古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

タグ:ウラジミール・プーティン

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争が始まって10カ月が経過している。ウクライナ東部ではウクライナ軍がロシア軍を押し返しているということだが、地図を見れば、ロシア側がまだ東部を一定程度掌握している。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はウクライナの全国土の奪還を目指しているが、ルハンスク州、ドネツク州、クリミア半島を奪還するとなれば、大変な犠牲を払うことが必要とする。

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 ロシア国内で無人機(ドローン)による攻撃が複数回起きているが、これはウクライナによる攻撃だとされている。ロシア国内にウクライナの協力者、スパイが組織として存在することが分かる。ウクライナのロシア占領地域では、退役軍人会がロシアに対する抵抗運動を組織しているそうだ。そして、一般市民たちも抵抗組織に参加し、協力しているそうだ。こうした人々は、日常生活を送っているふりをしながら、ロシア軍の情報を収集し、それを秘密のネットワークを通じてウクライナ政府に送っているようだ。また、詳しくは書かれていないが、退役軍人会はウクライナの情報当局ロシア軍に対する協力者やロシア側のスパイを摘発するSBUに協力しているようだ。

 ウクライナ国民の勇気ある行動は称賛に値する。ウクライナ国民の抵抗を成果につなげる力がウクライナ政府にないというところが残念だ。ウクライナ政府はロシア政府との停戦交渉を拒否しているが、ウクライナ国民の抵抗が継続している間に、できるだけ自分った地に有利な条件で交渉を行い、まとめるということが重要だと私は考える。このことを私は戦争勃発直後から主張してきた。そして、これからも主張し続ける。ウクライナ国民の努力と勇気を無駄にしてはいけない。
 この記事を書いているところで、日本語の記事で、ウクライナでは富裕層向けに徴兵逃れを行っている人間たちがいると報じられた。ウクライナは構造的に汚職が蔓延している国であり、そのためにEUに参加できないほどだ。そして、このように「地獄の沙汰も金次第」ということが起きる。ゼレンスキー大統領の国民総動員令、成人男性の出国禁止、野党の解体と財産没収などに対して、国民の側に大きな不満があることも分かる。このような国民の分断という不幸が続くと、ウクライナ国家自体が危機に晒されることになる。こうしたことを停めるためにも停戦が必要だと再度訴えたい。

(貼り付けはじめ)

ウクライナで徴兵逃れ横行 「富裕層にあっせん」

12/9(金) 15:44配信  共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/ace7445da6841fea3523120dbfca09e4d57a75b1

 ロシアの侵攻を受け、総動員令が出ているウクライナで、徴兵逃れが横行している。富裕層向けに、

兵役免除の証明書入手をあっせんする「脱徴兵ビジネス」に関与する20代男性が9日までに実態を明かした。男性は「武器を手にしたくない人に選択肢を提供している」と正当化するが、抜け穴拡大を恐れる当局は取り締まりに力を入れる。

 男性はウクライナ中部の医大生。仲介の依頼があれば、仲間の医師がいる徴兵事務所などで検査を受けてもらい、心臓病などを装った診断書を軍に提出。その後、1週間ほどで兵役免除の証明書、通称「ホワイトチケット」を入手できる。費用は68万~136万円程度。

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ウクライナ側にはロシア国境の裏側(ロシア軍占領地域)で活動する秘密のレジスタンスが存在する(Ukraine Has a Secret Resistance Operating Behind Russian Lines

-ウクライナの現代のパルチザンは占領を弱体化させるために静かに活動している。

ノーマ・コステロ、ヴェラ・ミロノヴァ筆

2022年11月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/21/ukraine-has-a-secret-resistance-operating-behind-russian-lines/

ウクライナ、キエフ発。キエフ中心部のにぎやかな通りで、黒いパーカーを着た背の高い男がカフェの外に立って、電子タバコを猛烈に吸っている。40代半ばの何の変哲もない男性は、これまでインタヴューを受けたことがなかった。それには正当な理由があった。退役軍人会(veterans associations)の委員長である彼の正式な肩書は、善良な公務員の役割のように聞こえるかもしれないが、ミハイロ(彼の安全を守るためにこの記事の目的で選択された別名)は、パレードやリボンのピン留めからはほど遠いものだ。

ミハイロの仕事は、敵の背後でウクライナのために秘密裏に戦う人々と協力することだ。ミハイロは、ロシア占領地域内のウクライナのパルチザンの主要な戦略家であり、組織者の1 人だ。「彼らが私を殺しても、私の代わりになる人は他にもたくさんいる」と彼はさりげなく言った。そして「私たちは適応し、より創造的にならなければならない。彼らは強いかもしれないが、私たちは頭脳を使う」と語った。

2月24日のロシアのウクライナ侵攻後、休眠状態にあった退役軍人協会が、占領域内でのウクライナ抵抗運動の生命線となった。彼らのネットワークは、ミハイロによれば、2月のロシアの本格的な攻撃の数ヶ月前に配置されていた献身的なヴォランティアに大きく依存していた。「2014年の際には、ロシア人はこれらの地域にとどまるつもりはないと言っていた。ある意味で、ウクライナ国家は準備をしていた」とミハイロは言った。彼は続けて次のように語った。「2014年の退役軍人はこれに参加していたが、今ではほとんど全員が軍隊に戻っている。私たちは、早期に打撃を受けることが分かっていた地域の人々に準備をさせていた。私たちの学校でさえ、私たちは子供たちを心理的に準備させていた」。

当初、政治家たちは、ウクライナの軍事および治安機関の内部の人々が発した大きな警報を無視し、差し迫ったロシアの攻撃に対して様子見のアプローチを取ることを志向した。

しかし、ミハイロのような人々によるロビー活動が成功した後、2021年7月にウクライナ政府は、ウクライナの防衛における民間人の役割を最大化するように設計された、国家抵抗の基本に関する法律を可決した。それは地域に領土防衛グループを設立し、これらの市民防衛グループをウクライナのより広範な治安および軍事機構と結びつけるのに役立たせた。この2月までに、民間人が全国の地域を守ることができるようにするために、武器や訓練を受けていない人々のために、緊急の配送センターが設立された。

ミハイロは、2月24日の攻撃の最初の衝撃の後、ウクライナ国民は、これらの地元の民間防衛ネットワークが互いにつなげ始めたと述べた。ミハイロは次のように語った。「攻撃初日、人々は頭の上からロケットが落下し、標的に対して、正確ではないミサイルが全て着弾したことでショックを受けた。最初の2日間のショックの後、抵抗する必要があることに人々は気付いた。彼らはそれぞれグループに集まり始めた」。

ミハイロのような組織者たちは、ドネツクやルハンスクで経験を積んだ退役軍人が多く、現在はキエフの軍や治安当局と連携している。彼らは当初、情報の流れを調整することに注力し始めた。何が攻撃されているのか、どこに武器が必要なのか、どうやって武器を手に入れるのか、といった情報を把握するのが仕事だった。占領下のスミやハリコフでは、ロシア軍との路上での戦闘が勃発し、防衛ネットワークは、時に負傷したままの元兵士を中心に反撃に出た。ミハイロは次のように語っている。「彼らはRPGなどの武器の使い方を知っている。彼らはソ連軍で訓練を受けたので、ロシアの戦術を知っている。私たちはネットワークを作り、人々をつないだが、彼らはしばしば自分たちのサークルを別々に使っていた。家族ぐるみの付き合いもあった」。

しかし、パルチザンは単に元兵士だけで構成されていたわけではない。公務員、郵便局員、そして猟師までもが、ウクライナのパルチザン運動で重要な役割を果たしたとミハイロは述べている。彼は「森を知る人たちは、私たちに協力したいと言ってくれた。ある人は林業に従事し、ある人は密猟者を捕まえていた。彼らの地域に関する知識は比類なきもので、私たちはロシア軍の動きに関する情報を見つけ、ロシア軍占領地域内の私たちの行動を成功させるために新しい方法を採用するために、彼らと協力した」と語った。

印象的なエピソードとして、国家的大義のために働いた狩猟犬「カバン」のことがある。ロシアがキエフを攻撃し始めたとき、ウクライナ軍は自分たちの立場が非常に弱いことに気づき、地域に存在する資源を活用するようになった。キエフ周辺では、ロシア軍が仮設橋を建設するのを阻止するために、川を氾濫させる計画を立て始めた。ある時、川の水位を大きく上げるためにダムを攻撃しが、その効果があったのかどうかを確認する方法がなかった。

1人の地元の猟師が提供した猟犬カバンは、GoProカメラを装着してロシア領内を移動し、貴重な映像をパルチザンの秘密ネットワークを通じてキエフに送り届けた。飼い主はどのようにしてカバンを敵地から救い出したのだろうか。ミハイロは笑いながら「飼い主が口笛で呼んだら飛んできたよ」と述べた。カバンの行動によって、ウクライナの治安当局は作戦の成功を確認することができた。

パルチザンは、ロシア軍占領地域で利用できる資源は何でも利用した。国境警備隊が持っていた武器を現地の人が回収できるような場所に運んだこともあった。一方、ロシア軍占領地内でウクライナの年金を配っていた女性たちは、ロシアの動静に関する情報を集め始めた。年金資金が底をついても、彼女たちは年金配給と称して家々を回った。

ミハイロは感嘆を込めて「彼女たちは貴重な存在だった」と述べた。このような経路がロシア側に発見されたため、ミハイロさんは、そのこと自体について大まかに話すが、日常で使用されている新たな連絡方法などについては詳しく語ることはない。ミハイロは「多くのパルチザンが殺されたり、拷問を受けたりした。しかし、人々は志願し、行動し続けている。その多くはおばあさん、姉妹、母親たちだ」と語った。

解放されたばかりのケルソン州出身の46歳のイゴールは、ミハイロのパルチザンネットワークの一員だったが、ロシアの動きを撮影していたために敵に拘束され、幸運にも脱出することができた。イゴールはその時の様子を次のように語っている。「私は携帯電話でロシア軍と武器の動きを撮影し始めた。ついに彼らは、私の村の誰かが撮影していることに気づき、検問所を閉鎖して、私たちの携帯電話を調べ始めた。私は写真を削除しましたが、ゴミ箱までは削除しませんでした。彼らが調べると、写真が見つかり、私を連行しようとした。大勢の人が彼らを取り囲み、私の親戚の何人かは彼らにお金とタバコを渡した」。

イゴールにとって、動画を送るための信頼できるネットワークを見つけるのに時間がかかったが、その後、彼の活動を知った養蜂家の父を含む家族や親族が協力を申し出てくれた。

イゴールは次のように述べた。「当初は座標を誰に送ればいいのか分からず、ミコライフ州行政庁に送っていたが、その後、2014年に戦った親戚がいて、その人物がより有効なネットワークを持っていることを知った。ケルソンからミコライフを爆撃し始めたとき、父は恐ろしいと感じ、自分も手伝いたいと考えた。彼はミツバチの仕事をしていたので、ミツバチを飼っている場所や、今忙しいかどうかなど、暗号のようなメッセージを送ってくれた。私たちだけが知っている場所についてメッセージを送ってくれた。人工衛星でも見ることができない、川のそばの景色を見た時もあった。釣りに行ったふりをして、その場所を報告することができた」。

計画レベルでは、ミハイルはウクライナ国内の対反乱活動を行う従来の治安機関であるSBUと密接に連携していることになっていた。SBUはウクライナ政府から正式に任命され、ウクライナ国内に存在するロシアのスパイを探し出し、ウクライナ領内でのロシアの動きを把握する役割を担っている。キエフ市内にあるロシアの武器庫を突き止めたり、リブネにある軍の兵舎の座標と食事時刻を300ドルで売ったウクライナ人コックを発見したりと、ウクライナの治安当局は国内のロシアによる反乱を常に警戒している。ロシアとの国境付近のハリコフ州で情報収集任務に当たっていたSBUのオレクは、「金のためにやることもあるが、それはとても小さなことだ」と話した。

ミハイロは「多くの仲間が逮捕された」と認めた。そして、「いくつかの村では、ロシア人が一軒一軒を訪ね、人々を拷問してネットワークを白状させようとした。退役軍人の名簿を手に入れることもあった。ケルソンでは、政府職員、特に軍人年金受領者のデータベースを全て獲得した」。民間人の犠牲を避けるためにパルチザンが降伏したと複数のウクライナの市長たちが発言したことについて質問すると、ミハイロは「彼らは嘘をついている。それはFSB(ロシア連邦保安庁)のシナリオだ」と明確に否定した。

SBUとその情報将校たちが解放されたばかりのケルソンで反乱活動を始める中、ミハイロはロシア占領地域のパルチザンと活動を続けている。彼らは常に新しい課題に対応し、ロシアの弱点を突くために戦術を変化させている。ミハイロは最後に「プーチンは明らかに歴史書を読んでいない、もし読んでいたら私たちのパルチザンのことを知っていたことだろう。スターリンはパルチザンのついて本当によく知っていた」と述べた。

※ノーマ・コステロ:アイルランド出身のフリーランス・ジャーナリスト。ツイッターアカウント:@normcos

※ヴェラ・ミロノヴァ:ハーヴァード大学訪問研究員。ツイッターアカウント:@vera_mironov

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 現地時間の11月15日午後3時40分頃、ポーランドのウクライナ国境に近いプシェヴォドフという場所に、ミサイルの発射体もしくは残骸が落下し、2名が死亡するという事件が起きた。ウクライナ戦争関連で西側諸国の国内で初めての死者が出た事件として衝撃が走った。ロシアが発射したミサイルの発射体もしくはウクライナ軍が迎撃したことによる残骸ということが報じられた。それが「ロシアのミサイルによってポーランドが攻撃されて死者が出た」ということになった。当事国ポーランドやバルト諸国、ウクライナの関係者たちはロシアを非難する声明を出している。一方、ロシアはポーランドに対するミサイル攻撃を否定している。
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 今回の出来事の報道に接し、私は慌てた。ロシアがポーランドを攻撃したことで、NATOが集団的安全保障を発動して、ロシアを攻撃するということになれば、戦争は拡大し、第三次世界大戦にまで状況は悪化すると考えた。ヨーロッパの地図を見ていただくと分かるが、ポーランドとリトアニアの間にくさびのような形で、カリーニングラードというロシアの飛び地の領土があり、ロシアのバルティック艦隊の本拠地となっている。このカリーニングラードとベラルーシの間のポーランドとリトアニアの国境地帯はスヴァウキ・ギャップ(Suwalki Gap)と呼ばれ、ここをめぐっては数年前から緊張が高まっている。カリーニングラードはポーランドをはじめとするバルト海沿岸諸国にとっては国家安全保障上、目障りな存在ということになる。今回の出来事を受けてポーランドがロシアを攻撃するとなれば、直接国境を接しているカリーニングラードが攻撃目標となる。その際にリトアニアと呼応して攻撃ということになると私は考え、これはウクライナ戦争の拡大であり、第三次世界大戦となると考えた。

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 現在のところ、ウクライナや中欧、東欧、バルト海沿岸諸国に比べて、アメリカは静観の構えを取っている。アメリカが動かなければNATOは何もできない。アメリカのジョー・バイデン大統領は今回の事件のきっかけとなったミサイルは「ロシアから発射されたとは考えにくい」と述べている。事態をエスカレーションさせないようにという配慮が伺える。もし、ウクライナが発射した迎撃ミサイルによる事故ならば、ポーランド政府としても非難はできず、大事になる前に事態は収束する。ロシアがポーランドを攻撃する意図ではなく、ウクライナ国内の攻撃目標を攻撃するために発射したミサイルが迎撃されて、その破片が落下しての事故ならばロシアに対する非難はできるだろうが、それ以上の措置は望ましくないということになる。

 現在のところ、状況のエスカレーションをアメリカが望んでいないようなので、ロシアに対して非難をする程度で終わる可能性もあるが、ウクライナ戦争の状況が膠着状態になっている中で、一歩間違えれば、第三次世界大戦や核兵器の使用という危険をはらんでいるということは把握しておく必要がある。

(貼り付けはじめ)

「ロシアからとは考えにくい」ポーランド着弾ミサイルでバイデン氏

11/16() 11:40配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/9e53bd260d081fe00fdb751fde5aaa022832b465

 バイデン米大統領は16日、ポーランド東部での爆発を受けて開かれた主要7カ国(G7)と北大西洋条約機構(NATO)の首脳会合の終了後、滞在先のインドネシア・バリ島で記者団の取材に応じた。バイデン氏は「ミサイルの軌跡から考えるとロシアから発射されたとは考えにくい」と述べた。「爆発の調査でポーランドを支援することで合意した。何が起きたか正確に把握するつもりだ」と強調した。

 ポーランド外務省はロシア製ミサイルが着弾して爆発が起きたとしている。バイデン氏は、調査の進捗(しんちょく)状況を見極めて「次の措置を決定する」と述べた。【バリ島・鈴木一生】

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ロシアがウクライナを攻撃し、ポーランドにミサイルが着弾したとの報道(Missiles Reportedly Land in Poland as Russia Pummels Ukraine

NATO加盟国の国土での爆発は今年初の重大な出来事である。

ロビー・グラマー、ジャック・ディッチ、エイミー・マキノン筆

2022年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/15/russia-missile-poland-escalation-nato/

ロシア軍がウクライナの諸都市に向けて大量のミサイルを発射し、少なくとも1発のミサイルの発射体もしくは破片が隣国ポーランドに着弾し、少なくとも2名が死亡、ロシアのウクライナ攻撃で初めてNATO加盟国の領域で死傷者が出たことになる。

ウクライナ軍が撃ち落としたロシアのミサイル発射体もしくはミサイルの破片がポーランドに落下したかどうかに関する相反する報告に基づいて、アメリカとヨーロッパの当局者たちは、死者2名というニューズが最初に流れると、何が起こったのかについての詳細情報を得るために奔走し始めた。

破片の落下による死亡事故と、ロシアが意図的にNATO加盟国の領土を攻撃した場合の違いは歴然としている。前者の場合は迅速な非難を引き起こし、NATOとモスクワの緊張の高まりを浮き彫りにする可能性がある。後者の場合はロシアの軍事戦略の大きな転換を示し、NATOとの本格的な軍事対決への道を開くことになるかもしれない。

複数のヨーロッパ諸国の当局者は、匿名を条件に、何が起きたかについて結論を出すのは時期尚早だと述べた。しかし、クレムリンは混乱を引き起こすために、このニューズの速報にすぐに飛びついた。

ロシア国防省は、この報道を「よく練られた意図的な挑発(deliberate provocation)」だと断じた。RTの編集長マルガリータ・シモニャンは、この報道から得られる1つの良いニューズは、「NATO加盟国の防衛があまりにもお粗末で、誰もが偶然に何かの武器を使って攻撃することができ、NATO加盟国全てが、誰が何を使って攻撃されたのか、どうして攻撃されたのかさえ分からないだろう」ということだと述べた。

ロシアは、ここ数日、ケルソンを失った後の報復の一環として、ウクライナの最西部を含むウクライナ国内の民間インフラへのミサイル攻撃を連続的に開始した。偶発的な攻撃は、厳しい非難や外交的報復、あるいはNATO軍の東側への増派の引き金となりうる。意図的な攻撃は、NATOのより厳しい軍事的反応を引き起こし、加盟国が攻撃された場合に侵略者に対する集団的対応を求めるNATOの第5条の規定が適用される可能性もある。

ポーランドの安全保障委員会は直ちに緊急会議を開き、ワルシャワは火曜日午後遅くに声明を発表する予定である。ポーランド領内での攻撃が報じられると、NATO加盟諸国の国防当局者から非難が殺到した。

スロバキアのジャロ・ナド国防相はこのニューズを受け、「ロシアは何が起きたのか説明しなければならない。インフラへの無意味な攻撃は直ちに止めなければならない。ロシアの無謀さは手に負えなくなっている」とツイートした。

今回の攻撃はウクライナのエネルギーインフラを狙ったもので、ロシアは冬の到来とともにウクライナを暗闇に陥れることを意図した戦略の一環である。ロシアは、ウクライナの精神を破壊し、戦場での恥ずべき敗北を補うために、遠くからウクライナの電力網を攻撃することが多くなっている。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、火曜日に少なくとも85発のロシアのミサイルによってウクライナが攻撃したと発表した。この攻撃は、これまでで最大規模と報告されている。この攻撃によって、ウクライナがロシアから更に領土を解放することをストップすることはないと述べた。ゼレンスキーは「私たちは努力を続けており、全てを回復させる。私たちは生き残るだろう」と述べた。

ワシントンは火曜日午後になっても静観モードを保持している。バイデン政権は、AP通信が匿名の米諜報情報機関高官の発言を引用して空爆を最初に報じた後も、早急に結論を導き出すことに消極的だ。米国防総省のパトリック・ライダー報道官(陸軍准将)は記者団に対し、米国防総省には空爆に関する報道を独自に裏付けるような情報はないと語ったが、ヨーロッパにあるアメリカの同盟諸国はロシアを即座に非難した。ラトヴィアのエドガース・リンケビクス外相は、今回の攻撃は「クレムリンによる非常に危険なエスカレーション」だと述べた。

NATOと在ワシントン・ポーランド大使館のそれぞれの報道官にコメントを求めたが、すぐには応じなかった。米国家安全保障会議のアドリアン・ワトソン報道官が発表した声明によると、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は本日午後、ポーランド国家安全保障局のヤチェク・シウィエラ局長と協議し、ホワイトハウスは現時点では報道の詳細を確認できないと付け加えた。

ポーランドの複数メディアの報道によると、ロシアのミサイルは、ウクライナとの国境に近いポーランドの町プシェヴォドフにある地域を攻撃したということだ。ミサイルがポーランド国内に着弾したのか、それともロシアのミサイルが撃墜された際の破片が落下したのかは明らかになっていない。

この攻撃は意図的なものではなかったようだが、ロシアのウクライナ侵攻がNATOにとってより大きな意味を持つことを強調したと複数の関係者は述べた。東欧諸国のある当局者は匿名を条件にして、「ロシアは、ウクライナ戦争に関しては、マリウポリやハリコフではなく、冷戦後の西側に対する戦争だと考えている」と語っている。

ゼレンスキーは、今回の攻撃を「集団安全保障に対する攻撃(attack on collective security)」であり、ロシアによる「非常に重大なエスカレーション」であると述べた。

複数の元アメリカ政府高官は、意図的な攻撃と誤爆のどちらと判断されるかによって、NATOの反応は異なる可能性があると述べた。ほとんどのNATO諸国の国防相は明日、定期的に開かれるウクライナ防衛コンタクトグループ会合で会談することになっている。

元米国防次官補のミック・マルロイは、「どちらも重要な問題だが、NATOによって異なる対応が取られる可能性が高い。今回の事態は、アメリカ軍、NATO軍、ロシア軍の間でのコミュニケーション・チャンネルの必要性をさらに浮き彫りにしている」と述べた。

NATOの集団防衛条項、いわゆる5条が発動されたのは、73年に及ぶ同盟の歴史の中で、911アメリカ同時多発テロの後に一度だけだ。元米国防次官補(ヨーロッパ・NATO政策担当)のジム・タウンゼントは「5条は自動に作動するものではない。ポーランドが『攻撃された』と主張としても、それが事実かどうかは北大西洋理事会が判断することだ」と指摘した。第5条は同盟の中核的原則である集団防衛(collective security)に関わるが、必ずしもロシアとの戦争を意味するものではない。他の選択肢としては、ロシアとの東側の側面に沿ってNATOのプレゼンスを強化することや、ポーランドの防空能力を支援するために更なる支援を提供することが考えられる。

現役の米国当局関係者たちと連絡を取っているタウンゼントによると、現在の考えは、事件は事故であり、早ければ水曜日に北大西洋理事会の会合が開かれる可能性があるとのことである。

もう1つの選択肢は、ポーランドが同盟条約第4条に基づく協議を要請することだ。この条項は、自国の安全や領土の一体性が脅かされたと感じた場合に発動することができる。第4条を発動すれば、強力なメッセージを送ることができる。「しかし、どのような対応をとるかは、同盟国全体が決定することだ」とタウンゼントは述べている。第4条は同盟の歴史上、何度か発動されたことがある。ロシアのウクライナ侵攻後、ポーランドとバルト諸国は2月に同条項に基づく協議を求めた。

アメリカを含む同盟諸国は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、8つの多国籍戦闘団や軍事演習のテンポアップなど、NATOの東側での軍事的プレゼンスを高めてきた。

ロシアの本格的な侵攻を受けて、アメリカはヨーロッパに駐留するアメリカ軍を数十年ぶりに10万人以上に増員した。その多くがポーランドに駐留し、火曜日のロシアの攻撃から数マイル以内に拠点を置いている。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交分野・国家安全保障分野担当記者。ツイッターアカウント:@RobbieGramer

※ジャック・ディッチ:米国防総省・国家安全保障分野担当記者。ツイッターアカウント:@JackDetsch

※エイミー・マキノン:国家安全保障・諜報情報分野担当記者。ツイッターアカウント:@ak_mack

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死亡者を出したロシアによるポーランドでの攻撃は危険なエスカレーションのリスクをもたらす(Deadly Russian strike in Poland risks dangerous escalation

エレン・ミッチェル筆

2022年11月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/3737395-us-nato-on-high-alert-after-deadly-russian-strike-in-poland/

ポーランドでのロシアのミサイル攻撃で2人が死亡し、アメリカは厳戒態勢(on high alert)にある。この事件は、モスクワのウクライナ戦争にとって大きな転機となる可能性がある。

ポーランドの国土での爆発とそれによって引き起こされた死亡は、NATO加盟国の間で長らく懸念されていたことが現実となった。ロシアのウクライナへの攻撃が国境を越え、加盟国の相互防衛条約である第5条を発動させ、紛争を拡大させる危険性がある。

ポーランドは、何が起こったのかについてすぐに調査を開始し、NATO加盟国のいずれもが理事会の議論を呼び出すことができる第4条の発動を検討しており、ポーランドは水曜日にブリュッセルでNATO閣僚会議開催を求める予定である。

また、この死亡事件をきっかけに、欧米諸国のトップ同士の電話や会談が相次ぎ、20カ国・地域首脳会議(G20首脳会談[サミット])のためインドネシアのバリ島を訪問中のジョー・バイデン大統領は、現地時間の水曜日早朝にポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領と会談した。

ホワイトハウスは「ジョー・バイデン大統領がポーランドの捜査に対してアメリカは全面的な支持と援助を提供し、アメリカのNATOに対する鉄壁の約束を再確認した」と発表した。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、ポーランド国家安全保障会議が開催された際に、ポーランドのヤチェク・シウィエラ国家安全保障局長と会談した。

アントニー・ブリンケン米国務長官もポーランド外相と火曜日に会談を持った。

ロシアのミサイルはポーランドを意図的に狙ったものなのか、それともウクライナ領土を狙ったものなのかについては、火曜日の夕方になっても多くの疑問が残っている。

ポーランド外務省のルカシュ・ジャシナ報道官は、現地時間午後3時40分頃、ウクライナ国境から約4マイル北にあるプシェヴォドフ村でロシア製兵器が落下し、爆発が発生したと発表した。

ポーランド国内での爆発は、ロシアがウクライナの重要都市ケルソンから撤退した後、ウクライナ全域でミサイル攻撃の連続的に開始したのと同じ日に起こったが、発射体がどこから来たかは明らかではない。

ポーランド大統領は火曜日の演説で、事件のきっかけとなったミサイルを誰が発射したかは分からないが、「ロシアで製造された可能性が高い」と述べた。

ドゥダ大統領はワルシャワから、「私たちは冷静に、非常に冷静に作業している」と述べ、ポーランドの専門家とともに爆発現場を調査するため、アメリカの専門家たちがポーランドに派遣されることを明らかにした。

ポーランド外相はロシア大使を召還し、ロシア製ミサイルがポーランド国境内に落下した経緯について「直ちに詳細な説明を要求した」とジャシナ報道官は述べた。

ロシア国防省は、ウクライナとポーランドの国境付近の標的へのミサイル攻撃はなかったと述べ、関与を否定した。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は火曜日、この事件をキエフとモスクワの間の戦争の「非常に重大なエスカレーション」だと評した。

ゼレンスキーはヴィデオ演説の中で「NATO加盟国の領土をミサイルで攻撃。これは集団安全保障に対するロシアのミサイル攻撃だ! これは本当に重大なエスカレーションだ。行動が必要だ」と述べた。

複数のロシア空軍機は今春、スウェーデン領空を数回、8月にはフィンランド領空を侵犯しており、戦争中にロシアの兵器が国境を越えて迷い込んだのは今回が初めてではない。

また、爆弾を搭載したソヴィエト連邦時代の無人偵察機が3月に、ウクライナからルーマニアとハンガリーの領空を飛行した後にクロアチアの首都ザグレブで墜落している。3月には、ロシア製の偵察用ドローンがルーマニアで墜落している。

しかし、火曜日の爆発の致命的な性質は、紛争のエスカレーションを意味するかもしれない。ウクライナとロシアの戦争が長引けば長引くほど、いずれはNATO諸国にまで広がるという懸念が確認されている。

ジム・タウンゼント元国防次官補(ヨーロッパ・NATO政策担当)は、「今回の出来事は、我々が常に恐れていたことだ。NATO加盟国に波及し、NATOを最前線に立たせることになる」と本誌の取材に対して述べた。タウンゼントは、全ての事実がまだ明るみに出ていないと強調した。

「第三次世界大戦に至らず、第5条にも違反しない形で、NATOだけでなくポーランド自身でも実行可能なオプションはたくさん存在する」と語った。

その代わりにウクライナは、同盟のどのメンバーも懸念事項を北大西洋理事会の協議の場に持ち込むことができる第4条の路線に傾くようだ。ウクライナのドミトロ・クレバ外相は火曜日午後、次のステップを議論するため、ウクライナの参加するNATO首脳会議を呼びかけた。

ウクライナのクレバ外相は「ロシアの行動に対する集団的対応は、強硬で原則的でなければならない」と書き、西側諸国の戦闘機と防空システムでロシアのミサイルを迎撃するよう改めて要求している。

クレバ外相は「今日ウクライナの空を守ることは、NATOを守ることだ」と付け加えた。

元駐ポーランド米国大使で、現在は大西洋評議会に所属するダニエル・フリードは、第4条発動はこの状況に対して最も論理的なステップであると述べた。

フリード元大使は「それが5条なのか、意図的な攻撃なのか、私たちには分からない。しかし、第4条が発動される有事であることは確かであり、このことについて議論されるべきだ」と本誌に語った。

この動きは確かにアメリカ政府関係者に歓迎されるだろう。彼らは紛争がエスカレートす

リンダ・トーマス=グリーンフィールド米国連大使は火曜日、アメリカ政府関係者は今回の事件について懸念を持っているが、まだ情報収集中であると述べた。

リンダ・トーマス=グリーンフィールド大使は『ワシントン・ポスト』紙のイヴェントに出席して「そして、その情報が何であるかを判断した後、安保理が会議を招集する必要があるかどうかを決定する」と述べた。

ポーランドでの偶発的なミサイル攻撃や、ロシアのミサイルがウクライナに撃墜され、破片がポーランド領に落下した状況であれば、厳しい反応を示す危険はないと複数の専門家は本誌に語った。しかし、ロシアが意図的にポーランド領を攻撃したと判断されれば、ワルシャワとNATO加盟国は対応を迫られる可能性がある。

タウンゼントは「NATOであれ、ポーランドであれ、アメリカであれ、ポーランドを確実に保護するため、そして今回の攻撃が意図的に行われたのであればロシアの侵略を抑止するために、何が賢明な次のステップとなるのかを考えなければならない」と述べた。

しかし、タウンゼントは「誰も性急に行動する意図を持っていない。事実を把握した上で、どうするかを決めるということになる」と強調した。

一方、バイデン大統領は、NATO加盟国が攻撃された場合、アメリカ政府は第5条を支持すると繰り返し約束している。これは、同盟国一国への攻撃を全加盟国への攻撃と見なすとする条項である。

バイデンはまた、「アメリカはNATO加盟国の領土を隅々まで守る」とも約束し、第5条への関与は「鉄壁」であると指摘した。

アメリカの連邦議員たちの中にはロシアからの対応を求めている。グレゴリー・ミークス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)はCNNで、ミサイル落下が本当に事故だったのなら「早くそのように言った方がいい」と発言した。

ジョニ・アーンスト連邦上院議員(アイオワ州選出、共和党)は退役軍人であるが、アーンスト議員は米国防総省からの更なる情報を待つことで不安を感じていると語った。

アーンスト議員は「大げさで攻撃的な発言をする前に、何が起こったのか理解する必要がある。これは重大なことだ。つまり、もし意図的な攻撃ならば、大変深刻な出来事ということになる」と語った。

フリード元大使は、現時点で重要なのは、「ポーランドやバルト沿岸諸国のような脆弱な国々に、私たちが背中を押していることを知らせるという意味で」迅速な対応を取ることだと発言している。

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ロシア、NATOの弱点「スヴァウキ・ギャップ」近くに軍事拠点を展開

Aug. 08, 2018, 10:45 AM 政治23,593

https://www.businessinsider.jp/post-172759

ロシアは近年、軍の拠点とその能力の拡大を進めている。

特にここ数カ月は、バルト海に面した飛び地、カリーニングラード州において軍事拠点の新設および増設の動きを見せている。

ロシアはバルト海に面した飛び地、カリーニングラード州での動きを活発化させている。

 

地球画像観測事業を展開するプラネット・ラボ(Planet Labs)が収集した衛星画像から、カリーニングラード州の町バルチースにある複数の掩体壕(兵士や物資を攻撃から守るための施設。通常、かまぼこ型のコンクリート製で上を土で覆う)で何らかの動きがあることが判明したと軍事情報誌ディフェンス・ワン(Defense One)は伝えた。バルチースクにはバルト海に面する不凍港と2つの空軍基地がある。

20183月から6月にかけて「目に見える変化があった。建造物の要塞化を進めているようだ。建造物には爆発物を保管する掩体壕の特徴が見受けられる。また構造を強化するために盛り土が行われている」とコンサルティング会社3ジンバルズ(3Gimbals)の上級地理空間アナリスト、マット・ホール(Matt Hall)氏はディフェンス・ワンに語った。

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ロシア・カリーニングラード州のフミリエフカ演習場で行われた大規模軍事演習「Zapad 2013」。2013926日。

ホール氏は衛星画像に映っている他の建造物も、同じ時期に強化された形跡があると語った。この地域は森林に覆われているため、ロシア軍の活動の詳細は分からない部分があるものの、木々の間にはさらに多くの建造物があるようだ。そして要塞化のレベルはそれぞれ違っている。

「一部の建造物に変化が認められる。天井を覆う構造物や防水シートが撤去され、保管されている物資が見えているところもある」とホール氏。

「加えて、新しい物資、あるいは再度補給された物資もあるようだ。輸送コンテナらしきものもある」

ホール氏はまた、衛星写真から線路が敷設されたことが分かるとディフェンス・ワンに語った。

カリーニングラード州はポーランドとリトアニアに挟まれたロシアの飛び地、旧ソ連時代からの重要拠点だ。近年のロシア軍の増強の中で、カリーニングラード州での軍の活動は活発化している。さらに同州には、ロシア海軍のバルチック艦隊が配備されている。

カリーニングラード州のロシア軍は、NATO(北大西洋条約機構)との間の摩擦の原因となってきた。

201610月、リトアニアのダリア・グリボウスカイテ(Dalia Grybauskaite)大統領は、カリーニングラード州に核弾頭が搭載可能なイスカンデル・ミサイルが配備されたことに対して、「軍事力を誇示する攻撃的な行為であり、バルト3国のみならず、ヨーロッパ各国に対する侵略行為」と非難した。

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イスカンデル・ミサイルの最大射程距離は約500キロ、過去にも一時的にカリーニングラード州に配備されたことがある。だが20182月、グリボウスカイテ大統領はロシアはミサイルの数を増やし、「恒久的に」カリーニングラード州に配備したと語った。

ロシア議会防衛委員会の委員長はイスカンデル・ミサイルの配備を認め、東ヨーロッパにおけるNATOの勢力拡大への対抗策と語った。ロシアの広報官はまた、ロシアには自国の領土に軍を配備する「主権国家としての権利」があると述べた。

さらに6月に発表されたアメリカ科学者連盟(FAS)の報告書は、カリーニングラード州の他の地域にある核兵器保管施設とみられる場所でも、改築の動きがあることを明らかにした。

衛星画像から「クリコヴォ(Kulikovo)付近にある3つの掩体壕のうちの1つが2106年に掘り起こされたことが分かった。改築のためと思われ、2018年には再び覆われたことから、まもなく稼働状態に復帰するとみられる」と報告書は記した。

施設の詳細を決定づける衛星画像は少ないものの、報告書によると「施設の特徴から、ロシア空軍もしくは海軍の共同利用施設と考えられる。または、各軍の共同施設として、この地域の空軍、海軍、陸軍、防空部隊、沿岸防衛部隊のために核弾頭を保管している可能性もある」

対立は“驚くべきスピードでエスカレートする”

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100キロにわたってポーランドとリトアニアが国境を接する「スヴァウキ・ギャップ」。カリーニングラード州とベラルーシを隔てるように位置している。

カリーニングラード州に配備されたミサイルは、西ヨーロッパ各国への脅威として懸念が高まっている。さらに、カリーニングラード州はNATOのウィークポイントとされるスヴァウキ・ギャップ(Suwalki Gap)の近くに、ロシアが軍を配備することを可能にしていると欧州戦略分析センター(CEPA)が7月に公開した報告書は指摘した。報告書の著者の1人は、かつてアメリカ欧州軍の司令官だったベン・ホッジス(Ben Hodges)元中将。

スヴァウキ・ギャップは、カリーニングラード州とベラルーシの間に広がる地域。NATO加盟国であるバルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)と他のNATO加盟国を結ぶ唯一の陸上経路となっている。

「スヴァスキ・ギャップには、NATOの戦略と配置における多くのウィークポイントがある」とCEPAの報告書は記した。

「仮にロシアがスヴァスキ地域の掌握を試みた場合、あるいは当地域でのNATOの人員や装備の自由な通行を脅かしただけでも、バルト3国は他のNATO加盟国から切り離されてしまい」、バルト3国への増援は妨げられてしまう。

NATO軍は2018年、スヴァスキ地域における機動力および相互連携能力に注力した軍事演習を実施している。

この地域をめぐって対立が起きれば「驚くべきスピードでエスカレートする恐れがある」と報告書は指摘した。だがホッジス元中将は、冷戦時代のような地上侵攻作戦にロシアが踏み切る可能性は低いと考えている。

「かつてのように、ロシアがヨーロッパに侵攻する意図を持っているとは思えない。そのような能力も持っていない」と元中将はディフェンス・ワンに語った。

ロシアはこの地域での危機を利用し、NATOが脅威に対して適切に、あるいはまったく対応できないことを示し、NATOを弱体化しようとしているのかもしれない。

「仮にNATOが加盟国を守れないことを示すために、ロシアが限定的な攻撃を行えば、それは大きな問題となる」

ロシアはNATOと接する国境に沿って、かなりの戦力を配置していると考えられる。また部隊を急速に展開する能力も持っているため、NATO軍にとっては、軍事演習なのか、実際の軍事作戦なのかを見分けることは難しい。

2013年と2017年に行われたロシア軍の軍事演習Zapadは、スヴァスキ・ギャップに侵攻し、バルト3国を他の西ヨーロッパ各国から切り離すというシナリオで行われた。

またバルト3国の上空空域ではNATOとロシアの航空機が異常接近するケースが増えている。

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スヴァスキに向かう米軍の車列。ポーランドの町、アウグストゥフ。

2014年のロシアのウクライナ侵攻以降、バルト3国は同様の可能性を懸念している。

2017年、リトアニアはロシアがプロパガンダとデマを用いる「キネティック・オペレーション」を準備していることを危惧していると語った。ロシアのクリミア併合の前にも同様の作戦が行われた。

リトアニアはロシアから、カリーニングラード州への通行路を永続的にロシアの管理下とするように圧力を受けている。そのような状況のもと、リトアニアはアメリカ軍に永続的な常駐を要請し、カリーニングラード州との国境にフェンスの建設を始めた。

CEPAの報告書は、スヴァスキ地域に対する行動を正当化するためにロシアが危機を誘発する複数のシナリオを提示した。シナリオではデマや政治的な手段を含む複合的な作戦を展開、非難をそらし、外部から見たときに状況を分かりにくくしている。

「もし(ロシア軍が)何かを企てるとしたら、非対称的なものとなるだろう。NATO側が察知する前に目標を達成するために」とホッジス元中将はディフェンス・ワンに語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は開戦以来10カ月近く経っている。ロシアが併合を宣言したウクライナ東部の4州の奪還をウクライナは目指している。ウクライナ軍は攻勢を強め、ロシア軍の劣勢が伝えられているが、ロシア軍が守備に徹するようになれば、攻撃側のウクライナ軍の犠牲は大きくなり、地域奪還も遅々として進まず、戦争は泥沼化することになる。

 ウクライナ戦争開戦直後からささやかれているのは、ロシアによる核兵器使用と戦争の各大による世界大戦の勃発である。「プーティンは狂人だから核兵器を使用するだろう」「核兵器が使用されれば世界大戦にまでエスカレートする」という主張がなされた。今のところ、ウクライナ戦争に対しては、西側諸国(主にアメリカ)がウクライナ側に大量の高性能武器を供与し、軍隊を送るなどの直接的な関与は控えている。米軍やヨーロッパ各国の軍隊が派遣され、ロシア軍と戦うという状況になれば、戦闘当事国は拡大し、ロシアの攻撃対象となる。ロシアのミサイルや核兵器の攻撃対象となる恐怖が出てくる。

 ロシアがウクライナで核兵器を使用する兆候は今のところ見られていない。ロシアが核兵器を使用することは、戦後の世界体制を崩壊させる大きな転換点となる。既にこの転換は始まっており、「西側世界対それ以外の世界」という分断が出現しているが、ロシアが核兵器を使用することは、ロシアを間接的に支援している非西洋諸国からの断絶を引き起こすことになるので、ロシアは自国の存在が脅かされる状況にならない限り、核兵器を使用することはないだろう。

 しかし、どのようなことが起きるは分からない。西側諸国をエネルギーや食糧で締め上げ、核戦争の恐怖をそれに追加するということがロシアの究極的な戦略となるだろう。「ロシアの脅しはただのブラフだ」と100%考えることができなければ、西側諸国は容易には動けない。「プーティンは何をするか分からない」という不確実性がある限り、「ロシアは核兵器を使用しないから戦争をエスカレートさせる、ロシアを敗北させるために自分たちも参戦する」ということはできない。

 大きく見れば、世界構造の大転換が起きつつあるが、覇権国の交代に戦争がつきものかどうか、ということになるが、歴史的に見れば、やはり覇権国の交代には戦争が付きまとう。「覇権戦争(hegemonic war)」が起きる。覇権国同士が戦う場合もあるし、大規模戦争によって覇権国が衰退し、新たな覇権国が勃興するということもある。現在の状況を考えれば、覇権国の交代はアメリカら中国にということになる。米中が直接戦うということがあるかどうかだが、それよりも大規模な世界大戦が起きて、アメリカ主導の世界体制が崩壊するということの方が可能性は高いのではないかと私は考えている。ウクライナ戦争がどのような結末になるか分からないが、大規模な世界大戦が起きる可能性ということを21世紀に生きる私たちに認識させた。世界大戦は歴史上の出来事で、これから起きることはないと断言できるほどに人間は賢くはない。

(貼り付けはじめ)

ロシアによるウクライナでの核兵器攻撃にアメリカはどのように対応するか(How the US might respond to a Russian nuclear attack in Ukraine

エレン・ミッチェル筆

2022年10月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/3674322-how-the-us-might-respond-to-a-russian-nuclear-attack-in-ukraine/

ウクライナで敗戦が続く中、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の核兵器による威嚇への懸念が高まる中、アメリカはどのような対応を取るかがより緊急の課題となっている。

ロシアのウクライナ攻撃開始以来、アメリカの政府高官たちは、モスクワの様々な動きに対抗する計画があると強調してきたが、具体的な内容は公表してこなかった。

バイデン政権は、クレムリンが核攻撃に向けて動き出した兆候はなく、ワシントンも自らの核武装の姿勢を変えていないと発表しているが、ロシアの軍事作戦の停滞とプーティンの不満が高まっていることから、アメリカの選択肢の可能性は非常に現実的なシナリオになりうると専門家は指摘する。

米国防総省官僚から戦略国際問題研究所の国防専門家に転身したマーク・カンシアンは、ロシアの大規模な攻撃に対するアメリカの対応は、軍事と外交の二本立てになるだろうと指摘している。

カンシアンは、「もしウクライナ人が戦い続けるなら、私たちからの援助の流れは継続するだろうし、キエフに提供する武器の程度も高まって、本気になっていくことだろう」と本誌に語った。

ウクライナの希望リストのトップは、陸軍戦術ミサイルシステム(Army Tactical Missile SystemATACMS)で、キエフがロシアとの戦いで現在持っているミサイルより4倍遠くまで飛ぶことができる地対地ミサイル(surface-to-surface missile)である。ウクライナは何ヶ月も前からアメリカにこのシステムを要求してきたが、アメリカは紛争をエスカレートさせる恐れがあるとして提供することに躊躇している。

しかしながら、モスクワがウクライナ軍や民間人に戦術核兵器(tactical nuclear weapon)を使用したり、人口密集地から離れた場所でそのような装置を爆発させたりする場合、カンシアンは、最終的にキエフにATACMSやロシアの標的を狙うための「ウクライナが望む武器は何でも」認めるだろうと予想した。

一方、外交面では、ロシアが核兵器を使用すれば、インド、中国、トルコ(NATOの同盟国)などがプーティンに経済的な圧力をかける可能性が非常に高いとカンシアンは指摘する。

カンシアンは「ロシアによる核兵器攻撃が起きれば、インド、中国、トルコ(トルコは北大西洋条約機構[NATO]の同盟国)などが、プーティンに対して経済的な圧力をかけるようになるだろう。そうなればロシアは自国を生存させているライフラインを失うことになる」と述べている。

国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは先週、モスクワが核兵器を配備すれば「破滅的な結果(“catastrophic consequences)」になると述べ、より具体的な最後通告(more specific ultimatum)がモスクワに内々に伝えられたと語った。

ジョー・バイデン米大統領は開戦以来、アメリカ軍をウクライナに派遣することはないと発言しており、専門家たちは、核攻撃への対応が、急速に核による世界大戦にエスカレートする可能性があると警告している。

デイヴィッド・ペトレイアス退役陸軍大将は日曜日、ロシアの核攻撃に対してアメリカがどのように対応するかの予測を示したが、それについてサリヴァンと話すことは意図的に避けていると指摘した。

ペトレイアスは「仮定の話になるが、私たちはNATOを率いて、ウクライナやクリミアの戦場で確認できるロシアの通常戦力や黒海の艦船を全て破壊するという対応を取るだろう」と述べた。

ロシア・ウクライナ・ユーラシア担当国防次官補代理であるローラ・クーパーは、米国当局は「ロシアの脅威について同盟諸国と継続的に協議しており、ロシアがもたらす核の脅威はその一面に過ぎず、確かにNATOフォーラムはこれらの問題についての協議の場として最も重要なものだ」と述べた。

オーストリアのある政府高官は、困難な交渉のための中立の場として自国を提供し、戦争エスカレーション防止会談を主催し、ロシアとのチャンネルを維持する用意があると本誌に語った。

プーティンが核戦争の危機を訴えたのは先月のテレビ演説が初めてではなかったが、ウクライナの4つの地域を併合しようとするクレムリンの好戦的な核のレトリックに、アメリカの現役もしくは元政府関係者は新たに警鐘を鳴らしている。

プーティンは8月21日、ロシアの領土や国民を守るために、モスクワは核兵器を大規模に配備するという強迫を行った。この核兵器配置計画には、ロシアが占領したウクライナの4地域が含まれる可能性がある。しかし、キエフとワシントンの両政府は、これらの地域を取り戻すための継続的な戦闘を抑止することはないと述べている。 

ロイド・オースティン米国防長官は、日曜日に放送されたCNNとのインタヴューで、ロシアの指導者が核兵器の使用を選択したことを示唆する情報には接していないが、「プーティンに対するチェック機能は存在しない」と述べた。

「明確にしておきたいが、その決定を下すのは、つまり、一人の男だということだ」とオースティンは述べた。

国家安全保障会議のジョン・カービー戦略通信調整官は月曜日、ザポリジャー発電所でのロシアの活動を「注意深く」観察していると述べた。サボリンジャー発電所はプーティンが戦争をエスカレートさせるために攻撃対象として選んだもう1つの場所である。

また、トランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたHR・マクマスターは日曜日、戦場での失敗や、何十万人もの予備兵力を戦場に送る可能性のある動員令に対する国内の反発から、プーティン大統領は「極度のプレッシャー下にある」と述べた。 

マクマスターはCBSの「フェイス・ザ・ネイション」の司会者マーガレット・ブレナンに対して、「プーティンへのメッセージは、核兵器を使えば自殺行為になるということになるだろう。NATOとアメリカの対応は核兵器である必要はない」と語った。

今週、ロシアの列車が核兵器を扱うクレムリンの軍事組織の機材を運んでいるように見えるネット動画が公開され、人々の恐怖心がさらに高まった。ロシアとベラルーシを専門とする航空宇宙・防衛アナリストのコンラッド・ムジカによれば、米国防総省当局が確認できなかったこの動画にはロシア国防省の秘密機関である第12総局の軍用車両が列車で運ばれている様子が映っている。

クレムリンの部隊は、核兵器、その保管、メンテナンス、輸送、発行を担当しているとムジカは日曜日にツイートしている。

クーパーは火曜日にこのビデオについて質問された時、「私はこのような報道を見たことがあるが裏付けとなるものは何もない」と記者団に答えた。

ロシアが核兵器の使用を考えていることを示す何かを見たかとの質問に対して、米国防総省当局者は「プーティンからサーベルを鳴らす(saber rattling)のを確かに聞いているが、私たちの姿勢を変えさせるような兆候は見られない」と答えた。

クーパーはまた、アメリカはロシアの核戦力の動きを注視しているかという質問にはアメリカの情報機関の保護を理由に回答を拒否した。

連邦下院情報委員会の共和党側幹部委員であるマイク・ターナー議員(オハイオ州選出、共和党)を含む一部の政治家たちは、ヨーロッパでの核兵器使用態勢強化やミサイル防衛資産の追加投入を政権に求める声もある。

ターナーは週末にフォックス・ニューズに出演し、「バイデン政権はミサイル防衛を強化する必要がある。私たちはヨーロッパに資産を有しており、同盟諸国を保護するために、それらを活用する必要がある」と述べた。

プーティンがどのような兵器を使用する可能性があるかについても多くの憶測を呼んでいる。戦術核兵器(戦闘中や特定の人口密集地で使用され、紛争を終わらせようとするもの)の使用に頼るのではないかとの懸念が存在する。

クーパーは「私たちは常に核使用の脅威を真剣に受け止める必要があり、そのために私たちは非常に注意深く監視し、同盟諸国と緊密に協議している」と語った。

クーパーは続けて「しかし同時に、現時点では、ロシアの言葉遣いはただのレトリックに過ぎず、無責任な妨害行為に過ぎない」と述べた。

現在のところ、アメリカはロシアの攻撃に対し、ウクライナに武器やその他の援助を注ぎ続けるだろう。その中には、キエフが今月初めに始めた攻撃に大いに役立ったと評価する最先端のロケットシステムも4基含まれている。

まもなく納入される高機動砲ロケットシステムは、ロシアが自軍の補給に利用する橋や道路、弾薬庫を狙うためにウクライナ側が使用するもので、火曜日に発表された6億2500万ドルの新しい攻撃強化支援パッケージの一部である。

その後、核攻撃からウクライナ人を守るためにアメリカは何か提供するのかと尋ねられたが、クーパーは、米国は既に「化学、生物、放射線攻撃の脅威に対する相当量の防護具」を提供してきたと答えた。

クーパーは、今年初めに行われた軍事援助に「多くの個人用防護具」が含まれていたこと、また、脅威削減協力プログラムの一環として「かなりの量」の防護具が提供されたことを指摘した。

ローラ・ケリーはこの記事作成に貢献した。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争についてその原因と責任について議論されることがある。その際に注意にしたいのは「時間の長さ」と「考えるもしくは分析するレヴェル」だ。キエフ・ルーシ、モスクワ・ルーシと呼ばれていた時代から考え始めるのか、20世紀から考え始めるのか、それもソヴィエト連邦成立(1917年)から考えるか、それとも、ソヴィエト連邦崩壊(1991年)から考えるのか、2022年2月23日から24日にかけての48時間で考えるのか、だいぶ異なった主張が出てくるだろう。どの時間軸を取るかということだ。

 そして、「分析レヴェル」だ。3つの分析レヴェルというのは、国際関係論の泰斗ケネス・ウォルツが『人間・国家・戦争』という著書の中で示した考え方だ。また、外交政策分析においても個人レヴェル、国内レヴェル、国際システムレヴェルで分析することが出来る。こうした手法を用いると、色々な説明ができる。

個人レヴェルで言えば、ロシアのウラジミール・プーティン大統領やウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領、更には欧米諸国の指導者たちに焦点を当てて、彼の経歴や権力掌握後からこれまでの行動を心理学的、社会学的な手法を用いて分析するということができる。国内レヴェルで言えば、国内の政治体制やどのようなアクター(政治家や政党、団体など)がどのような活動を行っているか、力を持っているかということを分析して説明することができる。国際システムレヴェルは国際関係論のリアリズムとリベラリズムという理論を用いて分析するということになる。

社会における現象の多くは単一の原因で起きることはない。複数、しかもかなり多くの原因で起きる。それら様々な原因の与える影響の度合い、強さ、大きさは異なる。例えば、ある植物(小学校の時に朝顔の観察日記を奴休みの宿題でやった人は多いだろう)の種を地面に埋めてそこから芽が出る、という現象について考えてみると、その原因は多くある。気温、湿度、日光、肥料(その中にもいろいろな成分ある)、水など素人が考えても様々出てくる。

 人間社会の減少もそれと同じで数多くの原因がある。社会科学はそのうちのどれに焦点を当てるか、どこを強調してモデルを作るかということになる。個別の研究から共通点や法則性を見つけ出して抽象度を高めていき、仮説や理論を生み出して、この仮説や理論がどれだけ当てはまるか、説明する力を持っているかを検証し、試していくということになる。

 話がだいぶ逸れてしまったが、「ウクライナ戦争はロシアが悪い」という言葉は非常に粗雑な言葉だということを私は言いたい。戦争開始を決定したのはウラジミール・プーティンで、ウクライナ国内に侵攻したのはロシア軍だ。それは間違いない。この現象がどうして起きたのか、ということを上記のように順序だてて考えていかねばならない。単純にプーティンが独裁者で奇矯な人物だからだ、ロシアという国は昔から好戦的なのだということでは済まない。「ロシア人たちが非合理的に周囲からの攻撃を心配し、自分たちの安全に関して病的になっている」と馬鹿にするのも間違っている。ロシアの不安を煽り続けたことはなかったか、という視点も必要だ。矛盾した言い方になるが、社会科学は法則を見つける作業ではあるのだが、対象の人間や社会があまりにも複雑であり、人間の理性はあまりにも無力であるのでそのような作業はうまくいかない。従って、今できることは、分析の段階を整理して、落ち着いて考え続けることだ。

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ロシア・ウクライナ戦争の原因はロシアか、NATOか?(Who caused the Russo-Ukrainian war, NATO or Russia?

アレクサンダー・J・モトリル筆

2022年7月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/3543012-who-caused-the-russo-ukrainian-war-nato-or-russia/

悪い論調の中にはなくなるべきであるにもかかわらず、なくならないものがある。その1つが、ローマ教皇フランシス、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー、コロンビア大学のジェフリー・サックスらが最近行った、NATOがウクライナの加盟除外を断固拒否したためにロシア・ウクライナ戦争が起こったという主張である。言い換えれば、この戦争はロシアとウクライナの問題ではなく、ロシアに隣国への攻撃と侵略を強要した西側の愚かな政策の問題であると主張する人々がいるのだ。

この主張を、ソヴィエト連邦の人々がかつて「歴史の灰の山(ash heap of history)」と呼んだような場所に捨てる上で、少なくとも9つの説得力のある理由が存在する。そしてそれは早ければ早いほどいい。西側諸国の存続がかかっているのだ。それらについてこれらを考えてみよう。

(1)ウクライナが今後20数年の間にNATOに加盟する可能性がゼロであることは、誰もが知っていた。それは、アメリカ人も、ヨーロッパ人も、ウクライナ人も、ロシア人も含めてそうだった。そして、ウクライナにとってNATO加盟は非現実的であったため、アメリカがウクライナの港に船を停泊させたり、ウクライナの東部国境にミサイルを設置したりする可能性もゼロであった。

(2)1991年にNATOの宿敵であったソ連が崩壊して以来、ほとんど全てのNATO加盟諸国の軍隊が資金不足に陥り、それが無視されてきたことは周知の事実である。そのようなNATOがロシアの安全保障に脅威を与えるという考えは、特にロシアが軍隊の近代化のために何十億ドルも費やしてきたことを考えると、馬鹿げていたということになる。

(3)ヨーロッパを訪問してみると、東ヨーロッパのNATO加盟諸国がロシアから攻撃される場合、他のヨーロッパ諸国が軍隊を派遣してそれらを防衛することは考えられないことが理解できる。2017年に行われたヨーロッパの諸国民を対象とした世論調査で、攻撃された場合に自国のために戦う気があるかどうかを尋ねたところ、この点を立証している。ドイツ人の18%が「はい」と答えた。イタリア人の20%、スペイン人の21%、フランス人の29%が同様に「はい」と答えた。

(4)そして悪名高い第5条(NATO条約の相互防衛条項)が存在する。これは、ある加盟国に対する攻撃には、他の加盟国が軍事的対応をとることを保証するものとされている。しかし、そんなことはない。第5条は明確にこう言っている。「締約国は、一国又は複数の締約国に対する武力攻撃は、全ての締約国に対する攻撃と見なすことに同意し、その結果、かかる武力攻撃が行われた場合には、各締約国は、武力の行使を含む必要と認める行動を直ちにとることにより、攻撃を受けた締約国を支援することに同意する」。言い換えると、攻撃された時にどう対応するかは、個々の国家が必要かどうか考える問題なのである。ポーランドは軍隊を派遣するかもしれないし、ドイツは平和行進を組織し、フランスは会議を開くかもしれない。

(5)より詳しく見てみると、NATO、西側諸国、そしてアメリカがロシアにウクライナとの戦争を強要したという主張は根拠のないロシア人像を前提としている。この主張では、ロシアの指導者たちは悪名高くタフな集団であるが、実際には非常に敏感で、ほとんどヒステリックになっている。NATO拡大に関する約束違反やウクライナのNATO加盟の可能性に関する約束がないことに対して、彼ら独特の効用計算に従ってコストと利益を計算するのではなく、感情的に、ほとんど子供のようにふて腐れることによって反応しているのは確かだ。ロシア人、特にプーティン大統領が、現実の、あるいは想像上の侮辱に対して、西側諸国に仕返しするために戦争を起こし、大量虐殺に乗り出すと、誰が本当に信じるだろうか?

(6)フィンランドとスウェーデンがNATO加盟を目指したのは、プーティンの対ウクライナ戦争がきっかけだった。同じように、ウクライナもロシアの攻撃を恐れてNATO加盟を目指した。現在進行中の戦争が示すように、ウクライナの恐怖は完全に正当化された。このような恐怖は誇大妄想(パラノイア)の産物ではなく、17世紀半ばに始まり今日までほとんど衰えることなく続いてきたロシアの侵略と搾取の長い歴史的経験によるものだった。NATO加盟は、ウクライナの求める安全保障を提供するかどうかは別として、ウクライナが存立の危機に直面しているという信念を示すものであった。

(7)ミアシャイマー、サックス、ローマ法王は主張の中で、ロシアの歴史的・現代的帝国主義、プーティン率いるロシアの政治システムの本質、ロシアの帝国主義・権威主義的政治文化の露骨な現実を無視して議論している。あたかもロシアが反応はするが主導権を持たない受動的な行為者であるかのように語っている。このようにして、彼らはロシアから主体性を奪い、その指導者を非理性的な子供にして、それによって戦争の全ての責任を幼稚なロシアから父権的な西洋に転嫁することに成功したのである。

(8)少なくとも14世紀以降、モスクワ大公国(Muscovy)は帝国主義を実践し、ピョートル大帝(Peter the Great)が生み出したロシア帝国はモスクワ大公国の足跡を引き継いでいる。このような帝国主義が長く続いた背景には、ロシアが歴史的に独裁体制であったことと国内外での攻撃的な行動に価値を置く政治文化を持っていることがある。独裁者は、自らの支配を正当化する手段として、外国に対する拡張と侵略を行う。この点で、プーティンはピョートル大帝やイワン雷帝(Ivan the Terrible)と何ら変わるところはない。帝国主義的な政治文化は、拡張と侵略を正常で望ましいこと、ロシアの歴史的運命の一部であるかのように思わせることによって、拡張と侵略を促進させるのである。

(9)ウクライナは確かにロシアに対して脅威を与える。それは、ウクライナが理論上2050年にはNATO加盟国になっている可能性があるからではない。そうではなくて、ロシアとその神話から独立しようとする民主政体国家としてのウクライナの存在自体が、ロシアの帝国主義、ロシアの権威主義、ロシアの政治文化を脅かすからである。プーティンとそのプロパガンダ担当者はそのように言っており、それを信じない理由はない。現在進行中の戦争における彼らの大量虐殺行為は、この点を強調しているに過ぎない。

これらのことは政策にとってどのような意味を持つのだろうか?

第一に、一部の人々が喧伝する単純化された世界観は危険なほど間違っており、脇に置くべきだということである。第二に、ロシアは子供ではなく、領土の拡大、政治的独裁、社会的支配に深くコミットする冷静な計算高い大人である。そして第三に、もしロシアがウクライナの占領に成功すれば、ロシアは拡大を続けるだろう。なぜなら、その帝国主義的プログラム、ファシスト的政治体制、帝国主義的政治文化は、拡大を必要とし、促進するからである。エルミタージュ美術館の館長が簡潔に述べたように、「私たちは皆、軍国主義者であり、帝国建設者である」ということだ。

もしくは、ウクライナが陥落するならば、次はヨーロッパだ。

※アレクサンダー・J・モトリル:ラトガース大学ニューアーク校政治学教授。ウクライナ、ロシア、ソヴィエト連邦、ナショナリズム、革命、帝国、政治理論の専門家。ノンフィクション10冊の著書。著書は『帝国の終焉:諸帝国の衰退、崩壊、復活』と『諸帝国の再現の理由:帝国の崩壊と帝国の復活の比較視点』がある。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2022年2月26日にウクライナ戦争が勃発して7カ月以上が経過している。状況は膠着状態だ。ウクライナ戦争勃発後、「次は台湾だ」という馬鹿げたスローガンが聞かれるようになった。ロシアがウクライナに侵攻したのと同様に、中国が台湾に侵攻するだろうという主張だ。日本国内でこのような危機感を煽り、日本の更なる防衛予算増大、核武装まで話を進めようという危険な人間たちが出た。自民党や野党の一部の政治家たちも散々に危機を煽った。

 ロシアはウクライナ侵攻で首都キエフ奪取を目指したがその企ては頓挫した。そして、ウクライナ東部の確保に注力することになった。首都キエフ奪取失敗やロシア軍の幹部たちの狙い撃ちによる殺害は西側諸国からウクライナに供与されたジャヴェリン対戦車ミサイル、スティンガーミサイルが効果を発揮したこと、ウクライナ軍が強固な抵抗を示したこと、ロシア軍の装備が古かったことや通信手段が平時のままであったことなどが理由として挙げられる。私が注目したいのは、ロシア黒海艦隊の旗艦モスクワがウクライナ軍のハープーンミサイルで撃沈されたことだ。

 中国が台湾に侵攻するためには、台湾海峡を渡らねばならない。このロシア黒海艦隊機関の撃沈は中国側に大きな教訓になったことと思う。対艦ミサイルの威力は大きく、艦隊側もかなりの防衛能力を持っていなければ相当な被害が出るということを学んだはずだ。そのためには、中国が台湾に侵攻する場合にはまず徹底的な空爆やミサイル攻撃で防衛能力を叩いておかねばならないが、そういうことをすれば台湾の民間人に大きな被害が出て、犠牲者の数は計り知れない。台湾の人々に深い恨みを残すという大きなコストを相殺しておつりが出るほどの軍事侵攻するメリットは今のところない。

 また、台湾と中国との経済的結びつきも深まっており、台湾を攻撃して失われる経済的メリットを考えると軍事侵攻など得策ではない。中国を代表する世界的大企業ファーウェイ(華為技術)と台湾の巨大企業フォックスコン(鴻海科技集団 / 富士康科技集団)のつながりは深いことは中退の経済的つながりの象徴だ。それぞれの創業者である任正非と郭台銘の個人的なつながりも深い。急激な現状変更など中台どちらも望んでいない。

台湾独立というような動きは、大きくは「一つの中国」政策に反するもので、アメリカも容認はできない。「一つの中国」政策堅持はアメリカの歴代政権が建前だけとは言いながらも述べてきたことだ。それを破るような行為は中国に対する背信行為と同様なことであり、情勢は一気に不安定化する。

 中国がウクライナ戦争から学ぶ教訓は軍事侵攻のメリットは少ない(海を渡っての作戦は難しい)、基本は現状維持で危険な動きは小さい段階で解決して置く、アメリカに関与させない、熟柿作戦で機会が到来するのを待つ(機会がやって来るように仕向けることまではする)、急激な動きはコストばかり大きくて駄目だ、というものだと思う。「ウクライナの次は台湾だ」というような短絡的な危機を煽動する言論には冷静に対応すべきだ。

 

 

 

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北京に対してどのようにしてウクライナでの教訓を教えるか(How to Teach Beijing a Lesson in Ukraine

-ロシアのウクライナ侵攻から得る教訓は台湾に対する意思決定に活かされるだろう。

ロバート・C・オブライエン筆

2022年9月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/09/01/china-taiwan-ukraine-war-lessons/

世界はより危険になっている。ロシアのウクライナ戦争は7カ月目に入り、中国は最近、台湾周辺で大規模な軍事演習を行い、台湾海峡を分断する中央線を戦闘機が定期的に横断するなど、台湾への攻撃性を強めている。中国共産党(CCP)がモスクワのウクライナ侵攻から得る教訓は、台湾に対する北京の意思決定に活かされることになる。

中国を「名ばかり共産主義(communist in name only)」とするダヴォス会議的な見方は薄れつつある。それに代わって、中国指導部の民族主義的ナショナリズム(ethnonationalist)に基づいた信念とマルクス・レーニン主義的な信念の両方が強いという理解が定着しつつある。かつては、アメリカが譲歩を続け、不公正な貿易慣行、知的財産の窃盗、大量虐殺を無視し続ければ、中国はより自由な政治に変容すると考えられていたが、正反対のことが起こっている。中国は、特にこの10年間、着実に権威主義的で攻撃的な姿勢を強めてきた。アメリカは、過去の純朴さと北京への宥和的な傾向の代償を払うことになっている。

中国の習近平国家主席とロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻前夜に「無制限(no limits)」の提携を公言して以来、この機に乗じて台湾を侵略・併合するのではないかと心配されるようになった。中国国内では経済危機や重要な第20回中国共産党大会が控えているため、直ちに台湾が侵略される可能性は低いものの、その脅威は依然として残っている。

習近平と中国共産党がウクライナ情勢を注視する上で重要視しているのは4つの要素である。第一は、標的となる国家の弾力性(resilience)である。ロシアは近代的な国民国家への侵攻が困難であることを見抜いている。プーティンはウクライナで迅速な勝利を収めることができなかったが、これは小国でも十分な物資と士気があれば戦闘で勝てる可能性があることを示している。台湾は侵略を抑止、あるいは撃退するために、中国が食欲をそそられないように、よく手入れされたヤマアラシになるべきである。ウクライナの成功は、中国に対する抑止力として活用できる。

台湾は西側諸国の支援を受け、海上または陸上から発射可能で射程距離100カイリ(nautical miles)の対艦兵器「海軍打撃ミサイル(Naval Strike Missile)」を含む主要兵器システムを直ちに増設する必要がある。このミサイルは、海上や陸上から発射でき、射程距離が100カイリの対艦ミサイルで、統合軽戦車に搭載すれば、射撃と狙撃の任務に非常に有効である。また、アメリカのクイックストライク(Quickstrike)空中投下型機雷やその他の高度な機雷技術が大量に配備されれば、水陸両用軍に大損害を与えることができる。有名なジャヴェリン対戦車ミサイルは、上陸した中国の装甲車に対処するのに非常に有効であろう。スティンガー対空ミサイルは、中国の回転翼艦隊に真の危険をもたらす。最後に、対ドローン領域防衛システム「アンドゥリル・アンビル(Anduril Anvil)」は、中国軍の小型ドローンの幅広い利用が予想されるため、これにも有効である。これらの兵器は、複雑なプラットフォームではありません。ジャヴェリンやスティンガーミサイルの使用が極めて効果的であったウクライナで見られたように、こうしたプラットフォームが十分な数で展開されれば、より優れた装備の侵略軍を壊滅させることが可能である。

台湾では、兵役の義務期間を現在の4カ月間から1年間、あるいはそれ以上に延長することを求める声が多く聞かれる。台湾の経済を破綻させることなく、どのような方法でこれを行うかについては議論が続いているが、時代の緊急性を考慮すれば、台湾が当面の軍事的予備力を向上させる方法はある。例えば、バルト諸国やポーランドで普及している「射撃クラブ(shooting clubs)」を組織し、銃器の使用と戦闘時の安全確保を国民に周知させることが考えられる。このような取り組みは、銃撃戦が始まるよりかなり前に行えば、容易に実施でき、結果としてはるかに効果的となる。

第二に、侵攻軍の能力である。ロシアの軍事力は、特に統合兵器や機動作戦において、アナリストたちの予想をはるかに下回るものであることが判明した。そのことに習近平は衝撃を受けたことだろう。中露両軍は共同訓練や合同軍事演習を行っている。また、中国はロシアの軍備を購入したり、国産化したりしているが、宣伝文句通りの性能を発揮していない。

チェチェン、ウクライナ、グルジア、モルドヴァ、シリア、リビアと数十年にわたる戦争を続けてきたロシアと異なり、中国の最後の武力衝突は1979年のヴェトナムとの戦いだ。中国は過去数年間、上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)を中心に行われた大規模な合同演習で、戦闘訓練を経験豊富なパートナーであるロシアに頼ってきた。そして、それで最先端の演習ができると考えてきた。しかし、現在、ロシアの戦術、技術、手順、戦闘方式は特に優れているようには見えず、ロシア製武器の品質に関しても深刻な懸念が存在する。

第三の要因は、侵略に対する地域の諸国家の反応だ。ウクライナ侵攻後のNATOの急拡大は、ゲームチェンジャーとなった。中国は震撼し注目した。フィンランドとスウェーデンのNATO加盟を「冷戦時代のメンタリティ(Cold War mentality)」への回帰と呼んだ。プーティンは同盟にくさびを打ち込むつもりでウクライナに侵攻した。しかし、ドイツ、イタリア、ハンガリーは、アメリカ、イギリス、カナダ、フランスといった西側の歴史的同盟諸国から切り離される代わりに、NATOは新たに2つの加盟国を獲得し、ロシアはNATOとの間に800マイルを超える拡大した戦線に直面することになった。

NATOの拡大は中国にとって深刻な懸念となる。中国は、周辺諸国間の安全保障の多国間主義(multilateralism)の試み、特にワシントンから促された場合は、常にこれを非難している。台湾への侵攻が成功した場合でも、アジアにおけるアメリカのパワーに壊滅的な打撃を与えるのではなく、この地域の安全保障上の同盟関係を更に強化する可能性がある。もちろん、攻撃が失敗すれば、中国の野心にさらに大きな打撃を与えることになる。

日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)は、主にレトリック的な組織であるが、このような同盟のモデルとなる可能性がある。中立国として知られるインドと軍事同盟を結ぶ可能性は低いが、アメリカは既に他の2つのクアッドのメンバー、日本およびオーストラリアと安全保障協定を結んでいる。東京とキャンベラの両国は互いに協力を強化している。韓国の尹錫悦新大統領は最近、招待されればクアッドに参加することに関心を示しており、フィリピンなど他のアメリカの同盟諸国やパートナーも参加する可能性がある。さらに、AUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリア)の3国間協定に続いて、フランスとイギリスが加盟を目指すという話もある。北京にとって、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は、中国が台湾に対して軍事行動を起こした場合にアジアで起こり得る悪い前兆である。

第四に、侵略された場合、侵略者にどのような経済的制裁を加えるかということである。この点は、ウクライナ危機を抱える西側諸国にとって問題であり、アメリカは早急に是正しなければならない。ロシアによる侵略戦争に対し、経済制裁の進展と実施は遅々として進まず、効果的とは言えない。

中国の国内宣伝が西側の信用を落とすために、制裁を軽視している証拠もある。中国は、中国企業に影響を与える二次的制裁の可能性をまだ気にしているかもしれないが、本当に恐れているのは、中国がロシアと行っている膨大な石油・ガス取引が西側の制裁の対象となった場合のみだ。今のところ、このような事態は起きていない。ヨーロッパ諸国は戦後半年以上経った今でも、燃料の購入を通じて1日当たり約10億ユーロをロシア経済に送り込んでいるのだ。

習近平は、中国が台湾に侵攻した場合、ヨーロッパ諸国とアメリカから包括的な制裁を受けることは許されない。中国共産党は中国の自立を目指した政策を実施しているが、西側と完全に関係を切り離す覚悟はない。

よって、ロシアが西側諸国による懲罰的な経済手段でどれだけ打撃を受けるかで、中国の今後の動きに影響を与えるだろう。すでに、中国のシンクタンクの1つである中国人民大学重慶金融研究所は、プーティンは制裁に打ち勝つだけでなく、原油価格の高騰により制裁に直面した戦争で大量の利益を上げていると断言している。中国共産党にとって経済は重要だ。金持ちになれば、北京は大規模な軍備増強に取り組み、一帯一路構想(Belt and Road Initiative)の資金を調達することができる。

従って、アメリカと西側諸国は、現在の中途半端な対露制裁から拡大する必要がある。つまり、ロシアの中央銀行に対する完全な制裁と、国際的な決済メッセージシステムであるSWIFTからロシアの全取引を排除することである。プーティンの戦争マシーンに資金を提供し、習近平に強いメッセージを送るときが来た。西側諸国は、独裁国家が近隣諸国を侵略した場合、その経済活動を停止させることができるし、そうするつもりだ。

短期的には、アメリカは決意を示し、ウクライナ人の抵抗を助け、台湾に効果的な武器を供与し、西側諸国の経済的な力を全部活用してロシアを罰することで、潜在的に台湾の人々を侵略から救うことができるかもしれない。

国家安全保障会議首席スタッフを務めたアレックス・グレイ、国家安全保障会議アジア問題上級部長を務めたアリソン・フッカーも本稿の作成に貢献した。

※ロバート・C・オブライエン:2019年から2021年(ドナルド・トランプ政権)まで国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。ツイッターアカウント:@robertcobrien
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は2022年2月26日に始まり、現在も継続中だ。現在のところ、停戦の見通しは立っていない。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は停戦交渉に応じる姿勢を見せているが、ウクライナはロシアに奪われた地域の奪還を目指しており、停戦を求める姿勢にはない。ウクライナ戦争は泥沼化の様相を呈している。ウクライナとロシア両国にとって不幸であるが、アメリカは大規模な軍事支援を行っており、アメリカ政府は多額の予算を自国内の軍事産業に投じている。アメリカ政府は人々から反対されにくい予算支出の大義名分を得ているということになる。世界中で多くの人々が物価高やエネルギー不足で苦しむ中で、アメリカの軍事産業だけはハッピーなクリスマスを迎えることが出来るだろう。

 戦争は始めるのは簡単だが終わらせるのは難しい。このことは歴史が証明している。私たちは日中戦争や太平洋戦争から体験的にそのことを学んでいる。戦争を始めてしまうと、「勝つ(相手が敗北を受け入れる)まで終われない」ということになる。そして、戦争が自国に有利な状況で進んでいるうちには停戦を考えることはなく、敗色濃厚になってから慌てて戦争終結について考慮、検討を始めても手遅れで、敗北を受け入れるところまで追い込まれて惨めな敗戦を迎えることになる。日中戦争開始から太平洋戦争で悲惨な敗戦を迎えるまでの約15年間に日本は何度も戦争を停める機会はあった。アメリカとの開戦を避けることも出来た。しかし、それができなかった。サンクコストと呼ばれる現象が原因の一つになっている。サンクコストは既に始めた事業から撤退した場合に回収できないコストのことで、これがあるために事業からの撤退を決断できずに、ずるずると事態が悪化し続けるということが起きる。日本はこのサンクコストに悩まされた。

 満州事変からの満州国建国までの道筋では、中国側に満州の権益を脅かされる事態となり、ここで関東軍が日露戦争を持ち出して、「十万の英霊、二十億の国帑(こくど、国の財産)」という言葉を使って「満州は日本の生命線だ」とのスローガンの下、満州国建国まで進み、日本は国際連盟脱退に至った。また、日米開戦直前には、アメリカが日本の中国からの撤退を求めたのに対して、東条英機をはじめとする陸軍首脳は「ここで引き下がっては二十万の英霊に申し訳が立たぬ」と言って強硬に中国からの撤兵に反対した。こうしたサンクコストへの個室のために結果的により大きな犠牲を払うことになった。戦死者を英霊と呼び、英霊の数がどんどん増えていくことで、戦争はより激化し、戦争を停めることはどんどん難しくなっていた。

 その他にも「首都である南京を落とせば中国は簡単に屈服する」「アメリカとイギリスを離間させることが出来る」「中国兵は弱兵、アメリカ兵は軟弱怠惰ですぐに逃げ出す」といった誤った認知、自分に都合の良い、客観的な証拠に基づかない期待に基づいた決定によって犠牲はどんどん増えていった。誤った認識を改めることは難しい。人間は誰しも自分の経験や先入観、考えを大きく変えることは困難だ。そして、年齢を重ねていくと、思考がより狭くなり、そして自分の出した結論や決断に固執してしまうことになる。しかし、そのことを知っていれば大きな失敗を回避できる。

 私が見事だったと評価したいのは第一次湾岸戦争におけるアメリカの動きだ。アメリカはクウェートを占領したイラクに対して、多国籍軍を結成し(アメリカ軍が大部分を占めてはいたが)、実力でクウェートからイラク軍を撤退させた。アメリカ軍とイラク軍の戦力差を考えると、これはそこまで難しいことではなかった。この当時のジョージ・HW・ブッシュ(父)政権では、ディック・チェイニーやドナルド・ラムズフェルド、ジョン・ボルトンなどのネオコン派がこのままイラク国内に侵攻して、サダム・フセイン大統領打倒を行うように求めた。しかし、ブッシュ大統領とジェイムズ・ベイカー国務長官はイラク侵攻に反対して、それは実現しなかった。アメリカ軍の実力であればサダム・フセイン大統領を追い落とすことは可能だっただろうが、第二次湾岸戦争とその結果を見れば明らかなように、その後のアメリカによるイラク占領は大きな犠牲を伴うものとなることをブッシュとベイカーの2人は分かっていた。戦争の目的(イラクのクウェートからの追い落とし)を達成したらすぐに軍を停めるという見事な決断だった。このようなことは中々できない。

 戦争が予想通りに進むことはほぼない。最初に「戦争終結案」のようなものを作ってもその通りには行かない。そして、戦争は長引き勝者になるにしても敗者になるにしても、犠牲は予想を大きく超えるものとなる。一番良いのは戦争を始めないことであり、戦争につながる危険を平時から少しでも除去しておくことだ。

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戦争を始めるのが容易くて終わらせるのが難しいのはどうしてか(Why Wars Are Easy to Start and Hard to End

-誤った認知(misperception)、サンクコスト(sunk cost)、激化(エスカレーション、escalation)、そして国際化(internationalization)、これら全てが衝突や戦闘を計画よりも長引かせることになる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年8月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/08/29/war-military-quagmire-russia-ukraine/

私はこれまでに何度か、国家指導者たちが危険を覚悟しながらも忘れている重要な外交政策上の考え方、例えば、力の均衡(balance of power、バランス・オブ・パウア)、ナショナリズム(nationalism)、安全保障のジレンマ(security dilemma)などについて論稿コラムを書いてきた。今週は、世界各国の指導者や外交政策アドバイザーたちが、机の上やオフィスの壁、あるいはまぶたの内側にタトゥーでも入れて、絶対に忘れないようにすべき、シンプルな意見を紹介する。それは「戦争を始めるのは終わらせるよりずっと簡単だ」というものだ。

この現象の描写はあらゆる場所にある。ジェフリー・ブレイニーがその古典的著書『戦争の原因(The Causes of War)』で述べているように、過去の紛争の多くは「来るべき将来の戦争への夢と妄想」、特に「戦争は素早く、安く、決定的な勝利をもたらす」という信念によって促されてきた。例えば1792年、オーストリア・ハンガリー、プロイセン、フランスの3か国の軍隊は、12回の戦闘で戦争が解決すると信じて戦場に駆けつけた。フランスの急進派は、自分たちが最近起こした革命がすぐに他国に広がると考え、相手国の君主国は、革命軍は無能な集団であり、自分たちの誇る職業軍人たちなら簡単に一掃できると考えていた。しかし、その結果は四半世紀に及ぶ戦争が繰り返され、全ての大国が巻き込まれ、戦争が世界中に拡大していった。

同様に、1914年8月、ヨーロッパ諸国では、クリスマスまでに兵士たちは帰ってくると言って出征したが、クリスマスに帰ってくることができたのは、1918年のことであることを知らずに兵士たちは出征した。イラクの指導者サダム・フセインは、1980年に同じような錯覚に陥った。1979年の革命によって、イランはイラクの攻撃に対して脆弱になったと考えた。その結果、戦争は8年続き、両国は何十万人もの死者と莫大な経済的損害を被った後、停戦した。

軍事作戦が大成功を収めても、すぐに勝利に結びつかず、泥沼にはまることがよくある。1967年の「六日間戦争(Six-Day War)」は1週間足らずで終わったが、イスラエルとその近隣諸国との間の根本的な政治問題は何一つ解決されず、よりコストのかかる「消耗戦(War of Attrition)」(1969-1970年)と1973年の「十月戦争(the October War)」の舞台となっただけである。1982年のイスラエルのレバノン侵攻は軍事的にはほぼ成功したが、その結果、レバノン南部の占領は18年間続き、何百人もの命を奪い、ヒズボラの創設につながり、更に費用のかかるいくつかの衝突の下地を作った。1991年の「砂漠の嵐作戦(Operation Desert Storm)」より成功した軍事作戦を見つけるのは難しいだろう。しかし、サダム・フセインはクウェートから彼の軍隊を追放した後も権力にしがみつき、アメリカは更に10年間、イラク上空の飛行禁止区域をパトロールし、時折空爆を行うことになった。

2001年のアフガニスタンと2003年のイラクにおけるアメリカの最初の成功は、全く幻想であったことが証明された。ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)がイラク侵攻後2カ月足らずで空母の上で早々と宣言した「ミッション・アコンプリッシュト(Mission Accomplished)」どころか、いずれのケースでも、驚くほど回復力があり有力な反乱軍との戦いで、コストがかかり、結局は失敗した。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、イエメンのフーシ派に対する無謀な戦争を始める前に、この経験を熟考すべきだった。

ロシアのウラジミール・プーティンは、勝利が手早く簡単に訪れると信じて戦争を始めた最新の世界的指導者だ。ウクライナ戦争の最終的な起源と責任について誰がどう考えるにせよ、ロシアが戦争を始めたことに疑問の余地はない。プーティンは、ロシアの強みを誇張し、ウクライナの決意を過小評価し、第三者がどう反応するかを計算ミスしたため、あるいはその3つの組み合わせのため、当初の戦争目的は達成に時間がかからず、費用もそれほどかからないと信じていたようである。プーティンは今、他の多くの世界の指導者が発見したのと同じ痛みを伴う教訓を学んでいる。戦争を始めることは、戦争を終わらせることよりもはるかに簡単なのだ。

しかし、なぜ、戦争を始めた人々の予想通りに、容易に停止させることができる短期決戦の戦争がほとんどないのだろうか? 戦争が常に不確実であること、戦前の予測にしばしば誤りがあること、戦闘がしばしば意図しない結果を生み、戦前の計算が無意味になることを認識するだけでは十分ではない。戦争を考えている指導者が評価すべきは、戦争が予想以上に大きくなり、費用がかさみ、長引かせる強力な傾向があるということだ。

第一に、相手がどれほど激しく抵抗するか事前に知ることは不可能であり、攻撃を考えている指導者はそれを過小評価する可能性が高い。ナショナリズムの力を理解していないことがその一因であり、自国があらゆる潜在的な敵に対して生来的に優れていると考える傾向があるので、侵略者たちは相手の抵抗力を軽視してしまう。相手がより強く、より団結しており、より結果を重視していることを認識していれば、誰も戦争を始めない。驚くべきは、戦争を始める国家がいかに頻繁にこの点を見誤るかということである。

第二に、戦争が始まると、サンクコスト(埋没費用 訳者註:既に投資した事業から撤退しても回収できないコスト)の問題が必ず発生する。敵対国が損失を被ると、その指導者は既に払われた犠牲を正当化するために十分な利益を得ようとする。愛する者を失った家族は、その犠牲が無駄であったとは言われたくないことだろう。軍の指揮官たちは、戦争の危険性を警告したり、最初の決断にあらかじめ反対したりしていたかもしれないが、敗戦の責任を負いたくないし、勝利をもたらすあらゆる機会を求めていくだろう。サンクコストが現在の政策を決定するのは非合理的かもしれないが、それが起こらないということではない。また、サンクコストを回収したいという欲求は、それぞれの側の戦争目的を拡大させ、増大する損失に見合った利益を得ようとする。

第三に、戦争が続くのは、戦うという行為そのものが、それぞれの側の相手に対するイメージを硬化させるからである。戦争が始まった時、当事国がいかに疑いや敵意を抱いていたとしても、それぞれが相手に死や破壊や苦しみを与えれば与えるほど、憎しみや疑いの感情は増すばかりだ。このような状況下では、復讐心を抱くのは当然であり、その結果、より軽蔑され嫌われる敵に対して決定的な勝利を収めたいという欲求が高まる。

第四に、敵のイメージが固まるにつれて、交渉能力が低下する。国交が断絶され、直接の意思疎通が難しくなり、妥協(compromise)の可能性を口にする者は、裏切り者(traitor)、あるいはそれ以上として糾弾される可能性がある。たとえ交渉が始まったとしても、どちらの側も相手を十分に信頼して取引を行うことはできないだろう。和平交渉は通常、深刻な関与(commitment)問題(「相手が再軍備して平和条約を破棄し、再び攻めてこないことをどうやって確認できるか」)に直面し、その障害は、双方の相手に対するイメージが悪化すればするほど顕著になるだろう。

例えばウクライナの場合、ヴォロディミール・ゼレンスキー政権にはプーティンやその関係者を信用できない理由が十分にあり、現時点ではプーティンやそのアドバイザーたちを誰も信用していない。残念ながら、ジュネーブのロシア国連大使、ゲンナジー・ガチロフが先週述べた、「"紛争が長引けば長引くほど、外交的解決は難しくなる」という言葉は、おそらく正しいのだろう。

第五に、戦争はエスカレートし、拡大する強力な傾向も持っている。一方が敗れれば、より多くの武力を行使し、より危険な新しい標的を攻撃し、他の方法で利害関係を高めることを考えるかもしれない。クリミアでの爆発、ザポリージャ原子力発電所の危険な状況、モスクワでの親プーティン派論客の自動車爆弾テロは、これらの行動の最終責任が誰にあるかにかかわらず、この過程がいかに機能しうるかを如実に示している。

また、NATOがウクライナに対して行ったように、戦争が始まると、外部が一方を支援するために飛び込んできたり、他が混乱している間に自分たちが利益を得ようとするために戦争が拡大したりする。シリアの内戦はその典型である。シリア国内の反乱として始まった戦争は、最終的にロシア、トルコ、イラン、サウジアラビア、アメリカ、イスラエル、その他多くの国々による直接的または間接的な軍事介入を引き起こした。残念ながら、紛争に関与する国の数が増えれば増えるほど、全ての国の合意を得ることは難しくなる。

戦争を長引かせる第六の問題は、情報の質の低下である。ハイラム・ジョンソン元連邦上院議員の言葉にもあるように、「戦争が起きたら最初に犠牲になるのは真実である」ということになる。戦争状態にある国は、できるだけ冷静かつ明確に考え、行動すべきであるが、戦時下においてはそれが困難となる。

世界各国の政府は、良いニューズを大々的に宣伝し、後退を隠し、敵の悪意を常に国民に思い起こさせることによって、国民の士気を維持しようとする強力な動機付けを持っている。また、検閲(censorship)を行い、異論を唱える者を弾圧・排除し、戦場で実際に何が起きているのか、内部の人間でさえも正確に把握することが難しくなっている。独裁国家には国民が知るべきことをコントロールする方法がたくさんあるが、この問題は民主政治体制国家でもほとんど知られていない。メディア組織はしばしば愛国的熱狂や政府の意図的な操作に屈することがある。

戦争当事国のエリートも国民も、戦争が自分たちの側に有利に進んでいると信じていれば、戦争を終結させようという圧力はあまりかからないだろう。もちろん、全ての人が正しい訳ではないが、本当の状況が広く理解されるには、長い時間がかかるかもしれない。1917年にイギリスのロイド・ジョージ首相が言ったように、「もし人々が戦場の状況を本当に知っていたら、戦争は明日にでも止められるだろう。しかし、もちろん彼らは知らないし、知ることもできない」ということとになる。

戦争を始めた人々には、自分たちが勝利と言える何かを達成する前に戦争を終わらせようという意欲がほとんどない。故フレッド・C・イクレ(彼はハト派ではなかった)は、その魅力的な著書『全ての戦争は終わらせねばならない(Every War Must End)』の中で、戦争を終結させるにはしばしば新しい指導者を迎え入れることが必要だと指摘している。それは、戦争に進むことを選択した人々は、しばしば自分たちの誤りを認めたがらなかったり、認めることができなかったりするからだ。このことは残念なニューズだ。

もちろん、全ての戦争は最終的に終結する。しかし、犠牲が利益をはるかに上回る場合、それは冷たい慰めにしかならない。この教訓は十分に明確である。戦争は時に必要かもしれないが、最も不本意なものであり、切実な必要性の下にのみ行われるべきだ。このような決定を下す立場にある人々は、戦争が予想や制御が困難な強力な政治的、社会的な力を解き放つことを決して忘れてはならない。ひとたび戦争の犬(the dogs of war)(訳者註:戦争の惨禍)

を解き放てば、誰が噛まれることになるかは分からない。しかし、皆さんが考えているよりずっと長く、ずっと多くの費用がかかることは間違いない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 地球規模の世界の支配構造という大きな枠組みで考えると、近代世界以降は、一極(unipolarity)、二極(bipolarity)、多極(multipolarity)ということになる。「極(polarity)」は「軸」冷戦終結後、ソヴィエト連邦崩壊以降の世界は、アメリカが世界で唯一の超大国(superpower)となり、アメリカが支配する一極世界ということになった。第二次世界大戦後の冷戦期は、アメリカとソ連の二極構造であり、一時期のヨーロッパは複数の大国がせめぎ合う多極世界であった。イマニュエル・ウォーラスティンは世界システム論という考えを提唱し、その中で支配的な国家について覇権(hegemony)という概念を用いて説明している。17世紀のオランダ、19世紀のイギリス、20世紀のアメリカがこの覇権(国家)に該当している。

 アメリカ一極世界が崩れつつあるのではないかという考えを多くの人が持つようになっている。アメリカの国力の低下によって、軍事的優位性、経済的優位性が崩れるのではないかと考える人が増えている。それは中国の急速な台頭が原因だ。世界GDPに占める割合ということはこのブログでも再三取り上げている。大まかに言えばアメリカが25%、中国が19%、日本が5%、ドイツが4.5%、インドが3.5%となっている。1968年に日本は西ドイツ(当時)を抜いて世界第2位となったが、現在のアメリカと中国の比率ほどにはアメリカに迫ることはできなかった。アメリカは第二次世界大戦以降、最大の強敵に迫られていることになる。ここで日本について取り上げるのは話を広げ過ぎではあるが、日本はこのままでいけば、インドに抜かれてしまう可能性が高く、中長期的に見てドイツにも抜かれてしまう可能性もある。30年以上にわたり経済成長がなかった国なのでそれも仕方がない。

 アメリカとしては一極世界を維持したいということになる。中露はそれに挑戦する形となる。しかし、中露間には微妙に差がある。ロシアは冷戦期に世界を二分した共産主義陣営の旗頭ソヴィエト連邦の後継国であり、「元超大国」としてのプライドが冷戦終結以降にずたずたに切り裂かれその屈辱からの復活を目指す。プーティンはロシアの復活を目指す。中国はアメリカに経済的にべったりとくっつき、高度経済成長を続けてきた。中国としては世界的なプレイヤーとしての役割を果たしつつも、アメリカとは本格的に衝突することはしたくない。また、アジア太平洋地域、具体的には西太平洋から東南アジアにかけての地域でアメリカの影響力を削ぎたいということもある。

 アメリカとしては中露を引き離したい。中国とロシアを各個撃破したい。しかし、中国もロシアも緊密な関係を保つことでアメリカに対抗できるということは分かっている。両国が1国だけでアメリカと対校することは難しい。ウクライナ戦争によって、「西側世界」対「それ以外の世界」という分裂が明確になり、アメリカとヨーロッパ諸国対中露という構図が明らかになった。下の記事で興味深いのは、最近娘ダリア・ドゥギナが自動車に乗っているところを爆殺されたアレクサンドル・ドゥーギンが「アメリカとヨーロッパを分断する」という「2つの西洋」ということを述べている点だ。そして、中露の関係を深化するように主張している点だ。

 アメリカが中露を離間させることは難しい。そして、ヨーロッパではウクライナ戦争の長期化で「早く停戦して欲しい」という声が高まっている。その声の向かう先はアメリカだ。アメリカが99億ドル(約1兆3000億円)規模の支援を行っているのだから、アメリカがウクライナ戦争を「やらせている」ということになる。ヨーロッパ諸国で反米意識が高まれば、ドゥーギンの主張の実現性も高まるということになる。「自分の陣営が割れないようにして、相手の陣営に楔を打ち込んで分裂させる」というのが戦いの基本のようだ。

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上海協力機構首脳会議:多極勢力としての中国の龍とロシアの熊(SCO SUMMIT: CHINESE DRAGON AND RUSSIAN BEAR AS MULTIPOLARITY FORCES

アレクサンドル・ドゥーギン筆

2018年6月14日

『ジオポリティカ』誌

https://www.geopolitika.ru/en/article/sco-summit-chinese-dragon-and-russian-bear-multipolarity-forces

ご親切な招待をいただき感謝申し上げる。まず復旦大学のジャン・ウェイウェイ氏に感謝を申し上げる。今回、私は初めて中国を訪れ、大変に感銘を受けた。私は中国について1冊著作を出している。『黄色い龍(Yellow Dragon)』というタイトルだ。この本で私は中国の歴史、文明、アイデンティティについて書いた。皆さんが中国文化についてのロシア的な見方にご興味がおありならば、そして翻訳することに関心がおありならば、復旦大学に著書をお贈りする。私はアムステルダムで開催された会議にウェイウェイ氏とともに出席した。その会議で、私たちは一極(unipolarity)に対抗する、多極(multipolarity)と新しい世界秩序の側に立っていた。

●一極の時代(Unipolar moment

まず、私は多極世界についての私の考えを明らかにしたい。私は多くの著作を書いてきた(これまでに60冊以上)。その中の一冊のタイトルは『多極世界の理論』だ。科学的なレヴェルで多極性に関する議論を進めることが極めて重要だ。

私たちは今でも一極性の時代の中に生きている。一極性の時代はソヴィエト連邦崩壊、そして二極性(bipolarity)の終焉とともにやってきた。チャールズ・クラウトハマーはそれを「一極性の時代(The Unipolar Moment)」と呼んだ。そして、フランシス・フクヤマは「歴史の終わり(The End of the History)」と呼んだ。

一極性の時代は今でも続いてはいるが、衰退の一途をたどっている。それは熱狂を呼び起こすようなものではない。グローバライゼーションは続き、西洋の覇権はまだ存在してはいるが、明らかに衰退の一途をたどっている。

私たちは今、一極時代の終焉の瞬間に生きている。それは、グローバルな西洋の価値観が普遍的なものとして受け入れられている一極性から移行している。そして、より多くの人々がこの新しいパラダイムのことを多極性と呼ぶことに同意している。

●多極主義と多極性(Multilateralism and multipolarity

多極主義と多極性の間には非常に重要な違いがある。

バラク・オバマが提唱した多極主義の考え方は、西側から中国へ力を分配するという考えに基づくものだった。例えば、ヒラリー・クリントンが提案したG2(米国の指導の下、中国と一緒に統治すること)はその一例である。

しかし、これは本当の多極性とは全く異なるものだ。私は、多極性とは何かということについてのロシアの理解を明らかにしたいと思う。多極性についてのロシアの理解には、西洋の近代そしてポストモダン文化の理解には普遍性というものがないという考えに基づいている。人類には普遍的なものはなく、どの社会にも適用できるような人間の価値の概念もなく、普遍的なものは何もない。異なる文化や文明における人間の理解は全く異なるものとなる。人間についての規範的な概念がないのだから、普遍的な人権の概念を扱うことはできない。西洋文化では、個人という概念があるが、これは人間に対する自由主義的なイデオロギー的な理解である。イスラム文化には、神との個人的な関係という文脈での人間についての別の理解があり、そこでは超越的なレヴェルが絶対的に重要である。中国文化には「仁(Ren)」[1]という概念があり、それは個人というより社会的なものである。また、キリスト教正教会では、人間を個人性(individuality)ではなく、人格(Personality)として理解し、それは人間の社会的関係と神との精神的関係の交差に依存している。ヒンズー教の文化では、人間の概念は仏教文化の伝統であるアドヴァイタ(Advaita)に基づいており、宇宙の幻想があり、人間の運命はこの幻想から自らを解放することであることを暗示している。

従って、人権の概念は普遍的なものではない。私たちが普遍的な価値として受け入れている人権は、人間とは何か、何が正しいかという近代西洋の理解の投影だ。それは西洋のイデオロギー的な概念が私たちに投影されたものだ。

多極性は、このような様々な民族の異質性を肯定的に認識することに基づいている。「人間」という概念は一つではないし、「正しい」「秩序」「普通」「普遍」という概念も一つではない。例えば、中国やロシアの文化は普遍的だが、ヨーロッパや西洋の文化はまた別の意味で普遍的だ。私たちは、西洋とは異なる方法で普遍性を理解している。

つまり、多極性とは、他者を肯定的に理解し、多元的な価値体系を受け入れることに基づいている。科学、文化、政治における最も重要な概念についての議論に基づくものであり、リベラルなアングロサクソンの概念を押しつけるような一極集中的な投影に基づくものではない。

●知的世界における脱植民地化(Intellectual decolonization

多極性のプロジェクトは、西洋の覇権、西洋の帝国主義、西洋の植民地主義を取り除くことであり、経済的、政治的にだけでなく、それは既に実行されている。政治的な意味では、脱植民地化のための戦いは終わっている。経済的な戦いは現在進行中で、中国はここをリードしている。これは、西洋を真似ることなく経済的に成功することができた好例だ。中国モデルは、ミシェル・アグリエッタ氏が規制理論(regulation theory)という観点から説明した。共産党は秩序を守り、中国版民主政治体制を推進する重要な役割を担っており、社会が重要なファクターとなっている。

1990年代のロシアの問題は、西側諸国の模倣をしたことだった。国家、独立、主権、産業など、ほとんど全てを失い、プーティンによって初めて復活を遂げた。中国の経済成長には政治的秩序が不可欠だが、ここには中国の経済的主権と経済的方法による脱植民地化のための戦いの例が見られる。

しかし、植民地主義の最も重要な形態、すなわち、私たちの知性、思考の占有がある。私たちは、思想、哲学、理論、科学、良心の分野で、依然として一極集中の大きな影響下にある。従って、西洋の世界支配を終わらせるべき多極化した世界秩序の中で最も重要なことは、知的脱植民地化なのだ。私たちは、西洋の普遍的な概念言語という幻想から自らを解放しなければならない。私たちはそれを理解し、学び、解体し、西洋を西洋文明の論理的かつ自然な限界の中に置くべきだ。

つまり、西洋の言説は西洋の部分で評価されるのであって、私たちの側では評価されない。従って、私たちは自分の考えを脱植民地化し、西洋文明を通常の植民地以前の限界に戻さなければならない。これは非常に重要なことだ。

中国では、時間の複数性について話すのは簡単だ。なぜなら、中国の文化では、直線的な時間ではなく、周期的な時間を扱っているからだ。だから、戻ることは常に可能だ。多極性は、オスマン帝国、ペルシャ帝国、中国帝国、ロシア帝国、ヨーロッパ帝国といった大帝国が共存していた時代、すなわちコロンブス以前の時代への回帰を基本にしている。それは、この西洋の世界進出に先立つバランスであった。ルネサンスというのは非常に興味深い瞬間だが、近代、つまり啓蒙主義の時代には、ルネサンスは近代への導入のようなものだと考えられていた。しかし、これは直線的な時間の概念に過ぎない。しかし、これは直線的な時間の概念に過ぎず、実際にはルネサンスは文明の失われた機会でもある。ルネサンスに留まるならば、近代化、つまりグローバル資本主義に向かうのとは別の道を歩むことになる。

資本主義の真の力は、民主政治体制や人権とは無関係であり、それは戦争の継続である。戦争は、近代資本主義的力の真の源泉である。フェルナン・ブローデル、カール・シュミット、ジョン・ホブソンたちがそれを証明した。つまり、自由、自由貿易、資本主義の特別な発展形態に関するこれらの神話は全て、植民地化の壮大な物語(metanarrative)だ。カール・フォン・クラウゼヴィッツは「戦争は他の手段による政治の継続である」と述べたが、その言葉を敷衍すれば、現実には、経済とは、他の手段によって政治を継続することである。経済とは政治の継続のもう1つの形態である。

つまり、資本主義とは、武器(weapon)に他ならないということになる。そして、この武器を使う主体は、国家、社会、国民である。このシステムを武器とするなら、誰がこの武器を使うのかを定義する必要がある。中国は、社会主義、資本主義、他の世界との関係の変化を、中国人に有利になるように利用することができる。これは素晴らしい例である。中国人は歴史の主体であり、中国文化は歴史の主体であり、これは多極性の好例である。

さて、多極性のもっと現実的な側面を考えてみよう。多極性は、西側諸国における世界的な決定のポイントが1つではなく、異なるポイントが存在することを前提としている。いわゆる主権国家の多くは主権者ではないので、主権国家の数がそのまま局になることはありえない。彼らは十分に強力ではなく、この主権に対する決定的な重みを持っていない。だから、いわゆる主権から真の主権へと移行する必要がある。多極化した世界は、これらの真の主権国家のバランスに基づいているはずだ。つまり、多極化システムの極の数量は、いわゆる主権国家の数よりも制限されるべきだ。

●2つの西洋(Two Wests

この多極化の特徴をいくつか説明することができる。第一に、西洋を分割する必要がある。アメリカは文明の一つの極であるが、ヨーロッパはそれと同じではない。両者には多くの共通点は存在するが、アメリカとヨーロッパをより分裂させているものがたくさんある。今、これらの違いに形を与える時が来た。このプロセスは、ますます自国中心的になり、ますますグローバリストでなくなっていくトランプ政権の統治によって促進されている。そして、トランプのこの攻撃的なスタイルは、ヨーロッパが自らのアイデンティティ、地政学的位置、利益、そしておそらく軍事的・戦略的独立を再定義する機会を与えることになる。これは非常に良い兆候である。つまり、ヨーロッパがアメリカとはまったく異なる存在として登場することは、重要な変化であり、多極化の重要な現象になる可能性がある。

唯一の決定権を持つように装うグローバルな西側ではなく、2つの西側が存在することになる。この分裂は、他の極を出現させるのに役立つだろう。

●ロシア、中国そして他の様々な極(Russia, China and other poles

多極性の第二の側面について述べる。それはロシアの復活だ。世界政治の多くの側面でそれを見ることができる。プーティンは、独立した国際的なプレイヤーとしてのロシアの主権を回復し始めた。ロシアは経済的には弱いが、軍事的、政治的には強い。ユーラシアの極が出現し、中国の極(独立した国際的なプレイヤーとなり、経済的には中国の方がはるかに発展している)があり、その他がある。上海協力機構はまさにその中核であり、この多極性がどのように作られるかの例である。これはまだ多極ではないが、多極化の方向性を示している。

従って、ロシアと中国という少なくとも2つの多極化の大きな極があると考えている。また、この多極化の文脈には、人口動態、経済、政治的な巨人であるインドが存在する。これは、ロシア、中国、西洋から完全に独立している。イスラム諸国の側では、一極に対する抵抗が高まっており、彼らの文明は、異なる方法で西洋の覇権主義に対抗している。イスラムの人々が国ごとに分かれている場合は克服できない。一国ごとであれば、リビアやイラクのように簡単に破壊することができる。しかし、もしロシアのような新しい極がこれらのイスラム国家を助けるようになれば(シリアの場合のように)、状況は違ってくるだろう。そして、シリアに対する中国の政治的・外交的支援と他の地域大国の関与があれば、イスラム国家を西側からの攻撃から救うことができる(イスラム国は、イスラム世界における社会主義・親ソ連傾向との戦いでCIAが作り出し支援したツールであることは既に知られている。現在は制御不能になっているが、それでも西側の戦略の継続であることには変わりはない)。異なる極が協力して多極化を促進すれば、多極世界が実現する可能性がある。イスラムは、この抵抗、この主権の宗教的な極である。イスラム世界には、イラン、トルコ、サウジアラビア、インドネシア、パキスタンなどのシーア派を中心とするさまざまな極があり、現在はあまり統一されていない。しかし、これらの極は、一極集中を拒否することでは一致している。この極は非常に重要で活発な力であり、台頭しつつある。

ラテンアメリカでは、統一的な立場への第一歩を踏み出した。アフリカ諸国は正式な占領から解放されたが、依然として西洋に依存しており、自分たちが植民地化されていると感じている。このポストコロニアル構造から脱却し、他のプレイヤーの力を借りて汎アフリカ的なプロジェクトで統一することも可能だろう。

私たちは、一極集中から多極への移行期を生きている。一極はまだここにあり、多極性への移行期だ。西洋覇権のドラゴンはまだ生きている。傷つき、弱体化しているが、まだ生きている。黄色い龍とロシアの熊は、覇権を譲ろうとしないこの怪物と戦っている。つまり、私たちはこの戦いの終盤に生きている。私は、最終的に私たちが勝つことを望んでいる。中露は一緒に戦っている。二極支配の夢は捨てよう。それはソヴィエト連邦時代における私たちの過ちだった。中国はG2支配の提案を拒否したがこれは非常に賢明だった。私たちは、多極化した世界のバランスを共に創り上げるべきだ。

[]仁(Ren):繁栄する人間社会を促進するために、模範となる人間が示すべき姿勢や行動を特徴づけるものである。(大英百科事典)

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中国とロシアはより緊密な関係を進めそれがバイデン政権にとっての軍事的な挑戦となっている(China and Russia Turn Deeper Ties into a Military Challenge for Biden

-トランプ政権の高官だったある人物は「私たちは二正面作戦に対応できる群を持たずに二正面作戦をする可能性に対峙している」と述べた。

ジャック・デッチ、エイミー・マキノン筆

2021年4月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2021/04/20/china-russia-military-attention-us-policy-xi-putin-biden-taiwan-ukraine/

ロシアと中国の軍事・外交協力の深化は、アメリカの国防計画担当者たちを悩ませている。軍事技術と多くの外交政策目標を共有する2つの宿敵が、アメリカのリーダーシップを再び発揮するというバイデン政権の計画を複雑にしてしまうことを恐れているのだ。

中国は、ウクライナとの国境付近におけるロシアの軍備増強を注意深く監視しており、米国防総省は今週、台湾と南シナ海に対する独自の圧力作戦を視野に入れて、2014年当時の配備よりも規模が大きいと発表した。先週、中国は過去最多の爆撃機と戦闘機を台湾の防空圏に派遣し優位性を誇示した。米軍トップは、北京が今後6年のうちに台湾を武力で奪取しようとする可能性があると警告している。

米国防総省のある高官は匿名を条件に次のように語った。「ロシアがウクライナで最初に行った時と同様に、今起こっていることについて中国は非常に注意を払っているというのが我々の感覚だ。中国は、学んだ教訓をどのように自国の国益に生かすことができるかを見極めるために、注意深く見ていると言ってもよいだろう」。

本誌は現役と元政府高官や専門家11名に取材を行った。北京とモスクワが並行して行っている圧力キャンペーンについては、両国が実際に調整しながら行っていることを示す証拠は今のところない。しかし、両国による軍備増強は、特に悪い時期にジョー・バイデン米大統領の注意を引き伸ばしている。米国防総省は、2つの主要な戦争を同時に計画するという1990年代の考え方を放棄しているので、台湾上空の中国の戦闘機とウクライナ付近に集結するロシア軍の分割画面は、国防総省の戦略立案者たちに、将来起こりうることについて、特に不快感を持って予見させることになった。

ドナルド・トランプ政権時代に国防次官補を務めたエルブリッジ・コルビーは次のように述べた。「2正面作戦の軍隊(two-front military)を持っていないところで、2正面戦争(two-front war)に直面することになる。NATOが台湾をめぐる戦いと同時期にアメリカ軍に救済を期待しても私たちはその両方を行うことはできない。私たちには資産がない。それは私たちにとって大きな問題を引き起こす可能性がある」。

ジョー・バイデン政権は、西太平洋に多くの軍事資産を配置することで、長らく遅れていた「アジアへの軸足転換(pivot to Asia)」を実現しようと躍起になっているが、北京とモスクワの軸足の関係をどう管理するかについては、2019年の米情報機関の評価で、過去60年間のどの時点よりも連携していると評されたままだ。中国の習近平国家主席はかつて、ロシアのウラジミール・プーティン大統領を「親友であり同僚(best friend and colleague)」と表現したことがあった。

ウクライナ国境付近でのロシアによる最近の軍備増強について言えば、モスクワにはまだヨーロッパに大混乱をもたらす能力があることを思い起こさせるものとなった。しかし、今後数年間は中国が戦略的優先事項となる可能性が高い。

バラク・オバマ前大統領の下で駐ロシア大使を務めたマイケル・マクフォールは、「アジアへの軸足転換を望むが、今日のプーティンの脅威に焦点を当てることを犠牲にして欲しくはない」と述べた。

長年にわたり、中国とロシアは、国連安全保障理事会(United Nations Security Council)で戦術的な連携を取り、経済制裁や軍事介入を自由に行うアメリカとヨーロッパにおける同盟国である英仏の影響力に対抗してきた。中露は近年、シリア問題などでも連携が強まっている。国連本部以外では、ロシアと中国は近年、エネルギーや武器などの主要分野で二国間貿易を倍増させ、かつては冷え込んでいた関係を強めている。中露両国とも、アメリカが主導する金融秩序を回避し、ワシントンの世界支配を弱体化させることに関心を抱いている。また、民主政治体制と人権を推進するアメリカの努力に深く懐疑的な点でも一致している。

新アメリカ安全保障センターで大西洋安全保障プログラムのディレクターを務めるアンドレア・ケンドール=テイラーは「中露両国がもたらす課題を増幅させるような相乗効果を生み出す方法についても考え始めなければならない」と指摘する。

1961年の中ソ分裂後、数十年にわたり、2つの大国間の関係は深い不信感によって特徴づけられていた。しかし、冷戦終結後に両国関係は雪解けし始め、2014年にロシアがクリミアに侵攻して併合し、欧米諸国の雪崩式制裁を誘発した後に本格的に動き出した。

その結果、ロシアは東アジアに新たな経済的・政治的パートナーを見つけ、ロシアのガスと中国のエネルギー需要をつなぐ天然ガスパイプラインの30年間で4000億ドルの契約をほぼ即決し、その後、中国のロシアの石油に対する依存度も高まった。

その代わりに、北京はモスクワが西側諸国からもはや入手できない資金やハイテク部品を提供している。中国の防衛産業は急速に発展しているが、ミサイル防衛システムS-400や戦闘機スホイSu-35など、武器輸入の約80%は依然としてロシアからのものだ。中国のJ-11とJ-15戦闘機は、地対空ミサイルの一部と同様に、ロシアの設計をベースにしている。これは双方向の関係だ。新アメリカ安全保障センターの最近の報告書によると、ロシアは西側の制裁に直面し、電子部品や海軍のディーゼルエンジンも中国に頼ってきたということだ。新アメリカ安全保障センターは、ロシアのミサイルや戦闘機の技術は、中国に「より優れた戦略的防空能力と、特に台湾や南シナ海におけるアメリカの優位に対抗する能力の向上」をもたらすと結論づけている。

2009年から2013年までNATOのヨーロッパ統合最高司令官を務めたジェームズ・スタブリディス退役海軍大将は、「古い映画『ジェリー・マグワイア』の言葉を借りれば、彼らはお互いを補完し合っているということになる」と述べた。

中露間における軍事的な関係はどんどん緊密化している。ロシアの2018年の「ボストーク」演習には、旧ソ連以外の軍隊が初めて参加し、数千人の中国人民解放軍部隊が参加した。翌年、プーティンは、ロシアが中国のミサイル攻撃早期警戒システムの開発を支援していることを明らかにした。ロシアと中国はイランとともに2019年にインド洋で大規模な海軍訓練を実施し、中国が日本と領有権を争う東シナ海でも中露両国が合同で演習を行った。

ロシア・ウラジオストクにある極東連邦大学の准教授で、アジア太平洋における中国の専門家であるアルチョム・ルキンは、中露両国は正式な防衛協定を結んでいないが、この関係は事実上「準同盟または協商(quasi-alliance or entente)」であると述べている。

しかし、中露の関係はしばしば便宜上の結婚とみなされる。カーネギー・モスクワ・センターのアジア太平洋プログラムのロシア担当のアレクサンダー・ガブエフは「よく計算された、現実的なパートナーシップであって、愛情はない。中南海(中国の中枢部)でもクレムリンでも、誰も錯覚していないと思う」と語っている。

最近強化された防衛関係も、長くは続かないかもしれない。2014年に行われたロシアに関する国防評価では、北京がロシアの軍事技術から離脱するのに10年以上かかると結論づけている。「中国が南シナ海でより積極的に行動し、アメリカに対抗するためには、このハードウェアが必要だ」とガブエフは述べている。

バイデンの国家安全保障会議でロシア・中央アジア担当上級部長を短期間務めたケンダル=テイラーは、「モスクワがこの関係におけるジュニアパートナーであることは疑いようがなく、プーティンもその地位に長くとどまることはないだろう」と述べ、アメリカ政府当局者たちはこの関係の深さと耐久性に疑問を呈している。

テイラーは次のように述べた。「兄貴は成長する過程で比喩的に言えば弟を殴り、パンツをわざと食い込ませるとか小突いたりとかして虐めていた。しかし、弟が兄貴より大きく、より強くなった。そして今、兄貴は自分がパートナーとして下になったことで、将来どうなるかを恐れているようなものだ」。

リチャード・ニクソン政権時代、ワシントンが中国とロシアを戦わせたのは有名な話だ。近年の和解の度合いを考えると、明らかにそれと同じことはできないのだが、米政府関係者たちはそうした試みを継続している。

例えば、2020年10月に当時のロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官とロシアのニコライ・パトルシェフとの外交分野のトップ会談について、トランプ政権のある高官は本誌の取材に対して、オブライエンの次の地位である次席補佐官のマシュー・ポッティンジャーがロシア側に対して中国との提携について警告を発したと述べた。ポッティンジャーは、中露両国には歴史上、数多くの領土争いがあり、それにはシベリアも含まれている。そして、シベリアでは北京官話を話す人の人口が増えているとポッティンジャーは述べた。ポッティンジャーは広報担当を通じてこの記事についてのコメントを拒否した。アメリカはまた、中国の人口の優位性を、二国間協議でロシアの弱さが増していることの表れとして演じたとトランプ政権の元高官2名が述べた。

ワシントンはまた、中国の核兵器の増強と頻繁なミサイル発射に対するロシアの警戒心を高めようと試みた。昨年(2020年)の米露軍備管理協議でロシア当局に脅威を説明するために北京の備蓄に関する膨大な情報の機密指定を解除した。トランプ政権の元高官は、中国が複数の独立した弾頭と道路移動可能な生存システムを開発したことで、米政府関係者が神経質になる中、ロシア政府関係者が核戦力の一部を中国の軍備に向けて氷人を合わせていると米政府関係者に述べた例もあると語った。米国防当局者たちは、ロシア東部軍は数年にわたる大規模な近代化プログラム遂行の只中にあり、長距離対艦ミサイルや戦闘機からハンターキラー潜水艦まで、全てを中国との国境近くに配備していると評価している。

しかし、3か国間の力関係のバランスを取るために、アメリカは中国との会談でロシアの脅威を強調したこともある。2名の元米政府高官によると、トランプ政権は、ロシアが協定内容に虚偽で従わなかった事例があった後、冷戦時代の中距離核戦力条約から2019年に離脱したことを利用して、アメリカの長距離ミサイルがアジアに出現することを恐れる中国に圧力をかけたということだ。「中距離ミサイルが太平洋に現れたら、我々を責めないでプーティンを責めろ」というメッセージを送ったとトランプ政権のある元高官は述べた。

問題は、強力な経済力、強力な海軍を合わせ持つ台頭する大国と、大国からの地位から転落したことで怒りを持つ元大国を抑止する唯一の解決策がないことだ。この元大国は、軍事的威嚇だけでなくハイブリッド戦争と経済的威圧に頼って近隣諸国を屈服させている。

別の米国防総省当局者が匿名を条件に、「私たちは両方を同時に抑止する方法を検討している。しかし、個々に、一方に有効なことが他方に有効でない場合もある」と語っている。

正式な同盟のようなものがなくても、中国とロシアの暗黙の協力関係や、ウクライナと台湾の両方をめぐる緊張の高まりがバイデン政権を窮地に陥れている。

ヨーロッパ・NATO政策担当の国防次官補を務めたジム・タウンゼントは、「今、あなたは2つの敵対する2つの舞台を見ている。これは、プランナーたちが夜中に起きて汗をかくようにするものと同じだ」と語っている。

※ジャック・デッチ:『フォーリン・ポリシー』誌米国防総省・国家安全保障担当記者。

※エイミー・マキノン:『フォーリン・ポリシー』誌国家安全保障・情報諜報担当記者。

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は膠着状態に陥っている。ロシアに対して大打撃を与えるような方法を採らずに、ずるずると戦争を引き延ばすことで、武器商人たちをどんどん肥え太らせている。アメリカ連邦議会では予算はお手盛り状態で、ウクライナへの武器支援をどんどん続けている。連邦議員たちは「この武器はこれだけでは足りない」「あの武器を支援に入れていないのはおかしい」と言って、国防総省が要求した計画よりも過大な内容を付け加えている。これは地元にある防衛産業の利益のための行動である。「ウクライナのために」と言えば、誰も反対できない。そうした中で、予算に糸目をつけずにどんどん使いまくれる、そういう状況になっている。それなのに、戦争は終わらない。ロシアに大打撃を与え、撤退させるような方策は採らない。それには「米露対決がエスカレートするのは困る」という理由付けがなされる。結局、戦争は終わらず、武器だけがどんどん使われて、アメリカ国民の税金が浪費されていく。日本にも請求書が回ってくることになるだろう。
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ヴィクトリア・スパーツ

 アメリカ連邦下院議員の中に、ウクライナで生まれ育ち、大学を卒業してからアメリカに移民した人物がいる。ヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員(インディアナ州選出、共和党)だ。1978年生まれで43歳、当時はまだソ連の一部であったウクライナに生まれた。国立キエフ経済大学で学士号と修士号を取得後、2000年にアメリカに渡り、2006年にアメリカの市民権を取得した。インディアナ大学で会計学の修士号を取得し、会計士と不動産業者として働いていた。2017年からはインディアナ州上院議員となり、2020年の選挙で連邦下院議員に当選した。スパーツは当然のことではあるが、ロシア語、ウクライナ語、英語が堪能である。スパーツはウクライナ生まれで初めての米連邦議員となった。新人議員としてのスパーツは短気なことで有名で、議員事務所のスタッフがいつかないことが話題となった。

 ウクライナ戦争開戦直後、スパーツはアメリカによるウクライナ支援を訴えた。これは当然の行動だ。戦争開始後からウクライナを6回も訪問している。スパーツの発言には一気に重みが付いた。彼女は大学卒業までウクライナで生まれ育ったのだ。親族、友人、知人のネットワークは大きいだろうし、言葉に不自由しないということは大きい。米連邦下院議員という地位もあって、ウクライナ政府からも情報が入るだろう。そして、ウクライナ政府の情報のコントロールを受けずに、ウクライナ国民の生の声を集めることが出来るということある。ウクライナに関してスパーツの発言が重要になるのは当然だった。
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バイデンとスパーツ(バイデンの隣)、カマラ・ハリス副大統領もいる

 スパーツが「ロシアを強く非難する」「どんどんウクライナに支援を行うように求める」態度から「支援はきちんと届いているか、使われているか、汚職の温床になっていないかの監視を行う」「ゼレンスキー政権の汚職に関わっている人物の更迭を求める」という態度に変化したことで、ウクライナ政府は困惑しつつも、スパーツを非難するようになった。アメリカ政府関係者たちもスパーツの態度の変化に困惑している。
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アンドリー・イェルマーク(左)とヴォロディミール・ゼレンスキー

 スパーツはウクライナ大統領府長官アンドリー・イェルマークを更迭するように求めている。そして、興味深いことに、バイデン大統領に宛てた書簡の中で「ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はイェルマークを高く評価しているのを承知している」と書いている。この一文の解釈は難しいところである。しかし、ウクライナ戦争に関して、サリヴァンが何かしらの計画の立案と実行に関与している、その一部がイェルマークだと述べていると私は考えている。今回のウクライナ戦争に関して、ホワイトハウス(アメリカ大統領府)ではサリヴァン、ウクライナ大統領府ではイェルマークが何かしらの計画を立案して実行した、ウクライナ戦争を仕組んだのはこの2人だとスパーツとウクライナ国民の一部が考えているということになるのだろう。そして、スパーツの態度の変化をこれと併せて考えるならば、スパーツやウクライナ国民は当初ロシアによる侵攻ということで、愛国心に燃えて闘志を高めてロシアと戦っていたが、その内にどうもおかしいということになった。自分たちは騙されているのかもしれない、という考えを持つに至ったということになるのではないかと思う。
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イェルマーク(左)とジェイク・サリヴァン(その隣)

 ジェイク・サリヴァンに関しては、昨年の米軍のアフガニスタン撤退から、その外交政策に関して批判が出ている。以下にその批判に関する記事も紹介している。ここからは私の憶測だ。このようなシナリオではないかと私は考えている。ジェイク・サリヴァンはアメリカの強敵であるロシアと中国に対して、何とか打撃を与えてバイデン政権の外交政策の成功と自身への評価を高めようと考えていた。現在のアメリカの国力では中露両国を同時に相手にして戦うことはできない。そこでまず、ロシアを叩いておいて、中国に対峙しようと考えた。ロシアをウクライナに引き込んでおいて、ウクライナに徹底抗戦をさせながら、西側諸国でロシアへの経済制裁を行って、ロシアを締め上げて敗退させる。そうなればロシアとウラジミール・プーティン大統領にとっては大打撃となり、ロシア国内に付け入るスキが生まれ、ロシアを政権交代から体制転換にまで追い込むことができる。ロシアが中国から離れれば中国はユーラシア大陸で大きな圧迫を受けるようになる。クアッドにロシアを組み入れれば、中国を孤立させることができる。

 しかし、実際にはロシアを早期に敗退させることができず、戦争は膠着状態に陥った。アメリカが直接ロシアと対決すれば、核戦争までエスカレートしてしまうことになるので、米軍を派遣することはできないし、高性能の戦闘機を供与し、飛行禁止区域を設定することもできない。また、西側諸国以外の国々が対ロシア経済制裁に参加しないことで、対ロシア経済制裁の効果は限定的となった。更には、エネルギー資源をロシアに頼っていたヨーロッパ諸国はエネルギー価格の高騰に苦しむことになった。頭脳明晰なジェイク・サリヴァンの完璧な計画は失敗に終わった。ヴェトナム戦争における「ベスト・アンド・ブライティスト」たちの事例が類推される。

 ウクライナ戦争に関しては停戦の目途が立っていないが、一日も早く停戦することだ。それが世界のためだ。人々の興味関心は移ろう。あれだけウクライナ頑張れ、ロシアをやっつけてやると盛り上がっていた、日本国内の人々が今では統一教会と自民党(をはじめとする政界)の関係に熱狂している。ニューズは消費されるがウクライナ国民の苦難の生活は続く。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ生まれの米共和党議員、祖国の政府を痛烈批判 同僚から「乱暴者」と苦言も

CNN

2022年8月8日

https://www.cnn.co.jp/usa/35191567.html

https://www.cnn.co.jp/usa/35191567-2.html

https://www.cnn.co.jp/usa/35191567-3.html

(CNN) 米国の超党派の議員グループが今年3月にウクライナ国境を訪問した際、思いもかけないゲストが姿を現した。共和党のビクトリア・スパーツ下院議員(インディアナ州選出)だ。

スパーツ氏は米連邦議会初のウクライナ生まれの議員で、歯に衣着せぬ発言を通じて祖国を擁護する。この時の議員団への参加について関心を表明していたものの、招待はされていなかった。議員団の構成は下院外交委員会が中心で、スパーツ氏は同委の所属ではないためだ。

そこで同氏は自腹でポーランドに渡航。ウクライナとの国境で議員団に合流し、現地での会合の一部に加わった。事情に詳しい複数の情報筋が明らかにした。

事前に伝えられていなかったスパーツ氏の参加は議員らを驚かせたが、当初は歓迎ムードだった。議員らはウクライナのため、西側諸国から支援を集めようとしていた。同国は1週間前からロシアによる残虐な攻撃にさらされていた。

ところがウクライナ訪問に参加した複数の議員らによると、スパーツ氏の「論争的」で「非難めいた」姿勢は、北大西洋条約機構(NATO)の関係者らを交えた会合にとって「無益」だった。その場にいることがむしろ有害ではないかという懸念も浮上したという。

共和党議員の1人は当時のスパーツ氏について、「我々議員代表団をぶち壊した。物事を台無しにする乱暴者といった感じだった」「鬱積(うっせき)した不満があったのか、正しい情報が十分得られていないと感じていたのか、それは分からないが、とにかく非難がましく無礼な態度だった」と振り返った。同僚議員に対してより自由に発言するため、また話題の性質が繊細なものであることを念頭に、この議員は他の議員と同様に匿名を条件に取材に応じた。

スパーツ氏はCNNに宛てた電子メールで匿名の批判に反論。「こうした非難は卑劣で、事実を正しく説明していない。一部の妬(ねた)み深い議員やスタッフによるものだ。極めて実りある活動を超党派で行ったのが、3月の議員代表団だった」と述べた。

スパーツ氏の言動への党派を超えた不満は、これだけで終わらなかった。戦争開始からおよそ6カ月の間、スパーツ氏はウクライナ政府に対する公の批判を継続。同国政府並びにゼレンスキー大統領の最側近らが絡むとされる汚職疑惑を広めている。これに対して同僚議員らからは、親ロシア派の主張をそっくり代弁しているとの非難の声が噴出している。

43歳の実業家であるスパーツ氏は公私において、ウクライナに勝利してほしいとの主張を繰り返す。自分が攻撃するのはあくまでもウクライナ政府であり、それがロシアに対する勝利の妨げとなり得るあらゆる障害を取り除く一助になるとの認識を示す。侵攻開始以降、6回にわたってウクライナを訪れ、ロシアにも常に非難の声を浴びせている。2日にはツイッターに、ロシアをテロ国家と宣言するべきだとのコメントを投稿した。

それでもスパーツ氏がゼレンスキー氏とその顧問らに向ける敵意に満ちた物言いは、共和・民主両党の議員やホワイトハウスの当局者、ウクライナの国会議員を一様に苛(いら)立たせている。彼らはスパーツ氏によって、団結してウクライナを支えようとする自分たちの取り組みが台無しになるのではないかと危惧するほか、一体同氏がどこから情報を得ているのか率直に疑問を呈してもいる。そうした状況は十数人あまりの議員、側近、政権内の情報筋にインタビューした結果明らかになった。

バイデン政権による度重なる状況説明や、共和党の有力議員からの私的な嘆願にも、これまでのところスパーツ氏の声高な批判を抑え込む効果はほとんどないと、情報筋は話す。

ここへ来てスパーツ氏は、国防強硬派にとってもある種厄介な存在となりつつある。彼らはすでに、国外で続く戦争に対する倦怠(けんたい)感が米国内で生まれるのを懸念している。また同氏がウクライナ批判を続ける中、「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」をスローガンに掲げる共和党の一派からは、ウクライナに兵器と支援物資を送り続けることについて懐疑的な見方が出てきてもいる。

スパーツ氏自身は、ウクライナへの兵器などの迅速な供与を可能にする重要法案成立を強く支持してきた。ウクライナ向けの兵器に対するより厳格な管理も呼びかけており、これには議員らも党派を超えて賛同している。その強い物言いに不満を抱きつつ、祖国を救いたいという必死さの表れだとしてスパーツ氏の擁護に回る議員も一部にはいる。

スパーツ氏はCNNへのメールで自らの情報源について説明。情報の入手先は現地にいる真のプロフェッショナルたちであるのが常で、ウクライナに足を踏み入れたこともない学者や雇われ政治家たちからではないとした。またロシアのプーチン大統領の術中にはまっているのはいわゆる「外交エリートたち」であって自分ではないとも付け加えた。

「人々の命も深く気にかけている。ごく普通のウクライナ人と、勇敢なウクライナ軍の命を。たとえ受けの良くない真実を口にして政治家たちを怒らせたり、大衆受けする今どきの言説から離れていくとしても、そうした人々を失望させることはできない」「決してあきらめないし、負けを認めるつもりもない。ウクライナを1つにし、ウラジーミル・プーチンを倒すため、できることは何でもやる」(スパーツ氏)

米軍制服組トップと会談

スパーツ氏は米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長との会談も要請した。米政治専門サイト「ポリティコ」が最初に報じたこの会談で、スパーツ氏は改めてウクライナ国内の汚職に関する懸念に言及。米国の供与した兵器が本来向かうべきところに行っていないと主張した。

情報筋によれば、ミリー氏はスパーツ氏の懸念を完全には否定しなかった。米国の当局者らは、依然として汚職がウクライナ国内における問題であり続けているとみている。最近ウクライナ側と交わした電話会談の中で、ミリー氏とサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ブリンケン国務長官は、ウクライナが国内の汚職に関して「自分たちの改革政策を実行し続けることが重要だ」と指摘。「戦争により複数の課題が生じていようと」、その点は変わらないと論じた。ホワイトハウスが提供した電話会談の要約から明らかになった。

とはいえ全体を通してミリー氏は、スパーツ氏の懸念が度を越したものであることを本人に説明したと、上記の情報筋は述べた。スパーツ氏はCNNに対し、ミリー氏について、当該の会談以前にも話し合う機会があったと明かした。自分の意見に耳を傾けてくれる相手として信頼しているとも述べた。

ミリー氏との会談から数日後、スパーツ氏はなおもゼレンスキー氏の最側近の1人を糾弾。「戦争の継続を装い、独裁そのものの体制を作り上げている」と非難した。

下院共和党トップのマッカーシー院内総務はCNNの取材に答え、スパーツ氏のウクライナ政府批判について個人的に本人と話をしたことはないと述べた。ただこの問題に対するスパーツ氏の熱意は、戦争への注目を集めることに寄与したと称賛。とりわけ紛争開始当初はそうだったと指摘した。

そのうえで、スパーツ氏自身の家族がウクライナにいるという事情から、本人がこの問題に極めて強い感情を抱いていることは理解する必要があると語った。

国外でも懸念の声

スパーツ氏の言動に対する懸念は米国内にとどまらない。元米中央情報局(CIA)アナリストのエリッサ・スロトキン下院議員(民主党・ミシガン州選出)は、最近受け取ったウクライナの国会議員からのテキストメッセージに言及し、同国でのスパーツ氏評を明らかにした。それによると、スパーツ氏が「利用されている」のかどうかは判然としないものの、「本人のウクライナでの評判はがた落ちになった」というのが議員らの見解だという。

「指導者層は皆、この話題で持ちきりだ。彼らは気分を害している」「彼らには、なぜ彼女がこんなことをするのか理解できない」(スロトキン氏)

過去数カ月のスパーツ氏の言動を巡り、ウクライナの当局者らは一段と警戒感を募らせていると、現地の情報筋はCNNに明かす。とりわけ大統領府の長官を務めるアンドリー・イェルマーク氏に対する執拗(しつよう)な攻撃が問題視されているという。先月のツイートでスパーツ氏はイェルマーク氏の「非民主的な統治」を非難。世界的に「評判の悪い」人物と断じた。また同月8日にはバイデン氏に送った書簡の中で、イェルマーク氏及び「同氏が行ったとされるロシアと関係のある取り引き」に特化した状況説明を求めた。

イェルマーク氏がロシアとビジネス上のつながりを有しているとの疑惑は、戦争前にラジオ・フリー・ヨーロッパが報じた内容と同様のものだ。ただ同氏がクレムリンの影響下にあるとの証拠はなく、本人も疑惑を否定している。

ウクライナの当局者らは、スパーツ氏の動機に疑問を投げかける。6月24日、ゼレンスキー氏の側近の1人に送ったテキストメッセージの中で、スパーツ氏は同側近を「然るべき人物に引き合わせる」と提案している。本人によればウクライナ軍の勝利に貢献できる人物だという。

このテキストメッセージについて尋ねられたスパーツ氏は、ウクライナが戦争に勝てるよう手を貸したい人々との関係作りを手伝いたかっただけだと説明。具体的には、自身の友人でもある複数の退役軍人を指しているとした。

情報筋によれば、ウクライナの当局者らはイェルマーク氏とスパーツ氏の会談の場を設置すると申し出たが、スパーツ氏はこれを辞退した。同氏はCNNに対して会談の申し出があったことを認めたものの、当時ウクライナ外務省がイェルマーク氏への攻撃を「ひねくれた」、「根拠のない」ものと批判したと指摘。

「そのような状況では、会談を開いても得るものがないと判断した」と語った。

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ウクライナ出身の同僚がゼレンスキーを打ちのめすのを見て共和党はうろたえる(Republicans wince as their Ukrainian-born colleague thrashes Zelenskyy

-ヴィクトリア・スパーツは、春にキエフを支援する共和党の主導権を取った。今、スパーツの同僚議員たちは、彼女がその努力を台無しにしているのではないかと心配している。

アンドリュー・デジデリオ、オリヴィア・ビーヴァーズ筆

2022年7月15日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2022/07/15/republicans-spartz-ukraine-zelenskyy-00045949

連邦下院共和党は、ウクライナ生まれのヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員に、ロシアの戦争に反対を表明するための切望されたプラットフォームを与えた。彼らはそのことを後悔している。

スパーツ議員(インディアナ州選出、共和党)は、ウクライナ戦争開戦以降、ウクライナを6度訪問し、この紛争について熱心に語ってきた。しかし、最近、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領とその側近に対する激しい批判で民主、共和両党の議員に衝撃を与えた。先週末にはウクライナ外務省から「根拠のない憶測で政治的な興味関心を集めようとしている」と非難される珍しい出来事も起きた。

連邦下院共和党の内部では、スパーツの姿勢が最悪のタイミングで米・ウクライナ関係を悪化させ、西側同盟の弱体化を狙う勢力に翻弄されているのではないかとの懸念が広がっている。また、共和党の国家安全保障タカ派は、ウクライナ支援に既に抵抗を示している党内の「アメリカを再び偉大に(MAGA)」派が、スパーツの発言を正当化するのではないかと懸念している。

彼らは、スパーツがゼレンスキーと公然と袂を分かったこと、そしてゼレンスキーの側近たちに対する彼女の汚職告発が、中間選挙が近づく中、アメリカのこれからのウクライナ支援に亀裂が入ることを懸念している。

連邦下院外交委員会に所属するある共和党議員は、率直に話すためには匿名が条件だとして、同僚スパーツについて次のように話した。「彼女の純真な無知さはアメリカ国民を傷つけている。私たちがやろうとしていることに彼女は役に立たないし、彼女が主張している事実とやらが正確かどうかも不明だ。私たちはウクライナの指導部についてしっかり調査している」。共和党は、スパーツの発言は戦争に対する努力を「傷つける」可能性があると警告した。

スパーツの発言についてコメントを求められた連邦下院の共和党幹部は、同じ理由から匿名で発言したが、何とも率直な返事をした。「おいおい、なんてこった」。

スパーツについて率直に話すために匿名を条件とした、3人目の連邦下院共和党議員によると、彼女は所属していない委員会のブリーフィングや会議に割り込んでくるという評判で、連邦下院外交委員会では複数の議員が密室で彼女の発言を取り上げようとしたという。

バイデン政権も巻き込まれている。スパーツの発言によって、キエフを擁護する西側連合の結束を損ないかねないという懸念が高まっている。連邦下院外交委員会のある補佐官は、匿名を条件に、米国情報機関が金曜日の朝に、連邦下院外交委員会に対して、機密扱いでスパーツの主張について説明する予定であると語った。

ゼレンスキー大統領の政敵たちは公然とスパーツ議員を応援しているが、国が生き残りをかけて戦っている間、国内政治のいさかいはほとんど脇に追いやられている。ドナルド・トランプ前大統領の最初の弾劾の要素である、ウクライナの腐敗に関する西側諸国の長年の懸念も、ロシアの侵略に対する国内外の結束を育むという目的のために棚上げされている状態だ。

ウクライナの独立国家としての将来がゼレンスキーとの同盟にかかっている時に、スパーツはゼレンスキーと彼の顧問の古い汚れを掘り起こしているとスパーツの批判者たちは口々に非難している。

ウクライナ関連法案でスパーツと組んだことのあるリンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、「私は彼女の批判には共感しない。ゼレンスキー政権とウクライナ国民は、この瞬間に立ち上がることができたと信じている。ウクライナ国民と選挙で選ばれた指導者が共に立ち上がることは、私たちの国家安全保障上の利益となる」と述べた。

スパーツは、声明やインタヴューの中で、ウクライナに流入するアメリカ製兵器の監視を強化するよう求めており、この問題は超党派の関心を集めている。

しかし、スパーツはまた、ゼレンスキーが「政治をもてあそび」、紛争の深刻さを「理解していない」と非難している。また、アンドリー・イェルマーク大統領府長官に対しては、ウクライナ大統領府長官がロシアの懐に入っていると非難し、イェルマークに対する聖戦を開始した。

この発言は、ゼレンスキー大統領の政敵が過去に事実無根の疑惑を投げかけてきたもので、彼女は何年も前の疑惑を持ち出している。スパーツは、戦争努力を阻害したイェルマークを解任すべきだと考えていると公言した。他の人々は、スパーツ自身の行動が戦争努力を阻害していることは否定できないと批判している。

スパーツは、この記事のためにオフレコで質問に答えることを拒否したが、彼女の事務所は、ゼレンスキー政権に対する彼女の批判を擁護する文書を『ポリティコ』誌に提供した。彼女は以前、自分の間違いを証明する責任をイェルマークや他の人に負わせたことがある。

そして、彼女には後悔している様子はない。

スパーツは次のように述べている。「ウクライナで生まれ育ち、戦争が始まってから6回も訪れているので、現地の状況を総合的に理解している。私たちの機関が意図するように、熟慮なしに反応的になるには、利害関係が高すぎる」。

共和党の新人議員としてスパーツはゼレンスキー氏の側近たちを追いかけていた。この当時、スパーツはスタッフの定着率の悪さで話題になったことがあった。現在のそして元のスタッフたちはポリティコ誌の取材に対して、スパーツが繰り返しスタッフを非難する敵対的な職場環境を作り出していたことについて説明した。

この夏、43歳の彼女はゼレンスキーを悩ませる人物になり、3月1日にバイデン政権が母国で起きている危機にもっと力強く対応するよう、涙ながらに熱く訴えた時とは打って変わったメッセージを発するようになっている。ロシアの血生臭い攻撃から生き延びた家族の苦労を語るスパーツの背後には、ウクライナの国旗に合わせた青と黄色の服を着た連邦下院共和党幹部と数十人の議員が立ち、同意してうなずいていた。

それから4カ月余り、彼女がこの問題で権威ある発言者であるというシグナルは、会議ではほとんど見られなくなった。ロシアによるウクライナ攻撃自体が共和党内で政治的な茨の道となる状況下で、ウクライナ問題で同僚を公に非難することを望む同僚はいないのだが、スパーツの最新の態度は内心多くの同僚を困惑させている。

スパーツには連邦下院共和党の中にも擁護派がいるが、彼らの多くは彼女の発言を取り上げて、彼女が善意でこの問題に熱中していることを主張している。

連邦下院少数党(共和党)院内幹事スティーヴ・スカーリス連邦下院議員(ルイジアナ州選出、共和党)は今週の記者会見で次のように述べた。「ヴィクトリアは、ウクライナの人々がプーチンに対抗するために必要なツールを手に入れることを強く支持してきた。彼女はこのことに非常に情熱的だ。そして結局のところ、彼女と話した限りでは、彼女の心と魂は、ウクライナの人々がプーティンの軍事攻撃を押し返すのを助けることに結びついている」。

スパーツは、イェルマークとゼレンスキー政権が不適切な行動を取ったという主張の情報源を挙げることを拒否している。一方、ウクライナ政府関係者だけでなく、制裁政策でイェルマークと直接仕事をしているマイケル・マクフォール元駐ロシア大使のようなアメリカ人からも、大きな反発を受け続けている。

マクフォールはインタヴューで次のように述べた。「イェルマークは親ロシア派とは考えられない。彼は反プーティンで、プーティンの野蛮な政権に強く反対している。もしイェルマークが新ロシアであるならば、なぜ彼は私たちのグループに、ロシア人を制裁するための新しく創造的な方法を考えるよう勧めるのだろうか? そして、なぜロシア政府は、私の研究助手さえ含む、私たちのワーキンググループの多くのメンバーを制裁するのだろうか?」。

クリストファー・ミラーがこの記事に貢献した。

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ウクライナ外務省がゼレンスキー大統領府長官に関する「根拠のない憶測」でスパーツ連邦下院議員を非難(Ukrainian Foreign Ministry hits Rep. Spartz over ‘baseless speculation’ on Zelensky chief of staff

キャロライン・ヴァキル筆

2022年7月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/3551138-ukrainian-foreign-ministry-hits-rep-spartz-over-baseless-speculation-on-zelensky-chief-of-staff/

ウクライナ外務省報道官は、ウクライナ出身のヴィクトリア・スパーツ連邦議員(インディアナ州選出、共和党)が、ウクライナ大統領府長官を務めるアンドリー・イェルマークAndriy Yermak)に関してジョー・バイデン米大統領に手紙を送り、「必要ではない政治的な興味関心を引こうとしている」と主張した。

ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ報道官は土曜日にフェイスブックに投稿し、その中で次のように書いている。「ウクライナは、ロシアの侵略との戦いにおけるアメリカの揺るぎない支援に深く感謝している。4ヶ月に及ぶ全面戦争において、連邦議会とジョセフ・バイデン政権が我が国に提供した政治的、軍事的、財政的援助は過大評価することが難しいほどだ。これらの取り組みを強化する上で、バイデン米大統領の個人的な役割を称える」。

ニコレンコ報道官は続けて次のように述べた。「このような広範な支援の背景と、ヴィクトリア・スパーツ米連邦下院議員の最近の行動や声明が特に対照的となっている。それらは、ウクライナ指導部が一見するとロシアとつながっているように見えるというロシアのプロパガンダの古典的な物語をアメリカの政治に持ち込み、私たちの国をアメリカの国内政治に引きずり込もうとする非公開の試みだ」。

ニコレンコは、スパーツが金曜日にバイデンに送った書簡に言及した。スパーツからの書簡は、バイデン政権に対し、イェルマークに関連して行われた事前調査(デュー・デリジェンス)と監視監督手続きについて連邦議会に説明するよう求め、米国内外の人々がこのウクライナ高官について懸念していると警告を発している。

スパーツ議員はバイデン大統領に宛てた書簡の中で、「ゼレンスキー大統領は西側諸国と我が国との同盟関係を築くために懸命に努力している。そうした中で彼の周りの重要人物に何か懸念があるかもしれないという可能性が考えられるのならば、そのことをゼレンスキー第伊藤亮に知らせることは私たちの責任だ。また、私たち全員のために自由と国際秩序のためにこの戦いを戦っている勇敢なウクライナ人兵士と頑強なウクライナ国民に対する義務でもある」と書いている。

ニコレンコは、スパーツのコメントは「冷笑的」で「根拠のない憶測」であると主張した。

土曜日の声明で、スパーツはニコレンコのフェイスブックへの投稿に反応し、イェルマークに対して一連の疑惑を呈した。

スパーツは、イェルマークが戦争前のモスクワとの和平交渉に適切に対処せず、ウクライナが紛争に適切に備えることを妨げようとし、緊急の軍事装備の購入を遅らせたと主張した。また、ウクライナの作戦をベラルーシとロシアにリークして失敗させたという主張もある。

「私は、ウクライナ外務省がこれまでのような中傷的な攻撃をするのではなく、イェルマーク氏に関するこれらの質問が要求しているような真剣さで私の声明を検討することを勧める。ウクライナ人とアメリカ人は、私たちの政府が防衛的な決まり文句ではなく、適切な注意を払って対応することで、より良いサーヴィスを受けることができる」と述べた。

スパーツの発言は、ロシアによるウクライナへの侵攻が100日以上続いている中で行われた。インディアナ州選出の共和党所属のスパーツ議員は、ウクライナ戦争中に何度かウクライナを訪れている。

バイデン政権は金曜日に、解体弾、高機動ロケットシステム4台、戦術車両3台などを含む4億ドルの安全保障支援パッケージをウクライナに送ることを発表した。

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ヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員からジョー・バイデン大統領へ宛てた書簡

https://spartz.house.gov/sites/evo-subsites/spartz.house.gov/files/evo-media-document/Spartz%20Letter%20to%20Biden_Yermak%20_red.pdf

(本文はここから)

親愛なる大統領閣下(Dear Mr. President,

連邦議会の監視調査の一環として、私は、2022年7月12日に予定されている連邦議会の監視ブリーフィングで、ゼレンスキー大統領の大統領府長官を務めるアンドリー・イェルマークに関連して行われた事前調査と監視監督手続きについて連邦議会に説明するよう大統領府に要請する。

ウクライナにおけるイェルマーク氏が行った様々な情報活動と行動に基づき、連邦議会はこの情報を緊急に入手する必要がある。この紛争への私たちの物質的な関与を考慮すると、私たちの援助が間違った人々の手に渡らないようにするために、アメリカ国民に対してこのレヴェルの厳密さと説明責任を負う必要がある。ウクライナは、これまでそうではなかったが、紛争が始まり残念なことではあるが、貴政権からのセキュリティ支援のレヴェルとスピードを上げることを緊急に必要としている。

ゼレンスキー大統領は西側諸国と我が国との同盟関係を築くために懸命に努力しているので、彼の周りの重要人物に何か懸念があれば、彼に知らせるのが私たちの責任である。また、私たち全員のために、自由と国際秩序のためにこの戦いを戦っている勇敢なウクライナ人兵士と強いウクライナ人に対する義務でもある。

加えて、イェルマーク氏が汚職撲滅のための法執行の副官としてオレグ・タタロフ氏を任命したことに私は注意を喚起したいと。タタロフ氏は、ご存知のように、独立汚職防止検察官の任命を1年以上遅らせ、専門汚職防止検察局と国家汚職防止局(National Anti-Corruption BureauNABU)を機能不全に陥らせている。タタロフ氏は、任命前の2020年にNABUによる捜査を受けていたが、そこで不適切に通常の検察官に送致され、事件は解決された。また、タタロフ氏はヤヌコビッチ前大統領の下でユーロマイダン抗議者たちを起訴した警察幹部でもあった。

イェルマーク氏は、米国内外の様々な人々に多くの懸念を抱かせているが、あなたの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、イェルマークを高く評価していると思われる。この緊急の案件について、これらの疑惑を肯定するか否定するか、一刻も早く連邦議会でご回答いただきたい。ブリーフィングの詳細については、私の事務所に直接ご連絡いただきたい。迅速なご返答をお待ちしている。

親愛の情を込めて

ヴィクトリア・スパーツ

連邦下院議員(インディアナ州第5選挙区)

CCにて、アントニー・ブリンケン国務長官、ブリジェット・ブリンク駐ウクライナ米国大使

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スパーツ議員:ゼレンスキー大統領はイェルマークに関わる問題を真剣に処理しなければならない(Spartz: President Zelensky Must Address the Yermak Issue

2022年7月9日

ヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員事務所プレスリリース

https://spartz.house.gov/media/press-releases/spartz-president-zelensky-must-address-yermak-issue

ワシントDC発。ゼレンスキー大統領が、狡猾な敵と危険な戦争を戦っていることを承知している。彼は国を守るために国際的な支援の構築に多くの時間を費やしているが、大統領府のトップであるアンドリー・イェルマークという長引く内部問題を抱えている。

私はこの3カ月間、ウクライナで多くの時間を過ごした。地域や政府のリーダー、戦闘員、そして一般市民に会ってきた。私は、ウクライナは民主政治体制の強国であり、若い才能の育成機関であり、アメリカがパートナーシップを強く求めている地域において、アメリカの真の同盟者となる可能性を持っていると信じている。そして、共産主義独裁政権下のウクライナで育った者として、自由を愛する全ての人々の最善の利益は、常に私の心と行動の中に存在する。

アメリカ人、ウクライナ人、そして世界中の多くの人々から受けている強い支持に基づき、私はなぜ私の発言がウクライナ外務省の神経に触れたのか理解することができた。

ウクライナ外務省には、これまでのような私に対する中傷ばかりの攻撃ではなく、イェルマーク氏に関する疑問について、真摯な態度で私の発言を検討することを求めたい。ウクライナ人とアメリカ人は、ウクライナ政府が保身だけの決まり文句ではなく、適切な注意を払って対応することで、より良いサーヴィスを受けることができるだろう。

イェルマーク氏に対する重大な疑惑を複数列挙し、彼自身に対処してもらうことにしよう。

ウクライナによる「ワーグナー・グループ(Wagner Group 訳者註:ロシアの民間軍事会社、準軍事組織のネットワークでウラジミール・プーティン露大統領の私兵とも評されている)」捕獲作戦について、ベラルーシ、ひいてはロシアに情報を漏らし、失敗させた。ヘルソン市防衛を放棄し、「アゾフ」大隊の悲劇を実現するためにロシアに与えた。ウクライナ国防省を通じた緊急軍事装備の購入を遅らせ、不当あるいは違法な条件さえ要求した。オレグ・タタロフ副官を通じて独立汚職防止検察官の任命を意図的に遅らせた。

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ロシアが侵攻する中、スパーツ連邦下院議員が母国ウクライナを訪問(Rep. Spartz makes latest trip to native Ukraine amid Russia’s invasion

モニク・ビールス筆

2022年6月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3512742-rep-spartz-makes-latest-trip-to-native-ukraine-amid-russias-invasion/

ヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員(インディアナ州選出、共和党)は今週末、ロシアの侵攻が始まって100日以上が経過し、少なくとも4回目の母国ウクライナを訪問した。

チェルニヒフ州政府高官ヴィヤチェスラフ・チャウスがSNS「テレグラム」に投稿した内容によると、スパーツはロシア軍から激しい空爆を受けたウクライナ北部の都市チェルニヒフで2日間過ごしたということだ。チャウスは、スパーツが「私たちの都市と地域を再建する可能性について研究・検討を行った」と述べた。

チャウスはスパーツ訪問に関連して「我々は、再建が実行できるという良い見通しを持っている。詳細は後ほど述べる」と付け加えた。

スパーツは、ウクライナに対するアメリカからの支援全てについて、連邦議会できちんと監視するよう求めている。5月の3度目の訪問の際の声明で、スパーツは連邦議会が「納税者の資源が必要な人々に届き、効率的に使われていることを確認しなければならない」と述べた。

スパーツは以前から、ロシアの攻撃とウラジミール・プーティン大統領に対して激しい口調で非難してきた。

ロシアによる侵攻が開始された際、スパーツは「これは戦争ではない。これは狂人によるウクライナの人々の大量虐殺だ」と述べた。

ウクライナに戦闘機を派遣したり、飛行禁止区域を設定したりすることに抵抗しているバイデン大統領について、スパーツは「口先だけ。何もしない」とも語った。

スパーツ議員は戦争開始から1週間ほど経った頃に「大統領は何をやっているのだろうか? 何百万人が死ぬまで待つつもりなのだろうか?それから何かを更なることを実行するつもりなのか? 私たちには道徳的な義務だけでなく、自由世界のリーダーとしての義務があるのだ」と語った。

今週、バイデン政権は、長距離ロケットシステムを含む7億ドルの武器パッケージをウクライナに供与する計画を発表する予定だ。

しかし、バイデン大統領は以前、記者団に対し、戦争がより大規模な紛争にエスカレートする懸念があるため、アメリカは「ロシアに打撃を与えるロケットシステムをウクライナに送るつもりはない」と述べている。

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(貼り付けはじめ)

オバマ大統領の元補佐官が、バイデンはアフガニスタンに関してサリヴァンを更迭すべきと発言(Ex-Obama adviser argues Biden should fire Sullivan over Afghanistan

ジョセフ・チョイ筆

2021年8月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/568038-former-obama-adviser-argues-biden-must-fire-sullivan-over-afghanistan/

オバマ政権のホワイトハウスで補佐官を務めた人物が月曜日、タリバンがアフガニスタンを占領したことを踏まえ、バイデン大統領は国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンを更迭すべきだと主張する論稿を寄稿した。

brettbruen511
ブレっと・ブレエン

オバマ大統領の国際関与部長を務めたブレット・ブレエンは『USAトゥディ』紙に燐光を発表しその中で、一緒にオバマ政権で働いたサリヴァンについて、国家安全保障問題担当大統領補佐官としてすべての点を考慮して落第していると主張した。

ブレエンは次のように書いている。「国家安全保障問題担当大統領補佐官には2つの仕事がある。その名が示しているように、シチュエーションルームにおいて、大統領にとって最後のそして理想的には最も近い助言者である。2つ目の仕事は、アメリカ軍最高司令官の決断と指令を実際の政策に転換することだ。時には権力者に対して真実を話すことが必要だ。これら全ての点で、現職であるサリヴァンは落第しているように見える」。

ブルエンは、サリヴァンは外交政策の理論や議論には精通しているが、海外での経験が不足しており、それが「アイデアと実行の断絶」につながっていると指摘した。

"そうなのだ、バイデンはアフガニスタンからの撤退を望んだ。サリヴァンは、潜在的な落とし穴や問題を確実に回避しながら大統領の目標を達成する方法を考えなければならなかった。そうしたことが起きなかったのは明らかだ」とブルエンは書いている。

ブルエンは、サリヴァンが、バイデンの明確な要望にただ「従う」のではなく、「仲介」するべきだったと主張している。ブルエンは、バイデン政権はこれまで「外交政策に関しては、実質よりもスローガンに強い」との見解を示している。

オバマ大統領の元顧問ブルエンはまた、キャリア外交官ではなく、「政治家タイプ」の人物たちが非常に影響力のある地位に就くことが多いことを嘆いている。

ブルエンは次のように書いている。「国家安全保障機構全体にわたるこれらの人事は、このティームの到着に伴う傲慢さの反映である。彼らは、いくつかの主要な国際問題についての専門家の懸念や警告をほとんど無視してやってきたのだ」。

本誌はブルエンの論稿についてのコメントをホワイトハウスに求めた。

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元オバマ大統領補佐官:ジョー・バイデン大統領がアフガニスタンの失敗を理由にして国家安全保障問題担当大統領補佐官を更迭しなければならない理由(Ex-Obama adviser: Why Biden must fire his national security adviser for Afghanistan failure

-アメリカの安全を守るためにジョー・バイデン大統領が配置した人材、計画、プロセスはうまくいっていない。

ブレット・ブレエン筆

2021年8月16日

USAトゥディ』紙

https://www.usatoday.com/story/opinion/2021/08/16/afghanistan-disaster-why-bidens-foreign-policy-team-failed-america/8145997002/

ジョー・バイデン大統領は彼の国家安全保障ティームの入れ替えをする必要がある。

アフガニスタンで繰り広げられた惨劇は、ホワイトハウスにおける他の大きな問題を物語っている。大統領がアメリカの安全を守るために導入した人材、計画、プロセスは機能していない。

バイデン大統領が重要な地位に選んだ人物たちは、自分たちの思い込みに挑戦することがまたもできなかった。それが悲しいことに、国家安全保障会議の歴史上、最も不必要に恥ずかしい一日につながってしまった。

国家安全保障問題担当大統領補佐官には2つの仕事がある。その名が示すように、シチュエーションルームにおいて大統領に最後にそして理想で言えば最も近い助言者である。

彼らの2つ目の任務は、アメリカ軍最高司令官の決定と指示を実際の政策に転換させることだ。そのためには、権力者に対して真実を語ることが必要な場合もある。この点で、現職のジェイク・サリヴァンは失敗しているように見える。

私は、オバマ政権でジェイク・サリヴァンと一緒に仕事をした。彼は、非常に優秀で、そのため、ヒラリー・クリントン国務長官、その後はジョー・バイデン副大統領のスタッフとして、記録的なスピードで昇進した。

サリヴァンは外交政策における理論や学問的な議論は全て知っているが、海外での経験はそれほど豊富ではない。それが、アイデアと実行の断絶につながることもある。

そうなのだ、バイデンはアフガニスタンからの撤退を望んでいた。サリヴァンは、潜在的な落とし穴や問題を確実に回避しながら、大統領の目標を達成する方法を考えなければならなかった。しかし、それが実現しなかったのは明らかだ。

ここ数日、私たちが見てきたように、彼のボスであるバイデンの考えは決まっていたのだ。 しかし、このような場合、大統領として望ましい道を追求することの本当のリスクを説明し、管理する方法を見つけなければならない。国家安全保障問題担当大統領補佐官は、ただ従うのではなく、同じ目標を達成できるより安全な選択肢を提示する必要がある。

アフガニスタンからの無謀な撤退の決定についてだけではない。バイデン政権は、外交政策に関して、実質よりもスローガンに重きを置いている。アメリカは戻ってきたと約束したが、キューバからイスラエルまで、驚くほど多くの分野で関わりを断ってきた。

●バイデン大統領は一連の失敗をしている

この8ヶ月間、深刻化する世界的な脅威に対してあまりにも注意が払われていない。ホワイトハウスは表面的なことを強調しすぎ、ドナルド・トランプ大統領の破壊的な4年間の後に必要な体系的な変化を起こすことに失敗した。

問題の一部は人事の判断にある。ホワイトハウスは、最も影響力のあるポジションに政治家タイプの人間を詰め込むことを選択している。

実際、国家安全保障会議の上級職で外交官経験者はアフリカ担当上級部長1名のみである。これはオバマ大統領の時代よりはるかに少ない。つまり、サリヴァンやバイデンは、最も新しく適切な経験を持つ人物からアドバイスを受けていないのである。

●政治上の盟友が仕事で報われる

国務省では、この四半世紀で初めて、現役外交官が上位3つの職種のいずれにも就いていないという事態が起きている。

政治任用者たちを国家安全保障のポジションに就かせるという政権の傾向は大使の人選にも見て取れる。バイデンは、あまりにも多くのポストを政党の優遇措置として扱い、トルコのように本来なら外交経験が前提である場所に、富裕な人やコネのある人を指名することが多すぎるのだ。

国家安全保障機構全体にわたるこれらの人事は、このティームの到着に伴う傲慢さの反映である。彼らは、いくつかの主要な国際問題についての専門家の懸念や警告をほとんど無視してやってきた。

第一に、国境と難民の政策が回避可能な溝に陥るのを見た。大統領は、これらの分野で活躍する専門家に十分な相談をすることなく、政策の変更を急いだ。

いずれの場合も、政権はすぐに軌道修正を余儀なくされた。しかし、その前に貴重な時間と信用を失うことになった。バイデンが原則的な変革を約束したサウジアラビアやロシアなどとの関係についても、深刻な疑問が呈された。そして、アフガニスタンでの惨劇がやって来た。

そうなのだ、私たちは常に撤退するつもりだったのだ。問題は、いつ、どのように撤退するかということだった。この2つの決断を、サリヴァンは自分の役割として慎重に導かなければならなかった。

残念ながら、彼は9月11日を前にして、大統領がアフガニスタンへの関与を終わらせようとするのを許し、アメリカの時間軸を動かしてしまったようだ。これは破滅的な誤りだった。私たちの兵士は準備不足だった。私たちは彼らを危険から遠ざけることができなかった。アフガニスタン政府と軍も明らかに準備ができていなかった。

バイデン大統領は、アフガニスタンからの撤退の失敗を監督した国家安全保障問題担当大統領補佐官と他の数人の高官たちを更迭する必要がある。彼は、主要な外交政策の決定を誰とどのように行うかを再構築し、キャリアのある専門家たちの意見をもっと取り入れる必要がある。

海外に派遣される我が国の代表に任命される大口献金者の起用はもう絶対にいない方がいい。利害関係が強すぎるのだ。最後に、世界舞台での我が国の評判と信用に与えた大きなダメージを修復することが急務である。

そのためには、バイデン大統領がこれまで以上に多くの時間を世界的な危機に費やし、選挙キャンペーンに参加しなかった人々の意見に耳を傾ける必要があるだろう。

※ブレット・ブレエン:バマ大統領のホワイトハウスで国際関与担当部長を務めた。現在は広報会社グローバル・シチュエーションルーム社長、ジョージタウン大学危機管理学部の非常勤講師を務める。

(貼り付け終わり)
(終わり)

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 古村治彦です。

 国際関係論の大家スティーヴン・ウォルトの論稿はこれまで何度も紹介してきた。今回は、「アメリカの一極集中時代が終わり、群雄割拠、諸大国がバランスを取る時代になる。これは国際関係論のリアリズムで説明することが最適の時代ということになる」という論稿をご紹介する。

 ソヴィエト連邦崩壊による冷戦終結後の世界は、超大国はアメリカ一国だけとなり、世界覇権国(world hegemony)アメリカによる単独行動主義、単極主義(unilateralism)時代となった。その基本となったのは、「歴史の終わり」によって最終的に勝利を得たという自由民主政治体制、人権、資本主義といった西側諸国(the West)の価値観であった。ちなみに冷戦期は二極主義(bilateralism)の時代であった。しかし、アメリカと西側諸国の国力の低下と、中国をはじめとする「西側以外の世界(the Rest)」の台頭によって、状況は変化しつつある。西側諸国の思い通りに世界管理をできない状況になりつつある。
 米中間の力関係は既に冷戦期の米ソ間の力関係よりもより「対等な二国間関係」に近づいている。更に西側諸国だけに偏っていた力も、それら以外の国々の台頭によって分散している。「G7・サミット」という枠組みよりも「G20」という枠組みの方がより重要で、世界の重要な諸課題に対応できる枠組みとなっている。そうした中で、世界はより複雑な力の均衡(バランス・オブ・パワー)の時代になった。アメリカだけ見ていればよい、という時代は終わりつつある。日本の対米従属一辺倒は周回遅れの外交姿勢ということになる。

 今回のウクライナ戦争はロシアとウクライナの二国間だけの問題にとどまらず、ヨーロッパ地域の問題、更には世界の構造を揺るがす問題となっている。そして、ウクライナ戦争が明らかにしたのは、多極的な大国間の力関係で世界が動いていくという方向に世界の構造が動いていくということだ。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ戦争が全てを変えるということはない(The Ukraine War Doesn’t Change Everything

-ロシアの戦争はアメリカの一極時代の決定的な終焉を示し、国際関係論のリアリズムによって最も良く説明される状態に世界を戻すことになる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年4月13日

『ザ・ヒル』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/13/ukraine-war-realism-great-powers-unipolarity/

遅かれ早かれ、ウクライナにおける戦闘は停止するだろう。どのように、いつ、最終的に解決するかについては誰にも分からない。もしかしたら、ロシア軍が崩壊して完全に撤退するかもしれない(しかし、その可能性は低い)。ウラジミール・プーティン大統領が負い落され、後継者が時計の針を戻すことを期待して寛大な取引を行うかもしれない(これもあり得ない)。ウクライナ軍が戦う意志を失うかもしれない(可能性は極めて低い)。もしかしたら、戦争は、関与しているアクターたちが疲れ果て、和平交渉が行われるまで、結論の出ない膠着状態が続くかもしれない(私はこれに賭ける)。しかし、その場合でも、最終的な条件がどのようなものになり、どれくらいの期間、戦争が続くのかは分からない。

結果がどのようなものになるにせよ、この戦争が世界政治のあり方に大きな影響を与えるという見方は少なくない。ウクライナ戦争は大きな分岐点となる。ロシアが大敗すれば、「自由主義的世界秩序」が息を吹き返し、独裁主義勢力が後退する。しかし、プーティンが何らかの勝利を収めれば、全体主義の深淵へと暗転することも予想される。武力による領土獲得についての既存の規範が失われ、他の独裁者たちも地政学的に有利な条件が整えば、同様の行為を行うことが可能となると考えられる。

私は全く別の考えを持っている。ウクライナ戦争は重要な出来事ではあるが、その結果が世界のパワーバランス(力の均衡)や各国家が構築してきた(そして時には固執してきた)規範的環境に劇的な独自の影響を与えるからではない。そうではなく、アメリカが世界で唯一の真の超大国であった「一極時代(unipolar moment)」(1993~2020年)の短い期間の終わりを告げるものであり、アメリカの無敵の優位が続いた短い時代に一時的に抑制された世界政治のパターンへの復帰を告げるものだからだと私は考ええているのだ。しかし、アメリカの一極支配の時代の終わりは、ロシアがウクライナに侵攻するずっと前から既に出現していたのであり、この戦争そのものは、むしろ一時的な現象に過ぎない。(同じような見解は、スティーブン・コトキンの論稿を参照のこと)。

私は、ウクライナ戦争について変革の瞬間であるという考えにこだわるつもりはない。それは、ここ数十年、今回のような歌を何度も聞いてきたからだ。ベルリンの壁が崩壊し、ソ連が崩壊し、ワルシャワ条約が解消された際、私たちは「全てが変わった(everything had changed)」と言われた。新しい世界秩序が目の前に迫っており、「純粋なパワーポリティクスのシニカルな計算は単純に計算できない」、人類は「歴史の終わり(end of history)」に到達したとされ、自由主義的資本主義と民主政治体制(できればアメリカ版)が今や「町の中で唯一のゲーム(the only game in town)」となった。

しかし、2011年9月1日に再び「全てが変わった」。突然、「世界規模のテロとの戦い(global war on terror)」に突入し、一部の興奮したアナリストたちは「第4次世界大戦(World War IV)」と言い換えようとした。しかし、ちょっと待って欲しい。2008年に金融市場が崩壊し、ウォール街の「全宇宙の支配者たち(masters of the universe)」が騙されやすく、誤りを犯しやすく、腐敗していることが明らかになった。この時、「全てが変わった」のだ。そして、ドナルド・トランプが大統領になり、アメリカの政治的規範をことごとく踏みにじり始めたことで、またまた「全てが変わった」のである。

だから、ウクライナ戦争を人類の歴史における決定的な転換点と見なすことが難しいことと考えていることは許していただけるものと思う。インドシナ戦争、イラン・イラク戦争、中央アフリカ戦争、あるいはアメリカのイラク戦争・アフガニスタン戦争がもたらした破壊のレヴェルに達するまでには至っていないが、ウクライナ戦争においては既に多くの損害と苦痛が発生している。

もちろん、大量破壊兵器が使用されれば、戦争はそこまで進むだろうが、その確率は低い(この予想が当たることを切に願っている)。更に重要なことは、今回の戦争で異なるのは、1990年代初頭以来、しかし歴史上初めてとは言えないが、主要な戦争で対立する大国が存在していることである。しかし、これは大国間の紛争(および代理戦争)の見慣れたパターンに回帰したものであり、目新しいものでもユニークなものでもない。

これまで述べてきたように、この戦争(ウクライナ戦争)は、冷戦終結後の短い疑似平和(quasi-peace)時代の正式な終焉を意味すると考えるのがより正確であろう。しかし、この時期の紛争は、内戦、小国同士の戦争、大国と小国の重大なミスマッチ、あるいはこれら3つの組み合わせのいずれかであった。

ロシアも中国もアメリカに公然と対抗できるほどは強力ではなかったので、直接的な大国間の競争は控えめだった。ダートマス大学の政治学者ウィリアム・ウォールフォースが「一極集中世界の安定性(stability of a unipolar world)」と書いたのは、部分的には正しかった。アメリカからの「集中的な敵意(focused enmity)」に直面したり、アメリカを対抗馬としてゲームに巻き込むような行動を選択したりする国はほとんどなかったからだ。しかし、冷戦期の二極化(bipolarity)よりも一極化が長続きするという予測は間違っていた。

しかしながら、その誤った判断は、一極集中時代の終焉を早めた度重なる失態を予見することができなかったからであり、ウォールフォースにだけ責任があるのではない。アメリカの政策立案者たちがより賢く、イデオロギーに流されず、あらゆる意味でより現実的であれば、アメリカの優位と一極集中の安定はより長く続いたであろう。

アメリカ政府高官たちはこれまで、アメリカのパワーを維持し、可能な限り紛争を解決し、他国が台頭しないように努力する代わりに、そのほとんどが正反対のことをしていた。中国の急速な台頭を助け、中東全域での高価で見当違いな十字軍に何兆ドルも浪費した。アメリカは、「平和のためのパートナーシップ」のようなメカニズムを通じて自由主義的制度を徐々に拡大する代わりに、ロシアの懸念をほとんど考慮せずにNATOを拡大し、モスクワがそれを阻止することはできない、あるいは何もしないとのんきに考えていた。

グローバライゼーションに対してより慎重なアプローチを取り、その恩恵がアメリカ国内で広く共有されるようにする代わりに、世界貿易と投資に対して新自由主義的なアプローチを採用し、アメリカの労働力のうち絶滅の危機に瀕したセクターをグローバライゼーションの影響から守るための措置を十分講じなかった。また、アメリカの政治家たちは、アメリカの民主政治体制を他の社会が見習いたいと思うようなモデルにしようと努力する代わりに、真の民主政治体制が生き残るために不可欠な原則と規範を繰り返し踏みにじった。アメリカの一極時代は永遠に続くものではなかったが、誰も責任を取らないまま、怠慢と関与(omission and commission)の罪を繰り返した結果、早々と終焉を迎えることになった。

では、私たちはどうなるのだろうか? ロックバンド「トーキング・ヘッズ」の不朽の名言の通りだ。「これまでと同じ、これまでと同じ(Same as it ever was, same as it ever was)」なのだ。

第一に、誰もが今思い知らされているように、世界にとってはハードパワーが依然として重要なのである。ロシアがドネツク州とルハンスク州の編入とクリミアへの陸橋の設置に成功すれば、それはロシア軍がこれまでの誤算と失策にもかかわらずその任務を遂行することができたからということになる。

ウクライナが旧領土の全部または大部分を保持することになれば、それは、その市民が外部からの多くの支援を得て、より大きな隣人を阻止するために用いたハードパワーのおかげということになる。大々的に宣伝された「征服禁止規範(norm against conquest)」が強化されるとすれば、それはプーティンが突然規範に従うべきことを思い出したからではなく、ウクライナのナショナリズムと有効な兵器の組み合わせが、モスクワにとって克服できないほどのものであることが証明されたからであろう。

第二に、経済的な相互依存にはリスクやトレードオフがつきものであることを世界は再び思い知らされた。市場は確かに重要だが政治はそれ以上に重要である。貿易、投資、複雑なサプライチェイン、ガスパイプラインを通じて世界を結ぶことは、明白で莫大な利益をもたらした。経済的なつながりが強固であっても紛争を防ぐ鉄壁のバリアとなるわけではない。こうした強固な経済的つながりしが危険なウイルスや地政学的な分裂によって切れてしまえば、他国に依存していた国々は大きな痛みを味合うことになる。

今後、ほとんどの国家と企業は、過剰人員と業績回復のために、経済効率をある程度犠牲 にすることになるだろう。経済成長率は、そうでない場合よりも低下するだろうが、破壊的なショックが発生する頻度は 低くなり、国家と企業は経済的圧力に対してより脆弱になるだろう。安全保障と利益の選択を迫られた場合、ほとんどの国は前者を選ぶだろう。

第三に、ロシアがドンバス地方で限定的な利益を得たとしても、この戦争はロシアの相対的な衰退を加速させるだろう。プーティンはウクライナのNATO加盟を阻止するかもしれないが、その結果、長期的にはロシア全体が衰退することになる。プーティンが新たな鉄のカーテンを築かない限り、才能ある若いロシア人はどんどん出て行くだろう。ロシアの石油、ガス、石炭から離脱する国々が増えれば増えるほど、国家収入は減少する。ウクライナは経済的にヨーロッパに接近していくだろうが、これは戦争が始まる前から既に始まっていた。

プーティンがウクライナで「勝利」を収めたとしても、それは決して確実なものではなく、「ピュロスの勝利(訳者註:犠牲が多くて引き合わない勝利)」である。ロシアの独裁体制はより強固なものになるかもしれないが、ロシアの影響力は小さくなる。将来の世界は、偏った多極化よりも真の二極化に近く、ロシアは中国のジュニアパートナー(経済的活力と長期的戦略的価値が低下している可能性のあるパートナー)の役割を果たすことになるだろう。ロシアによるウクライナの破壊と密接な関係を持つことは中国のイメージダウンにつながるし、ロシア経済の低迷と人口の高齢化・減少に伴い、モスクワは更なる支えを必要とする可能性がある。

これから出現する未来は、アメリカを中心とする「自由主義的秩序(liberal order)」でも中国を中心とする独裁的秩序(autocratic order)でもないだろう。その代わりに、この二大国はそれぞれ、同じような価値観を共有する国家、あるいはどちらかに肩入れせざるを得ない国家を取り込んだ部分的な秩序を導くだろう。そして、間違いなくワシントンも北京も、一部の同盟国には多大な忠誠心を期待することになる。米中両国がどちらの技術標準が優位に立つかを競い、デジタル世界がファイアウォール、セーフガード、互換性のないプライバシー標準、その他の制限の背後に徐々に分割されていくにつれて、デジタル空間における分裂と争いがより大きくなることが予期されている。

しかし、ウクライナに対する世界の反応が提示しているように、多くの国々、特に南半球の国々は、どちらかの側につくようにという圧力に抵抗し、自分たちに直接関係のない争いには関わらないようにしようとするだろう。また、アメリカと中国を対立させることで、より大きな利益を得ようとする国もあるだろう。とりわけ、「民主政治体制対独裁政治体制(democracy vs. autocracy)」という硬直した二項対立をアメリカの外交政策を基盤に使用とすることが、失敗の原因であることを思い知らされる事態である。これまでと同様、成功のためには、可能な限り志を同じくするパートナーと協力し、必要な場合にはアメリカの価値観を共有しない国家と協力することが必要となるのだ。

残念なことだが、大国間の協力は、たとえ利害が部分的に一致していたとしても、その実現と維持がかなり難しくなるであろう。このことは、この厄介な、しかし今のところ局地的な戦争から生じる最も重大な影響となるだろう。ウクライナ戦争は差し迫ったものではないが、加速する気候変動というはるかに大きな危険を諸大国が無視する口実を与えることになる。気候変動に対処するためには、全ての大国が犠牲を払う必要がある。しかし、世界のパワーバランスに不安を感じ、ライバル国よりも多くの犠牲を払うことに抵抗がある場合は、犠牲を払う気になることなどないだろう。

私たちは、リアリズムが最も良く説明できる世界、つまり、諸大国がパワーと影響力を求めて競争し、その他の国ができる限りそうした状況に適応する世界に戻っている。ロバート・ケーガンが私たちに信じ込ませようとしているように、ジャングルが「復活」しているということではない。アメリカが最大の野獣であり、他の全ての野獣を自分たちの意向に従って行動させることができると妄想していたときでさえ、ジャングルが本当に消滅したことはない。しかし、リアリズムが描く世界は、特別に幸せな世界などではないのだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争について、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が「戦争直前のラインで停戦を行うべき」と述べたことはこのブログでもご紹介した。「これ以上続けると、ウクライナの防衛戦争の枠組みを超えて、ロシアに対する新たな戦争になってしまう」とキッシンジャーは警告を発した。国際関係論分野の「リアリスト」と呼ばれる人たちは早期の停戦を主張している。

 それに対してキッシンジャーに反発する人物が書いた論稿をご紹介する。キッシンジャーについては、米中国交回復を実現したことで、中ソ離間を成功させ、ソ連を弱体化させたという評価がある一方で、親中派として中国がここまで成長する手助けをしたという批判がある。アメリカの最大の貿易相手国として中国は急激な成長を続け、それが結果としてアメリカの首を絞めることになったのは何とも皮肉な結果である。

 下に紹介する論稿の著者ジョセフ・ボスコはキッシンジャー批判派である。そして、ウクライナ戦争に関してはゼレンスキーを全面的に支持して、アメリカはより大きな支援を継続して行うべきだと考えている。こうした「ウクライナ頑張れ、アメリカはどんどん支援しよう(どんどん武器をアメリカ政府が替刃防衛産業も儲かるし)」という人々はきちんと出口を見据えて発言しているのだろうか。現状ではウクライナ軍がロシア軍をウクライナ東部から追い落とすこと、更に2014年にロシアが併合したクリミア半島を奪還することは不可能である。はっきり言って膠着状態であり、ウクライナ東部でロシア軍が状況を有利に進めているが、2月24日の戦争勃発前の状態にできるだけ戻す形での停戦が一番現実的である。

 どんどんやれ、ウクライナにどんどん武器を送れと言っても限界がある。欧米諸国はその限界を迎えつつあるのではないか。ヨーロッパの戦争であり、EU諸国が勇ましいことを述べているが、戦費の半分以上をアメリカに負担してもらって、まさに「口だけ番長」状態である。自分たちも一緒になって戦う気もなく、支援もする気がないのでは、EU諸国の存在意義はないに等しい。これが現代の先進諸国の実態である。そして、話を逸らそうと「次は台湾が危ない」などと言いだす。ロシアを叩き潰せない欧米諸国が中国と真剣に戦うことなどできる訳がない。欧米諸国は「張り子の虎(paper tiger)」だ。

 キッシンジャーに文句を言ってみたところで、現状がどうなるものでもない。現実的に考えて、早期停戦こそがより良い結果ということになる。

(貼り付けはじめ)

バイデンはキッシンジャーからのウクライナについて素早く逃げるようにという助言に従っているのだろうか?(Is Biden following Kissinger’s cut-and-run advice on Ukraine?

ジョセフ・ボスコ筆

2022年5月31日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/3506286-is-biden-following-kissingers-cut-and-run-advice-on-ukraine/

ウラジミール・プーティンは2005年、「20世紀最大の地政学的惨事」は第一次世界大戦でもなく、第二次世界大戦でもなく、毛沢東の中国支配でもなく、冷戦でもない、と断言した。プーティンの世界観では、冷戦の終結とソヴィエト連邦の解体こそが歴史的悲劇ということになる。しかし、それによってヨーロッパの数多くの国々と3億人近い人々がソ連の専制政治から解放された。

それから3年も経たないうちに、プーティンは第一次世界大戦とヴェルサイユ条約後のアドルフ・ヒトラーの復古主義を再現し、世界史における耐え難い一章と見なしたものを覆した。2008年にNATOがグルジアとウクライナの加盟を支持すると表明した数カ月後、ロシアはグルジアの一部に侵攻し、占領した。

ジョージ・W・ブッシュ(子)政権とNATOが事実上黙認すると、プーティンはソヴィエト連邦の再構築という次の方策を準備した。2009年にバラク・オバマ大統領は米露関係の「リセット」を発表した。そして2012年にはプーティンにアメリカの「柔軟性」の拡大を約束した。2014年、ロシアはウクライナ東部に侵攻し、クリミアを奪取して反撃した。この時も、西側諸国はロシアの侵略を覆すような、あるいは意味のある処罰を与えるようなことは何もしなかった。プーティンは、帝国再興計画の第3段階の準備を開始した。

ロシアが2021年に次のウクライナ侵攻に向けて軍を増強した際、プーティンの全ての動きを予見していた情報機関を持つワシントンは、侵攻が起こるのをただ見ているだけだった。ジョー・バイデン政権は、その正確な予測を自画自賛しながらも、侵略を阻止するためにNATOとともに直接あるいは適時に行動を起こそうとはしなかった。

その代わりにワシントンは、前例のない経済制裁を行うと脅した。国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、ロシアの攻撃後に経済制裁が成功すると主張した。ロシアの拡大を防ぐためではなく、単にロシアに経済的コストを課すために必要だと主張した。ジョー・バイデンは後に、経済制裁がプーティンを抑止したり拘束したりするために「決して機能しない」ことは最初から分かっていたと述べた。

一方、バイデンはウクライナ国内におけるNATOによる飛行禁止区域設定を否定し、ウクライナが求める最も緊急に必要とする兵器を保留し続けた。この政策はオバマ政権に端を発し、トランプ大統領の下でわずかながら変更されただけであった。

ウクライナは、西側諸国から送られた限定的な防衛用兵器を見事に、そして勇敢に活用し、また、アメリカの情報提供を受けてロシアの黒海旗艦を沈めた国産対艦ミサイル「ネプチューン」など、ウクライナ独自の武器も開発している。

ウクライナは首都キエフを守り、他の地域でもロシアの攻勢を阻止することに成功したが、兵器の格差と兵力数で圧倒的に有利なロシアは、その犠牲を払ってロシアの戦略的優位性を維持している。

ロシアは、犠牲を伴う勝利ではあったが、最終的に港湾都市マリウポリを奪取し、黒海封鎖を維持した。ロシアはドンバス地方で少しずつ、しかし着実に前進を続けており、ウクライナ東部のウクライナ軍を広く包囲する恐れがある。

ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、ウクライナがロシア軍を都市や軍事施設から遠ざけることを可能にする、より重く、より長距離のシステムを繰り返し要求している。しかし、ジョー・バイデン政権は、プーティンが「挑発的(provocative)」だと感じるかもしれない武器の提供を差し控えるという方針を堅持している。もちろん、修辞的かつ道徳的支援を含むあらゆる形態の西側援助は、プーティンにとって忌まわしいものであり、彼のヒトラーに向かうのと同等の怒りと反感を買うものだ。

プーティンの軍隊がウクライナ東部で容赦なく前進する中、ワシントンやベルリン、パリ、ローマなど一部のNATO諸国は、ウクライナの崩壊とロシアの敗北と屈辱を防ぐために提供できる軍事支援の正確なレヴェルについて、貴重な時間とエネルギーを浪費している。軍備の測定は、膠着状態を作り出し、両当事者に妥協を促し、プーティンの面目を保つために行うものである。

究極の国家安全保障の「リアリスト」であるヘンリー・キッシンジャーは、先週スイスのダヴォスで開かれた世界経済フォーラムでのインターネットを通じたスピーチで、プーティンを融和(accommodation)、もしくは宥和(appeasement)させるケースを示した。

「簡単に乗り越えられないような動揺や緊張が生じる前に、今後2ヶ月の間に交渉を始める必要がある。理想的には、分割線は現状復帰であるべきだ」と述べた。これが意味すると事は2月24日にロシア軍が侵攻する直前に存在したそれぞれが支配した領土ということだ。2014年にロシアがクリミアとウクライナ東部に侵攻する以前の状態のことではない。ロシアの侵攻前の状況に「戻す」ことができないのは、当然のことながら、失われ、破壊された何千人ものウクライナ人の命や、破壊された都市や歴史的な場所である。

キッシンジャーは警告を付け加えた。「それ以上の戦争を追求することは、ウクライナの自由のためではなく、ロシアそのものに対する新たな戦争になる」。キッシンジャーは、ウクライナの自由は分割可能であり、2月24日にロシアに支配されていない地域にのみ適用されると考えているようだ。

更に言えば、ウクライナはロシアそのものを攻撃するつもりを意図も持たず、その必要も存在しない。ウクライナに招かれざるロシア人がいるだけでありそれを追い出すだけのことだ。そして、ヒトラーの場合と同様に、領土の譲歩は、侵略者の基本計画の追求における一時停止を意味するに過ぎない。おそらく、キッシンジャーの交渉を勧める理由の1つは、ウクライナ、グルジア、その他NATOへの加盟を希望する国を永久に排除することであろう。しかし、プーティンは、NATOが最終的に1997年の安全保障状況にまで後退することを望んでいることを示唆している。

キッシンジャーは以前外交的手腕を発揮した。中国共産党の周恩来首相と上海コミュニケを発表した時がそうだ。それ以降、台湾の地位に関する、キッシンジャーの巧妙な言葉遣いのせいで、中国は大胆に行動するようになり、西側を悩ませてきた。そして、中国と台湾、中国とアメリカとの間での紛争はこれまでになく緊迫したものとなった。キッシンジャーは、その後の50年間にわたり、アメリカの歴代政権に対して、北京にとって最も有利な取り決めの解釈に固執することになった。2007年の台湾へ送った警告では、「中国が共産主義支配を放棄することは永遠にない」と述べた。

キッシンジャーはまた、ヴェトナムからの撤退を成功させたことでノーベル平和賞を受賞したが、その際、米連邦議会はアメリカからの資金提供を打ち切り、アメリカの同盟国であった南ヴェトナムは北ヴェトナムの最後の大攻勢に対して無防備な状態となった。ヴェトナムからのアメリカの撤退は台湾の主権と引き換えに潔く行われたものではなかった。米ソのデタント(緊張緩和)もまた、モスクワがラテンアメリカ、中東、アフリカで優位に立ったことで、幻想であることが明らかになった。

バイデンには、ウクライナの英雄的なゼレンスキー大統領の言葉に耳を傾けることをお勧めする。ゼレンスキーは、バイデンが述べた自由と独裁の間で起きている巨大な戦闘の先頭にいる。それは、自由主義的国際秩序に反対するプーティンの「無制限の戦略的パートナー(no-limits strategic partner)」である習近平率いる中国の敵対的意図に対する台湾の自由と安全という、この巨大な戦闘における次の戦いにとって、ワシントンに良い影響を与えることになるであろう。

※ジョセフ・ボスコ:国防長官直属中国担当部長(2005年から2006年)、アジア太平洋地域人道支援・災害援助担当部長(2009年から2010年)。ウラジミール・プーティンがグルジアに侵攻した際には米国防総省に在籍し、アメリカの対応について国防総省内での議論に参加していた。ツイッターアカウント:@BoscoJosephA.

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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