古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ティム・ウォルツ

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 アメリカ大統領選挙が終わって3週間ほどが経過した。結果は共和党のドナルド・トランプ前大統領(次期大統領)が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破って二回目の当選を果たした。トランプは選挙人312人(一般得票約7700万票、約49.9%)、ハリスは選挙人226人(一般得票約7400万票、約48.3%)という結果になった。トランプにとっては選挙人だけではなく、一般得票でも勝利し、圧勝、完勝ということになった。一度敗れた前大統領が再び勝利を収めたのは100年以上ぶりのことだった。

 前回は民主党のジョー・バイデン前副大統領(当時)が選挙人306名(一般得票約8100万票、約51.3%)で、共和党のドナルド・トランプ大統領(当時)を破った。トランプの獲得した選挙人は232名(一般得票約7400万票、46.8%)だった。この4年間で民主党はどうしてここまで票を落とすことになったのかということを、民主党自身が詳しく分析しているだろうが、各メディアでも出口調査の結果を基にして分析している。

 何よりも重要な原因となったのは、中絶問題を一番の争点として訴えて、経済問題を訴えることができなかった、アピールできなかったということになる。

民主党の支持基盤である、若者たち、ヒスパニック系、アフリカ系での支持を伸ばせなかった。ここに尽きるようだ。生活に密着する問題、インフレ問題について、バイデン政権も対策を行っていたが、それをアピールできなかったこと、更には生活実感として、そのような対策の効果を実感できなかったということである。インフレが直撃するのは所得が低い人々であり、そうした人々は、元々は民主党支持であったが、民主党がそうした人々の生活実感を救い取れなくなっている、また、都市部の中間層からエリート層が支持基盤となっているというところが大きい。また、有権者全体として、「経済問題はやはり、経営者出身のトランプだ」という感覚がある。

 文化的、価値観に関する問題で選挙を戦って勝てることもあるが、アメリカで生活に不安を持つ人々、明日の生活もどうなるか心配している人々、家賃高騰のために車上で生活することを余儀なくされている人々は直近の生活問題を解決することを望む。生活が安定しなければ、社会的な問題について考えることはできない。民主党はそうした生活実感を取り戻すことができるかどうか、ここが重要になってくる。

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2024年大統領選挙について出口調査が語っていること(What the exit polls say about the 2024 election

ダグラス・ショーエン、カーリー・クーパーマン筆

2024年11月18日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/4993162-trump-victory-exit-polls/?tbref=hp

ドナルド・トランプ次期大統領の選挙での勝利から2週間近くが経過したが、民主党員も専門家たちも、トランプが300人以上の選挙人を獲得するために、どのようにして7つの激戦州全てを席巻したのかを理解しようとしている。

出口調査はトランプ大統領の勝利の背後にある最大の理由を明らかにしている。有権者たちはカマラ・ハリス副大統領と民主党の左派によった綱領(left-leaning platform)を拒否した。この綱領は経済をほとんど無視しながら進歩的な社会問題に力を入れるものだった(doubled down on progressive social issues while largely neglecting the economy.)。

その代わりに、経済や移民問題といった生活に密着した台所テーブルに関する諸問題(kitchen table issues)に焦点を当てたトランプは、中絶の権利に焦点を当てたハリスや民主党よりも、特にハリスが勝利するために必要とした若年層、ヒスパニック系、黒人有権者に対して大きな効果を発揮した。

言い換えるならば、出口調査は、民主党が主要な有権者の間でさえ、意向を正しく読み取ることに失敗したことを示している。彼らは、2024年は2022年に似ていると想定していた。2022年は、中絶の権利をめぐる争いがインフレへの懸念をかき消し、全米で民主党を押し上げた。

しかしながら、CNNの2022年、2024年の出口調査によると、2022年には全米の有権者たちにとって中絶(27%)が2番目に重要な問題であったのに対し、2024年には14%だけが重要な問題だと答えただけだった。

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、その時点までに、ヒスパニック系が多数を占める郡は2020年と比べてトランプの支持率が13ポイント、アフリカ系アメリカ人が多い郡は3ポイントも上昇しており、これは主にトランプが選挙運動の目玉とした経済への懸念によるものだと言われている。

ハリスと民主党が明確な経済政策を打ち出せなかったことは、この2つの票田(ヒスパニック系とアフリカ系アメリカ人)に特に大きなダメージを与えた。実際、ヒスパニック系有権者の40%が、経済が自分の投票にとって最も重要な問題であると答えており、CNNによれば、これは全米の有権者全体よりも8ポイント高い。

経済が最重要課題であると答えたヒスパニック系有権者のうち、3分の2(67%)がトランプに投票したのに対し、ハリスに投票したのはわずか32%であった。

更に言えば、経済を最重要課題とした20%の黒人有権者のうち、トランプはその4分の1強(26%)の票を獲得し、黒人有権者全体における支持率の2倍に達した。

ペンシルヴァニア州やアリゾナ州のようないくつかの激戦州の中では、ヒスパニック系の支持率が2020年と比べてトランプはそれぞれ27ポイント、10ポイント改善した。これが決定的だったようだ。

そのため、ヒスパニック系有権者を詳しく見ると、民主党のメッセージ発信(messaging、メッセージング)がいかにずれていたかが浮き彫りにされる。

ハリスと民主党全体は、トランプ大統領の移民排斥のレトリックに大きく傾倒したが、ヒスパニック系有権者の10人に7人以上(71%)は、ユニドスの出口調査によれば、より厳しい国境警備政策を支持している。

これと同様に、2022年の中間選挙では中絶(28%)がヒスパニック系有権者の最重要課題であったが、CNNによれば、今年同じことを答えたヒスパニック系有権者は2分の1以下(13%)であった。

同様に、伝統的に民主党の信頼できる有権者である若い有権者も、ハリスと民主党のメッセージ発信には動かなかった。ニューヨーク・タイムズの分析によると、「18~34歳の人口が多い」郡は、トランプ支持に6ポイント動いた。

特に30歳未満の有権者について見ると、ハリスはこれらの有権者の支持を勝ち取ったものの、彼女の獲得した11ポイント差は、4年前のバイデンの24ポイント差の約半分にとどまった。

ペンシルヴァニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州といった「青い壁(Blue Wall)」の州と呼ばれる各州では、民主党はハリスが選挙人270人を超えることを期待していたが、若い有権者のシフト(移動)はさらに顕著だった。

エジソン・リサーチ社によれば、2020年と比較して、30歳未満の有権者はミシガン州で24ポイント、ペンシルヴァニア州で18ポイント、ウィスコンシン州で15ポイントもトランプにシフトした。これらは激戦州7州全てで最大の動きとなった。

中間選挙とは異なり、大統領選挙はほぼ常に経済と現政権をめぐる国民投票(referenda)であり、ハリスが苦戦したのはまさにここだった。

タフツ大学の世論調査によれば、30歳以下の有権者が今回の選挙の争点として挙げたのは、中絶よりも経済であり、その割合はほぼ4対1(40%対13%)となった。

ハーヴァード大学ケネディスクール政治学研究所の世論調査ディレクターであるジョン・デラ・ヴォルペが指摘するように、「私が実施した初期のフォーカス・グループから、トランプ政権下では若年層の財政が良くなるという生得的な感覚(innate sense)があった」ということだ。

興味深いことに、外交政策が経済、移民、中絶といった問題よりも関心が低いことが多い中、中東戦争に対する一貫した立場を明確に打ち出せなかったハリスは、ミシガン州のアラブ系有権者とペンシルベニア州のユダヤ系有権者からの支持を失った。

アラブ系アメリカ人の人口が多い都市であるミシガン州ディアボーンでは、トランプが得票率42%、ハリスの36%で僅差で勝利したが、これは2020年のバイデン大統領と比べてハリスは33ポイントも得票率を下げたことになり、これは驚異的な低下となった。多くの住民は、ハリスがイスラエル支持だと感じ、それに反対した。

逆に、ペンシルヴァニア州の世論調査によれば、ハリスがジョシュ・シャピロ州知事を副大統領候補に選ばなかったことは、CNNのヴァン・ジョーンズのような一部の民主党員でさえも、反イスラエルの進歩主義派をなだめるための努力だと非難しており、ハリスはペンシルヴァニア州を失った可能性がある。

ハリスはペンシルヴァニア州のユダヤ人票を48%対41%で獲得した。しかし、『ニューヨーク・ポスト』紙は、彼女がシャピロを選んでいたら、2倍以上の差をつけて勝っていた可能性が高いという世論調査を報じた。ユダヤ系有権者が有権者の3%を占めており、トランプが13万票弱の差で勝利した、この州では、これは大きな失敗だったかもしれない。

ミシガン州とペンシルヴァニア州でのハリスの苦戦は、彼女の選挙戦を悩ませた核心的な問題を象徴している。彼女は大統領になるための政策課題を明確に示すこともなく、不人気なバイデン大統領と自分を切り離して定義することもなかった。

より大きなスケールで見れば、全米および激戦州の世論調査は、ハリスと民主党のより深い問題を明らかにしている。有権者が、食卓に食べ物を並べられるかどうかや、管理されていない南部国境の脅威よりも、中絶のような問題を優先してくれることを期待し、手遅れになるまで間違った問題を優先したのだ。

ポジティヴに捉えれば、民主党の敗北の大きさと世論調査は、2026年、そして2028年に民主党がどのように立ち直ることができるかの明確な道筋を示している。とはいえ、民主党がこの地図に従って、経済中心の中道主義を発展させることを選択するかどうかは重要である。綱領を強化するか、その代わりに左寄りの社会問題に力を入れるかは見ていかねばならない。

※ダグラス・E・ショーン、カーリー・クーパーマン:ニューヨークに拠点を置く世論調査会社「ショーン・クーパーマン・リサーチ」の世論調査専門家兼パートナー。共著として『アメリカ:団結するか、死ぬか(America: Unite or Die)』の共著者である。

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(終わり)

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選挙後のカマラ・ハリスとジョー・バイデン

 アメリカ、特に民主党界隈では、「カマラ・ハリスは気の毒だった」という主張が出ている。私もその通りだと考える。佐藤優先生との対談『』は期せずして、「カマラ・ハリスの敗北分析」のようになったが、私たちが話していた内容が現在、カマラ・ハリスの敗北分析で言われている。

 それでも、ハリスには気の毒な面が多かった。まず、選挙活動が実質3カ月ほどに限定された。ジョー・バイデンの高齢問題について注目が集まり、選挙戦からの撤退の声が大きくなったのが今年6月で、それまでは大統領選挙は無風状態で、トランプが有利という展開になっていた。大統領選挙候補者討論会で、一気にバイデンへの不安が噴出し、民主党側は火消しに躍起になっていたが、そのうちに、バイデンを諦めさせることが必要ということになり、バラク・オバマに「何とかしてくれ」という声が集まり、彼が引導を渡す形になったようだ。それが今年7月のことで、1カ月もの間、ぐずぐずしていたことになる。そして、「副大統領のカマラが良いのではないか」という空気づくりがなされて、「カマラ待望論」が無理やりつくられた。

 そもそも、カマラ・ハリスは大統領選挙の候補者になるほどの資質を持った人物ではない。以下の論稿でネイト・シルヴァーが書いているように、「誰かの代わりになるくらいのレヴェル」であって、連邦上院議員でも彼女の資質だと持て余すくらいだと思われる。バイデンがハリスを副大統領に選んだのも、自分を脅かさないくらいの人物ということもあったと思われる。ハリスにとって大統領選挙候補者は荷が重すぎたということになる。そもそも、2020年の大統領選挙民主党予備選挙では、カマラ・ハリスは早々に撤退している。有力候補という見方をされていたのに、支持率が伸びなかった。民主党自体がカマラ・ハリスの資質について最初から見切っていた。自分の能力よりも上の仕事をさせられるのは気の毒なことである。

 7月末からカマラ・ハリスは選挙運動を始めることになったが、選対は「居抜き」のような形で、それにバラク・オバマが自身の選対のスタッフだった人たちに声をかけて急ごしらえで整えられたものだ。これではまず一体感が出ない。バイデンのために一生懸命頑張ってきたというスタッフたちにとっては、「なんで能力もないカマラのために働かねばならないのか、自分はバイデンを大統領にするために頑張っている」ということになり、士気が上がらない。「トランプの大統領就任を阻止する」だけでは士気は上がらない。

 更に言えば、バイデンは全く協力的ではなかったということも言えるだろう。バイデンはハリスの選挙運動にほとんど関わらなかった。「現政権の失敗と彼女とを結びつけるのはよくない」という言い訳はできるが、ハリスが副大統領である以上、バイデン政権を背負わねばならないのは当然だ。従って、バイデンは「自身の後継者」としてカマラ・ハリスを支援しなければならなかったが、それができていなかった。結果として、民主党側は盛り上がりに欠けた戦いになった。また、ハリスの候補者指名についても、結局、党の「ボス」たち、エスタブリッシュメントが空気づくりをして、手続きをすっ飛ばして決めてしまったことで、「非民主的」という批判を受ける口実を与えることになった。

 カマラ・ハリスは負けるべくして負けた。まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」ということになる。

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ネイト・シルヴァーがバイデンは「代わりの人レヴェル」の候補者カマラ・ハリスに対して「何の助けも」しなかったと発言(Nate Silver says Biden did ‘no favors’ for ‘replacement-level’ candidate Harris

アシュレイ・フィールズ筆

2024年11月15日

『ザ・ヒル』誌

by Ashleigh Fields - 11/15/24 10:57 PM ET

https://thehill.com/homenews/campaign/4993995-nate-silver-says-biden-did-no-favors-for-harris-bid/

世論調査専門家のネイト・シルヴァーは、ジョー・バイデン大統領が今夏の大統領選からの撤退前後に「彼女に手を貸さなかった(did her no favors)」ため、トランプ次期大統領に敗北したハリス副大統領に「大きな同情(a lot of sympathy)」を抱いていると述べた。

シルヴァーは金曜日に自身のウェブサイトに投稿し、ハリス副大統領が在任中に注力したことについて、「おそらく民主党が最も苦手とする国境問題や、ホワイトハウスがおそらく進展がないと分かっていたであろう投票権問題など、バイデンはハリスに厳しい課題を与えた」と書いた。

シルヴァーは「バイデンは、討論会のスケジュールを空白にし、9月11日以降、ハリスが最も得意とする討論会であったにもかかわらず、何も予定を入れなかった。最後まで、バイデンは彼女のメッセージを踏みにじった」と書いた。

しかし、シルヴァーは、この感情がハリス候補に対する一部の肯定的な見方を歪め、彼女は 「代替レヴェルの政治家(replacement-level politician)」であり、トランプを打ち負かすには「平均か平均より少し上(average or slightly above average)」の人物が必要だったと述べた。

シルヴァーは、11月の投票での民主党の連邦上院議員候補者たちに比べてハリスの成績が劣っていたことを挙げ、「人々はハリスの立場に対する同情を、彼女が良い候補者だったことと混同していると思う」と書いた。

シルヴァーは「計算してみると、ハリスは民主党上院候補と比べて、平均2.6ポイント、中央値で2.4ポイント下回った」と書いている。

シルヴァーによれば、ハリスの劣勢の理由には、メッセージ発信の問題、バイデンとの差別化を「拒否(refusal)」したこと、2020年の最初のホワイトハウスを目指した予備選挙と、2024年の直近の千四の間で彼女のスタンスが変化したことなどが含まれるという。

シルヴァーは「彼女は今回の選挙戦で中道(the center)に軸足を移そうとしたのだろうが、なぜ以前の立場を捨てたのか、彼女の政策課題が実際にどのようなものなのかについての説明が不足していたため、せいぜい不器用な努力をしているだけのことだった」と書いている。

それでも、シルヴァーは、バイデンが選挙戦を続けていれば負けていただろうと主張し、内部世論調査でトランプが400人の選挙人を獲得したとの報道を引き合いに出した。

シルヴァーは「バイデンが選挙戦から撤退したとき、バイデンは全米世論調査の平均でドナルド・トランプに4ポイント差をつけられていた。最終的な票差は、良くなるどころか、悪くなっていたと思う」と書いている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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donaldtrumpjdvance20241106001

 今回の大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領に圧勝、地滑り的勝利ということになった。大きいのは、一般得票数でもトランプがハリスに勝利したことだ。2016年の選挙では、選挙人獲得数ではトランプが勝利したが、一般得票数ではヒラリー・クリントンが勝利した。2020年の選挙ではジョー・バイデンがトランプに対して、選挙人獲得数、一般得票数で勝利した。人口が多い都市部を持つ州は民主党優勢州であり、ここで民主党の候補者が圧勝するので、一般得票数が多くなるということがあった。しかし、今回は、民主党優勢州でハリスは勝つには勝ったが、ヒラリーやバイデンに比べて得票率を減らしている。トランプは共和党優勢州ではハリスに圧勝している。こうしたことがあり、ハリスは一般得票数でもトランプに敗北するということになった。
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 やはりアメリカ国民のインフレ疲れ、生活の不安ということが原因であろう。特に低所得者層にとってこの問題は深刻だ。給与や年金が高い中間層以上には耐えられるものでも、こうした人々にとっては生きるか死ぬかの問題である。インフレ率はジョー・バイデン政権で下がってきていたが、生活者の実感としてはかなり厳しいということがある。私たちは、テレビ番組などで有名人たちがハワイに行ってラーメンが何千円もしたとか、朝食を食べるだけで1万円近くしたという話を聞いて、「なかなか海外旅行にも行けなくなったな」と嘆くばかりだが、実際にそこで生活している人たちにとっては死活問題だ。それが今回の選挙で明らかになった。

逆に言えば、トランプ政権はインフレ対策と雇用創出で思い切った施策を行わねばならない。トランプはもう次の任期は狙えないとなれば、子の大統領任期では、イングレ対策と雇用創出、更に、後継者づくりということを主眼に置くことになる。トランプの後継者となり得るのは現在のところ、JD・ヴァンス次期副大統領だ。

 今回の選挙ではラテンアメリカ諸国出身の人々、男性はラティーノ、女性はラティーナと呼ばれるが、ラティーノの間でトランプへの支持が増えている。彼らにとっては、不法移民対策がもっと重要なテーマとなったようだ。彼ら自身も移民、もしくは移民の家族出身であり、本来であれば、不法移民に対して寛容であるとも思われるが、不法移民に対して否定的な選択をしたということは、不法移民に関連しての地域の治安の悪化や財政負担の問題が大きくなっているということが挙げられる。これは彼らの生活の実感である。

 民主党は人々の生活の実感に鈍感になっている。そのことが今回の選挙、大統領選挙だけではなく、連邦上院議員選挙、連邦下院議員選挙で明らかになった。これをポピュリズムだと簡単に片づけて、見ないふりをしていては民主党に未来はない。アメリカの人々は生活の実感を持って政治に怒りを持ち、このような判断を下した。民主党はこれをしっかり受け止めねばならない。

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民主党優勢州の結果はハリスと民主党にとって残酷な夜を浮き彫りにしている(Blue state results underscore brutal night for Harris, Democrats

ジュリア・ミュラー、ジャレッド・ガンズ筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4977596-democrats-lose-midterms-2024/

全米の有権者は火曜日にカマラ・ハリス副大統領と民主党が主張した内容を拒否し、この結果は党による大規模な内省(soul-searching)の引き金となっている

ドナルド・トランプ次期大統領は前回勝利した州でハリスとの差を広げたが、一部の民主党の優勢州での差も縮小した。

2020年にジョー・バイデン大統領が16ポイント差で勝利したニュージャージー州では、水曜日の夜、ハリスが5ポイント弱の差でリードしていた。前回バイデンが23ポイント差で勝利したニューヨーク州では、火曜日にはハリスが約11ポイント差で勝利した。

『ワシントン・ポスト』紙の追跡調査によると、国内の約3000の郡のほとんどが火曜日に右方向(トランプ)に移動した。

世論調査専門家ネイト・シルヴァーの分析によると、ニューヨーク市の5つの行政区は全て右にシフトしており、場合によってはトランプの得票率が11ポイントも上昇した。

ハリス副大統領はシカゴ、ボストン、フィラデルフィア周辺の郡でバイデンの2020年の数字を下回った。ヒューストン周辺のテキサス州ハリス郡では、バイデンが約14ポイント差で勝利したが、ハリスはわずか5ポイント差で勝利した。

ハリスは民主党優勢州のメリーランド州で簡単に勝利したが、それでもその差は縮まって23ポイントだった。前回の選挙でバイデンはトランプに33ポイント差で勝利した。

イリノイ州は1990年代初頭以来、民主党の大統領候補は2桁の差で投票してきたが、ハリスはわずか8ポイント程度の差で勝利する見込みになっている。

トランプは多くの民主党優勢州でスコアを伸ばしただけではない。彼は共和党優勢州でもスコアを伸ばした。

トランプ氏は2020年にきわめて強力な共和党優勢州のアラバマ州で25ポイント差でバイデンに勝利したが、今回の選挙ではそのリードを30ポイント以上に広げた。

アイオワ州では、信頼性の高い世論調査でハリスが3ポイント差で驚くべき優位性を示した数日後、トランプが快勝した。最新の数字によると、トランプは約13ポイント差をつけてリードしており、アイオワ州での過去の成績を上回っている。

トランプは2016年と2020年の大統領選挙で一般得票数で敗れた。水曜日夜の時点で、トランプは2024年の一般得票数で勝利するのは確実と見られている。トランプはハリスに500万票近くの差を付けており、驚くべき逆転となった。

ハリスの困難な一夜は、民主党上院議員候補がモンタナ州とオハイオ州で苦戦して敗北し、ペンシルヴァニア州とネヴァダ州でもさらに2敗する危険があったため、投票結果に影響を及ぼした。ウィスコンシン州とミシガン州の連邦上院の他の民主党候補者2名が熾烈な競争を勝ち抜いた。

選挙翌日、民主党は敗北の原因が戦術的、戦略的決定なのか政策上の問題なのかを議論した。

民主党系のストラテジストのジョン・ライニッシュは、選挙戦の特殊な状況を考慮するとハリスは「できる限りの最善を尽くした」と主張し、再選活動から早期に撤退しなかったバイデン大統領の責任を非難した。

一方、民主党系のストラテジストのフレッド・ヒックスは、民主党がバイデン大統領を非難することに反対した。ヒックスは、新型コロナウイルス感染症時代からのインフレという逆風により、2024年に現職大統領が勝利するのは困難だっただろうと述べた。

ヒックスはまた、共和党と中道派の有権者にとって最大の2つの問題、移民とインフレに関してハリスがバイデンから距離を置くのに苦労したとも語った。 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、ブルーカラー層の有権者が大挙して民主党から離れていることを指摘し、民主党は労働者階級を見捨てたと主張した。

「最初、白人労働者階級だったが、今ではラティーノ系アメリカ人や黒人労働者もそうなっている」とサンダースは声明で述べた。彼は、「民主党指導部が現状を擁護する一方で、アメリカ国民は怒り、変化を望んでいる。そして彼らは正しいのだ」と続けた。

トランプ大統領はウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州、ミシガン州の「青い壁(blue wall)」3州を全てひっくり返し、前回の選挙では全てバイデンに敗れた。

また、バイデンが2020年に勝利を収めたジョージア州を逆転し、ネヴァダ州でも勝利して激戦区の連勝記録を伸ばした。前回もバイデンが勝ったアリゾナ州では、水曜午前の時点で5ポイント弱の差で勝利していた。 

選挙前の世論調査では、多くのアメリカ人にとって経済が最重要課題であることも示されており、火曜日の投票では、バイデンよりも経済にうまく対処するというトランプ大統領の公約にほぼ同意していることが示された。

このことは、ハリスが中絶の権利と、2020年の選挙を覆すためのトランプの行動を考慮してトランプが代表していると彼女が述べた民主政治体制への脅威に焦点を当てすぎたのではないかという疑問を引き起こした。

サフォーク大学政治研究センター所長のデイヴィッド・パレオロゴスは、中絶の権利について「一部の有権者にとっては非常に重要な問題だったと思うが、全体としては第一位や第二位の問題ではなかった」と述べた。

ヒックスは、共和党がインフレと移民を攻撃していることと、民主党がこれらの問題についてより良い主張を提案できなかったことが原因だと主張した。

ヒックスは次のように語った。「この件で民主党を沈めたのはインフレと移民の双子(twins)だった。そして、トランスジェンダーの学生がスポーツに参加し、税金がそこに投じられるという社会問題を持ち出すと、それはまさにインフレのポイント全体にまで及ぶが、民主党はそうしなかった。具体的には、ハリス陣営はそれを克服できなかったようだ」。

ライニッシュによれば、民主党は広く中道派の有権者に届く適切なメッセージを磨いておらず、「ここ数年で左派がどれだけ遠くまで行ったか」に不満を抱いた民主党支持層の一部を疎外しているということだ。

共和党系ストラテジストであるジョシュア・ノボトニーは、トランプは多くの人々を惹きつける「ブランド(brand)」であり、将来的には再び選挙に出馬することはないため、共和党がこれまでに得た利益を更に拡大できるかどうかが懸念材料だと述べた。

ノボトニーは、次期副大統領のJD・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)が新しい共和党の「後継者(heir)」と見られるが、将来の成功への最善の道は、制限された政府と減税というより古い理想と共和党の共和党の理念、トランプ大統領時代の「ポピュリズム傾向(populism streak)」を結びつけることだと述べた。

ノボトニーは「もし彼らがそれらを変えることができていれば、昨日彼らはかなりうまくやったと思うが、私たちがそれらを変え続けることができれば、それが勝利のレシピだと思う。 それが起こるかどうかは、私たちがどのような候補者を擁立するかに大きく左右されると思う」と述べた。

民主党は今後数カ月をかけて何が問題だったのか合意することに努め、有権者が2026年の中間選挙、そして2028年に再び中間選挙に戻るべき理由について説得力のあるメッセージを打ち出すよう努めるだろう。

ヒックスは、今後は民主党が経済メッセージを洗練させ、非大卒有権者、中年有権者、男性有権者といったトランプ大統領の主要層の支持を得るべく努力する必要があると述べた。

ヒックスは「今日は次の選挙サイクルの初日だ」と語った。

=====
トランプはラティーノ系からの支持を基盤にして勝利への道を整える(Trump builds on Latino support, helping pave way to victory

ジュリア・マンチェスター、キャロライン・ヴァキル筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4977774-trump-gains-latino-voters/

ラティーノ系とヒスパニック系の有権者の間でのトランプ次期大統領のパフォーマンスは、前大統領が重要な投票層に進出したことにより、投票日の共和党にとって最も明るい材料の1つとなった。

プエルトリコやラテンアメリカ出身者について人種差別的なジョークを飛ばすコメディアンをフィーチャーした集会でトランプが受けた反発にもかかわらず、トランプ前大統領はこうした人々の間で支持を拡大しているようだ。トランプはプエルトリコ人が多く住むフロリダ州中部のオセオラ郡を僅差で1ポイント以上の差をつけて逆転した。これに対し、2020年にジョー・バイデン大統領が14ポイント近くの差をつけてオセオラ郡で勝利し、2016年にはヒラリー・クリントン元国務長官が25ポイント近くの差をつけて勝利した。

アリゾナ州全体ではヒスパニック系人口が目立つユマ郡とサンタクルーズ郡でトランプ元大統領が2020年の成績を上回っているように見えたが、州内での票数はまだ集計中だ。

CNNの出口調査によると、ハリス副大統領がラティーノ系有権者の間でトランプに52%対46%で勝利しており、このグループ内でトランプを上回ったが、差は一桁となった。2020年の得票率はバイデンが65%だったが、トランプは32%だった。

今回の選挙で最も注目に値するのは、トランプがラティーノ系男性でハリスに12ポイント差をつけて勝利したことだ。これは、バイデンが23ポイント差で同グループの支持を集めた2020年以来、驚異的な35ポイントの差となった。そしてハリスはラティーナ系女性の間で大差で勝利し、トランプを22ポイント上回ったが、わずか4年前には、バイデンが獲得した39ポイントの差と比べると、歴然とした違いがある。

トランプ陣営の上級顧問ダニエル・アルヴァレスは次のように語った。「ドナルド・J・トランプ大統領がヒスパニック系有権者から歴史的な支持を得たのは、コストの削減、経済の回復、アメリカの繁栄の回復、国境の確保、国内外の安全など、私たちのコミュニティにとって最も重要な問題について決して揺るぎなかったからだ。トランプ大統領が勝利演説で述べたように、今こそ仕事に取り掛かり、アメリカ国民のために奉仕すべき時だ」。

ラティーノ系有権者の一部が共和党に傾きつつあるという警告の兆候は、民主党にとって長年にわたって明らかであった。2022年、共和党はフロリダ州の投票圏、特にキューバ人やプエルトリコ人コミュニティで実績を上げた。ロン・デサンティス知事(共和党)は、キューバ系アメリカ人の68%、プエルトリコ人の56%を含むフロリダ州のラティーノ系投票の58%を獲得した。

そして、2024年の選挙に向けた世論調査では、トランプはラテン系有権者の間で、特に若いラティーノ系男性の間で有望な兆しを見せていた。

ラティーノの投票行動や傾向を専門とする共和党のストラテジストであるマイク・マドリッドは、「孤立した若いラティーノ男性により浸透しているが特に注目だ」と述べている。

マドリッドは「若いヒスパニック系男性だけでは、オセオラ郡はひっくり返せない」と述べた。

マドリッドは、ラティーノ系有権者の大きな変化は、「より長期的な、世代的な軌跡(longer-term, generational trajectory)」の一部であると主張する。

マドリッドは「非白人で労働者階級のポピュリスト的な有権者という新しいタイプの有権者が出現している」と述べた。

共和党は、このスイングは経済や移民などの問題で共和党に向かう動きであると同時に、民主党の政策に対する拒絶だと主張している。

ある共和党系ストラテジストは「例えば、テキサス州南部に行って、それらのコミュニティに入ってみると、実際、不法移民の流入については長年の懸念があった。なぜなら、不法移民が実際に彼らのコミュニティに流入するからである」と述べ、ラティーノ系住民が、学校選択や中絶などの問題について右派への傾斜の兆しを見せていると付け加えた。

3月に発表されたピュー・リサーチ・センターの調査によると、アメリカ在住のヒスパニック系住民の75%が南部国境を越える移民数の増加を「大きな問題または危機(major problem or crisis)」と述べ、74%が政府の対処に対して批判的だと答えた。またこの世論調査では、51%が南部国境への対処が大統領と連邦議会にとって最優先事項であるべきだと答えていることも明らかになった。

前述のストラテジストは、「この傾向は以前から存在しており、共和党にとってありがたいことに、民主党はそれを認識できず、歴史を通じてその価値を評価することができず、率直に言って、彼らは党内のほとんどの少数派を同じように扱ってきた。彼らはテキサス州やアリゾナ州のヒスパニック系有権者を黒人有権者の穴埋め要員として扱った」と述べた。

このストラテジストは「それは連合ではない。それは怠惰であり、人々が自分たちを支持して当然なんだと見なしている」と続けて述べた。

アリゾナ州民主党の元幹事長DJ・クインランは、それはさらに単純であると示唆している。ラティーノ系とヒスパニック系の有権者たちは、他の主要な投票ブロックと同じ傾向の影響を受けている。

クインランは次のように説明した。「ドナルド・トランプ勝利の物語を、より多くのラティーノ系アメリカ人が彼に投票するという物語として伝えることに焦点を当て、起きている全体的な広範な社会的傾向に目を向けないのは大きな間違いだ。全体的に広範な動きがあったが、それは何よりも誤った情報と経済的不安によって主に動かされていると私は言いたい」。

クインランは「私自身もラティーノ系アメリカ人として、トランプ政権が傾いていると思われる多くの政策、つまり、特に医療費負担適正化法の廃止や、明らかに大量国外追放などの政策によって、ラティーノ系アメリカ人が不釣り合いなほどの深刻な影響を受けるのではないかと心配している」と語った。

コメディアンのトニー・ヒンチクリフがプエルトリコを「ゴミの浮島(floating island of garbage)」と呼び、ラティーノ系アメリカ人について下品なジョークを飛ばした先月下旬、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの大規模な集会の後、トランプ大統領のラティーノ系コミュニティに対する立場は不安定になったと多くの人が信じていた。リック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を含む共和党員たちは、この発言をすぐに非難したが、トランプと選挙陣営はヒンチクリフから距離を置いた。

ハリス陣営はこの論争を利用して、既に進行していたラティーノ系有権者への働きかけを強化した。しかし最終的には、この論争はこの有権者グループに大きな影響を与えなかったようだ。

トランプ前大統領への大口献金者であるダン・エバーハートは、「全国的に見て、ラティーノ系有権者に起こったことは驚きだと思う。これはアメリカ政治のパラダイムシフトであり、潜在的には今回の選挙よりも大きな変化だと思う」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 アメリカ大統領選挙が終わり、共和党のドナルド・トランプ前大統領の当選、民主党のカマラ・ハリス副大統領の落選の理由について様々な報道が出ている。CNNは出口調査の結果を2016年、2020年、2024年と比較して分析する記事を出している。
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 この記事によると、中南米出身の人々(男性はラティーノ、女性はラティーナと呼ぶ)はトランプ支持が増えており、男性ではトランプ支持が過半数となったということだ。マイノリティは民主党支持というのがこれまでの常識であったが、ラティーノ男性のトランプ支持の理由の詳細な分析がこれから待たれるところだ。

 大学の学位の有無と居住地域の差は大きい。大学の学位を持っている人たちはハリス支持(民主党支持)、持っていない人たちはトランプ支持(共和党支持)であり、居住地域では地方部はトランプ支持、都市部はハリス支持、郊外地域は激戦という構図になっている。大学の学位を持っている人たちの収入が比較総体的に高いことを考えると、所得た高ければハリス支持、低ければトランプ支持となることが容易に推定される。アメリカの分断は大きくなる一方だ。これは日本にとって対岸の火事ではない。日本でも格差社会から分断へと進みつつあるように思われる。

 人々は経済問題を最大のテーマと考えていた。インフレと生活費の高騰を何とかして欲しいというのが人々の願いだった。ジョー・バイデン政権が発足以来、アメリカのインフレ率は下がっている。2021年には7%、2022年には6.5%、2023年には3.4%、2024年には2.4%だ。しかし、それが生活の実感として感じられなかったというのはバイデン政権にとっても、カマラ・ハリスにとっても不運だった。そして、人々が4年前に比べて生活が苦しいということになって、他のどの問題よりも経済問題を重視した結果がトランプ支持となった。トランプにとっては雇用創出が最大のテーマとなる。

 そして、アメリカ大統領選挙の最大のテーマは「トランプ」そのものということになる。トランプ支持者のほとんどは、トランプを好み、トランプを支持している。一方で、ハリス支持者の一定数は、別にハリスでなくてもよく、トランプが嫌だ、トランプの対立候補だからハリスを応援するという消極的支持である。これでは選挙戦に熱が入らない。私は拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも、バイデン支持の一定数が消極的支持であることを指摘した。民主党は力強い人物を擁立できなかったことが敗北につながったと言えるだろう。

 私は『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始めるでも述べたが、こうしたアメリカの分断は2016年のドナルド・トランプの大統領選挙初当選以前からはじまっていたと指摘したい。「トランプがアメリカの分断を生み出したのではなく、アメリカの分断がトランプを生み出した」と書いた。バラク・オバマ政権下で既に始まったと見ている。あの時の多幸感(euphoria)と熱狂(enthusiasm)は、今から考えると、日本における小泉純一郎政権誕生の時とよく似ている。こうした熱狂の後には焼け野が原の光景が広がっていたというのは日米共通の実感かもしれない。

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トランプの3回の選挙の解剖:アメリカ人は2016年・2020年と2024年に比べてどのように移動したのか(Anatomy of three Trump elections: How Americans shifted in 2024 vs. 2020 and 2016

-出口調査は分断された国家を明らかにしている

ザカリー・B・ウォルフ、カート・メリル、ウェイ・マレー(CNN)筆

2024年11月6日(アップデート:2024年11月7日)

CNN

https://edition.cnn.com/interactive/2024/politics/2020-2016-exit-polls-2024-dg/

ドナルド・トランプ大統領が歴史的なカムバックを演じ、2度目の大統領選に勝利すると予想されている。トランプが投開票に参加した3回連続の選挙で、この国の政治がどのように変化したかについて、いくつかの重要なポイントがある。

2016年、2020年、2024年のCNNの出口調査結果は、景気低迷(sour economy)がいかにカマラ・ハリス副大統領の足かせとなったか、中絶の権利への支持(abortion rights)が高まったにもかかわらず、ハリスが女性の支持をいかに押し上げることができなかったか、そしてラティーノ男性が特にトランプに引き寄せられたことを明らかにしている。

2024年の選挙におけるCNNの出口調査には、投票日に投票した人、期日前投票や不在者投票をした人の両方を含む数千人の有権者へのインタヴューが含まれている。その範囲により、今年の選挙における有権者の人口動態や政治的見解を理解するための強力なツールとなる。そして、彼らの調査結果は、最終的には最終的なベンチマークである選挙結果そのものに対して重み付けされることになる。それでも、出口調査は依然として世論調査であり、誤差の余地はある。つまり、出口調査は、正確な測定値(precise measurements)ではなく推定値(estimates)として扱う場合に最も有効だ。出口調査の数字が最終的な選挙結果に合わせて調整される前は特にそうだ。

2024年の出口調査データは引き続き更新され、以下のグラフに自動的に反映される。

●女性はハリスに傾き、男性はトランプに傾く(Women lean toward Harris, and men lean toward Trump

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女性有権者におけるハリスの優位性は、ジョー・バイデン大統領やヒラリー・クリントン元国務長官のいずれも上回らなかったが、中絶問題で女性有権者を動員しようとしていたことを考えると、副大統領にとっては厄介な兆候となった。トランプは男性の間で優位性を維持した。

●ラティーノ男性はトランプを支持(Latino men embraced Trump

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ラティーノ系有権者、特に男性は、2016年以来、トランプに傾倒している。今年、初めてラティーノ男性がトランプの支持に傾いた。 2020年にはバイデンが23ポイントの差で支持を獲得し、2024年にはトランプが支持を獲得した。ラティーナ女性は依然としてハリスを支持したが、その差はクリントンやバイデンよりも小さかった。

ハリスは黒人男女の間で強いリードを維持した。白人男性におけるトランプのリードは小さくなった。

●教育における分裂は大きくなっている(The educational divide grows

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大学の学位を持たない白人有権者は長年トランプの支持基盤(base of support)を代表しており、それは今も変わらない。大卒の白人の有権者の間に変化が起きている。2016年には僅差でトランプを支持したが、2024年にはハリスが勝利し、男女双方で意見が分かれた。ハリスは大卒の白人女性に約15ポイント差で勝利し、バイデンとクリントンの両者を上回った。一方、ハリスはあらゆる教育レヴェルの有色人種の有権者の支持を一部失った。

●若い有権者はトランプに移動する一方で、トランプは高齢有権者たちの支持を失う(Younger voters shifted toward Trump, while he lost ground with senior voters
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民主党は、最年少有権者層の支持を一部失った。このグループは圧倒的に民主党に投票している。しかし、ハリスはまた、伝統的に共和党寄りのグループである最年長有権者の間で支持を伸ばした。興味深い変化となった。

●トランプはアメリカの地方部で力を取り戻す(Trump regained power in rural America

Voted for the Democrat

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トランプは2020年に地方での支持をいくらか失ったが、2024年には地方で完全な支持を取り戻した。都市部では依然として民主党支持が堅調だった。郊外は選挙を左右する激戦区であり続けた。

●有権者は経済について不満を持っている(Voters are sour on the economy
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2020年、経済が良好な状態にあるかどうかについて有権者の意見は二分されたが、2020年のアメリカ国民の生活に影響を及ぼしていた猛威を振るったパンデミックを考えると信じられないことだった。2024年には有権者の約3分の2が経済状況は悪化していると回答した。この心境の変化はトランプに利益をもたらした。

●自分たちの家族が落伍していると報告する人々が増えている(More people report their family has fallen behind

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党派が、自分たちが支持する人物がホワイトハウスにいるかどうかに基づいて、自分たちの立場が改善したかどうかを主張するのは当然だ。今年、大きな変化が起こった。2020年、有権者のわずか約5分の1が、4年前よりも悪い状況だと答えた。今年は有権者のほぼ半数が、4年前よりも状況が悪くなったと答えている。トランプが圧倒的に勝利した。

●より多くのアメリカ人は中絶の権利を支持している(More Americans support abortion rights

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これらのグラフでは十分に語られていないものの1つは、中絶に関する会話がどのように変化したかということだ。2016年のロウ対ウェイド事件では、全てのアメリカ人女性が中絶する憲法上の権利を保障された。2024年には、連邦政府の権利は消滅し、トランプが最高裁判事の議席に貢献した保守派多数派によって剥奪された。2020年にはアメリカ人の約半数が、全て、またはほとんどの場合において中絶は合法であるべきだと答えた。 2024年には、アメリカ人の約3分の2が、全て、またはほとんどの場合において中絶が合法であるべきだと考えている。しかし、彼らはその支持を必ずしも大統領への投票に結び付けた訳ではなかった。中絶はほとんどの場合合法であるべきだと主張する人の約半数がトランプを支持した。

●トランプは穏健派に食い込んだ(Trump made inroads with moderates

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トランプ時代にリベラル派と保守派は党派的な立場をさらに深めた。穏健派は2024年でも民主党候補を支持しているが、その差は2020年よりも小さい。

●トランプは選挙において支配的な人物だ‘Trump is the dominant figure in the election

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対立候補よりも自分が選んだ候補者を支持して投票すると回答した人々はトランプに二分され、これは支持者の間でのトランプの人気の表れだ。反対運動により動機付けられた人々は主にハリス陣営にいた。全体として、有権者の約4分の3は、ライヴァルに反対するためではなく、主に候補者を支持するために投票していると述べた。

●トランプ大統領は新たな有権者を巻き込んだ(Trump engaged new voters

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トランプの選挙戦略は、普段は政治プロセスに参加しない、政治性向の低い有権者を動かすことを中心に構築された。バイデンが若年有権者を獲得した2020年とトランプが獲得した2024年の間に劇的な変動があったため、それが功を奏した。しかし、最初の投票を 2020年よりも2024年に行ったと報告した有権者の割合が少なかったという事実には、重要な背景がある。

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(終わり)

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 アメリカでトランプが新大統領として選出され、日本では石破茂首相が総選挙を終えて、予算成立を目指すことになる。国内政策、対外政策は共に思い通りに進むものではない。それは、多くの要因が影響してくるからだ。国内政策であれば、政党、省庁、地方自治体、利益団体などが絡むし、対外政策では国家や国際機関が絡む。国内政策と対外政策はお互いが影響し合う。これによって非常に複雑な状況になり、予想通り、思い通りにいかないことがある。

 今回ご紹介するのはスティーヴン・M・ウォルトの記事で、選挙の時に発表される綱領(platform)はあてにならないというものだ。言われてみれば確かにそうだという内容になっている。ウォルトの主張をまとめると以下のようになる。

選挙で発表される綱領は、政権を取った場合に実現したい政策を発表するものだ。今回の大統領選挙での共和党、民主党の綱領の対外政策の部分は総花的ということだ。党の綱領は理想を示すものである一方、実現が難しい高邁な目標を掲げることが多く、実行可能な政策とのギャップが存在する。

実際の対外政策は選挙戦の公約とは異なる可能性がある。それは、大統領は外交政策において広範な裁量権を持っているため、選挙時の発言に縛られることはない。歴史的に見ても、選挙戦での公約と政権発足後の実際の政策には乖離が見られることが多く、過去の例としてクリントンの対中政策やバイデンの経済政策や対イラン外交のケースが挙げられる。

当選後の状況や出来事が予測不可能であるため、どのような事態が発生するかは事前に計画することが難しい。だから、次期大統領が具体的に何を行うかは、党綱領を見ても明確には分からない 最終的に、党綱領は党の目指す方向性を示すものではあるが、次期大統領がどのような課題に直面し、どのように対応するかは、党綱領ではなく、実際の政治的状況によって決まる。

 今回の大統領選挙ではドナルド・トランプが当選した。トランプが何をやるのか不安を募らせている人たちが多くいるという報道もなされている。トランプが何でもかんでもできるということはない。そのための権力分立(separation of power)である。そして、対外政策においても彼の思い通りにはいかない。それが政治の現実である。いたずらに不安を煽って、トランプに対する敵愾心を刺激する報道や主張こそはアメリカの分断・分裂を即死することになる。まずは落ち着いて現実を見ることだ。現実は理想通りに、また悪い想像通りには進まない。

(貼り付けはじめ)

外交政策について、アメリカの政党は力を持っていない(On Foreign Policy, U.S. Parties Don’t Have the Power

-なぜ大統領選挙の公式綱領に注目するのは間違いなのか?

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年8月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/26/republicans-democrats-conventions-platforms-2024-election-trump-harris-foreign-policy/

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2008年8月25日、ワシントンDCに掲げられた民主党(ロバ)と共和党(ゾウ)のシンボルマーク

アメリカの共和党と民主党は大統領候補を選出した。そのプロセスの一環として、彼らはまた、11月に勝利した場合に何を支持し、何を提案するかを述べた公式声明、いわゆる党綱領を発表した。ドナルド・トランプJD・ヴァンスがどのように行動したかの兆候を探してそれらを調べたくなる誘惑に駆られる。または、カマラ・ハリスとティム・ウォルツが統治することになるが、両方を読んだ上での私からのアドバイスは、「気にしないこと」だ。少なくとも外交政策に関して言えば、どちらの文書も2025年以降に何が予想されるかについてはあまり語っていない。

確かに、この2つの文書は全く異なるものだ。共和党の綱領はトランプ大統領の言葉のサラダであり、深刻な綱領的な声明というよりも、他国との関係を統治したり管理したりするための青写真(blueprint)どころか、彼の支離滅裂で奇妙に大文字のツイートのようなものだ。それは彼のおなじみの不満に満ちたテーマのほとんどを呼び起こすが、それは役に立たないほど曖昧であり、おそらくそれがポイントだ。これは、トランプ大学の古い広告の1つである詐欺の政治ヴァージョンだ。

対照的に、民主党の綱領は長くて、真面目で、理屈っぽくて、ちょっと退屈で、どの大統領も守れそうもないほど多くの公約を掲げている。ジョー・バイデン大統領の外交政策の成果をバラ色の目で評価し、良い点(同盟諸国との関係改善など)を強調し、ウクライナやガザ地区への対応を肯定的に描くために狂ったように回転している。ハリスが当選した場合に何をするかということについては、それほど多くを語らないという事実を除けば、注目に値するだけの十分な内容がここにはある。

それでは、これらの文書をどう解釈すればいいのだろうか? 始めに、党綱領とは何か、どのように交渉されるのかを理解することが重要だ。党綱領とは、党内で誰が十分な政治力を持ち、自分たちの意見を文書で表現できるかを反映したものである。共和党の場合、2024年の綱領を見れば、かつては誇り高く原則的な政治組織であったものを、トランプがほぼ完全に支配していることが分かる。

民主党の場合は、主要な利益団体や利害関係者、特に大口献金者の外交政策に対する主要な関与を反映している。だからこそ、バイデンの明らかに複雑な記録を肯定的に捉え、「中産階級の雇用を海外に移転させ、サプライチェーンを空洞化させ、労働者を大切にする代わりに企業のCEOに報酬を与え、包括的な経済成長を生み出せなかった(let middle-class jobs move offshore, hollowed out our supply chains, rewarded corporate CEOs instead of valuing workers, and failed to generate inclusive economic growth)」貿易政策を否定している。「永遠の戦争(forever wars)」を否定する一方で、あらゆる地域が重要である世界を描き、アメリカは「世界の舞台でリードし続けなければならない(must continue to lead on the world stage)」と主張している。リベラルな覇権主義そのものだ。

それでは、なぜこれらの発言を真に受けてはいけないのか? 第一の、そして最も明白な理由は、大統領は外交政策に関して莫大な裁量権(enormous latitude)を持っており、選挙戦に勝つため、あるいは献金を集めるために書かれたものには拘束されないということだ。大統領は、大口献金者やその他の利益団体が望むことを単純に無視することはできないが、特に再選にこだわる必要のない任期初期には、それらに縛られることはない。予算を通過させ、国内政策を承認させるためには議会での支持が必要だが、外交・国防政策で大統領が何をするかはほとんど大統領次第である。

更に言えば、重要な外交政策の決定は、綱領委員会や連邦議会の有力議員たち、著名な知事や党委員長によって行われることはない。その代わりに、大統領への忠誠心や大統領の世界観との適合性を主な理由として選ばれた側近や被任命者の小さなインナーサークルが決定することになる。例えば、バーニー・サンダース連邦上院議員はバイデンの2020年の当選に貢献したが、彼の側近でバイデン政権において重要なポストに就いた者はおらず、外交政策に関する彼の意見は一貫して無視された。バラク・オバマ前大統領が2009年にライヴァルだったヒラリー・クリントンを国務長官に任命することで党の結束を図ったのは事実だが、彼は彼女に力と権限をあまり与えず、代わりに自身のホワイトハウス補佐官と国家安全保障会議に主要な外交政策の決定と実行を委ねた。

第三に、党の綱領では聞こえがよく、選挙戦では有利に働く主張や立場も、選挙が終わって政権が発足すると違って見えることが多い。例えば、1992年の選挙戦で民主党のビル・クリントン候補は、中国の人権侵害に目をつぶっているとして現職のジョージ・HW・ブッシュ大統領を繰り返し批判したが、政権に就いてみると、北京に対する自らの影響力は限られており、この問題を軽視する方が理にかなっていることが分かった。同様に、2020年の民主党の綱領は、ドナルド・トランプ大統領が関税に依存し、2015年のイランとの核合意を放棄したことを厳しく批判していたが、ジョー・バイデンはトランプ時代の経済制限の多くをそのまま維持し、テヘランとの包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action with Tehran)に再び参加するという選挙公約を果たすことはなかった。

政党綱領はまた、過大な約束と過小な実現によって誤解を招く。綱領は、政党が達成すると信じ込ませたい事柄の願望リスト(wish list)であるため、これらの目標を実現するのを困難にする政治的障害を軽視したり省略したりする。前述したように、大統領は外交政策の遂行においてかなりの個人的権限を持っているとはいえ、反対政党はもちろんのこと、凝り固まった官僚組織(特に国防総省)や利益団体、ロビー団体、メディアからの反発に対処しなければならない。時間と政治資金は有限であるため、党綱領に盛り込まれた高邁な目標のいくつかは、完全に放棄されないまでも、必然的に後回しにされてしまう。

しかし、党の綱領がほとんど無視されるべき最も重要な理由は、候補者が大統領に就任した後に何が起こるかを、どんな選挙運動も予測することができないということだ。あるいは、元イギリス首相ハロルド・マクミランが、政治家にとって最も困難なことは何かとの質問に「出来事だ、親愛なる君、出来事だよ」と皮肉を込めて答えたと伝えられている。アメリカは非常に強力だが、世界的に重要なアクターはアメリカだけではない。ジョージ・W・ブッシュ前大統領は9月11日の同時多発テロが起きるとは思っていなかったし、バラク・オバマはアラブの春(Arab Spring)に目を奪われ、ドナルド・トランプは新型コロナウイルスに困惑し、ジョー・バイデンの外交政策はウクライナと中東の戦争に乗っ取られた。

11月に誰が勝利しても、それぞれの党の綱領でさえ言及されていないいくつかの大きな問題に直面することは間違いなく、それらにどう対応するかについての指針を得るためにこの文書を掘り起こす人は誰もいないだろう。

私は皮肉を言うつもりはない。党綱領は党が何を目指しているかを明らかにし、信者たちを結集させ、エネルギーを生み出し、明確なメッセージを提示するのに役立つ。しかし、彼らが明らかにしていないのは、次期大統領が2025年1月以降に何をするかということであり、選挙が終わったら誰もこれらの文書を調べに戻らないだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt
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