古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ジョー・バイデン

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争はアメリカの仲介による停戦交渉が続いている。ウクライナ戦争は2026年2月24日を過ぎて継続していると、満4年となり、5年目に入る。ウクライナ、ロシア両国の国民にとっての苦痛が長期間続くことになる。トランプ政権は、2026年2月24日に一般教書演説(the State of the Union Address)を予定している。ここまでに停戦交渉をまとめて、一般教書演説で大々的にアピールしたいところだろう。

 ウクライナ戦争は、ロシアとウクライナの戦争であるが、ウクライナのバックにはアメリカとヨーロッパの西側先進諸国という「大応援団」がいて、ロシア対西側諸国という構図になっていた。ロシアは戦術核兵器使用(ウクライナだけに限定せず)を示唆したことで、西側諸国の腰が引けた。ウクライナにロシアを本気で怒らせない程度の攻撃しか許さない状況になった。

 そもそも西側諸国はウクライナに軍事支援や軍事顧問団派遣を行い、ロシアを挑発してきた。ロシアがその挑発に乗ってしまったという面はある。西側諸国はロシアが挑発に乗ってきたところで、経済制裁を発動してロシアを締めあげてやろうとしており、実際に経済制裁を行ったのだが、意図に反して、ロシアは屈服しなかった。ウクライナからロシアを完全に追い払うには、西側諸国が自分たちも危険を冒して、血を流す覚悟、最終的には地上軍派遣を行わねばならないところまで進んだが、もちろん、西側諸国にそのような意図も度胸もない。ロシアは西側以外の国々からの支援を受けて、守りを固めて、戦争を継続している。ウクライナはどうしようもない状態になっている。さらに、ウクライナ国内の状況もばれつつあり、はっきり言って、見た目はヨーロッパだが、中身は昔の第三世界の国のようなもので、腐敗と汚職の蔓延した国家である。そのような国に重要な武器を渡して、それをアメリカの敵対国や敵対勢力に横流しでもされたら目も当てられない。いくらお金を注ぎ込んでも、そのお金が政府高官たちの贅沢な生活に消えてしまうが、それくらいはまだましであるということになる。

 西側諸国がウクライナ支援に対して及び腰なのは、ロシアを怒らせたくないということと、ウクライナ国内の腐敗と汚職の問題があることが原因だ。アメリカをはじめとする西側諸国の支援が足りないなどと言っても、支援したくてもできない事情がある。ウクライナ戦争は西側諸国の間違った戦略のために起きた災厄である。ウクライナの一般国民が一番の犠牲者である。一日も早い停戦の実現を望む。

(貼り付けはじめ)

ジョー・バイデン政権のウクライナへの長い影(Biden’s Long Shadow Over Ukraine

-バイデン政権はウクライナに対してほぼあらゆる面で失望を与え、今日に至るまで戦争を形作ってきた。

エイドリアン・カラトニツキー筆

2025年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/05/biden-war-ukraine-russia-putin-zelensky-military-aid/

2022年夏の終わり、ウクライナはウクライナ南部で大規模な反撃を開始した。11月11日、この作戦の結果、ヘルソン市とドニエプル川西側のロシア占領地域全てが解放された。

ウクライナ軍がヘルソンに復帰したという高揚感の中、包囲網に閉じ込められていたロシア軍の驚異的な脱出劇はほとんど注目されなかった。数週間にわたり、前線強化のために派遣された精鋭部隊を含む推定2、3万人のロシア兵と大量の軍事装備が、フェリー、桟橋、そしてウクライナ軍が事前に一部通行不能にしていた橋を使って、ドニエプル川を越えて安全に撤退した。ウクライナ軍は撤退に先立ち、この橋をロケット砲で攻撃していたが、ロシア軍の主力が渡河した数週間後、この脆弱な隘路への砲撃をほぼ停止した。戦争研究所のロシアティームを率いるジョージ・バロスは『フォーリン・ポリシー』誌に「ヘルソンから秩序正しく撤退したことは、戦争全体を通してロシアにとって最も成功した軍事作戦だった」と語った。もしこの部隊が壊滅するか降伏を強いられていたら、それは戦争の転換点となり、全世界の前で晒される、クレムリンにとっての大きな屈辱となっただろう。

最近、ウクライナ政府高官数名と背景について話をする機会があり、これらの出来事について新たな知見が得られた。第一に、この撤退は、屈辱的な敗北がロシアの戦術核による反撃を誘発するのではないかとアメリカが懸念する中で行われた。第二に、ウクライナは河川を越える距離まで到達できる弾薬が不足しており、これはアメリカがウクライナに供給する弾薬の種類と量を厳しく制限していたことが理由だ。ロシア軍の驚くほど妨害のない撤退の真相は、戦争終結後も長らく秘密のままとなる可能性があるが、ヘルソン周辺での出来事は、ウクライナの攻撃が戦争中ずっと、アメリカをはじめとする西側諸国からの兵器の流入とその使用制限によって厳しく制限されてきたことを象徴している。

ドナルド・トランプ大統領は、ロシアとウクライナの紛争をしばしば「バイデンの戦争(Biden’s war)」と呼んでいる。ジョー・バイデン前大統領がロシアのウクライナ侵攻の個人的な責任を負っているというトランプ大統領の主張はもちろん誤りだ。責任はロシアのウラジーミル・プーティン大統領にあるのであり、トランプ大統領も主張しているように、バイデンやウクライナにあるのではない。トランプ大統領を除くほとんどの人が知っているように、プーティン大統領は長らくウクライナの正統性(legitimacy)に疑問を呈しており、少なくとも2014年にクリミア侵攻とドンバス占領というロシア初の領土獲得を開始して以来、その領土を渇望してきた。プーティン大統領の野望の大きさを考えれば、全面戦争に突入するのは時間の問題だった。

しかし、これは全く異なる意味でのバイデンの戦争である。今日に至るまで、この侵攻は、バイデン政権がウクライナにいつ、どのように武器を供給するかという決定、そしてアメリカが軍事援助をてこ入れしてウクライナの戦争遂行を制約した方法によって、大きく形作られてきた。ホワイトハウスのこれらの決定は、ロシアの侵攻の輪郭を大きく決定づけた。ウクライナの現在の軍事態勢、支配地域、そして増大している民間人および軍人の犠牲者数は全て、バイデン政権がウクライナの戦争遂行方法に課した制限によって大きく形作られており、その制限は今日まで続いている。

確かに、バイデンのウクライナにおけるレガシーは、ネガティヴなものだけではない。バイデン政権の多大な支援と、キエフを支援する国際連合の形成における彼の成功がなければ、ウクライナは領土の約80%を維持できなかっただろう。ロシアの侵攻を衰弱させるほどに減速させることもできなかっただろう。もしトランプが政権を握っていたら、キエフを支援するよりもモスクワとのビジネス取引を優先したかもしれない。しかし、バイデンの過剰な慎重さとウクライナの戦闘方法に対する厳しい制約は、2022年秋のウクライナの急速な反撃の停滞にほぼ確実に寄与し、そして今日に至るまでロシアが戦争を終結させ、自国が出す以外の条件で和解を求める圧力をほとんど感じていないという事実にもつながっている。

バイデンはウクライナの運命を深く憂慮しており、NATO同盟諸国とその他の民主政治体制国間の結束、負担分担、支援の調整、そして協力を巧みに形作った功績は、高く評価されるべきだ。実際、ヨーロッパ各国の首脳が最近示した強い結束、そして8月18日に大統領執務室で行われたトランプ大統領との会談で最も劇的な結束は、バイデンの非常に効果的な連合構築の成果である。

しかし、バイデン陣営の失策、そしてウクライナ軍への支援における過剰な慎重さは、誠実な評価を免れるべきではない。

最初の失策は、バイデンが副大統領を務めていたオバマ政権時代の遺産であるが、2021年3月に政権発足からわずか数週間後に始まったロシアによるウクライナ国境での大規模な軍事力増強の過程で、バイデンがウクライナへの大幅な武器供与を拒否したことだ。ウクライナは、トランプ政権初期に供与された対戦車兵器を補強するための新たな兵器を強く​​求めていたにもかかわらず、バイデンは何もしなかった。

ワシントンが2億ドルの控えめな武器パッケージを送る準備をした後も、バイデンはプーティンとの緊張の高まりを恐れて援助の送付を遅らせた。2021年12月中旬のNBCニューズの記事によると、バイデンは「緊張を緩和するための外交努力のための時間を増やす」ために援助を差し控えることを決めた。『ワシントン・ポスト』紙の信頼できる情報源による報道によると、アメリカの情報機関はその時にすでにロシアがウクライナへの全面攻撃の準備をしていると結論付けていたため、援助の遅延はこのようにして多くの重要な数週間にわたって続いた。バイデンの遅延の結果、2022年2月にロシアが攻撃するまでに、比較的わずかな援助パッケージの一部しか移送されなかった。バイデンが事実上、ロシア・ドイツ間のノルドストリーム2・ガスパイプラインとアフガニスタンからの屈辱的なアメリカの撤退を支持したことと相まって、クレムリンはこれら全てをワシントンの弱さと決意の欠如のシグナルと見ざるを得なかった。

さらに、戦争の初期段階では、バイデン政権はウクライナ軍がロシア軍に対して短期間で敗北すると確信していたため、多額の援助を控えていた。政権の誤った評価は、バイデン政権の国家安全保障ティームが信頼するロシア専門家サミュエル・シャラップによっても主張されていた。彼は『フォーリン・ポリシー』誌で「西側諸国の兵器はウクライナに何ら影響を与えない」と主張した。アメリカ側との協議に関わったウクライナ政府の元高官は、バイデンの消極的な姿勢は、少なくとも部分的には、タリバンが数十億ドル相当のアメリカ製兵器を押収したことが影響していると考えていると私に語った。バイデンはロシアがすぐにウクライナを制圧すると考えており、そのため、アメリカ製兵器がプーティンの手に渡ることを恐れていたようだ。

現実は全く異なっていた。トランプ政権初期に提供された対戦車ジャヴェリン、イギリス製の対戦車NLAW、そしてウクライナ独自の兵器(国産兵器とソ連時代の装備の混合)に加え、ヴァレリー・ザルジニー将軍率いる士気の高い防衛部隊による大胆な戦闘作戦により、ウクライナは苦境を克服し、ロシアを当初奪取した領土の多くから追い出すことができた。ウクライナの予想外の成功は、バイデン政権とNATO同盟諸国がようやく懸念の一部を克服し、支援を強化する機会をもたらした。

しかし、ウクライナは大きな成功を収めたにもかかわらず、バイデンと彼のティームは戦争中、事実上あらゆる場面でウクライナを失望させた。彼らは重要な兵器を渡さず、過剰な警戒からキエフの生存をかけた戦い方を著しく制限した。

バイデン政権の核エスカレーションへの懸念は、その後数年間のアメリカによる支援を形作る上で決定的な役割を果たした。こうした懸念を認識したクレムリンは、頻繁な脅しによって巧みに国民の懸念を煽った。これは、ソ連時代の戦略家たちが「反射的統制(reflexive control)」と呼んだ、敵対者の思考を形作るための一種の心理戦の典型例である。バイデン政権は、オバマ政権のロシアの「エスカレーション優位(escalation dominance)」理論の派生型、すなわちロシアはいつでも紛争をエスカレートさせてアメリカの援助を無効化できるという考えを信じていた。2014年からオバマ政権の任期満了となる2017年まで、この理論はキエフへのアメリカの致命的な軍事支援を拒否する根拠となった。

ロシアは戦争初期に戦術核兵器の使用を検討していたかもしれないが、ウクライナ側は喜んでそのリスクを負うつもりだった。1年間の激戦、ロシアの戦場での大敗(占領地の大規模な喪失を含む)、そして西側諸国からの新型兵器の供与を経て、エスカレーションの脅威は(かつて存在した限りでは)後退していた。その時点で残っていたのは、ウクライナによる戦争遂行の実効性を抑制するというアメリカの一貫した政策だけだった。この政策の運用は、ボブ・ウッドワードの著書『WAR 3つの戦争(War)』で明らかにされている。同書は、2022年10月21日のやりとりを報じている。その中で、ロイド・オースティン国防長官はロシアのセルゲイ・ショイグ国防長官に対し、「私たちは特定のことを行わないよう注意してきた。(中略)私たちが提供した兵器の使用方法については、一定の制限を設けている」と述べている。オースティンのこの言葉は、ウクライナの戦争遂行に対するバイデン政権のアプローチの本質を明らかにしており、この政策は今日まで続いている。

ロシアの主要な戦略的パートナーである中国が、プーティン大統領が核兵器使用の選択肢に訴えることはないという強い兆候を示した後も、アメリカの牽制は続いた。ウクライナのある高官は私に、習近平国家主席がプーティン大統領に対し、核兵器使用の選択肢は容認できないと明確に伝えたと中国側がウクライナ側に伝えたと語った。プーティン大統領が中国の支援への依存度を高めていることを踏まえると、この情報はウクライナ当局者に、ロシアが核兵器使用のリスクを冒さないと確信させた。しかし、ワシントンは、キエフの戦争遂行能力を劇的に強化する可能性があった主要兵器の移転を、一貫して遅らせたり、遅々として進まなかったり、あるいは完全に反対したりした。

2023年1月末までに、ロシアによる戦術核兵器の使用が差し迫っているというアメリカの懸念は、ある程度和らいだ。ウクライナがハリコフとヘルソンを解放するという戦場での見事な活躍を受け、西側諸国は大型戦車を含む新たな兵器支援を約束した。しかし、多くの物資の搬入は依然として遅延していた。しかし、ロシア軍後方の軍事目標および兵站目標を攻撃するための深層攻撃兵器を求めるウクライナの要請は、バイデン政権時代を通じて常に無視されてきたように、依然として無視されたままであった。

バイデン政権がウクライナに適切な武器を提供することに消極的だった歴史的記録は衝撃的だ。ウクライナが当初HIMARS多連装ロケット砲を要請したが、2022年夏まで回答が得られなかった。しかも、要請が出されたのは、人口約45万人の戦略的に重要な港湾都市マリウポリが、凄惨な包囲攻撃で街がくすぶる廃墟と化した後にすぎなかった。マリウポリ近郊の集団墓地は、ウクライナの民間人および軍人の死者が数万人に上った可能性があることを示している。キエフがパトリオット防空システムを求める要請も、ロシア軍がウクライナの都市の民間人を標的に継続的かつ残忍な攻撃を行ったにもかかわらず、2022年の大半の間、回答が得られなかった。なぜ当時、純粋に防御用の兵器ですら禁止されていたのかは、バイデンと当時の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンの秘密のままである。

最初のエイブラムス戦車がウクライナ軍に到着したのは、ロシアの侵攻から1年半以上経った2023年9月になってからだった。そして、2023年5月にキエフに長距離ストームシャドウミサイルを供給すると発表したのは、ワシントンではなくロンドンだった。アメリカによるATACMSと呼ばれる長距離ミサイルの納入は、2023年10月にようやく始まった。当時でさえ、これらのミサイルは射程距離を制限するように改造されており、ロシア領内の軍事目標への使用は制限されていた。例えば2024年夏、ウクライナは国境からわずか100マイル内側にあるロシアの主要爆撃基地の1つへの攻撃許可を懇願したが、結局拒否された。この制限が部分的に解除されたのは、2024年11月になってからだった。

また、バイデン政権はキエフに対し、ウクライナの主権領土内であっても、特定のロシア軍・兵站施設を攻撃しないよう圧力をかけたようだ。『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、アメリカはクリミア半島のロシア空軍基地と、ロシア軍にとって重要な補給路であるケルチ海峡橋へのウクライナ軍の攻撃に反対している。この記事ではまた、アメリカがクレムリンの要請により停止した、未公表のウクライナ軍による作戦についても言及している。

さらに、バイデン政権は戦争中ずっと、アメリカとウクライナだけでなく、ヨーロッパの同盟諸国にも恣意的なレッドラインを引いた。同盟諸国は、戦車、長距離ミサイル、ヨーロッパ所有のF-16戦闘機など、特定の兵器の提供を差し止められた。しかし、これらの制限が遅れて解除されると、これらの戦闘機はロシアの攻撃に対するウクライナの防空防衛の不可欠な要素となった。

ハドソン研究所のルーク・コフィーが述べているように、「遅延はクラスター弾、戦車、歩兵戦闘車、そしてATACMS(対空ミサイルシステム)の提供に影響を与えた。アメリカは最終的にこれらのシステムすべてを承認したが、その決断の遅れはウクライナに多大な損害を与え、積極的対応ではなく事後対応を強いることとなった」。言い換えれば、バイデンはウクライナに対し、背中に片手を縛られた(one hand tied behind its back)状態でロシアと戦うことを強いた。

アメリカの限定的な援助はロシアの侵攻をやっと抑える程度ではあったが、ウクライナが国家として存続することを確かに保証した。こうした状況下で、ウクライナは、自国の長距離ミサイルを含む、これまで供給が認められていなかった兵器の開発と量産を徐々に開始した。また、強力な戦闘用ドローン産業の台頭にも時間を稼ぎ、戦場は一変した。

ウクライナ自身の技術革新にもかかわらず、バイデン政権によるロシアへの攻撃制限は、爆撃機攻撃に利用される飛行場など、ロシア国内の軍事施設やインフラ施設への攻撃能力を非常に限定的なものにしていた。2024年には、バイデン政権はキエフの国産兵器の使用さえも細かく管理し、ロシアの石油精製所へのドローン攻撃を中止するようウクライナに圧力をかけた。ウクライナはこれに従い、爆発力は大きいものの戦略的な影響は小さい燃料貯蔵庫への攻撃に切り替えたようだ。トランプ政権下では、この制限は撤廃され、ウクライナはロシアの製油所に対して非常に効果的なドローン作戦を開始した。その結果、ロシアの大部分が燃料不足に直面している。この作戦の成功は、石油インフラへの攻撃が、バイデン政権が想定していたようなレッドラインではなかったことを証明している。

バイデン政権の制限は軍事的にはほとんど意味をなさず、むしろ著しい不均衡を生み出した。ロシアのミサイルとドローンがウクライナの都市で電力、暖房、水道の供給を停止させた際、ウクライナには同様の対応を行う能力がほとんどなかった。ロシアの攻撃は今日まで衰えることなく続いており、民間人が殺害され、数千ものウクライナの学校、教会、病院、アパート、オフィスが壊滅した。これらの攻撃の一方的な姿勢は、バイデン政権の制限が今もなお及ぼしている影響を如実に示している。

バイデン政権の慎重なアプローチは、アメリカにも政治的な遺産を渡すことになった。武器の漸進的な供給と厳しい使用制限によってウクライナで生じた膠着状態は、新たな「永遠の戦争(forever war)」の恐怖を生み、トランプに近い共和党員からの反対を強め、2024年の選挙戦においてトランプを有利に導いた可能性が高い。

MAGA保守派の間でウクライナへのアメリカからの支援を縮小すべきだという機運が高まっていることを念頭に、共和党の連邦下院議員マイケル・マコール、マイク・ロジャース、マイク・ターナーは2024年1月に詳細な報告書を発表し、武器制限の解除を求め、バイデン政権は戦争終結を確実にする計画を策定していないと警告した。議員たちは「戦争の初日以来、バイデン大統領がウクライナへの重要兵器の提供をためらい、それがウクライナの勝利を遅らせてきた」と非難した。さらに彼らは、ウクライナの勝利への道筋は「(1)必要かつ迅速なウクライナへの重要兵器の提供、(2)プーティン政権への制裁の強化、(3)凍結されたロシアの国家資産(3000億ドル)のウクライナへの移管」が必要だと主張した。

トランプも2025年8月にトゥルーソーシャルに「バイデンはウクライナに反撃をさせず、防衛だけをさせた。その結果は一体どうなったんだ?」と投稿し、この批判を繰り返した。しかし、バイデン政権下でウクライナの戦闘行為に対して課された制約の大部分は、トランプ政権下でも依然として有効である。実際、ウォール・ストリート・ジャーナルが2025年8月23日に報じたように、トランプ政権はウクライナによるロシア国内への長距離対空ミサイル(ATACMS)発射をひそかに阻止した。すべての兵器輸送の費用をヨーロッパまたはウクライナが全額負担することを義務付けるアメリカの新たな政策下でも、これらの購入のほとんどは、種類、数量、使用方法において依然として厳しく制限されている。

バイデン政権が恣意的なレッドラインを課さず、クレムリンによる核恐怖の煽動に操られることもなければ、マリウポリは陥落しなかったかもしれない。ウクライナは2022年の反攻作戦の勢いを確実に維持し、ロシア軍が陣地を固める前にさらに多くの領土を解放できただろう。ウクライナはヘルソンで撤退するロシア軍とその装備に屈辱的な敗北を味合わせることができただろう。ウクライナ市民に毎夜死をもたらすロシアの爆撃機と空軍基地を破壊できたはずだ。ロシアの戦争マシーンにとって最重要の資金源である石油・ガス産業は麻痺状態に陥っていた。そしてクレムリンはとっくの昔に交渉の席に着き、勝ち目のない戦争からの脱却を迫られていたかもしれない。

その代わりに、バイデンが形作ったウクライナ戦争はトランプ政権下でも継続している。トランプが戦闘終結に向けた精力的な試みで一定の功績を認められる一方で、特使スティーヴ・ウィトコフの拙劣な取り組みが示すように、成功の見込みは薄い。永続的な平和を実現するには、プーティンを交渉のテーブルにつかせる必要がある。そのためには、トランプはまずウクライナが自力で効果的に戦えるよう支援し、バイデンの戦争(Biden’s War)を終わらせる必要がある。ヨーロッパの資金援助(凍結されたロシア資産の活用を含む)、アメリカと同盟諸国の武器の制限なき使用(モスクワやサンクトペテルブルクの標的攻撃能力を含む)、強力な二次制裁を伴うこうした戦争こそが、紛争終結への最短ルートである。

※エイドリアン・カラトニツキー:大西洋評議会上級研究員、ミュルミドン・グループ創設者。著書に『戦場としてのウクライナ:独立からロシアとの戦争へ(Battleground Ukraine: From Independence to the War with Russia)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2023年10月から始まったイスラエル・ハマス紛争はイランやシリア、レバノンを巻き込んでの地域紛争となっている。イスラエルがシリアやレバノンを攻撃し、紛争を拡大している。イスラエルに対しても、イランからのミサイル攻撃が実施されるなど、厳しい状況が続いている。ガザ地区ではイスラエル側による住民への非人道的な攻撃が続いている。

 イスラエルがなぜこのような残虐な行為を続けているのか。自国の安全保障のため、自国の存在を守るためという理由付けがされるが、実際のところは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が自身と家族のスキャンダルによる裁判、投獄を避けるために、権力に妄執し、極右勢力を内閣に引き入れて、戦争を継続、拡大させているからだ。自身の汚職の責任を取りたくないために、投獄されることを避けるために、首相の座を握る必要がある。そのために戦争を拡大させている。このことは、2024年に出した、佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相』(秀和システム)で、佐藤先生が指摘している。そのことがアメリカでも報道されているようだ。

 そして、ガザ地区の紛争ぼっ発当初からの窮状について、その時に政権を握っていた、ジョー・バイデン前大統領と側近たちは、その実情を知りながら、知らないと嘘をつき、そのようなことは起きていないと嘘を重ねながら、イスラエルを支援し続けたという告発がなされている。バイデン政権のそのような虚偽を押し通す姿勢に抗議して職を辞した人物たちもいて、そうした人々が声を上げている。遅きに失したという批判はあるだろうが、声を上げない(ゼロ)よりも、声を上げる(イチ)ということは、「ゼロからイチへ」という大きな行動である。

 現状、ガザ地区で日々命の危機に去られている人々への責任は当事者全てにある。アメリカは免罪されない。アメリカこそが重大な責任を負っている。ネタニヤフの延命に手を貸しているということでいけば、イスラエル国民に対しても責任を負っている。ドナルド・トランプ大統領が登場して、イスラエルへの支援を続けている。状況は変わっていない。しかし、トランプ大統領はイラン空爆を行って、事態を一応収めている。イスラエルにこれ以上の攻撃は無用、もし攻撃をすればアメリカの意向に反する行為だと釘を刺している。ネタニヤフはガザ地区で非人道的な攻撃を繰り返して、イランやイスラム組織を挑発し、先に手を出させて、イスラエルの攻撃の正当性を担保しようとしている。どこまでいっても、ガザ地区の人々は救われない。大きく見れば、世界的にイスラエルとアメリカが行っている行為は、多くの批判を浴び、怒りを集めている。結局のところ、これらはイスラエルとアメリカの国益に適わない。無理に無理を重ねていけばいつか続かなくなる。イスラエルの国際社会での立場はのけ者にならざるを得ない。イスラエルの良識あるっ勢力が権力を獲得することが何よりも重要だ。

(貼り付けはじめ)

バイデンのティームはガザ地区について嘘をついた。彼らの責任を問う時だ(Biden’s Team Lied About Gaza. It’s Time to Hold Them Accountable.

-戦争犯罪を幇助したことへの免罪符はアメリカの民主主義を弱体化させる。

マシュー・ダス筆

2025年7月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/07/18/biden-war-crimes-israel-gaza-accountability/

7月11日、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が政治的な理由でガザ紛争を長期化させている実態を詳細に取材した記事を掲載した。この記事は、首相が自らの連立政権維持に狂信的なまでに執着し、投獄を免れるために、数万人(そして今も増え続けている)のパレスティナ人を殺害し、イスラエル人人質の命を犠牲にし、自国イスラエルを国際的なのけ者(an international pariah)にしようとしていることを示しているだけでなく、バイデン政権の戦争対応を非難する検察側の報告書における新たな証拠となっている。ジョー・バイデン前米大統領は、無責任で気難しい人物として描かれ、ネタニヤフ首相に方針転換を迫り、彼がそうすると言ったら信じ、そしてネタニヤフ首相がどうしてもそうしないと激怒するという描写が繰り返されている。

偉大なアメリカの詩人ジョージ・W・ブッシュの言葉を借りれば、「私を一度騙すなら、それはあなたが悪い。一度騙されたら、二度と騙されることはない(Fool me once, shame on you. Fool me—can’t get fooled again)」ということになる。

たとえバイデンが騙されていたとしても、言い訳はできない。もしバイデンが、何が起きているのか正確に知らなかったとしても、彼の国家安全保障ティームの他の幹部たちは確実に知っていた。数週間前、国務省のマシュー・ミラー前報道官は、イスラエルがガザ地区で「戦争犯罪を起こしていることは疑いなく事実だ」と発言して話題となった。しかし、スマートフォンを持っている人なら既に知っていたことだ。歴史上、被害者と加害者の双方によってこれほど詳細に記録され、リアルタイムで放送された大規模残虐行為(mass atrocity)はない。それでも、ミラーのような人物の発言は注目に値する。彼は以前、その証拠を見たことがないと繰り返し否定するのが仕事だった。

バイデン政権のガザ地区政策の基礎となった嘘は、ガザ地区で市民に加えられた甚大な被害は意図的なものではないというものだった。民間人に危害を加えることは、イスラエルの戦略の一部なのだ。国際司法裁判所での南アフリカの裁判でも明らかになったように、イスラエル政府高官の多くは、この点に関する彼らの意図をかなり公言している。

この戦争に関する膨大なリアルタイムの報告、とりわけパレスティナ人自身による報告に加え、スージー・ハンセンによる最近のニューヨーク・タイムズ・マガジンのカバーストーリーは、バイデン政権高官がいつ何を知っていたのかについて、これまでで最も詳細な説明を提供している。ミラーの告白とともに、政権高官たちは戦争犯罪が行われていることに気づいていなかったという主張は、これで一掃されるはずだ。それにもかかわらず、重大な人権侵害や人道援助の制限で告発されている軍への武器供与を禁止するアメリカの法律に違反して、彼らは武器を供与し続けたのだ。

バイデン政権の高官たちが、この歴史的大惨事(historic catastrophe)における自分たちの役割を正当化するために用い、そして今も用いている主な論拠について、簡単に触れておく価値がある。国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジェイク・サリヴァンが公の場でこの件について質問された際に、サリヴァンがそれらの論拠を一つ一つ説明しているのを見たことがあるだろう。

第一に、イスラエルの敵対勢力はアメリカによる武器供給停止を攻撃の動機と解釈し、バイデン政権が避けたかった地域情勢の激化につながる可能性があるというものだ。これは二つの理由から疑問視される。一つ目は、ハマスにとって大きな失望であったが、その同盟者と目されるヒズボラとイランは、象徴的な武力誇示以外には戦争に参加する意思がなかったことは明らかである。バイデンがアメリカの大きな影響力を行使して戦争を終結させたとしても、この計算が変わらなかったという証拠は見当たらない。二つ目に、戦争が最終的に地域的に激化した際、それをエスカレートさせたのはバイデンの支援を受けたイスラエルであった。

もう一つの主張は、武器供給を維持することで、武器供給が停止されていたならば失われていたであろう、イスラエル政策に対するアメリカの影響力が一定程度発揮できたというものだ。この主張が明らかに機能しなかったという事実に加え、私がこの主張を非常に奇妙に思う理由の一つは、現在主張している同じ人物が以前はそれを否定していたという事実だ。

2018年11月、バラク・オバマ政権の元高官30人が、イエメン戦争への残虐な介入を理由にサウジアラビアへの武器供給停止を支持する公開声明を発表した。署名者たちは、以前は「同盟軍に国際人道法を遵守させ、並行する外交努力を支援するための影響力を得るために」サウジアラビアを支持していたが、今にして思えばこれは間違いだったと説明している。署名者のほぼ全員が後にバイデン政権で働いた。そして今、イスラエルのガザ戦争への支持を、サウジアラビアのイエメン戦争への支持を正当化した際に後悔したのと全く同じ言葉で正当化している人もいる。

この主張をする政府高官たちは、多大な努力によって、イスラエルが本来提供していたであろう以上の援助をガザ地区に時折送り込むことができたと指摘する。その援助が、そうでなければ援助を受けられなかった少数の人々にとって確かに大きな変化をもたらしたことは認めるべきだが、イスラエルの攻撃を支援し続けることの代償を帳消しにするには程遠い。時折ジェノサイドにブレーキをかけたからといって、大して評価されるべきではないと思う。

しかし、問題はここにある。たとえ、その正当性が理にかなっていたとしても、バイデン政権がイスラエルの行為について国内外に誤解を与え続ける必要はなかった。人道支援を妨害するイスラエルの政策には明確な証拠があるが、アメリカの安全保障上の利益は、支援を打ち切るのではなく、武器を供給し続けることが最善であると述べて、支援を継続するために法的な権利放棄の権限を使うこともできたはずだ。そうすれば、少なくとも率直な議論ができたはずだ。

しかし、彼らはそうしなかった。彼らは嘘をついた。何度も嘘をついた。組織的虐待の証拠はないと主張した。彼らは「あまりにも多くのパレスティナ人が殺された」などという奇妙な表現に頼った。イスラエルは人道支援を促進するために「十分なことをしていない」と言い、政策上の問題を物資供給の問題(a logistic problem)であるかのように装った。

バイデン政権は、イスラエルの行為の現実を曖昧にすることに全力を注いでいたため、幻想(the illusion)を持続させる目的でまったく新しいプロセスを作り出した。2024年2月にバイデンが率いるホワイトハウスが発表した国家安全保障覚書第20号は、米国務省に対し、「(アメリカの)防衛品と、必要に応じて防衛サーヴィスを受け取る外国政府から、アメリカと国際法を遵守するという、一定の信頼できる書面による保証を得る」よう指示した。

ここ数カ月、私はホワイトハウス、米国務省、そしてペンタゴンで働いていたバイデン政権の元高官たちと数多く面会してきた。彼らのほとんどは、この事実を否定していない。イスラエルが意図的に民間人に危害を加えており、バイデン政権はあらゆるレヴェルでそれを認識していたことを認めている。彼らは、この政策に対して政権内部で抵抗を続けてきたと主張している。彼ら全員に対する私の返答は一貫して同じだ。それは、「今すぐ声を上げ、それについての真実を語って欲しい(Speak up now and tell the truth about it)」だ。

しかし、今のところ、彼らが声を上げている姿を見ていない。ごくわずかな例外を除いて、イスラエル・パレスティナ問題担当元国務次官補のアンドリュー・ミラーや、元ホワイトハウス特別顧問のイルアン・ゴールデンバーグなどはそうしているが、彼らのほとんどは、バイデン政権が助長した残虐行為の甚大さ、そして国と世界にもたらすであろう極めて悲惨な結果について、公の場で真摯に反省しようとさえしていない。前国務長官のアントニー・ブリンケンは、ドナルド・トランプ大統領のイラン攻撃に関する最近の『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説で、いかなる成功も自分の手柄にするという臆面もなく姿勢を示しながら、「ガザ地区」という言葉に一度だけ言及した。

それでは、アメリカの政治家と有権者たちは、この問題に対してどうすべきだろうか。バイデン政権の高官たちが外交政策エスタブリッシュメントに再び戻っていく中、これは重要な問いだ。マシュー・ミラーが上司である大統領の建前を言い続けること選んだと認めたことは、バイデンを二度と信頼できる人物として扱うべきではないことを明確に示している。しかし、私たちは既にそのことを承知しており、たとえ遅きに失したとしても、ミラーが今声を上げたことは非常に重要なのだ。

彼の同僚たちから、彼らが何を知っていたのか、いつ知ったのか、そして政策変更の試みが高官たちによって繰り返し阻止された経緯について、もっと多くの話を聞く必要がある。たとえ非常に遅ればせながらでも、声を上げる元高官たちを攻撃するのではなく、歓迎すべき。ガザ地区でのジェノサイドとされる事件の再発を防ぐには、そしてそれが最優先事項でなければならないのは、人々が歴史の記録に何が間違っていたのかを語り、遅かれ早かれそれを実行するために、知っていることを私たちに伝える場を作ることだ。

重要な時に声を上げ、公に辞任するという職業上のリスクを負った高官や任命された人々も、私たちは認めるべきだ。ジョシュ・ポール、タリク・ハバシュ、ハリソン・マン、リリー・グリーンバーグ・コール、そしてステイシー・ギルバートは皆、名誉ある公務員とはどういうことかを私たちに示してくれた。彼らは「ノー」と言う勇気を持っていた。彼らはまさに、この国が政府に必要としている人材だ。

バイデンのガザ政策を立案した人々はそうではない。率直な発言によって最終的に政府に復帰できる可能性のある、より若い高官たちとは異なり、この大惨事の最も責任のある人々は、将来の政権においていかなる役割も担うべきではない。

元政権の同僚や他の民主党員から聞いた主張の1つは、トランプとトランプ主義という真の脅威に焦点を当て、民主党連合内で争うべきではないというものだ。これは、2009年にバラク・オバマ元大統領がブッシュ政権下の拷問者たちの法的責任追及を断念した際に述べた言葉と重なる。「過去を振り返るのではなく、未来を見据えよう(Look forward as opposed to looking backward)」というものだ。

しかし、この主張には2つのポイントが欠けている。第一に、これは単に「過去を振り返る」ことではないということだ。ガザ地区でのジェノサイドは今も続いている。今まさに起こっている。むしろ、激化している。説明責任追及(accountability)は、将来の犯罪を防ぐだけでなく、現在発生している犯罪を阻止するためにも必要だ。

第二に、オバマ大統領の決定は、その時点では賢明な政治的判断だったかもしれない。しかし、2008年に経済を崩壊させた企業幹部に何の責任も負わせなかった決定と同様に、エリート層の不処罰というシステム(a system of elite impunity)を強化し、アメリカの民主政治体制を蝕んでしまった。トランプが「システムは不正に操作されている(the system is rigged)」と発言して支持を集めるのは、システムが不正に操作されているからだ。それはトランプのような富裕層のために不正に操作されている。そして、想像し得る最悪の犯罪を幇助しても、法的、職業的、その他の面で何の責任も問われない、元政府高官のようなコネと影響力を持つ人々のために不正に操作されているのだ。

アメリカの民主政治体制の再建を真剣に考えるならば、不正操作を是正し、不処罰を終わらせることが不可欠だ。ガザ地区問題への責任追及を求める闘いは、トランプ主義との闘いと切り離せない。

※マシュー・ダス:国際政策センター筆頭副会長。2017年から2022年までバーニー・サンダース連邦上院議員の外交政策アドヴァイザーを務めた。Xアカウント:@mattduss

(貼り付け終わり)

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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今回はジョー・バイデン前大統領の健康問題についての報道が多く出たがそのことについて書いていく。
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ドナルド・トランプ、ジョー・バイデン、ジル・バイデン
 ジョー・バイデン前大統領の健康状態について、前立腺がんと診断され、がんが骨に転移していることが明らかになったという報道がなされた。私が甚だ疑問なのは、正式には今年の1月まで大統領を務めていたバイデンの健康診断や健康チェックの状況である。がんが骨にまで転移しているということはがんは以前からあったということであり、それを早期発見できなかったのかということだ。高齢になればがんの拡大のスピートは遅くなると聞いたことがある。それならば、そこまでがんが進行するとなると時間がかかる。大統領在任時に健康診断や健康チェックはしていなかったのか、もしくはその方法がずさんだったのではないかという疑問がある。
 次に、リベラル派のメディアの記者たちが書いた『原罪』という本についてである。この本では、ジョー・バイデンの認知機能が2024年の大統領選挙前から既に衰えており、大統領の職務遂行に支障をきたすほどだったということが書かれている。ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官の名前を思い出せない、とりとめのない話を繰り返すということがあったようだ。ホワイトハウスの高官たちはこの状況では大統領を続けるのは無理だと分かっていたようだが、夫人のジル・バイデンや側近によるグループ(「政治局(Political BureauPolitburo)」と揶揄されていたようだ)が、バイデンの再選に固執したということだ。

 バイデンの恒例や健康状態についての不安は大統領選挙前から既に出ていた。そして、今回の出版でも分かるように、それはホワイトハウスの高官たちも分かっていた。家族や側近たちだけがそれを否定していたが、バイデンで公の場で何かをするたびに多くの人々が「大丈夫だろうか、心配だ」と思うようになっていた訳で、このような不安を持たせること自体が問題ではある。

 これは民主党全体の問題でもある。党が機関として機能して、「アメリカ国民のために、バイデン大統領に対して勇退を勧告する」ということができなかったのは、実際にそんなことをするのは困難であることは分かっているが、それでも勧告すべきだった、予備選挙をきちんと実施すべきだったということになる。それだけの重たい責任がある。結局、事なかれ主義で、隠ぺいに走ったために、民主党は2024年の大統領選挙と連邦上下両院議員選挙において敗北を喫した。

 バイデン自身が決断をする、もしくはバイデンに近い人々が冷静に判断して強く勧めるということができなかったのは、バイデンという政治家の晩年に大きな汚点を残すことになった。「一期目だけで勇退します。後任は党の予備選挙でしっかりと決めてください」とバイデンが言えれば、選挙の結果は変わっていたかもしれない。しかし、バイデンは、このような大きな決断ができないくらいの人物であった。それでもアメリカ大統領になれたのだから、幸運な人物ではあっただろう。
(貼り付けはじめ)
●「バイデン前米大統領に前立腺がんの診断 骨にも転移と事務所発表」

2025519日 BBC NEWS JAPAN

https://www.bbc.com/japanese/articles/crr7zqzwn14o

ジョー・バイデン前米大統領(82)が前立腺がんと診断されたと、個人事務所が18日、発表した。骨に転移しているという。

今年1月に退任したバイデン氏は先週、排尿に関する症状があり医師の診察を受けたところ、16日に診断を受けた。

がんは悪性度が高く、がん組織の悪性度を検査で調べ点数化した「グリソンスコア」の等級10段階のうち9だという。英研究団体キャンサーリサーチUKによると、がん細胞が急速に転移する可能性があることを示す結果だという。

バイデン氏と家族は、治療方法の選択肢を検討していると伝えられている。同氏の事務所は、がんはホルモン感受性のある種類なので、おそらく治療は可能だろうと説明した。

前大統領の病状が公表されると、与野党を問わずアメリカ政界から支援のコメントが相次いだ。

ドナルド・トランプ大統領は、自分のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に、自分と妻メラニア氏は「ジョー・バイデン氏の最近の診断結果を聞き、悲しく思っている」と投稿。さらに、バイデン氏の妻ジル氏に対して「ジルと家族に心からお見舞い申し上げる」と呼びかけ、「ジョーの1日も早い回復を願っている」と書いた。

バイデン政権で副大統領を務めたカマラ・ハリス氏は、自分と夫のダグ・エムホフ氏がバイデン一家のために祈っているとソーシャルメディア「X」に書いた。

「ジョーは闘士なので、これまでの人生とその指導力を常に決定してきた力強さとたくましさと楽観姿勢で、この困難に立ち向かうはずだと承知している」と、ハリス氏は書いた。

バイデン氏が2009年から2017年まで副大統領を務めた際の大統領だったバラク・オバマ氏は「X」で、自分と妻のミシェル氏が「バイデン一家全員のことを考えている」と書いた。

「あらゆる種類のがんに対する画期的な治療法の発見に、ジョーほど貢献した人はいない。彼が持ち前の強い意志と品位をもって、この試練に立ち向かうと確信している。早期の完全回復を祈っている」とオバマ氏は書いた。

オバマ元大統領は2016年、がん治療の進歩加速を目指す「がん・ムーンショット」イニシアチブを開始。バイデン氏が取り組みを主導した。「ムーンショット」とは、月面到達を目指したアポロ計画にも匹敵する意欲的な取り組みを意味する。

男性にとって2番目に多いがん

現職の米大統領として最高齢だったバイデン氏は昨年7月、健康状態と高齢が不安視される中で、2024年大統領選から撤退を余儀なくされた。

それまで再選を目指していたバイデン氏は、共和党候補だったトランプ氏を相手にした6月末のテレビ討論会で精彩を欠いたことから、民主党内の懸念が高まり、当時のハリス副大統領が民主党候補になった。

米オハイオ州のクリーヴランド・クリニックによると、前立腺がんは男性が発症するがんの中で、皮膚がんに次いで2番目に多い。米疾病対策センター(CDC)によると、男性100人中13人がどこかの時点で前立腺がんを発症する。年齢が最も一般的な危険因子だという。

アメリカがん協会の最高科学責任者で前立腺がん専門医のウィリアム・デイハット博士はBBCに対して、バイデン氏の病状に関する公開情報を基に、悪性度の高いがんのようだと話した。

「一般的に、がんが骨に転移した場合、治癒可能ながんだという見方はしない」とデイハット博士は述べた。 ただし、ほとんどの患者は初期治療によく反応する傾向があり、「診断から何年も生きることもあり得る」という。

デイハット博士によると、バイデン氏のような診断を受けた患者にはおそらく、症状を緩和し、がん細胞の増殖を遅らせるためにホルモン療法が提供される可能性が高い。

バイデン氏は退任以来、表舞台から退き、公の場に登場することもほとんどなかった。

前大統領は今年4月、アメリカ拠点の障害者支援団体「障害者の擁護者、相談員、代表者協会」がシカゴで開いた会議で基調講演を行った。 5月には退任後初めてBBCのインタビューに応じ、2024年大統領選から退く決断は「困難」だったと認めた。

アメリカではこのところ、バイデン氏の健康状態を疑問視する指摘が相次いでいた。人気トーク番組「ザ・ヴュー」に5月に出演したバイデン氏は、ホワイトハウスでの最後の年に自分の認知能力が低下していたという意見を否定し、「それを裏付けるものは何もない」と述べた。

バイデン氏は長年にわたり、がん治療の研究推進を提唱してきた。大統領在任中の2022年には、妻ジル氏と共に、2047年までに400万人以上のがんによる死亡を防ぐための研究強化を掲げ、「がん・ムーンショット」イニシアチブを再開した。

バイデン氏の長男ボー氏は2015年、脳腫瘍のため亡くなっている。

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●「米民主党、大統領任期中のバイデン氏の衰えに衝撃受けるも沈黙守る 新著が明かす内幕」

2025.05.21 Wed posted at 20:00 JST CNN日本版

 https://www.cnn.co.jp/usa/35233278.html

(CNN) 米大統領任期中の最後の2年間、バイデン前大統領は非公開の場面で最側近の名前を思い出せずにいた。個人的な予定がどんどん制限され、首尾一貫しない発言を連発。思考の脈絡を失ったその姿は世間の目から隠され、衰えの度合いは伏せられた。CNNのジェイク・タッパー記者とアクシオスのアレックス・トンプソン記者が手掛けた新著で明らかになった。

同書に収録された詳細なエピソードの数々からは民主党議員、ホワイトハウスの側近、バイデン政権の閣僚、民主党への献金者らがバイデン氏の心身の衰えに衝撃を受ける様子が浮かび上がる。当時バイデン氏は2024年大統領選での再選に向けて動き出していたが、彼らのほぼ全員が同氏の状態について公言せず、大統領選出馬を止めようともしなかった。

「世界が目の当たりにした、バイデン氏にとって最初で最後の24年大統領選のテレビ討論は、例外的な事象ではなかった。本人が風邪を引いていたのではない。準備不足もしくは準備のし過ぎでもなかった。多少の疲労によるものでもない」。タッパー氏とトンプソン氏はそのように記す。

「長年能力に衰えが生じていた81歳の男性として、自然な結果だった。バイデン氏とその家族、彼のチームは、自分たちの利益とトランプ氏再選への不安を理由に正当化しているが、ここでの試みは思考の混乱した老人をさらに4年間、オーバルオフィス(大統領執務室)に据えておこうとするものに他ならない」

当該の新著「原罪:バイデン大統領の衰えとその隠蔽(いんぺい)、再出馬という破滅的な選択(仮題)」は、20日に発売された。本書の元になっているのは200を超えるインタビューで、その大半は民主党の内部関係者に対するものだ。ほぼ全てのインタビューが24年大統領選の終了後に行われた。

この数日、バイデン氏の年齢と健康には大きな注目が集まっている。18日には同氏の事務所が本人について、進行性の前立腺がんと診断されたと発表。がんが骨にまで転移していることを明らかにした。現在同氏と家族は、医師と相談しながら治療の選択肢を検討しているという。

それでも再選を目指したバイデン氏の選択にまつわる議論は続いている。バンス副大統領は19日に記者団に対し、バイデン氏の健康を祈る一方、「前大統領が職務可能な状態だったのかどうかについて、我々は本当に正直になる必要がある」と付け加えた。

「ある意味で、私が非難するのは彼よりも彼の周囲の人間たちだ」「我々としては健康を祈ることはできるが、同時に仕事が可能な健康状態にない人物はそもそも仕事に就くべきではないと考える」(バンス氏)

16日には、バイデン氏の元事務所や自宅から副大統領時代の機密文書が見つかった問題で同氏から聴き取り調査を行ったロバート・ハー特別検察官との会話の音声記録がアクシオスによって公開された。ハー氏は当時、聴き取り調査後の報告書でバイデン氏の記憶力の衰えに言及していた。

■最側近らが結束

タッパー氏とトンプソン氏が伝えるところによれば、バイデン氏の健康に関しては20年の段階で周囲から懸念する声が上がっていた。それでも心身の衰えが加速したのは23年から24年にかけてだという。

22年12月のある時点で、バイデン氏は政権のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)とケイト・ベディングフィールド広報部長の名前を思い出せなくなった。23年秋には、民主党全国委員会のジェイミー・ハリソン委員長を認識できないようだった(ハリソン氏はこれに異議を唱えている)。そして24年初め、バイデン氏は長年付き合いのある映画スターのジョージ・クルーニー氏のことが分からなかったという。

バイデン政権時代の一部の閣僚はタッパー氏とトンプソン氏のインタビューに答え、バイデン氏が国家的緊急事態の際、午前2時に職務を遂行できるとはとても思えないと明らかにした。

タッパー氏とトンプソン氏は、バイデン氏が妻と息子、長年の取り巻き集団などで構成される孤立したグループによって守られていたと記述する。この取り巻き集団は共産党の上級機関にちなんで「政治局」とあだ名されている。

選挙陣営スタッフなどこうした取り巻きから外れる人々は、これらの側近がバイデン氏を否定的な情報から守っていたと考えている。新書の内容によるとバイデン氏が再選への出馬を決断する際も議論は行われず、ホワイトハウスと選挙陣営に所属する他の人々の意見は入れられなかったという。

CNNへの声明で、バイデン氏の広報担当者は同書を批判。同氏が当時職務遂行が不可能な状態だったことを示す証拠はないと主張し、実際にはしっかり職務を果たした大統領だったと示唆した。

■「まるで別人」

タッパー氏とトンプソン氏は、バイデン氏の健康に関する懸念が20年大統領選の時期から存在していたことを確認した。バイデン氏は党大会の前、有権者へ向けて語りかける形式の選挙動画を撮影したが、それらの大半の映像は使用されなかった。陣営の一部はその映像に衝撃を受けている。

「まるで別人のようだった。信じられなかった。運転を任せられないおじいちゃんを眺めているようだった」「大統領が務まるとは思えなかった」。同書の中で、ある民主党議員はそう振り返った。

バイデン氏に近い一部の人々は、本人の状態の悪化を強いストレスに関連するものとの見方を示した。特に次男のハンター氏が起訴され、24年6月に有罪評決を受けたことが大きな打撃になったと、ある閣僚は証言している。

24年3月、バイデン氏は熱のこもった一般教書演説を行ったが、同日夜の高校生に向けての演説では状態の悪化にホワイトハウスの一部の側近たちが動揺。とりとめのないスピーチを続けるバイデン氏の姿に側近の一人は、自分たちが何を見せられているのか分からなかったという。

同書によればこの側近は、「これでうまくいくはずがない」「彼には無理だ。こんなことはクレージーだ。全くもってクレージーだ」と思ったという。

■テレビ討論後の圧力

散々な結果に終わった24年6月のトランプ氏とのテレビ討論後、バイデン氏の最側近らは失態を過去のものにしようとした。まるで何事もなかったかのように。

ある選挙陣営顧問は、テレビ討論の後、エアフォースワン(大統領専用機)の機内でバイデン氏と議論したときのことを振り返る。同書の中でこの顧問は、一文もまともに話せないバイデン氏に困惑。「このような会話では、相手が大統領でなくてもその人の健康状態が不安になる。だが実際ここにいるのは、現職の合衆国大統領なのだ」。この顧問はそのように当時を回想する。

バイデン氏と妻のジル夫人は今月、米ABCとの共同インタビューで大統領時代のバイデン氏の仕事ぶりを擁護。任期最後の年に認知機能が低下していたとする見方に反論した。

ジル氏は「そうした書籍を書いた人々は、ホワイトハウスで私たちと一緒にいたわけではない。だからジョー(・バイデン氏)が毎日どれだけ懸命に働いていたか、彼らは目にしていない」と主張した。

昨年の大統領選で、オバマ元大統領と民主党のシューマー上院院内総務(当時)は、バイデン氏が自身の最側近から必要な情報を与えられていないのではないかとの懸念を抱いていた。「原罪」の著者らによれば、この情報とはバイデン氏の再選の見込みがどれだけ薄いかを示す率直なデータのことを指す。オバマ氏はシューマー氏に対して、バイデン氏と話をし、データを渡すべきだと告げたという。

シューマー氏はデラウェア州へ出向き、上院民主党の間でバイデン氏の大統領選継続を望む声がいかに少ないかを表すデータを本人に示した。その上で、バイデン氏には大統領選の勝算にまつわる情報が伝えられていないと警告した。

これを聞いたバイデン氏はシューマー氏に、「カマラ(・ハリス氏)なら勝てると思うか?」と問いかけた。

「原罪」の記述によるとシューマー氏は、「彼女が勝てるかどうかは分からない」「ただあなたが勝てないことだけは分かる」と答えた。

バイデン氏は24年7月、大統領選からの撤退を決めた。

=====

バイデン前大統領の健康問題、組織的な隠ぺい疑惑…「補佐官の名前も覚えていない」

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2025.05.21 06:470 글자 작게
https://japanese.joins.com/JArticle/333997

米国のジョー・バイデン前大統領が少なくとも就任2年目(2022年)から「毎日会う補佐官の名前を覚えていない」という主張が出た。

昨年の米大統領選挙時代に提起されたバイデン前大統領の健康悪化と認知力の低下が、実はすでに執権初期から始まったということだ。

CNNアンカーのジェイク・タッパー氏とアクシオス誌記者のアレックス・トンプソン氏が20日(現地時間)に出版した『Original Sin(原罪)』(原題)によると、バイデン氏はこのように政権初期から認知力問題を抱えていた。

また、昨年の大統領選挙中には「車椅子を使わなければならない」という深刻な議論があったが、高齢イシューを避けるために車椅子を使わなかったという。

『原罪』はホワイトハウスと選挙キャンプ関係者200人に対するインタビューを基に執筆された。彼らはインタビューを通じてバイデン氏の家族と中心参謀らがこのような問題を組織的に隠ぺいした可能性を提起した。

著者は「昨年6月、初の大統領選挙テレビ討論で世界が見たのは突発状況や風邪、あるいは準備不足か、過度に準備された人、または少し疲れた人ではなかった」として「バイデン氏の家族と彼のチームは自分たちの私利私欲とトランプ氏の任期に対する恐れのため、数年間認知力が低下してきた81歳の老人を執務室に4年さらに置こうとする試みを正当化した」と主張した。

著者は特に「ジル夫人はホワイトハウスの参謀たちに自身を『ドクターB』と呼ぶように指示した」とし「ジル夫人は(バイデンの)再選出馬の決定を最も強く支持した人の一人であり、彼の病状悪化を最も強く否認した人」と書いた。

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下記論稿の著者であるスティーヴン・M・ウォルトは2020年の大統領選挙ではジョー・バイデン、2024年の選挙ではカマラ・ハリスに投票した。トランプ支持ではない。そうした人物(しかも、国際関係論の大物学者である)から見た、ジョー・バイデン政権の外交はどうだったかということは興味をそそる話題である。論稿の中で、ウォルトはバイデン政権の外交は、「成功ではなかった」という評価をしている。

 バイデン政権の外交は、エスタブリッシュメントの意向に沿った外交となり、よく言えば、国際協調主義、悪く言えば、事なかれ主義となった。バイデン政権下における、世界の重要な出来事・事件は、やはり、ロシアによるウクライナ侵攻・ウクライナ戦争だ。ウォルトも指摘している通り、ウクライナ戦争は、アメリカと西側諸国によるロシアへの挑発が原因で、NATOの拡大とウクライナへの軍事に偏った支援(火遊び)をロシアが安全保障上の脅威に感じ、最終的に侵攻を誘発した。

バイデン政権は、戦争を短期間で終結させるための努力をせず、重要な武器、具体的には制空権を確保するための戦闘機をウクライナに供給しなかった。もっとも、アメリカがウクライナに戦闘機を供給していたら、ロシアの対アメリカ、対ヨーロッパへの出方は厳しいものとなっていただろうことは容易に推測できる。戦争がウクライナを超えてヨーロッパに拡大し、アメリカが米軍派遣にまで追い込まれ、戦争は泥沼化するということになった可能性もある。そうなれば、アメリカは大きく傷つき、中国の世界覇権国化を早めることになっただろう。結局、バイデン政権はウクライナ戦争に対処する意図も能力も持たずに、事なかれ主義で時間を経過させるだけで、ウクライナとロシアの国民の被害を拡大し、アメリカ国民の税金を無駄に注ぎ込むだけになってしまった。

 

ウクライナ戦争に次いで、世界的な出来事・事件となったのは、イスラエルとハマス間の戦争だ。イスラエルのガザ地区への攻撃になって、民間人に多数の死者が出て、地区が大きく破壊されることで、国際的な批判を招いた。バイデン政権がそうした批判に応えることなく、イスラエル支持を貫き、攻撃を継続させた。結果として、アメリカは人道を叫びながら、イスラエルには好き勝手させている、という「二枚舌」だという批判がなされ、アメリカに対する信頼を損なうことになった。

バイデン政権のウクライナや中東での政策は、アメリカの国際的地位やルールに対する信頼性に打撃となった。バイデン政権の外交は「成功ではなかった」ということになる。しかし、これは、バイデン政権だけの責任ではない。そもそも、アメリカの国力が落ちたこと、アメリカ国内政治の混乱、アメリカ国民の自分たちの生活に対する不満と不安と言ったことも要因として挙げられる。アメリカが世界の覇権国・超大国として行動することができなくなっている。これをバイデン政権だけで何とかしようとしてできるということではない。大きな構造転換に即した大きな変化が必要であり、アメリカ国民はそのためにトランプを大統領に選んだということになる。

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ジョー・バイデンの外交政策最終報告書(Joe Biden’s Final Foreign-Policy Report Card

-退任するアメリカ大統領の国際的な功績を容赦なく検証する。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年1月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/01/14/joe-biden-final-foreign-policy-report-card-ukraine-israel-gaza-afghanistan/

私は2020年にジョー・バイデン米大統領に投票した。そして、ここの読者の皆さんもご存知の通り、昨年11月には、バイデン政権の外交政策への対応に懸念を抱きながらも、カマラ・ハリス副大統領を支持した。バイデンが国際舞台での最後の退任を迎えるにあたり、彼と彼のティームはどれほどの成果を上げたのだろうか? 当然のことながら、バイデンの最後の外交政策演説では、素晴らしい成果を挙げたと述べられていた。しかし、私の評価は大きく異なる。

最も大まかに言えば、バイデン政権は、かつてのアメリカの穏健な国際的リーダーシップの時代へと時計の針を戻そうとした。「アメリカ・ファースト」ではなく、アメリカは、台頭する独裁政治(autocracy)の波に対抗するため、他の仲間の民主政体諸国と連携し、いわゆる自由世界のリーダーを自称する、役割を再開しようとした。

大西洋を越えた友好関係(trans-Atlantic amity)は回復され、アジアにおける同盟関係は強化され、アメリカは人権といった自由主義的価値観を外交政策の「中心(center)」に据えるだろう。ワシントンは主要な国際機関を支援し、気候変動を阻止するための取り組みを主導し、イランの核開発計画の撤回に成功した合意に復帰し、中国やロシアといった大国によるライヴァルを封じ込めるために多くの同盟諸国を動員するだろう。軍事費の増額(increased military spending)と技術優位性を維持する(preserve technological supremacy)ための積極的な措置は、アメリカの優位性(U.S. primacy)を将来にわたって長期化させるだろう。

確かに、バイデンは、冷戦終結から2017年に当時のドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスに就任するまでアメリカの外交政策を導いてきた「自由主義的な覇権(liberal hegemony)」の青写真を完全に受け入れた訳ではない。それどころか、バイデンはトランプのグローバライゼーションからの撤退を継続した。トランプの関税をそのまま維持し、輸出規制やその他の経済制裁を更に積極的に行使し、製造業の雇用を復活させる(これは実現しなかった)とともに、半導体、人工知能、その他の先端技術におけるアメリカの支配(U.S. dominance)を確保するために国家産業政策(national industrial policies)を採用した。

しかし、全体として見ると、バイデンのアプローチは、数十年にわたってアメリカの外交政策を導いてきた主流派エリートのコンセンサスにすんなりと収まっていた。それは、同じ世界観を共有する経験豊富なティームによって運営され、進歩主義派や外交政策のリアリストたちは脇に追いやられていた。

彼らはどれほどうまくやったか? 公平を期すために言えば、実績には確かにいくつかの重要な成功が含まれている。

2021年のバイデンの就任を、ヨーロッパにおけるアメリカの同盟諸国の多くは明らかに安堵感を持って迎えた。バイデンとアントニー・ブリンケン国務長官は共に筋金入りの大西洋主義者(die-hard Atlanticists)であり、彼らは迅速に行動して、アメリカがヨーロッパの同盟諸国の安全保障に引き続き確固たる関与を維持することをヨーロッパの同盟国に保証した。

もちろん、ヨーロッパの好意的な反応は驚くべきことではなかった。アメリカを事実上の第一対応国(first responder 訳者註:現場に第一に到着して対応する人)とすることは、ヨーロッパにとって非常に有利な取引だからだ。この立場は2つの点で成果を上げた。1つは、2022年にロシアがウクライナに侵攻した際に、政権が迅速な対応を調整するのに役立ったこと(下記参照)。もう1つは、インフレ抑制法やCHIPS・科学技術法といった保護主義的な側面、そして中国に対する様々な輸出規制を、これらの措置に伴うコストを承知の上で、一部の主要同盟国に受け入れるよう説得できたことだ。

バイデン政権はまた、中国の台頭に対抗するための幅広い取り組みの一環として、アジアにおけるアメリカのパートナーシップを強化したことでも評価に値する。これらの措置には、フィリピンの基地へのアクセス拡大、キャンプ・デイヴィッドでの韓国と日本の首脳の接遇(新たな三国間安全保障協定の締結につながった)、そしてオーストラリア、イギリス、アメリカ間のAUKUSイニシアティヴを通じたオーストラリアとの安全保障関係の強化などが含まれる。

バイデン政権は、いくつかの主要技術分野における中国の進出を阻止するためのアメリカの取り組みも改善したが、この取り組みの長期的な影響は依然として不透明である。また、米中関係は依然として激しい競争状態にあるものの、あからさまな対立に発展することはなく、政権は米中関係の大幅な悪化を招くことなくこれらの目標を達成したとも言える。

確かに、バイデン政権の取り組みは、中国の不利な人口動態と経済の失策(これらは北京に緊張を抑制する十分な理由を与えた)と、中国の修正主義(Chinese revisionism)に対する地域的な懸念に後押しされた。バイデン政権はアジアに向けて有意義な経済戦略を実行できなかったことで非難されるかもしれないが、国内で超党派が保護主義(protectionism)に傾倒していたことを考えると、戦略を策定するのは困難な道のりだっただろう。

最後に、バイデンは、アフガニスタンにおけるアメリカの無益な戦争を終わらせるという、勇気ある、そして私の考えでは正しい決断をしたにもかかわらず、不当に批判された。アフガニスタン政府は、アメリカが撤退を選べばいつ崩壊するか分からない、いわば砂上の楼閣(a house of cards)のような存在だったため、撤退は悲惨な結果に終わる運命にあった。更に言えば、駐留期間が長引いたとしても、結果は大きく変わらなかっただろう。

バイデンは短期的には政治的な代償を払ったが、彼の決断は2024年までにほぼ忘れ去られ、先の選挙ではほとんど影響を与えられなかった。アメリカが撤退して以来、アフガニスタンで起きた出来事を喜ぶべき人は誰もいないが、アメリカは自らの行動を全く理解しておらず、決して勝利するつもりはなかったことはますます明らかになっている。この事実を認識し、それに基づいて行動する勇気を持ったバイデンには、十分な評価を与えるべきだ。

残念ながら、これらの成果は、より深刻ないくつかの失敗と比較検討されなければならない。

最初の失敗はウクライナ戦争である。バイデン政権はウクライナへの支援とロシアに課したコストをことごとく誇示したがるが、この主張を支持する人々は、ウクライナが払った莫大な代償と、この戦争がヨーロッパ諸国に与えた損害を無視しがちである。

ここで重要なのは、この戦争が突如としてどこからともなく現れたのではなく、ワシントン自身の行動が生み出した問題であることを認識することである。もちろん、ロシアは違法な戦争を開始したことに全責任を負っているが、バイデンとそのティームに非難の余地がない訳ではない。特に、彼らは自らの政策がこの戦争を不可避なものにしていることに気づかなかった。具体的には、彼らはNATOの無制限拡大(open-ended NATO enlargement)と、ウクライナを西側諸国との緊密な安全保障パートナーシップに、そして最終的にはNATOに加盟させることに固執し続けた。

ウラジーミル・プーティン大統領だけでないロシアの指導者たちが、この事態の進展を存亡の危機と捉え、武力行使による排除も辞さない姿勢を明確に示していたにもかかわらず、彼らはこの危険な行動方針を固守した。戦争の脅威が迫る中、政権は外交的解決を模索し衝突を回避するための努力を中途半端なものにとどめた。

戦争が勃発すると、バイデン政権は可能な限り速やかに戦争を終結させようとしなかったという過ちを犯した。バイデン政権はロシア軍がどうしようもなく無能であり、「前例のない(unprecedented)」制裁を課せばロシア経済が破綻し、プーティン大統領に方針転換を迫られると確信していたが、これは後に過度に楽観的な想定であったことが判明した。

こうした誤った判断の結果、政権は戦争終結に向けた初期の取り組みをほとんど支援せず、むしろ頓挫させてしまった可能性さえある。また、2022年秋にウクライナ情勢の見通しが一時的に改善した際にも(マーク・ミリー統合参謀本部議長が助言したように)、停戦の見通しを探ることもなかったし、ロシアの防衛網の正面に大規模な攻勢をかけることは失敗する運命にあるとウクライナの指導者に伝えることもなかった。

残念ながら、この戦争はウクライナとその西側諸国にとって重大な敗北に終わる可能性が高い。アメリカとNATOの当局者たちは同盟の結束はかつてないほど強固だと主張しているが、彼らの楽観的なレトリックは、この戦争がヨーロッパの安全保障と政治に及ぼした甚大な損害を無視している。この紛争は、ほとんどのヨーロッパ諸国政府(その多くは今や手に負えない財政的圧力に直面している)に多大な経済的負担を強い、エネルギーコストの上昇はヨーロッパの競争力を更に低下させ、右翼過激派の復活を助長し、ヨーロッパ内部の分裂を深刻化させた。また、中国との均衡を保つために投入できたはずの関心と資源を逸らした。

確かに、ロシアも莫大な犠牲を払ったが、モスクワが北京とより緊密に結びつき、西側諸国を弱体化させる、更なる機会を模索することは、アメリカやヨーロッパにとって決して利益にならない。この戦争が起こらなかった方が、ヨーロッパ、アメリカ、そして特にウクライナにとってはるかに良い状況になっていただろう。そして、戦争の可能性を高めた政策に対して、バイデン政権は大きな責任を負っている。

二つ目の災難は、言うまでもなく中東情勢だ。あらゆる大統領の夢がここで潰えてしまうかのようだ。バイデンの最大の失策は、選挙公約を放棄し、トランプから引き継いだ誤った政策を継続したことだった。彼はイラン核合意に復帰すると公約していたにもかかわらず、復帰しなかった。その結果、テヘランは爆弾級に近いレヴェルの核濃縮(nuclear enrichment)を再開し、強硬派の影響力を強化した。

また、政権はトランプと同様にパレスティナ人の将来に関する問題を無視し、サウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けた努力に注力したが、その試みは失敗に終わった。このアプローチは、パレスティナ人が永久に疎外されるのではないかという恐怖を強め、ハマスの指導者たちが2023年10月7日にイスラエルに対する残虐な攻撃を開始するきっかけとなった。

バイデン政権の状況判断の誤りは、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が、ハマスの攻撃のわずか8日前に、この地域は「ここ20年で最も静かだ(quieter than it had been in two decades)」と宣言したことで、痛ましいほど露呈した。

それ以来、バイデンと彼のティームは、イスラエルが最低限の自制を求める要請を無視し、少なくとも4万6000人、おそらくははるかに多くのパレスティナ人を殺害した容赦ない無差別軍事作戦を遂行したにもかかわらず、あらゆる場面でイスラエルを支持してきた。この猛攻撃はガザ地区の大部分を居住不能にし、全ての大学とほぼ全ての病院を破壊し、数百人のジャーナリストを殺害し、200万人以上の民間人に甚大な苦しみと永続的なトラウマを与えた。

イスラエルが10月7日以降に対応したことが正当であったことを否定する良識ある人はいないが、イスラエルの報復キャンペーンは戦略的、道徳的な理由から弁解の余地のないものであった。とりわけ、この容赦ない暴力の行使は、ハマスを壊滅させ、残りの人質を解放するという公約を達成することができなかった。そして、バイデン政権は、それを可能にした爆弾投下と外交的保護を提供したのだ。

少し立ち止まって、これが何を意味するのか考えてみて欲しい。アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、国際司法裁判所(ICJ)、国際刑事裁判所(ICC)、複数の独立救援機関、そしてジェノサイドに関する著名な専門家たちは皆、イスラエルが重大な戦争犯罪を行い、「おそらく(plausibly)」アメリカの全面的な支援を受けてジェノサイドを行っていると結論付けている。国連事務総長のアントニオ・グテーレスは、ガザ地区の状況を「道徳的な暴挙(moral outrage)」と称した。虐殺の様子を捉えた動画はソーシャルメディアで容易に見ることができる。

これらの自称「ルールに基づく秩序(rules-based order)」の擁護者たちは、イスラエルを遮断し、その不均衡な対応を非難するどころか、停戦と残りの人質の解放を求める国連安全保障理事会の決議を複数回拒否し、ICJICCへの攻撃を開始した。また、ヨルダン川西岸の占領下で暮らすパレスティナ人に対する暴力の増大を阻止するための真剣な努力も行っていない。これらの行動は、複数の政府高官が抗議の辞任に追い込まれ、国務省をはじめとする関係機関の士気を著しく低下させたとみられる。

22025年1月13日に国務省で行った退任演説で、バイデンはこれらの政策が功を奏したと示唆したようだ。ハマスとヒズボラは大幅に弱体化し、シリアのバシャール・アル=アサド大統領は失脚し、イランは深刻な打撃を受け、イランの核インフラを破壊するための空爆作戦を実施するリスクは減少した。この観点からすれば、これらの目的は手段を正当化すると言えるだろう。

この弁明は道徳的に空虚(vacuous)であり、戦略的にも近視眼的(shortsighted)だ。イスラエルとサウジアラビアの関係正常化は先送りされ、ジハード主義的なテロリズムの新たな波が目前に迫っているかもしれない。ハマスとヒズボラは弱体化したものの壊滅した訳ではない。イエメンのフーシ派は依然として抵抗を続けている。パレスティナ人が自らの国家、あるいは「大イスラエル(greater Israel)」における政治的権利を求める願望は消えることはないだろう。イランの指導者たちは、ムアンマル・アル=カダフィとアサドに降りかかった運命を回避するには、核兵器開発こそが最善の方法だと結論付ける可能性が高い。もしそうすれば、中東は再び不必要な戦争に見舞われ、原油価格は上昇し、アメリカは莫大な損失を伴う破綻に巻き込まれることになるだろう。たとえ消えることのない道徳的汚点を無視したとしても、これらの展開はどれもアメリカの利益にはならない。

バイデン政権によるイスラエル・ハマス戦争への対応は、差し迫った戦略的必要性によって強いられたのではないことを忘れてはならない。それは意識的な政治的選択だった。政府は存亡の危機に直面した際に、時に道徳的原則を妥協することがあるのは誰もが認めるところだが、ガザ地区の状況はアメリカにとってほとんど、あるいは全く危険をもたらすものではなかった。ワシントンはイスラエルによるジェノサイドへの支持を拒否しても、自国の安全や繁栄を少しでも危険に晒すことなく、行動できたはずだ。

バイデンとブリンケンがそうしなかったのは、選挙の年にイスラエル・ロビー(Israel lobby)の政治的影響力を恐れたか、イスラエルは通常のルールから除外される特別なケースだと考えていたからだろう。こうした露骨な二重基準(double standard)は、既存の秩序の正当性を必然的に損ない、アメリカの衰退しつつある道徳的権威(moral authority)を浪費した。今後、中国の外交官たちが他国に対し、西側諸国の人権観は偽善的な戯言だと説得しようとする時、イスラエルとハマスとの戦争はまさにその好例となるだろう。バイデンは、アメリカは「模範を示す力によって(by the power of our example)」主導するとよく言うが、今回の場合、他国が拒否することを願うべき模範を示したことになる。

バイデンは自称シオニストだが、ネタニヤフ首相の行動を無条件に支持したことはイスラエルにとっても良いことではなかった。イスラエルの首相と元国防大臣は、現在、国際刑事裁判所(the International Criminal Court)から逮捕状が出されている。これはプーティンと共通の問題であり、その汚点は消えることはないだろう。イスラエルのメシアニック過激派(Messianic extremists)は懲らしめられるどころか、むしろ強化され、世俗派と宗教派のイスラエル人の間の溝を深め、ヨルダン川西岸併合への圧力を強めている。

イスラエルがこの目標を推し進めれば、第二次世界大戦後の領土獲得を禁じる規範は更に弱まり、他の指導者たちは自らが切望する土地を奪取するよう促されるだろう。また、このような措置はヨルダン川西岸地区とイスラエル本土との区別を消し去り、イスラエルがアパルトヘイト国家であるか否かをめぐる議論に終止符を打つことになるだろう。これは容易に新たな民族浄化(ethnic cleansing)につながり、ヨルダンなどの近隣諸国に恐ろしい人道的被害と危険な影響を及ぼす可能性がある。私には、これらがイスラエルの利益となるとは到底考えられない。

最後に、ウクライナと中東における戦争(バイデン政権の政策が一因となって引き起こされた戦争)は、膨大な時間と関心を費やし、長期的に見てより重要な問題に十分な重みを与えることを困難にした。将来のパンデミックへの備えは停滞し、気候変動対策の進展は必要な水準を大きく下回った。そして、政権が信頼できる移民政策を打ち出せなかったことは、昨年11月にハリスに大きな痛手を与えた。

アフリカは重要性が増しているにもかかわらず、非常に軽視されてきた。過去4年間で、ブリンケンはイスラエル(人口1000万人弱)を16回、ウクライナ(人口3560万人)を7回訪問したが、人口約15億人のアフリカ大陸を訪問したのはわずか4回だった。

バイデン政権発足時の最重要目標は、「ルールに基づく秩序(rules-based order)」を強化し、独裁政治(autocracy)に対する民主政治体制(democracy)の優位性を示すことだった。しかし、バイデンとブリンケン国務長官は、都合の良い場合には躊躇なくルールを破り、ルールの執行を試みていた複数の機関(世界貿易機関、国際司法裁判所、国際刑事裁判所など)を積極的に弱体化させた。

他国はもはや、このような行動をトランプのような異端者(a rouge outlier)のせいにすることはできない。彼らは、これをアメリカの対外姿勢の本質的な要素として正しく認識するだろう。一方、バイデン政権が大々的に宣伝した「民主政治体制サミット(democracy summits)」にもかかわらず、世界中で民主政治体制は後退し続けており、強固な民主政治体制への関与が紙一重の人物が来週ホワイトハウスに復帰することになる。

ここに悲しい皮肉がある。確かにいくつかの成果はあったものの、バイデンのウクライナと中東情勢への対応の誤りは、彼が強化したいと述べていた「ルールに基づく秩序(rules-based order)」に甚大な、そしておそらくは致命的なダメージを与えた。バイデンとそのティームは、いくつかの重要な国際規範を一貫して遵守しなかったことで、次期政権(第2次トランプ政権)がそれらを完全に放棄することを容易にし、多くの国々が喜んでそれに追随するだろう。

こうなる必要はなかったが、ジョー・バイデンの外交政策の遺産は、ルールに縛られなくなり、繁栄が失われ、そして非常に、より危険な世界となるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Bluesky@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 ウクライナ戦争は現在も継続中であるが、大きな展開は見られない。そうした中で、トランプ政権が発足して、サウジアラビアで、アメリカとロシアによる停戦に向けた交渉が行われている。その場にウクライナはいない。私がこれまでの著作で書いてきているように、残念なことであるが(悲しいことであるが)、ウクライナはその交渉には参加できない。

ウクライナ戦争はアメリカがウクライナに代理で行わせた戦争であり、当初の目論見通りに進まず(ロシアが早期に手を上げると思っていた)、完全に失敗した中で、トランプ政権になって、停戦に向けた動きが始まっている。ウクライナは米露間で決まった条件を飲むしかない(多少の変更はできるだろうが)。そして、それを飲まないということになれば、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、アメリカによって失脚させられるだろう。気の毒なのはウクライナ国民であり、ロシア国民だ。早く戦争が止まれば助かった命は多くあっただろう。アメリカと西側諸国の「火遊び(NATOの東方拡大)」によって、貧乏くじを引かされたのはウクライナ国民だ。

 停戦の条件はどうなるか分からないが、現状のままということになる可能性が高い。そうなれば、ウクライナは東部4州が独立するということになり、国土を失うということになる。ウクライナと西側諸国が「勝利」で終わるということはないだろう。そうなれば、「誰のせいで、誰の責任で、このような失敗をしてしまったのか、どうして戦争が起きてしまったのか」という話は当然出てくるだろう。

 下記論稿にあるように、責任の所在について色々と考えが出てくるだろうが、そもそも論で、西側諸国全体に責任を期する考えは大っぴらに出てくることはないだろう。アメリカとヨーロッパ諸国が、実際にウクライナを支援する意図はないが、ロシアを刺激し、ロシアに手を出させて戦争を起こさせて、打撃を与えるというような、稚拙な考えで、ウクライナの軍事部門だけを支援した結果が現在である。しかし、そのようなことを言えば、アメリカとヨーロッパ諸国のエスタブリッシュメントに責任が及んでしまうので、そのようなことは言えない。だから、もっと小さな、枝葉末節なことを言って、煙に巻いてしまおうということになるだろう。武器を与える与えないというのは、ウクライナ戦争において重要な要素ではある。しかし、それよりも重要な論点がある。

 アメリカをはじめとする西側諸国(the West)の失敗と減退をウクライナ戦争は象徴している。そして、日本に住む私たちが得るべき教訓は、西側諸国の火遊びに巻き込まれず、決して戦争を起こさないということだ。

(貼り付けはじめ)

「ウクライナを失ったのは誰か?」についてのユーザーガイド(A User’s Guide to ‘Who Lost Ukraine?’

-長期にわたる議論にどのように備えるか。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/01/08/users-guide-to-who-lost-ukraine/

ロシアのウクライナ戦争がどのように、そして、いつ終結するのか、正確なところは誰にも分からないが、その結末はキエフとその西側諸国の支持者にとって失望となる可能性が高い。そうなれば、次の局面では誰が責任を負ったのかをめぐる激しい論争が繰り広げられるだろう。参加者の中には、悲劇的な出来事から真摯に学びたいという思いから行動する者もいれば、責任を回避したり、他者に責任を転嫁したり、政治的な利益を得ようとしたりする人もいるだろう。これはよくある現象だ。ジョン・F・ケネディの有名な言葉がある。「勝利には100人の父親がおり、敗北は孤児だ(Victory has 100 fathers, and defeat is an orphan[訳者註:勝利の際にはたくさんの人が自分のおかげだと名乗り出るが、敗北の際には自分が原因だと名乗り出る人はいない]」。

この思想戦(this war of ideas)が勃発するのを待つ必要はない。なぜなら、いくつかの対立する立場は既に存在しており、他の立場は容易に予測できるからだ。ここで、それらの詳細な評価を示すつもりはない。このコラムは、戦争がなぜ起こったのか、そしてなぜ私たちの大多数が期待したようには進まなかったのかという、対立する説明をまとめた便利なチェックリストに過ぎない。

論点1:ウクライナが核兵器を放棄したのは間違いだった。一部の専門家によると、最初の大きな誤りは、ウクライナに旧ソ連から継承した核兵器を、実効性のない安全保障上の保証と引き換えに放棄させたことだ。もしキエフが独自の核兵器を保有していれば、ロシアの軍事介入を心配することなく、自らが望む経済協定や地政学的連携を自由に追求できたはずだというのがこの論点の趣旨だ。この論点は、最近ビル・クリントン元米大統領によっても引用されているが、ロシアは2014年にクリミアを占領したり、2022年に核兵器を保有するウクライナの残りの地域に侵攻したりする勇気はなかっただろう、なぜならそのようなことをするリスクが大きすぎるからだという主張である。この論点には技術的な反論(つまり、ウクライナが核兵器を保有していたとしても、使用できたかどうかは明らかではない)もあるが、それでもなお、検討に値する反事実的仮定(a counterfactual worth pondering)である。

論点2:ウクライナのNATO加盟招請は、戦略上極めて重大な失策だった。1990年代、洗練された戦略思想家たちが、NATOの拡大は最終的にロシアとの深刻な問題につながると警告したが、彼らの助言は無視された。こうした専門家の一人であるイェール大学の歴史家ジョン・ルイス・ギャディスは1998年に次のように述べている。「国務省は、NATOの新規加盟国が誰になるかを決めるまでの間、モスクワとの関係は正常に進展すると保証している。おそらく次は豚でも空を飛べるぞとでも言おうとするだろう(Perhaps it will next try to tell us that pigs can fly)」。ブッシュ政権が2008年のブカレスト首脳会議でジョージアとウクライナのNATO加盟を提案した際、アメリカ政府内からの警告は強まったが、加盟への機運を断ち切ることはできなかった。ロシアの抗議活動と安全保障上の懸念は軽々しく無視され、キエフと西側諸国間の安全保障上の結びつきが着実に強まったことで、最終的にロシアのウラジーミル・プーティン大統領は2022年に違法な戦争を開始するに至った。

この見解によれば、要するに、拡大論者がロシアの懸念の深さを理解せず、モスクワの反応を予測できなかったためにウクライナが侵略されたということになる。この主張は、ウクライナの最も熱烈な支持者にとっては忌まわしいものだ。彼らは、プーティン大統領はNATOが何をしようと遅かれ早かれ攻撃してきたであろう、なだめることのできない侵略者だから戦争が起きたのだと主張する。しかし、戦争が起きた理由に関するこの説明は論理的に一貫しており、それを裏付ける十分な証拠もある。こう言ってもロシアの行動を少しも正当化するものではないが、西側諸国の指導者たちはNATOの東方拡大(expanding NATO eastward)を始めた時点で、モスクワが何か酷いことをする可能性を考慮すべきだったことを示唆している。彼らはおそらく自らの行動が戦争の可能性を高めたことを認めることはないだろうが、他国を支援しようとする西側諸国の善意の努力が裏目に出るのはこれが初めてではないだろう。

論点3:NATOの拡大速度が遅すぎた。この論点は論点2の裏返しである。真の誤りはNATO拡大の決定や、後にウクライナに加盟行動計画の策定を要請したことではなく、キエフをより早く加盟させ、自衛手段を提供できなかったことだと主張する。この論点は、キエフが北大西洋条約第5条の保護と西側諸国の直接的な軍事支援の見込みを享受していれば、モスクワは軍事行動を取らなかっただろうと想定している。少なくとも、NATOは2014年にロシアがクリミアを占領した後、ウクライナの軍事力拡大をより迅速に支援すべきだった。そうすれば、将来のロシアの侵攻を抑止または撃退する上で、ウクライナはより有利な立場に立つことができたはずだ。この見方では、NATOの優柔不断さ(そして、バラク・オバマ政権がウクライナへの実質的な軍事支援に消極的だったこと)が、キエフを最悪の立場に追い込んだ。モスクワはキエフの西側への傾きを存亡の危機と見なしていたが、ウクライナはロシアの予防戦争(a Russian preventive war.)に対する十分な防御手段を欠いていたのだ。

論点4:西側諸国は2021年に真剣な交渉に失敗した。ウクライナが西側諸国(the West)への接近を着実に続ける中で、危機は2021年に頂点に達した。ロシアは3月と4月にウクライナ国境に軍事力を動員した。アメリカとウクライナは9月に新たな安全保障協力協定(a new agreement for security cooperation)に署名し、ロシアは軍備を強化し、12月にはモスクワがヨーロッパ安全保障秩序(the European security order)の抜本的な改革を求める2つの条約案を発表した。これらの条約案は真剣な提案ではなく、戦争の口実と広く見なされ、アメリカとNATOはロシアの要求を拒否し、控えめな軍備管理案を提示したにとどまった。その結果、米露両国はウクライナの地政学的連携について真剣な交渉を行うことはなかった。ロシアの要求全体が受け入れられなかった可能性もあるが、この見解は、アメリカとNATOはそれらを「受け入れるか、拒否するか」の最後通牒(a take-it-or-leave-it ultimatum)ではなく、最初の試みと捉えるべきだったと主張する。もしワシントン(そしてブリュッセル)がモスクワの要求の一部(全てではないが)についてもっと妥協する姿勢を持っていたら、この戦争は避けられ、ウクライナは多くの苦しみから逃れることができただろうか?

論点5:ウクライナとロシアは共に戦争を早期に終結させなかったために敗北した。後知恵(hindsight)で言えば、ウクライナとロシアは共に、戦争開始直後に終結していればより良い結果になっていただろう。この論点の1つは、2022年4月にイスタンブールでウクライナとロシアの両国は合意に近づいたものの、西側諸国が提案された条件に反対したため、最終的にウクライナは合意から離脱したというものだ。もう1つの論点は、2023年まで米統合参謀本部議長を務めたマーク・ミリー退役大将の主張と関連付けられることもある。それは、ハリコフとヘルソンにおけるウクライナの攻勢がロシアを一時的に不利な状況に追い込んだ後、ウクライナとその支援諸国は2022年秋に停戦を推進すべきだったというものだ。戦争を早期に終結させようとする努力が成功したかどうかは分からないが、戦闘が終結し、特に条件がキエフにとって不利なものであれば、これらの論点は再び注目を集めるだろう。モスクワがその侵略行為に対して支払った莫大な代償を考えれば、2022年初頭に交渉によって合意に達していた方がモスクワにとってもずっと良かったかもしれない。

論点6:ウクライナは背後から刺された。当然のことながら、ウクライナ国民と西側諸国の最も熱烈な支持者たちは、キエフへの支援が不十分で、そのスピードも遅く、支援内容にも制限が多すぎると長年不満を訴えてきた。もしキエフがロシアの凍結資産(Russia’s frozen assets)に加えて、エイブラムス戦車、F―16、パトリオット、ATACMS、ストームシャドウ、砲弾などをもっと多く受け取り、これらの兵器を自由に使用することができていたなら、ロシアは今頃決定的に敗北し、ウクライナは失った領土を全て取り戻していただろう。この見解は、西側諸国の強硬派(hard-liners)を今回の惨事の責任から見事に免責するものだ。問題は彼らの助言が間違っていたのではなく、十分な熱意を持ってそれに従わなかったことにあると示唆しているからだ。結果として、今後、様々な方面から、いわば、陰謀(dolchstoss、ドルクストス)の復活とも言える批判が聞かれることが予想される。

論点7:それはキエフの失敗だ。ウクライナ人がロシアの手によって耐え忍んできた苦しみを考えると、結果を自らの戦略的ミスのせいにするのは無神経であり、残酷ですらある。とはいえ、戦後、何が間違っていたのかを評価する試みには、2023年夏のウクライナ軍の不運な(ill-fated)攻勢(西側諸国の評論家の多くが不可解にも成功すると確信していた)と、戦術的には成功していたものの戦略的には疑問視されていた、2024年夏のクルスク侵攻が間違いなく含まれるだろう。ウクライナ軍は英雄的に戦い、印象的な戦術的創意工夫(impressive tactical inventiveness)を見せたが、戦後の批評家たちは、内部腐敗による戦力の消耗、防衛体制の構築に十分な努力を払わなかったこと、そしてキエフが若い世代を戦闘に動員する意欲、あるいは能力がなかったことに焦点を当てるだろう。

論点8:これは現実政治(realpolitik)だ。プーティン大統領をはじめとするロシア人は、この戦争をアメリカ主導によるロシアの弱体化維持のための執拗な努力の一環と見ているが、西側諸国の中には、ウクライナはロシアを長期にわたる莫大な費用を伴う戦争に巻き込むための単なる犠牲の駒に過ぎないと考える人もいるのではないかと思う。これはまさにマキャベリズム的な見方で、NATOの拡大とウクライナ加盟はモスクワを激怒させ、最終的には軍事的対応を引き起こすことを西側諸国のエリート層(特にアメリカ人)が理解していたことを示唆している。もし戦争がウクライナを越えて拡大せず、西側諸国の軍隊が介入しなければ、はるかに裕福な西側諸国はウクライナを長期間戦闘に引き留め、ロシアを徐々に疲弊させていくことができるだろう。同様の戦略は1980年代のアフガニスタンでソ連に対して効果を発揮しており、ロシアが最近シリアとモルドヴァで後退していることは、それが効果を上げていることを示唆している。私自身、この説明には大きな疑問を抱いているが、時が経てばアーカイブから何が明らかになるのか興味がある。

論点9:他の全てが失敗したらトランプのせいにする。ジョー・バイデン米大統領はある意味で幸運だった。アフガニスタンの終盤とは異なり、ウクライナの決着は他の誰かの監視下で起こるだろう。結果がウクライナに不利になれば、批評家たちは責任の一部を次期大統領のドナルド・トランプに押し付けるだろう。トランプは自分が弱いと思われ、結果の責任を負わされることを恐れ、これまで示唆してきた以上の支援をウクライナに与えるかもしれないが、バイデンほどの言論的、物質的な支援は行わないだろう。もしウクライナがロシア占領下の4州とクリミアを永久に失うか、新たな凍結紛争(frozen conflict)に巻き込まれることがあれば、トランプの政敵は喜んで彼に責任を負わせるだろう。

ウクライナで何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのかを健全かつ公平に議論すれば、正しい教訓を学び、将来に向けてより良い行動を選択できるだろう。しかし、過去の失敗から正しい教訓を学べる保証はない。このコラムの常連の読者の皆さんは、私がこれらの様々な議論の中でどれが最も説得力があると考えているか既にご存知だろうが、ここでの私の目的は誰かを責め立てることではない。今は、このコラムを切り取って、非難の矛先が向けられ、激しい論争が始まるのを待ちたい。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ブルースカイ・アカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 イスラエルを中心として、中東地域では不安定さが増している。中東地域においての地域大国としては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、トルコなどが挙げられるが、サウジアラビアの動きがあまり見えてこない。イスラエルのガザ地区攻撃については、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は「大量虐殺(ジェノサイド)」と呼んで非難しているが、中東情勢安定化のために、具体的には積極的には動いているようには見えない。自分たちは騒動の輪から外れようとしているようだ。

なによりも、サウジアラビアはバイデン政権下でイスラエルとの国交正常化交渉の下準備を進めており、2023年9月の段階で、国交正常化交渉の準備は順調に進んでいるとジョー・バイデン政権のジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が発言していた。それから1カ月後にハマスによるイスラエル攻撃が実施された。私は「サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を阻むための動き」と見ている。サルマン王太子がイスラエルに対して「大量虐殺」という言葉を使ったことは国交正常化に向けて大きなハードルとなる。サウジアラビアは既に中国の仲介で、イランとの関係を正常化している。それ以上のことは、現在は望まないという意思を示しているかのようだ、

以下の論稿では、サルマン王太子が過去の失敗から学び、地域の混乱を避けるために内向きになっている可能性があると指摘している。彼は、国内の安定を確保することに重きを置いており、イランとの関係を利用して地域の安定を図ろうとしている。サウジアラビアは多額の投資を行っているため、基本的な安定を求めることが重要であり、イランとの関係を悪化させる理由はない。サウジアラビアは安定を求めているということだ。中東地域の安定は、サウジアラビアだけではなく、世界にとっても重要だ。

 サウジアラビアが動かないとなると、中東地域に安定をもたらすにはアメリカが出てこざるを得ない。具体的には、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の戦争拡大を止めるのはトランプの役割ということになる。トランプにそれができるかどうかが注目される。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアがイランに傾斜する当の理由(The Real Reason for Saudi Arabia’s Pivot to Iran

-テヘランに対するムハンマド・ビン・サルマンの論調の変化は見かけほど混乱していない。

スティーヴン・M・クック筆

2024年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/12/02/saudi-arabia-mohammed-bin-salman-pivot-iran/?tpcc=recirc062921

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サウジアラビアの首都リヤドで開催された未来投資イニシアティヴFII会議に到着したムハンマド・ビン・サルマン(2018年10月24日)

ここ数週間、同僚、上司、恩師、そして高校時代の友人たちから、「ムハンマド・ビン・サルマンはどうなっている?」という質問を受けた。11月11日、リヤドで開催されたイスラム諸国首脳会議で、サウジアラビアの王太子は国際社会(翻訳:アメリカ)に対し、イスラエルに「姉妹国であるイラン・イスラム共和国の主権を尊重し、その国土を侵害しない」よう強制するよう呼びかけた。同じ会合で彼は、イスラエル国防軍がガザ地区で行ったことを「集団虐殺(collective genocide)」と表現した。

このレトリックは、ワシントンのほとんどの人々が信じてきたムハンマド・ビン・サルマンについてのすべてに反するものであり、それゆえ「どうなっている?」という疑問が出ている。そして、少なくとも今回は、ワシントンの外交政策関係コミュニティは想像していない。

首脳会談でのムハンマド・ビン・サルマンの言葉は、質的な変化であるように見える。結局のところ、王太子はかつてこう質問した。「イスラム教徒の土地を支配し、(イスラム世界にトゥエルバー・ジャファリ宗派を広めなければならないという)過激派イデオロギーの上に築かれた政権とどのように対話するのか?」。彼は美辞麗句を並べてごまかしていたが、知識がある人が聞けば、彼の発言はイランを指しているのは明らかだった。公平を期すなら、それは2017年のことで、暴徒がテヘランのサウジ大使館を襲撃し、両国関係の断絶を促した翌年のことだった。しかし、中国政府が2023年3月にサウジアラビアとイランの国交再開を仲介した後も、リヤド政府高官はいまだにテヘランの意図に懐疑的で、イラン指導部に対する不信感を抱いている。

イスラエルについて、サウジ当局者は以前から、国交正常化は「もし(可能性)」ではなく「いつ(時期)」の問題だと示唆してきた。彼らはそれを頻繁に発言したので、しばらくすると誰もあまり気に留めなくなった。もちろん、ガザ地区での残酷な戦争によって、サウジアラビアが国交正常化のためにイスラエルに要求する代償は着実に増えている。それでも昨年、リヤドの高官たちはイスラエルとの和解に尽力していたようだ。イスラエルは戦争の初期からジェノサイド(genocide、大量虐殺)で非難されてきたが、11月11日のイスラム諸国首脳会談の前まで、ムハンマド・ビン・サルマンはこの言葉を使うことはなかった。

それでは、いったい何が起きているのか? サウジアラビアは「方向転換(pivoting)」しつつあるのか? 私はサウジのレトリックの変化を説明するために3つの理論を持っている。

第一に、長年議論されてきたアメリカとサウジアラビアの安全保障協定をめぐるドナルド・トランプ次期大統領との交渉の口火を切ることである。ムハンマド・ビン・サルマンはイランに対する態度を変えたかもしれないが、それは皮肉にすぎない。トランプ政権の政権移行関係者がイランに「最大限の圧力(maximum pressure)」をかけ直すと宣言しているのと同時に、サウジアラビアとイランの関係をレトリック的にでも改善することは、サウジアラビアを味方につけておくためにトランプ・ティームから利益を引き出す戦略の一環かもしれない。まるで王太子が、「次期大統領、あなたは交渉の達人気取りのようだ。私がお相手しよう。あなたは何を提供できる?」と述べているかのようだ。

私は数日間、この説に納得していた。しかし、結局のところ、しっくりこない。イラン指導部と仲良くしてアメリカ政府高官を操ろうとするのは、2010年代にトルコのレセップ・タイイップ・エルドアン大統領がやったことだが、サウジアラビアがそれに倣ったようではない。ムハンマド・ビン・サルマンはエルドアンを見習っているのかもしれないが、それが彼のスタイルだとは私には思えない。

第二に、イランに逃げ込むことで、ムハンマド・ビン・サルマンはイスラエルとの国交正常化の可能性から逃げていると考える方が説得力を持つ。ガザ地区におけるイスラエルの軍事作戦の残忍さは、サウジアラビアの多くの人々を激怒させている。最近のサウジアラビア訪問で、私と同僚は、ガザ地区で続いている殺戮をめぐるバイデン政権への批判の集中砲火を浴びた。その中で少なくとも1回は、「恥ずべき(shameful)」という言葉が出てきた。それがムハンマド・ビン・サルマンの考えの一部に違いない。王太子は万能だが、世論と無縁ではない。イスラエルとの国交正常化は、ガザ地区破壊に対する国民の怒りの深さを考えれば、短期的には彼にとってほとんど価値がない。

王太子が「大量虐殺」という言葉を使ったのは、アブラハム合意に続くものとしてイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を重視するトランプ次期政権への明確な警告でもある。サウジアラビアの指導者たちは、イスラエルの入植者たちがトランプは併合の邪魔をしないと信じるようになった今、国交正常化に関わりたいはずがない。元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーを駐イスラエル大使に任命したことは、彼らが間違っていないことを示唆している。イスラエルの正式な主権がヨルダン川西岸地区の一部にまで拡大され、トランプ大統領に祝福されるだけで、王太子が国交正常化の道を歩むのは非常に恥ずかしいことだ。大量虐殺を引き合いに出すことで、サウジアラビアは現状では前進する用意がないことを次期大統領に示しているのだ。

最後に、ムハンマド・ビン・サルマンの明らかな方向転換について、最も説得力のある説明がある。それは、イエメン内戦に介入し、カタールを封鎖し、レバノン首相を辞任に追い込み、リビアで国際的に認められた政府の反対派を支援し、失敗した後だというものだ。王太子は、自分の目標を達成するために、この地域を自分の意志通りに変化させることは自分の力の範囲内ではできないと結論づけた。代わりに、彼は今では内向きになり、王国内の安定を確保しようと努めている。イランに傾斜することは、混乱をサウジアラビア国境外に留め続ける1つの方法だ。

ムハンマド・ビン・サルマンはサウジアラビアの将来を形作るために数千億ドルを投じているため、この変化は彼にとって最も重要である。ネオムの新都市やジェッダのキディヤ海岸観光プロジェクトなど、彼のメガプロジェクトやギガプロジェクトの賢明さに疑問を抱く人もいるだろう。しかし、彼が彼らに多額の投資をした今、サウジアラビアの指導者たちが、たとえそれを達成するために我慢しなければならないとしても、彼らに成功のチャンスを与えるために基本的な経済的および政治的安定を求めないのは賢明ではないだろう。サウジアラビアが突然イランを信頼する兆候はないが、サウジアラビアが国内で行っていることを台無しにする口実を彼らに与えたくはない。

それほど遠くない昔、サウジアラビア人はリヤル(サウジアラビアの通貨単位)政治(riyalpolitik)を実践し、基本的に地域問題が王国を取り囲まないようにするためにお金を払っていた。ムハンマド・ビン・サルマンが世界にイスラエルを抑制するよう呼び掛け、イランを(現金の入った袋を持たずに)家族の一員と見なしていることを明らかにしたときの行動には同様の響きがある。皇太子が座っている場所から見ると、これはイランへの傾斜ではなく、むしろサウジアラビアへの傾斜である。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 アメリカ大統領選挙が終わって3週間ほどが経過した。結果は共和党のドナルド・トランプ前大統領(次期大統領)が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破って二回目の当選を果たした。トランプは選挙人312人(一般得票約7700万票、約49.9%)、ハリスは選挙人226人(一般得票約7400万票、約48.3%)という結果になった。トランプにとっては選挙人だけではなく、一般得票でも勝利し、圧勝、完勝ということになった。一度敗れた前大統領が再び勝利を収めたのは100年以上ぶりのことだった。

 前回は民主党のジョー・バイデン前副大統領(当時)が選挙人306名(一般得票約8100万票、約51.3%)で、共和党のドナルド・トランプ大統領(当時)を破った。トランプの獲得した選挙人は232名(一般得票約7400万票、46.8%)だった。この4年間で民主党はどうしてここまで票を落とすことになったのかということを、民主党自身が詳しく分析しているだろうが、各メディアでも出口調査の結果を基にして分析している。

 何よりも重要な原因となったのは、中絶問題を一番の争点として訴えて、経済問題を訴えることができなかった、アピールできなかったということになる。

民主党の支持基盤である、若者たち、ヒスパニック系、アフリカ系での支持を伸ばせなかった。ここに尽きるようだ。生活に密着する問題、インフレ問題について、バイデン政権も対策を行っていたが、それをアピールできなかったこと、更には生活実感として、そのような対策の効果を実感できなかったということである。インフレが直撃するのは所得が低い人々であり、そうした人々は、元々は民主党支持であったが、民主党がそうした人々の生活実感を救い取れなくなっている、また、都市部の中間層からエリート層が支持基盤となっているというところが大きい。また、有権者全体として、「経済問題はやはり、経営者出身のトランプだ」という感覚がある。

 文化的、価値観に関する問題で選挙を戦って勝てることもあるが、アメリカで生活に不安を持つ人々、明日の生活もどうなるか心配している人々、家賃高騰のために車上で生活することを余儀なくされている人々は直近の生活問題を解決することを望む。生活が安定しなければ、社会的な問題について考えることはできない。民主党はそうした生活実感を取り戻すことができるかどうか、ここが重要になってくる。

(貼り付けはじめ)

2024年大統領選挙について出口調査が語っていること(What the exit polls say about the 2024 election

ダグラス・ショーエン、カーリー・クーパーマン筆

2024年11月18日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/4993162-trump-victory-exit-polls/?tbref=hp

ドナルド・トランプ次期大統領の選挙での勝利から2週間近くが経過したが、民主党員も専門家たちも、トランプが300人以上の選挙人を獲得するために、どのようにして7つの激戦州全てを席巻したのかを理解しようとしている。

出口調査はトランプ大統領の勝利の背後にある最大の理由を明らかにしている。有権者たちはカマラ・ハリス副大統領と民主党の左派によった綱領(left-leaning platform)を拒否した。この綱領は経済をほとんど無視しながら進歩的な社会問題に力を入れるものだった(doubled down on progressive social issues while largely neglecting the economy.)。

その代わりに、経済や移民問題といった生活に密着した台所テーブルに関する諸問題(kitchen table issues)に焦点を当てたトランプは、中絶の権利に焦点を当てたハリスや民主党よりも、特にハリスが勝利するために必要とした若年層、ヒスパニック系、黒人有権者に対して大きな効果を発揮した。

言い換えるならば、出口調査は、民主党が主要な有権者の間でさえ、意向を正しく読み取ることに失敗したことを示している。彼らは、2024年は2022年に似ていると想定していた。2022年は、中絶の権利をめぐる争いがインフレへの懸念をかき消し、全米で民主党を押し上げた。

しかしながら、CNNの2022年、2024年の出口調査によると、2022年には全米の有権者たちにとって中絶(27%)が2番目に重要な問題であったのに対し、2024年には14%だけが重要な問題だと答えただけだった。

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、その時点までに、ヒスパニック系が多数を占める郡は2020年と比べてトランプの支持率が13ポイント、アフリカ系アメリカ人が多い郡は3ポイントも上昇しており、これは主にトランプが選挙運動の目玉とした経済への懸念によるものだと言われている。

ハリスと民主党が明確な経済政策を打ち出せなかったことは、この2つの票田(ヒスパニック系とアフリカ系アメリカ人)に特に大きなダメージを与えた。実際、ヒスパニック系有権者の40%が、経済が自分の投票にとって最も重要な問題であると答えており、CNNによれば、これは全米の有権者全体よりも8ポイント高い。

経済が最重要課題であると答えたヒスパニック系有権者のうち、3分の2(67%)がトランプに投票したのに対し、ハリスに投票したのはわずか32%であった。

更に言えば、経済を最重要課題とした20%の黒人有権者のうち、トランプはその4分の1強(26%)の票を獲得し、黒人有権者全体における支持率の2倍に達した。

ペンシルヴァニア州やアリゾナ州のようないくつかの激戦州の中では、ヒスパニック系の支持率が2020年と比べてトランプはそれぞれ27ポイント、10ポイント改善した。これが決定的だったようだ。

そのため、ヒスパニック系有権者を詳しく見ると、民主党のメッセージ発信(messaging、メッセージング)がいかにずれていたかが浮き彫りにされる。

ハリスと民主党全体は、トランプ大統領の移民排斥のレトリックに大きく傾倒したが、ヒスパニック系有権者の10人に7人以上(71%)は、ユニドスの出口調査によれば、より厳しい国境警備政策を支持している。

これと同様に、2022年の中間選挙では中絶(28%)がヒスパニック系有権者の最重要課題であったが、CNNによれば、今年同じことを答えたヒスパニック系有権者は2分の1以下(13%)であった。

同様に、伝統的に民主党の信頼できる有権者である若い有権者も、ハリスと民主党のメッセージ発信には動かなかった。ニューヨーク・タイムズの分析によると、「18~34歳の人口が多い」郡は、トランプ支持に6ポイント動いた。

特に30歳未満の有権者について見ると、ハリスはこれらの有権者の支持を勝ち取ったものの、彼女の獲得した11ポイント差は、4年前のバイデンの24ポイント差の約半分にとどまった。

ペンシルヴァニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州といった「青い壁(Blue Wall)」の州と呼ばれる各州では、民主党はハリスが選挙人270人を超えることを期待していたが、若い有権者のシフト(移動)はさらに顕著だった。

エジソン・リサーチ社によれば、2020年と比較して、30歳未満の有権者はミシガン州で24ポイント、ペンシルヴァニア州で18ポイント、ウィスコンシン州で15ポイントもトランプにシフトした。これらは激戦州7州全てで最大の動きとなった。

中間選挙とは異なり、大統領選挙はほぼ常に経済と現政権をめぐる国民投票(referenda)であり、ハリスが苦戦したのはまさにここだった。

タフツ大学の世論調査によれば、30歳以下の有権者が今回の選挙の争点として挙げたのは、中絶よりも経済であり、その割合はほぼ4対1(40%対13%)となった。

ハーヴァード大学ケネディスクール政治学研究所の世論調査ディレクターであるジョン・デラ・ヴォルペが指摘するように、「私が実施した初期のフォーカス・グループから、トランプ政権下では若年層の財政が良くなるという生得的な感覚(innate sense)があった」ということだ。

興味深いことに、外交政策が経済、移民、中絶といった問題よりも関心が低いことが多い中、中東戦争に対する一貫した立場を明確に打ち出せなかったハリスは、ミシガン州のアラブ系有権者とペンシルベニア州のユダヤ系有権者からの支持を失った。

アラブ系アメリカ人の人口が多い都市であるミシガン州ディアボーンでは、トランプが得票率42%、ハリスの36%で僅差で勝利したが、これは2020年のバイデン大統領と比べてハリスは33ポイントも得票率を下げたことになり、これは驚異的な低下となった。多くの住民は、ハリスがイスラエル支持だと感じ、それに反対した。

逆に、ペンシルヴァニア州の世論調査によれば、ハリスがジョシュ・シャピロ州知事を副大統領候補に選ばなかったことは、CNNのヴァン・ジョーンズのような一部の民主党員でさえも、反イスラエルの進歩主義派をなだめるための努力だと非難しており、ハリスはペンシルヴァニア州を失った可能性がある。

ハリスはペンシルヴァニア州のユダヤ人票を48%対41%で獲得した。しかし、『ニューヨーク・ポスト』紙は、彼女がシャピロを選んでいたら、2倍以上の差をつけて勝っていた可能性が高いという世論調査を報じた。ユダヤ系有権者が有権者の3%を占めており、トランプが13万票弱の差で勝利した、この州では、これは大きな失敗だったかもしれない。

ミシガン州とペンシルヴァニア州でのハリスの苦戦は、彼女の選挙戦を悩ませた核心的な問題を象徴している。彼女は大統領になるための政策課題を明確に示すこともなく、不人気なバイデン大統領と自分を切り離して定義することもなかった。

より大きなスケールで見れば、全米および激戦州の世論調査は、ハリスと民主党のより深い問題を明らかにしている。有権者が、食卓に食べ物を並べられるかどうかや、管理されていない南部国境の脅威よりも、中絶のような問題を優先してくれることを期待し、手遅れになるまで間違った問題を優先したのだ。

ポジティヴに捉えれば、民主党の敗北の大きさと世論調査は、2026年、そして2028年に民主党がどのように立ち直ることができるかの明確な道筋を示している。とはいえ、民主党がこの地図に従って、経済中心の中道主義を発展させることを選択するかどうかは重要である。綱領を強化するか、その代わりに左寄りの社会問題に力を入れるかは見ていかねばならない。

※ダグラス・E・ショーン、カーリー・クーパーマン:ニューヨークに拠点を置く世論調査会社「ショーン・クーパーマン・リサーチ」の世論調査専門家兼パートナー。共著として『アメリカ:団結するか、死ぬか(America: Unite or Die)』の共著者である。

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 2023年10月7日に、ガザ地区を実効支配しているイスラム政治・軍事組織ハマスがイスラエル側を攻撃し、約1200人が死亡し、200人以上が人質となった。イスラエルは報復として、ガザ地区に侵攻し、約4万人が死亡した。イスラエルはレバノンのイスラム武装組織ヒズボラへも攻撃を加えており、中東地域の不安定さは増している。イスラエルは、ハマスとヒズボラを支援するイランとも緊張を高めている。イランの核開発の進行状況によっては、中東地域での核戦争の可能性ということまで考えられる。イスラエルは、イラン政府中枢にまで情報提供者、スパイを配置しており(ハマスの最高幹部イスマーイール・ハニーヤ政治局長をテヘランで爆殺しており、これはイラン政府中枢に相当な確度の情報提供者がいることを示している)、イランの核開発は進んでおらず、核戦争までは進まないという判断を下している可能性もあるが、そのような危険性があるということだけでも、国際政治においては大きな要素になる。

 イスラエルのガザ地区やレバノンへの攻撃に対して、世界各国で反感が高まっている。アメリカの各キャンパスでの抗議活動の激化は、イスラエルを支え続けてきたアメリカの外交政策にも影響を及ぼすことになった(民主党のジョー・バイデン政権は弱腰と見られるような状況になった)。また、イスラエルはアメリカの意向に沿わない形で、中東地域での戦争の段階を拡大しているように見える。現在の戦時内閣を率いるベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦争がない状態であれば、自身と家族の汚職問題で辞任を迫られ、裁判となり、有罪判決を受ける可能性が高いと言われている。戦争が続く限り、個人としては逮捕されるような心配はない。そのような極めて個人的な利益のために、戦争を利用しているとすれば言語道断だ。また、イスラエルの一種の「傲慢さ」に関して、世界各国で反感が高まっている。

 ハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授は、イスラエルの建国からの歴史を検討し、イスラエルの戦略的洞察力が落ちていることが、イスラエルを危険にさらしていると主張している。建国からしばらくの間のイスラエルの首脳陣は非常に慎重な行動をし、戦略的に動いていた。しかし、1967年の第三次中東戦争での大勝利から、そのような慎重さが失われていったと分析している。ウォルトは次のように書いている。

「イスラエルの戦略的洞察力(Israeli strategic acumen)の劇的な低下について説明するものは何か? 重要な要因の一つは、アメリカの保護(U.S. protection)とイスラエルの意向への服従(deference to Israel’s wishes)から来る傲慢さと免罪符の感覚(sense of hubris and impunity)である。世界最強の国が何をやっても支援してくれるのであれば、自分の行動を慎重に考える必要性は必然的に低下する。加えて、イスラエルが自らを被害者とみなし、自国の政策への反対をすべて反ユダヤ主義(antisemitism)のせいにする傾向は、イスラエルの指導者やその国民が、自らの行動がどのように敵意を引き起こしているのかを認識することを難しくしているからだ。ネタニヤフ首相がイスラエルで最も長く首相を務めていることも、問題の一因となっている。特に彼の行動は、自国にとって何が最善であるかという懸念だけでなく、私利私欲(汚職による服役を避けたいという願望)によって引き起こされている部分が大きいからだ。それに加えて、宗教右派(religious right)の影響力の増大がある」。

 私は常々、「勝利は敗北の始まりである」という考えを持っている。特に大勝利は、後の敗北につながることが多いと考えている。引用したように、イスラエルは第三次中東戦争以降に、慎重さを失い、結果として、自国の立場を悪くする選択を行っている。それが、現在の状況までつながっているということになる。傲慢さは人間にとって宿痾である。そして、成功や勝利によって浮かれてしまうのもまた人間の性(さが)である。

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イスラエル戦略の危険な衰退(The Dangerous Decline in Israeli Strategy

-数十年にわたり、シオニスト・プロジェクトは自らを守るのが下手になっている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年8月16日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/16/the-dangerous-decline-in-israeli-strategy/

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イェルサレムのヘルツェル山で行われた故ゴルダ・メア元首相の国家追悼式典でスピーチするイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(2018年11月18日)

イスラエルは深刻な問題を抱えている。国民は深く分裂しており、この状況が改善する見通しはない。ガザ地区では勝ち目のない戦争に巻き込まれ、軍部には緊張の兆候が見られ、ヒズボラやイランとのより広範な戦争の可能性も残されている。イスラエル経済は大きな打撃を受けており、『タイムズ・オブ・イスラエル』紙は最近、6万もの企業が今年閉鎖される可能性があると報じた。

更に言えば、イスラエルの最近の行動は、その世界的なイメージを著しく損ない、かつては想像もできなかったような形で孤立国家(pariah state)となりつつある。2023年10月7日のハマスの残忍な攻撃の後、イスラエルは世界中から相当なそして適切な同情の声を受け、イスラエルには強い対応する権利があると広く受け入れられていた。しかし、それから10カ月以上が経過し、イスラエルはガザ地区でパレスティナ人に対する大量虐殺キャンペーンを展開し、ヨルダン川西岸地区では入植者による暴力が強まっている。国際刑事裁判所の主任検察官は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ギャラント国防相に対し、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を申請した。国際司法裁判所は、イスラエルの行動は本質的にも意図的にも大量殺戮的であるとする予備的所見を発表し、裁判所はついに、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、東エルサレム地区に対するイスラエルの占領と植民地化が明白な国際法違反であると宣言した。

ガザ地区で起きていることを見て、おぞましくはないにせよ、深く悩まずにいられるのは、シオニズムを擁護する最も頭の固い人たちだけだろう。イスラエルの行動に対するアメリカ国内の支持率は急激に低下しており、若いアメリカ人(多くの若いアメリカ系ユダヤ人を含む)は、イスラエルの行動に対するバイデン政権の杓子定規な対応に反対している。イスラエルの国家安全保障会議の元副議長エラン・エツィオンのこのツイートを読めば、イスラエルが自らに与えたダメージの大きさがよくわかるだろう。そして、世界有数のジェノサイド研究者である歴史家オメル・バルトフが最近イスラエルを訪問した際の記録を読めば、この問題が、いかに深刻かが分かるだろう。

これら全ての問題をネタニヤフ首相のせいにしたくなる誘惑に駆られるが、彼は確かに国内外から受けた批判に値する。しかし、全ての責任をビビ(ネタニヤフ)に押しつけることは、より深い問題、つまり、過去50年間にイスラエルの戦略的思考が徐々に損なわれていることを見落とすことになる。建国後の最初の20年間におけるイスラエルの功績と戦術的卓越性は、1967年以来のイスラエルの重要な戦略的選択がどの程度その安全保障を損なうのに役立ったかを、特に高齢者の間で曖昧にする傾向にある。

初期のシオニストとイスラエル第一世代の指導者たちは、鋭い戦略家だった。1900年当時のパレスティナにおけるユダヤ人人口はごくわずかで、1948年にイスラエルが建国された時点でもまだ少数派であったにもかかわらず、彼らはアラブ世界の真ん中にユダヤ人国家を建国するという、不可能に近いと思われたことに挑戦した。建国者たちは冷酷なまでに現実的であること(ruthlessly realistic)によって成功した。有利な機会を利用し、有能な準軍事組織(のちに一流の陸軍と空軍も)を構築し、世界の支配的な大国からの支持を勝ち取るために努力を重ねた。たとえば、ソ連も米国も1947年の国連分割計画を支持し、イスラエル建国直後に承認したことは記憶に新しい。ダヴィド・ベン=グリオンとその仲間のシオニスト指導者たちは、自分たちの最終的な目標に近づけるのであれば、少なくとも一時的には、長期的な目標に届かない取り決めも喜んで受け入れた。

国家の地位を獲得すると、新政府は執拗なハスバラ(hasbara、プロパガンダ)を通じて国際的な支持を獲得し、フランス、南アフリカ、その他いくつかの国との協力同盟を築くために熱心に取り組んだ。最も重要なことは、主に「イスラエル・ロビー(Israel lobby)」の力と影響力の増大に基づいて、アメリカとの「特別な関係(special relationship)」を確立したことである。イスラエルの初期の指導者たちは、敵対的な大国に囲まれた小国が国際的な支持を得るには慎重に計算し、多大な努力をしなければならないことを理解していた。巧妙な外交と少なからぬ欺瞞は、イスラエルが秘密裏に核兵器を開発し、イスラエル建国の残酷な現実を隠すのにも役立ったが、この事実はベニー・モリス、イラン・パッペ、アヴィ・シュライム、シンハ・フラパン、そして1980年代の他の「新しい歴史家」たちの業績によって広く知られるようになった。

完璧な政府など存在しないし、イスラエルの初期の指導者たちも時には過ちを犯した。ベン・グリオンは、1956年のスエズ危機でイギリス、フランスと結託してエジプトを攻撃し、イスラエルが軍を撤退させない可能性を示唆したときに過ちを犯した。しかし、ドワイト・アイゼンハワー政権がそのような不当な拡大を容認しないと明言すると、彼はすぐにその姿勢を捨てた。しかし、全体的に見れば、初期のシオニスト国家の戦略的洞察力(strategic acumen of the Zionist state in its early days)は、特に敵対国と比較した場合、印象的であった。

ターニングポイントとなったのは、1967年のアラブ・イスラエル戦争(第三次中東戦争)におけるイスラエルの圧勝だった。その結果は、当時見られたような奇跡的なものではなかったが(とりわけ、アメリカの諜報機関はイスラエルが容易に勝利するだろうと予測していた)、この勝利のスピードと規模は多くの人々を驚かせ、それ以来イスラエルの戦略的判断を損なう傲慢さを助長した。

思慮深いイスラエルの学者たちが繰り返し主張してきたように、主な誤りは、「大イスラエル(Greater Israel)」を創造する長期的な努力の一環として、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を保持し、占領し、徐々に植民地化するという決定を下したことだった。ベン・グリオンとその支持者たちは、新しいユダヤ人国家内のパレスティナ人の数を最小限に抑えようとしていたが、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を維持することは、イスラエルが、イスラエル系ユダヤ人の人口とほぼ同規模に急増しているパレスティナ人の人口を管理することを意味した。この結果、一般に「占領(occupation)」と呼ばれるように、イスラエルのユダヤ人としての性格と民主政治体制との間に避けがたい緊張関係(unavoidable tension between Israel’s Jewish character and its democratic system)が生まれた。それは、パレスティナ人の政治的権利を抑圧し、アパルトヘイト体制(apartheid system)を構築することによってのみ、ユダヤ人国家であり続けることができるということであった。イスラエルは、更なる民族浄化(ethnic cleansing)や大量虐殺(genocide)によってこの問題に対処することもできたが、どちらも人道に対する罪(crimes against humanity)であり、イスラエルの真の友であれば誰もそのようなことを支持することはできない。

大イスラエルの追求という決断の後には、すぐに別の過ちが生じた。イスラエルの指導者たち(そしてヘンリー・キッシンジャーを含むアメリカの指導者たち)は、エジプトのアンワル・サダト大統領が1967年にイスラエルが占領したシナイ半島の返還と引き換えに和平を結ぶ用意があるという兆候を見逃した。加えて、イスラエルの諜報機関は、エジプト軍がシナイ半島でイスラエル国防軍(Israeli Defense ForceIDF)に対抗するには弱すぎると誤って判断し、戦争まで進むのを思いとどまった。この誤った判断の結果が、1973年の第四次中東戦争だった。当初の挫折にもかかわらず、イスラエルは戦場では勝利を収めたが、戦後の交渉のテーブルでは勝利を収めることはできなかった。戦争の犠牲とアメリカからの圧力が相まって、イスラエルの指導者たちはシナイ半島を放棄するための真剣な交渉を始めるよう説得された。この転換は、やがてサダトの歴史的なエルサレム訪問、キャンプ・デイヴィッド合意、そしてその後のエジプト・イスラエル和平条約(当時のジミー・カーター米大統領の粘り強い巧みな仲介による)につながった。残念なことに、当時のメナヘム・ベギン首相は大イスラエルの目標に深く傾倒し、占領を終わらせようとはしなかったため、パレスティナ問題に真剣に取り組むこの有望な機会を逃してしまった。

戦略的判断が損なわれていることを示す次の明確な兆候は、1982年のイスラエルによるレバノン侵攻であった。この計画は、タカ派のアリエル・シャロン国防相の発案によるもので、レバノンに軍事侵攻すれば、レバノンでかなりの勢力をもっていたパレスティナ解放機構(Palestine Liberation OrganizationPLO)を掃討し、ベイルートに親イスラエル政権を樹立し、イスラエルにヨルダン川西岸地区での自由裁量(free hand)を与えることができるとベギン大統領を説得した。この侵攻は短期的には軍事的に成功したが、レバノン南部をイスラエル国防軍が占領することになり、それがヒズボラの創設につながった。PLOをレバノンから撤退させても、パレスティナの抵抗は止まらなかった。それどころか、1987年の第一次インティファーダへの道を開き、パレスティナ人が祖国を離れたり、イスラエルの恒久的な支配に服したりするつもりはないというもう一つの明確なサインとなった。

先見の明のあるイスラエル人は、パレスティナ問題が消えることはないと認識していたが、歴代のイスラエル政府は問題を悪化させるような行動をとり続けた。たとえば、PLOは1993年に最初のオスロ合意に調印してイスラエルの存在を受け入れたが、イスラエルの指導者がパレスティナ人に独自の国家を提供することはなかった。2000年のキャンプ・デイヴィッド・サミットでエフード・バラク首相(当時)が提示した寛大と思われる提案は、それまでのイスラエルのどの提案よりも進んでいたが、それでもパレスティナ人に実行可能な国家を与えるにはほど遠いものだった。イスラエルが提示した最善の案は、ヨルダン川西岸地区に2つか、3つの独立した非武装の州(separate and demilitarized cantons)を作り、イスラエルがその新しい州の国境、領空、水資源を完全に管理するというものだった。これでは実行可能な国家と言えず、ましてや正当なパレスティナの指導者が受け入れられるものでもなかった。シュロモ・ベン=アミ元イスラエル外相が後に、「私がパレスティナ人だったら、キャンプ・デイヴィッドを拒否していただろう」と認めたのも不思議ではない。

パレスティナ人と和平を結ぶには、イスラエルが占領地での入植地の拡大を止め、パレスティナ人と協力して、有能で効果的で合法的な政府を樹立する必要がある。ところが、イスラエルの指導者たち、とりわけシャロンとネタニヤフに率いられた政権は、その反対のことをしてきた。入植地の拡大を止めようとせず、ハマスへの支援を黙認してでもパレスティナ人を弱体化させ、分断させようとし、二国家解決(two-state solution)を達成しようとするアメリカの努力を何度も妨害した。その結果、破壊的だが決定的ではない衝突が繰り返された(2008年から2009年の「キャスト・リード」作戦[Operation Cast Lead]や2014年の「プロティクティヴ・エッジ」作戦[Operation Protective Edge]など)。しかし、こうした「草刈り(mow the grass)」の繰り返しはパレスティナの抵抗に終止符を打つことはなく、最終的には10月7日のハマスの越境攻撃という、ここ数十年でイスラエルに与えた最悪の打撃に至った。

イスラエルの戦略的近視眼(Israeli strategic myopia)の最新の例は、イランの核開発計画の制限を交渉する国際的な取り組みに対するイスラエルの熱烈な反対である。イスラエルは戦略的理由から、中東で核兵器を保有する唯一の国であり続けることを望んでおり、地域の最大の敵であるイランが核兵器を取得するのを望んでいない。したがって、アメリカと世界の他の主要国がイランに2015年の包括的共同行動計画への署名を説得したとき、ネタニヤフ首相と他のイスラエル指導者は喜び、安堵したはずだ。それはなぜか? なぜなら、イラン政府に対し、濃縮能力を削減し、濃縮ウランの備蓄を縮小し、国際原子力機関からの非常に立ち入った査察を受け入れることを要求し、それによってイランの爆弾が10年、あるいはそれ以上手に入らなくなる可能性があるからだ。イスラエルの安全保障高官の多くは賢明にもこの合意を支持したが、ネタニヤフ首相とその強硬派支持者、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)やアメリカのイスラエル・ロビーのタカ派グループは断固として反対した。これらの強硬派は2018年に当時のドナルド・トランプ大統領に核合意から離脱するよう説得する上で重要な役割を果たしており、現在イランはこれまで以上に爆弾製造に近づいている。これほど近視眼的なイスラエル政策を想像するのは難しい。

イスラエルの戦略的洞察力(Israeli strategic acumen)の劇的な低下について説明するものは何か? 重要な要因の一つは、アメリカの保護(U.S. protection)とイスラエルの意向への服従(deference to Israel’s wishes)から来る傲慢さと免罪符の感覚(sense of hubris and impunity)である。世界最強の国が何をやっても支援してくれるのであれば、自分の行動を慎重に考える必要性は必然的に低下する。加えて、イスラエルが自らを被害者とみなし、自国の政策への反対をすべて反ユダヤ主義(antisemitism)のせいにする傾向は、イスラエルの指導者やその国民が、自らの行動がどのように敵意を引き起こしているのかを認識することを難しくしているからだ。ネタニヤフ首相がイスラエルで最も長く首相を務めていることも、問題の一因となっている。特に彼の行動は、自国にとって何が最善であるかという懸念だけでなく、私利私欲(汚職による服役を避けたいという願望)によって引き起こされている部分が大きいからだ。それに加えて、宗教右派(religious right)の影響力の増大がある。宗教右派の外交政策に対する救世主を求めるような見解は、最近『ハーレツ』の冷ややかな記事に要約されている。どの国でも、終末予言や神の介入を期待して戦略的決定を下すようになったら、要注意だ。

なぜそれが重要なのか? なぜなら、アメリカが9月11日の事件への対応で示したように、戦略的選択肢について知的に考えていない国は、自国にも他国にも大きな害を及ぼす可能性があるからだ。イスラエルの行動はイスラエル自身の長期的な展望を脅かすものであり、イスラエルの明るい未来を望む者は、その戦略的判断力の低下を特に懸念すべきである。イスラエルの復讐心に満ちた近視眼的な行動は、何十年もの間、罪のないパレスティナ人に甚大な被害を与え続け、現在もなおそうしている。不安定で思慮の浅い相手と密接に結びついていることは、アメリカにとっても深刻な問題である。時間、注意力、資源を浪費し続け、アメリカを無能かつ偽善的に見せるからだ。また、反米テロリズムの新たな波を刺激する可能性もあり、その結果もたらされるであろう損害は明らかだ。

残念なことに、この状況をどのように打開するかも明らかではない。アメリカのイスラエル支持者にできる最善のことは、民主党と共和党の双方に圧力をかけ、ユダヤ国家に厳しい愛情(tough love)を注ぎ、現在の軌道を再考させることである。もちろん、そのためにはAIPACのようなロビー団体が、イスラエルを現在の苦境に導いた自らの役割を反省する必要がある。残念ながら、それがすぐに実現する兆しはない。それどころか、イスラエルとその支持者であるアメリカは、さらに手をこまねいている(doubling down)。これは、大惨事(disaster)とまではいかなくとも、終わりのないトラブルの処方箋である。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。よろしくお願いいたします。
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選挙後のカマラ・ハリスとジョー・バイデン

 アメリカ、特に民主党界隈では、「カマラ・ハリスは気の毒だった」という主張が出ている。私もその通りだと考える。佐藤優先生との対談『』は期せずして、「カマラ・ハリスの敗北分析」のようになったが、私たちが話していた内容が現在、カマラ・ハリスの敗北分析で言われている。

 それでも、ハリスには気の毒な面が多かった。まず、選挙活動が実質3カ月ほどに限定された。ジョー・バイデンの高齢問題について注目が集まり、選挙戦からの撤退の声が大きくなったのが今年6月で、それまでは大統領選挙は無風状態で、トランプが有利という展開になっていた。大統領選挙候補者討論会で、一気にバイデンへの不安が噴出し、民主党側は火消しに躍起になっていたが、そのうちに、バイデンを諦めさせることが必要ということになり、バラク・オバマに「何とかしてくれ」という声が集まり、彼が引導を渡す形になったようだ。それが今年7月のことで、1カ月もの間、ぐずぐずしていたことになる。そして、「副大統領のカマラが良いのではないか」という空気づくりがなされて、「カマラ待望論」が無理やりつくられた。

 そもそも、カマラ・ハリスは大統領選挙の候補者になるほどの資質を持った人物ではない。以下の論稿でネイト・シルヴァーが書いているように、「誰かの代わりになるくらいのレヴェル」であって、連邦上院議員でも彼女の資質だと持て余すくらいだと思われる。バイデンがハリスを副大統領に選んだのも、自分を脅かさないくらいの人物ということもあったと思われる。ハリスにとって大統領選挙候補者は荷が重すぎたということになる。そもそも、2020年の大統領選挙民主党予備選挙では、カマラ・ハリスは早々に撤退している。有力候補という見方をされていたのに、支持率が伸びなかった。民主党自体がカマラ・ハリスの資質について最初から見切っていた。自分の能力よりも上の仕事をさせられるのは気の毒なことである。

 7月末からカマラ・ハリスは選挙運動を始めることになったが、選対は「居抜き」のような形で、それにバラク・オバマが自身の選対のスタッフだった人たちに声をかけて急ごしらえで整えられたものだ。これではまず一体感が出ない。バイデンのために一生懸命頑張ってきたというスタッフたちにとっては、「なんで能力もないカマラのために働かねばならないのか、自分はバイデンを大統領にするために頑張っている」ということになり、士気が上がらない。「トランプの大統領就任を阻止する」だけでは士気は上がらない。

 更に言えば、バイデンは全く協力的ではなかったということも言えるだろう。バイデンはハリスの選挙運動にほとんど関わらなかった。「現政権の失敗と彼女とを結びつけるのはよくない」という言い訳はできるが、ハリスが副大統領である以上、バイデン政権を背負わねばならないのは当然だ。従って、バイデンは「自身の後継者」としてカマラ・ハリスを支援しなければならなかったが、それができていなかった。結果として、民主党側は盛り上がりに欠けた戦いになった。また、ハリスの候補者指名についても、結局、党の「ボス」たち、エスタブリッシュメントが空気づくりをして、手続きをすっ飛ばして決めてしまったことで、「非民主的」という批判を受ける口実を与えることになった。

 カマラ・ハリスは負けるべくして負けた。まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」ということになる。

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ネイト・シルヴァーがバイデンは「代わりの人レヴェル」の候補者カマラ・ハリスに対して「何の助けも」しなかったと発言(Nate Silver says Biden did ‘no favors’ for ‘replacement-level’ candidate Harris

アシュレイ・フィールズ筆

2024年11月15日

『ザ・ヒル』誌

by Ashleigh Fields - 11/15/24 10:57 PM ET

https://thehill.com/homenews/campaign/4993995-nate-silver-says-biden-did-no-favors-for-harris-bid/

世論調査専門家のネイト・シルヴァーは、ジョー・バイデン大統領が今夏の大統領選からの撤退前後に「彼女に手を貸さなかった(did her no favors)」ため、トランプ次期大統領に敗北したハリス副大統領に「大きな同情(a lot of sympathy)」を抱いていると述べた。

シルヴァーは金曜日に自身のウェブサイトに投稿し、ハリス副大統領が在任中に注力したことについて、「おそらく民主党が最も苦手とする国境問題や、ホワイトハウスがおそらく進展がないと分かっていたであろう投票権問題など、バイデンはハリスに厳しい課題を与えた」と書いた。

シルヴァーは「バイデンは、討論会のスケジュールを空白にし、9月11日以降、ハリスが最も得意とする討論会であったにもかかわらず、何も予定を入れなかった。最後まで、バイデンは彼女のメッセージを踏みにじった」と書いた。

しかし、シルヴァーは、この感情がハリス候補に対する一部の肯定的な見方を歪め、彼女は 「代替レヴェルの政治家(replacement-level politician)」であり、トランプを打ち負かすには「平均か平均より少し上(average or slightly above average)」の人物が必要だったと述べた。

シルヴァーは、11月の投票での民主党の連邦上院議員候補者たちに比べてハリスの成績が劣っていたことを挙げ、「人々はハリスの立場に対する同情を、彼女が良い候補者だったことと混同していると思う」と書いた。

シルヴァーは「計算してみると、ハリスは民主党上院候補と比べて、平均2.6ポイント、中央値で2.4ポイント下回った」と書いている。

シルヴァーによれば、ハリスの劣勢の理由には、メッセージ発信の問題、バイデンとの差別化を「拒否(refusal)」したこと、2020年の最初のホワイトハウスを目指した予備選挙と、2024年の直近の千四の間で彼女のスタンスが変化したことなどが含まれるという。

シルヴァーは「彼女は今回の選挙戦で中道(the center)に軸足を移そうとしたのだろうが、なぜ以前の立場を捨てたのか、彼女の政策課題が実際にどのようなものなのかについての説明が不足していたため、せいぜい不器用な努力をしているだけのことだった」と書いている。

それでも、シルヴァーは、バイデンが選挙戦を続けていれば負けていただろうと主張し、内部世論調査でトランプが400人の選挙人を獲得したとの報道を引き合いに出した。

シルヴァーは「バイデンが選挙戦から撤退したとき、バイデンは全米世論調査の平均でドナルド・トランプに4ポイント差をつけられていた。最終的な票差は、良くなるどころか、悪くなっていたと思う」と書いている。

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 今回の大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領に圧勝、地滑り的勝利ということになった。大きいのは、一般得票数でもトランプがハリスに勝利したことだ。2016年の選挙では、選挙人獲得数ではトランプが勝利したが、一般得票数ではヒラリー・クリントンが勝利した。2020年の選挙ではジョー・バイデンがトランプに対して、選挙人獲得数、一般得票数で勝利した。人口が多い都市部を持つ州は民主党優勢州であり、ここで民主党の候補者が圧勝するので、一般得票数が多くなるということがあった。しかし、今回は、民主党優勢州でハリスは勝つには勝ったが、ヒラリーやバイデンに比べて得票率を減らしている。トランプは共和党優勢州ではハリスに圧勝している。こうしたことがあり、ハリスは一般得票数でもトランプに敗北するということになった。
2024uspresidentialelectionresults20241107001

 やはりアメリカ国民のインフレ疲れ、生活の不安ということが原因であろう。特に低所得者層にとってこの問題は深刻だ。給与や年金が高い中間層以上には耐えられるものでも、こうした人々にとっては生きるか死ぬかの問題である。インフレ率はジョー・バイデン政権で下がってきていたが、生活者の実感としてはかなり厳しいということがある。私たちは、テレビ番組などで有名人たちがハワイに行ってラーメンが何千円もしたとか、朝食を食べるだけで1万円近くしたという話を聞いて、「なかなか海外旅行にも行けなくなったな」と嘆くばかりだが、実際にそこで生活している人たちにとっては死活問題だ。それが今回の選挙で明らかになった。

逆に言えば、トランプ政権はインフレ対策と雇用創出で思い切った施策を行わねばならない。トランプはもう次の任期は狙えないとなれば、子の大統領任期では、イングレ対策と雇用創出、更に、後継者づくりということを主眼に置くことになる。トランプの後継者となり得るのは現在のところ、JD・ヴァンス次期副大統領だ。

 今回の選挙ではラテンアメリカ諸国出身の人々、男性はラティーノ、女性はラティーナと呼ばれるが、ラティーノの間でトランプへの支持が増えている。彼らにとっては、不法移民対策がもっと重要なテーマとなったようだ。彼ら自身も移民、もしくは移民の家族出身であり、本来であれば、不法移民に対して寛容であるとも思われるが、不法移民に対して否定的な選択をしたということは、不法移民に関連しての地域の治安の悪化や財政負担の問題が大きくなっているということが挙げられる。これは彼らの生活の実感である。

 民主党は人々の生活の実感に鈍感になっている。そのことが今回の選挙、大統領選挙だけではなく、連邦上院議員選挙、連邦下院議員選挙で明らかになった。これをポピュリズムだと簡単に片づけて、見ないふりをしていては民主党に未来はない。アメリカの人々は生活の実感を持って政治に怒りを持ち、このような判断を下した。民主党はこれをしっかり受け止めねばならない。

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民主党優勢州の結果はハリスと民主党にとって残酷な夜を浮き彫りにしている(Blue state results underscore brutal night for Harris, Democrats

ジュリア・ミュラー、ジャレッド・ガンズ筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4977596-democrats-lose-midterms-2024/

全米の有権者は火曜日にカマラ・ハリス副大統領と民主党が主張した内容を拒否し、この結果は党による大規模な内省(soul-searching)の引き金となっている

ドナルド・トランプ次期大統領は前回勝利した州でハリスとの差を広げたが、一部の民主党の優勢州での差も縮小した。

2020年にジョー・バイデン大統領が16ポイント差で勝利したニュージャージー州では、水曜日の夜、ハリスが5ポイント弱の差でリードしていた。前回バイデンが23ポイント差で勝利したニューヨーク州では、火曜日にはハリスが約11ポイント差で勝利した。

『ワシントン・ポスト』紙の追跡調査によると、国内の約3000の郡のほとんどが火曜日に右方向(トランプ)に移動した。

世論調査専門家ネイト・シルヴァーの分析によると、ニューヨーク市の5つの行政区は全て右にシフトしており、場合によってはトランプの得票率が11ポイントも上昇した。

ハリス副大統領はシカゴ、ボストン、フィラデルフィア周辺の郡でバイデンの2020年の数字を下回った。ヒューストン周辺のテキサス州ハリス郡では、バイデンが約14ポイント差で勝利したが、ハリスはわずか5ポイント差で勝利した。

ハリスは民主党優勢州のメリーランド州で簡単に勝利したが、それでもその差は縮まって23ポイントだった。前回の選挙でバイデンはトランプに33ポイント差で勝利した。

イリノイ州は1990年代初頭以来、民主党の大統領候補は2桁の差で投票してきたが、ハリスはわずか8ポイント程度の差で勝利する見込みになっている。

トランプは多くの民主党優勢州でスコアを伸ばしただけではない。彼は共和党優勢州でもスコアを伸ばした。

トランプ氏は2020年にきわめて強力な共和党優勢州のアラバマ州で25ポイント差でバイデンに勝利したが、今回の選挙ではそのリードを30ポイント以上に広げた。

アイオワ州では、信頼性の高い世論調査でハリスが3ポイント差で驚くべき優位性を示した数日後、トランプが快勝した。最新の数字によると、トランプは約13ポイント差をつけてリードしており、アイオワ州での過去の成績を上回っている。

トランプは2016年と2020年の大統領選挙で一般得票数で敗れた。水曜日夜の時点で、トランプは2024年の一般得票数で勝利するのは確実と見られている。トランプはハリスに500万票近くの差を付けており、驚くべき逆転となった。

ハリスの困難な一夜は、民主党上院議員候補がモンタナ州とオハイオ州で苦戦して敗北し、ペンシルヴァニア州とネヴァダ州でもさらに2敗する危険があったため、投票結果に影響を及ぼした。ウィスコンシン州とミシガン州の連邦上院の他の民主党候補者2名が熾烈な競争を勝ち抜いた。

選挙翌日、民主党は敗北の原因が戦術的、戦略的決定なのか政策上の問題なのかを議論した。

民主党系のストラテジストのジョン・ライニッシュは、選挙戦の特殊な状況を考慮するとハリスは「できる限りの最善を尽くした」と主張し、再選活動から早期に撤退しなかったバイデン大統領の責任を非難した。

一方、民主党系のストラテジストのフレッド・ヒックスは、民主党がバイデン大統領を非難することに反対した。ヒックスは、新型コロナウイルス感染症時代からのインフレという逆風により、2024年に現職大統領が勝利するのは困難だっただろうと述べた。

ヒックスはまた、共和党と中道派の有権者にとって最大の2つの問題、移民とインフレに関してハリスがバイデンから距離を置くのに苦労したとも語った。 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、ブルーカラー層の有権者が大挙して民主党から離れていることを指摘し、民主党は労働者階級を見捨てたと主張した。

「最初、白人労働者階級だったが、今ではラティーノ系アメリカ人や黒人労働者もそうなっている」とサンダースは声明で述べた。彼は、「民主党指導部が現状を擁護する一方で、アメリカ国民は怒り、変化を望んでいる。そして彼らは正しいのだ」と続けた。

トランプ大統領はウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州、ミシガン州の「青い壁(blue wall)」3州を全てひっくり返し、前回の選挙では全てバイデンに敗れた。

また、バイデンが2020年に勝利を収めたジョージア州を逆転し、ネヴァダ州でも勝利して激戦区の連勝記録を伸ばした。前回もバイデンが勝ったアリゾナ州では、水曜午前の時点で5ポイント弱の差で勝利していた。 

選挙前の世論調査では、多くのアメリカ人にとって経済が最重要課題であることも示されており、火曜日の投票では、バイデンよりも経済にうまく対処するというトランプ大統領の公約にほぼ同意していることが示された。

このことは、ハリスが中絶の権利と、2020年の選挙を覆すためのトランプの行動を考慮してトランプが代表していると彼女が述べた民主政治体制への脅威に焦点を当てすぎたのではないかという疑問を引き起こした。

サフォーク大学政治研究センター所長のデイヴィッド・パレオロゴスは、中絶の権利について「一部の有権者にとっては非常に重要な問題だったと思うが、全体としては第一位や第二位の問題ではなかった」と述べた。

ヒックスは、共和党がインフレと移民を攻撃していることと、民主党がこれらの問題についてより良い主張を提案できなかったことが原因だと主張した。

ヒックスは次のように語った。「この件で民主党を沈めたのはインフレと移民の双子(twins)だった。そして、トランスジェンダーの学生がスポーツに参加し、税金がそこに投じられるという社会問題を持ち出すと、それはまさにインフレのポイント全体にまで及ぶが、民主党はそうしなかった。具体的には、ハリス陣営はそれを克服できなかったようだ」。

ライニッシュによれば、民主党は広く中道派の有権者に届く適切なメッセージを磨いておらず、「ここ数年で左派がどれだけ遠くまで行ったか」に不満を抱いた民主党支持層の一部を疎外しているということだ。

共和党系ストラテジストであるジョシュア・ノボトニーは、トランプは多くの人々を惹きつける「ブランド(brand)」であり、将来的には再び選挙に出馬することはないため、共和党がこれまでに得た利益を更に拡大できるかどうかが懸念材料だと述べた。

ノボトニーは、次期副大統領のJD・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)が新しい共和党の「後継者(heir)」と見られるが、将来の成功への最善の道は、制限された政府と減税というより古い理想と共和党の共和党の理念、トランプ大統領時代の「ポピュリズム傾向(populism streak)」を結びつけることだと述べた。

ノボトニーは「もし彼らがそれらを変えることができていれば、昨日彼らはかなりうまくやったと思うが、私たちがそれらを変え続けることができれば、それが勝利のレシピだと思う。 それが起こるかどうかは、私たちがどのような候補者を擁立するかに大きく左右されると思う」と述べた。

民主党は今後数カ月をかけて何が問題だったのか合意することに努め、有権者が2026年の中間選挙、そして2028年に再び中間選挙に戻るべき理由について説得力のあるメッセージを打ち出すよう努めるだろう。

ヒックスは、今後は民主党が経済メッセージを洗練させ、非大卒有権者、中年有権者、男性有権者といったトランプ大統領の主要層の支持を得るべく努力する必要があると述べた。

ヒックスは「今日は次の選挙サイクルの初日だ」と語った。

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トランプはラティーノ系からの支持を基盤にして勝利への道を整える(Trump builds on Latino support, helping pave way to victory

ジュリア・マンチェスター、キャロライン・ヴァキル筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4977774-trump-gains-latino-voters/

ラティーノ系とヒスパニック系の有権者の間でのトランプ次期大統領のパフォーマンスは、前大統領が重要な投票層に進出したことにより、投票日の共和党にとって最も明るい材料の1つとなった。

プエルトリコやラテンアメリカ出身者について人種差別的なジョークを飛ばすコメディアンをフィーチャーした集会でトランプが受けた反発にもかかわらず、トランプ前大統領はこうした人々の間で支持を拡大しているようだ。トランプはプエルトリコ人が多く住むフロリダ州中部のオセオラ郡を僅差で1ポイント以上の差をつけて逆転した。これに対し、2020年にジョー・バイデン大統領が14ポイント近くの差をつけてオセオラ郡で勝利し、2016年にはヒラリー・クリントン元国務長官が25ポイント近くの差をつけて勝利した。

アリゾナ州全体ではヒスパニック系人口が目立つユマ郡とサンタクルーズ郡でトランプ元大統領が2020年の成績を上回っているように見えたが、州内での票数はまだ集計中だ。

CNNの出口調査によると、ハリス副大統領がラティーノ系有権者の間でトランプに52%対46%で勝利しており、このグループ内でトランプを上回ったが、差は一桁となった。2020年の得票率はバイデンが65%だったが、トランプは32%だった。

今回の選挙で最も注目に値するのは、トランプがラティーノ系男性でハリスに12ポイント差をつけて勝利したことだ。これは、バイデンが23ポイント差で同グループの支持を集めた2020年以来、驚異的な35ポイントの差となった。そしてハリスはラティーナ系女性の間で大差で勝利し、トランプを22ポイント上回ったが、わずか4年前には、バイデンが獲得した39ポイントの差と比べると、歴然とした違いがある。

トランプ陣営の上級顧問ダニエル・アルヴァレスは次のように語った。「ドナルド・J・トランプ大統領がヒスパニック系有権者から歴史的な支持を得たのは、コストの削減、経済の回復、アメリカの繁栄の回復、国境の確保、国内外の安全など、私たちのコミュニティにとって最も重要な問題について決して揺るぎなかったからだ。トランプ大統領が勝利演説で述べたように、今こそ仕事に取り掛かり、アメリカ国民のために奉仕すべき時だ」。

ラティーノ系有権者の一部が共和党に傾きつつあるという警告の兆候は、民主党にとって長年にわたって明らかであった。2022年、共和党はフロリダ州の投票圏、特にキューバ人やプエルトリコ人コミュニティで実績を上げた。ロン・デサンティス知事(共和党)は、キューバ系アメリカ人の68%、プエルトリコ人の56%を含むフロリダ州のラティーノ系投票の58%を獲得した。

そして、2024年の選挙に向けた世論調査では、トランプはラテン系有権者の間で、特に若いラティーノ系男性の間で有望な兆しを見せていた。

ラティーノの投票行動や傾向を専門とする共和党のストラテジストであるマイク・マドリッドは、「孤立した若いラティーノ男性により浸透しているが特に注目だ」と述べている。

マドリッドは「若いヒスパニック系男性だけでは、オセオラ郡はひっくり返せない」と述べた。

マドリッドは、ラティーノ系有権者の大きな変化は、「より長期的な、世代的な軌跡(longer-term, generational trajectory)」の一部であると主張する。

マドリッドは「非白人で労働者階級のポピュリスト的な有権者という新しいタイプの有権者が出現している」と述べた。

共和党は、このスイングは経済や移民などの問題で共和党に向かう動きであると同時に、民主党の政策に対する拒絶だと主張している。

ある共和党系ストラテジストは「例えば、テキサス州南部に行って、それらのコミュニティに入ってみると、実際、不法移民の流入については長年の懸念があった。なぜなら、不法移民が実際に彼らのコミュニティに流入するからである」と述べ、ラティーノ系住民が、学校選択や中絶などの問題について右派への傾斜の兆しを見せていると付け加えた。

3月に発表されたピュー・リサーチ・センターの調査によると、アメリカ在住のヒスパニック系住民の75%が南部国境を越える移民数の増加を「大きな問題または危機(major problem or crisis)」と述べ、74%が政府の対処に対して批判的だと答えた。またこの世論調査では、51%が南部国境への対処が大統領と連邦議会にとって最優先事項であるべきだと答えていることも明らかになった。

前述のストラテジストは、「この傾向は以前から存在しており、共和党にとってありがたいことに、民主党はそれを認識できず、歴史を通じてその価値を評価することができず、率直に言って、彼らは党内のほとんどの少数派を同じように扱ってきた。彼らはテキサス州やアリゾナ州のヒスパニック系有権者を黒人有権者の穴埋め要員として扱った」と述べた。

このストラテジストは「それは連合ではない。それは怠惰であり、人々が自分たちを支持して当然なんだと見なしている」と続けて述べた。

アリゾナ州民主党の元幹事長DJ・クインランは、それはさらに単純であると示唆している。ラティーノ系とヒスパニック系の有権者たちは、他の主要な投票ブロックと同じ傾向の影響を受けている。

クインランは次のように説明した。「ドナルド・トランプ勝利の物語を、より多くのラティーノ系アメリカ人が彼に投票するという物語として伝えることに焦点を当て、起きている全体的な広範な社会的傾向に目を向けないのは大きな間違いだ。全体的に広範な動きがあったが、それは何よりも誤った情報と経済的不安によって主に動かされていると私は言いたい」。

クインランは「私自身もラティーノ系アメリカ人として、トランプ政権が傾いていると思われる多くの政策、つまり、特に医療費負担適正化法の廃止や、明らかに大量国外追放などの政策によって、ラティーノ系アメリカ人が不釣り合いなほどの深刻な影響を受けるのではないかと心配している」と語った。

コメディアンのトニー・ヒンチクリフがプエルトリコを「ゴミの浮島(floating island of garbage)」と呼び、ラティーノ系アメリカ人について下品なジョークを飛ばした先月下旬、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの大規模な集会の後、トランプ大統領のラティーノ系コミュニティに対する立場は不安定になったと多くの人が信じていた。リック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を含む共和党員たちは、この発言をすぐに非難したが、トランプと選挙陣営はヒンチクリフから距離を置いた。

ハリス陣営はこの論争を利用して、既に進行していたラティーノ系有権者への働きかけを強化した。しかし最終的には、この論争はこの有権者グループに大きな影響を与えなかったようだ。

トランプ前大統領への大口献金者であるダン・エバーハートは、「全国的に見て、ラティーノ系有権者に起こったことは驚きだと思う。これはアメリカ政治のパラダイムシフトであり、潜在的には今回の選挙よりも大きな変化だと思う」と述べた。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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