古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:イスラエル

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 中東におけるキープレイヤーとしては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、アメリカが挙げられる。これらの国々の関係が中東情勢に大きな影響を与える。アメリカは、イスラエルと中東諸国との間の国交正常化を仲介してきた。バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)といった国々が既にイスラエルとの国交正常化を行っている。アメリカにとって重要なのは、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化であった。昨年、2023年前半の段階では、国交正常化交渉は進んでいた。こうした状況が、パレスティナのハマスを追い詰めたということが考えられる。

 unitedstatessaudiarabiaisrael001

中東諸国がイスラエルと国交正常化を行うと、自分たちへの支援が減らされる、もしくは見捨てられるという懸念を持ったことが考えられる。ハマスをコントロールしているのはイランであり、イランの影響力はより大きくなっていると考えられる。イランは、レバノンの民兵組織ヒズボラも支援している。イランは、ハマスとヒズボラを使って、イスラエルを攻撃できる立場にいる。イランの大後方には中国がいる。

 internationalrelationsinmiddleast2024001

 イスラエルとしては、サウジアラビアと国交正常化を行い、中東地域において、より多くの国々をその流れに乗せて、自国の安全を図りたいところだった。イランを孤立させるという考えもあっただろう。しかし、ここで効いてくるのが、2023年3月に発表された、中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。これで、イランが中東地域で孤立することはなくなった。イスラエルとすれば、これは大きな痛手となった。そして、アメリカにしてみても、自国の同盟国であるサウジアラビアが「悪の枢軸」であるイランと国交正常化するということは、痛手である。これは、中国が中東地域に打ち込んだくさびだ。

 アメリカはサウジアラビアと防衛協定を結ぼうとしているが、それには、イスラエルとの関係が関わってくる。アメリカはサウジアラビアとイスラエルという2つの同盟国を防衛するということになるが、サウジアラビアとイスラエルとの関係が正常化されないと、アメリカとサウジアラビアとの間の防衛協定交渉も進まない。サウジアラビアのアメリカ離れということもある。ここで効いてくるのはサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。アメリカとイスラエルの外交が難しくなり、中国の存在感が大きくなる。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアは次のエジプトへの道を進んでいる(Saudi Arabia Is on the Way to Becoming the Next Egypt

-アメリカ政府はリヤドとの関係を大きく歪める可能性のある外交協定を仲介している。

スティーヴン・クック筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/saudi-arabia-us-deal-israel-egypt/?tpcc=recirc062921

mohammedbinsalmanjoebiden101

サウジアラビアの紅海沿岸都市ジェッダのホテルで開催されたジェッダ安全保障・開発サミット(GCC+3)期間中に、家族写真のために到着したジョー・バイデン米大統領とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子(2022年7月16日)

彼らはそうするだろうか、それとも、しないだろうか? それがここ数週間、中東を観察している専門家たちが問い続けてきた疑問だ。アメリカとサウジアラビアは、両国当局者たちが少なくとも2023年半ばから取り組んでいる大型防衛協定プラス協定(big defense pact-plus deal)を発表するだろうか?

2024年4月末のアントニー・ブリンケン米国務長官のリヤド訪問と、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官の保留中のリヤド訪問計画により、合意の可能性の話に緊迫感と期待感が注入された。報道によると、サウジアラビアとジョー・バイデン政権は準備ができているが、「いくつかの障害は残っている(obstacles remain)」という。これはイスラエルを指す良い表現だ。

ワシントンとリヤドの当局者間の協議が始まったとき、バイデン政権はサウジアラビアとの単独合意では、米連邦議会から適切な支持は決して得られないという確信を持っていた。連邦上院で過半数を占める民主党の議員と少数派の共和党の議員(防衛協定に署名する必要がある)は、アメリカをサウジアラビアの防衛に関与させることに二の足を踏む可能性が高い。しかしホワイトハウスは、そのような協定がイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を巡るものであれば、連邦議会の支持が得られる可能性が高いと推測していた。

2023年9月時点では、それは素晴らしいアイデアだったが、今ではやや理想的過ぎる考えになっている。ガザでの7カ月にわたる残忍な戦争の後に、サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化実現に求めている代償は、イスラエル人にとって大き過ぎ、イスラエル人の約3分の2がこの考えに反対している。それだけに基づいて、国防協定のための正常化協定を追求し続ける正当性はない。

しかし、ワシントンの当局者、そして、特にリヤドは、いずれにせよイスラエルをこの協定案から外したがっているはずだ。そうでなければ、アメリカとサウジアラビアの二国間関係に三国間関係の論理を持ち込むことになる。アメリカとエジプトの関係が何かを示すものであるとすれば、それはワシントンとリヤドの関係を深く不利な方向に歪めかねない。

ジョー・バイデン米大統領がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子を本質的にペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物、persona non grata)であると宣言し、米連邦議会の議員たちがサルマン王太子の人権侵害疑惑の責任を追及するよう要求したのは、ずいぶん昔のことのように思える。

リヤド当局者たちが当時予測していたように、バイデン大統領がサウジアラビアの指導者たちを必要とする時が来るだろう。彼らはそれほど長く待つ必要がなかった。新型コロナウイルス感染拡大後の旅行客の急増とロシアのウクライナ侵攻によるガソリン価格の上昇圧力は、ホワイトハウスに特別な難題を突きつけた。その結果、世界規模のエネルギー価格の高騰はアメリカ経済の健全性を脅かし、ひいてはバイデンの選挙での見通しを脅かした。このためバイデンはリヤドに外交官を派遣し、最終的には2022年7月に自らリヤドを訪問するに至った。サウジアラビア政府高官たちにもっと石油を汲み上げるよう説得し、アメリカ人のガソリン代負担を軽減させ、大統領は低迷する世論調査の数字を少しでも改善することを望んでいた。

そして、エネルギー価格の高騰が部分的に後押ししたインフレと、ヨーロッパにおけるロシアのウクライナ侵攻は、ホワイトハウスの中国に対する厳しいアプローチを背景にしていた。バイデンは政権発足当初から、世界中で北京を出し抜くことを優先課題としていた。最も影響力のあるアラブ国家として、サウジアラビアはその戦略の重要な要素になると期待されていた。

そしてイランの脅威が存在した。ドナルド・トランプ米大統領(当時)が2018年にワシントンを脱退させた核合意である「包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)」にテヘランが再加盟するよう、米政府高官たちが政権発足後2年の大半の期間を費やして追い回した結果、バイデンは、イランが実際にはアメリカやペルシャ湾西側の近隣諸国との新たな関係を望んでいないという結論に達したようだ。

結果として、アメリカ政府はイランの封じ込め(containing)と抑止(deterring)を目的とした、地域の安全保障を強化する取り組みに乗り出したが、その取り組みにおいてサウジアラビアが重要な役割を果たすことが期待されている。しかし、核合意と、2019年の自国領土へのイラン攻撃に対するトランプ大統領の反応に消極的だったことを受けて、リヤド当局者らは賢明に振舞った。その結果、彼らは現在、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカの取り組みを大枠で規定する、正式な合意を望んでいる。

2017年と2018年に自らが負った傷のせいで、米連邦議事堂内におけるサウジアラビアの不人気が続いており、その結果、かつてはサウド家の忠実な召使であったが、ムハンマド王太子を激しく批判するようになった、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害にまで至ったことを考えると、連邦議会では支持大きいイスラエルが協定を締結するはずだった。しかし、このアイデアはうまく設計されているかもしれないが、サウジアラビアとアメリカとの防衛協定のための、サウジアラビアとイスラエルとの国交正常化は、アメリカとサウジアラビア当局者が最も重要であると信じている関係に、重大な下振れリスクをもたらすことを示している。

アメリカのサウジアラビアへの関与が、サウジのイスラエルとの国交正常化を条件とするならば、その関係、すなわちイスラエルとサウジアラビアの関係の質は、明白な意味でも、そうでない意味でも、ワシントンとリヤドの二国間関係に影響を及ぼす可能性が高い。

エジプトは、このダイナミズムがどのように展開するかを示す典型的な例である。ホスニ・ムバラク前大統領の時代を通じて、とりわけ長期政権末期には、アメリカ・エジプト・イスラエルの三者関係の論理がエジプト政権に対する、破壊的な政治批判をもたらした。ムバラクの敵対勢力、特にムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)は、イスラエルのせいで、ワシントンがエジプトをこの地域の二流大国(second-rate power)にしたのだと主張した。

換言すれば、ムバラクと側近たちは、イスラエルが2度にわたってレバノンに侵攻し、ヨルダン川西岸とガザ地区を入植し、イェルサレムを併合するのを傍観していた。そうしなければイスラエルとの関係が危険に晒され、ひいてはイスラエルとの関係が損なわれるからである。そうなれば、エジプトとアメリカとの関係を損なうことになる。その結果、エジプトはイスラエルに直接挑戦するのではなく、国連やその他の国際フォーラムの場でイスラエルに抗議をする、つまり弱者の武器(weapons of the weak)を使うことになった。

2007年頃、エジプトからガザ地区への密輸トンネルの存在が初めて発見されたとき、イスラエルとその支持者たちはワシントンでそれを喧伝した。もちろん、彼らが憤慨するのは当然のことだが、エジプト政府関係者たちは、イスラエルがこの事態を二国間問題として処理せず、ワシントンを巻き込むことを選択したため、エジプトはカイロの軍事支援が危険にさらされることを恐れたと、私的な会話で苦言を呈した。米連邦議会の議員たちも、エジプトの軍事援助を削減し、他の支援にシフトするかどうか公然と議論していた時期だった。エジプトから見れば、特に敏感な時期に密輸トンネルをめぐって批判を浴びせられたことで、エジプトとイスラエルの二国間の問題が、ワシントンとカイロの問題になり、アメリカとエジプト関係に不当に緊張が走ることになった。

サウジアラビアとの安全保障協定を確保する努力にイスラエルを含めることは、既に複雑な二国間関係を更に複雑にすることを求めるだけだ。そのようなことをする価値はほとんどない。もちろん、エジプトとサウジアラビアには多くの違いがある。国境を接していないことから、イスラエルの安全保障上の懸念が、アメリカとエジプトとの関係で見られるような形でアメリカとサウジアラビアとの関係に影響を与えることはないだろう。

それでも、イランを管理するサウジアラビアの微妙なアプローチがイスラエルを怒らせた場合はどうなるのか? エジプトと同様、サウジアラビアは、アメリカの安全保障援助に依存している。イスラエルがサウジアラビア王室の外交政策の進め方を好まなければ、アメリカとサウジアラビアの関係に問題が生じる可能性は現実のものとなる。

バイデン政権がサウジアラビアとの防衛協定を望むなら、締結しよう。協定を結ぶにあたり、十分な根拠があるはずだし、バイデン大統領は懐疑論者を説得できるほど熟練した政治家だ。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

(貼り付け終わり)

(終わり)

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年10月に始まった、パレスティナ紛争、イスラエルによるパレスティナ側への報復攻撃は半年を超えて継続している。その間にパレスティナ側の民間人の死傷者が増加し、その様子が連日世界中で報道される中で、イスラエルによる過剰な報復、この機会を使用して、二国共存による解決(two-state solution)を無効化しようとする動きに対して、批判が高まっている。これまで、イスラエルを無前提、無条件で支援してきたアメリカでも、国内世論はイスラエルに批判的になっていることはこのブログでも既に紹介した。アメリカ全土の大学での抗議活動で逮捕者が出ていることは日本でも報道されている。

 アメリカのジョー・バイデン政権は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権に対して、自制を求めているが、イスラエル側は、アメリカが支援を止めることはないし、アメリカ国内にイスラエル・ロビーと呼ばれる、親イスラエルの強力な組織が複数あるといいうことから、バイデン政権の要請を無視してきた。バイデン大統領はネタニヤフ首相の姿勢に不満を表明してきた。そして、以下のような状況になっている。アメリカはイスラエルへの弾薬の輸送を停止した。そして、ハマスが戦闘停止の提案に賛意を示し、イスラエル側は提案内容に不満を示しながらも、交渉の継続を発表した。

(貼り付けはじめ)

米、イスラエルへの弾薬輸送停止 ハマスとの戦闘開始後初と報道

5/6() 0:33配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/d63cc6d470f4bd6fb499b4dc7b6ed03d097ba3cf

 【ワシントン共同】米ニュースサイト、アクシオスは5日、米国がイスラエルへの弾薬輸送を先週停止したと報じた。複数のイスラエル当局者が明らかにした。昨年107日にパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まって以降、兵器の輸送を停止したのは初めて。

 イスラエル政府は輸送停止に懸念を強めているという。全米の大学ではイスラエルの自衛権を支援するバイデン政権の対応に抗議するデモが続いている。

=====

●「ハマス、ガザ停戦案の受け入れ表明 イスラエルは「要求からかけ離れた内容」」

BBC JAPAN  2024年5月7日

https://www.bbc.com/japanese/articles/c1rv23v8j13o

パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘の一時停止とイスラエル人人質の解放にむけた交渉で、イスラム組織ハマスは6日、カタールとエジプトの仲介役に対し停戦案を受け入れると伝えたことを明らかにした。

ハマス関係者は「(交渉の)ボールは今、イスラエル側のコートにある」と述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの提案は「イスラエルの基本的な要求からかけ離れたもの」だとしつつ、交渉担当者による話し合いは継続されると述べた。

イスラエル国防軍(IDF)がガザ地区南部ラファの東側から避難するよう現地のパレスチナ人に指示をした数時間後に、ハマスは停戦案を受け入れると発表した。

ラファでの作戦では、数万人のガザ市民が影響を受けると考えられている。6日には多くの人がぎゅうぎゅう詰めの車やロバが引く荷車で移動した。

IDFは避難命令を出した後に空爆を実施した。ハマス関係者は「危険なエスカレーション」だとしている。

■停戦案を「承認する」と

ハマスは6日夜に声明を出し、同組織の政治指導者イスマイル・ハニヤ氏がカタールの首相とエジプト情報局の長官に「停戦合意に関する提案を承認する」と伝えたことを明らかにした。

この提案に詳しいパレスチナ側の高官は、条件が満たされれば「敵対的な活動を永久に」終わらせることにハマスが同意したと、BBCに語った。

これは、ハマスが武装闘争の終結を熟考している可能性をうかがわせるものだが、それ以上の詳細は明らかにされなかった。

提案では、停戦は段階的に行われる。第1段階では、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人囚人50人(終身刑の囚人数人が含まれる)の釈放と引き換えに、ハマスの人質となっているイスラエル人女性兵士らを解放することが含まれる。

1段階は42日間かけて実施される。この期間中、IDFはガザ内にとどまる。しかし、戦闘の一時停止が始まってから11日以内に、ガザ中部にあるIDF施設の解体を開始し、ガザを南北に走る主要ルート、サラ・アル・ディン通りや、海岸沿いの道路からIDFは撤退する。

停戦開始から11日後には、家を追われたパレスチナ人のガザ北部への帰還が認められる。

2段階も42日間で、前出のパレスチナ側の高官は、「持続可能な長期的な平穏」とガザ封鎖の完全解除で締めくくられるとしている。

「イスラエルが停戦合意に応じるのか、それともそれを妨害するのか。ボールは今、(イスラエル側の)コートにある」とハマス高官はAFP通信に語った。

■イスラエルの反応

ハマスの声明を受け、ガザではお祝いムードが広がった。

しかし、イスラエル政府関係者の1人はロイター通信に対し、ハマスが受け入れるとした提案は、エジプトが提案した内容が「弱められた」もので、イスラエルが受け入れることのできない「広範囲におよぶ」決定が含まれていると述べた。

そして、「イスラエルが合意を拒否する側であるように見せかけるための策略のようだ」と指摘した。

イスラエルの首相官邸はその後、「ハマスの提案がイスラエル側の基本的な要求からかけ離れていても、イスラエルは交渉の代表団を派遣し、イスラエルが受け入れられる条件のもとで合意に達する可能性を追及する」と声明で述べた。

イスラエルの戦時内閣は同じころ、ラファでの作戦継続を決定した。「人質の解放、ハマスの軍事・統治能力の破壊、そしてガザが将来、イスラエルにとって脅威とならないようにするという、我々の戦争目標を達成するため、ハマスに軍事的圧力をかけるため」だとしている。

■アメリカ、合意実現への努力継続と

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、アメリカはハマスの反応を検討し、「我々のパートナー国と話し合っている」と記者団に述べた。アメリカはカタールやエジプトとともに、停戦交渉の仲介を試みている。

「我々は人質解放の合意がイスラエル国民の最善の利益になると信じ続けている」

「(人質解放は)即時停戦をもたらすだろう。人道的支援の動きも拡大できるようになるだろう。だからこそ、我々は合意に到達するための努力を続けていく」

昨年107日のハマスによるイスラエル奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、250人以上が人質となった。イスラエルは直後に報復攻撃を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、ガザでのイスラエルの軍事作戦でこれまでに34700人以上が殺されたとしている。

11月には、1週間の停戦が実現し、この間にイスラエルの刑務所にいたパレスチナ人囚人約240人と引き換えにハマスの人質105人が解放された。

イスラエルによると、ガザでは依然、128人の人質の行方がわかっていない。

そのうち少なくとも34人は死亡したと推定されている。

(貼り付け終わり)

 アメリカのジョー・バイデン政権としては、ウクライナ問題よりも、パレスティナ問題について優先的に目途をつけたいと考えている。今年11月の大統領選挙を控え、各種世論調査で共和党のドナルド・トランプ前大統領に負けているジョー・バイデンは、まずは民主党支持者を固めたい。民主党支持者はイスラエルへの支援に反対が多い。民主党支持者を固めるには、パレスティナ問題が優先課題だ。また、全米各地の大学での学生たちによる抗議運動もバイデンにとっては脅威だ。彼らが今年夏の民主党大会において、激しい抗議活動を行えば、バイデン陣営と民主党にとっては大きな痛手だ。1968年の民主党大会の例を引くまでもなく、2016年の民主党大会で、ヒラリー・クリントンに反対する若者たちの抗議活動の激しさは記憶に新しい。バイデンとしては党大会までに、パレスティナ問題を何とかしたいところだ。そのために、イスラエル・ロビーの圧力を避けながら、イスラエルに対して、停戦に向けて圧力をかけるだろうと私は書いたが、そのような動きになっている。

 更に言えば、そもそも論として、イスラエルをここまで傲慢にし、増長させて、結果として中東の不安定化を進めたのはアメリカである。アメリカが無条件にイスラエルを支援し続けたことが、イスラエルの傲岸不遜、選民思想丸出しの戦争国家にしてしまった。また、イスラエルの極右派は、アメリカが主導した二国間共存解決を反故にしようとしている。アメリカの面子など、イスラエルは全く気にしない。アメリカはイスラエルに利用され、虚仮にされてきた。

 アメリカの世論も大きく変わろうとしている。無条件のイスラエル支援に対しては疑問の声、反対の声が大きくなっている。そうした声はこれまで「反ユダヤ主義的」として封じ込められてきたが、そのようなレイべリング(ラベリング、labeling)の有効性が小さくなっている。それほどにイスラエルの行動は酷いもので、国際的な孤立を招いている。そして、アメリカに対する反感も募っている。アメリカの対イスラエル政策を見直す時期が来ていると言ってよいだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカが中東の燃え盛る炎に油を注いだ(America Fueled the Fire in the Middle East

-イスラエルは、ますます大きくなる危険の中にあるが、その責任はテヘランよりもワシントンにある。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年4月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/15/middle-east-war-crisis-biden-america-iran-israel/

 

2024年4月1日、テヘランにて、イスラエルによるシリアのイラン領事館への空爆を非難する抗議デモで、アメリカ国旗を燃やすイランの抗議者たち

シリアのダマスカスにあるイランの領事館に対するイスラエルの攻撃に対し、イランが無人機とミサイル攻撃で報復するという決定を下したことは、バイデン政権が中東をいかにひどく誤って扱ってきたかを明らかにしている。ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃する前夜に、この地域は「ここ数十年来で最も静か(quieter than it has been for decades)」だと自らを納得させてきた、アメリカ政府高官たちは、それ以来、悪い状況を、更に悪化させるような対応をしてきた。ドナルド・トランプ、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの各政権も多くの場合失敗している。

2023年10月7日のハマスの残忍な攻撃に対するジョー・バイデン政権の対応には、3つの主な目的があった。第一に、イスラエルへの揺るぎない支持を伝えようとした。レトリック的に支持し、イスラエル政府高官たちと定期的に協議し、ジェノサイドの非難からイスラエルを擁護し、国連安全保障理事会での停戦決議に対して拒否権を行使し、イスラエルに殺傷能力の高い兵器を安定的に供給した。第二に、ワシントンはガザ紛争がエスカレートするのを防ごうとしてきた。最後に、パレスティナの市民への被害を抑え、アメリカのイメージと評判へのダメージを最小限に抑えるため、イスラエルに自制的な行動をとるよう説得してきた。

この政策は、その目的が本質的に矛盾していたために失敗した。イスラエルに無条件の支援を与えることは、イスラエルの指導者たちへのアメリカからの自制の呼びかけに耳を傾ける動機をほとんど与えなかったため、彼らがそれらを無視したのは驚くべきことではない。ガザは破壊され、少なくとも3万3000人のパレスティナ人(1万2000人以上の子供を含む)が死亡し、アメリカ政府当局者たちは、ガザの民間人が飢餓状態に直面していることを認めている。イエメンのフーシ派民兵組織は停戦を要求していると主張し、紅海の船舶を標的にし続けている。イスラエルとヒズボラの間の低レヴェルの紛争は依然としてくすぶっている。そして占領下のヨルダン川西岸では暴力が急増した。そして今、イランは4月1日の総領事館爆破に対して報復としてイスラエルに無人機とミサイル攻撃を開始しており、更に広範な戦争の可能性が高まっている。

アメリカ人はイランが悪の体現者であるということを聞き慣れているため、読者の中には、この問題全てをテヘランのせいにしたくなる人もいるかもしれない。たとえば先週、『ニューヨーク・タイムズ』紙のトップ記事は、イランがヨルダン川西岸地区の不安をあおるために武器を「洪水のように大量に(flooding)」持ち込んでいると報じた。

この見方では、イランは既に炎上している地域にガソリンを注いでいることになる。しかし、この話にはさらに多くの要素があり、そのほとんどはアメリカの実情をあまり良く反映していない。

はっきりさせておきたい。イランは残忍な神権的政権(brutal theocratic regime)によって統治されており、私は同情することはない。しかし、その支配下で暮らし、アメリカの制裁による懲罰に耐えなければならない何百万人ものイラン人には同情する。イランの政権の行動の中には、例えばロシアのウクライナ侵略への支持など、非常に不快なものもある。しかし、ヨルダン川西岸(あるいはガザ地区)に小火器やその他の武器を密輸しようとするその努力は、特に凶悪なことだろうか? また、最近イスラエルが領事館を攻撃し、その過程で2人のイラン人将軍を殺害したことに対して、報復の決定は驚くようなものだろうか?

ジュネーブ条約によれば、「交戦的占領(belligerent occupation)」下にある住民には占領軍に抵抗する権利がある。イスラエルが1967年以降、ヨルダン川西岸と東エルサレムを支配し、70万人以上の不法入植者によってこれらの土地を植民地化し、その過程で何千人ものパレスティナ人を殺害してきたことを考えれば、これが「交戦的占領」であることに疑いようがない。もちろん、抵抗行為には戦争法が適用される。ハマスや他のパレスティナ人グループは、イスラエルの民間人を攻撃する際に戦争法に違反している。しかし、占領に抵抗することは正当であり、苦境にある住民を助けることは必ずしも間違っている訳ではない。たとえイランがパレスティナの大義に対する深い関与からではなく、独自の理由から支援を行ったとしても、それは間違っていない。

同様に、イスラエルが自国の領事館を爆撃し、イランの将軍2人を殺害した後に報復するというイランの決定も、特にイランが戦争を拡大する意図がないと繰り返し表明していることを考えると、生来の攻撃性(innate aggressiveness)の証拠とは言えない。実際、その報復はイスラエルにかなりの警告を与える方法で行われ、イラン政府がこれ以上エスカレーションするつもりはないことを示すように設計されていたようだ。アメリカとイスラエルの政府当局者たちが武力行使の際によく言うように、イランは単に「抑止力を回復(restore deterrence)」しようとしているだけだ。

忘れてはならないのは、アメリカは何十年もの間、中東に兵器を「氾濫(flooding)」させてきたということだ。イスラエルには毎年何十億ドルもの高度な軍備を提供し、アメリカの支援は無条件であると繰り返し保証している。

イスラエルがガザ地区の民間人を爆撃し飢餓に陥れても、アメリカからの支持は揺らいでいない。イスラエルが最近、アントニー・ブリンケン米国務長官の訪問を歓迎し、ヨルダン川西岸地区における、1993年以来最大規模のパレスティナ人所有の土地の没収を発表したときも、その支持は揺るがなかった。エクアドルが最近キトのメキシコ大使館を襲撃したことを非難しているときでさえ、イスラエルがイランの領事館を爆撃したとき、ワシントンは何の動きも起こさなかった。それどころか、国防総省の高官たちは支持を示すためにエルサレムに向かい、ジョー・バイデン大統領はイスラエルへの関与が「鉄壁(ironclad)」であることを強調した。イスラエルの高官たちが、アメリカからの忠告を無視できると考えるのは不思議だろうか?

権力が抑制されていない国家はそれを濫用する傾向があり、イスラエルも例外ではない。イスラエルはパレスティナ人よりもはるかに強力であり、更に言えばイランよりも有能であるため、パレスティナに対して罰を受けずに行動することができ、実際にそうしている。数十年にわたるアメリカの寛大かつ無条件の支援により、イスラエルはやりたいことを何でもできるようになり、それがイスラエルの政治とパレスティナ人に対する行動が時間の経過とともにますます過激になる1つの要因となった。

第一次インティファーダ[First Intifada](1987-1993年)のように、パレスティナ人が効果的な抵抗を動員できるようになったのは珍しい機会であった。イツハク・ラビン元首相のようなイスラエルの指導者たちは、妥協の必要性を認め、和平を試みることを余儀なくされた。残念ながら、イスラエルは非常に強く、パレスティナ人は非常に弱く、アメリカの調停者はイスラエルに一方的に有利だったため、ラビンの後継者は誰もパレスティナ人が受け入れられるような取引を提示しようとしなかった。

イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸していることにまだ憤慨しているのなら、もし状況が逆だったらどう思うかを自問してほしい。エジプト、ヨルダン、シリアが1967年の第三次中東戦争に勝利し、何百万人ものイスラエル人を脱出させたとしよう。勝利したアラブ諸国がその後、パレスティナ人が「帰還権(right of return)」を行使し、イスラエル・パレスチナの一部または全部に独自の国家を樹立することを許可することを決定したとする。加えて、100万人ほどのイスラエル系ユダヤ人が、ガザ地区のような狭い飛び地に閉じこもる無国籍難民(stateless refugees)になってしまったとする。そして、元イルグン(Irgun)の戦士や他のユダヤ人強硬派が抵抗運動を組織し、その飛び地を支配下に置き、新しいパレスティナ国家の承認を拒否したとする。更に、彼らは世界中の同調支持者から支援を得て、飛び地への武器の密輸を開始し、その武器を使って近隣の入植地や最近建国されたパレスティナ国家の町を攻撃した。そして、そのパレスティナ国家が、飛び地を封鎖し爆撃することで応戦し、何千人もの民間人の死者を出したとする。

こうした状況を踏まえると、アメリカ政府はどちらの側を支持すると考えるか? 実際、アメリカはこのような状況の出現を許すだろうか? 答えは明白であり、アメリカがこの紛争に一方的に取り組んでいることを雄弁に物語っている。

このような悲劇的な皮肉は、イスラエルを批判から守り、次から次へとアメリカの歴代政権に、たとえ何をするとしてもイスラエルを支持するよう圧力をかけることに最も熱心だったアメリカ国内の個人や組織が、せっかく熱心に支援しても、実際にはイスラエルに多大な損害を与えてきた。

過去50年間、「特別な関係(special relationship)」がどこにつながってきたかを考えてみよう。二国家間解決(two-state solution)は失敗し、パレスティナ人の抱える問題は将来も未解決のままである。その理由の大部分は、ロビー活動によって、歴代の米大統領がイスラエルに意味のある圧力をかけることができなくなったからである。1982年にイスラエルが行った無策のままのレバノン侵攻(ヨルダン川西岸地区をイスラエルの支配下に置くという愚かな計画の一環)は、ヒズボラの出現につながり、ヒズボラは現在イスラエルを北から脅かしている。ベンヤミン・ネタニヤフ首相をはじめとするイスラエル政府高官たちは、パレスティナ自治政府を弱体化させ、ハマスへの密かな支援によって二国家解決への進展を阻止しようとし、2023年10月7日の悲劇を招いた。イスラエルの国内政治はアメリカ以上に偏向しており(これはある意味当然だが)、ロビーの大半のグループがことあるごとに擁護しているガザでの行動は、イスラエルの孤立国家(pariah state)への道を助長している。多くのユダヤ人を含む若いアメリカ人のイスラエルへの支持率は低下している。

この不幸な状況のおかげで、イランはパレスティナの大義を擁護し、核兵器保有に近づき、イランを孤立させようとするアメリカの努力を妨害することができた。もしアメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)とその盟友たちが自らを省みることができるのなら、自分たちがイスラエルに支援してきたことに愕然とするだろう。

対照的に、イスラエルの行動の一部を批判してきた私たち(反ユダヤ主義者、ユダヤ人嫌い、あるいはそれ以上の汚名を着せられるだけだった)は、実際には、アメリカにとってもイスラエルにとっても同様に良かったであろう政策を推奨してきた。私たちの助言に従っていれば、イスラエルは今日より安全になり、何万人ものパレスティナ人がまだ生きていて、イランは核開発から遠ざかり、中東はほぼ確実にもっと平穏になり、アメリカの人権と規則に基づく秩序の擁護者(principled defender of human rights and a rules-based order)としての評判も回復しただろう。最後に、もしこれらの土地が実行可能なパレスティナ国家の一部であれば、イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸する理由はほとんどないだろうし、イランの指導者たちが独自の核抑止力を持っていればより安全になるのではないかと熟考する理由も少なくなるだろう。

しかし、中東に対するアメリカの政策にもっと根本的な変化が起こらない限り、こうした希望に満ちた可能性は依然として手の届かないものであり、私たちをここに導いた過ちは繰り返される可能性が高い。

スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願い申し上げます。

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 専門家ではないので不正確という批判は承知しつつも、どうしても言いたいことがある。地政学的を地球の表面に例えてみると、現在は、プレートがぐっと下に入って大きな地殻変動が起きているようなものだ。西側(ザ・ウエスト)、欧米による600年の支配が終わり、西側以外の国々(ザ・レスト)が台頭しつつある。世界の大きな構造変化が起きている。大きなプレートの境目で大地震が起きる。現在、地政学上の「大地震」が起きているのは、ウクライナとイスラエル(パレスティナ)である。これは、大きく見れば、「西側諸国(ザ・ウエスト、the West)対西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)」の対立によって引き起こされている。そして、現在は平穏を保っているが、「地震」が起きるのではないかと心配されているのが、インド太平洋である。具体的には、米中対立がどのようなことになるか、ということである。私たちが住むインド太平洋地域で「大地震」、つまり、戦争を起こしてはいけない。それは私たちのためだけではなく、世界のためだ。

 インド太平洋を平穏のままにしておくことは、しかしながら、難しい。それは、アメリカが自国の衰退を受け入れられず、世界覇権国としての地位から、少しずつ、静かに去るという決断ができていないからだ。ジョー・バイデンが2期目を迎えるとなると、開戦直前の日本帝国海軍のように、「今やらねば、じり貧になって戦えなくなる」ということで、中国に大打撃を与えようとする輩が何をするか分からない。歴史の流れを人間の力で逆転させることは難しい。結局、「ドカ貧」になるだろうが、その過程で大きな犠牲や損失が出て、世界は大きく停滞することになる。ドナルド・トランプが今年秋の大統領選挙で勝利することが望ましいが、現状では、「ジョー・バイデンを勝たせる」という主流派・エスタブリッシュメント派の意思が強固である。バイデンが勝利すれば、アメリカは騒乱状態になるだろう。それが内戦まで行きつくかは分からないが、その危険性、可能性は高まっていると言わざるを得ない。

 地震を食い止めることができないならば、それに備えるということも考えておかねばならない。ドルの信用失墜による紙くず化、アメリカ国債の紙くず化ということも考えておくべきだろう。

(貼り付けはじめ)

地政学的ハードランディングの可能性は極めて高い(A Geopolitical Hard Landing Is All Too Possible

介入すべき時はいまだ。

ジャレッド・コーエン筆

2024年2月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/21/geopolitical-hard-landing-economics-election-china/

市場には良いニューズもあるが、私たちはまだ危機を脱した訳ではない。つまり、エコノミストのほとんどは2024年にソフトランディング(soft landing)すると予測している。しかし、地政学的なハードランディング(hard landing)がその邪魔になるかもしれない。

マクロ経済の課題に対処するためのツールとプロセスが存在する。インフレが高すぎる場合、連邦準備制度は金融政策と金利を調整し、多くの場合、イングランド銀行やヨーロッパ中央銀行などの同等の機関と調整する。結果は保証されておらず、一律でもない。経済学者、投資家、政策立案者たちは政策とその結果について議論する。しかし、金利の上昇によって景気が減速し、不況を引き起こすことなく、インフレ率が低下すれば、ソフトランディングすることになる。インフレ率はピークから低下し(それでも目標の2%は上回っているが)、2024年1月のアメリカの新規雇用数は35万3000人で、国際通貨基金(IMF)は世界経済の成長予測を最大3.1%に修正していることから、これが最終的に達成される成果のように見える。

地政学のシナリオは、悲惨な科学よりもはるかに悲観的な分野となっている。中東やヨーロッパでの戦争、インド太平洋での緊張、そして「ポスト冷戦時代の終わり(end of the post-Cold War era)」が他に何をもたらすのかという深い疑問がある。地政学的ハードランディングは、アメリカ主導の国際システムを圧倒しかねない、複数の、関連し、拡大する紛争や危機を伴うだろう。その結果、パワーバランス(balance of power)が変化し、世界市場が根底から覆される可能性がある。

地政学的に何が起こるかは、世界市場にとっても、私たちの生活にとっても重要である。今日の地政学的課題は一過性(transitory)のものではなく、今後も続く。政治や資源の現実、恐怖、名誉、利害といった要素、主権国家としての優先順位や利害を考慮した、時宜に敵した介入が必要なのだ。あまりにタカ派的なアプローチは、過剰拡張(overreach)と反撃(blowback)を招きかねない。だからと言って、あまりにハト派的なアプローチは、侵略(aggression)とエスカレーション(escalation)を招く。実際、2024年にアメリカとそのパートナーたちがトレードオフを正しく理解できなければ、地政学的なハードランディングがますます現実味を帯びてくる。

今日、世界は過去数十年間見られなかったような連鎖的な紛争(cascading conflicts)に直面している。2021年のアフガニスタンからの混乱した撤退の後、2022年にはロシアによるウクライナへの本格的な侵攻を抑止力は防ぐことができなかった。2023年には、ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃や、イランが支援する中東全域での地域的代理攻撃(Iranian-backed regional proxy attacks)を、抑止力(deterrence)で防ぐこともできなかった。世界で最も人口が多く、目まぐるしく動く地域であるインド太平洋でも、抑止力が機能しなくなる日が来るのだろうか? こうした連鎖はどこで止まるのだろうか?

ユーラシア全土で状況は改善されていない。ロシアから身を守る全面戦争が始まって2年が経ち、ウクライナ人は現在領土の80%以上を支配している。しかし、現場の状況は依然脆弱で、ワシントンの政治的行き詰まり(political gridlock)がこうした成果の逆転を招く可能性がある。つい最近、ウクライナが支配するアヴディーウカの町がロシアの進出により陥落した。連邦上院はウクライナ、イスラエル、台湾への950億ドルの支援策を70対29の賛成多数で可決したばかりだが、その多くはアメリカでの枯渇した武器供給の補充に費やされることになるが、連邦下院での法案の行方は不透明だ。アメリカは既存の法律の下でできる、キエフに対する最後の武器供与(drawdowns)を行った。また、ヨーロッパ連合加盟27カ国は、540億ドルのウクライナ支援パッケージに合意したが、強固な産業基盤を持たず、3月までに100万発の砲弾供与という約束を達成するのに十分な砲弾を生産できない。一方、ウクライナでは弾薬の配給が行われており、今年後半のロシア大統領選挙後(驚くべきことが起きるとは予想されていない)、ウラジーミル・プーティン大統領は大胆にも大規模な動員(larger mobilization)を命じる可能性がある。

市場は現在のロシア・ウクライナ戦争をほぼ織り込み済み(largely priced)だ。しかし、その長期的な意義や、この戦争がヨーロッパにとってどのような意味を持ちうるかについては、説明されていないと言えるだろう。ロシアがフィンランドとエストニアについて精査している中、ボリス・ピストリウス独国防相は、今後5年から8年の間にモスクワが「NATO加盟国を攻撃する可能性すらある(even attack a NATO country)」ことを考慮する必要があると述べ、それが意味することを詳しく説明した。

中東では、10月7日にハマスがイスラエルをテロ攻撃し、その後は紛争になっている。この紛争は中東地域にとって世界規模の対テロ戦争(Global War on Terror)以来最大の地政学的な試練となっている。イスラエルはハマス壊滅作戦を継続しているが、一方で、イランが支援している代理勢力(Iranian-backed proxies)が少なくとも6つの戦域で先頭をエスカレートさせている。世界経済と、バルバリア海賊(訳者註:北アフリカの各都市を拠点とした海賊)の時代から国際通商を守ってきたアメリカ海軍は、イエメンのフーシ派の攻撃に晒されている。全面的な地域戦争(full-scale regional wars)は想定されていない可能性が高いが、アメリカとイランが直接対立する事態が激化すれば、状況はすぐに変わる可能性がある。それがどのようにして起こるかを理解するのは難しいことではなく、地域で最長期間統治を行っている、最高政治指導者である85歳のアリ・ハメネイ師が統治するイランが核兵器の製造に成功すれば、混乱が加速する可能性がある。

しかし、ワシントンやウォール街、そして世界中の政治・金融資本が最も懸念しているのは、インド太平洋地域である。地政学的な理由から、中国はアメリカだけでなくオーストラリア、日本、リトアニア、韓国などの国々に対する経済的禁輸措置と相まって、「二重循環(dual circulation)」経済モデルと国内での自立(self-reliance)強化を推進している。同時に、ドナルド・トランプ政権下で始まった関税の大半はジョー・バイデン大統領の下でも継続されており、アメリカ主導の制限によって中国への半導体輸出は数十億ドル減少した。マイクロエレクトロニクスから医薬品、重要鉱物、レアアースに至るまで、国家安全保障上重要なサプライチェインのチョークポイントに焦点が当てられることで、世界経済に摩擦が生じ、それが他の分野でのリスクや機会を生み出している。

最悪のシナリオは、中国と、台湾やフィリピンといった近隣諸国との軍事衝突であり、アメリカがこれを支援した場合、計り知れない人的損失と過去数世代で最大の経済的ショックがもたらされる可能性がある。ブルームバーグ・エコノミクスは最近、台湾をめぐって中華人民共和国と戦争が起きた場合のコストを10兆ドルと見積もった。

歴史的に見れば、1973年のアラブ諸国の石油禁輸やロシアのウクライナ戦争のようなショックは、世界貿易を混乱させたことはあっても根底から覆すことはなかった。好戦的な北朝鮮やヴェネズエラとガイアナの国境紛争など、毎日の見出しには登場しない危機はもちろんのこと、ユーラシア大陸の3つの主要地域全てにわたって、深刻かつ密接な課題が山積している。

私たちが知っているように、世界は信頼できる大国であるアメリカのリーダーシップを引き継いでいる。アメリカは同盟諸国やパートナーと協力して、アメリカ人だけでなく世界中の人々に利益をもたらす国際安全保障と経済構造を構築し、支援してきた。もう1つの前提は、このアメリカ主導の国際秩序を再構築する意図と能力を他国が持たないだろうというものだった。アメリカのリーダーシップへの挑戦と、中国、イラン、ロシア、加えて北朝鮮の間の緊密化を考えると、どちらの想定も当然のこととは考えられない。

前提は変わったかもしれないが、経済学と同様、地政学(geopolitics)においても、避けられないものはない。昨年、予測者の一部は2023年に景気後退が起こる可能性は100%だと述べたが、それは間違いだった。ただし、ソフトランディングは単独で起こるものではなく、全分野にわたるリーダーシップが必要だ。

ヨーロッパの戦争は1年前と同じ状況ではない。 2023年のウクライナの反撃は成功しなかった。キエフは防御に回っており、2024年に領土の多くを取り戻す可能性は低い。ロシアは前進を続けており、現在GDPの6%を軍事費に費やしており、2021年の2.7%から増加しており、イランと北朝鮮からの軍事品によって支えられている。一方、グーグルの元最高経営責任者(CEO)エリック・シュミットが警告したように、モスクワはキエフとの「イノベーション競争に追いついており(caught up in the innovation contest)」、オーラン10やランセットなどのドローンを国内生産している。そして、アジア市場に軸足を移した後、ロシアは西側諸国の制裁を緩和し、IMFは最近ロシアの経済成長予測を2.6%に引き上げた。

後退を味わったとはいえ、ウクライナに有利な要因はいくつかある。アメリカ人が1人も参戦せず、アメリカの年間国防費の5%を費やし、アメリカの情報諜報機関は現在、モスクワは2022年の侵攻軍の90%を失ったと見積もっている。ウクライナは黒海の戦いに勝利しており、オデッサからの穀物回廊は昨年上半期に3300万トン以上の穀物や食料品に開放され、その3分の2は発展途上国へ運ばれた。ウクライナはクリミア周辺を含め、ロシア支配下のインフラを標的にしている。キエフは防衛産業基盤の拡大も図っており、30カ国から252社が参加する防衛産業フォーラムを立ち上げている。

ヨーロッパは自国の防衛インフラ強化に遅れをとってきたが、勢いはついている。フィンランド、リトアニア、スウェーデン、ポーランドといった対ロシアの最前線の民主政体国家が牽引し、2022年のヨーロッパの国防支出は6%増加した。それでも、NATO同盟のほとんどの加盟国は、GDPの2%を国防費に充てるという、2014年のウェールズ公約を達成できておらず、GDPに占めるアメリカの国防費も、今後10年間で、2023年の3.1%から2033年には2.8%まで減少すると予測されている。ウクライナは、欧米諸国の援助なしに、国土がその28倍、人口が3倍以上の国を抑えることはできない。同様に、抑止力の低下によってヨーロッパの、いや世界の安全保障を維持することはできない。

中東では今日、ガザ地区の「その後(day after)」や、紅海でのフーシ派の攻撃、イラクでのイランの後ろ盾による代理攻撃がいつ、どのように収まるのかが主に問われている。テヘランは不安定と混乱という新たな常態を作り出しており、停戦の継続を望む動機はほとんどない。かつてイエメンでは比較的無名のシーア派の代理集団だったフーシ派は、今やアラブ世界の英雄だ。

イランの短期的な戦略的優位は、根本的に変化した情報環境によって強化されている。戦争の「ソーシャルメディア化(social-mediafication)」とは、あらゆる人気ソーシャルメディアプラットフォームにアップロードされる映像の時間が、戦争の秒数よりも多いことを意味する。911を引き起こしたアルカイダのテロリストの多くは、1990年代にボスニアの戦争から生まれたアルゴリズム以前のコンテンツを見て過激化した。今日のAIを駆使したアルゴリズムは、そのリスクを更に高めている。

しかし、ハイパーターゲットされたオンライン過激化(hyper-targeted online radicalization)によって悪化した、古き悪しき時代に戻る必要はない。アブラハム合意は維持されている。ペルシア湾岸のスンニ派諸国は、サウジアラビアの「ビジョン2030()Vision 2030」のような変革プロジェクトに注力し、地政学的な影響をできるだけ受けずに経済発展を遂げようとしている。紅海で何が起きているのかにもかかわらず、国際ビジネス界との関わりはほとんど途切れていない。カタールもサウジアラビアと同様だ。

 

 

 

 

この地域を瀬戸際から引き戻すための2つの要因は、イランに対する抑止力の回復と、イスラエルと湾岸諸国の統合である。つまり、イランとその「抵抗軸(axis of resistance)」が今日の混乱の原因であることを認識することである。そのためには、アメリカは、アラブ首長国連邦やサウジアラビアのようなパートナーと協力する必要がある。サウジアラビアはワシントンと国防協議を再開し、高官たちはイスラエルとの国交正常化に「絶対的に(absolutely)」関心があると繰り返し述べている。

南シナ海と台湾海峡は危険であるが、ありがたいことに平和である。2023年11月に行われた中国の習近平国家主席とジョー・バイデン米大統領の会談では、サンフランシスコから良いニューズが伝えられた。2024年1月13日に行われた台湾の選挙に対する中国の反応は、多くの人が予想していたよりも抑制的だった。あとは、5月に台湾総統に就任する頼清徳(ウイリアム・ライ)の就任演説に北京がどう反応するかにかかっている。

しかし、台湾は今日の戦略的な焦点ではあるが、潜在的なホットスポット(hot spots)は台湾だけではない。中国は14カ国と国境を接しており、他のどの国よりも多くの国土を隣国と接している。北京は国境を接するほぼ全ての国と領土問題を抱えており、これらの紛争にはそれぞれリスクが伴う。

それでも、インド太平洋の平和を維持することは可能である。中国の攻撃的な姿勢は、オーストラリア、インド、日本、フィリピン、韓国を大きく変化させ、安定のためのミニラテラル連合(minilateral coalitions for stability)へと導いている。クワッド(Quad)、AUKUS、韓国や日本との首脳会談、フィリピンとの基地協定は、アメリカがこれらの国々が互いに協力を強化しているいくつかの例であり、日本は、アメリカとともに、2027年までに自衛隊を世界第3位の規模にする可能性のある防衛政策の大転換を約束した。

しかし、これら全てに欠けているものがある。それは、ワシントンはまだこの地域への経済的関与の戦略を持っていないということだ。北京が支持する地域包括的経済連携(Beijing-backed Regional Comprehensive Economic Partnership)のような協定が拡大する一方で、バイデン政権のインド太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic FrameworkIPEF)は停滞しており、ホワイトハウスはIPEFを「貿易協定ではない(not a trade agreement)」と説明しているが、IPEFは環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific PartnershipTTP)に代わるものではない。ワシントンの経済政策としては、アメリカが遠い国ではなく、信頼できる経済パートナーであることを伝えるようにすべきである。NATO同盟の75周年が近づくにつれ、指導者たちは、平和と繁栄がどのような挑戦を受けようとも、それを維持することに美辞麗句でも実際上でも関与する必要がある。

これらの地経学的な力は、世界中の人々にとって懸念事項だ。ただし、それらは公共部門だけの領域ではない。私たちを経済のソフトランディングに導く同じ市場力学の多くは、世界情勢において資産となる可能性がある。グローバル企業は戦争中の世界で成功することはできず、アメリカとその同盟諸国およびパートナー諸国は、民間部門によって可能になる成長と技術革新がなければ平和を維持することはできない。

この力学が最も顕著に表れているのは、エネルギーと新興テクノロジーの2つの分野である。新しい持続可能なエネルギー源を開発することは、地政学的にも経済的にも可能な最善の一手であり、アメリカが2018年以降世界トップの原油生産国となり、昨年以降世界トップの液化天然ガス輸出国となったのは、民間セクター主導の技術革新によるところが大きい。今後数年間で、アメリカが主導している生成人工知能(generative artificial intelligence)のようなテクノロジーは、地政学におけるワイルドカードとライフラインとなり、テクノロジー企業はより大きな地政学的利害関係者(stakeholders)となるだろう。このような領域は、深く開かれた資本市場、法の支配、財産権を持つ民主政体社会が、正統性(legitimacy)、安定性(stability)、成長(growth)の源泉となる優位性(advantages)を持つ場所である。

世界人口の60%が投票に向かう今年、こうした利点を生かすことが必要だ。何十億もの人々が指導者に投票することは、フリーダム・ハウスなどの団体によって世界的に記録された民主政治体制の長年の衰退の後では歓迎すべきニューズである。しかし、世界中の政府が変わることで、今年の終わりは、始まりとは大きく異なるものになるかもしれない。

特に、2024年のアメリカ大統領選は、他国にとって地政学的に最も重要な問題の1つであることは言うまでもないが、ここ数十年で最も重大な意味を持つかもしれない。有権者にとって外交政策が最優先されることはめったにないが、アメリカ国民の選択は世界情勢にとって経済以上に大きな影響を及ぼすかもしれない。バイデン、トランプどちらの政権が採用する貿易・産業政策も、国内では一部のセクターを強化するかもしれないが、海外ではパートナー諸国を含めて反発を招くかもしれない。世界におけるアメリカの役割に対する新たなアプローチは、友好国を安心させることもあれば、敵対勢力を煽ることもある。そして、どの指導者もバイデンかトランプのどちらかの結果に賭けて、リスクヘッジすることで準備を進めている。

2023年、私たちは経済のハードランディングが何を意味するかを理解し、それを防ぐために時宜を得た慎重な行動を取った。2024年には、地政学的なハードランディングが起こりうることを認識し、社会のあらゆる部門が、この瞬間に必要とされる真剣さをもって対応する時である。

※ジャレッド・コーエン:ゴールドマンサックス社国際問題担当部長・応用技術革新部門共同責任者。ゴールドマンサックス社経営委員会パートナー・委員。

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ウクライナ戦争は長期化し、イスラエルとハマスの紛争も半年を超えた。どちらも民間人の犠牲者が多く出ている。どちらも停戦が望ましい状況なのに、世界はまだ戦いを続けさせようとしている。アメリカ連邦議会は、ウクライナとイスラエルの支援を含むパッケージ法案を可決成立させ、ジョー・バイデン大統領も署名して、法律として発効することになった。同時期に、日本の岸田文雄首相が訪米し、米連邦議事堂での演説と言う、属国の指導者に対しては、最高の栄誉を与えられた。岸田首相の米連邦議事堂での演説は以下のように報じられた。

(貼り付けはじめ)

●「米議員らが首相演説を高評価 ウクライナ支援訴え大きな拍手浴びる」

毎日新聞 2024/4/12 10:40(最終更新 4/12 15:35

https://mainichi.jp/articles/20240412/k00/00m/030/070000c

 国賓待遇で訪米中の岸田文雄首相は11日、連邦議会の上下両院合同会議で演説した。英語による約34分間のスピーチで、拍手を浴びたのは48回以上。ロシアの侵攻を受けるウクライナの支援法案の審議が共和党の一部の反対で難航する中、米国の孤立主義に警鐘を鳴らし、米議員から「重要なメッセージを届けた」と高く評価された。

 「日本はこれからもウクライナと共にある」。米国のウクライナ支援の重要性を訴えた後、首相が日本の姿勢を強調すると、大多数の議員が立ち上がり、この日一番の拍手を送った。

 米議会では、民主党のバイデン政権が求めるウクライナ支援法案の審議が停滞している。上院は既に通過し、下院でも多数の議員が賛意を示している。しかし、法案を採決するかどうかを判断する共和党のジョンソン下院議長は、党内の保守強硬派の反発を懸念し、態度を決めかねている。採決すれば可決は確実とみられるが、ウクライナ支援の継続に懐疑的な保守強硬派が議長解任の動きを見せているからだ。

 首相は11日の演説で、孤立主義的なトランプ前大統領や下院の保守強硬派を念頭に「一部の米国民の心の内で、世界における米国のあるべき役割に自己疑念を持たれていると感じる」と踏み込んだ。それまで拍手が相次いでいた議場では「自己疑念」という言葉が出た後に雰囲気がやや重くなったが、首相は「米国のリーダーシップは必要不可欠だ」「米国は独りではない。日本は米国と共にある」と鼓舞した。

 取材に応じた議員らは演説を歓迎した。将来の大統領候補に名前が挙がるクロブシャー上院議員(民主党)は「首相がウクライナへの行動を求めると、実質的に(議員)全員が支持した。非常に重要なことだった」と強調。上院軍事委員会の筆頭委員であるウィッカー上院議員(共和党)も「インド太平洋地域にとっても、民主主義国のウクライナを支援するのは重要だとの訴えは非常に正当なものだ。下院がウクライナ支援に向け、前進することを願う」と述べた。

 バロン下院議員(民主党)は「孤立主義に関する訴えは素晴らしいものだった」と評価。キャピト上院議員(共和党)も「米国の努力を評価した上で、米国が独りではないと伝えてくれた。ウクライナに関するメッセージも響いた」と語った。一方、米メディアによると、ウクライナ支援に反対し、議長解任の動きを見せている保守強硬派のグリーン下院議員(共和党)は、首相がウクライナに言及した際には拍手せず、手元の携帯電話を見ていたという。【ワシントン秋山信一】

(貼り付け終わり)

 岸田文雄首相の訪米の後に、ウクライナ支援とイスラエル支援のパッケージ法案が可決した。昨年の11月から、ジョー・バイデン大統領がいくら求めても、連邦下院で過半数を握る共和党はウクライナ支援に反対してきた。世論調査を見ても、ウクライナ支援については、アメリカ国民の過半数が反対している、「もう十分にしてやったではないか」と考えているということはこのブログでも紹介したし、『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いている。岸田首相の訪米がきっかけになったかのように、急に、共和党と民主党の主流派、エスタブリッシュメント派が合同して、賛成多数で一気に成立してしまった。共和党の議員たちは有権者、世論を裏切ったことになる。下の記事にある通り、選挙区に帰って有権者たちから批判を浴びるだろう。そして、ジョンソン議長はこの法案可決と引き換えにして、議長の地位から追われることも考えられる。しかし、アメリカのエスタブリッシュメント派に対する功績は大であり、これから安泰であろう。しかし、アメリカ政府もお金が厳しい中で、すんなりと成立してしまったのはどうしてだろうか。ここで、私は次の3つの要素を挙げたいと思う。落語には、お客から3つの題をもらって、短時間で(時には数日間で)、落ちのある落語を作るということがある。これは三題噺(さんだいばなし)と呼ばれる。「芝浜」という冬になると高座にかかる、有名な噺があるが、これも元々は三題噺から生まれた。

さて、私が挙げたいのは「ウクライナ支援、岸田訪米、円安ドル高(円を売ってドルを買う)」という三題だ。そして、この噺で出てくる落ち(結論)は、「日本がアメリカのウクライナ支援分を肩代わりする、そのためにドルが必要になってドルを買っている」ということになると思う。そんな荒唐無稽な、と思うかもしれないし、日本政府がドルを買う資金源は何だ、と言われるだろう。日本の予算には、一般会計と特別会計がある。一般会計は私たちがよく耳にするもので、毎年3月末に国会で成立する、20204年度は約112兆円だ。特別会計はその3倍以上の460兆円規模である。こちらはあまり注目されない。特別会計から裏金をねん出する、もしくは外国為替関係で操作をする。そうやって、ウクライナ支援分である600億ドル(約9兆3000億円)を作り出すことになる。岸田首相訪米では、日米防衛協力ということで、自衛隊のアメリカ軍の下請け化、二軍化が話し合われたが、それは表向きのことで、裏では、この600億ドル分のことが「命令」されたと考えるべきだ。「アメリカと共にある、ウクライナと共にある、と言ったんだから、誠意を見せろ」と、チンピラまがいの恫喝で金を出させられたのだろうと思う。これが属国の役割だと言えばその通りだが、日本もいつまでもATMをやれるということはない。金を出すからには、こちらにも何か見返りになることをと言えるようになるべきだが、アメリカの衰退が目に見えるようになっている時期、そろそろその準備を始める頃だと考える。

(貼り付けはじめ)

連邦下院が対外援助法案を可決、ウクライナとイスラエルに援助を送る(House passes foreign aid bill, sending help to Ukraine and Israel

-この法案は来週連邦上院に提出され、ジョー・バイデン大統領も支持を表明している。

マリアナ・ソトマイヤー、メーガン・ヴァスケス筆

2024年4月20日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/politics/2024/04/20/house-vote-ukraine-israel-aid-johnson-2/

連邦下院は土曜日、世界的な脅威の中で外国の同盟諸国を支援するため、950億ドル(約14兆7000億円)規模の大規模な支援策を可決した。マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は、極右勢力が今回の可決によって彼を追放すると脅しているが、世界におけるアメリカの役割に対する幅広い支持を示した。

採決直後、ジョンソン議長がウクライナ支援を前進させた場合、議長の座から追い出すと公約していたマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は行動を起こさなかった。グリーン議員は記者団に対し、同僚議員たちが今週休会中に有権者からの反発に直面し、それから、ワシントンに戻ってから議長追放の取り組みに加わることを検討してほしいと語った。

連邦上院は来週初めに対外援助策を審議し、バイデン大統領が署名する予定になっている。

バイデンは土曜日の採決後の声明で、連邦下院が「歴史の呼びかけに応え、私が何カ月もかけて確保しようと闘ってきた、緊急に必要とされる国家安全保障法案を可決するために団結した」と評価した。

連邦議場では「ウクライナ!」の大合唱と青と黄色の旗が振られ、出席した民主党所属の連邦下院議員たちと少数派の共和党議員たちが、数カ月に及ぶ法制上の行き詰まりを打破し、ロシアとの戦争に巻き込まれたウクライナへの600億ドル(約9兆3000億円)の援助を承認した。採決は311対112となり、反対したのは共和党の保守派ばかりだった。

米国防総省が、ウクライナにとって最大の軍事的支援者であるアメリカからの援助がなければ、ウクライナは着々とロシア軍に更に多くの陣地を譲り、死傷者の数をさらに増やすという、驚異的な状況に直面するだろうと警告しているため、ウクライナへの資金はロシアとの戦争において、ウクライナにとって重要な岐路にある。また、ジョンソン議長にとっては、自身の職が脅かされているにもかかわらず、優先度の高い法案の可決に向けて、連邦下院共和党主流派と民主党の連合をリードし、大きな勝利を得た。

土曜日の民主党議員の会合中、ある議員は、民主党の支持によって政府への資金提供が可能になり、外国の脅威を監視するアメリカのスパイ機関の再認可が可能になったことを踏まえると、民主党が事実上過半数を支配していると誇らしげに叫んだ。

「連邦下院民主党はこの機会に立ち上がり、ジョー・バイデン大統領もこの機会に立ち上がり、マイク・ジョンソン議長率いる伝統的保守派もこの機会に立ち上がりました」と民主党のハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)院内総務は高らかに宣言した。

ウクライナ支援の可決は、ドナルド・トランプ前大統領への大きな反撃でもある。トランプは長年ウクライナを批判する一方で、ロシアの指導者ウラジミール・プーティンに繰り返し同調し、既に占領した土地をロシアに保持させることで戦争を解決すると側近たちに語ってきた。トランプはウクライナの援助を融資に変えることを推し進め、共和党は土曜日の法案に融資の要件を盛り込むよう促した。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、「民主、共和両党、そしてマイク・ジョンソン連邦下院議長個人に対し、歴史を正しい方向に導いてくれた決定に“感謝する”」とXに記した。

ウクライナ問題で問題解決に向けて動いてきたジョンソン議長は、「法案への批判者たち(critics of the legislation)」がいたにもかかわらず、超党派で外国の同盟諸国への資金提供を進める決定を下したことに開き直った。

ジョンソン議長は、「これは完璧な法律ではない。政府が分裂し、様々な意見が存在する時代には、完璧な法案が可決される保証される訳ではない」とジョンソン議長は語った。

ミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務(ケンタッキー州選出、共和党)は、法案可決を祝し、「連邦議会は、同盟とパートナーシップの強さ、公約の信頼性、そしてアメリカを守り侵略を抑止するための軍隊の能力を高めるために不可欠なこの投資がついに前進した」と述べた。

連邦下院はまた、イスラエルへの260億ドル(約4兆円)の資金拠出を圧倒的多数で可決した。その中には、90億ドル(約1兆3500億円)の人道支援が含まれ、その一部はガザ地区に割り当てられる。イスラエルが先週末、イランが発射したミサイルと無人機への報復としてイランを攻撃した数日後にこの法案は可決した。

共和党所属の連邦下院議員21名がこの法案に反対し、民主党議員37名に加わったが、その多くは、ガザ地区への人道支援が含まれていたにもかかわらず、同地域に支援を提供できる国連機関への資金を剥奪するという理由でこの法案に反対票を投じた。 10月7日のハマスによるイスラエルへの越境攻撃に国連機関のガザ地区職員1万2000人のうち12人が参加したことがアメリカ情報諜報機関とイスラエルによって判明したことを受け、アメリカは国連救済事業機関(U.N. Relief and Works AgencyUNRWA)への資金提供を停止した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、今回の援助について、「非常にありがたい」と述べ、「イスラエルに対する超党派の強い支持を示し、西洋文明を守るものだ」とXに投稿した

連邦下院はまた、中国の脅威に直面するインド太平洋地域の同盟諸国への80億ドルの支援を、385対34で圧倒的な差で可決した。反対票を投じたのは共和党の極右議員ばかりだった。

連邦下院はまた、「TikTok」を禁止する可能性、ウクライナに売却するためのロシア資産の差し押さえ、融資という形で提供されるウクライナ支援に条件をつけることなど、超党派の優先事項が多く含まれる法案を可決した。

ジョンソン議長は次のように述べた。「連邦上院の白紙委任(blank check)とは異なり、連邦下院の法案には非常に重要な特徴がいくつもある。ウクライナ支援に対する説明責任が強化される。私たちは議員たちの声を反映した。私たちは彼らにチャンスを与えた。私たちは彼らに、より良いプロセスを提供し、最終的にはより良い政策を実現した」。

連邦下院共和党は、アメリカの資金は南部国境の管理など国内問題に費やしたほうが良いと主張し、ウクライナへの送金にますます慎重になっている。ジョンソン議長はまた、南部国境での移民を取り締まる厳しい法案を提出したが、共和党の強硬派議員3人が連邦下院規則委員会での手続き動議を拒否したため、法案は否決された。

ジョンソン議長は、グリーン議員の行動が自分を議長職から追い落とそうとする動議の検討を早めるきっかけとなる可能性があることを認識し、リスクを冒して支援策可決を進めた。しかし、ジョンソン議長は今週初め、民主政治体制を維持するためにアメリカが介入し、独裁政権と戦う同盟諸国を支援する歴史上重要な時期に直面していると指摘し、リスクや党派争いに関係なく前に進むことを決意した。

ジョンソン議長は、「私は議長解任動議の心配をしながらこの議事堂の中を歩き回っているのではない。私は自分の仕事をしなければならない。私は、連邦議会の意思を尊重し、正しいと信じることをしたまでのことだ」と述べた。

グリーンは今週、ジョンソンを解任する動議を提出し、トーマス・マシー議員(ケンタッキー州選出、共和党)の支持を得た。トーマス・マシー議員とポール・A・ゴーサー議員(アリゾナ州選出、共和党)の支持を得た。マイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出、共和党)が辞職し、共和党の多数派が1議席に減少した今、議長を追放するには十分な数だ。ただし、民主党がジョンソン議長の救援に乗り出さない限りは、である。ジョンソン議長はウクライナ支援のために行動したため、民主党はその可能性を真剣に検討している。

グリーン議員は、共和党の同僚たちに有権者の意見を聞き、来月ワシントンに戻ったらジョンソン議長を続投させるかどうかについて議員らに話し合ってもらいたいため、土曜日に動議を提出しないことに決めたと語った。

グリーンは、ウクライナへの資金提供を支援した共和党の同僚について「この国のアメリカ人は全員激怒すべきだと思う。誰がこんな人たちに投票するだろう? どうすればこの人たちに投票できるだろうか? 彼らは私たちの国に奉仕していない」と語った。

マシー議員は、ジョンソン議長が「辞任を自発的に表明すれば、議長不在期間が長期化することは避けられる」と述べた。もしジョンソン議長が辞任しなければ、年内に議長が解任されるだろうと予想した。

マシー議員は次のように述べた。「彼はレームダックになった議長(lame-duck speaker)だ。私たちは連邦議会が機能するようにしようとしている。ジョンソン議長に集められている募金がケビン・マッカーシー前議長時代の募金の半分以下であるのには理由がある。それは、レームダックになった議長などに誰も会いたがらないからだ」。マシー議員は続けて、「私たちのオフィスには、2025年1月3日に再選できる人物が必要だ。そしておそらくここにいる人々はそれを認めたくないかもしれないが、ジョンソンがそこに到達するつもりがないことは私にとって非常に明白だ」と述べた。

土曜日、11月まで連邦下院議長でいられると思うかと質問されたジョンソン議長は、「はい」とだけ答えた。

ジャクリーン・アレマニー、トビ・ラジがこの記事の作成に貢献した。
=====
連邦下院がウクライナとイスラエルへの数十億ドルの援助を数ヶ月の闘いの末に可決。次は連邦上院だ(The House passes billions in aid for Ukraine and Israel after months of struggle. Next is the Senate

-連邦下院は、ウクライナ、イスラエル、その他のアメリカの同盟諸国に対する950億ドルの対外援助パッケージを、連邦議会での数ヶ月の混乱の後、承認した。

スティーヴン・グローヴス、リサ・マスカロ筆

2024年4月21日

APニューズ』紙

https://apnews.com/article/ukraine-aid-israel-tiktok-congress-a8910452e623413bf1da1e491d1d94ba

ワシントン発(AP通信)。連邦下院は、ウクライナ、イスラエル、その他のアメリカの同盟諸国に対する950億ドル(約14兆7000億円)の対外援助を、週末の議会で承認した。週末にこのようなことが行われるのは珍しいことだ。これは、ロシアの侵略を撃退するためのアメリカの新たな支援をめぐって、数ヶ月にわたる強硬な右派の抵抗の後、民主党と共和党が結束したことで達成された。

土曜日、610億ドル(約9兆5000億円)にのぼるウクライナへの支援は圧倒的な賛成多数で、数分で可決された。戦争で引き裂かれた同盟国への新たな支援策をめぐって、アメリカの連邦議員たちが争う中、この支援は力強いものとなった。民主党所属の下院議員の多くが連邦議場で歓声を上げ、ウクライナの青と黄色の旗を振った。

イスラエルや他の同盟諸国への援助も、人気プラットフォーム「TikTok」を取り締まる措置と同様に、大差で承認された。法案全体は連邦上院に送られ、早ければ火曜日にも可決される可能性がある。ジョー・バイデン大統領は直ちに署名すると約束している。

マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は、「私たちはここで務めを果たしたし、歴史はそれを高く評価するだろう」、自らの職を賭して法案成立に尽力し、疲れ切った様子で語った。

ホワイトハウスによれば、ジョー・バイデン大統領はジョンソン議長および民主党のハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)院内総務と個別に会談し、法案を推進することで「わが国の安全保障を最優先してくれたこと(putting our national security first)」に感謝した。

バイデン大統領は、「私は、連邦上院がこのパッケージを速やかに私の机に送り、私が署名して法制化し、ウクライナの緊急の戦場でのニーズに応えるために武器と装備を速やかに送ることができるようにすることを強く求める」と述べた。

ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は、連邦下院の民主、共和両党と「歴史を正しい軌道に乗せた決断に対して個人的にマイク・ジョンソン議長に感謝している」とX(旧ツイッター)で述べた。

ゼレンスキー大統領は「アメリカ、ありがとう」と述べた。

連邦議会でのこの場面は、多数派を握っているものの対外援助、特にウクライナに対する援助をめぐって大きく意見が分かれている共和党によって煽られた数カ月間の機能不全(dysfunction)と膠着状態(stalemate)を経て、印象的な行動を示した。ジョンソン議長は、2022年12月以来となるウクライナへの主要政策となる軍事資金(military funding)と人道資金(humanitarian funding)の承認を確実に得るために民主党に頼った。

その日の朝は、厳粛かつ真剣な議論と異常な目的意識で始まり、共和党と民主党の指導者たちが団結して迅速な承認を求め、アメリカが同盟諸国を支援し、世界舞台でリーダーであり続けることが確実になると述べた。連邦議会の訪問者ギャラリーは見物人で混雑していた。

連邦下院外交委員会委員長のマイケル・マッコール下院議員(テキサス州選出、共和党)は「世界の目が私たちに注がれており、我々が今ここで行うことは歴史が判断を下すだろう」と述べた。

連邦下院の法案通過により、ウクライナの軍事物資が不足し始めた2023年10月に初めて提出された、バイデン大統領のウクライナへの支援資金承認要請に対する最大のハードルが取り除かれた。

共和党が過半数を占める連邦下院は何をすべきかで数カ月にわたり苦悩し、まずウクライナ支援を米国・メキシコ国境の政策変更と結びつけるよう要求したが、まさにその方針に沿った超党派の連邦上院提案の法案を即座に拒否した。

ジョンソン議長にとって終盤戦に到達することは、ジョンソン議長の決意と共和党内での支持の両方を試す、厳しい試練となっている。現在、ジョンソン議長を公然と議長職から解任するよう求める声は少数ながらも増えている。しかし、連邦議会の各党の指導者たちは、この投票を歴史の転換点として位置付けて投票を行った。アメリカの同盟諸国がヨーロッパ大陸から中東、インド太平洋に至る戦争や脅威に悩まされている中での差し迫った犠牲をアメリカは払うことになる。

ニューヨーク州選出の連邦下院議員で、連邦下院外交委員会民主党側筆頭委員であるグレゴリー・ミークスは、「今日の私たちもそうであるが、歴史を生きていると、私たちが連邦下院本会議で行った投票の行動の重要性や、それが将来に及ぼす影響についてその時の段階では理解できないことがある。しかし、これは歴史的な瞬間だ。」と発言した。

反対派、特にジョンソン議長を含む多数派と対立している、共和党極右派は、アメリカは、国内の国境警備や国の債務増加に対処する国内の戦線に注力すべきだと主張し、海外で使用される兵器を製造するために、大部分がアメリカの軍需メーカーに流れ込むことになる、更なる資金の支出に警鐘を鳴らした。

それでも、連邦議会は、ゼレンスキー大統領から日本の岸田文雄首相まで、ここ数カ月の間に世界の指導者たちがワシントンを次々と訪れ、連邦議員たちに援助を承認するよう懇願しているのを目にした。世界的に見れば、この遅れは同盟国に対するアメリカの関与に疑問を投げかけるものだった。

バイデンの外交政策の最優先事項の1つ、ロシアのプーティン大統領のヨーロッパ進出を阻止することが問題になっていた。ジョンソン議長と秘密裏に会談した後、バイデン大統領はすぐにジョンソン議長の案を支持し、最終的な採決に必要な手続き上のハードルを乗り越えるために民主党が法案を支持する道を開いた。

ジェフリーズ院内総務は「民主党員や共和党員としてではなく、アメリカ人として、民主政治体制が危機に瀕しているところならどこでも守る責任がある」と、議場での討論の中で述べた。

ウクライナへの援助が共和党所属の議員たちの過半数を獲得できなかった一方で、数十人の進歩主義的な民主党所属議員たちは、数万の市民を殺害したガザ地区への攻撃の停止を要求し、イスラエルへの援助法案に反対票を投じた。約20人の共和党強硬派は、イスラエルや台湾のような伝統的に共和党の支持を得てきた同盟諸国への援助も含め、援助パッケージのあらゆる部分に反対票を投じた。

共和党所属議員の一部も、採決中に民主党議員たちがウクライナの国旗を振ったことに怒って反対した。フロリダ州選出の共和党所属のカット・カマック連邦下院議員は、X(旧ツイッター)で、民主党議員たちの行動に「激怒」しており、連邦下院議場での外国の国旗の掲示を禁止する法案の作成に取り組んでいると述べた。

同時に、共和党の大統領候補と目されるドナルド・トランプは、「アメリカ・ファースト(America First)」を掲げて共和党をよりアイソレーショニズム的なスタンスに傾けるため、ソーシャルメディア上の発言や連邦議員たちとの直接電話を通じて遠くから意見を述べるなど、この戦いに大きな影を落としている。

ウクライナの防衛はかつて連邦議会で超党派の強固な支持を得ていたが、戦争が3年目に入ると、共和党議員の過半数が更なる援助に反対するようになった。トランプ前大統領の盟友であるマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員は、資金をゼロにする修正案を提出したが、否決された。

超保守的な連邦下院共和党の議員連盟であるフリーダム・コーカスは、この法案を「アメリカ最後の」対外戦争対策案(the “America Last” foreign wars package)と嘲笑し、法案には国境警備措置が含まれていないとして、共和党指導部に反抗し、法案に反対するよう議員らに促した。

グリーンを筆頭とする3人の共和党所属の議員たちが、議長解任の投票につながる「解任動議(motion to vacate)」を支持したため、ジョンソン議長の連邦議長職の維持の可能性が小さくなっている。極右派に後押しされるように、グリーン議員の側には、アリゾナ州選出のポール・ゴーサー議員(アリゾナ州選出、共和党)を含む多くの議員に加わっている。ゴーサー下院議員、トーマス・マシー連邦下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)など、ジョンソン議長に自発的に退くよう求める議員も増えている。

このパッケージには、民主党が支持した、あるいは少なくとも受け入れることを望んでいる共和党の優先事項がいくつか含まれている。その中には、ウクライナ再建のために、アメリカが凍結されたロシア中央銀行の資産を差し押さえることを可能にする提案や、イラン、ロシア、中国、鎮痛効果のある合成ドラッグであるフェンタニルを取引する犯罪組織に対する制裁、人気動画アプリ「TikTok」の中国に拠点を置くオーナーに対し、1年以内に株式を売却するか、アメリカでの取引を禁止することを求める法案などが含まれている。

それでも、これらの法案を議会で成立させようと全力を挙げているのは、アメリカ国内政治だけでなくウクライナの現実を反映している。国家安全保障に関連する各委員会の理事である議員たちは、機密扱いのブリーフィングを受けることができるが、ロシアが兵力と弾薬の不足に悩むウクライナ軍を打ちのめし、戦況が悪化することを深刻に懸念している。

ニューヨーク州選出のチャック・シューマー連邦上院多数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)は、火曜日に連邦上院がこのパッケージの手続き投票を開始すると発表し、「世界中の同盟諸国がこの時を待っていた」と述べた。

共和党のミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務は、来週、右派の反対を押し切る準備をしながら、「目の前の課題は緊急だ。歴史を作るために再び連邦上院の出番となる」と述べた。

(貼り付け終わり)

(つづく)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。イスラエル、パレスティナ情勢についても分析しています。また、『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「アメリカが動けばイスラエルは言うことを聞くはずだ」という内容のブログを掲載して、舌の根も乾かないうちに、「イスラエルはアメリカの言うことを聞かないよ」という文章を掲載するのはおかしいと思われるだろうが、これが国際政治やどのように考えるのかということの面白いところだと思う。

 アメリカはイスラエルにとって最大の支援国であり、アメリカの動向はイスラエルの政策決定にとって重要だ。そのため、イスラエルは、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人たちを動かしてアメリカの世論や政策決定に影響を与えようとしてきた。それが成功している様子は、ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト著『イスラエル・ロビー』に詳しく書かれている。アメリカの連邦議員たち、特に都市部に地盤を持つ議員たちは、ユダヤ系の投票と資金に依存しているため、「支援しない」となれば政治生命が断たれることになる。イスラエルにとってアメリカは最重要の国である。

 支援をする国(アメリカ)と支援を受ける国(イスラエル)で言えば、イスラエルはアメリカ以外からの支援はほぼない状況であるので、イスラエルはアメリカから、支援を見直す、支援を打ち切ると言われてしまえば、立ち行かなくなってしまうので、アメリカの言うことを聞く。しかし、ここで、アメリカにばかり頼っていないという状況が出てくれば、アメリカに対して、「支援を打ち切るならどうぞ」と強い立場に出ることができる。また、支援を受ける国の特殊な事情、例えば、その国がある位置、国内政治体制や価値観の相似などによって、支援を受ける国の方が強い立場に立つことができる。それこそがイスラエルである。

イスラエルは中東にあって西側の形式の自由主義的民主政治体制、資本主義、法の支配などを確立している唯一の国だ。アメリカとしてはイスラエルを存続させることが重要ということになる。また、位置としても非常に微妙なところにある。従って、イスラエルの発言力は強くなる。

 こうして考えると、日本もイスラエルのように、アメリカに対して、ある程度の発言力を持つことができるのではないかと私は考える。それは、「アメリカがあまりに酷いことを日本に求めるならば、日本はアメリカの陣営から飛び出しますよ」という形で、中国と両天秤にかけることだ。しかし、戦後80年、アメリカに骨抜きにされ、アメリカ妄信が骨絡み状態になっている日本には難しいことだ。アメリカが衰退していって、初めて私たちは、その呪縛から解放されるだろう。その時期は私たちが考えるよりもかなり早く到来するだろう。

(貼り付けはじめ)

皆さんが考えるよりも、イスラエルに対するアメリカの影響力は小さい(The United States Has Less Leverage Over Israel Than You Think

-アメリカの影響力の基礎とその欠如について詳しく見てみる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年3月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/21/us-israel-leverage-biden-netanyahu/

ジョー・バイデン政権は、イスラエルのガザ報復作戦(Israel’s retaliatory campaign in Gaza)を止められなかったことで、執拗な批判にさらされている。バイデン米大統領とその側近たちは、増え続ける死者数(現在3万人を超えている)について憂慮し、故郷を追われた何十万人もの罪のないパレスティナ人に十分な人道支援を届けようとしないイスラエルに苛立ちを募らせていると伝えられている。しかし、バイデンはアメリカの武器の流入を止めず、アメリカは停戦を求める3つの国連安全保障理事会決議について拒否権(veto)を行使している(アメリカが承認する可能性のある決議案が準備中と報じられている)。カナダとは異なり、ガザの国際連合パレスティナ難民救済事業機関(United Nations Relief and Works AgencyUNRWA)の職員がハマス支持者で埋め尽くされていたという非難が今となっては疑わしいと思われるにもかかわらず、アメリカはUNRWAへの資金提供を停止するという決定をまだ翻していない。

バイデンを批判する人々は、アメリカがこの状況に対して多大な影響力を持っており、大統領が毅然とした言葉を発し、アメリカの援助を縮小、もしくは停止するとの圧力(脅し)を加えれば、イスラエルはすぐに方針転換を余儀なくされるだろうと想定している。しかし、この仮定は精査するに値する。弱小国家は、しばしばアメリカの要求に従うことを拒否し、場合によってはそれを無視してしまう。セルビアは1999年のランブイエ会議でNATOの要求を拒否した。イランと北朝鮮は数十年にわたり制裁に耐えてきたが、反抗的な姿勢を維持している。ヴェネズエラではニコラス・マドゥロが依然として権力を握っている。そしてバシャール・アル・アサドは、アメリカが以前から「退去せよ(must go)」と主張してきたにもかかわらず、依然としてシリアを統治している。

これらの指導者たちがアメリカの圧力に逆らうことができたのは、アメリカの支援に依存していなかったからであり、それぞれが、「強硬手段に出るよりも従う方が失うものが大きい」と考えたからである。しかし、ドイツがアメリカの反対にもかかわらず、パイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設を継続したように、アメリカの親密な同盟諸国も、アメリカの圧力に抵抗することがある。依存度の高い属国であっても、驚くほど頑固な場合がある。アフガニスタンの指導者たちは、米政府高官の要求する改革を何度も無視して実施しなかったし、ウクライナの司令官たちは昨夏の不運な反攻作戦を計画する際、アメリカの助言を拒否したと伝えられている。カブールとキエフはほとんど全面的にアメリカの物質的支援に依存してきたが、ワシントンは彼らの要求に従わせることができなかった。同様に、イスラエルの指導者たちも、ダヴィド・ベン=グリオンからベンヤミン・ネタニヤフに至るまで、アメリカの圧力に幾度となく抵抗してきた。バイデンから電話がかかってきて、アメリカの援助を打ち切ると脅せば、イスラエルがアメリカの言いなりになると自動的に考えるべきではない。

影響力はどこから来るのか? 偶然にも、私はこの問題について、1987年に、最初の著書の第7章で長々と書いた。支援国が、経済的・軍事的援助、外交的保護、その他の便益を、支援を受ける国に提供することで、支援を受ける国に提供される援助をほぼ独占している場合、支援国が目下の問題について支援を受ける国と同程度の関心を持ち、支援を受ける国に圧力をかけて順守させるために援助水準を操作することに国内的な障害がない場合、支援国はかなりの影響力を持つ。支援を受ける国が他の誰かから同じような援助を受けることができる場合、係争中の問題に関して、支援国よりもはるかに多くのことを気にかけており、それゆえ支援の削減という代償を支払う意思がある場合、あるいは支援国が国内的あるいは制度的な制約のために支援を削減する場合、影響力は低下する。

このような条件によって、なぜ、そして、どのようにして、支援を受ける国の一部が支援国の選好に逆らうことができ、また逆らうことを避けないのかを説明できる。支援国が、弱い同盟国に本質的な価値があると考えている場合(重要な戦略的位置にある、価値観が似ているなど)、あるいは、支援を受ける国の成功が支援国の評判や名声に結びついている場合、支援国は支援を受ける国が頑なに反抗的であっても、その国を切り捨てようとはしない。たとえば、ソ連はアラブの様々な支援を受ける国を自分たちの側に引き留めるのに苦労した。なぜなら、それらの国々は中東における影響力にとって重要な存在であり、クレムリンは、それらの国々が失敗する(あるいはアメリカと同盟を結ぶ)ことを望まなかったからである。同様に、アメリカは南ヴェトナムやアフガニスタンの指導者たちに、支援を撤回すると脅して圧力をかけることはできなかった。もちろん、ヴェトナムのグエン・バン・チュー大統領やアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領はこのことをよく理解していた。

更に悪いことに、援助を提供すると、短期的には影響力が低下する。なぜなら、一度提供された援助を取り戻す方法がないからだ。ヘンリー・キッシンジャーはあるジャーナリストに次のように語った際に、彼はこの力関係を完璧に捉えていた。「私はイスラエルのイツハク・ラビン首相に対して妥協するように求めた時、ラビンは、イスラエルは弱いので妥協はできないと答えた。そこで私は彼にもっと武器を与え、妥協するように求めた。ラビンはイスラエルは強いので譲歩する必要はないと言った」。更に言えば、弱くて依存的な支援を受ける国は、自分たちの方がより脆弱で、より多くのことを抱えているため、しばしば、支援国よりも、問題が提起されている問題について気にかけている。そして、同盟諸国が国内の主要な政治的支持層から支持されている場合、その支援国がその影響力を自由に利用する可能性はさらに低くなるだろう。

それでは、アメリカとイスラエルの関係の現状と、バイデンがもたらす可能性のある実際の影響力について何を物語っているかを考えてみよう。

第一に、イスラエルは以前ほどアメリカの支援に依存していないものの、誘導爆弾と砲弾、F-35航空機やパトリオット防空ミサイルなどの先進兵器システムと精密誘導ミサイルの両方を含むアメリカの兵器へのアクセスに依然として大きく依存している。もちろん、高度な兵器を生産しているのはアメリカだけではなく、イスラエルも独自の高度な防衛産業を持っているが、万が一アメリカが援助を遮断した場合に軍隊を再装備するのは困難で費用のかかるプロセスとなるだろう。イスラエルの戦略家たちは長年、潜在的な敵対国に対して質的優位性を維持することが極めて重要であり、アメリカの援助が失われれば長期的にはその能力が危うくなると信じてきた。これに、国連安全保障理事会の拒否権や他国がイスラエル批判を自制するよう圧力をかける形であれ、アメリカの外交的保護の価値が加わると、イスラエルがアメリカから得ている支援に代わるのは不可能ではないにしても困難であることは明らかだ。だからこそ、専門家の多くは、バイデンがすべきことはアメリカの援助を減らすと脅すことだけであり、ネタニヤフ首相には従う以外に選択肢はない、と考えている。

第二に、立場の弱い、援助を受ける国が問題に関心を持っている場合、圧力をかけるのは難しいが、現在、アメリカの手段を強化する方向に決意のバランスが変化している可能性がある。以前の中東紛争ではよくあったことだが、アメリカは自国の利益がより重視される場合にはイスラエルに行動を変えさせることができた。 1956年の第二次アラブ・イスラエル戦争後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領はイスラエルにシナイ半島から撤退するよう圧力をかけることに成功し、アメリカ政府当局は1969年から1970年の消耗戦争と1973年のアラブ戦争中にイスラエルに停戦協定を受け入れるよう説得するのに貢献することができた。ロナルド・レーガン大統領からイスラエル首相メナヘム・ベギンへの怒りの電話も、1982年のレバノン侵攻中のイスラエルによる西ベイルートでの大規模な爆撃作戦を終わらせた。これらのいずれの場合でも、アメリカの指導者たちは、より広範なアメリカの利益が危険に晒されていると信じていたため、強力に行動し、成功した。

しかし、今どちらの側に大きな決意があるのかはわからない。ネタニヤフ首相は国内では不人気となっているが、世論はガザ地区での軍事作戦を支持しており、ネタニヤフ首相に取って代わりたい政治的ライヴァルたちでさえ、これまでネタニヤフを支持してきた。これに加えて、ネタニヤフ首相は二国家共存解決[two-state solution](あるいはパレスティナ人との公正な和平)に反対し、汚職による訴追を避けたいと考え、政権を維持するために極右閣僚たちに依存している。イスラエルは「バナナ共和国(banana republic、訳者註:政治的に不安定で、経済は外国に支配され、1つの産物の輸出に依存する小国)ではない」と宣言したネタニヤフ首相は、アメリカの明確な警告にもかかわらず、イスラエル国防軍(IDF)が混雑するガザ地区の都市ラファを攻撃すると強硬に主張し続けている。しかしネタニヤフはまた、この問題について協議する代表団をワシントンに派遣することにも同意した。

加えて、ガザ地区における危機的状況は世界中でアメリカのイメージに大きなダメージを与え、バイデン政権が冷酷で無力であるように見せている。もし結果がそれほど憂慮すべきものでないならば、アメリカの政策の矛盾は滑稽なものになるだろう。アメリカ政府はガザ地区の飢餓に瀕している避難住民たちに食糧を空輸している。それと同時に、彼らを避難させ飢餓の危険にさらしている軍備をイスラエルに提供している。この状況はバイデンの再選の可能性を危うくする可能性もあり、ホワイトハウスが強硬姿勢を取る新たな理由となった。

私は、アメリカがイスラエルよりもガザ地区の状況を懸念していると言っているのではない。イスラエルとパレスティナで何が起こっても、アメリカで比較的安全に暮らす私たちよりもイスラエル人(そしてパレスティナ人)にとって、ガザ地区の状況は明らかに重要である。私が言いたいのは、どの程度かということを言うことは不可能ではあるが、決意の均衡がワシントンの方向に向かって進んでいるということだけだ。

最後に、国内の制約についてはどうだろうか? 過去の大統領が想像以上に影響力を行使できなかった主な理由は、イスラエル・ロビー(Israel lobby)の力である。アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)などが議会で行使してきた影響力を考えれば、イスラエルに深刻な圧力をかけようとする大統領は、必ず自分が所属する党の連邦議員たちからも含む、厳しい批判に直面した。ジェラルド・フォード大統領はこの教訓を1975年に学んだ。イスラエルの長期にわたる横暴に対し、関係を見直すと脅したところ、すぐに75人の連邦上院議員が署名した書簡が届き、その動きを非難されたのだ。バラク・オバマは大統領就任1年目に同じ教訓を学んだ。ネタニヤフ首相に入植地建設を止めるよう圧力をかけようとしたとき、共和党所属の連邦議員たちからも民主党所属の連邦議員たちからも同様の反発を受けた。イスラエル・ロビーの影響力は、長い間、結局は失敗に終わったオスロ和平プロセスにおいて、アメリカの交渉担当者がイスラエルの譲歩を得るために、肯定的な誘導策、つまりニンジン(carrots)しか使えずに、結局は棍棒(sticks)を使うことができなかった理由も説明する。

この状況も徐々に変わっていくだろう。アパルトヘイト制度(system of apartheid)を運用している国家を守ることは、特に現在、大量虐殺を行っているという、証明されていないが、もっともらしい告発に直面している場合には、簡単な仕事ではない。イスラエル政府のプロパガンダ(ハスバラ、hasubara)がいくら法廷で無実を訴えても、ガザ地区から流れ出る映像や、イスラエル国防軍兵士自身が投稿した不穏なTikTokYouTubeの動画を完全に否定することはできず、AIPACのような団体が影響力を維持することが難しくなっている。長らくイスラエルを最も忠実に擁護してきたチャック・シューマー連邦上院議員が連邦上院議場で演説し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の政策はイスラエルにとって悪であると宣言したことは、政治の風向きが変わりつつあることが明らかだ。アメリカ政治に対する考え方も、特に若者の間で変化しつつある。イスラエルの行為をアメリカの支持条件とすることには、依然として恐るべき政治的障害(formidable political obstacles)が存在するが、特に選挙の年には、数年前ほど考えられないほどの障害という訳ではない。

私は、ワシントンには確かに潜在的な影響力がたくさんあり、それを利用するための障壁は過去に比べて低くなっていると結論付ける。しかし、イスラエルの現在の指導者たちは、この問題に関して、依然として高い決意を持っているため、アメリカの支援を削減するという信頼できる脅しがあっても、彼らが大きく方針を変えることはないかもしれない。また、バイデンや彼の側近たちが、現在の失敗したアプローチから、より効果的なアプローチに移行するために必要な精神的な調整ができるかどうかも明らかではない。イスラエルへの圧力が機能するかどうかに焦点を当てるのではなく、問うべき真の問題は単に、大規模かつ悪化する人道的悲劇に積極的に加担することがアメリカの戦略的または道義的利益にかなうかどうかである。たとえアメリカがそれを止められなかったとしても、事態をさらに悪化させることの手助けをする必要はない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ