古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:スコット・ベセント

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は二期目の大統領就任演説で、「製造業国家(manufacturing nation)」を実現すると述べた。これは、トランプの支持基盤である、五大湖周辺州のもともと製鉄や自動車製造の工場に勤務していた、白人の男性労働者たちの製造業の雇用を復活させるということであった。私はもはやアメリカには他国と競争できるほどの良質な製造業に適する労働力となり得る人材が残っているとは考えていないが、トランプの宣言は肯定的に受け止めた。そして、製造業の雇用を増大させるためには、アメリカ製品の輸出を伸ばす必要があり、そのためにはドルの価値を下げる、ドル安を目指すことになるだろうと考えていた。ドル安になれば、輸入品は高くなり、輸出品は安くなる。それで競争力をいくらかでも取り戻せる。しかし、アメリカは輸入大国である。アメリカの一般国民が消費する製品は海外からの安い製品である。彼らの生活を支えるためには、ドルは高い方が良い。ここのバランスをどう取るのかということがトランプ政権の腕の見せ所だと考えていた。

 しかし、この仕事は非常に複雑で、バランスを取ることは非常に困難だ。それでも何とかするだろうと考えていたが、トランプ政権でも手に負えない課題であったようだ。^結局、国内の不満は高まり、トランプ政権は、不満から目を逸らさせるために、アメリカ・ファースト外交、ドンロー主義を採用した。これは、モンロー主義と棍棒外交を混合させたものだ。西半球以外には出て行かないが、西半球内では好き勝手をして、アメリカの利益のためには収奪も厭わないということになった。このような状況になり、アメリカへの信頼は揺らいだ。トランプ政権になって、ドル安も進んでいたが、これに加えて、アメリカへの反発も高まり、ドル離れ、ドルからの逃避も起きている。世界基軸通貨(key currency)であるドルは、国際決済に使われる通貨であるが、その信頼が揺らいでいる。ドル以外での決済を模索する動きが、BRICSを中核とする「西側以外の国々(the Rest)」で起きていることは、これまで、私は著作やこのブログでもご紹介した。

 加えて、地政学リスクの高まりもあり、金をはじめとする実物資産の価格が上昇している。これらが安全資産として評価され、購入されている。値動きが激しくなってきた。それだけ世界情勢やアメリカ情勢、日本情勢が混とんしてきていることを示している。私たちは大きな時代の転換点にいる。そのことを肝に銘じておかねばならない。

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(貼り付けはじめ)

結局、ドナルド・トランプはドル安に陥っている(Trump Is Getting His Weaker Dollar After All

-それは良いことではないかもしれない。

キース・ジョンソン筆

2026年1月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/28/us-dollar-index-value-usd-trump-tariffs-economic-policy-currency/

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スコット・ベッセント財務長官を含むドナルド・トランプ米大統領政権のメンバーたちがスイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムでトランプ大統領の演説を聞いている(2026年1月21日)

今週、米ドルはほぼ4年ぶりの安値に急落した。これは一部には自業自得の結果であり、ドナルド・トランプ米大統領の思惑通りではあるものの、世界最大の経済大国の健全性(the health)にとって必ずしも最善のことではないだろう。

ドルは火曜日に急落し、1週間続いた下落の頂点に達した。トランプ大統領がドル安は「素晴らしい(great)」と述べたことで、下落は一時悪化した。ドルは、他の通貨、新興国通貨、そしてトランプ大統領就任以来約13%下落しているユーロなどの主要通貨に対して、全般的に弱くなっている。

ドルの低迷は、アメリカの経済政策における数々の激動のさなか、そして部分的にはその結果として発生している。

トランプ政権はNATO加盟国の領土を武力で奪取すると脅し、最大の貿易相手国であるヨーロッパ連合(EU)に高関税を課すと脅した後、突如として撤回したが、それでも世界の信頼を揺るがすには十分だった。

トランプ政権は、連邦準備制度理事会(FRB)理事の解任を試み、議長を脅迫することで、連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を損なおうとしてきた。こうした動きは、アメリカの経済運営に対する信頼を揺るがしている。伝統的に通貨の監督も含まれるスコット・ベッセント財務長官の仕事はあまりにも杜撰で、金(ドルの代替通貨)の価格は1オンスあたり5000ドルを超える記録的な高値に達している。

トランプ大統領は先週だけでも、アメリカの自由貿易のパートナー国であるカナダと韓国に対し、理由も不明瞭なまま、新たな関税や追加関税を課すと警告している。ドイツの金融規制当局は水曜日、市場が世界の準備通貨としての米ドルの役割に疑問を抱き始める可能性があると指摘した。

ドルからの逃避(a flight away from the dollar)は、少なくとも歴代米政権のほとんどにとって懸念材料になっていたことだろう。しかし、トランプは選挙運動でこれを訴え、長年積極的に追求してきた。ドル安推進の背後にある考え方(the thinking behind the weak-dollar push)は、切り下げられた通貨(a devalued currency)によってアメリカ企業が他国との海外競争を容易にし、政権や多くのエコノミストが主張する自国通貨を人為的に低く抑えている国々と競争できるようになるということのようだ。しかし、輸出はアメリカのGDPのわずか11%弱を占めているだけに過ぎない。

ドル安は経済の残りの90%にとって良いニューズではない。輸入コストの上昇、インフレの長期化、そして連邦準備制度理事会(FRB)が予定通り年内に利下げを行う余地の縮小を意味するからだ。もし住宅価格の高騰と低金利がトランプの経済目標だとすれば(そして実際そうである)、ドル安は間違った治療法のように思える。

ドル安の理由について、ブルッキングス研究所のロビン・ブルックスによると、1つの合理的な答えは「政策の混乱(policy chaos)」だ。最近ではグリーンランドをめぐるヨーロッパ連合(EU)との争いが原因だが、それだけではない。要するに、不確実な世界の中で新たなパートナーを模索する中で、EUとインドが歴史的な貿易・防衛協定を締結するなど、各国がアメリカに対する地政学的リスクをヘッジしているのとほぼ同様に、外国人投資家たちもドルへの過度なリスクヘッジを行っているのだ。

しかし、確かに、ドル安の唯一のメリットは、アメリカの輸出品が海外で競争力を高めることではないか? ヨーロッパ諸国が1年前は100セントだったアメリカ製品を、今ではたった83セントで買えるのであれば、輸入を抑制しつつもアメリカの輸出を加速させ、トランプ大統領が「国家非常事態(national emergency)」と宣言した根深い貿易赤字の解消に繋がるはずだ。(米連邦最高裁判所は、おそらく来月、この件について判決を下す予定だ。)

理論上は、他の条件が同じであれば、ドル安は輸出にとって好ましい状況だ。しかし、他の条件が全て同じという訳ではない。

アメリカの輸出拡大を阻む、通貨以外の障壁は数多く存在する。消費者の嗜好はよく知られた例の1つで、大型SUVや小型トラックはヨーロッパや日本では高く評価されていない。規制上の制約もその1つで、ヨーロッパ向けであれアジア向けであれ、農産物輸出には多くの制限が設けられている。さらに、地政学的な障壁もある。トランプ大統領が中国との貿易戦争を二度も激化させた結果、巨大なアメリカ農業セクターの主要な輸出先が失われた。アメリカから中国への農産物輸出は、2022年の360億ドルから2025年には160億ドルに減少し、現在も減少傾向にある。

ドル安が輸出増加を促すという期待のもう1つの問題は、物を作るには物が必要であり、その物(製造業の投入財)の3分の1は輸入されているということだ。これらの投入財はドル安と世界のほぼ全ての国が自主的に輸入関税を課していることで値上がりしており、特に医薬品、航空宇宙、自動車、トラック、石油製品などの産業にとっては、見た目ほど利益は出ていない。

さらに、アメリカの貿易収支という難解な計算もある。輸入額は毎年輸出額を1兆ドル上回っている。ドル安になれば、これらの輸入品は全て高価になる。トランプ政権は輸入品が消えてしまえば喜ぶだろうが、多くの輸入品は必要不可欠であり(アメリカの石油産業は輸入されたチューブやパイプを本当に必要としているし、ヨーロッパの医薬品産業にはアメリカに匹敵する製品がまだ存在しない)、放棄することはできない。

したがって、ドルが弱まるほど、比較的低調なインフレ率(3%弱)が再びじりじりと上昇するのではないかという懸念が高まる。ちょうどその頃、連邦準備制度理事会(FRB)は政策面で2026年半ばまでに金利をさらに引き下げることに安心感を抱いていた。もしその時までに独立したFRBがまだ存在していたとしたら(FRB理事会の主要メンバー2人が迫害され、中央銀行が干渉を受けずに運営する能力に対する攻撃が公然と懸念されていることを考えると、これは未解決の問題だが)、それはおそらく利下げを見送ることを意味し、住宅ローンや自動車ローンなどの金利上昇につながるだろう。

結局のところ、ドル安はトランプ政権下のアメリカに対する世界の認識を問う、不完全な国民投票(referendum)の1つに過ぎない。もしアメリカと米ドルが晒されているリスクの拡大が主流の考えであれば、米ドルは需要が高まり、金は安くなり、米国債は安くなるはずだった。しかし、奇妙なことに、現状は全く逆のようだ。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学・エネルギー担当記者。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。ブログ継続のために書籍の購入をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

 2025年1月20日に第二次ドナルド・トランプ政権が発足した。あと3週間ほどで1年が経とうとしている。トランプ政権は、ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争の停戦を期待されていたが、ウクライナ戦争については停戦に至らずに2025年を終えようとしている。イスラエル・ハマス紛争は紆余曲折、途中でイランとの紛争もありながら、一応の停戦が実現した。トランプ政権はナイジェリアのイスラム国勢力へのミサイル攻撃や、ヴェネズエラの船舶への攻撃と圧力を強めている。これは、「西半球(Western Hemisphere)」はアメリカの勢力圏だという「モンロー主義」に基づいた行動だ。西半球から反米的矢要素と中国やロシアの影響を駆逐しようという動きだ。これは「ヨーロッパからは撤退する」ということでもある。問題はアジアである。中国がアメリカの強力なライヴァルとなっているが、既にアメリカが単独で中国を楽にいなして勝利するということはできない。中国はアメリカと直接軍事的にぶつからないようにしながら、アメリカの弱体化を待っている。そして、最終的にはアメリカに対して無理せずに勝利を収めるという方向を定めている。トランプ政権も中国には強硬姿勢を取っていない。その代わりに、対中強硬姿勢を強めているのは、日本の高市早苗政権である。その裏には、エルブリッジ・コルビー米国防次官がいる。最新刊でも書いたが、コルビーが圧力をかけて、日本の防衛予算増額を進め、東アジアの不安定化を演出している。日本政府は「東アジアの安全保障環境の悪化」ということを言うが、悪化の一番の要員は日本であり、高市早苗首相の存在である。高市首相の支持率が高いという点で、日本国民に失望している。戦後80年の営為は、このようなアホナ国民しか生まなかったということになる。

 下記論稿は、第二次ドナルド・トランプ政権における外交政策において重要な人物たちを紹介している。私としては、最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)で取り上げた、J・D・ヴァンス副大統領とダン・ドリスコル陸軍長官の関係である。下記論稿には、「またホワイトハウスは最近、ヴァンス副大統領の親しい友人であるダン・ドリスコル陸軍長官に、ロシアにとって極めて有利と見られる和平案をウクライナに受け入れるよう働きかける任務を与えた」と書かれている。ドリスコル長官については拙著をお読みいただきたいが、ヴァンス副大統領とはイェール大学法科大学院時代からの友人で、軍歴を持ち、ヴァンスが連邦上院議員を務めていた時には補佐官となっている。また、あまり目立たないところで、メラニア・トランプ大統領夫人(ファースト・レイディ)やスージー・ワイルズ大統領首席補佐官が裏で影響力を持っているということは意外だった。

 来年のアメリカ政治を見ていく上でも参考になる記事なので、是非お読みいただき、できれば繰り返し読むようにしていただきたい。

(貼り付けはじめ)

トランプ2.0の重要な外交政策プレイヤーたち(The Key Foreign-Policy Players of Trump 2.0

-第二次トランプ政権が1年目の節目を迎える中、主要政策に影響を与えているのは誰か。

『フォーリン・ポリシー』誌

2025年12月22日

https://foreignpolicy.com/2025/12/22/trump-administration-key-players-witkoff-miller-hegseth-rubio-bessent-vance/?tpcc=recirc_more_from_fp051524
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ドナルド・トランプ米大統領が第二期目の最初の100日を終えた時、私たちは彼の外交政策の推進役と受動役のリストを公開した。この論稿は、就任初期に最も影響力のある側近として台頭した人物と、脇に追いやられた人物を検証した内容となっている。

大統領就任から約1年の節目が近づくにつれ、そのリストの良い面を改めて検証することにした。その結果、第二期トランプ政権では第一期に比べて人事異動が比較的少なかったことを反映して、その好調さは概ね維持されていることが分かった。また、過去8カ月間で政権内での影響力を拡大した高官も数名存在する。

以下は、トランプの外交政策を形成し、そして発信することに貢献した人物たちのリストだ。

(1)スティーヴ・ウィトコフ(Steve Witkoff)、サム・スコーヴ筆
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ドナルド・トランプ大統領の親友で、億万長者の不動産開発業者スティーヴ・ウィトコフは、中東問題からロシア・ウクライナ紛争に至るまで、幅広い案件を手掛け、大統領の最重要外交交渉担当者として台頭してきている。外交経験は乏しいものの、ウィトコフはロシアで拘束されていたアメリカ人教師の釈放決定(2025年2月)をはじめ、いくつかの成果を上げている。また、ウィトコフはトランプ大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナーと共にガザ地区での停戦交渉にも成功し、2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃を契機に始まったイスラエルとハマス間の紛争を事実上終結させた。

しかし、ロシア・ウクライナ戦争の終結となると、ウィトコフはほとんど成功していない。2025年8月には、トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーティン大統領との間で行われた和平首脳会談(アラスカ)は、合意なく終了した。ブダペストで予定されていた新たな首脳会談も、ロシア側の譲歩(concessions)の用意がないことが明らかになったため、頓挫した。

ウィトコフは、ロシアとウクライナとの新たな外交ラウンドを主導しており、これはウィトコフとクシュナーが28項目の和平案を共同で作成することから始まった。この取り組みがどれほど成功するかは不透明だ。ウクライナとそのヨーロッパの同盟諸国が当初の案に難色を示したため、既にいくつかの項目が提案から削除されており、ロシアも妥協の用意がないことを改めて示唆している。

ウィトコフの経験不足は、数々の失策や論争を招いている。2025年8月には、ロシアのウクライナ問題における交渉姿勢を誤解し、ロシアが大幅な譲歩を提示しているとウィトコフは主張したとみられるが、実際にはそうではなかった。これがアラスカ首脳会談の失望を招いた結果の一因となったと報じられている。また、2025年11月下旬には、ウィトコフとプーティン大統領の側近との会話の記録が流出し、ウィトコフがロシアに対しトランプへのロビー活動の方法について助言していたとみられることから、辞任を求める声が高まった。

(2)マルコ・ルビオ(Marco Rubio)、ジョン・ホルティウィンガー筆
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トランプ大統領の二期目の最初の100日間、マルコ・ルビオ国務長官はしばしば脇に追いやられているように見えた。特にウィトコフが、通常はアメリカ外交官のトップである国務長官が担う役割を担い、様々な主要課題に関する協議の陣頭指揮を執るよう繰り返し指名されたことがその要因だ。しかし、ルビオは現在、政権内で最も影響力のあるメンバーの1人であり、トランプ大統領が彼を信頼していることは明らかだ。12月初旬、トランプ大統領はルビオがアメリカ史上「最高の国務長官」として記憶される可能性があると述べた。

ルビオは国務長官に加えて国家安全保障問題担当大統領補佐官も務めており、ヘンリー・キッシンジャー以来、両方の役割を兼任する初の人物だ。また、ルビオは米国公文書保管担当官代理でもあり、2月から8月末までは、アメリカ国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSIDA)の解体を監督する間、アメリカ国際開発庁の長官代理を務めた。

トランプからの称賛の言葉や数々の肩書きを越えて、ルビオの政権内での影響力は、ラテンアメリカで進行中のアメリカ軍の作戦にも顕著に表れている。2025年9月初旬に始まり、これまでに80人以上が死亡したラテンアメリカ地域での麻薬密売船とされる船舶への一連の攻撃は、ヴェネズエラの政権交代を促すためのより広範な取り組みの一環と広く見なされており、ルビオはこの取り組みの原動力となっていると考えられる。

ルビオの影響力はロシア・ウクライナ交渉でも顕著に表れており、ロシアの意図をより信頼する傾向にあるウィトコフとトランプ氏に対し、ルビオはロシア懐疑派(Russia-skeptical)としてバランス役として行動している。例えば、2025年10月、トランプ大統領とプーティン大統領の電話会談後、トランプ大統領はルビオに、ハンガリーのブダペストでプーティン大統領と今後開催される首脳会談の詳細を詰める任務を与えた。しかし、ルビオがロシアの同僚と会談した後、計画されていた首脳会談は突然中止された。

そして先月(11月)、ルビオは、ウィトコフとクシュナーによる当初の28項目の和平案がモスクワに過度に有利とみなされたことを受けて、ヨーロッパにおけるアメリカの同盟諸国の不安を和らげるのに貢献したと報じられている。ルビオはトランプ政権において、ヨーロッパとキエフの懸念をより深く考慮するよう働きかけ、和平案はウクライナにとってより受け入れやすい形に修正されたと評価されている。

ウクライナ和平交渉については依然として多くの不透明な点が残っているが、ルビオは依然として議論の中心にいる。

(3)ピート・ヘグセス(Pete Hegseth)、ジョン・ホルティウィンガー筆
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ピート・ヘグゼス国防長官は、兵士の殺傷能力の向上に重点を置くことで、軍に「戦士の精神」を取り戻すことを誓った。その取り組みの一環として、彼は国防総省、そしてより広範なアメリカ軍における大規模な改革を監督してきた。これらの中には、メディアへのアクセス制限、多様性・公平性・包摂性(diversity, equity, and inclusion)に関する取り組みの廃止、トランスジェンダーの入隊禁止といった物議を醸す措置も含まれている。ヘグゼス長官はまた、自身の肩書きを「戦争長官」に変更し、国防総省を「戦争省」に改称する動きを見せているが、この名称変更には連邦議会の承認が必要となるため、まだ正式には発表されていない。

ヘグゼス長官のトランプ政権における影響力は、彼が巻き込まれた数々の重大スキャンダルからも測ることができる。最初の事件、いわゆる「シグナルゲート」として知られる3月の事件では、ヘグゼスはメッセージアプリ「シグナル」上で、イエメンのフーシ派に対するアメリカ軍の作戦に関する機密計画について、他のアメリカ政府高官とのグループチャットで議論した。このグループチャットには、著名なジャーナリストも不注意にも含まれていた。国防総省監察官による最近の報告書によると、不正行為を否定しているヘグゼスは、自身の行動によって軍人を危険にさらすリスクを負っていたことが明らかになった。

国防長官は、9月2日にカリブ海で麻薬密輸船とされる船舶に対して行われた作戦についても厳しい視線に晒されている。この事件では、アメリカは最初の攻撃で生き残った2人の男性に対して、追い打ちの2度目の攻撃を行い、2人とも殺害したが、批判者たちはこれを戦争犯罪(a war crime)に相当すると指摘している(ただし、ほとんどの法律専門家は、麻薬密輸船とされる船に対するアメリカの作戦全体が違法であるとしている)。ヘグセス国防長官が直接2度目の攻撃を命じたのか、それとも作戦を監督した特殊部隊司令官が国防長官の指示に従って行動しただけなのかなど、事件の詳細については未解決の問題が残っている。トランプ政権は、これまでに攻撃の対象となった船が麻薬密輸に関与していたという主張を裏付ける証拠を公には一切提示していない。

ヘグセスをめぐる論争は、国防長官としての彼の任期も長くは続かないのではないかという憶測を呼んでいるが、彼は依然として謝罪もせず、反抗的な態度を崩していない。12月初旬の演説で、ヘグセスは船舶攻撃を擁護し、トランプ大統領は「我が国の国益を守るために、適切と判断すれば断固たる軍事行動を取ることができるし、また取るだろう」と述べた。

しかし、一部の共和党員でさえもこの攻撃について国防長官を批判していることから、ヘグセス長官がこの嵐を乗り切ることができるかどうかは、まだ分からない。ヘグセスは陸軍州兵の退役軍人であるが、国防長官に就任するまでは政府での経験がなく、トランプ政権の閣僚の中で最も不適格な人物の1人と見なされていた。一方、トランプは、ヘグセスがこの職務に不向きであると内部から指摘されても、反論することを止めたと報じられている。

(4)JD・ヴァンス(J.D. Vance)、レイチェル・オズワルド筆
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J・D・ヴァンス副大統領は、連邦上院議員時代の実績の通りに、政権内で発言力を持つ存在として台頭し、大西洋横断関係においてアメリカの寛大さや保護主義を緩和し、国内外で強硬な反移民政策を主張している。

今年初め、ヴァンス副大統領は、大統領執務室を訪問した、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領に対し、ロシアとの戦いにおけるアメリカの支援への感謝が不十分だと公然と非難した。またホワイトハウスは最近、ヴァンス副大統領の親しい友人であるダン・ドリスコル陸軍長官に、ロシアにとって極めて有利と見られる和平案をウクライナに受け入れるよう働きかける任務を与えた。

ヴァンス副大統領は、トランプ政権第二期の初めにミュンヘン安全保障会議で注目を集める演説を行い、長年のヨーロッパの同盟諸国が移民の受け入れを過剰に受け入れ、台頭する極右ポピュリスト政党への包摂性に欠けていると非難し、ヨーロッパに衝撃を与えた。ヴァンスはまた、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の「正当性を失わせようとしている」として、ドイツ政府を繰り返し批判してきた。ドイツ情報機関はAfDを過激派グループに指定しており、一部のドイツ政治家はAfDの活動禁止を求めている。

自分の考えを伝える手段としてXポストをよく利用する副大統領は、最近、カナダの政治指導者たちを痛烈に批判し、「移民の狂気」と称する行為によって多様性を推進することで、カナダの生活水準を損なっていると非難した。

ウクライナ防衛のためにワシントンがどれだけの費用を負担すべきかといった問題に関して、ヴァンスが示す孤立主義的な見解と、西側諸国の民主政治体制国家の内政に積極的に介入しようとする姿勢は、ホワイトハウスが今月初めに発表した「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」に典型的に見られる、極めて取引的でしばしば一貫性のない「アメリカ・ファースト」の外交政策を象徴している。

(5)エルブリッジ・コルビー(Elbridge Colby)、レイチェル・オズワルド筆
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(左から)小泉進次郎防衛相、玄葉光一郎衆院副議長、小野寺五典元防衛相、コルビー、小野田紀美経済安保担当相(2025年4月30日、ワシントンDCにて)
米国防総省の政策責任者が、エルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)の就任後8カ月でこれほどの影響力を発揮するのは異例だ。これは、彼の上司であるヘグゼスが国防総省規模の官僚組織運営の経験がほとんどないこと、そしてヘグゼスがコルビーの官僚的影響力を弱めるはずだった多くの上級将官を解雇したことが一因となっている。

国防次官就任前、第一次トランプ政権で国防次官補(戦略担当)を務めたコルビーは、対中強硬派として知られ、ヨーロッパを犠牲にしてインド太平洋地域におけるアメリカ軍資源の優先を主張してきた。それでもなお、ウクライナへの武器輸出の一部の一方的停止や、広く支持されているオーストラリア・イギリス・アメリカの防衛連携の見直し再開といった行動を含め、コルビーが自らの政策を実行に移す際の精力的な姿勢は、多くの人々を驚かせた。

連邦議会の民主党と共和党は共に、コルビーがルーマニアから800人の兵士を撤退させるという国防総省の最近の決定など、監視責任を果たすために必要な基本的な防衛関連情報を隠蔽していると非難している。コルビーと連邦議会防衛監視当局者との間で高まる超党派的な緊張は、その多くがアメリカによるヨーロッパ・中東への軍事的関与維持を支持する立場にあることから、公の場へと波及している。その結果、コルビーの事務所に指名された複数の連邦政府上級職員候補者の任命が、連邦議会からの十分な支持を得られないまま停滞している。

(6)スティーヴン・ミラー(Stephen Miller)、レイチェル・オズワルド筆
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スティーヴン・ミラーは、ホワイトハウスで外交政策の実務に携わる立場ではないものの、トランプ大統領の大統領次席補佐官として、積極的かつ包括的な反移民政策の実行における信頼できる窓口として、アメリカへの移民を送っている多くの国々との二国間関係に直接的な影響を与えてきた。

ミラーは、難民、亡命希望者、一時的保護ステータスまたは人道的仮釈放中の者、H-Bヴィザの専門職労働者、季節労働者、そして特に不法移民労働者に対する政権の厳しい取り締まりを公に訴えてきた。2025年11月にワシントンで、今年初めにアメリカ政府から正式な亡命を認められたアフガニスタン人男性が州兵2人を射殺する事件が起きた後、ミラー氏は、2021年にアフガニスタンがタリバンに陥落した後、多数のアフガニスタン国民のアメリカへの移住を許してきた政策の終結を、痛烈かつ外国人排斥的な言葉で訴えた。

ミラーはまた、ルビオと緊密に協力し、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の追い落としを目指す政権の取り組みを支援してきたほか、カリブ海と東太平洋の麻薬密輸船とされる船舶に対するアメリカのミサイル攻撃を強く擁護してきた。

(7)ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)、リシ・イエンガー筆
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トランプ大統領の義理の息子であるクシュナーは、第二次政権では表舞台に立つことは少なく、第一次政権のような正式な「特別補佐官(special advisor)」の役職も担っていない。しかし、クシュナーはウィトコフと共に、トランプ政権が今年行った2つの主要な外交交渉に取り組んだ。

10月初旬には、20項目からなるガザ和平合意の最終決定を支援するためイスラエルを訪問し、11月には単独でイスラエルのネタニヤフ首相と交渉を続けた。また、12月初旬にはモスクワでプーティン大統領と数時間にわたり対面し、その後にゼレンスキー大統領と2時間にわたる電話会談を行ったと報じられている。この電話会談では、ウクライナにおけるロシアの戦争終結に向けた、現在も継続中の交渉の進展が追求された。

ウィトコフと同じく、クシュナーも自身の事業における利益相反について懸念が持たれている。彼の企業は、中東地域でアラブ湾岸諸国と数十億ドル規模の取引を行っており、ガザ地区の戦後における彼の役割について疑問が持たれている。

しかし、ガザ和平合意が発表された直後、クシュナーは(再びウィトコフと共に出演した)、テレビ番組「60ミニッツ」でのインタヴューで、こうした懸念を一蹴した。「人々が利益相反と呼ぶものを、スティーヴと私は世界中で培ってきた経験と信頼関係と呼んでいる」とクシュナーは述べた。

(8)スコット・ベセント(Scott Bessent)、キース・ジョンソン筆
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スコット・ベセント米財務長官は、歴代の前任者の多くと同様、政権の外交政策における中心的な役割を担う人物の1人となっている。そして、トランプ政権第二期目の2年目には、その役割はさらに大きな影響力を持つものになる可能性がある。

ベセント長官は、トランプ政権の貿易戦争(trade wars)について真っ先に批判してきた。長年、関税や貿易障壁に対して合理的な懐疑論を唱えてきたウォール街のヴェテランにとって、これは意外な役割かもしれない。しかし、ベセント長官は今、他国の行動を強制するために輸入税を引き上げることの賢明さを認めている。トランプ政権の数々の貿易戦争は目的を達成していない。アメリカの貿易赤字は今年最初の8カ月間で昨年よりも大幅に拡大し、ヨーロッパ、中国、イギリスとの「貿易合意(trade deals)」は未だに最終決定ではなく、あくまでも願望段階にとどまっている。しかし、少なくとも彼らには強力な応援団がもう1人いる。

ベセントは、2025年12月初旬に行われた会談を含め、中国との進行中の貿易交渉においても主導的な役割を果たしてきた。ワシントンと北京は、貿易休戦(trade truce)を貿易合意のようなものに変化させようと模索を続けている。これは重要な意味を持つ。なぜなら、トランプ政権にとって、中国は国家安全保障上の課題というよりも、はるかに経済的な課題だからだ。

ベッセントはまた、アメリカの国家統治術(U.S. statecraft)をトランプの政治的目的に利用することにも尽力してきた。特に、イデオロギー的な同盟国であるアルゼンチンへのアメリカの救済は、数十億ドル規模の賭けであり、いずれ報われる可能性もある。

しかし、既に強力な影響力を持つ米財務長官ベセントは、来年さらに影響力を強める可能性がある。トランプは依然として、新議長の任命を含む連邦準備制度理事会(FRB)の改革を計画している。その結果、大統領はケヴィン・ハセットを大統領経済担当補佐官に指名し、ベセントを財務長官と大統領補佐官の兼任をさせる可能性がある。そうなれば、トランプ政権の政治課題を支配するであろう、アメリカの国内および海外の経済政策の立案者となる可能性が出てくるだろう。

■特別賞(HONORABLE MENTIONS

(9)メラニア・トランプ(Melania Trump)、クリスティーナ・リュー筆
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メラニア・トランプ大統領夫人(ファースト・レイディ)は、ロシア・ウクライナ戦争という重要な例外を除けば、外交政策の注目を浴びないように避けてきた。スロヴェニア出身のメラニア夫人は、ロシアに拉致された数千人ものウクライナの子供たちとその家族の再会を促進する外交努力に積極的に関与してきた。ウクライナ政府は、ロシアが2022年2月に本格的な侵攻を開始して以来、少なくとも1万9000人のウクライナの子供たちを拉致して、強制移送したと非難している。ロシア政府は、この行動は子供たちの安全確保が目的だったと主張している。

メラニア夫人は子供たちの解放を公に求め、プーティン大統領に手紙を書いたと彼女は述べ、その手紙は夫である大統領が個人的に届けたとしている。最終的に、彼女はロシアの指導者と直接連絡を取り、数カ月にわたって裏でやり取りしたと2025年10月に述べている。

注目すべきは、トランプ自身の発言が、メラニア夫人がこの戦争について、夫であるトランプ大統領に助言を与え、時にはプーティン大統領に対する彼の見解に異議を唱えたことさえ示唆していることだ。「家に帰ってファーストレディに『実は今日、ウラジーミルと話した。素晴らしい会話ができた』と言ったら、『えっ、本当に? ウクライナの別の都市が攻撃されたばかりなのに』と言われた」とトランプは7月に大統領執務室で振り返った。

(10)スージー・ワイルズ(Susie Wiles)、クリスティーナ・リュー筆
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大統領首席補佐官として、スージー・ワイルズはトランプ大統領の側近の中核的存在であり、権威ある存在でもある。しかし、彼女は主に影で活動し、舞台裏で重要な役割を果たしてきた。ワイルズがアメリカの外交政策を指揮して注目を集めることは滅多にないが、トランプ大統領は彼女の影響力を称賛し、「世界で最も力のある女性」と公に称賛してきた。

トランプ大統領は7月、「彼女はたった一本の電話だけで国を壊滅させることができる」と明言した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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ドナルド・トランプ大統領は、鉄鋼とアルミニウムに対する関税を25%から50%に倍増させる政策を正式に発効した。トランプ大統領が高関税を志向するのは、アメリカの国内産業を保護し、法律的な権限を拡大することが理由だ。具体的には、通商拡大法第232条に基づいて適用される関税が、ほとんど監視を受けずに貿易制限を行うための新たな手段となる可能性がある。
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トランプ大統領は、金属輸入税の引き上げが国家安全保障を守るために必要だと述べている。また、外国が米国市場に流入させている低価格の過剰鋼材に対抗し、アメリカの製鉄所を再稼働させる効果を期待している。しかし、下記論稿によると、専門家たちは、トランプ大統領の主張は誤りで、アメリカの鉄鋼輸入は過去1年で減少していることを指摘している。実際、アメリカの製鉄所の稼働率は近年よりも高くなっている。日本製鉄のUSスティール買収の判断もそうしたことが影響しているのだろうと考えられる。

トランプ関税によって、鉄鋼業が復活するのかということだが、これは難しいだろう。既に中国やインドの後塵を拝している状況だ。ドル安に誘導して(ドルの価値を下げて)、人件費の対外競争力を下げる必要があるが、それは、労働者たちの生活を改善することにはつながらない。輸入品が高くなることで、アメリカ国内の物価は高くなる。物価上昇率が給料の上昇率を上回れば、生活は苦しくなる。現在のアメリカの状況はまさにこれだ。トランプ大統領としては、石油や天然ガスのエネルギー増産で物価上昇を抑えることを考えているようだが、そう簡単にはいかない。
 直近では、日本とアメリカの関税をめぐる交渉では赤澤大臣が何度もワシントンと東京の間を往復して交渉を行っているが、妥結には至っていない。アメリカはこれから15カ国に対して関税通知書を送付するとしている。日本が送付対象に入っているかは分からないが、ギリギリのところに来ている。トランプとしては、高関税を受け入れるか、受け入れないならアメリカの国益に資する内容の譲歩を引き出すという強気の交渉態度であろうが、日本としては日本の国益のために交渉を続けている。これが故安倍晋三政権時代だったら、このような粘り腰は発揮されず、アメリカの国益のために、さっさと妥協がなされていただろう。石破政権は参院選でも苦しい状況にあり、選挙後は政局になることが考えられるが、粘り腰で、世界構造の大転換に臨んでもらいたい。そして、私たちは再び、対米隷従の安部は路線に戻ってはならない。それは大いなる退化である。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領の関税は鉄鋼産業を改善させない(Trump’s Tariffs Won’t Fix the Steel Industry

-鉄鋼とアルミニウムの価格が上昇しても、国内の製鉄所に大きな利益をもたらすことはなく、むしろ製鉄所に打撃を与えるだろう。

キース・ジョンソン筆

2025年6月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/05/trump-trade-tariffs-steel-aluminum/

ドナルド・トランプ米大統領は水曜日、鉄鋼とアルミニウムへの関税(tariff)を25%から50%に倍増する措置を正式に発効させた。しかし専門家たちは、この関税はトランプ大統領のアメリカ産業再建計画を阻害し、海外のパートナーとの進行中の貿易交渉を複雑化し、何十年にもわたって世界の鉄鋼業界を悩ませてきた構造的な問題への対策には全く役立たないと指摘している。

トランプ大統領の視点から見ると、この関税には国内産業を優遇するだけでなく、先週裁判所が無効とした関税権限よりも、より防御力の高い法的権限を用いて実施できるという利点がある。これは、水曜日に鉄鋼とアルミニウムに適用された通商拡大法第232条の権限など、実績のある貿易権限への転換の一環となる可能性が高い。これらの権限は、ホワイトハウスに、ほとんど監視や法的手段を必要とせずに貿易制限を課す広範な裁量を与えている。

トランプ大統領は大統領令の中で、金属およびそれらから作られる全ての製品に対する輸入税の倍増は「こうした輸入品が米国の国家安全保障を損なう恐れがないようにするため(so that such imports will not threaten to impair the national security)」必要だと述べた。さらに、「関税の引き上げは、低価格で余剰となった鉄鋼やアルミニウムを米国市場に流出させ続ける諸外国に、より効果的に対抗し、最終的にアメリカの製鉄所の操業再開を促すだろう(The increased tariffs will more effectively counter foreign countries that continue to offload low-priced, excess steel and aluminum)」と付け加えた。

しかし、トランプ大統領が大幅な関税引き上げの根拠として挙げた2つの論拠はいずれも誤りだ。アメリカの鉄鋼輸入量は、トランプ大統領による最初の関税導入後も含め、過去1年間で減少しており、急増している訳ではない。また、アメリカの製鉄所(steel mills)の稼働率は近年よりも高い。

ケイトー研究所の国際貿易弁護士スコット・リンシカムは「トランプ大統領の主張は的外れだが、232条に基づく貿易措置によって、そうする必要がないことが分かった」と述べた。

トランプ大統領は、歴代大統領の多くと同様に、鉄鋼産業を特別に保護主義的に捉えている。これは、サーヴィスとデータの世界ではますます重要性を失っている、煙突駆動型経済(smokestack-powered economy)への数十年にわたるノスタルジーを反映している面もあるが、トランプ大統領の最初の任期が、鉄鋼産業の弁護士、特に通商代表部(U.S. trade representativeUSTR)代表のロバート・ライトハイザーに翻弄されたことも一因となっている。

しかし、最新の大統領令で強調したように、トランプ大統領は就任以来、製鉄所から造船所に至るまで、あらゆる経済安全保障問題(matters of economic security)全てを国家安全保障問題(matters of national security)と捉えてきた。だからこそ、カナダ産木材やメキシコ製自動車シートといった深刻な脅威に対する国家安全保障関連の関税調査も行われている。

リンシカムは次のように語っている。「これは、第232条がいかに無法であるかを如実に示している。彼らは何でも国家安全保障上の脅威だと主張し、どんな理由でも正当化することができ、裁判所がその判断に異議を唱える可能性は極めて低い」。

トランプ大統領の鉄鋼関税の皮肉な点は、存在しない問題に対処する一方で、解決策を切実に求めている問題、すなわち中国などの国々、そして間もなくインドでも発生する鉄鋼生産の過剰な供給能力には対処していないことだ。さらに事態を悪化させているのは、トランプ大統領の新たな関税が、今年初めに導入された軽めの関税と同様に、鉄鋼製品全般に加え、半製品および完成品の輸入も対象としているという事実だ。今回の増税は、ヨーロッパや中国を問わず、既にどの競合相手よりも高い鉄鋼価格を支払っている鉄鋼使用企業の価格を引き上げているだけだ。

金属・鉱物コンサルティング会社CRUグループの主任鉄鋼アナリストであるジョシュ・スポーレスは「関税は国内の鉄鋼価格を引き上げるだけだ」と述べた。

トランプ大統領が輸入品を値上げして以来、アメリカの鉄鋼とアルミニウムの価格は高騰の一途をたどっており、桁(大梁)、パイプ、板、釘、アルミ箔など、あらゆる素材を扱う企業の競争力に悪影響を及ぼしている。経済学者たちは、鉄鋼関税が経済全体にどれだけの純雇用喪失をもたらすかを依然として定量化しようとしている。

トランプ大統領が関税で掲げる表向きの目標は、鉄鋼業界を強化し、自動車、造船、その他の旧来型産業におけるアメリカ製造業の競争力を高めることだが、実際はその逆である。最初の痛みはおそらく石油産業でも感じられるだろう。石油産業もトランプ大統領が好む産業の一つだが、石油産業は既に貿易戦争による原油価格暴落の痛手を被っており、石油掘削は危険な賭けとなっている。

スポーレスは、アメリカの石油・天然ガス産業に必要なパイプ、チューブ、ケーシングの約半分は輸入に頼っていると指摘した。いわゆる「産油国産品(oil country goods)」は、アメリカの鉄鋼輸入量の中で常に最大のカテゴリーの1つだ。関税の有無に関わらず、これらの製品を国内生産するための魔法のスイッチは存在しない。鉄鋼は必需品であり、価格が大幅に上昇しただけだ。あるいは、スポ―レスの言葉を借りれば、「需要が価格とは無関係に発生するという非弾力性に大きく起因していると言える」だろう。

造船や自動車製造についても同様だ。これらはトランプ大統領が優先課題としているもう1つの分野であり、適切に実施すれば大量の鉄鋼を消費する。造船業の問題は、商船であれアメリカ海軍艦船であれ、長期契約が不足していることだ。関税率を気まぐれに引き上げたところで、アメリカの製鉄所が超大型タンカーに使われるような鉄鋼を生産できるとは限らない。

スポーレスは「関税だけで、そのようなプレートを生産するための投資が促進されるとは思えない」と語った。

自動車も同様だ。自動車に使用される鋼材は特殊で、徹底的な品質テストを受けている。数十億ドル規模の投資が関税決定に左右される可能性は低く、関税決定はツイート1つで覆される可能性があり、実際に覆されたこともある。

スポ―レスは、「関税は鋼材価格を上昇させるだけだ。自動車品質の製鉄所を稼働させるには5年ほどかかる」と述べた。

一方、トランプ大統領の最新の貿易攻撃は、数十、数百もの潜在的な貿易相手国との協議の最中に放たれた。これらの国は皆、恐怖に陥り、そのほとんどが調整を進めている。今年、様々な理由で多くの関税を課せられたメキシコとカナダは、両国ともこの関税のエスカレーションの理由を解明しようと努めている。メキシコは報復措置をちらつかせている一方、カナダの新政権は慎重ながらも対応の準備を整えている。

将来の貿易交渉の予備的枠組みに合意したイギリスは、今回の鉄鋼関税が二国間休戦に支障をきたすのではないかと懸念している。特に、イギリスの製鉄所の多くが実際にはインド資本であることから、その懸念は高まっている。ヨーロッパ連合(EU)は最初の鉄鋼関税発動後、報復措置を控えており、交渉の進展に依然として期待を寄せているものの、念のため数十億ドル規模のバッテリー関税対策を再び検討している。

ヨーロッパの交渉担当者、そして鉄鋼業界の専門家全般を悩ませているのは、業界の問題の大部分が中国の過剰生産能力にあるにもかかわらず、トランプ大統領の最新の措置では、それに全く対処されていないことだ。中国は年間10億トン以上の鉄鋼を生産しており、これは世界全体の半分以上に相当する。依然として主要生産国であるアメリカの生産量は約8000万トンである。

近年、アメリカとヨーロッパは、中国の影響力と環境への影響を制限するような鉄鋼生産と貿易に関する妥協点を模索してきた。しかし、ヨーロッパの貿易専門家たちやアメリカの環境保護主義者たちにとって残念なことに、それは壁にさらにレンガを追加することよりも後回しにされている。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学・エネルギー専門記者。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

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第2次ドナルド・トランプ政権の発足100日のハネムーン期間は大きな動きが続いて、アメリカ国内、そして、諸外国を驚かせ続けた。大きな出来事としては、イーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE)による、連邦政府諸機関への立ち入りや調査が進められて、米国国際開発庁(USAID)という日本では聞き慣れない(私はデビュー作『アメリカ政治の秘密』で取り上げている)政府機関の閉鎖などが決められた。アメリカ政府の抱える財政赤字(fiscal deficit)の削減のために、連邦政府の予算に切り込んでおり、連邦政府職員の解雇も進められる。

 今年4月初旬には、世界各国からの輸入に一律10%の関税、更におよそ60カ国には追加の「相互」関税が課されるという、高関税政策が発表された。中国には145%という関税がかけられるとされたが(日本の24%が低く見えてしまうほど)、その後、スマートフォンや半導体は例外とされたり、大幅に引き下げられるということが発表されたりし、混乱を招いた。これは、株式市場の下落と共に、米国債の金利上昇が理由として考えられる。一説には中国が保有する米国債を売却し、「抑止力」を行使したとも言われている。

トランプ政権は、貿易赤字の削減を目指している。トランプ政権は1980年代のロナルド・レーガン政権の進めた「双子の赤字(twin deficits)の削減」政策を踏襲していると言えるだろう。レーガン政権時代との違いは、貿易赤字の相手国が、アメリカの属国で言いなりの日本ではなく、強力な対抗措置を取る力を持つ中国であるという点だ。

 こうした大きな流れをけん引しているトランプ政権内の重要人物たちをご紹介する。今回のトランプ関税(トランプ高関税、解放記念日関税とも呼ばれる)をめぐる動きでは、スコット・ベセント財務長官が主導権を握り、トランプ大統領に妥協を迫ったということになっている。それを支持したのがイーロン・マスクだとも言われている。そして、対中強硬派が敗北したと言われている。対中強硬派は今回のトランプ関税を利用して、中国に大規模な貿易戦争を仕掛けようとしたが、中国の返り討ちに遭った形になっている。そして、アメリカの信頼性を損なうということまで引き起こした。トランプ政権は妥協、交代を迫られることになった。総体的に中国の信頼性が高まるということになった。アメリカの製造業が復活することはなく、これからも厳しい状態は続く。トランプ大統領は厳しい時間を過ごすことになる。それでも、支持してくれた白人労働者たちのために力を尽くすだろう。そして、失敗し、アメリカは衰退の道を進んでいく。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領の外交政策のドライヴァーたち(そしてその乗客たち)(The Drivers (and Passengers) of Trump’s Foreign Policy

-アメリカ大統領就任後100日間、第2次トランプ政権の中心人物は誰で、脇に追いやられた人物は誰なのか。

FPスタッフ筆

2025年4月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/25/trump-100-days-influential-officials-navarro-bessent-witkoff/

ドナルド・トランプの通常の基準から見ても、米大統領就任後100日間は混沌と混乱を極めており、対立が激化している。特に外交政策においては、ウクライナとガザ地区での戦争終結に向けた迅速な(そして未だ未完了の)合意を推し進め、200人以上の移民をエルサルヴァドルの刑務所に強制送還し、世界の大半の国々(主に中国)に対して貿易戦争(trade war)を開始した。

これまでのところ、政権幹部の交代は最初の任期に比べて比較的少なく、地政学的な優先事項を策定・実行する中心人物として、数人の重要人物が台頭している。1月初旬には影響力のある役割を担うと思われていたものの、事実上脇に追いやられた人物もいる。

このリストには、皆さんが予想するかもしれないが、今回は含めなかった人物が1人いる。イーロン・マスクだ。世界で最も裕福な男は、9桁の選挙キャンペーン献金を糧にトランプ政権内で影響力を持ち、あらゆる場面で存在感を示すようになった。外国首脳との電話会談に同席したり、国防総省や国家安全保障局での高官級会合を開いたり、さらにはインドのナレンドラ・モディ首相と直接会談したりもしている。

しかし、ワシントンの国際関係におけるマスクの影響力はここ数週間で弱まり、非公式の政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)や、自身のソーシャルメディア「X」におけるMAGA支持の投稿の絶え間ない流れといった、より国内的な優先事項に取って代わられている。さらに、マスクの「特別政府職員(special government employee)」としての役職は130日の期限が約1カ月後に切れる予定であり、トランプ大統領とトランプ・ワールドは、期限後は彼が留任しない可能性を示唆している。

マスク以外では、マイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官にも言及すべきだっただろう。ウォルツのこれまでの影響力の低さは、特に前任者のジェイク・サリヴァンの著名さを考えると注目に値するが、彼をこのリストに含めなかったのは、彼をどちらの陣営にも明確に分類するには時期尚早だと考えたためである。シグナルゲート事件において、残念ながら彼は『アトランティック』誌編集長ジェフリー・ゴールドバーグをチャットに招き入れた閣僚として重要な役割を果たしたが、この論争の火種は今やピート・ヘグセス国防長官にも向けられている。

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さて、トランプ大統領が優先事項を遂行する上で信頼を寄せている人物と、そうでない人物について見てみよう。
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■ドライヴァーたち(DRIVERS

(1)ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro

トランプ大統領のホワイトハウス貿易製造業担当補佐官であるナヴァロは、トランプ政権の高コストで破滅的な貿易政策を、トランプに次ぐ存在として主導してきた。しかし、今月初め、トランプが世界各国との全面的な貿易戦争の瀬戸際(the precipice of his all-out trade war on the rest of the world)から撤退したことを受け、ナヴァロが明らかに脇に追いやられるまではそうだった。

ナヴァロ(と、彼が創作した別人格のロン・ヴァラ)は第1次トランプ政権にも在籍し、当時も同様のタカ派的な貿易政策についての考えを持っていたものの、スティーヴン・ムニューシン、ゲーリー・コーン、ウィルバー・ロスといった比較的保守的な経済思想家が政権のスタッフを務めていたため、ナヴァロの影響力はそれほど大きくなかった。しかし、2022年に連邦下院1月6日委員会への証言と証拠提出を求める連邦議会の召喚状を拒否し、最終的に4カ月の禁錮刑に服したことは、第2次トランプ政権でナヴァロの忠誠心を証明し、政権における高官の座を確保したと言えるだろう。

今回は、ナヴァロははるかに重要な役割を担っている。トランプ政権内の多くの補佐官たちからの妨害はほとんど受けていないものの、彼の考えは市場には完全に拒否された。ナヴァロは、貿易の仕組みに関する同様の根深い誤解(a similar profound misunderstanding)と、アメリカ企業への輸入関税を必ずしも是正する必要もない問題の万能薬(a cure-all)として好む姿勢を組み合わせることで、トランプにアピールしている。

しかし、ナヴァロが懸命に取り組んできた貿易戦争の影響が徐々に明らかになり、世界の株式市場、特に債券市場が激しく反応するにつれ、スコット・ベセント財務長官のようなより市場志向の政権高官が台頭してきた。少なくとも今のところは。トランプは、これまでで最も過激な貿易政策を控え、多くの国との二国間交渉(bilateral negotiations)の扉を開いた。ナヴァロの影響力の低下を示す兆候として、マスクでさえ彼を「間抜け(moron)」と考えていることが挙げられる。

(2)スコット・ベセント(Scott Bessent

財務長官就任前の大統領選挙運動中にトランプに助言したウォール街のヴェテランであるベセントは、ナヴァロとは大きく異なる。ベセントは、現在の世界経済の不均衡の原因と弊害について、綿密な論理に基づく分析を提示し、混乱した世界貿易システムの欠陥を是正しつつもその恩恵を維持するため、慎重に修正すべきだと提唱してきた。トランプ新政権に対するベセントの影響力は、4月2日の「解放記念日」関税(the April 2 “Liberation Day” tariffs)がほぼ全世界に無秩序に導入された後、特に顕著になった。この関税は、友好国と敵国を問わず、歴史的に高く、恣意的に選択されたものだった。トランプが1週間後に関税の大部分を部分的に撤回し、関税をそれ自体の目的ではなく交渉の手段として利用する方向に転換したことで、ベセントの影響力は明らかになった。

世界金融システムの頂点に君臨し、米ドルの管理者としての地位も確立したことで、世界市場が米ドルの神聖性(the sanctity of the greenback)、ひいては安全資産としての米国債の魅力にさえ疑問を呈しているように見えるこの時期に、ベセントはより大きな発言力を持つようになった。

ベセントはまた、トランプ政権が通商政策に意義を持たせるための最新の取り組みの立役者でもあるようだ。この取り組みは、アメリカの一方的な関税だけでは到底実現できないような形で、多くの国との二国間協議(bilateral talks)を通じて中国の経済的影響力を抑制しようとする試みである。

(3)スティーヴ・ウィトコフ(Steve Witkoff

不動産王(a real estate mogul)であり、トランプ大統領の長年の友人でもあるウィトコフは、政府や外交の経験がないにもかかわらず、トランプ新政権の数々の主要な外交政策危機において主導的な交渉役を務めてきた。トランプ大統領が当初中東担当特使に任命したウィトコフは、トランプ大統領就任前からイスラエルとハマス間の約2カ月にわたる停戦(cease-fire)の仲介役を務めていた。しかし、前回の停戦が決裂して以来、ガザ地区での停戦の再構築には成功していない。

ウィトコフはまた、ウクライナ戦争終結に向けた交渉においても政権の窓口役を務めてきた。これらの交渉への彼のアプローチは物議を醸している。ウィトコフは戦争に関してクレムリンの主張を繰り返すため、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を激怒させ、アメリカの同盟諸国やワシントンの親ウクライナ派連邦議員の間で深刻な懸念を引き起こしている。ゼレンスキー大統領は最近、ヴィトコフが危険な「ロシアの言説を拡散している(disseminating Russian narratives)」と非難した。トランプ政権によるウクライナ戦争終結に向けた取り組みは今のところほとんど進展がなく、トランプ大統領は進展がない中で、アメリカが間もなく交渉(さらには戦争そのもの)から離脱する可能性があると示唆した。

一方、トランプ大統領はウィトコフを非常に有能な交渉担当者と評価し続けており、その仕事量と外交ポートフォリオを拡大し続けている。ウィトコフはここ数日、イランの核開発計画に関する協議を主導し始めた。政権は、イランの核兵器開発を阻止する合意の確保を目指している。ウィトコフは、アメリカがイランの核開発計画の縮小を求めるのか、それとも完全に放棄を求めるのかに関して、矛盾したメッセージを伝えている。協議はまだ初期段階にあるが、トランプ大統領は合意に至らなければ、アメリカとイスラエルは軍事行動に出る可能性があると述べている。

ウィトコフが新政権に持つ並外れた影響力は、トランプ大統領の型破りな外交政策アプローチと、経験は浅いものの忠実な部外者を要職に就ける傾向を示している。カリフォルニア州選出の民主党連邦上院議員アダム・シフ氏は最近、『フォーリン・ポリシー』誌に対し、ウィトコフを「真の国務長官(“real secretary of state)」と見なしていると語り、ウィトコフは「中東とロシアの両方で、マルコ・ルビオ国務長官よりもはるかに大きな役割を果たしていることは明らかだ」と述べた。

(4)JD・ヴァンス(J.D. Vance

JD・ヴァンス副大統領ほど、数々のミームを生み出したトランプ政権高官はほとんどいない。ヴァンス副大統領はトランプ大統領のナンバー2として、常に上司の政策について議論する際には、型通りの発言をすることが求められていた。しかし、ここ数カ月、ヴァンスは政権の熱心で攻撃的な外交政策を体現する存在となり、公の場でトランプ大統領の忠実な攻撃犬(Trump’s loyal attack dog)としての地位を確立しようとしている。

まず2月のミュンヘン安全保障会議で、ヴァンスは異例の演説を行い、第2次トランプ政権がいかに劇的に大西洋横断関係を覆しているかを明らかにし、ヨーロッパの議員たちを驚かせた。2月下旬、ゼレンスキー大統領のホワイトハウス訪問でも、ヴァンスは再び攻撃犬としての地位を確立した。トランプ大統領とゼレンスキー大統領が話している間、22分間のほとんどで静かに座っていたヴァンスは、攻撃的に発言に割り込んだ。これがきっかけとなり、両首脳はウクライナ大統領を激しく非難し、公の場で激しい対立が起きた。

より最近で言えば、ヴァンスはトランプの最も物議を醸した外交政策のいくつかの顔として登場してきた。例えば、グリーンランド側が明らかに望んでいなかった訪問を熱心に主導したことなどだ。(デンマークのメディアによると、訪問に先立ち、アメリカ政府関係者はセカンドレディのウーシャ・ヴァンスを歓迎するグリーンランド人を見つけるのに苦労したと報じられている。)ヴァンスは予想通り、この任務により力を入れた。

(5)スティーヴン・ミラー(Stephen Miller

先月ワシントンを動揺させた「シグナルゲート」スキャンダルは、第2次トランプ政権にとって驚くべきリークであっただけではない。それはまた、トランプ大統領のトップ補佐官たちが、上司が部屋にいないときにどのようにコミュニケーションをとっているのか、そして誰が最終決定権を持っているのかを明らかにするものでもあった。

公開されたグループチャットのメッセージは、スティーヴン・ミラーに権力があることを示唆している。ミラーはトランプ第1次政権時代、大きな物議を醸した移民政策の立案者として名を馳せ、アメリカの指導者のより強硬な衝動を後押ししたことで知られる。彼は現在、トランプ大統領の国土安全保障補佐官およびホワイトハウスの政策担当次席補佐官としてより大きな影響力を持ち、特に政権の大規模な強制送還やアメリカの一流大学に対する十字軍の舵取りを担っている。

ミラーはその権限を利用して、政権と裁判所との衝突においてトランプ大統領の権限の限界を公に試してきた。最近では、誤ってエルサルヴァドルの刑務所に強制送還されたメリーランド州の男性キルマール・アブレゴ・ガルシアの件が記憶に新しい。トランプ政権は、アブレゴ・ガルシアがMS-13ギャングのメンバーであると主張しているが、ガルシアはこの主張を否定しており、刑事責任を問われたこともない。しかし政府は以前から、アブレゴ・ガルシアの強制送還は「行政上の誤り(administrative error)」であることを認めており、裁判所の裁定はホワイトハウスに彼の帰還を「促進(facilitate)」するよう求めている。

ミラーは反抗的である。フォックス・ニューズのインタヴューで、彼は裁判所の調査結果に反論した。ミラーは「彼は間違ってエルサルヴァドルに送られたのではない。彼は正しい場所に送られた、正しい人間なのだ」となった。

■乗客側(PASSENGERS

(6)マルコ・ルビオ(Marco Rubio

トランプ大統領の外交政策分野の最高ランク補佐官として、ワシントンの外交政策の優先事項を遂行するのが職務内容である人物にとって、ルビオはウクライナ、ガザ地区、イランに関する米国の唯一の責任者とはほど遠く、特にウィトコフにスペースを譲ることが多く、意思決定よりもダメージコントロールの任務が多い。

ルビオ国務長官がこれまでトランプ大統領の優先事項を最も顕著に実行したのは、何百人もの大学生のヴィザを取り消し、新規申請者のソーシャルメディアアカウントを監視させたことだ。

ルビオはまた、彼が監督する部局の大部分を解体する(半分程度と言われている)ことを命じられているようだ。これには、外国の偽情報を追跡するオフィスの最近の閉鎖、米国国際開発庁(USAID)の廃止、国務省の人権に関する活動の縮小などが含まれる。ルビオは最近、米国国際開発庁が国務省に吸収された後、米国国際開発庁の廃止を担当していたMAGAの忠実な支持者のピーター・マロッコを解雇したことで、トランプの熱烈な支持者の一部から国務長官に対する批判の嵐が巻き起こり、閣僚としての任期が残り少ないのではないかという憶測が再燃した。

おそらく、少なくともポップカルチャーに関して言えば、ルビオにとってこれまでで最も大きな出来事は、大統領執務室でトランプとヴァンスがゼレンスキー氏を激しく叱責する場面を、非常に不快そうな表情で目撃したことだろう。その場面はあまりにも気まずく、「サタデー・ナイト・ライヴ」で実際にパロディ化されたほどだ。

(7)ジェイミソン・グリア(Jamieson Greer

影響力を失い、何が起こっているのかを把握しているという印象さえ失った人物の中には、政権最大の政策において中心人物であるべきだった2人、すなわち米通商代表部(U.S. Trade RepresentativeUSTR)のジェイミソン・グリア代表とハワード・ラトニック商務長官がいる。トランプ大統領は当初、この2人を政権の貿易政策の責任者に指名していた。

この2人のうち、米通商代表グリアは最も不利な立場に立たされており、最も有名なのは、アメリカが貿易黒字を計上している同盟諸国に対しても巨額の関税が絶対に必要である理由について、連邦議会で証言している最中に、トランプ大統領がソーシャルメディアで方針を一変させ、グリアを困惑させたことで、グリアは窮地に陥ったことだ。米通商代表部は他国の差別的貿易慣行について綿密に記録された苦情申立書を作成したが、当初の「解放記念日」関税(“Liberation Day” tariffs)に使用された恣意的な計算式には、その作業は一切盛り込まれなかった。

トランプ大統領の1期目の任期中、国際パートナーは当時の米国通商代表ロバート・ライトハイザーが大統領の耳に心地よく響く、機転が利く貿易通の交渉相手であることを知っていたが、グリアがアメリカの貿易政策の策定において実際にどのような役割を果たしているのかは、今でも明らかではない。

(8)ハワード・ラトニック(Howard Lutnick

トランプは当初、商務長官であるラトニックを通商政策の最高責任者として想定していた。たとえ、トランプ自身がその舵取りをしっかりと握り、グリアが連邦議会で定められた権限を持ち、ベセントが財務省の役割拡大を主張し、ナヴァロが大統領の耳を持っていたとしても、である。

しかし、トランプ大統領の貿易戦争がエスカレートして以来、ラトニックは政権の政策に対する影響力の欠如を公の場で強調するばかりだ。市場では既に、ラトニックの攻撃的な口調や経済理解の欠如に懐疑的な見方をしていた。しかし、ラトニックもまたグリアと同様、トランプ大統領の鞭打つような通商政策とは一線を画している。ラトニックは、関税は交渉のためではなく、不公正な慣行を罰するためのものだと大声で何度も繰り返した。ラトニックは、アメリカ人が「小さなネジをねじ込んで(screwing in little screws)」iPhoneを製造する未来を約束したが、大統領が電子機器を懲罰的な中国制裁の対象から除外し、中国関税の根拠となる、既に疑問視されていたものを根底から覆すまでは。報道によれば、ホワイトハウスはラトニックをテレビから遠ざけようとしているようだ。

(9)キース・ケロッグ(Keith Kellogg

トランプ大統領のウクライナ・ロシア担当特使であるキース・ケロッグ退役中将は、トランプ新政権で自己主張するのに苦労している。ウクライナ戦争終結に向けたアメリカの努力の中で、彼はしばしばウィトコフの後塵を拝してきた。例えば、ケロッグは最近リヤドで行われた停戦交渉に出席しておらず、傍観されているのではないかという疑問が投げかけられている。

対露タカ派として知られ、他の政権高官よりもキエフに友好的と見られているケロッグは、最近パリで行われた戦争に関する協議には出席した。しかし、トランプ大統領がウィトコフにこの問題の処理にはるかに大きな信頼を置いていることは、不動産王ウィトコフの度重なるロシア訪問からも明らかだ。そしてトランプ大統領は、アメリカが戦争を終わらせる努力をすぐに放棄する可能性を示唆しており、ケロッグは更に影が薄くなる可能性がある。

(10)ピート・ヘグセス(Pete Hegseth

ヘグセスの国防総省長官としての在任期間は、混乱と論争に象徴されている。連邦上院で辛うじて承認されたわずか数週間後の2月、ヘグセスはベルギーで開催されたNATOの会議で、同盟諸国との「不均衡な関係を容認しない(tolerate an imbalanced relationship)」と述べ、ウクライナの同盟参加を否定した。ヘグセスはまた、ウクライナの2014年以前の国境線に戻ることは「非現実的(unrealistic)」だとも述べた。

フォックス・ニューズの司会者であったヘグセスは、歴史的に国防長官として不適格であると民主党は見ているが、その後、モスクワとの和平交渉においてキエフの最も重要な影響力を事実上放棄したと批評家から非難された。連邦上院軍事委員会の委員長である共和党のロジャー・ウィッカー連邦上院議員(ミシシッピ州選出)は、ヘグセスの演説は「新人のミス(rookie mistake)」だったと述べた。

ヘグセスは、トランプ政権がこれまでに直面してきた最大の論争の1つであるシグナルゲート事件の中心人物でもある。彼はシグナルのグループチャットで、イエメンのフーシ派に対する今後のアメリカ軍攻撃に関する機密情報を他の政権高官と共有したのだが、そのグループチャットには偶然、『アトランティック』誌編集長も含まれていた。

4月初旬、国防総省の監察総監代理(the Pentagon’s acting inspector general)は、シグナルのグループチャットにおけるヘグゼスの役割について調査を開始した。トランプ政権は、このチャットで機密情報は共有されなかったと主張しているが、報道はそれを否定しており、国家安全保障の専門家たちは、こうした主張は事実無根であると断言するとともに、このスキャンダルが主要同盟諸国との情報共有に深刻な影響を与え、国家を脅威から守ることがより困難になる可能性があると懸念を表明している。

そして今週、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ヘグゼスがシグナルでイエメン作戦に関する機密軍事情報を共有したという新たな疑惑を報じた。今回は、妻、兄弟、そして個人弁護士を含むグループチャットで共有されたとのことだ。

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トランプ大統領の経済政策を作っている5人の人物たち(The 5 people shaping Trump’s economic agenda

ブレット・サミュエルズ

2025年4月19日

『ザ・ヒル』誌

by Brett Samuels - 04/19/25 5:00 PM ET

https://thehill.com/homenews/administration/5256332-trump-economic-advisers/

ドナルド・トランプ大統領は、金融市場を揺るがし、時に矛盾したメッセージを伝える大規模な関税政策を実行するにあたり、異なる視点と経歴を持つ複数の経済アドヴァイザーに依存している。

スコット・ベセント財務長官は貿易協定交渉を主導し、共和党所属の連邦議員やウォール街の金融機関の幹部たちからは頼りになる人物と見られている。

ピーター・ナヴァロ上級貿易顧問は気難しい性格だが、関税に関してはトランプ大統領の揺るぎない見解を共有し、心底からの忠誠心を持っている。ハワード・ラトニック商務長官はトランプ大統領の長年の友人だが、メディア出演で何度か失言をしている。

加えて、ケヴィン・ハセット国家経済会議(National Economic CouncilNEC)委員長とジェイミソン・グリア米国通商代表部(U.S. trade representativeUSTR)代表は、トランプ大統領の経済計画の策定、実行、そしてそのメッセージ発信を影で支える高官たち(behind-the-scenes senior officials)だ。

ホワイトハウスに近い複数の取材源によると、異なる見解を持つ政府関係者がいることは大統領にとって目新しいことではなく、関税、貿易、経済政策に関して最終的な決定権を持つのは最終的にはトランプ大統領だということだ。しかし、経済学者たちがトランプ大統領の政策の潜在的な影響を警告する中、こうしたトップ経済担当アドヴァイザーたちは注目を集めている。

ある第1次トランプ政権のホワイトハウス関係者は次のように述べている。「彼らはA地点からB地点へ到達する方法に関して異なる見解を持っている。率直に言って、それがトランプ大統領の狙いだ。『私の前で戦い、誰が勝つかは私が決める(fight in front of me, and I’ll decide who wins)』という姿勢を望んでいる」。

(1)スコット・ベセント(Scott Bessent
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ベセントはここ数日、トランプ大統領のホワイトハウス内での評価が高まっており、彼の主張が大統領に受け入れられている兆候が見られる。

ベセントは、他の経済アドヴァイザーが交渉の余地はないと示唆した後、ホワイトハウスが先週記者団に対し、より厳しい「相互」関税(“reciprocal” tariffs)の90日間の一時停止について説明を行うために派遣したトランプ政権の高官だった。

ベセントは、日本をはじめとする各国との貿易協定締結交渉を主導してきた。木曜日、トランプ大統領とイタリア首相との会談中、ベセントは大統領執務室のソファに座っていた。トランプ大統領は、協定締結に向けた進行中の取り組みについて、ベセントに発言を委ねた。

ベセントは、市場への影響を懸念し、ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任について、トランプ大統領に警告したと報じられている。また、政権内外の多くの人々から、ベセントは大統領の政策を一般大衆とウォール街の両方に訴える形で明確に説明できる人物だと見られている。

「重要なのは、誰がグループにとって最良のメッセンジャーであるかだ。ベセントは最良のメッセンジャーだ」とトランプの支持者の1人は述べた。

第一次政権下では、トランプ・ワールドの中心人物ではなかった高官の台頭は、注目すべきものだ。ベセントは2015年にヘッジファンドを設立した。それ以前は、リベラル派の巨額献金者であり、共和党から頻繁に攻撃や陰謀論の標的となっているソロス家の資産を運用する投資会社に勤務していた。

(2)ハワード・ラトニック(Howard Lutnick
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トランプ大統領は、キャンター・フィッツジェラルド社の取締役であるラトニックを商務長官候補に指名した際、ラトニックが「関税と貿易政策を主導する(lead our tariff and trade agenda)」と述べた。これは、トランプが追求しようとする積極的な政策において、ラトニックがいかに重要な役割を担うかを早期に示唆するものだった。

確かに、ラトニックは政権による様々な関税導入において重要な役割を果たし、トランプ大統領の近くに頻繁にいる。しかし、特にメディア出演はホワイトハウス内の一部の人々を苛立たせ、その影響力の大きさを疑問視する声も上がっている。

ラトニックは3月のFOXニューズのインタヴューで、アメリカ国民にテスラ株への投資を促した。大統領が関税を撤回する数日前まで、ラトニックは決して撤回しないと断言していた。更に、トランプの貿易政策によって、何百万人ものアメリカ人が「iPhoneを作るために小さなネジを締める」ことになると示唆し、人々に不快感を起こさせた。

トランプ大統領の側近やウォール街の関係者の中には、ホワイトハウスの関税政策が失敗し(go awry)、経済が急落した(the economy into a tailspin)場合、ラトニックが責任を取るべきだと主張する人たちもいる。

共和党のあるストラテジストは、「ラトニックは明らかに一部の人々を怒らせている」と述べている。

しかし、ラトニックがすぐに解任される可能性は低く、依然として大統領の耳目を集めていると取材源は本誌に語っている。

ラトニックはトランプ大統領の長年の友人であり、大統領選挙に数百万ドルを寄付してきた。大統領専用機エアフォースワンに同乗する姿が頻繁に目撃されており、木曜日には大統領執務室で、アメリカの水産物輸出拡大に向けた取り組みを訴える大統領令の署名式に出席した。

(3)ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro
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ピーター・ナヴァロ(右)とスティーヴン・ミラー

ナヴァロの正式な肩書きは、貿易・製造業担当上級顧問(senior counselor for trade and manufacturing)だ。彼とトランプ大統領は、製造業をアメリカに呼び戻す手段(a tool to return manufacturing to the United States)として関税を活用するという点で一致している。

ナヴァロはトランプ大統領の関税政策を主導し、輸入品に対する新たな関税の導入を提唱してきた。また、鉄鋼・アルミニウム、そして自動車に既に課されている関税の重要性を主張してきた。

彼は、輸入品に10%の基本関税を課し、さらに数十カ国にさらに厳しい制裁関税を課す「相互」関税(“reciprocal” tariffs)を強く支持し、これを国内製造業の復活のための「国家非常事態(national emergency)」と位置付けていた。ナヴァロはかつて、ヴェトナムが全ての関税を撤廃するだけでは不十分だと示唆したこともあります。

しかし、トランプ大統領が中国を含むホワイトハウスとの協議への扉を開くと、彼の揺るぎない姿勢はホワイトハウス内の他のメンバーと足並みを揃えなくなっていった。ナヴァロの序列は、大統領顧問の億万長者であるイーロン・マスクがソーシャルメディアで公然と彼を攻撃したことで、さらに厳しく問われることになった。また、彼は連邦議会でも多くの友人を得ていない。

ホワイトハウスは内部の意見の相違を軽視している。ホワイト報道官のキャロライン・リーヴィットはマスクとナヴァロの口論について記者団に対して、「男はいつになっても少年(Boys will be boys)」と述べた。

更に言えば、トランプ大統領はナヴァロの忠誠心も高く評価している。ナヴァロは第1次政権でも内部抗争の中心にいたが、政権内にとどめられた。その後、ナヴァロは2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件に関連する議会の召喚状に応じなかったため、収監された。

(4)ケヴィン・ハセット(Kevin Hassett
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国家経済会議(National Economic CouncilNEC)の議長であるハセットは、事実上トランプ大統領のトップ経済アドヴァイザーである。

選挙運動中は大統領の経済政策を擁護する立場にあり、政権発足後も同様の役割を果たし、テレビや記者会見に出席して関税への批判に反論してきた。

ホワイトハウスに近い取材源は本誌に対し、ハセットは舞台裏では大統領の発言に常に同意している訳ではないと述べた。しかし、公の場では、ハセットはトランプ大統領のメッセージに忠実であり、大統領の行動やその先手を打つような発言はしない、一貫した人物と見られている。

例えば、ハセットは2021年に発表した回顧録の中で、自身と他のトランプ陣営の顧問たちが大統領に対し、FRB議長の解任は実際には不可能かもしれないし、合法かどうかに関係なく、金融市場を暴落させる可能性が高いと警告したと述べている。

金曜日、ハセットは慎重な姿勢を示し、記者団に対し、トランプ大統領とそのティームは、大統領がジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長を解任できるかどうかについて「引き続き検討する(will continue to study)」と述べ、FRBの政策を批判した。

ハセットは、トランプ大統領の最初の任期中、大統領経済諮問委員会(Council of Economic AdvisersCEA)の委員長を務めた。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間、ホワイトハウスに経済政策に関する助言を行い、CEAが米国の新型コロナウイルスによる死者数が2020年5月までに減少すると予測するグラフを発表した際には、厳しい批判に晒された。

(5)ジェミソン・グリア(Jamieson Greer
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あまり知られていないが、貿易交渉において同様に重要な人物が、米国通商代表を務めるグリアだ。

グリアはトランプ第1次政権時代、ロバート・ライトハイザー通商代表(当時)の首席補佐官を務め、関税や最終的な貿易協定に関する中国との交渉で最前列に立ち、重要な役割を果たした。彼はまた、NAFTAを再交渉し、2020年に調印されたUSMCAU.S.-Mexico-Canada Agreement、米・メキシコ・カナダ協定)にするための協議にも加わっていた。

グリアは、貿易に関して大統領の側近に誰がいるかということになると、見落とされる傾向がある。トランプ大統領は、ラトニックが商務省を運営するポートフォリオの一部として貿易を監督すると述べており、大統領自身もこの問題について強い見解を持っている。

グリアは、法令上はホワイトハウスの貿易交渉官だが、トランプ大統領はこれまで主要な経済協議の主導を財務長官に頼ってきた。

しかし、グリアは大統領のアジェンダを実行した経験を持つ人物としてトランプ・ワールド内で尊敬されており、連邦上院の承認公聴会では貿易赤字の削減と国内製造業の強化が優先事項であることを示唆した。

グリアは2月、複数の連邦上院議員に対し、「国際貿易システムを再構築し、アメリカの利益をより良くするための時間は比較的短いと確信している」と語った。

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●「対中強硬派、米政権で影響力低下 The Economist

日本経済新聞2025422

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO88177570R20C25A4TCR000/

トランプ米大統領が関税政策で世界を大混乱に陥れる前から、彼の対中戦略を見極めるのは難しかった。トランプ氏の決定は多くが気まぐれによるうえ、外交政策の顧問らも派閥に分かれ互いに対立しているようだ。

ワシントン用語で言う「優越主義者」はあらゆる脅威に立ち向かい、世界における米国の覇権を取り戻すとし、「優先主義者」は米国が対処できるのは中国だけでウクライナは見捨てるべきだと主張する。「抑制主義者」は米国は今後の戦争は避け、自国に専念すべきだと考える。

トランプ氏の考えがどうあれ、今、明らかになりつつあるのは優越主義者であれ、優先主義者であれ対中強硬派は影響力を失いつつある点だ。

関税騒動に隠れて目立たないが、それをよく表す出来事の一つが43日に公になった国家安全保障会議(NSC)の高官6人の解雇・異動だ。その前日、右翼の陰謀論者ローラ・ルーマー氏がトランプ氏と会い、彼らがトランプ氏に「忠実でない」と主張したのが影響したのは明らかだ。

6人を中国との戦争も辞さない「ネオコン(新保守主義者)」とみなし、排除したいという思いはトランプ・ジュニア氏ら抑制主義者とルーマー氏でほぼ一致している。

更迭された一人がNSCの重要技術担当のデビッド・フェイス上級ディレクターで、これは象徴的だ。父ダグラス氏も初期のネオコンの一人で、米国防総省高官として2003年の対イラク軍事作戦の立案に携わった。デビッド氏は現政権の最も経験豊富な中国専門家の一人で、第1次トランプ政権では国務省に勤務し、同盟国との関係強化を図るインド太平洋戦略の策定を支援した。その後、シンクタンクに移り、強硬な対中政策の必要性を訴えてきた。

NSCでは米国の対中技術輸出などの問題を担当し、中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業の非中国企業への売却を提案した。多くのバイデン前政権の取り組みを進める一方で、2月に発表した「アメリカファースト投資政策」など新しい政策にも取り組んだ。同政策はロシアと中国を「敵対国」とし、対中投資規制の枠を広げるものだ。

こうした政策への彼の見解が解雇を招いたのかは不明だが、元同僚らはこの解雇を孤立主義者らの勝利で、中国専門家らの敗北だとみている。

NSCの対中強硬派でアジア担当上級部長のイバン・カナパシー氏と、大統領副補佐官(国家安全保障担当)のアレックス・ウォン氏の先行きも今や不透明だ。ルーマー氏は、カナパシー氏が以前トランプ氏に批判的な人物と仕事をしていたことや、ウォン氏とその妻が中国系であること、妻の弁護士としての経歴を批判した。両氏はまだ解任されていないが、2人の上司であるウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当で対中強硬派)がすでに権威を失っているため弱い立場にある。

カナパシー氏は現政権で最も強力な台湾支持者の一人とされているため、中国と台湾当局は彼の動向を注視するだろう。1417年に米国の対台湾窓口機関、米国在台協会に駐在武官として赴任した。24年には第1次トランプ政権でNSCアジア上級部長だったマット・ポッティンジャー氏が編集した台湾防衛に関する本に寄稿し、同氏と共に昨年6月、頼清徳(ライ・チンドォー)台湾総統と会っている。

ポッティンジャー氏は211月の米議会襲撃事件へのトランプ氏の対応に不満を募らせ辞任したが、以来、中国に政治的変化を促すべく厳しい対中政策を提唱してきた。

こうした動きが米政府の中国への対応にどう影響するかは不透明だ。トランプ氏は貿易最重視で、対中政策を巡る高官らの対立を知らないかもしれない。だがもはや対中強硬派は1期目のように同氏に気付かれずに物事を進めるのは困難になる可能性がある。

米国が最近、中国の台湾支配に反対する断固とした共同声明を同盟国と共に複数出したことや、国務省のサイトから「台湾独立を支持しない」とする文言が削られたことについては、対中強硬派の関与を指摘する声がある。

国防総省でも勢力図は変わりつつあるかもしれない。要職経験のないヘグセス国防長官は3月にアジアの同盟各国を初めて歴訪した際、バイデン前政権の約束の多くを繰り返し、相手国を安心させた。それはトランプ政権がまだアジアでの軍事的優先事項を決めていなかったからだろう。

米上院は8日、国防総省ナンバー3の国防次官(政策担当)にコルビー氏を承認した。彼はヘグセス氏を支援する重要な役割を担うわけで、優先事項は今後明らかになる。

コルビー氏は中国を優先課題にすべき(台湾防衛を含む)だと声高に主張してきただけに元同僚らは適任だと言う。筋金入りの中国専門家ではないが、第1次トランプ政権では国防総省で中国とロシアを主たる敵対国とみなす国防戦略を策定した。退任後は中国のアジアでの覇権に対抗すべきだと主張するシンクタンクを設立し、本も出版した。

だがコルビー氏は最近はむしろ抑制主義者のようだ。台湾は米国の「存在にかかわる」問題ではないとし、台湾は防衛費を今の国内総生産(GDP)比3%から10%に上げるべきだと非現実的な主張を展開、韓国にも自力での国防に注力するよう求めている。

バンス副大統領やトランプ・ジュニア氏はこうした発言を支持している。彼らはトランプ氏は「眠れる竜の目を不必要に突く」のを避け、「中国と均衡を図って戦争を回避すべく」中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と交渉したい考えで、コルビー氏もこれを支持しているという。

コルビー氏の変節は政治的には賢明かもしれない。だが米国や同盟国の一部の防衛関係者の間で懸念を招いている。トランプ氏の欧州への見解と似たものを感じたためだ。トランプ氏の台湾への関心は低い。それだけに台湾防衛を犠牲にして、習氏から中国の貿易面で譲歩を引き出す一方、米国がアジアで既に持つ権益には手を出さないと約束させる取引をするのではないかと危惧しているのだ。

トランプ氏がアジアの同盟各国にも関税を課し、空母とミサイル防衛システムを最近アジアから中東に移したことなどから、彼が一貫した対中戦略を維持できるのかを疑問視する声もある。

国務省もルビオ国務長官が対中強硬派であるにもかかわらず、中国については限られた発言権しかないようだ。ルビオ氏の政策立案を担うマイケル・アントン政策企画局長は米国は台湾を防衛すべきでないと主張している。主な中国専門家数人が最近早期退職した一方で、東アジア・太平洋地域担当の次期トップに指名された弁護士のマイケル・デソンブル氏は駐タイ米国大使を1年務めた以外、外交経験がない。

中国がこうした人事を見逃すはずがない。中国政府に助言する中国の米研究者らは、第1次トランプ政権はNSCや国防総省、国務省の対中強硬派が強い影響力を持っていたとみている。復旦大学の孟維瞻研究員は最近、ある論評でトランプ現政権の対中強硬派の影響力は第1次政権に比べ弱まったと指摘した。米国はテックや貿易では強硬姿勢を強めていくが、国内問題重視からイデオロギーや軍事面ではそれほど圧力をかけてこないと孟氏はみている。

だがどれもトランプ氏の対中戦略を決定づけるものではない。この数週間をみても、彼の戦略は気まぐれですぐ変わる。それでも国際関係や政策を誰が日々管理するかは大事だ。トランプ氏が中国と取引しようとするか、あるいは貿易戦争が安全保障問題に波及した場合、同氏がとり得る選択肢や中国の反応を読む能力は重要だ。

米国が台湾を巡り弱腰な姿勢を見せれば中国の軍事行動を誘発するかもしれないし、挑発しすぎて軍事行動を招くかもしれない。一貫した戦略もなく中国との貿易戦争に突入するのは、それだけで多くのリスクを伴う。防衛面で一貫性を欠けば大惨事を招きかねない。

419日号)

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 ドナルド・トランプ大統領による高関税の発表から1カ月が経過した。いくつかの妥協がなされているが、日本に関しては、24%の関税賦課が行われる予定で、それを回避するために、赤澤亮正経済再生担当大臣が2度の訪米で交渉を行っている。アメリカとしては、貿易拡大、特にアメリカ製品の輸出拡大を目指しているが、厳しい状況だ。

アメリカ側は、日本車とアメリカ車の不均衡を批判しているが、日本で売れるアメリカ車を作る努力もしないで、ただただ買えと言っているのは押し売りと同じだ。もしくはカツアゲだ。アメリカ産の農産物を買うと言っても、少子高齢化で人口減少、高齢社会によって食料品の消費量はどうしても減っていく。アメリカ産のトウモロコシをどうやって消費するかは難しい。結局、政府がアメリカらから製品を買って、海外援助の現物として支給する形にするしかないが、そのような税金の使い方が良いのかという問題は起きる。

 トランプ高関税(解放記念日関税)によって、株式市場は乱高下し、更には米国債の金利上昇という事態に陥り、妥協する形になった。高関税を支持したのは対中強硬派であり、そのグループが交代を余儀なくされたということになる。この高関税政策の主眼は、アメリカの貿易赤字削減であるはずなのに、高関税を武器にして、中国と争うことを主眼としたグループがおり、そのグループが過剰な中国をターゲットにした、関税戦争、貿易戦争を仕掛けようとしたが、中国が頑として妥協しないという姿勢を示したために腰砕けとなった。これは、ウクライナ戦争勃発後、西和賀諸国がロシアをSWIFTという国際決済システムから除外し、制裁を科して、ロシアを早々に屈服させようとして失敗したのと似ている。中露両国はアメリカからの制裁に慣れており、その準備を十年単位に進めている。対米自立(対ドル自立)ができている(食糧安保も含めて)。

高関税を何とか宥めたいグループの代表がスコット・ベセント財務長官だ。ベセントは昨年の大統領選挙ではトランプを支持し、関税政策も支持していた。しかし、対中強硬派の暴走を抑えることに成功した。それはもちろん、米国債金利上昇(米国債が中国によって売られた可能性が高い)という緊急性の高い事態を招いたこともあるが。スコット・ベセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表がこれから、二国間協議で各国からの妥協を引き出すということになるだろう。これは簡単に言えば、みかじめ料ということになるが、あまりにも阿漕なみかじめ料を取るようならば、アメリカの威信は地に堕ち、信頼を失うことになる。

 ナヴァロをはじめとする対中強硬派は高関税を使ってやり過ぎてしまった。対中強硬派はこれからトランプ政権で力を失っていくだろう。ナヴァロはトランプに殉じて刑務所に入ったくらいの忠誠心の高い人物であるから、象徴的な意味でも政権内に留まるだろうが、実権はなくなるだろう。トランプ政権の荒療治はなかなか厳しい状況に陥っている。

(貼り付けはじめ)

トランプ関税ドラマの勝者と敗者(Winners and losers from the Trump tariffs drama

ナイオール・スタンジ筆

2025年4月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5243790-trump-tariff-china-trade-war/

ドナルド・トランプ大統領は水曜日、世界各国への関税賦課をほぼ一時停止し、方針を転換した。

唯一の大きな例外は、激化する貿易戦争(an escalating trade war)の焦点となっている中国だ。アメリカの対中関税は現在145%に達しており、中国は報復措置としてアメリカからの輸入品への関税を金曜日早朝に125%に引き上げた。

トランプ大統領が国際的な関税賦課を撤回したのは、アメリカ株が数兆ドルの下落を見せ、債券市場が警戒感を示し始め、経済界が景気後退の可能性を懸念する声が高まった後のことだ。

譲歩を決して認めようとしないトランプ大統領でさえ、投資家たちが動揺し始めていることを指摘し、「投資家たちは騒ぎ立てている(they were getting yippy)」と述べ、自身も債券市場の動向を注視していると述べた。

利上げ停止発表直後、水曜日の午後、市場は大きく上昇した。しかし、中国情勢への懸念が更に強まったため、木曜日には再び急落した。

ダウ工業株30種平均は1000ポイント以上、つまり、2.5%下落した。より広範なS&P500は約3.5%下落し、ハイテク株中心のナスダックはさらに下落し、4.3%下落した。

状況は流動的で、今後も多くのドラマが展開される可能性が高い。

トランプ大統領自身以外では、関税騒動の勝者と敗者は誰なのだろうか?

■勝者たち(WINNERS
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●スコット・ベセント財務長官(Treasury Secretary Scott Bessent

ベセントはここ1週間、トランプ政権内でより強い立場を築いてきた。

トランプ大統領と公に決別しようとしたことは一度もないが、包括的かつ過酷な関税水準に懐疑的な派閥のリーダーであることは明らかだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の木曜日の報道によると、ベセント財務長官は週末、トランプ大統領の専用機エアフォースワンに同乗し、金融市場の透明性の必要性を強調し、大統領に「他国との交渉に集中する(focus on negotiating with other countries)」よう助言したことで、内部での影響力を強めたようだ。

かつてヘッジファンドマネジャーを務め、過去には民主党の資金調達担当者でもあったベセントは、トランプ周辺の一部が主張する過剰な保護主義(hyperprotectionism)に対して、常に懐疑的だった。

より穏健なアプローチが勝利した後も、ベセントはトランプに対して忠誠心を持ち、トランプについて「これが彼の戦略だった(This was his strategy all along)」と報道陣に語った。
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●イーロン・マスク(Elon Musk

関税騒動の裏話はマスクに絡んでいる。

マスクは、トランプの側近で経済学者であり、最も保護主義的な立場を明確に示すピーター・ナヴァロと激しく対立していた。ナヴァロが、マスクがテスラ(ナヴァロはテスラを真のメーカーではなく「自動車組立業者(car assembler)」と揶揄していた)のせいで自由貿易に既得権益があると主張すると、マスク氏は彼を「間抜け(moron)」呼ばわりした。

更に言えば、マスクは壮大な関税制度に明らかに不安を抱いているもう1人の重要人物だった。例えば、トランプ大統領とヨーロッパ連合(EU)の間の緊張が高まる中、マスクは大西洋横断自由貿易圏(a transatlantic free trade zone)の設立を公に表明した。

ベセントと同様に、マスクも内部論争で勝利を収めた。

●民主党(Democrats

ここでは野党が勝利を収めることになる。

民主党は、昨年11月のトランプの勝利、党内の今後の方向性をめぐる議論、そして党に対する認識の急落を示す世論調査によって、大きく揺さぶられてきた。

しかし現在、トランプは中道層の有権者に深刻な打撃を与えかねない、最初の大きな失策を犯したと見られている。

世論調査では関税が広く不人気であることが示され、トランプの支持率も急速に低下しているように見える。

1月にトランプが大統領に就任して以降、初めて、民主党に追い風が吹いている。

■中間(MIXED

●ウォール街(Wall Street

投資家と金融機関にとって、これはジェットコースターのような激しい動きだった。

数日続いた急落は、水曜日にウォール街史上最大級の1日の上昇で打ち破られた。

そして木曜日、市場は再び急落した。

主要株価指数は、トランプ大統領の「解放記念日」関税(“Liberation Day” tariff)発表前の水準と、その後数日間に記録した安値とのほぼ中間水準にある。

ウォール街は、トランプ大統領の方針転換に影響力のある発言者が何らかの役割を果たしたという事実に、ある程度の安堵を抱くことができるだろう。

しかし、中国との緊張が解消されない限り、今後の道のりは依然として不安定だ。

●連邦議会共和党(Republicans in Congress

共和党の一部には、当初からトランプ大統領の関税措置に対する明確な不安が存在していた。

共和党所属の連邦議員の中には、関税が早期に緩和されることを期待する者もいた一方、連邦上院議員の中には、この問題に関する権限をホワイトハウスから奪還しようとする動きに加わった者もいた。

市場が今後改善すれば、共和党へのダメージは小さくなるかもしれない。

しかし、市場のヴォラティリティはまだ明らかに解消されておらず、それが共和党の政局にも不確実性をもたらしている。

■敗者(LOSERS
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●ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)

ナヴァロの保護主義、アメリカが外国の競争相手につけこまれていると強く主張する姿勢は、大統領に支持を得ているように見えた。

ハーヴァード大学で博士号を取得しているにもかかわらず、著名な経済学者の中では異端児であるナヴァロにとって、かつてはそれが好意的な承認のように思えたに違いない。

しかし、トランプ大統領が関税賦課を停止したことで、その見方は大きく崩れ去った。

確かに、トランプ大統領は10%の関税を維持し、他国向けに「特注(bespoke)」の解決策を検討しているとされている。

しかし、ナヴァロを最も象徴する主張、すなわち十分な規模と期間の長期にわたる懲罰的関税がアメリカの製造業の再生を促すという主張は、再び遠ざかりつつあるようだ。

●中国(China

中国政府はトランプ大統領との対決において決して譲歩しないと強調し続けている。

中国商務省は「最後まで戦う(fight to the end)」用意があると約束しており、政府報道官はソーシャルメディアで毛沢東国家主席の好戦的な映像を共有し、その点を強調した。

貿易戦争が長期化すれば、中国だけでなくアメリカにも打撃を与えることは疑いようがない。

最新の統計によると、アメリカは毎年約640億ドルの携帯電話、300億ドルの玩具、200億ドルの繊維・衣料を輸入している。関税は、これらの品目のアメリカ国内の価格を上昇させるか、単に入手しにくくするだけだ。

しかしながら、中国への打撃は更に大きくなる可能性が高い。

中国の対米輸出は輸入の約3倍に上る。中国は近年、市場の多様化に努めているものの、アメリカとの貿易に大きな障害が生じれば、深刻な痛みをもたらすだろう。

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『トランプの電撃作戦』
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