古村治彦です。
2028年の大統領選挙に向けて水面下で動いている。以下の記事は1年前の記事だが、重要なキーワードは「アンドゥリル社」「パルマー・ラッキー」「ジョン・ハステッド」である。オハイオ州は大統領選挙における激戦州(battleground state)の1つである。そして、重要なのは、J・D・ヴァンス副大統領の出身地であり、副大統領に就任するまでは、オハイオ州選出の連邦上院議員を務めていた。ヴァンスが副大統領就任のため連邦上院議員を辞職して、その後釜となったのが、下の記事に出てくるジョン・ハステッド州副知事(当時)である。
また、今年2026年にはオハイオ州知事選挙が実施される予定になっているが、共和党側の候補者としてトップランナーになっているのが、ヴィヴェック・ラマスワミである。ラマスワミは2024年大統領選挙共和党予備選挙で無名の泡沫候補であったがトランプ支持を表明しながらの選挙戦で人気を高めた。そして、第二次ドナルド・トランプ政権では、イーロン・マスクと共に政府効率化省(Department of Government Efficiency、DOGE)のトップを務めることが決まっていた。しかし、オハイオ州知事選挙の準備に集中するということで辞退していた。ラマスワミはインド系移民の子供としてオハイオ州で生まれ育ち、ハーヴァード大学卒業後に、イェール大学法科大学院に進学した。イェール大学大学院でJ・D・ヴァンスと同級生となり、親友となった。ヴァンスとラマスワミは法科大学院世時代に、パランティア社創業者にして、「ペイパル・マフィア」の総帥であるピーター・ティールの知己を得ている。さらに、アンドゥリル社と創業者パルマー・ラッキーは、ピーター・ティールとイーロン・マスク、更にヴァンスからの支援を受けて、アンドゥリル社を創業した。これらのことは拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社、2025年)で詳しく解説した。是非お読みいただきたい。
アンドゥリル社が向上をオハイオ州に建設し雇用を創出する、オハイオ州は補助金や優遇税制で支援するという形で「ウィン・ウィン」の関係を築いている。そして、これは大きくは、ラマスワミの2026年のオハイオ州知事選挙(既に、ドナルド・トランプ、J・D・ヴァンス、イーロン・マスクからの支持表明がなされている)、2028年のJ・D・ヴァンスの大統領選挙のために布石ということになる。パルマー・ラッキーにしてみれば、J・D・ヴァンスが大統領になることで、トランプから継続して、アメリカ政界に食い込み、大きな利益を得るための布石ということが出来る。新・軍産複合体の伸長が長期的に進んでいる。
(貼り付けはじめ)
AI兵器軍がオハイオ州へ向かう(The
AI weapon army goes to Ohio)
-コロンバスに計画されている大規模なアンドゥリル社工場はドローンによる雇用創出を約束し、州から約5億ドルの補助金を受ける予定だ
スタヴロウラ・パブスト筆
2025年2月20日
『レスポンシブル・ステイトクラフト』誌
https://responsiblestatecraft.org/anduril-ohio/
兵器技術業界の新しいスターであるアンドゥリル・インダストリーズ社がオハイオ州の支援を受けてオハイオ州に進出する。
先週、オハイオ州管理委員会は、オハイオ州開発局のオール・オハイオ・フューチャー・ファンドからの7000万ドルという巨額の資金提供を承認した。これは、アンドゥリル社がオハイオ州コロンバスのリッケンバッカー空港近くに建設を計画している、500万平方フィート(約460万平方メートル)の「ハイパースケール」製造施設「アーセナル1」と呼ばれる兵器工場建設のための資金である。
この資金提供は、管理委員会の会合で異議なく承認されたが、州下院議員トリスタン・レーダー(レイクウッド選挙区選出、民主党)が「多額の公的資金」が「民間の開発に流れている」と認めたこと以外は、ほとんど話題にもならなかった。
●オハイオ州がアンドゥリル社を全面支援(Ohio goes all in for
Anduril)
アーセナル1の推進派は、このプロジェクトがオハイオ州民にもたらす経済的利益を大々的に宣伝している。4000人の雇用創出を約束するアーセナル1は、オハイオ州史上最大の雇用創出プロジェクトとして称賛されている。州はアンドゥリル社に対し、約4億55000万ドルの減税措置を承認しており、アンドゥリル社自身もこのプロジェクトに約10億ドルを投資する予定だ。2026年半ばに操業開始予定のこの工場は、近隣のリッケンバッカー空港で製品の試験・開発を行うことも可能になる。
「私たちはアンドゥリル社を歓迎し、最先端の防衛製造業における数千人の新規雇用創出を祝福する」と、オハイオ州副知事ジョン・ハステッドは1月、アンドゥリル社がオハイオ州への進出を表明した後にこのように述べた。さらに「この投資は、先端技術と国家安全保障におけるオハイオ州のリーダーとしての地位を強化するものだ」と述べた。
アンドゥリルがアーセナル1で実際に提案しているのは、ほとんど精査されないという点だ。しかし、倫理的に問題のある自律型および半自律型兵器の大量生産計画は精査に値する。
自律型兵器システムに関する懸念は、概して、致命的な意思決定を人間から、おそらく判断力に乏しく、しばしば不正確な機械へとアウトソーシングすることにある。AI研究者たちはまた、AI技術の軍事化によって、戦闘(そして死)の責任が人間から戦闘用の自律型機械へと移行され、各国の紛争回避意欲が低下する可能性を懸念している。
こうした懸念にもかかわらず、ガザ地区のような地域ではAI支援兵器の拡散が止まっていない。イスラエル軍はパレスチナ人への攻撃において、AI軍事照準システムを利用してきたが、これに対して厳しい批判が集まっている。
そして今、自律型兵器の製造をさらに進めているアーセナル1は、軍事請負業者(military
contractors)、特に新世代の防衛技術スタートアップ企業による、桁違いに多くの兵器や軍事プラットフォーム、特にAI支援型を大量生産できるアメリカの防衛産業基盤の刷新(アンドゥリル社の言葉を借りれば「ハイパースケーリング(hyperscaling)」)に向けた、より大規模な防衛技術推進の一環である。
アーセナル1や、防衛志向の産業自動化スタートアップ企業ハドリアンの「高度に自動化された精密部品工場」といったアメリカに拠点を置く新たな施設を通じて兵器の大量生産を増強する防衛技術スタートアップ企業は、その過程で重要な経済的機会を軍国主義と結び付けている。こうした流れの中で、ハドリアンは2022年の資金調達発表において、自社の取り組みを「アメリカの先進製造業基盤の変革(transform America's advanced manufacturing industrial base)」に向けた取り組みであると明確に表現した。
支持者たちにとって、この取り組みは、ますます不安定化する地政学的状況の中で、アメリカの国家安全保障にとって極めて重要である。この点で、アンドゥリル社社長のパルマー・ラッキーは、軍産複合体が売り込む中国の脅威に対抗し、アーセナル1をはじめとする兵器製造事業を民間に売りつけることに激しく反発している。
ラッキーは1月下旬にアーセナル1に関するインタヴューで述べ、「従来通りのビジネスをしている余裕はない。・・・中国で紛争が発生した場合、最初の8日以内に兵器が枯渇すると予測されていることから、(アーセナル1のようなプロジェクトによって)製造を超大規模化する必要がある」と、中国との戦争が現実的な可能性として指摘した。
これらの兵器企業の軍国主義的な動きが、経済機会の約束と相まって、世論を同じ方向に導くのではないかと懸念する声もある。「パルマー・ラッキーの冷戦的信念は、中西部でますます広まっている」と、コロンバスを拠点とする『マター・ニューズ』所属のジャーナリストであるテイラー・ドレルは次のように指摘する。「例えば、ニューアルバニー(オハイオ州)のインテル工場建設は、半導体戦争で中国に勝つための新たな冷戦戦略として批判されている」。
●アーセナル1をめぐる議論が激しくなる(Debate over Arsenal-1
brews)
しかし、オハイオ州民全員がアンドゥリル社の工場開設を歓迎している訳ではない。アーセナル1を「国家防衛における大きな賭け(a high stakes gamble in national defense)」と呼び、『サイオト・ヴァレー・ガーディアン』紙のジェイ・サリーは、このプロジェクトに割り当てられた「多額の」公的補助金に対する地元の懐疑的な見方を強調した。
実際、ヴェテランズ・フォー・ピース(VFP)第183支部をはじめとするオハイオ州を拠点とする支援団体は、日曜日にオハイオ州リッケンバッカー空港前でアーセナル1への抗議活動を行う予定だ。これらの団体は、このプロジェクトへの多額の公的資金提供、環境への影響の可能性、そして前述のアンドゥリル社のような企業によるAIの軍事化に伴う倫理的影響を問題視している。
オハイオ州民がアーセナル1の導入をめぐって議論を交わす中、自律型兵器システムの大量拡散と将来、そしてそれらが将来の戦争をより危険なものにする可能性について、批判的な議論が切実に必要とされている。
※スタヴロウラ・パブスト:『レスポンシブル・ステイトクラフト』誌記者。
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』












