古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ウラジーミル・プーティン

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻が起きて以来、人々の不安を煽る主張が多く出ている。「ロシアはウクライナの次として●●(バルト三国や隣接している国々の名前が入る)を狙っている、攻める」とか、「ウクライナの次は台湾だ(中国がロシアの成功を見て台湾侵攻を行う)」といった主張がなされてきた。「ロシアのプーティンも中国の習近平も共に独裁者で、自分たちの思うとおりに軍隊を動かして、他国を攻める」「ロシアも中国も膨張主義(expansionism)だ」という粗雑な、浅はかな考えが基本になっている。プーティンも習近平も、こうした浅はかな主張をする人間たちよりも、はるかに頭が良く、自分の欲望だけで何かをするという次元の人間ではない。また、ロシアも中国も国土に関して野心を持っていない。

 プーティンのウクライナ侵攻の原因をきちんと精査し、分析し、合理的な判断もしないで、粗雑な前提で、「攻めてくる、攻めてくる」と騒ぎ立てるのは、人々の不安を煽って、自分の金儲けに使おう、商売にしようというさもしい根性から出ている。独裁者だから連続してどんどん侵略するということはない。ヒトラーやナポレオンがいるではないか、という声も出るだろうが、独裁者が全員、ヒトラーやナポレオンのような行動を取った訳ではない。

 プーティンが独裁者だから必ず、ウクライナ以外にも侵略戦争を仕掛けるというのは粗雑な考えであり、プーティンがどうしてウクライナに侵攻したのか(2014年の時も含めて)を考えるならば、NATOの拡大が理由として挙げられる。NATOとは対ソ連、今では対ロシア軍事同盟だ。ロシアの側か見れば、それがどんどん東側に拡大して、自国に迫ってくる。東欧諸国やバルト三国が加盟してNATOと隣接することになる。それでもロシアは自制した。しかし、ウクライナはロシアにとっては喉首のような場所であり、NATO拡大は看過できない(EU加盟には賛成している)。こうして考えると、西側諸国がロシアの意向を無視して、ロシアを煽ったということになる。ロシアは乾坤一擲、ウクライナを抑えた。それ以上のことをする意図はない。

 これは中国にも言えることで、台湾が現状のままならば、わざわざ侵攻することはない。既に両岸関係は緊密に絡まり合って、経済的には一蓮托生の状態になっている。アメリカをはじめとする西側諸国が余計なことをしなければ、そのままの状態で、経済が発展していく。西側諸国という存在が世界にとって大いなる邪魔者になっているということを私たちは良く考えねばならない。そして、過度に単純化された、不安を煽る言説に惑わされてはいけない。

(貼り付けはじめ)

ロシアが次に何をするかを実際のところは誰も知らない(Nobody Actually Knows What Russia Does Next

-ウラジーミル・プーティンの将来に関する計画に対して西側諸国の警告はますます大きくなっているが、説得力は増していない。

The West’s warnings about Vladimir Putin’s future plans are getting louder—but not any more convincing.

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年4月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/02/russia-putin-nato-warning-war-west/?tpcc=recirc062921

どうやら、西側諸国の外交政策エリートの主要メンバーたちは読心術者(mind readers)であるようだ。彼らは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の意図が何であるかを正確に知っていると主張している。著名な当局者や政治評論家たちは、プーティンの野心は無限であり、ウクライナは単なる最初の標的に過ぎないとの意見で一致している。

ロイド・オースティン米国防長官は、「プーティンはウクライナに止まらないだろう」と述べた。デイヴィッド・ペトレイアス元CIA長官は、CNNのクリスティアン・アマンプール記者に「プーティンはウクライナに止まらないだろう」と語った。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、「次はリトアニア、ラトビア、エストニア、モルドバになるかもしれない」と警告し、ジェーン・ハートリー駐英米大使は、「ロシアがこの後止まるかもしれないと考える人は誰でも間違っている」と述べた。リトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス外相も同じ考えだ。「ロシアは止まらないだろう。プーティンは、明らかに更なる計画を持っている」と述べている。ジョー・バイデン米大統領も2023年12月に同じ警告を発し、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も同じ警告を発した。西側諸国の政府関係者たちは、ロシアがいつNATOを狙うのか定かではないが、モスクワを断固として打ち負かさなければ、より広範な戦争は避けられないと考える声が高まっているようだ。

ウォルター・リップマンが警告したように、「全ての人が同じように考えるとき、誰もあまり考えない」。ウクライナ戦争が終結し、ロシアが2022年以前のウクライナの領土の一部を支配することになる場合、プーティンやロシアがどのような行動に出るかは、これらの人々の誰も、何も分からないというのが明白な事実である。私もそうだし、プーティン自身(そしてプーティン自身もはっきりとは知らないかもしれない)を除いて、他の誰も分からない。プーティンが大きな野心を持っていて、ウクライナでの高価な成功に続いて、どこか別の場所で新たな攻撃を試みる可能性はある。しかし、プーティンの野望が、ロシアが莫大な犠牲を払って勝ち取った以上のものには及ばず、それ以上のギャンブルをする必要も欲望もないという可能性も十分にある。例えば、プーティンは最近、ロシアはNATOを攻撃するつもりはないと宣言したが、ウクライナに供与されるF-16やその他の航空機がウクライナに配備されれば、合法的な標的になるとも指摘した(当たり前だ)。プーティンの保証を額面通りに受け取るべき人はいないが、彼の言うことは何でも全て嘘だと決めつけるべきではない。

もちろん、プーティンの将来的な行動について、薄気味悪い警告を発している西側の専門家たちは、西側諸国の人々(そしてアメリカ連邦議会)を説得して、ウクライナへの援助を増やし、ヨーロッパの防衛費を増額させようとしている。はっきり言って、私もウクライナへの援助を継続することには賛成だし、NATOの加盟国であるヨーロッパ各国が通常戦力を増強することで抑止力(deterrence)を強化することを望んでいる。私が気になるのは、このような宣言に触発される反射的な脅威を危険視する不安感の急速な膨張であり、このような暗い予測をあたかも確立された真実であるかのように扱い、それに疑問を呈する者を考えが甘い人間、親ロシアでロシアの手先、あるいはその両方と決めつける傾向があることだ。

プーティンに無限の野望があるという、偏った、信仰に近い考えは、全ての独裁者は生来攻撃的で抑止が難しいという、おなじみのリベラル派の主張にもとづいている。その論理は単純だ。「全ての独裁者は拡大を求める。プーティンは独裁者だ。だからプーティンはウクライナで止まらない。証明終わり」。この三段論法(syllogism)はリベラルなエリートたちの間では信条(article of faith)になっているが、この主張を裏付ける証拠はほとんどない。確かに、ナポレオンやアドルフ・ヒトラーのように危険な連続侵略者だった独裁者もいる。だから、現在私たちが偶然対峙することになっている独裁者は誰でも、必然的に「もう1人のヒトラー(another Hitler)」というレッテルを貼られる。しかし、他の独裁者たちは、国内での行いがいかに酷いものであったとしても、国際舞台ではむしろ品行方正(well-behaved)であった。毛沢東は誰がどう見ても暴君であり、彼の政策は何百万人もの同胞を死に至らしめたが、毛沢東の征服戦争(war of conquest)は1950年のチベット占領だけだった。オットー・フォン・ビスマルク率いるプロイセンは、8年間に3度にわたって戦争を繰り返したが、1871年に誕生した統一ドイツは、それから19世紀が終わるまで、断固として現状維持(status quo)に努めた。スタニスラフ・アンドレスキーが何年も前に論じたように、多くの軍事独裁政権は平和的な姿勢を取る傾向がある。プーティンが国内のライヴァルを投獄したり殺害したりする冷酷な独裁者であり、その他の卑劣な行為を行っているという事実は、彼がロシアの近隣諸国を征服したいと思っているかどうか、あるいはそうできると信じているかどうかについては、ほとんど何も語っていない。そして、いわれのない違法で破壊的な戦争を仕掛けるのに、独裁者である必要はほぼないのである。

第二に、ウクライナでの戦争が最終的に終わったとき、ロシアは新たな侵略戦争(new wars of aggression)を仕掛けることができる状態にはないだろう。アメリカの情報諜報機関は、ロシアがウクライナで死傷した兵力は30万人を超え、数千台の装甲車や数十隻の船舶・航空機も失ったと考えている。プーティンは、(「再選[reelection]」が終わった今、そうするかもしれないが)追加出動(additional troop mobilizations)を命じることに消極的だ。そのような措置はロシア経済をさらに弱体化させ、民衆の不満を煽る危険があるからだ。西側の制裁措置(sanctions)は、アメリカとその同盟諸国が期待したほどにはロシア経済に打撃を与えなかったが、ロシアにとって長期的な経済的影響は依然として深刻なものになるだろう。長い通常戦争(conventional wars)を戦うにはコストがかかる。現在の戦争が終わるたびに次の戦争を始めるのは、プーティンが簡単だと信じていた「特別軍事作戦(special military operation)」を開始するという当初の決断以上に無謀なことだ。ウクライナでのロシアの困難は、たとえプーティンの軍隊が最終的にピュロスのような勝利を収めたとしても、プーティンを今後はるかに慎重にさせる可能性が高いのではないだろうか?

第三に、プーティンが侵攻を決意した大きな理由が、ウクライナが西側の軌道に乗り、いつの日かNATOに加盟するということを阻止するためだったとすれば、その後の和平協定でその可能性が封じられれば、プーティンは満足するかもしれない。国家はしばしば、貪欲さ(greed)よりも恐怖(fear)から戦争に踏み切るものであり、ロシアが持つ安全保障上の恐怖が弱まれば、ヨーロッパ地域の他国を狙うインセンティヴ(誘因)もおそらく低下するだろう。もちろん、NATO加盟諸国はこの可能性を当然と考えるべきではないが、プーティンの狙いに際限がないという仮定と同程度には、説得力を持つ話だ。

ヨーロッパの専門家たちの一部は、ロシアのウクライナ侵攻に、NATOの拡大は関係ないと主張し、プーティンが侵略したのは、ウクライナ人とロシア人は文化的・歴史的に深いルーツを共有しており、形式的には統一されていなくても、政治的には同盟を結ばなければならないと考えているからだと主張している。この見解では、NATOの拡大は開戦の決断とは無関係であり、古き良きロシアの文化的帝国主義(cultural imperialism)の一例に過ぎない。しかし、もしそうだとすれば、プーティンの思考においてウクライナは特別な存在であり、プーティンが侵攻した理由(そして侵攻が容易だと考えた理由)は他の国には当てはまらないということになる。興味深いことに、この結論は、2008年にウィリアム・バーンズ駐ロシア米大使(当時)がワシントンに警告した「ウクライナのNATO加盟は(プーティンだけでなく)ロシアのエリートにとって最も明白なレッドラインだ」という指摘と一致している。ロシアはそれ以前のNATO拡大についてはしぶしぶ容認していたが、ウクライナはまったく異なるカテゴリーだった。プーティンの「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性(historical unity of Russians and Ukrainians)」についての錯綜した主張をどう考えるかにしても、プーティンはフィンランドやスウェーデンやポーランドや他の誰をも同じようには見ていない。バルト三国におけるロシア語を話す少数民族の地位は、その後のロシアの干渉の口実になるかもしれないが、プーティンは、国民のほとんどがロシア人ではなく、再統合されることを断固として反対して、ロシアを敵視している国々をめぐって、NATOと直接武力で衝突する危険を冒すだろうか?

私が指摘したいのは、プーティンがロシア人とウクライナ人を「ひとつの民族(one people)」だと考えているから侵略したと考えるのであれば、プーティンの野望はこの特殊なケースに限定されると結論づけるのが合理的だということになる。

最後に、プーティンは完全敗北させなければ新たな戦争を仕掛ける、容赦のない連続侵略者だという主張は、戦争を終結させ、ウクライナのさらなる被害を免れる努力を妨げている。プーティンが新たな戦争を始めるのを防ぐには、完全な敗北しかないと考えるのであれば、ウクライナが全ての領土を取り戻すまで現在の戦闘を続けなければならないということになる。私はウクライナが領土を回復して欲しいと考えているが、西側欧米諸国の追加支援があったとしても、その可能性はますます低くなっているようだ。昨夏のウクライナの反転攻勢(Ukraine’s counteroffensive last summer)が成功すると誤って予測した、考えの足りない楽観主義者たちは、その誤りを謝罪し、なぜ間違っていたのかを説明しただろうか?

繰り返す。私はプーティンが何をするか知っていると言っていない。また、ウクライナでの戦争が終われば、プーティンの意図は良性となり、ヨーロッパの現状を確実に維持するだろうと単純に考えるべきだとも思わない。私が反対しているのは、彼が何をするか正確に知っていると主張し、単なる推量(mere guesswork)に基づいて非現実的な目標を追求し続ける影響力のある声全てに対してだ。

ウクライナでの戦争がウクライナの完全勝利に満たないもので終わるのであれば、適切な対応とは、将来的に他の国がウクライナのような運命をたどる可能性を低くすることだ。プーティンが何をしでかすかは誰にも分からないのだから、NATOのヨーロッパ加盟諸国は防衛能力を高め、明らかな脆弱性(vulnerabilities)について是正すべきだ。しかし同時に、アメリカとNATOの同盟諸国は、ロシアの正当な安全保障上の懸念(全ての国がそうであるように、ロシアにも実際に懸念はある)を認め、それを和らげるために何ができるかを検討すべきである。そのような努力は、ロシアが行ったことに対して「代償を払わせる(make Russia pay)」という願望が残っていることを考えれば、物議を醸すだろうし、こんなことになるだろう。しかし、賢明な国家運営とは将来を見据えたものであり、将来の戦争を防ぐことが優先されるべきだ。そのためには、信頼できる抑止力と信頼できる保証を組み合わせる必要がある。そうすれば、プーティンやその後継者たちが持つ、武力行使を考える必要性も、武力行使をすればロシアが有利になるという確信も減るだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。週刊ダイヤモンド2024年3月2号にて、佐藤優先生にご紹介いただきました。ウクライナ戦争の分析に関して「説得力がある」という評価をいただきました。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ウクライナ戦争は開戦から2年半が過ぎ、現在は膠着状態、ロシア側が有利な展開となっている。ウクライナ側は2023年に春季大攻勢(Spring Offensive)を実施してロシアに打撃を与えると内外に宣伝し、ロシア側がそれを受けて守りを固めているところに、攻撃を仕掛けて、結果的に失敗に終わった。それ以降はウクライナには厳しい状況が続いている。アメリカ連邦議会、共和党が過半数を握っている連邦下院で、ウクライナ支援のための予算が否決されるなど、共和党とアメリカ国民の過半数はウクライナ支援に反対である。もう止めたい、十分にしてやったではないか、もう疲れた、というのがアメリカ国民の本音だ。
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 それでは、ウクライナを今すぐNATO(北大西洋条約機構)に入れて、ヨーロッパ全体で守ってやるべきだ、もしくは停戦してから加盟させて、今後のロシアの侵攻に備えるべきだという意見もある。しかし、こうした意見が無視しているのは、2014年のロシアによるクリミア半島併合の前後に、NATOはウクライナを加盟させなかったということだ。ウクライナを本気で守ってやろう、ロシアの侵攻に徹底的に対抗してやろうということならば、欧米諸国が実質的にどんどん軍事物資や要員、資金を提供して、ウクライナの軍事強化を行って、「実質的に」加盟させているような状況を作りながら、正式には「ウチとは関係ありませんから」という極めて無責任は態度を取るはずがない。NATOは分かっている、ウクライナなんぞを正式加盟させたら、自分たちがロシアからの攻撃を受ける、最悪の場合には核兵器による攻撃があるということを。

 また、ロシアの今回のウクライナ侵攻は、ウクライナのNATO加盟阻止という目的もあるので、ウクライナがNATOに加盟すれば、その目的が達成されないということになるので、戦争が長引く。ロシアとしては、ウクライナがEUに加盟することは認めているので(EUが赤字財政と腐敗と人権侵害のウクライナの世話をしてみろという態度)、中立化するということであれば停戦も可能である。こうしたことは2022年の段階で既に話されているもので、今更目新しく述べるようなことでもない。しかし、こうしたことは、再確認するためにも改めて書かねばならない。それが戦争を早期に集結させ、戦争に関わって苦しんでいる人たちを救うことにつながると私は確信している。

(貼り付けはじめ)

NATOは、ウクライナのために、ウクライナを受け入れるべきではない(NATO Should Not Accept Ukraine—for Ukraine’s Sake

-西側同盟の拡大がキエフをさらに不利にする5つの主要な理由について語る。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年3月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/05/nato-ukraine-membership-russia-war-west/

戦局がウクライナに不利に傾き、アメリカ連邦議会が新たな支援を承認するかどうかが疑問視される中で、元NATO司令官アンダース・フォッホ・ラスムッセンや元NATO米常任代表イヴォ・ダールダーといった影響力のある専門家たちは、ウクライナを早急にNATOに加盟させるべきだという以前の呼びかけを繰り返している。この措置は、ロシアにその軍事作戦ではウクライナを同盟から締め出すことはできないと納得させる方法であると同時に、最終的に戦争が終結したときにウクライナに十分な安全保障を提供する必要があるとして売り込まれている。

合理的な人々は、この勧告の賢明さについて同意できないし、また同意しないだろう。なぜなら、対立する立場は不確実な将来についての予測に基づいているからだ。事実上、私たちは皆、ウクライナを持ち込むことでどのような影響があるかについて賭けをしているのだ。私自身の立場を明確にしておくと、もし私がアメリカ連邦議員だったら、躊躇することなく、追加支援策に投票するだろう。なぜなら、私はウクライナが依然として支配する領土を固守することを望んでおり、ロシアにはその努力を理解させたいからである。ロシアが更に多くのウクライナの領土を占領することはコストがかかり、困難になるだろう。今日の追加援助は、おそらく11月の米大統領選挙後に本格的な議論が始まる際に、キエフの交渉上の立場を改善するだろう。そうは言っても、今ウクライナをNATOに加盟させるのは悪い考えであり、戦争が長引き、時間の経過とともにキエフはより悪い立場に置かれることになる。

まず、北大西洋条約(North Atlantic Treaty)が、一定の基準を満たせばどの国にも加盟する権利を与えている訳ではないことを思い出して欲しい。第10条では、「締約国は、全会一致の合意により、この条約の原則を促進し、かつ、北大西洋地域の安全保障に貢献する立場にある他のヨーロッパ諸国に対し、この条約に加盟するよう要請することができる」と述べているだけである。NATOの現在の「門戸開放(open door)」政策は、より最近のことである。NATOの加盟基準を満たせば、加盟を希望するいかなる国も加盟できるという正式な約束と見なされることもある。事実上、門戸開放政策はNATOから加盟希望国へと微妙に主体を移すものであり、加盟希望国に対して「門戸は開かれており、私たちの基準を満たせば自由に加入してよい」と告げるものだ。既存の加盟諸国が、新加盟国を受け入れることが「条約の原則を促進し、北大西洋地域の安全保障に貢献する」と集団的に合意するまで、ドアは閉ざされているのだ。その時点で加盟諸国はドアを開け、招待状を出すことを決定できる。当初の条約が同盟の拡大に積極的であるという前提を設けていない以上、この違いは重要である。スウェーデンのNATO加盟を数年間遅らせようとしたハンガリーの最近のキャンペーンは、このプロセスが実際にどのように機能しているかを思い起こさせる。スウェーデンには、他の加盟国全てが同意するまで加盟する「権利(right)」はないのだ。

ウクライナに目を向けると、今(あるいは近い将来)にウクライナをNATOに加盟させるのは賢明ではないという私の信念は、いくつかの前提に基づいている。1つは、ウクライナが昨年の挫折を経て、より多くの兵器を入手し、軍隊を再編成する時間がない場合、戦場で状況を逆転させ、失われた領土を再征服することはできないということだ。深刻な(おそらくは回復不可能な)人的資源不足に悩まされており、無人偵察機、大砲、ロシアの広大な要塞の組み合わせにより、キエフが領土の面で大規模に進出することは困難あるいは不可能になるだろう。西側諸国というウクライナ応援団は昨春、その後の反撃について楽観的な予想を示したのは間違いだったが、彼らはウクライナが形勢を変える方法はまだたくさんあると示唆して、この間違いを繰り返している。そうでなければ良いのだが、私たちは、世界がどうなりたいかではなく、世界の現状に基づいて政策を選択する必要がある。

私の第二の前提は、ロシアの指導者たちは欧米諸国よりもウクライナの運命を気にかけているということだ。もちろん、ウクライナ人以上に気にしている訳ではないが、彼らにとっては、ほとんどのNATO諸国の指導者や国民よりも重大な関心事なのだ。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領とその側近たちは、ウクライナで戦って死ぬために何千人もの兵士を送ることを厭うことはない。先週、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が不意にNATO軍派遣の可能性を提起した際、彼は即座にドイツのオラフ・ショルツ首相とNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長に叱責された。これは、NATOがウクライナの運命に関心がないということではなく、ロシアがもっと関心を持っているということだ。

第三に、プーティンが2022年2月に違法な侵攻を開始した主な理由の1つは、ウクライナが西側諸国に接近し、最終的に同盟に加盟するのを阻止するためだったと私は推測している。CIAとウクライナの諜報機関との協力関係が着実に深まっていることが最近明らかになったこと、2014年以降、欧米諸国がウクライナの防衛力強化に努めてきたこと、そしてNATOがウクライナを同盟に参加させるという約束を何度も繰り返していることが、モスクワの懸念を煽ったことは間違いない。プーティンの行動には、ウクライナ人とロシア人の文化的一体性に関するある種の信念も反映されているかもしれないが、ウクライナがNATOに加盟するという見通しがプーティンに行動を取るように駆り立てたという証拠を否定することはできない。実際、ストルテンベルグNATO事務総長はこのことを何度も公然と認めている。プーティンはNATOの意図を読み違え、彼らがもたらす脅威を誇張したかもしれないが、外国の危険を誇張した世界の指導者は彼だけではない。

これら3つの前提を踏まえて、ウクライナがNATOに加盟すべきでない理由の主要な5つは以下の通りとなる。

(1)ウクライナは加盟基準を満たしていない。ウクライナの民主政治体制はまだ脆弱である。汚職はいまだに蔓延しており、選挙は戦争が始まって以来実施されておらず、ウクライナ社会には民主政体規範への関与について疑問視される有力者たちがまだ存在する。エコノミスト・デモクラシー・インデックスは昨年、こうした理由も含めて、ウクライナを「ハイブリッド政治体制(hybrid regime)」と評価した。加えて、ウクライナは標準的なNATO加盟行動計画の条件をまだ満たしていない。この事実を認識したNATOは、昨年夏の年次首脳会議でこの基準を免除することに合意し、事実上、ウクライナの加盟プロセスを「2段階プロセスから1段階プロセス」に変更した。同盟加盟の基準を水増し(緩和)することで、この決定は将来的に悪しき前例となる可能性がある。

(2)NATOが第5条の約束を守るかどうかは定かではない。以前の記事でも指摘したように、北大西洋条約第5条は、他の加盟国が攻撃された場合に、加盟国が参戦を約束する仕掛けになっていない。アメリカの主張により、第5条は加盟国に対し、ある加盟国への攻撃を全ての加盟国への攻撃とみなし、「必要と考える行動(such actions as it deems necessary)」を行うことを義務づけているだけである。それにもかかわらず、この条項は、攻撃を受けている加盟国を防衛することを約束するものと広く解釈されており、重大な侵略があった場合にどの加盟国も助けに来なければ、同盟全体が疑問視されることになる。したがって、新たな加盟国を受け入れる前に、同盟の他の国々は、自国が攻撃された場合に自国の軍隊を危険にさらす意思があるかどうか、じっくりと考えるべきである。

これまでの私の指摘を繰り返す。これまでのところ、アメリカも他のNATO諸国も、ウクライナのために軍隊を派遣する意志を示していない。武器と資金は支援している。もしその意志があるのなら、既に軍隊を派遣しているはずだ。今やる気がないのに、5年後、10年後、20年後にウクライナのために戦うと暗黙のうちに約束することに意味があるのだろうか?

更に言えば、アメリカ連邦上院がウクライナの加盟を批准するかどうかも決して明らかではない。条約を批准するには3分の2以上の賛成が必要で、十分な票を集めるのは難しいかもしれない。確かに、今回の支援策には70人の連邦上院議員が賛成票を投じたが、その法案にはイスラエルへの追加支援も含まれており、それが票を動かした可能性もある。より重要なのは、共和党の事実上の指導者であるドナルド・トランプがNATOにウクライナを参加させることに反対していることで、彼の反対によって十分な数の共和党議員が反対票を投じ、批准に手が届かなくなる可能性がある。

(3)NATO加盟は魔法の盾(magic shield)ではない ウクライナを早急に加盟させる主な根拠は、そうすることでロシアが後日に戦争を再開するのを阻止できるというものだ。キエフが追加の保護を望む理由は簡単に理解できるが、この議論は、NATOに加盟することが、ほぼ全ての状況下でロシアの軍事行動を確実に阻止する魔法の盾であると仮定している。これと同じ仮定が、NATO をバルト三国のような脆弱な地域に拡大するという以前の決定を引き起こした。NATO拡大の支持者らは、延長される安全保証は決して現金化されない小切手であると単純に想定していた。

NATO加盟は多くの状況で攻撃を抑止するかもしれないが、魔法の盾ではない。実際、最近になって、今後数年のうちにロシアがNATOに挑戦してくる可能性について憂慮すべき警告を発する声が高まっている。もしプーティンがウクライナでの戦争を終結させ、ボロボロになった軍隊を再建するために小休止を取り、フィンランドやエストニア、あるいは他のNATO加盟国に新たな攻撃を仕掛けると本当に信じているのなら、魔法の盾がそれほど信頼できるものだとは思っていないはずだ。となると、NATOの現在の加盟諸国は、自国の死活的利益とは何か、どの国を守るために本当に戦う気があるのか、じっくり考えなければならないということだ。そこで2番目の理由に戻る。

(4)今の時点でのNATO加盟は戦争を長引かせるだけだ。キエフのNATO加盟を阻止するためにモスクワが攻撃したというのが私の見立て通りだとすれば、ウクライナを今加盟させることは、ウクライナが現在負けている戦争を長引かせるだけだ。そのためにプーティンが「特別軍事作戦(special military operation」」を開始したのだとすれば、自軍の戦力が中々に健闘し、ウクライナのNATO加盟がまだテーブルの上にあるのであれば、プーティンが戦争を終わらせることはないだろう。その結果、ウクライナは更に大きなダメージを受けることになり、自国の長期的な将来が危険にさらされることも考えられる。ウクライナは開戦前からヨーロッパで最も急速に人口が減少している国の1つであり、戦闘の影響(難民の逃亡、少子化[declining fertility]、戦場での死亡など)はこの問題をさらに悪化させるだろう。

(5)中立(neutrality)はそれほど悪いことではないかもしれない。ロシアとウクライナの関係の歴史(過去10年間の出来事も含めて)を考えれば、多くのウクライナ人が中立の立場を受け入れたくないのは理解できる。しかし、ロシアに近接する国家にとって、中立は必ずしも悪いことばかりではない。フィンランドは1939年から1940年にかけてソ連と戦い、戦費がかさみ、最終的には不成功に終わり、戦前の領土の約9%を割譲しなければならなかった。しかし、今日のウクライナのように、フィンランドは英雄的に戦い、はるかに大きなソ連に大きな代償を払わせた。その結果、当時のソ連の指導者ヨシフ・スターリンは、第二次世界大戦後にフィンランドをソ連に編入したり、ワルシャワ条約機構に加盟させたりすることはなかった。その代わり、フィンランドは中立国として民主政治体制を維持し、ソ連と西側の両方と貿易を行う市場経済を持った。

この結果は「フィンランド化(Finlandization)」と揶揄されることもあったが、かなり成功した方式であることが証明された。もしフィンランドがこの時期にNATOに加盟しようとしていたら、ほぼ間違いなく大きな危機、あるいは予防戦争(preemptive war)を引き起こしただろう。この2つの状況は完全に類似している訳ではないが(特に、ロシア人とウクライナ人の文化的一体性[cultural unity]についてのプーティンの見解を考えると)、形式的な中立が、ウクライナが強固な民主政体を確立し、西側諸国と広範な経済的結びつきを持つことを妨げるものではないことを示唆している。

これらの理由から、ウクライナのNATO加盟を急ぐのは得策ではない。その代わりに、西側諸国のウクライナ支持者たちは、戦後の休戦協定や和平協定の文脈においてウクライナを安心させることができる別の安全保障体制を創造的に考える必要がある。キエフは、モスクワが戦争を再開させないように安全確保する必要がある。モスクワを刺激して戦争を再開させない方法で、十分な保護を提供する方法を見つけ出すのは容易ではない。戦争を長引かせ、長年苦しんできたウクライナをこれまで以上に不利な状況に追いやる可能性が高い。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント: @stephenwalt

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。私は現職のジョー・バイデン大統領が、合法・非合法あらゆる手段を用いて、大統領に再選されると考えています。これを打ち破って、トランプ大統領が再び登場するとなれば、アメリカの民主政治体制も捨てたものではないということになりますが。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカの衰退基調は止められない。長期的な視点を持てばそれは明らかだ。短期に小さな変化があるにしても、衰退という流れを止められない。ジョー・バイデンが再選されようが、ドナルド・トランプが2度目の大統領になろうが、それは変わらない。トランプのスローガンである「Make America Great AgainMAGA)」は、「アメリカを再び偉大に」という意味であるが、「現在のアメリカは偉大ではない」という認識が根底にある。トランプとトランプ支持者にとっては残念なことであるが、アメリカが再び偉大になり、世界に冠たる超大国である状態にはもう戻れない。

西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)をリードする中国にとって、この長期的な視点から見ると、アメリカ大統領には誰がふさわしいのかということは一般的な常識とは異なる答えが出る。

 中国にとって、長期的な視点に立てば、トランプ大統領が望ましいということになる。トランプは前回の大統領時代に中国との貿易戦争を開始した人物であり、「そんな人物は中国にとってはふさわしくないのではないか、ジョー・バイデンの方がいいのではないか」と私たちは考えてしまう。しかし、長期的な視点では、トランプの方が良いということになる。
その理由を下に掲載した記事の著者デマライスは5つを挙げている。
 アメリカはもう世界を管理する力を失いつつある。「アメリカ(軍)は国に帰ろう」というのがトランプの考えだ。そうなれば、アメリカのグリップが緩む。世界システムは西側手動から大きく変化する。トランプはヨーロッパを「敵(貿易面では)」と呼び、かつ、アメリカからタダで守ってもらっている、安全保障をただ乗りしていると考えている。

トランプが大統領になれば、米欧間の不信感は大きくなる。トランプとロシアのウラジーミル・プーティンは仲が良い間柄だ。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、トランプ、プーティン、そして、中国の習近平の関係を「新しいヤルタ体制」と呼んだ。そうなれば、ヨーロッパは、「トランプとプーティンに挟まれている」という考えを持ち、焦燥感に駆られるだろう。そこに中国が付け込む隙ができるし、ロシアはエネルギー供給を利用して、ヨーロッパを取り込むこともできる。アメリカはヨーロッパ本土から駆逐されて、イギリスにまで下がる可能性がある。
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 アジア太平洋地域で見る場合に、大事なのは「列島線(island line)」である。最近では、「第3列島線」という言葉まで出ている。トランプとアイソレイショニスト(isolationists、国内問題解決優先派)は恐らく、第3列島線まで下がることを容認するだろう。バイデンをはじめとするエスタブリッシュメントは、第1列島線の固守にこだわるだろう。しかし、アメリカの長期的な衰退においては、第3列島線までの後退は避けられない。中国にしてみれば、トランプが大統領になって、米軍の縮小や撤退があれば好都合ということになる。
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 下の記事では、既に経済の最先端分野では中国が主導権を握っているものがあるということで、アメリカが輸出規制をしてくれれば好都合ということや、発展途上国からすれば中国の方が付き合いやすく、トランプが大統領になればその流れが加速するということが書かれている。こうしてみると、トランプこそはアメリカ帝国の解体を促すことができる、最有力の存在ということになる。

(貼り付けはじめ)

なぜ中国は熱心にトランプを応援しているのか(Why China Is Rooting for Trump

-中国政府の長期戦は、トランプの政策と、トランプが即死するアメリカ国内の分裂によって、はるかにうまくいくことになるだろう。

アガーテ・デマライス筆

2024年2月7日

https://foreignpolicy.com/2024/02/07/china-trump-biden-us-presidential-election-2024/

2017年1月にドナルド・トランプが米大統領に就任する前の世界の様子を思い出すと、印象的な光景が鮮明に思い出される。当時、北京が世界の安全保障に脅威を与えているという考えはワシントンでは主流ではなかった。ヨーロッパからの輸入品に関税を課すことは考えられなかった。そして、冷戦終結以降、徐々に使われなくなっていた技術輸出の規制は、一部の政策マニアの領域だった。

良くも悪くも、特にアメリカと中国の関係に関して言えば、トランプが世界を変えたことは否定できない

米中貿易戦争の激化を約束するなど、中国に対するトランプ大統領の扇動的な発言を考慮すると、中国の指導者たちが共和党大統領選挙候補となる可能性が高いトランプよりも現職のジョー・バイデン大統領を好むと考えるだろうというのは簡単に推測できることだ。

しかし、この見方はおそらく近視眼的(shortsighted)であり、全体像を覆い隠してしまう。おそらく中国はトランプを応援していることだろう。

中国政府は、トランプ政権下でもバイデン政権下でも、その他の米大統領の下でも、アメリカとの関係改善の見込みがないことを承知している。西側諸国に対する中国の長期戦の観点からすれば、トランプ大統領のホワイトハウス復帰は、少なくとも経済分野では中国に有利になる可能性が高い。その理由を5つ挙げていく。

(1)トランプはアメリカとヨーロッパの間の分断をさらに拡大するだろう。(Trump would increase divisions between the United States and Europe.

「貿易において、彼らが私たちにしていることから見て、ヨーロッパ連合(EU)は敵だと思う」 (トランプ、2018年7月)

2023年12月、『フィナンシャル・タイムズ』紙は、中国の諜報機関が元ベルギー上院議員フランク・クレイエルマンを何年にもわたってエージェントとして利用していたと報じた。彼を担当していた中国の当事者は、関係の目的について要約し、「私たちの目的はアメリカとヨーロッパの関係を分断することだ」と簡潔に語った。

中国政府の論拠は単純だ。共同輸出規制など、中国の利益を損なう大西洋横断政策の出現を防ぐには、アメリカとヨーロッパとの間に不信感を醸成し強固にすることが最善の方法だ。その観点からすれば、トランプの第二期大統領就任は中国の思う壺ということになる。トランプ大統領は2018年に「貿易において、彼らが私たちにしていることから見て、ヨーロッパ連合(EU)は敵だと思う」と述べたが、この考えが変わったこと示す兆候はない。

もしトランプが当選すれば、おそらく全面的に10%の関税を課すという公約を実行するなど、ヨーロッパとの貿易戦争を再開したいという衝動に抗うことはできないだろう。貿易戦争が起これば、中国の利益を損なう可能性のある措置に関するアメリカとEUの協力が停止する可能性が高い。もちろん、中国からの輸入品に最低60%の関税を課すというトランプの最近の約束も、中国にとっては苦痛となるだろう。しかし、大局的に見て、アメリカとEUの分裂が実現できるのであれば、中国政府はそのような代償を払う価値があると考えるかもしれない。

(2)トランプは対ロシア制裁について撤回する可能性がある。(Trump could make a U-turn on sanctions against Russia.

「彼らはロシアに対して制裁を行っている。ロシアと良い取引ができるか試してみよう」(2017年1月)

トランプの外交政策は予測不可能であるにもかかわらず、一貫しているのは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と良好な関係を築きたいという明らかな傾向である。これは2018年にフィンランドで行われた米ロ首脳会談で、トランプが自国の諜報機関よりもプーティン大統領の方を信頼していると示唆した際に最も顕著に表れた。プーティン大統領への称賛の気持ちが変わらなければ、トランプは大統領就任後すぐに対ロシア制裁の解除を決定する可能性が十分にあり、ヨーロッパ諸国に大きな懸念を持たせている。

このような状況はモスクワを喜ばせるだけでなく、中国にとっても有利となるだろう。ロシアと中国の無制限の友好宣言にもかかわらず、現実には中国企業はロシアとの取引に慎重になっている。中国のロシアへの輸出は2022年以降急増しているが、これは低いベースからのものであり、これまでのところ中国企業がロシアへの投資を急いでいるという証拠はほとんどない。

これは、アメリカ政府がモスクワに二次制裁を科し、世界中の企業がアメリカとロシアの顧客のどちらかを選択するよう迫られるのではないかとの懸念のためだ。このようなシナリオでは、ほとんどの中国企業にとってアメリカ市場に固執するのは当然のことだろう。その結果、中国企業はロシア企業との関係構築にはほとんど関心がなく、近いうちに断念する必要があるかもしれない。トランプが対モスクワ制裁を解除すれば、中国企業にとってこの問題は解決されることになるだろう。

(3)トランプ氏は中国による代替金融メカニズムの推進を後押しするだろう。(Trump would give a boost to China’s push for alternative financial mechanisms.

「中国は米ドルを人民元に置き換えたいと考えているが、それは私たちには考えられないことだ。考えられない。決して起こらないだろうし、起こってはならない。しかし、今、人々はそれについて考えている」(2023年8月)

中国は長年、非ドル化、西側管理のSWIFT世界銀行システムに代わる代替手段の創設、あるいは国境を越えた決済のためのデジタル人民元の計画などを通じて、アメリカの制裁から逃れようとしてきた。しかし、中国は単独でこの戦略を達成することはできない。中国の金融構造が確立された西側諸国の金融構造に取って代わるためには、中国の貿易相手国も同様に非西側の代替手段を選択する必要がある。そこに至るまでの道は険しいだろう。ほとんどの企業や銀行は、完全に機能する SWIFT を捨てて、はるかに小規模な中国製の代替手段を試す必要はないと考えている。

トランプが第二期大統領に就任すれば、この推論が変わる可能性がある。 2018年のロシアのアルミニウム生産会社ルサールの事件はその理由を物語っている。何の警告もなくルサールに制裁を加えた後、トランプ政権はその措置が世界に多大な波及効果をもたらすことを認識し、急いで制裁を撤回して解除しなければならなかった。

この話から得られる教訓は明らかだ。トランプ政権下では、どんなことでも起こる可能性があり、誰もが警告なしに制裁に晒される可能性がある。その結果、トランプがホワイトハウスに復帰した場合、多くの国はこうした措置から先制的に自分たちを守ろうとするだろう。現段階での最善の方法は、中国政府の代替金融メカニズムに切り替えることだ。それは中国にとってもう1つの勝利となるだろう。

(4)トランプが勝利すれば、新興国からの重要資材調達における中国の支配力が高まるだろう。(A Trump win would increase China’s domination for critical materials sourcing from emerging countries.

「なぜクソみたいな国からこんな人たちがここにやって来るんだ?」(2018年1月)

影響力をめぐる世界的な戦いにより、コバルト、銅、黒鉛、リチウム、ニッケルなど、グリーンエネルギーへの移行に不可欠となる原材料へのアクセスを確保するために、西側諸国は中国と対立している。これまでのところ、この戦いは主にボリビア、ブラジル、コンゴ民主共和国、ギニア、インドネシアなどの資源豊富な新興諸国で行われている。中国はこの競争において、群を抜いたリーダーであり、例えば世界のリチウム供給の精製の約50から70%を支配している。

2度目のトランプ大統領就任は、かつてトランプ大統領がまとめて「クソ国家」と軽蔑していた発展途上諸国に、重要な原材料の供給でアメリカと提携するよう説得するのには役立たないだろう。 2018年のイラン核合意からの突然の離脱が示したように、多くの鉱物資源諸国はトランプ大統領の約束にはほぼ価値がないのではないかと懸念を持つだろう。

その上、トランプの発展途上国経済への軽蔑、移民の抑制の可能性、そしてイスラム教に関する扇動的な発言は、アフリカ、東南アジア、南米諸国の指導者たちとの緊張を正確に打ち砕く訳ではない。中国は自らをその場にいる余裕のある大人のような存在、つまりビジネスと政治を混同しない信頼できるパートナーとして振る舞うことで、新興国経済における自国の利益を喜んで推進し続けるだろう。

(5)中国はアメリカのクリーンテクノロジー輸出規制から恩恵を受けるだろう。(China would benefit from U.S. export controls on clean tech.

「地球温暖化という概念は、アメリカの製造業の競争力を失わせるために中国によって生み出された」(2012年11月)

輸出制限は、アメリカ政府が中国に重点を置いた経済リスク回避戦略を実行するための重要な手段である。これらの措置は、半導体、人工知能、量子技術など、二重用途を持つ技術を対象としている。これまでのところ、クリーンテクノロジーはアメリカの輸出規制から逃れられているが、トランプ大統領の誕生でおそらく状況は変わるだろう。共和党は中国に対してよりタカ派的な姿勢をとり、バイデン政権よりも幅広い分野に輸出規制を適用することを明らかにしており、その中には再生可能エネルギーや電池技術などのクリーンテクノロジーも含まれるだろうと考えられる。

中国から見れば、アメリカのグリーン商品の輸出規制は素晴らしいニューズとなるだろう。中国企業は太陽光パネル、風力タービン、電気自動車などの分野で、既に世界のリーダーであるため、短期から中期的には、こうした措置は中国企業にほとんど影響を及ぼさないだろう。

長期的には、中国企業もこうした規制から恩恵を受ける可能性がある。世界最大の市場を奪われ、アメリカ企業は収益が減り、研究開発予算の削減を余儀なくされるだろう。寛大な公的補助金の支援を受けて、中国企業は研究を倍増させ、次世代のクリーンテクノロジー機器の開発で米国企業を追い越すことができるだろう。加えて、アメリカのクリーンテクノロジー削減のシナリオは、中国が将来のクリーンテクノロジー製品の世界基準に影響を与えるのに役立ち、最終的には中国政府の全面的な勝利につながるだろう。

2016年の選挙集会で、トランプは「私は中国を愛している」と高らかに述べた。これが真実であるかどうかに関係なく、中国政府はトランプの第二期大統領就任について、一見予想よりも高く評価している可能性が高い。貿易、制裁、金融インフラ、重要原材料へのアクセス、輸出規制などの主要な経済分野において、トランプ2.0シナリオは中国の長期的利益に十分に影響を及ぼす可能性がある。

もちろん、経済学以外にも考慮すべき領域はある。しかし、中国にとってもう1つの重要な問題である台湾の防衛にはあまり熱心ではないというトランプの最近の発言も中国政府を喜ばせるだろう。中国から見ると、2024年11月のトランプの勝利は、それによって引き起こされる混乱、分断、そしてアメリカの威信への打撃から利益を得られる魅力的な機会に見える可能性が非常に高い。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか』がある。ツイッターアカウント:@AgatheDemarais

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月15日に、副島隆彦先生の最新刊『中国は嫌々(いやいや)ながら世界覇権を握る』が発売になります。

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中国は嫌々ながら世界覇権を握る

 以下にまえがき、目次、あとがきを掲載します。是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

まえがき 中国人がいま本気で考えていること  副島隆彦(そえじまたかひこ)

この本の書名は「中国は嫌々(イヤイヤ)ながら世界覇権を握る」である。なぜ中国が「嫌々ながら世界覇権を握る」のか。そのことを説明することから始める。
大きく言うと、ウクライナ戦争はロシアが勝つ。今のような戦争状態はもう続かない。何らかの形の停戦がある。停戦が破られてもどうせ膠着(こうちゃく)状態になる。
世界が第3次世界大戦に入り、核戦争の可能性もある。この問題については、後ろのほうで書く。

ヘンリー・キッシンジャー博士がちょうど100歳で死んだ(11月29日)。この人が世界皇帝であったデイヴィッド・ロックフェラーの代理だった。
キッシンジャーは、2023年7月19日に北京へ向かい、このあと更迭された李尚福(りしょうふく)国防部長と会っている。

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(新聞記事貼り付けはじめ)

「100歳キッシンジャー氏、軍同士の対話復活探る 中国国防相と会談」

 米国のキッシンジャー元国務長官が中国を訪問し、7月19日に北京で李尚福国務委員兼国防相と会談した。李氏が米国の制裁対象となっていることが、米中が国防分野での対話を再開できない大きな要因となっているが、中国側は米国の対応次第で再開の意図があることを改めて示した。

 キッシンジャー氏はニクソン米政権の大統領補佐官として極秘訪中し、米中の国交正常化に道筋を付けた立役者。100歳となったキッシンジャー氏は現在の米中関係の緊張に危機感を持っており、2019年に習近平国家主席とも会談するなどいまでも中国側からの信頼は厚い。(朝日新聞 2023年7月18日)

 (新聞記事貼り付け終わり)

キッシンジャー博士が死んでも、当分の間(あいだ)は核戦争は起きない。なぜなら、核戦争を食いとめるためにヘンリー・キッシンジャーという大御所が存在したからだ。この構造はすぐには変わらない。だから大丈夫である。

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『中国は嫌々(いやいや)ながら世界覇権を握る』 目次

まえがき 中国人がいま本気で考えていること ──3

第1章  中国が嫌々ながら世界覇権を握る理由

目の前に迫るアメリカの没落 ──16
アメリカはもはや核ミサイルを打てない ──21
世界覇権が「棚からぼたもち」で中国のものになる ──26
「賃労働(ちんろうどう)と資本の非和解的(ひわかいてき)対立」という中国の大問題 ──30
人権は平等だが、個人の能力は平等ではない ──36
李克強の死 ──44
アメリカに通じた大物たちの〝落馬〟 ──48
中国の不動産価格は落ち着いていく ──49
民衆にものすごく遠慮している中国共産党 ──53
統一教会に対して空とぼけている連中 ──57

第2章  中国はマルクス主義と資本主義を乗り越える

中国は自分たち自身の過去の大失敗を恥じている ──68
鄧小平と Y=C+I ──78
ジャック・マーを潰すな ──85
中国が気づいた有能な資本家の大切さ ──90
中国版のオリガルヒを絶対に潰さない ──97
中国は他国に攻め入るどころではない ──100
イデアとロゴス ──102
賃労働と資本 ──107
「賃労働と資本の非和解的対立」について ──111

第3章  中国と中東、グローバルサウスの動き

ハマスを作ったのはCIAである ──120
パレスチナの若者はハマスに騙されて死んだ ──126
中国が成し遂げたイランとサウジの歴史的仲直り ──128
もうこれ以上アメリカに騙されない中東諸国 ──134
追い詰められているのはディープステイト ──136
一帯一路、発足10年で強まるヨーロッパとの関係 ──138
グローバルサウスの結集 ──154
進むアメリカの国家分裂 ──159

第4章  台湾は静かに中国の一部となっていく

ムーニーの勢力にヘイコラする日本 ──164
何よりも台湾人は中国人である ──170
台湾軍幹部の9割は退役後、中国に渡る ──175
基地の島、金門島の知られざる現実 ──182
ラーム・エマニュエルという戦争の火付け役 ──184

第5章  中国経済が崩壊するという大ウソ

ファーウェイ Mate60pro の衝撃 ──190
中国の勝利に終わった半導体戦争 ──195
半導体製造にまで進出するSBI ──202
アメリカが80年代に叩き潰した日本の半導体産業の真実 ──205
日本人が作った革新的な技術 ──208
量子コンピュータは東アジア人しか作れない ──212
アメリカが敗れ去った量子暗号通信技術戦争 ──213
EVという幻想 ── 218
TSMCの奪い合いこそが「台湾有事」の本態 ──221
世界を牛耳る通信屋たちの最大の弱点 ──225

あとがき ──228

=====

あとがき

 私が、この本で描きたかったことは。中国がもうすぐ次の世界支配国になる。アメリカ帝国は早晩(そうばん)崩(くず)れ落ちる。そのとき中国人は、どういう新(しん)思想で世界経営(けいえい)をするか、という課題だ。

 今の中国人は、総体としてもの凄(すご)く頭がいい。文化大革命の大破壊のあとの44年間を、ずっと苦労して這(は)い上がって来た。このことが私は分かる。中国(人)は、もうイギリス(大英帝国。ナポレオンを打ち倒した1815年からの100年間)と、アメリカ帝国(1914年からの100年間)の2つの世界覇権国(ヘジェモニック・ステイト)がやった、ヨーロッパ白人文明(ぶんめい)(実は帝国が文明も作るのである)の救済(サルベーション)と博愛思想[フラターニティ](代表キリスト教) の偽善(ぎぜん)と騙(だま)しによる世界管理はやらない。棚(たな)からぼた餅(もち)が落ちてくる。嫌々(いやいや)ながらの世界覇権国だ。

 中国は、カール・マルクスが発見した「賃労働(者)[ウエイジレイバラー]と資本(家)[カピタリスト]の非和解的対立」を何とか、180年ぶりに部分的に乗り越える新(しん)思想(イデー)で、世界を良導(りょうどう)しようと思っている。それを見つけることができるか。全てはここに掛(かか)っている。私自身の1973年(大学入学、20歳)以来の丁度50年間のマルクス思想との浮沈(ふちん)、泥濘(でいねい)でもある。

 中国は、もう核戦争と第3次世界大戦の脅威さえも乗り越えた。そんなものは怖くない、という段階まで一気に到達した。私は誰よりも早くこのことに気づいた。

 何という大ボラ吹きの大言壮語(たいげんそうご)を、と思われることはすでに計算のうちだ。先へ先へ、未来へ未来へと、予言(プレディクション)で突き進まなければ、知識・思想・言論を職業(生業[なりわい]) としてやっていることの意味がない。すでに私には、村はずれの気違い(village idiot、ヴィレッジ・イデオット)の評価がある。私だけは他のどんな知識人たちよりも、大きな言論の自由(フリーダム・オブ・エクスプレッション) を、この国で保障されている。しかも、出版ビジネス(商業出版物) としての信用の枠にもきちんと収まっている。

 この本を急速に書き上げるために、ビジネス社編集部の大森勇輝氏の優れた時代感覚に

大いに助けられた。記して感謝します。

2023年11月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

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古村治彦です。

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官・元国家安全保障問題担当大統領補佐官が100歳で亡くなった。彼が創設したコンサルティング会社キッシンジャー・アソシエイツが発表した。キッシンジャーについては、このブログでも特に多くご紹介してきた。このページの右側にある、「記事検索」の欄に「キッシンジャー」と入れてもらうと、キッシンジャーに関する記事がたくさん表示される。一番下まで行くと、「次の5件」という表示が出るので、それを押すと、次々と表示されるので、是非お試しいただきたい。

 私は2023年5月に長文の「キッシンジャー論」を翻訳し、このブログでご紹介した。以下にそのリンクを貼るので、「記事検索」と併せてご覧いただきたい。

(1)「同意しないことに同意する」というところから始めるキッシンジャーのリアリズム的な外交政策の真髄(第1回・全3回) 20230501

http://suinikki.blog.jp/archives/87343779.html

(2)「同意しないことに同意する」というところから始めるキッシンジャーのリアリズム的な外交政策の真髄(第2回・全3回) 20230502

http://suinikki.blog.jp/archives/87343787.html

(3)「同意しないことに同意する」というところから始めるキッシンジャーのリアリズム的な外交政策の真髄(第3回・全3回) 20230503

http://suinikki.blog.jp/archives/87343791.html  
 キッシンジャーについては1960年代からアメリカの安全保障。外交政策に関わり、様々な業績を残したので、それを簡単にまとめることは難しい。上記記事のようにどうしても長くなる。キッシンジャーについては近年であれば、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と頻繁に会談を持っていた。両首脳はキッシンジャーを厚遇した。キッシンジャーは非西洋諸国の中心的な2人の首脳に対して、様々な指南を行い、その最大のものはアメリカとは戦争してくれるな、ということだった。
 キッシンジャーはドナルド・トランプ大統領に対しても外交的な指南を行った。大統領選挙期間中、トランプは、娘イヴァンカの夫ジャレッド・クシュナーを介して、キッシンジャーとコンタクトを取り、キッシンジャーのニューヨークの私邸を訪問した。大統領当選後も、キッシンジャーはホワイトハウスを訪問している。トランプ政権下では、アメリカは大きな戦争を起こさず、巻き込まれることもなかった。バイデン政権下では、ウクライナ戦争とパレスティナ紛争が起きた。
 キッシンジャーについては毀誉褒貶がつきまとい、厳しい批判がある。しかし、彼の業績を今一度振り返り、リアリズムに基づいた外交政策とは何かについて、私たちはよくよく考える必要がある。
 キッシンジャー亡き世界とは、日本の戦前に例えるならば、最後の元老西園寺公望が亡くなった後の日本のようなことになるかもしれない。アメリカ、そして世界において、ブレーキ役がいなくなり、世論を含めて、強硬論が更に強くなり、戦争の可能性が高まるということも考えられる。しかし、少なくとも、習近平とプーティンがいる限りは、アメリカ、中国、ロシアが直接戦うということは起きないだろう。そのことはキッシンジャーの置き土産、遺産ということになるだろう。
(貼り付けはじめ)

アメリカの外交官ヘンリー・キッシンジャーが100歳で死去(American diplomat Henry Kissinger dies at 100

ミランダ・ナッザリオ筆

2023年11月29日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/4334541-american-diplomat-henry-kissinger-dies-at-100/

元外交官・元大統領補佐官のヘンリー・キッシンジャーが水曜日、100歳で死去した。彼のコンサルティング会社が水曜日夜に発表した。

キッシンジャー・アソシエイツの声明によると、キッシンジャーはコネティカット州にある自宅で死去した。

キッシンジャーは、国家安全保障分野と外交政策分野で幅広いキャリアで知られた。1969年から1975年にかけて、リチャード・ニクソン大統領の下で、国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。補佐官在任中に、ニクソンはキッシンジャーを第56代国務長官に指名し、国務長官と国家安全保障問題担当大統領補佐官の両方を同時に務めた最初の人物となった。

ジェラルド・フォード大統領の下で、国務長官に留任したが、フォード大統領は国家安全保障問題担当大統領補佐官からは退任させた。

キッシンジャーは1923年生まれ、当時はハインツ・アルフレード・キッシンジャーという名前だった。彼は人生の初期をドイツで過ごした。彼の家族はユダヤ系で、ナチスが権力を掌握した後、アメリカに移民した。アメリカに移民後、キッシンジャーは名前をヘンリーに改めた。

第二次世界大戦中、ドイツ語通訳としてアメリカ陸軍に入隊した。戦後、キッシンジャーはハーヴァード大学に入学し、1950年に学士号を取得し、1954年に博士号を取得した。その後は、アイヴィーリーグに残り、ハーヴァード大学政治学部教授、国際問題研究センター副所長を歴任した。

彼のキャリアは1960年代までに政府の仕事に移行し、ニクソンに国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命されるまで、いくつかの政府機関でコンサルタントを務めた。

国務省に入ったのは、エジプトがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けて、1973年に起きたアラブ・イスラエル戦争が勃発する数週間前のことだった。キッシンジャーは国務省で指揮を執り、イスラエルが米国からの物資を確実に受け取れるよう支援し、その後、イスラエルとエジプト、後にシリアとイスラエル間の交渉を仲介するため、中東地域を行き来する「シャトル外交(shuttle diplomacy)」を開始し、何度も中東を訪問した。

国務長官を退任した後も、キッシンジャーは外交問題に関するアドヴァイザーを務め、後に「中央アメリカに関する全米超党派委員会(National Bipartisan Commission on Central America)」の委員長を務めた。その後、ロナルド・レーガン元大統領とジョージ・HW・ブッシュ(父)元大統領の下で大統領対外情報・諜報諮問委員会(President’s Foreign Intelligence Advisory Board)の委員を務めた。

=====

●「キッシンジャー元米国務長官が100歳で死去、米中国交樹立の立役者」

11/30() 10:49配信 ブルームバーグ

https://news.yahoo.co.jp/articles/53d6bd8d43b33168aecaa2d6d2eec8952d74fd42

(ブルームバーグ): ニクソン、フォード米政権で国務長官を務め、1970年代の米外交政策決定で重要な役割を果たしたキッシンジャー元米国務長官が、米コネティカット州の自宅で死去した。100歳だった。元国務長官の関係者が明らかにした。

キッシンジャー氏は大統領補佐官として、72年のニクソン大統領による電撃的な中国訪問を実現させ、79年の米中の国交樹立につながる土台を築いた。

冷戦下での旧ソ連とのデタント(緊張緩和)や戦略兵器制限条約の実現に貢献したことで歴史に名を残す一方、ベトナムとカンボジアに対する大規模な空爆を支持したことなどで批判も受けた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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