古村治彦です。
ウクライナ戦争とイラン戦争によって私たちはドローン兵器が有効であることを知った。有効であるというのは「殺傷能力が高い(正確に目標である建物や人間を破壊、殺傷できる)」ということを意味するので使いたくない言葉である。ウクライナは西側諸国からの支援もあり、戦争を継続できている。西側諸国はこの4年以上にわたる大規模戦争で貴重なデータ、実戦でしか得られないデータをウクライナ側から得ることができた。
拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体』(ビジネス社)で、私はシリコンヴァレーのIT企業、スタートアップ企業が米国防総省やアメリカ軍に深く食い込み、巨額の予算を分捕っていることを紹介した。彼らは、これまでの戦闘機や戦車、ミサイルなどの兵器を製造し、国家(軍隊)に買ってもらうことで巨額の利益を得てきた旧・軍産複合体(主要な軍需産業5社を「プライム」と呼ぶ)とは異なり、ソフトウェアやシステム、そしてドローンを主力製品・主力商品としている。
戦争は、「精密な大量攻撃の時代(precise mass in war)」になりつつある。最新鋭で高価なミサイルや戦闘機、戦車の時代から、大量のドローンでの一斉攻撃(コンピュータで制御されている)の時代になりつつある。そして、これらの武器の方が安価だということになる。国家の経済力や生産力が軍事力の基盤になるという時代が長く続いたが、それも終わりを迎えつつある。
さらに重要な点について、下記論考の著者ファリード・ザカリアは次のように指摘している。
「1991年の湾岸戦争は、先進技術が戦争をより精密なものにできることを世界に示した。2026年、イランは世界にさらに重大なことを教えている。それは、精密さが大量生産される時代(Precision will now be mass-produced)が到来したということだ。勝利を収めるのは、単に最高性能の兵器を保有する国ではない。少数の精巧で高価な兵器と、膨大な数の安価なドローンを組み合わせられる国こそが勝利を収めるだろう。人間の判断は、やがてコンピュータアルゴリズムに取って代わられるだろう(Human judgment will over time give way to computer algorithms)。これが戦争の未来だ。そして、それは私たちの想像をはるかに超える速さで到来している」
コンピュータアルゴリズムで攻撃対象を識別するということは、どの人間を攻撃し、命を奪うかをコンピューターが決める時代が来るということだ。ウクライナでは電波障害で人間の操縦ができなくなった段階で、ドローンがAIによって自力で(自律的に)攻撃対象を識別し、攻撃を実施するということが実現している。映画『スターウォーズ』に出てくる、ドロイト兵器(キラーロボット)が近い将来実現するということだ。AIによって人間が選別される時代というのはSFとしては興味深いが、現実として恐怖を掻き立てる未来である。
(貼り付けはじめ)
イランと新たな戦争の計算(Iran and the New Arithmetic of
War)
-安価な自律型兵器(autonomous weapons)は戦闘の経済性(the economics of combat)を根底から覆しアメリカに重要な教訓を与えている。
ファリード・ザカリア筆
2026年3月20日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/03/20/iran-drone-war-lessons-fareed-zakaria/
中東地域における日々の攻撃と報復攻撃のニュースの裏側で、戦争は根本的に変化しつつある。テヘランによる報復攻撃の最初の1週間で、ペルシア湾岸諸国への攻撃のうち約71%がドローンによるものだった。アラブ首長国連邦(UAE)だけでも、わずか8日間で1422機のドローンと246発のミサイルが探知されたと報じられている。こうした傾向の多くは、すでにウクライナで垣間見ることができた。しかし、イランにおいては、戦争の未来像が明確に浮かび上がってきた。
外交問題評議会(the Council on Foreign Relations、CFR)のマイケル・ホロウィッツは、「私たちは現在、精密な大量攻撃の時代(precise
mass in war)に突入した」と述べている。まさにその通りだ。数十年間、精密戦争(precision
warfare)とは、少数のトマホークミサイル、ステルス爆撃機、あるいは戦闘機を意味していた。しかし今や、市販の部品で組み立てられ、群れをなして発射される一方向ドローンを意味するようになった。かつては巨大な工業国が必要としていたものが、はるかに小さな国々によって組み立て、改良され、規模を拡大できるようになっているのだ。
戦争の経済構造は根底から覆されつつある。シャヘド型ドローンは1機あたり約3万5000ドルだ。パトリオット迎撃ミサイルは約400万ドルで、100機以上のドローンが購入できる。これが新たな紛争の計算(the new arithmetic of conflict)だ。攻撃側は数千ドル、防御側は数百万ドルを費やす。そして、たとえ防御が成功したとしても、それは消耗戦(a form of attrition)となる可能性がある。
しかし、この革命はドローンだけにとどまらない。真の核心は、新たな軍事アーキテクチャ(a
new military architecture)にある。安価な自律システム(cheap
autonomous systems)、人工知能による標的設定(artificial
intelligence-assisted targeting)、商用衛星画像(commercial
satellite imagery)、強靭な通信(resilient communications)、統合センサー、そしてサイバーツール(integrated sensors and cyber tools)が全て連携して機能する。目的は単に攻撃することではない。時間を圧縮すること(to compress time)、つまり敵が移動、隠蔽、あるいは態勢を立て直すよりも速く、敵を発見し、判断し、攻撃することにある。昨年行われた実験で、アメリカ空軍は、機械が10秒以内に推奨事項を生成し、人間だけのティームの30倍もの選択肢を提示したと発表した。
古い軍事的優位性のモデル(the old model of military
supremacy)は、精巧なシステム(exquisite systems)に依存していた。壮大で高価、生産に時間がかかり、失うと大きな痛手となるシステムだ(magnificent, costly, slow to produce, painful to lose)。しかし、それだけではもはや十分ではない。2023年、キャスリーン・ヒックス米国防副長官は、アメリカが敵対国に対抗するために発表されたばかりの国防総省のレプリケーター構想(the Pentagon’s just-unveiled Replicator)について、「小型で、スマートで、安価で、多数存在する(“small, smart, cheap and many”)」システムの必要性を訴えた。明日の戦争に勝利するのは、単一の最高のプラットフォームを持つ側ではないかもしれない。十分な数の優れたプラットフォームを、安価に、迅速に配備し、それらを十分にインテリジェントにネットワーク化できる側かもしれない(t may be the one that can field enough good platforms, cheaply
enough, quickly enough, and network them intelligently enough)。少数の優れたものよりも、多数の優れたものの方が勝るだろう(Lots of good stuff will beat small numbers of great stuff)。
アメリカはイランのシャヘド136をモデルにした低コスト攻撃ドローン「ルーカス」を実戦配備した。世界で最も先進的な軍隊が、事実上、制裁対象のならず者政権(a sanctioned rogue regime)から学んでいるのは、戦争の論理(the
logic of warfare)が変化したためだ。量そのものが独自の価値を持つようになった―特にソフトウェア、自律性、リアルタイム接続と融合した場合はそうなる。ホロウィッツは、精密な大量生産は「機関銃や戦車のように(just like machine guns or tanks)」戦争の常態となるだろうと主張する。
ウクライナはこの新時代の偉大な実験場であり続けている。必要に迫られ、戦時下における迅速な適応モデルを構築してきた。ウクライナの迎撃ドローン「スティング」は1機約2000ドルで、最高時速280キロで飛行し、製造元によると2025年半ば以降3000機以上のシャヘドを撃墜しており、ロイター通信によると月産1万機以上となっている。ウクライナのテストパイロットの一人は、一人称視点ドローンを既に操縦できる者であれば、このドローンの操縦を習得するのに「3~4日」しかかからないと述べている。
そして、ソフトウェア面も重要だ。ウクライナは、同盟諸国がドローンAIを訓練できるよう、戦場データへのアクセスを開放した。これにより、パターン認識能力と標的探知能力が向上する。ミハイロ・フェドロフ国防相は、ウクライナは現在、「数万回の戦闘飛行で収集された数百万枚の注釈付き画像」を含む、「世界に類を見ない独自の戦場データ群」を保有していると述べている。つまり、この戦争で最も価値のある成果は、ハードウェアだけではないかもしれない。データこそが、その真価を発揮する可能性があるのだ。
だからこそ、その影響はウクライナやペルシア湾岸地域にとどまらない。ウクライナ軍最高司令官は、モスクワが現在、シャヘド型ドローンを1日404機生産しており、最終的には1日1000機を目指していると述べている。対照的に、ロッキード・マーティン社は2025年に約600機のパトリオット迎撃ミサイルを生産し、2027年までに2000機まで増産する計画だ。この対比こそが、現状を物語っている。問題はもはや単なる技術の高度化(technological sophistication)ではない。産業規模(industrial
scale)、ソフトウェアの統合(software integration)、そして戦場で得られた教訓を大量生産に迅速に反映させるスピード(the speed with which lessons from the battlefield are turned into
mass production)こそが、真の課題なのである。
この軍事革命(revolution in military affairs)は、より深い意味合いを数多く含んでいる。ドローンが配備されたことで、戦場はあらゆる場所に広がり、兵士たちは休息を取る暇もなくなる。人間が戦場から遠く離れることで、戦争は構想しやすくなる一方で、膠着状態に陥りやすくなる可能性もある。そして、こうした致命的な兵器が容易に生産できるようになったことで、テロ組織、麻薬カルテル、ギャングなどが、かつては兵器庫を持つ正規軍(organized armies with arsenals)の領域だったような戦争を仕掛けることが可能になるのだ。
1991年の湾岸戦争は、先進技術が戦争をより精密なものにできることを世界に示した。2026年、イランは世界にさらに重大なことを教えている。それは、精密さが大量生産される時代(Precision will now be mass-produced)が到来したということだ。勝利を収めるのは、単に最高性能の兵器を保有する国ではない。少数の精巧で高価な兵器と、膨大な数の安価なドローンを組み合わせられる国こそが勝利を収めるだろう。人間の判断は、やがてコンピュータアルゴリズムに取って代わられるだろう(Human judgment will over time give way to computer algorithms)。これが戦争の未来だ。そして、それは私たちの想像をはるかに超える速さで到来している。
※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria
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(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』


