古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:イタリア

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも詳しく書いたが、西側諸国では、エネルギー高から波及しての、物価高が続き、ウクライナ支援も合わせて、「ウクライナ疲れ」「ゼレンスキー疲れ」が国民の間に生じている。「早く戦争を終わらせて欲しい」「取り敢えず停戦を」という声は大きい。

ウクライナ戦争勃発後、アメリカとヨーロッパ諸国(西側諸国)は、ロシアに対して経済制裁を科した。ロシアからの格安の天然ガスを輸入していたが、輸入を停止することになった。アメリカはそれに代わって、天然ガスをヨーロッパ向けに輸出することになったが、ヨーロッパの足元を見て、高い値段で売りつけている。これはヨーロッパ諸国の人々からの恨みを買っている。以下の記事では、西側諸国の制裁がロシアに大きな打撃を与えており、ヨーロッパ諸国の経済には影響を与えていないということだが、かなり厳しい主張ということになるだろう。
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 10年ほど前から、ヨーロッパ諸国で勢力を伸長させているポピュリスト勢力(アメリカのドナルド・トランプ大統領誕生も同じ流れ)は、プーティン寄りの姿勢を取り、ウクライナ戦争の停戦を求めている。これは、アメリカで言えば、連邦議会の民主党左派・進歩主義派議員たちと、共和党のトランプ派議員たちの考えと同じだ。彼らもまた、アメリカの国内世論の一部を確実に代表している。
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ポピュリスト勢力は人種差別的と批判される。そういう側面もあるが、彼らは既存の政治に対する、人々の不満を吸い上げ、代表している。エスタブリッシュメントたちが主導する政治が戦争をもたらしていると多くの人々が考えている。トランプ前大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」は「孤立主義(Isolationism)」を基礎としているが、これは「国内問題解決優先主義」と訳すべきだ。そして、「アメリカ・ファースト」は「アメリカが何でもナンバーワン」ということではなく、「アメリカのことを、まず、第一に考えよう」ということだ。ここのところを間違ってはいけない。ポピュリストたちに共通しているのは、「外国のことに首を突っ込んで、税金を浪費するのではなく、自国の抱える諸問題を解決していこう」ということであり、そうした側面から見れば、ポピュリストたちが違って見えてくる。

(貼り付けはじめ)

ヨーロッパのポピュリストたちが制裁反対の戦いでクレムリンに加わる(European Populists Join the Kremlin in Anti-Sanctions Fight

-彼らは「制裁はロシアよりもヨーロッパを傷つける」と誤った主張を展開している。

アガーテ・デマライス筆

2024年3月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/11/russia-sanctions-oil-gas-populists-europe-elections/?tpcc=recirc_latest062921

ヨーロッパのポピュリスト政党の多くがロシアに友好的な傾向を持つことを考えれば、ヨーロッパのポピュリストたちがしばしばクレムリンの主張をオウム返しにしたがるのも当然と言えるだろう。最近では、極右から極左まで多くのヨーロッパの政党が要求しているように、欧米諸国の対モスクワ制裁の停止を求めることもその1つだ。

対モスクワ制裁解除要求の背後にある通常のシナリオは基本的なものだ。フランスの「国民連合(National RallyRassemblement National)」、ドイツの「ドイツのための選択肢(Alternative for GermanyAlternative für Deutschland)」、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相はいずれも、制裁は裏目に出ており、ヨーロッパ経済には打撃を与えているが、モスクワには打撃を与えていないと主張している。EU全域のポピュリスト政党が6月のヨーロッパ議会選挙に向けて準備を進めており、このような論調はますます目立つようになるだろう。だからこそ、このような誤った主張を論破する絶好の機会なのだ。

ロシアに好意的な政治家たちが最もよく口にするのは、制裁がヨーロッパの企業や消費者を破滅に追いやるというものだ。これらの主張の中で最も広まっているのは、制裁がヨーロッパにおけるエネルギー価格の高騰(およびインフレ)を引き起こしているというものだが、これは最も簡単に反証できる。2022年初頭に世界の炭化水素価格が高騰したのは、ロシアによるウクライナ攻撃とヨーロッパに対するガス恐喝がきっかけだった。欧米諸国がロシアのエネルギー輸出に制裁を課し始めたのは、その年の11月であり、石油・ガス価格はすでに下落していた。

もう1つの主張は、制裁がロシア市場へのアクセスを失ったEUの輸出志向企業にペナルティを与えているというものだ。しかし、現実はもっと穏やかなものだ。ロシアはEU企業にとって決して主要な市場ではなく、2021年にロシア企業がEUの輸出品のわずか4%を購入したにすぎない。EUの対ロ輸出の約半分が制裁の対象となることを考えると、EUの輸出のわずか2%が影響を受けることになる。

フランスの研究機関である国際経済予測研究センター(Centre d'Etudes Prospectives et d'Informations Internationales)の国家レヴェルのデータは、この評価を裏付けている。それによると、対ロ制裁がフランス経済に与える影響はほとんど無視できるもので、フランスの輸出のわずか0.8%、約40億ユーロ(44億ドル)しか影響を受けていない。視点を変えれば、これはフランスのGDPの0.1%ほどに相当する。この調査はフランスのみを対象としているが、おそらく他のEU経済圏でもこの調査結果は劇的に変わることはないだろう。ドイツ企業と並んで、フランス企業はヨーロッパでロシアと最も深い関係にある企業である。このことは、他の多くのヨーロッパ諸国の企業は、より少ない影響しか受けていないことを示唆している。

制裁がヨーロッパ経済を圧迫しているというクレムリン寄りの主張の別のヴァージョンは、EU企業が制裁のためにロシアへの投資を断念せざるを得なかったという考えに基づいている。例えば『フィナンシャル・タイムズ』紙は、ウクライナへの本格的な侵攻が始まってから2023年8月までの間に、ヨーロッパ企業はロシア事業から約1000億ユーロ(約1094億ドル)の損失を計上したと計算している。

この数字は正確かもしれないが、制裁と大いに関係があるという考えは精査に耐えない。現段階では、制裁によってヨーロッパ企業がロシアでビジネスを行うことは、防衛など一部の特定分野を除けば妨げられていない。それどころか、ヨーロッパ企業のロシアでの損失には他に2つの原因がある。1つは、風評リスクを恐れ、ロシアの税金を払いたくないためにモスクワの戦争に加担したくないという理由で、多くの企業が撤退を選択したことだ。

損失の第二の原因は資産差し押さえの急増で、クレムリンは多くのヨーロッパ企業に、場合によってはわずか1ルーブルの価値しかない資産の売却を迫っている。言い換えれば、仮に制裁がない世界であったとしても、かつてロシア市場に賭けていたヨーロッパ企業は現在、大規模な損失に直面している。もちろん、クレムリンは、収用は制裁に対する報復手段に過ぎないと主張している。この台詞は、欧米諸国の侵略から自国を守るためだけだというモスクワのインチキ主張の長いリストの、もう1つの項目にすぎない。

ヨーロッパのポピュリスト政治家たちが好んで売り込むもう1つの論点は、ロシアのエネルギーに対するヨーロッパの制裁は、これまで見てきたように、コストがかかるだけでなく、役に立たないというものだ。この神話(myth)にはいくつかのヴァージョンがあるが、最もポピュラーなものは、G7とEU加盟諸国が合意したEUの石油禁輸と石油価格の上限は、ロシアの石油生産者に影響を与えないというものだ。それは、ロシアは、ヨーロッパ向けの石油をインドに振り向けることができるからだ。

実際、以前はヨーロッパ向けだったロシアのバルト海沿岸の港からの原油輸出の大部分は、現在インドの精製業者が吸収している。しかし、このような見方は、モスクワにとってインドの精製業者に石油を売ることは、ヨーロッパに売るよりもはるかに儲からないという事実を無視している。インドへの航路は、ヨーロッパへの航路よりもはるかに長い(したがってコストが高い)。加えて、インドのバイヤーたちは値切ることができる。彼らは、ヨーロッパ市場の損失を補うことでクレムリンの好意を受けていると考えており、そのためロシア産原油の急な値引きを受ける権利がある。

キエフ経済学院の研究によれば、ロシアの損害は無視できるものではないという。過去2年間で、クレムリンは推定1130億ドルの石油輸出収入を失ったが、その主な原因はEUによるロシア産石油の禁輸だった。EUの禁輸措置とG7とEUの石油価格上限がともに完全に効力を発揮した昨年、ロシア全体の貿易黒字は63%減の1180億ドルに縮小し、ウクライナ戦争を遂行するためのクレムリンの財源に制約を課すことになった。

ロシアの石油輸出企業にとって、今年は良い年にならないかもしれない。先月クレムリンは、輸出収入の減少を国家に補填するため、石油会社は利益の一部を放棄する必要があると発表した。ロシアの石油会社ロスネフチなどにとって、モスクワが国内のエネルギー企業に戦争資金調達への直接的な協力を求めるのは初めてのことだ。

制裁の実施が強化されるにつれ、制裁は無意味だという考えはさらに薄れていくだろう。 2023年10月以来、アメリカはG7とEUの原油価格上限を回避してロシア産原油を輸送していたタンカー27隻に制裁を課しており、これにより、どちらかの圏に拠点を置く企業がこれらのタンカーと取引することは違法となる。これは西側諸国の制裁解釈の劇的な変化を浮き彫りにしている。最近まで、価格上限はG7かEUを拠点とする海運会社または保険会社がロシア石油の輸送に関与する場合にのみ適用されていた。ワシントンは現在、西側企業とのつながりをより広範囲に解釈している。

たとえば、ロシアの幽霊船団(ghost fleet)のかなりの割合を占めるリベリア船籍のタンカーは、リベリアがアメリカを拠点とする企業に船籍業務を委託しているため、現在では石油価格上限の対象となる。これと並行して、西側諸国はインドの石油精製業者への圧力を強め、ロシアからの石油供給を止めるよう働きかけている。クレムリンを落胆させているのは、こうした努力が功を奏しているように見えることだ。今年に入ってから、インドのロシア産原油の輸入量は、2023年5月のピークから徐々に約3分の1に減少している。

制裁はロシアに損害を与えるよりもヨーロッパに損害を与えるというポピュリストたちの主張は、精査に耐えられない。現実には、これらの措置がヨーロッパ企業に与える影響は小さいが、ロシアは原油のルートを欧州から外そうとしているため、ますます逆風に直面している。

制裁にはコストがかかり、効果もないという主張を否定するのは簡単だが、このシナリオがすぐに消えることはなさそうだ。ロシアに好意的な政治家たちがヨーロッパ議会やその他の選挙に向けてキャンペーンを強化するにつれ、このような主張が今後数週間でますます広まることが予想される。制裁がロシアに深刻な影響を及ぼしていないのであれば、クレムリンと西側の同盟国は制裁を弱体化させるためにこれほどエネルギーを費やすことはないだろう。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか』がある。ツイッターアカウント:@AgatheDemarais

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今年、アメリカは中間選挙を迎える。現在のところ、共和党優勢(※誤字がありました。お詫びして訂正いたします)が伝えられている。総合政治サイト「RealClearPolitics」の集計によると、連邦上院(100議席、過半数は51議席)では34議席が改選となり、今のところ共和党獲得議席が47議席、民主党が46議席、残り7議席は激戦ということだ。一方、連邦下院(435議席、過半数は218議席)は、共和党が223議席、民主党が180議席、残り32議席は激戦ということだ。連邦上下両院で共和党が過半数を占める可能性が高いと見られている。バイデン政権への支持率の平均は支持が39.6%、不支持が56.1%となっている。新型コロナウイルス対策では一定の評価を得たものの、景気回復やアフガニスタンからの撤退での混乱では不支持が多くなり、昨年からのアメリカ国内のインフレーションで更に不支持が多くなっている。

 このブログでも何度かご紹介してきたが、共和党内ではドナルド・トランプ前大統領の人気が高い。トランプからの支持を得ようとする連邦議員たちは多い。一方でトランプを批判する共和党所属議員たちは支持者たちからの批判を受け、予備選挙で苦戦するということも起きている。トランプの影響力はいまだに大きい。2024年の大統領選挙に出馬する可能性まで取り沙汰されている。

 アメリカ政治におけるドナルド・トランプとは何だったのか、ということをここで改めて考えてみたい。私は拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で、「トランプがアメリカの分断を生み出したのではなく、アメリカの分断がトランプを生み出した」と書いた。この考えは今も変わっていない。トランプを支持した人々は学歴の高くない、元は民主党を支持していた、組合に入っていたような白人の労働者たちだと言われている。彼らは既存のアメリカ政界に異議を申し立てた。それがトランプ大統領誕生へとつながった。これを「ポピュリズム」と言う。ポピュリズムは、既存の政治に対しての一般国民からの異議申し立て、反対ということになる。

 トランプという異分子に対しては様々な悪罵が投げつけられた。そうした悪罵の中に、下記のような記事もあった。トランプがイタリアのベニート・ムッソリーニのようだというものだ。ムッソリーニがこのような悪罵に登場する場合には、ドイツのアドフル・ヒットラーと並べて世紀の大悪人ということで使われている。しかし、ムッソリーニを一面的に見ることは全体を理解することにはつながらない。ムッソリーニもトランプも人々によって押し上げられた指導者であることを忘れてはいけない。

ファシズムを賛美する意図はない。ただ、人々はファシズムを選んだという言い方はできると考える。一般の人々が既存の政治に異議を唱え、力強いリーダーを求める、こうした動きは確かに危険である。しかし、既存の政治がどれほど酷く堕落しているかということを明らかにし、反省を促し、少しは浄化されるように進む、そのために大きな意義があると私は考える。

(貼り付けはじめ)

アメリカの権威主義者(An American Authoritarian

―共和党の大統領選挙候補者ドナルド・トランプはファシストではない。しかし、トランプ陣営はイタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニの支配との共通点を持っている

ルース・ベン=ジアット筆

2016年8月10日

『ジ・アトランティック』

https://www.theatlantic.com/politics/archive/2016/08/american-authoritarianism-under-donald-trump/495263/

アメリカ大統領選挙の共和党候補者にドナルド・トランプが選ばれた際、ファシズム(Fascism)という言葉がアメリカのニュースに再び登場することになった。「自分は白人の代弁者だ」というポピュリスト的主張(populist claim)と、威嚇的なリーダーシップのスタイルは、バラク・オバマ大統領がトランプについて述べたように、「アメリカ国内で大きくなった権威主義者(homegrown authoritarian)」トランプと外国の独裁者たちとの比較をもたらしている。

トランプはファシストではない。彼は一党支配国家(one-party state)の樹立を目的としていない。しかし、トランプは一人の人間が主導する政治運動(one-man-led political movement)を構築した。この政治運動は伝統的なアメリカ流の政党構造に連なるものではない。また、アメリカ政治の伝統とは異なる行動を取っている。これはファシズムが始まる時に出てくる現象だ。

トランプ出現から1世紀前、ベニート・ムッソリーニはイタリア政界に華麗に出現した。イタリア政界のエスタブリッシュメントは、ムッソリーニの異端的な教義と戦術、彼の型破りな個性のために、慌てさせられ、右往左往することになった。

第一次世界大戦後に元社会党員ムッソリーニが「反政党(anti-party)」としてファシズムを生み出した時、イタリア国民の多くは何がムッソリーニの思想と行動を作っているのかを理解していなかった。彼の始めた政治運動はアウトサイダーの運動であった。「自由主義や社会主義などを前提とした、エスタブリッシュメントが作っている既存諸政党は破綻し、イタリアに深刻な脅威を与えている」という考えがムッソリーニの運動の基礎となる考えだった。

ムッソリーニは、気まぐれな熱血漢(mercurial hothead)で、政治的破壊者としての役割を楽しんでいた。ムッソリーニは、社会主義者と民族主義者を混同し、矛盾と逆説を利用して、政治に対する伝統的な考え方に挑戦し、危機を煽った。「ファシズムは国家の再建を目指すのか、それとも破壊を目指すのか? 秩序か無秩序か?」と、首相就任の6カ月前に印刷物でイタリア人を煽った。

ムッソリーニの草の根の信奉者たちは、より直接的に、支配権を主張するための前段階として、イタリアの上層部を恐怖に陥れた。ムッソリーニの扇動的なレトリックを真に受け、黒シャツ隊(blackshirts)は集会や列車、店、学校、居酒屋で、司祭を含む何千人もの政敵を殴り、処刑した。日常的な暴力が、この国を例外的な結果へと導いたのである。1922年、ムッソリーニはローマに進軍し(march on Rome)、恐怖に怯える国王に首相の座を要求した。

1920年代にイタリア人が学んだことを、アメリカ人は2016年に学んでいる。政治的な地位を求めるカリスマ性を備えた権威主義者たちについて、伝統的な政治の枠組みを通じて理解することはできない。彼らは既成の方式やプロトコルに関心を持たず、忍耐力もない。彼らは自分の家族、あるいは既に支配している人たち以外をほとんど信用せず、協力や関係構築を困難にすることが多い。彼らは別の脚本に基づいて行動し、彼らと対決しようとする者もまた同様でなければならない。

権威主義者たちの戦略は、そのような個人が信奉者たちと持つ特定の関係によって定義されている。その戦略とは、たとえその権威主義者が政権の座に就いたとしても、党の上に立つ一個人の権威への服従に基づく愛着である。ジャーナリストとしての訓練を受けたムッソリーニは、メディアを見事に利用してイタリア国民との直接的な結びつきを育み、政党やその他の権威構造を混乱させ、彼の時代は18年間も続いたのである。

トランプはまた、共和党への忠誠心をほとんど後回しにし、有権者と個人的な絆を育んでいる。そのため、彼はイヴェントで感情的な内容を強調し、「愛を感じる」、あるいは「自分を嫌う人間たち」を撃退するのである。大統領選挙の選挙戦の初期には、民主政治体制国家よりも独裁国家でよく見られる儀式を導入した。それは、彼自身への支持を誓う宣誓と、腕をまっすぐ伸ばす形の敬礼である。この個人的な絆の確保は、今後の権威主義的行動の成功の必要条件である。なぜなら、トランプと同様、指導者たちは自分が民衆の声と意志を体現していると主張することができるからである。

ムッソリーニの権力獲得は、今回の選挙戦でアメリカが見たもう一つの権威主義の特徴を例証するものでもある。カリスマを持つ指導者は、一般大衆、報道機関、政治家たちが許容できる限度を試しながら進む。この試みは早くから始まり、物議をかもすような行動や、グループや個人に対する脅迫的、屈辱的な発言によって達成される。これは、言葉や身体による暴力や、警察やその他の領域における非合法的な手法の使用に対する集団的な欲求と許容度を測るためのものだ。エリートやマスコミが境界線の押し広げの例に対してどのように反応するかによって、その指導者の将来の行動、そしてその支持者の行動の基調が決まる。

ムッソリーニが暴力によってイタリア人を試したことは、支配的な政治体制の弱さを示している。恐怖心、日和見主義、そしてイタリアの強力な左翼を打ち負かしたいという願望が混ざり合い、多くのリベラル派はムッソリーニを支持した。ほとんどのイタリア国民はムッソリーニを嫌っていたが、ある程度の権力を与えれば、主流派に転じるか、宥めることができると考えていた。ムッソリーニが首相になった後も暴力は収まらなかった。しかし、哲学者のベネデット・クローチェや元首相のアントニオ・サランドラなど、リベラル派の主要な発言者は彼を支持し続けた。

そしてついに、ファシスト勢力は行き過ぎた行動に出た。1924年6月、彼らは社会党の人気政治家ジャコモ・マッテオッティを、自分たちの選挙違反を告発した廉で暗殺した。ムッソリーニは、反対派のマスコミからその責任を追及され、政治生命をかけた最大の危機に直面する。12月になると、多くのリベラル派がムッソリーニに反旗を翻した。

彼らは、支持を撤回するのに時間がかかりすぎた。1925年1月3日、ムッソリーニはイタリアにおける民主政治体制の終焉を宣言した。ムッソリーニは議会において次のように述べた。「起こったこと全ての政治的、道徳的、歴史的責任は私一人が負う。もしファシズムが犯罪結社であったなら、私はその犯罪結社の長なのだ」。

暴力的な言動は、ファシズムが誕生して以来、その特徴となっていた。しかし、この衝撃的な演説は、「ムッソリーニは狼の皮をかぶった羊であり、いったん権力を握れば革命ではなく改革を受け入れる」という、イタリア人の多くが自らに言い聞かせていた慰めの言葉を台無しにした。1月3日とそれに続く一連の弾圧の後、イタリアのエリートたちが長年試みてきた、政治家と行動隊(the squadtist)を切り離すことは困難となった。

この1年以上、トランプはアメリカ人とアメリカの民主政治体制に類似のテストを課してきた。多くの人が不合理と見なす行動も、この枠組みのもとで考えれば冷静に納得できる。人種差別的なツイートやリツイートの数々は、トランプ陣営がその後間違いであったと宣言している。ニューヨークの五番街で誰かを撃っても支持者を失わないという彼の初期の宣言、ポール・ライアンやジョン・マケインといった有力政治家への屈辱的な発言、アメリカの選挙プロセスの正当性に疑問を投げかけたこと、ヒラリー・クリントンが裁判官を任命するという潜在的な問題を、「アメリカ合衆国憲法修正第二条を支持する人々」がおそらく彼女を射殺することで解決できるかもしれないという彼の脅迫、この最後の発言は、トランプが、アメリカ人と共和党がどれだけ自分を許してくれるのか、そして、いつ 「もうたくさんだ」と言い出すかを確かめるために、勇み足をしている証拠であろう。

権威主義者たちは通常、彼らの意図を明確に表明する。ムッソリーニは実際にそうした。トランプは彼の政策と大統領に当選した場合に攻撃対象とするグループを明確にした。大統領選挙候補者受諾演説の中で、トランプは次のように宣言した。「現在アメリカを苦しめている犯罪と暴力は、すぐに終わることになるだろう。2017年1月20日から、安全は回復されるのだ」。このようなレトリックの危険性を見極めるのに、トランプにファシストのレッテルを貼る必要はない。トランプがアメリカの良識とアメリカの民主政治体制の強さを試していることを認識するために、独裁への軌跡を見る必要はない。ムッソリーニの台頭の歴史は、イタリア版共和党(Italy’s version of a Grand Old Party)とも言えるものだった。共和党内におけるトランプの台頭は、統一以降のイタリアを支配してきた自由主義派閥の没落と重なる。彼らは総統(Duce、ドゥーチェ)への屈服から立ち直ることができなかった。共和党がこれまでのトランプ大統領の経験から得られる多くの教訓の中で、これは最も貴重なものになるかもしれない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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