古村治彦です。
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2023年10月から始まったイスラエル・ハマス紛争はイランやシリア、レバノンを巻き込んでの地域紛争となっている。イスラエルがシリアやレバノンを攻撃し、紛争を拡大している。イスラエルに対しても、イランからのミサイル攻撃が実施されるなど、厳しい状況が続いている。ガザ地区ではイスラエル側による住民への非人道的な攻撃が続いている。
イスラエルがなぜこのような残虐な行為を続けているのか。自国の安全保障のため、自国の存在を守るためという理由付けがされるが、実際のところは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が自身と家族のスキャンダルによる裁判、投獄を避けるために、権力に妄執し、極右勢力を内閣に引き入れて、戦争を継続、拡大させているからだ。自身の汚職の責任を取りたくないために、投獄されることを避けるために、首相の座を握る必要がある。そのために戦争を拡大させている。このことは、2024年に出した、佐藤優先生との対談『世界覇権国
交代劇の真相』(秀和システム)で、佐藤先生が指摘している。そのことがアメリカでも報道されているようだ。
そして、ガザ地区の紛争ぼっ発当初からの窮状について、その時に政権を握っていた、ジョー・バイデン前大統領と側近たちは、その実情を知りながら、知らないと嘘をつき、そのようなことは起きていないと嘘を重ねながら、イスラエルを支援し続けたという告発がなされている。バイデン政権のそのような虚偽を押し通す姿勢に抗議して職を辞した人物たちもいて、そうした人々が声を上げている。遅きに失したという批判はあるだろうが、声を上げない(ゼロ)よりも、声を上げる(イチ)ということは、「ゼロからイチへ」という大きな行動である。
現状、ガザ地区で日々命の危機に去られている人々への責任は当事者全てにある。アメリカは免罪されない。アメリカこそが重大な責任を負っている。ネタニヤフの延命に手を貸しているということでいけば、イスラエル国民に対しても責任を負っている。ドナルド・トランプ大統領が登場して、イスラエルへの支援を続けている。状況は変わっていない。しかし、トランプ大統領はイラン空爆を行って、事態を一応収めている。イスラエルにこれ以上の攻撃は無用、もし攻撃をすればアメリカの意向に反する行為だと釘を刺している。ネタニヤフはガザ地区で非人道的な攻撃を繰り返して、イランやイスラム組織を挑発し、先に手を出させて、イスラエルの攻撃の正当性を担保しようとしている。どこまでいっても、ガザ地区の人々は救われない。大きく見れば、世界的にイスラエルとアメリカが行っている行為は、多くの批判を浴び、怒りを集めている。結局のところ、これらはイスラエルとアメリカの国益に適わない。無理に無理を重ねていけばいつか続かなくなる。イスラエルの国際社会での立場はのけ者にならざるを得ない。イスラエルの良識あるっ勢力が権力を獲得することが何よりも重要だ。
(貼り付けはじめ)
バイデンのティームはガザ地区について嘘をついた。彼らの責任を問う時だ(Biden’s
Team Lied About Gaza. It’s Time to Hold Them Accountable.)
-戦争犯罪を幇助したことへの免罪符はアメリカの民主主義を弱体化させる。
マシュー・ダス筆
2025年7月18日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2025/07/18/biden-war-crimes-israel-gaza-accountability/
7月11日、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が政治的な理由でガザ紛争を長期化させている実態を詳細に取材した記事を掲載した。この記事は、首相が自らの連立政権維持に狂信的なまでに執着し、投獄を免れるために、数万人(そして今も増え続けている)のパレスティナ人を殺害し、イスラエル人人質の命を犠牲にし、自国イスラエルを国際的なのけ者(an international pariah)にしようとしていることを示しているだけでなく、バイデン政権の戦争対応を非難する検察側の報告書における新たな証拠となっている。ジョー・バイデン前米大統領は、無責任で気難しい人物として描かれ、ネタニヤフ首相に方針転換を迫り、彼がそうすると言ったら信じ、そしてネタニヤフ首相がどうしてもそうしないと激怒するという描写が繰り返されている。
偉大なアメリカの詩人ジョージ・W・ブッシュの言葉を借りれば、「私を一度騙すなら、それはあなたが悪い。一度騙されたら、二度と騙されることはない(Fool me once, shame on you. Fool me—can’t get fooled again)」ということになる。
たとえバイデンが騙されていたとしても、言い訳はできない。もしバイデンが、何が起きているのか正確に知らなかったとしても、彼の国家安全保障ティームの他の幹部たちは確実に知っていた。数週間前、国務省のマシュー・ミラー前報道官は、イスラエルがガザ地区で「戦争犯罪を起こしていることは疑いなく事実だ」と発言して話題となった。しかし、スマートフォンを持っている人なら既に知っていたことだ。歴史上、被害者と加害者の双方によってこれほど詳細に記録され、リアルタイムで放送された大規模残虐行為(mass atrocity)はない。それでも、ミラーのような人物の発言は注目に値する。彼は以前、その証拠を見たことがないと繰り返し否定するのが仕事だった。
バイデン政権のガザ地区政策の基礎となった嘘は、ガザ地区で市民に加えられた甚大な被害は意図的なものではないというものだった。民間人に危害を加えることは、イスラエルの戦略の一部なのだ。国際司法裁判所での南アフリカの裁判でも明らかになったように、イスラエル政府高官の多くは、この点に関する彼らの意図をかなり公言している。
この戦争に関する膨大なリアルタイムの報告、とりわけパレスティナ人自身による報告に加え、スージー・ハンセンによる最近のニューヨーク・タイムズ・マガジンのカバーストーリーは、バイデン政権高官がいつ何を知っていたのかについて、これまでで最も詳細な説明を提供している。ミラーの告白とともに、政権高官たちは戦争犯罪が行われていることに気づいていなかったという主張は、これで一掃されるはずだ。それにもかかわらず、重大な人権侵害や人道援助の制限で告発されている軍への武器供与を禁止するアメリカの法律に違反して、彼らは武器を供与し続けたのだ。
バイデン政権の高官たちが、この歴史的大惨事(historic catastrophe)における自分たちの役割を正当化するために用い、そして今も用いている主な論拠について、簡単に触れておく価値がある。国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジェイク・サリヴァンが公の場でこの件について質問された際に、サリヴァンがそれらの論拠を一つ一つ説明しているのを見たことがあるだろう。
第一に、イスラエルの敵対勢力はアメリカによる武器供給停止を攻撃の動機と解釈し、バイデン政権が避けたかった地域情勢の激化につながる可能性があるというものだ。これは二つの理由から疑問視される。一つ目は、ハマスにとって大きな失望であったが、その同盟者と目されるヒズボラとイランは、象徴的な武力誇示以外には戦争に参加する意思がなかったことは明らかである。バイデンがアメリカの大きな影響力を行使して戦争を終結させたとしても、この計算が変わらなかったという証拠は見当たらない。二つ目に、戦争が最終的に地域的に激化した際、それをエスカレートさせたのはバイデンの支援を受けたイスラエルであった。
もう一つの主張は、武器供給を維持することで、武器供給が停止されていたならば失われていたであろう、イスラエル政策に対するアメリカの影響力が一定程度発揮できたというものだ。この主張が明らかに機能しなかったという事実に加え、私がこの主張を非常に奇妙に思う理由の一つは、現在主張している同じ人物が以前はそれを否定していたという事実だ。
2018年11月、バラク・オバマ政権の元高官30人が、イエメン戦争への残虐な介入を理由にサウジアラビアへの武器供給停止を支持する公開声明を発表した。署名者たちは、以前は「同盟軍に国際人道法を遵守させ、並行する外交努力を支援するための影響力を得るために」サウジアラビアを支持していたが、今にして思えばこれは間違いだったと説明している。署名者のほぼ全員が後にバイデン政権で働いた。そして今、イスラエルのガザ戦争への支持を、サウジアラビアのイエメン戦争への支持を正当化した際に後悔したのと全く同じ言葉で正当化している人もいる。
この主張をする政府高官たちは、多大な努力によって、イスラエルが本来提供していたであろう以上の援助をガザ地区に時折送り込むことができたと指摘する。その援助が、そうでなければ援助を受けられなかった少数の人々にとって確かに大きな変化をもたらしたことは認めるべきだが、イスラエルの攻撃を支援し続けることの代償を帳消しにするには程遠い。時折ジェノサイドにブレーキをかけたからといって、大して評価されるべきではないと思う。
しかし、問題はここにある。たとえ、その正当性が理にかなっていたとしても、バイデン政権がイスラエルの行為について国内外に誤解を与え続ける必要はなかった。人道支援を妨害するイスラエルの政策には明確な証拠があるが、アメリカの安全保障上の利益は、支援を打ち切るのではなく、武器を供給し続けることが最善であると述べて、支援を継続するために法的な権利放棄の権限を使うこともできたはずだ。そうすれば、少なくとも率直な議論ができたはずだ。
しかし、彼らはそうしなかった。彼らは嘘をついた。何度も嘘をついた。組織的虐待の証拠はないと主張した。彼らは「あまりにも多くのパレスティナ人が殺された」などという奇妙な表現に頼った。イスラエルは人道支援を促進するために「十分なことをしていない」と言い、政策上の問題を物資供給の問題(a logistic problem)であるかのように装った。
バイデン政権は、イスラエルの行為の現実を曖昧にすることに全力を注いでいたため、幻想(the
illusion)を持続させる目的でまったく新しいプロセスを作り出した。2024年2月にバイデンが率いるホワイトハウスが発表した国家安全保障覚書第20号は、米国務省に対し、「(アメリカの)防衛品と、必要に応じて防衛サーヴィスを受け取る外国政府から、アメリカと国際法を遵守するという、一定の信頼できる書面による保証を得る」よう指示した。
ここ数カ月、私はホワイトハウス、米国務省、そしてペンタゴンで働いていたバイデン政権の元高官たちと数多く面会してきた。彼らのほとんどは、この事実を否定していない。イスラエルが意図的に民間人に危害を加えており、バイデン政権はあらゆるレヴェルでそれを認識していたことを認めている。彼らは、この政策に対して政権内部で抵抗を続けてきたと主張している。彼ら全員に対する私の返答は一貫して同じだ。それは、「今すぐ声を上げ、それについての真実を語って欲しい(Speak up now and tell the truth about it)」だ。
しかし、今のところ、彼らが声を上げている姿を見ていない。ごくわずかな例外を除いて、イスラエル・パレスティナ問題担当元国務次官補のアンドリュー・ミラーや、元ホワイトハウス特別顧問のイルアン・ゴールデンバーグなどはそうしているが、彼らのほとんどは、バイデン政権が助長した残虐行為の甚大さ、そして国と世界にもたらすであろう極めて悲惨な結果について、公の場で真摯に反省しようとさえしていない。前国務長官のアントニー・ブリンケンは、ドナルド・トランプ大統領のイラン攻撃に関する最近の『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説で、いかなる成功も自分の手柄にするという臆面もなく姿勢を示しながら、「ガザ地区」という言葉に一度だけ言及した。
それでは、アメリカの政治家と有権者たちは、この問題に対してどうすべきだろうか。バイデン政権の高官たちが外交政策エスタブリッシュメントに再び戻っていく中、これは重要な問いだ。マシュー・ミラーが上司である大統領の建前を言い続けること選んだと認めたことは、バイデンを二度と信頼できる人物として扱うべきではないことを明確に示している。しかし、私たちは既にそのことを承知しており、たとえ遅きに失したとしても、ミラーが今声を上げたことは非常に重要なのだ。
彼の同僚たちから、彼らが何を知っていたのか、いつ知ったのか、そして政策変更の試みが高官たちによって繰り返し阻止された経緯について、もっと多くの話を聞く必要がある。たとえ非常に遅ればせながらでも、声を上げる元高官たちを攻撃するのではなく、歓迎すべき。ガザ地区でのジェノサイドとされる事件の再発を防ぐには、そしてそれが最優先事項でなければならないのは、人々が歴史の記録に何が間違っていたのかを語り、遅かれ早かれそれを実行するために、知っていることを私たちに伝える場を作ることだ。
重要な時に声を上げ、公に辞任するという職業上のリスクを負った高官や任命された人々も、私たちは認めるべきだ。ジョシュ・ポール、タリク・ハバシュ、ハリソン・マン、リリー・グリーンバーグ・コール、そしてステイシー・ギルバートは皆、名誉ある公務員とはどういうことかを私たちに示してくれた。彼らは「ノー」と言う勇気を持っていた。彼らはまさに、この国が政府に必要としている人材だ。
バイデンのガザ政策を立案した人々はそうではない。率直な発言によって最終的に政府に復帰できる可能性のある、より若い高官たちとは異なり、この大惨事の最も責任のある人々は、将来の政権においていかなる役割も担うべきではない。
元政権の同僚や他の民主党員から聞いた主張の1つは、トランプとトランプ主義という真の脅威に焦点を当て、民主党連合内で争うべきではないというものだ。これは、2009年にバラク・オバマ元大統領がブッシュ政権下の拷問者たちの法的責任追及を断念した際に述べた言葉と重なる。「過去を振り返るのではなく、未来を見据えよう(Look forward as opposed to looking backward)」というものだ。
しかし、この主張には2つのポイントが欠けている。第一に、これは単に「過去を振り返る」ことではないということだ。ガザ地区でのジェノサイドは今も続いている。今まさに起こっている。むしろ、激化している。説明責任追及(accountability)は、将来の犯罪を防ぐだけでなく、現在発生している犯罪を阻止するためにも必要だ。
第二に、オバマ大統領の決定は、その時点では賢明な政治的判断だったかもしれない。しかし、2008年に経済を崩壊させた企業幹部に何の責任も負わせなかった決定と同様に、エリート層の不処罰というシステム(a system of elite impunity)を強化し、アメリカの民主政治体制を蝕んでしまった。トランプが「システムは不正に操作されている(the system is rigged)」と発言して支持を集めるのは、システムが不正に操作されているからだ。それはトランプのような富裕層のために不正に操作されている。そして、想像し得る最悪の犯罪を幇助しても、法的、職業的、その他の面で何の責任も問われない、元政府高官のようなコネと影響力を持つ人々のために不正に操作されているのだ。
アメリカの民主政治体制の再建を真剣に考えるならば、不正操作を是正し、不処罰を終わらせることが不可欠だ。ガザ地区問題への責任追及を求める闘いは、トランプ主義との闘いと切り離せない。
※マシュー・ダス:国際政策センター筆頭副会長。2017年から2022年までバーニー・サンダース連邦上院議員の外交政策アドヴァイザーを務めた。Xアカウント:@mattduss
(貼り付け終わり)
(終わり)

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』






