古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:スコット・ベセント

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
 

第2次ドナルド・トランプ政権の発足100日のハネムーン期間は大きな動きが続いて、アメリカ国内、そして、諸外国を驚かせ続けた。大きな出来事としては、イーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE)による、連邦政府諸機関への立ち入りや調査が進められて、米国国際開発庁(USAID)という日本では聞き慣れない(私はデビュー作『アメリカ政治の秘密』で取り上げている)政府機関の閉鎖などが決められた。アメリカ政府の抱える財政赤字(fiscal deficit)の削減のために、連邦政府の予算に切り込んでおり、連邦政府職員の解雇も進められる。

 今年4月初旬には、世界各国からの輸入に一律10%の関税、更におよそ60カ国には追加の「相互」関税が課されるという、高関税政策が発表された。中国には145%という関税がかけられるとされたが(日本の24%が低く見えてしまうほど)、その後、スマートフォンや半導体は例外とされたり、大幅に引き下げられるということが発表されたりし、混乱を招いた。これは、株式市場の下落と共に、米国債の金利上昇が理由として考えられる。一説には中国が保有する米国債を売却し、「抑止力」を行使したとも言われている。

トランプ政権は、貿易赤字の削減を目指している。トランプ政権は1980年代のロナルド・レーガン政権の進めた「双子の赤字(twin deficits)の削減」政策を踏襲していると言えるだろう。レーガン政権時代との違いは、貿易赤字の相手国が、アメリカの属国で言いなりの日本ではなく、強力な対抗措置を取る力を持つ中国であるという点だ。

 こうした大きな流れをけん引しているトランプ政権内の重要人物たちをご紹介する。今回のトランプ関税(トランプ高関税、解放記念日関税とも呼ばれる)をめぐる動きでは、スコット・ベセント財務長官が主導権を握り、トランプ大統領に妥協を迫ったということになっている。それを支持したのがイーロン・マスクだとも言われている。そして、対中強硬派が敗北したと言われている。対中強硬派は今回のトランプ関税を利用して、中国に大規模な貿易戦争を仕掛けようとしたが、中国の返り討ちに遭った形になっている。そして、アメリカの信頼性を損なうということまで引き起こした。トランプ政権は妥協、交代を迫られることになった。総体的に中国の信頼性が高まるということになった。アメリカの製造業が復活することはなく、これからも厳しい状態は続く。トランプ大統領は厳しい時間を過ごすことになる。それでも、支持してくれた白人労働者たちのために力を尽くすだろう。そして、失敗し、アメリカは衰退の道を進んでいく。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領の外交政策のドライヴァーたち(そしてその乗客たち)(The Drivers (and Passengers) of Trump’s Foreign Policy

-アメリカ大統領就任後100日間、第2次トランプ政権の中心人物は誰で、脇に追いやられた人物は誰なのか。

FPスタッフ筆

2025年4月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/25/trump-100-days-influential-officials-navarro-bessent-witkoff/

ドナルド・トランプの通常の基準から見ても、米大統領就任後100日間は混沌と混乱を極めており、対立が激化している。特に外交政策においては、ウクライナとガザ地区での戦争終結に向けた迅速な(そして未だ未完了の)合意を推し進め、200人以上の移民をエルサルヴァドルの刑務所に強制送還し、世界の大半の国々(主に中国)に対して貿易戦争(trade war)を開始した。

これまでのところ、政権幹部の交代は最初の任期に比べて比較的少なく、地政学的な優先事項を策定・実行する中心人物として、数人の重要人物が台頭している。1月初旬には影響力のある役割を担うと思われていたものの、事実上脇に追いやられた人物もいる。

このリストには、皆さんが予想するかもしれないが、今回は含めなかった人物が1人いる。イーロン・マスクだ。世界で最も裕福な男は、9桁の選挙キャンペーン献金を糧にトランプ政権内で影響力を持ち、あらゆる場面で存在感を示すようになった。外国首脳との電話会談に同席したり、国防総省や国家安全保障局での高官級会合を開いたり、さらにはインドのナレンドラ・モディ首相と直接会談したりもしている。

しかし、ワシントンの国際関係におけるマスクの影響力はここ数週間で弱まり、非公式の政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)や、自身のソーシャルメディア「X」におけるMAGA支持の投稿の絶え間ない流れといった、より国内的な優先事項に取って代わられている。さらに、マスクの「特別政府職員(special government employee)」としての役職は130日の期限が約1カ月後に切れる予定であり、トランプ大統領とトランプ・ワールドは、期限後は彼が留任しない可能性を示唆している。

マスク以外では、マイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官にも言及すべきだっただろう。ウォルツのこれまでの影響力の低さは、特に前任者のジェイク・サリヴァンの著名さを考えると注目に値するが、彼をこのリストに含めなかったのは、彼をどちらの陣営にも明確に分類するには時期尚早だと考えたためである。シグナルゲート事件において、残念ながら彼は『アトランティック』誌編集長ジェフリー・ゴールドバーグをチャットに招き入れた閣僚として重要な役割を果たしたが、この論争の火種は今やピート・ヘグセス国防長官にも向けられている。

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さて、トランプ大統領が優先事項を遂行する上で信頼を寄せている人物と、そうでない人物について見てみよう。
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■ドライヴァーたち(DRIVERS

(1)ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro

トランプ大統領のホワイトハウス貿易製造業担当補佐官であるナヴァロは、トランプ政権の高コストで破滅的な貿易政策を、トランプに次ぐ存在として主導してきた。しかし、今月初め、トランプが世界各国との全面的な貿易戦争の瀬戸際(the precipice of his all-out trade war on the rest of the world)から撤退したことを受け、ナヴァロが明らかに脇に追いやられるまではそうだった。

ナヴァロ(と、彼が創作した別人格のロン・ヴァラ)は第1次トランプ政権にも在籍し、当時も同様のタカ派的な貿易政策についての考えを持っていたものの、スティーヴン・ムニューシン、ゲーリー・コーン、ウィルバー・ロスといった比較的保守的な経済思想家が政権のスタッフを務めていたため、ナヴァロの影響力はそれほど大きくなかった。しかし、2022年に連邦下院1月6日委員会への証言と証拠提出を求める連邦議会の召喚状を拒否し、最終的に4カ月の禁錮刑に服したことは、第2次トランプ政権でナヴァロの忠誠心を証明し、政権における高官の座を確保したと言えるだろう。

今回は、ナヴァロははるかに重要な役割を担っている。トランプ政権内の多くの補佐官たちからの妨害はほとんど受けていないものの、彼の考えは市場には完全に拒否された。ナヴァロは、貿易の仕組みに関する同様の根深い誤解(a similar profound misunderstanding)と、アメリカ企業への輸入関税を必ずしも是正する必要もない問題の万能薬(a cure-all)として好む姿勢を組み合わせることで、トランプにアピールしている。

しかし、ナヴァロが懸命に取り組んできた貿易戦争の影響が徐々に明らかになり、世界の株式市場、特に債券市場が激しく反応するにつれ、スコット・ベセント財務長官のようなより市場志向の政権高官が台頭してきた。少なくとも今のところは。トランプは、これまでで最も過激な貿易政策を控え、多くの国との二国間交渉(bilateral negotiations)の扉を開いた。ナヴァロの影響力の低下を示す兆候として、マスクでさえ彼を「間抜け(moron)」と考えていることが挙げられる。

(2)スコット・ベセント(Scott Bessent

財務長官就任前の大統領選挙運動中にトランプに助言したウォール街のヴェテランであるベセントは、ナヴァロとは大きく異なる。ベセントは、現在の世界経済の不均衡の原因と弊害について、綿密な論理に基づく分析を提示し、混乱した世界貿易システムの欠陥を是正しつつもその恩恵を維持するため、慎重に修正すべきだと提唱してきた。トランプ新政権に対するベセントの影響力は、4月2日の「解放記念日」関税(the April 2 “Liberation Day” tariffs)がほぼ全世界に無秩序に導入された後、特に顕著になった。この関税は、友好国と敵国を問わず、歴史的に高く、恣意的に選択されたものだった。トランプが1週間後に関税の大部分を部分的に撤回し、関税をそれ自体の目的ではなく交渉の手段として利用する方向に転換したことで、ベセントの影響力は明らかになった。

世界金融システムの頂点に君臨し、米ドルの管理者としての地位も確立したことで、世界市場が米ドルの神聖性(the sanctity of the greenback)、ひいては安全資産としての米国債の魅力にさえ疑問を呈しているように見えるこの時期に、ベセントはより大きな発言力を持つようになった。

ベセントはまた、トランプ政権が通商政策に意義を持たせるための最新の取り組みの立役者でもあるようだ。この取り組みは、アメリカの一方的な関税だけでは到底実現できないような形で、多くの国との二国間協議(bilateral talks)を通じて中国の経済的影響力を抑制しようとする試みである。

(3)スティーヴ・ウィトコフ(Steve Witkoff

不動産王(a real estate mogul)であり、トランプ大統領の長年の友人でもあるウィトコフは、政府や外交の経験がないにもかかわらず、トランプ新政権の数々の主要な外交政策危機において主導的な交渉役を務めてきた。トランプ大統領が当初中東担当特使に任命したウィトコフは、トランプ大統領就任前からイスラエルとハマス間の約2カ月にわたる停戦(cease-fire)の仲介役を務めていた。しかし、前回の停戦が決裂して以来、ガザ地区での停戦の再構築には成功していない。

ウィトコフはまた、ウクライナ戦争終結に向けた交渉においても政権の窓口役を務めてきた。これらの交渉への彼のアプローチは物議を醸している。ウィトコフは戦争に関してクレムリンの主張を繰り返すため、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を激怒させ、アメリカの同盟諸国やワシントンの親ウクライナ派連邦議員の間で深刻な懸念を引き起こしている。ゼレンスキー大統領は最近、ヴィトコフが危険な「ロシアの言説を拡散している(disseminating Russian narratives)」と非難した。トランプ政権によるウクライナ戦争終結に向けた取り組みは今のところほとんど進展がなく、トランプ大統領は進展がない中で、アメリカが間もなく交渉(さらには戦争そのもの)から離脱する可能性があると示唆した。

一方、トランプ大統領はウィトコフを非常に有能な交渉担当者と評価し続けており、その仕事量と外交ポートフォリオを拡大し続けている。ウィトコフはここ数日、イランの核開発計画に関する協議を主導し始めた。政権は、イランの核兵器開発を阻止する合意の確保を目指している。ウィトコフは、アメリカがイランの核開発計画の縮小を求めるのか、それとも完全に放棄を求めるのかに関して、矛盾したメッセージを伝えている。協議はまだ初期段階にあるが、トランプ大統領は合意に至らなければ、アメリカとイスラエルは軍事行動に出る可能性があると述べている。

ウィトコフが新政権に持つ並外れた影響力は、トランプ大統領の型破りな外交政策アプローチと、経験は浅いものの忠実な部外者を要職に就ける傾向を示している。カリフォルニア州選出の民主党連邦上院議員アダム・シフ氏は最近、『フォーリン・ポリシー』誌に対し、ウィトコフを「真の国務長官(“real secretary of state)」と見なしていると語り、ウィトコフは「中東とロシアの両方で、マルコ・ルビオ国務長官よりもはるかに大きな役割を果たしていることは明らかだ」と述べた。

(4)JD・ヴァンス(J.D. Vance

JD・ヴァンス副大統領ほど、数々のミームを生み出したトランプ政権高官はほとんどいない。ヴァンス副大統領はトランプ大統領のナンバー2として、常に上司の政策について議論する際には、型通りの発言をすることが求められていた。しかし、ここ数カ月、ヴァンスは政権の熱心で攻撃的な外交政策を体現する存在となり、公の場でトランプ大統領の忠実な攻撃犬(Trump’s loyal attack dog)としての地位を確立しようとしている。

まず2月のミュンヘン安全保障会議で、ヴァンスは異例の演説を行い、第2次トランプ政権がいかに劇的に大西洋横断関係を覆しているかを明らかにし、ヨーロッパの議員たちを驚かせた。2月下旬、ゼレンスキー大統領のホワイトハウス訪問でも、ヴァンスは再び攻撃犬としての地位を確立した。トランプ大統領とゼレンスキー大統領が話している間、22分間のほとんどで静かに座っていたヴァンスは、攻撃的に発言に割り込んだ。これがきっかけとなり、両首脳はウクライナ大統領を激しく非難し、公の場で激しい対立が起きた。

より最近で言えば、ヴァンスはトランプの最も物議を醸した外交政策のいくつかの顔として登場してきた。例えば、グリーンランド側が明らかに望んでいなかった訪問を熱心に主導したことなどだ。(デンマークのメディアによると、訪問に先立ち、アメリカ政府関係者はセカンドレディのウーシャ・ヴァンスを歓迎するグリーンランド人を見つけるのに苦労したと報じられている。)ヴァンスは予想通り、この任務により力を入れた。

(5)スティーヴン・ミラー(Stephen Miller

先月ワシントンを動揺させた「シグナルゲート」スキャンダルは、第2次トランプ政権にとって驚くべきリークであっただけではない。それはまた、トランプ大統領のトップ補佐官たちが、上司が部屋にいないときにどのようにコミュニケーションをとっているのか、そして誰が最終決定権を持っているのかを明らかにするものでもあった。

公開されたグループチャットのメッセージは、スティーヴン・ミラーに権力があることを示唆している。ミラーはトランプ第1次政権時代、大きな物議を醸した移民政策の立案者として名を馳せ、アメリカの指導者のより強硬な衝動を後押ししたことで知られる。彼は現在、トランプ大統領の国土安全保障補佐官およびホワイトハウスの政策担当次席補佐官としてより大きな影響力を持ち、特に政権の大規模な強制送還やアメリカの一流大学に対する十字軍の舵取りを担っている。

ミラーはその権限を利用して、政権と裁判所との衝突においてトランプ大統領の権限の限界を公に試してきた。最近では、誤ってエルサルヴァドルの刑務所に強制送還されたメリーランド州の男性キルマール・アブレゴ・ガルシアの件が記憶に新しい。トランプ政権は、アブレゴ・ガルシアがMS-13ギャングのメンバーであると主張しているが、ガルシアはこの主張を否定しており、刑事責任を問われたこともない。しかし政府は以前から、アブレゴ・ガルシアの強制送還は「行政上の誤り(administrative error)」であることを認めており、裁判所の裁定はホワイトハウスに彼の帰還を「促進(facilitate)」するよう求めている。

ミラーは反抗的である。フォックス・ニューズのインタヴューで、彼は裁判所の調査結果に反論した。ミラーは「彼は間違ってエルサルヴァドルに送られたのではない。彼は正しい場所に送られた、正しい人間なのだ」となった。

■乗客側(PASSENGERS

(6)マルコ・ルビオ(Marco Rubio

トランプ大統領の外交政策分野の最高ランク補佐官として、ワシントンの外交政策の優先事項を遂行するのが職務内容である人物にとって、ルビオはウクライナ、ガザ地区、イランに関する米国の唯一の責任者とはほど遠く、特にウィトコフにスペースを譲ることが多く、意思決定よりもダメージコントロールの任務が多い。

ルビオ国務長官がこれまでトランプ大統領の優先事項を最も顕著に実行したのは、何百人もの大学生のヴィザを取り消し、新規申請者のソーシャルメディアアカウントを監視させたことだ。

ルビオはまた、彼が監督する部局の大部分を解体する(半分程度と言われている)ことを命じられているようだ。これには、外国の偽情報を追跡するオフィスの最近の閉鎖、米国国際開発庁(USAID)の廃止、国務省の人権に関する活動の縮小などが含まれる。ルビオは最近、米国国際開発庁が国務省に吸収された後、米国国際開発庁の廃止を担当していたMAGAの忠実な支持者のピーター・マロッコを解雇したことで、トランプの熱烈な支持者の一部から国務長官に対する批判の嵐が巻き起こり、閣僚としての任期が残り少ないのではないかという憶測が再燃した。

おそらく、少なくともポップカルチャーに関して言えば、ルビオにとってこれまでで最も大きな出来事は、大統領執務室でトランプとヴァンスがゼレンスキー氏を激しく叱責する場面を、非常に不快そうな表情で目撃したことだろう。その場面はあまりにも気まずく、「サタデー・ナイト・ライヴ」で実際にパロディ化されたほどだ。

(7)ジェイミソン・グリア(Jamieson Greer

影響力を失い、何が起こっているのかを把握しているという印象さえ失った人物の中には、政権最大の政策において中心人物であるべきだった2人、すなわち米通商代表部(U.S. Trade RepresentativeUSTR)のジェイミソン・グリア代表とハワード・ラトニック商務長官がいる。トランプ大統領は当初、この2人を政権の貿易政策の責任者に指名していた。

この2人のうち、米通商代表グリアは最も不利な立場に立たされており、最も有名なのは、アメリカが貿易黒字を計上している同盟諸国に対しても巨額の関税が絶対に必要である理由について、連邦議会で証言している最中に、トランプ大統領がソーシャルメディアで方針を一変させ、グリアを困惑させたことで、グリアは窮地に陥ったことだ。米通商代表部は他国の差別的貿易慣行について綿密に記録された苦情申立書を作成したが、当初の「解放記念日」関税(“Liberation Day” tariffs)に使用された恣意的な計算式には、その作業は一切盛り込まれなかった。

トランプ大統領の1期目の任期中、国際パートナーは当時の米国通商代表ロバート・ライトハイザーが大統領の耳に心地よく響く、機転が利く貿易通の交渉相手であることを知っていたが、グリアがアメリカの貿易政策の策定において実際にどのような役割を果たしているのかは、今でも明らかではない。

(8)ハワード・ラトニック(Howard Lutnick

トランプは当初、商務長官であるラトニックを通商政策の最高責任者として想定していた。たとえ、トランプ自身がその舵取りをしっかりと握り、グリアが連邦議会で定められた権限を持ち、ベセントが財務省の役割拡大を主張し、ナヴァロが大統領の耳を持っていたとしても、である。

しかし、トランプ大統領の貿易戦争がエスカレートして以来、ラトニックは政権の政策に対する影響力の欠如を公の場で強調するばかりだ。市場では既に、ラトニックの攻撃的な口調や経済理解の欠如に懐疑的な見方をしていた。しかし、ラトニックもまたグリアと同様、トランプ大統領の鞭打つような通商政策とは一線を画している。ラトニックは、関税は交渉のためではなく、不公正な慣行を罰するためのものだと大声で何度も繰り返した。ラトニックは、アメリカ人が「小さなネジをねじ込んで(screwing in little screws)」iPhoneを製造する未来を約束したが、大統領が電子機器を懲罰的な中国制裁の対象から除外し、中国関税の根拠となる、既に疑問視されていたものを根底から覆すまでは。報道によれば、ホワイトハウスはラトニックをテレビから遠ざけようとしているようだ。

(9)キース・ケロッグ(Keith Kellogg

トランプ大統領のウクライナ・ロシア担当特使であるキース・ケロッグ退役中将は、トランプ新政権で自己主張するのに苦労している。ウクライナ戦争終結に向けたアメリカの努力の中で、彼はしばしばウィトコフの後塵を拝してきた。例えば、ケロッグは最近リヤドで行われた停戦交渉に出席しておらず、傍観されているのではないかという疑問が投げかけられている。

対露タカ派として知られ、他の政権高官よりもキエフに友好的と見られているケロッグは、最近パリで行われた戦争に関する協議には出席した。しかし、トランプ大統領がウィトコフにこの問題の処理にはるかに大きな信頼を置いていることは、不動産王ウィトコフの度重なるロシア訪問からも明らかだ。そしてトランプ大統領は、アメリカが戦争を終わらせる努力をすぐに放棄する可能性を示唆しており、ケロッグは更に影が薄くなる可能性がある。

(10)ピート・ヘグセス(Pete Hegseth

ヘグセスの国防総省長官としての在任期間は、混乱と論争に象徴されている。連邦上院で辛うじて承認されたわずか数週間後の2月、ヘグセスはベルギーで開催されたNATOの会議で、同盟諸国との「不均衡な関係を容認しない(tolerate an imbalanced relationship)」と述べ、ウクライナの同盟参加を否定した。ヘグセスはまた、ウクライナの2014年以前の国境線に戻ることは「非現実的(unrealistic)」だとも述べた。

フォックス・ニューズの司会者であったヘグセスは、歴史的に国防長官として不適格であると民主党は見ているが、その後、モスクワとの和平交渉においてキエフの最も重要な影響力を事実上放棄したと批評家から非難された。連邦上院軍事委員会の委員長である共和党のロジャー・ウィッカー連邦上院議員(ミシシッピ州選出)は、ヘグセスの演説は「新人のミス(rookie mistake)」だったと述べた。

ヘグセスは、トランプ政権がこれまでに直面してきた最大の論争の1つであるシグナルゲート事件の中心人物でもある。彼はシグナルのグループチャットで、イエメンのフーシ派に対する今後のアメリカ軍攻撃に関する機密情報を他の政権高官と共有したのだが、そのグループチャットには偶然、『アトランティック』誌編集長も含まれていた。

4月初旬、国防総省の監察総監代理(the Pentagon’s acting inspector general)は、シグナルのグループチャットにおけるヘグゼスの役割について調査を開始した。トランプ政権は、このチャットで機密情報は共有されなかったと主張しているが、報道はそれを否定しており、国家安全保障の専門家たちは、こうした主張は事実無根であると断言するとともに、このスキャンダルが主要同盟諸国との情報共有に深刻な影響を与え、国家を脅威から守ることがより困難になる可能性があると懸念を表明している。

そして今週、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ヘグゼスがシグナルでイエメン作戦に関する機密軍事情報を共有したという新たな疑惑を報じた。今回は、妻、兄弟、そして個人弁護士を含むグループチャットで共有されたとのことだ。

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トランプ大統領の経済政策を作っている5人の人物たち(The 5 people shaping Trump’s economic agenda

ブレット・サミュエルズ

2025年4月19日

『ザ・ヒル』誌

by Brett Samuels - 04/19/25 5:00 PM ET

https://thehill.com/homenews/administration/5256332-trump-economic-advisers/

ドナルド・トランプ大統領は、金融市場を揺るがし、時に矛盾したメッセージを伝える大規模な関税政策を実行するにあたり、異なる視点と経歴を持つ複数の経済アドヴァイザーに依存している。

スコット・ベセント財務長官は貿易協定交渉を主導し、共和党所属の連邦議員やウォール街の金融機関の幹部たちからは頼りになる人物と見られている。

ピーター・ナヴァロ上級貿易顧問は気難しい性格だが、関税に関してはトランプ大統領の揺るぎない見解を共有し、心底からの忠誠心を持っている。ハワード・ラトニック商務長官はトランプ大統領の長年の友人だが、メディア出演で何度か失言をしている。

加えて、ケヴィン・ハセット国家経済会議(National Economic CouncilNEC)委員長とジェイミソン・グリア米国通商代表部(U.S. trade representativeUSTR)代表は、トランプ大統領の経済計画の策定、実行、そしてそのメッセージ発信を影で支える高官たち(behind-the-scenes senior officials)だ。

ホワイトハウスに近い複数の取材源によると、異なる見解を持つ政府関係者がいることは大統領にとって目新しいことではなく、関税、貿易、経済政策に関して最終的な決定権を持つのは最終的にはトランプ大統領だということだ。しかし、経済学者たちがトランプ大統領の政策の潜在的な影響を警告する中、こうしたトップ経済担当アドヴァイザーたちは注目を集めている。

ある第1次トランプ政権のホワイトハウス関係者は次のように述べている。「彼らはA地点からB地点へ到達する方法に関して異なる見解を持っている。率直に言って、それがトランプ大統領の狙いだ。『私の前で戦い、誰が勝つかは私が決める(fight in front of me, and I’ll decide who wins)』という姿勢を望んでいる」。

(1)スコット・ベセント(Scott Bessent
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ベセントはここ数日、トランプ大統領のホワイトハウス内での評価が高まっており、彼の主張が大統領に受け入れられている兆候が見られる。

ベセントは、他の経済アドヴァイザーが交渉の余地はないと示唆した後、ホワイトハウスが先週記者団に対し、より厳しい「相互」関税(“reciprocal” tariffs)の90日間の一時停止について説明を行うために派遣したトランプ政権の高官だった。

ベセントは、日本をはじめとする各国との貿易協定締結交渉を主導してきた。木曜日、トランプ大統領とイタリア首相との会談中、ベセントは大統領執務室のソファに座っていた。トランプ大統領は、協定締結に向けた進行中の取り組みについて、ベセントに発言を委ねた。

ベセントは、市場への影響を懸念し、ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任について、トランプ大統領に警告したと報じられている。また、政権内外の多くの人々から、ベセントは大統領の政策を一般大衆とウォール街の両方に訴える形で明確に説明できる人物だと見られている。

「重要なのは、誰がグループにとって最良のメッセンジャーであるかだ。ベセントは最良のメッセンジャーだ」とトランプの支持者の1人は述べた。

第一次政権下では、トランプ・ワールドの中心人物ではなかった高官の台頭は、注目すべきものだ。ベセントは2015年にヘッジファンドを設立した。それ以前は、リベラル派の巨額献金者であり、共和党から頻繁に攻撃や陰謀論の標的となっているソロス家の資産を運用する投資会社に勤務していた。

(2)ハワード・ラトニック(Howard Lutnick
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トランプ大統領は、キャンター・フィッツジェラルド社の取締役であるラトニックを商務長官候補に指名した際、ラトニックが「関税と貿易政策を主導する(lead our tariff and trade agenda)」と述べた。これは、トランプが追求しようとする積極的な政策において、ラトニックがいかに重要な役割を担うかを早期に示唆するものだった。

確かに、ラトニックは政権による様々な関税導入において重要な役割を果たし、トランプ大統領の近くに頻繁にいる。しかし、特にメディア出演はホワイトハウス内の一部の人々を苛立たせ、その影響力の大きさを疑問視する声も上がっている。

ラトニックは3月のFOXニューズのインタヴューで、アメリカ国民にテスラ株への投資を促した。大統領が関税を撤回する数日前まで、ラトニックは決して撤回しないと断言していた。更に、トランプの貿易政策によって、何百万人ものアメリカ人が「iPhoneを作るために小さなネジを締める」ことになると示唆し、人々に不快感を起こさせた。

トランプ大統領の側近やウォール街の関係者の中には、ホワイトハウスの関税政策が失敗し(go awry)、経済が急落した(the economy into a tailspin)場合、ラトニックが責任を取るべきだと主張する人たちもいる。

共和党のあるストラテジストは、「ラトニックは明らかに一部の人々を怒らせている」と述べている。

しかし、ラトニックがすぐに解任される可能性は低く、依然として大統領の耳目を集めていると取材源は本誌に語っている。

ラトニックはトランプ大統領の長年の友人であり、大統領選挙に数百万ドルを寄付してきた。大統領専用機エアフォースワンに同乗する姿が頻繁に目撃されており、木曜日には大統領執務室で、アメリカの水産物輸出拡大に向けた取り組みを訴える大統領令の署名式に出席した。

(3)ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro
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ピーター・ナヴァロ(右)とスティーヴン・ミラー

ナヴァロの正式な肩書きは、貿易・製造業担当上級顧問(senior counselor for trade and manufacturing)だ。彼とトランプ大統領は、製造業をアメリカに呼び戻す手段(a tool to return manufacturing to the United States)として関税を活用するという点で一致している。

ナヴァロはトランプ大統領の関税政策を主導し、輸入品に対する新たな関税の導入を提唱してきた。また、鉄鋼・アルミニウム、そして自動車に既に課されている関税の重要性を主張してきた。

彼は、輸入品に10%の基本関税を課し、さらに数十カ国にさらに厳しい制裁関税を課す「相互」関税(“reciprocal” tariffs)を強く支持し、これを国内製造業の復活のための「国家非常事態(national emergency)」と位置付けていた。ナヴァロはかつて、ヴェトナムが全ての関税を撤廃するだけでは不十分だと示唆したこともあります。

しかし、トランプ大統領が中国を含むホワイトハウスとの協議への扉を開くと、彼の揺るぎない姿勢はホワイトハウス内の他のメンバーと足並みを揃えなくなっていった。ナヴァロの序列は、大統領顧問の億万長者であるイーロン・マスクがソーシャルメディアで公然と彼を攻撃したことで、さらに厳しく問われることになった。また、彼は連邦議会でも多くの友人を得ていない。

ホワイトハウスは内部の意見の相違を軽視している。ホワイト報道官のキャロライン・リーヴィットはマスクとナヴァロの口論について記者団に対して、「男はいつになっても少年(Boys will be boys)」と述べた。

更に言えば、トランプ大統領はナヴァロの忠誠心も高く評価している。ナヴァロは第1次政権でも内部抗争の中心にいたが、政権内にとどめられた。その後、ナヴァロは2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件に関連する議会の召喚状に応じなかったため、収監された。

(4)ケヴィン・ハセット(Kevin Hassett
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国家経済会議(National Economic CouncilNEC)の議長であるハセットは、事実上トランプ大統領のトップ経済アドヴァイザーである。

選挙運動中は大統領の経済政策を擁護する立場にあり、政権発足後も同様の役割を果たし、テレビや記者会見に出席して関税への批判に反論してきた。

ホワイトハウスに近い取材源は本誌に対し、ハセットは舞台裏では大統領の発言に常に同意している訳ではないと述べた。しかし、公の場では、ハセットはトランプ大統領のメッセージに忠実であり、大統領の行動やその先手を打つような発言はしない、一貫した人物と見られている。

例えば、ハセットは2021年に発表した回顧録の中で、自身と他のトランプ陣営の顧問たちが大統領に対し、FRB議長の解任は実際には不可能かもしれないし、合法かどうかに関係なく、金融市場を暴落させる可能性が高いと警告したと述べている。

金曜日、ハセットは慎重な姿勢を示し、記者団に対し、トランプ大統領とそのティームは、大統領がジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長を解任できるかどうかについて「引き続き検討する(will continue to study)」と述べ、FRBの政策を批判した。

ハセットは、トランプ大統領の最初の任期中、大統領経済諮問委員会(Council of Economic AdvisersCEA)の委員長を務めた。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間、ホワイトハウスに経済政策に関する助言を行い、CEAが米国の新型コロナウイルスによる死者数が2020年5月までに減少すると予測するグラフを発表した際には、厳しい批判に晒された。

(5)ジェミソン・グリア(Jamieson Greer
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あまり知られていないが、貿易交渉において同様に重要な人物が、米国通商代表を務めるグリアだ。

グリアはトランプ第1次政権時代、ロバート・ライトハイザー通商代表(当時)の首席補佐官を務め、関税や最終的な貿易協定に関する中国との交渉で最前列に立ち、重要な役割を果たした。彼はまた、NAFTAを再交渉し、2020年に調印されたUSMCAU.S.-Mexico-Canada Agreement、米・メキシコ・カナダ協定)にするための協議にも加わっていた。

グリアは、貿易に関して大統領の側近に誰がいるかということになると、見落とされる傾向がある。トランプ大統領は、ラトニックが商務省を運営するポートフォリオの一部として貿易を監督すると述べており、大統領自身もこの問題について強い見解を持っている。

グリアは、法令上はホワイトハウスの貿易交渉官だが、トランプ大統領はこれまで主要な経済協議の主導を財務長官に頼ってきた。

しかし、グリアは大統領のアジェンダを実行した経験を持つ人物としてトランプ・ワールド内で尊敬されており、連邦上院の承認公聴会では貿易赤字の削減と国内製造業の強化が優先事項であることを示唆した。

グリアは2月、複数の連邦上院議員に対し、「国際貿易システムを再構築し、アメリカの利益をより良くするための時間は比較的短いと確信している」と語った。

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●「対中強硬派、米政権で影響力低下 The Economist

日本経済新聞2025422

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO88177570R20C25A4TCR000/

トランプ米大統領が関税政策で世界を大混乱に陥れる前から、彼の対中戦略を見極めるのは難しかった。トランプ氏の決定は多くが気まぐれによるうえ、外交政策の顧問らも派閥に分かれ互いに対立しているようだ。

ワシントン用語で言う「優越主義者」はあらゆる脅威に立ち向かい、世界における米国の覇権を取り戻すとし、「優先主義者」は米国が対処できるのは中国だけでウクライナは見捨てるべきだと主張する。「抑制主義者」は米国は今後の戦争は避け、自国に専念すべきだと考える。

トランプ氏の考えがどうあれ、今、明らかになりつつあるのは優越主義者であれ、優先主義者であれ対中強硬派は影響力を失いつつある点だ。

関税騒動に隠れて目立たないが、それをよく表す出来事の一つが43日に公になった国家安全保障会議(NSC)の高官6人の解雇・異動だ。その前日、右翼の陰謀論者ローラ・ルーマー氏がトランプ氏と会い、彼らがトランプ氏に「忠実でない」と主張したのが影響したのは明らかだ。

6人を中国との戦争も辞さない「ネオコン(新保守主義者)」とみなし、排除したいという思いはトランプ・ジュニア氏ら抑制主義者とルーマー氏でほぼ一致している。

更迭された一人がNSCの重要技術担当のデビッド・フェイス上級ディレクターで、これは象徴的だ。父ダグラス氏も初期のネオコンの一人で、米国防総省高官として2003年の対イラク軍事作戦の立案に携わった。デビッド氏は現政権の最も経験豊富な中国専門家の一人で、第1次トランプ政権では国務省に勤務し、同盟国との関係強化を図るインド太平洋戦略の策定を支援した。その後、シンクタンクに移り、強硬な対中政策の必要性を訴えてきた。

NSCでは米国の対中技術輸出などの問題を担当し、中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業の非中国企業への売却を提案した。多くのバイデン前政権の取り組みを進める一方で、2月に発表した「アメリカファースト投資政策」など新しい政策にも取り組んだ。同政策はロシアと中国を「敵対国」とし、対中投資規制の枠を広げるものだ。

こうした政策への彼の見解が解雇を招いたのかは不明だが、元同僚らはこの解雇を孤立主義者らの勝利で、中国専門家らの敗北だとみている。

NSCの対中強硬派でアジア担当上級部長のイバン・カナパシー氏と、大統領副補佐官(国家安全保障担当)のアレックス・ウォン氏の先行きも今や不透明だ。ルーマー氏は、カナパシー氏が以前トランプ氏に批判的な人物と仕事をしていたことや、ウォン氏とその妻が中国系であること、妻の弁護士としての経歴を批判した。両氏はまだ解任されていないが、2人の上司であるウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当で対中強硬派)がすでに権威を失っているため弱い立場にある。

カナパシー氏は現政権で最も強力な台湾支持者の一人とされているため、中国と台湾当局は彼の動向を注視するだろう。1417年に米国の対台湾窓口機関、米国在台協会に駐在武官として赴任した。24年には第1次トランプ政権でNSCアジア上級部長だったマット・ポッティンジャー氏が編集した台湾防衛に関する本に寄稿し、同氏と共に昨年6月、頼清徳(ライ・チンドォー)台湾総統と会っている。

ポッティンジャー氏は211月の米議会襲撃事件へのトランプ氏の対応に不満を募らせ辞任したが、以来、中国に政治的変化を促すべく厳しい対中政策を提唱してきた。

こうした動きが米政府の中国への対応にどう影響するかは不透明だ。トランプ氏は貿易最重視で、対中政策を巡る高官らの対立を知らないかもしれない。だがもはや対中強硬派は1期目のように同氏に気付かれずに物事を進めるのは困難になる可能性がある。

米国が最近、中国の台湾支配に反対する断固とした共同声明を同盟国と共に複数出したことや、国務省のサイトから「台湾独立を支持しない」とする文言が削られたことについては、対中強硬派の関与を指摘する声がある。

国防総省でも勢力図は変わりつつあるかもしれない。要職経験のないヘグセス国防長官は3月にアジアの同盟各国を初めて歴訪した際、バイデン前政権の約束の多くを繰り返し、相手国を安心させた。それはトランプ政権がまだアジアでの軍事的優先事項を決めていなかったからだろう。

米上院は8日、国防総省ナンバー3の国防次官(政策担当)にコルビー氏を承認した。彼はヘグセス氏を支援する重要な役割を担うわけで、優先事項は今後明らかになる。

コルビー氏は中国を優先課題にすべき(台湾防衛を含む)だと声高に主張してきただけに元同僚らは適任だと言う。筋金入りの中国専門家ではないが、第1次トランプ政権では国防総省で中国とロシアを主たる敵対国とみなす国防戦略を策定した。退任後は中国のアジアでの覇権に対抗すべきだと主張するシンクタンクを設立し、本も出版した。

だがコルビー氏は最近はむしろ抑制主義者のようだ。台湾は米国の「存在にかかわる」問題ではないとし、台湾は防衛費を今の国内総生産(GDP)比3%から10%に上げるべきだと非現実的な主張を展開、韓国にも自力での国防に注力するよう求めている。

バンス副大統領やトランプ・ジュニア氏はこうした発言を支持している。彼らはトランプ氏は「眠れる竜の目を不必要に突く」のを避け、「中国と均衡を図って戦争を回避すべく」中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と交渉したい考えで、コルビー氏もこれを支持しているという。

コルビー氏の変節は政治的には賢明かもしれない。だが米国や同盟国の一部の防衛関係者の間で懸念を招いている。トランプ氏の欧州への見解と似たものを感じたためだ。トランプ氏の台湾への関心は低い。それだけに台湾防衛を犠牲にして、習氏から中国の貿易面で譲歩を引き出す一方、米国がアジアで既に持つ権益には手を出さないと約束させる取引をするのではないかと危惧しているのだ。

トランプ氏がアジアの同盟各国にも関税を課し、空母とミサイル防衛システムを最近アジアから中東に移したことなどから、彼が一貫した対中戦略を維持できるのかを疑問視する声もある。

国務省もルビオ国務長官が対中強硬派であるにもかかわらず、中国については限られた発言権しかないようだ。ルビオ氏の政策立案を担うマイケル・アントン政策企画局長は米国は台湾を防衛すべきでないと主張している。主な中国専門家数人が最近早期退職した一方で、東アジア・太平洋地域担当の次期トップに指名された弁護士のマイケル・デソンブル氏は駐タイ米国大使を1年務めた以外、外交経験がない。

中国がこうした人事を見逃すはずがない。中国政府に助言する中国の米研究者らは、第1次トランプ政権はNSCや国防総省、国務省の対中強硬派が強い影響力を持っていたとみている。復旦大学の孟維瞻研究員は最近、ある論評でトランプ現政権の対中強硬派の影響力は第1次政権に比べ弱まったと指摘した。米国はテックや貿易では強硬姿勢を強めていくが、国内問題重視からイデオロギーや軍事面ではそれほど圧力をかけてこないと孟氏はみている。

だがどれもトランプ氏の対中戦略を決定づけるものではない。この数週間をみても、彼の戦略は気まぐれですぐ変わる。それでも国際関係や政策を誰が日々管理するかは大事だ。トランプ氏が中国と取引しようとするか、あるいは貿易戦争が安全保障問題に波及した場合、同氏がとり得る選択肢や中国の反応を読む能力は重要だ。

米国が台湾を巡り弱腰な姿勢を見せれば中国の軍事行動を誘発するかもしれないし、挑発しすぎて軍事行動を招くかもしれない。一貫した戦略もなく中国との貿易戦争に突入するのは、それだけで多くのリスクを伴う。防衛面で一貫性を欠けば大惨事を招きかねない。

419日号)

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(終わり)
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 ドナルド・トランプ大統領による高関税の発表から1カ月が経過した。いくつかの妥協がなされているが、日本に関しては、24%の関税賦課が行われる予定で、それを回避するために、赤澤亮正経済再生担当大臣が2度の訪米で交渉を行っている。アメリカとしては、貿易拡大、特にアメリカ製品の輸出拡大を目指しているが、厳しい状況だ。

アメリカ側は、日本車とアメリカ車の不均衡を批判しているが、日本で売れるアメリカ車を作る努力もしないで、ただただ買えと言っているのは押し売りと同じだ。もしくはカツアゲだ。アメリカ産の農産物を買うと言っても、少子高齢化で人口減少、高齢社会によって食料品の消費量はどうしても減っていく。アメリカ産のトウモロコシをどうやって消費するかは難しい。結局、政府がアメリカらから製品を買って、海外援助の現物として支給する形にするしかないが、そのような税金の使い方が良いのかという問題は起きる。

 トランプ高関税(解放記念日関税)によって、株式市場は乱高下し、更には米国債の金利上昇という事態に陥り、妥協する形になった。高関税を支持したのは対中強硬派であり、そのグループが交代を余儀なくされたということになる。この高関税政策の主眼は、アメリカの貿易赤字削減であるはずなのに、高関税を武器にして、中国と争うことを主眼としたグループがおり、そのグループが過剰な中国をターゲットにした、関税戦争、貿易戦争を仕掛けようとしたが、中国が頑として妥協しないという姿勢を示したために腰砕けとなった。これは、ウクライナ戦争勃発後、西和賀諸国がロシアをSWIFTという国際決済システムから除外し、制裁を科して、ロシアを早々に屈服させようとして失敗したのと似ている。中露両国はアメリカからの制裁に慣れており、その準備を十年単位に進めている。対米自立(対ドル自立)ができている(食糧安保も含めて)。

高関税を何とか宥めたいグループの代表がスコット・ベセント財務長官だ。ベセントは昨年の大統領選挙ではトランプを支持し、関税政策も支持していた。しかし、対中強硬派の暴走を抑えることに成功した。それはもちろん、米国債金利上昇(米国債が中国によって売られた可能性が高い)という緊急性の高い事態を招いたこともあるが。スコット・ベセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表がこれから、二国間協議で各国からの妥協を引き出すということになるだろう。これは簡単に言えば、みかじめ料ということになるが、あまりにも阿漕なみかじめ料を取るようならば、アメリカの威信は地に堕ち、信頼を失うことになる。

 ナヴァロをはじめとする対中強硬派は高関税を使ってやり過ぎてしまった。対中強硬派はこれからトランプ政権で力を失っていくだろう。ナヴァロはトランプに殉じて刑務所に入ったくらいの忠誠心の高い人物であるから、象徴的な意味でも政権内に留まるだろうが、実権はなくなるだろう。トランプ政権の荒療治はなかなか厳しい状況に陥っている。

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トランプ関税ドラマの勝者と敗者(Winners and losers from the Trump tariffs drama

ナイオール・スタンジ筆

2025年4月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5243790-trump-tariff-china-trade-war/

ドナルド・トランプ大統領は水曜日、世界各国への関税賦課をほぼ一時停止し、方針を転換した。

唯一の大きな例外は、激化する貿易戦争(an escalating trade war)の焦点となっている中国だ。アメリカの対中関税は現在145%に達しており、中国は報復措置としてアメリカからの輸入品への関税を金曜日早朝に125%に引き上げた。

トランプ大統領が国際的な関税賦課を撤回したのは、アメリカ株が数兆ドルの下落を見せ、債券市場が警戒感を示し始め、経済界が景気後退の可能性を懸念する声が高まった後のことだ。

譲歩を決して認めようとしないトランプ大統領でさえ、投資家たちが動揺し始めていることを指摘し、「投資家たちは騒ぎ立てている(they were getting yippy)」と述べ、自身も債券市場の動向を注視していると述べた。

利上げ停止発表直後、水曜日の午後、市場は大きく上昇した。しかし、中国情勢への懸念が更に強まったため、木曜日には再び急落した。

ダウ工業株30種平均は1000ポイント以上、つまり、2.5%下落した。より広範なS&P500は約3.5%下落し、ハイテク株中心のナスダックはさらに下落し、4.3%下落した。

状況は流動的で、今後も多くのドラマが展開される可能性が高い。

トランプ大統領自身以外では、関税騒動の勝者と敗者は誰なのだろうか?

■勝者たち(WINNERS
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●スコット・ベセント財務長官(Treasury Secretary Scott Bessent

ベセントはここ1週間、トランプ政権内でより強い立場を築いてきた。

トランプ大統領と公に決別しようとしたことは一度もないが、包括的かつ過酷な関税水準に懐疑的な派閥のリーダーであることは明らかだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の木曜日の報道によると、ベセント財務長官は週末、トランプ大統領の専用機エアフォースワンに同乗し、金融市場の透明性の必要性を強調し、大統領に「他国との交渉に集中する(focus on negotiating with other countries)」よう助言したことで、内部での影響力を強めたようだ。

かつてヘッジファンドマネジャーを務め、過去には民主党の資金調達担当者でもあったベセントは、トランプ周辺の一部が主張する過剰な保護主義(hyperprotectionism)に対して、常に懐疑的だった。

より穏健なアプローチが勝利した後も、ベセントはトランプに対して忠誠心を持ち、トランプについて「これが彼の戦略だった(This was his strategy all along)」と報道陣に語った。
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●イーロン・マスク(Elon Musk

関税騒動の裏話はマスクに絡んでいる。

マスクは、トランプの側近で経済学者であり、最も保護主義的な立場を明確に示すピーター・ナヴァロと激しく対立していた。ナヴァロが、マスクがテスラ(ナヴァロはテスラを真のメーカーではなく「自動車組立業者(car assembler)」と揶揄していた)のせいで自由貿易に既得権益があると主張すると、マスク氏は彼を「間抜け(moron)」呼ばわりした。

更に言えば、マスクは壮大な関税制度に明らかに不安を抱いているもう1人の重要人物だった。例えば、トランプ大統領とヨーロッパ連合(EU)の間の緊張が高まる中、マスクは大西洋横断自由貿易圏(a transatlantic free trade zone)の設立を公に表明した。

ベセントと同様に、マスクも内部論争で勝利を収めた。

●民主党(Democrats

ここでは野党が勝利を収めることになる。

民主党は、昨年11月のトランプの勝利、党内の今後の方向性をめぐる議論、そして党に対する認識の急落を示す世論調査によって、大きく揺さぶられてきた。

しかし現在、トランプは中道層の有権者に深刻な打撃を与えかねない、最初の大きな失策を犯したと見られている。

世論調査では関税が広く不人気であることが示され、トランプの支持率も急速に低下しているように見える。

1月にトランプが大統領に就任して以降、初めて、民主党に追い風が吹いている。

■中間(MIXED

●ウォール街(Wall Street

投資家と金融機関にとって、これはジェットコースターのような激しい動きだった。

数日続いた急落は、水曜日にウォール街史上最大級の1日の上昇で打ち破られた。

そして木曜日、市場は再び急落した。

主要株価指数は、トランプ大統領の「解放記念日」関税(“Liberation Day” tariff)発表前の水準と、その後数日間に記録した安値とのほぼ中間水準にある。

ウォール街は、トランプ大統領の方針転換に影響力のある発言者が何らかの役割を果たしたという事実に、ある程度の安堵を抱くことができるだろう。

しかし、中国との緊張が解消されない限り、今後の道のりは依然として不安定だ。

●連邦議会共和党(Republicans in Congress

共和党の一部には、当初からトランプ大統領の関税措置に対する明確な不安が存在していた。

共和党所属の連邦議員の中には、関税が早期に緩和されることを期待する者もいた一方、連邦上院議員の中には、この問題に関する権限をホワイトハウスから奪還しようとする動きに加わった者もいた。

市場が今後改善すれば、共和党へのダメージは小さくなるかもしれない。

しかし、市場のヴォラティリティはまだ明らかに解消されておらず、それが共和党の政局にも不確実性をもたらしている。

■敗者(LOSERS
peternavarrodonaldtrump201
●ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)

ナヴァロの保護主義、アメリカが外国の競争相手につけこまれていると強く主張する姿勢は、大統領に支持を得ているように見えた。

ハーヴァード大学で博士号を取得しているにもかかわらず、著名な経済学者の中では異端児であるナヴァロにとって、かつてはそれが好意的な承認のように思えたに違いない。

しかし、トランプ大統領が関税賦課を停止したことで、その見方は大きく崩れ去った。

確かに、トランプ大統領は10%の関税を維持し、他国向けに「特注(bespoke)」の解決策を検討しているとされている。

しかし、ナヴァロを最も象徴する主張、すなわち十分な規模と期間の長期にわたる懲罰的関税がアメリカの製造業の再生を促すという主張は、再び遠ざかりつつあるようだ。

●中国(China

中国政府はトランプ大統領との対決において決して譲歩しないと強調し続けている。

中国商務省は「最後まで戦う(fight to the end)」用意があると約束しており、政府報道官はソーシャルメディアで毛沢東国家主席の好戦的な映像を共有し、その点を強調した。

貿易戦争が長期化すれば、中国だけでなくアメリカにも打撃を与えることは疑いようがない。

最新の統計によると、アメリカは毎年約640億ドルの携帯電話、300億ドルの玩具、200億ドルの繊維・衣料を輸入している。関税は、これらの品目のアメリカ国内の価格を上昇させるか、単に入手しにくくするだけだ。

しかしながら、中国への打撃は更に大きくなる可能性が高い。

中国の対米輸出は輸入の約3倍に上る。中国は近年、市場の多様化に努めているものの、アメリカとの貿易に大きな障害が生じれば、深刻な痛みをもたらすだろう。

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 ドナルド・トランプは仮想通貨・暗号通貨を長年「詐欺(scum)」と呼んできた。しかし、大統領就任後は仮想通貨を戦略物資と位置づけ、準備金制度を作り、犯罪捜査などで押収した仮想通貨・暗号通貨を保有するとした。下記論稿の内容を要約して紹介する。

ドナルド・トランプ大統領は最近、アメリカに戦略的ビットコイン準備金制度を設置する大統領令に署名し、これにより暗号通貨が石油や金と同じく戦略的資産として扱われることとなった。トランプ大統領の暗号と人工知能の責任者(czar)であるデイヴィッド・サックスは、この制度を「デジタル・ゴールド(digital gold)」のようなものだと説明した。

ビットコインは、現在広く採用されているが、まだ支払い方法としての普及には至っていない。サックスは、アメリカ政府が約20万ビットコインを保有していると推定しており、押収されたビットコインはこの準備金制度に充てられることに言及した。この制度は、納税者の負担を回避し、仮想通貨を公開市場で購入することによる詐欺の懸念を軽減する目的がある。

政府が新たにビットコインを購入する圧力がかかるだろうと予想しつつ、これが愚かな足掛かりとなる可能性を危惧する声もある。トランプは自身の暗号戦略準備金制度を発表し、その中にはビットコインやイーサリアム、さらにはXRPやソラナ、カルダノといったデジタル通貨が含まれている。

果たして政府の資金を投機的な通貨購入に使うことを防ぐかどうか懸念されている中、ホワイトハウスは今後、業界のリーダーを集めてサミットを開催する計画だ。トランプは自身が設立した仮想通貨企業に関与しており、SEC(米証券取引委員会)も仮想通貨に比較的友好的な姿勢を示している。

しかし、こうした動きを腐敗とみなす声もある。ビットコイン準備金制度の設立は、国家間での競争を促し、他国がどのように動くか注目される。政府が仮想通貨に資金を投じることのメリットとデメリットが議論される中で、ビットコインは依然として重要な資産の位置を占めていると考えられている。

 この政策は、スコット・ベセント財務長官が実現を主張してきた内容そのままだ。この政策はトランプ大統領というよりも、ベセント朝刊肝いりの政策である。ベセントは仮想通貨・暗号通貨の分野でアメリカが世界をリードすべきと訴えている。しかし、トランプ大統領自身はおそらく、「これは胡散臭い」と考えているだろう。彼は製造業の国家アメリカの再建を目指している。トランプの就任式や連邦議会での演説を見てみると、ウォール街や銀行、金融に関する言及はなかった。トランプは金融について根深い不信感を持っている。それでも、仮想通貨・暗号通貨について、「税金で買うというようなことではなく、没収したものを利用するなら良いだろう」という判断を下しているだろう。おそらく、アメリカ政府が積極的に仮想通貨・暗号通貨を市場から購入するということはないだろう。一種の妥協の産物としての政策であろうと考えられる。

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ドナルド・トランプ大統領は暗号通貨に全力投入(Trump Goes All in on Crypto

-米大統領は長年の懐疑主義(skepticism)を経てデジタル通貨(digital currencies)を歓迎した。
リシ・イエンガー筆

2025年3月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/03/07/trump-crypto-bitcoin-david-sacks-ai-summit/

ドナルド・トランプ大統領は木曜日遅く、アメリカに戦略的ビットコイン準備金制度(strategic bitcoin reserve)を設置する大統領令に署名し、暗号通貨(cryptocurrency)を石油や金と同様にワシントンが備蓄する戦略的資産(strategic assets)とした。トランプ大統領の暗号とAIの責任者(czar)であるデイヴィッド・サックスは、この比喩をさらに強調した。サックスはXへの投稿で、「この戦略的ビットコイン準備金制度は、しばしば 『デジタル・ゴールド(digital gold)』と呼ばれる暗号通貨のデジタル版のフォートノックス(a digital Fort Knox)のようなものだ」と書いている。

近年、多種多様な種類、価格、真剣さ、有効性のデジタル通貨が急増しているが、ビットコインはその先駆者であり、圧倒的に、最も広く採用されている。2008年にサトシ・ナカモト(その正体は今日まで秘密のままである)と呼ばれる匿名の人物またはグループによって作成されたビットコインは、グローバル金融システムの外で運用できる個人対個人の仮想通貨(a person-to-person virtual currency)として発表された。初期の支持者たちが思い描いた普遍的な支払い方法の地位にはまだ達していないが(極端なヴォラティリティ[extreme volatility]も原因の1つ)、株式に似た人気の投資となっている。

サックスは、アメリカ政府が現在保有するビットコインは約20万ビットコイン(現在の価格で約175億ドル相当)と推定している。犯罪行為の取り締まりで法執行機関に押収された既存のビットコインは、今回の準備金制度に充てられ、押収された他の暗号通貨は、大統領令によって作成された「デジタル資産備蓄(digital asset stockpile)」に統合される。

サックスは「これは納税者に1セント硬貨1枚たりとも負担をかけないことを意味する」と書いた。これは明らかに、アメリカの納税者のお金で仮想通貨をオープンマーケット(公開市場)で購入することが詐欺や汚職の蔓延(to rampant fraud and corruption)につながるという懸念を回避しようとする試みである。

『フォーリン・ポリシー』誌の寄稿者で、『50フィートブロックチェインの攻撃:ビットコイン、ブロックチェイン、イーサリアム、そして、スマートコントラクト(Attack of the 50 Foot Blockchain: Bitcoin, Blockchain, Ethereum & Smart Contracts)』の著者でもあるデイヴィッド・ジェラードは次のように述べている。「既に没収された通貨のみを準備金に蓄えるという決定に先立ち、新しいビットコインを買いに行くよう強い圧力がかかった。その圧力は続くと予想している」。しかし、ジェラードは続けて「これは依然として政府における仮想通貨の驚くべき、そして愚かな足掛かりとなる」と述べた。

トランプが政府の資金を使って、選挙運動の支援者の多くが所有する特定の暗号資産の価格を人為的に引き上げるのではないかという恐怖が広まっており、それは事実上インサイダー取引の一種である。(サックスは、トランプ政権に加わった際に保有する暗号資産を全て売却したと述べている。)

トランプは今週初めに自らその恐怖を煽った。3月の最初の日曜日にSNSTruth Social」に投稿された記事で、トランプ米大統領は、より広範で統合された「暗号戦略準備金制度(Crypto Strategic Reserve)」を発表した。これには、人気のデジタル通貨であるビットコインとイーサリアムに加え、あまり知られていないXRP、ソラナ、カルダノが含まれる。このうち2つは現在、それぞれ3ドル未満で取引されている。この計画は、アメリカ政府の資金が投機的なデジタル通貨の購入に使われることを懸念していた熱心な暗号資産支援者たちにとっても安心できるかもしれないが、ビットコイン準備金のみに取って代わられたようだ。

より詳細な内容は金曜日にホワイトハウスが業界の著名な幹部や投資家を招いて仮想通貨サミットを開催し、その場で明らかになる見込みだ。

業界の著名な関係者の多くは、トランプ大統領の大統領選挙運動と就任式基金に数百万ドルを寄付し、かつてビットコインを「詐欺(scam)」と呼んだ大統領を、今ではアメリカを「世界の仮想通貨の首都(the crypto capital of the world.)」にしたいと公言する大統領に変える一助となった。

いささか物議を醸すことになったが、トランプは昨年、ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial)という独自の仮想通貨ビジネスを立ち上げた。同社のウェブサイトには、大統領と3人の息子、ドナルド・ジュニア、エリック、バロンが、現在中東担当米国首席特使を務めるスティーヴ・ウィトコフと彼の息子のザックとアレックスとともに、経営陣に名を連ねている。トランプ大統領はまた、就任式の数日前に自身の名を冠した「ミームコイン(memecoin)」も立ち上げた。コインベース(Coinbase)はこれを「インターネットのミームやキャラクター、トレンドにインスピレーションを受けた仮想通貨の一種(a type of cryptocurrency that [is] often inspired by internet memes, characters, or trends)」と定義し、「実用性よりもエンターテインメント性に結びつくことが多い(often associated with entertainment rather than usability)」としている。大統領就任前、これは「トランプ・ダラー($Trump)」と呼ばれていた。就任式の2日後にはメラニア大統領夫人も自身のミームコインを発表した。

第一次トランプ政権下で仮想通貨規制を主導してきた米証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange CommissionSEC)は、これまでのところ仮想通貨に対してかなり友好的だ。SECは先月、トランプの仮想通貨事業に7500万ドルを投資した34歳の中国人仮想通貨起業家ジャスティン・サンに対する詐欺事件捜査を一時停止した。また、仮想通貨取引所コインベースとバイナンス(Binance)に対する執行措置を中止し、「技術革新を促進し、投資家を保護することを目的とした実用的な政策措置を勧告する」ための新たな仮想通貨タスクフォースを設置した。トランプがSEC長官に指名したポール・アトキンスも、仮想通貨支持派と広く見られている。

前出のジェラードは次のように述べている。「SECは、トランプ政権とバイデン政権の両方で過去8年間、仮想通貨と戦ってきた。なぜなら、これらのことは全て、法律の文言から見て、明らかに証券詐欺(securities fraud)だったからだ。これは露骨な泥棒政治(kleptocracy.)だ。これは腐敗(corruption)だ。それが現実だ」。

しかし、仮想通貨に強気な多くの支持者たちにとって、アメリカ政府が実際にビットコインを買いに行くことなく、ビットコイン用の戦略的準備金を持つことは最良のシナリオだ。(他の多くの人は政府による購入を期待していたようで、トランプ政権の発表直後にビットコインの価格が5000ドル近く急落した理由を説明できるかもしれない。)

仮想通貨に特化した投資会社エレクトリック・キャピタル社の共同創設者兼ジェネラル・パートナーであるアヴィチャル・ガーグは次のように述べた。「これが実際に起こったことに驚いている。この分野に長く携わってきた者として、アメリカ政府がビットコインを売却せずに保持するというのはちょっとおかしい」。

ガーグにとって、ビットコインの戦略的準備金制度の必要性は明白だ。彼は、他の仮想通貨とは異なり、SECは長年ビットコインを証券ではなく商品とみなしており、その世界的な供給量は1兆7000億ドルを超えると指摘する。つまり、ビットコインは株式や債券などの投資単位よりも、石油、金、穀物などの有形で取引可能な商品に近いものとして扱われている。

ガーグは「現時点では、金は世界的な商品として限界を超えていると思う。金から離れて他の希少商品に目を向けるのは理にかなっていると考える。仮想通貨は数学的に保証されている唯一の商品なので、直感的に非常に理にかなっている(intuitively makes a lot of sense.)」。

ビットコイン準備金制度を設立する最初の国はアメリカではないだろう。エルサルヴァドルは、ナイブ・ブケレ大統領がビットコインの法定通貨化を推し進める一環として、(物議を醸したが)これを行ったことで有名であり、ブータンも最近この動きに追随した。

ガーグは「小国がビットコインを導入し始めたら、大国が導入するのは時間の問題だ。だからアメリカが先手を打つのは本当に賢いやり方だと思う」と語り、ビットコインの世界的な導入に関しては、欠点はほとんどないと主張した。ガーグは「他の国が導入するなら、先手を打って価格上昇を実感する。他の国が導入しないなら、コストはほとんどかからない」と述べた。

おそらく、より大きな問題は、アメリカが仮想通貨を備蓄する必要があるかどうかだ。デジタル通貨を研究するピーターソン国際経済研究所の上級研究員マーティン・チョルゼンパ氏は次のように語っている。「アメリカは、緊急時に必要になるかもしれず、公開市場では購入できないかもしれない戦略的備蓄を保有している。アメリカには金融資産の戦略的備蓄はない。アメリカがビットコインを必要なときに購入できない世界は想像できないが、アメリカ政府が何らかの緊急時にビットコインを購入する必要があるというシナリオがどのようなものになるのか、私には想像もつかない」。

チョルゼンパによると、法執行機関が押収したビットコインやその他の仮想通貨を単に保持するだけでも逆効果になるという。チョルゼンパは「問題は、仮想通貨詐欺に対する訴訟のほとんどを取り下げているようで、仮想通貨を使って麻薬市場を運営していた人物の1人が恩赦を受けているため、実際に押収される仮想通貨の量は、予想されていたほどの潜在的な流入ではないかもしれないということだ」と述べ、機会費用(the opportunity cost)を考えると納税者のお金を使うのとあまり変わらないと付け加えた。彼は「これは機能的には債務を発行するのと同じだ。なぜなら、そのお金を集めて他の用途に使う代わりに、仮想通貨にとどまるため、それを保持することに関連する金利コストが依然として発生するからだ」と述べた。

ジェラードはより率直に「戦略的なビットコイン準備金制度の正当性は存在しない。それは愚かな考えのように思えるが、実際そうだ」と述べた。

しかし、ガーグにとって1つ明らかなことがある。ガーグは次のように述べた。「これが本当に示唆しているのは、暗号通貨がなくなることはないということだ。現時点でビットコインがゼロになるとは私には考えにくい。2年ほど前までは、ビットコインは基本的に極めて投機的で不安定であり、ネズミ講(ポンジ・スキーム、a Ponzi scheme)だ。しかし、政府が関与するネズミ講は、非常に長期間続く傾向がある」。

※リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。Xアカウント:@Iyengarish

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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。
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 第二次ドナルド・トランプ政権の顔触れで注目を集めていた財務長官に、スコット・ベセントが指名された。スコット・ベセントはウォール街の投資会社の創設者で、投資家として実績を上げた人物だ。なんと言っても著名な投資家であるジョージ・ソロスの下で、10年以上にわたり、投資担当を務めた人物である。ウォール街の真ん中を歩いてきた人物と言えるだろう。ベセントはトランプ側近として、減税と規制緩和、財政赤字削減を通じての経済成長を主張している。トランプが目指す、ロナルド・レーガン政権時代の経済政策を実行することになるだろう。
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ドナルド・トランプとスコット・ベセント

 トランプの最側近となっているイーロン・マスクは、商務長官に指名されたハワード・ラトニックを財務長官に指名するように求めていたという報道もあり、今回、ベセントが指名されたことで、財務長官に関しては、トランプが自身の意思を通したということになる。しかし、財務長官指名に時間がかかったことは、陣営内部で相当な検討や話し合いが行われたことが容易に推察される。

 ベセントの財務長官指名をはじめとして、第二次ドナルド・トランプ政権は、各担当省庁の人事に相当な介入を行う用意があることは分かるが、意外と中道派というか、強固な、時に狂信的なトランプ支持を表明する人物は入っていないという印象である。狂信的な支持者は力強い存在であるが、逆に、あまりにも熱心すぎるあまりに考えが異なるようになると、強力な反対者となってしまう。これは私たちの身近な生活においても良く起きることだ。

 財務長官の場合はやはり、ウォール街の主要な人物たちとの面識がなければ務まらない。そうした点で、ソロスの下で働いて、自身の会社を成功させたベセントは適任ということになる。ベセントが減税を主張し、規制緩和を行い、経済成長率を上げる、また、トランプが主張している関税に関しても賛成しているということから、ドル安傾向になると考えられるので、日本円との関係で言えば円高ということになる。既に、市場ではそのように織り込んで動いているようだ。

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●「米次期財務長官に投資家起用 ベセント氏、減税を主張」

11/23() 9:41配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/e958a70cf6a10487f4b589260d232f2eaccb533b

 【ワシントン共同】トランプ次期米大統領は22日、財政政策のかじ取りを担う財務長官に投資家のスコット・ベセント氏を起用すると発表した。これまで規制緩和や減税を通じた経済成長を重視する姿勢を示しており、トランプ氏が選挙戦で主張した法人税や所得税の減税などを担う。

 議会上院の承認を経て正式に就任する。ベセント氏は自ら創業した投資会社の運用責任者を務め、共和党の大統領候補者選びの段階からトランプ氏への支持を明確にしてきた。

 トランプ氏はベセント氏に関し「米国の新たな黄金時代をもたらす手助けをしてくれるだろう」とコメントした。

 ベセント氏は10日のウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿では「トランプ氏は、規制緩和と税制改革を通じ、供給サイドの成長を促進するという使命を担っている」と指摘。バイデン政権による財政赤字拡大やエネルギー政策を批判した。

 米財務省は、G7で協調するロシアのウクライナ侵攻を巡る制裁や、ウクライナへの財政支援を手がけてきた。トランプ氏は支援の見直しなどに踏み切るかどうかも焦点となる。

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ドナルド・トランプ大統領はリスクの高い財務長官にスコット・ベセントを指名:知っておくべきこと(Trump taps Scott Bessent for high-stakes Treasury chief: What to know

アシュレイ・フィールズ筆
2024年11月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/business/5006200-trump-taps-scott-bessent-for-treasury-what-to-know/

ドナルド・トランプ次期大統領は金曜日、億万長者の投資家スコット・ベセントを財務長官に選んだ。トランプは、関税引き上げ(increase in tariffs)と世界貿易活動の大幅な転換(major shifts in the country’s global trade operations)を求め続けている中で、ベセントを財務長官に選んだ。

ベセントはヘッジファンドのキー・スクエア・グループの創設者として巨額の利益を上げ、数十年にわたり民主党の大統領候補を支援してきた。しかし、今回、トランプの2期目を目指す選挙キャンペーンに資金を提供した。

トランプは声明の中で、「アメリカの主流とアメリカの産業の生涯のチャンピオンとして、スコットは、アメリカの競争力を高め、不公正な貿易不均衡を止め、成長を最前線に置く経済、特に来るべき世界エネルギー支配を通じた経済の創造に取り組む私の政策を支持している」と書いている。

(1)民主党員からトランプ支持者へ転身(Democrat turned Trump supporter

ベセントは民主党とつながりがあり、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、アル・ゴアの大統領選挙キャンペーンに献金し、2000年代には資金集め集会のホストを務めた。

自身の会社を設立する以前、ベセントは億万長者ジョージ・ソロスの下で10年以上、投資の最高責任者として働いていた。ソロスは民主党の最も著名な献金者の一人であるが、トランプ大統領とその同盟者たちから長年怒りを買っており、今年初めにはイスラエル・ガザ戦争に反対する大学キャンパスの抗議行動に資金を提供したと指摘する共和党員もいた。

『ナショナル・インタレスト』誌によれば、ソロスはアメリカ自由人権協会(American Civil Liberties UnionACLU)、全米家族計画連盟(Planned Parenthood)、ブレナン・センター(Brennan Center)など民主党の活動に対する強力な支持者である。

それにもかかわらず、『ウォールストリート・ジャーナル』紙の報道によれば、ベセントは長年トランプの周辺におり、JD・ヴァンス次期副大統領とも親しい。

(2)投資家としての背景(Background as an investor

ベセントのキャリアはソロスの下で飛躍的に成長し、1992年にロンドンの投資会社の対英ポンド賭けを手伝い、会社に10億ドルの支払いをもたらしたとロイター通信は報じている。

数年後、彼は最終的に450万ドルを集め、世界のマクロ経済をモニターする自身のヘッジファンドを立ち上げた。金融業界でのキャリアを通じて、投資家であるトランプの兄ロバート・トランプとも親密な関係を築き、一族の腹心であり続けた。

金曜日の発表前、ある情報提供者は本誌に対し、ベセントがトランプ政権に参加する場合、債券市場や為替市場での経験が有利に働くだろうと語っていた。

(3)トランプ選対の経済担当顧問(Economic adviser to Trump campaign

トランプは選挙期間中、経済情勢、特に減税と関税引き上げについて頻繁に語った。選挙期間中、ベセントは定期的にトーク番組に出演し、次期大統領の経済政策を宣伝した。

財務長官候補ベセントは第一次トランプ政権時に実施された減税の支持者で、連邦上院で人事承認されれば、国内市場の規制緩和を優先することになるだろう。

AP通信によると、ベセントは、国内総生産の3%に相当する財政赤字の削減と日量300万バレルの追加石油生産を通じて3%の経済成長を促進するという提案でトランプ前大統領に感銘を与えたということだ。

しかし、トランプ支持者の中には、ベセントが関税については弱いのではないかと懸念する者もいる。トランプはベセントに関する発表で関税について全く触れなかった。

(4)関税を支持(Support of tariffs

トランプはホワイトハウスへの立候補を通じて、アメリカ国内で調達・製造されていない製品への全面戦争(all out war)を宣言した。

共和党は、全ての輸入品に10~20%の一般関税を、中国からの輸入品には60%の関税をかけることを提案し、ベセントはその監督を任されることになる。ベセントは、関税は貿易協定を洗練させるために、制裁措置の代わりに使うことができると述べた。

AP通信によると、ベセントは8月に『ブルームバーグ』誌に対し、「ある意味、関税は制裁なき経済制裁(economic sanction without a sanction)とみなすことができると思う」と語った。

ベセントは「もし中国の経済政策が気に入らなければ、過剰な生産で市場を溢れさせれば、制裁を加えることもできるし、関税をかけることもできる。それは為替操作に対する答えともなる」と述べている。

(5)歴史上として初の同性愛者を公言した財務長官(First openly gay Treasury chief

ベセントが人事承認されれば、共和党政権で初めてLGBTQの閣僚が連邦上院で人事承認されることになる。ベセンは元ニューヨーク市検察官のジョン・フリーマンと結婚している。

ベセントは、2021年に連邦上院でLGBTQを公開した初の閣僚となった運輸長官ピート・ブティジェッジの足跡をたどることになる。

その前年、トランプ大統領はゲイであることを公表しているリチャード・グレネルを連邦上院の人事承認を必要としない国家情報長官代理に任命した。

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「三つ巴」:トランプ大統領の財務省指名権は宙に浮いている(‘Three-way tie’: Trump Treasury pick hanging in limbo

アレックス・ガンギターノ筆

2024年11月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5005347-trump-treasury-pick-limbo/

ドナルド・トランプ次期大統領はここ数日、財務長官に指名されそうな人物との会合に明け暮れているが、今のところ最終決定はどう転ぶか分からない状況だ。

アポロ・グローバル・マネジメントの共同設立者であるマーク・ローワン、連邦準備制度理事会の元理事のケヴィン・ウォーシュ、キー・スクエア・グループの創設者であるスコット・ベセントの3人は今週、次期大統領と会談するためにフロリダ州パームビーチを訪れた。

共和党関係者によると、会談にはトランプと、JD・ヴァンス次期副大統領、スコット・ラトニック、リンダ・マクマホン政権移行共同議長を含むトランプのティームのメンバーも含まれていたという。ローワンは金曜日にトランプのマー・ア・ラーゴ邸に戻った、と情報関係者は付け加えた。

ある共和党関係者は「今は試合前のボールのトスを待っている、そんな状況だ。 ボールは3人の候補者のうちの真ん中に位置している」と語った。

この情報提供者は、現状を「三つ巴(three-way tie)」と表現し、指名のタイミングはトランプが「車輪を回すのを止めた時(stops spinning the wheel)」になるだろうと付け加えた。

政権移行に詳しいある関係者は「流動的だ トランプ大統領は、ウォーシュの浮き輪がどう動くか見ている」と述べた。

ビル・ハガティ連邦上院議員(テネシー州選出、共和党)も財務長官の候補と目されており、火曜日にテキサス州で行われたスペースXの打ち上げにトランプ大統領とともに出席した。

トランプ政権移行ティームはコメントの要請に応じなかった。

トランプ大統領は、ウォール街の潜在的な不安を静めながら、自身の関税計画を支持した実績のある候補者を見つけるのに苦労しているため、財務長官の競争は数日間続いた。

財務長官は、トランプ大統領にとって最も重要な閣僚候補であり、木曜日にマット・ゲイツ前連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)が辞退したことで、司法長官候補がスポットライトを浴びた後に指名されることになる。

財務省を除き、そしてトランプ大統領がケリー・ロフラー元連邦上院議員(ジョージア州選出、共和党)に農務長官を依頼する可能性もあるが、トランプ大統領はまだ労働省と住宅都市開発省のトップを誰にするか選ばなければならない。

再選を逃したばかりのロリ・チャベス=デレマー連邦下院議員(オレゴン州選出、共和党)は、労働省の最有力候補と目されており、米国際トラック運転手組合(ティームスターズ)の支援を受けてきた。

財務長官の候補者の1人は、財務長官の代わりに国家経済会議(National Economic CouncilNEC)のトップに抜擢される可能性もある。ウォーシュはまた、ジェローム・パウエル議長の任期終了後の次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に興味を示している。

今週初めにハワード・ラトニックが商務長官に指名され、財務長官候補から外れ、リンダ・マクマホンは教育長官に指名された。

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 古村治彦です。
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 昨日、このブログでご紹介したドナルド・トランプ次期大統領の顧問弁護士で側近のボリス・エプスタインに関する続報が出た。それは、「エプスタインがトランプ政権の高官、閣僚に押し込むために、コンサルティング契約を結んで金を払え(月に3万から4万ドル、中には10万ドル)と迫った」という内容だ。エプスタイン自身が、トランプの最側近であるという地位を利用して、官職を売ろうとしていたということになる。そして、財務長官に指名されたスコット・ベセントに対しても売り込みを行い、拒絶されたという報道がなされている。トランプ陣営では調査を完了したが、エプスタインが実際にそのような行動をしたのかどうかは明らかにしていない。エプスタインは2016年の大統領選挙から、トランプ陣営に参加し、コミュニケイション担当として活動し、テレビ番組にも出演していた。
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スティーヴ・チャンとボリス・エプスタイン
 昨日、このブログでご紹介したように、現在のトランプの最側近の地位にいるイーロン・マスクがボリス・エプスタインに対して敵意を持ち、情報漏洩をしているだろうとエプスタインを怒鳴り上げて、エプスタインはそれを否定したということだ。そして、エプスタインは、自身がロシアで生まれ育ち、ロシアとウクライナ両国に親族が住んでいるということで、ウクライナ戦争停戦に関わりたい、特使のような資格で関わりたいということをトランプに述べていたということである。

 今回の件は、トランプ側近内で内紛が起きていることを示している。今回の大統領選挙ではイーロン・マスクに注目が集まり、彼がトランプ陣営内で大きな影響力を持つようになった。それを面白く思わない勢力がトランプ陣営内にいるようだ。彼らは情報をマスコミにリークして、マスクの思うような人事をさせまいとしたようだ。そして、今回、トランプ側近のエプスタインの売官(官職売買)行為が暴かれた。これで、イーロン・マスクの力は強くなるだろう。
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 今回のようなケースはトランプ政権に限ったことではない。アメリカの政権内部には色々な人々が参加しており、一枚岩、一致団結ということは難しいようだ。色々な大枠が絡み合い、衝突が生まれる。トランプ陣営では、イーロン・マスクの力が強くなる。これは間違いのないところだ。問題は、トランプがいつまでマスクを許容するかというところだ。トランプもまたいつかマスクと衝突するということも起きるだろう。

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トランプ・ティームがボリス・エプスタインの候補者指名を後押しするための「コンサルティング契約」を調査中(Trump team reviews Boris Epshteyn ‘consulting agreements’ to push potential nominees

ブレット・サミュエルズ筆

2024年11月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/5010245-trump-boris-epshteyn-consulting-agreements/

ドナルド・トランプ次期大統領の政権移行ティームは、トランプの長年の顧問の一人が、将来のトランプ政権での仕事を希望する人たちを擁護(推薦)するために支払いを求めていたという疑惑に関連して、コンサルティング契約の内部調査を行った。

AP通信や『ニューヨーク・タイムズ』紙を含む複数の報道機関は、ボリス・エプスタインが、トランプが先週財務長官に指名したスコット・ベセントを含む二人の人物を擁護するために支払いを求めていたと結論づけたと報じた。エプスタインは不正行為を否定している。

トランプ大統領のコミュニケイション・ディレクターであるスティーヴン・チャンは声明の中で次のように語っている。「標準的な慣行(standard practice)として、選挙運動のコンサルティング契約に関する広範な見直し調査が実施され、ボリスやその他の人物を含めて完了した。私たちは今、トランプ大統領がアメリカを再び偉大にするのを助けるために、チーム一丸となって前進している」。

エプスタインは声明の中で、この主張を「虚偽であり中傷的である(false and defamatory)」と述べた。

エプスタインは「私はトランプ大統領のために、そして彼のティームとともに働けることを光栄に思う。これらの偽の主張は虚偽であり、中傷であり、アメリカを再び偉大にすることから私たちの気をそらすことはない」と述べた。

個人へのアクセスやロビー活動のために手数料を取ることに違法性はないが、トランプ大統領は以前から、彼の名前や彼の近くにいることで利益を得ようとする人々に反感を抱いてきた。トランプ陣営は以前にも、トランプの支持を得たと不正確にほのめかす候補者を標的にしたことがある。

ニューヨーク・タイムズ紙は、2月にエプスタインがベセントに、マール・ア・ラーゴ周辺で投資家であるベセントに宣伝するために、月額3万ドルから4万ドルの報酬を提案したことが内部調査で判明したと報じた。ニューヨーク・タイムズによると、ベセントはこれを断った。

ニューヨーク・タイムズは、ベセントが今月初めにエプスタインに電話をかけ、自分を中傷していないかと質問したと報じたが、エプスタインは「ボリス・ファッキング・エプシュテイン」であり、コンサルティングのために彼を雇うには遅すぎると答えたという。

エプスタインはトランプ大統領の2016年と2020年の選挙キャンペーンに参加し、2020年の選挙結果に疑念を投げかける注目の取り組みの中心にいた。エプスタインは、トランプが2023年に34件の重罪で罪状認否を受けた際、マンハッタンの裁判所でトランプと一緒に登場した、ほんの一握りの側近の一人だった。エプスタインは長年にわたり、トランプ周辺に、批判者を生み出してきた。

保守系ウェブサイトの「ジャスト・ザ・ニューズ」が、エプスタインに対する疑惑を最初に報じた。ジャスト・ザ・ニューズとの短いインタヴューの中で、トランプ大統領は、大統領に近い人物がその近さを利用して金儲けをしようとするのは珍しいことではないと認めた。

トランプはインタヴューの中で「しかし、私のために働いている人間は、どんな立場であれ、金儲けを目的にしてはならない。彼らはアメリカを再び偉大にするためだけにここにいるべきだ」と語った。

次期大統領の息子であるエリック・トランプは、月曜夜の「フォックス・ニューズ」に出演した際、エプスタインに関する疑惑について質問された。

エリック・トランプはロウラ・イングラハムに対し次のように述べた。「聞いて欲しい、私はボリスのことを何年も知っているが、彼が善良な人間であること以外は知らない。とはいえ、私の父は信じられないほどはっきりと言っている。どんなことがあっても、そんなことはするな。信じて欲しいが、もしそんなことをしたら、しっぺ返しを食らうことになる」。

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●「米政権ポスト推薦で報酬要求か トランプ氏側近、CNNなど報道」

20241126 1506分 (共同通信) 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/369541

 【ワシントン共同】米CNNテレビなどは25日、トランプ次期大統領の側近ボリス・エプスタイン氏が次期政権の高官ポストへの推薦や政権関係者の紹介と引き換えに、候補者に報酬を求めた疑いがあると報じた。内部調査で発覚した。毎月10万ドル(約1540万円)を要求した例もあったとしている。エプスタイン氏は「根拠のない虚偽の主張だ」と否定した。

 トランプ氏の弁護士チームは、エプスタイン氏が投資家ベセント氏に報酬の支払いを求めた疑惑を調査。ベセント氏は支払いを拒否したという。

 ベセント氏はその後、次期政権の財務長官候補に指名されている。これ以外に少なくとも1件の疑惑があるとしている。

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●「トランプ氏側近のエプスタイン氏を調査 政権移行チーム」

The Wall Street Journal 週刊ダイヤモンド

国際The Wall Street Journal

20241127 10:59
https://diamond.jp/articles/-/354605

ドナルド・トランプ次期米大統領の側近であるボリス・エプスタイン氏は先週、トランプ氏の別荘「マールアラーゴ」のロビーで、スコット・ベッセント氏に突進する様子が目撃されている。政権移行チームが財務長官候補として検討していたヘッジファンドマネジャーのベッセント氏は、エプスタイン氏に「離れろ」と述べ、歩き続けようとした。だがエプスタイン氏は声を上げ、ベッセント氏を追い続けたという。大統領警護隊(シークレットサービス)など、この様子を目にした関係者らが間に割って入り2人を落ち着かせたと、現場にいた関係者らは明らかにした。そのエプスタイン氏は現在、トランプ氏の政権移行チームによる調査対象になっている。同氏はトランプ陣営に新たに加わったメンバーと舞台裏で衝突していた他、報酬を受け取ってさまざまな調整を行っていた疑いがかけられている。

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