古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:イスラエル・ロビー

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年10月に始まった、パレスティナ紛争、イスラエルによるパレスティナ側への報復攻撃は半年を超えて継続している。その間にパレスティナ側の民間人の死傷者が増加し、その様子が連日世界中で報道される中で、イスラエルによる過剰な報復、この機会を使用して、二国共存による解決(two-state solution)を無効化しようとする動きに対して、批判が高まっている。これまで、イスラエルを無前提、無条件で支援してきたアメリカでも、国内世論はイスラエルに批判的になっていることはこのブログでも既に紹介した。アメリカ全土の大学での抗議活動で逮捕者が出ていることは日本でも報道されている。

 アメリカのジョー・バイデン政権は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権に対して、自制を求めているが、イスラエル側は、アメリカが支援を止めることはないし、アメリカ国内にイスラエル・ロビーと呼ばれる、親イスラエルの強力な組織が複数あるといいうことから、バイデン政権の要請を無視してきた。バイデン大統領はネタニヤフ首相の姿勢に不満を表明してきた。そして、以下のような状況になっている。アメリカはイスラエルへの弾薬の輸送を停止した。そして、ハマスが戦闘停止の提案に賛意を示し、イスラエル側は提案内容に不満を示しながらも、交渉の継続を発表した。

(貼り付けはじめ)

米、イスラエルへの弾薬輸送停止 ハマスとの戦闘開始後初と報道

5/6() 0:33配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/d63cc6d470f4bd6fb499b4dc7b6ed03d097ba3cf

 【ワシントン共同】米ニュースサイト、アクシオスは5日、米国がイスラエルへの弾薬輸送を先週停止したと報じた。複数のイスラエル当局者が明らかにした。昨年107日にパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まって以降、兵器の輸送を停止したのは初めて。

 イスラエル政府は輸送停止に懸念を強めているという。全米の大学ではイスラエルの自衛権を支援するバイデン政権の対応に抗議するデモが続いている。

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●「ハマス、ガザ停戦案の受け入れ表明 イスラエルは「要求からかけ離れた内容」」

BBC JAPAN  2024年5月7日

https://www.bbc.com/japanese/articles/c1rv23v8j13o

パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘の一時停止とイスラエル人人質の解放にむけた交渉で、イスラム組織ハマスは6日、カタールとエジプトの仲介役に対し停戦案を受け入れると伝えたことを明らかにした。

ハマス関係者は「(交渉の)ボールは今、イスラエル側のコートにある」と述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの提案は「イスラエルの基本的な要求からかけ離れたもの」だとしつつ、交渉担当者による話し合いは継続されると述べた。

イスラエル国防軍(IDF)がガザ地区南部ラファの東側から避難するよう現地のパレスチナ人に指示をした数時間後に、ハマスは停戦案を受け入れると発表した。

ラファでの作戦では、数万人のガザ市民が影響を受けると考えられている。6日には多くの人がぎゅうぎゅう詰めの車やロバが引く荷車で移動した。

IDFは避難命令を出した後に空爆を実施した。ハマス関係者は「危険なエスカレーション」だとしている。

■停戦案を「承認する」と

ハマスは6日夜に声明を出し、同組織の政治指導者イスマイル・ハニヤ氏がカタールの首相とエジプト情報局の長官に「停戦合意に関する提案を承認する」と伝えたことを明らかにした。

この提案に詳しいパレスチナ側の高官は、条件が満たされれば「敵対的な活動を永久に」終わらせることにハマスが同意したと、BBCに語った。

これは、ハマスが武装闘争の終結を熟考している可能性をうかがわせるものだが、それ以上の詳細は明らかにされなかった。

提案では、停戦は段階的に行われる。第1段階では、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人囚人50人(終身刑の囚人数人が含まれる)の釈放と引き換えに、ハマスの人質となっているイスラエル人女性兵士らを解放することが含まれる。

1段階は42日間かけて実施される。この期間中、IDFはガザ内にとどまる。しかし、戦闘の一時停止が始まってから11日以内に、ガザ中部にあるIDF施設の解体を開始し、ガザを南北に走る主要ルート、サラ・アル・ディン通りや、海岸沿いの道路からIDFは撤退する。

停戦開始から11日後には、家を追われたパレスチナ人のガザ北部への帰還が認められる。

2段階も42日間で、前出のパレスチナ側の高官は、「持続可能な長期的な平穏」とガザ封鎖の完全解除で締めくくられるとしている。

「イスラエルが停戦合意に応じるのか、それともそれを妨害するのか。ボールは今、(イスラエル側の)コートにある」とハマス高官はAFP通信に語った。

■イスラエルの反応

ハマスの声明を受け、ガザではお祝いムードが広がった。

しかし、イスラエル政府関係者の1人はロイター通信に対し、ハマスが受け入れるとした提案は、エジプトが提案した内容が「弱められた」もので、イスラエルが受け入れることのできない「広範囲におよぶ」決定が含まれていると述べた。

そして、「イスラエルが合意を拒否する側であるように見せかけるための策略のようだ」と指摘した。

イスラエルの首相官邸はその後、「ハマスの提案がイスラエル側の基本的な要求からかけ離れていても、イスラエルは交渉の代表団を派遣し、イスラエルが受け入れられる条件のもとで合意に達する可能性を追及する」と声明で述べた。

イスラエルの戦時内閣は同じころ、ラファでの作戦継続を決定した。「人質の解放、ハマスの軍事・統治能力の破壊、そしてガザが将来、イスラエルにとって脅威とならないようにするという、我々の戦争目標を達成するため、ハマスに軍事的圧力をかけるため」だとしている。

■アメリカ、合意実現への努力継続と

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、アメリカはハマスの反応を検討し、「我々のパートナー国と話し合っている」と記者団に述べた。アメリカはカタールやエジプトとともに、停戦交渉の仲介を試みている。

「我々は人質解放の合意がイスラエル国民の最善の利益になると信じ続けている」

「(人質解放は)即時停戦をもたらすだろう。人道的支援の動きも拡大できるようになるだろう。だからこそ、我々は合意に到達するための努力を続けていく」

昨年107日のハマスによるイスラエル奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、250人以上が人質となった。イスラエルは直後に報復攻撃を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、ガザでのイスラエルの軍事作戦でこれまでに34700人以上が殺されたとしている。

11月には、1週間の停戦が実現し、この間にイスラエルの刑務所にいたパレスチナ人囚人約240人と引き換えにハマスの人質105人が解放された。

イスラエルによると、ガザでは依然、128人の人質の行方がわかっていない。

そのうち少なくとも34人は死亡したと推定されている。

(貼り付け終わり)

 アメリカのジョー・バイデン政権としては、ウクライナ問題よりも、パレスティナ問題について優先的に目途をつけたいと考えている。今年11月の大統領選挙を控え、各種世論調査で共和党のドナルド・トランプ前大統領に負けているジョー・バイデンは、まずは民主党支持者を固めたい。民主党支持者はイスラエルへの支援に反対が多い。民主党支持者を固めるには、パレスティナ問題が優先課題だ。また、全米各地の大学での学生たちによる抗議運動もバイデンにとっては脅威だ。彼らが今年夏の民主党大会において、激しい抗議活動を行えば、バイデン陣営と民主党にとっては大きな痛手だ。1968年の民主党大会の例を引くまでもなく、2016年の民主党大会で、ヒラリー・クリントンに反対する若者たちの抗議活動の激しさは記憶に新しい。バイデンとしては党大会までに、パレスティナ問題を何とかしたいところだ。そのために、イスラエル・ロビーの圧力を避けながら、イスラエルに対して、停戦に向けて圧力をかけるだろうと私は書いたが、そのような動きになっている。

 更に言えば、そもそも論として、イスラエルをここまで傲慢にし、増長させて、結果として中東の不安定化を進めたのはアメリカである。アメリカが無条件にイスラエルを支援し続けたことが、イスラエルの傲岸不遜、選民思想丸出しの戦争国家にしてしまった。また、イスラエルの極右派は、アメリカが主導した二国間共存解決を反故にしようとしている。アメリカの面子など、イスラエルは全く気にしない。アメリカはイスラエルに利用され、虚仮にされてきた。

 アメリカの世論も大きく変わろうとしている。無条件のイスラエル支援に対しては疑問の声、反対の声が大きくなっている。そうした声はこれまで「反ユダヤ主義的」として封じ込められてきたが、そのようなレイべリング(ラベリング、labeling)の有効性が小さくなっている。それほどにイスラエルの行動は酷いもので、国際的な孤立を招いている。そして、アメリカに対する反感も募っている。アメリカの対イスラエル政策を見直す時期が来ていると言ってよいだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカが中東の燃え盛る炎に油を注いだ(America Fueled the Fire in the Middle East

-イスラエルは、ますます大きくなる危険の中にあるが、その責任はテヘランよりもワシントンにある。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年4月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/15/middle-east-war-crisis-biden-america-iran-israel/

 

2024年4月1日、テヘランにて、イスラエルによるシリアのイラン領事館への空爆を非難する抗議デモで、アメリカ国旗を燃やすイランの抗議者たち

シリアのダマスカスにあるイランの領事館に対するイスラエルの攻撃に対し、イランが無人機とミサイル攻撃で報復するという決定を下したことは、バイデン政権が中東をいかにひどく誤って扱ってきたかを明らかにしている。ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃する前夜に、この地域は「ここ数十年来で最も静か(quieter than it has been for decades)」だと自らを納得させてきた、アメリカ政府高官たちは、それ以来、悪い状況を、更に悪化させるような対応をしてきた。ドナルド・トランプ、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの各政権も多くの場合失敗している。

2023年10月7日のハマスの残忍な攻撃に対するジョー・バイデン政権の対応には、3つの主な目的があった。第一に、イスラエルへの揺るぎない支持を伝えようとした。レトリック的に支持し、イスラエル政府高官たちと定期的に協議し、ジェノサイドの非難からイスラエルを擁護し、国連安全保障理事会での停戦決議に対して拒否権を行使し、イスラエルに殺傷能力の高い兵器を安定的に供給した。第二に、ワシントンはガザ紛争がエスカレートするのを防ごうとしてきた。最後に、パレスティナの市民への被害を抑え、アメリカのイメージと評判へのダメージを最小限に抑えるため、イスラエルに自制的な行動をとるよう説得してきた。

この政策は、その目的が本質的に矛盾していたために失敗した。イスラエルに無条件の支援を与えることは、イスラエルの指導者たちへのアメリカからの自制の呼びかけに耳を傾ける動機をほとんど与えなかったため、彼らがそれらを無視したのは驚くべきことではない。ガザは破壊され、少なくとも3万3000人のパレスティナ人(1万2000人以上の子供を含む)が死亡し、アメリカ政府当局者たちは、ガザの民間人が飢餓状態に直面していることを認めている。イエメンのフーシ派民兵組織は停戦を要求していると主張し、紅海の船舶を標的にし続けている。イスラエルとヒズボラの間の低レヴェルの紛争は依然としてくすぶっている。そして占領下のヨルダン川西岸では暴力が急増した。そして今、イランは4月1日の総領事館爆破に対して報復としてイスラエルに無人機とミサイル攻撃を開始しており、更に広範な戦争の可能性が高まっている。

アメリカ人はイランが悪の体現者であるということを聞き慣れているため、読者の中には、この問題全てをテヘランのせいにしたくなる人もいるかもしれない。たとえば先週、『ニューヨーク・タイムズ』紙のトップ記事は、イランがヨルダン川西岸地区の不安をあおるために武器を「洪水のように大量に(flooding)」持ち込んでいると報じた。

この見方では、イランは既に炎上している地域にガソリンを注いでいることになる。しかし、この話にはさらに多くの要素があり、そのほとんどはアメリカの実情をあまり良く反映していない。

はっきりさせておきたい。イランは残忍な神権的政権(brutal theocratic regime)によって統治されており、私は同情することはない。しかし、その支配下で暮らし、アメリカの制裁による懲罰に耐えなければならない何百万人ものイラン人には同情する。イランの政権の行動の中には、例えばロシアのウクライナ侵略への支持など、非常に不快なものもある。しかし、ヨルダン川西岸(あるいはガザ地区)に小火器やその他の武器を密輸しようとするその努力は、特に凶悪なことだろうか? また、最近イスラエルが領事館を攻撃し、その過程で2人のイラン人将軍を殺害したことに対して、報復の決定は驚くようなものだろうか?

ジュネーブ条約によれば、「交戦的占領(belligerent occupation)」下にある住民には占領軍に抵抗する権利がある。イスラエルが1967年以降、ヨルダン川西岸と東エルサレムを支配し、70万人以上の不法入植者によってこれらの土地を植民地化し、その過程で何千人ものパレスティナ人を殺害してきたことを考えれば、これが「交戦的占領」であることに疑いようがない。もちろん、抵抗行為には戦争法が適用される。ハマスや他のパレスティナ人グループは、イスラエルの民間人を攻撃する際に戦争法に違反している。しかし、占領に抵抗することは正当であり、苦境にある住民を助けることは必ずしも間違っている訳ではない。たとえイランがパレスティナの大義に対する深い関与からではなく、独自の理由から支援を行ったとしても、それは間違っていない。

同様に、イスラエルが自国の領事館を爆撃し、イランの将軍2人を殺害した後に報復するというイランの決定も、特にイランが戦争を拡大する意図がないと繰り返し表明していることを考えると、生来の攻撃性(innate aggressiveness)の証拠とは言えない。実際、その報復はイスラエルにかなりの警告を与える方法で行われ、イラン政府がこれ以上エスカレーションするつもりはないことを示すように設計されていたようだ。アメリカとイスラエルの政府当局者たちが武力行使の際によく言うように、イランは単に「抑止力を回復(restore deterrence)」しようとしているだけだ。

忘れてはならないのは、アメリカは何十年もの間、中東に兵器を「氾濫(flooding)」させてきたということだ。イスラエルには毎年何十億ドルもの高度な軍備を提供し、アメリカの支援は無条件であると繰り返し保証している。

イスラエルがガザ地区の民間人を爆撃し飢餓に陥れても、アメリカからの支持は揺らいでいない。イスラエルが最近、アントニー・ブリンケン米国務長官の訪問を歓迎し、ヨルダン川西岸地区における、1993年以来最大規模のパレスティナ人所有の土地の没収を発表したときも、その支持は揺るがなかった。エクアドルが最近キトのメキシコ大使館を襲撃したことを非難しているときでさえ、イスラエルがイランの領事館を爆撃したとき、ワシントンは何の動きも起こさなかった。それどころか、国防総省の高官たちは支持を示すためにエルサレムに向かい、ジョー・バイデン大統領はイスラエルへの関与が「鉄壁(ironclad)」であることを強調した。イスラエルの高官たちが、アメリカからの忠告を無視できると考えるのは不思議だろうか?

権力が抑制されていない国家はそれを濫用する傾向があり、イスラエルも例外ではない。イスラエルはパレスティナ人よりもはるかに強力であり、更に言えばイランよりも有能であるため、パレスティナに対して罰を受けずに行動することができ、実際にそうしている。数十年にわたるアメリカの寛大かつ無条件の支援により、イスラエルはやりたいことを何でもできるようになり、それがイスラエルの政治とパレスティナ人に対する行動が時間の経過とともにますます過激になる1つの要因となった。

第一次インティファーダ[First Intifada](1987-1993年)のように、パレスティナ人が効果的な抵抗を動員できるようになったのは珍しい機会であった。イツハク・ラビン元首相のようなイスラエルの指導者たちは、妥協の必要性を認め、和平を試みることを余儀なくされた。残念ながら、イスラエルは非常に強く、パレスティナ人は非常に弱く、アメリカの調停者はイスラエルに一方的に有利だったため、ラビンの後継者は誰もパレスティナ人が受け入れられるような取引を提示しようとしなかった。

イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸していることにまだ憤慨しているのなら、もし状況が逆だったらどう思うかを自問してほしい。エジプト、ヨルダン、シリアが1967年の第三次中東戦争に勝利し、何百万人ものイスラエル人を脱出させたとしよう。勝利したアラブ諸国がその後、パレスティナ人が「帰還権(right of return)」を行使し、イスラエル・パレスチナの一部または全部に独自の国家を樹立することを許可することを決定したとする。加えて、100万人ほどのイスラエル系ユダヤ人が、ガザ地区のような狭い飛び地に閉じこもる無国籍難民(stateless refugees)になってしまったとする。そして、元イルグン(Irgun)の戦士や他のユダヤ人強硬派が抵抗運動を組織し、その飛び地を支配下に置き、新しいパレスティナ国家の承認を拒否したとする。更に、彼らは世界中の同調支持者から支援を得て、飛び地への武器の密輸を開始し、その武器を使って近隣の入植地や最近建国されたパレスティナ国家の町を攻撃した。そして、そのパレスティナ国家が、飛び地を封鎖し爆撃することで応戦し、何千人もの民間人の死者を出したとする。

こうした状況を踏まえると、アメリカ政府はどちらの側を支持すると考えるか? 実際、アメリカはこのような状況の出現を許すだろうか? 答えは明白であり、アメリカがこの紛争に一方的に取り組んでいることを雄弁に物語っている。

このような悲劇的な皮肉は、イスラエルを批判から守り、次から次へとアメリカの歴代政権に、たとえ何をするとしてもイスラエルを支持するよう圧力をかけることに最も熱心だったアメリカ国内の個人や組織が、せっかく熱心に支援しても、実際にはイスラエルに多大な損害を与えてきた。

過去50年間、「特別な関係(special relationship)」がどこにつながってきたかを考えてみよう。二国家間解決(two-state solution)は失敗し、パレスティナ人の抱える問題は将来も未解決のままである。その理由の大部分は、ロビー活動によって、歴代の米大統領がイスラエルに意味のある圧力をかけることができなくなったからである。1982年にイスラエルが行った無策のままのレバノン侵攻(ヨルダン川西岸地区をイスラエルの支配下に置くという愚かな計画の一環)は、ヒズボラの出現につながり、ヒズボラは現在イスラエルを北から脅かしている。ベンヤミン・ネタニヤフ首相をはじめとするイスラエル政府高官たちは、パレスティナ自治政府を弱体化させ、ハマスへの密かな支援によって二国家解決への進展を阻止しようとし、2023年10月7日の悲劇を招いた。イスラエルの国内政治はアメリカ以上に偏向しており(これはある意味当然だが)、ロビーの大半のグループがことあるごとに擁護しているガザでの行動は、イスラエルの孤立国家(pariah state)への道を助長している。多くのユダヤ人を含む若いアメリカ人のイスラエルへの支持率は低下している。

この不幸な状況のおかげで、イランはパレスティナの大義を擁護し、核兵器保有に近づき、イランを孤立させようとするアメリカの努力を妨害することができた。もしアメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)とその盟友たちが自らを省みることができるのなら、自分たちがイスラエルに支援してきたことに愕然とするだろう。

対照的に、イスラエルの行動の一部を批判してきた私たち(反ユダヤ主義者、ユダヤ人嫌い、あるいはそれ以上の汚名を着せられるだけだった)は、実際には、アメリカにとってもイスラエルにとっても同様に良かったであろう政策を推奨してきた。私たちの助言に従っていれば、イスラエルは今日より安全になり、何万人ものパレスティナ人がまだ生きていて、イランは核開発から遠ざかり、中東はほぼ確実にもっと平穏になり、アメリカの人権と規則に基づく秩序の擁護者(principled defender of human rights and a rules-based order)としての評判も回復しただろう。最後に、もしこれらの土地が実行可能なパレスティナ国家の一部であれば、イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸する理由はほとんどないだろうし、イランの指導者たちが独自の核抑止力を持っていればより安全になるのではないかと熟考する理由も少なくなるだろう。

しかし、中東に対するアメリカの政策にもっと根本的な変化が起こらない限り、こうした希望に満ちた可能性は依然として手の届かないものであり、私たちをここに導いた過ちは繰り返される可能性が高い。

スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。イスラエル、パレスティナ情勢についても分析しています。また、『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「アメリカが動けばイスラエルは言うことを聞くはずだ」という内容のブログを掲載して、舌の根も乾かないうちに、「イスラエルはアメリカの言うことを聞かないよ」という文章を掲載するのはおかしいと思われるだろうが、これが国際政治やどのように考えるのかということの面白いところだと思う。

 アメリカはイスラエルにとって最大の支援国であり、アメリカの動向はイスラエルの政策決定にとって重要だ。そのため、イスラエルは、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人たちを動かしてアメリカの世論や政策決定に影響を与えようとしてきた。それが成功している様子は、ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト著『イスラエル・ロビー』に詳しく書かれている。アメリカの連邦議員たち、特に都市部に地盤を持つ議員たちは、ユダヤ系の投票と資金に依存しているため、「支援しない」となれば政治生命が断たれることになる。イスラエルにとってアメリカは最重要の国である。

 支援をする国(アメリカ)と支援を受ける国(イスラエル)で言えば、イスラエルはアメリカ以外からの支援はほぼない状況であるので、イスラエルはアメリカから、支援を見直す、支援を打ち切ると言われてしまえば、立ち行かなくなってしまうので、アメリカの言うことを聞く。しかし、ここで、アメリカにばかり頼っていないという状況が出てくれば、アメリカに対して、「支援を打ち切るならどうぞ」と強い立場に出ることができる。また、支援を受ける国の特殊な事情、例えば、その国がある位置、国内政治体制や価値観の相似などによって、支援を受ける国の方が強い立場に立つことができる。それこそがイスラエルである。

イスラエルは中東にあって西側の形式の自由主義的民主政治体制、資本主義、法の支配などを確立している唯一の国だ。アメリカとしてはイスラエルを存続させることが重要ということになる。また、位置としても非常に微妙なところにある。従って、イスラエルの発言力は強くなる。

 こうして考えると、日本もイスラエルのように、アメリカに対して、ある程度の発言力を持つことができるのではないかと私は考える。それは、「アメリカがあまりに酷いことを日本に求めるならば、日本はアメリカの陣営から飛び出しますよ」という形で、中国と両天秤にかけることだ。しかし、戦後80年、アメリカに骨抜きにされ、アメリカ妄信が骨絡み状態になっている日本には難しいことだ。アメリカが衰退していって、初めて私たちは、その呪縛から解放されるだろう。その時期は私たちが考えるよりもかなり早く到来するだろう。

(貼り付けはじめ)

皆さんが考えるよりも、イスラエルに対するアメリカの影響力は小さい(The United States Has Less Leverage Over Israel Than You Think

-アメリカの影響力の基礎とその欠如について詳しく見てみる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年3月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/21/us-israel-leverage-biden-netanyahu/

ジョー・バイデン政権は、イスラエルのガザ報復作戦(Israel’s retaliatory campaign in Gaza)を止められなかったことで、執拗な批判にさらされている。バイデン米大統領とその側近たちは、増え続ける死者数(現在3万人を超えている)について憂慮し、故郷を追われた何十万人もの罪のないパレスティナ人に十分な人道支援を届けようとしないイスラエルに苛立ちを募らせていると伝えられている。しかし、バイデンはアメリカの武器の流入を止めず、アメリカは停戦を求める3つの国連安全保障理事会決議について拒否権(veto)を行使している(アメリカが承認する可能性のある決議案が準備中と報じられている)。カナダとは異なり、ガザの国際連合パレスティナ難民救済事業機関(United Nations Relief and Works AgencyUNRWA)の職員がハマス支持者で埋め尽くされていたという非難が今となっては疑わしいと思われるにもかかわらず、アメリカはUNRWAへの資金提供を停止するという決定をまだ翻していない。

バイデンを批判する人々は、アメリカがこの状況に対して多大な影響力を持っており、大統領が毅然とした言葉を発し、アメリカの援助を縮小、もしくは停止するとの圧力(脅し)を加えれば、イスラエルはすぐに方針転換を余儀なくされるだろうと想定している。しかし、この仮定は精査するに値する。弱小国家は、しばしばアメリカの要求に従うことを拒否し、場合によってはそれを無視してしまう。セルビアは1999年のランブイエ会議でNATOの要求を拒否した。イランと北朝鮮は数十年にわたり制裁に耐えてきたが、反抗的な姿勢を維持している。ヴェネズエラではニコラス・マドゥロが依然として権力を握っている。そしてバシャール・アル・アサドは、アメリカが以前から「退去せよ(must go)」と主張してきたにもかかわらず、依然としてシリアを統治している。

これらの指導者たちがアメリカの圧力に逆らうことができたのは、アメリカの支援に依存していなかったからであり、それぞれが、「強硬手段に出るよりも従う方が失うものが大きい」と考えたからである。しかし、ドイツがアメリカの反対にもかかわらず、パイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設を継続したように、アメリカの親密な同盟諸国も、アメリカの圧力に抵抗することがある。依存度の高い属国であっても、驚くほど頑固な場合がある。アフガニスタンの指導者たちは、米政府高官の要求する改革を何度も無視して実施しなかったし、ウクライナの司令官たちは昨夏の不運な反攻作戦を計画する際、アメリカの助言を拒否したと伝えられている。カブールとキエフはほとんど全面的にアメリカの物質的支援に依存してきたが、ワシントンは彼らの要求に従わせることができなかった。同様に、イスラエルの指導者たちも、ダヴィド・ベン=グリオンからベンヤミン・ネタニヤフに至るまで、アメリカの圧力に幾度となく抵抗してきた。バイデンから電話がかかってきて、アメリカの援助を打ち切ると脅せば、イスラエルがアメリカの言いなりになると自動的に考えるべきではない。

影響力はどこから来るのか? 偶然にも、私はこの問題について、1987年に、最初の著書の第7章で長々と書いた。支援国が、経済的・軍事的援助、外交的保護、その他の便益を、支援を受ける国に提供することで、支援を受ける国に提供される援助をほぼ独占している場合、支援国が目下の問題について支援を受ける国と同程度の関心を持ち、支援を受ける国に圧力をかけて順守させるために援助水準を操作することに国内的な障害がない場合、支援国はかなりの影響力を持つ。支援を受ける国が他の誰かから同じような援助を受けることができる場合、係争中の問題に関して、支援国よりもはるかに多くのことを気にかけており、それゆえ支援の削減という代償を支払う意思がある場合、あるいは支援国が国内的あるいは制度的な制約のために支援を削減する場合、影響力は低下する。

このような条件によって、なぜ、そして、どのようにして、支援を受ける国の一部が支援国の選好に逆らうことができ、また逆らうことを避けないのかを説明できる。支援国が、弱い同盟国に本質的な価値があると考えている場合(重要な戦略的位置にある、価値観が似ているなど)、あるいは、支援を受ける国の成功が支援国の評判や名声に結びついている場合、支援国は支援を受ける国が頑なに反抗的であっても、その国を切り捨てようとはしない。たとえば、ソ連はアラブの様々な支援を受ける国を自分たちの側に引き留めるのに苦労した。なぜなら、それらの国々は中東における影響力にとって重要な存在であり、クレムリンは、それらの国々が失敗する(あるいはアメリカと同盟を結ぶ)ことを望まなかったからである。同様に、アメリカは南ヴェトナムやアフガニスタンの指導者たちに、支援を撤回すると脅して圧力をかけることはできなかった。もちろん、ヴェトナムのグエン・バン・チュー大統領やアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領はこのことをよく理解していた。

更に悪いことに、援助を提供すると、短期的には影響力が低下する。なぜなら、一度提供された援助を取り戻す方法がないからだ。ヘンリー・キッシンジャーはあるジャーナリストに次のように語った際に、彼はこの力関係を完璧に捉えていた。「私はイスラエルのイツハク・ラビン首相に対して妥協するように求めた時、ラビンは、イスラエルは弱いので妥協はできないと答えた。そこで私は彼にもっと武器を与え、妥協するように求めた。ラビンはイスラエルは強いので譲歩する必要はないと言った」。更に言えば、弱くて依存的な支援を受ける国は、自分たちの方がより脆弱で、より多くのことを抱えているため、しばしば、支援国よりも、問題が提起されている問題について気にかけている。そして、同盟諸国が国内の主要な政治的支持層から支持されている場合、その支援国がその影響力を自由に利用する可能性はさらに低くなるだろう。

それでは、アメリカとイスラエルの関係の現状と、バイデンがもたらす可能性のある実際の影響力について何を物語っているかを考えてみよう。

第一に、イスラエルは以前ほどアメリカの支援に依存していないものの、誘導爆弾と砲弾、F-35航空機やパトリオット防空ミサイルなどの先進兵器システムと精密誘導ミサイルの両方を含むアメリカの兵器へのアクセスに依然として大きく依存している。もちろん、高度な兵器を生産しているのはアメリカだけではなく、イスラエルも独自の高度な防衛産業を持っているが、万が一アメリカが援助を遮断した場合に軍隊を再装備するのは困難で費用のかかるプロセスとなるだろう。イスラエルの戦略家たちは長年、潜在的な敵対国に対して質的優位性を維持することが極めて重要であり、アメリカの援助が失われれば長期的にはその能力が危うくなると信じてきた。これに、国連安全保障理事会の拒否権や他国がイスラエル批判を自制するよう圧力をかける形であれ、アメリカの外交的保護の価値が加わると、イスラエルがアメリカから得ている支援に代わるのは不可能ではないにしても困難であることは明らかだ。だからこそ、専門家の多くは、バイデンがすべきことはアメリカの援助を減らすと脅すことだけであり、ネタニヤフ首相には従う以外に選択肢はない、と考えている。

第二に、立場の弱い、援助を受ける国が問題に関心を持っている場合、圧力をかけるのは難しいが、現在、アメリカの手段を強化する方向に決意のバランスが変化している可能性がある。以前の中東紛争ではよくあったことだが、アメリカは自国の利益がより重視される場合にはイスラエルに行動を変えさせることができた。 1956年の第二次アラブ・イスラエル戦争後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領はイスラエルにシナイ半島から撤退するよう圧力をかけることに成功し、アメリカ政府当局は1969年から1970年の消耗戦争と1973年のアラブ戦争中にイスラエルに停戦協定を受け入れるよう説得するのに貢献することができた。ロナルド・レーガン大統領からイスラエル首相メナヘム・ベギンへの怒りの電話も、1982年のレバノン侵攻中のイスラエルによる西ベイルートでの大規模な爆撃作戦を終わらせた。これらのいずれの場合でも、アメリカの指導者たちは、より広範なアメリカの利益が危険に晒されていると信じていたため、強力に行動し、成功した。

しかし、今どちらの側に大きな決意があるのかはわからない。ネタニヤフ首相は国内では不人気となっているが、世論はガザ地区での軍事作戦を支持しており、ネタニヤフ首相に取って代わりたい政治的ライヴァルたちでさえ、これまでネタニヤフを支持してきた。これに加えて、ネタニヤフ首相は二国家共存解決[two-state solution](あるいはパレスティナ人との公正な和平)に反対し、汚職による訴追を避けたいと考え、政権を維持するために極右閣僚たちに依存している。イスラエルは「バナナ共和国(banana republic、訳者註:政治的に不安定で、経済は外国に支配され、1つの産物の輸出に依存する小国)ではない」と宣言したネタニヤフ首相は、アメリカの明確な警告にもかかわらず、イスラエル国防軍(IDF)が混雑するガザ地区の都市ラファを攻撃すると強硬に主張し続けている。しかしネタニヤフはまた、この問題について協議する代表団をワシントンに派遣することにも同意した。

加えて、ガザ地区における危機的状況は世界中でアメリカのイメージに大きなダメージを与え、バイデン政権が冷酷で無力であるように見せている。もし結果がそれほど憂慮すべきものでないならば、アメリカの政策の矛盾は滑稽なものになるだろう。アメリカ政府はガザ地区の飢餓に瀕している避難住民たちに食糧を空輸している。それと同時に、彼らを避難させ飢餓の危険にさらしている軍備をイスラエルに提供している。この状況はバイデンの再選の可能性を危うくする可能性もあり、ホワイトハウスが強硬姿勢を取る新たな理由となった。

私は、アメリカがイスラエルよりもガザ地区の状況を懸念していると言っているのではない。イスラエルとパレスティナで何が起こっても、アメリカで比較的安全に暮らす私たちよりもイスラエル人(そしてパレスティナ人)にとって、ガザ地区の状況は明らかに重要である。私が言いたいのは、どの程度かということを言うことは不可能ではあるが、決意の均衡がワシントンの方向に向かって進んでいるということだけだ。

最後に、国内の制約についてはどうだろうか? 過去の大統領が想像以上に影響力を行使できなかった主な理由は、イスラエル・ロビー(Israel lobby)の力である。アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)などが議会で行使してきた影響力を考えれば、イスラエルに深刻な圧力をかけようとする大統領は、必ず自分が所属する党の連邦議員たちからも含む、厳しい批判に直面した。ジェラルド・フォード大統領はこの教訓を1975年に学んだ。イスラエルの長期にわたる横暴に対し、関係を見直すと脅したところ、すぐに75人の連邦上院議員が署名した書簡が届き、その動きを非難されたのだ。バラク・オバマは大統領就任1年目に同じ教訓を学んだ。ネタニヤフ首相に入植地建設を止めるよう圧力をかけようとしたとき、共和党所属の連邦議員たちからも民主党所属の連邦議員たちからも同様の反発を受けた。イスラエル・ロビーの影響力は、長い間、結局は失敗に終わったオスロ和平プロセスにおいて、アメリカの交渉担当者がイスラエルの譲歩を得るために、肯定的な誘導策、つまりニンジン(carrots)しか使えずに、結局は棍棒(sticks)を使うことができなかった理由も説明する。

この状況も徐々に変わっていくだろう。アパルトヘイト制度(system of apartheid)を運用している国家を守ることは、特に現在、大量虐殺を行っているという、証明されていないが、もっともらしい告発に直面している場合には、簡単な仕事ではない。イスラエル政府のプロパガンダ(ハスバラ、hasubara)がいくら法廷で無実を訴えても、ガザ地区から流れ出る映像や、イスラエル国防軍兵士自身が投稿した不穏なTikTokYouTubeの動画を完全に否定することはできず、AIPACのような団体が影響力を維持することが難しくなっている。長らくイスラエルを最も忠実に擁護してきたチャック・シューマー連邦上院議員が連邦上院議場で演説し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の政策はイスラエルにとって悪であると宣言したことは、政治の風向きが変わりつつあることが明らかだ。アメリカ政治に対する考え方も、特に若者の間で変化しつつある。イスラエルの行為をアメリカの支持条件とすることには、依然として恐るべき政治的障害(formidable political obstacles)が存在するが、特に選挙の年には、数年前ほど考えられないほどの障害という訳ではない。

私は、ワシントンには確かに潜在的な影響力がたくさんあり、それを利用するための障壁は過去に比べて低くなっていると結論付ける。しかし、イスラエルの現在の指導者たちは、この問題に関して、依然として高い決意を持っているため、アメリカの支援を削減するという信頼できる脅しがあっても、彼らが大きく方針を変えることはないかもしれない。また、バイデンや彼の側近たちが、現在の失敗したアプローチから、より効果的なアプローチに移行するために必要な精神的な調整ができるかどうかも明らかではない。イスラエルへの圧力が機能するかどうかに焦点を当てるのではなく、問うべき真の問題は単に、大規模かつ悪化する人道的悲劇に積極的に加担することがアメリカの戦略的または道義的利益にかなうかどうかである。たとえアメリカがそれを止められなかったとしても、事態をさらに悪化させることの手助けをする必要はない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回は、シカゴ大学教授ジョン・J・ミアシャイマー教授のインタヴュー記事をご紹介する。ミアシャイマー教授は、このブログで良く取り上げるハーヴァード大学教授のスティーヴン・M・ウォルト教授と一緒に『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1』を書いた人物だ。また、日本語で読める文献としては、『新装完全版 大国政治の悲劇』『なぜリーダーはウソをつくのか - 国際政治で使われる5つの「戦略的なウソ」 (中公文庫) 』がある。国際関係論の中でもリアリズムという流れに属する学者だ。
johnjmearcheimer511

ミアシャイマー
 ミアシャイマーはウクライナ危機をアメリカの介入主義に責任があると断じている。ミアシャイマーは「2008年4月、ルーマニアのブカレストで開催されたNATOサミットで、NATOはウクライナとグルジアをNATOの一部にするだろうという声明を発表したのが、この問題の始まりだと考える。ロシアは当時、これを存亡に関わる危機(existential threat)と見なし、越えてはならない一線を明確に設定した。それでも、時間の経過とともに何が起こったかと言うと、ウクライナをロシアとの国境の西側の防波堤(bulwark)にするために、ウクライナを西側に入れるという方向に進んだ。もちろん、これにはNATOの拡大だけではない。NATOの拡大は戦略の中心ですが、EUの拡大も含まれるし、ウクライナを親米の自由主義民主政治体制国家(pro-American liberal democracy)に変える(turning)ことも含まれ、ロシアから見れば、これは存亡に関わる危機なのだ」と述べている。

 ロシアが軍事侵攻を行ったことは断罪されるべきだ。ウクライナの国民にしてみれば、ロシアの都合など私たちとは関係ないということになる。しかし、大きな勢力や大国の近くにある中小国は常にそれらの角逐に神経を尖らせ、どちらか一方に賭けるのではなく、常に両方とつながるということが生き残る秘訣だ。日本はどうだろうかと考えると、ため息しか出ない。

(貼り付けはじめ)

ジョン・ミアシャイマーはなぜウクライナ危機をアメリカの責任だと批判するのか(Why John Mearsheimer Blames the U.S. for the Crisis in Ukraine

-政治学者ジョン・ミアシャイマーは長年、プーティンのウクライナへの侵略は西側諸国の介入(Western intervention)によるものだと主張してきた。最近の出来事で彼の考えは変わったのだろうか?

アイザック・コテイナー筆

2022年3月1日

『ニューヨーカー』誌

https://www.newyorker.com/news/q-and-a/why-john-mearsheimer-blames-the-us-for-the-crisis-in-ukraine?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=onsite-share&utm_brand=the-new-yorker&utm_social-type=earned

政治学者のジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)は、冷戦終結後のアメリカの外交政策に対する最も有名な批評家の一人である。ミアシャイマーは、スティーヴン・ウォルトと共著した著作『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』で最も良く知られているだろうが、大国間政治の主唱者だ。国家の安全を守るために、国家は敵対者を想定して事前に行動するとする国際関係論の一派であるリアリズムを信奉者である。ミアシャイマーは長年にわたり、アメリカがNATOの東方への拡大(to expand NATO eastward)やウクライナとの友好関係を推進した(establishing friendly relations with Ukraine)結果、核武装した大国間の戦争の可能性(likelihood of war between nuclear-armed powers)が高まり、ウラジミール・プーティンのウクライナに対する攻撃的な姿勢の下地(groundwork)ができたと主張してきた。実際、ロシアがクリミアを併合した後の2014年、ミアシャイマーは「この危機の責任の大半はアメリカとヨーロッパの同盟国が負っている(the United States and its European allies share most of the responsibility for this crisis)」と書いている。

今回のロシアによるウクライナ侵攻は、米露関係をめぐるいくつかの長年の議論を再燃させるものだ。プーティンは欧米の関与に関係なく旧ソ連圏内で積極的な外交政策を取るという批判が多いが、ミアシャイマーはプーティンを刺激したアメリカに責任があるとする立場を貫く。最近、私はミアシャイマーと電話で話した。ミアシャイマーとの会話の中で、今回の戦争は防げたのか(the current war could have been prevented)、ロシアを帝国主義的大国と考えることができるのか(whether it makes sense to think of Russia as an imperial power)、プーティンのウクライナに対する最終的な計画(Putin’s ultimate plans for Ukraine)などについて、長さと分かりやすさを重視して編集したものとなっている。

コテイナー:現在のロシアとウクライナの状況を見て、世界はどうしてこうなったのだと考えるか?

ミアシャイマー:2008年4月、ルーマニアのブカレストで開催されたNATOサミットで、NATOはウクライナとグルジアをNATOの一部にするだろうという声明を発表したのが、この問題の始まりだと考える。ロシアは当時、これを存亡に関わる危機(existential threat)と見なし、越えてはならない一線を明確に設定した。それでも、時間の経過とともに何が起こったかと言うと、ウクライナをロシアとの国境の西側の防波堤(bulwark)にするために、ウクライナを西側に入れるという方向に進んだ。もちろん、これにはNATOの拡大だけではない。NATOの拡大は戦略の中心ですが、EUの拡大も含まれるし、ウクライナを親米の自由主義民主政治体制国家(pro-American liberal democracy)に変える(turning)ことも含まれ、ロシアから見れば、これは存亡に関わる危機なのだ。

コテイナー:あなたは、「ウクライナを親米的な自由民主主義国家に変えること」と述べた。私は、アメリカがある場所を自由主義民主政治体制国家に「変える」ということに(“turning” places into liberal democracies)、あまり信頼や信用を置いていない。アメリカがそのようなことは実施するのは難しいと考えている。ウクライナが、ウクライナの人々が実際に本心から、親米的な自由民主主義国家に住みたいと言ったらどうするのか?

ミアシャイマー:ウクライナが親米的な自由主義的民主政治体制国家になり、NATOに加盟し、EUに加盟すれば、ロシアはそれを断固として容認しないだろう。もしNATOの拡大やEUの拡大がなく、ウクライナが単に自由主義的民主政治体制国家となり、アメリカや西側諸国と一般的に友好的であれば、おそらくそれで済ませることができるだろう。ここでは、3つの戦略が存在することを理解する必要がある。EUの拡大、NATOの拡大、そしてウクライナを親米的な自由主義的民主政治体制国家にすることだ。

コテイナー:NATOは誰を受け入れるかを決めることができる。しかし、2014年には多くのウクライナ人がヨーロッパの一部とみなされることを望んでいるように見受けられた。自由主義的民主政治体制国家になれないと言うことは、ほとんどある種の帝国主義(imperialism)のように思われる。

ミアシャイマー:それは帝国主義ではなく、大国間政治(great-power politics)だ。ウクライナのような国が、ロシアのような大国の隣に住んでいる場合、ロシアが何を考えているのか、注意深く観察しなければならない。棒で相手の目を突けば報復されるだろう。西半球の国々は、アメリカに関して、このことを十分に理解している。

コテイナー:本質的にモンロー・ドクトリン(Monroe Doctrine)だ。

ミアシャイマー:もちろんだ。西半球には遠い大国が軍隊を持ち込むことをアメリカから許されるような国は存在しない。

コテイナー:そうだ。しかし、西半球の国々(その多くは民主政治体制国家)が自分たちの外交政策を決めることをアメリカは許さないというのは、それが良いとも悪いとも言えるが、それは帝国主義ではないのか?私たちは本質的に、民主政治体制国家がどのように政策を決定し実施するかについて、アメリカに対してある種の発言権を持っていると私は考える。

ミアシャイマー:私たちが言えることは、冷戦時代には民主的に選ばれた西半球の国々の指導者たちをその政策に不満があるからということでアメリカが倒したことがある。これが大国の行動なのだ。

コテイナー:もちろん、アメリカはそのようなことを行った。しかし、そのような行動をするべきなのかについて私は疑念を持っている。外交政策について考える時、アメリカもロシアもそのような行動をしない世界を作ろうと考えるべきなのだろうか?

ミアシャイマー:それは世界が機能する方法ではない。そのような世界を作ろうとすると、アメリカが一極集中時代(unipolar moment)に追求した悲惨な政策に行き着く。私たちは自由主義的民主政治体制を構築するために世界中に手を出した。もちろん、主な対象は中東たったが、それがどれほどうまくいったかあなたは知っているはずだ。知っての通り、あまりうまくはいかなかった。

コテイナー:第二次世界大戦後の75年間、あるいは冷戦終結後の30年間のアメリカの中東政策は、中東に自由主義的民主政治体制国家を作ることだったと言い難いと私は考える。

ミアシャイマー:一極集中時代のブッシュ・ドクトリンがそうだったと思う。

コテイナー:イラクでそうだった。しかし、パレスチナ自治区やサウジアラビア、エジプト、その他の場所ではそうではなかったはずだが?

ミアシャイマー:いや、そうではない。サウジアラビアもエジプトではそうではなかった。そもそもブッシュ・ドクトリンでは、イラクで自由主義的民主政治体制を実現できれば、それがドミノ効果(domino effect)を起こして、シリアやイラン、ひいてはサウジアラビアやエジプトといった国々が民主政治体制に転換すると考えていた。それがブッシュ・ドクトリンの基本的な考え方だった。ブッシュ・ドクトリンは、イラクを民主化するためだけに作られたわけではない。もっと壮大な構想(grander scheme)があった。

コテイナー:ブッシュ政権の責任者たちが、どれだけ中東を民主政治体制国家の集まりにしたかったのか、本当にそうなると思っていたのかは、議論の余地がある。私の考えでは、サウジアラビアを民主政治体制に転換しようという実際の熱意はほぼなかったということだ。

ミアシャイマー:そうだ、サウジアラビアに焦点を当てるというのは、あなたの立場からすると、容易な事例だと思う。サウジアラビアは石油のために私たちに対して大きな影響力を持っており、民主政治体制国家ではないことは確かだ。しかし、当時のブッシュ・ドクトリンは、中東を民主化できるという信念に基づいている。一朝一夕にはいかないかもしれないが、いずれは実現するはずだ。これがブッシュ・ドクトリンの基本信念だ。

コテイナー:私が言いたいのは「行動は言葉よりも雄弁である(actions speak louder than words)」ということだ。ブッシュの華々しい演説がどうであれ、アメリカの最近の歴史のどの時点でも、世界中の自由主義的民主政治体制を保証しようとする政策が取られてきたとは思えない。

ミアシャイマー:一極集中の時代にアメリカが取った行動と、これまでの歴史の中でアメリカが取った行動には大きな違いがある。アメリカの外交政策について、広範な歴史の流れの中であなたは語るが、その大きな流れについて私はあなたに同意する。しかし、一極集中の時期は、非常に特殊な時期だった。一極集中の時代、私たちは民主政治体制を広めることに深く関与していたと思う。

ウクライナについては、2014年まで、ロシアを封じ込める(containing Russia)ための政策としてNATOの拡大やEUの拡大を想定していなかったことを理解することが非常に重要だ。2014年2月22日以前、誰もロシアが脅威だとは本気で思っていなかった。NATOの拡大、EUの拡大、ウクライナやグルジアなどを自由主義的民主政治体制国にすることは、ヨーロッパ全域に広がる、東ヨーロッパと西ヨーロッパを含む巨大な平和地帯を作るためのものだった。ロシアを封じ込めることが目的ではなかった。しかし、このような大きな危機が発生し、私たちは責任を負わなければならなくなった。もちろん、私たちは自分たちを責めるつもりなど微塵もなく、ロシアだけを責めるつもりだった。そこで私たちは、ロシアが東欧への侵略を企んでいるというストーリーを作り上げた。プーティンは大ロシア、あるいはソヴィエト連邦の再興に関心を持っているというストーリーを作り上げた。

コテイナー:その時期とクリミア併合について話を移そう。古い記事を読んでいたら、「欧米の通説では、ウクライナ危機はほぼ全面的にロシアの侵略のせいとされている」とあなたは書いていた。「ロシアのプーティン大統領は、ソヴィエト帝国を復活させたいという長年の願望からクリミアを併合し、いずれはウクライナの他の地域や東欧諸国を狙うかもしれない」というのが通説だ。そして、あなたは「しかし、この説明は間違っている」と述べた。ここ数週間の出来事で、通説が思ったより真実に近かったと思うことはないか?

ミアシャイマー:いや、私は正しかったと考えている。2014年2月22日以前は、彼が侵略者だとは思っていなかったという証拠は明らかにあると思う。これは、私たちが彼を非難するために捏造した話なのだ。私の主張は、西側、特にアメリカがこうした厄災の主な原因であるということだ。しかし、アメリカの政策立案者は誰も、そしてアメリカの外交政策の確立者のほとんど誰も、その論旨を認めようとはせず、ロシアに責任があると言うだろう。

コテイナー:あなたはそれでロシアが併合して侵攻したと言うのか?

ミアシャイマー:その通りだ。

コテイナー:その論稿に非常に関心を持った。それは論稿の中で、プーティンがいずれウクライナの他の地域や東欧諸国を狙うかもしれないという考え方は間違っているとあなたが書いていたからだ。現在、プーティンはウクライナの他の地域を狙っているようだが、その当時は分からなかったとしても、後から考えると、その主張の方が正しいかもしれないと考えるか?

ミアシャイマー:ウクライナの他の地域を狙うというのは、細かいことを言うようだが、ウクライナ全土を征服し、バルト三国に目を向け、大ロシアやソ連の再興を目指すことを意味する。それが本当だという証拠は今のところ見当たらない。現在進行中の紛争の地図を見ても、彼が何をしようとしているのか、正確に把握することは困難だ。ドンバス地方を占領し、ドンバスを2つの独立国か1つの大きな独立国にするつもりであることは明らかなようだが、その先どうするつもりなのかは不明だ。つまり、プーティンはウクライナ西部には手を出さないように見える。

コテイナー:プーティンの爆弾が実際に降っているではないか?

ミアシャイマー:しかし、それは重要な問題ではない。重要な問題は以下の通りだ。「どの領土を征服し、どの領土に固執するのか?」というものだ。先日、クリミアから出てきた部隊がどうなるかについてある人と話したのだが、その人は、彼らは西に回ってオデッサを取ると考えると言っていた。最近、別の人と話したら、それはないだろうと言っていた。何が起こるかを分かることがあるだろうか? いや、何が起こるかは誰にも分からない。

コテイナー:プーティンがキエフを狙っているとは考えないか?

ミアシャイマー:いや、私はプーティンがキエフに侵攻意図を持っているとは考えない。彼は少なくともドンバスを、そしておそらく更にウクライナ東部の領土を奪おうと考えている。そして2つ目は、キエフに親ロシア政府、つまりモスクワの利益に同調する政府を設置しようと考えているだろう。

コテイナー:あなたはキエフを手に入れることに興味はないと私に言ったのではないか?

ミアシャイマー:いや、プーティンは体制転換(regime change)のためにキエフを手に入れることに興味があるということだ。分かるだろうか?

コテイナー:何がどう違うのか?

ミアシャイマー:キエフを永続的に征服することはないということだ。

コテイナー:ロシアに友好的な政府が樹立され、プーティンは何らかの発言権を持つということか?

ミアシャイマー:その通り。しかし、それはキエフを征服して保持することとは根本的に異なることを理解することが重要だ。私の言っている内容を理解できるか?

コテイナー:帝国の領地では、たとえ本国が実質的に支配していても、ある種の人物が形式的に王位に就いていることは、誰しも考えることではないか? そのような場所は征服されていることになるではないか?

ミアシャイマー:「帝国」という言葉の使い方に問題がある。この問題を帝国主義という観点から語る人がいることを私は承知していない。これは大国間政治であり、ロシアが望んでいるのは、ロシアの利益に同調するキエフの政権だ。最終的には、ロシアは中立的なウクライナと共存することを望んでおり、モスクワがキエフの政府を全面的に支配する必要はないと考える。親米的でなく中立的な政権を望んでいるだけかもしれないのだ。

コテイナー:「誰も帝国主義として語らない」とあなたは述べた。しかし、プーティンの演説では、特に「旧ロシア帝国の領土(territory of the former Russian Empire)」に言及し、それを失うことを嘆いている。プーティンが帝国主義について話しているではないか?

ミアシャイマー:あなたの発言内容は間違っていると考える。なぜなら、西側諸国のほとんどの人がそうしているように、あなたはプーティンの演説原稿の前半からのみ引用しているからだ。彼は「ソヴィエト連邦を恋しく思わない者は心がない(Whoever does not miss the Soviet Union has no heart)」と述べた。そしてその後で、「それを取り戻したいと思う者は考えが足りない(Whoever wants it back has no brain)」と続けたのだ。

コテイナー:プーティンはウクライナが本質的にでっち上げの国家(essentially a made-up nation)だと述べ、そして現在侵略しているように見える。そうではないか?

ミアシャイマー:分かった。それでは、この2つの出来事を合わせて、その意味を私に教えて欲しい。私はよく理解できないのだ。プーティンはウクライナがでっち上げだと確信している。私は彼に、「全ての国家はでっち上げである」と指摘したい。ナショナリズムを勉強している学者や学生たちなら誰でもそう言うはずだ。私たちは国家のアイデンティティという概念を作り上げた。あらゆる種類の神話(myths)で構成されている。だから、ウクライナについては、アメリカやドイツについてそうであるように、プーティンが正しいのだ。もっと重要なのは、ウクライナを征服して、大ロシアや旧ソヴィエト連邦の再興に組み込むことはできないということをプーティンが理解しているということだ。彼にはそれが不可能だ。プーティンがウクライナで行っていることは、大ロシアや旧ソ連の再興とは根本的に異なっている。彼は明らかにいくつかの領土を切り取っている。2014年にクリミアで起きたことに加え、ウクライナから領土を奪おうとしている。更に言えば、彼は間違いなく体制転換(regime change)に関心を持っている。その先に何があるのかは、彼がウクライナ全土を征服するつもりがないことを除けば、はっきりとしたことは言えない。そんなことをしようものなら、プーティンは極めて深刻な失態を犯すことになるだろう。

コテイナー:もしプーティンが大ロシアや旧ソ連の再興を試みようとしたら、私たちが目撃した事柄についての分析内容も変化すると考えているか?

ミアシャイマー:全くその通りだ。私の主張は、プーティンはソヴィエト連邦の再興や大ロシアを築こうとはしていない、ウクライナを征服してロシアに統合しようとはしていない、というものだ。プーティンは非常に攻撃的で、このウクライナの危機の主な原因は彼にあるというストーリーを私たちが作り出したということを理解することが非常に重要だ。アメリカや西側諸国の外交政策当局が作り出した議論は、プーティンが大ロシアや旧ソヴィエト連邦の再興に関心を抱いているという主張を中心に展開されている。ウクライナを征服し終えたら、バルト三国に目を向けるだろうと考えている人たちがいる。彼はバルト三国には向かわないだろう。まずもって、バルト三国はNATOのメンバーなのだから。

コテイナー:それは良いことか?

ミアシャイマー:そうではない。

コテイナー:あなたはNATOの一部だから侵攻しないということを理由の一つとして挙げている。しかし、ウクライナはNATOに加盟してはいけないとも述べているが?

ミアシャイマー:その通りだ。しかし、この2つは全く異なる問題だ。なぜこの2つを結びつけるのか分からない。私がNATOに加盟すべきだと考えることと、実際に加盟しているかどうかとは無関係だ。バルト三国はNATOに加盟している。北大西洋条約第5条で保証されている、それが全てだ。更に言えば、プーティンはバルト三国を征服することに関心があるという証拠を示したことはない。また、実際、彼はウクライナを征服することに関心があるという証拠を示したことはない。

コテイナー:プーティンが復活させたいのは、ソ連より前にあったロシア帝国のように思える。彼はソ連にとても批判的なようだが?

ミアシャイマー:どうだろうか、プーティンが旧ソ連に対して批判的かどうかは分からない。

コテイナー:プーティンは昨年書いた重要な論稿でもそう言ったし、最近の演説でもそう述べたが、ウクライナなどのソヴィエト共和国にある程度の自治を認めたことを本質的にソ連の政策の失敗だと述べている。

ミアシャイマー:しかし、私が以前にあなたにお知らせしたように、プーティンは「ソヴィエト連邦を恋しく思わない者は心がない」とも語っている。今の話とは少し矛盾している。つまり、プーティンは事実上、ソ連を恋しがっていると言っている訳だが? 彼はそう言っているのだ。ここで言っているのは、彼の外交政策だ。自問自答しなければならないのは、ウクライナにその能力があると考えるかどうかです。ウクライナはテキサスより小さなGNPしかない国だと分かっているはずだ。

コテイナー:国家というものは常々能力のないことをやろうとするものだ。「アメリカがイラクの電力システムをすぐに使えるようにできるなんて誰が思うんだ、アメリカ国内にだって同じような問題が山積しているのに?」とあなたは言うかもしれない。その通りだ。しかし、それでも私たちはそれができると考え、実行しようとして、失敗したのだ。そうではないか? ヴェトナム戦争でアメリカはやりたいことができなかった。それが、様々な戦争をしない理由だとあなたは言うだろうし、私もそう考える。しかし、だからと言って、私たちの能力について正しかった、もしくは合理的だったということにはならない。

私が言っているのは、ロシアの潜在的な力、つまり経済力の大きさについてだ。軍事力は経済力の上に成り立っている。本当に強力な軍隊を作るには経済的な基盤が必要だ。ウクライナやバルト諸国を征服し、東欧に旧ソ連や旧ソ連帝国を再興するには、大規模な軍隊が必要であり、それには現代のロシアが持っていない経済的基盤が必要となる。それでもロシアがヨーロッパの地域覇権(regional hegemony)を握ることを恐れる理由はない。ロシアはアメリカにとって深刻な脅威ではない。しかし、私たちは国際システムにおいて深刻な脅威に直面している。私たちは、同世代の競争相手に直面している。それは中国である。東欧における私たちの政策は、今日私たちが直面している最も危険な脅威に対処する私たちの能力を損なっている。

コテイナー:今、ウクライナに対してどのような政策を取るべきだと考えるか? また、中国政策が損なわれるようなことをしているのではないかという懸念はないだろうか?

ミアシャイマー:第一に、ヨーロッパから中国にレーザーのような方法で対処するための軸足を移すべきだろう。そして第二に、ロシアとの友好的な関係を構築するために時間をかけて取り組むべきだ。ロシアは中国に対する均衡連合(balancing coalition)の一員となる。中国、ロシア、アメリカという3つの大国が存在し、そのうちの1つである中国が同党の競争者となる世界において、アメリカが望むことは、ロシアを味方につけることだ。しかし、私たちが東欧で行った愚かな政策は、ロシアを中国の側に引き入れさせることになってしまった。これは力の均衡政治学入門のレッスンに反するものだ。

コテイナー:2006年に『ロンドン・レヴュー・オブ・ブックス』誌に掲載された、イスラエル・ロビーについてのあなたの記事を読み返してみた。あなたはパレスチナ問題について書いていたが、私はその内容に非常に同意する。「ここには道徳的な側面もある。アメリカ国内でのロビー活動のおかげで、占領地におけるイスラエルの占領政策を事実上容認することになり、結果としてパレスチナ人に対して行われた犯罪にアメリカが加担することになってしまった」とあなたは書いている。あなたは自分を道徳について語らないタフで堅苦しい老人のように思っているよう見える。私には、ここに道徳的な側面があることをあなたが示唆しているように思えた。現在ウクライナで起きていることに道徳的な側面があるとすれば、それについてはどう考えるか?

ミアシャイマー:国際政治におけるほとんど全ての問題には、戦略的な側面と道徳的な側面があると考える。その道徳的な側面と戦略的な側面が一直線に並ぶこともあると思う。つまり、1941年から1945年までナチスドイツのことを考えれば、理解できると思う。一方、戦略的に正しいことをしても道徳的に間違っているような、それらの矢印が反対方向を向いている場面もある。ナチスドイツと戦うためにソ連と同盟を結んだことは、それは戦略的には賢明な方策だったが、道徳的には間違った方策だったと私は考える。しかし、戦略的に仕方がないからそうするしかなかったのだ。言い換えれば、私があなたに言いたいのは、いざとなれば、戦略的配慮が道徳的配慮を圧倒するということだ。理想的な世界では、ウクライナ人が自分たちの政治体制を自由に選択し、自分たちの外交政策を選択することができれば素晴らしいことではあるのだが。

しかし、現実の世界では、それは不可能なことなのだ。ロシア人が自分たちに何を求めているのかに真剣に耳を傾けることがウクライナ人にとっての国益となるのだ。もし、根本的なところでロシアを疎外するようなことがあれば、大変なリスクを負うことになる。ウクライナがアメリカや西ヨーロッパの同盟諸国と協調していることが、ロシアにとって存亡に関わる危機であるとロシア側が考えるなら、それはウクライナに甚大な損害を与えることになる。もちろん、現在まさにそれが起こっている。従って、私の主張は、ウクライナにとって戦略的に賢明な戦略は、西側諸国、特にアメリカとの緊密な関係を断ち、ロシアに迎合しようとすることである、ということだ。もしNATOを当方に拡大してウクライナを含めるという決定がなければ、クリミアとドンバスは現在もウクライナの一部であり、ウクライナでの戦争もなかっただろう。

コテイナー:その忠告は、今となってはちょっと現実的ではないと思われる。現地の状況から見て、ウクライナがロシアを何とかなだめる時間はまだあるだろうか?

ミアシャイマー:私は、ウクライナ人がロシア人とある種の共存関係(modus vivendi)を築ける可能性は十分にあると考える。それは、ロシア側は、ウクライナを占領してウクライナの政治を動かそうとすると、大きなトラブルを招くことに気付きつつあるからだ。

コテイナー:つまり、ウクライナを占領するのは大変なことになるということか?

ミアシャイマー:その通りだ。だから私は、ロシアが長期的にウクライナを占領するとは思えないと言ったのだ。しかし、はっきりさせておきたいのは、少なくともドンバスは占領するだろうし、できればウクライナの最東部をこれ以上占領しないだろうと言いたい。ロシア人は頭が良いので、ウクライナの全土占領を行うことはないと考える。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 今回はハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授による現在のウクライナ危機の原因を分析した論稿をご紹介する。この論稿を読むと、国際関係論の2つの潮流(リアリズムとリベラリズム)の違いと、リアリズムの大家であるウォルト教授がウクライナ危機をどのように分析しているかがよく分かる。

  リアリズムは国家を守ってくれる上位機関が存在しないこと(アナーキー[anarchy]と呼ぶ)、国家の目的は生存すること(国家体制の違いは考慮しない)、などの前提から施行を組み立てる。リベラリズムについて、ウォルトは「国家の行動は、主にその内部の特性と国家間のつながりの性質によって推進されると主張する。世界を「良い国家」(リベラルな価値観を体現する国家)と「悪い国家」(それ以外の多くの国家)に分け、紛争は主に独裁者や独裁者などの非自由主義的な指導者の攻撃的衝動から生じると主張する。リベラル派の解決策は、専制君主を倒し、民主政治体制、市場、制度を世界規模で拡大すること」と述べている。そして、リベラリズムを信奉する人々が欧米諸国の外交政策を担ったために、今回のウクライナの危機的な状況が生み出されたと主張している。

 EUNATOの東漸によって、ロシアは圧迫を感じていた。冷戦終結とはロシアから見れば、自分たちの敗北であった。国力も衰え、ソ連邦時代にロシアを取り囲んでソ連邦を形成していた各国が独立を果たした。東ヨーロッパでソ連の衛星国(satellite states)だった国々は次々とEUNATOに加盟していった。ロシアの行動原理は「不安感」と「被害者意識」だ。NATOの設立の経緯を考えれば、「NATOは自分たちを敵として見なしている国々の集まりだ、将来攻めてくるかもしれない」ということになる。それがどんどん自分たちの国境に近づいてくる。自分たちを包囲するかのように拡大してくる。冷戦が終わって、ソ連の脅威がなくなってもNATOが残り続けたのも良くなかったかもしれない。

 西側諸国にしてみれば、冷戦が終わって、デモクラシー、人権、法の支配など西洋的な価値観が勝利を収めて、それが世界中に拡大するのは素晴らしいこと、アメリカはそのために活動している素晴らしい国という単純思考で動いていた。しかし、一点矛盾点を挙げるならば、自分たちにとって重要なエネルギー源である石油を算出する国々がデモクラシーでなくても、人権が認められていなくても何も言わない。こうした国々でデモクラシーになれば、石油精製施設の国有化やアメリカへの輸出制限などが起きてしまう可能性がある。アメリカにとって西洋近代の価値観の押しつけはあくまで自分たちの気に入らない国々をひなするための道具に堕している。

 何とか火の手が上がらないように、戦争にならないように、人死にが出ないようにするためには、実質的にウクライナを中立国にするということで交渉をまとめるべきだった。しかし、もう手遅れだ。ウクライナはロシアの属国ということになる。そうならないために交渉することも出来たがそれはもう手遅れだ。今はまず戦争が早く集結すること、戦後処理で犠牲者が多く出ないこと、ウクライナが国として立ちゆくことが優先されるべきことだ。

 今回、西側諸国は言葉だけは激しく、立派なことばかりだったが、ウクライナを実質的に助けるために、何もしていない。簡単に言えば、見捨て只の。「EUNATOに入れてなくて良かったなぁ、もしメンバー国だったら助けに行かなくてはいけないところだった」が、本音であろう。何と冷たくて嫌らしいということになるが、それが国際政治、大国間政治ということになる。人間とは愚かな生き物だ。

(貼り付けはじめ)

リベラル派の幻想がウクライナ危機を引き起こした(Illusions Caused the Ukraine Crisis

-ロシアによる侵略の最大の悲劇はそれを避けることがいかに容易であったかである。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年1月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/01/19/ukraine-russia-nato-crisis-liberal-illusions/

ウクライナ国内の状況は悪い。更に悪化している。ロシアは侵略の構えを見せており、NATOが決して東方へ拡大しないという厳格な保証を要求している。交渉はうまくいっていないようで、アメリカとNATOの同盟諸国は、ロシアが侵攻に踏み切った場合、どのように代償を払わせるかを考え始めている。戦争になれば、ウクライナ市民をはじめ、関係者に多大な影響を与えることになる。

大きな悲劇は、この事件全体が回避可能であったことだ。アメリカとヨーロッパの同盟諸国が傲慢、希望的観測、リベラルな理想主義(idealism)に屈せず、リアリズム(realism)の核心的な洞察に依拠していれば、現在の危機は発生しなかったであろう。実際、ロシアがクリミアを占領することはなかっただろうし、ウクライナは今日、より安全な場所になっていたはずだ。世界は、欠陥のある世界政治に関する理論に依存したために高い代償を払っているのだ。

最も基本的なレベルでは、戦争が起こるのは、国家を保護し、国家がそうすることを選択した場合に戦いを止めることのできる機構や中央機関が存在しないからだという認識から始まる。戦争が常に起こりうるものである以上、国家は力を競い合い、時には武力を行使して自らをより安全に、あるいは他国に対して優位に立とうとする。国家は、他国が将来何をするか確実に知ることはできない。そのため、国家は互いに信用することに躊躇し、将来、他の強力な国家が自分たちに危害を加えようとする可能性を弱めることを促すのだ。

リベラリズム(liberalism)は世界政治を違った角度から見ている。リベラリズムは、全ての大国が多かれ少なかれ同じ問題、つまり、戦争が常に起こりうる世界で安全を確保する必要性に直面していると考える代わりに、国家の行動は、主にその内部の特性と国家間のつながりの性質によって推進されると主張する。世界を「良い国家」(リベラルな価値観を体現する国家)と「悪い国家」(それ以外の多くの国家)に分け、紛争は主に独裁者や独裁者などの非自由主義的な指導者の攻撃的衝動から生じると主張する。リベラル派の解決策は、専制君主を倒し、民主政治体制、市場、制度を世界規模で拡大することだ。民主体制国家は、特に貿易、投資、合意された一連のルールによって結びついている場合は、互いに争わないという信念に基づいている。

冷戦後、西側諸国のエリートたちは、リアリズムはもはや無意味であり、リベラリズムの理想が外交政策の指針となるべきであると結論づけた。ハーヴァード大学のスタンリー・ホフマン教授が1993年に『ニューヨーク・タイムズ』紙のトーマス・フリードマンに語ったように、リアリズムは「今日ではまったくナンセンス」なのだ。アメリカとヨーロッパの政府当局者たちは、自由民主政治体制、開放市場、法の支配、その他の自由主義的価値が急速に拡大し、世界的な自由主義的秩序が手の届くところにあると信じていた。1992年に当時の大統領選挙候補者であったビル・クリントンが語ったように、「純粋なパワー・ポリティクスのシニカルな計算」は現代世界には存在せず、出現しつつある自由主義秩序は何十年にもわたって民主的平和をもたらすとリベラル派は考えていた。世界の国々は、権力と安全保障を競い合う代わりに、ますます開かれた、調和のとれたルールに基づく自由主義秩序、すなわち米国の慈悲深い力によって形成され守られた秩序の中で、豊かになることに集中するだろうということであった。

もしこのバラ色のビジョンが正確であれば、ロシアの伝統的な影響圏(sphere of influence)に民主政治体制を拡散し、アメリカの安全保障を拡大することは、ほとんどリスクを伴わないものとなっただろう。しかし、優れたリアリストなら誰でも言うことだが、そのような結果などはありえないのだ。実際、拡大反対派は、ロシアがNATO拡大を脅威とみなすことは必至であり、拡大が進めばモスクワとの関係が悪化すると警告していた。だから、外交官のジョージ・ケナン、作家のマイケル・マンデルバウム、ウィリアム・ペリー元国防長官など、米国の著名な専門家たちは、最初から拡大に反対していた。ストローブ・タルボット国務副長官やキッシンジャー元国務長官も当初は同じ理由で反対していたが、後に立場を変えて拡大派に転じた。

拡大賛成派は、東ヨーロッパや中央ヨーロッパの新しい民主政治体制国家群の民主政体を確立する(consolidate)こと、そして全ヨーロッパに「広大な平和地帯」を作ることができると主張し、議論に勝利した。彼らの考えでは、NATOの新規加盟国が同盟にとってほとんど、あるいはまったく軍事的価値がなく、防衛が困難であろうとも問題ではなく、平和は非常に強固で永続的であり、それらの新規加盟国を守るという誓約は口先だけのことで、守る必要などないと考えられた。

モスクワはポーランド、ハンガリー、チェコのNATO加盟を容認せざるを得なかった。しかし、NTOの拡大が推進される間に、ロシアの懸念は高まっていった。1990年2月、当時のジェイムズ・ベイカー米国務長官がソ連のゴルバチョフ書記長に対して、もしドイツがNATO内で統一することを許されるなら、同盟は「1インチも東進しない」と口約束した。ゴルバチョフがこの口約束を文書化しなかったことは愚かなことだった。ベイカーと関係者たちはこうした主張に異議を唱え、ベイカーは正式に約束をしたことはないと否定している。2003年にアメリカが国際法を無視した形でイラクに侵攻し、2011年にオバマ政権が国連安保理決議1973号で与えられた権限を大きく逸脱して、リビアの指導者ムアンマル・カダフィを追放したことで、ロシアの疑念はさらに強まった。ロシアはこの決議の採決で棄権したため、ロバート・ゲイツ元米国防長官は後に「ロシアは自分たちがコケにされたと感じた(the Russians felt they had been played for suckers)」とコメントしている。このような経緯から、モスクワが文書による保証にこだわるようになったのである。

アメリカの政策立案者たちがアメリカの歴史と地理的な感覚を振り返ったならば、拡大がロシアのカウンターパートたちにどのように映ってきたかを理解できたはずである。ジャーナリストのピーター・ベイナートが最近指摘したように、アメリカは西半球を他の大国が立ち入れないようにすると繰り返し宣言し、その宣言を実現するために何度も武力で脅し、実際に武力を行使してきた。例えば、冷戦時代、レーガン政権はニカラグア(ニューヨーク市より人口の少ない国)の革命に危機感を抱き、反政府軍を組織して社会主義のサンディニスタ政権を打倒しようとした。アメリカ人がニカラグアのような小さな国をそこまで心配するのなら、なぜロシアが世界最強の同盟であるNATOのロシア国境への着実な進行に対して深刻な懸念を抱くのか、理解するのはそれほど難しいことだったのだろうか? 大国が自国周辺の安全保障環境に極めて敏感であることは、リアリズムによって説明されるが、リベラルな拡大政策の立案者たちは、このことを理解できなかったのである。これは、戦略的に重大な結果をもたらす、共感(empathy)を欠いたことによる重大な失敗であった。

NATOは、「拡大は自由で強制などされないプロセスであり、加盟基準を満たした国であればどの国でも加盟できる」と繰り返し主張していることがこの誤りをさらに大きくしている。ところで、この主張はNATO条約に書かれていることとは全く異なる。NATO条約第10条には次のように書かれているだけだ。「締約国は、全会一致の合意により、この条約の原則を推進し、北大西洋地域の安全保障に貢献する立場にある他のヨーロッパ諸国に対し、この条約に加盟するよう要請することができる」。ここで書かれているキーワードは「できる」である。NATOに加盟する権利を持つ国はなく、加盟することで他の加盟国の安全が損なわれる場合はなおさらである。詳細は置いておいて、この目標を屋上から叫ぶのは無謀であり、不必要なことであった。どんな軍事同盟も、既存の締約国が同意すれば、新しい加盟国を組み込むことは可能であり、NATOは何度かそうしてきた。しかし、東方拡大への積極的かつ無制限の関与を公然と宣言することは、ロシアの恐怖をさらに増幅させるに違いないのである。

次の誤りは、2008年のブカレスト首脳会議で、ブッシュ政権がグルジアとウクライナをNATO加盟国に推薦したことである。元国安全保障会議スタッフのフィオナ・ヒルは最近になって、アメリカの情報機関がこの措置に反対していたにもかかわらず、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領がその反対意見を無視した理由を明らかにした。ウクライナもグルジアも2008年の時点で加盟基準を満たすには程遠く、他のNATO加盟国も加盟に反対していたため、このタイミングは特におかしかった。その結果、NATOは両国の加盟を宣言したものの、その時期については明言しないという、イギリスが仲介した不明瞭な妥協案の通りとなった。政治学者のサミュエル・チャラップは次のように述べている。「この宣言は最悪のものだった。ウクライナとグルジアの安全保障を高めることはなかった上に、NATOが両国の加入を決めているというモスクワの見方が強まった。イヴォ・ダールダー元NATO担当米国大使が、2008年の決定をNATOの 「大罪(cardinal sin)」と評したのも当然のことだろう。

次に誤りが起きたのは2013年と2014年だった。ウクライナ経済が低迷する中、当時のヤヌコビッチ大統領は、経済支援を求めてEUとロシアの間で経済分野での綱引きを行うよう働きかけた。その後、ヤヌコビッチ大統領は、EUと交渉した加盟協定を拒否し、ロシアからのより有利な提案を受け入れたため、ユーロマイダン抗議運動が起こり、最終的に大統領は失脚することとなった。アメリカは、ヤヌコビッチの後継者選びに積極的に関与し、デモ隊を支持する姿勢を露骨に打ち出し、「西側が全面支援したカラー革命(Western-sponsored color revolution)」というロシアの懸念を一蹴した。しかし、欧米諸国の関係者は、ロシアがこの事態に異を唱えることはないのか、それを阻止するために何をするのか、全く考えなかったようだ。その結果、プーティン大統領はクリミアの占領を命じ、ウクライナ東部のロシア語圏の分離主義勢力を支援し、ロシアとウクライナ両国は凍結された紛争(frozen conflict)状態に陥り、現在に至っている。

西側世界では、NATOの拡大を支持し、ウクライナ危機についてプーティンだけに責任を負わせることが当然となっている。ロシアの指導者プーティンは同情に値しない。彼の抑圧的な国内政策、明白な腐敗、これまでつかれてきた多くの嘘、政権に危険を及ぼさないロシア人亡命者たちに対する複数の殺人が明白であり、プーティンは同情に値しない。また、ロシアは、ウクライナがソ連から引き継いだ核兵器を放棄する代わりに安全保障を提供するという1994年のブダペスト・メモを踏みにじっている。クリミアの不法占拠によって、ウクライナやヨーロッパの世論はモスクワに対して大きな反感を持つようになった。ロシアがNATOの拡大を懸念するのは当然として、近隣諸国がロシアを懸念する理由も十分に存在するのである。

しかし、ウクライナ危機はプーティンだけの責任ではないし、プーティンの行動や性格に対する道徳的な怒りは戦略にはなり得ない。また、制裁を強化しても、プーティンが欧米諸国の要求に屈することはないだろう。しかし、プーティンが旧ソ連を懐かしむ冷酷な独裁者だからウクライナを確保したいと考えているのではなく、ウクライナの地政学的配置はロシアにとって重要な利益であり、それを守るために武力行使も辞さないということをアメリカと同盟諸国は認識しなければならない。大国は国境に接する地政学上の勢力に無関心ではいられないし、ロシアは仮に別の人物が政権を取ったとしてもウクライナをめぐる情勢に大きな関心を持つはずだ。この基本的な現実を欧米諸国が受け入れないことが、今日の世界を混乱に陥れた大きな原因なのだ。

言い換えるならば、プーティンは銃口を突きつけて大きな譲歩を引き出そうとして、この問題をより難しいものにしている。たとえプーティンの要求が完全に合理的であったとしても(合理的でないものもあるが)、アメリカと他のNATO諸国には、彼の脅迫的な試みに抵抗する正当な理由が存在する。繰り返しになるが、リアリズムがその理由を理解する助けになる。全ての国家が最終的に独立している世界では、脅迫される余地があることを示すと、脅迫者は新たな要求をするようになるかもしれないのだ。

この問題を回避するためには、この交渉を「恫喝(blackmail)」から「相互牽制(mutual backscratching)」に変えていかなければならない。論理は簡潔だ。あなたが私を脅すなら、私はあなたの望むものを与えたくない。なぜなら、それは不安な前例となり、あなたが同様の要求を繰り返したり、エスカレートさせたりするよう誘惑するかもしれないからだ。しかし、もしあなたが私に同じように欲しいものをくれるなら、私はあなたが欲しいものをあげるかもしれない。あなたが私の背中を掻くなら、私もあなたの背中を掻く。このような前例を作ることは何も悪いことではない。実際、これは全ての自発的な経済交換の基礎となっている。

バイデン政権は、ミサイル配備などの二次的な問題について互恵的な合意を提案し、将来のNATO拡大の問題をテーブルから取り除こうとしているように見える。私はウェンディ・シャーマン米国務副長官の粘り強さ、洞察力、交渉力には敬意を表するが、このアプローチはうまくいかないと私は考える。その理由は何か? なぜなら、最終的にはウクライナの地政学的な配置がクレムリンにとって重要な利益であり、ロシアは具体的な何かを得ることにこだわるだろうからだ。バイデン米大統領はすでに、アメリカはウクライナを守るために戦争はしないと明言している。ロシアのすぐ隣にあるこの地域で戦争ができる、あるいはすべきだと考えている人々は、私たちがまだ1990年代のアメリカ一極の世界にいて、魅力的な軍事オプションをたくさん持っていると考えているようだ。

しかし、選択肢の少ないアメリカの交渉団は、ウクライナが将来的にNATOに加盟するオプションを保持することに固執しているようで、これこそモスクワがアメリカに放棄させたがっているものだ。アメリカとNATOが外交で解決しようとするならば、ロシアに対して本格的に譲歩しなければならないだろうし、望むようなものがすべて手に入るとは限らない。私は読者であるあなた方以上にこの状況を好まない。しかし、それがNATOを合理的な範囲を超えて不用意に拡大したことの代償なのだ。

この不幸な混乱を平和的に解決するための最善の方法は、ロシアと西側が最終的にキエフの忠誠を得るために争うことは、ウクライナにとって厄災であることをウクライナ国民とその指導者たちが認識することである。ウクライナは率先して、いかなる軍事同盟にも参加しない中立国(neutral state)として活動する意向を表明すべきなのだ。NATOに加盟せず、ロシア主導の集団安全保障条約機構にも参加しないことを正式に誓うべきだ。その場合でも、どの国とも自由に貿易を行い、どの国からの投資も歓迎し、外部からの干渉を受けずに自国の指導者を選ぶ自由があるはずだ。キエフが自らそのような行動を取れば、アメリカやNATOの同盟諸国はロシアの恫喝に屈したと非難されることはないだろう。

ウクライナ人にとって、ロシアの隣で中立国として生きることは、理想的な状況とは言い難い。しかし、その地理的位置からして、ウクライナにとっては現実的に期待できる最良の結果である。現状よりもはるかに優れていることは間違いない。1992年からNATOがウクライナの加盟を発表した2008年まで、ウクライナは事実上中立国であった。この間、ウクライナが深刻な侵略の危機に直面したことは一度もなかった。しかし、現在、ウクライナの大部分では反ロシア感情が高まっており、このような出口が見つかる可能性は低くなっている。

この全体として不幸な物語におけるもっとも悲劇的な要素はそれが回避可能だったということだ。しかし、アメリカの政策立案者たちがリベラルな傲慢さを抑え、リアリズムの不快ではあるが重要な教訓を十分に理解するまでは、今後も同様の危機につまずく可能性が高いだろう。

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 古村治彦です。

 2021年5月29日に発売しました最新刊について、担当編集者からもっと頑張って宣伝するようにと発破をかけられました。出版社がどのような宣伝をしているのか全く分かりませんが、私はできることが限られておりますので、自分が利用している媒体を使ってお知らせをするしかできません。

ですので、ブログ記事の冒頭にてご紹介させていただくスタイルをしばらく継続いたします。「もう飽きたよ」「見づらい」という方には申し訳ありませんが、本が売れるかどうかは次の出版につながるかどうか、ということにも関連しますので、しつこくやります。また、ブログは無料で公開していますが、このスタイルが良いのか、宣伝媒体としての力がないのではないかと考える場合には閉鎖も含めて検討したいと思います。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

  民主党進歩主義派(ポピュリズム派)を代表する4名の女性連邦下院議員たち(「スクアット(The Squad)」と呼ばれている)に対する非難決議案が連邦下院に提出された。この4名については拙著でも取り上げている。その理由は、アメリカとイスラエルをテロ組織タリバンとハマスと同列に並べるような発言をしたこと、テロ攻撃を擁護するかのような発言を行ったこととされている。提出したのはいずれも共和党所属の下院議員たちだ。
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左からAOC、プレスリー、オマル、タリーブ
 イスラエルに関してとなると、アメリカ政界では過剰とも言える反応が出る。それは、「イスラエル・ロビー(Israel Lobby)」と呼ばれる、親イスラエル系の組織や団体が資金や動員力を使って、アメリカの政治家たちを脅し上げているからだ。これによって、イスラエルが行う行為をアメリカが正当化するということになる。「反イスラエル」というレッテル貼りをされると、選挙では勝てない。また、ナチスと同じくらいに悪い人間ということにされる。

 アメリカ国内でも「Jストリート」のような穏健で、イスラエルに対しては是々非々の、手厳しい姿勢を取っている、ユダヤ系アメリカ人団体もあるが、全体としては、なんでもイスラエル擁護、イスラエル国内のユダヤ人たちよりも強硬な姿勢を取るユダヤ系アメリカ人たちが多くいる。

 ビビ・ネタニヤフ首相が退陣、ということが起き、イスラエルで政権交代が起きた。こうした時期に、連邦下院で、イスラエルに対して厳しい姿勢を取っているとされる議員たちに対する非難決議案が出されたというのは、これら2つの出来事は関連していると考えねばならない。中東和平、パレスチナ和平で、イスラエル・ロビーやイスラエル国内の強硬派を置き去りにして、アメリカが主導して何らかの妥協を行うことをけん制する目的があるのだろうと考えられる。

しかし、そもそもバイデン政権にとっての主要政策は、対中、対露政策であり、中東政策の重要性は下がっていると思われる。そのことにイスラエルは危機感を持っていることだろう。その危機感がアメリカ国内のイスラエル・ロビーに伝わり、連邦議員たちを動かしているという構図になっていると考えられる。

(貼り付けはじめ)

連邦下院共和党が「スクアッド」を非難する決議案を提出(House Republicans introduce resolution to censure the 'Squad'

マイケル・シューネル筆

2021年6月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/558280-house-republicans-introduce-resolution-to-censure-omar-ocasio-cortez-tlaib-and?fbclid=IwAR3zP3fqVrmT1SsKFY-Jj1foReDjFZa_ADKdiTCrjreuqwoEw8veizvQg3Y

共和党所属の連邦下院議員3名は月曜日、民主党所属の連邦下院議員であるイルハン・オマル(Ilhan Omar、ミネソタ州選出)、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio-Cortez、ニューヨーク州選出)、ラシダ・タリーブ(Rashida Tlaib、ミシガン州選出)、アヤンナ・プレスリー(Ayanna Pressley、マサチューセッツ州選出)に対する批判決議案を提出した。その理由は4名の議員たちは「テロリスト組織を擁護し、アメリカ各地での反ユダヤ攻撃を誘発した」というものだ。

決議案を提出したのは、マイク・ウォルツ(Mike Waltz、フロリダ州選出、共和党)、ジム・バンクス(Jim Banks、インディアナ州選出、共和党)、クラウディア・テニー(Claudia Tenney、ニューヨーク州選出、共和党)の3名だ。時に「ザ・スクアッド(The Squad 訳者註:部隊という意味)」と呼ばれる4名の議員たちは多くの事件を引き起こしている。最も最近批判を集めているのはオマルで、タリバンとハマスというテロ組織の戦争犯罪とアメリカとイスラエルの戦争犯罪を同列に並べた発言が攻撃を受けている。
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テニーとバンクス
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ウォルツ

決議案は更に、4名の下院議員がイスラエルを「アパルトヘイト国家(apartheid state)」と呼んだとし、タリブに関しては、イスラエル政府がパレスチナ人たちに対して「民族浄化(ethnic cleansing)」を行っていると発言したとしている。

ウォルツはプレスリリースの中で次のように述べている。「アメリカの緊密な同盟国であるイスラエルに対するハマスによるテロ攻撃を公の場で擁護し、危険な言葉遣いで全米各地での反ユダヤ攻撃を誘発している連邦議員たちの存在から目を背けることはできない」

バンクスも同様の声明を発表し、その中で、4名の議員たちは繰り返し、アメリカとアメリカに近い同盟諸国を侮辱してきた、と述べている。

最近、批判を浴びたのは、オマルが先週の連邦下院外交委員会での公聴会の席上、アントニー・ブリンケン国務長官に対して、アフガニスタンにおけるタリバンとアメリカ軍による犯罪についての国際刑事裁判所による捜査について質問した際に、ガザをめぐる紛争でのハマスとイスラエルについても同様の質問を行ったことだ。

オマルは、ブリンケンに対する質問の件についてヴィデオ撮影した弁明をツイートした。そして、次のようにツイートした。「人道に対する罪の被害者全てに対して説明責任と正義をもたらす必要がある。私たちは、アメリカ、ハマス、イスラエル、アフガニスタン、タリバンによる考えられないレヴェルの残虐行為を目撃している。私はブリンケン国務長官に対して、このような人々が正義を求めるためにはどこに向かうべきかという質問を行った」。

ソマリア難民のオマルは連邦議員に選ばれた最初のイスラム教徒女性2名のうちの1名である。オマルは、アメリカとイスラエルをテロ組織と同列に並べた発言をしたのではないということを明確にしようと努力を続けている。

オマルは声明の中で次のように述べた。「月曜日、私はアントニー・ブリンケン国務長官に対して、国際刑事裁判所によって現在も継続されている捜査について質問した。ここで明確にしておきたい。私たちの質疑応答は国際刑事裁判所が捜査している個別の事件についての説明責任についてであった。ハマスとタリバンとアメリカとイスラエルとの間の道徳上の比較を行うことが目的ではなかった」

オマルに対する批判が高まる中、先週、連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)と連邦下院民主党指導部は、稀なケースであるが、共同で声明を発表した。この声明は拡大していく論争と攻撃を鎮める目的を持っていた。しかし、声明では、「民主政治体制国家とテロリズムに関与する諸組織(ハマスとタリバン)を同列に扱うという過ちを犯し」、また、「偏見を助長し、平和と安全保障の未来に向かう進歩を損ねる」としている。

日曜日、ペロシはCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、ペロシは連邦下院民主党指導部に対して、オマルを「叱責しないように」求め、オマルは「連邦下院にとって重要なメンバー」であると発言した。

今年2月、別の非難決議案が民主党によって出され、この決議案は可決した。評決は党派のラインに沿って行われた。この決議によって、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)から連邦下院の各委員会からの排除が決定された。その理由は、グリーンが陰謀論と人種差別的な主張、民主党の政治家たちに対する暴力を支持してきたというものだった。

本誌はオマル、AOC、タリブ、プレスリーにコメントを求めた。

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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