古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:トランプ関税

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領の目玉政策に高関税政策がある。輸入品に対して高関税をかけることで国内での生産を促すというものだ。保護主義的政策である。ただ、関税の影響を受けるのは国内の消費者たちもそうである。上乗せされた分は消費者が支払うことになる。海外の生産者たちは価格上昇による売り上げの減少によって被害を受けるが、消費者たちは関税分を負担することになる。アメリカの生産能力が下がっている現状では、輸入を大きく削減することはできず、結果として消費者の支払いが増えることになる。

 トランプ関税について、アメリカ国内では連邦最高裁判所が無効の判決を下した。これによってなくなるはずであるが、トランプ政権は何とかして高関税政策を続けたい。そのために法律の細かい条文を持ち出してきて何とかしようとしている。それが「強制労働(forced labor)」だ。下記論考の著者ファリード・ザカリアは次のように書いている。以下に引用する。

(引用貼り付けはじめ)

トランプ政権は、カンボジアや中国、ノルウェー、日本、オーストラリアに至るまで、あらゆる国が強制労働によって製造された製品を自国市場から排除できておらず、その不作為がアメリカの通商に悪影響を及ぼしていると主張した。この主張はあまりにも明白なこじつけであり、かつ対象範囲も広すぎる(スウェーデンがカンボジアと同列に扱われるのか?)ため、その意図は明らかだ。これはほぼ間違いなく、トランプに不利な最高裁判決の精神を骨抜きにするための法的口実をホワイトハウスが必要としたために考え出されたものだろう。

(引用貼り付け終わり)

 このような事実がない、もしくはあってもその割合が相当小さいのに、難癖をつける形で「お前たちは強制労働をやっているだろう、だから高い関税をかけて制裁してやる」という形で、高関税政策を続けようとしている。事実ではないことを政策の理由にするということは逸脱行為であるし、非常に危険だ。でっち上げで他国を制裁するという形で、実は一般国民に影響を与えるということは不誠実ということになる。不誠実な政策決定を実行しなければならない官僚たちも気の毒であり、こうした人々は被害者ということになる。高関税制度自体は政策として実行されてきた歴史があり、適切なタイミングで、十分な準備の下に実行されることは間違いではない。問題は思いつき、行き当たりばったりで実行されることである。アメリカの政策の失敗は世界に大きな影響を与えることになる。

(貼り付けはじめ)

トランプの新たな関税計画に潜む不誠実(The Dishonesty Inside Trump’s New Tariff Plan

-関税を存続させるために連邦機関は虚偽の内容を証明するよう命じられている。

ファリード・ザカリア筆

2026年7月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/07/31/trump-tariffs-global-trade-dishonest-lie-economics-manufacturing-aluminum/

donaldtrump20260727001

ミシガン州へ向かう大統領専用機「エアフォース・ワン」の機内で発言するドナルド・トランプ米大統領(7月27日)

アメリカ連邦最高裁判所がドナルド・トランプ大統領の関税への執着に終止符を打ったと考えているならばそれは間違いだ。連邦最高裁は2026年2月、世界中のほぼ全ての国からの輸入品に課税する大統領の広範な「解放の日(Liberation Day)」関税について、大統領にはそのような非常事態権限がないとして無効と判断した。この判決に対しトランプ大統領は、極めて異例かつ不明瞭で、場合によっては違法ともなり得る手段を法律の中に探し求め、極めて類似した関税を復活させようとしている。

まず導入されたのは、一時的な世界一律関税だった。その期限が切れると、政権は不公正な貿易慣行を理由に、60の経済圏(国・地域数にして80カ国以上)を対象として10〜12.5%の関税を課した。カナダに対しては、1930年のスムート・ホーリー関税法第338条という、それまで一度も発動されたことのない条項を持ち出した。

これら広範な新関税の根拠として、ここ数カ月の間に突如として持ち出されたのが「強制労働(forced labor)」の疑いだ。トランプ政権は、カンボジアや中国、ノルウェー、日本、オーストラリアに至るまで、あらゆる国が強制労働によって製造された製品を自国市場から排除できておらず、その不作為がアメリカの通商に悪影響を及ぼしていると主張した。この主張はあまりにも明白なこじつけであり、かつ対象範囲も広すぎる(スウェーデンがカンボジアと同列に扱われるのか?)ため、その意図は明らかだ。これはほぼ間違いなく、トランプに不利な最高裁判決の精神を骨抜きにするための法的口実をホワイトハウスが必要としたために考え出されたものだろう。

これは単なる政治的な印象操作の域を超えている。トランプ大統領はアメリカ政府に対し、事実ではないと知りながら、ある事柄を事実として正式に認定するよう命じているように見える。各機関は調査結果を公表し、法的な論拠を構築し、そして最高裁の判断を回避するという明白な目的のために捏造された虚偽に対して、アメリカという国家の権威を付与しなければならない状況になっている。組織の腐敗とはこのようにして進む。まず真実を曲げるよう求められ、次に嘘を事実だと証明するよう求められる。やがて嘘が日常化し、誰もそれを異常だと思わなくなる。それは、ジョージ・オーウェルが描いた世界へと続く道である。

ちなみに、「世界奴隷制指数(Global Slavery Index)」を作成している人権団体「ウォーク・フリー(Walk Free)」の推計によれば、アメリカは年間1696億ドル相当の強制労働によって製造された疑いのある製品を輸入しており、これはG20諸国の中で圧倒的に多い数字となっている。もちろん、だからといってアメリカの取り締まり体制が、トランプが標的としたあらゆる国のそれよりも劣っていると証明されてはいない。しかし、それによってトランプ政権の道徳的姿勢は、ただでさえ不条理なものが、さらに不条理なものに見えてくる。

新たなデータが次々と明らかになるにつれ、関税に反対する経済的な根拠は日増しに強まっている。ジョー・バイデン政権下で急増し、2024年9月には年率換算で約2500億ドルのピークに達した製造業関連の建設支出は、今年5月までに約1750億ドルへと減少した。トランプの再登板以来、製造業の雇用は約7万5000人分も減少している。工場生産高は増加したが、その伸びは先端製造業や人工知能(AI)分野に集中しており、その多くはトランプの大統領就任前に計画された投資を反映したもので、関税とはほとんど関係がない。

数カ月前に全米商工会議所が取り上げたグレッグ・フレーリーの例を見てみよう。彼は、アリゾナ州で民間航空機向けのアルミニウム部品を製造する中小企業「FALCO」の経営に携わっている。FALCOは、トランプが支援を公言している「アメリカ人労働者を雇用するアメリカの工場」という、まさにその典型的な企業だ。

FALCOのアルミニウム調達コストは72%上昇した。FALCOは単純にアメリカ産金属を購入する訳にはいかない。全米商工会議所によると、国内生産はアメリカの需要の約半分を賄うにとどまり、その生産量の多くは市場に流通していないからだ。そのため、FALCOはアルミニウムを輸入し続け、関税を支払い、その損失を自社で負担せざるを得ない状況だ。フレーリーによれば、FALCOは採用の凍結や事業拡大の延期を行い、自然減による人員の2割削減を容認し、手元資金を取り崩すとともに、顧客への請求に「関税追加料金」を上乗せするなどの対応を取っている。

その一方で、いわゆる「解放の日(Liberation Day)」の混乱後も、トランプは輸入アルミニウムへの関税を50%に引き上げ、最近ではアメリカに製錬所を建設する生産者に対して割引を提示した。しかし、世界最大級のアルミニウム生産者であるリオ・ティントは即座にこれを拒否した。つまり、この関税政策は「アメリカの製造業者のコスト増(higher costs for an American manufacturer)」「雇用の減少と投資の縮小(fewer jobs and less investment)」「誘致を狙った外国生産者による新規製錬所建設の不実現(no new smelter from the foreign producer it was meant to entice)」という、三重の悪結果をもたらしたのです。

その論理は本末転倒になっている。アルミニウム製錬は、アメリカのアルミニウム関連雇用のごく一部を占めるに過ぎない。雇用の大半は、リサイクル部門や、金属を航空機部品、自動車、缶、機械、建材などに加工する中流・下流工程の産業が生み出している。トランプ大統領は、より多くの雇用を支え、アルミニウムに依存するはるかに大きな産業基盤に課税することで、上流工程のほんの一部分を保護しようとしているのだ。

80年にわたり、アメリカは市場と貿易の開放に向けて世界を主導してきた。しかし、トランプはわずか2年足らずの間に、アメリカを事実上、最も保護主義的な主要先進国へと変貌させた。その結果もたらされたのは、製造業の復興ではない。物価の上昇、投資の低迷、製造業雇用の減少、そして失敗に終わった経済信条を擁護するために、虚偽を公式な政策とすることさえ厭わない政府の姿だ。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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 第二次ドナルド・トランプ政権の肝いり政策である高関税に対して、米連邦最高裁判所が差し止め判決を出した。9名の最高裁判事のうち、判決に賛成が6名、反対が3名となった。共和党政権時に指名された保守派の判事が多い構成で、差し止め判決が出たことは衝撃となった。トランプ大統領は判事たちを口汚く非難した。
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 高関税政策は保護貿易政策であり、国内の産業を守り、育てるためのものだ。たとえば、自国内で自動車産業を育成したいということであれば、外国から入ってくる自動車(輸入車)に高関税を掛け、国内では高価格となるようにし、自国の自動車産業が製造する自動車が自国内で多く購入され、利益が出て、それが設備投資や研究開発に回るようにするということである。アメリカは、第二次世界大戦直後において、世界を凌駕する製造業の国であった。しかし、今は見る影もない。トランプ大統領は造船業や自動車産業、更に鉄鋼、そして、エネルギー産業を復活させるということで高関税政策を実施した。高関税の値上げ分を負担するのは消費者である。価格が上昇した輸入品を買わなくなることで、貿易赤字を減らすという目論見もあった。さらに、ドル安誘導にもなるということであった。

しかし、このような政策は1年くらいでやっても効果はない。製造業の設備投資だけでも数年の計画になる。保護貿易は長期間の見通しと計画が必要である。実は、第一次トランプ政権の後の、民主党のジョー・バイデン政権も保護貿易政策であった。第二次トランプ政権ほど激しい政策ではなかったが、保護貿易路線であった。それが、今回、最高裁判所の差し止め判決が出てしまった。

トランプ政権は一時的に、150日間、世界的に15%の関税を課すことになった。日本は交渉して既に15%になっていたので関税の引き下げの恩恵を受けない。加えて、80兆円規模の投資ということになると、実質的にはマイナスである。ここで恩恵を受けるのは、アメリカが貿易赤字を抱えるとして、高い税率を課されていた国々である。中国やブラジルは15%への引き下げで恩恵を受ける。トランプ政権はこの差し止め判決で打撃を受ける。中国やインド、ブラジルからの輸入品が安くなるというメリットがある。ドル安傾向のために効果は薄れるだろうが、それでも大きい。
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 トランプ政権は今年11月の中間選挙での共和党の連邦議会過半数維持を目指している。しかし、これまでのところ、経済政策などで支持が高まっていない。そうであれば、国内の不満を逸らすために、外国の脅威を喧伝し、外国への攻撃を企図することは可能性として高い。具体的には、イランへの攻撃ということも考えられるが、イランの実力はヴェネズエラ以上であり、アメリカ軍の制服組の最高機関である統合参謀本部は、イラク攻撃はリスクが高いという報告書をトランプ大統領に提出し、一蹴されたという報道も出ている。ウクライナ戦争停戦の仲介も進まない状況で、外交や軍事に支持率上昇のきっかけを見出すのも難しい。そうなると、今回の最高裁判決はトランプ政権にとって大きな打撃ということになる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の貿易戦争は次はどうなるか(What’s Next for Trump’s Trade War

-米連邦最高裁の判決は、米大統領の関税戦略と貿易協定を混乱に陥れた。

キース・ジョンソン筆

2026年2月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/23/trump-tariffs-trade-deals-supreme-court/

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左から右へ:ワシントンのホワイトハウスで実施された記者会見に出席した米訟務長官D・ジョン・ザウアー、米大統領ドナルド・トランプ、米商務長官ハワード・ラトニック、米通商代表ジェイミーソン・グリア(2026年2月20日)

ドナルド・トランプ米大統領は、金曜日の最高裁判所の不利な判決、国内の政治的支持の欠如、そしてこれまでのところ貿易政策による経済効果の不在にもかかわらず、週末にかけて関税を二度引き上げた。

米連邦最高裁判所が、トランプ大統領が関税賦課に用いてきた主要な権限を無効とした後、トランプ政権は1974年の法律のかつて用いられたことのない条項を、一時的な措置としてアメリカ企業と消費者への高税率を維持するための措置として利用した。この措置は5カ月後に失効するが、政権は年内に、より強力で包括的な関税権限を整備するための時間を稼ぎたいと考えている。

新たな権限の下での関税の即時再導入は、いくつかの疑問を提起する。今や違法となった関税の脅威の下でトランプ政権と貿易協定を交渉してきた国々は、この事態をどう見ているのだろうか? トランプ政権の関税に関するプランBはそもそも合法なのだろうか? プランCDは合法なのだろうか? これら全ては、連邦議会が貿易政策に対する伝統的な統制を取り戻すきっかけとなるだろうか? なぜ逆効果をもたらす政策がこれほど熱心に推進され、国民の議論がほとんど行われていないのだろうか?

第一に、トランプ政権との貿易協定で妥協・修正(accommodation)に至った国々は、偽りの商品を買ってしまったのではないかと自問している。皮肉なことに、アメリカの同盟諸国(イギリスなど)は1週間前よりも高い輸出障壁に直面する一方で、名目上の経済ライヴァル諸国(中国など)はより低い障壁に直面している。

例えば、ヨーロッパ連合(EU)はアメリカと貿易戦争休戦(a trade truce)について交渉した(まだ批准していない)。この休戦協定では、アメリカのEU製品に対する関税は15%という高水準に据え置かれる一方、アメリカからの輸出に対するEUの関税は引き下げられる。しかし、それは過去の話だ。最近発表されたアメリカの関税率では、EUは実際には交渉時よりも高い関税率に直面する可能性がある。EUは「合意は合意(deal is a deal)」であり、「関税の引き上げはなし(no increases in tariffs)」と主張している。ヨーロッパ議会のベルント・ランゲ通商担当委員長は、関税に関するおとり商法(bait-and-switch)は当初の合意に違反する可能性があると示唆した。

イギリスは、自国の輸出品にわずか10%の関税を課すという甘い協定を結んだと思っていたが、現在では自国の製品に対する障壁がさらに高まっており、トランプ政権との自国の貿易協定の運命がどうなるのか明確になることを切望している。

ヴェトナム、マレーシア、日本、韓国を含むアジア諸国も、懲罰的関税の脅威(the threat of punitive levies)に晒されながら、トランプ政権との合意を急いだが、その関税は後に違法と判明し、今や自らの約束に疑問を呈している。

もう一つの大きな疑問は、トランプ政権が関税維持のために講じた代替措置、すなわち1974年通商法第122条だ。トランプ政権は最高裁判決を受け、直ちに全ての国に10%(後に15%に引き上げ)の関税を課すことを発表した。第122条は、5カ月間最大15%の関税を課すことを可能にしており、その後関税を継続するには議会の承認が必要だ。(政権が新たな大統領令で関税を再び延長できるかどうかは不明だ。)

しかし、真の疑問は、これらの代替関税が合法なのか、それとも先週金曜日に無効とされた関税のように違法なのかということだ。第122条に基づく関税は、国際収支危機への対処を明確に意図している。これは、アメリカがまだ金本位制(the gold standard)だった。1960年代と1970年代に苦闘していた問題だ。その後、アメリカは通貨を自由変動相場制に移行しており、理論的には国際収支危機は発生し得ないため、新たな関税も違法となった。国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストのジーナ・ゴピナスは、世界最大かつ最も流動性の高い経済が国際収支危機に直面しているとは考えていない。

しかし、誰もが同意している訳ではない。現在外交問題評議会に所属する、尊敬を集める元米財務省高官のブラッド・セッツァーは、アメリカの経常収支状況は1974年の法律で定められた条件を基本的に満たしていると主張した。

また注目すべきは、トランプ政権が最高裁判所への提出書類の中で、第122条に基づく関税は現在の状況には適用できないと主張し、だからこそカーター政権時代の法律を前例のない形で適用し、各国により高い関税を課さざるを得なかったと主張した点である。

新たな関税はほぼ確実に訴訟を呼ぶだろうが、近い将来には問題にはならず、あるいは審理されることさえないだろう。(裁判所が最終的に、広範な新たな関税概念を持つ行政府に敬意を払うならば問題は生じるだろう。)新たな関税は、連邦議会が更新を決定しない限り、7月下旬に失効する。

それまでに、トランプ政権はプランCDを準備したいと考えている。これらには、1974年通商法第301条の更なる活用が含まれる。これは、政権が「差別的(discriminatory)」行為を理由に中国に関税を課す際に繰り返し利用してきた、より明確な貿易救済措置である。第301条関税をめぐる法的疑問は少ないものの、実施には時間がかかる。米通商代表部(USTR)はその件で残業を続けている。

その他の可能性のある措置としては、1962年通商拡大法第232条に基づく「国家安全保障」関税(the “national security” tariffs)の更なる活用が挙げられる。米商務省は既に、木材や大型トラック部品といった分野の国家安全保障を守るために関税を利用する件について、12件の調査を進めている。別の選択肢としては、1930年スムート・ホーレー関税法(そう、あのスムート・ホーレー法だ)の新たな斬新な活用が挙げられ、これは更なる法的争点を招く可能性がある。

法的措置に関しては、直ちに行われる措置として、アメリカ政府が輸入業者から徴収した1300億ドルから1750億ドルの税金の還付が行われる予定だ。これは後に違法と判明した。昨年の法廷闘争中、アメリカ政府は、還付は容易かつ自動的に行われると述べていた。しかし、最高裁判所で敗訴した際には、還付は不可能であり、そうでなければ「企業福祉(corporate welfare 訳者註:政府が特定の企業や産業に対して行う補助金、減税、優遇措置)」に当たると警告した。既に数千社の企業が救済措置を申請している。高額な輸入品に高い代金を支払った消費者たちは、いずれにせよ還付を受けられないが、経験豊富な法律事務所の中には還付を受けられるところもある。

より大きな疑問は、最高裁判所のニール・ゴーサッチ判事が金曜日の判決に賛成する中で提起した疑問であるが、それは、連邦議会がほぼ1世紀を経て、アメリカの貿易・関税政策の立案者であり裁定者としての役割を取り戻すかどうかである。トランプ大統領の第二期目において、これまでのところ、貿易権限を行政府から奪還しようとする臆病で不運な試みはほんのわずかしかなかった。

さらに大きな疑問は、最高裁判所の非難と、トランプ政権が輸入品に課税するための未検証の方法を必死に模索していることが、過去半世紀以上にわたり前例のない繁栄の促進に貢献してきた貿易の流れを阻害することの有用性をめぐる、より広範な政治的議論を巻き起こすかどうかである。

トランプ大統領の関税は、アメリカの貿易赤字削減や製造業の再建という目標を達成していないものの、企業と消費者のコストを上昇させ、世界の他の経済圏に取引相手を見直すよう促すことには成功している。自由貿易への強い政治的支持があることを考えると、最高裁の重大判決と政権の慌ただしい対応は、行き詰まりを招いてきた政策を見直す機会となるかもしれない。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター(地経学とエネルギー担当)。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 石破茂首相の退陣報道が出た。今日は、ドナルド・トランプ大統領がSNSで日本と関税15%で合意、米や自動車の市場開放、日本の対米投資5500億ドル(約80兆円)で雇用創出という内容を発表した。この内容ならば、先日の参議院選挙の投開票日前にでも発表出来るではないかと思うが、石破政権、特に赤澤亮正経済再生担当大臣の粘り腰の交渉が実を結んだということになるだろう。合意内容に不満はあるだろうが、石破政権だからこそ手にできた成果でもある。これが対米隷属の旧清和会系の首相だったら、条件闘争はほぼできなかっただろう。このように、日本国民の利益のために、世界覇権国と交渉できる指導者こそが愛国者(patriot)であり、ナショナリスト(nationalist)だ。石破茂首相が敬愛する石橋湛山元首相はまさにそうだ。

 昨日、村上誠一郎総務大臣が記者会見で、「旧統一教会との関係など『自民党が数十年やってきた問題が今回、噴出したのではないか』と指摘し、『今回の結果が本当に石破さん個人の責任なのか』と述べ」たということだ。きわめて正常な見識である。村上大臣は、記者会見場で涙を浮かべていたということだが、これは、石破首相の退陣の決意を聞いていたのだろうと推察される。

 自民党保守本流の総理大臣がまた職を辞する。国民は刺激のない、面白みのない総理大臣を使い捨てる。つまらない、人気がない、問題を即座に解決することができないということを理由にして。何度も書いているが、「大国を治むるは小鮮(しょうせん)を烹(に)るがごとくす」(国家を治めるには小さい魚を煮るようにする)が保守本流の真骨頂だ。退屈で苦しい日常が続き、大きな変化はない。しかし、それこそが貴重なのだ。大きな変化は危険だ。漸進的に、少しずつこそが理想だ。理想を性急に手に入れようとして、人類はどれだけの失敗をしてきたか、そのことを知っているのが保守だ。最近の言葉で言えば、それは「ショック・ドクトリン」でもある。そして、退屈で平凡な日常を過ごす力を「教養」という。物事をたくさん知っているとか、試験の出来が良かった、学歴が高いということが、教養があるとか、知性があるということではない。日本は保守と教養が衰えた国家だ。そして、この衰退はこれからも続くだろう。石破茂の師でもあった田中角栄の「必要なのは学歴ではなく学問だよ。学歴は過去の栄光。学問は現在に生きている」「いくら死にたくなくても、人間は必ず灰になる。ところが人間でも植物でも、生物は劣性遺伝なんだ。働かない、勉強しない奴は親よりバカになる」という言葉を拳拳服膺したい。

 統一教会やキリストの幕屋というような危険な考えを持つカルトとつながっていた自民党保守傍流・旧清和会、故安倍晋三元首相勢力、参政党の蠢動によって、日本政治は危険な状況に追い込まれる。高市早苗代議士を総理総裁にすることは日本滅亡への第一歩だ。しかし、そのシナリオはかなり明確に見える。参政党、国民民主党が連立、もしくは閣外協力で高市早苗政権を誕生させ、憲法改悪、国内の不満を逸らすために、外国人排斥、対中強硬姿勢からの最悪の日中衝突が見えてしまう。アメリカの対中強硬派はそのように画策するだろう。そのことを防ぐ必要がある。

 失われた30年間のうちの9割は自民党が政権を保持していた。その9割の内の約32%、3分の1弱は安倍晋三元首相が政権を担ってきた。不思議なことに、安倍晋三元首相を敬愛している人々は、安倍政権時代にはそうは言わなかったのに、急に「失われた30年」という言葉を使い始めている。そのうちの多くを安倍晋三元首相が政権を担っていたのだが。年数にして約9年、安倍首相だったのだ。安倍首相に全く責任がないかのように、そして、現在の多くの問題が、石破茂首相が引き起こしたかのように非難をしている。敢えて言うならば、故安倍晋三元首相と彼が象徴となっている、祖父岸信介元首相から戦後政治の負の部分が問題の根本だ。

 私たちは賢くならねばならない。戦略的に動かねばならない。最悪のシナリオを避けるために、一般国民にできることは少ないかもしれない。しかし、何もできないということはないし、何もしないというのは座して死を待つのと同じだ。現在は情報化社会である(もう既に古臭い言葉になっている)。まずは自分が居住している選挙区の自民党議員を調べてみる。もしこの議員が保守傍流(旧安倍派・麻生派・二階派など)に参加し、石破降ろしをやっている政治家なら投票しない、保守本流系でまともな考えならば投票する。比例は自民党、維新・国民民主・参政のゆ党以外に投票する(公明党に投票することは考慮する)ということをしてみるというのは、既に多くの方々が行っているだろうが、どうだろうかと考える。最悪を避けるための戦略的投票について、SNSを通じての洗練が望まれるところだ。

 戦後80年が戦後100年、戦後200年と続き、日本が緩やかな衰退の道を進みながら、何とか平穏に暮らしていけるようにと願うばかりだ。石破首相退陣報道を受けて、書き散らしになってしまったが、雑感を書き残しておく。

(貼り付けはじめ)

●「石破首相、退陣へ 8月末までに表明 参院選総括踏まえ」

毎日新聞 7/23() 11:17配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/81483105d5094d1b717f392d166ec6dd932287fd

 石破茂首相は23日、自民党が8月にまとめる参院選の総括を踏まえ、同月までに退陣を表明する意向を固め、周辺に伝えた。首相は同日、自民党の麻生太郎最高顧問、菅義偉副総裁、岸田文雄前首相と会談し、自らの進退を巡り協議するとみられる。

 ただ、参院選大敗直後に続投の意向を表明した首相に対し、党内から退陣要求や批判の声が高まっているため、判断時期が前後する可能性もある。

 首相に対しては、各地の地方組織が退陣や党の体制刷新を求める他、中堅・若手議員からは党大会に次ぐ意思決定機関「両院議員総会」を開催し、総裁選の前倒しの議決を求める声も出ている。

 こうした状況を踏まえ、首相は麻生氏ら首相経験者3人と意見を交わし、理解を求めたい考えだ。現職首相が首相経験者と一堂に会するのは異例。政府関係者は「石破首相が3人に頭を下げるスタンスだ」と話す。

 党執行部は当初31日の開催を予定していた両院議員懇談会を29日にも前倒しし、参院選の総括を開始する。8月に総括をまとめた後、執行部として責任のあり方を判断する方向だ。木原誠二選対委員長は検証・総括を終えた段階で辞任する意向を示しており、党総裁である首相の進退も判断することになる。政権幹部は「総括が出れば、執行部は責任についてしっかりと判断しないといけない」と話した。

 首相が今月中に退陣した場合、来月に召集予定の臨時国会で首相指名選挙が行われるが、少数与党の状況では自民党総裁が首相になれる保証はない。首相指名を巡り野党と協議する時間を確保するため、退陣する場合は来月以降の表明を検討している。

 首相は23日、続投理由の一つに挙げていた日米関税交渉が合意に至ったことが進退に与える影響について、「合意の内容をよく精査をしなければ申し上げることはできない」と首相官邸で記者団に語った。

=====

●「最側近閣僚ら涙ながらに「石破総理個人の責任か」 「支えていきたい」村上総務大臣」

7/22() 17:01配信 テレビ朝日系(ANNAll Nippon NewsNetwork(ANN)

https://news.yahoo.co.jp/articles/99c41b7587e157e1e187c770859f9c6c9f98caa5?source=sns&dv=sp&mid=other&date=20250722&ctg=dom&bt=tw_up

参議院選挙での大敗を巡り石破総理大臣に近い村上総務大臣は涙ながらに「支えていく」などと述べました。

村上総務大臣

「確かに選挙の結果がこうなるとね、皆さんの不満は本当によく分かります。だけど今までの色んな負の遺産を背負いながらね、やっぱりここまでやってきたっていうことに対してはね、私は石破さんだからここまでやってこられたというふうに心底、思っているので、私はできる限り一生懸命、支えていきたいとそういうふうに考えています」

 村上大臣は旧統一教会との関係など「自民党が数十年やってきた問題が今回、噴出したのではないか」と指摘し、「今回の結果が本当に石破さん個人の責任なのか」と述べました。

岩屋外務大臣

「ここは言ってみれば進むも地獄、退くも地獄ということでございますけれども、国家国民のために前に進んでいかなければならないというふうに考えている」

 また、岩屋大臣はアメリカとの関税協議での合意に向けて「国内の政治基盤が極めて不安定に映ることは決して交渉にプラスに作用しない」「足元をみられないよう、今こそ一致結束が必要だ」と強調しました。

 村上大臣、岩屋大臣、そして中谷防衛大臣ら石破内閣を支える総理最側近のメンバーは参院選投開票の前夜に集まり、与党が過半数割れしても石破総理を支えることで一致し、続投を促していたということです。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

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 アメリカは日本に対して25%の高関税を課すことを決定したようだ。中国に対する100%を超える関税を課すということがあったので、案外高くないなと思ってしまうほどだが、日本経済に対しては影響が出る。アメリカの巨額の貿易赤字はアメリカの国内問題であり、日本だけが一方的に努力をしたり、我慢をしたり、犠牲になったりすするということはおかしい。自動車が日米間の重要な問題になっているようだが、それならば、アメリカの三大メーカーは日本で売れるような、日本人に選んでもらえるような自動車を作って輸出すべきだ。そもそも、戦後すぐからしばらくは日本国内でもアメリカ車が走っていたし、憧れの的だった。それは黒澤明監督のその頃の映画を見てみたら分かる。また、その頃の日本車は箱根の山を登り切れずにエンジンが焼けてしまって立往生をしている横をアメリカ車が颯爽と走り去っていったという逸話が残っている。高性能で価格が見合うなら、日本の消費者は買うだろう。それができないのはアメリカの怠慢だ。
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 また、日本車に高関税をかけても、アメリカの消費者は壊れにくく、長持ちし、中古として売却するにしても高くで買い取ってもらえる日本車を選ぶだろう。アメリカのインフレの状態を考えると、25%の関税はあまり影響が大きくないということも考えられる(これは机上の空論であるが)。

 輸入品に関税を掛けてお金を徴収するのは政府だが、その支払いをするのは国民だ。トランプ政権の高官勢はアメリカ国内の製造業の保護や復活を企図したものだが、そのための「補助金」をアメリカ国民が支払うということになる。これまで、私たちはアメリカが最大の市場であり、アメリカで商売をして利益を上げて、ドルを獲得するということが最上のシステムであると考えてきた。ドルを獲得しなければ国際決済はできないし、何より石油を獲得することができないということであった(ペトロダラー体制)。

 しかし、今や西側諸国の国力の減退、西側以外の国々の発展があり、アメリカ依存は得策ではない。トランプ関税について、私は一定の評価をしてきたが、それは、アメリカ国内の支持者たちからの視点としてであった。トランプ支持者たちは、貧しい白人の労働者たちであり、高関税によって彼らの仕事が一部でも戻ってくる、新しくできるということを願っている。トランプとしてはそれをかなえてやりたいということになる。実際に少しは良くなるだろう。しかし、大きく見れば、アメリカは既に厳しい状況であり、「手遅れ」である。先の大戦における、サイパン陥落後の日本のようなもので、もうどうしようもないという状況だ。何とかしたい、しかし、もう有効な方法は残っていない。既にアメリカの覇権国としての寿命は尽きつつある。

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トランプは貿易戦争に負けるだろう(Trump Will Lose the Trade War

-多面的な紛争は、それを誘発した国にとって決して良い結末を迎えたことがない。

ロバート・D・アトキンソン筆

2025年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/12/trump-us-trade-war-tariffs-china-canada-protectionism-isi/

第一次世界大戦の敗戦後、ドイツ軍最高司令部は重要な教訓を学んだ。それは、「決して二正面作戦を戦わない(Never fight a two-front war)」というものだ。だからこそドイツは1939年、ソ連とモロトフ・リッベントロップ協定(Molotov-Ribbentrop pact)を締結し、10年間は​​両国が互いに攻撃を仕掛けないことを約束した。しかし、アドルフ・ヒトラーは10まで数えることができず、ドイツは第二次世界大戦に突入した。これもまた二正面作戦であり、ドイツにとって悲惨な結末を迎えた。

貿易戦争にも同じことが言える。一正面戦争(a one-front war)なら問題ないかもしれないが、世界全体と戦うのは避けるべきだ。コメディアンのノーム・マクドナルドが2015年の「レイト・ショー」でジョークを飛ばしたように、「前世紀の初め、ドイツは戦争を決意した。そして、誰と戦ったか? 世界だ。・・・それから約30年が経ち、ドイツは再び戦争を決意した。そして再び、世界を敵に選んだ!」

現在、ドナルド・トランプ米大統領は貿易戦争の開始を決意した。そして、誰を攻撃対象に選んだのだろうか? それは世界だ。4月のいわゆる「解放記念日(Liberation Day)」に、トランプ大統領はペンギンのいる島国やアメリカとの貿易赤字を抱える同盟諸国も含む、ほとんどの国に関税を課した。

その結果、世界の他の国々はアメリカへの反感を募らせ、アメリカに代わる貿易体制の構築を模索し始めている。日本、韓国、中国、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟諸国は、ヨーロッパ連合(EU)と中国と同様、貿易協力に向けた協議を行っている。カナダもまた、トランプ大統領の関税措置を受け、EUとの貿易・投資関係強化に期待を寄せている。

それにもかかわらず、トランプはアメリカが依然としてトップであり、ボスであり、主導権を握っていると考えているようだ。しかし、そろそろ事実を直視すべき時だ。アメリカは彼の貿易戦争によって甚大な損失を被るだろう。

その理由は単純だ。特に先進産業においては、多くのアメリカ企業が生き残り、繁栄するために世界市場へのアクセスを必要としている。トランプが模範とする企業は、低中程度の技術水準で非上場のアメリカ企業であり、生産物のほぼ全てを国内で販売している。包丁メーカー、家具メーカー、ゴルフクラブメーカーなどを思い浮かべてみよう。(トランプは、自分やカントリークラブの仲間たちが、間もなく新しいアイアンセットに高額なお金を使うことになることを知っているのだろうか?)自分がこれらの企業を海外の競争から守れば、これらの企業は繁栄するだろうというのがトランプの考えだ。保護された巨大な市場があれば、繁栄しないはずがない。

話はそんなに早くは進まない。アメリカは、力強い先進産業なしには強大な力を持つことはできない。そして、これらの産業はトランプの新しい世界では深刻な苦戦を強いられるだろう。

課題には複数のベクトルがある。1つ目は、輸出向けに生産するアメリカ企業(ボーイング、メルク、ゼネラル・エレクトリックなど)は、輸入部品や材料に関税を支払うため、投入コストが大幅に増加することだ。

第二に、他国が相互関税を課すと、これらの企業の製品は価格的に海外市場から締め出されることになる。他国の企業は、マイクロン製のメモリチップではなく、韓国製のメモリチップを購入するだろう。ボーイングではなくエアバス製のジェット機、キャタピラーではなく、日立製の機械類を使うだろう。これはお分かりいただけるだろう。

さらに、トランプ大統領はアメリカ企業に対する露骨な差別への扉を開こうとしている。EUはトランプ大統領の攻撃的な姿勢を利用して、「ユーロスタック(EuroStack)」計画を正当化しようとしている。これは、コンピューターチップからサーヴァーに至るまで、ほぼ全てのアメリカ製ハイテク製品を最終的にヨーロッパ製の製品に置き換える計画である。そして、EUはついに軍事費増額計画を発表したが、それはヨーロッパ製の兵器を購入することによって行われることになる。

これは関連する課題につながる。トランプ大統領の貿易戦争下で、アメリカの輸出企業はますます海外市場から締め出されることになる一方で、競合他社はアメリカ抜きではあるものの、グローバルに統合された市場に参入することになるだろう。特に、他国が新たな貿易協定を通じてより統合された市場の構築に着手する中で、この傾向は顕著になるだろう。外国企業は革新と繁栄に必要な規模を獲得するだろう。一方、比較的小規模なアメリカ市場に依存しているアメリカの生産者たちは、徐々に縮小し、最終的には消滅する可能性もある。

トランプ氏の輸入代替産業化戦略(import substitution strategyISI)は、過去にも他国で試みられてきたが、失敗に終わった。国際開発コミュニティは1950年代から60年代にかけて、成長戦略として輸入代替工業化(Import substitution industrializationISI)を広く採用し、多くの発展途上国は1980年代以降もそれを維持した。失敗の理由の1つは、ブラジルのような比較的規模の大きい国でさえ、ますます複雑化する製品を効率的に生産できるだけの市場規模を持っていなかったことにある。国際通貨基金(International Monetary FundIMF)による最近の世界産業政策分析によると、繁栄したのは韓国や台湾のように輸出戦略(export strategies)を採用した国であり、ISIを推進した国ではないことが明らかになった。

アメリカ経済は、例えば韓国経済よりもはるかに大きいものの、今日の先進産業は、継続的な研究開発費を賄うために必要な収入を生み出すだけでも、アメリカが提供できる以上の大きな市場を必要としている。

しかし、それだけではない。世界貿易の覇権国としてのアメリカの役割が衰退するにつれ、中国が確実にその地位を奪うだろう。中国は過去15年間、あらゆる国際機関に浸透してきた。トランプ大統領が主導権を握り、世界保健機関(WHO)、パリ協定、国連人権理事会など多くの機関からアメリカが離脱したことで、勝利は中国のものとなった。

すでに多くの国々が北京を訪れ、習近平国家主席に媚びへつらって貿易協定を締結するのを目にしており、今後もこうした動きが続く可能性が高い。かつて南米で最大のアメリカからの経済支援の受取国であったブラジルとコロンビアは、すでにその道を歩んでいる。中国の先進産業は貿易戦争後、アメリカ市場へのアクセスを失うかもしれないが、世界の他の国々の市場へのアクセスは確保されるだろう。一方、アメリカ企業はアメリカ市場の残りかすを残されることになるだろう。

トランプ大統領が対外援助を削減した後、中国は他国の心を掴むためにアメリカよりもはるかに多くの資金を費やしている。風向きが東であることは、気象予報士でなくても分かる。習近平国家主席が最近ロシアの新聞に寄稿した記事にあるように、「一極主義、覇権主義、そして威圧的な行為が世界中で深刻な被害をもたらしている」。中国を自由貿易と連帯の守護者として見せることができるのは、トランプ大統領だけである。

明確にしておくと、トランプはフェアプレーをしない国々に(貿易)戦争を仕掛ける必要があった。最大の加害者は中国であり、2006年頃に世界的な貿易戦争を開始し、習近平国家主席の就任以降、これを激化させてきた。中国は他のいくつかの国と共に、体系的な重商主義的慣行(systemic mercantilist practices)に従事し、アメリカの製造業の空洞化を助長し、巨額の貿易赤字につながっている。

中国は大規模な知的財産窃盗を行った。外国企業を恫喝し、中国国内での生産と技術移転を強要した。そして、特定の産業で生産能力を獲得すると、市場を閉鎖した。

アメリカが世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)を通じて中国の不正行為に対処しようと試みた事例はごくわずかだ。その理由の1つは、WTOの構造上、そのような行為を効果的に訴追することがほぼ不可能なためだ。アメリカ企業もまた、中国政府の報復を恐れて、WTOへの協力をほとんど拒否した。EUも同様だ。

アメリカが提訴し勝訴した訴訟は比較的少数で、レアアース輸出割当や風力発電補助金といった、ほとんどがピュロス的な勝利(pyrrhic victories、訳者註:勝利ではあるものの、その代償が大きすぎて、実質的には敗北と変わらないような状況を指す)に終わった。これらはいずれも競争の実態を変えることはなかった。そして、ほとんどの場合、中国はアメリカの訴訟に対して反訴を起こした。トランプは正しかった。宣戦布告すべき時だった。しかし、マクドナルドが言うように、世界に対して一度に宣戦布告するべきではない。

それでは、希望はあるのだろうか? おそらくないだろう。しかし、トランプに関しては予測不可能だ。

トランプがなすべきだったのは、まずヴェトナム、インドネシア、インドといった、世界貿易ルールの最も深刻な違反国に焦点を絞ることだった。関税を課す前に、これらの国々に協議を促し、アメリカの主要な要求事項を列挙し、90日以内に是正するよう求める。そして、相手が応じない場合のみ関税を課すのだ。そして、その際には、先進産業におけるアメリカの競争力にとって最も重要な貿易障壁や阻害要因に焦点を当てるべきだった。

これらの国々がエビの輸出を拡大したいなら誰が気にするだろうか? アメリカ産ウイスキーの市場を閉鎖したいなら争う価値はない。しかし、アメリカのハイテク企業を攻撃し、先進的なアメリカ製品・サービスへのアクセスを制限することなら、徹底的に抗戦する(going to the mattresses over)価値がある。

次に、ヨーロッパに軸足を移し、その後、日本、韓国、台湾に軸足を移す。お分かりだろう。しかし、世界全体と同時に戦争を仕掛けるべきではない。それがもたらすのは、世界的な反米同盟(a worldwide anti-American alliance)の形成だけだ。

中国は貿易戦争を仕掛ける際、全ての国を一度に攻撃しないだけの分別を持っている。北京は特定の国に貿易攻撃を仕掛け、しばらく様子を見て外国の反応を伺う。そして、怒りが収まると、また別の攻撃を仕掛ける。そして、沸騰した湯の中の蛙のように、他の国々は中国の攻撃をほとんどすすり泣くことなく受け止めてきた。

中国は依然として、アメリカ、そして西側諸国の先端技術産業を破壊する意志と手段を持つ唯一の国である。トランプの貿易戦争は、北京の勝利を阻止することを目的として設計されるべきである。何よりも、それはアメリカの同盟諸国と協力することを意味する。しかし、アメリカに対する敵意の高まりと国力の低下を目の当たりにすると、多くの国は北京との取引をより容易にしている。

同盟諸国がいなければ、いかなる戦争も敗北に終わる。トランプが同盟諸国との交渉に意欲を示さない限り――5月にカナダ首相マーク・カーニーと会談した際には、彼はこれを拒否した――アメリカは第一次世界大戦以前と同様に、世界的に孤立したままになるだろう。しかし、当時と現在との大きな違いは、アメリカ企業が生き残るためには技術面で世界的規模に到達する必要があり、中国がアメリカを凌駕する競争力を持つようになったことである。

アメリカがドイツよりもうまく、多面的な紛争から脱却することを願うばかりである。

※ロバート・D・アトキンソン:情報技術イノベーション財団(Information Technology and Innovation FoundationITIF)の創設者兼理事長、ジョージタウン大学エドマンド・A・ウォルシュ外交大学院の非常勤教授。クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマ、トランプ、バイデン政権で顧問役を務め、『技術革新経済学:グローバル優位をめぐる競争(Innovation Economics: The Race for Global Advantage)』を含む4冊の著書がある。Xアカウント:@RobAtkinsonITIF
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第2次ドナルド・トランプ政権100日では様々なことが起きたが、今はひと段落で、トランプ関税については、90日間の猶予の間に、各国がトランプ詣でをして、二国間で個別交渉を行い、妥協や譲歩を引き出すという動きになっている。日本も赤澤亮正経済再生担当大臣が何度も訪米し、トランプ大統領自身とも会談を持っている。日本としては自動車に関する関税や米を含む農産物について、妥協を引き出したいところだ。
 トランプ大統領が高関税を正式に打ち出したのは2025年4月2日で、「解放記念日(Liberation Day)」関税と呼んだが、これによって、株式が大幅下落し、米国債の金利が上昇したために、後退を余儀なくされた。スコット・ベセント財務長官が主導権を握る形で、状況が悪化することを防いだ。

私が奇妙だと思っているのは、高関税を発表すれば、株価が下落し、米国債の金利が上昇するくらいのことは政権が予測していたのではないか、それなのに慌てた様子で妥協を行ったということだ。ここからは私の想像で話を進めていきたい。
 現在の株式の高騰は現実の経済全体を反映したものではない。中央銀行が供給した資金が株式や不動産投資に回っているだけのことだ。コロナ禍もあり、中央銀行は市場に多くの資金を供給した。それが社会の隅々にまで行き渡れば良かったが、無利子の資金は富裕層や大企業に集中して回り、彼らを更に肥え太らすことになった。トランプ政権を誕生させたのは、貧乏な白人労働者たちを中心とする一般国民である。トランプ政権は富裕層や大企業の利益最優先ではない。株価の下落や米国債の金利上昇はウォール街や投資マネーにとっては痛手であるが、彼らのブクブクに膨れた、あぶく銭の資産を少し減らすことは重要なことだ。トランプ政権はそこから「撤退」して妥協する形になったが、いつでもこのようなことができるんだぞということを示した。これは大きい。富裕層や大企業はトランプの一挙一投足に気を遣わねばならなくなった。

 共和党は金持ちの党であったが、トランプの出現によって、そのウイングは広がっている。そして、トランプ政権は大きな矛盾を抱えることになった。貧乏人のための政策を行いながら同時に金持ちたちの利益もある程度は守らねばならない。この矛盾をどう解決するのか、それともそもそもそんなことはできないのか、何か共通の敵を見つけるのか、これから注目していかねばならない。
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ドナルド・トランプ大統領が就任100日で経済を変えた5つの方法(5 ways Trump has changed the economy in his first 100 days

トバイアス・バーンズ筆

2025年4月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/trumps-first-100-days/5273522-5-ways-trump-has-changed-the-economy-in-his-first-100-days/

ドナルド・トランプ大統領の就任から100日間の経済政策は、これまでとは全く異なるものだった。

トランプ大統領の関税措置は、世界の貿易関係を根本から覆し、企業と投資家を政権の一挙手一投足に合わせて右往左往させた。

トランプ大統領は複数の規制機関に猛攻撃を仕掛け、広範囲にわたる政府職員の人員削減を命じた。これは、テクノロジー業界の支持者たちが唱える「迅速に行動し、物事を打破する(move fast and break things)」というスローガンを、かつてないほど極端に押し進めたと言えるだろう。こうした命令と方針転換の嵐のようなリズムに、アメリカの経済同盟諸国も敵対諸国も、トランプ大統領の政策がどこに向かうのか見極めようと苦慮している。

景気後退から戦争に至るまで、経済危機の際の伝統的な安全資産であるアメリカの金融資産でさえ、弱体化の兆候を見せている。

ここで、トランプ大統領の政策が就任後100日間に経済に与えた影響を見てみよう。

(1)1世紀ぶりの高関税率(Century-high tariff rates

国際通貨基金(International Monetary FundIMF)の分析によると、アメリカの総関税率は25%を超え、1世紀以上ぶりの高水準となっている。

総関税率の主な構成要素は、中国に対する145%の関税、10%の一般関税、そして木材、自動車、金属などの製品に対する特定関税である。

金融当局は輸入税についてスタグフレーション的な見通し(a stagflationary picture)を示しており、IMFから連邦準備制度理事会(FRB)に至るまで、様々な機関が、その結果として物価上昇と経済成長率の低下を予想している。

IMFのエコノミストたちは4月の経済見通しで、「(関税水準は)それ自体が経済成長への大きなマイナスショックだ」と述べている。

トランプ大統領は関税を断続的に導入しており、発令後、すぐに撤回するといった行動を何度も繰り返してきた。

撤回された関税には、カナダとメキシコへの25%の関税、中国からの800ドル未満の貨物に対するデミミニス免除(the de minimis exemption)の終了、そして数十カ国のアメリカの貿易相手初校に対する様々な税率の国別関税の一時停止などが含まれる。商務省は火曜日、5月3日に予定されていた自動車部品への関税を縮小した。

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の国際ビジネス部門長ビル・ラインシュは本誌の取材に対して次のように語った。「これは(貿易相手国を)不均衡な状態に維持することを意図している。これにより、アメリカは最大限の立場を取り、その後、そこから後退することが可能になる。これはトランプのいつものやり方だ」。

ウォール街の投資家たちは関税を激しく非難している。億万長者のヘッジファンドマネージャーであるビル・アックマンは、トランプの特定国への関税は「誤った計算(bad math)」に基づいており、「世界経済を落ち込ませている(taking the global economy down)」と述べた後、最終的に関税を緩和したことを称賛した。

主要アメリカ株で構成されるダウ工業株30種平均は、トランプの就任以来約8.4%S&P500は約8.7%下落している。ハイテク株中心のナスダック総合指数は12%以上も下落している。

(2)貿易の再構築と国際関係の揺さぶり(Resetting trade, shaking up international relations

トランプ大統領の関税は、アメリカの経済的なライヴァル諸国と同盟諸国の両方を標的にしており、中国のような敵対国との緊張を高める一方で、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ連合(European UnionEU)といった長年のパートナー国との新たな緊張を生み出している。

中国は貿易戦争に「最後まで(to the end)」戦うと明確に表明し、先手を打つかどうかはアメリカ次第だと述べている。

中国外務省の郭嘉昆(Guo Jiakun)報道官は火曜日に、「この関税戦争(tariff war)はアメリカが始めたものだ。もしアメリカが本当に交渉による解決を望むのであれば、脅迫や圧力を止め、中国との対話を追求するべきだ」と述べた。

専門家たちは、トランプ大統領と会談する代表団は、トランプ大統領が貿易戦争で実際に何を求めているのかを理解していないと指摘する。

ラインシュは本誌に対して次のように語った。「今朝と先週、外国の関係者といくつか話し合った。「彼らは『彼はXについてもYについても言及しなかった。私たちは彼が話を持ち出すと予想していたのに。一体何が起こっているんだ?』と言っている」。

生産とサプライチェインの専門家たちは、戦後のアメリカの貿易政策の集大成である世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)に体現された一元的な貿易協定とは異なる、多極的な世界貿易システムの新たな基盤が築かれつつあると見ている。

供給管理研究所(Institute for Supply ManagementISM)のCEOトム・デリーは本誌とのインタヴューで次のように語った。「私が話を聞いたほとんどの人は、二極化した貿易体制に向かっていると考えている。WTO中心の、単一の合意に基づく貿易ルールではなく、西側中心、おそらくアメリカ主導の貿易圏(a Western-centered, maybe U.S.-led trade bloc)と、東側中心、中国主導の貿易圏(an Eastern-centered, China-led trade bloc)だ」。

(3)アメリカ金融資産からの逃避(A flight from U.S. financial assets

トランプ大統領が世界経済に大きな変化をもたらしていることを示す最も確かな兆候は、おそらく、米ドルが他の通貨に対して同時に下落し、アメリカ国債が市場で売られたことだ。

通常、投資家たちは経済の不確実性が高まるとアメリカ資産に逃げ込むが、この傾向は2001年9月11日の同時多発テロから世界大不況に至るまで、様々なショックにも耐えてきた。

しかし、指標となる米ドル指数はトランプ大統領の就任以来一貫して下落しており、4月2日と4月9日の追加関税発表直後には顕著な下落を記録した。

トランプ大統領が4月2日の「解放記念日(Liberation Day)」に関税を発表した直後、債券も売られ、トランプ政権は発効当日に特定国向け関税の90日間の一時停止を宣言した。

ユーロが対ドルで上昇するにつれて、アメリカ国債とドイツ国債の利回り格差は拡大した。これは異例のパターンであり、エコノミストたちはすぐにこの動きに気づいた。

タンパ大学の経済学者ヴィヴェカナンド・ジャヤクマールは今週の論説記事で、「2年物アメリカ国債と2年物ドイツ国債の利回り格差が200ベーシスポイントを超えたにもかかわらず、ユーロは対ドルで急上昇した。これは通常の市場動向の転換を示し、アメリカからヨーロッパへの資本逃避を示唆している」と述べている。

(4)移民パターンと労働市場(Migration patterns and the labor market

トランプ大統領はまた、国連が「世界で最も危険な移民の地上陸路(deadliest migration land route)」と表現するアメリカ南部国境沿いの取り締まりを強化し、移民の流入を阻止しようと努めてきた。

アメリカ税関・国境警備局によると、2024年度のこの時点で国境での接触件数は130万件、2023年度には120万件に達していた。今年は38万1000件に上る。

近年、移民はアメリカの労働力の動向において重要な要因となっており、成長予測や物価水準にも影響を与えている。

連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は昨年、多くの人が景気後退を予想していたにもかかわらず、2024年の経済が予想を大幅に上回ったのは、移民に関する測定値の違いが原因かもしれないと指摘した。

パウエル議長は昨年4月、移民問題に言及し、「これはまさに、私たちが自問自答してきたことの真相を説明している。つまり、外部のエコノミストほぼ全員が景気後退を予測していた年に、なぜ経済が3%以上成長できたのかということだ」と述べた。

移民の減少は、長期的には労働力不足と経済成長の鈍化を意味する可能性がある。保守派は、アメリカの労働者の利益のためには、こうしたコストを支払う価値があると主張する。

ヘリテージ財団予算センター所長リチャード・スターンは、本誌に対し、「企業に不法労働者、つまり労働法を破っても税金を全額負担しなくて済む労働者を雇用する能力を与えれば、それは事実上、不法労働者を雇用するための政府補助金となってしまう」と語った。

ヘリテージ財団が重要な役割を担って策定した「プロジェクト2025」で明記された政権の取り組みについて問われたスターンは「順調に進んでいる(on track)」と述べた。

スターンは「政権最初の100日間を振り返ると、政権が容易に実行可能なプロジェクトの部分を見ると、その主要部分の多くで間違いなく順調に進んでいる」と述べた。

(5)減税に先立ちIRS(内国歳入庁)を解体(Gutting the IRS ahead of tax cuts

トランプ大統領と、イーロン・マスクが率いるコスト削減委員会(the cost-cutting panel)である政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)は、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSID)、消費者金融保護局(Consumer Financial Protection BureauCFPB)、教育省(Department of Education)など、連邦政府諸機関の閉鎖をしてきた。

保守派の中には、DOGEの取り組みを政治的な芝居だと一蹴している。財政的に保守的なマンハッタン研究所の上級研究員ジェシカ・リードルはロイター通信に対し、「DOGEは真剣な取り組みではない(DOGE is not a serious exercise)」と述べ、最終的には節約効果を上回る費用がかかると予測している。

しかし、DOGEは、1万2000人を超えるIRS職員全体の4分の1から40%を人員削減する可能性がある。これは、政府の歳入とその財源に深刻な影響を与える可能性がある。

これは特に、IRSがバイデン政権下で開始し、トランプ政権によって完全に撤回された大規模な業務改革を考慮すると、なおさらだ。

アーバン・ブルッキングス税制政策センターの上級研究員ハワード・グレックマンは本誌に対して次のように語った。「彼らは何千人もの人を解雇し、さらに何千人もの人が辞めた。所得税制度に与えるダメージは計り知れない。文字通り、私たちは、彼らが何をしているのか分からないため、ダメージを測定することができない」。

トランプが1月に再就任して以来、IRS(内国歳入庁)には5人の長官が就任しており、グレックマンはその交代率を「驚異的(remarkable)」と評した。

IRSの空洞化は、共和党議員たちが2017年の減税延長と、トランプが選挙運動中に約束した新たな未検証の減税策の追加を進めている中で起こっている。

最終的な対策は、数兆ドル規模の財政赤字を増加させる可能性があり、公式会計では無視される見込みの4.6兆ドルの財政赤字拡大も含まれる。

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 第2次ドナルド・トランプ政権がトランプ関税を発表して1カ月ほど経過している。大きな混乱の後、政権側が譲歩したことで、事態は安定している。しかし、高関税政策によって、短期間でアメリカの影響力は大きく損なわれた。株価、債券、ドルの価値が同時に下落し、アメリカの信頼性が損なわれることになった。そして、西側以外の国々をけん引する中国に対する信頼が高まることになった。

 このことでトランプを批判する声が高まっている。確かにその通りだ。しかし、重要なことは、トランプはアメリカ国民によって選ばれた大統領であり、トランプは自身の公約である、アメリカ国内問題解決(「アメリカ・ファースト))のために政策を実行している。これまで彼が進めてきた政策は、彼が大統領選挙期間中に繰り返し訴えてきたことだ。何も突然思いついてやっている訳ではない。政府効率化省による政府予算の削減や職員の削減、高関税はアメリカの抱える双子の赤字である財政赤字と貿易赤字を減らすための方策である。そして、これらを実行しようとして、経済面での不安が出てきた。株式や債券、ドルが下落するということが起きた。何かを抑えようとして、別の弱い場所に影響が出る。これは、アメリカが抱える問題の複雑さと根深さを示している。単純な処方箋で解決することはできない。そして、これらの方策で、アメリカの衰退を押しとどめることはできないということを示している。

 アメリカの衰退は既に軌道に乗ってしまっている。トランプが少々何かをやったところで止まらない。そして、これは誰が何をやっても同じである。トランプではない他の人物が大統領になっていても(昨年の大統領選挙で言えばカマラ・ハリス)、何かをうまくやれたとは考えにくい。トランプが混乱を引き起こしたという見方は表層的である。誰がやっても混乱は起きていた。そこまでの状況になっていることを理解すべきだ。

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ドナルド・トランプ大統領就任100日で「ストロングマンの統治」のこれまでにない弱点が露呈されている(Trump’s First 100 Days Reveal a ‘Strongman’s’ Unprecedented Weakness

-これほど急速に世界的な力を放棄した米大統領はかつてない。

マイケル・ハーシュ筆

2025年4月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/28/trump-first-100-days-strongman-weakness-russia-china-trade/

ドナルド・トランプ米大統領は、アメリカ政府を動揺させ、国内の政敵を威嚇するという自身の強力な政策について、「誰もこのようなことは見たことがない(Nobody has ever seen anything like it)」と頻繁に述べている。

彼の言うことは正しいかもしれない。しかし、世界の舞台において、強権を標榜する人物がこれほど前例のない弱さを見せたのは誰も見たことがないのも事実だ。しかも、わずか100日間で露呈した。

国家安全保障であれ経済であれ、トランプは短期間のうちに、特にヨーロッパとインド太平洋地域におけるアメリカの圧倒的な力と影響力を一方的に放棄する方向に大きく前進した。おそらく、このことを最もよく示すのは、株価、債券、ドルの価値が同時に下落していることだろう。これは滅多に起こらない現象であり、投資がアメリカから幅広い分野で撤退していることを示唆している。

これはまさに、トランプが就任演説で約束した「アメリカの新たな黄金時代(golden age of America)」、つまり投資が流入し「我が国は再び繁栄し、世界中で尊敬されるようになる(our country will flourish and be respected again all over the world)」という公約とは正反対だ。

ところが、トランプの一連の政策のせいで、投資家の目に映るアメリカは、究極の安全な避難所(the ultimate safe haven)から、法の支配が疑わしい予測不可能な荒野(an unpredictable wilderness where the rule of law is in doubt)へと、徐々に格下げされつつある。

JPモルガンのアナリストは、「これは米ドルの没落なのか?(Is this the downfall of the U.S. dollar?)」と題した最近の分析で、「アメリカの政策に関する不確実性の急激な高まり(A sharp rise in U.S. policy uncertainty)は、アメリカ資産に対する投資家の信頼を揺るがし、世界の主要な準備通貨としての米ドルの役割をめぐる議論さえも巻き起こしている」と述べている。

シタデル・ヘッジファンドの最高経営責任者ケン・グリフィンなどトランプ大統領のビジネス界の支持者の中にも、トランプ大統領の「無意味な(nonsensical)」貿易戦争によってアメリカの「ブランド」に永久的なダメージが与えられると警告する人たちもいる。グリフィンは「与えられたダメージを修復するには一生涯かかるかもしれない」と述べている。

科学と教育への投資を削減し、移民を無差別に国外追放し、主要大学に自身の右翼的なポリティカル・コレクトネスを浸透させるよう脅迫することで、トランプはかつて想像もできなかったような頭脳流出(brain drain)を加速させている。トランプが復興を訴えている製造業の能力そのものを衰退させる恐れがあるのは言うまでもない。

アメリカは、優秀な人材を自国に引き寄せることで、特にソ連やナチス・ドイツといった敵国を幾度となく打ち負かしてきた国である。しかも、トランプが国内の法の支配に与えた影響は別として、誰もが適正手続きなしに逮捕・追放され、国内テロリストが大量に恩赦を受け、有罪判決を受けた犯罪者が政府の高官職(通商担当補佐官ピーター・ナヴァロや駐フランス大使に指名されたチャールズ・クシュナーなど)に就くような土地に、頭脳明晰で才能豊かな外国人が来る可能性は低くなる。

これら全ては、トランプが脅迫して沈黙させた政党、共和党の沈黙した支持と、自分たちの立場が理解できない野党・民主党の支離滅裂な抵抗によって起こっている。裁判所はトランプの政策の多くに反対の声を上げており、その声はしばしば説得力に富んでいるが、トランプはほとんど耳を傾けていない。

大統領にとって唯一重要なのは各市場であり、今やそれが彼の進む方向を変える唯一の希望かもしれない。

米国の二大ライヴァルであるロシアと中国は、超大国としての自滅を目指すワシントンの試みを大いに喜んでいる。

かつてトランプが「1日で解決する」と豪語したロシアによるウクライナ侵攻問題において、トランプはロシアのウラジーミル・プーティン大統領への徹底的な宥和政策を追求してきた。奇妙なことに、トランプは、アメリカの13分の1の経済規模を持つプーティン大統領への媚びへつらう態度と、これまでワシントンによるロシア抑制を支援してきたヨーロッパの同盟諸国への拒絶を結びつけている。

こうして、トランプ米大統領は、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領についてよく言うように、交渉のテーブルで「使えるカードがない(has no cards to play)」のはトランプ自身である可能性を高めている。

トランプ支持者たちは、プーティン大統領への熱心な働きかけとロシアとの正常化に向けた努力は、ヘンリー・キッシンジャーのように、モスクワを中国との同盟から引き離す巧妙なリアリズムに等しいと述べている。トランプ政権のスタッフは、いわゆるリアリストや「抑制派(restrainers)」で占められており、彼らは大国主義的な現実政治(great-power realpolitik)への回帰を訴え、トランプの前任のジョー・バイデン米大統領がアメリカの対ロシア戦略政策を事実上ゼレンスキー大統領に委任することでモスクワとの交渉から自らを閉ざしたことを批判している。

この批判には一理ある。しかし、ロシアからいかなる譲歩も引き出さずに、プーティン大統領のクリミア半島をはじめとするウクライナ領土に対する主張を先制的に承認したことで、トランプは紛れもなく弱腰に見える。また、将来の軍事的領土奪取を事実上正当化し、国際法に基づく戦後領土規範の残滓を破壊しようとしている。こうした将来の侵略には、中国による台湾の併合、トランプ自身のグリーンランドへの野望の実現も含まれる可能性がある。

ここ数日、トランプ大統領は、ロシアの指導者プーティンが自分を騙そうとしている可能性があると認め、プーティン大統領に対し、ウクライナの都市への残虐な攻撃をやめるよう懇願するに至った。

トランプ大統領は4月26日のトゥルース・ソーシャルへの投稿で次のように述べた。「プーティン大統領がここ数日、民間地域や都市、町にミサイルを撃ち込んだ理由は何もなかった。もしかしたら、彼は戦争を止めたいのではなく、ただ私を誘導しているだけなのかもしれない。『銀行制裁(Banking Sanctions)』や『二次的な制裁(Secondary Sanctions)』といった別の方法で対処する必要があるのではないか?」

それでは、中国はどうだろうか? 北京は、トランプの政策を公然と嘲笑している。トランプの政策は、大言壮語の後、混乱と撤退に終わったに過ぎない。トランプ大統領が中国に対して課した最低145%の関税(棚が空っぽになり価格が急騰すると警告したアメリカの大手小売業者との会談も含む)に市場が衝撃と恐怖を示したことを受け、トランプ大統領は方針を転換し、現在中国と関税を「実質的に(substantially)」削減する(pare back)交渉を行っていると発表した。

しかし、北京はそのような協議は行われていないと屈辱的に否定した。中国はさらに、アメリカへの多くのレアアース金属の輸出を禁止するという強硬手段に出たこともあって、ドローンやバッテリー駆動車の製造にこれらの鉱物を依存する防衛関連企業を含む、それらなしでは生産ラインを稼働できない主要産業にパニックをもたらした。

ダートマス大学の国際関係論の専門家、ウィリアム・ウォールフォースは、これら全てはトランプとそのチームが「内臓を抜き取り奪取する(gut and grab)」戦略を追求しようとする、不器用な試みだと指摘した。つまり、第二次世界大戦以降支配されてきたアメリカ主導の世界秩序を骨抜きにし、トランプにとっての英雄であるウィリアム・マッキンリーのような19世紀の大統領たちのやり方に倣い、領土のパイのより大きな部分を自ら奪い取ろうとする戦略だ。

ウォールフォースによると、問題はトランプ支持者たちが何をしているのか分かっていないように見えることだ。

ウォールフォースは電子メールで「ロシアへの先制的な譲歩(preemptive concessions)、つまりロシアにはアメを与え、ウクライナとヨーロッパにはムチを与えるというアプローチは、交渉戦略として間違っている。トランプ大統領は中国との関税をめぐるチキンレースで、まさにその隙を突いたようだ」と述べている。

そして今、これまで同盟国がほとんどなかった中国は、自らを世界システムの安定した新たな中心として見せかけることで、この好機を捉えようとしている。習近平国家主席が3月下旬、アメリカ、日本、韓国のビジネスリーダーたちに語ったように、中国は「理想的で安全かつ有望な投資先()an ideal, safe and promising investment」の選択肢だ。これは、歴代米大統領(最初の任期のトランプ大統領を含む)が数十年にわたり、中国に対し、開放と不公正な貿易慣行の撤廃を迫ってきた後のことだ。

トランプが大統領に就任するまで、中国とロシアは事実上、同盟諸国を切望する2国でした。モスクワは、取るに足らないベラルーシからのみ、揺るぎない忠誠を得ていた。そして近年では、孤立し、厳しい制裁を受けているイランと北朝鮮という2つの国と同盟を結んでいる。中国もまた、一帯一路構想(Belt and Road Initiative)やその他の債務負担(debt encumbrances)によって小国を従わせようと努めながらも、主に北朝鮮との結びつきを誇っていた。

その後、モスクワと北京は互いに協力関係を築き、西側諸国へのカウンターウェイト(釣り合い)として、主要新興国5カ国(当初はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)からなるBRICSフォーラムの拡大に向けて、散発的な努力を重ねてきた。しかし、参加に意欲的な国はほとんどいない。新たにBRICSに加盟・招待された国の中には、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプトなどがあり、依然としてアメリカの緊密な安全保障パートナー諸国がいる。同様のアルゼンチンは後に不参加を決定した。

一方、トランプが登場するまで、アメリカは世界中に50カ国以上の同盟国と戦略的パートナーを有しており、その中には世界で最も裕福な国のほとんどが含まれている。しかし今、ドイツから韓国に至るまでの主要同盟諸国は、トランプが絶えず撤退をちらつかせ、帝国への貢物要求(demands for imperial tribute)を突きつける中、ワシントンとは別に独自の防衛力整備を進めようとしている。これはアメリカの防衛産業に大きな打撃を与え、核拡散(nuclear proliferation)の新たな危険な時代を脅かすことになる。

トランプの常套句は、同盟諸国は「私たちを騙す(rip off us)」ことしかしていないというものだ。そして、トランプの功績として、NATO同盟諸国と台湾に対し、自国の防衛費増額案を提出するよう圧力をかけている。しかし、2013年のランド研究所の報告書によれば、日本(75%)、クウェート(58%)、カタール(61%)、サウジアラビア(65%)などの受入国が負担するアメリカ軍基地の費用の割合を考慮すると、ワシントンはインド太平洋地域と中東で大部分においてかなり良い取引をしている。

より大きな問題は、こうした政策がアメリカの世界的なリーダーシップと経済的優位性を維持していることだ。

戦後世界秩序(postwar global order)の専門家であるプリンストン大学のジョン・アイケンベリーは、トランプ政権の最初の任期中、大統領がアメリカ主導の国際システムへの最初の断続的な攻撃を開始した際に私に次のように語った。「トランプは、この秩序を不動産のように捉えているのかもしれない。アメリカの秩序は、70年にわたる投資を体現し、莫大な利益を生み出してきた。この秩序を破壊すること、つまり貿易体制、同盟、制度、そして信頼を弱体化させることは、最も収益性の高いホテルの資産を取り壊すようなものだ」。

実際、トランプの行動に歴史的前例を見出すのは難しいとアイケンベリーは述べている。アイケンベリーは近日発表予定の論文で次のように述べている。「なぜアメリカは自らの覇権秩序(hegemonic order)を破壊しようとするのか? なぜ世界システムにおいて最強の国家が、自らを弱体化させ、貧しく、不安定にしようと積極的に行動するのか?。大国が興亡を繰り返すことは周知の事実であり、世界の時代は終わり、新たな時代が始まる。しかし、国際秩序がこのように自らの創造主によって破壊されるのを見たことがあるだろうか? 歴史を振り返ると、大国は自殺ではなく、殺人によって終焉、あるいは消滅する傾向にあった」。

これまで止めようのない勢いを見せていたアメリカ経済に関して言えば、トランプはあまりにも自己破壊的な一連の政策を採用しており、これもまたトランプのお決まりの表現を使うならば、誰もかつて経験したことのない事態となっている。これらの政策が相まって、驚くほど短期間のうちにアメリカ経済の力を弱体化させたのだ。

実のところ、わずか100日だ。4月初旬に発表されたCNBCの調査によると、CEOの過半数(69%)が景気後退(recession)を予想している。

景気後退のスパイラルは、トランプ大統領によるアメリカ支援プログラムの放棄と同盟諸国への非難から始まった。しかし、4月初旬、トランプ大統領が関税と貿易戦争という誤った概念を明らかにしたことで、この傾向は急速に勢いを増した。

一部の国に対する厳しい貿易圧力によって、バイデン前政権が中国、東南アジア、その他の地域に逃がしてしまったアメリカの製造業の一部が回復する可能性があると信じる理由が再び現れた。

しかし、トランプ大統領は、税収を徴収する以外に明確な計画もなく、約90カ国に関税を課した。そしてすぐに、トランプ大統領は、他国がアメリカに課したとしている「各種関税(tariffs)」は、各国政府の実際の政策ではないことが明らかになった。それは、当該国のアメリカへの物品輸出量をアメリカの対外貿易赤字で割ったという粗雑な計算に基づいていた。これは、貿易はゼロサムゲームであり、国の貿易赤字は企業の損失に等しいという、トランプ大統領の誤った重商主義的考え(Trump’s false, mercantilist idea)に基づいているように思われる。

地球上で最も権力のある人物が経済学の基礎さえ理解していないことに、世界中が一挙に気づいたかのようで、市場は急落した。確かに、市場はそれを認識していた。

トランプ大統領は更に、新たな貿易協定を交渉する間、ほとんどの関税を90日間停止すると発表したことで、事態を更に悪化させた。しかし、新たな貿易協定は成立しそうになく、貿易専門家たちは、この短期間でそのような協定を交渉するのは事実上不可能だと指摘している。

一方、アメリカからの資金流出は続いている。1月20日のトランプ大統領就任式以来、米ドルは9%近く下落し、1970年代初頭のいわゆるニクソン・ショック以来50年以上ぶりの大打撃を受ける恐れがある。これは決して軽視できない問題だ。トランプ大統領の関税措置と同様に、これはインフレを加速させる可能性がある。

今日と同様に、当時のニクソン大統領は、戦後の金融システムの柱であった他国のドル準備金を金に交換することを停止することで、アメリカの国際的な評判を危険に晒した時期だった。

究極の皮肉は、トランプが大統領の権力と世界中の尊敬を取り戻すというストロングマン政治を目指しているように見えることかもしれない。しかし、彼は他国を威圧して屈服させるという自身の能力を過度に過大評価して大統領に就任したようだ。アトランティック誌との100日間のインタビューで彼は「私は国と世界を動かしている(I run the country and the world)」と述べた。

しかし、アメリカの力は軍事力と経済力だけでなく、ソフトパワーによる影響力にも大きく依存している。トランプはこの最後の部分を理解していなかったようだ。グリーンランドを占領し、カナダを併合すると宣言すれば、両国の国民を結束させて彼に対抗するだけだということを理解していなかったようだ。

就任前、トランプはバイデンをはじめとする歴代米大統領の政策について語る際、「世界は私たちを嘲笑している(The world is laughing at us)」とよく言っていた。

当時はそうではなかった。少なくとも、それほど頻繁にはそうではなかった。今は違う。あるいは、世界の多くの人々が笑うどころか泣いているのかもしれない。考えてみて欲しい。米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSIDA)とその多くのプログラムを廃止することで、トランプ政権は最終的に、ウラジーミル・プーティン大統領がウクライナでもたらしたのと同じくらい多くの罪のない人々の死をアフリカや発展途上国で引き起こす可能性がある。そして、再びアメリカの影響力と威信を犠牲にすることになる。

それでも、少し立ち止まって、新大統領の任期100日という指標が常に疑わしいものであったことを指摘しておこう。最悪の事態を招いたトランプは、自分が引き起こした損害の一部を認識し、調整するかもしれない。最新の世論調査によると、彼の支持率は、このような調査が初めて実施されて以来、どの新任大統領よりも最低水準に急落している。

多くの歴史家は、就任後100日間を、主にメディアが見出しを作るために仕掛けた策略と見なしている。大統領史家リチャード・ノイシュタットは、この指標を「現代の大統領が就任後3カ月で何を計画し、何を成し遂げたいかを示す指標としては不十分だ」と述べ、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領とニューディール政策に特有の基準であると主張した。彼が直面した危機の深刻さ、すなわち大恐慌の深刻さがその理由だったのだ。(「100日間」はもともと、フランスの指導者ナポレオン・ボナパルトがエルバ島から脱出してから没落するまでの期間を指す言葉として始まったが、1933年7月にルーズヴェルト大統領はこの概念を復活させ、「ニューディール政策の始動に捧げられた100日間の出来事の山場(the crowding events of the hundred days which had been devoted to the starting of the wheels of the New Deal)」と表現した。)

ジョージワシントン大学の政治学者ララ・ブラウンは2021年、ジョー・バイデン大統領の最初の100日間を評価する際に筆者に次のように語った。「ある意味では、100日という数字は、大統領の初期のリーダーシップスタイルを見るという意味で重要な指標だ。しかし、実際のパフォーマンス、つまりこの人物が成功するかどうかという点では、非常に近視眼的だと思う。現代のほとんどの大統領にとって、最初の100日間は彼らの物語の終わりではなく、始まりに過ぎないと言えるだろう」。

更に悪いことに、100日という基準は、新大統領が次々と大きな成果を上げようとする中で、機能不全(dysfunction)と不安定さ(unsteadiness)というメッセージを世界に発信するだけだ。これは特に、冷戦コンセンサスが崩壊し、各大統領が前任者の政策を覆そうとした過去数十年間において顕著であり、トランプとバイデンほどその傾向が顕著な人物はいない。

バイデンは就任初日に少なくとも50件の大統領令に署名したが、その約半数はパリ協定離脱、移民政策、国境の壁建設、イスラム教徒が多数を占める国への渡航禁止措置など、トランプ政権の政策を覆すものだった。

当時、バイデンは「私は新しい法律を作っているのではない。悪い政策を排除しているのだ」と述べた。

トランプはバイデンを凌駕し、1月以降に100件以上の大統領令に署名している。その多くはバイデン政権の政策を覆すものであり、バイデンを「アメリカ史上最悪の大統領(the worst president in U.S. history)」と繰り返し呼んでいる。

トランプ自身も100日という指標(the 100-day metric)を喜んで受け入れている。彼はこの指標を、2期目の目覚ましい躍動感を表現する際にしばしば引用している。4月8日には「我が国史上最も成功した100日間(the most successful 100 days in the history of our country)」と称した。

これは幻想だ。トランプは決して認めないだろうが、ここ数日、後退の兆し(signs of retreat)を見せている。スコット・ベセント財務長官は、かつて「恒久的(permanent)」とされていた関税は今や交渉の余地が十分にあると世界に安心感を与えた。数週間にわたり、自らの「行政の単一性理論(unitary theory of the executive)」を究極の試練にかけ、連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を破壊する可能性を示唆し、それが再び市場の暴落につながった後、トランプは今やFRB議長ジェローム・パウエルの解任計画を否定している。

これは、ウォルマート、ターゲット、ホーム・デポのCEOたちが4月21日に大統領執務室でトランプに経済破綻の危機を警告したメッセージに続くものだ。

彼が方向転換するにはまだ遅くはない。

※マイケル・ハーシュ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。『資本攻勢:ワシントンの賢人たちはどのようにしてアメリカの未来をウォール街に渡し、我々自身と戦争を行ったのか(How Washington’s Wise Men Turned America’s Future Over to Wall Street and At War With Ourselves)』と『何故アメリカはより良い世界を築くチャンスを無駄にしているのか(Why America Is Squandering Its Chance to Build a Better World)』の2冊の本の著者でもある。Xアカウント:@michaelphirsh

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 トランプ関税が発表され、日本には24%の関税が課されることになった。世界各国にはまず10%、それから個別の国々で、対米黒字が多い国を中心にして、様々な税率が課されることになった。中国には145%が課されるという発表があったために、「日本の24%は大したことはないな」という感想を持ってしまうが、やはりこれは日本にとっては重大な問題だ。

 今年4月からゴールデンウイークの連休までの間に、石破茂首相の側近である、赤澤亮正経済再生担当大臣が2度訪米し、関税や日米貿易について、スコット・ベセント財務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表と議論した。1度目はドナルド・トランプ大統領も出てきて驚きを持って迎えられた。通常、こういう交渉事は同格のカウンターパートと行うものであり、大統領が大臣と交渉することはない。
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 中国はトランプ関税に対して一歩も引かず、対抗措置を取ることを表明している。トランプ関税によって、株式や債券が下落し、アメリカ側が譲歩や撤退を余儀なくされる中で、中国に一貫性は評価され、信頼性が高まっている。中国のトランプ関税対策の最高責任者になっているのが、何立峰(かりつほう、He Lifeng)副首相だ。何立峰は、習近平の「側近中の側近」であり、福建省で長くテクノクラートを務めた人物だ。習近平の部下となり、習近平の結婚式にも出席した、数少ない人物の1人である。経済学で博士号を取得しているが、英語も話せないということで(前任の劉鶴はハーヴァード大学で教育を受けて英語が堪能)、あまり評価が高くなかったが、最近になって評価を上昇させている。こうしたところは、石破茂首相と赤澤経済担当相との関係に似ている(赤澤大臣はコーネル大学留学経験があり英語は堪能であると考えられる)。

 何立峰副首相の動きをこれから注視していく必要がある。

(貼り付けはじめ)

アメリカの関税交渉で中心的な役割を担う中国の貿易担当最高責任者である何立峰とは何者か?(Who is He Lifeng, the Chinese trade tsar taking centre stage in US tariff talks?

ロウリー・チェン、マイケル・マルティナ筆

2025年5月7日

ロイター通信

https://www.reuters.com/business/autos-transportation/chinas-trade-tsar-limelight-us-tariff-talks-2025-05-07/?taid=681b618679cfff00010e4fe1&utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter

●要約(Summary

・何副首相が土曜日に複数のアメリカ政府高官と会談。

・当初は外国人投資家たちの期待に応えられなかったが、自信と経験を積んできている。

・国家主導の成長(state-led growth)をイデオロギー的に支える人物として評価されている。

北京・ワシントン発。5月7日(ロイター通信)。習近平国家主席の長年の側近であり、外国投資家たちの間では重要なフィクサーとしての評判を徐々に築き上げてきた何立峰(He Lifeng)が、アメリカとの貿易停滞打開(breaking a trade deadlock with the United States)に向けた土曜日の協議で中心的な役割を果たすことになる。

世界のトップ2経済大国が互いの輸入品に100%を超える関税を課すなど、数週間にわたって緊張が高まっている状況を受け、何立峰はスイスでスコット・ベセント米財務長官とジェイミソン・グリア米通商代表と会談する予定だ。

ドナルド・トランプ米大統領は、習近平国家主席に対し、貿易協定の可能性について自身に電話するよう繰り返し求めてきたが、緊張緩和への道筋は、米中経済貿易問題を統括する何副首相を経由するだろうと見られる。

ロイター通信は、過去1年間に何副首相と面会した外国人投資家や外交官13人にインタヴューを行った。彼らは、70歳の何副首相が、英語が全く話せず、用意された発言から逸脱することを嫌う、堅苦しい共産党官僚という印象だったが、実際には、より自信に満ちた人物へと成長し、その実行力(ability to get things done)に感銘を受けたと語っている。

会談について説明を受けたアメリカのビジネス関係者たちは、先月、世界有数の企業トップが北京で開催されたビジネスフォーラムに集まった際、多くの企業が何副首相に感銘を受けていたと述べている。

関係者のほとんどは匿名を条件に、中国の広大な金融セクターに対する広範な規制監督権も有する何副首相との秘密のやり取りについて語った。

ロイター通信が何副首相の公務に関する調査を行ったところ、何副首相は過去1年間に少なくとも60回、外国人と会談を行っている。これは、2023年3月に副首相に就任してから2024年3月までの45回から着実に増加していることを意味する。

中国国務院(China's State Council)は、この会談に関するファックスによるコメント要請に回答しなかった。

●現状維持の擁護者?(DEFENDER OF STATUS QUO?

しかし、何副首相が西側諸国の企業幹部との交渉にますます慣れてきたにもかかわらず、ロイター通信がインタヴューした多くのビジネスマンは、副首相は政策革新者ではないと述べた。

先月の会合について説明を受けたこのビジネスマンは、何副首相のアメリカ企業幹部たちから評判が上がってきているのは、アメリカにおける混乱を受けて、中国の指導者たちが特に予測可能で自信に満ちている(predictable and confident)ように見えたことが、その要因となった可能性が高いと述べた。

報道によると、ヨーロッパ委員会は、年間約1000億ドル相当のアメリカからの輸入品を対象とするリストに民間航空機を含める予定だという。

彼は最後に中国の主要なマクロ経済計画機関の最高責任者を務め、産業政策(industrial policy)の策定を担当した。また、外国との会談では、北京の輸出主導型成長戦略(Beijing's export-led growth strategy)を繰り返し擁護してきた。

あるアメリカ人実業家はロイター通信に対し、国内消費よりも製造業の振興を支持してきた何副首相は、習近平国家主席の「1兆ドル規模の黒字創出における最大の補佐官(chief lieutenant for building a trillion-dollar surplus)」を務めていると語った。

何副首相は別の意味で、中国の過剰生産能力に関する不満を繰り返し無視してきた。これは、中国が輸出圧力の抑制と新たな協力の道を模索する中で、多くの国々が共有している不満だと3人の関係者がロイター通信に語った。

大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)のグローバル・チャイナ・ハブの上級研究員ウェン・ティ・ソンは次のように述べた。「日常的には、何副首相は中国の貿易黒字を擁護するだろう。何副首相が貿易黒字について軟化することは考えにくい。貿易黒字は中国の雇用創出にとって極めて重要な問題だ」。

何副首相は、トランプ大統領による関税攻撃の打撃を受けている日本やヨーロッパ連合(EU)といった先進市場への中国の最近の働きかけにおいて最前線に立ってきた。

何副首相はスイス訪問後、ハイレヴェル経済対話のためフランスを訪問する予定だ。

●期待外れのスタート(UNDERWHELMING START

何副首相が副首相に就任する前、経済問題は劉鶴(Liu He)前副首相が担当していた。劉鶴はハーヴァード大学で教育を受けた、英語が堪能な経済学者であり、トランプ政権下ではアメリカとの貿易協定交渉にも携わった。

何副首相は厦門大学で経済学の博士号を取得しているが、国内問題に注力してきた経歴を持つため、中国経済の代表として世界に向けて発信する上で、多くのことを学んできた。

出席者の1人によると、昨年7月に何副首相が重要な経済政策会合の結果を報告した後、アメリカ企業幹部の一部は何副首相に失望したという。

この人物によると、2027年の党大会で退任することになっている何副首相は、数十人の側近に囲まれた記者会見で、特に精力的な様子は見せなかったという。

一方、劉鶴や王岐山といった何立峰の前任者は、雄弁さと比較的くつろいだ物腰で外国人記者の間で知られていた。

また、何副首相は、2月に日本のビジネス代表団が提起した北京のレアアース輸出規制や、中国国内の日本人の安全に関する懸念を軽視した。

何副首相と3月の会談について説明を受けたこの実業家は、何副首相との過去の協議を「チャットGPTと話しているようだった(talking to ChatGPT)」と表現した。しかし、最近では、何副首相は欧米企業の幹部たちにもっと受け入れられるようなコミュニケーション方法を採るようになったと述べた。

何副首相と複数回面会したこの関係者は、習近平国家主席に近い立場にない当局者にはできない方法で、何副首相が経済政策に関する中国の立場を説明し、支援の約束を果たす能力にも感銘を受けたという。この関係者は具体的な内容を明らかにしなかった。

今年、何副首相と面会した別の外国当局者も、何副首相は関税や不動産危機に加え、デフレ圧力や高齢化といった中国の経済問題を深く理解しており、これらの問題について高度な分析を行ったと述べた。

また、何副首相は中国発のAIスタートアップ企業ディープシーク(Deepseek)の将来性にも非常に自信を持っているように見えたとこの関係者は述べた。

●「典型的な官僚」であり破壊者('TYPICAL BUREAUCRAT' AND DEMOLISHER

何副首相は故郷の福建省で地方官僚として出世し、習近平主席は1990年代から2000年代初頭にかけて福建省で地方官僚として権力基盤を築いた。ロイター通信が以前報じたように、彼はその頃に習近平主席の腹心となり、将来の指導者である習近平の結婚式にも出席した。

彼は2009年に工業港湾都市の天津に異動となり、大規模な都市再開発事業と高額なインフラ整備事業に着手したことで、地元住民から「破壊者(He the Demolisher)」というあだ名をつけられた。これらの事業は天津に華やかな外観を与えたが、同時に都市の債務をより深刻化させた。

シンガポール国立大学の中国専門家アルフレッド・ウーは、何副首相は経済成長の促進に力を入れ、特に「当時の多くの地方官僚と同様に、不動産と都市再開発(real estate and urban redevelopment)に熱心だった」と述べている。

福建省でジャーナリストとして働いていた際に何副首相と出会ったウーは、何副首相を「典型的な地方官僚であり、習近平の典型的な子分(typical local bureaucrat and a very typical protégé of Xi Jinping)」と評した。

ウーは続けて、「何副首相の最優先事項は習近平の指示を実行することであり、従属的な立場(a subordinate position)にある」と述べた。

※ロウリー・チェン:ロイター通信北京支局の中国特派員。政治と一般ニュースを担当している。ロイター通信入社前は、AFPと香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙で6年間、中国担当記者を務めた。中国語を流暢に操る。

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(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 ドナルド・トランプ大統領による高関税の発表から1カ月が経過した。いくつかの妥協がなされているが、日本に関しては、24%の関税賦課が行われる予定で、それを回避するために、赤澤亮正経済再生担当大臣が2度の訪米で交渉を行っている。アメリカとしては、貿易拡大、特にアメリカ製品の輸出拡大を目指しているが、厳しい状況だ。

アメリカ側は、日本車とアメリカ車の不均衡を批判しているが、日本で売れるアメリカ車を作る努力もしないで、ただただ買えと言っているのは押し売りと同じだ。もしくはカツアゲだ。アメリカ産の農産物を買うと言っても、少子高齢化で人口減少、高齢社会によって食料品の消費量はどうしても減っていく。アメリカ産のトウモロコシをどうやって消費するかは難しい。結局、政府がアメリカらから製品を買って、海外援助の現物として支給する形にするしかないが、そのような税金の使い方が良いのかという問題は起きる。

 トランプ高関税(解放記念日関税)によって、株式市場は乱高下し、更には米国債の金利上昇という事態に陥り、妥協する形になった。高関税を支持したのは対中強硬派であり、そのグループが交代を余儀なくされたということになる。この高関税政策の主眼は、アメリカの貿易赤字削減であるはずなのに、高関税を武器にして、中国と争うことを主眼としたグループがおり、そのグループが過剰な中国をターゲットにした、関税戦争、貿易戦争を仕掛けようとしたが、中国が頑として妥協しないという姿勢を示したために腰砕けとなった。これは、ウクライナ戦争勃発後、西和賀諸国がロシアをSWIFTという国際決済システムから除外し、制裁を科して、ロシアを早々に屈服させようとして失敗したのと似ている。中露両国はアメリカからの制裁に慣れており、その準備を十年単位に進めている。対米自立(対ドル自立)ができている(食糧安保も含めて)。

高関税を何とか宥めたいグループの代表がスコット・ベセント財務長官だ。ベセントは昨年の大統領選挙ではトランプを支持し、関税政策も支持していた。しかし、対中強硬派の暴走を抑えることに成功した。それはもちろん、米国債金利上昇(米国債が中国によって売られた可能性が高い)という緊急性の高い事態を招いたこともあるが。スコット・ベセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表がこれから、二国間協議で各国からの妥協を引き出すということになるだろう。これは簡単に言えば、みかじめ料ということになるが、あまりにも阿漕なみかじめ料を取るようならば、アメリカの威信は地に堕ち、信頼を失うことになる。

 ナヴァロをはじめとする対中強硬派は高関税を使ってやり過ぎてしまった。対中強硬派はこれからトランプ政権で力を失っていくだろう。ナヴァロはトランプに殉じて刑務所に入ったくらいの忠誠心の高い人物であるから、象徴的な意味でも政権内に留まるだろうが、実権はなくなるだろう。トランプ政権の荒療治はなかなか厳しい状況に陥っている。

(貼り付けはじめ)

トランプ関税ドラマの勝者と敗者(Winners and losers from the Trump tariffs drama

ナイオール・スタンジ筆

2025年4月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5243790-trump-tariff-china-trade-war/

ドナルド・トランプ大統領は水曜日、世界各国への関税賦課をほぼ一時停止し、方針を転換した。

唯一の大きな例外は、激化する貿易戦争(an escalating trade war)の焦点となっている中国だ。アメリカの対中関税は現在145%に達しており、中国は報復措置としてアメリカからの輸入品への関税を金曜日早朝に125%に引き上げた。

トランプ大統領が国際的な関税賦課を撤回したのは、アメリカ株が数兆ドルの下落を見せ、債券市場が警戒感を示し始め、経済界が景気後退の可能性を懸念する声が高まった後のことだ。

譲歩を決して認めようとしないトランプ大統領でさえ、投資家たちが動揺し始めていることを指摘し、「投資家たちは騒ぎ立てている(they were getting yippy)」と述べ、自身も債券市場の動向を注視していると述べた。

利上げ停止発表直後、水曜日の午後、市場は大きく上昇した。しかし、中国情勢への懸念が更に強まったため、木曜日には再び急落した。

ダウ工業株30種平均は1000ポイント以上、つまり、2.5%下落した。より広範なS&P500は約3.5%下落し、ハイテク株中心のナスダックはさらに下落し、4.3%下落した。

状況は流動的で、今後も多くのドラマが展開される可能性が高い。

トランプ大統領自身以外では、関税騒動の勝者と敗者は誰なのだろうか?

■勝者たち(WINNERS
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●スコット・ベセント財務長官(Treasury Secretary Scott Bessent

ベセントはここ1週間、トランプ政権内でより強い立場を築いてきた。

トランプ大統領と公に決別しようとしたことは一度もないが、包括的かつ過酷な関税水準に懐疑的な派閥のリーダーであることは明らかだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の木曜日の報道によると、ベセント財務長官は週末、トランプ大統領の専用機エアフォースワンに同乗し、金融市場の透明性の必要性を強調し、大統領に「他国との交渉に集中する(focus on negotiating with other countries)」よう助言したことで、内部での影響力を強めたようだ。

かつてヘッジファンドマネジャーを務め、過去には民主党の資金調達担当者でもあったベセントは、トランプ周辺の一部が主張する過剰な保護主義(hyperprotectionism)に対して、常に懐疑的だった。

より穏健なアプローチが勝利した後も、ベセントはトランプに対して忠誠心を持ち、トランプについて「これが彼の戦略だった(This was his strategy all along)」と報道陣に語った。
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●イーロン・マスク(Elon Musk

関税騒動の裏話はマスクに絡んでいる。

マスクは、トランプの側近で経済学者であり、最も保護主義的な立場を明確に示すピーター・ナヴァロと激しく対立していた。ナヴァロが、マスクがテスラ(ナヴァロはテスラを真のメーカーではなく「自動車組立業者(car assembler)」と揶揄していた)のせいで自由貿易に既得権益があると主張すると、マスク氏は彼を「間抜け(moron)」呼ばわりした。

更に言えば、マスクは壮大な関税制度に明らかに不安を抱いているもう1人の重要人物だった。例えば、トランプ大統領とヨーロッパ連合(EU)の間の緊張が高まる中、マスクは大西洋横断自由貿易圏(a transatlantic free trade zone)の設立を公に表明した。

ベセントと同様に、マスクも内部論争で勝利を収めた。

●民主党(Democrats

ここでは野党が勝利を収めることになる。

民主党は、昨年11月のトランプの勝利、党内の今後の方向性をめぐる議論、そして党に対する認識の急落を示す世論調査によって、大きく揺さぶられてきた。

しかし現在、トランプは中道層の有権者に深刻な打撃を与えかねない、最初の大きな失策を犯したと見られている。

世論調査では関税が広く不人気であることが示され、トランプの支持率も急速に低下しているように見える。

1月にトランプが大統領に就任して以降、初めて、民主党に追い風が吹いている。

■中間(MIXED

●ウォール街(Wall Street

投資家と金融機関にとって、これはジェットコースターのような激しい動きだった。

数日続いた急落は、水曜日にウォール街史上最大級の1日の上昇で打ち破られた。

そして木曜日、市場は再び急落した。

主要株価指数は、トランプ大統領の「解放記念日」関税(“Liberation Day” tariff)発表前の水準と、その後数日間に記録した安値とのほぼ中間水準にある。

ウォール街は、トランプ大統領の方針転換に影響力のある発言者が何らかの役割を果たしたという事実に、ある程度の安堵を抱くことができるだろう。

しかし、中国との緊張が解消されない限り、今後の道のりは依然として不安定だ。

●連邦議会共和党(Republicans in Congress

共和党の一部には、当初からトランプ大統領の関税措置に対する明確な不安が存在していた。

共和党所属の連邦議員の中には、関税が早期に緩和されることを期待する者もいた一方、連邦上院議員の中には、この問題に関する権限をホワイトハウスから奪還しようとする動きに加わった者もいた。

市場が今後改善すれば、共和党へのダメージは小さくなるかもしれない。

しかし、市場のヴォラティリティはまだ明らかに解消されておらず、それが共和党の政局にも不確実性をもたらしている。

■敗者(LOSERS
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●ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)

ナヴァロの保護主義、アメリカが外国の競争相手につけこまれていると強く主張する姿勢は、大統領に支持を得ているように見えた。

ハーヴァード大学で博士号を取得しているにもかかわらず、著名な経済学者の中では異端児であるナヴァロにとって、かつてはそれが好意的な承認のように思えたに違いない。

しかし、トランプ大統領が関税賦課を停止したことで、その見方は大きく崩れ去った。

確かに、トランプ大統領は10%の関税を維持し、他国向けに「特注(bespoke)」の解決策を検討しているとされている。

しかし、ナヴァロを最も象徴する主張、すなわち十分な規模と期間の長期にわたる懲罰的関税がアメリカの製造業の再生を促すという主張は、再び遠ざかりつつあるようだ。

●中国(China

中国政府はトランプ大統領との対決において決して譲歩しないと強調し続けている。

中国商務省は「最後まで戦う(fight to the end)」用意があると約束しており、政府報道官はソーシャルメディアで毛沢東国家主席の好戦的な映像を共有し、その点を強調した。

貿易戦争が長期化すれば、中国だけでなくアメリカにも打撃を与えることは疑いようがない。

最新の統計によると、アメリカは毎年約640億ドルの携帯電話、300億ドルの玩具、200億ドルの繊維・衣料を輸入している。関税は、これらの品目のアメリカ国内の価格を上昇させるか、単に入手しにくくするだけだ。

しかしながら、中国への打撃は更に大きくなる可能性が高い。

中国の対米輸出は輸入の約3倍に上る。中国は近年、市場の多様化に努めているものの、アメリカとの貿易に大きな障害が生じれば、深刻な痛みをもたらすだろう。

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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 第2次ドナルド・トランプ政権は、発足後100日を過ぎて、イーロン・マスクが政権を離れるという報道が出るなど、ひと段落を突けるという状況になっている。政権内部の影響力争いもあり(特に高関税政策において)、マスクが外れ、誰がトランプ大統領に対して影響力を持つかが分からない状況になっている。当初の怒涛の勢いはさすがに続かない。しかし、連邦政府の縮小と関税交渉はこれからなお続く。

 下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトは、ジェイムズ・スコットの傑作『国家のように見る:人間の状態を改善するための特定の計画はいかにして失敗したか(Seeing Like a State: How Certain Schemes to Improve the Human Condition Have Failed)』を敷衍して、トランプ政権が政策に失敗するであろうと予測している。スコットは著書の中で、重大な政策の失敗の原因を 「抑制されない権力(unchecked power)」と「強力な「ハイモダニズム」イデオロギー(“high modernist” ideologies)、つまり合理的かつ準科学的な基盤に基づいているとされる世界観に導かれていたこと」に求めており、結果として、「これら2つの要素が組み合わさると、自信過剰で、細部に頓着せず、地域の状況に無関心で、反対圧力にも動じない指導者が生まれる。このような状況下では、政府は自らの自覚すらなく、甚大かつ永続的な損害を与える可能性がある」としている。ウォルトは、トランプが抑制されない権力を求めているが、ハイモダニズム・イデオロギーには基づかないとしている。そして、以下のように書いている。「白人キリスト教ナショナリズム(ピート・ヘグゼスなど)の宗教的過激主義(the religious extremism)と、シリコンバレーのテクノ・リバタリアン的未来主義[Silicon Valley techno-libertarian futurism](イーロン・マスクなど)が融合しているからである。前者は多様性への攻撃、女性や少数派の権利を後退させようとする動きの原動力であり、後者は政府の制度や政策に対する軽率な破壊工作の背後にいる。この運動のどちらの勢力も、自分たちが神の意志を実行していると信じているか、あるいは自らを、テクノロジーを駆使して未来を操れる魔法使いだと信じているかのどちらかで、自らが正しいと確信している。彼らは大統領が全権を握ることに満足している。それは、彼らのユートピア的な(そして場合によっては利己的な)計画を実行するための手段だからだ」

 このウォルトの分析は重要だ。それは、トランプ政権内部の大きなグループ分けを示しているからだ。白人ナショナリズムとテクノリバータリアニズムの同居ということになる。これら2つのグループが呉越同舟である時は良いが、問題は、トランプ政権の施策が人々の支持を失う時だ。トランプ政権の施策はアメリカ国民を甘やかすものではない。「製造業の雇用を作れと言うからそのようにしている。実際にあなたたちはきちんと働いて、諸外国の労働者と競争しなくてはいけない(あなたたちは自分たちが世界一の労働者だと言っているのだからできるだろう)」ということになる。しかし、アメリカを外から眺める目で見てみれば、アメリカの労働者が世界一の質であるなどと考える人は少数だろう。

 状況が悪化していけばおそらく仲間割れを起こして、政権内は混乱するだろう。そうなったときに、トランプがどのような選択をするかである。トランプが3期目を目指すという話も出ているが、彼はそこまでは自分の仕事ではないと思っているはずだ。泥船のアメリカを劇的に救うことなど神様でもない限りできないだろう。そんな仕事を後7年もやるなんて、そんなバカげたことはない。トランプは何とか条件を整えるだけで精一杯だろう。そして、アメリカ国民は失敗してしまうだろう。そして、アメリカは世界覇権国の座から退いていく。それが国家の繁栄と衰退のサイクルということになるだろう。

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アメリカは自らの最大の敵だ(America Is Its Own Worst Enemy

-強大な国家が自らの足を撃つことは前例のないことではない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年2月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/02/12/trump-democracy-america-own-worst-enemy/

外交政策や国際安全保障を取り扱っている私たちは、主に外部からの脅威と、それを最小化し、抑止し、打ち負かすために何ができるかに焦点を当てがちである。しかし最近、私は奇妙な理由から、指導者が自ら愚かな行動(a foolish course of action)を選択し、手遅れになるまで軌道修正することができないか、あるいはしようとしない場合に、国が自らに与える甚大な損害について考えている。

もちろん、国家には外敵を心配する十分な理由がある。外敵の危険を真剣に受け止め、それらに知的に対応することを怠れば、痛ましい結果を招きかねない。自己満足も危険の1つだが、不必要な戦争を仕掛けて外的危険に過剰反応する国も、第二次世界大戦でドイツや日本が、イラクでアメリカが、そしてウクライナでロシアがしたように、大きな代償を払うことになる。したがって、私のような人間が国際的な問題を評価し、それに対処する様々な方法を提案することに多くの注意を払うのは当然のことである。

しかし、誤った外交政策や国家安全保障政策だけが国家が問題に陥る原因ではない。毛沢東が率いた、気まぐれで強引な中国共産党指導部は、40年近く経済発展を阻害し、1958年の大躍進政策(the Great Leap Forward)や1960年代の文化大革命(the Cultural Revolution)といった愚かな運動は何百万人もの不必要な死をもたらし、中国を本来よりもはるかに貧しく弱体化させた。ヨシフ・スターリンによる集団農業の強制(collectivized agriculture)はソ連でも同様の影響を及ぼし、ニキータ・フルシチョフによる、1950年代の考えなしの「処女地」計画(“Virgin Lands” program)も同様の影響を及ぼした。アルゼンチンは20世紀初頭には1人当たりの所得が世界第12位を誇り繁栄していたが、数十年にわたる政治の機能不全と度重なる政策ミスが発展を阻み、度重なる経済危機を引き起こした。ヴェネズエラはかつて南米で最も豊かな国だったが、ウゴ・チャベスとニコラス・マドゥロ政権の無能な指導力によって経済は破壊され、数百万人が国外に逃れる事態となった。これらの惨事の主たる責任は外国の敵ではなく、ほぼ全てが権力者たちが負うべきだ。

同様に、いかなる外国の敵がアメリカに対して、アメリカが自らに与えたほどの損害を与えたとは言い難い。死傷者数で言えば、南北戦争は依然としてアメリカ史上最も犠牲の大きい紛争である。アルカイダは2001年9月11日に約3000人を殺害し、数十億ドルの物的損害を引き起こしたが、世界的な対テロ戦争は、はるかに多くのアメリカ人の命と莫大な費用を費やす結果となった。1990年以降、100万人以上のアメリカ人が銃による暴力で亡くなっている。これは他のどの先進国よりも人口に占める割合がはるかに高い。そして、この悲惨な統計は、もっぱら国内政策の決定によるものだ。少なくとも50万人の死者を出したオピオイド危機は、主に製薬会社の強欲の結果であり、現在のフェンタニルの危険性は、薬物乱用を公衆衛生問題ではなく、外国の犯罪者に対する戦争として扱うという長年の傾向に大きく起因している。アメリカが中国の世界貿易機関(WTO)加盟を時期尚早に支持したり、金融業界の規制緩和を強制して金融危機を不可避にするような事態を招いたりした外国人は誰もいない。また、外国の敵が次の危機の引き金となり得る仮想通貨やミームコインの熱狂を煽っている訳でもない。

この状況はそれほど驚くべきものではない。アメリカは豊かで強力であり、地理的にも有利なため、いかなる外国勢力もアメリカに、アメリカが自らに与えるほどの損害を与えることは難しい。そこで当然の疑問が浮かぶ。アメリカの指導者が自国に打撃を与える可能性を高める条件とは一体何なのか?

以前にも述べたように、この問題を最もよく理解するための手引きの1つは、故ジェイムズ・スコットの傑作『国家のように見る:人間の状態を改善するための特定の計画はいかにして失敗したか(Seeing Like a State: How Certain Schemes to Improve the Human Condition Have Failed)』である。本書は、各国が自らの判断で、これらの政策が劇的で好ましい結果をもたらすと確信し、破滅的な政策を実行した一連の事例を検証している。

ジェイムズ・スコットは、これらの重大な政策の失敗は主に2つの要因に起因すると主張する。1つ目は、抑制されない権力(unchecked power)である。これらの国の指導者たちは、やりたいことを何でも自由に行うことができ、彼らに誤りを正すよう強制できる強力な機関は存在しなかった。2つ目は、これらの指導者たちは、強力な「ハイモダニズム」イデオロギー(“high modernist” ideologies)、つまり合理的かつ準科学的な基盤に基づいているとされる世界観に導かれていたことである。スターリンと毛沢東の両方を導いたマルクス・レーニン主義は、社会問題に対する唯一の真の答えを提供すると主張した点で、まさにその好例である。これら2つの要素が組み合わさると、自信過剰で、細部に頓着せず、地域の状況に無関心で、反対圧力にも動じない指導者が生まれる。このような状況下では、政府は自らの自覚すらなく、甚大かつ永続的な損害を与える可能性がある。

さて、話を今日のアメリカ合衆国に戻そう。スコットの洞察は、私たちの目の前で展開している出来事について何を示唆しているのだろうか?

良いことは何もない。

ドナルド・トランプ大統領が抑制されない行政権を望んでいることは今や明白であり、連邦下院も連邦上院も、合衆国憲法が連邦議会に与えている権限を奪取しようとする政権の試みに抵抗する意志も能力も持ち合わせていないようだ。資格のない閣僚任命を承認すること自体が懸念材料だが、政府支出に関する権限を放棄することはさらに深刻だ。

裁判所はこの権力掌握を阻止するだろうか? おそらくそうするだろう。しかし、最高裁判事の過半数が行政府の権限拡大を支持しており、連邦最高裁判所がトランプの行動を阻止するほどの力を発揮するとは思えない。それでは、もし阻止しようとしたらどうなるだろうか? 重要な訴訟で最高裁が政権に不利な判決を下し、トランプが任命した職員に判決を無視して命令を実行するよう命じたとしよう。一部のキャリア官僚は従わないかもしれないが、休職処分や解雇の対象になる可能性がある。FBI、司法省、シークレットサーヴィス、連邦保安官、軍が最高司令官の命令に従うのであれば、ジョン・ロバーツやエレナ・ケーガン、その他の判事たちは、特に任命された職員が、後に法的トラブルに巻き込まれたとしても大統領が恩赦を与えてくれると知っていたとしたら、行政府の行動を阻止するために何をするだろうか?

第二に、政権の指針となっているのは、知識の限界、予期せぬ結果の必然性、現代社会の複雑さ、あるいは地域事情を考慮する必要性(スコットなら助言しただろう)といった認識ではなく、共産主義者やファシスト、その他の狂信者たちと同様に、自分たちがあらゆる問題に対する唯一の真の答えを持っているという信念である。これはスコットが用いた意味でのハイモダニズム(high modernism)とは全く異なる。白人キリスト教ナショナリズム(ピート・ヘグゼスなど)の宗教的過激主義(the religious extremism)と、シリコンバレーのテクノ・リバタリアン的未来主義[Silicon Valley techno-libertarian futurism](イーロン・マスクなど)が融合しているからである。前者は多様性への攻撃、女性や少数派の権利を後退させようとする動きの原動力であり、後者は政府の制度や政策に対する軽率な破壊工作の背後にいる。この運動のどちらの勢力も、自分たちが神の意志を実行していると信じているか、あるいは自らを、テクノロジーを駆使して未来を操れる魔法使いだと信じているかのどちらかで、自らが正しいと確信している。彼らは大統領が全権を握ることに満足している。それは、彼らのユートピア的な(そして場合によっては利己的な)計画を実行するための手段だからだ。

数週間前、私は「トランプのピーク」が既に到来しつつあると述べ、政権が当初立て続けに打ち出した大統領令や突飛な提案は、最終的には裁判所、連邦議会、そして日々の統治の現場で行き詰まるだろうと予測した。しかしながら、連邦議会がトランプの行動に承認を与えることに甘んじ、裁判所の動きは鈍く、第四権力は分裂して無知であり、大学や有力な専門家団体は身を守ろうとしているように見えることから、既存のアメリカの諸機関がその任務を果たせるかどうかについては、ますます自信を失っている。高校の社会科の授業で習った抑制と均衡(the checks and balances)の仕組みは、今のところあまりうまく機能していないようだ。

この取り組みを崩壊させる可能性が高いのは、組織的かつ非暴力的な市民の抵抗とともに、現実世界での出来事だろう。白人のキリスト教ナショナリストとテック・ブラザーズとの間の便宜的な結婚(the marriage of convenience between the white Christian nationalists and the tech bros)は長続きしないかもしれない。特に、国内情勢が膠着し始め、トランプ大統領が非難するスケープゴートを必要とした場合(あなたのことだよ、イーロン)。もっと重要なのは、政権が現在進めている政策が、何百万人もの人々に深刻な悪影響を及ぼすということだ。連邦政府の予算が枯渇し、庶民は職を失い、病院は削減され、基本的なサーヴィスは脅かされる。中国の大学や研究機関が新たな高みへと急上昇しているように見える今、科学研究は機能不全に陥るだろう。かつては頼もしい親米だった国々も距離を置き始め、新たな市場や、場合によっては新たな友好国を探し始めるだろう。トランプ大統領の関税フェチが完全には実行に移されないとしても、国内外の企業は彼の予測不可能性を警戒し、脆弱性を減らすことに目を向けるだろう。私たちが向かうかもしれない先についての恐ろしい予測は、ノーベル賞受賞者ダロン・アセモグルが『フィナンシャル・タイムズ』紙に寄稿した、あまりにも現実的なエッセイをご覧いただきたい。

スコットや他の著名な学者たちが警告しているように、抑制のきかない権力の危険性は、独裁者が(部下や下僕が言わないために)自分たちの政策が失敗していることに気づかない可能性があること、そして、たとえ言われたとしてもそれを止められる立場にある者が誰もいないことだ。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、トルコ経済に甚大なダメージを与える異例の経済政策を追求するのを誰も止めることができなかった。最終的に軌道修正を余儀なくされたのは、高騰するインフレと世界市場の反応だった。

アメリカの民主政治体制、アメリカ経済、そして過去の成功の原動力となった知識生産機関へのダメージが修復不可能になる前に、事態が一刻も早く悪化することを願ってやまない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 下記論稿は、トランプ政権の発足後100日の動きを政治学・国際関係論の4つの理論(モデル)を使って分析している。難しい内容ではないので、軽い勉強だと思ってお読みいただければと思う。

1つ目は「リアルポリティックの復活」で、トランプ政権が強硬な現実政治へと回帰し、中国と西半球を優先しているという分析になる。トランプ政権は、アメリカの国防費を増額させつつ、ロシアとの交渉での和解を図るなど、リアリズムに基づく外交政策が実行されている。

2つ目のモデルは「外交政策としての国内政治」で、トランプ政権の外交政策が実際には国内政策からの影響を受けているという分析になる。このモデルは、トランプが不人気な連邦機関を解体しようとする試みや、投資家やウォール街の不安を引き起こす貿易政策によって裏付けられている。

3つ目のモデルでは、トランプ政権が依然として従来型の共和党政権の外交政策を維持しつつ、トランプ自身の好みに寄り添った形で変化を求める「トランプ・レーガン統合」という分析だ。このモデルはトランプ特有の行動様式や奇異な外交方針の背後にある矛盾も示している。

最後に4つ目のモデルでは、共和党内での外交政策に関する内部対立が外交政策の混乱の要員になっているとされる。国家主義的かつ保護主義的なグループが、他方では超タカ派の国際主義者が存在し、トランプ自身はそのどちらにも傾く可能性が示唆されている。

このように、トランプ政権の外交政策は多様なモデルを通じて説明可能である。それぞれのモデルに説得力がある。社会現象の見方は様々である。どれかが完全に正しいということもなく、完全に間違っているということはない。

 大事なことは、社会現象を前におろおろしたり、慌てたりすることではない。「どうしてそのようなことが起きたのか」ということを分析することであり、そのために、社会科学の理論(モデル)を利用することだ。そして、歴史を良く学び、同様の事例を参考にして、予測を立ててみることだ。こうしたことは専門家の専有物ではない。

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トランプ政権の混乱を説明する4つのモデル(Four Explanatory Models for Trump’s Chaos

-第2次トランプ政権がアメリカの外交政策において、停滞(inertia)ではなく変革(change)を目指していることは明らかだ。

エマ・アシュフォード筆

2025年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/24/trump-100-days-chaos-explanatory-models-foreign-policy/

ウラジーミル・レーニンはかつて、何十年も何も起こらない時期もあれば、数週間だけで、何十年間で起こるようなことが起きる時期もあると述べた。この基準に照らせば、ドナルド・トランプ大統領就任後の最初の100日間は、少なくとも20年間の外交政策の転換期と言えるだろう。

第2次トランプ政権の「迅速に行動し、物事を打破する(move fast and break things)」という外交政策へのアプローチは、その混沌とする状況においてのみ一貫している。注目を集める世界的な紛争へのアメリカのアプローチは、ロシアとの交渉への軸足を移し、ガザ地区での停戦を推進し、イランに対する軍事行動の脅しと新たに交渉された核合意の提案の間で揺れ動いている。

一方、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)は突然閉鎖され、食糧援助で満たされた倉庫は腐るに任せられた。移民問題では、エルサルヴァドル政府への移民収容のアウトソーシングなど、限界を押し広げる動きが見られた。更に言えば、トランプ大統領の気まぐれで電灯のスイッチのように関税がオンやオフになるなど、政権の貿易政策の不確実性によって金融市場にもたらされた混乱もある。

それでは、この混乱をどう理解すればいいのだろうか? 第2次トランプ政権がアメリカ外交政策において、停滞ではなく変革を目指していることは明らかだが、その方向性は不明確だ。それでも、これまでの選択を説明する上で、検討に値する4つのモデルがある。

●モデル1:リアルポリティックの復活(Model No. 1: The Return of Realpolitik

トランプの外交政策を理解する上で最初に適用できるモデルは、おそらく最も一貫性のあるものでもある。それは、トランプ政権が強硬な現実政治への回帰(a hard-nosed return to realpolitik)を目指し、ヨーロッパや中東よりも中国と西半球(the Western Hemisphere)を優先しているという考え方だ。この文脈において、トランプ政権とヨーロッパの同盟諸国との複雑な関係は、アメリカがヨーロッパに過度に関わり過ぎた時期(period of overreach)の後に、アメリカの戦略的関与のバランスを取り戻そうとするニクソン流の試みの一環と捉えられるだろう。実際、この見方では、トランプ政権はルールに基づく国際システム(a rules-based international system)における、アメリカのリーダーシップを放棄しているのではなく、むしろ既存の偽善(existing hypocrisy)を認め、民主政治体制や人権といった漠然としたリベラルな理想よりもアメリカの利益が常に重要であることを認めているに過ぎない。

トランプ政権の対欧アプローチは、おそらくこのトランプの意思決定モデルの最も強い証拠(the best evidence for this model of Trump’s decision-making)となる。同盟諸国に国防費増額を迫り、ロシアとの交渉による和解を通じてウクライナ戦争からアメリカを離脱させようとする政策は、どちらもリアリストたちが長らく支持してきた政策だ。トランプのリアルポリティック・モデルを裏付ける証拠は他にもある。敵対国と同盟国の両方に対して、国家運営の手段を積極的に利用しようとする姿勢は、世界に対する取引的なアプローチを反映している。関税の脅威を用いてカナダ、メキシコ、あるいはヨーロッパ連合(EU)に政策問題を迫ることは、長期的には問題となるかもしれないが、現時点では短期的な成果をもたらす可能性がある。

第2次トランプ政権が突如として西半球への懸念を表明したことも、このモデルに当てはまる。就任直後のマルコ・ルビオ国務長官によるラテンアメリカ歴訪、パナマ運河周辺における中国の存在に対するトランプ政権の懸念、そして一見奇妙に見えるグリーンランド併合の構想など、その背後にはハードパワーの論理がある。一方、副大統領を含むトランプ大統領の主要任命者の多くは、明らかに現実主義的な世界観を持っている。

しかしながら、このリアリティ・ポリティック・モデルは他の分野では行き詰まっている。イスラエル政策を説明できないし、外交政策機関の骨抜き化(the gutting of foreign-policy agencies)も容易に説明できない。大国間の競争(great-power competition)に重点を置く政権であれば、アメリカのソフトパワーの基盤を揺るがそうとはしないだろうと予想されるにもかかわらず、第2次トランプ政権はヴォイス・オブ・アメリカや米国国際開発庁(USAID)の解体によってロシアや中国がその空白を埋めるという訴えにほとんど無関心である。同様に、関税政策もこの枠組みに当てはめるのは難しい。中国とのデカップリングはリアルポリティックな論拠として成り立つかもしれないが、近隣諸国への制裁や世界の準備通貨としてのドルの地位の剥奪は論拠として成り立たない。

●モデル2:外交政策としての国内政治(Model No. 2: Domestic Politics as Foreign Policy

トランプ政権の外交政策を説明するもう1つのモデルは、民主党寄りのケーブルテレビでよく聞かれるものだ。外交政策は主に国内政策によって動かされている、あるいは富裕層を更に豊かにすることを目的としているというものだ。例えば、バーニー・サンダース連邦上院議員は、米国国際開発庁の廃止を「世界で最も裕福な人物であるイーロン・マスクが、世界で最も貧しい人々に食料を提供している米国国際開発庁をターゲットにしている」と表現した。

確かに、政府効率化省(the Department of Government EfficiencyDOGE)の行動、そして新政権が連邦政府官僚機構に対して明らかに抱いている敵意は、共和党が長年試みてきた、グローヴァー・ノーキストの印象的な表現を借りれば「政府を浴槽に沈めて溺れさせるまで縮小する(shrink the government until one can drown it in a bathtub)」という試みの継続と解釈できる。政権は一部の連邦機関(例えば、米国国際開発庁や教育省)を解体する一方で、他の機関(例えば、国防総省や社会保障局)は保護してきた。標的とされた機関は、概して共和党の有権者や寄付者から最も人気のない機関だった。

同時に、トランプ政権の対外経済政策はウォール街や経済界を非常に不安にさせており、市場は事実上暴落している。関税の目的については、大きな不確実性(significant uncertainty)がある。それはアジアとのより良い貿易協定のための手段なのか、それともメキシコやカナダとの移民政策や麻薬政策における譲歩(concessions)なのか? それとも、ドル安を促進し、国内の再工業化(domestic reindustrialization)を促進するための広範な戦略なのだろうか? スコット・ベセント財務長官がニューヨークの銀行家たちに語った印象的な発言の1つは、アメリカンドリームの本質は単に中国からの「安物(cheap goods)」ではないということだった。これはアメリカの経済エリートにとって、決して心地よいものではなかった。

国内政治への懸念は、他の地域にも反映されている。2月にミュンヘン安全保障会議でJD・ヴァンス副大統領が行った演説は、NATOへのアメリカの関与に関する部分だけでなく、移民問題や文化問題への重点、そして、ヨーロッパとアメリカの間に価値観の相違があるという主張でも注目された。ドイツ総選挙の直前に極右政党「ドイツのための選択肢(Alternative for Germany)」と会談するというヴァンス副大統領の型破りな選択もまた、第2次トランプ政権がヨーロッパ各地の右派政党を高く評価していることを反映している。

しかしながら、国内政治というレンズだけでは、トランプ政権の外交政策の選択を理解するには限界がある。政権が引き続き中東を重視していること、特にイスラエルに白紙委任(carte blanche)を与えようとしていることを説明するのは難しい。実際、マフムード・ハリルをはじめとする親パレスティナ派の抗議者たちに対する移民弾圧が続いていることは、外交政策と国内政策の逆転した関係を示唆している。ガザ紛争におけるイスラエルへの支持が、国内における言論の自由の弾圧を促しているのだ。国内の視点だけでは、第2次トランプ政権がウクライナから撤退したいという明らかな意向を説明することはできない。

●モデル3:第一期への回帰(Model No. 3: A Return to the First Term

トランプの外交政策を説明する3つ目のモデルは、彼の第1期の任期を振り返る必要がある。実際、これは共和党議員やワシントンDCに拠点を置く外交官の間では通説となっており、彼らは2016年から2020年にかけての第1次トランプ政権と同様に、政権初期の混乱は間もなくほぼ従来型の共和党政権に取って代わられると主張している。そのような政権はトランプ独特の才能の要素を持つかもしれないが、概ねジョージ・W・ブッシュ政権に遡る、主権(sovereignty)、単独行動主義(unilateralism)、強硬なタカ派的な軍事力(hawkish military power)を重視する共和党の外交政策の優先事項を継承するだろう。

結局のところ、トランプの第1期の国家安全保障戦略(National Security Strategy)は比較的従来型であり、彼のスタッフは主にワシントンDCの官僚だった。北朝鮮の独裁者である金正恩との首脳会談や、ツイートによる外交政策への傾倒は確かに刺激的な展開をもたらしたが、外交政策全体としては現状から大きく逸脱することはなかった。第2次トランプ政権は、伝統的なレーガン主義的な外交政策の方向性をほぼ維持しながらも、党をトランプ自身の好みに少し近づける、一種の「トランプ・レーガン」統合(“Trump-Reagan” synthesis)へと向かっているだけだと主張する人さえいる。

このモデルでは、就任後100日間における共和党の正統派(Republican orthodoxy)からのより過激な逸脱の多くは、トランプの性格のせいにするだけで説明できる。例えば、ロシアへの接近は、トランプ特有のストロングマン(強権的な人物)との直接交渉を好む傾向(Trump’s own idiosyncratic preferences for negotiating personally with strongmen)、そして、おそらくノーベル平和賞への渇望によって説明できるかもしれない。しかし、第1次政権と同様に、多くの共和党エリートは、トランプが迅速な和平合意を勝ち取れないことが明らかになるにつれ、ウクライナ問題、そしてより一般的な外交政策において、より伝統的なアプローチに傾倒するだろうと想定している。

しかし、この理論には矛盾(contradictions)も明らかだ。イスラエルについて考えてみよう。伝統的な共和党外交政策関係者の間では、イスラエルへの全面的な支持は依然として当たり前のことだ。第2次トランプ政権は、イスラエルへの全面的な支持を声高に表明する一方で、アブラハム合意(the Abraham Accords)の拡大・延長といった、ガザ紛争の継続によって阻まれている他のトランプ政権の優先事項との両立に苦慮している。ヴァンスは、アメリカはイランとの戦争には関心がないと公言しており、トランプ自身も、イランの核施設攻撃を望むイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の意向を支持することを拒否したと報じられている。

こうした立場、そし​​てその他多くの立場は、アメリカはイランの核開発計画への攻撃においてイスラエルを支援すべきであり、ウクライナへの武器供与を継続すべきであり、アメリカの広範な同盟関係を維持すべきだと考える、より伝統的な連邦議会にいる共和党タカ派とトランプ政権を対立させている。元連邦上院院内総務で熱烈なタカ派だったミッチ・マコーネル上院議員は、トランプ大統領が国防総省の高官の有力候補と目していたエルブリッジ・コルビーにさえ反対票を投じた。他の共和党連邦議員たちは、コルビーがイランとの戦争を支持する意向はないとほのめかしていた。この政権が伝統的な共和党員にとってトランプとレーガンの融合を意味するのかどうかは、まだ明らかではない。

●モデル4:共和党外交政策対決(Model No. 4: Republican Foreign-Policy Showdown

こうした論争は、トランプ政権を理解するための4つ目、そして最終的なモデルを示唆している。私たちが目にする混乱は、外交政策をめぐる共和党内の内紛(Republican infighting)が一因となっている。一方では、党内に台頭する国家主義的かつ保護主義的な一派が見られる。彼らは中国への関心を強めており、アイソレイショニストではないものの、もはやネオコンではないことも確かだ。この一派は国防総省、副大統領周辺、そしてマスクや政権内のシリコンヴァレー陣営にも広く代表されている。

他方では、より伝統的で超タカ派的な国際主義的な共和党員たちが、政権を自分たちの好みに回帰させようとしている(例えば、ルビオやマイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官など)。トランプ自身の本能は最初のグループに傾いているように思えるが、第1期の任期中に学んだように、彼はしばしば説得可能である。このモデルが正しければ、トランプ政権の外交政策の混乱と混沌は、政権内の派閥間の意見の相違、つまり人事と政策への影響力争いによる対立に一部起因していると言えるだろう。

これらの派閥が対立する問題は小さくない。ロシア、イラン、そしてある程度イスラエルに関しても、根本的に意見が一致していない。政権のウクライナ特使を務めているキース・ケロッグ退役陸軍中将が、キエフ問題で大統領と副大統領の見解に食い違い始めていたにもかかわらず、疎外された事例を考えてみよう。あるいは、シグナルゲート事件では、ヴァンスがイエメンのフーシ派への攻撃を遅らせるよう土壇場で嘆願したが、それが非生産的で無駄だと判断したものの、却下された。

もしこの対立が就任後100日間の混乱の一部を説明するのであれば、トランプ自身も前回よりもアドヴァイザーたちの指示に従うことをはるかに嫌がっていることもますます明らかになっている。ウォルツは、自身の見解が大統領の見解と頻繁に食い違うことに苦悩しているという報道もある。一方、Xパーソナリティのローラ・ルーマーは、大統領を説得し、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)のウォルツのスタッフ数名を、忠誠心の欠如とネオコンへの共感を理由に解任させた。この傾向が続けば、第2次トランプ政権は、従来の共和党外交政策の考え方である第3のモデルではなく、ここで論じた第1および第2のモデル(どちらもより明確な「アメリカ・ファースト(America First)」の色合いを持つ)に近づくと予想される。対照的に、先週、ピート・ヘグセス国防長官のより「抑制された(restrained)」上級スタッフ3名が不明瞭な理由で突然解任されたことは、その逆を示唆しているのかもしれない。

信じるのが難しいかもしれないが、トランプ政権はようやく、アメリカ人が政権を判断する基準となる就任100日目を迎えたばかりだ。第1期の任期では、主要な危機や外交政策上の決定の多くは、この時点を過ぎてから発生した。そして多くの点で、政権の外交政策がどこへ向かうのか、あるいは連邦議会や裁判所といった他のアクターが、ここ数週間に見られた行き過ぎをどの程度抑制できるのかを判断するのは、時期尚早である。実際、外交政策の最も重要な決定要因は、共和党の外交政策エリートたちがトランプを自分たちの意のままに操れるのか、それともトランプが彼らに自分の意向を押し付けることができるのか、ということなのかもしれない。このため、今のところ、トランプ・ドクトリン(Trump Doctrine)を1つだけ定義することは不可能である。

しかし、これらのモデルは、100日を過ぎようとする中で展開する外交政策のドラマを評価する方法を提供してくれる。今のところ、ここで提示した最初の2つのモデルは、トランプ大統領の決断を説明する上でより有用であるように思われる。しかし、外的ショックから人事をめぐる内部対立に至るまで、他の要因も第2次トランプ政権全体の外交政策の方向性を形作る上で依然として重要な役割を果たす可能性がある。そして、トランプ大統領自身が設定した主要目標の達成可否は、政策そのものを形作る可能性がある。例えば、ウクライナでの交渉が失敗に終われば、トランプ大統領は当初交渉を支持した現実主義的な保守派から遠ざかる可能性がある。イランへの壊滅的な爆撃作戦は、ネオコンの正当性を永久に失わせる可能性がある。

確実に言えることは、今後4年間は過去100日間と同じくらい混沌としたものになる可能性が高いということだ。そろそろ頭痛薬(headache medication)に投資すべき時かもしれない。

※エマ・アシュフォード:『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニスト。スティムソン・センター「米大戦略再考(Reimagining U.S. Grand Strategy)」プログラムの上級研究員、ジョージタウン大学の非常勤助教、そして『石油、国家、そして戦争(Oil, the State, and War)』の著者。Xアカウント:@EmmaMAshford

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