古村治彦です。
5月に米中首脳会談、中露首脳会談が北京で実施された。その後、習近平中国国家主席の7年ぶりの北朝鮮訪問、平壌(ピョンヤン)での北朝鮮の最高指導者である金正恩委員長との首脳会談が実施されるという報道が出た。その後、本日8日から習主席による訪朝が実施されると発表された。習近平訪朝の報道が出た後、中国が北朝鮮を自分の陣営、影響圏にとどめておくことを重要視しているという分析が多く出た。それについてはこのブログでもすでにご紹介した。北朝鮮は国際政治の中で、独自の立場を築きつつある。ロシアにはウクライナ戦争への派兵と戦死傷者を出すということで、朝露関係は「血の盟約」に格上げとなった。ロシアからは石油や技術支援を得ることが可能になった。中国への依存度を減らすことに成功した。中国としてこれは困る。北朝鮮が行動の自由を得て勝手な行動を行うことは、予測不可能性が高まり、東アジア地域の安全環境にとってマイナスだ。先日の中露首脳会談で、中国の習近平国家主席はロシアのウラジーミル・プーティン大統領に、北朝鮮との関係について一種の「警告」を発しただろうと私は考えている。
重要なことは、中朝首脳会談は、習近平国家主席が北朝鮮を訪問する形になるということだ。米中首脳会談、中露首脳会談はドナルド・トランプ大統領、ウラジーミル・プーティン大統領が北京を訪問するという形になった。それに対して、習近平国家主席が北朝鮮までわざわざ足を運ぶという形を取ることで、北朝鮮側の字損信を満足させるということになる。しかし、その代償としては、北朝鮮に対しては厳しい「警告」もあるだろうと私は考えている。もちろん、自分の陣営にとどめるために、支援の約束もするだろうが、「誰が北朝鮮をこれまで支えてきて、国家として存続することを助けてきたのか」ということを金正恩委員長にしっかりと理解させることが最優先事項となるだろう。
中国が見放してしまえば、北朝鮮は国家として存続することができない、もちろんそんなことになれば、北朝鮮は自暴自棄になって何をするか分からないのではあるが、最終的には中国人民解放軍が北朝鮮の人民を「解放」するために国境を越えて侵攻し、現体制の転換、金王朝の打倒を強引に行うということも示唆するだろう。そういうことはしたくないから、核兵器保有までは認めてやるが、それ以上、暴れるようなことはするな、分かっているなということを確認するための中朝首脳会談となるだろう。金正恩委員長も馬鹿ではない。外交に関して軌道修正を行うということになるだろう。
(貼り付けはじめ)
中国は北朝鮮を自分の陣営にとどめる必要がある(China Needs North
Korea on Its Side)
-もう筋実施されると見られる習近平国家主席の平壌訪問は7年ぶりとなる。
デン・イーウェン筆
2026年5月27日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/05/27/xi-jinping-kim-jong-un-china-north-korea-visit/
北京の天安門広場で、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩委員長が並んで歩いている(2025年9月3日)
韓国メディアは最近、中国の警備・儀典担当者が既に平壌入りして、準備を進めていると報じ、習近平国家主席が5月下旬か6月上旬に北朝鮮を訪問する可能性があると伝えた。
中国は訪問を正式に発表していないが、今回の訪問は長らく待たれており、習主席の視点からすれば必要不可欠だ。北京と平壌は、表向きは緊密な関係にあるものの、水面下では両国関係はしばしば緊張状態にある。中国は北朝鮮の核保有国としての地位を完全には認めておらず、北朝鮮における影響力をロシアに奪われることを懸念している。
習主席が最後に平壌を公式訪問したのは2019年6月で、7年近く前のことだ。パンデミックによる3年間を除いても、これは長い空白期間であり、その間、習主席は韓国を含む多くの国を訪問している。キューバやヴェネズエラの首脳をはじめ、ここ数週間でドナルド・トランプ米大統領やウラジーミル・プーティン露大統領など、多くの外国首脳が中国を訪問している。平壌にもプーティン大統領やヴェトナムのト・ラム大統領など、多くの賓客が訪れている。
外交儀礼の空白自体が政治的なシグナルとなる。そして、北朝鮮が世界から極めて閉鎖的であるため、中国と北朝鮮の外交は本質的に異例である。中朝両国は共産主義国家であり、相互支援の歴史を持ち、北朝鮮は中国にとって唯一の正式な条約同盟国であるものの、「血で結ばれた(forged in blood)」友情は見た目以上に脆い(fragile)。
習近平国家主席の訪朝が長らく遅れていることは、北朝鮮が事実上の核保有国(a de
facto nuclear-armed state)となったという現実を北京がまだ完全に受け入れていないことを反映しており、これが中朝関係の深化を阻む大きな障害となっている。
北朝鮮は既に核兵器を保有しており、一方、中国の長年の外交政策は朝鮮半島の非核化(the
denuclearization of the Korean Peninsula)である。北朝鮮の金正恩委員長にとって、核兵器は体制の安全保障を究極的に保証するものであり、小国としての運命を免れ、アメリカと交渉するための唯一の切り札(nuclear weapons are the ultimate guarantee of regime security and
North Korea’s only bargaining chip to escape the fate of a small state and
negotiate with the United States)である。金委員長に核兵器放棄を求めることは、体制の安全保障を放棄させることに等しい。北京にとって、北朝鮮を核保有国として公然と認めることは、中国が長年堅持してきた核不拡散の立場を損ない、韓国、日本、その他諸国からの連鎖反応を引き起こす可能性がある。
北京はかつてアメリカと協力して北朝鮮に核開発計画の放棄を迫ったが、これは中朝両国関係を悪化させた。その結果、中朝関係は長年にわたり極めて悪化した。最終的に、北京は北朝鮮の核兵器保有を暗黙のうちに容認せざるを得なくなった。つまり、朝鮮半島の非核化を原則として強調し続けながらも、実際には北朝鮮が核保有国であることを認めざるを得なかった。
中国の外交用語には依然として「朝鮮半島の非核化」という言葉が使われているが、もはや中朝関係の中心的なテーマではない。北京は、朝鮮半島の平和と安定、政治的解決、アメリカの軍事的抑止力への反対、そして北朝鮮の正当な安全保障上の懸念への尊重をより重視するようになっている。この変化は重要である。これは、北京が平壌との関係を重視し、米日韓安全保障同盟への対抗を非核化という目標よりも優先させていることを示している。
習近平国家主席の訪朝は、新たな協議の機会となる。北京は、北朝鮮の核問題を中国と北朝鮮の首脳レヴェルの交流を阻害する要因としてこれ以上容認できないと認識したのかもしれない。中朝両国関係は、北朝鮮の事実上の核保有という現状を踏まえて再構築される必要がある。
習主席の訪朝はまた、中国が北朝鮮を自国の戦略的緩衝システム(its own
surrounding strategic buffer system)に再び組み込むことを意味するだろう。現在、日米韓の安全保障協力が深化し、日中関係が極めて悪化している状況下で、北朝鮮の中国にとっての戦略的価値は高まっている。核武装した北朝鮮は、もちろん中国にとっても潜在的な脅威ではあるが、日本にとってはより差し迫った脅威であり、北京にとっては切り札となる。
習近平はプーティン大統領のことも念頭に置いている。金正恩がモスクワに接近したのは、中国をロシアに取って代わらせたいからではなく、北朝鮮の安全保障を保証してくれる後ろ盾が必要だからだ。プーティン大統領はまさにその支援を提供する用意がある。しかし、ロシアが北朝鮮に提供できるのは軍事・安全保障面での支援だけであり、1980年代から1990年代にかけて中国が追求し、中国当局が長年北朝鮮に受け入れるよう働きかけてきたような、完全な発展の道筋を示すことはできない。
中国が北朝鮮との距離を保ち続ければ、北朝鮮はますますロシアに接近し、最終的には朝鮮半島における支配的な地位を失うことになるだろう。こうした現実を踏まえ、中国は習近平の訪問を利用して、経済的・安全保障上のインセンティヴを提供することで、北朝鮮を北京主導の軌道に引き戻そうとするだろう。
さらに、習近平の訪問は、豆満江河口と羅津・先峰経済特区へのアクセスを開放し、中国東北部の経済を活性化させることも目的としている。かつて中国の工業地帯として栄えたものの、長らく停滞状態に陥っている中国東北部の復興は、長年にわたり議論されてきたものの、いまだに本格的に始動していない。
人口減少や制度の停滞など、その理由は多岐にわたるが、周辺地域との関係も無視できない。中国東北部は北朝鮮と国境を接しており、北朝鮮の長期にわたる閉鎖政策が、真の意味での国境を越えた交流や貿易の機会を阻んできた。もし中朝関係が改善し、北朝鮮が限定的な形で開放政策を実施し、豆満江の河口が開放され、羅津港と羅先経済特区が再び活発化すれば、中国東北部は朝鮮半島、ロシア極東、そして日本海を結ぶ新たな繋がりを築き、新たな未来を切り開く可能性を秘めている。プーティン大統領の最近の中国訪問において、習近平国家主席との共同声明で再び豆満江問題と北朝鮮との協議の必要性が言及されたことは、この問題が依然として完全には解決されていないことを示している。
金正恩委員長には、習主席の訪問を歓迎する独自の理由がある。プーティン大統領は既に国内における王朝的権威(dynastic authority)を固めているものの、国外からの承認も必要としている。北朝鮮訪問は既に安全保障面で大きな支持を得た。しかし、中国の重要性は異なる。今日のロシアは、戦争と制裁に苦しみ、国力が衰退している大国である。一方、中国は世界第2位の強国である。
北朝鮮が真に発展を望み、政権の安定を維持するためには、依然として大国である中国の援助と支援に頼らざるを得ない。習近平国家主席の訪朝延期が続くということは、中朝関係がそれほど強固ではなく、金正恩の個人的権威が習主席の全面的な支持を得ていないことを意味する。したがって、金正恩委員長は習主席を盛大に歓迎することで、自身の権威にさらなる正当性を加える必要がある。
そして、北朝鮮が将来的に門戸を開放し、国際社会に復帰したいのであれば、孤立国家(a
pariah state)の瀬戸際に立たされているモスクワではなく、北京を必要とする。特に、金正恩委員長がアメリカとのルートを開設し、トランプ大統領との首脳会談を再び開催し、アメリカの制裁の一部解除を実現したいのであれば、北京の仲介と安全保障の提供が必要となるだろう。
習主席の北朝鮮訪問は、金正恩委員長が中国を迂回してトランプ大統領と直接接触し、将来のトランプ大統領との首脳会談から中国が排除されることを北京が恐れていることの表れだと指摘する人もいる。習近平国家主席が北朝鮮を訪問すれば、トランプ大統領へのメッセージを伝える可能性は確かにある。しかし、北京が将来の米朝交渉から中国が排除されることを恐れているというのは誇張である。北朝鮮はそのようなことはしないし、そもそもできない。金正恩委員長とトランプ大統領の過去2回の会談では、中国は排除されなかった。むしろ、金委員長はシンガポールでトランプ大統領と会談する前に、まず北京で習主席と会談した。
今日、金委員長が北京を迂回して単独で行動することは、さらに困難になっている。北朝鮮はアメリカを信用しておらず、金委員長もトランプ大統領を信用していない。2019年のハノイ首脳会談の失敗は、金委員長にとって痛恨の出来事であり、教訓となった。彼はすでにトランプ大統領の土壇場での要求や突然の方針転換を経験している。ヴェネズエラやイラン、そしておそらくキューバでの経験を踏まえれば、小国は大国の支援、核兵器、あるいはその両方を必要とするという確信をさらに強めるだろう。彼がアメリカとトランプ大統領を信用しているだろうか?
習近平国家主席の訪朝は、核問題をめぐる中朝両国間の対立が完全に解消されることを意味するものではない。しかし、両国は現実に基づいた、より現実的な二国間関係を構築するだろう。中朝両国は伝統的な友好関係を引き続き重視する。北朝鮮は引き続き中国の保護と支援(China’s protection and assistance)を必要とし、北京は引き続き北朝鮮を自国の交渉材料(its own bargaining chip)として必要とする。それぞれが必要なものを得ることで、相互の実用的な関係(a relationship of mutual pragmatism)は長く続く可能性がある。
※デン・イーウェン:中国の作家・学者
(貼り付け終わり)
(終わり)


シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』













