アメリカ帝国の衰退は明らかになっている。ドナルド・トランプが大統領になってもそれは変わらない。大きな流れを変えることはできない。誰が大統領になろうとも変わらない。アメリカの一極支配は終わる。中国が対等な超大国となり、G2で世界を管理することになる。世界は西側諸国(the West)と西側以外の国々(the Rest)に分かれる。そして、これからは西側以外の国々の時代になっていく。500年続いた西洋近代支配は終焉を迎える。日本人は西洋に憧れ、名誉白人になることに狂奔したが、それも意味をなさなくなるだろう。
下記論考は「トランプがアメリカを弱体化させた」という趣旨であるが、私の認識は異なる。トランプであろうが、誰であろうが、アメリカの弱体化を止めることはできない。ジョー・バイデンでも駄目だったではないか。アメリカの信用を維持できたかとなるとそれは違うということになる。ドナルド・トランプの第一次政権が中国に対して貿易戦争を仕掛け、それに対して、民主党側は批判したが、バイデン政権もまた中国に対して厳しい姿勢を維持するしかできなかった。それは、アメリカの国力が落ち、保護貿易をするしか他に選択肢がないからだ。
米ドルと米国債の信認が落ちているのもその流れの中にある動きだ。アメリカの経済力の低下は戦後80年の大きな流れだ。20世紀であれば、米ドルは世界最強の通貨であり、経済が破綻しているような国家、自国通貨の信用が全くない国で、米ドルが流通するということは普通にあった。米国債は世界で最も安全な資産であった。世界各国の外貨準備や中央銀行の資産は米ドルと米国債で形成されていた。石油取引は米ドルでのみ実施されるというペトロダラー体制もあり、ドルは世界最強の通貨であった。単純化して言えば、アメリカはドル紙幣を擦りさえすればなんでも買うことができた。世界各国は農産物や工業製品をアメリカに売って、ドルを手に入れて石油を買う、もしくは安全な米国債を買うということをしていた。アメリカに投資をすることで利益を上げることができた。そのようなアメリカにとっては天国のようなシステムは終わりを迎えようとしている。世界各国は米ドルではなく、実物資産、具体的には金の購入に動いている。
経済力が低下すれば、軍事力も低下する。アメリカは大規模戦争を戦う力を失いつつある。ウクライナ戦争への支援に加えて、イラン戦争も実施していることで、大規模戦争を行っているような状況であるが、アメリカ軍の物資や武器が不足し、補給が厳しいために、将兵の士気が低下しているということが報じられている。第二次世界大戦、朝鮮戦争、ヴェトナム戦争と20世紀のアメリカは大規模な戦争を長期間にわたって実施することができた。しかし、21世紀のアメリカにはそれだけの国力はない。
繰り返しになるが、アメリカを弱体化させたのはトランプではない。弱体化したらトランプが大統領になったということの方が正確だ。そして、これは歴史の必然である。私たちは自身の頭の中を根本的に変更しなければならない。
(貼り付けはじめ)
トランプがアメリカを弱体化させた10の方法(The Top 10 Ways Trump Has Made
America Weaker)
-彼はあらゆる意味で「悪い方向」においてアメリカ史上最も大きな影響を及ぼした大統領の1人だ。
スティーヴン・M・ウォルト筆
2026年8月17日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/08/17/top-10-trump-america-weaker/
ワシントンのホワイトハウスにある「ステイト・ダイニング・ルーム(公式晩餐会用食堂)」で開かれた「信仰担当室(Faith Office)」主催の昼食会にてウェイトトレーニングについて語るドナルド・トランプ米大統領(2025年7月14日)
MAGA(マガ):「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」。これこそが、ドナルド・トランプ米大統領が国民に掲げた公約だ。彼を選べば、国はかつての活力(mojo)を取り戻し、国内の調和、経済的活力、国内主権、そして世界的な影響力を備えた黄金時代(a golden age of internal harmony, economic vitality, domestic
sovereignty, and global influence)に回帰する。それは、とりわけグローバル化の荒波に翻弄され、移民や「グローバリスト」が内側から国を蝕んでいると信じていたアメリカ人にとって、魅力的なヴィジョンとなった。
トランプ大統領の2期目が折り返し地点(the midway point)を迎えようとしている現在、彼がアメリカ史上最も大きな影響を及ぼした大統領の1人であることに疑いの余地はない。残念ながら、彼の行動がもたらした結果のほぼ全ては有害なものとなっている。それはアメリカの大多数の人々にとってだけでなく、世界におけるアメリカの相対的な力や地位にとっても同様だ。側近や家族は恩恵を享受しているかもしれないが、彼の行動が積み重なって生み出す結果は、「偉大さへの回帰(a return to greatness)」ではなく、より弱体化し、分断されたアメリカ(a weaker and more divided America)となるだろう。
その具体的な例を挙げていく。
(1)アメリカの約束に対する信頼の破壊(Destroying confidence
in U.S. promises)。信用の重要性は時に過大評価されがちだが、約束が守られると信じられなければ、諸外国はワシントンと協力しようという意欲を失うだろう。訴訟や破産を繰り返した実業家としての経歴を通じてそうであったように、トランプは自身の脅しが大抵は中身のない虚勢(empty bluster)に過ぎず、その公約には何の意味もないことを繰り返し露呈してきた。彼はイランとの間で成功していた核合意を破棄し(その行動がうまく機能しただろうか?)、今では自身の1期目にカナダやメキシコと交渉し「史上最高の取引(the best deal ever)」だと自画自賛した貿易協定さえも非難している。関税を巡る二転三転する対応(on-again, off-again approach)、主要同盟諸国への支援打ち切りを繰り返す脅し、そしてウクライナによるパトリオット迎撃ミサイルの製造を容認するという提案を理由も示さずに撤回したことなど、これらは全て、彼の言葉に何の意味もないことを明白に物語っている。全くの無価値だ(Zip. Nada)。
これには現実的な結果が伴う。例えば、トランプが二枚舌(double-dealing)で予測不能な人物だというごく当然の評判は、彼がイランとの紛争を終わらせるのに苦労している理由の1つとなっている。イランの指導者たちは彼の言葉を一切信じておらず(なぜ信じる必要があるだろうか?)、彼を窮地から救い出す前に、まずは具体的な譲歩を求めている。また、世界各国がリスクを分散させ、より信頼できるパートナーを求めているのも、こうした理由があるからだ。
(2)アメリカ軍の能力低下(Reducing U.S. military
capability)。巨額の予算を投じ、アメリカの「殺傷能力(lethality)」を誇示し、男性兵士のテストステロン確保も進めたにもかかわらず、トランプ大統領とピート・ヘグセス国防長官はアメリカ軍を弱体化させ、同盟国やパートナー国への攻撃を抑止するアメリカの能力を損なってきた。
どのようにしたか? イランとの愚かな紛争を始め、重要な兵器の備蓄を枯渇させ、艦船や飛行隊、兵士を何カ月にもわたって任務に就かせ続け(その結果、自殺未遂が相次いだと報じられている)、軍の能力を疲弊させた。こうした行動は、有益な軍事能力を無駄に浪費し、潜在的な敵国にアメリカの弱点を示し、兵士の士気を悲劇的な事態を招きかねないほど低下させた。トランプとヘグセスがアメリカの軍事資産を浪費している間に、将来の敵となり得る国々は、軍備を増強し、研究や訓練を重ね、着々と準備を進めてきた。
さらに悪いことに、トランプとヘグセスは軍を政治利用し、MAGA運動に忠実な組織へと変えようとしている。ヘグセスは、「ウォーク(woke 訳者註:社会正義や差別に対する意識の高い姿勢)」と見なした将校を積極的に排除しようとしてきた。また、彼らをよく知る上官からの推薦や輝かしい実績があるにもかかわらず、不釣り合いなほど多くの女性や有色人種の将校を解任したり、昇進を拒否したりしてきた。さらに、士官学校を含む軍全体にイデオロギー的な同調を強要しようともしている。
これは危険な動きです。故サミュエル・ハンティントンが著書『軍人と国家(The
Soldier and the State)』で論じたように、軍を政治的争いから超越した存在に保つ規範や組織文化に基づく「軍の専門性(professionalism)」は、私たちの歴史を通じて大きな資産となってきた。将校は憲法に対して宣誓を行うのであって、特定の政党や大統領に対して行うものではない。彼らは「義務・名誉・祖国(Duty, Honor, Country)」を最優先する規範を重んじることが求められている。彼らは支持政党によって評価されることはなく、上級将校は時を経て両党の政権に喜んで仕えてきた。軍の上層部(およびいわゆる軍産複合体[military-industrial complex]の他の構成要素)は国家安全保障の問題に多大な影響力を持っているが、文民統制(civilian control)の下にあり、特定の政党が権力を不当に奪取したり維持したりするための道具となったことは一度もない。
今日でもその状況は変わっていないと私は考えるが、懸念すべき傾向が見られる。そして、もしトランプが軍を自身の権力のための忠実な道具に変えられるなら、間違いなくそうするだろうと私は確信を持っている。もし彼がそれに成功すれば、軍は戦闘力においてさらに劣る組織となってしまうだろう。
(3)外交能力の解体(Dismantling diplomatic capacity)。マルコ・ルビオは、国務長官、国家安全保障担当大統領補佐官、国立公文書館の長官代行など、多くの肩書きを(候補として)取り沙汰されてきたが、時に彼は、かつて牛乳パックに掲載されていた「行方不明の子供」の写真を私に想起させる。「この男性を見かけなかったか?」と尋ねたくなるほどだ。ルビオは、イランとの紛争やウクライナ問題など、今日国家が直面している主要な課題から事実上遠ざけられてきた。その一方で、彼とトランプは、再構築に何十年もかかるような形で、アメリカの外交能力と国際的な存在感を組織的に弱体化させてきた。
ルビオが国務省の指揮を執る中で、中国が国際機関への関与を拡大し続けている一方で、アメリカは60以上の国際機関から一方的に脱退した。ルビオは海外の領事館や事務所を閉鎖し、数十もの大使ポストを空席のままにしている。アメリカ外交官協会(the American Foreign Service Association)が実施した包括的な調査によると、回答者の98%が士気の低下を報告し、86%がこうした措置によって業務遂行能力が阻害されていると回答した。報告書のタイトルが全てを物語っている。アメリカの外交機関は「崩壊の危機(breaking point)」に瀕している。
トランプが好んで頼る特使たちが極めて有能かつ効果的に機能しているのであれば、それほど大きな問題ではないかもしれない。しかし、スティーヴ・ウィトコフやジャレッド・クシュナーといった素人の外交官、あるいはJ・D・ヴァンス副大統領の振る舞いを見れば、実際はそうではないことが明らかだ。
(4)アメリカの科学的優位性の毀損(Undermining U.S.
scientific preeminence)。科学技術における主導権は、長年にわたりアメリカの世界的な力の基盤の1つとなってきた。中国が明確に理解しているように、科学的な力は将来さらに重要性を増すだろう。この課題に対し、トランプは何をしてきたか?
彼は広範な科学研究への連邦政府の支援を削減し、根拠のない理由で大学を攻撃し、無知で不適格な科学懐疑論者(ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官など)を要職に任命した。さらに、自身の発言やソーシャルメディアでの激しい投稿を通じて彼らの誤った主張を拡散し、科学者ではない人物を科学顧問に任命し、知識や専門性よりも無知の方が好ましいという考えを積極的に助長してきた。
こうした行動は影響を及ぼしているのだろうか? 間違いなく及ぼしている。アメリカ物理学協会(the American Institute of Physics)によると、物理学分野の博士号取得者がアメリカを離れる割合は過去30年間で最高水準に達しており、わずか1年前のほぼ2倍になっている。その結果生じるこの分野(および他の分野)での頭脳流出(brain drain)は、アメリカを、本来あるべき姿よりも知識、革新性、生産性、そして安全性の低い国にしてしまうだろう。それは、ワシントンにとって最大のライヴァルに科学的優位性を明け渡すことになりかねない「オウンゴール(an own goal)」だ。
(5)「グリーン・トランジション(環境に配慮した経済への移行)」への乗り遅れ(Missing
the green transition)。これに関連する失策は、トランプが長年にわたり気候変動を否定し、再生可能エネルギーに反対し、化石燃料の燃焼拡大に固執してきたことに起因する。この分野の文献を読んだり、長期的な気候変動の傾向に注目したりしている人なら誰でも知っているように、こうした姿勢は狂気でさえある。それは、より深刻な気候問題や気候変動に関連する死者数の増加、そして多くの人々の苦しみを招くだけでなく、トランプの政策によって、アメリカが19世紀型の「煙突産業(旧来の重厚長大産業)」(the smokestack technologies of the 19th century.)の技術を担う一方で、中国が未来のグリーン技術(太陽光、風力、蓄電池など)を支配する状況を決定づけてしまった。核融合技術がごく近い将来に商業的に実現し、広く普及すると信じない限り、トランプによる気候変動問題への対応は、アメリカをより弱く、より貧しく、そしてより温暖な国にしてしまうだろう。
(6)法の支配の形骸化(Eroding the rule of law)。トランプが法や規則を軽視していることは良く知られている。彼は、自らの怒りを買ってしまった不運な個人への報復に法制度を利用する一方で、あらゆる法的制約から自らを守るために多大な労力を費やしてきた。彼の個人的な弁護士であり、極めて従順なトッド・ブランシュを司法長官に指名し、人事承認させたことは、こうした動きの最新の段階に過ぎない。彼のこうした取り組みは、イデオロギー的に足並みを揃え、従順な姿勢を示す連邦最高裁判所によって後押しされてきた。連邦最高裁は、ごく一部の場面では彼の行動を抑制したこともあったが、大半においてはそれを容認し、権限を強化する役割を果たしてきた。
なぜこれが重要なのだろうか? それは、アメリカの司法制度の公正さに対する信頼が、アメリカ人にとっても、またアメリカとの貿易や投資を望む外国人にとっても、安心感をもたらすものだからだ。法が公平に解釈され、偏りなく透明性を持って執行されるという信頼があれば、恣意的あるいは政治的動機に基づく決定のリスクが減り、ひいてはビジネスを行う際のリスクも低減される。仮にアメリカの司法制度が政治化し腐敗したと見なされるようになったとしても、外国人がアメリカとの関係を完全に断つことはないだろう。なぜなら、そうした問題がさらに深刻な国は他にも数多く存在するからだ。しかし、アメリカは、かつて自国を極めて魅力的なパートナーたらしめていた重要な特質の1つを、みすみす失ってしまうことになる。
(7)選挙の公正さへの脅威(Threatening electoral
integrity)。民主政治体制は、自由で公正な選挙と、選挙結果が投じられた票を正確に反映しているという市民の信頼の上に成り立っている。トランプは当初から選挙制度の公正さに対して疑念を抱かせるような言動を繰り返してきた。その最たる例が、2020年の選挙で実際には自分が勝利したという、根拠のない主張を執拗に繰り返したことだ。実際、選挙の公正さを損なう行為の最も明白な例は、トランプ自身による2020年の敗北を覆そうとする試みだった。彼は怒れる群衆を扇動して連邦議会を襲撃させ、州の選挙管理当局者に圧力をかけて自身の票を上積みさせようとし、さらにはマイク・ペンス副大統領(当時)に対し、宣誓に背いて選挙結果の認定を拒否するよう迫った。真の選挙不正の証拠を探しているなら、これ以上の例はないだろう。
ここで懸念される危険は、選挙に対する国民の信頼が損なわれることで、敗者が有権者の多数の意思を拒絶し、不正に選ばれたと誤認している当局者の決定を受け入れなくなり、さらには国を分断する権力者共同謀議論(conspiracy theories)の餌食になってしまうことだ。選挙が常に不正操作されているという思い込みほど、愛国心や市民としての連帯感を蝕むものはないが、トランプとその取り巻きが行ってきたのは、まさにそのようなことなだ。
(8)権力の抑制と均衡の放棄(Abandoning checks and
balances)。行政府の権限拡大はトランプから始まった訳ではない。トランプの2期目においてその動きを加速させた要因、連邦議会の無力さや、「単一の行政府(unitary executive)」の理論を支持する構成となった連邦最高裁などのいくつかは、彼が2024年に再選される以前からすでに存在していた。また、自身の権限に対する制約を疎ましく思い、議会の承認や司法の裏付けを得ることなく、ただ自分の望む通りに行動したいと願った大統領は、彼が初めてではない。
とは言え、憲法に組み込まれた権力分立や抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)を強引に踏みにじろうとするトランプの姿勢は、アメリカの歴史上類を見ないものであり、その長期的な影響は甚大なものとなるだろう。例えば、連邦準備制度の政治的独立性に対する信頼が揺らげば海外の投資家は警戒心を強めることになり、大統領の行動に対する歯止めがなくなれば、アメリカの信頼性や予測可能性について他国の懸念を招くことになる。また、国民の支持を得たり議会に説明したりすることなく大統領が何でも自由にできるとなれば、現在のイランとの対立激化のような、思慮に欠ける失態を招く可能性が高まる。トランプを、それに反する圧倒的な証拠があるにもかかわらず、神の摂理を体現する無謬の存在(an infallible agent of divine Providence)だと信じ込んでいない限り、アメリカの憲法秩序に対するこうした攻撃は、大いに懸念すべき事態であるはずだ。
(9)建設的な対話の放棄(Abandoning civil discourse)。アメリカの政治的言説を粗野で下品なものへと変質させた責任は、何よりもトランプにある。その要因の1つは、彼が恥じることなく嘘をつく姿勢と能力(共和党の大部分にまで伝染した性質)にあるが、それだけではない。下品な侮辱や暴力的な言葉遣い、反対派を犯罪者や売国奴、あるいはそれ以下の存在として描く支離滅裂な罵倒、そして国民の半数に対するあまりにも露骨な軽蔑といった振る舞いも大きな要因だ。
ヴァンス副大統領をはじめとする彼の支持者たちも、同様の手法を取り入れている。アメリカ人を互いに対立させ、複雑な問題に関する真剣な議論を、まるで学校の運動場での悪口の言い合いのような低次元の争いへと変質させることは、さらなる分極化(polarization)や政治的膠着(gridlock)、そして愚かな決断(dumb decisions)を招く元凶となる。アメリカの現職大統領や副大統領が自ら敵の望むような振る舞いをしている様子を見て、敵対勢力はさぞかし喜んでいることだろう。
(10)アメリカの「ソフトパワー」の破壊(Torching U.S. soft
power)。これら全てを合わせると、かつては強大だったアメリカの「ソフトパワー」がリアルタイムで崩壊しつつあるという現実が浮かび上がる。思想を同じくする政治家の一部(主にラテンアメリカ諸国)の間ではトランプの人気は高いものの、全体として見れば、世界の多くの国々の目にはアメリカの地位が著しく低下したと映っている。欠陥を抱えた民主政治体制はもはや他国の憧れの対象ではなく、老朽化が進んだインフラは外国からの訪問者を感嘆させるどころか失望させている。さらに、トランプの略奪的とも言える政策は、かつては世界で最も親米的だった国々(カナダやデンマークなど)さえもアメリカから遠ざけてしまった。
何よりも最悪なのは、彼の気まぐれな意思決定(erratic
decision-making)と、能力不足の取り巻きへの依存(reliance on unqualified
lackeys)が、持続的な世界的影響力の源である有能さというオーラ(aura of competence)を損なってしまったことだ。アメリカへの評価が、北朝鮮、アフガニスタン、イラン、あるいはイスラエルと大差ないレヴェルにまで落ち込んでいるとなれば、何かが決定的に狂ってしまったことは明らかだろう。
公平を期すために言えば、トランプの2期目が完全な失敗だった訳ではない。彼は小国でトランプ支持派の当選を後押ししたり、一部の同盟国から短期的な経済的譲歩を引き出したりしたほか、最近のワールドカップでは、FIFA(国際サッカー連盟)にアメリカ男子代表選手への処分を撤回させたことさえある(もっとも、その甲斐なくティームは次の試合で敗退したが)。NATO(北大西洋条約機構)首脳会議に出席しても、大きな外交問題を起こさずに済ませることさえできた。
しかし、2期目における彼の最大の功績(accomplishment)は、自分自身と取り巻きを富ませたことにある。まあ、それは決して小さな成果ではないだろうし、そもそも彼が政界入りした真の理由もそこにあったのかもしれない。任期が終わる頃には彼の家族は莫大な富を手にしているだろうが、国家は弱体化し、病み、怒りに満ちた状態になっているはずだ。以前は不明瞭だったとしても、今や明白な事実がある。「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」というスローガンは、最初から単なる詐欺(just a scam)に過ぎなかったということになる。
※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。彼は、現代世界を理解・展望する上で不可欠な主要概念を解説する5部構成のニューズレター・シリーズ『新しい地政学(The New Geopolitics)』著者。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social Xアカウント:@stephenwalt
(貼り付け終わり)
(終わり)

『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

















