古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:サウジアラビア

 古村治彦です。

 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アメリカから構成されるブリックス(BRICS)という国際グループは、2001年にその概念が提出されたものだ。その後、21世紀を通じて、具体的な国際グループとして存在感を増してきた。先日、ブリックスの首脳会談が南アフリカで開催され、新たに6カ国がブリックスに参加することが認められた。その6カ国とは、イラン、サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、アルゼンチンである。地図で見ていただくと分かるが、ペルシア湾と紅海(スエズ運河)、アラビア海、南大西洋、喜望峰、マゼラン海峡をがっちり抑えている。このブログでは、中国がアフリカ西部各国の港湾に投資を行っていることを既にご紹介した。中国の資源確保のための航路づくり、中国の大航海時代の始まりということになる。
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 今回参加を認められた6カ国以外にも加盟申請を行っている国々もあるようだ。これらの国々はブリックスだけにとどまらず、上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)、一帯一路計画(One Belt, One Road Initiative)にも参加している。様々な国際機関、国際機構に重層的に参加することで、非西側・非欧米諸国の関係が深まり、強固になっていく。今回。ブリックス通貨(BRICS currency)の導入は行われなかったが、脱ドル化(dedollarization)の流れは変わらない。非欧米諸国は金を購入しており、新たに金本位制を導入するかもしれない。アメリカという国家の「信用(脅し)」で持っているドルの価値が揺らいでいくことになるだろう。
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 中国が今年に入ってイランとサウジアラビアの国交正常化を仲介したというニューズがあった。今回のブリックス拡大に向けた動きであることが明らかになった。ヨーロッパと北米を南半球から、グローバル・サウス(Global South)が圧迫していくという構図が出来上がりつつある。

(貼り付けはじめ)

イラン、サウジアラビア、エジプトが新興国グループに参加(Iran, Saudi Arabia and Egypt Join Emerging Nations Group

-アルゼンチン、エチオピア、アラブ首長国連邦もブリックス(BRICS)に招待され、欧米主導のフォーラムに代わるグループとしての役割が強化された。

スティーヴン・エルランガー、デイヴィッド・ピアーソン、リンゼイ・チャテル筆

2023年8月24日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2023/08/24/world/europe/brics-expansion-xi-lula.html

今回の拡大は、グループの主要メンバー2カ国にとって重要な勝利と見なされている。中国の政治的影響力が増大し、ロシアの孤立を軽減するのに役立っている。しかし、ロシアと中国は、両国が利益を促進していると主張している、国々の経済を損なう可能性のある経済的な逆風に直面している。

中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカに加え、サウジアラビアを筆頭とする中東の3カ国と、ロシアのウクライナ侵攻を強固に支持する反米色の強いイランが参加した。

開催国である南アフリカは、テヘランと長年にわたって関係があり、イランの加盟を支持したが、インドやブラジルのような、いわゆる「グローバル・サウス(Global South)」のリーダーであり、ワシントンと北京の間で行動の自由を守りたい国にとっては、厄介な結果となった。

今回の決定は、現在のグローバルな金融・統治システムを、よりオープンで多様性に富み、制限の少ない、そしてアメリカの政治やドルの力に左右されにくいものに作り変えたいという願望を除いては、多種多様な(heterogenous)、明確な政治的一貫性をもたないこのグループの奇妙な性質を浮き彫りにした。

11カ国を合わせた人口は約37億人だが、5つの民主政体国家(democracies)、3つの権威主義国家(authoritarian states)、2つの独裁的君主制国家(autocratic monarchies)、1つの神政国家(theocracy)で構成されており、なかでもサウジアラビアとイランは数ヶ月前まで宿敵(sworn enemies)だった。

グループを支配し拡大を急ぐ中国を除けば、彼らの経済的影響力は比較的小さい。サウジアラビアとアラブ首長国連邦の参加は、特にブリックス・グループが独自の小規模な開発銀行(development bank)の規模と影響力を拡大しようとしているため、財政的により大きな重みをもたらすことになる。

エジプト、エチオピア、イランが加わったことで、北京はロシアとの「無制限のパートナーシップ(no-limits partnership)」や主権国家ウクライナへの侵攻を黙認したことで、先進諸国の多くの国々を遠ざけてきたにもかかわらず、そのアジェンダへの支持が高まっていることを示そうとしている。

「チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト」のコブス・ファン・スタデン研究員は、「イランは明らかに複雑な選択だ。他の加盟国の中には、欧米諸国との地政学的な緊張を高めるのではないかと懸念している国もあるだろうと想像できる」と述べている。

中国の習近平国家主席は木曜日、「今回の加盟国拡大は歴史的なものだ」と宣言し、「ブリックス諸国が、より広い発展途上国のために団結と協力を目指す決意を示した」と付け加えた。

それでも、中国にとって成功の様相を呈したことは、首脳会談から得られる最も重要な収穫となるかもしれない。さもなければ、米ドルの覇権(hegemony of the U.S. dollar)に匹敵するブリックス通貨(BRICS currency)を確立するという長年の目標を達成できなかったからだ。ブリックス・グループは代わりに、貿易に現地通貨を使用することをメンバーに奨励した。

ブリックス・ブロックの限界のもう1つの象徴は、ロシアのウラジーミル・V・プーティン大統領の欠席だった。プーティン大統領は、西側主導の国際機関である国際刑事裁判所(International Criminal Court)の発行した令状に基づき、ウクライナでの戦争犯罪で指名手配されているため出席できなかった。南アフリカは国際刑事裁判所の決定を無視したくないと考えた。

加えて、今週は、ロシアの傭兵部隊(mercurial mercenary)のリーダーであるエフゲニー・V・プリゴジンが、アメリカや他の西側当局の発表によれば、プライヴェートジェット機内で爆発に巻き込まれ、墜落死したことが明らかになり、クレムリンのイメージは更に悪化した。

今週のサミットで導入された変更が、各国が期待しているような影響を与えるかどうかはまだ分からない。2001年にBRICsという言葉を作った元ゴールドマン・サックスのエコノミストであるジム・オニールは、歴史的な記録は安心できるものではないと言う。

オニールは、BRICs首脳会議は「象徴的なものでしかない」と語り、「BRICs首脳会議が何かを成し遂げたとは私には思えない」と付け加えた。

そして、首脳会議からしばしば発せられる高尚な美辞麗句(lofty rhetoric)は、今後数年間にBRICsメンバーに重くのしかかるであろう重大な問題を隠蔽している。

アジア・ソサエティ政策研究所の中国専門家フィリップ・ル・コレは、「不動産スキャンダル、原因不明の外交部長更迭、中国人民解放軍の将軍の突然の解任など、中国経済が低迷するなか、習近平は自国に誇示するための政治的勝利を必要としていた」と指摘する。

しかし、特に中国とロシアの経済については、挫折が積み重なっているようだ。

ピーターソン国際経済研究所のエコノミスト、ジェイコブ・ファンク・キルケゴールは次のように述べている。「中国が主要な経済的比重(main economic weight)と貿易上の優位性(trading advantages)を提供しているため、ブリックスは常に中国プラス4である。しかし、中国経済は深刻な危機に陥っている。中国経済の不振は中国への一次産品輸出に依存しているブラジルや南アフリカなどの国にとっても困難をもたらす」。

キルケゴールは「ロシア経済自体が制裁の重みで崩壊しつつあり、他のブリックス諸国はロシアを搾取し、安い石油を買いあさり、石油精製品をヨーロッパに送っている」と述べた。

厳重に管理された会議では、表向きは結束をアピールしていたものの、ブリックスのメンバーたちは、経済拡大に関して対立する見解を持ち寄っていた。中国は、ブリックスがアメリカのパワーに対抗するためのプラットフォームであると考え、急速な拡大を推し進めた。しかし、何人かの首脳は、冷戦時代を彷彿とさせるような分裂的な世界秩序への回帰を警告を発し、反発した。

ブリックス諸国は西側の覇権(Western hegemony)に対抗して結束を固めたとはいえ、その目標は依然としてバラバラだ。インドのタクシャシラ研究所中国アナリストであるマノジ・ケワラマーニは、「ブリックスは、様々な利害関係を持つ新たなアクターたちによって、未知の道を進んでいる。ブリックスは扱いにくくなり、あえて言えば、より非効率になるだろう」と述べている。

ブリックス関係者の中には、これに同意しない人たちもいた。

ブリックス交渉の南アフリカ代表であるアニル・スークラルは、西側が支配している各機関の構造は時代とともに変化する必要があると述べた。スークラルは「ブリックスが言っているのは、『もっと包括的になろう(Let’s be more inclusive)』ということだ。BRICSは反西洋ではない」と発言した。

対照的に、キルケゴールは、この組織が拡大しても、致命的に多様であり、「反西洋感情によって何とかまとめられた人為的な創造物」に過ぎないと見ている。

サウジアラビアと並ぶイランの加盟は、ロシアの侵攻軍への供給におけるテヘランの重要な役割と、リヤドのアメリカとの長期的な安全保障同盟を考えれば、おそらく最大の驚きとなった。

サウジアラビアはいまだに兵器のほとんどをアメリカから調達しており、複数のアナリストによれば、アメリカの安全保障の傘をすぐに放棄する意図はないという。しかし、サウジアラビア当局者たちは、ワシントンが本当に中東に関与しているのかについて懐疑的であり、今年初めに北京でテヘランとの和解を交渉し、中国の外交的地位を高めた。

テヘランは決してワシントンのファンではない。そして、北京とは意外にも親密になっている。北京は、国際的な制裁を無視して、大幅に値引きされた石油を購入することで、テヘランを浮揚させる手助けをしてきた。

木曜日、イランの政治担当副大統領であるモハマド・ジャムシディは、イランのブリックス加盟を「歴史的な偉業と戦略的勝利(historic achievement and a strategic victory)」と呼んだ。イランの加盟は、一種の世界的な門番としてワシントンがテヘランに対して持っていた影響力を弱めるものでもある、と「クインシー・インスティテュート・フォー・レスポンシブル・ステートクラフト」のトリタ・パルシは述べた。

デリーに本拠を置くオブザーヴァー・リサーチ財団の副理事長で、キングス・カレッジ・ロンドンのインド研究所で国際関係論を教えるハーシュ・V・パント教授は、インドは重大な懸念を抱きながらも、悪役を演じたくなかったため、この拡大に協力した、と語った。更に、ニューデリーは「このプラットフォームの性質が、地理経済的(geoeconomic)なものから地政学的(geopolitical)なものへと変化する」ことに警戒を怠らないだろうと付け加えた。

木曜日、米国務省はイランの参加については触れず、代わりにホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が週明けに述べた、バイデン政権が「ブリックスがアメリカや他の国々に対する地政学的ライバルのような存在に進化するとは考えていない」という発言を紹介した。

アナリストの中には、ブリックスへの加盟に関心を示した数十カ国は、西側諸国への警鐘(wake-up call)になるはずだと述べた。

アジア・ソサエティ政策研究所中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマスは、「多くの発展途上国がブリックスへの加盟に熱意を示しているのは、中国の価値中立的なグローバリゼーションの魅力だけでなく、西側諸国がより包括的な国際秩序の構築に失敗していることを反映している」と指摘している。

ワシントンのエドワード・ウォン、ロンドンのイザベル・クワイ、ベルリンのポール・ソンヌ、ニューデリーのスハシニ・ラジがこの記事の作成に貢献した。

※スティーヴン・エルランガー:『ニューヨーク・タイムズ』紙外交担当特派員チーフ、ベルリンを拠点としている。以前はブリュッセル、ロンドン、パリ、イェルサレム、ベルリン、プラハ、ベルグラード、ワシントン、モスクワ、バンコクで取材活動を行った。

※デイヴィッド・ピアーソン:中国外交政策と中国経済と文化の世界とのかかわりを取材している。

※リンゼイ・チャテル:本紙ヨハネスブルク支局を拠点に南アフリカを取材している。本紙インターナショナル・モーニング・ニューズレターでアフリカについて記事を書いている。チャテルは『フォーリン・ポリシー・クアーツ』誌とAP通信に勤務していた。

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ブリックス(Brics)、新たに6カ国を加盟させ2倍以上に拡大(Brics to more than double with admission of six new countries

-ロシアと中国を含む経済圏の大規模な拡大がアメリカと西側の同盟諸国への対抗軸を提供しようとしている。

ジュリアン・ボーガー筆(ワシントン発)

2023年8月24日

『ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/business/2023/aug/24/five-brics-nations-announce-admission-of-six-new-countries-to-bloc

新興経済大国で構成されるブリックス・グループ(Brics group)は、6カ国の新メンバーの加盟を発表した。今回の拡大は、グローバルな世界秩序を再構築し、アメリカとその同盟諸国に対抗しようとしてのことだ。

来年初め、イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアが、現在の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に加わることが、木曜日にヨハネスブルグで開催された首脳会談の席上で発表された。

中国の習近平国家主席は、この拡大について「歴史的」と表現した。習近平国家主席は、新メンバー加入の重要な推進者であり、ブリックスの拡大がグローバル・サウス(global south)が世界情勢でより強い発言力を持つための方法であると主張してきた。

しかし、この拡大が世界の舞台でブリックスの影響力をどの程度高めることになるのかは不明だ。アナリストたちは、影響力の拡大は、これらの国々がどこまで一致団結して行動できるかにかかっており、新メンバーの加入によって、強力な独裁国家と中所得国や発展途上の民主政治体制国家が混在する、よりバラバラのグループとなった。

「米州対話(Inter-American Dialogue)」でアジア・ラテンアメリカ・プログラムのディレクターを務めるマーガレット・マイヤーズは、「ブリックスの新メンバーが、このブロックに加盟することで何を得ることになるかはまったく明らかではない。少なくとも現時点では、この動きは何よりも象徴的なものであり、世界秩序の再調整に対するグローバル・サウスからの広範な支持を示すものだ」と述べた。

ウラジーミル・プーティンは、国際刑事裁判所(international criminal court)からウクライナでの戦争犯罪の逮捕状が出されている。プーティンは3日間のサミットに直接出席することはなかったが、ブリックスの拡大は、プーティンにとって象徴的な後押しとなる。現在、プーティン大統領は、アメリカが主導する、ロシア軍の撤退と先勝の終結を強いるための努力と企てに対して戦っている。

制裁を回避する方法を探していたイランを加盟させるという決定は、プーティンと習近平の勝利を意味し、グループに反欧米的、非民主的な色合いを与えることに貢献した。彼らは、グループを非同盟(non-aligned)として表現することを好む他のメンバーのより慎重なアプローチに勝った。

厳しい経済問題に直面しているアルゼンチンにとって、加盟は深刻化する危機から脱出するための生命線となりうる。アルベルト・フェルナンデス大統領は、アルゼンチンにとって今回の加盟はアルゼンチンにとっての「新しいシナリオ(new scenario)」となると述べた。

フェルナンデス大統領は「新市場への参加、既存市場の強化、投資の拡大、雇用の創出、輸入の増加の可能性が開ける」と語った。

エチオピアはグループ唯一の低所得国となった。アビイ・アーメド首相は、自国にとって「素晴らしい瞬間(great moment)」だと述べた。

10以上の国々が正式に加盟を申請しているが、加盟候補国が加盟するには、オリジナルの5カ国の間でコンセンサスを得る必要がある。

南アフリカ大統領のシリル・ラマフォサは、加盟諸国が「ブリックス拡大プロセスの指導原則、基準、手順」に合意したと述べた。しかし、これらの基準は説明されなかった。例えば、2億7400万人の人口を持ち、アジアで強力な力を持つインドネシアは、加盟を申請したが今回は認められなかった。

戦略国際問題研究センター(Centre for Strategic and International Studies)の米州プログラム責任者であるライアン・バーグは次のように述べている。「中国とロシアにとって、今回の拡大は勝利だ。中国にとっては、自分たちが望む北京中心の秩序を構築し続けることができる。来年、首脳会議を主催するロシアにとっては、孤立が深刻化している現在、これは大きなチャンスである」。

「ブラジルやインドの立場から見ると、たとえ美辞麗句を並べ立てたとしても、中国のような世界的な大国を含む組織の一員としての力を弱めてしまうため、その拡大にはあまり乗り気ではないだろう」とバーグは述べている。

既に中国と広範な二国間関係を結んでいる加盟諸国にとって、加盟による経済的利益がすぐに得られるとは思えない。ブリックス・グループの新開発銀行(New Development Bank)はまだ比較的小規模だ。しかし、マイヤーズは、この動きは象徴的なものではあるが、重要でないことを意味するものではないと述べた。

マイヤーズは次のように語っている。「これは重要なことであり、G7や他の北半球のグローバル・アクターたちが否定すべきではない。これらの新メンバー(特に主要産油国)が加わったことで、ブリックスの構成は、世界経済と世界人口に占める割合がはるかに大きくなった」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 サウジアラビアとイランはこれまで対立を深刻化させてきた。両国の対立が最高潮に達したのは、2016年のことだった。サウジアラビアがシーア派指導者を処刑して、それに対して、イラン国民がテヘランのサウジアラビア大使館を襲撃するという出来事が起きた。一連の出来事の後、両国は国交を断絶した。
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そうした状況下、サウジアラビアとイラン両国は2023年4月、7年ぶりに国交正常化を行うと発表した。両国を仲介したのは中国だ。両国は中東の地域大国として相争う関係だった。そもそもは戦後のアメリカが構築したペトロダラー体制(石油の取引はドルのみで行うという密約を基礎とした)を支える、親米の産油大国(王制)であったが、1979年のイランのイスラム革命で、イラン国内において王制が崩壊し、更にイランは反米へと転換した。サウジアラビアはイスラム革命の飛び火を懸念し、イランと激しく対立するようになった。サウジアラビアはアラブ人でイスラム教スンニ派、イランはペルシア人でイスラム教シーア派という違いもある。
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中国がサウジアラビア・イラン両国の激しい対立を収めたということは、中東にとっては地域情勢の安定に大きな貢献となる。他のアラブ諸国はサウジアラビアに追随することが多く、独自にイランと事を構える力はない。サウジアラビアの意向に従うということになれば、中東は一気に安定する。中東地域の地図を見れば分かる通り、サウジアラビアとイランはペルシア湾をはさんで対峙する位置関係になっている。ペルシア湾岸が安定することは、石油の安定供給にとって必要不可欠である。

 中国にとっては、対立する国々を仲介して国交正常化・関係改善に成功したということは、世界の舞台における中国の実力を示すことができたというのは大きい。これまでそうした役割は西側諸国、特にアメリカが世界覇権国として独占してきた感があるが、それが大きく変わることを象徴する出来事であった。中国にしてみれば、安定した石油輸入の確保が最優先だ。
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 対イランでまとまっていたアラブ諸国はイスラエルとの国交正常化や関係改善を模索していた。イランのパワーに対抗するために、イスラエルを味方にしたいという動きだった。しかし、これでは4度の中東戦争を戦ったアラブの大義は崩れることになる。パレスティナ難民の存在は無視されることになる。ベンジャミン・ネタニヤフ首相はパレスティナに対して「二国共存」とは異なる、強硬な姿勢を取っている。そうした中で、アラブ諸国がイスラエルと国交正常化・関係改善を行うことは裏切り行為ということになる。

 サウジアラビアがイランと国交正常化を決めたことで、中東地域における力関係が変化する。中東地域の二大親米国、アメリカの同盟国であるサウジアラビアとイスラエルの関係は悪化している。サウジアラビアはアラブ人、イスラム教の守護者を自認しているが、イスラエルのネタニヤフ政権によるパレスティナに対する強硬な姿勢は容認できない。また、サウジアラビアはバイデン政権とは仲が悪い。バイデン政権とイスラエルも又微妙な関係になっている。サウジアラビアが中国陣営にシフトする姿勢を鮮明にしていることを考えると、中東におけるアメリカの拠点が崩れてしまうことになる。もちろん、サウジアラビアが今すぐに完全にアメリカと切れるということはないし、サウジアラビア国内のアメリカ軍基地を撤去するということはないだろう。しかし、サウジアラビアが少しでも中国寄りの姿勢を見せることで、中東におけるアメリカの動きと影響力は制限を受けることになる。
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 サウジアラビアとイランの国交正常化によって、中東におけるアメリカの拠点は崩され、イスラエルは孤立する。そうした事態を防ぐために、アメリカはサウジアラビアとイスラエルの関係を改善したい。しかし、そうした動きはなかなかうまく行っていない。中国とイスラエルの関係については、中国がネタニヤフ首相の訪中を招請するなど、関係の深化に努めている印象だ。イスラエルが親米の同盟国を止めるということは考えにくいが、中国はイスラエルに対しても働きかけを行っている。中東における世界覇権国としての動きができているのがアメリカなのか、中国なのか分からない状況になっている。世界は動いている。

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サウジアラビア・イスラエル間の和平合意はそれを進める価値などない(A Saudi-Israeli Peace Deal Isn’t Worth It

-アメリカが最新の中東政策に大きな努力を傾けたことを公開することになるだろう理由

スティーヴン・M・ウォルト筆

2023年6月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/06/27/saudi-israel-biden-blinken-peace-normalization/

『ニューヨーク・タイムズ紙』は、ジョー・バイデン政権がイスラエルとサウジアラビアの関係を正常化させるための「希望の薄い戦い(long-shot bid)」に挑んでいると報じた。両国の関係正常化のためには、イスラエルがパレスティナの住民たちを虐待し続けているというサウジアラビアの懸念を払拭し、サウジアラビアの先進的な民生用核開発計画をイスラエルに受け入れさせる必要がある。バイデンとアントニー・ブリンケン米国務長官は手一杯の状況だ。ウクライナ戦争はそれほどうまくいっていないし、中国との建設的な関係を再構築するのは困難な課題となっている。バイデンとブリンケンはイランの核開発プログラムについて、非公式の交渉を何とか実現しようとしている。しかし、アメリカの外交政策立案担当者たちに傲慢さが、失礼、野心が欠けていると非難した者は存在しない。

一見したところ、サウジアラビアとイスラエルの関係正常化を推進することは、何の問題もないように思える。 アメリカの指導者たちは長い間、イスラエルの近隣諸国がイスラエルの存在を受け入れ、恒久的な和平に達することを望んできた。カーター政権が推進した1978年のキャンプ・デイヴィッド合意とそれに続くエジプト・イスラエル和平条約、そして1994年のイスラエル・ヨルダン和平の仲介などは、そのような衝動と冷戦期において中東におけるソヴィエト連邦の影響力を削ごうという関連した目的に駆られてのことだった。残念なことに、オスロ合意の枠組みの中で「2国家共存による解決(two-state solution)」を達成しようとしたその後の努力は、アメリカが公平な調停者(evenhanded mediator)ではなく、代わりに「イスラエル側の弁護士(Israel’s lawyer)」として行動したこともあって、惨憺たる失敗に終わった。それでも、アラブ・イスラエル間の長い敵対関係を考えれば、リヤドとテルアビブの正常化が平和を強化し、地域の経済発展を促進すると考えるのは簡単だ。なぜワシントンは、最も親密な、地域パートナーである2国間の折り合いをつけようとしないのだろうか?

実際、この突然のサウジアラビアとイラン間の関係改善の推進が、現在においてはほとんど意味を持たないのには、2つの大きな理由がある。

第一に、イスラエルとアラブ諸国の間で深刻な紛争が起こる危険性は、すでにほとんどなくなっている。イスラエルが、敵対的で人口の多い大規模なアラブ連合(ソ連によって武装・訓練されたメンバーもいる)に包囲されることを心配しなければならなかった時代は、とうの昔に終わっている。多勢に無勢で弱いはずのダヴィデ(デイヴィッド)であるイスラエルが、強力なはずのゴリアテ(ゴライアス)であるアラブ連合と戦った数次にわたる戦争でことごとく勝利したことを忘れてはならない。今日、イスラエルはこの地域で最も強力な軍隊を持ち、中東で唯一の核兵器保有国である。サウジアラビアはどんなことがあってもイスラエルを攻撃するつもりはないし、ヨルダン、イラク、エジプトも同様だ。シリアは厳密にはまだ交戦国だが、ボロボロのアサド政権もイスラエルには指一本触れることはないだろう。実際、これらの国のほとんどは、ガザのハマスやもちろんイランも含め、長い間、イスラエルと協力して敵対してきた。

誤解しないで欲しい。完全な国交正常化は、特にイスラエルにとっては素晴らしいことであり、バイデン政権はおそらく、米国イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)のような団体から賞賛を得るだろう。しかし、国交正常化は地域政治を一変させるものではなく、既に存在する状況を成文化し(codify)、より可視化する(more visible)ものにすぎない。公然の秘密(open secret)としては、サウジアラビア(および他の湾岸諸国)が、たとえ公の場でそれを認めようとしなかったとしても、ずっと以前にイスラエルを黙認していた(tacitly accepted)ということだ。つまり、仮にバイデンが進めている希望の薄い試みが成功したとしても、アメリカにとっての戦略的メリットは小さいということだ。

第二に、バイデンとブリンケンは、サウジアラビアとイスラエルの関係改善を推進することで、アメリカのポートフォリオの中で、最も感謝を示さない顧客の2名に対して、乏しい政治資金を浪費するという無駄な努力をしている。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相はアメリカ大統領を軽蔑の目で見てきた歴史があり、バイデンとの関係も冷え切っている。彼は現在、イスラエル史上最も強硬な政府(hard-line government)を率いており、ヨルダン川西岸地区の植民地化を正当化し、パレスティナ住民(米国市民を含む)に対するますます暴力的なキャンペーンを促進している。バイデン政権は、イスラエルが民主政治体制から遠ざかっていることを含めて、こうした動きを快く思っていない。一方、イスラエルはウクライナでの戦争に関しては一貫して中立を堅持しながらも、アメリカの軍事的・外交的支援を惜しみなく受け続けている。もちろん、ネタニヤフ首相とその一派はイスラエルの最善の利益のために行動しているに過ぎないが、彼らの行動はバイデン政権にとって警鐘となるはずだ。

サウジアラビアはもうアメリカが外交的に配慮をするべき相手ではない。2018年にサウジアラビアの諜報員によってジャーナリストのジャマル・カショギが殺害された事件を無視したとしても、サウジアラビアは最近、アメリカに対して厳しい態度を取る、アメリカの利益をもたらさない同盟国となっている。イエメンでの軍事作戦は、アメリカの支援が破壊的でほとんど無意味な戦争を助長したという点で、人道的災害であり、アメリカのイメージに打撃を与えた。リヤドはまた、ウクライナをめぐっても傍観者となっており、ロシアの石油を交渉して低い価格で購入する一方で、自国産の石油を割高で輸出することで、ロシアの戦争マシーンを養い続けている。加えて、サウジアラビアは昨秋、価格を維持するためにロシアと減産を調整し、バイデン政権を怒らせた。ムハンマド・ビン・サルマン王太子は中国に対して着実に接近しており、サウジアラビア政府高官は、特に経済分野において、アメリカの庇護に代わる選択肢を歓迎することを明らかにしている。

ここでも誤解して欲しくない。サウジアラビアはバイデン政権に意地悪をするためにこのようなことをしているのではない。彼らは自国の利益に従っているだけだと主張することもできる。リヤドからすれば、ウクライナの運命は重要な問題ではなく、中国に手を差し伸べ、アメリカの保護への依存を減らすことは戦略的に理にかなっている。しかし、それならば何故ワシントンはリヤドとテルアビブの取引を仲介しようとして、時間と労力と潜在的な影響力を浪費しているのだろうか?

ここで明確にしておきたい。もしこの2つの国(サウジアラビアとイスラエル)が共に現時点で関係を正常化することに意味があると考えるなら、アメリカは反対しないだろうし、反対すべきではない。しかし、アメリカが両国を説得するために労力を費やす必要があると考える理由は何だろうか?

バイデンとブリンケンは、この地域におけるアメリカの影響力低下を懸念し、中国の最近の外交成果に警戒している可能性がある。サウジアラビアを説得してイスラエルとの関係を正常化させれば、たとえその戦略的意義がささやかなものであったとしても、アメリカはまだ目に見える外交的成果を上げられることを示すことができる。サウジアラビアを説得し、核兵器開発への野心を封印させることができれば、真の成果となるだろうが、その可能性はあまり高くない。

この試みにはもう一つ大きなマイナス面がある。バイデンとブリンケンはイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を推し進めることで、イスラエルのアパルトヘイト(人種隔離政策)にとって世界をより安全なものにする手助けをしていることになるのだ。もちろん、サウジアラビアがイスラエル一国家体制の現実に反対することはないだろうが、国交正常化はパレスティナ人を永久に服従させることは問題ないと言っているに等しい。バイデンとブリンケンは、人権に真剣に取り組むという彼らの主張を嘲笑し、ロシアのウクライナ併合や中国の少数民族ウイグルの扱いに反対することが、独立した観察者たちの目には偽善的に映るとしても、このプロセスを止めたり覆したりするために何かをするつもりはない。 もしあなたが、どうして世界の多くの国々がもはや米国を進歩の鼓舞する道標として見なしていないのかと不思議に思っているなら、その答えの一端がそこにある。

国務省の「やることリスト」にある他の全ての項目を考えると、なぜこの希望の薄い試みを行っているのか、私には全くもって理解できない。 そして、少なくともやってみる価値はあると考える人々には、取引の仲介を試みては失敗し、ワシントンが無能に見える可能性を思い出してもらいたい。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

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 古村治彦です。

 サウジアラビアとイランの国交正常化、その仲介役が中国だった、というニューズは私にとっては衝撃であった。サウジアラビアとイランはお互いが不倶戴天の敵、サウジアラビアはアメリカの同盟国、イランはアメリカの敵国という水と油の関係にあった。それを中国がうまくまとめて、緊張緩和に持っていったということは驚きだった。まず、中東地域においてはこれまで欧米諸国が旧宗主国、利害関係国ということで、大きな役割を果たしてきた。それが、中国が欧米諸国に代わって、「仲介役」の役割を果たすことができるようになったということが愕きだった。

 更に言えば、中東において核兵器を使用しての戦争が可能な国としては、サウジアラビア、イスラエル、イランが存在している。サウジアラビアとイスラエルはアメリカの重要な同盟国同士であり、イランはアメリカの敵国ということを考えると、核兵器を使った戦争が起きるとすれば、「サウジアラビア対イラン」「イスラエル対イラン」という構図になるだろうと考えていた。それが「サウジアラビア対イラン」の構図が消えたということになった。これは中東地域の状況に関して大きなことである。

 サウジアラビアが西側(the West)・アメリカ陣営から離れつつあり、中露が柱となっている西側以外の国々(the Rest)に参加する姿勢を明確にしていることが今回の出来事で分かる。サウジアラビアがアメリカの陣営を離れて、イランとの関係改善を進めるということは、イスラエルが中東地域で孤立するということになる。「サウジアラビア・イスラエル対イラン」という構図が「イスラエル対イラン・サウジアラビア」ということになる。これは中東のパワーバランスにおける重大な変化だ。イスラエルのパレスティナ政策にも大きな影響を与えることになるだろう。

 付け加えて言えば、中国が世界の大舞台において「仲介者」という大きな役割を果たせることを示した。私はこの絵図面を描いたのは、「三代帝師(江沢民・胡錦涛・習近平の三代にわたって軍師を務めている)」と呼ばれる王滬寧であり、更に言えば、そのバックにはヘンリー・キッシンジャーがいると見ている。このような、思い切った、誰もが難しいと思うようなことをやってのける構想力はキッシンジャー独自のものだと私は考える。キッシンジャーは中東において戦争が起きる危険性を大きく減らした。ここが重要だ。そして、中国がロシアとウクライナの停戦交渉の仲介者としての実力を有しているということを示し、ウクライナ戦争をキッシンジャー自身が考える線で停戦させようとしている。

キッシンジャーの母国アメリカにはサウジアラビア・イランの緊張緩和、ウクライナ戦争の停戦をまとめ上げる力はない。そもそもイランとロシアとは敵対関係にあり、このような重要な交渉をすることもできない。キッシンジャーの構想力を実現することはできない。中国はこれらの国々とはどことも関係を悪化させていない。そうなれば、話ができるのは中国だけという単純な話になる。

30年前のパレスティナ和平、オスロ合意のことを思い出す。パレスティナ側の代表であるパレスティナ解放機構(PLO)のヤセル・アラファト議長とイスラエル側のイツハク・ラビン首相を握手させる真ん中には、アメリカのビル・クリントン大統領が立っていて、両首脳の方を抱くようにして、両者を握手させていた。実際にはノルウェーが仲介役を務めていたが、最後のおいしいところはアメリカに持っていかれ、オスロ合意という名前に地名を残すだけのこととなった。アメリカは世界の重要な問題での調停者・仲介者であり、世界の人々もそれを認めていた。しかし、一世代経過して、アメリカにはそのようなことができなくなっている。時代は変化している。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアとイランとの間の緊張緩和はアメリカにとっての目覚ましの衝撃音である(Saudi-Iranian Détente Is a Wake-Up Call for America

-和平計画は大きな合意であり、それを中国が仲介したのは偶発的な出来事ではない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2023年3月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/03/14/saudi-iranian-detente-china-united-states/

中国が仲介役を務めたサウジアラビアとイランの緊張緩和(détente、デタント)は、1972年のニクソンによる中国訪問や1977年のアンワル・サダトによるエルサレム訪問、1939年のモロトフ・リベントロップ協定ほど重要なものではない。それでも、もしこの協定が実現すれば、かなりの大きな合意となる。最も重要なことは、バイデン政権とアメリカの外交政策世界に大きな目覚ましの音を鳴らすことになったことだ。なぜなら、この出来事によって、アメリカの中東政策を長い間不自由な状態にしてきた、自らに課したハンディキャップが露呈したからである。また、中国がいかにして自らを世界の平和のための力として売り出そうとしているのか、も明らかになった。アメリカは近年、こうした動きをほぼ放棄してきた。

中国はどのようにしてサウジ・イラン合意を実現したのだろうか? リヤドとテヘランの間の温度差を小さくしようとする努力は以前から行われていたが、中国はその劇的な経済成長によって中東での役割を増大させているため、両者の合意形成に介入することができた。更に重要なことは、中国がイランとサウジアラビアを仲介できるのは、この地域の大半の国と友好的でビジネスライクな関係を築いているからである。中国はあらゆる方面と国交があり、ビジネスも行っている: エジプト、サウジアラビア、イスラエル、湾岸諸国、さらにはシリアのバッシャール・アル・アサドまで関係を深めている。これこそが、大国が影響力を最大限に発揮する方法なのである。他国が協力してくれるなら、自分も協力するという姿勢を明確にし、他国との関係によって、自分には他の選択肢もあるのだと気づかせるのだ。

一方、アメリカは、中東の一部の国とは「特別な関係(special relationships)」を持ち、その他の国(特にイラン)とは全く関係を持たない。その結果、エジプト、イスラエル、サウジアラビアなどの従属国は、アメリカの支援を当然と考え、エジプトの人権問題、サウジアラビアのイエメン戦争、イスラエルのヨルダン川西岸の植民地化という長期にわたる残虐なキャンペーンなど、アメリカの懸念を不当に軽蔑して扱っている。同時に、イスラム共和国(イラン)を孤立させ、打倒しようとする私たちの努力はほとんど無駄であり、イランの認識、行動、外交的軌道を形成する能力は、ワシントンには実質的にゼロである。この政策は、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs Committee)、民主主義防衛財団(Foundation for Defense of Democracies)などの熱心な努力と、資金力のあるアラブ政府のロビー活動の成果であり、現代のアメリカ外交における自殺点(失敗)の最も明確な例と言えるかもしれない。ワシントンがこの地域の平和や正義を推進するために大したことができないことを示すことで、北京に大きな門戸を開いているのである。

サウジとイランの合意は、米中対立の重要な一面を浮き彫りにしている。ワシントンと北京のどちらが、将来の世界秩序を導く最良の存在と見なされるのだろうか?

1945年以降、アメリカが世界的に大きな役割を果たしてきたことから、アメリカ人は、たとえアメリカが行っていることに疑問があったとしても、ほとんどの国がアメリカの指導に従うと考えることに慣れてしまっている。中国はこの方程式を変えたいと考えており、平和と安定をもたらす可能性の高い存在として自らをアピールすることが、その重要な行動となっている。

原則的に、世界のほとんどの政府は平和を望んでおり、部外者が自分たちのビジネスに介入し、何をすべきかを指示することを望んでいない。アメリカは過去30年以上にわたって、外国政府はリベラルな原則(選挙、法の支配、人権、市場経済など)を受け入れ、アメリカが主導する様々な機関に参加すべきであると繰り返し宣言してきた。つまり、アメリカの「世界秩序(world order)」の定義は、本質的に修正主義的(revisionist)なものだった。 つまり、ワシントンが全世界を豊かで平和なリベラルな未来へと徐々に導いていくということだ。民主党と共和党両方から出た、歴代の米大統領は、この目標を達成するために様々な手段を用い、時には軍事力を行使して独裁者たちを倒し、そのプロセスを加速させた。

その結果、膨大な予算を浪費する占領、破綻国家(failed states)、新たなテロ運動、独裁者間の協力関係の強化、人道的災害など、決して良い結果とはならなかった。ロシアの違法なウクライナ侵攻もその一環である。ロシアの侵攻は、ウクライナをNATOに加盟させようとするアメリカの善意に基づいているが、思慮の足りない努力に、少なくとも部分的に反応したものだ。抽象的には望ましい目標であっても、問題はその結果であり、そのほとんどは悲惨なものとなった。

中国は異なるアプローチを採用している。1979年以降、中国は実際の戦争はしておらず、国家主権(national sovereignty)と不干渉(non-interference)を繰り返し宣言している。この立場は、中国の酷い人権慣行に対する批判を逸らすという点で、明らかに利己的であり、主権への美辞麗句は、中国が不当な領土主張を進め、いくつかの場所で国境紛争を起こすことを止めなかった。北京はまた、批判されると不当に厳しく反応し、外交に好戦的なアプローチを採用したため、憤りと抵抗が高まっている。また、中国が現状を変えるために武力を行使しないとは誰も思わないはずである。

それでも、世界中の独裁者たちが、重武装で道徳を説くアメリカのやり方よりも、中国のやり方の方が心地よいことは容易に想像がつく。民主政治体制国家よりも独裁国家の方がまだ数が多く、その差は10年以上にわたって拡大し続けている。もしあなたが、権力を維持することを第一義とする腐敗した独裁者であったなら、世界の秩序に対してどちらのアプローチをとるのがより親和的だと思うだろうか?

更に言えば、世界のほとんどの国は、戦争がビジネスにとって不利であり、自国の利益に悪影響を及ぼすことが多いことを理解している。大国間の競争が手に負えなくなるのを見たくないのだ。アフリカの古い言い伝えを借りれば、「象が戦えば、草は苦しむ」という。従って、今後数十年の間に、多くの国家は、平和、安定、秩序を促進しそうな大国を支持することを好むようになるであろう。同じ論理で、平和を乱すと思われる大国とは距離を置く傾向がある。

このような傾向は以前にも見られた。20年以上前、アメリカがイラクへの侵攻を準備していた時、同盟国であるドイツとフランスは、武力行使を承認する国連安全保障理事会に反対していた。なぜなら、中東での大きな戦争は、いずれ自分たちを苦しめると考えていたからだ(そして、実際にそうなった)。中国が南シナ海に人工島を建設し、武力で台湾を威嚇しようとすると、近隣諸国はそれに気づき、中国から離れ、互いに、そしてワシントンとより密接に協力し始める。もし、他の国々があなたを解決策の一部ではなく、問題の一部と見なせば、あなたの外交的立場は損なわれる可能性が高い。

バイデン政権にとっての教訓は、外交政策の成功を、何回戦争に勝ったか、何人のテロリストを殺したか、何カ国を改宗(convert)させたかで決めるのではなく、緊張を和らげ、戦争を防ぎ、紛争を終わらせることにもっと注意を払うことである。これは明白なことだ。もしアメリカが、中国が信頼できるピースメーカー(peace maker)であるという評判を確立し、他国との関係において共存共栄する大国であることを認めれば、他国を説得することはますます難しくなるであろう。

サウジアラビアとイランの緊張が緩和されたことは、戦略的に重要な地域で深刻な衝突が起こるリスクを軽減する前向きな進展である。従って、この新たな緊張緩和(デタント)は、たとえ北京の功績があったとしても、歓迎されるべきだ。アメリカの適切な対応は、この結果を嘆くことではなく、より平和な世界を作るために同等かそれ以上のことができることを示すことだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

サウジアラビアがアメリカ偏重から脱し、中国重視へとシフトしようとしている。現在、

サウジアラビアの実権を握るムハンマド・ビン・サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との間がしっくりいっていない、はっきり言えば険悪になっていることは複数回にわたって報じられている。バイデン大統領が2022年7月にサウジアラビアを訪問した。バイデンは石油価格高騰対策のために、サウジアラビアによる石油増産を求めた。しかし、サルマン王太子の答えは「ノー」だった。それどころか、ロシアと歩調を合わせて、石油の減産を決定した。サウジアラビアの石油減産は、ウクライナ戦争において、ロシアを支持する、ロシアを支援する行為だと西側諸国では受け取られた。アメリカと蜜月関係にあったサウジアラビアがアメリカから離れた、裏切ったということになった。

 サウジアラビアからすれば、裏切り者呼ばわりは片腹痛いということになる。サウジアラビアを敵扱いして、見捨てたのはアメリカではないかということになる。バラク・オバマ政権時代に、サウジアラビアの宿敵イランと核開発をめぐる合意を結んだが、サウジアラビアからすれば中途半端な内容で、イランの核開発を止めることができず、イランの脅威を増大させるだけのことだということになった。また、アメリカ国内でシェールガス生産を行うことで、天然資源輸出でアメリカはサウジアラビアのライヴァルとなった。

 サウジアラビアはアメリカのライヴァルである中国にシフトした。サウジアラビアに捨てみれば、最大の石油輸出先である中国と親密になるのは当然のことだ。中国に近づくことで、アメリカから軽視されることのリスクを軽減しようという行動に出ている。これは、サウジアラビアの国益という点から見れば、きわめて合理的な行動ということになる。中国からすれば人民元結成を認めてもらえるようになれば、資源確保において大いに利益となる。そして、人民元が世界の基軸通貨に近づくことになる。これはドルの地位の凋落を招くことになる。

 私はサウジアラビアの行動は日本の参考になると考える。もちろん、サウジアラビアはアメリカにとっての同盟国であるが、日本は従属国である。従って、サウジアラビアと同じ行動を取ることはできない。しかし、アメリカに対して「バランスを取る」ということはできる。それにはアメリカ一辺倒では無理である。アメリカに依存するだけでは、アメリカの意向に振り回される。そこに中国という要素を入れて初めてバランスが取れるようになる。このように「ただ従うだけ」の状態から脱して、「あんまり理不尽なことをすれば離れますよ」という素振りを見せることで、アメリカとの交渉を少しは有利に進めることができるだろう。そのためにはアメリカの「対中強硬姿勢」に巻き込まれるべきではないのだ。日本が中国にぶつけられるようになるのは愚の骨頂だ。

 日本は西側の一員に留まらねばならないのは仕方がないが、少しでも国益のためになるように行動する必要がある。そのためには中国とロシアに対して喧嘩腰で臨むべきではない。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアが中国に向きを変えることを望まない理由(Why Saudis Don’t Want to Pivot to China

私のようなサウジアラビア人にとって、アメリカとの別離ほど心細いものはないだろう。

ムハンマド・アリヤアナ

2022年12月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/16/saudi-arabia-china-xi-bin-salman-biden-oil-opec-geopolitics-security-middle-east/

中国の習近平国家主席は、リヤドで3日間にわたって行われたサウジアラビアのサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子、湾岸協力会議の指導者たち、さらに大きなアラブ政府グループとの一連の首脳会談から帰国したばかりだ。首脳会談マラソンの結果、エネルギー、貿易、投資、技術協力、その他の様々な分野で、公的、非公的に数多くの合意がなされた。このサミットは、経済と安全保障の関係がますます緊密になっていることを証明するものだった。サウジアラビアは中国にエネルギー需要の18%を供給し、石油化学、工業、軍事設備の受注を拡大しているが、その多くはこれまでアメリカから調達していたものだ。

一方、ホワイトハウスは、習近平がペルシア湾地域で中国の影響力を拡大しようとしていることは、「国際秩序の維持に資するものではない(not conducive to maintaining international order)」と指摘した。コメンテーターたちは、習近平のサウジアラビア訪問は、リヤドが従来のワシントンとの関係を捨て、北京に軸足を移そうとしていることの表れであると主張している。

中国の政策は単純明快だ。北京はリヤドに取引を持ち掛けている。石油を売って世界のエネルギー市場の安定化に貢献し、軍事装備はカタログから好きなものを選び、防衛、航空宇宙、自動車産業、医療、技術などの協力で好きなだけ利益を得ようということだ。つまり、中国はサウジアラビアに対して、70年にわたり中東を安定させてきたアメリカとサウジアラビアの取引をモデルにしたような交渉を持ちかけているのだ。

サウジアラビアは、自国の基本的な利益に対して公然と敵対するようになったワシントンに裏切られたと感じている。それに対して中国の宣伝は響く。多くの若いサウジアラビア国民が、アメリカを中国に置き換えるという考えを素朴に口にするようになっているのは、驚くには当たらない。アメリカの大学を卒業し、アメリカのポップカルチャーや消費技術の貪欲な消費者として、教育を受けたサウジアラビアの人々の多くはアメリカを身近に感じている。アメリカのメディアや政策立案者たちが、私たちや私たちの国、指導者、文化に対して不当な攻撃をしていると見なし、いじめられていると感じている。多くの人にとっての選択肢は、中国語を学び、中国の産業と貿易を促進する将来のキャリアを想像することである。

アメリカが作り上げ、長く維持してきた世界秩序は、アメリカ自身以外のいかなる国内的なアクターによっても破壊することはできない。

私のようなサウジアラビア人にとって、アメリカとの別離ほど心細いものはないだろう。1960年代以降、サウジアラビアの人々はアメリカとの強い関係なしに世界を見たことがない。私も、アメリカの文化や偉大さに深い敬意を抱いている若いサウジアラビア国民の1人だ。しかし、この10年、サウジアラビアの人々の多くは、アメリカへの親近感と賞賛が、アメリカの政治家、政策立案者、ジャーナリストから報われていないと感じ、その信頼を失っている。アメリカは、2020年の選挙戦でジョー・バイデン米大統領が約束したように、サウジアラビアを「除け者(pariah)」にしようと決意しているようだ。

この不信感は、バラク・オバマ前米大統領の政権時代にまでさかのぼる。2015年に彼がイランとの核合意を交渉した時、私たちサウジアラビア国民は、彼が両国の安定と強さの源となっていた関係を否定していると理解した。この合意は、テヘランに核爆弾製造の道を開き、イランのイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps)の軍資金を満たし、既存の秩序を破壊するためにアラブ世界各地で民兵を貪欲に武装させることにつながった。攻撃的で修正主義的な国との取引を正当化するためにオバマ大統領が提唱したバランス感覚を装うことは、決して合理的な意味を持たない。結局のところ、もし友人があなたのニーズとあなたの最悪の敵のニーズのバランスを取ると約束したら、その人はもはやあなたの友人ではないと結論付けるのが公正ではないだろうか。

バラク・オバマ、ジョー・バイデン両政権は共に、イエメンにおけるテロリストの代理人を介したイランの攻撃に対し、アメリカは縮小を求め、求めてもいない紛争をサウジアラビアになすりつけることが頻繁にあった。シリアでは、アメリカは、イラン軍とロシアの爆撃機が支配する隣国という、恐ろしく悲惨な光景を私たちに見せつけた。イランとの核取引の一環として、オバマ政権は数百億ドルをイランに流した。その資金は、イラクの解体、シリアの崩壊、レバノンの混乱、サウジ領に対するフーシ派の攻撃支援に使われた。ロシアのプーティン大統領に地中海東部の戦略的拠点を与えることを決定したのもオバマ政権だ。この戦略は、シリアでの内戦を緩和する方法としてアメリカ国民に盛んに喧伝された。昨年、イエメンからサウジアラビアのインフラにミサイルが殺到したことを受け、バイデン政権はサウジアラビア領内からアメリカのミサイル防衛砲台を撤収させた。

しかし、ワシントンが私たちの裏庭に火をつけても、サウジアラビアは地域の平和構築者として、また私たちが賞賛し続ける国として、サウジアラビアの防衛におけるアメリカの役割に敬意を表そうとした。だからこそ、バイデン政権が2021年に「サウジアラビアとの関係を再調整する」と約束して誕生し、2019年に行った「サウジアラビアに代償を払わせ、事実上の除け者とする」という公約を継続した時、とても痛快で心配になった。

かつての大切なパートナーを切り捨てたことに加え、バイデン政権は、エネルギー転換をどのように管理すべきかについてほとんど現実的な考えを持たずに、炭素ベースのエネルギー源に戦争を仕掛けることを選択したのだ。地球を救うという大げさなレトリックは、OPEC+に対抗する買い手のカルテルを作ること、サウジアラビアの外交政策の最重要部分、国内開発計画という3つの方面からの努力を伴っている。第一に、バイデンはアメリカの戦略石油備蓄から数百万バレルの石油を放出した。その目的は、供給ショックを緩和することであり、市場を操作することではない。第二に、アメリカ、ヨーロッパの同盟諸国、カナダ、オーストラリアは先週、ロシアの石油輸出に価格上限を設けるための市場メカニズムを構築した。第三に、バイデン政権はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートに対し、自国の財政・金融政策によるインフレなどアメリカの国内政治目標達成のために増産を迫っている。このようなバイデン政権の戦略は、OPEC+から原油価格の決定権を奪おうとしているようにサウジアラビアには映る。もしこれが成功すれば、サウジアラビアは自国の開発目標を達成するための収入を得ることができなくなる。

このような背景から、サウジアラビアの人々の多くが東方へ視線を移し始めている理由は明らかだろう。しかし、中国がアメリカに代わってサウジアラビアのパートナーとなることを期待するのは、甘い考えだと私は言いたい。

私は、大学と大学院をアメリカで学び、幸運にも幼少期の一時期をワシントン郊外のヴァージニア州で過ごした。そこで私は、野球をしたり、感謝祭に七面鳥を食べたり、12月になると『クリスマス・キャロル』を見たりと、アメリカの娯楽に触れることができた。最近では、サウジアラビアとアメリカの関係を表現するメタファーとして、このチャールズ・ディケンズの物語を使っている。

アメリカの技術、技術革新、防衛協力、安全保障関係が存在しない地域を、「まだ来ぬクリスマスの亡霊(訳者註:『クリスマス・キャロル』に出てくる第三の幽霊)」が見せてくれると想像して欲しい。個人の自由の利点と限界が、サウジアラビア国民が自国の改革に伴ってますます行っているように、国民とその支配者が議論すべきテーマではなく、神を敵とみなす一党独裁の中央集権国家によって決定されるような地域を想像してみるといい。

アメリカの誤算と無能力を混同するのは愚かなことである。アメリカが作り上げ、長く維持してきた世界秩序は、中国を含むいかなる国際的なアクターによっても破壊することはできない。アメリカ自身によってのみ破壊することができるのだ。善かれ悪しかれ、アメリカとサウジアラビアの両国の運命は不可避的に絡み合っている。アメリカが創り出そうとしている未来に目を向けることで、中東に取り憑いている亡霊を追い払うことができるのではないかと私は考える。

※ムハンマド・アリヤアナ:ベルファー・センター中東部門研究員、ハドソン研究所中東平和・安全保障担当上級研究員。『アル・アラビア・イングリッシュ』紙元編集長。ツイッターアカウント:@7yhy

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習近平のサウジアラビア訪問はリヤドにおけるワシントンとの一夫一婦制の結婚関係終焉を示している(Xi’s Saudi Visit Shows Riyadh’s Monogamous Marriage to Washington Is Over

-現在の冷戦2.0では、サウジアラビアはどちらにつくかを選ぶことを拒否するだけでなく、北京やモスクワに接近する可能性もある。

アーロン・デイヴィッド・ミラー筆

2022年12月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/07/xi-jinping-saudi-arabia-trip-mbs-biden/?tpcc=recirc_trending062921

2004年のインタヴューで、当時のサウジアラビア外相サウド・アルファイサルは、アメリカとサウジの関係は、妻が1人しか許されない「カトリックの結婚(Catholic marriage)」ではなく、妻が4人許される「イスラムの結婚(Muslim marriage)」だと元『ワシントン・ポスト』紙記者デイヴィッド・オッタウェイに語っていることが極めて先見的だった。オッタウェイは「サウジアラビアはアメリカとの離婚を求めていたのではなく、他国との結婚を求めていただけだ」と書いている。

それが今、現実のものとなった。このことがより明確に反映されているのが、中国の習近平国家主席が今週、2016年以来初めてサウジアラビアを訪問することである。習近平の訪問は、「仲直りしよう(let’s mend the fences)」と握手を交わすような気まずい瞬間にはならないだろう。サウジアラビアにとって最大の貿易相手国と中国にとって最大の輸入石油源である中国との、華やかで温かい抱擁の祭典となるのである。

北京は、サウジアラビアにとって最重要の問題、すなわち不安定になっている近隣諸国における安全保障について、ワシントンに取って代わることはできない。しかし、リヤドがワシントンと一夫一婦制で結婚していた時代は時代遅れになっている(going the way of the dodo.)ようだ。冷戦2.0、つまりアメリカと中国・ロシアとの緊張と競争が高まっている現在、サウジアラビアはどちらにつくかを選ぶことを拒否するだけでなく、自国の利益のために北京やモスクワに接近する可能性がある。つまり、サウジアラビアはもはやアメリカ一国だけの妻ではない。

中国との関係改善に対するサウジの関心は、アメリカがサウジの利益にもっと注意を払い、「リヤドは当然自分たちの味方だ」と単純に考えないようにさせるための一時的な戦術と見なしたくなるものだ。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との個人的な関係は、決して友好的とは言えない。サルマン王太子はバイデンが自分をどう思っているか気にしないと述べ、バイデンはサウジアラビアの指導者たちについてあまり考えていないことを明らかにした。バイデンはサウジアラビアを非難する際に控え目に振舞う(wallflower)ことはない。サウジアラビアを呼び出すことになると萎縮する壁の花ではなく、

しかし、アメリカとサウジアラビアの関係を苦しめているのは、バイデン大統領とサルマン王太子の相性の悪さよりもずっと深いところに原因がある。ワシントンはサウジアラビアの石油を必要とし、リヤドはアメリカの安全保障を必要とするという、数十年にわたる関係を支えてきた基本的な相殺取引(トレイドオフ)が、長年にわたるストレスやひずみの積み重ねによって、擦り切れてしまっている。19人のハイジャック犯のうち15人がサウジアラビア人であり、サウジアラビア政府はこの計画をどの程度知っていたのかという疑問が残る911テロ事件、バグダッドにイランの影響を受けやすいシーア派支配の政権をもたらした2003年のアメリカによるイラク侵攻、アメリカの「アラブの春」への対応などでが両国関係を傷つけてきた。アメリカは「アラブの春」に対して、当時のエジプト大統領ホスニー・ムバラクに退陣を迫り、中東や北アフリカの他の地域で民主的な改革を促したが、サウジアラビア王政はこの動きを世界中の権威主義者への脅威、そして自らの権力保持への脅威と考えた。アメリカを石油輸出の競争相手とすることになった、フラッキング技術とシェールガス革命、サウジアラビアの宿敵イランとのオバマ政権の核合意、2019年9月のイランの無人機・巡航ミサイルによるサウジアラビアの主要産油施設2か所への攻撃に対するアメリカの弱腰反応によるリヤド側の懸念拡大、アメリカによるサウジアラビアの安全保障への関与などもあった。 そして最後に、冷酷で無謀なムハンマド・ビン・サルマンが台頭し、サウジアラビアの反体制派でアメリカ在住のジャマル・カショギの殺害を指示したこともあった。

関係を修復しようとする努力は、かえって関係を悪化させるようだ。バイデン大統領訪問の際、バイデンと王太子が兄弟のように握手を交えた場面もあったが、サウジアラビアが優位に立ち、与えた以上のものを得て、バイデン政権と共にウクライナでのロシアや台頭する中国に対抗しようとは考えていないように感じられたのである。両首脳会談で発表された広範な声明やコミュニケの中に、ワシントンの敵対諸国のいずれかを批判する言葉を見つけるのは困難である。10月のOPEC+では、サウジアラビアとロシアが日量200万バレルの減産を決定し、ワシントンではこの決定について、ウラジミール・プーティン大統領のウクライナでの戦争マシーンへの資金提供を直接支援する行為と見なされた。

2022年7月の中東歴訪を前にして、バイデン大統領は『ワシントン・ポスト』紙に寄稿した。その中で、中国に対抗するためにはアメリカ・サウジアラビア関係の改善が必要だと指摘したのは興味深い。もちろん、ムハンマド・ビン・サルマンはまったくそのようには考えていない。彼にとっては、中国カードをいかにサウジアラビアのために使うか、北京とワシントンのどちらかを永久に疎外することなく、両方から得られるものをいかに引き出すかが今のゲームとなっているのだ。

サウジアラビアは何年も前から中国との関係を深めてきた。しかし、これは、より小さくて脆弱な大国が超大国と行う非常に古いゲームに、新しい、そしておそらく戦略的なひねりを加えたものである。超大国(この場合はアメリカ)がある小さな国(あるいはその地域)を優先しないようになると、この小さな国もまたバランスを取る動きに出て、超大国の動きに対して、自国のマイナスを補うために他の大国と手を結ぼうとする。しかし、サウジアラビアが自信を深めていること、サウジアラビアの利益を守るために独自に行動する意志があること、そしてサウジアラビアの計算において超大国としての中国の重要性が増していることように変化したのである。

中国はサウジアラビアに何を提供するのか? ムハンマド・ビン・サルマンにとって、中国は単にアメリカに対抗するためのレヴァーではない。中国自体に真の価値がある。中国は現在、サウジアラビアにとって最大の貿易相手国であり、近年はアメリカとサウジアラビアの二国間貿易を上回っている。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「中国企業はサウジアラビアに深く入り込み、巨大プロジェクトの建設、5Gインフラの整備、軍事用ドローンの開発などを行っている」と報じている。中国が関与しているのは、インフラだけではない。カーネギー国際平和財団の研究担当副会長エヴァン・A・ファイゲンバウムは、北京はテクノロジーや通信を含む多次元的なアプローチを追求していると『フォーリン・ポリシー』誌に語っている。先月、中国の通信会社「チャイナ・モバイル・インターナショナル」はリヤドと「サウジアラビアのデジタルメディア・エコシステムを推進する」覚書に調印した。

中国はまた、サウジアラビアに対して、人権に関するあらゆる懸念を含め、国内政治への干渉を排除した無条件の関係を提案している。これは両国にとってメリットがある。習近平は新型コロナウイルスの流行が始まって以来、ほとんど中国国外には出ていない。習近平が最初の数回の海外出張にサウジアラビアを選んだのは偶然ではない。同じ権威主義者が統治する国で、ウイグルや香港、新型コロナウイルス感染対策のためのロックダウンに対する最近の中国のデモに対する抗議などに関して、中国に恥をかかせるような報道はないだろう。習近平とビン・サルマンは権威主義者クラブの正真正銘のメンバーとして、改革、民主化、人権促進を求める外圧に対して団結する共通の絆を持っている。

つまり、バイデンのサウジアラビア訪問とは異なり、習近平の訪問は不快感や摩擦を伴わない、相互の温かさに満ちたものになる可能性が高いのである。習近平とサウジアラビア国王、ムハンマド・ビン・サルマン王太子、習近平とペルシア湾岸諸国、習近平とアラブ連盟諸国との3つの首脳会談が予定されているというから、ムハンマド・ビン・サルマンと習近平はともにこの地域における中心的存在としての存在感を発揮することができそうだ。サウジアラビア国営通信によると、30人以上の国家元首や国際機関の指導者たちが出席する予定だという。

アメリカとサウジアラビアの関係は崩壊しそうにない。ワシントンは安全保障と情報協力においてリヤドの重要なパートナーであり続けるだろうし、イランという国外の脅威は、多少傷つきながらも、この特別な関係の少なくとも一面を存続させることを保証しているようだ。中国は、アメリカの兵器の精巧さと有効性に取って代わることはできないし、ペルシア湾の航行の自由(freedom of navigation)を保証する役割を果たすこともできない。実際、ペルシア湾で中国のエネルギー供給を保護し、その確保に貢献しているのはアメリカ海軍である。しかし、バイデン政権は、北京がサウジアラビアの手元にある中国のミサイルをどのように改良し、どのような核協力が行われようとしているのか、注意深く見守る必要がある。

しかしながら、一つだけ確かなことがある。それは、あなたの祖父や祖母の時代のようなアメリカとサウジアラビアの関係ではないのだ。リスクを避け、コンセンサスを重視するサウジアラビアの国王の時代は終わった。その代わりに、リスクを恐れず、自信を持ち、傲慢でさえあるサウジアラビア国王が、グリーン革命があろうとなかろうと、世界が今後何年にもわたってサウジアラビアの算出する炭化水素に依存することを認識している。アメリカは現在でも非常に重要な存在だが、おそらくムハンマド・ビン・サルマンの計算の中心ではないだろう。バイデンは7月の中東歴訪で、サウジや湾岸アラブ諸国の指導者たちに、アメリカは「どこにも行かない」し、この地域にとどまるのだと述べた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマンは彼独自の道を進む。中国とそしてロシアもまた、どこにも行かないだろう。

※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和基金上級研究員。共和党、民主党の各政権で米国務省中東担当アナリストと交渉担当官を歴任。著書に『偉大さの終焉:アメリカはどうしてもう一人の偉大な大統領を持つことができず、持ちたいと望まないのか(The End of Greatness: Why America Can’t Have (and Doesn’t Want) Another Great President)』がある。ツイッターアカウント:Twitter: @aarondmiller2
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 今年の冬はエネルギー価格の高騰があり、世界各国で厳しい冬になりそうだ。光熱費の高騰により生活が苦しくなる。ウクライナ戦争によって、ロシアに対しては経済生成が発動され、ロシアからの天然ガス輸入ができなくなった。ロシアは天然資源輸出ができなくなれば、経済的に行き詰って戦争を継続できなくなるだろうと考えられていた。しかし、そのような目算は崩れてしまった。非西側諸国によるロシアの天然資源輸入が大きかった。

アメリカや日本をはじめとする先進諸国は産油諸国に石油の増産を求めているが、これはこれまでのところうまくいっていない。サウジアラビアは増産を拒否している。ここにも西洋諸国(the West)対それ以外の世界(the Rest)の対立構造が明らかになっている。ロシアは非西洋諸国、具体的には中国やインドに石油を割安で輸出している。これでお互いにウィン・ウィンの関係を築いている。

ヨーロッパはロシアからの天然資源輸入がなくなり、アメリカからの高い天然ガスを買わねばならず、通常であれば安い夏の時期に買っておいて冬に備える備蓄も全くできなかったことから、厳しい冬になる。偶然見たテレビニューズの取材に対して、「薪を備蓄して冬に備える」と答えていたドイツ国民の声が印象的だった。

 日本でも東京都の小池百合子知事がタートルネックのセーターやスカーフの着用を推奨して話題になった。首元を温めれば暖房の設定温度は低くできるということのようだ。暖房や建物の建材などのエネルギー効率を高めれば、エネルギー消費を減らすことができる。気候変動のためにそうすべきということは長年言われてきたが、今回のウクライナ戦争とそれに影響を受けてのエネルギー価格高騰もあるので、こうした動きを促進しようという主張は出てきている。

 しかし、「言うは易く行うは難し」である。これから建物を全面的に改修するなり建て替えるなりするには多額の資金がかかる。更に言えば、こうした建材の材料費も高騰している。そことの兼ね合いが難しい。エネルギー効率を高めておけば、戦争が終わってエネルギー価格が下がればこれまでよりもエネルギー関連支出が下がるということになるから良いではないかということであるが、戦争でそのような対策が進むというのは何とも皮肉なものだ。

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そうだ、私たちはエネルギー需要の削減について話す必要がある(Yes, We Need to Talk About Cutting Energy Demand

-エネルギー供給のみに集中することで、世界は危機に立ち向かうための最も安価で迅速な方法のいくつかを無視している。

ジェイソン・ボードフ、メーガン・L・オサリヴァン筆

2022年6月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/06/29/energy-demand-supply-efficiency-conservation-oil-gas-crisis-russia-europe-prices-inflation/

ドイツは先週、ロシアがヨーロッパへの天然ガス供給を更に制限することで、エネルギー不足が差し迫ることを警告し、エネルギー部門を戦時体制(war footing)に移行させた。冬が到来した時に必要となる在庫を満たすヨーロッパの能力を低下させることによって、ロシアは、ウクライナを征服し、西側諸国の抵抗を断ち切るためのキャンペーンの一環として、エネルギー輸出を武器化するためのレバレッジを高めている。ドイツのロベルト・ハーベック・エネルギー経済大臣は、ガスシステムを政府によるエネルギー配給の一歩手前の「警報」段階までエスカレートさせ、ドイツ国民に対し、消費行動を自発的に変えてエネルギーを節約することで「変化を起こす」よう呼びかけた。

ハーベックは、今日のエネルギー危機に対する解決策として、極めて重要かつ過小評価されていることを指摘した。現在採用されている多くのアプローチとは異なり、効率性を高めることで、ロシアのレバレッジを減らし、エネルギー価格の高騰に対処し、気候変動に対処するための炭素排出を抑制することを同時に実現することが可能となる。実際、サーモスタットの調節や運転時間の短縮から、スマートなデジタル制御や建物の断熱に至るまで、効率と節約の向上は、これらの課題全てに対処する最も迅速、安価、かつ簡単な方法の1つである。エネルギー危機がまだまだ続く中、世界中の政策立案者たちは短期・中期・長期のエネルギー消費の削減をあらゆる戦略の中心に据えるべきだ。残念ながら、ドイツが市民や企業に節電を呼びかけるのは、迫り来るエネルギー不足に対処するために多くの国がとっているアプローチの例外である。

ロシアがヨーロッパ大陸へのガス供給を削減するのではないかというヨーロッパ各国の懸念はここ数週間で現実のものとなった。ヨーロッパの数カ国への選択的な供給削減の後、ロシアはドイツへの主要ガスパイプラインの能力を60%も削減し、他の多くの国への輸出を削減した。ヨーロッパの天然ガス価格は50%以上上昇し、電力価格は2021年12月以来の高水準に上昇した。これを受けて、欧州連合(EU)加盟国10カ国が様々な段階のガス緊急事態を宣言している。

一方、原油価格は、世界的な供給不足、ロシアの輸出抑制、精製能力の限界などを背景に、ほぼ過去最高値の水準で推移している。ガソリンや軽油の価格高騰は、インフレを引き起こし、人々の生活を圧迫し、世界各国政府にとって政治的な頭痛の種となっている。例えば、ジョー・バイデン米大統領は最近、連邦ガソリン税の一時停止を議会に要求した。

石油、ガス、石炭の使用量を削減するには、効率性への投資と需要の節約が最も安価で迅速な方法であることが多い。

今回の危機に対して、各国は石油やガスの代替資源を求め、石炭の利用を増やすことで対応している。最近、液化天然ガス(LNG)を船で供給する米独の長期契約と並んで、ヨーロッパ各国はカタールと同様の契約を結ぼうとしている。ドイツ、オランダ、フィンランド、フランスなどがLNG輸入設備の新設を発表している。LNG輸入基地を1つも持たず、ロシアのパイプラインガスへの依存度を高めているドイツは、現在3基の基地を計画しており、ドイツ政府は最近、基地を建設する間、より迅速にガスを輸入できるようにするため、浮体式貯蔵・再ガス化装置4隻をチャーターしている。オランダは、ガス採掘に起因すると思われる地震によって停止した、最大の陸上ガス田の再開を検討している。ドイツ、オーストリア、イタリア、オランダは、古い石炭発電所を復活させる計画を発表した(ただし、ドイツは不可解にも今年末に最後の石炭発電所2基を停止させる計画で原子力発電所は復活させない)。そして先週、バイデンは石油業界の幹部を招集し、アメリカの石油生産と精製を促進する方法を探ろうとした。

これらの措置は全て戦争によって起きているので嘆かわしいことではあるが、現在の危機への対応としては適切なものだ。本誌にも書いたように、ロシアからのエネルギー供給の多くを喪失しても、消費者に安全で安価な燃料を確保するためには、少なくとも短期的、中期的には、他の化石燃料供給源の活用と更なるインフラへの投資が必要だということは厳然たる事実である。より多くのエネルギー供給を求める動きは、もちろんクリーンエネルギーにも及び、ヨーロッパではゼロ炭素エネルギーへの投資を増やし、その目標を前倒しで達成しようとしている。

しかし、掘削と圧送、製油所の限界への挑戦、数十億ドル規模のLNG施設の建設、ヨーロッパにおけるクリーンエネルギー供給の促進といった努力は、エネルギー使用量を削減するためのより重要なプログラムと対をなす必要がある。再生可能エネルギーの拡大と化石燃料との戦いに注目が集まる中、世界は悲しいことに、エネルギーの最も重要な事実の1つを見失っている。石油、ガス、石炭の使用量を削減し、ロシアのエネルギー資源の輸入の必要性を減らすには、効率的な投資と需要の節約が最も安価で迅速な方法だ(言うまでもなく、二酸化炭素排出量も削減できる)。

国際エネルギー機関(IEA)によると、ヨーロッパの建物で暖房のサーモスタットを摂氏1度(華氏1.8度)調節するだけで、年間100億立方メートルのガス使用を抑えることができるという。ちなみに、バイデンは3月、今年中にヨーロッパに150億立方メートルのガスを供給すると公約している。また、IEAのネットゼロエミッション達成のためのロードマップでは、建物の改修、消費電力の少ない家電製品への切り替え、自動車の燃費基準の引き上げ、産業廃熱回収の改善などの対策を通じて、エネルギー効率が今後10年間で2番目に大きな貢献を果たすとされている。効率化が進むと、その反動でエネルギー使用量が増えることがあるが、これは「リバウンド効果」と呼ばれるもので、効率化と節約による正味の効果は非常に大きく、すぐに利用可能でしかも低コストで利用できる。

確かに、EUのエネルギー安全保障計画(REPowerEU)には、2030年までにEUの2020年の基準シナリオと比較して、効率化のためのエネルギー節約を9~13%に引き上げるという目標が含まれている。例えば、フランスでは、2018年に初めて採用されたアパートの改修と、ガスを使用する効率の悪いボイラーに代わる電気暖房の設置に対する補助金を増やすと発表している。古い建物が多いフランスの建物の改修は、エネルギー使用量削減の可能性が最も高いと専門家は指摘しています。このような努力は、効率性を確保するためのスタート地点に過ぎないにもかかわらず、この危機の中で、ヨーロッパ各国政府は、エネルギー需要よりもエネルギー供給に大きな関心を寄せている。

世界的なエネルギー危機に対する供給中心の対応は、ヨーロッパ以外では更に顕著である。IEAによれば、エネルギー効率化投資の成長率は2022年に鈍化するとされており、2050年までに排出量を正味ゼロにするという気候変動目標を達成するために必要な要素には及んでいない。IEAによれば、「最もクリーンで、最も安価で、最も信頼できるエネルギー源は、各国が使用を避けることができ、一方で市民に十分なエネルギーサービスを提供できるものである」ということだ。世界的な効率化の推進は、気候変動に関する目標を達成するために必要なだけでなく、短期的には、全ての消費国、特にヨーロッパの各消費国がロシアの石油とガスの損失による不足に対処するために、必要なエネルギー供給を解放することができ、また、価格の抑制にもつながる。

現在のように石油採掘とインフラ整備に偏って力を注ぐことは、環境的に悪いだけでなく、半世紀前にエネルギー分野の象徴的存在であるエイモリー・ロヴィンズが警告したように、困難でコスト高になる。1973年の石油危機をきっかけに発表された論稿の中で、ロヴィンズは、世界のエネルギー需要を満たすために、採掘、抽出、産業施設などの大規模プロジェクトという「ハード・パス(hard path)」ではなく、保全、効率、再生可能エネルギーという「ソフト・パス(soft path)」をとるよう、エネルギー分野のリーダーたちに強く求めた。

今日、彼の論稿を読み返すと、ロヴィンズの警告がいかに的確であったか、そしてその警告に耳を傾けていれば、私たちはどれほど幸福になれたか、ということに気づかされる。半世紀前に彼が書いたように、今日、「節約は、通常、政策というより価格によって誘導され、必要であることは認められているが、現実よりも修辞的な優先順位が与えられている」のである。加えて、「優先順位は圧倒的に短期的である」と嘆き、目先の政治的・経済的な不安に応えるために、「積極的な補助金や規制によってエネルギー価格が経済水準や国際水準を大きく下回り、成長が深刻に阻害されないように抑制されている」と指摘した。実際、今日の高値に対応して、政府はエネルギー価格の補助金を出し、燃料税を停止している。市場価格が必要なレヴェルまで上昇しているときに、需要を抑制する努力を怠っているのだ。

また、ロヴィンズは、1976年に気候変動の危険性をいち早く指摘し、「石炭へのシフトは、その時あるいはその後すぐに、地球気候に大きな、そしておそらく取り返しのつかない変化をもたらす」と警告し。彼は「205年のエネルギー収入型経済への橋渡しをするために、化石燃料を短期間かつ控えめに使用する過渡的技術」の利用を提唱しており、これは最近本誌で我々が主張したことである。確かに、原子力発電に断固として反対するなど、ヴィビンズのヴィジョンには問題点も多い。しかし、過去半世紀にわたってエネルギーのリーダーたちが困難な道を選んでこなかったならば、今日のヨーロッパと世界の他の地域は、ロシアのエネルギー供給喪失に対処するためにどれほど良い状態にあっただろうかと考えると反省しなければならない。

エネルギー効率と省エネルギーが、エネルギー使用量と排出量に大きな影響を与えるにもかかわらず、社会や政治の注目を浴びてこなかったのには、多くの理由がある。家主は断熱や改修の費用を負担しなければならないが、借主は光熱費の節約によって利益を得ることが多い。これは経済学者に「プリンシパル・エージェント問題(principal-agent problem)」と呼ばれるものだ。消費者たちは、将来的な総電力コストよりも、家電製品の購入価格に注目する傾向がある。これは、「近視眼的(myopia)」として知られる行動現象である。また、節電の呼びかけは政治的な意味合いが強く、1970年代のエネルギー危機の際、ジミー・カーター米大統領(当時)がカーディガンのセーターを着て犠牲を求めた苦い思い出を呼び起こされる。

「ソフト・パス」を歩むのに最適な時期が数十年前であったとすれば、二番目に最適な時期は今である。効率や節約というと、個人的な犠牲や窮乏を連想する人もいるかもしれないが、より効率的な経済は市民の生活の質を下げる必要はなく、同じかそれ以上の生産高を上げるために、より少ないエネルギーの使用を要求するだけのことなのだ。

サーモスタットの調整など、ささやかな行動の変化が必要な節約もあるが、一人当たりのエネルギー消費量が最も多い国の消費者に、ウクライナ人が命がけで究極の犠牲を払っている時に、消費をもう少しだけ減らすように求めるのは、過大な要求にはならない。今年の冬のヨーロッパのガス危機への対応、燃料費高騰による家計への打撃、ロシアのエネルギー供給停止による経済的打撃など、世界のエネルギー政策指導者は、エネルギー効率の価値を早く再認識し、省エネルギーをロシアの侵略に対抗する強力な武器とすべきであろう。

ジェイソン・ボードフ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学気候専門大学院創設学部長、コロンビア大学国際公共問題大学院国際エネルギー政策センター創設部長。国際公共問題担当職業実行教授。米国家安全保障会議上級部長、バラク・オバマ元大統領上級顧問を務めた。ツイッターアカウント:@JasonBordoff

※メーガン・L・オサリヴァン:ハーヴァード大学ケネディ記念大学院国際問題実行部門ジーン・カークパトリック記念教授。著書に『僥倖: 新しいエネルギーの豊富さが世界の政治を覆し、アメリカの力を強化する方法』がある。ジョージ・W・ブッシュ大統領イラク・アフガニスタン担当国家安全保障問題担当大統領次席補佐官、大統領特別補佐官を務めた。ツイッターアカウント: @OSullivanMeghan

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は「ウクライナ対ロシア」という枠組みを超えて、「西側対それ以外」という構図にもなっている。戦費や武器の支援から見れば、この戦いは「ウクライナ・アメリカ対ロシア」の戦いということになる。アメリカが約6兆円をつぎ込んでいる。

 西側諸国は対ロシア制裁で結束し、ロシアに大打撃を与えようとした。しかし、その効果は限定的だ。ロシア産の石油を西側諸国は禁輸としたが(イギリスは今年いっぱい輸入するとし、ドイツは全面禁輸には踏み切らない)、西側諸国に代わって、中国とインドがロシア産石油を少し安い値段で買い入れを行っており、石油の代金収入が戦費を上回るということが起きている。ロシアは石油の購入をルーブルで行うように要請し、一度大幅に下落したルーブルの価値も上昇した。

 このように、西側諸国の方策は効果を発揮していない。それは、西側以外の、それ以外の国々がロシアに対して積極的に支援をしている訳ではないが、西側の対ロシア制裁に同調しないからだ。その代表格がインド、中国、サウジアラビアといった国々だ。これらの国々が西側に同調しなければ、西側の制裁は効果を持たない。それではこれらの国々を西側の味方に引き入れられるかというと、それは難しい。それぞれの国が自国の国益を守るために行動している。これらの国々にとって西側に同調しないように行動すること、バランスを取ることが国益になるので、そのように行動する。それに対して何からの矯正をすることは難しい。

 下記の論稿にあるドイツとハンガリーはEUNATOの加盟国であり、本来であれば、アメリカとイギリスに同調すべき立場にある。しかし、両国はやはり自国の国益に沿った行動を取っている。ドイツもハンガリーもロシアからのエネルギー資源に依存している。ロシアとは決定的な断絶を避けたいということは当然のことだ。

 ウクライナ戦争が長期化し、「戦争疲れ」「ゼレンスキー疲れ」がたまっていく中で、西側諸国の結束は揺らいでいくことになるだろう。その結果、現在の世界体制の大きな転換、アメリカの終わりの始まりを印象付けることになる。

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アメリカがロシアに関して味方にしようと試みている5カ国(Five countries US is trying to sway on Russia

ブレット・サミュエルズ、ロウラ・ケリー筆

2022年4月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3264413-five-countries-us-is-trying-to-sway-on-russia/

ジョー・バイデン政権は、ロシアに対する圧力キャンペーンを支援するために多くの西側同盟国を集めることに成功したが、モスクワのウクライナ侵攻に反対するために他の多くの同盟諸国や主要な競争相手を味方につけることはより困難であることが判明した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「世界の国内総生産50%以上の国々を世界的な同盟に構築したが、失敗とは言えないだろう。誰もそれを失敗とは言わないと思う」と述べた。

それでも米政府関係者は、紛争にほぼ中立の立場を維持しているか、ロシアにさらに圧力をかけるという申し出を断っている世界中の国々と関わってきた。

Still, U.S. officials have engaged with nations around the world that have largely remained neutral in the conflict or declined overtures to further pressure Russia.

これから、ロシアに圧力をかけ、ロシアの侵略による世界的な経済的波及効果を鈍らせるためにバイデン政権が説得を試みている5カ国を紹介する。

(1)インド

バイデン大統領は月曜日、インターネットを通じてインドのナレンドラ・モディ首相と歓談を持った。ダリープ・シン国家安全保障問題担当大統領次席補佐官がインド当局者との会談のためにニューデリーに出張したのは2週間前のことだった。

バイデンは、ロシアの侵攻に反対する民主政治体制諸国の結束をしばしば宣伝してきた。しかし、世界最大の民主政治体制国家であるインドは、ロシアの石油を輸入し続け、ウクライナで行われた人権侵害に関する国連の決議投票では中立を保っている。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、「バイデン大統領はモディ首相との会談で、アメリカと同盟諸国が課す制裁の効果を明らかにしようと努め、アメリカはインドのエネルギー輸入の多様化を喜んで支援すると強調した」と記者団に語った。

サキ報道官は「バイデン大統領はまた、ロシアのエネルギーや他の商品の輸入を加速したり増やしたりすることがインドの利益になるとは考えていないと明言した」と述べた。

インドは、ウクライナのブチャで起きた民間人殺害事件を非難し、戦争犯罪の可能性について独立機関による調査を求め、人道的な救援活動を行ったことを強調した。

サキ報道官は続けて「私たちの目的の一つは、それを基礎にして、さらに多くのことを行うよう奨励することだ。だからこそ、指導者同士の対話が重要なのだ」と述べた。

(2)サウジアラビア・アラブ首長国連邦

石油輸出国機構(OPEC+)の中核メンバーで石油資源の豊富な湾岸諸国は、ロシアの石油・ガス輸出を制裁・抑制する取り組みの中で、上昇した価格を引き下げることを目的としてアメリカが世界市場での石油供給を増やすよう要求していることに抵抗している。

特にサウジアラビアは、OPEC+を通じてロシアと結んだ原油生産と価格に関する協定に大きく依存しており、リヤドはエネルギー依存から脱却した経済の多角化の一環として、将来の国内経済計画にそれを織り込んでいる。

ロシアの戦争はまた、『ワシントン・ポスト』紙の記者ジャマル・カショギの殺害におけるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子の役割に対するアメリカの非難をめぐり、リヤドとワシントンとの関係全般が冷え込む中で起こったものである。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は先月、ムハンマド王太子が、アメリカがロシアの石油輸入を禁止することについてバイデン大統領と話すのを拒否したと報じた。ホワイトハウスはこの報道を不正確だと述べた。

ワシントンのアラブ湾岸諸国研究所上級研究員フセイン・イビッシュは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦のロシアに対する姿勢が失敗であるという考え方に反論し、代わりに「部分的成功」と表現した。

イビッシュは「アラブ首長国連邦とサウジアラビアは曖昧な態度を取っているが、湾岸諸国は、ワシントンや国際社会から突きつけられる厳しい選択に立ち向かう準備を整えている佐中なのだろう」と述べた。

イビッシュは続けて「ウクライナ侵攻はヨーロッパの危機であり、世界の危機ではない、というのが彼らの誤算だったのだろう。彼らは、このような出来事に対して、自分たちはかなり周辺にいると考えていたがそれは間違いだ」と述べた。

イビッシュは、リヤドとアブダビは、バイデン政権からのイランが支援するイエメンのフーシ派反政府勢力からの攻撃に対抗するための安全保障の強化を求めており、アメリカとのそうした取引は、ロシアへのコストを高める行動に彼らを動かす可能性がある、と付け加えた。

イビッシュは次のように述べた。「サウジアラビアが原油を増産し、ロシアとのOPEC+合意を破棄しなければならないかもしれない。それは彼らにとって苦痛で不快なことだろうが、もしそうするならば、少なくとも彼らはワシントンとの前向きなリセットのためにそうしていると確信できるだろう」。

(3)中国

バイデン政権は、中国がロシアに軍事装備や資金援助を行うことを阻止するために、多大な時間とエネルギーを費やしてきた。

バイデン大統領は中国の習近平国家主席と直接会談し、アントニー・ブリンケン国務長官は中国の王毅外相と会談し、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は中国のトップ外交官である楊潔篪とそれぞれ会談した。いずれの場合も、米政府要人たちは北京に対し、ロシアが有利となるような介入をしないよう警告を発した。

バイデン政権高官たちは、中国がロシアとウクライナの紛争に関与しないことを明確に決めているかどうかはまだ不明だと述べている。しかし、これまでのところ、北京はモスクワが要求したとされる軍事援助をまだ送っていない。

ロイター通信は、中国はロシアとの石油契約を尊重しているが、新たな契約にはまだサインしていないと報じている。これは北京が、経済的に関係を持っている西側諸国からの反発の可能性を認識していることの表れである。

バイデン政権のある幹部は、侵攻が始まった直後に記者団に対し、北京がロシアを助けに来ることはないだろうと楽観視していると述べ、「中国はアメリカの制裁の効力を尊重する傾向にある」と指摘した。

(4)ドイツ

ロシアのウクライナ侵攻が始まった当初、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、キエフへの重要な軍事支援と、ロシアがヨーロッパへの天然ガス供給を計画していたガスパイプライン「ノルドストリーム2」の閉鎖によって、ベルリンの歴史的平和主義姿勢を厳しい行動に転じたとして称賛された。

しかし、戦争が7週目に入るとその勢いは弱まり、ドイツは、アメリカやヨーロッパの他の国々が、1日約10億ドル分入ってくるロシアの石油とガスの世界的な輸入を断ち、ロシアの戦費をさらに圧迫するという要求に加わることに反対を表明している。

ドイツは「ノルドストリーム1」パイプラインを通じてロシアの天然ガス供給に依存し続けており、ドイツ政府高官たちは、ヨーロッパで最も人口の多い国にとって蛇口を止めるという選択肢はないと明言している。

連邦下院多数党(民主党)院内総務捨てに―・ホイヤー連邦下院議員(メリーランド州選出、民主党)を団長とする連邦下院議員訪問団は、今週ベルリンに移動し、ヨーロッパへの複数国訪問の一環としてショルツ氏と会談する予定である。

同盟諸国は、ヨーロッパ、特にドイツをロシアのエネルギーから直ちに切り離すことが困難であることを認識している。

イギリスの対ヨーロッパ・北米外交のトップを務めるジェイムズ・クレヴァリーはあるインタヴューの中で、ドイツがこれまで進んできたステップを称賛し、次のように述べた。「ドイツ政府がこれまでの数十年間に行われたあらゆる決定によって作り出された状況の下で生きていることを批判するのは公正かつ合理的ではないと考える」。

クレバリーは「ショルツ首相は、ウクライナ侵攻の直接的な結果として、この1カ月でドイツの外交政策を再定義した」と述べた。

(5)ハンガリー

ハンガリーはNATO加盟国だが、ロシアの侵攻には慎重に対応しており、現在進行中の紛争において、複雑な国家であることが証明されている。

ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は2010年から政権を担っている権威主義的指導者で、ロシアの侵攻を非難しているが、ロシアのウラジミール・プーティン大統領個人に対して発言することは避けている。

ヨーロッパ連合(EU)の一員として、ハンガリーは対ロシア制裁措置の発動に協力した国の一部だが、ハンガリー自身はロシア経済を下支えするための措置をとっている。

オルバン大統領は先週、ロシアのガスをルーブルで購入する用意があると述べた。多くの西側諸国がロシアからのエネルギー購入を制限または完全に断ち、ロシアの通貨を孤立させようとしている時に、この発言はロシアの通貨を安定させる一助となるであろう。

先週、対ロシア制裁に関してアメリカはハンガリーと協力するのかと質問され、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「ハンガリーはNATO加盟国であり、今後もそうあり続ける。私たちは、NATOの防衛や人道支援を含む、様々な二国間および共通の世界的利益について協力を続けている」と答えた。

サキ報道官は続けて「ハンガリーは現在、NATOの戦闘部隊である、アーミー・ストライカー歩兵部隊を駐留させておる。私たちは彼らと定期的に合同訓練を行っており、今後もハンガリーとのパートナーシップを強化するために努力していく」と述べた。

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(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 古村治彦です。

 今回はアメリカとサウジアラビアの関係、更にウクライナ戦争開始以降の両国関係に関する記事を紹介する。長くなってしまって読みにくくなってしまっていることをお詫び申し上げる。ご紹介したい関連記事が複数あってこのように長くなってしまった。
 現在、世界の石油価格は高騰している。新型コロナウイルス感染拡大で石油価格が下落していたが、その騒ぎも収まりつつある中で石油価格が上昇していった。それに加えて2月末からのウクライナ戦争で対ロシア経済制裁と先行き不安のために石油価格は高騰している。

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石油価格の推移(2021年11月から) 

 アメリカはロシアからの石油が輸入の7%を占めていたがそれが入らなくなったために、これまでさんざん虐めてきたヴェネズエラとの関係修復を試みている。しかし、世界全体では増産まで時間がかかる上に、何より最大の産油国であるサウジアラビアがアメリカに非協力的であるために、石油価格が上昇している。

 サウジアラビアのアメリカに対する非協力的な態度はサウジアラビアの実質的な支配者であるサルマン王太子のバイデン政権に対する怒りが源泉となっている。ジョー・バイデン米大統領は大統領選挙期間中からサウジアラビアとサルマン王太子に対して批判的であり、『ワシントン・ポスト』紙記者だったジャマル・カショギ殺害にサルマン王太子が関与しているというインテリジェンスレポートを公表するということを約束しており、就任後に実際に公表した。また、バイデン政権は、ドナルド・トランプ前政権との違いを強調するためもあり、サウジアラビアの人権状況に批判的となっている。更には、サウジアラビアが関与しているイエメンの内戦でサウジアラビアの立場を支持してこなかった。こうしたことはサルマン王太子とサウジアラビア政府を苛立たせてきた。そして、サルマン王太子の中国とロシアへの接近ということになった。

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プーティンとサルマン王太子
 今回のウクライナ戦争で、アメリカは慌ててサウジアラビアとの関係を改善しようとしている。サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との直接の電話会談を実現させようとしたが、サウジアラビア側から拒否された。バイデン政権はサウジアラビアからしっぺ返しをされている。また、イエメン内戦でイランから支援を受けているフーシ派武装勢力がサウジアラビアの石油関連施設に攻撃を加えていることで、「石油の増産したいのだが、フーシ派が邪魔をしてうまくいかない」という大義名分も手に入れた。
 アメリカは理想主義的な建前外交をやって、アメリカ国民と世界の人々の生活を苦境に陥れている。実物を握っている国々はいざとなったら強い。だから、理想主義でどちらか一方に偏っていざとなったらしっぺ返しを食ってしまうという外交は結果としてよくない。汚い、裏がある、両天秤をかけて卑怯だ、そんな人々から嫌われるような外交がいざとなったら強い。「敵とも裏でつながっておく」ことが基本だ。

 

(貼り付けはじめ)

フーシ派からの攻撃の後、サウジアラビアは石油不足について「責任を持たない」と発表(Saudi Arabia says it 'won't bear any responsibility' for oil shortages after Houthi attack

クロエ・フォルマー筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/599014-saudi-arabia-says-it-wont-bear-any

サウジアラビアは、イランに支援されたフーシ派の反政府勢力が国営石油施設を最近攻撃したことによる流通への影響について、イエメンの内戦に対処するアメリカを明らかに非難し、石油増産に対して責任を取らないことを明らかにした。

国営サウジアラビア通信は、世界最大の石油輸出国サウジアラビアは、「石油施設へ攻撃を受けたこともあり、世界市場への石油供給が不足しても、いかなる責任も負わないことを宣言する」と報じている。

サウジアラビア外務省は、「イランに支援されたテロリストのフーシ派民兵から我が国の石油施設が攻撃されたこと」を受けて声明を発表した。

サウジアラビアの指導者たちは、エネルギー市場を安定させ、禁輸されているロシアの石油を相殺するために供給を増やして欲しいというアメリカらの要請に抵抗しているため、ロシアのウクライナ侵攻でアメリカ・サウジ間の緊張は既に高まっている。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日、国営石油大手アラムコが所有する石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、製油所などがドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省は、この攻撃により「製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と述べた。

サウジアラビア外務省は、西側諸国がサウジアラビアと共にイランとフーシを非難し、「世界のエネルギー市場が目撃している、この極めて微妙な状況において、石油供給の安全に対する直接的な脅威となる彼らの悪意ある攻撃を抑止する」よう呼びかけた。

2018年にイスタンブールのサウジアラビア領事館に誘い込まれて殺害された『ワシントン・ポスト』紙のジャーナリスト、ジャマル・カショギの殺害以来、アメリカ政府はサウジアラビアへの批判を強めている。

サウジアラビアの人権記録やイエメン内戦をめぐる緊張が、アメリカ連邦議会において超党派の議員たちからの批判を招き、それがまた両国間の争いに拍車をかけている。

しかし、アメリカのジョー・バイデン政権は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に最大限の圧力をかけるために外交政策を立て直し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子との関係を再構築しようとしていると複数のメディアが報じている。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は日曜日、ここ数週間にわたり、アメリカはサウジアラビアに「相当数」のパトリオット迎撃ミサイルを送り込んだと報じた。サウジアラビア政府はアメリカ政府に対してフーシ派からの攻撃に対処するための防衛的な武器を送るように求めていた。

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フーシ派勢力がサウジアラビアのエネルギー施設に複数のミサイルを発射(Houthi's fire missiles at Saudi energy facility

オラミフィハーン・オシン筆

2022年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/598959-houthis-fire-missiles-at-saudi-energy-facility?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ロイター通信は、サウジアラビア政府は、イエメンのイランから支援を受けているフーシ派が土曜日の夜から日曜日の朝にかけて、様々なエネルギー施設や淡水化施設に向けて複数のミサイルを発射したと発表したと報じた。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日に発表した声明で、ジザン地方の石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、紅海のヤンブ港にあるヤスレフ製油所がドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省からの声明には、「ヤスレフ製油所への攻撃により、製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と書かれている。

サウジアラビアのエネルギー省はまた、多くの石油物流工場が攻撃され、ある工場で火災が発生したと付け加えた。サウジアラビア政府のある高官によると、火災は制御され、死傷者は報告されていないということだ。

フーシ派のスポークスマンであるヤシャ・サレアは、過激派グループがサウジアラビアで多くの施設を攻撃したことを認めた。

サウジアラビア主導の軍事連合によると、武装勢力フーシ派はこの他、アル・シャキークの海水淡水化プラント、ダーラン・アル・ジャヌブの発電所、カミス・ムシャイトのガス施設などを攻撃対象として攻撃を加えてきた。ロイター通信によると、サウジアラビア国防軍は弾道ミサイル1発とドローン9機を迎撃したと報じている。

ハンス・グルンドベルグ国連特使は、数万人が死亡し、数百万人が飢餓に直面している7年間の戦闘を終わらせるための条約の可能性について、双方が協議したと述べたとロイター通信は報じている。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は日曜日の声明の中で、フーシ派からの攻撃を非難した。

サリヴァン補佐官は声明の中で、「アメリカは内戦終結に向けた取り組みを全面的に支持し、フーシ派の攻撃から自国の領土を守るパートナーを今後も全面的に支援していく。国際社会にも同じことをするよう求める」と述べた。

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ムハンマド・ビン・サルマンはバイデンに対して影響力を持ち、それを利用している(Mohammed bin Salman Has Leverage on Biden—and Is Using It

-サウジアラビアの原油価格引き下げへの協力は欧米諸国の価値観の犠牲の上に成り立つ。

アンチャル・ヴォウラ筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/24/mohammed-bin-salman-saudi-ukraine-oil-biden-opec/?tpcc=recirc_trending062921

ウクライナ侵攻後にロシアへ科された制裁によって、世界のエネルギー市場には大混乱がもたらされた。西側諸国は、1バレル140ドル近くまで高騰した原油価格をどう抑制するか、ロシアのエネルギー供給への依存からどのように脱するかでパニックに陥った。アメリカとイギリスはロシアの石油購入の禁止を発表し、伝統的な同盟国であるサウジアラビアに対して石油の供給を開始し、世界の石油価格を下げるように説得することに躍起となっている。

しかし、最大の産油国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、この危機を自分たちの好機と捉えて、それに応じようとはしなかった。アメリカと欧米諸国へのメッセージは明白である。サウジアラビアは、人権侵害で批判され続ける対象として扱われるには、あまりにも大きな影響力を地政学的に持っている、ということである。

サウジアラビアはアラブ首長国連邦以上に油田の鍵を握っており、油田を開放し、親ロシアの石油政策を転換する前に、アメリカから大きな譲歩を得ることを期待している。エネルギー安全保障のために人権が再び犠牲になることを、活動家たちは恐れている。アメリカもイギリスも、サウジアラビアが3月中旬に行った81人の大量処刑を公然と批判していない。欧米諸国の対サウジアラビア政策は、消費者の財布への圧力を緩和するためのおだてが中心となっている。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦は日量300万バレル以上の余力を持ち、その一部を放出することで原油価格を下げることができる。さらに、ロシアは日量約500万バレル、その8割近くを欧州に輸出しているため、リヤドとアブダビが支援を確約すれば、欧州諸国の懸念を払拭し、ロシアへの依存を減らすよう促すことができる。

しかし、湾岸諸国は、ロシアを含む石油カルテルの拡大版である「OPEC+1」への参加を理由に、これを控えている。その理由は、ウクライナ戦争は今のところ石油の供給に大きな支障をきたしていないため、生産量を増やす必要がないためだとしている。しかし、専門家たちは、これは世界政治の大きな変化を反映した政治的決断であると見ている。ロシアの戦争マシーンをも利する価格を維持する選択は、湾岸諸国の独裁者たちがもはやアメリカの緊密な同盟諸国の地位にいる必要性を感じず、同じような権威主義者たちとの新たな同盟を受け入れていることを示すものである。過去に何度か、サウジアラビアの支配者はアメリカの同盟諸国を喜ばせるために増産や減産を行ったことがある。

しかし今回、サウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ジョー・バイデン米大統領に復讐をするチャンスが到来したと見ているようだ。サルマンはこれまでバイデンから数々の侮辱を受け、優遇されてこなかったと考えているようだ。バイデンはまだ大統領選挙の候補者だった時期に、サウジアラビアをパーリア国家(pariah state 訳者註:国際社会から疎外される国家)と評し、大統領就任後にサウジアラビアの反体制派でワシントン・ポスト紙の記者ジャマル・カショギの暗殺に王太子が関与したとする情報報告書を公開した。さらに、サウジアラビアもアラブ首長国連邦も、イラン核合意の再開の可能性についての懸念を持っているがこれは無視され、イエメンのフーシ派が自国の船や都市を攻撃したことに対してアメリカが行動を起こさないことには、軍事同盟国としての義務を果たさなかったと感じたという。最近では、フーシ派を指定テロリストのリストに入れ続けて欲しいという嘆願さえもワシントンによって無視された。

ロシアのプーティン大統領の戦争をきっかけに燃料価格が上昇したため、ホワイトハウスはバイデンと不貞腐れた王太子の電話会談を実現しようと奔走したが拒否された。しかし、サウジアラビアの後継者サルマンはカショギ殺害を命じたという疑惑を通してプーティンの側に立ち、女性人権活動家が逮捕され囚人が大量に処刑されても非難を囁くこともなかった。サルマンはプーティンの緊密な同盟者と見られることに全く不安を感じていないのである。

サウジアラビアが同じ権威主義者プーティンに近づいたのは、当時のバラク・オバマ米大統領との関係が悪化した2015年に遡る。その1年後、ロシアがOPECに加盟した。リヤドはその後、モスクワとの関係を強化する一方、アメリカとの関係は、オバマ時代のイランとの核合意から離脱したドナルド・トランプ米大統領の在任中に改善し、バイデンが指揮を執って合意復活のための協議を再開すると再び悪化するなど、一進一退を繰り返している。トランプ政権時代、ムハンマド・ビン・サルマンは改革者として描かれていたが、バイデン政権下では、サウジアラビアのイエメン攻撃で民間人が死亡したことや、自国内の人権侵害で再び厳しく批判されるようになった。

クインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフトの共同設立者であり上級副会長を務めるトリタ・パルシは、サウジアラビアがロシアを支持している理由は、サルマン王太子がロシア大統領の地位をプーティンが継続し、アメリカで政権交代が起きることを確信しているからだと述べている。

パルシは次のように発言している。「サウジアラビアの王太子サルマンはプーティンに賭けている。サルマンはプーティンを信じているだけでなく、共和党が中間選挙で勝利し、バイデンがレイムダックになることを望んでいる。2025年までに、バイデンと民主党は政権を失い、プーティンはロシアの大統領に留まるとモハメド・ビン・サルマン王太子は信じているようだ」。

今回の危機は、アメリカが主張するエネルギーの独立性を改めて認識し評価することを余儀なくさせた。新型コロナウイルス感染拡大によって大きな損失を被った国内のエネルギー産業をよりよく管理するために、より首尾一貫した長期計画を打ち出すか、口を閉じて権威主義者たちを容認するかのどちらかでなければならない。

エネルギー分野の専門家たちによれば、いずれにせよ、米国のフラッキング企業(訳者註:シェールガス採掘を行う企業)が新たな井戸を掘るには数カ月かかるという。イランやヴェネズエラに対する制裁が解除されたとしても、その石油を世界市場に供給できるようになるにはまだ時間がかかるだろう。先週末、ドイツはカタールと液化天然ガス(LNG)輸入の長期契約に調印した。カタールはロシア、イランに次いで3番目に大きなガス埋蔵量を持つ国であり、この契約によりドイツは液化天然ガスを迅速に輸入することができる。この協定により、ドイツはカタールのガスを輸入できるように2つの液化天然ガス基地の建設を急ぐが、それでもそのガスがドイツの家庭に供給されるまでには何年もかかるだろう。これまでドイツは、パイプラインで輸送される安価なロシアのガスに頼っていた。

現在世界最大の産油企業であるサウジアラムコは、2021年に過去最高益となる1100億ドルを稼ぎ出し、前年の490億ドルから124%増の純利益を記録した。サウジアラムコは石油の増産に向けた一般的な投資を発表したが、短期的に供給を増やすことは何もしていない。サウジアラムコのアミン・ナセルCEO(最高経営責任者)は、「私たちは、エネルギー安全保障が世界中の何十億人もの人々にとって最も重要であると認識しており、そのために原油生産能力の増強に引き続き取り組んでいる」と述べた。

国際エネルギー機関(IEA)は、今年末までにロシアから少なくとも日量150万バレルの原油が失われる可能性があると発表している。それが更なる価格高騰につながることは間違いない。OPEC+は次回今月末に会合を開き、状況を把握して原油の生産量を決めると見られている。しかし、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の要求についてアメリカに耳を傾けてもらえたとどれだけ感じられるかに大きく左右される。

彼らは、アメリカが核取引に関する立場を変えないことを確信しているが、イエメンのフーシ派との戦いにおいて湾岸諸国を支援し、人権侵害に対する批判を減らすことができるだろうか? 厳しい国益の世界で最も低い位置にあるのは、個人の自由である。サウジアラビアの活動家たちは、世界の石油の安定と価格の引き下げのために、再び代償を払うことになるかもしれない。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、バイデンからそれ以上のものを求めるかもしれない。

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バイデンはロシアを支持するサウジアラビアを罰するべきだ(Biden Should Punish Saudi Arabia for Backing Russia

-リヤドは石油市場に変化をもたらすことができたが、アメリカではなく、権威主義者の仲間に味方することを選択した。

ハリド・アル・ジャブリ、アニール・シーライン筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/22/biden-mbs-oil-saudi-arabia-russia-ukraine/

アメリカとその同盟諸国が一致団結してロシアのウクライナ侵攻に反対している中、サウジアラビアはロシアに味方している。侵略を公に非難せず、OPEC+協定へのコミットメントを繰り返したことで、サウジアラビア政府はアメリカとの長年のパートナーシップに亀裂が入っていることを露呈した。

原油増産の懇願にもかかわらず、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ロシアのプーティン大統領と会談した1週間後に、ジョー・バイデン米大統領との会談を拒否したとされる。ロシアの石油の補償を拒否することで、王太子は国際社会が科す制裁に直面してエネルギーを武器として、エネルギーに依存するヨーロッパ諸国をロシアの石油とガスの人質にすることを許可し、プーティンの侵略を助長している。

月曜日になっても、サウジアラビア政府はロシアの行動を非難することを拒否している。その代わりに、サウジアラビアの外務大臣はロシア側と会談し、両国の二国間関係とそれを「強化・統合する方策」を確認した。

サウジアラビアの強硬姿勢にもかかわらず、バイデン政権は最近、フーシ派がサウジアラビアの水とエネルギー施設を攻撃したため、パトリオット対ミサイルシステムをサウジアラビアに追加配置した。サウジアラビアは、アメリカの保護が必要であることを表明し、これらの攻撃による石油供給不足の責任を否定する声明を出した。米国は、アラムコによる投資拡大の約束にもかかわらず、リヤドによる増産の保証を報告することなく防衛策を送ったのである。

バイデン米大統領から要求を受けてもサウジアラビアが石油の増産に消極的なのは、忠誠心が変化していることを示す最新の兆候である。70年にわたるパートナーシップを通じて、ワシントンはリヤドの主要な安全保障の保証人として機能し、その見返りとして、サウジアラビアの歴代国王はエネルギー問題でアメリカと緊密に協調してきた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子が権力を掌握して以降、二国間関係は、7年間続くイエメン戦争などサウジアラビアの無謀な外交政策の決定や、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害で最も顕著に表れた人権状況の悪化によってますます緊迫してきた。

複雑な関係にもかかわらず、バイデン政権関係者の多くは、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカのコミットメントを繰り返し表明し続けた。このような発言は、フーシの越境ミサイルやドローンによる攻撃からサウジを防衛するために最近6億5000万ドルの武器売却を行うなど、サウジアラビア主導のイエメン戦争に対するアメリカの継続的支援に裏打ちされたものである。

更に言えば、アメリカは最近、カタールを重要な非NATO加盟国に指定し、1月にアブダビで起きたフーシ派の無人機攻撃を受けてアラブ首長国連邦に追加の軍事資産を動員するなど、他の湾岸諸国のパートナーの安全確保に献身的であることを示している。このような安心感を持ちながらも、サウジアラビアは石油の増産と引き換えにイエメンでの戦争に対するアメリカの支持をもっと強要しようとしている。

現実には、サウジアラビアはアメリカの安全保障に関する保証を疑っていない。王太子が望んでいるのは、自らの支配を確実にすることである。アメリカは、湾岸諸国のパートナー諸国の物理的な安全を支援するために行動することはあっても、権威主義的なアラブの指導者が行うように、自分たちの好む体制を守るために民間人を攻撃することはないことを示してきた。湾岸諸国の支配者たちは、「アラブの春」におけるアメリカの中立的な姿勢が、エジプトにおけるワシントンの長年にわたるパートナー、ホスニー・ムバラクの失脚を許したと考えている

サウジアラビアの王室は、2011年にサウジアラビアが直接軍事介入したことでバーレーンのアル・ハリファ王家を救うことができた、マナーマの港に米海軍の第5艦隊がいたにもかかわらず、アメリカは役に立たなかったと考えている。それ以来、サウジアラビアの対米不信と国内の異論に対するパラノイア(被害者意識)は高まる一方である。サウジアラビアはサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子の統治下で、ロシアや中国との密接な関係の育成を加速させている。

アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史も、湾岸における意味のある軍事的プレゼンスもない。

プーティンや中国の習近平のように、サウジアラビアの歴代の支配者たちは資本主義における独裁的モデルを好み、権威主義体制の生存と国家間関係からの人権の排除に基づいた代替的な世界秩序を構築しているのである。

中国やロシアが両国内のイスラム系少数民族を虐待していることに対してサウジアラビアや他の主要イスラム国家が無関心であることは、これらの政府が人権に反対していることの相性の良さを示している。中国とロシアがイスラム主義運動を政権の不安定要因と考えて偏執狂的に恐れているが、サウジアラビアとアラブ首長国連邦はこうした考えを共有している。

サウジアラビアの国王と王太子は、イスラム教の重要性をサウジアラビアの国家戦略から切り離し、王室の役割を中心に据えることで、イスラム教徒を積極的に疎外しようとしてきた。例えば、2022年2月22日、サウジアラビアは初めて建国記念日を祝った。この新しい祝日は、サウジアラビアがワッハーブ派の創始者であるムハンマド・イブン・アル・ワッハーブと提携し、それによってサウジアラビアの宗教的正当性を高め、領土拡大を開始した1744年ではなく、ムハンマド・ビン・サウドが支配権を得た1727年を起源とするものであった。

西側諸国の多くは、サウジアラビア政府が宗教警察のようなアクターを無力化し、厳しい男女分離を若干緩和する決定を歓迎したが、これらの変化はまた、前例のないレヴェルの内部抑圧に対応している。人権活動家の投獄、海外での反体制派に対する弾圧、そして最近の81名の囚人の大量処刑は、ムハンマド・ビン・サルマン王太子の意図の本質を明らかにしている。それは、かつて国家権力を握っていた聖職者や保守派エリートを含む全ての反対意見を、より西側の社会規範の皮をかぶって黙らせることだ。

カショギの殺害をめぐる長引く憤慨と政治的疎外は、王太子に、欧米諸国から見たサウジアラビアのブランドを再構築する努力は失敗したと確信させたのかもしれない。その代わりに、中国とロシアは、ジャーナリストを殺害した皇太子を決して非難しないパートナーである。ロシアの場合、最近の歴史では、その行為すらも支持する可能性さえある。

しかし、中国とロシアに安全保障の保証に賭けるのはギャンブルである。アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史もなければ、湾岸地域における軍事的なプレゼンスもない。仮にサウジアラビアが米国製の軍備から移行する場合、そのプロセスには数十年と数千億ドルを要するだろう。

更に言えば、中国とロシアはイランと緊密な互恵関係にあり、サウジアラビアの顔色をうかがってこの関係を犠牲にすることはないだろう。サウジアラビアは、アメリカと対話する際、イランやイランが支援する集団に対するアメリカの保護をこれまで以上に保証するよう主張してきた。リヤドが北京やモスクワとの提携のためにそうした懸念を払拭したいと望んでいるとすれば、こうした姿勢はテヘランに対するアメリカの不信感を煽ることが主な目的であることが明らかになるであろう。

サルマン王太子のイランへの不安は本物だとしても、それ以上に国内状況への不安もまた大きい。そのためには、民間人に多大な犠牲を強いてでもシリアのアサド政権を維持しようとする姿勢を示したプーティンのようなパートナーが望ましい。今のうちにロシアと手を組んでおけば、サウジアラビア市民の大規模な抗議行動など、いざというときにクレムリンが助けてくれるだろうと期待しているのだ。

現在の米国のサウジアラビア宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているという王太子の認識を強めているだけのことだ。

ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、任期付きで選出された欧米諸国の政府高官たちのためにプーティンと敵対するリスクを冒すよりも、むしろプーティン支持という長期的なギャンブルに出るだろう。ボリス・ジョンソン英首相やジェイク・サリヴァン米国家安全保障問題担当大統領補佐官、ブレット・マクガーク米国家安全保障会議中東担当調整官らアメリカ政府高官たちによる最近の直接の懇請の失敗や、アントニー・ブリンケン米国務長官との面会を拒否したことは、サウジアラビア王太子が心を決めていることの証拠である。プーティンのエネルギー力を弱め、ロシアの石油ダラーの生命線を断つような石油政策を採用することはないだろう。彼は、ワシントンよりモスクワを選んだのだ。

同様に、バイデン政権がヨーロッパの同盟諸国にロシアの化石燃料を手放すよう圧力をかけているこの時期に、アメリカ政府がサウジアラビアに石油を懇願するのは止めるべきだ。アメリカの民主政治体制とサウジアラビアの権威主義体制は相容れず、長い間その関係を緊張させてきた。アメリカがサウジアラビアに石油をねだるのを止めるのは、もう過去のことだ。もう一つの残忍な炭化水素を基盤としている独裁国家に力を与えている場合ではないのだ。

ロシアの石油をサウジアラビア、イラン、ヴェネズエラの石油に置き換えるという不愉快な見通しに直面したとき、イラン核取引に再び参加し、イランの化石燃料を世界市場に戻すことは、最近の価格上昇に対処するためという理由はあるにしても、最悪の選択だ。イラン産原油の購入は、再交渉された核取引の条件によって制約されたままである。一方、サウジアラビア(またはヴェネズエラ)の要求に応じれば、アメリカが懸念する分野に対処するための追加の安全措置はないことになる。長期的には、バイデンは化石燃料への依存を減らし、それによって避けることができない石油価格ショックからアメリカ経済を守るよう努力しなければならない。そうしてこそ、アメリカ政府は石油を保有する権威主義者たちとの偽善的な取引を止めることができる。

リヤドは、最近の関係の冷え込みにもかかわらず、依然としてワシントンの保護を当然と考えているようだ。その理由の一つは、カショギの殺害とイエメンの荒廃についてサルマン王太子の責任を追及するというバイデン大統領の約束が守られなかったことが挙げられる。

現在のアメリカのサウジアラビアに対する宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているというムハンマド・ビン・サルマン王太子の認識を強めるだけであり、この見解は、アメリカ政府が自分を支援し続ける以外に選択肢がないと考えて、ロシアや中国とより緊密に提携することを促すだろう。

その代わり、バイデンはこの機会に、全ての武器売却を中止し、サウジアラビア軍への保守(メンテナンス)契約を停止するなど、アメリカとサウジアラビア王国の関係を根本的に見直すべきだ。そうすることで、リヤドに対して唯一の安定した安全保障上のパートナーを失う危険性があることを示すことができる。

もし、サルマン王太子が独裁者たちへの支援を強化するならば、アメリカにとって大きな損失にはならないだろう。

※ハリド・アル・ジャブリは、医療技術の起業家であり、心臓専門医でもある。サウジアラビアから追放され、兄弟2人が政治犯となっている。ツイッターアカウント:@JabriMD

※アニール・シーラインはクインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフト研究員である。ツイッターアカウント:@AnnelleSheline

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻に伴う経済制裁として、欧米諸国を中心にロシアからの石油輸入を禁止する措置を取る国が多く出ている。一方で、中国、インド、メキシコ、中東諸国、イスラエル、南アフリカ、ブラジルといった国々は慎重な態度を保っている。結果として、石油価格が高騰し、物価高(インフレーション)に拍車をかけている。エネルギーや物流コストを押し上げることで、私たちの生活に大打撃を与えることになる。ロシアへの厳しい制裁に乗り出していない国々に対してはロシアも様々な方法で石油や天然資源を現在よりも安い価格で提供するということを行うだろう。欧米諸国はそうした動きを批判するだろうが、そうした国々にまで経済制裁を科すということになれば、世界経済の混沌はますます深刻化する。

 アメリカのジョー・バイデン政権は中東諸国に石油の増産を求めているが、アメリカとサウジアラビアとの関係は緊張関係にあり、この試みもうまくいっていない。民主党の一部議員は中東諸国における人権状況を批判しており、そうした国々にいざとなったら膝を屈して石油の増産をお願いしなければならないということに不満を高めているようだ。また、サウジアラビア出身のジャーナリストだったジャマル・カショギが殺害された事件もアメリカとサウジアラビアとの関係を悪化させる原因となっている。

 サウジアラビアは高みの見物を決め込んでいる。石油価格が高騰すれば利益は勝手に転がり込んでくる。何もわざわざ石油の増産によって石油価格を安くする必要などない。特にアメリカの今の政権は自分たちを批判してきた民主党だ。何を協力してやる必要があるのかということになる。

 国際関係は複雑であり、学級会的な正義感や単純な感情論では動かない。このことを私たちはよく理解しておく必要がある。

(貼り付けはじめ)

アメリカ・サウジアラビア間の緊張関係は石油増産への動きを複雑化させている(US-Saudi tensions complicate push for more oil

ロウラ・ケリー、レイチェル・フラジン筆

2022年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/598828-us-saudi-tensions-complicate-push-for-more-oil

サウジアラビアとアメリカとの緊張関係は、バイデン政権がリヤドに石油生産の強化を説得する努力を複雑にしている。サウジアラビアが石油増産をすれば、ウクライナでのロシアの戦争によって悪化した物価高騰の中で、消費者にある程度の救済を与える可能性がある。

2018年に『ワシントン・ポスト』紙所属のジャーナリスト、ジャマル・カショギがイスタンブールのサウジ領事館に誘い込まれて殺害されて以来、アメリカ政府はサウジアラビアへの批判を強めてきた。

サウジアラビアの人権記録やイエメン内戦をめぐる緊張が、アメリカ連邦議会から超党派で批判され、アメリカとサウジアラビアの間での争いに拍車をかけている。

ジョー・バイデン政権はサウジアラビアとアラブ首長国連邦に増産を求めているが、アメリカとサウジアラビアとの間の緊張関係のために、苦境に追い込まれている。

バラク・オバマ政権で人権問題の最高責任者を務めたトム・マリノウスキー下院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は今週、記者団に「サウジアラビアに石油の増産を求めなければならないのは嫌なことだ」と述べた。

マリノウスキー議員はまた「バイデン政権が、私の選挙区の有権者たちが給油所で搾取されないように、サウジアラビアとの関係をどう利用するかを考えなければならないのが嫌だ」とも述べた。

サウジアラビアが戦略的石油備蓄(strategic oil reserves)を支配しているため、中間選挙を前に、インフレーションとガソリン価格の高騰の中で消費者を少しでも救済するよう圧力を受けているバイデン政権は、リヤドに対する戦略を見直す必要に迫られるかもしれない。

バイデン大統領は、リヤドの人権記録に対する懸念を表明する一方で、安全保障上の利益とエネルギー需要の共有に焦点を当てた現実的な関係を再構築しようとしている。

これは、トランプ政権がリヤドに対して過度に友好的で個人的な取引を行い、イエメンの壊滅的な内戦でサウジアラビア主導の攻撃を無条件で支持したこと(carte blanche support)からの急反転を意味する。

しかし、バイデンの戦略は今、世界的に必要な時期に彼自身の政権を不利な立場に追い込んでいるように見える。

王国の実質的な支配者であり、後継者候補でもあるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、ロシアのウクライナ侵攻の初期に、ロシアへの支援活動の一環としてバイデンからの電話を拒否したと報じられた。

ホワイトハウスはこの『ウォールストリート・ジャーナル』紙の報道に対して反論し、ジェン・サキ報道官は「不正確」と述べた。

サキ報道官は「大統領の関心は、今後、私たちの関係を前進させること、つまり、私たちがどこで協力できるのか、経済や国内の安全保障でどう協力できるかということにある。大統領は、この関係が続くことを期待している」と先週のブリーフィングで記者団に語った。

ロシアによるウクライナ衣侵略によって悪化したガソリン価格の高騰は、産油国の主要グループであるOPEC+のメンバーであるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)を戦略的な立場に立たせることになった。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦は「余剰生産能力(spare capacity)」を持っているため、原油を市場に対して即座に追加供給し、それを一時期維持することができる。

しかし、ワシントンのアラブ湾岸諸国研究所上級研究員のフセイン・イビッシュによれば、リヤドとアブダビは両国それぞれの経済を強化するためにロシアと交わした合意の一環として、供給量の増加を求める声に抵抗してきたという。

イビッシュは最新の論文の中で「サウジアラビアとUAEは、国家発展と経済移行計画の基礎として、ロシアと締結したOPEC+の石油生産協定に依存している」と書いている。

サウジとアラブ首長国連邦は、ロシアの侵攻を非難する露骨な声明を出すことにも抵抗している。その代わり、両国のトップはアメリカを批判している。

カショギを「捕獲または殺害」する計画を承認したとアメリカの情報機関が発表したムハンマド皇太子は、今月出版された『アトランティック』誌の長時間におよぶインタヴューで、バイデン大統領が自分をどう思っているかについて、「単純に」気にしないと述べ、アメリカがサウジ王政を遠ざけることがバイデン大統領を傷つけることになると示唆した。

「アメリカの国益を考えるのは彼次第だ」と同誌は彼の言葉を引用したが、ムハンマド皇太子は肩をすくめながら「まぁ頑張ってみれば」と述べた

アメリカ政府の高官たちは2月17日に最後にリヤドを訪問し、ロシアの侵攻を前にサウジアラビアに石油の増産を求めようとした。国務省のネッド・プライス報道官は今週、「私たちは日常的にサウジアラビアのパートナーと連絡を取り合っている」と述べた。

しかし、サウジアラビアとアラブ首長国連邦はアメリカへの不満を解消することに熱心なように思われる。

ユセフ・アル・オタイバ駐米アラブ首長国連邦大使は今月、ワシントンとアブダビが「ストレス耐性テスト」を受けていると述べたと報じられている。

「しかし、私たちはそこから抜け出し、より良い場所にたどり着くと確信している」とアブダビで開催された防衛会議で述べたとも報じられた。

アラブ首長国連邦は、アラブ首長国連邦へのF-35戦闘機の納入を承認するようバイデン政権に求めている。また、バイデン大統領が取り消したイエメンのフーシ派分離主義勢力を外国テロ組織として再指定するようバイデンに迫っている。

バイデン大統領はテロリストリストの再指定を検討していると述べたが、人権団体や民主党議員の一部は人道支援の提供を妨げることになると警告している。

ワシントン近東政策研究所の研究員で、財務省でイスラエルと湾岸諸国を担当の高官を務めたキャサリン・バウアーは、アメリカと湾岸諸国の間の特定の緊張は、この地域からのアメリカの後退という、より大きな感情の一部であると指摘する。

バウアーは「アメリカが十分な注意を払っていないという感覚がそうだ。アメリカが十分な注意を払っていないという感覚は、アメリカが過去に最も信頼できるパートナーでなかったという感覚に拍車をかけると思う」と述べた。

しかし、湾岸諸国との関係を改善し、石油の生産量を増やすことは、ロシアのエネルギー輸出を受け入れることに等しい、それは両者が重大な人権侵害に責任があるからだと考える人たちもいる。

複数の人権団体は、サウジアラビア主導の空爆によって何千人もの民間人が犠牲になっており、この戦禍の国が世界最悪の人道危機と分類されていることに加え、無差別暴力が形成されているということを記録している。バイデン大統領は就任1カ月でイエメンにおけるサウジアラビアの攻撃作戦に対するアメリカからの軍事支援を終了した。

「クインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフトの上級研究員であるウィリアム・ハートゥングは、「サウジアラビアがイエメンで行ってきたことは、実際にはもっと悪いことだと考えているが、あまり注目されていないのだ」と述べた。

ハートゥングは続けて「ロシアが感じている圧力のほんの一部でもサウジアラビアにかければ、イエメンでの殺害を食い止めるチャンスは十分にあると思う」と述べた。

一方で、共和党側は、ガソリン価格の高騰をバイデンの責任として非難することを重要な攻撃戦略としている。

バイデンの政策よりもむしろ、複数の国際的な要因が価格高騰の主な原因である。

共和党員も一部の政権関係者も、米国での掘削をもっと進めるよう求めている。

エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は、今月の業界会議で、「私たちは戦争状態にあり、緊急事態であり、責任を持って短期的な供給を増やさなければならない」と述べている。

これはギリシャを含むヨーロッパの一部のアメリカの同盟諸国から支持されている主張である。

ギリシャのバルヴィシオティス・ミルティアディス外務副大臣は今週ワシントンで行った、本誌とのインタヴューの中で、「石油の輸入をロシアやペルシア湾岸諸国に依存すべきではないと思う」と述べた。

ミルティアディスは更に、「私たちは、システムをより安定させるために、目に見える、身近なエネルギー資源を開発しなければならない」とも語った。

しかし、アメリカ企業がより多くの石油を増産化するには時間がかかるため、バイデン政権は最も即効性のある解決策を模索している。

NATO大使のカート・ヴォルカーは、ロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー不足の代替を湾岸諸国に求めるというバイデン政権の戦略は正しいと指摘する。彼は、ヨーロッパ連合とイギリスもバイデンに倣ってロシアの石油と天然ガスの輸入を禁止すべきだと主張した。

ヴォルカーは「私はそれが正しいことだと考える。石油と天然ガスの市場について全員と話し合うべきだ」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。
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 年末年始はイラン革命防衛隊のカシーム・スレイマニ殺害によってイラン、中東情勢がどうなるかということで大きな不安が起きたが、現在は小康状態となっている。スレイマニはこれまで様々なテロ事件や攻撃に関わったとして、スレイマニ殺害を評価する主張がある一方で、中東情勢を不安定化するような決断を下したドナルド・トランプ大統領の安易な姿勢に対する批判も存在する。
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 アメリカもイランも全面戦争に突入することを避けたいという思惑は一致しているので、即座に戦争ということにはならなかったが、それでも何が起きるか分からない、不測の事態で開戦まで突き進むということは考えられた。第一次世界大戦は一発の銃声から始まったということを考えると、「悪い奴だから殺して当然」というのは単純すぎる主張である。

 少し古い記事になるが、アメリカ国民はイランとの戦争を望んでいない、ということを示す記事をここで紹介したい。著者はメリーランド大学教授で、2019年9月にトランプ政権の対イラン政策についての世論調査を実施した。ここで示された数字はどれも、アメリカがイランとの緊張関係を深刻化させるべきではない、戦争にまで進むべきではないというアメリカ国民の考えを浮き彫りにするものだ。

 そもそもトランプ大統領はアメリカの対外戦争には反対、アメリカが世界中に展開している状況に反対ということで当選した大統領だ。「アイソレーショニズム(Isolationism、国内問題解決優先主義)」「アメリカ・ファースト(America First、アメリカ国民の生活が第一)」という言葉は日本でも広く知られることになった。また、2020年は大統領選挙の年であり、トランプ大統領は再選を目指している。アメリカ国民の意向には特に敏感にならざるを得ない時期である。

そのような大統領の下で、戦争を起こすような出来事が起きるというのはおかしいということになる。「火遊び」にしてはその危険性はあまりにも大きい。ウクライナ疑惑から起きた弾劾から目を逸らさせるということも理由としてあっただろうが、連邦上院で否決される公算は高いので、そこまでする必要があるのかということになる。政権内のマイク・ペンス副大統領やマイク・ポンぺオ国務長官の差し金ということは大いに考えられる。危険な対外戦争を推進するというネオコン勢力がトランプ政権内にもかなり入っているのだろう。今回の件もこうした人々が絡んでのことだろう。
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 トランプ大統領が自身の発言と矛盾するようなことを決定したというのは、大統領職の厳しさを浮き彫りにするものだと私は考える。大統領の周りには自分よりも頭が切れて、弁も立つ人物たちが揃っている。こうした人々が話す内容を全て理解することはできない。そして、大統領を説得して自分たちの望む政策をやらせようとしてくる。そのためにあらゆる権謀術数を駆使し、手練手管を繰り出してくる。それにフラフラっと乗せられてしまうということはどんな大統領にも起きることだろう。トランプ大統領が特別に弱いと彼以外だということはない。

 話は逸れてしまったが、トランプ大統領が上京を何とかコントロールできる範囲に収め、イラン側も復讐を「予告して」行うという抑制的な行動に出た。しかし、両国の最高首脳たちが全面戦争を望まなくても、全面戦争を望む勢力がどちらの側にもいるということを考えると、不測の出来事でどうなるかは分からない。事態の推移を注視しなくてはいけない。

(貼り付けはじめ)

アメリカ国民は現在もイランとの戦争を望んでいない(The U.S. Public Still Doesn’t Want War With Iran

―最新の世論調査のデータによると、アメリカ国民の過半数は、イランとの緊張関係を高める対イラン政策を批判している、スレイマニ殺害が起きてもそれは変化しないだろう

シブレイ・テルハミ筆

2020年1月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/01/03/killing-suleimani-iran-tension-trump-fault/

中東地域での戦争を嫌悪していると明言しているある大統領がイランのカシーム・スレイマニ将軍の殺害を命じた。ドナルド・トランプ米大統領はイランとの争いが軍事衝突に突き進むように政策を進めているが、その坂道を更に転げ落ちていくかもしれない。確かなことは、トランプ大統領がアメリカ国民に対してスレイマニがアメリカ国民の流血の原因になっていたと説得することは容易なことだ。しかし、説得を受けたからと言って、アメリカ国民はアメリカが戦争に進むことがアメリカの国益に最も適うと考えるようになるとは意味しない。

2019年9月にメリーランド大学が全国規模で世論調査を実施した。調査対象者は3016名だった。この世論調査の結果が示しているのはイランとの危機がエスカレートする中でトランプ大統領がアメリカ国民の意見とは異なることをして苦境に直面しているということだ。世論調査の結果には3つの特徴が出ている。共和党員と共和党支持者の過半数を含むアメリカ国民の4分の3がイランとの戦争は正当性がないであろうと答えている。多くの人々はトランプ政権がイランとの緊張を高めていることを非難し、トランプ政権の対イラン政策を認めていない。アメリカ国民はトランプのイランに関する目的を評価することについて分裂している。

アメリカ国民の大部分は、アメリカの国益がイランとの戦争を正当化するとは考えてない。世論調査に答えた人々の5分の1だけがアメリカはイランに関する目的を達成するために「戦争の準備をすべきだ」と答えたのに対し、4分の3がアメリカの目的は戦争を正当化しないと答えた。共和党員と共和党支持者の内、34%だけがアメリカの国益を守るために戦争を選択肢に入れるべきだと答えた。

●この中であなたの考えにより近いのはどれですか?

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2019年9月まで

出典:メリーランド大学

トランプ大統領にとってさらに懸念材料となるのは、世論調査の約半分が2019年9月14日より前に実施されたということだ。この日、サウジアラビアの油田地帯へ軍事攻撃が実施された。この攻撃についてアメリカはイランが攻撃を実施したと非難した。世論調査の残り半分はこうした事態を受けての国民の反応を示す稀有な機会になるこの攻撃はアメリカの国民の姿勢に対して影響を与えることはなかった。アメリカ国民の4分の3が開戦という選択肢は正当化されないと言い続けている。最近起きたイラク国内のアメリカ大使館への攻撃とスレイマニ殺害もまた同じ結果を生み出すことになるだろう。

●この中であなたの考えに近いのはどれですか?

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2019年9月現在

出典:メリーランド大学

メリーランド大学が2019年10月に実施した世論調査は、イランとの危機について4つの説明ができることを示している。イランの現政権の性質、イエメンでの戦争、2015年のイランとの核開発をめぐる合意の放棄、石油輸出を含むイランに対する新たな経済制裁である。これらの要素について調査対象者にランク付けするように問われた後、それぞれの説明の重要性は個別に証明されている。最も支持が少ない要素はイエメンでの戦争は5%がこれを原因に挙げている。イランの現政権の性質を原因に挙げているのは22%が理由に挙げている。69%はトランプ政権の政策を支持していない。イランとの合意の廃棄と新たに経済制裁を科すことへの賛成はそれぞれ35%、34%だ。重要なことは、共和党員の60%が危機の原因はトランプ政権の行動だと答えている。

●ペルシア湾における緊張関係について最も良く説明しているのはどれだと思いますか?

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2019年9月現在

出典:メリーランド大学

サウジアラビアの油田への攻撃前、トランプ政権のイラン政策への反対は51%だったが、攻撃後は57%に上昇している。アメリカ国民の開戦に対しての忌避とトランプ大統領の政策がペルシア湾岸地域の緊張関係の深刻化の原因だと考えていることを考慮すると、最近の一連の出来事についても同様の結果が出るだろうと考えられる。

●アメリカ政府のイランへの対処の方法について支持しますか、不支持ですか?

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2019年9月現在

出典:メリーランド大学

トランプ政権の対イラン政策の目的について評価すると次のようになる。30%(共和党員の53%)がイランの核兵器開発の阻止を挙げている。28%(共和党員の45%)がバラク・オバマ前米大統領の政策に戻すことを挙げている。9%がトランプ大統領はアメリカ国内で「強い大統領だ」と見られたいと考えている。そして、7%が中東地域のアメリカ同盟諸国を喜ばせるもしくはイランの態度を変化させるということを挙げている。

共和党員たちがトランプの対イラン政策の目的として望んでいるのはイランの核兵器開発の阻止だ。これはトランプ大統領にとって頭の痛い問題となるだろう。それは、ここ数カ月でイランが核開発プログラムを促進し、スレイマニ殺害の後に更に急速に促進することになるだろうからである。

●現在のトランプ政権の対イラン政策において最も重要な目的にすべき選択肢は何だと考えますか?

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2019年9月現在

出典:メリーランド大学

この世論調査が示しているのは、スレイマニ殺害を受けてのアメリカとイランとの間の緊張関係の悪化は、トランプ大統領のアメリカ国民からの支持率を試すものとなるだろうということだ。もちろん、トランプ大統領は状況をコントロールする卓越した能力を持っていることを示している。特に彼の支持者たちの間ではそのように考えられている。トランプ大統領は自分の考えに同調する人たちを獲得することができるだろう。しかし、アメリカ国民の戦争に対する懸念は現実的なものだ。イランとの衝突によって流されるアメリカ国民の血というコストもまた現実的なものだ。トランプ大統領が政権前半で行ったイランとの合意の破棄と経済制裁の強化は結果として二国間の関係を断絶寸前に追い込む理由となったと民主党員も共和党員も考えている。トランプ大統領の政策がアメリカとイランとの対立を深刻化させると見られると、彼は国民からのより大きな反対に直面するようになるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。 

 2019年9月14日にサウジアラビアの東部、ペルシア湾岸沿いのアブケイクの石油生産施設が攻撃された。サウジアラビアの1日当たりの産油量が半減する被害が出ているが、死傷者は出なかった。

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サウジアラビア・アブケイクの地図

  アメリカのドナルド・トランプ大統領とマイク・ポンぺオ国務長官は今回の攻撃はイランが実行、もしくは関与しているとして非難している。トランプ大統領は米軍が臨戦態勢にあるとまで発言した。また、サウジアラビア外務省は、イラン製の武器が使われたという声明を発表した。これに対して、イランは関与を完全否定しており、また中国は安易な決めつけをしないように懸念を表明した。

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攻撃後の様子 

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攻撃による被害の様子

  今回の攻撃について、イエメンの反体制勢力ホーシー派(Houthis、フーシ派)が攻撃を実行したという声明を発表した。ホーシー派にはイランが支援を行っている。ホーシー派はイエメン内戦の当事者であり、もう一方の当事者である現政権を支援しているサウジアラビアに対して、これまで数度攻撃を行っている。しかし、これほど重大な被害を与える攻撃となったのは初めてのことだ。 

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ホーシー派

  今回の攻撃については明確になっていないことが多い。誰が攻撃を実行したのか、どのような兵器が使われたのか、イランが実行もしくは関与したというのは真実か、サウジアラビアの自作自演の可能性はどうか、など疑問が次々と出てくる。

 アメリカ政府はイランの実行もしくは関与と決めつけている。また、サウジアラビアもイランを非難する声明を発表した。他の大国は抑制的に対応している。トランプ大統領は米軍が臨戦態勢にあると述べた。しかし、アメリカ軍がイランと直接戦うことは今のところ考えられない。 

 トランプ大統領は米軍の中東とアフガニスタンからの撤退を公約にして当選したことを考えると、来年大統領選挙を控えており、アメリカが新たな戦争をする可能性は低い。アメリカの脅威、圧力が低下する中で、世界規模で不安定さが増している。日韓関係の悪化もアメリカの存在感の低下が原因だ。 

 サウジアラビアとイランはペルシア湾をはさんで対峙している。ペルシア湾岸をはさんで直接戦火を交えることは、お互いが石油輸出を命綱としている以上、ペルシア湾岸を戦場にしたくはないだろう。サウジアラビアが単独でイランと戦うというのもサウジアラビアにとっては貧乏くじを引くようなもので、戦争によって国内が不安定になれば、サウジ王家の存続にまで影響が出る可能性もある。 

 イランにしてみれば、アメリカのトランプ大統領が強硬派のジョン・ボルトン国家安全保障問題担当補佐官を解任してくれ、交渉に前向きな姿勢を見せているのに、わざわざアメリカとの対立を激化させる危険な冒険をするとは考えにくい。

 アメリカが構築した戦後世界体制の緩みがでてきて、世界各地が不安定な状況になっている。アメリカからの距離感の遠近で、「ポスト・覇権国アメリカ」時代への移行期に、どれくらい影響を受けるかが違ってくるだろう。 

(貼り付けはじめ)

 サウジアラビアの石油生産施設に対する複数の攻撃についてあなたが知っておくべきこと(What You Need to Know About the Attacks on Saudi Oil Facilities)

―イランに責任があるとされる攻撃によってもアメリカとの間で軍事衝突には今のところ至っていない。 

ロビー・グラマー、エリス・グロール、エイミー。マキノン筆

2019年9月16日

『フォリーン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/09/16/what-you-need-to-know-about-the-attacks-on-saudi-oil-facilities-yemen-houthis-iran-who-attacked/

 土曜日にサウジアラビアの石油生産施設に対して攻撃があった。この攻撃によって、国際石油市場にショックを与え、イランとアメリカとの間の緊張を高めた。ドナルド・トランプ大統領は、アメリカ軍は反撃のために「臨戦態勢にある(locked and loaded)」と警告を発した。

 しかし、攻撃自体にはっきりしない点がまだ多く残っているのが現状だ。誰が攻撃を実行したのか、サウジアラビアの1日の石油生産量の半減させることに成功した発射体もしくはドローンはどこから飛んできたのか、ということをはじめ疑問は多く残っている。アメリカ政府高官たちはイランを非難しているが、イランは関与責任を否定している。

 サウジアラビア外務省は月曜日に発表した声明の中で、「初期調査の結果、攻撃に使用された武器はイラン製の兵器であることが示唆される。攻撃に使用された兵器や物質に関する調査は現在も継続中だ」と述べた。

 イランの支援を受けているイエメンの反体制勢力ホーシー派が攻撃を実行したことを認めた。しかし、専門家たちは、ホーシー派がこのような複雑なそして大胆な攻撃を実行出来るのかどうか、疑問に思っている。

 月曜日、この攻撃をイランが実行したか、もしくは関与したのか、どう考えるかと質問され、トランプ大統領は残された証拠はイランの関与を示していると発言した。大統領は「そのように考えられる。現在調査が続けられている」と述べた。

 アメリカ政府高官は攻撃直後の様子を撮影した衛星写真を後悔した、しかし、イランの関与が疑われる中で、それ以外の諜報関係の資料公表は行っていない。ヨーロッパ連合や中国といった諸大国は状況が不明確な状況で非難を行うことに対して慎重さと懸念を表明した。

 イランとアメリカとの間の対立が続くという重要な状況の中で、不確定な要素が多いが、重要な疑問について考えていきたい。

 ●攻撃はどのようにして実行されたか?

 攻撃がどのように実行されたかということの正確な全容は依然不明瞭だ。しかし、残された証拠などから、ミサイル攻撃、もしくはドローンによる攻撃、もしくはそれら2つを組み合わせたものであろうということだ。複数の攻撃によってサウジアラビアのアブケイクにある油田と石油精製施設が破壊された。

 アメリカ政府高官たちは施設には17か所の着弾があったと述べた。また、攻撃直後の衛星写真が示すところでは、17か所の着弾点は規則的にかつ正確に並んでいた。衛星写真では攻撃がどの地点から行われたことは明確にはなっていない。

●誰が実行者だと考えられているか?

 イランの支援を受けているイエメンの反体制組織ホーシー派は土曜日の攻撃を実行したと発表した。10機のドローンを送り施設を攻撃したと述べた、月曜日、ホーシー派はサウジアラビアの他の石油生産施設に対する更なる攻撃を行うと警告を発した。ホーシー派は所有兵器でサウジアラビア全土を攻撃できると述べた。

しかし、アメリカ政府はホーシー派の主張について疑念を抱いている。今回のような手際のよい攻撃を1つの反体制グループが実行できるだろうか、彼らの能力を超えているとアメリカ政府高官たちは考えている。

 マイク・ポンぺオ米国務長官はすぐにイランを名指しした。ポンぺオは同曜日にツイッターで「私たちは全世界の国々がイランによる攻撃を公式にかつ高らかに非難することを求める」と書いた。更に、イエメンからの攻撃であったことを示す証拠は存在しないと付け加えた。ポンぺオは彼の声明内容の正確性を担保する証拠は出していない。

 シンクタンクであるファンデーション・フォ・ディフェンス・オブ・デモクラシーズのイラン専門家ベウナム・ベン・タレブルは、ホーシー派はこれまでにもサウジアラビア国内の攻撃目標に対してミサイル攻撃やドローン攻撃を行ってきたが、そうした兵器や技術はイランから供与されたものだ、と指摘している。しかし、ホーシー派はこれまでこのようなサウジアラビア領土内深くに存在する重要施設の攻撃に成功したことなどなかった。

 アメリカ政府高官は、衛星写真に写っている施設内部の着弾点から分かることは、攻撃は施設の北部もしくは北西部、イラン、イラク、もしくはペルシア湾から実施されたもので、イエメンからではないということだと述べている。しかし、日曜日に公表された複数の衛星写真にはオイルタンクの西側部分が損傷している様子が写っており、アメリカ政府高官の説明とは食い違っている。

 一つの説得力がありかつ好奇心をそそる可能性として、攻撃はサウジアラビア国内にいるホーシー派の協力者たちによって実行されたというものがある。ホーシー派は攻撃実行を認めた声明の中で、「サウジアラビア王国内の名誉ある人々との協力」に感謝すると述べた。サウジアラビア国内に協力者が存在したということになると、イエメンにいるホーシー派がどのようにして長距離攻撃を行ったのかという技術上の疑問や反対意見に対しての藩論ということになる。

 ●イラン国内の強硬派が独自に攻撃を実行した可能性があるのか?

 イスラム革命防衛隊のような改革派や強硬派のようなイラン国内の複数の派閥は長年にわたりイランの外交・安全保障政策に影響を与えようと張り合ってきた。特に2015年のアメリカとの核開発をめぐる合意において主導権を握ろうと張り合った。

 しかし、専門家たちはイラン国内の1つの派閥がこれらの攻撃を実行したのだろうかと疑問を抱いている。駐アラブ首長国連邦米国大使を務め、現在ワシントン近東政策研究所上級研究員バーバラ・リーフは次のように語っている。「この種の目標を攻撃する場合、イラン政府の指導者たちが承認した攻撃となるはずだと私は考える」。

 ブルッキング研究所の中東専門家スザンヌ・マロニーは、今回の攻撃にイランが関与していると述べるのは早計だと述べている。それでもマロニーは「攻撃の背後にイランがいたと仮定すると、確かに今回のような直接攻撃、しかも正確な攻撃がイランの最高指導者たちの賛意と認識がなければ起きなかったであろう」と述べている。

 ●攻撃はイラク国内から実行された可能性はあるのか?

 専門家やアメリカ政府関係者の中には、イランの代理勢力がイラクもしくはシリアから攻撃を実行した可能性を主張する人々も出てきている。アメリカ政府は5月にサウジアラビアに対して行われたドローンによる攻撃はイラクから発射されたものだと断定している。

 しかし、イラク政府は今回の攻撃がイラクの領土内から実行されたという報道の内容を強く否定している。月曜日、イラク政府は、ポンぺオ米国務長官がイラクのアデル・アブドゥル・マウディ首相と電話会談を行い、その中で、ポンぺオ長官がマウディ首相に対して、「イラクの領土は今回の攻撃に使用されていないこと」を示す情報を持っていると述べた、と発表した。米国務省はイラク政府からのこの発表についてまだコメントを発表していない。

 ●イランが自国領土内から攻撃を実行した可能性があるのか?

 イラン領土内からの攻撃だった可能性についてはアメリカ政府高官の中には可能性のあるシナリオだと述べている。そうだとすると、アメリカとイランの対立を激化させることになる。現役のアメリカ政府高官や元高官たちは、イランの通常のやり方はについて、他国にいる代理勢力を通じて攻撃を行い、自身の関与を見せかけでかつもっともらしく否定できるようにするものだと主張している。

 リーフは、「イランが攻撃に関与したとなると、これはイランの“グレーゾーン”を使う、もしくは後で否定が出来るような行動をとるというこれまでのやり方からは外れていることになる」と述べている。そして、もしそうだとすると、イラン対アメリカと中東地域の同盟諸国との間の対立の「激化のはしごを大きく上った」ことを示しているとしている。

 自国の領土内から軍事攻撃を行うと、イランは破滅的な反撃を受ける可能性に晒されてしまうことになる。イランは代理勢力に頼って自国の利益を守っているが、これは、イランが国防にあたり自国の通常の軍事力を使うことが出来ないためである。イラン領土内から対立国であるサウジアラビアにミサイルを発射することは、こうした代理戦略を放棄したことを意味する。

 シンクタンクであるインターナショナル・クライシス・グループでイラン・プロジェクトのリーダーを務めているアリ・ヴァエズは次のように述べている。「イランはこれまで非対称戦争の術に長けてきた。イランはこれまで自国が報復を受けないようにするために努力を重ねてきた」。

 ●アメリカはどのように対応するだろうか?

 トランプ政権下、アメリカとヨーロッパとアジアの同盟諸国との間で緊張が高まっている。しかし、どの国もペルシア湾岸諸国の石油生産施設に直接的な脅威を与えるようなあからさまな対立が起きることは望んでいない。それはイランも同じだ。ペルシア湾岸から算出される石油は国際エネルギー市場の基盤である。しかし、サウジアラビア外務省は声明の中で、サウジアラビア王国は、「国土と国民を防衛し、こうした侵略行為に対して武力で反応することが出来る能力を有している」と述べた。

トランプ大統領とイランとの間の対立は継続中だ。その中で、トランプ大統領はアメリカ人の人命が損なわれることはアメリカの軍事力を使った報復の最終ラインとなると明確に述べている。サウジアラビアの石油生産施設に対する攻撃への報復としてイランを攻撃することは、大統領選挙を約1年後に控えたトランプ大統領にとって政治的な計算において魅力的な答えとはならない。トランプ大統領は前回の大統領選挙で中東からの米軍の撤退を自身の公約の柱として当選したので、イランとの戦争という選択は賢明なものではないということになる。

 月曜日、トランプ大統領はイランとの戦争は「避けたいと望んでいる」と述べた。そして、ポンぺオ長官をはじめ政権幹部たちが間もなくサウジアラビアを訪問する予定となっている。ポンぺオ長官はイランとの外交は「決して行き詰って」はいないとし、「イラン側が合意を結びたいと考えているのは認識している。ある時点でうまくいくだろう」と発言した。

 元駐アラブ首長国連邦米国大使リーフは、アメリカは、中東地域に利害関係を持つヨーロッパの同盟諸国やそのほかの国々と外交関係を刷新し、それらを使ってイランとの緊張関係を緩和するようにすべきだと述べている。リーフは次のように述べている。「国際社会、特にイランとの強力な関係を誇っている国々からの一致した、そして強硬な反応がない限り、アメリカが同盟諸国との関係を刷新し、イランとの緊張関係を緩和することで、ペルシア湾岸の石油生産施設に関しては、緊張緩和によって各国が安全で自由な行動が出来るようになる」。リーフはイランとの強力な関係を誇っている国々として、日本、中国、ロシアを挙げている。

これまで数か月で、石油タンカーに対する複数回の攻撃とアメリカのドローン偵察機の撃墜といった出来事が起きた。これらの出来事だけではアメリカがイランと開戦するためには不十分だった。その代わりにアメリカは経済制裁とサイバー攻撃によって反撃することになった。ヴァエズは「過去が前兆だということになると、アメリカは直接的な軍事行動ではないがそれに限りなく近い報復行動を選ぶ可能性がある」と述べている。

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