古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:イスラエル

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。

下記論稿の著者であるスティーヴン・M・ウォルトは2020年の大統領選挙ではジョー・バイデン、2024年の選挙ではカマラ・ハリスに投票した。トランプ支持ではない。そうした人物(しかも、国際関係論の大物学者である)から見た、ジョー・バイデン政権の外交はどうだったかということは興味をそそる話題である。論稿の中で、ウォルトはバイデン政権の外交は、「成功ではなかった」という評価をしている。

 バイデン政権の外交は、エスタブリッシュメントの意向に沿った外交となり、よく言えば、国際協調主義、悪く言えば、事なかれ主義となった。バイデン政権下における、世界の重要な出来事・事件は、やはり、ロシアによるウクライナ侵攻・ウクライナ戦争だ。ウォルトも指摘している通り、ウクライナ戦争は、アメリカと西側諸国によるロシアへの挑発が原因で、NATOの拡大とウクライナへの軍事に偏った支援(火遊び)をロシアが安全保障上の脅威に感じ、最終的に侵攻を誘発した。

バイデン政権は、戦争を短期間で終結させるための努力をせず、重要な武器、具体的には制空権を確保するための戦闘機をウクライナに供給しなかった。もっとも、アメリカがウクライナに戦闘機を供給していたら、ロシアの対アメリカ、対ヨーロッパへの出方は厳しいものとなっていただろうことは容易に推測できる。戦争がウクライナを超えてヨーロッパに拡大し、アメリカが米軍派遣にまで追い込まれ、戦争は泥沼化するということになった可能性もある。そうなれば、アメリカは大きく傷つき、中国の世界覇権国化を早めることになっただろう。結局、バイデン政権はウクライナ戦争に対処する意図も能力も持たずに、事なかれ主義で時間を経過させるだけで、ウクライナとロシアの国民の被害を拡大し、アメリカ国民の税金を無駄に注ぎ込むだけになってしまった。

 

ウクライナ戦争に次いで、世界的な出来事・事件となったのは、イスラエルとハマス間の戦争だ。イスラエルのガザ地区への攻撃になって、民間人に多数の死者が出て、地区が大きく破壊されることで、国際的な批判を招いた。バイデン政権がそうした批判に応えることなく、イスラエル支持を貫き、攻撃を継続させた。結果として、アメリカは人道を叫びながら、イスラエルには好き勝手させている、という「二枚舌」だという批判がなされ、アメリカに対する信頼を損なうことになった。

バイデン政権のウクライナや中東での政策は、アメリカの国際的地位やルールに対する信頼性に打撃となった。バイデン政権の外交は「成功ではなかった」ということになる。しかし、これは、バイデン政権だけの責任ではない。そもそも、アメリカの国力が落ちたこと、アメリカ国内政治の混乱、アメリカ国民の自分たちの生活に対する不満と不安と言ったことも要因として挙げられる。アメリカが世界の覇権国・超大国として行動することができなくなっている。これをバイデン政権だけで何とかしようとしてできるということではない。大きな構造転換に即した大きな変化が必要であり、アメリカ国民はそのためにトランプを大統領に選んだということになる。

(貼り付けはじめ)

ジョー・バイデンの外交政策最終報告書(Joe Biden’s Final Foreign-Policy Report Card

-退任するアメリカ大統領の国際的な功績を容赦なく検証する。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年1月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/01/14/joe-biden-final-foreign-policy-report-card-ukraine-israel-gaza-afghanistan/

私は2020年にジョー・バイデン米大統領に投票した。そして、ここの読者の皆さんもご存知の通り、昨年11月には、バイデン政権の外交政策への対応に懸念を抱きながらも、カマラ・ハリス副大統領を支持した。バイデンが国際舞台での最後の退任を迎えるにあたり、彼と彼のティームはどれほどの成果を上げたのだろうか? 当然のことながら、バイデンの最後の外交政策演説では、素晴らしい成果を挙げたと述べられていた。しかし、私の評価は大きく異なる。

最も大まかに言えば、バイデン政権は、かつてのアメリカの穏健な国際的リーダーシップの時代へと時計の針を戻そうとした。「アメリカ・ファースト」ではなく、アメリカは、台頭する独裁政治(autocracy)の波に対抗するため、他の仲間の民主政体諸国と連携し、いわゆる自由世界のリーダーを自称する、役割を再開しようとした。

大西洋を越えた友好関係(trans-Atlantic amity)は回復され、アジアにおける同盟関係は強化され、アメリカは人権といった自由主義的価値観を外交政策の「中心(center)」に据えるだろう。ワシントンは主要な国際機関を支援し、気候変動を阻止するための取り組みを主導し、イランの核開発計画の撤回に成功した合意に復帰し、中国やロシアといった大国によるライヴァルを封じ込めるために多くの同盟諸国を動員するだろう。軍事費の増額(increased military spending)と技術優位性を維持する(preserve technological supremacy)ための積極的な措置は、アメリカの優位性(U.S. primacy)を将来にわたって長期化させるだろう。

確かに、バイデンは、冷戦終結から2017年に当時のドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスに就任するまでアメリカの外交政策を導いてきた「自由主義的な覇権(liberal hegemony)」の青写真を完全に受け入れた訳ではない。それどころか、バイデンはトランプのグローバライゼーションからの撤退を継続した。トランプの関税をそのまま維持し、輸出規制やその他の経済制裁を更に積極的に行使し、製造業の雇用を復活させる(これは実現しなかった)とともに、半導体、人工知能、その他の先端技術におけるアメリカの支配(U.S. dominance)を確保するために国家産業政策(national industrial policies)を採用した。

しかし、全体として見ると、バイデンのアプローチは、数十年にわたってアメリカの外交政策を導いてきた主流派エリートのコンセンサスにすんなりと収まっていた。それは、同じ世界観を共有する経験豊富なティームによって運営され、進歩主義派や外交政策のリアリストたちは脇に追いやられていた。

彼らはどれほどうまくやったか? 公平を期すために言えば、実績には確かにいくつかの重要な成功が含まれている。

2021年のバイデンの就任を、ヨーロッパにおけるアメリカの同盟諸国の多くは明らかに安堵感を持って迎えた。バイデンとアントニー・ブリンケン国務長官は共に筋金入りの大西洋主義者(die-hard Atlanticists)であり、彼らは迅速に行動して、アメリカがヨーロッパの同盟諸国の安全保障に引き続き確固たる関与を維持することをヨーロッパの同盟国に保証した。

もちろん、ヨーロッパの好意的な反応は驚くべきことではなかった。アメリカを事実上の第一対応国(first responder 訳者註:現場に第一に到着して対応する人)とすることは、ヨーロッパにとって非常に有利な取引だからだ。この立場は2つの点で成果を上げた。1つは、2022年にロシアがウクライナに侵攻した際に、政権が迅速な対応を調整するのに役立ったこと(下記参照)。もう1つは、インフレ抑制法やCHIPS・科学技術法といった保護主義的な側面、そして中国に対する様々な輸出規制を、これらの措置に伴うコストを承知の上で、一部の主要同盟国に受け入れるよう説得できたことだ。

バイデン政権はまた、中国の台頭に対抗するための幅広い取り組みの一環として、アジアにおけるアメリカのパートナーシップを強化したことでも評価に値する。これらの措置には、フィリピンの基地へのアクセス拡大、キャンプ・デイヴィッドでの韓国と日本の首脳の接遇(新たな三国間安全保障協定の締結につながった)、そしてオーストラリア、イギリス、アメリカ間のAUKUSイニシアティヴを通じたオーストラリアとの安全保障関係の強化などが含まれる。

バイデン政権は、いくつかの主要技術分野における中国の進出を阻止するためのアメリカの取り組みも改善したが、この取り組みの長期的な影響は依然として不透明である。また、米中関係は依然として激しい競争状態にあるものの、あからさまな対立に発展することはなく、政権は米中関係の大幅な悪化を招くことなくこれらの目標を達成したとも言える。

確かに、バイデン政権の取り組みは、中国の不利な人口動態と経済の失策(これらは北京に緊張を抑制する十分な理由を与えた)と、中国の修正主義(Chinese revisionism)に対する地域的な懸念に後押しされた。バイデン政権はアジアに向けて有意義な経済戦略を実行できなかったことで非難されるかもしれないが、国内で超党派が保護主義(protectionism)に傾倒していたことを考えると、戦略を策定するのは困難な道のりだっただろう。

最後に、バイデンは、アフガニスタンにおけるアメリカの無益な戦争を終わらせるという、勇気ある、そして私の考えでは正しい決断をしたにもかかわらず、不当に批判された。アフガニスタン政府は、アメリカが撤退を選べばいつ崩壊するか分からない、いわば砂上の楼閣(a house of cards)のような存在だったため、撤退は悲惨な結果に終わる運命にあった。更に言えば、駐留期間が長引いたとしても、結果は大きく変わらなかっただろう。

バイデンは短期的には政治的な代償を払ったが、彼の決断は2024年までにほぼ忘れ去られ、先の選挙ではほとんど影響を与えられなかった。アメリカが撤退して以来、アフガニスタンで起きた出来事を喜ぶべき人は誰もいないが、アメリカは自らの行動を全く理解しておらず、決して勝利するつもりはなかったことはますます明らかになっている。この事実を認識し、それに基づいて行動する勇気を持ったバイデンには、十分な評価を与えるべきだ。

残念ながら、これらの成果は、より深刻ないくつかの失敗と比較検討されなければならない。

最初の失敗はウクライナ戦争である。バイデン政権はウクライナへの支援とロシアに課したコストをことごとく誇示したがるが、この主張を支持する人々は、ウクライナが払った莫大な代償と、この戦争がヨーロッパ諸国に与えた損害を無視しがちである。

ここで重要なのは、この戦争が突如としてどこからともなく現れたのではなく、ワシントン自身の行動が生み出した問題であることを認識することである。もちろん、ロシアは違法な戦争を開始したことに全責任を負っているが、バイデンとそのティームに非難の余地がない訳ではない。特に、彼らは自らの政策がこの戦争を不可避なものにしていることに気づかなかった。具体的には、彼らはNATOの無制限拡大(open-ended NATO enlargement)と、ウクライナを西側諸国との緊密な安全保障パートナーシップに、そして最終的にはNATOに加盟させることに固執し続けた。

ウラジーミル・プーティン大統領だけでないロシアの指導者たちが、この事態の進展を存亡の危機と捉え、武力行使による排除も辞さない姿勢を明確に示していたにもかかわらず、彼らはこの危険な行動方針を固守した。戦争の脅威が迫る中、政権は外交的解決を模索し衝突を回避するための努力を中途半端なものにとどめた。

戦争が勃発すると、バイデン政権は可能な限り速やかに戦争を終結させようとしなかったという過ちを犯した。バイデン政権はロシア軍がどうしようもなく無能であり、「前例のない(unprecedented)」制裁を課せばロシア経済が破綻し、プーティン大統領に方針転換を迫られると確信していたが、これは後に過度に楽観的な想定であったことが判明した。

こうした誤った判断の結果、政権は戦争終結に向けた初期の取り組みをほとんど支援せず、むしろ頓挫させてしまった可能性さえある。また、2022年秋にウクライナ情勢の見通しが一時的に改善した際にも(マーク・ミリー統合参謀本部議長が助言したように)、停戦の見通しを探ることもなかったし、ロシアの防衛網の正面に大規模な攻勢をかけることは失敗する運命にあるとウクライナの指導者に伝えることもなかった。

残念ながら、この戦争はウクライナとその西側諸国にとって重大な敗北に終わる可能性が高い。アメリカとNATOの当局者たちは同盟の結束はかつてないほど強固だと主張しているが、彼らの楽観的なレトリックは、この戦争がヨーロッパの安全保障と政治に及ぼした甚大な損害を無視している。この紛争は、ほとんどのヨーロッパ諸国政府(その多くは今や手に負えない財政的圧力に直面している)に多大な経済的負担を強い、エネルギーコストの上昇はヨーロッパの競争力を更に低下させ、右翼過激派の復活を助長し、ヨーロッパ内部の分裂を深刻化させた。また、中国との均衡を保つために投入できたはずの関心と資源を逸らした。

確かに、ロシアも莫大な犠牲を払ったが、モスクワが北京とより緊密に結びつき、西側諸国を弱体化させる、更なる機会を模索することは、アメリカやヨーロッパにとって決して利益にならない。この戦争が起こらなかった方が、ヨーロッパ、アメリカ、そして特にウクライナにとってはるかに良い状況になっていただろう。そして、戦争の可能性を高めた政策に対して、バイデン政権は大きな責任を負っている。

二つ目の災難は、言うまでもなく中東情勢だ。あらゆる大統領の夢がここで潰えてしまうかのようだ。バイデンの最大の失策は、選挙公約を放棄し、トランプから引き継いだ誤った政策を継続したことだった。彼はイラン核合意に復帰すると公約していたにもかかわらず、復帰しなかった。その結果、テヘランは爆弾級に近いレヴェルの核濃縮(nuclear enrichment)を再開し、強硬派の影響力を強化した。

また、政権はトランプと同様にパレスティナ人の将来に関する問題を無視し、サウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けた努力に注力したが、その試みは失敗に終わった。このアプローチは、パレスティナ人が永久に疎外されるのではないかという恐怖を強め、ハマスの指導者たちが2023年10月7日にイスラエルに対する残虐な攻撃を開始するきっかけとなった。

バイデン政権の状況判断の誤りは、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が、ハマスの攻撃のわずか8日前に、この地域は「ここ20年で最も静かだ(quieter than it had been in two decades)」と宣言したことで、痛ましいほど露呈した。

それ以来、バイデンと彼のティームは、イスラエルが最低限の自制を求める要請を無視し、少なくとも4万6000人、おそらくははるかに多くのパレスティナ人を殺害した容赦ない無差別軍事作戦を遂行したにもかかわらず、あらゆる場面でイスラエルを支持してきた。この猛攻撃はガザ地区の大部分を居住不能にし、全ての大学とほぼ全ての病院を破壊し、数百人のジャーナリストを殺害し、200万人以上の民間人に甚大な苦しみと永続的なトラウマを与えた。

イスラエルが10月7日以降に対応したことが正当であったことを否定する良識ある人はいないが、イスラエルの報復キャンペーンは戦略的、道徳的な理由から弁解の余地のないものであった。とりわけ、この容赦ない暴力の行使は、ハマスを壊滅させ、残りの人質を解放するという公約を達成することができなかった。そして、バイデン政権は、それを可能にした爆弾投下と外交的保護を提供したのだ。

少し立ち止まって、これが何を意味するのか考えてみて欲しい。アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、国際司法裁判所(ICJ)、国際刑事裁判所(ICC)、複数の独立救援機関、そしてジェノサイドに関する著名な専門家たちは皆、イスラエルが重大な戦争犯罪を行い、「おそらく(plausibly)」アメリカの全面的な支援を受けてジェノサイドを行っていると結論付けている。国連事務総長のアントニオ・グテーレスは、ガザ地区の状況を「道徳的な暴挙(moral outrage)」と称した。虐殺の様子を捉えた動画はソーシャルメディアで容易に見ることができる。

これらの自称「ルールに基づく秩序(rules-based order)」の擁護者たちは、イスラエルを遮断し、その不均衡な対応を非難するどころか、停戦と残りの人質の解放を求める国連安全保障理事会の決議を複数回拒否し、ICJICCへの攻撃を開始した。また、ヨルダン川西岸の占領下で暮らすパレスティナ人に対する暴力の増大を阻止するための真剣な努力も行っていない。これらの行動は、複数の政府高官が抗議の辞任に追い込まれ、国務省をはじめとする関係機関の士気を著しく低下させたとみられる。

22025年1月13日に国務省で行った退任演説で、バイデンはこれらの政策が功を奏したと示唆したようだ。ハマスとヒズボラは大幅に弱体化し、シリアのバシャール・アル=アサド大統領は失脚し、イランは深刻な打撃を受け、イランの核インフラを破壊するための空爆作戦を実施するリスクは減少した。この観点からすれば、これらの目的は手段を正当化すると言えるだろう。

この弁明は道徳的に空虚(vacuous)であり、戦略的にも近視眼的(shortsighted)だ。イスラエルとサウジアラビアの関係正常化は先送りされ、ジハード主義的なテロリズムの新たな波が目前に迫っているかもしれない。ハマスとヒズボラは弱体化したものの壊滅した訳ではない。イエメンのフーシ派は依然として抵抗を続けている。パレスティナ人が自らの国家、あるいは「大イスラエル(greater Israel)」における政治的権利を求める願望は消えることはないだろう。イランの指導者たちは、ムアンマル・アル=カダフィとアサドに降りかかった運命を回避するには、核兵器開発こそが最善の方法だと結論付ける可能性が高い。もしそうすれば、中東は再び不必要な戦争に見舞われ、原油価格は上昇し、アメリカは莫大な損失を伴う破綻に巻き込まれることになるだろう。たとえ消えることのない道徳的汚点を無視したとしても、これらの展開はどれもアメリカの利益にはならない。

バイデン政権によるイスラエル・ハマス戦争への対応は、差し迫った戦略的必要性によって強いられたのではないことを忘れてはならない。それは意識的な政治的選択だった。政府は存亡の危機に直面した際に、時に道徳的原則を妥協することがあるのは誰もが認めるところだが、ガザ地区の状況はアメリカにとってほとんど、あるいは全く危険をもたらすものではなかった。ワシントンはイスラエルによるジェノサイドへの支持を拒否しても、自国の安全や繁栄を少しでも危険に晒すことなく、行動できたはずだ。

バイデンとブリンケンがそうしなかったのは、選挙の年にイスラエル・ロビー(Israel lobby)の政治的影響力を恐れたか、イスラエルは通常のルールから除外される特別なケースだと考えていたからだろう。こうした露骨な二重基準(double standard)は、既存の秩序の正当性を必然的に損ない、アメリカの衰退しつつある道徳的権威(moral authority)を浪費した。今後、中国の外交官たちが他国に対し、西側諸国の人権観は偽善的な戯言だと説得しようとする時、イスラエルとハマスとの戦争はまさにその好例となるだろう。バイデンは、アメリカは「模範を示す力によって(by the power of our example)」主導するとよく言うが、今回の場合、他国が拒否することを願うべき模範を示したことになる。

バイデンは自称シオニストだが、ネタニヤフ首相の行動を無条件に支持したことはイスラエルにとっても良いことではなかった。イスラエルの首相と元国防大臣は、現在、国際刑事裁判所(the International Criminal Court)から逮捕状が出されている。これはプーティンと共通の問題であり、その汚点は消えることはないだろう。イスラエルのメシアニック過激派(Messianic extremists)は懲らしめられるどころか、むしろ強化され、世俗派と宗教派のイスラエル人の間の溝を深め、ヨルダン川西岸併合への圧力を強めている。

イスラエルがこの目標を推し進めれば、第二次世界大戦後の領土獲得を禁じる規範は更に弱まり、他の指導者たちは自らが切望する土地を奪取するよう促されるだろう。また、このような措置はヨルダン川西岸地区とイスラエル本土との区別を消し去り、イスラエルがアパルトヘイト国家であるか否かをめぐる議論に終止符を打つことになるだろう。これは容易に新たな民族浄化(ethnic cleansing)につながり、ヨルダンなどの近隣諸国に恐ろしい人道的被害と危険な影響を及ぼす可能性がある。私には、これらがイスラエルの利益となるとは到底考えられない。

最後に、ウクライナと中東における戦争(バイデン政権の政策が一因となって引き起こされた戦争)は、膨大な時間と関心を費やし、長期的に見てより重要な問題に十分な重みを与えることを困難にした。将来のパンデミックへの備えは停滞し、気候変動対策の進展は必要な水準を大きく下回った。そして、政権が信頼できる移民政策を打ち出せなかったことは、昨年11月にハリスに大きな痛手を与えた。

アフリカは重要性が増しているにもかかわらず、非常に軽視されてきた。過去4年間で、ブリンケンはイスラエル(人口1000万人弱)を16回、ウクライナ(人口3560万人)を7回訪問したが、人口約15億人のアフリカ大陸を訪問したのはわずか4回だった。

バイデン政権発足時の最重要目標は、「ルールに基づく秩序(rules-based order)」を強化し、独裁政治(autocracy)に対する民主政治体制(democracy)の優位性を示すことだった。しかし、バイデンとブリンケン国務長官は、都合の良い場合には躊躇なくルールを破り、ルールの執行を試みていた複数の機関(世界貿易機関、国際司法裁判所、国際刑事裁判所など)を積極的に弱体化させた。

他国はもはや、このような行動をトランプのような異端者(a rouge outlier)のせいにすることはできない。彼らは、これをアメリカの対外姿勢の本質的な要素として正しく認識するだろう。一方、バイデン政権が大々的に宣伝した「民主政治体制サミット(democracy summits)」にもかかわらず、世界中で民主政治体制は後退し続けており、強固な民主政治体制への関与が紙一重の人物が来週ホワイトハウスに復帰することになる。

ここに悲しい皮肉がある。確かにいくつかの成果はあったものの、バイデンのウクライナと中東情勢への対応の誤りは、彼が強化したいと述べていた「ルールに基づく秩序(rules-based order)」に甚大な、そしておそらくは致命的なダメージを与えた。バイデンとそのティームは、いくつかの重要な国際規範を一貫して遵守しなかったことで、次期政権(第2次トランプ政権)がそれらを完全に放棄することを容易にし、多くの国々が喜んでそれに追随するだろう。

こうなる必要はなかったが、ジョー・バイデンの外交政策の遺産は、ルールに縛られなくなり、繁栄が失われ、そして非常に、より危険な世界となるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Bluesky@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
trumpnodengekisakusencover001

『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001

※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 アメリカでは11月末の感謝祭(Thanksgiving Day)のあたりから、ホリデーシーズンに入るという感じで、一年を振り返るということも行われる。世界での大きな出来事から個人的な出来事まで、色々なことがあった。私で言えば、昨年末ギリギリに『』を刊行し、それがご縁になって、佐藤優先生との共著『』を出すことができた。来年も著書が出せるように、それが皆様のお役に立つ者であるように精進したい。より個人的なことは差し控えるが、大病もせず(慢性的な病気はあるがその状態が悪化せず)、大きな怪我もせずというのはありがたいことだったと思う。

 2024年は世界各国で国政レヴェルの選挙が実施された。思い出せるだけでも、台湾、インドネシア、インド、フランス、イギリス、日本、アメリカといった国々で選挙が実施され、指導者が交代することになった国もある。なんと言っても、アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが当選し、『』の内容から「トランプ当選を当てましたね」と言われたのは大きかった。また、共和党がホワイトハウス、連邦上下両院、連邦最高裁、アメリカの行政、立法、司法の三権を握ることになった(クアドルプル・レッド状態)。2025年からの第二次ドナルド・トランプ政権がどのようになるか、注目される。

 世界での戦争は2024年中に終わる可能性はない。ウクライナ戦争と中東での戦争は、小休止という状態であるが、正式な停戦には至っていない。この状態で2025年を迎えることになりそうだ。

 私は以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿で、世界で核兵器が使用されなかったことは最低限のことであるが、良かったということに同意する。それは多くの人もそうだと思う。ロシアにしても、イスラエルにしても、核兵器を使うということは、ハードルがとても高いことであるが、可能である。それでも、状況が深刻化しても、核兵器使用はなかった。核兵器を使用すればよいという主張がなかった訳ではない。地域紛争においては核兵器を使用しないという前例の積み重ねも重要だ。それがモラル面でのハードルになり、抑止力になる。もっとも、非常に脆弱なものではあるが。

 このブログは2025年も続くか、なんとなく日本のホリデーシーズンに入った感もあるので、このような文章を書いた。

(貼り付けはじめ)

2024年で感謝すべき10の理由(10 Reasons to Be Thankful in 2024

-何はともあれ、今年、世の中には感謝すべきことがいくつかある。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年11月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/11/28/thanksgiving-10-reasons-thankful-geopolitics-governance-human-rights/

joebidenthanksgivingday20241125001
ワシントンのホワイトハウスで感謝祭の七面鳥「ピーチ」に恩赦を与えるジョー・バイデン米大統領(11月25日)

今日はアメリカでは感謝祭(Thanksgiving)であり、この時期には感謝の気持ちをリストアップするのが私の習慣となっている。残念なことに、今回はその作業にもう少し努力が必要だ。

中東での紛争は、何千人もの罪のない人々の命を犠牲にし、アメリカの評判を落とし、将来のトラブルの種をまき続けている。ウクライナにおけるロシアの戦争は期待外れの結末に向かいそうだ。多くの国でポピュリストが台頭し、現代社会が直面する困難な課題に対する解決策をほとんど示さないまま、分裂と疑念(division and suspicion)をまき散らしている。地球は熱くなり続け、気候危機への対策は停滞している。

アメリカの有権者は、犯罪者を次期大統領に選んだばかりだ。彼は今、国民から金をむしり取り、自分たちを富ませようとする忠誠者、蓄財家、変わり者で構成される政府をせっせと任命している。いい時代ではないか?

それでも私は、ほろ苦いものもあるが、今年感謝すべき10の理由を見つけた。

(1)アメリカの選挙は異議を唱えられなかった(1. The U.S. Election Was Not Challenged

11月5日に行われた米大統領選挙の結果は、私が望んだものではなかったが、結果をめぐる長期にわたる揉め事や、選挙を盗もうとする別の努力に終始しなかったことに感謝している。もしドナルド・トランプ次期大統領が敗北していたら、彼と共和党は結果を覆そうとあらゆる手を尽くしたに違いない。しかし、民主党は、悲しい心で、しかし見事な潔さで結果を受け入れることで、その気品と合衆国憲法への関与を示した。トランプ2期目は国にとって良いことではないかもしれないが、秩序ある平和的な権力移譲(orderly and peaceful transfer of power)は行われた。

(2)(非常な) 老兵の退場(2. Out With the (Very) Old Guard

民主党について言えば、何十年もの間、民主党を支配してきた老人支配政治(gerontocracy)がついにその舞台を譲ることになり、私は感謝している。ジョー・バイデン大統領、ナンシー・ペロシ連邦下院議員、チャック・シューマー連邦上院議員、ステニー・ホイヤー連邦下院議員、クリントン夫妻、その他何人かが、理想よりも数年遅れて日没へと向かうのを見るのは残念でならない。これらの人々は、政治家としてのキャリアの中で良いこともしたし、それは私たちも感謝すべきことだが、アメリカ国民との関係が希薄になる中で権力にしがみついたことも事実だ。新しい血と新しいアイデアが必要な時だ。

新鮮な思考がアメリカの外交政策にも及ぶことを願っている。アントニー・ブリンケン国務長官やジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官を含むバイデンチームは、リベラルな覇権(libera hegemony)という失敗した戦略を少し手直しして復活させようとした。時代遅れの信念や政策にしがみついた結果、ウクライナやガザ地区で悲惨な結果を招いた。こうした考え方が今後のアメリカの外交政策に与える影響は少ない方がいい。

(3)有権者が見逃したソフトランディング(3. The Soft Landing That U.S. Voters Missed

バイデン政権の外交政策ティームの全員がひどいパフォーマンスだったわけではない。ジャネット・イエレン財務長官、ジャレド・バーンスタイン経済諮問委員会委員長、ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が新型コロナウイルス不況後のアメリカ経済を管理していたことに感謝している。彼らは多くの識者があり得ないと想定していた「ソフトランディング(soft landing)」を成し遂げた。もちろん彼らの実績は完璧ではなかったが、もっと悪くなる可能性もあった。

有権者がバイデンの功績を高く評価しなかったのは残念だが、その理由の1つは、バイデンが高齢のため、一般市民に説明することができなかったことだ。不平等と住宅費の上昇に対処するためのより大きな努力は助けになっただろうが、これらの問題を解決するための真剣な対策が連邦議会を通過したり、地方の障壁を乗り越えたりすることはなかった。アメリカの有権者は11月5日に感謝の念を抱かなかったのは明らかだが、私は感謝している。

(4)生殖の自由の反撃(4. Reproductive Freedom Battles Back

トランプ陣営の明らかな女性差別、安全な妊娠中絶を事実上不可能にするプロジェクト2025の計画、女性の身体以外のあらゆるものを規制緩和しようと急ぐ連邦最高裁の判例を無視する姿勢を考えれば、今年の選挙がリプロダクティブ・フリーダム、女性の健康、そして、ジェンダーの権利にとってより広範に何を意味するのか、多くの人々が落胆したのは当然である。

しかし、選挙戦の様相はまったく暗澹たるものではなかった。女性の健康と権利を守るための投票イニシアティヴは、それが検討されていた10州のうち7州で可決され、中絶の権利を支持する候補者が、トランプ大統領を支持した州を含む重要なレースで勝利した。ささやかな慰めかもしれないが、今年はもらえるものは何でももらうつもりだ。

(5)大量破壊兵器のタブーは守られてきた(5. The WMD Taboo Held Up

核兵器を保有する国々が関与する暴力的な紛争が継続・拡大しているにもかかわらず、大量破壊兵器(weapons of mass destructionWMD)が使用されることなく今年も1年が過ぎたことに、私たちは感謝しなければならない。しかし、私たちの感謝は、核兵器、そしておそらく他の大量破壊兵器の敷居が低くなっているという知識によって和らげられるべきである。アメリカを含むいくつかの国の強硬なタカ派は、核兵器の使用について公然と語り始めている。来年の感謝祭のリストにこの項目を入れられればいいのだが、年々その可能性が低くなっているのが心配だ。

(6)国際刑事裁判所の逮捕令状(6. The ICC Arrest Warrants

国際刑事裁判所(International Criminal CourtICC)が政治的圧力に屈することなく、ハマス軍最高責任者のモハメド・デイフ(彼はもう生きていないかもしれない)、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、ヨアヴ・ギャラント元イスラエル国防相に逮捕状を発行したことに感謝したい。この逮捕令状は、戦争犯罪や人道に対する犯罪を命じたり犯したりした人間が、国際社会から特別扱いされ、制裁を受ける可能性があることを示す希望的な兆候である。

私は、リアリストとして、このような措置が一部の指導者の悪行を止めるものではないことを認識している。しかし、執行メカニズムが弱いか存在しない、食うか食われるか(dog-eat-dog)の国際政治においても、国家は政府が罪のない市民に故意に過度の残虐行為を加えることを阻止しようとすることはできる。今回の逮捕状によって、ハマスやイスラエルの指導者たちが選んだと思われる暗い道に向かわないよう、将来の指導者たちが何人かでも説得されるのであれば、私たちはそれにも感謝しなければならない。

(7)公務員(7. Civil Servants

政治家や専門家たちは、お役所仕事で社会を窒息させ、私たちに自分たちの好みを押し付けていると思われる政府関係者を批判するのが大好きだ。彼らは格好の標的だが、多くの場合、不十分なリソースを使いながら、私たち全員の状況をより良くするために毎日働いている、ほとんど献身的でほとんど政治に無関心で組織的に低賃金の何千人もの公務員なしでは社会は機能しない。

アメリカは、このような人々が、イデオローグや日和見主義者から指示を受ける忠誠者やハッカーに取って代わられるとどうなるかを発見しようとしているのかもしれない。この戦略は他の国ではあまりうまくいっておらず、今後数年で公共サーヴィスが劇的に低下すれば、アメリカ人は満足しないだろう。私が間違っていればいいと思う。今のところは、トップに任命された人たちの気まぐれや愚行にもかかわらず、公的機関の運営を維持してきた専門知識と献身に感謝することにしよう。

また、ジョシュ・ポール、アネル・シェリーン、ハリソン・マンといった政府関係者にも特別な感謝の意を表する。彼らは出世主義(careerism)よりも道徳と原則を優先し、バイデン政権によるイスラエルの虐殺に対する非良心的かつおそらく違法な支援に抗議して辞任した。もし彼らの上司の何人かが彼らの例に倣っていれば、アメリカの政策はより建設的な方向に舵を切ったかもしれない。

(8)著述家たち(8. Authors

幸運なことに、私は仕事上、たくさんの本を読む必要があり、私を教育し、挑戦し、インスピレーションを与え、楽しませてくれた多くの著述家に毎年感謝している。全員に言及することはできないが、ステイシー・E・ゴダード、エリン・ジェン、シーピン・タン、スティーヴ・コル、カルダー・ウォルトン、アダム・シャッツ、ジェイムズ・ゴールドガイアー、ダニエル・チャーデル、ヴィクトリア・ティンボア・フイ、ノーム・チョムスキー、ネイサン・ロビンソンに簡単に感謝の意を表したい。私は彼らが書いた全てに同意する訳ではないが、その全てに多くの価値があると感じた。

そして、ナターシャ・ウィートリーに特別な応援を送りたい。著書『国家の生と死(The Life and Death of States)』は、オーストリア=ハンガリー帝国の終焉と近代国家制度の創設のめくるめく歴史であり、法制史、哲学、法学などの多くの学問分野の並外れた組み合わせとなっている。決して軽い読み物ではないが、非常に読み応えがあり、深く考えさせられる内容だった。

軽めの作品としては、故ポール・オースター、ジュリアーノ・ダ・エンポリ、バリー・アイスラー、ボニー・ガーマス、そして特にジョージ・スマイリーを完全に満足のいく形で甦らせるという不可能に近い偉業を成し遂げたニック・ハーカウェイの作品に喜びを見出したことに感謝している。私の読書人生を豊かにしてくれた上記の全ての人々に感謝する。

(9)希望の光か?(9. A Silver Lining?

これは時期尚早かもしれないが、第二次トランプ政権が、敵対者たちが警告していた無能で執念深い、そして過度の傲慢さを示しているという初期の兆候に対して、暫定的に感謝の意を表したいと思う。はっきり言っておくが、私はアメリカに悪いことが起こることを望んでいる訳ではない。私の心配は、いずれにせよそれらが起こるのではないかということだ。

これが引き起こすであろう問題や、多くのアメリカ人が耐えることになる苦しみを私は喜ばないが、トランプ、イーロン・マスク、ロバート・F・ケネディ・ジュニア、そしてその他の人々が最終的に多大な損害を与えるのであれば、むしろそうするほうが良いと思う。それは迅速かつ誰の目にも明白だ。そうなれば、他の非自由主義的な独裁者たちがやったように、トランプとその手下たちが権力を維持するために選挙制度を再配線する前に反発が始まるかもしれない。興味がある方のために付け加えておくが、私は間違いであると証明されることを嬉しく思うし、物事がそのように進むのであれば喜んでそれを認めるつもりだ。

(10)個人的な幸せ(10. Personal Blessings

私は幸運にも今学期をウィーンの人間科学研究所 (IWM) のゲストとして過ごすことができた。考えたり書いたりするのにこれ以上良い環境はない。とても良いホストをしてくれたミーシャ・グレニー、イワン・クラステフ、そしてIWMのスタッフに感謝する。最後に、たとえあなたがコメントで私に課題を与えてくれた読者の一人であっても、このコラムを読むことを選択した全ての人に、私は深く感謝し続ける。

そして、以前はトゥイッターとして知られていた地獄のサイトに代わるサイトがあることに特に感謝している。今後は、@stephenwalt.bsky.social で私をフォローして欲しい。素晴らしい感謝祭になりますように!

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。「Bluesky」アカウント:@stephenwalt.bsky、「X」アカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001

※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 イスラエルを中心として、中東地域では不安定さが増している。中東地域においての地域大国としては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、トルコなどが挙げられるが、サウジアラビアの動きがあまり見えてこない。イスラエルのガザ地区攻撃については、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は「大量虐殺(ジェノサイド)」と呼んで非難しているが、中東情勢安定化のために、具体的には積極的には動いているようには見えない。自分たちは騒動の輪から外れようとしているようだ。

なによりも、サウジアラビアはバイデン政権下でイスラエルとの国交正常化交渉の下準備を進めており、2023年9月の段階で、国交正常化交渉の準備は順調に進んでいるとジョー・バイデン政権のジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が発言していた。それから1カ月後にハマスによるイスラエル攻撃が実施された。私は「サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を阻むための動き」と見ている。サルマン王太子がイスラエルに対して「大量虐殺」という言葉を使ったことは国交正常化に向けて大きなハードルとなる。サウジアラビアは既に中国の仲介で、イランとの関係を正常化している。それ以上のことは、現在は望まないという意思を示しているかのようだ、

以下の論稿では、サルマン王太子が過去の失敗から学び、地域の混乱を避けるために内向きになっている可能性があると指摘している。彼は、国内の安定を確保することに重きを置いており、イランとの関係を利用して地域の安定を図ろうとしている。サウジアラビアは多額の投資を行っているため、基本的な安定を求めることが重要であり、イランとの関係を悪化させる理由はない。サウジアラビアは安定を求めているということだ。中東地域の安定は、サウジアラビアだけではなく、世界にとっても重要だ。

 サウジアラビアが動かないとなると、中東地域に安定をもたらすにはアメリカが出てこざるを得ない。具体的には、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の戦争拡大を止めるのはトランプの役割ということになる。トランプにそれができるかどうかが注目される。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアがイランに傾斜する当の理由(The Real Reason for Saudi Arabia’s Pivot to Iran

-テヘランに対するムハンマド・ビン・サルマンの論調の変化は見かけほど混乱していない。

スティーヴン・M・クック筆

2024年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/12/02/saudi-arabia-mohammed-bin-salman-pivot-iran/?tpcc=recirc062921

mohammedbisalman20181024001
サウジアラビアの首都リヤドで開催された未来投資イニシアティヴFII会議に到着したムハンマド・ビン・サルマン(2018年10月24日)

ここ数週間、同僚、上司、恩師、そして高校時代の友人たちから、「ムハンマド・ビン・サルマンはどうなっている?」という質問を受けた。11月11日、リヤドで開催されたイスラム諸国首脳会議で、サウジアラビアの王太子は国際社会(翻訳:アメリカ)に対し、イスラエルに「姉妹国であるイラン・イスラム共和国の主権を尊重し、その国土を侵害しない」よう強制するよう呼びかけた。同じ会合で彼は、イスラエル国防軍がガザ地区で行ったことを「集団虐殺(collective genocide)」と表現した。

このレトリックは、ワシントンのほとんどの人々が信じてきたムハンマド・ビン・サルマンについてのすべてに反するものであり、それゆえ「どうなっている?」という疑問が出ている。そして、少なくとも今回は、ワシントンの外交政策関係コミュニティは想像していない。

首脳会談でのムハンマド・ビン・サルマンの言葉は、質的な変化であるように見える。結局のところ、王太子はかつてこう質問した。「イスラム教徒の土地を支配し、(イスラム世界にトゥエルバー・ジャファリ宗派を広めなければならないという)過激派イデオロギーの上に築かれた政権とどのように対話するのか?」。彼は美辞麗句を並べてごまかしていたが、知識がある人が聞けば、彼の発言はイランを指しているのは明らかだった。公平を期すなら、それは2017年のことで、暴徒がテヘランのサウジ大使館を襲撃し、両国関係の断絶を促した翌年のことだった。しかし、中国政府が2023年3月にサウジアラビアとイランの国交再開を仲介した後も、リヤド政府高官はいまだにテヘランの意図に懐疑的で、イラン指導部に対する不信感を抱いている。

イスラエルについて、サウジ当局者は以前から、国交正常化は「もし(可能性)」ではなく「いつ(時期)」の問題だと示唆してきた。彼らはそれを頻繁に発言したので、しばらくすると誰もあまり気に留めなくなった。もちろん、ガザ地区での残酷な戦争によって、サウジアラビアが国交正常化のためにイスラエルに要求する代償は着実に増えている。それでも昨年、リヤドの高官たちはイスラエルとの和解に尽力していたようだ。イスラエルは戦争の初期からジェノサイド(genocide、大量虐殺)で非難されてきたが、11月11日のイスラム諸国首脳会談の前まで、ムハンマド・ビン・サルマンはこの言葉を使うことはなかった。

それでは、いったい何が起きているのか? サウジアラビアは「方向転換(pivoting)」しつつあるのか? 私はサウジのレトリックの変化を説明するために3つの理論を持っている。

第一に、長年議論されてきたアメリカとサウジアラビアの安全保障協定をめぐるドナルド・トランプ次期大統領との交渉の口火を切ることである。ムハンマド・ビン・サルマンはイランに対する態度を変えたかもしれないが、それは皮肉にすぎない。トランプ政権の政権移行関係者がイランに「最大限の圧力(maximum pressure)」をかけ直すと宣言しているのと同時に、サウジアラビアとイランの関係をレトリック的にでも改善することは、サウジアラビアを味方につけておくためにトランプ・ティームから利益を引き出す戦略の一環かもしれない。まるで王太子が、「次期大統領、あなたは交渉の達人気取りのようだ。私がお相手しよう。あなたは何を提供できる?」と述べているかのようだ。

私は数日間、この説に納得していた。しかし、結局のところ、しっくりこない。イラン指導部と仲良くしてアメリカ政府高官を操ろうとするのは、2010年代にトルコのレセップ・タイイップ・エルドアン大統領がやったことだが、サウジアラビアがそれに倣ったようではない。ムハンマド・ビン・サルマンはエルドアンを見習っているのかもしれないが、それが彼のスタイルだとは私には思えない。

第二に、イランに逃げ込むことで、ムハンマド・ビン・サルマンはイスラエルとの国交正常化の可能性から逃げていると考える方が説得力を持つ。ガザ地区におけるイスラエルの軍事作戦の残忍さは、サウジアラビアの多くの人々を激怒させている。最近のサウジアラビア訪問で、私と同僚は、ガザ地区で続いている殺戮をめぐるバイデン政権への批判の集中砲火を浴びた。その中で少なくとも1回は、「恥ずべき(shameful)」という言葉が出てきた。それがムハンマド・ビン・サルマンの考えの一部に違いない。王太子は万能だが、世論と無縁ではない。イスラエルとの国交正常化は、ガザ地区破壊に対する国民の怒りの深さを考えれば、短期的には彼にとってほとんど価値がない。

王太子が「大量虐殺」という言葉を使ったのは、アブラハム合意に続くものとしてイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を重視するトランプ次期政権への明確な警告でもある。サウジアラビアの指導者たちは、イスラエルの入植者たちがトランプは併合の邪魔をしないと信じるようになった今、国交正常化に関わりたいはずがない。元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーを駐イスラエル大使に任命したことは、彼らが間違っていないことを示唆している。イスラエルの正式な主権がヨルダン川西岸地区の一部にまで拡大され、トランプ大統領に祝福されるだけで、王太子が国交正常化の道を歩むのは非常に恥ずかしいことだ。大量虐殺を引き合いに出すことで、サウジアラビアは現状では前進する用意がないことを次期大統領に示しているのだ。

最後に、ムハンマド・ビン・サルマンの明らかな方向転換について、最も説得力のある説明がある。それは、イエメン内戦に介入し、カタールを封鎖し、レバノン首相を辞任に追い込み、リビアで国際的に認められた政府の反対派を支援し、失敗した後だというものだ。王太子は、自分の目標を達成するために、この地域を自分の意志通りに変化させることは自分の力の範囲内ではできないと結論づけた。代わりに、彼は今では内向きになり、王国内の安定を確保しようと努めている。イランに傾斜することは、混乱をサウジアラビア国境外に留め続ける1つの方法だ。

ムハンマド・ビン・サルマンはサウジアラビアの将来を形作るために数千億ドルを投じているため、この変化は彼にとって最も重要である。ネオムの新都市やジェッダのキディヤ海岸観光プロジェクトなど、彼のメガプロジェクトやギガプロジェクトの賢明さに疑問を抱く人もいるだろう。しかし、彼が彼らに多額の投資をした今、サウジアラビアの指導者たちが、たとえそれを達成するために我慢しなければならないとしても、彼らに成功のチャンスを与えるために基本的な経済的および政治的安定を求めないのは賢明ではないだろう。サウジアラビアが突然イランを信頼する兆候はないが、サウジアラビアが国内で行っていることを台無しにする口実を彼らに与えたくはない。

それほど遠くない昔、サウジアラビア人はリヤル(サウジアラビアの通貨単位)政治(riyalpolitik)を実践し、基本的に地域問題が王国を取り囲まないようにするためにお金を払っていた。ムハンマド・ビン・サルマンが世界にイスラエルを抑制するよう呼び掛け、イランを(現金の入った袋を持たずに)家族の一員と見なしていることを明らかにしたときの行動には同様の響きがある。皇太子が座っている場所から見ると、これはイランへの傾斜ではなく、むしろサウジアラビアへの傾斜である。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

(貼り付け終わり)

(終わり)

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001

※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2023年10月以来、イスラエルと中東地域は戦争状態が続いている。共和党の支持者の過半数はイスラエルに対する支援を継続することを望んでいる。また、ドナルド・トランプ次期大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は良い関係と言われている。バラク・オバマ、ジョー・バイデン両民主党政権とは関係がうまくいっていなかったネタニヤフ首相は2023年10月以来、積極的に周辺諸国に攻撃を仕掛けている。これは、再選の道を断たれたジョー・バイデン大統領はレイムダック化(無力化)しているうちに、戦線を拡大しておきたいということ、自分と関係が良いドナルド・トランプが次期大統領になることで、支援は継続されて、攻撃を続けることができるという計算をしているということが考えられる。トランプは2024年10月21日にネタニヤフ首相と電話会談を行い、「(イスラエルの自衛のために)やるべきことをやれ」と述べたとされている。ネタニヤフ首相は「お墨付き」をいただいたような気持であっただろう。
israelmilitaryfronts2024map001
 イスラエルは、ガザ地区のハマスだけではなく、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、更には、これらの組織を支援するイランに対する空爆も行っている。それだけではなく、シリアのバシャール・アサド政権崩壊を受けて、シリア国内の民兵組織にも攻撃を加え、係争地ゴラン高原の緩衝地帯に侵攻し、ゴラン高原の確保を強化している。ネタニヤフ首相は自衛のための行為としているが、中東地域を不安定にさせる危険な動きである。イスラエルと中東のイスラム教国の対立という「中東戦争」になって困るのはトランプだ。

 いくらトランプがイスラエルを支援していると言っても、イランとの戦争状態は望まないだろう。イスラエルとイランが戦争状態になり、核戦争の危機も高まるとなれば、アメリカがこの戦争に引っ張り出される、巻き込まれるということは考えられる。アメリカ軍が派遣され、アメリカ軍に死傷者が出るとなると、トランプ政権にとって大きな打撃である。そこまで事態が悪化しないように、トランプとしては状況をコントロールしたいところだろう。ネタニヤフ首相は自身と家族のスキャンダルを抱えており、首相の座から離れてしまえば逮捕される可能性がある。戦争状態、緊張状態が続くことは彼自身にとっては利益であるが、これはイスラエルと中東地域、世界にとっては好ましい状況ではない。

 ネタニヤフ首相が辞退を悪化させる場合、トランプは態度を変えて、ネタニヤフ首相を支持せず、政敵のベニー・ガンツ元国防相を応援するということも考えられる。トランプ自身の動きは「予測不可能」であり、いつ「You are fired!(お前はクビだ!)」と言われるかは分からないのだ。

(貼り付けはじめ)

トランプとネタニヤフは歩調を合わせないだろう(Trump and Netanyahu Won’t Get Along

-誰もがトランプとイスラエル首相の親密さを過大評価している。

スティーヴン・A・クック筆

2024年11月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/11/01/trump-and-netanyahu-wont-get-along/

donaldtrumpbenjaminnetanyahu2020001
ドナルド・トランプ前米大統領とベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相(2020年1月27日、ワシントンDC)。

『タイムズ・オブ・イスラエル』紙は最近、イスラエル人の3分の2がカマラ・ハリス米副大統領よりもドナルド・トランプ前米大統領を好むと報じた。彼らはトランプがバイデン・ハリス政権よりもイランに対してより厳しく、イスラエルの戦争努力を支持すると明白に信じているが、トランプもハリスもイランとの直接対決を望んでいないという事実を考えると奇妙なことである。

また、トランプとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が互いに歩調を合わせているという考えが広まっていることも奇妙だ。

私が書評したジャレッド・クシュナーの回顧録の内容を信じるならば、ネタニヤフ首相とトランプ大統領との間には信頼関係が欠如していた。ネタニヤフ首相が1996年に首相として初めてワシントンDCを訪れた際、ビル・クリントン大統領は会談後にスタッフにこう尋ねたと伝えられている。「ここにいる中で誰が超大国だ?」 バラク・オバマ大統領は明らかに、ネタニヤフと同じ部屋にいることに耐えられなかった。そしてトランプは、在任中に行われた一連のイスラエル選挙でベニー・ガンツを応援した。

トランプは明らかに、ハマスとの戦争を、選挙に勝った場合に最初に対処しなければならない問題にはしたくないようだ。だからこそ、トランプは最近になって、ネタニヤフ首相に対して、就任式の日までにガザ地区については決着をつけたほうがいいと述べた。これは以前から何度も言っていることで、イェルサレムの懸念をかき立てている。トランプのタイムラインは、ハマスに多くのダメージを与えたが、今後も続けるつもりのイスラエルのタイムラインとは必ずしも一致しないからだ。もしネタニヤフ首相が大規模な軍事作戦を終了させ、勝利宣言をすれば、国内の右派の同盟者たちとはうまくいかないだろう。

結論: 選挙結果がどちらに転んでも、アメリカ・イスラエル関係に緊張が走る可能性は高い。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

(貼り付け終わり)

(終わり)

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001

※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年の大統領選挙までは、「ドナルド・トランプとカマラ・ハリスではどちらが勝つか」という質問を受けることばかりだった。選挙が終わって1か月ちょっと過ぎている今まででは、「トランプが大統領になってアメリカはどうなるか、世界はどうなるか、日本はどうなるか」という質問を受ける。予言者ではない身としては答えるのに難しい質問ばかりだ。そこで、ハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルトはどう考えているかを見ていきたい。ウォルトもまたトランプを「予測不可能だ(unpredictable)」と言っているのではあるが。是非下の論稿を読んで欲しい。

 対中国に関しては、核兵器を使った戦争も辞さないと考える人たちがいる一方で、関わるべきではない、国内問題を優先すべきだと考える人たちもいる。トランプはその間を行ったり来たりするだろうというのがウォルトの見立てである。私は、トランプは中国との戦争を望まないだろうと考える。そして、アメリカが中国と戦うまでには何段階かあり、その中には、日本がけしかけられる形で、中国と戦うという段階があると思われる。そうなれば、世界経済は崩壊してしまうだろうと考えると、トランプは経済面での中国との貿易戦争を行う可能性は高いが、実際の戦争はない。

トランプ自身は戦争を損だと考えると思われるので、ウクライナ戦争も、そして中東地域でも戦争の拡大を望まないだろう。ウクライナ戦争はトランプ政権下で停戦ということになり、NATOに関しては、各国の負担増大を強く望むことになるだろう。中東地域におけるイスラエルの動きは気になるところだ。イランはイスラエルとの全面戦争を望まないだろうが(これはイスラエルもそうだろう)、現状のように押しまくられている状態で、どこかで反撃ということも考えられる。核戦争の脅威があるという懸念がある限り、アメリカはイスラエルを見捨てることはできないだろうが、現在のベンヤミン・ネタニヤフ首相があまりにも戦争を拡大させるようであれば、アメリカは歯止めをかける動きに出るだろう。大きな戦争は起きないだろうが、アメリカの国力の低下と威信の低下によって、各地域での役割が縮小することによって、各地域内での未解決の問題に関して、「自力救済」を求める動きが出て、不安定化したり、小競り合いが起きたりすることがあるだろう。

 トランプは日本に対してあまり関心を持たないだろう。アメリカ国内への投資とアメリカからの輸入増大、更には防衛費の増額(アメリカの負担の軽減)にしか関心がないと言ってよい。現在、日本では防衛費負担増額のための増税が進められているが、これは「防衛費を対GDPの2%まで倍増させよ」というトランプ政権以来の「厳命」に沿った動きである。「予測不可能な」トランプである。「2%?それはまだ低すぎる、3%だ」ということを言ってくる可能性もある。「それに加えて、アメリカ国内に工場を作れ」ということにもなるだろう。更には、「アメリカが産出する石油と天然ガスを買え」という要求も出てくるだろう。これらについて「条件を交渉する」役割が石破茂首相には求められる。石破氏は、トランプにとって、「ゴルフもやらない、おべっかも言わない」初めての日本の首相となる訳だが、タフな交渉相手であるところを見せれば、かえって好意を持つ可能性はある。「話せる奴」という評価を得ることが重要だ。

 アメリカ国内においては、関税引き上げによる経済への影響は気になるところだ。物価高を引き起こし、インフレ懸念が高まる。経済成長と人々の収入の増大を伴う物価高は望ましいが、そうではない場合には、アメリカ国内に生活苦からの不安定な状況が生み出さされる可能性がある。予断を許さない状況だ。

(貼り付けはじめ)

2024年のアメリカの選挙が外交政策に及ぼす10の影響(The 10 Foreign-Policy Implications of the 2024 U.S. Election

-トランプ2.0について考えるべきこと

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年11月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/11/08/10-foreign-policy-implications-2024-election/

donaldtrumpinmichigan20241105001
ミシガン州グランドラピッズでの集会に登場する共和党大統領候補ドナルド・トランプ(11月5日)

映画ファンは、ある映画の続編が良いものであることはほとんどなく、第一作よりも暗い展開になることが多いことを知っている。トランプの大統領としての最初の作品は多くの人を失望させ、一部の人にとっては致命的であった。それが、2020年の選挙でトランプが負けた理由である。リメイク版は更に悪いものとなるだろう。2024年のアメリカ大統領選挙がもたらすであろう影響トップ10を以下に挙げていく。

(1)アメリカ政治はミステリーだ(U.S. politics is a mystery)。
まだ明らかでなかったとしても、今や、誰もアメリカの選挙政治がどのように機能するのか理解しておらず、このテーマに関する従来の常識の多くが大間違いであることは火を見るより明らかだ。世論調査は当てにならないし、「地上戦(ground game)」の重要性についての定説は当てはまらないし、何が起こるか分かっていると思っていた賢い人たちは皆、間違っているだけでなく、大きく外れていた。2016年と同様、ドナルド・トランプ前米大統領とそのティームも、私たちと同様に驚いたのではないかと思う。私の粗雑な見解では、アメリカのエリートたちは、国民(body politic)の中にどれほどの白熱した怒りと恐怖が存在し、その多くが自分たちに向けられているのかをまだ過小評価している。民主党にとって何が問題だったのか、なぜ専門家たちはまたもやそれを見逃してしまったのか、その場しのぎの分析が延々と続くだろう。しかし、同じ「専門家」たちはこれを解明するのに8年を費やしており、今でも検討中である。

(2)トランプは予測不可能であろう(Trump will be unpredictable)。その通りだ。トランプは、予測不可能であることで、他者を不安にさせ続けることができる資産とみなしており、彼の不規則な行動に対する評判は十分に高く、一貫性がないことを批判するのは難しくなっている。このため、支持者を含め、誰も彼が何をするか正確に知っていると自信を持ってはならない。彼が個人的な政治的・経済的利益にならないことはしないのは確実だが、それがどのように政策に反映されるかは計算ができない。選挙期間中、彼はおかしなことをたくさん言ったが、そのどれだけが威勢のよいハッタリで、どれだけが本心なのかはまだ分からない。

更に言えば、共和党内には、いくつかの重要な問題、とりわけ中国をめぐって、重要な分裂がある。リアリストたちは、ヨーロッパ(とおそらく中東地域)から離れて、アジアに集中し、台湾に対するアメリカの関与を強化したいと考えている。一方、アイソレイショニストやリバータリアンたちは、ほとんど全ての地域から離れ、アメリカの行政国家の解体(dismantling the administrative state back home)に集中したいと考えている。そして、これらの人々の中には、アジアでの核兵器の使用について、かなり恐ろしい考えを持っている人たちもいる。誰がどの役職に就くのかに注目して欲しいが、政権内部には両方の派閥が存在し、トランプはその間を単に行ったり来たりかもしれないので、これを知っていても全てが分かるものでもない。

また、トランプが外交問題にどれほどの関心を払うつもりなのかも不明だ。主に民主党のライヴァルへの復讐と、悪名高い「プロジェクト2025」に書かれた過激な国内政策の追求に力を注ぐのか、それとも世界中でアメリカの政策を変革しようとするのか? あなたの推測は私の推測と同じだ。しかし、覚えておいてほしい。トランプはまた、エネルギーと集中力が目に見えて衰えてきている人物でもある(しかも、これらは最初の任期中はそれほど印象的ではなかった)。彼の任命した人たちは、何かがうまくいかなくなり、責任を取らなければならなくなるまで、多くの自由裁量権(latitude)を持つだろう。結論としては、私を含め、誰もトランプが何をするか分かっていると自信を持つべきではないということだ。

(3)リベラルな覇権は死んだ(Liberal hegemony is dead)。
ジョー・バイデン米大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官、カマラ・ハリス副大統領、そしてその他の人々は、冷戦終結以来アメリカの外交政策を導いてきたリベラルな覇権という戦略を復活させ、修正しようとしてきた。彼らの試みは以前のヴァージョン以上に成功せず、有権者は決定的な拒絶を示した。トランプに投票した人々は、民主政治体制を広めることに興味がなく、人権に関心がなく、自由貿易に懐疑的で、外国人を国内に入れたがらず、グローバルな制度に警戒心を抱いている。彼らは、トランプが公然と敵対している訳ではないにせよ、これら全てに無関心であることを知っている。

私がこの失敗した戦略に固執している民主党と共和党の両方を繰り返し批判してきたことを考えると、私が選挙結果に満足していると思う人がいるかもしれない。私は満足していない。なぜなら、トランプ大統領の外交・内政政策へのアプローチは、アメリカ国民を更に貧しく、より分断し、より脆弱なままにすると信じているからだ。そして、現在状況が悪いことが、状況が更に悪化することはないと意味することはないからだ。

(4)来るべき貿易戦争に気をつけろ(Beware the coming trade war)。

トランプ大統領が選挙戦で語った、1930年代にあった関税を全ての人に課すという話は、単なる威勢だけのハッタリだった可能性がある。ロバート・ライトハイザーのような保護主義者にこの問題を委ねるのか、それとも比較的開かれた市場とグローバルなサプライチェインに依存する新しい技術者仲間の意見に耳を傾けるのかにもよる。トランプは現代経済の仕組みについて洗練された理解を示したことがないため、もし彼が深刻な貿易戦争に踏み切った場合、多くの意図しない悪影響が予想される(財政赤字の増加、債券市場の圧力、インフレなど)。彼は自分自身を責めるしかないが、どこかで都合のいいスケープゴートを見つけるだろう。

(5)ヨーロッパは困難な状況にある(Europe is screwed)。
トランプはアメリカのヨーロッパの同盟諸国を戦略的資産とは見ておらず、以前から公然とEUを敵視している。過去にはEUを敵視し、ブレグジット(イギリスのEU離脱)は素晴らしいアイデアだと考えていた。なぜなら、EUは経済問題で声を一つにすることができて団結できるので、アメリカがEUを押し切ることが難しくなると理解していたからだ。共和党は、全てではないにせよ、ほとんどの形の規制に反対しており、イーロン・マスクのような人々は、ヨーロッパのデジタル・プライバシーに関するより厳しい規則に反対している。トランプはブリュッセルを無視し、アメリカがはるかに強い立場にあるヨーロッパ諸国それぞれとの二国間関係に焦点を当て、EU自体を弱体化させたり分裂させたりするためにできることは何でもやるだろう。この危険性によって、(フランスのエマニュエル・マクロン大統領が提唱し続けているように)ヨーロッパ諸国が結束して反対する可能性もあるが、それよりも可能性が高いのは、どの国も自分たちのために気を配るということだ。

NATOに関しては、トランプは完全に脱退することを決めるかもしれない。しかし、NATOはまだ多くのアメリカ人に人気があり、正式な脱退は国防総省や連邦議会共和党の一部から多くの反発を受けるだろう。それよりも可能性が高いのは、トランプがNATOにとどまりながら、ヨーロッパ諸国が十分なことをしていないと非難し続け、アメリカの兵器購入などにより多くの防衛費を費やすよう働きかけることだろう。そのようなアプローチを採用するアメリカ大統領は、トランプが初めてではないだろう。バイデン時代のぬるま湯の後、トランプ2.0はアメリカのヨーロッパのパートナー諸国にとって冷たいシャワーのように感じるだろう。

(6)ウクライナは本当に困難な状況にある(Ukraine is really screwed)。

もしハリスが当選していたら、ウクライナでの戦闘の終結を強く求めていただろうし、可能な限り最良の取引もやはりキエフにとってはかなり不利なものだっただろうと思う。しかし、彼女はウクライナに多少なりとも有利な条件を引き出すために、米国の支援が継続されるという見通しを利用しようとしただろうし、ロシアとの取引が成立した後も、いくらかは安全保障上の支援を提供しただろう。トランプ大統領は、米国の援助を打ち切り、ウクライナは自分たちの問題だとヨーロッパに言う可能性が高い。トランプは確かに、議会が再び大規模な支援策に賛成するよう説得するために政治資金を使うことはないだろう。世論は彼を支持するだろうし、彼の唯一の懸念は、ロシアがウクライナの他の地域を制圧し、彼が腑抜けで弱く、世間知らずだと思われることかもしれない。しかし、ロシアのプーチン大統領が恒久的な分裂を受け入れ、名目上は独立したもののNATO加盟には向かわず、傷ついたウクライナが残ることになれば、ほとんどのアメリカ人はページをめくって前に進むだろう。そうなれば、トランプは戦争終結の手柄を独り占めすることになる。

もしハリスが当選していたら、ウクライナでの戦闘の終結を強く求めていただろうし、可能な限り最良の取引もやはりキエフにとってはかなり不利なものだっただろうと思う。しかし、彼女はウクライナに多少なりとも有利な条件を引き出すために、アメリカの支援が継続されるという見通しを利用しようとしただろうし、ロシアとの取引が成立した後も、いくらかは安全保障上の支援を提供しただろう。トランプ大統領は、アメリカの援助を打ち切り、ウクライナはあなたたちの問題だとヨーロッパに言う可能性が高い。トランプは確かに、連邦議会が再び大規模な支援策に賛成するよう説得するために政治的資本を使うことはないだろう。世論は彼を支持するだろうし、彼の唯一の懸念は、ロシアがウクライナの他の地域を制圧し、彼が腑抜けで弱く、世間知らずだと思われることかもしれない。しかし、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が恒久的な分裂を受け入れ、名目上は独立したもののNATO加盟には向かわず、傷ついたウクライナが残ることになれば、ほとんどのアメリカ人はページをめくって前に進むだろう。そうなれば、トランプは戦争終結の手柄を独り占めすることになる。

(7)中東紛争は続く(Middle East strife will continue)。

バイデンとブリンケンの中東への誤った対応は、非人道的で非効果的な政策から距離を置こうとしないハリスの姿勢と同じくらいに、選挙でハリスを苦しめた。とりわけこの立場は、トランプを人権や民主政治体制、法の支配を気にしない危険な過激派として描こうとする彼女の試みを台無しにした。しかし、トランプが大統領に就任したからといって、事態が好転すると錯覚する人はいないはずだ。彼は最初の任期中、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に望むものを全て与え、イランの核兵器保有を阻止する協定から離脱し、ガザ地区、レバノン、占領下のヨルダン川西岸地区で罪のない人々が直面している悲劇的な損失には涙ひとつ流さないだろう。イスラエルがイランを攻撃するのを手助けするのを嫌がるかもしれないが(特に、彼の友人であるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子がそうしないように助言するならば)、そうでなければイスラエルはパレスティナ人を根絶やしにしたり追放したりする青信号を持ち続けるだろう。

トランプ大統領が自らを偉大な和平交渉者(grand peacemaker)として位置づけ、失敗に終わったアブラハム合意に沿って、ある種のスーパーチャージされた大取引を追求していると想像する人もいるかもしれない。一期目の任期中に北朝鮮の指導者である金正恩と会談したのと同じように、トランプがイランの新大統領やその最高指導者とさえ喜んで会談すると発表するところを想像することさえできた。しかし、トランプには実際の交渉を行うための忍耐力も余裕もないため、このようなことは、音と怒りに満ちた、何の意味も持たない大々的な宣伝以外には何も生まれないだろう。

(8)縛られない中国(China unbound)。

前述したように、トランプ大統領のアドバイザーたちは中国をどう扱うかについて意見が一致していないため、トランプ大統領が中国にどう対処するか正確に知ることはできない。貿易問題で強硬手段に出るのはほぼ確実で、中国企業への半導体チップなどの技術移転規制を撤回するとは考えにくい。中国への敵意は、おそらくワシントンに残された唯一の超党派の問題であり、そのことがワシントンと北京の間の重要な取引交渉(grand bargain、グランド・バーゲン)を想像しにくくしている。

残念なことに、トランプ大統領はアジアの同盟諸国にも喧嘩を売る可能性が高く、台湾が直接脅かされたり攻撃されたりした場合に台湾を支持するかどうかについては、既に疑念をまき散らしている。中国に立ち向かうためには、アジアのパートナーが不可欠であり、それはアメリカが海を隔てているという明白な理由からである。中国政府関係者はトランプ大統領の再選にやや二律背反的な感情を抱いているかもしれない。しかし彼らは、トランプが衝動的で無能な経営者であり、1期目のアジアへのアプローチが支離滅裂で効果的でなかったことも知っている。トランプの2期目は、バイデンとブリンケンがアジアで達成した成果(これが彼らの外交政策における最大の成果だった)を覆す可能性が高く、北京はそれを歓迎するだろう。

(9)気候に関する危機()。

これは簡単なことだが、やはり憂慮すべきことだ。トランプは気候変動に懐疑的で、化石燃料の「掘れ、ひたすら掘れ」が正しいエネルギー政策だと信じている。この問題に対する世界的な進展は遅れ、アメリカにおけるグリーン転換を加速させる努力は後退し、人類の未来を確保するための長期的な努力は短期的な利益に道を譲ることになるだろう。このようなアプローチは、グリーン技術の優位性を中国などに譲り、アメリカの長期的な経済的立場を弱めるかもしれないが、トランプは気にしないだろう。

(10)分断社会における統一権力(Unified power in a divided society)。

トランプの勝利は国民の団結の証であり、ほとんどのアメリカ人がトランプを全面的に支持していることの表れだと見る人たちもいるだろう。この見方は重大な誤解を招く。民主党はMAGAのアジェンダを受け入れるつもりはないだろうし、特に国内においては、プロジェクト2025で概説された施策は、政治的な分裂をより拡大させるだろう。政敵を追及し、経口中絶薬ミフェプリストンを禁止して、中絶をほとんど不可能にし、ワクチン反対派を重要な公衆衛生機関の責任者に据え、何百万人もの人々を国外追放しようとし、市民社会の他の独立した機関を攻撃しても、国をまとめることにはつながらない。

同時に、統一された行政部を創設するという共和党の長期にわたる取り組みは今や実現に近づき、ホワイトハウス、連邦最高裁判所、連邦上院、そして連邦下院を完全に掌握している。統一されたチェックされていない権力の問題は、間違いを検出して時間内に修正することが難しいということだ。アメリカでは既に説明責任の仕組みが本来よりも弱くなっており、今回の選挙で更にその仕組みが弱体化することが確実視されている。

国民の健康、安全、女性の権利、中央銀行の自主性などに対する国内的な影響とは別に、分極化の深まりは政府の効果的な外交政策能力をも脅かしている。振り子がこれほど大きく揺れ続けているとき、どの国もアメリカが約束したことを政権1期以上続けてくれるとは期待できない。政府が国内の敵の根絶やしに夢中になり、有益な雇用を得ている何百万人もの住民を強制送還し、経験豊かな公務員を忠誠心のあるハッカーに置き換えるような状況では、対外的に賢明なアプローチを行う能力は必然的に弱まる。深く分裂したアメリカはまさに敵の望むところであり、トランプ大統領がそれを悪化させる以外のことをすると考える理由はない。

アメリカの世界的な役割の大きさを考えると、アメリカ人を含む世界の人々は、人間による被験者の規制を全く受けずに行われる大規模な社会実験に参加しようとしている。この実験でいくつかの前向きな結果が得られると信じたいが、たとえささやかな成果が得られたとしても、自らが負った一連の傷によって埋もれてしまうのではないかと懸念している。冬がやって来る。私が警告しなかったとは言わないで欲しい。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。「X」アカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ