古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:グローバル・サウス

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 世界の構造は大きく変化しつつある。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのBRICSの枠組みが拡大し、非西側諸国、西側ではない国々(the Rest)の力が増している。戦後世界では、冷戦下の東西対決(アメリカ主導の西側・第一世界対ソヴィエト連邦主導の東側・第二世界)に与しない第三世界の団結といった動きや、南北問題の緩和に向けた動きというものがあった。しかし、非同盟運動などは、あまり効果を発揮することはなかった。これらの問題提起は重要であったが、何よりも、世界の舞台での発言権があまりにも小さかった。また、第二次世界大戦後の世界で、多くの植民地が西洋諸国の植民地から独立を果たしたが、経済的な搾取構造は変わらなかった。

モノカルチャー経済(monoculture economy)と呼ばれる、主要な農産物1種類の輸出に頼る経済で、西側諸国の搾取から逃れることはできなかった。アメリカでは、「近代化論(modernization theory)」と呼ばれる学説が主流となり、「西洋諸国の発展段階を踏んでいけば、新たに独立した国々も豊かになれる」ということになった。その最高の例が日本とされた。この近代化論は、マルクス主義に対抗するために生み出された面もある。しかし、それは欺瞞に過ぎなかった。マルクス主義経済学でも給食道の国々は豊かになれなかった。世界の経済格差は拡大するばかりだった。

 しかし、最近になって、BRICSを核とし、重層的な非西洋諸国のネットワークにおいて、大きな経済発展が各国で起きている。その中心は日本を除く、東アジア・東南アジア地域であり、アフリカ地域、南米地域でも同様のことが起きている。相対的に、西側諸国の力を低下し、格差は縮小しつつある。現在、そうした状況は、グローバル・サウスの台頭という言葉として表現されている。グローバル・サウスの台頭の影響を、グローバル・ノースは対立ではなく、協調・協力で良い方向に進めていくべきだ。そのためには、現在の対立構造を乗り越える必要があるのかもしれない。

 私は、これまで「西側諸国対西側以外の国々」という二項対立で世界情勢を見てきた。短期的にはこの見方で間違っていないと思う。しかし、中期的(20年から30年)、長期的(30年以上)でどうなるかということも考えるようになった。「覇権(hegemony)」という考え方、世界を支配する、管理する超大国が力を持つと考え方がどうなるのか、について考えていきたい。結論は出ていないし、私に結論が出せるのだろうかということも考えるが、「次の覇権国は中国である」ということまでは間違わないだろうが、それから先の世界はどうなるのだろうか、ということを考える。一極、二極、多極、無極という主張がこれまで出ているが、そもそも「覇権」という考え方自体が西洋中心的であり、それを乗り越えるものが出てくるのではないかと考えている。

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グローバル・サウスを恐れているのは誰か?(Who’s Afraid of the Global South?

-50年前の2つの国連決議(50-year-old U.N. resolutions)を見直すことは、経済的な世界秩序の変化に対する懸念を払拭するのに役立つはずだ。

マイケル・ギャラン、アウデ・ダーナル筆

2024年4月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/14/global-south-united-nations-new-international-economic-order/

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1974年5月1日、第6回国連特別総会の臨時委員会で、新しい国際経済秩序の確立に関する宣言案が採択された

グローバル・サウス(global south)は台頭している。中国が、世界最大の経済大国、120カ国以上の句にとっての最大の貿易相手国、そして単一国家として最大の開発金融国として台頭している。 BRICS+ブロック(BRICS+ bloc)の形成とその後の拡大。そして、この地域におけるアメリカの影響力に対抗しようとするラテンアメリカの「ピンク潮流(pink tide、訳者註:ラテンアメリカ各国の左翼的な政治動向)」の復活だ。数十年にわたるアメリカの支配を経て、たとえその正確な輪郭がまだ定義されていないとしても、新たな多極世界秩序(multipolar world order)が出現しつつある。

ワシントンでは、西側の優越的なパワーに対するこの挑戦は、困惑と対立をもって受け止められてきた。グローバル・サウスを理解しようとするよりも、その存在そのものを疑問視する人々もいる。確かに、グローバル・サウスは一枚岩ではない。南の団結を支持する人々は、自分たちの運動が文化的、政治的、経済的に大きな多様性を持ち、矛盾さえ含んでいることを長い間認識してきた。しかし、明確な一致点もあり、首尾一貫した一連の不満や要求もあるが、それが聞き入れられないことがあまりにも多い。

50年前、当時第三世界と呼ばれていた国々は、世界経済を変革するための急進的な計画、すなわち新国際経済秩序(new international economic orderNIEO)を打ち出した。この提案を理解することは、今日の地政学的な潮流を解明し、そこにチャンスを見出すことにつながる。

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左の写真。1955年4月にインドネシアで開催されたバンドン会議に出席するインドのジャワハルラール・ネルー首相

右の写真。1955年4月のバンドン会議での休憩中に会談するエジプトのガマル・アブデル・ナセル首相(右)とイエメンのハッサン・イブン・ヤヒヤ首相

第二次世界大戦後の数十年間、植民地支配から、何十もの新しい国々が誕生した。しかし、独立後に期待された繁栄は訪れなかった。政治的主権が自動的に経済的主権につながるのではないと、新たに独立した国々の指導者たちは考えるようになった。「世界経済の構造そのものが歪んでおり、公式的な植民地主義(colonialism)が終わった後も、富める者の利益のために貧しい国々の労働力と資源がより搾取されるように設計されている」と新たに独利した国々の指導者たちは声高に主張した。

1955年にインドネシアのバンドンで開催された会議に、植民地支配を受けて後に独立した数十カ国が集まり、集団としてのアイデンティティを確立し、自分たちにとって不利な状況になる、傾いたフィールドの上で共通の利益を主張するプロセスを開始した。アメリカと同盟を結ぶ西側諸国「the U.S.-aligned West」(第一世界、the First World)やソ連と同盟を結ぶ東ヨーロッパ諸国[the Soviet-aligned Eastern Bloc](第二世界)とは対照的な、誇り高き第三世界運動(The Third World movement)が誕生したのである。その後数十年間、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、カリブ海諸国からなる、この異質なグループは、非同盟運動(the Non-Aligned Movement)や77カ国グループ(the Group of 77)といった旗印のもとに組織され、残存する植民地体制と、それを引き継いだ「新植民地」体制(the “neocolonial” system)の両方に対して、集団的な闘争を展開した。バンドン会議から約20年後、この運動はおそらく最大の戦いに勝利した。

1974年5月1日、第三世界の国々は、第二世界の同盟諸国や石油輸出諸国の新たなパワーに支えられ、裕福な第一世界の抗議を押し切って、2つの画期的な文書を可決した。それらは、国連総会を通じて可決されたもので、それが「国際経済新秩序確立宣言及び行動プログラム(the Declaration and the Programme of Action on the Establishment of a New International Economic Order)」である。

この構想の背景にある理論は次のように簡潔なものだった。「世界経済システムの根幹をなすルールは不公平であり、それを変えるために貧しい国々が団結することが発展の鍵である」。第三世界全体の支持者にとっては直感的なものであったが、この視点はワシントンにおける一般的な正統性とは相容れないものであった。この視点を理解することが、今日の世界を理解する鍵である。

この宣言では、既存の経済秩序は、「外国人による植民地支配、外国による占領、人種差別、アパルトヘイト、新植民地主義(alien and colonial domination, foreign occupation, racial discrimination, apartheid and neo-colonialism)」によって定義されていると主張している。既存の経済秩序は「開発途上国の完全な解放と進歩に対する最大の障害(the greatest obstacles to the full emancipation and progress of the developing countries)」である。よって、発展(development)には、主権、公平性、国際協力に基づく新しい秩序の構築(the construction of a new order, founded on sovereignty, equity, and international cooperation)が必要である。

これを達成するために、国際経済新秩序決議(the NIEO resolutions)は、世界経済のルールを包括的に書き換えることを要約的に網羅している。具体的には、国家が自国の天然資源を管理する権利を明記すること、主要テクノロジーへのアクセスの集中を終わらせること、多国籍企業の規制を強化すること、適切な世界的流動性を確保すること、増大する公的債務(sovereign debt)の負担を軽減すること、国際通貨基金(International Monetary FundIMF)などの諸機関の民主化、貿易と金融に関して貧しい国に優遇措置を与えることである。これらは、グローバルガバナンス(global governance)の最高民主機関である国連総会で可決された、国際経済新秩序決議で承認された要求のほんの一部にすぎない。

このような野心的な改革が政治的な文書で実現されるなどとは誰も思っていなかった。実際、当時のアルゼンチン国連代表は次のように述べている。「国際経済新秩序は、宣言だけで構築されるものではなく、行動によって実現されるべきである。しかし、国際経済新秩序(NIEO)決議は、より平等な世界経済に対する第三世界の共同ヴィジョンと、それを達成するための計画を宣言するという、青写真を提示したものである」。

しかし、明るい未来への道筋を示すはずだったものは、落下の前の最後の最高頂点だったことが明らかになった。

国際経済新秩序決議から数年後、第三世界運動の力は弱まった。冷戦の波にのまれ、運動の最強の擁護者たちは没落していった。インドネシアからチリ、グレナダに至るまで、彼らはしばしば暴力的に、そしてアメリカの後ろ盾によって、政権から排除された。ヴォルカー・ショックによって火薬庫に点火され、国際経済新秩序が救済を求めた債務の増大は、危機的状況に達した。絶望的な債務諸国は、「構造調整(structural adjustment)」を条件とするIMF融資を受け入れざるを得なくなった。やがてソヴィエト連邦が崩壊し、第三世界運動の盟友であり、アメリカに対する世界的な対抗軸であったソヴィエト連邦が失われた。

前例のない一極支配(unparalleled unipolar dominance)のこの瞬間、世界経済に確かに変革が起きたが、それは 国際経済新秩序(NIEO)のヴィジョンに似た形ではなかった。多国籍企業がますます強力になる一方で、多国籍企業を保護するために貿易協定や新たな企業裁判所が設立された。持続不可能な債務負担は世界経済の恒常的な特徴となり、それが、多国間金融機関とそれを支配する西側諸国が債務諸国の主権政策を支配するための手段となった。テクノロジーの独占が法律に明文化された。富裕国とその企業の狭い利益が、これまで以上に世界経済のルールに深く組み込まれるようになった。

こうした変化は、繁栄を共有する新たな時代というよりも、「失われた数十年(lost decades)」の複数回の深化、世界的な不平等の拡大、そして(ワシントン・コンセンサス改革を回避した中国を特筆すべき例外として)世界的な貧困問題解決の進展の相対的な停滞をもたらした。

国際経済新秩序は、多くの人々にとってはより希望に満ちた時代の遺物であったが、他の人々にとっては完全に忘れ去られた過去のものとなった。

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2024年1月19日、ウガンダのカンパラで開催中の非同盟運動サミットで、本会議場への立ち入りを監視するウガンダ軍メンバー

西側諸国(the West)では、この具体的な提案の歴史が記憶から消し去られているだけでなく、その動機となった課題、視点、政治に対するより広い理解も消し去られている。発展を技術主義的な政策決定の問題と見なしたり、国際関係を民主政治体制と権威主義政治体制のゼロサムの戦いと見なしたりすることに慣れている人々には、1974年当時と同様、今日でも世界の多くの国々にとって、地政学の中心的な要点(fulcrum)が、現在一般的にグローバル・ノース(global north)とグローバル・サウス(global south)と呼ばれる国々の間の力の不均衡(the disparity of power)と、制度的不公平(systemic inequities)を是正するための闘いであることを想像するのは難しいかもしれない。

国際経済新秩序が発展に対する構造的障害を指摘して以来半世紀、世界の強国はこれらの障害を取り除くことに失敗しただけでなく、その強大な力を利用して障害を根付かせてきた。南半球の多くの人々にとって、アメリカを頂点とする北半球は、自分たちの期待を裏切った政治・経済秩序の守護者である。取り残された人々が、代替案を求めて、そして私たち全員が望んでいること、つまり「よりよく生きる(to live well)」ことを実現するために、共に戦おうとするのは当然のことである。

世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)では、インドと南アフリカが先陣を切って知的財産権(intellectual property)の制限を緩和し、新型コロナウイルスワクチンのような必要不可欠な医薬品への世界的なアクセスを促進する努力を行った。国連では、アフリカ諸国が世界の租税政策を富裕国クラブ(rich countries club)から引き離し、自国経済から何十億ドルも流出している組織的な租税回避行為を止めさせるキャンペーンの先頭に立っている。世界銀行(World Bank)とIMFでは、南半球諸国が債務帳消し(debt cancellation)、譲許的融資(concessional financing)、ガバナンスの民主化、逆進的な融資条件の廃止を求めて闘っている。非同盟運動とG-77は定期的に会合を開き、より公平な世界経済を構築するための公約を更新し続けている。

グローバル・サウスの再興は、実際、アメリカ主導の既存の国際秩序にとっては脅威かもしれない。しかし、それは我々全員にとって良いこととなるだろう。

国際経済新秩序(NIEO)の主な関心事は、当然のことながら、世界の何十億もの貧しい人々の幸福だったが、その擁護者たちは、第三世界の発展を第一世界の人々にとっての損失とは位置づけなかった。実際、国際経済新秩序宣言自体は、「先進国の繁栄と途上国の成長と発展の間には密接な相互関係があり、国際社会全体の繁栄はその構成要素の繁栄に依存している」と宣言している。

国際経済新秩序が敗北した後の時代に、賃金の停滞(stagnating wages)、格差の拡大(widening inequality)、社会的保護の溶解(the erosion of social protections)、そしてその結果としての反民主的反発(resulting anti-democratic backlash)がグローバル・ノースで見られたのは偶然ではない。新たな経済秩序は、安価で搾取可能な資源と労働力の安定的な流入に依存するグローバル・サウスの利益を犠牲にする一方で、労働者であるアメリカ人は、世界的な底辺への競争に終止符を打つことによってのみ利益を得ることができる。繁栄の共有(shared prosperity)、気候変動などのグローバルな課題に立ち向かうための多国間協力(multilateral cooperation to confront global challenges such as climate change)、その名にふさわしいルールに基づく秩序の確立(the establishment of a rules-based order worthy of the name)、これらは全ての人が恩恵を受けることができるグローバルな公共財(public goods)なのである。

グローバル・サウスの要求の正当性と、その力の増大がもたらす機会を認めることは、南半球の全ての主体の行動を盲目的に支持することではない。確かに、グローバル・サウスにも、グローバル・ノースと同様に、発展、平和、民主政治体制、人権とは相反する国内政策や外交政策を追求する政府もある。しかし、これらの本質的な目標は、発展への真のチャンスを提供する国際秩序のもとでは、より繁栄する可能性が高いのであって、決して低いものではない。一部の濫用を恐れて、より公平な国際経済システムへの正当な要求を退けるのは間違いである。

南半球諸国の力が新たに台頭する時代には、独自の課題が伴うかもしれないが、それらを恐れる必要はない。それは、まったくもって逆のことであり、あまりにも長い間先延ばしにされてきた夢、つまり半世紀後に新しい国際経済秩序を構築し、全ての人にとってより公正で豊かで平和な世界を構築するチャンスを実現する機会を提供するものとなる。

※マイケル・ギャラン:経済政策研究センターの上級研究員・アウトリーチ担当アソシエイト、「プログレッシブ・インターナショナル」のNIEOプログラムの調整に貢献している。

※アウデ・ダーネル:スティムソン・センター米大戦略再構築プログラム研究員。「世界秩序におけるグローバル・サウス・プロジェクト」の責任者を務め、グローバル・サウス諸国に関する一般的な先入観を検証し、彼らの視点から国際関係に取り組み、彼らと西側諸大国とのパートナーシップを促進している。ツイッターアカウント:@AudeDarnal
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。
 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。2023年10月に始まったイスラエルとハマスの紛争についても分析しています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イスラエルとハマスとの紛争、その後のイスラエルによるガザ地区への過酷な攻撃が今も継続中だ。イスラエルによるガザ地区への苛烈な攻撃に対しては、体調虐殺(ジェノサイド)だという批判の声が上がっている。アメリカは、一貫してイスラエル支持の姿勢を崩していないが(もちろん崩せないが)、ガザ地区の状況については憂慮しており、イスラエル側に自制を求めているが、イスラエルはアメリカ側の言うことを聞かない。アメリカは、イスラエルに引きずられる形になっている。それでも、「イスラエルを支援しているアメリカが何とかしろ」というアメリカに向けた批判の声も大きくなっている。

 私は最新作『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』の中で、世界は「ザ・ウエスト(the West、西側諸国)対ザ・レスト(the Rest、西側以外の国々)」という対立構造で、これからの世界は動いていくと書いた。ザ・ウエストの旗頭はアメリカで、ザ・レストの旗頭は中国である。ザ・レストには南半球の発展途上国が多いことから、「グローバル・サウス(Global South)」とも言う。アメリカが世界唯一の超大国として、一極構造であった世界から大きく変化しつつある。今回のパレスティナ紛争についても、この構図が当てはまる。

 中国は紛争発生当初から、即時の停戦を求めてきた。最近では、イスラエルによるガザ地区への攻撃を憂慮し、パレスティナ側に立つ姿勢を見せているが、深入りすることはせず、調停者の役割までは担うという姿勢を見せいている。中国の調停案はイスラエルには受け入れがたいものであるが、中国は強硬な態度を示していない。これは、アメリカの失敗、敵失を待っているということも言える。アメリカが自滅していくのを待っているということになる。そして、ザ・レスト、グローバル・サウスの旗頭として、これらの国々の意向を尊重しながら行動しているということになる。中国は慎重な姿勢を見せている。

 アメリカとイスラエルはお互いに抱きつき心中をしているようなものだ。イスラエルはアメリカを巻き添えにしなければ存続できない。アメリカはイスラエルを切り離したいが、もうそれはできない状況になっている。お互いがお互いにきつく抱きついて、行きつくところまで行くしかない。非常に厳しい状況だ。

 世界の大きな構造変化から見れば、アメリカとイスラエルは即座に停戦し、パレスティナ国家の実質的な確立を承認すべきであるが、イスラエルの極右勢力の代表でもあるベンヤミン・ネタニヤフ首相には到底受け入れられない。また、ハマスにしてもイスラエルとの共存は受け入れがたい。中国としてもパレスティナの過激派組織をどのように扱うかは頭の痛いところであろうが、イランとの関係を使ってうまく対処するだろう。二国間共存に向かうように今回の機器をうまく利用できるとすれば、それはアメリカではなく、中国だ。

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中国がイスラエルとハマスの戦争をどのように利用するか(How China Is Leveraging the Israel-Hamas War

-ワシントンとグローバル・サウスとの間に広がり続けている分断は、北京に有利に作用している。

クリスティーナ・ルー筆

2024年1月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/31/china-israel-hamas-global-south-us-foreign-policy/?tpcc=recirc062921

イスラエルによるガザ地区での軍事作戦に対する世界的な怒りが高まるなか、中国は、この戦争に対するワシントンとグローバル・サウス(Global South)のスタンスの間に広がる分断(divide)を利用し、北京自身の外交政策上の野心を高めることに注力してきた。

イスラエル・ハマス戦争の過程を通じて、中国は深刻化し続ける紛争に巻き込まれたり、地域のつながりが危​​険に晒されたりすることを警戒し、慎重に傍観者の立場を守り続けてきた。しかし、アメリカ政府がイスラエル支援をめぐって激しい反発に直面する中、中国政府もまた、ブラジル、インド、南アフリカ、パキスタンを含む数十カ国の集合体である、いわゆるグローバル・サウスと連携する機会を捉えている。アメリカの立場とは大きく異なり、イスラエルの行動を非難した。

戦略国際問題研究センター(Center for Strategic and International StudiesCSIS)で中東プログラムの部長を務めるジョン・アルターマンは、「中国は、そのほとんどをアメリカに任せている。中国が中東で追求している唯一の利益は、アメリカとグローバル・サウスの大部分との間に大きな分断が生まれるのを見守ることだ」と述べた。

イスラエル・ハマス戦争に対する中国のアプローチは当初から慎重さが特徴だった。例えば、中国の習近平国家主席は、2023年10月7日のハマスの最初のイスラエル攻撃後の検討まで2週間近く待ったが、一方、初期の政府声明ではハマスの名前さえも言及せずにいたが、この対応はイスラエル当局の怒りを買った。それ以来数カ月間、中国は自らを和平調停者(peacemaker)として位置づけ、紛争に直接関与するまでは至らないようにしながら、停戦とパレスティナ国家の確立を呼びかけた。

ブルッキングス研究所の研究員パトリシア・キムは本誌の取材に対して、電子メールを通じて答え、「中国は、現在進行中の紛争において実質的な役割を明らかに回避している」と語った。キムは更に、「中国政府は自らを地域の権力仲介者として見せたいと考えているが、安全保障の提供者(security provider)としての役割を果たすことや、地域における関係を危うくする可能性のある困難な状況に直接介入することには全く興味がない」と述べた。

こうした力関係は紅海でも明らかであり、フーシ派がパレスティナ人との連帯と主張して行った数か月にわたる商業船舶に対するフーシ派の攻撃により、世界貿易が混乱している。しかし、紅海を守るために船舶を派遣する国が増えているにもかかわらず、中国は自国の海軍の介入に抵抗している。中国政府が関与に最も積極的に取り組んでいるのは、フーシ派を支援するイランに非公式に介入を迫っているとロイター通信が報じたが、イラン当局者はこの報道を否定した。

北京のアプローチは、ワシントンとは対照的である。ワシントンは、イスラエルの建国以来、長年イスラエルの最も強力な支持者の1人であり、数十億の軍事援助で同国を支援してきただけでなく、パレスティナ紛争が始まって以来、国際舞台でイスラエルの主要な擁護者(primary defender)として行動してきた。国連安全保障理事会(United Nations Security Council)でアメリカの拒否権(veto)を行使し、中国だけでなく、グローバル・サウスの国々を含む数十カ国が支持する停戦を求める決議を阻止してきた。ジョー・バイデン政権は紅海でも行動を起こし、イエメンのフーシ派に対する攻撃を開始し、紅海の航行の自由を確保するために国際タスクフォースを動員した。

しかし、ガザでのイスラエルの軍事作戦が壊滅的な人道的被害をもたらしている中、ハマスが運営するガザ保健省によると、イスラエル軍は戦争開始以来、ガザで2万6000人ものパレスティナ人を殺害しているということだ。イスラエルに対するワシントンの揺るぎない支援に、世界の多くの人々はますます不満を募らせ、幻滅している。ガザでは現在、50万人以上の人々が「壊滅的なレベルの深刻な食糧不足(catastrophic levels of acute food insecurity)」に直面しており、統合食糧安全保障段階分類は12月に警告を発している。

そして、中国政府はその分断を利用しようとしている。「チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト(China Global South Project)」の共同創設者エリック・オランダーは、次のように述べた。「中国は、分断によって、世界の他の国々の目、彼らが関心を寄せる世界の地域において、アメリカを更に弱体化させることになると感じている。これは、アメリカがいかに孤立しているかを示し、世界と歩調が合っていないことを示し、そしてアメリカの偽善を示すという、中国に対する彼らの戦略にそのまま反映されている。」

オーランダーは、「中国は、自国の外交政策を追求し、アメリカ主導の国際秩序の欠点について彼らが言おうとしている価値観のいくつかを広めるという点で、これをかなり巧みに演じていると考える」と述べた。

この戦略の一環として、中国は自らを平和調停者であると公言し、5項目の和平計画を提案し、イスラエル・パレスチナ和平会議の開催を呼びかけている。2023年10月、北京はカタールとエジプトに地域特使を派遣し、停戦(ceasefire)を促した。それ以来、ガザへの約400万ドルの人道支援(humanitarian aid)を約束し、アラブ・イスラム諸国の閣僚代表団を受け入れ、紛争をめぐるBRICSブロック(当時はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成)の事実上の首脳会議に参加した。

中国の張軍国連大使は、戦争が始まって1カ月後、安全保障理事会のブリーフィングにおいて、「中国は、敵対行為の停止と平和の回復を促進するために、たゆまぬ努力を続けてきた。中国は引き続き、国際的な公正と正義の側に立ち、国際法の側に立ち、アラブ・イスラム世界の正当な願望の側に立っていく」と述べた。

中国の王毅外相は2024年1月、アフリカの多くの国々を訪問した。その際、イスラエル・ハマス戦争の仲介役の1人であるエジプトへの訪問の機会を利用し、停戦とパレスティナ国家の確立を繰り返し訴えた。

しかし、専門家たちは、北京の行動はほとんどがパフォーマンスであり、具体的な成果はほとんど得られていないと主張している。ヨーロッパ外交問題評議会のマーク・レナードが『フォーリン・アフェアーズ』誌上で指摘したように、2023年11月のBRICS首脳会議では、共同声明も現実的なロードマップも作成できなかった。ブルッキングス研究所によれば、中国が提案した和平案では、紛争解決の責任は北京ではなく、国連安全保障理事会にあるとしている。

大西洋評議会の非常勤研究員であるアーメド・アブドゥは2023年12月、「中国の外交用語の不明瞭さと、世界第2位の経済力を持っているにも関わらずガザに提供した金額の少なさ」を引き合いに出し、イスラエルとハマスの戦争調停に対する中国の真剣さは「巧妙な欺瞞(smoke and mirrors)」に過ぎないと書いている。

中国政府は紛争に巻き込まれるのではなく、バイデン政権の世界的な信頼性に疑問を投げかける一環として、ワシントンを厳しく追及し、米中両国の間の立場の違い対比させることに重点を置いている。こうした努力は国連安全保障理事会でも全面的に表れており、中国は2023年10月にアメリカの提出した安保理決議案が停戦を求めていないとして批判し、拒否権を発動した。ロシアもこの決議案に拒否権を発動した。

中国の張国連大使は、「アメリカは加盟諸国のコンセンサスを無視した新たな決議案を提出した」と述べた。北京を含む他の理事国が修正案を提案した後でも、ワシントンは彼らの「主要な懸念(major concerns)」を無視し、「善悪を混同(confuses right and wrong)」した決議案を提出したと張国連大使は続けて述べた。

12月下旬、人道的即時停戦(immediate humanitarian ceasefire)を求める安全保障理事会決議案(Security Council draft resolution)にワシントンが拒否権を発動した後、中国は再びその投票を利用して自らをグローバル・サウスと並び称し、ワシントンの立場を際立たせた。張国連大使は、決議案の約100の共同提案者の1人として、中国政府は「草案がアメリカによって拒否権を発動されたことに大きな失望と遺憾の意を感じている。これら全ては、二重基準(double standard)が何であるかを改めて示している」と述べた。

中国国営メディアもこうした意見に同調し、アメリカと中国の立場の相違にさらに注目した。『環球時報』はアメリカの拒否権について、「ガザ住民の安全と人道的ニーズに配慮すると主張しながら、紛争の継続を容認するのは矛盾している。紛争の継続を容認しながら、紛争の波及を阻止することを主張するのは自己欺瞞(self-deceptive)である」と書いている。

さらに最近、北京はイスラエルの行動に対する怒りの最も明確なケースの1つにおいて、グローバル・サウスと協調している。国際司法裁判所(International Court of JusticeICJ)での南アフリカによるイスラエルに対する大量虐殺訴訟がそれである。国際司法裁判所(ICJ)には判決を執行する手段はないが、南アフリカが提起した裁判は、イスラエルに対する国際的な圧力の高まりを反映している。

国際司法裁判所は、イスラエルがガザで大量虐殺を犯しているかどうかという問題についてはまだ判決を下しておらず、おそらくこれから何年も判決を下すことはないままだろうが、先週の金曜日には、イスラエルの軍事作戦の緊急停止を命じるよう裁判所に求めた南アフリカの要求に応えた。国際司法裁判所は判決の中で、イスラエルに対し、ガザの民間人への被害を最小限に抑えるために「あらゆる手段を取る(take all measures)」よう命じた。

この判決が発表された後、中国の国営メディアは、イスラエルのガザでの行動に対して「見て見ぬふりをするのをやめるよう」いくつかの主要国に働きかけることになる((some major countries to stop turning a blind eye))との期待を表明した。これに対してバイデン政権は、プレトリアによる大量虐殺疑惑は「根拠がない(unfounded)」という立場を繰り返したが、国際司法裁判所の判決はイスラエルに市民の安全を確保するよう求めるイスラエルの要求に沿ったものだとも述べた。

中国は長年、グローバル・サウス諸国との政治的・経済的関係を育むことを優先しており、王外相は最近、2024年の最初の外遊をエジプト、チュニジア、トーゴ、コートジボワールを訪問して締めくくった。中国外相が今年最初の世界歴訪の目的地をアフリカにするのは34年連続となる。その後、王外相はブラジルとジャマイカを訪問した。

アトランティック・カウンシルの専門家であるアブドゥは、「中国はイスラエルを、巻き添え被害を与える存在として扱うことにした。中国は、グローバル・ガバナンスと戦略的優先事項のために、これらの国々の支援を求めている」と述べている。

※クリスティーナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@christinafei

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 古村治彦です。

 最近の中国をめぐる動きとして重要なのは、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の訪中とブラジルのルイス・イグナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領の訪中が続けて実施されたことだ。日本のメディアではフランスのマクロン大統領訪中が大きく取り上げられたが、より重要なのはブラジルのルラ大統領の訪中だ。フランスの世界経済に占める割合もそして外交における存在感も衰退し続けている。

マクロン大統領は訪中して中国の習近平国家主席と会談を持ち、何かしらの発言を行ったが、何の影響力もない。フランス国内の年金制度改悪問題でダメージを受けている。ウクライナ戦争に関して、フランスが独自の立場で動いているということはない。NATOの東方拡大(eastward expansion)の一環で、のこのこと間抜け面を晒して、アジア太平洋地域におっとり刀で出てこようとしているが、全てアメリカの「属国」としての動きでしかない。フランスは戦後、シャルル・ドゴール時代には独自路線を展開し、NATO(1948年結成)から脱退(1966年)したほどだったが、2009年のニコラ・サルコジ政権下で復帰している。

 ブラジルはBRICs、G20の一員として、経済、外交の面で存在感を増している。南米、南半球の主要国、リーダー国として、ブラジルは、独自の外交路線を展開している。欧米中心主義の国際体制の中で独自の動きを行おうと模索している。具体的には中国(そしてロシア)との関係強化とアフリカ諸国との連携である。アフリカ諸国との関係強化は南半球のネットワークの強化ということでもあり、かつ、旧宗主国としての西側諸国から自立した地域を目指すということだ。

このような動きが既に始まっている。それを象徴する言葉が「グローバル・サウス」である。また、学問においては、欧米中心の「世界史(world history)」に対抗する「グローバル・ヒストリー(global history)」が勃興している。欧米中心の政治学や経済学、社会学ではこの大きな転換(欧米近代体制500年からの転換)を分析し、理解することはどんどん難しくなっている。

 ウクライナ戦争は世界が既に第三次世界大戦状態に入っていることを示している。第二次世界大戦の際には、世界は連合諸国(Allied Powers、後にUnited Nations)と枢軸国(the Axis)に分かれた。この第三次世界大戦では、世界は大きく、西側諸国(the West)とそれ以外の国々(the Rest)に分かれている。グローバル・サウスはそれ以外の国々の側だ。この戦いでは、それ以外の国々が優勢となっている。これは日本のテレビや新聞といった主流メディアを見ていても分からないことだ。

(貼り付けはじめ)

ルラ大統領の北京訪問は何故マクロン大統領の訪問よりも重要なのか(Why Lula’s Visit to Beijing Matters More Than Macron’s

-世界の経済の大きな動き、ダイナミズムはグローバル・サウス(global south)に移りつつある。

ハワード・W・フレンチ筆

2023年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/04/24/lula-brazil-china-xi-jinping-meeting-ukraine-france-macron-vassal/

今月初め、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が中国を訪問し、中国の習近平国家主席の世界観に同調し、アメリカに対して故意に控えめな姿勢をとり、台湾をめぐる大国の衝突の可能性について、フランスひいては欧州にとって限られた関心事であると発言した。マクロンに対して、ヨーロッパ大陸とアメリカにおいて、批判の声が一斉に上がった。また軽蔑するという声も上がった。

その数日後、ブラジルのルイス・イグナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領が北京を訪れ、マクロンと同様に中国の長年の立場を支持し、ブラジリアがワシントンから政治的に距離を置くことを公にするような発言をした。世界のマスコミは注目したが、それほど大きく取り上げなかった。

それぞれの訪問を個別に考えると、どちらの大統領の中国訪問も、過去との劇的な決別を示すものとは見なされることはないだろう。しかし、5年後、もしくは10年後に、どちらが記憶に残るかということになれば、それは南米の指導者の外交であり、はるかに若いフランスの指導者の外交ではないだろう。

今月、マクロン大統領の訪中がより注目を集めたのは、世界がどのように変化しているかという新鮮で冷静な考えよりも、国際メディアの根強い北大西洋バイアスを反映している。一見したところ、それぞれの国の外交には、他国よりも注目されるだけの根拠がある。GDPが約3兆ドルのフランスは、EUの中ではドイツに次ぐ第2位の経済大国であり、ブラジルGDPの約2倍である。

一方、ブラジルの人口は2億1400万人で、フランスの3倍以上、それだけで南米の人口の3分の1を占めている。人口が全てということはないが、将来を左右する可能性があるという点で、ブラジルに有利な議論はここから始まる。しかし、その前に、マクロンとフランスが、世界の中での重みを増し、アメリカとの距離を縮めようとする、一見、恒常的な試みに対して、懐疑的な理由を更に探る価値があると言えるだろう。

「永続的な(perennial)」という言葉の使用が示すように、世界の主要国に対するマクロンの外交には、本当に独創的なものはほとんど存在しない。歴史家の故トニー・ジャットが書いたように、フランスは1940年春、マース川を越えて押し寄せるドイツの戦車師団の前に軍隊が崩壊し、世界の主要国のクラブから追い出され、それ以来、その地位を回復することはなかった。しかし、そのために、この地位を失ったことに対するノスタルジーと悔しさに基づく外交政策が採用されてきたということもない。

第二次世界大戦がフランスに与えた精神的ショックは計り知れないものだ。伝統的に東ヨーロッパ地域に大きな影響力を持っていたフランスはその力を失った。フランス語は、もはや外交における固定の共通言語ではなくなった。戦勝国である連合諸国に対して、ドイツを解体するほどの懲罰を与えるよう説得することはできなかった。そして、経済的な生存と防衛から、国連安全保障理事会(the United Nations Security Council)という世界外交のトップテーブルへの座を含む、多くの事柄において、フランスが反射的に不信感を抱く「人種(race)」、すなわちアメリカとイギリスのアングロサクソン(the Anglo Saxons of the United States and Britain)の支持と寛容に依存してきた。

左右問わず、フランスの指導者たちはかつての高貴な地位を取り戻そうとして、世界に対して2つの時代遅れのアプローチに固執してきた。第一は、帝国の名残をできるだけ長くとどめることだった。その結果、パリはアルジェリアやインドシナで相次いで植民地支配が生み出す苦難に見舞われ、西洋諸国が帝国を支配することはもはや許されないという新しい時代の到来を受け入れる結果となった。それ以来、アフリカにおいて、フランスは、数年ごとに、軍事的関与と深い経済浸透による支配と干渉の古いパターンは過去のものであると宣言しているにもかかわらず、一連の新植民地関係を放棄することに苦労している。中国を訪問したマクロンは、フランスはアメリカの「属国」にはならないと強く宣言した。結果として、マクロンにとっては何とも厳しい皮肉が出現することになった。

もう一つのフランスの伝統的な戦術は、かつて「旧大陸(Old Continent)」を支配した現実政治(realpolitik)への関与である。これは、その時々の支配的な国に対して、完全に対抗しないまでも、常に緊張関係を保ちながらバランスをとること(balancing in tension with, if not completely against, the dominant power of the day)を意味する。この点で、フランスのアプローチが最も特徴的なのは、戦後、フランスがこのゲームを行った主役は、名目上の同盟国であるアメリカであるということだ。シャルル・ドゴールからフランソワ・ミッテラン、そして現在のマクロンに至るまで、そしてその間にフランスを率いたほとんどの人物を含めて、パリはまるで固定観念に従うかのように、ワシントンの最大のライヴァルと個別の理解や和解を得ようとしてきた。時が経つにつれ、これらにはソヴィエト連邦、毛沢東主席が率いた中国、そして今では経済とますます軍事的超大国である習主席の非常に異なる中国が含まれるようになった。

フランスが自国の問題に関して自律性と独立(autonomy and independence)を望むことを非難するのは間違いだ。しかし、パリはこれまで、その姿勢を持続的に評価させるのに必要な手段をほとんど持たず、ほとんど無能な妨害者として、時には単なる驕りや皮肉屋としてしか映らなかった。

中国に媚びることで、マクロンはエアバスのジェット機の大量発注に関する北京の承認を得るなど、予想通り多くの商業取引を実現したが、他に本当に達成したことはあるのだろうか? ロシアのウクライナ侵攻がヨーロッパの平和と安全への願望に対してどのように脅威を与えているのかを考えるよう習近平主席に求めたマクロン大統領は、北京が台湾への領有権を行使するために武器を使用する可能性に対する緊張が強く高まっている時に、台湾をバスに乗せようとしているように思われた。ヨーロッパでは、台湾をめぐる戦争のリスクが高まることへの懸念だけでなく、民主政体世界に対するシステム的な脅威としての中国への懸念も高まっている。恥ずかしいことに、先週、中国の駐仏大使が、かつてソ連に併合されていたEU加盟国であるバルト三国の主権を疑うような発言をしたのは、マクロンの訪中から1カ月も経っていない中で行われた。

更に言えば、アメリカからのヨーロッパの安全保障の独立を求めるマクロン大統領の新たな主張についてどう考えるべきだろうか? これも立派な考えではある。しかし、ワシントンがキエフに軍事的、外交的支援を提供する際に果たした指導的役割がなければ、ウクライナがロシアのウラジミール・プーティン大統領の侵略をなんとか持ちこたえられたことに疑いの余地はない。

ヨーロッパが自分たちの地域を守れるようになることは望ましいことかもしれない。だが、そのために必要な投資をする現実的な見込みは、当分の間、ほとんどないだろう。西ヨーロッパは、より高度な兵器はともかく、ウクライナが必要とする通常の砲弾を維持することさえできない。マクロンは、防衛と自決(defense and self-determination)に関するヨーロッパの良心(conscience of Europe)として真剣に受け止めるべきなのか、それとも彼の発言は、フランス人の貧しさと失われた関連性への郷愁の最新の表現に過ぎないのか、疑問が出てくる。

こうした背景の中で、ブラジルの最近の外交はもっと注目されるべきものである。確かに、南米のブラジルは、アメリカの外交政策から独立した実質的な行動できる余地を確保しようとする姿勢も以前から持っていた。国際基軸通貨(international reserve currency)としてのドルの存続を批判し、アルゼンチンとの通貨統合を模索し、さらにはウクライナ戦争をめぐって欧米諸国を批判するルラの取り組みは、単に象徴的な進歩主義者(iconoclastic progressive)の気まぐれと見るのではなく、最も重要な国家の1つから台頭しつつあるグローバル・サウスの1国として、その欲求を反映したものとして捉える必要がある。

何よりも、ブラジルの重要性が存在するのがこのグローバル・サウスという舞台だ。散らばっているように見えることもあるが、グローバル サウスは、世界の経済ダイナミズムの大部分が変化している場所だ。これは、世界の豊かな国のほとんど、および中国の悲惨な人口統計と、インド、インドネシア、ブラジル、メキシコなどの国々が世界のGDPランキングで力強く上昇するように設定されている世界経済生産のパターンの変化の中にみられる。そして、アメリカとイギリスを含む伝統的な西側の先進諸国は、現在から2050年の間に緩やかに衰退していくことになる。

ルラの発言は、欧米諸国にとって懸念を掻き立てるもの、更には脅威となると考えるのは間違いだ。マクロン大統領の言葉を借りれば、ブラジルは中国の属国になろうとは思っていない。ブラジルの可能性の多くは、自国の道を切り開くことにある。ドゴールはかつて、ブラジルを評して「未来の国(country of future)だ、これからもそうだ」と言ったという。しかし、多様な経済と豊富なソフトパワーを持つ多民族国家でありながら、対外侵略(extraterritorial conquest)の歴史もなく、他国を支配する野心もないブラジルに関しては、ようやくその時代が到来したということかもしれない。

アルゼンチンとの経済関係の強化が示すように、ブラジルは近隣諸国から恐れられてはいない。しかし、南半球のリーダーとしてのブラジルの将来の鍵を握っているのは、アフリカかもしれない。アフリカ大陸は、世界で最も人口が増加している地域であり、近年は堅調な経済成長を遂げているが、急増する若者たちが必要とする雇用の創出やインフラ整備を支援する新しいパートナーシップを切望している。中国は、これまでアフリカとの貿易や投資を独占してきた欧米諸国を抜き、アフリカにおける欧米諸国の代替的存在として急成長している。

ブラジルは、ルラ大統領の就任後、南大西洋の経済・外交パートナーシップを強化するための投資を開始したことは、別の記事で紹介した通りだ。ブラジルとアフリカは、大西洋横断奴隷貿易の悲劇的な歴史によって深く結ばれている。新しい強力な南北関係を率先して構築することで、ブラジルとアフリカは共に、より良い未来への扉を開くことができるだろう。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム専門大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作には『黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench
(貼り付け終わり)

(終わり)

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