古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アヴリル・ヘインズ

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 バイデン政権はインテリジェンス外交(intelligence diplomacy)ということで、国家情報長官も参加させての外交を行おうとしている。ウクライナ戦争直前にロシア軍の動きをウクライナ側に通報するということで、その成果を挙げたと言われている。

 インテリジェンスが外交の場で重要な役割を果たすということはこれまでもあった。代表的な例としては、日中国交正常化の交渉過程において、アメリカは軍事偵察衛星から撮影した中ソ(当時)国境のソ連赤軍の配備が分かる写真を中国側に提供し、これを見た毛沢東が米中国境正常化を最終決断したという話が残っている。「敵(ソ連)の敵は味方」ということで、共通の敵をつくり、それを認識させるために、インテリジェンスが重要であった。

 米中国交正常化やニクソンショックに関して、日本は情報収集ができず、アメリカからも情報を得ることができず、寝耳に水の状態で、慌てて対応しなければならなかった。日本は、情報諜報を軽視しがちと言われてきた。太平洋戦争開戦前、戦時中において、日本は情報部門を軽視し、情報を分析することを怠ったために、国が亡ぶという結果を招いたと言われている。しかし、日本には忍者の伝統があり(忍者は現在で言えば情報将校であり、スパイである)、日露戦争において、明石元次郎大佐(後に大将)がスウェーデンのストックホルムに拠点を置いて、ロシアに対する諜報上活動と後方かく乱に従事し、ロシア国内に混乱をもたらすことで、戦勝に貢献したことは知られている。日本には優秀な情報将校の伝統もある。しかし、それが何故か、一番重要なアメリカに対して機能しなかったのは、そこに何らかの意図があったのではないか、機能しないように仕組まれたのではないかと疑わざるを得ない。

 インテリジェンス外交によって、機密情報が各国で「交換」されることになり、そのために、セキュリティクリアランスが設定されたということもある。アメリカは、正確な情報を同盟諸国に与え、それを各国の行動の誘因にしようとしている。米中国交正常化交渉の時は、衛星写真であったが、今は各種情報となっているだろう。セキュリティクリアランスの運用に関しては、国家や政府に都合の悪い情報を機密情報に指定して、国民に知らせないということが起きる危険がある。自衛隊の日報問題ということがあったが、そのようなことが起きる危険がある。ここで重要なのは、シヴィリアン・コントロール(文民統制)、国民に選ばれた政治家がコントロールすることである。そして、国会がきちんとした権限を持つことだ。現在の弛緩しきった自民党にそうした緊張感を持ったコントロールができるかどうか、心もとない。こうしたことがしっかりできなければ、他国からの信頼も得られない。

(貼り付けはじめ)

インテリジェンス(情報諜報)外交の時代(The Age of Intelligence Diplomacy

-イラク戦争はそのリスクを浮き彫りにした。ロシアのウクライナ戦争はその機会を示した。

ブレット・M・ホルムグレン筆

https://foreignpolicy.com/2024/02/19/russia-ukraine-us-intelligence-diplomacy-invasion-anniversary/

私は残りの人生で、2022年2月22日のことを忘れることは決してないだろう。その日の夕刻、国務省内の、盗聴などから遮断された、安全が確認された部屋で、閣僚級の人々、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)の幹部クラスの人々が集まっての会議が招集された。私はアントニー・ブリンケン米国務長官とともに出席した。会議の冒頭で行われた通常の情報ブリーフィングでは、厳しい警告が発せられた。 ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始する姿勢を鮮明にしていた。

その前の数カ月間、アメリカはロシアの計画についてウクライナと世界に警告するため、戦略的に情報の機密性の格下げ(downgrading)と機密解除(declassifying)を行っていた。会議が行われた夜、国務省で国家安全保障会議の指導者たちは、新たな緊急脅威情報を直ちにウクライナと共有する必要があるとの結論に達した。

偶然にも、ウクライナのドミトロ・クレバ外相がブリンケン国務長官との会談の後、国務省に来ていた。ブリンケン、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官、そしてアヴリル・ヘインズ国家情報長官(Director of National IntelligenceDNI)は、私と、ヘインズ長官の分析担当副官モーガン・ミュアに国家安全保障会議を抜け出し、情報機関と協力してウクライナと共有できる文言を明確にするよう要請した。許可を得た後、私たちは国務省の7階にいるクレバ外相を探し出し、情報を伝えた。クレバは絶望の表情を浮かべながら、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に戦争の準備をするよう電話をかけた。

最終的に、ロシアの計画を事前に暴露しても戦争を回避することはできなかった。しかし、アメリカの情報公開はウクライナの自衛を可能にし、同盟諸国やパートナー諸国を動員して、キエフを支援させ、国民の目にはロシアの偽情報(disinformation)を無力化させ、世界の人々に対して、アメリカからの情報、そしてアメリカの信頼性を回復させた。イラク戦争がインテリジェンス(情報諜報)外交のリスクを浮き彫りにしたとすれば、ウクライナにおけるロシアの戦争はその機会を示した。

アメリカは常に外国のパートナーと脅威に関する情報を共有しており、情報は長い間、アメリカの外交官たちにとって貴重なカードであった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、アメリカの外交に対する情報諜報(インテリジェンス)支援の規模、範囲、スピードの著しい進化を象徴するものだった。それはまた、アメリカの国家安全保障上の利益を支援するために情報活動を行う18の機関で構成されている、アメリカ情報諜報(インテリジェンス)コミュニティの世界的な信頼性の転換点ともなった。

ロシアのウクライナ侵攻に対するアメリカと同盟諸国の対応を可能にする上で、戦略的で、承認された情報開示が中心的な役割を果たした。情報開示のおかげで、ウィリアム・バーンズCIA長官は2021年11月、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領に対し、アメリカはウクライナにおけるモスクワの意図を認識しており、断固とした対応を取るだろうと警告を与えることができた。また、ロシアの計画についてウクライナの人々や世界に警告を発した。そのような情報開示の一例として、モスクワがウクライナ侵攻を正当化するためにいわゆる「偽旗(fake flag)」残虐行為をでっち上げるかもしれないというアメリカの情報があった。

ロシアの陰謀を暴く諜報機関の正確さと成功を考慮して、政府、メディア、一般大衆の多くは、情報開示が他の世界的な紛争や課題における外交手段として利用される可能性があると認識している。

「インテリジェンス(情報諜報)外交(intelligence diplomacy)」について、一般的に受け入れられている定義は存在しない。ある人はこの概念を、外国のパートナーとの伝統的な情報共有という狭い意味で捉えている。また、情報外交をパブリック・ディプロマシー活動(public diplomacy campaigns)を強化するための手段、あるいはプレス・リリースなど政府高官の発言に注目を集めるための手段と考える人もいる。国務省では、情報諜報外交を「外交活動やパブリック・ディプロマシーを支援するための情報活用であり、アメリカの外交目的を推進し、パートナーに情報を提供し、同盟関係を構築し、協力を促進し、アプローチや見解の収斂を促し、条約を検証するためのもの」と定義している。

戦略的かつ責任を持って使用された後に、機密性のレヴェルが下げられた、もしくは機密解除された情報は、アメリカの外交政策を強力に後押しすることができる。例えば、1962年10月、アメリカは国連安全保障理事会に機密解除された情報を提出し、キューバにソ連の攻撃用ミサイルが存在することを暴露した。2017年4月、ホワイトハウスは対シリア攻撃への支持を集めるため、シリア政権による自国民への化学兵器使用を詳述した情報の機密指定を解除した。

しかし、適切な保護措置や監視がなければ、インテリジェンス外交は国家安全保障へのリスクを高め、外国のパートナーとの信頼を損ない、アメリカの利益を損なうような使われ方をすることもある。最も悪名高いのは、2003年にイラク侵攻を開始する前に、ジョージ・W・ブッシュ政権が、イラクの指導者サダム・フセインが大量破壊兵器を保有していることを主張するために機密情報を公開したことである。この情報は不正確であることが判明し、情報諜報コミュニティは一世代(30年)にわたって世界的な評判を落とした。

情報諜報コミュニティと政策立案者たちにとっての課題は、この種の誤用や悪用を防ぎながら、インテリジェンス外交の利点を最大限に活用することだ。インテリジェンス外交の将来を考えるとき、イラクの教訓を決して忘れてはならない。同時に、ロシアの本格的なウクライナ侵攻に対するアメリカの対応において、なぜインテリジェンス外交があれほど成功したのかを概説する価値がある。

第一の理由は、ジョー・バイデン大統領の決然たる指導力だ。2021年後半、ロシアが軍を動員し、情報諜報コミュニティが明らかにウクライナへの攻撃が間近に迫っていると評価する下地が整えられつつあったとき、バイデンはモスクワの計画と意図に関する情報を、機密レヴェルを下げるように指示した。ウクライナをはじめとするアメリカの同盟諸国やパートナー、そして一般市民が、アメリカが見ているものを正確に理解できるようにするためだ。

第二に、アメリカの政策意図は、戦争を防ぐという原則的かつ明確なものだった。サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が2022年初頭、ホワイトハウスでの記者会見の場で述べたように、「イラク情勢では、戦争を始めるために、まさにこの演壇から情報が利用され、展開された。私たちは戦争を止め、戦争を防ぎ、戦争を回避しようとしている」。ブリンケン国務長官は、ロシアが侵攻する数日前に、国連安全保障理事会で同様のメッセージを発した。

第三に、ロシアとウクライナに関するアメリカの情報は、具体的で一貫性があり、正確であり、そして今後もそうであり続ける。情報諜報機関のアナリストたちは、ロシアの活動と意図に関して収集した情報の信頼性と確実性に大きな自身を持っており、これは収集と分析能力に対する長年の投資の結果である。

第四に、商業画像やソーシャルメディアなど、ロシアの活動に関する新たなオープンソースデータによって、情報諜報コミュニティは、より機密性の高い収集源や方法を発覚の危険に晒すことなく、信頼できる情報の機密レヴェルを下げたり、機密扱いを解除したりして、外国のパートナーや一般市民と共有することができるようになった。

ブリンケンのリーダーシップの下、国務省は、より多くの外交にインテリジェンス(情報諜報)を注入するため、集中的かつ計画的なアプローチを採用し、実行してきた。その際、国務省は情報諜報機関と緊密に連携してきた。大使をはじめとする外務官僚から次官、副長官、そしてブリンケン自身にいたるまで、国務省の多くの高官が、格下げされた、あるいは機密解除された情報を、国際的な関与や公の場での発言、外交上の方策(diplomatic demarches)に利用する機会を定期的に探し求めている。

ブリンケン国務長官は、2022年7月に国家情報長官室で行った講演の中で、「我が国の情報諜報活動と外交との間の深い相乗効果(profound synergy between our intelligence and our diplomacy)」についてほのめかした。ブリンケンは続けて「私たちは、ウクライナに対するロシアの侵略に関してだけでなく、全般的に、インテリジェンス外交を我々の思考の一部に組み入れ続ける必要があると考える」と述べた。

2023年9月、ブリンケンは、冷戦後の秩序の終焉から、民主政治体制と独裁政治の闘いによって定義される戦略的競争の新時代へと移行する際のアメリカの外交アプローチについて概説した。この戦略の核心は、「アメリカの最大の戦略的資産である同盟とパートナーシップを再参加させ、活性化させ、再構築すること」だとブリンケンは語っている。

インテリジェンス(情報諜報)は、これらの関係をサポートし、発展させる上で重要な役割を果たす。情報を共有することで信頼を築き、信頼できる情報に基づく共通の見解を確立し、パートナー間の協力のための新たな分野を開くことが可能となる。同盟関係の強化は、アメリカ情報諜報機関にとっても重要な資産となる。バイデン政権の国家安全保障戦略と国家情報長官の最近の国家情報諜報戦略はいずれも、権威主義的、もしくは修正主義的な諸大国に対するアメリカの戦略的競争においてインテリジェンス外交が中心的な役割を果たすことを明らかにしている。

国務省当局者や外交官たちによる膨大な量の格下げ(downgrade)および機密解除(declassification)要求は、この新たな現実を浮き彫りにしている。たとえば、2021年には、情報諜報機関の格下げまたは機密解除を求める要求が900件以上もあった。 2023年には、そのようなリクエストは1100件以上あり、週あたり20件以上のリクエストがあった。

国務省はウクライナ戦争以降もインテリジェンス外交を展開してきた。2023年だけでも、ウクライナ戦争を支援するためにロシアに致死性殺傷兵器を提供した場合の結果について中国に警告するために、格下げまたは機密解除された情報が公に、そして外交ルートで、非公開で利用された。つい最近、国務省は、アメリカとの二国間協定に違反して中国製軍事装備品の輸入を検討している国に方向転換を促す大規模な取り組みの一環として、格下げされた情報を利用した。そして国務省は、人権侵害に関係する政府への監視技術の拡散を防ぐために各国と連携するために、格下げされた情報に大きく依存してきた。

インテリジェンス外交に万能のアプローチはない。アメリカ国内外の様々な政府機関が、それぞれの権限や目的、そして少なくともアメリカにおいては、国家情報長官のガイダンスに沿ったモデルを開発し、展開している。国務省としては、インテリジェンス外交の厳密性、規律、そして慎重さをもって、いつ、どのようにインテリジェンス外交を行うべきかについて、最善の実行手段(best practice)を制度化するためにいくつかのステップを踏んできた。

第一のステップとして、私たちは国務省職員による情報の開示または公表の要求を通知するのに役立つ指針を確立した。これら7つの核となる原則は、国家情報長官によって設定された既存の情報諜報コミュニティの開示ポリシーを補完するものだ。

インテリジェンス外交は、明確な政策目標を支援し、国力の他の要素と整合性を保ちながら、国力を強化し、同盟関係やパートナーシップの強化を優先し、アメリカの信頼性を維持するために、信頼性が高く、理想的には複数のソースからの情報に依拠し、オープンな情報源では得られないような新しくユニークな情報の共有に努めるべきだ。更には、外交を支援するために使用される情報は、明確で理解しやすく、伝えられる側に伝わりやすいものでなければならない。また、インテリジェンス外交の提案は、情報源や方法に対する潜在的なリスクと期待される利益を慎重に比較検討すべきだ。

2024年1月、私たちは、職員の意識を高め、将来の世代の外務官僚や公務員たちに指針を提供するために、国務省の内部政策の中に、インテリジェンス外交を活用するためのこれらの原則とガイドラインを成文化し、追加した。

第二のステップとして、テクノロジーを活用し、国務省の機密・非機密ネットワークを通じてリソースや情報共有ツールをオンラインで利用できるようにすることで、国内外の米外交官たちのインテリジェンス外交へのアクセスを拡大した。

最後のステップは、新任の外交官や大使を対象に、インテリジェンス外交について、またこの能力を世界各地の米在外公館での外交活動にどのように組み込むかについて教育するための研修の開発に着手したことである。

結論は次のようなものだ。インテリジェンス外交は、アメリカの外交政策を担う主要機関である国務省の使命を支え、それを可能にする上で、ますます不可欠になっている。しかし、それは国家の安全保障とアメリカの価値観に合致した形で活用されなければならない。ガードレールがなければ、インテリジェンス外交が誤用されたり、悪用されたりする危険性がある。

2022年2月の厳粛な夜のことを思い出すと、世界がどれほど変わったか、そして情報諜報活動と外交の関係がほんの2、3年の間にどれほど進化したかを思い知らされる。もはや情報を分析資源としてのみ捉える余裕はない。むしろ情報は、戦略的敵対国との競争の最前線において、アメリカの外交を可能にする重要な手段と見なされなければならない。適切な保護措置が講じられれば、インテリジェンス外交はアメリカの未来を守る上で重要な役割を果たすことになる。

※ブレット・M・ホルムグレン:米国防省情報諜報(インテリジェンス)・研究局(Intelligence and ResearchINR)担当国務次官補。米国防省情報諜報(インテリジェンス)・研究局は、INRは情報諜報コミュニティの18の構成機関の1つであり、アメリカで最古の文官系情報機関だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 私が著書『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(2021年)で取り上げ、最近になって、ヴェテランのジャーナリスト歳川隆雄氏が記事で取り上げた、ワシントンに本拠を置くコンサルティング会社ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社についての記事をご紹介する。ジョー・バイデン政権には、ウエストエグゼク社出身者が数多く入っており、代表格としては、アントニー・ブリンケン国務長官、アヴリル・ヘインズ国家情報長官、イーライ・ラトナー国防次官補などがいる。共和党のドナルド・トランプ政権時代には、こうした人々は、ウエストエグゼク社で働き、クライアント企業の問題解決のために活動していた。ウエストエグゼク社のクライアントは公表されていないが、創設者のミシェル・フロノイ元米国防次官(バラク・オバマ政権)と国防産業との関係が密接で深いために、国防産業の各企業がクライアントになっていると考えるのが自然だ。
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ミシェル・フロノイ

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林芳正外相(当時)との夕食会にて(一番奥・2022年)
 ウエストエグゼク社とバイデン政権の関係については、今年に入って、ウエストエグゼク社の現役の幹部社員が米国防総省戦略資本局のコンサルタントとして、兼職して働くことになり、「この兼職は大丈夫か、倫理上の問題はないのか」「利益相反問題は大丈夫か」という声が上がった。ウエストエグゼク社のクライアントが米国防総省から仕事を受けるというようなことが起きる場合、兼職のコンサルタントがその地位を利用して、有利な契約を結ぶというようなことが起きるのではないかという懸念がある。

 ここでポイントは米国防総省に新たに新設された戦略資本局という部局の存在である。この戦略資本局創設の目的は、「動きの鈍い連邦官僚機構(federal bureaucracy)と、ベンチャーキャピタルの支援を受けた最先端の仕事(cutting-edge work)をする民間企業とを結びつけること」「国家安全保障にとって極めて重要なテクノロジーに対する民間投資を拡大させる」となっている。国防に関わる重要な武器はハイテク化が進んでいる。武器開発、武器の基礎となる技術開発は政府だけで担えるものではない。民間部門も参加しなければならない。官民連携、官民協調を調整し、促進するのが戦略資本局ということになる。そこに、ウエストエグゼク社のコンサルタントが、ウエストエグゼク社に在籍のままで特別政府職員として入ったということはそうした関係構築、調整のためということになる。
 軍産複合体(military-industry complex)という有名な言葉(ドワイト・アイゼンハワー大統領が退任演説で使った)がある。アメリカ軍と民間国防企業が結びつき、肥大化し、税金を食い物にするということは第二次世界大戦後の冷戦期からずっと続いている。現在は、中国を標的として、アメリカ軍と民間国防産業は無図美月を深めている。また、官民協調は、中国の特徴でもあり、それを模倣しようとしている。バイデン政権は、日本研究の泰斗故チャルマーズ・ジョンソンが通産省研究を行って発見した、「産業政策」を採用している。アメリカの国防分野における「産業政策」の推進役がウエストエグゼク社ということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

回転ドアを通じて実現するかもしれない「偉大な三人組」(A Revolving-Door Trifecta

-本日の重要ポイント:国務省で同じことが繰り返されるかもしれない。

ロバート・カットナー筆

2023年8月25日

『ジ・アメリカン・プロスペクト』誌

https://prospect.org/blogs-and-newsletters/tap/2023-08-25-revolving-door-trifecta/

現在、ホワイトハウスで国家安全保障会議インド太平洋担当調整官(White House coordinator for Indo-Pacific Affairs at the National Security Council)を務めるカート・キャンベルが、国務副長官(deputy secretary of state)に就任する可能性があると報じられている。これは、グローバルな貿易政策が国内の産業や労働の目標に役立つことを望む人々にとっては、あまり良いニューズではない。

キャンベルはヴェテランである。彼は2013年までオバマ政権下で東アジア・太平洋担当国務次官補(assistant secretary of state for East Asian and Pacific Affairs)を務めたが、その後政府を離れ、様々な企業をクライアントに持つコンサルティング・ロビイング会社「ジ・アジア・グループ(The Asia Group)」を設立した。キャンベルは政府とのコネクションやアクセスを利用して、クライアントたちの利益に貢献した。キャンベルは、現在のアメリカでは廃案となっているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定、Trans-Pacific Partnership)の強力な推進者であった。このTPPは表向きには貿易取引の促進の仮面をかぶった、企業の希望リストに過ぎないものだった。
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カート・キャンベル

もしキャンベルが国務副長官に指名され、承認されれば、革命的な経歴を持つ他の2人の外交政策高官に加わることになる。本誌が既に報じているように、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、キャンベルと同じく、民主党がホワイトハウスから離れている間、企業コンサルタントとして有利なキャリアを積んでいた。主な顧客はウーバーだった。
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ジェイク・サリヴァン

外交政策に関する回転ドア三人組の最後を飾るのは、トニー・ブリンケン国務長官だ。ブリンケンは、ジョー・バイデン政権に、イーライ・ラトナー国防次官補(インド太平洋担当)を含む12人以上の高官を送り込んだコンサルティング会社「ウエストエグゼク(WestExec)」社の共同設立者兼マネージング・パートナーだった。本誌のジョナサン・ガイヤー編集長(当時)がウエストエグゼク社に関するこの見事な調査記事で書いているように、この会社のクライアントは「技術や防衛において物議を醸すような利害関係を持っており、その元コンサルタントが現在設定し実行する立場にある政策と交錯している」。
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アントニー・ブリンケン

このような回転ドアのパターンは、明示的・黙示的な利益相反(conflicts of interest)という点で十分に悪質である。もっと陰湿なのは、国家の安全保障について、経済的な概念よりも軍事的な概念に重きを置くメンタリティを強化することだ。米国企業や投資銀行家の利害が絡む経済的な深い問題を追及するよりも、狭義の軍事・技術問題に目を向けたタカ派的な対中外交政策を構築する方が簡単なのだ。

キャンベルは当初、中国をグローバル貿易システムに参加させることが、より民主的で市場志向の国家(more democratic and market-oriented nation)への移行(transition)を促進するという見解を共有していた。現在は、狭義の国家安全保障に関しては、対中国タカ派(China Hawk)となっている。

しかし、キャンベルの貿易に関する見解や、労働者中心の経済を構築するというバイデノミクス(Bidenomics)の国内的な願望との関連性には、並行した進化は見られない。これは、提案されているインド太平洋経済枠組(IPEFIndo-Pacific Economic Framework)のようなイニシアティヴの詳細が、輸出規制に関するバイデンの大統領令の詳細と同様に、まだ非常に未確定であるためだ。

キャンベルにはもう一つ、ホワイトハウスとの深いつながりがある。彼はバイデン政権の国家経済会議議長であるラエル・ブレイナードと結婚しており、ブレイナードもまた、貿易に関する見解は新潮流というよりはむしろ旧態依然としたリベラル派である。つまり、この政権の中心は、通商政策を国内経済政策と緊密に結びつけることから離れている。

必要なのはもっと異論を唱えることであり、自分の意見を強めるための、エコーチェンバーを増やすことではない。悲しいことだが、異端児(outliers)はトランプ政権時代に企業コンサルタントとして働いていなかった人々だ。例えば、キャサリン・タイ米通商代表(U.S. Trade Rep)は、古い企業版自由貿易を取り壊す必要性に厳しい。しかし、タイはクラブのメンバーではない。

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ペンタゴン(米国防総省)が民間部門と提携することに関する倫理上の厄介な諸問題(The thorny ethical issues of the Pentagon partnering with the private sector

―企業コンサルタントと米国防総省顧問を同時に務めることは法律上問題ではないのか。

ジョナサン・ガイヤー筆

2023年4月28日

『ヴォックス』誌

https://www.vox.com/politics/2023/4/28/23698006/pentagon-investing-capital-ethical-gray-areas-consulting

※ジョナサン・ガイヤーは『ヴォックス』誌で外交政策、国家安全保障、世界情勢の記事執筆を行っている。2019年から2021年まで『ジ・アメリカン・プロスペクト』誌に勤務し、編集長としてジョー・バイデン、ドナルド・トランプ両政権の外交政策ティームを取材した。

ここ数年、連邦政府内で、情報機関や軍事機関が次々と新設されているが、その最大の目的は、動きの鈍い連邦官僚機構(federal bureaucracy)と、ベンチャーキャピタルの支援を受けた最先端の仕事(cutting-edge work)をする民間企業とを結びつけることである。

いくつかの軍事機関や情報機関がベンチャー・キャピタル・オフィスを立ち上げ、ジョー・バイデン大統領のティームが実行しているCHIPS法(半導体関連法)は、アメリカのハイテク製造部門を発展させるための官民パートナーシップを前提としている。

公益と企業利益の境界線が曖昧であることを考えると、こうした努力は倫理的な問題を引き起こす可能性がある。そして、最近のキャリア上の動きが、そのような問題を物語っている。

今週、弁護士のリンダ・ロウリーは、米国防総省に新設された戦略資本局(Office of Strategic CapitalOSC)に非常勤のコンサルタントとして勤務することを発表した。彼女はリンクトイン(LinkedIn)に、「国家安全保障を支援するために、新興の最先端技術(emerging and frontier technologies)に民間資本を誘致し、その規模を拡大する」ことに貢献できることに、いかに興奮しているかを投稿した。

しかし、際立っていたのは、ロウリーがウエストエグゼク・アドヴァイザース社(WestExec Advisors)という、ハイテク企業や防衛関連企業を扱うワシントンの巨大なコネクション・コンサルタント会社での民間部門の仕事を辞めないということだ。戦略資本局の仕事は、ウエストエグゼク社が提供するサーヴィスと酷似している。現在、彼女は民間部門と公的部門で同時に働いていることになる。

ロウリーの兼職は厄介事に見えるが違法ではない。バラク・オバマ政権の倫理担当トップを務めたウォルター・シャウブは私の取材に対して、「企業の顧問に国防に関する仕事をさせることは、国民の利益を最優先するための理想的な方法とは思えない」と答えた。
Linda lourie
リンダ・ロウリー

「私は異なる組織で同時に働くことになるが、それぞれの組織は異なる問題を取り扱っており、利益相反(conflicts of interest)が起きるとは想定していない。しかし、利益相反が起こらないように細心の注意を払う」と、LinkedInで、シャウブの発言に対して、このように投稿した。(私はロウリーとウエストエグゼク社に対してコメントを求めたが、回答は記事執筆時点で得られていない)。

時代遅れの安全保障法が、何百人もの命を奪ったのかもしれない。

米国防総省はその原則を繰り返し、ロウリーが具体的な投資決定に携わることはないと述べた。

米国防総省の広報担当者は声明の中で、「こうした職員たちは、我が国の重要技術への民間部門の投資に関して情報を拡散し、奨励するという米国防総省の役割に関連する、広範な政策議論に貢献するために雇用されている。米国防総省の倫理担当官は、特別政府職員(special government employees)に対し、倫理規則に関する明確なガイドラインを提供し、特に利益相反を回避する方法を教えている」と述べた。

しかし、政府倫理の専門家によれば、こうした政策協議の中で利害の対立が生じなかったことを確認するのは難しいということだ。ロウリーのように「特別政府職員(special government employees)」として雇用する場合、国民への情報開示は少なくて済む。より広く言えば、ロウリーが活動しているグレーゾーンは、民間企業と政府を結びつけることが何を意味するのか、利益を得るのはアメリカ国民なのか企業なのかという、より大きな問題につながっている。

核心的な問題は、ロウリーの兼任が特別なことなのか、それとも今日の政府のあり方を代表するものなのかということだ。戦略資本局によれば、特別政府職員として採用された職員は、ロウリー以外には1人しかいないと発表している。しかし、政府全体で実質的な役割を担うこうした任命者が増えていることは、同様の問題を引き起こす可能性がある。

民間企業とのつながりに油を差すような(grease connections)役所が増え、政策立案者だった人間たちが政府を離れると回転ドアを利用して企業コンサルティングに参加し続けるので、この問題は今後も起こり続けるだろう。

●政府が民間部門の助けを求める時(When the government seeks the private sector’s help

2022年12月、米国防総省は戦略資本局を創設した。この部局の目的は、国家安全保障にとって極めて重要なテクノロジーに対する民間投資を拡大させるというものだ。

多くの新しい軍事技術の最大の消費者となるのは、もちろん政府であることが多い。しかし、米国防総省との契約には何年もかかることがあるため、新興企業が連邦政府の官僚機構に入り込むのに苦労することも多い。それは「死の谷(valley of death)」と呼ばれ、過去20年間、新興企業が米国防総省に入る際に直面するハードルを克服するために、様々な新しい部門が設計されてきた。これはまた、2017年にアントニー・ブリンケンと共同でウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社を設立したオバマ政権下の米国防総省の高官を務めた、ミシェル・フロノイが幅広く研究してきた重要な政策分野でもある。

2019年、フロノイは、アメリカが技術的優位性(tech superiority)を維持する方法についての記事を共同で発表した。この記事の中で一つの提案を行っている。それは、「政府は、重要な技術や資源の供給者を民間資本につなげる手助けをすることもできる」というものだ。これは、戦略資本局の目的と同じだ。

2024年度米国防総省予算で、バイデン政権は戦略資本局への資金提供として1億1500万ドルを求めており、最終的には融資や融資保証などの金融ツールを利用して関心のある新興企業を後押しすることになる。初年度は主に研究で構成される。リンクトインによると、現在オフィスの一員としてリストアップされているスタッフはほんの一握りだという。投資ツールを展開する新たな当局を模索する中で、同局は中小企業庁の投資プログラムと提携した。

戦略事務局の背後にあるアイデアは新しいものではない。陸軍と空軍における投資の取り組みと、2015年に発足したインキュベーターである国防技術革新ユニット(Defense Innovation UnitDIU)を基盤としている。国防技術革新ユニットが支援して数十億ドルの成功を収めた新興企業の中には、軍事技術企業の「アンドゥリル」社がある。

3月末にシリコンヴァレー銀行が破綻した際、多くの軍事技術系新興企業が経済的ストレスに晒された。プレスリリースによると、戦略資本局は「米国防総省や他の政府の同僚と積極的に協力し、国家安全保障コミュニティを擁護」し、「危機に対する国家安全保障関連の影響を常に監視」していた、ということだ。

●政府と民間企業で同時に働くことの何が問題か(What’s off about working for government and the private sector at once

官民パートナーシップは成功を収めているが、倫理的な問題を引き起こす可能性がある。

利益相反が主要の懸念事項である。そのため政府職員は勤務先、投資先、顧客、資産を申告で開示し、倫理担当官や上司と連携してえこひいき(favoritism)を避け、自身の経済的利益に影響を及ぼす可能性のあるプロジェクトに携わらないようにする。

民間部門と密接な関係を持ち、政府の請負業者を雇用する職務は特に問題を引き起こす。国防技術革新ユニットのCFOによると、2018年から2022年までに国防技術革新ユニットのディレクターを務めていたマイケル・ブラウンは、非倫理的な雇用や契約に関与していたとされている。これらの苦情は米国防総省監察官によって立証されず、昨年ブラウンは潔白を証明された。しかし、この出来事により、ブラウンはバイデン政権下での米国防総省の幹部への指名を受けられなかった。

リンダ・ロウリーのような非常勤職員は「地雷(landmines)」となる可能性がある。

ロウリーは、ジョー・バイデン大統領のホワイトハウスの科学技術政策事務局(Office of Science and Technology Policy)に勤務していた。彼女が退職し、2022年にウエストエグゼク社に入社した際、ウエストエグゼク社は、「リンダの豊富な知識ベースを活用し、クライアントが戦略的機会を活用できるよう支援する」と述べた。ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社は、大手ハイテク企業、大手銀行、主要な軍事請負業者(military contractors)、新しい防衛技術の新興企業などをクライアントに持つ。ウエストエグゼク社は、「プライヴェート・エクイティや多国籍企業と新興テクノロジー」を結びつけることを専門としてきた。

ロウリーが特別政府職員(special government employeeSGE)に指定されたことで、彼女はクライアントを公にすることなく、政府とウエストエグゼク社で同時に働くことができるようになった。

特別政府職員とは、365日のうち130日以内しか働かないという人を指す。パンデミック(世界的大流行)の規制の中で官僚機構がゆっくりと動いていた新型コロナウイルスの初期には、特別政府職員の活用は合法的だったのかもしれない。そして、特定の問題に対して技術的な知識が必要とされる場合には、役に立つ分類でもある。2011年から2013年まで政府倫理局の局長代理を務めたドン・フォックスは、「特別政府職員オプションの大きなメリットの一つは、他の方法では得られないような人材を、限られた期間だけ集めることができる」と言う。

しかし、この特殊な特別政府職員の役割は、政府請負業者として働く、連邦政府の諮問委員会の委員を務めるなど、民間部門のアドヴァイザーが通常果たす可能性のある他の役割よりも透明性が低い。セントルイスにあるワシントン大学のキャスリーン・クラーク教授(法学)は、「後者はより倫理的な保護措置があり、公開会議の要件など、より透明性が高い。この種の特別政府職員には当てはまらない」と述べている。

米国防総省広報官は、「特別政府職員に指定された職員は、広範な政策協議に職務を限定され、特定の投資に関する協議には参加しない」と述べた。

しかし、監視団体「リヴォルヴィング・ドア・プロジェクト」のジェフ・ハウザーは、この特別政府職員の役割は政府の権限を搾取的に利用することになるのではないかという懸念を持っている。ハウザーは私の取材に対して、「あなたが政府で取り組んでいる決定について、特定の結果に継続的な関心を持つ団体に雇用され続けているという事実を無視するには、人間の頭脳の中に防火壁を作ることが必要であり、そんなことは不可能だ」と答えた。

直近のデータが利用な暦年である2021年には、約1600名の特別政府職員たちが国防長官事務局で働いていた。

複数の専門家によれば、注目されるような採用のために特別政府職員を使いすぎることは、政府の倫理執行に対する信頼を損なう可能性がある。この呼称を使用した最も著名な人物は、バイデン政権におけるアニタ・ダンだ。アニタ・ダンは大統領上級顧問としてホワイトハウスを出入りし、短い任期の間、クライアントや金銭的利害関係の公表を避けていた。次期国務省報道官のマット・ミラーは、ロシアのウクライナ侵攻が始まった当初、ホワイトハウスの通信担当官として働いていた特別政府職員だったと見られる。

この傾向はおそらくドナルド・トランプ政権ではより顕著で、国務省のウクライナ特使カート・フォルカーのような著名な人物が任命された。ホワイトハウスのエメット・フラッド弁護士は特別政府職員としてスタートし、後にフルタイムに変更された。アイルランド特使を務めていたミック・マルバニーは、この指定を受けて働いていた。しかし、トランプ政権の大胆かつ前例のない倫理的不正行為によって、バイデン政権における厄介な力学を曖昧になるということがあってはならない。

2013年から2017年まで、オバマ政権下で政府倫理局を率いていたシャウブは、ロウリーは潜在的な対立を緩和するために積極的な透明性対策を取ることができると指摘する。大きな懸念は、既にバイデン政権と数多くのつながりを持つウエストエグゼク社が、同社に関連する仕事を政府機関で行っている人物タイルことで、極めて有利な立場に立つのではないかということだ。

現在は政府監視プロジェクトにいるシャウブは私の取材に対して、「ロウリーは、ウエストエグゼク社の仕事におけるクライアントを公表し、また政府での仕事について情報公表することもできる。もちろん、それは自発的な情報開示になるだろう。世論は厳しく当たることになるだろう。政府は国民に、この人事によって利益相反は起きないという、具体的な保証をする義務がある」と語った。

官民で同時に兼職をしているのはロウリーだけではない。ニュー・ビスタ・キャピタルの航空宇宙・防衛部門の投資家を務めているカーステン・バートク・トゥー(Kirsten Bartok Touw)も、戦略資本局のアドヴァイザーを務めている。
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カーステン・バートク・トゥー

米国防総省の戦略資本局は新設の部局のため、その仕事の責任が明確ではない可能性がある。米空軍事績法務顧問を務めた経験を持つドン・フォックスは私の取材に対して、「役割については定期的に最新情報を知りたいと思う。全く新しい職務やオフィスでは、これが反復的なものになる可能性がある」と語った。新しい部局の業務範囲は変化する可能性がある。

現在の倫理法や主要な改革の多くは、ウォーターゲート事件後に生まれ、トランプ政権はその限界と執行を試した。フォックスが言うように、「一般の人々の認識は、ある意味、全てだ」ということである。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 私は2021年5月、『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を出版した。ジョー・バイデン政権が発足して4カ月ほど経過した時期だった。この本を実際に企画したのは2020年12月、書き始めたのは2021年1月頃のことだった。

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 私はバイデン政権が発足する時点で「ヒラリー・クリントン政権でありかつ、第三次バラク・オバマ政権だ」と判断し、その顔触れについて調査するうちに、コンサルティング会社「WestExec Advisors」社の存在に行きついた。そして、この会社出身の人物たちが多くバイデン政権に入っていることに驚いた。そして、詳細にそれぞれの人物たちの名前を挙げて、バイデン政権がどのような政策を採用するかを予測した。それは「中国とロシアに戦争を仕掛ける」ということだった。実際にはロシアがウクライナに侵攻するという形になったが、世界は「戦争状態」になってしまった。

 今回、講談社の運営するウェブサイト「現代ビジネス」で連載を持っている、歳川隆雄というアメリカ政治ジャーナリストの大ヴェテランが、「WestExec Advisors」社の存在に注目する内容の記事を掲載した。その内容は、拙著の内容とほぼ同じだ。ここで日本人らしく、謙譲の美徳を発揮して、「おこがましいことだが」「光栄なことに」と書くべきだろうが、そういう取って付けた言葉がいらないほどに、同じである。それは、拙著をお読みくださった読者の皆さんもそのように判断されるだろう。拙著には人物の経歴や顔写真も入っているので、大変親切な内容になっている。

 拙著が出ても、あまり大きな反響はなかった。それは私の影響力のなさということがある。歳川隆雄氏のような著名な方が取り上げれば、少しは日本国内で話題になるだろう。そして願わくば、『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』にも注目してもらえることを願う。「何を言うか、ではなく、誰が言うか」という言葉もある。歳川氏の記事の内容に興味を持ち、より詳しく知りたいと思われる方は、是非拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』をお読みください。

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●「米バイデン政権「国務副長官」の後任は…政府要職を占めるコンサル出身者のからくり」

歳川隆雄

2023年9月2日

現代ビジネス

https://news.yahoo.co.jp/articles/7744b80ba025f3964822e13a3ff4810de0320930?page=1

https://news.yahoo.co.jp/articles/7744b80ba025f3964822e13a3ff4810de0320930?page=2

■国務副長官に二人の候補

 米バイデン政権のウェンディ・シャーマン国務副長官が728日に退任後、同ポストは空席だった。だが、今週になって米ワシントンの政界雀の間で後任の国務副長官候補の名前が話題になっている。

 最有力候補とされるのは、カート・キャンベル米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官である。米リベラル系メディアThe American Prospect(825 日付オンライン記事)が報じた。米誌ビジネス・ウィークの元コラムニストで、80歳現役のロバート・カットナー氏が寄稿した。

 818日にメリーランド州のキャンプデービッド(大統領の山荘)で行われた日米韓首脳会談の共同声明とりまとめからロジスティックまで統括したのがキャンベル氏だ。

 もう一人の候補は、ジョー・バイデン大統領のスピーチライターであるジョン・ファイナー大統領次席補佐官である。バイデン氏がオバマ民主党政権副大統領時代の国家安全保障担当補佐官だったイーリー・ラトナー国防次官補(インド太平洋担当)と共にバイデン氏を支えたことは周知の通り。

 日本でも馴染みが多く「知日派」として知られるキャンベル氏だが、2013年にコンサルティング会社「アジアグループ」を設立し、中国進出を目指す防衛関連企業やIT企業に助言を行うなどビジネス志向が強すぎるとの指摘もあったことが思い起こされる。それ故に、上院での人事承認が難航するとの懸念が少なくない。

 ここで筆者が注目するのはThe American Prospectのカットナー氏の寄稿文だ。同記事には次のような件がある。《彼は政府とのコネクションやアクセスを利用して彼らの利益に貢献した。キャンベルは基本的に貿易利益の仮面をかぶった企業の希望リストであった。今は廃案となったTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の大きな推進者でもあった。もし国務副長官に指名され、承認されれば、キャンベルは回転ドアの経歴を持つ他の2人の外交政策高官に加わることになる》。

■政府要職を占めるコンサル出身者

 かなりショッキングな内容だ。この「他の2人」とは、バイデン大統領の最側近であるアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)その人である。「えぇ~ブリンケンとサリバンもその手合いなの?」という声が聞こえてきそうだ。

 詳細を極めた同誌調査報道によれば、注目すべきはワシントンに本拠を置くコンサルティング会社WestExec Advisorsの存在である。そして同社の共同設立者がブリンケン国務長官であり、国防総省でインド太平洋政策を担うラトナー氏もまた同社出身というのである。早速、英語版ウィキペディアでWestExec Advisorsを検索し、そして驚いた。

 共同設立者・パートナーとして最初に写真付きで名前が記述されていたのはミシェル・フロノイ元国防次官(政策担当)である。もちろん、オバマ民主党政権時代だ。その他、幹部として名前を連ねているのはジョン・ブレナン元米中央情報局 (CIA)長官、ビンセント・ブルックス前在韓米軍司令官(退役陸軍大将)、エリック・グリーン元米NSCロシア担当上級部長、エミリー・ホーン元大統領特別補佐官(広報)、ダニエル・ラッセル元国務次官補(東アジア・太平洋担当)、ビクラム・シン元国防次官補代理(南アジア担当)など歴代民主党政権の要路を占めた人物の名前が続く。CIAを含む16の米情報機関を継活するアブリル・ヘインズ国家情報長官もまた同社出身である。

 そして肝心なのは、ブリンケン氏、フロノイ氏に加えて、セルジオ・アギーレ元駐国連米大使首席補佐官、ニティン・チャダ元国防長官上級顧問の4人が2017年の同社創設メンバーであることだ。確かに、米国では4年に1回の政権交代時に「人材の回転ドア」と呼ばれる政府と民間の人材交流が実施される。それでも政府元高官と、せいぜい有力シンクタンク幹部の入れ替えが一般的だったと思う。

 日本では想像外の政府要路への人材供給システムなのだ。米国は「情報先進国」であるが、ふと頭に浮かんだ言葉は最近メディアで頻繁に見かける「忖度」と「便宜供与」であり、「情報リーク」と「機密流出」である。如何お考えだろうか――。

歳川 隆雄(ジャーナリスト)

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(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争の先行きはどうなるか、ということに多くの人々が関心を持っていると思う。私もそうだ。私は戦争の早い段階(戦争勃発から1週間後)で、即刻停戦を行うべき、ウクライナが有利に事態を進めているうちに停戦し和平を結ぶべきと訴えた。しかし、そうした声は「正義派(ウクライナはロシアを叩きだすまで戦え、俺は何もしないけど)」の声にかき消された。そして寒い時期から春の陽気を超え、夏の猛暑の時期になってもまだ戦争は続いている。膠着状態になっている。ロシア軍は首都キエフ奪取に失敗したが、ウクライナ東部で有利に状況を展開している。ウクライナ軍の苦戦も報じられるようになった。
avrilhaines519
アヴリル・ヘインズ

そうした中で、アメリカのアヴリル・ヘインズ国家情報長官がウクライナ戦争の「3つのシナリオ」を提示した。その内容な誰でも考えつきそうなものだが、アメリカの情報・諜報機関のトップの発言は千金の重みがある。アメリカ政府の公式の発表と同程度だと考えてもよい。アメリカ政府は「膠着状態で消耗戦が続く」というシナリオが最も可能性が高いと見ている。

 アヴリル・ヘインズ国家情報長官は、CIAFBIなど40近くのアメリカの情報・諜報機関を束ねるトップである。ヘインズが述べた3つのシナリオは、アメリカの情報・諜報機関がシミュレーションを行って得た結果ということになるだろう。これはつまり、「ロシアが戦争初期の目論見通りにキエフを抑えて、ウクライナ政府を転覆させることはできない。だからと言って、ウクライナがロシアを完全に追い出すこともできない」とアメリカ政府が考えているということだ。そして、アメリカ政府は「きちんとした出口(戦争終結)」について、その形を今のところ考えていないか(考えられないか)、正式に発表することを控えているか、ということになる。

 私はアメリカ政府が当初想定したシナリオが狂ってしまっているのだろうと考えている。アメリカは当初、欧米諸国がウクライナに武器を供与し、ロシアに対して制裁を加えればロシアは早々に撤退することになると踏んでいたと思う。しかし、実態はそうではなかった。ロシア経済制裁は中途半端になってしまい、それどころかエネルギー価格や食料価格の高騰を引き起こして、欧米諸国に直撃している。ロシアからのエネルギーに依存してきたヨーロッパ諸国はこれから厳しい状況になるだろう。更にロシア軍が態勢を立て直してウクライナ東部に注力するという決断を下したことで戦争が長期化することになった。西側諸国によるウクライナへの支援は現在も継続中だが、これもいつまで続くか分からない。これは、アメリカの外交的失敗ということになる。アフガニスタンからの撤退に続く、ジョー・バイデン政権の外交面での大失策ということになる。ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官の更迭論もそのうち出てくるだろう。
jakesullivan519
ジェイク・サリヴァン

 現状における最高のシナリオは早期停戦と和平である。しかし、戦争を停めるのは難しい。それは、太平洋戦争末期の日本でもそうだったが、「それでは命を失った英霊は無駄死だったのか」という論が出て「今一度大攻勢をかけて勝利を得て有利な条件で停戦に」という主張が出てくるからだ。しかし、冷静になって、より冷酷になってみれば、これ以上の被害を出さないことが重要だということになる。しかし、冷静になることが、状況の渦の中にいると、難しいということになる。

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戦争に関する3つのシナリオ(Three War Scenarios

-そしてウクライナにおける戦争の結果に影響を与えるだろうもの

デイヴィッド・レオンハート筆

2022年7月6日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2022/07/06/briefing/ukraine-war-three-scenarios.html

アメリカ国家情報長官アヴリル・ヘインズは最近、ウクライナにおける起きる可能性のある3つのシナリオについて概略を述べた。

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1つ目のシナリオは、ロシアがウクライナ東部において前進を維持することで、ウクライナ国民の戦う意思を挫き、ロシア軍がウクライナの更なる領域を奪取することが可能となるというものだ。この結果は、ウクライナ政府を瓦解させようという最初の試みに失敗したプーティンにとって新たな目標ということになる。

2つ目のシナリオが最も実現可能性が高い。ヘインズは先週ワシントンで行われた公開の会議の席上、ロシアはウクライナ東部を支配するだろうが、それより先には進むことは不可能だろうと述べた。ウクライナ、ロシア両国は膠着状態に陥る。これをヘインズは「消耗戦による苦闘(a grinding struggle)」と呼んだ。

3つ目のシナリオは、ウクライナは東部でロシア軍の前進を阻み、そして反撃を開始することに成功するというものだ。ウクライナは既にいくつかの領域を再奪取している。特にウクライナ南部で領域を再奪取している。そして、軍事専門家の中には、より広範囲における攻勢が間もなく行われるだろうと予想している人たちもいる。

今日のニューズレターでは、この3つのシナリオのうち、どのシナリオが最も可能性が高いかを判断するためのいくつかの疑問を取り上げ、戦争の最新情報を提供する。

●一時的もしくは永続的(Temporary or permanent

流れは決定的に変わっているのか、それともウクライナ軍が更なる成功を収めようとしているのか?

ウクライナ戦争の最新局面について言えば、ロシアはうまくいっている。ドンバス地方と呼ばれるウクライナ東部には、ルハンスクとドネツクの2つの州がある。情報問題を専門とするジェインズ社のアナリストであるトーマス・ブロックによると、ロシアは現在、ルハンスクのほぼ全域とドネツクの約60%を支配しているという。

昨日、ロシア軍はドネツクの都市でウクライナの重要な供給拠点であるバフムト付近で砲撃を強めた。ロシアはルハンスクでも同様の戦術を用い、都市を占領する前にウクライナ軍と市民を排除した。

ニューヨーク・タイムズ紙モスクワ支局長アントン・トロイアノフスキは、「クレムリンは、彼らの全体的な計画は変わっておらず、全てが計画通りに進んでいるというメッセージを送っている」と語っている。アントンは更に、クレムリンの自信の表れとして、ロシアのメディアは最近、占領した領土で住民投票を実施し、正式に併合する計画を報じていると指摘した。

しかし、ウクライナは西側諸国から高性能の兵器が提供されている恩恵を受けている。そして、ウクライナ軍がそれらの兵器をこれまでよりもうまく活用できるようになる日が近いのではないかと考える理由もある。

戦争の初期段階において、アメリカ、EU、その他のウクライナの同盟国は、ジャベリンとして知られる肩撃ちのミサイルシステムのような比較的単純な兵器を送っていた。これらの兵器は、ロシア軍の小集団からウクライナの領土を守るのに役立った。最近では、西側諸国がより強力な大砲、例えばトラックベースのロケットシステム「ハイマース(HIMARS)」を送り、ウクライナが東部で大規模に増強されたロシア軍に耐えられるようにすることを意図している。

私の同僚であるジュリアン・バーンズが指摘するように、ジャベリンの使い方を訓練するのは数時間しかかからない。ハイマース(HIMARS)の訓練には、戦場への輸送と同様、数日から数週間かかる。今後数週間のうちに、ウクライナは増え続けるハイマース(HIMARS)を使ってロシア軍に更なる損害を与えることができるのか、ジュリアンは注視していると述べた。

●ロシア国内での徴兵は無い(No Russian draft

ロシア軍は兵員を消耗しているのだろうか?

最近起こった2つの出来事から不思議に思うことがある。まず、私の同僚であるトーマス・ギボンズネフが最近の戦争分析で説明したように、ロシアは部隊を補充するために、民間企業であるワーグナー・グループのような外部部隊に頼らざるを得なくなったのである。第二に、プーティンはドンバス地方での最近の勝利に関与した部隊のいくつかに休養を命じたが、これはそれらの部隊が疲弊していたことを示唆している。

ジュリアンは次のように語った。「ロシアがドンバスを越えて前進したいのであれば、これまでやりたがらなかった大量動員を行う必要があるというのがアメリカ政府関係者と外部アナリストの共通認識だ。ロシアは徴兵制を実施し、過去に兵役に就いた兵士を呼び戻し、軍隊を再建するために政治的に痛みを伴う措置を取る必要がある。今のところ、プーティンはそうする気がない」。

ロシアは、兵士や武器など、ウクライナよりも多くの資源を持っている。しかし、ロシアの資源には限界がある。特に、プーティンが大量動員のために政治資金を使うことを望まないのであればなおさらである。

この限界は、ウクライナがロシアの東方での獲得物を保持し、反撃と内部の抵抗、更には欧米諸国の経済制裁によって、ロシア軍を徐々に疲弊させるという見通しを生じさせる。その結果、プーティンはウクライナの大部分を残したまま最終的に停戦を受け入れる可能性がある。

ジュリアンは「それは完全な勝利にはならないだろう。それが現実的かもしれない」と述べた。

●戦争神経症(シェル・ショック、Shell shock

しかし、ウクライナの兵力不足は更に加速しているのだろうか?

ウクライナ・ロシア両陣営とも、1日に数百人という高い割合の死傷者を出しているようだ。その結果、ウクライナはほとんど訓練を受けていない部隊にますます頼らざるを得なくなっている。

また、生き残った部隊は精神的なダメージを受ける危険性もある。東部での戦闘方法は、絶え間ない砲撃の応酬で、「シェル・ショック」という言葉を生んだ第一次世界大戦の塹壕戦(trench warfare)に似ていると同僚のトーマスは指摘する。

匿名のウクライナ軍使命感はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して次のように語っている。「砲撃の最中は、壕の中で砲撃が終わるのを待つしかない。このような砲撃のために精神的にダメージを受ける人もいる。彼らは、何に遭遇しても、心理的に準備ができていないことが判明している」。

ウクライナの未来が不確かであるのと同様に、先週ヘインズが述べた3つのシナリオの概要を説明したときに認めたように、現在の状況は明らかに悲惨である。ヘインズは「要するに、絵はかなり厳しいままだ」と言った。

=====

アメリカのスパイ部門トップがウクライナ国内におけるロシア軍に待ち受けているのは「消耗戦による苦闘」と予測(Top US Spy Sees ‘Grinding Struggle’ Ahead for Russia in Ukraine

・アヴリル・ヘインズは戦闘の長期化が最も起こりうるシナリオと指摘

・「自主的な制裁」のためのアメリカ企業による行動が大きな影響を与えると発言。

エリック・マーティン、ピーター・マーティン筆

2022年6月30日

『ブルームバーグ』誌

https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-06-29/top-us-spy-sees-grinding-struggle-ahead-for-russia-in-ukraine

アメリカのスパイ部門トップが、ウクライナ国内のロシア軍には「消耗戦による苦闘」が待っており、ウラジミール・プーティン大統領の軍隊は少しずつ利益を上げることが出来るが、大きな突破口を見つけることが出来てないと考えていると述べた。

アヴリル・ヘインズ国家情報長官はワシントンで開催された商務省産業安全保障局の年次会議に出席し、アメリカの情報機関が予測する3つのシナリオのうち最も可能性が高いものとして、このシナリオを提示した。

より可能性が低い他のシナリオは、ロシアが突破口を開くか、ウクライナが前線を安定させ、南部で小さな利益を上げるかというものだ。

アメリカの情報機関は、ウクライナ軍を崩壊させながらドンバス東部で利益を上げるというプーティンの短期的目標と、ロシア軍が実際に達成できることの間にギャップがあると考えているとヘインズは指摘する。

ヘインズは軍事的な挫折に直面しても、プーティンの長期的な目的は首尾一貫していると指摘した。ロシアの指導者プーティンは依然としてウクライナの大部分を手に入れ、NATO同盟への加盟を阻止することで同国の「中立化(neutralization)」を達成しようとしているとヘインズは付け加えた。

またヘインズは、ロシアの侵攻に対して、アメリカ企業がどれほどの「自主的な制裁(self-sanction)」をするのか情報機関は予想していなかったとも述べた。

「アメリカ企業による自主的な制裁はロシア経済にかなりの大きな影響を与えた。民間企業が厳しく状況に対処して投資しないことに決定した。これは、今、私たちがより高く評価しようとしている点だ」とヘインズは述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカ政府はロシアによるウクライナ侵攻の可能性を掴んでいた。これまでアメリカが絡む大きな事件の場合、アメリカの情報・諜報機関は「事前にそうした大事件(テロ事件や戦争など)が起きるであろうことを事前に把握していたが、止められなかった」ということを繰り返している。2001年の同時多発テロ事件がまさにそうだった。今回の記事は、「アメリカの情報・諜報機関がロシアのウクライナ侵攻の意思を過小評価する一方で、軍事能力を過大に評価していた。一方で、ウクライナの抗戦意思については過小評価していた」という内容になっている。

 考えてみると、軍事能力についての評価は難しい。多くの場合、将兵の数、軍事予算、保有武器の種類と能力といった数字が軍事能力の判断基準となっている。そして、それは多くの場合、軍事能力を判断するのに妥当な基準である。しかし、やはり実践になってみないと分からないところがある。今回、ロシア軍がウクライナに侵攻し、キエフ近くまで侵攻しながら撤退を余儀なくされたが、それは欧米諸国からのウクライナに対する武器や物資の供与があったこともあるが、ウクライナ軍と国民の抗戦の凄まじさということもある。意思の部分については数字で判断することはできない。

 情報・諜報機関の情報収集・分析・判断は政策決定の大前提となる。今、アメリカの情報・諜報機関の最高責任者はアヴリル・ヘインズである。アメリカに複数ある情報機関や諜報機関を取りまとめる国家情報長官を務めている。ジョー・バイデン政権の政策の大前提となる分析と判断の最高責任者だ。バイデン政権はアフガニスタンからの撤退と今回のウクライナ戦争という2つの大きな外交政策において失敗している。アフガニスタンに大きな混乱を引き起こすということを過小評価していたし、今回のウクライナ戦争も早く片が付くとこちらも過小評価していた。それほどに政策策定と遂行は難しい。

 こうした失敗を基にして、組織や機構、教育などを見直し改善するということを、各国政府は繰り返している。「失敗から学ぶ」ということができるかどうか、これである。日本はどうであろうか。ノモンハン事件や日中戦争の泥沼化から何も学ぶことなく、失敗を隠蔽し、最高責任者を処分せず(中級クラスに苛烈な制裁を科す)、なあなあで済ます。これは日本の組織における宿痾ということになる。

 日本の組織における宿痾としては、情報・諜報を軽視するというものがある。これについては、この分野の名著である堀栄三著『情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記』を是非読んでもらいたい。堀元少佐は太平洋戦争中、大本営参謀部の情報将校として、アメリカ軍の情報収集と分析を行い、アメリカ軍の侵攻経路を割り出し、それがあまりにも的中するので「マッカーサー参謀」と呼ばれた人物である。彼の情報収集・分析の手法は興味深く、多くの方に参考になると思う。

 話はそれたが、情報・諜報の収集、分析、判断というのは非常に難しい作業であり、その多くは間違う。それについて改善の努力を不断に行っていくことが重要ということになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカの複数のスパイ機関がウクライナとロシアについて何を間違ったについて見直し(U.S. spy agencies review what they got wrong on Ukraine and Russia

-アヴリル・ヘインズ国家情報長官が公聴会で証言

ノマーン・マーチャント、マシュー・リー筆

『ロサンゼルス・タイムズ』紙(AP通信)

2022年6月4日

https://www.latimes.com/world-nation/story/2022-06-04/american-spy-agencies-review-their-misses-on-ukraine-russia

ワシントン発。ロシアが2月末にウクライナ侵攻を開始する数週間前、アメリカの情報・諜報機関関係者に向けて行われた非公開のブリーフィングで、この質問が投げかけられた。「ウクライナの指導者ヴォロディミール・ゼレンスキーは、イギリスのウィンストン・チャーチルやアフガニスタンのアシュラフ・ガーニのような人物だろうか?」

言い換えるならば、「ゼレンスキーは歴史的なレジスタンスを率いるのか、それとも政権が崩壊して逃げるのか?」ということだ

究極的に言えば、アメリカの情報・諜報機関は、ウラジミール・プーティン大統領の侵攻を正確に予測しながらも、ゼレンスキーとウクライナを過小評価し、ロシアとプーティン大統領を過大評価したのである。

しかし、ウクライナの首都キエフは、アメリカが予想したように数日では陥落しなかった。そして、アメリカのスパイ機関はウクライナのレジスタンスを支援したと評価されているが、現在彼らは、特に昨年のアフガニスタンでの判断ミスの後、事前に何が間違っていたかを見直すよう党派を超えた圧力に晒されている。

情報当局関係者たちは、外国政府の戦意と能力をどのように判断しているかについての見直しを始めた。この見直しは、アメリカの情報・諜報機関がウクライナで重要な役割を果たし続け、ホワイトハウスがウクライナへの武器供給と支援を強化し、プーティンがエスカレートしていると見なし、ロシアとの直接戦争を回避しようとする中で行われている。

バイデン大統領が率いる政権は、ウクライナが長年望んでいた兵器であるハイテク中距離ロケットシステムを少量供与すると発表した。2月24日の開戦以来、ホワイトハウスはドローン、対戦車・対空システム、数百万発の弾薬の輸送を承認してきた。アメリカは情報共有に関する初期の制限を解除し、ウクライナがロシア海軍の旗艦を含む重要な標的を攻撃するために使用する情報を提供している。

民主、共和両党の連邦議員たちは、プーティンが侵攻する前にアメリカがもっと手を打てたのではないか、ホワイトハウスはウクライナの抵抗力を悲観的に評価し、支援を控えたのではないか、と疑問を呈している。メイン州選出無所属連邦上院議員アンガス・キングは、先月の連邦上院軍事委員会の公聴会で、「予測についてもっとよく把握し対応していれば、もっと早くウクライナ人を支援することができたはずだ」と発言している。

連邦下院情報委員会の共和党側トップであるオハイオ州選出のマイク・ターナー連邦下院議員は、ホワイトハウスと政権幹部たちが「不作為を助長するような形で、状況に独自の偏見を投じた」と考えているとあるインタヴューに答えた。

連邦上院情報委員会は先月、国家情報長官室に非公開書簡を送り、情報・諜報機関がウクライナとアフガニスタンの両方をどのように評価したかについて質問している。CNNがこの書簡について最初に報じた。

アヴリル・ヘインズ国家情報長官は5月、連邦議員らに対し、国家情報会議が情報機関の「戦う意志」と「戦う能力」の両方をどう評価するかを見直すと述べた。この2つの問題は「効果的な分析を行うにはかなり困難であり、そのための様々な方法論を検討している」とヘインズは述べた。

委員会の書簡より前に始まったこの見直しのスケジュール表については発表されていないが、関係者たちは既にいくつかの誤りを確認している。戦前の評価に詳しい複数の関係者が、機密情報を話すために匿名を条件にAP通信の取材に応じた。

ロシアはその大きな優位性にもかかわらず、ウクライナに対する制空権を確立できず、戦場での通信手段の確保といった基本的な任務でも失敗した。アメリカの推計によると、ロシアは数千人の兵士と少なくとも8から10名の将官を失ったということだ。ロシア軍とウクライナ軍は現在、ウクライナ東部で激戦(fighting in fierce)を展開しており、アメリカや西側諸国が予想したロシアの迅速な勝利とは程遠い状況である。

ロシアは最近、いくつもの代理戦争に参加することはあったが、1980年代以降、大規模な陸上戦争を直接戦ったことはなかった。そのため、ロシアについて見積もられたそして、一般に発表された能力の多くが試されておらず、大規模な侵攻でロシア軍がどのように機能するかを評価するのは難しいと一部の関係者は述べている。ロシアの武器輸出産業は活発であるため、モスクワはもっと多くのミサイルシステムや飛行機を配備する準備ができているだろうと考える人もいた。

アメリカは公に警告したが、ロシアは今のところ化学兵器や生物兵器を使用していない。ある政府高官は、アメリカは化学兵器による攻撃について「非常に強い懸念」を持っているが、ロシアはそのような攻撃をすれば世界的な反発が大きくなりすぎると判断したのだろうと指摘した。ロシアがウクライナやアメリカの同盟諸国に対してサイバー攻撃の波紋を広げるのではないかという懸念は、今のところ現実にはなっていない。

その他にも、部隊将兵の士気の低さ、薬物やアルコールの乱用、部隊を監督し司令官からの指示を伝える下士官の不足など、ロシアの問題はよく知られていた。

国防総省に属するアメリカ国防情報局長官を務めたロバート・アシュレイ元陸軍中将は、「これらのことは全て分かっていた。しかし、最も単純な作戦を実行しようとした時、その全てが圧倒されるということが、連鎖的に起こってしまった」。

国家情報主席副長官を務めたスー・ゴードンは、アメリカのアナリストたちはロシアの軍事・サイバーに関する武器やツールの在庫を数えることに依存しすぎていた可能性があると指摘した。

ゴードンは、情報関係の出版社サイファー・ブリーフ社が主催した最近のイヴェントで、「結果を評価する際に、能力とその使用は同じではない、という考え方について少し学ぶことになるだろう」と述べた。

ゼレンスキーは、ロシアが彼を逮捕または殺害しようとするティームを送り込んできても逃げなかったことで、世界中から称賛を浴びている。しかし、戦争が始まる前、ワシントンとキエフの間には、侵略の可能性やウクライナの準備が整っているかどうかについて緊張関係があった。この論争に詳しい人物によれば、アメリカはウクライナがキエフ周辺の防衛を強化するために西側から軍を移動させることを望んでいたことが論争の火種となっていたということだ。

戦争勃発直前まで、ゼレンスキーとウクライナ政府高官たちは、パニックを鎮め、経済を守るためもあって、侵略の警告を公然と否定していた。あるアメリカ政府高官は、経験の浅いゼレンスキーが自国の直面しているレヴェルの危機に対処できるかどうか疑問だったと述べた。

アメリカ国防情報局長官のスコット・ベリエ陸軍中将は3月、「私の考えでは様々な要因から、ウクライナ人は私が考えるほど準備ができていなかった。だから、彼らの戦う意志を疑っていた。彼らは勇敢に、立派に戦い、正しいことを行っているのだから、私の評価は間違っていたということになる」と述べた。

ベリエは5月、自身の見解と情報・諜報機関全体の見解とに距離を置き、「ウクライナ人に戦意がないとする評価はなかった」と述べた。

ウクライナ戦争の前にウクライナの決意を示す十分な証拠があった。ロシアによる2014年のクリミア併合と、東部ドンバス地方での8年にわたる紛争は、モスクワに対するウクライナ国民の意識を硬化させた。ウクライナ軍は、アメリカから何年にもわたって訓練と武器の輸送を受けており、サイバー防衛の強化も支援されていた。

アメリカの情報・諜報機関は、ウクライナのレジスタンスに対する強い支持を示唆する民間の世論調査を見直した。国境近くのロシア語圏の都市ハリコフでは、市民が銃の撃ち方を学び、ゲリラ戦の訓練をしていた。

連邦下院情報委員会のメンバーであるブラッド・ウェンストラップ下院議員(オハイオ州選出、共和党)は、2021年12月のウクライナ訪問中にウクライナ人の決意を目の当たりにした。ドンバスの前線では、モスクワに支援された分離主義勢力が2014年からウクライナ政府軍と戦っており、参加者は前日に死亡したウクライナ人兵士の名前を読み上げた。

ウェンストラップは「それは、彼らが戦う意志を持っていることを私に示した。これは長い間、醸成されてきたものだ」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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