古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:インフレ

 古村治彦です。

 アメリカでは一般国民、中流層の生活が厳しいということは日本でも報道されている。物価高騰が生活を直撃し、都市部では住宅費も高騰している。家族で暮らすとなると、数千ドル(日本円で100万円ほど)になる場合もある。私がアメリカにいた20年ほど前、ロサンゼルスのワンルーム(アメリカではstudio、ストゥディオ)は駐車場付きで700ドルほどであった。日本円が130円くらいで約9万円であるが、日本のワンルームとは違い、実質的には1LDKほどであった。先ほど、インターネットで私が住んでいたアパートメントを調べてみたところ、ワンルームが1950ドルだった。日本円が160円とすると、約31万円である。30万円というのは留学当時の私の生活費よりもはるかに高い。学費高騰や物価高騰も考えると、留学中の方々や留学を考えている方々は大変だろうと思う。もう気軽に行けるような状況ではない。

 ワンルームで30万円となれば、家族でベッドルームが2つあってなどと考えると100万円ほどになるのは当然だ。もちろん、これは大都市部の話ではあるが、日本円で2000万円以上の収入がなければ、100万円の家賃を払うことは難しい。ロサンゼルスの平均所得は7万4000ドルほどであるから、日本円で1000万円は超えるが、生活は大変だ。

 カリフォルニア州全体でこうだという訳ではないが、生活費と税金の高さに嫌気がさして、他州に移住する人たちも多くいる。下記論考では転入転出の差し引きで、転出の方が190万人も多かったということだ。テキサス州がその行く先に選ばれることも多い。テキサス州は税金が安く、土地も広く、住宅費も比較的抑えられるということから、カリフォルニア州のシリコンヴァレーのIT企業も移転、もしくは移転を検討ということもあり、産業と雇用も含めて流出しているということもある。

 象徴的なのは、下記論考にある通り、映画産業やエンターテインメント産業の衰退だ。このことは全く分かっていなかった。ロサンゼルスのハリウッドと言えば、アメリカ映画の代名詞である。ハリウッドサインは日本人誰もが思い浮かべることができる。映画産業も衰退しているそうだ。それはもちろん、映像技術の進歩やIT技術の活用によって、従業員が少なくてもやっていけるということもあるだろうし、作品の傾向も変化しているということもあるだろう。

 これらについて民主党がカリフォルニア州の知事や州議会を抑えていることが問題であるかのように非難するが、もちろんそうした要因はあるだろうが、アメリカの長期インフレ、米国債の金利上昇といったマクロの問題が大きい。アメリカも日本もそうだが、こちらを押さえるとあっちが出てくるというようなもぐら叩きゲームのような状況になっている。国力低下がある限り、厳しい状況が続いていくことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

カリフォルニア州は統治の失敗を示す好例となっている(California Is a Case Study in Failed Governance)

-有権者たちはそのことを認識し始めている。

ファリード・ザカリア筆

2026年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/12/california-politics-governor-election-housing-homelessness-technology-hollywood-silicon-valley-voters/

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ロサンゼルスのダウンタウンのテント(6月11日)

ドナルド・トランプ米大統領や共和党が多くの世論調査で苦戦を強いられる中、カリフォルニア州での物語は全く違っている。知事選挙では、共和党のスティーヴ・ヒルトンが多額の選挙資金を投じた多くの民主党候補を抑え、1月の本選挙で民主党のゼイヴィア・ベセラと対決することになった。圧倒的に民主党支持者が多いロサンゼルス市では、元リアリティ番組出演者で無所属として出馬した共和党員のスペンサー・プラットが、市長選挙の本選挙に進出する可能性さえ見せ、最終的に3位につけた。

カリフォルニア州の民主党関係者は、こうした動きを単なる「副次的なこと」として片付けてしまいたい誘惑に駆られるかもしれない。しかし、そこにある不満は紛れもない現実であり、もっともな理由に基づいている。カリフォルニア州は、世界で最も活気ある地域の1つだ。シリコンヴァレーやハリウッド、世界有数の大学、極めて優れた農業、港湾、才能ある人材、そして豊かな自然を有している。しかし、カリフォルニア州は、豊かな社会であっても、一般市民が必要とするものを生み出す力は低下する一方で、支出だけが増大し続けるという事態を示す典型的な事例となっている。

今日のカリフォルニア州が抱えるパラドックス(paradox1)は、経済的な成功を収めている一方で、統治の仕組みとしては破綻したモデル(a failing model of governance)に縛られているという点にある。

財政記録について考えてみよう。2000年以降、カリフォルニア州の人口は約15%増加した。しかし、州の一般歳出は200%以上も増え、780億ドルから約2480億ドルに増大した。一人当たりの一般歳出も、約2300ドルから約6300ドルへと上昇した。ある統計によれば、州職員の数も50%以上増加した。過去25年間で、カリフォルニア州の行政や住民が受ける恩恵が200%向上したと考える人が果たしているだろうか?

住宅問題こそが、最大の失敗と言える。カリフォルニア州は長らく「思いやり(compassion)」を標榜してきたが、実際には排除(exclusion)の仕組みを構築してきた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の論説でアリシア・フィンリーが指摘しているように、人口約1300万人を抱えるロサンゼルス都市圏において、2021年から2024年の間に発行された新規住宅の建設許可はわずか11万8000件にとどまった。一方、人口がその約半分の規模であるアトランタでは、16万3000件の許可が発行されている。

カリフォルニア州では、住宅建設のハードルが高く、手続きに時間がかかり、費用もかさむ状況が続いている。その結果は予想されるとおりだ。住宅価格は高騰し、家賃は上昇している。労働者の通勤距離は延び、ホームレスの数は増え、若者たちは州外へと流出している。

そして、人々は州を去っている。雇用・経済センターによると、過去7年間で、カリフォルニア州は国内からの転出入の差し引きで190万人の人口を失った。何世代にもわたり、人々は未来を求めてカリフォルニアに移り住んできた。しかし今や、多くの中間層の人々が、その未来を築く経済的余裕がないために州を去っている。

教育の状況に目を向けてみよう。長年にわたり、カリフォルニア州の学校には資金不足(underfunded)というもっともらしい言い訳があった。しかし、幼稚園から高校までの教育総支出は2010年代初頭から倍増し、2023年時点での生徒一人当たりの支出額は全米平均を大きく上回っている。それにもかかわらず、教育成果は依然として全米で下位3分の1に留まっている。

ホームレス問題もまた、より深刻な形で同様の現実を物語っている。2024年の監査により、カリフォルニア州がこの問題に5年間で240億ドルを費やしていたことが明らかになった。しかし、2024年、カリフォルニア州のホームレス人口は過去最多の約20万人に達した。2024年から2025年にかけてホームレス人口は3%ほど減少したものの、カリフォルニア州が巨額の費用を投じて構築した複雑なホームレス支援体制は、この問題を根本的に解決する有効な手段とはなっていないの。

ハイテク産業など一部の産業が牽引するカリフォルニア州の表向きの繁栄は、その足元にある弱さを覆い隠している。雇用の創出は低迷している。雇用・経済センターのデータによれば、2025年、カリフォルニア州では実質的に新規雇用の純増がなかった。政府部門や公的支援を受ける医療分野を除くと、民間産業全体ではむしろ雇用が減少している。つまり、カリフォルニア州は、民間部門の停滞を公的支出で取り繕っているに過ぎない。

この状況が最も如実に表れているのがロサンゼルスだ。それは、ロサンゼルスを象徴する産業であるハリウッドが、緩やかな崩壊の過程にあるからだ。その影響を被っているのは、著名な俳優やインフルエンサーではない。かつて世界有数の産業クラスターを形成していた大工、衣装担当、音響技師、カメラマン、編集者、ドライバー、ケータリング業者、クリーニング店、小道具業者、そして中小企業といった人々だ。

数字は厳しい現実を物語っている。ある報告書によると、ロサンゼルスでの撮影日数は2022年の3万6792日から、2025年には1万9694日へと減少した。ロサンゼルス郡における映画関連の雇用者数は、2022年末の約14万2000人から、2年後には約10万人へと落ち込んだ。また別の報告書では、映画、テレビ、音響関連の雇用が2022年から2025年の間に30%近く減少したと推定されている。

ハリウッドは今もなお、象徴であり、ブランドであり、神話的な存在だ。そして、この1世紀近くにわたり世界最高のエンターテインメントの数々を生み出してきた大手スタジオも、依然としてここに拠点を置いている。しかし、主に高い税金やコスト、規制が原因で、仕事はジョージア州、ニュージャージー州、トロント、ロンドン、ワルシャワといった他の場所へと流出している。ソニー・エンタテインメントを率いたマイケル・リントンは私に、大手スタジオの敷地は今やゴーストタウンのようだと語った。何十エーカーにも及ぶサウンドステージや録音スタジオがありながら、そこでは何も行われていない。彼は、ロサンゼルスは「デトロイトの晴天版(a sunny version of Detroit)」になりつつあると述べた。

ある単純な事実を考えてみて欲しい。『フォーチュン』誌によると、今年のアカデミー賞作品賞にノミネートされた10作品のうち、ハリウッドを主たる制作拠点としたものは1つもなかった。ロサンゼルスは今もアカデミー賞の開催地だが、そこで表彰される映画の実際の制作は、ロサンゼルスでは行われないケースが増えている。

長年にわたり、カリフォルニア州の民主党は実質的な競争相手不在の状態で政権を担ってきた。しかし、最近の予備選挙の結果は、民主党の牙城(ディープ・ブルー、deep-blue)であっても有権者が現状に不満を抱いていることを示唆している。彼らが共和党支持に回っている訳ではない。しかし、彼らはもっともな疑問を抱いている。「これほどの資金、才能、そして将来性を備えた州でありながら、なぜ一般の人々の生活はこれほど困難なものになっているのか?」という疑問を持っている。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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 古村治彦です。

 アメリカとイスラエルが始めたイラン戦争によって、世界中が大迷惑をこうむっている。イランがホルムズ海峡封鎖を実施し、石油の流通が滞ることで、物資不足や物価上昇が世界各国で起きている。日本も例外ではない。高市早苗首相と日本政府は「大丈夫だ、大丈夫だ」と往年の志村けんのギャグのような発言を繰り返しているが、物資不足や物価上昇は日本国内でお発生している。石油価格は今のところ政府による補助金政策で急上昇してはいないが、輸入できる量が限定され、価格も高い中で(円安が進行している)、いつも通りの消費を続けるというのは常識的な対応ではない。

 アメリカ国内でもディーゼル燃料と肥料の価格上昇と物資不足によって、物流や建設、農業生産に影響が出ている。アメリカ国民の生活を直撃する。インフレも進行する。こうした状況が続けば、2026年11月の中間選挙で共和党は敗北を喫する。共和党優勢州(レッドステイト)はアメリカの農業が盛んな州に多い。農家は共和党の大票田であるが、その農家たちが共和党にそっぽを向けば選挙結果が厳しいものとなるのは当然だ。「強いアメリカ」を求めるということで、トランプと共和党を支持する人たちもいるだろうが、何より、今回のイラン戦争で、トランプが証明してしまったのは「アメリカ軍はイランを崩壊させることができなかった」ということだ。そして、「ペルシア湾岸諸国を中心にアメリカ軍基地が設置されていたのに、屁のツッパリにもならなかった」ということだ。アメリカ軍がいれば安全安心という神話は崩れてしまった。

 現在の世界の大きな関心は「イラン戦争がいつ終わるのか」「ホルムズ海峡はいつ以前のような状況に戻るのか」ということである。戦争が始まって3カ月が経過して、和平の見通しは明るくない。イラン側がホルムズ海峡を握っている限り、アメリカ側は自分たちの意向を通すことは難しい。譲歩をし続ける必要がある。それならば、アメリカは最強のアメリカ軍を使って、イランに大規模攻撃を仕掛けて、イランを徹底的に叩く、イランの現政権を打倒することが必要になるが、そのようなことは不可能である。「万能な(almighty)」はずのアメリカ軍にできないことがあると見せつけることはそれだけで敗北である。

 イラン戦争はドナルド・トランプ大統領とアメリカ政府にとって大失策であった。トランプとトランプを操ったイスラエル、そしてベンヤミン・ネタニヤフ首相の罪は万死に値する。イスラエルの身勝手な、自己中心的な野心のために世界は混乱に陥り、人々の生活が破壊されている。現状を改善するためには、ネタニヤフ首相の退陣、ひいてはトランプの引責辞任ということも視野に入ってくるだろう。

(貼り付けはじめ)

イラン戦争が世界経済の「主要原動力」を圧迫している(Iran War Chokes ‘Major Driver’ of Global Economy)

-ホルムズ海峡危機は原油以上にディーゼル燃料に大きな打撃を与えている。

クリスティーナ・ルー、キース・ジョンソン筆

2026年5月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/11/us-iran-war-diesel-fuel-energy-economy/?tpcc=recirc_featured_horizontal051524

ドナルド・トランプ米大統領によるイラン戦争が経済の多くの分野に混乱をもたらしているが、エネルギー市場もその1つだ。その中でも特に大きな打撃を受けているのがディーゼル燃料である。

過去2カ月間でディーゼル燃料の価格は急騰し、アメリカのディーゼル価格は昨年比で60%も上昇した。これは、イランに対するアメリカの戦争によって油田、製油所、そしてエネルギーの流れが麻痺したためだ。

大型機械や重機を操作した経験がない場合、ディーゼル燃料に馴染みがないかもしれない。しかし、この燃料は世界経済の原動力であり、現在その供給量は以前よりも減少している。これは、トラクターの故障、大型トラックの停止、そしてこの燃料に依存して成り立っている世界にとって大きな痛手となる。結局のところ、私たちが購入するもの、食べるもの全てがディーゼル燃料で動いているのだ。

ロンドンに拠点を置くエネルギーコンサルタント会社エナジー・アスペクツ社の需要部門責任者であるコーエン・ウェッセルズはディーゼル燃料について「経済の主要原動力(major driver of the economy)」だと述べている。

トランプ政権と共和党にとって、原油価格の高騰は、2026年11月の重要な中間選挙を控えた時期にリスクとなり得る。それは、全米の有権者は、現在進行中の戦争による深刻な経済的影響に苦しんでいるからだ。トランプ大統領は紛争が「すぐに終わる(quickly)」と楽観的な見方を示しているものの、イランが封鎖している重要な海上交通路であるホルムズ海峡をめぐる不確実性が続いているため、海運業者や保険会社は安易に楽観視していない。

ペルシア湾岸における戦争は、1日あたり1500万バレルの原油と500万バレルの石油製品が封鎖されただけでなく、中東産の原油は中重質で硫黄分が多く、ディーゼル燃料やジェット燃料などの製造に理想的な原料であるため、特に深刻な問題となっている。

低硫黄で軽質なアメリカ産原油はガソリンの生産量が多いため、世界最大の産油国であるにもかかわらず、アメリカは依然としてメキシコ湾岸の製油所群のために重質原油を輸入している。この依存度は、特にアジア地域において顕著であり、アジアはペルシア湾岸地域産原油の最大の顧客である。

アメリカ・イラン和平合意への期待から、世界の原油価格は最近再び下落したが、世界中の製油所を悩ませているボトルネックの解消にはほとんど繋がらず、経済のほぼあらゆる分野でコストが少なくとも今後数カ月間は高止まりするだろう。これは農家、トラック運転手、海運会社、そして彼らが生産・輸送する物資を購入する人々にとって悪いニューズだ。

コンサルティング会社クリアビュー・エナジー・パートナーズ社のマネージングディレクターであるケヴィン・ブックは「貨物や商品の輸送にディーゼル燃料を依存している私たち全員にとって、これは経済全体に波及する」と述べている。

アメリカにおいては、おそらく最も大きな打撃を最も受けているのはトラック運転手だろう。彼らはこれまで国内の貨物輸送の約4分の3を担い、ディーゼル燃料の最大の購入者でもある。ラピダン・エナジー・グループ社の精製製品担当ディレクターであるリンダ・ギーゼッケによると、国内で消費されるディーゼル燃料の約3分の2はトラックによるものだという。

ディーゼル燃料価格の高騰は、すでに業界に大きな負担をかけている。アメリカ最大手のトラック運送会社であるUPSとフェデックス(正確には、顧客であるトラック運転手)は、ディーゼル燃料価格の高騰によって大きな打撃を受けている。しかし、アメリカのトラック運転手の約半数は個人事業主だとブックは指摘する。「これは彼らの経費を圧迫し、利益を大幅に減少させ、貨物輸送の請負事業で収益を上げることを困難にしている」とブックは述べた。

そして、こうした圧力はトラック輸送業界だけにとどまらないだろう。ディーゼル燃料価格の高騰は、最終的には配送料の値上げや商品価格の上昇という形で消費者に転嫁されると専門家は指摘する。

ギーゼッケは「輸送コストが単純に高くなったため、私たちが購入する全ての商品に価格が転嫁される」と述べている。

ディーゼル燃料価格の高騰による影響を受けるのは貨物輸送だけではない。農業もまた、より深刻な混乱に見舞われるだろう。戦争はすでに世界中の農家に大きな打撃を与えている。紛争とホルムズ海峡の事実上の封鎖によって、世界の農業を支えるエネルギーと貿易の流れが阻害されているのだ。

特に肥料価格は戦争の影響で急騰している。全米最大の総合農業団体である全米農業連盟(American Farm Bureau Federation)が4月に実施した調査によると、多くのアメリカの農家がもはや肥料を購入できない状況にあることが明らかになった。5700人以上の農家を対象としたこの調査で、回答者の70%が、肥料価格の高騰によって必要な資材を全て購入できないと答えている。エネルギー価格の高騰は、こうした課題をさらに深刻化させ、農業機械や農機具の動力源としてディーゼル燃料に頼っている農家を一層苦しめることになるだろう。

 

 

 

エネルギー価格の高騰は、こうした課題をさらに深刻化させ、農業機械や農機具の動力源としてディーゼル燃料に頼る農家を一層苦しめることになるだろう。

元米農務省チーフエコノミストで現在は国際食糧政策研究所に所属するジョセフ・グラウバーは次のように述べている。「農家の利益率はここ数年で大幅に低下しており、今回の価格高騰はそれにさらなる圧力をかけることになる。農産物価格がほとんど改善していない中で、これは農家が負担しなければならない新たなコストとなる」。

世界中でディーゼル価格が高騰する中、地域社会は怒りを表明するために抗議活動を行っている。アイルランドでは、抗議者たちがトラクターやトラックで街頭に繰り出し、ディーゼル価格の高騰に対する不満を表明した。ノルウェーでも同様のデモが見られた。

国民の不安を受け、各国政府は対応に乗り出した。ヴェトナム政府は一部の産業に対し燃料節約を要請し、中国は消費者を保護するため、例年のような国内燃料価格の値上げを抑制した。世界的な価格上昇にもかかわらず、インドもディーゼルとガソリンの小売価格を据え置いているが、今後は状況が変わる可能性も懸念されている。

サプライチェインの混乱は長期化する見込みだ。先週、アントニオ・グテーレス国連事務総長はXへの投稿で、ホルムズ海峡の航行制限が直ちに解除されたとしても、「サプライチェインの回復には数カ月を要し、経済生産の低迷と物価高が長期化するだろう」と警告した。

「私たちは世界的な景気後退(global recession)という脅威に直面している。それは人々の生活、経済、そして政治的・社会的安定に深刻な影響を与えるだろう」とグテーレス事務総長は述べた。

※クリスティーナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@christinalu.bsky.social、Xアカウント:@christinafei

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学(geoeconomics)・エネルギー担当スタッフライター。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.social、Xアカウント:@KFJ_FP

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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 古村治彦です。

 2026年2月18日、特別国会が召集され、高市早苗議員が首相に指名された。第二次高市早苗内閣が発足し、第一次内閣の閣僚がそのまま留任した。第二次高市政権にとっては2026年度予算の成立が重要だ。国会の議席数で見れば成立は確実であるが、高市首相は、2025年度内(2026年3月31日まで)の成立を目指している。2月の総選挙、3月の訪米とありながら、3月末での成立にこだわっているようだ。そうなると必然的に審議時間は短くなる。野党に質問させない、自分にとって嫌なことを質問させないという態度が見え見えである。経団連からも審議時間の短さに対して懸念が表明されているが、そのようなことはお構いなしで突き進むのだろう。国会は国権の最高機関である。高市首相の国会軽視はやがてしっぺ返しを食らうだろう。高市首相の高い支持率が自民党の支持率とは連動していない。高市政権下で何か逆風が吹き、高市首相故人の人気が落ちてしまえば、逆回転も大きくなり、次の選挙では自民党の議員たちの大量落選が発生する。増上慢にならず、周りの浮ついた空気に流さされず、丁寧に謙虚に行動することが肝要になってくる。

 高市首相に対しては海外でも高い評価がある一方で、懸念の声も出ている。それらを以下に紹介している。様々な主張があるが、共通しているのは、日本の少子高齢社会と低成長を、日本の問題に挙げていることだ。海外メディアは高市首相がどのように対応するのかということを注目しているようだ。衆議院で多くの議席を有し、やりたいことはできるということで、大改革をするという見方もあるし、そううまくはいかずに厳しいという見方もある。

 私は、既に日本は衰退局面に入っており、厳しい撤退戦を戦う状況にあるという考えだ。少子高齢化とそれに伴う人口減少は止められないし(年間で約100万ずつ減っていく)、経済成長も見込めない(成長率3%などというのは厳しい)。それもこれも失われた30年で、就職氷河期世代を生み出し、しかも中途半端に人数が多いために、大きな負担になっており、これから負担が大きくなる一方になるということが原因だ。少なくともこれから30年は厳しい状況が続く。人口ピラミッドをみれば、逆三角形の肩幅の広いボディビルダーのような形の日本はこれから先進国の地位から滑り落ちて、また、世界の中でしょう石の地位に戻ることになる。

 そうした中で、高市首相にこうした状況を大逆転できる方策は残っていない。何とか厳しい撤退戦を戦うしかない。しかし、そんなものは国民にとって面白くもなく、負担ばかりが大きいだけのものだ。国民にアピールしない。不満ばかりが募る。それが石破茂政権時代だった。そして、お勇ましい、聞き心地の良い言葉を連発する高市首相を多くの国民は支持している。「高市さんは頑張っている、何かしてくれる」という心情は理解できる。しかし、実際には何もできない。そして、国民の不満を逸らすために、外に敵を作り、強大に見える、見掛け倒しのアメリカに莫大なお金を払って頼ろうとする。国民が「強い指導者」を高市首相に求めるように、高市首相は「強い指導者」をアメリカ、ドナルド・トランプ大統領に求めている。残念ながら、これらはすべて幻影、幻想である。結局のところ、何もうまくいかなくて、また、何か目新しいことを言う誰かを「強い指導者」として担ぎ出して捨てるということを繰り返す。このような悪循環、負のスパイラルを抜け出すことはほぼ不可能だ。なぜなら、そのためには日本国民が何かを諦め、現実を直視することが必要だからだが、それは不可能なことだ。こうして衰退に竿を指してスピードアップを続けていく。

(貼り付けはじめ)

中国は日本のダメージを与えられる部分を攻撃している。高市首相は屈するだろうか?(China is hitting Japan where it hurts. Will PM Takaichi give in?)

テッサ・ワン筆

2026年2月16日

BBC

https://www.bbc.com/news/articles/c86y3ndqlxwo

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アナリストたちは高市首相の最近の選挙での圧倒的勝利は中国に対して断固たる姿勢を取るための政治的資本(political capital)を彼女に与えたと述べている。

先月、東京の上野動物園で、何千人もの日本のファンから涙の別れを受けたシャオシャオとレイレイは、中国行きの飛行機に乗せられた。これは、悪化する日中関係の新たな象徴だ。

2頭の中国のジャイアントパンダは、北京がパンダの引き取りを発表したことを受け、帰国を余儀なくされた。これにより、日本には数十年ぶりに中国のパンダがいなくなる事態となった。

高市早苗首相の発言により日中関係がここ数年で最低レヴェルに落ち込んで以来、北京は軍艦の派遣、レアアース輸出の抑制、中国からの観光客の制限、コンサートの中止、さらにはパンダの返還など、様々な方法で圧力を強めている。

高市首相が先日の総選挙で歴史的に強力な国民の支持を得て首相として新たな任期を迎える中、アナリストたちは日中両国にとって緊張緩和(de-escalate)は困難であり、日中関係がすぐに回復することはないだろうと警告を発している。

今回の論争は11月に始まった。高市首相が、台湾への攻撃があった場合、日本が自衛隊を出動させる可能性があると示唆した時からだ。

中国は、自治を行っている台湾を自国の一部だと主張しており、将来台湾と「再統一する(reunify)」ために武力行使する可能性も排除していない。台湾はアメリカを主要な同盟国と見なし、アメリカは台湾の自衛を支援することを約束している。

長年懸念されてきたのは、台湾へのいかなる攻撃も米中間の直接的な軍事紛争(a direct military conflict)につながり、ひいては日本やフィリピンといった地域における他のアメリカの同盟諸国を巻き込む可能性があるということだ。

台湾問題は中国にとって絶対的な譲れない一線(an absolute red line)であり、「外部からの干渉(outside interference)」とみなされるいかなる発言にも激怒し、これは主権の問題(a question of sovereignty)であり、中国のみが自ら決定できるものだと主張している。

高市首相の発言後、中国政府は即座に非難の嵐で応じ、発言の撤回を要求した。

専門家たちは、高市首相の発言は政府の立場や過去の日本の指導者の発言と一致すると指摘している。

しかし、相違点は、現職の日本の首相がこのような見解を表明したのは今回が初めてだったという点だ。

一方、高市首相は謝罪も発言の撤回も拒否した。アナリストたちは、高市首相が獲得した強力な支持によって、この姿勢は正当化される可能性が高いと指摘している。

しかし、高市首相は具体的な状況についてはより慎重にコメントすると述べ、日本政府は高官級の外交官を中国側と会談させた。

しかしながら、これは中国の怒りを和らげる効果はほとんどなかった。

●「グレイゾーン」の圧力('Greyzone' pressure)

高市氏が譲歩を拒絶する姿勢を崩さない中、中国は一貫して圧力をかけ続けている。

アナリストたちは、日中両国の間ではここ数十年、歴史的な敵意を背景に対立が激化してきたが、今回は状況が異なっていると指摘する。

シンクタンク国際戦略研究所(IISS)日本部長ロバート・ワードは、中国はこれまでより「さらに幅広い分野(wider range of fronts)」で圧力を強めていると指摘する。

これは、台湾に対して行っている「グレイゾーン戦争(greyzone warfare)」に類似した、拡散的で低レヴェルの圧力であり、「実際には正常ではない状況を正常化させるために相手を疲弊させること」を目的としているとワードは述べた。

外交面では、中国は国連に苦情を申し立て、日本と韓国との三カ国首脳会談を延期した。

中国はまた、他の国々をこの争いに巻き込もうとしており、イギリスとフランスに自国への協力を呼びかけ、同盟国であるロシアと北朝鮮には日本を非難するよう促している。

週末、中国の王毅外相はミュンヘン安全保障会議で西側諸国の首脳たちを前に演説し、第二次世界大戦における日本の侵略の歴史に言及し、高市首相の発言を「非常に危険な展開(very dangerous development)」と呼んだ。

軍事面では、日本は中国がドローンを飛ばし、軍艦が日本の島々を航行し、戦闘機が日本の航空機を「レーダー照射(locked radars)」したと主張している。日中の海上保安庁の船舶は、係争中の尖閣諸島(釣魚島)付近で衝突し、先週は日本当局が中国漁船を拿捕した。

しかし、中国が日本の痛いところ、つまり経済にも打撃を与えようとしていることは明らかだ。

中国は、レアアース元素や重要鉱物などの軍民両用技術の対日輸出を制限しており、これは一種の経済的圧力と見られている。

中国政府はまた、中国国民に対し、留学や休暇で日本を訪れるのを避けるよう勧告し、日本行きの49路線の航空便を欠航とした。これにより、観光客の減少と一部株価の下落につながった。公式統計によると、日本を訪れる外国人観光客の4分の1は中国人である。

エンターテインメントや文化も例外(off the hook)ではない。

中国では日本の音楽イヴェントが中止され、中には歌手が演奏中にステージから降ろされるという出来事も起きた。また、映画配給会社は複数の日本映画の公開を延期した。

日本の代表的な文化輸出品の一つであるポケモンも、靖国神社で開催予定だったイヴェントをめぐり批判を浴びた。靖国神社は、中国が戦犯とみなす人々を含む日本の戦没者を祀っている。イヴェントは最終的に中止された。

また、ソーシャルメディアでは、中国のネット上の民族主義者が高市首相を攻撃し、人気キャラクターのウルトラマンやアニメキャラクターの名探偵コナンが首相と戦うAI生成動画をシェアするなどしている。

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上野動物園での最後の日に撮影されたシャオシャオは、妹のレイレイと共に中国に送還されました。

しかし、全体として、中国の行動は日本との過去の紛争に比べて挑発的ではないとシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・リンとクリスティ・ゴベラは指摘している。

リンとゴヴェラは「これまでのところ、中国の経済的・軍事的対応は過去に比べて比較的限定的だが、さらなるエスカレーションの余地は十分にある」と最近の分析で指摘している。

中国は現在、「第二次世界大戦後の秩序の守護者(the guardian of the post World War Two order)として積極的に位置づけ」ており、アメリカと比較して責任ある大国(a responsible power)として見られたいと考えているため、日本に対して強硬な姿勢を控えている可能性もあるとウォードは付け加えて述べている。

●「続くタンゴ」(A 'tango that will continue')

専門家たちは、緊張が緩和される場合、あるいは緩和された際には、以前よりも高い水準で落ち着く可能性が高いと一致して見ている。

リンとゴヴェラは分析の中で、日中両国が今回、緊張緩和に動く可能性は低いと指摘している。中国は現在、はるかに強力な大国であり、「台湾は中国の核心的利益の中核を成しており、北京は過去の出来事の時よりも強硬な姿勢を取る可能性が高い」と述べている。

リンとゴヴェラは、「北京は高市首相に深い疑念を抱いており、発言を明確に撤回することなく緊張緩和を試みる彼女の試みは、偽善的(hypocritical)、あるいはさらに悪いことに、戦略的に欺瞞的(deceptive)だと見なす可能性が高い」と述べている。

一方、日本は、特に高市首相が選挙で圧勝したことで、強硬な姿勢を貫く意欲が高まっており、「彼女はこれを対中姿勢の正当性(as vindication for her stance on China)を示すものと受け止めるだろう」とウォードは指摘した。

ゴヴェラはBBCに対し、高市首相は今回の勝利を「政治的資本(political capital)」として、日本の立場を強化する防衛・経済政策を推進する可能性が高いと語った。

高市首相は、日本の防衛関連支出を予定より2年前倒しでGDPの2%に引き上げ、今年末までに主要な安全保障戦略の見直しを完了し、経済刺激策を早期に開始すると約束している。

一方、中国は「高市首相は非常に強力な指導者であり、圧力をかけることは国内で彼女をさらに強くするだけだと考えているため、圧力をそれほど強めないかもしれない」と、スタンフォード大学ショーレンスタイン記念アジア太平洋研究センター所長で日本専門家の筒井清輝は述べている。

筒井は「そのため、この駆け引き(tango)はしばらく続くだろう」と述べている。

不確定要素となるのは、ドナルド・トランプ米大統領がこれまで高市首相への強力な支持を表明しており、総選挙を前に異例の支持表明を行っていることだ。

しかし、筒井は、トランプ大統領と習近平国家主席の間で、4月の大統領の北京国賓訪問を含む複数の会談が予定されていることから、米中関係は今年さらに改善すると多くの人が予想していると指摘した。

リンとゴヴェラは、過去の出来事と比較すると、今回のアメリカの日中対立に対する反応は「今のところ控えめで、それが中国を勇気づける可能性がある」と述べた。

ワードは「日本は習近平主席とトランプ大統領の間で何らかの大きな取引が行われることを恐れている」と述べた。

週末、ミュンヘン安全保障会議の傍ら、マルコ・ルビオ米国務長官と茂木敏充外相が会談し、日米間の緊密な関係を再確認した。

高市首相は、トランプ大統領の中国訪問に先立ち、3月にワシントンDCを訪問し、再びトランプ大統領と会談する予定である。

中国が圧力を強め続ける中、日本はアメリカと分かち合っている防衛負担を「倍増(double down)」させる可能性が高いとウォードは述べ、「アメリカがこの地域(アジア)から関心を失わないように、日本とより緊密に協力していく」と付け加えた。

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日本は高市首相に圧勝したが彼女は経済を立て直すことができるだろうか?(Japan has given Takaichi a landslide win - but can she bring back the economy?)

スランジャナ・テワリ筆

2026年2月10日

BBC

https://www.bbc.com/news/articles/cddn7qed35eo

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日本の高市早苗首相は解散総選挙という賭けに出たがそれが成功した。

高市首相率いる自由民主党は465議席中316議席という圧倒的多数を獲得した。これは近年、ほとんどの指導者が達成していない圧倒的多数だ。むしろ、日本は首相が入れ替わり立ち替わりしてきた(a revolving door)と言える。

今、問われているのは、高市首相がそれをどう活用するかだ。彼女は、日本経済が何十年も達成できなかったもの、すなわちより速い成長(faster growth)を実現できるだろうか?

日本は、低調な成長(sluggish growth)、世界最大の公的債務(public debt that is the largest in the world)、そして高齢化と減少が進む労働人口(a working population that is both ageing and shrinking)など、多くの問題を抱えている。

専門家の中には、高市首相にはこの状況を打開し、世界第4位の経済大国である日本の経済運営のあり方、そして市場が日本をどのように見ているかを根本から変えるチャンスがあると考えている。

故安倍晋三首相の政策顧問とスピーチライターを務めた谷口智彦は高市首相が日本を正しい方向に導いてくれるだろうと述べている。

谷口は「もし成功すれば、世界中の高齢化社会にとって貴重なケーススタディとなるだろう」と述べている。

●資金はどこからやって来るのか?(Where will the money come from?)

高市首相は、主要産業への投資を含む歳出拡大で経済成長を後押しすると公約していた。

これは前任者たちからの方針転換だった。彼女は減税によって国民の消費支出を増やすと誓い、貯蓄よりも経済成長が優先事項だ(growth rather than savings was the priority)と述べた。

しかし、市場は高市首相がこれらの計画をどのように財源確保するのかという疑念で動揺した。圧倒的多数の賛成を得たことで投資家は安心したようで、それは日曜夜の彼女の勝利に対する市場の好意的な反応に表れた。

投資家たちは「高市トレード(Takaichi trade)」と呼ばれる、日本株を買い、円と国債を売る取引を行っている。重要なのは、円高も進んでいることだ。投資家の一部にとって、通貨高は好ましい状況だ。

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市場は高市早苗首相の勝利を歓迎した。

しかし、事態はもっと複雑だ。

高市首相が2025年10月に首相に就任すると、国債利回り(実質的には日本が借金をするために支払う金利[effectively the interest Japan pays to borrow money])は急上昇した。

日本の公的債務が巨額であるため、これは投資家にとって大きな懸念事項となっている。高市首相が公約してきたより多い支出とより少ない税金(more spending and lower taxes)は、政府がより多くの借金をしなければならないことを意味する。

日本の債券市場は世界最大級の規模を誇り、東京での小さな変化でさえ世界市場に波及し、借入コスト、投資判断、そして通貨に影響を与える可能性がある。

投資家は金利にも注目している。なぜなら、日本銀行はインフレ抑制のための数十年にわたる超低金利からの脱却を目指しているからだ。

例えば、米の価格は2025年に倍増した。価格の安定、あるいは下落に慣れてしまった国にとって、価格上昇は大きな衝撃だ。

これが、高市首相の台頭を支えたメッセージの中心だった。有権者はより貧しく、物価はより高く感じる(voters feel poorer and prices feel higher)。結局のところ、これは彼女の前任者が失脚した原因の一つとなった。

高市首相が提案した減税は、短期的には家計の痛みを和らげるかもしれません。

しかし、慶応義塾大学の経済学教授である小林慶一郎は、これは危険な道だと警告している。「支出の増加はインフレを刺激し生活費を上昇させるだけだ」と述べている。

むしろ、政府はインフレ対策として日本銀行が引き続き金利を引き上げることを許可しつつ、政府支出を引き締めるべきだと小林教授は主張する。そうすれば投資家も満足するだろう。

金利が低く政府支出が多いと、日本は外国人投資家にとって魅力が低下するため、通貨需要が減少し、円安につながる。

円安は、特にエネルギーや食料品といった輸入コストを押し上げるが、より安価な中国製品との競争において輸出業者にとって有利となる。

高市首相が約束した成長を実現するためには、これは非常に繊細な綱渡り(balancing act)であり、高市首相はそこから逃れることはできない。

しかし、課題は市場だけのことではない。

円安は、日本人の日本での生活に対する意識も変化させる。不動産や海外製品の購入が難しくなる一方で、外国人観光客にとっては物価が安くなり、より魅力的な場所となる。

観光ブームは収益をもたらしたが、同時に過密状態(overcrowding)や、一部地域では外国人に対する反発も高まっている。

●パズルの中で欠けているピース(A missing piece of the puzzle)

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日本は高齢化が進んでいるが外国人労働者の受け入れに抵抗している。

日本の人口、そしてその労働力は長年減少傾向にある。今や世界有数の高齢化社会となり、医療や社会福祉といった公共サーヴィスに大きな負担がかかっている。

日本は既に建設(construction)、介護(care work)、農業(agriculture)、そして接客業(hospitality)といった分野で深刻な労働力不足に直面している。労働者の減少は生産量の減少、ひいてはより弱い経済成長を意味する。

移民はこの負担を軽減できる可能性がある。公式データによると、政府は近年、一部の規制をひそかに緩和しており、外国人労働者の数は増加している。しかし、欧米諸国と比較すると、日本における外国人労働者の数は依然としてはるかに少ない。

高市首相は、移民問題は特に保守派支持層にとって非常にデリケートな問題であるため、この状況を変えるような大きな対策は講じないだろうと示唆している。

高市首相とその支持者たちは、生産性向上のためには(to lift productivity)、テクノロジー、自動化、そして女性や高齢者の参加率向上に頼るべきだと述べている。

エコノミストたちは、それだけでは不十分かもしれないと警告している。日本は依然として外国人労働者のさらなる増加を必要としている。他の先進国が長らく経済の維持のために外国人労働者に依存してきたのと同様だ。

専門家たちは、移民に対する抵抗は、過去に技術革新と改革の妨げとなってきた、より広範な変化への抵抗感の一環でもあると指摘している。

●中国はどうだろうか?(What about China?)

しかし、日本は変化する必要がある。しかも迅速に変化しなければならない。なぜなら、中国は既に規模と工業生産力で日本を追い抜いており、ヴェトナムをはじめとするアジア諸国も追い上げているからだ。

中国は日本にとって最大の貿易相手国でもある。これは高市首相の計画にとって重要である。なぜなら、国内需要の回復には時間がかかるからだ。それまでは、日本は成長を促進するために貿易に頼らざるを得ない。

しかし、レアアース輸出をめぐる紛争を含む、中国との継続的な緊張は、戦略的サプライチェインにおける日本の脆弱性(vulnerability)を露呈させている。みずほ銀行の日本担当チーフエコノミスト服部直樹は、こうした緊張関係は電気自動車や防衛装備品の生産にも悪影響を及ぼす可能性があると指摘している。

一方、高市首相は、希少鉱物や医薬品といった重要分野における中国への依存度の低減を最優先事項としている。また、トランプ大統領に対して積極的に機嫌を取り(court)、日本の平和憲法の下では物議を醸すことになる防衛予算の増額に同意した。

高市首相はトランプ大統領の「温かい言葉(warm words)」に感謝し、今春ホワイトハウスを訪問することを楽しみにしていると述べ、「日米同盟の潜在力は“無制限”だ(the potential of our Alliance is LIMITLESS)」とも述べた。

高市首相は米中の「等距離(equidistance)」を否定し、ワシントンとの同盟こそが日本の安全保障と経済の強靭性の中核を成すと考えていると谷口は述べている。

しかし、日本はどちらか一方を選択する余裕はない。

小林教授は、特に中国の不動産危機と国内経済成長の鈍化が、この地域における中国の影響力を再編する可能性があることから、日中両国との関係強化は賢明だと述べている。

高市首相のアプローチは、彼女の師である故安倍晋三元首相の戦略を踏襲しているように見える。つまり、成長を刺激するための大規模な支出と投資を支える低金利だ。

安倍首相は物価下落、円高、そしてはるかに弱体化した中国という問題に対処していた。

高市首相が直面する課題はより深刻だ。日本は高齢化が進み、経済成長は依然として低迷しており、世界情勢は大きく変化している。

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世界で最も力を持つ女性(The world’s most powerful woman)

-日本の首相は一世代に一度の国を立て直すチャンスを手にした。彼女はそれを掴むことができるだろうか?

2026年2月12日

『エコノミスト』誌

https://www.economist.com/leaders/2026/02/12/the-worlds-most-powerful-woman
自由民主党(LIBERAL DEMOCRATIC PARTY、LDP)は1955年の結党以来、わずか二度の短い中断を挟みつつ、日本の政治を支配してきた。2月8日の衆議院総選挙で、これほど圧倒的な勝利を収めたことはかつてなかった。優越的な衆議院の議席の約70%を獲得した。勝利を収めた高市早苗首相は、今、国を変革する歴史的なチャンスを手にしている。この機会を決して逃してはならない。

選挙での賭けと大勝利によって生まれた期待に応えるために、高市首相はより大きく、より広い視野で考える必要がある。在任期間を、目先の救済策にばかり目を向け、現状の苦痛を和らげることに終始するのではなく、日本が直面する長期的な人口動態と経済の課題に真正面から向き合わなければならない。また、不安定な世界情勢において、安定をもたらす力として、日本が果たすべき重要な役割を認識すべきだ。そして、右派の支持者だけでなく、日本全体のリーダーでなければならない。つまり、彼女は再び賭けに出なければならない。

●日本の首相は新たな大きな責務をどう活かすのか(How Japan’s prime minister will use her massive new mandate)

彼女には支持がある。高市首相への支持は全国から寄せられた。自民党は衆議院(定数465)で198議席から316議席を獲得し、3分の2の超多数(supermajority)を獲得した。これにより、自民党は掌握していない参議院の決定を覆すことが可能になる。高市首相は、日本の有権者が求める安全と変革の両方の欲求を捉えた。彼女は、厳しい時代にふさわしい、強硬な現実主義(realism)を提示した。また、彼女は旧態からの脱却を体現している。彼女は中流家庭の出身で、率直な物言いをする人物であり、多くの先人たちのように、堅苦しい政治王朝の御曹司ではない。そして、彼女は女性として、民主政治体制国家である日本を率いる最初の人物である。

高市首相がそれを大胆に捉えるならばの話だが、歴史的な選挙は、歴史的な機会を解き放つ。最も重要なのは、彼女が日本の防衛力改革を加速させる上で有利な立場にあることだ。2012年から2020年まで首相を務めた故安倍晋三元首相は、中国の強硬姿勢とアメリカの信頼性の低さに対抗するため、軍事力の強化に着手した。しかし、世界の変化は日本よりも速い。高市首相は既に、当初2027年度に予定されていた防衛費の対GDP比2%への増額を今年度に前倒ししたが、それでもまだ不十分だ。いずれにせよ、単に予算を増額するだけでは不十分だ。日本は新たな世界の混乱に真摯に向き合う必要がある。核兵器への言及を含め、タブーを破る首相の姿勢は健全である。防衛産業の束縛を解き放ち、防衛技術革新を促進し、国の情報収集能力を強化するという点において、彼女は正しい考えを持っている。

これには進取的な外交が必要となる。他の同盟国と同様に、日本もドナルド・トランプの大統領復帰に動揺している。しかし、NATO加盟諸国以上に、日本はアメリカを疎外することはできない。日本は中国、ロシア、北朝鮮という核兵器を保有する敵対国に囲まれており、当面はアメリカの核の傘(nuclear umbrella)に頼らざるを得ない。高市首相はトランプ大統領の機嫌を損ねることなく、称賛に値する仕事をしてきた(トランプ大統領は投票前に高市首相への支持を表明していた)。しかし、日本はアメリカと協力する一方で、アメリカを迂回する動きも躊躇すべきではない。これは、トランプ大統領が最初の任期中に放棄した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)を安倍首相が救済した際に行った行動である。これは、安倍首相がトランプ大統領と良好な関係を築くことを妨げたわけではない。今回は、日本はCPTPPとヨーロッパ連合(EU)を連携させる取り組みを主導すべきである。これにより、世界の生産量の30%以上をカバーする貿易圏が誕生することになる。

日本は、国内資源が逼迫する今こそ、このグローバルな指導力を発揮する必要がある。減少が続き、高齢化が進む人口(shrinking, ageing population)は、日本の成長を阻む大きな要因となっている。多くの国が学んでいるように、容易な解決策はない。家族は簡単にスピードアップできる生産ラインではない。むしろ、気候変動と同様に、人口動態の変化は絶え間ない適応を必要とする。選挙での圧倒的勝利は、高市首相にこれまで他国が避けてきた難しい選択を迫る余裕を与えている。

高市首相は、日本が持つ人々の力を解き放ち、新規参入者をより歓迎する体制を構築することに注力すべきである。社会保障制度(social-security system)は緊急に改革する必要がある。企業は、硬直的で年功序列の終身雇用慣行(seniority-based lifetime employment practices)から、より柔軟な職務に基づく制度へと転換すべきである。結婚を阻害し、女性を低賃金労働に留める家父長制的な家族法と税制は廃止されなければならない。日本は移民を誘致すべきであり、彼らを悪者にするのではなく、受け入れるべきである。そして、防衛費と福祉支出への需要が高まる中、日本は必要なプログラムに資金を提供できることを市場に保証しなければならない。総負債(the gross debt)の削減に貢献するために、今は海外資産(overseas assets)から徐々に利益を得る好機かもしれない。

高市首相は果たしてその任務を果たせるだろうか? 2025年10月に首相に就任したばかりで、まだ試練を迎えていない。彼女は、幅広い支持を、自身の狭いイデオロギー的目標を追求する許可証と誤解する恐れがある。熱烈な国家主義者である彼女は、日本の戦没者、その中には戦犯も含まれている帝国の指導者たちを祀る靖国神社を参拝するかもしれない。これは中国との関係を悪化させ、中国の台頭に対抗するために不可欠な、日本と韓国の脆弱な関係を悪化させるだろう。また、社会的な保守主義者である彼女は、外国人排斥感情を煽り、人口減少を補うために日本が必要とする移民や、経済成長を牽引する観光客を遠ざける可能性がある。財政ハト派である高市首相は、インフレを煽り、国債保有者をパニックに陥れるような大規模な支出政策を推進する可能性がある。試金石となるのは、新たな国債を発行することなく、食​​料品への8%の消費税を2年間停止するという、ポピュリスト的な選挙公約だろう。有権者はそのような魔法のような考えを信じていたかもしれないが、市場はより深く理解している。彼女は景品代を支払う方法を見つけるか、それを中止する必要があるだろう。

●実行の難しさ(The difficulty of doing)

首相のメールボックスは気が遠くなるような量だ。国民が不安になるのも無理はない。高市首相は有権者たちに対し、この激動の時代を彼女に導いてほしいかと質した。その答えは圧倒的な「イエス」だった。しかし、もし彼女が象徴主義(symbolism)とポピュリズム(populism)に基づく信任を無駄にすれば、より有害な代替案が蔓延するだろう。そして日本はすぐには、次のリーダーにこれほど大きなチャンスを与えることはないだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 

 第二次ドナルド・トランプ政権が始まって、アメリカはどうなっているだろうか。インフレ状態が続き、人々の生活を圧迫している。トランプ政権下の各種選挙では共和党は苦戦している。フロリダ州マイアミ市の市長選挙で30年ぶりに民主党所属の候補者が当選した。フロリダ州マイアミ市は第二次トランプ政権のマルコ・ルビオ国務長官(前連邦上院議員)のお膝元であり、共和党支持が多いキューバ系の有権者が多い。しかし、それでも共和党が破れたというのは今後への影響が大きい。来年は中間選挙が実施される。現状では民主党の支持率が上回っており、連邦下院においては共和党が過半数を失う可能性があるという状況になっている。そうなれば、トランプ大統領の影響力も低下する。

 トランプが標榜した政策、「製造業の国家の再建」はその実現までに時間がかかる。工場を誘致し、人々の雇用を軌道に乗せるには数年規模の計画が必要だ。そのための投資も必要であるが、大企業は経済法則に従い、人件費が安く、労働力としての質の高い外国での生産を選ぶことになる。高関税の保護主義政策も一定の成果を上げたようであるが、肝心の中国との関係では、アメリカは大きく妥協することになった。アメリカが貿易赤字を削減するためには中国からの輸入を減らし、国内での生産を高めねばならないが、この道筋は非常に厳しい。アメリカの輸出を促進するためには、ドル安(ドルの価値が低いこと)が望ましいが、現状はドル高が続いている。相対的に円安になっている。

 下記論稿にあるように、アメリカの現状をどう見るか、どう分析するかであるが、ある観点から見れば「最良」、別の観点から見れば「最悪」ということになる。どう見るかはそれぞれの個人の判断に任されるが、現状では「悪い」と見る人が多くいるということになると思う。アメリカ国内の分断状況も改善される兆しはなく、来年の中間選挙の前後に、何か大きな暴力が絡む事態が勃発しなければ良いけれど、その懸念が大きいと思わされる状態である。なかなか厳しい状況で2025年を終えていくということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

最良の時代と最悪の時代、そしてアメリカの政治的分断(The best and worst of times and America’s political divide)

ハーラン・ウルマン筆

2025年11月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5619440-best-worst-times-america/

一つの思考実験(a thought experiment)をしてみよう。アメリカにとって、今は最良の時代だろうか、それとも最悪の時代だろうか?

MAGA(Make America Great Again、アメリカを再び偉大に)の熱心な支持者を架空の人物を想定してみよう。MAGAの支持者と、MAGAが最良の時代だと主張する人物を想定してみよう。そして、MAGAに強く反対し、今は最悪の時代だと熱烈に信じている人物を架空の人物として想定してみよう。

この対比は、今日のアメリカ政治の何が間違っているかを示す。半分の真実と歪曲が、現実を装っている。

この架空の、そして欠陥のある議論は、今がアメリカにとって「黄金時代(golden era)」であるという主張から始まる。国境は閉鎖され、トランプは法と秩序をもたらしている。そして、アメリカ・ファースト政策は、国外においてアメリカをより安全で安心なものにしている。

トランプの経済計画の主要政策は関税、彼のお気に入りの言葉、である。関税は国家債務を解消し、数兆ドル規模の収入をもたらすと主張されている。関税によってアメリカのパートナーはアメリカへの直接投資を余儀なくされ、少なくとも20兆ドル、あるいはそれ以上の収入が見込まれる。

失業率はほぼゼロにまで低下し、インフレは過去のものとなるだろう。全てが順調に進めば、トランプが約束したアメリカ国民全員への2000ドルの給付金は間もなく支払われるだろう。
国際情勢はかつてないほど明るい。トランプは数え切れないほど多くの戦争を終結させてきた。ガザ地区では平和が訪れている。ウクライナ戦争終結に向けたトランプの戦略は、彼の卓越した交渉力に基づいている。

提案されている和平文書の正式な条件はまだ公表されていないが、その原則と基盤は極めて明確だ。トランプは既に戦争資金をヨーロッパに移管している。そして、平和はアメリカというよりもヨーロッパの責任となるだろう。

ウクライナは、本来ロシア領とすべき領土のロシアへの返還やウクライナ軍規模の縮小といった譲歩を迫られるだろう。NATO加盟の可能性も放棄せざるを得ないだろう。しかし、その安全保障は米露両国の投資の組み合わせによって保証される。

ロシアはもはや領土拡大の野心を抱いていない。なぜなら、野心を持ち続ければ、自国の投資が危険に晒されるからだ。ウクライナへの攻撃がアメリカの反撃を誘発するという、国連安全保障理事会第5条のような保証は不要だ。

同様に、中国とは強固な経済関係を確固たるものにする合意について交渉がなされ、米中両国関係は友好的な基盤へと回復するだろう。カリブ海諸国では、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が辞任するか、アメリカとの妥協点を見出すか、どちらかになるだろう。これもまた勝利と言えるだろう。

これらの観点からすれば、今こそまさに最良の時と言えるだろう。敵対的な見方をする人は、これまで述べてきたような見方をする人物が一体どこの惑星に住んでいるのかと疑問に思うだろう。

関税は税金と同じだ。適切に使えば効果を発揮するが、無秩序に適用されれば悲惨な結果を招く。インフレと失業は急上昇するだろう。そして、数兆ドル規模の支援約束は、まさに空論に過ぎない。債務はバクテリアのように増殖し、2026年夏半ばまでに40兆ドルに達するだろう。

全米各地に州兵を駐留させることは違法であり、何の成果ももたらしていない。ジョー・バイデン政権発足以降、暴力犯罪は減少傾向にある。

アメリカ軍に、積荷の正体不明の非武装小型船舶への攻撃を命じることは、戦争権限法および軍の法執行機関としての使用を禁じるポッセ・コミタトゥス法に反する。

ガザ停戦はイスラエルによって一貫して無視されており、イスラエルは依然としてガザ地区とシリアを攻撃し続けている。ウクライナとの合意案は、キエフを実質的に降伏に追い込むことになり、1938年のヒトラーとのミュンヘン協定を素晴らしいものと見せかけることになる。そして中国との関係は解決には程遠い。

2025年11月の各地での選挙で共和党が惨敗したことで、トランプは著しく弱体化している。裁判所は彼に不利な判決を下している。エプスタイン関連の文書公開をめぐるトランプの度重なる拒否と撤回は、彼の判断力に疑問を投げかけ、何が公開されるのかという疑問を投げかけている。

共和党はトランプがこの件を巧みに処理したと主張している。ハハッ!

多くの善良な人々(主に民主党員)が不必要に暴露され傷つけられるだろうという同情に基づいて、文書公開を拒否したというのは、全くのナンセンスだ。少なくとも、エプスタイン文書はトランプがエプスタインが未成年女性と何をしていたかを知っていながら沈黙を守っていたことを証明することになるだろう。

このやり取りが示すように、特に深刻な状況にある分野がある。それは、民主、共和両党が常識的な統治について合意できない政治環境だ。

さらに重要な点として、トランプは8人の連邦議員を扇動罪で告発した。扇動(sedition)とは、政府を転覆させるために武力を用いることだとトランプは理解しているはずだ。

トランプが主張する容疑は、軍隊は違法な命令に従わないように法律で義務付けられていると主張したことだ。アメリカ国民がこの法律を改めて認識しなければならないという事実は、政治情勢が最悪の状況にあることの究極の兆候である。

※ハーラン・ウルマン博士:UPI通信のアルノー・ドゥ・ボルクグレーヴ特別コラムニスト、アトランティック・カウンシル上級アドヴァイザー、2つの民間企業の会長、「ショックと畏怖の教義」主著者。ウルマンと元英国国防長官デイヴィッド・リチャーズは、戦略的大惨事の防止に関する著書を近々出版する予定となっている。

(貼り付け終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカ経済は堅調で、日米の金利差も大きいままで、ドル高円安(ドルを買って円を売る)状態が続いている。強いドル(購買力の高いドル)は、輸入製品が安くなり、アメリカ国民の生活のためには良いが、輸出は弱くなる。円安はその逆ということになる。アメリカは物価上昇が続いており、インフレ状態にあるが、実質賃金も上昇している。日本の物価がインフレなのかどうかは議論が分かれているところだが、実質賃金は低下しており、家計に影響を与えている。

 アメリカはインフレ状態であるので、利上げの判断がどうなるかであるが、景気減速も怖いとなると、なかなか踏み出せない状態にある。インフレ状態が続き、強いドルを背景にして、海外からの輸入が増えていくと、ドルの海外への流出は増えていく。ここで怖いのは、アメリカの景気減速であるが、それよりももっと怖いのは、アメリカ国債の崩れやドルの信用不安だ。アメリカ国内では経済が堅調と言われながら、下記の記事のように、厳しい状態にある人々の数は増えている。財産もなく、生活するのがやっとの賃金しか得られないが、公的な補助を受ける基準よりは上という数が、景気が好調ということもあって増えている。

しかし、それは逆に、賃金は上がっても生活は厳しいまま、公的補助がない分、厳しいということになる。住む場所を失い、自動車の中で生活をしているほぼホームレス状態であるが、仕事があるというようなことが起きている。都市部の固定資産税と家賃の高騰で、生活が破綻する人々は増えている。以前であれば、アメリカでは、高校を卒業すれば、親元を離れて自立して生活する、進学したり、就職したりということが当たり前だった。大学進学も奨学金を受けたり、学生ローンを組んだりして、自分で何とかするということが自然だった。今では、若い人たちは大学を卒業して、親元、実家に戻り、そこで生活するようになった。一人暮らしの家賃を払うことや、学生ローンの返済は自力ではとてもできない状況になっている。

 経済格差が進み、勝者はより富裕となり、敗者はより貧しくなり、それが固定化、階級化されて再生産されるようになる。人間社会は階級社会であったので、昔に戻ったということになる。しかし、それでは現代社会は不安定になるばかりだ。現在の社会は階級社会ではないということで設計されているが、それが実際と合わないということになれば、人々の不安と不満は高まるばかりだ。それが政治の世界でのポピュリズムとなり、ドナルド・トランプ大統領の誕生と、民主党進歩主義派の登場につながった。

これまでアメリカのことを書いてきたが、より深刻なのは日本である。以下の記事にあるように、経済格差はアメリカやイギリスよりも大きいということだ。戦後、「一億総中流社会」と呼ばれた日本であるが(これは過大評価ではあるが)、21世紀に入って、小泉政権以降の自民党政権、自公政権の政策の誤りによって、格差が拡大し、少子化が進行し、経済も衰退していった。「経済のことは自民党とその裏にいる財務省に任せておけば安心だ」と無定見、無思想に自民党に投票し続けた、日本国民自身が招いた大惨事である。日本の亡国化の進行を止める、もしくはそのスピードを緩める第一歩は自民党と財務相に責任を取らせることである。

(貼り付けはじめ)

●「アメリカでは「ALICE」が増えている…職に就いているが資産がなく、生活費の支払いに苦労している人々」

Noah Sheidlower,Juliana Kaplan [原文] (翻訳:大場真由子、編集:井上俊彦)

May. 02, 2024, 10:30 AM  国際23,099

BUSINESS INSIDER

https://www.businessinsider.jp/post-285805

・ALICEとは「資産に限りがあり、収入に制約がある雇用者」を指す。

・ほとんどのALICEは、政府の援助を受けるには収入がやや多いが、その収入はアメリカで日常生活を送るためには決して十分なものではない。

・彼らの存在は、アメリカが経済的に苦境にある人々を評価する方法にギャップがあることを示している。

フードスタンプ(食料品の配給システム)や障害者手当を受ける資格はない収入を得ていながらも、その収入が家賃や医療費が支払うには十分ではない場合、あなたは「ALICE」だということになる。

ALICEとは、非営利団体ユナイテッド・ウェイ(United Way)のプログラム「ユナイテッドフォーALICE(United For ALICE)」が生み出した造語で、アメリカ人のうちで「資産が限られ(Asset Limited)、収入に制約がある(Income Constrained)被雇用者(Employed)」を表す言葉だ。4人世帯で3万1200ドル(約483万円)、個人で1万5060ドル(約233万円)という連邦貧困レベル(Federal Poverty Level)をわずかに上回る収入を得ながらも、基本的な生活の支払いに苦労しているアメリカ人を指す。

ALICEの多くは一般的に、得ている賃金が生活費をまかなうのに十分ではない労働者だ。つまり、彼らは給料ギリギリの生活をしている。中には、医療機関にかかるために、食費や保育料の支払いを犠牲にせざるを得ない人もいる。

ユナイテッドフォーALICEが、アメリカ国勢調査局(USCB)の全米地域調査(American Community Survey)のデータとユナイテッド・ウェイの推計によると、アメリカの世帯の約29%がALICEであり、13%が連邦貧困レベル以下にあるという。

政府の多くの取り組みは、人々が貧困から抜け出すことを支援しようとしてきた。だが、ユナイテッドフォーALICEでナショナルディレクターを務めるステファニー・フープス (Stephanie Hoopes)がBusiness Insiderに語ったように、連邦貧困レベルは多くの点で時代遅れであり、地域差や、人々の家計に占める食費の割合の変化を考慮していない。またフープスは、経済的には恵まれているが、将来のために投資することができない人々を支援することにあまり注意が払われていないとも話している。

アメリカ全体の貧困率はおおむね低下しており、これは一見、アメリカの労働者にとっては朗報のように思える。政府の支援は最も経済的に困窮するアメリカ人たちに届くかもしれないが、依然経済的に不安定なALICEへの給付金の打ち切りは、彼らを取り残してしまうことになるだろう。

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2010年から2021年の貧困率の変化

ALICEの割合はこの10年の間にアメリカ全土で増加しており、モンタナ州やアイダホ州などのパンデミックに起因したブームが起こった州ではその割合が大きく跳ね上がっている。これは、多くのアメリカ人の収入が増加したものの、インフレや住宅価格の高騰に追いついていない可能性があるからだ。

ALICEの広がりは、一見堅調に見える労働市場の根底にある経済的な問題を示しているのかもしれない。豊かさと支援の狭間に立たされるアメリカ人はますます増えており、国の政策はそのような人たちに応えるものにはなっていない。これは、さまざまな援助に対し受給資格を撤廃し、直接的な刺激策を提供していたパンデミック時の景気刺激策とは対照的だ。

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2010年から2021年のALICEの増減

「フラストレーションやストレス、難しい選択をしなければならない状況が毎日毎日続く中に身を置くことは本当につらいことだ」とフープスは言う。

「子どものために薬を買いに行くのか、それとも今夜の夕食を食べるのか。電気はつけたままにしておくのか、保育園に行くのか」

■貧困状態にあるアメリカ人は減少しているが、ALICEは増加している

例えば、低所得者用食料品購入支援プログラムであるSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)の受給資格を得るためには、連邦貧困レベルの約138%以下の所得、つまり4人家族の総所得が3万9000ドル(約602万円)以下でなければならない。

障害を持つアメリカ人に給付される補足的所得補償給付(Supplemental Security Income)の場合、受給できなくなるのは通常、年間の個人所得2万3652ドル(約365万円)からだ。州によっては、個人や家族が連邦貧困レベルの200%から250%の所得があっても受給できる場合もある。

ユナイテッドフォーALICEによると、これらの世帯は一般的なアメリカ人よりもインフレの影響を受けているという。消費者物価指数(CPI)は、アメリカのインフレを測る主な指標のひとつだが、外食、スポーツ用品、コンサートチケットなど、ALICEが頻繁に購入しない商品やサービスが多く含まれている。

ユナイテッドフォーALICEは、低所得世帯の生存予算をより詳細に追跡する「ALICE必需品指数」を開発した。基本的な支出のみのインフレ率を測定すると、ALICE必需品指数はCPIよりも速く上昇している。同時に、ALICEは過去12年間、賃金の上昇に遅れをとっている。

「我々の計算では、毎年同じものを買うだけなのに、遅れを取るようになることが分かった。ALICEは、その期間、これらの物を買うためにさらに丸1年働かなければならなかっただろう」とフープスは言う。

そして、ALICE内でも格差が見られる。

「黒人やヒスパニック系の世帯、障害を持つ人々に影響が大きく、若い世帯や高齢者世帯でもALICEの基準値を下回る可能性が高く、また子どものいる片親の世帯も、両親のいる世帯と比較すると基準値を下回る可能性が高い」

実際、多くのアメリカ人は必ずしも貧困に陥っているわけではないが、ALICEになる可能性は高まっている。フープスによると、ALICEというレッテルは労働者の間で共感を呼んでいるという。

「我々がプレゼンをすると、終わった後にみんながやって来て、『なぜ私が苦労しているのかを説明してくれてありがとう。私は自分が問題だと思っていた』と言われる」とフープスは言う。

「ここでは構造的な説明をするので、非常に現実的な形で人々に知らしめている」

このことは、ALICEの基準値を上回るアメリカ人の割合が、2010年から2021年にかけて、フロリダ州やユタ州を除く、ほぼすべての州で減少したことを意味する。フロリダ州とユタ州は、新型コロナウイルスのパンデミック中に沿岸部の富裕層が移住してきた州だ。

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2010年から2021年のALICE以上のクラスの割合の増減

ALICEが増えていることは、アメリカ人が良い経済指標に対して楽観的になれない理由の一つかもしれない。また、アメリカで苦しんでいるのはいったい誰なのかという型にはまったイメージに風穴を開けることにもなる。

「人々は、それは誰なのか、多くの型にはまったイメージを持っていて、それは怠け者であったり、努力していない人だったりする。人々には生活コストがあり、仕事の賃金がある。だがそれらの仕事のほとんどは、生活コストをカバーできる十分な賃金を支払っていないこと我々のデータは示している」とフープスは語った。

「これは数学的な方程式であり、構造的な問題だ。人々が努力していないわけではない」
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●「5100万世帯が日々の生活に苦慮、十分な収入得られず 米」

CNN

2018.05.19 Sat posted at 18:07 JST

https://www.cnn.co.jp/usa/35119435.html

5100万世帯が十分な収入を得られず、家計のやりくりで苦労しているとの調査結果が発表された

ニューヨーク(CNNMoney) 米国の世帯数の43%が月々の家計のやり繰りに苦労し、住宅費、食費、子どもの世話、健康保険、交通費や携帯電話利用料などの支払いに困らないほど十分な収入を得ていないことが全米規模の最新調査で19日までにわかった。

43%は約5100万世帯に相当する。今回調査の実施組織は「United Way ALICE Project」で、貧困層とされる1619万世帯や、「ALICE」と呼んでいる、勤めてはいるものの資産が限られ、所得額に限界がある家庭の3470万世帯が含まれる。

今回調査の責任者は米国経済は一見、好転の兆しを示しているが、世帯の経済的な困窮は広範な問題であり続けていることが裏付けられたと指摘した。

家計の調整に困っている世帯数を州別に見た場合、カリフォルニア、ニューメキシコ、ハワイ各州がそれぞれ49%と最大だった。最小はノースダコタ州の32%だった。

これら世帯の多数は保育関連分野、在宅介護、事務所補助員や店舗従業員で構成され、低賃金に直面し、貯金もほとんどない。米国内の職種の約66%の報酬は時給20ドル(約2220円)以下としている。

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●「相対的貧困率とは 日本15.4%、米英より格差大きく」

きょうのことば

日本経済新聞 2023年11月19日 2:00

▼相対的貧困率 国や地域の中での経済格差を測る代表的な指標のひとつ。所得が集団の中央値の半分にあたる貧困線に届かない人の割合を指す。税金や社会保険料を除いた手取りの収入を世帯の人数で調整した「等価可処分所得」が比較の物差しになる。

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、貧困線は直近の2021年に127万円だった。相対的貧困率は15.4%で、30年前より1.9ポイント高い。経済協力開発機構(OECD)によると、米国は21年に15.1%、英国は20年に11.2%だった。日本は米英と比べると国内の経済格差がやや大きい状況といえる。
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日本で子どもの相対的貧困率はピークの12年に16.3%と、おおよそ6人に1人の割合だった。21年は11.5%まで下がった。子どもがいる世帯で大人が一人だけの場合は44.5%と、大人が二人以上いる場合の8.6%を大きく上回る。ひとり親世帯などが経済的に苦しい傾向にあることを示している。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。世界政治について詳しく分析しています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 バブル経済崩壊以降、日本は経済成長のない国となった。この状態が30年も続いている。英語の「generation」、日本語では世代と訳すが、これは約30年を意味する。一世代、経済成長がないということになる。1990年代に生まれて、現在20代中盤から30代中盤の若い人たちは、日本が縮小する時代を生きてきた人たちだ。日本はデフレーション(物価の継続的な低下)の中にある。

 そうした中で、安倍晋三政権下、日本銀行は異次元の量的緩和を行い、日本国債を引き受けて、日本銀行券(紙幣)を発行し、現金を市中に流そうとしてきた。市中に流れる現金の量が増えれば、物価が自然と上がる、そうすれば経済成長ということになる、というものだった。日本銀行の黒田東彦総裁(当時)は就任当時、2年間で2%の物価上昇を実現すると宣言したが、それを達成することができないままで、日銀総裁を退任した。現在の植田和男総裁も2%の物価上昇を目標として掲げている。

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 世界的に見ると、新型コロナウイルス感染拡大が落ち着き、経済活動が復活する中で、ウクライナ戦争が起き、更にはパレスティナ紛争も始まった。結果として、石油や食料品の輸入価格が高騰し、物価は上昇することになった。これは政府の考えていた道筋とは違うだろうが、とりあえず物価は上昇した。
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しかし、一般国民の給料や報酬は実質的には下がっており、生活は苦しい。物価の上昇率よりも給料の上昇率が高ければ生活は楽になるが、その逆だと生活は苦しくなる。現在の状況は、給料が上がらずに、物価が高いという状況だ。統計で見れば、物価は下がっているが、実質賃金も下がり続けている。このような状況は厳しい。

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 何よりも給料が上がることが重要であるが、それができないということであるならば、生活者としてはデフレの方がありがたいということになる。そのような考えが出ないようにするために賃上げを伴ったインフレが実現することを望む。

(貼り付けはじめ)

日本はついにインフレーションに突入した。それについて誰も喜んでいない(Japan Finally Got Inflation. Nobody Is Happy About It.)

-25年間続いたデフレーションの後、物価上昇に一般国民は怒っている。

ウィリアム・スポサト筆

2024年1月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/15/japan-economy-inflation-deflation/?tpcc=recirc_latest062921

過去25年間、日本の中央銀行と政府は、経済成長の足かせとみなされてきたデフレーション圧力(deflationary pressures)を終わらせることに共通の大義を見出してきた。そして今、それは成功しつつある。しかし、人々はそれを好まない。

標準的な経済理論によれば、高レヴェルの財政赤字(high levels of deficit spending)と超低金利(ultra-low interest rates)は、ほぼ必然的にインフレ率の上昇につながるはずであり、通常、ほとんどの経済にとって問題となる結果となる。しかし、日本は、持続的な物価と賃金のデフレーションという、逆の問題のリスクの代表的な存在となっている。

ベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、日本銀行(Bank of Japan、BOJ)の行動を強く支持した。バーナンキは、まだFRB理事に過ぎなかった2003年5月、日本金融学会での講演で、「デフレ問題に対処することは、日本経済に実質的・心理的な利益をもたらし、デフレを終わらせることは、日本が直面している他の問題を解決することをより容易にする」と述べた。危機に瀕しているのは日本経済の健全性だけでなく、「かなりの程度、世界の他の国々の繁栄でもある」とバーナンキは言った。彼が後にFRB議長として、2007年から2008年にかけての世界金融危機後に大規模な量的緩和(quantitative easing、QE)プログラムを提案した理由の一つは、アメリカにおける同様のデフレの罠(deflationary trap)に対する彼の懸念だった。

これを達成するため、日銀はまず超低金利を試み、それが失敗するとゼロ金利、そして最終的にはマイナス金利を導入した。さらに、成長が見込まれる中小企業に融資する銀行への特別資金供給や、融資を一定額増やした銀行への資金供給など、融資を奨励するさまざまな制度が設けられた。貸出促進策は、主に2つの障害にぶつかった。1つは、日本の銀行は資金を必要としない企業にしか資金を貸したがらないこと(日本の大企業は巨額の現金を保有している)、そして、このような低金利では、融資の開始とサーヴィシングにかかるコストが利払いの利益を上回ってしまうことである。

2013年、安倍晋三首相によって日銀総裁に任命された黒田東彦は、周囲から好かれる人物だった。大蔵省出身で中央銀行内ではアウトサイダーだった黒田総裁は、逆風に警戒心を持っていた。黒田総裁は、日銀のバランスシートを倍増させることで、2年以内に2%のインフレを実現すると約束した。

FRBのQEを超え、日本はQQEを導入することになる。QQEとは、量的緩和に質的(qualitative)という考え方を加えたもので、国債だけでなく、よりリスクの高い資産も買い入れることを意味する。その結果、バランスシートは大幅に拡大し、事実上、毎年予算総額の約30%に相当する政府の安定した財政支出を現金化することになった。黒田総裁の10年間の任期中にバランスシートが4倍以上に膨れ上がったにもかかわらず、賃金上昇が物価上昇を促すという「好循環(virtuous cycle)」のアイデアは黒田総裁の在任中ほとんどずっと実現せず、消費者物価指数はゼロ近辺にとどまった。

変化は起きたが、それは中央銀行の政策によるものではなかった。その代わり、主に最近の世界にとってのナンバーワンのゲームチェンジャーによるものだった。それは、新型コロナウイルス(COVID-19)である。輸入コストの上昇とサプライチェーンの混乱により、世界標準から見れば小幅なレヴェルではあったが、物価上昇が経済のほぼ全ての分野で目に見えるようになった。2023年1月までに消費者物価指数は4%跳ね上がり、1981年以来の高水準となり、日本銀行が設定した目標の2%を大きく上回った。この中で、外国人観光客が再び東京や京都の中心部に押し寄せたため、ホテル価格は急騰し、63%上昇した。日本の買い物客にとっては、食品メーカーがコスト上昇を隠そうとするため、「シュリンクフレーション(shrinkflation)」という形で多くの影響が出ている。東京の中心部では、コーヒー1袋がまだ4ドル前後で売られている。大手食品包装会社の昨年の収益が33%急増したのも不思議ではない。

その結果、労働力の減少、良好な経済成長、技能不足が給与を高騰させる中、停滞していた賃金がようやく動きの兆しを見せ始めた。 2023年10月の賃金は前年比1.5%上昇し、春季労使交渉で組合員は平均3.6%の上昇を記録した。

では、なぜ皆が喜んでいないのか? 現実は、この2つの成長の道筋によって、インフレ調整後の実質賃金が着実に低下しているのだ。政府の数字によれば、実質賃金は2023年11月まで20ヶ月連続で減少し、前年同月比で3%の減少を記録した。

マネックスグループのグローバル・アンバサダーであり、日本で最も有名なエコノミストの一人であるイェスパー・コールは、「国民は愚かではない。30年にわたるデフレは終わりを告げたが、日本国民は望むようなインフレを手にしているのだろうか?」と語った。

実際、デフレは日本が相対的に貧しくなるにつれて、政策立案者を歯ぎしりさせたが(技術職のなかには、現在の日本よりヴェトナムの方が給料の良いものもある)、物価が毎年1%前後下落する一方で給料が小幅に上昇するサラリーマンにとっては好都合だった。新しいシナリオはもっと複雑だ。インフレ経済下で働く労働者が証言しているように、賃金はほとんどの場合、小売価格よりもゆっくりと上昇する。黒田総裁が誕生する前の2012年、ある日銀関係者は、中央銀行がデフレを阻止しようとしているにもかかわらず、国民はデフレを好んでいるという調査結果が出たと内々に語っていた。

物価上昇による価格ショックは、岸田文雄首相にとって不本意な打撃である。岸田首相は明確な理由もなく信任の危機に直面している。岸田首相とジョー・バイデン米大統領は、その点ではお互いを同情できるに違いない。

昨秋、政府の支持率が「危険水域(danger zone)」の30%(党が首相として新たな顔を模索する前兆となる数字)を下回ったとき、岸田氏は補助金を提供して政府が持っていない現金を配り始めた。これはエネルギーや公共料金の高騰による影響を抑えるためだった。しかし、これさえも裏目に出て、人気回復を狙っているのではないかとの疑念が出てきた。

コールは、「国民が不満に思っているのは、岸田首相は常に支出を増やしているが、国民がお金を使うためのプログラムがないことだ。日本人はお金に対して合理的で、散財したりはしない」と述べている。

2021年10月に就任した岸田首相は現在、ほとんどの世論調査で20%をわずかに上回る支持を得ており、回答者の3分の2が岸田政権を支持しないと答えている。これにより、通常であれば、与党自由民主党(Liberal Democratic Party、LDP)を実質的に支配する党の長老たちによって解任される機会が出てくるだろう。これは1955年の党創設以来のモデルであり、結党以来以来、6年間を除いて自民党が政権を維持するのに役立った。

しかし、岸田首相はしばらくの間生き残るかもしれない。一連のスキャンダルの最新のものには、違法な資金調達の可能性を巡る自民党の他の幹部も関与しており、潜在的な後継者層の縮小に影響を与えている。また、そもそも岸田首相が首相になった理由の1つは、党内のリベラル派とタカ派の両方を満足させる明確な後任もいないということだ。

もう1つの未解決の問題は、岸田首相、あるいは後継者が実際に25年間にわたるデフレ圧力に終止符を打つことができるかどうかだ。最新のインフレ統計は物価上昇の鈍化を示しており、2023年11月のコアインフレ率(生鮮食品価格を除く)はわずか2.5%上昇と、16カ月ぶりの低水準となった。これは消費者にとっては朗報かもしれないが、一部のエコノミストは、経済が本当に自律的な賃金・物価上昇に向けて舵を切ったのか、あるいは新たな数字が景気後退につながる消費者の低迷を示しているのかどうかについて懐疑的な見方をしている。焦点は今春の労働組合の賃金交渉であり、労働者と政府の両者は、少なくとも現時点では、賃金引き上げによって最終的に労働者がインフレを上回ることができると期待している。この費用を支払わなければならない企業はあまり熱心さを示していない。

しかし、一部のエコノミストは依然として懐疑的だ。野村総合研究所のエコノミストで元日銀理事の木内登英は11月の報告書で、「来春交渉での賃上げは予想される水準に達しないと考えている」と述べた。このため、日銀はマイナス金利の変更を控える可能性があると述べた。他の先進国がインフレ率の急上昇を受けて金融引き締め政策に切り替えている中、日本は依然として超低金利を維持する唯一の国である。

同時に木内は、量的緩和をあまりに長引かせることは、利回りをゼロかそれ以下に保つために国債を購入する日銀のバランスシートが増え続けることを意味すると指摘する。これは、将来金利が上昇した場合、膨大な保有資産の価値が急落するため、日本銀行の財務状況に対するリスクを高めることになる。バランスシートは今や日本の年間GDPを上回っており、その影響は深刻なものになる可能性がある。もしそうなれば、政府は救済を余儀なくされるだろう。しかし政府はすでに、日本銀行を使って自国の金融の行き過ぎを補填している。

平均的な日本人にとって古き良きデフレの日々を懐かしむようになってしまう。

※ウィリアム・スポサト:東京を拠点とするジャーナリスト、2015年から『フォーリン・ポリシー』の寄稿者を務めている。20年以上にわたり、日本の政治と経済を追いかけており、ロイター通信と『ウォールストリート・ジャーナリスト』紙に勤務していた。2021年にカルロス・ゴーン事件とそれが日本に与えた衝撃についての共著の本を刊行した。
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 古村治彦です。

 日本国内でも様々な商品の値上げ、内容量の削減が続いている。政府は物価高騰対策に躍起となっている。その大きな原因は石油価格の高騰であるが、世界規模での食糧供給にもウクライナ戦争が影響を与えている。ウクライナは世界有数の食糧輸出国である。ソヴィエト連邦の急速な近代化、五か年計画のために、その資金と労働者への食糧確保のために、ウクライナの農民たちが収奪され飢饉が発生したことは歴史の悲しい事実だ。ウクライナの農業生産力がソ連をあれほどの大国に押し上げたということになる。ソ連加盟時代には重工業化も進められ、生産力という点でウクライナという国は大きな可能性を秘めている国、大国になる可能性のある国と言われ続けてきた。

 ウクライナからの穀物輸出に依存している国々は多い。そのウクライナから収穫された穀物が輸出できないという状態が続いている。ウクライナ戦争によってロシアの艦船による黒海封鎖が実施されているためだ。ウクライナから輸出される穀物はそのほとんどは黒海沿岸の港湾から船で出荷されてきた。しかし、黒海がロシア海軍によって封鎖されてしまうと、ウクライナからの穀物は輸出できなくなる。戦争中ではあるが、ウクライナ国内では例年の80パーセントの作付けがなされたということだ。ウクライナでは年に2回小麦が収穫できるということだが、それらが輸出できないということになると、世界の食糧供給に大きな影響を与えることになる。

 船で輸出できないということで、ウクライナ国内の小麦を鉄道でヨーロッパ各国に運んで、各国の港から輸出するという案も検討されているようだが、鉄道の幅が違うこと、コストとリスクの高さのために実現は難しいと見られている。また、ロシア海軍の黒海封鎖に対抗してヨーロッパ各国の有志諸国が海軍を出すという提案もなされているが、そうなればロシアと直接対峙することになるという危険もありこの話も進んでいない。

 西側諸国による対ロシア経済制裁はロシア側には打撃であるが、西側諸国にもまた深刻な影響を及ぼしている。遠く離れた日本でも影響が出ている。ここは早期の停戦ということも真剣に検討されるべきだ。しかし、状況はそうはいかないようだ。ウクライナ側はこの戦争を利用してクリミアとウクライナ東部を完全に回復しようと考えているようだ。そうなれば戦争はますます泥沼化していく。西側諸国はより高度な武器をウクライナに供給せざるを得なくなるが、そうなれば共闘者扱いでロシアからの攻撃のリスクも高まる。第三次世界大戦ということにもなりかねない。そうしたことにならないように、是非早期の停戦をとこれまでと同様に繰り返して訴える。

(貼り付けはじめ)

ロシアによる黒海封鎖は世界の食糧危機を加速させる(Russia’s Black Sea Blockade Will Turbocharge the Global Food Crisis)

-リトアニアは、ロシアによるウクライナの輸出制限を打破するために海軍連合創設を呼びかけたが、まだ取り上げられていない。

ロビー・グラマー、クリスティアン・リュー、メアリー・ヤン筆

2022年5月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/24/russia-ukraine-blockade-food-crisis-black-sea/

ウクライナにおけるロシアの地上戦が停滞する中、ロシア海軍の艦艇が黒海で純緒に前進し、ウクライナの海岸線を掌握して内陸部の目標への攻撃を可能にし、ウクライナの輸出を封鎖する試みを強化している。

現在、西側諸国はロシアによる封鎖を解除し、戦争で揺れた世界の商品・農産物市場の緊張を和らげる方法を見つけようと躍起になっている。ウクライナは「ヨーロッパの穀倉地帯(breadbasket of Europe)」と呼ばれ、世界全体で約4億人を養っている。そして、数多くの発展途上諸国に対するトップの穀物供給国である。そうした国々の中には、また、ロシアが2月末にウクライナへの侵攻を開始して以来、政治的に不安定な中東やアフリカ諸国が含まれている。これらの国々では食料価格が高騰している。

時計の針は刻々と進んでいる。あと2ヶ月で今シーズン最初の収穫を迎える。ロシアの封鎖が続けば、現在ウクライナの港に滞留している数千万トンの穀物の多くが出荷できなくなる。

今月、国連世界食糧計画(U.N. World Food Program、WFP)デイヴィッド・ビーズリー代表は次のように警告した。「港を開放し、使えるようにする必要がある。さもなければ、大惨事の上に大惨事を重ねることになる。このことが、世界中の最も貧しい人々にどれほどの打撃を与えることになるのか、信じがたいことが起きる」。

NATOとヨーロッパ連合(EU)の加盟国であるリトアニアは、封鎖されたウクライナの穀物を満載した貨物船を安全に護衛し、ロシアの軍艦をかわして黒海を通過し、海上貿易ルートにアクセスするために、各国の海軍の「有志連合(coalition of the willing)」の結成を提案している。他のNATO加盟諸国がこの計画に署名するかどうかは不透明だ。ほとんどのNATO加盟諸国はウクライナに軍事物資を送っているが、NATOとロシアの対立を誘発するような事態を避けるため、貨物船の護衛とはいえ、自国軍を紛争に直接巻き込むことには慎重である。

このような計画は、1936年の「海峡の規制に関するモントルー条約」に基づいて、黒海の出入口と通過できる艦艇の数を管理するNATOの同盟国であるトルコの承認も必要となるだろう。

同時に、EU加盟諸国は、ウクライナの穀物供給を、西ヨーロッパを経由して鉄道で輸送して、ヨーロッパの他の港に陸送する代替ルートを計画している。しかし、この計画は論理的に実行が難しく、コストも高くつく。ウクライナの鉄道は他のEU加盟諸国と異なるゲージを使用しており、ウクライナの国境でチョークポイントを作り出している。

国際食糧政策研究所の上級研究員ジョセフ・グラウバーは次のように述べている。「ウクライナ国外に穀物を出荷させようとする誘因は十分にある。しかし、システムは上流に向かうようにできておらず、全て港に向かうように構築されている」。

また、そのように鉄道を使ってヨーロッパ各国に送るようにしても、ウクライナ戦争勃発前にウクライナの黒海沿岸の各港から出荷された輸出量を補うことは不可能だ。グラウバーは「通常ウクライナから輸出される穀物の大部分は黒海沿岸の各港から船によって輸出されている。また、一部はアゾフ海沿岸のウクライナ東部の港からも輸出されている。アゾフ海は黒海の一部だ」と述べている。

食糧危機の到来を告げる警告にもかかわらず、ロシアは国連や西側諸国による封鎖解除の要請を無視し、代わりに食糧危機を悪化させた西側による対露経済制裁に責任があると主張している。

NATO加盟諸国の中には、ロシアの海上封鎖を突破するために、ウクライナ海軍を支援する取り組みを強化し始めたところもある。ロイド・オースティン米国防長官は月曜日、デンマークが長距離対艦ミサイルシステム「ハープーン」をウクライナに送ることを発表した。この動きは、現在ウクライナの港を封鎖しているロシアの軍艦を危険に晒す可能性がある。ロシア海軍は4月に旗艦「モスクワ」が沈没するなど、既に大きな挫折を経験している。

しかし、これらの新しい防衛資産が、ロシアの海上封鎖を完全に撤回したり、ウクライナの重要な港湾都市オデッサに対するロシアの攻撃回数を緩和したりして、ウクライナの輸出供給ラインを安全に復活させるのに十分であるかどうかは不透明だ。更に、戦争の影響で黒海の海上保険料が高騰しているため、ロシアによる海上封鎖に亀裂が生じたとしても、商船がウクライナの港に寄港しなくなる可能性もある。

ウクライナ産の小麦は、多くの国の主要食糧であり、年に2回収穫される。ロシアの封鎖によって輸出がストップすれば、今収穫を迎えている作物を簡単かつ迅速に補充することはできない。昨年、ウクライナは約2000万トンの小麦を輸出したが、これは専門家が予測する今年の小麦の総収穫量にほぼ匹敵する。

ウクライナの港湾封鎖は、今後何年にもわたって世界の食糧供給に影響を与える可能性がある。戦争にもかかわらず、ウクライナの農家はこの春、例年の80パーセントの耕作地で小麦を植えることができたと推定されている。2シーズン分の穀物輸出が今、ロシアの封鎖によって縛られる可能性があるという見通しが立っている。

国際通貨基金(IMF)のオルタナティブ・エグゼクティブ・ディレクターで、以前はウクライナ国立銀行の副総裁を務めたウラディスラフ・ラシュコバンは次のように語っている。「私たちは前回の収穫について話している。そしてこれは、最も低所得の国々において、食料価格の上昇と食料不足を引き起こすことになるだろう」。

それは、ウクライナの小麦だけのことではない。ウクライナとロシアを合わせると、世界の大麦生産の3分の1近く、ひまわり油の輸出の半分を占めている。更には、ロシアと隣国のベラルーシは、ウラジミール・プーティン大統領の戦争を仕組んだ共犯者であり、農業用の重要な肥料成分であるカリの世界的な生産国である。両国は現在、戦争の資金源を断つため、国際的な制裁措置と輸出禁止措置に直面している。

世界の農業と気候の動向をテクノロジーで追跡するソフトウェア会社「グロ・インテリジェンス」上級副社長、スティーヴ・マシューズは次のように述べている。「ソヴィエト連邦が崩壊して以来の過去30年間、ウクライナ、ロシア、そして旧ソヴィエト諸国における農業生産性は急上昇を続けてきた。人々はその生産に依存するようになり、突然その生産が停止されると、多くの問題が発生することになる」。

主要供給国からの輸出が途絶えたことで、他の潜在的輸出国にも間接的な影響を及ぼしており、彼らは更なる食糧不足に備えて国産の穀物を備蓄している。例えば、インドは最近、小麦の価格が上昇し、記録的な猛暑に見舞われたため、小麦の輸出を禁止した。このような傾向は、穀物価格をさらに上昇させている。世界銀行の4月の報告書によると、小麦の価格は今年40%以上上昇し、インフレ調整前の名目ベースで過去最高を記録すると予測されている。

封鎖が続く限り、その影響はウクライナの次の収穫にまで及ぶ可能性があると専門家は警告を発している。ウクライナの穀物倉庫が満杯のままであり、十分な臨時貯蔵施設を確保できない場合、同国の次の収穫は貯蔵不能になる可能性がある。

シカゴ国際問題評議会の著名な研究員で、国連世界食糧計画の前事務局長であるエルサリン・コーシンは次のように述べた。「保管場所も輸送手段もないため、次の収穫で大きな食糧損失が発生する可能性がある。そうなれば、ウクライナ国内での収穫は1回だけでなく2回分も失われることになる」。

エイミー・マキノンがこの記事に貢献している。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウントは@RobbieGramer

※クリスティアン・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌編集員。ツイッターアカウントは

@christinafei

※メアリー・ヤン:『フォーリン・ポリシー』誌インターン。ツイッターアカウントは@MaryRanYang

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 アメリカのジョー・バイデン大統領の支持率は低いままだ。この言葉を何度繰り返したことだろうか。アメリカの分断を癒す穏やかな大統領として、ドナルド・トランプ前大統領とは違うのだ、新型コロナウイルス対策も経済対策もしっかりやれるんだ、連邦議会は民主党が過半数を握っているし、上院議員出身だから知己も多い、と鳴り物入りでスタートしたバイデン大統領が、トランプ前大統領の支持率とあまり変わらずに、低迷している。民主党側はトランプ前大統領の支持率の低さを嘲笑していたが、それならばバイデン大統領にも同じだけの嘲笑を浴びせねばバランスが取れないだろう。

 現在のアメリカでは、人々の不安感、悲観主義が渦を巻いている。インフレが進行し、生活が苦しいということが最大の原因だ。インフレは貧しい人たちほど影響を受ける。民主党の支持基盤は貧しい人々であることから、そこからそっぽを向かれると民主党は厳しい。また、期待の新型コロナウイルス対策でもバイデンの支持率はそこまで高くはない。人々はもう疲れている(日本もそうだが)。そうなれば、どこの国でもそうだが、「政治が悪い、指導者が悪い」ということになる。そこからバイデンに対する批判が高まるということになる。

 ウクライナ情勢でも、ウクライナに決定的な軍事援助ができない以上、ウクライナ軍や国民、財産の犠牲を重ねながらロシア軍の勝利を引き延ばすことはできるが、ここから逆転させることは難しい。ウクライナ失陥となれば、バイデンに対する支持率はますます下がるだろう。

 今年11月の中間選挙では連邦上下両院で共和党が過半数を奪還する可能性が高い。そうなれば、バイデン政権の運営もますます厳しくなる。目玉政策を推進することも出来なくなる。そもそもバイデン政権の目玉政策派は公共事業に対する大型支出ということで、現在のインフレ率を考えると支持を得ることが難しい。バイデン政権のブレイクスルーは困難である。

(貼り付けはじめ)

『ワシントン・ポスト』紙・ABC共同世論調査は深刻な悲観主義に陥っているアメリカ湖民の姿を発見した。国民は経済とバイデンの指導力に懸念を持っている(Post-ABC poll finds a deeply pessimistic nation, worried about the economy and Biden’s leadership)

―11月の中間選挙に向かう中で有権者たちは民主党ではなく共和党をより信頼している状況で、バイデン大統領の支持率はまた新たな低い数字を記録した。

ダン・バルズ、スコット・クレメント、エミリー・ガスキン筆

2022年2月27日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/politics/2022/02/27/biden-post-abc-poll/

『ワシントン・ポスト』紙とABCニューズの共同世論調査によると、ジョー・バイデン大統領は火曜日に一般教書演説を行うが、アメリカ国民は深く悲観しており、バイデン大統領の下で経済が悪化し、重要問題に対する彼の指導力を信頼しておらず、2022年11月の選挙後に共和党が議会を支配することを望んでいるということだ。

バイデンは、プライムタイムに連邦下院議場から国民に語りかける際、複数の問題に対処することになる。ロシア軍がウクライナに侵攻し、ヨーロッパの安定を乱し、西側同盟に挑戦している。アメリカとその同盟諸国がロシアに科した制裁は、アメリカがインフレコストの下でその対処に苦労しているにもかかわらず、原油価格を上昇させる可能性がある。一方、バイデンは、数カ月にわたって停滞している国内政策の残りの部分からの影響に直面している。

今回の世論調査では、バイデンの大統領支持率は過去最低となり、彼が行っている仕事を支持すると答えた人は37%、不支持と答えた人は55%だった。全体では、44%が強く不支持だと答えている。予想通り、共和党支持者の間では圧倒的に不支持(86%)で、無党派層の多数(61%)も否定的な評価をしている。民主党支持者の間では77%がバイデンに好意的な評価をしている。

washingtonpostabcpolls202202501

次の連邦議会では、大統領に対するチェック機能を果たすために共和党の手に過半数を委ねるか、バイデンの優先事項を支持する民主党の手に委ねるか、どちらがいいかという質問に対しては、成人の50%が、共和党が連邦議会の過半数を掌握する方が良いと答え、40%が、民主党過半数を握ることを支持している。

また、今日選挙が行われる場合、連邦下院議員選挙でどのように投票するかという質問に対しては、登録済有権者の49%が共和党の候補者を支持すると答え、42%が民主党の候補者に投票すると答えた。ちなみに、民主党が大きな得票を得て連邦下院の過半数を獲得した2018年の中間選挙の直前には、この同じ質問で民主党が7ポイントの優位を占めた。

ロシアの侵攻は、この選挙の年の初頭における政治的な計算を変えた。しかし、ウクライナでの戦闘はまだ初期段階にあり、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の最終目的も完全に知られていないことを考えると、バイデン大統領と民主党に対する有権者の態度にどんな影響があり得るかを評価するには時期尚早であろう。

初期の評価は矛盾している。ロシアに科された制裁措置には大きな、そして超党派の多数が賛成している。しかし、47%がバイデンのこれまでの危機管理方法に不支持と答えている。今のところ、今回の国際危機がバイデンを後押しすることはない。国際危機がアメリカ大統領の支持率を引き上げることはこれまで何度か起きている。今回の調査は、本格的な侵攻が始まり、アメリカなどが制裁で対応する前にほぼ終了した。

アメリカ人はウクライナ危機に対するバイデン大統領の指導力以外にも、大きな問題でバイデンを否定的に評価している。バイデンの経済への対応に関する支持率は、現在37%で、58%が不支持と答えている。これは2021年11月の世論調査よりもわずかに悪いのだが、その差は統計的に有意ではない。

新型コロナウイルス感染拡大への対応については、44%が支持、50%が不支持と答えている。バイデンの新型コロナウイルス感染拡大に関する数字は、昨年の夏、10人中6人が彼のやっている仕事を承認すると答えたときから、着実に下がってきている。それ以来、ワシントン・ポスト紙とABCのどの共同世論調査でも、新型コロナウイルス感染者数が急激に減少し、マスク着用義務やその他の制限の全般的な緩和が国の多くの地域で進行しているにもかかわらず、その支持率はさらに少し低下している。

大統領は、アメリカ人の経済に対する厳しい評価が重荷になっているようだ。現在、75%のアメリカ人が経済を否定的に評価しており、2021年11月の70%から上昇している。これは、ワシントン・ポスト紙とABCの共同世論調査において、2013年以来最悪の評価である。全体では、39%が経済は「悪い」状態にあると答えており、これは2012年以来最も高い数字だが、2021年11月に同じことを答えた38%からほとんど変化していない。

バイデンが大統領に就任して以来、アメリカ人の大多数は経済が悪化したと言っており、54%がそう答えたのに対し、経済は良くなったという人は17%、13ヶ月前に就任する前とほぼ同じという人は27%だった。

バイデンの大統領就任後の1年間で、失業率は4%にまで低下し、経済は約600万人の新規雇用を増やした。しかし、インフレ率は40年ぶりの高水準に達し、ガソリンや食料品の価格はアメリカの家庭の財布を直撃している。

アメリカ人の10人のうち6人は、インフレが自分自身や家族の一員に苦難をもたらしたと答え、10人に3人はその苦難が深刻であると答えた。所得が5万ドル以下の層では、深刻な苦難に見舞われたと答えた人の割合はさらに高く43%になっている。

washingtonpostabcpolls202202502

アメリカ人の3分の1以上が、バイデンが大統領になる前ほど経済的に恵まれていないと答え、一方、全成人のほぼ半数は、バイデンが大統領になったときと経済的にほぼ同じ状況だと答えている。6人に1人はより裕福になったと答えている。

バイデン大統領に現在のインフレ率の責任があるのかどうかについて、ほぼ均等に分かれている。50%が「大いに」あるいは「かなり」責任があると答え、48%は「あまり」あるいは「まったく」責任がないと答えた。これらの意見は党派的の線に沿って分裂している。

価格高騰の責任は、より高い利益を求める大企業や、サプライチェインを遮断した新型コロナウイルス感染拡大による経済的混乱にあるとする意見が多い。3人に2人以上(全てのの党派で過半数を占める)が、インフレ率の上昇は利益を上げようとする企業のせいだと言い、10人に7人以上が新型コロナウイルス感染拡大による混乱を原因として挙げている。

washingtonpostabcpolls202202503

バイデンに対する印象の弱点は、彼の個人的な能力に対する疑念の度合いとつながる。彼が強い指導者であるかという質問に対して59%がノー、36%がイエスと答えた。これは彼の全体的な支持率と密接に関連する。無党派層では65%が「強くない」と答えた。

バイデン大統領に関する更なる個人的な質問については、バイデンには大統領を務めるのに必要な精神的な鋭敏さがないと思うという人が54%、あると思うという人が40%となっている。前回、ワシントン・ポスト紙・ABCニューズの共同世論調査でこの質問をしたのは2020年5月だった。この時は、バイデン候補が大統領に必要な精神的鋭敏さを持っていると答えた人が51%だったのに対し、そうでないと答えた人は43%だった。今回はほぼ逆の結果だった。

この質問について、共和党支持者と民主党支持者は全く逆の見解を持っているのは驚くに値しない。次の選挙で重要な役割を果たす無党派層については、大統領の精神的鋭敏さについて59%が否定的な評価をしており、2020年5月から13ポイント上昇している。

一方、2022年11月の選挙への関心は、歴史的に見て大統領選の年に比べて投票率が低くなることを考えると、比較的高くなっている。現在、成人の67%、登録済有権者の75%が「確実に投票する」と回答した。これは、中間選挙の投票率が過去100年で最高に急増した2018年の年明けに比べればわずかに高い数字となっている。この早い段階で、共和党議員を支持する有権者の82%が「確実に投票する」と答えているのに対し、民主党を支持する有権者の74%が「確実に投票する」と答えている。

今回のワシントン・ポストとABCの共同世論調査は、共和党員または共和党寄りの無党派層であると認識している人の割合が2回連続で増加していることを示している。最新の世論調査では、46%の成人が共和党員または共和党寄りであり、昨年6月の41%、4月の40%から上昇した。民主党支持者の割合は、昨年4月の48%から今月は43%に減少している。これは、ギャラップ社の世論調査において、2021年初頭から年末にかけて共和党へのシフトが顕著であったことと一致する。

中間選挙が近づくにつれ、どの政党が最も信頼されるか、国民の評価は分かれている。経済問題では共和党が大きくリードしており、54%の成人が共和党を信頼すると答え、35%が民主党を信頼すると答えた。この問題については1990年に共和党が記録した19ポイントのリードに匹敵する。一方、新型コロナウイルス感染対策については、43%対37%と、民主党が僅差で優勢である。

アメリカ国民は、教育に関して誰を信頼するかで大きく分かれている。この問題は、マスクの義務付けや遠隔学習から、親の関与やカリキュラムの問題、特にアメリカの人種史の教育まで、この1年でより争いの激しいものとなっている。

歴史的には、教育問題では民主党が優位に立ってきたが、共和党は2022年11月の中間選挙に向けてこの問題を最重要課題とし、民主党を守勢に立たせようとするシグナルを発している。今日の世論調査では、これらの問題への対処について、共和党を信頼する有権者が41%に対し、民主党をより信頼すると答えた有権者は44%だった。2006年には、56%が民主党をより信頼していた。1990年から2006年にかけて、民主党は教育問題への対応で平均して13ポイントの優位を保っていた。

『ワシントン・ポスト』紙・ABC共同世論調査は2022年2月20日から24日にかけてランダム・サンプリングで選ばれた1011名の成人を対象に実施された。調査は携帯電話と地上電話を使って行われた。全ての結果について誤差は4ポイントだ。サンプルのうち904名は登録済の有権者たちだ。

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(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。  
 主流派経済学の「誤り」、行き過ぎたグローバライゼーション(超[ハイパー]グローバライゼーション)によってアメリカの労働者たちは傷ついたということについて、経済学者たちから反省が出ている。1990年代から既にグローバライゼーションに対して批判を行った経済学者たちもいたが、そうした人々は激しい批判に晒された。しかし、そうした人々は復権しつつある。
 中野剛志著『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】 (ワニの本)』では、激しいインフレ対策のためには競争や規制緩和、グローバライゼーションが有効だ、それはこれらの政策はデフレを生み出すからだとしている。1970年代から80年代にかけてのアメリカは激しいインフレに苦しんでおり、その対策にはこれらの政策は有効だった。しかし、経済がデフレになればこうした政策は逆効果ということになる。  
 日本ではバブル崩壊からデフレになる中で、インフレ対策のための政策が実行された。そのために、デフレはより進行することになった。新自由主義的な政策と社会主義的な政策は、その時の状況に応じて使い分けをするべきで、どちらが完全に正しく、完全に間違っているということはない。しかし、日本では新自由主義が神の言葉のように扱われ、デフレ不況下にもかかわらず、更にデフレを進行させる政策が実行された。それが平成という時代だった。  
 経済学に振り回されて不幸になった日本。まずは主流派経済学のどこが間違っていたのか、どのように間違っていたのかということを知らねばならない。
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経済学という人類を不幸にした学問: 人類を不幸にする巨大なインチキ 

(貼り付けはじめ)

「次々と逃げ出す経済学者たち(ECONOMISTS ON THE RUN)」

―ポール・クルーグマン(Paul Krugman)やその他の主流派の国際貿易を専門とする学者たちは現在、「自分たちはグローバライゼーション(globalization)について間違ってしまった」ということを認めつつある。その内容は、専門家たちが考えていた程度以上にグローバライゼーションがアメリカの労働者たちに損害を与えた、というものだ。アメリカ国内にいる自由市場を信奉する経済学者たちがホワイトハウスに保護主義を唱える煽動政治家(demagogue)を据えることに貢献したことになるのだろうか?

マイケル・ハーシュ(MICHAEL HIRSH)筆

2019年10月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/10/22/economists-globalization-trade-paul-krugman-china/

ポール・クルーグマンは、これまで自分が馬鹿だと判断した人間や考えを認めて受け入れることなどなかった。ノーベル経済学賞を受賞した経済学者クルーグマンの名声はアメリカ国内にとどまらず海外にまで鳴り響いた。知識人ならば一度は書いてみたいと羨む『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説ページにスペースが与えられてきた。彼が名声を獲得した方法は自分とは考えの異なる反対者たちを最も効果的な方法でやっつけるというものだった。1990年代初頭から数多くの著書と論文を発表してきたが、クルーグマンは一貫して、グローバライゼーションの進展のペースが急速であることに疑問を持った人々全てに対して経済をよく理解していない馬鹿者という烙印を押し続けた。他国との競争、特に中国との競争への恐れを募らせた専門家たちを形容するのにクルーグマンは「愚か者(Silly)」という言葉を多用した。他国との競争を恐れるな、とクルーグマンは言い放った。そして、自由貿易は皆さんの国(訳者註:アメリカ)の繁栄にほんの小さな影響しか与えないだろう、と言っていた。

格差についてこれから出版される本の一章を短くまとめた「経済学者たち(私も含まれる)がグローバライゼーションについて間違っていたこと」という題の最新の論稿の中で、クルーグマンは、彼自身と主流派経済学者たちが、グローバライゼーションが「ハイパーグローバライゼーション(hyperglobalization、過剰なグローバライゼーション、超グローバライゼーション)」を引き起こすことになることと、経済や社会の大変動、特にアメリカ国内の製造業に従事する中流階級の大変動を認識できず、「物語の極めて重要な部分を見逃してしまった」と書いている。そして、労働者階級が多く住む地域は中国との競争の影響を深刻に受けてしまっている。クルーグマンは、経済学者たちは中国との競争の影響を過小評価するという「重大な誤り」を犯してしまったと述べている。

1990年代以降に荒廃してしまったアメリカの地域と解雇された数多くの労働者たちのことを考えると、これはまさに「しまった」という瞬間だ。最近すっかり謙虚になったクルーグマンは、彼をもっと悩ませるであろうことについて考察しなければならない。それは、「クルーグマンとその他の主流派経済学者たちはホワイトハウスで歴代政権に自由市場について間違った助言を多く行ってしまったことで、保護主義を唱導するポピュリスト、ドナルド・トランプをホワイトハウスの主に据える手助けをしてしまったのではないか?」という疑問だ。

公平を期すならば、クルーグマンはここ数年、彼自身が以前に唱えていた自由貿易の影響についての主張が誤りであることを認め修正するということを率直に行っている。クルーグマンは、2008年の金融危機とそれに続く大不況の後、彼が専門としている経済学についての批判の急先鋒を務め、その内容は時に辛辣だ。クルーグマンは、過去30年間の大部分の機関において、マクロ経済学は「良く言ってけばけばしいほどに役立たずで、悪く言えば明確に有害(spectacularly useless at best, and positively harmful at worst)」だったと断言した。クルーグマンはオバマ政権が及び腰で財政と経済に関する諸改革をほとんど進めなかったことを厳しく責め立てた。クルーグマンは、トランプ政権で労働長官を務めた、現在の進歩主義派の源流とも言うべきロバート・ライシュのような人々についても非難の言葉を投げつけた。ライシュは国際的な競争に懸念を持ち、アメリカの労働者たちのためにより良い保護政策と再訓練プログラムを実行しようとした。クルーグマンは、勢いよく人々をやっつけていた1990年代に私に向かって、ライシュは「気の利いた言い回しはうまいが、深く考察することをしない、嫌な奴(offensive figure, a brilliant coiner of one-liners but not a serious thinker)」とこき下ろした。

ライシュは私(著者)宛のEメールの中で「彼(訳者註:クルーグマン)が貿易についてやっと正しく理解することになったのは喜ばしいことだ」と書いている。クルーグマンは別のEメールで、「私はライシュに対して述べたことの内容について後悔している。もっとも彼がハイパーグローバライゼーションの到来を予測し、チャイナ・ショックの影響を最小限にとどめようとしたなどとことは聞いたことなど一切なかったけれども」と精一杯の負け惜しみを込めて書いている。

しかし、経済学者たちが経済学自体に過剰なまでに自信を持っていたことを認めるのにあまりにも長い時間がかかってしまった。また、誤りを認めたクルーグマンは2009年、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌の記事の中で、「経済学者たちは一団となって、数学という素晴らしい装いに包まれた美しい理論を真実だと思い込んでいた(economists, as a group, mistook beauty, clad in impressive-looking mathematics, for truth)」と書いている。ジャーナリストのビンヤミン・アッペルボームは彼の最新刊『経済学者たちの時間:誤った予言者、自由市場、社会の断面(The Economists’ Hour: False Prophets, Free Markets, and the Fracture of Society)』の中で書いているように、経済学者たちは1960年代末からそれまでなかった方式でワシントンの政策立案を支配するようになり、アメリカを誤った方向に導いた。経済学者たちは、自由市場が持つ驚嘆すべき機能に関して確実性が科学的に証明されているという誤った考えを主張することで、アメリカ社会を崩壊させ、分裂させた。経済学者たちは、社会福祉を犠牲にして効率性を最優先し、「高賃金の雇用を切り捨て、低コストの電子工学(low-cost electronics)に未来を託する形で、アメリカの製造業の利益をアメリカの消費者の利益に飲み込ませることになった(訳者註:消費者の利益[製品の価格が下がること]が製造業者の利益よりも優先されることになった)」というのだ。

デイヴィッド・オーターは、マサチューセッツ工科大学(MIT)に所属する経済学者で、中国の急速な台頭がアメリカの労働市場に驚くべき影響を与えていることを論文として発表し、クルーグマンは自分の最新の論説の中で、オーターの論文を引用している。オーターは、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストでもあるクルーグマンが自分の誤りを認めたことを評価している。オーターは私宛のEメールの中で、「なんて珍しいことが起きたんだ?!」と書いている。オーターはクルーグマンや貿易に関する誤った予測をすることにつながった「以前のコンセンサス」を擁護する人々を責めはしないとEメールの中で書いている。彼は次のように書いている。「率直に言って、その当時に現在の状況を予測することは、地震が何日の何時何分にどこそこで起きるということまで正確に予測することと同じことだ(訳者註:不可能だった)と私は考えている」。より大きな問題は自由貿易こそが正しいのだと信奉する時代精神(zeitgeist)だ、とオーターは述べている。彼は次のように書いている。「一般に正しいとされる知見にとらわれたために、経済学者は何が起きているかを示す証拠をきちんと評価することができなかったのだ。・・・そこには何かギルドに入っている会員たちが共通で信奉しなければならない正統とされる教義(guild orthodoxy)があったと言えるだろう。その教義とは、世界中の全ての場所に住む人々全てにとって、国際貿易は善である、と政策決定者たちに助言することが私たち経済学者の仕事なのだという断定であった」。

ハーヴァード大学の経済学者ダニ・ロドリックは1997年に『グローバライゼーションは行き過ぎか(Has Globalization Gone Too Far?)』という著書を発表した。この本は発表された当時異端(then-heretical)とされた。先週、ロドリックはこの本を書いたのは、「グローバライゼーションに関して経済学は全く無関心だ」と確信したからだ、と述べている。現在では彼の考えが主流になっている。ロドリックは国際経済学会の次期会長に決まっている。しかし、経済学者たちは自分たちが作り出して残してしまったゴミを片付けるためにようやく始動し始めた。ロドリックは、元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャールと一緒に、ワシントンに本拠を置くピーターソン国際経済研究所で格差に関する会議を開催した。しかし、ロドリックが述べているように、もう手遅れかも知れない、それはトランプ大統領の下では道理にかなった議論ができないからだ。現在のアメリカ大統領は現代経済学を無用の長物として切り捨てて、アダム・スミスよりも前の時代の重商主義者たちがそうであったように、荒削りの保護主義を復活させ、主張している。大統領は貿易をゼロサムゲームと見なし、貿易黒字は利益、貿易赤字は損失と捉えている。トランプ大統領は経済学の基本を全く分かっていない。アッペルボームは最新刊『経済学者たちの時間の中で、トランプ大統領の無知は「現代アメリカの大統領の中でも比べるべくもないほど酷い」とアッペルボームと書いている。

トランプ大統領はこれまでになかった規模の貿易戦争を始めた。彼は一般国民の中国に対する不信と恐怖を利用している。一般国民に中国に対する不信と恐怖が広がったのは経済学者たちの初期の誤解、特に中国の経済成長がいかに素早く膨大な数のアメリカの製造業の雇用を喪失させたかについて誤解していたせいである。現在ではクルーグマンも認めているように、「製造業における雇用は2000年を境にして崖から落下するかのように急落し、この急落はアメリカの貿易赤字、特に対中貿易赤字の急増に対応している」のだ。雇用や貿易赤字の数字は、トランプ大統領の重商主義の主張に信憑性を与えるようになっている。トランプ大統領の主張はどこまでいってももっともらしいだけで中身はないのだ。

ロドリックは「トランプ大統領登場の効果の中で最も予想外だったのは、貿易、格差、労働者にとっての適切な保護についての根拠に基づいた議論がアメリカ国内で完全にできなくなってしまったことだ」と述べている。これもまた1990年代に経済学者たちが行った自由貿易に関する間違った助言によるマイナスの影響のためだ。

また、MITのオーターは次のように述べている。「自由貿易を熱狂的に推し進める政策によって、政策立案者たちは貿易が与えるショックによる悲惨な結果が起きることに目を向けることができず、またこれらのショックに対する準備を全くできないようになってしまった(例えば、この当時のアメリカには貧弱なセーフティネットと職業再訓練政策しかなかった)」。その結果、アメリカは何の懸念も持たず、準備もないままに、政策が生み出した無視できない規模の災害(別名:チャイナ・ショック)に見舞われた。そして、一般国民の自由貿易に対する怒りがかき立てられ、アメリカ国内の政策議論において自由貿易の害悪ばかりが強調されることにつながった。読者の皆さんもこの皮肉がお分かりになるだろう。貿易を熱狂的に推進することで、自由貿易の正当な根拠を完全に壊してしまったのである。

クルーグマンに対して、彼と他の経済学者たちが犯した誤りがトランプ大統領の台頭を助けることになったのではないかと質問してみた。これに対してクルーグマンは次のように答えた。「私たちはその問題について議論をしている最中だ。しかし、トランプ大統領の貿易政策に関する限り、彼を支持しているブルーカラーの労働者たちさえも含めて、多くの人々が支持していないと私は考える。従って、トランプ大統領の台頭という現象について、貿易を専門とする学者たちに責任を問うことは酷だ」。

このクルーグマンの発言に同意しない人もいるだろう。問題の一部は、ポスト冷戦時代のコンセンサスが出現しつつあった1990年代、学者たちが貿易に関して、単純な二者択一の考え方、自由貿易を信奉するのかそれとも保護主義貿易を信奉するのか、どちらかを選ぶように強いるという考え方をする傾向があったことだ。クルーグマンもこうした経済学者の一人だった。クルーグマンは概して自由貿易を支持する立場だった。クルーグマンの著書や論説(これらは賢明な戦略的貿易政策の知的基盤となった)とノーベル経済学賞の受賞理由となった論文と比べると、微妙に矛盾する内容が含まれていることを考えると結果として皮肉な話ということになる。

政策論争に参加した人たちの中には、ロドリック、ライシュ、ビル・クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長を務めたローラ・ダンドリア・タイソンのように、急速なグローバライゼーションに対してより深刻に懸念を持っている人たちもいた。こうした人々は、自由貿易を推進する考え方に疑義を呈したり、タイソンの場合にはアメリカの競争力を高めるために政府主導の産業政策(government-led industrial policy)を強力に推し進めたりした。この当時は冷戦終結直後であり、新たに自由化された国々の多くが盛んに国際経済に参入するようになっていた。クルーグマンは急速なグローバライゼーションに懸念を持つ考え方も激しく嫌った。

オーターは次のように述べている。「ダニは先を行き過ぎていたのだ」「彼は突然に起きるショックそれ自体を懸念していたのではなく、グローバライゼーションに付き物の、開放経済(open economies、訳者註:外国との金融や貿易の取引を行っている経済)に基づいた政策オプションについて懸念を持っていた(社会保険への資金供給や増大しつつあった国家間を移動する資本への課税などといったオプションについてどうなるのかと懸念していた)。これは問題の核心だったし、今でもそうだ。・・・一方、ローラ・タイソンは積極的な産業政策は主張していたが、その時期、産業政策が政策の分野におけるヴォルデモート(訳者註:ファンタジー小説『ハリー・ポッター』に出てくる敵役)のような存在であった」。オーターをはじめとするクルーグマンのこれまでの業績を詳細に調べた人たちは、クルーグマンが正しい産業政策は産業部門に競争力を持たせるのに役立つことは当然のことながらきちんと理解していた、と評価している。しかし、オーターは次のようにも述べている。「経済学者たちは産業政策によって競争力を高めることを声高に主張すると、落ち着きのない子供に実弾が入った武器を渡すのと同じで、政策立案者たちに危険な武器を渡すことになると恐れていたのだろうと私は考える」。

クルーグマンは、国際貿易がいかに低賃金の労働者に影響を与え、格差を拡大させたのかについて「極めて小さい」程度の読み違いをしただけだと責任を認めている。これは間違ってはいない。しかし、冷戦終結後、貿易をめぐる議論(クルーグマンが貿易に関する研究でノーベル賞を受賞)は、自由市場対政府の介入をめぐる、より大きな規模の知的な分野での争いの代理戦争となった。クルーグマンは、発展途上諸国の低賃金労働との競争からアメリカの雇用と賃金は深刻な影響を受けると主張した「戦略的貿易論者」を経済学的に無知だとして攻撃した。『ワシントン・ポスト』紙の記者を務めた経験を持つジャーナリストのウィリアム・グレイダーは詳細な調査をまとめた著書『一つの世界に向けて準備が出来ているのかどうか:国際資本主義の騒々しい論理(One World, Ready or Not: The Manic Logic of Global Capitalism)』の中で、発展途上諸国が先進諸国に向けて輸出攻勢をかけるようになっており、「アメリカ国内で誇らしい勝者となる産業部門と無残な敗者となる産業部門が出てくる」と警告を発した。クルーグマンはぐレイダーの本を「最初から最後まで愚かな内容の本」と切って捨てた。高名な評論家であるマイケル・リンドも、アメリカの生産性向上の進み具合では「世界規模の低賃金労働経済(global sweatshop economy)」に太刀打ちできない、と(正確に)主張していた。これに対して、クルーグマンは、リンドは経済的な「諸事実」について全くの無知だと切り捨て、「誰かからの案内や指南がなければ一つの分野できちんとした仕事が出来ないような人物を信頼することはできない」と述べた。クルーグマンは自由貿易に関するコンセンサスに疑いの目を向ける同じ学問分野を研究する仲間であるはずの経済学者たちに対しても同様に辛辣だった。ローラ・タイソンが1993年にクリントン政権の大統領経済諮問委員会委員長に選ばれた時、クルーグマンはタイソンには「必要不可欠な分析スキル」が欠けていると発言した。

クルーグマンは、こうした疑いや疑問を持つことは全て誤った経済学なのだ、と述べている。他の国々の動向について心配し過ぎてはいけない。全ての国が開かれた貿易から利益を得るという比較優位(comparative advantage)など新古典派の概念のおかげで安定がもたらされる。実際のところ、市場への政府の介入と「自由貿易」よりも「公平な貿易」(より広範で高い関税、失業保険、労働者保護)に類した主張を行った人々は保護主義貿易論者のレッテルを貼られ、議論から締め出された。クリントン大統領は「グローバリゼーション」大統領という評判をとっていたが、それでも競争力を失った産業に従事していた人々の運命についての会議を開くなどしていた。クリントン大統領がローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学していた時代からの古い友人であったライシュ労働長官は、クリントン大統領が赤字削減を熱心に進めていた時期に、教育、訓練、社会資本への再投資を公の場で主張した。そのためにライシュはクリントン大統領との会話から締め出され、遂には政権から去ることになった。

国家経済会議委員長を務めたジーン・スパーリングをはじめクリントン政権時代の高官たちは議論がそこまで激しいものではなかったと証言している。スパーリングは私に対して、「クリントン大統領は中流階級に気を配っていた」と述べた。また、スパーリングは次のようにも語っている。民主党がクリントン政権後も引き続き権力を握っていたら(訳者註:2000年の大統領選挙でアル・ゴアが勝利していたら)、中国が貿易の規範を守るようにより努力をしたであろう。例えば、「対波状攻撃(anit-surge)」の保護策を中国に強いたであろう。これは、1999年にクリントン政権が中国の世界貿易機関(World Trade Organization)参加をめぐる交渉を行った際に、参加のための必要条件としたものだった。具体的には、低価格の製品のダンピング輸出でアメリカの雇用を減少させることに反対するための施策のことだ。「人々は、(2000年の大統領選挙での)ある・ゴアとジョージ・W・ブッシュとの間の唯一の違いはイラク戦争についてであったと今でも考えている。しかし、もう一つの大きな違いがあった。それは、製造業を守ることに関してブッシュがやったよりもはるかに大きなそして多くのことをアル・ゴアがやったであろうということだ」と述べた。(ワシントン・ポスト紙で経済専門記者を務めたポール・ブルースタインは新著『分裂:中国、アメリカ、国際貿易システムの分解(Schism: China, America, and the Fracturing of the Global Trading System)』の中で、ブッシュ政権は中国をあまりにもやりたい放題にやらせ過ぎたと結論付けている。中国は輸出を加速させるために人為的に通貨価値の切り下げを行った。こうしたことを受けて、トランプ大統領はアメリカ経済が中国に「レイプ」)されたとまで主張している。)

クルーグマンにこき下ろされた人々は今でも彼の誤った判断を批判し、彼が懺悔をしても腹立ちを抑えられないままでいる。『アメリカン・プロスペクト』誌の共同編集長で、進歩主義派の思想家としてよく引用されるロバート・カットナーは次のように述べている。「誤りを認めて懺悔をすることは悪いことではないが、彼が書いていることを最後まで読むと、クルーグマンは今でも自由貿易か、さもなくば保護主義貿易かという過度に単純化した二分法を主張していることが分かる」「若き日のクルーグマンは(訳者註:アメリカの)競争力の優位は創出できることを証明したことで経済学界での名声が上がったのに、まるで経済学史を専攻している、数学を使わない学者たちが彼に言いそうなことを、クルーグマンが述べるようになっているのは何とも奇妙なことだ」。

こうした批判に対して、クルーグマンは中流階級に対しては、より良い医療と教育という保護が与えられるべきだと確信していると自己弁護している(彼が以前にニューヨーク・タイムズ紙のインターネット版に持っていたブログのタイトルは「1人のリベラル派の良心(The Conscience of a Liberal)」だった)。そして、彼は、自分が貿易に関する知見で誤りを認めたからと言って、それがワシントン・コンセンサス(Washington Consensus)と呼ばれる考え方を支持していることとはつながらない、と述べている。ワシントン・コンセンサスとは、ネオリベラルな(つまり、自由貿易を支持する)考え方で、財政規律、急速な民営化、規制緩和を支持するものだ。先週、クルーグマンは私に対して次のように述べた。「私たちは間違ったと認めることは、私たちを批判してきた人たち全てが正しかったということにはならないという点が重要だと私は考える。私たちを批判してきた人たちが何を言ってきたのかが重要だ。私が知る限り、貿易の分野で中国がここまで巨大に成長することを予測した人はほとんどいなかったし、一部の地域に集中した影響について注目した人もまたほとんどいなかった」。

だがしかし、グローバリゼーションを支持するコンセンサスに関してはより深刻な概念上の諸問題も存在した。こちらもノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジョセフ・スティグリッツは、前述のロドリックと同様、1990年代には貿易と資本移動に関する障壁をあまりにも早く撤廃することについて警告を発していた。スティグリッツは私に対して、「“標準的な新古典派経済学の分析”が抱える問題は、調整について注目をしないことだ。労働市場での調整は驚異的なまでにコストがかからないものだ、と新古典派経済学では考える」と述べた。タイソンとライシュ同様、スティグリッツもクリントン政権下で大統領経済諮問委員会委員長を務めた。この当時、スティグリッツは主流派からすればはずれ者(outliner)であり、 国際規模での資本の流れのペースを緩やかなものにしようと試みた(が失敗した)。スティグリッツはまた「通常、雇用の喪失のペースは新たな雇用の創出のペースよりもかなり速いものだ」と主張した。

最近の論説の中で、クルーグマンは、自由貿易の基調となった1990年代のコンセンサスを支持した彼のような経済学者たちは、貿易が労働市場に与える影響は最小限度のものとなると考えていたが、「特定の産業部門と地方の労働者たちに注目する分析的な方法に目を向けなかった。この方法を経済学者たちが採用していれば短期的な動向をより良く理解できたことだろう。この方法に目を向けなかったことについて私は大きな間違いであったと確信している。そしてこの間違いを犯すことに私も協力したのだ」と書いている。

開かれた貿易と比較優位についての古くから正しいとされてきた主張に説得力がなくなり、世界規模での供給チェインのような新しい現象に取って代わられたことに興味関心を持つ人々はたくさん存在した。世界規模での供給チェインによって、海外に雇用が移り、各地域から雇用が消えてしまった。クルーグマンは彼自身で2008年に発表した学術論文の中で、こうした超複雑な供給チェインがあるために、「世界貿易の性質は変化しているが、そのペースは明確な量的分析に関与するための経済学者の能力向上のペースを上回るものだ」と結論付けた。

スティグリッツは『フォーリン・ポリシー』誌に記事を掲載し、その中で次のように書いている。「はっきりしているのは、(グローバライゼーション)のコストは特定の地域、特定の場所にのしかかるものだということだ。製造業が位置していたのは賃金が低い場所であった。こうした場所では、調整コストは大きなものとなる」。また、グローバライゼーションの有害な影響は一時的な潮流ではないのではないかということが明らかにされつつある。アメリカ政府は発展途上諸国との貿易を急速に自由化し、それに伴って投資協定を結んだ。これによって「(労働組合の弱体化と労働関連の法規や規制の変化もあり)アメリカの労働者たちの交渉力に劇的な変化が起きた」。

伝統的な経済学におけるもう一つの側面について考え直さねばならないとこまできている。かつて経済学者たちは、失業率が低ければインフレーションが起きると信じていた。しかし、『エコノミスト』誌が最近の号の巻頭記事で書いているように、今日では、失業率とインフレーションとの関係を示す標準的なフィリップス曲線(standard Phillips curve)では説明がつかないようになっている。繰り返しになるが、最大の敗者はアメリカの労働者だ。経済学者たちはかつて、好況時には労働者たちは自分たちの賃金を引き上げることができる(だからインフレーションになる)と確信していた。一方で、現在出来上がりつつある経済学上の知見では、これとはいささか異なることを示唆している。その内容は、多国籍企業が世界全体を自分たちの領域に引き入れてから四半世紀が経過し(一方で労働者たちは大抵の場合、自分たちの生まれ育った国にとどまらねばならなかった)、世界を動き回るようになった資本は、世界各国を股にかける供給チェインという形で姿を現したのだが、国内にとどまった労働者たちよりも優位に立つようになった。

従って、経済学者たち自身が、主流派経済学がいかに急速に左傾化しているかということに驚愕している。先週開催された格差に関する会議で経済学者の多くが経済学の左傾化の現状を目撃した。会議の参加者の中には、「2020年の米大統領選挙をめぐる政治に関しては、経済学者の多くが中道派のジョー・バイデンよりもエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースといった進歩主義者たちを支持している」と語る人たちもいた。進歩主義派は労働者側に交渉力を取り戻させるための急進的な解決策を提示している。(例えば、ウォーレンは企業の役員会において労働者が参加できる割合を高くするという提案を行っている。)元IMFチーフエコノミストのブランシャールは「私はフランスで社会主義者となりそのままアメリカにやってきた。現在、私は自分自身何も変わっていないのに中道派になっていることに気づいた」とジョークを飛ばした。

こうした経済学の左傾化は、1990年代まで遡る経済学者たちの読み間違いが与えるマイナスの影響の結果と言えるだろう。ローラ・タイソンは「人々は物事がどれほど早く変化することができるかを見落とした」と語った。

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