古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ハマス

 古村治彦です。

 イスラエルはハマスからの奇襲攻撃を受け、人質を取られたことで、それを奇貨として大規模な反撃を行い、ガザ地区での大規模な破壊を行った。多くの民間人が犠牲となった。アメリカの仲介による停戦は実行されたが、現在も状況は改善していない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自身のスキャンダル隠しと訴追逃れのために、戦争状態を継続している。アメリカのドナルド・トランプ大統領のエプスタイン文書隠し、日本の高市早苗首相の自民党と統一教会の爛れた関係隠しと同様であるが、日本の場合は人間が殺されないだけまだましと言えるだろう。

 話は逸れたが、イスラエルは中東地域において地域覇権ではなく、生存を最優先にしてきた。そのために戦いながら、同時に交渉を行い、スパイ活動を行いながら情報戦を行いながら、近隣諸国と裏舞台では協力関係を保ってきた。中東諸国もイスラエルを公式には認めないスタンスであったが、裏では取引ができるようにしていた。

 ネタニヤフ首相の武力偏重のスタンスで、ガザ地区への大規模な攻撃は、せっかく進められていたサウジアラビアとの国交樹立交渉にも影響を与えた。サウジアラビアとしても、アラブの盟主として、イスラエルを公式に認めることができない状態になってしまった。中東地域の安定という地域共通の利益をイスラエルが破壊していることが根本の問題である。

 イスラエルのガザ地区とイランへの攻撃は短期的には一定の成果を上げるだろうが、中長期的に見て、それがイスラエルの利益になるとは考えられない。イスラエルが中東地域を支配することはあり得ない。武力で中東地域を従わせることはできないし、そもそもがそのような制度設計になっていない。結局のところ、ネタニヤフ首相の私戦を戦っているに過ぎない。これは、イスラエルにとっては一時的な逸脱という見方もできる。

(貼り付けはじめ)

イスラエルは(地域)覇権国にはなれない(Israel Can’t Be a Hegemon

-イスラエル政府は成功する可能性の低い地域支配を狙っている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年6月16日

https://foreignpolicy.com/2025/06/16/israel-iran-war-middle-east-hegemon/

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イェルサレムの政府報道室(Government Press OfficeGPO)での記者会見で、中東の地図の前で演説するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(2024年9月4日)

イスラエルによるイランへの広範囲にわたる攻撃は、地域のあらゆる敵対勢力を排除または弱体化させるためのキャンペーンの最新のラウンドである。2023年10月のハマス攻撃を受けて、イスラエルはパレスティナ人を意味のある政治勢力として破壊するための残忍なキャンペーンを遂行しており、主要な人権団体や多くの学術専門家たちはこれをジェノサイド(genocide)と呼んでいる。レバノンでは空爆(airstrikes)、爆弾を仕掛けた携帯電話(booby-trapped cellphones)、その他の手段でヒズボラの指導部を壊滅させた。イエメンではフーシ派を攻撃し、アサド政権崩壊後のシリアを爆撃して武器貯蔵庫を破壊し、危険と見なす勢力が政治的影響力を行使するのを阻止した。そして、イランに対する最新の攻撃は、イランの核インフラに損害を与えたり破壊したりする以上のことを目的としている。イスラエルは少なくとも、イランの核計画をめぐる交渉を終わらせたいと考えている。イランの最高指導者、軍関係者、外交官、科学者を殺害することでイランの反撃能力を弱体化させ、可能であればアメリカを戦争にさらに深く引きずり込む。最大限には、イランの体制を崩壊させるまで弱体化させることを望んでいる。

これらの行動はいずれも、少なくとも短期的には、また部分的には成功している。では、今やイスラエルを地域覇権国(a regional hegemon)とみなすべきだろうか? もしそのような国家が「特定の地域における唯一の大国(the sole great power within a particular region)」であり、「全面的な軍事力の試練において、他のいかなる国家(あるいは国家連合)も本格的な防衛力を発揮できない(no other states (or combination of states) could mount a serious defense in an all-out test of military strength)」と定義されるならば、イスラエルは今やその資格を満たしていると言えるだろうか? もしそうであれば、近隣諸国も覇権国に直面した際に他の国々がしてきたように行動することを期待すべきだろうか? つまり、「その優位性を認め、覇権国にとって極めて重要な問題においては従う(recognize its superior power and defer to it on matters of vital interest to the hegemon)」ということだろうか?

一見すると、この可能性は非現実的に思える。人口1000万人にも満たない国(そのうちユダヤ人は約75%に過ぎない)が、数億人(主にイスラム教徒のアラブ人)と9000万人以上のペルシャ人を抱える広大な地域を、どのようにして支配できるのだろうか?

しかしながら、イスラエルが近隣諸国に対して多くの優位性を持っていることを考えると、この考えはより説得力を持つように思える。イスラエル国民はアラブ諸国の国民よりも教育水準が高く、愛国心が強く、より有能な指導者に導かれてきた。イスラエルは裕福で政治的に影響力のあるディアスポラ(diaspora、離散民)から惜しみなく揺るぎない支援を受けており、過去にはイギリスやフランスといった大国からも多大な支援を受けてきた。アラブ諸国のライヴァル諸国の多くは、様々な内部分裂(internal schisms)、動乱(upheavals)、クーデター(coups)に直面し、アラブ諸国間の対立(divided by inter-Arab rivalries)によって分断されてきた。

さらに言えば、現代の軍事力は単なる兵力よりも、技術力、訓練、そして能力の高い指揮統制に大きく依存しているため、イスラエル国防軍(Israel Defense ForcesIDF)は常に、敵対する軍よりもはるかに優れた能力を誇ってきた。この優位性は、戦争が高価で高度な兵器にますます依存するようになるにつれて、さらに高まっている。ヒズボラとハマスは共に時とともに能力を高めていったものの、どちらもイスラエルの存在を脅かしたり、イスラエルがヒズボラとハマスに与えることのできる損害に匹敵したりすることはできなかった。イスラエルの膨大な核兵器と評価の高い情報能力はその立場をさらに強化した。

何よりも重要なのは、イスラエルがアメリカから広範かつほぼ無条件の支援を受けていることだ。アメリカ政府はイスラエルの行動の如何に関わらずイスラエルを支持し、イスラエルの「質的軍事優位性(qualitative military edge)」を維持することを正式に約束している。この支援がなければ、約1000万人のイスラエル人は自国の領土を守ることはできるが(核兵器を保有していることを忘れてはならない)、周辺地域を支配する可能性はほとんどない。

以上の点を考慮すると、イスラエルがより広い中東知己を支配するという考えはそれほど突飛なものではない。しかし、イスラエルを真の地域覇権国と見なすのは誤りだろう。

第一に、地域覇権国は近隣諸国に比べて非常に強力であるため、近隣諸国から重大な安全保障上の脅威を受けることはなく、真のライヴァルがすぐに出現することを心配する必要もない。これは、20世紀初頭までにアメリカが達成した立場だ。他の大国は西半球(the Western Hemisphere)から撤退し、この地域のどの国や組み合わせも、アメリカの経済力と軍事力の組み合わせに近づくことはできなかった。キューバ危機(外部の大国(ソ連)が核兵器搭載ミサイルを西半球に送り込んだ)という短い例外を除けば、アメリカは19世紀後半以降、西半球地域からの重大な軍事的脅威に直面していない。この特権的な立場により、ワシントンは外交・防衛政策をユーラシアに集中させ、戦略的に重要な地域で他の大国が同様の地位を獲得するのを阻止することができた。

今日のイスラエルは、その基準を満たしていない。例えば、フーシ派は依然として反抗的な姿勢を崩しておらず、イスラエル国防軍はガザ地区の住民に甚大な被害を与えたにもかかわらず、依然として泥沼に足を取られている状況だ。イスラエルはヒズボラとハマスを著しく弱体化させたが、これらは非国家アクターであり、イスラエルの存在に実存的な脅威を与えたことはこれまで一度もない。今日、アラブ諸国や連合軍でイスラエルに匹敵するものは存在しない。しかし、トルコとイランはどちらも強力な軍事力とはるかに大きな人口を有しており、総力戦(all-out war)が発生した場合、たとえ最終的に敗北するにしても、それぞれ信頼性の高い防衛体制を構築することができる。つまり、イスラエルはこれらの国々を計算から除外したり、これらの国々が従うと想定したりすることはできない。イランの継続的な抵抗がそれを如実に示している。最近の攻撃に対するイランの報復は、被った被害に比べれば少ないものの、決して軽微なものではなく、紛争はまだ終わっていない。たとえ今回の戦闘で敗北することになったとしても、テヘランが自国の利益をイスラエルに進んで従属させる兆候は見られない。その理由だけでも、イスラエルは地域の覇権国とは言えない。

さらに言えば、これらの最新の攻撃の正当化の根拠は全て、イランがいつの日か核兵器を入手するかもしれないという懸念にあった。リスクは、イランが自殺行為となる核兵器でイスラエルを攻撃することではなく、むしろイランの核兵器が、イスラエルがこの地域で無制限に武力を行使する能力を制限する可能性にあった。イスラエルの指導者たちが、より大きな抑制をもって行動せざるを得なくなる可能性を危険と見なしたことは、彼らが世界唯一の真の地域覇権国であるアメリカが長年享受してきたような「無料の安全保障(free security)」を享受していないことを示している。

イスラエルの最近の戦場での成功も、イスラエルが支配する地域の人口の約半分を占めるパレスティナ人というより根本的な問題を解決してはいない。イスラエルの優れた軍事力と情報能力は、2023年10月にハマスが数百人のイスラエル人を殺害するのを防げなかった。また、それに対する報復としてイスラエルが5万5千人以上のパレスティナ人を殺害したことで、この紛争の政治的解決に近づいた訳でもない。むしろ、イスラエルの世界的なイメージは著しく傷つき、長年の同盟諸国でさえ支援を弱めている。

最も重要なのは、イスラエルが依然としてアメリカ国内の後援者に決定的に依存している点だ。アメリカは、隣国を攻撃するために必要な航空機、爆弾、ミサイルの大半を供給し、絶え間ない外交的保護を提供している。真の地域覇権国は近隣地域を支配するために他国に依存する必要はないが、イスラエルは依存せざるを得ない。強力な国内利益団体の影響力により、アメリカの支援は何十年にもわたって揺るぎないものだったが、近年、この関係には緊張の兆しが見られ、アメリカの力そのものの衰退に伴い、この関係を維持することはさらに困難になるだろう。そして、今回の戦闘が最終的に米国を巻き込むことになれば、ドナルド・トランプ米大統領がアメリカの平和を維持すると信じていた MAGA の支持者たちを含め、より多くのアメリカ国民が、「特別な関係(special relationship)」のためにアメリカが支払っている多大な代償を認識することになるだろう。

最後に、永続的な地域覇権は、近隣諸国が覇権国の優位な地位を受け入れる(場合によっては歓迎する)ことを必要とする。そうでなければ、覇権国は常に新たな反対勢力の出現を懸念し、反対勢力の出現を阻止するために繰り返し行動を取らざるを得なくなる。自らの特権的な地位(privileged position)を他国に受け入れてもらうためには、永続的な覇権国はある程度の寛容さ(forbearance)をもって行動しなければならない。これは、フランクリン・D・ルーズヴェルト元米大統領がラテンアメリカに対して「善隣(Good Neighbor)」政策を採用した際に示したものである。ナポレオン時代のフランス、ナチス・ドイツ、大日本帝国といった地域覇権国を志向した国々が一時的に優位な地位を獲得したものの、当初の成果を固めることができず、最終的にはより強力な反対勢力の連合に屈服したことを想起することに価値がある。

しかし、隣国への寛容を持っての処遇はイスラエルの得意分野ではなく、イスラエルの右翼勢力や宗教過激派の影響力拡大によって、その可能性はさらに低くなっている。これらを総合すると、イスラエルが地域の覇権国となるには程遠い。指導者たちがその地位を望んでいることは疑いない—当然だろう—。しかしそれは永遠に手の届かないものとなる。つまりイスラエル国家の長期的な安全保障は、結局のところパレスティナを含む近隣諸国との永続的な政治的解決の達成にかかっている。これは、永続的な安全保障が最終的に依存するのは力だけではなく政治であるという、また1つの教訓なのである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialX:アカウント@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 

 2022年10月から続いていたイスラエルとハマスの紛争は途中にイランも巻き込み、中東地域を不安定化させた。ガザ地区では約7万の民間人が犠牲となった。イスラエル側にも多くの犠牲者が出ている。2025年に停戦合意が結ばれたが、先行きは不透明となっている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ガザ地区への圧力を強め、紛争状態を長引かせようとしている。ハマス殲滅を大義名分に掲げているが、実際は、地震と家族が抱える汚職に関する裁判を避ける意味合いが大きい。先日、ついに大統領に対して、恩赦を求めるという事態になった。自身の個人的な利益、犯罪行為の処罰を避けるために紛争を続けるという国益を損なう行為をしているということになる。

 アメリカは常にイスラエルを支援してきた。それはイスラエルの建国以来ずっと続いている。それは、アメリカ国内におけるイスラエル系有権者の力の大きさということもあるが、中東地域において唯一の西洋型の民主政治体制国家を守るという大義名分もあった。しかし、最近では、アメリカ国民の間でイスラエル支持が縮小している。これをユダヤ人差別と見るのは早計だ。ユダヤ人とイスラエルを区別して考えるようになっている。特に、ネタニヤフ首相のような、個人の利益を国家の利益に重ねてしまうようなことに反対している。ドナルド・トランプ大統領は強力なイスラエル支持者であると見られているが、トランプはそのような単純な人物ではない。イデオロギーとか論理とか、そういうものに縛られる人物ではない。トランプがイスラエルを支持しているからと言ってそれが未来永劫続く訳ではない。ネタニヤフ首相に対しては良い顔をしながらも、裏では「切る」タイミングを考えている。アメリカとトランプ政権はイスラエルを安心させていない。これこそは外交の基本である。日本外交がこの基本ができていると言われると心許ない。

(貼り付けはじめ)

イスラエルはアメリカが依然として自国の味方かどうか疑問に思っている(Israel Is Wondering if America Is Still on Its Side

-アメリカの政策と国民の支持の変化を受けて、イスラエル人は答えを探し求めている。

アンチャル・ヴォーラ筆

2025年12月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/01/israel-trump-america-gaza-abraham-accords/

政治的立場を問わず、アメリカ国民の間でイスラエルへの批判が高まっているのと同様に、イスラエル人も、ワシントンの中東における最近の政策決定の多くがイスラエルにとって不利益となるかどうかを議論している。アメリカ政府はしばしば、イスラエルの政策を統制し、行動の自由を制限しようとしているとされている。イスラエルとアラブ諸国の報道機関は、アメリカがイスラエルを独立した主権国家としてではなく、51番目の州として扱っているのではないかと疑問を呈している。

イスラエル民主政治体制研究所の最近の世論調査によると、イスラエル人のほぼ半数が、アメリカはイスラエル政府よりも「安全保障上の決定に大きな影響力を持っている」と考えている。

アメリカにおいては、イデオロギーの違いを超えてイスラエルへの批判が高まっている。ピュー・リサーチ・センターによると、過去3年間で共和党支持者、特に若年層の間でイスラエルに対する否定的な見方が高まっている。アメリアでは伝統的に最も強力な親イスラエル派である福音派キリスト教徒たち(Evangelical Christians)も、イスラエルの圧力を受けたことで、「永遠の戦争(forever wars)」を終わらせるという約束を裏切ったとみられるドナルド・トランプ米大統領によるイラン爆撃に憤慨している。

反イスラエル・親トランプのMAGA基盤からは、さらに厳しい挑戦が巻き起こっている。フォックス・ニューズの元司会者タッカー・カールソン、トランプの前大統領顧問のスティーヴ・バノン、そして連邦下院議員マージョリー・テイラー・グリーンは、アメリカのイスラエル支援に疑問を呈している。しかし、広大なMAGAの世界に生きる他の人々は、こうした政策への不同意を口実に反ユダヤ主義的な発言を吐き出している。10月、カールソンは極右白人至上主義者のニック・フエンテスにインタヴューを行い、彼に発言の機会を与えた。フエンテスは露骨な反ユダヤ主義的な見解を述べ、アメリカのユダヤ人が同化を拒否し、「組織化されたユダヤ人(organized Jewry)」こそが国家統一の最大の障害だと非難した。

専門家たちは、トランプ政権下でもアメリカのイスラエル支援は継続されるものの、イスラエル政府はMAGA基盤に対し、イスラエルがアメリカの利益に合致しているという姿勢をより明確に示すために方針を変える可能性があると見ている。イスラエルの元国家安全保障担当副首相補佐官で、エルサレム戦略安全保障研究所(JISS)副所長のエラン・レーマンは「経済援助モデルから軍事面での相互協力モデルへの転換(from the model of economic aid to a model of mutual cooperation on the military side)が必要だ」と述べた。レーマンは「トランプ自身が情勢を完全に掌握している限りイスラエルとの関係は安全だ」とも述べている。

しかし、トランプこそが問題の最大の原因だと指摘する声もある。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との関係は、友好的とは程遠い。イスラエル人ジャーナリストであるバラク・ラヴィッドの著書『トランプの平和:アブラハム合意と中東の再構築(Trump’s Peace: The Abraham Accords and The Reshaping of The Middle East)』の取材に応じた際、トランプはネタニヤフについて「クソ野郎だ(Fuck him)」と述べた。より大きな懸念は、トランプのイスラエル支持が、歴史的に差別されてきたコミュニティへの支援や中東における民主政体国家であるイスラエル支持といった原則に基づくものではなく、自らを平和主義者として見せかけ、ノーベル賞受賞を確実なものにするためのものだという点だ。

実際、イスラエルの戦略コミュニティを大いに驚かせたように、トランプはアラブ諸国の指導者たちの主張にも耳を傾け、経済発展のためのアメリカからの支援拡大や武器供給を求める声にも耳を傾け、パレスティナ問題への関心を完全に放棄させないようにしている。第一次政権時代、トランプが占領下のゴラン高原を(シリアではなく)イスラエルの領土と認め、アメリカ大使館をテルアヴィヴからエルサレムに移転したにもかかわらず、アラブ諸国はトランプの耳元で効果的なささやきを続け、惜しみない称賛と豪華な航空機まで贈ってトランプの歓心を繋ぎ止めている。

トランプはラヴィッドに対し、ネタニヤフ首相がパレスティナとの紛争を終結させ、合意を成立させたいと考えているとは考えていないと述べた。一方、野党指導者のベニー・ガンツはそう望んでいると述べた。トランプの批判は主に、2020年のアメリカ大統領選挙でジョー・バイデンが勝利した後、ネタニヤフ首相がバイデンに送った祝辞から生まれたようだ。ラヴィッドはその後の会話で、トランプのネタニヤフ首相に対する口調ははるかに穏やかだったとも指摘しているが、本書の記述は、しばしば強固とされる両者の関係の暗い側面を明らかにしている。

トランプはここ数日、ネタニヤフ首相への支持を表明しており、今月はイスラエル大統領に対し、汚職事件での恩赦を求めた。しかし、専門家たちは、これはより大きな戦略の一環だと見ている。それは、ハマスの武装解除の遅延、あるいは確実性に関わらず、ネタニヤフ首相によるヨルダン川西岸併合を阻止し、停戦を維持するという戦略だ。

停戦合意の直後、トランプ大統領はマルコ・ルビオ国務長官やJD・ヴァンス副大統領を含む複数の政権メンバーを急派し、「ビビ・シット(Bibi-sit)」、つまり「ビビ」の愛称を持つネタニヤフ首相によるハマス攻撃を阻止するよう指示した。ハマスを壊滅させることはイスラエルの戦争目標だったが、ハマスが依然としてガザ地区の47%を支配しているため、イスラエル人の一部は、その目標を達成するのはトランプ大統領の責任だと指摘している。

JISSのヨシ・クーパーワッサー所長は「トランプは和平委員会の長だ。だから、ハマスの武装解除を実現させなければならない」と述べた。しかし、トランプの計画では武装解除のタイムラインやプロセスが明確ではなかったと認めた。

ガザ地区から約32キロ離れた場所に、アメリカは民軍調整センターを設置し、200人のアメリカ兵と西側諸国の代表者が行き交っている。この兵站センター設置の目的は、トランプの和平計画の次の段階を計画することだが、同時にイスラエルの政策と国防軍を外国勢力の監視下に置いて、彼らの手を縛ることにもなる。

他にも多くの政策面で意見の相違が生じている。最新鋭のF-35戦闘機をサウジアラビアに売却するというトランプの決定は、イスラエルの多くの人々を動揺させた。イスラエルはリヤドとの関係正常化に熱心だが、サウジアラビアは、この地域における質的な軍事的優位性を失いたくないと考えている。トランプ大統領によるシリア制裁の解除と、ジハード主義者で後に大統領となったアハメド・アル・シャラーの支持は、イスラエル国内で懸念を引き起こしている。

さらに、トランプ大統領がカタールとトルコを支持していることは、アメリカがハマスに影響を与える主要国と見なしている一方で、イスラエルはハマスに同調していると見なしており、その対応は困難を極めている。ネタニヤフ首相がドーハでハマス指導者たちを爆撃したことについてカタールに強制的に謝罪したとみられる事態を受け、今度はアメリカがガザ地区に展開する国際安定化軍(International Stabilization ForceISF)へのトルコの参加を支持していると報じられている一方、イスラエルはトルコの地上部隊の受け入れを拒否している。

アメリカの対イスラエル支援に亀裂が生じているのは誇張であり、トランプ大統領の政策は依然としてイスラエルに大きく有利に働いているという意見もある。

しかし、ガザ地区で6万9000人以上のパレスティナ人が死亡するなど死者数が増加していること、ヨルダン川西岸地区の併合とパレスティナ人の追放を推進するイスラエルの右派連合、アメリカがイスラエルのためにイランとの新たな戦争に介入するのではないかという懸念、そしてトランプの「MAGA」支持層におけるイスラエルへの支持の分裂といった様々な要因が重なり、初めてアメリカ国民がイスラエルへのアメリカの支援の根拠に疑問を抱き始めていることは否定できない。先月、レスリー・スタールとの「60ミニッツ」インタヴューで、トランプの義理の息子であり、中東問題における二大交渉担当者の1人であるジャレッド・クシュナーは、トランプは「イスラエルの行動は制御不能になりつつあり、今こそ強硬手段を取り、長期的な利益に反する行動を阻止すべき時だ」と感じていると述べた。

チャタムハウスのシニアコンサルティングフェローであるヨシ・メケルバーグは、イスラエル人はトランプ大統領の対イスラエル政策について様々な見解を持っていると述べた。しかし、アメリカ国民のイスラエル支持率の低下は「戦略的に非常に危険」であり、イスラエル政府の政策転換を促す必要があると主張するのは難しいとメケルバーグは述べた。イスラエルは武器の69%を米国からの供給で賄っており、あらゆる種類の外交支援もアメリカから受けているとメケルバーグは付け加えた。

アメリカがイスラエルの意向を全て考慮せずに地域政策を推進しようとすれば、イスラエルには頼る術がない。イスラエルは、大統領執務室にいる人物と協力するしかない。たとえ、人質の帰還という合意を成立させたことで絶大な人気を誇る大統領であっても、他方では国の司法制度に介入しているように見える。トランプは、ネタニヤフ首相の恩赦を求める権利などないと考えるイスラエル人の一部を怒らせたようだ。「トランプが、自分には恩赦を求める法的根拠がないという事実を全く認識せずに、ネタニヤフ首相の恩赦を求めたというのは奇妙な話だ」とメケルバーグは述べた。

一方、ネタニヤフ政権は、平和をもたらす形で戦争を終結させ、アメリカで失った支持の一部を取り戻すという先見の明のある政策転換を行うどころか、広報会社を雇ってオンライン上に親イスラエル的なコンテンツを作成し、アメリカ国内の世論を操作していると非難されている。

※アンチャル・ヴォーラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』コラムニスト。ヨーロッパ、中東、南アジアについて執筆している。『タイムズ・オブ・ロンドン』誌で中東担当を務めた。アルジャジーラ・イングリッシュとドイチェ・ヴェレのテレビ特派員も務めた。以前はベイルートとデリーを拠点に、20カ国以上の紛争や政治を報道してきた。Xアカウント:@anchalvohra

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イスラエルとハマスの紛争、ガザ地区への攻撃と民間人殺傷は、停戦合意によって、小康状態になっているが、民間人の苦境は続いている。イスラエルに対する国際刑事裁判所のカリム・カーン検察官が、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防大臣に対して逮捕状を請求したことによる。カーンは同時にハマスの指導者に対しても逮捕状を請求した。これに対して、ネタニヤフ首相はカーンを反ユダヤ主義者と非難し、法律専門家もカーンがイスラエルとハマスを同じレベルに置いたことに動揺した。多くの一般市民も怒りを抱くが、その感情だけではカーンの訴えの根拠を判断するのは難しい。しかし、カーンは証拠を集めるため、国際法の専門家からなる委員会に相談し、その結果、彼が特定した容疑者が戦争犯罪や人道に対する罪を犯したと信じるに足る合理的な根拠があると結論付けた。ネタニヤフ首相とガラント大臣に対する主な容疑は、ガザの民間人に対する共通の計画として、飢えや暴力を用いた行為に関与した点である。つまり、これは人道支援の妨害が失策ではなく、意図的な行為であったという主張を基にしている。カーンはビデオや衛星画像などを資料として提示しているが、具体的な証拠は公にはされていない。
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テオドール・メロン

国際刑事裁判所において重要な役割を果たしたのは、ユダヤ人の著名な法学者テオドール・メロンである。メロンは、入植地の問題についても指摘している。1967年における入植の開始時、彼は法的な観点から問題があることをイスラエル政府に伝えたが、無視された。仮にイスラエル政府が当時のアドバイスに従っていれば、入植地はなかったかもしれず、中東の平和にも違った道があったと考えられる。入植地の存在がイスラエルの外交政策に影響を与え、特にネタニヤフ政権においてその傾向が強化された。そのような人物が国際刑事裁判所で重要な役割を果たした。メロンという人物はイスラエルの愛国者と言える存在だろう。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は私利私欲のために、ナショナリズムを利用し、中東と世界に災厄を与えている。メロンは現在も存命である(95歳)。彼に続き、イスラエルのために、イスラエルの政策を批判する人たちはたくさんいる。私たちはそのことに思いをいたすべきだ。

(貼り付けはじめ)

イスラエルをイスラエル自身から救おうとした男(The Man Who Tried to Save Israel From Itself

-今回、イスラエルはテオドール・メロン(Theodor Meron)の警告に従わなければならない。

ガーショム・ゴレンバーグ筆

2024年6月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/04/israel-settlements-occupation-theodor-meron-gaza-netanyahu/?tpcc=recirc062921

「ハーグの偽善(the Hague’s Hypocrisy)」と、イスラエルの大衆向け日刊紙は見出しに大々的に書き立てた。ライヴァル紙は負けじとばかりに「ハーグの恥辱(the Hague’s Disgrace)」と見出しを付けた。

国際刑事裁判所のカリム・カーン検察官が、人道に対する罪(crimes against humanity)でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防大臣に対して逮捕状を請求すると発表したとき、イスラエル国内で最も明らかな国民の反応は激怒だった。カーン検察官が同時にハマスの指導者3人の逮捕を要請しても、この怒りは収まらなかった。

ネタニヤフ首相は予想通り、カーンが「反ユダヤ主義の火(the fires of antisemitism)」を煽っていると非難した。しかし、首相に深く批判的なイスラエルの法律専門家ですら、カーンがイスラエルとハマスの司令官を同じカテゴリーに入れているように見えることに動揺している。ある人は「攻撃者(ハマス)と攻撃される側(イスラエル)の間に法的同等性を設けるのは容認できない」と書いた。

私もごく普通のイスラエル人なので、その反射的な怒りをいくらか共有できる。世界はイスラエルの行動に過剰な注目を払い、2023年10月7日にどちらの側が残虐行為を犯し、この戦争を引き起こしたのかを忘れているようだ。

しかし、怒りは、カーンがネタニヤフとガラントを訴える根拠となるかどうかを判断する上で、あまり有効な手段ではない。私にとって、その疑問に答える鍵は、ある名前にある。テオドール・メロンだ。

カーンは、要請書を提出する前に、戦争法に関する主要な専門家で構成される委員会に証拠を提出した。委員会は全員一致で、「カーンが特定した容疑者が、国際刑事裁判所の管轄権の範囲内で戦争犯罪および人道に対する罪を犯したと信じるに足る合理的な根拠がある」と結論付けた。ホロコースト生存者であり、法学者であり、元イスラエル外交官でもある94歳のテオドール・メロンは、これらの専門家の中でも群を抜いて著名な人物である。

私が「T・メロン」という名前に初めて出会ったのは、20年以上前、占領地におけるイスラエル人入植地の歴史に関する著書『偶然の帝国(The Accidental Empire)』の調査中に、イスラエル国立公文書館でのことだった。故レヴィ・エシュコル・イスラエル首相の事務所から機密解除されたファイルのページ下部に、彼の署名があった。ページ上部には「極秘(Most Secret)」と記されていた。その間に記された情報が、私を彼についてもっと知りたいという気持ちにさせた。

メロンは1930年、ポーランドのカリシュで、彼自身が「中流階級のユダヤ人家庭(middle-class Jewish family)」と表現する家庭に生まれた。「幸せだったが、残念ながら短かった幼少期」は、9歳の時にドイツ侵攻によって終わりを迎えた。ナチスが支配するゲットーや強制労働収容所で暮らしながらも、どうにかホロコーストを生き延びた。しかし、彼の家族のほとんどは生き延びられなかった。終戦直後、15歳の時、彼は当時イギリス領だったパレスティナのハイファ市に移住した。

それからの6年間、彼にとって唯一の学校教育は苦痛に満ちたものとなった。失われた教育の年月は「私に学びへの強い渇望を与えてくれた」と彼は後に語っている。彼は新しい言語で高校を卒業し、ヘブライ大学で法学の学位を取得し、ハーヴァード大学で博士号を取得し、ケンブリッジ大学で国際法の博士研究員として研究を行った。

1957年、学術界のポストに就く見込みのないメロンは、イスラエル外務省からのオファーを受けた。1967年の六日間戦争(第三次中東戦争)直後、37歳にしてイスラエル外務省の法律顧問、つまり事実上イスラエル政府における国際法の最高権威に任命された、天才(wunderkind)なのである。

大使としての10年の任期を経て、彼は学術界に戻った。多くのイスラエル人学者と同様に、これは海外留学を意味した。メロンの場合は、ニューヨーク大学ロースクールへの留学だった。彼の法律に関する論稿は、「国際刑事裁判所(international criminal tribunals)の法的基盤構築に貢献した」と評されている。国際刑事裁判所の始まりは、ユーゴスラビア崩壊後の戦争犯罪を扱うために1993年に国連が設立した裁判所である。

当時アメリカ市民であったメロンは、2001年に国際刑事裁判所の判事に任命された。彼は数年間、同裁判所の所長と控訴裁判所判事を務めた。インタヴューで、彼は自身の立場を「胸が締め付けられる(poignant)」と同時に「気が重くなる(daunting)」と語った。かつてナチスの少年囚人だった彼が、今やジェノサイドを含む犯罪の裁判長を務めているのだ。彼は特に、「レイプと性奴隷制を人道に対する罪と定義した」判決を誇りに思っている。

メロンは、1990年代後半、再びオックスフォード大学の法学教授として、また最近ではイスラエルとハマスの指導者に対する訴訟を担当する国際刑事裁判所所長カーンの顧問も務めている。

カーンの令状請求は有罪判決ではないことを肝に銘じておくことが重要だ。メロンをはじめとする専門家たちが確認したのは、証拠と法律がネタニヤフとガラント、そしてハマス関係者のヤヒヤ・シンワル、モハメド・デイフ、イスマイル・ハニヤを裁く根拠を提供しているということだ。

専門家たちの報告書は、国際刑事裁判所(ICC)に訴訟適格がないとするイスラエルの主張を否定した。「ガザ地区を含むパレスティナは、国際刑事裁判所規程の適用上、国家である」と専門家たちは述べた。イスラエルとは異なり、パレスティナは国際刑事裁判所の管轄権を受け入れている。したがって、国際刑事裁判所はガザ地区における行動、そしてイスラエル領内でのパレスティナ人の行動について判決を下すことができると報告書は述べている。

『フィナンシャル・タイムズ』紙に寄稿した共同意見記事の中で、メロンと同僚たちは「これらの容疑は紛争の理由とは全く関係がない」と強調した。その点を敷衍すると、イスラエルは正当化可能な防衛戦争(a justifiable war of defense)を行っているかもしれないが、政府首脳を含む一部のイスラエル人は、その戦争遂行の過程で罪を犯した可能性がある。

シンワル、デイフ、ハニヤに対する起訴案には、10月7日のイスラエル攻撃における民間人殺害という人道に対する罪である絶滅(extermination)、人質の確保、強姦といった戦争犯罪が含まれている。

ネタニヤフとガラントに対する主な容疑は、ハマスを根絶やしにし、イスラエル人人質を解放し、ガザ地区の住民を処罰するために、「ガザ地区の民間人に対する飢餓やその他の暴力行為を用いるという共通の計画(a common plan to use starvation and other acts of violence against the Gazan civilian population)」に関与したという点である。言い換えれば、人道支援の妨害は失策ではなく、戦争遂行のための意図的な手段だったとされている。

カーンは、生存者へのインタヴュー、ビデオ資料、衛星画像など、自身が収集した証拠の種類を列挙している。しかし、証拠そのものは公表していない。今のところ、私たちは専門家全員の一致した見解に頼るしかない。そして、カーンの主張が確固たるものかどうかを判断できるのは、おそらくメロン以上に適任な人物はいないだろう。メロンがイスラエルを迫害していると示唆するのは滑稽であり、彼が反ユダヤ主義者だと主張するのは言語道断だ。

これは判決ではない。告発を真剣に受け止めるべき理由だ。

実際、イスラエル政府がテオドール・メロンの訴えをもっと早く、つまり私がアーカイヴで発見した覚書を書いた1967年9月に真剣に受け止めていれば、イスラエルはこのような状況には陥っていなかっただろう。

当時、エシュコル首相は、3カ月前の予期せぬ戦争でイスラエルが征服した領土に入植地を建設すべきかどうかを検討していた。エシュコルは、1948年にアラブ軍に制圧されたキブツ、クファル・エツィオンの再建に傾いていた。その場所は、ヨルダン川西岸地区のヘブロンとベツレヘムの間にあり、その間ヨルダンの支配下に置かれていた。エシュコルはまた、同じくイスラエルに最近征服されたシリア領ゴラン高原への入植にも関心を持っていた。

しかし、閣議において法務大臣は「施政下」地域[administered” territory](政府が占領地を指す用語)への民間人の定住は国際法違反になると警告していた。エシュコルの局長は外務省の法律顧問に意見を求めた。

メロンの回答は断定的だった。「私の結論は、施政下における民間人の定住は、ジュネーブ条約第4条の明示的な規定に違反となる」。メロンによると、1949年の戦時における文民保護に関する条約は、占領国が自国民の一部を占領地に移動させることを禁じている。この規定は、征服国による「植民地化を防止することを目的としている(aimed at preventing colonization” by the conquering state)」と彼は書いている。

9日後、イスラエルの若者の一団が政府の支援を受けてクファル・エツィオンに入植地を設置した。当初、この入植地は公に軍事前哨基地(a military outpost)とされていた。メロン自身も指摘していたように、占領地に臨時の軍事基地を建設することは合法だった。しかしこれは策略であり、新たな入植地の民間性が高まるにつれ、その効果は急速に薄れていった。

そこでイスラエル政府はすぐに、著名なイスラエル人法学者イェフダ・ブルムとメイア・シャムガルの主張に頼るようになった。彼らは、ジュネーブ条約第4条はヨルダン川西岸地区には適用されないと主張した。ヨルダンの主権は国際的にほぼ完全に承認されていないため(というのが彼らの主張だった)、ヨルダン川西岸地区は占領地ではないという主張だ。

メロン自身が最初の覚書から50年後の2017年に書いたように、この理論は根拠がない。ジュネーブ条約は国家や主権主張を守ることを目的としたものではない。占領下の人々を占領国の行為から守るものだ。

ここで疑問が生じる。もしエシュコル政権が1967年に歯を食いしばり、自国の弁護士の意見を受け入れていたらどうなっていただろうか?

まず、占領地に入植地は存在しなかっただろう。イスラエルの広大な郊外、より小規模なゲート付き郊外、そして小さな前哨基地からなるネットワーク全体は存在しなかっただろう。イスラエル軍はこれらのコミュニティを警備する必要もなく、イスラエルは占領地に自らを縛り付けるために莫大な資源を投入することもなかっただろう。

今頃、イスラエルの隣にパレスティナ国家が誕生していたのか、あるいはどこか別の場所で平和が実現していたのか、私たちには分からない。入植地は和平合意の唯一の障害ではなかった。しかし、大きな障害の1つであることは確かだ。さらに、入植地の一部、つまりイデオロギー的な郊外は、土地の放棄に断固反対するイスラエルの過激な宗教右派の温床となってきた。ネタニヤフ政権の二大極右政党は入植者によって率いられており、入植地を中核的な支持基盤としている。入植地がなければ、イスラエルが現在の苦境を回避できた可能性は高かっただろう。

当時、メロンの意見を受け入れていれば、イスラエルの政治家や軍指導者の間に国際法に対する異なる姿勢、すなわち厳格な遵守の姿勢が確立されていたかもしれない。おそらくそのような姿勢が、ネタニヤフとガラントに、現在の戦争を異なる方法で遂行させ、国際刑事裁判所の検察官が現在主張しているような行為を回避させていたかもしれない。

しかし、キーワードは「疑惑(alleged)」だ。カーンが主張する犯罪の重要な要素は、それらが意図的であったこと、つまり飢餓(starvation)やその他の民間人の死因が政策として設定されていたことだ。

イスラエルの指導者たちが、ガザ地区の人々への食糧やその他の基本的なニーズの供給を意図的に阻止した可能性は確かにある。つまり、援助が遮断されたのは、ハマスに人質解放、あるいはガザの支配権を放棄するよう圧力をかけるためだ。ハマスはガザ地区の民間人を人間の盾として利用してきた。おそらくネタニヤフ首相は、彼らの苦しみをハマスに対する武器として利用しようとしたのだろう。

ガザ地区の人々に食糧を届けられなかったのは、戦闘の混乱、エジプトの失策、ハマスの行動、イスラエル兵が援助活動員に誤射したこと(イスラエル兵が時折、他のイスラエル人に対して誤射したことも同様)、そしてイスラエル政府の無能さ(10月7日にイスラエルを無防備な状態に陥れた悲惨な無能さの継続)といった複数の要因が重なった結果である可能性もある。

世界中のあまりにも多くの人々が、主に先入観やメディア報道の洪水に基づいて、これらの可能性のどれが真実なのかを既に確信しているようだ。しかし、もしカーンがネタニヤフとガラントを裁判にかけることに成功したとしても、確固たる証拠によって意図を立証する必要があるだろう。

メロンの1967年のメモを発見したことで、もう1つ教訓を得た。政府の意図を示す最良の証拠は、しばしば何十年も秘密にされた文書の中に隠されているということだ。これは戦争における決定においてはなおさら当てはまり、イスラエル自身がガザ地区で何が起きたのかを調査すべき理由をさらに強めるものだ。

国際刑事裁判所がイスラエルの機密文書にアクセスする可能性は低い。一方、10月7日の悲惨な情報漏洩以降の戦争遂行の全過程を調査するイスラエルの国家調査委員会は、そのようなアクセスを要求し、政府高官や将校を召喚して証言を求めることができるだろう。

カーンの発表で明確に示されたのは、イスラエルが容疑犯罪について独自に「独立かつ公平な(independent and impartial)」調査を実施するのであれば、カーンはイスラエルの判断に従うという点だ。これは「補完性(complementarity)」の原則であり、国際刑事裁判所の管轄権は各国の司法制度が機能しない場合にのみ適用される。

調査委員会は刑事手続きではない。しかし、イスラエルが自国で調査を実施するのであれば、カーンには自らの調査を中断または終了する十分な理由があるだろう。

しかし、イスラエル国内では、ネタニヤフ政権が必要な独立性と広範な権限を有する調査委員会を設置することはないのは明らかだ。それは、国の深刻な政治危機が政権の崩壊と新たな選挙に繋がった場合にのみ可能となる。

ネタニヤフ首相は、カーン首相による逮捕状請求に対する国民の反射的な怒りを利用して、失った支持をいくらか回復させようとしている。しかし、理性的な反応は正反対だ。国際刑事裁判所での訴訟の可能性は、ネタニヤフ政権を終わらせ、戦争のあらゆる側面を調査する新たな理由となる。

言い換えれば次のようになる。1967年、占領開始当初、イスラエル政府は国際法に関する非常に若い顧問からの警告を無視した。今日、イスラエルは戦争法に関する非常に老練な権威、つまり同じ人物からの新たな警告に耳を傾ける必要がある。

※ガーショム・ゴレンバーグ:イスラエルのジャーナリスト・歴史家。最新作に『影の戦争:暗号解読者、スパイ、そしてナチスを中東から追い出すための秘密の闘争(War of Shadows: Codebreakers, Spies, and the Secret Struggle to Drive the Nazis From the Middle East)』がある。ツイッターアカウント:@GershomG

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(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

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 古村治彦です。

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 2025年6月13日にイスラエルはイランの核開発関連施設に対する攻撃を行った。イランの革命防衛隊の司令官と参謀総長が死亡した。イランはイスラエルに向けてミサイルを発射し、報復攻撃を行った。その後、イスラエルはイランに対しての空爆を継続し、イランの国防省を攻撃し、イラン国内の油田・石油採掘施設を攻撃するなど攻撃を拡大している。アメリカのドナルド・トランプ政権はイランとの交渉を行っている最中でのイスラエルによる攻撃に不満を持っている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は極右勢力に支えられ、かつ、自身の汚職からイスラエル国内、国外の注目を逸らさせるために、戦争を拡大しようとしている。極め付きは、アメリカにイラン攻撃への参加を求めている。非常に危険な動きだ。イスラエル、正確にはベンヤミン・ネタニヤフと極右勢力には「自分たちにはアメリカがついている、いや、アメリカ国内政治を動かして自分たちの思い通りに動かせる」という思い上がりがある。

 第1次ドナルド・トランプ政権では、前任のバラク・オバマ政権で成立した、イランとの核開発をめぐる合意から離脱した。そのために、イランは核開発を継続した。それが、第2次ドナルド・トランプ政権では姿勢を転換し、イランとの交渉を開始した。そうした中で、イスラエルによるイラン攻撃が実施された。第2次トランプ政権のイランとの関係修復は賢明な動きである。何よりも、バイデン政権後半で、中国の仲介によって、サウジアラビアとイランの関係改善が成功した。アメリカは中東においてその役割を縮小させ、存在感を減らしている。イスラエルにとってアメリカの中東地域における減退・撤退は死活問題である。イスラエルはアメリカのバイデン政権の仲介で、サウジアラビアとの関係改善、国交正常化を目指していた。しかし、イスラエル・ハマス紛争によってその動きは頓挫した。

 こうして考えてみると、中東地域においても、私の分析の枠組みである「西側諸国(ジ・ウエスト、the West)」対「西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)」、「グローバル・ノース(Global North)」対「グローバル・サウス(Global South)」の対立が反映されていると考える。イスラエルは核兵器さえも持つ軍事強国であるが、今回の攻撃は、一種の不安からの暴走であると考えている。

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ドナルド・トランプ大統領が中東で正しく判断したこと(What Trump Got Right in the Middle East

-アメリカ大統領によるイランへの和解(olive branch)は、ワシントンの外交政策におけるパラダイム・シフト(a paradigm shift)となる可能性がある。

ハワード・W・フレンチ筆

2025年5月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/16/trump-middle-east-trip-iran-us-foreign-policy/

あるニューズ・イヴェントの重要性は、主流メディアがそれをどれだけ軽視、あるいは完全に無視するかによって測られることがある。今週、ドナルド・トランプ米大統領が中東歴訪中に、アメリカの外交政策のパラダイム・シフト(a paradigm shift)に繋がりかねない発言をした時、まさにその通りだった。

トランプが二期目初の外遊を開始して以来、メディアの注目は、旧型エアフォースワンの後継機としてカタールから超高級機ボーイング747を受け入れるという決定(批評家たちからは露骨な腐敗の兆候[a breathtaking sign of corruption]だと広く非難されている)と、アメリカがダマスカスに対する長年の経済制裁を解除すると発表した後にシリアの新大統領アハメド・アル・シャラーと電撃会談を行ったことに集中している。

どちらの話題も、真剣に検討する価値がある。しかし、トランプ大統領が裕福なアラブ諸国を次々と訪問する間、アメリカの各報道機関は、いくつかの例外を除き、中東およびその周辺地域に重大な地政学的影響を及ぼす問題、すなわちトランプ大統領がイランに和解(olive branch)の手を差し伸べる決断について、比較的少ない言葉しか割(さ)かなかった。

トランプ大統領は火曜日、アメリカが40年間執拗な敵として扱ってきたイランと直接交渉する決意を表明した。トランプはリヤドでの演説の中で、「繰り返し示してきたように、たとえ両国の間に大きな隔たりがあったとしても、過去の紛争を終わらせ、より良く安定した世界のために新たなパートナーシップを築く用意がある」と表明した。

ワシントンにおいて、イスラエルとの足並みを揃えた同盟関係、ひいては中東地域の大国にイスラエルの宿敵であるイランの封じ込めを支援するよう働きかける必要性ほど、外交政策に関する信念が深く根付いているものは少ない。この戦略を少なくとも部分的にキャリアに重ねてきた多くのアナリストは、今回の訪問後、トランプ大統領がすっかり忘れてテヘランへの働きかけを放棄するか、あるいはイランがホワイトハウスに考えを変えさせるような挑発的な行動に出るかを期待、あるいは信じているかもしれない。

関税を軸とした経済政策が示すように、トランプは一貫性のある人物と見られている訳ではない。そのため、イランとの和解(rapprochement with Iran)に向けた言葉だけの試みが長続きしないと考えるのは愚かなことではない。しかし、アメリカがこの考えを真剣に追求しないのであれば、それは遺憾である。同盟諸国への高関税から、ガザ地区をパレスティナ人を排除した高級不動産開発地とするという提案(トランプは今回の訪問でもこの提案を繰り返したが、ガザ地区におけるイスラエルの壊滅的な懲罰的軍事作戦にはほとんど注意を払っていない)まで、奇妙でしばしば無意味に混乱を招く姿勢に満ちた外交政策の実績の中で、これは今のところトランプが正しかった数少ないアイデアの1つだ。

1979年のイラン・イスラム革命、そして、1979年後半のイラン人質事件に始まる、長年にわたるアメリカのイランに対する敵意が、どのような結果をもたらしたかを考えてみて欲しい。それは醜悪なバランスシートだ。例えば、アメリカはイラクを支援することで、1980年から1988年にかけてのイラン・イラク戦争を助長した。この戦争では、50万人から100万人の死者が出ており、前世紀で最も多くの死者を出した紛争の1つとなっている。

この歴史において、罪のない主体は存在しない。テヘランは、レバノンのヒズボラ、ガザ地区のハマス、イエメンのフーシ派といった過激派組織に武器と資金を提供し、世界最悪の現代独裁政治の1つである、最近打倒されたシリアのアサド王朝を支援してきた。イランはまた、イスラエルの破壊を主張してきた。

テヘランの忌まわしい立場を弁解する訳にはいかないが、そもそもなぜそのような事態に至ったのかを問わなければならない。その答えの1つは、西側諸国がイランの主権を歴史的に軽視してきたことにある。それは、1953年にCIAの支援を受けて民主的に選出されたモハンマド・モサデク首相が打倒され、イラン国王モハンマド・レザー・パーレヴィが親西側の独裁政権を樹立したことに遡る。イランが長らくイスラエルを敵対的なアメリカと西側諸国の代理と見なしてきたのも、当然のことである。

2000年代以降、ワシントンは1979年に初めて導入したイランの核開発計画を理由に、対イラン経済制裁を着実に強化してきた。しかしながら、イランがなぜ核技術の習得を必要としているのかを公に問うアナリストはほとんどいない。イランが核攻撃に対する正当な恐怖感や、究極の抑止力あるいは自衛手段としての核技術を必要としている可能性を考慮しようとしないからだ。イスラエルが、イランが近いうちに核兵器を開発する可能性に脅威を感じるのは当然だが、イスラエル自身も核兵器を保有している。また、シリアへの継続的な爆撃や領土侵攻が示すように、イスラエルは長年にわたり隣国を攻撃してきた。

2000年代を通じて、私は5年間北朝鮮を取材した。北朝鮮の状況は少なくとも部分的にはイランと類似している。北朝鮮による自国民への弾圧はテヘランよりもさらに顕著であり、海外でも挑発的で忌まわしい行動を頻繁に行っている。北朝鮮には、脅威を感じる歴史的な理由もある。専門家を除けば、朝鮮戦争が70年経った今も公式には終結していないことを認識している人はほとんどいない。そして、国際的に交渉された包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of ActionJCPAP)の下で、北朝鮮はイランと同様に、核開発計画の放棄または制限と引き換えに制裁解除を提案されている。

しかし、1980年代に北朝鮮が核兵器開発に真剣に取り組むようになって以来、それ以降のアメリカ大統領の試みは、北朝鮮の核開発を阻止することには繋がっていない。近年の世界史は、北朝鮮のような国が方針転換に抵抗する多くの理由を示している。ウクライナはソ連時代に自国領土に配備されていた核兵器を放棄したが、数十年後にはロシアの侵攻を受けた。リビアの独裁者ムアンマル・アル=カダフィは、違法な化学兵器開発計画を自主的に停止したが、西側諸国の支持を得て打倒され、最終的には暗殺された。今日のリビアは破綻国家であり、暴力と武器密売の氾濫によってサヘル・アフリカの大部分が不安定化している。

トランプ大統領の最初の任期中の北朝鮮へのアプローチは、最近のイランに対する発言の背後にある論理を示唆している。彼は金正恩委員長とハイレヴェルの個人外交を行い、潜在的に破滅的な地政学的状況を打開するため、二国間の緊張緩和に努めた。トランプの外交は、他の多くのことと同様に、不安定で計画性に欠けていた。朝鮮半島情勢を根本的に変えることもできなかった。

だからといって、トランプの行動の根底にある真実が必ずしも否定される訳ではない。際限のない軍備増強と将来の大惨事の可能性を回避する唯一の方法は、時に長年の敵国と交渉し、相互信頼(mutual confidence)と安全保障の保証(guarantees of security)を築く道を見つけることである。それは性急には達成できない。

イランと交渉することさえ、ワシントンの多くの者にとって受け入れ難いことであり、イスラエル政府にとっては考えられないことだろう。イスラエルは、イランの核兵器開発可能性を理由に、イランを存亡の危機とみなしているだけではない。アメリカの永遠の敵国であるイランの存在は、長年にわたり、アメリカによるイスラエルへの揺るぎない政治的支援、そして継続的な重武装の強力な根拠となってきた。トランプは木曜日、アメリカとイランは核合意の条件について「一応」合意したと主張したが、詳細は依然として不明であり、これがどのように展開するかは不透明だ。

しかし、他の地域では状況が変化しつつあるようだ。ドナルド・トランプ大統領の訪問以前から、サウジアラビアをはじめとする地域におけるイランの伝統的なライヴァル諸国は、テヘランとの緊張緩和への意欲を示し始めていた。こうした動きは、イランを好戦的に封じ込める政策は行き詰まりに陥るという確信から生まれたものと考えられる。地域大国は、数十年にわたる戦争によって中東の豊富な資源と人的資源の両方が浪費されてきたことを認識し始めている。この歴史的悪循環に終止符を打つには、人口9000万人、世界第19位の経済大国であるイランを冷遇から救い出し、テヘラン、アラブ諸国、そしてイスラエルの間に新たなポジティヴ・サム(positive-sum)の力学を構築する必要がある。

もちろん、私たちがこれを実現するには程遠く、多くの欠点や特異な点を抱えるトランプ大統領がそれを実現できる可能性は低い。しかし、何かを変えるためには、あるテーマを提起し、議題に載せなければならない。それがトランプ大統領の中東訪問の最も重要な遺産かもしれない。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり特派員を務めた。最新作に『黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ブルースカイ・アカウント: @hofrenchbluesky.social Xアカウント:@hofrench

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(終わり)

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 パレスティナの飾築を実効支配しているハマスによって2023年10月7日にイスラエルが攻撃を受け、それに対する報復でガザ地区に大規模な攻撃が実行されている。イスラエルとイランの間でのミサイル攻撃の応酬もあった。その後、一時的な停戦が実現したが、再び状況は悪化している。ガザ地区では生活環境は悪化し、攻撃は続いている。イスラエルはイラン国内を空爆し、核開発関連施設を破壊し、イラン革命防衛隊の司令官と参謀総長などの最高幹部を殺害している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエルの極右勢力に支えられているが、国民の支持率は低下している。そうした中で、起死回生の策がイランに対する空爆だった。

 イスラエルは国際社会を信頼せず、自国の防衛のためにはあらゆる犠牲を強いる。こうした点では北朝鮮に類似している。それは、あまりにも排他的な、選民思想的な原理が国家にあるからだろうと私は考えている。

 ガザ地区に関して言えば、私たちは歴史の授業で習ったゲットー(ghetto)を類推することができる。中世以来のヨーロッパの各都市に存在した、ユダヤ人たちが強制的に居住させられた地域である。ナチスドイツの侵略によって、各国のゲットーには厳しい抑圧がなされた。そうした中で、1943年にワルシャワ・ゲットー蜂起(Warsaw Ghetto Uprising)が起きたが、ナチスドイツによって鎮圧されたが、その方法は過酷なものだった。私たちは、ガザ地区の現状からワルシャワのゲットーを思い起こす。ユダヤ人が建国したイスラエルが、ゲットーの惨劇を繰り返す。「歴史は繰り返す(History repeats itself)」という言葉があるが、これはあまりにも皮肉なことである。人権や自由といった価値観を世界に拡大することを標榜するアメリカをはじめとする西側諸国は今回の事態に対してあまりにも無力だ。それどころか、ガザ地区の状況に対する批判を抑圧している。

 現在のガザ地区の状況は西側諸国の偽善と国際政治の野蛮さを改めて明らかにしている。そして、人間の愚かさを暴露している。
(貼り付けはじめ)
ガザ地区がいかにして西洋の神話を打ち砕いたか(How Gaza Shattered the West’s Mythology

-この戦争は、第二次世界大戦後の共通の人間性に対する幻想(post-World War II illusions of a common humanity)を露呈させた。

パンカジ・ミシュラ筆

2025年2月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/02/07/pankaj-mishra-world-after-gaza-book-israel-war-global-order-history/

1943年4月19日、ワルシャワのゲットー(Ghetto)にいた数百人の若いユダヤ人が、入手できる限りの武器を手にナチスの迫害者たちに反撃した。ゲットーにいたほとんどのユダヤ人は、すでに絶滅収容所(extermination camps)に強制送還されていた。彼らの指導者の1人であったマレク・エデルマンが回想しているように、闘士たちはいくらかの尊厳(dignity)を取り戻そうとしていた。彼は次のように書き残している。「最終的には、私たちの番が来たときに、私たちを虐殺させないということだった。死に方を選ぶだけのことだった」。

絶望的な数週間が過ぎ、抵抗者たちは圧倒され、そのほとんどは殺害された。蜂起の最終日に生き残った者の中には、ナチスがガスを注入した司令部地下壕で自殺した者たちもいた。下水管を通って脱出できたのはほんの数人だけだった。その後、ドイツ兵はゲットーをブロックごとに焼き払い、火炎放射器を使って生存者たちを煙で追い出した。

ポーランドの詩人チェスワフ・ミウォシュは後に、「美しい静かな夜、ワルシャワ郊外の田舎の夜にゲットーから悲鳴が聞こえた」と回想している。

「この悲鳴には鳥肌(goose pimples)が立った。何千人もの人々が殺害される時の悲鳴だった。その悲鳴は、焚き火の赤々とした輝きの中から、無関心な星々の下から、都市の静寂な空間を通り抜け、植物が労を惜しまず酸素を放出し、空気が芳香を放ち、人が生きていてよかったと感じる庭園の慈悲深い静寂の中に入っていった。この夜の平和には特に残酷なものがあり、その美しさと人間の罪が同時に心を打った。私たちは互いの目を見なかった」。

占領下のワルシャワでミロシュが書いた詩「カンポ・デイ・フィオーリ」は、ゲットーの壁の横にあるメリーゴーランドを想起させる。メリーゴーランドに乗る人たちは、遺体の煙の中を空に向かって進み、その陽気な曲が苦悩と絶望の叫びをかき消す。カリフォルニア州バークレーに住んでいたミロシュは、アメリカ軍が何十万人ものヴェトナム人を空爆し、殺害している間、その残虐行為(atrocity)をアドルフ・ヒトラーやヨシフ・スターリンの犯罪と比較していた。「もし私たちが同情することができ、同時に無力であるならば、私たちは絶望的な憤りの中で生きているのだ(If we are capable of compassion and at the same time are powerless, then we live in a state of desperate exasperation)」とミロシュは書いている。

イスラエルによるガザ地区殲滅(annihilation of Gaza)は、西側民主政体諸国によって提供され、何百万もの人々にこの精神的試練(psychic ordeal)を何カ月も与えた。政治的悪(political evil,)の行為の自発的目撃者である彼らは、時折、生きていることは良いことだと考えることを自分自身に許しながら、イスラエルによって爆撃された別の学校で娘が焼け死ぬのを見る母親の悲鳴を聞いた。

ホロコースト(shoah)は数世代にわたるユダヤ人に傷跡を残した。1948年、ユダヤ系イスラエル人は生死を分ける問題として国民国家の誕生(birth of their nation state)を経験し、その後、1967年と1973年にも、アラブの敵による絶滅論のレトリックの中で再び経験した。ヨーロッパのユダヤ人がユダヤ人であるという理由だけでほぼ完全に消滅したという知識とともに育った多くのユダヤ人にとって、世界は脆弱(fragile)に見えざるを得ない。その中でも、2023年10月7日にイスラエルでハマスや他のパレスティナグループによって行われた虐殺と人質事件は、ホロコースト再来への恐怖を再燃させた。

しかし、歴史上最も狂信的なイスラエルの指導者たちが、蹂躙、死別、恐怖という遍在する感覚(an omnipresent sense of violation, bereavement, and horror)を利用することに躊躇しないことは、最初から明らかだった。イスラエルの指導者たちは、ハマスに対する自衛の権利を主張したが、ホロコーストの主要な歴史家であるオメル・バルトフが2024年8月に認めたように、彼らは最初から「ガザ地区全体を居住不可能にし、その住民を衰弱させて、死に絶えるか、その領土から逃れるためにあらゆる可能な選択肢を模索するようにする(to make the entire Gaza Strip uninhabitable, and to debilitate its population to such a degree that it would either die out or seek all possible options to flee the territory)」ことを目指したのである。こうして10月7日以降、何十億もの人々がガザ地区に対する異常な猛攻撃を目の当たりにした。その犠牲者たちは、ハーグの国際司法裁判所(the International Court of Justice in The Hague)で南アフリカを代表して弁論したアイルランドの弁護士ブリネ・ニ・グラレイに言わせれば、「世界が何かしてくれるかもしれないという絶望的な、今のところむなしい希望のために、自分たちの破壊をリアルタイムで放送していた」のである。

世界は、より特定すれば西側は何もしなかった。ワルシャワ・ゲットーの壁の向こうで、マレク・エデルマンは「世界の誰も何も気づかない(nobody in the world would notice a thing)」ことを「大変に恐れて(terribly afraid)」いた。ガザ地区ではそのようなことはなく、犠牲者は処刑される数時間前にデジタルメディアで自分の死を予言し、殺人犯はTikTokで自分たちの行為をさかんに流した。アメリカやイギリスの指導者たちが国際刑事裁判所や国際司法裁判所(he International Criminal Court and the International Court of Justice)を攻撃したり、『ニューヨーク・タイムズ』紙の編集者が社内メモで、「難民キャンプ(refugee camps)」、「占領地(occupied territory)」、「民族浄化(ethnic cleansing)」という用語を避けるようスタッフに指示したりと、西側の軍事的・文化的ヘゲモニー(the West’s military and cultural hegemony)の道具によって、ガザ地区のライブストリーミングによる情報発信は日々、見えないように、読めないようにされていった。

毎日が、自分たちが生活している間に、何百人もの普通の人々が殺され、あるいは自分たちの子どもが殺されるのを目撃させられているという意識に毒されるようになった。ガザ地区にいる人々、しばしば有名な作家やジャーナリストからの、自分や自分の愛する人が殺されようとしているという警告や、その後に続く殺害の知らせは、肉体的にも政治的にも無力であるという屈辱をより募らせた。無力な暗示された罪の意識に駆られ、ジョー・バイデン米大統領の顔をスキャンして慈悲の兆し、流血を終わらせる兆しを探そうとした人々は、不気味なほど滑らかな硬さを発見した。あれやこれやの国連決議、人道支援NGOの必死の訴え、ハーグの陪審員たちによる厳罰、そして土壇場でのバイデンの大統領候補交代によって喚起された正義の希望は残酷なまでに打ち砕かれた。

2024年末までには、ガザ地区の虐殺の現場から遠く離れた場所に住む多くの人々が、悲惨と失敗、苦悩と疲労の壮大な風景に引きずり込まれたことを、遠くからではあるが感じていた。これは、ただ傍観する者にとっては大げさな感情的負担に思えるかもしれない。しかし、ピカソが空からの攻撃で殺されながら叫ぶ馬と人間を描いた「ゲルニカ(Guernica)」を発表した際に引き起こされた衝撃と憤りは、ガザ地区で撮影された、父親が首のない我が子の遺体を抱く一枚の写真の影響だった。

戦争はやがて過去のものとなり、積み重なった恐怖の山は時とともに平らになるかもしれない。だが、ガザ地区では、負傷した身体、孤児となった子供たち、瓦礫の町、家を失った人々、そして、あちこちに漂う大量の死別意識と存在の中に、この惨劇の痕跡が何十年も残るだろう。そして、狭い海岸地帯で何万人もの人々が殺害され、重傷を負うのを遠くから無力に見守り、権力者の拍手喝采や無関心を目撃した人々は、心の傷と、何年も消えないトラウマを抱えて生きていくことになるだろう。

イスラエルの暴力を、正当な自衛なのか、厳しい都市環境での正当な戦争なのか、民族浄化や人道に対する罪なのか、という論争は決して決着がつかないだろう。しかし、イスラエルの一連の道徳的、法的違反行為の中に、究極の残虐行為の兆候を見出すことは難しくない。イスラエルの指導者によるガザ地区撲滅に向けた率直で決まりきった決意、ガザ地区でのイスラエル国防軍(Israel Defense ForcesIDF)による報復が不十分であることを国民が嘆くことで暗黙のうちに容認していること、犠牲者を和解不可能な悪と同一視していること、犠牲者のほとんどが全くの無実で、その多くが女性や子供だったという事実、第二次世界大戦での連合軍によるドイツ爆撃よりも比例して大きい破壊の規模、ガザ地区全体の集団墓地を埋め尽くす殺戮のペース、そしてその方法が不吉なほど非人格的(人工知能アルゴリズムに依存)かつ個人的(狙撃手が子供の頭を2発撃ったという報告が多い)であること。食料や医薬品へのアクセスの拒否、裸の囚人の肛門に熱い金属の棒が挿入されること、学校、大学、博物館、教会、モスク、さらには墓地の破壊、死んだり逃げたりするパレスティナ女性の下着を着て踊るイスラエル国防軍兵士に体現された悪の幼稚さ(puerility of evil)、イスラエルにおけるそのようなTikTokインフォテインメント(訳者註:情報[information]と娯楽[entertainment]の合成語)の人気、そして自国民の絶滅を記録していたガザ地区のジャーナリストの慎重な処刑。

もちろん、産業規模になった虐殺に伴う無慈悲さは前例がないわけではない。ここ数十年、ホロコースト(the Shoah)は人類の悪の基準を定めてきた。人々がそれを悪と認識し、反ユダヤ主義(antisemitism)と戦うために全力を尽くすと約束する程度は、西洋では彼らの文明の尺度となっている。しかし、ヨーロッパのユダヤ人が抹殺された年月の間に、多くの良心が歪められたり、麻痺したりした。非ユダヤ人のヨーロッパの多くは、しばしば熱心に、ナチスのユダヤ人攻撃に加わり、彼らの大量殺戮のニューズでさえ、西洋、特にアメリカでは懐疑的かつ無関心に迎えられた。ジョージ・オーウェルは、1944年2月になっても、ユダヤ人に対する残虐行為の報告は「鉄のヘルメットから豆が落ちるように(like peas off a steel helmet)」人々の意識から跳ね返ったと記録している。西側諸国の指導者たちは、ナチスの犯罪が明らかになってから何年もの間、大量のユダヤ人難民の受け入れを拒否した。その後、ユダヤ人の苦しみは無視され、抑圧された。一方、西ドイツは、ナチス化からほど遠いものの、ソ連共産主義に対する冷戦に加わりながら、西側諸国から安易な赦免(cheap absolution)を受けた。

記憶に残る中で起きたこれらの出来事は、宗教的伝統(religious traditions)と世俗的な啓蒙主義(the secular Enlightenment)の両方の基本的前提、つまり人間は根本的に「道徳的(moral)」な性質を持っているという前提を揺るがした。人間には道徳的性質がないという、腐った疑念が今や広まっている。冷酷さ、臆病さ、検閲の体制下での死や切断を間近で目撃した人々はさらに多く、あらゆることが起こり得ること、過去の残虐行為を覚えていても現在それが繰り返されない保証はないこと、そして国際法と道徳の基盤がまったく安全ではないことを衝撃とともに認識している。

近年、世界では多くの出来事が起こっている。それらは、自然の大災害、財政破綻、政治的激変、世界的パンデミック、征服と復讐の戦争などである。しかし、ガザ地区に匹敵する災害はない。これほど耐え難い悲しみ、困惑、良心の呵責(grief, perplexity, and bad conscience)を私たちに残したものはない。これほど、私たちの間での、情熱と憤りの欠如、視野の狭さ、思考の弱さ(lack of passion and indignation, narrowness of outlook, and feebleness of thought)を恥ずべき形で証明したものはない。西洋の若者の世代全体が、政治とジャーナリズムの長老たちの言葉と行動(そして無作為)によって道徳的に大人に成長させられ、世界で最も豊かで最も強力な民主政体国家の支援を受けた残虐行為を、ほぼ独力で認識せざるを得なくなった。

パレスティナ人に対するバイデンの頑固な悪意と残酷さは、西洋の政治家やジャーナリストたちが提示した多くのぞっとするような謎の1つに過ぎない。西側諸国の指導者たちにとって、10月7日の戦争犯罪の犯人を追及し、裁きを受けさせる必要性を認めながらも、イスラエルの過激派政権(an extremist regime in Israel)への無条件の支援を差し控えることは簡単だっただろう。それなのに、なぜバイデンは存在しない残虐行為のヴィデオを見たと繰り返し主張したのか? 元人権弁護士の英首相キール・スターマーは、イスラエルにはパレスティナ人から電力と水を差し控え、停戦(cease-fire)を求める労働党員を処罰する「権利がある(has the right)」と主張したのはなぜか? なぜ、西洋啓蒙主義(the Western Enlightenment)の雄弁な擁護者であるユルゲン・ハーバーマスは、自称民族浄化主義者たち(avowed ethnic cleansers)の擁護に飛びついたのか?

アメリカで最も古い定期刊行物の1つである『ジ・アトランティック』誌が、ガザ地区で約8000人の子供たちが殺害された後、「子供たちを合法的に殺すことは可能だ(it is possible to kill children legally)」と主張する記事を掲載したのはどうしてか? イスラエルの残虐行為を報道する際に西側主要メディアが受動態に頼り、誰が誰に、どのような状況下で何を行っているのかが分かりにくくなっているのはなぜか(「ダウン症のガザ地区在住男性が孤独死(The lonely death of Gaza man with Down’s syndrome)」というのが、障害のあるパレスティナ人男性にイスラエル兵が攻撃犬を放ったというBBCの報道の見出しだった)? なぜアメリカの億万長者たちが大学キャンパスでの抗議活動者への容赦ない弾圧を促進するのに協力したのか? 親イスラエルの合意に反抗しているように見えるという理由で、学者やジャーナリストたちが次々と解雇され、芸術家や思想家がプラットフォームを追われ、若者が就職を妨げられたのはなぜか? なぜ西側諸国は、ウクライナ人を悪意ある攻撃から守り保護しながら、あからさまにパレスティナ人を人間の義務と責任の共同体(the community of human obligation and responsibility)から排除したのか?

これらの疑問にどう対処するかに関わらず、私たちは直面している現象を正面から見つめざるを得ない。それは、西側の民主政治体制国家が共同で引き起こした大惨事(a catastrophe jointly inflicted by Western democracies)であり、1945年のファシズムの敗北後に生まれた、人権の尊重と最低限の法的・政治的規範に支えられた共通の人間性という必要な幻想(the necessary illusion that emerged after the defeat of fascism in 1945 of a common humanity underpinned by respect for human rights and a minimum of legal and political norms)を破壊したのだ。

※パンカジ・ミシュラ:インドのエッセイスト、小説家。『怒りの時代: 現在の歴史(Age of Anger: A History of the Present)』、『帝国の廃墟から:アジアを再構築した知識人たち(From the Ruins of Empire: The Intellectuals Who Remade Asia)』など、その他数冊のノンフィクションおよびフィクションの著書がある。

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年も世界各地で戦争が続いた。ウクライナ戦争は2年以上も経過し、3年目に入ろうとしている。2023年に始まったイスラエルとガザ地区を実効支配するハマスとの戦闘は続いており、加えて、レバノンのヒズボラやイランとの紛争も継続中だ。シリアにおいては10年以上継続した内戦が新たな段階を迎え、50年以上続いたアサド家による独裁体制は終焉したが、シリアの状況は予断を許さない。これらが示しているのは、アメリカの国力が低下し、アメリカが世界の警察官であることを止めたことで、アメリカの力による問題解決ができなくなり、各国は「自力救済」を志向する傾向が出てきたということだ。シリアに関して言えば、イスラエルが一番の受益者ということになる。イスラエルは恐らく、反体制派へ武器と情報の支援を実施し、電光石火のアサド政権崩壊を導いたのだろう。

スティーヴン・M・ウォルトによると、世界政治においては、2つの相反する傾向が存在する。これらの傾向が互いに影響し合うことで、多くの国々が判断を失敗する原因となっている。第一の傾向は、現代兵器の射程、精度、致死性の増大である。過去には、敵に損害を与えるために軍隊を破る必要があったが、今日では強力な国家が数百マイル離れた目標を爆破する能力を持っている。核兵器やミサイルがその代表であり、無人機の使用による遠隔攻撃も増えている。アメリカやロシア、イスラエルはこうした高い能力を保有している。

第二の傾向は、地域のアイデンティティや国家意識の強化である。過去500年の歴史の中で、共通の文化や言語に基づく集団が自らの統治を求めてきた。国家意識が高まると、人々はそのために大きな犠牲を払うことを厭わなくなる。第一の傾向の武器の強靭化をもってしても、人々の意志を挫くことは困難だ。

これら2つの傾向は相反するもので、強力な国家が遠方で破壊的な手段を持つ一方で、地域のアイデンティティが強化されることで、敵対する国民の結束が高まる可能性がある。空爆は民間人の士気を打ち砕くどころか、逆に団結感を育むことが歴史的に示されている。高い攻撃能力を持っていても、それが政治的影響力や戦略的勝利をもたらすことは少ないとウォルトは分析している。私たちが既に見ているように、ウクライナやパレスティナの人々は屈服していない。

単に爆弾を投下することは、根本的な政治的問題の解決にはならないことは明らかだ。特に、イスラエルによるガザ地区への攻撃は、その破壊力が何らかの解決に結びつくとは考えられない。問題を解決するためには、根本的な政治的原因への対処と国民の統治意識を認めることが必要であり、単なる破壊的な力だけでは目的を達成できないことを理解する必要がある。

 アメリカは世界最強の軍事力を誇り、それを背景として、価値観外交を展開し、敵対する国々の体制転換(regime change)を行ってきたが、失敗の連続という結果に終わった。軍隊では問題の根本解決はできないということを考え、アメリカは、軍隊の役割を限定するということが必要になってくる。その根本的な原理となるのが「アイソレイショニズム」であり、「アメリカ・ファースト」だ。

(貼り付けはじめ)

世界の二大潮流は対立している(The Two Biggest Global Trends Are at War

-世界の指導者たちは新たな世界秩序の矛盾を乗り越える術を学ばなければならない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年8月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/06/trends-war-drones-identity-gaza-ukraine-houthis/

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ウクライナのキエフ地方でテスト飛行中のポーランドの偵察用ドローン「フライアイWBエレクトロニクスSA」を打ち上げる軍関係者(2022年8月2日)

ドナルド・トランプやカマラ・ハリスなど、世界のリーダーを目指す人たちが外交政策について私に助言を求めてきたら、喜んで話をしたいことはたくさんある。気候変動、中国との付き合い方、保護主義が愚かな理由、ガザ地区をどうするか、規範の役割、脅威の均衡理論(balance of threat theory)が本当に意味するもの、その他多くのトピックがある。しかし、私はまず、世界政治における2つの相反する傾向に注意を喚起することから始めるだろう。この2つの潮流は、重要な点で互いに対立しており、この2つの潮流がどのように影響し合っているかを理解しなかったために、多くの国々が道を踏み外すことになった。

第一の傾向は、現代兵器の射程、精度、致死性の増大だ。1世紀ほど前、空軍力は初期段階にあり、ロケット弾や大砲は精度が低く、射程も限られていた。敵に多大な損害を与えるには、敵の軍隊を破り、包囲軍で都市を包囲する必要があった。しかし今日、強大な国家は、たとえ目標が数千マイルではなく、数百マイル離れたところにあるとしても、物事を爆破することに非常に熟練している。核兵器と大陸間ミサイルはこの傾向のモデルだが、ありがたいことに、これらの兵器は1945年以来抑止目的のみに使用されてきた。しかし、長距離航空機、弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人機、および精密誘導技術の着実な進歩により、現在では、戦闘員が数百マイル離れた目標を破壊することが可能になっている。一部の非国家主体(イエメンのフーシ派など)さえもこの行為に参加している。

制空権(command of the air)によって、強力な国家は、敵対する軍隊や無力な市民に甚大な損害を与えることができるようになった。アメリカが第一次湾岸戦争の初期に行ったこと、ロシアがウクライナで行っていること、イスラエルが現在ガザ地区で行っていることは、破壊的パワーを投射する能力(ability to project destructive power)が時代とともに飛躍的に高まっていることを示している。このリストに、いわゆる識別特性爆撃(シグネチャーストライク、signature strikes)でテロリストと疑われる人物を殺害したり、イランの精鋭部隊コッズ部隊(Quds Force)のトップであるカセム・スレイマニのような外国高官を暗殺したりするための無人機の使用を加えることができるだろう。先週レバノンでヒズボラの高官フアド・シュクルを殺害したイスラエルの攻撃は、最新の例にすぎない。世界最強の国家にとって、遠隔地で殺傷力を行使する能力はかつてないほど高まっている。また、洗練されたサイバー兵器によって、たとえ標的が地球の反対側にあったとしても、マウスをクリックするだけで相手の重要インフラを攻撃できるようになるかもしれない。つまり、一部の国家にとっては、破壊する能力がグローバルな範囲に広がっている。

二つ目の傾向はまったく異なる。それは、地域のアイデンティティと忠誠心、特に国家としての意識の政治的顕著性(political salience)と粘り強さ(tenacity)の深化だ。以前にも述べたように、「人間は共通の言語、文化、民族性、自己認識に基づいて異なる部族を形成しており、そのような集団は自らを統治できるべきであるという考えが、過去500年の歴史を形作ってきた。多くの人がまだ十分に理解していない形で何年も経っている」。国家意識の広範な出現と、そのような集団が他者に支配されるべきではないという信念が、多国籍のハプスブルク帝国とオスマン帝国がそれぞれ1918年と1922年以降存続できなかった主な理由の1つだ。イギリス、フランス、ポルトガル、ベルギーの植民地がなぜ独立したのか。そして、なぜソ連とワルシャワ条約機構も最終的に解体してしまったのかなどの理由になる。

国家としてのアイデンティティに対する強力な意識が国民の中に根付くと、国家へのより大きな一体感と忠誠心を築くために政府がしばしば奨励するプロセスであるが、国民はますます「想像上の共同体(imagined community)」のために多大な犠牲を払うことを厭わないようになるだろう。北ベトナム人は独立を獲得し国家を統一するために、日本、フランス、アメリカと50年間戦った。アフガニスタンのムジャヒディーンは最終的にソ連に自国からの軍隊撤退を強制し、タリバンの後継者たちはアメリカに同じことをするよう説得した。今日、数と武器で劣るウクライナ人がロシアの侵略に抵抗し続けている一方、パレスティナ人の抵抗とアイデンティティを破壊しようとするイスラエルの努力は、彼らを更に強くするだけのように思われる。

その結果、ある種の矛盾が生じる。強力で技術的に進んでいる先進諸国は、遠距離から他国に損害を与える効果的な手段をますます手に入れているが、この破壊的な能力は永続的な政治的影響力をもたらしたり、意味のある戦略的勝利をもたらしたりすることはない。アメリカは1992年から2010年までイラク上空を制圧し、望むときはいつでも航空機、ミサイル、無人機をイラクの敵国に向けて投入することができた。しかし、その技術的に優れた能力は、アメリカ軍が反政府勢力を排除したり、親イラン民兵組織の影響力を弱めたり、国家の政治的発展を決定したりすることを可能にするものではなかった。

これら2つの傾向、つまり遠く離れた場所で物事を爆発させる能力がますます増大していることと、地元のアイデンティティの頑固な力が相反する理由の1つは、遠隔地攻撃能力を使用すると地元のアイデンティティが強化される傾向があるからだ。初期の空軍力理論家たちは、空爆は民間人の士気を打ち砕き、敵対者を迅速に降伏させるだろうと予測していたが、経験上、民間人に爆弾を投下する方が強力な団結感(sense of unity)と抵抗の精神(spirit of resistance)を育む可能性が高いことを示している。無防備な人々に死と破壊を与えることは、実際、犠牲者の間に共通のアイデンティティの感覚を築くための理想的なるつぼだ。爆弾やミサイルでウクライナのインフラを破壊することには、ある程度の軍事的価値があるかもしれないが、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、ウクライナ国民にロシアとの「歴史的団結(historical unity)」を説得するために、これ以上悪い方法を選択することはできなかったはずだ。戦争が最終的にどのように終結しても、彼はウクライナとロシアの間に数十年続く可能性が高い亀裂を生み出した。

なぜ私は、志ある国家指導者たちにこれら2つの傾向について伝えたいのだろうか? なぜなら、強国の指導者たちは、物事を爆破する「衝撃と畏怖(shock and awe)」の能力があれば、弱い国民を従わせることができると考える傾向があるからだ。弱い敵に爆弾を投下したり、ミサイルやドローンを発射したりすることで、自国民へのリスクを最小限に抑えることができるため、これは魅惑的な考えだ。歴史家のサミュエル・モインが主張しているように、指導者は、精度と正確さによって悪者を排除し、民間人を救うことができると自分自身に納得させることさえでき、それによって致死的な武力の使用が良性で承認されやすくなる可能性さえある。もしあなたが何らかの厄介な外交政策問題を抱えている強国であり、自国民に大きなリスクを与えることなくその問題に空軍力を投じることができるのであれば、「何かをする」ことはより魅力的なものとなる。

残念ながら、物事を爆破したり(場合によっては多くの無実の人々を殺害したりすることも)、そもそも紛争を引き起こした根本的な政治的問題には対処できない。過去10カ月にわたってイスラエルがガザ地区に加えた大規模な虐殺を見て欲しい。イスラエルが示した破壊力に疑問を呈する人は誰もいない。今日のガザ地区のヴィデオ映像を見るだけで分かる。しかし、これによってガザ地区やヨルダン川西岸、その他の場所にいる何百万ものパレスティナ人が自身の統治への欲求を放棄することになると本気で信じている人がいるだろうか? もちろん、同じことは逆にも当てはまる。ヒズボラは20年前よりもイスラエルを攻撃する能力が高まっているが、その破壊能力によって条件を決定したり、イスラエルとの紛争を引き起こしている、より深い政治問題を解決したりすることはできない。そして、イスラエルとより広範な地域戦争の危険に晒されている。

私は、現代の航空戦力に価値がないとか、国家が絨毯爆撃(carpet-bombing)やより粗雑な長距離攻撃(cruder forms of long-range attack)に頼らざるを得なくなった方が世界が良くなるなどと言っているのではない。有能な地上軍と組み合わされれば、航空戦力は十分に選択された政治目的を推進する上で極めて効果的である。例えば、アメリカの航空戦力は、イスラム国を、短期間続いたカリフ国から追い出すのに重要な役割を果たしたが、それはイラクとイランの地上軍がその地域を奪還し、平和にするために存在していたからである。

軍事理論家カール・フォン・クラウゼヴィッツは正しかった。戦争は政治の継続であり、破壊力だけで政治的目的を達成できることはほとんどない。成功するかどうかは、何よりもまず現実的な目的を選択するかどうかにかかっているが、それと同時に、根本的な政治的原因に対処し、各国が自国を統治しようとする意欲を認めるかどうかにもかかっている。勝利への道を空爆で切り開こうと考えるような人間に国家を運営する資格はない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。「X」アカウント:@stephenwalt

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 昨年(2023年)10月7日にガザ地区を実効支配するハマスによる、イスラエルへの攻撃から始まった紛争は1年以上経過しても終息していない。その後、イスラエルはレバノンを拠点とするヒズボラを攻撃するために、レバノンにも侵攻している。また、イエメンのフーシ派にも空爆を加えている。ハマスとヒズボラ、フーシ派を支援するイランとの対決姿勢を鮮明にしている。状況は深刻化していた。その後、レバノンとの間で停戦合意が結ばれているが、中東における戦争の段階が上がり、エスカレーションが進めば、イランとの全面的な対決となり、最悪の場合には核戦争が起きる可能性もある。
 イスラエルは公には認めていないが、核兵器保有国であり、アメリカからの大きな支援を受けて、軍事力でも近隣諸国を圧倒している。そのため、戦術レヴェルでの勝利を得ることは容易い。それぞれの戦いにおいては確実に勝利を収めることができる。しかし、戦略的に見れば、ガザ地区やレバノンにおける民間人の犠牲者が増えるにつれて、イスラエルに対する同情は消え、世界的に見て、批判が高まっている。それは、イスラエルを手厚く支援しているアメリカ国内においてもそうだ。

 あれだけの圧倒的な戦力差がありながら、イスラエルは常に不安定な状況に置かれている。大きな武力が屁のツッパリにもなっていないということになる。更に、これまでは、同情される面もあったが、昨年からのガザ地区やレバノンでの戦争によって、孤立感を深めている。アメリカが仲介してのサウジアラビアとの国交正常化交渉は頓挫したままだ。サウジアラビアは、中国の仲介もあり、イランとの国交正常化を行っている。中東において、イスラエルとアメリカが孤立感を深め、主要なプレイヤーとしての役割を果たせなくなりつつある。イスラエルは戦術レヴェルでの勝利を収めても、戦略レヴェルでの勝利を収めていないということになる。

 現在のイスラエルの指導者であるベンヤミン・ネタニヤフ首相は、どのように戦争を終結させるのか、どのように現状から自国の利益につなげていくのかというヴィジョンがはっきりしない。戦争を拡大させて、自分の政権が存続することを第一と考えているように見える。これはイスラエルにとって非常に危険なことだ。戦時内閣ということで、批判を受けにくいということもあるだろうが、イスラエルは、自国の利益のために、ネタニヤフ首相の更迭を行うべきであろう。

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中東におけるイスラエルの「任務完了」の瞬間(Israel’s ‘Mission Accomplished’ Moment in the Middle East

-ベンヤミン・ネタニヤフはジョージ・W・ブッシュと同じ大きな過ちを犯しているかもしれない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年10月2日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/02/israel-netanyahu-lebanon-iran-gaza-strategy-mission-accomplished/

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ハイファ港に停泊中の米空母ジョージ・H・W・ブッシュを訪問し、アメリカ兵と話すイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(2017年7月3日)

2003年5月1日、ジョージ・W・ブッシュ米大統領はかっこいいフライトスーツを身にまとい、S-3ヴァイキング機に乗り込み、空母エイブラハム・リンカーンに着艦した。「任務完了(Mission Accomplished)」と書かれたバナーの下に立ち、イラクにおける主要な戦闘作戦の終了を宣言した。「アメリカと同盟諸国は勝利した」と誇らしげに宣言した彼の支持率は急上昇し、戦争を仕組んだネオコンたちは、その大胆さと英知(boldness and wisdom)を自画自賛した。しかし、イラクの状況はすぐに悪化し、ブッシュ大統領のイラク侵攻の決断は戦略的な大失策であったと今では誰もが考えている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とその支持者たちが、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスルラと過激派組織のトップ指導者の多くの暗殺で頂点に達した(しかし終わっていない)イスラエルによる最近のレバノン攻撃を祝っているのを見ながら、私はあの事件のことを思い出した。過去1年間、ネタニヤフ首相は、ハマスのイスラエル攻撃から始まった戦争を容赦なく延長、拡大させながら、国防大臣、国内の敵対者グループ、ハマスに今も拘束されているイスラエル人人質の家族、そしてバイデン政権に反抗してきた。かつて、「創業国家(start-up nation)」ともてはやされたイスラエルは、今では「物事を爆発させる国家(blow-things-up nation)」となっており、ネタニヤフ首相はイスラエルの敵対者たちに、イスラエルの手の届かないところは何もないことをすぐに思い出させた。イスラエル軍と諜報機関が複数の敵対者に与えた損害(その過程で数万人の民間人が殺害された)を考えれば、ネタニヤフ首相が勝利の歩みを進めていたことは驚くべきことではない。ブッシュがそうであった。

過去数週間にわたるイスラエルの行動が驚くべき戦術的成果であったことには疑問の余地はない。イスラエル諜報機関は、優れた信号情報とヒズボラの組織構造の亀裂、さらには最高指導者によるいくつかの不可解なミスを利用し、ヒズボラが通信に使用していたポケベルやトランシーバーをブービートラップにする複雑かつ大胆な計画を見事に成功させた。ガザ地区での場合と同様、イスラエル国防軍は、アメリカが提供した最新兵器を使用してナスルラを殺害し、レバノン全土に大規模な被害を与え、ヒズボラのロケット弾とミサイル能力を部分的に低下させた。イスラエル空軍はこれに続いてイエメンのフーシ派を攻撃し、イスラエル地上軍は現在レバノン南部に進入しており、イランは間違いなく最近のミサイル攻撃に対するイスラエルの報復に直面するだろう。ネタニヤフ首相とその極右閣僚たちはまた、「大イスラエル(Greater Israel)」を創設するための長期キャンペーンの一環として、戦争(とそれに対するアメリカの無関心な対応)を利用して、占領下のヨルダン川西岸地区での暴力と土地接収を強化している。

ネタニヤフ首相が全勝で戦争を終わらせ、地域のバランス・オブ・パウア(balance of power、勢力均衡)を恒久的にイスラエルに有利な方向にシフトさせることを、何が止めるだろうか? 戦術的な成果が戦略的な成功を保証するわけではないが、十分な成果を上げることができれば、重要かつ永続的な方法で戦略的環境を変えることができるかもしれないと主張することはできる。ネタニヤフ首相はそれを目指しているが、成功するかどうか疑わしい理由がある。

始めに、イスラエルがいわゆる抵抗の枢軸(Axis of Resistance)に与えたダメージは、抵抗の勢力を解散に追い込む、もしくは、白旗を揚げる原因にはならないだろう。ヒズボラ、ハマス、フーシ派、イランはいずれも過去に強力な打撃を受けて生き延びてきた。更に、昨年の様々な出来事の発生によって、彼らの報復の希望はどんどんと大きくなっている。奇妙なことだが、大量の爆発物を人々に投下しても、彼らを打ち負かすことはできないようだ。あるいは少なくともいじめる相手を止めさせる能力を切望するようになる。ヒズボラは今もイスラエルに向けてロケット弾やミサイルを撃ち続けており、北部に避難している約6万人のイスラエル人が帰還できないようになっている。暗殺された指導者たちは、既に入れ替わり、幹部組織は再建され、再武装され、彼らが学んだことに基づいて新しい戦術が開発されるだろう。イスラエルは現在、これを防ごうとレバノン南部に再び軍隊を派遣しているが、以前のレバノン南部への侵攻は良い結果をもたらさなかった。

イスラエルの手による虐待が問題の根源であるパレスチナ人については、イスラエルが自分たちにしていることに抵抗し続ける以外に選択肢はない。もしイスラエルが彼らに魅力的な代替案、たとえば自分たちの国家や大イスラエル内での平等な権利などを提供していれば、状況は変わっていたかもしれないが、ネタニヤフ首相はそうした可能性を閉ざしてしまった。エジプトのアンワル・サダト大統領はイスラエルと和平を結び、エジプトはシナイ半島を取り戻した。PLOはイスラエルと和平し、さらにイスラエルの違法入植地(illegal Israeli settlements)を手に入れた。現在、イスラエルがパレスチナ人に提示している唯一の選択肢は、追放、絶滅、または永続的なアパルトヘイト(expulsion, extermination, or permanent apartheid)であり、戦わずしてそのような運命を受け入れる国民はいない。従って、イスラエルの存在を受け入れ、実行可能な国家を得ることを期待してイスラエルに協力し、何の見返りも得られなかったパレスチナ自治政府が、パレスチナの人々の間で人気を失う一方で、ハマスへの支持が高まっているのも不思議ではない。

同様に、アリ・アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ大統領とハッサン・ルーハニ大統領のもとで、イランがアメリカ(ひいてはイスラエル)との関係を改善しようと時々行ってきた努力は、イスラエルとその支持者であるアメリカによって断固として阻止された。特に、2018年にイランの核プログラムを厳しく制限する画期的な協定である「包括的共同行動計画」を放棄するよう、騙されやすいドナルド・トランプ大統領を説得したときはそうだった。こうした対応はイラン強硬派の力を強め、イランの新大統領が緊張を緩和させたいと繰り返し表明しているにもかかわらず、この地域の現在の危機も同じことをするだろう。ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤが7月にテヘランで暗殺されたことを含め、イスラエルが地域の同盟諸国を衰弱させたり排除しようとしたりする動きに対して、イランはイスラエルに向けてミサイルを発射することで対抗した。

残念なことに、こうした出来事によって、イランの指導者たちが潜在的な核兵器保有国であることを超えて、イランの核兵器保有を決断する可能性が高まっている。そのような決断をすれば、全面的な地域戦争(all-out regional war)に発展する可能性が高くなるが、イスラエルは究極の抑止力(ultimate deterrent)を欲しがるイランにさらなる刺激を与え続けている。もしそうなれば、イスラエルの最近の成功は驚くほど近視眼的(shortsighted)に見えるだろう。

イスラエルの最近の行動は、地政学的な孤立を深め、最終的にはアメリカとの特別な関係を危うくするかもしれない。10月7日の攻撃後、イスラエルが当然享受していた同情は、ガザ地区やレバノンの民間人に加えられた殺戮を世界が見るにつれて消え失せている。国際司法裁判所はイスラエルのヨルダン川西岸地区占領を国際法違反と宣言し、ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相は、戦争犯罪と人道に対する罪で国際刑事裁判所から逮捕状を請求されるかもしれない。サウジアラビアをはじめとするアラブ諸国による承認は保留され、グローバル・サウス諸国の多くが反対を表明し、ヨーロッパ各国政府はますます苛立ちを募らせている。先週の国連総会でのネタニヤフ首相の演説に反対するデモ行進は、象徴的なジェスチャーではあったが、彼とイスラエルが多くの人々からどう見られているかを反映していた。

ネタニヤフ首相と支持者たちは、バイデン政権からの無制限の援助や、ネタニヤフ首相の米連邦議会演説でのスタンディングオベーション、アメリカ軍からの積極的な支援、大学キャンパスやその他の場所でのイスラエル・ロビーによる批判の抑圧の成功を慰めにするかもしれない。これらも短期的な戦術的成功であり、危険な反動を引き起こす可能性がある。多くの人はいじめられることを好まない。イスラエルの行動に対する正当な批判を封じ込めることを意図した言論統制やその他の規制の実施は、多くの憤りを生むだろう。特に、暴力と民族浄化の大量虐殺キャンペーンを展開している国を守るために、露骨かつ公然と行われている場合はなおさらだ。

更に言えば、イスラエルの行動がより広範な地域の戦争につながり、アメリカがそれに巻き込まれることになれば、アメリカ人は「特別な関係(special relationship)」の価値を真剣に疑うかもしれない。イラクのサダム・フセインを倒そうというネオコンのキャンペーンは、イスラエルをより安全にしたいという願望に触発された部分もあった(だからこそ、アメリカ・イスラエル公共問題委員会やネタニヤフ首相のようなイスラエルの指導者たちは、ブッシュ政権がこの戦争を売り込むのを助けたのだ)が、戦争が起きた理由はそれだけではないし、イスラエルもイスラエル・ロビーも非難されることはなかった。しかし、もしアメリカがまた中東戦争で兵士や船員を失い始めたら、アメリカから金と武器を受け取り、好き勝手なことをする、いつまでも恩知らずな保護国(client state)のためにアメリカ人を危険に晒していると、広く正しく見なされるだろう。さらに、ジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官の不手際が原因で、11月の選挙でカマラ・ハリスが落選するようなことがあれば、民主党も共和党も、反射的にイスラエルを支持することが今でも賢明な政治姿勢なのかどうか疑問を持ち始めるだろう。そして、もしこのようなことが起これば、アメリカ国内のイスラエル支持者に対する反発のリスクは高まるだろう。アメリカにおける反ユダヤ主義の台頭を心配するのであれば、大学キャンパスでの無害なデモよりも、その可能性の方がはるかに怖いはずだ。

最後に、イスラエル自身への影響である。107日の余波で、イスラエル国民はネタニヤフ首相(彼の決断がイスラエルをハマスの残忍な攻撃に無防備な状態にした)を見捨てて、国を正常な状態に戻す機会を得た。しかし、それは実現せず、ネタニヤフ首相の最近の戦術的成功は、イスラエルの未来について熱烈に宗教的でメシア主義的なヴィジョンに基づく政策をとる右翼過激派とともに、彼の政治的立場を強化している。穏健で世俗的なイスラエル人は、近年の経済を支えてきたハイテク部門の中心的存在であるが、ベザレル・スモトリッチ財務相のような人物が作りたがっているイスラエルに住むことを避けるため、離脱を続けるだろう。すでに50万人以上のイスラエル人(つまり人口の約5%)が海外に住んでいる。調査によれば、彼らの80%は戻るつもりはない。『ワシントン・ポスト』紙は、イスラエル経済が「深刻な危機に瀕している」と報じているが、こうした傾向はさらに強まるだろう。イスラエルの大学は国の宝であるが、外国人留学生の激減が報告されており、これはイスラエルのイメージ低下のさらなる兆候であると同時に、将来の科学的進歩への打撃でもある。要するに、ネタニヤフ首相の短期的な成果は、イスラエルの長期的な将来を危うくする傾向を強めているのだ。

人生は不確かなものだ。政治の世界では特にそうだ。しかし、数週間前にも書いたように、一見、軍事的、政治的に圧勝したように見えても、時間の経過とともに深い問題の種が芽生えることがある。成功するリーダーの課題は、一時的な優位性を利用して長期的な利益を確保することである。しかし、そのためには、いつ立ち止まり、いつ戦いから紛争解決へとシフトするかを知る必要がある。悲しいかな、ネタニヤフ首相にそのようなスキルがある気配はないし、身につけようという考えも全く持っていない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2023年10月7日に、ガザ地区を実効支配しているイスラム政治・軍事組織ハマスがイスラエル側を攻撃し、約1200人が死亡し、200人以上が人質となった。イスラエルは報復として、ガザ地区に侵攻し、約4万人が死亡した。イスラエルはレバノンのイスラム武装組織ヒズボラへも攻撃を加えており、中東地域の不安定さは増している。イスラエルは、ハマスとヒズボラを支援するイランとも緊張を高めている。イランの核開発の進行状況によっては、中東地域での核戦争の可能性ということまで考えられる。イスラエルは、イラン政府中枢にまで情報提供者、スパイを配置しており(ハマスの最高幹部イスマーイール・ハニーヤ政治局長をテヘランで爆殺しており、これはイラン政府中枢に相当な確度の情報提供者がいることを示している)、イランの核開発は進んでおらず、核戦争までは進まないという判断を下している可能性もあるが、そのような危険性があるということだけでも、国際政治においては大きな要素になる。

 イスラエルのガザ地区やレバノンへの攻撃に対して、世界各国で反感が高まっている。アメリカの各キャンパスでの抗議活動の激化は、イスラエルを支え続けてきたアメリカの外交政策にも影響を及ぼすことになった(民主党のジョー・バイデン政権は弱腰と見られるような状況になった)。また、イスラエルはアメリカの意向に沿わない形で、中東地域での戦争の段階を拡大しているように見える。現在の戦時内閣を率いるベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦争がない状態であれば、自身と家族の汚職問題で辞任を迫られ、裁判となり、有罪判決を受ける可能性が高いと言われている。戦争が続く限り、個人としては逮捕されるような心配はない。そのような極めて個人的な利益のために、戦争を利用しているとすれば言語道断だ。また、イスラエルの一種の「傲慢さ」に関して、世界各国で反感が高まっている。

 ハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授は、イスラエルの建国からの歴史を検討し、イスラエルの戦略的洞察力が落ちていることが、イスラエルを危険にさらしていると主張している。建国からしばらくの間のイスラエルの首脳陣は非常に慎重な行動をし、戦略的に動いていた。しかし、1967年の第三次中東戦争での大勝利から、そのような慎重さが失われていったと分析している。ウォルトは次のように書いている。

「イスラエルの戦略的洞察力(Israeli strategic acumen)の劇的な低下について説明するものは何か? 重要な要因の一つは、アメリカの保護(U.S. protection)とイスラエルの意向への服従(deference to Israel’s wishes)から来る傲慢さと免罪符の感覚(sense of hubris and impunity)である。世界最強の国が何をやっても支援してくれるのであれば、自分の行動を慎重に考える必要性は必然的に低下する。加えて、イスラエルが自らを被害者とみなし、自国の政策への反対をすべて反ユダヤ主義(antisemitism)のせいにする傾向は、イスラエルの指導者やその国民が、自らの行動がどのように敵意を引き起こしているのかを認識することを難しくしているからだ。ネタニヤフ首相がイスラエルで最も長く首相を務めていることも、問題の一因となっている。特に彼の行動は、自国にとって何が最善であるかという懸念だけでなく、私利私欲(汚職による服役を避けたいという願望)によって引き起こされている部分が大きいからだ。それに加えて、宗教右派(religious right)の影響力の増大がある」。

 私は常々、「勝利は敗北の始まりである」という考えを持っている。特に大勝利は、後の敗北につながることが多いと考えている。引用したように、イスラエルは第三次中東戦争以降に、慎重さを失い、結果として、自国の立場を悪くする選択を行っている。それが、現在の状況までつながっているということになる。傲慢さは人間にとって宿痾である。そして、成功や勝利によって浮かれてしまうのもまた人間の性(さが)である。

(貼り付けはじめ)

イスラエル戦略の危険な衰退(The Dangerous Decline in Israeli Strategy

-数十年にわたり、シオニスト・プロジェクトは自らを守るのが下手になっている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年8月16日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/16/the-dangerous-decline-in-israeli-strategy/

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イェルサレムのヘルツェル山で行われた故ゴルダ・メア元首相の国家追悼式典でスピーチするイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(2018年11月18日)

イスラエルは深刻な問題を抱えている。国民は深く分裂しており、この状況が改善する見通しはない。ガザ地区では勝ち目のない戦争に巻き込まれ、軍部には緊張の兆候が見られ、ヒズボラやイランとのより広範な戦争の可能性も残されている。イスラエル経済は大きな打撃を受けており、『タイムズ・オブ・イスラエル』紙は最近、6万もの企業が今年閉鎖される可能性があると報じた。

更に言えば、イスラエルの最近の行動は、その世界的なイメージを著しく損ない、かつては想像もできなかったような形で孤立国家(pariah state)となりつつある。2023年10月7日のハマスの残忍な攻撃の後、イスラエルは世界中から相当なそして適切な同情の声を受け、イスラエルには強い対応する権利があると広く受け入れられていた。しかし、それから10カ月以上が経過し、イスラエルはガザ地区でパレスティナ人に対する大量虐殺キャンペーンを展開し、ヨルダン川西岸地区では入植者による暴力が強まっている。国際刑事裁判所の主任検察官は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ギャラント国防相に対し、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を申請した。国際司法裁判所は、イスラエルの行動は本質的にも意図的にも大量殺戮的であるとする予備的所見を発表し、裁判所はついに、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、東エルサレム地区に対するイスラエルの占領と植民地化が明白な国際法違反であると宣言した。

ガザ地区で起きていることを見て、おぞましくはないにせよ、深く悩まずにいられるのは、シオニズムを擁護する最も頭の固い人たちだけだろう。イスラエルの行動に対するアメリカ国内の支持率は急激に低下しており、若いアメリカ人(多くの若いアメリカ系ユダヤ人を含む)は、イスラエルの行動に対するバイデン政権の杓子定規な対応に反対している。イスラエルの国家安全保障会議の元副議長エラン・エツィオンのこのツイートを読めば、イスラエルが自らに与えたダメージの大きさがよくわかるだろう。そして、世界有数のジェノサイド研究者である歴史家オメル・バルトフが最近イスラエルを訪問した際の記録を読めば、この問題が、いかに深刻かが分かるだろう。

これら全ての問題をネタニヤフ首相のせいにしたくなる誘惑に駆られるが、彼は確かに国内外から受けた批判に値する。しかし、全ての責任をビビ(ネタニヤフ)に押しつけることは、より深い問題、つまり、過去50年間にイスラエルの戦略的思考が徐々に損なわれていることを見落とすことになる。建国後の最初の20年間におけるイスラエルの功績と戦術的卓越性は、1967年以来のイスラエルの重要な戦略的選択がどの程度その安全保障を損なうのに役立ったかを、特に高齢者の間で曖昧にする傾向にある。

初期のシオニストとイスラエル第一世代の指導者たちは、鋭い戦略家だった。1900年当時のパレスティナにおけるユダヤ人人口はごくわずかで、1948年にイスラエルが建国された時点でもまだ少数派であったにもかかわらず、彼らはアラブ世界の真ん中にユダヤ人国家を建国するという、不可能に近いと思われたことに挑戦した。建国者たちは冷酷なまでに現実的であること(ruthlessly realistic)によって成功した。有利な機会を利用し、有能な準軍事組織(のちに一流の陸軍と空軍も)を構築し、世界の支配的な大国からの支持を勝ち取るために努力を重ねた。たとえば、ソ連も米国も1947年の国連分割計画を支持し、イスラエル建国直後に承認したことは記憶に新しい。ダヴィド・ベン=グリオンとその仲間のシオニスト指導者たちは、自分たちの最終的な目標に近づけるのであれば、少なくとも一時的には、長期的な目標に届かない取り決めも喜んで受け入れた。

国家の地位を獲得すると、新政府は執拗なハスバラ(hasbara、プロパガンダ)を通じて国際的な支持を獲得し、フランス、南アフリカ、その他いくつかの国との協力同盟を築くために熱心に取り組んだ。最も重要なことは、主に「イスラエル・ロビー(Israel lobby)」の力と影響力の増大に基づいて、アメリカとの「特別な関係(special relationship)」を確立したことである。イスラエルの初期の指導者たちは、敵対的な大国に囲まれた小国が国際的な支持を得るには慎重に計算し、多大な努力をしなければならないことを理解していた。巧妙な外交と少なからぬ欺瞞は、イスラエルが秘密裏に核兵器を開発し、イスラエル建国の残酷な現実を隠すのにも役立ったが、この事実はベニー・モリス、イラン・パッペ、アヴィ・シュライム、シンハ・フラパン、そして1980年代の他の「新しい歴史家」たちの業績によって広く知られるようになった。

完璧な政府など存在しないし、イスラエルの初期の指導者たちも時には過ちを犯した。ベン・グリオンは、1956年のスエズ危機でイギリス、フランスと結託してエジプトを攻撃し、イスラエルが軍を撤退させない可能性を示唆したときに過ちを犯した。しかし、ドワイト・アイゼンハワー政権がそのような不当な拡大を容認しないと明言すると、彼はすぐにその姿勢を捨てた。しかし、全体的に見れば、初期のシオニスト国家の戦略的洞察力(strategic acumen of the Zionist state in its early days)は、特に敵対国と比較した場合、印象的であった。

ターニングポイントとなったのは、1967年のアラブ・イスラエル戦争(第三次中東戦争)におけるイスラエルの圧勝だった。その結果は、当時見られたような奇跡的なものではなかったが(とりわけ、アメリカの諜報機関はイスラエルが容易に勝利するだろうと予測していた)、この勝利のスピードと規模は多くの人々を驚かせ、それ以来イスラエルの戦略的判断を損なう傲慢さを助長した。

思慮深いイスラエルの学者たちが繰り返し主張してきたように、主な誤りは、「大イスラエル(Greater Israel)」を創造する長期的な努力の一環として、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を保持し、占領し、徐々に植民地化するという決定を下したことだった。ベン・グリオンとその支持者たちは、新しいユダヤ人国家内のパレスティナ人の数を最小限に抑えようとしていたが、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を維持することは、イスラエルが、イスラエル系ユダヤ人の人口とほぼ同規模に急増しているパレスティナ人の人口を管理することを意味した。この結果、一般に「占領(occupation)」と呼ばれるように、イスラエルのユダヤ人としての性格と民主政治体制との間に避けがたい緊張関係(unavoidable tension between Israel’s Jewish character and its democratic system)が生まれた。それは、パレスティナ人の政治的権利を抑圧し、アパルトヘイト体制(apartheid system)を構築することによってのみ、ユダヤ人国家であり続けることができるということであった。イスラエルは、更なる民族浄化(ethnic cleansing)や大量虐殺(genocide)によってこの問題に対処することもできたが、どちらも人道に対する罪(crimes against humanity)であり、イスラエルの真の友であれば誰もそのようなことを支持することはできない。

大イスラエルの追求という決断の後には、すぐに別の過ちが生じた。イスラエルの指導者たち(そしてヘンリー・キッシンジャーを含むアメリカの指導者たち)は、エジプトのアンワル・サダト大統領が1967年にイスラエルが占領したシナイ半島の返還と引き換えに和平を結ぶ用意があるという兆候を見逃した。加えて、イスラエルの諜報機関は、エジプト軍がシナイ半島でイスラエル国防軍(Israeli Defense ForceIDF)に対抗するには弱すぎると誤って判断し、戦争まで進むのを思いとどまった。この誤った判断の結果が、1973年の第四次中東戦争だった。当初の挫折にもかかわらず、イスラエルは戦場では勝利を収めたが、戦後の交渉のテーブルでは勝利を収めることはできなかった。戦争の犠牲とアメリカからの圧力が相まって、イスラエルの指導者たちはシナイ半島を放棄するための真剣な交渉を始めるよう説得された。この転換は、やがてサダトの歴史的なエルサレム訪問、キャンプ・デイヴィッド合意、そしてその後のエジプト・イスラエル和平条約(当時のジミー・カーター米大統領の粘り強い巧みな仲介による)につながった。残念なことに、当時のメナヘム・ベギン首相は大イスラエルの目標に深く傾倒し、占領を終わらせようとはしなかったため、パレスティナ問題に真剣に取り組むこの有望な機会を逃してしまった。

戦略的判断が損なわれていることを示す次の明確な兆候は、1982年のイスラエルによるレバノン侵攻であった。この計画は、タカ派のアリエル・シャロン国防相の発案によるもので、レバノンに軍事侵攻すれば、レバノンでかなりの勢力をもっていたパレスティナ解放機構(Palestine Liberation OrganizationPLO)を掃討し、ベイルートに親イスラエル政権を樹立し、イスラエルにヨルダン川西岸地区での自由裁量(free hand)を与えることができるとベギン大統領を説得した。この侵攻は短期的には軍事的に成功したが、レバノン南部をイスラエル国防軍が占領することになり、それがヒズボラの創設につながった。PLOをレバノンから撤退させても、パレスティナの抵抗は止まらなかった。それどころか、1987年の第一次インティファーダへの道を開き、パレスティナ人が祖国を離れたり、イスラエルの恒久的な支配に服したりするつもりはないというもう一つの明確なサインとなった。

先見の明のあるイスラエル人は、パレスティナ問題が消えることはないと認識していたが、歴代のイスラエル政府は問題を悪化させるような行動をとり続けた。たとえば、PLOは1993年に最初のオスロ合意に調印してイスラエルの存在を受け入れたが、イスラエルの指導者がパレスティナ人に独自の国家を提供することはなかった。2000年のキャンプ・デイヴィッド・サミットでエフード・バラク首相(当時)が提示した寛大と思われる提案は、それまでのイスラエルのどの提案よりも進んでいたが、それでもパレスティナ人に実行可能な国家を与えるにはほど遠いものだった。イスラエルが提示した最善の案は、ヨルダン川西岸地区に2つか、3つの独立した非武装の州(separate and demilitarized cantons)を作り、イスラエルがその新しい州の国境、領空、水資源を完全に管理するというものだった。これでは実行可能な国家と言えず、ましてや正当なパレスティナの指導者が受け入れられるものでもなかった。シュロモ・ベン=アミ元イスラエル外相が後に、「私がパレスティナ人だったら、キャンプ・デイヴィッドを拒否していただろう」と認めたのも不思議ではない。

パレスティナ人と和平を結ぶには、イスラエルが占領地での入植地の拡大を止め、パレスティナ人と協力して、有能で効果的で合法的な政府を樹立する必要がある。ところが、イスラエルの指導者たち、とりわけシャロンとネタニヤフに率いられた政権は、その反対のことをしてきた。入植地の拡大を止めようとせず、ハマスへの支援を黙認してでもパレスティナ人を弱体化させ、分断させようとし、二国家解決(two-state solution)を達成しようとするアメリカの努力を何度も妨害した。その結果、破壊的だが決定的ではない衝突が繰り返された(2008年から2009年の「キャスト・リード」作戦[Operation Cast Lead]や2014年の「プロティクティヴ・エッジ」作戦[Operation Protective Edge]など)。しかし、こうした「草刈り(mow the grass)」の繰り返しはパレスティナの抵抗に終止符を打つことはなく、最終的には10月7日のハマスの越境攻撃という、ここ数十年でイスラエルに与えた最悪の打撃に至った。

イスラエルの戦略的近視眼(Israeli strategic myopia)の最新の例は、イランの核開発計画の制限を交渉する国際的な取り組みに対するイスラエルの熱烈な反対である。イスラエルは戦略的理由から、中東で核兵器を保有する唯一の国であり続けることを望んでおり、地域の最大の敵であるイランが核兵器を取得するのを望んでいない。したがって、アメリカと世界の他の主要国がイランに2015年の包括的共同行動計画への署名を説得したとき、ネタニヤフ首相と他のイスラエル指導者は喜び、安堵したはずだ。それはなぜか? なぜなら、イラン政府に対し、濃縮能力を削減し、濃縮ウランの備蓄を縮小し、国際原子力機関からの非常に立ち入った査察を受け入れることを要求し、それによってイランの爆弾が10年、あるいはそれ以上手に入らなくなる可能性があるからだ。イスラエルの安全保障高官の多くは賢明にもこの合意を支持したが、ネタニヤフ首相とその強硬派支持者、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)やアメリカのイスラエル・ロビーのタカ派グループは断固として反対した。これらの強硬派は2018年に当時のドナルド・トランプ大統領に核合意から離脱するよう説得する上で重要な役割を果たしており、現在イランはこれまで以上に爆弾製造に近づいている。これほど近視眼的なイスラエル政策を想像するのは難しい。

イスラエルの戦略的洞察力(Israeli strategic acumen)の劇的な低下について説明するものは何か? 重要な要因の一つは、アメリカの保護(U.S. protection)とイスラエルの意向への服従(deference to Israel’s wishes)から来る傲慢さと免罪符の感覚(sense of hubris and impunity)である。世界最強の国が何をやっても支援してくれるのであれば、自分の行動を慎重に考える必要性は必然的に低下する。加えて、イスラエルが自らを被害者とみなし、自国の政策への反対をすべて反ユダヤ主義(antisemitism)のせいにする傾向は、イスラエルの指導者やその国民が、自らの行動がどのように敵意を引き起こしているのかを認識することを難しくしているからだ。ネタニヤフ首相がイスラエルで最も長く首相を務めていることも、問題の一因となっている。特に彼の行動は、自国にとって何が最善であるかという懸念だけでなく、私利私欲(汚職による服役を避けたいという願望)によって引き起こされている部分が大きいからだ。それに加えて、宗教右派(religious right)の影響力の増大がある。宗教右派の外交政策に対する救世主を求めるような見解は、最近『ハーレツ』の冷ややかな記事に要約されている。どの国でも、終末予言や神の介入を期待して戦略的決定を下すようになったら、要注意だ。

なぜそれが重要なのか? なぜなら、アメリカが9月11日の事件への対応で示したように、戦略的選択肢について知的に考えていない国は、自国にも他国にも大きな害を及ぼす可能性があるからだ。イスラエルの行動はイスラエル自身の長期的な展望を脅かすものであり、イスラエルの明るい未来を望む者は、その戦略的判断力の低下を特に懸念すべきである。イスラエルの復讐心に満ちた近視眼的な行動は、何十年もの間、罪のないパレスティナ人に甚大な被害を与え続け、現在もなおそうしている。不安定で思慮の浅い相手と密接に結びついていることは、アメリカにとっても深刻な問題である。時間、注意力、資源を浪費し続け、アメリカを無能かつ偽善的に見せるからだ。また、反米テロリズムの新たな波を刺激する可能性もあり、その結果もたらされるであろう損害は明らかだ。

残念なことに、この状況をどのように打開するかも明らかではない。アメリカのイスラエル支持者にできる最善のことは、民主党と共和党の双方に圧力をかけ、ユダヤ国家に厳しい愛情(tough love)を注ぎ、現在の軌道を再考させることである。もちろん、そのためにはAIPACのようなロビー団体が、イスラエルを現在の苦境に導いた自らの役割を反省する必要がある。残念ながら、それがすぐに実現する兆しはない。それどころか、イスラエルとその支持者であるアメリカは、さらに手をこまねいている(doubling down)。これは、大惨事(disaster)とまではいかなくとも、終わりのないトラブルの処方箋である。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt

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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 中東情勢は悪化の一途を辿っている。2023年10月にハマスの攻撃に対する報復として、イスラエル軍はガザ地区での軍事作戦を開始し、民間人に多くの死傷者が出ている。ハマスの人質となった人々の救出は思うように進んでいない。更には、イスラエルは、イランの首都テヘランでハマスの最高指導者を殺害し、イランから報復攻撃を受けている。加えて、レバノンの武装組織ヒズボラに対しても軍事作戦を開始している。ヒズボラのメンバーたちが使用していたポケベルに爆発物を仕込み、一斉に爆発して大きな被害を出したニューズは日本でも多く報道された。このポケベルはイスラエルから輸出されたものということが後に分かった。私は「イスラエルからの輸出された製品というのは怖いな。何が仕込まれているか分からないではないか」という感想を持った。イスラエルは危険な国という印象を多くの人々に与えたと思う。

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 このポケベルでの攻撃は衝撃的であったが、それ以外にも、イスラエルはレバノン、ヒズボラへの攻勢を強めている。ガザ地区に続いて、2つ目の戦線を開いたと言える。イスラエルの軍事的な優位性もあり、二正面作戦はまだ耐えられるだろうが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦争の段階を引き上げようとしている。イエメンのフーシ派の空額も実施している。ハマス、ヒズボラ、フーシ派は全部がイランからの支援を受けている。ネタニヤフ率いるイスラエルはイランとの全面戦争(all-out war)へと進む危険性を持っている。

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そうなると、中東全体が戦争地域ということになり、石油の供給に大きな影響が出る。そうなれば、世界経済は大きなダメージを受ける。もっと怖いのは、核戦争勃発の可能性だ。核戦争に対する禁忌が破られるとなると、核兵器使用のハードルが大きく下がることになる。それはまた世界を危機に晒すことになる。戦争の段階を引き上げるべきではない。

 アメリカは現在、大統領選挙期間中で、しかも現職のジョー・バイデン大統領が再選を目指さないということになり、レイムダック化(無力化)している。そうした中で、イスラエルのネタニヤフ首相は暴走している。アメリカはコントロールする力を失っている。イスラエルへの資金援助や武器援助をアメリカが止めない限り、イスラエルはこうした状況を変えることはしないだろう。

 イスラエルのネタニヤフ首相は家族ぐるみでお金に関するスキャンダルを抱えており、平和に復帰すれば、家族ごと有罪判決を受け、牢獄行きとなる。そのために、戦争状態を続けたいということはあるだろう。しかし、それは世界に追って大きな不幸である。

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ヒズボラのポケベル爆発は皆が考える以上に危険だ(The Hezbollah Pager Explosions Are More Dangerous Than You Think

-人権問題を超えて、今回の攻撃は中東におけるアメリカとイスラエルの政策にも疑問を投げかけるものとなった。

ハワード・フレンチ

2024年9月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/09/24/hezbollah-pager-explosions-lebanon-israel-middle-east-iran-us-policy/

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9月18日、ベイルート南部の地区で、前日にレバノン全土で発生したポケベルの爆発で死亡した人々の葬儀でヒズボラの旗を手にする男性。

先週、イスラエルがレバノンとシリアでヒズボラを攻撃した際、地政学的にどのような立場にあったにせよ、専門家の多くが最初に抱いたのは畏怖の感情(awe)だった。

敵対国も友好国も関係なく、作戦をやり遂げるために必要な、イスラエル情報・諜報機関の洗練の度合いに驚嘆した。イスラエルのために働く諜報員たちは、ポケベルやトランシーバーの中に微量の爆発物を仕込む仕事に重視し、これを宿敵の手にうまく渡さなければならなかった。この偉業は、1967年の六日間戦争でのアラブ連合軍に対する勝利、1976年の民間旅客機ハイジャック事件で捕らえられた人質を解放するためのウガンダのエンテベ空港攻撃、1990年代後半にさかのぼる過激派グループを攻撃するためのブービートラップ付き携帯電話の使用など、イスラエルの技術的・作戦的洗練の長い歴史を思い起こさせるものとなった。

今回の攻撃は、技術的なレヴェルでは素晴らしいものだったが、多くの批判も当然出ている。1つには、民間人に壊滅的な打撃を与えたことだ。ポケベルはヒズボラ・メンバーのものだったが、爆発によって少なくとも40人が死亡、3000人以上が負傷し、多くの非戦闘員が危険に晒される結果となった。もし運転手や親族がポケベルを携帯していたら、車の乗客や食卓にいた子どもたちはどうなっていただろうか? ヴィデオ映像によれば、市場や街角で爆発したものもあった。

政治理論家のマイケル・ウォルツァーは、『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説ページで、攻撃の瞬間には積極的に戦争に従事していなかったヒズボラの工作員を標的にした爆発は、「戦争犯罪の可能性が非常に高い(very likely war crimes)」と書いている。レオン・パネッタ元国防長官・元CIA長官でさえも、今回の攻撃がテロの一形態であることに「疑問の余地はないと考える(think there’s any question)」と述べている。

 

イスラエルへのロケット弾発射に使われる南部のヒズボラ陣地に対するエスカレートする空からの攻撃など、レバノンにおけるイスラエルの最近の戦術に対する私の懸念は、更にその先にある。ポケベルを爆発させての攻撃という衝撃が落ち着いた後、アナリストたちはイスラエルがこの攻撃で戦略的利益を得たかどうかを問い始めた。その答えは依然として不明だ。イスラエルがガザ地区でハマスに対して1年近く攻撃を続けている間、同じことが言える。そこでは、基本的な疑問が未解決のままである。その疑問とは、イスラエルは軍事作戦が終了した後に、一体何をするのか?

この2つのキャンペーンを結びつけているのは、イスラエルは軍事的優位の政策と無制限の攻撃作戦によって長期的な安全保障を達成できるという、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の明白な見解である。アメリカは、イスラエルに対する弱腰の批判とほぼ無制限の武器供給を通じて、この立場を黙認している。ガザ地区が示し始めたように、またレバノンとの戦争が起これば、それが再確認される可能性が高いように、このアプローチは、イスラエルが平和を達成するために、巻き添え被害の有無にかかわらず「悪者たち(bad guys)」を十分に殺せるという妄信的な希望をもって、近隣の土地を焦土と化すことに等しい。

このアプローチの1つ目の、明確な欠陥は、各軍事作戦が新たな敵を生み出し、イスラエルと近隣諸国との間の敵意を永続させる危険性があることだ。例えば、ガザ地区におけるイスラエルの完全な軍事支配は、パレスチナ人の政治的および領土的権利の差し迫った必要性に対処するものではない。実際、この地域の絶望と支配は、将来、イスラエルに対する新たな形態の抵抗を確実にするだろう。同様に、イスラエルのレバノン南部への侵攻は、両国間に敵対の新たな境地を生み出すだけであり、この作戦による死と破壊により、より多くのレバノン人がイスラエルに対する暴力的報復の方向に駆り立てられるのと同じくらい確実である。

しかし、私が最も懸念しているのは、それだけにとどまらず、イスラエルと同様に、アメリカの戦略にも関わることだ。ここ数十年、同盟関係にある両国は、イランを中東における暴力と不安定化の究極の原因とみなしてきた。しかし、イランに核兵器開発を断念させるための国際的な努力を除いては、イスラエルはともかく、アメリカはイランに政治的に関与する創造性をほとんど示してこなかった。イランと政治的な関わりを持つための非現実的な前提条件、たとえばテヘランがまず自国の政治体制を変えることや、イスラエルの生存権を認めることなどは、その数には入らない。

中東地域の問題を特に扱いにくくしているのは、イスラエルとイランの両方が古い文明的および宗教的アイデンティティの化身であるということだ。西側諸国の多くは、イスラエルが聖書の国であり、多くのユダヤ人がシオニズムへの正当な支持を、部分的には古代イスラエルの存在に基づいており、その物語が旧約聖書の本質を構成していることを知っている。専門家の領域以外ではあまり理解されていないが、イランははるか古代に遡る言語、文化、アイデンティティ、帝国、国家の伝統の継承者でもある。

ガザ地区での終わりの見えない暴力に対し、多くの人々が怒りの声を上げている。ユダヤ人もパレスチナ人も、現在紛争で分断されている土地から消えることはないということを認識することに代わるものはない。つまり、永続的な和平には、この深い溝を隔てた両側の人々、ひいては国家が、互いのニーズと利益を認識することが必要である。

これはイランにも同じことが言える。人口9000万人の国を悪者扱いする政策では、イランを消し去ることはできない。実際、西側諸国がイランの孤立化を図ろうとしても、イランはヒズボラやイエメンのフーシ派といった非国家的な代理勢力を増強し、ロシアや中国との関係を深めようとする決意を強めるだけである。

イスラエルと同様、西側諸国でも中心的な関心事となっているのは、イランの核開発計画であり、テヘランが長引く研究・精製段階を脱し、すぐにでも使用可能な核兵器を開発するのではないかという見通しである。残念ながら、核保有国の核軍縮に関する世界的な実績は極めて芳しくない。ウクライナは、ソ連時代から受け継いだ核兵器を廃棄した唯一の例であり、このことが悲しいことに、ウラジーミル・プーティンのロシアに対して脆弱な国になってしまった。例えば、北朝鮮をめぐる欧米諸国とアジアの長年にわたる外交は、平壌に核プログラムを放棄するよう説得することができなかった。好むと好まざるとにかかわらず(私は好まないが)、それは北朝鮮の体制がその将来について根本的な不安を感じているからだ。更に言えば、イスラエルは公式には認めていないが、何十年もの間、核兵器を保有していることは広く知られている。

イランの核開発プログラムに対する懸念は、テヘランともっと話をし、この地域の敵対関係を和らげる方法を模索する妨げになるはずはない。イスラエルを含む中東地域の広範な安全保障を確保する唯一の方法は、何らかの形でイランを西側諸国とより深く接触させ、最終的にはイスラエルやサウジアラビアなどの他国、パレスチナ人とともに、イランの安全保障上の懸念に対処することである。欧米諸国がそうするのは早ければ早いほどよい。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

アメリカとイスラエルの関係については、非常に複雑になっている。アメリカはこれまでキスラエルを強力に支援してきた。しかし、現在のイスラエルのガザ地区攻撃、戦争拡大路線に対して、アメリカのジョー・バイデン政権は抑制的な態度を取っている。これは、アメリカとイスラエルとの関係の変異店になるのではないかという主張がある。バイデン政権はまた、特に司法改革や人種差別的な政治に対しては懸念を抱いてきた。

下記論稿によれば、今後の関係には深刻な疑問が残り、両国関係は共通の価値観、利益、国内の支持基盤の3つの柱に依存しているが、これらの柱は今まで以上にストレスに晒されている。アメリカの政治情勢も変化しており、共和党と民主党の間で、イスラエル支援に対する意見の対立が激化している。大きく分ければ、共和党はイスラエル支援に前向きで、民主党はイスラエル支援に抑制的となっている。

バイデン政権は、ベンヤミン・ネタニヤフ政権に対して、ガザ地区における人道危機に対処するように求めており、これに対して、ネタニヤフ首相は反対姿勢を取っている。更に、レバノンのヒズボラとの対立を激化させ、ハマスとヒズボラを支援するイランとの全面戦争にまで進みかねないところにまで、状況を悪化させている。対イスラエル問題は、アメリカ大統領選挙においても重要な争点となる。

アメリカからの支援がなければ、イスラエルという国家は成り立っていかない。現在の状況は、イスラエルの国益にとってマイナスになっている。アメリカにとっても、イスラエルへの支援継続は、世界政治において、アメリカの国益にマイナスになる状況になっている。アメリカとイスラエル両国が自国の利益について、再検討し、利益の最大化を図ることが、停戦に向けた第一歩ということになるだろう。

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亀裂か分断か?(Rift or Rupture?

-ガザ地区での戦争がアメリカとイスラエルの関係に与えているもの。

アーロン・デイヴィッド・ミラー、ダニエル・C・カーツナー筆

2024年5月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/17/israel-hamas-war-biden-netanyahu-relations-gaza/?tpcc=recirc_featured_alt091023

写真

ガザ地区でのイスラエルの停戦を求める、ワシントンのナショナル・モールでパレスティナ旗を振る親パレスティナデモ参加者(2023年10月21日)。

最近、アメリカとイスラエルの関係における現在の緊張をどう説明すればよいかと人々に質問されることが多くなかった。私たちは簡単な答えを見つけるのに苦労している。私たちは以前にこのようなことを経験したことがあるだろうか? アメリカの軍事援助を一時停止または停止した前例はあるだろうか? そして私たちは、根本的な変化を予感させる関係における何らかの変曲点(inflection point)の頂点に立っているのだろうか?

私たちは長年にわたり、アメリカとイスラエルの関係において、浮き沈みを何度も見てきた。過去に深刻な緊張があった後でも、常に変化よりも継続が優先されているように思われる。時間が経つにつれて、緊張は和らぎ、物事は多かれ少なかれ、伝統的なアメリカとイスラエルの「オペレーティングシステム(operating system)」と呼ばれる通常の過程に戻った。アメリカでは、これは大統領のペルソナ(persona、穏健な親イスラエルから強力な親イスラエルまで)、国内政治(そうしたシンパシーを強く反映し、強化する)、政権の政策(地域の課題を管理するために、イスラエルと対立するよりもむしろ協力することを求めることが多い)によって、緊張の緩和が推進された。

しかし最近、私たちは何か変化を感じている。そして、それが困難な道にあるのか、それとも変革、変曲点なのかは分からない。私たちは現在の状況から重大な結論を出すことには慎重だ。実際、一般に、変曲点という概念は誇張される可能性がある。新型コロナウイルス感染症は私たちの世界を一変させるだろう。ロシアのウクライナ侵攻は国際政治を根本的かつ取り返しのつかないほど変えたと言われている。そして、10月7日は、何らかの形で中東の政治を変えるものだと見る人もいる。しかし、ヘッドラインが必ずしもトレンドラインにつながるとは限らない。そして、変革をもたらすと思われる出来事が、必ずしも変革をもたらすとは限らない。

確かに、イスラエルとバイデン政権の間の現在の緊張は前例のない状況で起こっている。しかし、それらは一時的なものである可能性もある。一方で、アメリカとイスラエルの関係を持続的な違反や亀裂から守る伝統的な運営システムは、10月7日以来機能し続けている。ジョー・バイデン米大統領は例外なく、米国史上どの大統領よりもイスラエルとイスラエルの戦争目的を支持してきた。イランが350発以上の無人機、巡航ミサイル、弾道ミサイルでイスラエルを攻撃した際に、地域的な防空ネットワークを構築し、それを証明した。バイデンとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は定期的に会談し、公の場での衝突の可能性を最小限に抑え、関係を軌道に乗せようとしている。バイデンは、このようなイスラエル支持を維持するために、民主党内を含む国内からの政治的反発を受け続けてきたが、11月の大統領選挙で票を失う可能性がある犠牲を払ってでも、怯むことはなかった。

一方で、今後のアメリカとイスラエルの関係に深刻な疑問を投げかける勢力も存在する。その関係は、共通の価値観(shared values)、共通の利益(common interests)、そして国内の強力な支持基盤(strong base of domestic support)という、密接に結びついた3つの重要な柱の上に成り立っている。今日、これらの柱のそれぞれは、おそらく関係の歴史の他の時期よりも大きなストレスに直面している。

第一に、バイデン政権とほとんどのアメリカ人は、イスラエル史上最も極端な右翼政府と価値観を共有していない。10月7日以前でさえ、ネタニヤフ政権はアメリカの価値観や利益に反する政策、特にイスラエルの司法、特に最高裁判所の権威を厳しく制限する取り組みと見られる司法改革提案(judicial overhaul proposal)を推進していた。バイデン政権とイスラエルの連合の野心は、イスラエルの民主政治体制への取り組みを損なうように見えた。

同時に、ネタニヤフ首相は、人種差別主義者でユダヤ人至上主義者を自称する2人の過激派閣僚に広範な権限を与えた。彼らは、ヨルダン川西岸で併合政策(annexationist policies)を推進し、パレスティナ人に二流市民としての政治生活、亡命、紛争への黙認の選択を強制する意図を公然と宣言した。この取り組みは、権力を維持するために過激派に対応する必要があり、収賄、詐欺、背任(bribery, fraud, and breach of trust)の罪で裁判を抱えるネタニヤフ首相によって歓迎された。

第二に、過去数十年にわたり、アメリカの政治情勢も同様に変化している。イスラエルに対する超党派の支持は依然強いが、どのようなイスラエルを支援すべきかについて共和党と民主党の意見はこれまで以上に分かれている。共和党は概して、「イスラエルは間違いなど犯さない」と主張する政党(Israel-can-do-no-wrong party)になった。ドナルド・トランプとその影響下にある共和党は、ネタニヤフ首相とその右派政府との絆を強めている。民主党は分裂を深めており、パレスティナ人の扱いについて、ネタニヤフ政権に制約とコストを課したいと考えている進歩主義派が少数だがその数を増やしている。10年前には、クリス・マーフィー連邦上院議員、クリス・クーンズ連邦上院議員、クリス・ヴァン・ホーレン連邦上院議員がその方針を公に主張することは想像もできなかっただろう。しかし、今日はそうではない。そして、連邦議会におけるイスラエルの最大の支持者であるチャック・シューマー連邦上院多数党(民主党)院内総務は、3月の臨時演説で、新たな選挙と新政府の樹立をイスラエルに対して要求した。アメリカ政治の他の多くの問題と同様に、イスラエルは意見を二分する問題となっており、バイデン政権は、イスラエルへの無条件支援を望む共和党と、支援に条件付きを求める多くの民主党との間で、狭い線の上を歩むことになっている。

第三に、これまでのアラブ・イスラエル戦争とは異なり、そして私たちの持つ直観に反するが、イスラエル・ハマス戦争の独特の性格がアメリカ国内の分断を深めている。抗議活動参加者たちは、ハマスのイスラエルに対する残忍な攻撃、性的暴行、人質(そのほとんどが民間人)のことを忘れているように見える。抗議活動参加者たちは、イスラエルの対応だけに焦点を当てている。バイデン政権にとって、これは問題となっている。なぜなら、バイデン政権は、ハマスについて10月7日のような攻撃を繰り返すことができないようにして、ガザ地区の統治を再開できないところまで弱体化させるという考えを支持しているが、数千人の死者を出したイスラエルの戦略と戦術には強く反対しているからである。イスラエルの戦略と戦術によって、パレスティナ民間人の犠牲者が増え、ガザ地区のインフラの大部分の破壊が行われた。その結果、人道上の悪夢が生じた。イスラエルはこれを予期して対処すべきだったが、イスラエルは、後手、後手に回り、効果のない対応を繰り返してしまった。あれから7カ月が経ち、人道危機は深まるばかりだ。ガザ地区の230万人の大多数が避難を余儀なくされたため、彼らは適切な避難所、水、食料、医療にアクセスできなくなった。

イスラエルの政策と行動の結果、3つの問題がイスラエルとバイデン政権を分断した。それは、民間人の犠牲を最小限に抑える軍事作戦をどのように実施するか、人道的災害を防ぐために十分な支援を確実に提供するにはどのようにしたらよいか、そして戦闘が終わった翌日に何が起こるのか、ということだ。イスラエルは、バイデン政権の計画提示要請に対して不十分な回答を示した。実際、ネタニヤフ首相はラファ、あるいはガザ地区全体に対するいかなる現実的な計画にも反対の姿勢を強めており、ネタニヤフ首相自身の国防大臣やイスラエル軍内の一部が、政府の政策の方向転換に反対する声を上げるよう促している。

おそらく、アメリカとイスラエルのオペレーティングシステムは、特に選挙の年には、関係に継続的な断絶や亀裂を生じさせることなく、これらの問題を管理または解決する方法を見つけるだろう。しかし、そのトレンドラインはどんなものになるだろうか? イスラエルがハマスとの戦争を遂行した結果、アメリカ国内でも国際的にも、イスラエルのイメージとブランドはどの程度根本的に損なわれたのだろうか? 両国を結びつける真の接着剤である価値観の親和性は持続するだろうか? 今や打ち砕かれた共通の価値観に対する認識は、イスラエル政治の右傾化、ヨルダン川西岸と東エルサレムの、イスラエルによる57年間の占領、そして民主政治体制の中で暮らすイスラエルの200万人のパレスティナ国民の多くの不満を乗り越えて生き残ることができるだろうか? 彼らにユダヤ国民と同じ扱いを与えることになるだろうか? アメリカの政治環境は、イスラエルがアメリカの国益にとって利益ではなく、むしろ負担となるのではないかと疑問を抱く若いアメリカ人が増えるまでに進化するだろうか?

良い答えなど出てこない様々な疑問ばかりだ。そして、アメリカ・イスラエル関係の軌跡を確実かつ正確に予測する方法はない。どの要素も決定的なものにはなりえないが、ひとつだけはっきりしていることがある。それは、イスラエル人は、占領の意味を直視しない中で、自分たちにふさわしい平和と安全を手に入れられると信じるというやり方を止める必要があり、パレスティナ人は、イスラエルに苦痛を与えることで、自分たちにふさわしい自決と独立が達成されると信じるのを止める必要がある。10月7日のトラウマと痛み、そして果てしなく続くと思われるイスラエルとハマスの戦争が、彼らにこのような認識をもたらすかどうかはまだ分からない。

※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和財団上級研究員。歴代の民主党、共和党の各政権で米国務省中東担当分析官、交渉官を務めた。著書に『偉大さの周縁:アメリカはどうしてもう一人の偉大な大統領を持てない(持つことを望まない)のか』がある。ツイッターアカウント:@aarondmiller2

※ダニエル・C・カーツナー:元駐エジプト米大使、元駐イスラエル大使。プリンストン大学公共国際問題研究大学院で外交と紛争解決について教鞭を執る。

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