古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:エマニュエル・マクロン

 古村治彦です。

 ヨーロッパは2度の世界大戦の舞台となり、その反省から二度と域内で戦争を行さないという決意の下で、経済協力から政治統合、安全保障協力という道筋をたどり、ヨーロッパ連合と共通通貨ユーロまで生み出した。ヨーロッパで戦争が起きるということを想像することは難しくなっている。

 ヨーロッパの安全にとって重要なのはドイツの動向である。19世紀からドイツ問題(Germann Question)という課題がある。それは、「統一された強力なドイツがヨーロッパ全体の安全環境を不安定化させるのでそれ以下に防ぐか」ということである。考えてみると、2度の大戦共に「主役」となったのはドイツである。もちろん、その他の大国(昔風に言えば列強、powers)も重要なプレイヤーであったが、統一ドイツが戦争の理由となったのは歯科なことだ。ドイツの隣にはフランスがある。フランスもまた列強であり、ヨーロッパの強国であり続けた。ドイツとフランスの関係が悪化することがヨーロッパの安全に大きな悪影響を与えるということは確かである。長年の「宿敵(nemesis)」と言うことができる。

 戦後のヨーロッパ史は、一面ではドイツとフランスの和解の歴史であった。両国の間で紛争の理由となった石炭と鉄鋼の共同管理のために1952年に、フランス・西ドイツ・イタリア・ベネルクス3国(ベルギー・オランダ・ルクセンブルク)ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(European Coal and Steel Community、ECSC)が発足した。これがヨーロッパ連合(EU)につながった。フランスとドイツは「恩讐を越えて」、「小異を捨てて大同につく」ということで協力関係を築いてきた。

 しかし、最近になって、その協力関係がうまくいっていないということがあるようだ。以下の記事に紹介されている。共同での戦闘機開発計画が破綻したのはその一例だ。1990年に、アメリカのシカゴ大学教授ジョン・J・ミアシャイマーは「バック・トゥ・ザ・フューチャー:冷戦後のヨーロッパにおける不安定性(Back to the Future: Instability in Europe After the Cold War)」という論文を発表した。1990年に当時の西ドイツと被害ドイツが統合することでドイツが再統一された。このことはお祝いムードを持って迎えられたが、ミアシャイマーは、そのようにうまくいかない、良いことばかりではないという主張を行った。

米ソ両両大国がヨーロッパから撤退することで、二極システム(bipolar system)から多極システム(multipolar system)に移行(復帰)することから不安定さが増す(以前のヨーロッパのようになる)、ヨーロッパ各国は相互に不信感を持ち軍拡競争に進む可能性がある(安全保障のディレンマ[Security Dilemma])、ナショナリズムの台頭が起きるなどの指摘を行った。論文の発表当時は、「過激な内容だ」という批判も起きたが、現状では予言的な部分もある論文となっている。仏独関係の悪化と不安定化はこの論文の通りとなっている。

 アメリカの撤退によってヨーロッパが過去に戻るということは不安定化が進むということになる。このヨーロッパの教訓から私たちは国際協調と不安定化に進む要因の排除について考えねばならない。その見本となるのが東南アジア諸国連合(ASEAN)である。ヨーロッパの様に統合に進まなくても地域内協力を進めることができ、それがいかに安定を生み出すかということを私たちは学び、東アジアにおいても実行するべきだと考える。

(貼り付けはじめ)

ヨーロッパは1952年の状態に逆戻りしている(Europe Is Back in 1952)

-フランスとドイツが再び軍事的なライヴァル関係に陥ったことはヨーロッパの他の国々にとって悪いニューズである。

キャロライン・デ・グロイター筆

2026年7月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/07/20/europe-germany-france-eu-1952/

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モンテネグロのティヴァトにあるポルト・モンテネグロで開催されたEU・西バルカン首脳会議の合間に行われた会談の前にドイツのフリードリヒ・メルツ首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が言葉を交わした(2026年6月5日)

私は最近、あるヨーロッパの外交関係の高官に、7月7日、8日にトルコのアンカラで開催されたNATO首脳会議から得た、最重要の教訓は何かと質問した。この人物は躊躇なく次のように答えた。「ヨーロッパ諸国の全首脳が、一部の者が足並みを乱したり(breaking ranks and bending over)、ドナルド・トランプの機嫌を取ろうと必死になったりすることなく、1つのグループとして行動した初めての機会だったことだ」。

これは、長年アメリカの軍事的保護に依存してきたヨーロッパ各国が、ついに自立に向けて態勢を整えつつあるかのように聞こえるかもしれない。しかし、この新たな結束(newfound unity)は、彼らが共同の決意を持って強力なヨーロッパ防衛に取り組む準備ができていることを意味するということではない。

ヨーロッパの中で最も環大西洋関係を重視してきた(trans-Atlantic-oriented)国々でさえ、アメリカがヨーロッパの防衛責任から徐々に手を引こうとしている現実を、ようやく受け入れ始めている段階にあると言える。しかし現時点では、ヨーロッパ各国は依然としてアメリカの防衛関連企業に大きく依存している。2024年にはアメリカ製の防衛関連製品に680億ドルを費やたが、これは2017年から2021年の平均支出額である110億ドルと比べると桁違いの数字だ。さらに悪いことに、ヨーロッパの二大経済大国であるドイツとフランスの間には大きな亀裂が生じている。ヨーロッパの防衛体制の要となるべき独仏間の信頼関係が、崩壊の危機に瀕している。

これはヨーロッパ全体にとっての問題となる。ヨーロッパ統合は1952年に「二度と戦争をしない(no more war)」をスローガンに掲げて始まった。当時、フランスと西ドイツ(およびイタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)は、自国の防衛産業について、国家を超越した権限の下に置いた。その唯一の目的は、再び世界大戦が起こることを不可能にすることだった。しかし、長い平和と数十年にわたる軍事軽視の時代を経て、ロシアからのハイブリッドな脅威や軍事的脅威に直面する中、かつて戦争の当事者であったヨーロッパ各国は再び自国の防衛産業への投資を始めている。ただし今回は共同で取り組むのではなく、単独で進める傾向が強まっている。ここ数カ月の間に、フランスとドイツの共同防衛プロジェクトの1つが大きな音と共に破綻し、他のプロジェクトも停滞している。

第一に、その破綻について取り上げる。ヨーロッパの防衛統合を象徴するプロジェクトとして構想された「将来戦闘航空システム(Future Combat Air System、FCAS)」は、各国間の産業競争を「仏独共同開発の戦闘機(a Franco-German fighter jet)」という共通の目標へと転換するヨーロッパの能力を象徴するものとなるはずだった。6月初旬に発表されたこの計画の失敗は、ヨーロッパにおいて産業の分断が再燃していることを浮き彫りにした。それは、共通の防衛イニシアティヴへの協力が最も必要とされているまさにその時に、協力を阻害する要因となっている。

スペインも参加していた将来戦闘航空システム計画が暗礁に乗り上げた主な理由は、主導的な役割を担う2つの企業が協力関係を築けなかったことにある。当初の主要契約企業であったフランスのダッソー社は主導権を握ることに固執し、パートナーであるドイツのエアバス・ディフェンス社には情報をほとんど共有しなかったと報じられている。エアバス社の幹部は、知的財産(intellectual property、IP)や特許に関する合意形成の難しさを指摘していた。

これは、産業ナショナリズムが防衛協力を損なった明確な事例だ。事態が収拾不能に陥った背景には、ヨーロッパにおいて防衛プロジェクトにおける役割分担や、ノウハウおよび知的財産から生じる将来的な利益(非軍事分野を含む)の配分に関する枠組みが存在しないという問題がある。明確なルールや規制がない状況では、最も力のある主体が全てを独占することになる。こうした事態は、かつて規制が不十分(あるいは不適切)だった銀行や製薬業界でも見られたことだ。

将来戦闘航空システム計画の破綻は、防衛産業における役割分担や知的財産の公正な配分に関するヨーロッパのルールが早急に必要であることを示している。れおは、ロシアの脅威やアメリカのヨーロッパからの撤退といった状況下で、各国や企業は防衛分野への投資を急ピッチで進め、共同プロジェクトを立ち上げているからだ。

例えば、フランス、ドイツ、イタリア、スペインは「ユーロドローン(Eurodrome)」の開発に取り組んでいる。また、複数の国々が「宇宙の盾(スペース・シールド、space shield)」の構築を進めており、ウクライナを支援したり、ウクライナと共同生産を行ったりしている。さらに今月には、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、ノルウェー、オランダ、スウェーデン、イギリス、ウクライナからなる「弾道ミサイル防衛連合(antiballistic coalition)」が、フランスの革命記念日の前日にパリで会合を開いた。この会合は、ウクライナの民間人を標的とするロシアの兵器を迎撃可能なミサイル防衛システムを生産するため、各国および各産業界の取り組みを調整することを目的としていた。7月14日には、ヨーロッパの決意を示すべく、ウクライナ軍を含む外国部隊がパリ市内を行進した。

ドイツのフリードリッヒ・メルツ首相もその式典に同席していた。しかし、1950年代のようにフランスとドイツが資源を出し合って兵器を共同購入・生産するのではなく、現在ではより小規模な国々がそうした動きを主導している。それらの国々はヨーロッパ連合(EU)からの資金援助を受け、共同調達を行っている。自国だけでは必要な兵器を生産できないため、共同プロジェクトこそが、最も低コストかつ効率的な選択肢となっている。

あらゆる事態が猛烈なスピードで動いている。動く金額も天文学的だ。ヨーロッパ各国は1990年代のベルリンの壁崩壊以降、国防費を削減してきたが、今やほぼゼロからの再出発を余儀なくされている。北大西洋条約機構(NATO)の最新の統計によれば、ヨーロッパの加盟国およびカナダにおける2025年の国防費は、2024年と比べて20%増加する見通しだ。こうした活発な動きは新たな機会をもたらす一方で、懸念されるリスクもある。それは、政府の支援を受けた巨大企業が他社を市場から締め出し、弱肉強食のジャングルのような状況に陥ってしまうことだ。

仏独共同の戦闘機開発計画が破綻したのはまさにこのためだ。ドイツとフランスには強力な兵器メーカーが存在するが、それらはヨーロッパのレヴェルでの協力を目指す政治指導者の決定を無視しているかのように振る舞っている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が将来戦闘航空システム(FCAS)を、ヨーロッパの新たな戦略的自律と主権を象徴する仏独共同生産のショーケースにしようとしていた一方で、フランスのダッソー社はドイツのパートナー企業をあらゆる面で排除し始めた。費用の半分を負担していたドイツ側は、激しい不満を持った。この問題は最高レヴェルの政治の場で幾度となく取り上げられたが、ついにメルツ独首相が我慢の限界に達し、6月に計画を白紙撤回する結果となった。スペイン側には事前の連絡さえなかった。

もしフランスとドイツが今後、防衛力を主に自国主導で再構築するようなことになれば、ヨーロッパは元の状態に戻ることになる(come full circle)。そもそも、各国の軍事力を統合し、アメリカの安全保障の傘と組み合わせることで、ヨーロッパ大陸は80年間にわたり平和を享受してきたのだ。もしヨーロッパ各国が80年ぶりに再び互いに戦争を始められるような状況になるのであれば、とるべき唯一の道は、各国の防衛産業を規制し、再び超国家的な権限の下に置くことであろう。

だからと言って、防衛を国単位で行えないということではない。適切に規制されたEU防衛市場において、各国が互いに兵器や装備品を発注・生産し、調達を調整(ソフトウェアの互換性がある兵器システムで相互に協力できるようにする)している限り、懸念すべきことはほとんどない。小規模な国々では、すでにこうした動きが広がっている。問題が生じるのは、ヨーロッパ全体を統括する基本計画が存在せず、その結果、ドイツがほぼドイツ国内の工場に、フランスがフランス国内の工場にのみ発注を行うような場合だ。

ドイツは将来戦闘航空システム計画の失敗から教訓を得たのだろうか? エアバス社のミヒャエル・シェルホルンが「ドイツの産業界に中心的な役割を担ってほしい」と発言したことは、そうではないことを示唆している。一部の人々は、ドイツが非ドイツ系企業と真のヨーロッパ・コンソーシアムを形成するような対応をとることを期待していた。彼らの考えでは、ドイツは産業ナショナリズム(industrial nationalism)の犠牲者となった経験がある以上、他国に対して同様のことを強いるのではなく、全ヨーロッパ規模での解決策を選ぶはずだと思われたからだ。

しかし、実際にはそうならなかった。ドイツはエアバス社を主導役とし、数社のドイツ系パートナー企業を従えた新たな戦闘機開発プログラム「ティーム・ジェネレーション6(Team Gen 6)」を立ち上げた。要するに、ドイツはダッソー社に対抗しうる「ナショナル・チャンピオン(national champion、自国を代表する有力企業)」を育成することで、報復に出ようとしているのかもしれない。

フランスとドイツの企業が共同所有するKNDS戦車プロジェクト(KNDS tank project)も順調とは言えない。ここでもドイツは共同所有のあり方に不満を抱き、独自の戦車開発に乗り出したと報じられている。新たな戦車コンソーシアムには他のヨーロッパ企業も参加しているが、ドイツ主導であり、フランス企業は排除されている。一方、海洋哨戒プログラムである「仏独海洋航空戦システム(Maritime Airborne Warfare System、MAWS)」もストップした。さらに宇宙・衛星プロジェクト(偵察や通信を担う最大1000基の衛星群を構築する計画)においても、ドイツは当初協力を予定していたフランスのパートナーを計画から外した。

ヨーロッパ統合の伝統的な推進役であるフランスとドイツが防衛プロジェクトを巡って対立し、時には報復的な動きさえ見せる中、今や他の国々には、そうした報復の連鎖を未然に防ぎ、この分野における業務分担や知的財産の扱いに関するヨーロッパ共通のルール作りを推進する役割が求められている。

ここで北ヨーロッパ諸国が役割を果たすかもしれない。世界的な地政学的危機の渦中にあり、バルト三国、ベネルクス諸国、ポーランド、そしてEU非加盟のノルウェーに囲まれたスウェーデン、デンマーク、フィンランドといった国々は、共同プロジェクトの必要性を痛感しており、ブリュッセル(EU中枢)において初めて声を上げ、主導権を握ろうとしている。特にスウェーデンは強固な防衛産業を擁しており、ベルリンのシンクタンクであるドイツ外交評議会で地政学経済プログラムを率いるシャヒン・ヴァレは、「ヨーロッパの防衛における調整役(aggregator)として台頭する可能性がある」と指摘している。ヴァレによれば、スウェーデンは「周辺に位置する重武装の中立国(well-armed neutral on the margins)」という立場からヨーロッパの表舞台へと移行しつつあり、フランスやドイツを含む複数の企業や国々と契約を結んでいる(ただし、フランスとドイツが揃って関与する案件ではない)。

北ヨーロッパの各小国は、ヨーロッパ防衛の「要衝(anchor)」となり得るだろうか? あるいは少なくとも、機能不全に陥った仏独の防衛連携に対する十分な対抗勢力となり得るのだろうか? そして、もしフランスやドイツで極右勢力が政権を握った場合、この機能不全はヨーロッパにとってどれほど深刻な事態を招く恐れがあるのだろうか?

多くの疑問が残されている。しかし、一つ確かなことがある。その答えは、ヨーロッパの人々が自らの近年の歴史から何かを学んだのか、それとも学ばなかったのかを、いずれ明らかになるだろう。

※キャロライン・デ・グロイター:『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニストであり、オランダの新聞『NRC』の欧州特派員兼コラムニストを務めている。現在はブリュッセル在住。Xアカウント:@CarolineGruyter

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は2022年2月24日の開戦から丸4年が過ぎようとしている。停戦の兆しは見えていない。戦線は膠着し、打開策は今のところない。アメリカのドナルド・トランプ大統領は自身が二期目の大統領になれば24時間以内に停戦させると豪語したが、1年が経過しても戦争は終わっていない。アメリカとヨーロッパ諸国、日本などの西側諸国はロシアに対して制裁を加え、ウクライナに支援を行っているが、屁のツッパリにもなっていない。ウクライナが本気で停戦に臨まない程度に助けながら、戦争を続けさせている。なんと残酷なことだろう。トランプ大統領はアメリカのウクライナ支援に批判的であったが、政権発足後は支援を続けている。

 こうした中で、ヨーロッパ諸国の中で、アメリカに交渉の仲介を任せていても埒が明かないので、直接自分たちでプーティン大統領と交渉しようという動きが出ている。アメリカは頼りにならないということだ。アメリカに任せていては自分たちもいつまでもお金を出し続けねばならない。それは馬鹿げたことである。

更に言えば、ヨーロッパ諸国はロシアと完全に切れている訳ではないということを以下の論稿で知り、呆れるばかりだ。ヨーロッパの多くの企業はロシアでビジネスを続けており、ロシアからの資源も買っているということだ。それでいて、表ではロシアを非難し、ウクライナを助けるとしているが、決して軍隊を送ったり、強力な武器を送ったりはしていない。表向きの言葉だけは立派で勇ましいが、ヨーロッパ諸国はロシアと完全に切れてしまえば、自分たちの経済にも影響が出ると懸念して、自分たちで抜け穴を作り、ロシアとの関係を継続している。日本企業に対してロシアでのビジネスを行うなという圧力をかけてきて、自分たちはビジネスを続けている。ヨーロッパ諸国の見かけだけは立派だが実際の汚さには呆れ果てるしかない。口だけ勇ましいだけの役立たずである。

 それでも、アメリカ型よりならないと気づくだけでもまだましである。日本はアメリカに従属し尽くしてそのようなことを考えつくことすらできない。そして、アメリカの奴隷を続けて、悦に入って喜んでいる。ヨーロッパはその点では日本よりは優れている。比べる基準が低すぎるのでk褒められてもうれしくないだろうが。

 戦争をここまで長引かせたことを反省し、一日でも早く平和と安定が戻すことはヨーロッパ諸国に課せられた義務であり、世界に対する責務である。アメリカが全く頼りにならない今、ヨーロッパが動くのは当然のことだ。

(貼り付けはじめ)

ヨーロッパはウラジーミル・プーティン大統領への依存の準備を進めつつある(Europe Is Getting Ready to Pivot to Putin)

-ヨーロッパの指導者たちはアメリカの圧力に直面しロシア大統領への働きかけを検討している。

アンシャル・ヴォ―ラ筆Anchal Vohra

2026年2月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/06/europe-russia-putin-trump-pivot-detente/

ヨーロッパの高官たちは『フォーリン・ポリシー』誌に対し、1月にスイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムに出席した際、アメリカ側とウクライナ和平交渉の現状について協議する時間があると考えていたと語った。しかし、実際には、グリーンランドをめぐるNATO加盟国との軍事衝突を回避することに集中せざるを得なかった。

その後、ヨーロッパではプランBの必要性が議論されている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領とイタリアのジョルジア・メローニ首相は共に、ヨーロッパが特に安全保障上不可欠な事項において、アメリカへの依存をゆっくりと、しかし確実に減らそうとする中で、ロシアとの直接交渉を追求している。

エマニュエル・マクロン大統領は2025年12月下旬、ヨーロッパはロシアと「適切に協議するための適切な枠組みを見つける(find the right framework to talk properly)」必要があると述べ、アメリカがロシアとウクライナの和平交渉を主導する中で欧州が後部座席に座っている現状は「理想的ではない(not ideal)」と述べた。

「ウラジーミル・プーティン大統領と話すことはまた有益になるだろう」とマクロンは付け加えた。メローニは、ロシア大統領と話す「時が来た(the time has come)」と考えていると述べた。メローニは、「ヨーロッパが現場の二者のうち一方とだけ話せば、貢献できる範囲が限られてしまうのではないかと懸念している」とも述べた。

主要問題に関するEU加盟27カ国の合意形成を担う欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は、1月27日、フォーリン・ポリシー誌を含む少数の記者団に対し、アメリカ主導の協議を阻害する可能性のある並行プロセスは支持しないものの、ヨーロッパは必要であればロシアと交渉する用意ができていなければならないと述べた。

ヨーロッパの戦略転換は、ドナルド・トランプ米大統領自身によって引き起こされた。トランプ大統領は、ヨーロッパの安全保障に直接関わる和平案を策定する中で、ヨーロッパを交渉の場から排除しただけではない。ロシア・ウクライナ戦争に関するトランプ大統領の28項目の和平提案は、ロシアを世界経済に再統合することを提案し、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙によると、西ヨーロッパへのロシアのエネルギー供給の流れを回復することを約束した。

専門家たちはフォーリン・ポリシー誌に対し、トランプ政権の最初の計画は、パリ、ブリュッセル、ベルリンとの事前協議なしに、ロシアがヨーロッパに保有する凍結資産をアメリカとロシアの企業に利益をもたらすプロジェクトに活用することをモスクワに約束していたようだと語った。

ヨーロッパは岐路に立たされている(at a crossroads)。ロシアとの取引をトランプに委ね、結果に確信を持てないままにするか、それとも現実的なアプローチを取り、関係がかつてないほど悪化しているに中ではあるが、プーティン大統領に直接働きかけるかだ。

ウクライナ侵攻とNATO領土への脅威となるドローンの継続的な使用の後、ロシアとの関係回復というアイデアをヨーロッパは快く思わないかもしれないが、いかなる取引においてもこれが避けられない結果となる可能性があることを認識している。そして、彼らは既にその可能性を示唆している。トランプ政権の28項目の計画に対する最初の反応として、ヨーロッパ諸国が支持する提案は、経済関係に関する条項を書き換え、ロシアは「徐々に(progressively)」世界経済に再統合されると述べている。

EUによる制裁で起きる経済的締め付けと、管轄権下にある数十億ドル規模のロシアの凍結資産は、ヨーロッパ諸国にとって重要な交渉材料となる。つまり、EUは独自の合意を締結できる。しかし、ヨーロッパ諸国は、段階的かつ限定的な救済措置、つまりロシアの行動改善に対する段階的な報酬を望んでいる。プーティン大統領との交渉でトランプ大統領が譲歩するような形での譲歩ではない。

貿易専門家たちは、EUが潜在的な合意において有利な条件を模索する一方で、多くのヨーロッパ諸国はロシアとの貿易関係を完全に断絶しておらず、公式発表と実際の経済政策の間に深刻な乖離が生じていると指摘している。

制裁を含む国際貿易法の遵守について企業や個人に助言を行うダルシャク・S・ドラキアは、フォーリン・ポリシー誌に対し、EUのこれまでの戦略は「離脱(exit)」というよりは「ロシアとのビジネス関係の一時停止(“more of a pause” in business relations with Russia)」を反映したものだと述べている。ドラキアは、交渉が加速するにつれ、「アメリカとヨーロッパのビジネス界は、貿易関係の再開に大きな期待を抱いている(there is a lot of hope in the business community in the U.S. and in Europe that trade ties can be resumed)」と付け加えた。

ロシアによるウクライナ侵攻にもかかわらず、数千ものヨーロッパ企業がロシアから撤退しなかった。その理由として、法的障壁、現地での雇用義務、そして利益率を挙げた。ロシアにおける外国企業を追跡するプロジェクト「リーヴ・ロシア(Leave Russia)」によると、2300社以上の外国企業が何らかの形でロシアに残ることを決定した一方、完全に撤退したのはわずか547社だった。EU加盟国の中では、ロシアに残ることを選択した企業、あるいはまだ完全に撤退していない企業の中で、ドイツ企業が最も多く、377社だった。一方、撤退したのはわずか83社だった。フランスはドイツに次いで、完全に撤退した企業はわずか39社だった。一方、147社は何らかの形で事業を継続している。イタリア企業は140社以上が現在もロシア国内で事業を継続しているが、完全に撤退したのはわずか8社だった。

キエフ経済大学の開発副部長であり、「リーヴ・ロシア」プロジェクトの責任者でもあるアンドリー・オノプリエンコは、フォーリン・ポリシー誌に対し、ロシアで依然として事業を展開している多くの企業は「評判や倫理上の懸念よりも経済の継続性を優先し、EUの制裁目標への政治的整合性よりも、契約、株主の利益、法的複雑さといった観点​​から意思決定を行っている」と述べた。

オノプリエンコは続けて、「この傾向は、商業的インセンティヴが、完全な撤退を求める政治的要請を上回り続けていることを示唆している」と述べた。

EUの限界は長らく露呈しており、既存の制裁措置に様々な例外を認め、ロシア企業への対応は遅々として進んでいない。本格的な戦争勃発以降、EUは19の制裁措置を打ち出してきたが、そのたびに対象国を増やし、圧力を強めてきたものの、完全には行き届いていない。

ドラキアは次のように述べた「ヨーロッパはロシアの銀行への制裁から始め、その後、エネルギー輸入への制裁を徐々に強化してきた。これは主に、全てを尽くすこと、そしてロシアをイランや北朝鮮のような完全な禁輸国にしないことが目的だった。政治的には見苦しいが、ロシアを孤立させてのけ者(a pariah state)にするのではなく、何らかの圧力をかけ続けられるよう、統合を維持することが狙いだった」。

しかし、EUが課した財政的圧力は抑止力としては不十分だった。おそらく、ヨーロッパがロシア経済に数十億ドルもの資金を注ぎ込み続けたためだろう。スウェーデンのマリア・マルマー・ステネルガルド外相によると、EUは2022年以降、ロシアに輸入代金として3110億ユーロ(3667億ドル)を支払い、同期間にウクライナに1870億ユーロ(2205億ドル)の援助を行っている。

EUはパイプラインによるガス輸入を大幅に削減したが、液化天然ガス(LNG)輸入は2021年の20%から翌年には15%に減少したものの、2024年には戦前の水準まで回復した。2025年には、EUは依然としてLNG総輸入量の13%をロシアから輸入していた。

EUは依然としてロシアからの肥料輸入に依存している。EU全体の肥料輸入量に占めるロシアの割合は2025年第3四半期に13%に低下したが、ロシアは依然としてEU第2位の供給国だ。また、ロシア製の鋼板は依然として現地子会社を通じてEU内で販売されている。

ウクラインスカ・プラウダ紙の調査によると、ロシアのオリガルヒであるウラジミール・リシンが主権を握るノボリペツク・スティール(NLMK)は、複数のヨーロッパ諸国に鋼板を輸出し続けている。ウクラインスカ・プラウダ紙は、ノボリペツク・スティール(NLMK)はロシアの防衛サプライチェインに深く関わっており、ドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイルの製造会社を含むロシアの防衛部門の少なくとも22の施設に供給していると報じた。ノボリペツク・スチールとリシンはいずれもEUから制裁を受けていない。

ロシア・リーヴキャンペーンのオノプリエンコは次のように述べた。「ノボリペツク・スティール(NLMK)はEU理事会の制裁基準を満たしていないと判断された可能性がある。大手鉄鋼メーカーはEU諸国に経済的な足跡を残しており、雇用やヨーロッパのサプライチェインへの相互影響なしに単純な制裁を課すことは困難だ」。

ノボリペツク・スティール(NLMK)の関係者は匿名を条件にフォーリン・ポリシー誌の取材に応じ、EUは子会社が操業するベルギーなどの国々で雇用喪失の可能性に対する圧力に晒されていると語った。

さらに、ロシアのエネルギー大手ルクオイルは、これまでのところEUによる全面的な禁輸措置や資産凍結を免れている。前述のドラキアは次のように述べた「アメリカはルクオイルに全面的な制裁を課しているが、EUはルクオイルの子会社1社のみに制裁を課しており、ルクオイル自身には制裁を課していない。多くのヨーロッパ諸国がエネルギー需要をルクオイルに依存しており、EUは構成国や加盟国に過度の圧力をかけたくないのかもしれない」。

ルクオイルとノボリペツク・スティール(NLMK)に関する質問に対し、EU報道官は制裁に関する協議は機密扱いであり、加盟国の裁量に委ねられていると述べた。「制裁は加盟27カ国が全会一致で採択したものであり、EUは公にコメントすることはできない」。

フランスはイギリスと共にいわゆる有志連合(a so-called coalition of the willing)を率いており、将来の和平を監視するためにウクライナに部隊を派遣する意向表明に署名した。しかし一方では、フランスのエネルギー企業EDFの子会社であるフラマトムは、ロシアの国営原子力企業ロスアトム傘下のTVELとの合弁事業を推進し、ドイツで核燃料棒を製造しようとしている。

EU報道官は、「現在、ロスアトムは制裁対象リストに含まれていない」と付け加えたが、EUはロスアトムを含むロシアの原子力関連製品・技術へのアクセスを制限している。EUのカヤ・カラス外相は2025年8月、ヨーロッパ委員会を代表して、ヨーロッパ議会において、「ヨーロッパ委員会は、ロシアからの原子力輸入を段階的に、秩序正しく、かつ安全な方法で廃止することに尽力している」と述べた。

要するに、ヨーロッパ諸国はロシアからの輸入を遮断しようと試みたものの、依然として依存状態が続いている。制裁措置を講じる際には意見が分かれ、代わりに地域経済を優先する特例措置を設けている。多くのヨーロッパ企業はモスクワとのつながりを維持し、関係を再開することを望んでいる。EUとロシアの関係は、ロシアがウクライナに侵攻する前の、より希望に満ちた時代、つまり貿易によってプーティン大統領の強権的な傾向を抑制できるとヨーロッパが信じていた時代に戻ることはないだろう。しかし現状では、ヨーロッパは既に地域の強権国家と繋がりを持っており、経済的な譲歩は近いうちに避けられないものとなるかもしれない。

アンシャル・ヴォーラ:ブリュッセルを拠点とするフォーリン・ポリシー誌コラムニスト。ヨーロッパ、中東、南アジアについて執筆している。『タイムズ・オブ・ロンドン』紙で中東を担当し、アルジャジーラ・イングリッシュとドイチェ・ヴェレのテレビ特派員も務めた。以前はベイルートとデリーを拠点に、20カ国以上の紛争や政治を報道してきた。Xアカウント:@anchalvohra

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 最近の中国をめぐる動きとして重要なのは、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の訪中とブラジルのルイス・イグナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領の訪中が続けて実施されたことだ。日本のメディアではフランスのマクロン大統領訪中が大きく取り上げられたが、より重要なのはブラジルのルラ大統領の訪中だ。フランスの世界経済に占める割合もそして外交における存在感も衰退し続けている。

マクロン大統領は訪中して中国の習近平国家主席と会談を持ち、何かしらの発言を行ったが、何の影響力もない。フランス国内の年金制度改悪問題でダメージを受けている。ウクライナ戦争に関して、フランスが独自の立場で動いているということはない。NATOの東方拡大(eastward expansion)の一環で、のこのこと間抜け面を晒して、アジア太平洋地域におっとり刀で出てこようとしているが、全てアメリカの「属国」としての動きでしかない。フランスは戦後、シャルル・ドゴール時代には独自路線を展開し、NATO(1948年結成)から脱退(1966年)したほどだったが、2009年のニコラ・サルコジ政権下で復帰している。

 ブラジルはBRICs、G20の一員として、経済、外交の面で存在感を増している。南米、南半球の主要国、リーダー国として、ブラジルは、独自の外交路線を展開している。欧米中心主義の国際体制の中で独自の動きを行おうと模索している。具体的には中国(そしてロシア)との関係強化とアフリカ諸国との連携である。アフリカ諸国との関係強化は南半球のネットワークの強化ということでもあり、かつ、旧宗主国としての西側諸国から自立した地域を目指すということだ。

このような動きが既に始まっている。それを象徴する言葉が「グローバル・サウス」である。また、学問においては、欧米中心の「世界史(world history)」に対抗する「グローバル・ヒストリー(global history)」が勃興している。欧米中心の政治学や経済学、社会学ではこの大きな転換(欧米近代体制500年からの転換)を分析し、理解することはどんどん難しくなっている。

 ウクライナ戦争は世界が既に第三次世界大戦状態に入っていることを示している。第二次世界大戦の際には、世界は連合諸国(Allied Powers、後にUnited Nations)と枢軸国(the Axis)に分かれた。この第三次世界大戦では、世界は大きく、西側諸国(the West)とそれ以外の国々(the Rest)に分かれている。グローバル・サウスはそれ以外の国々の側だ。この戦いでは、それ以外の国々が優勢となっている。これは日本のテレビや新聞といった主流メディアを見ていても分からないことだ。

(貼り付けはじめ)

ルラ大統領の北京訪問は何故マクロン大統領の訪問よりも重要なのか(Why Lula’s Visit to Beijing Matters More Than Macron’s)

-世界の経済の大きな動き、ダイナミズムはグローバル・サウス(global south)に移りつつある。

ハワード・W・フレンチ筆

2023年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/04/24/lula-brazil-china-xi-jinping-meeting-ukraine-france-macron-vassal/

今月初め、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が中国を訪問し、中国の習近平国家主席の世界観に同調し、アメリカに対して故意に控えめな姿勢をとり、台湾をめぐる大国の衝突の可能性について、フランスひいては欧州にとって限られた関心事であると発言した。マクロンに対して、ヨーロッパ大陸とアメリカにおいて、批判の声が一斉に上がった。また軽蔑するという声も上がった。

その数日後、ブラジルのルイス・イグナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領が北京を訪れ、マクロンと同様に中国の長年の立場を支持し、ブラジリアがワシントンから政治的に距離を置くことを公にするような発言をした。世界のマスコミは注目したが、それほど大きく取り上げなかった。

それぞれの訪問を個別に考えると、どちらの大統領の中国訪問も、過去との劇的な決別を示すものとは見なされることはないだろう。しかし、5年後、もしくは10年後に、どちらが記憶に残るかということになれば、それは南米の指導者の外交であり、はるかに若いフランスの指導者の外交ではないだろう。

今月、マクロン大統領の訪中がより注目を集めたのは、世界がどのように変化しているかという新鮮で冷静な考えよりも、国際メディアの根強い北大西洋バイアスを反映している。一見したところ、それぞれの国の外交には、他国よりも注目されるだけの根拠がある。GDPが約3兆ドルのフランスは、EUの中ではドイツに次ぐ第2位の経済大国であり、ブラジルGDPの約2倍である。

一方、ブラジルの人口は2億1400万人で、フランスの3倍以上、それだけで南米の人口の3分の1を占めている。人口が全てということはないが、将来を左右する可能性があるという点で、ブラジルに有利な議論はここから始まる。しかし、その前に、マクロンとフランスが、世界の中での重みを増し、アメリカとの距離を縮めようとする、一見、恒常的な試みに対して、懐疑的な理由を更に探る価値があると言えるだろう。

「永続的な(perennial)」という言葉の使用が示すように、世界の主要国に対するマクロンの外交には、本当に独創的なものはほとんど存在しない。歴史家の故トニー・ジャットが書いたように、フランスは1940年春、マース川を越えて押し寄せるドイツの戦車師団の前に軍隊が崩壊し、世界の主要国のクラブから追い出され、それ以来、その地位を回復することはなかった。しかし、そのために、この地位を失ったことに対するノスタルジーと悔しさに基づく外交政策が採用されてきたということもない。

第二次世界大戦がフランスに与えた精神的ショックは計り知れないものだ。伝統的に東ヨーロッパ地域に大きな影響力を持っていたフランスはその力を失った。フランス語は、もはや外交における固定の共通言語ではなくなった。戦勝国である連合諸国に対して、ドイツを解体するほどの懲罰を与えるよう説得することはできなかった。そして、経済的な生存と防衛から、国連安全保障理事会(the United Nations Security Council)という世界外交のトップテーブルへの座を含む、多くの事柄において、フランスが反射的に不信感を抱く「人種(race)」、すなわちアメリカとイギリスのアングロサクソン(the Anglo Saxons of the United States and Britain)の支持と寛容に依存してきた。

左右問わず、フランスの指導者たちはかつての高貴な地位を取り戻そうとして、世界に対して2つの時代遅れのアプローチに固執してきた。第一は、帝国の名残をできるだけ長くとどめることだった。その結果、パリはアルジェリアやインドシナで相次いで植民地支配が生み出す苦難に見舞われ、西洋諸国が帝国を支配することはもはや許されないという新しい時代の到来を受け入れる結果となった。それ以来、アフリカにおいて、フランスは、数年ごとに、軍事的関与と深い経済浸透による支配と干渉の古いパターンは過去のものであると宣言しているにもかかわらず、一連の新植民地関係を放棄することに苦労している。中国を訪問したマクロンは、フランスはアメリカの「属国」にはならないと強く宣言した。結果として、マクロンにとっては何とも厳しい皮肉が出現することになった。

もう一つのフランスの伝統的な戦術は、かつて「旧大陸(Old Continent)」を支配した現実政治(realpolitik)への関与である。これは、その時々の支配的な国に対して、完全に対抗しないまでも、常に緊張関係を保ちながらバランスをとること(balancing in tension with, if not completely against, the dominant power of the day)を意味する。この点で、フランスのアプローチが最も特徴的なのは、戦後、フランスがこのゲームを行った主役は、名目上の同盟国であるアメリカであるということだ。シャルル・ドゴールからフランソワ・ミッテラン、そして現在のマクロンに至るまで、そしてその間にフランスを率いたほとんどの人物を含めて、パリはまるで固定観念に従うかのように、ワシントンの最大のライヴァルと個別の理解や和解を得ようとしてきた。時が経つにつれ、これらにはソヴィエト連邦、毛沢東主席が率いた中国、そして今では経済とますます軍事的超大国である習主席の非常に異なる中国が含まれるようになった。

フランスが自国の問題に関して自律性と独立(autonomy and independence)を望むことを非難するのは間違いだ。しかし、パリはこれまで、その姿勢を持続的に評価させるのに必要な手段をほとんど持たず、ほとんど無能な妨害者として、時には単なる驕りや皮肉屋としてしか映らなかった。

中国に媚びることで、マクロンはエアバスのジェット機の大量発注に関する北京の承認を得るなど、予想通り多くの商業取引を実現したが、他に本当に達成したことはあるのだろうか? ロシアのウクライナ侵攻がヨーロッパの平和と安全への願望に対してどのように脅威を与えているのかを考えるよう習近平主席に求めたマクロン大統領は、北京が台湾への領有権を行使するために武器を使用する可能性に対する緊張が強く高まっている時に、台湾をバスに乗せようとしているように思われた。ヨーロッパでは、台湾をめぐる戦争のリスクが高まることへの懸念だけでなく、民主政体世界に対するシステム的な脅威としての中国への懸念も高まっている。恥ずかしいことに、先週、中国の駐仏大使が、かつてソ連に併合されていたEU加盟国であるバルト三国の主権を疑うような発言をしたのは、マクロンの訪中から1カ月も経っていない中で行われた。

更に言えば、アメリカからのヨーロッパの安全保障の独立を求めるマクロン大統領の新たな主張についてどう考えるべきだろうか? これも立派な考えではある。しかし、ワシントンがキエフに軍事的、外交的支援を提供する際に果たした指導的役割がなければ、ウクライナがロシアのウラジミール・プーティン大統領の侵略をなんとか持ちこたえられたことに疑いの余地はない。

ヨーロッパが自分たちの地域を守れるようになることは望ましいことかもしれない。だが、そのために必要な投資をする現実的な見込みは、当分の間、ほとんどないだろう。西ヨーロッパは、より高度な兵器はともかく、ウクライナが必要とする通常の砲弾を維持することさえできない。マクロンは、防衛と自決(defense and self-determination)に関するヨーロッパの良心(conscience of Europe)として真剣に受け止めるべきなのか、それとも彼の発言は、フランス人の貧しさと失われた関連性への郷愁の最新の表現に過ぎないのか、疑問が出てくる。

こうした背景の中で、ブラジルの最近の外交はもっと注目されるべきものである。確かに、南米のブラジルは、アメリカの外交政策から独立した実質的な行動できる余地を確保しようとする姿勢も以前から持っていた。国際基軸通貨(international reserve currency)としてのドルの存続を批判し、アルゼンチンとの通貨統合を模索し、さらにはウクライナ戦争をめぐって欧米諸国を批判するルラの取り組みは、単に象徴的な進歩主義者(iconoclastic progressive)の気まぐれと見るのではなく、最も重要な国家の1つから台頭しつつあるグローバル・サウスの1国として、その欲求を反映したものとして捉える必要がある。

何よりも、ブラジルの重要性が存在するのがこのグローバル・サウスという舞台だ。散らばっているように見えることもあるが、グローバル サウスは、世界の経済ダイナミズムの大部分が変化している場所だ。これは、世界の豊かな国のほとんど、および中国の悲惨な人口統計と、インド、インドネシア、ブラジル、メキシコなどの国々が世界のGDPランキングで力強く上昇するように設定されている世界経済生産のパターンの変化の中にみられる。そして、アメリカとイギリスを含む伝統的な西側の先進諸国は、現在から2050年の間に緩やかに衰退していくことになる。

ルラの発言は、欧米諸国にとって懸念を掻き立てるもの、更には脅威となると考えるのは間違いだ。マクロン大統領の言葉を借りれば、ブラジルは中国の属国になろうとは思っていない。ブラジルの可能性の多くは、自国の道を切り開くことにある。ドゴールはかつて、ブラジルを評して「未来の国(country of future)だ、これからもそうだ」と言ったという。しかし、多様な経済と豊富なソフトパワーを持つ多民族国家でありながら、対外侵略(extraterritorial conquest)の歴史もなく、他国を支配する野心もないブラジルに関しては、ようやくその時代が到来したということかもしれない。

アルゼンチンとの経済関係の強化が示すように、ブラジルは近隣諸国から恐れられてはいない。しかし、南半球のリーダーとしてのブラジルの将来の鍵を握っているのは、アフリカかもしれない。アフリカ大陸は、世界で最も人口が増加している地域であり、近年は堅調な経済成長を遂げているが、急増する若者たちが必要とする雇用の創出やインフラ整備を支援する新しいパートナーシップを切望している。中国は、これまでアフリカとの貿易や投資を独占してきた欧米諸国を抜き、アフリカにおける欧米諸国の代替的存在として急成長している。

ブラジルは、ルラ大統領の就任後、南大西洋の経済・外交パートナーシップを強化するための投資を開始したことは、別の記事で紹介した通りだ。ブラジルとアフリカは、大西洋横断奴隷貿易の悲劇的な歴史によって深く結ばれている。新しい強力な南北関係を率先して構築することで、ブラジルとアフリカは共に、より良い未来への扉を開くことができるだろう。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム専門大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作には『黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench
(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 

 『フィナンシャル・タイムズ』紙に、今回のフランス大統領選挙の結果についての分析記事が掲載されていました。学歴、所得、失業、反エスタブリッシュメント意識といった要素からの分析がなされていました。以下に箇条書きした内容の要約をご紹介します。

 

 マクロンに投票したのは、教育程度が高く、社会的に恵まれている人々であり、ルペンに投票したのは、不平不満、フラストレーションを抱えている人々でした。ルペンに投票した人々は、イギリスのEU離脱の国民投票で離脱に投票した人々と同じような特徴を示す人々でした。

 

 既存の保守政党である共和党のフィヨン、リベラル政党である社会党のアモンを支持した有権者のほとんどはマクロンへ投票し、極左のメランションの支持者も多くはマクロンに投票したようです。ルペンは第1回目の投票から支持を10%ほど伸ばしましたが、これはメランションの支持者から流れたと見られています。

 

 ルペンに投票した人々は、反EU、反ドイツ中心、反移民の考えを強く持っている人々ということになります。極右で危険なファシストと罵倒されるルペンが3割の支持を得たということは右傾化という言葉だけでは片づけられないと思います。

 

 近年の西洋諸国の政治状況を見てみると、左派・リベラル政党の退潮が顕著に見られます。イギリスの労働党、オランダの労働党、フランスの社会党、アメリカの民主党、日本の民進党(旧・民主党)といった、政権を担当したこともある諸政党は勢力を落としています。これは、グローバライゼーションが生み出すひずみや格差、マイナスに対処するための政策を打ち出すべきであったこれらの諸政党が、グローバライゼーションを促進する役割を果たしたり、人々の生活を苦しめるような内容の政策を最悪の対民で打ち出してしまったりで、人々の信任を失ったためと考えられます。

 

 こうした左派・リベラル政党の支持者の一部が更に左翼的な政党やポピュリズム(既存の政党や政治に対する怒り)へと移行しているのが現在の状況です。これは「右傾化」という言葉では片づけられないと考えます。低所得やマイノリティの有権者はリベラル政党の再分配政策を支持してきました。社会の高学歴化と都市化と中流化が進み、リベラル政党がこうした恩恵に浴する有権者からの支持を得ようとしてグローバライゼーションを受け入れ、促進する政策を選択するようになり、政権に就くことになりましたが、元は再分配重視の政党ですから、中途半端に終わり、かえって有権者の支持を失っているということが現在起きていることだと思います。

 

 日本で言えば、安倍政権は、本質的には戦前回帰、反米、反国際協調主義なのでしょうが、グローバライゼーションを促進すると主張しています。それであるならば、野党第一党である民進党は、グローバライゼーションによるひずみを解消する、格差を拡大させない、固定化させない政策を主張すべきで、それが旧・民主党が掲げた「国民の生活が第一」というスローガンであったと思います。そして、昨年、ドナルド・トランプは「アメリカ・ファースト!」を掲げて、下馬評を覆して当選しました。トランプが言う「アメリカ」は、普通の一般国民(昔、日本でもパンピー[一般ピープル]なんて言葉が使われましたが)のことですので、旧・民主党のスローガンは時代を先取りしていたということが言えます。

 

 フランスの大統領選挙は、中道マクロンの勝利ということになりましたが、彼がどんな「中道」であるのか、これからはっきりしてくるでしょう。

 

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French election results: Macron’s victory in charts(フランス大統領選挙の結果:マクロンの勝利をチャートで見る)

 

2017/5/8

Financial Times

https://www.ft.com/content/62d782d6-31a7-11e7-9555-23ef563ecf9a

 

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●総評

 

・マクロンは大差をつけて勝利した(66%対34%)。

・マクロンは、第一次投票で左派の候補だったメランションとアモンの支持した有権者の過半数の支持を受けた。中道右派のフィヨンの支持者の半数の支持も得た。

 

・ルペンの増加分はフィヨンを支持した有権者とメランションの支持者の10%の支持であった。

・メランションの支持者の3分の1は棄権したが、これが大勢に影響を与えることはなかった

 

●学歴

 

・学士号を持つ人々の数が多い地域ほど、マクロンへの投票が多かった。

・学歴が高い人が多く住む地域ではマクロンへの投票が多く、低い人々が住む地域ではルペンへの投票が多かった。

 

・このパターンは2016年のイギリスのEU離脱国民投票、アメリカの大統領選挙、オランダの総選挙でも見られた。学歴はポピュリズムに基づく投票行動を示す指標になる。学歴が低い人ほどポピュリズムを選び、学歴が高い人ほどそうではない。

 

●所得

 

・所得が高い人々ほどマクロンに投票すると予想されていた。富裕層を代表するマクロン対貧困層を代表するルペンという構図になっていた。

 

・学歴と所得とは相関関係にある。

・所得が高い人ほど都市部に住む傾向がある。都市部の場合は収入以外の社会的要因が投票行動に影響を与える。

 

・オランダの総選挙でも所得は重要な要因となった、所得が低い地域ではポピュリストのゲルト・ウィルダースへの投票が多かった。イギリスの国民投票でも同様のことが起きた。所得が低い地域ほど離脱への投票が多かった。

 

●労働者階級

 

・学歴に次いで、有権者に占める労働者階級の割合がルペンへの投票の指標となった。特にサーヴィス部門における単純作業に従事する非熟練労働者の数が顕著な指標となった。

 

・労働者階級、特に非熟練労働者は、エスタブリッシュメントに見捨てられたグローバライゼーションの被害者として語られた。

 

・しかし、FTの分析では、学歴と年齢を指標に比べると、労働者階級の人口に占める割合は有意な指標とはならなかった。

 

・大学教育を受けた人々は高い技術を必要としない仕事に就かない傾向にあり、大学教育を受けた人々の数は増加している。

 

・肉体労働者の多い地域では移民の割合も高いが、そうした人々は投票権を持っていないことが多い。

 

●失業

 

・低所得と同じく、失業問題もまたグローバライゼーションのために放置されているとルペンは主張していた。

 

・第1回投票でメランションに投票した有権者は、ルペンに投票した人々よりも失業問題を重視していた。第1回目の投票でマクロンを支持しない理由として失業問題を挙げる人の割合が多かったが、第2回目ではその割合は減少した。マクロンへの支持を巡って、こうした有権者は分裂した。

 

・ルペンは都市部で苦戦した。都市部の低所得者、失業者は第1回目の投票ではメランションに投票した。こうした人々は決選投票でルペンに投票しなかった。

 

●福利と悲観主義

 

・ルペンの支持者たちは将来についてより悲観的だという調査結果が出た。将来に対して楽観的な有権者はマクロンに投票した。

 

・親の世代よりも自分たちは恵まれないという認識を持っている人々はルペンに投票した。

 

●平均寿命

 

・マクロンに投票した地域では人々の平均寿命が長いことが分かった。

 

・平均寿命とマクロンへの投票との間には正の関係があると解釈される。平均寿命が長く福利に恵まれていると考える人々はルペンのマイナスの感情への訴えを拒絶し、マクロンのポジティヴな主張を支持した。

 

●移民

 

・移民の数とルペンへの投票との間で相関関係は発見できなかった。ルペンの支持者たちは移民を重要な問題だと考えている。

 

・イギリスのEU離脱国民投票とよく似ている。移民に対して否定的な考えを持つ人々はEU離脱に投票した。更に言うと、このような考えを持っている人々の方が投票に向かった。

 

●反エスタブリッシュメント意識

 

・左派を支持した有権者はマクロンに投票した。自分を「極左」だと分類した有権者は、「左派」「左派に近い」とした有権者よりもルペンに投票した人が多かった。

 

・西側諸国に長く続いた左右対決というパターンに変化が出てきている。それは、エスタブリッシュメント(中道)対過激勢力との間のイデオロギー上の戦いというものだ。

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

 
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 古村治彦です。

 

 フランスでは大統領選挙が行われています。2017年4月23日に第1回目の投票が行われましたが、過半数を獲得する候補者がいなかったために、5月7日に上位2名による決選投票が行われます。

 

第1回目の投票では、中道の「アン・マルシェ!(前進)」のエマニュエル・マクロンが24.01%、極右の国民戦線のマリーヌ・ルペンが21.30%、保守の共和党のフランソワ・フィヨンが20.01%、左派のジャン=リュック・メランションが19.58%、中道左派の社会党のブノワ・アモンが6.36%の得票率を記録しました。マクロンとルペンが決選投票に進出しました。

 

 第3位となったフィヨンは敗北を認め、支持者たちにマクロンへの投票を呼びかけました。既成大政党である社会党の候補者でありながら、6%台の得票率しか記録できず、代惨敗となったアモンも、元は社会党の現職大統領フランソワ・オランド大統領政権下の閣僚を務めた元社会党員のマクロンへの支持を表明しました。左翼党のメランションは上位2名どちらへの支持も表明しませんでした。フィヨン、メランションを支持した人々の間で、決選投票に参加しない、棄権するという動きが広がっています。ルペンの国民戦線へのけん制と共に、マクロンも支持できないという感情が広がっているようです。

 

 以下に、『ワシントン・ポスト』紙に掲載されたフランス大統領選挙に関する記事をご紹介します。著者はアメリカの保守派コラムニストとして有名なジョージ・F・ウィルです。ウィルは保守派の論客ですから、民主党の大統領であったバラク・オバマには批判的でした。そして、今回のフランスの大統領選挙に関して、エマニュエル・マクロンをフランス版のバラク・オバマ(its own Barack Obama)だと述べています。中身のない候補者だとウィルは皮肉を込めて述べています。

 

 大統領選挙の決選投票に進出した中道と呼ばれるどっちつかずのマクロンと極右のルペンの最大の争点はEUとの関わり方であると思います。マクロンはEU残留を主張し、ルペンはEU離脱を主張しています。

 

 EU(ヨーロッパ連合)の基礎となったヨーロッパ統合の考え方は、ヨーロッパで二度と戦争を起こさない、そのためには、ドイツ問題(ドイツが蠢動するとヨーロッパが不安定化する)の解決と隣国同士であるフランスとドイツの友好を促進するというものです。フランスがEUから離脱するとなると、ヨーロッパ連合の基礎的な理念まで崩壊してしまいますし、物理的にはポルトガルとスペインのリベリア半島が他のEU加盟国と陸路ではつながらなくなるという事態も起きます。ですから、フランスのEU離脱は、EU崩壊のスタートとなることになります。

 

 フランスの社会史(アナール学派)・人工史学者であるエマニュエル・トッドの簡単に手に入るこれまでの書籍を数冊読むと、フランスがEUというシステムの中で、ドイツに従属していることの不満があることが分かります。「ドイツと喧嘩をしたい訳ではないが、ドイツと同じようなことをやらされるのは嫌だ、できない、国民性に合わない」という考えがフランスにあり、反EU、反ドイツの感情がフランス国民の中に沸き起こっているようです。

 

 こうしたフランス国民の多くが抱える不満について、日本でも良く似た事態が戦後に起きました。昭和24年度の国家予算について、その頃は日本政府はSCAP(連合国最高司令官)であるマッカーサー率いる占領当局(GHQ)の承認を必要としていました。昭和24年度の国家予算について、アメリカから派遣されていたジョセフ・ドッジは反対し、補助金を削減し、公共料金の値上げや減税公約の撤廃を求めました。激しいインフレーションに対処するために、日本国民に耐乏生活を求めました。しかし、選挙で勝利していた民主自由党の公約はほぼ通らなかったことになり、日本の政治家と国民は、占領されているからこのような屈辱を受けることになるのだ、と考え、早く独立したい、そのためには、戦争状態を終わらせる講和条約を早急に結び、独立すべきだと考えるようになりました。


 ドイツが求める均衡財政は嫌だし、それを堅持するとフランス国内で格差が拡大するが、EUにいる限りは、ドイツに従わねばならない、という状態が続くことになります。

 

 現在のフランスでも、社会党という社会主義政党が平等を追い求め、富の再配分を行う政策を放棄しなければならないほど、EU、特にドイツの意向に従う状況になっています。そうした中で、人々の中に、反EU、EUからの「独立」を求める声がでているようです。EUはひとまとまりで、アメリカに匹敵するGDPを占めることになります。世界の総GDPに占める割合は、アメリカが25%、EUが25%、中国が14%、日本が6%です。日中韓露で24%となります。EUそれぞれの国に分かれれば、割合は小さくなりますので、規模の経済を活かすにはまとまっていくしかありませんが、各国が抱える事情がそれぞれ異なるので、同床異夢、という状態になっています。

 

 しかし、現在のところ、マクロン対ルペンでは、マクロンがリードしているという世論調査の結果も出ています。マクロンという人物は中道と言っていますが、実際には親米で、親EU、ネオリベラリズム政策を行う人物です。中道というのは大変難しい言葉で、どっちつかず、無原則に何でも取り入れるということにもなりかねません。マクロン対ルペンで恐らくマクロンが勝利することになるでしょうが、フランスのEUからの「独立」を求める声がどれほど大きいものなのか、という点から、ルペンの得票率も大変気になるところです。フランス大統領選挙の結果でEUの将来の道筋が占えるのだろうと私は考えます。EUは国家のかなりの主権をEUに譲るということで成立していますが、これは行き過ぎで、関税同盟や経済連携にまで後退することもしかるべしではないかと考えます。

(貼り付けはじめ)

 

フランスはフランス版のバラク・オバマを選ぶのだろうか?(Will France elect its own Barack Obama?)

 

ジョージ・F・ウィル筆

2017年4月26日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/opinions/will-france-elect-its-own-barack-obama/2017/04/26/067f754e-2aa3-11e7-b605-33413c691853_story.html?tid=ss_tw&utm_term=.29a451a0583c

 

フランス人は、他の国や人々の政治的な考えを借りられないほど知的な自惚れが強すぎる。しかし、同時に他の国のスタイルを評価し、取り入れることに興味を持っている。従って、5月7日のフランスの大統領選挙の決選投票で、フランス国民は、「ドゴール的な」バラク・オバマを大統領に選び出す可能性が高い。

 

2008年、新人の連邦上院議員だったオバマは、アメリカにとってのロールシャッハテストの役割を果たした。アメリカ国民は彼らの希望をオバマに投影した。39歳のエマニュエル・マクロンはパリの投資銀行に勤務していた。彼はこれまでの選挙で嫌な思いをしたことがなく、曖昧さをうまく隠せる人物だ。マクロンの公約は、ジョナサン・ミラーが『スペクテイター』誌で書いたように、「ジャコブ通りに住む高額所得者たちから提供されるチョコレートの入ったお菓子箱であり、ソフトな中道的主張」である。中道主義者を自称するマクロンは、現職大統領、社会党のフランシス・オランドの閣僚を務めた人物だ。オランドの最新の支持率は4%となっている。先週の日曜日、社会党の大統領候補者ブノワ・アノンは6.35%の得票率であった。マクロンは自分が率いる運動体を「前進(En Marche!,、on the move)」と呼ぶ。これは、オバマ大統領が掲げた「私たちは、私たちが長年待ち望んだ存在となっている」という主張と同じくらいに自己満足で役に立たないものだ。マクロンは、良い人間になることで長く続く経済不況を改善しようと提案している。これは、結局のところ、「彼女」のようにならない、ということを意味している。

 

1984年の大統領選挙で、マリーヌ・ルペンの父ジャン・マリーは反ユダヤ主義と外国嫌悪の主張を掲げ、200万以上の得票を得た。パリのある新聞は見出しに次のように掲げた。「フランスには、218万2248名のファシストがいるのか?」これは、道理にかなわない質問だ。ジャン・マリーは「権威を示す束桿(fasces)の下で国家の全ての勢力をまとめる」と主張したのだ。ジャン・マリーはローマの権力の象徴を主張したのだ。ローマにおける権力の象徴は、斧の周りに木の板を合わせた束桿であった。ここからファシズム(fascism)という言葉が出来た。彼のスローガンは狡猾だった。「私のプログラムはあなたが考えていることだ」というものだ。その意味するところは、「ユダヤ人、移民、負け組について皆さんが語りたがらないこと」というものだった。

 

すっぱりリンゴがなる木から、ジャン・マリーの娘がどれほど離れているのかは明確ではない。マリーヌの選挙運動のスローガンは、「フランスは私たちの家だ(“On est chez nous” 、“This is our home”)」というものだ。このスローガンは、フランスがどんどんフランスらしさを失っているという懸念の表明である。同化を拒む数百万の移民は、空想の多文化主義の徒労を意味する。空想の多文化主義は移民の急激な流入から関係ない場所で快適に暮らしている人々によって唱導されている。ルペンと血と国土を基礎にしたナショナリズムは、アイデンティティが衰退しているという感情に対する反対の叫び声なのだ。

 

フランスの図書館にはフランスの歴代の憲法がきちんと収められているというのは正しくない。1791年以降、フランス憲法は多くの書き換えが行われた。現在のフランス憲法は59年前に制定された。しかし、一般的に国家のアイデンティティは言語的な統一と強く結びつくものであり、フランスの国家アイデンティティはある意味で、比較的若いものである。政治学者のフランシス・フクヤマは次のように書いている。「1860年代、フランス国民の4分の1はフランス語を話せなかった。また別の4分の1は第二外国語としてフランス語を話した。フランス語はパリの言葉であって、教育を受けたエリートの言葉であった。フランスの地方では、農民たちはブレトン語、ピカード語、フレミッシュ語、プロヴァンス語、その他の方言を話した」。マリーヌ・ルペンは、フランス性の権化だと自称している。しかし、彼女はパリで5%以下の得票率しか記録できなかった。国家アイデンティティが認識された場所パリでルペンは最も強力な選挙運動を展開したが、それほどの得票しかなかった。

 

1977年、フランスのGDPはイギリスのGDPよりも約60%も大きかった。現在はイギリスよりも小さくなっている。この期間、イギリスにはマーガレット・。サッチャーが出現し、フランスは「ネオリベラリズム」に抵抗した。上記のように、外国からの考えを寄せ付けないということを意味する。ネオリベラリズムは、「経済統制政策(dirigisme)」として知られる、強力な国家による経済指導を廃止することを意味する。経済統制はフランスの硬直性を象徴している。フランスの失業率は10%で、若い世代に限ればこの数字が2倍になる。

 

公的部門の支出はフランスのGDPの56%以上を占めている。これは他のヨーロッパ諸国よりも高い割合だ。マクロンは国家主義の一部を少し削り取ることしかできないと約束している。マクロンは彼が追い求めないものを受け取ることはないだろう。退職年齢62歳や週35時間労働、フランスの3500ページに及ぶ労働規制に挑戦する特別な権限を手にすることはないだろう。これによって労働者を解雇することは困難になり、経営者たちは人を雇用することに躊躇することになる。マクロンは、より強力なヨーロッパ連合を求めている。強力なヨーロッパ連合は民主政治体制を損ない、傲慢な規制が幅を利かすようになる。

 

1930年代、ヨーロッパの左翼は狼狽した。それは、資本主義の危機が鼻持ちならない、不快な右翼を利することになったからだ。この時代の右翼は、人々の怒りを基礎にして、経済と文化の面での懸念を融合することで台頭してきていた。今日、グローバライゼーションは、大西洋両岸のアメリカとヨーロッパで似たような激しい動きを起こしている。ルペンの台頭は、彼女を大統領にまで押し上げる可能性が高いところまで来ている。しかし、フランスや他の国々で自己満足している人々は、アメリカで公民権運動が盛んになっていた1963年にアフリカ系アメリカ人作家ジェイムズ・ボールドウィンが警告した、アフリカ系アメリカ人に関わる霊的な言葉を覚えておくべきだ。

 

神はノアに虹のサインを示した。

 

これ以上は水はでないが、次は大規模な火事が起きる、と。

 

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