古村治彦です。

 本日、2023年12月27日は、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)の発売日です。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカのシンクタンクであるランド研究所は、アメリカの軍事関係の研究所としては最先端に位置する。そもそもが第二次世界大戦後の戦争戦略についての研究のために創設された。ランド研究所ではウクライナ戦争についても研究がなされており、その教訓をアメリカ軍の改善にどう活かすかということになっている。
 下の記事は、ウクライナ戦争開戦から1年が経過した段階での、ウクライナ戦争における陸、海、空各軍の装備や武器に関する評価を行っている。アメリカは、50年までの第四次中東戦争で、イスラエルがエジプト・シリア連合軍(ソ連の指導を受けた)の奇襲を受けて、苦戦したことから教訓を得て、エアランド・バトル(AirLand Battle)という戦術を開発し、地上機動(ground maneuvers)、正確な航空戦力(precision air power)、全体的な速度(overall speed)の融合を再検討し、第一次湾岸戦争における電光石火の大勝利につなげたということだ。

 ウクライナ戦争では、アメリカ軍が提供した対戦車ミサイル、対空防衛システムが効果を発揮し、ロシア軍の戦車やヘリコプター、戦闘機の攻撃を食い止めた。ここから、アメリカ軍は、これまでの通常兵器、戦車やヘリコプター、有人戦闘機の有効性について、論文の筆者たちは議論を行うべきだとしている。これは非常に興味深い指摘だ。
 そして、実際の戦場では、高性能の武器よりも、性能は低くても大量にある兵器の方が有効であるという指摘も行っている。この指摘も非常に重要だ。アメリカは物量作戦で、ウクライナを支援しなくてはいけない。しかし、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも説明した通り、アメリカ連邦議会ではウクライナ支援予算は可決されず、アメリカ国民も「ウクライナ疲れ」「ゼレンスキー疲れ」に陥り、「もう十分にしてやったではないか」ということになっている。アメリカが物量で支援できなければ、ウクライナは戦争を継続できない。結果として、停戦となり、現状がそのまま確定される。これは、アメリカと西側諸国(ザ・ウエスト、the West)の敗北であり、ロシアと西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)の勝利ということになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカ軍はウクライナ戦争から教訓を得ることができるか?(Is the U.S. Military Capable of Learning From the War in Ukraine?

―米国防総省はこれまで痛みを伴う教訓を得てきた。そして、その痛みを伴う教訓を再び得ることになるだろう。

ラファエル・S・コーエン、ジアン・ジェンタイル筆

2023年2月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/02/us-military-lessons-war-ukraine-russia-weapons-tactics/

国家の防衛戦略の核心は、非常に高価なギャンブルのようなものだ。アメリカは毎年、防衛費として数千億ドルを費やしているが、これは全て、こうした投資によって次の戦争に勝利できるという前提に立っている。アメリカが直接関与する紛争がない限り、政策立案者たちがこうした賭けの結果として勝ったのかどうかを知る機会はほとんどない。その1つが、今日のウクライナのように、他国がアメリカの軍事装備や戦術を使って戦争をする場合である。別の例としては、1973年の第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争[Yom Kippur War]としても知られる)がある。イスラエルが敗北しかけたことで、ワシントンはアメリカの兵器と戦術を徹底的に見直した。つまり、どの兵器を購入するかだけでなく、21世紀の大国間戦争をどのように想定するのか、つまり、戦争が短期間で鋭利なものになるのか、それとも長引く消耗戦になるのかということを見直したのだ。

1973年、アメリカが最後に紛争を起こさずに紛争の未来を見通すことができた時、イスラエルはエジプト・シリア主導の連合軍の奇襲攻撃によって足元をすくわれた。最終的にはイスラエルが勝利したものの、この戦争はユダヤ国家にとって大失敗だった。イスラエルは、数十年にわたる戦闘経験を持つ熟練した軍事指導部を擁し、アメリカの兵器を装備していたにもかかわらず、800台以上の装甲車と100機以上の戦闘機を失った。イスラエルが第三次中東戦争(6日間戦争[Six-Day War])でアラブ連合軍を瞬く間に粉砕して世界を驚かせたわずか6年後、第四次中東戦争は対照的な結果となった。数週間も長引き、装備の損失を補うためにアメリカの緊急援助が必要となり、イスラエルは敗北に近づくという屈辱を味わった。

第四次中東戦争はアメリカへの警鐘となった。アメリカが直接参加した訳ではないとはいえ、アメリカ軍の指導者たちは、イスラエル軍が使用したアメリカの装備と戦術が、ソ連軍が指導したエジプト軍やシリア軍相手にどのような戦いを繰り広げたかをリアルタイムで目撃した。アメリカにとってはその光景は望ましいものではなかった。もしアメリカ軍が事態に対して適応しなければ、将来起こりうる紛争で同じように敗北に近づくか、それ以上になる可能性があるとワシントンは推測した。

そこで、アメリカ軍は戦争のあらゆる側面を研究することに取り組んだ。これらの教訓から、陸軍は新しい教義であるエアランド・バトル(AirLand Battle)を開発し、またヴェトナム戦争後、徴兵制度廃止後の軍隊の新たな青写真を示す最新の訓練計画を開発した。そして、冷戦中にアメリカがソ連と直接戦ったことはなかったが、第四次中東戦争とそこからアメリカが得た教訓は、地上機動(ground maneuvers)、正確な航空戦力(precision air power)、全体的な速度(overall speed)をどのように融合させるかについての知的基盤を提供した。第一次湾岸戦争中、ソ連軍が装備を提供したイラクに対するアメリカの電光石火の勝利を可能にしたまさにその戦略の組み合わせだ。半世紀を経た今でも、第四次中東戦争はアメリカ軍の将来に対する考え方や計画を形成している。

今日、ロシアの対ウクライナ戦争は、第四次中東戦争が20世紀の紛争に与えたように、21世紀の戦争に多くの示唆を与える可能性がある。何十年もの間、米国防総省は、スピードと正確さが支配する瞬間的な紛争や迅速な介入を想定して米軍を形成してきた。しかし、たった数日で終わると思われていた戦争が始まって1年経過し、ウクライナは産業戦争(industrial warfare)の時代が戻ってきたのかという疑問を投げかけた。結果は次のようになる。アメリカは、現在とはまったく異なるタイプの紛争に備える必要がある。

例えば、ウクライナ軍が地上戦で対戦車兵器(anti-tank weapons)や遍在する小型から大型の無人航空機システム(unmanned aerial systems)の使用に成功したことを考えると、戦車の継続的な重要性を疑問視する多くの論稿が既に発表されている。また、ウクライナ戦争では、最新鋭のモデルを含む75機ほどのロシア製ヘリコプターがウクライナ側に破壊され、そのほとんどが比較的古い防空ミサイルを使用され損傷されたことを考えると、現代の戦場にヘリコプターがまだ居場所があるのか​​という疑問も提起している。

また、ウクライナ紛争は主に陸戦であるにもかかわらず、この紛争は同様に米海軍に不穏な問題を提起している。ロシアの巡洋艦モスクワの沈没は、自国の海軍戦力を持たない国によって損傷または破壊された、他の十数隻の小型のロシア艦船と同様に、現代の戦争における大型水上艦船の生存能力について深刻な疑問を投げかけるものである。逆に、ウクライナが乗組員のいない小型艦艇の使用に成功したことは、海軍力を行使する別の方法の可能性を示唆している。

アメリカ空軍にとっての教訓もまた深甚なものとなる。NATOが飛行禁止区域を設定しなければ、ロシアの航空戦力はたちまちウクライナを圧倒するだろうという戦前の予測にもかかわらず、ロシアは航空優勢を得ることができず、ウクライナ空軍は開戦後1年近く経った今もなお飛行を続けている。ウクライナ戦争は、航空戦力が敵ミサイルの射程圏内でも活動できることを示している。さらに重要なことは、陸、海、空の各領域における現代の戦闘において、ドローンの重要性が増していることだ。実際、ウクライナ上空での戦闘では、ある意味で有人機が遠隔操縦機(remotely piloted aircraft)に後塵を拝している。

宇宙とサイバースペースにとっても重要な教訓が出てきた。ウクライナ戦争は、初の商業的宇宙戦争(commercial space war)と呼ばれている。このレッテルが正確かどうかは別として、ウクライナ軍のオンライン維持から世界中の紛争報道を形作る画像の提供まで、民間宇宙企業がこの紛争で大きな役割を果たしたことは間違いない。サイバースペースでは、ロシアが自慢していた能力は期待に応えることはなく、一部の人々が主張するように、サイバー攻撃は本当に次の大量破壊兵器なのか、それともその効果はもう少し限定的なものなのかという疑問が投げかけられている。

まとめると、ウクライナ戦争は、半世紀前の第四次中東戦争と同じような豊富な洞察をもたらしている。第四次中東戦争では、アメリカ軍が革新を余儀なくされるほど鮮明で暗澹たる状況が描かれたのに対し、ウクライナ戦争では、少なくとも今のところは、アメリカ軍の装備と戦術が勝利を収めているように見える。その結果、教訓に耳を傾け、変化をもたらそうという同じ原動力が生まれてこない。

名誉のために言っておくと、アメリカはウクライナがうまく活用してきた能力を倍増させている。例えば、アメリカ陸軍は、ウクライナでの支出を補うために、砲弾、ジャヴェリン対戦車ミサイルやスティンガー対空ミサイル、高機動砲ロケットシステム発射装置をさらに購入している。しかし、これらはおそらく簡単な教訓である。アメリカに何か違うことをするよう要求しておらず、同じものをもっと買うだけのことだ。

アメリカはまた、この戦争から得た教訓以外のものをもとに行動しないことも正しい。ウクライナ戦争が教訓にならない場合もある。例えば、ロシアは最新鋭機のほとんどをロシア領空内にとどめ、ウクライナの防空圏外に置いている。したがって、この戦争は、ステルス機と防空ミサイルのどちらが優勢かについて、今のところ結論が出ていない。

また、技術的な教訓は明らかでも、運用上の影響は明らかではない場合もある。例えば、戦車に関する論争について考えてみよう。キエフの戦いは、戦車が非常に脆弱であることを示した。同時に、ハリコフ州とヘルソン州でのウクライナの反撃の成功は、特に開けた地形で地を制するための機甲戦に代わる手段がほとんどないことを証明した。従って、アメリカ軍も同様に分裂していることはおそらく驚くことではない。海兵隊は戦車を放棄したが、陸軍はより近代的な戦車の開発を進めている。

しかし、特にウクライナの成功ではなくロシアの失敗から学ぶ必要がある場合、アメリカが戦争の厳しい教訓、つまり実際にアメリカ軍の方向転換を根本的に要求する教訓を受け入れるかどうかについては、まだ結論が出ていない。ロシアのヘリコプターがすべて失われたにもかかわらず、アメリカ陸軍は依然として、5種類の新しいヘリコプターに対して、費用をかけて開発する将来の垂直リフト計画を推し進めている。モスクワやその他のロシア艦艇が沈没したにもかかわらず、アメリカ海軍は依然として水上艦艇への投資を続けている。そして、空域ではドローンが優勢であるにもかかわらず、空軍は引き続き有人航空機部隊の開発と錬成に取り組んでいる。

さらに根本的には、アメリカは将来の能力capability)と現状の能力(capacity)のバランスを考え直す必要がある。1発数千万ドルのミサイルから、数億ドルの飛行機、数十億ドルの艦船に至るまで、アメリカ軍はたとえ取得するシステムの数が少なくなるとしても、高価な武器を標準にし続けている。しかし、ウクライナ戦争の最も重要な教訓は、安価で豊富な兵器は、実際には、精巧だが高価な兵器に勝る可能性があるということだ。実際、ロシアは極超音速ミサイルのような比較的少数の不思議な兵器を使用しただけで、ほとんど成功していないように見える。同時に、ウクライナ戦争は、第四次中東戦争がそうであったように、数が重要であることを示している。現代の戦争は多大な損害を伴う。

実際、ウクライナにパトリオット防空システム、エイブラムス戦車、レオパルド戦車、F16戦闘機を供与するかどうかが世間で激しく議論されているが、現在のところ、特定の兵器システムよりもその質量が戦局を左右するように見える。複数のコメンテーターが指摘するように、個々の能力は確かに役立つが、特定の兵器システムが十分な量提供されない限り、バランスを意味あるものに変えることはできないだろう。長期化する戦争では、誰が硬化の高い武器(silver bullet)を持っているかよりも、単に弾丸の数が多いかどうかが問題になる。そのため、アメリカは、より多くの弾丸を確保する必要がある。

公平を期すために述べるが、ウクライナ戦争は一つのデータに過ぎず、アメリカ軍はロシア軍ではない。アメリカのハードウェアは、ロシアの類似プラットフォームよりも生存性が高く、より思慮深い戦術を採用しているかもしれない。アメリカの指導者たちはまた、より思慮深く、ウクライナでのロシアのような弱点に陥らないかもしれない。そしてアメリカの戦略は、確かに、アメリカが迅速に勝利し、紛争が長期化しない可能性を高めているかもしれない。(イラク戦争とアフガニスタン戦争を見れば、そうではないことが分かるだろうが)。

ウクライナ戦争が意味するものをすべて受け入れるには、ロシアの失敗から学ぶべき教訓がまだあるという事実を受け入れる必要がある。少なくとも、今後のアメリカの防衛戦略の責任は転換しなければならない。なぜアメリカのヘリコプターや艦船、航空機はロシアのものと同じ運命をたどらないのか? なぜ次の戦争が長期化しないのか? なぜ次の戦争がウクライナ戦争のようにならないのか?

幸いなことに、大規模な戦争はめったに起こらない。ウクライナにおいてロシアが実施しているような戦争は、アメリカ人の血を犠牲にすることなく、アメリカのハードウェアと戦略的前提を試す有意義な機会となる。しかし、この戦争によってアメリカが次の紛争に備え、より賢明な未来への賭けをすることができるかどうかは、アメリカ軍が自己反省と点検に取り組むことができるかどうかにかかっている。そしてそれは、アメリカがウクライナの戦場での成功と勝利の可能性をどう見るかにかかっている。

もしアメリカがウクライナ戦争から教訓を学べば、50年前の第四次中東戦争後のように、今後数十年にわたってアメリカ軍の質的優位(qualitative edge)を確保できるかもしれない。そうでなければ、二度目のチャンスはないかもしれない。

※ラファエル・S・コーエン:ランド研究所空軍プロジェクト戦略・教義プログラム部長。

※ジアン・ジェンタイル:ランド研究所陸軍研究部副部長。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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