古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:コーク兄弟

 古村治彦です。
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001

※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年の大統領選挙(11月5日)で勝利したトランプが政権構想を発表する前の9日に、第一次政権で国連大使を務めたニッキー・ヘイリーと、国務長官を務めたマイク・ポンぺオについて、第二次政権では政権入りさせないと発表した。ポンぺオは、トランプに近い大物として、アメリカでも、日本でも、第二次政権の国務長官候補として名前が挙がっていた。ニッキー・ヘイリーは今回の大統領選挙の共和党予備選挙に出馬して、トランプと指名を争った経緯があり、また、選挙期間中にはトランプ批判を繰り返したことから、厳しいかなと思っていたが、ポンぺオの政権入りの可能性消滅には驚いた。
nikkihaely2024001
ニッキー・ヘイリー
mikepompeo2024001
マイク・ポンぺオ

 日本製鉄がアメリカのUSスティールの買収に動く中で、マイク・ポンぺオを指南役に迎えたという報道があり、トランプに近いポンぺオに説得してもらって、トランプの反対を取り下げてもらうという心づもりがあったであろうことは容易に推測されるが、トランプがポンぺオを遠ざけたということは望ましくない計算違いということになるだろう。しかし、それまでの状況から、ポンぺオがトランプの側近であるという判断は間違っていない。これがトランプの「予測不可能」なところだということも言える。

 第二次トランプ政権の顔触れを見ると、第一次政権の大物はほぼ入っていない。ヘイリーもポンぺオも第一次政権の閣僚級(国連大使は閣僚級の扱い)、国家安全保障会議に出席できる権限を持つ、アメリカ最高位の職に就いていたということであり、大物は退けたということにはなる。しかし、ポンぺオはトランプ批判をしておらず、何故ポンぺオまで外されるのかという疑問が残る。ポンぺオもまた、大統領選挙共和党予備選挙に出馬して、トランプに対抗するという憶測が流れていたが、結局は出馬しなかった。それでもトランプ周辺から外された格好だ。

 ここからは私の見解を述べる。ヘイリーとポンぺオが外されたのはどうしてか?両者には第一次トランプ政権の閣僚だったという共通点はあるが、トランプとの距離感に差がある。ヘイリーが外されるのは理解できるが、ポンぺオが外されるのは理解できない。ヘイリー、ポンぺオのもう一つの共通点は、「コーク兄弟との近さ」があり、そのために両者が外された理由ではないかというのが私の考えである。コーク兄弟はトランプに反対し続けてきた。コーク兄弟についてはこのブログでも何度も紹介してきたし、私は、コーク兄弟についての評伝『アメリカの真の支配者 コーク一族』を翻訳した。
charleskoch201
チャールズ・コーク

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

20190507日「トランプ大統領に反対する共和党のグループはネオコン派とリバータリアン」
https://suinikki.blog.jp/archives/78919932.html

 ヘイリーは今回の大統領選挙共和党予備選挙でコーク兄弟の全面支援を受けて出馬したが、トランプに敗北した。ポンぺオはカンザス州選出の連邦下院議員として政界に進出したが、そのパトロンとなったのがコーク兄弟だった。コーク兄弟が所有するコーク・インダストリーズの本社はカンザス州ウィッチタにある。コーク兄弟はリバータリアニズムを信奉し、リバータリアンの勢力を拡大するために巨額の資金を投じてきた。彼らから見れば、ポピュリストのトランプは危険な人物である。規制を嫌い、自由な経済活動を何よりも重視するリバータリアンのコーク兄弟にとって、関税引き上げなどは全く受け入れられない。

 トランプ陣営から見れば、ヘイリーとポンぺオは「仇敵のコーク兄弟との距離が近すぎる」ということになる。それならば第一次政権で閣僚に起用したのはどうしてかということになるが、これはやはり、トランプとトランプ陣営がアマチュアだったということになるだろう。第一次政権での混乱はやはり人物の見極めが甘かったことが原因という分析がなされていたのだろう。そのために、今回はそのようなことがないように人選し、反逆する可能性がある人物はあらかじめ排除しておくということになったのではないかと思う。

 第二次トランプ政権には4年間しか時間がない。政権内の内部抗争に時間を取られてしまうのは損である。しかし、ここで前言を翻すようであるが、ポンぺオに関しては、北朝鮮との交渉の経験もあり、対北朝鮮外交において、特使などに起用されることも考えられる。私たちはまず、トランプが「予測不可能」であるということを前提にして考えを組み立てる必要がある。

(貼り付けはじめ)

●「トランプ氏、ヘイリー元国連大使とポンペオ元国務長官を起用せず」

読売新聞 2024/11/10 12:09

https://www.yomiuri.co.jp/world/20241110-OYT1T50039/

 【ワシントン=今井隆】トランプ次期米大統領は9日、新政権ではニッキー・ヘイリー元国連大使とマイク・ポンペオ元国務長官を起用しないと明らかにした。両氏について、「現在検討中のトランプ政権に招くつもりはない」と自身のSNSに投稿した。

 ヘイリー氏は前政権で国連大使を務めた。大統領選では共和党指名候補争いに立候補し、トランプ氏を繰り返し批判した。選挙戦から撤退した後にトランプ氏への支持を表明した。

 ポンペオ氏は前政権で中央情報局(CIA)長官や国務長官を務めた。党指名候補争いへの立候補に意欲的とみられていたが、見送った経緯がある。米メディアは、国防長官候補の一人と報じていた。

=====

億万長者のコーク兄弟が支援するネットワークがニッキー・ヘイリーへの支出を停止(Billionaire Koch brothers-backed network stops Nikki Haley spending

トム・ゲイガン筆

2024年226

BBCニューズ

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-68401537

億万長者のコーク兄弟によって設立されたリバータリアン系保守団体が、ニッキー・ヘイリーの大統領選挙キャンペーンへの資金提供を停止した。

アメリカン・フォ・プロスペリティ・アクション(Americans for Prosperity ActionAFP)による資金提供中止の決定は、共和党候補指名を目指すヘイリーにとって新たな後退となった。

ヘイリーは土曜日、地元サウスカロライナ州でドナルド・トランプ前大統領に敗れた。トランプは予備選で4連勝を達成した。

しかし、彼女は戦い続けることを誓った。

日曜日にAFPの会長兼CEOはスタッフに宛てた電子メールで、AFPの支援はヘイリーではなく、11月の選挙で重要な連邦上院と連邦下院の選挙に集中すると述べた。

「彼女は闘い続けることを明言しており、私たちは心から彼女を支援する」とエミリー・サイデルは書いている。

サイデルは続けて「しかし、この先の予備選挙での課題を考えると、どのような外部団体も、彼女の勝利への道を広げるような重要な変化をもたらすことはできないだろう」と書いている。

ヘイリー選対は、まだ継続するのに十分な資金が入ってくると主張している。

ヘイリーのスポークスマンであるオリビア・ペレス・クバスは、AFPの支援に感謝し、サウスカロライナ州での敗北以来100万ドルが入ってきていると述べた。クバスは「続けるための燃料は十分にある。私たちには救うべき国がある」と述べている。

AFPは、ヘイリーがトランプへの明確な挑戦者としての地位を確立しようとしていた11月に支持と資金援助を表明していた。

それ以来、彼女は共和党内のトランプの対抗馬の中で最も耐久性があることを証明してきたが、今彼女がどのように勝利への道を見出すことができるかは不明である。

11月には、トランプとジョー・バイデン大統領(民主党)の再戦に向かう可能性が高まっている。

=====

コーク・ネットワーク、2024年大統領選予備選でドナルド・トランプ以外の共和党支持を計画(Koch network plans to back a Republican – other than Donald Trump – in the 2024 presidential primary

フレデリカ・ショーテン筆
2023年2月5日

https://edition.cnn.com/2023/02/05/politics/koch-network-republican-primary-2024/index.html

億万長者チャールズ・コークに関連する巨大なネットワークが2024年の大統領選挙予備選挙で共和党の候補者一人に資金と支援を提供する準備を進めている。

コーク・ネットワークの主要政治部門であるアメリカン・フォ・プロスペリティ・アクション(Americans for Prosperity ActionAFP)は、「共和党の大統領選挙予備選挙で、我が国を前進させることができ、勝利することができる候補者を支援する用意がある」と、AFPCEOAFP Actionの最高顧問であるエミリー・サイデルは、日曜日に発表された声明メモでこのように述べた。

この声明メモにはドナルド・トランプについての言及はないが、AFPアクションの関係者がCNNに確認したところによると、同ネットワークは前大統領のホワイトハウス候補を支援する予定はないという。

サイデルはAFPのスタッフや活動家に宛てて「私たちの国家に新たな章を書くには、過去のページをめくる必要がある。したがって、この国にとって最善のことは、2025年に新たな章を代表する大統領が誕生することだろう」と書いている。

直近の2回のホワイトハウス候補指名争いを傍観してきたコークが共和党予備選挙に参加するという決断を下したことで、共和党の大統領候補者たちは、カンザス州を拠点とする実業家と、彼の影響力のある自由市場ネットワークに資金を提供する数百人の富裕層献金者を取り込もうと奔走することになりそうだ。

トランプはホワイトハウス在任中、政権の通商政策や強硬な移民政策を厳しく批判するコーク当局者らと頻繁にスパーリングを行った。

AFPアクションは2024年の政治活動の予算を発表していないが、同ネットワークは過去の選挙サイクルで数億ドルを費やしており、共和党全国委員会の資金力に匹敵する。アメリカンズ・フォ・プロスペリティは36州に常駐のスタッフを擁し、全国に数百万人の草の根活動家を抱えている。

また、AFPアクションの政治部門は、より多くの争いに影響を与え、予備選挙に参加する新たな有権者を見つけるため、議会や州レベルの予備選により早く、より積極的に関与する計画だとAFPアクション関係者は述べた。

サイデルは、首都に「有害な状況(toxic situation)」を作り出し、政策の進展を妨げていると語る「壊れた政治(broken politics)」に対処するために、このネットワークは活動を強化していると語った。

サイデルは「共和党は、アメリカの核心原則に反することを主張する悪い候補者を指名している。そしてアメリカ国民は彼らを拒否している」と書いている。

そして、民主党は 「更なる極端な政策(more and more extreme policies)」を推し進めているとしている。

2024年の立候補を検討している共和党議員の中には、マイク・ペンス元副大統領をはじめ、コーク・ワールドと長年のつながりがある者もいる。ペンスの長年の最側近であるマーク・ショートは、かつてコーク・ネットワークで政治活動を監督していた。

もう1人の候補者マイク・ポンペオ前国務長官は、コーク・インダストリーズの本社があるカンザス州ウィチタを代表する連邦下院議員だったとき、コークの政治委員会から資金援助を受けていた。元サウスカロライナ州知事のニッキー・ヘイリーは、今月末に共和党候補指名への立候補を表明する予定だが、少なくとも1回はコークの献金者の集会に出席している。また、コッホが支援するスーパーPACは、ロン・デサンティスが2018年の共和党予備選挙で競り勝ち知事になる前に支援していた。

リバータリアン寄りのネットワークは近年、公の場で優先順位の再設定に取り組み、トランプ時代には共和党ブランドから距離を置くよう努めてきた。

しかし、同ネットワークは、他の政治・政策問題で当時の大統領や共和党全国委員会と衝突したにもかかわらず、例えば2017年に1兆5000億ドル規模の税制改革を推進するために多額の費用を投じて、トランプ主導の取り組みを支持した。

サイデルは、ネットワークの広がりの1つの兆候として、AFPAFPアクションが昨年の中間選挙で450以上のレースに参加し、700万以上のドアをノックし、1億通以上の郵便物を発送したことを指摘した。

=====

ランド・ポールが別のイヴェントを欠席する中、ロン・ポールがコーク兄弟のイヴェントに参加‘Ron Paul Headlines One Koch Brothers Event—as Rand Paul Skips Another

-元連邦下院議員のロン・ポールがコーク兄弟主催の#YALcon15で観衆を沸かせる一方、息子のランド・ポールは大きな撤退を行った。若きリバータリアンの戦いの内幕を報じる。

オリヴィア・ナッジ筆

2015年8月3日

『デイリー・ビースト』誌

https://www.thedailybeast.com/ron-paul-headlines-one-koch-brothers-eventas-rand-paul-skips-another/

ヤング・アメリカンズ・フォー・リバティ・カンファレンス(Young Americans for Liberty Conference#YALcon15)に参加する大学生たちは、ある参加者の言葉を借りれば 「迷える子犬(lost puppies)」だ。

自分の興味(アイン・ランドやフリードリヒ・ハイエク)が仲間に共有されていないため、自分のキャンパスになじめない子供たちだ。しかし、#YALcon15のウェブサイトによれば、彼らはたった30ドルで、「原理に基づいて勝つことに参加する若者を動員する(mobilize young people committed to winning on principle)」ことを目的としたリバータリアン会議に参加することができる。そして彼らは96時間、ここワシントンDCにあるライアン・ホールと呼ばれるアメリカ・カトリック大学の寮で、最も装飾的な蝶ネクタイを締め、自分たちと同じような人たち、つまり「原理に基づいて勝つ(Winning on Principle)」ことに参加する人たちのために作られたスピーチやプレゼンテーションに耳を傾けながら、一緒に家を見つけたような気分に浸ることができる。

私が見たのは、順不同だが、キルトを着た若者(彼は二晩続けて同じものを着ていた)、黒いマーカーで「#RAWMILK」と書かれたピンクのボタンダウンシャツを着た若者(彼はウィスコンシン州出身だと言っていた)、YouTube スターにどうすれば自分もスターになれるかを一対一で尋ねている若きリバータリアンたちの列。そして、ロン・ポールを生で見ることを生涯待ち望んでいた若者たち(原理に基づいて勝利することに専念している!)の1マイルの長さの列がそこにはあった。

しかし、ロン・ポールは彼らのダンブルドア(『ハリー・ポッター』の登場人物)かもしれないが、#YALcon15はロン・ポールの元スタッフが中心となって運営され、そのほとんどがコーク兄弟によって支援されている。ロン・ポールはこのコークのイヴェントの主役を務めたが、彼の息子ランドは南カリフォルニアで開催されたコーク兄弟の献金者イヴェントを欠席し、関係者を落胆させた。共和党の大統領選予備選候補者たちが週末に西部に向かう準備をしている中、ケンタッキー州選出の連邦上院議員ランド・ポールはアイオワ州でのちょっとした選挙イヴェントに向かった。

ランド・ポール陣営は私や他の記者に、彼はコーク家の集まりへの招待状を受け取っていたが、先約があり、予定を無断ですっぽかすような人物ではないと断言した。しかし、彼の欠席は、a)資金調達がうまくいっておらず、億万長者の助けが必要なこと、b1月の前回のコーク家サミットでのパフォーマンスで非難されたこと、という事実によって、より不可解なものとなった。コーク家サミットでは、ランド・ポールは、『ポリティコ』誌のケン・ヴォーゲル記者が特徴として挙げた「とりとめのない、時には不人気な回答(rambling and sometimes unpopular answers)」をし、ブルーのブレザーにジーンズ、カウボーイブーツという彼の特徴的な服装を身に着けていた。この服装は一部の超富裕層の寄付者にとっては不快なほどカジュアルな服装だった。

若いポールの選挙キャンペーンは、リバータリアン傾向を持つ有権者から明らかな人気を得ているのと同時に、共和党の他の派閥や民主党にも広くアピールできる人物として自らを位置づけようとしている。そうなると、選挙に勝つことを最優先とするリバータリアンであるコーク家のお気に入りであることは明らかだ。しかし、そうはなっていない。1月にブルームバーグ・ポリティックスに寄稿したデイヴ・ウェイゲルが指摘したように、「ポールのリバータリアニズムはコーク家のリバータリアニズムではない」ということになる。

しかし、若いリバータリアンたちにとって、この運動には顔がある。「彼は“エサ”なんだ(He’s the bait)」と、「Antiwar.com」の創設者であるジャスティン・ライモンドは私に言った。ライモンドはリバータリアン運動の中核と呼ばれるグループの一員であり、彼のような人々にとってコーク家は売国奴(sellouts)なのだ。

デイヴィッド・コークは1980年にリバータリアンとして大統領選に出馬し、落選した。その後、彼はシンクタンクなどを通じて他の方法で政治に影響を与えることに目を向けたが、同時にリバータリアニズムを主流にした。政策に真の影響力を持つには勝たなければならず、勝つためには魅力的でなければならない。そこでリバータリアン運動は、コークが設立したケイトー研究所(Cato Institute)と、マレー・ロスバードが設立したルートヴィヒ・フォン・ミーゼス研究所(Ludwig von Mises Institute)という、より筋金入りのリバータリアンに奉仕する別々の派閥に分裂した。ウェイゲルが書いたように、ロン・ポールはロスバードに近い。彼が大統領選に出馬した2007年、主流派のリバータリアンの間で「懸念された(the worry)」のは、ポールのブランドであるポピュリスト(populist)、連邦準備制度理事会(FRB)叩きのリバータリアニズムは、この哲学を売り込む最良の方法ではないということだった。

チャールズ・コークの元友人であるガス・ディゼレガは、コーク一族は「共和党の保守派と同盟を結ぶことを決めた。その後、彼は魂を失い、言うなれば、かつて持っていた知的誠実さ(intellectual honesty)を全て失った」と述べた。

ロン・ポールへの支持に消極的であった訳ではないが、ロン・ポールが若者たちをリバータリアニズムに引き込み、「原理で勝つ(Win on Principle)」ために、より現実的には右派候補の草の根活動家として集中するための正しい方法であることをコークは理解しているのかもしれない。

そのため、コーク兄弟が南カリフォルニアで最も勝利する可能性が高い候補者を選ぶことに集中している間、国の反対側では別の種類の皮肉を用いていた。

ライモンドは次のように述べている。「コークの人々はYALに寄生しているようなものだ。彼らはYALを伝道ベルトのように使って、人々を自分たちのネットワークに吸い込み、自分たちが持っているどんな計画にも彼らを吸い込もうとしている」。

#YALcon15は、各参加者の名札の裏に「プラチナ」、「ゴールド」、「シルヴァー」と書かれて、分類される23の組織によって後援されており、これら23の組織の大部分はコーク兄弟の募金ネットワークの一部だ。または批評家によって「コクトパス(Kochtopus)」と呼ばれている。

#YALcon15 の「プラチナ」スポンサーは次の通りだ。チャールズ・コークによって設立されたチャールズ・コーク研究所、コーク兄弟が資金提供しているリーダーシップ研究所、 スチューデント・フォ・リバティもコーク兄弟から資金提供を受けている。フリーダム・ワークス(Freedom Works)は、1984年に健全な経済のための市民としてコーク兄弟によって設立されたが、2004年に2つの組織に分離され、もう1つは同じくプラチナ寄付者としてリストされており、アメリカンズ・フォ・プロスペリティ(Americans for Prosperity)と名付けられ、最終的にコーク家の中心的な政治団体となった。

「ゴールド」のスポンサーは、コーク兄弟が寄付者であり、デイヴィッド・コークが理事を務めるリーズン財団、薬物政策同盟、教育における個人の権利財団 (Foundation for Individual Rights in EducationFIRE) は、コークの寄付者ネットワークから100万ドル以上を受け取っている。コークが資金提供したグループであるフリーダム・パートナーズ1100万ドルを注ぎ込んだジェネレーション・オポチュニティ(Generation Opportunity,

コンサヴァティヴス・コンサーンド・アバウト・ザ・デス・ペナルティがある。

「シルヴァー」スポンサーは以下の通りだ。ハリー・リードがコーク兄弟を公に批判したため、かつて連邦上院倫理特別委員会に苦情を提出したティーパーティー・ペイトリオッツ(Tea Party Patriots)、コーク兄弟が資金提供しているフリーダム・パートナーズ(Freedom Partners)、ヘリテージ財団(Heritage Foundation)はチャールズ・コーク財団から1万1000ドル以上、フリーダム・パートナーズから100万ドル以上を受け取っている。正義研究所(The Institute for Justice)、そのシードマネーはチャールズ・コークによって提供された。チャールズ・コークによって共同設立されたケイトー研究所、アイン・ランド研究所はケイトー研究所の元最高経営責任者であるジョン・アリソンの支援を受けている。コーク兄弟が資金提供を敷いている、コーク兄弟の弟ウィリアムが所属する独立研究所、コーク兄弟が資金提供したアメリカ研究基金がある。コーク兄弟が支援するNRA(全米ライフル協会)もある。コーク兄弟から資金提供を受けている人道研究所が組織する自由基金(Liberty Foundation)。経済教育財団 (FEE)、そしてアメリカズ・フューチャー財団はコーク家のフェローシップ・プログラムからインターンを受け入れている。

YALのウェブサイトによると、ゴールドスポンサーは1万2000ドル、シルヴァースポンサーは6000ドルの寄付が必要だ。プラチナスポンサーがいくら寄付しなければならないかについての情報はない。 YALの広報担当者は私の問い合わせに応じなかった。

キャンパスから歩いてすぐのブルックランド・パイントのバーに座って、原理で勝つことに専念するシンシナティ出身の若者ジミー・マヘイニーは、どうしてここに来ることになったのかについて話していた。トーマス・マッシー連邦下院議員とジャスティン・アマシ連邦下院議員はちょうど彼や他のYALメンバーと話をしたばかりで、マヘイニーは彼らをとても気に入っており、実際、フェイスブック上で「いいね!」したことさえあった。しかし、マヘイニーの政治的覚醒のきっかけは彼らではなかった。それはもちろんロン・ポールだった。マヘイニーはトランペットを吹くのが好きで、ある日、マーチングバンドの仲間たちがロン・ポールについて話しているのを耳にした。「私は彼とリバータリアニズムについてさらに調べ続けた。そして突然、これが実に理にかなっていることに気づいた」と彼は話した。

木曜日の夕方、会議室はロン・ポールのスピーチを前に予想通り満員だった。聴衆は彼が出てくる前から「連邦政府を終わらせろ(END THE FED)」と叫び始め、彼が出てくるとすぐに立ち上がった。

ロン・ポールは「未来はあなたの手の中にあると私が思うことは秘密ではない。国際的にも経済的にも、今のように全世界がひっくり返った事はかつてなかった」と述べた。

学生たちは、まるで目の前で魔法をかけられているかのように、夢中になってロン・ポールを見つめていた。携帯電話で彼の様子を撮影している人もいた。彼が法定通貨(fiat money)と連邦準備制度(Federal Reserve)について冗談を言ったとき、彼らはまさに適切な瞬間に笑った。「ワシントンに戻っても、あまり興奮はしない。実際のところ、私はあそこを訪れることさえない」とロン・ポールは連邦議事堂を示唆しながら述べた。「それはあまりにも憂鬱なことだ」と述べて、誰もが笑った。ロン・ポールは次のように語った。「しかし、私がここにいるのは、皆さんのような若者が将来のことを考え、あそこにいる大勢の人たちが知っているより少しは理解しているのだから、落ち込む必要はないと分かっているからだ。皆さんは自由とは何かを理解しており、そしてそれが重要なのだ!」

スピーチの後、マヘイニーはツイッターにミームを投稿した。「DIE STATIST SCUM(国家主義のくずに死を)」と書かれていた。ジミーは、「ロン・ポール(RP)は#YALcon15のようだ」というキャプションを付けた。彼はフェイスブックにロン・ポールとの写真を投稿した。ジミーはにやりと笑い、2本の指を横に広げてV字にし、右目の上にかざした。

土曜日になっても、人々はスピーチのことを話していた。キャンパスのメインビル「プライズ」の外では、少人数のグループがマルボロを吸っていた。そのうちの一人は、スピーチの後に警備員とともに芝生を歩くポールを見かけ、彼と話すことができた。ニュージャージー州南部から来たある若者は、前夜に飲みすぎて一日中寝ていたと愚痴をこぼした。スピーチの最中、彼は疲れて居眠りをしていた。別の若者は「彼はどんなリバータリアンなのか?」と質問した。ロン・ポールのために起きていられない人なんているのか?

訂正:この記事の前のヴァージョンではジョン・アリソンをケイトー研究所成功経営責任者と誤って描写した。正確には彼は元最高経営責任者だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 チャールズとデイヴィッドのコーク兄弟と言えば、一時期はアメリカ政治を陰で操る大実業家というイメージだった。バラク・オバマ政権成立後に始まった保守派の草の根運動ティーパーティー運動に全面的な資金提供を行ったのがコーク兄弟だった。ドナルド・トランプ政権のマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官などは連邦議員時代にコーク兄弟から政治資金提供を受けていたこともあり、このブログでも紹介したが、「コーク兄弟のための国務長官だ」とまで言われるほどだった。
charlesdavidkoch001

デイヴィッド(左)とチャールズ
 コーク兄弟も弟デイヴィッドが2019年に79歳で死去してしまい、85歳になる兄チャールズが残された。コーク家には4名の男性兄弟がおり、長男はフレデリック(2020年に86歳で死去)、次男がチャールズ(85歳)、その次が双子でデイヴィッド(2019年に79歳で死去)、ビル(80歳)という構成になっていた。兄弟たちの父フレッドが創設したコーク・インダストリーズを従業員13万人の大企業に育てたのは、チャールズとデイヴィッドの力が大きい。長男は芸術家肌で事業には全くの不向き、末っ子のビルはコーク・インダストリーズに入っていたが、兄たちと喧嘩別れし、自身でオックスバウという会社を立ち上げ成功させた。また、ヨットの世界的な大会アメリカズ・カップでも優勝している。

 コーク兄弟はリバータリアニズムを信奉していることでも知られていた。リバータにリアニズムについて簡単に言うと、反税金、反福祉、反規制、反大規模政府ということで、徹底的に規制や制限を嫌い、無政府主義にまでつながる思想である。コーク・インダストリーズの主要ビジネスが石油採掘や精製で、政府の既成と常に戦ってきたということもある。そのため、現実政治では、民主党ではなく、共和党と共和党所属の政治家たちを応援してきた。

 コーク兄弟は自分たちが政治献金をするだけではなく、政治献金をする大金持ちたちのネットワーク作りも行い、成功した。コーク兄弟に誘われて政治献金をするようになった大金持ちたちも多い。

 こうしたことは拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン、講談社、2016年)に詳しく述べられている。

 チャールズが今になって後悔している、というのが下の記事だ。コーク兄弟はさんざん当時のオバマ政権と民主党を攻撃した形になっている。それが今になって「分断を招いた」として「間違っていた」と後悔しているというのだ。そして、貧困問題やホームレス、麻薬中毒といった社会的な問題について取り組みたいなどと殊勝なことを述べている。

 コーク兄弟はトランプ大統領が嫌いで、2016年の段階では対抗馬を支援していたし、トランプが共和党の大統領選挙候補者に指名されても全く動かなかった。質実剛健を旨とする中西部に生まれ育ち、実業(コーク・インダストリーズの主要なビジネスは石油採掘と精製、更に父親以来の牧場経営もある)の世界で生きていたチャールズ(兄や弟たちはフロリダ州や東海岸で贅沢な暮らしをしてきた)と、トランプでは肌合いが全く異なるということはあるだろうし、チャールズからすれば、「お前はずっと民主党員だったし、保護貿易主義者ではないか」という反感が強いと思われる。

 チャールズは前回紹介した「トランプ現象、トランプ主義」に恐れおののいたのだろう。チャールズもまた名門中の名門大学マサチューセッツ工科大学を卒業して会社経営を行っているエリート側の人間だ。そして、リバータリアニズムを信奉し、関連著書を読み漁ってきた研究者タイプの人間でもある(書斎は本で埋め尽くされている)。しかし、現実は厳しい。チャールズは、トランプ現象、トランプ主義をアメリカの衰退の始まりともとらえて、高尚な思想運動や政治運動ではなく、足元の共同体や社会が抱える諸問題に取り組むという決心をしたのだろう。しかし、それはもう手遅れだ。アメリカの分断は分裂に向かう

 バイデン・ハリスという新政権誕生に何の高揚感もないのは、トランプ現象で本の表紙が開かれた、アメリカの衰退のページが新たにめくられたと人々が感じているからだろう。世界中の人々が、「デモクラシーの本家本元だと威張り腐って、俺たちに散々説教してきたが、お前らの選挙制度一つ、うまくやっていないじゃないか。もっと効率的で公正で、疑義を挟まれない形でできる選挙のやり方を教えてやろうか」と思うようになっている。

 チャールズの言葉は何かとても物悲しく、アメリカの終わりを印象付けるものだ

(貼り付けはじめ)

チャールズ・コークは自身の党派性について後悔:「やれやれ、私たちは間違ったのか!」(Charles Koch regrets his partisanship: 'Boy, did we screw up!'

カエラン・デシー筆

2020年11月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/news/525878-charles-koch-regrets-his-partisanship-boy-did-we-screw-up

共和党への大口献金者チャールズ・コークは、党派性を持ち続けた数十年を後悔し、政治的な分裂の間をつなぐことに注力したいと望んでいると発言した。『ウォールストリート・ジャーナル』紙が金曜日に報じた。

大統領選挙直前に行ったインタヴューの中で、85歳になるリバータリアニズムを信奉しているビジネス界の大立者は、ウォールストリート・ジャーナル紙に対して、これまで保守的な大義のために多額の資金を投じてきたが、今の関心は貧困、麻薬中毒、ギャングによる暴力、ホームレス、累犯といった諸問題に関心が移りつつあると述べた。

長年にわたり、チャールズとデイヴィッドのコーク兄弟は保守的な大義と候補者たちに資金を投入するための影響力を持つネットワークを構築した。チャールズ・コークはコーク・インダストリーズの最高責任者の地位にとどまり続けている。コーク・インダストリーズは13万人の従業員を抱える数十億ドルを稼ぎ出すコングロマリットである。

コークが共著として木曜日に発売開始した最新刊『人々を信じる:トップダウンの世界のためのボトムアップの解決法』の中で、自身の党派性の強い政治がもたらす分断と呼ぶものについて考察している。

チャールズは本の中で「やわやれ、私たちは間違ったのか!」と書いた。そして、「なんてことだ」とも書いた。

コークは統合を呼びかけているが、2020年の選挙において共和党所属の候補者たちへ多額の資金のほとんどを投じた。280万ドルを共和党に寄付し、民主党の候補者には22万1000ドルを寄付した、とウォールストリート・ジャーナル紙は報じている。

コークは、大統領選挙候補者ジョー・バイデンと副大統領候補者カマラ・ハリスの選挙の勝利に対して祝意を表した。そして、「私たちは選挙後の時間を使ってより良い前進の方法を見つけたい」と述べた。

トランプ大統領と共和党所属の連邦議員たちのほとんどはバイデンを大統領選挙勝利者と言及することを拒絶している。連邦議員たちは選挙結果についてトランプ陣営が行っている法律的な争いを支持している。

コークは、「私たちは党派争いのために、政治について過剰に期待し、私たち自身とお互いについて過小に期待するようになってしまっている」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 私が翻訳しました『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)の主人公コーク兄弟の弟デイヴィッド・コーク(David Koch、1940-2019年)が亡くなりました。79歳でした。兄チャールズ(Charles Koch、1935年―)は83歳で、弟の死去を発表するという不幸に見舞われました。

americanoshinnoshihaishakochichizoku001
アメリカの真の支配者 コーク一族

 

 コーク兄弟は2018年において保有資産608億ドルずつで、世界で第8位の大富豪です。彼らはコーク・インダストリーズという石油精製を中心とした多角経営の大企業を経営しています。コーク・インダストリーズは非上場企業で、非上場企業としては全米第2位の規模を誇ります。2人の資産の多くはコーク・インダストリーズの株式ということになります。コーク・インダストリーズの株式はほぼ親族だけで独占されています。

charlesdavidkock015

デイヴィッド(左)とチャールズ 

 昨年、デイヴィッドが公的な活動からの引退を発表し、アメリカ政治に大きな影響を与えた「コーク兄弟」は解体ということになりました。この時から既に健康を害していたのでしょう。この一年がデイヴィッドにとって家族との穏やかな日々であったのだろうかと考えると感慨深いものがあります。

 

 コーク兄弟は正式には4名いるのですが、長男のフレッデリック(1933年―、86歳)はコーク・インダストリーズの経営に全く関与しておらず、莫大な財産を受け継いで慈善事業家として活動しています。フレデリックだけハーヴァード大学で人文学を専攻し、芸術家肌の人物です。フレデリックは早い段階でコーク・インダストリーズの後継者レースから脱落しました。

frederickkoch005
フレデリック

次男チャールズと双子の弟たちデイヴィッドとビル(Bill Koch、1940年―、79歳)は、父フレッドと同じくマサチューセッツ工科大学の工学系を卒業し、コーク・インダストリーズの経営を引き継ぎましたが、ビルは仲違いをし、離れていきました。結局、コーク・インダストリーズの経営はチャールズとデイヴィッドが行うことになりました。


billkoch005
ビル
 

チャールズとデイヴィッドは「コーク兄弟」とひとくくりに呼ばれました。彼らは、アメリカ政界、特に共和党系、保守系の候補者や運動に多額の資金を提供し、影響力を行使することで知られてきました。2008年のバラク・オバマ大統領誕生後から始まったティーパーティー運動の資金源としても知られています。

 

 コーク兄弟は様々な組織や団体に資金提供を行い、ネットワーク化していきました。このネットワークは、コーク・ネットワークと呼ばれています。また、コーク兄弟は、他の大富豪たちを組織化し、共和党を支持する大富豪グループも形成しました。


kochempire001

 

 コーク兄弟が形成した組織や団体のネットワーク、大富豪のネットワーク、政治家たちからドナルド・トランプ政権に入った人たちが多く出ました。下の図にあるように10名上がトランプ政権入りをしています。また、トランプ選対の責任者だったコーリー・ルワドンスキーなど選対にはコーク・ネットワークで活動家だった人々が入っていました。マイク・ペンス副大統領やマイク・ポンぺオ国務長官は政治資金の面でコーク兄弟に大いにお世話になった人々です。

Koch-Cabinet-smaller-e1499255511125

 

 コーク兄弟はトランプ大統領を支持していませんが、自分たちが支援してきた人々からトランプ大統領を支える人材が多数出ているというのは何とも皮肉なことです。コーク兄弟はリバータリアニズムという反大きな政府、反税金、反福祉、反規制の考えを拡大させようとして活動してきました。兄弟からしてみれば、トランプ大統領の国境封鎖や関税引き上げのような政策は受け入れられるものではありません。

 

 特に現在の米中貿易戦争のような状態を、自由貿易体制を標榜するコーク兄弟は容認できません。また、伝統的な共和党の政治家たちも自由貿易体制を壊すものとして容認できないものです。自由紡績体制を標榜するはずの共和党から出ている大統領が保護貿易を行うというのはこれまでの考え方らすると大きな矛盾です。このような大きな矛盾が起きているのは、アメリカの力が衰退し、世界帝国の地位を維持できなくなりつつあるからです。

 

 コーク兄弟は2008年からの草の根の保守運動ティーパーティーの資金源であったことをも知られています。現在、ティーパーティー運動は下火になっています。それに代わって、大きな矛盾を抱え込んだトランプ大統領流のポピュリズムがアメリカを席巻しています。

 

 デイヴィッドの死去は、コーク兄弟の力の衰えと共にアメリカ保守運動の衰退、リバータリアニズムへの支持の減退といったことを象徴していると私は考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

大富豪にして保守系の慈善事業家デイヴィッド・コークが79歳で死去(Billionaire conservative philanthropist David Koch dies at 79

 

ジョン・ボウデン筆

2019年8月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/458521-billionaire-david-koch-dies-at-79

 

大富豪のデイヴィッド・コークが金曜日午前に79歳で死去した。デイヴィッド・コークは兄と共に長年にわたり、保守系の活動家、献金者として活動したことで知られている。

 

金曜日、チャールズ・コークは声明を発表し、その中で「私の弟であるデイヴィッドの逝去について発表することについて私の気持ちは沈んでいる。デイヴィッドと活動を共にした人は誰でも彼の人格の大きさと人生に対する熱意を感じ取ったはずだ」と述べた。

 

チャールズ・コークは続けて「今日は私たち全員にとって大変悲しい日であるが、私が皆さんに知っていただきたいのは、デイヴィッドがコーク・インダストリーズを現在のような成功に導いて下さった皆さん方を大変誇りに思っていたということだ。彼の逝去をこれからも悲しむことになるだろうが、彼が生きたということを決して忘れはしない」と述べた。

 

デイヴィッド・コークは健康上の理由でちょうど1年前にコーク・インダストリーズの経営陣から退いていた。

 

彼は20年以上前に前立腺がんと診断され、それ以来、数多くのがん研究に関する慈善活動や医療グループに多額の献金を続けた。

 

デイヴィッドがコーク・インダストリーズの経営陣から退いた時、チャールズ・コークは記者団に対して、「様々な問題が解決されておらず、彼の健康状態は悪化し続けている」と述べた。

 

昨年、チャールズ・コークは「その結果としてデイヴィッドは実業の世界や様々な組織的な活動に関与することが出来なくなっている」と述べた。

 

コーク一族は共和党の候補者たちやリバータリアニズムの大義に対する膨大な政治献金を行ってきたことで知られている。

 

チャールズとデイヴィッドは共にティーパーティー運動を資金面から援助したことでも知られている。ティーパーティー運動のおかげで共和党は2010年の中間選挙で連邦下院の過半数を制することが出来た。

 

デイヴィッド・コークは多くの共和党の候補者を支援し、当選させている。しかし、彼は2016年の大統領選挙でトランプ大統領を支持しなかった。彼は共和党の減税計画を声高に支持した。1980年にはリバータリアン党の副大統領候補として選挙に出馬した。

 

=====

 

デイヴィッド・コークについて知っておくべき5つのこと(Five things to know about David Koch

 

マリナ・ピトフスキー筆

2019年8月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/458570-5-things-to-know-about-david-koch

 

大富豪の実業家にして保守系政界の大口献金者デイヴィッド・コークが金曜日に79歳で亡くなった。

 

1960年代、デイヴィッドは兄チャールズと共に、父フレッド・コークからコーク・インダストリーズの経営を引き継いだ。コーク・インダストリーズは原油、石油パイプライン、その他数多くの化学や一般消費者向けの製品を取り扱っている。会社は現在、非上場企業の多角経営企業としては全米で2番目の規模を誇るまでになっている。『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、年間売り上げは1000億ドル以上を記録している。

 

しかし、コーク兄弟はアメリカ政治に分裂をもたらすほどの影響力を行使してきたことで知られている。数十年にわたり、コーク兄弟は州レヴェルと全国レヴェルにおいて共和党とリバータリアン党の政治運動に資金を提供してきた。兄弟は様々な組織と政治活動委員会をネットワーク化し、アメリカ全土で小さな政府、反規制を促進してきた。

 

2005年にリバータリアン系の雑誌『リーズン』誌の編集長ブライアン・ドアティの取材に応じた。その中でデイヴィッドは次のように語っている。「私が成長する中で繰り返し言い聞かされてきたのは、大きな政府は悪い、私たちの生活や経済活動に政府のコントロールを課すことは良くない、という考えでした」。

 

ここでデイヴィッド・コークについて知っておくべき5つのことを書いていく。

 

●政治に対して数十億ドルを使った

 

デイヴィッドと兄チャールズは数十億ドルもの資金を提供し、アメリカの保守政界に大きな影響を与えてきた。10以上のグループを組織し、それらのグループを使って影響力を行使してきた。コーク兄弟はこれらのグループを創設したり、数百万ドル規模の資金援助をしたりしてきた。これらのグループはコーク・ネットワークとして知られるようになった。

 

2016年の大統領選挙、連邦議員選挙、州知事選挙だけで、コーク・ネットワークは約9億ドルを支出した。『ワシントン・ポスト』紙によると、この額は共和党全体でその年に候補者たちに使った総額とほぼ同じであった。

 

コーク・ネットワークは2018年の中間選挙期間中に最大4億ドルを支出する計画だと発表した。コーク・ネットワークは2020年の選挙に向けて新たに4つの政治活動委員会を発足させた。しかし、コーク・ネットワークのチュ心的存在であるアメリカンズ・フォ・プロスペリティは2020年の大統領選挙に直接関与することはないと発表している。

 

コーク兄弟は政治運動以外にも数百万ドルを支出し、特に民主党や進歩主義派の政策を攻撃させた。例えば、コーク・ネットワークは、2010年から2012年にかけて2億ドルを投じてオバマケア廃止に向けた運動を展開した、とワシントン・ポスト紙は報じた。

 

コーク・ネットワークはワシントン政界で影響力を持つ人々の多くを支援してきた。ジョニ・エルンスト連邦上院議員(アイオワ州選出、共和党)への支援をはじめ、マイク・ペンス副大統領のインディアナ州知事選挙の支援、マイク・ポンぺオ国務長官の連邦下院議員選挙の支援などを行った。ワシントン・ポスト紙は、連邦下院議員時代のポンぺオについて「コークに送り込まれた連邦下院議員」として知られていたと報じている。

 

●トランプとの危険をはらむ関係

 

デイヴィッドとチャールズは、トランプが2016年の大統領選挙期間中に、コーク兄弟からの資金を求めていた他の共和党候補者たちを「操り人形」と攻撃した後、トランプ大統領の選挙に反対し、彼を支持しなかった。

 

ニューヨーク・タイムズ紙によると、2016年の大統領選挙後に開催されたトランプの祝勝会にデイヴィッド・コークは出席し、更にトランプ所有のマーラゴ・リゾートで当選者であったトランプと会談を持った、ということだ。しかし、コーク兄弟率いる組織はトランプ政権の各政策に反対した。特に公共支出政策や移民に対する発言に反対した。

 

しかしながら、コーク兄弟は特に貿易問題についてトランプ大統領と異なる考えを持っていた。兄弟は自由貿易を強固に主張していた。そして、チャールズ・コークはトランプの関税支持やその他の保護主義的な政策をアメリカにとって「有害だ」と批判した。

 

コーク・ネットワークに属する各グループ、「フリーダム・パートナーズ」「アメリカンズ・フォ・プロスペリティ」「LIBRE・イニシアティヴ」などが昨年、トランプの関税政策に対して、複数年の数百万ドル規模のプログラムを発足させた。このプログラムでは、連邦議員たちに対するロビー活動、活動家たちの訓練、政策に反対する政治広告が含まれていた。

 

トランプ大統領は昨年ツイッターでコーク兄弟を攻撃した。トランプ大統領は兄弟を「グローバリスト」「真の共和党関係者たちからしてみれば冗談のような存在」とこき下ろした。

 

●デイヴィッドはリバータリアンだったが、主に共和党の主張を支持してきた

 

1980年、デイヴィッド・コークはリバータリアン党の副大統領候補となった。大統領候補は企業弁護士エド・クラークだった。

 

二人の公約は、企業法人税と個人の所得税の全廃、メディケアの廃止、児童労働禁止法の廃止だった。二人はレーガン大統領の当選に対して、1%の得票率しか得られなかった。しかし、選挙戦を戦った経験によってデイヴィッド・コークは、アメリカにとってリバータリアン的政策が重要なのだという信念を固めることが出来た。

 

デイヴィッドは貿易、税制、規制緩和、選挙資金制度改革などの諸問題について共和党を支持していた。しかし、デイヴィッドはABCニュースの取材に対して、自分自身を「社会問題に関してはリベラル」と規定した。

 

デイヴィッドはLGBTQの婚姻、女性たちの中絶を含む生殖に関する諸権利をはじめ、中東からの米軍の撤退や予算を均衡させるための手段としての軍事費の削減のような民主党が主張している諸政策を支持した。

 

しかし、コーク兄弟は、数多くのシンクタンク、ロビー団体、その他のグループに数百万ドルの資金を提供し、気候変動に関する政策や環境に関する研究や法制化を止めようとした。また公共交通プログラムも阻止しようとした。

 

「グリーンピース」はコーク・インダストリーズを「科学的な気候変動研究を否定する中心的存在」と非難した。

 

●ティーパーティー運動の台頭に資金援助

 

デイヴィッドは2008年に始まったティーパーティー運動の台頭に資金援助を行ったことで知られている。ティーパーティー運動はオバマ政権に反対するために始まった。コーク兄弟が率いる「アメリカンズ・フォ・プロスペリティ」は選挙運動への政治献金、論点整理、動員の援助を通じてティーパーティー運動の指導者たちに資金援助を行い、運動の規模拡大を支援した。

 

2010年、『ニューヨーカー』誌はジェイン・メイヤーによるアメリカンズ・フォ・プロスペリティの影響力に関する分析記事「隠された作戦」を掲載した。その中で、アメリカンズ・フォ・プロスペリティは、「ロビイストや利益団体によってかき消されている平均的なアメリカ人の声」を集めるとして、諸団体の幹部を集めた会議を開催したり、多くの人々を集めるイヴェントを組織したりした。

 

ニューヨーク・タイムズ紙によると、アメリカンズ・フォ・プロスペリティは少なくとも1億ドルをティーパーティー運動に投じ、アメリカを右傾化させようとしたということだ。

 

それにもかかわらず、デイヴィッドは2010年の『ニューヨーク・マガジン』誌とのインタヴューの中で、ティーパーティー運動から出てきた候補者に資金を提供したことなどないと述べた。

 

デイヴィッドは「私はティーパーティー運動のイヴェントに行ったことなどありません。ティーパーティー運動を代表する人が私に連絡をして来たことすらないんです」と述べた。

 

●民主党にとっての怪物となる

 

「コーク兄弟」という言葉は、多くの民主党員や支持者にとって、極右の政策を主張する存在として捉えられるようになっている。特に選挙資金制度改革とアメリカ政治における大富豪の影響力といった諸問題に関しては、コーク兄弟という言葉が深く結びついている。

 

2012年の大統領選挙期間中、当時のオバマ大統領はコーク兄弟を狙い撃ちにしたテレビコマーシャルを流した。テレビコマーシャルは、ミシガン州、ノースカロライナ州、オハイオ州、ヴァージニア州といった激戦州の有権者たちに対して、流された。コマーシャル内ではコーク兄弟の名前は直接言及されなかったが、「秘密主義の石油産業で財を成した大富豪たちがファクトチェックをするというテレビコマーシャルを使ってオバマ大統領を攻撃しているが、そのテレビコマーシャル自体が事実に基づかないものだ」と主張するものであった。2012年当時、こうした事実をニューヨーク・タイムズ紙は紙面を通じて報じた。

 

デイヴィッド・コークの死去が発表された後、ツイッター上ではデイヴィッドの長年にわたる様々な方法でのアメリカ政治への影響力行使について非難する書き込みが続いた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

kakusaretajuujikaedonosuugakushatachi001
隠された十字架 江戸の数学者たち

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 今年の秋にはアメリカで中間選挙が行われます。連邦下院の全議席、連邦上院の一部議席、そして複数の州の州知事選挙が行われます。

 

 拙訳『コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)でも取り上げられていましたが、コーク兄弟から政治資金を受け、保守的な政策を進めている現職のウィスコンシン州知事スコット・ウォーカーが苦戦をしている、という世論調査の結果が出ています。

wisconsingovernorelectionpolls001
 

 ウォーカーは、ティーパーティー運動(コーク兄弟が資金源)で頭角を現し、その後、ウィスコンシン州知事に当選。2016年の米大統領選挙で共和党の予備選挙に出馬を表明し、一時は有力候補と見られるまでになりましたが、その後失速し、出馬をすることはありませんでした。それでもスコット・ウォーカーは共和党の若手有力株として注目されています。このウォーカーが苦戦しているというのはアメリカの政治ニュースとなっています。

 

 ウォーカーの苦戦の原因が小政党リバータリアン党の候補者が数パーセントの支持を得ているために、接戦となったら、共和党からリバータリアン党に流れる票数が死命を決するということになると予想されています。1991年の米大統領選挙で民主党のビル・クリントンが勝利をした際に、第三党のロス・ペローが善戦したために、共和党のジョージ・HW・ブッシュが敗れたという事例に似た構図となっています。

 

 ティーパーティー運動で台頭し、コーク兄弟から政治資金を受けているマイク・ポンぺオ国務長官、テッド・クルーズ連邦上院議員、スコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事がそれぞれ苦戦をしているのは興味深いところです。彼らはコーク兄弟が見い出して援助を与え、中央政界に進出し、または名前を売った人物たちです。


scottwalkerkochbrothers001
scottwalkernegativead001

 コーク兄弟の信奉するリバータリアニズムは、何事も市場の機能に任せれば、最も合理的に最適の結果が無駄なく得られるという市場至上主義です。アメリカ国民の中には、市場至上主義疲れが起きていると考えられます。トランプ大統領への支持が低下しないのは、彼が株高を演出し、再分配を志向する政策を実行しているからです。この点で、共和党の体制派、更にはリバータリアニズムを信奉する勢力とは対立します。

 

 スコット・ウォーカーが大苦戦しているというのは、今回の中間選挙で民主党が盛り返していること、そして、トランプ政権とは異なる姿勢を持つ共和党の体制派とリバータリアン達には逆風となっていることを示しています。

 

(貼り付けはじめ)

 

世論調査:スコット・ウォーカーはウィスコンシン州知事選挙で大接戦(Poll shows Scott Walker in dead heat in Wisconsin reelection race

 

タル・アクセルロッド筆

2018年8月22日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/403084-poll-gov-walker-in-dead-heat-for-reelection-in-wisconsin

 

マーケット大学法科大学院が実施した、ウィスコンシン州知事選挙に関する世論調査の結果が水曜日に発表された。現職のスコット・ウォーカー知事(共和党)が州立学校監督官トニー・エヴァース(民主党)と大接戦を演じているという結果が出た。

 

投票に必ず行くと答えた有権者のうち、46%がウォーカーを支持し、46%がエヴァースを支持すると答えた。2%がどちらも支持しない、分からないと答えた。誤差は4.5%であった。

 

有権者登録をしている有権者の中でも、ウォーカーは大接戦を演じている。ウォーカー46%、エヴァース44%という結果が出ている。誤差は4%であった。

 

マーケット大学の調査では、ウォーカーの支持率は3月以降、40%台後半で安定している。一方、不支持率は40%台中盤で安定している。

 

エヴァースは8月に実施された民主党の州知事選挙予備選挙で勝利を収めた。この時期、ウィスコンシン州民主党は、州議会議員選挙の複数の補選と州最高裁判所の判事の選挙で勝利を収め、上昇気流にあった。

 

ウィスコンシン州知事選挙で台風の目になりそうなのが、リバータリアン党のフィル・アンダーソンである。アンダーソンは、選挙に行くと答えた有権者の中では6%、有権者登録をしている有権者の中では7%の支持を得ている。これらの数字はエヴァースとウォーカーとの差よりも大きい数字である。

 

リアル・クリア・ポリティックスによる各種世論調査の集計によると、エヴァースとウォーカーとの一騎打ちでは、エヴァースが6.3%のリードをしている。しかし、クック・ポリティカル・レポートはウィスコンシン州知事選挙について「共和党先行」としている。

 

今回の世論調査は815日から19日にかけて、800名のウィスコンシン州民に対して電話でのインタヴューでデータを集められた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 今回は、マイク・ポンぺオ国務長官についての記事をご紹介します。


maikeponpeo008

ポンぺオと金正恩 

 今年の3月に前任のレックス・ティラーソンが本人に事前通告なしに(トランプ大統領がツイッター上で発表)更迭され、マイク・ポンぺオCIA長官(当時)が後任となるにあたり、いくつかのメディアで出た記事には、ポンぺオとコーク兄弟の関係が取り上げられています。

kochbrothers005

チャールズ(左)とデイヴィッド 

 コーク兄弟とは、チャールズ・コーク、デイヴィッド・コークの兄弟で、アメリカの大富豪で、大企業コーク・インダストリーズの経営者です。コーク・インダストリーズは非上場で株式の8割をこの2人の兄弟が所有しています。コーク・インダストリーズは石油関連事業を中心に様々な事業を展開している巨大企業です。

 

 コーク兄弟は豊富な資金を政治家に提供して、政治に影響を与えています。彼らは様々な草の根組織を作り、更には自分たちと同じような大富豪を組織して、資金提供ネットワークを構成しています。コーク兄弟については、拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)をお読みください。

 

kochichizoku001
 アメリカの真の支配者 コーク一族


 マイク・ポンぺオは、2010年の中間選挙の連邦下院議員選挙でカンザス州第4選挙区から出馬し、当選しました。この時期、アメリカ政界に旋風を巻き起こした「ティーパーティー運動」の一員でした。ポンぺオはトランプ政権に入るまで連邦下院議員を務めました。過激な発言で人々の注目を集めました。

 

この選挙区にはカンザス州の最大都市ウィチタが含まれています。ウィチタにはコーク・インダストリーズの本社があり、総帥チャールズ・コークも居住しています。コーク兄弟はティーパーティー運動の資金源でした。ポンぺオはコーク兄弟のお膝元から政治家としてのキャリアをスタートさせています。そして、実際にポンぺオはコーク兄弟から多額の資金援助を受けています。

 

 しかし、コーク兄弟とポンぺオとのつながりはもっと昔に遡ることが出来ます。ポンぺオ(1963年生まれ)は陸軍士官学校をトップの成績で卒業し(1986年)、その後、1991年までアメリカ陸軍の機甲師団に勤務しました。1992年にハーヴァード大学法科大学院に入学しました。学内誌『ハーヴァード・ロー・レヴュー』誌の編集員を務めました。この経歴はバラク・オバマ前大統領と同じです。エリートということになります。

 

 1994年に法科大学院修了後、ポンぺオはワシントンDCにあるウィリアム・アンド・コノリー法律事務所に勤務しました。この法律事務所は200名以上の弁護士を抱える大規模な事務所です。そして、1998年にカンザス州ウィチタに移りました。ここで陸軍士官学校時代の友人たちと航空機の部品製造の会社を立ち上げました。この時にコーク・インダストリーズのヴェンチャービジネス投資専門の子会社から資金提供を受けました。この時に既にコーク兄弟との関係が出来たということになります。

 

 2017年1月から正式に発足したドナルド・トランプ政権にはコーク兄弟と関係の深い人々が多数入閣しています。その代表がポンぺオということになります。コーク兄弟は、リバータリアニズムという思想を信奉しています。リバータリアニズムは、アメリカが外国で戦争をすることに反対します(アメリカの領土に攻めてこられたら徹底的に戦うとしています)。

Koch-Cabinet-smaller-e1499255511125
 

 今回の米朝首脳会談から共同宣言へと進み、対話路線となったのにはトランプ大統領の意向が大きかったと思いますが、ポンぺオとコーク兄弟の関係、コーク兄弟の意向も働いたのではないかと考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

コーク兄弟は自分たちのための国務長官を手に入れた(The Koch Brothers Get Their Very Own Secretary of State

-レックス・ティラーソンの後任として、トランプは大富豪の使い走りを据える

 

ジョン・ニコラス筆

2018年3月13日

『ザ・ネイション』誌

https://www.thenation.com/article/the-koch-brothers-get-their-very-own-secretary-of-state/

 

2010年の中間選挙において共和党が勝利を収めた。この時、チャールズ・コークとデイヴィッド・コークがアメリカ政治における重要人物として登場した。この選挙で、コーク・インダストリーズから最大の寄付を受けたのがマイク・ポンぺオという名前の新人であった。8年前の連邦下院議員選挙の後、ポンぺオは「コーク兄弟の連邦議員」や「コークが送り込んだ連邦議員」と呼ばれた。

 

現在、ポンぺオはコーク兄弟の影響を受けた国務長官になるという立場に立っている。

 

ポンぺオはCIA長官としてトランプ大統領のイエスマンを1年ちょっと務めた。そして、トランプは無気力なレックス・ティラーソンの後任にポンぺオを据えた。

 

トランプ大統領とティラーソン国務長官はお互いが疎遠になっていった。ティラーソンは自身の解任を火曜日の朝にツイッターを通じて知ったことが明らかとなった。ティラーソンは側近からツイッターの画面を見せられ、トランプ大統領による更迭を教えられた。国務省が発表した声明は、ティラーソンが解任の理由について「知らない」ということを示唆している。

 

ティラーソンは、ロシアによるサイバー攻撃やサウジアラビアやカタールなどの国々に対する姿勢といった点でトランプとは別の方法を採用していた。

 

ポンぺオの政治的な寄付者に対する服従のパターンは、自己中心的なトランプ大統領には合うものである。ポンぺオはティラーソンに欠けていた外交上の立場を持ち込むことになるだろう。ポンぺオは外交政策に関してはタカ派で、イランとの核合意に強く反対し、アメリカ国内や海外に在住するイスラム教徒たちへの恐怖感を煽り、グアンタナモ基地の収容所の閉鎖に反対した。また、国家安全保障庁による憲法違反の調査プログラムを「素晴らしく重要な仕事」だと擁護した。ポンぺオはまた、NSAの内部告発者エドワード・スノーデンについて、「ロシアから連れて帰り、法的な処置を取るべきだ。そうすれば、適切な司法過程の結果として彼に死刑が宣告されるはずだと思う」という過激な発言を行った。

 

ポンぺオはプライヴァシー権や公民権を重視しない立場を公の場で見せている。また過激な言動や過激な政策を好む傾向にある。これは外交官に適しているとは言えない。過激な言動を好むポンぺオでは、レックス・ティラーソン国務長官よりもトラブルを引き起こす可能性が高い。ティラーソンは自分の世界観を持っているが、喧嘩をするような人物ではない。自分の影響力が低下している国務省のために喧嘩をするようなことはしない。

 

ポンぺオは短気であり、同時に闘争的な街であるワシントンにおいて最も闘争的な人物である。非上場で秘密主義の世界規模のビジネス帝国の支援のおかげで、ポンぺオは政治上のキャリアを上昇することが出来た。ポンぺオはカンザス州ウィチタ出身だ。ウィチタには石油と天然ガスを取り扱うコーク家のビジネス帝国が本部を置いている。ポンぺオはコーク・ヴェンチャー・キャピタルから設立資金の融資を受けて自身の会社を立ち上げた過去を持つ。

 

政治的により重要なことは、ポンぺオがビジネスの世界から政界に進出するにあたり、コーク兄弟とコーク・インダストリーズの従業員たちから大きな支援を受けた。カンザス大学政治学教授のバーデット・ルーミスは次のように語っている。「この点についてポンぺオは激しく反論するでしょうが、彼を“コークから送り込まれた連邦下院議員”と規定することは難しくありませんよ」。

 

実際のところ、「コークから送り込まれた」という特徴付けは、ドナルド・トランプが国務長官に据えようとしている人物にとっては適切なものである。コーク兄弟について考えてみると、彼らは漫画で描かれている姿よりもより繊細で抑制的である。『ジ・アメリカン・コンサヴァティヴ』誌のようなコーク兄弟を長年監視してきた人々や雑誌によれば、コーク兄弟から資金援助を受けてきた様々なプロジェクトは、激しい言葉遣いや戦闘的な保守主義とは一線を画するものばかりだ。しかしながら、コーク兄弟との資金と協力を得ている共和党の政治家の場合と同じく、それらのプロジェクトは、大富豪であるコーク兄弟と彼らの協力者たちの意向に沿った主張を行うものとなっている。多国籍企業に有利な国内向け、海外向けの政策を求める主張を行い、その点でポンぺオとそっくりなのだ。

 

非営利組織「センター・フォ・フード・セイフティ」は、食品表示問題でポンぺオと争った。食品表示問題は世界規模の農業ビジネスと食品小売りにとって大きな利益となる。「センター・フォ・フード・セイフティ」は2014年の文書の中で次のように書いている。

 

「マイク・ポンぺオ連邦下院議員は2010年の選挙においてコーク兄弟から最大の選挙資金の援助を受けた。コーク兄弟からの資金で選挙に当選した後、ポンぺオ議員はコーク・インダストリーズに勤務していた弁護士を議員事務所運営のために雇い入れた。『ワシントン・ポスト』紙によると、ポンぺオ議員はコーク・インダストリーズに有利になる法案を次々と提案し、コーク兄弟はロビイストたちを雇ってそれらの法案を支援した」。

 

2010年の中間選挙について、センター・フォ・レスポンシヴ・ポリティックスはつぎのように分析している。

 

「コーク・インダストリーズは、2010年のポンぺオ議員の選挙の時に投入した金額以上の資金を1人の候補者に提供したことはない。コーク・インダストリーズは総額で8万ドルをポンぺオに提供した。2012年の選挙ではポンぺオの選挙に11万ドルを提供した」。

 

2014年にポンぺオは再選を目指した。この時、ポンぺオはこちらもコーク家とつながりを持つライヴァルの共和党員と厳しい予備選挙を戦った。この時の選挙戦で流れを決定づけたのは、コーク家がポンぺオを支援するという姿勢を見せた時だ。 コーク・インダストリーズの政府・公共問題担当副会長のマーク・ニコラスは、『ポリティコ』誌の当時の取材に対して次のように答えた。「コーク政治活動委員会はマイク・ポンぺオを連邦議会に送ることを支援することに誇りを持っている。ポンぺオは市場を基礎とした政策と経済的自由を支持している。これらは社会全体に利益をもたらすものだ」。

 

コーク家はポンぺオを忠実に支援しているし、ポンぺオはコーク家に対して忠実だ。ポンぺオはコーク家が開催する非公開の集まりに定期的に出席している。また、コーク兄弟を擁護する発言をしている。ポンぺオは、「オバマ大統領と“ニクソン的な”民主党員たちは、チャールズ・コークとデイヴィッド・コークに対して不当な中傷を行っている」と発言した。

 

しかし、もちろん、巷間言われている悪口には、大富豪であるコーク兄弟が持つ影響力やコーク兄弟のアメリカの政治と統治に対する適切な疑問も含まれている。これは根拠のない疑念ではない。ポンぺオはアメリカ国内で最もコーク兄弟の支援を受けている政治家だと考えられている。ポンぺオは連邦下院議員になってわずか数週間後に、「コーク兄弟のビジネスの利益になるため」の法案を提出したと批判された。

 

『ワシントン・ポスト』紙は2011年に「その手段として、連邦下院で審議される連邦政府予算案におけるオバマ政権で始められた主要な2つのプログラムへの予算を大幅な削減が挙げられる。その2つのプログラムとは、安全ではない製品に対する消費者からの訴えを記録するデータベースと環境保護局による温室効果ガスを排出する企業や団体などの登録である」と報じている。この2つはコーク・インダストリーズにとって法律上重要なことである。公開された情報によると、コーク・インダストリーズはこれらに関して2008年から総計で3700万ドルの資金をロビー活動に投じている」。

 

「コモン・コウズ」のメリー・ボイルは「昔から変わらない。連邦議員が自身にとっての最大の資金提供者のために働くということは全く変わっていない」と非難している。

 

しかしながら、今回は全く別の内容の話になっている。ドナルド・トランプは「コークから送り込まれた連邦下院議員」を国務省の最高責任者に据えたいと考えている。更に考えると、アメリカ政府の世界との関わり方はコーク兄弟の利益となるようになるであろう。

 

======

 

コーク兄弟のコントロールは像だし、16の連邦政府機関に拡大(Koch Brothers Growing Control Extends to 16 Federal Departments

―私たちの目に触れない裏側で、コークの力は増大している

 

2017年7月5日

『チェック・アンド・バランス』誌

https://checksandbalancesproject.org/koch-strength-increases/

 

アメリカはトランプ・サーカスによって立ち往生している。しかし、あまり知られていないが、コーク兄弟はより力を強めている。コーク兄弟は長年にわたり共和党内の経済哲学を軌道修正しようと努力してきた。そして、極端な、反政府的なリバータリアニズム哲学を信奉する組織を集めてきた。リバータリアニズム哲学はコーク兄弟に役立っている。

 

現在、コーク兄弟は16の政府機関の長官職を通じて政権をコントロールしている。長官職に就いている人々はコーク兄弟と長年にわたり緊密な関係を保ち、資金的な支援を受けてきた。

 

●コーク・インダストリーズのビジネスを守ることと成長

 

これまでの1年半、「チェックス・アンド・バランシズ・プロジェクト」はコーク・インダストリーズと私たちがコーク・アドヴォカシー・ネットワークと呼ぶネットワークについて詳しく調査を行ってきた。それで分かったことは、コーク・インダストリーズは、自分たちのビジネスを守り、成長させるために行動しているということだ。コーク兄弟の草の根団体ネットワークはコーク・インダストリーズを擁護し、成長させるために存在している。

 

コーク一族、その中でもチャールズとデイヴィッドはコーク・インダストリーズの株式の8割以上を保有し、1983年に反対派の株主たちから株式を買い取り、議決権株式の88%を取得した。コーク兄弟は複数の巨大な石油精製施設とパイプラインを所有しているが、コーク・インダストリーズは化石燃料を民生用の商品に加工して利益を得ている。

 

コーク・インダストリーズはアメリカの非上場企業では第2位の規模を誇る。60か国でビジネスを展開し、従業員数は12万以上である。2015年の年間の総売上は1150億ドル(約11兆5000億円)に達した。「ブルームバーグ・ビリオネア・インデックス」によると、チャールズ・コークとデイヴィッド・コークの兄弟は2人合わせると世界で最も富裕な人たちということになる。彼らの資産は960億ドル(約10兆5000億円)である。

 

コーク兄弟は長年にわたり、アメリカ政界を支配するために努力してきた。しかし、マイク・ペンスがドナルド・トランプの副大統領候補に選ばれてから、コーク兄弟にとっての新たな機会が開かれるようになった。

 

●副大統領による保証

 

ペンスは、政権以降ティームの責任者となってトランプ政権の主要なポジションに人々を推薦した。そして、現在は副大統領となっている。そのためにコーク兄弟の力は強まっている。

 

本誌はトランプ政権の16の省と連邦機関の長官についての情報を集めた。この人々はコーク兄弟と関係を持っている。その中の数名をご紹介しよう。

 

中央情報局(CIA)長官マイク・ポンぺオ。2010年の中間選挙の連邦議会選挙で躍進を見せた時、コーク・インダストリーズから最も支援を受けた人物が新人連邦下院議員として当選したマイク・ポンぺオだ。選挙後、ポンぺオは「コーク兄弟の連邦下院議員」「こーうから送り込まれた連邦下院議員」と呼ばれた。ポンぺオは連邦下院議員時代に連邦下院情報委員会の委員を務めた。そして、連邦下院情報委員会と連邦上院情報委員会の20名以上の委員を差し置いて、CIA長官に抜擢された。

 

保健福祉長官トム・プライス。連邦下院議員(ジョージア州第六選挙区、6期)時代、コーク兄弟の主要な政治団体「アメリカンズ・フォ・プロスペリティ」の立場を反映した法案への支持率は、2007年から2008年にかけては95%、2009年から2010年にかけては100%、2011年から2012年にかけては91%、2013年から2014年にかけては77%、2015年は100%であった。2016年のアメリカンズ・フォ・プロスペリティジョージア州支部の評価では、この数字は100%であった。

 

ネオミ・レオ情報規制局長官。レオはトランプ政権の規制に関しての最高責任者だ。約50名の部下を指揮して、コーク兄弟のお気に入りミック・マルヴァニーアメリカ合衆国行政管理予算局長官に報告をしている。ラオは連邦機関一つ一つが持つ規制に関する緩和計画を準備することになるだろう。レオは2015年9月にジョージメイソン大学行政学研究センターが創設され責任者になるまで、11年間ジョージメイソン大学ロースクール教授を務めた。ジョージメイソン大学ロースクールはアントニン・スカリア記念ロースクールと名付けられた。ジョージメイソン大学ロースクールは、コーク兄弟の慈善事業の最大の受益者となっている。2005年以降総額で4600万ドルがロースクールに提供された。

 

私たちの民主政治体制は世界で最も富裕な2人の兄弟に乗っ取られている。彼ら2人が持つ総資産の価値はビル・ゲイツを上回る。これまで彼ら2人のように私たちの政治システムと政府をコントロールした人物たちはほとんどいなかった。コーク兄弟の強さが増している中で、彼らの求める政策が既に実行されているのである。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)



kanemoukenoseishinwoyudayashisounimanabushinshoban001

金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ (祥伝社新書)

imanokyodaichuugokuwanihonjingatsukutta001

今の巨大中国は日本が作った


shinjitsunosaigoutakamori001
真実の西郷隆盛
 

semarikurudaibourakutosensoushigekikeizai001

迫りくる大暴落と戦争〝刺激〟経済
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ