古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:インフレ

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカ経済は堅調で、日米の金利差も大きいままで、ドル高円安(ドルを買って円を売る)状態が続いている。強いドル(購買力の高いドル)は、輸入製品が安くなり、アメリカ国民の生活のためには良いが、輸出は弱くなる。円安はその逆ということになる。アメリカは物価上昇が続いており、インフレ状態にあるが、実質賃金も上昇している。日本の物価がインフレなのかどうかは議論が分かれているところだが、実質賃金は低下しており、家計に影響を与えている。

 アメリカはインフレ状態であるので、利上げの判断がどうなるかであるが、景気減速も怖いとなると、なかなか踏み出せない状態にある。インフレ状態が続き、強いドルを背景にして、海外からの輸入が増えていくと、ドルの海外への流出は増えていく。ここで怖いのは、アメリカの景気減速であるが、それよりももっと怖いのは、アメリカ国債の崩れやドルの信用不安だ。アメリカ国内では経済が堅調と言われながら、下記の記事のように、厳しい状態にある人々の数は増えている。財産もなく、生活するのがやっとの賃金しか得られないが、公的な補助を受ける基準よりは上という数が、景気が好調ということもあって増えている。

しかし、それは逆に、賃金は上がっても生活は厳しいまま、公的補助がない分、厳しいということになる。住む場所を失い、自動車の中で生活をしているほぼホームレス状態であるが、仕事があるというようなことが起きている。都市部の固定資産税と家賃の高騰で、生活が破綻する人々は増えている。以前であれば、アメリカでは、高校を卒業すれば、親元を離れて自立して生活する、進学したり、就職したりということが当たり前だった。大学進学も奨学金を受けたり、学生ローンを組んだりして、自分で何とかするということが自然だった。今では、若い人たちは大学を卒業して、親元、実家に戻り、そこで生活するようになった。一人暮らしの家賃を払うことや、学生ローンの返済は自力ではとてもできない状況になっている。

 経済格差が進み、勝者はより富裕となり、敗者はより貧しくなり、それが固定化、階級化されて再生産されるようになる。人間社会は階級社会であったので、昔に戻ったということになる。しかし、それでは現代社会は不安定になるばかりだ。現在の社会は階級社会ではないということで設計されているが、それが実際と合わないということになれば、人々の不安と不満は高まるばかりだ。それが政治の世界でのポピュリズムとなり、ドナルド・トランプ大統領の誕生と、民主党進歩主義派の登場につながった。

これまでアメリカのことを書いてきたが、より深刻なのは日本である。以下の記事にあるように、経済格差はアメリカやイギリスよりも大きいということだ。戦後、「一億総中流社会」と呼ばれた日本であるが(これは過大評価ではあるが)、21世紀に入って、小泉政権以降の自民党政権、自公政権の政策の誤りによって、格差が拡大し、少子化が進行し、経済も衰退していった。「経済のことは自民党とその裏にいる財務省に任せておけば安心だ」と無定見、無思想に自民党に投票し続けた、日本国民自身が招いた大惨事である。日本の亡国化の進行を止める、もしくはそのスピードを緩める第一歩は自民党と財務相に責任を取らせることである。

(貼り付けはじめ)

●「アメリカでは「ALICE」が増えている職に就いているが資産がなく、生活費の支払いに苦労している人々」

Noah Sheidlower,Juliana Kaplan [原文] (翻訳:大場真由子、編集:井上俊彦)

May. 02, 2024, 10:30 AM  国際23,099

BUSINESS INSIDER

https://www.businessinsider.jp/post-285805

ALICEとは「資産に限りがあり、収入に制約がある雇用者」を指す。

・ほとんどのALICEは、政府の援助を受けるには収入がやや多いが、その収入はアメリカで日常生活を送るためには決して十分なものではない。

・彼らの存在は、アメリカが経済的に苦境にある人々を評価する方法にギャップがあることを示している。

フードスタンプ(食料品の配給システム)や障害者手当を受ける資格はない収入を得ていながらも、その収入が家賃や医療費が支払うには十分ではない場合、あなたは「ALICE」だということになる。

ALICEとは、非営利団体ユナイテッド・ウェイ(United Way)のプログラム「ユナイテッドフォーALICEUnited For ALICE)」が生み出した造語で、アメリカ人のうちで「資産が限られ(Asset Limited)、収入に制約がある(Income Constrained)被雇用者(Employed)」を表す言葉だ。4人世帯で31200ドル(約483万円)、個人で15060ドル(約233万円)という連邦貧困レベル(Federal Poverty Level)をわずかに上回る収入を得ながらも、基本的な生活の支払いに苦労しているアメリカ人を指す。

ALICEの多くは一般的に、得ている賃金が生活費をまかなうのに十分ではない労働者だ。つまり、彼らは給料ギリギリの生活をしている。中には、医療機関にかかるために、食費や保育料の支払いを犠牲にせざるを得ない人もいる。

ユナイテッドフォーALICEが、アメリカ国勢調査局(USCB)の全米地域調査(American Community Survey)のデータとユナイテッド・ウェイの推計によると、アメリカの世帯の約29%がALICEであり、13%が連邦貧困レベル以下にあるという。

政府の多くの取り組みは、人々が貧困から抜け出すことを支援しようとしてきた。だが、ユナイテッドフォーALICEでナショナルディレクターを務めるステファニー・フープス (Stephanie Hoopes)がBusiness Insiderに語ったように、連邦貧困レベルは多くの点で時代遅れであり、地域差や、人々の家計に占める食費の割合の変化を考慮していない。またフープスは、経済的には恵まれているが、将来のために投資することができない人々を支援することにあまり注意が払われていないとも話している。

アメリカ全体の貧困率はおおむね低下しており、これは一見、アメリカの労働者にとっては朗報のように思える。政府の支援は最も経済的に困窮するアメリカ人たちに届くかもしれないが、依然経済的に不安定なALICEへの給付金の打ち切りは、彼らを取り残してしまうことになるだろう。

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2010年から2021年の貧困率の変化

ALICEの割合はこの10年の間にアメリカ全土で増加しており、モンタナ州やアイダホ州などのパンデミックに起因したブームが起こった州ではその割合が大きく跳ね上がっている。これは、多くのアメリカ人の収入が増加したものの、インフレや住宅価格の高騰に追いついていない可能性があるからだ。

ALICEの広がりは、一見堅調に見える労働市場の根底にある経済的な問題を示しているのかもしれない。豊かさと支援の狭間に立たされるアメリカ人はますます増えており、国の政策はそのような人たちに応えるものにはなっていない。これは、さまざまな援助に対し受給資格を撤廃し、直接的な刺激策を提供していたパンデミック時の景気刺激策とは対照的だ。

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2010年から2021年のALICEの増減

「フラストレーションやストレス、難しい選択をしなければならない状況が毎日毎日続く中に身を置くことは本当につらいことだ」とフープスは言う。

「子どものために薬を買いに行くのか、それとも今夜の夕食を食べるのか。電気はつけたままにしておくのか、保育園に行くのか」

■貧困状態にあるアメリカ人は減少しているが、ALICEは増加している

例えば、低所得者用食料品購入支援プログラムであるSNAPSupplemental Nutrition Assistance Program)の受給資格を得るためには、連邦貧困レベルの約138%以下の所得、つまり4人家族の総所得が39000ドル(約602万円)以下でなければならない。

障害を持つアメリカ人に給付される補足的所得補償給付(Supplemental Security Income)の場合、受給できなくなるのは通常、年間の個人所得23652ドル(約365万円)からだ。州によっては、個人や家族が連邦貧困レベルの200%から250%の所得があっても受給できる場合もある。

ユナイテッドフォーALICEによると、これらの世帯は一般的なアメリカ人よりもインフレの影響を受けているという。消費者物価指数(CPI)は、アメリカのインフレを測る主な指標のひとつだが、外食、スポーツ用品、コンサートチケットなど、ALICEが頻繁に購入しない商品やサービスが多く含まれている。

ユナイテッドフォーALICEは、低所得世帯の生存予算をより詳細に追跡する「ALICE必需品指数」を開発した。基本的な支出のみのインフレ率を測定すると、ALICE必需品指数はCPIよりも速く上昇している。同時に、ALICEは過去12年間、賃金の上昇に遅れをとっている。

「我々の計算では、毎年同じものを買うだけなのに、遅れを取るようになることが分かった。ALICEは、その期間、これらの物を買うためにさらに丸1年働かなければならなかっただろう」とフープスは言う。

そして、ALICE内でも格差が見られる。

「黒人やヒスパニック系の世帯、障害を持つ人々に影響が大きく、若い世帯や高齢者世帯でもALICEの基準値を下回る可能性が高く、また子どものいる片親の世帯も、両親のいる世帯と比較すると基準値を下回る可能性が高い」

実際、多くのアメリカ人は必ずしも貧困に陥っているわけではないが、ALICEになる可能性は高まっている。フープスによると、ALICEというレッテルは労働者の間で共感を呼んでいるという。

「我々がプレゼンをすると、終わった後にみんながやって来て、『なぜ私が苦労しているのかを説明してくれてありがとう。私は自分が問題だと思っていた』と言われる」とフープスは言う。

「ここでは構造的な説明をするので、非常に現実的な形で人々に知らしめている」

このことは、ALICEの基準値を上回るアメリカ人の割合が、2010年から2021年にかけて、フロリダ州やユタ州を除く、ほぼすべての州で減少したことを意味する。フロリダ州とユタ州は、新型コロナウイルスのパンデミック中に沿岸部の富裕層が移住してきた州だ。

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2010年から2021年のALICE以上のクラスの割合の増減

ALICEが増えていることは、アメリカ人が良い経済指標に対して楽観的になれない理由の一つかもしれない。また、アメリカで苦しんでいるのはいったい誰なのかという型にはまったイメージに風穴を開けることにもなる。

「人々は、それは誰なのか、多くの型にはまったイメージを持っていて、それは怠け者であったり、努力していない人だったりする。人々には生活コストがあり、仕事の賃金がある。だがそれらの仕事のほとんどは、生活コストをカバーできる十分な賃金を支払っていないこと我々のデータは示している」とフープスは語った。

「これは数学的な方程式であり、構造的な問題だ。人々が努力していないわけではない」
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●「5100万世帯が日々の生活に苦慮、十分な収入得られず 米」

CNN

2018.05.19 Sat posted at 18:07 JST

https://www.cnn.co.jp/usa/35119435.html

5100万世帯が十分な収入を得られず、家計のやりくりで苦労しているとの調査結果が発表された

ニューヨーク(CNNMoney) 米国の世帯数の43%が月々の家計のやり繰りに苦労し、住宅費、食費、子どもの世話、健康保険、交通費や携帯電話利用料などの支払いに困らないほど十分な収入を得ていないことが全米規模の最新調査で19日までにわかった。

43%は約5100万世帯に相当する。今回調査の実施組織は「United Way ALICE Project」で、貧困層とされる1619万世帯や、「ALICE」と呼んでいる、勤めてはいるものの資産が限られ、所得額に限界がある家庭の3470万世帯が含まれる。

今回調査の責任者は米国経済は一見、好転の兆しを示しているが、世帯の経済的な困窮は広範な問題であり続けていることが裏付けられたと指摘した。

家計の調整に困っている世帯数を州別に見た場合、カリフォルニア、ニューメキシコ、ハワイ各州がそれぞれ49%と最大だった。最小はノースダコタ州の32%だった。

これら世帯の多数は保育関連分野、在宅介護、事務所補助員や店舗従業員で構成され、低賃金に直面し、貯金もほとんどない。米国内の職種の約66%の報酬は時給20ドル(約2220円)以下としている。

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●「相対的貧困率とは 日本15.4%、米英より格差大きく」

きょうのことば

日本経済新聞 20231119 2:00

▼相対的貧困率 国や地域の中での経済格差を測る代表的な指標のひとつ。所得が集団の中央値の半分にあたる貧困線に届かない人の割合を指す。税金や社会保険料を除いた手取りの収入を世帯の人数で調整した「等価可処分所得」が比較の物差しになる。

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、貧困線は直近の2021年に127万円だった。相対的貧困率は15.4%で、30年前より1.9ポイント高い。経済協力開発機構(OECD)によると、米国は21年に15.1%、英国は20年に11.2%だった。日本は米英と比べると国内の経済格差がやや大きい状況といえる。
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日本で子どもの相対的貧困率はピークの12年に16.3%と、おおよそ6人に1人の割合だった。21年は11.5%まで下がった。子どもがいる世帯で大人が一人だけの場合は44.5%と、大人が二人以上いる場合の8.6%を大きく上回る。ひとり親世帯などが経済的に苦しい傾向にあることを示している。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。世界政治について詳しく分析しています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 バブル経済崩壊以降、日本は経済成長のない国となった。この状態が30年も続いている。英語の「generation」、日本語では世代と訳すが、これは約30年を意味する。一世代、経済成長がないということになる。1990年代に生まれて、現在20代中盤から30代中盤の若い人たちは、日本が縮小する時代を生きてきた人たちだ。日本はデフレーション(物価の継続的な低下)の中にある。

 そうした中で、安倍晋三政権下、日本銀行は異次元の量的緩和を行い、日本国債を引き受けて、日本銀行券(紙幣)を発行し、現金を市中に流そうとしてきた。市中に流れる現金の量が増えれば、物価が自然と上がる、そうすれば経済成長ということになる、というものだった。日本銀行の黒田東彦総裁(当時)は就任当時、2年間で2%の物価上昇を実現すると宣言したが、それを達成することができないままで、日銀総裁を退任した。現在の植田和男総裁も2%の物価上昇を目標として掲げている。

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 世界的に見ると、新型コロナウイルス感染拡大が落ち着き、経済活動が復活する中で、ウクライナ戦争が起き、更にはパレスティナ紛争も始まった。結果として、石油や食料品の輸入価格が高騰し、物価は上昇することになった。これは政府の考えていた道筋とは違うだろうが、とりあえず物価は上昇した。
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しかし、一般国民の給料や報酬は実質的には下がっており、生活は苦しい。物価の上昇率よりも給料の上昇率が高ければ生活は楽になるが、その逆だと生活は苦しくなる。現在の状況は、給料が上がらずに、物価が高いという状況だ。統計で見れば、物価は下がっているが、実質賃金も下がり続けている。このような状況は厳しい。

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 何よりも給料が上がることが重要であるが、それができないということであるならば、生活者としてはデフレの方がありがたいということになる。そのような考えが出ないようにするために賃上げを伴ったインフレが実現することを望む。

(貼り付けはじめ)

日本はついにインフレーションに突入した。それについて誰も喜んでいない(Japan Finally Got Inflation. Nobody Is Happy About It.

-25年間続いたデフレーションの後、物価上昇に一般国民は怒っている。

ウィリアム・スポサト筆

2024年1月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/15/japan-economy-inflation-deflation/?tpcc=recirc_latest062921

過去25年間、日本の中央銀行と政府は、経済成長の足かせとみなされてきたデフレーション圧力(deflationary pressures)を終わらせることに共通の大義を見出してきた。そして今、それは成功しつつある。しかし、人々はそれを好まない。

標準的な経済理論によれば、高レヴェルの財政赤字(high levels of deficit spending)と超低金利(ultra-low interest rates)は、ほぼ必然的にインフレ率の上昇につながるはずであり、通常、ほとんどの経済にとって問題となる結果となる。しかし、日本は、持続的な物価と賃金のデフレーションという、逆の問題のリスクの代表的な存在となっている。

ベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、日本銀行(Bank of JapanBOJ)の行動を強く支持した。バーナンキは、まだFRB理事に過ぎなかった2003年5月、日本金融学会での講演で、「デフレ問題に対処することは、日本経済に実質的・心理的な利益をもたらし、デフレを終わらせることは、日本が直面している他の問題を解決することをより容易にする」と述べた。危機に瀕しているのは日本経済の健全性だけでなく、「かなりの程度、世界の他の国々の繁栄でもある」とバーナンキは言った。彼が後にFRB議長として、2007年から2008年にかけての世界金融危機後に大規模な量的緩和(quantitative easingQE)プログラムを提案した理由の一つは、アメリカにおける同様のデフレの罠(deflationary trap)に対する彼の懸念だった。

これを達成するため、日銀はまず超低金利を試み、それが失敗するとゼロ金利、そして最終的にはマイナス金利を導入した。さらに、成長が見込まれる中小企業に融資する銀行への特別資金供給や、融資を一定額増やした銀行への資金供給など、融資を奨励するさまざまな制度が設けられた。貸出促進策は、主に2つの障害にぶつかった。1つは、日本の銀行は資金を必要としない企業にしか資金を貸したがらないこと(日本の大企業は巨額の現金を保有している)、そして、このような低金利では、融資の開始とサーヴィシングにかかるコストが利払いの利益を上回ってしまうことである。

2013年、安倍晋三首相によって日銀総裁に任命された黒田東彦は、周囲から好かれる人物だった。大蔵省出身で中央銀行内ではアウトサイダーだった黒田総裁は、逆風に警戒心を持っていた。黒田総裁は、日銀のバランスシートを倍増させることで、2年以内に2%のインフレを実現すると約束した。

FRBQEを超え、日本はQQEを導入することになる。QQEとは、量的緩和に質的(qualitative)という考え方を加えたもので、国債だけでなく、よりリスクの高い資産も買い入れることを意味する。その結果、バランスシートは大幅に拡大し、事実上、毎年予算総額の約30%に相当する政府の安定した財政支出を現金化することになった。黒田総裁の10年間の任期中にバランスシートが4倍以上に膨れ上がったにもかかわらず、賃金上昇が物価上昇を促すという「好循環(virtuous cycle)」のアイデアは黒田総裁の在任中ほとんどずっと実現せず、消費者物価指数はゼロ近辺にとどまった。

変化は起きたが、それは中央銀行の政策によるものではなかった。その代わり、主に最近の世界にとってのナンバーワンのゲームチェンジャーによるものだった。それは、新型コロナウイルス(COVID-19)である。輸入コストの上昇とサプライチェーンの混乱により、世界標準から見れば小幅なレヴェルではあったが、物価上昇が経済のほぼ全ての分野で目に見えるようになった。2023年1月までに消費者物価指数は4%跳ね上がり、1981年以来の高水準となり、日本銀行が設定した目標の2%を大きく上回った。この中で、外国人観光客が再び東京や京都の中心部に押し寄せたため、ホテル価格は急騰し、63%上昇した。日本の買い物客にとっては、食品メーカーがコスト上昇を隠そうとするため、「シュリンクフレーション(shrinkflation)」という形で多くの影響が出ている。東京の中心部では、コーヒー1袋がまだ4ドル前後で売られている。大手食品包装会社の昨年の収益が33%急増したのも不思議ではない。

その結果、労働力の減少、良好な経済成長、技能不足が給与を高騰させる中、停滞していた賃金がようやく動きの兆しを見せ始めた。 2023年10月の賃金は前年比1.5%上昇し、春季労使交渉で組合員は平均3.6%の上昇を記録した。

では、なぜ皆が喜んでいないのか? 現実は、この2つの成長の道筋によって、インフレ調整後の実質賃金が着実に低下しているのだ。政府の数字によれば、実質賃金は2023年11月まで20ヶ月連続で減少し、前年同月比で3%の減少を記録した。

マネックスグループのグローバル・アンバサダーであり、日本で最も有名なエコノミストの一人であるイェスパー・コールは、「国民は愚かではない。30年にわたるデフレは終わりを告げたが、日本国民は望むようなインフレを手にしているのだろうか?」と語った。

実際、デフレは日本が相対的に貧しくなるにつれて、政策立案者を歯ぎしりさせたが(技術職のなかには、現在の日本よりヴェトナムの方が給料の良いものもある)、物価が毎年1%前後下落する一方で給料が小幅に上昇するサラリーマンにとっては好都合だった。新しいシナリオはもっと複雑だ。インフレ経済下で働く労働者が証言しているように、賃金はほとんどの場合、小売価格よりもゆっくりと上昇する。黒田総裁が誕生する前の2012年、ある日銀関係者は、中央銀行がデフレを阻止しようとしているにもかかわらず、国民はデフレを好んでいるという調査結果が出たと内々に語っていた。

物価上昇による価格ショックは、岸田文雄首相にとって不本意な打撃である。岸田首相は明確な理由もなく信任の危機に直面している。岸田首相とジョー・バイデン米大統領は、その点ではお互いを同情できるに違いない。

昨秋、政府の支持率が「危険水域(danger zone)」の30%(党が首相として新たな顔を模索する前兆となる数字)を下回ったとき、岸田氏は補助金を提供して政府が持っていない現金を配り始めた。これはエネルギーや公共料金の高騰による影響を抑えるためだった。しかし、これさえも裏目に出て、人気回復を狙っているのではないかとの疑念が出てきた。

コールは、「国民が不満に思っているのは、岸田首相は常に支出を増やしているが、国民がお金を使うためのプログラムがないことだ。日本人はお金に対して合理的で、散財したりはしない」と述べている。

2021年10月に就任した岸田首相は現在、ほとんどの世論調査で20%をわずかに上回る支持を得ており、回答者の3分の2が岸田政権を支持しないと答えている。これにより、通常であれば、与党自由民主党(Liberal Democratic PartyLDP)を実質的に支配する党の長老たちによって解任される機会が出てくるだろう。これは1955年の党創設以来のモデルであり、結党以来以来、6年間を除いて自民党が政権を維持するのに役立った。

しかし、岸田首相はしばらくの間生き残るかもしれない。一連のスキャンダルの最新のものには、違法な資金調達の可能性を巡る自民党の他の幹部も関与しており、潜在的な後継者層の縮小に影響を与えている。また、そもそも岸田首相が首相になった理由の1つは、党内のリベラル派とタカ派の両方を満足させる明確な後任もいないということだ。

もう1つの未解決の問題は、岸田首相、あるいは後継者が実際に25年間にわたるデフレ圧力に終止符を打つことができるかどうかだ。最新のインフレ統計は物価上昇の鈍化を示しており、2023年11月のコアインフレ率(生鮮食品価格を除く)はわずか2.5%上昇と、16カ月ぶりの低水準となった。これは消費者にとっては朗報かもしれないが、一部のエコノミストは、経済が本当に自律的な賃金・物価上昇に向けて舵を切ったのか、あるいは新たな数字が景気後退につながる消費者の低迷を示しているのかどうかについて懐疑的な見方をしている。焦点は今春の労働組合の賃金交渉であり、労働者と政府の両者は、少なくとも現時点では、賃金引き上げによって最終的に労働者がインフレを上回ることができると期待している。この費用を支払わなければならない企業はあまり熱心さを示していない。

しかし、一部のエコノミストは依然として懐疑的だ。野村総合研究所のエコノミストで元日銀理事の木内登英は11月の報告書で、「来春交渉での賃上げは予想される水準に達しないと考えている」と述べた。このため、日銀はマイナス金利の変更を控える可能性があると述べた。他の先進国がインフレ率の急上昇を受けて金融引き締め政策に切り替えている中、日本は依然として超低金利を維持する唯一の国である。

同時に木内は、量的緩和をあまりに長引かせることは、利回りをゼロかそれ以下に保つために国債を購入する日銀のバランスシートが増え続けることを意味すると指摘する。これは、将来金利が上昇した場合、膨大な保有資産の価値が急落するため、日本銀行の財務状況に対するリスクを高めることになる。バランスシートは今や日本の年間GDPを上回っており、その影響は深刻なものになる可能性がある。もしそうなれば、政府は救済を余儀なくされるだろう。しかし政府はすでに、日本銀行を使って自国の金融の行き過ぎを補填している。

平均的な日本人にとって古き良きデフレの日々を懐かしむようになってしまう。

※ウィリアム・スポサト:東京を拠点とするジャーナリスト、2015年から『フォーリン・ポリシー』の寄稿者を務めている。20年以上にわたり、日本の政治と経済を追いかけており、ロイター通信と『ウォールストリート・ジャーナリスト』紙に勤務していた。2021年にカルロス・ゴーン事件とそれが日本に与えた衝撃についての共著の本を刊行した。
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 古村治彦です。

 日本国内でも様々な商品の値上げ、内容量の削減が続いている。政府は物価高騰対策に躍起となっている。その大きな原因は石油価格の高騰であるが、世界規模での食糧供給にもウクライナ戦争が影響を与えている。ウクライナは世界有数の食糧輸出国である。ソヴィエト連邦の急速な近代化、五か年計画のために、その資金と労働者への食糧確保のために、ウクライナの農民たちが収奪され飢饉が発生したことは歴史の悲しい事実だ。ウクライナの農業生産力がソ連をあれほどの大国に押し上げたということになる。ソ連加盟時代には重工業化も進められ、生産力という点でウクライナという国は大きな可能性を秘めている国、大国になる可能性のある国と言われ続けてきた。

 ウクライナからの穀物輸出に依存している国々は多い。そのウクライナから収穫された穀物が輸出できないという状態が続いている。ウクライナ戦争によってロシアの艦船による黒海封鎖が実施されているためだ。ウクライナから輸出される穀物はそのほとんどは黒海沿岸の港湾から船で出荷されてきた。しかし、黒海がロシア海軍によって封鎖されてしまうと、ウクライナからの穀物は輸出できなくなる。戦争中ではあるが、ウクライナ国内では例年の80パーセントの作付けがなされたということだ。ウクライナでは年に2回小麦が収穫できるということだが、それらが輸出できないということになると、世界の食糧供給に大きな影響を与えることになる。

 船で輸出できないということで、ウクライナ国内の小麦を鉄道でヨーロッパ各国に運んで、各国の港から輸出するという案も検討されているようだが、鉄道の幅が違うこと、コストとリスクの高さのために実現は難しいと見られている。また、ロシア海軍の黒海封鎖に対抗してヨーロッパ各国の有志諸国が海軍を出すという提案もなされているが、そうなればロシアと直接対峙することになるという危険もありこの話も進んでいない。

 西側諸国による対ロシア経済制裁はロシア側には打撃であるが、西側諸国にもまた深刻な影響を及ぼしている。遠く離れた日本でも影響が出ている。ここは早期の停戦ということも真剣に検討されるべきだ。しかし、状況はそうはいかないようだ。ウクライナ側はこの戦争を利用してクリミアとウクライナ東部を完全に回復しようと考えているようだ。そうなれば戦争はますます泥沼化していく。西側諸国はより高度な武器をウクライナに供給せざるを得なくなるが、そうなれば共闘者扱いでロシアからの攻撃のリスクも高まる。第三次世界大戦ということにもなりかねない。そうしたことにならないように、是非早期の停戦をとこれまでと同様に繰り返して訴える。

(貼り付けはじめ)

ロシアによる黒海封鎖は世界の食糧危機を加速させる(Russia’s Black Sea Blockade Will Turbocharge the Global Food Crisis

-リトアニアは、ロシアによるウクライナの輸出制限を打破するために海軍連合創設を呼びかけたが、まだ取り上げられていない。

ロビー・グラマー、クリスティアン・リュー、メアリー・ヤン筆

2022年5月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/24/russia-ukraine-blockade-food-crisis-black-sea/

ウクライナにおけるロシアの地上戦が停滞する中、ロシア海軍の艦艇が黒海で純緒に前進し、ウクライナの海岸線を掌握して内陸部の目標への攻撃を可能にし、ウクライナの輸出を封鎖する試みを強化している。

現在、西側諸国はロシアによる封鎖を解除し、戦争で揺れた世界の商品・農産物市場の緊張を和らげる方法を見つけようと躍起になっている。ウクライナは「ヨーロッパの穀倉地帯(breadbasket of Europe)」と呼ばれ、世界全体で約4億人を養っている。そして、数多くの発展途上諸国に対するトップの穀物供給国である。そうした国々の中には、また、ロシアが2月末にウクライナへの侵攻を開始して以来、政治的に不安定な中東やアフリカ諸国が含まれている。これらの国々では食料価格が高騰している。

時計の針は刻々と進んでいる。あと2ヶ月で今シーズン最初の収穫を迎える。ロシアの封鎖が続けば、現在ウクライナの港に滞留している数千万トンの穀物の多くが出荷できなくなる。

今月、国連世界食糧計画(U.N. World Food ProgramWFP)デイヴィッド・ビーズリー代表は次のように警告した。「港を開放し、使えるようにする必要がある。さもなければ、大惨事の上に大惨事を重ねることになる。このことが、世界中の最も貧しい人々にどれほどの打撃を与えることになるのか、信じがたいことが起きる」。

NATOとヨーロッパ連合(EU)の加盟国であるリトアニアは、封鎖されたウクライナの穀物を満載した貨物船を安全に護衛し、ロシアの軍艦をかわして黒海を通過し、海上貿易ルートにアクセスするために、各国の海軍の「有志連合(coalition of the willing)」の結成を提案している。他のNATO加盟諸国がこの計画に署名するかどうかは不透明だ。ほとんどのNATO加盟諸国はウクライナに軍事物資を送っているが、NATOとロシアの対立を誘発するような事態を避けるため、貨物船の護衛とはいえ、自国軍を紛争に直接巻き込むことには慎重である。

このような計画は、1936年の「海峡の規制に関するモントルー条約」に基づいて、黒海の出入口と通過できる艦艇の数を管理するNATOの同盟国であるトルコの承認も必要となるだろう。

同時に、EU加盟諸国は、ウクライナの穀物供給を、西ヨーロッパを経由して鉄道で輸送して、ヨーロッパの他の港に陸送する代替ルートを計画している。しかし、この計画は論理的に実行が難しく、コストも高くつく。ウクライナの鉄道は他のEU加盟諸国と異なるゲージを使用しており、ウクライナの国境でチョークポイントを作り出している。

国際食糧政策研究所の上級研究員ジョセフ・グラウバーは次のように述べている。「ウクライナ国外に穀物を出荷させようとする誘因は十分にある。しかし、システムは上流に向かうようにできておらず、全て港に向かうように構築されている」。

また、そのように鉄道を使ってヨーロッパ各国に送るようにしても、ウクライナ戦争勃発前にウクライナの黒海沿岸の各港から出荷された輸出量を補うことは不可能だ。グラウバーは「通常ウクライナから輸出される穀物の大部分は黒海沿岸の各港から船によって輸出されている。また、一部はアゾフ海沿岸のウクライナ東部の港からも輸出されている。アゾフ海は黒海の一部だ」と述べている。

食糧危機の到来を告げる警告にもかかわらず、ロシアは国連や西側諸国による封鎖解除の要請を無視し、代わりに食糧危機を悪化させた西側による対露経済制裁に責任があると主張している。

NATO加盟諸国の中には、ロシアの海上封鎖を突破するために、ウクライナ海軍を支援する取り組みを強化し始めたところもある。ロイド・オースティン米国防長官は月曜日、デンマークが長距離対艦ミサイルシステム「ハープーン」をウクライナに送ることを発表した。この動きは、現在ウクライナの港を封鎖しているロシアの軍艦を危険に晒す可能性がある。ロシア海軍は4月に旗艦「モスクワ」が沈没するなど、既に大きな挫折を経験している。

しかし、これらの新しい防衛資産が、ロシアの海上封鎖を完全に撤回したり、ウクライナの重要な港湾都市オデッサに対するロシアの攻撃回数を緩和したりして、ウクライナの輸出供給ラインを安全に復活させるのに十分であるかどうかは不透明だ。更に、戦争の影響で黒海の海上保険料が高騰しているため、ロシアによる海上封鎖に亀裂が生じたとしても、商船がウクライナの港に寄港しなくなる可能性もある。

ウクライナ産の小麦は、多くの国の主要食糧であり、年に2回収穫される。ロシアの封鎖によって輸出がストップすれば、今収穫を迎えている作物を簡単かつ迅速に補充することはできない。昨年、ウクライナは約2000万トンの小麦を輸出したが、これは専門家が予測する今年の小麦の総収穫量にほぼ匹敵する。

ウクライナの港湾封鎖は、今後何年にもわたって世界の食糧供給に影響を与える可能性がある。戦争にもかかわらず、ウクライナの農家はこの春、例年の80パーセントの耕作地で小麦を植えることができたと推定されている。2シーズン分の穀物輸出が今、ロシアの封鎖によって縛られる可能性があるという見通しが立っている。

国際通貨基金(IMF)のオルタナティブ・エグゼクティブ・ディレクターで、以前はウクライナ国立銀行の副総裁を務めたウラディスラフ・ラシュコバンは次のように語っている。「私たちは前回の収穫について話している。そしてこれは、最も低所得の国々において、食料価格の上昇と食料不足を引き起こすことになるだろう」。

それは、ウクライナの小麦だけのことではない。ウクライナとロシアを合わせると、世界の大麦生産の3分の1近く、ひまわり油の輸出の半分を占めている。更には、ロシアと隣国のベラルーシは、ウラジミール・プーティン大統領の戦争を仕組んだ共犯者であり、農業用の重要な肥料成分であるカリの世界的な生産国である。両国は現在、戦争の資金源を断つため、国際的な制裁措置と輸出禁止措置に直面している。

世界の農業と気候の動向をテクノロジーで追跡するソフトウェア会社「グロ・インテリジェンス」上級副社長、スティーヴ・マシューズは次のように述べている。「ソヴィエト連邦が崩壊して以来の過去30年間、ウクライナ、ロシア、そして旧ソヴィエト諸国における農業生産性は急上昇を続けてきた。人々はその生産に依存するようになり、突然その生産が停止されると、多くの問題が発生することになる」。

主要供給国からの輸出が途絶えたことで、他の潜在的輸出国にも間接的な影響を及ぼしており、彼らは更なる食糧不足に備えて国産の穀物を備蓄している。例えば、インドは最近、小麦の価格が上昇し、記録的な猛暑に見舞われたため、小麦の輸出を禁止した。このような傾向は、穀物価格をさらに上昇させている。世界銀行の4月の報告書によると、小麦の価格は今年40%以上上昇し、インフレ調整前の名目ベースで過去最高を記録すると予測されている。

封鎖が続く限り、その影響はウクライナの次の収穫にまで及ぶ可能性があると専門家は警告を発している。ウクライナの穀物倉庫が満杯のままであり、十分な臨時貯蔵施設を確保できない場合、同国の次の収穫は貯蔵不能になる可能性がある。

シカゴ国際問題評議会の著名な研究員で、国連世界食糧計画の前事務局長であるエルサリン・コーシンは次のように述べた。「保管場所も輸送手段もないため、次の収穫で大きな食糧損失が発生する可能性がある。そうなれば、ウクライナ国内での収穫は1回だけでなく2回分も失われることになる」。

エイミー・マキノンがこの記事に貢献している。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウントは@RobbieGramer

※クリスティアン・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌編集員。ツイッターアカウントは

@christinafei

※メアリー・ヤン:『フォーリン・ポリシー』誌インターン。ツイッターアカウントは@MaryRanYang

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 アメリカのジョー・バイデン大統領の支持率は低いままだ。この言葉を何度繰り返したことだろうか。アメリカの分断を癒す穏やかな大統領として、ドナルド・トランプ前大統領とは違うのだ、新型コロナウイルス対策も経済対策もしっかりやれるんだ、連邦議会は民主党が過半数を握っているし、上院議員出身だから知己も多い、と鳴り物入りでスタートしたバイデン大統領が、トランプ前大統領の支持率とあまり変わらずに、低迷している。民主党側はトランプ前大統領の支持率の低さを嘲笑していたが、それならばバイデン大統領にも同じだけの嘲笑を浴びせねばバランスが取れないだろう。

 現在のアメリカでは、人々の不安感、悲観主義が渦を巻いている。インフレが進行し、生活が苦しいということが最大の原因だ。インフレは貧しい人たちほど影響を受ける。民主党の支持基盤は貧しい人々であることから、そこからそっぽを向かれると民主党は厳しい。また、期待の新型コロナウイルス対策でもバイデンの支持率はそこまで高くはない。人々はもう疲れている(日本もそうだが)。そうなれば、どこの国でもそうだが、「政治が悪い、指導者が悪い」ということになる。そこからバイデンに対する批判が高まるということになる。

 ウクライナ情勢でも、ウクライナに決定的な軍事援助ができない以上、ウクライナ軍や国民、財産の犠牲を重ねながらロシア軍の勝利を引き延ばすことはできるが、ここから逆転させることは難しい。ウクライナ失陥となれば、バイデンに対する支持率はますます下がるだろう。

 今年11月の中間選挙では連邦上下両院で共和党が過半数を奪還する可能性が高い。そうなれば、バイデン政権の運営もますます厳しくなる。目玉政策を推進することも出来なくなる。そもそもバイデン政権の目玉政策派は公共事業に対する大型支出ということで、現在のインフレ率を考えると支持を得ることが難しい。バイデン政権のブレイクスルーは困難である。

(貼り付けはじめ)

『ワシントン・ポスト』紙・ABC共同世論調査は深刻な悲観主義に陥っているアメリカ湖民の姿を発見した。国民は経済とバイデンの指導力に懸念を持っている(Post-ABC poll finds a deeply pessimistic nation, worried about the economy and Biden’s leadership

―11月の中間選挙に向かう中で有権者たちは民主党ではなく共和党をより信頼している状況で、バイデン大統領の支持率はまた新たな低い数字を記録した。

ダン・バルズ、スコット・クレメント、エミリー・ガスキン筆

2022年2月27日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/politics/2022/02/27/biden-post-abc-poll/

『ワシントン・ポスト』紙とABCニューズの共同世論調査によると、ジョー・バイデン大統領は火曜日に一般教書演説を行うが、アメリカ国民は深く悲観しており、バイデン大統領の下で経済が悪化し、重要問題に対する彼の指導力を信頼しておらず、2022年11月の選挙後に共和党が議会を支配することを望んでいるということだ。

バイデンは、プライムタイムに連邦下院議場から国民に語りかける際、複数の問題に対処することになる。ロシア軍がウクライナに侵攻し、ヨーロッパの安定を乱し、西側同盟に挑戦している。アメリカとその同盟諸国がロシアに科した制裁は、アメリカがインフレコストの下でその対処に苦労しているにもかかわらず、原油価格を上昇させる可能性がある。一方、バイデンは、数カ月にわたって停滞している国内政策の残りの部分からの影響に直面している。

今回の世論調査では、バイデンの大統領支持率は過去最低となり、彼が行っている仕事を支持すると答えた人は37%、不支持と答えた人は55%だった。全体では、44%が強く不支持だと答えている。予想通り、共和党支持者の間では圧倒的に不支持(86%)で、無党派層の多数(61%)も否定的な評価をしている。民主党支持者の間では77%がバイデンに好意的な評価をしている。

washingtonpostabcpolls202202501

次の連邦議会では、大統領に対するチェック機能を果たすために共和党の手に過半数を委ねるか、バイデンの優先事項を支持する民主党の手に委ねるか、どちらがいいかという質問に対しては、成人の50%が、共和党が連邦議会の過半数を掌握する方が良いと答え、40%が、民主党過半数を握ることを支持している。

また、今日選挙が行われる場合、連邦下院議員選挙でどのように投票するかという質問に対しては、登録済有権者の49%が共和党の候補者を支持すると答え、42%が民主党の候補者に投票すると答えた。ちなみに、民主党が大きな得票を得て連邦下院の過半数を獲得した2018年の中間選挙の直前には、この同じ質問で民主党が7ポイントの優位を占めた。

ロシアの侵攻は、この選挙の年の初頭における政治的な計算を変えた。しかし、ウクライナでの戦闘はまだ初期段階にあり、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の最終目的も完全に知られていないことを考えると、バイデン大統領と民主党に対する有権者の態度にどんな影響があり得るかを評価するには時期尚早であろう。

初期の評価は矛盾している。ロシアに科された制裁措置には大きな、そして超党派の多数が賛成している。しかし、47%がバイデンのこれまでの危機管理方法に不支持と答えている。今のところ、今回の国際危機がバイデンを後押しすることはない。国際危機がアメリカ大統領の支持率を引き上げることはこれまで何度か起きている。今回の調査は、本格的な侵攻が始まり、アメリカなどが制裁で対応する前にほぼ終了した。

アメリカ人はウクライナ危機に対するバイデン大統領の指導力以外にも、大きな問題でバイデンを否定的に評価している。バイデンの経済への対応に関する支持率は、現在37%で、58%が不支持と答えている。これは2021年11月の世論調査よりもわずかに悪いのだが、その差は統計的に有意ではない。

新型コロナウイルス感染拡大への対応については、44%が支持、50%が不支持と答えている。バイデンの新型コロナウイルス感染拡大に関する数字は、昨年の夏、10人中6人が彼のやっている仕事を承認すると答えたときから、着実に下がってきている。それ以来、ワシントン・ポスト紙とABCのどの共同世論調査でも、新型コロナウイルス感染者数が急激に減少し、マスク着用義務やその他の制限の全般的な緩和が国の多くの地域で進行しているにもかかわらず、その支持率はさらに少し低下している。

大統領は、アメリカ人の経済に対する厳しい評価が重荷になっているようだ。現在、75%のアメリカ人が経済を否定的に評価しており、2021年11月の70%から上昇している。これは、ワシントン・ポスト紙とABCの共同世論調査において、2013年以来最悪の評価である。全体では、39%が経済は「悪い」状態にあると答えており、これは2012年以来最も高い数字だが、2021年11月に同じことを答えた38%からほとんど変化していない。

バイデンが大統領に就任して以来、アメリカ人の大多数は経済が悪化したと言っており、54%がそう答えたのに対し、経済は良くなったという人は17%、13ヶ月前に就任する前とほぼ同じという人は27%だった。

バイデンの大統領就任後の1年間で、失業率は4%にまで低下し、経済は約600万人の新規雇用を増やした。しかし、インフレ率は40年ぶりの高水準に達し、ガソリンや食料品の価格はアメリカの家庭の財布を直撃している。

アメリカ人の10人のうち6人は、インフレが自分自身や家族の一員に苦難をもたらしたと答え、10人に3人はその苦難が深刻であると答えた。所得が5万ドル以下の層では、深刻な苦難に見舞われたと答えた人の割合はさらに高く43%になっている。

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アメリカ人の3分の1以上が、バイデンが大統領になる前ほど経済的に恵まれていないと答え、一方、全成人のほぼ半数は、バイデンが大統領になったときと経済的にほぼ同じ状況だと答えている。6人に1人はより裕福になったと答えている。

バイデン大統領に現在のインフレ率の責任があるのかどうかについて、ほぼ均等に分かれている。50%が「大いに」あるいは「かなり」責任があると答え、48%は「あまり」あるいは「まったく」責任がないと答えた。これらの意見は党派的の線に沿って分裂している。

価格高騰の責任は、より高い利益を求める大企業や、サプライチェインを遮断した新型コロナウイルス感染拡大による経済的混乱にあるとする意見が多い。3人に2人以上(全てのの党派で過半数を占める)が、インフレ率の上昇は利益を上げようとする企業のせいだと言い、10人に7人以上が新型コロナウイルス感染拡大による混乱を原因として挙げている。

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バイデンに対する印象の弱点は、彼の個人的な能力に対する疑念の度合いとつながる。彼が強い指導者であるかという質問に対して59%がノー、36%がイエスと答えた。これは彼の全体的な支持率と密接に関連する。無党派層では65%が「強くない」と答えた。

バイデン大統領に関する更なる個人的な質問については、バイデンには大統領を務めるのに必要な精神的な鋭敏さがないと思うという人が54%、あると思うという人が40%となっている。前回、ワシントン・ポスト紙・ABCニューズの共同世論調査でこの質問をしたのは2020年5月だった。この時は、バイデン候補が大統領に必要な精神的鋭敏さを持っていると答えた人が51%だったのに対し、そうでないと答えた人は43%だった。今回はほぼ逆の結果だった。

この質問について、共和党支持者と民主党支持者は全く逆の見解を持っているのは驚くに値しない。次の選挙で重要な役割を果たす無党派層については、大統領の精神的鋭敏さについて59%が否定的な評価をしており、2020年5月から13ポイント上昇している。

一方、2022年11月の選挙への関心は、歴史的に見て大統領選の年に比べて投票率が低くなることを考えると、比較的高くなっている。現在、成人の67%、登録済有権者の75%が「確実に投票する」と回答した。これは、中間選挙の投票率が過去100年で最高に急増した2018年の年明けに比べればわずかに高い数字となっている。この早い段階で、共和党議員を支持する有権者の82%が「確実に投票する」と答えているのに対し、民主党を支持する有権者の74%が「確実に投票する」と答えている。

今回のワシントン・ポストとABCの共同世論調査は、共和党員または共和党寄りの無党派層であると認識している人の割合が2回連続で増加していることを示している。最新の世論調査では、46%の成人が共和党員または共和党寄りであり、昨年6月の41%、4月の40%から上昇した。民主党支持者の割合は、昨年4月の48%から今月は43%に減少している。これは、ギャラップ社の世論調査において、2021年初頭から年末にかけて共和党へのシフトが顕著であったことと一致する。

中間選挙が近づくにつれ、どの政党が最も信頼されるか、国民の評価は分かれている。経済問題では共和党が大きくリードしており、54%の成人が共和党を信頼すると答え、35%が民主党を信頼すると答えた。この問題については1990年に共和党が記録した19ポイントのリードに匹敵する。一方、新型コロナウイルス感染対策については、43%対37%と、民主党が僅差で優勢である。

アメリカ国民は、教育に関して誰を信頼するかで大きく分かれている。この問題は、マスクの義務付けや遠隔学習から、親の関与やカリキュラムの問題、特にアメリカの人種史の教育まで、この1年でより争いの激しいものとなっている。

歴史的には、教育問題では民主党が優位に立ってきたが、共和党は2022年11月の中間選挙に向けてこの問題を最重要課題とし、民主党を守勢に立たせようとするシグナルを発している。今日の世論調査では、これらの問題への対処について、共和党を信頼する有権者が41%に対し、民主党をより信頼すると答えた有権者は44%だった。2006年には、56%が民主党をより信頼していた。1990年から2006年にかけて、民主党は教育問題への対応で平均して13ポイントの優位を保っていた。

『ワシントン・ポスト』紙・ABC共同世論調査は2022年2月20日から24日にかけてランダム・サンプリングで選ばれた1011名の成人を対象に実施された。調査は携帯電話と地上電話を使って行われた。全ての結果について誤差は4ポイントだ。サンプルのうち904名は登録済の有権者たちだ。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。  
 主流派経済学の「誤り」、行き過ぎたグローバライゼーション(超[ハイパー]グローバライゼーション)によってアメリカの労働者たちは傷ついたということについて、経済学者たちから反省が出ている。1990年代から既にグローバライゼーションに対して批判を行った経済学者たちもいたが、そうした人々は激しい批判に晒された。しかし、そうした人々は復権しつつある。
 中野剛志著『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】 (ワニの本)』では、激しいインフレ対策のためには競争や規制緩和、グローバライゼーションが有効だ、それはこれらの政策はデフレを生み出すからだとしている。1970年代から80年代にかけてのアメリカは激しいインフレに苦しんでおり、その対策にはこれらの政策は有効だった。しかし、経済がデフレになればこうした政策は逆効果ということになる。  
 日本ではバブル崩壊からデフレになる中で、インフレ対策のための政策が実行された。そのために、デフレはより進行することになった。新自由主義的な政策と社会主義的な政策は、その時の状況に応じて使い分けをするべきで、どちらが完全に正しく、完全に間違っているということはない。しかし、日本では新自由主義が神の言葉のように扱われ、デフレ不況下にもかかわらず、更にデフレを進行させる政策が実行された。それが平成という時代だった。  
 経済学に振り回されて不幸になった日本。まずは主流派経済学のどこが間違っていたのか、どのように間違っていたのかということを知らねばならない。
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経済学という人類を不幸にした学問: 人類を不幸にする巨大なインチキ 

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「次々と逃げ出す経済学者たち(ECONOMISTS ON THE RUN)」

―ポール・クルーグマン(Paul Krugman)やその他の主流派の国際貿易を専門とする学者たちは現在、「自分たちはグローバライゼーション(globalization)について間違ってしまった」ということを認めつつある。その内容は、専門家たちが考えていた程度以上にグローバライゼーションがアメリカの労働者たちに損害を与えた、というものだ。アメリカ国内にいる自由市場を信奉する経済学者たちがホワイトハウスに保護主義を唱える煽動政治家(demagogue)を据えることに貢献したことになるのだろうか?

マイケル・ハーシュ(MICHAEL HIRSH)筆

2019年10月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/10/22/economists-globalization-trade-paul-krugman-china/

ポール・クルーグマンは、これまで自分が馬鹿だと判断した人間や考えを認めて受け入れることなどなかった。ノーベル経済学賞を受賞した経済学者クルーグマンの名声はアメリカ国内にとどまらず海外にまで鳴り響いた。知識人ならば一度は書いてみたいと羨む『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説ページにスペースが与えられてきた。彼が名声を獲得した方法は自分とは考えの異なる反対者たちを最も効果的な方法でやっつけるというものだった。1990年代初頭から数多くの著書と論文を発表してきたが、クルーグマンは一貫して、グローバライゼーションの進展のペースが急速であることに疑問を持った人々全てに対して経済をよく理解していない馬鹿者という烙印を押し続けた。他国との競争、特に中国との競争への恐れを募らせた専門家たちを形容するのにクルーグマンは「愚か者(Silly)」という言葉を多用した。他国との競争を恐れるな、とクルーグマンは言い放った。そして、自由貿易は皆さんの国(訳者註:アメリカ)の繁栄にほんの小さな影響しか与えないだろう、と言っていた。

格差についてこれから出版される本の一章を短くまとめた「経済学者たち(私も含まれる)がグローバライゼーションについて間違っていたこと」という題の最新の論稿の中で、クルーグマンは、彼自身と主流派経済学者たちが、グローバライゼーションが「ハイパーグローバライゼーション(hyperglobalization、過剰なグローバライゼーション、超グローバライゼーション)」を引き起こすことになることと、経済や社会の大変動、特にアメリカ国内の製造業に従事する中流階級の大変動を認識できず、「物語の極めて重要な部分を見逃してしまった」と書いている。そして、労働者階級が多く住む地域は中国との競争の影響を深刻に受けてしまっている。クルーグマンは、経済学者たちは中国との競争の影響を過小評価するという「重大な誤り」を犯してしまったと述べている。

1990年代以降に荒廃してしまったアメリカの地域と解雇された数多くの労働者たちのことを考えると、これはまさに「しまった」という瞬間だ。最近すっかり謙虚になったクルーグマンは、彼をもっと悩ませるであろうことについて考察しなければならない。それは、「クルーグマンとその他の主流派経済学者たちはホワイトハウスで歴代政権に自由市場について間違った助言を多く行ってしまったことで、保護主義を唱導するポピュリスト、ドナルド・トランプをホワイトハウスの主に据える手助けをしてしまったのではないか?」という疑問だ。

公平を期すならば、クルーグマンはここ数年、彼自身が以前に唱えていた自由貿易の影響についての主張が誤りであることを認め修正するということを率直に行っている。クルーグマンは、2008年の金融危機とそれに続く大不況の後、彼が専門としている経済学についての批判の急先鋒を務め、その内容は時に辛辣だ。クルーグマンは、過去30年間の大部分の機関において、マクロ経済学は「良く言ってけばけばしいほどに役立たずで、悪く言えば明確に有害(spectacularly useless at best, and positively harmful at worst)」だったと断言した。クルーグマンはオバマ政権が及び腰で財政と経済に関する諸改革をほとんど進めなかったことを厳しく責め立てた。クルーグマンは、トランプ政権で労働長官を務めた、現在の進歩主義派の源流とも言うべきロバート・ライシュのような人々についても非難の言葉を投げつけた。ライシュは国際的な競争に懸念を持ち、アメリカの労働者たちのためにより良い保護政策と再訓練プログラムを実行しようとした。クルーグマンは、勢いよく人々をやっつけていた1990年代に私に向かって、ライシュは「気の利いた言い回しはうまいが、深く考察することをしない、嫌な奴(offensive figure, a brilliant coiner of one-liners but not a serious thinker)」とこき下ろした。

ライシュは私(著者)宛のEメールの中で「彼(訳者註:クルーグマン)が貿易についてやっと正しく理解することになったのは喜ばしいことだ」と書いている。クルーグマンは別のEメールで、「私はライシュに対して述べたことの内容について後悔している。もっとも彼がハイパーグローバライゼーションの到来を予測し、チャイナ・ショックの影響を最小限にとどめようとしたなどとことは聞いたことなど一切なかったけれども」と精一杯の負け惜しみを込めて書いている。

しかし、経済学者たちが経済学自体に過剰なまでに自信を持っていたことを認めるのにあまりにも長い時間がかかってしまった。また、誤りを認めたクルーグマンは2009年、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌の記事の中で、「経済学者たちは一団となって、数学という素晴らしい装いに包まれた美しい理論を真実だと思い込んでいた(economists, as a group, mistook beauty, clad in impressive-looking mathematics, for truth)」と書いている。ジャーナリストのビンヤミン・アッペルボームは彼の最新刊『経済学者たちの時間:誤った予言者、自由市場、社会の断面(The Economists’ Hour: False Prophets, Free Markets, and the Fracture of Society)』の中で書いているように、経済学者たちは1960年代末からそれまでなかった方式でワシントンの政策立案を支配するようになり、アメリカを誤った方向に導いた。経済学者たちは、自由市場が持つ驚嘆すべき機能に関して確実性が科学的に証明されているという誤った考えを主張することで、アメリカ社会を崩壊させ、分裂させた。経済学者たちは、社会福祉を犠牲にして効率性を最優先し、「高賃金の雇用を切り捨て、低コストの電子工学(low-cost electronics)に未来を託する形で、アメリカの製造業の利益をアメリカの消費者の利益に飲み込ませることになった(訳者註:消費者の利益[製品の価格が下がること]が製造業者の利益よりも優先されることになった)」というのだ。

デイヴィッド・オーターは、マサチューセッツ工科大学(MIT)に所属する経済学者で、中国の急速な台頭がアメリカの労働市場に驚くべき影響を与えていることを論文として発表し、クルーグマンは自分の最新の論説の中で、オーターの論文を引用している。オーターは、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストでもあるクルーグマンが自分の誤りを認めたことを評価している。オーターは私宛のEメールの中で、「なんて珍しいことが起きたんだ?!」と書いている。オーターはクルーグマンや貿易に関する誤った予測をすることにつながった「以前のコンセンサス」を擁護する人々を責めはしないとEメールの中で書いている。彼は次のように書いている。「率直に言って、その当時に現在の状況を予測することは、地震が何日の何時何分にどこそこで起きるということまで正確に予測することと同じことだ(訳者註:不可能だった)と私は考えている」。より大きな問題は自由貿易こそが正しいのだと信奉する時代精神(zeitgeist)だ、とオーターは述べている。彼は次のように書いている。「一般に正しいとされる知見にとらわれたために、経済学者は何が起きているかを示す証拠をきちんと評価することができなかったのだ。・・・そこには何かギルドに入っている会員たちが共通で信奉しなければならない正統とされる教義(guild orthodoxy)があったと言えるだろう。その教義とは、世界中の全ての場所に住む人々全てにとって、国際貿易は善である、と政策決定者たちに助言することが私たち経済学者の仕事なのだという断定であった」。

ハーヴァード大学の経済学者ダニ・ロドリックは1997年に『グローバライゼーションは行き過ぎか(Has Globalization Gone Too Far?)』という著書を発表した。この本は発表された当時異端(then-heretical)とされた。先週、ロドリックはこの本を書いたのは、「グローバライゼーションに関して経済学は全く無関心だ」と確信したからだ、と述べている。現在では彼の考えが主流になっている。ロドリックは国際経済学会の次期会長に決まっている。しかし、経済学者たちは自分たちが作り出して残してしまったゴミを片付けるためにようやく始動し始めた。ロドリックは、元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャールと一緒に、ワシントンに本拠を置くピーターソン国際経済研究所で格差に関する会議を開催した。しかし、ロドリックが述べているように、もう手遅れかも知れない、それはトランプ大統領の下では道理にかなった議論ができないからだ。現在のアメリカ大統領は現代経済学を無用の長物として切り捨てて、アダム・スミスよりも前の時代の重商主義者たちがそうであったように、荒削りの保護主義を復活させ、主張している。大統領は貿易をゼロサムゲームと見なし、貿易黒字は利益、貿易赤字は損失と捉えている。トランプ大統領は経済学の基本を全く分かっていない。アッペルボームは最新刊『経済学者たちの時間の中で、トランプ大統領の無知は「現代アメリカの大統領の中でも比べるべくもないほど酷い」とアッペルボームと書いている。

トランプ大統領はこれまでになかった規模の貿易戦争を始めた。彼は一般国民の中国に対する不信と恐怖を利用している。一般国民に中国に対する不信と恐怖が広がったのは経済学者たちの初期の誤解、特に中国の経済成長がいかに素早く膨大な数のアメリカの製造業の雇用を喪失させたかについて誤解していたせいである。現在ではクルーグマンも認めているように、「製造業における雇用は2000年を境にして崖から落下するかのように急落し、この急落はアメリカの貿易赤字、特に対中貿易赤字の急増に対応している」のだ。雇用や貿易赤字の数字は、トランプ大統領の重商主義の主張に信憑性を与えるようになっている。トランプ大統領の主張はどこまでいってももっともらしいだけで中身はないのだ。

ロドリックは「トランプ大統領登場の効果の中で最も予想外だったのは、貿易、格差、労働者にとっての適切な保護についての根拠に基づいた議論がアメリカ国内で完全にできなくなってしまったことだ」と述べている。これもまた1990年代に経済学者たちが行った自由貿易に関する間違った助言によるマイナスの影響のためだ。

また、MITのオーターは次のように述べている。「自由貿易を熱狂的に推し進める政策によって、政策立案者たちは貿易が与えるショックによる悲惨な結果が起きることに目を向けることができず、またこれらのショックに対する準備を全くできないようになってしまった(例えば、この当時のアメリカには貧弱なセーフティネットと職業再訓練政策しかなかった)」。その結果、アメリカは何の懸念も持たず、準備もないままに、政策が生み出した無視できない規模の災害(別名:チャイナ・ショック)に見舞われた。そして、一般国民の自由貿易に対する怒りがかき立てられ、アメリカ国内の政策議論において自由貿易の害悪ばかりが強調されることにつながった。読者の皆さんもこの皮肉がお分かりになるだろう。貿易を熱狂的に推進することで、自由貿易の正当な根拠を完全に壊してしまったのである。

クルーグマンに対して、彼と他の経済学者たちが犯した誤りがトランプ大統領の台頭を助けることになったのではないかと質問してみた。これに対してクルーグマンは次のように答えた。「私たちはその問題について議論をしている最中だ。しかし、トランプ大統領の貿易政策に関する限り、彼を支持しているブルーカラーの労働者たちさえも含めて、多くの人々が支持していないと私は考える。従って、トランプ大統領の台頭という現象について、貿易を専門とする学者たちに責任を問うことは酷だ」。

このクルーグマンの発言に同意しない人もいるだろう。問題の一部は、ポスト冷戦時代のコンセンサスが出現しつつあった1990年代、学者たちが貿易に関して、単純な二者択一の考え方、自由貿易を信奉するのかそれとも保護主義貿易を信奉するのか、どちらかを選ぶように強いるという考え方をする傾向があったことだ。クルーグマンもこうした経済学者の一人だった。クルーグマンは概して自由貿易を支持する立場だった。クルーグマンの著書や論説(これらは賢明な戦略的貿易政策の知的基盤となった)とノーベル経済学賞の受賞理由となった論文と比べると、微妙に矛盾する内容が含まれていることを考えると結果として皮肉な話ということになる。

政策論争に参加した人たちの中には、ロドリック、ライシュ、ビル・クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長を務めたローラ・ダンドリア・タイソンのように、急速なグローバライゼーションに対してより深刻に懸念を持っている人たちもいた。こうした人々は、自由貿易を推進する考え方に疑義を呈したり、タイソンの場合にはアメリカの競争力を高めるために政府主導の産業政策(government-led industrial policy)を強力に推し進めたりした。この当時は冷戦終結直後であり、新たに自由化された国々の多くが盛んに国際経済に参入するようになっていた。クルーグマンは急速なグローバライゼーションに懸念を持つ考え方も激しく嫌った。

オーターは次のように述べている。「ダニは先を行き過ぎていたのだ」「彼は突然に起きるショックそれ自体を懸念していたのではなく、グローバライゼーションに付き物の、開放経済(open economies、訳者註:外国との金融や貿易の取引を行っている経済)に基づいた政策オプションについて懸念を持っていた(社会保険への資金供給や増大しつつあった国家間を移動する資本への課税などといったオプションについてどうなるのかと懸念していた)。これは問題の核心だったし、今でもそうだ。・・・一方、ローラ・タイソンは積極的な産業政策は主張していたが、その時期、産業政策が政策の分野におけるヴォルデモート(訳者註:ファンタジー小説『ハリー・ポッター』に出てくる敵役)のような存在であった」。オーターをはじめとするクルーグマンのこれまでの業績を詳細に調べた人たちは、クルーグマンが正しい産業政策は産業部門に競争力を持たせるのに役立つことは当然のことながらきちんと理解していた、と評価している。しかし、オーターは次のようにも述べている。「経済学者たちは産業政策によって競争力を高めることを声高に主張すると、落ち着きのない子供に実弾が入った武器を渡すのと同じで、政策立案者たちに危険な武器を渡すことになると恐れていたのだろうと私は考える」。

クルーグマンは、国際貿易がいかに低賃金の労働者に影響を与え、格差を拡大させたのかについて「極めて小さい」程度の読み違いをしただけだと責任を認めている。これは間違ってはいない。しかし、冷戦終結後、貿易をめぐる議論(クルーグマンが貿易に関する研究でノーベル賞を受賞)は、自由市場対政府の介入をめぐる、より大きな規模の知的な分野での争いの代理戦争となった。クルーグマンは、発展途上諸国の低賃金労働との競争からアメリカの雇用と賃金は深刻な影響を受けると主張した「戦略的貿易論者」を経済学的に無知だとして攻撃した。『ワシントン・ポスト』紙の記者を務めた経験を持つジャーナリストのウィリアム・グレイダーは詳細な調査をまとめた著書『一つの世界に向けて準備が出来ているのかどうか:国際資本主義の騒々しい論理(One World, Ready or Not: The Manic Logic of Global Capitalism)』の中で、発展途上諸国が先進諸国に向けて輸出攻勢をかけるようになっており、「アメリカ国内で誇らしい勝者となる産業部門と無残な敗者となる産業部門が出てくる」と警告を発した。クルーグマンはぐレイダーの本を「最初から最後まで愚かな内容の本」と切って捨てた。高名な評論家であるマイケル・リンドも、アメリカの生産性向上の進み具合では「世界規模の低賃金労働経済(global sweatshop economy)」に太刀打ちできない、と(正確に)主張していた。これに対して、クルーグマンは、リンドは経済的な「諸事実」について全くの無知だと切り捨て、「誰かからの案内や指南がなければ一つの分野できちんとした仕事が出来ないような人物を信頼することはできない」と述べた。クルーグマンは自由貿易に関するコンセンサスに疑いの目を向ける同じ学問分野を研究する仲間であるはずの経済学者たちに対しても同様に辛辣だった。ローラ・タイソンが1993年にクリントン政権の大統領経済諮問委員会委員長に選ばれた時、クルーグマンはタイソンには「必要不可欠な分析スキル」が欠けていると発言した。

クルーグマンは、こうした疑いや疑問を持つことは全て誤った経済学なのだ、と述べている。他の国々の動向について心配し過ぎてはいけない。全ての国が開かれた貿易から利益を得るという比較優位(comparative advantage)など新古典派の概念のおかげで安定がもたらされる。実際のところ、市場への政府の介入と「自由貿易」よりも「公平な貿易」(より広範で高い関税、失業保険、労働者保護)に類した主張を行った人々は保護主義貿易論者のレッテルを貼られ、議論から締め出された。クリントン大統領は「グローバリゼーション」大統領という評判をとっていたが、それでも競争力を失った産業に従事していた人々の運命についての会議を開くなどしていた。クリントン大統領がローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学していた時代からの古い友人であったライシュ労働長官は、クリントン大統領が赤字削減を熱心に進めていた時期に、教育、訓練、社会資本への再投資を公の場で主張した。そのためにライシュはクリントン大統領との会話から締め出され、遂には政権から去ることになった。

国家経済会議委員長を務めたジーン・スパーリングをはじめクリントン政権時代の高官たちは議論がそこまで激しいものではなかったと証言している。スパーリングは私に対して、「クリントン大統領は中流階級に気を配っていた」と述べた。また、スパーリングは次のようにも語っている。民主党がクリントン政権後も引き続き権力を握っていたら(訳者註:2000年の大統領選挙でアル・ゴアが勝利していたら)、中国が貿易の規範を守るようにより努力をしたであろう。例えば、「対波状攻撃(anit-surge)」の保護策を中国に強いたであろう。これは、1999年にクリントン政権が中国の世界貿易機関(World Trade Organization)参加をめぐる交渉を行った際に、参加のための必要条件としたものだった。具体的には、低価格の製品のダンピング輸出でアメリカの雇用を減少させることに反対するための施策のことだ。「人々は、(2000年の大統領選挙での)ある・ゴアとジョージ・W・ブッシュとの間の唯一の違いはイラク戦争についてであったと今でも考えている。しかし、もう一つの大きな違いがあった。それは、製造業を守ることに関してブッシュがやったよりもはるかに大きなそして多くのことをアル・ゴアがやったであろうということだ」と述べた。(ワシントン・ポスト紙で経済専門記者を務めたポール・ブルースタインは新著『分裂:中国、アメリカ、国際貿易システムの分解(Schism: China, America, and the Fracturing of the Global Trading System)』の中で、ブッシュ政権は中国をあまりにもやりたい放題にやらせ過ぎたと結論付けている。中国は輸出を加速させるために人為的に通貨価値の切り下げを行った。こうしたことを受けて、トランプ大統領はアメリカ経済が中国に「レイプ」)されたとまで主張している。)

クルーグマンにこき下ろされた人々は今でも彼の誤った判断を批判し、彼が懺悔をしても腹立ちを抑えられないままでいる。『アメリカン・プロスペクト』誌の共同編集長で、進歩主義派の思想家としてよく引用されるロバート・カットナーは次のように述べている。「誤りを認めて懺悔をすることは悪いことではないが、彼が書いていることを最後まで読むと、クルーグマンは今でも自由貿易か、さもなくば保護主義貿易かという過度に単純化した二分法を主張していることが分かる」「若き日のクルーグマンは(訳者註:アメリカの)競争力の優位は創出できることを証明したことで経済学界での名声が上がったのに、まるで経済学史を専攻している、数学を使わない学者たちが彼に言いそうなことを、クルーグマンが述べるようになっているのは何とも奇妙なことだ」。

こうした批判に対して、クルーグマンは中流階級に対しては、より良い医療と教育という保護が与えられるべきだと確信していると自己弁護している(彼が以前にニューヨーク・タイムズ紙のインターネット版に持っていたブログのタイトルは「1人のリベラル派の良心(The Conscience of a Liberal)」だった)。そして、彼は、自分が貿易に関する知見で誤りを認めたからと言って、それがワシントン・コンセンサス(Washington Consensus)と呼ばれる考え方を支持していることとはつながらない、と述べている。ワシントン・コンセンサスとは、ネオリベラルな(つまり、自由貿易を支持する)考え方で、財政規律、急速な民営化、規制緩和を支持するものだ。先週、クルーグマンは私に対して次のように述べた。「私たちは間違ったと認めることは、私たちを批判してきた人たち全てが正しかったということにはならないという点が重要だと私は考える。私たちを批判してきた人たちが何を言ってきたのかが重要だ。私が知る限り、貿易の分野で中国がここまで巨大に成長することを予測した人はほとんどいなかったし、一部の地域に集中した影響について注目した人もまたほとんどいなかった」。

だがしかし、グローバリゼーションを支持するコンセンサスに関してはより深刻な概念上の諸問題も存在した。こちらもノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジョセフ・スティグリッツは、前述のロドリックと同様、1990年代には貿易と資本移動に関する障壁をあまりにも早く撤廃することについて警告を発していた。スティグリッツは私に対して、「“標準的な新古典派経済学の分析”が抱える問題は、調整について注目をしないことだ。労働市場での調整は驚異的なまでにコストがかからないものだ、と新古典派経済学では考える」と述べた。タイソンとライシュ同様、スティグリッツもクリントン政権下で大統領経済諮問委員会委員長を務めた。この当時、スティグリッツは主流派からすればはずれ者(outliner)であり、 国際規模での資本の流れのペースを緩やかなものにしようと試みた(が失敗した)。スティグリッツはまた「通常、雇用の喪失のペースは新たな雇用の創出のペースよりもかなり速いものだ」と主張した。

最近の論説の中で、クルーグマンは、自由貿易の基調となった1990年代のコンセンサスを支持した彼のような経済学者たちは、貿易が労働市場に与える影響は最小限度のものとなると考えていたが、「特定の産業部門と地方の労働者たちに注目する分析的な方法に目を向けなかった。この方法を経済学者たちが採用していれば短期的な動向をより良く理解できたことだろう。この方法に目を向けなかったことについて私は大きな間違いであったと確信している。そしてこの間違いを犯すことに私も協力したのだ」と書いている。

開かれた貿易と比較優位についての古くから正しいとされてきた主張に説得力がなくなり、世界規模での供給チェインのような新しい現象に取って代わられたことに興味関心を持つ人々はたくさん存在した。世界規模での供給チェインによって、海外に雇用が移り、各地域から雇用が消えてしまった。クルーグマンは彼自身で2008年に発表した学術論文の中で、こうした超複雑な供給チェインがあるために、「世界貿易の性質は変化しているが、そのペースは明確な量的分析に関与するための経済学者の能力向上のペースを上回るものだ」と結論付けた。

スティグリッツは『フォーリン・ポリシー』誌に記事を掲載し、その中で次のように書いている。「はっきりしているのは、(グローバライゼーション)のコストは特定の地域、特定の場所にのしかかるものだということだ。製造業が位置していたのは賃金が低い場所であった。こうした場所では、調整コストは大きなものとなる」。また、グローバライゼーションの有害な影響は一時的な潮流ではないのではないかということが明らかにされつつある。アメリカ政府は発展途上諸国との貿易を急速に自由化し、それに伴って投資協定を結んだ。これによって「(労働組合の弱体化と労働関連の法規や規制の変化もあり)アメリカの労働者たちの交渉力に劇的な変化が起きた」。

伝統的な経済学におけるもう一つの側面について考え直さねばならないとこまできている。かつて経済学者たちは、失業率が低ければインフレーションが起きると信じていた。しかし、『エコノミスト』誌が最近の号の巻頭記事で書いているように、今日では、失業率とインフレーションとの関係を示す標準的なフィリップス曲線(standard Phillips curve)では説明がつかないようになっている。繰り返しになるが、最大の敗者はアメリカの労働者だ。経済学者たちはかつて、好況時には労働者たちは自分たちの賃金を引き上げることができる(だからインフレーションになる)と確信していた。一方で、現在出来上がりつつある経済学上の知見では、これとはいささか異なることを示唆している。その内容は、多国籍企業が世界全体を自分たちの領域に引き入れてから四半世紀が経過し(一方で労働者たちは大抵の場合、自分たちの生まれ育った国にとどまらねばならなかった)、世界を動き回るようになった資本は、世界各国を股にかける供給チェインという形で姿を現したのだが、国内にとどまった労働者たちよりも優位に立つようになった。

従って、経済学者たち自身が、主流派経済学がいかに急速に左傾化しているかということに驚愕している。先週開催された格差に関する会議で経済学者の多くが経済学の左傾化の現状を目撃した。会議の参加者の中には、「2020年の米大統領選挙をめぐる政治に関しては、経済学者の多くが中道派のジョー・バイデンよりもエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースといった進歩主義者たちを支持している」と語る人たちもいた。進歩主義派は労働者側に交渉力を取り戻させるための急進的な解決策を提示している。(例えば、ウォーレンは企業の役員会において労働者が参加できる割合を高くするという提案を行っている。)元IMFチーフエコノミストのブランシャールは「私はフランスで社会主義者となりそのままアメリカにやってきた。現在、私は自分自身何も変わっていないのに中道派になっていることに気づいた」とジョークを飛ばした。

こうした経済学の左傾化は、1990年代まで遡る経済学者たちの読み間違いが与えるマイナスの影響の結果と言えるだろう。ローラ・タイソンは「人々は物事がどれほど早く変化することができるかを見落とした」と語った。

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