古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:シリコンヴァレー

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争とイラン戦争によって私たちはドローン兵器が有効であることを知った。有効であるというのは「殺傷能力が高い(正確に目標である建物や人間を破壊、殺傷できる)」ということを意味するので使いたくない言葉である。ウクライナは西側諸国からの支援もあり、戦争を継続できている。西側諸国はこの4年以上にわたる大規模戦争で貴重なデータ、実戦でしか得られないデータをウクライナ側から得ることができた。

 拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体』(ビジネス社)で、私はシリコンヴァレーのIT企業、スタートアップ企業が米国防総省やアメリカ軍に深く食い込み、巨額の予算を分捕っていることを紹介した。彼らは、これまでの戦闘機や戦車、ミサイルなどの兵器を製造し、国家(軍隊)に買ってもらうことで巨額の利益を得てきた旧・軍産複合体(主要な軍需産業5社を「プライム」と呼ぶ)とは異なり、ソフトウェアやシステム、そしてドローンを主力製品・主力商品としている。

 戦争は、「精密な大量攻撃の時代(precise mass in war)」になりつつある。最新鋭で高価なミサイルや戦闘機、戦車の時代から、大量のドローンでの一斉攻撃(コンピュータで制御されている)の時代になりつつある。そして、これらの武器の方が安価だということになる。国家の経済力や生産力が軍事力の基盤になるという時代が長く続いたが、それも終わりを迎えつつある。

さらに重要な点について、下記論考の著者ファリード・ザカリアは次のように指摘している。

「1991年の湾岸戦争は、先進技術が戦争をより精密なものにできることを世界に示した。2026年、イランは世界にさらに重大なことを教えている。それは、精密さが大量生産される時代(Precision will now be mass-produced)が到来したということだ。勝利を収めるのは、単に最高性能の兵器を保有する国ではない。少数の精巧で高価な兵器と、膨大な数の安価なドローンを組み合わせられる国こそが勝利を収めるだろう。人間の判断は、やがてコンピュータアルゴリズムに取って代わられるだろう(Human judgment will over time give way to computer algorithms)。これが戦争の未来だ。そして、それは私たちの想像をはるかに超える速さで到来している」

 コンピュータアルゴリズムで攻撃対象を識別するということは、どの人間を攻撃し、命を奪うかをコンピューターが決める時代が来るということだ。ウクライナでは電波障害で人間の操縦ができなくなった段階で、ドローンがAIによって自力で(自律的に)攻撃対象を識別し、攻撃を実施するということが実現している。映画『スターウォーズ』に出てくる、ドロイト兵器(キラーロボット)が近い将来実現するということだ。AIによって人間が選別される時代というのはSFとしては興味深いが、現実として恐怖を掻き立てる未来である。

(貼り付けはじめ)

イランと新たな戦争の計算(Iran and the New Arithmetic of War

-安価な自律型兵器(autonomous weapons)は戦闘の経済性(the economics of combat)を根底から覆しアメリカに重要な教訓を与えている。

ファリード・ザカリア筆

2026年3月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/20/iran-drone-war-lessons-fareed-zakaria/

中東地域における日々の攻撃と報復攻撃のニュースの裏側で、​​戦争は根本的に変化しつつある。テヘランによる報復攻撃の最初の1週間で、ペルシア湾岸諸国への攻撃のうち約71%がドローンによるものだった。アラブ首長国連邦(UAE)だけでも、わずか8日間で1422機のドローンと246発のミサイルが探知されたと報じられている。こうした傾向の多くは、すでにウクライナで垣間見ることができた。しかし、イランにおいては、戦争の未来像が明確に浮かび上がってきた。

外交問題評議会(the Council on Foreign RelationsCFR)のマイケル・ホロウィッツは、「私たちは現在、精密な大量攻撃の時代(precise mass in war)に突入した」と述べている。まさにその通りだ。数十年間、精密戦争(precision warfare)とは、少数のトマホークミサイル、ステルス爆撃機、あるいは戦闘機を意味していた。しかし今や、市販の部品で組み立てられ、群れをなして発射される一方向ドローンを意味するようになった。かつては巨大な工業国が必要としていたものが、はるかに小さな国々によって組み立て、改良され、規模を拡大できるようになっているのだ。

戦争の経済構造は根底から覆されつつある。シャヘド型ドローンは1機あたり約3万5000ドルだ。パトリオット迎撃ミサイルは約400万ドルで、100機以上のドローンが購入できる。これが新たな紛争の計算(the new arithmetic of conflict)だ。攻撃側は数千ドル、防御側は数百万ドルを費やす。そして、たとえ防御が成功したとしても、それは消耗戦(a form of attrition)となる可能性がある。

しかし、この革命はドローンだけにとどまらない。真の核心は、新たな軍事アーキテクチャ(a new military architecture)にある。安価な自律システム(cheap autonomous systems)、人工知能による標的設定(artificial intelligence-assisted targeting)、商用衛星画像(commercial satellite imagery)、強靭な通信(resilient communications)、統合センサー、そしてサイバーツール(integrated sensors and cyber tools)が全て連携して機能する。目的は単に攻撃することではない。時間を圧縮すること(to compress time)、つまり敵が移動、隠蔽、あるいは態勢を立て直すよりも速く、敵を発見し、判断し、攻撃することにある。昨年行われた実験で、アメリカ空軍は、機械が10秒以内に推奨事項を生成し、人間だけのティームの30倍もの選択肢を提示したと発表した。

古い軍事的優位性のモデル(the old model of military supremacy)は、精巧なシステム(exquisite systems)に依存していた。壮大で高価、生産に時間がかかり、失うと大きな痛手となるシステムだ(magnificent, costly, slow to produce, painful to lose)。しかし、それだけではもはや十分ではない。2023年、キャスリーン・ヒックス米国防副長官は、アメリカが敵対国に対抗するために発表されたばかりの国防総省のレプリケーター構想(the Pentagon’s just-unveiled Replicator)について、「小型で、スマートで、安価で、多数存在する(“small, smart, cheap and many”)」システムの必要性を訴えた。明日の戦争に勝利するのは、単一の最高のプラットフォームを持つ側ではないかもしれない。十分な数の優れたプラットフォームを、安価に、迅速に配備し、それらを十分にインテリジェントにネットワーク化できる側かもしれない(t may be the one that can field enough good platforms, cheaply enough, quickly enough, and network them intelligently enough)。少数の優れたものよりも、多数の優れたものの方が勝るだろう(Lots of good stuff will beat small numbers of great stuff)。

アメリカはイランのシャヘド136をモデルにした低コスト攻撃ドローン「ルーカス」を実戦配備した。世界で最も先進的な軍隊が、事実上、制裁対象のならず者政権(a sanctioned rogue regime)から学んでいるのは、戦争の論理(the logic of warfare)が変化したためだ。量そのものが独自の価値を持つようになった特にソフトウェア、自律性、リアルタイム接続と融合した場合はそうなる。ホロウィッツは、精密な大量生産は「機関銃や戦車のように(just like machine guns or tanks)」戦争の常態となるだろうと主張する。

ウクライナはこの新時代の偉大な実験場であり続けている。必要に迫られ、戦時下における迅速な適応モデルを構築してきた。ウクライナの迎撃ドローン「スティング」は1機約2000ドルで、最高時速280キロで飛行し、製造元によると2025年半ば以降3000機以上のシャヘドを撃墜しており、ロイター通信によると月産1万機以上となっている。ウクライナのテストパイロットの一人は、一人称視点ドローンを既に操縦できる者であれば、このドローンの操縦を習得するのに「3~4日」しかかからないと述べている。

そして、ソフトウェア面も重要だ。ウクライナは、同盟諸国がドローンAIを訓練できるよう、戦場データへのアクセスを開放した。これにより、パターン認識能力と標的探知能力が向上する。ミハイロ・フェドロフ国防相は、ウクライナは現在、「数万回の戦闘飛行で収集された数百万枚の注釈付き画像」を含む、「世界に類を見ない独自の戦場データ群」を保有していると述べている。つまり、この戦争で最も価値のある成果は、ハードウェアだけではないかもしれない。データこそが、その真価を発揮する可能性があるのだ。

だからこそ、その影響はウクライナやペルシア湾岸地域にとどまらない。ウクライナ軍最高司令官は、モスクワが現在、シャヘド型ドローンを1日404機生産しており、最終的には1日1000機を目指していると述べている。対照的に、ロッキード・マーティン社は2025年に約600機のパトリオット迎撃ミサイルを生産し、2027年までに2000機まで増産する計画だ。この対比こそが、現状を物語っている。問題はもはや単なる技術の高度化(technological sophistication)ではない。産業規模(industrial scale)、ソフトウェアの統合(software integration)、そして戦場で得られた教訓を大量生産に迅速に反映させるスピード(the speed with which lessons from the battlefield are turned into mass production)こそが、真の課題なのである。

この軍事革命(revolution in military affairs)は、より深い意味合いを数多く含んでいる。ドローンが配備されたことで、戦場はあらゆる場所に広がり、兵士たちは休息を取る暇もなくなる。人間が戦場から遠く離れることで、戦争は構想しやすくなる一方で、膠着状態に陥りやすくなる可能性もある。そして、こうした致命的な兵器が容易に生産できるようになったことで、テロ組織、麻薬カルテル、ギャングなどが、かつては兵器庫を持つ正規軍(organized armies with arsenals)の領域だったような戦争を仕掛けることが可能になるのだ。

1991年の湾岸戦争は、先進技術が戦争をより精密なものにできることを世界に示した。2026年、イランは世界にさらに重大なことを教えている。それは、精密さが大量生産される時代(Precision will now be mass-produced)が到来したということだ。勝利を収めるのは、単に最高性能の兵器を保有する国ではない。少数の精巧で高価な兵器と、膨大な数の安価なドローンを組み合わせられる国こそが勝利を収めるだろう。人間の判断は、やがてコンピュータアルゴリズムに取って代わられるだろう(Human judgment will over time give way to computer algorithms)。これが戦争の未来だ。そして、それは私たちの想像をはるかに超える速さで到来している。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体』(ビジネス社、2025年11月)では、新・軍産複合体(パランティア社、スペースX社、アンドゥリル社)について詳しく書いた。現在の第二次ドナルド・トランプ政権における重要人物である、イーロン・マスクとJD・ヴァンス、パランティア社の創業者であるピーター・ティールの関係についても詳しく分析した。

 軍産複合体という言葉は1961年にドワイト・アイゼンハワー大統領が退任する際の演説の中で使った言葉である。政府と軍、企業が緊密な関係を築いて、お互いに巨額な利益を生み出す関係である。そのためには緊密な人脈が重要になってくる。私は、これまでの軍複合体の形成過程について分析を行い、20世紀の財界と政界の重要人物たちが協力してきたことを明らかにした。

 アメリカ空軍は、無名に近かった二つのドローン開発企業、カリフォルニア州コスタメサのアンドゥリル・インダストリーズとサンディエゴのジェネラル・アトミックスを選び、協調型戦闘機(CCA)のプロトタイプ製造を発注した。CCAはパイロット搭乗機と連携して高リスク任務を担う次世代無人機と位置付けられ、空軍は今後十年で少なくとも千機、1機能あたりの単価約三千万ドルを調達する計画だが、この重大なプロジェクトが大手メディアでほとんど取り上げられなかった一方で、両社の受注は従来の巨大防衛企業三社(ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン)を破り、既存の軍産複合体(military-industrial complexMIC)の支配構造を揺るがす可能性を示した。

新・軍産複合体についても同じ構図・図式となる。ピーター・ティールやイーロン・マスク、パルマー・ラッキーとJD・ヴァンス、更にアメリカ軍の文民幹部たちの緊密な協力関係があってこそ、新・軍産複合体は形成され、発展していく。現在は、これまでの巨大な軍事産業を中心とする古い軍産複合体が力を保持しているが、新・軍産複合体が追い上げている状況だ。アメリカ政治の大きな動きについては、これから更に研究・分析を深化させていきたい。
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ペンタゴン内部の秘密戦争がトランプ世界を分裂させる可能性(A Secret War Inside the Pentagon Could Divide the Trump Universe

-新たな軍産複合体が誕生しつつあり、その目標と利益追求者は既存のものとは大きく異なる可能性がある。

マイケル・クレア筆

2025年2月12日

『インクスティック・メディア』誌

https://inkstickmedia.com/a-secret-war-inside-the-pentagon-could-divide-the-trump-universe/
昨年4月、メディアの注目をほぼ浴びない中で、アメリカ空軍は無名のドローンメーカー2社、カリフォルニア州コスタメサのアンドゥリル・・インダストリーズとサンディエゴのジェネラル・アトミックス社を選定し、提案中の協調型戦闘機(Collaborative Combat AircraftCCA)のプロトタイプ版を製造させると発表した。CCAは将来の無人機で、パイロット搭乗機と共に高リスク戦闘任務に投入されることが想定されている。アメリカ空軍が今後10年間に、1機あたり約3000万ドル、少なくとも1000機の CCA を調達する予定であり、これは国防総省にとって最も費用のかかる新規プロジェクトの1つであることを考えると、この報道の少なさは驚くべきことだった。しかし、メディアが注目しなかったことはそれだけではない。CCA の契約を獲得したアンドゥリルとジェネラル・アトミックスは、アメリカ最大かつ最も強力な防衛関連企業3社、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンを打ち負かし、既存の軍産複合体(military-industrial complexMIC)の継続的な支配に深刻な脅威を与えている。

数十年にわたり、これら3社のような少数の巨大企業が国防総省の武器契約の大半を獲得し、毎年同じ航空機、艦船、ミサイルを生産しながら、株主たちに巨額の利益をもたらしてきた。しかし、シリコンヴァレーで誕生した、あるいはその破壊的技術革新(イノヴェイション)精神を取り入れた様々な新興企業が、収益性の高い国防総省の契約獲得をめぐり、既存企業に挑戦し始めている。この過程で、主流メディアではほとんど報じられていないが、画期的な動きが進行中だ。新たな軍産複合体が誕生しつつあり、既存のものとは全く異なる目標と利益享受者を持つ可能性がある。旧来の軍産複合体と新軍産複合体の間の避けられない戦いがどう展開するかは予測できないが、1つ確かなことがある。今後数年間で、それらが重大な政治的混乱(political turbulence)を引き起こすことは間違いない。

「軍産複合体」という概念、巨大防衛企業と連邦議会・軍部の有力者たちを結びつける存在は、1961年1月17日、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が連邦議会と国民に向けた退任演説で初めて提唱した。冷戦下のこの時代、強力な外国の脅威に対応するため、アイゼンハワー大統領は「私たちは巨大な恒久的な軍需産業を構築せざるを得なかった」と指摘した。しかし同時に、この言葉を初めて用いて、次のように続けた。「私たちは、軍産複合体が意図的か否かを問わず、不当な影響力を獲得することに対して警戒しなければならない。誤った権力の危険な台頭の可能性は存在し、今後も続くだろう」。

それ以降、軍産複合体の権力拡大をめぐる議論はアメリカ政界を揺るがし続けてきた。数多くの政治家や著名な公人たちは、ヴェトナム、カンボジア、ラオス、イラク、アフガニスタンなどにおける一連の破滅的な海外戦争へのアメリカの介入を、軍産複合体が政策決定に及ぼす不当な影響の結果として描いてきた。しかし、こうした主張や不満が、国防総省の兵器調達に対する軍産複合体の鉄壁の支配を緩めることに成功したことは一度もない。今年度の防衛予算は約8500億ドルと過去最高を記録し、うち1432億ドルが研究開発費、さらに1675億ドルが兵器調達費に充てられる。この3110億ドルの大半は巨大防衛企業に流れ込み、地球上の他の全ての国の防衛費総額を上回っている。

時間の経過とともに、数十億ドルの国防総省契約をめぐる競争は、軍産複合体のエコシステムを淘汰し、その結果、少数の大手産業巨人が支配的な地位を築くこととなった。2024年には、ロッキード・マーティン(防衛関連収益647億米ドル)、RTX(旧レイセオン、406億米ドル)、ノースロップ・グラマン(352億米ドル)、ゼネラル・ダイナミクス(337億米ドル)、ボーイング(327億米ドル)の5社だけが、国防総省の契約の大部分を占めた。(アンドゥリル社とジェネラル・アトミックス社は、契約獲得額トップ100社のリストにさえ登場していない)。

通常、これらの企業は、国防総省が毎年購入を続けている主要な兵器システムの主要、つまり「プライム」契約業者(“prime,” contractors)だ。たとえば、ロッキード・マーティンは、アメリカ空軍の最優先事項であるF-35ステルス戦闘機(運用では明らかに期待外れであることがしばしば証明されている航空機)のプライム契約業者だ。ノースロップ・グラマンはB21ステルス爆撃機を製造している。ボーイングはF-15EX戦闘機を生産し、ゼネラル・ダイナミクスは海軍のロサンゼルス級攻撃型潜水艦を製造している。このような「高額商品(Big-ticket)」は通常、長年にわたって大量に購入されるため、生産者は安定した利益を確保できる。こうしたシステムの初期購入が完了に近づくと、生産者は通常、同じ兵器の新ヴァージョンやアップグレイド版を開発すると同時に、ワシントンで強力なロビー活動を行い、連邦議会に新設計の資金提供を説得する。

長年にわたり、「ナショナル・プライオリティーズ・プロジェクト」や「フレンズ・コミッティ・オン・ナショナル・レギスレーション」といった非政府組織は、軍産複合体のロビー活動に抵抗し、軍事費を削減するよう連邦議員たちを勇敢に説得しようと試みてきたが、目立った成果は得られていない。しかし今、シリコンヴァレーのスタートアップ文化という新たな勢力が参入し、軍産複合体の構図は突如として劇的に変化しつつある。

昨年4月、軍産複合体の大手3社を凌駕し、協働型戦闘機の試作機製造契約を獲得した、目立たない2社のうちの1社であるアンドゥリル・インダストリーズについて考えてみよう。アンドゥリル(JRR・トールキンの『指輪物語』でアラゴルンが所持する剣にちなんで名付けられた)は、仮想現実(virtual-reality)ヘッドセットの設計者であるパルマー・ラッキーによって2017年に設立され、人工知能(AI)を新型兵器システムに組み込むことを目指している。この取り組みは、ファウンダーズ・ファンドのピーター・ティールや、防衛関連のスタートアップ企業パランティア(これも『ロード・オブ・ザ・リング』に由来する名前)の代表者など、シリコンヴァレーの著名な投資家たちの支援を受けた。

ラッキーとその仲間たちは当初から、従来の防衛関連企業を排除し、ハイテク新興企業のためのスペースを確保しようと努めてきた。この2社をはじめとする新興テクノロジー企業は、長年にわたり、多数の弁護士を擁し、政府の書類処理に精通した巨大防衛関連企業に有利になるように作成されていたため、国防総省との主要契約から締め出されることがしばしばあった。2016年には、パランティアは米陸軍が大規模なデータ処理契約の選定を拒否したとして訴訟を起こし、後に勝訴した。これにより、将来的に国防総省から契約を獲得する道が開かれた。

アンドゥリルは、その積極的な法的姿勢に加え、創業者であるパルマー・ラッキーの率直な意見表明によっても名声を得ている。他の企業幹部が国防総省の活動について議論する際には通常、言葉遣いを控えるのに対し、ラッキーは、将来の紛争で中国とロシアを圧倒するために必要だと考える先進技術への投資を犠牲にして、伝統的な防衛関連企業との協力を国防総省が根強く好んでいることを公然と批判した。

ラッキーは、そのような技術は民間技術産業でしか入手できないと主張した。「大手防衛関連請負業者は愛国心旺盛な人材を抱えているが、必要な技術を開発するためのソフトウェアの専門知識やビジネスモデルは持ち合わせていない」と、ラッキーとアンドゥリル社の幹部たちは2022年のミッションドキュメントで次のように主張した。「これらの企業は仕事が遅いが、優秀な[ソフトウェア]エンジニアはスピード重視だ。そして、敵よりも速く開発できるソフトウェアエンジニアの才能は、大手防衛関連企業ではなく、民間部門に存在するのだ」。

ラッキーは、軍の近代化(military modernization )の障害を克服するには、政府が契約規則を緩和し、防衛関連のスタートアップ企業やソフトウェア企業が国防総省と取引しやすくする必要があるとして次のように主張した。「スピードのある防衛企業が必要だ。それは単に願うだけでは実現しない。はるかに寛容な国防総省の政策によって、企業が動くようインセンティヴが与えられる場合にのみ実現する」。

こうした議論やティールのような重要人物の影響によって、アンドゥリル社は軍や国土安全保障省から小規模ながらも戦略的な契約を獲得し始めた。2019年には、日本と米国の基地にAIを活用した境界監視システムを設置する海兵隊の小規模契約を獲得した。1年後には、アメリカ・メキシコ国境に監視塔を建設する5年間2500万ドルの契約を税関・国境警備局Customs and Border ProtectionCBP)から獲得した。2020年9月には、同国境沿いにさらに監視塔を建設する3600万ドルの契約も税関・国境警備局から獲得した。

その後、より大きな契約が次々と舞い込むようになった。2023年2月には、国防総省がウクライナ軍への納入用にアンドゥリル社のアルティウス600監視・特攻ドローンの購入を開始し、昨年9月には陸軍が戦場監視作戦用にGhost-Xドローンを購入すると発表した。アンドゥリル社は現在、小型の偵察・攻撃ドローンの一斉発射を目的とした中型ドローン「エンタープライズ・テスト・ビークル」の試作機を開発するために空軍に選ばれた4社の1社でもある。

アンドゥリル社は国防総省から大型契約を獲得し、その成功は防衛関連スタートアップ企業の成長期待から利益を得る機会を模索する富裕層投資家の関心を集めている。2020年7月には、ティールのファウンダーズ・ファンドとシリコンヴァレーの著名投資家アンドリーセン・ホロウィッツから新たに2億ドルの投資を受け、企業価値は20億ドル近くにまで上昇した。1年後には、これらのヴェンチャーキャピタル企業やその他のヴェンチャーキャピタル企業からさらに4億5000万ドルを調達し、推定企業価値は45億ドル(2020年の2倍)に達した。それ以来、アンドゥリル社への資金流入は拡大しており、民間投資家による防衛関連スタートアップ企業の台頭を後押しし、その成長が現実のものとなった暁には利益を得ようとする動きが勢いを増している。

アンドゥリル社は、大型防衛契約の獲得と資本注入に成功しただけでなく、国防総省の多くの高官に対し、国防スタートアップ企業やテクノロジー企業のための余裕を創出するために、国防総省の契約業務改革の必要性を納得させることにも成功した。2023年8月28日、当時国防総省で2番目に高官だったキャスリーン・ヒックス国防副長官は、軍への先進兵器の配備を迅速化することを目的とした「レプリケーター」構想(the “Replicator” initiative,)の開始を発表した。

「(私たちの)予算編成と官僚的な手続きは遅く、煩雑で、複雑怪奇だ」とヒックスは認めた。こうした障害を克服するため、レプリケーター構想は煩雑な手続きを簡素化し、スタートアップ企業に直接契約を交付することで、最先端兵器の迅速な開発と供給を実現すると彼女は示唆した。「私たちの目標は技術革新の種を蒔き、火をつけ、燃え上がらせることだ」とヒックスは宣言した。

ヒックスが示唆したように、レプリケーター契約は確かに連続したバッチ、つまり「トランシェ」で交付される。昨年5月に発表された最初のトランシェには、エアロバイロンメント社製のスイッチブレード600カミカゼドローン(標的に衝突し、接触すると爆発することからこの名がつけられている)が含まれていた。アンドゥリル社は、11月13日に発表された第2回の資金提供で3つの勝利を収めた。国防総省によると、この資金提供には、陸軍のゴーストX監視ドローン購入、海兵隊のアルティウス600特攻ドローン取得、そして空軍のエンタープライズ・テスト・ビークル開発への資金が含まれており、アンドゥリル社は参加ヴェンダー4社のうちの1社である。

おそらく同様に重要なのは、ヒックスがパーマー・ラッキーの示した国防総省の調達改革の青写真を支持したことだろう。「レプリケーター構想は、技術革新への障壁を明らかに低減し、戦闘員に迅速に能力を提供している」とヒックスは11月に断言した。「私たちは従来型および非従来型の防衛・テクノロジー企業を含む幅広い企業に機会を創出している・・・そして、それを繰り返し実行できる能力を構築している」。

*
キャスリーン・ヒックス国防副長官は、ドナルド・トランプがホワイトハウスに復帰した2025年1月20日、多くの高官たちと同様に国防副長官を辞任した。新政権が軍事調達問題にどう取り組むかはまだ不明だが、イーロン・マスク氏やJD・ヴァンス副大統領など、トランプ政権の高官の多くはシリコンヴァレーとの繋がりが強く、レプリケーター構想のような政策を支持する可能性が高い。

先日国防長官に指名されたFOXニューズの元司会者ピート・ヘグゼスは兵器開発の経歴がなく、この件についてほとんど発言していない。しかし、トランプが副長官(そしてヒックス氏の後任)に選んだのは、サーベラス・キャピタル・マネジメントの最高投資責任者(CIO)として軍事スタートアップ企業ストラトローンチを買収した億万長者の投資家スティーヴン・A・ファインバーグだ。これは、彼がレプリケーター構想のようなプログラムの拡大を支持する可能性を示唆している。

ある意味、トランプ政権の今回の動きは、国防総省に関して言えば、これまでのワシントンのパターンに当てはまると言えるだろう。大統領と連邦議会の共和党支持者たちは、国防予算が既に過去最高水準に達しているにもかかわらず、間違いなく国防費の大幅な増額を推し進めるだろう。こうした動きは、従来の元請け企業であれ、シリコンヴェレーの新興企業であれ、あらゆる兵器メーカーに利益をもたらすだろう。しかし、トランプと共和党が支持する減税やその他の高額な対策を賄うために国防費が現状水準に維持されれば、軍産複合体の2つの形態の間で激しい競争が再び勃発する可能性は容易に考えられる。そうなれば、トランプの側近たちの間で分裂が起こり、旧軍産複合体支持者と新軍産複合体支持者が対立する事態に発展する可能性がある。

一般的に、選挙資金は古くからの軍産複合体企業からの献金に依存している共和党議員の大半は、このような競争では主要な元請け企業を支持せざるを得ない。しかし、トランプの主要な側近である JD・ヴァンスとイーロン・マスクの2人は、彼に反対の方向へと働きかける可能性がある。ピーター・ティールやその他のテクノロジー業界の大富豪たちによる強力なロビー活動の結果、トランプの副大統領候補となったとされる、シリコンヴァレーの元幹部であるヴァンスは、かつての同盟者たちから、国防総省との契約をアンドゥリル、パランティア、および関連企業にもっと振り向けるよう促される可能性が高い。ヴァンスのプライヴェート・ヴェンチャー・ファンドであるナリヤ・キャピタル(そうだ、これも『指輪物語』に由来する名前だ!)が、アンドゥリルやその他の軍事・宇宙関連ヴェンチャー企業に投資していることから、それはまったく驚くことではないだろう。

トランプによって、まだ設立されていない政府効率化省の責任者に指名されたイーロン・マスクは、アンドゥリルのパーマー・ラッキーと同様に、自身の企業であるスペースXの契約を獲得するために国防総省と争い、国防総省の伝統的なやり方に深い軽蔑を表明してきた。特に、AI制御のドローンの能力が高まっているにもかかわらず、高価で一般的に性能の悪いロッキード社製のF-35ジェット戦闘機を酷評している。その進歩にもかかわらず、彼が現在所有するソーシャルメディアプラットフォーム「X」に「一部の馬鹿たちは、F-35のような有人戦闘機を作り続けている」と投稿している。続く投稿で彼は「いずれにせよ、有人戦闘機はドローンの時代には時代遅れだ」と付け加えた。

F-35に対する彼の批判はアメリカ空軍を怒らせ、ロッキードの株価は3%以上下落した。「私たちは、世界最先端の航空機であるF-35と、その比類なき性能を、政府および業界パートナーと協力して提供することに全力を尽くしています」と、ロッキードはマスクのツイートに対して声明を発表した。一方、国防総省では、フランク・ケンドール空軍長官が次のように述べている。「私は、エンジニアとしてのイーロン・マスクを非常に尊敬している。彼は戦闘員ではなく、このような大々的な発表を行う前に、この事業についてもう少し学ぶ必要があると思う」と述べた。さらに、「F35が置き換えられることはないと私は考えている。購入を継続し、アップグレイドも続けるべきだと思う」と付け加えた。

トランプ大統領は、F-35や国防総省予算のその他の高額項目について、まだ立場を明らかにしていない。トランプ大統領は、この航空機の購入を遅らせ、他のプロジェクトへの投資拡大を求めるかもしれない(あるいは求めないかもしれない)。それでも、伝統的な防衛請負業者が製造する高価な有人兵器と、アンドゥリル、ジェネラル・アトミックス、エアロバイロンメントなどが製造するより手頃な無人システムとの間にある、マスクが露呈した分断は、新たな軍産複合体が富と権力を増大させるにつれ、今後数年間で確実に拡大していくだろう。旧来の軍産複合体が自らの優位性に対するこの脅威にどう対処するかは未知数だが、数十億ドル規模の兵器メーカーが抵抗なく退くことはまずないだろう。そしてその対立は、トランプ世界を分断することになるだろう。

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)では、JD・ヴァンス副大統領が次の2028年米大統領選挙でトランプ大統領の後継者として共和党候補者となると書いた。そして、ヴァンスとシリコンヴァレーの大立者で、2016年の大統領選挙でトランプを支持し続けた、ピーター・ティールが、ヴァンスを見出したことを紹介した。ヴァンスはティールの弟子ということになる。今回は、『トランプの電撃作戦』では使わなかったが、ヴァンスとシリコンヴァレーの大物たちとの関係を詳しく分析している論稿を紹介する。内容を要約すると次のようになる。
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盟友同士のヴィヴェック・ラマスワミ(青いネクタイ)とJ・D・ヴァンス

ドナルド・トランプの副大統領候補にJD・ヴァンスが浮上する数週間前、テクノロジー業界の著名な人物たちが彼を推す動きが始まった。特に、テクノロジー起業家や資本家たちからヴァンスを副大統領候補にするように強く求めた。

ティールの投資会社の共同経営者デリアン・アスパロウホフは、ヴァンスがホワイトハウスの職に就くことが自分たちの代表がホワイトハウスに入ることを意味すると述べた。また、ヴァンスはその背景からシリコンヴァレーのエリートと将来の連携を生み出す人材として注目されている。

一方で、ヴァンスの過去の社会問題に対する姿勢や商業界とのつながりから批判も受けており、彼とティールの関係がビジネス上の駆け引きになる可能性が指摘されている。さらに、彼はシリコンヴァレーにおけるエリート主義と、一般市民を置き去りにする姿勢を意識し、影響を持とうとしていることがある。

ティールは過去のトランプの選挙に対して、巨額の寄付をしたものの、政権の混乱に失望しつつも、ヴァンスへの支援を続けている。トランプは最近、電気自動車や人工知能に対する積極的な姿勢を示している。テクノロジー業界の不満を受けて、トランプとヴァンスの最近の集まりには多くのテクノロジー企業の幹部が集まり、大規模な資金集めの場となった。

ヴァンスはより小規模なスタートアップ企業を支援する意義を持つことで支持を広げ、テクノロジー業界の変革を目指している。また、彼は過去の経歴を活かし、地域経済の問題にも取り組んできた。

最後に、ヴァンスがテクノロジー業界の影響力の高まりを象徴する存在となっていることが指摘されている。彼は新たなデジタル社会への対応を模索しながらも、政治的なロビー活動に関しては複雑な立場に立たされている。彼の副大統領候補への道筋は、アメリカの今後に向けての新たな枠組みを指し示すものとなるだろう。

 ヴァンスはトランプのポピュリズムを体現する人物である。詳しくは『トランプの電撃作戦』に書いたが、シングルマザーの貧しい家庭から身を起こし、副大統領にまで上り詰めた。彼はトランプを支持する貧しい白人労働者の代表という面がある。同時に、シリコンヴァレーでの経験や知識から、テック産業の代表という側面を持つ。彼はその点でハイブリッドということになる。アメリカ政治の大きな潮流を示し、体現する人物がヴァンスということになる。

(貼り付けはじめ)

JD・ヴァンスを指名した強力なピーター・ティールのネットワークの内部(Inside the powerful Peter Thiel network that anointed JD Vance

-右派の技術者による小規模で影響力のあるネットワークが、シリコンヴァレーでのヴァンスの台頭、そして共和党での台頭を画策した。彼がホワイトハウスを勝ち取れば、業界は利益を得る立場にある。

エリザベス・ドゥオスキン、キャット・ザクロウスキー、ニターシャ・ティク、ジョシュ・ダウジー筆

2024年7月28日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/technology/2024/07/28/jd-vance-peter-thiel-donors-big-tech-trump-vp/

ドナルド・トランプ前大統領が副大統領候補を発表する数週間前、テクノロジー業界の大物たちが、自分たちの仲間であるオハイオ州選出の連邦上院議員JD・ヴァンスを推す静かなキャンペーンを開始した。

トランプ元大統領は、テクノロジー起業家のデイヴィッド・サックス、パランティア社顧問のジェイコブ・ヘルバーグ、そして、ヴァンスの元雇用主で師(mentor)でもある億万長者のヴェンチャー・キャピタリストであるピーター・ティールから、かつてのシリコンヴァレーにいる投資家を候補に加えるよう何度も懇願をうけたと、懇願に詳しい3人が匿名を条件にプライベートな会話について語った。

ヴァンスの最も強力なシリコンヴァレーにいる支持者たちは、元ネヴァー・トランプ派の人物であるヴァンスが共和党内で台頭していることに大喜びしている。彼らは、ヴァンスをワシントンにいる自分たちの使者と見なしており、政府やグーグルからロッキード・マーティンに至るまでの定着した大企業が技術革新(innovation、イノヴェーション)を阻害し、機敏で大胆な考えを持つスタートアップ企業、特に自分たちのスタートアップ企業が国益を推進できるという教義を広めている。ハリス副大統領の大統領就任は多くの左派テクノロジーリーダーを活気づけたが、ティールのネットワークの一部は、ヴァンスがホワイトハウスに入ることで恩恵を受ける立場にある。ヴァンスは最近までワシントンを避けていたヴェンチャー・キャピタリストにとって新たな資産だ。

ティールの投資会社ファウンダーズ・ファンド社の共同経営者であるデリアン・アスパロウホフはXに「地球上で最も偉大な国のホワイトハウスに元テックヴェンチャーキャピタルにはいることになるんだぜ(WE HAVE A FORMER TECH VC IN THE WHITE HOUSE GREATEST COUNTRY ON EARTH BABY)」と投稿した。

ティールにとって、ヴァンスが共和党候補に名を連ねるのは、ラストベルト出身のイェール大学法科大学院(ロースクール)卒業生を弟子(protégé)として迎え入れた10年前の先見の明のある賭けの成果であり(the payoff on a prescient bet placed a decade ago)、Meta社のCEOのマーク・ザッカーバーグやOpenAI創設者のサム・アルトマンを含むメンバーに加わった。

特に2016年に自叙伝『ヒルビリー・エレジー』を出版した後、ヴァンスは多岐にわたる知性、温厚な物腰でありながら、実はオハイオ州の労働者階級で育ったアウトサイダーの物語を通じて、シリコンヴァレーのティールの高尚な仲間たちに強い印象を与えた。この物語は2016年の大統領選挙後、テクノロジー界のエリートたちが、未来を築くことへの執着がいかに多くのアメリカ人を置き去りにしているのかを理解しようとしたときに共感を呼んだ。

ティールは彼自身を裕福にし、MAGA層に人気となった企業に投資する環境を整えた。彼は他のシリコンヴァレーの寄付者とともに、ヴァンスの政界進出を後押しし、2022年の米連邦上院選挙で彼の出馬を成功させた。

ティールの考えを知るある人物は「ピーターにとって、ヴァンスは一世一代の賭け(a generational bet)だ」と語った。

しかし、ヴァンスのビジネス界での人脈、そして中絶や同性婚などの社会問題に対するスタンスは、批判にもさらされている。批判者たちはヴァンスを「シリビリー(shillbilly 訳者註:シリコンヴァレーとヒルビリーの合成語)」と呼び、ティールのネットワークとの関係が金銭授受のシナリオ(a pay-to-play scenario)になる可能性があると主張している。

投資家のデル・ジョンソンはXに次のように投稿した。「彼らがエリート主義的な計画と反動的な見解を[導入する]ための最良の方法は、規制の捕捉だ(regulatory capture)」。これは民間セクターによる規制プロセスのコントロール(private sector’s control of the regulatory process)を表す用語を使っての投稿だ。続けて「ヴェンチャー・キャピタル階級に大統領職を任せても何も起きない」と書いた。

この記事は、シリコンヴァレーでのヴァンスの台頭、ティールとの関係、そして彼がアメリカで2番目に高い政治職に就いた場合のテクノロジー業界の野望に詳しい17人の人物へのインタヴューに基づいており、その多くは関係を保護するために匿名を条件に話してくれた。

ティールはコメントを拒否した。ヴァンスはコメントの要請に応じなかった。

ティールは2016年の選挙運動においてトランプに対して巨額の寄付を行ったが、彼の考えを知る複数の人物によると、最終的には政権の混乱と科学と技術革新への焦点の欠如に失望したという。

しかし、ヴァンスの指名は、ティールがトランプに好意的になるのに役立っている。また、トランプの共和党大統領候補指名は、テクノロジー業界にとって極めて重要な問題に新たに焦点を絞ったことと一致する。トランプ元大統領は、電気自動車、仮想通貨(cryptocurrency)、人工知能に関する業界に好意的なメッセージを受け入れてきた。トランプは先月、サックスのポッドキャスト「オールイン(All-In)」に出演し、シリコンヴァレーの寄付者たちを「天才たち(“geniuses)」と呼んだ。また、最近の選挙集会では、電気自動車のパイオニアであるイーロン・マスクを称賛し、「私たちは賢い人々の生活を良くしなければならない(We have to make life good for our smart people)」と発言した。

『ワシントン・ポスト』紙が確認した出席者リストによると、サックスが6月にトランプとヴァンスをサンフランシスコの自宅に招いて開催した、高額な資金集めパーティーの場で、2人は50人以上のテクノロジー企業の幹部や他の裕福な寄付者たちと会った。

共和党全国委員会で、サックスがトランプの専用ボックスでヴァンスと話している姿が見られた。出席者たちは、寄付者やロビイスト、テクノロジー業界の関係者らがこれほど集まったイヴェントは見たことがないと語った。

対照的に、バイデン政権は、暗号通貨業界を妨害し、人工知能を規制しようとし、スタートアップ創業者が金儲けするための重要な道である企業買収に異議を唱えることで、テクノロジー業界のリーダーたちを激怒させている。サックス、マスク、パランティア社共同創業者のジョー・ロンズデール、セコイア・キャピタル社のダグ・レオーネ、著名なヴェンチャー・キャピタル企業アンドリーセン・ホロウィッツ者の創業者たちは、トランプに同調し、トランプ支持のPACに多額の寄付を行っている。

トランプがホワイトハウスを奪還すれば、ヴァンスは、イデオロギー的に一致した技術面のリーダーたちを政府要職に就かせ、テクノロジー業界を政治的サンドバッグから資本主義の原動力へと変える一助となるかもしれない。ヴァンス自身の防衛スタートアップ企業アンドゥリルへの名ばかりの投資を含め、ティールと関係のあるスタートアップ企業のネットワークは、数十億ドル規模の契約をめぐって競争している。

一方、ヴァンスを指名する際のトランプへの売り込みは非介入主義外交政策(noninterventionist foreign policy)だったサックスの友人たちは、ヴァンスは国務長官を狙っているのだとよく冗談を言っていた。

ヴァンスの支持者たちは、ビッグテック企業の独占的慣行(Big Tech’s monopolistic practices)を非難する一方で、より機敏なスタートアップ企業(「リトルテック(Little Tech)」と名付けられている)を支援する姿勢が、ヴァンスを説得力のある特使(persuasive envoy)にしていると語った。

アリゾナ州で連邦下院議員選挙に立候補しているティール・キャピタル社の元上級幹部ブレイク・マスターズは、ヴァンスとシリコンヴァレーとのつながりが、技術革新の新時代を先導するのに役立つだろうと語った。

マスターズは「金儲けが目的ではない」と述べている。マスターズは、ティールがヴァンスに『ヒルビリー・エレジー』の宣伝文をレビューするよう依頼したことで、ヴァンスと友人になった。「マンハッタン計画のような大きな取り組みをかつて行っていた政府が、もはや作ることができないようになっている、新しい技術を作ることが目的だ。これから起こる問題をほとんど直感的に理解している人物のようだ」。

●「私たちのネットワークに欲しい人」(‘Someone we want in our network’

トランプが当選する2カ月前、ヴァンスはサンフランシスコで、テクノロジー業界で最も裕福で影響力のある人々とサロンディナーに出席した。出席者にはティール、アンドリーセン、アルトマン、セールスフォースのCEOマーク・ベニオフ、当時スタンフォード大学ビジネススクールの学部長だったジョン・レヴィンが含まれ、新たに重要なテーマ「アメリカの労働者階級の困難と仕事の未来(The difficulties of working class America and the future of work)」について話し合うために集まっていた。

幅広い会話はすぐに政治の話になった。当時はネヴァー・トランプ派だった若き回想録作家は、トランプの見込みのない選挙運動と民主社会主義者のバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の選挙運動を牽引したポピュリストの怒りを翻訳し、自分の言葉で主張した。

「そこにいた誰もがその瞬間を理解しようとしていた」と、その夜のことを知る人物は、プライベートな集まりだったため匿名を条件に語った。当時32歳だったヴァンスは「これらの素晴らしい知性に負けず、自分の力を発揮した・・・。彼はその場にいた全員の尊敬を集めていた」ということだ。

ティールがヴァンスのために道を切り開いたのは、約10年前、ヴァンスがこの億万長者にシリコンヴァレーでの機会を模索するようメールを送った後だった。ヴァンスは、2011年にティールがイェール大学法科大学院で行ったスピーチに触発された。そのスピーチは、技術の停滞を嘆き、競争の激しい仕事に対するエリートの執着が技術革新を潰していると主張した内容だった。ヴァンスは、そのスピーチをイェール大学在学中の「最も重要な瞬間(the most significant moment)」と表現した。

ヴァンスはティールに強い印象を残したとティールの投資会社ミスリル社の元マネージングディレクターのコリン・グリーンスポンは語っている。

グリーンスポンは後にヴァンスと共にヴェンチャー企業ナリヤを創設している。グリーンスポンは次のように述べている。「この男は、私たちのネットワークに100%欲しい人物だと分かっていた。ピーター・ティールの世界の利益は、常に興味深い人物が出入りすることであり、JDは私たちが親しくしたいと望む人物だと分かっていた」。

ティールの仲間が、ヴァンスがバイオテクノロジー企業サーキット・セラピューティクスに就職するのを支援した。ヴァンスはサーキット・セラピューティクスの専門分野であるオプトジェネティクスについては全く知らなかったが、勉強熱心な学生だった。彼はすぐに、スタートアップ企業への投資についてミスリルにアプローチした。

ミスリルはアプローチを断った。しかし、ヴァンスのアプローチ、つまり「適切なタイミングで連絡を取る才覚(knack for checking in at the right time)」はグリーンスポンに非常に感銘を与え、グループは「彼を雇う必要がある(we needed to hire him)」と結論付けた。

2016年にミスリルに入社したヴァンスは、投資家たちが企業を評価する方法を吸収し、技術革新が社会進歩の原動力として尊重される環境に身を置いた。オハイオ州ミドルタウン出身のヴァンスは、回想録の中で、白ワインが1種類以上あることを知らなかったと書いていて、そんな彼が億万長者とのディナーに出席するようになった。現在は新興企業と政府との連携を支援しているヴェンチャー・キャピタリストのキャサリン・ボイルは、サンフランシスコの自宅アパートでヴァンスのためにピザを用意して本の出版パーティーを開いた。

専門家たちは既に「ヒルビリー・エレジー」を選挙のための本と呼んでいたが、ワシントンに懐疑的なシリコンヴァレーでヴァンスが政治的野心について語ることはほぼなかった。

2016年にサロンディナーを企画してヴァンスを社交界に紹介したことで友人になったスタートアップ企業セーフグラフのCEO、オーレン・ホフマンは「彼は脚光を浴びよう(trying to get the limelight)としているようには見えなかった。彼の政治についての考えは知らなかった」と語った。

ヴァンスをもっと打算的な(calculating)人物と見る人たちもいた。ティールの仲間と交流していたある人物は、ヴァンスは同じような経歴を持つ人々と知り合う努力をせず、自分のキャリアに役立つ影響力のある人々に引き寄せられるだけだったと述べている。

クライナー・パーキンスの元投資家で非営利団体プロジェクト・インクルードの共同創設者のエレン・パオは「ヴァンスは、シリコンヴァレーで注目を集める、ホレイショ・アルジャー(Horatio Alger)のような、自力で起業する気骨のある白人男性創業者(bootstrap-pulling White male founder)の典型に当てはまるようだ」と語った。パオはヴァンスを直接知らないとしながらも、「彼の成功は、風に合わせて変化する意志、つまり、資金提供した新興企業を軌道に乗せるために政府の支援を求める場合に役立つ柔軟性と結びついているのではないか」と疑問を呈した。

ミスリルに入社してから1年後、ヴァンスはオハイオ州に戻った。2017年の『ニューヨーク・タイムズ』紙の「なぜ故郷に戻るのか(Why I’m moving home)」という見出しの論説で、ヴァンスはシリコンヴァレーでの時間を「高学歴の移住者たちに囲まれて(surrounded by other highly educated transplants)」「不快だった(jarring)」と表現した。別のインタヴューでは、西海岸の人々は「政治的・経済的権力とある種の恩着せがましさを併せ持っている(wield political-financial power in combination with a certain condescension)」と述べ、エリートのテクノロジー集団を冷笑したように見えた。

論説が掲載された数日後、ヴァンスは新しい仕事に就いたことも発表した。それは、前回の選挙でヒラリー・クリントンを支持した無所属のAOL共同創設者スティーヴ・ケースとともに、沿岸部のテクノロジー首都(シリコンヴァレー)以外のスタートアップの人材育成に重点を置いた取り組みである「ライズ・オブ・ザ・レスト(Rise of the Rest)」に取り組むことだった。

2018年、ヴァンスはオハイオ州ヤングスタウンで高級バスに乗り込み、政治家が主催する同様の取り組みであるカムバック・シティーズ・ツアーに参加した。ヴィーガン・ドーナツ、コンブチャ(昆布茶)、そして西海岸のヴェンチャー・キャピタリストに囲まれながら、ヴァンスは地元のスタートアップシーンと、オピオイド危機によるこの地域の課題について語った。ヴァンスは成人してからの人生の大半を、衰退する鉄鋼の町(the declining steel town)から遠く離れた場所で過ごしたが、訪問者たちは彼を、サンフランシスコの洗練されたオフィスとオハイオの間の溝を埋めるのに適した大使(as an ambassador well-positioned to close the gulf between their sleek San Francisco offices and Ohio)とみなした。

バスに乗っていた投資家の1人だったパトリック・マッケナは「この状況で、JDと会って人々が気づいたのは、シリコンヴァレーには賢い人がいっぱいいるが、賢い人が全員シリコンヴァレーにいる訳ではないということだった」と語った。

翌年、グリーンスポンとヴァンスはオハイオ州を拠点とする自分たちのファンドであるナリヤを立ち上げた。ナリヤは『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する火の輪(a ring of ire)にちなんで名付けられた。(ティールの「ミスリル」と「パランティア」もJRR・トールキンの叙事詩に由来する)。ティールは資本金の少なくとも15%を提供し、密接に関与し続けた。

ヴァンスは、シリコンヴァレーは「駐車場のUberUber for parking)」のような、模倣的な、その時々の流行に乗った企業(flavor-of-the-moment companies)で「飽和状態(oversaturated)」だと潜在的な支援者に語った。ヴァンスは、ナリヤは大きなアイデアと、ロボット工学やバイオテクノロジーなどの「ディープ・テクノロジー(deep technology)」の調達に注力すると語った。(AIや暗号は誇張されすぎていると当時彼は言っていた)。

ナリヤ・キャピタルの投資が全て利益を上げた訳ではなかった。ナリヤ・キャピタルは、昨年破産申請した農業新興企業AppHarvestに2800万ドルの投資を行った。

匿名を条件に取材に応じた人物は「ディープテック(deep tech)」の売り文句に飛びついた初期の投資家たちは、ナリヤのイデオロギーに基づいた賭けとみなして驚いたと語った。この人物はこの投資について公に議論する権限がなかったため匿名で語った。

ナリヤはティールとともに、右派の視聴者に人気のYouTubeの競合企業ランブルの大口投資家となった。ナリヤとティールはカトリックの祈祷アプリ「ハロウ」にも資金提供している。

2021年のナリヤの会合に、オハイオ州副知事ジョン・アレン・ハステッド(共和党)と、当時は製薬会社の元幹部で「意識高い(woke)」資本主義を攻撃するベストセラー本の著者だったヴィヴェック・ラマスワミが出席した。ハロウの創設者は「タブーな夕食の話題(taboo dinner topics)」をテーマとしたセッションで政治と宗教について語った。

ナリヤの共同創設者グリーンスポンは、ナリヤの目標は「投資家に可能な限り最高の利益をもたらすこと」だと述べた。

2021年に米連邦上院議員選挙への出馬を発表した頃には、ヴァンスはネヴァー・トランプ派からMAGA共和党員に変貌していた。これはティールやマスターズらとの長年の対話の結果だ。

マスターズによると、2021年、長年連邦上院議員を務めたロブ・ポートマン(オハイオ州選出、共和党)が引退を発表した日に、彼とヴァンスは電話で話したということだ。マスターズはポートマンから聞いた、「私はすぐにJDに電話し、おい、君はオハイオ州で立候補する必要があると思うと言ってやった。・・・私たちは2人とも、このためにビジネスキャリアを捨てる必要があると感じていた」という話を紹介した。

2022年の中間選挙の期間、ティールは彼の弟子である候補者2人に3000万ドル以上を投入した。これはティールにとって過去最大の寄付であり、その選挙期間の唯一の大口寄付だった。

1つの賭けは失敗した。もう1つは彼の予想を上回るものだった。

●彼らの仲間の1人(One of their own

ヴァンスは、主要政党の大統領候補に選ばれた最初の著名なテクノロジー・ヴェンチャーキャピタリストであり、テック業界の影響力が高まっている兆候である。

シリコンヴァレーは1950年代にまで遡る政府の支援の上に築かれたが、その指導者たちはここ数十年、ワシントン、特に防衛契約(defense contracts)を避けてきた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大以降、財務収益(financial returns)が減少し、中国と世界の不安定さがより大きな脅威となったため、政府は引く手あまたの顧客(a sought-after customer)となった。

ヴァンスは、グーグルの分割を主張する一方で、暗号通貨などの新興技術には介入しない姿勢を主張してきた。彼は、シリコンヴァレーが一枚岩としてロビー活動を行っていないことを理解している数少ない政治家の1人として、テクノロジー業界内で広く見られている。

第1次トランプ政権の連邦通信委員会委員長アジット・パイの下で働いた経験を持つ、アメリカ技術革新財団の上級フェローであるエヴァン・シュワルツトラウバーは、ヴァンスが副大統領に当選すれば、「リトルテックとミディアムテックに誰かが入ることになる」と述べ、この議論は「最大手企業群に支配されすぎている」とも述べた。

いくつかの著名な「小規模」および「中規模」の防衛技術企業(several prominent “little” and “medium” defense tech companies)は、偶然にもティールの緊密な関係にある企業から資金提供を受けている。アメリカの兵器システムに人工知能を組み込むことを目指すアンドゥリル社は、ティールのネットワークであるアンドリーセンの支援を受けており、ヴァンスの寄付者であるパルマー・ラッキーが共同設立者となっている。パランティア社はヘルバーグが代表を務め、ティールとロンズデールが共同設立した。ロンズデールは投資家であり、ヴァンスとマスクの友人で、シリコンヴァレーの企業を結集してトランプ支持のPACに寄付するよう支援した。ヴァンスについて楽観的な投稿をしたティールのファウンダーズ・ファンド社の共同経営者であるアスパロウホフは、政府からの資金提供を求めているヴァルダ・スペース・インダストリーズ社の共同設立者でもある。

ポッドキャスト「オールイン」の最近のエピソードで、共同司会者のジェイソン・カラカニスは、民主党が献金者に虜(とりこ)になっていると批判したサックスをからかい、ヴァンス指名の「事業計画者(architect)」と呼んだ。

サックスはポッドキャストで、自身の関与を過小評価した。サックスは「私はおそらく、(トランプに)意見を述べた1000人、いや少なくとも数百人のうちの1人だった」と語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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  古村治彦です。※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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2025年1月20日に実施された第47代米大統領ドナルド・トランプの就任式には、彼を嫌い、民主党を支持してきた、シリコンヴァレーのテック産業の大立者たちが神妙な面持ちで、かつ時には目は笑っていない笑顔を見せていた。アマゾンのジェフ・ベゾス、META(フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグなど、トランプを自分たちの提供するサーヴィスから排除してきた人物たちが進んで、就任式の費用の一部の負担(寄付)を申し出て、式へ出席した。逆に、イーロン・マスクにとっては彼らを並べて悦に入れる時間だった。私は最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)で、テック産業の大物たちの「降伏式」と形容した。ピーター・ティールは式には出席しなかったが、祝賀パーティーを開いたということだ。ピーター・ティールがトランプから離れたという見立ては間違っている。彼の不在が注目されることこそが彼の存在の大きさを物語る。
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左から:プリシラ・チャン(ザッカーバーグ夫人)、マーク・ザッカーバーグ、ローレン・サンチェス(ベゾス婚約者)、ジェフ・ベゾス、サンダー・ピチャイ(Google CEO)、イーロン・マスク

 下記論稿では、「どうしてシリコンヴァレーのテック産業の億万長者たちがトランプに敬意を表するのか(よりあからさまな表現をするならば靴を舐めるのか)?」という視点から書かれている。彼らの行動には2つの介錯ができると論稿の著者マット・K・ルイスは述べている。それは、「トランプに屈服しているか、あるいはトランプを利用して自分たちの利益を追求する長期的な戦略を取っているか」である。

億万長者たちが求めているのは低税率や規制緩和、低賃金労働へのアクセスであるが、それだけではなく、彼らの興味はブロックチェインやAI、トランスヒューマニズムに向かっており、これらの目標は米国の根本的な理念を脅かす可能性がある。アネンバーグ技術革新ラボのジョナサン・タプリンは、著書で彼らのヴィジョンを詳細に描写し、ザッカーバーグのメタバースやマスクの火星植民地化、ティールの若返りの探求が、根本的な平等の理想を脅かすと警告しているということだ。

それは、富の格差がますます広がるトランスヒューマニズムの未来が想像されることだ。この状況は、自由民主政治体制や人間性、急速に進化する技術の将来に関して重要な疑問を投げかけている。タプリンは、これらの変化に対抗するためにはポピュリスト右派とも協力が必要であると述べ、スティーヴ・バノンが「テクノ封建主義(technofeudalism)」に対する懸念を表明していることを引き合いに出している。彼の警告には、権力が人々を恐れさせる要因であるとの指摘も含まれている。

今日ではテック業界の巨人たちが文化的、政治的議論において主導的な役割を果たしており、彼らの姿は昔のオタクとは異なっている。今や彼らは、豪華なライフスタイルを送り、権力を誇示する存在となっている。オタクたちが社会を動かす時代に突入しているが、その行く先には懸念が残る。彼らが持つ力によって、社会全体にどのような影響が及ぶのか、引き続き注視していく必要がある。

 人間の生活や社会の構成を大きく変更させるだけの力を持つ技術をシリコンヴァレーのテック産業の大物たち(元はオタクと馬鹿にされていた)が持つようになった。彼らの野望が実現すれば、社会は平等ではなくなり、そうなれば民主政治体制の基盤も揺らぐという指摘である。既に、静養が培ってきた価値観や民主政治体制が大きく揺らいでいる。私は佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相』(秀和システム)の中で、ストロングマン(strong man)を人々が求めることで、民主政治体制が揺らぐと主張した。「テクノ封建制」と呼ばれる動きがその動きを加速させることになる。そして、シリコンヴァレーの億万長者たちが「テクノ封建制」を推進するために、大嫌いなトランプに協力するということは大いにあると私は考える。

(貼り付けはじめ)

どうしてテック業界の億万長者たちはトランプに敬意を表しているのか?(Why exactly are tech billionaires kissing Trump’s ring?

マット・K・ルイス筆

2025年1月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/technology/5098642-why-exactly-are-tech-billionaires-kissing-trumps-ring/

今週行われたトランプ大統領の2回目の就任式について、シリコンヴァレーの「寡頭支配者たち(oligarchs)」、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、ピーター・ティール(就任式には出席しなかったが就任式パーティーを開いた)とその仲間たちが、トランプのご機嫌を取ろうとしてこびへつらい神妙に並んでいる(to curry favor)のに気づくことなしに、その様子を見ることはできなかった。

以前、超富裕層の究極の願望(the ultimate aspiration of the ultra-wealthy)は、社会的制約を超えて活動できるだけの「薄汚い金(F-you money)」を蓄えることだった。現在、テック業界の巨人たちは、連邦政府の力に絡め取られ、金銭的にも大きな問題を抱えているため、トランプ大統領に敬意を表せざるを得ないようだ(they seem compelled to kiss the ring)。

この力学は2通りの解釈ができる。1つの見方は、これらのテック業界の大物は単にトランプに屈服し、不服従が大きな代償を伴う可能性がある政治環境での賭けをヘッジしているというものだ(トランプが以前ザッカーバーグを投獄すると脅したことを思い出して欲しい)。もう1つの見方は、彼らが長期戦を仕掛けており、トランプを道具として、つまり政治の世界(political realm)で自分たちの目的を達成するための便利な手段として利用しているということだ。

しかい、テック業界の大立者たちが実際に欲しているのは何なのか?

ほとんどの大企業を経営するエリートたちと同様、彼らもまた低い税率、規制緩和、低賃金労働へのアクセスを好んでいる。それは、H-Bヴィザをめぐるポピュリスト右派との最近の衝突が証拠となって示している。

それでも、テック業界の一部の人々にとって、右傾化(the rightward shift)は個人的な問題であった。著名なテクノロジー投資家のマーク・アンドリーセンを例に取ると、オバマ時代の社会契約(social contract)が破綻していると見なし、最近、幻滅を表明した。アンドリーセンは、次のように述べた。「成功したビジネスマンになって、技術革新と富で称賛されても、最後にはそれを全て手放して再び称賛されるという取り決めだ。それによって自分の罪が洗い流される」。

アンドリーセンは裏切られたと感じている(Andreessen feels double-crossed)。慈善活動や政治献金を行うことで、進歩主義者たちから攻撃の免除と称賛を獲得できると期待していたのにそうではなかったのと同じように感じている。

これらの動機、貪欲(greed)、恐怖(fear)、エゴ(ego)、復讐(revenge)は理解しやすい。しかし、テック業界の億万長者たちが抱くユニークな野望を考えると、その意味するところはより不穏なものになる。ブロックチェイン、人工知能、トランスヒューマニズムに根ざした彼らの目標は、トランプを超越し、私たちが知るアメリカの実験を長引かせる可能性がある。

アネンバーグ技術革新ラボの名誉所長であるジョナサン・タプリンは、2023年の著書『The End of Reality: How Four Billionaires Are Selling a Fantasy Future of the Metaverse, Mars, and Crypto』の中で、このヴィジョンについて描いている。タプリンは彼らの夢を次のようにまとめている。ザッカーバーグのメタバースとは、人々が仮想現実(virtual reality)のヘッドセットをつけて1日7時間を過ごすという考え方であり、マスクの火星植民地化、追跡不可能な暗号資産とは、国家の支配を越えて存在するものであり、ティールの探求とは、老化を逆転させる(reverse aging)こと(少なくとも160歳まで生きること)だ。

これらの野望の結果は重大なものとなる可能性がある。そして、その潜在的な影響の全てをここで説明するにはスペースが足りないが、タプリンは、これらの野望は、トーマス・ジェファーソンの「全ての人間は平等に創られている(all men are created equal)」という理想など、民主政治体制の根本原則を損なうものだと主張している。

富が寿命や遺伝的優位性を決定するトランスヒューマニズムの世界では、平等は無意味になる可能性がある。

私たちは、自由民主政治体制の未来、人間の本質、AIのような急速な技術進歩の変革的影響について、重大な疑問に取り組んでいる極めて重要な瞬間に立っている。しかし、私たちは、これらの結果に最も大きな既得権益を持つ個人に、この未来を形作る調停者や専門家のルール策定者として行動するよう委ねているのだ。

簡単なことではないが、このディストピア的未来に対抗するには、ポピュリスト右派の奇妙な仲間たちと手を組む必要があるかもしれない。『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニストとの最近のインタビューで、スティーヴ・バノンは「テクノ封建主義(technofeudalism)」と「トランスヒューマニズム(transhumanism)」に対して激怒した。バノンは「誰もが自分の持つ力のせいで怯えている(Everybody’s scared because of their power)」と警告した。バノンは多くの点で間違っているかもしれないが、これは間違っていない。

音楽と映画でも成功を収めたタプリンは、高潔な社会では「作家、ミュージシャン、映画製作者、芸術家といったヒューマニストたちが、私たちが向かうべき方向のヴィジョンを提示しなければならない」と示唆している。

しかしながら、2024年の選挙では文化的な変化が明らかになった。芸術界のインフルエンサー(カマラ・ハリスを支持したテイラー・スウィフトなど)は、少なくとも人々の投票方法に関して、世論を形成する能力をかなり失ってしまったようだ。

彼らに代わって、この国の文化的、政治的な議論をますます支配しているのは、テック業界の巨人たち(その多くはアメリカ生まれでもない)だ。

彼らはもはや、昔の典型的なオタク(stereotypical nerds of yesteryear.)ではない。今日のテック業界の男たちは、金のチェーン、美しい妻やガールフレンド、ジムで鍛えた肉体を誇示している。これは「オタクの復讐(Revenge of the Nerds)」だが、ステロイドを摂取して達成している。

オタクたち(the geeks)が地球を継承しており、彼らが地球を焼き尽くさないことを願うしかない。

※マット・K・ルイス:コラムニスト、ポッドキャスト番組放映者、『潰すには駄目すぎる(Too Dumb to Fail)』『汚らわしい富裕な政治家たち(Filthy Rich Politicians)』といった複数の著作を持つ著者でもある。

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