古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

タグ:ドナルド・トランプ

 古村治彦です。

 現在、アメリカ政治を語るキーワードとして、「福音派(Evangelicals)」という言葉が使われる。「福音派」は、アメリカのプロテスタントの一つの大きな勢力であり、アメリカの人口の20~25%を占めると言われている。中西部から南部にかけて居住し、アメリカの保守の地盤となっている。南部は「バイブル・ベルト(Bible Belt)」と呼ばれるように、熱心なキリスト教徒が多く住む。聖書を無誤謬の「神の言葉」と信じ、回心主義(Born Again、ボーン・アゲイン)を重視する。「回心」とはこれまでと生き方を捨て、神に帰依する生き方へと大きく変化させることで、「内面的な劇的変化」を指す。「改心(反省し、悔い改めること)」とは異なる。ジョージ・W・ブッシュ元大統領も若いときにはアルコールに依存していたが、そこから脱却するのに信仰の力があったというのは有名な話だ。回心してからはお酒を飲まず、早寝早起きの健康な生活になったという。形だけでの信仰ではなく、大きな変化を経ての敬虔な信仰を重視する。社会的な主張としては、妊娠中絶の制限、同性婚反対、従来の家族観の維持など保守的な主張をする。福音派は1980年の選挙で共和党のロナルド・レーガンを支援し、同じ福音派ではあるが穏健なリベラルの民主党現職のジミー・カーターを破ってから、政治的な影響力を強めてきた。

福音派の中には、聖書に書かれている「世界最終戦争(Armageddon、ハルマゲドン)」が起きて、キリストが再臨して信者は救われると強く確信している。そして、イスラエルが主要な役割を果たして、中東地域で起きる戦争がハルマゲドンとなると考える人たちもいる。彼らはイスラエルを強く支持する。これがハルマゲドン招来につながると考えるからだ。2026年2月28日に始まったイラン戦争も福音派の影響が強いという説も出ている。

 福音派は学校現場での宗教教育、特にキリスト教プロテスタント教育を実施するように求めている。アメリカはプロテスタントが建国した国であり、プロテスタントの教義が国是という時代もあったが、現在は宗教の面でも多様化が進んでおり、プロテスタントも多数派の地位を維持することが難しい状況になっている。そもそもが宗教自体の存在感も薄くなっているが。

 ここで重要なのは、アメリカの建国の父たち(Founding Fathers)がアメリカの政治システムに「政教分離(Separation of Church and State)」を組み込んでいたことだ。これは、「いかなる宗教も国教とはせず、いかなる宗教も国家が優遇しない」ということだ。それは、建国の父たちがヨーロッパの悲惨な宗教戦争から学んだ教訓である。宗教戦争は同じキリスト教徒たちがカトリックとプロテスタントに分かれて戦った。異教徒(paganheathen)に対してよりも、異端者(heretic)に対する方が敵意は高まる。アメリカの建国の父たちは、国家権力を使ってある宗教型の宗教を弾圧し、宗教戦争まで発展しないように設計したということになる。アメリカの教育現場に宗教教育を持ち込もうというのは、こうした建国の父たちの知恵を踏みにじる主張ということになる(私立学校で宗教教育を行うことはあてはまらないが)。しかし、アメリカ国内でそのような声が大きくなっているのも事実だ。アメリカは建国250周年を迎えるが、常に緊張をはらんで進んでいるように外側からは見える。

(貼り付けはじめ)

キリスト教ナショナリズム対実際のキリスト教(Christian nationalism versus actual Christianity

ジョス・ジョセフ筆

2026年4月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5816789-christian-nationalism-fragile-unity/

オハイオ州立大学で学部生だった頃、ルームメイト数人が福音派キリスト教団体(the evangelical Christian group)「キャンパス・クルセード・フォ・クライスト」に所属していた。ある日、モルモン教の宣教師2人が私たちの家を訪問した。ルームメイトたちは彼らを歓迎し、聖書を取り出して、モルモン教が「間違っている」「真のキリスト教ではない」理由について1時間にも及ぶ議論を始めた。ルームメイトの1人が彼らを「異端者(heretics)」と呼んだ後、モルモン教徒たちは怒って出て行ってしまった。

政治的キリスト教(Political Christianity)はこの国において強力な勢力だ。その定義は驚くほど容易で、共和党は政治的キリスト教を巧みに利用してきた。私はキリスト教徒だ。彼もキリスト教徒だ。彼女もキリスト教徒だ。私たちはキリスト教徒だ。彼らはキリスト教徒ではない。私たちにはキリスト教的価値観があり、彼らにはない。私たちにはユダヤ・キリスト教的価値観があり、彼らにはない。キリスト教を「私たち対彼ら」の戦いと定義づけることで、キリスト教右派は選挙に勝利し、支持基盤を拡大し、勢力を拡大し続けている。

共和党は政治的キリスト教を受け入れた一方で、自分たちの約束には限界があることも認識していた。「クリスマス戦争(war on Christmas)」に勝利し、「学校での祈りを復活させ(bringing back prayer to school)」、「アメリカを再びキリスト教国にする(making America a Christian country again)」といった公約を掲げた。問題は、中絶規制から学校での祈りまで、宗教右派(the religious right)が実際にこれらの全てを望んでいたことだ。共和党が約束を果たさなかったため、彼らはそれを実現してくれるポピュリストたちに投票し始めた。

そこに、キリスト教ナショナリストたちが登場する。

私たちは、政教分離(the separation of church and state)は維持されるべきだと主張する。なぜなら、政府はユダヤ教、イスラム教、ヒンドゥー教、無神論、あるいは悪魔崇拝(Satanism)といった宗教よりもキリスト教を優遇することはできないからだ。そして、彼らの主張は正しいと言えるだろう。

しかし、キリスト教ナショナリストに問うべきは、次の点だ。あなたはどのキリスト教を支持したいのか? どの聖書を教えるべきか? カトリック聖書か、それともプロテスタント聖書か? キリスト教とは、JD・ヴァンス副大統領が説く、聖母マリアに祈り、聖人を崇敬するカトリック信仰のことか? それとも、マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)が説く、神との個人的な関係こそが救いの全てだとするプロテスタント信仰のことか? 私たちは子供たちに宗派についてどのように教えるべきか? どれが正しく、なぜ他は間違っているのだろうか?

教師たちは生徒にキリスト教の信仰を伝えることを許されるべきだろうか? キリスト教ナショナリストは「イエス」と答えるかもしれない。しかし、もしその教師たちがモルモン教徒だったらどうだろうか? 自分の子供たちに、モルモン書が神の言葉だと教えたいと思うだろうか?

だからこそ、建国の父たちは私たちが思っている以上にずっと賢かった。彼らは政教分離(the separation of church and state)を確立したのは、キリスト教徒ではないアメリカ人を守るためだけではなかった。彼らはキリスト教徒同士の争いからキリスト教徒を守りたかったのだ。

彼らは宗教、歴史、哲学、政治を学んだ教養ある人々だった。啓蒙時代(the Age of Enlightenment)の申し子と言えるだろう。そして彼らは、建国間もないこの国(アメリカ)が、ヨーロッパ諸国の政府と同じ過ちを繰り返さないようにしたいと願っていた。私たちは、宗教紛争は常に中東地域に限られていたかのように振る舞い、ヨーロッパの宗教戦争のような出来事を無視しがちだ。

ヨーロッパでは、プロテスタントとカトリックの対立によって何百万人もの命が失われた。戦争が起こり、人々は故郷を追われ、現代ではジェノサイドと呼ばれるような虐殺が行われた。三十年戦争、清教徒革命、フランス宗教戦争について調べてみれば分かるだろう。ヨーロッパでは信教の自由があまりにも脆弱だったため、人々は船に乗って世界の反対側、つまりアメリカへと渡った。

建国の父たちはこれらの戦争から学び、「私たちは決してこのようなことをこの国では繰り返さない」と決意した。彼らが政教分離を確立したのは、国民全員がキリスト教徒である国でキリスト教を国教とすれば、誰もが自分なりのキリスト教を押し付けようとするため、宗教紛争が必ず発生することを知っていたからだ。そして、それは功を奏した。確かに、モルモン教徒の追放のような宗教的暴力事件はあったが、概してこの国では宗派間の暴力が蔓延することはなかった。ヨーロッパ諸国もこれに気づき、追随した。

キリスト教ナショナリズムの反対者たちは、「私たち対彼ら」という構図を利用して運動を抑え込もうと苦心してきた。しかし、彼らは政治家たちにキリスト教信仰の定義を問い、その信仰を法律に明文化する意思があるのか​​どうかを問うべきかもしれない。そして、キリスト教ナショナリズムの反対者たちは、キリスト教ナショナリストの結束がいかに脆いかを露呈させるために、あえて政治的に不適切な発言をする必要があるだろう。

トランプ大統領とその政権に対し、ポピュリズム的な発言を繰り返すのではなく、どのキリスト教宗派を支持すべきかを問うべきだ。

そうすれば、キリスト教ナショナリストは「私たち対彼ら」という構図の優位性を失うだろう。なぜなら、彼らはどちらが正しいかを巡って互いに争い始めるからだ。それは、建国の父たちが国を世俗国家に保ち、政教分離を確立しようとした理由を証明するだけだろう。

※ジョス・ジョセフ:「ベスト・コメンタリー・オピニオン」軍関係記者編集者賞受賞者。ハーヴァード大学とオハイオ州立大学の卒業生で、アメリカ海兵隊に所属し、イランに派遣された経験を持つ。現在はカリフォルニア州アナハイム在住。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 第二次世界大戦から冷戦、ポスト冷戦期まで、アメリカは世界超大国として、国際社会で極めて大きな役割を果たした。日独伊の枢軸諸国との戦争においては、ヨーロッパと太平洋の二正面で日独を撃破し、同時に連合諸国側の兵器庫・工廠(工場)として、食料や武器の支援を行った。冷戦期は、自由主義陣営を率いて、ソ連と社会主義陣営と戦った。結果として、ソ連崩壊によって冷戦に勝利して、ポスト冷戦期は世界唯一の超大国として、安全保障や経済面で世界をリードしてきた。

 世界の歴史にはこれまで帝国(empire)と呼ばれる巨大な存在が出てきた。古くはローマ帝国、モンゴル帝国、大英帝国、そして、現在のアメリカもそれらに匹敵する存在である。世界帝国は世界から収奪することで富を築く。しかし、そのとみのしゅうだつのシステムを維持するためのコストのために衰退し、滅亡する。最も重荷になるのは軍事費だ。世界を支配するためにはどうしても巨大な軍隊を保有しなければならない。大英帝国はこの点で、巨大な陸軍ではなく強力な海軍を保有していたのではあるが。第二次世界大戦後のアメリカ軍は2つの大きな戦争と1つの小さな戦争を同時に戦えるだけの規模を維持してきたが、アメリカの国力低下はそれを許さない状況になっている。同盟諸国への責任の分担はそれを示唆している。

 アメリカが世界の支配者であることの恩恵は富裕層にしかないということを、アメリカの中流以下の一般国民が認識している。それなのに、実際に軍隊に行って死傷するのは自分たちということで、ますます怒りが高まっている。そのような怒りが、「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプ大統領を誕生させた。しかし、トランプ大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の洗脳に近い「誘導」によって、イラン攻撃を行い、目論見が外れ、イラン攻撃は失敗に終わってしまった。このことはアメリカ中心の国際社会の構造の大きな変化を私たちの明確に示している。ウクライナ戦争の停戦が進まないことも同様である。「アメリカの終わりの始まり」を迎えた今、アメリカの属国である日本も一緒に沈んでいくか、少しずつ自立していくかを選択しなければならない時期を迎えている。

(貼り付けはじめ)

イランにおけるアメリカの帝国主義的罠(America’s Imperial Trap in Iran

―トランプ大統領の中東地域復帰の決断はかつてイギリスを破滅に導いた戦略的愚行(strategic folly)を彷彿とさせる。

ファリード・ザカリア筆

2026年3月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/13/united-states-iran-war-middle-east-imperialism-british-empire/

約15年間、当時の3人の大統領を含む多くのアメリカの指導者たちは、アメリカが中東地域の社会構造改革に深く関与し過ぎていると考えていた。彼らは、より喫緊の課題はアメリカの産業基盤の再建と中国の台頭への対応だと考えていた。しかし今、アメリカは再び、大中東地域における社会構造改革のための戦争を戦っている。そしてイラク、アフガニスタン、リビアと同様に、この戦争も支持者たちが期待するような結果にはならないだろう。

なぜこのようなことが繰り返され続けているのか?

現状を理解するには、過去、つまり近代史においてアメリカに匹敵する世界的な影響力を持っていた唯一の国に目を向ける必要がある。20世紀初頭のイギリスは、世界唯一の超大国だった。1870年における大英帝国の世界総生産(GDP)に占める割合は約25%で、これは今日のアメリカとほぼ同じである。そしてロンドンは世界の金融の中心地だった。クリミア戦争期間中、イギリスはナポレオンのヨーロッパ大陸支配の試みとロシアの南東ヨーロッパへの勢力拡大の試みを阻止した。広大な帝国を統治し、今日のワシントンと同様に国際情勢(international life)の方向性を決定づけたのだ。

1880年代から1920年代にかけての数十年間、イギリスはアジアとアフリカ各地で不安定(instability)、悪質な政権(nasty regimes)、そして力の空白(power vacuums)といった問題への対応に追われた。スーダン、ソマリア、イラク、ヨルダンといった地域に軍隊を派遣し、コントロールを確保した。これらの任務は当時としてはどれも重要に見えたが、結果としてロンドンは世界の辺境地域(peripheral parts of the world)で次々と発生する局地的な危機に翻弄され、多大な犠牲を払うことになった。1920年のイラク反乱鎮圧には10万人を超えるイギリス軍とインド軍、そして数千万ポンドもの費用が要した。当時のイギリスの教育予算総額は、このイラクへの「遠征(excursion)」費用とほぼ同額だった。

イギリスの指導者たちはメソポタミアにおける戦略について熱心に議論を交わしたが、彼らが直面していた真の経済的、技術的な課題を根本的に見過ごしていた。イギリスが中東地域やアフリカの部族と戦っていた頃、大西洋を挟んだアメリカは、世界史上最も先進的な工業経済を静かに築き上げていた。第一次世界大戦後のヨーロッパでは、敗戦国ドイツが着実に産業と高度に機械化された軍事機構を再建した。混沌とした周辺地域に気を取られていたイギリスは、その中核において組織的に追い抜かれていった。時を経て、イギリスは世界の覇権国としての地位を失墜した。

今日のアメリカは、かつての帝国主義の誘惑に再び屈しつつある。中東における真の危機に対応し、その対応に政治的、軍事的、そして道徳的な論理を見出している。しかし、究極的に言えば、大戦略(grand strategy)とは限られた資源の優先順位をつけることである。アメリカは無限の政治資本、時間的余裕、軍事力、そして経済的回復力を持っている訳ではない。テヘランへの空爆、ペルシア湾上空で発射された対ドローン迎撃ミサイル、そして政権当局者がイランの政治的継承の微妙な点について議論する時間は、21世紀を特徴づける真の地殻変動的な課題からエネルギーを逸らすことを意味する。

アメリカにとって最も重要かつ不可欠な役割は、北京とモスクワの修正主義的な野望に対抗し、国際システムを安定させることである。中国は中東地域の泥沼に足を踏み入れるどころか、人工知能、量子コンピューティング、太陽光発電、風力発電、バッテリー、ロボットなどの、世界の勢力均衡を決定づける技術に容赦なく投資している。ロシアは、探知が困難で、撃退が極めて困難なハイブリッド型の政治・軍事戦争を通じて、ヨーロッパの安全保障を混乱させ、西側民主政体を弱体化させることに依然として固執している。モスクワと北京がアメリカの世界秩序の根幹を揺るがす一方で、ワシントンは再び中東地域の治安維持と、その一国の指導者の選出に、血と財産を費やそうとしている。

歴史は、大国が「小規模戦争(small wars)」の魅力に屈することが多いことを示唆している。それは、小規模戦争が、迅速で政治的、道徳的な勝利という幻想を与えてくれるからだ。残念ながら、こうした戦術的な成功は戦略的な利益につながることは稀であり、むしろ長期的な疲弊への第一歩となることが多い。

イランへの介入が成功したとしても、アメリカはイランの運命に深く関与せざるを得なくなるだろう。果たして、今後10年間、アメリカの時間とエネルギーを最も有効に投入すべき分野はイランなのだろうか? イギリスの役割から得られる教訓は明白だ。大国は通常、外国軍に征服されるから滅びるのではない。周辺地域に過剰に手を広げ、中核地域を軽視するからこそ滅びるのである(They fall because they overextend themselves on the periphery while neglecting the core)。

※ファリード・ザカリア:CNN番組「ファリード・ザカリアGPS」司会者、著述家。最新作に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週に一度コラムを掲載し、『フォーリン・ポリシー』誌に転載されている。Xアカウント:@FareedZakaria

=====

大英帝国がグアドループではなくカナダをどのようにして選んだか(How the British Empire Chose Canada Over Guadeloupe

-ロンドンはフランスとの戦争の戦利品を獲得したが、アメリカ合衆国を失った。

ダンカン・ウェルドン(イギリスのジャーナリスト・歴史家)筆

2026年2月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/06/british-empire-france-americas-history/

戦争は費用がかさむ事業だ。大同盟戦争(九年戦争、War of the Grand AllianceNine Years’ War)(1688~1697年)の終結までに、イングランドの国家債務は国民所得(national income)の約20%に達した。これは今日の基準からすれば低い数字だが、当時としては憂慮すべき高水準だった。しかし、住宅ローンやその他のローンを組んだ経験のある人なら誰でも知っているように、重要なのは借入の総額(the quantum of the borrowing)だけでなく、そのコストだ。

イングランド(そして1707年のスコットランド合同法以降はグレートブリテン)が支払いを滞納しないことを確約し、議会が必要に応じて税収を増額する能力を示したことで、課税金利は低下し始めた。1750年代の七年戦争(Seven Years’ War)の時期には、イギリス政府はわずか3%の金利で借入を行うことができた。理論上、国家債務(national debt)は「完済(pay off)」するという計画が常に存在した。

18世紀を通じて、財政部門の政府高官たちはしばしば、議会が例えば8%の借入を前提に課税を認めているものの、実際のコストはそれよりも低く、おそらく4%か、5%程度であり、その差額を元金の返済に充てることができると指摘した。1710年代後半、楽観的な当局者は22年以内に全額返済できると考えていた。しかし、この安心感を与える計算は、イギリスとフランスとの長きにわたる断続的な戦争という現実を無視していた。スペイン継承戦争(War of the Spanish Succession)とオーストリア継承戦争(War of the Austrian Succession)の末、七年戦争(1756~1763年)が始まる頃には、政府債務はGDPの約100%に達した。

しかし、イギリスに奉仕するコストは極めて抑えられるものだった。

多額の債務と高金利を抱え、さらなる借入を余儀なくされた国は、一般的に軍事力の低下を招く。しかしながら、18世紀のイギリスは、フランス革命の引き金となった債務よりも高額な債務を抱えていたかもしれない。しかし、制度的な信頼性に基づく低金利(the low interest rates, based on institutional credibility)が、当時のイギリスの債務を決定的に異なるものにしていた。

1750年代におけるイギリスの世界戦争への成功を支えたのは、まさにこの財政的枠組み(financial framework)だった。イギリスは最高クラスの海軍を維持し、財政的に逼迫しているヨーロッパ大陸の同盟諸国に補助金を支給することで、フランスと戦う軍隊を戦場に維持することが可能となった。

イギリスにとって、特に戦争後半においては、七年戦争は真に世界規模の紛争となった。ここで、「イギリス流の戦争術(“British way of warfare)」という、時に物議を醸す概念の起源を探ることは重要だ。九年戦争では、元はオランダ人であったイギリス王オラニエ公ウィリアムは、オランダ共和国が南のより大きな隣国に侵略される可能性を当然ながら懸念し、大陸で直接戦うためにフランドルに大規模なイギリス軍を維持していた。

1700年から1714年にかけて戦われたスペイン継承戦争でも、同様の大陸への関与が見られ、マールバラ公爵はヨーロッパで有名な勝利を収めた。しかし、これはイギリスで必ずしも好評だった訳ではない。海軍の存在を正当化するのは容易だった。それは、海軍は島国を侵略から守るだけでなく、成長するイギリスの権益と海外貿易の保護・拡大にも貢献したからだ。

この問題は、アン女王(ウィリアムとメアリーの後継者)が1714年に子供を残さずに亡くなったことでさらに分極化した。プロテスタントによる王位継承の必要性から、ハノーヴァー公ジョージ1世がイギリス国王に即位し、ドイツにおける元々の領地も維持した。ハノーヴァー朝の最初の数十年間、イギリス議会の議員の一部は、イギリス軍がヨーロッパ大陸におけるハノーヴァー家の権益に奉仕しているように見えることに抵抗感を抱いていた。 1756年から1761年まで内閣の一員であり、実質的にイギリスの戦時戦略の管理者であったウィリアム・ピット(父)に代表されるイギリスの戦争方法は、大規模な軍隊の必要性を軽視し、ヨーロッパにイギリス軍を派遣することに懐疑的であり、その代わりに同盟諸国への財政支援、強力な海軍の維持、敵国の植民地や海外領土の支配権の獲得の重要性を強調した。

この戦略の支持者たちは、イギリスの強み、すなわち海軍力の比較優位(a comparative advantage in naval power)と、同盟諸国を経済的に支援できる財政力(the financial strength to support allies economically)を生み出す海洋文化(a maritime culture)を活用できると主張した。結局のところ、フランスはイギリスよりもはるかに大きな国であり、陸軍に関しては常に優位に立っていた。こうした行動の副産物の一つは、海外のフランス植民地を掃討する機会をもたらした。

これはまさに1750年代のイギリスが辿った道である。ウィリアム・メイクピース・サッカレーの小説『バリー・リンドンの幸運』に描かれているように、小規模なイギリス軍はドイツで戦い、ミンデンの戦いで大きな称賛を得たが、イギリスの戦争活動の大半はヨーロッパ外に集中していた。インドとケベックでの勝利に加え、カリブ海に浮かぶフランス領の島々も占領され、戦争末期にはスペインに宣戦布告し、フィリピンとキューバを併合した。

しかし、これらの獲得物全てを永久に保持することが意図された訳ではなかった。18世紀の政治家たちは、和平交渉(peace talks)はギヴ・アンド・テイクを伴う交渉プロセスであることを認識していた。実際、当時の和平条約の特徴の一つは、しばしば通商条項を含んでいたことだ。勝者は植民地の一部を奪取するだけでなく、かつての敵国が支配する市場において、自国の輸出品に対する有利なアクセスを要求することもあった。

戦争終盤におけるイギリスの目標は、避けられない和平交渉に向けて十分な選択肢を持つために、可能な限り多くの土地を奪取することだった。しかし、スペインとの紛争においては、これは計画通りには進みなかった。18世紀の通信手段は限られていたため、マニラを攻撃したイギリス軍は、戦争の知らせがフィリピンに届く前に攻撃を開始し、その知らせがヨーロッパに届く頃には、既に条約は締結されていた。

しかし、フランスとの避けられない交渉が始まる前に、イギリスでも和平と引き換えにどの戦利品を保持し、どの戦利品を返還すべきかについて、多くの交渉が行われた。1760年から1763年にかけて、現代の私たちからすれば、かなり突飛に聞こえる激しい議論が繰り広げられた。イギリスはカナダを保持するべきか、それともグアドループを保持するべきか? ベンジャミン・フランクリンからカーライル司教に至るまで、様々な人物が書いたパンフレットがこの問いに意見を述べている。

この議論は、見た目ほど奇妙なものではなかった。

カナダは地理的にはるかに広大で人口もはるかに多かったものの、すぐに得られる経済的利益は少なかったように思われる。ビーバーの毛皮貿易は確かに魅力的だったが、グアドループは砂糖の島であり、砂糖は18世紀のヨーロッパで非常に需要の高い高価値商品だった。しかし、グアドループからすぐに得られる経済的利益は、カナダにとっての明確な安全保障上の理由と対比させる必要があった。イギリス自身の北アメリカ13植民地のすぐ北に位置するフランスの植民地を撤去すれば、イギリスの立場が安定するだけでなく、駐屯地運営費用が減って最終的には財政的な節約にもつながると期待された。

議論は時折、激しさを増した。終戦時に政府を率いたビュート伯爵は、『ノース・ブリトン』紙でビーバーの毛皮の魅力を理解していないと非難され、「もし人工的な暖かさを求めるほど親切な女性がいるなら、私たちにはそのための猫や犬がいる。・・・その上、実に愉快な荒々しさで」と皮肉られた。

最終的に、イギリスは砂糖の島がもたらす利益よりも、北アメリカ植民地の安全保障を優先した。しかし、パンフレット戦争において洞察力のある一部の評論家が認識していたように、これは長期的にははるかに逆の結果をもたらすことになる。近代カナダにおける大規模なフランス植民地の存在は、少なくとも、これらの植民地が安全保障をイギリスに頼る明確な理由となっていた。

1760年代のあるイギリス人植民者はこう記している。「畏敬の念を抱かせてくれる隣国が、必ずしも最悪の隣国とは限らない」。フランスの脅威がなくなったことで、植民者たちの動機は変化した。パリ条約以前は、大英帝国の一部であることは多少の負担を強いられたかもしれないが、同時にフランスからの保護という明確な利益も伴っていた。

パリ条約締結後も、イギリスが植民地に帝国統治の重荷を負わせようとしたため、コストは依然として残り、むしろ増加し始めた。しかし、その利益ははるかに疑わしいものだった。グアドループをカナダと交換したことは、結局のところ、イギリスにとって北アメリカを失ったことにつながったかもしれない。イギリスの制度は世界大戦に勝利することを可能にしたが、インセンティヴを理解していなかったため、その勝利は空虚なものとなった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
 第二次ドナルド・トランプ政権内で影響力を増しているJD・ヴァンス副大統領はこれから慎重に、バランスを取りながら、トランプから嫌われないようにしながら、2028年に自身の大統領選挙での勝利に向けて決断と行動をしなければならないという難しい状況になる。そこで重要になってくるのはヴァンスの後ろ盾となっているピーター・ティールの存在だ。露骨に書けば、ヴァンスはティールの課したいくつかの課題をすべてクリアしたことで、現在の地位にある。それはつまり、ティールが「こいつを大統領にする」という試験に合格しているということである。第一次トランプ政権誕生においても重要役割を果たし、「影の大統領」と呼ばれたティールは、イーロン・マスクとも「ペイパル・マフィア」としてつながりを持ち、トランプとマスクを結び付ける役割を果たした。ティールが「次の大統領にはヴァンスを」ということになれば、マスクも進んで支援するだろう。これは、拙著『』(ビジネス社)で取り上げた、新・軍産複合体がヴァンスを大統領にするという動きでもある。

 ヴァンスを支える政治組織として、ロックブリッジ・ネットワークというものがあることは、先日、このブログでもご紹介した。その記事は以下の通りだ。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」:2026年5月7日付記事「JD・ヴァンス副大統領を支える「ロックブリッジ・ネットワーク」について紹介する」↓

https://suinikki.blog.jp/archives/90471185.html

 以下で、ロックブリッジ・ネットワークについての記事をご紹介している。私はロックブリッジ・ネットワークについて調べていく中で、ヴァンスとティールは、大統領の座を目指すために、この組織を作った、そして、ドナルド・トランプの後継者として2028年の大統領選挙での勝利を目指しているという感触を持った。それは、ロックブリッジ・ネットワークには資金源となる財界人も入っているが、トランプ政権にとって極めて重要な人物で、ホワイトハウスを取り仕切るスージー・ワイルズ大統領首席補佐官、そして、トランプの長男であり、トランプ一家にとって重要な存在であるドナルド・トランプ・ジュニアをネットワークに入れていることからも分かる。トランプ・ジュニアは、2028年大統領選挙の候補者としても名前が挙がっているが、ヴァンスが圧倒的な支持率を誇っている。重要なことは、トランプ・ジュニアがヴァンスを支持するとなれば、ライヴァルたちはもう追いつけないということになる。そのために、トランプ・ジュニアに、ネットワークに入れて、ある程度の金儲けをさせているということになる。ワイルズはトランプの信頼が厚い人物であり、ワイルズの口添えがあれば、ヴァンスの先行きは明るいということになる。ヴァンスとティールは少しずつ2028年に向けて根回しをしているだろう。これからさらに注目していかねばならない。
(貼り付けはじめ)
台頭するMAGA支持者たちの秘密会合の舞台裏(Behind the Scenes at a Secretive Gathering of Rising MAGA Donors

―ウィンクルヴォス双子兄弟、レベカ・マーサー、イーロン・マスクの盟友たち、ドナルド・トランプ・ジュニア、そしてトランプ陣営の幹部たちが最近、突如として権力を手にした右派系献金者たちの会合に参加した。

セオドア・シーファー筆

2024年11月20日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2024/11/20/us/politics/rockbridge-trump-vance-wiles.html

rebekahmercersusiewilesdonaldtrmpjr001

ラスヴェガスで開催された今年のロックブリッジ・ネットワークの会合には、共和党の大口献金者であるレベカ・マーサー、ドナルド・J・トランプ次期大統領の大統領首席補佐官を務めるスージー・ワイルズ、そしてドナルド・トランプ・ジュニア(左から)が出席した

次期ホワイトハウス大統領首席補佐官に指名されてからわずか4日後、スージー・ワイルズはラスヴェガスの五つ星ホテルでエスプレッソを辛抱強く待っていた。

一夜にして、スージー・ワイルズはアメリカで最も影響力のある人物の一人となった。大統領移行期において、彼女の1分1秒の価値はかつてないほど高まっている。共和党の野心家たちは、彼女に魅力的なポストを要求し、一方、マール・ア・ラーゴでは、次期大統領ドナルド・J・トランプが人事を巡って物議を醸し続けている。

しかし、彼女は数千マイル離れた場所で、警備員一人を伴って、フォーシーズンズホテルのコーヒーショップに一人で並んでいた。彼女は、選挙対策本部長クリス・ラシヴィタ、世論調査担当トニー・ファブリツィオ、資金調達責任者メレディス・オロークといったトランプ陣営の幹部たちとの昼食を終えたばかりだった。「みんなただのんびりしているだけなんだ」と、ホテル内を歩いているところを近くにいた『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者に目撃されたと知らされたトランプ一行の一人が驚いた様子で冗談めかして言った。

キャリアの中でも最も重要な時期に、トランプ陣営の面々が何日も滞在する必要があったのはなぜだろうか? それは、共和党の献金者層の中で急速に台頭してきた、裕福なテクノロジー企業の幹部とその支持者たちによる秘密結社ロックブリッジ・ネットワーク(the Rockbridge Network)の秋の会合のためだった。

JD・ヴァンスが5年前に共同設立したこの団体は、非公式な夕食会から発展し、共和党の有力献金者による強力な連合体へと成長した。この団体のある関係者によると、2019年以降、ロックブリッジのプロジェクトに1億ドル以上を寄付し、シリコンヴァレーの右傾化を牽引してきたという。ロックブリッジにとって、ヴァンスの副大統領選出はまさに快挙であり、新たな国家的影響力を行使する絶好の機会となった。

しかし、ロックブリッジ・ネットワークは、コーク・ネットワーク(Koch Network)のような富裕層の保守派団体が、リベラル派の批判者や共和党支持者から攻撃を受けていることを念頭に置き、活動を極秘裏に進めてきた。

先週、黒塗りのSUVの車列が億万長者たちをプライヴェートジェットからホテルへと送り届ける中、ロックブリッジ・ネットワークのメンバーがホテル周辺で目撃された。共和党有数の献金者一族の令嬢であるレベカ・マーサーは、ロビーで祝福に駆けつけた人々に挨拶をしていた。ホテルのバーでハッピーアワーを楽しんでいたのは、イーロン・マスクの親友であるケン・ハウリーとルーク・ノセックの2人。彼らはマスクと共にペイパル(PayPal)で働き、巨万の富を築いた。

そして、映画「ソーシャル・ネットワーク」で有名になった、身長196センチの仮想通貨投資家でハーヴァード大学ではボートクルーだったタイラーとキャメロンのウィンクルヴォス双子兄弟の姿も見逃すことはできなかった。

tylerwinklevosscameronwinklevoss001

2021年のタイラー・ウィンクルボスとキャメロン・ウィンクルボス。彼らは最近、他の裕福なテクノロジー企業の経営者やその仲間たちと共にロックブリッジで開催された会合に参加した

白と赤のギフトバッグとストラップを身につけた出席者たちは、ホテル関係者や、非公開のこの会合に招待されていない『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者に話しかけられても、口を閉ざすよう心得ていた。しかし、出席者によると、議事録には、アンドゥリルの共同創業者であるパルマー・ラッキーやヴェンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンなど、複数のテクノロジー界の大富豪による講演が記載されていた。アンドリーセンは、テクノロジー規制緩和への支持や、トランプへの支持表明に対するシリコンヴァレーの賛否両論について語ったという。

テクノロジー業界の新進気鋭の人物もいた。ドナルド・トランプ・ジュニアは、歓迎夕食会でヴェンチャーキャピタル業界への参入を発表した。そして、次期大統領がロバート・F・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官に指名する数日前、ケネディは自身の公衆衛生に関する取り組みについて詳しく語り、聴衆からスタンディングオヴェーションを受けた。ワイルズはまた、「2024年選挙分析(2024 Election Analysis)」と題したセッションを主導し、トランプの大統領就任後の最初の数日間を概観した。

「これはアメリカ国内版『砂漠のダヴォス会議(Davos in the desert)』だ」とロックブリッジ・ネットワークの支援者であり、ドナルド・トランプ・ジュニアの新たなビジネスパートナーでもあるオミード・マリクは、リヤドで開催される年次ビジネス会議に言及しながら語った。

omeedmalikdonaldtrumpjr001

2023年にドナルド・トランプ・ジュニアと共にニューヨーク証券取引所に出席した金融家オミード・マリクはロックブリッジ・ネットワークの中核メンバーとなり、トランプ一家の友人となった

●小規模な夕食会からリッツ・カールトンへ(From small dinners to the Ritz-Carlton

ロックブリッジ・ネットワークは、より謙虚な形で始まった。2019年、当時『ヒルビリー・エレジー』の著者として知られていたヴァンスと、保守系メディア関係者のクリス・バスカークは、ヴァンスの政治キャリアの基盤を築き、最終的にはコーク・ネットワークに対抗するトランプ派の組織を構築することを目指し、非公式に小規模な夕食会を何度か開催し始めた。初期の会合の一つは、ヴァンスがオハイオ州ロックブリッジのリゾートで寄付者や活動家を集めて開催したもので、そこで「ロックブリッジ」という名前が誕生した。

このグループは、マーサーとヴェンチャーキャピタリストのピーター・ティールから最初の資金提供を受け、やがてドナルド・J・トランプの目に留まり、トランプはいくつかの会合で講演を行った。

秋と春にそれぞれ一度ずつ、ロックブリッジはフロリダ州パームビーチのフォーシーズンズやダラスのリッツ・カールトンといった場所で、3日間にわたる政治パネルディスカッションとビジネス交流会を開催するようになった。講演者には、タッカー・カールソン、ティールの弟子であるブレイク・マスターズ、カジノ王のスティーヴ・ウィン、投資家のデイヴィッド・サックス、そしてニューヨーク・ジェッツのオーナーである億万長者のウッディ・ジョンソンなどが名を連ねた。

参加者全員が政治に関心を持っている訳ではない。中には、ロックブリッジをエリート層向けのサンヴァレー会議の保守的なヴァージョンと捉え、ビジネスに強い関心を持つ人もいる。

かつて『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄稿していた論説委員で、2016年にトランプ支持の出版物「アメリカン・グレートネス(American Greatness)」を創刊したバスカークは、政治に直接携わった経験は限られていた。しかし、彼は「ニューライト(the New Right)」と呼ばれる運動、保守系ビジネス界、そしてトランプの周辺との人脈を活かし、共和党の献金者を組織し、ロックブリッジ・ネットワークを築き上げた。彼はこの記事へのコメントを拒否した。

chrisbuskirk001

クリス・バスカークはJD・ヴァンスと共にロックブリッジ・ネットワークを設立し、政治に直接携わった経験は限られているものの、徐々に組織を拡大し、保守系のプロジェクトに資金を提供してきた

ロックブリッジ・ネットワークは、今年献金者に配布された資料によると、「永続的な政治基盤を構築(builds lasting political infrastructure)」し、「共和党の衰退の一因となっているシンクタンク、メディア組織、活動家グループといった現在の共和党のエコシステムに取って代わることを目指している」としている。その野心は明白だが、長年の参加者の中には、ロックブリッジがこれらの目標達成にどれほど近づいているのか疑問視する声もある。

ヴァンスが2022年のオハイオ州選出連邦上院議員選挙で勝利し、今年大統領選挙で副大統領候補に選出されたことは、ロックブリッジとバスカークにとって強力な正当性の証明となった。バスカークは現在もヴァンスの側近として活動している。バスカークはロックブリッジ社の資金を活用し、今回の選挙サイクルでトランプの草の根運動を強化するため、迅速にスーパーPACを立ち上げた。また、かつては共和党の資金調達において二流と見なされていたロックブリッジは、一部の主流派共和党員でさえラスヴェガスまで足を運ぶほどの影響力を持つようになった。

ロックブリッジが実際にどれだけの資金を運用しているのかについては、依然として懐疑的な見方がある。ロックブリッジ・ネットワークへの寄付者は若年層が多く、起業家出身者で、資産の流動性が低い傾向にある。フォーシーズンズホテルのロビーには、スタートアップ企業のTシャツを着た人々とMAGA帽やカウボーイブーツを履いた人々が混在し、シリコンヴァレー、オースティン、マイアミといったテクノロジーの中心地から人々が集まっていた。

●1億ドルを政治に静かに流し込む(Quietly funneling $100 million into politics

選挙直後にこの秋の会合を開催したことで、サミットがまるで葬儀のような雰囲気になってしまう危険性もあった。しかし、実際は正反対だった。

イヴェントが正式に始まる前から、ワイルズはラスヴェガスに滞在し、ロックブリッジの寄付者や友人約30人を招いて、ステーキハウスで土曜日の屋外ディナーを主催していた。賑やかなオープンバーや音楽が流れる宴会場で、参加者たちはトランプ政権でどのような役職に就けるかについて率直に意見を交わし、マスクが世界で最も影響力のある人物かどうかについて議論を交わしていた。

「ロックブリッジ・ネットワークの参加者は皆、技術者と政治家が再び直接協力し合い、互いに公然と敵対しなくなったことを非常に喜んでいた」と出席したソイレントの共同創業者ジョン・クーガンは語った。彼は続けて次のように述べた。「もはやテクノロジーが未来を牽引するかどうかではなく、その影響をいかに導くかが問われている。だからこそ、テクノロジー界の大富豪と政界のエリートたちが共にパーティーを開くのは当然のことなのだ」。

ヴァンスは出席しなかった。これは異例のことで、一部の支持者にとっては残念なことだった。しかし、ヴァンスの勝利によってロックブリッジ・ネットアークは一躍人気となり、直前になって参加申し込みが殺到した。以前は5000ドルで参加できたこともあったロックブリッジ・ネットワークは、最低参加費を2万5000ドルに引き上げた(ただし、一部の参加者はもっと安く参加できたと内緒話をしていた)。

ニューヨーク・タイムズ紙が入手した目論見書によると、ロックブリッジの会員資格の費用は、「リミテッド・パートナー」の10万ドルから、「プリンシパル・パートナー」の100万ドルまでとなっている。

この資金は、ロックブリッジが運営する8つの組織に充てられる。これには、4つの非公開資金を扱う501(c)()団体、2つのスーパーPAC、非営利活動のための寄付者指定型501(c)()基金、そしてロックブリッジ・ネットワークという傘下組織(有限責任会社)が含まれる。バスカーク氏が主宰するスーパーPAC「ターンアウト・フォー・アメリカ」は、今年少なくとも2500万ドルを調達している。

jdvance202

次期副大統領のJD・ヴァンスはロックブリッジの共同創設者。ロックブリッジは、ヴァンスが2022年のオハイオ州選出連邦上院議員選挙で勝利した後、影響力を増し、現在、さらに大きな影響力を行使しようとしている

ロックブリッジ傘下の8つのグループは、主に投票促進活動を行っている。そのうちの1つ、「フェイスフル・イン・アクション(Faithful in Action)」は、16万人の会員を擁し、週2回、小規模教会にフィールドチームを組織している。このグループは、公的な活動は一切行っていない。

ロックブリッジ傘下のグループは、トランプに対する訴訟を追及する検察官を調査するドキュメンタリーも制作している。目論見書によると、ロックブリッジは2020年以降、「提携メディアに無料で提供される」世論調査に資金を提供してきた。また、提携メディアが掲載する「地方および全国規模の調査」にも資金援助を行っている。

●新たなタイプの共和党献金者(A new breed of Republican donors
siliconvalleyinvestors001

ヴァンスの新たな職務は、ロックブリッジとその150人の会員をトランプ政権の政策推進において影響力のある存在にする可能性が高い。

その理由の一つは、トランプがリバータリアン系のコーク・ネットワークや、よりタカ派的なアメリカン・オポチュニティ・アライアンス(American Opportunity Alliance)といった伝統的な共和党献金者グループと、時に冷え込んだ関係を築いてきたことにある。対照的に、ロックブリッジはトランプ時代に設立され、ライヴァル団体ほどの財力はないものの、トランプ氏と同様の過激な姿勢を共有している。

「保守系の大口献金者たちは、ここで決断を迫られている」とヴァンスの側近で、こうした大口献金者たちと親しい影響力のある保守派経済学者オレン・キャスは語る。「2024年の選挙までは、トランプが成功しないかもしれないという、少なくともそれなりの根拠があった」。

しかし、キャスによれば、もはやその根拠は存在しない。「古い船の貨物室に閉じ込められて沈没しようとしているのは誰なのか、そして保守主義の未来にとって真に重要な存在でありたいと願っているのは誰なのか?」と彼は問いかけた。

バスカークはラスヴェガスの献金者たちに対し、選挙期間中、ロックブリッジは約3000人を現場でトランプのために活動させていたと語った。そして、共和党の勝利後、ロックブリッジのプロジェクトはさらに規模を拡大する時が来たとバスカークは述べた。

セオドア・シュライファーは、選挙資金とアメリカ政治における億万長者の影響力を取材する『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者である。

=====

所属政党に不満を抱く裕福な共和党献金者たちが秘密の連合を形成する(Dissatisfied With Their Party, Wealthy Republican Donors Form Secret Coalitions

―いわゆる「闇資金グループ(dark money group)」における民主党の優位性を相殺しようと、ピーター・ティールのようなトランプ支持派の裕福な保守派は、従来の党組織の枠外でより大きな影響力を行使しようと画策している。

シェイン・ゴールドマチャー、ライアン・マック筆

2022年4月6日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2022/04/06/us/politics/republican-donors-rockbridge-network-trump.html

「共和党の政策を混乱させつつも推進する(disrupt but advance the Republican agenda)」ことを目指すと表明する、裕福な保守派支援者による新たな連合が今週、フロリダ州南部で非公開のサミットを開催した。文書や関係者へのインタヴューによると、このサミットではドナルド・J・トランプ前大統領と、トランプと連携する連邦上院議員候補が、トランプの所有するマール・ア・ラーゴ・クラブで非公開の演説を行った。

ロックブリッジ・ネットワークと呼ばれるこの連合には、ピーター・ティールやレベカ・マーサーなど、トランプの最大の献金者も含まれており、保守系メディア、法律、政策、有権者登録などのプロジェクトに3000万ドル以上を投じ、アメリカの右派勢力を再構築するという野心的な目標を掲げている。

これまでその存在が報じられていなかったロックブリッジの出現は、保守派の大口献金者たちが、党の正式な組織機構の外で、そして多くの場合ほとんど情報公開をせずに、2022年の中間選挙と共和党の将来を左右しようと、激しい駆け引きを繰り広げている中で起こった。

2月には、これまで報道されていなかった別の寄付者連合、トランプと親しいロビイスト、マット・シュラップが組織したチェスナット・ストリート・カウンシルが会合を開き、保守運動への新たな資金調達モデルについて説明を受けた。

こうした新興連合が勢いを増せば、トランプに懐疑的あるいは中立的な立場を取ってきた既存の寄付者ネットワークと、保守派の間で影響力を巡って競合することになるだろう。

億万長者の実業家チャールズ・G・コークとデイヴィッド・H・コークが設立したある連合は、2020年に2億5000万ドル以上を支出した。また、ニューヨークのヘッジファンドの億万長者ポール・シンガーが主導する別の連合は、2月に共和党の有力政治家を招いて会合を開いた。

秘密裏に行われる資金調達の急増はそれだけにとどまらない。トランプへの忠誠度の異なる複数の非営利団体も、右派への献金の主要な分配者となるべく競い合っている。

こうした駆け引きは、共和党を取り巻く政治構造、そして場合によっては党の政治家に対する右派の不満、さらにトランプが次期大統領選出馬を示唆する中での党の方向性に関する意見の相違を浮き彫りにしている。

共和党の最も裕福な活動家たちの資金力を活用しようとする動きは、今年の中間選挙、そして場合によっては2024年の大統領選に向けて、共和党にとって有利な選挙環境を活かすのに役立つ可能性がある。逆に、富裕層が競合する候補者、団体、戦術に資金を投入すれば、共和党の見通しは暗くなるだろう。

寄付者が自ら組織化しようとする姿勢は、寄付者の身元開示が義務付けられている各政党の公式機関から、開示義務がほとんどない外部団体へと権力と資金が流出していることを浮き彫りにしている。これはまた、各政党の候補者や政策を支援する非営利団体に関して、政治的右派が不利な立場に置かれているという、一部の有力共和党員の懸念を反映している。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の分析によると、民主党と概ね連携する政治活動が最も活発な非営利団体15団体は、2020年に寄付者の身元が非公開の資金で15億ドル以上を支出した。これに対し、共和党と連携する同規模の15団体が支出した、いわゆる「闇資金(dark money)」は約9億ドルにとどまっている。

この格差を縮め、右派の政治基盤を支える政治コンサルティングやテクノロジー分野で優位に立つための取り組みは、これらの連合体の間で主要な議論の的となっている。

ロックブリッジ・ネットワークのパンフレットには「将来の選挙で勝利する可能性を少しでも高めるためには、私たちの陣営が組織化されており、必要な組織的ノウハウと資金的支援を備えていることを示す必要がある」と記されている。

今年、共和党の資金関係者の間で出回ったパンフレットは、ロックブリッジを「一種の政治的ヴェンチャーキャピタル企業(a kind of political venture capital firm)」と称し、「(投資家の資金を適切な政治的専門知識で活用(leverage our investors’ capital with the right political expertise)」することで、「党の衰退の一因となっている現在の共和党のシンクタンク、メディア組織、活動家グループといったエコシステムを、より行動志向で、より効果的な、勝利に焦点を当てた人材と組織に置き換える(replace the current Republican ecosystem of think tanks, media organizations and activist groups that have contributed to the Party’s decline with better action-oriented, more effective people and institutions that are focused on winning)」としている。

ロックブリッジのパンフレットに記載されている取り組みの中には、広報、メッセージ発信、世論調査、「インフルエンサー・プログラム(influencer programs)」、調査報道など、メディア関連の機能が含まれており、総予算は800万ドルに上る。

375万ドルの費用が見込まれる「法廷闘争と戦略的訴訟(lawfare and strategic litigation)」は、裁判所を利用して「メディアを含む悪質な行為者に責任を負わせる(to hold bad actors, including the media, accountable)」ことを目的としている。300万ドルの費用が見込まれる「政権移行プロジェクト(transition project)」は、政策専門家を集め、「次期共和党政権のスタッフ(government-in-waiting to staff the next Republican administration)」を編成することを目的としている。

「レッドステート・プロジェクト(red state project)」とは、左派が先駆的に開発したモデルを模倣したもので、戦略家たちが様々な運動団体の活動を調整し、互いに補完し合い、重複を避けるという手法である。このプロジェクトは州ごとに600万ドルから800万ドルの費用がかかると見込まれており、当初は激戦州であるアリゾナ州、ネヴァダ州、ミシガン州に重点が置かれている。

ロックブリッジに詳しい関係者によると、これらのプロジェクトとその資金調達目標は野心的なもので、ロックブリッジ・ネットワークはこれまで新たな団体を設立するのではなく、既存の団体に寄付金を配分して目標を達成することに重点を置いてきたという。

関係者によると、この連合は昨年、有権者登録イニシアティヴを含むいくつかの計画をアリゾナ州で試験的に実施したという。アリゾナ州はパンフレットの中で事例研究として紹介されている。

アリゾナ州は、昨年開催されたロックブリッジ初のサミットの開催地だった。サミットでは、億万長者のテクノロジー投資家であるティールが講演を行った。ティールと、ヘッジファンドの大物ロバート・マーサーの娘であるレベカ・マーサーは、2016年のトランプへの最大の献金者の一人であり、トランプの政権移行チームで緊密に協力した。

それ以来、ティールは重要なキングメイカーとして台頭し、連邦上院議員と連邦下院議員の候補者16人を支援してきた。その中には、レベカ・マーサーも支援している候補者もいる。これらの候補者の多くは、トランプが2020年の大統領選に勝利したという虚偽の主張を鵜呑みにしている。

1つ目は、ティールの元従業員でアリゾナ州選出連邦上院議員選に出馬しているブレイク・マスターズだ。マスターズは火曜日夜、トランプに先立ち、マール・ア・ラーゴで開催されたロックブリッジの夕食会で講演を行い、ロックブリッジの活動から恩恵を受ける可能性が考えられる。

ティールは、マスターズとオハイオ州選出連邦上院議員候補のJD・ヴァンスを支援するスーパーPACにそれぞれ1000万ドルを寄付した。

ティールとレベカ・マーサーが今週のロックブリッジの会合に出席したかどうかは不明だ。この会合は、火曜日夜のマール・ア・ラーゴでの夕食会に加え、別のホテルでも会合が開かれた。マール・ア・ラーゴでの夕食会の直前には、トランプ支持者が集まる別のイヴェントが開催された。それは、フェイスブックの親会社であるメタ社のCEOマーク・ザッカーバーグが、パンデミックの中で選挙実施費用を賄うのに苦労している選挙管理委員会に2020年に助成金を提供したことを批判する映画のプレミア上映会だった。ティールはメタの取締役を務めていたが、中間選挙への影響力行使に専念するため、その職を辞任した。ロックブリッジへの関与は、ティールが非営利団体への秘密資金提供に手を広げようとしている可能性を示唆している。

ロックブリッジは、トランプ支持の雑誌「アメリカン・グレートネス」の編集長兼発行人であり、マスターズを支援するスーパーPACの顧問も務めるクリストファー・バスカークによって設立された。

ティールの広報担当者はコメントを拒否した。マーサーへ連絡する努力は成功しなかった。

15年以上前にコーク兄弟の政治活動の拡大を支援したシュラップは、2020年の選挙後、寄付者から「政治活動への資金調達の従来の方法に不満を抱いている」との声が寄せられたことが、チェスナット・ストリート・カウンシル設立のきっかけになったと述べた。

シュラップは、「こうした寄付者と協力して、より良い投資機会を見つけるのが賢明だと判断した」と述べた。

シュラップは、チェスナット・ストリート・カウンシルが投票規則をめぐる訴訟を支援する可能性を示唆した。

2月に開催されたチェスナット・ストリート・カウンシルの会合では、ヴェテラン共和党資金調達者のキャロライン・レンが寄付者に向けてプレゼンテーションを行った。

トランプの多くの政治活動、特に1月6日の連邦議事堂襲撃事件に先立つ集会の資金調達に尽力したレンは、右派は左派の献金者ネットワークや非営利団体の資金調達拠点といったシステムを模倣し、新たな団体を育成し、既存の団体間の連携を強化すべきだと述べたと、プレゼンテーションの内容を知る関係者が明らかにした。

近年、右派にも新たな資金調達拠点が出現しているものの、左派のそれほどの洗練された組織や資金規模には及ばない。

保守パートナーシップ研究所は、「保守運動のハブ(the hub of the conservative movement)」となることを目指している。保守パートナー研究所は2021年の年次報告書で、トランプの元補佐官スティーヴン・ミラーが率いるアメリカ・ファースト・リーガル、同じくトランプ政権出身のラス・ヴォートが率いるセンター・フォ・リニューイング・アメリカ、そして元住宅都市開発長官ベン・カーソンが率いるアメリカン・コーナーストーン研究所など、複数の新たな保守系非営利団体の設立に貢献したと主張している。

この団体には、選挙公正ネットワークも含まれており、そのリーダーは保守派弁護士クレタ・ミッチェルだ。ミッチェルは、当時大統領だったトランプがジョージア州当局者に対し、選挙結果を覆すのに十分な票を「見つける(find)」よう圧力をかけた1時間にわたる電話会議に同席していた。

保守パートナーシップ研究所は昨年夏、トランプの政治活動委員会(PAC)から100万ドルの資金提供を受け、昨年春にはトランプのプライヴェート・クラブであるマール・ア・ラーゴで寄付者向けの会合を開催した。

こうした団体は、選挙運動や政治活動委員会に比べて情報開示義務がはるかに少ないのが現状だ。保守パートナーシップ研究所や、司法活動家のレナード・A・レオが設立した別の非営利ネットワークのような資金提供拠点は、他の団体への助成金については開示義務があるが、資金提供者については開示義務がある。ロックブリッジ・ネットワークやチェスナット・ストリート・カウンシルのような寄付者連合も、おそらく開示義務はないだろう。

トランプをはじめとする政府関係者や大統領候補者たちが、こうした連合体との連携に積極的であることは、アメリカ政治におけるこれらの連合体の重要性が高まっていることの証左である。

シンガーの連合体であるアメリカン・オポチュニティ・アライアンスがコロラド州とフロリダ州パームビーチで最近開催した非公開会合には、マイク・ポンペオ元国務長官、フロリダ州知事ロン・デサンティス、マイク・ペンス元副大統領、ニッキー・ヘイリー元国連大使が出席した。

ミネソタ州選出のトム・エマー連邦下院議員(共和党連邦議員委員長)は、今週パームビーチで開催されるロックブリッジ・ネットワークの会合で講演する予定だった。

※シェイン・ゴールドマッハー:全国政治担当記者で、以前はメトロデスクの主任政治特派員を務めていた。『ニューヨーク・タイムズ』紙に入社する前は、『ポリティコ』誌で共和党の全国政治と2016年の大統領選挙を取材していた。

※ライアン・マック:世界のテクノロジー業界における企業の責任問題に焦点を当てたテクノロジー担当記者である。フェイスブックに関する報道で2020年にジョージ・ポーク賞を受賞した。ロサンゼルスを拠点としている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 イラン戦争は膠着状態に陥っている。ホルムズ海峡の閉鎖が解かれなければ、世界経済の混迷は続く。石油価格の高騰や石油由来の物品の不足は続くことになる。現在、表ではパキスタン、裏では中国が米中間を取り持ち、和平の条件を整えている。アメリカとイラン両国はできるだけ自分に有利な条件でと考えているだろうが、落としどころを見つけて、一日も早く停戦合意、和平合意を達成してもらいたいところだ。アメリカはイランの核兵器開発能力の完全廃絶、イランは体制の保証、安全の保証を求めている。ここで問題になっているのは、「アメリカの信頼性の欠如」だ。より正確に言えば、「トランプのする約束の信頼性の欠如」だ。

 トランプは、前政権が行った約束を反故にするということをしてきた。たとえば、第一次政権時、バラク・オバマ政権がイランとの交渉の末締結した核開発に関する合意を放棄した。また、キューバとの間の国交正常化や経済関係正常化についても反故にする決定を行った。トランプはアメリカ政府の継続性を無視し、約束を反故にするということをしてきた。それがここにきて重荷になっている。「トランプが約束したとしてもそれが守られる保証はない」というのは非常に厳しい。しかしそれでもなお、和平交渉は再開され、和平合意は達成されなければならない。なぜなら、アメリカはこれ以上、大規模な攻撃はできないし、実行する意志もない。地上軍を派遣してイラン国内で大規模な戦闘を展開するということはもってのほかだ。

 イランはアメリカ側が音を上げるまで、嫌気がさして、「何でも言うことを聞く」というところを目指しているだろう。中国やパキスタンは「アメリカにも少しは花を持たせないと、現状が続くことはイランにとっても得策ではない」という説得を続けているだろう。そして、アメリカ側に対しては「トランプの信頼性のなさが問題だ」ということは伝えているだろう。そうなれば、「少なくとも外交に関してはJD・ヴァンス副大統領が主導権を握って進めてくれなければ困る」ということになるだろう。「いざとなれば、トランプを座敷牢に閉じ込めてでも」という決意をもって、責任をもって外交運営ができる人物はヴァンスであり、トランプ自身が後ろに引くことで、和平が進むということになる。トランプにとっては不満が募ることになるだろうが、和平がなければ中間選挙の結果もおぼつかず、そうなれば完全に無力化してしまうことになるとなれば、ここは妥協するしかないということになる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプのレッドラインは今や何の意味も持たない(Trump’s Red Lines Mean Nothing Now

―イランは、虚勢(bluff)、場当たり的な対応(improvisation)、そして服従の儀式(submission rituals)の上に築かれた大統領制の限界を露呈させている。

ファリード・ザカリア筆

2026年3月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/27/donald-trump-red-line-iran-war-barack-obama-syria-maga-foreign-policy-middle-east/

バラク・オバマ大統領の退任後、彼の外交政策における最大の誤りの一つは、シリアの「レッドライン(red line)」だったという見方が定説となった。オバマはシリアが化学兵器を使用すれば攻撃すると明言していたが、実際に化学兵器を使用した証拠が出てくると、介入(intervention)の是非を連邦議会に委ね、連邦議会は行動を起こさなかった。

当時、ドナルド・トランプはこれを「大惨事(a disaster)」と呼び、マルコ・ルビオ連邦上院議員(当時、フロリダ州選出、共和党)は「世代を超えて、そしてアメリカの評判を傷つける(generational and reputational damage)」出来事だと非難した。数年後、ピート・ヘグセスは、オバマの外交政策は「支離滅裂な迷路(an incoherent maze)」の一部だと批判した。リンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、オバマが自ら引いたレッドラインを無視したことで、世界におけるアメリカの信頼性を失墜させる危険を冒したと説明した。

オバマのレッドラインの二転三転(flip flop)は、イラン・イラク戦争以降に見られる政策決定の模範例と言えるだろう。先週、トランプ大統領はソーシャルメディアに「イランが今この瞬間から48時間以内に、脅威を与えることなくホルムズ海峡を完全に開放しない場合、アメリカ合衆国はイランの様々な発電所を攻撃し、破壊するだろう。まずは最大の発電所から攻撃を開始する」と投稿した。

その後の展開は皆さんがご存じの通りだ。イランはこの脅威に屈することなく、攻撃と海峡封鎖を継続した。トランプ大統領の対応はどうだったか? 急遽方針を転換し、エネルギーインフラに関するあらゆる措置を5日間延期すると発表した。そして、突如として、一晩にして、イランとアメリカが「中東における敵対関係の完全かつ全面的な解決(complete and total resolution of our hostilities in the Middle East)」に向けた「生産的な協議(productive conversations)」を開始したと主張した。イラン側はこうした協議が行われていることを否定した。そして今、トランプ大統領は延期期間をさらに1週間半延長すると発表している。

トランプ大統領の評価が相対評価(on a curve)で行われていることは、もはや明らかだ。関税を130%に引き上げるとか、イラン最大のガス田を爆破するとか、「戦争はほぼ終結した(the war is very complete, pretty much)」などと言っても、これらの発言にはほとんど意味がない。これらは実際のアメリカの政策かもしれないし、そうでないかもしれない。あるいは、1日か1週間だけ政策として通用し、その後変更される可能性もある。戦争はほぼ終結したと発言した直後、トランプは同じ日に「私たちはまだ十分な勝利を収めていない(we haven’t won enough)」「敵が完全に、そして決定的に敗北するまで、私たちは決して諦めない(we’ll not relent until the enemy is totally and decisively defeated)」と断言した。イランの指導者たちと交渉することに同意したものの、彼らが次々と殺されるため交渉できなくなったと述べているが、実際に殺戮を行っているのは紛れもなくトランプ自身の軍隊(そしてイスラエル軍)である。これで全て理解できるだろうか?

トランプの支持者たちは、この矛盾こそが戦略的な天才の所業であり、人々を油断させているのだと主張する。しかし、その政策は様々な理由で変化しているようだ。例えば、株価が下落したり、標的国がトランプを称賛し、金塊を贈呈したりするかもしれない。トランプの最大の強みは、瞬時に方針転換できる柔軟性(he is flexible enough to turn on a dime)と、彼が提案するものなら何でも受け入れる支持基盤(a base that will accept anything he proposes)を持っていることだ。かつては中東戦争に断固反対していたトランプのMAGA支持者の多くは、今や改宗者のような熱狂ぶり(the zeal of converts)でこの中東戦争を信じている。トランプ大統領は敵対行為を終結させたいと明言しているものの、今回の問題は関税問題とは異なり、彼自身が始めたことを止めることができない点にある。イランには投票権があり、現在イランは戦闘継続に投票している。弱体化しているとはいえ、世界経済に打撃を与え、ひいてはアメリカに痛手を与えるだけの軍事力は依然として持っていると判断している。

世界にとって、もはやアメリカの信頼性などというものは存在せず、ただ主人公が危機を巧みに回避し、昨日の発言によって引き起こされた危機を今日の発言で解決できると期待する、奇妙なリアリティ番組のようなものになっている。イランの発電所を破壊すると脅迫する前日、トランプはアメリカがイランに対する軍事作戦を「縮小(winding down)」することを検討していると主張し、ホルムズ海峡の防衛は自分の問題ではなく、海峡を通過する輸入品を扱う他国が対処できると示唆した。また別の時には、他国の助けは必要ないと述べた。かつてビジネスマンたちは政策の不確実性を理由に前政権を非難していたが、今ではトランプの混乱の祭典がほぼ毎週市場を揺るがす中、彼らはこぞってトランプを称賛している。

トランプ大統領は、アメリカの強大な力を弄び、従わない者を罰し、従う者を褒賞することに慣れきっている。そうすることで、彼は数十年にわたって築き上げてきた信頼を、短期的な利益を得るために浪費している。時には、それは彼自身の家族のビジネス上の利益にもつながっている。しかし、イランにおいては、彼は自分のルールに従わない敵対者と対峙しているように見える。

※ファリード・ザカリア:CNN番組「ファリード・ザカリアGPS」司会者、著述家。最新作に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週に一度コラムを掲載し、『フォーリン・ポリシー』誌に転載されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 先日、第二次ドナルド・トランプ政権内部のネオコン派の動きや政権を実質的に取り仕切るスティーヴン・ミラーホワイトハウス大統領次席補佐官の動きについての記事を紹介した。ブログの記事は以下の通りだ。ぜひお読みいただきたい。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」:2026年4月29日付記事「アメリカに対するイスラエルからの働き掛けの受容体となった第二次ドナルド・トランプ政権内のネオコンたちと政権を動かすスティーヴン・ミラー」

https://suinikki.blog.jp/archives/90465309.html

 この記事の中で、聞き慣れない言葉「ロックブリッジ・ネットワーク(Rockbridge Network)」が出てくる。このロックブリッジ・ネットワークは政治活動組織であり、傘下にいくつもの組織を抱えている。2019年に、JD・ヴァンスとクリス・バスカークという人物によって創設された。「ロックブリッジ」はヴァンスの地元オハイオ州にあるリゾート地で、ここで会合が開かれたことから、その名前が使われることになった。2021年には、バスカークの地元アリゾナ州で大規模な会合が開かれ、マスコミの注目を浴びることになった。バスカークについては別の記事で詳しくご紹介したい。

 ロックブリッジ・ネットワークに資金的な援助を行っているのが、ヴァンスの師匠であるピーター・ティールとレベカ・マーサーである。ティールについてはここで詳しく説明しない。拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新軍産複合体の正体』(ビジネス社)をお読みいただきたい。レベカ・マーサーは保守系、共和党系の政治組織やシンクタンクへの大口献金者として知られる。父ロバート・マーサーはIBMの技術者出身で、初期の人工知能(AI)開発に携わった人物だ。のちにルネッサンス・テクノロジーズというヘッジファンドを設立し、ウォール街で大成功を収めた。ルネッサンス・テクノロジーズはすでに売却している。数兆円に及ぶ資産を財団に編成し、レベカはその理事となり、潤沢な資産を右派の政治団体に供給し、存在感を増している。2016年の大統領選挙ではドナルド・トランプを支援し、その影響力は大きい。

 共和党系の大口献金者としては、これまで、コーク・インダストリーズのコーク一族がよく知られている。彼らは政治団体やシンクタンク、大学などに多額の献金を行い、また、様々な組織を作り上げ、「コーク・ネットワーク(Koch Network)」と呼ばれる政治活動ネットワークを作り上げている。このことについては拙訳『』(講談社)をお読みいただきたい。「ロックブリッジ・ネットワーク」はこのコーク・ネットワークをしのぐ規模になることを目指している。そして、もちろん、ヴァンスの大統領就任も目標にしている。以下の記事が長いので、紹介はこのあたりにするが、ぜひこれからヴァンス副大統領の動き、ロックブリッジ・ネットワークの動き、アメリカ政治の動きについて注目を続けていただきたい。

(貼り付けはじめ)

JD・ヴァンスと師匠に当たるピーター・ティール、あまり知られていないロックブリッジ・ネットワーク、そして2016年のキングメイカーであるレベカ・マーサーとの主要なつながりを示す図表と概要(Chart and overview of key links for J.D. Vance with mentor Peter Thiel, the little-known Rockbridge Network and 2016 kingmaker Rebekah Mercer

ウェンディ・シーグルマン筆

2024年7月29日

『ニューズトラックス』誌

https://newstracs.com/chart-and-overview-of-key-links-for-jd-vance-with-thiel-mercer-rockbridge/2024/07/29/

ドナルド・トランプがJD・ヴァンスを副大統領候補に指名して以来、ヴァンスが「子どものいない猫好き女性」を批判する女性蔑視的な発言や、子どものいないアメリカ人はより高い税率を支払うべきだといった物議を醸す見解を述べていることが報じられている。ソーシャルメディアはソファやヴァンスの奇妙さを揶揄するミームで溢れかえっている。さらに、ヴァンスと彼の師であるピーター・ティールが、2008年に「非生産的な人々はバイオディーゼル燃料に変換されるべきだ」と書いたカーティス・ヤーヴィンの思想に倣っているという、より悪質な報道もある。ヤーヴィンは後に冗談だったと釈明したが、その後、非生産的な人々を仮想現実世界に閉じ込めるという、映画「ソイレント・グリーン」や「マトリックス」を彷彿とさせる悪夢のようなシナリオを、大量虐殺の代替手段として提案した。

JD・ヴァンスがトランプ陣営に加わったことは、過激な極右のIT億万長者グループがどれほどの影響力を持っているか、そしてトランプが11月の選挙で勝利すれば、彼らの影響力がどれほど増大するかを示している。トランプが勝利しない場合、このグループがハリス政権を弱体化させるためにあらゆる手段を講じることは間違いないところだ。

JD・ヴァンスのネットワークにおける主要人物の図表Chart of some key people in J.D. Vance’s network
以下の図表と記事は、JD・ヴァンスとクリス・バスカークが共同設立したロックブリッジ・ネットワークを通じて、主要人物たちがどのように繋がっているかを示している。これはヴァンスと繋がるネットワークのごく一部だ。メディアはピーター・ティール、イーロン・マスク、その他のテクノロジー系億万長者に注目しているが、父親のロバートと共に2016年のトランプの勝利に多額の資金を提供したレベカ・マーサーを忘れてはいけない。レベカ・マーサーはこのネットワークに強い人脈を持ち、ピーター・ティールと共に再び政治的なキングメイカーとしての役割を果たそうとしている。

rockbridgenetwork001
1789capital001
parler001
2017informalpoliticalcoalition001
rumble001
colombieracquisitiocorppsqholdings001
heritagefoundation001

●テクノロジー界の巨頭たちとレベカ・マーサー(The tech broligarchs and Rebekah Mercer

2018年、キャロル・キャドワラダーは、レベカ・マーサーとロバート・マーサーが出資するケンブリッジ・アナリティカが、数千万件ものフェイスブックのプロフィールを収集し、そのデータを利用してアメリカの有権者をターゲットにするツールを構築した経緯について、複数のスクープ記事を発表した。ケンブリッジ・アナリティカに関する報道は、極右の政治家や献金者がテクノロジーと個人データを駆使して選挙に影響を与えるリスクを浮き彫りにした。

私の最初の調査と報道は2017年に始まり、SCLグループとケンブリッジ・アナリティカの企業一覧表を作成した。以来、これらの企業について継続的に報道している。

最近、キャドワラダーは、トランプを支持するJD・ヴァンス、ピーター・ティール、イーロン・マスクといったテクノロジー界の「巨頭たち(broligarchs)」について記事を書いている。

2016年に見られた、億万長者の献金者、テクノロジー、データに関するいくつかのパターンは、2024年の選挙でも継続している。

新たな権力者として台頭する一部のテクノロジー界の巨頭たちは、メディアで大きく取り上げられている。レベカ・マーサーのような人物は、過去の経験を利用して右翼的な政策を推進しており、こうした人物もこの陰謀ネットワークに関する報道に含めるべきである。

●ピーター・ティールはいかにしてテクノロジー界の巨頭となったのか(How Peter Thiel became a tech broligarch

ピーター・ティールは、2024年の大統領選挙に向けて最も有力なキングメイカー志望者(the most prominent ‘would-be’ kingmaker)と言えるだろう。もっとも、最近トランプを支持したイーロン・マスクと、その座を争っているように見えることもある。ティールとマスクは共に、ペイパル(PayPal)の共同創業者として巨万の富を築き、テクノロジー界の巨頭となった。

1990年代後半、世界が2000年問題(Y2K)への対応に追われる中、ピーター・ティールはオンライン決済ソフトウェア会社コンフィニティ(Confinity)を設立した。コンフィニティは後にイーロン・マスクが設立したX.comと合併し、ペイパルへと社名を変更した。マスクはペイパルを短期間経営した後、2002年にeBayに売却し、その資金をスペースXSpaceX)の設立資金に充てた。

ピーター・ティールはその後、クラリウム・キャピタル(Clarium Capital)(現在は閉鎖)、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)、ティール・キャピタル(Thiel Capital)、ミスリル・キャピタル(Mithril Capital)、ヴァラー・ヴェンチャーズ(Valar Ventures)など、複数のヴェンチャーキャピタル会社を設立、あるいは共同設立した。彼はフェイスブックに50万ドルを投資し、約10%の株式を取得した最初の外部投資家だった。

ヴェンチャーキャピタルや投資会社に加え、ティールはソフトウェアおよびデータ分析会社であるパランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)を設立した。パランティアは、トランプ政権以前、政権中、そして政権後も、国防総省、保健福祉省などから数億ドル規模の政府契約を獲得しており、膨大な量の政府データへのアクセス権を有している。

ピーター・ティールは巨万の富を築く過程で、多くの弟子たち(proteges)を育成してきた。その多くは、ティールの極右思想に共鳴する人々だ。弟子の一人であるJD・ヴァンスとブレイク・マスターズは、偶然にも(それぞれ別々に)ロースクール在学中にティールと出会った。ヴァンスはイェール大学ロースクール在学中にティールの講演を聴講し、もう一人の将来の有望株で弁護士のブレイク・マスターズはスタンフォード大学でティールが担当した「主権、テクノロジー、グローバライゼーション(Sovereignty, Technology, and Globalization)」という授業で出会った。

JD・ヴァンスとブレイク・マスターズは、ともにピーター・ティールが設立した企業で働いた。そして、2022年の中間選挙を前に、ティールは弟子2人を連邦上院議員に当選させるために数千万ドルを投じた。

ティールは、2022年にオハイオ州で連邦上院議員選挙に出馬し当選したヴァンスを支援する政治活動委員会(PAC)に1500万ドルを寄付した。

ティールは、アリゾナ州で連邦上院議員選挙に出馬したブレイク・マスターズを支援するPACにも1350万ドルを寄付した。マスターズは、現在カマラ・ハリスの副大統領候補として検討されているマーク・ケリーに敗れた。マスターズは現在、連邦議会議員選挙に出馬しており、最近トランプ大統領の支持を得た。

JD・ヴァンスのキャリアにおける重要な節目とピーター・ティールの支援(J.D. Vance’s career milestones with support from Peter Thiel

ヴァンスと彼の師であるティールとの関係は、他のメディアでも広く取り上げられており、最近の『ワシントン・ポスト』紙の記事では、ヴァンスの経歴とティールをはじめとする複数の大手テクノロジー系寄付者からの支援について優れた概説が掲載されている。

(引用はじめ)

ティールはヴァンスを富裕層に引き上げ、MAGA支持者の間で人気を博した企業へ彼が投資できるようにした。また、ティールはヴァンスの政界進出を後押しし、他のシリコンヴァレーの寄付者とともに、2022年の連邦上院議員選挙でのヴァンスの当選を資金面で支援した。

(引用終わり)

以下は、JD・ヴァンスのキャリアと人生におけるいくつかの重要な節目となる出来事だ。

・2011年、イェール大学ロースクール在学中にピーター・ティールと出会った。

・卒業後、ヴァンスは短期間法律関係の仕事に就いた後、ティールの推薦により、サーキット・セラピューティクスのCEOであるフレデリック・モルによって同社に採用された。

2016年、ヴァンスはイェール大学ロースクールで出会ったウシャ・チルクリ・ヴァンスと結婚した。

・ヴァンスは長年にわたり、名前を何度も変えている(両親の離婚後、祖母の旧姓であるヴァンスを名乗るなど)。ジェームズ・ドナルド・ボウマン、ジェームズ・デイヴィッド・ハメル、JD・ハメル、JD・ヴァンスなど、様々な名前を使用していた。

・2016年、ヴァンスは回顧録『ヒルビリー・エレジー』を出版し、ベストセラーとなり、後に映画化された。

2016年、ヴァンスはティールが共同設立したヴェンチャーキャピタルであるミスリル・キャピタルで短期間勤務した。

・2017年、ヴァンスはアメリカ・オンライン共同創業者スティーヴ・ケースが設立したヴェンチャーキャピタル企業レヴォリューションのパートナーに就任した。

・2019年、ヴァンスはカトリックに改宗した。以前は無神論者を自称していたにもかかわらず、ティールが「キリスト教への道を歩む上での原点となるインスピレーションを与えてくれた(was an original inspiration for his path to Christianity despite previously calling himself an atheist)」と記した。

・2020年、ヴァンスはコリン・グリーンスポンと共にヴェンチャーキャピタル企業ナリヤ・キャピタルを共同設立した。グリーンスポンは以前ティールのミスリル・キャピタルに勤務しており、ヴァンスをそこで採用した人物でもある。ナリヤはピーター・ティール、元グーグルCEOのエリック・シュミット、そして億万長者のテクノロジー起業家兼投資家マーク・アンドリーセンからの資金提供を受けて設立された。(興味深いことに、ティールの企業であるヴァラー、ミスリル、パランティア、そしてヴァンスのナリヤの社名の多くは、ティールとヴァンスのお気に入りのJRR・トールキンの『指輪物語』に由来している)。

・2022年、ヴァンスはピーター・ティールからの1500万ドルの支援を受けてオハイオ州選出の連邦上院議員に当選した。

・2024年、ヴァンスはトランプによって共和党の副大統領候補に指名された。

ピーター・ティールの弟子であるJD・ヴァンスが副大統領候補に浮上した今、彼らを繋ぐネットワーク、特にあまり知られていないロックブリッジ・ネットワークについて理解しておくことは有益である。

●ロックブリッジ・ネットワークは、クリス・バスカークとJD・ヴァンスが共同設立し、ピーター・ティール、レベカ・マーサーなどから資金提供を受けている(The Rockbridge Network was co-founded by Chris Buskirk and J.D. Vance with funding from Peter Thiel, Rebekah Mercer and others

rockbridgenetwork001

2022年、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、コーク兄弟(2020年に2億5000万ドル以上を支出)をはじめとする共和党の富裕層献金者によって結成された秘密連合、そして、コーク兄弟のネットワークとは別のピーター・ティールとレベカ・マーサーが出資するロックブリッジ・ネットワークに関する記事を掲載した。

チャールズ・コークとデイヴィッド・コークについては、特にジェイン・メイヤーの2016年の著書『ダークマネー』で、彼らの石油による莫大な富が、右翼イデオロギーや政策、そして彼らの巨額の富を守り、さらに増やすのに役立つ候補者を支援するために、非営利団体、シンクタンク、学術機関、政治機関からなる広範なネットワークに資金提供されていたことが明らかになって以来、大きく報道されてきた。

一方、コーク・ネットワークに対抗する、より若い世代のテクノロジー系組織として設立されたロックブリッジ・ネットワークについては、報道がはるかに少ないのが現状だ。

(引用はじめ)

ロックブリッジ・ネットワークには、ピーター・ティールやレベカ・マーサーなど、トランプの最大の献金者が名を連ねており、保守系メディア、法律、政策、有権者登録プロジェクトなどに3000万ドル以上を投じ、アメリカの右派勢力を再構築するという野心的な目標を掲げている。

(引用終わり)

2023年の『パック』誌の記事によると、ロックブリッジ・ネットワークは2019年にティールの側近2人によって共同設立された。1人は当時ベストセラー回顧録『ヒルビリー・エレジー』の著者であり、新進気鋭のヴェンチャーキャピタリストだったJD・ヴァンス、もう1人は保守系雑誌『アメリカン・グレートネス』の編集者兼発行人であるクリス・バスカークだ。

●ロックブリッジ・ネットワークの会合では、ピーター・ティール、ドナルド・トランプ、ドナルド・トランプ・ジュニア、タッカー・カールソン、デイヴィッド・サックスなどが講演を行った(Rockbridge Network meetings included speeches by Peter Thiel, Donald Trump, Donald Trump Jr., Tucker Carlson and David Sacks

JD・ヴァンスとクリス・バスカークは、シリコンヴァレーにおける若手たちの政治的な拠点としてロックブリッジ・ネットワークを設立した。年2回開催されるイヴェントでは、タッカー・カールソン、カジノ王スティーヴ・ウィン、ピーター・ティール、デイヴィッド・サックスといった著名人が講演を行った。

昨年、ロックブリッジは、ネットワークが推奨するプログラムに年間10万ドルを支出することを約束した会員が約125名いると発表した。

ロックブリッジは2021年にアリゾナ州で初のサミットを開催し、テクノロジー界の大富豪ピーター・ティールが講演を行った。

2022年、ロックブリッジ・ネットワークは「一種の政治的ヴェンチャーキャピタル」と自称するパンフレットを配布し、マール・ア・ラーゴでドナルド・トランプの講演を招いた非公開会議を開催した。

2024年にマール・ア・ラーゴで開催されたロックブリッジの会合には、口止め料裁判のためニューヨークに滞在していたドナルド・トランプが電話で参加し、息子のドン・ジュニアが講演を行った。その他の出席者には、トランプの共同選挙対策責任者であるスージー・ワイルズとクリス・ラシヴィタ、共和党の献金者であるレベカ・マーサー(以前に取り上げた)、億万長者のウッディ・ジョンソン、トランプの「法廷の口達者」レナード・レオ(以前に取り上げた)、仮想通貨起業家のエリック・ヴォーヒーズ、元ウーバー幹部のエミル・マイケルなどがいた。

●ヴァンスはシリコンヴァレーの資金調達パーティーで副大統領候補に推薦された(Vance was recommended for VP at a Silicon Valley fundraiser

2024年7月の『ニューヨーク・タイムズ』紙は記事「いかにしてテクノロジー界の億万長者ネットワークがJD・ヴァンスの権力掌握を支援したか」を掲載した。6月には、南アフリカ系アメリカ人のテクノロジー起業家兼投資家であるデイヴィッド・サックスの自宅で資金調達パーティーが開催された。

2007年、『フォーチュン』誌は「ペイパル・マフィア(The Paypal Mafia)」と題した記事を掲載し、ピーター・ティールやデイヴィッド・サックスを含むペイパルの創業者たちを紹介した。この記事で「ペイパル・マフィア」という言葉が生まれ、その後、新興テクノロジー界の有力者たちを指す言葉として頻繁に使われるようになった。

7月のイヴェントは、サックスがポッドキャスター仲間のチャマス・パリハピティヤと共同開催した。資金調達パーティー後に開かれた、テクノロジー業界や仮想通貨業界の幹部や投資家約20名が出席した非公開の夕食会で、トランプは副大統領候補について非公式な投票を行った。サックス、パリハピティヤたちは全員、JD・ヴァンス氏を選んだ。

7月の資金調達イヴェントはロックブリッジ・ネットワークとは関係がなかったが、JD・ヴァンスはピーター・ティールを通じてデイヴィッド・サックスと知り合い、シリコンヴァレーでの影響力拡大を目指したロックブリッジ・ネットワークの運営におけるヴァンスの活動が、シリコンヴァレーでの資金調達イvヴェントでヴァンスが圧倒的な支持を得た大きな理由の一つだったと考えられる。

●クリス・バスカーク、レベカ・マーサー、オミード・マリクが共同設立した1789キャピタルは2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェント後に設立された(1789 Capital co-founded by Chris Buskirk, Rebekah Mercer and Omeed Malik was formed after a Rockbridge event in 2022

1789capital001

NBCニューズの記事では、2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェントで、1789キャピタルという新しいファンドの構想がどのように生まれたかが報じられている。

マリクのような人々にとって、このネットワークはアイデアの交換と創出の場としても機能している。マリクのファンドである1789キャピタルの構想が生まれたのも、2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェントだった。現在、このファンドはタッカー・カールソンの新たなメディア事業を支援しており、元FOXニューズ司会者の最新事業の資金調達を主導している。

1789キャピタルは、共和党の献金者であり、ケンブリッジ・アナリティカの資金提供者でもあるレベカ・マーサー、ロックブリッジの共同創設者であるクリス・バスカーク、そして「反ウォーク(anti woke)」を掲げる実業家オミード・マリクによって共同設立された。

私は以前、オミード・マリクと、彼がレベカ・マーサー、クリス・バスカークと共に1789キャピタルで行っている活動について詳しく記事を書いた。その際、アドヴァイザーとして名を連ねる著名な人物の一人に、ピーター・ティールの弟子であるブレイク・マスターズがいることを指摘した。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、1789キャピタルがタッカー・カールソンとニール・パテルが率いるニューメディアヴェンチャーへの1500万ドルの創業資金提供を主導したと報じた。次の投資先は、ミサイル用の3Dプリント可能なロケット燃料を製造するスタートアップ企業ファイアホークだ。ファイアホークは、従来の方法よりも安全で安価だと主張している。数カ月前、ファイアホークは1789キャピタルが参加した新たな資金調達ラウンドを発表した。レベカ・マーサーに関する最近の記事では、1789キャピタルがここ数カ月で1200万ドル以上を調達したことを示す複数のSEC提出書類について詳しく解説した。

●レべカ・マーサー、JD・ヴァンスとヘリテージ財団(Rebekah Mercer, J.D. Vance and the Heritage Foundation

parler001

ヘリテージ財団は最近、大統領移行計画「プロジェクト2025」の立案者として大きく報道されている。この計画は、トランプ支持者を政府要員に据え、保護規制緩和を大幅に進め、教育省や環境保護庁(EPA)などの機関を縮小または解体することを目的としている。

トランプは、ヘリテージ財団の過激な極右的大統領移行計画「プロジェクト2025」から距離を置こうとしてきた。

しかし、JD・ヴァンスは、プロジェクト2025の主要スポンサーであるヘリテージ財団理事長ケヴィン・ロバーツの近刊書籍に序文を寄稿しており、ヴァンスがヘリテージ財団の指導部や目標といかに密接に連携しているかが明らかになっている。

私は、ヘリテージ財団の18人の理事の一人であるレベカ・マーサーについてこの記事を書いた。マーサー・ファミリー財団は過去にヘリテージ財団に寄付を行っている。さらに、マーサーは、ヘリテージ財団傘下の非営利団体であるヘリテージ・アクション・フォー・アメリカのわずか5人の理事の一人でもある。これは、彼女がヘリテージ財団に深く関わっていることを示しており、彼女はヘリテージ財団の理事を務めると同時に、関連する2つの非営利団体の役員も務めている。

ヴァンスとマーサーがヘリテージ財団と共同で活動していたという証拠はないが、両者ともヘリテージ財団とそれぞれ強い繋がりを持っている。

●レベカ・マーサー、スティーヴン・バノン、クリス・バスカークは2017年に連合を結成した(Rebekah Mercer, Stephen Bannon and Chris Buskirk formed an alliance in 2017

2017informalpoliticalcoalition001

レベカ・マーサーとクリス・バスカークの関係は、バスカークがヴァンスと共にロックブリッジ・ネットワークを共同設立する数年前にまで遡る。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、スティーヴン・バノンとレベカ・マーサーが2017年に、アラバマ州連邦上院議員選挙で落選したロイ・ムーアなどの候補者を支援する政治連合を結成したと報じた。ピーター・ティールはバノンとマーサー夫妻に近い人物とされ、この連合で重要な役割を果たすと予想されていた。オンラインジャーナル「アメリカン・グレートネス」の発行人であるクリス・バスカークは、連合の政策方針を広める役割を担うために招集された。

注目すべきは、バスカークとヴァンスがマーサーとティールと共に連合を立ち上げる数年前に、マーサー、ティール、バスカークがこのロックブリッジ・ネットワークに関わっていたことである。 2017年の連合は、ロックブリッジの初期形態だった可能性が高い。

●マーサー家が資金提供するケンブリッジ・アナリティカと、ティール氏のデータ企業パランティア(Mercer’s Cambridge Analytica and Thiel’s data company Palantir

2018年、ケンブリッジ・アナリティカの内部告発者であるクリストファー・ワイリーは、イギリス議会で、マーサーが出資するケンブリッジ・アナリティカが、ピーター・ティールのデータ企業パランティアのスタッフと非公式に協力していたと証言した。

「パランティアとケンブリッジ・アナリティカの間には正式な契約はなかったが、パランティアのスタッフがオフィスに出入りし、そのデータを使って作業していた」とワイリーは議員たちを前にして語った。さらに、パランティアのスタッフは「私たちが取り組んでいたモデルの構築を支援してくれた」と付け加えた。

パランティアの広報担当者はこの主張を否定し、パランティアはケンブリッジ・アナリティカとは一切関係がなく、ケンブリッジ・アナリティカのデータを使ったこともないと述べた。

●ティール、ヴァンス、マーサー、そしてソーシャルメディアプラットフォームのパーラーとランブル(Thiel, Vance, Mercer and social media platforms Parler and Rumble

parler001
rumble001

JD・ヴァンスは、自身のヴェンチャーキャピタルであるナリヤ・キャピタルを経営していた当時、ソーシャルネットワーク「パーラー(Parler)」に対する投資に関してレベカ・マーサーに助言を与え、その後、保守系プラットフォーム「ランブル(Rumble)」にも投資した。

この時期、ヴァンスは、パーラーをはじめとする保守派に支持されるテクノロジー・プラットフォームへの投資に関心を持つようになった。関係者2人によると、ヴァンスはパーラーの支配株主であり、共和党の大口献金者でもあるレベカ・マーサーに助言を与え、パーラーへの投資を検討していたとのことだ。ナリヤ・キャピタルは最終的にパーラーへの投資は行わなかったが、2021年に保守派に支持されるユーチューブ(YouTube)の競合サーヴィスであるランブルにティールと共に投資した。また、ケンタッキー州に拠点を置く屋内農業企業アプハーヴェスト(AppHarvest)にも投資しており、アプハーヴェストは2020年末に上場した。アプハーヴェストは昨年破産申請を行った。

私はランブルと、トランプのトゥルース・ソーシャル(Truth Social)の親会社であるトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(Trump Media & Technology GroupTMTG)との密接な関係について、この記事を書いた。トランプのTMTGの最高情報責任者(CIO)は、マケドニアにオフィスを構えるランブルの主要パートナー企業であるコスミック・ディヴェロップメント(Cosmic Development)の最高技術責任者(CTO)も兼任している。

ランブルの主要投資家には、JD・ヴァンス、ピーター・ティール、ダレン・ブラントンなどが名を連ねている。ブラントンはマイク・フリンの仲間と共同で企業に投資し、スティーヴ・バノンのパートナーである郭文貴が経営するGTVメディアの取締役を務めていた。

2023年6月、ペイパルの共同創業者であり、トランプのシリコンヴァレーでの資金調達イヴェントを主催したデイヴィッド・サックスは、ランブルが彼のポッドキャストおよびライヴストリーミングプラットフォームであるカリン(Callin)を買収した後、ランブルの取締役に就任した。

●オミード・マリクは、ティールの弟子であるブレイク・マスターズのビジネス上の同僚(Omeed Malik is a business colleague of Thiel protege Blake Masters

colombieracquisitiocorppsqholdings001

私がマリクについて書いたこの記事では、彼がマーサーとバスカークと共に1789キャピタルを共同設立した経緯、そしてマリクが既存の事業との統合を目的とした特別目的買収会社(special purpose acquisition companiesSPAC)を2社設立したことについて述べています。

マリクが設立した最初のSPACであるコロンビエ・アクイジション・コープ(Colombier Acquisition Corp.)は、アマゾンと競合する愛国的な企業や消費者向けの大手マーケットプレイスであるPSQホールディングス(PSQ Holdings)(別名パブリックスクエア[PublicSquare])と合併した。

マリクは、ヴェンチャーキャピタリストでピーター・ティールの弟子であるブレイク・マスターズ(前述の通り1789キャピタルの顧問も務めている)と共にPSQホールディングスの取締役に就任した。

マリクと共にPSQの取締役を務めるのは、マイク・ペンス副大統領の元首席補佐官ニック・エアーズ、ジョージア州選出の元連邦上院議員でトランプの主要献金者であるケリー・ロフラーなどだ。

●ロックブリッジ・ネットワークは有権者登録に注力(The Rockbridge Network is focused on voter registration

このNBCニューズの記事によると、ロックブリッジの2024年の主要プロジェクトの一つは有権者登録だ。

先週の会合に出席し、ロックブリッジの活動に詳しい情報筋によると、ロックブリッジ・ネットワークは2023年に12万5000人の有権者を登録し、2024年にはその倍増を目指しているとのことだ。ロックブリッジ・ネットワークは、新規登録者を対象とするプログラムに資金を提供しており、彼らが重視する問題に基づいてアプローチするとともに、「アンバサダー(ambassador)」と呼ばれるアウトリーチ体制を構築している。この体制では、10人の新規有権者それぞれに1人のオーガナイザーが割り当てられ、オーガナイザーが彼らと親交を深める。

最近、新たに設立されたスーパーPAC「アメリカPAC」が話題になった。『ウォールストリート・ジャーナル』紙が、イーロン・マスクがトランプ支援のためにアメリカPACに毎月4500万ドルを寄付すると報じたことが発端だ。マスクは後にこの報道を否定した。

アメリカPACについては、初期寄付者リストの詳細と、PACが出資する主要ヴェンダー2社の概要をこちらで解説した。初期寄付者は主にテクノロジー系起業家や投資家で、ピーター・ティールやイーロン・マスクと密接な関係にある人物が多く含まれている。アメリカPACの活動は、共和党支持層に期日前投票や不在者投票を促すことに重点を置いており、ヴェンダーであるラコンター・メディア(Raconteur Media)とイン・フィールド・ストラティジーズ(In Field Strategies)は、戸別訪問、現場活動、デジタルサーヴィス、テキストメッセージ、電話サービスなどを専門としている。

ロックブリッジ・ネットワークとアメリカPACの間には直接的な繋がりは報告されていないが、両者とも有権者登録やシリコンヴァレーおよびヴェンチャーキャピタルからの資金提供といった点で共通点があることから、何らかの繋がりがある可能性は否定できない。

●共和党全国委員会が公開したシリコンヴァレーの投資家たちの写真(RNC photo of various Silicon Valley investors

この記事を執筆中、リサーチャーのスリックロックウェブが、先に述べた人物を含む興味深い人脈を示す写真を提供してくれた。以下でさらに詳しく述べる人物たちは、現在トランプとヴァンスを支援しているテクノロジー系億万長者ネットワークに関係する人物の一部について、より詳細な情報を提供してくれる。

テディ・シュライファーがツイッター(X)で共有したこの写真には、左前から時計回りに右奥に向かって、ケン・ハウリー、シャーヴィン・ピシェヴァー、シェイン・コプラン、ドナルド・トランプ・ジュニア、オミード・マリク、デイヴィッド・サックスが写っている。

オミード・マリクとデイヴィッド・サックス、そしてドナルド・トランプ・ジュニアについて、JD・ヴァンス、ピーター・ティール、レベカ・マーサーとの繋がりについて書いた。

以下では、この写真に写っている他の3人、ケン・ハウリー、シャーヴィン・ピシェヴァー、シェイン・コプランについて、ティール、イーロン・マスク、そして右派テクノロジー界の頭目たちとの繋がりについて、より詳しく解説する。

ケン・ハウリーは、ピーター・ティールと共にペイパルとファウンダーズ・ファンドを共同設立した。ドナルド・トランプ大統領政権下の2019年から2021年まで駐スウェーデン米大使を務めた。私は以前、アメリカPACの初期資金提供者リストについて記事を書いたが、ケン・ハウリーは25万ドルずつ4回、合計100万ドルを寄付した寄付者の1人だ。

シャーヴィン・ピシェヴァーはヴェンチャーキャピタリストで、ウーバー(Uber)とハイパーループ(Hyperloop)の投資家だった。2013年にはイーロン・マスクと共にキューバを訪問している。ピシェヴァーは2014年にハイパーループを共同設立し、イーロン・マスクが開発した技術の商業化に取り組んだ。2016年の『モスクワ・タイムズ』紙の記事によると、ピシェヴァーはロシアを訪問し、複数のロシア政府系ファンドの責任者と会談し、ウラジーミル・プーティン大統領とも直接会談したとのことだ。彼はその後、ハイパーループがロシア直接投資基金(RDIF)から2件の投資を受けていたことが問題視され、2016年にハイパーループを去った。2017年、『ブルームバーグ』誌はピシェヴァーが複数の女性から性的不正行為で告発されたと報じた。

シェイン・コプランは、スポーツ、ポップカルチャー、そして2024年のアメリカ大統領選挙への賭けを提供することで急速に成長しているベッティングプラットフォームであるポリマーケット(Polymarket)(別名ブロックラタイズ[Blockratize])の創設者だ。ポリマーケットは2回の資金調達ラウンドで7000万ドルを調達しており、その中にはピーター・ティール率いるファウンダーズ・ファンドが主導した4500万ドルや、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリンからの出資が含まれている。2022年、ポリマーケットは米商品先物取引委員会(CFTC)から、イヴェントベースのバイナリーオプションオンライン取引契約(いわゆる「イヴェントマーケット」)のための違法な未登録・未指定施設を運営していたとして、140万ドルの和解金を支払うよう命じられた。現在、ポリマーケットはアメリカ人によるプラットフォーム上での取引を禁止している。それにもかかわらず、このサイトは成長を続けており、7月の取引額は2億7500万ドルを超えた。ポリマーケットは最近、世論調査専門家のネイト・シルヴァーをアドヴァイザーとして迎え入れた。ウォールストリート・ジャーナルの記事では、この仮想通貨賭博プラットフォームの成長とリスクについて、「批判者たちは、選挙賭博が有権者の動機を歪め、選挙操作を助長するのではないかと懸念している」と述べている。

11月の大統領選挙に向けて、ドナルド・トランプとJD・ヴァンスを支援するネットワークを暴露し続けることが不可欠だ。11月の選挙で誰が勝つかにかかわらず、このネットワークは組織化、資金調達を続け、過激な極右アジェンダの実現に向けて突き進むだろう。そして、トランプが勝利しない場合、特に民主党が連邦上院の過半数を維持できず、連邦下院でも過半数を獲得できない場合、バラク・オバマ政権時代のティーパーティー運動に似たものがハリス大統領に対して立ち上がる可能性が高いだろう。しかし今回は、右翼のテクノロジー系仮想通貨億万長者による運動、つまりJD・ヴァンスをトランプ陣営に送り込んだネットワークが率いるテクノファシスト政党(a techno-fascist party)になるかもしれない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 戦争はどの国にとっても大きな負担となる。世界の超大国であるアメリカでもそれは変わらない。そして、イスラエルにとってもそれは同じだ。イスラエルは人口約1000万人(ユダヤ系が約74%、イスラム教が多いアラブ系が約18%、キリスト教徒やドルーズ教徒が約8%)の比較的小さな国であるが、GDPは約5400億ドル(約87兆円)で世界第20位である(日本は約4.38兆ドル、約690兆円で世界第4位)。一人当たりのGDPは約6万ドルとなり、こちらも世界第20位となっている。ちなみに、日本は約3万4000ドルで世界第24位である。出生率(約2.84)も高いが、これは超正統派ユダヤ教徒の出生率(約6.66)が大きく貢献している。超正統派ユダヤ教徒は労働に従事しない傾向があり(イスラエル国家から補助されている)、兵役も免除されている。イスラエル国内で、超正統派ユダヤ教徒の割合が増えており、そうなれば、労働をせず、兵役にも就かない人が増えることになり、イスラエル国家全体にとって大きな負担となる。

 イスラエルは現在、イランとの戦争状態にあり、さらに、ガザ地区を実行支配するハマス、レバノンのシーア派組織ヒズボラ、イエメンのシーア派組織フーシ派との戦闘も続いている。戦争にはお金がかかる。戦費はイスラエル経済に重くのしかかる。アメリカからの支援やイスラエル以外に住むユダヤ人からの支援はあるにしても、戦争が永久的に続くことはイスラエルにとっては大きな負担である。また、人口が1000万人の国家で、一定数の国民が兵役に就くが、同時に兵役が免除されている超正統派ユダヤ教徒が労働に従事しないということはイスラエル経済や社会にとっては大きな痛手だ。

 さらに、イスラエルにとってはアメリカからの支援が頼みの綱であるが、アメリカ国民、特に若年層を中心にしてイスラエルの政策に反対する割合が増加しているのは懸念材料である。アメリカからの無条件の厚遇をいつまでも期待できるということはない。

 こうして見ると、イスラエルにとって武力による制圧というのは得策ではないということになる。圧倒的な軍事力があり、戦争を続けても、最終的な勝利を得られていないという状況は、人命や資金を浪費しているということに他ならない。イスラエル国内の情勢が大きく変化し、極右勢力が退潮しなければ、イスラエルはその大きな力によって滅亡の途をすすることになりかねない。

(貼り付けはじめ)

イスラエルが戦争で払っている代償(The Price Israel Is Paying for Its Wars

―複数の戦線での戦闘はイスラエルの軍事力、経済、そしてアメリカとの関係に大きな負担をかけている。

デイヴィッド・E・ローゼンバーグ筆

2026年4月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/14/israel-war-hamas-hezbollah-iran-economy-military/

2月28日にアメリカとイスラエルによるイラン攻撃が始まった時、イスラエルはベンヤミン・ネタニヤフ首相が主張する地域大国(the regional power)、ひいては大国(the great power)そのもののように見えた。ネタニヤフの言葉を疑う理由はほとんどなかった。過去2年半の間、イスラエルは宿敵であるハマス、ヒズボラ、そしてイランを事実上打ち負かしたかに見えた。イスラエル国防軍(IDF)は長期戦を遂行できる能力を示し、ヒズボラへのポケベル攻撃のような卓越した技術力を披露し、イランやイエメンのフーシ派への攻撃を通じて地域全体にその力を誇示してきた。そして今、ネタニヤフ首相が「全ての戦争を終わらせる戦争(a war to end all wars)」と豪語した、イランの核・弾道ミサイルの脅威を排除するための最終決戦(a final blow)に乗り出そうとしていた。

6週間後、イランの軍事力は著しく低下し、経済は崩壊、主要インフラは破壊され、主要な政治・軍事指導者の多くが死亡した。しかし、ネタニヤフ首相とトランプ大統領が作戦開始時に掲げた目標は、達成には程遠い状態にある。イランの政権は依然として権力を維持し、濃縮ウランを保有し、弾道ミサイルとドローンを大量に保有していると報じられている。そして何よりも深刻なのは、イランがホルムズ海峡を封鎖できることを示したことだ。一方、ヒズボラはイスラエルの予想をはるかに上回る抵抗を見せ、武装解除の意思を全く示していない。

それでは、この戦争によってイスラエルは以前よりも弱体化したのか、それとも強くなったのか? これは極めて重要な問いである。なぜなら、ネタニヤフ首相はイラン戦争を大勝利と喧伝する一方で、戦いはまだ終わっていないとも述べているからだ。「私たちにはまだ達成すべき目標があり、合意によってか戦闘再開によってか、いずれにせよそれを達成するだろう。・・・私たちは引き金に指をかけている」とネタニヤフは先週、ドナルド・トランプ米大統領による停戦宣言を受けて述べた。

イスラエルの戦後における国力に関する問いへの答えは、イランとヒズボラにも少なからず関わっている。彼らの損失の程度、そして復興・再建能力は、おそらく時間が経つにつれて明らかになるだろう。この不確実性こそが、イスラエルの戦略的課題をより複雑にしている。一方で、イスラエルの資産と能力ははるかに評価しやすく、現状は決して楽観視できるものではない。

イスラエルの国力は主に3つの柱に支えられている。すなわち、圧倒的な軍事力、ますます費用がかさみ、長期化する戦争を支える経済力と国民力、そしてアメリカとの同盟関係である。ネタニヤフ首相はこれら3本の柱を限界まで活用し、さらにその限界を超えようとしているように見える。

軍事:純粋に戦術的なレヴェルでは、イスラエル国防軍は2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、数々の目覚ましい成果を上げてきたが、それらは莫大な兵器、人員、そして資金の投入によって達成された。イスラエル銀行の推計によると、イランとヒズボラとの現在の戦争が始まる以前でさえ、他の戦争によってイスラエルの6600億ドル規模の経済に対し、約1160億ドルの直接的な国防費が費やされた。現在のイラン攻撃の費用については議論の余地があるが、110億ドルから180億ドルと推定されている。

たとえイランとレバノンでの作戦が間もなく終結したとしても、イスラエルの国防費は依然として高水準にとどまるだろう。イスラエル軍はガザ地区の半分とシリア南部の広範囲に部隊を配備し続けている。ヨルダン川西岸にも多数の新たな入植地を守るため、さらに多くの兵士が派遣された。ネタニヤフ首相はレバノンとの交渉に渋々応じたものの、レバノン南部にいわゆる「安全保障地帯(security zone)」を設置する構想も示しており、そのためにはさらに多くの地上部隊が必要となる。ネタニヤフ首相はどこからも撤退するつもりはなく、先月「私たちは安全保障の概念を変えた。攻撃を開始し、敵を奇襲するのは私たちだ」と述べた。

イスラエル政府は軍の資源が無限であるかのように扱い、新たな攻勢や占領の拡大を軍に求めている。しかし、それらを遂行するのに十分な人員を確保するための措置は一切講じていない。徴兵制の延長や、超正統派ユダヤ教徒に認められている徴兵免除の廃止に関する法案は未だに可決されていない。人員不足を補うため、予備役兵がほぼ不可能なほど長い期間召集されている。エヤル・ザミル参謀総長は先月、閣僚に対し、約1万5000人の兵員不足を背景に「イスラエル国防軍は崩壊寸前だ(IDF is going to collapse in on itself)」と警告したと報じられている。装備に関しては、イスラエル国防軍の備蓄量や装備の摩耗状況は厳重に秘密にされているが、特に迎撃ミサイルの供給において、問題の兆候が時折表面化している。

経済:過去20年間、イスラエル経済は度重なる戦争に直面しながらも、驚くべき回復力を見せてきた。最近の戦争も例外ではない。2023年のハマスによる攻撃後の数カ月間、そして昨年6月のイランとの12日間の戦争中、GDPは縮小した。そして、現在の戦争でもほぼ確実に再び縮小しただろう。しかし、いずれの場合も経済活動は急速に回復し、戦争によってイスラエルの国防費負担が世界最高水準にまで上昇したにもかかわらず、経済は成長を続けた。

この回復力の一因は、イスラエルの企業や労働者が戦争に慣れ、対処メカニズムを発達させてきたことにある。しかし、政府が財政を健全に保ち、比較的小幅な財政赤字にとどめ、債務(対GDP比)を削減してきたことも同様に重要である。イスラエルのハイテク産業と天然ガス生産は、数十億ドル規模の海外投資を呼び込み、経常収支の黒字を継続的に維持することを可能にしてきた。ガザ紛争勃発以来、アメリカから総額約220億ドルに上る多額の援助を受けてきたことも、経済的な負担を軽減する一因となっている。イスラエルは戦争費用を負担できる経済力を持っている。

しかし、ネタニヤフ首相の政策は、この経済力の限界を試している。膨大な戦闘費用を賄うため、イスラエル政府は概して増税や民間向け支出の削減を避けてきた。これは経済成長を維持するのに役立ってきたが、同時に、イスラエルの公的債務はガザ紛争前のGDP比60%という比較的低い水準から、2026年末には70.5%に達すると予測されるほどに急増した。この債務水準は危険なほど高いとは言えないものの、ネタニヤフ首相は軍事費への支出を止めようとはしていない。今後10年間で国防予算に1160億ドルを追加する計画であり、これはGDPの6%という巨額の国防費を国防に充てることになる。この支出水準は、債務の増加、増税、民間支出の削減などを通じて、経済に重くのしかかるだろう。アメリカ:2023年のハマスによる攻撃は、イスラエルに前例のない規模のアメリカの軍事的、財政的、外交的支援をもたらした。イランへの共同攻撃は、その支援を新たなレヴェルへと引き上げたように見える。しかし、これら全ては、実際にはアメリカ・イスラエル関係の頂点となる可能性もある。

イスラエルの国力を構成する3つの要素全てがますます脆弱になっているにもかかわらず、ネタニヤフ首相はまるで何事もなかったかのように振る舞っている。彼には他に選択肢があるのだろうか?

批判者たちは、ネタニヤフ首相はイスラエルの軍事的成果を外交的合意形成に活用すべきだと指摘する。しかし、ネタニヤフ首相は国家安全保障が絡む合意にはほとんど信頼を置いていないことを示してきた。ある程度、彼の見解は正当化される。レバノンとシリアの政府は約束を履行する力が弱く、イランとハマスはイスラエルの存在そのものにイデオロギー的に反対しており、実質的な合意交渉に応じる姿勢は見られない。

問題は、イスラエルが敵国に対して圧倒的な軍事的優位性を持っているにもかかわらず、彼らを屈服させることができていないことだ。ハマスでさえ、戦前の軍事力と指導部をほぼ全て失い、ガザ地区の半分を支配下に置いたにもかかわらず、屈服を拒否している。したがって、イスラエルは資源が枯渇し、後ろ盾であるアメリカの全面的な支援も得られない中で、終わりのない戦争(forever wars)という不確実な未来に直面する運命にあるように見える。

※デイヴィッド。E・ローゼンバーグ:『ハアレツ』紙英語版経済担当編集員兼コラムニスト。著書に『イスラエルのテクノロジー経済(Israel’s Technology Economy)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 国際社会の構造は大きく変化しつつある。これまでの約600年間、世界を支配したのは西洋諸国、ポルトガル・スペイン、オランダ、イギリス、アメリカであった。そこにはイタリア、フランス、ドイツといった諸大国も存在してきた。現在は「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)」対「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の2つの陣営に分かれている。そのことが明確になったのが、2022年2月からのウクライナ戦争であった。

 第二次ドナルド・トランプ政権発足後から、アメリカは「ならず者国家(rogue state)」のような振る舞いに終始している。ヴェネズエラやイランを直接攻撃しただけではなく、キューバに対しては不必要な経済制裁、グリーンランド領有の野心を明らかにすることなど、相手に関係なく、「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」「気に入らないからぶん殴る」というアニメ「ドラえもん」に出てくるガキ大将のジャイアンのような態度を取り続けている。このような暴れん坊のアメリカに対して、どのような対処法があるのかについて、下記論稿の著者で、国際関係論の大物学者であるスティーヴン・M・ウォルトは6つの方法を提案している。それらは国際関係論の研究の成果でもある。それらについては下記論稿をお読みいただきたい。

 国力を衰えさせながら、野心をむき出しにして自分勝手な行動を取る、老いた超大国となるアメリカに日本はどのように対応すべきかということであるが、大前提として、日本はアメリカの属国であるという事実がある。今まではアメリカの属国として、アメリカの言う通り、アメリカの利益になり、日本の利益になる行動を取ればよかった。しかし、アメリカが変容するならば、日米関係も変容するのが当然だ。対米従属一辺倒から変化しなければならない。アメリカと一緒に泥船に乗って沈む訳にはいかない。

 日本は地理的に見てもそうだが、米中両超大国の間に位置する。経済大国であったの過去の栄光、少子高齢化の最先端を進んでいる。そうした中で、中国との関係も重要である。現在の高市早苗政権が行っている政策派のこの点で最悪と言わざるを得ない。中国との関係改善は喫緊の課題だ。しかし、中国に急接近することも難しい。日本はアメリカの属国である。したがって、重要なことは、アメリカらか少しずつ距離を取りながら、中国に少しずつ近づくということになる。現在が10対ゼロで対米従属一辺倒であるならば、そこを黄金比の1対約0.6、5対3くらいにするというのはどうだろうか。完全に二等分するのではなく、アメリカに寄りながら、中国も立てる。これが間にいる、ミドルパワー国家である日本の生き方ではないかと私は考えている。

(貼り付けはじめ)

アメリカはならず者国家になった(The United States Has Become a Rogue State

―アメリカを除く世界ができることを挙げていく。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年3月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/26/united-states-trump-rogue-state-iran/

第二次ドナルド・トランプ政権は、私を含め多くの専門家の予想をはるかに超える混乱と損害、そして危険性をもたらしており、イランとの悲劇的なまでに無能な戦争は、その事実を如実に物語っている。その結果、世界中の国々が、ますます暴走するアメリカへの対処法を模索せざるを得ない状況に陥っている。自分に問うてみて欲しい。もしあなたがサウジアラビア、ブラジル、ドイツ、インドネシア、ナイジェリア、デンマーク、オーストラリアなどの指導者だったらどうするだろうか?

なぜこれが難しい問題なのか。アメリカは、たとえ現在、誤った重商主義(misguided mercantilism)、科学や学術界への無分別な攻撃(mindless attacks on science and academia)、あらゆる種類の移民に対する露骨な敵意(overt hostility to immigrants of all sorts)、化石燃料への依存の強化(doubling down on fossil fuel dependence)、無駄な軍事支出(wasteful military spending)、慢性的な財政赤字(chronic deficits)など、いずれはアメリカを弱体化させるだろう政策を追求しているとしても、現在のところは非常に強力な国家だ。しかし今のところ、他国は、アメリカの力が意図的であろうとなかろうと、自国に害を及ぼす可能性があると懸念せざるを得ない。

第二に、私が他の場所で詳しく論じてきたように、アメリカは今や略奪的な覇権国(a predatory hegemon)のように振る舞い、数十年にわたって築き上げてきた影響力を駆使して、同盟国も敵対国も等しく搾取している。ほぼ全ての他国との関係において、このようなゼロサム的なアプローチをとることは、ほとんどの国際機関や規範に対する根深い敵意、意図的な不安定な行動、そして他国の指導者を露骨に軽蔑しながら、そのほとんどから屈辱的な服従と忠誠(demeaning acts of submission and fealty)を期待する傾向を伴う。イラン戦争の余波が地域全体、そして世界中に広がるにつれ、政権が自らの行動が他国にどのような影響を与えるかを理解していなかったか、あるいは単に気にしていなかったかのどちらかが浮き彫りになっている。

そして、これが第三の問題につながる。アメリカの外交政策は今や、大統領をはじめとする極めて無能な官僚たちの手に委ねられている。国際的な影響力は多くの要素に左右されるが、重要な要素の一つは、他国が、自分たちが関わる相手が賢明で、情報に通じており、概して自分たちの行動を理解していると信じることである。現時点で、トランプ政権の上層部で、そのような評価に値する人物はいるだろうか? 少なくとも私には見当もつかない。外交政策の遂行は困難な仕事であり、どの政権も全てを完璧にこなせるというものではない。しかし、この政権は毎週のように自らの目標を掲げながら、自らは無誤謬である(it is infallible)と主張している。

さらに悪いことに、これらの問題点のいくつかは、たとえトランプと全く異なる見解を持つ人物が後任になったとしても、退任後に容易に是正できるものではないだろう。経験豊富な公務員(一部の上級軍人を含む)が退職または解雇され、後任が任命されないか、あるいはトランプに忠実な人物によって取って代わられることで、アメリカの外交政策機構の組織力は空洞化している。

そして、アメリカの政治体制は依然として深刻な分極化状態にあるため、他国もまた、政治の振り子が両極端の間を行ったり来たりするのではないかと懸念せざるを得ない。アメリカ国民はトランプを一度ならず二度も選出しており、再び似たような人物を選ぶ可能性もある。こうした現実を踏まえれば、ワシントンが今日、あるいは民主党大統領の下でどのような約束をしようとも、どの国もそれを信頼できるだろうか?

まとめると、世界の他の国々は、少なくとも今後3年間、おそらくはそれ以上、強力で、おそらく略奪的で​​、極めて不安定なアメリカ合衆国と向き合わなければならないということだ。そうなるとすれば、アメリカ合衆国だけが危険な略奪者(dangerous predator)ではないこと(そして一部の国にとっては、より差し迫った危険が身近にあること)を念頭に置きながら他の国々はどうすべきだろうか。

質問を繰り返す。もしあなたが他国の外交政策を担うとしたらどうするか?

私が考える主な選択肢を以下に挙げる。

(1)バランシング(Balancing

歴史を通じて、強力で危険な国家に対処する古典的な方法は、自国の努力、あるいは他国との連携(あるいはその両方)によって、それらの国家に対抗するためにバランスを取ることだ。ロシアと中国の「無制限パートナーシップ(no-limits partnership)」、北朝鮮がウクライナでロシアに提供した支援、イランが中東地域各地で支援した代理勢力のネットワーク(the network of proxies)、そしてロシアがイランに提供しているとされる情報支援(the intelligence support that Russia is reportedly giving Iran)などに、この傾向が見られる。

一部の国が採用する可能性のあるもう一つの戦略は、「ソフト・バランシング(soft balancing)」だ。これは、強力な国家の目的を阻止するために、外交行動を意識的に調整するものだ。典型的な例としては、2002年の国連安全保障理事会決議案(イラクへのアメリカ軍攻撃を承認するもの)に反対したフランス、ドイツ、ロシアの協調行動が挙げられる。この出来事はジョージ・W・ブッシュ政権に戦争を思いとどまらせるには至らなかったものの、アメリカ(およびイギリス)の孤立を露呈させ、米英両国が最終的に支払う政治的代償を増大させた。

トランプ大統領がデンマークからグリーンランドを奪取すると脅迫したことに対するヨーロッパの対応は、もう一つの明白な例である。これは、強大な国家が望ましくない行動に出るのを阻止するための協調的な外交対応(a coordinated diplomatic response)であり、軍事的要素も含まれていた。カナダのマーク・カーニー首相が1月に、世界のミドルパワー国家が結束し、信頼できない略奪的なアメリカとの協力に依存しない、互恵的な関係(mutually beneficial relations)を築くよう呼びかけた際、念頭に置いていたのは、ソフト・バランシングであったようだ。

トランプ政権は、アメリカのパワーとのバランスを図るためのハードな取り組みもソフトな取り組みも、いずれも弱く、不安定で、大きな成果をもたらさないと見込んでいる。多くの国がアメリカのパワーに対抗するために多大なコストのかかる行動を取ることに当然ながら消極的であること、そして「ソフト・バランシング」の取り組みでさえ大きな集団行動上の問題に直面することを考えると、彼らの見方は正しいかもしれない。しかし、これらの障害は克服できないものではない。特に、アメリカに迎合することが新たな要求を生むだけであったり、他国がアメリカとの緊密なパートナーシップを資産ではなく負債とみなすようになったりすれば、なおさらである。

そして、もう一つのバランシングの形を忘れてはならない。アメリカが自国を攻撃するかもしれないと懸念する国、あるいはアメリカがもはや信頼できる守護者(a reliable protector)ではないと恐れる国は、自国の核抑止力(nuclear deterrents)を獲得することで安全保障を強化しようとするだろう。アメリカの信頼性に対する懸念から、フランスは自国の抑止力をヨーロッパ全域に拡大することを提案しており、韓国や日本といった国々も再び自国の抑止力の必要性を検討している。イランとの戦争、そして比較的慎重なイラン指導者数名の排除は、北朝鮮を模倣して機会があったうちに積極的に核兵器開発に取り組まなかったことが最大の過ちだったと考える国々の立場を強化するだけだろう。

(2)バンドワゴニング(Bandwagoning

多くの現実主義的な学者は、強力な略奪国家に追随することは危険であり、したがって稀であると主張するが、一部の国はこれを最善の選択肢とみなすだろう。特に弱体で脆弱な国は、アメリカと連携して最善の結果を期待する以外に選択肢がないと結論づけるかもしれない。また、アメリカの支援を利用して自国の修正主義的な目的を推進したい国は、喜んでこの流れに乗るだろう。

イスラエル、サウジアラビア、そしてペルシア湾岸の小国は、こうした楽観主義的な行動(opportunistic behavior)の明白な例である。このカテゴリーには、ハンガリーのヴィクトル・オルバン、アルゼンチンのハビエル・ミレイ、フランスのマリーヌ・ルペン、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフといった右派指導者も含まれる。彼らはトランプを、自由主義的民主政治体制や多くの国際規範に対する嫌悪感を共有する、権威とカリスマ性を備えた人物と見なしている。これらの指導者全員(トランプも含む)が、苦戦を強いられているハンガリーのオルバンの再選運動を公然と支持していることは、何ら驚くべきことではない。

しかしながら、気まぐれで略奪的なアメリカに追随することには、それなりのリスクが伴う。例えば、イラン戦争、低迷するアメリカ経済、トランプ大統領の支持率低迷といった失態は、MAGAブランドを汚しており、外国のポピュリストにとってアメリカとの緊密な関係は必ずしも有益とは言えないだろう。

さらに言えば、これらの指導者の多くは、自らを熱烈なナショナリストとして描くことで支持を得ているが、略奪的な外国勢力への長期的な服従とは相容れない。こうした懸念が、フランスの極右政党「国民連合」の実質的な指導者であるルペンが、ここ数カ月の間にトランプ大統領からやや距離を置いている理由を説明しているのかもしれない。

(3)政治的策略(Political manipulation

アメリカとの緊密な関係を維持し、アメリカの力を利用して自国の目的を推進しようとする国々は、自国が望む方向にアメリカの外交政策を誘導するために、一層の努力を重ねるだろう。

ネタニヤフ首相とイスラエル・ロビーの主要組織は、トランプ大統領に最新の戦争開始を説得するのに一役買い、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子はトランプ大統領に地上部隊の投入を促していると報じられている。イスラエルと湾岸諸国がホワイトハウスと連邦議会に武器供給の継続を求めるロビー活動を続けることはほぼ確実であり、トランプ大統領の任期中は、より露骨な影響力行使(ジャレッド・クシュナーやトランプ・オーガナイゼーションへの新たなビジネス取引など)も続くと予想される。しかし、イラン戦争はこれらの国々にとってもリスクとなる。他国のために戦われている戦争と見なされれば見られるほど、戦争が不利な結果に終わった場合の反発リスクは高まる。

(4)分散化とリスク軽減(Diversifying and de-risking

信頼できないパートナーと取引する場合、たとえ多少コストがかかったとしても、そのパートナーへの依存度を下げるのが賢明な策となる。この傾向は、2025年4月にトランプ大統領が報復関税を発表して以来顕著に表れている。その後、アメリカの貿易相手国は、互いに自由貿易協定を締結することで、アメリカ市場への依存度を低減しようと躍起になった。カナダは中国との緊張関係を緩和し、インドネシアやインドと新たな貿易協定を締結した。ヨーロッパ連合(EU)もインドやメルコスールと同様の措置を講じている。

(5)拒絶(もしくは「ただノーという」)(Balking (or “just say no”)

親なら誰でも知っているように、時に非常に弱い立場の国は、要求に頑固に応じないことで、強い立場の国が強制的に従わせる意志や忍耐力に欠けることを期待し、自らの主張を通すことがある。例えば、トランプ大統領がホルムズ海峡の開通に協力するようNATO加盟国に要求した際、加盟国は拒否した。これは、開戦前に相談を受けていなかったこと、トランプ大統領の失策を救済する理由がほとんどないこと、そしておそらく今回の失敗がワシントンに教訓を与えることを期待していたためだ。

あるいは、各国は要求に応じるふりをしながら、実際には行動を遅らせ、予期せぬ複雑な問題を公表し、遵守状況の確認を困難にし、できる限り混乱を招くような行動をとることもできる。この戦略の魅力は明らかだ。ワシントンとの直接対決を避けられるだけでなく、要求に応じることによるあらゆるコストも回避できるからだ。

過去には、他国もアメリカに対して同様の戦術を用いてきた。NATO加盟国は国防費増額を繰り返し約束しながら、毎回目標を達成できなかった。また、イスラエルは入植地の撤去を約束しながら、可能な限りゆっくりと進め、その間に新たな入植地を建設した。トランプ政権は、中国が第一次トランプ政権に交わした経済的な約束を履行したかどうかを検証しようとしていると報じられている(おそらく履行していないだろう)。

世界は広く、忙しく、複雑な世界だ。アメリカのような強大な国でさえ、他国が過去に合意した全ての事柄を把握し、それらが約束通りに履行されているかどうかを判断することは不可能だ。

(6)アメリカの見え方を悪くする(Make the United States look bad

ハードパワー(hard power)は依然として世界政治における主要な通貨だが、強大な国家は、概ね高潔で、ある程度正直で信頼でき、少なくとも時折は世界をより良くしようと努力していると見なされることで、さらに恩恵を受ける。この資質こそ、私の亡き同僚ジョセフ・ナイが「ソフトパワー(soft power)」と呼んだものだ。国家は、他国から魅力的(appealing)で、概ね善意(benevolent)に満ちていると認識されることで、影響力を増す。

したがって、アメリカの敵対国は、アメリカを利己的で攻撃的、危険な国、そして賞賛や模倣の対象ではなく拒絶すべきモデルとして描くことで、そのイメージを傷つけようとあらゆる手段を講じるだろう。中国が長年実践してきたこの戦略の必然的な帰結は、アメリカがつまずき続けるのを傍観し、干渉しないことだ。ナポレオン・ボナパルトが言ったとされるように、「敵が過ちを犯しているときは、決して邪魔をしてはならない(never interrupt an enemy when it is making a mistake)」。

そして、トランプ政権はまさにこの戦略を容易にしているのだ! 単なる疑いだけでカリブ海で船舶を爆破したことを自慢したり、外国首脳の暗殺を支援したり、移民や観光客を虐待したり、十数カ国に渡航禁止措置を課したり、大統領を批判したという許されない罪で外国当局者に金融制裁を命じたり、力こそすべてだと豪語したり、まるで覚醒剤を打ったハムスターのように上下に揺れる関税率を課したり、行き先も定まらないまま世界経済全体に影響を及ぼす戦争を始めたり、リストはどれだけでも続く。

アメリカのイメージが、善意はあるものの時に誤った判断をする世界大国から、無関心で残酷、反射的に不誠実で、自国の利益しか考えない国へと変化するにつれ、ワシントンとビジネスをしたいと願う指導者でさえ、あまり近づきすぎることを警戒するようになるだろう。

アメリカに対抗する様々な戦略は、互いに強化し合う関係にある。強硬な手段であれ軟弱な手段であれ、バランスを取ろうとする国が増えるほど、他国もアメリカから距離を置きやすくなる。アメリカが世界において果たす役割が、広く善意に基づくものではなく、積極的に有害なものと認識されるようになればなるほど、多くの国がアメリカ側に留まることは難しくなり、外国の指導者たちはワシントンに立ち向かうことでより多くの利益を得るだろう。各国が反発すればするほど、他国もそれに追随しやすくなる。なぜなら、超大国(a superpower)であっても、全ての国の些細な反抗行為を把握し、すべてを一度に罰することはできないからだ。

ワシントンの現在の行動に対するこうした様々な対応策から、アメリカ人が学ぶべき主な教訓はここにある。強大な国家であることの大きな利点は、問題に対処する際に、大きな余裕と豊富な資源を活用できることだ。欠点は、一部の国がアメリカの力を自国の利益のために利用しようとする一方で、他の国はそれを懸念し、抑制または制限する方法を模索するということだ。

この理由から、先見の明のある大国は、自国の力を抑制的に行使し、可能な限り広く受け入れられている規範を遵守し、緊密な同盟国でさえ独自の思惑を持っていることを認識し、全ての関係者が利益を得られるような関係構築に努めるだろう。強硬な力を維持することは重要だが、それを柔らかな手袋で包み込むことも同様に重要である。アメリカは過去75年間、概ねこれをうまく実践し、大きな恩恵を受けてきたが、現在の指導者たちはその知恵を急速に捨て去りつつある。

私が20年以上前に警告したように、「もしアメリカが既存のパートナーシップの崩壊を早め、我々を封じ込めることを目的とした新たな関係を生み出すことになれば、私たちは自らを責めるしかないだろう」。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 イラン戦争が始まってもうすぐ2カ月が経過しようとしている。現在は一時停戦となっているが、速やかな停戦に向けて、アメリカとイランの間を仲介しているパキスタンが奔走している。しかし、ホルムズ海峡封鎖一本で世界経済を人質にして勝負しているイランは、アメリカを焦らすだけ焦らして、自国の有利な条件を引き出そうとしている。5月14日と15日のドナルド・トランプ大統領による中国公式訪問までに一定の成果を挙げたい米中両国は、イランとの交渉において共通の利益を持っていると言えるだろう。

 イラン戦争が始まって世界経済は石油価格高騰と物資不足の影響をつけつつある。日本は前回のオイルショックの教訓を活かし備蓄があるが、現在の状況が続けば、厳しい状況は早晩やってくる。日本にとっても早急な停戦が望まれる。アメリカは国内で石油が生産できるので、ホルムズ海峡が封鎖されても影響は少ないというトランプ大統領の発言があったが、アメリカ国内でも石油価格は上昇している。

アメリカでは5月や6月に卒業式(commencement ceremony)があり、夏休みのホリデーシーズンを迎える。移動も多くなり、ガソリン価格や航空機チケット代の上昇は人々の生活を直撃する。ここで人々に不満を持たれてしまうと、大統領の支持率にダメージを与える。何よりも今年は中間選挙が実施される年だ。共和党が連邦下院で過半数を失う可能性が指摘されている。そうなれば、「トランプの応援を受けても選挙に勝てない」ということになり、トランプの影響力や勢力は減退することになる。

 アメリカはウクライナの支援、イスラエルの支援、そして、中東地域に派遣しているアメリカ軍の戦費ということで、巨額の予算が必要となる。それらは増税をして賄うことになるが、増税となれば有権者の反対や不満を増やすことになる。そうなれば国債発行に頼るしかないが、累積した国債はアメリカ政府に重くのしかかる。結局のところ、増税やインフレによって、一般庶民、有権者の生活を直撃することになる。海外での戦争をしないというトランプ大統領の訴えを信じて投票したアメリカの有権者にとっては大きな裏切りである。トランプはイラン戦争開戦の責任を取って実質的な政策運営から引退することが望ましいということになるだろう。それでなくても三期目はないので、中間選挙後は「死に体(lame deck、レイムダック)」状態になる。最後のお勤めは、JD・ヴァンス副大統領にしっかりと引継ぎをして、大統領にさせることだ。

(貼り付けはじめ)

イラン戦争の経済的コスト:数字で見る(The Economic Costs of the Iran War, by the Numbers

―数百万ドル規模の兵器から原油価格の高騰まで、この戦争がもたらす経済的損失を以下に挙げていく。

マキシーン・デイヴィ、エリ・ウィゼヴィッチ筆

2026年3月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/13/iran-war-cost-economic-oil-gas-prices-hormuz/

アメリカとイスラエルが2月28日にイランを攻撃して以来、中東地域全域で戦争が勃発した。わずか13日でその被害は甚大だ。

人的被害は甚大である。イラン保健省によると、3月13日時点で少なくとも1444人のイラン人が死亡しており、その中には、アメリカが実行したとみられる小学校への攻撃で死亡した少なくとも168人の子どもも含まれている。イスラエルによるレバノンへの爆撃では600人以上が死亡、80万人以上が避難を余儀なくされた。イランによる地域各地への攻撃、そしてイランの代理勢力であるヒズボラによるイスラエルへの攻撃で、60人以上が死亡、数百人が負傷した。また、アメリカ軍兵士13人が死亡した。

エスファンディヤル・バトマンゲリジ氏は『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿し、「これは単なるペルシア湾での戦争ではなく、第二次世界大戦以来、グローバル経済の拠点となる都市や施設に直接的な影響を与えた初めての紛争だ」と述べた。

原油価格から欠航便まで、この戦争がすでに世界経済をいかに混乱させているかを示す主要な数字を以下に挙げていく。

2026iranwareconomiccost001

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、米国防総省当局者は火曜日、連邦議事堂で行われた連邦議員向け非公開ブリーフィングでこの推計値を示した。この数字には、2月28日以前の数カ月にわたるアメリカの軍備増強費用は含まれていない。

以前のブリーフィングで、国防担当当局者たちは最初の2日間で56億ドル相当の弾薬が使用されたと述べていた。マクドナルド・アモア、モーガン・D・バジリアン、ジャハラ・マティセクによる『フォーリン・ポリシー』誌の分析によると、アメリカは「壮大な怒り作戦」開始後最初の36時間で、推定1250発の防衛・攻撃用弾薬を消費した。

彼らは「消費された弾薬、そしてそれらを製造するために必要な鉱物資源は、西側諸国、特にアメリカにとって防衛産業に関する問題である」と述べている。

2026iranwareconomiccost002

当初は市場の反応が鈍かったものの、国際指標であるブレント原油価格は3月9日の取引時間中に一時1バレル119.50ドルまで急騰し、その後同じ日の中で100ドルを下回った。3月11日以降、価格は3桁台で推移している。『フォーリン・ポリシー』誌のキース・ジョンソンは、「市場はついに、イラン戦争が世界経済に及ぼす脅威の深刻さに気づき始めた」と報じた。

今回の価格高騰は過去1年間で最大であり、イラン、イスラエル、アメリカによる12日間の戦争が行われた2025年6月の高騰を上回った。金曜日現在、原油価格は1バレル100ドル以上で推移している。

2026iranwareconomiccost003

水曜日、国際エネルギー機関(IEA)は、加盟32カ国が市場の混乱緩和と原油価格高騰対策として、12億バレルを超える緊急備蓄原油の放出に全会一致で合意したと発表した。これはIEA史上最大規模の原油放出であり、協調的な放出としては6回目となる。

また、スコット・ベセント米財務長官は木曜日、アメリカが制裁対象となっているロシア産原油を既に海上に積載した状態で各国が購入することを一時的に許可すると発表した。

ジョンソンは、「トランプ政権は、自らが引き起こした戦争の影響を抑制するため、軍事、金融、エネルギーなどあらゆる政策手段を駆使してきたが、今のところ全て無駄に終わっている」と述べた。

アメリカのガソリン価格は平均で1ガロンあたり3.50ドルを超え、昨年同時期より0.50ドル以上高くなっている。
2026iranwareconomiccost004

湾岸諸国からの石油製品と液化天然ガス(LNG)の輸出は戦争によって深刻な打撃を受けており、生産者の収入減は甚大である。コンサルティング会社ウッド・マッケンジーの推計によると、サウジアラビアは戦争開始以来、45億ドルという最大の収入を失ったと『フィナンシャル・タイムズ』紙は報じている。

2026iranwareconomiccost005

世界第2位のLNG輸出国である国営カタールエネルギーは先週生産を停止し、世界のヘリウム市場と肥料市場に波及効果(knock-on effects)をもたらした。

カタールのサード・アル・カービ・エネルギー相はニューヨーク・タイムズ紙に対し、中東地域での戦争は「世界の経済を崩壊させる可能性がある」と警告した。

2026iranwareconomiccost006

イランは3月2日、ホルムズ海峡を通過しようとする船舶は全て攻撃すると初めて宣言した。『ガーディアン』紙の報道によると、それ以来、約500隻の石油・ガスタンカー、500隻のコンテナ船、そして6隻のクルーズ船が海峡の両岸で立ち往生している。

戦争開始以来、ペルシア湾、ホルムズ海峡、オマーン湾周辺で運航するタンカー、コンテナ船、その他のばら積み貨物船を含む少なくとも2隻の民間船舶がイランの攻撃を受けている。

イランの新最高指導者(supreme leader)モジタバ・ハメネイ師は、就任後初の公式声明で木曜日、「ホルムズ海峡封鎖(blocking the Strait of Hormuz)という手段は、今後も間違いなく使い続けなければならない」と述べた。

2026iranwareconomiccost007

ペルシア湾岸地域で運航する船舶の保険料高騰を受け、アメリカ国際開発金融公社(DFC)は、トランプ政権が海峡を通じたエネルギー輸送の再開を目指す取り組みの一環として、特定の船舶(具体的な船舶名は未公表)に対し海上再保険を提供すると発表した。DFCは、この計画の実施にあたり、米中央軍および米財務省と連携し、保険会社チャブが主導的な役割を担う。

3月11日時点で、中東地域発着便は4万6000便以上が欠航となった。イランは、世界で最も利用者の多い国際空港であるドバイを含む、中東地域の複数の国の空港を標的にしている。ドーハのハマド国際空港は3月1日から6日まで全便の運航を停止し、現在も通常の利用客数のごく一部でしか運航していない。

戦争勃発当初、航空便の運航停止により数十万人の旅行者が地域内で足止めされ、避難活動が困難を極めた。 『フォーリン・ポリシー』誌のサム・スコブ記者は3月10日、米国務省が解雇された職員からの支援申し出を断ったと報じた。

同時に、ジェット燃料価格は原油価格を上回るペースで上昇している。航空会社が運賃値上げや運航便数の削減を発表するにつれ、このコストは世界の消費者に転嫁されることになるだろう。

※マキシーン・デイヴィ:『フォーリン・ポリシー』誌編集研究員。

※エリ・ウィゼヴィッチ:『フォーリン・ポリシー』誌編集研究員。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 中東地域で起きている諸問題の多くはイスラエルが絡んでいる。イスラエル建国から拡大、占領という形で中東地域において不協和音を起こしている。現在でいえば、イラン戦争はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が引き起こした戦争である。イスラエル側にも理屈がある。イスラエルが自衛行動を取ることは制限されない。問題は、彼らが自衛という名の下に過剰な攻撃を民間人に加えていることであり、イスラエルへの正当な批判までも「反ユダヤ主義」というレッテルを貼って圧殺、封殺をしようとすることだ。そして、イスラエルの傲慢な態度の源泉はアメリカからの支援がある。アメリカから数兆円の軍事支援を受け、最新の兵器を備えて、中東地域の近隣諸国を圧倒している。核兵器までも開発し保有している。興味深いのは、こうして中東地域最強になりながら、一向に安全が確保されていないことだ。矛と盾をどんなに最新最強にしても、建国以来、安全安心を確保することはできなかった。

 アメリカはイスラエルを支援することを「国是(national credo)」としてきた。第二次世界大戦中にユダヤ人の大規模虐殺を止めることができなかったことが原罪のように突き刺さっている。また、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人がイスラエルを支援するために、その資金力と影響力を行使してきた。彼らは、いくつかの親イスラエル組織を構築し、政治的な活動、ロビー活動を展開してきた。イスラエルに批判的な政治家に対して、落選運動に資金提供をしたり、ユダヤ系が多く住む大都市圏であれば、集団的に相手候補に投票したりすることで落選をさせるなどの行動を取って、影響力を保持し、イスラエルに有利になる政策をアメリカ政府が行うように働きかけてきた。このようなアメリカからの手厚い支援がイスラエルを増長させてきた。

 イスラエルの傲慢と増長が中東地域における諸問題の原因となっている。それであるならば、問題を解決するためには、こうした傲慢と増長を取り去ることが必要である。そのためには、アメリカとイスラエルの間の「特別な関係」を見直し、改善していくこと、他国との関係に近づけていくことが、アメリカとイスラエル両国にとって重要だ。そうしなければ、お互いが抱きつき合ったままで、世界から孤立し、衰退、滅亡の途を進むことになる。

(貼り付けはじめ)

ガザの平和は長続きしないだろう(The Peace in Gaza Won’t Last

-イスラエルとアメリカの特別な関係が終わることが真の戦争終結のシグナルとなるだろう。

スティーヴン・M・ウォルト

2025年10月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/15/peace-gaza-israel-us-trump-middle-east/

ガザ地区での虐殺が少なくとも一時的に停止し、イスラエル人の人質とパレスティナ人の囚人の交換が行われ、苦しむガザ住民への救援物資がより自由に届くようになったことは、誰もが感謝すべきことだ。当然のことながら、ドナルド・トランプ米大統領は勝利宣言を行い、停戦合意を「新たな中東の歴史的な夜明け(historic dawn of a new Middle East)」と称している。しかし、彼は以前にも同様のことを述べており、歴代大統領の中にもそうした人がいた。彼の言葉が正しいことを願うが、確信は持てない。

今回の合意後、2つの疑問が依然として残っている。1つ目は、言うまでもなく「この合意は維持されるのか?」という点だ。そして、2つ目は、イスラエルと世界の他の国々との関係、特にアメリカとの「特別な関係(special relationship)」が、ついに永続的な平和を実現できるような方向に変化しているかどうかという点である。この2つ目の疑問は、最初の疑問への答えを大きく左右する。

最初の疑問に関して言えば、楽観視するのは難しい。他の批評家も指摘しているように、この「和平案(peace plan)」は、パレスティナ側の参加が最小限に抑えられた、イスラエルを強く支持するアメリカの「仲介者(mediators)」(スティーヴ・ウィトコフとジャレッド・クシュナー)によって作成された。最終的な形は、交渉による解決というよりは、最後通牒(an ultimatum)に近いものだった。この合意は、イスラエルの極右勢力の極端な野望(ガザ地区の併合やパレスティナ住民の永久追放など)の一部を拒否するものの、パレスティナ側には、ハマスの完全武装解除、全てのトンネルの破壊、あらゆる政治活動からの排除、そしてパレスティナ自治政府の抜本的かつ具体的な内容が未定の改革など、困難かつ検証不可能な(impossible-to-verify)一連の調整を求めている。トランプ大統領自身が議長を務める「平和評議会(Board of Peace)」が監督する、まだ特定されていない外部監視機関が、合意の遵守状況を監視し、双方が合意を遵守しているかどうかを判断する。

さらに重要なのは、この合意が全ての困難な政治問題を将来の不特定の時点に先送りし、イスラエルによるヨルダン川西岸地区併合の継続的な試みについては全く触れていない点だ。これは、ルーシーとチャーリー・ブラウンとフットボールの古い物語と同じだ。イスラエルは、パレスティナ側の遵守が不十分だと宣言し、再び圧力を強める(あるいは暴力を再開する)機会をいくらでも得るだろう。

したがって、この計画が成功すると信じるには、国際社会、特にアメリカが、イスラエルに対し、現在の合意を維持し、パレスティナとの長年の紛争に対する公正かつ恒久的な解決策を最終的に交渉するよう、容赦ない圧力(relentless pressure)をかけ続けると信じなければならない。確かに、トランプ大統領はついにイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の引き延ばし戦術にうんざりし、この限定的な合意を受け入れさせたようだ。これは、米大統領が、もし行使する意思があれば、どれほどの影響力を持っているかを示す全てだ。

しかし、ネタニヤフ首相、彼の右派支持者、そしてイスラエル社会自体が、ハマスやその他のパレスティナ過激派が完全に排除されたと確信していたとしても、真の二国家解決案(a genuine two-state solution)や何らかの形の単一国家連邦制(some form of one-state confederation)を受け入れる意思があるという証拠はどこにもない。トランプ大統領の極めて短い集中力、気まぐれな性格、そして細部への無関心さを考えると、一体誰が、この問題が継続的に実行されると真剣に考えているだろうか?

問題はトランプ大統領だけではない。外部勢力は、1956年、1967年、1973年の第四次中東戦争におけるアメリカとソ連の行動、そしてそれ以降のワシントンの幾度にもわたる行動のように、交戦当事者に一時的な停戦を促すことはしばしば行ってきた。しかし、公正かつ永続的な政治的解決を実現するために、十分な時間、注意、そして政治的資本を投入し、あらゆる影響力を行使する意思は決して示してこなかった。だからこそ、オスロ合意、2000年のキャンプ・デイヴィッド首脳会談、2007年のアナポリス会議、不運な結果に終わった中東カルテット(アメリカ、ロシア、ヨーロッパ連合、国際連合)、その他大々的に宣伝された和平構想は全て失敗に終わった。

もしアメリカによる継続的な圧力が必要なのであれば、私の2つ目の疑問が重要になる。トランプ大統領の個人的な意向に関わらず、アメリカとイスラエルの関係は和平の可能性を高めるような方向に変化しつつあるのだろうか?

2023年10月7日の攻撃は、国際社会の目から見てハマスに大きな打撃を与え、イスラエルのジェノサイド的対応も同様にイスラエルのイメージを損なった。イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、その他いくつかの国はパレスティナ国家を正式に承認した。これは確かに象徴的なジェスチャーであるが、人々の意識がどれほど変化したかを物語っている。イスラエルのアラブ世界との関係正常化に向けた努力は停滞している。ここアメリカでは、世論調査で支持の劇的な変化が示されており、イスラエルよりもパレスティナに同情的なアメリカ人が多く、イスラエルの行動はジェノサイド(あるいはそれに近い行為)に当たると考える人が41%、正当化できると考える人はわずか22%となっている。

イスラエルへの支持は民主党支持者と無党派層の間で最も急激に低下しているが、スティーヴ・バノン、タッカー・カールソン、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員といった著名な保守派も厳しい批判を表明している。民主党支持者は人権問題への懸念を強く訴えている一方、保守派は、ますます無法化するイスラエルへのアメリカの無条件の支援(unconditional U.S. support)は「アメリカ・ファースト(America First)」の理念と相容れないと考えている。

特別な関係の直接的なコストは、長い間明らかだった。イスラエルはアメリカから最大の軍事援助を受けている外国であり、アメリカ政府は、イスラエルが一人当たりの所得で世界16位にランクインし、相当数の核兵器を保有する繁栄した国であるにもかかわらず、公式には「質的な軍事的優位性(qualitative military edge)」を維持することを約束している。年間約40億ドルの軍事援助は通常、イスラエル・ハマス戦争中に急増し、アメリカの納税者は約220億ドルを負担した。この無条件の支援こそが、中東諸国の指導者たちが武器、投資、市場アクセスを得るためにアメリカ政府に媚びへつらい続けているにもかかわらず、アメリカが中東諸国の大半で依然として非常に不人気である主な理由である。イスラエルへの無条件の支援は、ワシントンが人権の揺るぎない擁護者であり、したがってロシアや中国などの大国ライヴァルよりも道徳的に優れているという主張を損なうことで、アメリカのソフトパワー(America’s soft power)を低下させている。こうした偽善は、トランプ政権がこうした理想を軽視していることを考えると、彼らにとっては問題にならないかもしれないが、それでもアメリカのリベラルな理想とは相容れない。

また、特別な関係は、人口1000万人にも満たない小国が、世界で最も強力な国の政治生活において、不釣り合いなほど多くの時間を割かれていることを意味する。インド、日本、インドネシア、ナイジェリア、ブラジルといった、より規模が大きく戦略的に重要な国々が占める紙面や放送時間と比較して、この小国が受ける報道量を考えてみて欲しい。オーストリアはイスラエルとほぼ同じ人口とGDPを持ち、多くの国際機関の本部が置かれているにもかかわらず、アメリカ人はオーストリアについて散発的にしか耳にしない。あるいは、この小国に特化したシンクタンクやロビー団体の数、そしてアメリカの政治家がこの国の問題に費やす時間の量を見てみよう。

さらに、この小国に関連する問題は、アメリカのより広範な文化や知的活動に日常的に波及している。現在大学を攻撃している背景には多くの要因があるが、ガザ地区の虐殺と、それを支援したアメリカの役割に抗議する学生たち(その多くはユダヤ人)から生じた、誇張された反ユダヤ主義(antisemitism)の非難によって、その攻撃はさらに激化している。学問の自由、ひいては言論の自由全般に対する攻撃は、イスラエルを批判から守り、特別な関係を維持したいという誤った願望だけによって動機づけられているわけではないが、そうした目的も一部の人々にとっては、その要因の一つとなっている。

最後に、この小さな国にアメリカの大統領がどれほどの時間と注意を費やしているかを見てみよう。ジミー・カーター大統領は1978年のキャンプ・デイヴィッド合意の交渉にほぼ2週間を費やし、ビル・クリントン大統領も同様の試みを行った。しかも、これは首脳会談以外でこれらの問題に費やした時間は含まれていない。ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ジョー・バイデンの各大統領は、イスラエル関連の問題に数日、場合によっては数週間を費やした。アントニー・ブリンケン国務長官は在任4年間でイスラエルを16回訪問したが、アフリカ大陸全体への訪問はわずか4回だった。トランプ大統領でさえ、イスラエル問題から距離を置くこと、あるいはイスラエル政策を部下に完全に委任することは不可能だと悟った。大統領、上級顧問、その他の高官がこれらの問題に費やす時間は、アメリカの安全保障と繁栄にとってより直接的に重要な問題に取り組むことができない時間となる。

だからこそ、私をはじめとする多くの人々は、イスラエルの規模と戦略的重要性、そしてアメリカの国益との合致を考慮し、アメリカがイスラエルと正常な関係を築くべきだと繰り返し訴えてきた。正常な関係においては、ワシントンはもはやアメリカとイスラエルの国益が同一であるかのように装うことはなくなるだろう。イスラエルがアメリカにとって望ましい行動をとれば、アメリカはイスラエルを支持するだろう。もしイスラエルがアメリカの意向に反する行動、例えば占領地における入植地の拡大といった行動をとれば、アメリカはイスラエルに強く反対するだろう。

イスラエルは歴史的起源、キリスト教徒による長く悲劇的な反ユダヤ主義の歴史、ホロコーストの遺産、そして非常に紛争の多い地域に位置していることから、通常の国ではないため、通常の関係は意味がないと主張する専門家たちもいるかもしれない。おそらくそうだろうが、2025年においては、イスラエルが「正常(normal)」ではない点は、実際にはアメリカの支援を維持するのではなく、むしろ縮小する理由となる。イアン・ラスティックが最近指摘したように、イスラエルはイスラエルの政治学者イェヘズケル・ドロールの「狂った国家(crazy state)」の定義にますます当てはまるようになっている。狂った国​​家とは、(1)しばしば他者に害を及ぼす攻撃的な目標を追求する、(2)そのような目標に対して極めて過激な関与を示す、(3)不道徳な行為を厭わないにもかかわらず、道徳的優越感を広く示す、(4)そのような目標を追求するために論理的な手段を合理的に選択する能力を持つ、(5)それらを追求するのに十分な能力を持つ、というものである。ラスティックの見解では、イスラエルの現状を決定づける重要な要因の一つは、「アメリカ政権が歴代のイスラエル政府にほぼ無条件の支援を与えてきたこと()has been the nearly unconditional support which American administrations have given to Israeli governments」であり、彼はその原因を「ワシントンにおけるイスラエルロビーの圧倒的な政治力(the Israel lobby’s super-abundant political power in Washington.)」にあると指摘する。

この立場は「反イスラエル(anti-Israel)」と言えるだろうか? 決してそうではない。無条件の支援はアメリカにとって有害で​​あり、イスラエルにとっては災難である。イスラエルは海外からの支持を失い、国内では分裂が深まり、メシア的右派(the messianic right)への傾倒がますます強まり、高学歴で経済的に流動的なエリート層の国外流出に苦しんでいる。「寛容な正常化(benevolent normality)」政策は、たとえそれがAIPAC、アメリカ・シオニスト機構、イスラエルのためのキリスト教徒連合、その他、特別な関係を維持し、イスラエルを現在の窮状に陥れ、何百万人もの不本意なパレスティナ住民に多大な苦痛を与えることを可能にしてきた団体の利益にならないとしても、長期的にはアメリカにとってもイスラエルにとってもより良いものとなるだろう。要するに、永続的な平和を望むなら、イスラエルとのより正常な関係が必要だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2026年2月28日に始まったイラン戦争について、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がアメリカを巻き込む形で攻撃が始まったことは既にご紹介した。ネタニヤフ首相による「誘導(induction)」にドナルド・トランプ大統領が乗せられてしまったということになる。もちろん、トランプ大統領個人だけではなく、政権内部にもイラン攻撃に賛成する人物たちが揃っていたということはある。下記論稿では次のように書かれている。

(引用貼り付けはじめ)

第二次トランプ政権では、ワシントンは遠隔地での戦争を通じて莫大な富を蓄積するロビイストの巨大なネットワークと、アメリカの覇権維持のために戦争も辞さない新世代のネオコンによって支配されている(Under the second Trump administration, Washington has been gripped by a vast network of lobbyists accumulating immense wealth through remote wars and new neocons willing to go to war to maintain US hegemony

(引用貼り付け終わり)
mikewaltzmarcorubio001
マイク・ウォルツ国連大使(左)とマルコ・ルビオ国務長官
elliottabrams101
エリオット・エイブラムス

 下記論稿では、「ワイトハウス大統領次席補佐官スティーヴン・ミラー、国務長官マルコ・ルビオ、国連大使マイク・ウォルツ、元国家安全保障問題担当次席大統領補佐官アレックス・ウォン、そして政策担当国防次官エルブリッジ・コルビー」といった人々がネオコンとして名前が挙がっている。ネオコンとして、ジョージ・W・ブッシュ政権で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を務め、第一次ドナルド・トランプ政権では、ヴェネズエラとイラン問題の特別代表を務めたエリオット・エイブラムスが創設したシンクタンクのヴァンデンバーグ・コアリションの影響力についても下記論稿では言及されている。下記論稿ではさらに、「ロックブリッジ・ネットワーク(Rockbridge Network)」について軽く振られているが、この団体はかなり重要であるので、このブログで後ほど紹介する。
stephenmillerdonaldtrump101
ドナルド・トランプ大統領とスティーヴン・ミラー(右)

 第二次ドナルド・トランプ政権の内部で大きな力を持っているのは、スティーヴン・ミラーホワイトハウス大統領次席補佐官兼国土安全保障問題担当大統領補佐官である。第一次政権ではスピーチライターと特別顧問を務めた。強硬な国境政策や不法移民政策を策定し、実行しているのはミラーであるが、このミラーはイスラエルとのベンヤミン・ネタニヤフ首相ともユタ野人同士ということもあり昵懇の間柄だ。ミラーがトランプ大統領のイラン攻撃決定に影響を及ぼしたということは十分に考えられることだ。

 第二次ドナルド・トランプ政権の内部の動きについてはこれからも随時追いかけ、ご報告する。このブログを継続するためにも、定期的にブログを開きお読みいただきたい。また、著書についてもお買い上げいただきたい。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの暴走を操る新世代のネオコンたち(The new class of neocons guiding Trump’s rampages

キム・ドンスク筆

2026年4月21日

『ハンギョレ』紙(韓国)

https://english.hani.co.kr/arti/english_edition/e_international/1255216.html

ドナルド・トランプはネオコンを敬遠していたが、トランプ2.0時代において、新世代のネオコンが相当な権力を握っている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、どのようにしてドナルド・トランプ米大統領を説得し、イランとの戦争に踏み切らせることができたのだろうか?

ネタニヤフ首相は、この合意を一気に成立させたのではない。むしろ、それは綿密な計画の成果であり、保守的なシオニストやイスラエル企業の協力を得て、2024年の大統領選挙におけるトランプの立候補を支援するという戦略に基づいていた。この計画の中心は、イスラエルを支持する保守派の政治的影響力を行使し、第二次トランプ政権の外交・国家安全保障ティームに新たなネオコン層を送り込むことだった。

これらの人物は、保守系シンクタンクであるヘリテージ財団が2024年の大統領選挙前に作成した、第二次トランプ政権を想定した政策綱領「プロジェクト2025(Project 2025)」の執筆者の中にも含まれていた。

トランプが昨年(2025年)1月にホワイトハウスに復帰するとすぐに、ワシントンに拠点を置くシンクタンクであるヴァンデンバーグ・コアリションは、新たな外交政策を提唱する報告書を発表した。その報告書のタイトルは「世紀の取引:中東問題の解決(Deals of the Century: Solving the Middle East)」だった。

この報告書は、トランプの2期目に向けたネオコンのマニフェストとも言えるもので、アメリカはイスラエルへの軍事援助をさらに拡大し、イランに対して根本的に異なる姿勢を取るべきだと主張していた。

これは、トランプの選挙公約で掲げた「海外での軍事冒険はしない(o stay out of foreign military adventures)」というアイソレイショニスト(アメリカ国内問題解決最優先的)な姿勢から脱却させるための、まさに強硬なロードマップだった。

報告書は、アメリカの最優先事項は「イランの核兵器開発計画を抑止すること(deter Iran’s nuclear weapons ambitions)」だと述べ、中東地域における中国の影響力拡大への懸念を表明するとともに、中国をアメリカの主要な敵対国と位置づけるよう促した。要するに、ヴァンデンバーグ・コアリションは、イランと中国がトランプの2期目における主要な外交課題であると強調したのである。

ヴァンデンバーグ・コアリションの報告書は、過去1年間、アメリカ政府の最高レヴェルで繰り返し参照されてきた。特に、ホワイトハウス大統領次席補佐官スティーヴン・ミラー、国務長官マルコ・ルビオ、国連大使マイク・ウォルツ、元国家安全保障問題担当次席大統領補佐官アレックス・ウォン、そして政策担当国防次官エルブリッジ・コルビーなどが、ヴァンデンバーグ・コアリションの提案を実行するための具体的な措置を準備し、トランプ大統領に提示した。

結局のところ、ヴァンデンバーグ・コアリションの戦略的焦点は中国の封じ込め(containing China)にある。報告書の中で、ヴェネズエラ政府をアメリカの勢力圏(sphere of influence)に組み込むことで、ヴェネズエラが足がかりとなっていた西半球(the Western Hemisphere)における中国の影響力を弱めることができると主張している。

アメリカは、外交・軍事資源を他の分野に集中させれば、中東地域などの重要地域における中国の影響力拡大を効果的に抑制できると考えている。これは、中国の世界的な影響力を弱体化させるための多段階イニシアティヴの一環である。一部のアナリストは、トランプ大統領の対イラン攻撃は、北京訪問のための布石だったと考えている。

トランプ大統領の勢力志向の外交政策は、「破壊して取引する(destroy and deal)」という行動様式として体系化され、以前よりも攻撃的で予測不可能なものとなっている。

2021年に設立されたヴァンデンバーグ・コアリションは、介入主義的な外交政策と国防費の増額を提唱している。2025年、この組織はヴェネズエラとイランに関する多数の報告書を発表し、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の逮捕を促し、イランを非難した。

著名なネオコンであるエリオット・エイブラムスは、ヴァンデンバーグ・コアリションの創設者兼会長だ。彼は介入主義(interventionism)の熱烈な支持者であり、中東地域にアメリカに友好的な政権を樹立することが、世界からテロリストを一掃する最善かつ最も確実な方法だと信じている。また、2003年のイラク侵攻を執拗に支持したネオコン運動の中核人物でもある。彼はイラン・コントラ事件への関与で有罪判決を受けた。

バラク・オバマ政権の8年間を通して、エイブラムスは外交問題評議会の上級研究員を務め、その間、オバマの「後ろから導く(leading from behind)」外交政策はアメリカの影響力を弱めていると主張した。

エイブラムスはオバマのキューバとイランとの関係正常化の試みを強く批判し、オバマが敵国に接近していると非難した。イラク戦争の反動が無視できないほど深刻化した後も、エイブラムスはシリア内戦とイスラエル・パレスティナ紛争について持論を展開し続け、イラク戦争後に散り散りになったネオコン勢力を再結集させた。

2019年、第一次トランプ政権に、エイブラムスはイラン・ヴェネズエラ担当米特別代表に任命され、公職に復帰した。エイブラムスはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と特別な関係にある。

私はかつて2007年のAPEC首脳会議でエイブラムスに直接会う機会があった。私が韓国人だと知ると、エイブラムスは「中国、イラン、北朝鮮が連携している以上、アメリカ、イスラエル、韓国は国家安全保障に関して協力する必要がある」と述べた。

トランプが2024年の大統領選挙で孤立主義を唱え、「新たな戦争は起こさない(there would be no new wars)」と主張した際、エイブラムスはヴァンデンバーグ・コアリションに所属する複数のネオコン戦略家を招き入れ、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」計画ティームに加えた。

エイブラムスは第二次トランプ政権には公式な役職には就いていないものの、舞台裏のアドヴァイザー兼アナリストとして中東政策に関する理論的助言を提供し、影響力を行使している。何よりも、エイブラムスの指導の下、トランプ政権の要職に就く新世代のネオコンたちは、絶大な権力を振るっている。

トランプ大統領の側近の多くは、エイブラムスに同調するネオコンの中に名を連ねている。スティーヴン・ミラー、マイケル・ウォルツ、マルコ・ルビオなどがその例だ。連邦上院では、テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)、リンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)、トム・コットン連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)が、エイブラムスの政策を支持するネオコンである。

その他、注目すべきネオコンとしては、ジェイミソン・グリア米通商代表、ブライアン・キャバノー(国土安全保障次官候補)、アール・マシューズ(国防総省法律顧問)、モーガン・オルタガス(中東地域担当米国特使代理)、マイク・ハッカビー駐イスラエル米大使などが挙げられる。

ハッカビーの側近であり、イスラエルを熱烈に支持し、MAGA運動の柱としてホワイトハウスで影響力を持つデイヴィッド・ミルスタインは、トランプ大統領が揺るぎない信頼を寄せているFOXニューズの司会者で保守派コメンテーターのマーク・レヴェンの義理の息子でもある。さらに、韓国でよく知られたエルブリッジ・コルビーは、エイブラムスの義理の姉の息子である。

かつてネオコンはアメリカの外交政策に大きな影響力を持っていたが、イラク戦争の惨禍の後、ジョン・ボルトンを最後の生き残りとしてワシントンから姿を消したかに見えた。

しかしながら、彼らはイスラエル中心の中東政策という長年の戦略を擁護することで、トランプ政権の中枢に静かに深く入り込んできた。これらの新たなネオコンは、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」の原則と、介入主義への揺るぎない信念を融合させ、新たなタカ派政策を築き上げている。

彼らはもはや、旧来のネオコンが掲げていた民主政治体制の普及というスローガンを唱えていない。代わりに、圧倒的な武力による制圧と取引に焦点を当てることで、第二次トランプ政権の外交・安全保障政策を主導している。価値観(values)よりも実利主義(pragmatism)を優先することで、彼らは敵対国、つまり中国を効果的に無力化する(neutralizing)という目標を設定し、トランプの注目を集めている。

こうした新ネオコンと同盟を結んだネタニヤフ首相が用いているもう一つの戦略は、トランプ一族が経営する企業に巨額の資金を投入することだ。これらの企業の多くは、防衛、人工知能、航空宇宙、バイオテクノロジーといった分野の巨大企業である。

トランプがイランを攻撃し戦争を仕掛ける中、彼の2人の息子は防衛産業への投資で莫大な利益を上げている。次男のエリック・トランプは、イスラエルのドローンメーカーで米防総省の契約企業であるエクステンド社に投資し、この戦争においてドローンの能力がますます重要になるにつれて巨額の富を築いた。

トランプ大統領の長男であるドナルド・トランプ・ジュニアは、ドローン部品を製造するスタートアップ企業アンユージュアル・マシーンズの株主兼アドヴァイザーを務めている。アンユージュアル・マシーンズはドローン部品製造のため、米国防総省から6億2000万ドルの融資を受けた。これは国防総省戦略資本局が過去に行った融資の中で最大規模である。

トランプ・ジュニアはまた、「愛国的資本主義(patriotic capitalism)」を推進し、防衛技術系スタートアップ企業に投資するヴェンチャーキャピタル企業である1789キャピタルのパートナーでもある。1789キャピタルは、シリコンヴァレーのヴェンチャーキャピタリストの中でもトランプを支持する億万長者ネットワークであるロックブリッジ・ネットワーク(the Rockbridge Network)の億万長者たちが支援する投資運用会社である。

1789キャピタルは、トランプ大統領の再選直後にトランプ・ジュニアがパートナーとして加わって以来、爆発的な成長を遂げている。1789キャピタルは主に防衛・兵器産業分野に投資しており、アンドゥリル・インダストリーズ、ハドリアン・オートメーション、スペースX、そして米国防総省のパートナー企業である希土類磁石の新興メーカーであるバルカン・エレメンツなどが投資ポートフォリオに含まれている。

トランプ・ジュニアは、物議を醸している予測市場企業ポリマーケットのアドヴァイザーも務めており、主要な外交政策や国家安全保障に関する決定を事前に予測することで巨額の利益を得ていると疑われている。

第二次トランプ政権では、ワシントンは遠隔地での戦争を通じて莫大な富を蓄積するロビイストの巨大なネットワークと、アメリカの覇権維持のために戦争も辞さない新世代のネオコンによって支配されている(Under the second Trump administration, Washington has been gripped by a vast network of lobbyists accumulating immense wealth through remote wars and new neocons willing to go to war to maintain US hegemony)。

ネタニヤフ首相の影響力は、こうした新たな政治情勢の中で発揮されている。これらの人物は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮をまとめて「CRINK」という新しい略語を作り出し、これらの国々を「新たな悪の枢軸(the new axis of evil)」と位置づけている。

韓国では、トランプ大統領の5月の中国訪問が、米朝関係の打開につながるのではないかと期待されている。個人的には、その見通しに不安を覚える。ペルシア湾が炎上している状況が、まるで他人事のように感じられないと言うのは、大げさな反応だろうか。

キム・ドンスク:韓国系アメリカ人グラスルーツ会議議長。

=====

ドナルド・トランプの熱狂者:スティーヴン・ミラーの恐怖政治の内幕(Trump’s ZealotInside Stephen Miller’s Reign of Terror

―ドナルド・トランプのアメリカについてあなたが嫌悪したり愛したりするもの全てはスティーヴン・ミラーの恐怖共和国についてあなたが憎んだり大切にしたりするものと全く同じだ。

アサウィン・スエブサエング、ニッキ・マカン・ラミレズ、アンドリュー・ぺレズ筆
2025年9月14日

『ローリングストーン』誌
https://www.rollingstone.com/politics/politics-features/stephen-miller-trump-terror-ice-immigration-military-1235426023/

昨年(2024年)11月6日午前3時過ぎ、ヒルトン・ウェストパームビーチ・ホテルの受付近くに立っていた、薄毛で痩せ型の男性ほど、この世で幸せそうな人はいなかっただろう。

ドナルド・トランプは、隣接するフロリダ・コンヴェンションセンターで2024年大統領選挙の開票速報パーティーを終えたばかりで、「史上最も素晴らしい政治的出来事(the most incredible political thing)」と雄弁に語る演説で勝利を宣言した。歓喜に沸く共和党の献金者、選挙スタッフ、将来の政府高官、そして出席者たち(もちろんジョン・ヴォイトも)が、祝賀のためにこの高級ホテルに押し寄せた。

ロビーの正面に立っていたのはスティーヴン・ミラー。トランプが間もなくホワイトハウスの政策決定と行政権限の絶対的な責任者として指名する人物だ。

ミラーは、トランプ政権初期の主要な政策立案者の一人であり、特に大統領による合法移民の抑制政策において重要な役割を果たした。ジョー・バイデン政権の高官たちは、トランプ政権1期目にミラーが移民政策に与えたダメージは今もなお国に重くのしかかっており、バイデン陣営は4年間の政権期間中にその多くを覆すことができなかった、あるいはそうしようとしなかったと語るだろう。

しかし、フロリダでのあの夜、当時39歳だったミラーにとって何かが違っていた。目の前に無限の可能性が広がっていたのだ。

祝賀ムードの中、ミラーはトランプ政権の高官たちと集まり、次々と祝福の言葉をかけてくる熱狂的な保守派有権者や共和党の大物たちに感謝の意を伝えた。彼らは皆、あの夜の勝利はトランプだけのものではなく、ミラー自身の勝利でもあることを理解しており、多くの人がトランプから贈られたミラーの指輪にキスをせざるを得ないと感じていた。

トランプの復権を目の当たりにした瞬間、ミラーの顔に浮かんだ抑えきれない喜びの表情は、未来を見通す者の目を見ていたかのようだった。トランプのトップ補佐官であり、最も忠実な信奉者であり、1期目のMAGA派幹部の度重なる粛清をどうにか生き延びた唯一の側近は、この国が今や自分のものになったことを悟っていた。

喜びにあふれた女性に語りかけるミラーは「素晴らしいことになるだろう」と言った。

トランプの2期目が始まって7カ月以上が経ち、スティーヴン・ミラーは、アメリカ、いや世界でも最も権力を持つ非選出官僚となった。トランプの承認を得て、ミラーは、その階級のアメリカ政府高官としては前例のないほど、国家を自由に運営し、再構築することを許されている。トランプ政権の悪名高い政策を思い浮かべてみてほしい。おそらく、それはスティーヴン・ミラーによって推進されたものだろう。

全てにトランプの署名があるものの、大統領が夜な夜な大統領令を書き、法理論を自らの意のままに操っている訳ではない。そのほとんど全てはミラーの著作(あるいは少なくとも共著)である。ドナルド・トランプのアメリカについてあなたが嫌悪したり愛したりするものはすべて、スティーヴン・ミラーの恐怖の共和国についてあなたが憎んだり大切にしたりするものと同じだ。

ミラーの指導の下、大統領が望めば、政府は適正な手続きを経ずに、あなたやあなたの配偶者を国外の強制収容所に強制送還(あるいは誘拐して身柄を引き渡す)することができる。ホワイトハウスは、人身保護令状(habeas corpus)のような最も基本的な憲法上の権利を剥奪すると繰り返し脅迫することができる。大統領は、最高司令官を苛立たせたか、選挙を盗むのに協力することを拒否した以外に何も悪いことをしていない敵に対して、司法省による刑事捜査を開始することができる。大統領とその側近は、たとえ犯罪歴がなくても、裁判所への定期的な出頭時、教会、子供の学校の前など、どこでもあなたを逮捕することができる。彼らは極めて厳格な移民逮捕「割り当て(quotas)」制度を導入し、大量強制送還ではなく、大量失踪と刑務所や新設された収容所での無期限拘留を主とする体制を確立した。

彼らは連邦法執行機関の大部分を、大統領とそのスタッフの気まぐれで活動する、覆面をした匿名で責任を問われない秘密警察(secret police)へと急速に変貌させた。大統領はいつでも、武装した州兵や海兵隊をアメリカの都市の街路に派遣し、そこを敵地とみなすことができる。政権は、ホワイトハウス西棟から連邦通信委員会に至るまで、言論の自由を抑圧する十字軍(an anti-free-speech crusade)を展開し、メディア、コメディアン、そして老齢のロックスターに対する検閲を政策の最優先事項としている。

「影の国防長官(Shadow Sec Def)」。

「ミラー総理大臣(Prime Minister Miller)」。

「本当の司法長官(The REAL Attorney General)」。

「国土安全保障省のボス(The DHS boss)」。

「ミラー大統領(President Miller)」。

トランプ政権の当局者や大統領およびホワイトハウスに近い他の共和党員は、ミラーがいつか陰で自分の悪口を言われるのではないかと疑心暗鬼になっているが、それでも彼らはホワイトハウス副首席補佐官に付けた非公式の肩書きやニックネームをささやき合っている。

ローリングストーン誌が、元FOXニューズのスターで国防長官を務めるピート​​・ヘグセスについてある政権高官に尋ねたところ、この情報源は自ら進んで「彼はスティーヴン(・ミラー)の言うことを聞いている」と答えた。

国防総省報道官のショーン・パーネルは、ヘグセス長官は「スティーヴン・ミラーと良好な協力関係を築いている。両者はトランプ大統領の『アメリカ・ファースト(America First)』政策の遂行において完全に一致している」と述べた。

●「とんでもない奴」(‘One Intense Motherfucker’

カリフォルニア州サンタモニカで十代だった頃、ミラーは学校で自分と関わりのないハンサムな少年たちを挑発することに何よりも熱中していた。

サンタモニカのリンカーン中学校でミラーと初めて出会ったジェイソン・イスラスは、自分とミラー、そしてもう一人の友人は仲の良いアウトサイダー集団で、中学時代はスタートレックの話をするなど、思春期の男の子らしいことをして過ごしたと語る(イスラスはミラーがカーク船長の大ファンだったことを覚えている)。しかし、1999年の夏、中学2年生から3年生になる頃、状況は一変した。イスラスによれば、ミラーは彼に「もう友達ではいられない」と告げたという。「彼が言ったことの一つは、僕がラテン系の血を引いていることが気に入らないということだった」とイスラスは回想する。

その後数十年、ミラーは成長するどころか、過激な思想をますます強固にしていった。バラク・オバマ政権時代にアラバマ州選出のジェフ・セッションズ連邦上院議員の事務所で広報担当補佐官として働いていた頃、彼は連邦議事堂の保守派の同僚たちから非常に嫌われていた。そのため、他の共和党議員事務所のスタッフは、ミラーが陶器の人形遊びが好きだといった悪意のある噂をでっち上げたり、広めたりしていた。(ホワイトハウス当局者は、彼の連邦議会での活動に関するそのような描写は「不正確で根拠のない噂話」だと主張している。)当時のスタッフは、彼が極右のヘイトサイトを読み過ぎてワシントンの最も過激な沼に足を踏み入れるとどうなるかという、単なる笑い話か、あるいはあまり知られていない教訓話以上の存在になるとは夢にも思っていなかった。

今日に至るまで、状況はほとんど変わっていない。トランプ大統領の政策立案者であり執行者でもあるスティーヴン・ミラーは、3人のトランプの補佐官によれば、いかなる犠牲を払ってでも、自らが「反白人憎悪(anti-white hatred)」「反白人人種差別(anti-white racism)」「反白人差別(anti-white discrimination)」とみなすものを根絶するために、政府の力を駆使することに執着している。

ミラー氏は、軍事戦闘(military combat)、永遠の戦争(forever war)、文化と国土への侵略(invasion against the culture and the homeland)といった、誇張された表現を用いた終末論的な単語(apocalyptic terms)ばかりを用いる。

彼は、収容と大量強制送還のための「キャンプ(camps)」と名付けた、巨大で超軍事化されたネットワークを構築することを切望している。このネットワークによって、アメリカの政治的・物理的な景観が永久に変わることを期待しているのだ。

ユダヤ人であるミラーは、自身のおじから、ユダヤ人の道徳的・政治的価値観を裏切った人物として非難されている。ミラーは長年、1924年移民法に深い敬意を抱いており、アメリカをあの時代に戻したいと願っている。この法律は、ナチスから逃れようとしたユダヤ人がアメリカへの安全な渡航を拒否されたことで、ホロコーストをより悲惨なものにしたことで悪名高い。

2024年の大統領選挙結果が確定した直後、人権団体や移民擁護派は、ミラーがこれから解き放とうとしている猛攻に全く備えができていないと痛感せざるを得なかった。トランプ政権の任命者の中で、彼らを夜も眠らせないほど心配させたのはミラーだった。トランプ政権の次期「国境警備責任者(border czar)」トム・ホーマンが大量強制送還について大々的に語っていたとしても、ミラーに比べれば取るに足らない存在だった。ホーマンの仕事ぶりを知る者にとって、元移民税関執行局(ICE)長官代行は、時折、規則や制限が多少なりとも存在することを認めていた。ミラーのような男にとって、重要な法律とは、彼とトランプが都合よく歪めることができる法律だけだった。

ミラーは、匿名の人種差別主義者のインターネット荒らしが苦痛に満ちた現実世界に具現化し、権力を授けられたような存在かもしれない。しかし、だからといって、彼は自らが唱えるイデオロギーの正当性を心から信じていない訳ではない。彼自身は、自らを勝利の英雄、軟弱なリベラリズムに対する唯一の解毒剤、そして、彼自身や仲間たちが多元的な現実によって不当な扱いを受けていると感じている、寛容な合法・非合法移民に対する聖戦士(a holy warrior against the permissive legal and illegal immigration)だと考えている。

トランプ政権の最高幹部である共和党員にミラーについて尋ねると、賞賛と不安が入り混じった独特の反応が返ってくる。「とんでもない奴だ(One intense motherfucker)」と長年トランプの顧問を務めてきた人物は言う。

友人たちが彼をより穏やかで、親切で、面白い人物に見せようと試みても、たいていは失敗に終わり、偏屈者(a crank)か、これまで出会った中で最も意地悪なオタク(the meanest dork)のように映ってしまう。例えば、ミラーの長年の側近数名によると、ホワイトハウスの最高補佐官である彼は、これまでに出会った中で最も「MAHA(アメリカを再び健康に、Make America Healthy Again)」(マナーの悪い、傲慢な)人物の一人であり、ロバート・F・ケネディ・ジュニア流の食と健康(あるいは反健康)に関するプロパガンダにどっぷり浸かっているという。彼の私生活に関する話を聞くと、控えめに言っても退屈な人物像が浮かび上がる。

ローリングストーン誌に、ミラーに言い寄られたある女性は、2017年頃、デュポンサークル近くのバーで、結婚前のミラーに口説かれた時のことを語っている。その話によると、彼女は服の襟にどこの国名が書いてあるのか(中国とは言わないように)と執拗に聞かれ、保守派の典型的なタイプではないという理由で「グローバリスト(globalist)」だと非難されたという。

ワシントンで彼を奇妙だと思うのは、見知らぬ女性だけではない。長年にわたる緊密な協力関係の中で、トランプ大統領は、まるで核兵器を携えたおしゃべりな意地悪女のように、ミラーの陰口を言うことをためらわなかった。この件を直接知る2人の情報筋によると、トランプは過去に、ミラーの強烈でぎこちなく、時には人を遠ざけるような態度について、他の人に話していたという。

しかし、トランプにとって、ミラーは頼りになる突破口(a useful battering ram)であり、「ロイ・コーンはどこにいるのか?」という長年の疑問に対する政策的な答えなのだ。

ホワイトハウス報道官キャロライン・リーヴィットは次のように述べている。「スティーヴン・ミラーは、トランプ大統領の最も長く仕え、最も信頼されている顧問の一人として、ほぼ10年間務めてきた。大統領がスティーヴンをどれほど尊敬しているかは、私自身が日々目の当たりにしているので、このように断言できる。だからこそ、スティーヴンは政策担当大統領次席補佐官兼国土安全保障担当大統領補佐官を務めている。大統領はスティーヴンと、その実績あるリーダーシップ能力に絶大な信頼を寄せているからだ。スティーヴンは職務を非常に効率的にこなすだけでなく、忠実な同僚であり友人でもある。これに反する意見は、彼をよく知らない人々の根拠のない噂話に過ぎない」。

報道官の声明に加え、トランプ政権はローリングストーン誌に対し、共和党所属の連邦議員たちからの長々とした推薦文リストを送付した。それはまるで、トランプ支持派のリンクトインの推薦欄を彷彿とさせるもので、スティーヴン・ミラーが個人的にも人々に好かれていることを証明するためだった。

例えば、ジョシュ・ホウリー連邦上院議員は、ミラーを「友人(a friend)」と呼べることを嬉しく思うと述べ、「彼はアメリカの家族が繁栄できる未来の実現に深く尽力している」と付け加えた。

スティーヴ・スカリス連邦下院多数党(共和党)院内総務は、「スティーヴン・ミラーは聡明で思慮深く、議員たちの意見や懸念に耳を傾ける時間を惜しまず、常に一緒に仕事がしやすい人物だ」と述べ、「スティーヴン・ミラー氏を親しい友人と呼べることを誇りに思う」と付け加えた。

ホワイトハウスは、トム・コットン連邦上院議員、マイク・リー連邦上院議員、ジム・ジョーダン連邦下院議員からも同様の声明を発表し、報道官は、これらの議員によるミラーへの称賛は全てこの記事に掲載される予定だと述べた。

●「やり遂げる」(‘Get It Done’

トランプ政権のホワイトハウス・ウエストウイングで働く複数の情報筋によると、現在、大統領の側近は形式上はホワイトハウス副首席補佐官だが、トランプ政権の政策責任者として、実際の首席補佐官であるスージー・ワイルズ(トランプの2024年大統領選共同責任者)をはるかに凌駕している。

ミラーは、事実上あらゆる政策と行政措置(特に国内政策関連)に関与し、事実上全ての文書、トランプ大統領の指示、憲法上疑わしい命令、メモに関わっている。ワシントンDC、ロサンゼルス、そしてあなたの街の民主党優勢都市にも迫りつつあるトランプ政権の軍事介入の構図は、ミラーが軽蔑するリベラル派の牙城を制圧するという彼の構想の産物でもある。

「スティーヴンにとっては最高に楽しい仕事だ」とトランプ氏の側近の一人は、アメリカ軍の国内展開を指揮しているミラーの役割について語る。

トランプ政権による多様性推進プログラム、高等教育、そしてトランプが好まない言論の自由に対する徹底的な締め付けは、ミラーの理念を如実に表しており、かつては粗野とみなされていた方法で保守派の「文化戦争(culture war)」を連邦政府の手に委ねるという長年の野望を実現させた。トランプの広範な移民・国境警備政策は、まさに「スティーヴン・ミラー・ショー」であり、スティーヴン・ミラー・プロダクションズLLCが制作し、スティーヴン・ミラー自身が演出を手がけている。

大統領がこれらの国内プログラムを開始するために署名する書類の一枚一枚を、トランプの側近であるミラーは精査し、時には修正を加え、連邦政府機関のあらゆる部署のトランプ政権関係者に、彼自身の言葉を借りれば「やり遂げる(get it done)」と圧力をかける。

彼が省庁や機関の職員を叱責する様子は、もはや悪夢とまではいかないまでも、伝説となっている。トランプ政権2期目が始まって以来、連邦政府で働き、ミラーと直接やり取りをしたことのある2人の情報筋がローリングストーン誌に語ったところによると、ミラーの叱責によって、それぞれ職場で泣いてしまったという。

省庁間の協議において、ミラーは日常的に相手を罵倒し、怒鳴りつけ、職員の職や党内での将来を脅し、同僚の前で屈辱を与えようとしてきた。移民逮捕者数が十分に水増しされていないと感じたり、トランプ大統領の国内政策が少しでも停滞していると感じたりすると、激怒する。彼は長時間労働と、新政権が打ち出す過酷な政策の細部にわたる管理で知られている。2017年以来、共和党上層部では、トランプ大統領のためなら何でも言い、何でもやり、ほとんど誰でも裏切ることを厭わない人物として、そして何よりも大統領との権力関係と近さを維持するために、そうした姿勢を貫いてきた人物として、長年にわたり悪評がつきまとっている。

トランプ政権の最高幹部レヴェルでは、パム・ボンディ司法長官が司法省を、クリスティ・ノーム国土安全保障長官が国土安全保障省を牛耳っているという考えは、あまりにも不完全である。名目上は独立している各省庁は、ホワイトハウスのウエストウイング、つまり実質的にはミラーによって運営されている。

政府関係者の中には、トランプ大統領は州兵や武装した海兵隊を民主党が統治する都市部に派遣できるものの、これらの部隊は従来の法執行活動を行うことはできないと指摘する者もいた。こうした状況に対し、ミラーは政権の弁護士やスタッフに対し、トランプ大統領は彼らにその法的制約を回避する方法を見つけ出し、得られた法的​​理論を報告するよう求めている。

ミラーは、トランプ政権発足当初の数カ月間、非常事態宣言ではなく国内政治目的のために、アメリカ国内へのアメリカ軍派遣を常態化させることを最優先事項としてきた。関係者によると、トランプ大統領とミラーは、これに反対する者を「弱者(weak)」「臆病者(cowards)」「犯罪擁護者(pro-crime)」と見なしているという。

●「私たちは命令に従うしかない」(‘We Just Have to Follow Orders’
トランプ大統領がロサンゼルスでの移民税関執行局(ICE)の作戦を支援するため、州兵と海兵隊を派遣した後、ミラーは、不法移民を市から一掃すれば、残された住民にとってユートピアが生まれると主張した。

「不法移民がいなくなれば、アメリカ国民のためにどれだけの資源が解放されるか、想像できるか?」とミラーはフォックスニューズに語った。「救急外来で列に並ぶ必要もなくなり、ロサンゼルスのひどい交通渋滞もなくなる。健康保険料は下がり、公立学校の教室の規模も縮小する。・・・そして、もし政府の支援が必要になったとしても、第三世界から来た何百万人もの不法移民の後ろに並ぶ必要はない。これは、一般のアメリカ国民の生活の質にとって、まさに大きな恩恵となるだろう」。

2025年7月、ホワイトハウス前で記者団の取材に応じた際、ミラーは「幼い子供を持つ母親(moms with young kids)」を標的にすることが政権の資源の最適な使い方なのかと問われた。それに対し、彼は記者に対し、不法移民のうち何パーセントを滞在させるべきかと問い詰めた。「どの不法移民がレイプや殺人を犯すかを、魔法の8ボールで予知できるとでも思っているのか?」。

ミラーには法律の専門知識はないが、トランプ政権関係者によると、ミラーはトランプが外国人敵対者法(AIEA)を利用して適正手続きを経ずに大量強制送還を行うという策略の首謀者だったという。この計画は、2023年に保守系ラジオパーソナリティのクレイ・トラビスとバック・セクストンとのインタヴューで詳細に語られたものだ。

ミラーはまた、国家による恣意的拘束からの保護という憲法上の基本的権利である人身保護令状の停止を公に示唆した最初の政権関係者でもある。2025年5月にホワイトハウスで記者団に対し、ミラーは「侵略時には人身保護令状の特権を停止することができる。したがって、我々はそれを積極的に検討している選択肢の一つだ」と述べた。もちろん、侵略など起きていない。

ミラーの遺産と、彼が現代社会で果たした役割の真髄を理解したいなら、ペンシルヴァニア通り1600番地(ホワイトハウス)の向こう側を見据える必要がある。トランプの主要な執行者であるミラーを理解するには、彼が全米各地で無数の人々に何をしているのかを理解する必要がある。そして、被害者の話を聞いた時の彼の個人的な、本能的な反応を理解しなければならない。

全米には、トランプとミラーの集団によって引き裂かれた何千もの家族がいる。そのほとんどは、世に出回ることもなく、おそらく耳にすることもないだろう。そのうちの一つが、今年初めにオハイオ州の移民弁護士からローリングストーン誌に伝えられた。ローリングストーン誌はこの話の詳細を確認し、妻、夫、そして3歳の娘には仮名を使用することに同意した。弁護士は、ミラーとトランプ政権が無償で移民支援を行う弁護士を標的にしていることを理由に、身元を明かさないよう求めた。

2020年、「リカルド」(ここではそう呼ぶ)は、ラテンアメリカの故郷を逃れ、アメリカに亡命を求めた。リカルド自身が語るように、彼は故郷で軍隊に所属していたが、汚職や強力な組織犯罪を理由に、もし故郷に留まれば自分に何が起こるか恐れるようになったという。

2025年までに、彼はすでにアメリカで生活基盤を築いていた。妻の「エレン」と幼い娘の「ジェシカ」と共に、オハイオ州コロンバスに暮らしていた。彼は家族を養うために働き、エレンはジェシカの世話をしていた。2人の間には、軽犯罪や暴力犯罪、その他の犯罪歴は一切なかった。しかし、2024年初頭、2人は予定されていた公聴会に出頭したものの、実際には出席せずに帰ってしまった。受付係が誤って、その日の公聴会の予定に入っていないと告げたためだった。このたった一つの不手際誰の言い分にも反するはずのない出来事だったが、トランプ政権2期目の下で、彼らの家族を破滅(doom)へと導くことになった。

今年の6月、リカルドはICE(移民税関執行局)から、地元のICE事務所に出頭するよう求めるテキストメッセージを受け取った。トランプ政権がミラーとトランプによって推進した数々の新政策や逮捕割り当てを前に、彼の弁護士は疑念を抱いた。それでも、リカルドはこの偉大な国を信じていた。彼は自分が犯罪者ではないこと、正しい方法でここに来たかったこと、そして隠すことは何もないことを示したかったのだ。

オハイオ州を拠点とする弁護士は、コロンバス郊外の連邦入国管理局の受付で、建物に入るために列に並んでいた3人家族と出会った。ジェシカとエレンはお揃いの服装で、ジェシカはリボンで結んだおさげ髪にピンクのワンピースを着ていた。弁護士は、ジェシカが父親の頬を触って遊んでいると、父親がフグのように頬を膨らませて笑っていたのを覚えている。

待合室を過ぎると、武装した移民税関執行局(ICE)職員2人が間もなく彼らの両脇に現れ、そのうちの1人が弁護士と家族に、職員には選択の余地がないと告げた。ICEは「ワシントンからの(from Wasington)」指示を受けていると職員は言った。その指示は1月のトランプ大統領就任後に出されたもので、ミラー長官が直接作成した、逮捕・強制送還件数の増加を求める新たな基準と要求(既存の犯罪歴の有無に関わらず)が含まれていた。

職員は、父親にその場で手錠をかけ、連行しなければならないと告げた。「私たちは命令に従うしかない」とICE職員は言った。

スペイン語を話す家族は、最初は何が起こっているのか理解できなかった。夫婦と弁護士はICE職員に家族全員で自主退去させてほしいと懇願し、弁護士が通訳を交えながら、何度もやり取りをしなければならなかった。そうすればアメリカの納税者の負担が軽減されるはずだと彼らは訴えた。

ICE職員は謝罪した。どうすることもできないようだった。

職員たちは、エレンとジェシカが部屋を出られるように配慮してくれた。ジェシカが父親に手錠をかけられる場面を見なくて済むようにするためだ。父親はしゃがみ込み、ジェシカを抱き上げて別れのハグをした。混乱して泣きじゃくるジェシカは、父親の首に腕を回し、体を抱きしめて離れようとしなかった。

2人のICE職員のうち1人が、手続きを進める必要があると家族に告げた。ちょうどその時、エレンはジェシカの腰に手を回し、最初は就学前の幼い娘を父親から引き離すことができなかった。ICE職員の1人は父親の肩に手を置き、もう1人は家族を見守っていた。

「パパ!」少女はスペイン語で叫んだ。「パパに会いたい!パパに会いたい!」。

エレンはついにヒステリックになっているジェシカを部屋から連れ出すことができた。ICE職員がリチャードを連れて行く間も、ジェシカは「パパ、パパ、いやだー!」と叫び続けた。待合室に戻る途中、弁護士は待合室に座っていた移民たちや他の人々の顔を見た。彼らはドアの向こうで何が待ち受けているのか、困惑と恐怖の表情で見つめていた。数カ月後、弁護士はローリングストーン誌にこう語っている。「今でもあの少女の叫び声が耳に残っている」。

エレンとジェシカは荷物をまとめてリチャードの故郷へ向かった。2人は数日中に彼と再会できると期待していた。ところが、トランプ政権はリチャードをルイジアナ州の拘留施設に約2カ月間も拘束し、2人の恐怖をよそに、2人は彼を行方不明にしてしまった。その後、2人は再会を果たしたが、心の傷はまだ癒えていない。弁護士によると、ジェシカは今でも夜中に目を覚まし、「パパ!」と叫ぶという。

現代のどの政権下でも、厳しい移民取り締まりが行われ、胸が張り裂けるような決断が下されてきた。しかし、この話が起こっているのは、トランプ政権とミラーが、ミラー自身が逮捕者数を水増しするためだけに、各州の機関に取り締まり強化を強要しているからだ。

あなたにとって、これは悲しい、あるいは恐ろしいことのように思えるかもしれない。しかし、ミラーにとって、あなたの怒りは実に滑稽なものだ。今年、トランプ政権の側近であるミラーは、非公式の会話の中で、移民家族の「悲しい話(sob stories)」を煽るリベラル派は、ミラーと政府が決して騙されない感情的な「脅迫(blackmail)」を行っていると述べている。彼はそれを笑い飛ばし、再びホラーストーリーの創作に取り掛かった。
(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ