古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:トランプ関税

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 アメリカは日本に対して25%の高関税を課すことを決定したようだ。中国に対する100%を超える関税を課すということがあったので、案外高くないなと思ってしまうほどだが、日本経済に対しては影響が出る。アメリカの巨額の貿易赤字はアメリカの国内問題であり、日本だけが一方的に努力をしたり、我慢をしたり、犠牲になったりすするということはおかしい。自動車が日米間の重要な問題になっているようだが、それならば、アメリカの三大メーカーは日本で売れるような、日本人に選んでもらえるような自動車を作って輸出すべきだ。そもそも、戦後すぐからしばらくは日本国内でもアメリカ車が走っていたし、憧れの的だった。それは黒澤明監督のその頃の映画を見てみたら分かる。また、その頃の日本車は箱根の山を登り切れずにエンジンが焼けてしまって立往生をしている横をアメリカ車が颯爽と走り去っていったという逸話が残っている。高性能で価格が見合うなら、日本の消費者は買うだろう。それができないのはアメリカの怠慢だ。
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 また、日本車に高関税をかけても、アメリカの消費者は壊れにくく、長持ちし、中古として売却するにしても高くで買い取ってもらえる日本車を選ぶだろう。アメリカのインフレの状態を考えると、25%の関税はあまり影響が大きくないということも考えられる(これは机上の空論であるが)。

 輸入品に関税を掛けてお金を徴収するのは政府だが、その支払いをするのは国民だ。トランプ政権の高官勢はアメリカ国内の製造業の保護や復活を企図したものだが、そのための「補助金」をアメリカ国民が支払うということになる。これまで、私たちはアメリカが最大の市場であり、アメリカで商売をして利益を上げて、ドルを獲得するということが最上のシステムであると考えてきた。ドルを獲得しなければ国際決済はできないし、何より石油を獲得することができないということであった(ペトロダラー体制)。

 しかし、今や西側諸国の国力の減退、西側以外の国々の発展があり、アメリカ依存は得策ではない。トランプ関税について、私は一定の評価をしてきたが、それは、アメリカ国内の支持者たちからの視点としてであった。トランプ支持者たちは、貧しい白人の労働者たちであり、高関税によって彼らの仕事が一部でも戻ってくる、新しくできるということを願っている。トランプとしてはそれをかなえてやりたいということになる。実際に少しは良くなるだろう。しかし、大きく見れば、アメリカは既に厳しい状況であり、「手遅れ」である。先の大戦における、サイパン陥落後の日本のようなもので、もうどうしようもないという状況だ。何とかしたい、しかし、もう有効な方法は残っていない。既にアメリカの覇権国としての寿命は尽きつつある。

(貼り付けはじめ)

トランプは貿易戦争に負けるだろう(Trump Will Lose the Trade War

-多面的な紛争は、それを誘発した国にとって決して良い結末を迎えたことがない。

ロバート・D・アトキンソン筆

2025年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/12/trump-us-trade-war-tariffs-china-canada-protectionism-isi/

第一次世界大戦の敗戦後、ドイツ軍最高司令部は重要な教訓を学んだ。それは、「決して二正面作戦を戦わない(Never fight a two-front war)」というものだ。だからこそドイツは1939年、ソ連とモロトフ・リッベントロップ協定(Molotov-Ribbentrop pact)を締結し、10年間は​​両国が互いに攻撃を仕掛けないことを約束した。しかし、アドルフ・ヒトラーは10まで数えることができず、ドイツは第二次世界大戦に突入した。これもまた二正面作戦であり、ドイツにとって悲惨な結末を迎えた。

貿易戦争にも同じことが言える。一正面戦争(a one-front war)なら問題ないかもしれないが、世界全体と戦うのは避けるべきだ。コメディアンのノーム・マクドナルドが2015年の「レイト・ショー」でジョークを飛ばしたように、「前世紀の初め、ドイツは戦争を決意した。そして、誰と戦ったか? 世界だ。・・・それから約30年が経ち、ドイツは再び戦争を決意した。そして再び、世界を敵に選んだ!」

現在、ドナルド・トランプ米大統領は貿易戦争の開始を決意した。そして、誰を攻撃対象に選んだのだろうか? それは世界だ。4月のいわゆる「解放記念日(Liberation Day)」に、トランプ大統領はペンギンのいる島国やアメリカとの貿易赤字を抱える同盟諸国も含む、ほとんどの国に関税を課した。

その結果、世界の他の国々はアメリカへの反感を募らせ、アメリカに代わる貿易体制の構築を模索し始めている。日本、韓国、中国、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟諸国は、ヨーロッパ連合(EU)と中国と同様、貿易協力に向けた協議を行っている。カナダもまた、トランプ大統領の関税措置を受け、EUとの貿易・投資関係強化に期待を寄せている。

それにもかかわらず、トランプはアメリカが依然としてトップであり、ボスであり、主導権を握っていると考えているようだ。しかし、そろそろ事実を直視すべき時だ。アメリカは彼の貿易戦争によって甚大な損失を被るだろう。

その理由は単純だ。特に先進産業においては、多くのアメリカ企業が生き残り、繁栄するために世界市場へのアクセスを必要としている。トランプが模範とする企業は、低中程度の技術水準で非上場のアメリカ企業であり、生産物のほぼ全てを国内で販売している。包丁メーカー、家具メーカー、ゴルフクラブメーカーなどを思い浮かべてみよう。(トランプは、自分やカントリークラブの仲間たちが、間もなく新しいアイアンセットに高額なお金を使うことになることを知っているのだろうか?)自分がこれらの企業を海外の競争から守れば、これらの企業は繁栄するだろうというのがトランプの考えだ。保護された巨大な市場があれば、繁栄しないはずがない。

話はそんなに早くは進まない。アメリカは、力強い先進産業なしには強大な力を持つことはできない。そして、これらの産業はトランプの新しい世界では深刻な苦戦を強いられるだろう。

課題には複数のベクトルがある。1つ目は、輸出向けに生産するアメリカ企業(ボーイング、メルク、ゼネラル・エレクトリックなど)は、輸入部品や材料に関税を支払うため、投入コストが大幅に増加することだ。

第二に、他国が相互関税を課すと、これらの企業の製品は価格的に海外市場から締め出されることになる。他国の企業は、マイクロン製のメモリチップではなく、韓国製のメモリチップを購入するだろう。ボーイングではなくエアバス製のジェット機、キャタピラーではなく、日立製の機械類を使うだろう。これはお分かりいただけるだろう。

さらに、トランプ大統領はアメリカ企業に対する露骨な差別への扉を開こうとしている。EUはトランプ大統領の攻撃的な姿勢を利用して、「ユーロスタック(EuroStack)」計画を正当化しようとしている。これは、コンピューターチップからサーヴァーに至るまで、ほぼ全てのアメリカ製ハイテク製品を最終的にヨーロッパ製の製品に置き換える計画である。そして、EUはついに軍事費増額計画を発表したが、それはヨーロッパ製の兵器を購入することによって行われることになる。

これは関連する課題につながる。トランプ大統領の貿易戦争下で、アメリカの輸出企業はますます海外市場から締め出されることになる一方で、競合他社はアメリカ抜きではあるものの、グローバルに統合された市場に参入することになるだろう。特に、他国が新たな貿易協定を通じてより統合された市場の構築に着手する中で、この傾向は顕著になるだろう。外国企業は革新と繁栄に必要な規模を獲得するだろう。一方、比較的小規模なアメリカ市場に依存しているアメリカの生産者たちは、徐々に縮小し、最終的には消滅する可能性もある。

トランプ氏の輸入代替産業化戦略(import substitution strategyISI)は、過去にも他国で試みられてきたが、失敗に終わった。国際開発コミュニティは1950年代から60年代にかけて、成長戦略として輸入代替工業化(Import substitution industrializationISI)を広く採用し、多くの発展途上国は1980年代以降もそれを維持した。失敗の理由の1つは、ブラジルのような比較的規模の大きい国でさえ、ますます複雑化する製品を効率的に生産できるだけの市場規模を持っていなかったことにある。国際通貨基金(International Monetary FundIMF)による最近の世界産業政策分析によると、繁栄したのは韓国や台湾のように輸出戦略(export strategies)を採用した国であり、ISIを推進した国ではないことが明らかになった。

アメリカ経済は、例えば韓国経済よりもはるかに大きいものの、今日の先進産業は、継続的な研究開発費を賄うために必要な収入を生み出すだけでも、アメリカが提供できる以上の大きな市場を必要としている。

しかし、それだけではない。世界貿易の覇権国としてのアメリカの役割が衰退するにつれ、中国が確実にその地位を奪うだろう。中国は過去15年間、あらゆる国際機関に浸透してきた。トランプ大統領が主導権を握り、世界保健機関(WHO)、パリ協定、国連人権理事会など多くの機関からアメリカが離脱したことで、勝利は中国のものとなった。

すでに多くの国々が北京を訪れ、習近平国家主席に媚びへつらって貿易協定を締結するのを目にしており、今後もこうした動きが続く可能性が高い。かつて南米で最大のアメリカからの経済支援の受取国であったブラジルとコロンビアは、すでにその道を歩んでいる。中国の先進産業は貿易戦争後、アメリカ市場へのアクセスを失うかもしれないが、世界の他の国々の市場へのアクセスは確保されるだろう。一方、アメリカ企業はアメリカ市場の残りかすを残されることになるだろう。

トランプ大統領が対外援助を削減した後、中国は他国の心を掴むためにアメリカよりもはるかに多くの資金を費やしている。風向きが東であることは、気象予報士でなくても分かる。習近平国家主席が最近ロシアの新聞に寄稿した記事にあるように、「一極主義、覇権主義、そして威圧的な行為が世界中で深刻な被害をもたらしている」。中国を自由貿易と連帯の守護者として見せることができるのは、トランプ大統領だけである。

明確にしておくと、トランプはフェアプレーをしない国々に(貿易)戦争を仕掛ける必要があった。最大の加害者は中国であり、2006年頃に世界的な貿易戦争を開始し、習近平国家主席の就任以降、これを激化させてきた。中国は他のいくつかの国と共に、体系的な重商主義的慣行(systemic mercantilist practices)に従事し、アメリカの製造業の空洞化を助長し、巨額の貿易赤字につながっている。

中国は大規模な知的財産窃盗を行った。外国企業を恫喝し、中国国内での生産と技術移転を強要した。そして、特定の産業で生産能力を獲得すると、市場を閉鎖した。

アメリカが世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)を通じて中国の不正行為に対処しようと試みた事例はごくわずかだ。その理由の1つは、WTOの構造上、そのような行為を効果的に訴追することがほぼ不可能なためだ。アメリカ企業もまた、中国政府の報復を恐れて、WTOへの協力をほとんど拒否した。EUも同様だ。

アメリカが提訴し勝訴した訴訟は比較的少数で、レアアース輸出割当や風力発電補助金といった、ほとんどがピュロス的な勝利(pyrrhic victories、訳者註:勝利ではあるものの、その代償が大きすぎて、実質的には敗北と変わらないような状況を指す)に終わった。これらはいずれも競争の実態を変えることはなかった。そして、ほとんどの場合、中国はアメリカの訴訟に対して反訴を起こした。トランプは正しかった。宣戦布告すべき時だった。しかし、マクドナルドが言うように、世界に対して一度に宣戦布告するべきではない。

それでは、希望はあるのだろうか? おそらくないだろう。しかし、トランプに関しては予測不可能だ。

トランプがなすべきだったのは、まずヴェトナム、インドネシア、インドといった、世界貿易ルールの最も深刻な違反国に焦点を絞ることだった。関税を課す前に、これらの国々に協議を促し、アメリカの主要な要求事項を列挙し、90日以内に是正するよう求める。そして、相手が応じない場合のみ関税を課すのだ。そして、その際には、先進産業におけるアメリカの競争力にとって最も重要な貿易障壁や阻害要因に焦点を当てるべきだった。

これらの国々がエビの輸出を拡大したいなら誰が気にするだろうか? アメリカ産ウイスキーの市場を閉鎖したいなら争う価値はない。しかし、アメリカのハイテク企業を攻撃し、先進的なアメリカ製品・サービスへのアクセスを制限することなら、徹底的に抗戦する(going to the mattresses over)価値がある。

次に、ヨーロッパに軸足を移し、その後、日本、韓国、台湾に軸足を移す。お分かりだろう。しかし、世界全体と同時に戦争を仕掛けるべきではない。それがもたらすのは、世界的な反米同盟(a worldwide anti-American alliance)の形成だけだ。

中国は貿易戦争を仕掛ける際、全ての国を一度に攻撃しないだけの分別を持っている。北京は特定の国に貿易攻撃を仕掛け、しばらく様子を見て外国の反応を伺う。そして、怒りが収まると、また別の攻撃を仕掛ける。そして、沸騰した湯の中の蛙のように、他の国々は中国の攻撃をほとんどすすり泣くことなく受け止めてきた。

中国は依然として、アメリカ、そして西側諸国の先端技術産業を破壊する意志と手段を持つ唯一の国である。トランプの貿易戦争は、北京の勝利を阻止することを目的として設計されるべきである。何よりも、それはアメリカの同盟諸国と協力することを意味する。しかし、アメリカに対する敵意の高まりと国力の低下を目の当たりにすると、多くの国は北京との取引をより容易にしている。

同盟諸国がいなければ、いかなる戦争も敗北に終わる。トランプが同盟諸国との交渉に意欲を示さない限り――5月にカナダ首相マーク・カーニーと会談した際には、彼はこれを拒否した――アメリカは第一次世界大戦以前と同様に、世界的に孤立したままになるだろう。しかし、当時と現在との大きな違いは、アメリカ企業が生き残るためには技術面で世界的規模に到達する必要があり、中国がアメリカを凌駕する競争力を持つようになったことである。

アメリカがドイツよりもうまく、多面的な紛争から脱却することを願うばかりである。

※ロバート・D・アトキンソン:情報技術イノベーション財団(Information Technology and Innovation FoundationITIF)の創設者兼理事長、ジョージタウン大学エドマンド・A・ウォルシュ外交大学院の非常勤教授。クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマ、トランプ、バイデン政権で顧問役を務め、『技術革新経済学:グローバル優位をめぐる競争(Innovation Economics: The Race for Global Advantage)』を含む4冊の著書がある。Xアカウント:@RobAtkinsonITIF
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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第2次ドナルド・トランプ政権100日では様々なことが起きたが、今はひと段落で、トランプ関税については、90日間の猶予の間に、各国がトランプ詣でをして、二国間で個別交渉を行い、妥協や譲歩を引き出すという動きになっている。日本も赤澤亮正経済再生担当大臣が何度も訪米し、トランプ大統領自身とも会談を持っている。日本としては自動車に関する関税や米を含む農産物について、妥協を引き出したいところだ。
 トランプ大統領が高関税を正式に打ち出したのは2025年4月2日で、「解放記念日(Liberation Day)」関税と呼んだが、これによって、株式が大幅下落し、米国債の金利が上昇したために、後退を余儀なくされた。スコット・ベセント財務長官が主導権を握る形で、状況が悪化することを防いだ。

私が奇妙だと思っているのは、高関税を発表すれば、株価が下落し、米国債の金利が上昇するくらいのことは政権が予測していたのではないか、それなのに慌てた様子で妥協を行ったということだ。ここからは私の想像で話を進めていきたい。
 現在の株式の高騰は現実の経済全体を反映したものではない。中央銀行が供給した資金が株式や不動産投資に回っているだけのことだ。コロナ禍もあり、中央銀行は市場に多くの資金を供給した。それが社会の隅々にまで行き渡れば良かったが、無利子の資金は富裕層や大企業に集中して回り、彼らを更に肥え太らすことになった。トランプ政権を誕生させたのは、貧乏な白人労働者たちを中心とする一般国民である。トランプ政権は富裕層や大企業の利益最優先ではない。株価の下落や米国債の金利上昇はウォール街や投資マネーにとっては痛手であるが、彼らのブクブクに膨れた、あぶく銭の資産を少し減らすことは重要なことだ。トランプ政権はそこから「撤退」して妥協する形になったが、いつでもこのようなことができるんだぞということを示した。これは大きい。富裕層や大企業はトランプの一挙一投足に気を遣わねばならなくなった。

 共和党は金持ちの党であったが、トランプの出現によって、そのウイングは広がっている。そして、トランプ政権は大きな矛盾を抱えることになった。貧乏人のための政策を行いながら同時に金持ちたちの利益もある程度は守らねばならない。この矛盾をどう解決するのか、それともそもそもそんなことはできないのか、何か共通の敵を見つけるのか、これから注目していかねばならない。
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ドナルド・トランプ大統領が就任100日で経済を変えた5つの方法(5 ways Trump has changed the economy in his first 100 days

トバイアス・バーンズ筆

2025年4月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/trumps-first-100-days/5273522-5-ways-trump-has-changed-the-economy-in-his-first-100-days/

ドナルド・トランプ大統領の就任から100日間の経済政策は、これまでとは全く異なるものだった。

トランプ大統領の関税措置は、世界の貿易関係を根本から覆し、企業と投資家を政権の一挙手一投足に合わせて右往左往させた。

トランプ大統領は複数の規制機関に猛攻撃を仕掛け、広範囲にわたる政府職員の人員削減を命じた。これは、テクノロジー業界の支持者たちが唱える「迅速に行動し、物事を打破する(move fast and break things)」というスローガンを、かつてないほど極端に押し進めたと言えるだろう。こうした命令と方針転換の嵐のようなリズムに、アメリカの経済同盟諸国も敵対諸国も、トランプ大統領の政策がどこに向かうのか見極めようと苦慮している。

景気後退から戦争に至るまで、経済危機の際の伝統的な安全資産であるアメリカの金融資産でさえ、弱体化の兆候を見せている。

ここで、トランプ大統領の政策が就任後100日間に経済に与えた影響を見てみよう。

(1)1世紀ぶりの高関税率(Century-high tariff rates

国際通貨基金(International Monetary FundIMF)の分析によると、アメリカの総関税率は25%を超え、1世紀以上ぶりの高水準となっている。

総関税率の主な構成要素は、中国に対する145%の関税、10%の一般関税、そして木材、自動車、金属などの製品に対する特定関税である。

金融当局は輸入税についてスタグフレーション的な見通し(a stagflationary picture)を示しており、IMFから連邦準備制度理事会(FRB)に至るまで、様々な機関が、その結果として物価上昇と経済成長率の低下を予想している。

IMFのエコノミストたちは4月の経済見通しで、「(関税水準は)それ自体が経済成長への大きなマイナスショックだ」と述べている。

トランプ大統領は関税を断続的に導入しており、発令後、すぐに撤回するといった行動を何度も繰り返してきた。

撤回された関税には、カナダとメキシコへの25%の関税、中国からの800ドル未満の貨物に対するデミミニス免除(the de minimis exemption)の終了、そして数十カ国のアメリカの貿易相手初校に対する様々な税率の国別関税の一時停止などが含まれる。商務省は火曜日、5月3日に予定されていた自動車部品への関税を縮小した。

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の国際ビジネス部門長ビル・ラインシュは本誌の取材に対して次のように語った。「これは(貿易相手国を)不均衡な状態に維持することを意図している。これにより、アメリカは最大限の立場を取り、その後、そこから後退することが可能になる。これはトランプのいつものやり方だ」。

ウォール街の投資家たちは関税を激しく非難している。億万長者のヘッジファンドマネージャーであるビル・アックマンは、トランプの特定国への関税は「誤った計算(bad math)」に基づいており、「世界経済を落ち込ませている(taking the global economy down)」と述べた後、最終的に関税を緩和したことを称賛した。

主要アメリカ株で構成されるダウ工業株30種平均は、トランプの就任以来約8.4%S&P500は約8.7%下落している。ハイテク株中心のナスダック総合指数は12%以上も下落している。

(2)貿易の再構築と国際関係の揺さぶり(Resetting trade, shaking up international relations

トランプ大統領の関税は、アメリカの経済的なライヴァル諸国と同盟諸国の両方を標的にしており、中国のような敵対国との緊張を高める一方で、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ連合(European UnionEU)といった長年のパートナー国との新たな緊張を生み出している。

中国は貿易戦争に「最後まで(to the end)」戦うと明確に表明し、先手を打つかどうかはアメリカ次第だと述べている。

中国外務省の郭嘉昆(Guo Jiakun)報道官は火曜日に、「この関税戦争(tariff war)はアメリカが始めたものだ。もしアメリカが本当に交渉による解決を望むのであれば、脅迫や圧力を止め、中国との対話を追求するべきだ」と述べた。

専門家たちは、トランプ大統領と会談する代表団は、トランプ大統領が貿易戦争で実際に何を求めているのかを理解していないと指摘する。

ラインシュは本誌に対して次のように語った。「今朝と先週、外国の関係者といくつか話し合った。「彼らは『彼はXについてもYについても言及しなかった。私たちは彼が話を持ち出すと予想していたのに。一体何が起こっているんだ?』と言っている」。

生産とサプライチェインの専門家たちは、戦後のアメリカの貿易政策の集大成である世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)に体現された一元的な貿易協定とは異なる、多極的な世界貿易システムの新たな基盤が築かれつつあると見ている。

供給管理研究所(Institute for Supply ManagementISM)のCEOトム・デリーは本誌とのインタヴューで次のように語った。「私が話を聞いたほとんどの人は、二極化した貿易体制に向かっていると考えている。WTO中心の、単一の合意に基づく貿易ルールではなく、西側中心、おそらくアメリカ主導の貿易圏(a Western-centered, maybe U.S.-led trade bloc)と、東側中心、中国主導の貿易圏(an Eastern-centered, China-led trade bloc)だ」。

(3)アメリカ金融資産からの逃避(A flight from U.S. financial assets

トランプ大統領が世界経済に大きな変化をもたらしていることを示す最も確かな兆候は、おそらく、米ドルが他の通貨に対して同時に下落し、アメリカ国債が市場で売られたことだ。

通常、投資家たちは経済の不確実性が高まるとアメリカ資産に逃げ込むが、この傾向は2001年9月11日の同時多発テロから世界大不況に至るまで、様々なショックにも耐えてきた。

しかし、指標となる米ドル指数はトランプ大統領の就任以来一貫して下落しており、4月2日と4月9日の追加関税発表直後には顕著な下落を記録した。

トランプ大統領が4月2日の「解放記念日(Liberation Day)」に関税を発表した直後、債券も売られ、トランプ政権は発効当日に特定国向け関税の90日間の一時停止を宣言した。

ユーロが対ドルで上昇するにつれて、アメリカ国債とドイツ国債の利回り格差は拡大した。これは異例のパターンであり、エコノミストたちはすぐにこの動きに気づいた。

タンパ大学の経済学者ヴィヴェカナンド・ジャヤクマールは今週の論説記事で、「2年物アメリカ国債と2年物ドイツ国債の利回り格差が200ベーシスポイントを超えたにもかかわらず、ユーロは対ドルで急上昇した。これは通常の市場動向の転換を示し、アメリカからヨーロッパへの資本逃避を示唆している」と述べている。

(4)移民パターンと労働市場(Migration patterns and the labor market

トランプ大統領はまた、国連が「世界で最も危険な移民の地上陸路(deadliest migration land route)」と表現するアメリカ南部国境沿いの取り締まりを強化し、移民の流入を阻止しようと努めてきた。

アメリカ税関・国境警備局によると、2024年度のこの時点で国境での接触件数は130万件、2023年度には120万件に達していた。今年は38万1000件に上る。

近年、移民はアメリカの労働力の動向において重要な要因となっており、成長予測や物価水準にも影響を与えている。

連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は昨年、多くの人が景気後退を予想していたにもかかわらず、2024年の経済が予想を大幅に上回ったのは、移民に関する測定値の違いが原因かもしれないと指摘した。

パウエル議長は昨年4月、移民問題に言及し、「これはまさに、私たちが自問自答してきたことの真相を説明している。つまり、外部のエコノミストほぼ全員が景気後退を予測していた年に、なぜ経済が3%以上成長できたのかということだ」と述べた。

移民の減少は、長期的には労働力不足と経済成長の鈍化を意味する可能性がある。保守派は、アメリカの労働者の利益のためには、こうしたコストを支払う価値があると主張する。

ヘリテージ財団予算センター所長リチャード・スターンは、本誌に対し、「企業に不法労働者、つまり労働法を破っても税金を全額負担しなくて済む労働者を雇用する能力を与えれば、それは事実上、不法労働者を雇用するための政府補助金となってしまう」と語った。

ヘリテージ財団が重要な役割を担って策定した「プロジェクト2025」で明記された政権の取り組みについて問われたスターンは「順調に進んでいる(on track)」と述べた。

スターンは「政権最初の100日間を振り返ると、政権が容易に実行可能なプロジェクトの部分を見ると、その主要部分の多くで間違いなく順調に進んでいる」と述べた。

(5)減税に先立ちIRS(内国歳入庁)を解体(Gutting the IRS ahead of tax cuts

トランプ大統領と、イーロン・マスクが率いるコスト削減委員会(the cost-cutting panel)である政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)は、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSID)、消費者金融保護局(Consumer Financial Protection BureauCFPB)、教育省(Department of Education)など、連邦政府諸機関の閉鎖をしてきた。

保守派の中には、DOGEの取り組みを政治的な芝居だと一蹴している。財政的に保守的なマンハッタン研究所の上級研究員ジェシカ・リードルはロイター通信に対し、「DOGEは真剣な取り組みではない(DOGE is not a serious exercise)」と述べ、最終的には節約効果を上回る費用がかかると予測している。

しかし、DOGEは、1万2000人を超えるIRS職員全体の4分の1から40%を人員削減する可能性がある。これは、政府の歳入とその財源に深刻な影響を与える可能性がある。

これは特に、IRSがバイデン政権下で開始し、トランプ政権によって完全に撤回された大規模な業務改革を考慮すると、なおさらだ。

アーバン・ブルッキングス税制政策センターの上級研究員ハワード・グレックマンは本誌に対して次のように語った。「彼らは何千人もの人を解雇し、さらに何千人もの人が辞めた。所得税制度に与えるダメージは計り知れない。文字通り、私たちは、彼らが何をしているのか分からないため、ダメージを測定することができない」。

トランプが1月に再就任して以来、IRS(内国歳入庁)には5人の長官が就任しており、グレックマンはその交代率を「驚異的(remarkable)」と評した。

IRSの空洞化は、共和党議員たちが2017年の減税延長と、トランプが選挙運動中に約束した新たな未検証の減税策の追加を進めている中で起こっている。

最終的な対策は、数兆ドル規模の財政赤字を増加させる可能性があり、公式会計では無視される見込みの4.6兆ドルの財政赤字拡大も含まれる。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 第2次ドナルド・トランプ政権がトランプ関税を発表して1カ月ほど経過している。大きな混乱の後、政権側が譲歩したことで、事態は安定している。しかし、高関税政策によって、短期間でアメリカの影響力は大きく損なわれた。株価、債券、ドルの価値が同時に下落し、アメリカの信頼性が損なわれることになった。そして、西側以外の国々をけん引する中国に対する信頼が高まることになった。

 このことでトランプを批判する声が高まっている。確かにその通りだ。しかし、重要なことは、トランプはアメリカ国民によって選ばれた大統領であり、トランプは自身の公約である、アメリカ国内問題解決(「アメリカ・ファースト))のために政策を実行している。これまで彼が進めてきた政策は、彼が大統領選挙期間中に繰り返し訴えてきたことだ。何も突然思いついてやっている訳ではない。政府効率化省による政府予算の削減や職員の削減、高関税はアメリカの抱える双子の赤字である財政赤字と貿易赤字を減らすための方策である。そして、これらを実行しようとして、経済面での不安が出てきた。株式や債券、ドルが下落するということが起きた。何かを抑えようとして、別の弱い場所に影響が出る。これは、アメリカが抱える問題の複雑さと根深さを示している。単純な処方箋で解決することはできない。そして、これらの方策で、アメリカの衰退を押しとどめることはできないということを示している。

 アメリカの衰退は既に軌道に乗ってしまっている。トランプが少々何かをやったところで止まらない。そして、これは誰が何をやっても同じである。トランプではない他の人物が大統領になっていても(昨年の大統領選挙で言えばカマラ・ハリス)、何かをうまくやれたとは考えにくい。トランプが混乱を引き起こしたという見方は表層的である。誰がやっても混乱は起きていた。そこまでの状況になっていることを理解すべきだ。

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ドナルド・トランプ大統領就任100日で「ストロングマンの統治」のこれまでにない弱点が露呈されている(Trump’s First 100 Days Reveal a ‘Strongman’s’ Unprecedented Weakness

-これほど急速に世界的な力を放棄した米大統領はかつてない。

マイケル・ハーシュ筆

2025年4月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/28/trump-first-100-days-strongman-weakness-russia-china-trade/

ドナルド・トランプ米大統領は、アメリカ政府を動揺させ、国内の政敵を威嚇するという自身の強力な政策について、「誰もこのようなことは見たことがない(Nobody has ever seen anything like it)」と頻繁に述べている。

彼の言うことは正しいかもしれない。しかし、世界の舞台において、強権を標榜する人物がこれほど前例のない弱さを見せたのは誰も見たことがないのも事実だ。しかも、わずか100日間で露呈した。

国家安全保障であれ経済であれ、トランプは短期間のうちに、特にヨーロッパとインド太平洋地域におけるアメリカの圧倒的な力と影響力を一方的に放棄する方向に大きく前進した。おそらく、このことを最もよく示すのは、株価、債券、ドルの価値が同時に下落していることだろう。これは滅多に起こらない現象であり、投資がアメリカから幅広い分野で撤退していることを示唆している。

これはまさに、トランプが就任演説で約束した「アメリカの新たな黄金時代(golden age of America)」、つまり投資が流入し「我が国は再び繁栄し、世界中で尊敬されるようになる(our country will flourish and be respected again all over the world)」という公約とは正反対だ。

ところが、トランプの一連の政策のせいで、投資家の目に映るアメリカは、究極の安全な避難所(the ultimate safe haven)から、法の支配が疑わしい予測不可能な荒野(an unpredictable wilderness where the rule of law is in doubt)へと、徐々に格下げされつつある。

JPモルガンのアナリストは、「これは米ドルの没落なのか?(Is this the downfall of the U.S. dollar?)」と題した最近の分析で、「アメリカの政策に関する不確実性の急激な高まり(A sharp rise in U.S. policy uncertainty)は、アメリカ資産に対する投資家の信頼を揺るがし、世界の主要な準備通貨としての米ドルの役割をめぐる議論さえも巻き起こしている」と述べている。

シタデル・ヘッジファンドの最高経営責任者ケン・グリフィンなどトランプ大統領のビジネス界の支持者の中にも、トランプ大統領の「無意味な(nonsensical)」貿易戦争によってアメリカの「ブランド」に永久的なダメージが与えられると警告する人たちもいる。グリフィンは「与えられたダメージを修復するには一生涯かかるかもしれない」と述べている。

科学と教育への投資を削減し、移民を無差別に国外追放し、主要大学に自身の右翼的なポリティカル・コレクトネスを浸透させるよう脅迫することで、トランプはかつて想像もできなかったような頭脳流出(brain drain)を加速させている。トランプが復興を訴えている製造業の能力そのものを衰退させる恐れがあるのは言うまでもない。

アメリカは、優秀な人材を自国に引き寄せることで、特にソ連やナチス・ドイツといった敵国を幾度となく打ち負かしてきた国である。しかも、トランプが国内の法の支配に与えた影響は別として、誰もが適正手続きなしに逮捕・追放され、国内テロリストが大量に恩赦を受け、有罪判決を受けた犯罪者が政府の高官職(通商担当補佐官ピーター・ナヴァロや駐フランス大使に指名されたチャールズ・クシュナーなど)に就くような土地に、頭脳明晰で才能豊かな外国人が来る可能性は低くなる。

これら全ては、トランプが脅迫して沈黙させた政党、共和党の沈黙した支持と、自分たちの立場が理解できない野党・民主党の支離滅裂な抵抗によって起こっている。裁判所はトランプの政策の多くに反対の声を上げており、その声はしばしば説得力に富んでいるが、トランプはほとんど耳を傾けていない。

大統領にとって唯一重要なのは各市場であり、今やそれが彼の進む方向を変える唯一の希望かもしれない。

米国の二大ライヴァルであるロシアと中国は、超大国としての自滅を目指すワシントンの試みを大いに喜んでいる。

かつてトランプが「1日で解決する」と豪語したロシアによるウクライナ侵攻問題において、トランプはロシアのウラジーミル・プーティン大統領への徹底的な宥和政策を追求してきた。奇妙なことに、トランプは、アメリカの13分の1の経済規模を持つプーティン大統領への媚びへつらう態度と、これまでワシントンによるロシア抑制を支援してきたヨーロッパの同盟諸国への拒絶を結びつけている。

こうして、トランプ米大統領は、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領についてよく言うように、交渉のテーブルで「使えるカードがない(has no cards to play)」のはトランプ自身である可能性を高めている。

トランプ支持者たちは、プーティン大統領への熱心な働きかけとロシアとの正常化に向けた努力は、ヘンリー・キッシンジャーのように、モスクワを中国との同盟から引き離す巧妙なリアリズムに等しいと述べている。トランプ政権のスタッフは、いわゆるリアリストや「抑制派(restrainers)」で占められており、彼らは大国主義的な現実政治(great-power realpolitik)への回帰を訴え、トランプの前任のジョー・バイデン米大統領がアメリカの対ロシア戦略政策を事実上ゼレンスキー大統領に委任することでモスクワとの交渉から自らを閉ざしたことを批判している。

この批判には一理ある。しかし、ロシアからいかなる譲歩も引き出さずに、プーティン大統領のクリミア半島をはじめとするウクライナ領土に対する主張を先制的に承認したことで、トランプは紛れもなく弱腰に見える。また、将来の軍事的領土奪取を事実上正当化し、国際法に基づく戦後領土規範の残滓を破壊しようとしている。こうした将来の侵略には、中国による台湾の併合、トランプ自身のグリーンランドへの野望の実現も含まれる可能性がある。

ここ数日、トランプ大統領は、ロシアの指導者プーティンが自分を騙そうとしている可能性があると認め、プーティン大統領に対し、ウクライナの都市への残虐な攻撃をやめるよう懇願するに至った。

トランプ大統領は4月26日のトゥルース・ソーシャルへの投稿で次のように述べた。「プーティン大統領がここ数日、民間地域や都市、町にミサイルを撃ち込んだ理由は何もなかった。もしかしたら、彼は戦争を止めたいのではなく、ただ私を誘導しているだけなのかもしれない。『銀行制裁(Banking Sanctions)』や『二次的な制裁(Secondary Sanctions)』といった別の方法で対処する必要があるのではないか?」

それでは、中国はどうだろうか? 北京は、トランプの政策を公然と嘲笑している。トランプの政策は、大言壮語の後、混乱と撤退に終わったに過ぎない。トランプ大統領が中国に対して課した最低145%の関税(棚が空っぽになり価格が急騰すると警告したアメリカの大手小売業者との会談も含む)に市場が衝撃と恐怖を示したことを受け、トランプ大統領は方針を転換し、現在中国と関税を「実質的に(substantially)」削減する(pare back)交渉を行っていると発表した。

しかし、北京はそのような協議は行われていないと屈辱的に否定した。中国はさらに、アメリカへの多くのレアアース金属の輸出を禁止するという強硬手段に出たこともあって、ドローンやバッテリー駆動車の製造にこれらの鉱物を依存する防衛関連企業を含む、それらなしでは生産ラインを稼働できない主要産業にパニックをもたらした。

ダートマス大学の国際関係論の専門家、ウィリアム・ウォールフォースは、これら全てはトランプとそのチームが「内臓を抜き取り奪取する(gut and grab)」戦略を追求しようとする、不器用な試みだと指摘した。つまり、第二次世界大戦以降支配されてきたアメリカ主導の世界秩序を骨抜きにし、トランプにとっての英雄であるウィリアム・マッキンリーのような19世紀の大統領たちのやり方に倣い、領土のパイのより大きな部分を自ら奪い取ろうとする戦略だ。

ウォールフォースによると、問題はトランプ支持者たちが何をしているのか分かっていないように見えることだ。

ウォールフォースは電子メールで「ロシアへの先制的な譲歩(preemptive concessions)、つまりロシアにはアメを与え、ウクライナとヨーロッパにはムチを与えるというアプローチは、交渉戦略として間違っている。トランプ大統領は中国との関税をめぐるチキンレースで、まさにその隙を突いたようだ」と述べている。

そして今、これまで同盟国がほとんどなかった中国は、自らを世界システムの安定した新たな中心として見せかけることで、この好機を捉えようとしている。習近平国家主席が3月下旬、アメリカ、日本、韓国のビジネスリーダーたちに語ったように、中国は「理想的で安全かつ有望な投資先()an ideal, safe and promising investment」の選択肢だ。これは、歴代米大統領(最初の任期のトランプ大統領を含む)が数十年にわたり、中国に対し、開放と不公正な貿易慣行の撤廃を迫ってきた後のことだ。

トランプが大統領に就任するまで、中国とロシアは事実上、同盟諸国を切望する2国でした。モスクワは、取るに足らないベラルーシからのみ、揺るぎない忠誠を得ていた。そして近年では、孤立し、厳しい制裁を受けているイランと北朝鮮という2つの国と同盟を結んでいる。中国もまた、一帯一路構想(Belt and Road Initiative)やその他の債務負担(debt encumbrances)によって小国を従わせようと努めながらも、主に北朝鮮との結びつきを誇っていた。

その後、モスクワと北京は互いに協力関係を築き、西側諸国へのカウンターウェイト(釣り合い)として、主要新興国5カ国(当初はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)からなるBRICSフォーラムの拡大に向けて、散発的な努力を重ねてきた。しかし、参加に意欲的な国はほとんどいない。新たにBRICSに加盟・招待された国の中には、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプトなどがあり、依然としてアメリカの緊密な安全保障パートナー諸国がいる。同様のアルゼンチンは後に不参加を決定した。

一方、トランプが登場するまで、アメリカは世界中に50カ国以上の同盟国と戦略的パートナーを有しており、その中には世界で最も裕福な国のほとんどが含まれている。しかし今、ドイツから韓国に至るまでの主要同盟諸国は、トランプが絶えず撤退をちらつかせ、帝国への貢物要求(demands for imperial tribute)を突きつける中、ワシントンとは別に独自の防衛力整備を進めようとしている。これはアメリカの防衛産業に大きな打撃を与え、核拡散(nuclear proliferation)の新たな危険な時代を脅かすことになる。

トランプの常套句は、同盟諸国は「私たちを騙す(rip off us)」ことしかしていないというものだ。そして、トランプの功績として、NATO同盟諸国と台湾に対し、自国の防衛費増額案を提出するよう圧力をかけている。しかし、2013年のランド研究所の報告書によれば、日本(75%)、クウェート(58%)、カタール(61%)、サウジアラビア(65%)などの受入国が負担するアメリカ軍基地の費用の割合を考慮すると、ワシントンはインド太平洋地域と中東で大部分においてかなり良い取引をしている。

より大きな問題は、こうした政策がアメリカの世界的なリーダーシップと経済的優位性を維持していることだ。

戦後世界秩序(postwar global order)の専門家であるプリンストン大学のジョン・アイケンベリーは、トランプ政権の最初の任期中、大統領がアメリカ主導の国際システムへの最初の断続的な攻撃を開始した際に私に次のように語った。「トランプは、この秩序を不動産のように捉えているのかもしれない。アメリカの秩序は、70年にわたる投資を体現し、莫大な利益を生み出してきた。この秩序を破壊すること、つまり貿易体制、同盟、制度、そして信頼を弱体化させることは、最も収益性の高いホテルの資産を取り壊すようなものだ」。

実際、トランプの行動に歴史的前例を見出すのは難しいとアイケンベリーは述べている。アイケンベリーは近日発表予定の論文で次のように述べている。「なぜアメリカは自らの覇権秩序(hegemonic order)を破壊しようとするのか? なぜ世界システムにおいて最強の国家が、自らを弱体化させ、貧しく、不安定にしようと積極的に行動するのか?。大国が興亡を繰り返すことは周知の事実であり、世界の時代は終わり、新たな時代が始まる。しかし、国際秩序がこのように自らの創造主によって破壊されるのを見たことがあるだろうか? 歴史を振り返ると、大国は自殺ではなく、殺人によって終焉、あるいは消滅する傾向にあった」。

これまで止めようのない勢いを見せていたアメリカ経済に関して言えば、トランプはあまりにも自己破壊的な一連の政策を採用しており、これもまたトランプのお決まりの表現を使うならば、誰もかつて経験したことのない事態となっている。これらの政策が相まって、驚くほど短期間のうちにアメリカ経済の力を弱体化させたのだ。

実のところ、わずか100日だ。4月初旬に発表されたCNBCの調査によると、CEOの過半数(69%)が景気後退(recession)を予想している。

景気後退のスパイラルは、トランプ大統領によるアメリカ支援プログラムの放棄と同盟諸国への非難から始まった。しかし、4月初旬、トランプ大統領が関税と貿易戦争という誤った概念を明らかにしたことで、この傾向は急速に勢いを増した。

一部の国に対する厳しい貿易圧力によって、バイデン前政権が中国、東南アジア、その他の地域に逃がしてしまったアメリカの製造業の一部が回復する可能性があると信じる理由が再び現れた。

しかし、トランプ大統領は、税収を徴収する以外に明確な計画もなく、約90カ国に関税を課した。そしてすぐに、トランプ大統領は、他国がアメリカに課したとしている「各種関税(tariffs)」は、各国政府の実際の政策ではないことが明らかになった。それは、当該国のアメリカへの物品輸出量をアメリカの対外貿易赤字で割ったという粗雑な計算に基づいていた。これは、貿易はゼロサムゲームであり、国の貿易赤字は企業の損失に等しいという、トランプ大統領の誤った重商主義的考え(Trump’s false, mercantilist idea)に基づいているように思われる。

地球上で最も権力のある人物が経済学の基礎さえ理解していないことに、世界中が一挙に気づいたかのようで、市場は急落した。確かに、市場はそれを認識していた。

トランプ大統領は更に、新たな貿易協定を交渉する間、ほとんどの関税を90日間停止すると発表したことで、事態を更に悪化させた。しかし、新たな貿易協定は成立しそうになく、貿易専門家たちは、この短期間でそのような協定を交渉するのは事実上不可能だと指摘している。

一方、アメリカからの資金流出は続いている。1月20日のトランプ大統領就任式以来、米ドルは9%近く下落し、1970年代初頭のいわゆるニクソン・ショック以来50年以上ぶりの大打撃を受ける恐れがある。これは決して軽視できない問題だ。トランプ大統領の関税措置と同様に、これはインフレを加速させる可能性がある。

今日と同様に、当時のニクソン大統領は、戦後の金融システムの柱であった他国のドル準備金を金に交換することを停止することで、アメリカの国際的な評判を危険に晒した時期だった。

究極の皮肉は、トランプが大統領の権力と世界中の尊敬を取り戻すというストロングマン政治を目指しているように見えることかもしれない。しかし、彼は他国を威圧して屈服させるという自身の能力を過度に過大評価して大統領に就任したようだ。アトランティック誌との100日間のインタビューで彼は「私は国と世界を動かしている(I run the country and the world)」と述べた。

しかし、アメリカの力は軍事力と経済力だけでなく、ソフトパワーによる影響力にも大きく依存している。トランプはこの最後の部分を理解していなかったようだ。グリーンランドを占領し、カナダを併合すると宣言すれば、両国の国民を結束させて彼に対抗するだけだということを理解していなかったようだ。

就任前、トランプはバイデンをはじめとする歴代米大統領の政策について語る際、「世界は私たちを嘲笑している(The world is laughing at us)」とよく言っていた。

当時はそうではなかった。少なくとも、それほど頻繁にはそうではなかった。今は違う。あるいは、世界の多くの人々が笑うどころか泣いているのかもしれない。考えてみて欲しい。米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSIDA)とその多くのプログラムを廃止することで、トランプ政権は最終的に、ウラジーミル・プーティン大統領がウクライナでもたらしたのと同じくらい多くの罪のない人々の死をアフリカや発展途上国で引き起こす可能性がある。そして、再びアメリカの影響力と威信を犠牲にすることになる。

それでも、少し立ち止まって、新大統領の任期100日という指標が常に疑わしいものであったことを指摘しておこう。最悪の事態を招いたトランプは、自分が引き起こした損害の一部を認識し、調整するかもしれない。最新の世論調査によると、彼の支持率は、このような調査が初めて実施されて以来、どの新任大統領よりも最低水準に急落している。

多くの歴史家は、就任後100日間を、主にメディアが見出しを作るために仕掛けた策略と見なしている。大統領史家リチャード・ノイシュタットは、この指標を「現代の大統領が就任後3カ月で何を計画し、何を成し遂げたいかを示す指標としては不十分だ」と述べ、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領とニューディール政策に特有の基準であると主張した。彼が直面した危機の深刻さ、すなわち大恐慌の深刻さがその理由だったのだ。(「100日間」はもともと、フランスの指導者ナポレオン・ボナパルトがエルバ島から脱出してから没落するまでの期間を指す言葉として始まったが、1933年7月にルーズヴェルト大統領はこの概念を復活させ、「ニューディール政策の始動に捧げられた100日間の出来事の山場(the crowding events of the hundred days which had been devoted to the starting of the wheels of the New Deal)」と表現した。)

ジョージワシントン大学の政治学者ララ・ブラウンは2021年、ジョー・バイデン大統領の最初の100日間を評価する際に筆者に次のように語った。「ある意味では、100日という数字は、大統領の初期のリーダーシップスタイルを見るという意味で重要な指標だ。しかし、実際のパフォーマンス、つまりこの人物が成功するかどうかという点では、非常に近視眼的だと思う。現代のほとんどの大統領にとって、最初の100日間は彼らの物語の終わりではなく、始まりに過ぎないと言えるだろう」。

更に悪いことに、100日という基準は、新大統領が次々と大きな成果を上げようとする中で、機能不全(dysfunction)と不安定さ(unsteadiness)というメッセージを世界に発信するだけだ。これは特に、冷戦コンセンサスが崩壊し、各大統領が前任者の政策を覆そうとした過去数十年間において顕著であり、トランプとバイデンほどその傾向が顕著な人物はいない。

バイデンは就任初日に少なくとも50件の大統領令に署名したが、その約半数はパリ協定離脱、移民政策、国境の壁建設、イスラム教徒が多数を占める国への渡航禁止措置など、トランプ政権の政策を覆すものだった。

当時、バイデンは「私は新しい法律を作っているのではない。悪い政策を排除しているのだ」と述べた。

トランプはバイデンを凌駕し、1月以降に100件以上の大統領令に署名している。その多くはバイデン政権の政策を覆すものであり、バイデンを「アメリカ史上最悪の大統領(the worst president in U.S. history)」と繰り返し呼んでいる。

トランプ自身も100日という指標(the 100-day metric)を喜んで受け入れている。彼はこの指標を、2期目の目覚ましい躍動感を表現する際にしばしば引用している。4月8日には「我が国史上最も成功した100日間(the most successful 100 days in the history of our country)」と称した。

これは幻想だ。トランプは決して認めないだろうが、ここ数日、後退の兆し(signs of retreat)を見せている。スコット・ベセント財務長官は、かつて「恒久的(permanent)」とされていた関税は今や交渉の余地が十分にあると世界に安心感を与えた。数週間にわたり、自らの「行政の単一性理論(unitary theory of the executive)」を究極の試練にかけ、連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を破壊する可能性を示唆し、それが再び市場の暴落につながった後、トランプは今やFRB議長ジェローム・パウエルの解任計画を否定している。

これは、ウォルマート、ターゲット、ホーム・デポのCEOたちが4月21日に大統領執務室でトランプに経済破綻の危機を警告したメッセージに続くものだ。

彼が方向転換するにはまだ遅くはない。

※マイケル・ハーシュ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。『資本攻勢:ワシントンの賢人たちはどのようにしてアメリカの未来をウォール街に渡し、我々自身と戦争を行ったのか(How Washington’s Wise Men Turned America’s Future Over to Wall Street and At War With Ourselves)』と『何故アメリカはより良い世界を築くチャンスを無駄にしているのか(Why America Is Squandering Its Chance to Build a Better World)』の2冊の本の著者でもある。Xアカウント:@michaelphirsh

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 トランプ関税が発表され、日本には24%の関税が課されることになった。世界各国にはまず10%、それから個別の国々で、対米黒字が多い国を中心にして、様々な税率が課されることになった。中国には145%が課されるという発表があったために、「日本の24%は大したことはないな」という感想を持ってしまうが、やはりこれは日本にとっては重大な問題だ。

 今年4月からゴールデンウイークの連休までの間に、石破茂首相の側近である、赤澤亮正経済再生担当大臣が2度訪米し、関税や日米貿易について、スコット・ベセント財務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表と議論した。1度目はドナルド・トランプ大統領も出てきて驚きを持って迎えられた。通常、こういう交渉事は同格のカウンターパートと行うものであり、大統領が大臣と交渉することはない。
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 中国はトランプ関税に対して一歩も引かず、対抗措置を取ることを表明している。トランプ関税によって、株式や債券が下落し、アメリカ側が譲歩や撤退を余儀なくされる中で、中国に一貫性は評価され、信頼性が高まっている。中国のトランプ関税対策の最高責任者になっているのが、何立峰(かりつほう、He Lifeng)副首相だ。何立峰は、習近平の「側近中の側近」であり、福建省で長くテクノクラートを務めた人物だ。習近平の部下となり、習近平の結婚式にも出席した、数少ない人物の1人である。経済学で博士号を取得しているが、英語も話せないということで(前任の劉鶴はハーヴァード大学で教育を受けて英語が堪能)、あまり評価が高くなかったが、最近になって評価を上昇させている。こうしたところは、石破茂首相と赤澤経済担当相との関係に似ている(赤澤大臣はコーネル大学留学経験があり英語は堪能であると考えられる)。

 何立峰副首相の動きをこれから注視していく必要がある。

(貼り付けはじめ)

アメリカの関税交渉で中心的な役割を担う中国の貿易担当最高責任者である何立峰とは何者か?(Who is He Lifeng, the Chinese trade tsar taking centre stage in US tariff talks?

ロウリー・チェン、マイケル・マルティナ筆

2025年5月7日

ロイター通信

https://www.reuters.com/business/autos-transportation/chinas-trade-tsar-limelight-us-tariff-talks-2025-05-07/?taid=681b618679cfff00010e4fe1&utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter

●要約(Summary

・何副首相が土曜日に複数のアメリカ政府高官と会談。

・当初は外国人投資家たちの期待に応えられなかったが、自信と経験を積んできている。

・国家主導の成長(state-led growth)をイデオロギー的に支える人物として評価されている。

北京・ワシントン発。5月7日(ロイター通信)。習近平国家主席の長年の側近であり、外国投資家たちの間では重要なフィクサーとしての評判を徐々に築き上げてきた何立峰(He Lifeng)が、アメリカとの貿易停滞打開(breaking a trade deadlock with the United States)に向けた土曜日の協議で中心的な役割を果たすことになる。

世界のトップ2経済大国が互いの輸入品に100%を超える関税を課すなど、数週間にわたって緊張が高まっている状況を受け、何立峰はスイスでスコット・ベセント米財務長官とジェイミソン・グリア米通商代表と会談する予定だ。

ドナルド・トランプ米大統領は、習近平国家主席に対し、貿易協定の可能性について自身に電話するよう繰り返し求めてきたが、緊張緩和への道筋は、米中経済貿易問題を統括する何副首相を経由するだろうと見られる。

ロイター通信は、過去1年間に何副首相と面会した外国人投資家や外交官13人にインタヴューを行った。彼らは、70歳の何副首相が、英語が全く話せず、用意された発言から逸脱することを嫌う、堅苦しい共産党官僚という印象だったが、実際には、より自信に満ちた人物へと成長し、その実行力(ability to get things done)に感銘を受けたと語っている。

会談について説明を受けたアメリカのビジネス関係者たちは、先月、世界有数の企業トップが北京で開催されたビジネスフォーラムに集まった際、多くの企業が何副首相に感銘を受けていたと述べている。

関係者のほとんどは匿名を条件に、中国の広大な金融セクターに対する広範な規制監督権も有する何副首相との秘密のやり取りについて語った。

ロイター通信が何副首相の公務に関する調査を行ったところ、何副首相は過去1年間に少なくとも60回、外国人と会談を行っている。これは、2023年3月に副首相に就任してから2024年3月までの45回から着実に増加していることを意味する。

中国国務院(China's State Council)は、この会談に関するファックスによるコメント要請に回答しなかった。

●現状維持の擁護者?(DEFENDER OF STATUS QUO?

しかし、何副首相が西側諸国の企業幹部との交渉にますます慣れてきたにもかかわらず、ロイター通信がインタヴューした多くのビジネスマンは、副首相は政策革新者ではないと述べた。

先月の会合について説明を受けたこのビジネスマンは、何副首相のアメリカ企業幹部たちから評判が上がってきているのは、アメリカにおける混乱を受けて、中国の指導者たちが特に予測可能で自信に満ちている(predictable and confident)ように見えたことが、その要因となった可能性が高いと述べた。

報道によると、ヨーロッパ委員会は、年間約1000億ドル相当のアメリカからの輸入品を対象とするリストに民間航空機を含める予定だという。

彼は最後に中国の主要なマクロ経済計画機関の最高責任者を務め、産業政策(industrial policy)の策定を担当した。また、外国との会談では、北京の輸出主導型成長戦略(Beijing's export-led growth strategy)を繰り返し擁護してきた。

あるアメリカ人実業家はロイター通信に対し、国内消費よりも製造業の振興を支持してきた何副首相は、習近平国家主席の「1兆ドル規模の黒字創出における最大の補佐官(chief lieutenant for building a trillion-dollar surplus)」を務めていると語った。

何副首相は別の意味で、中国の過剰生産能力に関する不満を繰り返し無視してきた。これは、中国が輸出圧力の抑制と新たな協力の道を模索する中で、多くの国々が共有している不満だと3人の関係者がロイター通信に語った。

大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)のグローバル・チャイナ・ハブの上級研究員ウェン・ティ・ソンは次のように述べた。「日常的には、何副首相は中国の貿易黒字を擁護するだろう。何副首相が貿易黒字について軟化することは考えにくい。貿易黒字は中国の雇用創出にとって極めて重要な問題だ」。

何副首相は、トランプ大統領による関税攻撃の打撃を受けている日本やヨーロッパ連合(EU)といった先進市場への中国の最近の働きかけにおいて最前線に立ってきた。

何副首相はスイス訪問後、ハイレヴェル経済対話のためフランスを訪問する予定だ。

●期待外れのスタート(UNDERWHELMING START

何副首相が副首相に就任する前、経済問題は劉鶴(Liu He)前副首相が担当していた。劉鶴はハーヴァード大学で教育を受けた、英語が堪能な経済学者であり、トランプ政権下ではアメリカとの貿易協定交渉にも携わった。

何副首相は厦門大学で経済学の博士号を取得しているが、国内問題に注力してきた経歴を持つため、中国経済の代表として世界に向けて発信する上で、多くのことを学んできた。

出席者の1人によると、昨年7月に何副首相が重要な経済政策会合の結果を報告した後、アメリカ企業幹部の一部は何副首相に失望したという。

この人物によると、2027年の党大会で退任することになっている何副首相は、数十人の側近に囲まれた記者会見で、特に精力的な様子は見せなかったという。

一方、劉鶴や王岐山といった何立峰の前任者は、雄弁さと比較的くつろいだ物腰で外国人記者の間で知られていた。

また、何副首相は、2月に日本のビジネス代表団が提起した北京のレアアース輸出規制や、中国国内の日本人の安全に関する懸念を軽視した。

何副首相と3月の会談について説明を受けたこの実業家は、何副首相との過去の協議を「チャットGPTと話しているようだった(talking to ChatGPT)」と表現した。しかし、最近では、何副首相は欧米企業の幹部たちにもっと受け入れられるようなコミュニケーション方法を採るようになったと述べた。

何副首相と複数回面会したこの関係者は、習近平国家主席に近い立場にない当局者にはできない方法で、何副首相が経済政策に関する中国の立場を説明し、支援の約束を果たす能力にも感銘を受けたという。この関係者は具体的な内容を明らかにしなかった。

今年、何副首相と面会した別の外国当局者も、何副首相は関税や不動産危機に加え、デフレ圧力や高齢化といった中国の経済問題を深く理解しており、これらの問題について高度な分析を行ったと述べた。

また、何副首相は中国発のAIスタートアップ企業ディープシーク(Deepseek)の将来性にも非常に自信を持っているように見えたとこの関係者は述べた。

●「典型的な官僚」であり破壊者('TYPICAL BUREAUCRAT' AND DEMOLISHER

何副首相は故郷の福建省で地方官僚として出世し、習近平主席は1990年代から2000年代初頭にかけて福建省で地方官僚として権力基盤を築いた。ロイター通信が以前報じたように、彼はその頃に習近平主席の腹心となり、将来の指導者である習近平の結婚式にも出席した。

彼は2009年に工業港湾都市の天津に異動となり、大規模な都市再開発事業と高額なインフラ整備事業に着手したことで、地元住民から「破壊者(He the Demolisher)」というあだ名をつけられた。これらの事業は天津に華やかな外観を与えたが、同時に都市の債務をより深刻化させた。

シンガポール国立大学の中国専門家アルフレッド・ウーは、何副首相は経済成長の促進に力を入れ、特に「当時の多くの地方官僚と同様に、不動産と都市再開発(real estate and urban redevelopment)に熱心だった」と述べている。

福建省でジャーナリストとして働いていた際に何副首相と出会ったウーは、何副首相を「典型的な地方官僚であり、習近平の典型的な子分(typical local bureaucrat and a very typical protégé of Xi Jinping)」と評した。

ウーは続けて、「何副首相の最優先事項は習近平の指示を実行することであり、従属的な立場(a subordinate position)にある」と述べた。

※ロウリー・チェン:ロイター通信北京支局の中国特派員。政治と一般ニュースを担当している。ロイター通信入社前は、AFPと香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙で6年間、中国担当記者を務めた。中国語を流暢に操る。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 ドナルド・トランプ大統領による高関税の発表から1カ月が経過した。いくつかの妥協がなされているが、日本に関しては、24%の関税賦課が行われる予定で、それを回避するために、赤澤亮正経済再生担当大臣が2度の訪米で交渉を行っている。アメリカとしては、貿易拡大、特にアメリカ製品の輸出拡大を目指しているが、厳しい状況だ。

アメリカ側は、日本車とアメリカ車の不均衡を批判しているが、日本で売れるアメリカ車を作る努力もしないで、ただただ買えと言っているのは押し売りと同じだ。もしくはカツアゲだ。アメリカ産の農産物を買うと言っても、少子高齢化で人口減少、高齢社会によって食料品の消費量はどうしても減っていく。アメリカ産のトウモロコシをどうやって消費するかは難しい。結局、政府がアメリカらから製品を買って、海外援助の現物として支給する形にするしかないが、そのような税金の使い方が良いのかという問題は起きる。

 トランプ高関税(解放記念日関税)によって、株式市場は乱高下し、更には米国債の金利上昇という事態に陥り、妥協する形になった。高関税を支持したのは対中強硬派であり、そのグループが交代を余儀なくされたということになる。この高関税政策の主眼は、アメリカの貿易赤字削減であるはずなのに、高関税を武器にして、中国と争うことを主眼としたグループがおり、そのグループが過剰な中国をターゲットにした、関税戦争、貿易戦争を仕掛けようとしたが、中国が頑として妥協しないという姿勢を示したために腰砕けとなった。これは、ウクライナ戦争勃発後、西和賀諸国がロシアをSWIFTという国際決済システムから除外し、制裁を科して、ロシアを早々に屈服させようとして失敗したのと似ている。中露両国はアメリカからの制裁に慣れており、その準備を十年単位に進めている。対米自立(対ドル自立)ができている(食糧安保も含めて)。

高関税を何とか宥めたいグループの代表がスコット・ベセント財務長官だ。ベセントは昨年の大統領選挙ではトランプを支持し、関税政策も支持していた。しかし、対中強硬派の暴走を抑えることに成功した。それはもちろん、米国債金利上昇(米国債が中国によって売られた可能性が高い)という緊急性の高い事態を招いたこともあるが。スコット・ベセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表がこれから、二国間協議で各国からの妥協を引き出すということになるだろう。これは簡単に言えば、みかじめ料ということになるが、あまりにも阿漕なみかじめ料を取るようならば、アメリカの威信は地に堕ち、信頼を失うことになる。

 ナヴァロをはじめとする対中強硬派は高関税を使ってやり過ぎてしまった。対中強硬派はこれからトランプ政権で力を失っていくだろう。ナヴァロはトランプに殉じて刑務所に入ったくらいの忠誠心の高い人物であるから、象徴的な意味でも政権内に留まるだろうが、実権はなくなるだろう。トランプ政権の荒療治はなかなか厳しい状況に陥っている。

(貼り付けはじめ)

トランプ関税ドラマの勝者と敗者(Winners and losers from the Trump tariffs drama

ナイオール・スタンジ筆

2025年4月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5243790-trump-tariff-china-trade-war/

ドナルド・トランプ大統領は水曜日、世界各国への関税賦課をほぼ一時停止し、方針を転換した。

唯一の大きな例外は、激化する貿易戦争(an escalating trade war)の焦点となっている中国だ。アメリカの対中関税は現在145%に達しており、中国は報復措置としてアメリカからの輸入品への関税を金曜日早朝に125%に引き上げた。

トランプ大統領が国際的な関税賦課を撤回したのは、アメリカ株が数兆ドルの下落を見せ、債券市場が警戒感を示し始め、経済界が景気後退の可能性を懸念する声が高まった後のことだ。

譲歩を決して認めようとしないトランプ大統領でさえ、投資家たちが動揺し始めていることを指摘し、「投資家たちは騒ぎ立てている(they were getting yippy)」と述べ、自身も債券市場の動向を注視していると述べた。

利上げ停止発表直後、水曜日の午後、市場は大きく上昇した。しかし、中国情勢への懸念が更に強まったため、木曜日には再び急落した。

ダウ工業株30種平均は1000ポイント以上、つまり、2.5%下落した。より広範なS&P500は約3.5%下落し、ハイテク株中心のナスダックはさらに下落し、4.3%下落した。

状況は流動的で、今後も多くのドラマが展開される可能性が高い。

トランプ大統領自身以外では、関税騒動の勝者と敗者は誰なのだろうか?

■勝者たち(WINNERS
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●スコット・ベセント財務長官(Treasury Secretary Scott Bessent

ベセントはここ1週間、トランプ政権内でより強い立場を築いてきた。

トランプ大統領と公に決別しようとしたことは一度もないが、包括的かつ過酷な関税水準に懐疑的な派閥のリーダーであることは明らかだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の木曜日の報道によると、ベセント財務長官は週末、トランプ大統領の専用機エアフォースワンに同乗し、金融市場の透明性の必要性を強調し、大統領に「他国との交渉に集中する(focus on negotiating with other countries)」よう助言したことで、内部での影響力を強めたようだ。

かつてヘッジファンドマネジャーを務め、過去には民主党の資金調達担当者でもあったベセントは、トランプ周辺の一部が主張する過剰な保護主義(hyperprotectionism)に対して、常に懐疑的だった。

より穏健なアプローチが勝利した後も、ベセントはトランプに対して忠誠心を持ち、トランプについて「これが彼の戦略だった(This was his strategy all along)」と報道陣に語った。
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●イーロン・マスク(Elon Musk

関税騒動の裏話はマスクに絡んでいる。

マスクは、トランプの側近で経済学者であり、最も保護主義的な立場を明確に示すピーター・ナヴァロと激しく対立していた。ナヴァロが、マスクがテスラ(ナヴァロはテスラを真のメーカーではなく「自動車組立業者(car assembler)」と揶揄していた)のせいで自由貿易に既得権益があると主張すると、マスク氏は彼を「間抜け(moron)」呼ばわりした。

更に言えば、マスクは壮大な関税制度に明らかに不安を抱いているもう1人の重要人物だった。例えば、トランプ大統領とヨーロッパ連合(EU)の間の緊張が高まる中、マスクは大西洋横断自由貿易圏(a transatlantic free trade zone)の設立を公に表明した。

ベセントと同様に、マスクも内部論争で勝利を収めた。

●民主党(Democrats

ここでは野党が勝利を収めることになる。

民主党は、昨年11月のトランプの勝利、党内の今後の方向性をめぐる議論、そして党に対する認識の急落を示す世論調査によって、大きく揺さぶられてきた。

しかし現在、トランプは中道層の有権者に深刻な打撃を与えかねない、最初の大きな失策を犯したと見られている。

世論調査では関税が広く不人気であることが示され、トランプの支持率も急速に低下しているように見える。

1月にトランプが大統領に就任して以降、初めて、民主党に追い風が吹いている。

■中間(MIXED

●ウォール街(Wall Street

投資家と金融機関にとって、これはジェットコースターのような激しい動きだった。

数日続いた急落は、水曜日にウォール街史上最大級の1日の上昇で打ち破られた。

そして木曜日、市場は再び急落した。

主要株価指数は、トランプ大統領の「解放記念日」関税(“Liberation Day” tariff)発表前の水準と、その後数日間に記録した安値とのほぼ中間水準にある。

ウォール街は、トランプ大統領の方針転換に影響力のある発言者が何らかの役割を果たしたという事実に、ある程度の安堵を抱くことができるだろう。

しかし、中国との緊張が解消されない限り、今後の道のりは依然として不安定だ。

●連邦議会共和党(Republicans in Congress

共和党の一部には、当初からトランプ大統領の関税措置に対する明確な不安が存在していた。

共和党所属の連邦議員の中には、関税が早期に緩和されることを期待する者もいた一方、連邦上院議員の中には、この問題に関する権限をホワイトハウスから奪還しようとする動きに加わった者もいた。

市場が今後改善すれば、共和党へのダメージは小さくなるかもしれない。

しかし、市場のヴォラティリティはまだ明らかに解消されておらず、それが共和党の政局にも不確実性をもたらしている。

■敗者(LOSERS
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●ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)

ナヴァロの保護主義、アメリカが外国の競争相手につけこまれていると強く主張する姿勢は、大統領に支持を得ているように見えた。

ハーヴァード大学で博士号を取得しているにもかかわらず、著名な経済学者の中では異端児であるナヴァロにとって、かつてはそれが好意的な承認のように思えたに違いない。

しかし、トランプ大統領が関税賦課を停止したことで、その見方は大きく崩れ去った。

確かに、トランプ大統領は10%の関税を維持し、他国向けに「特注(bespoke)」の解決策を検討しているとされている。

しかし、ナヴァロを最も象徴する主張、すなわち十分な規模と期間の長期にわたる懲罰的関税がアメリカの製造業の再生を促すという主張は、再び遠ざかりつつあるようだ。

●中国(China

中国政府はトランプ大統領との対決において決して譲歩しないと強調し続けている。

中国商務省は「最後まで戦う(fight to the end)」用意があると約束しており、政府報道官はソーシャルメディアで毛沢東国家主席の好戦的な映像を共有し、その点を強調した。

貿易戦争が長期化すれば、中国だけでなくアメリカにも打撃を与えることは疑いようがない。

最新の統計によると、アメリカは毎年約640億ドルの携帯電話、300億ドルの玩具、200億ドルの繊維・衣料を輸入している。関税は、これらの品目のアメリカ国内の価格を上昇させるか、単に入手しにくくするだけだ。

しかしながら、中国への打撃は更に大きくなる可能性が高い。

中国の対米輸出は輸入の約3倍に上る。中国は近年、市場の多様化に努めているものの、アメリカとの貿易に大きな障害が生じれば、深刻な痛みをもたらすだろう。

(貼り付け終わり)
(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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