古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ケヴィン・マッカーシー

 古村治彦です。

 アメリカ政府の債務上限引き上げ問題は解決された。アメリカ連邦議会で債務引き上げ法案が賛成多数で可決した。現在のアメリカ連邦議会は、連邦下院は共和党、連邦上院は民主党がそれぞれ過半数を握っており、ねじれている状況だ。そうした中で、「先行き不透明、アメリカ国債のデフォルトが起きる可能性がある」というマスコミの報道もあったが、いつも通りに決着する茶番だった。しかし、この茶番はアメリカにとっては深刻でかつ重要な茶番であり、債務上限が引き上げられなければデフォルトになり、アメリカ発の世界恐慌ということになりかねない。こうして債務はどんどん積み上げられ、総額は約32兆8250億ドルとなっている。1ドル=140円で計算すると、4595兆5000億円となる。日本のGDPが約5兆ドル(約700兆円)であるから、およそ7倍の規模である。

 今回の債務上限引き上げ問題に関しては、民主、共和両党の連邦議員たちが交渉役となり、どこまで妥協できるかということを話し合った。最後は民主党側のジョー・バイデン大統領、共和党側のケヴィン・マッカーシー連邦下院議長(カリフォルニア州選出、共和党)がトップ会談で決着をつけた。民主党側は「大事な部分は歳出削減をせずに債務上限引き上げができた」、共和党側が「歳出削減を認めさせることができた」という成果を強調できる形となった。

連邦下院(定員435議席)は共和党が222議席で過半数を握り、民主党が213議席を持っている。過半数は218議席だ。今回の債務上限引き上げ法案は、賛成314(共和党:149;民主党:165)、反対117(共和党:71;民主党:46)、棄権4(共和党:2;民主党:2)という採決結果で可決された。

その後、連邦上院(定数100議席)に送られた。連邦上院は民主党が48議席、民主党系の無所属が3議席、共和党が49議席という構成で、民主党が過半数を握っている。採決は、賛成63(共和党:17;民主党:44;民主党系無所属:2)、反対36(共和党:31議席;民主党:5議席)、棄権1(共和党:1)という結果で、法案は可決した。ジョー・バイデン大統領が署名することで法律が可決成立ということになる。

 バイデン大統領と民主党としては債務上限引き上げを行いたいし、共和党の主流派も口では威勢の良いことを言っていても自分たちが政権(大統領)を担う際に債務上限問題に直面する可能性もあるので、裏では当然賛成となる。ある程度政府の支出を減らす形を見せるように求めて、それができたら妥協して賛成しましょうという出来レースである。民主党内では主流派と反主流派(進歩主義派)、共和党内では主流派と反主流派(トランプ派、フリーダム議連)という分裂が起きて、民主党と共和党の主流派同士が手を握って賛成し、民主、共和両党の反主流派が反発して反対という構図になる。これは、民主化研究における非民主政府対民主化勢力の対立から民主化へ向かう道筋と同じ構図である。

 共和党の反主流派は「歳出削減の規模が小さすぎる」から反対、民主党の反主流派は「歳出削減の規模が大きすぎる」から反対ということになった。民主、共和両党の反主流派は、それぞれの立場が大きく違っているが、共通している点もある。それはアメリカの対外的な役割の縮小だ。簡単に言えば、「アメリカは帝国であることを止めよう」ということだ。両者はウクライナに対する過剰な支援に反対しているし、アメリカ軍の海外展開にも反対している。アメリカ国内問題解決を第一にする、アメリカ国民の生活を第一にする、「アメリカ・ファースト」の立場であり、これこそがポピュリズムの立場である。既存のアメリカ政治に反対する反主流派があってこそ、アメリカ政治は「らしさ」を保っている。

(貼り付けはじめ)

米債務上限引き上げ法案 上院で可決 米国債の債務不履行回避へ

202362 1354分  NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230602/k10014086261000.html

アメリカの議会上院は政府の借金の上限、債務上限を一時的になくす法案を可決しました。法案はバイデン大統領の署名を経て成立することになり、アメリカ国債の債務不履行は回避されることになりました。

アメリカ政府の債務上限をめぐっては引き上げを求めるバイデン政権と、歳出削減を強く求める野党・共和党の対立が続いてきましたが、バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長が再三にわたって協議を行った結果、先月28日に合意しました。

合意内容を反映した法案は議会下院で31日に超党派の議員の賛成多数で可決されたのに続いて1日、議会上院の本会議で採決が行われました。

与党・民主党が主導権を握る上院でも、与野党双方の一部の議員が反対しましたが、バイデン大統領や、議会指導部の説得もあり、超党派の議員が賛成して賛成63、反対36で、必要な60票を上回り可決されました。

法案は政府予算について、2024年度は国防費以外の歳出を2023年度とほぼ同額にするなど支出を抑えるかわりに、アメリカ政府の債務上限を20251月までなくし、政府が借り入れることができる額を事実上、引き上げる内容となっています。

これによって来年秋の大統領選挙までこの問題をめぐる政治対立は避けられることになります。

イエレン財務長官は上限の引き上げなどがなければ、今月5日にも債務不履行に陥ると警告していましたが、アメリカの国債の債務不履行は回避されることになりました。

法案はバイデン大統領が署名して成立することになります。

バイデン大統領が声明「アメリカ国民にとって大きな勝利」

アメリカの議会上院で政府の借金の上限、債務上限を一時的になくす法案が可決されたことを受けて、ホワイトハウスは1日、バイデン大統領の声明を発表しました。

バイデン大統領は「民主党・共和党両党の上院議員は今夜、われわれが苦労して獲得した経済発展を守り、アメリカ史上初の債務不履行を防ぐために投票した。この超党派の合意はアメリカ国民にとって大きな勝利だ」として、歓迎しました。

さらに、「われわれの仕事は終わらないが、この合意は重要な一歩だ。できるだけ早く法案に署名し、あす、アメリカ国民に直接、伝えることを楽しみにしている」としています。

債務上限引き上げで合意した内容「財政責任法案」とは

バイデン大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長が先月28日に債務上限の引き上げで合意した内容は「財政責任法案」としてまとめられました。

法案では再来年・20251月までを期限に債務上限についてその適用を停止、つまり一時的に上限をなくします。

これによって、アメリカ政府は上限を超えて追加で借金して資金の調達ができるため、アメリカ国債の元本の償還や利払いが可能となり、国債の債務の不履行=デフォルトを避けることができます。

上限の適用を一時的に停止する期限については、共和党側は当初、来年3月まで、バイデン政権は来年秋の大統領選挙後までとするよう求めていました。

法案では上限適用の停止が再来年までになり、大統領選挙の後まで債務上限の問題が解消されることから、バイデン政権の主張が通った形です。

一方、共和党が求めていた歳出削減の内容については、国防費以外の支出を2023年の会計年度と比べて、2024年度はほぼ同額に、2025年度は1%程度の増額に抑えるとしています。

また、共和党が要求していた低所得者向けの食料支援の支給条件の厳格化は盛り込まれましたが、民主党が反対していた低所得者向けの医療保険制度「メディケイド」の利用条件の厳格化は見送られました。

さらに、石油・ガス業界から支援を受ける共和党が求めていた、石油・天然ガス・鉱物などの資源開発プロジェクトに対して政府の許認可プロセスを迅速にすることが盛り込まれました。

日本の国税庁にあたるIRS=内国歳入庁の予算を削減することも含まれています。

バイデン大統領は大企業や富裕層への課税の強化を掲げていて去年成立させた「インフレ抑制法」にIRSの予算の増額を盛り込んでいました。

共和党は課税強化や増税につながるIRSの予算増額に強く反発していて、共和党の主張が通った形です。

アメリカ国債の債務不履行回避までの経緯

アメリカでは、財政規律を守るため政府が国債などを発行して、借金できる上限が決められています。

その上限を引き上げるには議会の承認が必要となります。

ことし1月、政府の借金が増えてその上限に達しました。

イエレン財務長官は臨時の対応として公務員や障害者の年金基金の中で直ちには必要のない資金を使ってやりくりする特別措置を始めたと発表しました。

イエレン長官はこの特別措置で確保できる資金が早ければ今月1日に底をつく可能性があると指摘。

議会に対して繰り返し上限の引き上げを求めてきました。

上限が引き上げられなければ信頼性が高く、安全な資産として世界中で取り引きされているアメリカ国債が史上初めて債務不履行=デフォルトに陥る可能性があります。

バイデン大統領は先月9日、16日と続けて野党・共和党のマッカーシー下院議長など議会の指導部と会談し、上限の引き上げに向けて協力を要請しましたが協議はまとまりませんでした。

バイデン大統領はG7広島サミット後に予定していたオーストラリアなどへの外国訪問をキャンセルし、帰国を早めて対応にあたることになりました。

バイデン大統領が日本を訪問している間も担当者レベルでの交渉は続けられ、マッカーシー下院議長は18日、「何も合意はしていないが、合意できるかもしれない。道筋は見えてきた」と述べて、話し合いが前向きに進んでいることを示唆しました。

しかし、19日になって事態は一転します。

交渉を担当する共和党の議員が「交渉が生産的ではない」と述べて協議が一時、中断されました。

これについてバイデン大統領はG7広島サミットの閉幕後、記者会見し、野党・共和党の提案は「率直に言って受け入れがたい」と述べ、意見の食い違いが依然として大きいことを明らかにしました。

バイデン大統領はワシントンに戻る機内でマッカーシー下院議長と電話で協議を行い、22日午後には直接ホワイトハウスで会談しましたが合意には至りませんでした。

その後も続いた担当者レベルの交渉でも妥協点は見いだせず債務不履行に陥るおそれがある期限が迫る中、金融市場では警戒感が高まります。

イエレン財務長官は26日、マッカーシー下院議長をはじめ議会指導部に宛てた書簡で、議会が債務上限の引き上げなどに応じなければ、今月5日に債務の不履行に陥るおそれがあるという最新の見通しを示しました。

これまでは早ければ来月1日が期限だとしてきており、日程上、わずかな余裕が生まれましたがイエレン長官は、過去のケースを踏まえると、期限ギリギリまで交渉が続けばアメリカの信用などに深刻な打撃を与えると警告しました。

アメリカでは27日から3連休に入る中、バイデン大統領はマッカーシー下院議長と電話で協議を行い、原則、合意したとの声明を発表しました。

アメリカ国債が債務不履行=デフォルトに陥るおそれがある期限が9日後に迫るなかでの妥結となりました。

28日には最終合意し、この内容をもとに法案が作成され31日には議会下院で賛成314、反対117の超党派の議員の賛成多数で可決されました。

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米債務上限引き上げ、原則合意 妥協案に反発も 予断許さず

5/28() 17:26配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/805b8ce54e5d46eaf44322221065ce8e456e53d3

 バイデン米大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長は27日、連邦政府の借金限度額「債務上限」の引き上げで原則合意した。共和党が上限引き上げの条件として求めていた歳出削減についてバイデン氏側が妥協するなど、双方が歩み寄った。

 マッカーシー氏は、合意内容を基にした法案を28日中に完成させて議員に周知した後、31日に下院で採決するとした。米国債の史上初のデフォルト(債務不履行)回避の「タイムリミット」とされる65日までに何とか法案成立を間に合わせたい考えだ。ただ、両党から妥協案への反発も予想され、予断を許さない状況が続く。

 バイデン氏とマッカーシー氏が27日に電話協議して合意した。バイデン氏は同日夜、「マッカーシー氏と私は今夕、原則合意に達した。経済不況を引き起こす破滅的デフォルトを防ぐことができる」との声明を発表。「両院が直ちにこの合意内容を可決するよう強く求める」と議会に協力を呼びかけた。マッカーシー氏も記者団に対し「数週間の交渉の末に原則合意に達した。まだやるべきことは多いが、米国民にとって価値ある合意だ」と述べた。

 ロイター通信などによると、双方は27日までに国防費を除く多くの政府プログラムへの支出に上限を設けることなどで合意。共和党が求める低所得者向け給付制度の就労条件の厳格化などが対立点として残ったが、27日にトップが電話協議して妥協点を探った。これらの歳出削減に関する合意事項と引き換えに、2年間の債務上限引き上げを認める法案を策定する。

 今後の焦点は議会の対応だ。202211月の中間選挙の結果、米議会は下院で野党の共和党が多数派を握る一方、上院では与党の民主党が多数派を握る「ねじれ」状態にあるためだ。

 トップ合意した妥協案に対しては、大幅な歳出削減を求める共和党保守強硬派や、バイデン政権の巨額予算の維持を求める民主党急進左派の双方から反発を受ける可能性が高く、審議が円滑に進むかは不透明だ。

 連邦政府の現在の債務上限は314000億ドル(約4400兆円)だが、1月に上限に達して追加の借金ができなくなった。財務省は公的年金基金の運用見直しなどの臨時措置で資金繰りを続けてきたが、イエレン財務長官は最速で65日に手元資金が枯渇すると警告。実際にそうなれば、政府機関の閉鎖に加え、米国債のデフォルトで世界経済が大混乱に陥る恐れがある。【ワシントン大久保渉】

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債務上限引き上げ合意の中身はこうなっている(Here’s what’s in the deal to raise the debt ceiling

ブレット・サミュエルズ、エミリー・ブルックス筆

2023年5月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/4024014-whats-in-the-deal-to-raise-the-debt-ceiling/

ジョー・バイデン大統領とケヴィン・マッカーシー連邦下院議長(カリフォルニア州選出、共和党)の交渉担当者たちは土曜日深夜、政府支出に関する合意に達し、債務上限を引き上げ、迫り来るデフォルト(支払い不能)を回避することができることになった。

今回の合意は、今後数日の間に、連邦上下両院を通過しなければならないが、労働条件、支出上限、その他の問題についての意見の相違を解決するため、数日間の激しい交渉の後にまとまることができた。

バイデン大統領とマッカーシー議長は、土曜深夜にそれぞれ、今回の合意を勝利と称したが、今後は具体的な内容についてそれぞれの党に売り込む必要がある。

合意の中身についてこれから見ていく。

●債務上限を2年間上げる(Raises debt ceiling two years

今回の合意は、債務上限を金額ではなく、期間として引き上げるもので、2年間引き上げる。それは、次の大統領選挙(2024年)後までこの問題が再び浮上することはないことを意味する。

債務上限引き上げは歳出合意とは別のもので、交渉に詳しいある関係者は、2015年、2018年、2019年の予算合意で、当時の債務上限を同時に引き上げた仕組みと一致していると述べた。

ジャネット・イエレン財務長官は今週、連邦議会の措置がなければ6月5日に連邦政府は資金不足に陥り、デフォルトに陥る可能性が高いと議員たちに警告していた。専門家たちは、デフォルトは景気後退の引き金になりかねないと警告していた。

ホワイトハウスは数ヶ月間、債務上限について交渉していないと主張し、連邦議会には条件なしに債務上限を引き上げる責任があると主張してきた。ここ数日、政府関係者たちは、債務上限について交渉しているのではなく、単に歳出の合意について協議しているに過ぎないと主張していた。

●歳出上限(Spending caps

共和党が発表したこの合意に関する資料には、国防以外の裁量支出を2022年度の水準まで後退させる一方で、連邦政府の主要支出を6年間にわたり年率1%の成長率に制限することが盛り込まれていると記載されている。

しかし、今回の合意に詳しいある関係者は、2025年以降の予算上限はなく、「強制力のない予算目標」に過ぎないと述べている。また、その関係者によると、国防以外の支出は、合意された他の予算調整を考慮すると、ほぼ横ばいになるとのことだ。

その同じ情報提供者によると、国防費はバイデンが2024年度予算案で要求した9000億ドル近いもの同様の金額になるということだ。

今回の合意では、超党派の電子タバコ規制法による有害物質暴露基金への資金提供を含め、退役軍人の医療費に全額が充てられる。

保守派の多くが今回の交渉を政府支出に関して大幅に抑制する機会と見ていたことから、最終文書に盛り込まれる歳出削減のレヴェルと期間によって、最終的にどれだけの共和党員がこの合意を支持するのかを左右する可能性が出てくる。

●就労義務(Work requirements

就労義務は、ここ数日の協議で最も大きな対立点の一つであり、共和党は、より厳しい就労義務が合意に含まれることを強く求め、ホワイトハウスは、貧しいアメリカ人から援助を奪うような変更には難色を示した。

今回の合意では、フードスタンプの受給者が受給資格を得るため、仕事を探さなければならない年齢を49歳から54歳に段階的に引き上げる一方、退役軍人やホームレスなど、SNAPプログラムの制限の対象となる弱者の数を減らすための改革も含まれている。

フードスタンプ・プログラムの変更は2030年に終了すると、合意に詳しいある関係者は述べている。

この合意には、貧困家庭一時扶助(TANFTemporary Assistance for Needy Families)プログラムに対する就労要件の追加が含まれているが、これは民主党にとっては不満の種になりそうだ。合意に詳しい関係者によると、債務上限を引き上げるための下院共和党の当初の法案に含まれていた変更は、最終的な合意には含まれておらず、100万人以上の潜在的な受給者を危険にさらすことになるということだ。

今回の合意には、共和党が提案しホワイトハウスが強く反発した、メディケイド受給者の就労要件の変更は含まれていない。

●新型コロナウイルス関連貸付回収(COVID-19 funds clawback

共和党は、今回の合意に関する要約文書で、米疾病管理予防センターの「グローバルヘルス基金」からの4億ドルを含む、新型コロナウイルス対策に充てられた未使用の資金、数百億 ドルを取り戻すと述べている。

バイデンはここ数週間、支出協議の一環として未使用の新型コロナウイルス救済資金を交渉のテーブルに載せることに前向きだと示唆していた。

●内国歳入庁予算(IRS funds

今回の合意は、民主党が昨年承認した、強制捜査の強化のための10年間で800億ドルの資金増強はそのままにして、内国歳入庁の予算を一部削減するものだ。この増額措置の廃止は、共和党の長年の優先事項であった。共和党のリストによると、この合意は「新しい内国歳入庁エージェントのための2023年度の総人件費要求を修正する」ものであるということだ。

ダン・ビショップ議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は、今回の合意は内国歳入庁の予算を19億ドル削減するものだと不服そうにツイートした。「それは、マッカーシーが債務上限を4兆ドル増やすことに同意したのと同様の“成果”ということになるのだろう」と、ビショップはツイートした。

●許認可改革と環境条項(Permitting reform and environmental provisions

今回の合意に詳しいホワイトハウスの関係者は、暫定合意には、ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)の主要な優先事項であり、マッカーシーが合意の特徴になる可能性があると述べていたエネルギー許可改革が含まれていることを本誌は確認した。

この情報筋は、今回の合意では、バイデンの代表的な気候・インフラ関連法案であるインフレ抑制法(Inflation Reduction ActIRA)の気候条項が維持されると強調する。この法案は、共和党が債務上限引き上げと引き換えに縮小することを求めていた。

「今回の合意は、連邦政府機関の意思決定に関連する調整、予測可能性、確実性を高めることを目的とした改革を、国家環境保護法において成文化するものである」と、関係者は声明の中で述べている。

この暫定的な合意は、許認可プロセスを見直し、公的なスケジュールのもとで最終的な環境評価文書の作成を単一の機関が担当することになると伝えられている。ホワイトハウスは、これによって時効が短縮されたり、利用可能な法的救済措置が縮小されたりすることはないと強調している。

マンチンは2022年、許認可改革案の採決と引き換えにインフレ抑制法を支持することに同意したが、彼の提案はその後、連邦上院共和党によって阻止された。これとは別に、連邦上院環境・公共事業委員長のトム・カーパー連邦上院議員(デラウェア州選出、民主党)は今月初め、再生可能エネルギーに特化した許認可改革を発表した。

この案件に関する共和党の資料には、「お役所仕事を減らし、エネルギー・インフラプロジェクトを合理化する」ための施策が含まれていると書かれている。

●新しい課税は行わない(No new taxes

マッカーシーは土曜日に記者団に対して行った短い声明発表の中で、今回の合意には新たな課税は含まれないと述べた。

マッカーシーは「新しい課税はなく、新たな政府プログラムもない」と述べた。

バイデンは最近、公の場にいて、交渉には歳入の財源に関して議題になると主張していた。特に、税金の抜け穴をふさぎ、富裕層に対して課税を強化することを主張していた。

●政府予算法案を可決するためのインセンティヴ(Incentive to pass government funding bills

連邦議会に予算案の期限内通過を促す意味で、債務上限引き上げ合意には、12本の予算案の全てが可決成立するまで、政府資金を賄う継続決議の上限を現行の99%に抑える措置が盛り込まれている。この案は、トーマス・マッシー議員(ケンタッキー州選出、共和党)が以前から提案していたものだ。

●行政上のペイゴー原則(Administrative Pay-Go

共和党側は、今回の合意には、裁量支出の増加に伴う支出削減を提案する機関に関する、史上初の行政上のペイゴー原則に関する文言が含まれていると主張している。共和党は、この措置により、制定される行政規則や規制が節約されることを期待している。

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バイデン、マッカーシーがデフォルトを回避するために債務上限に関して合意に達する(Biden, McCarthy reach debt ceiling deal to avoid default

マイク・エリス筆

2023年5月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/4023783-debt-ceiling-deal-reached/

民主、共和両党のトップリーダーたちは土曜日、前例のない政府のデフォルト(債務不履行)を回避するために長い間求められていた合意に達し、債務上限を2年間引き上げ、同じ期間に連邦支出に新しい上限を適用する計画で合意したと発表した。

合意に到達するために、交渉担当者たちは、支出水準の引き下げ、社会給付プログラムの新たな就労義務、エネルギーインフラの承認を促進するための改革許可など、ここ数日の交渉を悩ませてきた小さいながらも重要な未解決の問題のリストについて、両者の意見の相違を整理する必要があった。これら3つの要件は共和党側が要求し、民主党側のほとんどが反対していた。

土曜日の夕方、ジョー・バイデン大統領とケヴィン・マッカーシー連邦下院議長(カリフォルニア州選出、共和党)が、膠着状態を打破するために11時間かけて、率直な腹を割った電話会談を行うほど、行き詰まりは深刻化していた。

マッカーシー議長は、連邦議事堂での短い挨拶の中で、まだやるべきことは残っているが、日曜日には立法文書を掲載し、翌水曜日には議場での採決を行う予定であると述べた。

特に連邦下院では、保守派がこの妥協案を、マッカーシーがバイデンに屈服したものであり、協議に臨む共和党の赤字削減目標を台無しにするものだとして、合意発表後すぐに非難を浴びせた。保守派は、この法案が議場に持ち込まれた際には反対すると宣言している。

マッカーシー新議長は、党派的なメッセージング法案では共和党をまとめ上げるという困難に立ち向かったが、民主党の支持を得られるような、特に経済が危ぶまれる重要な法案は、まだ試されていない。

合意内容に詳しい関係者によると、共和党は政府の借入権限を2年間延長することに合意し、バイデンが要求していたデフォルトの危機を2024年の選挙以降に延期することに成功した。

その見返りとして、ホワイトハウスは2024年の国防以外の支出を凍結するか、あるいはわずかな削減を受け入れることに同意した。2025年の支出は1%増額され、2026年以降には上限が適用されないと、情報筋は指摘した。

この合意では、フードスタンプの受給資格を得るために仕事を探さなければならない年齢を49歳から54歳に引き上げるという、共和党の重要な要求もある。しかし、退役軍人やホームレスなど、他の特定のグループの就労要件も緩和され、民主党側に有利になるような変更が加えられている。

情報筋によると、メディケイドは影響を受けず、バイデンが導入した学生ローン救済プログラムも影響を受けないとのことである。

この妥協案は、マッカーシー、バイデンとその代理人との緊迫した交渉の11日目に出されたものだ。この交渉は、前日に財務省から出された、政府が6月5日に全ての債務を返済するための資金が不足するという警告に後押しされたものであった。

土曜日の朝、連邦議事堂で行われた最終協議に臨んだマッカーシーは、連邦議会がその期限を守ると確信していることを表明した。

時間的な制約があり、連邦上院での投票を遅らせるという連邦上院の脅しを考えると、これは難しい注文だ。それでもマッカーシー連邦下院議長は、1月に保守派に約束した「立法文書が完成し、議員たちが内容を理解できるように72時間掲示するまで連邦下院は法案を採決しない」という約束を守るつもりだと述べた。立法文書が日曜日に完成する見込みであることから、水曜日の議場での採決に向けた準備が整ったことになる。

マッカーシーは土曜日の朝、「両者の合意という結末は、誰もが気に入らないものであるだろう。しかし、一日の終わりには、人々が投票する前に、その合意内容が何であるかを確認するべきだと思う」と述べた。

この合意は即座に通路の両側から怒鳴り声が上げられた。リベラル派は歳出削減が激しすぎると抗議し、保守派は歳出削減が十分ではないと反対した。

このような批判は当然である。それは、マッカーシーやバイデンの支持を得た超党派の妥協案は、各党のイデオロギーの過激派・原理主義派を疎外することが常に予想されたからである。マッカーシーだけでなく、ハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)総務も含めて、党のリーダーたちが直面している課題は、超党派の多数派をまとめ、パッケージを連邦上院に送るため、民主、共和両党の支持を十分に集めることである。

この課題は、1月に保守派の反対を押し切って連邦下院議長に当選したマッカーシーにとって特に深刻で、債務上限交渉で一線を画すよう右派から強い圧力を受けている。債務上限交渉に対する保守派の怒りが十分に高まれば、1月の規則改正によって容易になった決定の取り消しを求める動きが出てくるかもしれない。

連邦下院共和党は先月、党派を超えた債務上限法案を下院で可決した。この法案には約4.8兆ドルの赤字削減が含まれ、グリーンエネルギー税控除、学生ローン補助金、800億ドルのIRS資金など、バイデン時代に決められたプログラムの多くを廃止するものとなった。

しかし、共和党の交渉担当者たちは、新たな支出上限を確保するために、協議の過程でこれらの条項のほとんどを削除した。そして、この合意が発表される前から、フリーダム・コーカスは、バイデンに多くを与えすぎているとして、この提案を非難していた。

保守派が指摘しているのは大きな論点である。保守派は、自分たちの法案における債務上限引き上げの上限は1.5兆ドルであるのに対し、マッカーシーがバイデンと結んだ取引はその3倍近くになると予想されている。

フリーダム・コーカスは一言、「受け入れられない」とツイートした。

ダン・ビショップ連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は批判を更に強め、この規模の債務上限引き上げは、保守派と指導部の間で「戦争」を引き起こすだろうと述べた。

ビショップは「マッカーシー議長の交渉担当者たちが、実質的にきれいな債務上限引き上げを持ち帰り、それが大統領選でバイデンを問題から守るほどの規模なら、その結果は共和党内部での戦争だ」とツイートした。

保守派の批判にもかかわらず、共和党はある重要な意味で明らかにこの議論に勝利した。共和党の指導者が歳出削減を要求する一方で、その見返りとして民主党に増税を譲歩した過去の債務上限闘争とは異なり、マッカーシー議長はプロセスの早い段階で新規歳入にレッドラインを引き、赤字削減努力を予算方程式における支出側だけに集中させ、共和党にとって大きな勝利となった。

今回の合意で増税が見送られたことで、民主党は激怒している。そして、協議の不均衡さを嘆いている。しかし、極右の懐疑論者から批判を浴びるマッカーシーにとっては、援護射撃となる可能性もある。

「この法案の中身を恐れているわけではない」とマッカーシー議長は述べた。

連邦下院多数党(共和党)院内幹部を務めるトム・エマー連邦下院議員(ミネソタ州選出、共和党)は、この協議に直接関与していない。しかし、彼は土曜日に連邦議事堂を訪れ、共和党の指導者たちが、保守的な批判者たちの懸念を払拭するために、既に連絡を取り合っていることを明らかにした。

エマー議員は合意が発表される前、「私たちは常に議員たちと連絡を取り合い、受け入れられないようなないようでも報告されて情報を与えられている。私たちから情報が提供されるまでは、報道などで読んでいる内容を信じてはいけない」と述べた

交渉が難航し、交渉担当者の表情に疲れが見える中、最終局面では明るい話題もあった。

連邦下院金融サーヴィス委員会委員長で、共和党のトップ交渉担当者の1人であるパトリック・マクヘンリー連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は、自分の子供が参加する誕生日パーティーや料理の好みについて、記者団に語った。

土曜日の朝、連邦議事堂に入りながら、記者団の問いかけに答えて、「子供たちはフレンチトーストを食べた。私は何ももらえなかったけどね」と述べた。

数時間後、マッカーシー、マクヘンリー、ギャレット・グレイブス(、ルイジアナ州選出、共和党)の3人の共和党側の交渉担当者たちは、チポトレで昼食を取るために議事堂を後にした。自動車の中には、数え切れないほどのポテトチップスの袋やクエッソ(チーズケーキ)の入れ物が載せられており、彼らは会談を見守る何十人もの記者たちのためにそれを配った。

更にその後、マッカーシーのスタッフたちは事務所からミニカヌーを運び出し、氷、ソーダ、水のボトルを詰め込んで、これも記者のために用意した。しかし、この試みにはいくつかの難点があった。

まず、議事堂内を歩き回る観光客たちに取られてしまった。そして、スタッフたちが更に補給を終え、観光客の流れが落ち着いてみると、氷が溶けて水漏れを起こしてしまった。

ある記者は「今の状態を表しているみたいだ」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 連休前半、ファースト・リパブリック・バンクの経営破綻のニューズと共に流れたのが、米国債務上限問題のニューズだった。ジャネット・イエレン財務長官が債務上限を引き上げて借り入れを行わないと、連邦政府の資金が61日までに枯渇してしまい、最悪の場合には債務不履行(デフォルト)に陥ると発表した。デフォルトになれば、アメリカ国債の償還や利払いができなくなることで、そうなればアメリカ国債の信用、アメリカ・ドルの信用が傷つき、世界経済が大きく動揺するということになる。そのような事態(国際決済通貨としてのドルの信用急落)に備えて、新興諸国(西洋以外の国々[the Rest])の中央銀行は金(きん)を備蓄している。

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 アメリカ政府は所得税の税収が予想よりも低かったために、やりくりをしながらも、予想よりも早く、資金が枯渇し、新たに米国債を発行しなければ、資金が手に入らないために、予算執行や国債の償還や利払いができない状態になるということだ。アメリカ政府の債務上限引き上げ問題は日本でもここ数年で数回報道されてきたので、お馴染みの言葉になっている。

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アメリカ国債の総計

 財政支出が削減され、国家財政のために増税がなされるということが起きると、景気が悪くなることが懸念される。バラク・オバマ政権時代にこのような事態が予想され、それが「財政の崖(fiscal cliff)」と呼ばれた。「崖から真っ逆さまに落ちる」ということからこう呼ばれた。連邦準備制度理事会(FRB)により政策金利引き上げもあり、現状が続けば、アメリカの景気後退が起きるという懸念が出ている。
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 アメリカ連邦議会では、何の条件も付けないで債務上限引き上げを行いたい民主党(ホワイトハウスを含む)と、歳出削減を上限に債務上限引き上げを認めるとする共和党が対立している。共和党が過半数を握る連邦下院では「クリーン」債務上限引き上げ法案が可決され、連邦上院に送られている。この法案は、連邦政府の歳出削減をすることを条件にしての債務上限引き上げを認める法案だ。民主党が過半数を握る連邦上院ではこの法案に反対も多い。 

来年には大統領選挙と連邦上院(約3分の1)、連邦下院(全議席)、各州知事などの選挙が全国レヴェルで実施される。歳出削減を行えば、民主党が行いたい政策の予算執行ができなくなる、そうなれば選挙も厳しくなるので、民主党側は必死だ。共和党としては、無責任な民主党というイメージを植え付けたいということもあるし、民主党の支持を切り崩したいということもある。

 しかし、どちらにしても債務不履行などと言うことは民主、共和両党どちらも避けたいので、チキンゲームの様相となり、結局、債務上限引き上げは認められる。条件闘争でどちらがどれだけの痛みを引き受けるか、痛み分けで済ませるかということになる。ケヴィン・マッカーシー連邦下院議長(カリフォルニア州選出、共和党)はドナルド・トランプ前大統領との関係も悪くないが、エスタブリッシュメント派とも話ができる。マッカーシー議長がどのように差配をして、連邦上院で否決されるであろうクリーン債務上限引き上げ法案を修正可決するかが注目される。共和党所属の強行派の連邦下院議員たちの反対があるので、民主党所属の一部議員たちと妥協をするということになるだろうが、そうなれば、共和党内部からの突き上げもあり、マッカーシー議長の立場も厳しくなる。

 バイデン大統領はこれから連邦議会側と話し合いや説得をしなければならない。そうなれば、のんきにG7会合のために日本に来るのも大変だ。G7各国の首脳たち(日本を除く)も、「アメリカ国債がデフォルトになると大変だし、その問題をやっておいてくれよ(まぁデフォルトにはならないだろうけど)」という心境だろう。バイデン大統領とアメリカ政府としては、広島に行くとなればどうしても原爆投下について何か触れねばならない(謝罪などはとんでもないが)。債務上限引き上げ問題があるということになれば、広島に行かずに済むかもしれないということであれば、これを利用しようと考えるかもしれない。

 債務上限引き上げ問題は茶番であるがそれを利用するということはいろいろとあるだろう。

(貼り付けはじめ)

●「イエレン米財務長官「6月1日にも資金枯渇」と議会に警告、デフォルトの恐れも」

2023/05/02 10:03 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230502-OYT1T50083/

 【ワシントン=田中宏幸】米国のイエレン財務長官は1日、米連邦政府の借入金の限度を定めた「債務上限」について、米議会指導部に書簡を送った。上限の引き上げを行わなければ6月1日にも財政資金が枯渇すると警告し、議会に対応を急ぐよう求めた。

 政府債務は今年1月、上限の約31兆4000億ドル(約4300兆円)に到達し、米財務省が6月初旬までの特別措置で資金繰り策を実施している。新たな借り入れができなくなれば、債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがある。

 イエレン氏は書簡で「議会が債務上限を引き上げたり、(上限の)適用を停止したりしなければ、早ければ6月1日にも措置が行き詰まる可能性がある」とし、「米国の家庭に深刻な苦難をもたらし、世界的なリーダーシップを失う」とクギを刺した。

 債務上限を巡っては、無条件の引き上げを求めるバイデン米政権に対し、共和党は歳出削減を求めて下院で独自法案を可決しており、与野党の対立は長期化の様相を呈している。

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イエレンは債務上限の最終締め切り日は6月1日と発言(Yellen says drop-dead date for debt ceiling is June 1

スティーヴン・ニューカム、アリス・フォーリー、アル・ウィーヴァー筆

2023年5月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/3982225-yellen-says-drop-dead-date-for-debt-ceiling-is-june-1/

ジャネット・イエレン財務長官は月曜日、連邦議会民主・共和両党指導者たちに宛てた書簡の中で、連邦議員たちは6月1日までにアメリカの債務上限(debt ceiling)を引き上げなければならないと述べた。

イエレン財務長官は、61日までにアメリカが全ての債務を支払えなくなるとの見通しを示し、連邦議会とホワイトハウスが合意に達するよう圧力を強めた。

イエレン長官は当初、連邦政府が6月上旬までに支払いを継続するためのいわゆる臨時措置を使い果たす可能性は低いと連邦議員たちに語っていた。しかし現在、最近の税収を基にして、期限が予想より早く来る見込みであると述べた。

連邦議会の超党派の予算管理責任者である議会予算局(Congressional Budget OfficeCBO)も月曜日、4月の税収が予想を下回ったことを理由に、「6月上旬に財務省が資金不足に陥るリスクが著しく高まっている」と警告を発した。

CBOのフィリップ・スウェーゲル局長は月曜日、「4月に処理された所得税の受取額が、最新の基本予算予測で予想したよりも少なかったことが分かった。更に、内国歳入庁(Internal Revenue ServiceIRS)は、コロナウイルスの感染拡大による数年間の混乱を経て、昨年よりも迅速に納税の処理を終えると予想している」と述べた。

スウェーゲル局長は続けて次のように述べた。「その結果、IRS新型コロナウイルス感染拡大前の年のように、5月の追加支払いを比較的少なく処理すると予想している。このことは、4月までの受取額が予想を下回ることと相まって、財務省の特別措置が以前の予測よりも早く枯渇することを意味する」。

この予定表は、連邦議員たちが取引の仕組みを理解するための貴重な時間を与え、議員たちは時間を無駄にすることなく、相手側を非難することになった。

「時間の無駄だ。このことを理解しよう」。ジョン・テスター連邦上院議員(モンタナ州選出、民主党)は、このニュースが流れた直後の月曜日、記者団にこう語った。

ジョー・バイデン大統領と民主党は、連邦下院共和党が「クリーン」な法案の一部として債務上限を引き上げることを要求している。一方、共和党は債務限度額の引き上げを支出削減と結びつけて行うことを望んでいる。

連邦下院予算委員会の民主党側のトップであるブレンダン・ボイル議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)は月曜日に発表した声明の中で、この展開について「ケヴィン・マッカーシー連邦下院議長に対する警鐘とならねばならない」と述べ、共和党が先週可決した債務上限引き上げの党派案を標的にしていると述べた。

一方、共和党はその責任をバイデンに押し付けた。

ジョン・コーニン連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)は次のように述べている。「私たちはそれが来ることは分かっていた。ただ、それがいつなのか、正確には分からなかった。これはバイデン大統領がソファから降りてマッカーシー議長と話し、何かを解決するための情報をもう少し提供するものだ」。

シェリー・ムーア・キャピト連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、共和党)は、この予定表に驚きを隠せなかった。しかし、この進展は、マッカーシーと交渉のテーブルに着くようホワイトハウスに圧力をかけるものだと述べた。

キャピト議員は「大統領は我が国の指導者だ。彼は事態にきちんと関与する必要がある。私はイエレンが大統領の意向に対して忠実に働いている(carrying his water)と考えている」と述べている。

連邦下院共和党の法案は、1.5兆ドルの債務上限を引き上げるか、来年3月末までのどちらか早い方と引き換えに、民主党が断固として反対している政府支出の削減に関する共和党の幅広い提案と引き換えにするものだ。

その中には、年次歳出プロセスの一環として、連邦議員らによって捻出された政府資金を2022会計年度の水準に制限する一方、今後10年間の歳出の伸びを毎年1%に制限するという提案も含まれている。

法案に盛り込まれた他の提案は、メディケイドや補足栄養支援プログラム(SNAP)などのプログラムに対してより厳しい労働条件を課し、バイデン政権下で実施された人気の学生ローン政策に終止符を打つ内容となっている。

共和党はまた、両党が後追いで行った、連邦上院を含む連邦議会で審議中の「クリーンな」債務上限措置が実施される可能性に疑問を投げかけた。

コーニン議員は「連邦下院も通過しないし、連邦上院も通過しないだろう」と述べた。

ブライアン・シャッツ連邦上院議員(ハワイ州選出、民主党)は、民主党側に対し、共和党が提案するクリーンな債務上限引き上げに反対する姿勢を貫くよう呼びかけ、「ここで合意すべき取引ではない」と述べた。

シャッツ議員は「ここでの前提は、デフォルトを防ぐ代わりに政策面で譲歩することであってはならない。どの政党も自分たちの政策を実現するためにアメリカ経済を崩壊させると脅すことは決してあってはならないということだ」と彼は言った。

「これは異常であるばかりでなく、無謀でもある。アメリカ経済を人質に取ることは許されない。歳出削減の代わりに債務上限を引き上げることを交渉しないことより怖いのは、これを主張する人々と交渉することだ。その理由は、彼らはアメリカ人とアメリカ経済を人質に取ることを決して止めないだろう、ということだ」と付け加えて述べた。

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●「イエレン氏、債務上限で議会に行動要求-修正条項発動は危機招く」

Christopher Condon

202358 1:43 JST 更新日時 202358 7:20 JST ブルームバーグ通信

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-07/RUAJO9DWX2PS01

・議会が上限を引き上げる以外に「良い選択肢はない」

・米憲法修正第14条発動なら憲法上の危機-ABCの番組で発言

イエレン米財務長官は膠着(こうちゃく)状態に陥っている債務上限問題を解決する上では、議会が上限を引き上げる以外に「良い選択肢はない」と述べた。また、この件で米憲法修正第14条を発動すれば憲法上の危機を招くと警告した。

 イエレン長官は米ABCの番組で7日、議会が債務上限を引き上げることなく「大統領が債券を発行し続けることが可能かどうかを、われわれが検討する必要が生じる段階に進むべきではない」と発言。「こうしたことは憲法上の危機を招くだろう」と語った。

 修正第14条には公的債務の有効性は「問われてはならない」との記述があり、政権が債券発行を継続できるかを巡って憲法学者やエコノミストの間で解釈が分かれている。

 イエレン氏は同番組内で、バイデン大統領がこの選択肢を使う可能性を何度か問われたが、議会が上限を引き上げるべきだと繰り返し主張するにとどまり「私が言いたいのはそれは議会の仕事だということだけだ」と述べ、直接の返答は避けた。

 下院金融委員会のマクヘンリー委員長(共和)は、短期の債務上限引き上げに向けた取引は一つの選択肢だと示唆した。これはヤング行政管理予算局(OMB)局長の4日の発言と同様の内容だ。

 マクヘンリー氏は7日、CBSの番組「フェース・ザ・ネーション」で、「現時点では全てがテーブルの上にある」とした上で「この難題で考慮が必要な重要なことは、短期および長期で財政に対処することだ」と発言。「財政に対処しなければならないという事実以外にレッドラインはない」と語った。

 バイデン氏は5日、MSNBCとのインタビューで修正第14条を発動する用意があるかと質問された際、「まだそこに至っていない」と述べ、発動の可能性を完全には排除しなかった。 

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●「米債務上限引き上げ間に合わなければ大統領は決断迫られる-財務長官」

Viktoria DendrinouChristopher Condon

202359 8:52 JST ブルームバーグ通信

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-08/RUCYLBDWRGG001

・債務上限という「銃」を突き付けられた状態では交渉に応じず-長官

・議会が債務上限で行動しなければ、世界のドルの利用に「悪影響」

イエレン米財務長官は8日、議会が連邦債務上限の引き上げに間に合わない場合、バイデン政権は今後の対応について「決断」を迫られることになると述べた。

 イエレン長官はCNBCとのインタビューで、唯一の「良い」選択肢は議会による上限引き上げだとの主張を繰り返した上で、それが実現しない場合、政府は「今ある資源で何をするか」を考える必要があると述べた。

 さらに、財務省が早ければ6月1日に債務上限未満に抑える余地がなくなる危険性があるとの警告を繰り返した。

 共和党議員などは、財務省が債券の支払いを続けながら他の支出を遅らせる優先順位付けの案を持ち出しているが、イエレン長官や前任者らは同省の制度はそうした態勢が整っていないと述べている。また、米国債の信頼性に関する憲法修正第14条の条項を発動し、単に借り入れを続けるという極端な選択肢も打ち出されている。

 イエレン長官は「さまざまな異なる選択肢があるが、良い選択肢はなく、どの選択肢も悪い選択肢だ。私はそれらの議論やランク付けはしたくない」と語った。

 その上で、共和党が債務上限引き上げの条件として歳出削減を提案していることを批判し、バイデン政権が既に「財政的に責任ある提案」を示していると指摘。共和党が打ち出した「極めて厳しい」歳出削減案はバイデン大統領の提案とは明らかに大きな隔たりがあるとも述べ、政権は協議にオープンな姿勢だが、債務上限という「銃」を頭に突き付けられた状態では交渉に応じないと語った。

 さらに、議会が債務上限を引き上げられなかった場合、世界中のドルの利用に「悪影響」を及ぼすとし、経済的に大打撃を与え国家にとって「大惨事」となると警告した。

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米政府 債務上限問題 バイデン氏と議会指導部が協議 平行線に終わる

5/10() 7:57配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/f4c8dd555036052065710d8119f2aaf627f979e0

アメリカのバイデン大統領は、連邦政府が借入できる債務残高の上限引き上げを巡り、議会指導部と協議しましたが、進展はありませんでした。

 アメリカでは連邦政府が借り入れできる債務残高がすでに上限に達していて、早ければ61日にも資金繰りが行き詰り、債務不履行に陥る可能性が指摘されています。

 最悪の事態を回避するためバイデン大統領は9日、野党共和党のマッカーシー下院議長ら議会指導部との協議に臨みましたが平行線をたどりました。

 共和党・マッカーシー下院議長:「今回の協議では、誰もが自分の置かれている立場を繰り返しただけで新たな動きは見られなかった」

 共和党は債務上限を引き上げる代わりに社会保障費などの削減を条件とする案を改めて提示しましたが、無条件の引き上げを求めるバイデン大統領との隔たりは埋まらず、12日に改めて協議の場が設けられる見通しです。

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●「バイデン米大統領、G7欠席も 債務上限問題「進展なし」」

5/10() 8:14配信 時事通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/c814a5b0c73254ae8ce2ba6922708449059f38d7

 【ワシントン時事】バイデン米大統領は9日、ホワイトハウスで上下両院の与野党幹部と会い、連邦政府の借入限度額である「債務上限」の引き上げを巡り協議した。

 バイデン氏はこの後、記者団に「(債務上限問題が)解決するまでここにとどまる」と述べ、1921日に広島で開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)を欠席する可能性を示唆した。

 マッカーシー下院議長(野党共和党)は会談後、記者団に「進展はなかった」と述べ、債務不履行(デフォルト)回避に向けた前進に至らなかったことを明らかにした。バイデン氏と議会幹部の協議は2月以来。今月12日に再度会談する。 

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 古村治彦です。

 アメリカ連邦議会は新しいセッション(第118期)が始まった。始まって早々、連邦下院では新議長選出を巡って大騒ぎとなったことは日本でも報道され、記憶に新しいところだ。前回のセッションまで連邦議会共和党の少数党(共和党)院内総務を務めてきたケヴィン・マッカーシーが新しい下院議長に選出されることは通常であれば当然のことであった。 

しかし、共和党内から造反議員が出て、何度も何度も否決され、15回目の投票でようやく過半数の得票となり、新議長に選出された。その過程で議場ではつかみ合いの喧嘩騒ぎも起きた。民主党側からは造反してマッカーシーの議長就任に賛成票を投じた議員は出なかったので、今回の騒動は共和党内部の争いということになった。

 マッカーシー議員は2014年から連邦下院共和党の最高幹部であり、2014年から2019年までは連邦下院多数党(共和党)院内総務、2019年から2023年まで少数党(共和党)院内総務を務めた。ドナルド・トランプ政権下では、連邦議会で過半数を失って少数党となった共和党を指揮し、トランプ大統領と協力して議会運営に当たった。トランプ派と目される人物の1人である。

 共和党内でマッカーシー議員の議長就任に抵抗したのは、フリーダム議連(Freedom Caucus)のメンバーたちである。フリーダム議連とはティーパーティー運動が源流の議員連盟であり、「保守系」もしくは「リバータリアン系」と評される議員たちの集まりだ。彼らの考えを簡単に述べれば「反福祉・反税金・反大きな政府」ということになる。彼らの資金源となっているのがコーク・インダストリーズという巨大企業を率いるチャールズ・コークだ。コーク一族の歴史と動きについては拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(講談社)を是非お読みいただきたい。

 簡単に言えば、フリーダム議連のパトロンであるチャールズ・コークは反ポピュリズム、反トランプの立場を取っている。トランプのポピュリズムは、彼から見れば「貧乏人にバラマキを約束している」ということになる。トランプ派と目されるマッカーシーの議長職就任を妨害したい、もしくはフリーダム議連が議会活動で有利になるような条件を受け入れさせたい、ということでフリーダム議連を使って妨害活動としい活動を行ったということになる。コークとフリーダム議連は共和党内部のエスタブリッシュメント派とも対立しており、フリーダム議連、エスタブリッシュメント派、トランプ派という形で共和党は分裂しているということになる。フリーダム議連とエスタブリッシュメント派が共同してトランプ派をけん制し、トランプの大統領選挙での復活を阻止したいという動きになっている。そのために、フロリダ州のロン・デサンティス知事やニッキー・ヘイリー元国連大使の名前を、2024年の大統領選挙の共和党側の有力候補として主流メディアは出している。

 2023年、2024年のアメリカは、2024年の大統領選挙に向けて政治の季節となる。共和党内部の争いはますます激化するだろう。

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5つのポイント:マッカーシーは如何にして連邦下院議長職を勝ち取ったか(Five takeaways: How McCarthy won the Speakership

イアン・スワンソン筆

2023年1月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/3803662-five-takeaways-how-mccarthy-won-the-speakership/

ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が新しい連邦下院議長に就任した。この1週間、議場では15回もの投票が行われ、党内分裂が誰の目にも明らかな異常事態となった。

しかし、この騒動は、マッカーシー議員が分裂した共和党をどのように統率していくのか、また、政府予算や国の債務上限(debt ceiling)引き上げの時期が来た時、国にとってどのような意味を持つのか、それらについて疑問が生じている。

ここでは、これまで誰も見たことのないような狂騒のうちに誕生した連邦下院議長選挙について5つのポイントを紹介する。

(1)マッカーシーは反対派をけん制する(McCarthy picks them off

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第118期連邦議会で連邦下院議長に選出されたケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が人々の歓声に応える。2023年1月7日。

マッカーシーはこの1週間、民主、共和両党の有権者や批評家たちから、連邦下院で最も大きな丘を登る能力を疑問視され、次々と批判されてきた。

マッカーシーに対する反対派は動じる気配もなく、次々と票を失う中で、彼が必要な過半数を獲得できるのかどうか、多くの人が疑問に思った。

マッカーシーの戦術のいくつかは成功しなかったし、批判されるには理由があった。

2023年1月2日の非公開の会議で反対派に圧力をかけても誰も動かず、マッカーシー議員が批判派に対して議長の座を獲得するに決まっていると話すと、ローレン・ベイバート議員(コロラド州選出、共和党)が「くそ野郎!」と叫ぶなど激しい票読みの始まりとなった。

1回目の投票で19人の共和党所属の議員たちがマッカーシーに反対票を投じ、3回目の投票でバイロン・ドナルド連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)が反対者に加わり、その数は20人に膨れ上がった。

しかし、マッカーシーはこの間、実にたくましく対応しており、火曜日には「次から次へと投票がある中で戦うことを恐れていない」と発言していたが、その通りとなった。

マッカーシーは「戦う準備はできている」と公言し、週半ばには反対勢力との取引に向け、味方の議員たちとともに水面下で猛烈に働きかけた。その努力が実り、金曜日には、12回目の投票で反対派20人のうち13人が賛成に代わり、14回目の投票では更に1票が反対派から賛成に変わるという劇的な投票が行われた。 

その数時間後、連邦下院の議場で歴史的な前代未聞の瞬間が訪れた。

(2)マット・ゲーツが注目を集めた瞬間(Matt Gaetz gets his moment)

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2023年1月5日(木)、第118期議会の3日目に連邦下院民主党の議員たちと話すマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)

マッカーシーの政治的将来が、金曜深夜に近づくにつれ、マット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)の投票にかかるようになるとは、誰も予想しなかっただろう。

ゲーツ議員とマッカーシー議員との間の反目は、この1週間の投票の底流にあり、金曜日には、フロリダ州の共和党員であるゲーツは、マッカーシーを連邦下院議長職に就くために裏取引をしたと非難し、より個人的な反感が高まっているように見えた。

ゲーツはまた、「これは、計算し、集計し、絶対に回避できることをこの機関に課している人物の虚栄心の表れなのか?」と問いかけた。

しかし、マッカーシーは議長選挙で216票を確保し、あと1票で当選というところでゲーツの投票を待っていた。当時、マッカーシーが連邦下院で過半数を獲得するには217票が必要だった。

ゲーツは「賛否を示さない出席(present)」と発言した。結果として、マッカーシーが投票者の過半数を獲得するための基準を引き下がることになったが、ゲーツの投票では勝利するのに十分でなかった。

ゲーツと同席していたマッカーシーの信頼する盟友パトリック・マクヘンリー連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)を含む議場の共和党所属議員たちは、マッカーシーのマジックナンバーをまだ確保していないことにすぐには気づかず、立ち上がって拍手喝采を送った。

ゲーツは考えを変えなかった。ゲーツの投票は「賛意を示さない出席」だった。

当初、マッカーシーにとって完全な災難に見えたが、その味方は月曜日まで議会を閉会させる投票に動いた。しかし、その閉会投票が行われると、別の切り替えが行われた。どうやら、共和党側のマッカーシーを非難する最終グループの6人全員が「賛否を示さない出席」票を投じるという取引が成立したようだ。

マッカーシーと他の共和党議員たちは閉会日に票を入れ替え、新たに議長選の投票が行われ、マッカーシーは再び216票を獲得したが、今度はそれで十分であった。ゲーツをはじめとする4人の共和党議員がベイバート議員に加わって「賛否を示さない出席」票を投じたことで、マッカーシーが過半数を確保した。

ゲーツは政治的なショーマンであり、カメラに映る時間を多く獲得し、その中心的存在となった

(3)この人たちはどうやって付き合っていくんだろうか?(How are these people going to get along?

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2023年1月6日(金)に連邦下院議長選挙の14回目の投票が実施された後、マイケル・D・ロジャース連邦下院議員(アラバマ州選出、共和党)は、ローレン・ベイバート連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)とマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)から引き離されている。

1枚の絵は1000の言葉に匹敵する(百聞は一見に如かず、Sometimes a picture is worth a thousand words)ということがある。

リチャード・ハドソン連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)がマイク・ロジャース連邦議員(アラバマ州選出、共和党)の体をつかまえている写真(片手を肩に、片手を顎に置き、レスリングに近い動き)は、そうした写真の1つである。

この時のロジャースは、ゲーツと現在の自身の投票について話し合うか、彼の首を絞めるかのどちらかに興味があるように見えた。

この100年間、連邦下院議長の投票では見られなかった光景に、多くの共和党員たちが互いにどれほど不満と疲れと苛立ちを感じていたかを示す象徴となった。

今、連邦下院共和党は僅かな差で、この違いを埋めて、彼らがやりたいこと、監視、支出削減、国境警備強化のための戦い、これら全て行うために協力しなければならない。

1月15日の投票でマッカーシーが新議長に決まった後、団結をするようにと訴えられていた。

しかし、この連邦下院議長選出の戦いは、今後、法案や規則をめぐって共和党内で更なる争いが起こることを予感させるものでもある。

今週、マッカーシーが強いられた屈辱や、ゲーツなどの議員たちの行動に見られた大義名分に対して怨嗟の声が上がるだろう。

マッカーシーがこの騒動をどう処理するかは今後直面する厳しい試練の一つになるだろう。

(4)マッカーシーは勝利を収めるために多くのことを諦めた(McCarthy gave up a lot to win

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2023年1月6日(金)、連邦下院議長選挙の14回目の投票中のケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)。

連邦下院議長の座を勝ち取るために、マッカーシーは多くのルール変更と反対派への譲歩を提示しなければならなかった。特に、新議長の投票を強制することができる議長退任動議を1人の議員が出すことができるようにすることが重要だった。

マッカーシーと提携する委員会は、共和党の予備選挙における委員会の役割を制限すると述べ、保守派議員たちは、議場に提出される全ての法案を審議する連邦下院規則委員会を含む、より多くの委員会の割り当てを受けることになる。

マッカーシーはまた、歳出法案を公開規則で審議することに同意したが、これは実質的に基本的な予算措置の可決を得ることをかなり難しくするものである。

今週マッカーシーに反対していた共和党議員の多くは、政府支出(国内支出と国防総省の予算の両方)の削減を望んでいる。今回の規則改正は、理論的には彼らにそれを実行する力を与えることになる。

この譲歩はマッカーシーの力を弱めることになりそうだが、彼は公の場で、この譲歩によって連邦下院議長が弱体化するとの見方を否定した。

(5)債務上限をめぐる戦いが注目の戦いだ(The debt ceiling fight is the battle to watch

andybiggs501 

2023年1月5日(木)、ワシントンの連邦下院議会で10回目の投票中に、ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)と話すアンディ・ビグス連邦下院議員(アリゾナ州選出、共和党)(右)。

連邦政府は歳入を上回る支出をしているため、連邦議会は長年にわたり、社会保障や医療保険から軍事費まであらゆる資金を調達するために、国の借入限度額を定期的に引き上げる必要がある。

債務上限を引き上げること自体は、新たな連邦政府支出の増加や承認にはならないが、連邦政府がより多く支出することを可能にする。

もし、債務上限が引き上げられなければ、連邦政府は支払いをすることができない。

2011年には、当時のバラク・オバマ大統領と共和党が過半数を握る連邦下院が何とか合意に至るまで、政府はデフォルト(default、債務不履行)に近い危険な状態に陥った。

次に債務上限を引き上げなければならないのは今年8月である。どのようになるかは誰にも分からないが、今後数カ月、ワシントンやウォール街では多くの神経がすり減ることになりそうだ。

今週、マッカーシーの議長選に反対していた共和党側議員の1人であるラルフ・ノーマン連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は水曜日、「マッカーシーは債務上限を引き上げるより、連邦政府を閉鎖することを望んでいるのだろうか?」と語った。ノーマンは更に「これは交渉の余地がない」とも述べた。

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マッカーシーの譲歩による連邦下院議長職獲得は驚きとなった(McCarthy concessions to win Speakership raise eyebrows

マイク・リリス、マイケル・シュニール、アル・ウィーヴァ―筆

2023年1月7日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/homenews/house/3803315-mccarthy-concessions-to-win-speakership-raise-eyebrows/

ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は、歴史的な投票失敗の週を経て、議長の当選に必要な支持を得るために、反対派からの一連の要求に屈することを余儀なくされた。

ほとんどの共和党連邦議員たちはマッカーシーの譲歩の重要性を軽視しているが、この変更はマッカーシー自身の指導力を犠牲にして一般議員に権限を与えるものであり、連邦下院の統治機能を麻痺させかねないという懸念も出てきている。

特に、1人の議員が下院議長を追放するプロセスを開始できるようにする今回の変更は、保守派の強硬派グループがマッカーシーに圧力をかけて重要な必須法案を維持するために繰り返し使用することを恐れている民主、共和両党の議員に胸焼けを与えている。

その結果、連邦政府が閉鎖され、債務不履行に陥り、連邦下院の事業が急停止するリスクが高まると彼らは言う。

ドン・ベーコン連邦下院議員(ネブラスカ州選出、共和党)は、「これは恐ろしい決断だ」と述べた。

ベーコン議員は「1人でも議場から退席の動きを推し進めればまたやることになる。毎週こんなことをするのはいかがなものか?」と、マッカーシーの下院議員当選を数日遅らせた内部抗争を引き合いに出してこのように語った。ベーコン議員は「こういう人が何人かいると将来的にそうなるのではないかと思う。連邦下院議長が弱体化し、最小会派が強化されることになるのだ」と語った。

マッカーシーの保守派の批判者たちの中には、国の債務上限(連邦政府が債務を支払うためにお金を借りることを認める)を引き上げるいかなる動きも、社会保障やメディケアなどの国の権利プログラムの削減を伴わなければならないと要求している者もいる。そして、新しい連邦下院規則パッケージの条項では、債務上限引き上げについて別途投票を行うことが義務付けられている。

チップ・ロイ議員(テキサス州選出)は、木曜日に連邦議会議事堂で記者団に対して、「債務上限引き上げには具体的な支出制限が必要だと考えている」と語った。

マッカーシーの反対派で、今回の譲歩で最終的に支持に回ったスコット・ペリー連邦下院議員(ペンシルヴァニア州選出、共和党)も「何事もなく進められる債務上限引き上げはありえない、それは間違いない」と述べた。

この要求は、民主党側の議員たちからの反発を招いた。民主党議員たちは、国のセーフティネット・プログラムを守りたいが、マッカーシーが保守派の意向に従えば、連邦債務不履行のリスクが高まることを恐れているのだ。

民主党側のある議員は、「もし彼らが債務上限を設定したら私たちは終わりだ」と述べた。

今週の長丁場の交渉を通じて、中道派の共和党所属の議員たちにとってもう1つの大きな懸念は、保守派が小委員会の権限を自分たちのものにしようとすることで、この案は既に小委員会の席についている議員たちを激怒させた。

ベーコンはこれを「成功の見込みがない(non-starter)」だと形容した。特に小委員会の委員になるために努力してきた穏健派共和党員の間で怒りが広がっている。

ベーコンは次のように語った。「連邦下院議長職やそのようなものについて話すのであれば、彼らはまだそれを獲得しなければならない状況にあるのだ。私はそれを獲得していないにもかかわらず指導的役割を担わせるという、最も小さな議連に対するアファーマティブ・アクション同様だと考えている。私たちは共和党側の実力を基礎にしたシステム(merit-based system)を信じている」。

2013年から連邦下院議員を務めているアン・ワグナー議員(ミズーリ州選出、共和党)は、連邦下院議長職の「年功序列プロセス(seniority process)」だと強調した。

「誰もが年功序列のプロセスを経て、両委員会の役職や議長職などを獲得していかなければならないのだ」とワグナー議員は語った。

共和党が第118期連邦議会の開幕に際して採用したその他の変更点は、それほど議論の余地のないものである。その中には、全下院議員の任期制限を設けるための議場投票の保証、修正案の公開手続き、連邦政府機関に対する新たな権限を議会に与えるいわゆるホルマンルールの採用、議場に入る前に議員が法案を読むために丸3日間を必要とする72時間ルールなどが含まれる。

これらの変更は、全て過去の時点で採用されている。そして、ほとんどの共和党側議員たちは、マッカーシーが議員職の見返りに多くを捧げ過ぎたという説を否定している。

マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党は)「そのようには感がない」と語った。グリーンは下院議長選でマッカーシーの最も有力な支持者の1人となった。

キャシー・マクモリス・ロジャーズ連邦議員(ワシントン州選出、ワシントン州選出)は、「これらの譲歩は私たちの話し合いで合意されたものであり、最終的には、より国民主導の立法過程につながると信じている。これは、より多くの権力と意思決定を議員に取り戻すことだ」と述べた。

ダン・クレンショー連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)は、最初の規則パッケージの最小値である1人制と5人制の違いはほとんどないと述べ、1人制の空転動議についての懸念さえも軽視した。

クレンショー議員は「皆さん方はもう5人制で合意したのだろう。5人制と1人制で一体何が違うのか? 説明責任の問題だ。だから、みんなチームとして働こう、それが最善だ」と述べた。

マッカーシー自身も瀬戸際の交渉を擁護し、この重要な譲歩が彼を「弱い議長」にすることはないと断言している。

木曜日の夜、マッカーシー議員は記者団に対して、「これを恐れていたら、より弱い議長になるだけだ」と語った。「私は弱い議長になどならない」とも述べた。

マッカーシー議員は更に「前の議長を除いてはいつもそうだ。私はそれが結構なことだと思う」と付け加えて述べた。

しかし、民主党側は、カリフォルニア州選出の共和党議員であるマッカーシーが共和党右派対して提案したことは、彼の権威を低下させ、安定した統治を損なうと警鐘を鳴らしている。

前回と前々回の議会で下院議長として一人退席ルールを撤廃したナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、その復活を「馬鹿げたことだ」と評した。

前多数党(民主党)院内総務のステニー・ホイヤー議員(メリーランド州選出、民主党)は、この協定は共和党の極右勢力にあまりにも大きな力を与えるものだと述べた。

ホイヤ―議員は次のように述べた。「彼は私が予想した以上のものを与えたと思う。この協定は、共和党の小さな、意志を持った一派、共和党の否定的な一派、ほぼ一様に妨害的な一派に、彼らが持つべき以上の権威を与えることになると思う」。

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「クラブ・フォ・グロース」とコークはフリーダム議連に資金提供(Club for Growth and Koch nurtured Freedom Caucus

アイザック・アーンスドーフ筆

2015年10月22日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/story/2015/10/freedom-caucus-koch-club-growth-214973

最近、連邦下院をひっくり返した連邦下院保守派の反逆派の背後には、共和党の極右からおなじみの寄付者たちが何人か立っている。それが「クラブ・フォ・グロース(Club for Growth)」 とコーク・インダストリーズ(Koch Industries)だ。

非営利団体「センター・フォ・レスポンシヴ・ポリティックス(Center for Responsive PoliticsCRP)」と共同で行った本誌の分析によると、これらの強力な外部勢力は、ジョン・ベイナー連邦下院議長を追い出し、ケヴィン・マッカーシーが後継になることを阻止した共和党内グループである「連邦下院フリーダム連盟(House Freedom Caucus)」のメンバー37人の政治キャリアを育むのに一役買ってきた。

この分析によると、フリーダム議連のメンバーは、銀行や自動車ディーラーなど、伝統的に共和党候補を支持している業界から強い支持を受けてきた。しかし、議連のメンバー数は、共和党の重要な勢力として台頭し、時には保守的な原則をめぐって指導部と衝突する外部団体の影響力を示すものでもある。

各議員が報告した選挙運動およびリーダーシップPACへの寄付の金額を基に分析したところ、10万人の会員を持つ自由企業体制擁護団体「クラブ・フォ・グロース(Club for Growth)」の寄付額は177万ドルで、各議員が集めた総額1億7500万ドルの約1%に相当することが分かった。このクラブは、11人の議連メンバーにとって最大の寄付者であり、他のどの寄付者よりも多くのメンバーが寄付を受けた。

クラブ・フォ・グロースの広報担当者ダグ・サクトルベンは、本紙の取材に対して、最近の連邦下院での共和党指導部の混乱について、フリーダム議連に責任はないと述べた。サクトルベン「私たちの問題は、フリーダム議連の問題ではない。彼らは、選挙で訴えたことや有権者が投票したことを守っている。問題なのは、エスタブリッシュメントと指導部だ」と発言した。

指導者争いの中で、クラブはベイナー議員傘下のPACから「自分たちの信じる原則を守るために」攻撃を受けている保守派議員たちへの支援を公に表明していた。

カンザス州ウィチタに本社がある石油・ガス複合企業のコーク・インダストリーズは、現在フリーダム議連と提携しているメンバーたちに長期にわたり、総額で59万9400ドルを献金してきた。同社のPACとコーク社の従業員からの個人献金を合わせると、カンザス州選出のティム・ヒュールスカンプ連邦下院議員にとっての第2位の献金者となった。しかし、今回の分析では、フリーダム議連メンバーへの全体では2番目に大きな寄付をするのに十分な資金をばらまいていることが分かった。今回の分析では、コーク兄弟が築き上げた政治団体の幅広いネットワークはカヴァー仕切れておらず、これらはまとめて共和党候補への主要な資金源として発展してきた。

コーク PACのスポークスマンであるケネス・P・スペインは、同団体はフリーダム議連だけでなく、たくさんの共和党所属の議員たちに寄付していると述べた。CRPがまとめたデータによると、2014年のサイクルで1080万ドルを寄付していた。

この1カ月間、宮廷内の陰謀(palace intrigue)の中で、メンバーの名前を秘密にしているフリーダム議連は、党のどの派閥、グループが連邦下院指導部を支配するかをめぐる争いで影響力のある勢力として浮上してきた。連邦下院議長候補と目されているポール・ライアン連邦下院議員は、フリーダム議連が賛同し、ベイナー議員に対して脅した手続き上の戦術を諦めることに同意する場合のみ、連邦下院議長の座を望むと述べた。

共和党内部のエスタブリッシュメント派は、フリーダム議連が共和党のビジネス界の同盟者を軽視し、ひいては党の資金調達と多数派拡大への努力を軽視していると見て、不満を募らせている。しかし、クラブ・フォ・グロースやコーク・インダストリーズのような反体制的な資金提供者たちとの結びつきは、この集団がそれなりの資金基盤を持っていることを示唆している。

アメリカ商工会議所(UCC)は、この強力な勢力を排除するため、予備選挙の挑戦者を支援すると宣言している。

ベイナーのスタッフからロビイストに転身したある人物は次のように述べている。「昔は、党組織や経済界がもっと大きな影響力を持っていた。今、フリーダム議連は、ワシントンのグループは自分たちに献金しないと言って、ワシントン以外からもっと金を集められる。経済界は、この人たちと話をして、関係を構築する方法を考えるべきだ。今、彼らは共和党の未来を担っているように見えるからだ」。

業種別では、フリーダム連邦の寄付者の7%が退職者、次いで医療従事者(5%)と分析されている。

『ポリティコ』誌とCRPの分析によると、このブロックで最も資金調達に成功したのはニューメキシコ州のスティーヴ・ピアース連邦下院議員で、キャリアを通じて1690万ドル(クラブ・フォ・グロースから34万7867ドル、コーク・インダストリーズから86000ドルを含む)を稼ぎ、現職下院議員の中で38位にランクされた。ニュージャージー州のスコット・ギャレット連邦下院議員は1360万ドル(コーク・インダストリーズから7万2500ドルを含む)で69位と続く。

この分析は、選挙運動へのハードマネーによる寄付のみを対象としており、これらのレースにおける候補者の賛否を問わない独立した支出は反映されていない。

フリーダム議連への献金者の上位5位は、アメリカ銀行協会、全米自動車販売店協会(連邦議会への寄付額ではトップクラス)、エヴリ・リパブリカン・イズ・クルーシャルPACEvery Republican is Crucial PACERICPAC)で、エリック・カンター連邦下院多数派(共和党)院内総務がヴァージニア州選出のデイヴ・ブラット連邦下院に失脚させられる前に協力していた諸団体である。

アメリカ銀行協会の連邦議会関係・政治問題担当のジェームズ・バレンティン執行副会長は次のように述べている。「アメリカ銀行協会は、新人議員から議会指導部、その間にいる全ての議員に至るまで、通路の両側の議員たち(民主、共和党両党)と協力してきた長い歴史がある。これらの議員の中には、偶然にも、全米の銀行にとって重要な数々の施策を支持している議員たちもいる」。

ケネス・P・ヴォーゲルはこの記事の作成に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 「リズ・チェイニーとは誰だ?」という人も多いだろう。アメリカ政治に詳しい人なら既にピンと来ているだろうが、苗字から推測される通り、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権で副大統領を務めたディック・チェイニーの娘である。現在、ワイオミング州選出の連邦下院議員を務めている。

 私は新著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』の第三章で、共和党内部の分裂について取り上げ、このリズ・チェイニーについてかなり詳しく取り上げた。それは、ドナルド・トランプがCPACという政治集会で、ワシントンに巣くう共和党エスタブリッシュメントとして、ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出)とリズ・チェイニーの名前を挙げたからだ。リズはエスタブリッシュメントを代表する議員ということになる。

 共和党に属する連邦上院、連邦下院の議員たち、特に2022年(もう来年だ)は、トランプからの支持を欲している。連邦下院議員は全員が2年おきに選挙があるので、いつもいつも選挙に追いまくられているということになる。現在の共和党の支持者の中に、トランプ支持者が多い。トランプに嫌われたら、落選する可能性が高い。

 リズは反トランプ姿勢を鮮明にしている議員だ。そのことが、トランプ支持の同僚議員たちを苛立たせている。今回の動きだけでなく、昨年の11月の選挙直後から、フリーダム議連(トランプ派の議員連盟)がリズを共和党指導部(リズは議員会長を務めている)から追い落とそうとして動いている。また、リズがトランプ弾劾に賛成票を投じたことで、地元の共和党支部からは非難声明が出された。

 リズ・チェイニーをめぐる共和党の動きは、共和党内部の分裂の最前線ということになる。

(貼り付けはじめ)

マッカーシー:連邦下院共和党はチェイニーが職務を遂行できないのではと「懸念」している(McCarthy: House Republicans 'concerned' Cheney can't carry out her job

ミカエル・スキネル筆

2021年5月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/551657-gop-leader-tells-fox-members-concerned-cheney-cant-carry-out-her-job

連邦下院少数党(共和党)院内総務(House Minority Leader)であるケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は火曜日、共和党所属の連邦下院議員たちは、リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)の共和党所属連邦下院議員会会長としての職務を実行する能力があるかどうか、疑問を持っていると述べた。連邦下院共和党は徐々にチェイニーの反トランプ姿勢について妥協できなくなってきている。

「フォックス・アンド・フレンズ」に出演し、司会者のスティーヴ。ドーシーが、共和党の政治家や支持者たちは、トランプ弾劾に賛成票を投じたチャイニーが指導部にいることについて不満を持っているという報道が出ていることについて質問された際、マッカーシーは、彼女に対する懸念は弾劾での投票についてではなく、共和党としてのメッセージを発する能力についての懸念なのだと答えた。

マッカーシーは次のように述べた。「彼女がダン台でどのような投票をしたかについての懸念はないのです。それはもう既になされたことで、決定が覆ることはないのです。私が同僚議員たちから聞かされているのは、共和党連邦下院議員会会長としての職務を遂行する能力があるのかどうかについて懸念です。彼女は共和党としてメッセージを発信できるのかどうかについて懸念があるのです」。

マッカーシーは続けて次のように述べた。「連邦下院で共和党が過半数を勝ち取るには、私たちは一つになって努力する必要があるのです。よろしいいですか、過半数の議席というものは、待っていれば自然と与えられるというものではありません。自分たちで勝ち取るものなのです。前進するということについてメッセージが必要となるのです」

マッカーシーは更に、連邦下院共和党は、「お互いを攻撃し合うのではなく、まとまって前進するためにはどうしたらよいか」について懸念を持っていると述べた。

チェイニーの報道担当はマッカーシーの発言に対応し、次のような声明を発表した。「チェイニー議員は2020年の選挙に関する“嘘を容認”しないし、2021年1月6日の連邦議事堂進入事件について“ごまかし”もしない。この問題は、マッカーシー議員が院内総務として、議員会長と共に対応していく問題だと述べたものだ」。

リズ・チェイニー議員の報道担当ジェレミー・アドラーは本誌の取材に対して次のように答えた。「これはつまり、共和党が全体として2020年の選挙に関する嘘を容認し、2021年1月6日の連邦議事堂進入事件をごまかし続けるのかどうかの問題だ。リズはそのようなことに加担しない。それが問題とされている」。

共和党内部でチェイニーの反トランプ姿勢について不満が高まり、共和党指導部から排除しようという動きが出ているという報道がなされる中、両者のコメントが発表された。

ある共和党所属の連邦議員は、「彼女をめぐる状況は悪化している」と述べた。

チャイニーはそれでも、彼女の姿勢を和らげる計画があることを示してはいない。月曜日、1月6日の事件についてトランプをこき下ろし、閉ざされたドアの後ろにいて安全を確保しながらの彼の行動は「越えてはいけない線を越えてしまった」ものだと述べた。

月曜日午前、チェイニーは、トランプが繰り返し、選挙は盗まれたという誤った主張をづけていることについて公の場でトランプを非難した。

(貼り付け終わり)
akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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