古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:インドネシア

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカはインドネシアとより緊密な関係を築くべきだ。これが下に掲載した論稿の筆者の主張だ。そのためには、二国間の自由貿易協定から始めることができる。インドネシアはこれまでに何度も紹介したが、電気自動車のバッテリーの原材料であるニッケルの産出で世界をリードしている。精製されたニッケルの輸出を行っている。アメリカは、電気自動車の分野で中国と競争しているが、インドネシアとの関係を軽視している。一方で、中国は既にインドネシアに多額の投資を行っている。

 アメリカの電気自動車メーカーであるテスラを率いるイーロン・マスクが先月中旬、インドネシアを訪問した。イーロン・マスクが展開している衛星通信サーヴィスであるスターリンクのインドネシアでの運用を行うための訪問であったが、訪問の目的はそれだけではないだろう。バッテリー工場の建設など、電気自動車に関することも話し合われたことだろう。イーロン・マスクは中国を訪問して、中国最高指導部層と緊密な関係を築くなど、独自の動きをしている。彼にはインドネシアの重要性が分かっている。

 インドネシアは、中国一辺倒でもなく、アメリカ一辺倒でもない。全方位外交とも言うべき方針で、実力を貯めて、21世紀中の大国化を目指している。東南アジア地域の地域大国となっているが、ブリックスでの地位向上、G20での地位向上を通じて、世界政治での大国の立場を獲得することになるだろう。アメリカとしては、中国包囲網の重要なピースとして考えているようだが、20世紀のように、アメリカが一声かければ、誰でもついていくという時代ではない。インドネシアは、グローバルサウスに属しながら、西側諸国ともうまく付き合っていく。力関係が大きく変化していく中で、賢い選択を行っている。

 アメリカが中国包囲網にインドネシアを組み込むためには、それ相応の見返りが必要であるが、アメリカにインドネシアが満足するだけの見返りを与えるほどの力はないし、インドネシアは既に施しをもらって喜ぶ段階にはない。世界は大きく変化している。

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インドネシアはアメリカのインド太平洋戦略にとって欠けている部分だ(Indonesia is the missing piece in America’s Indo-Pacific strategy

フィリップ・シェトラー=ジョーンズ筆

2024年6月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/4712299-indonesia-is-the-missing-piece-in-americas-indo-pacific-strategy/

週末にシンガポールで開催されたシャングリラ対話年次総会(annual Shangri-La Dialogue)の結果から判断すると、中国がインド太平洋地域で覇権を獲得するのを阻止する、アメリカの戦略は前進している。

アメリカの支持が確実視される中、基調講演者であるフィリピン大統領フェルディナンド・“ボンボン”・マルコスは、「フィリピンは中国からの圧力に屈しない」と宣言した。アメリカ、日本、韓国の三国間の防衛協力を深めるための新たな取り組みが発表された。インド太平洋地域における不用意なエスカレーションを防ぐため、米中軍事対話は2年間の中断を経てトップレヴェルで再開された。

しかし、満足する余地はほとんどない。アメリカのインド太平洋政策には、依然として矛盾が多すぎる。これらの矛盾を未解決のまま放置すると、時間の経過とともに、同盟諸国を中立的な方向へ、現在および潜在的なパートナーを更に悪い方向へと押しやる可能性がある。このリスクはインドネシアに関して最も顕著だ。

西側諸国の間で、インドネシアの重要性を理解し、研究している人がほとんどいないことを理解するには、今年初めにインドネシアの現国防大臣であるプラヴウォ・スビアントが9600万票を超える票を獲得して、インドネシアの大統領選挙に勝利したことを考えてみよう。

この選挙結果だけでも、世界第2位と第3位の民主政体国家間の密接な関係を示す理由になるはずだ。特に、中国が西側型の民主政治体制が中国の経済発展への道とは相容れないことをグローバルサウスに説得しようと努めている場合にはそうだ。

それでも、単に選挙を実施するだけでは、その国はアメリカの同盟国にはなれない。しかし、国際ルールに基づく秩序に関しては、インドネシアはまったく警戒していない。ジョコ・ウィドド現大統領が2023年11月にジョー・バイデン米大統領と会談した際、共同声明はロシアに対しウクライナ領土からの完全撤退を求めた。

しかし、プラヴウォはシャングリラでの演説の中で、ガザ紛争に対するインドネシアの立場は、同じ国際秩序の遵守を前提としていると述べた。プラヴウォは、多くのグローバルサウス諸国の間で幻滅が高まっていることを警告し、インドネシアの外交政策の原理原則は、アジアにおけるルールに基づく秩序の強化ということである、と述べた。これは、アメリカの利益に有利に働いているという、見落とされているが重要な真実をほのめかしたことである。

インドネシアを揺るぎないパートナーにするためには、インドネシア人が大切にしているものについてもっと譲歩する必要がある。民主党も共和党もこれを優先する必要がある。人口約3億人のイスラム教徒が多数を占めるこの国は、2050年までに世界第4位の経済大国になると予測されている。東南アジアにおける影響力をめぐる地政学的競争において、インドネシアは究極のアメリカの帰趨を決める国家(swing state)である。

より良い連携を図るために、アメリカは貿易から始めるべきだ。残念ながら、この政策分野におけるバイデン政権のアプローチは、インドネシアを疎外させ、アメリカの主な競争相手との関係を緊密化させる危険性がある。そして、バイデン大統領のインフレ抑制法(Inflation Reduction ActIRA)が最大の妨害要因(spoiler)である。

インフレ抑制法は、重要な鉱物がアメリカまたは自由貿易協定(free trade agreementFTA)を結んでいる国から供給される場合、アメリカの製造業者に税額控除を認めている。しかし、こうした贅沢な補助金が共謀して、インドネシアのような国をサプライチェーンから締め出している。インドネシアは回避策として重要な鉱物のみを対象とする限定的なFTAを提案している。しかし、完全に否定されていないものの、アメリカ政府の鈍行状態にある。

これは自分の足を2回撃つ事件のようなものだ。これはG20諸国に、その重要な鉱物産出量に飢えている他の国々との経済連携を深めるよう促すだけでなく、アメリカが自国の電気自動車(EV)産業を創設するために必要な主要なサプライチェーンから切り離すことにもなる。 EVにはニッケルが必要で、インドネシアには世界最大の埋蔵量がある。2030年までに世界の供給量の65%を占めるようになり、ヴァリューチェーンの上位への移行を支援するパートナーを探している。アメリカはこの機会を捉えるべきだ。その後、加工済みの原材料をインドネシアから調達し、アメリカの消費者が米国製のEVを購入できるようにする。それが中国の言うところの「ウィンウィン(win-win)」だ。

第二に、アメリカはインドネシアとの防衛関係にもっと努力しなければならない。中国は、日本、フィリピン、ヴェトナム、マレーシアとの領土紛争に関して、国際法に何の根拠もなく組織的に一方的な主張を行っている。南シナ海のインドネシアのナトゥナ諸島に狙いを定めるのも時間の問題だ。

インド太平洋におけるインドネシアの重要な位置を考慮すると、アメリカは海洋安全保障協力に関する二国間作業計画への投資を強化すべきである。これは、領土の隅々まで、そして国際法によって認められた海洋経済的権利のあらゆる側面を保護するための、列島国家の海洋安全保障能力を囲い込むことになるだろう。アメリカのインド太平洋戦略の観点から見ると、より有能なインドネシアは、マラッカの要所をより強固に守り、オーストラリアの上空を守る盾となる。プラヴウォが2023年11月にロイド・オースティン米国防長官と署名した防衛協力協定を完全に履行するには一刻の猶予もない。

インドネシアは、アメリカの政策がインド太平洋における優先事項と交差する目的でどのように機能するかを例示している。世界秩序と経済が崩壊する中、重要な同盟を維持し発展させるために、政府の全ての部門が同じ方向に取り組む必要がある。アメリカは、世界で2番目に大きい民主政体国家であるインドネシアを経済的に受け入れることから始めることができる。

※フィリップ・シェトラー=ジョーンズ:世界で最古の、イギリスにある国防と安全保障専門のシンクタンクである英国王立防衛安全保障研究所(Royal United Services InstituteRUSI)国際安全保障担当上級研究員(博士)。最近の研究テーマはインド太平洋地域安全保障である。
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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカのジョー・バイデン大統領は、中国からアメリカに輸出される電気自動車の関税を100%に引き上げると発表した。電気自動車をめぐり、米中の間は争いになっている。

バイデン大統領が強いドル政策を維持していれば、自然とアメリカからの輸出は高くなり、中国からの輸入は安くなる。関税を引き上げて、国内メーカーを保護するにしても、アメリカ最大の電気自動車メーカーであるテスラは中国との関係は悪くないし、既に進出して一定のシェアを保っている。

アメリカのテスラ(Tesla Motors)のイーロン・マスクは、中国との関係が悪くないどころか、良好である。上海にテスラの工場があり、テスラにとっての最大の市場は中国市場である。テスラのイーロン・マスクにしてみれば、バイデン政権の輸入電気自動車の関税引き上げは、中国からの報復を引き起こす可能性があり、迷惑なことだろう。テスラは電池だけの電気自動車に特化しており、バッテリー関連で制裁されると、テスラにとっては大きな痛手となる。イーロン・マスクがバイデンを支持していないこと、アメリカの三大メーカーが電気自動車で後塵を拝していることから、関税引き上げがやりやすかったということが考えられる。

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 バイデンの関税引き上げは、国家安全保障上の懸念から実施された面がある。アメリカ国内で中国メーカーの電気自動車が「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」であり、個人情報の流出やハッキングを警戒している。コネクテッド・ヴィークル「インターネットを介し、さまざまな情報を送受信できる次世代の自動車」のことであり、ジーナ・ライモンド米商務長官は中国製の電気自動車を「車輪のついたスマートフォン」と呼んでいる。個人情報が外国(中国)に流れることを懸念している。また、ハッキングされたり、遠隔操作をされたりして、運転できない状態にされることや、この電気自動車を通じて、政府機関のコンピュータへの侵入されてしまうことを懸念している。アメリカ国内市場で、安価な中国製の電気自動車がシェアを伸ばすことは、こうした懸念を増大させることになる。しかし、他国からすれば、アメリカ製の電気自動車に対して、同様の懸念がある。
 今回のバイデン大統領の措置は経済的な懸念というよりは、安全保障上の懸念の側面が強いということになる。また、政治的に見て、自分の再選に大きな影響がないと判断したものでもあるだろう。

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●「バイデン氏、中国製品国家経済会議分への関税引き上げ 電気自動車は100%に」

2024.05.14 Tue posted at 20:30 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35218904.html

ワシントン(CNN) バイデン米大統領は14日までに、中国からの輸入品のうち、国家安全保障に戦略的な重要性を持つ180億ドル(約2兆8000億円)相当の製品に対する関税を引き上げる方針を明らかにした。

鉄鋼やアルミニウム、汎用(はんよう)(レガシー)半導体、電気自動車、バッテリー部品、重要鉱物、太陽電池、クレーン、医療用品などに適用される。

電気自動車の関税を現行の27.5%から100%と約4倍に引き上げるほか、太陽光パネル関連は50%、他分野の製品は25%とする。

米国家経済会議(NEC)のブレイナード議長は、中国が自国の成長のために他国を犠牲にする戦略を続けていると批判した。

トランプ前大統領は在任中、中国から輸入される3000億ドル相当の製品に追加関税を課した。この措置は4年に1度、効果を検証することが法律で義務付けられている。バイデン政権の新たな関税は、この検証結果に基づいているという。

ホワイトハウス当局者らによると、バイデン政権は政策の優先順位に沿って算定法の見直しも図り、クリーンエネルギー技術に重点を置いた。

中国はこれまでの関税に、高い報復関税で対抗してきた。ホワイトハウスは、中国が今回どのような対抗措置を取るかについての言及を避けた。

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バイデン氏、中国の電気自動車を取り締まる(Biden Cracks Down on Chinese Electric Vehicles

-外国の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」に関する新たな調査は、将来的に北京のハイテク部門に対する措置を可能にする可能性がある。

A new investigation into foreign “connected vehicles” could enable future action against Beijing’s tech sector.

クリスティーナ・リュー、リシ・イエンガー筆

2024年3月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/01/biden-china-electric-vehicles-tech-security-investigation-commerce/

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中国東部の江蘇省にある蘇州港にある国際コンテナターミナルで船への積み込みを待つBYD製の電気自動車(2023年9月11日)

バイデン政権は木曜日、米商務省に対し、中国製の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」がもたらす潜在的な国家安全保障上の脅威を調査するよう命令した。これは、中国との関係のリスクを軽減し、中国のハイテク産業に対して、圧力をかけようとするアメリカの最近の取り組みを示すものである。

ジョー・バイデン米大統領は声明の中で次のように警告している。「これらの電機自動車は、私たちの電話やナビゲーションシステム、重要なインフラ、そしてそれらを製造した企業に接続されている」と述べた。このような自動車は、わが国の市民やインフラに関する機密データを収集し、そのデータを中華人民共和国に送り返す可能性がある」。これらの電気自動車事態は「遠隔操作でアクセスされたり、機能停止させられたりする」とバイデンは述べている。

中国は電気自動車(electric vehicleEV)生産大国に成長し、アメリカとヨーロッパの同盟諸国を動揺させてきた世界の産業内で支配的な地位を築いている。バイデン政権が発表した調査は、テクノロジーへの懸念が米中関係を支配するようになった最新の例であり、車両を対象とした将来のアメリカの措置の基礎を築く可能性がある。

バイデンは続けて次のように述べている。「中国は、不公正な慣行を用いるなどして、将来の自動車市場を支配しようとしている。中国の政策は、私たちの市場に中国製の電機自動車を氾濫させ、私たちの国家安全保障にリスクをもたらす可能性がある。私の目の前でそのようなことが起こるのを許すつもりはない」。

バイデン政権の最新の攻撃は、テクノロジーの未来と未来のテクノロジーの両方をめぐる米中競争の、より広範なエスカレートに当てはまる。半導体チップ(semiconductor chips)、人工知能(artificial intelligence)、対外技術投資(outbound tech investment)に対する行動が最も注目されているが、ワシントンは更に多くの蛇口を閉めようとしているようだ。

コロラド鉱山大学ペイン研究所のモーガン・所長は、本誌に宛てた電子メールの中で、バイデン政権が発表の中で国家安全保障上の必要性を強調したことに触れながら、「これは米中間の現在進行中の貿易戦争の一環のように考えられる」と書いている。

バジリアンは、「確かに、サイバーとデータの面で実際のセキュリティ上の脅威は存在するが、私にとって主な推進力は経済的な闘争のように見える」と付け加えた。

こうした経済的懸念は、アメリカに限ったものではない。ここ数カ月間、安価な中国製電気自動車の流入に対する懸念は、中国政府の主要電気自動車市場の1つであるヨーロッパでも動揺しており、ヨーロッパ議会議員らは、中国政府が国内の電池式電気自動車メーカーに与えた補助金疑惑について調査を開始するまでに至っている。中国政府は、中国の電気自動車に補助金を与えることで、EUの電気自動車メーカーを圧倒しているという疑いだ。中国の電気自動車輸出は過去3年間で851%と爆発的に増加し、中国製のほとんど電気自動車がヨーロッパ市場に上陸した。

アメリカにおける中国製電気自動車の販売は依然として比較的小規模だが、特にバイデン大統領と共和党の対抗馬となる可能性が高いドナルド・トランプ前大統領が、11月の大統領選挙に向けて準備を進める中、アメリカの政治論争でも、ヨーロッパにおけるのと同様の懸念が浮上している。バイデンは先月、全米自動車労働組合がバイデン大統領の再選を正式に支持し、政治的に大きな勝利を確実にした一方、トランプ前大統領は自動車労働者の支持を集めるために選挙期間中、バイデンの電気自動車政策を激しく非難してきた。

そして実際、バイデンは木曜日の声明で、自身の政治的動機を隠そうとはしなかった。バイデンは次のように述べた。「大統領として、私は自動車労働者と、自動車産業に雇用を依存する中流家庭に対して正しいことをすると誓った。今回の措置やその他の措置によって、私たちは、自動車産業の未来がここアメリカでアメリカ人労働者によって作られることを確実にするつもりだ」。

戦略国際​​問題研究所の中国ビジネス専門家イラリア・マッツォッコは、「自動車産業をめぐる政治経済は非常に強力かつ重要だ。中国の電気自動車が先進諸国の主要産業を、非常に破壊的な形で脅かす可能性があるという深刻な懸念があると考えている」と述べている。

複数の米政府高官は、今回の調査は、データをめぐる国家安全保障上の懸念に根ざしていると強調する。ジーナ・ライモンド米商務長官は、「コネクテッド・ヴィークルにアクセスできる外国政府が、国家安全保障とアメリカ国民の個人的プライバシーの双方に深刻なリスクをもたらす可能性があると考えるのは、ほぼ想像力を必要としないものだ」と述べ、電気自動車を「車輪のついたスマートフォン(smart phones on wheels)」と例えた。

ライモンド長官は、「これらの自動車に搭載され、広範囲のデータを取得したり、コネクテッド・ヴィークルを遠隔操作で無効化したり、操作したりできる技術の範囲を理解する必要がある」と続けて述べた。

バイデン政権の今回の発表は、中国やロシアを含む6つの「懸念国(countries of concern)」に対する、アメリカ人の個人データの売却を制限することに焦点を当てた大統領令を発表した翌日に行われた。この大統領令では、ゲノムデータ(genomic data)、バイオメトリックデータ(biometric data)、金融データ(financial data)、個人健康データ(personal health data)、地理位置情報(geolocation data,)、そして個人を特定できる特定のカテゴリーという6つの機密情報のカテゴリーについて概説している。

しかし、データの流れを監督し取り締まることはより難しくなる可能性があり、バイデン政権による最新の規制は、アメリカ市民にとって意図しない結果をもたらす可能性があると、アメリカ自由人権協会(ACLU)は水曜日に警告した。ACLU上級政策顧問コーディ・ヴェンスキは声明の中で次のように述べた。「この大統領令は、政府の干渉を受けずに情報を共有しアクセスする私たちの権利を更に侵食し、消費者たちがプライバシーとセキュリティのニーズに最も適したオンラインサービスを選ぶことを禁じ、プライバシーを保護するどころか、むしろ害する結果になりかねない」。

ヴェンスキは続けて、「私たちのオンライン上の安全を本当に守るために、バイデン政権はその代わりに、私たちに関して収集されるデータの氾濫を食い止め、暗号化のような強力な保護を受け入れる、強固なプライバシー法を可決するよう議会を後押しすることに集中すべきだ」と述べた。

この2つの措置は互いに接近しており、中国のアメリカのテクノロジーへのアクセスを遮断することを目的とした過去数年間にわたる一連の大統領指示の最新のものである。

戦略国際​​問題研究所(CSIS)の貿易・技術専門家エミリー・ベンソンは、「これらの政策を総合すると変化が起こり、新たなパラダイムが生まれる。全体として、テクノロジーがこの新たな経済と国家安全保障の課題の最前線にあるということは、改めて非常に明白な象徴であり、それがすぐに変わる可能性は低い」と述べている。

※クリスティーナ・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@christinafei

リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@Iyengarish

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 電気自動車(electric vehicles)分野は米中の競争になっている。アメリカのテスラモータース(Tesla Motors)と中国のBYD(比亜迪)の争いになっている。電気自動車はこれから伸びていく分野だと考えられている。アメリカはこの分野で世界シェアの拡大を図り、中国は国内市場をまずは固めるという状況になっている。
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 電気自動車にとって重要なバッテリーに欠かせないのが、ニッケルだ。ニッケルの産出量、埋蔵量共に世界のトップとなっているのは、インドネシアである。インドネシアでは、未加工、未精錬のニッケルの輸出をジョコ・ウィドド政権下の2020年に禁止した。その結果、中国企業や韓国企業がニッケル加工に進出している。インドネシアとしては、更なる技術移転を求めており、将来的にはバッテリーの自国内の生産(国産化)を推進している。
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 下に紹介する論稿は、インドネシア海洋・投資担当調整大臣のルフット・ビンサル・パンジャイタン(Luhut Binsar Pandjaitan)の名前で出されたものだ。その内容は、一言で言えば、「アメリカもインドネシアのニッケルに投資しないと、電気自動車分野での未来はない。私たちはいつまでも気長にアメリカが投資してくるのを待つつもりはない」というものだ。ルフット大臣は、インドネシア軍の将官の出身であり、現役時代には、アメリカ軍特殊部隊での教育、トレーニングを複数回にわたって受けてきた人物だ。また、ワシントンDCにあるジョージワシントン大学で修士号を取得している。スハルト時代のエリート軍人であり、現在もスハルト体制時代の与党だったゴルカルに属している。アメリカとは不快コネクションがある人物だ。その人物がアメリカに半分脅しをかけるような、半分誘いをかけるような内容の論稿を発表した。

 アメリカ連邦議会は、ニッケルの分野でインドネシアの競争相手である、オーストラリアの働きかけを受けて、インドネシアからのニッケル輸入を制限している。その理由に、インドネシアでのニッケル精錬に石炭が使われており、炭素排出を行っていること、既に中国企業が多数進出していることを挙げている。これに対して、ルフット大臣は、「そんなことを言っていて大丈夫?」というような内容の論稿を出している。

インドネシアは、「西側以外の国々(the Rest)」の中で存在感を高めている。東南アジアの地域大国となっている。ジョコ大統領の下で、経済発展を進めている。2050年には、GDPの面で、日本を抜いて、世界第4位になるという予測も出ている(日本は第8位と予測されている)。そのスタートとなるのが、自国から算出する資源の有効活用だ。日本はインドネシアと良好な関係をこれまで継続して築いてきた。中国も歴史上、様々なことがあったが、現在はやはりインドネシアとの友好関係を保っている。アメリカがインドネシアとの関係を重視しないとなれば、それは、アメリカの衰退のスピードが加速するだけのことだ。

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インドネシアのニッケルなしでは、EVにアメリカの未来はない(Without Indonesia’s Nickel, EVs Have No Future in America

-ジャカルタとの自由貿易協定に反対するIRAと連邦上院は、アメリカのグリーン転換を台無しにしている。

ルフット・ビンサル・パンジャイタン筆

2024年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/01/indonesia-nickel-green-energy-ev-fta-congress/

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インドネシア南東スラウェシの採掘現場で、ニッケル鉱石を積んだダンプトラックの様子(2023年8月3日)

インドネシア産ニッケルがなければ、アメリカの電気自動車(Electric VehiclesEV)市場は低迷するだろう。我が国は、電気自動車用バッテリーの中核的金属であるニッケルの世界最大の埋蔵量を誇っている。2023年、インドネシアは世界のニッケル加工品の半分以上を輸出した。今後数年間で、このシェアは拡大すると予測されている。

しかし、米連邦議会議員の中には、インドネシアの海外の競争相手と協力して、我が国からの精製ニッケル(refined nickel)の輸入を阻止することを決意している。これまでのところ、彼らは成功している。しかし、企業にガソリン車の販売からの転換を強制する、3月に可決された措置と併せて導入するということになると、最終的に損をするのはアメリカの自動車労働者たちということになる。

ジョー・バイデン米大統領のインフレ削減法(Inflation Reduction ActIRA)は、競争条件を根本的に変えてしまった。アメリカの製造業者たちは、アメリカが自由貿易協定を結んでいる国(インドネシアは結んでいない)からのインプットでない限り、その補助金を利用することができない。

アメリカの自動車メーカーに必要なニッケルの供給を確保するため、昨年(2023年)、私が大臣を務める政府は、重要鉱物を対象とした限定的な貿易協定をアメリカ側に提案した。しかし、超党派の米連邦上院議員グループとオーストラリアなどニッケル生産国の企業による頓挫を狙ったキャンペーンが展開され、今のところ合意には至っていない。

連邦上院議員たちの反対は、環境への懸念に集中する傾向がある。インドネシアのニッケル製錬所の多くは石炭を燃料としている。一部の人々にとっては、内燃機関を道路から撤去すること(ガソリン自動車を減少させること)が炭素削減につながるにもかかわらず、その精製されたニッケルを含むバッテリーが信用されていないことを意味する。このような気候の純粋性は惰性を生み、結局は自滅する。環境とのトレードオフは、ニッケルがその動力源となるバッテリーにとって重要であるのと同様に、グリーン転換にとっても重要である。

アメリカが炭素の排出量を大幅に削減するためには、より多くの電気自動車が道路を走る必要がある。運輸部門は、アメリカ最大の排出源であるにもかかわらず、電気自動車の割合は1%にも満たない。電気自動車の普及は、購入しやすい価格に左右される。投入資源が安くなれば、バッテリーも安くなる。人為的な貿易障壁のないインドネシア産の精製ニッケルは、石炭が豊富にあるため競争力がある。

それは理想的ではないかもしれない。しかし、再生可能エネルギーは、インドネシアの製錬所の電力を賄う費用対効果の高い選択肢をまだ提供していない。技術が進歩するのを待つよりも、私たちは今、重要な金属を精製するために自由に使える資源を使わなければならない。

インドネシアのニッケルは、より環境に優しいものになるだろう。しかし、そのためには経済発展が不可欠である。輸出収入や海外からの直接投資があって初めて、エネルギーシステムの再構築を始めることが可能となる。例えば、インドネシア最大のニッケル生産者であるハリタ・ニッケル(Harita Nickel,)は、その経済的成功の上に立って初めて、自社施設に自然エネルギーを導入することができる。

当然のことながら、政府のイニシアティブも助けになる。今年導入される予定の炭素排出量規制と税制は、石炭からの脱却を促進するのに役立つだろうし、石炭発電所の新設は禁止されている。しかし、インドネシアにおける真のグリーン転換は、最終的には資本次第ということになる

途上国を化石燃料から引き離すための、気候変動資金調達メカニズムであるジャスト・トランジション・パートナーシップの下で約束された、西側諸国からの資金だけでは、約束が実際に履行されるかどうかにかかわらず、十分ではない。これは何の見返りもなく、ただ金を出せと言っているのではなく、事実を言っているだけのことだ。

大幅な資金不足を補うためには、途上諸国が既存の天然資源で繁栄し、世界のグリーン転換に積極的な役割を果たせるようにしなければならない。私たちは、慈悲深い諸大国からの施しに頼るだけの傍観者に成り下がることはできないし、そうなる意図もない。

一方、インドネシア国内でグリーン転換が国民の支持を維持するためには、国民の雇用と繁栄を実現しなければならない。2020年、インドネシア政府は、ヴァリューチェーンをより拡大するため、未加工のニッケル原鉱石の輸出を禁止した。それ以来、インドネシアには投資が殺到している。

インドネシアからのニッケル加工品の輸出額は飛躍的に増加し、年間300億ドル(約46500億円)に達している。今年、インドネシア初のバッテリー発電所が、韓国メーカーとの合弁でオープンする。この工場はインドネシア人に何千もの高生産性雇用を創出し、技術移転を促進し、インドネシアの輸出を更に押し上げることになるだろう。

同様に、インフレ削減法は、アメリカの雇用を促進し、グリーンエネルギーのコストを削減し、重要鉱物のサプライチェーンを確保することを目的としていた。それどころか、移行が依存する商品やインフラを提供するために、アメリカの製造業者が必要とする重要物資の参入を事実上妨げている。

考えられる最悪のシナリオは、アメリカのインフレ削減法は、アメリカを世界の電気自動車市場から完全に締め出す可能性がある。S&Pグローバル社は、2035年までに世界のニッケル供給の90%が、アメリカの自由貿易協定によってカヴァーされなくなると予想している。今後数十年の経済関係を形成するサプライチェーンが現在構築されつつあるのに、これではアメリカを拠点とするメーカーが需要を満たすことが不可能になりかねない。簡単な解決策は、重要鉱物を対象とするアメリカとインドネシアの限定協定(limited agreement)にある。

提案されている自由貿易協定に対するアメリカの連邦議員たちの環境問題への懸念は、北京とワシントン間の緊張によっても裏付けられている。インドネシアのニッケル精錬には中国企業が進出している。しかし、韓国企業やアメリカ企業も同様に進出している。アメリカの製造業者は、米財務省の指導に反しない企業から重要な鉱物を調達することができる。実際、自由貿易協定が結ばれれば、アメリカのインドネシアへの投資が促進され、サプライチェーンの安全が確保されるだろう。

しかしながら、アメリカのサプライチェーンの確保には、他国がニッケル産業に参入しているという理由だけで、アメリカがインドネシア産ニッケルの実質的な全面禁止を決定しない限り、という条件が付く。しかし、そのような動きは、アメリカのインド太平洋地域の同盟諸国が中国かアメリカかの二者択一を迫られるべきではないというイエレン米財務長官の再保証と矛盾することになる。結局のところ、インドネシアのニッケルはどこかに輸出されることになる。

インドネシアは全ての国との提携に手を差し伸べている。その手を握ってより環境に優しい未来を創造するかどうかは、ワシントン次第である。しかし、我が国はいつまでも気長に待つつもりなどない。

※ルフット・ビンサル・パンジャイタン:インドネシア海洋・投資担当調整大臣

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。「西側諸国対西側以外の国々」という構造で国際政治を分析しています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 インドネシアの新大統領に選出されたプラヴウォ・スビアント国防相が選挙後の初めての外遊として、中国と日本を訪問した。中国だけ、日本だけではなく、両国を訪問したという点はインドネシアの置かれている立場をよく表している。インドネシアは東南アジアの地域大国として、アジア全体の地域大国である中国と日本の橋渡しができる国である。思い返せば、北朝鮮の拉致被害者曽我ひとみさんが夫ジェンキンズ氏と娘たちと再会を果たしたのはインドネシアの首都ジャカルタでのことだった。

 プラヴウォ国防相(新大統領)は、インドネシア共和国の建国の父スカルノを失脚させ、第2代大統領となり、独裁者として権勢を振るったスハルトの娘婿だ(1983年に結婚・現在別居中という話がある)。陸軍の中で栄進を重ね、陸軍中将となった時に、民主化でスハルトが失脚し、軍を追われることになった。軍籍をはく奪された後は海外で亡命生活をしながら、ビジネスを展開し成功、資産は約1億5000万ドル(約225億円)と見られている。スハルトの娘婿、東ティモール派遣軍の司令官時代に、独立運動の活動家の殺害や弾圧、人権侵害に関わった疑いというマイナス面がありながら、政界に進出し、大統領選挙に何度も出馬している。

 2019年の大統領選挙では、二期目を目指すジョコ・ウィドド大統領の対抗馬として出馬し、選挙後には選挙に不正があったと主張し、プラヴウォ支持者が暴動をおこし、死者が出る騒ぎとなった。それほど対立した関係であったが、ジョコ大統領は、プラヴウォを自分の政権の国防相に迎え入れた。そして、今回の大統領選挙では、ジョコ大統領の長男ギブランが、プラヴウォの副大統領となり、実質的に、ジョコ大統領が「後継者」としてプラヴウォを指名し、「お目付け役」として長男をつけるということになった。選挙結果は、プラヴウォの勝利だった。1回目の投票で過半数を取れないので、2回目の決選投票になると思われていたが、1回目の投票で、プラヴウォは58%の得票率で勝利を決めた。

 ジョコ大統領はこれから院政を敷くことになる。プラヴウォは、ジョコ大統領の路線を継承することを公約に掲げている。そして、アメリカをはじめとする西側諸国と、中国をはじめとする西側以外の国々との間でうまくバランスを取りながら、国内経済成長路線を維持する。もし、何か反する動きがあれば、プラヴウォのマイナス面である、過去を掘り返して、大統領の座から追われるということになるだろう。副大統領となるジョコ大統領の長男ギブランが、大統領になるかどうかは不明だが、それもこれから5年での成果にかかっている。インドネシア政治はこれから注目される。

(貼り付けはじめ)
インドネシア次期大統領 中国 習主席と会談 関係強化を確認

202442 633分 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014409911000.html
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インドネシアの次期大統領のプラボウォ国防相は、当選後、初めての外国訪問先として中国を訪れて習近平国家主席と会談し、双方とも両国関係のさらなる強化を確認しました。

ことし2月に行われたインドネシアの大統領選挙で当選したプラボウォ国防相は、当選後初めての外国訪問として習近平国家主席の招きを受けた中国を訪れていて、1日、北京で習主席と会談しました。

インドネシア国防省によりますと、会談でプラボウォ氏は「防衛分野の協力において、中国は地域の平和と安定を確保するのに鍵となるパートナーの1つだ」と述べ、中国との関係を重視していく姿勢を強調したということです。

中国外務省によりますと、これに対し習主席はプラボウォ氏の当選を祝福し「中国とインドネシアはともに新興国の代表であり、主権や安全保障、発展の利益を守る上で互いをしっかり支持すべきだ」と述べ、両国関係の強化を確認しました。

また、南シナ海をめぐってASEAN=東南アジア諸国連合の一部の国との領有権争いを念頭に「海洋協力を引き続き深めることを望んでいる」と述べ、インドネシアに理解を求めました。

中国としては、ASEANの大国であるインドネシアとの連携を重視する姿勢を改めて示し、地域での影響力を強めるねらいがあるとみられます。

プラボウォ氏は2日、日本も訪れる予定で、岸田総理大臣との会談が調整されています。
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【インドネシア】プラボウォ氏と岸田首相会談、協力強化確認

4/4() 11:31配信  NNAKyodo News Group

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e93ecdf6cc95647af589409f4383d76e4abd06d

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 インドネシア次期大統領のプラボウォ・スビアント国防相は3日、訪問中の日本で岸田文雄首相と会談した。2国間関係や地域情勢について意見交換し、協力関係を強化していくことを確認した。プラボウォ氏の大統領選当選後の外遊先としては、日本が中国に続いて2カ国目となった。

 プラボウォ氏と岸田氏の会談は、午前9時15分から約35分間実施された。岸田氏は、プラボウォ氏に当選の祝意を改めて示し「早々の訪日は日本重視の姿勢と受け止め、大変心強い」と述べた。また「基本的な価値や原則を共有する『包括的・戦略的パートナー』として、2国間関係や地域・国際情勢に係る協力をさらに進めていきたい」とした。

 岸田氏は、2国間関係において、インフラやエネルギー分野で協力するほか、インドネシアが目指している経済協力開発機構(OECD)への加盟に向けて支援することも伝えた。

 プラボウォ氏は「インドネシアと日本は旧友であり、重要なパートナーだ。これまでの良好な関係をさまざまな分野でさらに強化したい」と述べた。安全保障協力をはじめ、農水産業や防災などの分野で、2国間関係を深めることに期待を示した。

 地域情勢を巡っては、東シナ海や南シナ海情勢、北朝鮮への対応、ミャンマー情勢などでも意見交換し、連携を継続していくことを確認した。

 プラボウォ氏は、2月に実施された大統領選の正式結果が3月20日に発表され初当選した。当選後初の外遊で同月31日~4月2日に中国を訪問し、習近平国家主席や李強首相と会談した。

 プラボウォ氏は、憲法上3選が認められておらず2期・10年で退任するジョコ・ウィドド大統領の後任として、1020日に就任する。

 ■木原防衛相とも会談

 プラボウォ氏は3日、木原稔防衛相とも会談した。両者は、防衛省で午前1028分から約50分間会談し、2国間・多国間の防衛協力や交流を強化していくことで一致した。木原氏は、南シナ海での力による一方的な現状変更や緊張を高める行為に強く反対すると表明した。中国の海洋進出を念頭に置いた発言とみられる。

 また木原氏は、海洋国家の両国間において「法の支配に基づく『自由で開かれたインド太平洋』を維持・強化していきたい」と述べた。 

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プラヴウォはインドネシアをどのように主導するか?(How Will Prabowo Lead Indonesia?

-今回の大統領選挙の勝者プラヴウォは選挙運動の中で過去を葬ろうとした。指導者として成功するために、彼は歴史が繰り返されないことを期待している。

サリル・トリパティ筆

2024年2月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/28/indonesia-elections-prabowo-leader-human-rights-jokowi/

大統領選挙において2度の失敗を経験した末、今年の2月14日、インドネシアのプラヴウォ・スビアント国防相が大統領選挙で念願の勝利を収めた。プラヴウォは自分の勝利が自分の政治の結果だと考えたいように見えるが、彼の成功はジョコウィとして知られるインドネシアのジョコ・ウィドド現大統領の人気に負うところが大きい。プラヴウォは2014年と2019年にジョコウィの対抗馬として出馬し、いずれも敗れた。しかし、ジョコウィは2019年にプラヴウォを国防相に任命することで、専門家と支持者の多くを驚かせた。ジョコウィの長男であるギブラン・ラカブミン・ラカは、プラヴウォの副大統領候補として出馬した。

インドネシアにおける選挙の最終結果は数週間以内に発表されるが、初期の集計によると、プラヴウォが得票率58%でリードしており、対抗馬のガンジャル・プラノウォとアニエス・バスウェダン(いずれも元州知事)を大幅に上回っている。他の候補者は2月14日の選挙に関して不正があったと主張し、投票結果に異議を唱えるつもりだと述べている。広範な操作の証拠があれば、憲法裁判所は結果を取り消す可能性がある。新大統領は10月まで就任しない。

任期制限により、ジョコウィ大統領は3度目の出馬を妨げられた。今回の選挙は、ジョコウィなら簡単に勝てたであろう。ギブランが副大統領として勝利すると予想されているため、多くのインドネシア人は次期政権がジョコウィの事実上の3期目、あるいは少なくとも継続性を示すものと見なしている。しかし、ジョコウィは大統領職を辞し、未知の領域に入りつつある。プラヴウォを支援することで、自身が今でも関係を持っている、インドネシア闘争民主党(Indonesian Democratic Party of Struggle PDI-P)との架け橋をジョコウィが燃やしてしまうことになった。闘争民主党候補者のガンジャールが3位に終わって、裏切られたと感じるのには十分な理由がある。ガンジャールは、自分の得票数がこれほど少ないとは信じていないと述べている。

プラヴウォはジョコウィの支援なしでは勝利できなかったが、統治するにあたり、ジョコウィに依存する必要はもはや存在しない。退任する大統領のテクノクラート出身の閣僚のうち、プラヴウォの下で引き続き職務を続ける者はほとんどいないと見られているが、プラヴウォはそれを気にしないかもしれない。彼の経済政策はポピュリズム的であり、特にインドネシアの財政赤字を増大させる学校給食プログラムなど補助金の増額提案などがある。対照的に、ジョコウィ政権の財務大臣、尊敬を集める経済学者スリ・ムリャニ・インドラワティは改革派として知られ、かつては世界銀行の専務理事を務めたこともある。彼女がプラヴウォの下で職務を継続する可能性は低い。

タイミングは選挙において、プラヴウォに対してもう1つの利点をもたらした。プラヴウォは、人々の記憶が薄れつつあることを利用して、権力を固めようとしている。選挙期間中、彼はソーシャルメディアを使って若い有権者に自分をアピールし、過去を覆い隠すような、かわいらしいおじいさんとしてのイメージを打ち出した。元陸軍中将の人権に関する記録はあまりに酷いもので、何年もの間、アメリカへの入国が事実上禁止されていた。興味深いことに、プラヴウォは3人の候補者の中で唯一、ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った「インドネシアの次期大統領として人権を守るために何をするか」という質問に答えなかった。インドネシアの有権者の半数以上は1980年代以降に生まれており、プラヴウォが東ティモール(現東ティモール民主共和国)で特殊部隊の司令官を務めていたことなど、おぼろげな記憶しかないことになる。人権団体は、プラヴウォが東ティモールでの人権侵害に関係していると主張しているが、プラヴウォはこれを否定している。

もしプラヴウォが東ティモールでの勤務していた時代以降、ある種の免罪符を持っているように見えたとしたら、それは彼が長年、インドネシアを32年間統治したスハルト元大統領の次女、シティ・ヘディアティ・ハリジャディ(別名ティティーク)と結婚していたからだ。スハルトの息子たちはビジネスに専念し、婿のプラヴウォは軍隊で華々しいキャリアを積んだ。プラヴウォとティティークの結婚はかなり前に終わったが、ティティークは彼の立候補を支持し、今年最後の選挙集会にも彼の側に姿を見せた。2023年12月、プラヴウォは元妻ティティークを自身が率いる政党グリンドラ党の顧問に任命した。

スハルトの長期にわたる統治の間、インドネシアは多くの社会経済指標を改善し、食糧生産を増加させ、識字力を向上させ、外国からの投資を誘致した。しかし、この時代には寡頭制文化の台頭も見られた。スハルトの子供たちは事業で繁栄し、指導者と協力する縁故資本家たち(crony capitalists)が経済を支配した。1980年代に経済を安定させようとした努力にもかかわらず、汚職(corruption)は1990年代半ばまでに大幅に増加した。1997年7月にタイの通貨バーツが急落し、他のアジア通貨もその影響に巻き込まれた。

当時、インドネシアは公的債務を比較的うまく管理していたが、民間部門は、過大評価されているインドネシア・ルピアが安定的に続くとの前提で無謀な借り入れを行い、短期債務を積み上げていた。何かが与えられなければならず、市場はルピアに賭けて、ルピアを暴落させた。インフレと物資不足は避けられず、金融危機は本格的な経済危機(economic crisis)に変わり、その後、政治危機(political crisis)に発展した。スハルトは国際通貨基金(International Monetary Fund)に緊急支援を求め、その後はより実質的なパッケージを求めた。

世情不安(public unrest)が高まり、首都ジャカルタ全土でデモ行進が行われた。1998年5月、治安部隊はトリサクティ大学の学生活動家たちを取り締まり、少なくとも4人の学生が殺された。他にも多くの学生が拉致され、何人かは帰ってこなかった。その後の数日間、大きな変化が迫っていた。戦車が首都を走り回り、煙が充満し、デモ隊は企業を破壊し、スハルトに近い大物たちの邸宅を襲撃した。1998年5月21日、スハルトは辞任した。この出来事はプラヴウォのキャリアを後退させ、今も彼を苦しめている。

プラヴウォは予備役に編入された。プラヴウォは当初、学生拉致の責任を否定していたが、2014年の大統領選挙においては、命令を実行しただけだ、と自らの役割を認めた。

南東アジアはノスタルジックな局面を迎えているようだ。古い秩序への憧れが地域全体の選挙で繰り広げられている。フィリピンを統治するフェルディナンド・"ボンボン・マルコス・ジュニア(Ferdinand “Bongbong” Marcos Jr.)大統領は、彼の父親が1965年から1986年まで大統領を務め、民衆蜂起の後に倒され、1989年にハワイに亡命した。一方、マレーシアでは、1990年代に副首相を務めたアンワル・イブラヒムが首相を務めている。アンワルは1981年から2003年まで、そして2018年から2020年まで再びマレーシアを統治したマハティール・モハマド首相(当時)と対立し、アンワルは1998年に淫行と汚職の罪で投獄された。アンワルは最終的に2022年に首相となった。

多くの国民がスハルト時代の暗黒面を忘れていることを願いつつも、プラヴウォがインドネシアで政権を取ったことは、この傾向を裏付けているようだ。残る疑問は、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかということだ。ジョコウィの息子であるギブランは、スラカルタ市長を務めただけで、政治経験は浅いが、いつかは大統領になりたいと考えているようだ。もしプラヴウォがギブランを脅威と見なせば、2人の同盟関係に綻びが生じるかもしれない。72歳のプラヴウォは、スハルトが辞任したときより5歳若いだけで、選挙チームは選挙運動中に脳卒中の治療を受けたという噂を否定しなければならなかった。

インドネシアの専門家たちは、ワヤン・クリット[wayang kulit](影絵人形劇[shadow puppetry])と呼ばれる民俗劇を、この国の表向きには不可解な政治のメタファーとして用いることが多い。人々はスクリーンの向こう側で何が起きているのかを垣間見ることしかできないし、目に見えるものが正確に出来事を表しているとは限らない。スハルトはそのような曖昧さの達人(the master of such ambiguities)だった。しかし、プラヴウォはもっと率直で険悪で、短気なことで知られている。彼がインドネシアを統治する際に、ジェモイ(gemoy、かわいい)イメージを維持できるかどうかは未知数だ。

プラヴウォの闘争的な性格は、西側の諸大国に説教することを厭わないということであり、有権者にアピールできるかもしれない。過去には、インドネシアにとって他国からの民主政治体制に関する教訓は必要ないと発言し、ジャカルタのパーム油輸出への依存をめぐるヨーロッパ諸国からの批判には、植民地時代の歴史を引き合いに出して歯向かった。大統領選挙期間中、ヨーロッパ連合(EU)の森林破壊に対する政策を批判し、プラヴウォは次のように述べた。「茶、コーヒー、ゴム、チョコレートを植えさせたのはヨーロッパ人だ。そして今、私たちが森林を破壊していると言うのか? 私たちの森林を破壊したのはあなたたちだ」。この態度は、礼儀正しいポピュリスト(polite populist)というジョコウィの評判とは対照的である。

更に、狭い目的によって同盟関係が変化する多極化した世界では、プラヴウォはスハルトの型にはまり、独立した路線を作り上げるかもしれない。インドネシアと中国は南シナ海の係争中の島々の所有権を主張している国の1つだが、プラヴウォは中国への投資にヨーロッパの投資家たちよりも制約が少ないため、中国に言い寄っている。 2023年6月にシンガポールで開催されたシャングリラ対話(Shangri-La Dialogue)で、プラヴウォはモスクワで作成された可能性が高い、ロシアのウクライナ戦争に対する和平案を提案し、多くの地域アナリストやインドネシアのメディアを驚かせた。

プラヴウォは、インドネシアの広大な群島全域で学校給食費の補助を拡大する計画など、国内の支持を補強するために危険なポピュリスト的施策に頼ることになりそうだ。彼のチームは、初年度に76億8000万ドルもの費用がかかる可能性があると述べている。それは称賛に値するが、給食費補助計画はインドネシアの予算を圧迫し、財政赤字を拡大させる可能性がある。そうなればインフレにつながり、プラヴウォの側にはジョコウィ政権のテクノクラート的な有能な大臣たちはいなくなるだろう。プラヴウォは、ジョコウィのようなテクノクラート的な大臣たちを味方につけることはできない。彼の過去の気質がどうであれ、それはインドネシアに危険をもたらすかもしれない。

結局のところ、過去はインドネシアに必要なことの序章であってはならない。世界で4番目に人口の多い国として、その安定は重要であり、民主政治体制への移行(transition to democracy)を確固たるものにしなければならない。成功するためには、プラヴウォはインドネシアの若い人々の願望に応えることができる21世紀のリーダーになる必要がある。そして、技術力だけでなく、実質を提供する必要がある。

※サリル・トリパティ:ニューヨークを拠点とするライター。1990年代から東南アジアから報道を続け、その中にはジャカルタからスハルト政権崩壊も含まれている。著書に『悔い改めない大佐:バングラデシュ戦争とその不穏な遺産(The Colonel Who Would Not Repent: The Bangladesh War and its Unquiet Legacy)』があり、現在はグジャラートについての本を執筆中。

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インドネシア大統領選挙の勝者には暗い過去とかわいいイメージがある(Indonesia’s Election Winner Has a Dark Past and a Cute Image

-プラヴウォ・スビアントの記録は民主政治体制にとって良い兆候ではない

ジョセフ・ラックマン筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/prabowo-indonesia-election-democracy-jokowi/

ジャカルタ発。「神のご加護で、1ラウンド、1ラウンド、1ラウンドだ。プラヴウォ、プラヴウォ」。歓喜に沸く群衆が、ジャカルタのスタジアムで次期大統領に決まったプラヴウォ・スビアントが勝利演説をするために到着したときにこのように大合唱した。約2億人のインドネシア国民が投票権を持ち、その52%が40歳以下という圧倒的な差で、旧独裁政権と深いつながりを持つ72歳の元陸軍中将を選んだ。

彼は変わったと言う人たちもいる。また、ジョコ・ウィドド現大統領(通称ジョコウィ)の選挙運動への暗黙の支援によって、既に緊張状態にあるインドネシアの民主政治体制にとって、ジョコウィの登場は悪い知らせになると懸念する声もある。ジョコ・ウィドド現大統領は、かつてのライバルの選挙運動を黙認していた訳ではない。インドネシアのヒューマン・ライツ・ウォッチのヴェテランのメンバーであるアンドレアス・ハルソノは、「ジョコウィは、インドネシアをかつての独裁者スハルトの、新秩序の闇に逆戻りさせる扉を開いてしまった」と語った。

最も明らかな心配の種は、プラボヴウォの伴走者であるギブラン・ラカブミン・ラカがジョコウィの息子であるという事実だ。父親が政治家としてのキャリアをスタートさせた、スラカルタ市長として2年強の政治経験を持つ、この36歳が立候補資格を得たのは、40歳以上という従来の制限を例外とする憲法裁判所の判決が最終的に下ったからだ。

国家は選挙運動の他の部分でも同様の判断を下している。党指導者たちに対する汚職捜査が浮上したが、ジョコウィがプラヴウォを支援することになった後は消えた。野党陣営は警察が嫌がらせをし、人々にプラヴウォを支持するよう圧力をかけていると訴えた。そして、インドネシア人への社会援​​助への支出が急増しただけでなく、場合によってはプラヴウォの選挙運動に関係する人々によって配られたとさえ伝えられている。前述のハルソノは「多くの法学教授や他の学者は、これはスハルト後のインドネシアでこれまで行われた中で最も汚い選挙であると述べた」と述べた。

大統領選挙に敗れた2人の候補は現在、開票における大規模な不正を主張している。結果を覆すのに必要な規模の、信頼に足る証拠はまだない。インドネシアの世論調査の専門家であるセス・ソダーボーグは、「あちこちに不正や問題があるのは確かだと思う。しかし、何千万票もの偽の投票があれば、その痕跡が残るだろう」と語った。

それでも、選挙運動中の選挙妨害は、多くの人々にとって、特にプラヴウォ自身の過去と組み合わせれば、懸念が存在することになる。特にプラヴウォ自身の過去と合わせればなおさらだ。彼が最初に注目されるようになったのは、東ティモールでの流血の対反乱作戦中にインドネシアの特殊部隊を指揮していた時だ。プラヴウォは将官として、抵抗運動の指導者ニコラウ・ロバトの殺害に関与した。プラヴウォは東ティモールと西パプアの虐殺の責任者として告発されているが、彼は疑惑について常に激しく否定している。

スハルトの娘との結婚により、プラヴウォは政治的に有名になり、一部の人は彼を潜在的なスハルトの後継者と見なしている。1998年に民主化運動がスハルト政権を崩壊させたとき、プラヴウォは23人の民主活動家誘拐に関与し(うち13人は行方不明で死亡と推定されている)、自ら権力を掌握しようとしたという疑惑がある。

新しい政権によって一時的に失脚させられたプラヴウォは、すぐにインドネシア政界に復帰した。2004年に大統領候補に指名され、2009年には副大統領候補として出馬し、2014年と2019年には大統領選に出馬した。

いずれの時もプロヴウォはジョコウィに敗れた。2019年に敗れたジョコウィは当初、大規模な不正を主張して結果を否定し、8人の死者を出す暴動を引き起こした。ジョコウィはプラヴウォを国防相として政権に参加させることで事態を打開し、多くの人々を驚かせた。

これにより、プラヴウォはジョコウィの後継者となり、多くの若い有権者にとってはかわいらしい老人へと変貌を遂げることになった。それ以前の10年間、プラヴウォの選挙運動は熱狂的な「強者のナショナリズム(strongman nationalism)」によって特徴づけられ、彼はスタジアムの馬の後ろに乗って、熱狂する群衆に対して、外国の破壊的勢力や共産主義について警告を発していた。彼は明らかに日和見主義(opportunism)であるにもかかわらず、過激派イスラム主義グループと同盟を結び、脅威を増大させた。プラヴウォの母親はキリスト教徒であり、彼の兄もキリスト教徒である。

今回、プラボウォは、かつて彼の陣営が、秘密共産主義者・中国系無神論者・キリスト教徒と中傷したジョコウィへの忠誠を仰々しく、繰り返し宣言し、その政策を継続することを計画した。選挙戦では、ナショナリズムの隆興が、外国人たちがインドネシアを没落させ、富を盗むことへの警告として感じられた。しかし、選挙戦で最も目立ったのは、「ジェモイ(gemoy、かわいい)」というイメージの宣伝だった。ソーシャルメディアは、父親のように不器用に踊ったり、猫を抱っこしたりする動画や、彼の顔をピクサーのアニメのように描いたもので埋め尽くされた。

特に若い有権者たちは、プラヴウォのイメージが気に入り、おそらく彼の過去を知らずに、彼に群がった。プラヴウォの勝利演説を待つ群衆の中で、大学の工学部で学ぶ学生のファウザン・ディスマスは、プラヴウォは「タフ(tough)」だから好きだと明言した。しかし、過去の人権侵害疑惑やスハルトとのつながりについて尋ねられると、ディスマスは「そのことについてはよく知らない」と言葉を濁した。彼は「私はまだ生まれていなかった」とも述べた。

それでは、次はどうなるのか?

国際的には、インドネシアの姿勢や立場が大きく変わることはないだろう。アメリカも中国もインドネシアに言い寄ってきているが、インドネシアは長い間、国際問題における中立(neutrality)と非同盟(nonalignment)の原則を堅持してきた。プラヴウォは、インドネシアの立場を冷戦時代のスイスやフィンランドに例えて、この姿勢への関与を強調している。

それでも、プラヴウォの大げさな性格と鋭敏なナショナリズムは、時折驚きをもたらすかもしれない。インドネシアは南シナ海における中国の領有権に異議を唱え続けており、その領有権はインドネシアが「北ナトゥナ海(North Natuna)」と呼ぶ海域と重なっている。昨年8月、プラヴウォはロイド・オースティン米国防長官との共同声明を発表し、一時的に対中強硬路線を取るように見えた。しかし、その2カ月前、シンガポールで開かれたシャングリラ・ダイアログで、彼はウクライナ和平案を提案した。

国内的には、民主政治体制の衰退(democratic decline)を心配する以上に、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかが重要な問題かもしれない。大統領選挙期間中、詳細な政策論議は欠けていたが、プラヴウォはインフラ整備、インドネシアの天然資源の「川下化(downstreaming)」、ボルネオ島への新首都建設などでジョコウィに追随することを声高に約束した。しかし、プラヴウォは気性が激しいことで知られ、何十年もの間、指導者への野心を抱いてきた。果たして彼は前任者の影に隠れていることに満足するのだろうか?

もしプラヴウォがこれに反旗を翻す場合、ジョコウィの影響力は限られたものになるかもしれない。ジョコウィの息子は副大統領かもしれないが、その役割にはアメリカと同様、大統領が譲り渡したいと思う以上の正式な権限はほとんどない。

ジョコウィはまた、自分自身の政治的手段も持っていない。彼はまだ形式的にはインドネシア闘争民主党(PDI-P)のメンバーだが、闘争民主党が推薦した候補者ガンジャル・プラノウォ元中部ジャワ州知事よりもプラヴウォを非公式に支援したことで、その闘争民主党との関係を繋ぐ橋は完全に焼け落ちてしまった。一方、彼のもう一人の息子であるケーサン・パンガレップが9月に引き継いだインドネシア連帯党という小政党は、国民評議会に議席を得るのに十分な票を得ることができなかった。

プラヴウォも72歳で、健康状態が良くないと噂されている。世界第3位の民主政体国家が、事業経営にはある程度成功したが、かつて父親が市長をしていた市の市長を2年間務めた経験しかない若者の手に委ねられることになるかもしれない。インドネシアのヴェテランのテクノクラートの中には、どちらがより心配なのか分からないというひとたちもいる。 プラヴウォ大統領か、ギブラン大統領か、どちらの方が酷いことになるのか?

※ジョセフ・ラックマン:インドネシアと東南アジアからの報道を行うフリージャーナリスト。ツイッターアカウント:@rachman_joseph

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年2月にインドネシア大統領選挙が実施され、プラヴウォ・スビアントが大統領に当選した。インドネシアはジョコ・ウィドド大統領政権下、経済発展を遂げ、国際政治、世界経済においてその存在感を増している。これからの10年間で更に成長を遂げ、重要な国となるだろう。今回は、少し長くなるが、インドネシア政治について書いていく。

インドネシアは東南アジアにある島国だ。以下の地図にあるように、約1万5000の島からなり、広大な国土を誇る。スマトラ、ジャワ、カリマンタン、スラウェシ、ニューギニアが主要な島だ。この国土に、約2億7000万人(世界第4位)が住んでいる。世界最大のイスラム教国だ。

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インドネシアの地図

2020年のインドネシアの年齢の中央値は約31歳(2024年)だ。日本は世界第2位の48.6歳だ(1位はモナコの55.4歳)。インドネシアは大変若い国であり、これから若い人々が労働者・消費者として、元気に経済活動、社会活動をしていく。それが更なる経済発展につながる。若い人々が多い状況を「人口ボーナス」と呼ぶ。インドネシアは人口の面から見ても、これから大きく発展していく国だ。以下に、インドネシアと日本の「人口ピラミッド(population pyramid)」を載せる。図の下の方が若者層で、インドネシアは「釣り鐘型(若年層から中年層が多い)」、日本は「極端なつぼ型(老年層が多く、若者層が少ない)」となっている。私が最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で紹介した世界で言われている言葉「ヨーロッパは博物館(美術館)、日本は老人ホーム」そのものだ。

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インドネシアの人口構成(2020年)

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日本の人口構成(2021年)

●優秀な指導者の下で着実に経済成長を続けている

インドネシアの名目GDPは約1兆ドル(約143兆円)であり、現在のところ、世界第16位に位置している。GDPが1兆ドルを超える国々で構成される「1兆ドルクラブ(Trillion Dollar Club)」に2017年に入った。「1兆ドルクラブ」に入るということは、発展途上国から脱し、地域の大国になったということだ。インドネシアは東南アジア初の「1兆ドルクラブ」のメンバーとなった。更に言えば、西側以外の国々(ザ・レスト)の中核をなす国になった。

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世界のGDP上位国のリスト

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「1兆ドルクラブ」のメンバー国

以下のグラフにある通り、インドネシアはこれまで5%以上の経済成長率を維持し、着々と経済発展を続けている。インドネシアは21世紀に入って、安定的に経済成長を続けている。これは、天然資源に恵まれたということもあるが、何よりも国家の指導者がしっかりしているからだ。下のグラフにあるように、2004年から2014年まで大統領を務めたスシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono、1949年-、74歳)、2014年から大統領を務めるジョコ・ウィドド(Joko Widodo、1961年-、62歳)の下で、インドネシアは着実な経済成長を続けている。

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2005年から2019年まで(コロナ前)のグラフ

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2019年(コロナ期間を含む)からのグラフ

●「インドネシアの田中角栄」と言うべき偉大な指導者ジョコ・ウィドド(愛称はジョコウィ)大統領

インドネシアは1945年にオランダから独立してから、初代大統領スカルノ(Sukarno、1901-1970年、69歳で死 在任:1945-1966年)と第2代スハルト(Soeharto、1921-2008年、86歳で死 在任:1967-1998年)の政権が長く続いた。1998年にスハルトが失脚後、第3代バハルディン・ユスフ・ハビビ(Bacharuddin Jusuf Habibie、1936-2019年、83歳で死 スハルト失脚後に副大統領から昇格、在任:1998-1999年)、第4代アブドゥルラフマン・ワヒド(Abdurrahman Wahid、1940-2009年、69歳で死、国会で罷免された、在任:1999-2001年)、第5代メガワティ・スティアワティ・スカルノプトゥリ(Megawati Setiawati Sukarnoputri、1947年-、76歳、副大統領から昇格 在任:2001-2004年)と短命な大統領が続いた。

国民による大統領直接選挙で選ばれた、第6代ユドヨノ、第7代ジョコがそれぞれ、憲法で定められた任期(2期10年まで)を全うしている。インドネシア政治が安定したのは2004年からだ。ユドヨノ大統領、ジョコ大統領がインドネシアの経済成長をけん引したのは既に書いた通りだ。安定した政権の下、工業化とインフラ整備が進んだ。特に、ジョコ大統領の経済政策は、ジョコ大統領の愛称の「ジョコウィ」を取って、「ジョコウィノミクス(Jokowinomics)」と呼ばれ、高く評価されている。

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インドネシア歴代大統領の一覧

現在のジョコ・ウィドド(愛称はジョコウィ)大統領(第7代)は、「父が誰々」「祖父が誰々」というようなエリートの出身ではない。スラム街で育ち、苦労して大学を卒業し、元々は家具製造業で成功したビジネスマンだった。20代で自分の会社を興したが、騙されて会社を倒産させたこともある。その後に見事に復活するなど、苦労を重ねた。2005年に闘争民主党に所属して、ジャワ島中部の小さな町スラカルタの市長(在任期間:2005-2012年)、首都ジャカルタの知事(在任期間:2012-2014年)を務めた。都市計画で立ち退きを迫られて、反対運動を起こした住民たちのところに直接出向いて、何十回も一緒に食事をし、最終的に説得に成功したり、自然災害が起きた際にはいち早く駆け付けたりなど、類まれな行動力を見せた。スラカルタ市長、ジャカルタ知事としての実績を積んだジョコは国民的人気を高めていった。

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メガワティ(左)とジョコ大統領

1998年の結党以来、闘争民主党の党首を務めているメガワティ元大統領は、スカルノの長女ということで、スハルト政権末期の1990年代に国民的人気を得た。しかし、2004年、2009年の大統領選挙で、ユドヨノに敗れた。この雪辱を果たし、党勢の拡大を図るため、メガワティは2014年の大統領選挙に自分が出るのではなく、国民的人気の高いジョコ・ウィドドを大統領選挙に出馬させることにした。ユドヨノ側は、右派政党の「グリンドラ党(Partai Gerakan Indonesia RayaGerindra Party)」の党首で、スハルトの娘婿、元陸軍中将というエリートのプラヴウォ・スビアント(Prabowo Subianto Djojohadikoesoemo、1951年-、72歳)を候補者に立てた。2014年の大統領選挙は、メガワティにとっての大きな賭けとなったが、この賭けに勝った。ジョコは大統領になり、闘争民主党は党勢を拡大し、国会で第一党となった。2019年の大統領選挙でも、ジョコ大統領がプラヴウォを破った。

ここで、インドネシアの政党について簡単に説明すると、インドネシアは、30年にわたって大統領として君臨した、スハルト時代に、政権を支える与党として「ゴルカル(Golkar)」という組織があった。そして、政府が認める合法野党として、イスラム系の「開発統一党(Partai Persatuan PembangunanPPPUnited Development Party)」と非イスラム系の「インドネシア民主党(Partai Demokrasi IndonesiaPDIIndonesian Democratic Party)」があった。メガワティは元々インドネシア民主党に所属していたが、島内の権力争いのために、追い出される形になって、「闘争民主党(Partai Demokrasi Indonesia-PerjuanganPDI-PIndonesian Democratic Party of Struggle)」を結成した。現在、インドネシアには10くらいの政党があるが、大きいものは、ゴルカルと闘争民主党だ。

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現在のインドネシアの政党一覧

ジョコ大統領の人気ぶり(支持率は70%を超える)に危機感を募らせたメガワティは、「憲法を改正して大統領の人気制限を撤廃しよう」「新型コロナ騒ぎで活動が停滞した2年分は延長しても良いではないか」という声を潰し、ジョコ大統領の任期延長の動きを阻止した。このために、ジョコ大統領とメガワティの間はうまくいっていない。

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ジョコ大統領の支持率の変遷

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インドネシアの現在の政治状況

今回の大統領選挙では、ジョコ大統領が所属する闘争民主党からガンジャル・プラノウォ(Ganjar Pranowo、1968年-、55歳)という人物が出馬している。しかし、ジョコ大統領は、どの候補者に対しても公的に支持を表明していない。

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大統領選挙候補者の顔ぶれ

ジョコ大統領は、自分が2014年、2019年の大統領選挙で戦ったプラヴウォを閣内に防衛相として起用し、今回の大統領選挙では、自分の長男ギブラン(Gibran Rakabuming Raka、1987年-、36歳)を副大統領候補としてプラヴウォつけるという、乾坤一擲(けんこんいってき)の、政治的に素晴らしい一手を打った。こうして、メガワティを抑えることに成功した。ギブランも父ジョコ大統領と同じく、闘争民主党に所属していたが、離党して副大統領候補となった。

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ギブラン(左)とプラヴウォ

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プラヴウォ(左)とジョコ大統領

プラボウォは、政敵であった、ジョコ・ウィドドに、2015年から、ジョコ大統領と協力関係にあり、後継者に選ばれた。もっと露骨に言えば、ジョコウィは、プラヴウォに自分の長男を副大統領として監視役をさせて、院政を敷く。プラヴウォはどうしてもなりたかった大統領になる、その代わりに、ジョコウィ路線を継承する。このようにして、ジョコ大統領は大統領を退任しても、後任の大統領になるプラヴウォに、自分の政策を継続遂行させる手はずを整えた。しかし、だからと言って、メガワティと喧嘩をして、闘争民主党を割るとか、メガワティを党から追い出すということはしない。大きく、長期的な構えをしている。ここもまた政治家として凄いところだ。闘争民主党は今回、プラヴウォに敗れたが、国民評議会選挙では第一党になった。闘争民主党は野党の立場となるが、ジョコ大統領路線の警鐘をプラヴウォが堅持する限り、政権に対して敵対的な姿勢を取ることはないだろう。

ジョコ大統領は、2023年9月に次男のケーサン・パンガレップ(Kaesang Pangarep、1994年-、29歳)をインドネシア連帯党(Partai Solidaritas IndonesiaPSIIndonesian Solidarity Party)の党首に就任させた。この政党は2014年にできたばかりで、若者や女性の権利を主張する政党だ。現在は国会議員を出していない。しかし、今回の大統領選挙と同時に実施される国会議員選挙では、国会での議席獲得が期待されている。インドネシア連帯党が国会で議席を得れば、プラヴウォ大統領とギブラン副大統領を支える与党の立場になる。ジョコ大統領は自分の息子たちを政界に送り込み、自分の政策の継続性を確保する。

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ケーサン・パンガレップ(右)、オバマ元大統領、ウィドド大統領

インドネシアは、ジョコ・ウィドド大統領が敷いた経済成長路線を継続する。そのために、ジョコ大統領は着々と段取りを整えている。自分が所属している闘争民主党のメガワティ党首・元大統領と喧嘩をしないが、政治的なライヴァルだったプラヴウォを取り込むことで、結果として、メガワティの力を抑えることに成功した。ジョコ大統領はまだ62歳と若い。これから少なくとも10年は仕事ができる。そして、この10年は世界にとっても、インドネシアにとっても重要な10年となる。それは、これからの10年で世界の構造が大きく変化するからだ。これから伸びていく、非西側陣営の重要なメンバーとして、インドネシアは偉大な指導者の下、発展を続けていく。

(貼り付けはじめ)

インドネシアの選挙は与党である闘争民主党にとって何を意味するか(What Indonesia’s Election Result Means For the Ruling PDI-P

20年ぶりに野党に転落した闘争民主党(PDI-P)は次期政権の権力をチェックする重要な役割を担うことになる。

ヴィルディカ・リスキー・ウタマ筆

2024年2月16日

『ザ・ディプロマット』誌

https://thediplomat.com/2024/02/what-indonesias-election-result-means-for-the-ruling-pdi-p/

水曜日、インドネシアでは、大統領選挙と国民議会および地方議会の選挙が同時に行われた。その結果、複雑な政治情勢が明らかになった。各調査機関と「コンパス」の毎日の研究開発からの簡単な集計に基づくと、与党インドネシア闘争民主党(PDI-P)は大統領選挙で後退に直面したが、国民議会選挙では好成績を収めた。公式結果は来月まで発表されないが、闘争民主党の現在の位置と果たすべき役割を明確に示している。

闘争民主党は、最近まで中央ジャワ州知事を務めていた大統領候補ガンジャール・プラノウォが得票率約16から18%に留まり、大統領選挙戦で大きな課題に直面した。これは、24から26%を獲得した元ジャカルタ知事アニエス・バスウェダンや、各種速報結果によると約56から58%の得票率で圧倒的な勝利を収めた最終的な勝利者プラヴウォ・スビアント国防大臣を大きく下回った。プラヴウォの勝利はインドネシア政治の極めて重要な瞬間を示し、有権者の志向の変化と政治勢力の再編の可能性を示している。

特に中央ジャワ、東ジャワ、バリといった伝統的な闘争民主党の拠点でのガンジャール・マフフドの敗北は、党への忠誠心を超えた有権者の力関係の複雑な相互作用を明らかにしている。大統領選挙での敗北にもかかわらず、闘争民主党は国民議会選挙で好成績を収めた。「リトバン・コンパス」の速報集計結果によると、闘争民主党は得票率17から18%を獲得し、国民議会で最も高い得票率を確保し、ゴルカル党、ゲリンドラ党、国民覚醒党がそれに続いた。

闘争民主党の立法府部門での成功は、闘争民主党がインドネシア政治の雄として不朽の強さと回復力を保持していることを再確認させるものだ。この逆説的な変化は、政治的再編成とインドネシアの有権者における新たな分断線の出現という、より広範な物語を強調するものである。また、過去10年間与党であった闘争民主党は、その戦略を再評価し、進化する政治情勢における自らの役割を再定義する必要に迫られている。

立法府選挙における闘争民主党の好成績は、闘争民主党の永続的な強さと回復力の証である。この結果は、立法部門における闘争民主党の本拠を再確認するものである。闘争民主党が政治戦略を立て直し、強大な野党勢力としての影響力を再強化するための重要な足場を提供するものである。

しかしながら、インドネシアにおける競争的権威主義(competitive authoritarianism)への移行を示唆する可能性があるプラヴウォ・スビアントの大統領就任という文脈において、闘争民主党の立法府選挙での勝利の重要性はいくら強調してもしすぎることはない。公平性と平等の原則が侵食される一方で、選挙競争の幻想を特徴とする競争的権威主義は、ウラジーミル・プーティン政権下のロシアの政治路線を彷彿とさせる。

この文脈において、与党政権に対するカウンターバランスとしての闘争民主党の役割は、国の民主政体構造を維持するために不可欠である可能性がある。この変化に対する懸念は、ジョコ・ジョコウィ・ウィドド大統領が選挙結果を自分たちに有利に操作しようと努めたと主張する先週公開された映画「汚い投票」で強調された選挙不正疑惑など、いくつかの要因によるものだ。プラヴウォと副大統領候補ギブラン・ラカブミン・ラカはジョコウィの長男である。さらに、プラヴウォは独裁者スハルトの義理の息子という経歴と人権侵害の経歴から、民主的な原則への取り組みに懸念が生じている。

更に言えば、プラヴウォの支持者の中には、異論を唱える者を警察に通報することで批判を封じ込めようとする傾向があり、民主政治体制の基本的な柱である表現の自由に対する不寛容さを反映している。これらの要素を総合すると、プラヴウォの大統領就任は、選挙の装いはあるが民主政治体制の本質が損なわれた、より権威主義的な統治スタイルへとインドネシアを導く可能性があることを示唆している。

闘争民主党がもたらす反対派としての資産は、この重大な局面において非常に貴重なものとなる可能性がある。国民議会で重要な議席数を獲得している闘争民主党には、民主政治体制の完全性、透明性、説明責任の大義を擁護する機会が出てくる。闘争民主党は立法上の影響力を活用して政府の政策を精査し、改革を主張し、民主的な原則を支持する世論を動員することができる。

更に言えば、闘争民主党が10年間の政権運営を経て野党のベンチに戻ったことは、その政治的アイデンティティを再定義し、草の根の支持基盤とのつながりを取り戻すまたとない機会となる。社会正義、経済的公正、政治的包摂の大義を唱えることによって、闘争民主党はそのイデオロギー的な魅力を若返らせ、インドネシアにおける民主政治体制の先駆者としての地位を強化することができる。

闘争民主党が野党としての役割を受け入れる必要性は、単なる立法バランスの仕組みにとどまらない。それは闘争民主党のイデオロギー的基盤と、インドネシア社会の恵まれない人々や社会から疎外された人々を擁護するという歴史的関与に根ざしている。闘争民主党の左派的傾向は、スカルノ主義(Sukarnoism)または「マルヘーニズム(Marhaenism)」に触発されたもので、社会正義、ナショナリズム、そして庶民(マルヘーン、ordinary people)の力をつけてやること(empowerment)を強調している。このようなイデオロギー的スタンスは、闘争民主党を、エリートの利益を優遇したり、社会的公正を損なうような政策を効果的に批判し、対抗できる政党として自然に位置づける。

野党の役割への復帰は、戦闘的で忠実な草の根基盤を持つ政党としての闘争民主党の本質的な特徴とも一致している。数十年にわたって培われたこの草の根ネットワークは、東証民主党に世論を動員し、非民主的な統治の転換に対する抵抗を組織するための強力なプラットフォームを与えている。闘争民主党にはスハルト時代の、強力な反政府勢力としての名高い歴史があり、その回復力と民主的価値観への献身を示してきた。その後、メガワティ・スカルノプトリの指導の下で闘争民主党は権力を掌握し、スシロ・バンバン・ユドヨノ(2004年-2014年)およびジョコウィ(2014年-2024年)の大統領時代を通じて、政治情勢におけるその重要性をさらに強固なものとした。これら全てによって、闘争民主党はプラヴウォ政権に対する強力な野党勢力となる理想的な立場にある。

強力な野党としての役割は、競争力のある独裁政権の状況において極めて重要であり、与党はしばしば潜在的な挑戦者を取り込むか無力化しようとする。 闘争民主党は、その明確な政治的アイデンティティとイデオロギーの明確さを維持することで、民主的規範への侵食を防ぎ、政治の場が真の論争と議論のための空間であり続けることを保証することができる。これは、少数派の権利を保護し、政府が社会のあらゆる層に対して責任を負い続けることを保証するために特に重要だ。

闘争民主党にとって、野党の地位を受け入れることは、党の将来にとって戦略的な意味を持つ。それは、闘争民主党が不人気な政府の政策から距離を置き、国民の利益、特にウォン・シリク(wong cilik、庶民)のチャンピオンとして自らを位置づけ直すことを可能にする。これは、党のイメージを再構築し、国民の信頼を回復する上で、特に選挙での敗北の余波を受けた場合には、貴重な財産となりうる。闘争民主党は、インドネシアのための明確で首尾一貫した代替ヴィジョンを明示することで、支持基盤を活性化し、現状に幻滅した新たな支持者たちを引きつけることが可能となる。

しかし、野党としての闘争民主党の前途は多難である。建設的な批判と協力の間で微妙なバランスを取らなければならない。闘争民主党の野党共闘が妨害的なものとしてではなく、ガバナンス(統治)を強化し民主的価値を守るための真の努力として受け止められることが肝要である。更に言えば、闘争民主党は、その政治的正当性を損ない、国民議会での発言力を抑圧しようとする試みに対して警戒を怠らないようにしなければならない。闘争民主党は、デジタルメディアと草の根動員の力を活用し、メッセージを増幅させ、その民主的アジェンダに対する国民の支持を喚起しなければならない。

今週のインドネシアでの選挙は、国の民主政体を守る上で、活気と回復力のある野党が極めて重要であることを浮き彫りにした。闘争民主党は国民議会選挙で一貫して成功を収めており、闘争民主党を政治情勢において極めて重要な勢力として位置づけ、プラヴウォ次期政権への動きに対抗できる立場にある。速報結果が、総選挙管理委員会が発表した公式の選挙結果と厳密に一致する場合、闘争民主党は警戒を怠らず、プラヴウォの選挙後の団結という物語の魅力に屈しないことが不可欠である。プラヴウォ政権に協力することは、インドネシアにおける野党の役割を軽減することになる。

政府機構内に強力な抑制と均衡が存在しないことは、国の民主政治体制の健全性に悪影響を及ぼす。インドネシア国民は、十分な情報に基づいた、回復力のある、批判的で明確な反対派を切実に必要としている。歴史的な先例は、闘争民主党が希望すればこの役割を果たす独自の立場にあることを示している。

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元陸軍の実力者がインドネシア大統領選挙での勝利を確実のものとした(Ex-army strongman leader claims victory in Indonesian presidential election

ヘザー・チェン、アンガス・ワトソン、ソフィー・ジオン、キャサリーン・マグラモ(CNN)筆

2024年2月14日

CNN

https://edition.cnn.com/2024/02/14/asia/indonesia-election-prabowo-subianto-intl-hnk/index.html

CNN発。議論が続いている過去を持つ元陸軍大将がインドネシア大統領選挙が勝利を確実のものとした。

国営報道機関アンタラ、CNN系列局CNNインドネシア、ロイター通信が報じた非公式結果によると、プラヴウォ・スビアント(72歳)が開票率約85%の段階で、大統領選挙決選投票を回避するには十分な得票率60%近くを獲得したということだ。初期の集計は非政府シンクタンクによって行われた。水曜日の午後早くに全国の投票所が閉鎖された。

プラヴウォ候補は、水曜日の投開票を前にジャカルタの支持者に対し、ジョコ・ウィドド大統領の長男であるギブラン・ラカブミン・ラカ候補とともに「インドネシア国民全員のため(for all the people of Indonesia)」に政治を行うと語った。

プラヴウォは次のように宣言した。「感謝はしているが、私たちは傲慢になってはいけないし、有頂天になってはいけない。今回の勝利は全てのインドネシア国民のための勝利でなければならない。部族、民族、人種、宗教、社会的背景に関係なく、インドネシアの全ての人々を育て、守り、守るために、私はギブランとともに先頭に立つ」。

非公式の開票速報によると、人気の高いアニエス・ベスワダン前知事は22%弱の得票率で2位となり、ライヴァルのガンジャール・プラノウォが3位となった。

ロイター通信が引用したアニエス陣営、ガンジャール陣営のスポークスマンによれば、両陣営とも初期の結果に異議を唱えており、勝利者が確定したとするには時期尚早だという。

CNNは、早期の投票結果の数字を独自に検証することはできないが、信頼できるシンクタンクによる集計は、インドネシアの過去の選挙で正確であることが証明されている。

水曜日の演説の中で、プラヴウォは支持者たちに対し、インドネシア選挙管理委員会が正式な投票結果を発表するのを「静かに待つ(calmly wait)」よう呼び掛けた。選挙管理委員会は3月に正式な結果を発表する予定だ。

2019年の前回選挙後、敗れたプラヴウォが結果に異議を唱え、激しい暴動が発生した。

インドネシアは世界で4番目に人口の多い国であり、世界最大のイスラム教徒人口を抱えている。世界最大規模の1日限りの選挙とされる今回の選挙では、水曜日に38の州の2億人以上が投票する資格を持っている。

しかし、世界最大の群島国家であるインドネシアで投開票を実施するのは大変な労力が必要である。国土はアメリカよりも広く、3つの時間帯にまたがっている。1万8000以上の島と小島で構成され、そのうち6000に人が住み、150以上の言語が話されている。

専門家たちは、今年の投票では若い有権者が鍵を握っており、総選挙管理委員会によると、登録有権者の約半数が40歳未満であると指摘している。

プラヴウォの後にステージに登場したギブランは、今回の選挙における若者有権者の影響力を認め、支持者たちに「将来、私たちは若者を巻き込んでいくことになる」と語った。

●プラヴウォの大統領就任は何を意味するか?(What will a Prabowo presidency mean?

プラヴウォはエリート政治家一族の出身だが、彼の過去、特に義父でもあった故独裁者スハルトの時代については議論を呼んでいる。軍人としての過去における人権侵害の告発は、彼の政治家としてのキャリアを通してずっとつきまとってきた。

プラヴウォの父親スミトロ・ジョジョハディクスモは元財務・貿易大臣で、祖父マルゴノはネガラ・インドネシア銀行を設立し、大統領諮問委員会委員長を務めいた。

プラヴウォは1970年にインドネシア陸軍士官学校に入学し、特殊部隊の司令官となり、インドネシアが24年間東ティモールを軍事占領した際、独立派に対する作戦を指揮した。

プラヴウォはまた、スハルト独裁政権の最後の数か月間、民主化活動家たちの誘拐を命令したと非難されている。

その後、プラヴウォはインドネシアの活気ある民主政体を支持する人物へと変身し、最近では親しみやすいが頼りになるおじいさんのような人物というイメージを築き上げ、過去10年間にわたり政界の主要人物として存在感を増してきた。

プラヴウォは2014年と2019年に大統領選に出馬したが、ジョコウィの名で親しまれているジョコ・ウィドド現大統領に2度とも敗れた。

かつてのライヴァル2人は、ジョコウィがプラボウォを国防相として入閣させたことで対立は解消した。

今年、プラヴウォはジョコウィの長男であるギブラン・ラカブミン・ラカを副大統領候補として指名して、コンビを組んだが、この決定は議論を巻き起こした。ジョコウィが大統領職を退く準備を進める中、妨害の疑いでジョコウィに対する激しい批判を巻き起こした。

インターナショナルIDEAアジア太平洋ディレクターであるリーナ・リッキラ・タマンは、「大統領が選挙で中立を保つことは広く予想されている。プラヴウォの勝利は『ジョコウィの政策の継続』と見なされるだろう」と述べた。

プラヴウォの人気が2019年の選挙以降上昇しているのは、ジョコウィの暗黙の支持によるところが大きいと専門家たちは指摘している。

ジョコウィは貧しい家族の出身で、インドネシア政治の伝統的な裕福なエリートからの脱却を掲げて選挙戦を戦ったジョコウィは、目覚ましい経済成長を主導し、人気を博して政権を去ることになる。しかし、ジョコウィが在任中、インドネシアは人権問題や汚職指数で後退した。プラヴウォはジョコウィの遺産を受け継ぐ後継者という位置づけが強い。

ヴェリスク・メープルクロフト社の東南アジア担当上級アナリストであるローラ・シュワルツは次のように述べている。「プラヴウォ大統領の就任に関する懸念は、彼が以前から大統領の任期制限撤廃、大統領直接選挙の廃止、人権保護の縮小を主張していることから、非自由主義的な行動が増加する可能性が高まると考えられることだ。このような動きは、インドネシアの評判を落とし、外国投資を誘致する能力を低下させるだろう」。

ワシントンDCのアメリカ合衆国国防大学で東南アジアの政治と安全保障問題を研究するザカリー・アブザ教授は、CNNの取材に対し、「プラヴウォは自分自身を再創造し、過去を白紙に戻そうと懸命に努力してきた」と語った。

アブザは、元軍人をトップに据えることは、権威主義的支配の暗黒時代への回帰を意味すると続けて指摘した。アブザは、「ジョコウィは多くの陸軍大将に囲まれ、コロナウィルスのパンデミックのような多くの問題を『安全化(securitize)』する傾向があったが、プラヴウォでは事態が悪化する可能性がある」と述べた。

アブザは、「プラヴウォは、退役軍人たちを顧問や閣僚の地位に就けるだろうと私は考えている。しかし、より大きな懸念は、彼が軍の政治への復帰を加速させることだ」と述べている。

ジャカルタの有権者たちはCNNの取材に対し、今回の選挙の結果は「王朝政治(dynasty politics)」の復活を示唆するものになるだろうと述べた。ヨハネス・グレゴリウス・トゥカン氏(41歳)は、プラヴウォとギブランの選挙運動は、「ニュアンスの違う縁故主義と腐敗(nuanced nepotism and corruption)」を示していると語った。もう1人の有権者であるクンコロ・リコニは「権威主義的支配への回帰(a return to authoritarian rule)」を恐れていると述べた。

リコニは「1998年に血と涙を流して戦い取った民主政治体制を失いたくない」と述べた。

CNNのアレックス・スタンボー、ティール・レバンが今回の記事の作成に貢献した。ジャーナリストのアウグスティヌス・ベオがジャカルタからの報道に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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