古村治彦です。
ウクライナ戦争は5年目を迎えている。状況が大きく変化していないが、ウクライナ側がドローン攻撃をロシア国内でも行い、一定の成果が出ている。一方で、ロシア側もキエフに対する攻撃を強めるなど状況は膠着しているが、攻撃は依然として止まず、双方に被害が出ている。ウクライナ戦争はウクライナ側の領土の譲歩とNATO不参加を条件にして停戦に向かうことが考えられるが、ヨーロッパ諸国はアメリカが控えている支援を肩代わりして、ウクライナへの支援を増加させており、そのことが停戦を遠ざけているという皮肉な状況になっている。ウクライナは自国の力だけでは戦争を継続することができない。ヨーロッパ諸国(主にドイツ)が資金と武器を援助しなければどうしようもない。しかし、ヨーロッパ諸国はロシアに致命的な打撃を与えることができる強力な武器をウクライナに与えていない。それは、そのようなことをすれば、ロシアから攻撃対象にされてしまうと分かっている。あくまで戦争が継続できる範囲で、ロシアに大打撃を与えないようにして、支援を行っている。そして、実際に被害に遭い、命を落としているのは、ウクライナとロシアの人々である。ヨーロッパ諸国は狡猾な立ち回りをしている。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は第二次政権発足時に、即時のウクライナ戦争停戦を主張し、ウクライナへの支援を控える形で停戦を促そうとした。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領をホワイトハウスに呼んで、叱りつけるような形で停戦を説得した。しかし、その後はゼレンスキー大統領を評価し、ウクライナへの支援を再開している。一方で、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領とは首脳会談を行い、ウクライナ戦争停戦への働き掛けを行った。プーティン大統領に対して、トランプ大統領は停戦を促すことができる立場にある。問題は領土面での譲歩である。ウクライナはクリミア半島の再奪取を求めているが、これはもはや不可能であり、現在のウクライナ東部のドンバス地方の独立(ロシアの影響圏の編入)が焦点となる。ウクライナがウクライナ東部の回復を見通せるほどの軍事的な能力を持っているならばまだ粘っても好機を見出す可能性はあるが、ヨーロッパ諸国もアメリカもそれを行えるだけの資金も高性能の武器もウクライナに与える意思はない。ただ、ダラダラと戦争を継続させる、ロシアの出血を強要するということが目的となっている。アメリカはイラン戦争も抱えており、ウクライナに力を割くことも厳しい状況だ。
ここでトランプ大統領がウクライナ戦争を停戦に導くことに成功すれば、現在の厳しい状況から挽回できる。支持率は上昇し、11月の中間選挙の見通しも明るくなる。トランプ政権としてもそのことは分かっているので、何らかの動きは行っているだろう。ウクライナ戦争停戦となれば、アメリカはより動きやすくなる。そして、世界にも良い影響を与える。そのような「奇跡」を起こすこともまた政治家の責務ということになる。トランプにそれだけの神通力が残っているかどうか、一種の試練の夏となるだろう。
(貼り付けはじめ)
ウクライナはトランプにとって大きな勝利となるかもしれない(Ukraine Could
Be a Big Win for Trump)
-ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は弱っている。今こそ戦争を終わらせるよう彼に強く求めるべき時だ。
ファリード・ザカリア筆
2026年6月5日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/06/05/ukraine-russia-war-trump-putin-missiles-diplomacy-deal-territory/
ドナルド・トランプ大統領は、国内での支持率急落と自らが引き起こした海外での泥沼化した戦争という二重の困難に直面している。しかし、彼にはこの状況を覆す好機が訪れている。その舞台は中東地域ではなく、そこから1000マイル以上離れたヨーロッパ、すなわちロシアとウクライナの間で血なまぐさい戦争が続く地である。ここ数カ月の間にこの紛争の情勢は変化し、ついに和平への道が開かれつつある。
ウクライナは現在、経済規模で約12倍、人口で4倍以上という強大な敵国との戦争の5年目を迎えている。国家として存続し続けていること自体、現代における軍事的・国家的な業績と言えるだろう。しかし今や、キエフ(ウクライナ)は単に生き残っているだけではない。戦争の巣額そのものを変えつつある。
長年にわたり、ロシアの残酷なまでの強みは、その戦い方が巧みだったことにはなかった。むしろ、拙劣な戦い方をしても、その代償に耐え抜く力があったことにある。ロシア軍は、徴集兵、受刑者、少数民族、辺境の貧困層、その他国家が「戦火の炉(the furnace)」へと放り込めるあらゆる人々を動員してきた。膨大な数の兵士を失いながらも、それを上回る兵員を補充し続け、時には毎月3万人以上を新たに投入することさえあった。
その構図は崩れ始めている。ロシアは、訓練を受けた兵士を補充する能力を上回るペースで損失を被っているようだ。莫大な犠牲を払って進めてきた攻勢も、今や牛歩の如く停滞している。かつてはドンバス全域の制圧を目指していたロシア軍だが、現在の進撃はマイル単位ではなく、わずか数メートル単位にとどまる。戦況分析によれば、5月のロシア軍による領土獲得は皆無に等しく、むしろ一部の地域を失った可能性さえある。かつては大きな強みであったロシアの広大さが、今や弱点となっている。守るべき兵站線や防衛対象が増え、攻撃に対して脆弱な領域も拡大しているからだ。
一方のウクライナは、物量に頼るのではなく、スピード、情報力、そして創意工夫で対抗している。ウクライナは強力なドローン産業を築き上げており、その多くは国産である。今年は700万機以上のドローンを生産する計画だ(比較として挙げれば、アメリカは2027年末までに約30万機を生産する計画だ)。ウクライナは中距離攻撃を駆使し、前線後方のロシア軍の兵站や指揮所を攪乱している。また、長距離ドローンやミサイルを用いて、ロシア国内の製油所、石油貯蔵施設、飛行場、レーダー基地、軍需工場を攻撃している。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、もはや戦争をウクライナ国内だけに封じ込めておくことはできない。先月モスクワの赤の広場で行われた「戦勝記念日」の式典でさえ、ウクライナのドローンによる脅威の影で規模が縮小されたほどだ。
しかしながら、ウクライナが容易な勝利を目前にしているということではない。ロシアは依然として、ロシアのミサイルやドローンでウクライナの都市を激しく攻撃し続けている。キエフではパトリオット迎撃ミサイルの不足が続いており、兵員不足の問題も解消されていない。さらに、汚職スキャンダルや強硬な徴兵措置(harsh conscription)によって国内政治も緊張を強いられている。
しかし、戦況の勢いは変化した。その変化の重要な要因の1つはヨーロッパだ。今年、この戦争において最も過小評価されている成功例は、アメリカが支援を控える中でヨーロッパがその役割を担ったことかもしれない。ヨーロッパによる支援は今や、アメリカによるキエフへの支援激減分をほぼ補っている。ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相による妨害が、オルバンの敗北によって、解消されたことで、ヨーロッパ連合(EU)の900億ユーロ規模の融資パッケージも動き出しつつある。ヨーロッパは、この戦争の主導権を握るようになった。
ここでトランプの出番となる。ウクライナに対するトランプのこれまでの外交は、本来持っていた交渉力を無駄にしてきた典型例と言える。トランプはウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を激しく非難し、ウクライナ側の譲歩(concessions)を交渉の出発点として扱い、プーティンに「西側諸国が根負けするのを待てばよい(he could wait the West out.)」と思わせるような状況を作り出した。
しかし、トランプにはヨーロッパのどの指導者も持ち合わせていない「切り札(tools)」がある。彼は、キエフへの大規模なアメリカ軍事支援の再開をちらつかせたり、ロシア産石油や「影の船団(the shadow fleet、制裁逃れを行うタンカー船団)」に対する制裁を強化したり、ウクライナへの供与を前提としたNATO諸国へのアメリカ製兵器の売却を加速させたりすることができる。その上で、和平合意という形でプーティンに「出口(exit ramp)」を提示できるかもしれない。忘れてはならないのは、ロシアがこの戦争で35万人から50万人の兵士を失っており、新たな独立系調査によれば、この戦争は今や国内で極めて不人気なものとなっているという事実だ。
皮肉なことに、トランプの親ロシア的な姿勢こそが、こうした合意をまとめる上で有利に働く可能性がある。プーティンは、トランプが長年にわたりキエフに対して懐疑的であり、モスクワに対しては寛容な態度を取ってきたことを知っているからだ。もちろん、ウクライナやヨーロッパ諸国がその合意を受け入れるためには、それが真剣かつ実効性のあるものでなければならない。ウクライナは領土の譲歩に応じる用意があるべきだが、新たな国境線は防衛可能なものでなければならない。また、ウクライナを西側陣営にしっかりとつなぎ止めるような、確実な安全保障の保証も必要だ。この戦争の本質はドンバス地方をめぐる争いではない。ウクライナが、自らの未来を自由に選択できる主権国家であり続けられるかどうかが問われている。
プーティンが勝利の条件として描いていた「ウクライナが弱い」と「西側諸国が疲弊するだろう」という2つのシナリオはどちらも崩れ去った。これこそがトランプにとっての好機である。彼は、第二次世界大戦以来最悪のヨーロッパにおける戦争を終結させ、西側陣営におけるウクライナの地位を確保し、西側を打ち負かして帝国を再興しようとする修正主義的な大国を抑止する役割を果たせるかもしれない。それは、トランプがこれまで中東地域などで誇示してきたような、単なる写真撮影のための見せかけの停戦とは異なり、真の功績となるだろう。それこそが、真に「歴史的」と呼ぶにふさわしい合意となるはずだ。
※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』











