古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:スティーヴン・M・ウォルト

 古村治彦です。

 中東地域で起きている諸問題の多くはイスラエルが絡んでいる。イスラエル建国から拡大、占領という形で中東地域において不協和音を起こしている。現在でいえば、イラン戦争はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が引き起こした戦争である。イスラエル側にも理屈がある。イスラエルが自衛行動を取ることは制限されない。問題は、彼らが自衛という名の下に過剰な攻撃を民間人に加えていることであり、イスラエルへの正当な批判までも「反ユダヤ主義」というレッテルを貼って圧殺、封殺をしようとすることだ。そして、イスラエルの傲慢な態度の源泉はアメリカからの支援がある。アメリカから数兆円の軍事支援を受け、最新の兵器を備えて、中東地域の近隣諸国を圧倒している。核兵器までも開発し保有している。興味深いのは、こうして中東地域最強になりながら、一向に安全が確保されていないことだ。矛と盾をどんなに最新最強にしても、建国以来、安全安心を確保することはできなかった。

 アメリカはイスラエルを支援することを「国是(national credo)」としてきた。第二次世界大戦中にユダヤ人の大規模虐殺を止めることができなかったことが原罪のように突き刺さっている。また、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人がイスラエルを支援するために、その資金力と影響力を行使してきた。彼らは、いくつかの親イスラエル組織を構築し、政治的な活動、ロビー活動を展開してきた。イスラエルに批判的な政治家に対して、落選運動に資金提供をしたり、ユダヤ系が多く住む大都市圏であれば、集団的に相手候補に投票したりすることで落選をさせるなどの行動を取って、影響力を保持し、イスラエルに有利になる政策をアメリカ政府が行うように働きかけてきた。このようなアメリカからの手厚い支援がイスラエルを増長させてきた。

 イスラエルの傲慢と増長が中東地域における諸問題の原因となっている。それであるならば、問題を解決するためには、こうした傲慢と増長を取り去ることが必要である。そのためには、アメリカとイスラエルの間の「特別な関係」を見直し、改善していくこと、他国との関係に近づけていくことが、アメリカとイスラエル両国にとって重要だ。そうしなければ、お互いが抱きつき合ったままで、世界から孤立し、衰退、滅亡の途を進むことになる。

(貼り付けはじめ)

ガザの平和は長続きしないだろう(The Peace in Gaza Won’t Last

-イスラエルとアメリカの特別な関係が終わることが真の戦争終結のシグナルとなるだろう。

スティーヴン・M・ウォルト

2025年10月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/15/peace-gaza-israel-us-trump-middle-east/

ガザ地区での虐殺が少なくとも一時的に停止し、イスラエル人の人質とパレスティナ人の囚人の交換が行われ、苦しむガザ住民への救援物資がより自由に届くようになったことは、誰もが感謝すべきことだ。当然のことながら、ドナルド・トランプ米大統領は勝利宣言を行い、停戦合意を「新たな中東の歴史的な夜明け(historic dawn of a new Middle East)」と称している。しかし、彼は以前にも同様のことを述べており、歴代大統領の中にもそうした人がいた。彼の言葉が正しいことを願うが、確信は持てない。

今回の合意後、2つの疑問が依然として残っている。1つ目は、言うまでもなく「この合意は維持されるのか?」という点だ。そして、2つ目は、イスラエルと世界の他の国々との関係、特にアメリカとの「特別な関係(special relationship)」が、ついに永続的な平和を実現できるような方向に変化しているかどうかという点である。この2つ目の疑問は、最初の疑問への答えを大きく左右する。

最初の疑問に関して言えば、楽観視するのは難しい。他の批評家も指摘しているように、この「和平案(peace plan)」は、パレスティナ側の参加が最小限に抑えられた、イスラエルを強く支持するアメリカの「仲介者(mediators)」(スティーヴ・ウィトコフとジャレッド・クシュナー)によって作成された。最終的な形は、交渉による解決というよりは、最後通牒(an ultimatum)に近いものだった。この合意は、イスラエルの極右勢力の極端な野望(ガザ地区の併合やパレスティナ住民の永久追放など)の一部を拒否するものの、パレスティナ側には、ハマスの完全武装解除、全てのトンネルの破壊、あらゆる政治活動からの排除、そしてパレスティナ自治政府の抜本的かつ具体的な内容が未定の改革など、困難かつ検証不可能な(impossible-to-verify)一連の調整を求めている。トランプ大統領自身が議長を務める「平和評議会(Board of Peace)」が監督する、まだ特定されていない外部監視機関が、合意の遵守状況を監視し、双方が合意を遵守しているかどうかを判断する。

さらに重要なのは、この合意が全ての困難な政治問題を将来の不特定の時点に先送りし、イスラエルによるヨルダン川西岸地区併合の継続的な試みについては全く触れていない点だ。これは、ルーシーとチャーリー・ブラウンとフットボールの古い物語と同じだ。イスラエルは、パレスティナ側の遵守が不十分だと宣言し、再び圧力を強める(あるいは暴力を再開する)機会をいくらでも得るだろう。

したがって、この計画が成功すると信じるには、国際社会、特にアメリカが、イスラエルに対し、現在の合意を維持し、パレスティナとの長年の紛争に対する公正かつ恒久的な解決策を最終的に交渉するよう、容赦ない圧力(relentless pressure)をかけ続けると信じなければならない。確かに、トランプ大統領はついにイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の引き延ばし戦術にうんざりし、この限定的な合意を受け入れさせたようだ。これは、米大統領が、もし行使する意思があれば、どれほどの影響力を持っているかを示す全てだ。

しかし、ネタニヤフ首相、彼の右派支持者、そしてイスラエル社会自体が、ハマスやその他のパレスティナ過激派が完全に排除されたと確信していたとしても、真の二国家解決案(a genuine two-state solution)や何らかの形の単一国家連邦制(some form of one-state confederation)を受け入れる意思があるという証拠はどこにもない。トランプ大統領の極めて短い集中力、気まぐれな性格、そして細部への無関心さを考えると、一体誰が、この問題が継続的に実行されると真剣に考えているだろうか?

問題はトランプ大統領だけではない。外部勢力は、1956年、1967年、1973年の第四次中東戦争におけるアメリカとソ連の行動、そしてそれ以降のワシントンの幾度にもわたる行動のように、交戦当事者に一時的な停戦を促すことはしばしば行ってきた。しかし、公正かつ永続的な政治的解決を実現するために、十分な時間、注意、そして政治的資本を投入し、あらゆる影響力を行使する意思は決して示してこなかった。だからこそ、オスロ合意、2000年のキャンプ・デイヴィッド首脳会談、2007年のアナポリス会議、不運な結果に終わった中東カルテット(アメリカ、ロシア、ヨーロッパ連合、国際連合)、その他大々的に宣伝された和平構想は全て失敗に終わった。

もしアメリカによる継続的な圧力が必要なのであれば、私の2つ目の疑問が重要になる。トランプ大統領の個人的な意向に関わらず、アメリカとイスラエルの関係は和平の可能性を高めるような方向に変化しつつあるのだろうか?

2023年10月7日の攻撃は、国際社会の目から見てハマスに大きな打撃を与え、イスラエルのジェノサイド的対応も同様にイスラエルのイメージを損なった。イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、その他いくつかの国はパレスティナ国家を正式に承認した。これは確かに象徴的なジェスチャーであるが、人々の意識がどれほど変化したかを物語っている。イスラエルのアラブ世界との関係正常化に向けた努力は停滞している。ここアメリカでは、世論調査で支持の劇的な変化が示されており、イスラエルよりもパレスティナに同情的なアメリカ人が多く、イスラエルの行動はジェノサイド(あるいはそれに近い行為)に当たると考える人が41%、正当化できると考える人はわずか22%となっている。

イスラエルへの支持は民主党支持者と無党派層の間で最も急激に低下しているが、スティーヴ・バノン、タッカー・カールソン、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員といった著名な保守派も厳しい批判を表明している。民主党支持者は人権問題への懸念を強く訴えている一方、保守派は、ますます無法化するイスラエルへのアメリカの無条件の支援(unconditional U.S. support)は「アメリカ・ファースト(America First)」の理念と相容れないと考えている。

特別な関係の直接的なコストは、長い間明らかだった。イスラエルはアメリカから最大の軍事援助を受けている外国であり、アメリカ政府は、イスラエルが一人当たりの所得で世界16位にランクインし、相当数の核兵器を保有する繁栄した国であるにもかかわらず、公式には「質的な軍事的優位性(qualitative military edge)」を維持することを約束している。年間約40億ドルの軍事援助は通常、イスラエル・ハマス戦争中に急増し、アメリカの納税者は約220億ドルを負担した。この無条件の支援こそが、中東諸国の指導者たちが武器、投資、市場アクセスを得るためにアメリカ政府に媚びへつらい続けているにもかかわらず、アメリカが中東諸国の大半で依然として非常に不人気である主な理由である。イスラエルへの無条件の支援は、ワシントンが人権の揺るぎない擁護者であり、したがってロシアや中国などの大国ライヴァルよりも道徳的に優れているという主張を損なうことで、アメリカのソフトパワー(America’s soft power)を低下させている。こうした偽善は、トランプ政権がこうした理想を軽視していることを考えると、彼らにとっては問題にならないかもしれないが、それでもアメリカのリベラルな理想とは相容れない。

また、特別な関係は、人口1000万人にも満たない小国が、世界で最も強力な国の政治生活において、不釣り合いなほど多くの時間を割かれていることを意味する。インド、日本、インドネシア、ナイジェリア、ブラジルといった、より規模が大きく戦略的に重要な国々が占める紙面や放送時間と比較して、この小国が受ける報道量を考えてみて欲しい。オーストリアはイスラエルとほぼ同じ人口とGDPを持ち、多くの国際機関の本部が置かれているにもかかわらず、アメリカ人はオーストリアについて散発的にしか耳にしない。あるいは、この小国に特化したシンクタンクやロビー団体の数、そしてアメリカの政治家がこの国の問題に費やす時間の量を見てみよう。

さらに、この小国に関連する問題は、アメリカのより広範な文化や知的活動に日常的に波及している。現在大学を攻撃している背景には多くの要因があるが、ガザ地区の虐殺と、それを支援したアメリカの役割に抗議する学生たち(その多くはユダヤ人)から生じた、誇張された反ユダヤ主義(antisemitism)の非難によって、その攻撃はさらに激化している。学問の自由、ひいては言論の自由全般に対する攻撃は、イスラエルを批判から守り、特別な関係を維持したいという誤った願望だけによって動機づけられているわけではないが、そうした目的も一部の人々にとっては、その要因の一つとなっている。

最後に、この小さな国にアメリカの大統領がどれほどの時間と注意を費やしているかを見てみよう。ジミー・カーター大統領は1978年のキャンプ・デイヴィッド合意の交渉にほぼ2週間を費やし、ビル・クリントン大統領も同様の試みを行った。しかも、これは首脳会談以外でこれらの問題に費やした時間は含まれていない。ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ジョー・バイデンの各大統領は、イスラエル関連の問題に数日、場合によっては数週間を費やした。アントニー・ブリンケン国務長官は在任4年間でイスラエルを16回訪問したが、アフリカ大陸全体への訪問はわずか4回だった。トランプ大統領でさえ、イスラエル問題から距離を置くこと、あるいはイスラエル政策を部下に完全に委任することは不可能だと悟った。大統領、上級顧問、その他の高官がこれらの問題に費やす時間は、アメリカの安全保障と繁栄にとってより直接的に重要な問題に取り組むことができない時間となる。

だからこそ、私をはじめとする多くの人々は、イスラエルの規模と戦略的重要性、そしてアメリカの国益との合致を考慮し、アメリカがイスラエルと正常な関係を築くべきだと繰り返し訴えてきた。正常な関係においては、ワシントンはもはやアメリカとイスラエルの国益が同一であるかのように装うことはなくなるだろう。イスラエルがアメリカにとって望ましい行動をとれば、アメリカはイスラエルを支持するだろう。もしイスラエルがアメリカの意向に反する行動、例えば占領地における入植地の拡大といった行動をとれば、アメリカはイスラエルに強く反対するだろう。

イスラエルは歴史的起源、キリスト教徒による長く悲劇的な反ユダヤ主義の歴史、ホロコーストの遺産、そして非常に紛争の多い地域に位置していることから、通常の国ではないため、通常の関係は意味がないと主張する専門家たちもいるかもしれない。おそらくそうだろうが、2025年においては、イスラエルが「正常(normal)」ではない点は、実際にはアメリカの支援を維持するのではなく、むしろ縮小する理由となる。イアン・ラスティックが最近指摘したように、イスラエルはイスラエルの政治学者イェヘズケル・ドロールの「狂った国家(crazy state)」の定義にますます当てはまるようになっている。狂った国​​家とは、(1)しばしば他者に害を及ぼす攻撃的な目標を追求する、(2)そのような目標に対して極めて過激な関与を示す、(3)不道徳な行為を厭わないにもかかわらず、道徳的優越感を広く示す、(4)そのような目標を追求するために論理的な手段を合理的に選択する能力を持つ、(5)それらを追求するのに十分な能力を持つ、というものである。ラスティックの見解では、イスラエルの現状を決定づける重要な要因の一つは、「アメリカ政権が歴代のイスラエル政府にほぼ無条件の支援を与えてきたこと()has been the nearly unconditional support which American administrations have given to Israeli governments」であり、彼はその原因を「ワシントンにおけるイスラエルロビーの圧倒的な政治力(the Israel lobby’s super-abundant political power in Washington.)」にあると指摘する。

この立場は「反イスラエル(anti-Israel)」と言えるだろうか? 決してそうではない。無条件の支援はアメリカにとって有害で​​あり、イスラエルにとっては災難である。イスラエルは海外からの支持を失い、国内では分裂が深まり、メシア的右派(the messianic right)への傾倒がますます強まり、高学歴で経済的に流動的なエリート層の国外流出に苦しんでいる。「寛容な正常化(benevolent normality)」政策は、たとえそれがAIPAC、アメリカ・シオニスト機構、イスラエルのためのキリスト教徒連合、その他、特別な関係を維持し、イスラエルを現在の窮状に陥れ、何百万人もの不本意なパレスティナ住民に多大な苦痛を与えることを可能にしてきた団体の利益にならないとしても、長期的にはアメリカにとってもイスラエルにとってもより良いものとなるだろう。要するに、永続的な平和を望むなら、イスラエルとのより正常な関係が必要だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今年2026年7月4日、アメリカは建国250周年を迎える。1776年7月4日、フィラデルフィアで建国の父(Founding Fathers)と呼ばれる人々が独立宣言(the Declaration of Independence)に署名した日、現在の状況を想像していただろうかという疑問を自らに問うとき、彼らの思い通りの国家にはなっていないであろうと私は考えてしまう。この250年の間、アメリカは国力を増進し、やがて世界最大、もっとも豊かな国になっていったが、

それと同時に世界最強の国家として多くの戦争を戦ってきた。そして、今も戦っている。

少なくとも、1992年の大統領選挙以降、新大統領になる人々は、自分は戦争をしないで、平和の構築者になると訴えて当選してきたが、その約束はことごとく破られてきた。下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトはアメリカについて戦争中毒(addicted to war)と指摘している。そして、戦争中毒になってしまった理由として次の5点を挙げている。番号を振って当該箇所を引用する。

(引用貼り付けはじめ)

(1)冷戦初期から進行し、対テロ戦争中にさらに拡大した、大統領権力の長期的な強化(the long-term consolidation of executive power)である。私たちは大統領に、戦争と平和に関する決定、外交の遂行、巨大な情報機関の活動、そして秘密工作能力に関して、途方もない裁量権(enormous latitude)を与えてきた。

(2)アメリカ大統領は戦争に踏み切る自由があるのは、国民に直接費用を負担させないことを学んだからだ。朝鮮戦争は、国民が直接増税して費用を賄った最後の戦争だった。それ以降、大統領は借金をして財政赤字をさらに膨らませ、将来の世代にそのツケを押し付けてきた。

(3)志願制軍隊は戦争の意思決定を容易にする側面もある。なぜなら、危険に身を投じる人々は皆、その可能性を承知の上で志願しており、無作為に徴兵された者よりも不満を漏らす可能性が低いからだ。

(4)軍産複合体(the military-industrial complex)を非難することはできる。ただし、ロッキード・マーティンやボーイングが誰かに戦争を働きかけたと言っている訳ではない。しかし、武器を売るビジネスをしている以上、不安を売るビジネスをしているのと同じなのだ。つまり、脅威が満ち溢れた世界(中には先制攻撃が必要な脅威もある)を描き、外交の価値を貶め、武力による解決策を過剰に推し進めるということだ。

(5)武力行使があまりにも容易になり、リスクがほとんどないように思えるようになったからだ。巡航ミサイル、ステルス機、精密誘導爆弾、ドローンのおかげで、アメリカ(およびその他数カ国)は地上部隊を派遣することなく、また直接的な報復を(少なくとも当初は)あまり心配することなく、大規模な空爆作戦を展開することが可能になった

(引用貼り付け終わり)

 アメリカは戦争をしやすい体制を作り上げてきたということが言える。それがアメリカを帝国に押し上げた。しかし、アメリカの最盛期はすでに過ぎ去った。その国力は低下し続け、世界支配は過重な負担になっている。アメリカは世界支配を止め、西半球に立てこもろうとしている。アメリカが世界支配を止め、帝国であることを止めるということは、戦争中毒からの脱却、回復を目指すということである。その過程は数十年単位ということになるだろうが、これからはそのリハビリ期間ということになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカは今でもまだ戦争中毒だ(The United States Is Still Addicted to War

―なぜ歴代のアメリカ大統領全員が大規模な軍事作戦に巻き込まれるのか

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年3月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/02/trump-iran-war-united-states-addicted/

彼らが何を言おうと、戦争を避けることは不可能だ。1992年、ビル・クリントンは「問題は経済だ、馬鹿(it’s the economy, stupid)」と述べ、勢力政治(power politics)の時代は終わったと宣言して大統領選挙に勝利した。しかし、就任後、クリントンは複数の国へのミサイル攻撃を命じ、イラク上空に飛行禁止区域を設定し(時には爆撃も行った)、1999年にはセルビアに対する長期にわたる空爆作戦を展開した。

2000年、ジョージ・W・ブッシュはクリントンの過剰な外交政策を批判し、有権者に力強いが「謙虚な」(strong but “humble”)外交政策を約束してホワイトハウスを勝ち取った。その結果は皆さんがご存じの通りだ。8年後、バラク・オバマという若い連邦上院議員が大統領に就任したが、その大きな理由の一つは、彼が2003年のイラク侵攻に反対した数少ない民主党員の一人だったことだ。就任からわずか1年で、彼は何の功績もないにもかかわらずノーベル平和賞を受賞した。それは、人々が彼を真の平和構築者(peacemaker)だと信じたからに他ならない。オバマ大統領はいくつかの問題で努力を重ね、最終的にはイランの核開発計画を縮小する合意に達したが、同時にアフガニスタンへの無意味な「増派(surge)」を命じ、2011年にはリビア政権の転覆を支援し、様々な標的に対する標的攻撃やその他の暗殺をますます躊躇なく命じるようになった。2期目の任期が終わる頃には、アメリカは依然としてアフガニスタンで戦闘を続けており、勝利には全く近づいていなかった。

そして2016年、平凡な実業家でリアリティ番組スターのドナルド・トランプが大統領選挙に出馬し、「永久戦争(forever wars)」を公然と非難し、外交政策のエスタブリッシュメントを糾弾し、「アメリカ・ファースト(America First)」を掲げた。選挙での予想外の勝利の後、彼もまたアフガニスタンへの一時的な増派を発表し、対テロ戦争を全速力で継続させ、イラン高官のミサイル暗殺を命じ、軍事予算の着実な増加を主導した。トランプは最初の任期中に新たな戦争を始めなかったが、終結させた戦争もなかった。

ジョー・バイデンは、アメリカの無益なアフガニスタン侵攻作戦を中止することで戦争を終結させたが、前任者たちが無視してきた現実を認識したことで激しい非難を浴びた。バイデンは2022年のロシアによるウクライナ侵攻に対し、西側諸国の積極的な対応を主導したが、ウクライナを西側陣営に取り込もうとした彼の以前の努力が、戦争の可能性を高めたという事実を、多くの有機者が無視した。大統領就任後最初の2年間、パレスティナ問題を無視していたバイデンは、2023年10月のハマスによるイスラエル攻撃に対するイスラエルのジェノサイド的報復に対し、数十億ドル相当の武器供与と外交的保護を提供した。

バイデンの失策(そして再選を目指す彼の頑固な姿勢)は、トランプの大統領復帰を後押しし、トランプは再び平和の大統領となり、アメリカ国民に数兆ドルの損失と数千人の命を奪ってきた絶え間ない介入主義(interventionism)を終わらせると誓った。しかし、過去との決別どころか、トランプ2.0はかつて嘲笑していた歴代大統領よりもさらに好戦的な人物であることが判明した。アメリカはトランプ政権復帰後最初の1年間で少なくとも7カ国を爆撃し、カリブ海と太平洋では麻薬密輸の疑いだけで船舶乗組員を次々と殺害している。ヴェネズエラの石油資源を掌握するため、指導者を拉致し(その一方で、ヴェネズエラは新たな独裁者の手に委ねられた)、そして今、1年足らずで2度目のイランへの戦争を開始した。昨年夏にはイランの核インフラが「壊滅した(obliterated)」と世界に宣言していたにもかかわらず、今や「差し迫った脅威(imminent threats)」を阻止するために爆撃せざるを得なかったと主張している。

一体何が起こっているのだろうか? 1992年以来、民主、共和両党の歴代大統領は平和構築者(peacemaker)となり、前任者の行き過ぎた行為や過ちを繰り返さないと誓って選挙に立候補してきたが、就任すると遠い異国で軍事行動を起こす衝動を抗することができなかった。私たちは再び自問自答しなければならない。アメリカは戦争中毒になっているのだろうか?

トランプ大統領の2期目までは、この傾向は、軍事力をグローバルな自由主義秩序を推進するための有効な手段とみなしていた超党派の外交政策における「ブロブ(Blob エスタブリッシュメント)」の傲慢な考え方によって説明できたかもしれない。しかし、この説明ではトランプ大統領の2期目の行動をうまく説明できない。トランプ大統領は依然として既成勢力(いわゆる「ディープステート(the deep state)」)を憎み、1期目の失敗を彼らのせいにし、国家安全保障機関を骨抜きにし、自分の意のままに動く忠実な部下を要職に任命した。今回の戦争は、もはや「ブロブ」のせいにはできない。

こうした政策を擁護する人々は、アメリカには他に類を見ない世界的な責任があり、大統領は就任当初は武力行使を減らすという理想主義的な考えを抱いていても、すぐに世界中でアメリカの力を行使する必要性を痛感させられると主張するかもしれない。しかし、この説明の問題点は、これほど頻繁に爆撃を繰り返しても根本的な政治問題が解決されることはほとんどなく、アメリカの安全保障も向上せず、ましてや攻撃を受けているほとんどの国にとって良いことではないということだ。学習能力の低いアメリカでさえ、今頃はもうこのことを理解しているはずだ。だからこそ、疑問は残る。真の平和賞(FIFAから授与された偽りの賞ではなく)を熱望する大統領の下でさえ、なぜワシントンはこうした行為を続けるのか?

明白な理由の一つは、冷戦初期から進行し、対テロ戦争中にさらに拡大した、大統領権力の長期的な強化(the long-term consolidation of executive power)である。私たちは大統領に、戦争と平和に関する決定、外交の遂行、巨大な情報機関の活動、そして秘密工作能力に関して、途方もない裁量権(enormous latitude)を与えてきた。そして、行政府が必要に応じて嘘をつきやすくするような、ある程度の秘密主義を容認してきた。民主、共和両党の大統領は、この行動の自由を喜んで受け入れ、その権限を縮小しようとする試みを歓迎することはほとんどなかった。行政権の強化(the consolidation of executive power)は、連邦議会によって助長され、促進されてきた。連邦議会は、武力行使の決定に対して、意味のある監督を行うことにますます消極的になっている。そのため、オバマ政権が(テロとの戦いとイラク侵攻を承認した時代遅れの決議に代わる)新たな武力行使承認を積極的に求めた際、連邦議会は議員たちが記録に残ることを望まなかったため、承認を拒否した。そして今、彼らはトランプ政権がイランに対する無益な戦争を始める前に、自分たちの許可を求めなかったと不満を述べている。

第二に、サラ・クレプスとロゼラ・ジエリンスキーが指摘しているように、アメリカ大統領は戦争に踏み切る自由があるのは、国民に直接費用を負担させないことを学んだからだ。朝鮮戦争は、国民が直接増税して費用を賄った最後の戦争だった。それ以降、大統領は借金をして財政赤字をさらに膨らませ、将来の世代にそのツケを押し付けてきた。その結果、少なくとも5兆ドルもの費用がかかったイラク戦争やアフガニスタン戦争のような長期にわたる高額な戦争でさえ、ほとんどのアメリカ国民は経済的な影響を感じていない。

志願制軍隊は戦争の意思決定を容易にする側面もある。なぜなら、危険に身を投じる人々は皆、その可能性を承知の上で志願しており、無作為に徴兵された者よりも不満を漏らす可能性が低いからだ。また、トランプ(とその子供たち)のようなエリート層が兵役を完全に免れることを可能にし、富裕層や政治的コネを持つ人々がこうした決定によって個人的に影響を受ける度合いを低下させ、職業軍人を、本来守るべき社会との繋がりが希薄な、いわば「分離した階級(a separate caste)」へと徐々に変貌させている。しかし、こうした度重なる武力行使の決定を軍のせいにしてはならない。この流れを操っているのは非軍人の民間人なのだ。

しかしながら、軍産複合体(the military-industrial complex)を非難することはできる。ただし、ロッキード・マーティンやボーイングが誰かに戦争を働きかけたと言っている訳ではない。しかし、武器を売るビジネスをしている以上、不安を売るビジネスをしているのと同じなのだ。つまり、脅威が満ち溢れた世界(中には先制攻撃が必要な脅威もある)を描き、外交の価値を貶め、武力による解決策を過剰に推し進めるということだ。防衛企業が多くの外交政策シンクタンクの有力な支援者となっているのは偶然ではない。これらのシンクタンクは、脅威は至る所に潜んでおり、アメリカは地球上のどこで発生しようとも軍事行動を取らざるを得ない可能性があり、国防予算の増額こそが当然の解決策であると、アメリカ国民を説得しようと努めている。こうした能力を一度手に入れてしまえば、それを行使したいという誘惑に抵抗するのは難しい。AIPACやイスラエル・ロビーの強硬派といった特殊利益団体も存在し、大統領を説得して戦争に同意させたり、立場の弱い連邦議会指導者に反対させないように説得したりすることに成功することもある。

アメリカ大統領が戦争に中毒になった最後の理由がある。それは、武力行使があまりにも容易になり、リスクがほとんどないように思えるようになったからだ。巡航ミサイル、ステルス機、精密誘導爆弾、ドローンのおかげで、アメリカ(およびその他数カ国)は地上部隊を派遣することなく、また直接的な報復を(少なくとも当初は)あまり心配することなく、大規模な空爆作戦を展開することが可能になった。イランはアメリカや同盟諸国に対して様々な方法で報復するかもしれないが、アメリカがイランに与えることができるような規模の損害をアメリカ本土に与えることは期待できない。したがって、厄介な外交上の課題に直面したとき、あるいは国民の目を国内の問題やスキャンダル(ジェフリー・エプスタイン事件など)から逸らす方法を探しているとき、軍事的選択肢に頼りたくなる誘惑は非常に大きい。あるいは、決してハト派ではなかったリチャード・ラッセル連邦上院議員が1960年代に述べたように、「どこへでも行き、何でもできるのであれば、私たちは常にどこかへ行き、何かをするだろう」と考える理由がある。

私は時々これを「大きな赤いボタン(big red button)」の問題だと考えている。まるでどの大統領も机の上に大きな赤いボタンを置いていて、外交上の問題が発生すると(あるいは気を紛らわせる必要があると)、側近たちが大統領執務室にやって来て問題を説明するかのようだ。彼らは、ボタンを押せば決意を示すことができ、大統領が行動を起こしていることを示せる、そして良い結果が生まれるかもしれないと指摘する。彼らが正直であれば、ボタンを押す絶対的な必要性はなく、そうすることで事態が悪化する可能性もあると認めるかもしれない。しかし、リスクは小さく、コストも許容範囲内であり、ボタンを押さなければ問題はほぼ確実に悪化し、大統領は優柔不断に見えるだろうと彼らは大統領に念を押す。そして、彼らは厳粛な口調でこう締めくくる。「あなたの選択です、大統領閣下(It’s your choice, Mr. President.)」。このような甘言に一貫して抵抗できるのは、近年の大統領のほとんどよりも優れた判断力を持つ指導者だけだろう。

明確に言えば、今回の暴力の嵐は、2003年のイラク侵攻以来、アメリカ軍による最も不必要な流血行為と言えるだろう。しかし、この出来事がアメリカの戦争中毒(America’s addiction to war)について物語っていることは、現アメリカ大統領について語っていることと同じくらい重要だ。

骨棘の話は徴兵を逃れるための口実だったのではないか? そうだとすれば、トランプ自身は志願兵制の原則には当てはまらないということになるのだろうか?

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 イラン戦争は現在のところ、停戦になっているが、ホルムズ海峡をめぐり、イランとアメリカがお互いに海上封鎖を行い、にらみ合いという状況になっている。イラン側も石油輸出ができないということになると、世界は本格的な石油欠乏に陥る可能性が高く、非常に厳しい状態が続く。価格が上昇するだけならまだしも、物品がないという状態になることが恐ろしい。

 アメリカの外交政策の大きな潮流として、介入主義とリアリズムがあり、介入主義には、共和党系となるとネオコンサヴァティヴィズム、民主党系となると人道的介入主義がある。介入主義は海外の非民主的な国家の民主化(democratization)を求める。もっとも、アメリカの利益にかなう非民主的な国家の民主化は求められない(例:サウジアラビア、中央アジア諸国)。最悪の場合には、戦争に訴えてでも民主化するということになる。

 イランに関しては、1979年のイスラム革命によって、中東における親米の非民主的な王政から反米のイスラム共和国となって以来、アメリカの介入主義にとっては攻撃材料となってきた。1980年から1988年のイラン・イラク戦争は、アメリカがイラクのサダム・フセイン大統領を支援して、イスラム革命の拡大を防ぎ、イランの弱体化を進めるために行われた戦争だ。イスラム革命に関しては、中東地域の国々にとっても迷惑な話ということになる。

 アメリカ国内にはイラン攻撃を主張する人々がいた。今回ご紹介する論稿ではそのような人々の実名が出ている。そして、論稿の著者スティーヴン・M・ウォルト教授は、そうした人々に責任を取ることを求めている。それは何も引退せよとか筆を折ってしまえ、職を辞せよということではなく、彼らが間違っていた点を分析し、反省し、誠実にそのことを述べることである。彼らの主張を封じてしまうことではない。思想の自由、表現の自由は誰であっても守られねばならない。反省について私たちは歓迎し、その誠実さを称揚すべきである。しかし、こうしたことは非常に難しい。しかし、過ちを繰り返さない、未来において過ちの可能性を少しでも減少させるためには、間違いや誤りについて「寛容」でなければならない。

(貼り付けはじめ)

アメリカの戦争推進派エリートたちは責任を取らされるべきだ(America’s Pro-War Elites Must Be Held Accountable

―イランにおける破滅的な冒険を擁護した者たちは責任を逃れることはできない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年4月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/09/america-pro-war-elites-accountable-responsibility/?tpcc=recirc_latest062921

アメリカは多くの点で優れているが、エリートたちに責任を取らせること(holding elites to account)は得意ではない。ジェラルド・フォード大統領はリチャード・ニクソンを恩赦し、ジョージ・HW・ブッシュ大統領はイラン・コントラ事件の責任者を恩赦し、バラク・オバマ大統領は拷問の違法使用を承認した者たちを訴追しなかった。ヴェトナム戦争とイラク戦争という悲惨な戦争の立案者たちは、その後も生涯にわたりエスタブリッシュメント側の尊敬される一員であり続け、場合によっては著名な機関で指導的地位や閑職に就き、望む時にいつでも外交問題について意見を述べ続けた。2008年の金融危機を引き起こした詐欺師たちも責任を問われることはなく、私たちはただ過去を水に流して前に進んだだけだった。こうした経緯を考えると、アメリカが過去の過ちを繰り返す傾向があるのも不思議ではない。

イランとの戦争はその典型的な例である。火曜日に発表された停戦が維持されるかどうかはまだ分からないが、2025年6月のイラン攻撃以降に、再び戦争に突入したことがとんでもない失策であったことは既に明らかだ。2カ月前、ホルムズ海峡は開かれており、イランは封じ込められ、その指導者たちは不人気で、石油と天然ガスの価格は低く、アメリカの兵器備蓄は豊富だった。今日、石油と天然ガスの価格は高騰し、インフレは上昇し、イランは海峡を支配し、通行料で収入を得ている。そして、イラン政府はより若くなり、より強硬路線で、国民の支持も高まっている。アメリカのミサイル備蓄は枯渇し、中東地域の主要施設のいくつかは深刻な被害を受けている。そして全世界は、自分が何をしているのか全く分かっていない衝動的な老人にアメリカが率いられていることを思い知らされた。この時点で、不必要な戦略的大惨事(an unnecessary strategic disaster)となった事態の責任者に責任を負わせることを遅らせる理由はない。

 

 

 

 

 

 

 

戦争という愚かな決断の責任は誰にあるのか、そして誰に責任がないのかについて、既にいくつかの予備的な見解を述べた。もちろん、第一の責任はドナルド・トランプ米大統領、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフ、そして彼らを支援した側近たちにある。しかし、このような決断は突如として起こるものではない。民主政治体制国家においては、愚かな選択戦争への道は、評論家、ロビイスト、補佐官、そしてその他の自称専門家によって舗装される。彼らは時に何年もかけて、戦争という名の犬を解き放てば厄介な外交問題が消え去ると政策決定者を説得しようとする。彼らの努力によって、軍事力行使という考え方が徐々に常態化し、何千もの命がかかっている重大かつ運命的な決断が、数ある選択肢の1つに過ぎないように思えてしまう。

戦争の公式はほぼ常に同じだ。まず、選んだ敵を悪の権化(the epitome of evil)であり、改革不可能な存在として描き出す。次に、戦争推進派は、作戦は迅速かつ容易で、費用もかからず、広範囲にわたる長期的な利益をもたらすと断言する。そして、残り時間がなくなりつつあり、今行動を起こさなければ悲惨な結果を招くと繰り返し警告する。彼らは、多くのものを爆破した後に犠牲となる罪のない民間人や、生き残った人々が直面する苦難については意図的に沈黙を守り、攻撃対象となっている住民は私たちの行動を歓迎するだろうと自信満々に予測する。このお決まりのパターンは、好機が訪れ、愚かな指導者が戦争推進派の主張が正しいと判断するまで、延々と繰り返される。

それでは、トランプ大統領の開戦決定を正当化するのに一役買った主要人物は誰だろうか? 『ニューヨーク・タイムズ』紙のブレット・スティーヴンスは間違いなくその1人だ。スティーヴンスは長年にわたりイランとの戦争を声高に主張しており、2003年のイラク侵攻を支持し(そして今も擁護している)のと同様である。世界有数の報道機関の要職に就く彼は、2024年に「私たちは絶対にイランへの攻撃をエスカレートさせる必要がある」と書いた。開戦前夜にも「イラン攻撃の論拠」と題したコラムでこの見解を改めて表明した。現在もなお、彼はこの戦いに全力を注いでおり、その後もコラムを執筆し、戦争は順調に進んでいると読者に保証し、アメリカの努力を緩めることを戒めている。もしあなたが税金を戦争犯罪に使われることを喜び、ガソリン価格に1ガロン6ドル以上払うことを楽しんでいるなら、彼に感謝の手紙を送っても構わない。

スティーヴンスと同様、アトランティック・カウンシルのマシュー・クローニグも、2012年の記事「イラン攻撃の時」をスタートにして、10年以上にわたりイランへの戦争を主張してきた。この記事は、戦略分析の失敗例の典型例と言えるだろう。クローニグは、戦争がどのような結果になるかという最良のシナリオと、戦争が起こらなかった場合に何が起こるかという最悪のシナリオを混同していた。クローニグはその後の著書でも同様の主張を繰り返し、以来、その見解を微塵も変えていない。2025年にも再び戦争を主張し、イランが報復措置を取ることはないだろうから、大規模な戦争に発展する危険性はほとんどないと主張した。(どうやらイランの指導者たちは彼の分析を読んでいないようだ。もし読んでいたとしても、明らかに納得しなかっただろう。)

アメリカン・エンタープライズ研究所のダニエル・プレトカ、マーク・ティーセン、マイケル・ルービンもまた、戦争の熱烈な支持者として知られている。開戦前夜、これらの筋金入りのタカ派は長時間のポッドキャスト対談を行い、トランプ大統領が政権交代(体制転換、regime change)を主導することを期待する理由を説明し、イラン政府の転覆は容易だと予測し、指導者暗殺の是非について何気なく議論した。プレトカは、戦争の費用増大とトランプ大統領の明らかな焦りにもかかわらず、依然として戦争を擁護しており、3人とも戦争による人的被害、度重なる国際法違反、あるいは戦争犯罪の可能性について、全く懸念を示していないようだ。

フーヴァー研究所のナイオール・ファーガソンも同様に責任を問われるべきだ。2003年のイラク侵攻を支持した人物にふさわしく、ファーガソンは2026年初頭のポッドキャストで、アメリカは昨年夏に始めた「仕事を完遂するべきだ(finish the job)」と述べた。ファーガソンは、「この邪悪な政権を地球上から排除することは、間違いなくイランの一般市民にとって有益であり、地域全体、ひいては世界にとっても有益となるだろう。さあ、実行しよう」と述べた。トランプ大統領がファーガソンの願いを叶えた際、ファーガソンは『フリー・プレス』誌の読者に対し、「アメリカとイスラエルによるイラン・イスラム共和国との戦争について、私が自信を持って約束できることが1つある。それは、戦争は長くは続かないということだ」と断言した。常に柔軟な姿勢を見せるファーガソンは、最近では当初の楽観論から後退し、戦争が「世界規模(global)」に拡大する可能性について疑問を呈しているようだ。戦争を煽る前に、その可能性についてもう少し考えてくれていたらよかったのにと思う。

ジャック・キーン退役大将(四つ星)も注目に値する。他の退役軍人たちは今回の戦争の是非を問うているが、キーン大将は特に一貫して戦争を支持してきた。開戦前、彼はフォックス・ニューズに対し、軍事力行使は「最善の選択肢(the best option)」であり、政権交代のための「歴史的な機会(historic opportunity)」だと述べた。開戦後もキーン大将は戦争を擁護し続け、トランプ大統領の決定を称賛し、戦争はすぐに終結すると予測している。

対イラン好戦主義者について語る上で、マーク・デュボウィッツと、彼が率いる民主政治体制防衛財団(the Foundation for Defense of DemocraciesFDD)の様々な関係者を外すことはできない。イスラエル・ロビー(the Israel Lobby)の主要組織であるFDDは、イランのウラン濃縮能力と濃縮ウランの備蓄量を大幅に削減し、イランが核兵器を開発するまでの時間を延長するはずだった包括的共同行動計画(核開発合意、JCPOA)に最も積極的に反対した組織の1つだ。当初の合意を阻止できなかったFDDは、イランが完全に合意を遵守していたにもかかわらず、トランプ大統領が最初の任期中にJCPOAから離脱し、聖職者政権を打倒することを目的とした「最大限の圧力(maximum pressure)」政策を採用するよう説得するのに貢献した。批評家たちは、合意を破棄すればイランはウラン濃縮を再開し、核兵器開発に近づく(そして実際にそうなった)ことになり、アメリカは最終的に武力行使という決断を迫られ、現在我々が経験しているようなあらゆる悪影響が生じるだろうと警告した。しかし、デュボウィッツはその可能性について考慮せず、2月初旬に前米公共ラジオに対し、アメリカは「まず攻撃し、それから話し合うべきだ(strike first and then talk)」と語った。それ以来、トランプ大統領の判断ミスや、戦争が世界中でもたらした人的被害を示す証拠が増えているにもかかわらず、FDDは一貫して戦争を応援し続けている。

そして、第一次トランプ政権で米国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンも挙げられる。ボルトンはトランプ大統領の戦争対応を含め、トランプを厳しく批判するようになったが、イラン政権打倒のための武力行使を長年支持し、ワシントンとテヘランの関係改善に向けた外交努力に反対してきた。2015年の核開発合意に反対し、トランプ政権1期目の失敗に終わった「最大限の圧力(maximum pressure)」キャンペーンを支持し、2026年3月初旬にはPBSのインタヴューで、2月の開戦決定は「完全に正当化される(totally justified)」と述べ、「20年前に開戦していれば、世界はもっと安全だっただろう」と続けた。したがって、トランプ大統領と対立したとはいえ、ボルトンはこの戦争を引き起こした人物の1人として挙げるべきだろう。

2026年2月28日以前にイラン攻撃を主張し、その後も戦争を擁護し続けている著名人は、これらの名前だけではない。リンジー・グラハム連邦上院議員やトム・コットン連邦上院議員といった共和党の政治家、そしてフォックス・ニューズのマーク・レヴィンやショーン・ハニティといったコメンテーターは、ここでは除外した。世界経済や、より深刻な国家安全保障上の課題への対応能力に甚大な影響を与えるにもかかわらず、アメリカの指導者たちが再び中東地域における無期限の紛争を開始するという政治的風潮を作り出した、他にも重要な人物が間違いなくいるだろう。私のリストに名前を追加して、彼らのうち誰かが最終的に自分たちの助言が間違っていたと認めるかどうかを確かめて欲しい。

もし戦争が本当にアメリカの大敗で終わるとしたら、現状ではその可能性が極めて高いように見えるが、戦争を推進した人々は、戦争は正しい判断だったと主張し、トランプ大統領、ピート・ヘグセス国防長官、マルコ・ルビオ国務長官、JD・ヴァンス副大統領たちを、彼らの巧妙な計画を適切に実行できなかったとして非難するだろう。しかし、この言い訳は通用しないだろう。攻撃命令が出る前からトランプ政権の無能さは明らかだったし、戦争が順調に進むと信じる理由はほとんどなかったからだ。

アメリカ人が同じ過ちを繰り返さないようにするには、こうした悪質な助言を繰り返す人間たちの意見に耳を傾けるのを大幅に減らす必要がある。確かに、説明責任(accountability)を求めるあまり行き過ぎてしまうこともある。外交政策は不確実なものであり、誰もが常に正しい判断を下せるわけではないからだ(私も含めて)。しかし、分別のある人は過ちを認め、経験から学ぶ。一方、イデオロギーに凝り固まった人や活動家は、ますます頑固になる傾向がある。同じ処方箋を繰り返し提示し、毎回同じように悪い結果を招き、決して学ぼうとしない人がいるなら、別の助言を求めるべき時だ。

ここは依然として自由な国であり、今回の愚かな戦争を煽った者たちを訴追したり、解雇したり、罰したり、その他の形で虐待したりすべきだと言っている訳ではない。ジョン・スチュアート・ミルが「思想と議論の自由(the liberty of thought and discussion)」と呼んだものが、長期的にはより良い政策を生み出すと今でも信じているし、意見の異なる見解を抑圧しようとするべきではない。しかし、表現の自由と反対意見への寛容さを守ることは、全ての声に等しく注目したり、同等の重要性を与えたりすることを要求するものではない。

誤った助言を繰り返す人々に責任を問う第一歩は、誰がそのようなことをしているのかを特定し、彼らの発言を記録することだ。私がこのコラムを書いたのもそのためだ。今後、記事のために専門家の助言を求める記者が、名簿にあるお馴染みの名前ばかりに頼るのではなく、もっと多様な意見に耳を傾けるようになることを期待したい。学術誌の編集者は、好戦的な論客の投稿をより懐疑的に扱うべきであり、啓発的な解説を求めるニュースネットワークやポッドキャスターは、こうした失敗した預言者を今よりも頻繁に取り上げるべきではない。そして何よりも重要なのは、困難な外交問題について賢明な助言を求める政策立案者は、他者の洞察と助言に頼るべきだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 以下に紹介している、スティーヴン・M・ウォルトの論稿は昨年9月に発表された論稿であるが、現在の状況において非常に重要な内容を含んでいるのでご紹介したい。政治的な殺害、つまり暗殺は外交や国際関係にとって危険であり、同時に国内政治においても危険である。そのことをウォルトは論稿の中で説明している。

 今回のイスラエルとアメリカによるイランに対する大規模攻撃に当てはめてみよう。アメリカはイランと核開発に関して交渉を行っていた。オマーンが仲介役を務めていた。しかし、最終的には、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に説得(洗脳)されイランに対する大規模攻撃を行った(2025年だけでネタニヤフは6回訪米し、トランプと会談を持っている)。攻撃はイラン政府や軍の指導者を多数殺害した。その中にはイランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師も含まれている。ハメネイ師が自宅にいることを特定し、攻撃を加えて殺害した。

 ここで重要なのは、交渉中の相手国の最高指導者を、「宣戦布告もなしに」、奇襲攻撃をして、殺害したことである。これは政治的な殺害、暗殺である。下記論稿の内容に沿って考えると、なぜ暗殺が良くないかと言うと、信頼を損ない、交渉や階段を持つことが出来なくなるからだ。実際に、イランはアメリカからの交渉を拒否している。アメリカと交渉しても、交渉中に攻撃を受けるかもしれない、もしくは、交渉で合意した内容を守らないかもしれないという疑念は当然出てくる。それほどの重大事をアメリカとイスラエルは起こしている。

そして、「邪魔な奴は殺してしまえばよい」ということが当然に行われるようになれば、それは国内でも同様のことが起きる可能性にもつながる。

 アメリカとイスラエルが国際法無視で暗殺者集団と同様のことを行っていれば、国際社会における信頼を失ってしまう。それは長期的に見て、アメリカとイスラエルの国益を損ない、アメリカ国民とイスラエル国民を苦しめることになる。

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暗殺はどのようにして再び常態化したのか(How Assassinations Became Normal Again

-国内外における政治的な殺害(political killings)は、かつては頻繁に起こっていたが、その後ほぼなくなり、そして再び頻繁に起こるようになった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/18/assassination-political-violence-charlie-kirk-normal/

インフルエンサーのチャーリー・カーク殺害事件と、イスラエルによるハマス幹部殺害未遂事件(カタール爆撃)には、どのような共通点があるのだろうか? もちろん、明白かつ重要な相違点もある。カーク事件は動機が明らかになっていない個人による単独犯行(isolated act)とみられる一方、後者は動機が明白な選出された政府による意図的な軍事行動である。しかし、2つの事件は、国家間および国家内部における現代政治の規範の広範な崩壊(the broader erosion of norms in contemporary politics)、特に暗殺を正当な政治戦術とみなす傾向(the tendency to see assassination as a legitimate political tactic)の兆候と捉えることもできる。

政治的な殺人(political killings)は、もちろん新しい現象ではない。しかし、ウォード・トーマスが2000年に『インターナショナル・セキュリティ』誌に掲載した画期的な論文で示したように、数世紀にわたり、ある国の指導者が他国の指導者を殺害しようとする行為に対しては、極めて効果的な規範が存在していた。国家による暗殺(assassinations)は、かつては一般的だったが、時が経つにつれ、この戦術は主要諸国の間で廃れ、暗殺を禁じる規範が徐々に形成されていったとトーマスは主張した。

この変化は、物質的・戦略的な利害と、変化する規範意識が複合的に作用した結果である。暗殺は、弱小国がより強力なライヴァル国に対して用いることのできる手段であったが、大国(great powers)は暴力的な政治行動(すなわち戦争)を、自国の優位な資源が有利に働く可能性が高い戦場に限定することを好んだ。さらに、各国の支配者たちは、たとえ他の相違点がどうであれ、何千人もの国民を血みどろの戦場に送り込んで死なせようとしながらも、互いに殺し合わないという共通の利益を有していた。

暗殺に反対する規範は、国家指導者は一般市民とは異なる道徳的原則に従うのであり、国家のために行った行為について個人的に責任を問われるべきではないという、現実政治の考え方も反映していた。一般市民が人を殺害すれば起訴され有罪判決を受ける可能性があるが、「国益(in the national interest)のため」に戦争を開始した君主や首相は、その決定の結果として何千人もの命が失われたとしても、何の罰も受けずに済むことがあった。失敗に終わった戦争を始めた指導者は権力の座から追放されることはあっても、公的な立場で行動していた限り、裁判にかけられたり処罰されたりすることはほとんどなかった。

この二重基準(double standard)が最も鮮明に表れたのは、第一次世界大戦後だ。廃位されたドイツ皇帝(deposed German kaiser)ヴィルヘルム2世は、オランダでの平穏な亡命生活を送り、余生を全うすることを許された。1世紀前、ナポレオン・ボナパルトも、幾度となくヨーロッパを戦争に巻き込んだにもかかわらず、直接的な処罰を免れた。もっとも、彼は最終的に南大西洋の孤独な流刑地で老い、生涯を閉じた。驚くべきことに、この暗殺禁止の規範は、凄惨な戦争の最中でさえも守られていた。連合国(the Allies)はアドルフ・ヒトラーを暗殺しようとはしなかった(一部のドイツ人は試みた)。また、日本の昭和天皇やイタリアの指導者ベニート・ムッソリーニを直接標的にすることもなかった。(アメリカは日本の山本五十六海軍大将を標的にし、その飛行機を撃墜して殺害したが、彼は軍司令官であり、文民の公職者ではなかった。)

トーマスによれば、第二次世界大戦後、新たな倫理的・物質的配慮が定着するにつれて、この規範は崩れ始めた。ニュルンベルクおよび東京の戦争犯罪裁判において、勝利した連合国は、公的行為と私的行為との従来の区別を否定し、日本およびドイツの元政府高官たちに対し、その公的(かつ疑いようのないほど凶悪な)行為について個人的責任を問うた。同様の動きが、『世界人権宣言(the Universal Declaration of Human Rights)』の採択や、戦争犯罪(war crimes)、ジェノサイド(genocides)、その他の人道に対する罪(crimes against humanity)の責任者を処罰するという、残念ながら一貫性に欠けるものの、世界的に高まりつつある取り組みの原動力となった。その後の国際刑事裁判所(the International Criminal Court)の創設や、こうした重大な犯罪の有罪とみなされた指導者を制裁しようとする関連の取り組みも、同じ広範な潮流の一部であった。

なぜこのような規範的視点の転換が重要だったのか? それは、個々の指導者が自らの決定に対して道義的責任を負うようになったことで、特に邪悪あるいは危険であると判断された者たちに対する直接的な措置を正当化することが容易になったからである。一人の指導者(そしておそらくは少数の側近)を標的とすることは、はるかに多くの人命が失われる戦争を始めるよりも望ましいとみなされる可能性もあった。暗殺は、政治的問題に対処する上でより費用対効果の高い方法のように見え始め、少なくとも軍事的に最も能力のある国々においては、軍事技術の発展によって精密攻撃(precision strikes)や標的殺害(targeted killings)が可能になるにつれて、その傾向はさらに強まった。

そのため、国家が支援するライヴァル指導者の暗殺は極めて稀なことではなく、時が経つにつれてより一般的になった。例えば、冷戦時代には、アメリカはフィデル・カストロ、パトリス・ルムンバ、ゴ・ディン・ディエム、ムアマル・アル・カダフィ、その他複数の外国指導者を直接殺害、殺害への協力、または殺害を試みた。ブッシュ政権は2003年のイラク侵攻開始時にサダム・フセインを意図的に標的とし、2020年にはトランプ政権がミサイル攻撃でイランの精鋭部隊であるコッズ部隊の司令官カセム・ソレイマニを殺害した。(ソレイマニは軍事指導者であると同時に高官でもあった。もし外国が統合参謀本部議長を意図的に標的にしたらアメリカ人がどう反応するか想像してみて欲しい。)イスラエルは長年にわたり、ハマスやヒズボラの指導者、そして複数のイラン人民間核科学者を含む多くの政治的敵対者たちを殺害してきた。北朝鮮は1968年と1983年の2度、韓国の大統領暗殺を企てた。ウクライナは、ロシアがウォロディミール・ゼレンスキー大統領の暗殺を繰り返し試みたと主張している。かつて存在した「各国政府は他国の要人を標的にしてはならない(governments should not target their foreign counterparts)」という規範は、もはや風前の灯火(on life support)となっている。

これは少なくとも3つの理由から非常に懸念すべき事態となっている。

第一に、強力な規範であっても、強大な国家が自らの意思で行動することを完全に阻止することはできないも。しかし、確立された規範に違反すれば、違反国は評判を損なうことになり、他国は違反した国との緊密な関係や協力関係を維持することを躊躇するようになる。規範が崩壊するにつれ、評判を損なう行為によって、抑止力(deterrent)は低下し、暗殺を極端な手段ではあるものの、正当な政治行動とみなす国が増えるだろう。世界中の政府はより恐れを抱き、互いを信用しなくなり、既存の紛争に対する相互に受け入れ可能な解決策を見出すことはより困難になる。結局のところ、自らを殺害しようと積極的に企んでいる相手と、誠実に交渉できるだろうか? 規範が崩壊すればするほど、世界の政治はより醜悪で、より争いの多いものになるだろう。

第二に、そして第一の点から派生する点として、暗殺を禁じる規範を放棄することは、単に会談が危険であるという理由が発生することになり、ライヴァル同士の会談を阻害することになる。その結果、進行中の紛争に対する外交的解決の道はさらに狭まるだろう。また、第三者が外交的解決取り組みを支援しようとする意欲も削ぐことになる。これこそが、イスラエルによるカタールへの攻撃がこれほど無謀であった理由である。それは、責任ある国際社会の一員としてのイスラエルの評判をさらに損なうだけでなく、一部の国々がイスラエルの外交活動を仲介する意欲を削ぐことになるからだ。どの国も時として敵と対話する必要があり、その過程を円滑に進めるには通常、中立的な第三者の仲介が不可欠である。このようにカタールの主権を侵害し、暗殺を禁じる規範に背くことは、国際外交がより一層必要とされているこの時期に、その歯車にさらなる砂を撒き散らすことになる。イスラエルが、ワシントンから目立った制裁を受けることなく、名目上ではあるがアメリカの同盟国を攻撃する姿勢を示したことは、この地域におけるアメリカの既に傷ついている評判にさらなる打撃を与えた。もっとも、その評判がこれ以上低下する余地があるとは到底思えないのではあるが。

最後に、対立する外国の要人を標的にして殺害することは全く問題ないという考え方は、一部の人々にとって、意見の合わない国内の政治家に対する暴力行為を正当化しやすくする。いずれの場合も、標的となりうる人物はまず悪の権化(the embodiment of evil)、国家に対する致命的な脅威(a mortal threat to the nation)として悪魔化される(demonized)。一度そのレッテルが貼られると、彼らに対処するための極端な手段は許容され、場合によっては必要不可欠とさえ思えるようになる。もしあなたがアメリカ人で、国内における暴力的な政治活動の増加(JD・ヴァンス副大統領や他の政権関係者が述べている嘘とは異なり、これは圧倒的に右派によるものであり、左派によるものではない)を懸念しているのなら、アメリカ合衆国、その最も緊密な同盟諸国の一部、そして他の主要諸国が、海外における暗殺に対する規範をいかに損なってきたかについても懸念すべきである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 スティーヴン・M・ウォルトによる以下の論稿は2025年7月に発表された論稿であるが、現状を理解する上で重要な内容となっている。ここで重要なのは、政治的力、政治的な魅力と政策立案・遂行を分けて考えている点だ。私はこのことが出来ていなかった。第二次ドナルド・トランプ政権に持つ違和感を言語化できていなかったが、この政治的な力と政策立案・遂行を分けることで、私の抱える違和感を言語化できるように思う。

トランプは生粋の政治家ではなく、財界人としても主流から外れたアウトサイダーだ。そうした人物が既存の政治を破壊するためにワシントンに乗り込んだ。彼の個人的な魅力で大きな政治力を持った。しかし、政策立案・遂行は彼一人ではできない。周囲に人材を配置しなければならない。第二次政権の特徴は、イスラエルとの関係が深い人物が揃ったことだ。国家情報長官であるトゥルシー・ギャバードは民主党所属の連邦下院議員時代から、非主流派であり、イランやロシアとの交渉を主張し続けてきた。ギャバード長官以外は親イスラエル派であり、今回のイラン攻撃を推進した。トランプは政治的な力を持つが、政策立案・遂行の力を持たず、結果として、政策の失敗をしてしまうことになった。更に言えば、トランプに周辺に配置された人物たちはワシントンの既存政治、エスタブリッシュメントの息のかかった人物たちであり、彼らによって、トランプ政治が変容させられたということが考えられる。

 トランプが政策立案・遂行を任せる人物の選定に失敗したとも言えるだろう。しかし、選定の過程で述べたことと実際に政権発足後に実行することに乖離がある場合、つまり、嘘をついた、もしくは態度を変化させたと言うことになる。

 私がここで重要だと考えているのは、JD・ヴァンス副大統領の存在である。第二次トランプ政権が大統領選挙期間の公約をことごとく破っている状況で、ヴァンスは非常に苦心してトランプ政権内でバランスを取りながら、選挙期間中の公約を守る、もしくは守る姿勢を見せている。トランプが州に騙されて搦(から)めとられている様子も見ている。そうした中で、彼がトランプの後継者として、トランプの失敗を学んでいると私は見ている。政治力を持ちながら、政策立案・遂行に失敗するのは、自分を利用しようとして集まる、もしくは集められる人物たちの影響が大きいということを学んでいるだろう。

 トランプもまた騙され、利用されたということを考えると、ワシントンの既存の政治、エスタブリッシュメントたちの力は大きく、簡単に打ち破ることが出来ないということが認識される。

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ドナルド・トランプが逃した好機は積み上がっている(Trump’s Missed Opportunities Are Piling Up

-トランプ政権にはアメリカをより良い方向に変えるという前例のない好機があった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年7月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/07/29/trumps-missed-opportunities-are-piling-up/

好むと好まざるとにかかわらず、ドナルド・トランプ米大統領は、この10年近くにわたり、アメリカ政界で最も重要な人物であり続けている。今や、私たちは彼を評価する十分な時間があり、彼について2つのことが明白になっている。第一に、トランプの政治的魅力は当初から過小評価されていたこと、そして彼は時を経るごとに、より有能な政治家へと成長してきたことだ。度重なる嘘、公約違反、重罪判決、性犯罪、そして自分の望みを阻むあらゆる規範を容赦なく破壊する姿勢にもかかわらず、彼は共和党を自らの理想とする姿へと変貌させ、最初の任期の惨憺たる実績にもかかわらず、2024年の再選を果たした。彼は今、アメリカ史上最も過激な政治変革を試みている。権威主義的な政権掌握(an authoritarian takeover)は着々と進んでおり、成功する可能性が高い。

彼について分かったもう一つのことは、彼が政策立案者として極めて無能だということだ。無知、衝動性、そして能力よりも忠誠心を優先する傾向が相まって、彼は幾度となく愚かな決断を下してきた。彼は権力を集中させ、私腹を肥やし、弱者を威圧することには長けているが、アメリカ全体に利益をもたらす建設的な政策を立案・実行する能力には長けていないことが明らかになった。

政治的手腕(political adroitness)と政策立案能力の欠如(policymaking ineptitude)の組み合わせは、まさに悲劇(tragedy)のようになっている。なぜなら、トランプはそのカリスマ性と有利な立場(共和党が連邦上下両院を支配し、従順とは言わないまでも、トランプに理解を示す最高裁判所が存在する)を活かせば、近年の大統領が国家の深刻な問題に取り組むことを困難にしてきた膠着状態と機能不全(the logjams and dysfunction)を打破できたはずだからだ。もしトランプがこの機会を建設的に、そして異なる政策のために活用していれば、「アメリカを再び偉大にする(make America great again)」ために大きく貢献できたかもしれないし、ひいては彼が長年主張してきた「アメリカ史上最も偉大な大統領の一人(one of the country’s greatest presidents)」という称号にふさわしい人物になれたかもしれない。

しかし、イギリス国教会の祈祷書を言い換えるならば、トランプは「なすべきことをせず、なすべきでないことをした。彼には健全さが全くない([has] left undone those things which [he] ought to have done,; and [he has] done those things which [he] ought not to have done; and there is no health in [him])」となる。そして、アメリカはこれらの失敗によって大きな苦しみを味わうことになるだろう。

私が言いたいことは何か?

まず、トランプはアメリカの過剰な軍事プレゼンスを縮小し、同盟諸国に防衛努力のより大きな分担を促し、国防総省の肥大化した軍事予算を抑制することで、差し迫った国内のニーズに対応し、増大する国家債務を削減するために必要な資源を確保できたはずだ。ロシアのウクライナでの行動も少なからず影響しているものの、トランプは一部の同盟国にさらなる協力を促すことに成功したが、アメリカの世界的な軍事プレゼンスは縮小されておらず、国防予算は増え続けている。その一方で、連邦議会が可決したばかりの予算案は、アメリカの債務水準を数兆ドル増加させ、上位1%の富裕層をさらに富ませ、幅広い公共サーヴィスを削減し、大多数のアメリカ人の生活を改善する効果はほとんどないだろう。さらに、この予算案には、警察国家(police state)の萌芽となる要素も含まれている。

なんという機会の損失だろう! 中国を含む先進工業国を訪れれば、きらびやかな近代的な空港、安全で効率的かつ手頃な価格の公共交通機関、穴だらけではない道路、超高速の都市間鉄道、そして最先端の港湾やその他の重要なインフラが整っていることに気づくだろう。これらの国の多くは、優れた医療制度と高い平均寿命も誇っている。かつてアメリカはそのインフラの質で世界を驚嘆させたが、同盟諸国やライヴァル諸国に追いつくことはできなかった。その代わりに、愚かな対外戦争や長期にわたる介入(foolish foreign wars and protracted interventions)に数兆ドルを浪費してしまった。さらに悪いことに、国内は深刻な分極化に陥っており、政治システムには拒否権が行き渡っているため、私たちが求める長期的なプログラムを立ち上げ、実行することはほぼ不可能となっている。トランプは、自らが繰り返し主張する(そして最高裁が認める意向を示している)大統領権限を行使し、こうした行き詰まりを打開して国内で「国家建設(nation-building)」を行うこともできたはずだ。しかし彼は、大学への脅迫、NPR(公共ラジオ)やPBS(公共テレビ)への資金削減、トランスジェンダーの選手への処罰、メディケイドの縮小、そしてジョー・バイデン前大統領やバラク・オバマ元大統領が関与したあらゆる政策の解体を選んだ。

トランプは、科学に対する連邦政府の支援を大幅に削減し、大学キャンパスには反ユダヤ主義が蔓延しているという荒唐無稽な主張に基づいて高等教育を攻撃する代わりに、連邦政府の権限を活用して、科学研究におけるアメリカの優位性を維持することもできたはずだ。ソ連がスプートニクを打ち上げた後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領がそうしたように、連邦政府の支援によって生み出された発見から、その後の世代のアメリカ人は多大な恩恵を受けてきた。アメリカはまた、世界中から最も優秀な人材を引き寄せ、留める能力からも恩恵を受けてきた。しかしトランプは今、その優位性を逆転させようとしている。中国はすでに研究開発費でアメリカを上回り、研究者たちはより多くの特許や科学論文を生み出しており、電気自動車やクリーンエネルギーといった将来の重要技術のいくつかにおいて主導的な役割を獲得している。トランプの対応とはどうだろうか? それは一方的な知的武装解除(unilateral intellectual disarmament)の政策である。

もし、その強大な権力を公益のために使おうとする強力な大統領であれば、アメリカ国民の健康を守ることを使命とする機関をロバート・F・ケネディ・ジュニアのようなペテン師たちに委ねたりはしなかっただろうし、気候危機に対処するための、遅ればせながらなお不十分な国の取り組みを後退させるようなこともなかったはずだ。もしトランプが真に偉大なことを成し遂げたいと望むなら、彼は自身の第一期政権における数少ない成功事例の一つ記録的な速さで命を救うCOVID-19ワクチンの開発を可能にした「ワープ・スピード」計画を基盤とし、バイデンが推進しようとしたグリーン・トランジションを加速させるはずだ。誤解のないように言っておくが、気候変動は現実のものであり、事態はさらに悪化するだろう。なぜなら、大気物理学の法則はフォックスニューズを見たり、ソーシャルメディア上のプロパガンダに左右されたりしないからだ。パリ協定からの離脱や化石燃料への依存強化を促すというトランプ氏の決定は、問題を悪化させ、米国はその結果に対する備えが不十分になるだろう。

アメリカの偉大さについて言えば、より賢明なトランプであれば、同盟諸国を搾取すべき属国(vassals)のように扱うのではなく、アメリカの戦略的パートナーシップの改革と強化に尽力するだろう。あるヨーロッパ連合(EU)当局者が「ゆすりたかり(shakedown)」と正しく指摘した彼の気まぐれで強圧的な関税政策は、アメリカの消費者の物価を上昇させ、国内外の経済成長を鈍化させるだろう。また、アメリカの同盟諸国がトランプの国防費増額要求に応じることをより困難にするだろう。デンマーク、カナダ、韓国、日本といった親米諸国と対立することは、歴代大統領の中でも最も愚かな決断の一つと言えるだろう。これらの国々は歯を食いしばってトランプの要求の一部を受け入れるかもしれないが、二度とアメリカを以前と同じように見ることはなく、ワシントンの指示に従う、もしくは、将来的にワシントンが望むような調整を行うことに消極的になるだろう。

トランプ大統領が本当に前任者よりも外交手腕に優れていることを示したいのであれば、ガザ地区での虐殺を終わらせるためにアメリカの影響力を活用し、イランとの新たな核合意に現実的なアプローチを取り、ウクライナ和平に向けて飴と鞭(carrots and sticks)を組み合わせるべきだった。しかし、彼はこの問題を素人外交官のスティーヴ・ウィトコフに任せてしまい、結果として中東地域でのさらなる惨劇(carnage)、アメリカのイメージのさらなる悪化(もはやこれ以上悪化する余地があるのか​​どうかも怪しいが)、そしてロシアの前進を招いた。

一方、トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官は外交団を弱体化させ、かつて多くの国際機関で支配的だったアメリカの地位を放棄している。『ニューヨーク・タイムズ』紙が先週報じたように、北京はこれにいち早く乗じて、様々な国際フォーラムで存在感を高め、取引を成立させている。こうした動きは一見不可解に思えるかもしれないが、これらの機関こそ、多くの国際関係を形作るルールや技術基準が確立される場なのである。中国当局は、将来的に影響力を拡大するための専門知識と人脈を築き上げており、一方で、アメリカはますます存在感を失っている。スコット・ベセント米財務長官は、先日開催されたG20サミットに出席することさえしなかった。なぜか? それは、南アフリカで開催されたからだ。中国は、外交の価値、直接対話の利点、そしてソフトパワーの重要性を理解しているからこそ、すでにアメリカよりも多くの外交官と在外公館を擁している。トランプ大統領はそれを理解していない。アメリカの当局者やビジネスリーダーが、もはや「アメリカ製(made in America)」ではないルールで世界を渡り歩かなければならないことに気づいた時、それは大きな衝撃となるだろう。そして、まさにトランプ大統領がアメリカを導こうとしている世界こそが、そうした世界なのだ。

最後に、トランプは、国をさらに分断するのではなく、共和党に対する影響力と、政府の三権全てを掌握している立場を利用して、国を統一することもできたはずだ。彼は、実績のある女性やマイノリティを政府の要職から追放し、「無能な白人男性のためのアファーマティブ・アクション(affirmative action for incompetent white guys)」を推進するのではなく、より過激な形の「ウォークイズム(wokeism)」からの撤退を(すでに進行中だったプロセスだが)巧みに促し、厳格な実力主義の必要性を強調することもできたはずだ。その好例が、ピート・ヘグセス米国防長官、あるいはダレン・ビーティーだ。ビーティーは、白人至上主義者とのつながりを理由に第一期トランプ政権から解雇された陰謀論者だが、つい先日、アメリカ平和研究所の所長に任命されたばかりだ。トランプは、法的に疑問の残る強制送還を承認し、海外からの有能な人材にとってアメリカをはるかに魅力のない場所にしてしまうのではなく、賢明な移民制度改革を推進することもできたはずだ。

要するに、トランプには、アメリカを弱体化させている政治的分断を縮小し、国際的な地位を強化する可能性のある、広範囲にわたる、そして長らく待望されていた改革(far-reaching and long-overdue reforms)に着手する絶好の機会があった。もし彼がそのカリスマ性と政治的手腕を、より思慮深く、国民の利益を重視する政策に注いでいれば、私を含め、彼を最も厳しく批判する人々も納得したかもしれない。しかし彼は正反対の道を選び、支持率が急速に低下しているにもかかわらず、その姿勢を改める気配は全く見られない。

読者の皆さんが何を考えているかは分かっている。「もしトランプがこうしたことを少しでも実行していたら、穏健な民主党員のような振る舞いになり、MAGA支持層が反旗を翻していただろう」と考えているだろう。私はそうは考えない。ジェフリー・エプスタインのスキャンダルはさておき、トランプの支持層は、たとえ過去の立場と真っ向から矛盾していても、彼が言うことならほぼ何でも飲み込む用意があるようだ。私は、彼が支持基盤を説得し、上述した政策を受け入れさせることができたと確信している。特に、その多くの施策が彼らにとってすぐに利益となるものであったならばなおさらだ。無党派層や穏健派は喜んだだろうし、それによって2024年の大統領選挙で彼に僅差の勝利をもたらした緩やかな連合が固まったはずだ。化石燃料業界は反対しただろうが、その他の経済界は、規制改革や、おそらくは控えめな減税によって、説得できたかもしれない。

しかし、私のこのフィクションのシナリオには致命的な欠陥(a fatal flaw)がある。それは、別のトランプを想定している点だ。自らの天才性を確信し、自己顕示欲にのみ執着し、ルールや規範を軽視する復讐心に燃えるナルシストではなく、私のシナリオが想定するのは、真に民主政治体制を守り、できるだけ多くのアメリカ人の生活を向上させ、世界政治におけるアメリカの特権的な地位を維持したいと願う大統領である。残念ながら、トランプはそのような人物ではない。だからこそ、彼に与えられた機会は浪費され、あるいはそれ以上に台無しにされているのだ。素晴らしい未来はあり得たはずだが、この大統領の下では実現しなかった。トランプ自身が称賛されることを切望していることを考えれば、これは彼自身の悲劇だと捉えることもできるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 現在は世界中で過剰さがあふれている。極端さと言っても良いだろう。政治の世界で言えば、ドナルド・トランプ大統領や高市早苗首相がその象徴である。過度なナショナリズム、過度な断定(言い切り)、過度な自己中心、過度な依存が特徴である。有権者にしても、中庸ではなく、過激を求める傾向がある。そのことは日本だけではなく、西側先進諸国において共通の現象になっている。このことはこのブログでも既に紹介した。

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ:「20260309日先進西側民主政体国家の有権者は破れかぶれになっているのかもしれない」

https://suinikki.blog.jp/archives/90360730.html

 過剰を求める反対の動きが抑制であり、中庸である。国際関係論ではその考えを持つ人たちを「リアリスト(Realist)」「抑制者(restrainer)」と呼ぶ。ウォルトは「抑制主義」について以下のように書いている。長くなるが、いくつか引用する。「アメリカ外交政策における抑制という考え方は、アメリカの力を用いて民主政治体制、市場経済、法の支配、その他のリベラルな価値観を世界中に広め、できるだけ多くの国をアメリカが支配する国際機関に取り込もうとする、リベラル覇権(liberal hegemony)の大戦略(grand strategy)に反対する形で生まれた。抑制者は、軍事力によって民主政治体制を広めようとするのは無謀な試みであり、他国を脅迫したり威嚇したりすることは通常逆効果となり、敵対国を疑心暗鬼にさせ、同盟国や中立国を敵に変えてしまうと確信している(Restrainers believe that trying to spread democracy with military force is a fool’s errand, and that threatening or bullying other states usually backfires, making adversaries more suspicious and turning allies or neutrals into enemies)。そのため、外交こそがアメリカ・ファーストの行動であり、武力行使は最後の手段(last resort)であるべきだと彼らは考えている」「抑制者は、世界は危険な場所であり、アメリカは一部の国と深刻な利害の衝突を抱えていることを認識しているものの、過剰な軍事費支出や海外での武力行使を正当化するために用いられる、絶え間ない脅威の誇張には反対している」「アメリカが国家安全保障への支出を減らし、依然として大きな力を持っているにもかかわらず、より賢明にその力を行使すれば、より安全で繁栄した国になると考えている」。第一次政権時のドナルド・トランプは抑制主義であったが、現在のドナルド・トランプは全くの別人である。下記論硬はスティーヴン・M・ウォルトによる昨年9月の論稿であるが、現在の状況を警告しているかのようでもある。

 私は昨年の5月頃に第二次ドナルド・トランプ政権における外交政策に大きな転換点があったと考えている。ここで抑制者から介入主義者に変化している。私たちはこのことをより深く研究する必要がある。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプは決して抑制者にはなれない(Donald Trump Will Never Be a Restrainer

-最終判決は下された。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/30/donald-trump-foreign-policy-restrainer-realist-war-defense-diplomacy/

ドナルド・トランプ米大統領が外交政策におけるリアリスト(foreign-policy realist)もしくは、「抑制者(restrainer)」なのかという議論に終止符を打つべき時が来た。確かに、彼の政策決定における気まぐれなアプローチや、言行不一致の傾向は、特に明確な理由もなく極端から極端へと態度を翻す時(ウクライナ問題を参照)には、彼の見解を捉えること(to pin down)を困難にしている。彼の発言や行動の中には、リアリスト・抑制者というレッテル(labels)に合致するように見えるものもあるかもしれないが、彼はリアリスト・抑制者ではない。

私がこの問題を提起するのは、レッテルが重要であり、誰がどのようなアプローチや思想と結びつけられるかによって、様々な考え方や政策提案がどのように受け止められるかが左右されるからだ。公平を期すために言えば、トランプは「永久戦争(forever wars)」への批判、外交政策エスタブリッシュメントへの不信感、裕福な同盟諸国に自衛のための行動を促そうとする姿勢、そして海外におけるリベラルな価値観の擁護への明らかな無関心などにおいて、抑制の提唱者のように聞こえる時もある。(この点において、彼は異例なほど一貫性を見せている。なぜなら、言論の自由や法の支配といった、厄介なリベラルな価値観に対しても、アメリカ国内で同様に敵対的な姿勢をとっているからだ。)要するに、内容ではなくスタイルだけを見れば、トランプはリアリスト・抑制者の典型的なメンバーだと結論づけるかもしれない。

この議論をしているもう一つの理由は、トランプをリアリスト・抑制者とレッテルを貼ることが、時に政治的な得点稼ぎ(to score political points)に利用されることがあるからだ。JD・ヴァンス副大統領のようなMAGA支持者の中には、抑制者というレッテルを受け入れることで、トランプが以前の公約を守り、アメリカが莫大な予算のかかる海外関与に陥るのを防いでいるとアピールする人たちもいる。(トランプ政権1期目には、傲慢なマイク・ポンペオ国務長官も同様の策略を試みたが、説得力はなかった。)対照的に、抑制に反対する人々は、アメリカの外交政策の軍事化(the militarization of U.S. foreign policy)に反対し、世界各地へのアメリカの介入を批判してきた個人や組織(例えば、クインシー責任ある国家運営研究所など)の信用を失墜させるために、トランプにそのレッテルを貼ろうとすることがある。(念のため申し添えておくと、私はクインシー研究所の理事を務めており、時折、同研究所の出版物に寄稿している。)

しかしながら、現時点ではトランプの実績が、この問題を解決する上で重要な手がかりとなる。そのためには、抑制者が何を主張しているのかを明確にする必要がある。そして、その出発点として最も適切なのは、この運動にその名を与えたバリー・ポーゼンの著書『抑制:アメリカの大戦略の新たな基盤(Restraint: A New Foundation for U.S. Grand Strategy)』であろう。さらに、ダリル・プレス、ユージン・ゴールズ、ハーヴェイ・サポルスキーによる初期の論文、クリストファー・レインによる注目すべきエッセイ、そしてジョン・ミアシャイマー、モニカ・トフト、シディタ・クシ、そして私自身による後期の著作も参照すべきだろう。

アメリカ外交政策における抑制という考え方は、アメリカの力を用いて民主政治体制、市場経済、法の支配、その他のリベラルな価値観を世界中に広め、できるだけ多くの国をアメリカが支配する国際機関に取り込もうとする、リベラル覇権(liberal hegemony)の大戦略(grand strategy)に反対する形で生まれた。抑制者は、軍事力によって民主政治体制を広めようとするのは無謀な試みであり、他国を脅迫したり威嚇したりすることは通常逆効果となり、敵対国を疑心暗鬼にさせ、同盟国や中立国を敵に変えてしまうと確信している(Restrainers believe that trying to spread democracy with military force is a fool’s errand, and that threatening or bullying other states usually backfires, making adversaries more suspicious and turning allies or neutrals into enemies)。そのため、外交こそがアメリカ・ファーストの行動であり、武力行使は最後の手段(last resort)であるべきだと彼らは考えている。彼らはアイソレイショニストでも平和主義者でもない。なぜなら、アメリカは主要地域における有利な勢力均衡(balances of power)の維持に貢献する利益を有しており、同盟国は有用ではあるが、責任を果たさせるべきであり、重要な国益を守るためには武力行使が必要となる場合もあり、適切に設計された国際機関は国家間の競争の中でも協力関係を促進できると信じているからである。抑制者は、世界は危険な場所であり、アメリカは一部の国と深刻な利害の衝突を抱えていることを認識しているものの、過剰な軍事費支出や海外での武力行使を正当化するために用いられる、絶え間ない脅威の誇張には反対している。

抑制者はあらゆる問題について意見が一致する訳ではない。例えば、中国に対してより積極的に対抗すべきだと主張する者もいれば、中国の台頭を容認する努力を強化すべきだと主張する者もいる。しかし、彼らは近年の民主党政権と共和党政権下でアメリカの国家戦略を特徴づけてきた、自己中心的で傲慢な姿勢に反対するという点では一致している。何よりも、抑制者は気まぐれな軍事力行使に反対し、アメリカが国家安全保障への支出を減らし、依然として大きな力を持っているにもかかわらず、より賢明にその力を行使すれば、より安全で繁栄した国になると考えている。

それでは、なぜトランプは真の抑制者ではないのか? その理由をいくつか挙げてみよう。

第一に、トランプ大統領はアメリカの国防予算の不必要な増額を依然として支持しており、その額は最近1兆ドルを超え、依然として他のどの国の国防予算をも大きく超えている。さらに悪いことに、彼はこれらの巨額の予算の一部を本来の目的である「外国の脅威からアメリカを守る(defending the United States against foreign dangers)」ことから逸脱させ、国内の架空の敵(fictitious domestic enemies)を追いかけるために流用している。脅威を弱めるどころか、トランプ大統領は国内外の架空の敵を利用して、大統領権限を危険なレヴェルまで拡大することを正当化している。抑制者は長年、過剰な軍事化(excessive militarization)は最終的にアメリカ国内の市民の自由を脅かすと警告してきたが、トランプ大統領は彼らの警告が正しかったことを証明してしまった。

第二に、抑制者は、アメリカはヨーロッパと中東地域における軍事的プレゼンスを縮小し、中東地域ではより公平な姿勢を取るべきだと考えている。トランプ大統領にはこれら両方を行う十分な機会があったにもかかわらず、どちらも実行していない。両地域におけるアメリカのプレゼンスはほぼ変わらず、トランプ大統領は中東地域におけるアメリカの「特別な関係(special relationships)」をさらに強化し、中東地域の敵対勢力との真剣な対話を拒否している。

第三に、トランプ大統領は、際限のない紛争にアメリカ軍地上部隊を投入することには慎重な姿勢を示しているものの、目に見える形ではあるものの戦略的に疑わしい軍事行動に空軍力を行使することには全く抵抗がない。2025年1月に大統領に復帰して以来、イエメンとイランの標的を攻撃し、カリブ海で麻薬密輸に関与していたとされる複数の船舶を軍に撃沈するよう命じた。これらの行動の合法性は疑わしいだけでなく、いずれも重要かつ永続的な戦略的目的を達成する可能性は低い。フーシ派は依然として強硬な姿勢を崩さず、イランは核開発計画を放棄しておらず、数隻の船舶を撃沈すればアメリカへの麻薬流入が減少すると考える者は夢物語を語っているに過ぎない。トランプ大統領の関税政策と並んで、こうした無意味な軍事行動は外交政策における自制とは正反対であり、トランプ政権に今もなお仕えている数少ない真の抑制者たち(彼らは自分が誰であるかを分かっている)が、こうした行動をどう思っているのか、私は疑問に思わずにはいられない。

第四に、トランプ大統領は、抑制者の一部が提唱するように、経済・安全保障に関する諸問題に関して中国と包括的な合意に達することも、また、他の抑制者が主張するように、アジアにおける中国の勢力均衡を図り、地域覇権の確立を阻止するための連合を強化する真剣な努力もしていない。それどころか、トランプ政権は日本、韓国、インドといったアメリカの重要なパートナー国との貿易をめぐって対立を煽り、ジョージア州のバッテリー工場で韓国人労働者を不当に扱うことで韓国との関係をさらに悪化させ、科学技術分野における中国に対するアメリカの競争力を組織的に弱体化させている。

第五に、抑制者、特に超党派を標榜するクインシー研究所のような組織が提唱する重要な提言の1つは、アメリカ外交を活性化させ、軍事力の反射的な行使を控えることである。しかし、以前にも述べたように、トランプ大統領とその側近たちは、準備不足、人員不足、一貫性のない取り組み、そして最終的には失敗に終わる外交交渉の典型例と言えるだろう。トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官兼国家安全保障担当大統領補佐官は、国務省を骨抜きにし、通常の省庁間協議プロセスを無視し、ガザ地区とウクライナに関する重要な交渉を、明確な資格がなく、潜在的な利益相反を抱える不動産弁護士(スティーヴ・ウィトコフ)に委ねてしまった。彼らがほとんど成果を上げていないのは何も不思議に思うものではないか?

トランプ大統領自身の外交姿勢については、先週の国連総会での彼の全くもって奇妙なパフォーマンスをご覧になることをお勧めしたい。国連が好きであろうと、トランプ大統領を嫌っていようと、彼がそこで見せた光景、そしてそれが我が国とその指導者について世界に何を物語ったのかを知れば、誰もが不快感を覚えるはずだ。トランプは持ち時間15分をほぼ45分も超過し、数十人の世界の指導者たちを前に、支離滅裂で自己憐憫に満ち、虚偽と侮辱に満ちた長時間のスピーチを続けた。この演説は、世界で最も力のある国がこれほど無能な人物の手に委ねられていることに、アメリカの敵対諸国を安堵させ、残されたアメリカの友好諸国を同じ理由で不安にさせたことは間違いない。

従って、トランプは抑制者でもリアリストでもない。もっと適切な表現はいくつかあるが、それらを挙げるには私は礼儀正し過ぎるのかもしれない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権は政権発足後、第一次政権時代に比べて、軍事攻撃の数や度合いを高めている。アメリカ・ファースト、アメリカが「世界の警察官」であることを止めるというのが旗印であったが、現在は「世界の暴れ者」となっている。第一次政権では、北朝鮮の最高指導者である金正恩委員長と服す会の会談を行い、板門店(パンムンジョム)で軍事境界線を行き来するということまでやって見せた。

 以下の論稿にある「ポチョムキン平和(Potemkin peace)」について説明する。帝政ロシア時代に、皇帝が行幸する際に、現実の極貧の生活を隠すために、見せかけの豊かな村落を短期間に作ったことを、「ポチョムキン村」と呼んだことから、見せかけの和平を行うことを「ポチョムキン平和」という言葉で表現している。アメリカのメディアでは、トランプ外交について、「実質的な問題解決を伴わない、表面的な和平が達成されるだけだ」という批判がなされ、「ポチョムキン平和」「ポチョムキン合意(Potemkin agreements)」という言葉が使われている。

 イスラエルとハマスの停戦合意(2025年10月)は人質の解放などの一定の成果があったが、有名無実化している。イスラエル側がガザ地区の人道的な状況の悪化を進め、アメリカもそれを容認している。トランプ大統領が一方的にイスラエルに肩入れし、無条件で支持している。ガザ地区の状況を悪化させ、パレスティナ人たちを追放するなどして、ガザ地区の「再開発」を進めることで、多額の利益を得ようという動きになっており、トランプと家族や友人たちの利益のためにそのようなことが実行されようとしている。

 このようなことでは、アメリカは外交交渉の相手や仲介者としては信頼を得られない。アメリカは核開発に関連して、イランと交渉を実施しながら、先生軍事攻撃を行った。これでは、アメリカの交渉は軍事的な野心を隠すための隠れ蓑でしかないということになる。これはアメリカにとって非常にまずいことになる。アメリカの信頼が低下することで、交渉の価値も下がり、世界は混乱と無秩序に溢れることになる。このようにして、世界の構造は大きく変化していく。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の虚偽の和平合意は危険だ(Trump’s Fake Peace Deals Are Dangerous

-ポチョムキン的平和(Potemkin peace)はそれ自体が脅威となり得る。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年12月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/22/trump-peace-deals-ceasefire-gaza-ukraine-congo-fake/

ホリデーシーズンは、読者の皆さんに平和の重要性と、平和をより広く永続的なものにするために私たちが取るべきステップについて改めて考えさせる絶好の機会である。私は以前から、近年のアメリカの指導者たちが平和について語る機会が、本来あるべきよりも少なくなっている(前任者よりも少ない)ことに気づいていた。アメリカがより平和な世界への幅広い関心を持っていることを考えると、これは驚くべきことだ。

この点において、ドナルド・トランプ米大統領はある種の例外と言えるだろう。彼は平和について多く語るが、それは主に、自分がノーベル平和賞に値すると主張するためだ(最近、FIFA会長ジャンニ・インファンティーノから授与されたあの奇妙な賞に加えて)。彼は少なくとも8つの戦争を終結させたと主張しているが、残念ながら、この主張は「トランプ大学」が教育を受けるのに良い場所だったという考えと同じくらい正確ではない。紛争の真の終結ではなく、トランプの得意技はポチョムキン平和案、つまり大々的に宣言されてすぐに崩壊する象徴的な「合意」だ(Instead of a genuine end to conflict, Trump’s specialty is a Potemkin peace plan—a symbolic “agreement” proclaimed with great fanfare that soon collapses)。

例えばガザ地区では、トランプ大統領が「これは戦争の終結だけでなく、恐怖と死の時代の終焉でもある」と称賛した20項目の和平計画は、イスラエルとハマスの間の暴力を終わらせていない。それどころか、イスラエルによるヨルダン川西岸のゆっくりとした征服と、そこに住むパレスティナ人への残虐な扱いを助長している。2025年10月に停戦が成立して以来、400人近くのパレスティナ人(と少数のイスラエル兵)が殺害され、救援物資は依然として限られていて不十分であり、停戦のその後の段階を監視するはずだった平和維持部隊はまだ設立されていない。そして、計画にある「将来のパレスティナ国家への道筋(pathway toward a future Palestinian state)」という意図的に曖昧な表現が本物であり、何かにつながる可能性があると本気で信じている人がいるだろうか? 計画は真の平和への一歩ではなかった。それは「大イスラエル(greater Israel)」を創り出し、最終的にはパレスティナ人を意味ある政治的実体として消し去ろうとする絶え間ない努力の単なる見せかけに過ぎなかった。

同様に、カンボジアとタイの国境紛争は終結したというトランプ大統領の主張も、数々の出来事によって信憑性を失っている。両国は最近になって戦闘を再開し、タイのアヌティン・チャーンウィラクル首相はトランプ大統領との電話会談で停戦要求を拒否し、「タイは、我が国の国土と国民に対する危害や脅威がなくなるまで軍事行動を継続する」と宣言した。

コンゴ民主共和国でも同様の悲劇的な状況が見受けられる。ルワンダが支援するM23民兵組織がコンゴ軍への攻撃を再開し、領土支配を拡大している。マルコ・ルビオ米国務長官でさえ、これはトランプ大統領が仲介したとされる停戦の「明確な違反()a clear violation」であると認めた。スーダンでは、残虐な内戦を終結させようとするアメリカの努力は、何の成果も生んでいない。インドのナレンドラ・モディ首相は、インドとパキスタン間の国境紛争を一時的に鎮圧したというトランプ大統領の主張を否定した(その過程でトランプ大統領の怒りを買った)。エジプトとエチオピアは、トランプ大統領の散発的な介入にもかかわらず、ナイル川の物議を醸すダム建設計画をめぐって依然として対立している。

これらのケース全てで、トランプ大統領が平和を推進したという主張は、ほとんどが誇大宣伝(hype)に過ぎない。

ウクライナについても同様だ。大統領選挙運動中、トランプ大統領はウクライナでの戦争を「24時間以内に(in 24 hours)」終わらせると豪語したが、これは当時としては突飛な主張であり、ウクライナとロシアの両陣営に戦闘停止を説得しようと試みたトランプの不安定な努力は、未だに実を結んでいない。

そして、こうした効果のない和平努力は、他の場所で戦争の火に油を注ぐ行動を伴っていることを忘れてはならない。トランプ大統領は、イスラエルがイランを攻撃した際にイスラエルに協力した。また、アフガニスタン、ナイジェリア、ソマリア、リビア、イラク、シリア、イエメンで爆撃やミサイル攻撃を命じた。彼の政権は、カリブ海で麻薬密輸の容疑者を法廷外で殺害することを平気で行っており、これはアメリカ国内法および国際法に明確に違反している。さらに、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領率いる政権を打倒するために軍事力を使うと脅迫している。これは「平和推進者(peacemaker)」というレッテルを貼られるに値する経歴ではない。

戦争を終結させ、永続的な平和を築くことは容易ではない。通常は、一方の完全な勝利(その後、敗者が結果を覆そうとするのを思いとどまらせるような妥当な和解が成立する)か、戦闘を継続しても何も得られないという相互承認(mutual recognition)が必要になる。後者の場合、双方は望むもの全てを得られる訳ではないことを受け入れ、満足するために必要なものを十分に得ることに集中しなければならない。

しかしながら、いずれの場合でも、国境の位置、賠償の可能性、捕虜の送還、外交関係の回復、様々な安全保障、そして条件を監視し「関与問題(commitment problem)」(つまり、将来的にどちらか一方が約束を破る可能性)を軽減するためのメカニズム(中立平和維持軍の派遣など)など、多くの詳細を詰める必要がある。理想的には、和平合意は、通常長い時間を要する長期的な和解への道筋も示すものとなるだろう。公平な第三者仲介者は、これらの全ての手順を円滑に進め、合意の履行を確実にするのに役立つ。

トランプは下手な平和構築者である。それは、彼自身も彼のティームがこれらの要件を全て無視しているからだ。トランプ自身も、せっかちで細部に関心を示さないことで有名だ(notoriously impatient and uninterested in details)。1978年のキャンプ・デイヴィッド合意にエジプトとイスラエルの当局者たちを署名させるために長時間を費やしたジミー・カーター元米大統領や、1905年の日露戦争終結の合意の仲介にほぼ1カ月を費やしたセオドア・ルーズヴェルト元米大統領とは異なり、トランプには、戦闘当事者間の溝を埋めるための独創的な提案を自ら袖をまくり上げて練り上げる意欲も能力もない。また、彼の集中力は非常に短いため、敵対国は彼が他のことに移ると、ただ待つだけで戦闘に戻れることを知っている。

大統領の直接関与が絶対条件ではないのは当然だが、その場合、大統領は有能な代表者を指名し、自身に代わって役割を担わせなければならない。残念ながらトランプは、必要な専門知識を持つプロの外交官ではなく、スティーヴ・ウィトコフやジャレッド・クシュナーのような素人外交官(amateur diplomats)に依存することを好み、潜在的な合意が実行可能かどうかを判断する経験豊富な官僚を信頼していない。ここでトランプの「ディープステイト(the deep state)」に対する敵意は自業自得と言える。専門家たちの助言は極めて貴重であり、プロの外交官は政治任命者(political appointees)を凌駕する傾向があるからだ。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのジョナサン・モンテンが最近指摘したように、「(トランプは)自らを中核的存在と見なされたい。・・・そのため準備の質、専門性の質、外交交渉の質はいずれも極めて低い」のである。

トランプの「カウボーイ外交(cowboy diplomacy)」を擁護しようとする者でさえ、「しかし平和が空虚な合意(hollow agreements)—ホワイトハウスの芝生で振りかざされる箇条書きの書類—の上に築かれるなら、その平和は長く続かないかもしれない」と認めている。

さらに、トランプとその選任した使節たちの一部は公平さを欠いている。その結果、紛争当事者の一部は彼らを信頼しておらず、仲介者たちは、行き詰まるか、署名後すぐに破綻する一方的な解決策を推し進める可能性が高い。この問題は、ウィトコフ、クシュナー、そして駐イスラエル米大使のマイク・ハッカビーの親イスラエル的な感情を考えると、中東で最も顕著であるが、ウクライナに対するトランプの軽蔑や、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領に対する賞賛にも明らかである。

トランプを称賛すべき点は、主要な軍事紛争、特に地上部隊の投入やその他の重大なリスクを伴う紛争を真に警戒しているようで、戦争は費用がかかり、収益性の高いビジネス取引の妨げになることを認識しているように見えることだ。それは良い直感であるが、主要な紛争を解決し、将来の問題の種をまかないようにするには、それ以上のものが必要だ。

もし私がこのホリデーシーズンで欲しい贈り物が何かと質問されたら、私はこう答えるだろう。平和構築(peacemaking)を単なる広報活動(public relations)や大統領の自己顕示(presidential preening)と捉えるのではなく、困難ではあるが真剣に取り組む価値のある課題として捉える姿勢が欲しい、と。以前にも書いたが、世界平和はアメリカの国益にかなう。なぜなら大規模な紛争は、アメリカの驚くほど安全で特権的な立場に永続的な損害を与えうる数少ない事象の1つだからだ。平和は道徳的にも望ましい。戦争は計り知れない人間の苦痛を伴うからだ。和平を真剣に追求しても、既存の紛争が全て終結する訳でも、新たな紛争の発生を完全に防げる訳でもないかもしれない。しかし、少なくともいくつかの紛争が終結する可能性は高まるだろう。このホリデーシーズンに、それこそが最も歓迎すべき贈り物となる。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年2月28日に始まったイスラエル・アメリカによるイラン攻撃とイランによるペルシア湾岸諸国にあるアメリカ軍基地を中心とする報復攻撃は既に10日ほどが経過している。アメリカのドナルド・トランプ大統領は攻撃の成果を強調しているが、長期化の見通しが出ており、世界全体に影響が出つつある。イラン革命防衛田によるホルムズ海峡封鎖によって石油価格は高騰し、株価は下落している。「有事のドル買い」によって、円安も進行している。石油価格の上昇と円安によって、日本経済に深刻な影響が出ることが予想される。このような状況が長引くほどに、その影響も尾を引くことになる。

 以下の論稿は1年前の、2025年6月の論稿である。この時期にもイスラエルとアメリカによるイランの核開発関連施設に対する約2週間にわたる攻撃が実施された。今回、2026年2月の大規模攻撃に比べて限定的な規模にとどまったが、この2つの攻撃は一連の出来事として捉えるべきだろう。それは、以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿を読むと明らかだが、戦争の構造は同じだからである。

 以下の論稿では、ウォルトの厳しい批判の矛先はトランプに向かう。トランプの「注目を浴びたい、人々からの称賛を浴びたい」という肥大化した自己顕示欲が戦争に向かわせたとウォルトは主張している。ここで、私が僭越ではあるが付け加えるならば、このようなトランプの肥大化した自己顕示欲をイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に利用されたということになるだろう。イスラエル、そしてネタニヤフの狙いは、イランの弱体化である。アメリカはイランが核兵器を持っていないという判断をしていたが、これでは緊急的な脅威ということにはならない。しかし、トランプの自己顕示欲を利用して、ネタニヤフはイラン攻撃を行わせることに成功した。しかし、昨年の場合には、今回の大規模攻撃に比べて、限定的な攻撃にとどまった。今回、トランプが大規模攻撃を決断するにあたっては、マルコ・ルビオ国務長官の影響も大きかったと言われている。そして、ネタニヤフは昨年、2025年を通じて、ルビオとの関係構築を実行してきた。ネタニヤフのこうした根回りは政治家としては非常に重要な能力である。それが今回の大規模攻撃につながった。

 しかし、アメリカとイスラエルの攻撃は世界に深刻なマイナスの影響を与えている。長期化していけばより深刻な状況になり、アメリカとイスラエルに対する反感は募るということになり、それは両国の国益を損なうということにつながる。こうして世界の構造は大きく変化していく。

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ドナルド・トランプのエゴのための戦争(The War for Trump’s Ego

-イスラエルとアメリカによるイラン攻撃は見た目以上に意味を持たなかった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/26/trump-iran-war-attack-ego/

まず、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とアメリカのドナルド・トランプ大統領によるイランとの戦争(それは戦争であった)が何を目的としていたのかを明確にしておこう。アメリカをより安全に、より豊かに、あるいは世界中でより尊敬され、賞賛される国にするためではなかった。トランプがトゥルーソーシャルで何を主張しようと、彼の忠実な支持者たちが何を言おうと、中東地域をより安定させること、あるいはイスラエルを長期的に守ることさえ目的ではなかった。

そもそも、イランは核兵器を取得する直前の段階にはなかった。これは、ホワイトハウスが彼女に屈服させ、発言を撤回させる前に、国家情報長官トゥルシー・ギャバードが連邦議会で述べた通りだ。そして、たとえテヘランがいつか核兵器を手に入れたとしても、その指導者たちがアメリカやイスラエルに対してそれを使用できない。それは、国家の自滅行為(committing national suicide)となるからだ。イスラエルは数十発の核爆弾を保有し、アメリカは数千発の核爆弾を保有している。イランの指導者たちはこのことをよく知っている。

さらに、ケネス・ウォルツが最後の論文で主張したように、イランが独自の抑止力を持つことができれば、中東はより安定する可能性がある。安全保障は強化され(つまり代理勢力に頼る必要性が減少し)、イスラエルが望む時に望む者を攻撃する能力は抑制されるだろう。もし気づいていないなら、レバノン、シリア、イエメンへの空爆に加え、2年近くガザ地区を容赦なく爆撃し、ガザ地区とヨルダン川西岸でゆっくりとした民族浄化(ethnic cleansing)を行っているのはイランではない。これらの活動を終わらせることは、地域全体の安定化に大きく貢献するだろう。ウォルツの主張には疑問に思うところもあるが、少なくともイランの爆弾は世界を一変させる大惨事(a world-altering catastrophe)となるので、いかなる犠牲を払ってでも阻止しなければならないという主張と同じくらいの説得力を持っている。

いずれにせよ、もしこの戦争の目的がイランによる核兵器取得の阻止だったとしたら、逆の効果をもたらす可能性が高い。トランプ大統領とその代弁者たち(mouthpieces)は、アメリカの攻撃は完全に成功し、イランの核インフラを破壊したと主張し続けているが、初期の被害評価では、これらのバンカーバスターの投下はイランの努力を数カ月遅らせたに過ぎないと結論付けられている。フォードウ施設内の主要構造物は無傷だっただけでなく、イランは最も濃縮度の高いウランの一部または全部を分散・隠蔽したと見られており、さらに濃縮する能力を保持している。また、これらの攻撃は、長年アメリカとの交渉に反対し、自国で核兵器を取得することを主張してきたイランの強硬派の支持を強めたようにも見え、トランプ大統領は彼らの主張に一層の説得力を与えた。もし将来イランが核兵器を取得した場合、その責任の大部分はトランプ大統領とネタニヤフ首相に帰せられるだろう。

もしこれがイランによる自国での核兵器製造を阻止するための綿密に練られた努力でなかったとしたら、一体何のためだったのだろうか? イスラエルが戦争を始めた以上、まずイスラエルの指導者たち、特にネタニヤフ首相が何を得ようとしていたのかを考えなければならない。明白な目的の1つは、イスラエルがガザ地区、そして程度は低いもののヨルダン川西岸地区で日々犯している戦争犯罪と破壊行為から世界の目を逸らすことだった。もう1つの目的は、アメリカとイランの交渉を妨害することだった。イスラエルはアメリカがイランの核インフラの一部を保持することを容認するのではないかと懸念しており、ネタニヤフ首相はイランとアメリカを対立させ続けたいと考えていた。ワシントンとテヘランの真の和解を阻止することが、ネタニヤフ首相が包括的共同行動計画(JCPOA)に反対した理由の1つである。バラク・オバマ政権は、JCPOAがアメリカとイランの緊張緩和への第一歩となることを期待していた。最後に、イスラエルはイラン高官を組織的に殺害することで、イランの体制転換につながり、イスラエルの地域的優位が確立されることを期待していた。前回のコラムで述べたように、この目標は単なる空想に過ぎないと思うが、だからといって、ますます強硬路線を強めるイスラエル政府(Israel’s increasingly hard-line government)にとって魅力的な空想ではなかった訳ではない。この地域の緊張状態を維持することは、ネタニヤフ首相を権力の座に留め(そして投獄から守ることにも)役立つ。

しかし、これらの点だけでは、トランプがなぜこの合意に同意することにしたのか、あるいはなぜ戦争は大成功だったという主張を改めて強調しているのかを説明することはできない。そこには、いくつかの明白な要因が作用していた。

第一に、この戦争は、少なくともアメリカの中東政策に関しては、ネオコンがまだ死んでいないこと、そしてイスラエル・ロビーが依然としてこの分野で大きな影響力を持っていることを改めて認識させるものだ。親イスラエルのアメリカ系ユダヤ人と福音派キリスト教シオニスト(evangelical Christian Zionists)の両方を含むこのロビーは、アメリカとイスラエルの間に特別な関係を維持したいと考えている。実際には、彼らはアメリカがイスラエルの行動に関わらずイスラエルを支持し、アメリカの力を利用してイスラエルの安全保障を強化することを望んでいる。2018年にトランプにJCPOA(包括的共同行動計画)を放棄させるにあたり、このロビーが重要な役割を果たしたことを思い出す価値がある。この戦略的失策は、イランの遠心分離機の増強と濃縮ウラン備蓄の増加を許した。先週末、AIPACや民主政治体制防衛財団(the Foundation for Defense of Democracies)といった組織団体、ミリアム・アデルソンのような裕福な政治献金者、そしてマルコ・ルビオ国務長官やマイク・ハッカビー駐イスラエル大使といった政治家たちは、ついに長年の希望であるイラン攻撃を実現させた。トランプ大統領が裕福なアラブ諸国の指導者たち(彼らは近年イランとの関係を冷やそうとしてきた)や、新たな中東戦争に反対するリアリストたちの声に耳を傾けてくれることを期待していたアメリカ国民は、またしても失望させられた。トランプ大統領は依然としてアメリカ軍地上部隊の投入には消極的で、イスラエルが「一体何を(what the fuck)」をしているのか分かっていないと批判するほどだったが、イスラエルから参戦を求められた際に、自らが戦争に踏み切った。「変化すればするほど、それは同じものである(Plus ça change, plus c’est la même chose)(The more things change, the more they stay the same)」。

しかしながら、イスラエル・ロビーはアメリカの政策を支配しておらず、戦争の最終決定権は依然としてトランプに委ねられていた。ここで鍵となったのは、トランプが持つ、注目の的でありたいという飽くなき欲求だった。彼は世界中が自分の一挙手一投足に注目し、議論し、そして理想的には称賛することを望んでいる。真の外交政策の成果、つまりアメリカをより安全で、より豊かに、より影響力のある国にする具体的な成果には、それほど関心がない。なぜなら、外交政策における大きな飛躍には、真摯な努力が必要だからだ。トランプはむしろ、自分と仲間が私腹を肥やしている間、偉業を成し遂げているように見せかけたいだけなのだ。イスラエルとの最新の戦争に加わったことで、彼は再び見出しのトップに躍り出た。そして、他国を爆撃することは、多くのアメリカ人(そして一部の洗練された観察者でさえ)が「大統領らしい(presidential)」と考える行為の1つだ。これはリアリティ番組のような政権であり、トランプはかつて人気番組「アプレンティス」で成功した実業家を演じたのと同じように、大統領を演じている。

トランプが結果(results)よりも体裁(appearances)を重視する傾向は、今に始まったことではない。トランプは最初の任期を北朝鮮の金正恩委員長とのオンライン上での激しい舌戦でスタートさせ、その後、突然、書簡を交換し「恋に落ちた(fallen in love)」と発表し、直接会談することになった。結果として行われた首脳会談は、トランプが好むようなメディアの熱狂的な反応を巻き起こしたが、準備不足の交渉は成果を上げず、北朝鮮の核兵器備蓄はそれ以来着実に増加し続けている。

この問題は他の多くの問題にも顕著に表れている。貿易政策を見てみよう。トランプが関税を脅迫、課す、延期、修正、停止、あるいは復活させるたびに、メディアは大騒ぎする。しかし、彼が交渉を約束した数々の「素晴らしい(beautiful)」貿易協定は、一度も実現していない。トランプはウクライナ戦争を「24時間以内に(in 24 hours)」終わらせると宣言し、大統領執務室でウォロディミール・ゼレンスキー大統領を叱責する(あの痛ましく気まずい会談は「素晴らしいテレビ中継だった(great television)」と発言した)が、戦争終結が予想以上に困難であることが判明すると、関心を失ってしまう。彼はメキシコ湾を「アメリカ湾」と改称したことは意義深い成果だと考えている。最近、「国防長官」ではなく「戦争長官」という肩書きに戻すことについても考えていた。トランプにとって重要なのは、肩書きと世間の印象であり、高官の能力や彼らが監督する政策の有効性ではない。目に見える成果を上げることではない。目標は、トランプとその行動に皆の注目を向け続けることだ。

現時点でこの傾向に誰も驚かないはずだ。なぜならトランプのキャリアは、何百万人もの人々に自分がそうでない何かであると信じ込ませる驚異的な能力の上に成り立っていたからだ。彼は平凡なビジネスマンだったが、新しいカモに金を貸すよう巧みに説得し、テレビで成功した大物実業家を演じることに長けていた。彼の再選は、何百万人もの人々を騙して、自分は国を偉大にする先見の明のある人物だと信じ込ませる彼の能力を改めて証明した。その一方で、彼の政権は、一般のアメリカ人が頼りにし、アメリカの力と影響力の基盤となっている多くの制度を解体している。現代アメリカの政治は、トランプのような人物のために作られている。彼の高尚な野心と真実を軽視する姿勢は、事実や実績よりもイメージ、クリック数、視聴者数が重視される世界にぴったり合っているのだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権の外交政策はマルコ・ルビオ国務長官が牛耳っている。アメリカの外交政策立案実施の特徴は、国務省とホワイトハウスに二本立てである点だ。が育成策に関して、国務長官(Secretary of State)と国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)が責任者として存在する。2025年5月、国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマイケル・ウォルツが更迭されて(2025年5月)、国連大使に転身してからは、ルビオがこの2つの職位を兼務している。ルビオには大きな権限が集まることになった。そして、トランプ政権は介入主義的な色合いを強めた。昨年のイランの核開発関連施設攻撃(2025年6月)もその一環だ。それが今回のイラン攻撃にまで続いている。

 ドンロー主義はモンロー主義の変化形である。これはアメリカは西半球まで後退するということであり、世界(全半球)帝国ではなく、西半球帝国になるという宣言である。それだと困ってしまうのはヨーロッパとイスラエルである。これらの国々は置き去りにされてしまう。ユーラシア大陸から西半球に引っ越しをする訳にもいかない。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ドナルド・トランプ大統領を洗脳に近い形で説得して、イラン攻撃を行わせた。ネタニヤフは自身のスキャンダルを免れ、国民の不満を外に逸らし、中東地域を不安定化させることで相対的にイスラエルの立場を強化し、そして、アメリカを中東から撤退させないために、イラン攻撃を実施した。彼の賭けは成功した。アメリカは中東から撤退することが出来なくなった。

 トランプ革命、ポピュリズム革命は失敗した。ワシントンの変革(ワシントンの洗濯)のために人々がワシントンに送り込んだトランプはワシントン政治の論理にからめとられてしまった。既存の政治、エスタブリッシュメントの頑強さを思う時、嘆息しか出ない。しかし、それでも人々はまた立ち上がることだろう。

(貼り付けはじめ)

「ドンロー主義」は意味をなさない(The ‘Donroe Doctrine’ Makes No Sense

-寛大に解釈したとしても矛盾が数多く存在する。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/08/donroe-doctrine-trump-venezuela-empire/

ドナルド・トランプ政権のヴェネズエラ政策(ニコラス・マドゥロ大統領の最近の拘束事件を含む)の戦略的正当性について、もしあなたが困惑しているなら、私はそれを非難することはできない。なぜなら、これまでに提示された論拠のほぼ全ては検討に値するものではないからだ。

第一に、これはアメリカを「麻薬テロ(narcoterrorism)」から守ることではない。ヴェネズエラはアメリカに流入する違法薬物(ましてやフェンタニル)の主要な供給源ではなかっただけでなく、ドナルド・トランプ米大統領が、麻薬密売で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領ファン・オルランド・エルナンデスに完全恩赦を与えるという決定を最近行ったが、このことはトランプがこの問題をどれほど真剣に考えているかを示している。さらに、米司法省は、トランプ政権が昨年繰り返し騒ぎ立てた危険な麻薬カルテル「カルテル・デ・ロス・ソレス(Cartel de los Soles)」が実際には存在しなかったことを認めた。言い換えれば、それは全くの虚構の政権プロパガンダであり、繰り返し警告されながら発見されなかったイラクの大量破壊兵器と同じくらい現実味を帯びていた。

マドゥロ政権の掌握もまた、アメリカの安全保障を強化するためではなかった。ヴェネズエラは非常に脆弱な国であり、マドゥロが容易に捕らえられたことからもそれが分かる。そして、ヴェネズエラはアメリカの強力なライヴァル国にとって、緊密な戦略的同盟国ではない。中国はヴェネズエラに軍事基地を建設しておらず、イランはアメリカを攻撃するためのミサイルをヴェネズエラに運び入れていなかった。ヴェネズエラには、アメリカの貿易ルートを阻害できるほどの強力な海軍力もなかった。カラカスがもたらす、アメリカが直面する深刻な脅威について、夜も眠れずに心配していた人間は誰もいなかったし、マドゥロ政権がブルックリンで投獄された今、私たちは誰一人として安眠できていない。

トランプ大統領は既に野党指導者マリア・コリーナ・マチャドの政権掌握を断念し、依然として紛れもなく独裁主義的な政権を率いるマドゥロ政権の副大統領と交渉する意向を示していることからも、民主政治体制の促進(promoting democracy)が目的だったのではないことが分かる。

危険な麻薬の撲滅でも、深刻な安全保障上の脅威への対処でも、民主政体回復への願望でもないのであれば、それは石油に違いない、そうではないか? トランプ大統領は、これが真の理由であり、アメリカ企業が石油を奪い取ってアメリカを偉大な国にするだろうと繰り返し主張している。これもまた間違いだ。トランプ大統領は好きなように信じればいい(そしてよく信じている)が、近いうちにあmエリカにとって大規模な石油ブームが待ち受けている訳ではない。火曜日、トランプ大統領はヴェネズエラが最大5000万バレルの石油をアメリカに引き渡すことに同意したと自慢したが、これはアメリカの原油生産量の4日分にも満たない量であることを考えると、このことを知らなければ、一見素晴らしい話に聞こえる。トランプは、売却益を管理し、ヴェネズエラ経済の支援に充てると述べた。もしそう信じるなら、トランプの略奪的本能(predatory instincts)に耳を傾けていないと言えるだろう。たとえその石油収入が最終的に得られたとしても、ヴェネズエラ経済の再建に必要な資金のほんの一部になるに過ぎない。

そうだ、ヴェネズエラは世界最大の確認埋蔵量を誇っているが、その重質原油は採掘が難しく、精製コストも高い。率直に言って、良識ある生産者なら開発を試みようとしないであろう、ヴェネズエラの石油開発に最後と言えるだろう。ヴェネズエラの老朽化したインフラの危機的状況と、昨今の原油価格の低迷を考えると、なおさらだ。そして、もし奇跡的に大量の原油が世界市場に流入すれば、価格はさらに下落し、アメリカのシェール掘削業者の多くは廃業に追い込まれるだろう。

そして、トランプや大手石油会社が何を考えているかに関わらず、世界は徐々に炭化水素から離脱し、他のエネルギー源へと目を向けつつあり、ヴェネズエラの埋蔵量の価値をさらに低下させていることを忘れてはならない。実際、気候変動の現実を考えると、最も賢明なのは、石油をできるだけ地中に残しておくことだ。つまり、中国が未来のグリーン産業を支配し、その結果、影響力を拡大することにレーザー光線のように集中している一方で、トランプと彼を取り巻く戦略の天才たちは、地球を脅かす、まるで前世紀的なエネルギー政策に邁進しているのだ。

従って、この作戦の戦略的根拠についてあなたが混乱するのも無理はない。私がここで見出す唯一の「戦略的」目的(“strategic” objective)は、西半球(the Western Hemisphere)におけるアメリカの覇権(hegemony)を再確立するという大まかな考えだ。トランプはあらゆるものに自分の名前を冠することで自らのテリトリーを示すことを好むため、この考えは現在「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」として宣伝されており、最近出された「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」にも明確に示唆されている。これは外交政策のリアリストなら支持できる合理的な考えのように聞こえるかもしれないが、綿密な検証にも耐えられない。

モンロー・ドクトリンの本来の目的は、アメリカが西半球におけるライヴァル大国の軍事介入を心配しなくて済むようにすることだった。ジェイムズ・モンロー大統領の構想が実現するまでにはほぼ1世紀が必要であったが、最終的にアメリカは他の全ての大国を西半球から追い出し、歴史家C・ヴァン・ウッドワードが「自由な(無料の)安全保障(free security)」と呼んだものの恩恵を享受することに成功した。

しかし、トランプらが言っているのはそういうことではない。なぜなら、現在、西半球で重要な軍事的役割を果たしている大国はおらず、また、そのような役割を担おうとしている大国も存在しないからだ。「国家安全保障戦略」が明らかにしたように、トランプ政権は、発生する可能性のあるあらゆる問題において、可能な限り多くの近隣諸国に、自らの指示に従わせようとしている。彼らは現在、マドゥロ大統領の後継者たちにこう言い放っている。「私たちの要求に応じなければ、封鎖を続け、もしかしたらもっとひどいことをするかもしれない」。そして、トランプ大統領と周辺の人々は地域の他の国々がこのメッセージを理解し、従順に行動してくれることを期待しているのだ。

特に、トランプ政権は近隣諸国の経済政策を統制する権利、そして中国などの国々にとって経済的に有益となる可能性のある政策に対して拒否権を行使する権利を主張している。「国家安全保障戦略」の中で書かれているように、「私たちは敵対的な外国の侵入や重要資産の所有から自由な半球を望む」とし、外部勢力が「戦略的に重要な資産を所有または支配」してはならず、アメリカは「非米州圏の競争相手が地域での影響力を拡大することを困難にしなければならない」と付け加えている。トランプ政権は、ラテンアメリカ諸国の一部が「低コストと規制障壁の低さ(low costs and fewer regulatory hurdles)」に「惹かれて他国と取引を行う(attracted to doing business)」傾向にあることを理解しているため、「各国にそのような支援を拒否させる(induce countries to reject such assistance)」と主張している。しかしトランプ政権は、一般的に対外援助に反対し、あらゆる二国間関係において利益の大部分を独占しようとする略奪的な政権であるため、欲しいものを手に入れるのに、寛大さ(generosity)ではなく脅し(threats)に頼らざるを得ない。

しかしながら、問題は、アメリカがこのように近隣諸国の経済に干渉し続けるならば、その地域の経済状況に対する責任を負わねばならなくなる点だ。アメリカ製品より安価な中国製品(電気自動車など一部では大幅に優れた製品)をラテンアメリカ諸国が購入しないようにと命じれば、現地の消費者は不満を抱くだろう。さらに、インフラ整備や新たな機会創出につながる中国やその他の外国投資を拒否するようこれらの政府に指示すれば、ワシントンは自らそれを提供せざるを得なくなる。さもなければ、ラテンアメリカの人々を貧困に陥らせていると非難されるだろう。これに、トランプ政権が自国の問題をラテンアメリカ地域からの移民・難民のせいにする傾向や、可能な限り多くを国外退去させるという強硬な姿勢を加えれば、安定した覇権ではなく、反米感情の高まりと地域の不安定化を招く処方箋となる。

より成功したアメリカの政策との対比は明らかである。例えば第二次世界大戦後、アメリカはヨーロッパやアジア(かつての敵国であるドイツや日本を含む)で極めて成功したパートナーシップを築いた。その背景には、これらの国々がソ連からの共通の脅威を認識していたこと、そしてアメリカが新たなパートナーが第二次世界大戦から可能な限り迅速に復興できるよう、善意をもって行動したことがある。しかし、トランプは「善意のある(benevolent)」という言葉の意味を知らない。彼の人生観は「自分のものは自分のもの、あなたのものは交渉可能(what’s mine is mine and what’s yours is negotiable)」である。

銃の威力で西半球を支配しようとしても、それは過去と同様に、将来も決してうまくいくことはないだろう。トランプ大統領の補佐官であるスティーヴン・ミラーは、「歴史の鉄則(iron laws of history)」の1つは、世界は力によって支配されているということだと考えている。しかし、彼が言及しなかった「鉄則」は、力だけが重要だと考える指導者は、必然的に多くの愚かなことをしてしまうというものである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアヵウント:@stephenwalt

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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 先日の総選挙での自民党の大勝を受けて、友人、知人から「選挙についてはどのように考えているか」という質問を受けた。これは私にはなかなか答えるのが難しい質問である。個人的には、選挙戦期間中に複数のメディアの選挙情勢分析で「自民党が300を超える議席獲得」という報道があり、ショックを受けつつ、「まさかそんな」と考えていただけに、自民党大勝という結果が突きつけられ、呆然としてしまった。しかし、いつまでも呆然としていられない。何か考えなければいけない。

 今回の総選挙の結果は小選挙区制の特徴である得票率と実際の議席占有率の乖離の大きさということが結果をセンセーショナルに見せている。2009年の総選挙でも同様のことが起きている。小選挙区制が良いのか、比例代表制が良いのか、もしくは別の選挙制度が良いのかということは結論が出ない議論である。それぞれに長所、短所がある。選挙については数千年の歴史があるが、選挙制度の精緻な研究は数十年の研究しかされていない。専門家たちの英知を集め、人々の議論の活発化が望まれる。

 私は、以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿を参考にして、今回の日本の総選挙の結果は、西側先進諸国に共通するある心性(mentality)がこのような結果を生み出したと考えている。それは、ウォルトが書いているように、「不確かな未来への恐怖(the fear of an uncertain future)」だ。西側先進諸国はどこも程度の差はあれ、少子高齢化が進み、経済成長も鈍化敷いている。最も厳しいのは日本であるが、他の先進諸国も同様である。そして、世界に目を転じてみれば、BRICSを中核とする「西側以外の国々」の活況や経済成長が目に入る。日本にも多くの外国人観光客が訪問し、「日本は安い」として食事や買い物を楽しんでいる。その様子を私たちは見ている。そして、「日本は安く買われる国だ」「日本は衰退しつつある」ということを肌で感じるようになっている。他の西側先進諸国もこの点で共通している。

こうした中で、強いリーダーの存在が求められるようになっている。強いリーダーは実際に強かったり、賢明であったり、頭脳明晰であったりする必要はない。嘘でも誇張でも何でも言い切り、その後に絶対に謝ったり、撤回したりしない。空とぼけるくらいの図太い人物で、強さを演出できる人物であれば良いのだ。日本はまさにそのような状況になっている。高市早苗首相は私が今書いた通りの人物であり、彼女の指導者としての正統性は、日本初の女性首相であるという目新しさと故安倍晋三元首相の正統な後継者であるという演出にある。そして、人々は強いリーダーを求め、そして、近代的な価値観を否定することが「改革」だと勘違いをする。

これらは全て、恐怖から発していることだ。未来が怖いのだ。そして、現状を正確に分析して受け入れることが怖いのだ。そして、強さを演出する指導者の語るお花畑の話を支持する。南鳥島近海で採掘されるレアアースが日本を豊かにするという夢物語を信じる。自民党が公約したのだから消費税減税がすぐに実行されるという与太話を信じる。信じたいのだ。そして、裏切られる。そして、また、新しく自分たちを騙してくれる指導者を探す。そのようにして国を滅ぼしていく。

(貼り付けはじめ)

恐怖がいかにしてリベラリズムを殺したか(How Fear Killed Liberalism

-政治における不安感が積み重なり人々の楽観主義の時代は終焉した。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/02/fear-populism-liberalism-trump-far-right/

学者、専門家、政治家たちは常に誤った予測をするが、その間違いの中には本当にとんでもないものもある。ちなみに、過去50年間で最悪の地政学的予測として私が挙げるのは、冷戦後の世界が平和でますます繁栄するリベラリズムの未来へと容赦なく押し流されていくという信念だ。フランシス・フクヤマの有名な「歴史の終わり(end of history)」という主張に表れているが、これは彼に限ったことではない。この見解は、民主政治体制が広がり続け、貿易と投資に対する障壁が全ての人々の利益のために減少し続け、ナショナリズムが衰退し、国境はますます重要ではなくなり、国際機関が最も困難な地球規模の問題に対処するために立ち上がり、戦争の危険は、指導者たちがそのメモを受け取っていない、弱くますます無関係になっている少数のならず者国家(rogue states)に限定されるだろうと想定していた。

それが全て実現していたらどんなに素晴らしいことだっただろう。1990年代に多くの賢明な人々がこの魅力的なヴィジョンに熱狂したのも無理もないことだ。ソヴィエト型の共産主義は崩壊し、アメリカ合衆国は力の頂点に君臨し、世界の多くの国々がリベラリズムの定式を受け入れているように見えた。民主政治体制は東ヨーロッパや中南米に広がり、グローバライゼーションは加速し、人権尊重は勢いを増し、専門家も政治家も、中国をはじめとする一党独裁国家(one-party states)が徐々に多党制民主政治体制(multiparty democracy)へと移行していくと予想していた。アメリカの政策決定層はリベラルな国際主義者(liberal internationalists)とネオコン(neoconservatives)が支配し、世界をアメリカのイメージに沿って再構築し、グローバルなリベラルな秩序を創造することに強く関与していた。

2025年まで早送りしよう。過去四半世紀を振り返ると、こうした楽観的な予測はほぼ完全に間違っていたことが明らかだ。中国はより権威主義的になり、ロシアは真の選挙民主政体を短期間試した後、独裁政治へと逆戻りした。実際、民主政体はここ20年近く、世界中で着実に衰退しており、アメリカ自身も例外ではない。中国、ロシア、そしてアメリカは収斂しつつあるが、アメリカはむしろこれらの腐敗した独裁政治体制(corrupt autocracies)に似てきている。トランプ政権はほとんど抑制なく行政力(executive order)を拡大し、法の支配(rule of law)は崩壊し、トランプは習近平が中国で行ったように、大学、法律事務所、民間企業から譲歩(concessions)を強要している。トランプ政権は、卑劣で抑制のきかないトランプ大統領の怒りを買った者に対して個人的な復讐を仕掛けている。そして今、連邦軍は首都ワシントンDCに展開し、主に一般市民を威嚇することを目的とした武力誇示を行っている。グローバライゼーションは保護主義の台頭に取って代わられた。現在、インド、ハンガリー、そしてアメリカ合衆国では非自由主義的な指導者が政権を握っている。そして、国連、世界貿易機関、世界保健機関、ヨーロッパ連合、核不拡散体制といった国際機関は、30年前よりも弱体化している。

要するに、アメリカ(そしてヨーロッパ)の外交政策を支えてきたリベラルな楽観主義は、全く的外れだったことが判明した。こうした展開の原因として、アメリカの傲慢さ(hubris)、「永遠の戦争(forever wats)」の悪影響、ソーシャルメディアの有害な影響、中国の経済発展、2008年の金融危機、エリート層の説明責任の欠如、格差の拡大など、様々な点を指摘するのは容易だ。そして、リベラルな世界秩序の拡大に向けた努力が失敗した理由を説明する書籍を執筆した人たちもいる。しかし、そこには、アメリカを含む多くの場所で政治が非リベラルな方向へ転じた理由を説明する、より深い力が働いていた。そして、それら全ての深層的な力に共通するのは、不確かな未来への恐怖(the fear of an uncertain future)だ。

今日、それほど裕福でも恵まれたわけでもない人々が、どれほど多くのことを心配しているかを考えてみよう。

第一に、経済の不確実性の高まりだ。これは、格差の拡大、腐敗と縁故資本主義(crony capitalism)の蔓延、人工知能(AI)とロボット工学の労働力への影響、多くの国における若者の失業率(一部のSTEM分野でさえも)、一部の経済大国における生産性の低迷、人口の高齢化、国際貿易やマクロ経済学を理解していない米大統領、またしても軽率な金融市場の規制緩和(一体何が問題になるというのか?)、そしてバブルの兆候を多く示す株式市場などが原因だ。もしあなたが既に超富裕層でなく、経済的な将来について少しでも不安を感じていないのであれば、あなたは注意を払っていないと言えるだろう。

第二のテーマは気候変動だ。その影響はますます顕著になり、ほぼ完全に有害で費用がかさみ、さらに悪化する可能性が高い。トランプとMAGAの世界は、この事実を否認し、問題をさらに悪化させるためにあらゆる手段を講じているかもしれない。しかし、物理法則や化学法則はソーシャルメディアの投稿を読んだり、フォックス・ニューズを見たりはしない。そして、ほとんどの一般人は、私たちがより暑く、より風が強く、より雨が多く、より危険な未来を迎えることを理解している。世界中の若者たちは、私たちが大きな問題を抱えていることを理解しており、彼らが子供を持つことに不安を抱く理由の一つでもある。

次に、大国間競争が再び到来する。一極化の時代は終わり、中国、ロシア、そしてアメリカ合衆国(そしてその他の国々)は対立し、新たな軍拡競争が始まり、直接衝突が起こり得る火種は数多く存在する。第三次世界大戦は避けられないものではないが、リスクは高まっている。より多くの国が核兵器の取得を試みる可能性が高く、長期的には安定化につながるかもしれないが、短期的には予防戦争(preventive war)への大きな動機付けとなり、私たちはさらに恐怖を抱く理由が増えることになる。

テロリズムについても忘れてはならない。確かに、ほとんどの人々がテロリズムに直面する実際の危険は常に誇張されてきた(あるいは、場合によっては政治的な目的で意図的に誇張されてきた)。しかし、テロリズムは依然として世界の一部の地域で深刻な問題であり、無差別的な政治的暴力行為への恐怖は、人々の認識に依然として大きな影を落としている。

さらに、移民や難民の問題もある。そして、様々な国が海外からの人々の流入に飲み込まれ、その結果、ある種の文化が消滅してしまうのではないかという恐怖がある。これは、白人至上主義運動(the white nationalist movement)の中心的な柱である「大人口置換理論(great replacement theory)」のような偏執的な幻想の背後にある恐怖だ。人口増加を切実に必要としている高齢化社会でさえ、この懸念に非常に敏感であり、アメリカ合衆国のような人種のるつぼ社会は、時計の針を戻そうと、障壁を築き、生産性の高い住民を追い出そうとしている。寛容なコスモポリタニズムの世界に溶け込む代わりに、「他者(other)」への恐怖は世界中で深刻な反発を引き起こしている。

しかし、待って欲しい。それだけではない! 専属の免疫学者を雇う余裕があったり、隠れ家としてプライヴェートアイランドを持っていたりしているのでなければ、おそらく次のパンデミックを心配していることだろう。私たちはここ数十年で、エイズ、SARS、エボラ、そしてもちろん新型コロナウイルスなど、すでにいくつかの大きな脅威を経験してきた。そして、またいずれ大きな脅威が起こるだろう(米保健長官ロバート・F・ケネディ・ジュニアの思い通りに事が運ぶなら、おそらくもっと早く起こるだろう)。

最後に、私たちが耳にする偽りの脅威を忘れてはならない。トランスジェンダーの人々、図書館の本、命を救うワクチン、ピザゲート事件、ワシントンDCをはじめとする民主党支持の都市での犯罪などだ。これらの脅威が全くの空想、あるいは極端に誇張されたものであっても、世界は民主政治体制では対処できない危険に満ちており、人々が本当に必要としているのは独裁者だ(the world is brimming with dangers that democratic systems cannot handle and that what people really need is a dictator)という、広く信じられている認識を助長することになる。もちろん、独裁者への依存は他の国々で非常にうまく機能したからだ。

不運なことに、人々は恐怖を感じると、何よりも保護を提供してくれる強力な権威を渇望する傾向がある。アルカイダによる911同時多発テロの後、アメリカ人は愛国者法の賢明さ、国内監視の拡大、そしてたとえテロとは全く関係のない外国の占領の妥当性について疑問を抱くことはなかった。人々は限界まで恐怖を感じると、事実が何であるかを理解し、どのように対応するかを慎重に検討するまで待つことはない。彼らは、誰かが指揮を執り、ただ危険に対処してくれることを望むようになる。

理想的には、有権者たちは、上記のような様々な困難な問題に効果的な対応策を講じるために24時間365日体制で働く、非常に有能な指導者を選ぶことになるだろう。しかし、恐怖心は、たとえそれが現実からどれほどかけ離れていても、強さと能力のイメージを巧みに演出する独裁者予備軍が売りつけるインチキ薬に、人々をいとも簡単に騙してしまう。野心的な独裁者は当然ながらこのことを知っているため、正当な懸念を誇張したり、架空の緊急事態をでっち上げたりすることで、権力の強化を正当化し、自らの行動の結果から人々の目を逸らそうとする。

フランクリン・ルーズベルト大統領は一期目の就任式で、「私たちが恐れるべき唯一のものは恐怖そのものである(The only thing we have to fear is fear itself)」という有名な言葉を残している。しかし、これは必ずしも正確ではない。遅滞なく対処する必要がある真の問題がいくつかあり、あなたがそれらを心配するのは当然だ。私たちが決して許されないのは、恐怖に麻痺したり、判断力を曇らせたりすることだ。私たちが直面する最大の危険は、将来への不安に駆られて、問題を悪化させる兆候を示し、個人的な力を得たいという欲によってより自由な世界というリベラルなヴィジョンを消えゆく記憶にしてしまう可能性のある指導者に頼ってしまうことだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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