古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:イーロン・マスク

 古村治彦です。
※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 第2次ドナルド・トランプ政権の発足後100日の中心人物であり続けたのは、イーロン・マスクだった。政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を率いて、各政府機関を回り、情報を収集し、米国国際開発庁(USAID)の閉鎖を決定するなど、華々しい動きをしてきた。連邦政府職員の削減はOPM()

マスクは自身の世界観を物理学に基づいており、第一原理思考を通じて複雑な問題をシンプルな公理から解決するアプローチを重視している。マスクはペンシルヴァニア大学で経済学と物理学で学士号を取得し、物理学を専攻するためにスタンフォード大学大学院に進学した(後に中退)。マスクは数学と物理で天才的な才能を示した。そして、彼はこの物理の才能を経営や政策に応用しようとしている。以下の論稿では、イーロン・マスクが物理学の第一原理思考(first principles thinking)で物事を捉えようとしていると主張している。以下に重要な部分を引用する。

(引用はじめ)

「第一原理思考(first principles thinking)」はマスクの世界におけるマントラのようなものになっている。それは、どんなに複雑な問題に対しても、厳格さと子供のような無邪気なアプローチの両方を呼び起こす。

この考え方は、自動車であれロケットであれ、あらゆる技術的問題を分解し、ゼロから始めるというものだ。そして、非常に基本的な公理から解決策を導き出す。そしてこのプロセスにおいて、それまでに誰かが行ったこと、受け継がれてきた伝統など、何一つ考慮されない。実際、その根底にある前提は、受け継がれてきた思考や実践は全て、古臭く、埃をかぶった、悪いお荷物であり、それらを手放して先に進んだ方がよい、というものだ。

(引用終わり)

 橘玲著『テクノ・リバタリアン』で、著者である橘玲氏は、ピーター・ティールやイーロン・マスクを「テクノ・リバタリアン(techno libertarians)」と定義し、彼らは数学的に物事を捉えると分析している。そして、引用したように、非常に明晰に、明快に原理に則り、物事を進めていくということになる。私たち一般人ではしり込みしてしまうようなことを、彼らは平気で進めてしまう。今までのしがらみや伝統から抜け出せないということがイーロン・マスクたちには理解できないだろう。天才的な頭脳を持つ彼らにはヴィジョンが見えており、それに向かって進んでいく。トランプ大統領も一種の天才であり、ヴィジョンが見えている。それを理解できない一般人はついていけない。

 しかし、残念なことだが、数学の天才でも間違うことがある。人間や社会の理解に限界がある。天才的な人間が全能の力を持つことはある種の理想であるが、それはまた危険なことでもある。人間や社会は大変革を短期間で起こすことは難しい。また、短期間で起きた大変革は深刻な副作用をもたらす。そのことは歴史が証明している。

(貼り付けはじめ)

イーロン・マスクの第一原理(Elon Musk’s First Principles

-世界一の富豪は、物理法則を政治に応用しようとしている。一体何が問題になるのだろうか?

アダム・トゥーズ筆

2025年3月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/03/25/elon-musk-trump-doge-physics-principles/

イーロン・マスクは世界で最も裕福な人物であり、歴史上最も裕福な人物の1人でもある。しかし、マスクの権力はもはやテスラやX、スペースXから得られる金銭的な富だけに結びついている訳ではない。マスクはドナルド・トランプ大統領との親密な関係によって、新たに設立された政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を通じて、アメリカ政府全体の政策に影響を与えるという大役を与えられている。起業家としての彼の人生は、政治家としての彼の仕事に重要な光を当てている。

マスクはしばしば、物理学が彼の世界観の中心にある(physics is at the center of his worldview)と主張してきた。彼は、ビジネスや生活全般における行動の動機として、自然な第一原理の探求(the search for natural first principles)について語っている。そして、「第一原理思考(first principles thinking)」はマスクの世界におけるマントラのようなものになっている。それは、どんなに複雑な問題に対しても、厳格さと子供のような無邪気なアプローチの両方を呼び起こす。

この考え方は、自動車であれロケットであれ、あらゆる技術的問題を分解し、ゼロから始めるというものだ。そして、非常に基本的な公理から解決策を導き出す。そしてこのプロセスにおいて、それまでに誰かが行ったこと、受け継がれてきた伝統など、何一つ考慮されない。実際、その根底にある前提は、受け継がれてきた思考や実践は全て、古臭く、埃をかぶった、悪いお荷物であり、それらを手放して先に進んだ方がよい、というものだ。

テスラとスペースXの成功が証明しているように、このアプローチには利点がある。しかし、有能な自動車評論家なら誰でも言うように、大きな欠点もある。テスラの車はまるで火星人が設計したかのようだ。まるで、現代の高性能車のシャシー、ステアリング、ブレーキを設計、最適化し、効率的に製造する方法について、業界が何十年もの経験を持っていないかのように。

そして、政治となると、この「ゼロから始める(start from scratch)」アプローチの利点ははるかに曖昧になる。マスクと彼のDOGEティームは、彼の思考習慣を利用して、政府機関、特に米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)を破壊し、財務省決済システムという形でアメリカ政府の仕組みそのものに干渉しようとしている。

もちろん、物理学との類似性から政治や倫理へのインスピレーションを得られることは事実だ。アイザック・ニュートンが現代の政治思想に与えた影響を考えてみて欲しい。経済における均衡の概念(the notions of equilibrium in economics)、均衡の安定性(the stability of equilibria)といった概念は、物理学の類似性、多くの場合は力学から派生したものだ。あるいは、初期のコンピュータ時代におけるサイバネティクス(cybernetics)の影響を考えてみて欲しい。そして、物理学の近いいとこである工学(engineering)について考えると、このことはさらに顕著だ。ウラジーミル・レーニンは、共産主義をソヴィエト権力とロシアの電化(Soviet power plus the electrification of Russia)と定義したことで有名だ。1930年代から1940年代にかけての権威主義的なテクノクラシー運動も、工学から同様のインスピレーションを得た。後にカナダから南アフリカに移住することになるマスクの母方の祖父もこの運動に関わっていた。

物理学を政治に類似させるこうした立場の波及効果(knock-on effect)は2つある。第一に、それは誤った物理学である可能性が高いということだ。第二に、たとえ物理学に基づくアナロジーからイデオロギーを導き出せたとしても、最終的に得られるものは本当に政治的なものなのだろうか? 政治とは議論、意見の相違、人間の感情や思想の戯れであるならば、工学や物理学のアナロジーから政治を導き出すことは、決して額面通りに受け止められるべきではない。それは政治的であり、自らそれを自覚している(ただし、その場合、物理学や力学は単なる比喩に過ぎないことを認めざるを得なくなるだろう)。そうでなければ、それは政治ではなく、実際には政治を抑圧しようとする権威主義的なテクノクラート的ヴィジョンである。

マスクの政策に対する白紙姿勢(Musk’s blank-slate approach)は、そもそも彼がアメリカ政治に前例のない形で関与してきたことの裏返しだ。2024年のトランプ勝利に賭けることで巨額の富を得る方法は数多くあった。しかし、マスクはトランプの個別的な取引の最大の受益者というだけではない。寄付、X、そして個人的な支持を通して、彼はその実現に貢献した。彼はトランプの政治的成功に全面的に関わっている。

紛れもない事実は、マスクが政治関与によって個人的に利益を得てきたということだ。現在、マスクの個人資産は3300億ドルから3500億ドルと推定されている。これは株式市場の動向に応じて変動し、100億ドル上昇したり、100億ドル下落したりしている。つい最近の2024年夏には、彼の資産は1700億ドルと評価されていたが、2023年には1300億ドルまで落ち込んでいた。

その間に何が変わったのだろうか? マスクの個人資産の中核であるテスラの事業見通しについては、根本的な変化は見られない。実際、テスラは苦境に立たされている。消費者がトランプとの新たな関連性を理由にテスラを拒否し始めているからだ。マスクの巨額の個人資産が2倍以上に増加した明白な理由は、トランプの大統領選出馬が成功し、マスクが最大の寄付者であり、そして今やトランプに最も近い人物となったことだ。トランプとのパートナーシップは、マスクの個人的な利益と国家の利益を融合させている。

不正行為(malfeasance)は一切必要ない。利益相反(conflict of interest)さえも必要ない。トランプにとって良いことは、マスクにとって良いことであり、アメリカにとって良いことだ。彼らはそう想像し、それに従って行動するだろう。例えば、スペースXは、その絶え間ない革新と投資によって、既にアメリカの宇宙計画の中核を担う地位を確立している。大統領就任時にアメリカ宇宙軍を創設したトランプは、この計画とスペースXの地位を容易に拡大することができる。そして、マスクは常に自らを歴史の正しい側にいると考えるだろう。

マスクから見れば比較的取るに足らない投資で、彼は自身のヴィジョンの力強さを示し、今や現場で事実を生み出している。おそらく疑問なのは、なぜこれまで誰もこれをしなかったのかということだろう。トランプは明らかに、この種の特異な個人的な影響力に、非常に影響を受けやすい。トランプはビジネスの成功を愛している。マスクほどの資金力を持つ者はいないものの、それでも数十億ドルの富を持つ人は数多く存在する。なぜ大富豪たちは政治システムへの寄付、そして政治全般を操ろうとする努力を、口先だけで済ませているのだろうか? 確かに、数百万ドルが費やされていることは目に見えている。しかし、マスクはツイッター社を買収し、2024年の大統領選挙でトランプをはじめとする共和党候補に2億7700万ドルを投じた。そして、その見返りを見れば、それは目覚ましい成功を収めた投資と言えるだろう。

唯一思い浮かぶ明確な類似点は、ナレンドラ・モディ首相とアンバニ家のようなインドの寡頭政治の支配者たち(oligarchs)との関係だろう。彼らは、単に狭い意味でではなく、より広い意味で、自分たちに有利な方向に流れを変えてくれる政治家に、真に長期的かつ大規模な投資を行った。

この「政治への投資(investment in politics)」は、マスクの事業を活気づけるヴィジョンを取り巻く環境を積極的に形作る、つまり、更なるリスクテイクを可能にするものと考えることもできる。あるいは、彼の政治介入をより防御的なものと捉えることもできる。

歴史が自分に降りかかるのを待ちながら、ただ傍観し、自分の道を進み、富を享受する方が良いのか? それとも、真剣に賭けに出て、どうにかしてこの対立を乗り切ろうとする方が良いのか? マスクは明らかに後者の道を選んだ。リスクや矛盾はあるのだろうか? もちろんある。テスラは中国で大きなリスクを負っている。中国はテスラにとって最大の市場の1つであり、世界の生産量に占める割合は更に大きい。

これがトランプ大統領の貿易政策や、よりタカ派的な側近たちの地政学政策と衝突しないという保証はあるだろうか? もちろんない。しかし、政権内部にいる方が、事態の行方に影響を与え、自社にとって効果的な現実的な解決策を見つける可能性が高くなるだろうか? もちろんある。第1次トランプ政権下で関税免除のロビー活動を成功させたアップルは、その可能性を実証した。マスクは更に上を行くだろう。アップルのCEOティム・クックと同様、マスクも中国の上層部から下層部まで強力な人脈を持っている。おそらく彼は何らかの方法で矛盾を解消できるだろう。マスクが選択肢として考えていないのは、架空の中立の立場に後退することだ。

マスクが極右イデオロギーに傾倒しているのは、南アフリカで育ったせいではないかとの議論が盛んだ。土地再分配や黒人の所有権に関する政策をめぐって、トランプ政権が南アフリカの現政権をいじめようとしていることは、今や明らかだ。マスクが糸を引いているかどうかは別として、トランプの周囲には、より広範な南アフリカの白人グループが存在し、その中でマスクは最も権力を握っている。彼らがこの話題に関する彼の見解を形成していないとは考えにくい。

しかし、より深いレヴェルでは、1970年代から1980年代にかけての南アフリカ政治という実に変幻自在な環境で育ったことが、マスクの政治の根底にあるリスクテイクの形、つまり憲法の腐敗可能性や歴史そのものに対する理解を形成した可能性を考えることは有益である。

アパルトヘイト体制が崩壊し、人種戦争(race war)という終末論的なシナリオ(これは今日でも南アフリカに色濃く残っている)が政治生活に影を落としていた。あらゆるものが争奪戦に晒されていた。いかなる政治体制も排除することはできなかった。リベラルな想像力を育むには不向きな環境だった。マスクの父親はリベラルだったと言われているが、南アフリカの文脈では、それは黒人の代表をある程度認めるための多院制議会について議論することを意味していた。マスクによれば、彼自身はアパルトヘイトの柱であった南アフリカ軍への徴兵を避けるために国を離れたという。

マスクやピーター・ティール、そしてシリコンヴァレーの仲間たちに共通しているのは、あらゆる物事について「考えられないことを考える(think the unthinkable)」のが好きだということだ。それは、科学的な公理に基づいて政治を考える習慣につながる。アパルトヘイト後期の南アフリカのような状況では、全てが修正される可能性がある。第一原理に立ち戻るしかない。

しかし、ヨーロッパの右翼政策におけるマスクの冒険は、彼の動機が彼自身も認めているほど明らかではないことを示唆している。ベルリン郊外に建設した工場周辺では、ドイツ政界から度々ビジネスプランへの抵抗を受け、不快な思いをしてきた。報道によると、マスクはベルリンの極端にヒップなパーティーシーンの一部と険悪な関係にあるという。現時点では、報復のためにドイツを混乱させるという考えをマスクはかなり好んでいるのだろう。そして、その感情的な計算に第一原理を当てはめてみると、ドイツの極右は強力な支持に値するという結論がすぐに導き出される。

極右政党「ドイツのための選択肢[Alternative for Germany]AfD)」の共同党首アリス・ヴァイデルとの会話を目にすると、マスクはほとんど世間知らずに思える。政策面では、AfDは一般的に極右とされているものの、アメリカの共和党よりも右翼的という訳ではない。唯一の違いは歴史であり、だからこそマスクは、ドイツ人はナチスの過去をあまり心配する必要はないと結論づけたのだ。

マスクが決してしないのは、マイクロソフトで築いた莫大な財産を、世界の公衆衛生や教育といった従来型の慈善事業に注ぎ込んだビル・ゲイツのような人物の、おとなしく追随することだ。ゲイツはベビーブーマー世代で、伝統的な趣味を育み、定評のあるアメリカ美術コレクションを所有している。一方、マスクは1970年代から1980年代にかけて、社会化が乏しく、やや野性的なコンピュータキッズだったが、型破りなエネルギーによって、自らを世界一の富豪へと押し上げた。型破りな思考(thinking outside)こそが、彼が知っている唯一無二の道なのだ。

政府効率化省におけるマスクの最終目的が何なのか、そして彼の政治哲学が最終的にどこへ向かうのかは、誰にも分からない。マスク自身も含めて誰にも分からない。

政府インフラへの侵入やオフィスビルの占拠といった形で行われる敵対的な監査(hostile audits)は、政治史において決して珍しいことではない。例えば、ユーロ危機の後期には、いわゆるトロイカ(ヨーロッパ委員会、ヨーロッパ中央銀行、国際通貨基金)の検査官がギリシャ政府庁舎を訪れ、コンピュータやファイルにアクセスし、ギリシャの将来の支出形態を決定した。

しかし、これには何年もかかり、一定の手続きが踏まれた。第二次トランプ政権発足後数週間で私たちが目にしたのは、2021年1月6日の暴動に似た攻撃だ。予算400億ドルの米国国際開発庁は、アメリカ政府機関の中では小さな部分を占めるに過ぎないが、世界の政府開発援助(official development assistanceODA)の20%以上を占めている。この機関の破壊は、近年の政府改革において前例のない事態だ。

おそらく戦略があるのだろう。マスクは現状打破を望んでいるようだ。アメリカ政府を混乱させることで、想像を絶するほどの効率化が実現できると考えているのかもしれない。

彼が変革を推進するために活用しているティームは、10代のエンジニア、彼の様々な事業からの出向者、そして一流弁護士といった構成だ。レイオフは、教育省から中小企業庁、消費者金融保護局に至るまで、ほぼ全ての連邦政府機関に及んでいる。もし彼らが何らかの計画を実行しているとすれば、それは場当たり的なものに思える。

しかし、そこには戦略があるのか​​もしれない。マスクは物事を打破したがっているようだ。アメリカ政府を混乱させることで、想像もできなかったほどの莫大な効率化が実現できると考えているのかもしれない。スペースXNASAで事実上実現したように、政府の大部分を民間企業に置き換えることさえ構想しているのかもしれない。しかし最近、彼は自身のヴィジョンを説明するのに、醜悪なガーデニングの比喩に頼っている。

機関の一部を残すのではなく、機関全体を削除する必要があると私は考える。それは雑草を放置するのと似ている。雑草の根を抜かなければ、雑草は簡単にまた生えてくる。しかし、雑草の根を取り除いても、雑草が再び生えてこなくなる訳ではなく、生えにくくなるだけだ。

庭師とは、もちろん、雑草を識別し、手入れが必要な植物と区別するための実践的な知識を培った人のことだ。言い換えれば、原則に従って仕事をする人ではない。

※アダム・トゥーズ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学歴史学教授、ヨーロッパ研究所部長。経済、地政学、歴史のニューズレター「チャーターブック」著者。Xアカウント:@adam_tooze

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 ドナルド・トランプ大統領による高関税の発表から1カ月が経過した。いくつかの妥協がなされているが、日本に関しては、24%の関税賦課が行われる予定で、それを回避するために、赤澤亮正経済再生担当大臣が2度の訪米で交渉を行っている。アメリカとしては、貿易拡大、特にアメリカ製品の輸出拡大を目指しているが、厳しい状況だ。

アメリカ側は、日本車とアメリカ車の不均衡を批判しているが、日本で売れるアメリカ車を作る努力もしないで、ただただ買えと言っているのは押し売りと同じだ。もしくはカツアゲだ。アメリカ産の農産物を買うと言っても、少子高齢化で人口減少、高齢社会によって食料品の消費量はどうしても減っていく。アメリカ産のトウモロコシをどうやって消費するかは難しい。結局、政府がアメリカらから製品を買って、海外援助の現物として支給する形にするしかないが、そのような税金の使い方が良いのかという問題は起きる。

 トランプ高関税(解放記念日関税)によって、株式市場は乱高下し、更には米国債の金利上昇という事態に陥り、妥協する形になった。高関税を支持したのは対中強硬派であり、そのグループが交代を余儀なくされたということになる。この高関税政策の主眼は、アメリカの貿易赤字削減であるはずなのに、高関税を武器にして、中国と争うことを主眼としたグループがおり、そのグループが過剰な中国をターゲットにした、関税戦争、貿易戦争を仕掛けようとしたが、中国が頑として妥協しないという姿勢を示したために腰砕けとなった。これは、ウクライナ戦争勃発後、西和賀諸国がロシアをSWIFTという国際決済システムから除外し、制裁を科して、ロシアを早々に屈服させようとして失敗したのと似ている。中露両国はアメリカからの制裁に慣れており、その準備を十年単位に進めている。対米自立(対ドル自立)ができている(食糧安保も含めて)。

高関税を何とか宥めたいグループの代表がスコット・ベセント財務長官だ。ベセントは昨年の大統領選挙ではトランプを支持し、関税政策も支持していた。しかし、対中強硬派の暴走を抑えることに成功した。それはもちろん、米国債金利上昇(米国債が中国によって売られた可能性が高い)という緊急性の高い事態を招いたこともあるが。スコット・ベセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表がこれから、二国間協議で各国からの妥協を引き出すということになるだろう。これは簡単に言えば、みかじめ料ということになるが、あまりにも阿漕なみかじめ料を取るようならば、アメリカの威信は地に堕ち、信頼を失うことになる。

 ナヴァロをはじめとする対中強硬派は高関税を使ってやり過ぎてしまった。対中強硬派はこれからトランプ政権で力を失っていくだろう。ナヴァロはトランプに殉じて刑務所に入ったくらいの忠誠心の高い人物であるから、象徴的な意味でも政権内に留まるだろうが、実権はなくなるだろう。トランプ政権の荒療治はなかなか厳しい状況に陥っている。

(貼り付けはじめ)

トランプ関税ドラマの勝者と敗者(Winners and losers from the Trump tariffs drama

ナイオール・スタンジ筆

2025年4月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5243790-trump-tariff-china-trade-war/

ドナルド・トランプ大統領は水曜日、世界各国への関税賦課をほぼ一時停止し、方針を転換した。

唯一の大きな例外は、激化する貿易戦争(an escalating trade war)の焦点となっている中国だ。アメリカの対中関税は現在145%に達しており、中国は報復措置としてアメリカからの輸入品への関税を金曜日早朝に125%に引き上げた。

トランプ大統領が国際的な関税賦課を撤回したのは、アメリカ株が数兆ドルの下落を見せ、債券市場が警戒感を示し始め、経済界が景気後退の可能性を懸念する声が高まった後のことだ。

譲歩を決して認めようとしないトランプ大統領でさえ、投資家たちが動揺し始めていることを指摘し、「投資家たちは騒ぎ立てている(they were getting yippy)」と述べ、自身も債券市場の動向を注視していると述べた。

利上げ停止発表直後、水曜日の午後、市場は大きく上昇した。しかし、中国情勢への懸念が更に強まったため、木曜日には再び急落した。

ダウ工業株30種平均は1000ポイント以上、つまり、2.5%下落した。より広範なS&P500は約3.5%下落し、ハイテク株中心のナスダックはさらに下落し、4.3%下落した。

状況は流動的で、今後も多くのドラマが展開される可能性が高い。

トランプ大統領自身以外では、関税騒動の勝者と敗者は誰なのだろうか?

■勝者たち(WINNERS
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●スコット・ベセント財務長官(Treasury Secretary Scott Bessent

ベセントはここ1週間、トランプ政権内でより強い立場を築いてきた。

トランプ大統領と公に決別しようとしたことは一度もないが、包括的かつ過酷な関税水準に懐疑的な派閥のリーダーであることは明らかだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の木曜日の報道によると、ベセント財務長官は週末、トランプ大統領の専用機エアフォースワンに同乗し、金融市場の透明性の必要性を強調し、大統領に「他国との交渉に集中する(focus on negotiating with other countries)」よう助言したことで、内部での影響力を強めたようだ。

かつてヘッジファンドマネジャーを務め、過去には民主党の資金調達担当者でもあったベセントは、トランプ周辺の一部が主張する過剰な保護主義(hyperprotectionism)に対して、常に懐疑的だった。

より穏健なアプローチが勝利した後も、ベセントはトランプに対して忠誠心を持ち、トランプについて「これが彼の戦略だった(This was his strategy all along)」と報道陣に語った。
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●イーロン・マスク(Elon Musk

関税騒動の裏話はマスクに絡んでいる。

マスクは、トランプの側近で経済学者であり、最も保護主義的な立場を明確に示すピーター・ナヴァロと激しく対立していた。ナヴァロが、マスクがテスラ(ナヴァロはテスラを真のメーカーではなく「自動車組立業者(car assembler)」と揶揄していた)のせいで自由貿易に既得権益があると主張すると、マスク氏は彼を「間抜け(moron)」呼ばわりした。

更に言えば、マスクは壮大な関税制度に明らかに不安を抱いているもう1人の重要人物だった。例えば、トランプ大統領とヨーロッパ連合(EU)の間の緊張が高まる中、マスクは大西洋横断自由貿易圏(a transatlantic free trade zone)の設立を公に表明した。

ベセントと同様に、マスクも内部論争で勝利を収めた。

●民主党(Democrats

ここでは野党が勝利を収めることになる。

民主党は、昨年11月のトランプの勝利、党内の今後の方向性をめぐる議論、そして党に対する認識の急落を示す世論調査によって、大きく揺さぶられてきた。

しかし現在、トランプは中道層の有権者に深刻な打撃を与えかねない、最初の大きな失策を犯したと見られている。

世論調査では関税が広く不人気であることが示され、トランプの支持率も急速に低下しているように見える。

1月にトランプが大統領に就任して以降、初めて、民主党に追い風が吹いている。

■中間(MIXED

●ウォール街(Wall Street

投資家と金融機関にとって、これはジェットコースターのような激しい動きだった。

数日続いた急落は、水曜日にウォール街史上最大級の1日の上昇で打ち破られた。

そして木曜日、市場は再び急落した。

主要株価指数は、トランプ大統領の「解放記念日」関税(“Liberation Day” tariff)発表前の水準と、その後数日間に記録した安値とのほぼ中間水準にある。

ウォール街は、トランプ大統領の方針転換に影響力のある発言者が何らかの役割を果たしたという事実に、ある程度の安堵を抱くことができるだろう。

しかし、中国との緊張が解消されない限り、今後の道のりは依然として不安定だ。

●連邦議会共和党(Republicans in Congress

共和党の一部には、当初からトランプ大統領の関税措置に対する明確な不安が存在していた。

共和党所属の連邦議員の中には、関税が早期に緩和されることを期待する者もいた一方、連邦上院議員の中には、この問題に関する権限をホワイトハウスから奪還しようとする動きに加わった者もいた。

市場が今後改善すれば、共和党へのダメージは小さくなるかもしれない。

しかし、市場のヴォラティリティはまだ明らかに解消されておらず、それが共和党の政局にも不確実性をもたらしている。

■敗者(LOSERS
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●ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)

ナヴァロの保護主義、アメリカが外国の競争相手につけこまれていると強く主張する姿勢は、大統領に支持を得ているように見えた。

ハーヴァード大学で博士号を取得しているにもかかわらず、著名な経済学者の中では異端児であるナヴァロにとって、かつてはそれが好意的な承認のように思えたに違いない。

しかし、トランプ大統領が関税賦課を停止したことで、その見方は大きく崩れ去った。

確かに、トランプ大統領は10%の関税を維持し、他国向けに「特注(bespoke)」の解決策を検討しているとされている。

しかし、ナヴァロを最も象徴する主張、すなわち十分な規模と期間の長期にわたる懲罰的関税がアメリカの製造業の再生を促すという主張は、再び遠ざかりつつあるようだ。

●中国(China

中国政府はトランプ大統領との対決において決して譲歩しないと強調し続けている。

中国商務省は「最後まで戦う(fight to the end)」用意があると約束しており、政府報道官はソーシャルメディアで毛沢東国家主席の好戦的な映像を共有し、その点を強調した。

貿易戦争が長期化すれば、中国だけでなくアメリカにも打撃を与えることは疑いようがない。

最新の統計によると、アメリカは毎年約640億ドルの携帯電話、300億ドルの玩具、200億ドルの繊維・衣料を輸入している。関税は、これらの品目のアメリカ国内の価格を上昇させるか、単に入手しにくくするだけだ。

しかしながら、中国への打撃は更に大きくなる可能性が高い。

中国の対米輸出は輸入の約3倍に上る。中国は近年、市場の多様化に努めているものの、アメリカとの貿易に大きな障害が生じれば、深刻な痛みをもたらすだろう。

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 第2次ドナルド・トランプ政権は、発足後100日を過ぎて、イーロン・マスクが政権を離れるという報道が出るなど、ひと段落を突けるという状況になっている。政権内部の影響力争いもあり(特に高関税政策において)、マスクが外れ、誰がトランプ大統領に対して影響力を持つかが分からない状況になっている。当初の怒涛の勢いはさすがに続かない。しかし、連邦政府の縮小と関税交渉はこれからなお続く。

 下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトは、ジェイムズ・スコットの傑作『国家のように見る:人間の状態を改善するための特定の計画はいかにして失敗したか(Seeing Like a State: How Certain Schemes to Improve the Human Condition Have Failed)』を敷衍して、トランプ政権が政策に失敗するであろうと予測している。スコットは著書の中で、重大な政策の失敗の原因を 「抑制されない権力(unchecked power)」と「強力な「ハイモダニズム」イデオロギー(“high modernist” ideologies)、つまり合理的かつ準科学的な基盤に基づいているとされる世界観に導かれていたこと」に求めており、結果として、「これら2つの要素が組み合わさると、自信過剰で、細部に頓着せず、地域の状況に無関心で、反対圧力にも動じない指導者が生まれる。このような状況下では、政府は自らの自覚すらなく、甚大かつ永続的な損害を与える可能性がある」としている。ウォルトは、トランプが抑制されない権力を求めているが、ハイモダニズム・イデオロギーには基づかないとしている。そして、以下のように書いている。「白人キリスト教ナショナリズム(ピート・ヘグゼスなど)の宗教的過激主義(the religious extremism)と、シリコンバレーのテクノ・リバタリアン的未来主義[Silicon Valley techno-libertarian futurism](イーロン・マスクなど)が融合しているからである。前者は多様性への攻撃、女性や少数派の権利を後退させようとする動きの原動力であり、後者は政府の制度や政策に対する軽率な破壊工作の背後にいる。この運動のどちらの勢力も、自分たちが神の意志を実行していると信じているか、あるいは自らを、テクノロジーを駆使して未来を操れる魔法使いだと信じているかのどちらかで、自らが正しいと確信している。彼らは大統領が全権を握ることに満足している。それは、彼らのユートピア的な(そして場合によっては利己的な)計画を実行するための手段だからだ」

 このウォルトの分析は需要だ。それは、トランプ政権内部の大きなグループ分けを示しているからだ。白人ナショナリズムとテクノリバータリアニズムの同居ということになる。これら2つのグループが呉越同舟である時は良いが、問題は、トランプ政権の施策が人々の支持を失う時だ。トランプ政権の施策はアメリカ国民を甘やかすものではない。「製造業の雇用を作れと言うからそのようにしている。実際にあなたたちはきちんと働いて、諸外国の労働者と競争しなくてはいけない(あなたたちは自分たちが世界一の労働者だと言っているのだからできるだろう)」ということになる。しかし、アメリカを外から眺める目で見てみれば、アメリカの労働者が世界一の質であるなどと考える人は少数だろう。

 状況が悪化していけばおそらく仲間割れを起こして、政権内は混乱するだろう。そうなったときに、トランプがどのような選択をするかである。トランプが3期目を目指すという話も出ているが、彼はそこまでは自分の仕事ではないと思っているはずだ。泥船のアメリカを劇的に救うことなど神様でもない限りできないだろう。そんな仕事を後7年もやるなんて、そんなバカげたことはない。トランプは何とか条件を整えるだけで精一杯だろう。そして、アメリカ国民は失敗してしまうだろう。そして、アメリカは世界覇権国の座から退いていく。それが国家の繁栄と衰退のサイクルということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカは自らの最大の敵だ(America Is Its Own Worst Enemy

-強大な国家が自らの足を撃つことは前例のないことではない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年2月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/02/12/trump-democracy-america-own-worst-enemy/

外交政策や国際安全保障を取り扱っている私たちは、主に外部からの脅威と、それを最小化し、抑止し、打ち負かすために何ができるかに焦点を当てがちである。しかし最近、私は奇妙な理由から、指導者が自ら愚かな行動(a foolish course of action)を選択し、手遅れになるまで軌道修正することができないか、あるいはしようとしない場合に、国が自らに与える甚大な損害について考えている。

もちろん、国家には外敵を心配する十分な理由がある。外敵の危険を真剣に受け止め、それらに知的に対応することを怠れば、痛ましい結果を招きかねない。自己満足も危険の1つだが、不必要な戦争を仕掛けて外的危険に過剰反応する国も、第二次世界大戦でドイツや日本が、イラクでアメリカが、そしてウクライナでロシアがしたように、大きな代償を払うことになる。したがって、私のような人間が国際的な問題を評価し、それに対処する様々な方法を提案することに多くの注意を払うのは当然のことである。

しかし、誤った外交政策や国家安全保障政策だけが国家が問題に陥る原因ではない。毛沢東が率いた、気まぐれで強引な中国共産党指導部は、40年近く経済発展を阻害し、1958年の大躍進政策(the Great Leap Forward)や1960年代の文化大革命(the Cultural Revolution)といった愚かな運動は何百万人もの不必要な死をもたらし、中国を本来よりもはるかに貧しく弱体化させた。ヨシフ・スターリンによる集団農業の強制(collectivized agriculture)はソ連でも同様の影響を及ぼし、ニキータ・フルシチョフによる、1950年代の考えなしの「処女地」計画(“Virgin Lands” program)も同様の影響を及ぼした。アルゼンチンは20世紀初頭には1人当たりの所得が世界第12位を誇り繁栄していたが、数十年にわたる政治の機能不全と度重なる政策ミスが発展を阻み、度重なる経済危機を引き起こした。ヴェネズエラはかつて南米で最も豊かな国だったが、ウゴ・チャベスとニコラス・マドゥロ政権の無能な指導力によって経済は破壊され、数百万人が国外に逃れる事態となった。これらの惨事の主たる責任は外国の敵ではなく、ほぼ全てが権力者たちが負うべきだ。

同様に、いかなる外国の敵がアメリカに対して、アメリカが自らに与えたほどの損害を与えたとは言い難い。死傷者数で言えば、南北戦争は依然としてアメリカ史上最も犠牲の大きい紛争である。アルカイダは2001年9月11日に約3000人を殺害し、数十億ドルの物的損害を引き起こしたが、世界的な対テロ戦争は、はるかに多くのアメリカ人の命と莫大な費用を費やす結果となった。1990年以降、100万人以上のアメリカ人が銃による暴力で亡くなっている。これは他のどの先進国よりも人口に占める割合がはるかに高い。そして、この悲惨な統計は、もっぱら国内政策の決定によるものだ。少なくとも50万人の死者を出したオピオイド危機は、主に製薬会社の強欲の結果であり、現在のフェンタニルの危険性は、薬物乱用を公衆衛生問題ではなく、外国の犯罪者に対する戦争として扱うという長年の傾向に大きく起因している。アメリカが中国の世界貿易機関(WTO)加盟を時期尚早に支持したり、金融業界の規制緩和を強制して金融危機を不可避にするような事態を招いたりした外国人は誰もいない。また、外国の敵が次の危機の引き金となり得る仮想通貨やミームコインの熱狂を煽っている訳でもない。

この状況はそれほど驚くべきものではない。アメリカは豊かで強力であり、地理的にも有利なため、いかなる外国勢力もアメリカに、アメリカが自らに与えるほどの損害を与えることは難しい。そこで当然の疑問が浮かぶ。アメリカの指導者が自国に打撃を与える可能性を高める条件とは一体何なのか?

以前にも述べたように、この問題を最もよく理解するための手引きの1つは、故ジェイムズ・スコットの傑作『国家のように見る:人間の状態を改善するための特定の計画はいかにして失敗したか(Seeing Like a State: How Certain Schemes to Improve the Human Condition Have Failed)』である。本書は、各国が自らの判断で、これらの政策が劇的で好ましい結果をもたらすと確信し、破滅的な政策を実行した一連の事例を検証している。

ジェイムズ・スコットは、これらの重大な政策の失敗は主に2つの要因に起因すると主張する。1つ目は、抑制されない権力(unchecked power)である。これらの国の指導者たちは、やりたいことを何でも自由に行うことができ、彼らに誤りを正すよう強制できる強力な機関は存在しなかった。2つ目は、これらの指導者たちは、強力な「ハイモダニズム」イデオロギー(“high modernist” ideologies)、つまり合理的かつ準科学的な基盤に基づいているとされる世界観に導かれていたことである。スターリンと毛沢東の両方を導いたマルクス・レーニン主義は、社会問題に対する唯一の真の答えを提供すると主張した点で、まさにその好例である。これら2つの要素が組み合わさると、自信過剰で、細部に頓着せず、地域の状況に無関心で、反対圧力にも動じない指導者が生まれる。このような状況下では、政府は自らの自覚すらなく、甚大かつ永続的な損害を与える可能性がある。

さて、話を今日のアメリカ合衆国に戻そう。スコットの洞察は、私たちの目の前で展開している出来事について何を示唆しているのだろうか?

良いことは何もない。

ドナルド・トランプ大統領が抑制されない行政権を望んでいることは今や明白であり、連邦下院も連邦上院も、合衆国憲法が連邦議会に与えている権限を奪取しようとする政権の試みに抵抗する意志も能力も持ち合わせていないようだ。資格のない閣僚任命を承認すること自体が懸念材料だが、政府支出に関する権限を放棄することはさらに深刻だ。

裁判所はこの権力掌握を阻止するだろうか? おそらくそうするだろう。しかし、最高裁判事の過半数が行政府の権限拡大を支持しており、連邦最高裁判所がトランプの行動を阻止するほどの力を発揮するとは思えない。それでは、もし阻止しようとしたらどうなるだろうか? 重要な訴訟で最高裁が政権に不利な判決を下し、トランプが任命した職員に判決を無視して命令を実行するよう命じたとしよう。一部のキャリア官僚は従わないかもしれないが、休職処分や解雇の対象になる可能性がある。FBI、司法省、シークレットサーヴィス、連邦保安官、軍が最高司令官の命令に従うのであれば、ジョン・ロバーツやエレナ・ケーガン、その他の判事たちは、特に任命された職員が、後に法的トラブルに巻き込まれたとしても大統領が恩赦を与えてくれると知っていたとしたら、行政府の行動を阻止するために何をするだろうか?

第二に、政権の指針となっているのは、知識の限界、予期せぬ結果の必然性、現代社会の複雑さ、あるいは地域事情を考慮する必要性(スコットなら助言しただろう)といった認識ではなく、共産主義者やファシスト、その他の狂信者たちと同様に、自分たちがあらゆる問題に対する唯一の真の答えを持っているという信念である。これはスコットが用いた意味でのハイモダニズム(high modernism)とは全く異なる。白人キリスト教ナショナリズム(ピート・ヘグゼスなど)の宗教的過激主義(the religious extremism)と、シリコンバレーのテクノ・リバタリアン的未来主義[Silicon Valley techno-libertarian futurism](イーロン・マスクなど)が融合しているからである。前者は多様性への攻撃、女性や少数派の権利を後退させようとする動きの原動力であり、後者は政府の制度や政策に対する軽率な破壊工作の背後にいる。この運動のどちらの勢力も、自分たちが神の意志を実行していると信じているか、あるいは自らを、テクノロジーを駆使して未来を操れる魔法使いだと信じているかのどちらかで、自らが正しいと確信している。彼らは大統領が全権を握ることに満足している。それは、彼らのユートピア的な(そして場合によっては利己的な)計画を実行するための手段だからだ。

数週間前、私は「トランプのピーク」が既に到来しつつあると述べ、政権が当初立て続けに打ち出した大統領令や突飛な提案は、最終的には裁判所、連邦議会、そして日々の統治の現場で行き詰まるだろうと予測した。しかしながら、連邦議会がトランプの行動に承認を与えることに甘んじ、裁判所の動きは鈍く、第四権力は分裂して無知であり、大学や有力な専門家団体は身を守ろうとしているように見えることから、既存のアメリカの諸機関がその任務を果たせるかどうかについては、ますます自信を失っている。高校の社会科の授業で習った抑制と均衡(the checks and balances)の仕組みは、今のところあまりうまく機能していないようだ。

この取り組みを崩壊させる可能性が高いのは、組織的かつ非暴力的な市民の抵抗とともに、現実世界での出来事だろう。白人のキリスト教ナショナリストとテック・ブラザーズとの間の便宜的な結婚(the marriage of convenience between the white Christian nationalists and the tech bros)は長続きしないかもしれない。特に、国内情勢が膠着し始め、トランプ大統領が非難するスケープゴートを必要とした場合(あなたのことだよ、イーロン)。もっと重要なのは、政権が現在進めている政策が、何百万人もの人々に深刻な悪影響を及ぼすということだ。連邦政府の予算が枯渇し、庶民は職を失い、病院は削減され、基本的なサーヴィスは脅かされる。中国の大学や研究機関が新たな高みへと急上昇しているように見える今、科学研究は機能不全に陥るだろう。かつては頼もしい親米だった国々も距離を置き始め、新たな市場や、場合によっては新たな友好国を探し始めるだろう。トランプ大統領の関税フェチが完全には実行に移されないとしても、国内外の企業は彼の予測不可能性を警戒し、脆弱性を減らすことに目を向けるだろう。私たちが向かうかもしれない先についての恐ろしい予測は、ノーベル賞受賞者ダロン・アセモグルが『フィナンシャル・タイムズ』紙に寄稿した、あまりにも現実的なエッセイをご覧いただきたい。

スコットや他の著名な学者たちが警告しているように、抑制のきかない権力の危険性は、独裁者が(部下や下僕が言わないために)自分たちの政策が失敗していることに気づかない可能性があること、そして、たとえ言われたとしてもそれを止められる立場にある者が誰もいないことだ。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、トルコ経済に甚大なダメージを与える異例の経済政策を追求するのを誰も止めることができなかった。最終的に軌道修正を余儀なくされたのは、高騰するインフレと世界市場の反応だった。

アメリカの民主政治体制、アメリカ経済、そして過去の成功の原動力となった知識生産機関へのダメージが修復不可能になる前に、事態が一刻も早く悪化することを願ってやまない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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 古村治彦です。※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 第2次ドナルド・トランプ政権は発足後から100日を過ぎた。政権は発足後、怒涛のスタートダッシュを見せて、アメリカ国内、そして、世界中を驚かせた。様々なことが起きて、いささか疲れ気味という感じになっている。トランプ政権には4年間しか時間がなく、次の選挙には出られないので、最後の1年はどうしてもレイムダック化(無力化)してしまうこと、2026年11月には中間選挙が実施され、上下両院での共和党の過半数が崩される可能性もあること、こうしたことから、2年間で公約の多くを進めようという意図が見える。

 トランプ政権の原理は「アメリカ・ファースト」であり、これはアメリカ国内問題解決最優先主義ということになる。アメリカ国内の諸問題を解決するために、政権は財政赤字と貿易赤字の削減を行おうとしている。肥大化した連邦政府と官僚機構の削減と、高関税とドル安誘導を行おうとしている。そして、関税と共に、不法移民対策によって、「国境を守る」という政策を進めている。

 これらのスピード感あふれる施策によって、摩擦も起きている。トランプ政権の大統領令や施策に対して、裁判所に提訴するということも多く起きている。政権側と司法(裁判所)が対立する構図にもなっている。

 アメリカの国内、国外の大変革は、国内、国外での「アメリカ政府の役割を変える」ということである。歴代の大統領たちは、「現状を変える」「ワシントン政治を変える」と訴えて当選してきた。しかし、結果は大きな変化は見られず、失望の4年間、8年間となった。そして、また、新しい人物が「変化」「変革」を訴えて当選して、失望させるというパターンに陥ってきた。それは、これまでの歴代の大統領たちがワシントンのインサイダーであり、「常識人」であったからだ。アメリカ国民はアウトサイダーのトランプに賭けた。子の賭けは失敗に終わるだろうが、それはアメリカの衰退という大きな流れの中で仕方がないことだ。それでも何とかしようとしたというトランプの存在は後世の歴史家たちに評価されていくだろう。

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ドナルド・トランプ大統領が就任100日で政府を刷新した5つの方法(5 ways Trump reshaped the government in the first 100 days

アレックス・ガンギターノ筆

2025年4月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5271255-trump-executive-actions-federal-government/

ドナルド・トランプ大統領の就任後100日間は、主要な選挙公約の実現を目指した数々の大統領令(executive orders)や政策で、ホワイトハウスと連邦政府全体の常識を覆した。

その中には、複数の機関の削減、数千人の連邦職員の解雇、そして政権に異議を唱える多数の訴訟が提起される中での裁判所の介入回避などが含まれている。

以下で、トランプ大統領が2期目の最初の3カ月で政府を刷新した5つの方法について挙げていく。

(1)連邦政府機関の再編と削減(Federal agency overhauls, cuts

ドナルド・トランプ大統領は、億万長者のテック起業家イーロン・マスクを政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)の責任者に任命した。政府効率化省は、連邦政府機関の無駄を特定することで、連邦政府の抜本的な改革を目指している。

CNNの分析によると、少なくとも12万1000人の連邦職員が解雇またはレイオフされ、少なくとも30の機関が影響を受けている。

政府効率化省は、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSIDA)を骨抜きにし、退役軍人省(Department of Veterans Affairs)の職員を大幅に削減し、保健福祉省(Department of Health and Human Services)などの省庁の再編に長官らと協力した。一部の削減は迅速かつ広範囲に行われ、トランプ大統領はマスクに「斧(hatchet)」ではなく、「メス(scalper)」で削減してほしいと公言した。

ホワイトハウス高官たちは、今回の改革は連邦政府の非選官僚から権力を奪い、選挙で選ばれた公職者に「権力を戻す(return power)」ために必要だと主張している。マスクはトランプの選挙運動中にアドヴァイザーとして就任し、大統領は彼を政府効率化省の責任者に任命した。

ホワイトハウス高官たちは、「私たちは民主政治体制とは全く相反する官僚制という牢獄(the prison of bureaucracy)の中で生きている。大統領が行った最大の改革の1つである最初の戦いは、行政部内の闘争(intrabranch fight)、つまり大統領と官僚たちの闘争だ」と述べた。

今回の改革後、マスクは政府における特別任務を縮小し、進行中の改革の指揮を長官たちに委ねる予定だ。マスクの自動車会社テスラは攻撃の標的となり、彼の仕事に対する国民の認識も一部で酷評されている。

(2)大統領令で連邦議会を回避する(Executive orders bypassing Congress

ホワイトハウスによると、トランプ大統領は就任後100日間で140件以上の大統領令に署名した。

就任宣誓の日から、移民問題や社会問題から、1月6日の被告人問題、教育問題、法律事務所への攻撃など、あらゆる問題に対処してきた。

大統領が大統領執務室から執行したこれらの大統領令は、財政権を持つ連邦議会を除外していた。共和党が多数派を占める連邦上下両院は、連邦議会の権限が縮小されているとについてほとんど言及していない。

大統領は重要な法案の1つ、レイケン・ライリー法に署名した。1月に署名されたこの法案は、窃盗、強盗、万引きの容疑で逮捕された、合法的な滞在資格を持たない幅広い移民を拘留することを義務付けている。

ホワイトハウス高官によると、ホワイトハウスは今後100日間で、税制および国境関連法案の成立に向けて連邦議会への圧力を強めると予想されており、法案の成立が近づくにつれ、トランプ大統領は連邦議会への働きかけを強めるだろう。

マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は月曜日に大統領と会談し、議題について協議したが、連邦下院における共和党のわずかな過半数と、相反する優先事項のため、連邦議会が法案を成立させるには長い道のりが残されている。

(3)法廷闘争を回避する(Skirting court challenges

ホワイトハウスは、国外追放、連邦政府職員の解雇、軍におけるトランスジェンダーの兵士に関する措置など、大統領令に対する数十件の異議申し立てに直面している。

トランプ大統領が18世紀に制定された「外国人敵対者法(Alien Enemies Act)」を行使したことに対する法的異議申し立てが最も大きな注目を集めている。この法律は、外国への「侵略(invasion)」を理由に移民を国外追放することを可能にする。

その結果、数百人の移民が国外追放に巻き込まれており、トランんプ政権は証拠を示すことなく、彼らがヴェネズエラが発祥のトレン・デ・アラグア・ギャングのメンバーであった、あるいはその他の犯罪行為を行ったと主張している。

キルマー・アブレゴ・ガルシアのケースでは、トランプ政権は裁判所文書の中で、エルサルヴァドル国籍のアブレゴ・ガルシアの国外追放は「行政上の誤り(administrative error)」であったと認めたが、ホワイトハウスはその後、この見解に異議を唱えている。連邦最高裁判所からアブレゴ・ガルシアの帰国を「促進(facilitate)」するよう命じられたにもかかわらず、トランプ政権はアブレゴ・ガルシアがアメリカに帰国することはないと主張している。

トランプ政権は、アブレゴ・ガルシアは現在エルサルヴァドル当局の管轄下にあるため、アメリカの裁判所が帰国を義務付けることはできないと主張している。

別のケースでは、連邦判事が先週、「サンクチュアリ」地域(“sanctuary” jurisdictions)が「連邦資金へのアクセスを受けないようにする」大統領令は違憲の可能性が高いとの判決を下した。その後、トランプ大統領は月曜日、連邦移民当局との連携を怠ったサンクチュアリ都市への取り締まりを強化する大統領令に署名した。

複数のホワイトハウス高官は、裁判所が官僚機構の味方をしていると主張している。

(4)司法省、アメリカ移民・関税執行局の役割を拡大する(Expanding roles of DOJ, ICE

トランプ大統領は、最重要課題の執行の大部分を担う2つの機関、司法省(Department of JusticeDOJ)とアメリカ移民・関税執行局(Immigration and Customs EnforcementICE)の役割を拡大した。

トランプ大統領は、パム・ボンディ司法長官に対し、民主党の寄付者プラットフォーム「アクトブルー」への外国人によるダミー献金疑惑の捜査から、「反キリスト教的偏見の根絶(eradicate anti-Christian bias)」に向けたタスクフォースの指揮まで、幅広い任務を担うよう指示した。

トランプ政権はまた、司法省公民権局において一連の政策変更を実施し、「女子スポーツへの男性の介入排除()keeping men out of women’s sports」や「反キリスト教的偏見の根絶」といった優先事項に司法省職員たちが重点的に取り組むよう指示した。

アメリカ移民・関税執行局は、強制送還件数を急速に増やす任務も負っている。フロリダ州では州法執行機関と共同で「前例のない(first-of-its kind)」作戦を実施し、数日間で100人近くを逮捕した。また、日曜日の早朝にはコロラド州コロラドスプリングスのナイトクラブを急襲し、100人以上を拘束した。

加えて、FBIは金曜日、ミルウォーキー郡巡回裁判所のハンナ・C・デュガン判事を前例のない方法で逮捕した。デュガン判事は、アメリカに不法滞在している移民が法廷で逮捕を逃れるのを手助けし、トランプ大統領の移民政策を妨害しようとした疑いがある。

(5)民間機関をターゲットにする(Targeting of private institutions

トランプ大統領は、主要大学や法律事務所を含む様々な民間機関に対し、資金提供を停止し、企業への打撃を与えようとしている。

トランプ政権は、ハーヴァード大学が採用・入学手続きの変更、多様性・公平性・包摂性(diversity, equity and inclusion)プログラムの廃止といったトランプ大統領の要求を拒否したことを受け、ハーヴァード大学への22億ドルの資金提供を停止した。

ハーヴァード大学はトランプ政権を提訴しているが、トランプ大統領はハーヴァード大学の免税措置にも狙いを定めており、国土安全保障省はハーヴァード大学の留学生受け入れを停止すると警告している。

パーキンス・コイ法律事務所やウィルマー・ヘイル法律事務所といった法律事務所は、トランプ大統領の政敵と協力していることで、トランプ大統領の怒りを買っている。大統領は様々な機関に対し、これらの法律事務所の従業員の機密情報取扱許可(セキュリティクリアランス)の剥奪、連邦政府施設へのアクセスの停止、そして政府と法律事務所との契約内容の精査を指示している。

パーキンス・コイ法律事務所とウィルマー・ヘイル法律事務所は、トランプ大統領の命令は違法であり、政府に関わる法律業務を遂行する能力に重大な危害をもたらすとして、裁判所に法的救済を求めている。司法省は、国家機密を誰に委託するかは大統領の裁量に委ねられていると主張し、これに反論している。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 今回は、興味深い論稿をご紹介する。民主党系のストラティジストが書いた文章で、内容は、イーロン・マスクが行っている政府効率化(連邦政府職員の削減、連邦政府機関の一部の閉鎖、予算の削減)がトランプと支持者たちを離間させるというものだ。 

論稿の著者ブラッド・バノンは「マスクはトランプのスケープゴートにされる可能性がある。民主党は、トランプを弱体化させることが最終目標であり、マスクを攻撃することではないと認識すべきである」と主張している。失業保険や生活保護など、連邦政府の予算が入っている福祉制度や労働対策制度を利用している低所得者層にとって、連邦政府の予算削減は生活に直結する大問題だ。

これまでにブログで何度も書いているが、トランプは、アメリカの貧乏白人、白人労働者たちの支持を受けて、彼らの代表として、既存の政治を壊すためにワシントンにやって来ている。貧しい白人、白人労働者たちが望んでいるのは、雇用であり、働かせてくれさえすれば、そして、生活できるだけの給料を保証してくれれば、福祉に頼ることなく、自分で生活を立て直すという考えを持っている。

 彼らの考えはもっともで素晴らしい。しかし、実態は厳しいだろう。トランプ政権下の4年間でどれだけの雇用が、一度、製造業が去ってしまった地域に戻るだろうか。しかも、彼らが望むだけの賃金となると、どうしても競争力は限定されてしまう。そうなると、彼らもまた我慢を強いられる。自分たちの思い通りにはいかないし、福祉に頼るということも続くことになるだろう。

 以下の論稿で重要なのは、後半の以下の記述だ。「マスクを嫌うバノンは私だけではない。トランプの大統領顧問を務めたスティーヴ・バノン(私とは血縁関係はない)は、長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)との間で、MAGA内戦が勃発すると警告している。バノンはこれを、トランプ連合内の億万長者と労働者階級の勢力間の戦い(a battle between the billionaire and working-class elements within the Trump coalition)だと表現した」。

 既に、日本でも報道されているように、政権内部には不協和音が起きつつある。最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)でも、政権内の不協和音、衝突については触れているが、より鮮明になっているようだ。私は違和感を覚えていたが、それが「長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)」という形で言語化されている。トランプ政権はポピュリズム政権であるが、大富豪であるイーロン・マスク、そして、ピーター・ティールが支えていることの違和感はあった。これが顕在化しつつある。

 トランプという巨大な存在によって、そうした不協和音を抑えることができるだろうが、それがいつまで続くだろうかということは私の最新の興味関心ということになる。

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マスクは民主党がトランプを労働者階級の支持層から引き離すために必要な楔となるかもしれない(Musk may be the wedge Democrats need to separate Trump from his working-class base

ブラッド・バノン筆

2025年2月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/5158364-elons-musk-vs-trump-division/

イーロン・マスクはメディアの注目を独占している。この状況が続く限り、彼にはそれを楽しんでいて欲しい。マスクはトランプ大統領の影を薄くし始めており、トランプのようなナルシストが長く我慢するはずがない。

木曜日、クールなサングラスをかけ、チェーンソーを振り回すマスクは、今年のCPAC保守派会議の主役だった。FOXニューズのショーン・ハニティとの共同インタヴューでは、トランプを圧倒した。トランプが脇役に甘んじていた最近の大統領執務室での会合の報道では、マスクと息子が中心人物だった。カルヴィン・クーリッジがネイティヴ・アメリカンの頭飾りを身につけて以来、最悪の大統領写真撮影の機会だった(意識が高ぶっていることを許して欲しい)。

マスクはフレッド・アステアの真似を精一杯やっている。重力に逆らって天井で踊っている。この綱渡りは、彼の失墜が更に悲惨なものになることを意味するだけだ。

2週間前に『エコノミスト』誌が実施した全国世論調査によれば、トランプ大統領は既に不人気であり、人命が失われる数が増えるにつれ、事態はさらに悪化するだろうことは間違いない。

トランプの支持率も、2度目の就任以来低下している。彼に対するネガティヴな評価が警戒すべきレヴェルにまで達すれば(そして必ずそうなるだろう)、脚光を浴びることを好むこの大企業経営者であるマスクは大統領のスケープゴート(scapegoat)にされるだろう。トランプの元側近の多くと同様に、彼も使い捨てられる存在だ(He is disposable like so many of Trump’s former associates)。民主党は、私たちの最終目標は大統領を弱体化させることであり、マスクを弱体化させることではないことを忘れてはならない(Democrats must remember that weakening the president, not Musk, is our ultimate goal)。マスクがトランプの意のままに動いているのであって、その逆ではないことを明確にすべきだ(We should make it clear that Musk is doing Trump’s bidding and not the other way around)。

国民の60%以上は、マスクがトランプに大きな影響力を持っていると考えているものの、マスクにそう望んでいるのはアメリカ人の5人に1人だけだ。共和党員の3人に1人でさえ、この大企業経営者マスクは大統領に過大な影響力を持っていると考えている。

トランプは、マスク、Metaのマーク・ザッカーバーグ、Amazonの『ワシントン・ポスト』紙のジェフ・ベゾスといった超富裕層のテック業界の巨人たちと肩を並べている。ワシントン・ポストで最近起きた騒動は、トランプの企業カルテルがいかに集中的な権力を持っているかを如実に示している。公益団体コモン・コーズは、マスクを批判するラップアラウンド広告を一面、裏面、そして中面1ページに掲載することを提案した。しかし、注文を受けた後、ワシントン・ポストは尻込みして広告掲載を断った。ワシントン・ポストのモットーは、「ワシントン・ポストで民主政治体制は闇の中で死ぬ(Democracy Dies in Darkness at the Washington Post)」に変更されるべきだ。

ワシントン・ポストが広告掲載を拒否したことは、言論の自由に対する明白かつ差し迫った脅威だ。また、トランプ、マスク、ベゾスが、機能不全に陥ったアメリカ民主政治体制の心臓部に血液を送り込む情報動脈(the information arteries)を、いかに強大に締め上げているかを如実に示している。

マスクは世界で最も富裕な人物の1人、いや、最も裕福な人物と言えるだろう。彼は政府効率化省をリードする頭脳(the brain behind the Department of Government Efficiency)だ。彼の冷酷な指揮下で在宅医療や学校給食を失う貧しいアメリカ国民のことを、彼には気遣う理由など存在しない。効率化をあえて追求するあまり、彼は大切なものを駄目にし()throw the baby out with the bathwater、何百万人もの人々に奉仕する連邦政府機関を丸ごと潰そうとしている。彼の執拗な追求には、政府撲滅省(the Department of Government Eradication)というより適切な名称がふさわしいだろう。そして、彼が直属する大統領の真の目的はまさに政府の撲滅なのだ。

最近、政府効率化省(DOGE)は移民・関税執行局(the Immigration and Customs Enforcement Agency)で80億ドルの無駄遣いを発見したと主張した。『ニューヨーク・タイムズ』紙が調査したところ、実際の数字は800万ドルだったことが判明した。マスクが80億ドルと800万ドルの違いも分からないのであれば、他に何を間違っているだろうか? 彼は政府支出の効率化(efficiency in government spending)を担うべき人物ではない。

彼はまた、行動と言動において利益相反(conflict of interest)そのものだ。彼の巨大な企業的利益は、彼が担う重要な政府責任と真っ向から衝突している。彼のロケット会社スペースX社は連邦政府の請負業者である。

マスクを嫌うバノンは私だけではない。トランプの大統領顧問を務めたスティーヴ・バノン(私とは血縁関係はない)は、長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)との間で、MAGA内戦が勃発すると警告している。バノンはこれを、トランプ連合内の億万長者と労働者階級の勢力間の戦い(a battle between the billionaire and working-class elements within the Trump coalition)だと表現した。

民主党と進歩主義派は、この分裂につけ込むことができる。苦境に立たされた労働者世帯を支援するという自らの関与を強調することで、こうした分裂をうまく利用することができる。彼らは、トランプが新政権発足初日に物価を引き下げるという、今や放棄された選挙公約を実行してくれることを期待していた。

分断統治(divide and conquer)は常に敵を倒す効果的な手段だった。私たちはMAGA内の分裂につけ込まなければならない。マスクは、トランプを労働者階級の支持層から引き離すために必要な楔(wedge)となるかもしれない。

※ブラッド・バノン:民主党の全国規模担当ストラティジストであり、民主党、労働組合、そして進歩主義的な問題団体のための世論調査を行うバノン・コミュニケーションズ・リサーチCEO。彼は、権力、政治、政策に関する人気の進歩主義派ポッドキャスト「デッドライン・DC・ウィズ・ブラッド・バノン(Deadline D.C. with Brad Bannon)」の司会者を務めている。

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