古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:イーロン・マスク

 古村治彦です。

 イーロン・マスクが創業し、宇宙開発事業で急成長を遂げているスペースXが2026年6月12日新規株式公開(IPO)を行い、1株135ドルで公開となり、成功を収めたという報道がなされた。その後は価格が下落し、135ドルを割り込むところまで来ている。スペースXIPO成功によって、「宇宙資本主義(Space Capitalism)」の時代がやってくるという楽観論が出ている。宇宙開発が新たなフロンティアということだ。

 私たちが新しいフロンティアに向かうにはあまりにも技術が追いついていない。イーロン・マスクは火星移住を目標として掲げているが、半世紀前にはできていた次への着陸にまで四苦八苦しているようではどうしようもない。なぜ月に人類を送るという技術がこの期間に発達せずに退化してしまったのか、科学というのは不思議なものだ。どうしてだろう。もともと行っていなかったのではないか。このことにこれ以上は触れないが、月にさえいけないのにどうやって火星まで行くというのだろうか。

 月での資源開発だと言ってみても、それまでにどれだけの時間とお金がかかるだろうか。月に行けば資源が掘り放題というイメージで語られているが、果たしてそうだろうか。月についてどれだけのことが分かっているのか。これから進む宇宙開発は衛星を膨大な数打ち上げて、通信インフラにするくらいのことであろう。それもまた大変なことであろうが、月に人類が行く、火星に人類が移住するなどと比べればあまりにも小さな一歩ではないか(月には既に人類が一歩を刻んでいるとされているが)。地球と月の距離は約34万キロであるが、私たちが行けるのはせいぜい十キロのものだ。
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 宇宙開発は現在、民間主導、アメリカ主導になっている。スペースXとNASAがやっているのだから当然だ。中国やロシアも進めているが、こちらは国家主導ということになる。スペースXは、衛星を打ち上げ、国際ステーションに物資を運ぶことでアメリカ政府からお金をもらっている。もちろん民間企業とのビジネスをやっているだろうが、どれほどの規模になるだろうか。

 太陽系の惑星を植民地にして人類が拡大していくと言うのは、様々なSF小説やスペースオペラのモチーフになっている。そのような夢を持つのは楽しいことだが、現実は厳しい。中世以降のヨーロッパ諸国による植民地獲得競争の端緒となった大航海時代(Great Navigation)で考えてみても、この時代には数百名を収容可能の帆船があり(中国・明時代の鄭和の大遠征では数千人規模であった)、大遠征は可能であった。しかし、現在の私たちは手漕ぎボートで未知の大海に漕ぎ出す程度のことでしかない。せめてヨットであればまだしも、その程度では夢を見る段階にすら達していない。宇宙を利用してのインフラ整備が関の山である。「宇宙資本主義」などという言葉に踊らされるのは危険である。

(貼り付けはじめ)

イーロン・マスクと宇宙資本主義の台頭(Elon Musk and the Rise of Space Capitalism

-ヨーロッパ、中国、インドが苦戦する一方でアメリカは先行している。

C・ラジャ・モハン筆

2026年6月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/17/elon-musk-spacex-ipo-space-commercial-satellites-india-china/?tpcc=recirc_latest062921

ウォール街におけるスペースXの新規株式公開(IPO)は、取引初日の終了時点でスペースXの評価額が2兆1000億ドルに達するという驚異的な成功を収めたが、これは宇宙経済(the space economy)の将来に対する投資家の信頼の表れと言える。

スペースXを率いるイーロン・マスクが語る、宇宙への人工知能(AI)データセンター建設や火星の植民地化といった構想は、一見すると空想的に映るかもしれない。「人類が複数の惑星で生活できるようにするためのシステムや技術を構築し・・・意識の光を星々へと広げる」ためにスペースXを活用するという彼の考えは確かに現実離れしたものだ。しかしマスクは、宇宙には巨額の利益を生み出す可能性があると投資家に確信させた。そうすることでマスクは、現代資本主義が地球軌道上、さらにはその先へと急速に拡大していく時代の到来を告げた。彼が世界初の「紙上の(資産評価額ベースでの)」1兆ドル長者になったことよりも重要なのは、資本主義が宇宙にその足跡を刻もうとしているという事実だろう。

1950年代に幕を開けて以来、宇宙時代は長らく政府の独占領域だった。ロケット、人工衛星、スペースシャトル、軌道上の宇宙ステーションの建設や惑星探査といった活動は、国家主導で進められてきたのだ。冷戦期において、宇宙活動はワシントンとモスクワの間で繰り広げられたあらゆる分野にわたる競争の中で、科学的成果と国家の威信を象徴するものだった。空を目指すことはまた、軍事目的での宇宙利用や、新たなフロンティア(開拓地)における主導権の確保を意味するものでもあった。宇宙開発においてアメリカやソ連に追いつくことは、中堅国や野心的な国々にとって国家的な悲願となったのです。

ミサイル能力や宇宙空間におけるプレゼンスが、ワシントンとモスクワの間の大規模な核軍拡競争における重要な要素となる中、米ソ両国は1967年に宇宙条約(Outer Space TreatyOST)を締結し、この新たな領域の国際的な管理に関する一定のルールを定めた。この条約は、宇宙への核兵器配備の禁止、天体に対する国家による領有権主張の禁止、宇宙活動に対する政府の責任の明記などを規定した。さらに、発展途上国からの圧力もあり、宇宙は「全人類の領域(province of all mankind)」であり、平和目的でのみ利用されなければならないと宣言した。

そうした世界は、今や私たちの目の前で消え去ろうとしている。それは必然的なことだった。1960年代の世界は、すでに遠い過去のものとなっているからだ。宇宙条約(OST)が宇宙活動の責任を政府に負わせたのは、単に宇宙へのアクセスに伴う広範な課題を認識してのことだった。しかし、20世紀から21世紀にかけて民間企業の技術力が飛躍的に向上したことで、今や民間プレイヤーが極めて重要な役割を担うようになっている。

実際、民間企業こそが技術革新、投資、そして事業拡大の主要な原動力となりつつある。活動の重心は政府から、起業家、投資家、そして企業(とりわけアメリカ企業)へと移行している。

この変革を最も象徴する企業がスペースXだ。マスクはわずか20年足らずの間に、政府や既存の航空宇宙企業が半世紀にわたって苦闘しても成し遂げられなかったことを実現した。ロケットの低コスト化や再利用化といった技術革新により、スペースXは軌道投入にかかる費用を劇的に引き下げた。かつては政府の特権であった宇宙へのアクセスは、今や商業サーヴィスへと変わった。

その結果、スペースXは世界のロケット打ち上げ事業を席巻するに至った。スペースXは2025年において、世界の全軌道打ち上げの約51%、アメリカの打ち上げの約85%を担っている。マスクが手掛ける「スターリンク(Starlink)」もまた、衛星通信市場を支配している。スターリンクは6月時点で約1万500基の衛星を軌道上に保有しており、最終的に4万2000基からなる衛星コンステレーション(衛星群)を構築すべく、さらに数千基を追加投入する計画を立てている。スターリンクを通じて、スペースXは軌道上に地球規模の通信ネットワークを構築した。政府、軍、企業、そして個人が、通信手段として民間所有の衛星コンステレーションにますます依存するようになっている。ロシアによるウクライナ侵攻の際、スターリンクの戦略的重要性が世界中に知れ渡ることとなった。マスクは商業・軍事通信の枠を超え、宇宙空間へのデータセンター建設を構想しており、さらに100万基もの衛星を打ち上げる計画についても言及している。

これは劇的な転換だ。何世紀にもわたり、インフラを構築するのは国家であり、民間プレイヤーたちはそれを利用する側だった。しかし今や、国家が依存する宇宙インフラを民間主体が構築するケースが増加している。スペースXだけではない。アマゾンの「プロジェクト・カイパー(Project Kuiper)」(最近「アマゾン・レオ(Amazon Leo)」と改称)も、競合する衛星ネットワークの構築を目指している。他にも、月着陸船、小惑星採掘技術、軌道上サーヴィス・システム、商業宇宙ステーションなどを開発する新興企業が次々と登場している。ユーテルサットのワンウェブ(OneWeb)は、民間宇宙インフラのもう1つの事例であり、アメリカ以外の企業によるものとしては数少ない例の1つだ。

新たなフロンティアが開拓されるにつれ、法的な統治のあり方が必然的に問われるようになる。財産権の定義や紛争解決の仕組みが極めて重要となる。かつてヨーロッパ諸国による海洋進出の時代には、主権の主張、航行の自由、遠隔地との貿易、そして戦略的競争をめぐって議論が巻き起こった。宇宙も今や同様の局面を迎えつつあり、その状況は宇宙条約(OST)が掲げる崇高な理念に影を落としている。

宇宙条約は、天体領域に対する主権の主張を禁じている。しかし、月や小惑星、その他の天体から採取された資源の所有権については、驚くほど何も規定していない。企業は、自ら採取した月面の鉱物を所有できるのか? 施設の周囲に排他的な活動区域を設定できるのか? あるいは、ある程度の財産権保護があって初めて価値が成立するようなインフラを構築できるのか? 多くの国や企業が月の南極を目指して競い合う中、宇宙条約の下での平等の原則を掲げつつも、実際には先行者が後発者に対して優位に立つことになるのだろうか? こうした問いは、つい最近までは主に理論上の議論に過ぎなかったが、今日では現実的な課題となりつつある。

アメリカはすでに、企業が宇宙から採取した資源を所有する権利を認める方向へと動いている。現在のアメリカ国内法では、民間プレイヤーたちが(小惑星や月などから)回収した「宇宙資源(space resources)」を採取し所有することが明示的に認められているが、その一方で、アメリカは天体そのものに対する主権や領有権の主張を明確に否定し、こうした措置が宇宙条約と整合するものでなければならないと強調している。

アメリカ主導で数十カ国が署名した「アルテミス合意(Artemis Accords)」は、将来の月面活動に向けた原則の確立を目指すものだ。国際的な専門家の一部は、アメリカのこのアプローチ、特に「資源の採取は、それ自体が直ちに国家による領有(専有)を構成するものではない」とする主張については、依然として議論の余地があると指摘している。

主要な宇宙開発国もアメリカの動きに追随し始めているが、民間部門の参画規模やその活発さには大きなばらつきがある。いずれの国も、アメリカの持つような厚みのある資本市場や、民間部門における技術革新エコシステム(生態系)を有してはいない。

中国は2010年代半ばの宇宙政策改革以来、急速に拡大する商業エコシステムを構築してきたが、民間企業は共産党・国家による強力な指導の下で活動している。ヨーロッパは複数の資金提供手段を通じて宇宙分野での起業を積極的に推進しているが、依然として大きく遅れを取っている。日本は、法整備の進展に伴うスタートアップの参入により、民間のロケット打ち上げや衛星サーヴィスの育成を開始した。インドは宇宙分野を自由化し、活気あるスタートアップ環境の台頭を促したが、民間資本のさらなる拡大に向けた正式な法的枠組みの整備には至っていない。ロシアは依然として国営企業が支配的な地位を占めているが、民間部門に対して徐々に門戸を開きつつある。

ルクセンブルクとアラブ首長国連邦(UAE)という、小規模ながら戦略的な野心を持つ2つの国家は宇宙における民間企業を明確に優遇する国内法制度を迅速に整備した。金融・企業活動のハブとして国力以上の存在感を示すルクセンブルクは、2017年に、宇宙で採掘された資源に対する企業の所有権を認める法律を成立させた。ルクセンブルクはこれを、公的投資ファンド、規制の明確化、そして外交的働きかけによって後押しした。その結果、小惑星採掘や衛星サーヴィスを手掛ける企業群がルクセンブルクに移転し、この小国は世界の宇宙経済における意外な重要拠点へと変貌を遂げた。

UAEも同様の道を進んでいる。2019年に制定されたUAEの宇宙法は、民間事業者にとって自由度の高い環境を提供し、外国からの投資を奨励するとともに、UAEを商業宇宙活動の地域的ハブとして位置づけている。

 

宇宙資本主義がグローバル化するにつれ、宇宙条約の曖昧さがより鮮明に浮き彫りになるだろう。民間資本が新たな領域に参入するには、明確な財産権が必要となる。しかし、まさにこの点に地政学的な要素が絡んでくる。宇宙における財産権をめぐる議論は、単なる法的な問題にとどまらず、急速に戦略的な問題へと変化しつつある。アメリカとそのパートナー諸国は、「アルテミス合意」を中心とした枠組みを構築している。一方、中国はロシアやその他のパートナーと緊密に連携し、「国際月面研究ステーション(International Lunar Research StationILRS)」計画に関連した独自の枠組みを推進している。専門的な用語の背後には、次なるフロンティアのルールを誰が策定するのかという、より大きな競争が存在している。

宇宙資本主義の台頭によって国家の役割がなくなる訳ではない。それどころか、海洋分野や電波周波数帯の管理と同様に、何らかの合意されたルールを策定する政府の役割が世界的に求められることになるだろう。民間資本が宇宙へと進出する中、新たなルールが合意される前に優位な地位を確保しようと、国家間で激しい競争が繰り広げられることは避けられないだろう。

宇宙に対する国家の独占体制は終わりを迎えつつあるかもしれないが、各国政府は自国の企業を支援し、支配的な地位を確立しようとし続けるはずだ。マスクが率いるスペースXの株式公開(IPO)は、宇宙をめぐる人類の壮大な競争において、新たな大きな一歩となる可能性がある。

C・ラジャ・モハン:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。OP・ジンダル・グローバル大学モトワニ・ジャデジャ・アメリカ研究・研究所の特別教授、戦略・防衛研究評議会(the Council for Strategic and Defense ResearchCSDR)におけるアジアの地政学担当コリア・ファウンデーション寄贈学科長を務めるほか、インド国家安全保障諮問委員会の元メンバーでもある。Xアカウント:@MohanCRaja

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 先月、スイスのハッカーが、ピーター・ティールが中心となって組織されている「ダイアログ」という組織について情報を入手し、公開した。シリコンヴァレーの中心的な人物であるティールが秘密組織の情報を抜かれるというのは迂闊(うかつ)であり、何をやっているんだということになるが、この組織にはイーロン・マスクやエリック・シュミットなどの大富豪やドナルド・トランプ政権の高官であるスコット・ベセント財務長官やダン・ドリスコル陸軍長官が入っていることが明らかになった。また、集まって討論している内容が「第三次世界大戦への備え」から「セックスライフ」まで多岐にわたっているということが明らかになった。金持ちたちはいろんなことをしているのだなという感想になるが、私が注目したのはダン・ドリスコル陸軍長官が入っていることだ。

 拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社、2025年12月)で明らかにしたように、ダン・ドリスコルはJD・ヴァンス副大統領の親友であり、イェール大学法科大学院時代の学友で、側近だ。ヴァンスが連邦上院議員を務めた時期には補佐官となった。私はヴァンスが2028年の大統領選挙で勝利した暁には、かなり高い地位で政権入りをすると見ている。

 もちろん、JD・ヴァンスの最大の後ろ盾はピーター・ティールであり、イーロン・マスクだ。ヴァンスとティールの関係については複数の拙著やこのブログでもさんざん書いてきたので繰り返すことはしない。ヴァンスは共和党の大統領選挙候補としては最有力であり、ドナルド・トランプ大統領の後継者である。マルコ・ルビオ国務長官も後継候補として名前が挙がっているが、ヴァンスを抜き去って候補者となることはかなり難しいだろう。ティールは様々な形でヴァンスの大統領選挙に向けた準備を行っていると見るべきだろう。その一環がこの秘密組織「ダイアログ」ということになる。

(貼り付けはじめ)

億万長者ピーター・ティールの秘密結社「ダイアログ」について分かっていること-参加者たちも含めての紹介(What We Know About Billionaire Peter Thiel’s Secret 'Dialog’ Society—Including Who’s Involved

メアリー・ウィットフィル・ローロフス、筆

2026年6月18日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/maryroeloffs/2026/06/18/what-we-know-about-billionaire-peter-thiels-secret-dialog-society-including-whos-involved/

●最重要(TOPLINE

ペイパル創業者の億万長者ピーター・ティールが創設した極秘組織(ultra-secret society)「ダイアログ(Dialog)」に関連するとされる機密情報が流出し、数百人もの世界的リーダー、ビジネスエグゼクティヴ、億万長者が所属するこのエリート集団の内部構造が明らかになった。

●主要な諸事実(KEYFACTS

・今週、『ワイアード』誌が調査・公開した文書によると、ティールと投資家のオーレン・ホフマンは2006年にダイアログを共同設立した。これは、テクノロジー、政治、学術、金融、政府など、様々な分野の影響力を持つ人々による、招待制の非公開「超党派」ネットワーク(invitation-only and “bipartisan” network of influential people)である。

・ダイアログは、異なる分野やイデオロギー的背景を持つリーダーたちが非公式な交流を行う場であると自称しており、アリゾナ州のリッツ・カールトン・ダヴ・マウンテン、カリフォルニア州サンタバーバラのリッツ・カールトン、ヴェネツィアのサン・クレメンテ・パレスといった豪華な場所で、少なくとも年に一度は対面での会合を開催している。

・この会合では、参加者(発言内容は一切外部に漏らさないと約束されている)向けに、モデレーター付きのセッションが用意されており、「お金で幸せは買えるのか?」「核兵器の復活」「第三次世界大戦への備え」「あなたのセックスライフはどうだ?」といったタイトルが付けられている。

スイスのハクティヴィスト(ハッカー兼アクティヴィスト)であるマイア・アーソン・クリメウによって最初に暴露された情報漏洩により、グループのセキュリティ対策が不十分なウェブサイト(dialog.org)の公開コード内に登録記録が隠蔽されていたことが明らかになった。ダイアログは、参加者一人ひとりの会員ステータス、参加した合宿、経歴、政治的所属、居住地、そしてログイン認証情報として機能するプライヴェート・アクセス・トークン(private access token)を記録している。

ダイアログは、政治家やビジネス界のエリートが非公式に集まるビルダーバーグ会議(Bilderberg)とシリコンヴァレーのサロン(Silicon Valley salon)を合わせたような組織だと評されている。

●誰がピーター・ティールの秘密結社「ダイアログ」のメンバーになっているのか?(WHO ARE THE MEMBERS OF PETER THIEL’S SECRET ‘DIALOG’ SOCIETY?

登録記録には、ダイアログの現役メンバー、リトリートに参加した人、セッションを主催した人、今年初めて参加予定の人(ワイアード誌によると、イヴェントは8月にアイルランドで開催予定)などが記載されているようだ。流出したリストには、現職のトランプ政権高官、米連邦上院議員2名、いわゆる「ペイパル・マフィア(PayPal Mafia)」(1990年代後半から2000年代初頭にかけてペイパルで働いていた創業者や初期従業員)6名、元中東情報機関トップ、現職の駐米大使、プライヴェートエクイティの億万長者、テレビ俳優、ベストセラー作家などが名を連ねている。スイス人ハッカーが名指しした人物には、以下の人物が含まれる。

・アレクサス・グリンケウィッチ大将・(NATO欧州連合軍最高司令官)(General Alexus Grynkewich, NATO's supreme allied commander Europe

・スコット・ベセント財務長官(Treasury secretary Scott Bessent

・ダン・ドリスコル陸軍長官(Army secretary Dan Driscoll

・ハリー・ホフマン麻薬取締局局長首席補佐官代理(Hallie Hoffman, acting chief of staff of the Drug Enforcement Administration

・テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)(Sen. Ted Cruz (R-Texas)

・コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)(Sen. Cory Booker (D-N.J.)

・ジム・ハイムズ連邦下院議員(コネティカット州選出、民主党)(Rep. Jim Himes (D-Conn)

・ウェス・ムーア・メリーランド知事(Wes Moore, Maryland governor

・ジャレッド・ポリス・コロラド州知事(Jared Polis, Colorado governor

・トム・ルー・グーグル・ディープマインド法務顧問兼ガヴァナンス部門責任者(Tom Lue, general counsel and head of governance at Google DeepMind

・ランディ・クロスナー元連邦準備制度理事会理事(Randy Kroszner, a former governor of the Federal Reserve

・ジョナサン・グリーンブラット名誉棄損防止同盟CEOJonathan Greenblatt, chief executive of the Anti-Defamation League

・ピーター・ゴットラー・ケイトー研究所会長(Peter Goettler, president of the Cato Institute

・ライアン・ストアーズ・チャールズ・コーク財団最高責任者(Ryan Stowers, executive director of the Charles Koch Foundation

・ロジャー・マイアーソン(ノーベル賞受賞経済学者)(Roger Myerson, Nobel laureate economist

・ジャレッド・クシュナー(ドナルド・トランプ大統領の義理の息子)(Jared Kushner, President Donald Trump’s son-in-law

・ニール・モハンYouTube CEONeal Mohan, YouTube CEO

・スクーター・ブラウン(音楽マネジャー)(Scooter Braun, Music manager

・エズラ・ケイン(政治コメンテイター)(Ezra Klein, political commentator

・スアド・メケネット『ワシントン・ポスト』紙記者(Souad Mekhennet, Washington Post reporter

・ジョセフ・ゴードン=レヴィット(俳優)(Joseph Gordon-Levitt, actor

・ソフィア・ブッシュ(女優)(Sophia Bush, actress

・リック・ウォーレン福音派牧師(Rick Warren, evangelical pastor

WHICH BILLIONAIRES WERE NAMED IN THE DIALOG LEAK?

・イーロン・マスク(1兆3000億ドル、約210兆円)(Elon Musk ($1.3 trillion)):スペースX、テスラ、「X」、ペイパル・マフィア

・エリック・シュミット(401億ドル、約6兆5000億円)(Eric Schmidt ($40.1 billion)):グーグル元CEO,グーグルの持株会者アルファベット元会長、現技術顧問

・ピーター・ティール(278億ドル、約4兆5000億円)Peter Thiel ($27.8 billion):パランティア、ペイパル・マフィア

・ヘンリー・クラヴィス(122億ドル、約2兆円)(Henry Kravis ($12.2 billion)):投資会社KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)共同創業者

・マルコス・ガルペリン(68億ドル、約1兆円)(Marcos Galperin ($6.8 billion)):テクノロジー起業家、メルカド・リブレの共同創業者

・マイク・キャノン=ブルックス(77億ドル、約1兆3000億円)(Mike Cannon-Brookes ($7.7 billion)):ソフトウェア会社アトラシアン共同創業者兼CEO

・スコット・クック(44億ドル、約7100億円)(Scott Cook ($4.4 billion)):大手金融・財務ソフトウェア会社インテュイット共同創業者

・バリー・スターンリヒト(31億ドル、約5000億円)(Barry Sternlicht ($3.1 billion)):投資ファンドスターウッド・キャピタル・グループ共同創設者、会長、CEO

・ニコラス・バーグルエン(29億ドル、約4700億円)(Nicolas Berggruen ($2.9 billion)):非公開投資会社ベルグルーエン・ホールディングス創設者、社長

・ジョン・アーノルド(28億ドル、約4500億円)(John Arnold ($2.8 billion)):ヘッジファンド、ケンタウルス・アドバイザーズ創業者

・ジョー・ロンズデール(28億ドル、約4500億円)(Joe Lonsdale ($2.8 billion)):パランティア共同創業者

・リード・ホフマン(27億ドル、約4350億円)(Reid Hoffman ($2.7 billion)):リンクトイン共同創業者、ペイパル・マフィア

●驚きの事実(SURPRISING FACT

別のウェブサイトである「dating.dialog.org」は、関心のあるグループメンバー同士の恋愛関係のマッチングを目的としている。ダイアログの参加登録フォームでは、登録者たちに「愛を探していますか?」と尋ね、「特別な人々のための有意義なつながり」を見つけると約束している。

●余談(TANGENT

ダイアログはデジタル上の痕跡をほとんど残しておらず、メンバーも公には沈黙を守っているが、過去にはグループの様子が少しだけ明らかになったことがある。昨年、『アクシオス』誌は、リーダーたちがワシントンDC郊外にダイアログのキャンパスを購入しようとしていると報じた。統計学者のアンドリュー・ゲルマンは、2022年にダイアログからの招待状を自身のブログに掲載し、それを皮肉たっぷりに紹介した。メールのスクリーンショットには、カリフォルニアで開催されるイヴェントの参加費が1万6846ドルと記載されていたが、ゲルマンが送られてきた割引コードを使用したことで70%割引になったことが示されていた。2014年にユタ州サンダンス・リゾートで開催されたダイアログ会合への招待状は、ハーヴァード大学の物理学者リサ・ランドールがジェフリー・エプスタインに「これは行く価値があるか?」と尋ねた招待状を転送した後、エプスタイン文書を通じて公開された。エプスタインは「サンダンスはいいところだ。行くべき」と返信した。イギリスの金融家イアン・オズボーンも2014年の招待状をエプスタインに転送し、「同じようなものだ。ピーターは出席すらしない。彼には、自分の名前を使うのを止めるように伝えておく」と書き添えた。

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リーク情報でピーター・ティールの秘密結社「ダイアログ」のメンバーが明らかになる(Leak Exposes Members of Peter Thiel’s Secretive ‘Dialog’ Society

-世界のエリート200人以上が、カルト構築やセックスに関するパネルディスカッションから第三次世界大戦への備えまで、多岐にわたる議題を扱う会合に登録していた。関連アプリではマッチング(matchmaking)も提供されている。

デル・キャメロン、ユリア・アルマゾヴァ筆

2026年6月16日

『ワイアード』誌

https://www.wired.com/story/leak-exposes-members-of-peter-thiels-secretive-dialog-society/

アメリカの政治、金融、テクノロジーの各分野の有力者で構成される秘密結社の内部記録が大量にオンライン上に流出したこと(trove)をワイアード誌が確認した。流出した記録には、イヴェント参加者の名前や、秘密保持を約束されていたはずの機密性の高い個人情報が含まれている。

「ダイアログ(Dialog)」と呼ばれるこの団体は、億万長者のテクノロジー投資家ピーター・ティールが2006年に共同設立した、招待制の非公開組織(a private, invitation-only organization)である。アメリカ政府関係者、外国政府関係者、シリコンヴァレーの経営幹部たちが、非公開の年次会合に集まる。ダイアログは20年間、会員名簿の公表を拒否してきた。

ウェブサイトのコード内に存在していた名簿を最初に明らかにしたのは、スイスのハクティビストであるマイア・アーソン・クリムだ。アメリカ政府の飛行禁止リストの暴露や、監視カメラ会社ヴェルカダ(Verkada)へのハッキングで知られるクリムは、匿名の情報提供によって名簿が流出したとワイアードに語っている。ワイアードは独自にその内容を検証した。

●参加者が秘密にされる「言論の自由」再移行会議(The ‘Free Speech’ Remigration Convention Where the Attendees Are Kept Secret

ワイアード誌は、情報提供者からダイアログの2026年会合の登録者リストを入手した。このリストには222名の名前が記載されており、各登録者の会員ステータスと参加者タイプ(「アクティヴメンバー」と「ゲスト」を含む)が記録されている。会合は8月12日から16日まで、アイルランドのダブリン近郊の会場で開催される予定だ。

同じデータには、非公開セッションのプログラムも記載されている。「お金で幸せは買えるのか?」「核兵器の復活」「第三次世界大戦への備え」「戦場技術」「あなたのセックスライフは?」といったセッションが含まれる。その他にも、キリスト教系ソーシャルネットワーキングサイト「Pray.com」の創設者が司会を務める「カルトの構築」や元ホワイトハウス国家安全保障担当官が運営する「パーティーの構築」といった講演も予定されている。

これらの経営幹部は、それぞれの業界を監督するアメリカの高官たちと肩を並べている。ダイアログの会長であるオーレン・ホフマンは、位置情報データ仲介会社セイフグラフ(SafeGraph)と本人確認サービス会社ライヴランプ(LiveRamp)の創業者であり、これらは消費者データ経済における最も重要なサプライヤー2社である。ホフマンは、金融データに関する規則を策定する財務省のスコット・ベセント財務長官、そして連邦取引委員会(FTC)とそのデータプライバシー権限を監督する連邦上院商務・科学・運輸委員会のテッド・クルーズ委員長と並んで名簿に掲載されている。

アメリカ移民税関執行局(ICE)の事件管理や国防総省および情報機関のデータ融合にソフトウェアを提供するパランティア(Palantir)の共同創業者ジョー・ロンズデールも、陸軍長官ダン・ドリスコル、そして、パランティアが契約する機関を監督する連邦下院情報委員会の筆頭委員であるジム・ハイムズ連邦下院議員と同じ名簿に掲載されている。

この記事で名前が挙がった人物はいずれもコメントの要請に応じなかった。 リンクトイン(LinkedIn)のプロフィールでダイアログのエグゼクティブディレクターを名乗り、自己啓発書『大人になる方法(How to Be a Grown-Up)』の著者でもあるラフィ・グリンバーグは、コメントの要請に応じなかった。

登録記録からは、ダイアログの会員だけでなく、参加者も明らかになっているようだ。流出した記録によると、2026年の会合に登録した222人のうち、87人が初参加とされている。中には10年以上前から参加している人もおり、中には20年前の設立当初からの参加者もいる。グリンケウィッチを含め、登録者の中に政府機関のメールアドレスを使用している者はいなかった。全員が個人または企業のメールアドレスで登録しており、参加記録は公文書公開法の対象となるメールシステムの対象外となっている。

肩書きや役職以上に、この名簿を結びつけているのは、人工知能、長寿、そして近未来への共通の関心である。登録フォームで未来予測を尋ねられたところ、登録者たちは繰り返し同じテーマに言及した。それは、AIが数年以内に仕事、戦争、教育、そして信仰のあり方を根本的に変えるだろうというものだ。大規模な労働力喪失と労働組合や政府プログラムへの回帰を予測する人もいれば、「AIの冬」、データセンターを標的とした国内テロ、被告人が公選弁護人ではなくAI弁護士を選ぶようになること、あるいはAIによる混乱が宗教復興を引き起こすことを予測する人もいた。

「社会の退廃(societal degeneration)は加速し続けるだろう」とある人は予測した。

メンバーは他にも、「遊園地の鏡の組み立て」「アクセントの真似」「バックカントリースキー」「都市探検」「現実の本質を探求する瞑想的かつサイケデリックな探求」といった特技を挙げている。あるメンバーは「思いやりと実存的不安」、別のメンバーは「ディナーパーティー、秘密を守ること、誕生日を覚えること」を挙げている。おすすめの本は、マルクス・アウレリウスやミラン・クンデラといった古典的名著や最適化志向の作品に偏っており、アニー・デュークの『シンキング・イン・ベッツ(Thinking in Bets)』、ピーター・アッティアの『アウトライヴ(Outlive)』、そして少なくとも一人の参加者はティール自身の『ゼロ・トゥ・ワン(Zero to One)』を挙げている。

ダイアログはマッチングサーヴィスも提供している。参加登録フォームでは、「恋人を探しているか」を尋ね、「独身男性」「独身女性」「その他」の回答者を「今後のマッチング」に含めることができる。別のサイト「dating.dialog.org」では、「特別な人々のための有意義なつながり」を謳うアプリを提供している。

このフォームでは、登録者の「政治的傾向(political leaning)」など、機密性の高い情報も収集される。ダイアログは、これらの情報は「アプリ内や他の参加者と決して共有されない」と約束している。しかし、このデータとマッチング結果がリークによって明らかになった。

記録は商用データベースであるAirtableに保存されています。Dialog社は、各参加者について、会員ステータス、参加したすべてのリトリート、経歴、居住地、そしてプライヴェート・アクセス・トークンを記録している。ワイアード誌は、ログイン認証情報として機能するトークン、およびそれらを含む個人アカウントリンクを公開していない。

リークされた登録者リストには、公開されている113名の名簿には記載されていない著名人も含まれている。例えば、元連邦準備制度理事会理事で現在はイングランド銀行金融政策委員会委員を務めるランディ・クロスナー、元麻薬取締局法務顧問兼首席補佐官代理のハリー・ホフマン、反名誉毀損連盟(ADL)最高経営責任者のジョナサン・グリーンブラット、ケイトー研究所会長のピーター・ゴットラーなどだ。チャールズ・コーク財団の事務局長であるライアン・ストワーズと、シカゴ大学のノーベル経済学賞受賞者であるロジャー・マイアーソンも含まれている。

また、グーグルおよびグーグル・ディープマインドの幹部数名も名を連ねており、その中にはグループ・ディープマインドの最先端AI部門のグローバル担当責任者であるトム・ルーや、『ワシントン・ポスト』紙の元国家安全保障担当記者であるジャーナリストのスアド・メケネットも含まれている(彼女は「ユリシーズ・ブッククラブ」というイヴェントを主催していると記載されている)。

その他の会員には、ヘッジファンドやプライヴェートエクイティの億万長者、現職および元外国政府高官、テレビ俳優、ベストセラー作家、宗教指導者などが名を連ねている。

ダイアログが登録記録を保管していたオンラインデータベースに公開していた複数の内部文書の1つは、イヴェントのモデレーター向けガイドで、参加者に対し、全ての発言は「非公式(off the record)」であり、コメントは簡潔かつ「露骨でない(nonobvious)」ように注意するよう促している。また、連邦上院議員、要人、大物実業家が集まる場で「地位を誇示しない(avoid status signaling)」ために、簡潔な自己紹介を心がけるよう指導している。

しかし、このグループが課していた規律は、ウェブサイトには適用されていなかった。このディレクトリは、ほぼ空のページである「dialog.org」のコードに埋め込まれており、ページのソースコードを閲覧した全ての訪問者に表示されていた。別のダイアログのページ(app.dialog.org)には、ダブリン郊外で開催される「Dialog Global 2026」のサインイン画面が表示される。このページでは、メールアドレスまたはグーグルアカウントでのサインインが促されるが、利用規約、アプリケーションが会員限定である旨の通知、招待状が必要である旨の表示は一切ない。

ダイアログは設立以来、ほとんど公に活動していない。年に少なくとも1回は会合を開催しており、座席指定制、モデレーター付きのセッション、そして発言内容の出典を明記しないというルールが設けられている。ワシントンDC近郊にキャンパスを建設する計画を最初に報じたアクシオス誌によると、過去の会合はアリゾナ州のリッツ・カールトン・ダヴ・マウンテンやイタリアのヴェネツィアにあるサン・クレメンテ宮殿で開催された。これは、西側諸国の政財界のエリートが非公式に集まるビルダーバーグ会議のテクノロジー業界版に例えられている。

記録によると、参加者は約100名だった。ワイアード誌が確認した2026年の登録者リストには222名の名前が載っている。公に知られることは稀だ。統計学者のアンドリュー・ゲルマンは2022年にダイアログの招待状を自身のブログに掲載し、その形式と1万6000ドルを超える登録料について説明した。2014年の会合は今年、金融家のジェフリー・エプスタインに転送された招待状が米司法省によるエプスタイン文書の公開で明らかになったことで再び注目を集めた。添付された過去の参加者リストには「ジェフ・エプスタイン」という人物の名前があるが、実際には故人となった性的人身売買犯ではなく、オラクルの元CFOである。

・更新:2026年6月16日午後5時47分(アメリカ東部標準時):ワイアードはこの記事を更新し、ジェフ・エプスタインという名前の2名の人物を混同していた点を訂正した。また、ダイアログの担当者から指摘されたセキュリティ上の懸念に対応するため、若干の修正も行った。

・更新:2026年6月18日午後2時17分(アメリカ東部標準時):この記事の掲載後、『ワシントン・ポスト』紙は、スアド・メケネットが同紙の元従業員であることを明らかにした。

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(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体』(ビジネス社、2025年11月)では、新・軍産複合体(パランティア社、スペースX社、アンドゥリル社)について詳しく書いた。現在の第二次ドナルド・トランプ政権における重要人物である、イーロン・マスクとJD・ヴァンス、パランティア社の創業者であるピーター・ティールの関係についても詳しく分析した。

 軍産複合体という言葉は1961年にドワイト・アイゼンハワー大統領が退任する際の演説の中で使った言葉である。政府と軍、企業が緊密な関係を築いて、お互いに巨額な利益を生み出す関係である。そのためには緊密な人脈が重要になってくる。私は、これまでの軍複合体の形成過程について分析を行い、20世紀の財界と政界の重要人物たちが協力してきたことを明らかにした。

 アメリカ空軍は、無名に近かった二つのドローン開発企業、カリフォルニア州コスタメサのアンドゥリル・インダストリーズとサンディエゴのジェネラル・アトミックスを選び、協調型戦闘機(CCA)のプロトタイプ製造を発注した。CCAはパイロット搭乗機と連携して高リスク任務を担う次世代無人機と位置付けられ、空軍は今後十年で少なくとも千機、1機能あたりの単価約三千万ドルを調達する計画だが、この重大なプロジェクトが大手メディアでほとんど取り上げられなかった一方で、両社の受注は従来の巨大防衛企業三社(ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン)を破り、既存の軍産複合体(military-industrial complexMIC)の支配構造を揺るがす可能性を示した。

新・軍産複合体についても同じ構図・図式となる。ピーター・ティールやイーロン・マスク、パルマー・ラッキーとJD・ヴァンス、更にアメリカ軍の文民幹部たちの緊密な協力関係があってこそ、新・軍産複合体は形成され、発展していく。現在は、これまでの巨大な軍事産業を中心とする古い軍産複合体が力を保持しているが、新・軍産複合体が追い上げている状況だ。アメリカ政治の大きな動きについては、これから更に研究・分析を深化させていきたい。
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ペンタゴン内部の秘密戦争がトランプ世界を分裂させる可能性(A Secret War Inside the Pentagon Could Divide the Trump Universe

-新たな軍産複合体が誕生しつつあり、その目標と利益追求者は既存のものとは大きく異なる可能性がある。

マイケル・クレア筆

2025年2月12日

『インクスティック・メディア』誌

https://inkstickmedia.com/a-secret-war-inside-the-pentagon-could-divide-the-trump-universe/
昨年4月、メディアの注目をほぼ浴びない中で、アメリカ空軍は無名のドローンメーカー2社、カリフォルニア州コスタメサのアンドゥリル・・インダストリーズとサンディエゴのジェネラル・アトミックス社を選定し、提案中の協調型戦闘機(Collaborative Combat AircraftCCA)のプロトタイプ版を製造させると発表した。CCAは将来の無人機で、パイロット搭乗機と共に高リスク戦闘任務に投入されることが想定されている。アメリカ空軍が今後10年間に、1機あたり約3000万ドル、少なくとも1000機の CCA を調達する予定であり、これは国防総省にとって最も費用のかかる新規プロジェクトの1つであることを考えると、この報道の少なさは驚くべきことだった。しかし、メディアが注目しなかったことはそれだけではない。CCA の契約を獲得したアンドゥリルとジェネラル・アトミックスは、アメリカ最大かつ最も強力な防衛関連企業3社、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンを打ち負かし、既存の軍産複合体(military-industrial complexMIC)の継続的な支配に深刻な脅威を与えている。

数十年にわたり、これら3社のような少数の巨大企業が国防総省の武器契約の大半を獲得し、毎年同じ航空機、艦船、ミサイルを生産しながら、株主たちに巨額の利益をもたらしてきた。しかし、シリコンヴァレーで誕生した、あるいはその破壊的技術革新(イノヴェイション)精神を取り入れた様々な新興企業が、収益性の高い国防総省の契約獲得をめぐり、既存企業に挑戦し始めている。この過程で、主流メディアではほとんど報じられていないが、画期的な動きが進行中だ。新たな軍産複合体が誕生しつつあり、既存のものとは全く異なる目標と利益享受者を持つ可能性がある。旧来の軍産複合体と新軍産複合体の間の避けられない戦いがどう展開するかは予測できないが、1つ確かなことがある。今後数年間で、それらが重大な政治的混乱(political turbulence)を引き起こすことは間違いない。

「軍産複合体」という概念、巨大防衛企業と連邦議会・軍部の有力者たちを結びつける存在は、1961年1月17日、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が連邦議会と国民に向けた退任演説で初めて提唱した。冷戦下のこの時代、強力な外国の脅威に対応するため、アイゼンハワー大統領は「私たちは巨大な恒久的な軍需産業を構築せざるを得なかった」と指摘した。しかし同時に、この言葉を初めて用いて、次のように続けた。「私たちは、軍産複合体が意図的か否かを問わず、不当な影響力を獲得することに対して警戒しなければならない。誤った権力の危険な台頭の可能性は存在し、今後も続くだろう」。

それ以降、軍産複合体の権力拡大をめぐる議論はアメリカ政界を揺るがし続けてきた。数多くの政治家や著名な公人たちは、ヴェトナム、カンボジア、ラオス、イラク、アフガニスタンなどにおける一連の破滅的な海外戦争へのアメリカの介入を、軍産複合体が政策決定に及ぼす不当な影響の結果として描いてきた。しかし、こうした主張や不満が、国防総省の兵器調達に対する軍産複合体の鉄壁の支配を緩めることに成功したことは一度もない。今年度の防衛予算は約8500億ドルと過去最高を記録し、うち1432億ドルが研究開発費、さらに1675億ドルが兵器調達費に充てられる。この3110億ドルの大半は巨大防衛企業に流れ込み、地球上の他の全ての国の防衛費総額を上回っている。

時間の経過とともに、数十億ドルの国防総省契約をめぐる競争は、軍産複合体のエコシステムを淘汰し、その結果、少数の大手産業巨人が支配的な地位を築くこととなった。2024年には、ロッキード・マーティン(防衛関連収益647億米ドル)、RTX(旧レイセオン、406億米ドル)、ノースロップ・グラマン(352億米ドル)、ゼネラル・ダイナミクス(337億米ドル)、ボーイング(327億米ドル)の5社だけが、国防総省の契約の大部分を占めた。(アンドゥリル社とジェネラル・アトミックス社は、契約獲得額トップ100社のリストにさえ登場していない)。

通常、これらの企業は、国防総省が毎年購入を続けている主要な兵器システムの主要、つまり「プライム」契約業者(“prime,” contractors)だ。たとえば、ロッキード・マーティンは、アメリカ空軍の最優先事項であるF-35ステルス戦闘機(運用では明らかに期待外れであることがしばしば証明されている航空機)のプライム契約業者だ。ノースロップ・グラマンはB21ステルス爆撃機を製造している。ボーイングはF-15EX戦闘機を生産し、ゼネラル・ダイナミクスは海軍のロサンゼルス級攻撃型潜水艦を製造している。このような「高額商品(Big-ticket)」は通常、長年にわたって大量に購入されるため、生産者は安定した利益を確保できる。こうしたシステムの初期購入が完了に近づくと、生産者は通常、同じ兵器の新ヴァージョンやアップグレイド版を開発すると同時に、ワシントンで強力なロビー活動を行い、連邦議会に新設計の資金提供を説得する。

長年にわたり、「ナショナル・プライオリティーズ・プロジェクト」や「フレンズ・コミッティ・オン・ナショナル・レギスレーション」といった非政府組織は、軍産複合体のロビー活動に抵抗し、軍事費を削減するよう連邦議員たちを勇敢に説得しようと試みてきたが、目立った成果は得られていない。しかし今、シリコンヴァレーのスタートアップ文化という新たな勢力が参入し、軍産複合体の構図は突如として劇的に変化しつつある。

昨年4月、軍産複合体の大手3社を凌駕し、協働型戦闘機の試作機製造契約を獲得した、目立たない2社のうちの1社であるアンドゥリル・インダストリーズについて考えてみよう。アンドゥリル(JRR・トールキンの『指輪物語』でアラゴルンが所持する剣にちなんで名付けられた)は、仮想現実(virtual-reality)ヘッドセットの設計者であるパルマー・ラッキーによって2017年に設立され、人工知能(AI)を新型兵器システムに組み込むことを目指している。この取り組みは、ファウンダーズ・ファンドのピーター・ティールや、防衛関連のスタートアップ企業パランティア(これも『ロード・オブ・ザ・リング』に由来する名前)の代表者など、シリコンヴァレーの著名な投資家たちの支援を受けた。

ラッキーとその仲間たちは当初から、従来の防衛関連企業を排除し、ハイテク新興企業のためのスペースを確保しようと努めてきた。この2社をはじめとする新興テクノロジー企業は、長年にわたり、多数の弁護士を擁し、政府の書類処理に精通した巨大防衛関連企業に有利になるように作成されていたため、国防総省との主要契約から締め出されることがしばしばあった。2016年には、パランティアは米陸軍が大規模なデータ処理契約の選定を拒否したとして訴訟を起こし、後に勝訴した。これにより、将来的に国防総省から契約を獲得する道が開かれた。

アンドゥリルは、その積極的な法的姿勢に加え、創業者であるパルマー・ラッキーの率直な意見表明によっても名声を得ている。他の企業幹部が国防総省の活動について議論する際には通常、言葉遣いを控えるのに対し、ラッキーは、将来の紛争で中国とロシアを圧倒するために必要だと考える先進技術への投資を犠牲にして、伝統的な防衛関連企業との協力を国防総省が根強く好んでいることを公然と批判した。

ラッキーは、そのような技術は民間技術産業でしか入手できないと主張した。「大手防衛関連請負業者は愛国心旺盛な人材を抱えているが、必要な技術を開発するためのソフトウェアの専門知識やビジネスモデルは持ち合わせていない」と、ラッキーとアンドゥリル社の幹部たちは2022年のミッションドキュメントで次のように主張した。「これらの企業は仕事が遅いが、優秀な[ソフトウェア]エンジニアはスピード重視だ。そして、敵よりも速く開発できるソフトウェアエンジニアの才能は、大手防衛関連企業ではなく、民間部門に存在するのだ」。

ラッキーは、軍の近代化(military modernization )の障害を克服するには、政府が契約規則を緩和し、防衛関連のスタートアップ企業やソフトウェア企業が国防総省と取引しやすくする必要があるとして次のように主張した。「スピードのある防衛企業が必要だ。それは単に願うだけでは実現しない。はるかに寛容な国防総省の政策によって、企業が動くようインセンティヴが与えられる場合にのみ実現する」。

こうした議論やティールのような重要人物の影響によって、アンドゥリル社は軍や国土安全保障省から小規模ながらも戦略的な契約を獲得し始めた。2019年には、日本と米国の基地にAIを活用した境界監視システムを設置する海兵隊の小規模契約を獲得した。1年後には、アメリカ・メキシコ国境に監視塔を建設する5年間2500万ドルの契約を税関・国境警備局Customs and Border ProtectionCBP)から獲得した。2020年9月には、同国境沿いにさらに監視塔を建設する3600万ドルの契約も税関・国境警備局から獲得した。

その後、より大きな契約が次々と舞い込むようになった。2023年2月には、国防総省がウクライナ軍への納入用にアンドゥリル社のアルティウス600監視・特攻ドローンの購入を開始し、昨年9月には陸軍が戦場監視作戦用にGhost-Xドローンを購入すると発表した。アンドゥリル社は現在、小型の偵察・攻撃ドローンの一斉発射を目的とした中型ドローン「エンタープライズ・テスト・ビークル」の試作機を開発するために空軍に選ばれた4社の1社でもある。

アンドゥリル社は国防総省から大型契約を獲得し、その成功は防衛関連スタートアップ企業の成長期待から利益を得る機会を模索する富裕層投資家の関心を集めている。2020年7月には、ティールのファウンダーズ・ファンドとシリコンヴァレーの著名投資家アンドリーセン・ホロウィッツから新たに2億ドルの投資を受け、企業価値は20億ドル近くにまで上昇した。1年後には、これらのヴェンチャーキャピタル企業やその他のヴェンチャーキャピタル企業からさらに4億5000万ドルを調達し、推定企業価値は45億ドル(2020年の2倍)に達した。それ以来、アンドゥリル社への資金流入は拡大しており、民間投資家による防衛関連スタートアップ企業の台頭を後押しし、その成長が現実のものとなった暁には利益を得ようとする動きが勢いを増している。

アンドゥリル社は、大型防衛契約の獲得と資本注入に成功しただけでなく、国防総省の多くの高官に対し、国防スタートアップ企業やテクノロジー企業のための余裕を創出するために、国防総省の契約業務改革の必要性を納得させることにも成功した。2023年8月28日、当時国防総省で2番目に高官だったキャスリーン・ヒックス国防副長官は、軍への先進兵器の配備を迅速化することを目的とした「レプリケーター」構想(the “Replicator” initiative,)の開始を発表した。

「(私たちの)予算編成と官僚的な手続きは遅く、煩雑で、複雑怪奇だ」とヒックスは認めた。こうした障害を克服するため、レプリケーター構想は煩雑な手続きを簡素化し、スタートアップ企業に直接契約を交付することで、最先端兵器の迅速な開発と供給を実現すると彼女は示唆した。「私たちの目標は技術革新の種を蒔き、火をつけ、燃え上がらせることだ」とヒックスは宣言した。

ヒックスが示唆したように、レプリケーター契約は確かに連続したバッチ、つまり「トランシェ」で交付される。昨年5月に発表された最初のトランシェには、エアロバイロンメント社製のスイッチブレード600カミカゼドローン(標的に衝突し、接触すると爆発することからこの名がつけられている)が含まれていた。アンドゥリル社は、11月13日に発表された第2回の資金提供で3つの勝利を収めた。国防総省によると、この資金提供には、陸軍のゴーストX監視ドローン購入、海兵隊のアルティウス600特攻ドローン取得、そして空軍のエンタープライズ・テスト・ビークル開発への資金が含まれており、アンドゥリル社は参加ヴェンダー4社のうちの1社である。

おそらく同様に重要なのは、ヒックスがパーマー・ラッキーの示した国防総省の調達改革の青写真を支持したことだろう。「レプリケーター構想は、技術革新への障壁を明らかに低減し、戦闘員に迅速に能力を提供している」とヒックスは11月に断言した。「私たちは従来型および非従来型の防衛・テクノロジー企業を含む幅広い企業に機会を創出している・・・そして、それを繰り返し実行できる能力を構築している」。

*
キャスリーン・ヒックス国防副長官は、ドナルド・トランプがホワイトハウスに復帰した2025年1月20日、多くの高官たちと同様に国防副長官を辞任した。新政権が軍事調達問題にどう取り組むかはまだ不明だが、イーロン・マスク氏やJD・ヴァンス副大統領など、トランプ政権の高官の多くはシリコンヴァレーとの繋がりが強く、レプリケーター構想のような政策を支持する可能性が高い。

先日国防長官に指名されたFOXニューズの元司会者ピート・ヘグゼスは兵器開発の経歴がなく、この件についてほとんど発言していない。しかし、トランプが副長官(そしてヒックス氏の後任)に選んだのは、サーベラス・キャピタル・マネジメントの最高投資責任者(CIO)として軍事スタートアップ企業ストラトローンチを買収した億万長者の投資家スティーヴン・A・ファインバーグだ。これは、彼がレプリケーター構想のようなプログラムの拡大を支持する可能性を示唆している。

ある意味、トランプ政権の今回の動きは、国防総省に関して言えば、これまでのワシントンのパターンに当てはまると言えるだろう。大統領と連邦議会の共和党支持者たちは、国防予算が既に過去最高水準に達しているにもかかわらず、間違いなく国防費の大幅な増額を推し進めるだろう。こうした動きは、従来の元請け企業であれ、シリコンヴェレーの新興企業であれ、あらゆる兵器メーカーに利益をもたらすだろう。しかし、トランプと共和党が支持する減税やその他の高額な対策を賄うために国防費が現状水準に維持されれば、軍産複合体の2つの形態の間で激しい競争が再び勃発する可能性は容易に考えられる。そうなれば、トランプの側近たちの間で分裂が起こり、旧軍産複合体支持者と新軍産複合体支持者が対立する事態に発展する可能性がある。

一般的に、選挙資金は古くからの軍産複合体企業からの献金に依存している共和党議員の大半は、このような競争では主要な元請け企業を支持せざるを得ない。しかし、トランプの主要な側近である JD・ヴァンスとイーロン・マスクの2人は、彼に反対の方向へと働きかける可能性がある。ピーター・ティールやその他のテクノロジー業界の大富豪たちによる強力なロビー活動の結果、トランプの副大統領候補となったとされる、シリコンヴァレーの元幹部であるヴァンスは、かつての同盟者たちから、国防総省との契約をアンドゥリル、パランティア、および関連企業にもっと振り向けるよう促される可能性が高い。ヴァンスのプライヴェート・ヴェンチャー・ファンドであるナリヤ・キャピタル(そうだ、これも『指輪物語』に由来する名前だ!)が、アンドゥリルやその他の軍事・宇宙関連ヴェンチャー企業に投資していることから、それはまったく驚くことではないだろう。

トランプによって、まだ設立されていない政府効率化省の責任者に指名されたイーロン・マスクは、アンドゥリルのパーマー・ラッキーと同様に、自身の企業であるスペースXの契約を獲得するために国防総省と争い、国防総省の伝統的なやり方に深い軽蔑を表明してきた。特に、AI制御のドローンの能力が高まっているにもかかわらず、高価で一般的に性能の悪いロッキード社製のF-35ジェット戦闘機を酷評している。その進歩にもかかわらず、彼が現在所有するソーシャルメディアプラットフォーム「X」に「一部の馬鹿たちは、F-35のような有人戦闘機を作り続けている」と投稿している。続く投稿で彼は「いずれにせよ、有人戦闘機はドローンの時代には時代遅れだ」と付け加えた。

F-35に対する彼の批判はアメリカ空軍を怒らせ、ロッキードの株価は3%以上下落した。「私たちは、世界最先端の航空機であるF-35と、その比類なき性能を、政府および業界パートナーと協力して提供することに全力を尽くしています」と、ロッキードはマスクのツイートに対して声明を発表した。一方、国防総省では、フランク・ケンドール空軍長官が次のように述べている。「私は、エンジニアとしてのイーロン・マスクを非常に尊敬している。彼は戦闘員ではなく、このような大々的な発表を行う前に、この事業についてもう少し学ぶ必要があると思う」と述べた。さらに、「F35が置き換えられることはないと私は考えている。購入を継続し、アップグレイドも続けるべきだと思う」と付け加えた。

トランプ大統領は、F-35や国防総省予算のその他の高額項目について、まだ立場を明らかにしていない。トランプ大統領は、この航空機の購入を遅らせ、他のプロジェクトへの投資拡大を求めるかもしれない(あるいは求めないかもしれない)。それでも、伝統的な防衛請負業者が製造する高価な有人兵器と、アンドゥリル、ジェネラル・アトミックス、エアロバイロンメントなどが製造するより手頃な無人システムとの間にある、マスクが露呈した分断は、新たな軍産複合体が富と権力を増大させるにつれ、今後数年間で確実に拡大していくだろう。旧来の軍産複合体が自らの優位性に対するこの脅威にどう対処するかは未知数だが、数十億ドル規模の兵器メーカーが抵抗なく退くことはまずないだろう。そしてその対立は、トランプ世界を分断することになるだろう。

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権の目玉政策にゴールデンドーム・ミサイル防衛システム(Golden Dome missile shield)がある。政権発足直後の2025年1月27日に、トランプ大統領はゴールデンドーム計画を発表した。これは、イスラエルのミサイル防衛システムであるアイアンドームをアメリカに適用する計画だ。国土の大きさを考えると、大規模な計画になり、約1850億ドル(約30兆円)規模の大型プロジェクトである。私は拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(2025年11月、ビジネス社)でゴールデンドーム計画について分析を行った。そして、これは、ピーター・ティールが率いるパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスクが率いるスペースX社、パルマー・ラッキーが率いるアンドゥリル・インダストリーズ社が重要や役割を果たす、特に、オペレイティングシステムで重要な役割を果たすと書いた。

 以下の記事にあるように、パランティア社とアンドゥリル社がゴールデンドーム計画のソフトウェア開発を行っているということが報道された。この約30兆円に及ぶ巨大プロジェクトの根幹を両社が請け負うということである。さらに私は両社は長期的にゴールデンドーム計画に関与し、長期契約(サブスクリプション)で安定して利益を上げるということを目指しているとも書いた。実際にその通りに動いているようだ。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

 何度も宣伝になり申し訳ないが、是非、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』をお読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

アンドゥリル社とパランティア社がゴールデンドーム・ミサイル防衛システムのソフトウェアを開発中と情報源が述べる(Anduril, Palantir developing Golden Dome missile shield's software, source says

ロイター通信

2026年3月25日

https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/anduril-palantir-developing-golden-dome-missile-shields-software-source-says-2026-03-24/

2026年3月24日(ロイター通信)。米大統領ドナルド・トランプが推進するミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」構想向けソフトウェアの開発で、アンドゥリル社とパランティア・テクノロジーズ(PLTR.O)社が協力しているとこのテーマに詳しい取材源が火曜日に取材に対して答えた。

1850億ドル規模のゴールデンドーム・ミサイル防衛計画(Golden Dome missile defense project)は、弾道(ballistic)ミサイル、巡航(cruise)ミサイル、極超音速(hypersonic)ミサイルを迎撃できる宇宙配備型防衛システムの構築を目指しており、数百社が防衛システム開発で役割を果たそうとして競っている。

アンドゥリル社とパランティア社は、ゴールデンドーム構想の発足当初から参画に関心を示してきた。ロイターは昨年、アンドゥリル社とパランティア社がイーロン・マスクの率いるスペースX社と共同でプロジェクトの様々な部分で協力していると報じた。

アンドゥリル社は昨年(2025年)11月、ゴールデンドーム関連の小規模契約を6件獲得し、競合するミサイル防衛システムの試作機を開発する企業の1つにも選ばれた。情報源によると、アーリリア・テクノロジーズ社(Aalyria Technologies)、スタートアップ企業のスケールAIScale AI)、そしてソフトウェア企業のスウープ・テクノロジーズ社(Swoop Technologies)もこのプロジェクトに取り組んでいるという。

各社はロイターのコメント要請に期日までに応じなかった。この件は『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が火曜日に最初に報じた。

ロッキード・マーティン社(LMT.N)、RTX社(RTX.N)、ノースロップ・グラマン社(NOC.N)は既に主契約企業としてこのプログラムに参加している。

プログラムの責任者は先週、主要な宇宙関連能力の開発を加速させるため、プロジェクト費用が100億ドル増の1850億ドルになったと述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 私は昨年11月末に著書『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』を出した。著作の中で私は次のように主張した。ピーター・ティール率いるビッグデータ分析やAI開発のパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスク率いる宇宙開発のスペースX社、パルマー・ラッキー率いるドローン開発のアンドゥリル・インダストリーズ社が「新・軍産複合体(Neo Military-Industrial Complex)」を形成し、アメリカ政府とアメリカ軍に食い込む形で、大型契約を締結し、巨額の利益を生むということになる。その具体例が「ゴールデンドーム」という、ドナルド・トランプ大統領が発表した、アメリカ全土を防衛するシステムである。このシステムの重要な点は、長期契約(サブスクリプション契約)によって、長期にわたり、巨額の利益を上げる点にある。そして、彼らは大規模な戦争を忌避するだろう。新・軍産複合体は長期契約で利益を上げるが、米中衝突などの大規模な演奏は望まないし、そのようなことになったら、技術提供を止めるなどして阻止することになるだろう。


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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

 今回のイラン攻撃は大規模攻撃である。私の主張の一部は外れているという指摘があるだろう。しかし、今回のイラン攻撃について、イスラエルとアメリカの目論見は、最初の一撃でイランを屈服させるというものであった。しかし、それが外れてしまい、大規模化、長期化せざるを得なくなった。アメリカはこのような形になることを望んでいなかったし、想定していなかった。

 以下の論稿は、私の主張の正当性を担保してくれる内容になっている。「サブスクリプション」という言葉も出てくる。最先端の高度技術を提供する民間企業が政府の政策遂行、軍の作戦遂行においてイニシアティヴを取るという時代がそこまで来ている。最後に宣伝になって恐縮だが、是非、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』をお読みください。よろしくお願いいたします。

(貼り付けはじめ)

スターリンクは地政学を民営化した(Starlink Has Privatized Geopolitics

-ウクライナからイランまでイーロン・マスクのサーヴィスは外交政策の仲裁者(an arbiter)となった。

ロバート・ムガー、ミシャ・グレニー筆

2026年3月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/20/starlink-spacex-musk-geopolitics-war-ukraine-russia-iran/

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ウクライナのドネツクで戦闘任務中にウクライナ兵がスターリンク衛星モデムを調整している(2025年3月12日)

スターリンクは単なる商用通信サーヴィスではない。それは、戦争をいかに戦われるか、国内の混乱へ国家は以下に対処するか、そして政府の統治が及ばない分野において犯罪組織が如何に活動するかについて、ますます左右する戦略的インフラ(strategic infrastructure)になっている。スターリンクが政治的にこれほど重要な意味を持つのは、その地球規模のネットワーク網だけでなく、その背後にあるガヴァナンスモデルにもある。

今や民間企業が軌道上のゲートキーパーとなり、誰が、どこで、どのような条件で、どのような技術的制約の下で接続できるかを決定する役割を担っている。多くの紛争において、こうした決定は軍事的、政治的な影響を及ぼし、国家はそれを再現したり制御したりすることが困難になっている。多くの戦略的サプライチェインが民間企業に依存している現状において、スターリンクは公共の安全保障機能に対する民間企業の裁量権が極めて集中している事例と言えるだろう。

スターリンクの地政学的な重要性は、その規模に比例する。2025年12月中旬時点で、軌道上には9357基のスターリンク衛星が存在していた。 2026年1月、アメリカ連邦通信委員会(FCC)はスペースXに対し、第2世代衛星7500基の追加配備を承認した。これにより、スペースXの衛星総数は約17000基となる。スペースXは以前から、最大42000基の衛星運用を目指すという野心を表明してきた。

スターリンクのサーヴィス提供範囲も拡大している。現在、160の市場でサーヴィスを展開しており、その決定に対処しなければならない軍、通信規制当局、法執行機関の数も増加している。競合他社と比較すると、スターリンクの圧倒的な優位性はより明確になる。低軌道における最大のライヴァルであるユーテルサット・ワンウェブ(Eutelsat OneWeb)は約650基の衛星を運用している一方、アマゾンのカイパー衛星群(Amazon’s Kuiper constellation)は2月時点でわずか200基強にとどまっている。スターリンクは事実上の独占状態にあり、当面の間、競合相手は存在しないことになる。

スターリンクは現在、世界中で1000万人以上のアクティヴユーザーを抱えていると発表しており、スペースXは2026年末までにその数を倍以上に増やすことを目標としている。その成長は、米国のT-Mobileをはじめとする携帯電話事業者との提携によってさらに加速しており、ドイツテレコムは2028年からヨーロッパでスターリンクを利用した衛星通信サーヴィスを開始する予定だ。

スターリンクの商業的な強みは、地上基地局や光ファイバー網が届かない農村部、遠隔地、災害被災地への接続にある。しかし、こうした重要な通信レイヤーを支配することで、スターリンク社は地政学的に大きな影響力を持つことになる。特に紛争、緊急事態、そして接続性が軍事、政治、人道的な結果を左右するあらゆる状況において、その影響力は顕著になる。

ウクライナ情勢は、スターリンクが戦場の通信にどのような影響を与え、戦略的な依存関係を生み出すかを示す、これまでで最も明確な事例と言えるだろう。2022年のロシアによる本格的な侵攻で地上ネットワークが機能停止した後、ドローン、分散型指揮、迅速な標的設定サイクルが特徴的なこの戦争において、スターリンク端末は運用インフラとなった。2025年初頭までに、ウクライナは少なくとも4万7000台のスターリンク端末を確保したが、その大部分はポーランド、ドイツ、アメリカ、そしてスペースX自身を含むパートナー国政府やその他の支援国から供給されたものだった。安定したモバイル帯域幅がなければ、ウクライナ軍はドローン映像の送信、兵站の調整、そしてこの紛争の特徴である分散型火力支援ネットワークの維持ができなかった。これらの端末は単なる利便性ではなく、効果的な抵抗のための必要条件だったのだ。

この依存関係は即座に攻撃対象領域を生み出した。ロシア軍は第三者ルートを通じてスターリンクへのアクセス権を取得したと報じられており、2024年にはロシア支配地域におけるスターリンクネットワークの利用が繰り返し懸念事項となった。問題は深刻で、スペースXとウクライナ国防省は不正接続を抑制するために認証管理を導入した。ウクライナ当局は、前線におけるロシア軍の利用が阻害されたと述べ、軍事顧問たちは、この影響はロシア軍の作戦にとって重大な後退であると評した。

この一連の出来事は示唆に富む。企業内のエンジニアが商業アクセスに関する方針に基づいて下した決定が、実戦中の戦争における戦術的バランスを崩した。条約による承認も、議会での採決もなかった。その決定を左右したのは、一企業の利用規約(a firm’s terms of service)だった。

戦略的、地政学的な側面はさらに深刻だ。2025年初頭、アメリカの交渉担当者は、ウクライナが重要な鉱物資源に関する合意を受け入れなければ、スターリンクへのアクセスを制限するとア圧迫を与えたとされる。スペースXのオーナーであるイーロン・マスクは関連性を否定したが、圧迫の信憑性と、それがキエフにもたらした不安は、その具体的な内容よりも重要だった。

すでに前例があった。2022年、マスクは、ロシア占領下のクリミア半島近辺でのスターリンクの通信網をウクライナ海軍のドローン作戦支援のために提供することを拒否したと報じられている。その理由として、事態のエスカレーションに関するリスクについて個人的な見解を挙げた。民間供給業者が個人的な直感に基づいて、最前線の国家が実施できる作戦を決定できる場合、その関係はもはや商業的なものではなくなる。それは主権の委譲であり、説明責任を負わない行政機関によって行使される戦略的機能である。

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衛星放送受信アンテナが点在するテヘラン中心部の住宅街の窓(2026年1月20日)

イランは、スターリンクの地政学的影響を示すもう1つの事例である。2026年1月に大規模な抗議デモが発生した後、イランの政権は史上最長かつ最も厳しいインターネット遮断を実施し、国内の接続率を通常の約4%にまで低下させた。近年、密輸され闇市場で取引された数万台のスターリンク端末は、弾圧の様子を外部に伝える重要な経路となったようだ。イラン国内の利用者には利用料が免除されたと報じられており、トランプ政権はスターリンク端末約6000台を密かにイランに持ち込んだ。これらの端末は単なる消費財としてではなく、アメリカの外交政策の手段として利用された。

テヘランの対応は前例のないものだった。政府当局は、地上妨害装置、GPSスプーフィング装置、携帯電話妨害装置を各地域に配備した。報道によると、治安当局は戸別訪問による捜索を行い、ドローンや情報提供者を使って衛星アンテナや端末の位置を特定し、利用者をスパイ容疑で告発した。イラン議会は既に、スターリンク端末の無許可所持・使用を犯罪と定めており、軽微な違反には懲役刑、スパイ行為や協力行為には死刑を含むさらに厳しい刑罰を科すことを規定していた。イランは国際電気通信連合(ITU)に対し、スターリンクが国家主権を侵害しているとして正式に提訴していた。

第2段階は2月28日に始まり、アメリカとイスラエルがイランの軍事施設、核施設、政府機関を標的とした共同攻撃を開始した。最高指導者アリ・ハメネイ師の暗殺は、イランによるイスラエル、中東各地のアメリカ軍基地、湾岸諸国、その他複数の国へのミサイルとドローンによる報復攻撃を引き起こした。イラン国内の通信状況はさらに悪化し、通常の約1%にまで低下した。

この段階において、スターリンクの役割はまさに矛盾をはらんだものとなった。密輸された端末によって、一部のイラン人は政府庁舎への攻撃を記録し、通信規制の努力にもかかわらず映像を拡散することができた。しかし、衛星通信へのアクセスは反体制派に限られていた訳ではないようだ。従来のネットワークが劣化するにつれ、スターリンクは国家と関係のある主体によっても利用された可能性がある。サイバーセキュリティ研究者たちは、インターネット遮断期間中、イラン情報保安省に関連する一部の活動がスターリンクのIPアドレス範囲から発信されていたと指摘している。同時に、イラン政府当局は検閲を回避しようとする市民によるスターリンクへのアクセスを妨害または低下させていたと報じられている。

また、別のサイバーセキュリティグループは、スターリンクを装った罠を利用した監視マルウェアを特定した。これは、同じ通信プラットフォームが抗議活動参加者、監視活動者、そして国家と関係のあるサイバー攻撃者によってどのように利用されうるかを示している。

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カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられた28基のスターリンク衛星を搭載したスペースX社のファルコン9ロケットが上昇している(2025年9月28日)

米国防総省は、イランを、低軌道システムが持続的な電子妨害や戦時下の混乱下でどのように機能するかを示す好例として捉えている。持続的な圧力によってスターリンクの耐障害性が著しく低下する可能性があるならば、例えば台湾におけるスターリンクの役割を支える前提は見直される必要がある。これはシステムの有用性を損なうものではない。単に、ネットワークが宇宙空間にあるというだけで耐障害性が保証される訳ではないことを意味する。

スターリンク技術は、犯罪組織や反乱組織のネットワークにも浸透しつつある。犯罪組織は、分散型通信の力を活用して作戦を遂行しようとしている。統治能力が低く、スペースXに対する影響力も乏しい脆弱な国家にとって、課題は喫緊の課題だ。通信網が地上の基地局やケーブルではなく、上空から提供されるようになると、遠隔地や紛争地域でのアクセス規制が困難になり、民間事業者がどのような条件で協力してくれるのかを交渉することもさらに難しくなる。

ブラジルのアマゾン熱帯雨林は、その具体的な例を示している。2025年6月、ブラジル連邦検察庁は、違法採掘や犯罪行為におけるスターリンクサーヴィスの利用を抑制するため、スターリンクと協定を締結した。この協定では、アマゾン地域における新規利用者に対し、身分証明書と居住証明の提出を義務付け、捜査対象となっている端末に関するデータをブラジル当局と共有することを認めている。また、違法行為に関与している疑いのある端末については、サーヴィスが停止される可能性がある。ブラジル環境庁の作戦調整官であるヒューゴ・ロスは、犯罪組織がスターリンクを利用して取締チームのリアルタイム位置情報を送信し、摘発を予測したり、現場の職員の安全を脅かしたりしていたことを指摘している。ブラジルは実行可能な合意を取り付けたものの、それは問題が環境犯罪の現場に深く根付いた後のことだった。

メキシコの組織犯罪の状況は、関連するリスクを示唆している。麻薬カルテルは、アメリカ国境沿いで拡大する技術軍拡競争の中で、密輸、監視、治安部隊への攻撃にドローンを活用している。このエスカレーションは、今や民間空域管理にも波及している。2026年2月、アメリカ連邦航空局(FAA)は、アメリカの対ドローン対策の展開への懸念から、テキサス州エルパソ周辺の空域を突然閉鎖したが、数時間後に制限を解除した。この一件は、犯罪組織によるドローンの脅威が、戦術的な安全保障対応だけでなく、深刻な外交的・航空的混乱を引き起こしかねないことを示した。

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左:メキシコ陸軍の対ドローン特殊部隊がメキシコ・ナウカルパン州で報道陣向けにデモンストレーションを行った(2026年2月17日)右:チャド・アドレの難民キャンプで、仮設小屋の横に設置されたソーラーパネルがスターリンク回線に電力を供給している(2026年2月19日)

アフリカのサヘル地域では、状況はさらに深刻だ。イスラム国家ジャマート・ナスル・アル・イスラム・ワル・ムスリミン(JNIM)やイスラム国西アフリカ州(ISWAP)などの反政府勢力は、リビアとナイジェリアからマリ、ニジェール、その他の紛争地域へとスターリンク機器の違法な供給網を構築している。2024年6月、JNIMはマリのガオ地域での作戦中にスターリンク端末が使用されている様子を映した動画を公開した。昨年(2025年)、ナイジェリア軍はボコ・ハラムに対する襲撃作戦で、サンビサ森林地帯の司令官からスターリンクの機器を押収した。

2025年を通して、ジハード主義グループは衛星通信をますます活用し、分散した部隊の連携、プロパガンダの配信、そして地上ネットワークに対する国家統制によって恩恵を受けていた傍受型監視の回避を図った。ニジェールとチャドは監視体制強化のため、2025年初頭にスターリンクの合法化と規制に着手したが、密輸ネットワークは今後も存続する可能性が高い。

スターリンクは宇宙分野における唯一の存在ではない。商業宇宙セクターは、国​​家防衛と軍事力にとってますます重要な役割を担うプレーヤーで溢れている。その結果、各国が同時に受け入れ、統制しようとする戦略的サーヴィスの市場が拡大している。通信分野では、イリジウムが防衛通信に深く根付いている。2024年、スターリンク社は合えりか宇宙軍と、高度なモバイル衛星サーヴィスとその維持管理に関する5年契約を発表した。これは、見通し外通信における商用プロバイダーへの依存が続いていることを示している。

ユーテルサット・ワンウェブとアマゾンのカイパー衛星群も防衛・政府市場で競合しており、ヨーロッパ連合(EU)のIRIS2構想は、EUの主権能力強化への野心を反映している。マクサール(Maxar)、プラネット(Planet)、ブラックスカイ(BlackSky)の商用画像データは、カペラ(Capella)とICEYEのレーダーデータとともに、軍事目標設定と状況認識に組み込まれている。

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ウクライナのロボティネ近郊の最前線の雪原に立つスターリンクデヴァイス。ドローン偵察・攻撃部隊の一部(2024年1月23日)

近年の紛争は、こうした仕組みをさらに深化させている。商用衛星、端末、データ契約は、今や軍事サプライチェインの一部となっている。そして、弾薬や防空システムと同様に、政治的圧力によってその供給が制限、転用、あるいは兵器化される可能性がある。商用宇宙は、国家が権力を行使し、また抑制する手段の一部になりつつある。

イランが最も鮮明に露呈させたのは、ウクライナやその他のスターリンク利用事例で部分的にしか明らかにならなかった統治上の欠陥である。国際人道法は、国家に対し軍事目標と民間目標を区別することを求めているが、午前中に反体制派に利用されていた端末が、午後には軍事攻撃を支援するために利用される可能性もある。

国連憲章の下で、商用衛星ネットワークの妨害行為を武力行使とみなすべきかどうかを判断するための、確立された国際的な枠組みは存在しない。商用機器の秘密裏の配備が情報戦行為に該当するか否かを規定する規則もない。CEOの意見が戦場の結果を左右する場合、民間事業者の責任を問う仕組みも存在しない。また、リアルタイムで民生用と軍事用を行き来するシステムを運用する商用衛星事業者の義務についても、明確な合意は得られていない。

戦略的な接続性は、もはや地理的な問題ではなく、ガヴァナンスの問題となっている。帯域幅は軌道上から供給され、情報はサブスクリプション方式(subscription)で購入される。主権(sovereignty)は、民間企業との関係、交渉によるアクセス協定、そして争点となる技術的設定を通じて、ますます行使されるようになっている。商用衛星インフラを、それに伴う規律、冗長性、そして法的枠組みといったあらゆる要素を含めた戦略的依存関係として扱わない国家は、危機に際して、その依存関係が他国によって管理されることを覚悟しなければならないだろう。

スターリンクの新たな地政学は既に始まっている。問題は、各国がそれを統治するのか、それとも単に反応するだけなのか、ということである。

※ロバート・ムガー:「セクデヴ」グループ最高責任者、イグナイト研究所共同創設者、ロバート・ボッシュ・アカデミー研究員。著述家であり、イアン・ゴールデンとの共著『未知の地:今後100年を生き抜くための100枚の地図(Terra Incognita: 100 Maps to Survive the Next 100 Years)』がある。Xアカウント:@robmuggah

※ミシャ・グレニー:人間科学研究所所長。多くの著作があり、『マクマフィア:深刻な組織犯罪(McMafia: Seriously Organised Crime)』と『宿敵:ブラジル最重要指名手配犯の追跡(Nemesis: The Hunt for Brazil’s Most Wanted Criminal)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2028年の大統領選挙に向けて水面下で動いている。以下の記事は1年前の記事だが、重要なキーワードは「アンドゥリル社」「パルマー・ラッキー」「ジョン・ハステッド」である。オハイオ州は大統領選挙における激戦州(battleground state)の1つである。そして、重要なのは、JD・ヴァンス副大統領の出身地であり、副大統領に就任するまでは、オハイオ州選出の連邦上院議員を務めていた。ヴァンスが副大統領就任のため連邦上院議員を辞職して、その後釜となったのが、下の記事に出てくるジョン・ハステッド州副知事(当時)である。
koizumishinjiropalmerluckey101

また、今年2026年にはオハイオ州知事選挙が実施される予定になっているが、共和党側の候補者としてトップランナーになっているのが、ヴィヴェック・ラマスワミである。ラマスワミは2024年大統領選挙共和党予備選挙で無名の泡沫候補であったがトランプ支持を表明しながらの選挙戦で人気を高めた。そして、第二次ドナルド・トランプ政権では、イーロン・マスクと共に政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)のトップを務めることが決まっていた。しかし、オハイオ州知事選挙の準備に集中するということで辞退していた。ラマスワミはインド系移民の子供としてオハイオ州で生まれ育ち、ハーヴァード大学卒業後に、イェール大学法科大学院に進学した。イェール大学大学院でJD・ヴァンスと同級生となり、親友となった。ヴァンスとラマスワミは法科大学院世時代に、パランティア社創業者にして、「ペイパル・マフィア」の総帥であるピーター・ティールの知己を得ている。さらに、アンドゥリル社と創業者パルマー・ラッキーは、ピーター・ティールとイーロン・マスク、更にヴァンスからの支援を受けて、アンドゥリル社を創業した。これらのことは拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社、2025年)で詳しく解説した。是非お読みいただきたい。
vivekramaswamyjdvance101

 アンドゥリル社が向上をオハイオ州に建設し雇用を創出する、オハイオ州は補助金や優遇税制で支援するという形で「ウィン・ウィン」の関係を築いている。そして、これは大きくは、ラマスワミの2026年のオハイオ州知事選挙(既に、ドナルド・トランプ、JD・ヴァンス、イーロン・マスクからの支持表明がなされている)、2028年のJD・ヴァンスの大統領選挙のために布石ということになる。パルマー・ラッキーにしてみれば、JD・ヴァンスが大統領になることで、トランプから継続して、アメリカ政界に食い込み、大きな利益を得るための布石ということが出来る。新・軍産複合体の伸長が長期的に進んでいる。

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AI兵器軍がオハイオ州へ向かう(The AI weapon army goes to Ohio

-コロンバスに計画されている大規模なアンドゥリル社工場はドローンによる雇用創出を約束し、州から約5億ドルの補助金を受ける予定だ

スタヴロウラ・パブスト筆

2025年2月20日

『レスポンシブル・ステイトクラフト』誌

https://responsiblestatecraft.org/anduril-ohio/

兵器技術業界の新しいスターであるアンドゥリル・インダストリーズ社がオハイオ州の支援を受けてオハイオ州に進出する。

先週、オハイオ州管理委員会は、オハイオ州開発局のオール・オハイオ・フューチャー・ファンドからの7000万ドルという巨額の資金提供を承認した。これは、アンドゥリル社がオハイオ州コロンバスのリッケンバッカー空港近くに建設を計画している、500万平方フィート(約460万平方メートル)の「ハイパースケール」製造施設「アーセナル1」と呼ばれる兵器工場建設のための資金である。

この資金提供は、管理委員会の会合で異議なく承認されたが、州下院議員トリスタン・レーダー(レイクウッド選挙区選出、民主党)が「多額の公的資金」が「民間の開発に流れている」と認めたこと以外は、ほとんど話題にもならなかった。

●オハイオ州がアンドゥリル社を全面支援(Ohio goes all in for Anduril

アーセナル1の推進派は、このプロジェクトがオハイオ州民にもたらす経済的利益を大々的に宣伝している。4000人の雇用創出を約束するアーセナル1は、オハイオ州史上最大の雇用創出プロジェクトとして称賛されている。州はアンドゥリル社に対し、約4億55000万ドルの減税措置を承認しており、アンドゥリル社自身もこのプロジェクトに約10億ドルを投資する予定だ。2026年半ばに操業開始予定のこの工場は、近隣のリッケンバッカー空港で製品の試験・開発を行うことも可能になる。

​​「私たちはアンドゥリル社を歓迎し、最先端の防衛製造業における数千人の新規雇用創出を祝福する」と、オハイオ州副知事ジョン・ハステッドは1月、アンドゥリル社がオハイオ州への進出を表明した後にこのように述べた。さらに「この投資は、先端技術と国家安全保障におけるオハイオ州のリーダーとしての地位を強化するものだ」と述べた。

アンドゥリルがアーセナル1で実際に提案しているのは、ほとんど精査されないという点だ。しかし、倫理的に問題のある自律型および半自律型兵器の大量生産計画は精査に値する。

自律型兵器システムに関する懸念は、概して、致命的な意思決定を人間から、おそらく判断力に乏しく、しばしば不正確な機械へとアウトソーシングすることにある。AI研究者たちはまた、AI技術の軍事化によって、戦闘(そして死)の責任が人間から戦闘用の自律型機械へと移行され、各国の紛争回避意欲が低下する可能性を懸念している。

こうした懸念にもかかわらず、ガザ地区のような地域ではAI支援兵器の拡散が止まっていない。イスラエル軍はパレスチナ人への攻撃において、AI軍事照準システムを利用してきたが、これに対して厳しい批判が集まっている。

そして今、自律型兵器の製造をさらに進めているアーセナル1は、軍事請負業者(military contractors)、特に新世代の防衛技術スタートアップ企業による、桁違いに多くの兵器や軍事プラットフォーム、特にAI支援型を大量生産できるアメリカの防衛産業基盤の刷新(アンドゥリル社の言葉を借りれば「ハイパースケーリング(hyperscaling)」)に向けた、より大規模な防衛技術推進の一環である。

アーセナル1や、防衛志向の産業自動化スタートアップ企業ハドリアンの「高度に自動化された精密部品工場」といったアメリカに拠点を置く新たな施設を通じて兵器の大量生産を増強する防衛技術スタートアップ企業は、その過程で重要な経済的機会を軍国主義と結び付けている。こうした流れの中で、ハドリアンは2022年の資金調達発表において、自社の取り組みを「アメリカの先進製造業基盤の変革(transform America's advanced manufacturing industrial base)」に向けた取り組みであると明確に表現した。

支持者たちにとって、この取り組みは、ますます不安定化する地政学的状況の中で、アメリカの国家安全保障にとって極めて重要である。この点で、アンドゥリル社社長のパルマー・ラッキーは、軍産複合体が売り込む中国の脅威に対抗し、アーセナル1をはじめとする兵器製造事業を民間に売りつけることに激しく反発している。

ラッキーは1月下旬にアーセナル1に関するインタヴューで述べ、「従来通りのビジネスをしている余裕はない。・・・中国で紛争が発生した場合、最初の8日以内に兵器が枯渇すると予測されていることから、(アーセナル1のようなプロジェクトによって)製造を超大規模化する必要がある」と、中国との戦争が現実的な可能性として指摘した。

これらの兵器企業の軍国主義的な動きが、経済機会の約束と相まって、世論を同じ方向に導くのではないかと懸念する声もある。「パルマー・ラッキーの冷戦的信念は、中西部でますます広まっている」と、コロンバスを拠点とする『マター・ニューズ』所属のジャーナリストであるテイラー・ドレルは次のように指摘する。「例えば、ニューアルバニー(オハイオ州)のインテル工場建設は、半導体戦争で中国に勝つための新たな冷戦戦略として批判されている」。

●アーセナル1をめぐる議論が激しくなる(Debate over Arsenal-1 brews

しかし、オハイオ州民全員がアンドゥリル社の工場開設を歓迎している訳ではない。アーセナル1を「国家防衛における大きな賭け(a high stakes gamble in national defense)」と呼び、『サイオト・ヴァレー・ガーディアン』紙のジェイ・サリーは、このプロジェクトに割り当てられた「多額の」公的補助金に対する地元の懐疑的な見方を強調した。

実際、ヴェテランズ・フォー・ピース(VFP)第183支部をはじめとするオハイオ州を拠点とする支援団体は、日曜日にオハイオ州リッケンバッカー空港前でアーセナル1への抗議活動を行う予定だ。これらの団体は、このプロジェクトへの多額の公的資金提供、環境への影響の可能性、そして前述のアンドゥリル社のような企業によるAIの軍事化に伴う倫理的影響を問題視している。

オハイオ州民がアーセナル1の導入をめぐって議論を交わす中、自律型兵器システムの大量拡散と将来、そしてそれらが将来の戦争をより危険なものにする可能性について、批判的な議論が切実に必要とされている。

※スタヴロウラ・パブスト:『レスポンシブル・ステイトクラフト』誌記者。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 2025年11月末、私は、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)を刊行した。その中で、ピーター・ティールが率いるパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスクが率いるスペースX社、パルマー・ラッキーが率いるアンドゥリル・テクノロジーズ社(ティールとマスクの出資を受けている)が企業コンソーシアムを形成して、ゴールデンドーム計画に参画し、巨額の利益を上げるだろう、そして、彼らがアメリカの「新・軍産複合体」として台頭するだろうということを書いた。
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 ゴールデンドーム計画は数重兆円規模の巨大プロジェクトであるが、その内容も不透明なのが実際だ。そして、現在、予算承認が進んでいないということだ。しかし、準備段階でも相当な予算が投入される。陸海空に宇宙という多層的なミサイル防衛システムということになると、パランティア社のビッグデータ分析、スペースX社の宇宙開発、ロケット打ち上げ技術、アンドゥリル社のドローン技術の融合が必要となる。そして、ドナルド・トランプ大統領誕生に、ピーター・ティールやイーロン・マスクが重要な役割を果たしたことを考えると、ゴールデンドーム計画は彼らに対する利益供与ということもできる。

 中国は、2015年に「中国製造2025」というプロジェクトを発足させ、AI、ドローン、量子コンピュータなどの分野でアメリカに対抗している。同じ年、中国は、「軍民融合(Civil-Military Fusion)」プロジェクトもスタートさせた。これは、民間企業が開発した、最先端技術の中国軍による利用を促進するものだ。アメリカでも同様の軍民融合を行おうということになれば、ゴールデンドーム計画のような形になる。

 詳しくは是非拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』を読んでいただきたい。

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ドナルド・トランプ大統領はゴールデンドームを愛している。彼自身のホワイトハウスは支出を遅らせている(Trump Loves Golden Dome. His Own White House Is Slow-Rolling Spending

-行政管理予算局によって承認された数十億ドルの支出が差し止められている。

サム・スコーヴ筆

2026年2月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/23/golden-dome-spending-omb-budget-pentagon-trump-missile-defense-drones/
写真
ピート・ヘグゼス米国防長官(右)がワシントンのホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領とゴールデンドームについて協議している(2025年5月20日)
『フォーリン・ポリシー』誌が入手した国防総省の文書によると、トランプ政権の目玉となる国家安全保障戦略である「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムとドローン生産増強計画への数十億ドル規模の予算が支出されていないことが明らかになった。

ドナルド・トランプ米大統領は2025年5月、ゴールデンドームへの支出を称賛し、政権は「アメリカ本土へのミサイルの脅威を永遠に終わらせる」と約束した。

ミサイル防衛兵器を宇宙に配備するなど技術的な課題を抱えながらも、トランプ大統領はわずか3年、つまり大統領の2期目が終了する前に、迅速にプロジェクトを完遂すると約束した。トランプはプロジェクト費用を1750億ドルと見積もっているが、他の推計ではそれよりかなり高額になるとされている。

この計画の財源として、トランプ大統領は昨年連邦議会で可決された「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(the One Big Beautiful Bill Act)」の一環として、この計画に250億ドルを支出すると発表した。

しかしながら、米国防総省の文書によると、ゴールデンドームに関連する宇宙能力への支出のうち、最大140億ドルが連邦資金を配分する行政管理予算局(OMB)の「承認待ち(pending approval)」となっている。

これには、宇宙ベースセンサーに72億ドル、軍事衛星とその防護に36億ドル、標的捕捉関連の軍事衛星に20億ドル、次世代大陸間弾道ミサイル防衛システムに8億ドル、宇宙指揮統制システムに3億5000万ドル、そして宇宙通信システムに1億2500万ドルが含まれる。

アメリカンエンタープライズ研究所上級フェローのトッド・ハリソンは、この資金繰りの停滞により、トランプ大統領が提案した野心的なスケジュールでのゴールデンドーム配備が遅れる可能性があると述べた。「会計年度のほぼ半分が過ぎていることを考えると、この資金の多くを2026年度に使用することは困難であり、つまり配分は2027年度に繰り越されることになる」とハリソンは述べた。

国防総省もドローンの調達を最優先事項としており、ピート・ヘグゼス国防長官は「ドローン優位性(drone dominance)」の実現を約束している。しかし、文書によると、小型ドローン船に15億ドル、中型ドローン船に21億ドルの予算が承認待ちのまま保留されている。

行政管理予算局(OMB)が資金拠出を保留している理由は不明だが、これは行政管理予算局と国防総省の間で資金配分の最適解をめぐる意見の相違を示唆しているとハリソンは述べた。国防総省はコメント要請に応じなかった。

コメントを求められた行政管理予算局広報部長のレイチェル・コーリーは、「これは事実ではない。誰がそう言っているにせよ、誤解している。ホワイトハウスが競争政策と単独調達契約についてどのような立場を取っているかは秘密ではない」と述べた。

『フォーリン・ポリシー』誌は当初、競争政策や単独調達契約について質問していなかった。その後、フォーリン・ポリシー誌はコーリーに対し、ゴールデンドームやドローンの契約プロセスが競争的でないという懸念から資金拠出を差し控えているのではないと言っているのかと尋ねた。

コーリーは「その資金のほとんどは全く保留されていない。全くのナンセンスだ」と答えた。

現在承認待ちとなっている項目の少なくとも1つは、「空中移動目標指示」衛星システムへの20億ドルの割り当てである。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は以前、スペースXがこの契約を獲得する見込みだと報じていた。ゴールデンドームは、スペースX、アンドゥリル、パランティアによるシステム建設の入札で、以前から世間の厳しい批判に晒されてきた。

※サム・スコーヴ:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Xアカウント:@samuelskove
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トランプ大統領のゴールデンドームは万能薬ではない(Trump’s Golden Dome Is No Silver Bullet

-アメリカ最大の防衛計画の1つは発表からほぼ1年が経過した現在も構想の域を出ていない。

アレクサンドラ・シャープ、ジョン・ホルティワンガー筆

2026年1月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/22/golden-dome-trump-missile-defense-explained-greenland/

ドナルド・トランプ米大統領は、1年足らずで歴代大統領の誰よりも多くのことを成し遂げたと主張している。しかし、「トランプ2.0」の最大の提案の一つである「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムは、発表から12カ月近くが経過した現在も、構想の域を出ていない。トランプ大統領は2期目終了までにゴールデンドームを完成させると述べているものの、その実現はますます困難になりつつある。さらに、グリーンランドへの進出もこの構想と結びつけ、今週スイスのダヴォスで行った演説では、デンマーク領であるこの地こそ「史上最大のゴールデンドームを建設する地(land on which we’re going to build the greatest Golden Dome ever built)」だと述べた。

このようなシステムが本当に費用に見合う価値があるのか​​、建設と維持にかかる費用(一部の推計では数兆ドルに上る)と、新たな軍拡競争を煽る可能性の両方において、多くの疑問が残る。一部の専門家は、現在のアメリカのミサイル防衛能力には悪用される可能性のある脆弱性が存在することに同意しているものの、ゴールデンドームが真の解決策となるかどうかについては疑問を呈している。

現在、アメリカは複数のミサイル防衛システムを保有している。その中には、飛行中期段階における中・長距離大陸間弾道ミサイルからアメリカ本土を守るために設計された地上配備型中間段階防衛システム(Ground-Based Midcourse DefenseGMD)、飛行中期段階における短・中距離弾道ミサイルを防御するために地上および海上に配備されたイージス弾道ミサイル防衛システム(the Aegis Ballistic Missile DefenseBMD)、そして飛行最終段階における短・中距離弾道ミサイルを防御するために設計された迅速展開・移動式の最終高高度防衛システム(Terminal High Altitude Area Defense THAAD)がある。

しかし、専門家の中には、ロシア、中国、北朝鮮といった主要敵国が兵器の増強と近代化を進めている現状において、極超音速ミサイル、ドローン、先進巡航ミサイルといった新技術がアメリカの防衛体制に危険な隙間をもたらしていると警告を発している人たちもいる。

米国防総省は、小規模で的を絞った取り組みによってこれらの脆弱性(vulnerabilities)に対処しようとしている。しかし、トランプ大統領ははるかに大胆で包括的な解決策を求めている。大統領は、ゴールデンドームによってアメリカ本土へのミサイルの脅威が「永遠に(forever)」なくなると述べている。

ゴールデンドームについて、その目的、期待される能力、潜在的なコスト、開発スケジュール、そして考えられるリスクなど、知っておくべきことを以下に挙げていく。

●ゴールデンドームとは何か、そしてその目的は何か?(What is Golden Dome, and what is it meant to do?

ゴールデンドームは、多様な空中脅威を阻止できる多層型ミサイル防衛システム(a multilayered missile defense system capable of thwarting a wide range of aerial threats)であるが、特に長距離ミサイルの破壊に重点を置く。多くの点で、これは防衛のために宇宙を兵器化する(weaponizing space for the sake of defense)ということだが、地上、海上、空中の層も含まれることになる。

ゴールデンドームは、1984年にロナルド・レーガン米大統領が提唱した「スターウォーズ(Star Wars)」の愛称を持つ戦略防衛構想(Strategic Defense InitiativeSDI)の近代化された拡張版と言えるかもしれない。しかし、この計画が実用化されることはなかったことは注意すべき点だ。

トランプ政権はゴールデンドームを「次世代ミサイル防衛シールド(next-generation missile defense shield)」と表現している。この構想を主導する米宇宙軍のマイケル・グートライン大将は、これを「マンハッタン計画に匹敵する規模(on the magnitude of the Manhattan Project)」と評した。しかし、プロジェクトの規模はそれよりもさらに大きくなる可能性がある。

ゴールデンドームは、基本的にあらゆるもの、つまり国防総省が2025年5月に発表したプレスリリースにあるように「あらゆる敵からの空中攻撃(aerial attacks from any foe)」から防衛することを目指している。当初の構想は、主にロシアや中国などのアメリカの敵対諸国が発射する大陸間弾道ミサイル(intercontinental ballistic missilesICBM)の迎撃に重点を置いていた。ICBMは、核兵器を搭載して宇宙空間に発射され、大気圏に再突入して標的を攻撃する先進的な長距離ミサイルで、射程は通常3400マイル(約5600キロメートル)以上だ。

しかし、ホワイトハウスが2025年1月下旬にこの構想を初めて発表して以来、この防衛システムの提案能力は拡大し、「巡航ミサイル、弾道ミサイル、極超音速ミサイル、ドローン(通常兵器か核兵器かを問わず)」を含む、他の多くの潜在的な脅威も含まれるようになったと、ピート・ヘグゼス米国防長官は昨年5月に述べた。

これは、冷戦時代の核への恐怖からドローン技術の実際的な懸念へと現代戦争の変遷に対応するための取り組みの一環だ。ロシアとウクライナの戦争は、偵察から直接的な標的攻撃まで、あらゆる用途における低コストで使い捨て可能なドローンの有効性を特に示した。この戦争における両陣営の死傷者の約70%はドローンによるものと推定されている。

「この分野では、十分な速さで対応できない」と、米陸軍副参謀総長のジェームズ・ミンガス将軍は昨年7月に述べた。その理由として、多くの軍指導者や専門家が、短距離ドローンの脅威への対応においてアメリカは後れを取っている点を強調した。

ゴールデンドームがドローンの脅威に具体的にどのように対処するのかについては疑問が残るものの、国防総省は他の方法でこの問題に取り組んでおり、特に現代の戦場で好んで使用される小型無人航空機(small, unmanned aerial vehicles)への対抗能力をアメリカ軍にいかに強化するかに重点を置いている。このため、陸軍はドローンの訓練にますます力を入れている。昨年8月、国防総省は小型ドローンに対抗する軍の能力強化を加速させるため、新たな省庁間合同タスクフォースを設置した。これは、この問題が軍にとって優先事項となっていることを示す新たな兆候である。

しかし、ゴールデンドーム推進の推進は、音速の5倍(マッハ5)以上で飛行するため迎撃が極めて困難な極超音速ミサイルの開発競争をめぐる世界的な懸念によっても促進されている。

But the push for Golden Dome has also been catalyzed by concerns over the global race to produce hypersonic missiles, which travel at five times the speed of sound (Mach 5) or faster, making them exceptionally difficult to intercept.

●ゴールデンドームは理論上どのように機能するのだろうか?(How will Golden Dome function in theory?

ゴールデンドームは、センサーと迎撃衛星を搭載した数百、あるいは数千もの衛星群を用いて、極超音速ミサイルをはじめとする兵器システムを追跡・破壊する。

トランプ政権は、この宇宙配備型システムがブースト段階、つまり発射後約5分間の初期段階にあるミサイルを迎撃できる能力を持つことを想定している。ブースト段階のミサイルは探知が容易ですが、破壊は困難だ。なぜなら、ミサイルを破壊には発射地点付近に迎撃衛星を配置する必要があるからだ。迎撃衛星を低軌道に配備することで、ゴールデンドームは理論的には、ブースト段階、つまり飛行初期段階にある敵ミサイルを破壊する能力をアメリカに提供する可能性がある。

アメリカの現在のミサイル防衛システムは、中間段階(ブースターの燃焼が終わった後、ミサイルが最大20分間宇宙空間を滑空する段階。これはミサイルの飛行の中で最も長い段階であり、大気圏再突入前の迎撃の絶好の機会である)と最終段階(ミサイルが大気圏に再突入し、目標に命中するまでの段階)におけるミサイルの迎撃に重点を置いている。

もし今日、ICBMがアメリカ本土に向けて発射された場合、ワシントンの主要な防衛線は地上配備型の中間段階防衛システムであり、ミサイルが中間段階にある間に迎撃する。しかし、アメリカ西部のカリフォルニア州とアラスカ州に設置されている地上配備型中間段階防衛システム(GMDシステム)の一部として運用されている地上配備型迎撃ミサイルはわずか44基である。GMDシステムは全50州を防衛する設計となっているが、北朝鮮のような敵対国による限定的な攻撃に対抗することを目的としており、ロシアや中国のより大規模で高度な兵器に対する防御は想定されていない。

イージスBMDシステムは信頼性が高いと考えられているが、ICBMの迎撃を目的として設計されている訳ではない。これは地域に特化した防衛システムであり、大規模な攻撃に対抗したり、アメリカ本土全体を防衛したりすることを目的としたものではない。

アメリカには最終高高度防衛システム(Terminal High Altitude Area Defense THAAD)とパトリオットシステムがあり、ミサイルを最終段階で迎撃することが可能ですが、限られた時間(1分未満の場合もあり)やミサイルが標的に近接していることなど、様々な課題から、最終段階はそのような脅威を迎撃するには最も理想的なタイミングとは言えない。これらのシステムは、一般的にICBMや長距離ミサイルの迎撃を目的として設計されていない。

ここでゴールデンドームの出番だ。提案されているシステムは、より高度な技術を持つ敵から発射される様々な射程のミサイルを、ブースト、ミッドコース、そして最終段階の全ての飛行段階で迎撃することができる。

しかし、繰り返すが、これはあくまでも理論上の話だ。

ゴールデンドームの開発には、その機能を果たすために必要な宇宙配備型迎撃ミサイルの膨大な数をはじめ、重大なハードルが存在する。

「核兵器に対処する場合、真に安全だと感じるためには、非常に高い迎撃率が必要だ」と、ブルッキングス研究所の防衛専門家マイケル・オハンロンは次のように述べている。「多層防御が必要だ。そして問題は、多層防御の多くは、大国によって偽装されたり、欺かれたり、あるいは飽和状態に陥ったりする可能性があるということだ」。

つまり、アメリカの敵対国がゴールデンドームの能力を圧倒するには、システムを水浸しにするか、デコイを使うだけで済むということだ。アメリカはまだ、宇宙空間にある弾頭が真の脅威なのか、それとも欺瞞なのかを判断する技術を開発している。

●ゴールデンドームの費用はいくらかかるだろうか?(How much will Golden Dome cost?

ゴールデンドーム開発における重大なハードルはおそらく費用となるだろう。トランプ大統領はこのプロジェクトの費用は約1750億ドルだと述べているが、実際の費用ははるかに高額になると推定されている。

宇宙配備型迎撃ミサイルに頼るのは、飛来する飛行体1個を撃墜するのに数十基の迎撃ミサイルが必要となるため、費用のかかる戦略となる。「不在率(the absentee ratio)こそが真の致命的な問題だ。これらの迎撃ミサイルやレーザーミサイルのほとんどは、高度が高いため常に周回しているため、適切な位置に配置できず、適切な位置にある1基に対して10基ほどの迎撃ミサイルを宇宙に配備しなければならない」とオハンロンは述べている。

アメリカンエンタープライズ研究所上級研究員のトッド・ハリソンによると、迎撃ミサイル1基の調達コストは平均440万ドルから890万ドルと推定されている。つまり、ゴールデンドームが最大2発のミサイルに対抗するために全世界を継続的にカヴァーするために1900基の迎撃ミサイルが必要だとすると、総調達コストは86億ドルから172億ドルとなる。しかし、(例えばシステムを氾濫させる戦略の一環として)発射される弾道ミサイルの数が増えると、より多くの迎撃ミサイルが必要となり、調達コストは急騰する。連邦議会予算局の推計によると、限定的な宇宙配備型迎撃ミサイルシステムでさえ5000億ドル以上のコストがかかるということだ。

これはゴールデンドームの総費用を考慮に入れていない。ゴールデンドームの総費用は、どの脅威を優先するか、そしてどこでカヴァーするかによって、20年間で2520億ドルから3兆6000億ドルと推定されている。

これまでに、連邦議会はゴールデンドーム構想に約250億ドルを拠出している。この構想は2026年国防権限法にも漠然と言及されているものの、具体的な支出指示は示されていない。

2025年10月、ロッキード・マーティンのジム・タイクレットCEOは、ロッキード・マーティンは2028年までにゴールデンドーム構想の一部である宇宙配備型ミサイル迎撃ミサイルを少なくとも1基試験する計画だと述べた。

ミサイル防衛プロジェクトのディレクターであり、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員であるトム・カラコは、ゴールデンドームは「システム(system)」ではなく、むしろ「数年にわたって段階的に展開される構想(initiative” that will be rolled out in phases over a “number of years)」であると述べた。ミサイル防衛へのこのようなアプローチはずっと前から必要だったと述べるカラコは、ゴールデンドームを「会計機能(accounting function)」と表現し、この構想に関する多くの詳細が依然として未確定であることを強調した。

トランプ政権には「計画のコンセプト(concept of a plan)」があると元国防次官(政策担当)のエリック・エデルマンは述べた。エデルマンは続けて次のように語った。「トランプ政権が実際に成果を上げたいのであれば、現状の巡航ミサイルの脆弱性への対処といった、容易に達成できる目標に取り組むだろう。そうでなければ、3年で成果を上げることは難しいだろう。なぜなら、はるかに長い時間がかかるからだ」。

しかし、国防総省は依然として楽観的な姿勢を崩していない。2025年10月、ある国防関係のお当局者は『フォーリン・ポリシー』誌に対し、ゴールデンドームは国防総省にとって依然として「戦略的に不可欠なもの(strategic imperative)」であり、同省は「作戦上の安全保障を最優先に考えている(operational security top of mind)」ため、これ以上の情報提供はできないと述べた。

「私たちは大統領のヴィジョンを実現するために、引き続き尽力していく」と公式コメントを控えたこの当局者は付け加えて述べた。

フォーリン・ポリシーは2025年を通して国防総省に複数回連絡を取り、ゴールデンドームの開発状況について最新情報を求めたが、追加情報は得られなかった。

国防専門家の中には、イスラエルのアイアンドーム・システムをトランプ大統領のゴールデンドーム構想の実現可能性を示す証拠として挙げている。しかし、重要な違いがあるため、この比較は不完全である。

第一に、イスラエルは地理的にアメリカ合衆国よりもはるかに小さく、守るべき領土も多くない。イスラエルの面積はアメリカ合衆国ニュージャージー州とほぼ同じである。さらに、イランの代理組織であるハマスやヒズボラなど、イスラエルの敵対勢力の多くは、単純な軌道と小型の通常弾頭を持つ安価なロケットを主に発射している。アイアンドーム・システムはコストを抑えるため、ネゲブ砂漠のような無人地帯を狙ったロケットも攻撃対象としている。これらの地域は民間人に実質的な脅威を与えないからだ。一方、アメリカは世界最大級の核兵器に対抗することになる。これらの核兵器は大都市圏を標的とする可能性が高く、攻撃を放置する余裕はない。

エデルマンは、「全てを攻撃しなければならない。これが核弾頭漏れ防止防衛の問題点だ」と述べた。

ロシアは5400発以上の核弾頭を保有しており、中国は約600発の核弾頭を保有しているが、2035年までに1500発の核弾頭を保有すると予想されている。北朝鮮の核弾頭の総数は未確認だが、アメリカ科学者連盟は平壌が50発以上を保有していると見ている。(アメリカは約5225発の核弾頭を保有している。)

新アメリカ安全保障センターの防衛プログラムのディレクターであるステイシー・ペティジョンは次のように述べている。「ゴールデンドームは、ロシアや中国が保有する量のミサイルを迎撃できるような防御力場にはならないだろう。中露両国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の兵器規模は大きすぎるからだ。むしろ、限定的な攻撃を迎撃できる盾となることを意図している」。

●ゴールデンドームのリスクは何か?What are the risks of Golden Dome?

効果への懸念に加え、多くの批評家はゴールデンドームが世界的な軍拡競争(arms race)を誘発するのではないかと懸念している。ペティジョンは次のように語っている。「つまり、敵対国がゴールデンドームを見て、アメリカが先制攻撃を仕掛けてくると想定し、ミサイルの増強、そしてシールドを迂回するためのより高度なミサイルの開発に着手するのではないかという懸念だ。つまり、ゴールデンドームが対処できるものに加えて、さらに強力なミサイルを開発し、さらに新システムの弱点を突こうとする新型ミサイルも開発するだろう」。

これは、オハンロンが懸念した、戦場への電子線(flooding)やデコイの使用という戦略にも繋がる。アメリカにはまだ対抗できる技術力がない。

しかし、一部の専門家は、外国の敵対国がゴールデンドーム構想に不満を抱いていることは良い兆候だと主張する。カラコは次のように述べている。「ミサイル防衛は抑止力に貢献するために存在する。空に浮かぶスピードバンプ(スピードを落とさせるための道路上の段差)のようなものだ。中国人がそれについて不満を言うのを聞くのは、私たちが何か建設的なことをしているという良い兆候となるだろう」。

※アレクサンドラ・シャープ:『フォーリン・ポリシー』誌「ワールドブリーフ」担当ライター。Blueskyアカウント:@alexandrassharp.bsky.socialXアカウント:@AlexandraSSharp

※ジョン・ホルティワンガー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@jchaltiwanger.bsky.socialXアカウント:@jchaltiwanger
(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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 古村治彦です。

 アメリカでは、未成年に対する性的虐待で実刑判決を受け、その後死亡したジェフリー・エプスタインに関するファイルの公開が実施され、300万ページに及ぶ文書や写真などが公開された。これらを精査するだけでも莫大な時間がかかるだろう。被害者の名前は守られるが、その他は公開されるということになっているが、実際には、被害者の名前が公開されるということが起きており、司法省の杜撰な対応に批判が集まっている。もっとも、人員も予算も限りがあるため、このような間違いが出ることは仕方がないことではある。問題は、事件に関わっている人物たちの名前で隠蔽されているものがあるということだ。

 民主党所属のロウ・カンナ連邦下院議員と共和党所属のトーマス・マシー連邦下院銀は超党派で、エプスタイン・ファイルの公開を求めてきた。両議員は司法省まで出向き、2時間だけであったが、ファイルを精査し、6名の「有罪の可能性が高い」人物を突き止めた。そして、カンナ議員は6名の名前を公開した。この6名はエプスタイン事件で訴追されていない人物たちでアリ、カンナ議員がどうして「有罪の可能性が高い」と判断したのかは明確になっていない。

 エプスタイン事件については、このブログでも昨年12月に何度か取り上げた。そして、私は、エプスタイン事件の本丸はイギリスではないかと考えていた。それは、エプスタインの恋人で側近のギレーヌ・マクスウェルの王室やイギリス政界との緊密さがあったからだ。そして、その時に、彼女の父親ロバート・マクスウェルについて、しっかり調べなかったことは私の痛恨のミスであった。「メディア王だったのか」くらいで済ませてしまった。このロバート・マクスウェルは、イギリスのMI6、旧ソ連の旧KGB、イスラエルのモサドのトリプルエイジェント(スパイ)だった可能性が高く、ヨット事故での死亡も怪しい。そして、彼はイスラエルのオリーブ山に埋葬されている。これは、イスラエルへの愛国的な行動をした人物に与えられる栄誉である。さらに、マクスウェルは、日本の笹川良一とも関係が深く、「大英(イギリス)笹川財団議長」を務めている。マクスウェルのイスラエルとの関係をギレーヌが引き継ぎ、アメリカではエプスタインが発展させたということは考えられる。彼がイスラエル・ロビーのために働いたことは間違いない。

 こうして見ると、エプスタイン事件は、超富裕層や有名人たちのネットワークによるセックス・スキャンダルであるが、その奥にはもっと禍々しい何かがあるように思われる。「エプスタイン階級(Epstein Class)」という言葉も出ているようだが、上流階級・超富裕層による何かがあるようだ。このことは、西洋近代500年の理想が崩れ果て、綺麗事を述べている人たちが裏に回れば、酷いことをやり尽くしていたということも言える。光が輝かしいほど影はより暗黒になる。エプスタイン事件は、西洋近代終焉の一つの象徴となるだろう。

(貼り付けはじめ)

ロウ・カンナ連邦下院議員が連邦下院本会議場でジェフリー・エプスタインのファイルに記載されている「有罪の可能性が高い」6名の男性の名前を読み上げる(Khanna reads names of 6 men ‘likely incriminated’ in Epstein files on House floor

レベッカ・ベイッチ、スディクシャ・コーチ筆

2026年2月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/5731909-khanna-epstein-files-house-floor/

ロウ・カンナ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は火曜日、連邦下院本会議場で、ジェフリー・エプスタイン・ファイルについて、「有罪の可能性が高い(likely incriminated)」とされる6名の男性の名前を明らかにした。

カンナ議員の発言は、司法省がファイルの編集方法を巡り批判を浴びている中で行われた。司法省は、被害者の名前を隠すこと(redactions)ができなかったケースもあれば、有罪判決を受けた性犯罪者ジェフリー・エプスタイン被告とわいせつなメールを交換していた人物の身元を隠蔽したケースもあった。

カンナ議員とトーマス・マシー連邦下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、ファイルの公開を義務付ける法案の共同提案者であり、月曜日、司法省の事務所で議員が閲覧できるファイルの非編集版を精査した。2人は記者団に対し、2時間にわたる精査で、ファイルの内容に基づき刑事責任を問われる可能性があると考える6名の名前を確認したと述べ、マシー議員はこれらの6名について「有罪の可能性が高い」と述べた。

カンナ議員は下院議場で6名の名前を明かした後、「私の疑問は、なぜトーマス・マシー議員と私が司法省に出向いて、この6名の身元を公表する必要があったのかということだ。もし2時間で6名の男性が見つかったとしたら、300万件ものファイルにどれだけの男性が隠蔽されているか想像してみて欲しい」と述べた。

「これで私の主張は明確になった。「エプスタイン透明性法(Epstein Transparency Act)」は、FBIのファイルを非公開にすることを義務付けている。しかし、司法省は私とマシー議員に対し、『FBIから送られてきたものをそのままアップロードしただけだ』と述べた。そして、どうなったか? FBIは非公開のファイルを送ってきた。つまり、エプスタイン島に行った、彼の牧場に行った、彼の自宅に行って未成年の少女たちをレイプ・虐待した、あるいは未成年の少女たちが引きずり回されるのを目撃した、裕福で権力のある男性たちの名前を挙げた被害者たちのFBIへの声明文は、全て隠蔽され、非公開にされていた。まるで茶番劇(a farce)だ」

カンナ議員が氏名を公表すると決めたのは、マシー議員が公表するつもりはないと述べ、代わりに司法省がまず「誤りを正す(correct their mistake)」機会を持つべきだと主張した後のことだ。

マシー議員は月曜日に「彼らは自らの宿題をきちんと確認する必要がある」と述べた。

エプスタイン・ファイル透明性法は、主に被害者たちの身元を保護する目的のためのファイルの編集を限定的にしか認めていない。

カンナ議員が下院議場で氏名を公表したことで、6名のうちの誰かが名誉毀損訴訟を起こす意思がある場合、カンナ議員はある程度の保護を受けることができる。

「憲法の言論・討論条項(Speech and Debate Clause of the Constitution)」は、議員が議員としての職務の過程で行った発言について尋問されることを防ぎ、刑事責任と民事訴訟の両方から保護する。

議場では明言しなかったものの、カンナ議員は月曜日、エプスタイン・ファイルへの掲載自体が必ずしも有罪を意味する訳ではないと指摘した。

「これは魔女狩り(a witch hunt)を目的としたものではない。ファイルに誰かの名前が載っているからといって、必ずしも有罪であるということではない。しかし、未成年の少女たちをレイプしたのは、非常に権力のある人物たちだ。エプスタインと(彼の側近であるギレーヌ・)マクスウェルだけではない。未成年の少女たちが連れ回されていることを知りながら、島や牧場、あるいは自宅に現れた人物もいた」とカンナ議員は月曜日に述べた。

トッド・ブランシュ司法副長官は火曜日、マシー議員に反論し、司法省が数ページの修正を解除する対応を取ったにもかかわらず、マシー議員を「スタンドプレー(grandstanding)」だと非難した。

マシー議員は、ソーシャルプラットフォーム「X」上の、大幅な修正が加えられた3つの文書を具体的に言及した。1つは、当初エプスタインと共犯者のギレーヌ・マクスウェルの名前のみが記載されていた20人の非機密リスト、マシー議員がスルタンのように見えると述べている男性とエプスタインとの間で2009年に交わされた電子メールのやり取りである。そして、エプスタインが2019年に自殺した数日後に作成された、共謀者候補に関するFBIのメモも含まれている。

マシー議員の批判を受け、FBIは20人のリストに含まれていた16人の名前を元の状態に戻した。2人の名前は引き続き黒塗りのままで、エプスタインとマクスウェル以外の人物の写真も黒塗りのままとなっている。

ブランシュは月曜日の深夜にソーシャルメディアに、「書類を見れば、メールアドレスが黒塗りされているのが分かる。法律では、メールアドレスに含まれる場合も含め、個人を特定できる情報は黒塗りで処理することが義務付けられています」と投稿した。

ブランシェは「正直になろう、見せかけのスタンドプレーは止めよう」と書いた。

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未編集のエプスタイン・ファイルに記載されている6名の男性とは誰か?(Who are the six men named in the unredacted Epstein files?

-民主党所属の連邦下院議員ロウ・カンナは議会演説で、未編集のファイルを見た後6名の男性の身元を明らかにした。

ジョセフ・ゴードン(ワシントンDC)筆

2026年2月10日

『ザ・ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/us-news/2026/feb/10/six-men-epstein-files-unredacted

米連邦下院議員ロウ・カンナは、ジェフリー・エプスタインのファイルから個人情報が隠されていた6名の男性の名前を公表した。その中には、FBIが共謀者として指定したとみられる億万長者の小売業王レスリー・ウェクスナーも含まれている。

カリフォルニア州選出の民主党所属の下院議員カンナは、司法省を訪問した後、火曜日の議会演説でこれらの名前を明らかにした。司法省では、カンナとケンタッキー州選出の共和党所属の連邦下院議員トーマス・マシーが2時間かけて未編集の文書を精査した。

カリフォルニア州選出の民主党下院議員カンナは、司法省を訪問した後、火曜日の議会演説でこれらの名前を明らかにした。司法省では、カンナとケンタッキー州選出の共和党下院議員トーマス・マシー議員が2時間かけて未編集の文書を精査した。

カンナ議員が名指しした6名の男性とは、ヴィクトリアズ・シークレットの創設者ウェクスナー、DPワールドのCEOでアラブ首長国連邦の億万長者ビジネスマンのスルタン・アハメド・ビン・スレイエム、そしてニコラ・カプト、サルヴァトーレ・ヌアラ、ズラブ・ミケラゼ、レオニク・レオノフの4名である。

カンナは、これらの人物の不正行為の証拠を提示しておらず、エプスタインに関連する犯罪で起訴もされていない。

カンナ議員は議会演説で「もし2時間で彼らが隠していた6名の男性を見つけたとしたら、300万件のファイルにどれだけの男性を隠蔽しているのか想像してみて欲しい」と述べた。

カンナ議員は、自分とマシーが司法省職員のために黒塗りを特定した際、「彼らは間違いを認め」、身元を明らかにしたと述べた。ファイルの大部分は黒塗りのままだとカンナ議員は述べた。

エプスタインは2008年に未成年者たちへの売春斡旋の罪を認め、13カ月の刑期を終えた。2019年、性的人身売買の罪で裁判を受ける中、ニューヨークの拘置所で自殺した。

エプスタインのファイルに名前が記載されているだけで、有罪を立証することはできない。電子メールのやり取り、連絡先、あるいは悪名高い性犯罪者の資金提供者に関するその他の文書を通して、個人が明らかになる可能性があるからだ。

以下に公開された6名の名前を掲載する。

(1)レスリー・「レス」・ウェクスナー(Leslie ‘Les’ Wexner
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ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)、バス&ボディ・ワークス(Bath & Body Works)を含む小売帝国を築き上げた88歳のウェクスナーは、自身の投資を担ってきたエプスタインと長年にわたる金銭的関係を維持してきた。

『ニューヨーク・タイムズ』紙が11月に実施した長期にわたる調査では、ウェクスナーがエプスタインの財政状態を億万長者から富豪へと押し上げた人物とされている。記者たちは、金銭面以外では、「ウェクスナーがエプスタインに与えた最大の価値は、彼に新たな信用と資格(credibility and credentials)を与えたことだった」と記している。

ウェクスナーとエプスタインの関係は既に公に知られており、以前の報道でも氏名が浮上していたが、今回、エプスタインの犯罪行為に関連して刑事訴追はされていないものの、FBIによってエプスタインの共謀者として指定されていたことが明らかになった。

(2)スルタン・ビン・スレイヤム(Sultan Ahmed bin Sulayem
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ドバイを拠点とする実業家であるスレイエムは、80カ国以上で事業を展開する多国籍港湾・物流企業DPワールド(DP World)の会長だ。また、F1を含む世界モータースポーツ選手権を統括する国際自動車連盟(FIA)のモハメド・ベン・スレイエム会長の実弟でもある。

最近公開された文書によると、スルタン・アハメド・ビン・スレイエムは2015年にエプスタインにメールを送り、「2年前」にドバイのあるアメリカ系大学に通う女性と出会い、「今までの人生の中で最高のセックスをした。素晴らしい体だった」と書いていた。

「彼女は婚約したが、今は私の許に戻ってきた」と彼は述べている。

マシー議員はまた、氏名が伏せられていたことから、司法省はスレイエムがエプスタインから「拷問ビデオが大好きだった」と書かれたメールの受信者であったことを確認したようだと述べた。

(3)二コラ・カプト(Nicola Caputo
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ニコラ・カプトという名の男性は、2014年から2019年にかけてヨーロッパ議会でイタリア代表を務め、その後カンパニア州政府で高官職に就いたイタリアの政治家だが、公式に公開された文書にこの人物の記載があることを確認する検証済みの証拠はなく、大手報道機関もこの人物とファイルとの関連を裏付けていない。

(4)サルヴァトーレ・ヌアラ(Salvatore Nuara

この人物が誰なのか、またエプスタインとどのような関係があるのか​​はまだ分かっていない。

(5)ズラブ・ミケラゼ(Zurab Mikeladze

この人物が誰なのか、またエプスタインとどのような関係があるのか​​はまだ分かっていない。

(6)レオニック・レオノフ(Leonic Leonov

この人物が誰なのか、またエプスタインとどのような関係があるのか​​はまだ分かっていない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。ブログ継続のために書籍の購入をお願いいたします。

 最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)の第2章では、アメリカの軍産複合体を生み育てた「現在の危機委員会(the Committee on the Present Dange)」について詳述した。同名の委員会はこれまで4回設立され、アメリカの戦後の外交政策や軍事政策に多大な影響を与えた。特に、第一次現在の危機委員会と第二次現在の危機委員会は、冷戦期のアメリカでソ連と共産主義の脅威を声高に主張し、人々にアピールし、軍事予算の増額を行うことに成功した。軍産複合体を肥え太らせるための存在が「現在の危機委員会」であった。第四次現在の危機委員会のターゲットは中国であり、中国の脅威を声高に喧伝することで、軍事予算の増額を狙っている。

 日本でも「東アジアの安全保障環境の悪化」、簡単に言えば「中国が怖いぞ、攻めてくるぞ」という大義名分で、国防予算の対GDP比の上昇が決定している。短期間で2%から3%、更には3.5%へと進む。高市早苗政権はアメリカの要求を嬉々として受け入れ、可及的速やかに防衛予算の大幅増額を進めようとしている。「愛国増税」でその財源を賄おうとしている。私に言わせれば、「東アジアの安全保障環境の悪化」の原因は日本であり、高市早苗という人物はその象徴である。結果として、中国からは実質的な経済制裁を受ける状況になっている。この状態が長期間継続すれば、日本経済は悪化していくことになる。

 日本にも「現在の危機委員会」のような、中国の脅威を煽り立て、人々の不安に付け込んで防衛予算を増額し、肥え太ろうという勢力がいる。高市早苗という人物もその勢力の一員だ。私たちはそのような過剰な煽り立てに乗じられてはならない。しかし、日本国民の馬鹿さ加減を見れば、騙され続けてもう一度国土を焼け野が原にしてしまうかもしれないという不安感しかない。

(貼り付けはじめ)

アメリカの対中国恐怖キャンペーン(The US Scare Campaign Against China

-冷戦時代から現在に至るまで、「現在の危機(present danger)」を誇張する背後にある政治的計算について語る。

デイヴィッド・スキッドモア筆
2019年7月23日
『ザ・ディプロマティック』誌

https://thediplomat.com/2019/07/the-us-scare-campaign-against-china/

成熟した国家運営の指標は、国際的な課題を評価し、慎重さ、冷静さ、そして均衡(proportionality)の取れた対応策を講じる能力である。しかしながら、数十年にわたる世界的なリーダーシップにもかかわらず、アメリカの外交は依然として思春期のヒステリー(adolescent hysteria)に陥りやすい。こうした熱狂的な運動は、冷戦期における過剰な核兵器増強や、ヴェトナム戦争とイラク戦争における悲惨な戦争など、アメリカ外交政策における最も高くつく誤り(the costliest mistakes)を生み出してきた。

この反射的な行動は、国際競争の現実というよりも、むしろ国内政治に関係している。政治学者セオドア・ローウィが指摘したように、アメリカの指導者たちは日常的に外国の脅威を誇張し、提案された解決策を民主政治の束縛から逃れる手段として過大評価している。

ドナルド・トランプ政権による中国に対する警戒的な言辞がその好例である。2018年の国家防衛戦略は、中国の指導者たちが「世界的な優位性を獲得するためにアメリカに取って代わろうとしている」と断言している。マイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官はそれぞれ、大国間の新たな対立の要求に備えさせるため、中国の脅威についてパニック的な評価を発表した。

ローウィに呼応する形で、ディック・チェイニー副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めたアーロン・フリードバーグは最近、トランプ政権が中国との冷戦に向けた国内の支持を動員することに真剣であるならば、「イデオロギー的な観点から挑戦を提起する」必要があると助言した。「アメリカ国民を動かし、動機づけてきたのは、彼らのシステムの基盤となっている原則が脅威にさらされているという認識である」からだ。

ハリー・トルーマン大統領は、1947年3月12日、連邦上下両院合同会議での演説で冷戦勃発の鐘を鳴らし、「空が落ちてくる(sky is falling)」というレトリックの典型を確立した。演説を仕上げる中で、トルーマンはソ連との壮大な闘争に国民をどう結集させるかに苦慮していた。結局のところ、アメリカ国民は国際紛争からの休息と戦前のアイソレイショニズムへの回帰を切望していた。トルーマンはアーサー・ヴァンデンバーグ連邦上院議員に相談し、ヴァンデンバーグ議員から明確な答えを得た。それは、アメリカの価値観に対する共産主義の脅威を強調することで、「国中を恐怖に陥れる(scare the hell out of the country)」必要があるというものだった。

ヴァンデンバーグの助言を受け、トルーマン・ドクトリンはアメリカの新たな世界における役割について包括的なヴィジョンを提示した。トルーマンは「武装した少数派や外部からの圧力による征服の試みに抵抗する自由な人々を支援することが、アメリカ合衆国の政策でなければならない」と述べた。

それは功を奏した。連邦議会はギリシャとトルコへの援助パッケージを承認しただけでなく、冷戦時代の必需品として提案された、はるかに野心的なマーシャル・プランも承認した。

●(常に)現在の危機委員会Committees on the (Ever) Present Danger

しかし、対立的な外交政策に対する国民の支持をかき立てる任務は、ホワイトハウスだけに委ねられた訳ではない。超党派の外交政策エスタブリッシュメント―ドワイト・アイゼンハワー大統領がかつて「軍産複合体(military-industrial complex)」と呼んだもの―は、重要な局面で軍事費増額への支持を集めるために動員されてきた。これらのグループは、志を同じくする大統領と連携して活動することが多いが、過度にハト派的と見なされる大統領の外交政策に異議を唱えることもあった。

これらの中で最も有名なのは、現在の危機委員会(the Committee on the Present DangerCPD)。1950年12月に設立された最初の現在の危機委員会は、国家安全保障の専門家からなる高官グループで構成され、アメリカの国防費を3倍に増額することを求めた戦略計画文書であるNSC-68の勧告に対する議会の支持を求めました。現在の危機委員会メンバーたちによる社説、講演、議会証言、専門家報告書といったキャンペーンを経て、連邦議会は国防費の大幅な増額でこれに対応した。

最初の現在の危機委員会の目的はトルーマン政権の目的と一致していたが、1976年に発足した2番目の現在の危機委員会は、ジェラルド・フォード大統領とジミー・カーター大統領のハト派的姿勢と見なされたことに対抗して設立された。復活した現在の危機委員会は、ソ連との緊張緩和(détente)を弱め、ヴェトナム戦争後の軍事力削減を反転させることを目指した。このグループは報道関係者とのつながりを築き、メンバーを講演ツアーに派遣し、防衛、軍備管理、米ソ関係に関する一連の声明を作成した。

最初の声明は次のように宣言した。「我が国、世界平和、そして人類の自由に対する主要な脅威は、比類なき軍備増強に基づくソ連の支配欲である」。

第二の現在の危機委員会は設立直後に大きな成果を上げた。現在の危機委員会のメンバーたちは、CIAが毎年作成している国家情報評価がソ連の危険性を過小評価していると主張した。こうした批判に憤慨したジェラルド・フォード大統領は、退任間際の大統領は異例の措置を取り、政府外部の保守派防衛専門家たちで構成された「チームB」を任命し、CIAの通常の活動に匹敵する報告書を作成させた。第二の現在の危機委員会のメンバーが中心となったチームBは、ソ連の能力と意図について、CIAの通常の「チームA」が作成したものよりもかなり悲観的な評価を作成した。その後、ジョージ・HW・ブッシュCIA長官はチームAに対し、「草稿を大幅に改訂(substantially revise its draft)」し、「全ての重要な点でチームBの立場と一致する評価」を作成するよう命じた。1983年のCIAの再評価によると、この出来事が、ソ連の脅威を誇張した一連の扇動的な情報報告書の土台を作ったという。

同様に、カーター大統領は現在の危機委員会メンバーをPRM10と呼ばれる世界戦略レヴューへの参加に招き入れることで、タカ派の批判者を取り込もうとした。また、カーター大統領は現在の危機委員会の幹部メンバーをホワイトハウスに招集し、政権の軍備管理への攻撃を控えるよう訴えた。その見返りとして、カーター大統領はメンバーに対し、ズビグニュー・ブレジンスキー国家安全保障問題担当大統領補佐官とハロルド・ブラウン国防長官への非公開の面会を約束した。

しかし、現在の危機委員会が「幻想に基づく政策を追求し、ソ連が権力と帝国を拡大する一方で、我々は漂流し、不確実な状況に陥っていた(Pursuing a policy built on illusion, we have been adrift and uncertain while the Soviet Union expanded its power and empire)」と警告する中、保守派からの批判は消えなかった。

SALT II条約をめぐる激しい論争が繰り広げられた。第二の現在の危機委員会のメンバーは連邦上院委員会でSALT IIに反対する証言を行い、479件ものテレビ・ラジオ番組、記者会見、公開討論、有力者への説明会、演説に参加した。委員会は20万部のパンフレットを配布した。批准の見込みが薄れると、カーター大統領は連邦上院での審議から条約を撤回した。元国務長官サイラス・ヴァンスは次のように述べた。「現在の危機委員会がSALTの弱体化に大きく関与していたことは疑いようがない」。

現在の危機委員会の第3期は2004年に誕生し、「アメリカ国民と自由を尊ぶ何百万もの人々の安全を脅かす過激イスラム主義者」に対抗し、アメリカ国民を結集させるという使命を掲げた。100人を超えるメンバーの多くは、イラク戦争の根拠構築に大きな役割を果たした「新アメリカ世紀プロジェクト(the Project for the New American CenturyPNAC)」と密接に連携していた。

このグループの最新版(第4)である「現在の危機委員会:中国(the Committee on the Present Danger: ChinaCPDC)」は、2019年4月9日にワシントンDCで開催された記者会見で発表され、テッド・クルーズ連邦上院議員、ニュート・ギングリッチ元連邦下院議長、そしてトランプ大統領の元大統領顧問であるスティーヴ・バノンが発言した。CPDCは、2011年から2017年にかけて国防予算が横ばいだった時期を経て、中国に対する強硬な政策と持続的な軍備増強に対する政治的支持を確立することを目指している。

CPDCは、中国の指導者たちが「世界覇権(global hegemony)」への道を切り開くために、「アメリカを弱体化させて最終的には打ち負かし(weaken and ultimately defeat America)」、「西側諸国の民主政治体制を転覆させようとしている(subvert Western democracies)」と主張している。「数十年にわたるアメリカの誤算、不作為、そして宥和政策(decades of American miscalculation, inaction and appeasement)」の後、CPDCはアメリカに対し、「国家権力のあらゆる手段を動員(mobilizing all instruments of national power)」してこの課題に立ち向かうよう求めている。中国指導部との妥協を求める人々に対して、CPDCは「共産党が国を統治する限り、中国との共存の希望はない(no hope of coexistence with China as long as the Communist Party governs the country)」と警告している。

●脅威を過剰に売り込むことの危険性(The Danger of Overselling Threats

中国の台頭がもたらす困難な課題にもかかわらず、ホワイトハウスとCPDCから発せられる反中国キャンペーンは、過去の恐怖煽動と比較しても依然として誇張されすぎている。今日、中国がもたらす軍事的・イデオロギー的脅威は、旧ソ連がもたらした脅威と比べれば取るに足らないものであり、中国はかつてのソ連よりもはるかに深く世界経済と国際機関に統合されている。中国は革命の輸出(to export revolution)や既存の国際秩序の転覆(overturn the existing international order)などではなく、むしろその秩序の改革とその中での地位と影響力の拡大(reform of and greater status and influence within that order.)を目指している。中国の台頭は誇張されているが、内外における課題は過小評価されている。一方、アメリカ自身の継続的な強みは、あまりにも過小評価されがちである。最後に、冷戦時代とは対照的に、アメリカの同盟諸国がアメリカに倣って、中国を弱体化させ封じ込めようとする野放図な試みに走る可能性は低い。

しかし、政治的に見れば、再び「国を恐怖に陥れる(scare hell out of the country)」ような試みは完全に理にかなっている。軍事費増額を主張する強硬派は、国民の外的脅威に対する認識を増幅させることで国内の支持を得ている。

しかし、こうした定期的な恐怖キャンペーンは真の危険をはらんでいる。最も明白なのは、国際紛争を不必要に悪化させることだ。脅威を誇張するレトリックは、たとえ国内向けに意図されたものであっても、ライヴァル諸国の恐怖を煽り立てる可能性がある。さらに、他国を悪者扱いするレトリックは、妥協が可能な具体的な利益相反(conflicts of interest)という対立の構図を、解決がはるかに困難なイデオロギー対立へとすり替えてしまう。

さらに、国民が完全に動員されると(fully mobilized)、大統領が都合よく恐怖を和らげる必要があると判断したとしても、その恐怖を和らげるのは困難になり得る。冷戦(the Cold War)を善と悪の闘争(a struggle between good and evil)と定義したトルーマン大統領は、中国国共内戦における共産党の勝利をアメリカは阻止できないと現実的に結論づけたことで、反逆罪(treason)の非難を浴びた。同様に、共産党の白熱した言辞は、ジョセフ・マッカーシー連邦上院議員が赤狩り(a Red Scare)を仕掛け、最終的にアイゼンハワー政権をも標的にすることで政治的影響力を獲得する土台を作った。

現在のところ、アメリカ国民が中国との二元論的な(マニ教的)闘争(a Manichean struggle with China)に賛同する用意があるという兆候はほとんど見られない。しかし、共産党の歴史が示唆するように、警鐘はしばしば効果を発揮する。最近の米中関係の冷え込みは、米中両国国民に不利益をもたらす深刻な冷え込みへと転じる可能性がある。

※デイヴィッド・スキッドモア:アメリカ合衆国アイオワ州デモインにあるデューク大学政治学部教授。

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 最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』のテーマである「新・軍産複合体」について、「単なる思いつき、妄想だろう」という言葉をかけられた。しかし、それは違う。「単なる思いつき、妄想」ではない。『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム、2021年)から、新・軍産複合体について調査・分析を始めた。新聞や雑誌の記事を中心にした一次資料を渉猟し、「何が起きているのか」「どうしてそのようなことが起きているのか」ということを念頭に調べ上げた結果である。今回ご紹介する記事のタイトルには「新しい軍産複合体(the New Military-Industrial Complex)」という言葉が使われている。この記事は2024年の記事であり、私がこの記事の真似っこをしたということは言えない。「思いつき、妄想」だと思われる方には、是非これまでの本と一緒に、最新刊も読んでもらいたい。

 下記論稿では、私のこれまでの主張が裏付けられる内容が描かれている。アメリカ軍がシリコンヴァレーのテック産業のパランティア・テクノロジーズ社(ピーター・ティール)やアンドゥリル・テクノロジーズ社(パルマー・ラッキー)との関係を深めているということが強調されている。「米国防総省は、各種の無人システムに数十億ドルを費やす構えであり、その過程でハイテク・スタートアップ企業が新たな富を得ることが期待されていることから、シリコンヴァレーを中心とした新たな軍産複合体の出現を見ることができる。当然ながら、退役軍人が有利な職を求めてシリコンヴァレーに集まり、プライベート・エクイティ企業が新たな興味関心に資金を注いでいる」と書かれている。

 結論部は私と意見が異なるが、このように、新・軍産複合体出現は既に重要な事象となっている。最新刊で私は様々な角度から分析をし、このことを日本に伝える努力を行った。是非お読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

新しい軍産複合体に遭遇する(Meet the New Military-Industrial Complex

-米国防総省とシリコンヴァレーの同盟が、第三次世界大戦で中国を打ち破るためにAIをどのように活用しているか。

マイケル・T・クラレ筆

2024年4月22日

『ザ・ネイション』誌

https://www.thenation.com/article/world/ai-military-power-war-china-taiwan-silicon-valley/

2024年3月5日、カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトン海兵隊基地のブリーフィング用テントの中を覗き込むと、巨大なフロアスクリーンに、西太平洋を舞台にした「赤」(侵略側)と「青」(防衛側)の部隊の一進一退の攻防が映し出されていた。アメリカの「同等の能力を持つ敵対国(near-peer adversary)」(中国を意味する一般的な代名詞)とされる赤軍の空・海兵隊は、ワシントンの同盟諸国が占領する「青」の領土の奥深くまで侵入したが、青軍の戦闘部隊によって撃退または破壊された。太平洋における第二次世界大戦の現代化版としか言いようのないシナリオでは、青の軍隊は空と海からの攻撃を水陸両用攻撃で補強し、演習開始時に占領した島々から赤軍の侵略者を追い払った。

私がコンピュータの生成したこれらの交戦を見ている間、実際のアメリカ軍と同盟諸国の軍部隊は、赤軍と青軍の両方の役割を演じ、ハワイからテキサスまでの地域で空、海、地上の作戦行動を行った。これらの模擬戦闘は、艦船、飛行機、戦車が互いにロケット弾やミサイルを撃ち合うという、大国間の重要な戦闘で予想されるようなものだった。しかし、この演習は、プロジェクト・コンヴァージェンス・キャプストーン4(Project Convergence Capstone 4PCC4)として知られるこの演習の主な目的は、従来の火力ではなく、むしろ人工知能(AI)、自動データ配信、その他の先端技術を駆使して、アメリカ軍であれ同盟軍であれ、バラバラの戦闘ユニットをまとめ、戦闘での成功を確実にすることである、という点で、ほとんどのアメリカの訓練作戦とは一線を画していることを私は知った。アメリカ陸軍はPCC4について発表した際に次のように述べた。「将来の統合(すなわち多軍種)および多国籍軍の戦闘員は、将来のハイパーアクティブな戦場で勝利するために、機械速度で運用される統合能力を必要とする。キャップストーン4は、こうした必須能力を開発するための学習キャンペーンにおける継続的な実験の最高峰となる」。

アメリカ陸軍はPCC4を発表する際に次のように発表した。「将来の統合軍(すなわち、多軍種)および多国籍軍の戦闘員は、将来の超活発な戦場で勝利するために、機械スピードで動作する統合能力を必要とする。キャップストーン4は、そのような必要不可欠な能力を開発するための学習キャンペーンにおける永続的な実験の頂点となる機会となる」。

プロジェクト・コンヴァージェンスは、次世代部隊の兵器と戦術を設計するために、2018年に設立された陸軍フューチャーズ・コマンド(司令部)によって、ほぼ毎年実施されている。最初のイヴェントであるプロジェクト・コンヴァージェンス2020(Project Convergence 2020PC20)は、アリゾナ州ユマ試験場で開催され、500名の陸軍隊員が参加した。その後の反復ごとに複雑さが増し、2021年には統合軍種(プロジェクト・コンヴァージェンス2021、Project Convergence 2021PC21)、2022年には多国籍イヴェント(PC22)となった。(2023年には演習は実施されなかった。)

今年は、アメリカ軍5軍(陸軍、海軍、空軍、海兵隊、宇宙軍)のほか、オーストラリア、カナダ、フランス、日本、ニュージーランド、イギリスの軍から4000名が参加し、これまでで最も手の込んだ複雑なものとなった。PCC4は、4週間にわたる2つのフェーズで行われた。キャンプ・ペンドルトンを中心に、2月23日から3月3日まで行われたフェーズ1では、「インド太平洋における海上シナリオ(maritime scenario in the Indo-Pacific)」に焦点が当てられ、主に航空戦と海上戦が行われた。カリフォルニア州フォート・アーウィンにある陸軍のナショナル・トレーニング・センターで実施されたフェーズ2は、3月11日から20日まで行われ、無人兵器システムの広範囲な使用を含む陸上戦闘演習に重点が置かれた。その多くは一般公開されなかったが、私は3月5日にキャンプ・ペンドルトンに招待された約20人の報道陣の1人として、一連のブリーフィングと武器のデモンストレーションを受けた。

陸軍フューチャーズ・コマンド副司令官のロス・コフマン中将は、フェーズ1終了後の35日、「今年、私たちは脅威の範囲を(PC22の)10倍に拡大した」と報道陣に語った。通信とデータ共有を支援するために2つのマルチドメイン任務部隊が投入されたことを指摘し、「インド太平洋シナリオにおいて、かつてない規模で初めて効果的にデータを移動できるようになった」と主張した。

キャンプ・ペンドルトンのパシフィック・ビューズ・イヴェントセンターで講演したコフマン中将は、PCC4によって構築されたデータ共有ネットワークが電子的な「橋渡し」として機能し、統合部隊のあらゆる部隊間で戦闘情報を瞬時に共有できるようになったと説明した。コフマン中将は「この橋渡しによって、複数のセンサーから複数の射撃装置に情報を渡すことが可能になった。陸軍のセンサーが各軍種の射撃装置にデータを渡し、各軍種のセンサーが他の全ての軍種に同じデータを渡すことが可能になった」と述べた。

広大な太平洋に散在する異なる戦闘部隊間で迅速に情報を共有できることは、将来中国(あるいは当時の言葉で言えば「同等の能力を持つ敵対国」)との紛争において、アメリカまたはその同盟諸国が勝利を確実なものにするために不可欠だと言われていた。想定される敵国は膨大な数の艦船、航空機、ミサイルを保有しているため、アメリカ主導の連合軍は、これらの部隊を迅速に特定し、深刻な被害を与える前に、最適な位置にいる「シューター(shooters)」を用いて無力化する必要があると説明された。迅速な行動を取らなければ、アメリカ、またはその同盟国に多大な損失をもたらし、勝敗の定まらない長期の消耗戦に陥る可能性があると主張されていた。

CJADC2と「レプリケーター」(CJADC2 and “Replicator”

PCC4ネットワークは、プロジェクト・コンヴァージェンスの第1フェーズにおいて、標的データや攻撃命令の伝送に使用されただけでなく、米国防総省の統合全領域指揮統制システム(the Pentagon’s Combined Joint All-Domain Command and ControlCJADC2)のモデルとしても活用された。CJADC2は、センサー、データリンク、自動戦闘管理システムを駆使し、アメリカ軍の全部隊を連携させる精巧なネットワークだ。米国防総省のエリック・パホン報道官は35日に次のように説明した。「CJADC2は、現代戦におけるデータの量と複雑さに対応し、敵を決定的に打ち負かすために不可欠な戦闘システムだ。CJADC2により、統合部隊は自動化、人工知能、予測分析、機械学習を用いて、戦場全体の情報を迅速に『感知(sense)』し、『理解(make sense)』し、『行動(act)』し、回復力と堅牢性を備えたネットワーク環境を通じて、情報に基づいたソリューションを提供できるようになる」。

現在までのところ、CJADC2のコスト、構成部品、請負業者など、詳細な情報はほぼ公開されていない。キャスリーン・ヒックス国防副長官は昨年(2023年)8月、このプロジェクトに関する異例の公開討論で、アメリカの防衛関連請負業者の代表者たちに対し、「これは、アメリカの中核的な戦闘機能である指揮統制を進化させる、概念、技術、政策、そして人材の集合体だ」と述べた。ヒックス国防副長官はさらに、「CJADC2では、あらゆる領域にわたってセンサーを統合し、データを融合するとともに、最先端の意思決定支援ツールを活用して、ハイテンポな作戦を可能にする」と続けた。

米国防総省高官たちがCJADC2をいかに重視しているかは、ヒック国防副長官が3月4日にキャンプ・ペンドルトンを訪問し、プロジェクト・コンヴァージェンスとCJADC2技術の試験を視察したことからも明らかになった。米国防総省が発表した報告書によると、ヒック国防副長官は各軍の歴史的に互換性がなかった通信ネットワークを、複数の軍種が共有するネットワークに統合する取り組みの進捗状況について、上級将校たちと協議した。これは膨大な作業であり、多くの「難題(challenges)」を突きつけていると言われている。

キャンプ・ペンドルトン滞在中、ヒック国防副長官は軍が自律型兵器システム[autonomous weapons systems](人間の操縦者ではなく、主にAIによって操作される戦闘装置)を戦闘体制に統合する取り組みの進捗状況についても、より深く理解しようと努めた。2023年8月に国防産業協会(the National Defense Industrial AssociationNDIA)の会員に向けた演説で、ヒック国防副長官は、将来、中国人民解放軍(PLA)との紛争において、アメリカ軍が勝利するためには、こうしたシステムの開発と配備が不可欠であると明言した。人民解放軍が従来の戦闘力尺度[conventional measures of power](彼女の言葉を借りれば、「より多くの艦船、より多くのミサイル、より多くの人員」)において優位に立っていることを考えると、アメリカ軍は将来の戦場に多数の「全領域消耗型・自律型」兵器(“all-domain attritable autonomous” weapons)、つまりあらゆる種類の、低コストで使い捨て可能な自動操縦ドローンを投入する必要がある。ヒックス国防副長官は、「人民解放軍の圧倒的な戦力には、私たち自身の圧倒的な戦力で対抗するが、私たちの戦力は計画を立てることも、攻撃することも、相手を打ち負かすことも、より困難になるだろう」と断言した。

しかし、ヒックス国防副長官も認めているように、米国防総省の既存の調達システムは、長年、大手兵器メーカーから艦船、航空機、戦車といった「高額」品(“big-ticket” items)を購入することに重点を置いてきたため、この種の多くのハイテク機器の取得に対応できる体制が整っていない。ヒックス国防副長官は、既存の軍産複合体の主な柱であるこれらの大企業は、それぞれの仕事は得意だが、AI主導の「消耗型・自律型」兵器(“attritable autonomous” weapons)を迅速に大量に生産するための技術的および起業家的なスキルを持ち合わせていないと指摘した。むしろ、米国防総省は、必要な機能を提供できるようにするために、多くがシリコンヴァレーにルーツを持つスタートアップ企業に、より依存する必要があるだろう。ヒックス国防副長官は、そうした機能へのアクセスを獲得することが「レプリケーター(Replicator)」の主目的であると断言した。ヒックス国防副長官は昨年(2023年)8月に次のように明確に述べた。「アメリカは依然として、大規模で精巧で、高価で、数が少ないプラットフォームから利益を得ている。しかし、レプリケーターは、小型でスマート、安価で多数のプラットフォームを活用することによって、あまりにも遅いアメリカ軍の技術革新の移行を活性化させるだろう。」

レプリケーターは新しい取り組みではあるものの、連邦議会から強力な支持を得ており、2024年度国防予算案では最終盤で、2億ドルが計上され、2025年度予算ではさらに5億ドルの予算が約束されている。しかし、レプリケーター・プログラムが本格化するにつれて、今後さらに数百万ドル、最終的には数十億ドル規模の資金が投入される可能性が高いため、アンドゥリル社(Anduril)、パランティア社(Palantir)、シールドAI社(ShieldAI)といった防衛関連のハイテク・スタートアップ企業の多くが、プロジェクト・コンヴァージェンスなどの軍事演習に自社製品を貸し出し始めており、これが長期的な調達契約につながることを期待している。

例えば、PCC4のフェーズ2では、青軍の歩兵部隊が複数のアンドゥリル・ゴーストXAnduril Ghost-X)監視ドローンを使用し、赤軍の要塞を偵察し、その後の地上攻撃に備えて位置をマークした。約90cmのローターを備えた、昆虫のような洗練されたデザインのゴーストは、25キロの航続距離を持ち、様々なセンサーシステムを搭載できる。 PCC4では、ハイヴ(Hive)無人航空システム(unmanned aerial systemUAS)も展示されていた。これは、自律的に群れをなして飛行するように特別に設計されたドローンで、ドローン群は互いに連携して動き、様々な弾薬で敵の防衛網を圧倒することができる。フォート・アーウィンで試験されたハイヴ・ドローンは、運用を監督する陸軍関係者から聞いたところ、「人間の操縦者から非常に限定的な制御を受けた後、3機以上のUASプラットフォームが群れをなして任務を遂行する、攻撃用の小型無人航空機システムのプロトタイプ」ということだ。

コフマン中将によれば、今年のプロジェクト・コンヴァージェンスでは、無人兵器システムの使用が前回の10倍に増加したということだ。しかし、ヒックス国防副長官と同様に、コフマン中将やPCC4の他の幹部たちも、必要な技術は国防総省の軍需研究所やボーイングやロッキード・マーチンといった伝統的な防衛請負業者から得られるものではなく、必要な専門知識を持つアンドゥリルやパランティアのようなスタートアップ企業から得なければならないと指摘した。ランディ・A・ジョージ陸軍参謀総長は、35日にキャンプ・ペンドルトンで行われたブリーフィングで、「産業界、特にデータネットワークや無人システムにおいては、多くの点で商業技術がリードしている」と述べた。

米国防総省は、各種の無人システムに数十億ドルを費やす構えであり、その過程でハイテク・スタートアップ企業が新たな富を得ることが期待されていることから、シリコンヴァレーを中心とした新たな軍産複合体の出現を見ることができる。当然ながら、退役軍人が有利な職を求めてシリコンヴァレーに集まり、プライベート・エクイティ企業が新たな興味関心に資金を注いでいる。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の最近の調査によると、少なくとも50名の元米国防総省および国家安全保障担当の政府高官たち(そのほとんどが過去5年以内に退官)が現在、防衛関連のヴェンチャー・キャピタルやプライベート・エクイティ企業で働いている。その中には、トランプ政権下で国防長官を務め、現在はヴェンチャー・キャピタル企業レッドセル社(Red Cell)の代表を務めるマーク・T・エスパーもいる。エスパーは対ドローン技術メーカーのエピラス社(Epirus)など、軍事関連のスタートアップ企業に投資している。また、元陸軍長官ライアン・マッカーシーは、在任中にフューチャーズ・コマンドの設立に尽力し、現在は防衛関連投資を行うヴェンチャー・キャピタル企業の代表を務めている。

●私たちはどこへ向かうのか?(Where Are We Headed?

プロジェクト・コンヴァージェンス・キャップストーン4は、アメリカの現在の政治・軍事・技術体制とその進化の様相を完璧に縮図したものと言えるだろう。3週間にわたるこの演習から多くの知見を得たが、特に際立った点が3つある。

第一に、アメリカ軍は中国との戦争への備えに完全に固執している。これは、米国防総省の正式なドクトリンにも、軍高官たちの言動にも明らかだ。例えば、PCC4のシナリオは、中国が西太平洋にある友好的な島嶼国(台湾? フィリピン?)を攻撃し、その後、アメリカだけでなくオーストラリア、日本、ニュージーランド、イギリスを巻き込んだ地域規模の紛争が発生するという仮想的なものだった。この点を念頭に、この演習の主目的は、これらの部隊間の通信と戦闘行動の連携をテストすることだった。「世界のどこで戦おうとも、私たちは共同パートナーと戦うことになると承知している」とジョージ陸軍参謀総長は、3月5日のブリーフィングで、「あらゆるセンサー、あらゆる射撃装置に頼り、それらを連携させる必要がある」と述べた。

キャンプ・ペンドルトンで私が話し相手になった人々は、制服を着た軍人であろうと民間請負業者の代表であろうと、中国との戦争に備えることばかりに注力することの起こりうる結果について、ほとんど懸念を抱いていないようだった。陸軍フューチャーズ・コマンド副司令官のコフマン中将は、「私たちは戦争を回避することを望んでいる。しかし、もし要請があれば、我が国の男女は同盟諸国やパートナーと共に戦うだろう」と断言した。この一文、オーストラリア、ニュージーランド、そしてPCC4に代表される他の国々が、将来中国と戦争する場合には参加することを前提としている、と、PCC4での(模擬)作戦の地域規模を合わせると、近代兵器を用いた第二次世界大戦のようなシナリオを目の当たりにしているという結論に至るのも無理はない。これがあらゆる陣営にもたらす甚大な破壊を考えると、両交戦国が敗北を回避するために核兵器の使用を放棄するという保証はどこにあるのだろうか? プロジェクト・コンヴァージェンスでは、そのような保証は全く与えられなかった。

第二に、第一の点に密接に関連することだが、アメリカ政府関係者たちは、将来のいかなる紛争においても、中国を打ち負かすためにAIやその他の先端技術を利用することに絶対の決意を抱いているという観察である。これはレプリカント・イニシアティブの最大の目的であり、PCC4の戦闘シナリオの基本的な組織原理でもある。私は何度も何度も、アメリカ軍は将来の米中戦争で「情報支配(information dominance)」を達成するために先端技術を採用しなければならず、それによってアメリカ軍と同盟軍は、中国の脅威が連合軍の資産に大きな損害を与える前に察知し、攻撃できるようにならなければならないと聞かされた。

しかし、ここでもまた、人工知能や関連技術に過度に依存することの危険性についてはほとんど耳にしなかった。ChatGPTや他の「生成AIgenerative AI)」プログラムの作成に使われる高度なアルゴリズム(the sophisticated algorithms)は、驚くべき結果を達成することができる一方で、業界関係者に「幻覚(hallucinations)」と呼ばれるような、誤った、誤解を招く結果を生み出すことでも知られている。軍事システム、特に戦闘部隊の指揮統制に関わるシステムを制御するために、これらやその他の高度なAIプログラムに頼ることは、システム不全の重大なリスクをもたらし、兵士の命を危険に晒したり、意図しないエスカレート事件を引き起こしたりする可能性がある。ヒックス国防副長官をはじめとする政府高官たちは、この問題について懐疑的な人々を安心させようと、重要な戦闘に関する決定に関しては、人間は常に「ループの中にいる(in the loop)」と主張している。しかし、私がペンドルトンで経験したのは、AIと自律性の軍事利用を何としてでも加速させようとする動きであり、そのようなシステムに対する人間の支配力が急速に低下していることを示唆していた。

最後に、先に示唆したように、米国防総省とシリコンヴァレーの同盟に基づく新たな軍産複合体の出現を目の当たりにしている。この変化がアメリカの国内政策と外交政策にどのような影響を及ぼすかはまだ分からないが、少なくとも、議会に対する軍事費引き上げの圧力が強まり、中国との戦争への備えが一層重視されることになるだろう。伝統的な兵器メーカーと同様、新たなハイテク企業家たちも、議会で自分たちの大義を押し通すために多くのロビイストを雇い、その一方で多くの人々が北京に対抗する必要性を公に語っている。

私の見解の一部は、米メディアにも掲載されているが、3つ全てがこのように関連づけられている訳ではなく、また、それらがもたらす危険性についても十分な評価がなされている訳ではない。しかし、明らかなように、これらの動向はアメリカおよび国際社会の安定にとって重大なリスクを伴うため、私たちは細心の注意を払い、場合によっては重大な規制措置を求める必要がある。特に、AIと自律技術の戦争への拙速な適用については、より一層の懸念を表明し、いかなる状況下においても人間があらゆる戦争遂行システムを完全に制御し続けるべきであると主張しなければならない。オーストリア、フランス、ドイツ、そして他の多くの国々が主張するように、そのような制御が保証できない自律型兵器は全面的に禁止されるべきだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 


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