古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:クリス・バスカーク

 古村治彦です。

 以前、JD・ヴァンス副大統領を支えるロックブリッジ・ネットワークについて紹介した。今回はロックブリッジ・ネットワークの創始者であり、中心人物のクリス・バスカークについての紹介記事を掲載する。

クリス・バスカークは、生まれ故郷アリゾナ州スコッツデールで父親と共に保険関連企業を創設し、大きく成長させ、最終的に売却し、巨額の資金を得た。同時期に、ドナルド・トランプが大統領選挙に出馬を表明したことで、トランプへの支援として、保守系オンラインマガジン『アメリカン・グレイトネス』を創刊した。創刊に当たり、ピーター・ティールから資金援助を受けた。さらに、ティールから当時、連邦上院議員選挙出馬の準備をしていたヴァンスを紹介された。そして、ヴァンスと共に2019年にロックブリッジ・ネットワークを立ち上げた。バスカークの経歴で重要なのは、ビジネスを立ち上げる前に、カリフォルニア州にあるクレアモント大学に在学していたことだ。クレアモント大学はアメリカ右派、トランプ支持派において重要な存在である。

レオ・シュトラウス(Leo Strauss、1899-1973年、74歳没)が重要になってくる。レオ・シュトラウスについては、そして、シュトラウスの弟子でクレアモント大学を保守派の拠点として発展させたハリー・ジャッファについては、副島隆彦著『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』(講談社+α文庫、1999年)の第四章「『法』をめぐる思想闘争と政治対立の構図」を読むことで理解ができる。シュトラウスとジャッファは、法思想・法哲学において、「自然法(natural law)」を信奉するグループである。「自然法」とは「人間社会には、それを成立させて、社会を社会、人間を人間たらしめている自然のきまり・おきてがある。それは人間の目には見えないが、必ずある」ということである。近代になって、自然法から自然権[natural rights](「人間は生まれながらにして固有の権利が与えられている」と考える)が分岐し、更に人権(human rights)という考えが出てきた。これらが対立しながら法思想・法哲学において存在している。アメリカの建国の理念は「自然権」から発しているものである。自然法の立場からすれば、自然権のようなものはないということになる。自然法派はアメリカの建国の理念とは相いれない、きっちりとはまらない部分がある。ヴァンスやティールが民主政体に懐疑的な暗黒啓蒙やポストリベラリズムに親和性を持つのは当然のことと言えるだろう。

 それではヴァンスやティールが現実的にアメリカの政治体制を変更して、民主政治体制を今すぐに廃止すべきだということはさすがに言えないし、そのようなことは考えていても口には出せない。そんなことをすれば、ヴァンスはアメリカ大統領選挙当選の可能性を自らで閉ざしてしまうことになる。しかし、行き過ぎたリベラリズム、人権偏重へのアンチテーゼとしての思考実験、既存の民主政治体制の改良や改善のための批判の一環として主張していくことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

JD・ヴァンスを当選させた秘密の献金者グループは今やMAGAの未来を書き換えようとしている(The secretive donor circle that lifted JD Vance is now rewriting MAGA’s future

―クリス・バスカークは、トランプ政権下のワシントンで、テクノロジー業界のエリート層を権力の中枢に据えた。彼の主張の根底にあるのは物議を醸すある理論だ。それは、国を前進させるためには「貴族制(aristocracy)」が必要だというものだ。

エリザベス・ドゥオスキン筆

2025年11月4日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/technology/2025/11/04/chris-buskirk-maga-vance-post-trump/

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クリス・バスカークは、ドナルド・トランプの再選を支援し、現在ワシントンの権力の中枢を担うビジネス界とテクノロジー業界の献金者連合を率いている

2019年、オハイオ州ロックブリッジ郊外の人口100人ほどの町で、少数の右派献金者たちがリゾートホテルを借り切り、MAGA運動の将来を確固たるものにするためのサミットを開催した。彼らの狙いは、ドナルド・トランプ大統領という一人の候補者を、共和党の抜本的な変革(a radical transformation of the GOP)を確固たるものにする有権者、献金者、候補者のパイプラインを構築した、永続的な政治連合(an enduring political coalition)へと変貌させることだった。

シリコンヴァレーの大富豪ピーター・ティールと、当時ベストセラー回顧録を執筆した投資家JD・ヴァンスが招集したこの会合には、ヘッジファンドの相続人レベカ・マーサー、当時FOXニューズの司会者だったタッカー・カールソン、経済学者のオレン・キャスなどが参加していたと、会合を知る2人の関係者が証言している。関係者たちは匿名を条件に、これまで報道されていなかったこの非公開会合の詳細を語った。

しかし、この会合でグループの野望を確固たるものにする上で決定的な役割を果たしたのは、はるかに目立たない人物だった。アリゾナ州の保険関連事業家で保守系メディア関係者のクリス・バスカークだ。

現在、バスカークはロックブリッジ・ネットワークを率いている。この秘密組織は、先週末の会合をきっかけに誕生し、共和党政治において最も影響力のある勢力の一つとしての地位を確立した。政治ストラティジストたちは、この緊密な実業家兼献金者ネットワークが、昨年の大統領再選を後押しし、その一員であるヴァンスを副大統領に押し上げた要因だと評価している。

テクノロジー業界のリーダーたちからの多額の資金援助を受け、ロックブリッジはトランプ政権後もMAGA運動が存続できるよう準備を進めている。ロックブリッジはウェブサイトや一般向けの組織を持たないが、世論調査員、データ分析担当者、オンライン広告担当者、さらにはドキュメンタリー映画制作部門まで擁している。2026年の中間選挙と2028年の大統領選挙に向けて、その戦力を結集させようとしている。ロックブリッジのメンバーの多くは、ヴァンスが大統領候補となることを期待している。ロックブリッジに直接詳しい人物によると、ロックブリッジはアウトドア団体や教会など、政治とは無関係な団体への所属を通じて、潜在的な有権者の詳細なプロフィールをまとめたデータベースを構築しているという。

バスカークとトランプ陣営との繋がりはロックブリッジだけにとどまらない。バスカークが投資家のオミード・マリクと共同設立したヴェンチャーキャピタル企業1789キャピタルは、パートナーたちが「愛国的資本主義(“patriotic capitalism)」と呼ぶものに焦点を当てており、現在ドナルド・トランプ・ジュニアもパートナーとして名を連ねている。二人は政権関係者や友人たちと共に、最近「エグゼクティブ・ブランチ(Executive Branch)」という、トランプ支持のビジネスリーダーたちがワシントンDCで交流するための会員制クラブを立ち上げた。年会費は一人50万ドルだ。

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バスカーク・キャピタルの簡素な内装は、政治関連の記念品で埋め尽くされている

バスカークによれば、これらの組織には共通の野望がある。それは、彼が国の未来にとって不可欠だと考えるビジネスパーソンに、政府形成と永続的な政治権力を担う役割を与えることだ。

彼らの活動は、社会進歩に関する物議を醸す理論に基づいている。それは、選ばれたエリート集団こそが国を前進させるのにふさわしい人々であるという考え方だ。バスカークは、この立場はMAGAMake America Great Again)のポピュリズムに反するものではないと主張する。業界のリーダーを要職に就かせることは、商務長官ハワード・ルトニックからテクノロジー界の大物イーロン・マスクまで、トランプ大統領の政権の特徴であり、バスカークはMAGA運動が国の新たな世代の担い手を活性化させたと述べている。

バスカークと彼の側近9人へのインタヴューによると、彼の様々なプロジェクトは、右派の一部が「貴族主義的ポピュリズム(aristopopulism)」と呼ぶものを反映しており、富裕な資本家と彼らが代表しようとする労働者階級との間に橋を架けることを目的としている。具体的には、国を収益性の高い形で再産業化(reindustrializing)し、自らの利益を支持基盤の利益と結びつけようとしている。

バスカークはアリゾナ州スコッツデールのオフィスでのインタヴューで、「どの社会にも、搾取的なエリート層、寡頭制(an extractive elite — an oligarchy —)か、生産的なエリート層、貴族制(a productive elite — an aristocracy —)のどちらかが存在する」と語った。

バスカークは、歴史上の多くの革新的な時代は、こうした貴族制によって推進されてきたと主張する。この点は、2023年に出版された著書『アメリカと可能性の芸術(America and the Art of the Possible)』にも記されている。「古典ギリシャ的な意味では」この言葉は蔑称ではなく、「国を守り、国民全員が繁栄できるよう適切に統治する、真のエリート層」を意味するとバスカークは述べている。

バスカークの見解では、彼はビジネスマンのように政治市場にアプローチし、弱点を見抜き、それを埋めるために意図的な行動を起こしてきた。右派には、彼が言うところの「連携の問題(coordination problem)」があった。それは、予想外にもトランプを選出した有権者(voters who had unexpectedly elected Trump)と、進歩的な左派から疎外された新興の富裕層(a nascent group of wealthy people who had become alienated by the progressive left)という二つの勢力だ。しかし、両陣営とも組織的な基盤を欠いていた。

バスカークは自身の取り組みを「頭脳+資金+支持基盤(Brains-plus-money-plus-base)」という一言で表現している。

他の人々は、バスカークの影響力をより力強く表現している。保守系シンクタンクであるアメリカン・コンパスのチーフエコノミストであるキャスは、トランプへの支持は依然として「個人へのカルト的な崇拝(a cult of personality)」と見なされているものの、今や強力なエコシステムがMAGA運動を支えていると述べている。

「クリス(・バスカーク)はこのエコシステムの招集者(the convener)だ」とキャスは付け加えた。

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クリス・バスカークはロックブリッジ・ネットワークと1789キャピタルの共同創設者だ

クリス・バスカークはロックブリッジの設立イヴェントについてコメントを拒否した。ティールもコメントを控えた。マーサーはコメントの要請に応じなかった。

限られたビジネスリーダーや戦略家たちのサークル以外ではあまり知られていないバスカークは、かつてコーク兄弟が支配していた役割を担う異色の人物だ。コーク兄弟は、トランプ政権の多くの貿易政策に反対してきた、資金力のある共和党の大口献金者である。彼はミームを振りかざすようなMAGA支持者ではない。友人たちはバスカークを、鋭い洞察力を持つ粘り強い戦略家だと評している。バスカークのパートナーであり、1789キャピタルの共同創設者であるオミード・マリクは、「民主党に居場所を感じなくなった裕福な人々が何千人も現れるだろうと最初に認識した人物(the first mover” to recognize that there were going to be thousands of well-off people who “no longer felt at home in the Democratic Party)」だと述べている。

ヴァンスは『ワシントン・ポスト』紙への声明の中で、バスカークについて「独創的な思想家(original thinker)」であり、「誰よりも早く、適切なアイデア、組織力、資金の組み合わせが共和党の永続的な政治的成功を確実にする方法を見抜いていた(before almost anyone,” how the “right combination of ideas, organizing and funding can ensure lasting political success for the Republican Party)」と述べた。

選挙政治とは別に、バスカークのプロジェクトは、アメリカ社会に無制限の資本主義(unrestrained capitalism)を浸透させることを目指している。バスカークによれば、1789キャピタルは、国内発の技術革新(innovation、イノヴェイション)がアメリカの産業基盤を再生できるというアイデアの実験場であり、1789キャピタルのパートナーたちはウェブサイトでこれを「アメリカ例外主義の次章(the next chapter of American exceptionalism)」と謳っている。約30社に投資している1789キャピタルは、「反ウォーク(anti-woke)」的な政治やトランプ政権の経済政策に関連するスタートアップ企業に資金を提供しており、その中にはレアアース採掘企業、戦争用AI工場建設企業、ロケット燃料の3Dプリント企業などが含まれる。

バスカークのネットワークがトランプ政権と深く結びつくにつれ、このグループはワシントンの新たな権力者層のためのパーティー・ネットワークを形成している。ロックブリッジの年2回の会議は、4月にフロリダ州キービスケーンのリッツ・カールトンで開催され、「アメリカを再び健康に(Make America Healthy Again)」をテーマにした呼吸法とヨガのセッションが行われ、スコット・ベセント財務長官、トゥルシー・ギャバード国家情報長官、スティーヴ・ウィトコフ中東特使が出席した。バスカークの友人であるロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は、6月に高級ワインと寿司を提供するが植物油は提供しないレストラン「エグゼクティブ・ブランチ(Executive Branch)」の開店セレモニーに出席した。

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(左から)ドナルド・トランプ・ジュニア、JD・ヴァンス、オミード・マリク、クリス・バスカーク。トランプ大統領の2期目の就任式の数日前にパームビーチで会合を開いた

バスカークのネットワークに属する人々は、自分たちの影響力の拡大を、政府が社会のイノヴェーターを非難するのではなく、ようやく支援するようになった証拠と捉えている。彼らは、ジョー・バイデン政権下で抑圧されていた経済の原動力が解き放たれると考えている。

しかし、ロックブリッジや1789キャピタルといった企業には、より有害な兆候が見られると批判する声もある。それは、労働者の利益を約束したトランプ大統領の政策を阻害する、選挙で選ばれていないアメリカの寡頭支配者集団の台頭(the rise of a group of unelected American oligarchs who are undermining Trump’s promises to benefit working people)だ。トランプ政権は就任以来、AI技術の輸出規制解除や仮想通貨を促進する大統領令や法案の署名(lifting export controls on AI technology and signing executive orders and legislation promoting cryptocurrency)など​​、テクノロジー起業家に有利な一連の新政策を打ち出してきた。ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は声明で、「トランプ大統領の第一の、そして唯一の目標は、彼を圧倒的な支持で再選してくれた労働者階級のアメリカ国民の繁栄を取り戻すことだ」と述べた。

関係者2人によると、トランプ・ジュニアが昨年11月に1789キャピタルにパートナーとして加わって以来、1789キャピタルは数億ドルを調達し、現在10億ドル以上の資産を保有している。この夏、政府はバイデン政権時代にポリマーケットに対して行っていた2件の連邦捜査を中止した。ポリマーケットは、1789キャピタルが出資しているブロックチェーンベースの賭博スタートアップ企業で、トランプ・ジュニアは現在、ポリマーケットの諮問委員会メンバーを務めている。

コーク兄弟の慈善ネットワークから資金提供を受けている右派系シンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ研究所の経済政策研究部長マイケル・ストレインは次のように述べた。「一般的に、ビジネスにとって良いことはアメリカにとっても良いことだが、大統領を取り巻く人々はアメリカのビジネス界を代表しているとは思えない。政府の役割は国家の繁栄を促進することであり、富裕層や創業者、経営者の繁栄を促進することではない」。

バスカークにとってこうした批判は的を外している。バスカークは、たとえワシントンDCがあまり好きではないとしても、トランプをホワイトハウスに復帰させた実業家たちをワシントンに呼び戻す決意を固めている。バスカークは政治を「腐敗している(venal)」と評し、ワシントンDCのシンクタンクを「ありきたりな表現の二乗(every cliché, squared)」と表現し、文化を根本から再構築する必要があると主張する。

バスカークは次のように述べている。「したがって、ワシントンDCは時間を過ごすのに魅力的な場所ではないが、同時に非常に必要な場所でもある。自治(self-government)とは、自分がやりたくないことにも実際に関わらなければならないということだ。」

●「調整の問題」(‘A coordination problem’

バスカークに、その日どこにいるのかを尋ねれば、56歳で4人の子供の父親である彼は、7つの異なる都市の名前を挙げるかもしれない。彼は、スコッツデールにある家族経営のオフィス、1789キャピタルの本社があるフロリダ州パームビーチ、ダラス、サンフランシスコ、オースティン、そして不本意ながらワシントンDCを行き来している。彼は、起床から就寝まで電話が鳴りっぱなしで、ヴァンス副大統領のスケジュールが許せば必ず時間を作っていると言う。

しかし、バスカークの幼少期はほぼ全てアリゾナ州で過ごした。冷戦時代に父親が駐屯していたドイツの軍事基地で生まれたものの、スコッツデールで育った。週末は、州内の住宅や中小企業向けの保険を取り扱う家族経営の会社で働いていた。バスカークは、一家は「極めて愛国的(patriotic to the nth degree)」で、保守系雑誌『ナショナル・レビュー(the National Review)』の熱心な購読者だったと回想する。

若い頃、バスカークは政治理論の修士号取得を目指し、政治哲学者レオ・シュトラウスに影響を受けた右派系シンクタンクであるクレアモント研究所でインターンシップを経験した。

しかし、学問の世界はあまりにも非現実的だと考え、シンクタンクも学位も途中で諦めた。故郷のスコッツデールに戻り、保険会社を設立した。救急車販売業者など、型破りな事業の保険引受業務を行った。その後20年間で、保険関連企業を4社設立し、売却した。

バスカークの家族は政治から疎遠になっていた。バスカーク一家は2000年代半ばにナショナル・レビュー誌の購読を解約した。共和党主流派が国を誤った方向に導いたと感じ、嫌悪感を抱いていたからだ。イラク戦争は「目くらまし(smoke screen)」であり、目の前に迫る深刻な経済問題から人々の目を逸らすためのものだったとバスカークは語った。

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アリゾナ州スコッツデールにあるバスカーク・キャピタルの内装の一部

ミシガン州に住む親戚を訪ねた際、2001年にアメリカが世界貿易機関(WTO)に加盟した後、「工場全体が文字通り梱包され、40フィートコンテナに詰め込まれて中国に送られる」様子を目の当たりにしたとバスカークは語る。アメリカ人は低賃金のサーヴィス業に従事するようになり、マクドナルドの時給8ドルに対し、フォードの工場では25ドルだったという。そして、不法移民がやってきて、それらの仕事も奪っていったと彼は言う。

「特別なことをしなくても尊厳ある生活を送れる(that you don’t have to do anything extraordinary to live a dignified life)」というアメリカンドリームが、ますます難しくなっていると、バスカークは友人たちに憤慨したが、無力感(powerless)を覚えた。「私はただアリゾナに住む、ごく普通の男だった」と彼は当時を振り返る。「一体どうすればいいんだ?」。

2000年代後半にバラク・オバマ大統領が登場すると、バスカークはオバマが社会に革命を起こす様子を目の当たりにした。一方で、バスカークは共和党とその諸機関が惰性で停滞していると感じていた。

その間、バスカークは父親と共に築き上げた保険事業の最後の株を売却していた。2015年、トランプがトランプタワーの黄金のエスカレーターを降りて大統領選への出馬を表明した頃には、バスカークには時間に余裕ができていた。

アリゾナ州の実業家であるバスカークは当初、ニューヨークのリアリティ番組司会者であるトランプが大統領の座を売名行為と見なしているのではないかと懸念し、懐疑的だった。しかし、トランプの過去のインタヴューを見ると、アメリカの指導者たちがアメリカ国民を第一に考えていないという主張が繰り返し聞こえてきた。

「トランプは40年間ずっと同じことを言い続けている!」とバスカークは当時を振り返る。「その時、トランプは本気だと気づいた。彼が真剣ではないと言っている人たちは嘘をついているのだ」。

2016年7月、バスカークはオンラインマガジン「アメリカン・グレイトネス(American Greatness)」を創刊した。この雑誌は、保守主義の新たな表現が「否定しようもなく(undeniable)」必要であると訴えた。ティールから資金提供を受けた。ティールはトランプへの100万ドルの献金でリベラルなシリコンヴァレーを驚かせた人物であり、バスカークとは友人の紹介で知り合ったばかりだった。「保守運動の土壌は枯れ果てていた(The soil of the conservative movement is exhausted)」と編集者たちは創刊マニフェストに記した。「再び繁栄するためには、肥料を与え、種をまき直し、丹念な耕作が必要だ(It needs fertilization, resowing, and diligent cultivation if it is to thrive again)」。

ティールはバスカークを、彼の弟子であり『ヒルビリー・エレジー』の著者であるヴァンスに紹介した。ヴァンスとバスカークはすぐに意気投合した。

バスカークは当時を振り返り、「特に目標があった訳ではなく、ただ何かを創り出すべきだと感じていた(we should create something)」と語る。2人は1年半ほど「オタク談義に花を咲かせた(just nerding out)」という。

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ニューヨークのトランプタワーで行われたテクノロジー業界のリーダーたちとの会合で、マイク・ペンス次期副大統領(左)とペイパル創業者ピーター・ティールがドナルド・トランプ次期大統領の話に耳を傾けている(2016年)

2019年、ヴァンスとティールは、後に組織名の由来となる小さな町の郊外にあるオハイオ州の田舎の宿に十数人を集めた。参加者の中には、バスカークのように熱烈なトランプ支持者もいた。一方で、懐疑的な人物たちもいた。しかし、参加者全員が、トランプ政権下での成功は、民主党がホワイトハウスを奪還すれば、単なる偶然に終わってしまう可能性があると感じていたと、その週末にバスカークと会った投資家のブレイク・マスターズは語っている。

「私たちは左派の有効性(the effectiveness of the left)を嘆くことに多くの時間を費やしてきた」とマスターズは続けて語る。「彼らの政策はかなりひどいものだったが、・・・組織化に関しては非常に効果的だった。・・・右派は長い間現状維持に甘んじており、その組織はまさに崩壊し始めていたのだ。」

出席者の中には、MAGAMake America Great Again)運動にネットワークの問題があることに気づいた者もいた。コーク兄弟のような右派の献金者たちは長年組織を築き上げてきたが、トランプを支持する富裕層や、バスカークが代表する新たな右派思想の集団は「実際にはお互いをよく知らなかった」とバスカークは述べた。そして、トランプに投票した人々労働者階級の層も含むもまた、組織化されていなかった。

「調整もなければ、管理も計画もなかった。全てが成り行き任せだった」とバスカークは当時を振り返る。「よし、この2つの問題を解決すれば、他の全てがより良く、より効果的になる。さあ、その解決に取り掛かろうと私たちは話し合った」。

●ムーヴメントの創設(The making of a movement

サミットから活気を取り戻したバスカークは、政治組織化の研究に没頭し始めた。彼はまず基本原則から始め、1980年代に出版された影響力のある左派組織化マニュアル『ルーツ・トゥ・パワー(Roots to Power)』を読んだ。

ヴァンスと共に、バスカークは左右両派の政治組織の事例研究を始め、その失敗と成功を記録していった。中でも全米ライフル協会(NRA)は際立っていた。バスカークと彼の仲間たちは、NRAは2つの支持層のうちの1つ、つまり憲法修正第2条の擁護者を組織化することには非常に成功していたと結論づけた。しかし、もう1つの支持層である狩猟を愛するアウトドア愛好家は、それほど組織化されておらず、有権者登録をする可能性も低かった。

しかし、1960年代から民主党支持層の中心だったアウトドア愛好家たちは、トランプに投票した層とかなりの部分で重なり合っていた。

「これは埋めなければならない空白だ」とバスカークは述べ、もし「彼らが注目するに値する何か」を見つけることができれば動員できると付け加えた。

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クリス・バスカークは、政治組織運営について自ら研究することを決意した

バスカークはロックブリッジの活動について詳細を語ろうとはしないが、大まかに言えば、所属団体に基づいて人々をソーシャルメディアグループに誘い込むための、古典的なオンライン販売ファネルを考案したと述べている。対象となったのは、中小企業の経営者、アウトドア愛好家、教会の信者などだった。

これは、選挙直前に大量の広告を流し込むなど、「力ずく(brute force)」で人々を味方につけようとする政治組織のやり方とは正反対だとバスカークは言う。ロックブリッジは対照的に、より段階的なアプローチをとった。「信頼関係を築き、人々に何らかの利益を提供する。そうして初めて、彼らに何かを頼むことができるのだ」。

2022年4月、ヴァンスは初めて、当選の見込みは薄いものの、政治家への立候補を表明した。マリクはパームビーチのレストランで、ヴァンスのための小規模な資金集めパーティーを主催した。マリクは、新型コロナウイルス対策の規制や、テクノロジー企業による新型コロナウイルスに関する言論統制に反発し、民主党を離党した後、前年にニューヨーク市からパームビーチに移住していた。バスカークはドナルド・トランプ・ジュニアと共にこの会合に出席した。

一行はその後、バスカークがロックブリッジのカンファレンスを主催していたマール・ア・ラーゴへと移動した。

彼らは、オンライン検閲に対する怒りや、持続可能性や多様性といったリベラルな優先事項のために技術革新が阻害されているという感覚を共有し、一週間を共に過ごした。

マリクは、「私たちの多くはほぼ同年代だ。このグループが『世代交代(a generational shift)』の兆しを見せていると感じている」と語った。

マリクとバスカークは翌年、共同で1789キャピタルを設立した。社名は、権利章典が提案された年にちなんで名付けられた。当初、1789キャピタルはマリクが「反ウォーク企業」と呼ぶ企業に特化していた。最初の投資先は、フォックスニューズを追われたタッカー・カールソンが設立した新しいメディア・エンターテインメント企業であるラスト・カントリーだった。その後、両パートナーはオンライン銃器マーケット・プレイスのグラバガン、アスリートがパフォーマンス向上薬を服用できるエンハンスド・ゲームズ、防衛向けAI工場を開発するスタートアップのハドリアンにも投資した。(両パートナーは、イーロン・マスクの3社、スペースX、ニューラリンク、xAIにも出資している。)

ダラスを拠点とするスタートアップ企業ファイアホーク・エアロスペースのウィル・エドワーズは、ミサイル用固体ロケット燃料の3Dプリントを専門としているが、シリコンヴァレーの多くのヴェンチャーキャピタリストは、軍事専用企業への投資を望まなかったため、彼のプレゼンテーションをきっぱりと拒否したと語っている。

「クリス(・バスカーク)はそれを馬鹿げていると思った」とエドワーズは語った。

その後、ファイアホークに6000万ドルを投資する資金調達ラウンドを主導したバスカークは、特に関心を示し、ダラスまで足を運び、エドワーズの工場を視察した。バスカークによれば、そこでは大卒資格を持たない労働者でも6桁の収入を得ることができるということだ。

バスカークは、エドワーズの会社は投資家たちの政治的主張を経済的に証明するものだと考えている。アメリカが再びiPhoneやナイキの靴を製造する可能性は低いが、特に国防分野において産業基盤を活性化させ、中間層の回復に貢献できるとバスカークは述べている。

この目標は、ジョー・バイデン大統領が2022年に520億ドル規模の「チップス法」に署名した際にも達成しようとしたもので、この法律は、国内の半導体製造に対する過去最大規模の支援策として、先端製造業の雇用を国内に戻すことを目的としていた。トランプは、この補助金を無駄遣いだと批判し、一部の資金を回収した。

アメリカン・エンタープライズ研究所のエコノミストであるマイケル・ストレインは、MAGA運動の政治的レトリックは、アメリカの実際の経済状況を誤解していると述べた。製造業の雇用喪失の主な要因はアウトソーシングではなく技術革新であり、国内製造業がアメリカを再生させると主張する人々の多くは、人工知能による大規模な労働力削減を推進している投資家と同じであると指摘した。

アメリカン・コンパスのキャスは、労働者階級のコミュニティを再建するために必要な投資規模は、1789キャピタルや他の同様の投資家が投入できる額をはるかに超えていると述べた。しかし、バスカークとそのパートナーが資金提供している実験は、「先駆的な取り組み(blaze a trial)」であるため重要だとキャスは語った。

ロックブリッジとスーパーPAC2024年の選挙に与える影響は十分に理解されていない。ロックブリッジ傘下のスーパーPACであるターンアウト・フォ・アメリカは、チャーリー・カークのターニング・ポイント・アクションなど、トランプ陣営のために激戦州で戸別訪問活動を行った数少ない団体の1つだった。連邦選挙委員会(FEC)の記録によると、ターンアウト・フォ・アメリカは2024年の選挙サイクルに3450万ドルを費やしたが、これはイーロン・マスクのアメリカPACの2億6100万ドルをはるかに下回る額である。

しかし、ロックブリッジの内部データは一定の効果を示唆しており、関係者たちはこれを長年にわたる有権者プロファイリングと動員活動の成果としている。このスーパーPACは、7つの激戦州において、投票率の低い数百万人の有権者を特定し、投票を促すことでトランプ氏に投票する可能性が高いと判断した。ロックブリッジは、これらの有権者の40%を投票所へ向かわせることができれば、トランプがこれらの州で勝利できると試算した。内部統計を直接知る2人の関係者によると、最終的にロックブリッジの3000人の戸別訪問員は50%の投票率を達成したという。

今日、このグループの雰囲気は高揚感に満ちている。バスカークによると、選挙後、関心が急上昇し、新規メンバーの約半数がテクノロジー業界出身だという。メンバーの中には億万長者も複数おり、著名な投資家であるマーク・アンドリーセンとデイヴィッド・サックスも既にメンバーとなっている。

それでも、バスカークの招待でロックブリッジに加わったファイアホークの創設者エドワーズは、イヴェントは温かい雰囲気で、「お互いの会社を楽しむ親しい人たちの集まりのようだ」と語った。エドワーズは二世帯住宅に住み、トヨタ車を運転しているという。年齢層も幅広く、バスカークの息子で最近大学を卒業したクリスも所属する30歳未満の次世代メンバーグループ「ネクストジェン(NextGen)」に参加している。

ミネソタ大学の企業法教授で、ジョージ・W・ブッシュ政権で首席倫理担当法律顧問を務めたリチャード・ペインターは、ロックブリッジ、1789キャピタル、そして行政府への関心の高まりは、「金で便宜を図る(pay to play)」ネットワーク、つまり政権幹部やトランプ一家への接触を得るために金銭を支払う人々のネットワークという印象を与えると述べた。(ペインターはまた、もし自分の時代にこのような集まりがあったなら、政権幹部には出席しないよう助言するだろうとも述べている。)

バスカーク氏は、この批判についてコメントを拒否した。

海外出張中に送ったテキストメッセージの中で、バスカークはアメリカの偉大さは「高い信頼関係のもとで協力し合う、才能豊かで主体性の高い人々を意図的に育成することによってのみ達成される(by the intentional cultivation of talented, high-agency people working together in high-trust environments)」と述べた。

彼の著書には、ルネサンス期のフィレンツェ、20世紀半ばのアメリカ、そして産業革命期のイングランド、ランカシャー州など、エリートのネットワークが社会を前進させた歴史的な事例が挙げられている。スコットランド啓蒙主義(the Scottish Enlightenment)は実際には「数十人の人々による活動」であり、彼らは「セレクト・ソサエティ(the Select Society)」という私的な社交クラブで「長年にわたる友情を育んだ」と彼は指摘する。

現在について、驚くほど革新的な歴史的時代との類似点が見られ始めているが、「アメリカの潜在能力が完全に開花するという保証はない(the full flourishing of America’s latent potential” was not guaranteed)」とバスカークは述べた。

バスカークは「そうなることを祈っている。やるべきことは山積みだ」と語った。
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バンス氏は「複雑な右派の媒介者」 米思想家が語るMAGA指導者像

日本経済新聞 202649 7:32

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08CW40Y6A400C2000000/

【ワシントン=飛田臨太郎】バンス米副大統領は共和党内で次期大統領候補の有力者と目されている。バンス氏と関係が近い保守系シンクタンク、クレアモントのフェローで政治思想家のスコット・イエノール氏に理由を聞いた。

「右派は左派よりもはるかに複雑な政治的有機体といえる。例えば、シリコンバレーのテック系右派は移民拡大を望むが、MAGA(マガ)のなかには移民制限派もいる。(科学技術によって人間の身体や精神の限界を超えようとする)トランスヒューマニズムへの賛否も衝突の火種だ」

「右派内には多くの緊張関係があり、それを仲介できる人物がリーダーとして必要だ。バンス氏はどちらにも属しており、彼を軸に双方が交われる。右派の全ての陣営が信頼を寄せられる人物が必要であり、バンス氏は間違いなくその一人だ」

「バンス氏はテック業界に深いつながりを持ち、同時にキリスト教の美徳を重視する。そしてバンス氏に近い(著名投資家の)ピーター・ティール氏やイーロン・マスク氏は同じ哲学を共有している。米国の主権や世界通貨としてのドルに与える中国の脅威認識でも一致する」

「バンス氏の偉大な貢献はシリコンバレーにいた彼らに国家と産業の関係について考えさせていることだ。シリコンバレーをグローバリズムのためでなく、米国や米国民のために奉仕するよう、より深化させていくだろう」

「ルビオ米国務長官は『バンス氏が次期大統領選に立候補したら、自分は立候補しない』と言っているようだ。私はそれを信じる。仮にバンス氏が大統領になれば、ルビオ氏は副大統領に就くか国務長官を続投するとみている」

MAGAは法の下での平等を支持する。科学を基盤として自由な探究を重視しており、このことも誰の下でも変わらない。自由や平等、米国の核心的価値観の順守は維持するべきだ」

「一方で自由貿易や、米国の国益でなく世界の利益を重視するという外交政策、つまり戦後コンセンサスといわれてきた自由主義は私たちが乗り越えなければいけないと考えている対象だ」

「リーダーがトランプ米大統領からバンス氏に変わればMAGA運動は間違いなく変化していく。あらゆる政治運動は構成要素が変われば変化する。人工知能(AI)がどう進展するか、トランプ氏のカリスマ性がMAGA運動から失われた後にどうなるのか、世界情勢はどうなっているかに左右される」

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
 第二次ドナルド・トランプ政権内で影響力を増しているJD・ヴァンス副大統領はこれから慎重に、バランスを取りながら、トランプから嫌われないようにしながら、2028年に自身の大統領選挙での勝利に向けて決断と行動をしなければならないという難しい状況になる。そこで重要になってくるのはヴァンスの後ろ盾となっているピーター・ティールの存在だ。露骨に書けば、ヴァンスはティールの課したいくつかの課題をすべてクリアしたことで、現在の地位にある。それはつまり、ティールが「こいつを大統領にする」という試験に合格しているということである。第一次トランプ政権誕生においても重要役割を果たし、「影の大統領」と呼ばれたティールは、イーロン・マスクとも「ペイパル・マフィア」としてつながりを持ち、トランプとマスクを結び付ける役割を果たした。ティールが「次の大統領にはヴァンスを」ということになれば、マスクも進んで支援するだろう。これは、拙著『』(ビジネス社)で取り上げた、新・軍産複合体がヴァンスを大統領にするという動きでもある。

 ヴァンスを支える政治組織として、ロックブリッジ・ネットワークというものがあることは、先日、このブログでもご紹介した。その記事は以下の通りだ。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」:2026年5月7日付記事「JD・ヴァンス副大統領を支える「ロックブリッジ・ネットワーク」について紹介する」↓

https://suinikki.blog.jp/archives/90471185.html

 以下で、ロックブリッジ・ネットワークについての記事をご紹介している。私はロックブリッジ・ネットワークについて調べていく中で、ヴァンスとティールは、大統領の座を目指すために、この組織を作った、そして、ドナルド・トランプの後継者として2028年の大統領選挙での勝利を目指しているという感触を持った。それは、ロックブリッジ・ネットワークには資金源となる財界人も入っているが、トランプ政権にとって極めて重要な人物で、ホワイトハウスを取り仕切るスージー・ワイルズ大統領首席補佐官、そして、トランプの長男であり、トランプ一家にとって重要な存在であるドナルド・トランプ・ジュニアをネットワークに入れていることからも分かる。トランプ・ジュニアは、2028年大統領選挙の候補者としても名前が挙がっているが、ヴァンスが圧倒的な支持率を誇っている。重要なことは、トランプ・ジュニアがヴァンスを支持するとなれば、ライヴァルたちはもう追いつけないということになる。そのために、トランプ・ジュニアに、ネットワークに入れて、ある程度の金儲けをさせているということになる。ワイルズはトランプの信頼が厚い人物であり、ワイルズの口添えがあれば、ヴァンスの先行きは明るいということになる。ヴァンスとティールは少しずつ2028年に向けて根回しをしているだろう。これからさらに注目していかねばならない。
(貼り付けはじめ)
台頭するMAGA支持者たちの秘密会合の舞台裏(Behind the Scenes at a Secretive Gathering of Rising MAGA Donors

―ウィンクルヴォス双子兄弟、レベカ・マーサー、イーロン・マスクの盟友たち、ドナルド・トランプ・ジュニア、そしてトランプ陣営の幹部たちが最近、突如として権力を手にした右派系献金者たちの会合に参加した。

セオドア・シーファー筆

2024年11月20日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2024/11/20/us/politics/rockbridge-trump-vance-wiles.html

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ラスヴェガスで開催された今年のロックブリッジ・ネットワークの会合には、共和党の大口献金者であるレベカ・マーサー、ドナルド・J・トランプ次期大統領の大統領首席補佐官を務めるスージー・ワイルズ、そしてドナルド・トランプ・ジュニア(左から)が出席した

次期ホワイトハウス大統領首席補佐官に指名されてからわずか4日後、スージー・ワイルズはラスヴェガスの五つ星ホテルでエスプレッソを辛抱強く待っていた。

一夜にして、スージー・ワイルズはアメリカで最も影響力のある人物の一人となった。大統領移行期において、彼女の1分1秒の価値はかつてないほど高まっている。共和党の野心家たちは、彼女に魅力的なポストを要求し、一方、マール・ア・ラーゴでは、次期大統領ドナルド・J・トランプが人事を巡って物議を醸し続けている。

しかし、彼女は数千マイル離れた場所で、警備員一人を伴って、フォーシーズンズホテルのコーヒーショップに一人で並んでいた。彼女は、選挙対策本部長クリス・ラシヴィタ、世論調査担当トニー・ファブリツィオ、資金調達責任者メレディス・オロークといったトランプ陣営の幹部たちとの昼食を終えたばかりだった。「みんなただのんびりしているだけなんだ」と、ホテル内を歩いているところを近くにいた『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者に目撃されたと知らされたトランプ一行の一人が驚いた様子で冗談めかして言った。

キャリアの中でも最も重要な時期に、トランプ陣営の面々が何日も滞在する必要があったのはなぜだろうか? それは、共和党の献金者層の中で急速に台頭してきた、裕福なテクノロジー企業の幹部とその支持者たちによる秘密結社ロックブリッジ・ネットワーク(the Rockbridge Network)の秋の会合のためだった。

JD・ヴァンスが5年前に共同設立したこの団体は、非公式な夕食会から発展し、共和党の有力献金者による強力な連合体へと成長した。この団体のある関係者によると、2019年以降、ロックブリッジのプロジェクトに1億ドル以上を寄付し、シリコンヴァレーの右傾化を牽引してきたという。ロックブリッジにとって、ヴァンスの副大統領選出はまさに快挙であり、新たな国家的影響力を行使する絶好の機会となった。

しかし、ロックブリッジ・ネットワークは、コーク・ネットワーク(Koch Network)のような富裕層の保守派団体が、リベラル派の批判者や共和党支持者から攻撃を受けていることを念頭に置き、活動を極秘裏に進めてきた。

先週、黒塗りのSUVの車列が億万長者たちをプライヴェートジェットからホテルへと送り届ける中、ロックブリッジ・ネットワークのメンバーがホテル周辺で目撃された。共和党有数の献金者一族の令嬢であるレベカ・マーサーは、ロビーで祝福に駆けつけた人々に挨拶をしていた。ホテルのバーでハッピーアワーを楽しんでいたのは、イーロン・マスクの親友であるケン・ハウリーとルーク・ノセックの2人。彼らはマスクと共にペイパル(PayPal)で働き、巨万の富を築いた。

そして、映画「ソーシャル・ネットワーク」で有名になった、身長196センチの仮想通貨投資家でハーヴァード大学ではボートクルーだったタイラーとキャメロンのウィンクルヴォス双子兄弟の姿も見逃すことはできなかった。

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2021年のタイラー・ウィンクルボスとキャメロン・ウィンクルボス。彼らは最近、他の裕福なテクノロジー企業の経営者やその仲間たちと共にロックブリッジで開催された会合に参加した

白と赤のギフトバッグとストラップを身につけた出席者たちは、ホテル関係者や、非公開のこの会合に招待されていない『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者に話しかけられても、口を閉ざすよう心得ていた。しかし、出席者によると、議事録には、アンドゥリルの共同創業者であるパルマー・ラッキーやヴェンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンなど、複数のテクノロジー界の大富豪による講演が記載されていた。アンドリーセンは、テクノロジー規制緩和への支持や、トランプへの支持表明に対するシリコンヴァレーの賛否両論について語ったという。

テクノロジー業界の新進気鋭の人物もいた。ドナルド・トランプ・ジュニアは、歓迎夕食会でヴェンチャーキャピタル業界への参入を発表した。そして、次期大統領がロバート・F・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官に指名する数日前、ケネディは自身の公衆衛生に関する取り組みについて詳しく語り、聴衆からスタンディングオヴェーションを受けた。ワイルズはまた、「2024年選挙分析(2024 Election Analysis)」と題したセッションを主導し、トランプの大統領就任後の最初の数日間を概観した。

「これはアメリカ国内版『砂漠のダヴォス会議(Davos in the desert)』だ」とロックブリッジ・ネットワークの支援者であり、ドナルド・トランプ・ジュニアの新たなビジネスパートナーでもあるオミード・マリクは、リヤドで開催される年次ビジネス会議に言及しながら語った。

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2023年にドナルド・トランプ・ジュニアと共にニューヨーク証券取引所に出席した金融家オミード・マリクはロックブリッジ・ネットワークの中核メンバーとなり、トランプ一家の友人となった

●小規模な夕食会からリッツ・カールトンへ(From small dinners to the Ritz-Carlton

ロックブリッジ・ネットワークは、より謙虚な形で始まった。2019年、当時『ヒルビリー・エレジー』の著者として知られていたヴァンスと、保守系メディア関係者のクリス・バスカークは、ヴァンスの政治キャリアの基盤を築き、最終的にはコーク・ネットワークに対抗するトランプ派の組織を構築することを目指し、非公式に小規模な夕食会を何度か開催し始めた。初期の会合の一つは、ヴァンスがオハイオ州ロックブリッジのリゾートで寄付者や活動家を集めて開催したもので、そこで「ロックブリッジ」という名前が誕生した。

このグループは、マーサーとヴェンチャーキャピタリストのピーター・ティールから最初の資金提供を受け、やがてドナルド・J・トランプの目に留まり、トランプはいくつかの会合で講演を行った。

秋と春にそれぞれ一度ずつ、ロックブリッジはフロリダ州パームビーチのフォーシーズンズやダラスのリッツ・カールトンといった場所で、3日間にわたる政治パネルディスカッションとビジネス交流会を開催するようになった。講演者には、タッカー・カールソン、ティールの弟子であるブレイク・マスターズ、カジノ王のスティーヴ・ウィン、投資家のデイヴィッド・サックス、そしてニューヨーク・ジェッツのオーナーである億万長者のウッディ・ジョンソンなどが名を連ねた。

参加者全員が政治に関心を持っている訳ではない。中には、ロックブリッジをエリート層向けのサンヴァレー会議の保守的なヴァージョンと捉え、ビジネスに強い関心を持つ人もいる。

かつて『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄稿していた論説委員で、2016年にトランプ支持の出版物「アメリカン・グレートネス(American Greatness)」を創刊したバスカークは、政治に直接携わった経験は限られていた。しかし、彼は「ニューライト(the New Right)」と呼ばれる運動、保守系ビジネス界、そしてトランプの周辺との人脈を活かし、共和党の献金者を組織し、ロックブリッジ・ネットワークを築き上げた。彼はこの記事へのコメントを拒否した。

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クリス・バスカークはJD・ヴァンスと共にロックブリッジ・ネットワークを設立し、政治に直接携わった経験は限られているものの、徐々に組織を拡大し、保守系のプロジェクトに資金を提供してきた

ロックブリッジ・ネットワークは、今年献金者に配布された資料によると、「永続的な政治基盤を構築(builds lasting political infrastructure)」し、「共和党の衰退の一因となっているシンクタンク、メディア組織、活動家グループといった現在の共和党のエコシステムに取って代わることを目指している」としている。その野心は明白だが、長年の参加者の中には、ロックブリッジがこれらの目標達成にどれほど近づいているのか疑問視する声もある。

ヴァンスが2022年のオハイオ州選出連邦上院議員選挙で勝利し、今年大統領選挙で副大統領候補に選出されたことは、ロックブリッジとバスカークにとって強力な正当性の証明となった。バスカークは現在もヴァンスの側近として活動している。バスカークはロックブリッジ社の資金を活用し、今回の選挙サイクルでトランプの草の根運動を強化するため、迅速にスーパーPACを立ち上げた。また、かつては共和党の資金調達において二流と見なされていたロックブリッジは、一部の主流派共和党員でさえラスヴェガスまで足を運ぶほどの影響力を持つようになった。

ロックブリッジが実際にどれだけの資金を運用しているのかについては、依然として懐疑的な見方がある。ロックブリッジ・ネットワークへの寄付者は若年層が多く、起業家出身者で、資産の流動性が低い傾向にある。フォーシーズンズホテルのロビーには、スタートアップ企業のTシャツを着た人々とMAGA帽やカウボーイブーツを履いた人々が混在し、シリコンヴァレー、オースティン、マイアミといったテクノロジーの中心地から人々が集まっていた。

●1億ドルを政治に静かに流し込む(Quietly funneling $100 million into politics

選挙直後にこの秋の会合を開催したことで、サミットがまるで葬儀のような雰囲気になってしまう危険性もあった。しかし、実際は正反対だった。

イヴェントが正式に始まる前から、ワイルズはラスヴェガスに滞在し、ロックブリッジの寄付者や友人約30人を招いて、ステーキハウスで土曜日の屋外ディナーを主催していた。賑やかなオープンバーや音楽が流れる宴会場で、参加者たちはトランプ政権でどのような役職に就けるかについて率直に意見を交わし、マスクが世界で最も影響力のある人物かどうかについて議論を交わしていた。

「ロックブリッジ・ネットワークの参加者は皆、技術者と政治家が再び直接協力し合い、互いに公然と敵対しなくなったことを非常に喜んでいた」と出席したソイレントの共同創業者ジョン・クーガンは語った。彼は続けて次のように述べた。「もはやテクノロジーが未来を牽引するかどうかではなく、その影響をいかに導くかが問われている。だからこそ、テクノロジー界の大富豪と政界のエリートたちが共にパーティーを開くのは当然のことなのだ」。

ヴァンスは出席しなかった。これは異例のことで、一部の支持者にとっては残念なことだった。しかし、ヴァンスの勝利によってロックブリッジ・ネットアークは一躍人気となり、直前になって参加申し込みが殺到した。以前は5000ドルで参加できたこともあったロックブリッジ・ネットワークは、最低参加費を2万5000ドルに引き上げた(ただし、一部の参加者はもっと安く参加できたと内緒話をしていた)。

ニューヨーク・タイムズ紙が入手した目論見書によると、ロックブリッジの会員資格の費用は、「リミテッド・パートナー」の10万ドルから、「プリンシパル・パートナー」の100万ドルまでとなっている。

この資金は、ロックブリッジが運営する8つの組織に充てられる。これには、4つの非公開資金を扱う501(c)()団体、2つのスーパーPAC、非営利活動のための寄付者指定型501(c)()基金、そしてロックブリッジ・ネットワークという傘下組織(有限責任会社)が含まれる。バスカーク氏が主宰するスーパーPAC「ターンアウト・フォー・アメリカ」は、今年少なくとも2500万ドルを調達している。

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次期副大統領のJD・ヴァンスはロックブリッジの共同創設者。ロックブリッジは、ヴァンスが2022年のオハイオ州選出連邦上院議員選挙で勝利した後、影響力を増し、現在、さらに大きな影響力を行使しようとしている

ロックブリッジ傘下の8つのグループは、主に投票促進活動を行っている。そのうちの1つ、「フェイスフル・イン・アクション(Faithful in Action)」は、16万人の会員を擁し、週2回、小規模教会にフィールドチームを組織している。このグループは、公的な活動は一切行っていない。

ロックブリッジ傘下のグループは、トランプに対する訴訟を追及する検察官を調査するドキュメンタリーも制作している。目論見書によると、ロックブリッジは2020年以降、「提携メディアに無料で提供される」世論調査に資金を提供してきた。また、提携メディアが掲載する「地方および全国規模の調査」にも資金援助を行っている。

●新たなタイプの共和党献金者(A new breed of Republican donors
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ヴァンスの新たな職務は、ロックブリッジとその150人の会員をトランプ政権の政策推進において影響力のある存在にする可能性が高い。

その理由の一つは、トランプがリバータリアン系のコーク・ネットワークや、よりタカ派的なアメリカン・オポチュニティ・アライアンス(American Opportunity Alliance)といった伝統的な共和党献金者グループと、時に冷え込んだ関係を築いてきたことにある。対照的に、ロックブリッジはトランプ時代に設立され、ライヴァル団体ほどの財力はないものの、トランプ氏と同様の過激な姿勢を共有している。

「保守系の大口献金者たちは、ここで決断を迫られている」とヴァンスの側近で、こうした大口献金者たちと親しい影響力のある保守派経済学者オレン・キャスは語る。「2024年の選挙までは、トランプが成功しないかもしれないという、少なくともそれなりの根拠があった」。

しかし、キャスによれば、もはやその根拠は存在しない。「古い船の貨物室に閉じ込められて沈没しようとしているのは誰なのか、そして保守主義の未来にとって真に重要な存在でありたいと願っているのは誰なのか?」と彼は問いかけた。

バスカークはラスヴェガスの献金者たちに対し、選挙期間中、ロックブリッジは約3000人を現場でトランプのために活動させていたと語った。そして、共和党の勝利後、ロックブリッジのプロジェクトはさらに規模を拡大する時が来たとバスカークは述べた。

セオドア・シュライファーは、選挙資金とアメリカ政治における億万長者の影響力を取材する『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者である。

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所属政党に不満を抱く裕福な共和党献金者たちが秘密の連合を形成する(Dissatisfied With Their Party, Wealthy Republican Donors Form Secret Coalitions

―いわゆる「闇資金グループ(dark money group)」における民主党の優位性を相殺しようと、ピーター・ティールのようなトランプ支持派の裕福な保守派は、従来の党組織の枠外でより大きな影響力を行使しようと画策している。

シェイン・ゴールドマチャー、ライアン・マック筆

2022年4月6日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2022/04/06/us/politics/republican-donors-rockbridge-network-trump.html

「共和党の政策を混乱させつつも推進する(disrupt but advance the Republican agenda)」ことを目指すと表明する、裕福な保守派支援者による新たな連合が今週、フロリダ州南部で非公開のサミットを開催した。文書や関係者へのインタヴューによると、このサミットではドナルド・J・トランプ前大統領と、トランプと連携する連邦上院議員候補が、トランプの所有するマール・ア・ラーゴ・クラブで非公開の演説を行った。

ロックブリッジ・ネットワークと呼ばれるこの連合には、ピーター・ティールやレベカ・マーサーなど、トランプの最大の献金者も含まれており、保守系メディア、法律、政策、有権者登録などのプロジェクトに3000万ドル以上を投じ、アメリカの右派勢力を再構築するという野心的な目標を掲げている。

これまでその存在が報じられていなかったロックブリッジの出現は、保守派の大口献金者たちが、党の正式な組織機構の外で、そして多くの場合ほとんど情報公開をせずに、2022年の中間選挙と共和党の将来を左右しようと、激しい駆け引きを繰り広げている中で起こった。

2月には、これまで報道されていなかった別の寄付者連合、トランプと親しいロビイスト、マット・シュラップが組織したチェスナット・ストリート・カウンシルが会合を開き、保守運動への新たな資金調達モデルについて説明を受けた。

こうした新興連合が勢いを増せば、トランプに懐疑的あるいは中立的な立場を取ってきた既存の寄付者ネットワークと、保守派の間で影響力を巡って競合することになるだろう。

億万長者の実業家チャールズ・G・コークとデイヴィッド・H・コークが設立したある連合は、2020年に2億5000万ドル以上を支出した。また、ニューヨークのヘッジファンドの億万長者ポール・シンガーが主導する別の連合は、2月に共和党の有力政治家を招いて会合を開いた。

秘密裏に行われる資金調達の急増はそれだけにとどまらない。トランプへの忠誠度の異なる複数の非営利団体も、右派への献金の主要な分配者となるべく競い合っている。

こうした駆け引きは、共和党を取り巻く政治構造、そして場合によっては党の政治家に対する右派の不満、さらにトランプが次期大統領選出馬を示唆する中での党の方向性に関する意見の相違を浮き彫りにしている。

共和党の最も裕福な活動家たちの資金力を活用しようとする動きは、今年の中間選挙、そして場合によっては2024年の大統領選に向けて、共和党にとって有利な選挙環境を活かすのに役立つ可能性がある。逆に、富裕層が競合する候補者、団体、戦術に資金を投入すれば、共和党の見通しは暗くなるだろう。

寄付者が自ら組織化しようとする姿勢は、寄付者の身元開示が義務付けられている各政党の公式機関から、開示義務がほとんどない外部団体へと権力と資金が流出していることを浮き彫りにしている。これはまた、各政党の候補者や政策を支援する非営利団体に関して、政治的右派が不利な立場に置かれているという、一部の有力共和党員の懸念を反映している。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の分析によると、民主党と概ね連携する政治活動が最も活発な非営利団体15団体は、2020年に寄付者の身元が非公開の資金で15億ドル以上を支出した。これに対し、共和党と連携する同規模の15団体が支出した、いわゆる「闇資金(dark money)」は約9億ドルにとどまっている。

この格差を縮め、右派の政治基盤を支える政治コンサルティングやテクノロジー分野で優位に立つための取り組みは、これらの連合体の間で主要な議論の的となっている。

ロックブリッジ・ネットワークのパンフレットには「将来の選挙で勝利する可能性を少しでも高めるためには、私たちの陣営が組織化されており、必要な組織的ノウハウと資金的支援を備えていることを示す必要がある」と記されている。

今年、共和党の資金関係者の間で出回ったパンフレットは、ロックブリッジを「一種の政治的ヴェンチャーキャピタル企業(a kind of political venture capital firm)」と称し、「(投資家の資金を適切な政治的専門知識で活用(leverage our investors’ capital with the right political expertise)」することで、「党の衰退の一因となっている現在の共和党のシンクタンク、メディア組織、活動家グループといったエコシステムを、より行動志向で、より効果的な、勝利に焦点を当てた人材と組織に置き換える(replace the current Republican ecosystem of think tanks, media organizations and activist groups that have contributed to the Party’s decline with better action-oriented, more effective people and institutions that are focused on winning)」としている。

ロックブリッジのパンフレットに記載されている取り組みの中には、広報、メッセージ発信、世論調査、「インフルエンサー・プログラム(influencer programs)」、調査報道など、メディア関連の機能が含まれており、総予算は800万ドルに上る。

375万ドルの費用が見込まれる「法廷闘争と戦略的訴訟(lawfare and strategic litigation)」は、裁判所を利用して「メディアを含む悪質な行為者に責任を負わせる(to hold bad actors, including the media, accountable)」ことを目的としている。300万ドルの費用が見込まれる「政権移行プロジェクト(transition project)」は、政策専門家を集め、「次期共和党政権のスタッフ(government-in-waiting to staff the next Republican administration)」を編成することを目的としている。

「レッドステート・プロジェクト(red state project)」とは、左派が先駆的に開発したモデルを模倣したもので、戦略家たちが様々な運動団体の活動を調整し、互いに補完し合い、重複を避けるという手法である。このプロジェクトは州ごとに600万ドルから800万ドルの費用がかかると見込まれており、当初は激戦州であるアリゾナ州、ネヴァダ州、ミシガン州に重点が置かれている。

ロックブリッジに詳しい関係者によると、これらのプロジェクトとその資金調達目標は野心的なもので、ロックブリッジ・ネットワークはこれまで新たな団体を設立するのではなく、既存の団体に寄付金を配分して目標を達成することに重点を置いてきたという。

関係者によると、この連合は昨年、有権者登録イニシアティヴを含むいくつかの計画をアリゾナ州で試験的に実施したという。アリゾナ州はパンフレットの中で事例研究として紹介されている。

アリゾナ州は、昨年開催されたロックブリッジ初のサミットの開催地だった。サミットでは、億万長者のテクノロジー投資家であるティールが講演を行った。ティールと、ヘッジファンドの大物ロバート・マーサーの娘であるレベカ・マーサーは、2016年のトランプへの最大の献金者の一人であり、トランプの政権移行チームで緊密に協力した。

それ以来、ティールは重要なキングメイカーとして台頭し、連邦上院議員と連邦下院議員の候補者16人を支援してきた。その中には、レベカ・マーサーも支援している候補者もいる。これらの候補者の多くは、トランプが2020年の大統領選に勝利したという虚偽の主張を鵜呑みにしている。

1つ目は、ティールの元従業員でアリゾナ州選出連邦上院議員選に出馬しているブレイク・マスターズだ。マスターズは火曜日夜、トランプに先立ち、マール・ア・ラーゴで開催されたロックブリッジの夕食会で講演を行い、ロックブリッジの活動から恩恵を受ける可能性が考えられる。

ティールは、マスターズとオハイオ州選出連邦上院議員候補のJD・ヴァンスを支援するスーパーPACにそれぞれ1000万ドルを寄付した。

ティールとレベカ・マーサーが今週のロックブリッジの会合に出席したかどうかは不明だ。この会合は、火曜日夜のマール・ア・ラーゴでの夕食会に加え、別のホテルでも会合が開かれた。マール・ア・ラーゴでの夕食会の直前には、トランプ支持者が集まる別のイヴェントが開催された。それは、フェイスブックの親会社であるメタ社のCEOマーク・ザッカーバーグが、パンデミックの中で選挙実施費用を賄うのに苦労している選挙管理委員会に2020年に助成金を提供したことを批判する映画のプレミア上映会だった。ティールはメタの取締役を務めていたが、中間選挙への影響力行使に専念するため、その職を辞任した。ロックブリッジへの関与は、ティールが非営利団体への秘密資金提供に手を広げようとしている可能性を示唆している。

ロックブリッジは、トランプ支持の雑誌「アメリカン・グレートネス」の編集長兼発行人であり、マスターズを支援するスーパーPACの顧問も務めるクリストファー・バスカークによって設立された。

ティールの広報担当者はコメントを拒否した。マーサーへ連絡する努力は成功しなかった。

15年以上前にコーク兄弟の政治活動の拡大を支援したシュラップは、2020年の選挙後、寄付者から「政治活動への資金調達の従来の方法に不満を抱いている」との声が寄せられたことが、チェスナット・ストリート・カウンシル設立のきっかけになったと述べた。

シュラップは、「こうした寄付者と協力して、より良い投資機会を見つけるのが賢明だと判断した」と述べた。

シュラップは、チェスナット・ストリート・カウンシルが投票規則をめぐる訴訟を支援する可能性を示唆した。

2月に開催されたチェスナット・ストリート・カウンシルの会合では、ヴェテラン共和党資金調達者のキャロライン・レンが寄付者に向けてプレゼンテーションを行った。

トランプの多くの政治活動、特に1月6日の連邦議事堂襲撃事件に先立つ集会の資金調達に尽力したレンは、右派は左派の献金者ネットワークや非営利団体の資金調達拠点といったシステムを模倣し、新たな団体を育成し、既存の団体間の連携を強化すべきだと述べたと、プレゼンテーションの内容を知る関係者が明らかにした。

近年、右派にも新たな資金調達拠点が出現しているものの、左派のそれほどの洗練された組織や資金規模には及ばない。

保守パートナーシップ研究所は、「保守運動のハブ(the hub of the conservative movement)」となることを目指している。保守パートナー研究所は2021年の年次報告書で、トランプの元補佐官スティーヴン・ミラーが率いるアメリカ・ファースト・リーガル、同じくトランプ政権出身のラス・ヴォートが率いるセンター・フォ・リニューイング・アメリカ、そして元住宅都市開発長官ベン・カーソンが率いるアメリカン・コーナーストーン研究所など、複数の新たな保守系非営利団体の設立に貢献したと主張している。

この団体には、選挙公正ネットワークも含まれており、そのリーダーは保守派弁護士クレタ・ミッチェルだ。ミッチェルは、当時大統領だったトランプがジョージア州当局者に対し、選挙結果を覆すのに十分な票を「見つける(find)」よう圧力をかけた1時間にわたる電話会議に同席していた。

保守パートナーシップ研究所は昨年夏、トランプの政治活動委員会(PAC)から100万ドルの資金提供を受け、昨年春にはトランプのプライヴェート・クラブであるマール・ア・ラーゴで寄付者向けの会合を開催した。

こうした団体は、選挙運動や政治活動委員会に比べて情報開示義務がはるかに少ないのが現状だ。保守パートナーシップ研究所や、司法活動家のレナード・A・レオが設立した別の非営利ネットワークのような資金提供拠点は、他の団体への助成金については開示義務があるが、資金提供者については開示義務がある。ロックブリッジ・ネットワークやチェスナット・ストリート・カウンシルのような寄付者連合も、おそらく開示義務はないだろう。

トランプをはじめとする政府関係者や大統領候補者たちが、こうした連合体との連携に積極的であることは、アメリカ政治におけるこれらの連合体の重要性が高まっていることの証左である。

シンガーの連合体であるアメリカン・オポチュニティ・アライアンスがコロラド州とフロリダ州パームビーチで最近開催した非公開会合には、マイク・ポンペオ元国務長官、フロリダ州知事ロン・デサンティス、マイク・ペンス元副大統領、ニッキー・ヘイリー元国連大使が出席した。

ミネソタ州選出のトム・エマー連邦下院議員(共和党連邦議員委員長)は、今週パームビーチで開催されるロックブリッジ・ネットワークの会合で講演する予定だった。

※シェイン・ゴールドマッハー:全国政治担当記者で、以前はメトロデスクの主任政治特派員を務めていた。『ニューヨーク・タイムズ』紙に入社する前は、『ポリティコ』誌で共和党の全国政治と2016年の大統領選挙を取材していた。

※ライアン・マック:世界のテクノロジー業界における企業の責任問題に焦点を当てたテクノロジー担当記者である。フェイスブックに関する報道で2020年にジョージ・ポーク賞を受賞した。ロサンゼルスを拠点としている。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 先日、第二次ドナルド・トランプ政権内部のネオコン派の動きや政権を実質的に取り仕切るスティーヴン・ミラーホワイトハウス大統領次席補佐官の動きについての記事を紹介した。ブログの記事は以下の通りだ。ぜひお読みいただきたい。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」:2026年4月29日付記事「アメリカに対するイスラエルからの働き掛けの受容体となった第二次ドナルド・トランプ政権内のネオコンたちと政権を動かすスティーヴン・ミラー」

https://suinikki.blog.jp/archives/90465309.html

 この記事の中で、聞き慣れない言葉「ロックブリッジ・ネットワーク(Rockbridge Network)」が出てくる。このロックブリッジ・ネットワークは政治活動組織であり、傘下にいくつもの組織を抱えている。2019年に、JD・ヴァンスとクリス・バスカークという人物によって創設された。「ロックブリッジ」はヴァンスの地元オハイオ州にあるリゾート地で、ここで会合が開かれたことから、その名前が使われることになった。2021年には、バスカークの地元アリゾナ州で大規模な会合が開かれ、マスコミの注目を浴びることになった。バスカークについては別の記事で詳しくご紹介したい。

 ロックブリッジ・ネットワークに資金的な援助を行っているのが、ヴァンスの師匠であるピーター・ティールとレベカ・マーサーである。ティールについてはここで詳しく説明しない。拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新軍産複合体の正体』(ビジネス社)をお読みいただきたい。レベカ・マーサーは保守系、共和党系の政治組織やシンクタンクへの大口献金者として知られる。父ロバート・マーサーはIBMの技術者出身で、初期の人工知能(AI)開発に携わった人物だ。のちにルネッサンス・テクノロジーズというヘッジファンドを設立し、ウォール街で大成功を収めた。ルネッサンス・テクノロジーズはすでに売却している。数兆円に及ぶ資産を財団に編成し、レベカはその理事となり、潤沢な資産を右派の政治団体に供給し、存在感を増している。2016年の大統領選挙ではドナルド・トランプを支援し、その影響力は大きい。

 共和党系の大口献金者としては、これまで、コーク・インダストリーズのコーク一族がよく知られている。彼らは政治団体やシンクタンク、大学などに多額の献金を行い、また、様々な組織を作り上げ、「コーク・ネットワーク(Koch Network)」と呼ばれる政治活動ネットワークを作り上げている。このことについては拙訳『』(講談社)をお読みいただきたい。「ロックブリッジ・ネットワーク」はこのコーク・ネットワークをしのぐ規模になることを目指している。そして、もちろん、ヴァンスの大統領就任も目標にしている。以下の記事が長いので、紹介はこのあたりにするが、ぜひこれからヴァンス副大統領の動き、ロックブリッジ・ネットワークの動き、アメリカ政治の動きについて注目を続けていただきたい。

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JD・ヴァンスと師匠に当たるピーター・ティール、あまり知られていないロックブリッジ・ネットワーク、そして2016年のキングメイカーであるレベカ・マーサーとの主要なつながりを示す図表と概要(Chart and overview of key links for J.D. Vance with mentor Peter Thiel, the little-known Rockbridge Network and 2016 kingmaker Rebekah Mercer

ウェンディ・シーグルマン筆

2024年7月29日

『ニューズトラックス』誌

https://newstracs.com/chart-and-overview-of-key-links-for-jd-vance-with-thiel-mercer-rockbridge/2024/07/29/

ドナルド・トランプがJD・ヴァンスを副大統領候補に指名して以来、ヴァンスが「子どものいない猫好き女性」を批判する女性蔑視的な発言や、子どものいないアメリカ人はより高い税率を支払うべきだといった物議を醸す見解を述べていることが報じられている。ソーシャルメディアはソファやヴァンスの奇妙さを揶揄するミームで溢れかえっている。さらに、ヴァンスと彼の師であるピーター・ティールが、2008年に「非生産的な人々はバイオディーゼル燃料に変換されるべきだ」と書いたカーティス・ヤーヴィンの思想に倣っているという、より悪質な報道もある。ヤーヴィンは後に冗談だったと釈明したが、その後、非生産的な人々を仮想現実世界に閉じ込めるという、映画「ソイレント・グリーン」や「マトリックス」を彷彿とさせる悪夢のようなシナリオを、大量虐殺の代替手段として提案した。

JD・ヴァンスがトランプ陣営に加わったことは、過激な極右のIT億万長者グループがどれほどの影響力を持っているか、そしてトランプが11月の選挙で勝利すれば、彼らの影響力がどれほど増大するかを示している。トランプが勝利しない場合、このグループがハリス政権を弱体化させるためにあらゆる手段を講じることは間違いないところだ。

JD・ヴァンスのネットワークにおける主要人物の図表Chart of some key people in J.D. Vance’s network
以下の図表と記事は、JD・ヴァンスとクリス・バスカークが共同設立したロックブリッジ・ネットワークを通じて、主要人物たちがどのように繋がっているかを示している。これはヴァンスと繋がるネットワークのごく一部だ。メディアはピーター・ティール、イーロン・マスク、その他のテクノロジー系億万長者に注目しているが、父親のロバートと共に2016年のトランプの勝利に多額の資金を提供したレベカ・マーサーを忘れてはいけない。レベカ・マーサーはこのネットワークに強い人脈を持ち、ピーター・ティールと共に再び政治的なキングメイカーとしての役割を果たそうとしている。

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●テクノロジー界の巨頭たちとレベカ・マーサー(The tech broligarchs and Rebekah Mercer

2018年、キャロル・キャドワラダーは、レベカ・マーサーとロバート・マーサーが出資するケンブリッジ・アナリティカが、数千万件ものフェイスブックのプロフィールを収集し、そのデータを利用してアメリカの有権者をターゲットにするツールを構築した経緯について、複数のスクープ記事を発表した。ケンブリッジ・アナリティカに関する報道は、極右の政治家や献金者がテクノロジーと個人データを駆使して選挙に影響を与えるリスクを浮き彫りにした。

私の最初の調査と報道は2017年に始まり、SCLグループとケンブリッジ・アナリティカの企業一覧表を作成した。以来、これらの企業について継続的に報道している。

最近、キャドワラダーは、トランプを支持するJD・ヴァンス、ピーター・ティール、イーロン・マスクといったテクノロジー界の「巨頭たち(broligarchs)」について記事を書いている。

2016年に見られた、億万長者の献金者、テクノロジー、データに関するいくつかのパターンは、2024年の選挙でも継続している。

新たな権力者として台頭する一部のテクノロジー界の巨頭たちは、メディアで大きく取り上げられている。レベカ・マーサーのような人物は、過去の経験を利用して右翼的な政策を推進しており、こうした人物もこの陰謀ネットワークに関する報道に含めるべきである。

●ピーター・ティールはいかにしてテクノロジー界の巨頭となったのか(How Peter Thiel became a tech broligarch

ピーター・ティールは、2024年の大統領選挙に向けて最も有力なキングメイカー志望者(the most prominent ‘would-be’ kingmaker)と言えるだろう。もっとも、最近トランプを支持したイーロン・マスクと、その座を争っているように見えることもある。ティールとマスクは共に、ペイパル(PayPal)の共同創業者として巨万の富を築き、テクノロジー界の巨頭となった。

1990年代後半、世界が2000年問題(Y2K)への対応に追われる中、ピーター・ティールはオンライン決済ソフトウェア会社コンフィニティ(Confinity)を設立した。コンフィニティは後にイーロン・マスクが設立したX.comと合併し、ペイパルへと社名を変更した。マスクはペイパルを短期間経営した後、2002年にeBayに売却し、その資金をスペースXSpaceX)の設立資金に充てた。

ピーター・ティールはその後、クラリウム・キャピタル(Clarium Capital)(現在は閉鎖)、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)、ティール・キャピタル(Thiel Capital)、ミスリル・キャピタル(Mithril Capital)、ヴァラー・ヴェンチャーズ(Valar Ventures)など、複数のヴェンチャーキャピタル会社を設立、あるいは共同設立した。彼はフェイスブックに50万ドルを投資し、約10%の株式を取得した最初の外部投資家だった。

ヴェンチャーキャピタルや投資会社に加え、ティールはソフトウェアおよびデータ分析会社であるパランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)を設立した。パランティアは、トランプ政権以前、政権中、そして政権後も、国防総省、保健福祉省などから数億ドル規模の政府契約を獲得しており、膨大な量の政府データへのアクセス権を有している。

ピーター・ティールは巨万の富を築く過程で、多くの弟子たち(proteges)を育成してきた。その多くは、ティールの極右思想に共鳴する人々だ。弟子の一人であるJD・ヴァンスとブレイク・マスターズは、偶然にも(それぞれ別々に)ロースクール在学中にティールと出会った。ヴァンスはイェール大学ロースクール在学中にティールの講演を聴講し、もう一人の将来の有望株で弁護士のブレイク・マスターズはスタンフォード大学でティールが担当した「主権、テクノロジー、グローバライゼーション(Sovereignty, Technology, and Globalization)」という授業で出会った。

JD・ヴァンスとブレイク・マスターズは、ともにピーター・ティールが設立した企業で働いた。そして、2022年の中間選挙を前に、ティールは弟子2人を連邦上院議員に当選させるために数千万ドルを投じた。

ティールは、2022年にオハイオ州で連邦上院議員選挙に出馬し当選したヴァンスを支援する政治活動委員会(PAC)に1500万ドルを寄付した。

ティールは、アリゾナ州で連邦上院議員選挙に出馬したブレイク・マスターズを支援するPACにも1350万ドルを寄付した。マスターズは、現在カマラ・ハリスの副大統領候補として検討されているマーク・ケリーに敗れた。マスターズは現在、連邦議会議員選挙に出馬しており、最近トランプ大統領の支持を得た。

JD・ヴァンスのキャリアにおける重要な節目とピーター・ティールの支援(J.D. Vance’s career milestones with support from Peter Thiel

ヴァンスと彼の師であるティールとの関係は、他のメディアでも広く取り上げられており、最近の『ワシントン・ポスト』紙の記事では、ヴァンスの経歴とティールをはじめとする複数の大手テクノロジー系寄付者からの支援について優れた概説が掲載されている。

(引用はじめ)

ティールはヴァンスを富裕層に引き上げ、MAGA支持者の間で人気を博した企業へ彼が投資できるようにした。また、ティールはヴァンスの政界進出を後押しし、他のシリコンヴァレーの寄付者とともに、2022年の連邦上院議員選挙でのヴァンスの当選を資金面で支援した。

(引用終わり)

以下は、JD・ヴァンスのキャリアと人生におけるいくつかの重要な節目となる出来事だ。

・2011年、イェール大学ロースクール在学中にピーター・ティールと出会った。

・卒業後、ヴァンスは短期間法律関係の仕事に就いた後、ティールの推薦により、サーキット・セラピューティクスのCEOであるフレデリック・モルによって同社に採用された。

2016年、ヴァンスはイェール大学ロースクールで出会ったウシャ・チルクリ・ヴァンスと結婚した。

・ヴァンスは長年にわたり、名前を何度も変えている(両親の離婚後、祖母の旧姓であるヴァンスを名乗るなど)。ジェームズ・ドナルド・ボウマン、ジェームズ・デイヴィッド・ハメル、JD・ハメル、JD・ヴァンスなど、様々な名前を使用していた。

・2016年、ヴァンスは回顧録『ヒルビリー・エレジー』を出版し、ベストセラーとなり、後に映画化された。

2016年、ヴァンスはティールが共同設立したヴェンチャーキャピタルであるミスリル・キャピタルで短期間勤務した。

・2017年、ヴァンスはアメリカ・オンライン共同創業者スティーヴ・ケースが設立したヴェンチャーキャピタル企業レヴォリューションのパートナーに就任した。

・2019年、ヴァンスはカトリックに改宗した。以前は無神論者を自称していたにもかかわらず、ティールが「キリスト教への道を歩む上での原点となるインスピレーションを与えてくれた(was an original inspiration for his path to Christianity despite previously calling himself an atheist)」と記した。

・2020年、ヴァンスはコリン・グリーンスポンと共にヴェンチャーキャピタル企業ナリヤ・キャピタルを共同設立した。グリーンスポンは以前ティールのミスリル・キャピタルに勤務しており、ヴァンスをそこで採用した人物でもある。ナリヤはピーター・ティール、元グーグルCEOのエリック・シュミット、そして億万長者のテクノロジー起業家兼投資家マーク・アンドリーセンからの資金提供を受けて設立された。(興味深いことに、ティールの企業であるヴァラー、ミスリル、パランティア、そしてヴァンスのナリヤの社名の多くは、ティールとヴァンスのお気に入りのJRR・トールキンの『指輪物語』に由来している)。

・2022年、ヴァンスはピーター・ティールからの1500万ドルの支援を受けてオハイオ州選出の連邦上院議員に当選した。

・2024年、ヴァンスはトランプによって共和党の副大統領候補に指名された。

ピーター・ティールの弟子であるJD・ヴァンスが副大統領候補に浮上した今、彼らを繋ぐネットワーク、特にあまり知られていないロックブリッジ・ネットワークについて理解しておくことは有益である。

●ロックブリッジ・ネットワークは、クリス・バスカークとJD・ヴァンスが共同設立し、ピーター・ティール、レベカ・マーサーなどから資金提供を受けている(The Rockbridge Network was co-founded by Chris Buskirk and J.D. Vance with funding from Peter Thiel, Rebekah Mercer and others

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2022年、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、コーク兄弟(2020年に2億5000万ドル以上を支出)をはじめとする共和党の富裕層献金者によって結成された秘密連合、そして、コーク兄弟のネットワークとは別のピーター・ティールとレベカ・マーサーが出資するロックブリッジ・ネットワークに関する記事を掲載した。

チャールズ・コークとデイヴィッド・コークについては、特にジェイン・メイヤーの2016年の著書『ダークマネー』で、彼らの石油による莫大な富が、右翼イデオロギーや政策、そして彼らの巨額の富を守り、さらに増やすのに役立つ候補者を支援するために、非営利団体、シンクタンク、学術機関、政治機関からなる広範なネットワークに資金提供されていたことが明らかになって以来、大きく報道されてきた。

一方、コーク・ネットワークに対抗する、より若い世代のテクノロジー系組織として設立されたロックブリッジ・ネットワークについては、報道がはるかに少ないのが現状だ。

(引用はじめ)

ロックブリッジ・ネットワークには、ピーター・ティールやレベカ・マーサーなど、トランプの最大の献金者が名を連ねており、保守系メディア、法律、政策、有権者登録プロジェクトなどに3000万ドル以上を投じ、アメリカの右派勢力を再構築するという野心的な目標を掲げている。

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2023年の『パック』誌の記事によると、ロックブリッジ・ネットワークは2019年にティールの側近2人によって共同設立された。1人は当時ベストセラー回顧録『ヒルビリー・エレジー』の著者であり、新進気鋭のヴェンチャーキャピタリストだったJD・ヴァンス、もう1人は保守系雑誌『アメリカン・グレートネス』の編集者兼発行人であるクリス・バスカークだ。

●ロックブリッジ・ネットワークの会合では、ピーター・ティール、ドナルド・トランプ、ドナルド・トランプ・ジュニア、タッカー・カールソン、デイヴィッド・サックスなどが講演を行った(Rockbridge Network meetings included speeches by Peter Thiel, Donald Trump, Donald Trump Jr., Tucker Carlson and David Sacks

JD・ヴァンスとクリス・バスカークは、シリコンヴァレーにおける若手たちの政治的な拠点としてロックブリッジ・ネットワークを設立した。年2回開催されるイヴェントでは、タッカー・カールソン、カジノ王スティーヴ・ウィン、ピーター・ティール、デイヴィッド・サックスといった著名人が講演を行った。

昨年、ロックブリッジは、ネットワークが推奨するプログラムに年間10万ドルを支出することを約束した会員が約125名いると発表した。

ロックブリッジは2021年にアリゾナ州で初のサミットを開催し、テクノロジー界の大富豪ピーター・ティールが講演を行った。

2022年、ロックブリッジ・ネットワークは「一種の政治的ヴェンチャーキャピタル」と自称するパンフレットを配布し、マール・ア・ラーゴでドナルド・トランプの講演を招いた非公開会議を開催した。

2024年にマール・ア・ラーゴで開催されたロックブリッジの会合には、口止め料裁判のためニューヨークに滞在していたドナルド・トランプが電話で参加し、息子のドン・ジュニアが講演を行った。その他の出席者には、トランプの共同選挙対策責任者であるスージー・ワイルズとクリス・ラシヴィタ、共和党の献金者であるレベカ・マーサー(以前に取り上げた)、億万長者のウッディ・ジョンソン、トランプの「法廷の口達者」レナード・レオ(以前に取り上げた)、仮想通貨起業家のエリック・ヴォーヒーズ、元ウーバー幹部のエミル・マイケルなどがいた。

●ヴァンスはシリコンヴァレーの資金調達パーティーで副大統領候補に推薦された(Vance was recommended for VP at a Silicon Valley fundraiser

2024年7月の『ニューヨーク・タイムズ』紙は記事「いかにしてテクノロジー界の億万長者ネットワークがJD・ヴァンスの権力掌握を支援したか」を掲載した。6月には、南アフリカ系アメリカ人のテクノロジー起業家兼投資家であるデイヴィッド・サックスの自宅で資金調達パーティーが開催された。

2007年、『フォーチュン』誌は「ペイパル・マフィア(The Paypal Mafia)」と題した記事を掲載し、ピーター・ティールやデイヴィッド・サックスを含むペイパルの創業者たちを紹介した。この記事で「ペイパル・マフィア」という言葉が生まれ、その後、新興テクノロジー界の有力者たちを指す言葉として頻繁に使われるようになった。

7月のイヴェントは、サックスがポッドキャスター仲間のチャマス・パリハピティヤと共同開催した。資金調達パーティー後に開かれた、テクノロジー業界や仮想通貨業界の幹部や投資家約20名が出席した非公開の夕食会で、トランプは副大統領候補について非公式な投票を行った。サックス、パリハピティヤたちは全員、JD・ヴァンス氏を選んだ。

7月の資金調達イヴェントはロックブリッジ・ネットワークとは関係がなかったが、JD・ヴァンスはピーター・ティールを通じてデイヴィッド・サックスと知り合い、シリコンヴァレーでの影響力拡大を目指したロックブリッジ・ネットワークの運営におけるヴァンスの活動が、シリコンヴァレーでの資金調達イvヴェントでヴァンスが圧倒的な支持を得た大きな理由の一つだったと考えられる。

●クリス・バスカーク、レベカ・マーサー、オミード・マリクが共同設立した1789キャピタルは2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェント後に設立された(1789 Capital co-founded by Chris Buskirk, Rebekah Mercer and Omeed Malik was formed after a Rockbridge event in 2022

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NBCニューズの記事では、2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェントで、1789キャピタルという新しいファンドの構想がどのように生まれたかが報じられている。

マリクのような人々にとって、このネットワークはアイデアの交換と創出の場としても機能している。マリクのファンドである1789キャピタルの構想が生まれたのも、2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェントだった。現在、このファンドはタッカー・カールソンの新たなメディア事業を支援しており、元FOXニューズ司会者の最新事業の資金調達を主導している。

1789キャピタルは、共和党の献金者であり、ケンブリッジ・アナリティカの資金提供者でもあるレベカ・マーサー、ロックブリッジの共同創設者であるクリス・バスカーク、そして「反ウォーク(anti woke)」を掲げる実業家オミード・マリクによって共同設立された。

私は以前、オミード・マリクと、彼がレベカ・マーサー、クリス・バスカークと共に1789キャピタルで行っている活動について詳しく記事を書いた。その際、アドヴァイザーとして名を連ねる著名な人物の一人に、ピーター・ティールの弟子であるブレイク・マスターズがいることを指摘した。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、1789キャピタルがタッカー・カールソンとニール・パテルが率いるニューメディアヴェンチャーへの1500万ドルの創業資金提供を主導したと報じた。次の投資先は、ミサイル用の3Dプリント可能なロケット燃料を製造するスタートアップ企業ファイアホークだ。ファイアホークは、従来の方法よりも安全で安価だと主張している。数カ月前、ファイアホークは1789キャピタルが参加した新たな資金調達ラウンドを発表した。レベカ・マーサーに関する最近の記事では、1789キャピタルがここ数カ月で1200万ドル以上を調達したことを示す複数のSEC提出書類について詳しく解説した。

●レべカ・マーサー、JD・ヴァンスとヘリテージ財団(Rebekah Mercer, J.D. Vance and the Heritage Foundation

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ヘリテージ財団は最近、大統領移行計画「プロジェクト2025」の立案者として大きく報道されている。この計画は、トランプ支持者を政府要員に据え、保護規制緩和を大幅に進め、教育省や環境保護庁(EPA)などの機関を縮小または解体することを目的としている。

トランプは、ヘリテージ財団の過激な極右的大統領移行計画「プロジェクト2025」から距離を置こうとしてきた。

しかし、JD・ヴァンスは、プロジェクト2025の主要スポンサーであるヘリテージ財団理事長ケヴィン・ロバーツの近刊書籍に序文を寄稿しており、ヴァンスがヘリテージ財団の指導部や目標といかに密接に連携しているかが明らかになっている。

私は、ヘリテージ財団の18人の理事の一人であるレベカ・マーサーについてこの記事を書いた。マーサー・ファミリー財団は過去にヘリテージ財団に寄付を行っている。さらに、マーサーは、ヘリテージ財団傘下の非営利団体であるヘリテージ・アクション・フォー・アメリカのわずか5人の理事の一人でもある。これは、彼女がヘリテージ財団に深く関わっていることを示しており、彼女はヘリテージ財団の理事を務めると同時に、関連する2つの非営利団体の役員も務めている。

ヴァンスとマーサーがヘリテージ財団と共同で活動していたという証拠はないが、両者ともヘリテージ財団とそれぞれ強い繋がりを持っている。

●レベカ・マーサー、スティーヴン・バノン、クリス・バスカークは2017年に連合を結成した(Rebekah Mercer, Stephen Bannon and Chris Buskirk formed an alliance in 2017

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レベカ・マーサーとクリス・バスカークの関係は、バスカークがヴァンスと共にロックブリッジ・ネットワークを共同設立する数年前にまで遡る。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、スティーヴン・バノンとレベカ・マーサーが2017年に、アラバマ州連邦上院議員選挙で落選したロイ・ムーアなどの候補者を支援する政治連合を結成したと報じた。ピーター・ティールはバノンとマーサー夫妻に近い人物とされ、この連合で重要な役割を果たすと予想されていた。オンラインジャーナル「アメリカン・グレートネス」の発行人であるクリス・バスカークは、連合の政策方針を広める役割を担うために招集された。

注目すべきは、バスカークとヴァンスがマーサーとティールと共に連合を立ち上げる数年前に、マーサー、ティール、バスカークがこのロックブリッジ・ネットワークに関わっていたことである。 2017年の連合は、ロックブリッジの初期形態だった可能性が高い。

●マーサー家が資金提供するケンブリッジ・アナリティカと、ティール氏のデータ企業パランティア(Mercer’s Cambridge Analytica and Thiel’s data company Palantir

2018年、ケンブリッジ・アナリティカの内部告発者であるクリストファー・ワイリーは、イギリス議会で、マーサーが出資するケンブリッジ・アナリティカが、ピーター・ティールのデータ企業パランティアのスタッフと非公式に協力していたと証言した。

「パランティアとケンブリッジ・アナリティカの間には正式な契約はなかったが、パランティアのスタッフがオフィスに出入りし、そのデータを使って作業していた」とワイリーは議員たちを前にして語った。さらに、パランティアのスタッフは「私たちが取り組んでいたモデルの構築を支援してくれた」と付け加えた。

パランティアの広報担当者はこの主張を否定し、パランティアはケンブリッジ・アナリティカとは一切関係がなく、ケンブリッジ・アナリティカのデータを使ったこともないと述べた。

●ティール、ヴァンス、マーサー、そしてソーシャルメディアプラットフォームのパーラーとランブル(Thiel, Vance, Mercer and social media platforms Parler and Rumble

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JD・ヴァンスは、自身のヴェンチャーキャピタルであるナリヤ・キャピタルを経営していた当時、ソーシャルネットワーク「パーラー(Parler)」に対する投資に関してレベカ・マーサーに助言を与え、その後、保守系プラットフォーム「ランブル(Rumble)」にも投資した。

この時期、ヴァンスは、パーラーをはじめとする保守派に支持されるテクノロジー・プラットフォームへの投資に関心を持つようになった。関係者2人によると、ヴァンスはパーラーの支配株主であり、共和党の大口献金者でもあるレベカ・マーサーに助言を与え、パーラーへの投資を検討していたとのことだ。ナリヤ・キャピタルは最終的にパーラーへの投資は行わなかったが、2021年に保守派に支持されるユーチューブ(YouTube)の競合サーヴィスであるランブルにティールと共に投資した。また、ケンタッキー州に拠点を置く屋内農業企業アプハーヴェスト(AppHarvest)にも投資しており、アプハーヴェストは2020年末に上場した。アプハーヴェストは昨年破産申請を行った。

私はランブルと、トランプのトゥルース・ソーシャル(Truth Social)の親会社であるトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(Trump Media & Technology GroupTMTG)との密接な関係について、この記事を書いた。トランプのTMTGの最高情報責任者(CIO)は、マケドニアにオフィスを構えるランブルの主要パートナー企業であるコスミック・ディヴェロップメント(Cosmic Development)の最高技術責任者(CTO)も兼任している。

ランブルの主要投資家には、JD・ヴァンス、ピーター・ティール、ダレン・ブラントンなどが名を連ねている。ブラントンはマイク・フリンの仲間と共同で企業に投資し、スティーヴ・バノンのパートナーである郭文貴が経営するGTVメディアの取締役を務めていた。

2023年6月、ペイパルの共同創業者であり、トランプのシリコンヴァレーでの資金調達イヴェントを主催したデイヴィッド・サックスは、ランブルが彼のポッドキャストおよびライヴストリーミングプラットフォームであるカリン(Callin)を買収した後、ランブルの取締役に就任した。

●オミード・マリクは、ティールの弟子であるブレイク・マスターズのビジネス上の同僚(Omeed Malik is a business colleague of Thiel protege Blake Masters

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私がマリクについて書いたこの記事では、彼がマーサーとバスカークと共に1789キャピタルを共同設立した経緯、そしてマリクが既存の事業との統合を目的とした特別目的買収会社(special purpose acquisition companiesSPAC)を2社設立したことについて述べています。

マリクが設立した最初のSPACであるコロンビエ・アクイジション・コープ(Colombier Acquisition Corp.)は、アマゾンと競合する愛国的な企業や消費者向けの大手マーケットプレイスであるPSQホールディングス(PSQ Holdings)(別名パブリックスクエア[PublicSquare])と合併した。

マリクは、ヴェンチャーキャピタリストでピーター・ティールの弟子であるブレイク・マスターズ(前述の通り1789キャピタルの顧問も務めている)と共にPSQホールディングスの取締役に就任した。

マリクと共にPSQの取締役を務めるのは、マイク・ペンス副大統領の元首席補佐官ニック・エアーズ、ジョージア州選出の元連邦上院議員でトランプの主要献金者であるケリー・ロフラーなどだ。

●ロックブリッジ・ネットワークは有権者登録に注力(The Rockbridge Network is focused on voter registration

このNBCニューズの記事によると、ロックブリッジの2024年の主要プロジェクトの一つは有権者登録だ。

先週の会合に出席し、ロックブリッジの活動に詳しい情報筋によると、ロックブリッジ・ネットワークは2023年に12万5000人の有権者を登録し、2024年にはその倍増を目指しているとのことだ。ロックブリッジ・ネットワークは、新規登録者を対象とするプログラムに資金を提供しており、彼らが重視する問題に基づいてアプローチするとともに、「アンバサダー(ambassador)」と呼ばれるアウトリーチ体制を構築している。この体制では、10人の新規有権者それぞれに1人のオーガナイザーが割り当てられ、オーガナイザーが彼らと親交を深める。

最近、新たに設立されたスーパーPAC「アメリカPAC」が話題になった。『ウォールストリート・ジャーナル』紙が、イーロン・マスクがトランプ支援のためにアメリカPACに毎月4500万ドルを寄付すると報じたことが発端だ。マスクは後にこの報道を否定した。

アメリカPACについては、初期寄付者リストの詳細と、PACが出資する主要ヴェンダー2社の概要をこちらで解説した。初期寄付者は主にテクノロジー系起業家や投資家で、ピーター・ティールやイーロン・マスクと密接な関係にある人物が多く含まれている。アメリカPACの活動は、共和党支持層に期日前投票や不在者投票を促すことに重点を置いており、ヴェンダーであるラコンター・メディア(Raconteur Media)とイン・フィールド・ストラティジーズ(In Field Strategies)は、戸別訪問、現場活動、デジタルサーヴィス、テキストメッセージ、電話サービスなどを専門としている。

ロックブリッジ・ネットワークとアメリカPACの間には直接的な繋がりは報告されていないが、両者とも有権者登録やシリコンヴァレーおよびヴェンチャーキャピタルからの資金提供といった点で共通点があることから、何らかの繋がりがある可能性は否定できない。

●共和党全国委員会が公開したシリコンヴァレーの投資家たちの写真(RNC photo of various Silicon Valley investors

この記事を執筆中、リサーチャーのスリックロックウェブが、先に述べた人物を含む興味深い人脈を示す写真を提供してくれた。以下でさらに詳しく述べる人物たちは、現在トランプとヴァンスを支援しているテクノロジー系億万長者ネットワークに関係する人物の一部について、より詳細な情報を提供してくれる。

テディ・シュライファーがツイッター(X)で共有したこの写真には、左前から時計回りに右奥に向かって、ケン・ハウリー、シャーヴィン・ピシェヴァー、シェイン・コプラン、ドナルド・トランプ・ジュニア、オミード・マリク、デイヴィッド・サックスが写っている。

オミード・マリクとデイヴィッド・サックス、そしてドナルド・トランプ・ジュニアについて、JD・ヴァンス、ピーター・ティール、レベカ・マーサーとの繋がりについて書いた。

以下では、この写真に写っている他の3人、ケン・ハウリー、シャーヴィン・ピシェヴァー、シェイン・コプランについて、ティール、イーロン・マスク、そして右派テクノロジー界の頭目たちとの繋がりについて、より詳しく解説する。

ケン・ハウリーは、ピーター・ティールと共にペイパルとファウンダーズ・ファンドを共同設立した。ドナルド・トランプ大統領政権下の2019年から2021年まで駐スウェーデン米大使を務めた。私は以前、アメリカPACの初期資金提供者リストについて記事を書いたが、ケン・ハウリーは25万ドルずつ4回、合計100万ドルを寄付した寄付者の1人だ。

シャーヴィン・ピシェヴァーはヴェンチャーキャピタリストで、ウーバー(Uber)とハイパーループ(Hyperloop)の投資家だった。2013年にはイーロン・マスクと共にキューバを訪問している。ピシェヴァーは2014年にハイパーループを共同設立し、イーロン・マスクが開発した技術の商業化に取り組んだ。2016年の『モスクワ・タイムズ』紙の記事によると、ピシェヴァーはロシアを訪問し、複数のロシア政府系ファンドの責任者と会談し、ウラジーミル・プーティン大統領とも直接会談したとのことだ。彼はその後、ハイパーループがロシア直接投資基金(RDIF)から2件の投資を受けていたことが問題視され、2016年にハイパーループを去った。2017年、『ブルームバーグ』誌はピシェヴァーが複数の女性から性的不正行為で告発されたと報じた。

シェイン・コプランは、スポーツ、ポップカルチャー、そして2024年のアメリカ大統領選挙への賭けを提供することで急速に成長しているベッティングプラットフォームであるポリマーケット(Polymarket)(別名ブロックラタイズ[Blockratize])の創設者だ。ポリマーケットは2回の資金調達ラウンドで7000万ドルを調達しており、その中にはピーター・ティール率いるファウンダーズ・ファンドが主導した4500万ドルや、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリンからの出資が含まれている。2022年、ポリマーケットは米商品先物取引委員会(CFTC)から、イヴェントベースのバイナリーオプションオンライン取引契約(いわゆる「イヴェントマーケット」)のための違法な未登録・未指定施設を運営していたとして、140万ドルの和解金を支払うよう命じられた。現在、ポリマーケットはアメリカ人によるプラットフォーム上での取引を禁止している。それにもかかわらず、このサイトは成長を続けており、7月の取引額は2億7500万ドルを超えた。ポリマーケットは最近、世論調査専門家のネイト・シルヴァーをアドヴァイザーとして迎え入れた。ウォールストリート・ジャーナルの記事では、この仮想通貨賭博プラットフォームの成長とリスクについて、「批判者たちは、選挙賭博が有権者の動機を歪め、選挙操作を助長するのではないかと懸念している」と述べている。

11月の大統領選挙に向けて、ドナルド・トランプとJD・ヴァンスを支援するネットワークを暴露し続けることが不可欠だ。11月の選挙で誰が勝つかにかかわらず、このネットワークは組織化、資金調達を続け、過激な極右アジェンダの実現に向けて突き進むだろう。そして、トランプが勝利しない場合、特に民主党が連邦上院の過半数を維持できず、連邦下院でも過半数を獲得できない場合、バラク・オバマ政権時代のティーパーティー運動に似たものがハリス大統領に対して立ち上がる可能性が高いだろう。しかし今回は、右翼のテクノロジー系仮想通貨億万長者による運動、つまりJD・ヴァンスをトランプ陣営に送り込んだネットワークが率いるテクノファシスト政党(a techno-fascist party)になるかもしれない。

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