古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:サイバー攻撃

   古村治彦です。

 ウクライナ戦争において、ウクライナ政府のサイバー担当の若い副首相ミハイロ・フェドロフ(Mykhailo Fedorov、1991年-、31歳)についてはこのブログでもご紹介した。ウクライナはサイバー軍を創設し、サイバー戦争でロシア(強力なサイバー軍を保有している)に強力に対抗しているということは日本でも報道で紹介されている。ロシア国内の金融機関はインフラ施設に対するサイバー攻撃を行っている。

 ウクライナのサイバー軍はインターネット上で攻撃目標を公表し、世界中の協力者たち、ヴォランティアたちに攻撃を行うように「仕向けている」。協力者たちは世界中からロシアにサイバー攻撃を仕掛けている。

この攻撃に対して、ウクライナ政府は謝意を示しながらも、公式には支持しないという奇妙な態度を取っている。下の論稿から引用する。
(引用貼り付けはじめ)

ウクライナ国家特殊通信・情報保護局のヴィクター・ゾーラ副局長は次のように述べている。「もちろん、ロシア軍とロシア政府のインフラに対する攻撃活動は全てウクライナにとって有益なものだ。私たちは公式にヴォランティアによるロシアに対するサイバー攻撃を支持することはできない。しかし、攻撃を行えるヴォランティアに感謝している」。

(引用貼り付け終わり)

 ヴォランティアたちがロシア国内の攻撃目標に攻撃を仕掛けることには感謝するが、公式に支持はできないということはどういうことか。これは、「ロシア国内へのサイバー攻撃はヴォランティアが勝手にやっているだけのことで、ウクライナ政府は支持していないし指示していない」ということだ。それは、世界中のヴォランティアたちがサイバー攻撃、ハッキングなどは犯罪行為になるということだ。ウクライナ戦争という状況下、ロシア国内へのサイバー攻撃は黙認されているかもしれないが、冷静に見れば、ウクライナ国民でもない人間がロシアへのサイバー攻撃やハッキングをすれば犯罪行為ということになる。義勇軍を気取って、安全だからということでハッキングをしているのだろうが、これは犯罪行為ということになるだろう。だから、ウクライナ政府は慫慂も支持もできないが、勝手にやってくれたことには感謝するということになる。

 ウクライナ戦争勃発直後、ウクライナへ世界中から義勇兵が向かっているという報道もあった。日本からも数十人が渡航を希望しているという報道があった。しかし、日本政府は「私戦の禁止」を理由にしてそのようなことを行わないようにと釘を刺した。サイバー攻撃に参加するヴォランティアたちも同様である。従って、ロシアに対する義憤にかられるのは理解できるが、慎重な対応を行う、赤十字などへ寄付を行うなど穏健な対応をすべきということになるだろう。
(貼り付けはじめ)
ウクライナのインターネット上のヴォランティアたちはロシア国内の複数の攻撃目標をつけ狙っている(Ukraine’s Online Volunteers Go After Russian Targets

-キエフはサイバー攻撃を支持していないと述べているが、サイバー攻撃を行っている人々に感謝している。

ジャスティン・リン筆

2022年5月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/03/ukraine-it-army-hackers-russia-war/?tpcc=recirc_latest062921

2022年4月20日、ウクライナIT軍の公式「テレグラム」チャンネルで、「今日は金融データ運営会社を攻撃する」と宣言された。そこには、ロシアとベラルーシの金融機関のウェブサイトのリストと、そのウェブサイトの構成に関する重要な情報が添付されていた。

それから24時間以内に、これらのウェブサイトの多くがオフラインになった。「テレグラム」チャンネルは「よくやってくれた」と報告した。そして、新たな攻撃目標のリストが添付されていた。数時間のうちに、それらもオフラインになった。

ウクライナの巨大なサイバー軍団は、ウクライナで急成長している技術部門の労働者と世界中から集まったヴォランティアの両方によって構成され、専門家たちが誰も予想もしなかった方法でロシアに対して逆転のための攻撃を仕掛けた。

ウクライナの副首相兼デジタル変換担当大臣ミハイロ・フェドロフは次のように述べた。「ロシアの本格的な侵略以前は、数多くのサイバー攻撃にさらされていたにもかかわらず、私たちが行ったのは明らかに防御的なものだった。それが、ロシアの戦車が走り始めてから、劇的に変わった」。

2月下旬にロシアがウクライナへの侵攻を開始した時、多くのアナリストたちがロシアの軍事的勝利を予想したように、モスクワもその定評ある攻撃的サイバー能力でウクライナの技術基盤を破壊するだろうという予測が多くあった。

しかしそうはならなかった。

それどころか、ウクライナは自国の重要インフラに対する大量のサイバー攻撃を積極的に撃退し、ロシアに闘いを挑んでいる。

フェドロフは「私たちは実際に反撃を開始した」と述べた。

ウクライナ政府関係者はロシアに対するサイバー攻撃に感謝の意を表しているが、IT軍はキエフの指揮系統には属していない。

ウクライナ国家特殊通信・情報保護局のヴィクター・ゾーラ副局長は次のように述べている。「もちろん、ロシア軍とロシア政府のインフラに対する攻撃活動は全てウクライナにとって有益なものだ。私たちは公式にヴォランティアによるロシアに対するサイバー攻撃を支持することはできない。しかし、攻撃を行えるヴォランティアに感謝している」。

ロシアのハッカー組織は複雑で大規模である。そして、国家予算から多額の資金が出ている。「ノットペトヤ(NotPetya)」や「サンドウォーム(Sandworm)」といったサイバーウイルスの犯人とされるスパイ組織ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)に所属する国家レベルのハッカー、アメリカを標的とした「ファンシーベアー(Fancy Bear)」のようなハッカー集団、ロシア政府から暗黙の了解を得て活動する多くの犯罪ハッカー集団などが存在する。ウクライナの状況はロシアとは全く対照的なものだ。

しかしながら、ウクライナのヴォランティア・ハッカー軍団は、かなり規律正しく活動している。ハッカーたちは、ランダムな攻撃目標ではなく、意図的かつ慎重に選ばれた目標を攻撃していると主張している。IT軍団の「Q&A」には、「もし全員がランダム(無差別)の標的を攻撃し始めたら、攻撃力を失ってしまうことになる」と書かれている。

ここ数週間で、ハッカーたちが公共の利益になると信じてハッキングした情報を流出させる分散型秘密分散ポータル(ウェブサイト)は、ロシアの金融機関、不動産管理会社、旅行会社、鉄道会社、さらにはロシア政府自身から2テラバイト以上のハッキング資料をアップロードしている。ハッカーたちは、国営ガスプロム、ロシア中央銀行、教育省、さらにはロシア正教会から膨大な量の電子メールをハッキングした。

ウクライナのIT軍団のウェブサイトには、攻撃対象が記録されている。ある攻撃の際に標的となった64個のウェブサイトとサーヴァのうち、約43個が「死亡(オフラインになった)」となり、更に11個が「健康ではない」と評価されました。

ウクライナ戦争以前、ウクライナには強力なハイテク部門があり、年間40~50パーセントの成長率を記録し、比較的安価な労働力と高学歴の人々、そして技術科目を重視する学校のおかげでうまく機能していた。しかし、多くの技術者たちが国外に流出し、リモートで仕事をする者もいれば、職を失い、ロシアとの戦いに身を投じている者もいる。

しかし、全てのハッカーがウクライナ人ではない。ハッカー集団「アノニマス」はウクライナ政府への支援を表明し、ロシア国内の生活を混乱させるために世界的な活動を展開している。特に、ロシア国営テレビの膨大なプロパガンダを中断して、戦争の実像を映し出すなどの活動を行っている。

ウクライナ政府は、誰がロシアに対してサイバー攻撃しているにせよ、慎重に対応しなければならない。一つは、ロシアのデータを狙うことで、軍事目標と民間目標の境界線が曖昧にならないかという懸念がある。フェドロフは「ウクライナでは、国民一人ひとりの個人情報を非常に重視している」は述べている。ウクライナのデジタルサービス構築の責任者であるフェドロフは、ウクライナ政府が厳密に必要なデータのみを収集することを主張している。フェドロフは「ロシアでは、基本的に状況が逆だと思います。ロシアでは、国民のデータは国家が所有すると考えている。そして、国家は脆弱である。これが真実だ」とも述べている。

フェドロフは続けて「そのデータを流出させることで、より的を絞った介入、つまり詐欺やソーシャルエンジニアリングを使った操作や攻撃の可能性を可能にすることができる」と述べた。

調査団体「べリングキャット(Bellingcat)」は、ロシアの人気フードデリバリーサービスのハッキングにより、国家安全保障サーヴィスの従業員の身元が明らかになったことを報告した。このようなデータは、より専門的な国家のサイバーアクターが、特定のセキュリティや軍事関係者をターゲットにする際に有利に働く可能性がある。

2022年3月、ウクライナ側のハッカーはロシアの通信・メディア担当省庁であるロシア連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁(Roskomnadzor)から大量のデータを流出させた。また3月には、『フォーブス』誌は、ロシア連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁が分散型サーヴィス妨害攻撃(ウェブサイトをアクセス不能にする大規模攻撃)に対する防御のための国家プログラムを構築するために、現在懸命に取り組んでいると報じた。

フェドロフは「これはロシアの情報システムに対する前例のない攻撃となった。ウクライナ政府によるIT軍の組織と専門性が高まっている。そして、今後しばらくは有効だと思う」と述べた。

ロシアの通信社インタファクス通信によると、ロシア政府は外国からのサイバー攻撃から防御しようとして、外国のインターネットトラフィックを制限しているということだ。しかし、今のところあまり効果は上がっていない。

フェドロフは次のように述べている。「IT軍の有効性はロシア人自身が言っていることから判断できる。そして、彼らが言っていることは、データ漏洩や重要な情報システムのダウンタイムが発生しているということだ」。

また、あまり対立的でない戦術もある。IT軍団は、「トリップアドバイザー(TripAdvisor)」をはじめとするクラウドソーシングの口コミサイトに、戦争に関する情報を発信するヴォランティアも派遣している。ヴォランティアたちは「残念なことに、プーティンはウクライナとの戦争を卑劣にも開始し、私たちの食欲を台無しにした」と言った書き込みをしている。ハッカーアクティヴィスト(hacktivists、ハクティビスト)たちは、ユーザーが無作為にロシアの携帯電話に親ウクライナのメッセージを送ることができるサイトも立ち上げている。

こうした行動は、西側諸国では広報分野における大きな一撃となるかもしれないが、ロシアではその影響ははるかに小さいだろう。世論調査のデータによると、ロシアのプーティン大統領と彼の戦争に対する支持は戦争が始まって以来、実際に上昇していることが明らかだ。

大西洋評議会が発行している『ウクライナ・アラート』誌の編集者ピーター・ディキンソンは次のように述べている。「ロシア人はプロパガンダの裏を読むことが得意であり、その気になれば簡単に別の情報源にアクセスできる。何千万人ものロシア人が、クレムリンのテレビが宣伝するオーウェル的な嘘を容易に受け入れ、この国の戦争応援団が表明する感情を共有しているというのが恐ろしい真実である」。

ロシアは国家、非国家、その中間に位置する様々なサイバーアクターを利用しているかもしれない。しかし、ウクライナはロシアに対して公式に攻撃的なサイバー活動を開始する予定はないようだ。

ウクライナ国家特殊通信・情報保護局のヴィクター・ゾーラ副局長は「ウクライナに対するサイバー攻撃を組織する彼らの能力を制限するために、私たちは防衛だけを行っている」と述べている。もしウクライナ政府がロシアのインフラへの攻撃を開始したいのであれば、ウクライナ国内の法的枠組みを採用する必要がある。

ゾーラは続けて次のように述べている。「NATOは、今サイバースペースで何が起きているのかを非常に注意深く見守っている。そしておそらく、攻撃的な作戦がどのように提供され、何が限界なのかを理解する上で何らかの変化が生じるだろう」。

現在まで、NATOはサイバーパワーの展開に慎重だった。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、大規模で高度なサイバー攻撃は同盟創設条約第5条を発動させ、集団的対応につながる可能性があると述べているが、その限界がどのようなものか、集団的対応とはどのようなものなのかは不明確だ。このように明確でないため、NATO加盟国はロシアに対するサイバー作戦を避けてきたし、少なくとも公式には認めず黙認してきた。

サイバーセキュリティの専門家であるエリカ・ロナーガンとサラ・モラーは、『ポリティコ』誌に発表した最近の論稿の中で、「大規模攻撃に至らないサイバー攻撃は、同盟諸国の問題ではなく、国家の問題として扱う」ように提唱している。そうすることで、5条を発動すべきタイミングが明確になり、各国がサイバー攻撃に対して「国家に合わせた対応」を取ることができるようになると彼らは主張している。

一方、ゾーラは、ウクライナ政府の要求はかなり単純なものだと主張している。彼は「まず武器。第二に制裁だ」と述べた。サイバーセキュリティに関しては、西側諸国はロシアとのデジタル関係を遮断し続ける必要があるとも述べた。彼はそれを「技術的ロックダウン(technological lockdown)」と呼んでいる。

ウクライナのロシアに対するサイバー攻撃の有効性は、モスクワがウクライナ国内のITインフラに対する砲撃を強化する動機となり得る。これまでウクライナは、IT産業の大富豪イーロン・マスクやアメリカ、ヨーロッパが提供するスターリンク端末のおかげで、ウクライナ国内の大部分をオンラインに保つことに成功してきた。これらの端末のいくつかは、既に砲撃の被害を受けている。ここ数日、ロシア軍はケルソン地方でのインターネット接続を遮断することに成功した。

ウクライナ政府は声明の中で、「今回の爆撃は、ロシアがウクライナに対して行っている戦争の進展に関する真の情報にウクライナ国民がアクセスできないようにし、ロシアで行われているのと同じように、彼らの偽情報によるプロパガンダを唯一の情報源にしようとするもう一つの敵(ロシア)による試みである」と述べた。

※ジャスティン・リン:トロントを拠点とするジャーナリスト。
(貼り付け終わり)
(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 少し古い記事でしかも我田引水のような内容になっていることをまずお断りしておく。今回のウクライナ戦争は物理的にも大量の武器が使われ、多くの生命が失われそして傷つき、建物や財産が失われている。この状況は止まる兆候は見いだせていない。これに加えて、サイバー空間での戦争も激化している。こちらもハッキングなどによって相手のインフラを機能できなくしたり、情報を盗み出したりと行ったことが行われている。ウクライナ政府は世界各国の人々に「サイバー義勇兵となってロシア攻撃に参加して欲しい」と呼びかけ、日本を含む数十万人単位でこうした行為に参加しているようだ。ハッキング行為は違法行為となっている国も多いが、「対ロシア」のハッキングであれば思い切りやって下さい、ということになるのだろう。ロシアに制裁を科してロシアの海外資産を没収するということも含めて、ロシアに対してであればどんなに違法なことでもやって良い、というとても21世紀とは思えない状況が続いている。

 さて、アメリカ政府は各大企業に対して、サイバーに関しての「愛国的な」行動を取ることを求めている。ロシアからのサイバー攻撃から自分たちを守るようにと求めている。しかし、こうした行動はこれまでもやって来たことであろうし、何もロシアからだけサイバー攻撃を受けている訳ではない。しかし、下の記事にあるバイデンの発言は「サイバー空間でも既に相当な闘争が繰り広げられている」ということを示している。アメリカ政府も既にロシアに対して相当な攻撃を仕掛けており、それに対する報復に備えよということも示唆しているのだと考えらえる。私は昨年『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)という本を出した。宣伝がしつこくて申し訳ないが是非多くの方々に読んでいただきたい。

 サイバー空間での対ロシア攻撃の尖兵となるのはビッグテック各社である。SNSを運営している各ビッグテックは、情報戦のところで「愛国的な」行動を取っている。フェイスブック上ではこれまでネオナチや過激なテロ組織に対する制限を加えていたのに、「アゾフ大隊だけは別」として、人種差別やネオナチ的な文脈でない場合には称賛しても差し支えない、ということになっている。アゾフ大隊の根本思想やこれまでやって来たことを無視して(臭いものにふたをして)、「素晴らしい愛国的な勢力」ということにしてしまっている。フェイブック公認の「愛国的ネオナチ」ということになった。

 ビッグテック各社の情報に関する独占力の凄まじさは拙訳『ビッグテック5社を解体せよ』(ジョシュ・ホウリー著、徳間書店)でも明らかにされている。私が最近話したある編集者の言葉が印象的だった。それは「古村さん、SNS上にないものはいないのと一緒なんですよ」というものだ。つまり、ビッグテック各社がSNS上で制限したり隠したりして人々の目に触れにくい、もしくは触れない情報は現実世界でも存在しないのと同じということになる、ということだ。それほどの力をビッグテックは持っている。私たちはますます困難な時代をいきることになりそうだ。

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ホワイトハウスがロシアはアメリカに対するサイバー攻撃の準備中の可能性があると警告(White House warns Russia prepping possible cyberattacks against US

モーガン・チャルファント筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/599072-white-house-warns-russia-prepping-possible-cyberattacks-on-us

ホワイトハウスは月曜日、ロシア政府がアメリカ国内の重要インフラを標的とした「潜在的なサイバー攻撃の選択肢」を模索していることを示唆する情報が集まっているとして、民間企業にサイバー防御を強化するよう促した。

ホワイトハウスの国家安全保障問題担当大統領副補佐官(サイバー、新技術担当)アン・ニューバーガー(サイバーおよび新技術担当)は、月曜日の午後のブリーフィングで記者団に対し、「明確に述べておきたいが、重要インフラに対するサイバー事件が確実に起きるかどうかは分からない」と述べた。

「それでは、なぜ私はここにいるのか? これは、私たち全員に対する行動の要請であり、責任の要請があるからだ」と続けて述べた。

バイデン政権はここ数週間、ロシアがアメリカ国内外のインフラをサイバー攻撃で狙う可能性があると警告しているが、当局者はこれまで、アメリカに対する具体的で信頼できる脅威はないと述べていた。

ニューバーガーは月曜日、当局がロシア側によるいくつかの「準備活動」を発見しており、政権は先週、影響を受ける可能性のある企業や部門に機密扱いで説明を行ったと述べた。

ニューバーガーは「私たちが特定のインフラに対するサイバー攻撃を予期しているがそれについての確たる証拠はない。私たちが見ているのはいくつかの準備活動で、それは私たちが影響を受けるかもしれないと考えた企業と機密の文脈で情報を共有した」と語った。

ニューバーガーは、準備活動にはウェブサイトのスキャンや脆弱性の探索が含まれる可能性があると述べたが、具体的な内容は明らかにしなかった。 

その後、ニューバーガーは、アメリカ政府はロシア側の「潜在的な意図の変化」を察知したと述べた。

ホワイトハウスはファクトシートを配布し、各企業に対し、多要素認証の使用義務化、システムのパッチ適用、対応策を準備するための緊急訓練の実施、脅威を探すためのセキュリティツールの導入、データのバックアップ、データの暗号化、その他の情報保護とサイバー脅威から守るためのセキュリティ強化を促している。

バイデン大統領は声明で、「私は以前、同盟国やパートナーとともにロシアに課した前例のない経済的コストへの対応としてなど、ロシアがアメリカに対して悪意のあるサイバー活動を行う可能性について警告した。これはロシアの戦術の一部である。本日、ロシア政府がサイバー攻撃の可能性を探っているという新たな情報に基づいて、私の政権はこれらの警告を再度表明する」と述べた。

バイデンはその後、月曜日の夜にワシントンで開催されたビジネスラウンドテーブルの会議で出席したCEOたちに対してこの警告を再度提示した。

バイデンは「ロシアのサイバー能力の大きさはかなり重大であり、攻撃が私たちに近づいて

バイデン政権は先月、ウクライナの国防省と銀行を標的としたサイバー攻撃をロシアに起因するものとしている。これらの攻撃は、224日にロシアがウクライナに侵攻を開始する前に発生した。

ロシア政府が支援しているアクターたちによるサイバー攻撃は以前にもあり、おそらく最も顕著なのは2016年の大統領選挙への干渉作戦とソーラーウィンズ社に対する大規模なハッキングに関連したものだ。

ロシアのサイバー犯罪者たちは、コロニアル・パイプラインへの攻撃にも関与した。 

バイデン政権は過去1年間、大部分が民間企業によって所有・運営されている重要インフラのサイバーセキュリティを向上させる試みに取り組んできた。

ニューバーガーは、具体的にどの重要インフラ部門が標的にされる可能性があるのか、月曜日には言及しなかった。重要インフラには、水道、エネルギー、医療、金融サーヴィスなど、様々な分野が含まれる。

ニューバーガーはバイデン政権がロシアによるサイバー攻撃に対応すると明言した。

「大統領が述べたように、アメリカはロシアとの対決を求めていないが、ロシアが重要なインフラに対して破壊的なサイバー攻撃を行った場合、対応する用意があるとも明言している」とニューバーガーは述べた。 

バイデン大統領は声明の中で、「バイデン政権は重要インフラに対するサイバー攻撃を抑止し、攻撃を破壊し、必要であれば対応するためにあらゆる手段を使い続ける」と述べた。

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バイデンが各大企業のCEOにロシアのサイバー攻撃から守る「愛国的義務」を訴える(Biden tells CEOs they have 'patriotic obligation' to guard against Russian cyberattacks

アレックス・ガンギターノ筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/599118-biden-asks-top-ceos-to-invest-in-combating-potential-cyberattacks

ジョー・バイデン大統領は月曜日、ウクライナ侵攻のさなか、ロシアのウラジミール・プーチン大統領からのサイバー攻撃(cyberattacks)の可能性に対処するため、企業の能力を高めるよう、企業トップに対して呼びかけた。

バイデンは月曜日の夜、ビジネスラウンドテーブルの四半期会議の席上、次のように発言した。「サイバーセキュリティの潜在的な使用で危機に直面しているのは皆さん方の利益だけではない。国益の危機に直面している。私は、皆さん方がサイバー攻撃に対処するための技術的能力を構築したことを確認するためにできる限り投資することが、愛国的義務であると真剣に提案する。そして私たちはいかなる方法でも支援する」。

バイデンはこのような攻撃に対抗するための技術に投資することは、企業を保護し、重要なサーヴィスを提供し続け、アメリカ人のプライバシーを保護することにつながると述べた。

バイデンは、サイバー攻撃はプーティンが「最も使いそうな手段」の1つであると述べた。ホワイトハウスは月曜日、ロシア政府がサイバー攻撃の可能性を探っていることを示唆する情報が集まっているとして、民間企業にサイバー防御を強化するよう促した。

バイデンはビジネスラウンドテーブルでの発言で、「プーティンはサイバー攻撃能力を保持しており、まだ使用してはいないが、プーティンのプレイブックの一部だ」と述べた。

バイデン大統領は、例えば、銀行が全ての顧客に対して追加のサイバーセキュリティ対策をデフォルトで実施にすることで支援できることを示唆した。

バイデンは「どのようなステップを踏むか、その責任は皆さん方にあり、私たちの責任ではない」と述べた。

大統領の四半期総会への出席は金曜日に発表された。ビジネスラウンドテーブルのCEOであり、ジョージ・W・ブッシュ大統領の前チーフスタッフであるジョシュ・ボルテンがバイデン大統領を紹介し、ビジネスラウンドテーブルの議長であり、ゼネラルモーターズのCEOであるメアリー・バーラがCEOと大統領との非公開質疑応答セッションの進行役を務めた。

バイデンはまた、プーティンがヨーロッパで生物兵器や化学兵器を使用することについて、出席したCEOたちに警告を発した。

また、バイデンは、プーティンがヨーロッパで生物兵器や化学兵器を使用することについて、CEOグループに警告を発した。「プーティンの背中が壁にぶつかっているほど、彼が用いる戦術の厳しさは大きくなる」と述べた。

また、バイデンはアメリカがウクライナの反撃を支援するために十分な軍備を提供していないという批判に反論した。

バイデンは次のように発言した。「洗練された装備が十分でないというのは単純に正確ではない。ここで詳細に説明する時間を取るつもりはないが、私たちの軍隊とNATOの軍隊に基づいた合理的な意味を持つ全てのあらゆる装備を彼らは持っているということだ」。

バイデンは続けて、ウクライナ軍はロシア軍に「大混乱を引き起こしている」とも述べた。

バイデン大統領は加えて、アメリカと同盟諸国がロシアに対する制裁を科すのを支援してくれた企業に対して感謝の意を表した。アメリカは最近、モスクワとの貿易関係の正常化を終了した。

バイデン大統領は次のように述べた。「私たちがロシア経済に制裁を科し、コスト、実質的な費用を負担するのを助けるために、皆さんは大変なことをして下さった。そして今、私たちは、皆さんがして下さったことが重要で、本当に大切なことだと理解している。皆さん全員がそうしなければならないとは言わないが、立ち上がってくれた人たちは、大きな影響を及ぼした」と述べた。

アップル、ヴィザ、マクドナルド、ディズニー、コカ・コーラなど、アメリカを拠点とする何百もの企業がロシアでの業務の一部または全部を停止している。

ビジネスラウンドテーブルは月曜日の会合への出席者リストを公表していないが、理事会にはアップルCEOのティム・クック、JPモルガン・チェイスCEOのジェイミー・ディモンド、シティCEOのジェーン・フレーザーなどが出席した。

バイデンは次のように述べた。「私たちが世界の舞台でリードしているのは皆さん方のおかげだ。アメリカ企業が立ち上がり、それぞれの役割を果たし、ウクライナへの寄付や、誰の要請もなく事業を縮小するという点で、皆さんがやっていることを嬉しく思う。このことを明確にしておきたい。ロシアでの事業を自ら縮小している。全てではないが、多くの企業が、皆さん方だけでなく世界中の企業を縮小している」。

月曜日午前、バイデン大統領と政権幹部たちは、石油、クリーンエネルギー、銀行といった様々な産業分野の16の大企業の経営陣と面会し、ロシアに関する情勢について意見交換を行った。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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古村治彦です。

昨日付の産経新聞に興味深い記事が掲載されていたのでご紹介する。最後の段は意味が分かりづらいが、内容は「(中露が)大規模なサイバー攻撃を仕掛けてくれば戦争になるだろうとバイデンが発言した」というものだ。拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)の内容に沿った動きだ。

バイデンが国家情報長官室(ODNI)において職員たち向けに演説したという点も重要だ。国家情報長官(Director of National Intelligence)はスパイマスター、スパイの元締めであり、CIAもその指揮を受けねばならない。現在の長官はアヴリル・ヘインズである。アヴリル・ヘインズについては本ブログ、また拙著で詳しく紹介しているので是非読んでいただきたい。
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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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バイデン氏、次の戦争「サイバー攻撃が引き金に」

7/28() 14:33配信

産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/a71a565e0c5298c4c9afe37babac0f456a27dbc9

【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米大統領は27日、米情報機関を統括する国家情報長官室(ODNI)で職員向けに演説し、「大国間による撃ち合いの戦争が起きるとすれば、(米国への)大規模サイバー攻撃によって引き起こされる可能性がある」と述べ、ロシアと中国によるサイバー攻撃の脅威への警戒を呼びかけた。

バイデン氏は、甚大な結果を呼ぶサイバー攻撃が実施される恐れは「飛躍的に高まっている」と指摘。また、ODNIが27日、バイデン氏向けに作成した機密文書「大統領日報」(PDB)で、ロシアが来年の米中間選挙に向けて早くも偽情報工作を展開していると指摘していたことを明かし、「米国の主権の明白な侵害だ」と強調した。

バイデン氏はさらに、中露などによる偽情報工作は、人々が決断を下す際に必要となる正確な情報へのアクセスをますます困難にしており、「対抗していく必要がある」と訴えた。

バイデン氏は6月にジュネーブでロシアのプーチン大統領と会談した際、ロシア政府を後ろ盾に活動するハッカー集団による攻撃を認めないとする米国内の重要インフラのリストを示し、自国内で暗躍するハッカー集団の締め付けに向けた対応を求めた。

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