古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ドル

 古村治彦です。

 第二次世界大戦後の世界の基軸通貨となったのは、米ドルだ。米ドルが価値の基準であり、米ドルで貿易決済のほとんどが行われてきた。世界の多くの発展途上国(貧乏な国)では、自国の通貨の信用がなく、米ドルが流通するというところも多い。「自国の通貨はいつ紙切れになるか分からないほど信用はないが、米ドルは世界の超大国・派遣のアメリカの通貨だから安心だ」ということになる。日本も外貨準備高でドルを貯めこみ、また、米国債を多く買っている。米ドルは安心だ、だからこれらは安心の資産(運用)ということになる。

 アメリカではインフレ懸念から中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve System)が政策金利の利上げを進めている。これで市場に流れているドルを吸収しようということであるが、これは諸刃の剣だ。政策金利の上昇は住宅ローン金利に反映される。住宅ローンの返済額が大きくなれば、家を持ち切れないという人々が出てくる。そうなれば社会不安が発生する。また、住宅バブルが崩壊することで不景気に突入する可能性が高まる。しかし、金利を上げなければ、インフレ状態は続き、住宅バブルは続く。バブルはいつか弾ける。何より、米ドルの価値が下がる。これは米ドルの信用にもかかわってくる重大な問題だ。政策金利を上げても問題が起き、下げても問題が起きる。「前門の虎、後門の狼」という状態だ。アメリカはドルの信用だけは守らねばならない。そうでなければ、アメリカ国民の生活自体を維持することができなくなるからだ。そのために必死である。

 米ドルが基軸通貨の地位から転落した場合、それに代わる存在は何かということになるが、ユーロはドルと道連れであろうし、円は日本の経済力の低下もあってそのような力はない。中国の人民元が有力候補であるが、ここで出てくるのがBRICs共通通貨という候補だ。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が最初にこれらの国々の間だけで通用する通貨を作る。それが役割を拡大していき、最終的には基軸通貨となるというシナリオだ。金(きん)を後ろ盾にする通貨ということになれば、米ドルよりも信用が高まる可能性が高い。

 ドル覇権の崩壊が現実味を帯びてきたことを考えると、アメリカとノルウェー、NATOによるノルドストリーム攻撃・爆破はドル覇権を守るための動きだったという解釈もできる。ヨーロッパに安価なエネルギー源である天然ガスを供給してきたロシアはその取引決済をドルで行っていたが、西側諸国による制裁の後はルーブルで決済をするように求めた。エネルギー源を買えなければ生活は成り立たない。ヨーロッパ諸国はルーブルを手に入れるようになり、ルーブルの価値は安定することになった。英米が画策したルーブルの価値下落によるロシア経済の破綻というシナリオは崩れた。

これが進んで(これを敷衍して考えると)、BRICsの共通通貨で支払うことを求めるようになれば、共通通貨の使い勝手を考えると(ブラジル、インド。中国、南アフリカともこれで決済ができる)、ドルに頼らないということになる。ドイツにとっての最大の貿易相手国は中国だ(日本もそうだ)。ロシアとのノルドストリームを通じての天然ガス取引が実質的に続けば、ドル覇権が脅かされることになる。
 こうした動きに敏感なのがサウジアラビアだ。現在のサウジアラビアはサルマン王太子がバイデン政権との不仲を理由に、これまで強固な同盟関係にあったアメリカの意向に逆らうような動きを見せている。「西側以外の国々(the Rest)」の仲間に入る姿勢を鮮明にしている。サウジアラビアは米ドルで石油を売るということをやってきた。アメリカは極端な話をすれば、「(打ち出の小槌のように)米ドルを刷れば石油が手に入る」(アメリカ以外の国々は米ドルを手に入れるために苦労しなければならない)ということであった。しかし、米ドルの信用が落ち、ドル覇権の崩壊の足音が近づく中で、西側以外の国々(the Rest)のリーダー国である中国に近づいている。中国の仲介受け入れて、イランとの緊張緩和を決定したのは象徴的な出来事だった。サウジアラビアとしては、BRICs共通通貨の出現を待っている状況なのだろう。そのためには米ドルが紙くずになる前に、自国の資産を保全するという動きに出るだろう。その一つが金(きん)の保有量を増やすことである。

金(きん)価格が高騰しているというのは日本でも報道されている。「新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ戦争といった不安定要素があるから金が買われているんだろう」ということが理由として挙げられている。しかし、それだけではない。米ドルの基軸通貨からの転落に備えての資産保全のために金が買われている。

 私たちは世界の大きな転換点に生きているということを改めて認識すべきだ。アメリカと米ドルがいつまでも強いという確固とした信念を持っている人はまずその信念について点検して、考え直した方が良い。

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ブリックス通貨はドルの支配を揺るがすことになるだろう(A BRICS Currency Could Shake the Dollar’s Dominance

-脱ドル化(De-dollarization)はついに来たのかもしれない

ジョセフ・W・サリヴァン筆

2023年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/04/24/brics-currency-end-dollar-dominance-united-states-russia-china/?tpcc=recirc_trending062921

脱ドル化の話が取り沙汰されている。先月、ニューデリーで、ロシア国家議会のアレクサンドル・ババコフ副議長は、ロシアが現在、新しい通貨の開発を主導していると述べた。この通貨はBRICS諸国による国境を越えた貿易に使用される予定だということだ。BRICS諸国にはブラジル、ロシア、インド、中国、そして南アフリカが含まれる。その数週間後、北京でブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領がこう言った。「毎晩のように、『なぜ全ての国がドルを基軸に貿易を行わなければならないのか(why all countries have to base their trade on the dollar)』と自問自答している」。

ユーロ、円、人民元といった個々の競争相手が存在する中で、ドルが最強の貨幣であるためにドルの支配が安定しているという説を、こうした動きは弱めている。あるエコノミストは、「ヨーロッパは博物館、日本は老人ホーム、中国は刑務所」と表現した。彼は間違ってはいない。しかし、BRICSが発行する通貨は、それとは異なる。BRICSの通貨は、新進気鋭の不満分子の新しい連合体のようなもので、GDPの規模では、覇者であるアメリカだけでなく、G7の合計を上回るようになっている。

ドル依存から脱却しようとする諸外国の政府の動きは、今に始まったことではない。1960年代から、ドル離れ(dethrone the dollar)を望む声が海外から聞こえてくるようになった。しかし、その話はまだ結果には結びついていない。ある指標によれば、国境を越えた貿易の84.3%でドルが使われているのに対し、中国人民元は4.5%に過ぎない。また、クレムリンの常套手段である嘘は、ロシアの発言に懐疑的な根拠を与えている。ババコフの提案に他のBRICS諸国がどの程度賛同しているかなど、現実的な疑問は山ほどあるが、今のところ答えは不明だ。

しかし、少なくとも経済学的な観点からは、BRICS発行の通貨が成功する見込みは新しいと言える。どんなに計画が時期尚早で、どんなに多くの現実的な疑問が残っていても、このような通貨は本当にBRICS加盟国の基軸通貨として米ドルを追い落とすことができるだろう。過去に提案されたデジタル人民元のような競合とは異なり、この仮想通貨は実際にドルの座を奪う、あるいは少なくとも揺るがす可能性を持っている。

この仮想通貨(hypothetical currency)を「ブリック(bric)」と呼ぶことにしよう。

もしBRICSが国際貿易に通貨ブリックのみを使用すれば、ドルの覇権(dollar hegemony)から逃れようとする彼らの努力を妨げている障害を取り除くことができる。こうした努力は、現在、中国とロシアの間の貿易における主要通貨である人民元のような、ドル以外の通貨で貿易を表記するための二国間協定という形で行われることが多い。障害となっているのは何か? ロシアは、中国からの輸入に消極的である。そのため、二国間取引の後、ロシアはドル建て資産に資金を蓄え、貿易にドルを使用している他の国々から残りの輸入品を購入したいと考える傾向がある。

しかし、中国とロシアそれぞれが貿易に通貨ブリックを使うだけなら、ロシアは二国間貿易の収益をドル建てで保管する必要はなくなるだろう。結局、ロシアは輸入品の残りをドルではなくブリックで購入することになる。つまり、脱ドル(de-dollarization)となるのである。

BRICSが貿易にブリックだけを使うというのは現実的な話なのか? その答えはイエスだ。

まず、BRICSは自分たちの輸入代金を全て自分たちで賄うことができる。2022年、BRICSは全体で3870億ドルの貿易黒字(国際収支の黒字としても知られる)を計上した。

BRICSはまた、世界の他の通貨同盟が達成することができなかった、国際貿易における自給自足のレヴェルを達成する態勢を整えている。BRICSの通貨統合は、これまでの通貨統合とは異なり、国境を接する国同士ではないため、既存のどの通貨統合よりも幅広い品目を生産できる可能性が高い。地理的な多様性がもたらすものであり、ユーロ圏のような地理的な集中によって定義される通貨同盟では、2022年には4760億ドルの貿易赤字が発生するという痛ましい事態が起きているが、自給自足の度合いを高めることができるのだ。

しかし、BRICSはその中だけで貿易を行う必要さえないだろう。それは、BRICSの各メンバーはそれぞれの地域で経済的な強者であるため、世界中の国々が通貨ブリックでの取引を希望する可能性が高いからだ。タイが中国と取引するためにブリックを利用せざるを得なくなったとしても、ブラジルの輸入業者はタイの輸出業者からエビを購入することができ、タイのエビをブラジルの食卓に並べ続けることができる。また、ある国で生産された商品を第三国へ輸出し、第三国から再輸出することで、二国間の貿易制限を回避することもできる。これは、関税のような新しい貿易制限を避けようとした結果である。アメリカが中国との二国間貿易をボイコットした場合、その子供たちは中国製の玩具で遊び続け、それがヴェトナムなどの国に輸出され、さらにアメリカに輸出されることになる可能性がある。

BRICS諸国の各政府が「ブリックを絶対に実現する(bric of bust)」ことを貿易条件として採用した場合、BRICS諸国の消費者に降りかかる絶対的に最悪なシナリオを、今日のロシアから予見することができる。アメリカやヨーロッパの政府は、ロシアの経済的孤立を優先してきた。しかし、一部の西側諸国の製品はロシアに流入し続けている。消費者にとってのコストは現実的だが、破滅的なものではない。BRICS諸国が脱ドル志向を強め、現在のロシアをその上限として、脱ドルのリスクとリターンのトレードオフがますます魅力的に見えるようになるであろう。

BRICS諸国の基軸通貨としてドルから変更するために、ブリックは貿易に使わない時に置いておける安全な資産も必要である。ブリックがそのようになるのは現実的なのだろうか? その答えはイエスだ。

まず、BRICSは貿易と国際収支が黒字であるため、ブリックは必ずしも海外からの資金を集める必要はないだろう。BRICSの各国政府は、自国の家計や企業が貯蓄でブリックの資産を購入するよう、飴と鞭を組み合わせて、事実上強制的に市場を出現させ、補助金を与えることができるようになる。

しかし、ブリック建ての資産は、実は海外投資家にとって非常に魅力的な特徴を持つことになる。世界的な投資家たちの資産としての金(きん)の大きな欠点は、分散投資としてのリスク低減効果があるにもかかわらず、金利が付かないことである。BRICSは金(きん)やレアアースのような本質的な価値を持つ金属を新通貨の裏付けとする予定だと言われているので、ブリック建ての利払い資産は、利払いのある金(きん)に似ていることになる。これは珍しい特徴だ。債券の利子と金の多様性の両方を求める投資家にとって、ブリック債は魅力的な資産となり得る。

確かに、ブリック債が単に金(きん)に利子がつくのと同じ効果があるものとして機能するためには、デフォルトのリスクが比較的低いと認識される必要がある。そして、BRICs諸国の政府債務でさえも、明らかになっていないデフォルトリスクがある。しかし、こうしたリスクは軽減することができる。ブリック建ての債務を発行する各国政府は、債務の満期を短くしてリスク性を下げることができる。投資家たちは、南アフリカ政府が「30年後」に返済してくれることを信用するかもしれないが、時間の単位が一年以内である場合、もしくは数年単位である場合はそうではない。また、価格に関しては、単純にそのリスクに対して投資家を補償することもできる。市場参加者がBRICsの資産を買うのに高い利回りを要求すれば、おそらくそれを得ることができるだろう。なぜなら、BRICS諸国政府はブリックの実行可能性に対価を支払うことをいとわないからだ。

公平を期すために、通貨ブリックは現実的に多くの問題を提起している。ブリックは主に国際貿易に利用され、国内での流通はない可能性が高いため、BRICS諸国の中央銀行の仕事は複雑になる。また、ヨーロッパ中央銀行のような超国家的な中央銀行を設立し、ブリックを管理することも必要である。これらは解決すべき課題だが、必ずしも乗り越えられないものではない。

BRICS加盟国間の地政学も茨の道である。しかし、BRICSの通貨は、利害が一致する明確な分野での協力を意味する。インドや中国のような国々は、安全保障上の利害が対立しているかもしれない。しかし、インドと中国は脱ドルという点で利害を共有している。そして、共有する利益については協力し、その他の利益については競争することができる。

通貨ブリックはドルの頭から王冠を奪うというより、その領土を縮小させることになるだろう。BRICSが脱ドルしても、世界の多くは依然としてドルを使用し、世界の通貨秩序は一極集中(unipolar)から多極化(multipolar)することになるだろう。

多くのアメリカ人は、ドルの世界的役割の低下を嘆く傾向にある。嘆く前に考えるべきだ。ドルの世界的な役割は、アメリカにとって常に両刃の剣(double-edged sword)である。ドルの価値を上げると、結果として、アメリカの商品とサーヴィスのコストが上がり、輸出が減少し、アメリカの雇用が奪われてしまう。しかし、アメリカ国内においては、アメリカに切り込む側の武器は研ぎ澄まされ、海外においてアメリカの敵に切り込む武器は鈍化するのであろう

ドルのグローバルな役割が、国内の雇用や輸出競争力を犠牲にしていることを、少なくとも2014年のコメントから理解しているのは、現在ホワイトハウス経済諮問委員会のトップであるジャレッド・バーンスタインだ。しかし、こうしたコストは、アメリカ経済が世界と比較して縮小するにつれて、時間の経過とともに増大する一方だ。一方、ドルの世界的な役割の伝統的な利点の中には、アメリカが金融制裁を利用して自国の安全保障上の利益を増進しようとする能力があることが指摘される。しかし、ワシントンは、21世紀におけるアメリカの安全保障上の利益は、中国やロシアのような国家主体との競争によってますます定義されると考えている。もしそれが正しいなら、そしてロシアに対する制裁の一定しない実績が示すように、制裁はアメリカの安全保障政策においてますます効果のない手段となっていくだろう。

BRICSの基軸通貨がドルに代わってブリックになった場合、その反応は多様で奇妙なものになるだろう。反帝国主義的な気質を持つBRICS諸国の高官、アメリカ連邦上院の共和党の一部、ジョー・バイデン米大統領のトップエコノミストからは、大きな拍手が送られそうだ。ドナルド・トランプ前米大統領と、彼がしばしば対立する米国の国家安全保障コミュニティからも、ブーイングが起こる可能性がある。いずれにせよ、ドルの支配が一夜にして終わることはないだろうが、ブリックが実現すれば、ドルの支配力が徐々に失われていくことになるのだ。

ジョセフ・W・サリヴァン:リンゼイ・グループの上級顧問。トランプ政権下のホワイトハウス経済諮問会議議長特別顧問・スタッフエコノミストを務めた。ツイッターアカウント:@TheMedianJoe
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 古村治彦です。

 今回は、副島隆彦先生の最新刊『金融暴落は続く。今すぐ金を買いなさい』(祥伝社)をご紹介します。発売日は2022年11月1日です。
kinyuubourakuwatuzukuimakosokinwokainasai511

金融暴落は続く。今すぐ金を買いなさい

 以下に、まえがき、目次、あとがきを掲載します。参考にしていただき、手に取ってお読みください。

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まえがき

 この本で書く一番大事なことは、以下の事実である。

 実は金(きん)の価格が、世界値段では、ものすごく値上がりしているという事実である。金は、実はロシアをはじめBRICs(ブリツクス)諸国では、1オ(ウ)ンス( once 31・1グラム)で、2700ドルである。これの日本円での価格は、ちょうど1グラム=1・2万円である。金はもう1グラム=1万円を超えているのだ。

 ところが、私たちが今、日本国内で金(きん)を買おうとすると、1グラム=8600円ぐらい(田中貴金属の小売値段)である。安い。100グラムの金の小さな板だったら86万円である。1グラムあたり、世界値段と3400円の差が出ている。

 いったい何が起きているのか。

 ただし私が「世界値段」と書いたのは、ロシア政府が6月に、「金1グラムを、=5000ロシアルーブルとする」と決めて固定したからである。この固定値段を、フィックスト・プライス fixed price と言う。ロシア中央銀行は、世界に向かって、金の地金(じがね)を持参した人にこの値段で買い取ると発表した。だから前述したように、日本円なら1グラムを1万2000円なのである。現在「1ルーブル=2・4円」である(図表を参照)

 だが日本人は、1キロの金の延()べ板(いた)を(自分の)ポケットに入れて、モスクワに飛行機で飛んでいくわけには、そう簡単にはいかない。

 今、日本の金券ショップ(古物商の認可だけ)では、金(きん)1グラム=8460円とかで買い取っている。いわゆるバッタ屋と呼ばれる「おたからや」や「大(だい)(こく)()」のような業者が、どんどん金を買い取っている。それらの金(きん)は、いったいどこに行くのか。興味津々(しんしん)である。

 まさか日本の暴力団とロシアのマフィアが組んで、北海道の漁民たちの漁船で、いつもはタラバガニやシャケやウニを、半分非合法で買い取っている、その船でロシアに金の地金(ゴールド・インゴット)を持ち出しているか分からない(笑)。

 このように金の値段はどんどん上がっている。アメリカは、自分のドル体制とドル紙幣を守りたいから、憎(にく)き金の価格をニューヨークやシカゴでたたき落している。貴金属の先物(さきもの)の市場で、金ETF(イーティーエフ)という仕掛けを使って、たたき落している。政府自(みずか)ら、こんなみっともないことをしている。

 アメリカ政府(NY連邦銀行が係)は、公表している8300トンの金を、もうほとんど持っていない。すっからかんなのだ。だから金が憎らしくて憎らしくて仕方がない。

だから、この本の読者になってくれる皆さんは、金の価格は、これからもっと2倍、3倍になってゆくのだという私の考え(近未来への予言)を信じてください。

 この本の第1章から、このことをガンガン書いていきます。

 ここまで書いたとおり、金(きん)は次第に世界値段のほうに近寄ってゆく。だから、日本国内でも1グラム=1万2000円になる。わざわざ金の延()べ板(いた)を、暴力団に頼んでロシアに持ち出さなくても(笑)、手持ちの金を黙ってじっと持っていればいいのである。

 だから、まだ金(きん)を買ったことのない人は、今からでもいいから金を買いなさい。あなたの旧(ふる)くからの友だちで、金を1グラム2000円とか、3000円で買った人たちを妬(ねた)んでばかりいないで。決心して買いなさい。もうすぐ買えなくなる。だから私はこの本の表紙に、表題(タイトル)に「今こそ金を買いなさい」と打ち込んだ。

 すでに金(きん)を買ってたくさん持っている人たちは、新たな金融制度の大変動(新円切り替えのリデノミネーション)が起きたときに、さらに金の値段も上がるのだが、そのときどのように売るかは前の本で書いた。「それは何ですか、教えてください」という人は勉強が足りない。人が儲かったことを妬(ねた)んで羨(うらや)んで嫉妬(しっと)してばかりいないで、自分で動きなさい。

副島隆彦

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目次

まえがき

1章 金は〝世界値段〟に近づいてゆく

● 金の世界値段は1グラム=1万2000円

● 値段の格差を、どう埋めてゆくか

● 米政策金利はどこまで上げられるのか

● 金利の上げ下げは政府の武器

● 危険な相場と国家自身が張る金融バクチ

● アメリカに迫り来るバブル崩壊

● 危険な債券市場に手を出すな

● 債権()と債券()の違い

● 年金が半分に減らされる!?

● 本当の円とドルの力を「購買力平価」で見る

● 中国人が日本のワンルームマンションを買う理由

● 私たちは、生きてゆく

2章 金融暴落は続く

● 連鎖する大暴落

● 自分で自分に借金をしている

● 2023年末、NY発の大恐慌突入

● ウクライナ開戦と同時期の金融緩和

● 〝日本売りの仕掛人〟は、なぜ負けたのか

● なぜ円安が進んだのか

● ミセス・ワタナベの勝利

● リーマン・ショックの再来

● ドルペグ制の仕組み

● 英ポンドを暴落させたジョージ・ソロス

● 米国債の秘密

● 中国が米国債を売れば、アメリカの金融市場は崩壊する

● 米国債を売らせない法律とは

3章 世界恐慌突入は2024年

● 世界経済体制が変更される

● アメリカを襲う不動産バブル

● ノンバンクがふたたび暴れる

14年前、リーマンは人身御供にされた

● 資本主義の原理を政治力でゆがめた

● 2024年、大恐慌突入の序曲

● 日本の不動産を買う中国人や韓国人たち

4章 賢く金を買う

● 金の値段をどう読むか

● 金の売り方と金券ショップ

● 金券ショップが買い集めた金は、どこへ行くのか

● 自分の金は倉庫業者に預けなさい

● なぜパラジウムは値上がりするのか

● プラチナの可能性

● ソフトバンク、5兆円赤字決算の原因

●「アリババへの投資を5分で決めた」は本当か

● QRコードで成長するPayay

● 新生銀行買収と北尾吉孝

● テレビ朝日買収騒動と孫正義の黒幕

●「評価」と「再評価」は違う

5章 資源〝貧乏〟大国が台頭する

● 仮想通貨を買ってはいけない

● ロシアルーブルは強い

● 金本位制が復活する

●「8515」の時代

● 人民元がルーブルと結合した

● SWIFTからCIPSへ

附章 安倍晋三暗殺の真実

● 統一教会への組織解散命令

● カルトとは何か

● 副島隆彦も命を狙われた

●〝安倍処分〟を世界最高度で決定した者たちの実名

あとがき

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あとがき

 この本を書き終えて、つくづく思う。

 私は、この「エコノ・グローバリスト・シリーズ」25冊を毎年1冊、1998年から書いて出版し続けてきた。

 四半世紀が経()って、まさしくエコノ・グローバリスト econo-globalists たち、すなわち「経済面の地球支配者」たちが滅びつつある。彼らの現在の通称(つうしょう)は、 the Deep State(ザ・ディープステイト) である。

 際限なく(リミツトレス)刷って世界中に垂れ流したドル紙幣が、およそ100兆ドル(1・4京[けい]円)ある。それと貸借(たいしゃく)を取っている米国債の無制限の大増刷が、もはやこれ以上は許されない時代になりつつある。

 なぜならロシアのプーチン大統領が、今年の4月から、ロシア産天然ガスはルーブル通貨でしか売らない、と宣言した。それと同じくして、金(きん)を固定価格(フイツクスド・プライス)にして、「金1グラム=5000ルーブルでロシア中央銀行が買い取る」とした。これで実物資産(タンジブル・アセット)に裏打ちされたお金しか通用しなくなる。

 欧米白人文明のG7(ジーセブン)体制に対決して、中国とロシアを先頭にした非白人の貧乏〝資源〟大国による〝新興国(ニユー)G8〟の連合が出来上がりつつある。「15(欧米):85(その他)」の世界である。

 このことを本書でずっと説明した。

 本書も祥伝社(を定年退職した)岡部康彦氏と、熱海の寓居(ぐうきよ)で寝泊まりして完成させた。記して感謝します。

 私たちは四半世紀、幾山河(いくさんが)を渡ってここまで来た。私は自分の命が尽きるときまで、このシリーズを書き続ける。

2022年11月

副島隆彦

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争勃発後、アメリカを中心とする西側諸国(the West)は対ロシア制裁を発動した。具体的には国際金融、決済からロシアを締め出すというものだった。ロシアが輸出する石油や天然ガスの支払い手段であるドルが使えなければ、ロシアは経済的に追い詰められ、戦費負担も併せて、ロシアは戦争継続が困難になるというのが西側諸国の見立てだった。ロシアがドルを受け取れなければロシアは経済的に追い詰められギヴアップするという見込みだった。

 しかし、ロシアに対する制裁には西側以外の国々(the Rest)は参加しなかった。中国やインドにはロシアから割安の石油や天然資源を手に入れることができるようになった。それでは取引ではどの通貨を使っているのかということになる。それは人民元とロシアのルーブルである。その枠組みとなっているのは上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)だ。上海協力機構は、1996年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの首脳会合が開催されたことが端緒である。これを上海ファイヴと呼ぶ。2001年にウズベキスタンが参加して発足したのが上海協力機構である。2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロもあり、この枠組みは安全保障分野のものであると考えられていた。それから約20年が経ち、上海協力機構はユーラシア大陸を網羅する国際的な枠組みに成長した。上海協力機構の構成は以下の通りだ。

(1)   正式加盟国は、中華人民共和国、ロシア、カザフスタン、タジキスタン、キルギ

ス(以上が上海ファイヴ)、ウズベキスタン(2001年に加盟)、インド(2017年に加盟)、パキスタン(2017年)(2)オブザーヴァーは、イラン(2023年から正式加盟が決定)、モンゴル(2005年にオブザーヴァー参加)、ベラルーシ(2015年にオブザーヴァー参加)、アフガニスタン(2012年におブザーヴァー参加)、(3)対話パートナーは、スリランカ(2009年に対話パートナー参加)、トルコ(2012年に対話パートナー参加)、アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、エジプト、カタール、サウジアラビア、(4)対話パートナー参加予定国は、アラブ首長国連邦、ミャンマー、クウェート、モルディヴ、バーレーン、(5)参加申請国は、バングラデシュ、イスラエル、シリア、イラク、(6)客員参加は、トルクメニスタン、独立国家共同体、東南アジア諸国連合となっている。

 このユーラシアを網羅する国際的枠組みに、BRICSのブラジルと南アフリカという資源大国が加わって、中国の人民元を基軸とする国際決済システムを構成すれば、ドルの国際決済システムにおける基軸通貨という地位は脅かされる。ドルの力を使って世界中の国々を従わせるという構造が崩れることになる。そのような状況がすぐに現実化するとは考えにくいが、10年、20年の単位でこのようなことが起きるということも頭に入れておかねばならない。

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中国は静かにドルを王座から引きずり降ろそうとしている(China Is Quietly Trying to Dethrone the Dollar

各地域グループと小規模の銀行が整体に対する北京の絶縁を手助けしている。

ゾンユアン・ゾー・ルー

2022年9月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/09/21/china-yuan-us-dollar-sco-currency/

中国とロシアを中心とする上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganisationSCO)は、ウズベキスタンで開催された首脳会議で、地域通貨(local currencies)による貿易を拡大するためのロードマップを作成することに合意した。現地通貨を貿易に活用し、代替決済システム(alternative payment and settlement systems)を開発するためのロードマップ作りは、上海協力機構の経済計画の一部として何年も前から行われてきた。

このロードマップは、西側諸国による制裁を緩和しようとするロシア、アメリカとの関係を悪化させる中国、ロシアとの貿易で非ドル通貨(nondollar currencies)を利用するインド、そして最近イランが提案した上海協力機構単一通貨(single SCO currency)など、同グループの有力メンバー側の個々の政策と一致するものであった。中国の習近平国家主席は、地域統合(regional integration)による開発赤字(development deficits)の解消、特に現地通貨決済のシェア拡大、現地通貨による国境を越えた決済システムの開発強化、上海協力機構開発銀行(SCO Development Bank)設立の推進を提案した。

習近平主席は、今回の上海協力機構サミットでの演説で、米ドル依存の地政学的リスク(geopolitical risk of U.S. dollar dependence)について公式には触れなかった。しかし、習近平の提案は、ドル覇権(U.S. dollar hegemony)に対する中国経済の脆弱性(vulnerability)に対する中国指導者たちの深い懸念と、ドル覇権のリスクを回避する(hedge)ための代替システムの開発への願望を反映したものだ。

北京は今のところ、人民元(yuan)を国際化した通貨にしようとはしていない。米ドルを退け、国際システムにおける米ドルの支配を人民元に置き換えようとは考えていない。むしろ、中国国内の地方機関や上海協力機構などの地域政府間組織を通じて、人民元を地域的に強力な通貨とするための措置を講じているのである。北京は、中国の国境を越えた貿易決済や投資における人民元の利用を拡大し、ドルへの依存度を下げ、為替リスクやドルの流動性不足を最小化し、地政学的危機の際にも世界市場へのアクセスを維持したいとしている。

中国の脱ドル(China’s de-dollarization)への取り組みは、北京の中央政府だけが行っている訳ではない。地方政府、地方金融機関でも実施されている。その一例が「中露金融連合(Sino-Russian Financial Alliance」」である。2015年10月、中国のハルビン銀行(都市型商業銀行)とロシアのスベルバンク(資産規模でロシア最大の貯蓄銀行)は、非営利の国境を越えた金融協力組織として「中露金融同盟」を発足させた。この連合の主な目的は、中露貿易を支援する効率的なメカニズムを確立し、二国間金融協力を包括的に促進し、二国間決済における現地通貨の使用を促進することだ。この金融連合には、中国の金融機関(中小銀行、保険会社、信託投資会社)18社とロシアの金融機関17社を含む35社が当初から加盟していた。黒龍江省の孫堯(Sun Yao、1963年-)副省長(当時)は、この金融連合の発足に際して、「中国・モンゴル・ロシア経済回廊の発展を促進するための重要なプラットフォームである」と述べた。

ドルを基軸とする国際金融システムとの接点が少ない中国の小規模銀行群は、代替的な支払・決済メカニズムを実践するにはうってつけの存在である。これらの銀行は、ロシア側と連携することで、制裁回避のための脱ドル戦略の実施に習熟する可能性がある。2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、アメリカはロシアの金融機関に制裁を加えたが、ハルビン銀行と黒龍江省は二次的制裁の可能性にも動じないように見える。ハルビン銀行は今年5月、黒龍江省の地方指導者たちの対ロシア金融開放推進の野望を実現するため、「百策(Hundred Measures)」と称する施策を発表した。

アメリカ政府がロシアの銀行群に対する制裁措置を発表したことを受け、中国銀行(Bank of China)や中国工商銀行(Commercial Bank of China)など中国のシステム上重要な銀行群は直ちにロシア企業との取引処理を停止した。しかし、中露金融同盟の中小銀行群は、越境銀行間決済システム(Cross-Border Interbank Payment SystemCIPS)や現金などの代替決済インフラを利用して、ロシア企業の制裁回避を支援することができる。

ハルビン銀行がその良い例だ。中国の、越境銀行間決済システム(CIPS)に直接参加しているハルビン銀行の決済ネットワークはロシア全土を網羅しており、ロシアの銀行や企業にとって国境を越えた人民元決済のハブとして有力な候補となる。航空機だけでなく、トラックによる陸上輸送でロシアに人民元を現金で供給することも、ロシアの制裁回避につながる仕組みだ。こうした仕組みは、2018年以降、黒龍江省の複数の小規模銀行によって開発・拡大されている。ハルビン銀行の地方支店は2019年、ロシアのポルタフカ税関支署に1500万元(約200万ドル)の現金を届けることに成功した。

習近平が上海協力機構の首脳会議に出席したことは、中国の厳格なゼロ新型コロナウイルス政策にもかかわらず、北京が中国主導の地域ブロックとの関与を強化することによって西側の更なる孤立のリスクを回避する準備を進めていることを示唆している。北京は、上海協力機構(SCO)が北京にとって地政学的なクッションになることを期待している。過去20年間、上海協力機構は、より高いレベルの集団的自給自足(collective self-sufficiency)と、世界的な金融・地政学的混乱に対する自己防衛の強化を目指す非西洋的地域地経済圏として静かに成長してきた。

2002年に中国、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国による地域安全保障協力組織(regional security cooperation organization)として発足した上海協力機構(SCO)は、経済、エネルギー、技術といった側面を含むようにそのアジェンダを拡大した。2002年に制定された上海協力機構(SCO)憲章では、経済、貿易、金融、エネルギー、インフラ整備など、安全保障以外の分野での協力も組織の任務とされた。2003年9月、当時6カ国だった上海協力機構は、現在9カ国(2017年にインドとパキスタン、2022年にイランが加盟)に拡大し、「多極的経済・貿易協力に関する要綱(An Outline for Multilateral Economic and Trade Cooperation)」を発表した。この要綱は、経済協力の法的根拠を示し、銀行・金融サービス協力を優先分野として指定した。2013年に中国の「一帯一路構想(Belt and Road Initiative)」が開始されて以来、中国は上海協力機構加盟国へのインフラ投資計画を推進してきた。2015年の上海協力機構ウファ宣言では、上海協力機構加盟諸国が「一帯一路」を支持することが正式に発表され、2つの構想の結合が示された。

上海協力機構(SCO)の枠組みを利用して二国間決済に現地通貨の使用を促進することへの中国の関心は、一帯一路構想が開始された2013年以前からあった。中国の政策立案者たちは、2008年の世界金融危機の後、非ドル建て貿易決済の選択肢を模索した。例えば、2012年の上海協力機構ビジネスフォーラムで、中国の王岐山(Wang Qishan、1948年-)副首相(当時)は、上海協力機構加盟諸国は貿易決済における現地通貨の使用を促進し、二国間通貨スワップを進め、地域金融協力を強化し、新しい融資モデルを開発すべきであると強調した。

2011年以降、中国は上海協力機構の正加盟国(ウズベキスタン、カザフスタン、ロシア、タジキスタン、パキスタンなど)および上海協力機構の遵守・対話パートナー(モンゴル、トルコ、アルメニアなど)と二国間通貨スワップ協定(bilateral currency swap agreements)を締結してきた。これらの二国間スワップ協定は、人民元と相手国通貨建てで、中国人民銀行(People’s Bank of ChinaPBOC)の相手国の中央銀行が自国通貨を暗黙の担保として、比較的低い金利で短期間人民元の流動性を利用できるようにするものだ。このようなスワップ協定は、相手国が人民元建て融資を利用して中国製品の購入を増やすことを後押しする。中国はキルギスと二国間通貨スワップを締結していないが、中国銀行とキルギス共和国国立銀行は、通貨スワップに向けた一歩となる協力強化の意向書に署名している。

中国と他の上海協力機構(SCO)加盟諸国との間の国境を越えた決済における自国通貨の使用は、依然として非常に限られている。しかし、中国が域内で人民元の国際化を推進しているため、その比率は高まっている。その進展は、中露貿易決済において最も顕著となった。張漢暉駐ロシア中国大使は最近、人民元を使った中露貿易決済の割合が2014年から2021年の間に、3.1%から17.9%に増え、477%増になったことを明らかにした。2020年、人民元を使った中露二国間決済の割合は44.92%に達した。これは480億ドルに相当する。

中国は、上海協力機構(SCO)加盟諸国が銀行業務と開発金融で協力し、域内の決済協力を促進することを提唱してきた。2005年10月、上海協力機構の加盟諸国は、国家が出資する投資プロジェクトの資金調達と銀行業務を調整するメカニズムとして、上海協力機構銀行間コンソーシアム(SCO Interbank ConsortiumSCO IBC)を創設した。上海協力機構銀行間コンソーシアムSCO IBC)には、加盟諸国の開発銀行や政策金融機関からなる8つの加盟銀行があり、中国開発銀行(China Development Bank)が最大の融資先となっている。また、上海協力機構銀行間コンソーシアムはグループ外の3つの提携銀行を有している。上海協力機構銀行間コンソーシアムの協力の優先分野の一つは、インフラ整備、基礎・ハイテク産業、輸出志向の文や、社会プロジェクトに対する資金提供である。2014年のドゥシャンベ宣言では、上海協力機構開発基金(特別会計)と上海協力機構開発銀行を創設し、加盟諸国でのプロジェクトを銀行化し、加盟諸国間の金融協力を進めるためのさらなる取り組みが盛り込まれました。2018年以降、中国開発銀行は上海協力機構銀行間コンソーシアムに300億元(43億ドル)相当の特別融資を実施した。今年8月までに、中国開発銀行は他上海協力機構銀行間コンソーシアム加盟銀行や提携銀行とともに、63のプロジェクトに融資し、累計で146億ドルの融資を行い、そのうち約4分の1の251億元が中国開発銀行から提供された。

上海協力機構(SCO)開発銀行の可能性は、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカからなるBRICSにならって、為替リスクと米ドルによる高コストな資金調達を軽減するために、貿易決済と開発資金調達における現地通貨の使用を促進する公式機関を建設する道のりを示唆している。しかし、これはまだ先の話である。この10年近く、首脳会議の度に上海協力機構開発銀行と開発基金(Development Fund)の議論を続ける意思を表明してきたが、まだ具体的な計画には至っていない。

最終的にそのような銀行が設立されるとしても、他の上海協力機構加盟諸国の資本不足と地域全体の資本市場の未発達を考慮すれば、少なくとも当面は中国と中国開発銀行が主要な資金提供者となる可能性が高い。上海協力機構とBRICSの間でアジェンダや制度が収斂していることは、二国間通貨スワップの拡大、貿易や開発金融における現地通貨の利用促進、代替決済システムの開発、そして最終的には各国の米ドル依存度の低減といった問題において、この二つの非西洋連合とそのメンバー間の政策協力を促進するものである。

BRICSと上海協力機構(SCO)の間では、脱ドルに向けての緊密な連携がすでに行われている。ウラジミール・ノロフ上海協力機構事務総長(当時)は昨年、上海協力機構加盟諸国が決済に現地通貨を使用するよう段階的に移行していることを確認した。また、上海協力機構の投資ポテンシャルを十分に引き出すために、アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank)、新開発銀行(New Development Bank)、シルクロード基金(Silk Road Fund)とのパートナーシップを構築することを提案した。

中国は、カザフスタン政府が2018年7月に立ち上げた「アスタナ国際金融センター(Astana International Financial Centre AIFC)」も支援している。アスタナ国際金融センター(AIFC)は、中央アジア、中国西部、コーカサス、ユーラシア経済連合、中東、モンゴル、ヨーロッパの地域金融ハブとして戦略的に位置づけられている。また、カザフスタンはアスタナ国際金融センター(AIFC)を中国とロシアの企業間の契約に関する仲介・仲裁センター(arbitration center)として発展させることを望んでいる。カザフスタンの金融市場が限られていることを考えると、こうした構想は今のところ現実的とは言えない。

より重要なのは、中国西部の新疆ウイグル自治区が、中国と中央アジアを結ぶ国境を越えた決済の中心地として、すでに地域金融のハブとなっていることだ。新疆ウイグル自治区で行われた国境を越えた人民元決済の累積額は、2013年には早くも1000億元(140億ドル)を突破し、2018年には2600億元を超えた。それでも、中国の金融機関が提供するアスタナ国際金融センター(AIFC)への支援は、カザフスタンや北京の利益に沿った他の上海協力機構加盟諸国にインセンティブを与えている。

上海協力機構の枠組みを超えて、中国はBRICSプラットフォームやアジア太平洋地域の他の地域多国間機関を通じて、貿易決済や金融における現地通貨の利用を進めている。例えば、今年2月のG20会合で、中国人民銀行総裁の易綱(Yi Gang、1958年-)は、アジア諸国と協力して貿易・投資における現地通貨の利用を促進し、地域の金融安全保障と外部ショックに対する弾力性(resilience)を強化すると述べた。6月には、中国人民銀行と国際決済銀行(Bank for International Settlements)が、インドネシア銀行、マレーシア中央銀行、香港金融管理局、シンガポール金融管理局、チリ中央銀行の参加を得て、人民元流動性アレンジメント(Renminbi Liquidity Arrangement)を開始した。この取り決めは流動性支援を目的としており、市場の変動時に参加している中央銀行群が利用することができる。

上海協力機構(SCO)は今後、貿易・投資における現地通貨の追求や代替決済システムの開発など、既存メンバー諸国と共通の利益を持つ新規メンバーを加え、拡大していく可能性がある。上海協力機構は、先日の上海協力機構首脳会議で、西側諸国による厳しい制裁に対処し、脱ドル通貨に積極的なイランを9番目の正式メンバーとして迎えたばかりである。イランのエブラーヒーム・ライースィー大統領は、上海協力機構への加盟がアメリカの単独行動主義(American unilateralism)を阻止し、制裁を回避するための手段であることを明らかにした。

現在またもや通貨危機に陥っているトルコは、2012年以来上海協力機構の対話パートナーであり、オブザーバー資格の取得、あるいは正会員としての加入に関心を示している。トルコ中央銀行は2019年に中国銀行と通貨スワップ協定を締結し、2020年には中国との貿易決済に初めてスワップ枠を利用した。トルコの5つの銀行が既にロシアの決済システムを採用している。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とロシアのウラジミール・プーティンも、先日の上海協力機構首脳会議の傍ら、トルコへのロシアのガス供給の25%をルーブルで支払うという合意に至った。

ベラルーシはオブザーバー資格から正式加盟への格上げ申請書を提出し、これもロシアの支持を得た。バーレーン、モルディヴ、アラブ首長国連邦、クウェート、ミャンマーが新たに上海協力機構(SCO)の対話パートナーとなり、エジプト、カタール、サウジアラビアがすでに対話パートナーとして署名している。このように、上海協力機構はアメリカの制裁に直面している、あるいはアメリカの覇権的な力(hegemonic power)やドルによる支配に不満を抱いている主要な天然資源輸出諸国を受け入れていることが示唆される。エネルギーやその他の主要商品の取引において、上海協力機構圏内で非ドル建て通貨がより広く使用されるようになる。

アメリカは長い間、上海協力機構(SCO)の存在と拡大を軽視してきた。上海協力機構の主要メンバーであるロシアと中国との関係は悪化している。アメリカの同盟システムの復活は、中国が先端技術の購入や商品の輸出で依存してきた西側諸国から中国を孤立させる危険性をより高めている。西側諸国からの孤立リスクが高まる中、中国にとっての上海協力機構(SCO)の真の意味は、ロシアとの関係ではなく、西側諸国の孤立が深刻化した場合に、中国の地政学的安全保障のクッションとなるグループ化をいかに実現するかということだ。

この論理は、イランやインドなど西側諸国による制裁に弱い、あるいはドルへの依存度を減らそうとする他のメンバー諸国にも当てはまる。アメリカ政府は、上海協力機構(SCO)加盟諸国が貿易や投資のために代替通貨を共同で追求しようとすることを止めることはできない。しかし、過剰な制裁措置の誘惑に負けることなく、デカップリング(decoupling)を積極的に脅かすのではなく、アメリカの金融市場と中国市場のつながりを強化し、開発途諸国の社会経済成長に資するプロジェクトに資金を提供する米国際開発金融公社(U.S. International Development Finance Corporation)と米国際開発庁(Agency for International DevelopmentUSAID)の役割を強化することによって、ドルを基軸とするシステムの魅力を向上させることは可能であることは確かだ。

※ゾンユアン・ゾー・ルー:外交問題評議会(Council on Foreign RelationsCFR)国際政治経済担当研究員。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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