古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。ブログ継続のために書籍の購入をお願いいたします。

 最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)の第2章では、アメリカの軍産複合体を生み育てた「現在の危機委員会(the Committee on the Present Dange)」について詳述した。同名の委員会はこれまで4回設立され、アメリカの戦後の外交政策や軍事政策に多大な影響を与えた。特に、第一次現在の危機委員会と第二次現在の危機委員会は、冷戦期のアメリカでソ連と共産主義の脅威を声高に主張し、人々にアピールし、軍事予算の増額を行うことに成功した。軍産複合体を肥え太らせるための存在が「現在の危機委員会」であった。第四次現在の危機委員会のターゲットは中国であり、中国の脅威を声高に喧伝することで、軍事予算の増額を狙っている。

 日本でも「東アジアの安全保障環境の悪化」、簡単に言えば「中国が怖いぞ、攻めてくるぞ」という大義名分で、国防予算の対GDP比の上昇が決定している。短期間で2%から3%、更には3.5%へと進む。高市早苗政権はアメリカの要求を嬉々として受け入れ、可及的速やかに防衛予算の大幅増額を進めようとしている。「愛国増税」でその財源を賄おうとしている。私に言わせれば、「東アジアの安全保障環境の悪化」の原因は日本であり、高市早苗という人物はその象徴である。結果として、中国からは実質的な経済制裁を受ける状況になっている。この状態が長期間継続すれば、日本経済は悪化していくことになる。

 日本にも「現在の危機委員会」のような、中国の脅威を煽り立て、人々の不安に付け込んで防衛予算を増額し、肥え太ろうという勢力がいる。高市早苗という人物もその勢力の一員だ。私たちはそのような過剰な煽り立てに乗じられてはならない。しかし、日本国民の馬鹿さ加減を見れば、騙され続けてもう一度国土を焼け野が原にしてしまうかもしれないという不安感しかない。

(貼り付けはじめ)

アメリカの対中国恐怖キャンペーン(The US Scare Campaign Against China

-冷戦時代から現在に至るまで、「現在の危機(present danger)」を誇張する背後にある政治的計算について語る。

デイヴィッド・スキッドモア筆
2019年7月23日
『ザ・ディプロマティック』誌

https://thediplomat.com/2019/07/the-us-scare-campaign-against-china/

成熟した国家運営の指標は、国際的な課題を評価し、慎重さ、冷静さ、そして均衡(proportionality)の取れた対応策を講じる能力である。しかしながら、数十年にわたる世界的なリーダーシップにもかかわらず、アメリカの外交は依然として思春期のヒステリー(adolescent hysteria)に陥りやすい。こうした熱狂的な運動は、冷戦期における過剰な核兵器増強や、ヴェトナム戦争とイラク戦争における悲惨な戦争など、アメリカ外交政策における最も高くつく誤り(the costliest mistakes)を生み出してきた。

この反射的な行動は、国際競争の現実というよりも、むしろ国内政治に関係している。政治学者セオドア・ローウィが指摘したように、アメリカの指導者たちは日常的に外国の脅威を誇張し、提案された解決策を民主政治の束縛から逃れる手段として過大評価している。

ドナルド・トランプ政権による中国に対する警戒的な言辞がその好例である。2018年の国家防衛戦略は、中国の指導者たちが「世界的な優位性を獲得するためにアメリカに取って代わろうとしている」と断言している。マイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官はそれぞれ、大国間の新たな対立の要求に備えさせるため、中国の脅威についてパニック的な評価を発表した。

ローウィに呼応する形で、ディック・チェイニー副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めたアーロン・フリードバーグは最近、トランプ政権が中国との冷戦に向けた国内の支持を動員することに真剣であるならば、「イデオロギー的な観点から挑戦を提起する」必要があると助言した。「アメリカ国民を動かし、動機づけてきたのは、彼らのシステムの基盤となっている原則が脅威にさらされているという認識である」からだ。

ハリー・トルーマン大統領は、1947年3月12日、連邦上下両院合同会議での演説で冷戦勃発の鐘を鳴らし、「空が落ちてくる(sky is falling)」というレトリックの典型を確立した。演説を仕上げる中で、トルーマンはソ連との壮大な闘争に国民をどう結集させるかに苦慮していた。結局のところ、アメリカ国民は国際紛争からの休息と戦前のアイソレイショニズムへの回帰を切望していた。トルーマンはアーサー・ヴァンデンバーグ連邦上院議員に相談し、ヴァンデンバーグ議員から明確な答えを得た。それは、アメリカの価値観に対する共産主義の脅威を強調することで、「国中を恐怖に陥れる(scare the hell out of the country)」必要があるというものだった。

ヴァンデンバーグの助言を受け、トルーマン・ドクトリンはアメリカの新たな世界における役割について包括的なヴィジョンを提示した。トルーマンは「武装した少数派や外部からの圧力による征服の試みに抵抗する自由な人々を支援することが、アメリカ合衆国の政策でなければならない」と述べた。

それは功を奏した。連邦議会はギリシャとトルコへの援助パッケージを承認しただけでなく、冷戦時代の必需品として提案された、はるかに野心的なマーシャル・プランも承認した。

●(常に)現在の危機委員会Committees on the (Ever) Present Danger

しかし、対立的な外交政策に対する国民の支持をかき立てる任務は、ホワイトハウスだけに委ねられた訳ではない。超党派の外交政策エスタブリッシュメント―ドワイト・アイゼンハワー大統領がかつて「軍産複合体(military-industrial complex)」と呼んだもの―は、重要な局面で軍事費増額への支持を集めるために動員されてきた。これらのグループは、志を同じくする大統領と連携して活動することが多いが、過度にハト派的と見なされる大統領の外交政策に異議を唱えることもあった。

これらの中で最も有名なのは、現在の危機委員会(the Committee on the Present DangerCPD)。1950年12月に設立された最初の現在の危機委員会は、国家安全保障の専門家からなる高官グループで構成され、アメリカの国防費を3倍に増額することを求めた戦略計画文書であるNSC-68の勧告に対する議会の支持を求めました。現在の危機委員会メンバーたちによる社説、講演、議会証言、専門家報告書といったキャンペーンを経て、連邦議会は国防費の大幅な増額でこれに対応した。

最初の現在の危機委員会の目的はトルーマン政権の目的と一致していたが、1976年に発足した2番目の現在の危機委員会は、ジェラルド・フォード大統領とジミー・カーター大統領のハト派的姿勢と見なされたことに対抗して設立された。復活した現在の危機委員会は、ソ連との緊張緩和(détente)を弱め、ヴェトナム戦争後の軍事力削減を反転させることを目指した。このグループは報道関係者とのつながりを築き、メンバーを講演ツアーに派遣し、防衛、軍備管理、米ソ関係に関する一連の声明を作成した。

最初の声明は次のように宣言した。「我が国、世界平和、そして人類の自由に対する主要な脅威は、比類なき軍備増強に基づくソ連の支配欲である」。

第二の現在の危機委員会は設立直後に大きな成果を上げた。現在の危機委員会のメンバーたちは、CIAが毎年作成している国家情報評価がソ連の危険性を過小評価していると主張した。こうした批判に憤慨したジェラルド・フォード大統領は、退任間際の大統領は異例の措置を取り、政府外部の保守派防衛専門家たちで構成された「チームB」を任命し、CIAの通常の活動に匹敵する報告書を作成させた。第二の現在の危機委員会のメンバーが中心となったチームBは、ソ連の能力と意図について、CIAの通常の「チームA」が作成したものよりもかなり悲観的な評価を作成した。その後、ジョージ・HW・ブッシュCIA長官はチームAに対し、「草稿を大幅に改訂(substantially revise its draft)」し、「全ての重要な点でチームBの立場と一致する評価」を作成するよう命じた。1983年のCIAの再評価によると、この出来事が、ソ連の脅威を誇張した一連の扇動的な情報報告書の土台を作ったという。

同様に、カーター大統領は現在の危機委員会メンバーをPRM10と呼ばれる世界戦略レヴューへの参加に招き入れることで、タカ派の批判者を取り込もうとした。また、カーター大統領は現在の危機委員会の幹部メンバーをホワイトハウスに招集し、政権の軍備管理への攻撃を控えるよう訴えた。その見返りとして、カーター大統領はメンバーに対し、ズビグニュー・ブレジンスキー国家安全保障問題担当大統領補佐官とハロルド・ブラウン国防長官への非公開の面会を約束した。

しかし、現在の危機委員会が「幻想に基づく政策を追求し、ソ連が権力と帝国を拡大する一方で、我々は漂流し、不確実な状況に陥っていた(Pursuing a policy built on illusion, we have been adrift and uncertain while the Soviet Union expanded its power and empire)」と警告する中、保守派からの批判は消えなかった。

SALT II条約をめぐる激しい論争が繰り広げられた。第二の現在の危機委員会のメンバーは連邦上院委員会でSALT IIに反対する証言を行い、479件ものテレビ・ラジオ番組、記者会見、公開討論、有力者への説明会、演説に参加した。委員会は20万部のパンフレットを配布した。批准の見込みが薄れると、カーター大統領は連邦上院での審議から条約を撤回した。元国務長官サイラス・ヴァンスは次のように述べた。「現在の危機委員会がSALTの弱体化に大きく関与していたことは疑いようがない」。

現在の危機委員会の第3期は2004年に誕生し、「アメリカ国民と自由を尊ぶ何百万もの人々の安全を脅かす過激イスラム主義者」に対抗し、アメリカ国民を結集させるという使命を掲げた。100人を超えるメンバーの多くは、イラク戦争の根拠構築に大きな役割を果たした「新アメリカ世紀プロジェクト(the Project for the New American CenturyPNAC)」と密接に連携していた。

このグループの最新版(第4)である「現在の危機委員会:中国(the Committee on the Present Danger: ChinaCPDC)」は、2019年4月9日にワシントンDCで開催された記者会見で発表され、テッド・クルーズ連邦上院議員、ニュート・ギングリッチ元連邦下院議長、そしてトランプ大統領の元大統領顧問であるスティーヴ・バノンが発言した。CPDCは、2011年から2017年にかけて国防予算が横ばいだった時期を経て、中国に対する強硬な政策と持続的な軍備増強に対する政治的支持を確立することを目指している。

CPDCは、中国の指導者たちが「世界覇権(global hegemony)」への道を切り開くために、「アメリカを弱体化させて最終的には打ち負かし(weaken and ultimately defeat America)」、「西側諸国の民主政治体制を転覆させようとしている(subvert Western democracies)」と主張している。「数十年にわたるアメリカの誤算、不作為、そして宥和政策(decades of American miscalculation, inaction and appeasement)」の後、CPDCはアメリカに対し、「国家権力のあらゆる手段を動員(mobilizing all instruments of national power)」してこの課題に立ち向かうよう求めている。中国指導部との妥協を求める人々に対して、CPDCは「共産党が国を統治する限り、中国との共存の希望はない(no hope of coexistence with China as long as the Communist Party governs the country)」と警告している。

●脅威を過剰に売り込むことの危険性(The Danger of Overselling Threats

中国の台頭がもたらす困難な課題にもかかわらず、ホワイトハウスとCPDCから発せられる反中国キャンペーンは、過去の恐怖煽動と比較しても依然として誇張されすぎている。今日、中国がもたらす軍事的・イデオロギー的脅威は、旧ソ連がもたらした脅威と比べれば取るに足らないものであり、中国はかつてのソ連よりもはるかに深く世界経済と国際機関に統合されている。中国は革命の輸出(to export revolution)や既存の国際秩序の転覆(overturn the existing international order)などではなく、むしろその秩序の改革とその中での地位と影響力の拡大(reform of and greater status and influence within that order.)を目指している。中国の台頭は誇張されているが、内外における課題は過小評価されている。一方、アメリカ自身の継続的な強みは、あまりにも過小評価されがちである。最後に、冷戦時代とは対照的に、アメリカの同盟諸国がアメリカに倣って、中国を弱体化させ封じ込めようとする野放図な試みに走る可能性は低い。

しかし、政治的に見れば、再び「国を恐怖に陥れる(scare hell out of the country)」ような試みは完全に理にかなっている。軍事費増額を主張する強硬派は、国民の外的脅威に対する認識を増幅させることで国内の支持を得ている。

しかし、こうした定期的な恐怖キャンペーンは真の危険をはらんでいる。最も明白なのは、国際紛争を不必要に悪化させることだ。脅威を誇張するレトリックは、たとえ国内向けに意図されたものであっても、ライヴァル諸国の恐怖を煽り立てる可能性がある。さらに、他国を悪者扱いするレトリックは、妥協が可能な具体的な利益相反(conflicts of interest)という対立の構図を、解決がはるかに困難なイデオロギー対立へとすり替えてしまう。

さらに、国民が完全に動員されると(fully mobilized)、大統領が都合よく恐怖を和らげる必要があると判断したとしても、その恐怖を和らげるのは困難になり得る。冷戦(the Cold War)を善と悪の闘争(a struggle between good and evil)と定義したトルーマン大統領は、中国国共内戦における共産党の勝利をアメリカは阻止できないと現実的に結論づけたことで、反逆罪(treason)の非難を浴びた。同様に、共産党の白熱した言辞は、ジョセフ・マッカーシー連邦上院議員が赤狩り(a Red Scare)を仕掛け、最終的にアイゼンハワー政権をも標的にすることで政治的影響力を獲得する土台を作った。

現在のところ、アメリカ国民が中国との二元論的な(マニ教的)闘争(a Manichean struggle with China)に賛同する用意があるという兆候はほとんど見られない。しかし、共産党の歴史が示唆するように、警鐘はしばしば効果を発揮する。最近の米中関係の冷え込みは、米中両国国民に不利益をもたらす深刻な冷え込みへと転じる可能性がある。

※デイヴィッド・スキッドモア:アメリカ合衆国アイオワ州デモインにあるデューク大学政治学部教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 

 最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』のテーマである「新・軍産複合体」について、「単なる思いつき、妄想だろう」という言葉をかけられた。しかし、それは違う。「単なる思いつき、妄想」ではない。『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム、2021年)から、新・軍産複合体について調査・分析を始めた。新聞や雑誌の記事を中心にした一次資料を渉猟し、「何が起きているのか」「どうしてそのようなことが起きているのか」ということを念頭に調べ上げた結果である。今回ご紹介する記事のタイトルには「新しい軍産複合体(the New Military-Industrial Complex)」という言葉が使われている。この記事は2024年の記事であり、私がこの記事の真似っこをしたということは言えない。「思いつき、妄想」だと思われる方には、是非これまでの本と一緒に、最新刊も読んでもらいたい。

 下記論稿では、私のこれまでの主張が裏付けられる内容が描かれている。アメリカ軍がシリコンヴァレーのテック産業のパランティア・テクノロジーズ社(ピーター・ティール)やアンドゥリル・テクノロジーズ社(パルマー・ラッキー)との関係を深めているということが強調されている。「米国防総省は、各種の無人システムに数十億ドルを費やす構えであり、その過程でハイテク・スタートアップ企業が新たな富を得ることが期待されていることから、シリコンヴァレーを中心とした新たな軍産複合体の出現を見ることができる。当然ながら、退役軍人が有利な職を求めてシリコンヴァレーに集まり、プライベート・エクイティ企業が新たな興味関心に資金を注いでいる」と書かれている。

 結論部は私と意見が異なるが、このように、新・軍産複合体出現は既に重要な事象となっている。最新刊で私は様々な角度から分析をし、このことを日本に伝える努力を行った。是非お読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

新しい軍産複合体に遭遇する(Meet the New Military-Industrial Complex

-米国防総省とシリコンヴァレーの同盟が、第三次世界大戦で中国を打ち破るためにAIをどのように活用しているか。

マイケル・T・クラレ筆

2024年4月22日

『ザ・ネイション』誌

https://www.thenation.com/article/world/ai-military-power-war-china-taiwan-silicon-valley/

2024年3月5日、カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトン海兵隊基地のブリーフィング用テントの中を覗き込むと、巨大なフロアスクリーンに、西太平洋を舞台にした「赤」(侵略側)と「青」(防衛側)の部隊の一進一退の攻防が映し出されていた。アメリカの「同等の能力を持つ敵対国(near-peer adversary)」(中国を意味する一般的な代名詞)とされる赤軍の空・海兵隊は、ワシントンの同盟諸国が占領する「青」の領土の奥深くまで侵入したが、青軍の戦闘部隊によって撃退または破壊された。太平洋における第二次世界大戦の現代化版としか言いようのないシナリオでは、青の軍隊は空と海からの攻撃を水陸両用攻撃で補強し、演習開始時に占領した島々から赤軍の侵略者を追い払った。

私がコンピュータの生成したこれらの交戦を見ている間、実際のアメリカ軍と同盟諸国の軍部隊は、赤軍と青軍の両方の役割を演じ、ハワイからテキサスまでの地域で空、海、地上の作戦行動を行った。これらの模擬戦闘は、艦船、飛行機、戦車が互いにロケット弾やミサイルを撃ち合うという、大国間の重要な戦闘で予想されるようなものだった。しかし、この演習は、プロジェクト・コンヴァージェンス・キャプストーン4(Project Convergence Capstone 4PCC4)として知られるこの演習の主な目的は、従来の火力ではなく、むしろ人工知能(AI)、自動データ配信、その他の先端技術を駆使して、アメリカ軍であれ同盟軍であれ、バラバラの戦闘ユニットをまとめ、戦闘での成功を確実にすることである、という点で、ほとんどのアメリカの訓練作戦とは一線を画していることを私は知った。アメリカ陸軍はPCC4について発表した際に次のように述べた。「将来の統合(すなわち多軍種)および多国籍軍の戦闘員は、将来のハイパーアクティブな戦場で勝利するために、機械速度で運用される統合能力を必要とする。キャップストーン4は、こうした必須能力を開発するための学習キャンペーンにおける継続的な実験の最高峰となる」。

アメリカ陸軍はPCC4を発表する際に次のように発表した。「将来の統合軍(すなわち、多軍種)および多国籍軍の戦闘員は、将来の超活発な戦場で勝利するために、機械スピードで動作する統合能力を必要とする。キャップストーン4は、そのような必要不可欠な能力を開発するための学習キャンペーンにおける永続的な実験の頂点となる機会となる」。

プロジェクト・コンヴァージェンスは、次世代部隊の兵器と戦術を設計するために、2018年に設立された陸軍フューチャーズ・コマンド(司令部)によって、ほぼ毎年実施されている。最初のイヴェントであるプロジェクト・コンヴァージェンス2020(Project Convergence 2020PC20)は、アリゾナ州ユマ試験場で開催され、500名の陸軍隊員が参加した。その後の反復ごとに複雑さが増し、2021年には統合軍種(プロジェクト・コンヴァージェンス2021、Project Convergence 2021PC21)、2022年には多国籍イヴェント(PC22)となった。(2023年には演習は実施されなかった。)

今年は、アメリカ軍5軍(陸軍、海軍、空軍、海兵隊、宇宙軍)のほか、オーストラリア、カナダ、フランス、日本、ニュージーランド、イギリスの軍から4000名が参加し、これまでで最も手の込んだ複雑なものとなった。PCC4は、4週間にわたる2つのフェーズで行われた。キャンプ・ペンドルトンを中心に、2月23日から3月3日まで行われたフェーズ1では、「インド太平洋における海上シナリオ(maritime scenario in the Indo-Pacific)」に焦点が当てられ、主に航空戦と海上戦が行われた。カリフォルニア州フォート・アーウィンにある陸軍のナショナル・トレーニング・センターで実施されたフェーズ2は、3月11日から20日まで行われ、無人兵器システムの広範囲な使用を含む陸上戦闘演習に重点が置かれた。その多くは一般公開されなかったが、私は3月5日にキャンプ・ペンドルトンに招待された約20人の報道陣の1人として、一連のブリーフィングと武器のデモンストレーションを受けた。

陸軍フューチャーズ・コマンド副司令官のロス・コフマン中将は、フェーズ1終了後の35日、「今年、私たちは脅威の範囲を(PC22の)10倍に拡大した」と報道陣に語った。通信とデータ共有を支援するために2つのマルチドメイン任務部隊が投入されたことを指摘し、「インド太平洋シナリオにおいて、かつてない規模で初めて効果的にデータを移動できるようになった」と主張した。

キャンプ・ペンドルトンのパシフィック・ビューズ・イヴェントセンターで講演したコフマン中将は、PCC4によって構築されたデータ共有ネットワークが電子的な「橋渡し」として機能し、統合部隊のあらゆる部隊間で戦闘情報を瞬時に共有できるようになったと説明した。コフマン中将は「この橋渡しによって、複数のセンサーから複数の射撃装置に情報を渡すことが可能になった。陸軍のセンサーが各軍種の射撃装置にデータを渡し、各軍種のセンサーが他の全ての軍種に同じデータを渡すことが可能になった」と述べた。

広大な太平洋に散在する異なる戦闘部隊間で迅速に情報を共有できることは、将来中国(あるいは当時の言葉で言えば「同等の能力を持つ敵対国」)との紛争において、アメリカまたはその同盟諸国が勝利を確実なものにするために不可欠だと言われていた。想定される敵国は膨大な数の艦船、航空機、ミサイルを保有しているため、アメリカ主導の連合軍は、これらの部隊を迅速に特定し、深刻な被害を与える前に、最適な位置にいる「シューター(shooters)」を用いて無力化する必要があると説明された。迅速な行動を取らなければ、アメリカ、またはその同盟国に多大な損失をもたらし、勝敗の定まらない長期の消耗戦に陥る可能性があると主張されていた。

CJADC2と「レプリケーター」(CJADC2 and “Replicator”

PCC4ネットワークは、プロジェクト・コンヴァージェンスの第1フェーズにおいて、標的データや攻撃命令の伝送に使用されただけでなく、米国防総省の統合全領域指揮統制システム(the Pentagon’s Combined Joint All-Domain Command and ControlCJADC2)のモデルとしても活用された。CJADC2は、センサー、データリンク、自動戦闘管理システムを駆使し、アメリカ軍の全部隊を連携させる精巧なネットワークだ。米国防総省のエリック・パホン報道官は35日に次のように説明した。「CJADC2は、現代戦におけるデータの量と複雑さに対応し、敵を決定的に打ち負かすために不可欠な戦闘システムだ。CJADC2により、統合部隊は自動化、人工知能、予測分析、機械学習を用いて、戦場全体の情報を迅速に『感知(sense)』し、『理解(make sense)』し、『行動(act)』し、回復力と堅牢性を備えたネットワーク環境を通じて、情報に基づいたソリューションを提供できるようになる」。

現在までのところ、CJADC2のコスト、構成部品、請負業者など、詳細な情報はほぼ公開されていない。キャスリーン・ヒックス国防副長官は昨年(2023年)8月、このプロジェクトに関する異例の公開討論で、アメリカの防衛関連請負業者の代表者たちに対し、「これは、アメリカの中核的な戦闘機能である指揮統制を進化させる、概念、技術、政策、そして人材の集合体だ」と述べた。ヒックス国防副長官はさらに、「CJADC2では、あらゆる領域にわたってセンサーを統合し、データを融合するとともに、最先端の意思決定支援ツールを活用して、ハイテンポな作戦を可能にする」と続けた。

米国防総省高官たちがCJADC2をいかに重視しているかは、ヒック国防副長官が3月4日にキャンプ・ペンドルトンを訪問し、プロジェクト・コンヴァージェンスとCJADC2技術の試験を視察したことからも明らかになった。米国防総省が発表した報告書によると、ヒック国防副長官は各軍の歴史的に互換性がなかった通信ネットワークを、複数の軍種が共有するネットワークに統合する取り組みの進捗状況について、上級将校たちと協議した。これは膨大な作業であり、多くの「難題(challenges)」を突きつけていると言われている。

キャンプ・ペンドルトン滞在中、ヒック国防副長官は軍が自律型兵器システム[autonomous weapons systems](人間の操縦者ではなく、主にAIによって操作される戦闘装置)を戦闘体制に統合する取り組みの進捗状況についても、より深く理解しようと努めた。2023年8月に国防産業協会(the National Defense Industrial AssociationNDIA)の会員に向けた演説で、ヒック国防副長官は、将来、中国人民解放軍(PLA)との紛争において、アメリカ軍が勝利するためには、こうしたシステムの開発と配備が不可欠であると明言した。人民解放軍が従来の戦闘力尺度[conventional measures of power](彼女の言葉を借りれば、「より多くの艦船、より多くのミサイル、より多くの人員」)において優位に立っていることを考えると、アメリカ軍は将来の戦場に多数の「全領域消耗型・自律型」兵器(“all-domain attritable autonomous” weapons)、つまりあらゆる種類の、低コストで使い捨て可能な自動操縦ドローンを投入する必要がある。ヒックス国防副長官は、「人民解放軍の圧倒的な戦力には、私たち自身の圧倒的な戦力で対抗するが、私たちの戦力は計画を立てることも、攻撃することも、相手を打ち負かすことも、より困難になるだろう」と断言した。

しかし、ヒックス国防副長官も認めているように、米国防総省の既存の調達システムは、長年、大手兵器メーカーから艦船、航空機、戦車といった「高額」品(“big-ticket” items)を購入することに重点を置いてきたため、この種の多くのハイテク機器の取得に対応できる体制が整っていない。ヒックス国防副長官は、既存の軍産複合体の主な柱であるこれらの大企業は、それぞれの仕事は得意だが、AI主導の「消耗型・自律型」兵器(“attritable autonomous” weapons)を迅速に大量に生産するための技術的および起業家的なスキルを持ち合わせていないと指摘した。むしろ、米国防総省は、必要な機能を提供できるようにするために、多くがシリコンヴァレーにルーツを持つスタートアップ企業に、より依存する必要があるだろう。ヒックス国防副長官は、そうした機能へのアクセスを獲得することが「レプリケーター(Replicator)」の主目的であると断言した。ヒックス国防副長官は昨年(2023年)8月に次のように明確に述べた。「アメリカは依然として、大規模で精巧で、高価で、数が少ないプラットフォームから利益を得ている。しかし、レプリケーターは、小型でスマート、安価で多数のプラットフォームを活用することによって、あまりにも遅いアメリカ軍の技術革新の移行を活性化させるだろう。」

レプリケーターは新しい取り組みではあるものの、連邦議会から強力な支持を得ており、2024年度国防予算案では最終盤で、2億ドルが計上され、2025年度予算ではさらに5億ドルの予算が約束されている。しかし、レプリケーター・プログラムが本格化するにつれて、今後さらに数百万ドル、最終的には数十億ドル規模の資金が投入される可能性が高いため、アンドゥリル社(Anduril)、パランティア社(Palantir)、シールドAI社(ShieldAI)といった防衛関連のハイテク・スタートアップ企業の多くが、プロジェクト・コンヴァージェンスなどの軍事演習に自社製品を貸し出し始めており、これが長期的な調達契約につながることを期待している。

例えば、PCC4のフェーズ2では、青軍の歩兵部隊が複数のアンドゥリル・ゴーストXAnduril Ghost-X)監視ドローンを使用し、赤軍の要塞を偵察し、その後の地上攻撃に備えて位置をマークした。約90cmのローターを備えた、昆虫のような洗練されたデザインのゴーストは、25キロの航続距離を持ち、様々なセンサーシステムを搭載できる。 PCC4では、ハイヴ(Hive)無人航空システム(unmanned aerial systemUAS)も展示されていた。これは、自律的に群れをなして飛行するように特別に設計されたドローンで、ドローン群は互いに連携して動き、様々な弾薬で敵の防衛網を圧倒することができる。フォート・アーウィンで試験されたハイヴ・ドローンは、運用を監督する陸軍関係者から聞いたところ、「人間の操縦者から非常に限定的な制御を受けた後、3機以上のUASプラットフォームが群れをなして任務を遂行する、攻撃用の小型無人航空機システムのプロトタイプ」ということだ。

コフマン中将によれば、今年のプロジェクト・コンヴァージェンスでは、無人兵器システムの使用が前回の10倍に増加したということだ。しかし、ヒックス国防副長官と同様に、コフマン中将やPCC4の他の幹部たちも、必要な技術は国防総省の軍需研究所やボーイングやロッキード・マーチンといった伝統的な防衛請負業者から得られるものではなく、必要な専門知識を持つアンドゥリルやパランティアのようなスタートアップ企業から得なければならないと指摘した。ランディ・A・ジョージ陸軍参謀総長は、35日にキャンプ・ペンドルトンで行われたブリーフィングで、「産業界、特にデータネットワークや無人システムにおいては、多くの点で商業技術がリードしている」と述べた。

米国防総省は、各種の無人システムに数十億ドルを費やす構えであり、その過程でハイテク・スタートアップ企業が新たな富を得ることが期待されていることから、シリコンヴァレーを中心とした新たな軍産複合体の出現を見ることができる。当然ながら、退役軍人が有利な職を求めてシリコンヴァレーに集まり、プライベート・エクイティ企業が新たな興味関心に資金を注いでいる。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の最近の調査によると、少なくとも50名の元米国防総省および国家安全保障担当の政府高官たち(そのほとんどが過去5年以内に退官)が現在、防衛関連のヴェンチャー・キャピタルやプライベート・エクイティ企業で働いている。その中には、トランプ政権下で国防長官を務め、現在はヴェンチャー・キャピタル企業レッドセル社(Red Cell)の代表を務めるマーク・T・エスパーもいる。エスパーは対ドローン技術メーカーのエピラス社(Epirus)など、軍事関連のスタートアップ企業に投資している。また、元陸軍長官ライアン・マッカーシーは、在任中にフューチャーズ・コマンドの設立に尽力し、現在は防衛関連投資を行うヴェンチャー・キャピタル企業の代表を務めている。

●私たちはどこへ向かうのか?(Where Are We Headed?

プロジェクト・コンヴァージェンス・キャップストーン4は、アメリカの現在の政治・軍事・技術体制とその進化の様相を完璧に縮図したものと言えるだろう。3週間にわたるこの演習から多くの知見を得たが、特に際立った点が3つある。

第一に、アメリカ軍は中国との戦争への備えに完全に固執している。これは、米国防総省の正式なドクトリンにも、軍高官たちの言動にも明らかだ。例えば、PCC4のシナリオは、中国が西太平洋にある友好的な島嶼国(台湾? フィリピン?)を攻撃し、その後、アメリカだけでなくオーストラリア、日本、ニュージーランド、イギリスを巻き込んだ地域規模の紛争が発生するという仮想的なものだった。この点を念頭に、この演習の主目的は、これらの部隊間の通信と戦闘行動の連携をテストすることだった。「世界のどこで戦おうとも、私たちは共同パートナーと戦うことになると承知している」とジョージ陸軍参謀総長は、3月5日のブリーフィングで、「あらゆるセンサー、あらゆる射撃装置に頼り、それらを連携させる必要がある」と述べた。

キャンプ・ペンドルトンで私が話し相手になった人々は、制服を着た軍人であろうと民間請負業者の代表であろうと、中国との戦争に備えることばかりに注力することの起こりうる結果について、ほとんど懸念を抱いていないようだった。陸軍フューチャーズ・コマンド副司令官のコフマン中将は、「私たちは戦争を回避することを望んでいる。しかし、もし要請があれば、我が国の男女は同盟諸国やパートナーと共に戦うだろう」と断言した。この一文、オーストラリア、ニュージーランド、そしてPCC4に代表される他の国々が、将来中国と戦争する場合には参加することを前提としている、と、PCC4での(模擬)作戦の地域規模を合わせると、近代兵器を用いた第二次世界大戦のようなシナリオを目の当たりにしているという結論に至るのも無理はない。これがあらゆる陣営にもたらす甚大な破壊を考えると、両交戦国が敗北を回避するために核兵器の使用を放棄するという保証はどこにあるのだろうか? プロジェクト・コンヴァージェンスでは、そのような保証は全く与えられなかった。

第二に、第一の点に密接に関連することだが、アメリカ政府関係者たちは、将来のいかなる紛争においても、中国を打ち負かすためにAIやその他の先端技術を利用することに絶対の決意を抱いているという観察である。これはレプリカント・イニシアティブの最大の目的であり、PCC4の戦闘シナリオの基本的な組織原理でもある。私は何度も何度も、アメリカ軍は将来の米中戦争で「情報支配(information dominance)」を達成するために先端技術を採用しなければならず、それによってアメリカ軍と同盟軍は、中国の脅威が連合軍の資産に大きな損害を与える前に察知し、攻撃できるようにならなければならないと聞かされた。

しかし、ここでもまた、人工知能や関連技術に過度に依存することの危険性についてはほとんど耳にしなかった。ChatGPTや他の「生成AIgenerative AI)」プログラムの作成に使われる高度なアルゴリズム(the sophisticated algorithms)は、驚くべき結果を達成することができる一方で、業界関係者に「幻覚(hallucinations)」と呼ばれるような、誤った、誤解を招く結果を生み出すことでも知られている。軍事システム、特に戦闘部隊の指揮統制に関わるシステムを制御するために、これらやその他の高度なAIプログラムに頼ることは、システム不全の重大なリスクをもたらし、兵士の命を危険に晒したり、意図しないエスカレート事件を引き起こしたりする可能性がある。ヒックス国防副長官をはじめとする政府高官たちは、この問題について懐疑的な人々を安心させようと、重要な戦闘に関する決定に関しては、人間は常に「ループの中にいる(in the loop)」と主張している。しかし、私がペンドルトンで経験したのは、AIと自律性の軍事利用を何としてでも加速させようとする動きであり、そのようなシステムに対する人間の支配力が急速に低下していることを示唆していた。

最後に、先に示唆したように、米国防総省とシリコンヴァレーの同盟に基づく新たな軍産複合体の出現を目の当たりにしている。この変化がアメリカの国内政策と外交政策にどのような影響を及ぼすかはまだ分からないが、少なくとも、議会に対する軍事費引き上げの圧力が強まり、中国との戦争への備えが一層重視されることになるだろう。伝統的な兵器メーカーと同様、新たなハイテク企業家たちも、議会で自分たちの大義を押し通すために多くのロビイストを雇い、その一方で多くの人々が北京に対抗する必要性を公に語っている。

私の見解の一部は、米メディアにも掲載されているが、3つ全てがこのように関連づけられている訳ではなく、また、それらがもたらす危険性についても十分な評価がなされている訳ではない。しかし、明らかなように、これらの動向はアメリカおよび国際社会の安定にとって重大なリスクを伴うため、私たちは細心の注意を払い、場合によっては重大な規制措置を求める必要がある。特に、AIと自律技術の戦争への拙速な適用については、より一層の懸念を表明し、いかなる状況下においても人間があらゆる戦争遂行システムを完全に制御し続けるべきであると主張しなければならない。オーストリア、フランス、ドイツ、そして他の多くの国々が主張するように、そのような制御が保証できない自律型兵器は全面的に禁止されるべきだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 


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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今回は、最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)をご紹介します。発売日は2025年11月21日です。今回のテーマは「新・軍産複合体」です。これまでの著作で取り上げてきた「新・軍産複合体」に絞っての単著となります。以下にまえがき、目次、あとがきを掲載します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願い申し上げます。 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしています。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されています。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てきます。活用いただければ幸いです。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

(貼り付けはじめ)

まえがき 古村治彦

■トランプ大統領に振り回される世界

ドナルド・トランプ Donald Trump(一九四六年生まれ、七九歳)は、二〇二四年のアメリカ大統領選挙で勝利し、二〇二五年一月二〇日に政権に返り咲いた。現職大統領が選挙で敗北し、その後、再び当選して大統領に復帰したというのは、アメリカ史上、一三二年ぶりの重大な出来事となった。

 第二次政権発足後のトランプは、就任初日から次々と大統領令を発し、不法移民の摘発の厳格化や行政機関の削減、更には高関税政策を次々と実行に移した。大統領選挙でトランプ陣営に多額の寄付を行い、側近となったイーロン・マスク率いる政府効率化省Department of Government Efficiency(デパートメント・オブ・ガヴァメント・エフィシエンシィ)、DOGE(ドージ)が各政府機関に乗り込んで、調査を行い、数千人の政府職員を解雇した。このことは日本でも詳しく報道された。

 トランプの電光石火(でんこうせっか)の動きに、アメリカ国内、そして世界が振り回されることになった。トランプ大統領と良好な関係にあったイーロン・マスクは二〇二五年五月に政府効率化省から離れ、更には、予算案をめぐり、トランプと対立するようになった。マスクは更に、新しい政党「アメリカ党 American Party(アメリカン・パーティー)」の立ち上げを画策している。

日本関連で言えば、二〇二五年四月のトランプ関税 Trump Tariff(タリフ)のショックがあったが、日本政府の粘り腰の交渉で、関税を引き下げることに成功した。

■「エプスタイン問題」が今後のトランプのアキレス腱となる

 二〇二五年七月に入ってから、トランプ政権にとってアキレス腱となり得る事案が話題を集めている。

 それは、ジェフリー・エプスタイン Jeffrey Epstein(一九五三〜二〇一九年、六六歳で没)の起こした児童買春事件に関するファイルを公開するかどうかの問題だった。トランプが二〇二四年の大統領選挙で公開を約束した、エプスタイン事件ファイル、特に「顧客リスト」の機密解除の後の公開が焦点となった。二〇二五年七月六日に、司法省は、ファイルは存在せず、エプスタインは自殺だったと発表した。

 これに対して、トランプを支持した勢力、MAGA[マガ]Make America Great Again[メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン])派と呼ばれる人々から激しい批判の声が上がっている。(註1)トランプの名前が顧客リストに掲載されていたために、ファイルの公開が見送られたと誰もが考えた。

トランプは批判を強めるMAGA派の人々に対して、「弱虫 weaklings(ウィークリングス)」「お前たちの支持はいらない」と激しく非難した。MAGA派からすれば、顧客リストの公開なしはトランプの卑劣な「裏切り betrayal(ベトレイヤル)」にほかならない。二〇二五年二月に、パム・ボンディPam Bondi(一九六五年生まれ、五九歳)司法長官 Attorney General(アトーネイ・ジェネラル)が、エプスタインのファイルにトランプの名前が出てくることを報告しており、そのために公開しないという決定がなされたとされており、対応をめぐって共和党内部にも分裂が起きている。

 エプスタイン事件への対応が取り沙汰されるようになって、トランプの動きがおかしくなった、そして、イーロン・マスクとの関係悪化につながったと私は判断している。トランプとイーロン・マスクの仲違いが表面化した際に、マスクはXへの投稿で、「ドナルド・トランプは、エプスタイン・ファイルに載っている。これこそが書類が公開されない真の理由だ(Donald Trump is in the Epstein files. That is the real reason they have not been made public.)」と書いている(後に謝罪した)。

 政府効率化省を率いて、連邦政府各機関の調査を行ったイーロン・マスクは自身が抱える天才ハッカー集団を総動員して、各機関のコンピュータを調査し、様々な情報を入手したであろうことは間違いないので、マスクのXへの投稿には信憑性が高いと私は考えている。

 そうなると、トランプは自分の支持者たちを裏切ったということになる。そして、トランプは既存勢力、MAGA派が敵視するディープステイト側に寝返ったということになる。

■アメリカをこれまで動かしてきた軍産複合体

 本書は、現下のトランプ政権をめぐる激しい動きではなく、その下にある、より大きな動きについて見ていく。そのためのキーワードとなるのが「軍産複合体(ぐんさんふくごうたい)Military-Industrial Complex(ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス)、MIC(エムアイシー)」という言葉だ。

 この「軍産複合体」という言葉について簡単に説明すると、軍需産業 defense industry(ディフェンス・インダストリー)と軍隊・政府機関が密接に結びつく、互恵(ごけい)的な reciprocal(レシプロカル)連合体ということになる。

 民間企業である軍需産業が、政府の一部門で多くの予算と多数の人員を抱える軍隊と結びついて、お互いの利益となる、予算獲得や予算そのものの拡大のために、協力して影響力を行使するということになる。

 アメリカで見てみると、軍産複合体には、民間の軍需産業や軍隊だけではなく、米連邦議会 Congress(コングレス)や学術界などの社会各層も入っているとも解釈されている。広範囲にわたる連合体ということになる。

 アメリカの巨大軍需産業の代表的な企業としては、①ロッキード・マーティン社Lockheed Martinボーイング社 BoeingRTXコーポレーション社 RTX Corporationノースロップ・グラマン社 Northrop Grummanゼネラル・ダイナミクス社 General Dynamicsなどの名前が挙げられる。

 RTX社は旧名がレイセオン・テクノロジーズ社であり、レイセオン・テクノロジーズ社は元々レイセオンとユナイテッド・テクノロジーズ社が合併した巨大企業で、レイセオンという名前の方が良く知られている。

 この五大巨大軍需産業は、国防総省(註2)やアメリカ軍の主要な契約(請負)企業contractors(コントラクターズ)であり、「プライム primes」と呼ばれ、優遇されてきた。

 ロッキード・マーティン社は、戦闘機、ミサイル、艦船、人工衛星などを製造し、二〇二四年の売上は約七一〇億ドル(約一〇兆五〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約一〇四五億ドル(約一五兆二〇〇〇億円)だ。

 ボーイング社は民間航空機製造でも知られているが、爆撃機やミサイル、宇宙開発の分野にも進出しており、二〇二四年の売上は、約六六五億ドル(約九兆八〇〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約一七一六億ドル(約二四兆九〇〇〇億円)だ。

 RTXコーポレーション社は、航空エンジン、機体、ミサイル、防空システムなどのメーカーで、二〇二四年の売上は、約八〇七億ドル(約一一兆七〇〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約二〇九二億ドル(約三〇兆三〇〇〇億円)だ。

 ノースロップ・グラマン社は、戦闘機、人工衛星、ミサイルなどを製造し、二〇二四年の売上は約四一〇億ドル(約六兆円)、二〇二五年八月の時価総額は約八四〇億ドル(約一二兆二〇〇〇億円)だ。

 ゼネラル・ダイナミクス社は、造船や宇宙開発、情報機器に強いメーカーで、二〇二四年の売上は約四八〇億ドル(約七兆円)、二〇二五年八月の時価総額は約八六〇億ドル(約一二兆五〇〇〇億円)だ。

 他にも軍需産業には多くの企業があるが、これらの巨大軍需企業は、アメリカ国防総省Department of Defense(デパートメント・オブ・ディフェンス)の元請(もとうけ)契約業者 prime contractors(プライム・コントラクターズ)として優遇され、国防予算から巨額の利益を上げてきた。

 日本経済新聞二〇二四年八月二日付記事「米欧防衛8社、紛争特需で増産投資 時価総額五年で倍増」では、「ロシアのウクライナ侵略や中東情勢の緊迫で、弾薬やミサイルを増産している。好業績を受け、これまで防衛銘柄を敬遠していた投資マネーも流入している」と書かれている。ウクライナ戦争や中東での紛争で、巨大軍事産業は莫大な利益を上げ、それは今も続いているということだ。戦争は彼らにとっての「飯(めし)のタネ」ということになる。

■軍産複合体には都合が悪い「アメリカ・ファースト」

ドナルド・トランプ大統領は、こうした軍需産業に対して、大統領選挙を通じて拒否反応を示していた。

 トランプは昨年(二〇二四年)の大統領選挙の運動期間中、九月のウィスコンシン州での選挙集会で本書のテーマの核心となることについて発言した。『フォーブス』誌二〇二四年九月一三日付記事「ドナルド・トランプは軍産複合体を抑制できるか?(Will Donald Trump Tame the Military-Industrial Complex?)」で、トランプの重要な発言が紹介されている。以下に引用する。

(引用はじめ)

私は好戦主義者たち warmongers(ウォーモンガーズ)を追放するだろう。常に戦争をしたがっている連中がいる。それはなぜか? ミサイルは一発で二〇〇万ドルもする。これが答えだ。彼らは世界中の至る所にミサイルを落とすのが大好きだ。私の(前の)政権の時には戦争などなかった。……私は好戦主義者たちを国家安全保障分野から追放し、必要とされてきた軍産複合体の一掃を実行する。戦争を利用しての利益追求を止め、常にアメリカ・ファースト America first を推進するためだ。私たちはアメリカ国内問題解決を第一に考える。私たちは終わりのない戦争に終止符を打つ。軍産複合体の人々は、終わりのない戦争を決して終わらせることはない。(翻訳は引用者)

(引用終わり)

 この記事で私は「好戦主義者」と翻訳したが、これは「戦争屋(せんそうや)」と言い換えても良いだろう。

 トランプは、巨大軍事産業が金儲けのために、戦争を引き起こしている、戦争の元凶(げんきょう)だと喝破[かっぱ](堂々と論じて人々が隠したがる真理を明らかにすること)している。ウクライナ戦争の即時停戦とウクライナへの支援の停止も同時に訴えていた。トランプは、好戦主義者・戦争屋たちを排除して、アメリカが戦争に巻き込まれないようにすると訴えた。そして、大統領に返り咲いた。

 ドナルド・トランプはこれまで一貫して、「アメリカ・ファースト America First」を訴えてきた。

「アメリカ・ファースト」は、「アメリカが何でも一番だぞ」という単純な、子供じみた優越感を示した言葉ではない。その真意を含んで正確に日本語に訳すと、「アメリカ国内問題解決優先主義」ということになる。アメリカ国内では、経済格差の拡大やインフラの老朽化といった問題が深刻化している。そういった問題の解決を優先しようという考え方である。

 国内重視姿勢であり、海外の問題をアメリカが出しゃばって解決しようとするのは止めよう(ほとんどの場合、アメリカは失敗してきた)、外国の問題解決は外国がすればよいという考えだ。このような考え方を「アイソレイショニズム Isolationism」という。アメリカ外交にとって、建国以来の重要な伝統だ。アイソレイショニズムを「孤立(こりつ)主義」と訳すのは間違いだ。世界の大国であるアメリカが、世界から孤立すること自体があり得ないことだ。このように訳すと、実態を見誤ってしまう。

 トランプはこの伝統に回帰することを訴えた。そして、多くのアメリカ国民がそれを支持した。しかし現状は、ウクライナへの支援は継続し、トランプが進めた「大きく美しい一つの法案」(One Big Beautiful Bill Act(ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル・アクト) of 2025OBBBA 2025)では、防衛予算は前年比で増額となった。

■新たな軍産複合体がすでに形成されつつある

 私は、前作『トランプの電撃作戦』(秀和システム、二〇二五年)において、「ペイパル・マフィア Paypal Mafia」の総帥(そうすい)にして、シリコンヴァレーの新興テック産業の多くの操業に関わってきたピーター・ティール Peter Thiel(一九六七年生まれ、五八歳)が、トランプ政権の樹立に大きく貢献したことを明らかにした。そして、ティールと、イーロン・マスク Elon Musk(一九七一年生まれ、五四歳)が新・軍産複合体 Neo Military Industrial Complex(ネオ・ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス)づくりを行っていると分析した。

 現在のアメリカ経済において、シリコンヴァレー発のテック産業が大きな存在となっている。その代表が、GAFA(ガーファ)と呼ばれる巨大テック企業である。グーグル社 Google、アップル社 AppleFacebook(現在はメタ社 Meta)、アマゾン社 Amazonは売上、時価総額ともに世界トップ一〇を占めている。これら以外にもテック産業は成長を続けて、アメリカの経済や社会において存在感を増している。

 二〇二五年一月一五日、ジョー・バイデン Joe Biden(一九四二年生まれ、八二歳)前大統領は、退任演説 Farewell Address(フェラウェル・アドレス)において、軍産複合体に言及した。以下の該当部分を引用する。

(引用はじめ)

ご存知のように、アイゼンハワー大統領は退任演説で軍産複合体(ぐんさんふくごうたい)military-industrial complexの危険性について言及した。演説から引用すると、彼は当時、私たちに「誤った権力の破滅的な台頭の可能性(the potential for the disastrous rise of misplaced power)」について警告した。

 六日後(言い間違い)、いや六〇年後、私はアイゼンハワー大統領と同様に、我が国に真の危険をもたらす可能性のあるテック産業複合体 tech-industrial complex(テック・インダストリアル・コンプレックス)の台頭を懸念している。

 アメリカ国民は、権力の濫用を助長する偽情報 misinformation(ミスインフォメーション)と虚偽 disinformation(ディスインフォメーション)の雪崩(なだれ)に埋もれつつある。報道の自由 free press(フリー・プレス)は崩壊しつつある。編集者は姿を消しつつある。ソーシャルメディアはファクトチェックを放棄している。真実は、権力と利益のために語られる噓によって覆い隠されている。

 私たちは、子供たち、家族、そして民主政治体制 democracy(デモクラシー)そのものを権力の濫用から守るために、ソーシャルプラットフォームに責任を負わせなければならない。(翻訳は引用者)

(引用終わり)

 バイデン前大統領は、ドワイト・アイゼンハワー Dwight D. Eisenhower(一八九〇〜一九六九年、七八歳で没 在任:一九五三│一九六一年)元大統領の退任演説(本書第二章で詳しく見る)を意識して、アイゼンハワーが使ったことで注目されるようになった軍産複合体を意識して、「テック産業複合体」という言葉を使い、その存在に警告を発している。

 巨大テック産業が政治や社会、人々の日常生活に過度な影響力を持つことを懸念し、警鐘を鳴らしている。

 シリコンヴァレー発の巨大テック産業の重要人物たちのほとんどは、民主党支持で、二〇二〇年の大統領選挙ではジョー・バイデン(大統領在任:二〇二一│二〇二五年)を、二〇二四年ではカマラ・ハリス Kamala Harris(一九六四年生まれ、六〇歳)を支援した。バイデンは、独占禁止法を盾にして巨大テック産業の影響力の削減を行おうとしたが、中途半端に終わった。

 二〇二四年の大統領選挙後、シリコンヴァレーの巨大テック産業は軒並み、トランプ支持を表明し、二〇二五年一月の大統領就任式に多額の献金を行い、CEOたちがばつが悪そうな顔をして就任式に出席した。バイデンとしては、テック産業の手のひら返しを許せないということもあって、恨み節として「テック産業複合体」という言葉が出てきたのだろう。しかし、バイデンが指摘するように、テック産業は様々な場面で、影響力を増しているのも事実だ。

■「米中戦争」の主役は双方の新・軍産複合体が担う

私はトランプが批判した軍産複合体と、バイデンが批判したテック産業が交わる領域についてこれから書いていく。

より具体的には、これまでの著作でも触れてきたが、「新・軍産複合体」づくりだ。

 より具体的には、シリコンヴァレーで、第一次トランプ政権誕生に大きく貢献したピーター・ティール、第二次トランプ政権誕生に貢献したイーロン・マスク、ティールが引き立てたシリコンヴァレーの天才児パルマー・ラッキー Palmer Luckey(一九九二年生まれ、三三歳)が軍産複合体に食い込もうとしていることを詳述していく。

更に、これまでの軍産複合体について、新旧の軍産複合体の違い、ティールたちに影響を与えている思想の新潮流、中国の軍産複合体、軍産複合体の変化を前提にした米中関係の予測について見ていく。

本書の構成を簡単に紹介する。

 第一章では、シリコンヴァレーのテック産業が、新しい軍産複合体づくりを行っている様子を人物と人脈を手掛かりにして見ていく。具体的には、ドナルド・トランプの政権獲得に貢献し、大きな影響力を持つ、ピーター・ティール、イーロン・マスク、そして、ティールの庇護の下で成功を収めたパルマー・ラッキーといった、シリコンヴァレー発のテック産業の大立者(おおだてもの)たちが、自分たちの所有するパランティア・テクノロジーズ社 Palantir Technologies、スペースX社 Space X、アンドゥリル・インダストリーズ社 Anduril Industriesが国防総省とアメリカ軍との大規模な契約を結ぶことを目指している。第二次トランプ政権の軍事関係の人事についても見ていく。

 第二章では、戦後アメリカの軍産複合体の歴史を概観している。主に、第二次世界大戦後の冷戦がスタートした時期から軍産複合体は大きな影響力を行使してきた。第二次世界大戦後もアメリカは多くの戦争を戦ってきた。アメリカの戦争において重要な役割を果たしてきた軍産複合体の成り立ちや役割について、ニューヨーク財界人が作った「現在の危機委員会」や、アメリカの介入主義の思想潮流であるネオコン派の人物たちの名前を挙げて詳述する。

 第三章では、古くからの軍産複合体と新・軍産複合体の違いについて見ていく。二つの間にある大きな違いは、ビジネスモデルの違いと、底流にある思想の違いである。ビジネスモデルの違いで大きいのは、私たちにとってもなじみ深い言葉「サブスク」である。底流にある思想に関しては、古くからの軍産複合体の基底にあるのは介入主義(かいにゅうしゅぎ)であり、新・軍産複合体の場合は暗黒啓蒙(あんこくけいもう)である。これらを詳述し、二つの間の違いを明確化する。

第四章では、アメリカの新しい軍産複合体づくりが国際関係に与える影響について考える。現在、国際関係における最重要のファクターは、米中関係 US -China relations(ユーエス・チャイナ・リレイションズ)である。より具体的に言えば、「米中戦争は起きるのか」ということが重要なテーマになる。

 まず、中国における軍産複合体の形成について見ていく。習近平政権下、中国は軍の近代化を進めており、そのための中心戦略が「軍民融合(ぐんみんゆうごう)」であり、習近平は二〇二三年からの国家主席三期目の中国共産党指導部人事で「軍工航天系(ぐんこうこうてんけい)」のテクノクラートたちを登用していることを紹介する。

 続けて、ピーター・ティール、イーロン・マスク、パルマー・ラッキーの対中観について、そして、暗黒啓蒙の中にある「中華未来主義(ちゅうかみらいしゅぎ)」について見ていく。そして、アメリカの軍産複合体の「変容 transformation(トランスフォーメイション)」によって、米中関係も変化していくだろうということを結論づける。

 本書を通じて、アメリカ政治の表面に出てこないが、確かなそして大きな動きについて、読者の皆さんに理解を深めていただけることを願っている。

二〇二五年九月

古村治彦(ふるむらはるひこ)

【註】

註1 『ロイター通信』二〇二五年七月三〇日付記事「情報BOX:「エプスタイン問題」とは何か、未公開文書巡りトランプ氏と支持層に亀裂も」

註2 二〇二五年九月に戦争省 United States Department of Warに改名

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『シリコンヴァレーから世界支配を狙う 新・軍産複合体の正体』 目次

まえがき

トランプ大統領に振り回される世界 3

「エプスタイン問題」が今後のトランプのアキレス腱となる 4

アメリカをこれまで動かしてきた軍産複合体 6

軍産複合体には都合が悪い「アメリカ・ファースト」 9

新たな軍産複合体がすでに形成されつつある 11

「米中戦争」の主役は双方の新・軍産複合体が担う 14

新旧・軍産複合体の人脈関連図と関係企業

新・軍産複合体の人脈図(1):トランプ政権 26

新・軍産複合体の人脈図(2):ウエストエグゼク社 28

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(1):第一次「現在の危機委員会」まで 30

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(2):第二次「現在の危機委員会」まで 32

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(3):ジョージ・W・ブッシュ政権とネオコン 34

新旧軍産複合体企業 36

第1章 アメリカで新しい軍産複合体が出現しつつある

ミッシェル・フロノイというキーパーソンの浮上 40

バイデン政権と濃密につながるウエストエグゼク社 41新・軍産複合体づくりの動きが見えてきた 44

新・軍産複合体の中心人物ピーター・ティール 46

反福祉、反税金、反中央政府の自由至上主義者(リバータリアン)ンたち 51

政界ネットワークを着々と拡大するティール 53

ビン・ラディンの発見と殺害で政府機関の信用を得る 55

第二次トランプ政権の「台風の目」となっていたイーロン・マスク 57

アメリカにとって不可欠の存在にわずか二〇年で成長したスペースX社 61

ティールに育てられた「シリコンヴァレーの異端児」パルマー・ラッキー 63

アンドゥリル社は新時代の軍需企業として台頭 67

ピーター・ティールが見出して、育てたJ・D・ヴァンス 70

防衛関係のスタートアップに投資するスティーヴン・フェインバーグ 75

「アジア・ファースト」軍事戦略を目論むエルブリッジ・コルビー 80

陸軍の文民トップには新・軍産複合体寄りの二人が就任した 84

トロイ・メインク空軍長官はイーロン・マスクと昵懇の中 90

第二次トランプ政権は新・軍産複合体づくりを支援する 92

第2章 二〇世紀は軍産複合体の世紀だった

「アメリカの世紀」は戦争によって築かれた 96

世界最強の軍隊を支える軍産複合体 98

軍産複合体の脅威を警告したドワイト・アイゼンハワー大統領 101

「現在の危機委員会」は米国民が軍拡を受け入れるように仕向けた 106

軍産複合体の生みの親であるバーナード・バルーク 112

財界人にとって安全な投資先となった軍需産業 114

第二次「現在の危機委員会」の創設がレーガン政権につながった 118

ネオコンや人道的介入主義派の源流となったヘンリー・ジャクソン 123

ジョージ・W・ブッシュ政権を牛耳ったネオコンは軍産複合体そのものだった 126

二一世紀になっても米国民を煽っている「現在の危機委員会」 132

二〇世紀で作り上げられた軍産複合体は二一世紀で変容する 137

第3章 新・軍産複合体は旧来と何が違うか

防衛システムのサブスクリプション契約を目論む 142

基盤となる思想も新旧大いに異なる 145

古くからの軍産複合体のビジネスモデルは「お手盛り」でコスト軽視 146

一致団結して国防予算削減を妨げる者たち 149

イーロン・マスクが政府効率化省を率いた理由 151

新たなミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」導入が大きなチャンス 154

時代遅れの巨大軍需産業に取って代わるシリコンヴァレーのテック産業 157

「サブスク」でアメリカ軍をコントロールする新・軍産複合体 162

ウクライナ戦争で核戦争の危機を回避したイーロン・マスク 165

トランプは旧・軍産複合体にも利益を与える方向に転換した 169

トランプとマスクとの仲違いが新・軍産複合体づくりに影響 172

古くからの軍産複合体の思想の基盤は介入主義だ 176

ピーター・ティールが影響を受ける新しい思想潮流「暗黒啓蒙」 178

暗黒啓蒙の思想家カーティス・ヤーヴィン 181

ディープステイトと非ディープステイトの対立構図が浮かび上がる 186

第4章 新しい軍産複合体の台頭で米中関係はこうなる

アメリカが煽り立てる中国脅威論のおかしさ 192

「アメリカ以後の世界」へと歴史は流れている 196

戦争を必要としない新・軍産複合体と米中関係 198

中国の軍民融合はアメリカの軍産複合体と同様の機能を持つ 202

習近平体制三期目のキーワードは「軍工航天系」で、軍民融合を進める 206

中国の軍産複合体幹部が異例の昇進 212

最先端技術の軍への応用を可能にする人事 215

ピーター・ティールは中国に対して批判的だが理想は中国の体制のはずだ 219

中国に恩義があるイーロン・マスクが中国を敵視する理由がない 224

アメリカは世界の警察官をやめるべきと主張するパルマー・ラッキー 226

ニック・ランドが生み出した中華未来主義が重要だ 228

新・軍産複合体が米中衝突を望むことはない 233

新・軍産複合体の後ろ盾があるJ・D・ヴァンス副大統領がトランプの後継者 238

あとがき 243

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あとがき 古村治彦

「西洋 the Westの衰退と非西洋 the Rest の再興」は私の大きなテーマである。フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドは、「西洋の敗北 the Defeat of the West(ザ・デヒィート・オブ・ザ・ウエスト)、La défaite de l’Occident(ラ・ディフェツ・ドゥ・ロクスィダン)」という言葉を使っている。

 世界は今、大きな構造変化の時期を迎えている。西洋近代支配五〇〇年が終わり、非西洋諸国がBRICSを中心にして勃興(再興)しようとしている。

世界覇権は中国に移る。現在の日本の衰退は、世界規模で位置づければ、西洋の衰退という大きな流れの中で起きている現象ということになる。私たちはこのことをまずしっかりと認識しなければならない。

 アメリカ国内に目を向けると、アメリカの国力の減退はもう覆(おお)い隠(かく)せない状況になっている。アメリカは世界覇権国として、第二次世界大戦後の世界を支配してきたが、その世界支配を続けられなくなっている。その象徴がドナルド・トランプ大統領の誕生だ。

 トランプは、戦後のアメリカ支配体制を終わらせるために、時代の要請によって生み出された。世界帝国アメリカの墓堀り人 gravedigger(グレイヴディガー)である。私はそのように判断している。

 トランプ大統領誕生には、本書の主人公であるピーター・ティールとイーロン・マスクが大きく貢献した。彼らが目指しているのが、「新・軍産複合体」である。

 私は、本書を通じて、アメリカ政治の大きな流れである「新・軍産複合体」づくりについて詳述した。ティールやマスク、そして、パルマー・ラッキーは、これからのアメリカ政治において、「影の大統領」とも言うべき、政商 influence peddlers(インフルエンス・ペドラーズ)となるだろう。アメリカ史に引き付けて言えば、二一世紀の「泥棒男爵 robber barons(ロバー・バロンズ)」ということになる。

「新・軍産複合体は中国を敵視しない、戦争を必要としない軍産複合体となる」という私の主張は、突飛に聞こえるかもしれない。私の主張に説得力があるかどうかは、読者の皆様の評価を俟(ま)ちたい。

ドナルド・トランプ大統領は、第二次政権が始まった当初、様々な政策を行い、期待通りの動きを見せた。しかし、その後は、既存の勢力、ディープステイト側に妥協しているように見える。エプスタイン問題でも、ウクライナ停戦でも、昨年の選挙期間に行った自身の主張から大きく後退している。既存勢力に媚びを売り、何とか四年間の任期を無事に終えようという意図が透(す)けて見える。しかし、アメリカの衰退、アメリカ国内の分裂 division(ディヴィジョン)を止めることは不可能だ。大きな流れは誰にも止められない。

 本書の執筆中、日本では、石破茂総理大臣の退陣表明があった(二〇二五年九月七日)。そして、一〇月四日に自民党総裁選挙の投開票が行われ、最終的に高市早苗が新総裁に選ばれた。公明党の連立与党離脱で日本政界に激震が走った。これから連立与党の枠組みの変更と総理指名に向けて、協議が行われることになる。

 石破首相はアメリカに隷属的に盲従することなく、是々非々(ぜぜひひ)で事態に対応した。国防予算の対GDP比三・五%引き上げ要求を拒絶し、日米の外相と国務長官、防衛相と国防長官が会合を行う「2+2」の開催を見送ったことは本文の中で紹介した。

 石破政権は在任期間こそ短かったが、石破政権の業績を後世の歴史家が高く評価するだろう。世界の大きな構造転換に直面する日本で、石破茂というリーダーが誕生したことは倖(ぎょうこう)だった。対米隷属(れいぞく)路線からの小さな軌道修し正(きどうしゅうせい)が将来に大きな違いを生み出すと私は確信している。

 最後に、師である副島隆彦(そえじまたかひこ)先生には推薦の言葉をいただきました。ありがとうございます。本書の執筆にあたり、フリーの編集者の大久保龍也氏、ビジネス社の中澤直樹氏には企画の段階から大変お世話になりました。特に大久保氏には、私のデビュー作、二作目を担当していただいて以来、久しぶりにタッグを組むことができたことは、私にとって光栄なことでした。記して感謝します。

二〇二五年一〇月

古村治彦(ふるむらはるひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 


jinruiwofukounishitashoakunokongen001
『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体
 

最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。
 第二次ドナルド・トランプ政権のアメリカ軍の文民(civilian、シヴィリアン)トップは、「新・軍産複合体」寄りの人事になっている。アメリカ空軍文民トップのトロイ・メインク空軍長官は、メインクはアメリカ空軍に技術者として勤務しながら、工学博士号を取得した人物である。キャリア公判では、アメリカの偵察衛星を監督する国家偵察局(the National Reconnaissance OfficeNRO)の首席副局長を務めている。下記記事には、「メインクは、国家安全保障任務への民間宇宙企業の参加拡大に尽力していることで知られている」と書かれている。これは、スペースシャトル計画が放棄されて以降、宇宙空間への物資輸送をイーロン・マスクのスペースX社が担う中で、国家偵察局(NRO)の実質的なトップとして、メインクはスペースX社に便宜を図ってきた。メインクが空軍全体を統括する地位に就いたのは重要だ。空軍は数年前に創設された宇宙軍を統括している。
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トロイ・メインク

一方で、日本でも有名なアメリカ航空宇宙局(NASA)の長官に内定していた、ジャレッド・アイザックマンはゴタゴタがあり、長官就任に至らなかった。アイザックマンもイーロン・マスクに近い人物であり(マスクの顧客となり、スペースX社の宇宙船で宇宙空間に到達した)、順調に長官就任の手続きが進んでいたが、マスクがトランプ政権から離れて以降、長官就任に至らなかった。これは、トランプとマスクの仲違いが大きな原因となっている。
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ジャレッド・アイザックマン

これらのことは、最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)で詳しく解説している。是非、お読みいただきたい。
(貼り付けはじめ)
独占:「極めて不適切」:防衛請負業者のマスクが空軍候補者の面接に同席(Exclusive: 'Highly inappropriate': Musk, a defense contractor, sat in on Air Force nominee's interview

-スペースX社創設者であるマスクには、数十億ドル規模の国家安全保障および防衛契約が絡んでいるため同席は重大だ。

ジョー・ゴウルド、サム・スコーヴ筆

2025年4月25日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2025/04/25/musk-meink-ethics-concerns-00309302

イーロン・マスクは、ドナルド・トランプ大統領による空軍長官候補のトロイ・メインクとの面談に同席した。メインク自身の連邦議会への情報開示によると、これは極めて異例の行動であり、選考プロセスにおけるマスクの関与について深刻な利益相反(conflict of interest)の懸念が生じている。

これまで公表されていなかったこの詳細は、メインクが連邦上院軍事委員会に提出した書面による回答に記載されており、『ポリティコ』誌が入手した。

この情報開示は、スペースXCEOとして数十億ドル規模の国家安全保障・防衛契約を握っているマスクにとって重要な意味を持つ。これには、米国防総省の打ち上げ契約、衛星システム、そしてトランプ大統領が提案した「ゴールデンドーム(Golden Dome)」と呼ばれるミサイル防衛システムが含まれる。

しかし、空軍高官の人事決定へのマスクの関与は、億万長者の起業家であるマスクの政治的影響力の新たなレヴェルを示すものであり、契約を監督する機関の指導的決定に請負業者が影響を与えることを阻む倫理規範に違反する可能性がある。

メインクは、2024年12月のインタヴューで、マスクは「同席した大勢の出席者の1人」だったが、「私に質問をしたのは大統領だけだった」と述べている。マスクに支援を求めたことも、マスクから支援を求められたこともないとメインクは述べている。

メインクは「私は、現在の職務遂行における職業上の関係以外、スペースXやマスクとは何の関係もない」と述べた。

メインクはキャリア公務員であり、アメリカの偵察衛星を監督する国家偵察局(the National Reconnaissance OfficeNRO)の首席副局長を務めている。メインクは、国家安全保障任務への民間宇宙企業の参加拡大に尽力していることで知られている。このアプローチは、スペースXのような非伝統的な請負業者を重視するトランプ政権の姿勢と合致している。

倫理専門家たちは、マスクの出席は一線を越えたと警告している。

ジョージ・W・ブッシュ大統領の下でホワイトハウス倫理担当主任弁護士を務めたリチャード・ペインターは次のように述べた。「米国防総省の幹部人事に軍事請負業者が協力するなど、このようなことはかつて見たことがない。もしマスクがメインクの人事に加担したのであれば、メインクはマスクの企業に関わるあらゆる業務から身を引くべきだ」。

超党派の監視団体「政府監視プロジェクト」のダニエル・ブライアンは、今回の件はマスクの企業が獲得する可能性のある空軍との契約に暗い影を落とすだろうと述べた。

ブライアンは次のように述べた。「交渉に参加する企業が増えるのは良いことだ。問題は、スペースXが本当にこれらの契約を獲得したのか、それともマスクのソフトな政治力(soft political power)、率直に言って、それほどソフトではない、が勝敗を左右しているのか、判断できないことだ」。

国家偵察局(NRO)はホワイトハウスに質問を回した。ハリソン・フィールズ報道官はこの批判を否定した。

フィールズ報道官は、「トロイ・メインクを起用するという決定は、誰からも独立して行われ、最終決定権はトランプ大統領にあり、トランプ大統領のみに委ねられた。それ以外の主張は、単なるセンセーショナルなジャーナリズムに過ぎない」と述べた。

マスクはコメント要請に応じなかった。

連邦上院は早ければ来週にもメインクの指名を審議する見込みだ。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、メインクの承認にはさらなる精査が必要だと主張している。

ウォーレンは声明の中で、「マスクがメインクの面接に同席したことは非常に不適切であり、マスクがメインクを選んだのか、もしそうならなぜなのか、疑問が残る。特に、何十億ドルもの税金を彼に渡す権限を持つのであればなおさらだ」と述べた。

ロイター通信は以前、ウォーレンとタミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)が、2021年の機密衛星契約の要件をスペースXに有利になるようメインクが調整したのではないかと疑問を呈したと報じたが、メインクはこの主張を否定している。

マスクの影響力に関する懸念はメインクに限ったことではない。NASA長官に指名されたジャレッド・アイザックマンは、スペースXで飛行経験があり、火星到達というマスクの野望を共有する億万長者の起業家だが、マスクとのつながりについての疑問にも直面している。

アイザックマンは、木曜日に発表された連邦上院商業委員会への回答書の中で、トランプ当選以降、マスクとNASAのビジネスについて話し合ったことはないと述べ、マスクとの親密な関係を否定した。マスクとは2024年末にマーアラゴで、アイザックマンが 「トランプ政権をヴォランティアで支援する」可能性について少し話したことは確認した。

アイザックマンは、トランプがアイザックマンの就職面接を主導したことを強調し、マスクが彼にNASAの仕事をオファーするために電話をかけたという『ウォールストリート・ジャーナル』紙の報道は「全くの虚偽(entirely false)」だと述べた。その他の詳細はほとんど語られなかった。

「私に質問し、最終的に機会を与えてくれたのは大統領自身だった」とアイザックマンは語った。
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メインクとアイザックマンの指名におけるマスクの役割の可能性は依然として懸念材料になっている(Musk’s Possible Role in Meink, Isaacman Nominations Continues to Raise Concerns

マルシア・スミス筆

2025年4月26日

『スペース・ポリシー・オンライン』誌

https://spacepolicyonline.com/news/musks-possible-role-in-meink-isaacman-nominations-continues-to-raise-concerns/

ドナルド・トランプ大統領が空軍長官に指名したトロイ・メインクは、連邦上院軍事委員会に対し、スペースXCEOのイーロン・マスクがトランプ大統領との面接に同席していたと証言したと報じられている。スペースXは、米宇宙軍を統括する空軍省と数十億ドル規模の契約を結んでいるため、この事実は利益相反(conflict of interest)の懸念を生じさせる。また、マスクがトランプ大統領とNASA長官候補のジャレッド・アイザックマンとの面接に同席していたかどうかという疑問も再燃している。スペースXNASAにとって2番目に大きな契約相企業手である。アイザックマンはこの質問への回答を繰り返し拒否しているが、連邦上院商務委員会の公聴会後の質疑応答では、スペースXとの商業宇宙飛行2件の契約を解除したと回答した。

連邦上院軍事委員会によるメインクの指名採決は、いつでも実施される可能性がある。連邦上院商務科学運輸委員会は4月30日にアイザックマンの指名について投票を行う。

メインクは国家安全保障分野で長年のキャリアを持ち、現在は国家偵察局(NRO)の首席副局長を務めている。国家偵察局は、国家の偵察衛星の設計、製造、運用を担当している。国家偵察局の立場で、スペースXとの契約を誘導したとの疑惑が浮上している。

連邦上院商務科学運輸委員会は3月27日、アイザックマンのNASA長官指名に関する公聴会を開催した。空軍省は、2019年に独立した軍種となったアメリカ空軍とアメリカ宇宙軍という2つの軍種を統括している。

『ポリティコ』誌が報じたように、公聴会後の連邦上院軍事委員会からの質問に対する書面回答の中で、メインクは、採用面接にはマスクも同席していたものの、質問したのはトランプのみであったことを認めた。また、メインクは、マスクおよびスペースXとの関係は、国家偵察局での現在の職務の一環としてのみ、仕事上のものだったと述べた。

しかし、『ポリティコ』誌は、ジョージ・W・ブッシュ大統領政権下でホワイトハウスの倫理問題担当弁護士を務めた人物の発言を引用し、国防総省の幹部人事に軍事請負業者が関与するのは前例がなく、メインクはマスクの企業に関するいかなる決定にも関与すべきではないと述べた。連邦上院軍事委員会メンバーのエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、これを「極めて不適切(highly inappropriate)」だと批判した。ウォーレン議員とタミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)は、公聴会前にメインクとマスクの関係について懸念を表明したが、公聴会ではメインクに質問は投げかけられなかった。

一方、49日に行われた連邦上院商務委員会でのアイザックマンの公聴会では、ゲイリー・ピーターズ連邦上院議員(ミシガン州選出、民主党)とエド・マーキー連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)が、アイザックマンとマスクとの関係について直接質問した。スペースXNASAにとって2番目に大きな契約相手企業であるだけでなく、アイザックマンは2021年と2024年に指揮を執った2回の商業宇宙飛行(Inspiration4Polaris Dawn)をスペースXから購入しており、彼の会社Shift4はスターリンク通信衛星システムの支払い処理に関してスペースXと契約を結んでいる。

アイザックマンはピーターズ議員に対し、NASA長官に正式に指名されて以来、マスクとは何の連絡もしていないと語った。マーキー議員は、トランプ大統領がアイザックマンを面接したとき、マスクはマールアラーゴにいたのか、部屋にいたのかと質問した。 アイザックマンは、マスクはマールアラーゴにおり、一応の会話はしたかもしれないが、誰がその部屋にいたかについては、トランプから面接を受けたとだけ答えた。何度か質問して同じ答えが返ってきた後、ついにマーキー議員は「マスクが部屋にいたから直接答えたくないのだろう」と言った。

マーキー議員は公聴会後の委員会の質疑応答(Questions for the RecordQFR)で再度質問した。アイザックマンは同じ回答をした。彼はまた、マスクが彼に仕事をしたいかどうか尋ねるために電話をかけてきたというウォールトリート・ジャーナルの報道にも異議を唱え、「ノー、その報道は虚偽だ」と直接答えた。

委員会の幹部メンバーであるマリア・キャントウェル連邦上院議員(ワシントン州選出、民主党)に対する回答でも、アイザックマンは、元スペースX関係者で現在はNASA上級顧問を務めるマイケル・アルテンホーフェンと頻繁に話をしているというウォールストリート・ジャーナルの報道は誤りだと述べた。マスクとの交流は「親密」ではなく「プロフェッショナル」であるとし、倫理プロセスにおいて金銭的・契約的関係は全て開示しており、「対立の様相を呈する可能性のあるいかなる問題」についても「NASAの法律顧問やその他の適切な関係者を巻き込むことをためらわない」と断言した。

アイザックマンは、既にスペースXの商業宇宙飛行2回に加え、クルー・ドラゴンと新型スターシップ・システムの初の有人宇宙飛行の2回分を購入した。キャントウェル議員に対し、これらの契約は既に解除し、代金は返金されたと述べたが、最初の2回分の支払額については明言を避けた。

「倫理規定に基づき、スペースXとの全ての宇宙飛行サービス契約を解除し、将来のミッションのためにスペースXに支払った資金は全て返金された。さらに、倫理規定に基づき、これらの資金は利益相反のない受動的な投資に再投資することを約束する。過去のミッションのためにスペースXに支払った金額は、スペースXとの契約上の守秘義務の対象となる」ジャレッド・アイザックマン。

アイザックマンは、スペースXShift4にスターリンク関連サービスに対して年間1000万から1600万ドルを支払っているというキャントウェル議員の主張には異議を唱えなかったが、承認されればShift4を辞任し、過半数の議決権を放棄すると述べた。

利益相反の問題が委員会での指名投票や本会議での指名投票に影響を与えるかどうかは予測が難しい。トランプ大統領は指名者の承認を得ることにかなり成功しているが、必要な支持が得られないことが明らかになったため、土壇場で指名が取り下げられた例もいくつかある。

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トロイ・メインク:米国防総省内のイーロン・マスクの男?(Troy Meink: Elon Musk’s Man in the Pentagon?
スティーヴ・ティミヌコ筆

2025年3月27日

『ザ・ナショナル・インタレスト』誌

https://nationalinterest.org/blog/buzz/troy-meink-elon-musks-man-in-the-pentagon

ドナルド・トランプ大統領が空軍長官に指名した人物は、国防総省最大の請負業者の1人であるイーロン・マスクとの緊密な関係を理由に綿密な調査を受けるに値する。

数十年にわたりアメリカの国家安全保障上の利益を守ってきた元国防総省高官として、ドナルド・トランプ大統領によるトロイ・E・メインクの次期空軍長官指名をめぐる最近の動きに私は深く懸念を抱いている。

政治家、オピニオンリーダー、そしてアメリカ国民が、イーロン・マスクの政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)の影響と節約効果について議論する中、より懸念されるのは、スペースXとテスラ社のCEOであるマスクが、メインクの指名を含む国防政策に及ぼす可能性のある明白な影響力についてである。

マスクがメインクをこのポストに推薦したと報じられていることは注目に値する。これは驚くべきことではない。7人の関係者が最近ロイター通信に語ったところによると、監察官がメインクを調査し、18億ドルの機密契約の条件をスペースXに有利なように変更したかどうかを確認したという。この契約は最終的にマスクの会社が獲得した。

メインクはこのポストに最適な人物である可能性が高い。アメリカ連邦上院は、承認プロセスにおいて助言権と同意権を行使し、この点について議論し、決定を下す必要がある。しかし、マスクがこの結果を推し進めたというだけの理由で彼がこのポストに指名されたとしたら、それは政府、特に空軍と数十億ドル相当の取引を行っている企業に対する偏見や不正の疑いを提起することになり、非常に問題となるだろう。

軍に対する文民統制(civilian control over the military)は、アメリカが最も誇りとする、そして最も独特な伝統の1つだ。しかし今日、アメリカは中国と密接な関係にある人物から潜在的な影響力が行使されるという状況に直面している。国防当局者の一部は、マスクの企業が中国の軍民融合法(the country’s military-civil fusion laws)の対象となる可能性を懸念しており、同法では、企業の機密情報は中国共産党と共有されることが義務付けられている。連邦上院軍事委員会のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とタミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)は、メインクがマスクとスペースXを優遇する可能性があると懸念を表明し、マスクの企業が現在支配的な分野における「主要な契約、配備、調達の決定(key contracting, deployment, and acquisition decisions)」にメインクが責任を負うことを強調している。

連邦上院議員たちは正しい。これは党派政治の問題ではなく、アメリカの国家安全保障を守るための問題だ。

スペースXは既に約220億ドルの政府契約を締結している。スペースXの防衛関連契約は2023年から2024年にかけて2倍以上に増加し、8億5600万ドルから18億ドルに増加した。一見すると、これらの契約が不当に授与されたと疑う余地はない。しかし、マスクとメインクの間の不正行為の可能性に関する最近の報道は、確かに疑問を抱かせるに十分だ。

空軍長官は、政治的圧力から完全に独立しつつ、防衛関連企業との複雑な関係を巧みに操らなければならない。不正行為の疑いさえあれば、特定のプログラムや機関、省庁全体に汚名を着せられる可能性がある。そして、空軍長官の職務が商業的利益に影響されているという認識は、国民の信頼と軍事力の有効性を損なうことになる。

これは、マスクの愛国心や、彼の企業がアメリカの技術革新に貢献しているかどうかを問うことではない。アメリカの国家安全保障にとって可能な限り最良の結果を確保することだ。

連邦上院は、この指名について利益相反の可能性がないか徹底的に精査しなければならない。政府と軍の指導者たちは、いかなる偏見やえこひいきもせず、客観的に行動しなければならない。DOGEが米国防総省の契約とプログラムに関する透明性と説明責任の向上を主張する一方で、空軍のトップが、契約の選択によって利益を得ることができる人物によって指名されたのではないかと人々に疑念を抱かせるのは非論理的だ。

調査を始めましょう。アメリカ国民は、それ以上のことを当然受けるべきです。

Let the digging begin. The American people deserve no less.

※スティーヴ・ティミヌコ:米国務省元グローバル政府間担当副部長兼上級会議調整官。
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独占記事:トランプ政権の空軍長官候補は、マスクのスペースXに有利な方法で衛星契約を手配した(Exclusive: Trump Air Force nominee arranged satellite contract in manner that favored Musk's SpaceX

ジョイ・ロウレット、マリサ・テイラー、アラム・ロストン筆

2025年2月8日

ロイター通信

https://www.reuters.com/world/us/trump-air-force-nominee-arranged-satellite-contract-manner-that-favored-musks-2025-02-07/

ワシントン発、2 7日(ロイター)。ドナルド・トランプ大統領の空軍長官候補は現在、国家偵察衛星機関(the national spy satellite agency)の最高幹部であり、契約に詳しい7人によると、イーロン・マスクのスペースXに有利な方法で数十億ドルの契約募集を手配した。

機密契約の要件が変更されたことで、国家偵察局(National Reconnaissance Office)の監察総監は、トロイ・メインクが不適切にスペースX社に取引を指示したかどうかを調査することになったと、2人の関係者がロイター通信に語った。マスクの宇宙ヴェンチャーは最終的に2021年に契約を勝ち取った。監察総監が報告書をまとめたのか、それともまだ調査が続いているのかは明らかではない。

契約に関する疑惑も、監察総監の調査も、これまで報道されたことはない。

国家偵察局の広報担当者はメールで、ロイター通信が言及した「調達に関連するいかなる疑惑、抗議、不正行為も承知していない」と述べた。また、「業界パートナーとの契約関係や特定の活動に関する詳細(details related to contractual relationships with industry partners or specific activities)」についてはコメントを避けた。
テレンス・エドワーズ監察総監は、国家偵察局の広報担当者を通じて、彼の事務所は「苦情や調査活動の可能性に関するいかなる情報も提供しない」と述べた。

エンジニアであり、元軍人、2020年から国家偵察局の首席副長官を務めているメインクは、空軍の指揮官への指名承認を待っている。彼の指名は、億万長者の起業家であり、ホワイトハウスの人事に影響を与え、スペースXを含む彼の様々な会社が連邦政府と広範なビジネスを行っているため、潜在的な利益相反をめぐって騒動を引き起こしているトランプ大統領のアドバイザーとなったマスクの推薦に従ったものだと2人の関係者がロイター通信に語った。

マスクもスペースXも、この報道に対するコメントの要請には応じなかった。空軍の広報担当者はホワイトハウスに問い合わせた。ホワイトハウス広報部はロイター通信の要請に応じなかった。

メインクが国家偵察局に在籍していた期間、スペースXは国家偵察局との強い関係を築いたと契約に詳しい関係者はロイター通信に語った。2021年の契約は、世界中の軍事・諜報ターゲットの高解像度画像を収集・中継する数百のスパイ衛星を開発するものだった。

これはスペースXにとって極めて重要な取引であり、アメリカの防衛・情報機関との結びつきを深めた。当初は18億ドルだったが、衛星ネットワークが配備されるにつれ、契約総額はその数倍になると予想されている。ロイター通信はこの契約を見ることができなかった。この契約は機密扱いで、政府はその詳細を公表しておらず、スペースXの関与も確認していない。

他の数社が競争入札の準備をしている間に、メインクは契約の一部を変更した。この変更は、スペースXがスパイ衛星ネットワークに提供できる衛星間通信の一種に関係しており、軌道上に約7000基の衛星を持つ、スペースXの商業ブロードバンド・サービスであるスターリンクのためであったと関係者たちは付け加えた。

ロイター通信は、この変更が他の入札者を排除するための意図的な試みだったのか、それとも世界最大かつ最速で成長を続ける民間宇宙企業であるスペースXが、この変更がなくても契約を獲得できたのかを判断できなかった。いずれにせよ、結果として「(スペースXに)対抗できる企業はなかった。なぜなら、他には接続できる商用衛星群を持っていなかったからだ」と契約に詳しい関係者の1人は語っている。

関係者たちによると、当時、入札プロセスに関わった関係者の一部が国家偵察局当局に苦情を申し立て、最終的に監察総監による調査に至ったという。契約業者であるL3ハリス・テクノロジーズ社の場合、変更に不満を抱いたL3ハリス・テクノロジーズは、メインクと直接話し合いたが、その場で、メインクは正式な抗議を申し立てれば国家偵察局との今後の取引に支障が出る可能性があると述べたとこのやり取りに詳しい3人の関係者がロイター通信に語った。

L3ハリス(LHX.N)は、契約プロセスに関するロイター通信の詳細な質問には回答しなかった。電子メールで送られた声明の中で、広報担当者は「トロイ・メインクのリーダーシップの下で国家偵察局が変貌していく様子を見てきた。新空軍長官として彼と協力することを楽しみにしている」と述べた。

機密扱いのスパイ衛星群は、アメリカ政府が軌道上で最も待ち望んでいる開発の1つだ。地球上の活動を最も持続的、広範囲かつ迅速に監視できるように設計されたこれらの衛星は、宇宙における軍事的・地政学的優位を巡り、中国、ロシア、その他のライヴァル国を出し抜こうとするアメリカの取り組みにおいて極めて重要な要素だ。

公開されている宇宙追跡データやこの計画に詳しい関係者によると、この衛星群を構成する100基以上の衛星が昨年以降に打ち上げられている。スペースXのスターシールド部門が展開するこのスパイ衛星群は、400万人以上の顧客を抱える商用通信ネットワークであるスターリンクとは異なる。しかし、これら2つの衛星システムは、宇宙で相互に通信できるように設計されている。

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連邦上院はトランプ大統領が空軍長官に指名したトロイ・メインクを承認した(Senate confirms Troy Meink, Trump’s pick for Air Force secretary

-軍と政府で数十年にわたる経験を持つメインクは、イーロン・マスクのスペースXを優遇しているという疑惑があったにもかかわらず、74対25の投票で容易に承認された。

アンドリュー・ジョン筆

2025年5月14日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/national-security/2025/05/14/air-force-secaf-troy-meink-trump/

連邦上院は火曜日、トロイ・メインクを次期空軍長官に74対25の賛成多数で承認した。これは、スペースXの創業者イーロン・マスクとの利益相反の可能性について、民主党所属の連邦上院議員2名が以前から懸念を示していたにもかかわらず、承認された。

メインクは技術者・エンジニアであり、湾岸戦争で100回以上の任務を遂行した空軍の退役軍人だ。ミサイルや衛星の開発に貢献してきた公務員でもある。空軍が管轄する技術に関する彼の経験は、21人の民主党所属の連邦上院議員の支持を得て承認を獲得するのに十分以上の説得力を持ったようで、民主党側からの承認票は21票となった。

メインクは、ライバヴァル国との技術競争や、慢性的なパイロットや他の職種の人員不足など、様々な課題に直面している空軍と宇宙軍の監督を担うことになる。

メインクは承認手続きにおいて、これらの問題に対処することを約束した。

3月27日の公聴会で、メインクは連邦上院議員たちに対し、中国などの競争相手に対するアメリカの技術的優位性の維持、ロシアがもたらす「高度にエスカレートする非対称能力(highly escalatory asymmetric capabilities)」への対処、そして国境におけるサイバー攻撃と違法薬物取引への対処に注力すると述べた。

書面証言の中で、メインクは中国をアメリカにとって「最大かつ最も可能性の高い軍事的脅威(the largest plausible military threat)」と表現した。また、メインクは、ロシアは3年以上にわたるウクライナ紛争で疲弊しているにもかかわらず、ヨーロッパにおけるNATO同盟諸国にとって「深刻な脅威(acute threat)」であり続けることは明らかだと述べた。

メインクはまた、空軍を「史上最も規模が小さく、老朽化し​​ている(smaller and older than it has ever been in its history)」と述べ、少なくとも950名の戦闘機パイロット不足に対処することを約束した。同時に、空軍が航空業界との厳しい競争に直面することを認めた。

メインクは民主党所属の連邦上院議員の一部からの反対に直面している。2月には、連邦上院軍事委員会のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とタミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)が、メインクとマスクの間の「潜在的な取引(a potential quid pro quo)」について懸念を表明した。両議員は、マスクがメインクの前職における契約で「スペースX社に有利な条件を提示した」とされる事件を受け、マスクがメインクの空軍長官就任を働きかけたとの報道を引用した。

メインクにコメントを求めたが、すぐには連絡が取れなかった。『ポリティコ』誌によると、メインクは連邦上院への書面証言で、スペースX社およびマスクとの利益相反や関係を否定したと報じられている。

スペースXの担当者にも火曜日遅くにコメントを求めたが、すぐには連絡が取れなかった。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今回は、最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)をご紹介します。発売日は2025年11月21日です。今回のテーマは「新・軍産複合体」です。これまでの著作で取り上げてきた「新・軍産複合体」に絞っての単著となります。以下にまえがき、目次、あとがきを掲載します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願い申し上げます。 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしています。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されています。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てきます。活用いただければ幸いです。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

(貼り付けはじめ)

まえがき 古村治彦

■トランプ大統領に振り回される世界

ドナルド・トランプ Donald Trump(一九四六年生まれ、七九歳)は、二〇二四年のアメリカ大統領選挙で勝利し、二〇二五年一月二〇日に政権に返り咲いた。現職大統領が選挙で敗北し、その後、再び当選して大統領に復帰したというのは、アメリカ史上、一三二年ぶりの重大な出来事となった。

 第二次政権発足後のトランプは、就任初日から次々と大統領令を発し、不法移民の摘発の厳格化や行政機関の削減、更には高関税政策を次々と実行に移した。大統領選挙でトランプ陣営に多額の寄付を行い、側近となったイーロン・マスク率いる政府効率化省Department of Government Efficiency(デパートメント・オブ・ガヴァメント・エフィシエンシィ)、DOGE(ドージ)が各政府機関に乗り込んで、調査を行い、数千人の政府職員を解雇した。このことは日本でも詳しく報道された。

 トランプの電光石火(でんこうせっか)の動きに、アメリカ国内、そして世界が振り回されることになった。トランプ大統領と良好な関係にあったイーロン・マスクは二〇二五年五月に政府効率化省から離れ、更には、予算案をめぐり、トランプと対立するようになった。マスクは更に、新しい政党「アメリカ党 American Party(アメリカン・パーティー)」の立ち上げを画策している。

日本関連で言えば、二〇二五年四月のトランプ関税 Trump Tariff(タリフ)のショックがあったが、日本政府の粘り腰の交渉で、関税を引き下げることに成功した。

■「エプスタイン問題」が今後のトランプのアキレス腱となる

 二〇二五年七月に入ってから、トランプ政権にとってアキレス腱となり得る事案が話題

を集めている。

 それは、ジェフリー・エプスタイン Jeffrey Epstein(一九五三〜二〇一九年、六六歳で没)の起こした児童買春事件に関するファイルを公開するかどうかの問題だった。トランプが二〇二四年の大統領選挙で公開を約束した、エプスタイン事件ファイル、特に「顧客リスト」の機密解除の後の公開が焦点となった。二〇二五年七月六日に、司法省は、ファイルは存在せず、エプスタインは自殺だったと発表した。

 これに対して、トランプを支持した勢力、MAGA[マガ]Make America Great Again[メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン])派と呼ばれる人々から激しい批判の声が上がっている。(註1)トランプの名前が顧客リストに掲載されていたために、ファイルの公開が見送られたと誰もが考えた。

トランプは批判を強めるMAGA派の人々に対して、「弱虫 weaklings(ウィークリングス)」「お前たちの支持はいらない」と激しく非難した。MAGA派からすれば、顧客リストの公開なしはトランプの卑劣な「裏切り betrayal(ベトレイヤル)」にほかならない。二〇二五年二月に、パム・ボンディPam Bondi(一九六五年生まれ、五九歳)司法長官 Attorney General(アトーネイ・ジェネラル)が、エプスタインのファイルにトランプの名前が出てくることを報告しており、そのために公開しないという決定がなされたとされており、対応をめぐって共和党内部にも分裂が起きている。

 エプスタイン事件への対応が取り沙汰されるようになって、トランプの動きがおかしくなった、そして、イーロン・マスクとの関係悪化につながったと私は判断している。トランプとイーロン・マスクの仲違いが表面化した際に、マスクはXへの投稿で、「ドナルド・トランプは、エプスタイン・ファイルに載っている。これこそが書類が公開されない真の理由だ(Donald Trump is in the Epstein files. That is the real reason they have not been

made public.)」と書いている(後に謝罪した)。

 政府効率化省を率いて、連邦政府各機関の調査を行ったイーロン・マスクは自身が抱える天才ハッカー集団を総動員して、各機関のコンピュータを調査し、様々な情報を入手したであろうことは間違いないので、マスクのXへの投稿には信憑性が高いと私は考えている。

 そうなると、トランプは自分の支持者たちを裏切ったということになる。そして、トランプは既存勢力、MAGA派が敵視するディープステイト側に寝返ったということになる。

■アメリカをこれまで動かしてきた軍産複合体

 本書は、現下のトランプ政権をめぐる激しい動きではなく、その下にある、より大きな動きについて見ていく。そのためのキーワードとなるのが「軍産複合体(ぐんさんふくごうたい)Military-Industrial Complex(ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス)、MIC(エムアイシー)」という言葉だ。

 この「軍産複合体」という言葉について簡単に説明すると、軍需産業 defense industry(ディフェンス・インダストリー)と軍隊・政府機関が密接に結びつく、互恵(ごけい)的な reciprocal(レシプロカル)連合体ということになる。

 民間企業である軍需産業が、政府の一部門で多くの予算と多数の人員を抱える軍隊と結びついて、お互いの利益となる、予算獲得や予算そのものの拡大のために、協力して影響力を行使するということになる。

 アメリカで見てみると、軍産複合体には、民間の軍需産業や軍隊だけではなく、米連邦議会 Congress(コングレス)や学術界などの社会各層も入っているとも解釈されている。広範囲にわたる連合体ということになる。

 アメリカの巨大軍需産業の代表的な企業としては、①ロッキード・マーティン社Lockheed Martinボーイング社 BoeingRTXコーポレーション社 RTX Corporationノースロップ・グラマン社 Northrop Grummanゼネラル・ダイナミクス社 General Dynamicsなどの名前が挙げられる。

 RTX社は旧名がレイセオン・テクノロジーズ社であり、レイセオン・テクノロジーズ社は元々レイセオンとユナイテッド・テクノロジーズ社が合併した巨大企業で、レイセオンという名前の方が良く知られている。

 この五大巨大軍需産業は、国防総省(註2)やアメリカ軍の主要な契約(請負)企業contractors(コントラクターズ)であり、「プライム primes」と呼ばれ、優遇されてきた。

 ロッキード・マーティン社は、戦闘機、ミサイル、艦船、人工衛星などを製造し、二〇二四年の売上は約七一〇億ドル(約一〇兆五〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約一〇四五億ドル(約一五兆二〇〇〇億円)だ。

 ボーイング社は民間航空機製造でも知られているが、爆撃機やミサイル、宇宙開発の分野にも進出しており、二〇二四年の売上は、約六六五億ドル(約九兆八〇〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約一七一六億ドル(約二四兆九〇〇〇億円)だ。

 RTXコーポレーション社は、航空エンジン、機体、ミサイル、防空システムなどのメーカーで、二〇二四年の売上は、約八〇七億ドル(約一一兆七〇〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約二〇九二億ドル(約三〇兆三〇〇〇億円)だ。

 ノースロップ・グラマン社は、戦闘機、人工衛星、ミサイルなどを製造し、二〇二四年の売上は約四一〇億ドル(約六兆円)、二〇二五年八月の時価総額は約八四〇億ドル(約一二兆二〇〇〇億円)だ。

 ゼネラル・ダイナミクス社は、造船や宇宙開発、情報機器に強いメーカーで、二〇二四

年の売上は約四八〇億ドル(約七兆円)、二〇二五年八月の時価総額は約八六〇億ドル(約一二兆五〇〇〇億円)だ。

 他にも軍需産業には多くの企業があるが、これらの巨大軍需企業は、アメリカ国防総省

Department of Defense(デパートメント・オブ・ディフェンス)の元請(もとうけ)契約業者 prime contractors(プライム・コントラクターズ)として優遇され、国防予算から巨額の利益を上げてきた。

 日本経済新聞二〇二四年八月二日付記事「米欧防衛8社、紛争特需で増産投資 時価総額五年で倍増」では、「ロシアのウクライナ侵略や中東情勢の緊迫で、弾薬やミサイルを増産している。好業績を受け、これまで防衛銘柄を敬遠していた投資マネーも流入している」と書かれている。ウクライナ戦争や中東での紛争で、巨大軍事産業は莫大な利益を上げ、それは今も続いているということだ。戦争は彼らにとっての「飯(めし)のタネ」ということになる。

■軍産複合体には都合が悪い「アメリカ・ファースト」

ドナルド・トランプ大統領は、こうした軍需産業に対して、大統領選挙を通じて拒否反応を示していた。

 トランプは昨年(二〇二四年)の大統領選挙の運動期間中、九月のウィスコンシン州での選挙集会で本書のテーマの核心となることについて発言した。『フォーブス』誌二〇二四年九月一三日付記事「ドナルド・トランプは軍産複合体を抑制できるか?(Will Donald Trump Tame the Military-Industrial Complex?)」で、トランプの重要な発言が紹介されて

いる。以下に引用する。

(引用はじめ)

私は好戦主義者たち warmongers(ウォーモンガーズ)を追放するだろう。常に戦争をしたがっている連中がいる。それはなぜか? ミサイルは一発で二〇〇万ドルもする。これが答えだ。彼らは世界中の至る所にミサイルを落とすのが大好きだ。私の(前の)政権の時には戦争などなかった。……私は好戦主義者たちを国家安全保障分野から追放し、必要とされてきた軍産複合体の一掃を実行する。戦争を利用しての利益追求を止め、常にアメリカ・ファースト America first を推進するためだ。私たちはアメリカ国内問題解決を第一に考える。私たちは終わりのない戦争に終止符を打つ。軍産複合体の人々は、終わりのない戦争を決して終わらせることはない。(翻訳は引用者)

(引用終わり)

 この記事で私は「好戦主義者」と翻訳したが、これは「戦争屋(せんそうや)」と言い換えても良いだろう。

 トランプは、巨大軍事産業が金儲けのために、戦争を引き起こしている、戦争の元凶(げんきょう)だと喝破[かっぱ](堂々と論じて人々が隠したがる真理を明らかにすること)している。ウクライナ戦争の即時停戦とウクライナへの支援の停止も同時に訴えていた。トランプは、好戦主義者・戦争屋たちを排除して、アメリカが戦争に巻き込まれないようにすると訴えた。そして、大統領に返り咲いた。

 ドナルド・トランプはこれまで一貫して、「アメリカ・ファースト America First」を訴えてきた。

「アメリカ・ファースト」は、「アメリカが何でも一番だぞ」という単純な、子供じみた優越感を示した言葉ではない。その真意を含んで正確に日本語に訳すと、「アメリカ国内問題解決優先主義」ということになる。アメリカ国内では、経済格差の拡大やインフラの老朽化といった問題が深刻化している。そういった問題の解決を優先しようという考え方

である。

 国内重視姿勢であり、海外の問題をアメリカが出しゃばって解決しようとするのは止めよう(ほとんどの場合、アメリカは失敗してきた)、外国の問題解決は外国がすればよいという考えだ。このような考え方を「アイソレイショニズム Isolationism」という。アメリカ外交にとって、建国以来の重要な伝統だ。アイソレイショニズムを「孤立(こりつ)主義」と訳すのは間違いだ。世界の大国であるアメリカが、世界から孤立すること自体があり得ないことだ。このように訳すと、実態を見誤ってしまう。

 トランプはこの伝統に回帰することを訴えた。そして、多くのアメリカ国民がそれを支持した。しかし現状は、ウクライナへの支援は継続し、トランプが進めた「大きく美しい一つの法案」(One Big Beautiful Bill Act(ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル・アクト) of 2025OBBBA 2025)では、防衛予算は前年比で増額となった。

■新たな軍産複合体がすでに形成されつつある

 私は、前作『トランプの電撃作戦』(秀和システム、二〇二五年)において、「ペイパル・マフィア Paypal Mafia」の総帥(そうすい)にして、シリコンヴァレーの新興テック産業の多くの操業に関わってきたピーター・ティール Peter Thiel(一九六七年生まれ、五八歳)が、トランプ政権の樹立に大きく貢献したことを明らかにした。そして、ティールと、イーロン・マスク Elon Musk(一九七一年生まれ、五四歳)が新・軍産複合体 Neo Military Industrial Complex(ネオ・ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス)づくりを行っていると分析した。

 現在のアメリカ経済において、シリコンヴァレー発のテック産業が大きな存在となっている。その代表が、GAFA(ガーファ)と呼ばれる巨大テック企業である。グーグル社 Google、アップル社 AppleFacebook(現在はメタ社 Meta)、アマゾン社 Amazonは売上、時価総額ともに世界トップ一〇を占めている。これら以外にもテック産業は成長を続けて、アメリカの経済や社会において存在感を増している。

 二〇二五年一月一五日、ジョー・バイデン Joe Biden(一九四二年生まれ、八二歳)前大統領は、退任演説 Farewell Address(フェラウェル・アドレス)において、軍産複合体に言及した。以下の該当部分を引用する。

(引用はじめ)

ご存知のように、アイゼンハワー大統領は退任演説で軍産複合体(ぐんさんふくごうたい)military-industrial complexの危険性について言及した。演説から引用すると、彼は当時、私たちに「誤った権力の破滅的な台頭の可能性(the potential for the disastrous rise of misplaced power)」について警告した。

 六日後(言い間違い)、いや六〇年後、私はアイゼンハワー大統領と同様に、我が国に真の危険をもたらす可能性のあるテック産業複合体 tech-industrial complex(テック・インダストリアル・コンプレックス)の台頭を懸念している。

 アメリカ国民は、権力の濫用を助長する偽情報 misinformation(ミスインフォメーション)と虚偽 disinformation(ディスインフォメーション)の雪崩(なだれ)に埋もれつつある。報道の自由 free press(フリー・プレス)は崩壊しつつある。編集者は姿を消しつつある。ソーシャルメディアはファクトチェックを放棄している。真実は、権力と利益のために語られる噓によって覆い隠されている。

 私たちは、子供たち、家族、そして民主政治体制 democracy(デモクラシー)そのものを権力の濫用から守るために、ソーシャルプラットフォームに責任を負わせなければならない。(翻訳は引用者)

(引用終わり)

 バイデン前大統領は、ドワイト・アイゼンハワー Dwight D. Eisenhower(一八九〇〜一九六九年、七八歳で没 在任:一九五三│一九六一年)元大統領の退任演説(本書第二章で詳しく見る)を意識して、アイゼンハワーが使ったことで注目されるようになった軍産複合体を意識して、「テック産業複合体」という言葉を使い、その存在に警告を発している。

 巨大テック産業が政治や社会、人々の日常生活に過度な影響力を持つことを懸念し、警鐘を鳴らしている。

 シリコンヴァレー発の巨大テック産業の重要人物たちのほとんどは、民主党支持で、二〇二〇年の大統領選挙ではジョー・バイデン(大統領在任:二〇二一│二〇二五年)を、二〇二四年ではカマラ・ハリス Kamala Harris(一九六四年生まれ、六〇歳)を支援した。バイデンは、独占禁止法を盾にして巨大テック産業の影響力の削減を行おうとしたが、中途

半端に終わった。

 二〇二四年の大統領選挙後、シリコンヴァレーの巨大テック産業は軒並み、トランプ支持を表明し、二〇二五年一月の大統領就任式に多額の献金を行い、CEOたちがばつが悪そうな顔をして就任式に出席した。バイデンとしては、テック産業の手のひら返しを許せないということもあって、恨み節として「テック産業複合体」という言葉が出てきたのだろう。しかし、バイデンが指摘するように、テック産業は様々な場面で、影響力を増しているのも事実だ。

■「米中戦争」の主役は双方の新・軍産複合体が担う

私はトランプが批判した軍産複合体と、バイデンが批判したテック産業が交わる領域についてこれから書いていく。

より具体的には、これまでの著作でも触れてきたが、「新・軍産複合体」づくりだ。

 より具体的には、シリコンヴァレーで、第一次トランプ政権誕生に大きく貢献したピーター・ティール、第二次トランプ政権誕生に貢献したイーロン・マスク、ティールが引き立てたシリコンヴァレーの天才児パルマー・ラッキー Palmer Luckey(一九九二年生まれ、三三歳)が軍産複合体に食い込もうとしていることを詳述していく。

更に、これまでの軍産複合体について、新旧の軍産複合体の違い、ティールたちに影響を与えている思想の新潮流、中国の軍産複合体、軍産複合体の変化を前提にした米中関係の予測について見ていく。

本書の構成を簡単に紹介する。

 第一章では、シリコンヴァレーのテック産業が、新しい軍産複合体づくりを行っている様子を人物と人脈を手掛かりにして見ていく。具体的には、ドナルド・トランプの政権獲得に貢献し、大きな影響力を持つ、ピーター・ティール、イーロン・マスク、そして、ティールの庇護の下で成功を収めたパルマー・ラッキーといった、シリコンヴァレー発のテック産業の大立者(おおだてもの)たちが、自分たちの所有するパランティア・テクノロジーズ社 Palantir Technologies、スペースX社 Space X、アンドゥリル・インダストリーズ社 Anduril

Industriesが国防総省とアメリカ軍との大規模な契約を結ぶことを目指している。第二次トランプ政権の軍事関係の人事についても見ていく。

 第二章では、戦後アメリカの軍産複合体の歴史を概観している。主に、第二次世界大戦後の冷戦がスタートした時期から軍産複合体は大きな影響力を行使してきた。第二次世界大戦後もアメリカは多くの戦争を戦ってきた。アメリカの戦争において重要な役割を果たしてきた軍産複合体の成り立ちや役割について、ニューヨーク財界人が作った「現在の危機委員会」や、アメリカの介入主義の思想潮流であるネオコン派の人物たちの名前を挙げて詳述する。

 第三章では、古くからの軍産複合体と新・軍産複合体の違いについて見ていく。二つの間にある大きな違いは、ビジネスモデルの違いと、底流にある思想の違いである。ビジネスモデルの違いで大きいのは、私たちにとってもなじみ深い言葉「サブスク」である。底流にある思想に関しては、古くからの軍産複合体の基底にあるのは介入主義(かいにゅうしゅぎ)であり、新・軍産複合体の場合は暗黒啓蒙(あんこくけいもう)である。これらを詳述し、二つの間の違いを明確化する。

第四章では、アメリカの新しい軍産複合体づくりが国際関係に与える影響について考える。現在、国際関係における最重要のファクターは、米中関係 US -China relations(ユーエス・チャイナ・リレイションズ)である。より具体的に言えば、「米中戦争は起きるのか」ということが重要なテーマになる。

 まず、中国における軍産複合体の形成について見ていく。習近平政権下、中国は軍の近代化を進めており、そのための中心戦略が「軍民融合(ぐんみんゆうごう)」であり、習近平は二〇二三年からの国家主席三期目の中国共産党指導部人事で「軍工航天系(ぐんこうこうてんけい)」のテクノクラートたちを登用していることを紹介する。

 続けて、ピーター・ティール、イーロン・マスク、パルマー・ラッキーの対中観について、そして、暗黒啓蒙の中にある「中華未来主義(ちゅうかみらいしゅぎ)」について見ていく。そして、アメリカの軍産複合体の「変容 transformation(トランスフォーメイション)」によって、米中関係も変化していくだろうということを結論づける。

 本書を通じて、アメリカ政治の表面に出てこないが、確かなそして大きな動きについて、読者の皆さんに理解を深めていただけることを願っている。

二〇二五年九月

古村治彦(ふるむらはるひこ)

【註】

註1 『ロイター通信』二〇二五年七月三〇日付記事「情報BOX:「エプスタイン問題」とは何か、未公開文書巡りトランプ氏と支持層に亀裂も」

註2 二〇二五年九月に戦争省 United States Department of Warに改名

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『シリコンヴァレーから世界支配を狙う 新・軍産複合体の正体』 目次

まえがき

トランプ大統領に振り回される世界 3

「エプスタイン問題」が今後のトランプのアキレス腱となる 4

アメリカをこれまで動かしてきた軍産複合体 6

軍産複合体には都合が悪い「アメリカ・ファースト」 9

新たな軍産複合体がすでに形成されつつある 11

「米中戦争」の主役は双方の新・軍産複合体が担う 14

新旧・軍産複合体の人脈関連図と関係企業

新・軍産複合体の人脈図(1):トランプ政権 26

新・軍産複合体の人脈図(2):ウエストエグゼク社 28

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(1):第一次「現在の危機委員会」まで 30

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(2):第二次「現在の危機委員会」まで 32

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(3):ジョージ・W・ブッシュ政権とネオコン 34

新旧軍産複合体企業 36

第1章 アメリカで新しい軍産複合体が出現しつつある

ミッシェル・フロノイというキーパーソンの浮上 40

バイデン政権と濃密につながるウエストエグゼク社 41新・軍産複合体づくりの動きが見えてきた 44

新・軍産複合体の中心人物ピーター・ティール 46

反福祉、反税金、反中央政府の自由至上主義者(リバータリアン)ンたち 51

政界ネットワークを着々と拡大するティール 53

ビン・ラディンの発見と殺害で政府機関の信用を得る 55

第二次トランプ政権の「台風の目」となっていたイーロン・マスク 57

アメリカにとって不可欠の存在にわずか二〇年で成長したスペースX社 61

ティールに育てられた「シリコンヴァレーの異端児」パルマー・ラッキー 63

アンドゥリル社は新時代の軍需企業として台頭 67

ピーター・ティールが見出して、育てたJ・D・ヴァンス 70

防衛関係のスタートアップに投資するスティーヴン・フェインバーグ 75

「アジア・ファースト」軍事戦略を目論むエルブリッジ・コルビー 80

陸軍の文民トップには新・軍産複合体寄りの二人が就任した 84

トロイ・メインク空軍長官はイーロン・マスクと昵懇の中 90

第二次トランプ政権は新・軍産複合体づくりを支援する 92

第2章 二〇世紀は軍産複合体の世紀だった

「アメリカの世紀」は戦争によって築かれた 96

世界最強の軍隊を支える軍産複合体 98

軍産複合体の脅威を警告したドワイト・アイゼンハワー大統領 101

「現在の危機委員会」は米国民が軍拡を受け入れるように仕向けた 106

軍産複合体の生みの親であるバーナード・バルーク 112

財界人にとって安全な投資先となった軍需産業 114

第二次「現在の危機委員会」の創設がレーガン政権につながった 118

ネオコンや人道的介入主義派の源流となったヘンリー・ジャクソン 123

ジョージ・W・ブッシュ政権を牛耳ったネオコンは軍産複合体そのものだった 126

二一世紀になっても米国民を煽っている「現在の危機委員会」 132

二〇世紀で作り上げられた軍産複合体は二一世紀で変容する 137

第3章 新・軍産複合体は旧来と何が違うか

防衛システムのサブスクリプション契約を目論む 142

基盤となる思想も新旧大いに異なる 145

古くからの軍産複合体のビジネスモデルは「お手盛り」でコスト軽視 146

一致団結して国防予算削減を妨げる者たち 149

イーロン・マスクが政府効率化省を率いた理由 151

新たなミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」導入が大きなチャンス 154

時代遅れの巨大軍需産業に取って代わるシリコンヴァレーのテック産業 157

「サブスク」でアメリカ軍をコントロールする新・軍産複合体 162

ウクライナ戦争で核戦争の危機を回避したイーロン・マスク 165

トランプは旧・軍産複合体にも利益を与える方向に転換した 169

トランプとマスクとの仲違いが新・軍産複合体づくりに影響 172

古くからの軍産複合体の思想の基盤は介入主義だ 176

ピーター・ティールが影響を受ける新しい思想潮流「暗黒啓蒙」 178

暗黒啓蒙の思想家カーティス・ヤーヴィン 181

ディープステイトと非ディープステイトの対立構図が浮かび上がる 186

第4章 新しい軍産複合体の台頭で米中関係はこうなる

アメリカが煽り立てる中国脅威論のおかしさ 192

「アメリカ以後の世界」へと歴史は流れている 196

戦争を必要としない新・軍産複合体と米中関係 198

中国の軍民融合はアメリカの軍産複合体と同様の機能を持つ 202

習近平体制三期目のキーワードは「軍工航天系」で、軍民融合を進める 206

中国の軍産複合体幹部が異例の昇進 212

最先端技術の軍への応用を可能にする人事 215

ピーター・ティールは中国に対して批判的だが理想は中国の体制のはずだ 219

中国に恩義があるイーロン・マスクが中国を敵視する理由がない 224

アメリカは世界の警察官をやめるべきと主張するパルマー・ラッキー 226

ニック・ランドが生み出した中華未来主義が重要だ 228

新・軍産複合体が米中衝突を望むことはない 233

新・軍産複合体の後ろ盾があるJ・D・ヴァンス副大統領がトランプの後継者 238

あとがき 243

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あとがき 古村治彦

「西洋 the Westの衰退と非西洋 the Rest の再興」は私の大きなテーマである。フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドは、「西洋の敗北 the Defeat of the West(ザ・デヒィート・オブ・ザ・ウエスト)、La défaite de l’Occident(ラ・ディフェツ・ドゥ・ロクスィダン)」という言葉を使っている。

 世界は今、大きな構造変化の時期を迎えている。西洋近代支配五〇〇年が終わり、非西洋諸国がBRICSを中心にして勃興(再興)しようとしている。

世界覇権は中国に移る。現在の日本の衰退は、世界規模で位置づければ、西洋の衰退という大きな流れの中で起きている現象ということになる。私たちはこのことをまずしっかりと認識しなければならない。

 アメリカ国内に目を向けると、アメリカの国力の減退はもう覆(おお)い隠(かく)せない状況になっている。アメリカは世界覇権国として、第二次世界大戦後の世界を支配してきたが、その世界支配を続けられなくなっている。その象徴がドナルド・トランプ大統領の誕生だ。

 トランプは、戦後のアメリカ支配体制を終わらせるために、時代の要請によって生み出された。世界帝国アメリカの墓堀り人 gravedigger(グレイヴディガー)である。私はそのように判断している。

 トランプ大統領誕生には、本書の主人公であるピーター・ティールとイーロン・マスクが大きく貢献した。彼らが目指しているのが、「新・軍産複合体」である。

 私は、本書を通じて、アメリカ政治の大きな流れである「新・軍産複合体」づくりについて詳述した。ティールやマスク、そして、パルマー・ラッキーは、これからのアメリカ政治において、「影の大統領」とも言うべき、政商 influence peddlers(インフルエンス・ペドラーズ)となるだろう。アメリカ史に引き付けて言えば、二一世紀の「泥棒男爵 robber barons(ロバー・バロンズ)」ということになる。

「新・軍産複合体は中国を敵視しない、戦争を必要としない軍産複合体となる」という私の主張は、突飛に聞こえるかもしれない。私の主張に説得力があるかどうかは、読者の皆様の評価を俟(ま)ちたい。

ドナルド・トランプ大統領は、第二次政権が始まった当初、様々な政策を行い、期待通りの動きを見せた。しかし、その後は、既存の勢力、ディープステイト側に妥協しているように見える。エプスタイン問題でも、ウクライナ停戦でも、昨年の選挙期間に行った自身の主張から大きく後退している。既存勢力に媚びを売り、何とか四年間の任期を無事に終えようという意図が透(す)けて見える。しかし、アメリカの衰退、アメリカ国内の分裂 division(ディヴィジョン)を止めることは不可能だ。大きな流れは誰にも止められない。

 本書の執筆中、日本では、石破茂総理大臣の退陣表明があった(二〇二五年九月七日)。そして、一〇月四日に自民党総裁選挙の投開票が行われ、最終的に高市早苗が新総裁に選ばれた。公明党の連立与党離脱で日本政界に激震が走った。これから連立与党の枠組みの変更と総理指名に向けて、協議が行われることになる。

 石破首相はアメリカに隷属的に盲従することなく、是々非々(ぜぜひひ)で事態に対応した。国防予算の対GDP比三・五%引き上げ要求を拒絶し、日米の外相と国務長官、防衛相と国防長官が会合を行う「2+2」の開催を見送ったことは本文の中で紹介した。

 石破政権は在任期間こそ短かったが、石破政権の業績を後世の歴史家が高く評価するだろう。世界の大きな構造転換に直面する日本で、石破茂というリーダーが誕生したことは倖(ぎょうこう)だった。対米隷属(れいぞく)路線からの小さな軌道修し正(きどうしゅうせい)が将来に大きな違いを生み出すと私は確信している。

 最後に、師である副島隆彦(そえじまたかひこ)先生には推薦の言葉をいただきました。ありがとうございます。本書の執筆にあたり、フリーの編集者の大久保龍也氏、ビジネス社の中澤直樹氏には企画の段階から大変お世話になりました。特に大久保氏には、私のデビュー作、二作目を担当していただいて以来、久しぶりにタッグを組むことができたことは、私にとって光栄なことでした。記して感謝します。

二〇二五年一〇月

古村治彦(ふるむらはるひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体


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