古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:カナダ

 古村治彦です。

 サッカーのワールドカップ北中米大会(カナダ、アメリカ。メキシコでの開催)が佳境に入っている。日本代表は予選リーグを突破し、決勝トーナメント1回戦で強豪ブラジルと対戦し、1対2で敗れた。そのブラジルはノルウェーに1対2で敗北を喫した。日本は1998年のフランス大会で初出場して以来、8大会連続で出場し、アジアの強豪となった。私が子供の頃、1980年代は、アニメ『キャプテン翼』の影響でサッカー人気は高まっていたが、韓国や中東の国々に歯が立たなかった。それを思えば日本のサッカーは急成長だと考えられるが、専門家や目の肥えたファンの人たちからすれば不満が残る結果だったかもしれない。
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サッカーと地政学 -ゴールの先に世界が見える -

 今大会は、アメリカによる、選手やファンに対する不公平な取り扱い、ドナルド・トランプ大統領が介入したのではと取り沙汰されたアメリカ代表選手の退場処分保留などの、政治と絡んだニューズが多く出ている。しかし、参加数が48になったことで、参加枠が拡大したことで、あまり有名ではない小国も参加し、どんな国なのかと興味を持って調べるという楽しみもある。キュラソーやカーボベルデなど申し訳ないが、全く知らなかった。

 今大会の参加ティームの多くは国外生まれの選手たちが多くを占めるようになっているそうだ。1930年の第1回大会の時はその割合が約5%だったが、今大会は約25%になっている。私はラグビーが好きでよく見ているが、ラグビーの場合には代表ティームのメンバーになるには条件が異なり、多くの外国出身選手が日本代表としてプレーしているが、サッカーはもっと条件が厳しいのかと思っていたが、少し緩くなっているようだ。

また、ヨーロッパの有名プロティームの育成組織、アカデミー出身者が様々な国の代表に入っているということだ。有名なティームは途上国などの身体能力に優れた子供たちを青田買いして、育成組織に入れるということは昔から行われ、そこからスーパースターが生まれているが、同時に、途中で怪我をしたり、技術が伸びなかったりした場合には放り出されて、行き場もなく、教育も受けていないために仕事にもありつけずに犯罪に走るという若者たちがいるということもある。

 日本代表にも帰化選手や外国にルーツを持つ選手が昔からいたし、これからもどんどん増えていくだろう。それはグローバリズムの結果だ。同時に、移民、外国から来た(自発的、非自発的は問わず)が作った国であるアメリカで、これだけグローバル化したサッカーの世界大会ワールドカップが開催されているのに、出入国で不公平な取り扱いがあったことはグローバル化の副作用と言うべきであろう。別の副作用はトランプ大統領の出現であるが。

 以下の記事を読みながら、サッカーは世界の歴史や大きな流れを映す鏡だということを改めて認識した。

(貼り付けはじめ)

ワールドカップの新たな地理学(The New Geography of the World Cup

-移民、植民地時代の歴史、そしてエリート・アカデミーが、現代の代表ティームのあり方を再定義した。

ジル・ゲラ、ダイアン・ロイ筆

2026年6月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/24/world-cup-soccer-football-immigration-nationality-haiti/

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男子サッカーハイチ代表ティームが初めてFIFAワールドカップに出場した1974年当時、ティームは完全に国内育ちの選手で構成されていた。登録メンバー22名全員がハイチ生まれであり、1名を除いて全員が国内クラブに所属していた。

それから50年以上が経過した今日、6月13日に行われたスコットランドとの初戦に出場した26名の選手のうち16名はハイチ以外の生まれであり、その大半は北アメリカやヨーロッパのクラブでプレーしている。これらの選手の多くは、ハイチにルーツを持つことで代表資格を得ている。国内を拠点とする選手は、ウデンスキー・ピエールただ1人だ。代表ティームを率いるフランス人のセバスチャン・ミニェ監督は、代表ティームにとって史上2度目となるワールドカップ出場を果たし、ティームを指揮しているが、これまでハイチの地を踏んだことはない。

ハイチ代表が国外生まれの選手に依存している背景には、経済の不安定さ、政情不安、そして蔓延する治安の悪化といった、多くの人々を国外流出へと追いやってきた状況がある。2021年のジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件以降、ギャングによる暴力が横行し、代表ティームが国内で試合を行うことは事実上不可能となった。そのため、ハイチ代表はワールドカップ予選のホームゲームをキュラソーで開催し、フロリダやニュージャージーでトレーニングを行ってきた。

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しかし、ハイチ代表の選手構成は決して例外的なものではない。アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国が共同開催する今年のワールドカップでは、多くのティームが、自国以外の国で生まれた選手を所属させている。こうした傾向は1980年代以降加速しており、ワールドカップ出場ティームの構成に対する移民の影響力の増大や、サッカーというスポーツがますます国境を越えた広がりを見せている現状を反映している。

2004年、カタール・サッカー協会がカタールと縁もゆかりもない選手に金銭的報酬を提示して帰化させたことを受け、FIFA(国際サッカー連盟)は代表資格に関する規定を厳格化し、選手が代表する国との間に「明確なつながり(clear connection)」を持つことを義務付けた。現在では、出生であれ帰化であれ、その国の国籍を保有していれば代表ティームでプレーすることが可能だ。ただし帰化の場合、FIFAは、本人、親、祖父母の出生地や血縁関係による直接的なつながり、あるいは少なくとも5年間の継続的な居住実績といった条件を求めている。こうした変更は、便宜的な帰化を制限しつつ、血縁やルーツに基づく代表入りを正当なルートとして明文化したことで、今年の大会に見られるような、ディアスポラ(he diaspora、国外在住者やその子孫)を多く含むティーム構成を形作る一因となった。

ワールドカップの代表ティームには以前から外国生まれの選手が含まれてきたが、その割合は時代によって変動しており、これは移民の動向やプロサッカーのグローバル化を反映していると考えられる。2022年に『ヴォックス』誌が発表した分析によれば、1930年の第1回大会では参加ティームはわずか13で、全選手のうち出生国以外の国を代表していた選手の割合は5%強だった。一方、32ティームが参加した2022年のカタール大会では、その数字は16.5%に上昇した。

2022年大会ではモロッコがその傾向を牽引し、代表選手の約54%が国外生まれだった。チュニジアやセネガルも、主にフランス生まれの選手を多数起用していた。

今年のワールドカップでは、国外生まれの選手の割合が23.2%へと著しく上昇した。この増加の主な要因の1つは、今大会の出場ティーム数が過去最多の48に拡大されたことだ。この拡大により、国境を越えて選手を招集できる(ディアスポラなどの)選手層を持つ国々が、より多く本大会への出場権を獲得できるようになった。

同時に、各国のサッカー連盟は最強のティームを編成するために、積極的に国外へと目を向けるようになっている。人口の少ない国にとっては、国外在住のディアスポラのネットワークを活用することが不可欠だ。その最も顕著な例と言えるのがキュラソーだ。人口約15万6000人のキュラソーは、ワールドカップ出場権を獲得した史上最小の国だ。26名の代表メンバーは、そのほぼ全員が国外生まれの選手で構成されている。1人を除く全員がオランダ生まれであり、これは約400年に及ぶオランダによる植民地支配の名残と言える。

他にも、コンゴ民主共和国(76.9%)、モロッコ(73.1%)、アルジェリア(61.5%)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(57.7%)、チュニジア(57.7%)など、国外生まれの選手に大きく依存している出場国がいくつかある。その一方で、オーストリア、ブラジル、コロンビア、南アフリカのように、国外生まれの選手が誰もいないティームもある。
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2026年ワールドカップに出場する国外生まれの選手の多くに共通する出身国がある。それはフランスだ。全48ティームの中で、フランス生まれの選手は99人に上り、そのうち54人はパリ都市圏(Greater Paris)の出身だ。この事実は、サッカーの才能を輩出する地域として世界で最も多くの人材を送り出しているという、フランスの首都が長年築いてきた評価を改めて裏付けるものとなっている。比較として挙げると、ロンドン都市圏から今大会に送り出された選手は14人だった。

世界最高峰のサッカーを支えるインフラのような役割をごく一部のクラブが事実上担うようになっている。ヨーロッパのいくつかのクラブのアカデミーが多国籍なルーツを持つ選手をワールドカップに送り出している。

マンチェスター・シティのユース組織で育った選手は10の異なる代表ティームでプレーしており、マンチェスター・ユナイテッドとアーセナルのアカデミー出身者はそれぞれ8ティーム、パリ・サンジェルマンは7ティーム、バイエルン・ミュンヘンは5ティームの代表選手を輩出している。エリート選手の育成で名高いアムステルダムのクラブであるアヤックスは、今大会において他のどのアカデミーよりも多くの出身選手を送り出しており、その数は5つの代表ティームにまたがる計17名になる。
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今年のワールドカップは史上最も真にグローバルな大会である一方、国境を越えた人の移動に対する障壁も高まっている。大会全試合の4分の3にあたる78試合を開催するアメリカは、ドナルド・トランプ大統領の下で入国管理や渡航に関する政策を厳格化した。

一部の国については、サポーターがアメリカへ渡航することが事実上不可能になっている。ハイチとイランはアメリカの全面的な渡航禁止措置の対象となっており、両国の国民は移民ヴィザ・非移民ヴィザを問わず、その取得がほぼ全面的に認められていない。ただし、選手や必要不可欠なスタッフについては例外が設けられている。さらに、本大会出場国であるセネガルとコートジボワールも12月に一部渡航禁止リストに追加され、新規の観光ヴィザ発給が停止された。そのため、1月1日時点でアメリカのヴィザを保有していなかったファンは現在ヴィザを取得することができない。

こうした規制は広範囲にわたる影響を及ぼしている。少なくとも15名のイラン関係者がアメリカのヴィザの発給を拒否されたほか、イラン・サッカー連盟は、出場全連盟に認められているはずの「自国ファン向けのアメリカ開催試合のチケット割り当て権限」をFIFAに取り消されたと発表した。また、ワールドカップで主審を務める初のソマリア人審判となる予定だったオマール・アルタンは、「テロ組織の容疑者との関わり(association with suspected members of terror organizations)」が疑われたとしてマイアミの空港で拘束された後、アメリカへの入国を拒否された。イラク代表のストライカーであるアイメン・フセイン選手も、シカゴ到着時に7時間近くにわたって拘束され、尋問を受けた。

アメリカによる最も厳しい入国制限は、主に国外出身の才能ある選手でティームを構成している国々に向けられる傾向がある。この両者の重なりは偶然ではない。自国のサッカーの才能を国外へ流出させる原因となる不安定な情勢や機会の欠如は、同時に、その国のファンを入国させることへの「リスク(risk)」を高いとみなさせる要因にもなっている。特例措置が設けられたとしても、その適用範囲は意図的に限定されている。それらは旅行者個人ではなくワールドカップの観戦チケットに紐づけられており、大会終了とともに効力を失うからだ。
アルジェリア、カーボベルデ、チュニジア、セネガル、コートジボワールの5カ国は、アメリカの「ヴィザ保証金(ボンド)」制度の対象国となっている。この制度により、選手を除くこれらの国の国民は、観光ヴィザを取得する際に5000ドルから1万5000ドルの保証金(返金可能)を預け入れることが義務付けられている。トランプ政権は先月、4月中旬の時点でアメリカ開催試合のチケットを購入し、かつ「FIFAパス」に登録しているファンに対しては、この保証金要件を免除すると発表した。しかし、この免除措置が恩恵をもたらすのは、アルジェリア、カーボベルデ、チュニジアのサポーターに限られる。セネガルとコートジボワールのファンにとっては救済策にならない。両国に対しては部分的な渡航制限が課されており、保証金の対象となるはずの観光ヴィザの発給自体がすでに停止されているからだ。

他の開催国による救済策も限定的だ。カナダは、これらアフリカや中東地域の国々(およびその他の対象国)のファンに対し、訪問者ヴィザの取得を義務付けているが、その取得はアメリカのヴィザと同様に困難だ。メキシコは、有効なアメリカのヴィザ(あるいはカナダ、イギリス、日本、またはシェンゲン協定加盟国のヴィザ)をすでに所持している旅行者にはヴィザを免除している。しかし、ハイチやイランの国民のようにアメリカへの入国を拒否されているファンは、メキシコのヴィザを直接申請せざるを得ないだろう。

チュニジアはグループステージの3試合のうち2試合をメキシコで行い、セネガルとコートジボワールはそれぞれ1試合をカナダで行う予定だが、どの国へ入るにもヴィザという壁が立ちはだかっている。これは、開催国がファンの入国障壁を緩和していた過去の大会とは異なる状況だ。2018年のロシア大会では、政府発行の「ファンID」を取得した全てのチケット保有者に対し、ヴィザなしでの入国が認められた。2022年のカタール大会でも同様の措置がとられ、ファンは通常のヴィザなしで大会期間中の入国が可能だった。
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その結果、出場ティームの国際色はかつてないほど豊かであるにもかかわらず、スタジアムの観客席の構成は以前とほとんど変わらないという大会になるだろう。出場ティーム数が48に拡大されたことで、ディアスポラを中心に構成された代表ティームを擁する国々がいくつか加わった。ヴィザ取得のハードルが最も高い国々を応援することになるファンの多くもまた、そうしたディアスポラ・コミュニティの出身者となるだろう。

こうした傾向は、6月16日にニュージャージーで行われたフランス対セネガル戦で如実に表れた。両ティームは、同じ現象の異なる側面を映し出している。フランス代表のメンバーの多くは、フランス生まれの移民の子供たちである一方、セネガル代表の国外生まれの選手たちは、フランスのクラブでキャリアを築いたアフリカ系ディアスポラの人々だ。

フランス代表の26名のうち、国外生まれはわずか3名で、ティームの88.5%がプロキャリアの大半をフランス国内で過ごしている。対照的に、セネガル代表のメンバーは半数近くが国外生まれであり、そのうち10人がフランスで生まれている。また、セネガル代表選手の4分の3近くが、フランスでプロとしてのプレー経験を持っている。

代表ティームは時に、その国が抱く理想的な自己像の反映と見なされることがある。しかし、2026年ワールドカップの代表メンバー構成は、あるがままの国家の姿を映し出しているようだ。そこには、その国にとどまった人々、国を離れた人々、そしてその双方の子供たちが含まれており、彼らがひと夏の間、サッカー界最大の舞台に集結している。

—インフォグラフィック制作:ロリ・ケリー(エグゼクティヴ・クリエイティヴ・ディレクター)

訂正(2026年6月24日):本記事の以前の版に掲載された図において、ボスニア・ヘルツェゴビナおよびヨルダンの代表選手に関する色分けに誤りがあった。現在は修正済みだ。

訂正(2026年6月25日):ボスニア・ヘルツェゴビナ代表メンバーの直前の変更を反映し、同国の国外生まれ選手数にヨヴォ・ルキッチを追加する形で図を更新した。

更新(2026年6月29日):エボラ出血熱に関連する渡航制限についての情報を追加し、本記事のインフォグラフィックを更新した。

※ジル・ゲラ:ニカネン・センター移民・安全保障政策担当上級アナリスト。Xアカウント:@gildeguerra

※ダイアナ・ロイ:米外交評議会ラテンアメリカ・移民担当上級ライター兼編集者。Xアカウント:@Diana_royy

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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 古村治彦です。

 アメリカの政治・外交・安全保障専門高級誌として有名な『フォーリン・アフェアーズ』誌に「日本、ドイツ、カナダという“模範的な”アメリカの同盟諸国に核兵器を持たせることでアメリカの安全保障は改善される」という内容の論考が掲載された。2025年11月19日のことである。「核拡散(nuclear proliferation)」という言葉を聞いたことがある人は多いと思う。アメリカが核兵器開発を成功させ、1945年に連続して、日本の広島と長崎に対して使用し、数十万人の民間人を殺傷して以来、核兵器開発は進み、保有する国の数も増えている。国連安保理常任理事国である米ソ(現在は露)英仏中の5カ国は「核不拡散(nonproliferation)」を進める「NPT(核不拡散)条約体制」を構築し、核兵器の拡散を防ごうとしてきたが、実際には、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮といった国々で核兵器の開発・保有が実施されている。

 アメリカが一極支配を維持できない状況の中で、「同盟諸国の一部に核兵器を持たせて、アメリカの負担を軽くする」という議論が出ている。「選択的核拡散(selective proliferation )」という言葉を使っているが、「アメリカが選んだ同盟諸国に核兵器保有を認める」という主張である。下記論稿の筆者たちはその同盟諸国として、ドイツ、日本、カナダの名前を挙げている。これらの“模範的な”同盟諸国は、管理面や技術面から核兵器を保有しても大丈夫ということになる。そして、重要なことは、ドイツ、日本、カナダに核兵器を持たせることで、中国とロシアを牽制し、封じ込めることができるという主張だ。

 このような主張は、日本やドイツを独立国として扱い、世界における役割を尊重しているかのように見える。しかし、実際には、あくまで日本やドイツを「手駒」として利用し、核攻撃の危険をドイツや日本に分散して、アメリカを守ろうという主張である。中国とロシアにより近い場所に核兵器を配備することで、中国とロシアを抑え込もうということであり、実際に核攻撃が始まれば、アメリカではなく、核兵器を持つドイツや日本が至近の標的となることで、アメリカへの攻撃を防ぐという「弾除け」の役割を果たさせようということだ。

 核兵器を持たねば一流の国ではない、独立国ではないという情緒的な、根拠薄弱な主張に与することはできない。そして、そのような主張を「餌」にして、日本の核保有の機運を高めようという勢力こそは日本の将来を毀損する売国勢力であるということをここに宣言しておく。

(貼り付けはじめ)

アメリカの同盟諸国は核保有するべきだ(America’s Allies Should Go Nuclear

-選択的核拡散(selective proliferation)は国際秩序(the global order)を終焉させるのではなく、強化するだろう。

モリッツ・S・グレーフラス、マーク・A・レイモンド(Moritz S. Graefrath and Mark A. Raymond)筆

2025年11月19日

『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/canada/americas-allies-should-go-nuclear

※モリッツ・S・グレーフラス(MORITZ S. GRAEFRATH)は、オクラホマ大学ウィック・キャリー国際安全保障助教授であり、ユーラシア・グループの国際問題研究所の非常勤研究員である。

※マーク・A・レイモンド(MARK A. RAYMOND)は、オクラホマ大学ウィック・キャリー国際関係学准教授であり、オクラホマ航空宇宙防衛イノベーション研究所国際安全保障政策担当副所長を務めている。

核拡散(nuclear proliferation)の見通しほど、専門家と政策立案者たちを恐ろしがらせるシナリオはほとんどない。ロシアがウクライナ侵攻において戦術核兵器(tactical nuclear weapons)の使用をちらつかせていること、ドナルド・トランプ米大統領の核実験に対する曖昧な姿勢、そしてロシアとアメリカの核兵器保有量を制限する2010年の新戦略兵器削減条約(新START)の期限切れが間近に迫っていることは、核兵器の根強い破壊力を世界に改めて認識させ、その使用に対する恐怖を再燃させている。アメリカの指導者たちは、核兵器の拡大(the spread of nuclear weapons)はアメリカの戦略的利益を著しく損ない、既に脆弱な国際秩序をさらに不安定化させると確信している。ここ数カ月、彼らは核拡散防止への取り組みを改めて強調しており、6月のイラン核施設への攻撃は、ワシントンが核兵器保有国を増やすことを阻止するために武力を行使する覚悟があることを示している。

数十年にわたり、アメリカは核不拡散(nonproliferation)を基盤とした核秩序に投資を続けてきた。弾道ミサイル迎撃条約(ABMT)のような冷戦時代の軍縮協定が失効した後も、その姿勢は変わらなかった。信頼できない国家や敵対国による核兵器の拡大に反対することは理にかなっているが、核兵器のさらなる拡散に全面的に反対することは、核兵器がもたらす重大な恩恵を覆い隠してしまう(Opposing proliferation among unreliable states and adversaries makes sense, but a blanket opposition to the further spread of nuclear weapons obscures the significant benefits they can bestow)。アメリカは核不拡散への厳格な固執を見直し、カナダ、ドイツ、日本といった少数の同盟国に核保有を促すべきだろう(The United States would do well to reconsider its strict adherence to nonproliferation and encourage a small set of allies—namely Canada, Germany, and Japan—to go nuclear)。ワシントンにとって、選択的核拡散(selective proliferation)は、これらのパートナー国が地域防衛(regional defense)においてより大きな役割を担い、アメリカへの軍事的依存度(military dependence on the United States)を低下させることを可能にする。一方、これらの同盟国にとって、核兵器の保有は、中国やロシアといった地域的な敵対国、そして従来の同盟関係への関与が弱まるアメリカからの脅威に対する、最も確実な防衛手段となる(For these allies, in turn, acquiring nuclear weapons provides the most dependable protection against the threats of regional foes, such as China and Russia, as well as a United States less committed to its traditional alliances)。

核兵器保有国が増加する世界という構想に懐疑論者や核兵器悲観論者は眉をひそめるかもしれないが、核拡散が選択的に進められるならば、そうした懸念はあまり根拠のないものとなる。カナダ、ドイツ、日本は、合理的な政策決定と国内の安定について、確かな実績があり、核事故や制御不能なエスカレーションの連鎖が起こる可能性は極めて低い。また、慎重に管理されれば、これらの国々における核拡散が、他国による核兵器開発の広範な動きにつながることはないだろうと考える十分な根拠がある。

選択的核拡散は、国際的な不安定化という恐ろしい新時代(a frightening new era of global instability)を到来させるのではなく、第二次世界大戦後の秩序を維持すること(uphold the post–World War II order)の一助となる。カナダ、ドイツ、日本が核兵器を保有すれば、世界の軍事力バランスは、ルールに基づく国際秩序に関与し、その主要規範、特に領土保全の侵害を阻止することに尽力する国家連合に有利な方向に再調整されることになるだろう(Were Canada, Germany, and Japan to acquire nuclear weapons, they would rebalance global military capabilities in favor of a coalition of states committed to the rules-based system and to stopping the erosion of its key norms, especially territorial integrity)。選択的核拡散は、アメリカとその同盟諸国に多大な恩恵をもたらしてきた1945年以降の、ますます脆弱になりつつある国際秩序を活性化させるだろう。

●ウィン・ウィン関係(A WIN-WIN

アメリカの高官たちは、大陸防衛の負担をヨーロッパの同盟諸国に移し、アメリカへの軍事的依存度を低下させる必要性を繰り返し強調してきた。東アジアにおける中国の台頭という地政学的課題に直面し、国内問題への対応に資源を割く必要に迫られているワシントンは、ヨーロッパのフリーライダー状態を終わらせることを最優先の戦略課題と捉えるようになった。今日、ヨーロッパが自国の安全保障を確保する能力を阻害し、ひいてはアメリカの大幅な撤退を阻んでいるのは、ドイツの核戦力の欠如(the lack of German nuclear forces)である。冷戦中、アメリカの指導者たちはヨーロッパからのアメリカ軍撤退を望んでいたが、ドイツが核抑止力(a nuclear deterrent)を獲得しない限り、ヨーロッパは自国の安全保障を確保できないと判断した。歴史家のマーク・トラクテンバーグが指摘するように、アメリカはイギリスとフランスの核戦力では、ヨーロッパがソ連とその膨大な核兵器を抑止できるという「必要な安心感を与えることはできない(could not provide the necessary degree of reassurance)」と正しく判断した。今日でも、同じ障害が依然として存在している。ドイツが独自の核兵器開発を進めるよう促すことは、最終的にアメリカの離脱(exit)を可能にするような、自立したヨーロッパの実現につながるだろう。

ドイツの指導者と国民は、アメリカへの軍事的依存が、自国をワシントンの気まぐれ(Washington’s whims)に翻弄される脆弱な状態に陥らせていることを認識している。2025年2月の首相就任直後、フリードリヒ・メルツ首相はアメリカからの「独立を達成する(achieve independence)」時が来たと宣言し、以来、実質的な再軍備(substantial rearmament)を声高に主張してきた。しかし、ドイツの通常戦力増強には長い年月を要するだろう。ベルリンは、メルツ首相をはじめとする欧州首脳が6月のNATO首脳会議で合意した、対GDP比5%という野心的な国防費目標をどのように達成するかについて、いまだ明確なヴィジョンを示していない。ウクライナへの軍需物資供与というドイツの継続的な義務と、国民の兵役への抵抗感は、迅速な通常戦力増強を阻害している。独立した核戦力を開発することは、アメリカが突然ヨーロッパから撤退する可能性からドイツを守ると同時に、5%の核兵器保有義務を果たすための実現可能で意義のある方法を提供するだろう。

日本の核拡散は、東アジアにおけるアメリカの主要目標、すなわち強力な地域同盟(strong local alliances)を通じた中国の封じ込め(the containment of China)という目標の達成に大きく貢献するだろう。ワシントンの視点からすると、北京がもたらす第一の脅威は、地域支配(regional dominance)を確立し、例えば半導体サプライチェインの混乱や東アジア、さらにはその周辺地域への前方基地(forward bases)の設置などによって、アメリカとその国益を深刻に脅かす軍事力を開発する可能性があることだ。このような中国の地域覇権(regional hegemony)は、アメリカにとって大きな脅威となるだろう。

日本は既に、海によって敵対国から隔てられた島国(an archipelago country)という地理的優位性を享受している。これに独自の核能力が加われば、外部からの脅威に対する日本の安全保障は事実上保証され、中国の支配下に置かれることもなくなるだろう(it does not fall under Chinese control)。自国の防衛力強化に加え、核武装した日本は、アメリカが提供できるよりも信頼性が高く、即効性のある拡大抑止力を東アジアにもたらすことになる。中国は東アジア情勢をめぐってワシントンが核戦争のリスクを冒す意思があるのか​​どうかを疑うかもしれないが、日本は地理的に近く、地域安定に直接的な利害関係を持っているため、その関与ははるかに信頼性が高い。

核武装した日本は、危機エスカレーションシナリオに新たな選択肢を加え、アメリカを直接巻き込むことなく、中国の侵略に効果的に対応することを可能にする。中国は日本への攻撃を検討する際、アメリカからの追加支援の有無にかかわらず、日本の報復がもたらす莫大なコストを考慮せざるを得なくなるだろう。核兵器を保有することで、日本、そしておそらく東アジア全体が、ワシントンの安全保障への関与の急激な変化に対応できるようになる。ドナルド・トランプ政権の最新の「国家防衛戦略(National Defense Strategy)」は、中国とロシアからの脅威よりも、アメリカ本土と西半球の防衛(the defense of the U.S. homeland and the Western Hemisphere)を優先しており、これは潜在的に大きな方向転換を示唆している。

北アメリカにおいて、カナダの核兵器保有はアメリカの国土安全保障を強化するだろう。NATOにおけるカナダ軍とアメリカ軍の統合、そして二国間防空システム「NORAD」の存在を鑑みれば、米加両国はほぼあらゆる想定される半球防衛シナリオにおいて共に戦うことになる。カナダはロシアや中国から領土保全に対する差し迫った脅威に直面していないものの、中露両国との関係は過去10年間で著しく悪化している。カナダの核抑止力は、アメリカが大陸の隣国であるカナダの防衛に介入する必要性を低下させ、アメリカの防衛能力を事実上解放し、潜在的な地政学的侵略の道筋を一つ排除する。また、カナダの核抑止力に対するアメリカの支持は、両国関係が緊張状態にある今、大陸防衛に対するワシントンの関与を示す重要な安心材料(crucial reassurance)となるだろう。

一方、カナダにとって、核兵器保有は、大陸防衛に対する共有された責任(shared responsibility)を受け入れていること、そしてオタワはアメリカの支援なしに潜在的な侵略者を抑止できることをアメリカに示すシグナルとなる。カナダのマーク・カーニー首相が3月に述べたように、カナダとアメリカの「古い関係」は「終わった」(Canada’s “old relationship” with the United States is “over”)。核保有は、大陸同盟を再構築し、カナダが単独で行動するための準備を整えることで、オタワをこの新たな世界へと導くことになるだろう。さらに、NATOの5%国防費目標達成という課題は、ドイツよりもカナダにとってより深刻であると言える。控えめな核抑止力は、この課題に対する解決策となるだけでなく、カナダの兵器庫における重要な戦略的資産にもなる。

カナダ、ドイツ、日本はそれぞれ、核兵器を独自に開発できる科学技術力と産業力(the scientific and industrial capacity)を有している。例えば、カナダは核分裂性物質の主要供給国(a major supplier of fissile material)としての役割を担っており、これはこれらの新たな核能力を実現するための共同努力の基盤となる。これら3つの同盟国が必要としているのは、そしてアメリカが提供できる、また提供すべきなのは、核保有国への移行に対する国民の支持と外交的支援、そして強固な指揮統制保障措置を確保するための技術的・教義的指導である(What the three allies would need—and what the United States can and should provide—is public support and diplomatic cover for their transition to becoming nuclear-armed states, as well as technical and doctrinal guidance to ensure robust command-and-control safeguards)。

●核問題の解決策(NUCLEAR FIX

伝統的に、核拡散は国際秩序の安定に対するリスクとして理解されてきた。国家が核能力を獲得すると、地域的および世界的な勢力均衡の変化(regional and global balances of power shift)が発生し、既存の安全保障体制に疑問が生じる。核抑止力を持つ国家は、抑制の試みから隔離されるため、略奪的な行動を取る可能性がある、というのが従来の考え方である。しかし、この従来の見方は誤りである―少なくとも単純化しすぎている―。なぜなら、全ての核拡散国が同じように行動すると仮定しているからだ。国際的なルールと規範を守ることに尽力する国家が核能力を獲得する場合、実際には、核拡散は国際秩序の安定性と強固さを高める(When states committed to defending international rules and norms acquire nuclear capabilities, proliferation, in fact, increases the stability and strength of the global order)。

カナダ、ドイツ、日本は、ルールに基づく国際秩序に尽力する主要国である。これら3カ国は、外交政策、ひいては国家アイデンティティを、良き国際市民としての役割という観点から構築している。これらの国々における選択的な核拡散は、軍事力の均衡を再構築し、潜在的な現状変更勢力を阻止することに尽力する核保有国による統一的な連合を形成するだろう。このような連合は、1945年以降の国際秩序のルール、規範、制度、そして征服禁止の規範のさらなる崩壊を防ぐのに役立つだろう。選択的核拡散は、物質的な安定をもたらすだけでなく、国際秩序に不可欠な規範的な安定の源泉を強化することになる。

したがって、選択的核拡散は、国際秩序の活性化への投資として捉え、理解されるべきである。事実上、カナダ、ドイツ、日本は、ロシアが修正主義に有利な状況を見出すに至った、そして、中国が同様の判断を下す可能性を示唆する空白を埋めることに貢献することになるだろう。

●恐れるな(BE NOT AFRAID

核拡散反対派が提起する典型的な懸念の多くは、アメリカの同盟諸国による選択的核拡散には当てはまらない。例えば、カナダ、ドイツ、日本の核兵器がならず者国家(rogue states)やテロ組織の手に渡ることを恐れる理由はない。これら3カ国はいずれも責任感、国家能力、国内の安定性において模範的な国(paragons)である。また、これらの国の合理性についても心配する必要はない。北朝鮮の金正恩委員長が核兵器に関して慎重かつ用心深く行動できるのであれば、オタワ、ベルリン、東京の指導者たちも同様の行動をとると合理的に期待できる。

もう一つの懸念は、少数の国が核能力を追求すれば、他の多くの国も同様の動きに出るということだ。しかし、この主張は説得力に欠ける。連鎖的な核拡散(knock-on proliferation)は、通常、既存の対立の結果であり、地理的な近接性に大きく左右される。例えば、インドの核拡散に対抗してパキスタンが核兵器開発を進めたことがその典型例である。カナダの核拡散が、例えばメキシコに核兵器開発を促す可能性は低い。ドイツの核拡散に対抗する最大の動機を持つと考えらえるヨーロッパ諸国、すなわちイギリスとフランスは、既に独自の核戦力を保有している。ポーランドのような他の潜在的な核拡散国は、多国間または二国間の核共有協定によって、独自の核兵器開発計画を断念するよう説得されるかもしれない。東アジアでは、日本が核兵器を取得すれば、韓国が長年抱いてきた核開発の野望を実行に移す可能性もあるが、ソウルがアメリカの安全保障体制に組み込まれていることで、その動機は大幅に低下している。日本の地理的優位性と、(韓国が核武装した北朝鮮との)膠着状態(a frozen conflict)に陥っていないという事実は、選択的核拡散において韓国よりも魅力的な候補国となっている。確かに、ソウルが核兵器開発に踏み切った場合、安全かつ信頼できる核兵器保有国となるだろう。台湾も理論的には同様の動きを望むかもしれないが、中国との地政学的な立場が不安定なため、この願望を実行に移す現実的な道筋はない。

 

 

核兵器による事故の可能性は、依然として妥当な懸念事項である。核兵器の拡大は、技術的には偶発的な核戦争の可能性を高めることは事実だが、そのリスクは極めて小さく、国際的な安定と安全保障に対する具体的な利益によって相殺される可能性が高い。冷戦の最盛期、すなわち戦略的・イデオロギー的な対立が激しかった時代でさえ、2つの超大国は核戦争を回避することに成功した。選択的核拡散の利点の1つは、カナダ、ドイツ、日本が、追加的なリスクを最小限に抑えるための体制を最も整えている国の1つであるという点である。これらの国々はいずれも高度に専門的な軍隊、軍隊に対する強固な文民統制、そして平和的な紛争解決に長けた外務省を有している。

その他の反対意見は、精査に耐えうるものではない。例えば、アメリカ専門家の中には、核拡散がアメリカの同盟諸国、特にドイツと日本に対するアメリカの影響力を弱めるという理由で、アメリカの核拡散に反対している。この主張は、戦略的手段(strategic instruments)と目的(objects)を混同している。ワシントンがヨーロッパと東アジアにおいて掲げる根本的な目標は、いずれの地域においても単一国家による支配を阻止することにある。同盟諸国に対するアメリカの影響力は、地域覇権国の台頭(the rise of a regional hegemon)を防ぐための間接的かつ不確実な道筋を提供するものの、ドイツと日本が核兵器を保有すれば、事実上その結果を招くことになる。言い換えれば、選択的核拡散はアメリカの影響力をいくらか犠牲にするが、それはあくまでも当初の目的達成と引き換えに過ぎない。

最も理解しやすい、そしておそらく最も克服困難な障害は、核拡散に対する国民の反対である。広島と長崎への原爆投下という日本の経験は、今なお国民の記憶に深く刻まれている。1945年以降の平和主義と原子力エネルギーに対する一般的な懐疑心は、多くのドイツ国民に核兵器保有に反対する傾向を強めている。そしてカナダは、自国領土への核兵器配備はおろか、核兵器保有にさえ長年抵抗してきた。この懸念を払拭するのは、疑う余地のないほどに困難であり、各国は懐疑的な市民に対し、核兵器の取得は彼らの安全を高めるだけでなく、ルールに基づく国際秩序全体の健全性を向上させることにもつながると説得しなければならないだろう。

●慎重に進める(PROCEED WITH CAUTION

選択的核拡散の実施は容易ではなくリスクも伴う。まず、カナダ、ドイツ、日本は核不拡散条約(NPT)から脱退する必要がある。NPTにおいて、各国は核兵器を開発しないことを約束している。国際法に基づき、適切な手続きを経てNPTから脱退することは、国際秩序を弱体化させるのではなく、国際安全保障を強化しようとする意思を示すことになる。可能な限り、NPTからの脱退については、主要な同盟諸国に事前に慎重に打診し、懸念を最小限に抑えるべきだ。全ての国が脱退を受け入れることを期待するのは非現実的だが、責任ある透明性のある方法で核拡散を進めることは、各国の善意を示すことになる。ここで、アメリカの外交的支援が特に重要になる。フランスやイギリスと連携し、新たな核保有国が国連安全保障理事会の制裁措置の対象とならないようにすることが重要だ。

懐疑的な国々に最大限の安心感を与えるため、核拡散国3カ国は、少なくともアメリカの核の傘下にある間は、「先制不使用(no first use)」政策の採用を検討すべきだ。NATOは冷戦時代にはそのような政策に踏み切ることをためらったが、カナダ、ドイツ、日本は少なくとも現時点ではそれほど厳しい安全保障上の課題に直面しておらず、現状維持(maintaining the status quo)への関与を示すためにこの措置を検討できるだろう。

選択的核拡散は、その潜在能力を最大限に発揮するためには慎重な管理を必要とするが、真の楽観主義に対する真の根拠(genuine ground for optimism)を提供する。その是非は今でも議論されているが、どの国が核兵器を保有するかは極めて重要である。もし核拡散国が同盟関係にあり、安定した政権を持ち、国際社会の責任ある一員であるならば、核兵器の増加はむしろ良いことかもしれない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ政権がドンロー主義を基盤として、西半球をアメリカの勢力圏として固める意向を示し、ヴェネズエラ攻撃やグリーンランド領有希望の公表など動きを強めている。そうした中で、カナダはアメリカを脅威と見なし、懸念を深めている。アメリカとカナダの関係について、私たちは深く学ぶ機会を持たない。正直なことを言えば、「どっちも似たようなものだろう」「カナダはフランス語を使用する地域があるな」というくらいのことしか思わない。しかし、考えてみれば、あれだけの長い国境線で接している、アメリカとカナダの関係は改めて知っておくことは有益であろう。

 アメリカは建国してしばらくの間、カナダの領土に対して野心を持っていた。1776年にアメリカはイギリスから独立したが、北方には、カナダが存在した。そこには当たり前のことだがイギリスが存在した。イギリスはアメリカにとって脅威である。従って、アメリカの北方にいるイギリス勢力に懸念を持ち、カナダの領土を欲するということもあった。イギリスの勢力に対する懸念は、アメリカの外交政策の原理原則である、モンロー主義(イギリスの影響力を排除する)に通底する。そうした動きは20世紀に入るまで続いた。カナダが自治領となり、独立国家となることで、アメリカの懸念は減少した。

 今回、トランプ大統領がカナダをアメリカの51番目の州と呼ぶなどの行為から、カナダ側の懸念が高まった。そして、アメリカとカナダの間に歴史的にある緊張関係に注目が集まっている。NATO加盟国であり、G7の一角であるカナダをアメリカが攻撃することは考えにくい。たとえカナダ攻撃の命令が出ても、アメリカ軍は「違法な命令である」として、動かない可能性が高い。しかし、このような緊張関係を生み出してしまったことは、国際関係に大きな影響を及ぼす。アメリカは同盟国でも攻撃するかもしれないという懸念を世界各国に持たせてしまうことは、アメリカの国益にとって大きなマイナスである。そして、それを注視しながらほくそ笑んでいるのは中国とロシアである。

(貼り付けはじめ)

アメリカは再びカナダにとって最大の脅威となっている(The United States Is Once Again Canada’s Biggest Threat

-ドナルド・トランプは北隣国カナダとの伝統的に緊張関係にあった関係を取り戻した。

ケイシー・ミシェル筆

2026年2月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/03/us-canada-threat-trump-carney-history/

ここ数週間、アメリカが国境を強制的に拡大することはない、NATO加盟国が他の加盟国を侵略することはないといった基本的な地政学的事実が、ドナルド・トランプ米大統領によるグリーンランドへの継続的な脅威によって、突如として揺らぎ始めた。カナダのマーク・カーニー首相が最近述べたように、これは「断絶(a rupture)」であり、古い秩序が崩壊し、新しい秩序が生まれようともがく瞬間である。

大西洋横断関係の亀裂に注目が集まっている一方で、その断絶の多くはカーニー首相にとってはるかに身近な問題、すなわち米加関係に集中している。トランプ政権下のワシントンが今や脅威となっていることに、デンマークやグリーンランドだけが突然気づいた訳ではないからだ。カナダもまた、今やアメリカ政府がカナダの主権(sovereignty)だけでなく、カナダという国家そのものを公然と脅かしているのを目の当たりにしている。トランプ大統領自身もカナダを幾度となく脅迫し、アメリカによるカナダ併合を要求し、両国の国境を撤廃すべきだと繰り返し示唆している。これは単なるおしゃべりではない。先週、トランプ政権当局者がアルバータ州の分離独立派と直接会談を開始したことが明らかになった。彼らはアルバータ州をカナダから分離し、アメリカに併合しようと躍起になっている。

カナダをアメリカの51番目の州にするというトランプの脅しを一笑に付した時代はとうに過ぎ去った。新たな現実が突如カナダ全土に波紋を広げている。トランプ政権下のアメリカは、受け入れがたい現実かもしれないが、突如としてカナダにとって最大の国家安全保障上の脅威となった。

カナダ国民はようやくこの現実を受け入れ始めている。しかし同時に、これはカナダが直面するアメリカの危機の、はるかに長く、はるかに根深い部分を浮き彫りにする現実でもある。実際、過去80年ほど続いた米加友好関係、世界最長の国境線は概ね平和裡に保たれ、ワシントンとオタワはおそらく世界で最も緊密な同盟国となったが、もはや時代錯誤(anachronism)、アメリカが北米におけるはるかに広範な拡大の歴史において単に立ち止まっただけの例外的な出来事のように思えるかもしれない。

トランプ政権下のアメリカ合衆国は、むしろ北の隣国を威嚇し、安定した同盟関係よりも野蛮な拡大(brutish expansion)を志向し、カナダを地図から完全に消し去ろうとする、伝統的な立場に戻ろうとしていると言える。この歴史はアメリカ合衆国ではほとんど見過ごされているが、ワシントンが再び信頼できるパートナーになるために、そして再び安定した北アメリカ大陸を見るために、検討する価値がある。

アメリカ合衆国がカナダの領土を欲しがる歴史は、アメリカ合衆国建国初期にまで遡る。1774年、フィラデルフィアで開かれたばかりの大陸会議(Continental Congress)は、カナダ国民に書簡を送り、彼らは「小さな人々(small people)」であると主張し、イギリスの支配を打破するための、芽生えつつある取り組みに加わるよう呼びかけた。この呼びかけには脅迫的な言葉が込められており、カナダ国民は「北アメリカの他の全ての国を揺るぎない友とするのか、それとも根深い敵とするのか」を考えるべきだと述べている。書簡には、もしカナダ人がアメリカ植民地人(American colonists)への参加を拒否した場合、彼らは「征服されて自由になる(conquered into liberty)」だろうと付け加えられていた。

これは決して少数派の立場ではなかった。「大陸の一致した意見は、カナダは私たちの領土でなければならないというものだ」と、後のアメリカ大統領ジョン・アダムズは1776年に書いた。「ケベックは奪取されなければならない」とベンジャミン・フランクリンも同様に、カナダを将来のアメリカ領土と見なしていた。カナダの歴史家マデリーン・ドロハンが明らかにしたように、フランクリンは当時アメリカがイギリス領北アメリカ全域を支配していた状況下で、フランス系カナダ人(当時カナダのヨーロッパ系植民地人口のほぼ全員を占めていた)の強制同化(forced assimilation)、あるいは全面的な追放(outright eviction)を主張した。

もちろん、こうした初期の立場は全て無駄になった。アメリカ軍はケベックへの壊滅的な攻撃を開始したが、戦略のまずさと天然痘の蔓延によって頓挫した。その後のイギリスとの交渉において、フランクリンがカナダを占領しようとした試みも失敗に終わった。アダムズ自身が記したように、「ああ、カナダよ! あの一帯は不幸と恥辱に満ちていたことを私たちは発見した(Alass Canada! We have found Misfortune and disgrace in that Quarter)」ということになる。

しかし、これらの失敗によって、アメリカのカナダに対する計画が終わることはなかった。米英戦争中、アメリカ軍は再びイギリス領カナダを視野に入れ、ある将軍はカナダを「アメリカの一部になる(one of the United States)」だろうと発言した。カナダ併合(Canadian annexation)は、この戦争全体の明確な目標ではなかったかもしれないが、この戦争自体、北アメリカ中部の大部分からイギリスの要塞を追放し、アメリカの拡張主義に対するイギリスの障壁を事実上終わらせたが、アメリカが大陸の覇権へと急速に突き進む、押しつけがましく、奪い取る大国であるというイメージを確固たるものにした。

その現実は、アメリカの大陸帝国主義(United States’ continental imperialism)が頂点に達した19世紀半ばに表面化した。当時、英米共同所有地として管理されていたオレゴン準州をめぐる紛争が続く中、米大統領候補ジェームズ・ポークの支持者たちは、太平洋岸北西部の北緯54度線までの全域に対する主権を放棄するよう英領カナダを説得する手段として、「54か40か、さもなくば戦え!(Fifty-Four Forty or Fight!)」と繰り返し叫んだ。ポークは最終的に全面戦争を諦め、北緯49度線までのアメリカの主権を確保した(その代わりにメキシコの分割に注力した)。それでも、ポークの帝国主義的支持者たちは止まらなかった。「明白な運命(Manifest Destiny)」という言葉の生みの親とされるジョン・オサリバンが書いたように、カナダの領土を含む「神の摂理によって割り当てられた大陸に広がることは、依然として明白な運命である(manifest destiny to overspread the continent allotted by Providence”—including Canadian territory.)」ということになる。

南北戦争(the Civil War)はアメリカを分裂させ、数十万人ものアメリカ人の虐殺を招いたが、それでもアメリカのカナダに対する計画を阻止することはほぼできなかった。戦争終結直後、アメリカはアラスカ購入を確定させ、帝政ロシア(tsarist Russia)から領土を獲得した。しかし、この購入は地政学的な空白の中で行われた訳ではない。購入を主導した国務長官ウィリアム・スワードは、アメリカが支配するアラスカがブリティッシュコロンビア、ひいてはそれ以上の領土を獲得する鍵となると見ていた。「自然は、この大陸全体が遅かれ早かれ、・・・アメリカ合衆国の魔法の輪の中に入るように設計している(Nature designs that this whole continent … shall be, sooner or later, within the magic circle of the American Union)」とスワードは1867年に聴衆に語った。ヴァージニア大学のアラン・テイラーが、この時代に関する傑出した歴史書の中で述べているように、「アメリカ人は(アラスカの)獲得をカナダに対する締め付けとして歓迎した」。彼らがすべきことはただ待つことだけだった。そうすれば、カナダは彼らのものになるはずだったのだ。

しかしながら、カナダ人は異なる方向へと進んだ。アメリカのアラスカ購入は、カナダを分裂させるどころか、主権国家としてのカナダと完全に独立したカナダのアイデンティティの確立に直接つながった。ジョン・マクドナルドをはじめとする指導者たちの指導の下、カナダ人は全国規模の連邦を発足させ、その後数年間で次々と州を新たなカナダ自治領に加えた。アメリカの併合論者(U.S. annexationists)の餌食になるのではなく、カナダは統合を進め、アメリカのさらなる拡大を鈍らせ、150年以上続く独立した国家としての地位を確固たるものにした。

建国の父たち(the Founding Fathers)のカナダに対する領有権主張、北の隣国に対するアメリカの脅威の一貫性、アメリカの脅威に直面したカナダの統合といった要素は全て、ごく最近まで、魅力的な歴史の脚注、より激動の時代を捉えたスナップショットだった。1890年代にアメリカの政治家たちが潜在的な戦争を警告し、1910年代には「カナダのあらゆる場所に星条旗を掲げる」よう求め続け、1930年代にはワシントンがカナダに対する有事の戦争計画を策定したにもかかわらず、カナダの主権に対するアメリカの実際の脅威は大幅に減少した。実際、米加関係は非常に緊密になり、良好な関係は最終的に当然のことと見なされるようになった。ワシントンが維持した最も緊密なパートナーシップは、安定した北アメリカの安全保障体制によってアメリカの世界的な支配力の拡大が可能になり、背景の雑音のようなものへと薄れていった。

そして、全ては崩壊した。トランプのグリーンランドに対する脅しは、カナダに対する脅しと並行して行われてきた。実際、グリーンランド危機のピーク時でさえ、NBCニューズはトランプがカナダへの「密かに関心を強めている(privately ramping up his focus)」と報じ、カナダの地図にアメリカ国旗を掲げた地図を見せたほどだった。さらに、カナダ国民がよく認識しているように、トランプのグリーンランドに関する言説、つまりグリーンランドを守れるのはアメリカだけであり、そもそもデンマークにはグリーンランドに対する権利はないという言説は、カナダの北極圏の島々にも容易に当てはまり得る。その多くはグリーンランドに隣接している。

トランプだけではない。MAGAのイデオローグであるスティーヴ・バノンは、カナダに対するアメリカの宗主権を幾度となく声高に訴えてきた。バノンは最近、「かつてカナダにとって大きな障壁であった北極圏北部が、今や最大の脅威となっている」と述べ、カナダの「弱点(soft underbelly)」だと主張した。さらにバノンは、カナダは「次のウクライナになる可能性がある」と述べた。ウクライナには「アメリカに敵対する人々」が溢れているそうだ。そして、これは北極圏だけではない。今週、『フィナンシャル・タイムズ』紙は、トランプ政権当局者がアルバータ州の極右分離主義者と複数回直接会談したと報じた。彼らはアメリカへの加盟の熱意を隠そうともしていない。

国境を拡大し、近隣の分離主義運動を煽り立てようとする新帝国主義大国(a neoimperialist power)である。これは全て、地域的支配を主張し、近隣諸国を分裂させる手段だ。実際、カナダとウクライナの類似点は、不快なほどに緊密になっている。しかし、カナダ国民は、かつてウクライナ国民であったのと同様に、この事態を黙って受け入れるつもりはない。カナダ国防省は新たな文民・民間人防衛軍(a new civilian defense force)の構想を練り始めており、オタワ政府は1世紀ぶりに、アメリカの侵略への対応をモデル化した軍事演習の計画を開始した。

そしてカナダ当局はついに、そして公に警鐘を鳴らし始めた。元カナダ国連大使のボブ・レイは『グローブ・アンド・メール』紙に対し、カナダに対するアメリカの脅威は「存亡の危機」(U.S. threats against Canada are “existential)に瀕していると語り、元カナダ国防長官はトランプ大統領の行動はカナダを警戒態勢に追い込むことになると述べた。あるカナダの紛争研究者は『ガーディアン』紙に次のように語った。「私たちはアメリカの友好と寛大さ(the friendship and benignness of the United States)に大きく依存してきたのに、突然、その両方が消えてしまった。消滅してしまった。今になってようやくカナダ国民がこの意味を真に理解し始めたのではないかと危惧している」。これはまさに衝撃的な出来事であり、かつて北アメリカに存在していた安定がもはや当然のこととは考えられなくなったことを示している。NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)から砕氷船団、情報収集に至るまで、あらゆるものが突如として未解決の問題となり、カナダの領土保全さえも疑問視されるようになった。

しかし、トランプ大統領は恐らく気づいていないだろうが、カナダはカナダ国外のほとんどの人々が知るよりもはるかに長く、アメリカの計画を撃退してきた歴史を持っている。その歴史は、ここ一世紀よりも今の方がはるかに意味を持つ。それは全て、始まったばかりの断絶(a rupture)のおかげだ。

※ケイシー・ミシェル:ヒューマン・ライツ財団の「クレプトクラシー対策プログラム」の責任者。『アメリカのクレプトクラシー:アメリカはいかにして史上最大のマネーロンダリング計画を作り上げてきたのか(American Kleptocracy: How the U.S. Created the World’s Greatest Money Laundering Scheme in History)』の著者。Xアカウント:@cjcmichel

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は、カナダやメキシコに強く当たり、グリーンランドやパナマ運河の領有を主張している。これをいつものトランプの激しい言葉遣いとして片づけてはいけない。彼の発言の裏には非常に重要な考えが存在するのだ。それは「モンロー主義」である。モンロー主義という言葉は日本人であれば、中学校や高校の歴史の授業で習った言葉である。第5代米大統領ジェイムズ・モンロー(James Monroe、1758-1831年、73歳で没 在任:1817-1825年)が公式に宣言した、アメリカの外交政策上の指針である。一般的には、アメリカが世界から孤立する、ヨーロッパに関わらないという考えだと思われているが、これは正確ではない。モンロー主義は、アメリカが西半球(南北アメリカ大陸)を支配する、ヨーロッパには手を出させない、その代わりにアメリカはヨーロッパに手を出さないという考えだ。この時期、南米諸国がスペインの植民地から独立をしていた時期で、各国にイギリスが支援をしていた。それは、独立後に南米諸国をイギリスの勢力圏に入れて、イギリス製品の市場にしようという魂胆があったからだ。それを阻止したいということでモンロー主義、モンロー宣言が出された。

 第二次世界大戦後のアメリカは、冷戦期、ポスト冷戦期を通じて、世界の極として世界支配を続けてきた。しかし、トランプ大統領はそうした介入主義的な外交政策ではなく、モンロー主義に戻ろうとしている。アメリカは世界支配から退き、西半球に立て籠もるという考えである。そして、21世紀のモンロー主義の対象は中国とロシアということになる。中露両国の南米諸国への影響を排除したいとして動いている。しかし、南米諸国もトランプの意向に唯々諾々と従う訳ではない。中露、アメリカとの両天秤をかけて、自分たちの利益を生み出そうとしている。

 3月25日の最新刊ではトランプの外交政策について詳しく分析している。下記論稿を使ってはいないが、非常に参考になる論稿である。

(貼り付けはじめ)

トランプは自分自身のモンロー主義を持っている(Trump Has His Own Monroe Doctrine

-大統領として、対象地域に対する彼の攻撃的な姿勢は、多くの国々を中国に好意的にさせた。

オリヴァー・ステンケル筆

2024年10月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/17/trump-election-latin-america-monroe-doctrine-china-huawei-venezuela-far-right/

2024年11月のアメリカ大統領選を前に、ラテンアメリカの右派指導者数人が共和党候補であるドナルド・トランプ前大統領への支持を公然と表明している。その中には、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領、エルサルヴァドールのナイブ・ブケレ大統領、ブラジルのジャイル・ボルソナーロ前大統領、そして彼らの同盟者や支持者も含まれている。「トランプの当選で、私たちは大きな転換を見ることができる。そして、神の思し召し(God Willing)によりそうなるだろう」と、ボルソナーロ前大統領の息子でブラジル連邦下院議員のエドゥアルド・ボルソナロは、7月に開催されたブラジルの保守政治行動会議で語った。

ラテンアメリカ中のトランプ支持者は、前大統領のさまざまな文化戦争十字軍(culture war crusades)や経済政策に共感している。また、トランプがホワイトハウスに戻ることで、アメリカの海外介入(U.S. interventions abroad)を終了させ、より平和な世界が実現するとの意見も多い。2022年、ジャイル・ボルソナーロは、「(トランプが)まだ政権に就いていれば、ウクライナでの戦争は起こらなかったと考える人もいる。私はそれに同意する」と述べた。 政治家でボルソナーロの盟友であるビア・キシスは最近、『ニューヨーク・タイムズ』紙に、「トランプが候補者だったころ、第三次戦争の可能性が取り沙汰された。しかし、トランプが大統領を辞めるまでは戦争は起こらなかった。そして、現在は戦争が世界全体に影響を与えている(Back when Trump was a candidate, there was talk of a possible third war. But there was no war—until Trump left office, and now war is affecting the whole world)。」と書いている。アルゼンチンの作家でミレイ支持者のアグスティン・ラジェは、トランプの復帰は 「平和を保証するために(to guarantee peace)」不可欠だと語った。

しかし、少なくともラテンアメリカの場合、トランプがホワイトハウスに戻れば、1期目の時のようにアメリカの外交政策がはるかに介入的になるという強い証拠がある。当時、トランプはキューバやヴェネズエラのような国に対して「最大限の圧力(maximum pressure)」戦術を採用し、ブラジルのような国には中国のハイテク大手ファーウェイを禁止するよう無駄に圧力をかけた。

トランプが第2期の大統領になれば、ラテンアメリカ諸国がアメリカと中国の間で勃発しつつある競争において、どちら側を選ぶかについて、より明確なアメリカの圧力が復活する可能性が高い。そうなれば、多くの国々が中国に懐柔されたトランプ大統領の1期目と同様、この地域に大きな摩擦が生じる可能性がある。トランプ大統領のラテンアメリカに対するアプローチが攻撃的になればなるほど、各国政府は北京との関係を緊密化させることでワシントンとバランスを取ろうとするだろう。

最近のアメリカの歴代政権のほとんどは、1823年にラテンアメリカにおけるヨーロッパ勢力の干渉に対するワシントンの同地域の支配権(authority)を主張したモンロー主義(Monroe Doctrine)から明確に距離を置いてきた。モンロー主義は、西半球(Western Hemisphere)におけるアメリカの軍事的または外交的介入の口実としてしばしば使用され、特に20世紀には主にアメリカ帝国主義(U.S. imperialism)の一形態とみなされていた。 2013年、当時の米国務長官ジョン・ケリーは「モンロー主義の時代は終わった(“The era of the Monroe Doctrine is over)」と発表した。

しかしながら、トランプと支持者たちは、モンロー・ドクトリンを明確に擁護している。2018年の国連総会でトランプは、「この半球と自国の問題に対する外国の干渉を拒否することは、モンロー大統領以来の私たちの国の正式な政策である」と主張した。今回の警告はヨーロッパ諸国ではなく、ロシアと中国に向けられたもので、中露両国は過去10年間にほとんどの南米諸国の主要貿易相手国となった。

おそらくトランプの世界観の最も極端な要素は、トランプの国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンによって明らかにされた。彼は2020年の著書『ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日(The Room Where it HappenedA White House Memoir)』の中で、トランプはヴェネズエラに軍事的オプションを求め、そして、『本当にアメリカの一部だから(it’s really part of the United States)』という理由でヴェネズエラを維持すると主張した」と書いている。2019年4月、ボルトンは「今日、私たちは誇りをもって全ての人に宣言する。モンロー・ドクトリンは健在である(Today, we proudly proclaim for all to hear: The Monroe Doctrine is alive and well)」と述べた。

このことは、世界全体におけるトランプのアイソレイショニズム的な外交政策が、西半球を支配したいという強い衝動につながることを示唆している。ジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授が『フォーリン・アフェアーズ』誌で論じたように、「『アメリカ・ファースト』はモンロー主義の再活性化(reenergized)を特徴とする。旧世界の前哨基地(Old World outposts)からのアメリカの撤退は、新世界におけるアメリカの影響力を守り、ライヴァルがそこに足場を築くのを防ぐための、おそらくより強硬な取り組みの強化を予感させる。

振り返ってみると、トランプ大統領のラテンアメリカ戦略は目標を達成することができなかった。破壊的な制裁(crippling sanctions)と威嚇的なレトリック(menacing rhetoric)にもかかわらず、ボルトンが「暴政のトロイカ(Troika of Tyranny)」と名付けたニカラグア、ヴェネズエラ、キューバの政権は維持されている。トランプがラテンアメリカ諸国政府にファーウェイを禁止したり、中国との関係を格下げしたりするよう説得した努力も、具体的な成果は得られなかった。ボルソナーロ政権時代でさえ、ブラジルの対中貿易は拡大する一方だった。

特にファーウェイに対するトランプ政権の戦略は、ラテンアメリカの政策立案者たちを当惑させた。アメリカは、ファーウェイが中国のスパイ活動のためのトロイの木馬(Trojan horse)として利用される可能性があるとして、ラテンアメリカ諸国に対し、5Gネットワークのコンポーネント・プロヴァイダーとしてファーウェイを排除するよう圧力をかけた。当時、トランプ政権はヨーロッパやラテンアメリカの政府に対し、ファーウェイを利用しないよう脅し、そうすればワシントンがアメリカの情報共有を停止する恐れがあると警告した。

しかし、ワシントンはラテンアメリカの政治的現実を無視し、政治的・経済的エリートの間には北京と対決する意欲がほとんどなかった。更に悪いことに、アメリカは中国の5G技術に代わる真の選択肢を提示しなかった。ファーウェイの競争相手、エリクソン、ノキア、サムスンなどは、より高価であり、ワシントンはその差額を支払うという提案を行わなかった。

ファーウェイがもたらす危険性についてのトランプ大統領の警告も、ほとんど効果を持たなかった。ほとんどのラテンアメリカの国民にとって、中国にスパイされることと、アメリカにスパイされることの間には、ほとんど違いがない。アメリカは、例えば、ブラジルのディルマ・ルセフ前大統領をNSAの監視下に置いたことについて謝罪を拒否しており、その他にも、この地域におけるアメリカの介入主義や秘密活動(covert activities)の多くの事例がある。

トランプ大統領のこの地域に対する強硬なアプローチ(muscular approach)は、北京の利益に大きく貢献した。ラテンアメリカ諸国政府は、トランプ大統領の姿勢とバランスを取るために中国との関係を強化した。北京はラテンアメリカ諸国政府との交流において主権を尊重することを強調しているが、これはグローバルサウス(global south)全域の政府にとっていかに魅力的に聞こえるかを意識してのことである。

トランプ大統領は最終的にヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を打倒するための軍事介入を断念したが、彼の攻撃的なレトリックは地域を緊張させた。アメリカが侵攻するという漠然とした不安でさえ、ヴェネズエラが主権に対する深刻な脅威に直面しているというマドゥロ大統領のシナリオをより強固にする旗を掲げた集会のような効果をもたらした。また、国の経済的苦境をすべてアメリカの制裁のせいにする機会にもなった。その結果、いくつかの地域の指導者たちは、躊躇しながらマドゥロ側についた。

トランプの大統領就任一期目の中南米に対する敵対的なアプローチは失敗したが、ホワイトハウスに戻ったら同じ戦略を繰り返す可能性が高いと、ブエノスアイレスのトルクアト・ディ・テラ大学教授フアン・ガブリエル・トカトリアンは『アメリカズ・クォータリー』誌で、「共和党の上院議員と下院議員は、モンロー主義の有効性を再確認する決議を提出した」と警告を発している。共和党の多くの有力な発言者も、この地域に対して定期的に脅迫的な言葉を使っている。

昨年、トランプはアメリカがパナマ運河の支配権を失ったことを嘆いた。トランプ、副大統領候補のJD・ヴァンス、テキサス州選出の連邦上院議員テッド・クルーズ、フロリダ州知事のロン・デサンティス、元国連大使のニッキー・ヘイリーらは皆、麻薬カルテルと戦うためにメキシコを空爆すると脅している。アメリカの国際法違反(U.S. violations of international law)を助長するこのようなレトリックは、反米の主張にとって好都合であり、中国がこの地域でより魅力的なパートナーとして自国を位置づけることを容易にするだろう。

トランプ大統領は、ドル回避(circumvent the dollar)に向けた取り組みを行っている国の製品に高関税を課す可能性がある。これはおそらく、BRICSグループ内の国々との貿易の一部に現地通貨を使用しているブラジルにも当てはまるだろう。メキシコはトランプ大統領の復帰で最も影響を受ける国の1つとなる可能性が高く、メキシコで生産された製品に高額の関税を課し、移民を減らし、アメリカの貿易赤字を削減すると公約している。

しかしながら、トランプ大統領は、ラテンアメリカに対する最も極端な提案の一部を撤回する可能性がある。もしトランプが1000万人以上の不法移民(その大部分はラテンアメリカ出身者)の大量国外追放(mass deportations)を実施するという公約を実行すれば、送金は減少し、帰国した労働者によって労働市場は不安定化する可能性がある。その結果生じる労働者不足はアメリカ経済に悪影響を及ぼし、インフレを上昇させる可能性があり、トランプ大統領が脅しを完全に実行する可能性は低い。

トランプ大統領の最初の任期中、ブラジリアからブエノスアイレスまでの指導者たちは、ワシントンに同調し、中国から離れさせようとするアメリカの圧力にほぼ耐えることができた。この地域全体では、大国間の多角的な連携は、今後数年間は可能であり、中国との関係縮小を求めるアメリカの圧力にはわずかなコストで抵抗できるというコンセンサスが存在し続けている。

トランプはしばしば取引重視的な外交政策観(transactional foreign-policy view)を持っていると評されるが、これはほとんどのラテンアメリカ政府にも当てはまる。ブラジルはその典型だ。ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領は、ウクライナ戦争に対するロシアへの明確な非難を控えるという決定を下したが、それは西側の偽善(hypocrisy)を非難する道徳的な言葉で表現されている。例えば、ブラジルはウクライナ戦争に反対することで、ロシアのディーゼル燃料や肥料を安く購入し、数百万ドルを節約することができた。モスクワとの関係を守ることは、ブラジルの戦略的余裕を維持し、アメリカを牽制ために極めて重要だと考えられている。

同じ理由で、ラテンアメリカ諸国は、ファーウェイ論争に象徴されるような、中国のような独裁国家に技術的に依存することのリスクについてのアメリカのレトリックをほとんど気にしていない。そうすることで測定可能な経済的利益が生まれるのであれば、各国政府は確かにファーウェイを5Gネットワークから排除することを検討するだろう。しかし、アメリカが具体的なインセンティヴや資金を提供しなければ、その可能性は低いと考えられる。

新たなモンロー主義を通じてラテンアメリカにおける中国の役割を縮小しようとするトランプの試みは、おそらく再び反撃を受けることになるだろう。外交問題に対するトランプの不安定なアプローチに、ラテンアメリカの指導者たちは不安定さを感じ、他の大国との結びつきを強めるためにアメリカとの関係をヘッジ(両賭け)しなければならないと考えている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回は、「北米大陸は次の新興巨大市場になる」という論稿をご紹介します。著者は、アフガニスタンやイラクで米軍や多国籍軍を率い、オバマ政権ではCIA長官も務めながら、不倫スキャンダルで失脚したデイヴィッド・ペトレイアス退役陸軍大将です。ペトレイアスは、軍歴もさることながら、学歴も素晴らしいもので、陸軍士官学校、アメリカ陸軍指揮幕僚大学を優秀な成績で卒業し(戦前の日本陸軍で言えば恩賜の軍刀組です)、プリストン大学大学院(ウッドロー・ウイルソンスクール)で国際関係論の博士号を取得しています。

 

 ペトレイアスの今回の論稿は、ハーヴァード大学ケネディスクールの研究員として発表した論稿の要約で、言いたいことは「北米大陸(アメリカ・カナダ・メキシコ)は次の新興巨大市場になる」という内容です。内容自体は目新しいものでないし、陳腐なもので、著者が有名であるくらいがウリです。

 

 このように「アメリカは凄い」「アメリカは偉い」と言い続け、BRICSの台頭やAIIBに見られる、ヨーロッパと中国の結合に対抗しようとする姿は何だか哀れを誘うものです。アメリカとそれに追随する日本が中国を包囲する(自由と繁栄の弧やら安倍版の大東亜共栄圏的発想)つもりが、もっと大きく包囲され、気付いたら日米が孤立していたなんてことにならないように、今からでも動くべきでしょうが、日本はこのままアメリカの下駄の雪としてどこまでもついて行くしかないと思っている人たちが政権にいるために馬鹿な選択しかできないでしょう。

 

==========

 

北アメリカ大陸:次の巨大新興市場となるか?(North America: the Next Great Emerging Market?

―アメリカ、カナダ、メキシコが21世紀の世界経済を牽引する位置にいるその理由

 

デイヴィッド・ペトレイアス、パラス・D・バヤーニ筆

2015年6月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/06/25/north-america-the-next-great-emerging-market-united-states-mexico-canada/?utm_content=buffer7967b&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 米連邦議会はついにバラク・オバマ大統領に対して、彼が交渉を妥結させようとしている環太平洋経済協力協定(TPP)と環大西洋貿易・投資協力協定(TTIP)に関する「促進」権限を与えようとしている。しかし、オバマ大統領の進める貿易協定についての長引く激しい議論は、将来の市場統合の価値に対するワシントンにおける疑念を増大させ、力強い世界経済の建設などできないという悲観論を拡大させている。こうした中で全く触れられない疑問が存在する。それは「アメリカと国境を接する近隣諸国は競争できるか?」というものだ。

 

 この疑問に対する答えは、明らかに「イエス」だ。実際、緊密な市場統合、アメリカ、カナダ、メキシコ3カ国それぞれの経済力、4つの技術革命によって、3カ国は次の巨大な新興市場となれる位置に付けているのだ。

 

 現在、世界市場は不確実な動きの中にあることは疑問の余地がない。中国の経済成長は鈍化している。投資主導の経済発展の疲れ、人口構造の変化、10年に渡る労働コストの上昇、財政赤字の急増、環境汚染と汚職の拡大といった問題と中国は戦っている。インドは、「モディ時代」が訪れようとしているが、経済成長を促すために必要な諸改革がまだ軌道に乗っていない。ブラジルは景気後退に陥り、「将来の大国」の地位に留まり続けているように思われる。

 

 先進諸国もそれぞれ同じような問題を抱えている。日本は、安倍晋三首相による一連の経済改革である「アベノミクス」の下で、ある程度の成果を収めているが、経済における競争を導入し、企業の慣習を改革するという最も厳しい改革は不完全なままである。一方、日本の人口における構造変化の影響は深甚なものである。ユーロ圏は一時的なそれぞれの国で程度の異なる経済回復を経験している最中である。しかし、ヨーロッパの先進諸国は堅実な経済成長の道進むための実質的な諸改革を必要としている。

 

 世界経済をこれまで牽引してきた国々の経済成長は鈍化しているが、北米諸国の経済は急速に発展できる位置にある。3か国の経済における重要な中核をなしているのが他に類を見ない市場統合である。確かにTPPTTIPのような貿易協定にも問題はある。競争に晒されるアメリカ国内のいくつかの経済セクターでの雇用の喪失はその代表例だ。北米自由貿易協定(NAFTA)の下で、北米3カ国は繁栄を共に享受してきた。 貿易量は20年間で3倍になり、その総額は1兆ドルを超え、北米3カ国をまたいで数百万の雇用の創出が行われた。この事実は経済的つながりの改善が生み出す利益であり、注目に値する。

 

 一国レヴェルで言えば、アメリカ経済は根本的な有利さを保持している。それは、比較的自由化されたビジネス環境、技術革新と企業家精神に富んだ文化、大きくて動きが速い資本市場、技術的な先進性を生み出し、製品化する小規模企業である。カナダの銀行システムは世界で最も健全であることは証明されている。カナダの石油とガス生産部門は協力である。昨年の石油価格の下落では影響を受けたがそれでもその強さは健在だ。メキシコはマクロ経済の面で高い安定性を達成している。現在、海外の国々での労働コストが上昇し続けているが、メキシコの現政権はメキシコが製造業の一大拠点になるための諸改革を強調している。

 

 こうした強みに加えて、北米3カ国は4つの部門の大きな変化から恩恵を蒙っている。この4部門とは、エネルギー、先進製造業、生命科学、情報技術である。                                                  これら4つのこれまでの制限を打ち破る革命によって、北米アメリカ大陸は次の新興巨大市場として世界に登場することになるだろう。

 

これらの大転換は共鳴し合って起きている。採掘技術の発展によって、石油埋蔵量は拡大し、石油と天然ガスの価格は安くなった。これによってアメリカはエネルギー上の独立を得ただけでなく、製造業の復活も果たした。製造業では、ロボット工学と3Dプリンターによって、工学における基準が向上し、コストを下げることが出来た。クラウド・コンピューターとビッグデータを通じてIT技術の応用は拡大した。これらを使って、アメリカの製造業と生命科学は、それぞれ「産業インターネット」と「ヘルスケア・インターネット」を出現させつつある。

 

 北米各国の経済は、これらの諸分野で有利な位置を占めているが、こうした動きを加速させるために、政策決定者たち、特にアメリカ連邦議会が行えることはまだまだたくさん存在する。

 

 第一にそして最も重要であるが、米連邦議会は政府の財政を規律あるものにすることでビジネス環境を改善する必要がある。これには、アメリカの社会保障制度の改革と、慎重に選ばれた軍事・非軍事プログラムの削減によって予算の大幅削減と転換を行う必要が出てくる。これらの予算とプログラムの削減は理想的には、アメリカの企業に対する税制の再構築と共に行われることが望ましい。それには複雑さと世界で最高水準にある全体としての税率の削減が行われるべきだ。

 

 加えて、アメリカ連邦議会はアメリカが技術革新の先頭ランナーでいられるようにいくつかの方策を立てるべきだ。軍事用・非軍事用の科学研究に対する連邦予算は、2009年以降、対GDP比で20%以上も下落している。これを上昇させねばならない。応用研究に対する企業の投資を継続させるために、研究開発に関する減税措置は高級に継続させるべきだ。IT関連企業がサイバーテロとの戦いに参加することを認める法律の成立によって、各企業と米国土安全保障省との間での情報共有が以前に比べてだいぶ楽になった。これは、IT部門におけるアメリカの指導的な立場を守る上で重要不可欠だ。

 

 教育システムと移民システムの改革によって、アメリカは世界中の最高の人的資源を魅了することになるだろう。各州の政策決定者たちは、厳格な教育に関する基準、特に数学、科学、読解能力に関する基準を設け、高い質の教育を提供する特別認可学校などを通じてより大きな競争と選択を促すべきだ。連邦議会は包括的な移民改革法案を通過させ、H-1Bヴィザの拡大、教育と仕事を持つ移民の受け入れの促進のためのシステム作り、非熟練労働者たちのための永住権や市民権獲得の道筋づくりを行うべきだ。

 

 北米大陸がエネルギー生産部門でトップを維持するために、大統領と連邦議会は、カナダからアメリカへ石油を輸出するためのキーストーンXLパイプラインを承認すべきだ。そして、アメリカ国内で生産された石油の輸出を許可し、更には、電力の移送のための高電圧の送電システムの建設によって再生可能エネルギーの開発を促進するようにすべきだ。米環境保護庁には水圧粉砕式に対する奇声を行う権限が与えられた。これによって、シェールガス生産を安全なものにする高質のそして共通の基準が決められ、これまで各州でまちまちだった規制が統一された。結果として、シェールガス革命は継続されることになった。

 

 最後に、連邦議会はアメリカ国内の物理的、そしてデジタル的な社会資本を強化するために投資を賢く行うべきだ。国家社会資本銀行を創設し、自動車燃料税を増税しかつスライド制にし、どこでも使えるブロードバンド・インターネットを発達させる戦略を立てることで、アメリカの生産性が向上だろう。

 

 こうした根本的な強さは、アメリカ、カナダ、メキシコが現在の不確実な世界経済の状況を乗り切ることの手助けとなる。逆風に対する政策から順風に対する政策に転換することで、連邦議会は今日起きている4つの革命の成果を確かなものとすることができ、これから数十年間の経済の大変化を進め、アメリカと北米の近隣諸国の将来に大きな経済的な果実を与えることが出来るようにすることができる。

 

※著者たちはハーヴァード大学ケネディ記念行政学・政治学大学院付属ベルファー記念科学・国際問題研究センターから共同執筆した報告書を発表した。タイトルは「次の大規模新興市場となるか?:北米大陸における4つの融合された革命の評価」

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23




 
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