古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アルゼンチン

古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』が発売になります。年末年始で宣伝が打てないのですが、自力で皆さんにご紹介しております。このブログで、内容の一部をご紹介しております。参考にしていただいて、お読みいただければ幸いです。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「モンロー・ドクトリン、モンロー主義(Monroe Doctrine)」とは、1823年にアメリカ第五代大統領ジェイムズ・モンローが連邦議会での演説で発表した外交政策の原理だ。教科書的な書き方をすれば、「アメリカ合衆国がヨーロッパ諸国に対して、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸間の相互不干渉を提唱したこと」となるが、簡単に言えば、「ヨーロッパ諸国に対して南北アメリカ大陸に再び手を出すことは許さないと宣言したこと」である。このモンロー・ドクトリンの考え方を「アメリカの“孤立主義”」とする解釈もあるが、そうではない。

 モンロー・ドクトリンは、「南北アメリカ大陸を含む西半球のことはアメリカが決める、ヨーロッパ諸国に手出しをさせない。その代わり、他の地域のことにアメリカが何か介入することはしない」というものだ。アメリカが西半球の決定者になるということで、「地球の半分の王になる」という宣言であった。しかし、何かきれいごとのように、モンロー・ドクトリンは、「アメリカは海外のことに手を出さない」「アメリカは植民地を求めない」という解釈の根拠にされてきた。

 南米諸国にしてみれば、アメリカがヨーロッパ諸国に対して、南米に手を出すなよと言ってくれた、ということは守ってくれるんだということになって、モンロー・ドクトリンは、歓迎された。しかし、実際には、旧宗主国(colonial master、コロニアル・マスター)であるヨーロッパ諸国に代わって、アメリカが影響力を行使するということであることが分かり、南米諸国を失望させた。アメリカも結局、ヨーロッパ諸国と同じ穴の狢であった。

 アメリカは世界帝国の座から滑り落ちようとしている。アメリカは19世紀にそうであったように、「地球の半分(西半球)の王」へと縮小しようとしている。しかし、南米では中国の影響が増大している。それを何とか解決したい。これこそが「21世紀のモンロー・ドクトリン」である。南米に注力しようにも、人的資源、予算の面で、南米へ注げる力は限られている。そうしている間に中国が影響力を高めている。BRICS(ブリックス)に、南米地域の大国であるブラジルとアルゼンチンが加盟している。アメリカが南米大陸での影響力を回復することはかなり難しい。アメリカの凋落を止めることはかなり難しい。

(貼り付けはじめ)

モンロー・ドクトリンへの回帰(The Return of the Monroe Doctrine

-ラテンアメリカで存在感を増す中国へのアメリカの対応は家父長主義的な、古いパターンに陥る危険性がある。

トム・ヤング、カーステン=アンドレス・シュルツ筆

2023年12月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/12/16/monroe-doctrine-united-states-latin-america-foreign-policy-interventionism-china-gop/

モンロー主義が復活しつつある。今月建国200周年を迎えるにあたり、この古くから神聖化された外交政策原則、「ワシントンが西半球の外に存在する諸大国による、西半球への政治的・軍事的侵略に反対することを宣言する」が再びアメリカの政治議論の最前線にある。

ヴィベック・ラマスワミやロン・デサンティスといった共和党の大統領候補たちは、ラテンアメリカで存在感を増す中国を狙い撃ちするために、このドクトリンの再活性化を求めており、メキシコの犯罪組織に対するアメリカの軍事攻撃の可能性を正当化するものとして、このドクトリンを提示している。彼らは、国連総会でモンローを称賛したドナルド・トランプ前米大統領や、ジョン・ボルトンやレックス・ティラーソン前国務長官などのトランプのアドヴァイザーたちに従っている。

バイデン政権はこの原則を明示的に発動することを控えているが(モンロー大統領について言えば中南米諸国の人々を強く刺激することを認識しているのだろう)、西半球における中国の拡大する足跡に対するホワイトハウスの警告には、明らかにモンロー主義的な色合いが含まれている。

10年前でさえ、21世紀におけるモンローの重要性は薄れていると思われていたかもしれない。イェール大学教授でマチュピチュ探検家のハイラム・ビンガムは、モンロー・ドクトリンの100周年に「時代遅れの禁句(obsolete shibboleth)」というレッテルを貼った。ドクトリンの2世紀目には、アメリカ大陸におけるアメリカの冷戦介入(U.S. Cold War interventions)や単独行動主義(unilateralism)と密接に関連するようになっていた。ジョン・ケリー米国務長官(当時)が2013年に「モンロー・ドクトリンの時代は終わった」と宣言した時、この原則は時代錯誤になっていた。

しかし、最近の復活が示唆するように、モンロー・ドクトリンは長い間、聴衆によって異なる意味を持たれてきた。「モンロー・ドクトリン」という言葉は広く有害であると考えられているが、ワシントンの政治家たちはその遺産継承を断ち切ろうと苦闘してきた。そして、ラテンアメリカにおけるアメリカの言動は、いまだにモンローのレンズを通して認識されている。

死後、モンロー・ドクトリンとして知られることになるその教義(ドクトリン)は、1823年12月2日、当時のジェームズ・モンロー米大統領が連邦議会への年次メッセージの中で初めて発表したものだが、問題となる、一節の大部分は当時のジョン・クインシー・アダムズ国務長官によって書かれたものだった。モンローとアダムスの外交政策には2つの主要原則があった。1つは、ヨーロッパとアメリカ大陸の間に「分離領域()separate spheres”」と呼ばれるものを確立することで、もう1つは、ラテンアメリカと太平洋岸北西部におけるヨーロッパの再征服(reconquest)の試みと領土的野心に対するアメリカの反対であった。

当初、この考えはドクトリンではなかったし、設立されたばかりの共和政体のアメリカがそのドクトリンを武力で裏付けることもできなかった。モンローの言説は当初、かなり高圧的なものではあったものの、ヨーロッパ征服の脅威に対する団結の宣言として受け止められた。旧スペイン系アメリカ植民地の独立指導者たちは、自分たちの大義(cause)に対する暗黙の支持の表明としてモンローの演説に熱心に注目した。

しかし、1846年から1848年まで続いた征服戦争でアメリカがメキシコの北半分を併合すると、アメリカの政策は不吉な色合いを帯び始めた。

数十年にわたって、モンロー・ドクトリンはアメリカの競合する政治派閥の間でより顕著になり、モンローの本来の文脈とのつながりは弱まった。歴代のアメリカ政府は、イギリス、ドイツ帝国、第二次世界大戦の枢軸諸国、そしてその後のソ連など、世界中の他の敵を撃退するためにモンロー・ドクトリンを発動した。ラテンアメリカでは、この原則は各国に(要請の有無にかかわらず)アメリカの保護を提供する一方、どのような行為が脅威とみなされるかを定義するアメリカの権利と、それにどのように対応するかを決定する権利を留保した。この地域に対する固有の家父長主義(パターナリズム)はすぐに、完全な一極主義と介入主義によって補完された。

それにもかかわらず、1860年代後半には、ラテンアメリカのリベラル派やアメリカの奴隷廃止論者(U.S. abolitionists)の一部が、モンロー・ドクトリンを、王朝の利益や大国の共謀ではなく、法の支配(rule of law)と連帯(solidarity)に基づく地域秩序(regional order)を創造する好機と捉えた。

19世紀半ばのリベラル派は、モンローを膨張主義(expansionism)のライセンスと見なす代わりに、旧世界の戦争や共謀から脱却した西半球共通の運命を構想した。このドクトリンは、メキシコのベニート・フアレス大統領やセバスティアン・レルド・デ・テハダ大統領といったラテンアメリカのリベラル派指導者たちの呼びかけを含め、アメリカ大陸におけるフランスやスペインの侵略に対してアメリカが行動することを求めるものとして再び登場した。

リベラル派の指導者たちは、アメリカの規模と力が西半球におけるその地位を際立たせることを認識していたが、国家間の相違は共和党の団結、多国間外交、国際法によって埋められるべきだと主張した。平和は小国を犠牲にして秘密協定を結ぶのではなく、仲裁と協議によって実現されるだろう。

ラテンアメリカ諸国はこの文脈でモンロー・ドクトリンを援用し、今や悪名高い1884年から1885年のベルリン会議へのアメリカの参加を批判した。そこではヨーロッパ列強が西洋文明を広めるべきだという義務(duty)の意識のもとにアフリカの領土を分配した。ラテンアメリカ諸国は、この認可された帝国の拡大が自分たちにも及ぶのではないかと恐れた。

数年後、ヴェネズエラはモンローの遺産を再び訴え、ヴェネズエラとガイアナの国境をめぐるイギリスとの紛争でアメリカの支援を求めた。100年前に行われた仲裁手続きに対するヴェネズエラの不満が、最近の戦争の脅威の舞台となった。アメリカでは、このドクトリンは、国内問題優先主義者たちがヨーロッパの同盟政治にアメリカが関与していることへの批判を進めるためにも役立った。

しかし今世紀に入り、セオドア・ルーズヴェルト大統領は、モンロー・ドクトリンとアメリカの単独介入との結びつきを深めた。最も悪名高いのは、ルーズヴェルト大統領がこの原則の「推論(corollary)」として、新たに強大になったアメリカが近隣諸国を統制する権利と義務を主張したことである。ウッドロー・ウィルソン大統領もまた、多くの外交問題でセオドア・ルーズヴェルトと敵対していたが、モンロー・ドクトリンに対するこの見解をほぼ共有していた。ウィルソンは国際連盟憲章にモンロー・ドクトリンを明記し、アメリカの一方的な特権を明記するよう主張した。

この時点で、ラテンアメリカの好意的な人々でさえもモンロー・ドクトリンに嫌悪感を抱いており、モンローはこの地域の民族主義者や反帝国主義者にとってのスローガンとなった。セオドア・ルーズヴェルトのドクトリン解釈は、連帯と自制を強調するドクトリンの解釈を大きく転換させた。この時代には、アメリカにはラテンアメリカ人を指導し、教育する権利と義務があるという人種的、文明的な驕りが蔓延していた。

しかし、学者フアン・パブロ・スカルフィが示したように、セオドア・ルーズヴェルトの考えが覆され、モンロー・ドクトリンを多国間主義と両立するものとして解釈し直そうという希望が消えた訳ではない。ラテンアメリカ社会の一部では、アメリカは依然として近代性のモデルとして支持されていた。

フランクリン・ルーズヴェルト大統領の、いわゆる善隣政策(Good Neighbor Policy)、西半球不干渉宣言に対するラテンアメリカの主張にアメリカが同意した、この暖かい雰囲気の時代に、モンロー・ドクトリンはこの地域である程度の救済を経験した。1930年代後半までにヨーロッパは戦争状態に入り、独立した平和な領域という考えはアメリカ大陸全体に大きな魅力をもたらした。

そのような期待に反して、アメリカは第二次世界大戦に引き込まれ、当時のヘンリー・スティムソン陸軍長官は1945年5月の日記で、国際連合(United Nations)設立の提案とフランクリン・ルーズヴェルトの不介入の約束が相まって、モンロー・ドクトリンは希薄になったと内々に不満を漏らし、スティムソンは大いに落胆した。

モンロー・ドクトリンに関する明確な言及は減少したが、冷戦の期間中、アメリカの対ラテンアメリカ外交政策は、より介入主義的な熱意を帯びるようになった。ソ連の影響力を排除するという正当な理由によって、アメリカ政府はラテンアメリカ各地で改革主義的な民主化計画を覆し、アメリカに友好的な独裁政権を樹立する手助けをした。1970年、故ヘンリー・キッシンジャー米国務長官はチリについて、「ラテンアメリカの有権者が自分たちの判断に委ねるには、問題はあまりにも重要だ」と述べた。

アメリカがラテンアメリカに露骨に介入することはまれとなった30年後の現在、モンロー・ドクトリンに関する議論が復活しつつあるようだ。

今度は中国との大国間競争が再燃することを予期し、アメリカは西半球以外の地域からの挑戦者、そして西半球内からの挑戦者に対する首尾一貫したアプローチを模索している。モンロー・ドクトリンは、一見シンプルで持続性があるため、アメリカ国内で支持者を増やしている。しかし、最近の共和党内におけるモンロー・ドクトリン礼賛は、ラテンアメリカにおけるモンロー・ドクトリンとその意味を表面的にしか理解していないことを示唆している。

このような使い方はアメリカ国内向けかもしれないが、ラテンアメリカの耳に届くと、常識はずれ(out of touch)、あるいはそれ以上に思われる。モンロー・ドクトリンを褒め称えたところで、ラテンアメリカの人々が、自分たちの利益は西半球地域以外のライヴァルではなく、アメリカとの協力にあるのだと納得することはない。モンロー・ドクトリンを呼び起こすことは、モンロー・ドクトリンが回避しようとする結果そのものを早めることになる。

ラテンアメリカで「モンロー・ドクトリン」という言葉を受け入れる人はほとんどいないだろうが、ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領、エクアドルのギジェルモ・ラッソ前大統領、アルゼンチンのハビエル・ミレイ新大統領など、この地域の右派の指導者の多くは独自の反中国的気質を持っている。これらの指導者たちは、中国の経済的・政治的比重の高まりを相殺するためにアメリカを頼っている。近年、この地域のいくつかの国々は、台湾から中国に外交関係を切り替え、北京との貿易・投資取引を拡大している。

ジョー・バイデン米大統領が、国連で公然とモンロー・ドクトリンを称賛するトランプ大統領に追随することはないだろう。しかし、バイデン政権のイニシアティヴの多くは、ラテンアメリカでも同じように受け止められている。複数のアメリカ政府高官は、移民や麻薬取引に関連する問題以外にラテンアメリカのために時間を割くことはほとんどなく、アメリカがこの地域に提供する経済支援は、他の地域への関与に比べるとわずかなものと見られている。バイデン政権の高官たちがラテンアメリカの人々に中国との経済的な関わり合いの危険性を説く時、その警告は「アメリカが一番よく知っている(the United States knows best)」というモンローの常套句の現代版として聞かれる。

モンロー・ドクトリンは、最近の復活によって、さらに多くの意味を持つようになった。しかし、モンロー主義(Monroeism)は名目であれ、暗黙の政策パラダイムであれ、失敗する運命にある。用語としての「モンロー・ドクトリン」は、贖罪するにはあまりにも汚染されている。今日の南北アメリカ関係においてこの言葉を持ち出すことは逆効果である。モンロー・ドクトリンは、一極主義、家父長主義(パターナリズム)、介入主義(interventionism)との2世紀にわたるつながりを拭い去ることはできない。

モンロー・ドクトリンを別の名前で呼んでも、その胡散臭さは隠せない。モンロー・ドクトリンの核心原理(core principles)は、現在の国際関係や南北アメリカ関係と衝突している。モンロー・ドクトリンは分離領域の考え方を前提としており、より多国間的なモンロー・ドクトリンの解釈は、独特の「西半球の考え方(Western Hemisphere idea)」の基礎としてこの側面を強調する傾向があった。

しかし、冷戦下の世界規模の対立と普遍的な核の脅威は、分離領域の実現可能性に疑問を投げかけた。グローバルな気候変動とヴァリューチェーンの時代となった今、この主張はさらにありえないものに見える。アメリカはヨーロッパ、アジア、そして世界情勢と切っても切れない関係にあるだけでなく、ラテンアメリカも同様である。

多国間のドクトリンの概念でさえ、家父長的な前提に陥っていた。より多国間的で平等主義的な地域秩序を求める声は、誰が西半球の脅威となるかを決めるのはアメリカであるというモンロー・ドクトリンの基本的な前提とは相容れない。

同様に、当初のモンロー・ドクトリンにあったヨーロッパ諸国による再征服の禁止は、時代とともに他の活動、たとえば数十年前のソ連との外交・通商関係や今日の中国の「債務の罠(debt traps)」にも適用されるようになった。モンローから出発するということは、アメリカがどのような外交関係が不穏当であるかを定義することを前提としている。

そしてここに問題がある。政策立案者たちがモンロー・ドクトリンの意味をどう考えようと、モンロー・ドクトリンの核心は、ラテンアメリカ諸国が世界の中で独自の道を切り開くことができるということを疑っているのだ。アメリカの外交政策がそのような考えを払拭しない限り、モンローの呪縛から抜け出せないだろう。

※トム・ロング:ワーウィック大学国際関係論講師、メキシコシティにある経済学研究教育センターの非常勤教授を務めている。ツイッターアカウント:@tomlongphd

※カーステン=アンドレス・シュルツ:ケンブリッジ大学国際関係学助教授を務めている。ツイッターアカウント:@schulz_c_a
(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アメリカから構成されるブリックス(BRICS)という国際グループは、2001年にその概念が提出されたものだ。その後、21世紀を通じて、具体的な国際グループとして存在感を増してきた。先日、ブリックスの首脳会談が南アフリカで開催され、新たに6カ国がブリックスに参加することが認められた。その6カ国とは、イラン、サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、アルゼンチンである。地図で見ていただくと分かるが、ペルシア湾と紅海(スエズ運河)、アラビア海、南大西洋、喜望峰、マゼラン海峡をがっちり抑えている。このブログでは、中国がアフリカ西部各国の港湾に投資を行っていることを既にご紹介した。中国の資源確保のための航路づくり、中国の大航海時代の始まりということになる。
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 今回参加を認められた6カ国以外にも加盟申請を行っている国々もあるようだ。これらの国々はブリックスだけにとどまらず、上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)、一帯一路計画(One Belt, One Road Initiative)にも参加している。様々な国際機関、国際機構に重層的に参加することで、非西側・非欧米諸国の関係が深まり、強固になっていく。今回。ブリックス通貨(BRICS currency)の導入は行われなかったが、脱ドル化(dedollarization)の流れは変わらない。非欧米諸国は金を購入しており、新たに金本位制を導入するかもしれない。アメリカという国家の「信用(脅し)」で持っているドルの価値が揺らいでいくことになるだろう。
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 中国が今年に入ってイランとサウジアラビアの国交正常化を仲介したというニューズがあった。今回のブリックス拡大に向けた動きであることが明らかになった。ヨーロッパと北米を南半球から、グローバル・サウス(Global South)が圧迫していくという構図が出来上がりつつある。

(貼り付けはじめ)

イラン、サウジアラビア、エジプトが新興国グループに参加(Iran, Saudi Arabia and Egypt Join Emerging Nations Group

-アルゼンチン、エチオピア、アラブ首長国連邦もブリックス(BRICS)に招待され、欧米主導のフォーラムに代わるグループとしての役割が強化された。

スティーヴン・エルランガー、デイヴィッド・ピアーソン、リンゼイ・チャテル筆

2023年8月24日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2023/08/24/world/europe/brics-expansion-xi-lula.html

今回の拡大は、グループの主要メンバー2カ国にとって重要な勝利と見なされている。中国の政治的影響力が増大し、ロシアの孤立を軽減するのに役立っている。しかし、ロシアと中国は、両国が利益を促進していると主張している、国々の経済を損なう可能性のある経済的な逆風に直面している。

中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカに加え、サウジアラビアを筆頭とする中東の3カ国と、ロシアのウクライナ侵攻を強固に支持する反米色の強いイランが参加した。

開催国である南アフリカは、テヘランと長年にわたって関係があり、イランの加盟を支持したが、インドやブラジルのような、いわゆる「グローバル・サウス(Global South)」のリーダーであり、ワシントンと北京の間で行動の自由を守りたい国にとっては、厄介な結果となった。

今回の決定は、現在のグローバルな金融・統治システムを、よりオープンで多様性に富み、制限の少ない、そしてアメリカの政治やドルの力に左右されにくいものに作り変えたいという願望を除いては、多種多様な(heterogenous)、明確な政治的一貫性をもたないこのグループの奇妙な性質を浮き彫りにした。

11カ国を合わせた人口は約37億人だが、5つの民主政体国家(democracies)、3つの権威主義国家(authoritarian states)、2つの独裁的君主制国家(autocratic monarchies)、1つの神政国家(theocracy)で構成されており、なかでもサウジアラビアとイランは数ヶ月前まで宿敵(sworn enemies)だった。

グループを支配し拡大を急ぐ中国を除けば、彼らの経済的影響力は比較的小さい。サウジアラビアとアラブ首長国連邦の参加は、特にブリックス・グループが独自の小規模な開発銀行(development bank)の規模と影響力を拡大しようとしているため、財政的により大きな重みをもたらすことになる。

エジプト、エチオピア、イランが加わったことで、北京はロシアとの「無制限のパートナーシップ(no-limits partnership)」や主権国家ウクライナへの侵攻を黙認したことで、先進諸国の多くの国々を遠ざけてきたにもかかわらず、そのアジェンダへの支持が高まっていることを示そうとしている。

「チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト」のコブス・ファン・スタデン研究員は、「イランは明らかに複雑な選択だ。他の加盟国の中には、欧米諸国との地政学的な緊張を高めるのではないかと懸念している国もあるだろうと想像できる」と述べている。

中国の習近平国家主席は木曜日、「今回の加盟国拡大は歴史的なものだ」と宣言し、「ブリックス諸国が、より広い発展途上国のために団結と協力を目指す決意を示した」と付け加えた。

それでも、中国にとって成功の様相を呈したことは、首脳会談から得られる最も重要な収穫となるかもしれない。さもなければ、米ドルの覇権(hegemony of the U.S. dollar)に匹敵するブリックス通貨(BRICS currency)を確立するという長年の目標を達成できなかったからだ。ブリックス・グループは代わりに、貿易に現地通貨を使用することをメンバーに奨励した。

ブリックス・ブロックの限界のもう1つの象徴は、ロシアのウラジーミル・V・プーティン大統領の欠席だった。プーティン大統領は、西側主導の国際機関である国際刑事裁判所(International Criminal Court)の発行した令状に基づき、ウクライナでの戦争犯罪で指名手配されているため出席できなかった。南アフリカは国際刑事裁判所の決定を無視したくないと考えた。

加えて、今週は、ロシアの傭兵部隊(mercurial mercenary)のリーダーであるエフゲニー・V・プリゴジンが、アメリカや他の西側当局の発表によれば、プライヴェートジェット機内で爆発に巻き込まれ、墜落死したことが明らかになり、クレムリンのイメージは更に悪化した。

今週のサミットで導入された変更が、各国が期待しているような影響を与えるかどうかはまだ分からない。2001年にBRICsという言葉を作った元ゴールドマン・サックスのエコノミストであるジム・オニールは、歴史的な記録は安心できるものではないと言う。

オニールは、BRICs首脳会議は「象徴的なものでしかない」と語り、「BRICs首脳会議が何かを成し遂げたとは私には思えない」と付け加えた。

そして、首脳会議からしばしば発せられる高尚な美辞麗句(lofty rhetoric)は、今後数年間にBRICsメンバーに重くのしかかるであろう重大な問題を隠蔽している。

アジア・ソサエティ政策研究所の中国専門家フィリップ・ル・コレは、「不動産スキャンダル、原因不明の外交部長更迭、中国人民解放軍の将軍の突然の解任など、中国経済が低迷するなか、習近平は自国に誇示するための政治的勝利を必要としていた」と指摘する。

しかし、特に中国とロシアの経済については、挫折が積み重なっているようだ。

ピーターソン国際経済研究所のエコノミスト、ジェイコブ・ファンク・キルケゴールは次のように述べている。「中国が主要な経済的比重(main economic weight)と貿易上の優位性(trading advantages)を提供しているため、ブリックスは常に中国プラス4である。しかし、中国経済は深刻な危機に陥っている。中国経済の不振は中国への一次産品輸出に依存しているブラジルや南アフリカなどの国にとっても困難をもたらす」。

キルケゴールは「ロシア経済自体が制裁の重みで崩壊しつつあり、他のブリックス諸国はロシアを搾取し、安い石油を買いあさり、石油精製品をヨーロッパに送っている」と述べた。

厳重に管理された会議では、表向きは結束をアピールしていたものの、ブリックスのメンバーたちは、経済拡大に関して対立する見解を持ち寄っていた。中国は、ブリックスがアメリカのパワーに対抗するためのプラットフォームであると考え、急速な拡大を推し進めた。しかし、何人かの首脳は、冷戦時代を彷彿とさせるような分裂的な世界秩序への回帰を警告を発し、反発した。

ブリックス諸国は西側の覇権(Western hegemony)に対抗して結束を固めたとはいえ、その目標は依然としてバラバラだ。インドのタクシャシラ研究所中国アナリストであるマノジ・ケワラマーニは、「ブリックスは、様々な利害関係を持つ新たなアクターたちによって、未知の道を進んでいる。ブリックスは扱いにくくなり、あえて言えば、より非効率になるだろう」と述べている。

ブリックス関係者の中には、これに同意しない人たちもいた。

ブリックス交渉の南アフリカ代表であるアニル・スークラルは、西側が支配している各機関の構造は時代とともに変化する必要があると述べた。スークラルは「ブリックスが言っているのは、『もっと包括的になろう(Let’s be more inclusive)』ということだ。BRICSは反西洋ではない」と発言した。

対照的に、キルケゴールは、この組織が拡大しても、致命的に多様であり、「反西洋感情によって何とかまとめられた人為的な創造物」に過ぎないと見ている。

サウジアラビアと並ぶイランの加盟は、ロシアの侵攻軍への供給におけるテヘランの重要な役割と、リヤドのアメリカとの長期的な安全保障同盟を考えれば、おそらく最大の驚きとなった。

サウジアラビアはいまだに兵器のほとんどをアメリカから調達しており、複数のアナリストによれば、アメリカの安全保障の傘をすぐに放棄する意図はないという。しかし、サウジアラビア当局者たちは、ワシントンが本当に中東に関与しているのかについて懐疑的であり、今年初めに北京でテヘランとの和解を交渉し、中国の外交的地位を高めた。

テヘランは決してワシントンのファンではない。そして、北京とは意外にも親密になっている。北京は、国際的な制裁を無視して、大幅に値引きされた石油を購入することで、テヘランを浮揚させる手助けをしてきた。

木曜日、イランの政治担当副大統領であるモハマド・ジャムシディは、イランのブリックス加盟を「歴史的な偉業と戦略的勝利(historic achievement and a strategic victory)」と呼んだ。イランの加盟は、一種の世界的な門番としてワシントンがテヘランに対して持っていた影響力を弱めるものでもある、と「クインシー・インスティテュート・フォー・レスポンシブル・ステートクラフト」のトリタ・パルシは述べた。

デリーに本拠を置くオブザーヴァー・リサーチ財団の副理事長で、キングス・カレッジ・ロンドンのインド研究所で国際関係論を教えるハーシュ・V・パント教授は、インドは重大な懸念を抱きながらも、悪役を演じたくなかったため、この拡大に協力した、と語った。更に、ニューデリーは「このプラットフォームの性質が、地理経済的(geoeconomic)なものから地政学的(geopolitical)なものへと変化する」ことに警戒を怠らないだろうと付け加えた。

木曜日、米国務省はイランの参加については触れず、代わりにホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が週明けに述べた、バイデン政権が「ブリックスがアメリカや他の国々に対する地政学的ライバルのような存在に進化するとは考えていない」という発言を紹介した。

アナリストの中には、ブリックスへの加盟に関心を示した数十カ国は、西側諸国への警鐘(wake-up call)になるはずだと述べた。

アジア・ソサエティ政策研究所中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマスは、「多くの発展途上国がブリックスへの加盟に熱意を示しているのは、中国の価値中立的なグローバリゼーションの魅力だけでなく、西側諸国がより包括的な国際秩序の構築に失敗していることを反映している」と指摘している。

ワシントンのエドワード・ウォン、ロンドンのイザベル・クワイ、ベルリンのポール・ソンヌ、ニューデリーのスハシニ・ラジがこの記事の作成に貢献した。

※スティーヴン・エルランガー:『ニューヨーク・タイムズ』紙外交担当特派員チーフ、ベルリンを拠点としている。以前はブリュッセル、ロンドン、パリ、イェルサレム、ベルリン、プラハ、ベルグラード、ワシントン、モスクワ、バンコクで取材活動を行った。

※デイヴィッド・ピアーソン:中国外交政策と中国経済と文化の世界とのかかわりを取材している。

※リンゼイ・チャテル:本紙ヨハネスブルク支局を拠点に南アフリカを取材している。本紙インターナショナル・モーニング・ニューズレターでアフリカについて記事を書いている。チャテルは『フォーリン・ポリシー・クアーツ』誌とAP通信に勤務していた。

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ブリックス(Brics)、新たに6カ国を加盟させ2倍以上に拡大(Brics to more than double with admission of six new countries

-ロシアと中国を含む経済圏の大規模な拡大がアメリカと西側の同盟諸国への対抗軸を提供しようとしている。

ジュリアン・ボーガー筆(ワシントン発)

2023年8月24日

『ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/business/2023/aug/24/five-brics-nations-announce-admission-of-six-new-countries-to-bloc

新興経済大国で構成されるブリックス・グループ(Brics group)は、6カ国の新メンバーの加盟を発表した。今回の拡大は、グローバルな世界秩序を再構築し、アメリカとその同盟諸国に対抗しようとしてのことだ。

来年初め、イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアが、現在の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に加わることが、木曜日にヨハネスブルグで開催された首脳会談の席上で発表された。

中国の習近平国家主席は、この拡大について「歴史的」と表現した。習近平国家主席は、新メンバー加入の重要な推進者であり、ブリックスの拡大がグローバル・サウス(global south)が世界情勢でより強い発言力を持つための方法であると主張してきた。

しかし、この拡大が世界の舞台でブリックスの影響力をどの程度高めることになるのかは不明だ。アナリストたちは、影響力の拡大は、これらの国々がどこまで一致団結して行動できるかにかかっており、新メンバーの加入によって、強力な独裁国家と中所得国や発展途上の民主政治体制国家が混在する、よりバラバラのグループとなった。

「米州対話(Inter-American Dialogue)」でアジア・ラテンアメリカ・プログラムのディレクターを務めるマーガレット・マイヤーズは、「ブリックスの新メンバーが、このブロックに加盟することで何を得ることになるかはまったく明らかではない。少なくとも現時点では、この動きは何よりも象徴的なものであり、世界秩序の再調整に対するグローバル・サウスからの広範な支持を示すものだ」と述べた。

ウラジーミル・プーティンは、国際刑事裁判所(international criminal court)からウクライナでの戦争犯罪の逮捕状が出されている。プーティンは3日間のサミットに直接出席することはなかったが、ブリックスの拡大は、プーティンにとって象徴的な後押しとなる。現在、プーティン大統領は、アメリカが主導する、ロシア軍の撤退と先勝の終結を強いるための努力と企てに対して戦っている。

制裁を回避する方法を探していたイランを加盟させるという決定は、プーティンと習近平の勝利を意味し、グループに反欧米的、非民主的な色合いを与えることに貢献した。彼らは、グループを非同盟(non-aligned)として表現することを好む他のメンバーのより慎重なアプローチに勝った。

厳しい経済問題に直面しているアルゼンチンにとって、加盟は深刻化する危機から脱出するための生命線となりうる。アルベルト・フェルナンデス大統領は、アルゼンチンにとって今回の加盟はアルゼンチンにとっての「新しいシナリオ(new scenario)」となると述べた。

フェルナンデス大統領は「新市場への参加、既存市場の強化、投資の拡大、雇用の創出、輸入の増加の可能性が開ける」と語った。

エチオピアはグループ唯一の低所得国となった。アビイ・アーメド首相は、自国にとって「素晴らしい瞬間(great moment)」だと述べた。

10以上の国々が正式に加盟を申請しているが、加盟候補国が加盟するには、オリジナルの5カ国の間でコンセンサスを得る必要がある。

南アフリカ大統領のシリル・ラマフォサは、加盟諸国が「ブリックス拡大プロセスの指導原則、基準、手順」に合意したと述べた。しかし、これらの基準は説明されなかった。例えば、2億7400万人の人口を持ち、アジアで強力な力を持つインドネシアは、加盟を申請したが今回は認められなかった。

戦略国際問題研究センター(Centre for Strategic and International Studies)の米州プログラム責任者であるライアン・バーグは次のように述べている。「中国とロシアにとって、今回の拡大は勝利だ。中国にとっては、自分たちが望む北京中心の秩序を構築し続けることができる。来年、首脳会議を主催するロシアにとっては、孤立が深刻化している現在、これは大きなチャンスである」。

「ブラジルやインドの立場から見ると、たとえ美辞麗句を並べ立てたとしても、中国のような世界的な大国を含む組織の一員としての力を弱めてしまうため、その拡大にはあまり乗り気ではないだろう」とバーグは述べている。

既に中国と広範な二国間関係を結んでいる加盟諸国にとって、加盟による経済的利益がすぐに得られるとは思えない。ブリックス・グループの新開発銀行(New Development Bank)はまだ比較的小規模だ。しかし、マイヤーズは、この動きは象徴的なものではあるが、重要でないことを意味するものではないと述べた。

マイヤーズは次のように語っている。「これは重要なことであり、G7や他の北半球のグローバル・アクターたちが否定すべきではない。これらの新メンバー(特に主要産油国)が加わったことで、ブリックスの構成は、世界経済と世界人口に占める割合がはるかに大きくなった」。

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