古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:インドネシア

 古村治彦です。

 石油以外の資源を豊富に持つ国々の存在感と重要性が増している。鉱物資源、特にレアアースは獲得競争状態になっている中で、先進諸国は資源確保に向けて、資源を多く持つ国々に働きかけを行っている。中国は東南アジア、南米、アフリカにいち早く進出し、資源のサプライチェインを構築し、主導権を握っている。欧米の先進諸国は「旧宗主国」という意識がどうしてもぬぐえず、これらの国々から警戒されてしまっている。それは、大航海時代から植民地として過酷な搾取をされてきた歴史があるからだ。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領は資源確保に躍起になっている。ヴェネズエラ攻撃もそしてイラン攻撃も石油資源確保がその理由にあるという分析もある。ドンロー主義による、西半球(Western Hemisphere)の支配、南北アメリカ大陸の支配には、資源確保と資源の支配を目論んでいる。ブラジルは南米の地域大国であり、同時に鉄鉱石などの資源を持つ資源大国である。アメリカはブラジルとの関係を強化しようとしているが、うまくいっていない。ブラジルはBRICSの一角であり、アメリカの支配に唯々諾々と従うことはない。

 このブログで以前にインドネシアについてご紹介したが、インドネシアは資源大国である。ニッケルや天然ガスを多く産出している。インドネシアはただそれらの天然資源を採掘し、輸出するということではなく、それらの加工、精錬を自国で行うというモデルを構築した。これが他の資源諸国を刺激している。他の国々も自国での加工を行おうという動きに出ている。しかし、それには資金や技術、そして安定した政府やインフラが必要となる。インドネシアのように進めるのは難しい。こうした動きをサポートしているのは中国だ。

 欧米の先進諸国は天然資源のサプライチェインを中国が握っていることに危機感を持っている。それは自分たちが「支配」し「搾取」できないということが明らかになっているからだ。適当に援助と結びつけて、安い金で買い叩けばよいということが通じなくなっている。これまで数百年、西洋の先進諸国はそれ以外の地域の国々を搾取し、大きな利益を上げてきた。しかし、BRICSという枠組みが西洋諸国への対抗軸として出現し、中国が主導して、サプライチェインを構築した。先進諸国は「正当な」対価を支払うことを求められるようになったことを「中国が支配する不安」と言い換えている。自分たちが搾取できないことを「不満」に思っている。しかし、世界は変わりつつある。資源大国は協力し合いながら、自分たちの正当な利益を確保する。その流れは止められない。

(貼り付けはじめ)

世界の鉱物資源大国が好機を掴む(The World’s Mineral Powers Seize Their Moment

-資源国はこれまで必ずしも資源採掘の恩恵を享受できてこなかった。今回は状況が違うのだろうか?

クリスティーナ・ルー筆

2026年6月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/02/critical-mineral-trade-trump-china-supply-chain-africa-latin-america/

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インドネシア南東スラウェシ州ノース・コナウェの鉱山でニッケル鉱石を積んだダンプカーを捉えた航空写真(2023年8月3日)

重要鉱物をめぐる世界的なブームに巨額の資金が投じられている。これらの資源が「貿易兵器(trade weapons)」として利用される場面が増え、各国がサプライチェイン(供給網)の脆弱性を解消しようと躍起になっていることがその理由として挙げられる。

そして、資源所有諸国もまた、この好機を最大限に活かそうと熱心に活動している。

ジョー・バイデン政権でエネルギー資源担当の国務次官補を務めたジェフリー・パイアットは、資源産出国は「この瞬間を最大限に利用したい(to take maximum advantage of this moment)」と考えていると指摘している。

コンゴ民主共和国、ボリヴィア、南アフリカといった世界の主要な資源諸国にとって、これはあまりにも馴染み深い展開だ。これらの国々は過去にも資源開発への関心が集中した経験があり、資源採掘や搾取(extraction and exploitation)にまつわる複雑で困難な歴史を経験してきた。

バラク・オバマ政権下で米国務省初のチーフ・エコノミストを務め、現在は外交問題評議会(CFR)に所属するハイディ・クレボ=レディカーは、「資源国はこれまで、資源を吸い上げられるだけの存在として利用されてきた」と述べている。クレボ=レディカーによれば、多くの国が「何十年にもわたる資源採掘の恩恵を享受できていない(have not seen the benefits of the extraction of many resources over many decades)」のが現状だ。

資源諸国は、今回こそは、その利益を自らのものにしたいと考えている。

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ベルギー領コンゴ(現コンゴ民主共和国)のカタンガ地方にある鉱山の写真(1960年)

重要鉱物はかつて外交政策の分野で片隅に追いやられていたが、今や貿易戦争(trade wars)や、トランプ政権の露骨な取引重視の外交姿勢を追い風にして脚光を浴びている。

ドナルド・トランプ米大統領は、ウクライナから日本に至るまで新たな取引を求めて世界を奔走する中で、鉱物資源確保への野心を隠そうとはしていない。アメリカの優先事項を明確に示す動きとして、今年初め、マルコ・ルビオ米国務長官は史上初となる重要鉱物に関する閣僚級会合を招集した。この会合でアメリカ政府高官たちは、50カ国以上の代表者に対し、世界規模の鉱物貿易圏(a global minerals trading bloc)の構築を働きかけた。

これらの資源が世界的に極めて重要な安全保障上の課題とみなされるようになるにつれ、鉱物資源確保に総力を挙げているのはアメリカだけではなくなっている。こうした関心の高まりは、鉱物資源に恵まれた国々から歓迎されている。彼らは「資源ナショナリズム(resource nationalism)」の波に乗じ、高まる地政学的影響力を利用して、自国の戦略的産業に対する支配力を強めようと躍起になっているからだ。

『チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト(China-Global South Project)』編集長エリック・オランダーは次のように語っている。「発展途上国は、こうした様々な大国と関わりを持とうと躍起になっている。重要な問いは、『実際に物事を成し遂げるのは誰か?』ということだ」。

その問いに対する答えは長らく中国であった。中国はこの分野に数十年にわたり資源と投資を注ぎ込み、今や世界の鉱物サプライチェインを強力に支配する地位を確立しているからだ。ウィリアム・アンド・メアリー大学の調査機関「エイドデータ(AidData)」によれば、中国は20年以上にわたり47カ国での採掘・加工事業に約980億ドルを投じており、世界の重要鉱物プロジェクトにおける最大の資金提供者となっている。

「中国は、金融、政府系保険、そして実際に事業を遂行できる政府系鉱業会社からなるエコシステム(経済圏)を構築していることを証明してきた」とオランダーは指摘している。

しかし現在、提示される案件は増える一方であり、単一の取引相手に縛られたいと考える者は誰もいない。

特にトランプとの交渉において、各国政府は、自国の豊富な鉱物資源を「切り札」にすることで、トランプの歓心を買ったり、投資を引き出したりできることを学んだ。さらに選挙という要素も加わり、各国政府は、資源の富や外国からの関心を活用して、国内での政治的成果につなげることへの関心を一層強めている。

こうした背景のもと、トランプ政権はコンゴ民主共和国を含む世界各地で取引を模索してきた。アメリカはコンゴ民主共和国との和平合意の仲介役を務め、その合意によってアメリカ企業は鉱物資源へのアクセスを得ることになった。(一方、ワシントンは、コンゴのフェリックス・チセケディ大統領が任期制限である2期を越えて、3期目を目指す動きを見せているにもかかわらず、沈黙を守っている。批判派はこれを露骨な権力掌握だと非難している。)

「アメリカが重要な鉱物資源へのアクセスを確保できる限り、トランプ政権にとって他のことは何も重要ではない」と『チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト』のアフリカ担当編集者クリスチャン=ジェロー・ニーマは述べている。

しかし、トランプの取引的なアプローチは必ずしも支持を得てきてはいない。最も激しい対立を生んだ事例の1つとして、先月、アメリカとザンビア間の協議が決裂した。ザンビア側は、トランプ政権が保健援助の条件として鉱物資源へのアクセスを求めていると非難した。

ザンビアは銅の主要産地であり、ワシントンが中国の「一帯一路」構想(China’s Belt and Road Initiative)への対抗策として長年推進してきた広大な鉄道プロジェクトである「ロビト回廊(the Lobito Corridor)」の一部となっている。8月に選挙を控える中、ザンビア政府は2031年までに銅生産量を大幅に増加させるべく、海外からの投資を積極的に誘致していた。

しかし、当時のザンビア外相ムランボ・ハイムベは、6ページにわたる厳しい内容の声明の中で、ワシントンが鉱物資源への優遇アクセスを要求し、鉱物資源取引を約20億ドルの保健援助と結びつけていると非難した。

「ザンビア政府は第一に、ザンビア国民が自国の重要な鉱物資源の利用方法について発言権を持つべきであり、第二に、いかなる戦略的パートナーも他国より優遇されるべきではないという正当な見解を持っている」とハイムベ外相は述べた。

これに対し、アメリカ政府当局者は反論している。米国務省の報道官は『フォーリン・ポリシー』誌への電子メールを通じての回答で、「ザンビアに提案したものを含め、『アメリカ・ファースト・グローバル・ヘルス(America First Global Health)』に基づくどの覚書(MOU)にも重要鉱物に関する条項は含まれていない」と述べた。

この報道官はさらに、「ザンビアに提示された覚書案は、純粋にデータに基づく影響評価と説明責任の指標を基盤としており、ザンビアが外部からの保健医療支援への依存を減らせるよう、持続可能な医療インフラを構築することを目的としている」と付け加えた。「国務省は現在もザンビア政府当局と保健医療に関する覚書について協議を続けており、前向きな結果が得られると楽観視している」。

大西洋の反対側でも、アメリカはブラジルに対し重要鉱物協定の締結を働きかけてきたが、成果は上がっていない。南米に位置するブラジルは金採掘の長い歴史を持ち、世界第2位の埋蔵量を誇るレアアース(希土類)資源を擁しているが、ブラジル政府はこれまでその開発・活用を試みてきたものの、その多くは失敗に終わっている。

アメリカとブラジルは長年にわたり重要鉱物分野での協力について検討してきたが、トランプ政権はここ数カ月、協定締結に向けた圧力を強めていると報じられている。

しかし、『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、ブラジル政府当局は、中国よりも優先的に鉱物へのアクセス権をアメリカに与えることや、何らかの排他的な協定に署名することに対して、これまでのところ難色を示しているという。また、ブラジルはインド、韓国、日本、そしてヨーロッパ諸国とも鉱物分野での協力を模索しており、世界的な連携を拡大しようとする姿勢を明確にしている。

それでも、アメリカ企業は大きな進出を果たしている。USAレアアース社は最近、ブラジルの企業セラ・ヴェルデ(Serra Verde)を買収する28億ドル規模の契約を発表した。セラ・ヴェルデはレアアース鉱山と処理施設を所有している。この鉱山は、特に「重希土類(heavy rare earth)」が豊富であることで知られている。重希土類は、中国がアメリカとの最近の貿易摩擦において、その処理工程を支配していることを武器化して利用したまさにその資源だ。

USAレアアース社のバーバラ・ハンプトンCEO4月、外交専門誌『フォーリン・ポリシー』に対し、「ブラジルは、世界経済を動かすために中国以外から調達する必要がある重要物資の供給において、まさに要(かなめ)となる位置にある」と述べた。

今後、いくつかの障害が待ち受けている可能性もある。特に、ブラジルでは今年後半に選挙を控えているためだ。ブラジルの政治家たちは国家安全保障上の懸念を理由にこの取引に強く反対しており、ブラジルの独占禁止法担当当局も先月、この買収計画について調査を開始すると発表した。この調査には、アメリカ企業との15年間にわたるオフテイク契約(生産物全量引き取り契約)の条件に関する精査も含まれる。

USAレアアース社はコメントを拒んだ。

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領の発言を見る限り、ブラジルは慎重な姿勢で進めているようだ。ルーラ大統領は3月、具体的な相手の名は挙げずに「彼ら」と呼び、次のように語った。「彼らは私たちのあらゆるものを奪った挙句、今度は私たちが持つ重要鉱物やレアアースまで所有しようとしている。彼らは私たちを再び植民地化しようとしている」。

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ワシントンのアメリカ平和研究所にて、ルワンダのポール・カガメ大統領(左)とコンゴのフェリックス・チセケディ大統領との和平合意調印式を主催し身振り手振りを交えて話すドナルド・トランプ米大統領(2025年12月4日)

地下に豊富な資源が眠っていることだけが経済の全てではない。ブラジル、ザンビア、コンゴのように鉱物資源に恵まれた国であっても、常に大きな課題となってきたのは、採掘された原鉱石を、世界中で需要の高い、より付加価値の高い加工素材へと転換することだ。そこで登場するのが中国だ。中国は、重要な鉱物資源のサプライチェインにおける加工工程(processing)を圧倒的に支配している。

しかし今や、資源豊富な国々は、単に原材料を輸出するだけでは満足していない。自国で加工も行いたいと考えている。しかしながら、その道のりは容易ではない。

外交問題評議会(CFR)の専門家であるクレボ=レディカーは次のように指摘している。「大きな課題の1つは、採掘事業を、その国自身により大きな利益をもたらすような形で構築できるかどうかという点だ。そして、さらに大きな問いは、それらの国々がヴァリューチェイン(価値連鎖)の上流へと段階的に移行できるか?、ということだ」。

インドネシアは数年前、加工・製造能力の構築と投資誘致の一環として、ニッケル原鉱の輸出禁止やその他の商品輸出規制を導入し、その「成功の作戦書(playbook)」を確立した。インドネシア政府は現在、さらに一歩踏み込んだ動きを見せており、商品輸出を一元管理し、戦略的分野への統制を強化する国営機関を設立する新たな計画を進めている。

他国もこの動きを注視している。コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センター上級研究員ザイナブ・ウスマンによると、インドネシアの措置はアフリカ諸国政府の同様の動きを促すきっかけとなった。アフリカ諸国は現在、探査・採掘・鉱山開発といった段階にとどまらず、加工・精錬・製造といったヴァリューチェインの下流工程への投資を積極的に求めている。

ジンバブエは、未加工の鉱物およびリチウム精鉱の輸出を全面的に停止した。ガーナは2030年までに未加工の鉱石の輸出を停止する計画を立てている。モザンビークも、マリやブルキナファソと同様の措置として、鉱山プロジェクトへの国家の権益確保や鉱物輸出の制限を盛り込んだ法改正を検討している。

ウスマンは次のように述べている。「こうしたアフリカ諸国は今、これまでとは異なるやり方を採用することを決断している。彼らは、未加工の鉱石ではなく、加工・精錬された鉱物を輸出できるかどうかを模索している」。

しかし、大きな課題が立ちはだかっている。新たなサプライチェインを構築するには専門知識、技術、時間、そして継続的な資本が必要となる。コモディティ価格の激しい変動(これは周知の事実だ)や、適切なガヴァナンスおよび政治的安定性への懸念がある中で、長期的な投資を呼び込んだり、強靭なサプライチェインを構築したりすることは容易ではない。

過去の事例を見れば、鉱物資源による富を十分に活用することがいかに困難であるかが理解できる。ヴェネズエラから太平洋の島国ナウルに至るまで、多くの国が資源による富を経済成長の原動力に変えようと試みては失敗してきた。価格の乱高下、ずさんな管理、そして汚職によって、その産業が崩壊してしまったからだ。

この分野で機運が高まっているとはいえ、加工分野における中国の圧倒的な力に対抗するための即効性のある解決策は存在しない。また、アメリカやその他の国々が公約を最後まで実行に移すかどうかも不透明だ。

オランダーは次のように指摘する。「アメリカやヨーロッパは、ほぼ全ての取引において、採掘という側面にばかり目を向けている。精錬や加工といった側面についてはほとんど議論されていないが、そこは依然として、重要鉱物のサプライチェインの大部分を中国が強力に支配している領域である」。

さらに、地域社会が負担する代償という問題もある。鉱業は世界的に見ても極めて環境負荷の高い産業として知られており、汚染、環境破壊、安全上のリスク、そして死傷事故といった問題を長年にわたり引き起こし、世界各地で地域住民からの反発を招いてきた。

こうした反発によって、一部のプロジェクトが頓挫する事態も生じている。昨年、エクアドルでは数万人が街頭でデモを行い、あるカナダ企業による金採掘プロジェクトに抗議した。住民たちは、このプロジェクトが重要な水源に悪影響を及ぼすと主張した。こうした世論の圧力に押され、エクアドル政府は最終的に、その企業に対する環境認可を取り消す決定を下した。

『採掘:グリーン資本主義の最前線(Extraction: The Frontiers of Green Capitalism)』の著者で、プロヴィデンス・カレッジの政治学者であるテア・リオフランコスは、鉱業やそれに続く開発事業には「極めて甚大な環境的・社会的コスト(really intense environmental and social cost)」が伴うと指摘している。

しかし、世界的な資源獲得競争が加速する中、これらの国々の指導者たちは事業拡大に全力を注いでいるようだ。

戦略国際問題研究所(CSIS)で「重要鉱物安全保障プロジェクト(the Critical Minerals Security project)」ディレクターを務めるグレースリン・バスカランは次のように述べる。「アフリカやラテンアメリカの多くの国々にとって、雇用、インフラ投資、そして経済成長は不可欠なものであり、鉱物資源はその実現に向けた最良の手段となる」。

※クリスティーナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@christinalu.bsky.social Xアカウント:@christinafei

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アメリカの戦時資金準備完了(America’s War Chest in Waiting

-ワシントンが新たに手にした外交手段は2000億ドルの小切手だ。

クリス・ヒューズ筆

2026年1月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/12/united-states-war-venezuela-military-development-finance-corporation/

外国元首の拉致は戦争行為とみなされる可能性がある。ワシントンでは、これは交渉の口火を切るための布石となった。ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の劇的な拉致事件後、ドナルド・トランプ米大統領とその政権は、アメリカのエネルギー企業がヴェネズエラに再進出し、石油採掘を行い、企業の利益とヴェネズエラ政府の歳入を支えることを明確にした。石油・ガス業界の幹部たちは大規模投資に慎重な姿勢を示しているが、アメリカ政府は合意形成を促進する新たな手段を入手した。

先月、連邦議会は大規模な外国投資銀行設立に向けた準備を進めたが、この動きはほとんど報道されなかった。2025年12月に可決された2026年度国防権限法は、あまり知られていない開発金融公社(Development Finance CorporationDFC)に対し、アメリカの外交政策および国家安全保障上の利益に合致するプロジェクトを支援するため、最大2050億ドルの公的資金を投資する権限を与えた。対照的に、トランプ政権による予算削減以前の米国際開発庁(the U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)の予算は約350億ドルだった。

開発金融公社(DFC)は、トランプ政権初期に超党派の支持を得て設立され、新興国経済の発展を公的資金で加速させるという限定的な使命を担っていた。12月の再承認により、その任務は劇的に拡大され、開発金融はアメリカの外交政策を推進し、より広範な国家安全保障を強化するための、柔軟な国家戦略の手段へと変貌した。

この拡大は、まさに危機的な状況下で行われた。第二次ドナルド・トランプ政権は、公的権力を私的な影響力として扱うという、異例の姿勢を示しており、これは「取引による統治(rule by deal)」と呼べる統治方法である。サプライチェインを強化したり、同盟諸国による重要鉱物・エネルギー資源の生産を支援したりできる国家資本(state capital)は、現政権によって武器化される可能性もある。新たに拡大された開発金融公社は、外国の指導者たちを転覆させたり、従属政権(client regimes)に報いたり、法ではなく支配によって定義される国際秩序を構築したりするなど、強制力を行使する手段となり得る。

ヴェネズエラでは、開発金融公社は理論上、民間企業が自己資金では敬遠しがちなプロジェクト、例えばパイプラインの修繕、貯蔵施設の改修、油田サーヴィスなどへの投資を保証できる可能性がある。これは政権の外交政策目標の達成に貢献するかもしれないが、同時に政治的な恩恵供与の始まり(openings for political patronage)となることも明白だ。危険なのは公共投資(public investment)そのものではなく、誰がそれを管理し、どのような目的で使用するかという点である。

公共機関が市場の誘導に役立つと考える私たちにとって、これらの機関を廃止したり弱体化させたりすることが解決策ではない。異なるリーダーシップの下であれば、同じ能力でクリーンエネルギーなどの将来有望な産業への投資や、重要な鉱物資源のサプライチェインが権威主義的な競争相手によって独占されないようにすることで、同盟諸国の経済を強化できるはずだ。

むしろ、開発金融公社の拡大と同時に、現在そして将来にわたってその悪用を防ぐために、民主的な説明責任(democratic accountability)を強化しなければならない。政治的リスクだけを理由に公共投資を放棄すべきではない。効果的な説明責任の仕組みを求めるべき理由なのだ。

濫用の可能性はあるものの、適切な説明責任メカニズムが導入されれば、開発金融公社の権限と規模の拡大はアメリカの外交政策を強化する可能性を秘めている。アメリカ企業によるフロンティア市場への投資を促進するために設立されたこの機関は、世界中の戦略産業を牽引する存在となる可能性を秘めている。開発金融公社が投入する公的資金は、強靭なサプライチェインの構築、同盟諸国の製造能力の支援、そして重要産業における中国の支配の阻止に活用されるだろう。これらは全て、民主党と共和党の双方から支持されている目標である。

この法律が制定される以前は、開発金融公社(DFC)はアルゼンチンのリチウム加工施設への融資は可能だったが、世界有数のリチウム埋蔵量を誇り、アメリカと情報共有を行う緊密な同盟国であるオーストラリアへの融資はできなかった。ヴェトナムの半導体パッケージング事業への支援は可能だったが、日本や韓国への同様の投資は不可能だった。こうした地理的な制約により、アメリカの開発金融は、戦略的な機会が限られている開発途上諸国では自由に活動できる一方で、投資によって最大の利益が見込める同盟諸国では活動が制限されるという、いささか不利な立場に置かれていた。

この新法により、情報共有協定を結んでいるファイヴ・アイズ諸国(オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス)への投資はほぼ無制限に可能となり、その他の富裕国への投資は、エネルギー、重要鉱物、レアアース、海底ケーブルを含む情報通信技術関連のプロジェクトに限られるようになった。富裕国への投資額は、開発金融公社の負債総額の10%、すなわち約200億ドルを超えてはならないとされている。

新設された開発金融公社は規模も権限も拡大したものの、依然として大きな制約に直面している。新法は、開発金融公社がリスクを取り、融資では不可能な形で成果を左右できる株式投資能力に関する課題に十分に対処できていない。株式投資は、開発金融公社に企業統治への影響力、情報へのアクセス、そして事業の長期的な発展を方向付ける能力をもたらす。

新法は、2018年の認可で定められた株式投資総額の上限35%を維持しているが、既存の政府会計基準では依然として融資に比べて株式投資が不利に評価されている。この問題を緩和するため、新法は50億ドルの株式回転資金を創設し、開発金融公社が実現利益を連邦議会の予算承認を経ずに将来の投資に再投資できるようにした。しかし、この50億ドルという新たな資金は、現状では空っぽだ。真の課題は、連邦議会がこの資金を拠出するかどうか、そして拠出がいつになるかである。

他国の成功事例から、外国投資銀行が国家の外交政策遂行能力を著しく強化できることは明らかだ。公的資本の戦略的活用における最も明確な前例は中国だ。中国開発銀行と中国輸出入銀行は合わせて2兆ドルを超える資産を保有し、「一帯一路」構想(the Belt and Road Initiative)の金融基盤を担っている。両行は株式投資を行い、複雑な取引を構築し、中国の戦略的利益を促進する長期的な関係を築いている。

このモデルを実証したのは中国だけではない。ドイツのKfWは、戦後復興のための信用機関として設立されたが、世界最大級の国立投資銀行へと発展し、その資本をクリーンエネルギーへの移行や戦略的な産業投資に活用している。欧州投資銀行(European Investment BankEIB)やシンガポールのテマセクも同様に、ヨーロッパ連合(EU)全体で同様の役割を果たしている。

長年にわたり、アメリカの政策立案者たちは、アメリカの投資力不足を嘆いてきた。中国は長期的な資本投資を国家戦略の手段として活用した一方、アメリカは援助プログラム、技術支援、そして「ルールに基づく秩序(rule-based order)」への建前上の関与に頼ってきた。2023年、当時連邦上院議員だったマルコ・ルビオは、左派経済学者ラリー・サマーズが提唱した言葉を引用し、アメリカの援助を受ける多くの国が「中国と協力すれば空港が手に入るが、アメリカと協力すれば説教されるだけだ」と不満を漏らしていると述べた。権限を強化された国際金融公社(DFC)はこうした状況を変える可能性があるが、同時にワシントンは国際金融公社がトランプ政権の私的資金源とならないよう対策を講じる必要もある。

連邦議会は開発金融公社がその使命を果たすために、引き続き予算を計上する必要がある。次回予算を計上する際には、より明確な条件を付すべきである。

第一に、連邦議会は、大統領、副大統領、閣僚、およびその近親者、ビジネスパートナー、支配下にある企業に直接的かつ重大な利益をもたらすプロジェクトへの開発金融公社の融資を禁止すべきだ。もはやホワイトハウスの住人の誠実さに頼って公正な取引を保証することはできない。したがって、法律は、政権関係者の個人的利益に大きく寄与する可能性のある投資を開発金融公社が追求することを明確に禁止しなければならない。

連邦議会は開発金融公社の監督体制を強化すべきだ。既存の開発金融公社監察官には適切な予算が与えられ、大統領の干渉から保護されるべきだ。アメリカ政府会計検査院(Government Accountability OfficeGAO)は、開発金融公社の大規模取引について定期的な監査を実施することが義務付けられ、アメリカ政府会計検査院の最高経営責任者は説明責任を確保するために定期的に連邦議会で証言すべきだ。内部告発者も明確に保護されるべきだ。最高裁判所がハンフリー対アメリカ訴訟の判決を覆さず、告発理由保護の継続を認めるならば、連邦議会は連邦準備制度理事会(FRB)と同様の保護された理事会を設置することも検討すべきだ。

こうした変化があったとしても、開発金融公社は、その基盤となる民主政治体制的エコシステムの機能に依存している。連邦議会による継続的な監視、独立した裁判所、積極的な調査報道、そして競争的な選挙は、公的資金を個人的または政治的な利益のために流用しようとする行政機関に対する、強固な抑止力となるべきである。

腐敗を抑制するための適切な措置が講じられれば、近年超党派で支持されている、国家運営の手段としての公的投資(public investment)は、国境を越えて拡大されるべきである。

オーストラリアの重要鉱物プロジェクトにおいて株式投資権限が妥当であるならば、アリゾナ州の同様のプロジェクトにおいても同様に妥当である。開発金融公社(DFC)の投資権限を3倍に拡大し、その地理的範囲を富裕な同盟諸国にまで広げる意思のある政権と連邦議会は、国内展開を承認することで、この事業を完遂する意思を持つべきだ。ただし、その際、当初からより強固なセーフガードを構築する必要がある。

アメリカには、このようなアメリカ中心の機関の先例がある。1932年に設立され、フランクリン・ルーズヴェルト大統領の下で大幅に拡大された復興金融公社(Reconstruction Finance CorporationRFC)は、20年間にわたりアメリカの国立投資銀行として機能した。復興金融公社(RFC)は世界恐慌時に破綻寸前の銀行を救済し、産業・住宅投資の活性化を促進し、アメリカが第二次世界大戦に勝利するための産業動員(the industrial mobilization)に資金を提供した。復興金融公社とその関連機関は、日本が天然資源へのアクセスを断った際に合成ゴム工場を建設し、航空機生産の需要が高まった際にアルミニウム精錬所を建設し、自動車メーカーが年間数万機の航空機を生産できるよう支援した。

復興金融公社は1950年代初頭に解散した。これは、戦後の自信過剰によって、もはや強靭な国内経済の構築に公的投資資本は必要ないという認識が広まった結果である。この誤った認識は、危機が次々と発生し、海外の国家支援を受けた競合企業が、公的資本がいかに強力な市場形成力を持つかを証明した後も、数十年にわたって根強く残った。

拡大された開発金融公社(DFC)は、左右両派における政治経済学への転換の一環であり、アメリカの政治目標は市場形成を伴う公的投資を通じてしばしば達成できるという認識に基づいている。今問われているのは、連邦議会がこの権限を、長期的に強靭かつ正当なものとするための民主的な制約と結びつけることができるかどうかである。

※クリス・ヒューズ:『マーケットクラフターズ:アメリカ経済を形作るための100年の苦闘(Marketcrafters: The 100-Year Struggle to Shape the American Economy)』著者。経済安全保障プロジェクト(Economic Security Project)議長。

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ドナルド・トランプの国家資本主義を数字で見てみる数字で見る(Trump’s State Capitalism, by the Numbers

-ドナルド・トランプ米大統領が政府出資を行った企業とセクター。

『フォーリン・ポリシー』誌スタッフ

2026年1月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/14/trump-state-capitalism-equity-stakes-list-companies/

ドナルド・トランプ米大統領は、2期目の最初の1年間、前例のない形で政府と企業の境界線を曖昧にしてきた。その範囲は、ソヴリン・ウェルス・ファンドの設立の試みから、ヴェネズエラ大統領の軍事拘束まで多岐にわたる。この拘束作戦は、少なくとも部分的には、ヴェネズエラの膨大な石油資源をアメリカ企業に開放することを目的としていた。トランプ大統領は、これらの企業を株主や取締役の意向ではなく、自身の意向に従わせるために補助金を与える可能性を示唆した。

トランプ大統領はまた、関税[tariffs](そして優遇企業への特例措置[preferential exemptions for favored firms])、輸出税(export taxes)、規制による威圧(regulatory bullying)など、経済への国家介入(state intervention)を前例のないレヴェルにまで拡大させた。

しかし、トランプ政権の国家資本主義(state capitalism)への転換を最も明確に示したのは、10社以上の企業に直接出資したり、利益分配の交渉を行ったりしたことである。トランプ大統領は、歴代大統領のほとんどが行わなかった形で国家資本主義を受け入れたが、これは中国やロシアといった国々における国家介入の典型的な例である。この傾向は2026年にはさらに加速する見込みだ。

トランプ政権が数十億ドルもの税金を投入している企業の一覧は以下の通り掲載する。

(1)アトランティック・アルミナ(Atlantic Alumina Co.

このリストに最近加わった企業として、トランプ政権は1月に、ルイジアナ州に拠点を置くガリウム企業アトランティック・アルミナ(ATALCO)に1億5000万ドルの株式投資を行うと発表した。

半導体製造に不可欠な原料でありながら、あまり知られていないガリウム(Gallium)は、数年前に中国が輸出規制を課して以来、ワシントンにとって最大の懸念事項となっている。アメリカは現在、アルミナ製造の副産物であるガリウムを生産しておらず、ATALCO社は将来的にはアメリカのガリウム需要を全て満たす見込みだと述べている。(クリスティーナ・ルー筆)

(2)インテル(Intel

おそらくこの種の取引の中で最も注目を集めたものと言えるのが、トランプ大統領が8月に発表した、かつては名門だったものの現在は経営難に陥っている半導体製造会社インテルの株式約10%(約110億ドル相当)を取得するという取引だ。これにより、アメリカ政府はインテルの筆頭株主となる。

トランプは政府がこれらの株式に「何も支払っていない」と豪語したが、インテルは実際には、バイデン政権のCHIPS・科学法に基づき承認された助成金という形で、政府の参入を認める見返りに納税者の資金を受け取っていた。(リシ・イエンガー)

(3)コリア・ジンク(Korea Zinc

2025年12月、トランプ政権は、韓国のコリア・ジンクがテネシー州に建設する精錬所の株式40%を取得する契約を締結した。この契約の一環として、アメリカ政府と匿名の米投資家たちもコリア・ジンクの株式10%を保有することになる。

トランプ政権は、コリア・ジンクとの提携によるメリットを歓迎している。複数のアメリカ政府当局者によると、この製錬所は2029年の操業開始時には年間54万トンの重要鉱物を生産できる可能性がある。また、ハワード・ラトニック米商務長官によると、2026年からはワシントンはコリア・ジンクの世界生産量への優先的なアクセス権を得ることになる。(クリスティーナ・ルー)

(4)リチウム・アメリカズ(Lithium Americas

アメリカ政府は現在、アメリカ最大級のリチウム鉱床を開発するリチウム・アメリカズ社の株式を保有している。ホワイトハウスは、「サッカー・パス(Thacker Pass)」と呼ばれるこのプロジェクト(2028年操業開始予定)を、世界最大のリチウム加工国であり、世界第3位の生産国である中国をはじめとする他国へのアメリカのリチウム依存度を大幅に削減するための重要な一歩と位置付けている。

サッカー・パス・プロジェクトは長年にわたり超党派の支持を得ており、ジョー・バイデン政権はサッカー・パス・プロジェクトに対し23億ドルを超える連邦融資を承認している。しかし、トランプ政権は、以前の承認にもかかわらず、融資を再評価すると表明し、最終的に、アメリカ政府が同社およびプロジェクトの株式を取得する代わりに、トランプ政権が融資の一部を放出するという合意に達したと発表した。その他にもいくつかの条件が盛り込まれている。(クリスティーナ・ルー)

(5)MPマテリアルズ(MP Materials

トランプ政権は昨年(2025年)、アメリカのレアアース産業の活性化に向けた最も注目すべき動きの一つとして、数十億ドル規模の取引を発表した。この取引により、米国防総省は、現在アメリカで最大かつ唯一の稼働中のレアアース鉱山を運営するMPマテリアルズの筆頭株主となる。

レアアースは、アメリカと中国の貿易戦争における最大の弱点の一つとして浮上しており、ホワイトハウスは過去1年間、アメリカの鉱物サプライチェインの安全保障強化に向けた取り組みを強化してきた。

この合意に基づき、国防総省はMPマテリアルズの株式15%を取得し、MPマテリアルズはレアアース磁石の新工場を建設する。米国防総省は、その工場の生産物を買い取り、最低価格を設定することを約束している。(クリスティーナ・ルー)

(6)エヌヴィディア(Nvidia

シリコンヴァレーの巨大企業NVIDIAは、世界的な人工知能ブームを支える半導体チップへの天文学的な需要によって、世界で最も価値の高い企業へと成長した。そしてトランプ大統領は、この急成長を、かなり型破りな方法で利用しようとしてきた。

2025年12月、トランプ大統領はNVIDIAに対し、中国への先端チップ販売を許可した。これは、バイデン政権が導入した輸出規制の一部を撤廃するものであり、その見返りとして、販売額の25%をNVIDIAに支払うという条件だった。これは、トランプ大統領が8月にNVIDIAとその最大のライバルであるAMDと合意した、中国向け販売額の15%を受け取るという当初の条件よりも大幅な改善である。(リシ・イエンガー)

(7)トリロジー・メタルズ(Trilogy Metals

国内鉱業の拡大に意欲的なトランプ政権は、アラスカで物議を醸している銅・亜鉛採掘プロジェクトを進めるカナダ企業トリロジー・メタルズに出資した。ジョー・バイデン政権は、アラスカの原生自然を横断する大規模な道路建設に反対し、環境保護運動を巻き起こしていた。しかしトランプ政権は、このプロジェクトを支援し、同社に数千万ドルを投資することで、正反対の方向へと突き進んでいるようだ。(クリスティーナ・ルー)

(8)USスティール(U.S. Steel

トランプ政権による国家資本主義への最初の大きな介入は、日本の日本製鉄とUSスティールの買収合戦への直接介入だった。この買収合戦は、通常ヨーロッパでしか見られない妥協案で決着した。それは、トランプ自身が米大統領として、新会社の投資と生産に関する決定に拒否権を持つ黄金株(golden share)を発行するというものだ。この黄金株は次期米大統領に引き継がれる。

2025年11月下旬、トランプ大統領は商務省の職員2名を、自身とアメリカ政府を代表して、新たに合併した会社の取締役に任命した。世界中の他の鉄鋼会社が過剰生産能力と「グリーン・スティール(green steel)」(炭素排出量の少ない鉄鋼)への移行に苦慮する中、日本鉄鋼傘下の新会社USスティールは、全く異なる一連の指示に直面することになるだろう。(キース・ジョンソン)

(9)ヴァルカン・エレメンツとリエレメント・テクノロジーズ(Vulcan Elements/ReElement Technologies

トランプ政権はレアアース推進の一環として、レアアース関連の新興企業2社ヴァルカン・エレメンツとリエレメント・テクノロジーズに出資した。ホワイトハウスの合意には、米国防総省からの融資2件(ヴァルカン社に6200億ドル、リエレメント社に8000万ドル)に加え、商務省からの5000万ドルの連邦補助金、さらに数億ドル規模の民間資金が含まれている。

両社は、この資金によって今後数年間で磁石の生産量を年間1万トンまで拡大できるとしている。その見返りとして、米国防総省は両社のワラントを取得し、商務省はヴァルカン・エレメンツの株式5000万ドルを取得する。(クリスティーナ・ルー)

(10)ウェスティングハウス(Westinghouse

トランプ政権は、民生用原子力発電(civilian nuclear power generation)の復興を重点課題としており、規制審査の迅速化と新規原子炉建設の促進を目的とした一連の大統領令や法改正を実施してきた。

2025年10月、アメリカ政府は、アメリカ最大の原子炉メーカーであるウェスティングハウス・エレクトリック(AP1000は現代原子力発電所のゴールドスタンダード)の株式8%を取得するオプション権を獲得した。ウェスティングハウス・エレクトリックが再び株式公開すれば、さらに大きな株式を取得するオプションも含まれている。現在、ウェスティングハウス・エレクトリックは、ウラン燃料供給会社とクリーンエネルギー投資会社という2つのカナダ企業によって共同所有されている。一方、アメリカ政府との「戦略的パートナーシップ(strategic partnership)」は、少なくとも800億ドルの原子力発電投資を促進することを目的としている。(キース・ジョンソン)

(11)xライト(xLight

トランプ政権は、シリコンヴァレーを拠点とするリソグラフィーのスタートアップ企業で、より高度な半導体製造プロセスの開発に注力するxライトへの出資に合意した。政府の出資額はまだ明らかにされていないが、商務省は同社に最大1億5000万ドルを投資すると表明している。(クリスティーナ・ルー)

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 第二次ドナルド・トランプ政権は、各国からの輸入に高関税を掛ける政策を発表し。世界を混乱に陥れた。この高関税はアメリカの輸入業者に打撃を与え、消費者は物価高に苦しむことになった。私は、この高関税政策は、アメリカの製造業回帰に向けた第一段階と考えていた。しかし、現状は製造業の拠点づくりは進まず(数年単位のプロジェクトで当たり前だ)、ドルの価値は下がっているが、そこまでではない。やはり物価高もあり、強いドルで輸入品を買わねばならないということもある。
donaldtrumpxijinping2025001

 そうした中で、対中強硬姿勢を見せていたトランプ政権も、中国との妥協、合意をすることになった。アメリカが中国に頭を下げた格好である。レアアースの輸出制限がよほど厳しかったようだ。

※独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構のウエブサイト↓

https://www.jogmec.go.jp/publish/plus_vol29.html?mid=hp250515
criticalmineralsrareearthscountries001

上記のページには、各資源について、どの国がどれだけ生産し、どれだけ精製しているかを示すグラフが出ている。このグラフに今回のアメリカと中国の貿易に関する合意の理由が明らかに示されている。グラフを見れば、重要資源とレアアースの分野においては、アメリカは中国に大きく後れを取っていることが分かる。レアアースの輸出制限をされてしまうのはアメリカにとって死活問題なのである。日本が石油を禁輸されてしまうようなものだ。下に掲載した論稿には具体的な国名が出てくるが、中国とインドネシアの名前が出てこない。これでは何の意味もないということもグラフを見れば明らかだ。

 ロシアは国際的な決済システムから除外されているのに、石油を輸出して外貨を稼いでいる。ロシア経済は破綻しなかった。それはロシアが資源大国であると同時に、ドルを使った国際決済システム以外に、金を使った決済を行えているからだ。ドルを基軸とするアメリカ中心の世界は終わりつつある。

 アメリカは今頃になって重要資源とレアアースの確保に躍起になっている。ドルを吸って買って来ればよいという石油で行えたシステムは機能しない。重要資源とレアアースの世界は中国が支配する世界である。アメリカは頭を下げるしかない。私たちはこのことをよくよく拳拳服膺する必要がある。

(貼り付けはじめ)

【解説】 トランプ氏の一連のレアアース合意、中国による世界的支配を変えられるのか

BBC NEWS JAPAN

20251030

スランジャナ・テワリ・アジアビジネス担当編集委員

https://www.bbc.com/japanese/articles/c0jd9ywzql1o

中国が長年、支配的な立場を保っているレアアース(希土類)の分野での供給を確保しようと、アメリカのドナルド・トランプ大統領がアジア歴訪中、次々と合意文書に署名している。

合意は、日本、マレーシア、タイ、ヴェトナム、カンボジアと結んだ。規模や内容は相手によって異なり、具体的な影響を評価するにはまだ早い。しかしいずれも、電気自動車やスマートフォンなど、先進的な製品の製造で不可欠となっている鉱物の入手方法を多様化させる取り組みを、合意の中身として含んでいる。

合意はまた、アメリカがパートナー各国のレアアース取引を、アメリカとの間だけに限定することを狙っている。このことは、トランプ氏が中国の習近平国家主席との重要な会談を前に、レアアースをめぐって中国への依存度を小さくしたいと思っていることをはっきり示している。

これらの合意は、いずれは中国のレアアース支配を脅かすかもしれない。ただ専門家らは、そうなるまでには何年もかかり、多くの犠牲を伴うだろうとしている。

英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)環境社会センターのパトリック・シュローダー上席研究員は今週の論説で、「オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパなどの地域で新たな採鉱場、精製施設、加工工場を建設するには、(中国に比べて)はるかに高い資本コスト、厳しい環境規制、費用のかかる労働力とエネルギーの投入が必要になる」と指摘した。

それでも今回の動きは、米中対立の転換点となる一歩だ。

中国は現在、世界のほぼすべてのレアアースの加工を支配している。このことが、アメリカとの貿易戦争において、習氏に強大な力を与えている。両国は、関税やTikTokの米国事業の売却など、さまざまな問題で合意を目指している。そうしたなか、中国が最近、輸出を規制したことで、レアアースの供給が減っている。

この輸出規制は、欧米やアジアの製造業の拠点で、これまでもみられた不安を引き起こしている。これは、世界のサプライチェーンが、揺れ動きの大きい米中関係の影響をいかに受けやすいかを示している。

トランプ氏は、今週のアジア歴訪を開始する前にすでに、オーストラリアと85億ドル規模の合意を成立させた。レアアースの加工などに関して、産業レベルでの協力と共同投資を約束した。

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相がホワイトハウスを訪れた際、トランプ氏は、「今から1年ほど後には、重要鉱物やレアアースが取れすぎて、どうしていいかわからなくなるだろう」と述べた。また、「値段は2ドルになる」と述べ、供給の急増に伴って価格が急落するとの見方を示した。

 

トランプ氏が提示した時期も価格も非現実的だ。だが、重要鉱物を欲しているアメリカにとって、オーストラリアが重要なパートナーであることは間違いない。

 

米シンクタンクの戦略国際問題研究所のグレイスリン・バスカラン氏とケサリン・ホーヴァス氏は、最近の小論文で、オーストラリアを「地球上で最も広範で豊富な鉱物資源を誇る、クリスマスツリーのように輝く周期表」だと表現した。

 

イルカ・リソーシズなどいくつかの豪企業は、すでに精製施設を建設している。同社は今年、BBCの取材で、政府の支援なしでは財政的にほぼ不可能だとした。

 

トランプ氏がクアラルンプールのコンベンションセンターで、署名した文書を掲げて見せている。後ろには米国旗が見える画像提供,Getty Images

画像説明,タイとの間で署名した合意書を掲げるトランプ米大統領(26日、マレーシア・クアラルンプール)

アメリカが日本との間で結んだ重要鉱物に関する合意は、レアアースの供給と生産を強化する内容だ。また、レアアースをめぐる協調投資と備蓄の計画、供給ショックに対処する緊急対応グループについても触れている。

東南アジアの小規模経済圏との合意は、詳細がはっきりしない。マレーシア、タイ、ヴェトナム、カンボジアの各国は、アメリカのレアアースに対するアクセスの拡大と、米企業を中国企業より優遇する輸出ルールに合意した。アメリカへの出荷を妨害しないという約束や、中国系ではない企業による現地での加工や投資を奨励するという約束も、合意には含まれている。

 

ただ、マレーシアおよびタイとの合意は、拘束力のない「基本合意書」(MOU)だ。これは関係国の政治的な変化に耐えられるのだろうか?

まだ取り上げられていない大きな問題に「規制」がある。環境破壊の可能性を考慮すると、これは特に重要だ。レアアースをめぐるビジネスは、採掘だけでなく、加工までダーティーだ。採掘、浸出、熱分解、精製のすべてで放射性物質が発生する。中国での影響については多くの記録があり、他国が積極的に乗り出したくなる産業ではないことを示している。

中国を除いて、世界で最も多くのレアアースを供給しているのが、豪企業のライナス・レアアースだ。精製の一部はマレーシアに頼っており、同国では長年にわたり、規制をめぐっていくつかの問題に直面している。

トランプ氏は、日本やオーストラリアといったアジア太平洋地域の大国を投資に参加させ、レアアースの供給をめぐるアメリカのコントロールを拡大する可能性を手に入れた。確固たる基盤に立って、非常に重要な習氏との交渉に30日に臨むことになる。

とはいえ、中国がレアアース加工の約7割を占めているのは事実だ。追いつくには、膨大な資本、強力な環境法、技術の専門性が必要だ。一つの加工工場を建設するだけでも、設計からフル生産までは何年もかかる。オーストラリアは長い間、レアアースの生産拡大に真剣に取り組んできたが、工場はまだ稼働していない。

中国はこの地域で決して黙っていることはない。世界2位の経済大国の中国との貿易は、日本を含むすべての国にとって不可欠となっている。中国がもつ影響力(特に東南アジアでの影響力)を、アメリカは軽視することはできない。

レアアースのサプライチェーンは多様化と変革が必要だ。協力と投資の約束は手始めではあるが、前途は長く、曲がりくねっている。
=====
ホワイトハウス「中国がレアアース規制停止」 米中合意の詳細公表

日本経済新聞 2025112 10:01

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0202J0S5A101C2000000/

米ホワイトハウスは1日、1030日に開いた米中首脳会談での合意内容の詳細を公表した。レアアースなど重要鉱物の輸出規制を「中国側が事実上撤廃する」と強調。「米国の労働者、農家、そして家族を最優先とする大きな勝利」だとアピールした。

米中が共同でまとめた文書ではなく、米国が独自に作成した説明資料「ファクトシート」の形式で発表した。ホワイトハウスは米中の約束事項を列挙したが、中国側の説明と食い違う可能性もある。

レアアース新規制「中国が施行停止」

ファクトシートによると、中国は109日に発表したレアアース(希土類)の新たな輸出規制を停止する。

新たな輸出規制は、中国産のレアアースをわずかでも含めば海外製品でも輸出時に中国政府の許可が必要だったり、レアアースの製錬ノウハウの国外提供を規制したりする内容。一部は施行前だった。

これらについて、ホワイトハウスは「中国が世界規模での施行を停止する」とした。

ホワイトハウスは中国が、重要鉱物であるガリウムやゲルマニウム、アンチモン、グラファイトの輸出許可を出すとも説明した。「20254月と2210月に中国が導入した輸出規制の事実上の撤廃を意味する」と主張した。

米戦略国際問題研究所(CSIS)はガリウムが「米国の主要な防衛サプライチェーンにおいて並外れた重要性を持つ」として、中国の輸出規制に警鐘を鳴らしていた。

オランダ半導体ネクスペリアの輸出再開

オランダに本社を置く中国資本の半導体メーカー、ネクスペリアの半導体については「世界各国に流通できるよう(中国が)適切な措置を取る」とも明記した。

同社の半導体は、オランダとの対立を背景に中国が輸出を一時停止し、ホンダのメキシコ工場が操業を一時停止するなど影響が広がっていた。米中合意を受け、中国商務省も1日、ネクスペリアの半導体の輸出を条件付きで解禁すると発表した。

米国は、中国当局が米テクノロジー企業に対する独占禁止法違反などの調査を「終了する」とも説明した。

中国当局は、米エヌビディアや米半導体大手クアルコムによる第三国企業の買収が、中国独禁法が定める手続きに違反したとして調査を始めたばかりだった。中国側が調査を終了すれば、米各社は違反を問われなくて済む可能性がある。

「中国がフェンタニルの原料輸出対策強化」

ファクトシートの説明によると、中国は合成麻薬フェンタニルの流入対策として、麻薬に用いられる可能性がある化学物質の北米向け輸出を停止する。

麻薬原料は代替となる物資も多いため、輸出停止の対象とした物質以外も管理を厳しくすることで米中は合意した。

中国側は3月以降に導入した鶏肉や小麦といった米国製品への報復関税も停止する。報復として導入した非関税障壁もすべて「停止または撤廃」するという。

中国が米国産の大豆を2025年にまず1200万トン以上輸入し、2628年にも少なくとも年2500万トンを購入することを約束したと明記した。

米国はフェンタニル関税引き下げ

米国側はフェンタニルの流入対策が不十分だとして中国に課した20%の追加関税のうち10%1110日から引き下げる。レアアースの輸出規制に対抗して示唆していた100%の追加関税も発動を見送る。

米国は中国企業に対する事実上の禁輸措置となる「エンティティーリスト」の対象を大幅に拡大する措置や、中国船からの入港料の徴収措置もそれぞれ1年延期する。

入港料については、中国側も報復措置として米国船から徴収する方針を示していたが、米国側が1年延期を決めたことで中国側も報復措置を「撤廃する」(ホワイトハウス)という。

米国の入港料を巡っては、中国船以外に日本の自動車運搬船も徴収対象になっていた。自動車運搬船の容積1トン当たり46ドルの入港料を、1210日以降に本格的に徴収する予定だった。

ファクトシートでは、日本の自動車運搬船からの入港料徴収も併せて延期となるかどうかはまだ明確になっていない。今後、連邦官報や米税関・国境取締局(CBP)の通達で詳細を公表するとみられる。

(八十島綾平、ワシントン=高見浩輔)

=====

重要鉱物でトランプ大統領のご機嫌を伺う国々(The Countries Courting Trump With Critical Minerals

-日本からパキスタンまで、取引は続いている。

リシ・イエンガー筆

2025年10月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/28/trump-critical-minerals-deals-rare-earths-list-japan-china/

ドナルド・トランプ米大統領は、重要鉱物がどこにあろうともその発見に躍起になっており、世界中の国々がそれらの供給に名乗りを上げている。

重要鉱物とレアアース(critical minerals and rare earths)は、和平協定から関税の脅威(peace deals to tariff threats)まで、トランプ大統領の第2期における外交政策の多くの柱となっている。その理由は明白だ。アメリカ地質調査所(U.S. Geological SurveyUSGS)がアメリカの安全保障に不可欠とみなす約50種類の鉱物は、ミサイルや戦闘機を含む多くの先進軍事技術に不可欠な原材料である。問題は、レアアースと重要鉱物の生産と加工の大部分を中国が占めていることであり、中国は貿易交渉においてこの締め付けをますます武器として利用しようとしている。

いくつかの国が、ワシントンのこうした優位性への対応を支援し、同時にトランプ大統領の支持を得ることで自国にも利益をもたらすべく、動き出している。

●日本(Japan

トランプ大統領は10月28日、日本の新首相であり、女性初の首相でもある高市早苗と会談し、レアアースおよび重要鉱物に関する協力に関する暫定合意に至った。

この合意に基づき、ワシントンと東京は、共同採掘投資、重要鉱物埋蔵量の地理的位置特定に関する協力、相互備蓄(joint mining investments, cooperation on geolocating critical mineral reserves, and mutual stockpiling)といった措置を通じて、両国それぞれおよび共同の重要鉱物供給の確保に向けて協力していく。

●マレーシア(Malaysia

トランプ大統領は大統領復帰後初のアジア歴訪で、まずマレーシアを訪れ、東南アジア諸国連合(Association for Southeast Asian NationsASEAN)首脳会議に出席した。マレーシアは、アメリカへの複数の投資約束とアメリカ製品に対する関税障壁の削減を約束する代わりに、貿易協定を締結した。

この協定には、アメリカとマレーシア両政府間の重要鉱物に関する覚書が含まれており、両国は「重要鉱物の代替市場を開拓」し、「世界の重要鉱物サプライチェーンの多様化を支援する」ために協力していくと表明した。

●タイ(Thailand

タイは、トランプ大統領がアジア歴訪中に重要鉱物協定に署名した2番目のASEAN加盟国となった。両国は枠組み貿易協定の締結に向けた交渉を継続している。

両政府間の覚書によると、アメリカ政府とアメリカ企業はタイの重要鉱物サプライチェインの発展を支援し、「タイの重要鉱物セクターの競争力向上」に貢献し、アメリカ企業にタイの重要鉱物への優先的なアクセスを与える可能性がある。

●オーストラリア(Australia

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相も、重要鉱物資源をトランプ大統領のご機嫌取りとして利用し、2025年10月のワシントン訪問時に、アメリカがオーストラリアの重要鉱物資源とインフラへのアクセスを拡大する協定に署名した。

この協定の一環として、両国は今後6カ月間で重要鉱物プロジェクトに30億ドルを共同投資し、ホワイトハウスによると推定530億ドル相当の鉱物の採掘を目指す。国防総省はまた、ガリウム鉱石を採掘するため、西オーストラリア州に先進的な精錬所建設への投資を行う。

「今から約1年後には、重要鉱物とレアアースがあまりにも大量に存在し、どう扱えばいいのか分からなくなるだろう」とトランプ大統領は記者団に語った。

●ウクライナ(Ukraine

重要鉱物は、トランプ大統領の最も困難な外交努力の1つであるロシアとウクライナの戦争終結交渉に絡んでいた。

2025年2月、トランプ大統領は、アメリカが既にキエフに提供した援助に対する補償として、ウクライナ産の5000億ドル相当の鉱物資源の提供を要求した。ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は以前、アメリカの指導者トランプをなだめ、キエフの戦争遂行への支持を将来的に維持するため、アメリカにウクライナ資源へのアクセスを提供する用意があると示唆していた。しかし、ゼレンスキー大統領は「国を売る(sell our country)」ことはできないと明言し、トランプ政権の当初の提案には同意しなかった。

トランプ大統領がホワイトハウスでゼレンスキー大統領を叱責した悪名高い事件から数カ月後の4月下旬、ウクライナとアメリカは、リチウムやチタンなどの重要鉱物の100以上のウクライナ鉱床への優先的なアクセスをアメリカ企業に与える協定に署名した。

●コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo

重要鉱物資源が豊富なアフリカ大陸の中でも、コンゴは際立っている。この中央アフリカの国は、タンタルとコバルトの世界最大の供給国であり、金や銅といった他の資源も豊富に埋蔵している。中国は長年にわたり、コンゴをはじめとする鉱物資源の豊富なアフリカ諸国に足場を築いてきた。歴代のアメリカ政権は、この優位性を打破しようと試みてきた。

トランプ大統領の最新の試みは2025年6月、コンゴと隣国ルワンダの間で数カ月にわたって続いていた軍事衝突を終結させる合意の仲介役を務めたことだ。この合意には、重要鉱物資源に関する両国の協力が含まれており、安全保障の保証と引き換えに、アメリカがこれらの鉱物資源へのアクセスを拡大する道が開かれている。

しかし、複数のアメリカの連邦議員たちの反対を受けている合意内容については、現在も交渉が続いており、和平合意自体も依然として不安定な状況にある。

●パキスタン(Pakistan

アメリカ政府の高官たちは数カ月にわたり、パキスタンの膨大な重要鉱物資源へのアクセスに関心を示してきたが、2025年9月初旬、パキスタンはついにその意向を表明した。パキスタン政府は、アメリカ企業U.S.ストラテジック・メタルズと5億ドルの契約を締結し、アンチモンや銅などの鉱物資源へのアクセスを認めた。

パキスタンは2025年10月初旬、これらの鉱物資源の最初の出荷をアメリカに引き渡した。この南アジアの国における重要鉱物・金属資源の埋蔵量は、推定23万平方マイル(約57万平方キロメートル)以上に及ぶ。これはイギリスの国土の2倍以上の面積に相当する。

●予想以上(Above and beyond

トランプ大統領は、やや型破りな方法で鉱物資源のパイのより大きな部分を掌握しようと試みてきた。2025年7月には国防総省がアメリカのレアアース採掘会社MPマテリアルズの筆頭株主となり、最近ではトランプ政権がカナダの重要鉱物企業2社の株式を取得した。

重要鉱物は、大統領就任当初、グリーンランドを買収あるいは武力行使によって支配するという執念を抱かせた重要な要因でもあったが、最終的には実現しなかった。

※リシ・イエンガー:『』誌スタッフライター。アカウント:@iyengarish.bsky.social Xアカウント:@Iyengarish Instagram: @iyengar.rishi

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(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 


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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカはインドネシアとより緊密な関係を築くべきだ。これが下に掲載した論稿の筆者の主張だ。そのためには、二国間の自由貿易協定から始めることができる。インドネシアはこれまでに何度も紹介したが、電気自動車のバッテリーの原材料であるニッケルの産出で世界をリードしている。精製されたニッケルの輸出を行っている。アメリカは、電気自動車の分野で中国と競争しているが、インドネシアとの関係を軽視している。一方で、中国は既にインドネシアに多額の投資を行っている。

 アメリカの電気自動車メーカーであるテスラを率いるイーロン・マスクが先月中旬、インドネシアを訪問した。イーロン・マスクが展開している衛星通信サーヴィスであるスターリンクのインドネシアでの運用を行うための訪問であったが、訪問の目的はそれだけではないだろう。バッテリー工場の建設など、電気自動車に関することも話し合われたことだろう。イーロン・マスクは中国を訪問して、中国最高指導部層と緊密な関係を築くなど、独自の動きをしている。彼にはインドネシアの重要性が分かっている。

 インドネシアは、中国一辺倒でもなく、アメリカ一辺倒でもない。全方位外交とも言うべき方針で、実力を貯めて、21世紀中の大国化を目指している。東南アジア地域の地域大国となっているが、ブリックスでの地位向上、G20での地位向上を通じて、世界政治での大国の立場を獲得することになるだろう。アメリカとしては、中国包囲網の重要なピースとして考えているようだが、20世紀のように、アメリカが一声かければ、誰でもついていくという時代ではない。インドネシアは、グローバルサウスに属しながら、西側諸国ともうまく付き合っていく。力関係が大きく変化していく中で、賢い選択を行っている。

 アメリカが中国包囲網にインドネシアを組み込むためには、それ相応の見返りが必要であるが、アメリカにインドネシアが満足するだけの見返りを与えるほどの力はないし、インドネシアは既に施しをもらって喜ぶ段階にはない。世界は大きく変化している。

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インドネシアはアメリカのインド太平洋戦略にとって欠けている部分だ(Indonesia is the missing piece in America’s Indo-Pacific strategy

フィリップ・シェトラー=ジョーンズ筆

2024年6月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/4712299-indonesia-is-the-missing-piece-in-americas-indo-pacific-strategy/

週末にシンガポールで開催されたシャングリラ対話年次総会(annual Shangri-La Dialogue)の結果から判断すると、中国がインド太平洋地域で覇権を獲得するのを阻止する、アメリカの戦略は前進している。

アメリカの支持が確実視される中、基調講演者であるフィリピン大統領フェルディナンド・“ボンボン”・マルコスは、「フィリピンは中国からの圧力に屈しない」と宣言した。アメリカ、日本、韓国の三国間の防衛協力を深めるための新たな取り組みが発表された。インド太平洋地域における不用意なエスカレーションを防ぐため、米中軍事対話は2年間の中断を経てトップレヴェルで再開された。

しかし、満足する余地はほとんどない。アメリカのインド太平洋政策には、依然として矛盾が多すぎる。これらの矛盾を未解決のまま放置すると、時間の経過とともに、同盟諸国を中立的な方向へ、現在および潜在的なパートナーを更に悪い方向へと押しやる可能性がある。このリスクはインドネシアに関して最も顕著だ。

西側諸国の間で、インドネシアの重要性を理解し、研究している人がほとんどいないことを理解するには、今年初めにインドネシアの現国防大臣であるプラヴウォ・スビアントが9600万票を超える票を獲得して、インドネシアの大統領選挙に勝利したことを考えてみよう。

この選挙結果だけでも、世界第2位と第3位の民主政体国家間の密接な関係を示す理由になるはずだ。特に、中国が西側型の民主政治体制が中国の経済発展への道とは相容れないことをグローバルサウスに説得しようと努めている場合にはそうだ。

それでも、単に選挙を実施するだけでは、その国はアメリカの同盟国にはなれない。しかし、国際ルールに基づく秩序に関しては、インドネシアはまったく警戒していない。ジョコ・ウィドド現大統領が2023年11月にジョー・バイデン米大統領と会談した際、共同声明はロシアに対しウクライナ領土からの完全撤退を求めた。

しかし、プラヴウォはシャングリラでの演説の中で、ガザ紛争に対するインドネシアの立場は、同じ国際秩序の遵守を前提としていると述べた。プラヴウォは、多くのグローバルサウス諸国の間で幻滅が高まっていることを警告し、インドネシアの外交政策の原理原則は、アジアにおけるルールに基づく秩序の強化ということである、と述べた。これは、アメリカの利益に有利に働いているという、見落とされているが重要な真実をほのめかしたことである。

インドネシアを揺るぎないパートナーにするためには、インドネシア人が大切にしているものについてもっと譲歩する必要がある。民主党も共和党もこれを優先する必要がある。人口約3億人のイスラム教徒が多数を占めるこの国は、2050年までに世界第4位の経済大国になると予測されている。東南アジアにおける影響力をめぐる地政学的競争において、インドネシアは究極のアメリカの帰趨を決める国家(swing state)である。

より良い連携を図るために、アメリカは貿易から始めるべきだ。残念ながら、この政策分野におけるバイデン政権のアプローチは、インドネシアを疎外させ、アメリカの主な競争相手との関係を緊密化させる危険性がある。そして、バイデン大統領のインフレ抑制法(Inflation Reduction ActIRA)が最大の妨害要因(spoiler)である。

インフレ抑制法は、重要な鉱物がアメリカまたは自由貿易協定(free trade agreementFTA)を結んでいる国から供給される場合、アメリカの製造業者に税額控除を認めている。しかし、こうした贅沢な補助金が共謀して、インドネシアのような国をサプライチェーンから締め出している。インドネシアは回避策として重要な鉱物のみを対象とする限定的なFTAを提案している。しかし、完全に否定されていないものの、アメリカ政府の鈍行状態にある。

これは自分の足を2回撃つ事件のようなものだ。これはG20諸国に、その重要な鉱物産出量に飢えている他の国々との経済連携を深めるよう促すだけでなく、アメリカが自国の電気自動車(EV)産業を創設するために必要な主要なサプライチェーンから切り離すことにもなる。 EVにはニッケルが必要で、インドネシアには世界最大の埋蔵量がある。2030年までに世界の供給量の65%を占めるようになり、ヴァリューチェーンの上位への移行を支援するパートナーを探している。アメリカはこの機会を捉えるべきだ。その後、加工済みの原材料をインドネシアから調達し、アメリカの消費者が米国製のEVを購入できるようにする。それが中国の言うところの「ウィンウィン(win-win)」だ。

第二に、アメリカはインドネシアとの防衛関係にもっと努力しなければならない。中国は、日本、フィリピン、ヴェトナム、マレーシアとの領土紛争に関して、国際法に何の根拠もなく組織的に一方的な主張を行っている。南シナ海のインドネシアのナトゥナ諸島に狙いを定めるのも時間の問題だ。

インド太平洋におけるインドネシアの重要な位置を考慮すると、アメリカは海洋安全保障協力に関する二国間作業計画への投資を強化すべきである。これは、領土の隅々まで、そして国際法によって認められた海洋経済的権利のあらゆる側面を保護するための、列島国家の海洋安全保障能力を囲い込むことになるだろう。アメリカのインド太平洋戦略の観点から見ると、より有能なインドネシアは、マラッカの要所をより強固に守り、オーストラリアの上空を守る盾となる。プラヴウォが2023年11月にロイド・オースティン米国防長官と署名した防衛協力協定を完全に履行するには一刻の猶予もない。

インドネシアは、アメリカの政策がインド太平洋における優先事項と交差する目的でどのように機能するかを例示している。世界秩序と経済が崩壊する中、重要な同盟を維持し発展させるために、政府の全ての部門が同じ方向に取り組む必要がある。アメリカは、世界で2番目に大きい民主政体国家であるインドネシアを経済的に受け入れることから始めることができる。

※フィリップ・シェトラー=ジョーンズ:世界で最古の、イギリスにある国防と安全保障専門のシンクタンクである英国王立防衛安全保障研究所(Royal United Services InstituteRUSI)国際安全保障担当上級研究員(博士)。最近の研究テーマはインド太平洋地域安全保障である。
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカのジョー・バイデン大統領は、中国からアメリカに輸出される電気自動車の関税を100%に引き上げると発表した。電気自動車をめぐり、米中の間は争いになっている。

バイデン大統領が強いドル政策を維持していれば、自然とアメリカからの輸出は高くなり、中国からの輸入は安くなる。関税を引き上げて、国内メーカーを保護するにしても、アメリカ最大の電気自動車メーカーであるテスラは中国との関係は悪くないし、既に進出して一定のシェアを保っている。

アメリカのテスラ(Tesla Motors)のイーロン・マスクは、中国との関係が悪くないどころか、良好である。上海にテスラの工場があり、テスラにとっての最大の市場は中国市場である。テスラのイーロン・マスクにしてみれば、バイデン政権の輸入電気自動車の関税引き上げは、中国からの報復を引き起こす可能性があり、迷惑なことだろう。テスラは電池だけの電気自動車に特化しており、バッテリー関連で制裁されると、テスラにとっては大きな痛手となる。イーロン・マスクがバイデンを支持していないこと、アメリカの三大メーカーが電気自動車で後塵を拝していることから、関税引き上げがやりやすかったということが考えられる。

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 バイデンの関税引き上げは、国家安全保障上の懸念から実施された面がある。アメリカ国内で中国メーカーの電気自動車が「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」であり、個人情報の流出やハッキングを警戒している。コネクテッド・ヴィークル「インターネットを介し、さまざまな情報を送受信できる次世代の自動車」のことであり、ジーナ・ライモンド米商務長官は中国製の電気自動車を「車輪のついたスマートフォン」と呼んでいる。個人情報が外国(中国)に流れることを懸念している。また、ハッキングされたり、遠隔操作をされたりして、運転できない状態にされることや、この電気自動車を通じて、政府機関のコンピュータへの侵入されてしまうことを懸念している。アメリカ国内市場で、安価な中国製の電気自動車がシェアを伸ばすことは、こうした懸念を増大させることになる。しかし、他国からすれば、アメリカ製の電気自動車に対して、同様の懸念がある。
 今回のバイデン大統領の措置は経済的な懸念というよりは、安全保障上の懸念の側面が強いということになる。また、政治的に見て、自分の再選に大きな影響がないと判断したものでもあるだろう。

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●「バイデン氏、中国製品国家経済会議分への関税引き上げ 電気自動車は100%に」

2024.05.14 Tue posted at 20:30 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35218904.html

ワシントン(CNN) バイデン米大統領は14日までに、中国からの輸入品のうち、国家安全保障に戦略的な重要性を持つ180億ドル(約2兆8000億円)相当の製品に対する関税を引き上げる方針を明らかにした。

鉄鋼やアルミニウム、汎用(はんよう)(レガシー)半導体、電気自動車、バッテリー部品、重要鉱物、太陽電池、クレーン、医療用品などに適用される。

電気自動車の関税を現行の27.5%から100%と約4倍に引き上げるほか、太陽光パネル関連は50%、他分野の製品は25%とする。

米国家経済会議(NEC)のブレイナード議長は、中国が自国の成長のために他国を犠牲にする戦略を続けていると批判した。

トランプ前大統領は在任中、中国から輸入される3000億ドル相当の製品に追加関税を課した。この措置は4年に1度、効果を検証することが法律で義務付けられている。バイデン政権の新たな関税は、この検証結果に基づいているという。

ホワイトハウス当局者らによると、バイデン政権は政策の優先順位に沿って算定法の見直しも図り、クリーンエネルギー技術に重点を置いた。

中国はこれまでの関税に、高い報復関税で対抗してきた。ホワイトハウスは、中国が今回どのような対抗措置を取るかについての言及を避けた。

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バイデン氏、中国の電気自動車を取り締まる(Biden Cracks Down on Chinese Electric Vehicles

-外国の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」に関する新たな調査は、将来的に北京のハイテク部門に対する措置を可能にする可能性がある。

A new investigation into foreign “connected vehicles” could enable future action against Beijing’s tech sector.

クリスティーナ・リュー、リシ・イエンガー筆

2024年3月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/01/biden-china-electric-vehicles-tech-security-investigation-commerce/

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中国東部の江蘇省にある蘇州港にある国際コンテナターミナルで船への積み込みを待つBYD製の電気自動車(2023年9月11日)

バイデン政権は木曜日、米商務省に対し、中国製の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」がもたらす潜在的な国家安全保障上の脅威を調査するよう命令した。これは、中国との関係のリスクを軽減し、中国のハイテク産業に対して、圧力をかけようとするアメリカの最近の取り組みを示すものである。

ジョー・バイデン米大統領は声明の中で次のように警告している。「これらの電機自動車は、私たちの電話やナビゲーションシステム、重要なインフラ、そしてそれらを製造した企業に接続されている」と述べた。このような自動車は、わが国の市民やインフラに関する機密データを収集し、そのデータを中華人民共和国に送り返す可能性がある」。これらの電気自動車事態は「遠隔操作でアクセスされたり、機能停止させられたりする」とバイデンは述べている。

中国は電気自動車(electric vehicleEV)生産大国に成長し、アメリカとヨーロッパの同盟諸国を動揺させてきた世界の産業内で支配的な地位を築いている。バイデン政権が発表した調査は、テクノロジーへの懸念が米中関係を支配するようになった最新の例であり、車両を対象とした将来のアメリカの措置の基礎を築く可能性がある。

バイデンは続けて次のように述べている。「中国は、不公正な慣行を用いるなどして、将来の自動車市場を支配しようとしている。中国の政策は、私たちの市場に中国製の電機自動車を氾濫させ、私たちの国家安全保障にリスクをもたらす可能性がある。私の目の前でそのようなことが起こるのを許すつもりはない」。

バイデン政権の最新の攻撃は、テクノロジーの未来と未来のテクノロジーの両方をめぐる米中競争の、より広範なエスカレートに当てはまる。半導体チップ(semiconductor chips)、人工知能(artificial intelligence)、対外技術投資(outbound tech investment)に対する行動が最も注目されているが、ワシントンは更に多くの蛇口を閉めようとしているようだ。

コロラド鉱山大学ペイン研究所のモーガン・所長は、本誌に宛てた電子メールの中で、バイデン政権が発表の中で国家安全保障上の必要性を強調したことに触れながら、「これは米中間の現在進行中の貿易戦争の一環のように考えられる」と書いている。

バジリアンは、「確かに、サイバーとデータの面で実際のセキュリティ上の脅威は存在するが、私にとって主な推進力は経済的な闘争のように見える」と付け加えた。

こうした経済的懸念は、アメリカに限ったものではない。ここ数カ月間、安価な中国製電気自動車の流入に対する懸念は、中国政府の主要電気自動車市場の1つであるヨーロッパでも動揺しており、ヨーロッパ議会議員らは、中国政府が国内の電池式電気自動車メーカーに与えた補助金疑惑について調査を開始するまでに至っている。中国政府は、中国の電気自動車に補助金を与えることで、EUの電気自動車メーカーを圧倒しているという疑いだ。中国の電気自動車輸出は過去3年間で851%と爆発的に増加し、中国製のほとんど電気自動車がヨーロッパ市場に上陸した。

アメリカにおける中国製電気自動車の販売は依然として比較的小規模だが、特にバイデン大統領と共和党の対抗馬となる可能性が高いドナルド・トランプ前大統領が、11月の大統領選挙に向けて準備を進める中、アメリカの政治論争でも、ヨーロッパにおけるのと同様の懸念が浮上している。バイデンは先月、全米自動車労働組合がバイデン大統領の再選を正式に支持し、政治的に大きな勝利を確実にした一方、トランプ前大統領は自動車労働者の支持を集めるために選挙期間中、バイデンの電気自動車政策を激しく非難してきた。

そして実際、バイデンは木曜日の声明で、自身の政治的動機を隠そうとはしなかった。バイデンは次のように述べた。「大統領として、私は自動車労働者と、自動車産業に雇用を依存する中流家庭に対して正しいことをすると誓った。今回の措置やその他の措置によって、私たちは、自動車産業の未来がここアメリカでアメリカ人労働者によって作られることを確実にするつもりだ」。

戦略国際​​問題研究所の中国ビジネス専門家イラリア・マッツォッコは、「自動車産業をめぐる政治経済は非常に強力かつ重要だ。中国の電気自動車が先進諸国の主要産業を、非常に破壊的な形で脅かす可能性があるという深刻な懸念があると考えている」と述べている。

複数の米政府高官は、今回の調査は、データをめぐる国家安全保障上の懸念に根ざしていると強調する。ジーナ・ライモンド米商務長官は、「コネクテッド・ヴィークルにアクセスできる外国政府が、国家安全保障とアメリカ国民の個人的プライバシーの双方に深刻なリスクをもたらす可能性があると考えるのは、ほぼ想像力を必要としないものだ」と述べ、電気自動車を「車輪のついたスマートフォン(smart phones on wheels)」と例えた。

ライモンド長官は、「これらの自動車に搭載され、広範囲のデータを取得したり、コネクテッド・ヴィークルを遠隔操作で無効化したり、操作したりできる技術の範囲を理解する必要がある」と続けて述べた。

バイデン政権の今回の発表は、中国やロシアを含む6つの「懸念国(countries of concern)」に対する、アメリカ人の個人データの売却を制限することに焦点を当てた大統領令を発表した翌日に行われた。この大統領令では、ゲノムデータ(genomic data)、バイオメトリックデータ(biometric data)、金融データ(financial data)、個人健康データ(personal health data)、地理位置情報(geolocation data,)、そして個人を特定できる特定のカテゴリーという6つの機密情報のカテゴリーについて概説している。

しかし、データの流れを監督し取り締まることはより難しくなる可能性があり、バイデン政権による最新の規制は、アメリカ市民にとって意図しない結果をもたらす可能性があると、アメリカ自由人権協会(ACLU)は水曜日に警告した。ACLU上級政策顧問コーディ・ヴェンスキは声明の中で次のように述べた。「この大統領令は、政府の干渉を受けずに情報を共有しアクセスする私たちの権利を更に侵食し、消費者たちがプライバシーとセキュリティのニーズに最も適したオンラインサービスを選ぶことを禁じ、プライバシーを保護するどころか、むしろ害する結果になりかねない」。

ヴェンスキは続けて、「私たちのオンライン上の安全を本当に守るために、バイデン政権はその代わりに、私たちに関して収集されるデータの氾濫を食い止め、暗号化のような強力な保護を受け入れる、強固なプライバシー法を可決するよう議会を後押しすることに集中すべきだ」と述べた。

この2つの措置は互いに接近しており、中国のアメリカのテクノロジーへのアクセスを遮断することを目的とした過去数年間にわたる一連の大統領指示の最新のものである。

戦略国際​​問題研究所(CSIS)の貿易・技術専門家エミリー・ベンソンは、「これらの政策を総合すると変化が起こり、新たなパラダイムが生まれる。全体として、テクノロジーがこの新たな経済と国家安全保障の課題の最前線にあるということは、改めて非常に明白な象徴であり、それがすぐに変わる可能性は低い」と述べている。

※クリスティーナ・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@christinafei

リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@Iyengarish

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 電気自動車(electric vehicles)分野は米中の競争になっている。アメリカのテスラモータース(Tesla Motors)と中国のBYD(比亜迪)の争いになっている。電気自動車はこれから伸びていく分野だと考えられている。アメリカはこの分野で世界シェアの拡大を図り、中国は国内市場をまずは固めるという状況になっている。
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 電気自動車にとって重要なバッテリーに欠かせないのが、ニッケルだ。ニッケルの産出量、埋蔵量共に世界のトップとなっているのは、インドネシアである。インドネシアでは、未加工、未精錬のニッケルの輸出をジョコ・ウィドド政権下の2020年に禁止した。その結果、中国企業や韓国企業がニッケル加工に進出している。インドネシアとしては、更なる技術移転を求めており、将来的にはバッテリーの自国内の生産(国産化)を推進している。
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 下に紹介する論稿は、インドネシア海洋・投資担当調整大臣のルフット・ビンサル・パンジャイタン(Luhut Binsar Pandjaitan)の名前で出されたものだ。その内容は、一言で言えば、「アメリカもインドネシアのニッケルに投資しないと、電気自動車分野での未来はない。私たちはいつまでも気長にアメリカが投資してくるのを待つつもりはない」というものだ。ルフット大臣は、インドネシア軍の将官の出身であり、現役時代には、アメリカ軍特殊部隊での教育、トレーニングを複数回にわたって受けてきた人物だ。また、ワシントンDCにあるジョージワシントン大学で修士号を取得している。スハルト時代のエリート軍人であり、現在もスハルト体制時代の与党だったゴルカルに属している。アメリカとは不快コネクションがある人物だ。その人物がアメリカに半分脅しをかけるような、半分誘いをかけるような内容の論稿を発表した。

 アメリカ連邦議会は、ニッケルの分野でインドネシアの競争相手である、オーストラリアの働きかけを受けて、インドネシアからのニッケル輸入を制限している。その理由に、インドネシアでのニッケル精錬に石炭が使われており、炭素排出を行っていること、既に中国企業が多数進出していることを挙げている。これに対して、ルフット大臣は、「そんなことを言っていて大丈夫?」というような内容の論稿を出している。

インドネシアは、「西側以外の国々(the Rest)」の中で存在感を高めている。東南アジアの地域大国となっている。ジョコ大統領の下で、経済発展を進めている。2050年には、GDPの面で、日本を抜いて、世界第4位になるという予測も出ている(日本は第8位と予測されている)。そのスタートとなるのが、自国から算出する資源の有効活用だ。日本はインドネシアと良好な関係をこれまで継続して築いてきた。中国も歴史上、様々なことがあったが、現在はやはりインドネシアとの友好関係を保っている。アメリカがインドネシアとの関係を重視しないとなれば、それは、アメリカの衰退のスピードが加速するだけのことだ。

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インドネシアのニッケルなしでは、EVにアメリカの未来はない(Without Indonesia’s Nickel, EVs Have No Future in America

-ジャカルタとの自由貿易協定に反対するIRAと連邦上院は、アメリカのグリーン転換を台無しにしている。

ルフット・ビンサル・パンジャイタン筆

2024年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/01/indonesia-nickel-green-energy-ev-fta-congress/

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インドネシア南東スラウェシの採掘現場で、ニッケル鉱石を積んだダンプトラックの様子(2023年8月3日)

インドネシア産ニッケルがなければ、アメリカの電気自動車(Electric VehiclesEV)市場は低迷するだろう。我が国は、電気自動車用バッテリーの中核的金属であるニッケルの世界最大の埋蔵量を誇っている。2023年、インドネシアは世界のニッケル加工品の半分以上を輸出した。今後数年間で、このシェアは拡大すると予測されている。

しかし、米連邦議会議員の中には、インドネシアの海外の競争相手と協力して、我が国からの精製ニッケル(refined nickel)の輸入を阻止することを決意している。これまでのところ、彼らは成功している。しかし、企業にガソリン車の販売からの転換を強制する、3月に可決された措置と併せて導入するということになると、最終的に損をするのはアメリカの自動車労働者たちということになる。

ジョー・バイデン米大統領のインフレ削減法(Inflation Reduction ActIRA)は、競争条件を根本的に変えてしまった。アメリカの製造業者たちは、アメリカが自由貿易協定を結んでいる国(インドネシアは結んでいない)からのインプットでない限り、その補助金を利用することができない。

アメリカの自動車メーカーに必要なニッケルの供給を確保するため、昨年(2023年)、私が大臣を務める政府は、重要鉱物を対象とした限定的な貿易協定をアメリカ側に提案した。しかし、超党派の米連邦上院議員グループとオーストラリアなどニッケル生産国の企業による頓挫を狙ったキャンペーンが展開され、今のところ合意には至っていない。

連邦上院議員たちの反対は、環境への懸念に集中する傾向がある。インドネシアのニッケル製錬所の多くは石炭を燃料としている。一部の人々にとっては、内燃機関を道路から撤去すること(ガソリン自動車を減少させること)が炭素削減につながるにもかかわらず、その精製されたニッケルを含むバッテリーが信用されていないことを意味する。このような気候の純粋性は惰性を生み、結局は自滅する。環境とのトレードオフは、ニッケルがその動力源となるバッテリーにとって重要であるのと同様に、グリーン転換にとっても重要である。

アメリカが炭素の排出量を大幅に削減するためには、より多くの電気自動車が道路を走る必要がある。運輸部門は、アメリカ最大の排出源であるにもかかわらず、電気自動車の割合は1%にも満たない。電気自動車の普及は、購入しやすい価格に左右される。投入資源が安くなれば、バッテリーも安くなる。人為的な貿易障壁のないインドネシア産の精製ニッケルは、石炭が豊富にあるため競争力がある。

それは理想的ではないかもしれない。しかし、再生可能エネルギーは、インドネシアの製錬所の電力を賄う費用対効果の高い選択肢をまだ提供していない。技術が進歩するのを待つよりも、私たちは今、重要な金属を精製するために自由に使える資源を使わなければならない。

インドネシアのニッケルは、より環境に優しいものになるだろう。しかし、そのためには経済発展が不可欠である。輸出収入や海外からの直接投資があって初めて、エネルギーシステムの再構築を始めることが可能となる。例えば、インドネシア最大のニッケル生産者であるハリタ・ニッケル(Harita Nickel,)は、その経済的成功の上に立って初めて、自社施設に自然エネルギーを導入することができる。

当然のことながら、政府のイニシアティブも助けになる。今年導入される予定の炭素排出量規制と税制は、石炭からの脱却を促進するのに役立つだろうし、石炭発電所の新設は禁止されている。しかし、インドネシアにおける真のグリーン転換は、最終的には資本次第ということになる

途上国を化石燃料から引き離すための、気候変動資金調達メカニズムであるジャスト・トランジション・パートナーシップの下で約束された、西側諸国からの資金だけでは、約束が実際に履行されるかどうかにかかわらず、十分ではない。これは何の見返りもなく、ただ金を出せと言っているのではなく、事実を言っているだけのことだ。

大幅な資金不足を補うためには、途上諸国が既存の天然資源で繁栄し、世界のグリーン転換に積極的な役割を果たせるようにしなければならない。私たちは、慈悲深い諸大国からの施しに頼るだけの傍観者に成り下がることはできないし、そうなる意図もない。

一方、インドネシア国内でグリーン転換が国民の支持を維持するためには、国民の雇用と繁栄を実現しなければならない。2020年、インドネシア政府は、ヴァリューチェーンをより拡大するため、未加工のニッケル原鉱石の輸出を禁止した。それ以来、インドネシアには投資が殺到している。

インドネシアからのニッケル加工品の輸出額は飛躍的に増加し、年間300億ドル(約46500億円)に達している。今年、インドネシア初のバッテリー発電所が、韓国メーカーとの合弁でオープンする。この工場はインドネシア人に何千もの高生産性雇用を創出し、技術移転を促進し、インドネシアの輸出を更に押し上げることになるだろう。

同様に、インフレ削減法は、アメリカの雇用を促進し、グリーンエネルギーのコストを削減し、重要鉱物のサプライチェーンを確保することを目的としていた。それどころか、移行が依存する商品やインフラを提供するために、アメリカの製造業者が必要とする重要物資の参入を事実上妨げている。

考えられる最悪のシナリオは、アメリカのインフレ削減法は、アメリカを世界の電気自動車市場から完全に締め出す可能性がある。S&Pグローバル社は、2035年までに世界のニッケル供給の90%が、アメリカの自由貿易協定によってカヴァーされなくなると予想している。今後数十年の経済関係を形成するサプライチェーンが現在構築されつつあるのに、これではアメリカを拠点とするメーカーが需要を満たすことが不可能になりかねない。簡単な解決策は、重要鉱物を対象とするアメリカとインドネシアの限定協定(limited agreement)にある。

提案されている自由貿易協定に対するアメリカの連邦議員たちの環境問題への懸念は、北京とワシントン間の緊張によっても裏付けられている。インドネシアのニッケル精錬には中国企業が進出している。しかし、韓国企業やアメリカ企業も同様に進出している。アメリカの製造業者は、米財務省の指導に反しない企業から重要な鉱物を調達することができる。実際、自由貿易協定が結ばれれば、アメリカのインドネシアへの投資が促進され、サプライチェーンの安全が確保されるだろう。

しかしながら、アメリカのサプライチェーンの確保には、他国がニッケル産業に参入しているという理由だけで、アメリカがインドネシア産ニッケルの実質的な全面禁止を決定しない限り、という条件が付く。しかし、そのような動きは、アメリカのインド太平洋地域の同盟諸国が中国かアメリカかの二者択一を迫られるべきではないというイエレン米財務長官の再保証と矛盾することになる。結局のところ、インドネシアのニッケルはどこかに輸出されることになる。

インドネシアは全ての国との提携に手を差し伸べている。その手を握ってより環境に優しい未来を創造するかどうかは、ワシントン次第である。しかし、我が国はいつまでも気長に待つつもりなどない。

※ルフット・ビンサル・パンジャイタン:インドネシア海洋・投資担当調整大臣

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 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。「西側諸国対西側以外の国々」という構造で国際政治を分析しています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 インドネシアの新大統領に選出されたプラヴウォ・スビアント国防相が選挙後の初めての外遊として、中国と日本を訪問した。中国だけ、日本だけではなく、両国を訪問したという点はインドネシアの置かれている立場をよく表している。インドネシアは東南アジアの地域大国として、アジア全体の地域大国である中国と日本の橋渡しができる国である。思い返せば、北朝鮮の拉致被害者曽我ひとみさんが夫ジェンキンズ氏と娘たちと再会を果たしたのはインドネシアの首都ジャカルタでのことだった。

 プラヴウォ国防相(新大統領)は、インドネシア共和国の建国の父スカルノを失脚させ、第2代大統領となり、独裁者として権勢を振るったスハルトの娘婿だ(1983年に結婚・現在別居中という話がある)。陸軍の中で栄進を重ね、陸軍中将となった時に、民主化でスハルトが失脚し、軍を追われることになった。軍籍をはく奪された後は海外で亡命生活をしながら、ビジネスを展開し成功、資産は約1億5000万ドル(約225億円)と見られている。スハルトの娘婿、東ティモール派遣軍の司令官時代に、独立運動の活動家の殺害や弾圧、人権侵害に関わった疑いというマイナス面がありながら、政界に進出し、大統領選挙に何度も出馬している。

 2019年の大統領選挙では、二期目を目指すジョコ・ウィドド大統領の対抗馬として出馬し、選挙後には選挙に不正があったと主張し、プラヴウォ支持者が暴動をおこし、死者が出る騒ぎとなった。それほど対立した関係であったが、ジョコ大統領は、プラヴウォを自分の政権の国防相に迎え入れた。そして、今回の大統領選挙では、ジョコ大統領の長男ギブランが、プラヴウォの副大統領となり、実質的に、ジョコ大統領が「後継者」としてプラヴウォを指名し、「お目付け役」として長男をつけるということになった。選挙結果は、プラヴウォの勝利だった。1回目の投票で過半数を取れないので、2回目の決選投票になると思われていたが、1回目の投票で、プラヴウォは58%の得票率で勝利を決めた。

 ジョコ大統領はこれから院政を敷くことになる。プラヴウォは、ジョコ大統領の路線を継承することを公約に掲げている。そして、アメリカをはじめとする西側諸国と、中国をはじめとする西側以外の国々との間でうまくバランスを取りながら、国内経済成長路線を維持する。もし、何か反する動きがあれば、プラヴウォのマイナス面である、過去を掘り返して、大統領の座から追われるということになるだろう。副大統領となるジョコ大統領の長男ギブランが、大統領になるかどうかは不明だが、それもこれから5年での成果にかかっている。インドネシア政治はこれから注目される。

(貼り付けはじめ)
インドネシア次期大統領 中国 習主席と会談 関係強化を確認

202442 633分 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014409911000.html
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インドネシアの次期大統領のプラボウォ国防相は、当選後、初めての外国訪問先として中国を訪れて習近平国家主席と会談し、双方とも両国関係のさらなる強化を確認しました。

ことし2月に行われたインドネシアの大統領選挙で当選したプラボウォ国防相は、当選後初めての外国訪問として習近平国家主席の招きを受けた中国を訪れていて、1日、北京で習主席と会談しました。

インドネシア国防省によりますと、会談でプラボウォ氏は「防衛分野の協力において、中国は地域の平和と安定を確保するのに鍵となるパートナーの1つだ」と述べ、中国との関係を重視していく姿勢を強調したということです。

中国外務省によりますと、これに対し習主席はプラボウォ氏の当選を祝福し「中国とインドネシアはともに新興国の代表であり、主権や安全保障、発展の利益を守る上で互いをしっかり支持すべきだ」と述べ、両国関係の強化を確認しました。

また、南シナ海をめぐってASEAN=東南アジア諸国連合の一部の国との領有権争いを念頭に「海洋協力を引き続き深めることを望んでいる」と述べ、インドネシアに理解を求めました。

中国としては、ASEANの大国であるインドネシアとの連携を重視する姿勢を改めて示し、地域での影響力を強めるねらいがあるとみられます。

プラボウォ氏は2日、日本も訪れる予定で、岸田総理大臣との会談が調整されています。
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【インドネシア】プラボウォ氏と岸田首相会談、協力強化確認

4/4() 11:31配信  NNAKyodo News Group

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e93ecdf6cc95647af589409f4383d76e4abd06d

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 インドネシア次期大統領のプラボウォ・スビアント国防相は3日、訪問中の日本で岸田文雄首相と会談した。2国間関係や地域情勢について意見交換し、協力関係を強化していくことを確認した。プラボウォ氏の大統領選当選後の外遊先としては、日本が中国に続いて2カ国目となった。

 プラボウォ氏と岸田氏の会談は、午前9時15分から約35分間実施された。岸田氏は、プラボウォ氏に当選の祝意を改めて示し「早々の訪日は日本重視の姿勢と受け止め、大変心強い」と述べた。また「基本的な価値や原則を共有する『包括的・戦略的パートナー』として、2国間関係や地域・国際情勢に係る協力をさらに進めていきたい」とした。

 岸田氏は、2国間関係において、インフラやエネルギー分野で協力するほか、インドネシアが目指している経済協力開発機構(OECD)への加盟に向けて支援することも伝えた。

 プラボウォ氏は「インドネシアと日本は旧友であり、重要なパートナーだ。これまでの良好な関係をさまざまな分野でさらに強化したい」と述べた。安全保障協力をはじめ、農水産業や防災などの分野で、2国間関係を深めることに期待を示した。

 地域情勢を巡っては、東シナ海や南シナ海情勢、北朝鮮への対応、ミャンマー情勢などでも意見交換し、連携を継続していくことを確認した。

 プラボウォ氏は、2月に実施された大統領選の正式結果が3月20日に発表され初当選した。当選後初の外遊で同月31日~4月2日に中国を訪問し、習近平国家主席や李強首相と会談した。

 プラボウォ氏は、憲法上3選が認められておらず2期・10年で退任するジョコ・ウィドド大統領の後任として、1020日に就任する。

 ■木原防衛相とも会談

 プラボウォ氏は3日、木原稔防衛相とも会談した。両者は、防衛省で午前1028分から約50分間会談し、2国間・多国間の防衛協力や交流を強化していくことで一致した。木原氏は、南シナ海での力による一方的な現状変更や緊張を高める行為に強く反対すると表明した。中国の海洋進出を念頭に置いた発言とみられる。

 また木原氏は、海洋国家の両国間において「法の支配に基づく『自由で開かれたインド太平洋』を維持・強化していきたい」と述べた。 

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プラヴウォはインドネシアをどのように主導するか?(How Will Prabowo Lead Indonesia?

-今回の大統領選挙の勝者プラヴウォは選挙運動の中で過去を葬ろうとした。指導者として成功するために、彼は歴史が繰り返されないことを期待している。

サリル・トリパティ筆

2024年2月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/28/indonesia-elections-prabowo-leader-human-rights-jokowi/

大統領選挙において2度の失敗を経験した末、今年の2月14日、インドネシアのプラヴウォ・スビアント国防相が大統領選挙で念願の勝利を収めた。プラヴウォは自分の勝利が自分の政治の結果だと考えたいように見えるが、彼の成功はジョコウィとして知られるインドネシアのジョコ・ウィドド現大統領の人気に負うところが大きい。プラヴウォは2014年と2019年にジョコウィの対抗馬として出馬し、いずれも敗れた。しかし、ジョコウィは2019年にプラヴウォを国防相に任命することで、専門家と支持者の多くを驚かせた。ジョコウィの長男であるギブラン・ラカブミン・ラカは、プラヴウォの副大統領候補として出馬した。

インドネシアにおける選挙の最終結果は数週間以内に発表されるが、初期の集計によると、プラヴウォが得票率58%でリードしており、対抗馬のガンジャル・プラノウォとアニエス・バスウェダン(いずれも元州知事)を大幅に上回っている。他の候補者は2月14日の選挙に関して不正があったと主張し、投票結果に異議を唱えるつもりだと述べている。広範な操作の証拠があれば、憲法裁判所は結果を取り消す可能性がある。新大統領は10月まで就任しない。

任期制限により、ジョコウィ大統領は3度目の出馬を妨げられた。今回の選挙は、ジョコウィなら簡単に勝てたであろう。ギブランが副大統領として勝利すると予想されているため、多くのインドネシア人は次期政権がジョコウィの事実上の3期目、あるいは少なくとも継続性を示すものと見なしている。しかし、ジョコウィは大統領職を辞し、未知の領域に入りつつある。プラヴウォを支援することで、自身が今でも関係を持っている、インドネシア闘争民主党(Indonesian Democratic Party of Struggle PDI-P)との架け橋をジョコウィが燃やしてしまうことになった。闘争民主党候補者のガンジャールが3位に終わって、裏切られたと感じるのには十分な理由がある。ガンジャールは、自分の得票数がこれほど少ないとは信じていないと述べている。

プラヴウォはジョコウィの支援なしでは勝利できなかったが、統治するにあたり、ジョコウィに依存する必要はもはや存在しない。退任する大統領のテクノクラート出身の閣僚のうち、プラヴウォの下で引き続き職務を続ける者はほとんどいないと見られているが、プラヴウォはそれを気にしないかもしれない。彼の経済政策はポピュリズム的であり、特にインドネシアの財政赤字を増大させる学校給食プログラムなど補助金の増額提案などがある。対照的に、ジョコウィ政権の財務大臣、尊敬を集める経済学者スリ・ムリャニ・インドラワティは改革派として知られ、かつては世界銀行の専務理事を務めたこともある。彼女がプラヴウォの下で職務を継続する可能性は低い。

タイミングは選挙において、プラヴウォに対してもう1つの利点をもたらした。プラヴウォは、人々の記憶が薄れつつあることを利用して、権力を固めようとしている。選挙期間中、彼はソーシャルメディアを使って若い有権者に自分をアピールし、過去を覆い隠すような、かわいらしいおじいさんとしてのイメージを打ち出した。元陸軍中将の人権に関する記録はあまりに酷いもので、何年もの間、アメリカへの入国が事実上禁止されていた。興味深いことに、プラヴウォは3人の候補者の中で唯一、ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った「インドネシアの次期大統領として人権を守るために何をするか」という質問に答えなかった。インドネシアの有権者の半数以上は1980年代以降に生まれており、プラヴウォが東ティモール(現東ティモール民主共和国)で特殊部隊の司令官を務めていたことなど、おぼろげな記憶しかないことになる。人権団体は、プラヴウォが東ティモールでの人権侵害に関係していると主張しているが、プラヴウォはこれを否定している。

もしプラヴウォが東ティモールでの勤務していた時代以降、ある種の免罪符を持っているように見えたとしたら、それは彼が長年、インドネシアを32年間統治したスハルト元大統領の次女、シティ・ヘディアティ・ハリジャディ(別名ティティーク)と結婚していたからだ。スハルトの息子たちはビジネスに専念し、婿のプラヴウォは軍隊で華々しいキャリアを積んだ。プラヴウォとティティークの結婚はかなり前に終わったが、ティティークは彼の立候補を支持し、今年最後の選挙集会にも彼の側に姿を見せた。2023年12月、プラヴウォは元妻ティティークを自身が率いる政党グリンドラ党の顧問に任命した。

スハルトの長期にわたる統治の間、インドネシアは多くの社会経済指標を改善し、食糧生産を増加させ、識字力を向上させ、外国からの投資を誘致した。しかし、この時代には寡頭制文化の台頭も見られた。スハルトの子供たちは事業で繁栄し、指導者と協力する縁故資本家たち(crony capitalists)が経済を支配した。1980年代に経済を安定させようとした努力にもかかわらず、汚職(corruption)は1990年代半ばまでに大幅に増加した。1997年7月にタイの通貨バーツが急落し、他のアジア通貨もその影響に巻き込まれた。

当時、インドネシアは公的債務を比較的うまく管理していたが、民間部門は、過大評価されているインドネシア・ルピアが安定的に続くとの前提で無謀な借り入れを行い、短期債務を積み上げていた。何かが与えられなければならず、市場はルピアに賭けて、ルピアを暴落させた。インフレと物資不足は避けられず、金融危機は本格的な経済危機(economic crisis)に変わり、その後、政治危機(political crisis)に発展した。スハルトは国際通貨基金(International Monetary Fund)に緊急支援を求め、その後はより実質的なパッケージを求めた。

世情不安(public unrest)が高まり、首都ジャカルタ全土でデモ行進が行われた。1998年5月、治安部隊はトリサクティ大学の学生活動家たちを取り締まり、少なくとも4人の学生が殺された。他にも多くの学生が拉致され、何人かは帰ってこなかった。その後の数日間、大きな変化が迫っていた。戦車が首都を走り回り、煙が充満し、デモ隊は企業を破壊し、スハルトに近い大物たちの邸宅を襲撃した。1998年5月21日、スハルトは辞任した。この出来事はプラヴウォのキャリアを後退させ、今も彼を苦しめている。

プラヴウォは予備役に編入された。プラヴウォは当初、学生拉致の責任を否定していたが、2014年の大統領選挙においては、命令を実行しただけだ、と自らの役割を認めた。

南東アジアはノスタルジックな局面を迎えているようだ。古い秩序への憧れが地域全体の選挙で繰り広げられている。フィリピンを統治するフェルディナンド・"ボンボン・マルコス・ジュニア(Ferdinand “Bongbong” Marcos Jr.)大統領は、彼の父親が1965年から1986年まで大統領を務め、民衆蜂起の後に倒され、1989年にハワイに亡命した。一方、マレーシアでは、1990年代に副首相を務めたアンワル・イブラヒムが首相を務めている。アンワルは1981年から2003年まで、そして2018年から2020年まで再びマレーシアを統治したマハティール・モハマド首相(当時)と対立し、アンワルは1998年に淫行と汚職の罪で投獄された。アンワルは最終的に2022年に首相となった。

多くの国民がスハルト時代の暗黒面を忘れていることを願いつつも、プラヴウォがインドネシアで政権を取ったことは、この傾向を裏付けているようだ。残る疑問は、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかということだ。ジョコウィの息子であるギブランは、スラカルタ市長を務めただけで、政治経験は浅いが、いつかは大統領になりたいと考えているようだ。もしプラヴウォがギブランを脅威と見なせば、2人の同盟関係に綻びが生じるかもしれない。72歳のプラヴウォは、スハルトが辞任したときより5歳若いだけで、選挙チームは選挙運動中に脳卒中の治療を受けたという噂を否定しなければならなかった。

インドネシアの専門家たちは、ワヤン・クリット[wayang kulit](影絵人形劇[shadow puppetry])と呼ばれる民俗劇を、この国の表向きには不可解な政治のメタファーとして用いることが多い。人々はスクリーンの向こう側で何が起きているのかを垣間見ることしかできないし、目に見えるものが正確に出来事を表しているとは限らない。スハルトはそのような曖昧さの達人(the master of such ambiguities)だった。しかし、プラヴウォはもっと率直で険悪で、短気なことで知られている。彼がインドネシアを統治する際に、ジェモイ(gemoy、かわいい)イメージを維持できるかどうかは未知数だ。

プラヴウォの闘争的な性格は、西側の諸大国に説教することを厭わないということであり、有権者にアピールできるかもしれない。過去には、インドネシアにとって他国からの民主政治体制に関する教訓は必要ないと発言し、ジャカルタのパーム油輸出への依存をめぐるヨーロッパ諸国からの批判には、植民地時代の歴史を引き合いに出して歯向かった。大統領選挙期間中、ヨーロッパ連合(EU)の森林破壊に対する政策を批判し、プラヴウォは次のように述べた。「茶、コーヒー、ゴム、チョコレートを植えさせたのはヨーロッパ人だ。そして今、私たちが森林を破壊していると言うのか? 私たちの森林を破壊したのはあなたたちだ」。この態度は、礼儀正しいポピュリスト(polite populist)というジョコウィの評判とは対照的である。

更に、狭い目的によって同盟関係が変化する多極化した世界では、プラヴウォはスハルトの型にはまり、独立した路線を作り上げるかもしれない。インドネシアと中国は南シナ海の係争中の島々の所有権を主張している国の1つだが、プラヴウォは中国への投資にヨーロッパの投資家たちよりも制約が少ないため、中国に言い寄っている。 2023年6月にシンガポールで開催されたシャングリラ対話(Shangri-La Dialogue)で、プラヴウォはモスクワで作成された可能性が高い、ロシアのウクライナ戦争に対する和平案を提案し、多くの地域アナリストやインドネシアのメディアを驚かせた。

プラヴウォは、インドネシアの広大な群島全域で学校給食費の補助を拡大する計画など、国内の支持を補強するために危険なポピュリスト的施策に頼ることになりそうだ。彼のチームは、初年度に76億8000万ドルもの費用がかかる可能性があると述べている。それは称賛に値するが、給食費補助計画はインドネシアの予算を圧迫し、財政赤字を拡大させる可能性がある。そうなればインフレにつながり、プラヴウォの側にはジョコウィ政権のテクノクラート的な有能な大臣たちはいなくなるだろう。プラヴウォは、ジョコウィのようなテクノクラート的な大臣たちを味方につけることはできない。彼の過去の気質がどうであれ、それはインドネシアに危険をもたらすかもしれない。

結局のところ、過去はインドネシアに必要なことの序章であってはならない。世界で4番目に人口の多い国として、その安定は重要であり、民主政治体制への移行(transition to democracy)を確固たるものにしなければならない。成功するためには、プラヴウォはインドネシアの若い人々の願望に応えることができる21世紀のリーダーになる必要がある。そして、技術力だけでなく、実質を提供する必要がある。

※サリル・トリパティ:ニューヨークを拠点とするライター。1990年代から東南アジアから報道を続け、その中にはジャカルタからスハルト政権崩壊も含まれている。著書に『悔い改めない大佐:バングラデシュ戦争とその不穏な遺産(The Colonel Who Would Not Repent: The Bangladesh War and its Unquiet Legacy)』があり、現在はグジャラートについての本を執筆中。

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インドネシア大統領選挙の勝者には暗い過去とかわいいイメージがある(Indonesia’s Election Winner Has a Dark Past and a Cute Image

-プラヴウォ・スビアントの記録は民主政治体制にとって良い兆候ではない

ジョセフ・ラックマン筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/prabowo-indonesia-election-democracy-jokowi/

ジャカルタ発。「神のご加護で、1ラウンド、1ラウンド、1ラウンドだ。プラヴウォ、プラヴウォ」。歓喜に沸く群衆が、ジャカルタのスタジアムで次期大統領に決まったプラヴウォ・スビアントが勝利演説をするために到着したときにこのように大合唱した。約2億人のインドネシア国民が投票権を持ち、その52%が40歳以下という圧倒的な差で、旧独裁政権と深いつながりを持つ72歳の元陸軍中将を選んだ。

彼は変わったと言う人たちもいる。また、ジョコ・ウィドド現大統領(通称ジョコウィ)の選挙運動への暗黙の支援によって、既に緊張状態にあるインドネシアの民主政治体制にとって、ジョコウィの登場は悪い知らせになると懸念する声もある。ジョコ・ウィドド現大統領は、かつてのライバルの選挙運動を黙認していた訳ではない。インドネシアのヒューマン・ライツ・ウォッチのヴェテランのメンバーであるアンドレアス・ハルソノは、「ジョコウィは、インドネシアをかつての独裁者スハルトの、新秩序の闇に逆戻りさせる扉を開いてしまった」と語った。

最も明らかな心配の種は、プラボヴウォの伴走者であるギブラン・ラカブミン・ラカがジョコウィの息子であるという事実だ。父親が政治家としてのキャリアをスタートさせた、スラカルタ市長として2年強の政治経験を持つ、この36歳が立候補資格を得たのは、40歳以上という従来の制限を例外とする憲法裁判所の判決が最終的に下ったからだ。

国家は選挙運動の他の部分でも同様の判断を下している。党指導者たちに対する汚職捜査が浮上したが、ジョコウィがプラヴウォを支援することになった後は消えた。野党陣営は警察が嫌がらせをし、人々にプラヴウォを支持するよう圧力をかけていると訴えた。そして、インドネシア人への社会援​​助への支出が急増しただけでなく、場合によってはプラヴウォの選挙運動に関係する人々によって配られたとさえ伝えられている。前述のハルソノは「多くの法学教授や他の学者は、これはスハルト後のインドネシアでこれまで行われた中で最も汚い選挙であると述べた」と述べた。

大統領選挙に敗れた2人の候補は現在、開票における大規模な不正を主張している。結果を覆すのに必要な規模の、信頼に足る証拠はまだない。インドネシアの世論調査の専門家であるセス・ソダーボーグは、「あちこちに不正や問題があるのは確かだと思う。しかし、何千万票もの偽の投票があれば、その痕跡が残るだろう」と語った。

それでも、選挙運動中の選挙妨害は、多くの人々にとって、特にプラヴウォ自身の過去と組み合わせれば、懸念が存在することになる。特にプラヴウォ自身の過去と合わせればなおさらだ。彼が最初に注目されるようになったのは、東ティモールでの流血の対反乱作戦中にインドネシアの特殊部隊を指揮していた時だ。プラヴウォは将官として、抵抗運動の指導者ニコラウ・ロバトの殺害に関与した。プラヴウォは東ティモールと西パプアの虐殺の責任者として告発されているが、彼は疑惑について常に激しく否定している。

スハルトの娘との結婚により、プラヴウォは政治的に有名になり、一部の人は彼を潜在的なスハルトの後継者と見なしている。1998年に民主化運動がスハルト政権を崩壊させたとき、プラヴウォは23人の民主活動家誘拐に関与し(うち13人は行方不明で死亡と推定されている)、自ら権力を掌握しようとしたという疑惑がある。

新しい政権によって一時的に失脚させられたプラヴウォは、すぐにインドネシア政界に復帰した。2004年に大統領候補に指名され、2009年には副大統領候補として出馬し、2014年と2019年には大統領選に出馬した。

いずれの時もプロヴウォはジョコウィに敗れた。2019年に敗れたジョコウィは当初、大規模な不正を主張して結果を否定し、8人の死者を出す暴動を引き起こした。ジョコウィはプラヴウォを国防相として政権に参加させることで事態を打開し、多くの人々を驚かせた。

これにより、プラヴウォはジョコウィの後継者となり、多くの若い有権者にとってはかわいらしい老人へと変貌を遂げることになった。それ以前の10年間、プラヴウォの選挙運動は熱狂的な「強者のナショナリズム(strongman nationalism)」によって特徴づけられ、彼はスタジアムの馬の後ろに乗って、熱狂する群衆に対して、外国の破壊的勢力や共産主義について警告を発していた。彼は明らかに日和見主義(opportunism)であるにもかかわらず、過激派イスラム主義グループと同盟を結び、脅威を増大させた。プラヴウォの母親はキリスト教徒であり、彼の兄もキリスト教徒である。

今回、プラボウォは、かつて彼の陣営が、秘密共産主義者・中国系無神論者・キリスト教徒と中傷したジョコウィへの忠誠を仰々しく、繰り返し宣言し、その政策を継続することを計画した。選挙戦では、ナショナリズムの隆興が、外国人たちがインドネシアを没落させ、富を盗むことへの警告として感じられた。しかし、選挙戦で最も目立ったのは、「ジェモイ(gemoy、かわいい)」というイメージの宣伝だった。ソーシャルメディアは、父親のように不器用に踊ったり、猫を抱っこしたりする動画や、彼の顔をピクサーのアニメのように描いたもので埋め尽くされた。

特に若い有権者たちは、プラヴウォのイメージが気に入り、おそらく彼の過去を知らずに、彼に群がった。プラヴウォの勝利演説を待つ群衆の中で、大学の工学部で学ぶ学生のファウザン・ディスマスは、プラヴウォは「タフ(tough)」だから好きだと明言した。しかし、過去の人権侵害疑惑やスハルトとのつながりについて尋ねられると、ディスマスは「そのことについてはよく知らない」と言葉を濁した。彼は「私はまだ生まれていなかった」とも述べた。

それでは、次はどうなるのか?

国際的には、インドネシアの姿勢や立場が大きく変わることはないだろう。アメリカも中国もインドネシアに言い寄ってきているが、インドネシアは長い間、国際問題における中立(neutrality)と非同盟(nonalignment)の原則を堅持してきた。プラヴウォは、インドネシアの立場を冷戦時代のスイスやフィンランドに例えて、この姿勢への関与を強調している。

それでも、プラヴウォの大げさな性格と鋭敏なナショナリズムは、時折驚きをもたらすかもしれない。インドネシアは南シナ海における中国の領有権に異議を唱え続けており、その領有権はインドネシアが「北ナトゥナ海(North Natuna)」と呼ぶ海域と重なっている。昨年8月、プラヴウォはロイド・オースティン米国防長官との共同声明を発表し、一時的に対中強硬路線を取るように見えた。しかし、その2カ月前、シンガポールで開かれたシャングリラ・ダイアログで、彼はウクライナ和平案を提案した。

国内的には、民主政治体制の衰退(democratic decline)を心配する以上に、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかが重要な問題かもしれない。大統領選挙期間中、詳細な政策論議は欠けていたが、プラヴウォはインフラ整備、インドネシアの天然資源の「川下化(downstreaming)」、ボルネオ島への新首都建設などでジョコウィに追随することを声高に約束した。しかし、プラヴウォは気性が激しいことで知られ、何十年もの間、指導者への野心を抱いてきた。果たして彼は前任者の影に隠れていることに満足するのだろうか?

もしプラヴウォがこれに反旗を翻す場合、ジョコウィの影響力は限られたものになるかもしれない。ジョコウィの息子は副大統領かもしれないが、その役割にはアメリカと同様、大統領が譲り渡したいと思う以上の正式な権限はほとんどない。

ジョコウィはまた、自分自身の政治的手段も持っていない。彼はまだ形式的にはインドネシア闘争民主党(PDI-P)のメンバーだが、闘争民主党が推薦した候補者ガンジャル・プラノウォ元中部ジャワ州知事よりもプラヴウォを非公式に支援したことで、その闘争民主党との関係を繋ぐ橋は完全に焼け落ちてしまった。一方、彼のもう一人の息子であるケーサン・パンガレップが9月に引き継いだインドネシア連帯党という小政党は、国民評議会に議席を得るのに十分な票を得ることができなかった。

プラヴウォも72歳で、健康状態が良くないと噂されている。世界第3位の民主政体国家が、事業経営にはある程度成功したが、かつて父親が市長をしていた市の市長を2年間務めた経験しかない若者の手に委ねられることになるかもしれない。インドネシアのヴェテランのテクノクラートの中には、どちらがより心配なのか分からないというひとたちもいる。 プラヴウォ大統領か、ギブラン大統領か、どちらの方が酷いことになるのか?

※ジョセフ・ラックマン:インドネシアと東南アジアからの報道を行うフリージャーナリスト。ツイッターアカウント:@rachman_joseph

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年2月にインドネシア大統領選挙が実施され、プラヴウォ・スビアントが大統領に当選した。インドネシアはジョコ・ウィドド大統領政権下、経済発展を遂げ、国際政治、世界経済においてその存在感を増している。これからの10年間で更に成長を遂げ、重要な国となるだろう。今回は、少し長くなるが、インドネシア政治について書いていく。

インドネシアは東南アジアにある島国だ。以下の地図にあるように、約1万5000の島からなり、広大な国土を誇る。スマトラ、ジャワ、カリマンタン、スラウェシ、ニューギニアが主要な島だ。この国土に、約2億7000万人(世界第4位)が住んでいる。世界最大のイスラム教国だ。

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インドネシアの地図

2020年のインドネシアの年齢の中央値は約31歳(2024年)だ。日本は世界第2位の48.6歳だ(1位はモナコの55.4歳)。インドネシアは大変若い国であり、これから若い人々が労働者・消費者として、元気に経済活動、社会活動をしていく。それが更なる経済発展につながる。若い人々が多い状況を「人口ボーナス」と呼ぶ。インドネシアは人口の面から見ても、これから大きく発展していく国だ。以下に、インドネシアと日本の「人口ピラミッド(population pyramid)」を載せる。図の下の方が若者層で、インドネシアは「釣り鐘型(若年層から中年層が多い)」、日本は「極端なつぼ型(老年層が多く、若者層が少ない)」となっている。私が最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で紹介した世界で言われている言葉「ヨーロッパは博物館(美術館)、日本は老人ホーム」そのものだ。

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インドネシアの人口構成(2020年)

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日本の人口構成(2021年)

●優秀な指導者の下で着実に経済成長を続けている

インドネシアの名目GDPは約1兆ドル(約143兆円)であり、現在のところ、世界第16位に位置している。GDPが1兆ドルを超える国々で構成される「1兆ドルクラブ(Trillion Dollar Club)」に2017年に入った。「1兆ドルクラブ」に入るということは、発展途上国から脱し、地域の大国になったということだ。インドネシアは東南アジア初の「1兆ドルクラブ」のメンバーとなった。更に言えば、西側以外の国々(ザ・レスト)の中核をなす国になった。

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世界のGDP上位国のリスト

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「1兆ドルクラブ」のメンバー国

以下のグラフにある通り、インドネシアはこれまで5%以上の経済成長率を維持し、着々と経済発展を続けている。インドネシアは21世紀に入って、安定的に経済成長を続けている。これは、天然資源に恵まれたということもあるが、何よりも国家の指導者がしっかりしているからだ。下のグラフにあるように、2004年から2014年まで大統領を務めたスシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono、1949年-、74歳)、2014年から大統領を務めるジョコ・ウィドド(Joko Widodo、1961年-、62歳)の下で、インドネシアは着実な経済成長を続けている。

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2005年から2019年まで(コロナ前)のグラフ

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2019年(コロナ期間を含む)からのグラフ

●「インドネシアの田中角栄」と言うべき偉大な指導者ジョコ・ウィドド(愛称はジョコウィ)大統領

インドネシアは1945年にオランダから独立してから、初代大統領スカルノ(Sukarno、1901-1970年、69歳で死 在任:1945-1966年)と第2代スハルト(Soeharto、1921-2008年、86歳で死 在任:1967-1998年)の政権が長く続いた。1998年にスハルトが失脚後、第3代バハルディン・ユスフ・ハビビ(Bacharuddin Jusuf Habibie、1936-2019年、83歳で死 スハルト失脚後に副大統領から昇格、在任:1998-1999年)、第4代アブドゥルラフマン・ワヒド(Abdurrahman Wahid、1940-2009年、69歳で死、国会で罷免された、在任:1999-2001年)、第5代メガワティ・スティアワティ・スカルノプトゥリ(Megawati Setiawati Sukarnoputri、1947年-、76歳、副大統領から昇格 在任:2001-2004年)と短命な大統領が続いた。

国民による大統領直接選挙で選ばれた、第6代ユドヨノ、第7代ジョコがそれぞれ、憲法で定められた任期(2期10年まで)を全うしている。インドネシア政治が安定したのは2004年からだ。ユドヨノ大統領、ジョコ大統領がインドネシアの経済成長をけん引したのは既に書いた通りだ。安定した政権の下、工業化とインフラ整備が進んだ。特に、ジョコ大統領の経済政策は、ジョコ大統領の愛称の「ジョコウィ」を取って、「ジョコウィノミクス(Jokowinomics)」と呼ばれ、高く評価されている。

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インドネシア歴代大統領の一覧

現在のジョコ・ウィドド(愛称はジョコウィ)大統領(第7代)は、「父が誰々」「祖父が誰々」というようなエリートの出身ではない。スラム街で育ち、苦労して大学を卒業し、元々は家具製造業で成功したビジネスマンだった。20代で自分の会社を興したが、騙されて会社を倒産させたこともある。その後に見事に復活するなど、苦労を重ねた。2005年に闘争民主党に所属して、ジャワ島中部の小さな町スラカルタの市長(在任期間:2005-2012年)、首都ジャカルタの知事(在任期間:2012-2014年)を務めた。都市計画で立ち退きを迫られて、反対運動を起こした住民たちのところに直接出向いて、何十回も一緒に食事をし、最終的に説得に成功したり、自然災害が起きた際にはいち早く駆け付けたりなど、類まれな行動力を見せた。スラカルタ市長、ジャカルタ知事としての実績を積んだジョコは国民的人気を高めていった。

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メガワティ(左)とジョコ大統領

1998年の結党以来、闘争民主党の党首を務めているメガワティ元大統領は、スカルノの長女ということで、スハルト政権末期の1990年代に国民的人気を得た。しかし、2004年、2009年の大統領選挙で、ユドヨノに敗れた。この雪辱を果たし、党勢の拡大を図るため、メガワティは2014年の大統領選挙に自分が出るのではなく、国民的人気の高いジョコ・ウィドドを大統領選挙に出馬させることにした。ユドヨノ側は、右派政党の「グリンドラ党(Partai Gerakan Indonesia RayaGerindra Party)」の党首で、スハルトの娘婿、元陸軍中将というエリートのプラヴウォ・スビアント(Prabowo Subianto Djojohadikoesoemo、1951年-、72歳)を候補者に立てた。2014年の大統領選挙は、メガワティにとっての大きな賭けとなったが、この賭けに勝った。ジョコは大統領になり、闘争民主党は党勢を拡大し、国会で第一党となった。2019年の大統領選挙でも、ジョコ大統領がプラヴウォを破った。

ここで、インドネシアの政党について簡単に説明すると、インドネシアは、30年にわたって大統領として君臨した、スハルト時代に、政権を支える与党として「ゴルカル(Golkar)」という組織があった。そして、政府が認める合法野党として、イスラム系の「開発統一党(Partai Persatuan PembangunanPPPUnited Development Party)」と非イスラム系の「インドネシア民主党(Partai Demokrasi IndonesiaPDIIndonesian Democratic Party)」があった。メガワティは元々インドネシア民主党に所属していたが、島内の権力争いのために、追い出される形になって、「闘争民主党(Partai Demokrasi Indonesia-PerjuanganPDI-PIndonesian Democratic Party of Struggle)」を結成した。現在、インドネシアには10くらいの政党があるが、大きいものは、ゴルカルと闘争民主党だ。

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現在のインドネシアの政党一覧

ジョコ大統領の人気ぶり(支持率は70%を超える)に危機感を募らせたメガワティは、「憲法を改正して大統領の人気制限を撤廃しよう」「新型コロナ騒ぎで活動が停滞した2年分は延長しても良いではないか」という声を潰し、ジョコ大統領の任期延長の動きを阻止した。このために、ジョコ大統領とメガワティの間はうまくいっていない。

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ジョコ大統領の支持率の変遷

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インドネシアの現在の政治状況

今回の大統領選挙では、ジョコ大統領が所属する闘争民主党からガンジャル・プラノウォ(Ganjar Pranowo、1968年-、55歳)という人物が出馬している。しかし、ジョコ大統領は、どの候補者に対しても公的に支持を表明していない。

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大統領選挙候補者の顔ぶれ

ジョコ大統領は、自分が2014年、2019年の大統領選挙で戦ったプラヴウォを閣内に防衛相として起用し、今回の大統領選挙では、自分の長男ギブラン(Gibran Rakabuming Raka、1987年-、36歳)を副大統領候補としてプラヴウォつけるという、乾坤一擲(けんこんいってき)の、政治的に素晴らしい一手を打った。こうして、メガワティを抑えることに成功した。ギブランも父ジョコ大統領と同じく、闘争民主党に所属していたが、離党して副大統領候補となった。

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ギブラン(左)とプラヴウォ

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プラヴウォ(左)とジョコ大統領

プラボウォは、政敵であった、ジョコ・ウィドドに、2015年から、ジョコ大統領と協力関係にあり、後継者に選ばれた。もっと露骨に言えば、ジョコウィは、プラヴウォに自分の長男を副大統領として監視役をさせて、院政を敷く。プラヴウォはどうしてもなりたかった大統領になる、その代わりに、ジョコウィ路線を継承する。このようにして、ジョコ大統領は大統領を退任しても、後任の大統領になるプラヴウォに、自分の政策を継続遂行させる手はずを整えた。しかし、だからと言って、メガワティと喧嘩をして、闘争民主党を割るとか、メガワティを党から追い出すということはしない。大きく、長期的な構えをしている。ここもまた政治家として凄いところだ。闘争民主党は今回、プラヴウォに敗れたが、国民評議会選挙では第一党になった。闘争民主党は野党の立場となるが、ジョコ大統領路線の警鐘をプラヴウォが堅持する限り、政権に対して敵対的な姿勢を取ることはないだろう。

ジョコ大統領は、2023年9月に次男のケーサン・パンガレップ(Kaesang Pangarep、1994年-、29歳)をインドネシア連帯党(Partai Solidaritas IndonesiaPSIIndonesian Solidarity Party)の党首に就任させた。この政党は2014年にできたばかりで、若者や女性の権利を主張する政党だ。現在は国会議員を出していない。しかし、今回の大統領選挙と同時に実施される国会議員選挙では、国会での議席獲得が期待されている。インドネシア連帯党が国会で議席を得れば、プラヴウォ大統領とギブラン副大統領を支える与党の立場になる。ジョコ大統領は自分の息子たちを政界に送り込み、自分の政策の継続性を確保する。

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ケーサン・パンガレップ(右)、オバマ元大統領、ウィドド大統領

インドネシアは、ジョコ・ウィドド大統領が敷いた経済成長路線を継続する。そのために、ジョコ大統領は着々と段取りを整えている。自分が所属している闘争民主党のメガワティ党首・元大統領と喧嘩をしないが、政治的なライヴァルだったプラヴウォを取り込むことで、結果として、メガワティの力を抑えることに成功した。ジョコ大統領はまだ62歳と若い。これから少なくとも10年は仕事ができる。そして、この10年は世界にとっても、インドネシアにとっても重要な10年となる。それは、これからの10年で世界の構造が大きく変化するからだ。これから伸びていく、非西側陣営の重要なメンバーとして、インドネシアは偉大な指導者の下、発展を続けていく。

(貼り付けはじめ)

インドネシアの選挙は与党である闘争民主党にとって何を意味するか(What Indonesia’s Election Result Means For the Ruling PDI-P

20年ぶりに野党に転落した闘争民主党(PDI-P)は次期政権の権力をチェックする重要な役割を担うことになる。

ヴィルディカ・リスキー・ウタマ筆

2024年2月16日

『ザ・ディプロマット』誌

https://thediplomat.com/2024/02/what-indonesias-election-result-means-for-the-ruling-pdi-p/

水曜日、インドネシアでは、大統領選挙と国民議会および地方議会の選挙が同時に行われた。その結果、複雑な政治情勢が明らかになった。各調査機関と「コンパス」の毎日の研究開発からの簡単な集計に基づくと、与党インドネシア闘争民主党(PDI-P)は大統領選挙で後退に直面したが、国民議会選挙では好成績を収めた。公式結果は来月まで発表されないが、闘争民主党の現在の位置と果たすべき役割を明確に示している。

闘争民主党は、最近まで中央ジャワ州知事を務めていた大統領候補ガンジャール・プラノウォが得票率約16から18%に留まり、大統領選挙戦で大きな課題に直面した。これは、24から26%を獲得した元ジャカルタ知事アニエス・バスウェダンや、各種速報結果によると約56から58%の得票率で圧倒的な勝利を収めた最終的な勝利者プラヴウォ・スビアント国防大臣を大きく下回った。プラヴウォの勝利はインドネシア政治の極めて重要な瞬間を示し、有権者の志向の変化と政治勢力の再編の可能性を示している。

特に中央ジャワ、東ジャワ、バリといった伝統的な闘争民主党の拠点でのガンジャール・マフフドの敗北は、党への忠誠心を超えた有権者の力関係の複雑な相互作用を明らかにしている。大統領選挙での敗北にもかかわらず、闘争民主党は国民議会選挙で好成績を収めた。「リトバン・コンパス」の速報集計結果によると、闘争民主党は得票率17から18%を獲得し、国民議会で最も高い得票率を確保し、ゴルカル党、ゲリンドラ党、国民覚醒党がそれに続いた。

闘争民主党の立法府部門での成功は、闘争民主党がインドネシア政治の雄として不朽の強さと回復力を保持していることを再確認させるものだ。この逆説的な変化は、政治的再編成とインドネシアの有権者における新たな分断線の出現という、より広範な物語を強調するものである。また、過去10年間与党であった闘争民主党は、その戦略を再評価し、進化する政治情勢における自らの役割を再定義する必要に迫られている。

立法府選挙における闘争民主党の好成績は、闘争民主党の永続的な強さと回復力の証である。この結果は、立法部門における闘争民主党の本拠を再確認するものである。闘争民主党が政治戦略を立て直し、強大な野党勢力としての影響力を再強化するための重要な足場を提供するものである。

しかしながら、インドネシアにおける競争的権威主義(competitive authoritarianism)への移行を示唆する可能性があるプラヴウォ・スビアントの大統領就任という文脈において、闘争民主党の立法府選挙での勝利の重要性はいくら強調してもしすぎることはない。公平性と平等の原則が侵食される一方で、選挙競争の幻想を特徴とする競争的権威主義は、ウラジーミル・プーティン政権下のロシアの政治路線を彷彿とさせる。

この文脈において、与党政権に対するカウンターバランスとしての闘争民主党の役割は、国の民主政体構造を維持するために不可欠である可能性がある。この変化に対する懸念は、ジョコ・ジョコウィ・ウィドド大統領が選挙結果を自分たちに有利に操作しようと努めたと主張する先週公開された映画「汚い投票」で強調された選挙不正疑惑など、いくつかの要因によるものだ。プラヴウォと副大統領候補ギブラン・ラカブミン・ラカはジョコウィの長男である。さらに、プラヴウォは独裁者スハルトの義理の息子という経歴と人権侵害の経歴から、民主的な原則への取り組みに懸念が生じている。

更に言えば、プラヴウォの支持者の中には、異論を唱える者を警察に通報することで批判を封じ込めようとする傾向があり、民主政治体制の基本的な柱である表現の自由に対する不寛容さを反映している。これらの要素を総合すると、プラヴウォの大統領就任は、選挙の装いはあるが民主政治体制の本質が損なわれた、より権威主義的な統治スタイルへとインドネシアを導く可能性があることを示唆している。

闘争民主党がもたらす反対派としての資産は、この重大な局面において非常に貴重なものとなる可能性がある。国民議会で重要な議席数を獲得している闘争民主党には、民主政治体制の完全性、透明性、説明責任の大義を擁護する機会が出てくる。闘争民主党は立法上の影響力を活用して政府の政策を精査し、改革を主張し、民主的な原則を支持する世論を動員することができる。

更に言えば、闘争民主党が10年間の政権運営を経て野党のベンチに戻ったことは、その政治的アイデンティティを再定義し、草の根の支持基盤とのつながりを取り戻すまたとない機会となる。社会正義、経済的公正、政治的包摂の大義を唱えることによって、闘争民主党はそのイデオロギー的な魅力を若返らせ、インドネシアにおける民主政治体制の先駆者としての地位を強化することができる。

闘争民主党が野党としての役割を受け入れる必要性は、単なる立法バランスの仕組みにとどまらない。それは闘争民主党のイデオロギー的基盤と、インドネシア社会の恵まれない人々や社会から疎外された人々を擁護するという歴史的関与に根ざしている。闘争民主党の左派的傾向は、スカルノ主義(Sukarnoism)または「マルヘーニズム(Marhaenism)」に触発されたもので、社会正義、ナショナリズム、そして庶民(マルヘーン、ordinary people)の力をつけてやること(empowerment)を強調している。このようなイデオロギー的スタンスは、闘争民主党を、エリートの利益を優遇したり、社会的公正を損なうような政策を効果的に批判し、対抗できる政党として自然に位置づける。

野党の役割への復帰は、戦闘的で忠実な草の根基盤を持つ政党としての闘争民主党の本質的な特徴とも一致している。数十年にわたって培われたこの草の根ネットワークは、東証民主党に世論を動員し、非民主的な統治の転換に対する抵抗を組織するための強力なプラットフォームを与えている。闘争民主党にはスハルト時代の、強力な反政府勢力としての名高い歴史があり、その回復力と民主的価値観への献身を示してきた。その後、メガワティ・スカルノプトリの指導の下で闘争民主党は権力を掌握し、スシロ・バンバン・ユドヨノ(2004年-2014年)およびジョコウィ(2014年-2024年)の大統領時代を通じて、政治情勢におけるその重要性をさらに強固なものとした。これら全てによって、闘争民主党はプラヴウォ政権に対する強力な野党勢力となる理想的な立場にある。

強力な野党としての役割は、競争力のある独裁政権の状況において極めて重要であり、与党はしばしば潜在的な挑戦者を取り込むか無力化しようとする。 闘争民主党は、その明確な政治的アイデンティティとイデオロギーの明確さを維持することで、民主的規範への侵食を防ぎ、政治の場が真の論争と議論のための空間であり続けることを保証することができる。これは、少数派の権利を保護し、政府が社会のあらゆる層に対して責任を負い続けることを保証するために特に重要だ。

闘争民主党にとって、野党の地位を受け入れることは、党の将来にとって戦略的な意味を持つ。それは、闘争民主党が不人気な政府の政策から距離を置き、国民の利益、特にウォン・シリク(wong cilik、庶民)のチャンピオンとして自らを位置づけ直すことを可能にする。これは、党のイメージを再構築し、国民の信頼を回復する上で、特に選挙での敗北の余波を受けた場合には、貴重な財産となりうる。闘争民主党は、インドネシアのための明確で首尾一貫した代替ヴィジョンを明示することで、支持基盤を活性化し、現状に幻滅した新たな支持者たちを引きつけることが可能となる。

しかし、野党としての闘争民主党の前途は多難である。建設的な批判と協力の間で微妙なバランスを取らなければならない。闘争民主党の野党共闘が妨害的なものとしてではなく、ガバナンス(統治)を強化し民主的価値を守るための真の努力として受け止められることが肝要である。更に言えば、闘争民主党は、その政治的正当性を損ない、国民議会での発言力を抑圧しようとする試みに対して警戒を怠らないようにしなければならない。闘争民主党は、デジタルメディアと草の根動員の力を活用し、メッセージを増幅させ、その民主的アジェンダに対する国民の支持を喚起しなければならない。

今週のインドネシアでの選挙は、国の民主政体を守る上で、活気と回復力のある野党が極めて重要であることを浮き彫りにした。闘争民主党は国民議会選挙で一貫して成功を収めており、闘争民主党を政治情勢において極めて重要な勢力として位置づけ、プラヴウォ次期政権への動きに対抗できる立場にある。速報結果が、総選挙管理委員会が発表した公式の選挙結果と厳密に一致する場合、闘争民主党は警戒を怠らず、プラヴウォの選挙後の団結という物語の魅力に屈しないことが不可欠である。プラヴウォ政権に協力することは、インドネシアにおける野党の役割を軽減することになる。

政府機構内に強力な抑制と均衡が存在しないことは、国の民主政治体制の健全性に悪影響を及ぼす。インドネシア国民は、十分な情報に基づいた、回復力のある、批判的で明確な反対派を切実に必要としている。歴史的な先例は、闘争民主党が希望すればこの役割を果たす独自の立場にあることを示している。

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元陸軍の実力者がインドネシア大統領選挙での勝利を確実のものとした(Ex-army strongman leader claims victory in Indonesian presidential election

ヘザー・チェン、アンガス・ワトソン、ソフィー・ジオン、キャサリーン・マグラモ(CNN)筆

2024年2月14日

CNN

https://edition.cnn.com/2024/02/14/asia/indonesia-election-prabowo-subianto-intl-hnk/index.html

CNN発。議論が続いている過去を持つ元陸軍大将がインドネシア大統領選挙が勝利を確実のものとした。

国営報道機関アンタラ、CNN系列局CNNインドネシア、ロイター通信が報じた非公式結果によると、プラヴウォ・スビアント(72歳)が開票率約85%の段階で、大統領選挙決選投票を回避するには十分な得票率60%近くを獲得したということだ。初期の集計は非政府シンクタンクによって行われた。水曜日の午後早くに全国の投票所が閉鎖された。

プラヴウォ候補は、水曜日の投開票を前にジャカルタの支持者に対し、ジョコ・ウィドド大統領の長男であるギブラン・ラカブミン・ラカ候補とともに「インドネシア国民全員のため(for all the people of Indonesia)」に政治を行うと語った。

プラヴウォは次のように宣言した。「感謝はしているが、私たちは傲慢になってはいけないし、有頂天になってはいけない。今回の勝利は全てのインドネシア国民のための勝利でなければならない。部族、民族、人種、宗教、社会的背景に関係なく、インドネシアの全ての人々を育て、守り、守るために、私はギブランとともに先頭に立つ」。

非公式の開票速報によると、人気の高いアニエス・ベスワダン前知事は22%弱の得票率で2位となり、ライヴァルのガンジャール・プラノウォが3位となった。

ロイター通信が引用したアニエス陣営、ガンジャール陣営のスポークスマンによれば、両陣営とも初期の結果に異議を唱えており、勝利者が確定したとするには時期尚早だという。

CNNは、早期の投票結果の数字を独自に検証することはできないが、信頼できるシンクタンクによる集計は、インドネシアの過去の選挙で正確であることが証明されている。

水曜日の演説の中で、プラヴウォは支持者たちに対し、インドネシア選挙管理委員会が正式な投票結果を発表するのを「静かに待つ(calmly wait)」よう呼び掛けた。選挙管理委員会は3月に正式な結果を発表する予定だ。

2019年の前回選挙後、敗れたプラヴウォが結果に異議を唱え、激しい暴動が発生した。

インドネシアは世界で4番目に人口の多い国であり、世界最大のイスラム教徒人口を抱えている。世界最大規模の1日限りの選挙とされる今回の選挙では、水曜日に38の州の2億人以上が投票する資格を持っている。

しかし、世界最大の群島国家であるインドネシアで投開票を実施するのは大変な労力が必要である。国土はアメリカよりも広く、3つの時間帯にまたがっている。1万8000以上の島と小島で構成され、そのうち6000に人が住み、150以上の言語が話されている。

専門家たちは、今年の投票では若い有権者が鍵を握っており、総選挙管理委員会によると、登録有権者の約半数が40歳未満であると指摘している。

プラヴウォの後にステージに登場したギブランは、今回の選挙における若者有権者の影響力を認め、支持者たちに「将来、私たちは若者を巻き込んでいくことになる」と語った。

●プラヴウォの大統領就任は何を意味するか?(What will a Prabowo presidency mean?

プラヴウォはエリート政治家一族の出身だが、彼の過去、特に義父でもあった故独裁者スハルトの時代については議論を呼んでいる。軍人としての過去における人権侵害の告発は、彼の政治家としてのキャリアを通してずっとつきまとってきた。

プラヴウォの父親スミトロ・ジョジョハディクスモは元財務・貿易大臣で、祖父マルゴノはネガラ・インドネシア銀行を設立し、大統領諮問委員会委員長を務めいた。

プラヴウォは1970年にインドネシア陸軍士官学校に入学し、特殊部隊の司令官となり、インドネシアが24年間東ティモールを軍事占領した際、独立派に対する作戦を指揮した。

プラヴウォはまた、スハルト独裁政権の最後の数か月間、民主化活動家たちの誘拐を命令したと非難されている。

その後、プラヴウォはインドネシアの活気ある民主政体を支持する人物へと変身し、最近では親しみやすいが頼りになるおじいさんのような人物というイメージを築き上げ、過去10年間にわたり政界の主要人物として存在感を増してきた。

プラヴウォは2014年と2019年に大統領選に出馬したが、ジョコウィの名で親しまれているジョコ・ウィドド現大統領に2度とも敗れた。

かつてのライヴァル2人は、ジョコウィがプラボウォを国防相として入閣させたことで対立は解消した。

今年、プラヴウォはジョコウィの長男であるギブラン・ラカブミン・ラカを副大統領候補として指名して、コンビを組んだが、この決定は議論を巻き起こした。ジョコウィが大統領職を退く準備を進める中、妨害の疑いでジョコウィに対する激しい批判を巻き起こした。

インターナショナルIDEAアジア太平洋ディレクターであるリーナ・リッキラ・タマンは、「大統領が選挙で中立を保つことは広く予想されている。プラヴウォの勝利は『ジョコウィの政策の継続』と見なされるだろう」と述べた。

プラヴウォの人気が2019年の選挙以降上昇しているのは、ジョコウィの暗黙の支持によるところが大きいと専門家たちは指摘している。

ジョコウィは貧しい家族の出身で、インドネシア政治の伝統的な裕福なエリートからの脱却を掲げて選挙戦を戦ったジョコウィは、目覚ましい経済成長を主導し、人気を博して政権を去ることになる。しかし、ジョコウィが在任中、インドネシアは人権問題や汚職指数で後退した。プラヴウォはジョコウィの遺産を受け継ぐ後継者という位置づけが強い。

ヴェリスク・メープルクロフト社の東南アジア担当上級アナリストであるローラ・シュワルツは次のように述べている。「プラヴウォ大統領の就任に関する懸念は、彼が以前から大統領の任期制限撤廃、大統領直接選挙の廃止、人権保護の縮小を主張していることから、非自由主義的な行動が増加する可能性が高まると考えられることだ。このような動きは、インドネシアの評判を落とし、外国投資を誘致する能力を低下させるだろう」。

ワシントンDCのアメリカ合衆国国防大学で東南アジアの政治と安全保障問題を研究するザカリー・アブザ教授は、CNNの取材に対し、「プラヴウォは自分自身を再創造し、過去を白紙に戻そうと懸命に努力してきた」と語った。

アブザは、元軍人をトップに据えることは、権威主義的支配の暗黒時代への回帰を意味すると続けて指摘した。アブザは、「ジョコウィは多くの陸軍大将に囲まれ、コロナウィルスのパンデミックのような多くの問題を『安全化(securitize)』する傾向があったが、プラヴウォでは事態が悪化する可能性がある」と述べた。

アブザは、「プラヴウォは、退役軍人たちを顧問や閣僚の地位に就けるだろうと私は考えている。しかし、より大きな懸念は、彼が軍の政治への復帰を加速させることだ」と述べている。

ジャカルタの有権者たちはCNNの取材に対し、今回の選挙の結果は「王朝政治(dynasty politics)」の復活を示唆するものになるだろうと述べた。ヨハネス・グレゴリウス・トゥカン氏(41歳)は、プラヴウォとギブランの選挙運動は、「ニュアンスの違う縁故主義と腐敗(nuanced nepotism and corruption)」を示していると語った。もう1人の有権者であるクンコロ・リコニは「権威主義的支配への回帰(a return to authoritarian rule)」を恐れていると述べた。

リコニは「1998年に血と涙を流して戦い取った民主政治体制を失いたくない」と述べた。

CNNのアレックス・スタンボー、ティール・レバンが今回の記事の作成に貢献した。ジャーナリストのアウグスティヌス・ベオがジャカルタからの報道に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。BRICS(ブリックス)を中心とする非西洋諸国(the Rest、ザ・レスト)の台頭と重要性について書きました。是非手に取ってお読みください。

 世界規模で電気自動車の需要が高まる中(電気自動車の有効性については疑問がある)、電気自動車の肝となる電池(バッテリー)に使われるニッケルでは、世界最大の埋蔵量(約23%)を占め、鉱石生産量の約半分(約48%)を占めるのがインドネシアだ。

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 インドネシア成否はニッケルの重要性を理解しており、精製していないニッケルの輸出を禁じている。国内に精製工場を建設し、精製済みのニッケルの輸出が必要となっている。世界の電気自動車競争において、電池(バッテリー)が重要だ。インドネシアは電池を製造するところまではいっていないが、精製する段階までは来ている。そのために、電気自動車分野で世界をけん引する中国企業がインドネシアに投資を行っている。インドネシア国内への産業投資の約3分の1は金属部門に流れているが、その多くはニッケル分野だ。

インドネシア政府はこれから電池製造に進もうとしているが、まずはニッケル精製を行っている。これは、2000年代のユドヨノ政権から始まり、2010年代のジョコ政権と続き、今年の選挙で当選したプラヴウォ政権でもこの動きは続く。

 日本ではパナソニックが電気自動車用の電池(バッテリー)を製造している。日本にとって重要なのは、テスラだけではなく、中国電気自動車企業BYDにも電気自動車用の電池(バッテリー)を供給することである。そのために、インドネシアとの友好関係をしっかりと固めることである。日本からも積極的に投資を行うべきだ。それこそは日本の経済だけではなく、安全保障にとっても重要である。

(貼り付けはじめ)

インドネシアはニッケル産業に大きな野望を抱いている(Indonesia Has Grand Ambitions for Its Nickel Industry

-同国が今週投票に向かう中、ジャカルタの大統領府の将来により焦点が当てられることになる。

クリスティナ・ルー筆

2024年2月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/13/indonesia-election-nickel-economy-energy-jokowi-prabawo/

世界中でエネルギー転換の機運が高まるずっと以前から、ニッケル大国(powerhouse)インドネシアは、豊富な鉱物資源を活用して自国の経済を変革し、国際市場においてより大きな影響力を行使することを夢見てきた。

化石燃料からの世界規模での脱却と、グリーン・テクノロジーの原動力となる重要鉱物の需要の高まりが、ジャカルタの野心を加速させている。ニッケルは電気自動車用バッテリーの主要部品に使用される。インドネシアは世界最大級のニッケル埋蔵量を誇り、2022年には世界供給量の半分を採掘したインドネシアほど、世界のニッケル分野で大きな権益を主張できる国はない。

現在、水曜日には1億人以上の有権者たちが10年ぶりのインドネシアの新しい大統領を選出するために投票所に向かうことが予想されており、ジャカルタの大統領府の将来により焦点が当てられることになる。現在のジョコ・ウィドド大統領(通称ジョコウィ)は、許容される最長任期である10年間権力を握った後、2024年10月に退任する予定であり、彼の後継者が国の急成長するセクターを具体的にどのように形成し続けるのかについて疑問が生じている。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社の政策アナリストであるアレックス・ベッカーは、「インドネシアが、世界の他の地域でより価値の高い原料を生産することを望んでいる訳ではないことは明らかだ。本格的な電池とまではいかなくても、少なくとも精製ニッケルを生産することで、自分たちの世界での価値を高めたいのだろう」と述べた。

こうした野望は、ジョコ政権下で具体化され、ジョコウィは世界的な投資を呼び込み、インドネシアを地域の電池製造大国に作り変える努力を強め、一時はOPECと同様の、ニッケルカルテルの設立を提案したこともあった。より付加価値の高い製造能力(川下化[downstreaming]として知られるプロセス)を構築することに熱心なジョコウィは、2020年に未加工ニッケルの輸出を禁止した。この動きは、主に中国企業など、関心を持つ投資家たちに対して、代わりにインドネシアで製錬所を開発し、国内で鉱物を加工するよう促した。ジョコウィは大統領在任中、ジャカルタはボーキサイト、パーム油、石炭の輸出を様々な時点で制限してきた。5月には銅鉱石の輸出の禁止が実効化される予定だ。

ジョコウィの後継者をめぐる競争は始まっている。 3人の候補者が大統領の地位を争っている。その3人は、残忍な独裁者スハルトの親族であり、人権侵害を行ったとして告発されている現国防大臣プラヴウォ・スビアント、元中部ジャワ知事ガンジャール・プラノウォ、元ジャカルタ知事アニエス・バスウェダンだ。

プラヴウォは、ジョコウィの実の息子であるギブラン・ラカブミン・ラカを副大統領候補としているが、最近の世論調査では、水曜日に50%以上の票を獲得すると予測されており、現在のところ最有力視されている。どの候補者も50%以上の得票を得られなかった場合、選挙は6月の決選投票に持ち越される。2人はジョコウィの政策の継続を誓い、経済的繁栄への道を歓迎しており、ギブランはライヴァルたちを「反ニッケル(anti-nickel)」だと非難している。

プラヴウォは投票を前の声明で次のように宣言した。「この粘り強さこそ、私たちが維持しなければならないものだ。私たちは電気自動車のバッテリーや電気自動車を輸出した方がいいのであって、他国に加工してもらうために生のニッケルを輸出した方がいいということはない」。

オーストラリア国立大学インドネシア研究所所長で『インドネシアの資源ナショナリズム』の著者イヴ・ウォーバートンは、「彼らの主張は、私たちは鉱物の下流部門で多くのことを達成しており、プラヴウォ・ギブラン政権の任期中も同じ道を歩み続けるだろう、ということだ。この特定の政策介入に関して、他の候補者たちがプラヴウォやギブランと差別化を図るのは困難なことだった。なぜなら、政府および政府の数字によれば、それは大成功だったからである」と述べた。

例えば、2014年にジョコウィ政権が誕生した当時、インドネシアのフェロニッケル(ニッケルの加工品)の輸出額は8300万ドルだったが、2022年には58億ドルにまで膨れ上がった。輸出だけでなく、インドネシアでは現在、外国直接投資(foreign direct investment)が記録的な水準に達しており、その約3分の1が同国の金属・鉱業部門に注ぎ込まれている。

インドネシアのニッケル産業育成への取り組みは、ジョコウィの在任期間よりも10年以上前に遡る。当時のスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は2009年、企業に国内の鉱山労働者たちを雇用するよう命じる法律を導入し、全ての鉱山への取り組みは国益の増進に焦点を当てるべきだと強調した。外国からの投資を誘致するために、ユドヨノ大統領は2014年にインドネシア初のニッケル未加工品の輸出禁止も課したが、その制限は2017年に緩和された。

ウォーバートンは、「インドネシアのニッケル部門に対する野望は、ユドヨノ時代と2009年の鉱山法にまでさかのぼる。それ以来、インドネシアは鉱物からより多くの価値を引き出すべきだと法律で定められている」と述べた。

しかし、その後数年間、この業界は多くの課題に直面し、特に製錬所の爆発やその他の死亡事故の報告を受けて業界の汚染、環境への被害、安全上の問題に対する懸念が高まっている。最も致命的な事件の1つとして、12月に中国のニッケル工場で爆発があり、21人が死亡、数十人が負傷した。

インドネシアの政治リスク分析コンサルタント会社リフォルマシ・インフォメーション・サーヴィス代表ケヴィン・オルークは、「ニッケル川下政策の本当の問題は、セーフガードが全くないように見えることだ」と言う。

ニッケル部門の将来には、他の課題も立ちはだかる。中国の大手投資家たちやBYDを含むEVメーカーが数十億ドルの投資をインドネシアに集めている一方で、ジャカルタのアプローチは他の有望なパートナーたちやアメリカを含む国際市場からインドネシアを遠ざける危険性がある。

ジャカルタはワシントンとともに、インドネシア企業がインフレ抑制法を通じて多額の税額控除を利用できる限定的重要鉱物貿易協定の締結を推進していた。しかし、この入札はワシントンで激しい反発を引き起こし、昨年10月には9名のアメリカ連邦上院議員がそのような協定に反対する書簡を書いた。

アメリカ連邦上院議員たちは書簡の中で、「私たちは、インドネシアの労働権、環境保護、安全性、人権に関する基準に懸念を抱いている」と書いている。また、中国企業のインドネシアへの投資やジャカルタのニッケル鉱石輸出禁止に対する懸念も書簡の中で挙げられていた。結局、貿易協定は実現しなかった。

エネルギー転換の需要が新型EVバッテリーの開発を後押しする中、専門家たちによると、技術状況の変化もジャカルタの将来計画を複雑にする可能性があるという。ニッケルは、現在普及している強力なニッケル・マンガン・コバルト(NMC)電池の重要な構成要素だが、企業の一部はニッケルを使用しない新型電池に目を向けている。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローであるカレン・ヘンドリックスは昨年11月、「インドネシアのニッケル埋蔵量と産業への野心は、電池化学の変化によって価値が低下する恐れがある。NMCバッテリーの優位性はつかの間かもしれない」と書いている。

その一例がテスラだ。ジャカルタは数年にわたりテスラからの投資誘致に努めてきたが、テスラはインドネシアへの投資に難色を示し、代わりにインドネシアの豊富な鉱物資源を必要としないバッテリーを採用している。

オーストラリア国立大学のウォーバートンは次のように述べている。「その多くは、技術の進化の早さにかかっている。当初の計画では、ニッケルがこの産業を本格的に立ち上げるために必要な主成分であるという考えに長い間基づいていた。市場は、それが転換する可能性を示唆しているようだ」。

※クリスティナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌特派員。ツイッターアカウント:@christinafei
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。西側諸国が600年間も握り続けた世界覇権が西側以外の国々に移動しつつある現在を詳しく分析しています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 西側先進諸国の政治家たちの支持率が軒並み20%台、30%台であり、40%もあれば立派なものという状況になっている。不支持率は50%、60%を超えており、単純に言えば、有権者の過半数が支持していないということになる。これに対して、アジア諸国の、民主的な選挙で選ばれた国々の指導者たちの支持率は高いということを西側のメディアも注目している。
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 その理由は極めて単純だ。新興諸国は、国力が伸び、経済状況が改善される中で、国民にどのように還元するか、再分配するかということに集中すれば済む。日本でも高度経済成長期は、国土の発展と国民生活の向上のための再分配に集中していればよかった。公害問題などもあったが、基本的には伸びゆく日本ということで、ある程度の大盤振る舞いができた。しかし、高度経済成長が終わり、低成長、ゼロ成長の時代には大盤振る舞いどころではなくなった。また、少子高齢化など社会の構造を根本から揺さぶる問題もあり、政治家たちにしてもどう対処したらよいのか、アイディアもないという状況だ。先進諸国はどこもそうだ。結果として、国民には不満が募り、政治家たちは非難され、支持率は低下する。
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フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領(フィリピン)
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ナレンドラ・モディ首相(インド)

 しかし、逆に言えば、国民のニーズをつかみ、国民生活の向上ということをやれば、世界共通で支持率が上がるということになる。日本を含む先進諸国ではそれができていないということになる。

 私が注目してきたインドネシアの大統領選挙は、大統領候補プラボウォ・スビアントと副大統領候補ギブラン・ラカブミン・ラカ(ジョコ・ウィドド大統領の長男)のコンビが58%の得票率で、三つ巴の選挙戦を制した。ジョコ・ウィドド大統領が実質的に支持してきたことで、このコンビの大統領選挙での勝利は確実視されていたが、三つ巴の戦いということで、1回目の投票で過半数を得られないので、2回目の決選投票が行われると予想されていた。しかし、結果は1回目の投票で過半数を得る圧勝だった。それだけ、ジョコ大統領の人気が高いということになる。プラボウォは過去にジョコ大統領と選挙で争った間柄であったが、ジョコ大統領の路線を引き継ぐということで、彼の後継者となった。プラヴウォの次は、ジョコ大統領の長男ギブランになる可能性が高い。これから「院政」を敷くであろうジョコ大統領に鍛えられていくだろう。
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プラヴウォ(左)とギブラン(右)

 先進諸国のリーダーと言うのは大変なことであり、支持率が上がらないのは仕方がないことだろう。しかし、国民生活の改善、向上を行えば、支持率は上がる。そのような当たり前のことができないほどに先進諸国の置かれている状況は悪化しているということも言えるだろう。

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アジアの民主的に選ばれた指導者たちはどうしてこうも人気なのか?(Why Are Asia’s Democratic Leaders So Popular?

-西側諸国の政治家たちに比べて、アジア諸国の政治家たちは正しいことをしている。

ジェイムズ・クラブトゥリー筆

2024年2月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/22/asia-democracy-politics-election-modi-prabowo-marcos-india-indonesia-philippines/

プラヴウォ・スビアントが三つ巴の厳しい選挙戦の末、インドネシア大統領選挙で圧勝した。2024年2月14日の選挙戦に関する各種世論調査の結果では、プラヴウォの勝利が確実視されていたが、専門家の多くは、1回目の投票で過半数を獲得する候補者が現れず、2回目の決選投票になるだろうと予測していた。しかし、プラヴウォ国防相は58%の得票率で記録し、予想外の大勝利を収めた。

プラヴウォの勝利には多くの原因が存在した。しかし結果が示しているのは、「アジアの新興市場民主政体国家の多くで政治指導者が驚くべき人気を得ている」という、より広範な流れを示している。豊かな西側諸国の政府首脳たちは、ほぼ例外なく、国民から非難され、多くの議会では、衰退しつつある諸政党が、連立与党を形成することさえ難しくなっている。

対照的にインドネシアでは、80%の支持率を記録して、任期を終えたジョコ・ウィドド大統領(通称ジョコウィ)の後任として、プラヴウォが大統領に就任する。フィリピンでは、フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領が、前任のロドリゴ・ドゥテルテ大統領と同様に好感を持たれている。そして、4月に始まるインドの選挙では、ナレンドラ・モディ首相が3回連続の圧勝を収めることがほぼ確実視されている。

このように人気の高い指導者たちにポピュリストというレッテルを貼りたいのはやまやまだ。そして、ドゥテルテのようにその言葉に当てはまる人物もいる。パキスタンの元首相イムラン・カーンもそうだ。彼の激しい反体制的なレトリックは、パキスタンの最近の世論調査で彼の政党に関連する無党派層を予想外の成功に導いた。しかし、多くの政治家たちはそうではない。プラヴウォの選挙運動では、多くの仕掛けが施されたが、一般的にポピュリストの選挙運動で見られるような、エリートへの攻撃はほとんどなかった。ジョコウィは、開発、インフラ、社会サービスに重点を置き、クリーンな統治を評価され、インドネシアの有権者から賞賛されている。彼はまた慎重な政治家でもある。

それぞれの指導者が、それぞれの国が置かれている状況の産物であることも明らかだ。プラヴウォの勝利の規模は、ジョコウィ自身の支持によるところもあるが、それはプラヴウォがジョコウィの息子を伴走者に選んだというエリートの策略に従ったものだ。フィリピンでは、有権者はマルコスの冷静な統治スタイルに好感を抱いている。インドでは、モディの人気はその宗教的ナショナリストとしての魅力に起因しており、この要素がジョコウィと世界の主要民主政体国家で、最も人気のある指導者の座を争う一因となっている。

とは言うものの、アジアの民主的な選挙で選ばれた政治家たちが、西側諸国の政治家をはるかに凌ぐ支持率を維持する理由を説明するのに役立つ3つの要素がある。ジョー・バイデン米大統領は先日のスーパーボウルでTikTokデビューを果たした。しかし、アジアの政治家たちは長い間、このようなプラットフォームをキャンペーンの目玉としてきた。元陸軍大将のプラヴウォは、TikTokを利用して軍人としての硬派なイメージを和らげ、漫画のような童顔のおじいさんに扮したクリップを流した。モディの再選に向けた選挙運動は既に始まっており、これもまた非常に洗練されたデジタルキャンペーンを展開している。こうしたことはすべて、人口が若い国々では重要である。インドネシアの2億人の有権者の約半数は40歳以下であり、インドの有権者たちは更に若い。

経済運営に対する特徴的なアプローチは、1つ目の要素と関連する、2つ目の要素となる。多くの場合、これは政治家が無料で物品を配ることに関係している。プラヴウォの選挙運動では、学生に無料の給食と牛乳を提供すると公約した。2022年に勝利したマルコスの選挙運動は、米の価格上限設定の公約によって助けられた。モディの選挙での支持は、調理用コンロの配布やトイレの建設といった政策によって強化されてきた。

インド政府の最高経済顧問を務めたアルビンド・スブラマニアンは、これを「新しい福祉主義(new welfarism)」の一形態と表現している。政治家が、民間セクターが提供するはずの財やサービスを提供したり、補助金を出したりする。この戦略は、経済運営が混乱している場合には有権者の支持を得にくい。しかし、力強い成長と汚職がほとんどないと思われる指導者が組み合わされれば、有権者に広くアピールするレシピとなる。

3つ目の、そして最後の問題は安全保障である。西側諸国と同様、アジアの有権者も、地政学的リスクの高まりの中で、自分たちを取り巻く世界がより危険になりつつあることを感じている。その結果、有権者は国際的な信頼性を示す指導者に投票するようになっているようだ。ここでのアピールは、伝統的な「ストロングマン(strongman、暴力使用もいとわない実力者)」指導者ではなく、世界の舞台で自国の安全を守ることを正しく主張できる指導者である。フィリピンでは、南シナ海での一連の軍事衝突の後、中国に立ち向かうマルコスの姿勢に有権者は好意的に反応した。モディは昨年のG20サミットのホスト国としての役割を巧みに利用し、世界的な政治家としてのイメージを強調した。

特に経済的な後退に直面した場合、このような高騰した支持率がいつまでも維持できるという訳ではない。例えば、マルコスの支持率は2023年後半、インフレの高騰により多少低下したが、ある世論調査によれば、80%という高い支持率から、65%にまで低下した。人気のある政治家はアジアだけの現象ではない。メキシコでは、左派の現職大統領アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールが、6年の任期満了に近づいても常に60%以上の支持率を維持している。彼の後継者であるクラウディア・シャインバウムは、6月2日に行われる国政選挙を前に、対立候補を25ポイントの大差をつけてリードしている。

アジアの指導者の多くが人気を集めていることを認めることは、アジア諸国の民主政体の状態についての懸念を軽視することでもない。スウェーデンのイェーテボリ大学のVデム研究所の報告書によれば、インド、インドネシア、フィリピンはいずれも2022年までの10年間で独裁色を強めた。プラヴウォは軍事指導者として疑わしい記録を持っているため、人権侵害の疑いでアメリカへの入国を禁止されており、ジョコウィの息子を副大統領候補に据えるという裏取引と同様に、インドネシアの民主政体の軌道について多くの懸念を起こさせている。モディのヒンドゥー教ナショナリズム政策は、2億人のイスラム教徒人口をはじめとする、インドの少数民族から警戒の目を向けられている。

しかし、アジアの民主的な選挙で選ばれた政治家の人気は、少なくとも、世界の民主政体の健全性について、よりポジティヴなシグナルを示している。西側諸国では、いわゆる民主政治体制の後退に関する報道は、ポピュリズム、ナショナリズム、無謀な指導者によって空洞化した独裁といった悲惨な構図を描いている。しかし、現実は必ずしもそれほど厳しいものではない。プラヴウォが勝利したからといって、インドネシアの民主政治体制が崩壊する訳ではない。マニラでマルコス王朝が復活したからといって、一族がかつて率いていた独裁体制に戻るわけではない。

もちろん、アジアの民主的な選挙で選ばれた指導者たちが完璧であるとは言えない。しかし、有権者は彼らのパフォーマンスに満足している。そして、民主政体が本当に世界中で維持されるのであれば、民主的に選ばれた、人気のある政治家たちを政府の指導的な立場に据えることは、良いスタートになるだろう

※ジェイムズ・クラブトゥリー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。アジア国際戦略研究所元上級部長。著書に『億万長者による支配:インドの新しい黄金時代を通じての旅路(The Billionaire Raj: A Journey Through India’s New Gilded Age)』がある。ツイッターアカウント:@jamescrabtree

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。世界構造の大きな転換について詳述しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年1月15日に「名目GDPで日本がドイツに抜かれて世界4位に転落」という報道がなされて話題になった。1968年に当時の西ドイツを抜いて世界第2位に躍進したが、2010年に中国に抜かれて第3位となり、今回ドイツに抜かれて4位に転落となった。このことは昨年から既に言われていたことだ。何故なら、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)にこのことを書いたからだ。「日本は経済成長がない国であり、ドイツは高々2%の経済成長率なのに日本を抜く」ということを書いた。そのことを今更声高に叫ぶ必要もない。5位のイギリスに抜かれることはないだろうが、現在6位のインドにも抜かれて、5位に転落するのはここ10年から20年以内の出来事となるだろう。日本は残念なことだが衰退の道を着実に歩んでいる。
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●「日本のGDP4位転落、ほぼ確実に ドイツに抜かれる見通し」

朝日新聞 1/15() 18:13配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/3477c4492a7de21be7d26064cb879c2c9606c716

 2023年の名目国内総生産(GDP)で日本がドイツに抜かれ、世界4位に転落することがほぼ確実になった。米ドル換算で比べるため、日本のGDPが円安で目減りする一方、ドイツは大幅な物価高でかさ上げされることが要因だ。ただ、長期的にドイツの経済成長率が日本を上回ってきた積み重ねの結果という面もある。

 名目GDPはその国が生み出すモノやサービスなどの付加価値の総額。経済規模を比べる時に使う代表的な指標で、1位は米国、2位は中国だ。

 ドイツが15日発表した23年の名目GDPは、前年比63%増の41211億ユーロ。日本銀行が公表している同年の平均為替レートでドル換算すると、約45千億ドルとなる。

 大幅に伸びた要因は、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰などで、日本以上に激しい物価上昇に見舞われたことだ。物価の影響を除いた実質成長率は03%減と、3年ぶりのマイナス成長になった。

 一方、日本の23年の名目GDPは来月発表されるが、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算では591兆円(約42千億ドル)とドイツを下回る。円ベースでは前年比で57%増えるが、円安が進んだことでドル換算では12%減ると予測されている。

 日本はすでに19月期の実績で、ドイツに約2千億ドル(約28兆円)の差をつけられている。追いつくには1012月期に約190兆円を積み上げる必要があるが、前年同期が約147兆円だったことを踏まえると、実現はほぼ不可能だ。

 長期的にみるとドイツの成長率は日本を上回っており、経済規模の差は縮まってきていた。国際通貨基金(IMF)のデータから0022年の実質成長率を単純平均すると、ドイツの12%に対し、日本は07%にとどまる。

 各国の経済規模をめぐっては、日本は1968年に西ドイツ(当時)を国民総生産(GNP)で上回り、世界2位の経済大国となった。だが2010年にGDPで中国に抜かれて3位になっていた。(寺西和男=ダボス、米谷陽一)

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 日本はこれから貧しくなっていく。二極化が進むが、外国から見れば、いくら日本で勝ち組だ何だと威張ってみても、「負け組の船に乗るかわいそうな人たち」というひとくくりの評価だ。私の母方の曽祖父は戦前、アメリカのロサンゼルスに出稼ぎに行って、仕送りをして、子供たちを育て学校に行かせた。ガーデナーといわれる庭師、肉体労働をしていたそうだ。ハリウッドの映画スターの家で働きぶりが良いということで、お菓子をもらったり、子供たちの洋服のおさがりをもらったりして、それを日本に送ってもらって、それを皆で食べた、お古とは言えきれいな洋服を着て目立ってしまったという話を祖母から聞かされた。

そういうことがまた起きるだろう。しかし、今の日本人に何ができるだろう。外国語(英語や中国語など)ができなければ、デスクワークなどはできない。それなら肉体労働はどうだろうか。今の日本人に肉体労働ができるだろうか。はなはだ心もとない。そうなれば、使えない人間ということになる。元先進国の国民で体が動かないというのは、江戸幕府瓦解後の武士階級みたいなものだ。

 各国の経済力や経済成長を見てみると、やはり、非西側諸国(the Rest、ザ・レスト)の勢いが凄まじい。その中核であるBRICSのさらに中核BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)は、名目GDPで見てみると世界トップ20位以内に入っている。更に、ジョコ・ウィドド大統領の下で進境著しいインドネシアも躍進している。

 名目GDP以外に、購買力平価(purchase power parity)によるGDPという指標もある。購買力平価とは「一つの物品の価格は一つ(一物一価)」という考えから、例えば、ハンバーガーがアメリカでは1ドルで買えて、日本では120円で買えるとすると、1ドル=120円という為替価値が妥当だとする考えだ。購買力平価は短期的な為替ではなく、長期的な動きを示すということになる。そして、この購買力平価によるGDPの評価ということもなされている。こちらの方が実態に近いという説もあるが、名目GDPの方がまだよく使われる指標になっている。購買力平価GDPで見てみると、名目GDPよりもより驚くべき順位が出る。中国がアメリカを抜いて世界第1位であること、インドが既に世界第3位で、日本は4位であること、7位にインドネシアが入っていること、トップ10にBRICが全ては言っていることなど、下記の順位を見て驚く人も多いだろう。これがある側面で見た世界の現実である。
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 ここで重要なのは、インドネシアである。インドネシアは、世界第4位の2億7000万の人口を誇り、名目GDPは世界16位、購買力平価GDPは世界7位となっている。名目GDPが1兆ドル(約143兆円)を突破し、「1兆ドルクラブ」入りを果たした。インドネシア国民の平均年齢は約31歳(日本は約48歳)、これから消費者、生産者として活発に活動していく人々が多く存在する。これを「人口ボーナス」と呼ぶ。一方日本は「老人ホーム」となっていく。日本はこれから旺盛な経済活動を行う、西側以外の国々に抜かされていくだろう。ドイツに抜かされたくらいで悲観的になっていては身が持たない、これからこのようなニューズに何度も何度も接することになるのだから。
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(終わり)


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