古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:バイデン政権

 古村治彦です。

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で取り上げたウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社だが、ジョー・バイデン政権高官にはその出身者が15名を占めている。今回はその顔ぶれを詳しく紹介している記事を紹介する。国務長官のアントニー・ブリンケンとアメリカ情報・諜報機関のトップである国家情報長官のアヴリル・ヘインズだけにとどまらず、数多くの人物がバイデン政権の中枢を支えている。一企業の出身者たちがこれほど政権に参加することは前代未聞のことで、「倫理規定違反ではないか」という声も上がっている。

 ウエストエグゼク。アドヴァイザーズ社が巨大企業500社を顧客にしているのは、バイデン政権との強力な人脈関係を持っているからだというのは明白なことだ。このブログでも紹介したが、ウクライナ戦争が始まってからは、ウエストエグゼク社の経営パートナー(共同創設者)であるミッシェル・フロノイ(オバマ大統領時代に国防次官、クリントン大統領時代に国防次官補)には各巨大企業のCEOたちからひっきりなしに連絡が来て、助言を仰いでいるということだ。バイデン政権の意向を一番掴みやすいい民間の存在がウエストエグゼク社ということになる。

 拙著と合わせて以下の記事をよく読んで欲しい。私が何か荒唐無稽なことを言っていたのではないということが分かるはずだ。

(貼り付けはじめ)

ジョー・バイデン政権に人材を派遣しているコンサルティング会社に目を向ける(MEET THE CONSULTING FIRM THAT’S STAFFING THE BIDEN ADMINISTRATION

-ウエストエグゼク社(WestExec)は、トランプ時代を通じて大企業の代理人を務めていた。そうした人々が今、ホワイトハウスにいる。

ジョナサン・ガイヤー、ライアン・グリム筆

2021年7月6日

『ジ・インターセプト』誌

https://theintercept.com/2021/07/06/westexec-biden-administration/

ホワイトハウスからわずか数ブロックしか離れていない本社で、元大使たち、弁護士たち、バラク・オバマ大統領時代に政権高官に任命された人々からなる小規模で強力なチームが、過去数年間、世界の各大企業のために問題解決に取り組んできた。

バイデン政権発足から半年足らずで、ウエストエグゼク。アドヴァイザーズ社(WestExec Advisors)という会社の15人以上のコンサルタントが、ホワイトハウスやその外交政策機構、法執行機関などに散らばっている。そのうち5人はすでに政権内で仕事を行っており、高官ポストへの指名を受けており、他の4人はバイデン-ハリス政権移行チームに所属していた。ワシントンの基準からしても、特に2017年に立ち上げたばかりの会社としては、政権と民間の間を行き来する回転ドアを通過する驚くべき前進となっている。このパイプラインは、バイデン政権内部にウエストエグゼク社の出身者たちを圧倒的な数配置し、国家情報長官や国務長官といった影響力のある最高幹部クラスに人材を据えている。一方、ウエストエグゼク社の顧客たちは、ハイテクや防衛の分野で、かつてのコンサルタントたちが現在設定・実行する立場にある政策と交錯し、論議を呼んでいる。

ウエストエグゼク社の出身たちが新しく政権に就くと、国務長官の場合は見出しで、サイバーセキュリティの責任者の場合は業界誌でと、さまざまな報道がなされた。一介のコンサルティング会社が外交政策立案を独占していることはほとんど気づかれなかった。このような政策立案者たちのネットワークは孤立しており、集団思考(groupthink)や利益相反(conflicts of interest)、また、矛盾しているかもしれないが、合法化された汚職(legalized corruption)と呼ばれるようなことが起こる可能性が懸念される。

ウエストエグゼク社は顧客情報を正式には公開しておらず、公開されている財務報告書も大まかな内容しか提供していない。ワシントン大学(セントルイス)法科大学院のキャサリン・クラーク教授は、数十年前に作られた政府の倫理法は、一企業から15人もの政府高官が出るような状況に対応できるものではないと言う。クラーク教授は続けて「彼らは政府に雇われているのは確かだ。それは認める。しかし、彼らは実際にアメリカ国民のために働いているのか、いないのか? 彼らの忠誠心はどこにあるのだろうか? 民間部門は本質的に公共部門を利用することができる」と述べている。

ホワイトハウスの報道官は声明の中で「これらのホワイトハウス高官たちは経験豊富な政府のリーダーたちであり、以前の民間部門での経験は、彼らが政府の仕事にもたらす幅広く多様なスキルの一部である」と述べている。ウエストエグゼク社は今回期の記事のための詳細な質問リストに回答することはなかった。

ウエストエグゼク社は、「他を圧倒する地政学的リスク分析」を売りの一つとしているが、現在、ウエストエグゼク社出身者たちが権力者の周辺において飽和状態にあることからも、それが確認できる。ウエストエグゼク社は、ハイテク新興企業を防衛契約に参加させることに成功し、防衛企業のハイテクによる近代化を支援し、多国籍企業の中国進出を支援することにも取り組んでいる。ウエストエグゼク社の協力者の一人が、防衛を中心とした投資グループ「パイン・アイランド・キャピタル・パートナーズ社(Pine Island Capital Partners)」で、昨年、SPAC(白紙委任会社)を立ち上げた。トニー・ブリンケンはパイン・アイランド社の顧問を務め、株式の一部を保有する共同オーナーでもある。ウエストエグゼク社のもう一人の共同設立者であるミシェル・フロノイは、国防長官への指名が見送られた。ジョー・バイデン大統領は、代わりにロイド・オースティンを指名した。オースティンはパイン・アイランドの元パートナーだが、ウエストエグゼク社のコンサルタントではなかった。

ウエストエグゼク社が「ブティック」となっているのは、幹部たちがベテランの政策立案者と顔を合わせる時間を確保できると約束したことだ。2020年、ウエストエグゼク社の共同創設者の一人は、「他の会社は、大物のために人を集めるが、大物に会うことはできないと感じていた。トニーはクライアントたちからの電話に出る」と述べている。

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ブリンケンは現在、国務長官を務めている。ブリンケンは、通信大手のAT&T、防衛大手のボーイング、物流大手のフェデックス、メディア企業のディスカバリーといった有名企業の顧問を務め、ウエストエグゼク社の創業パートナーでもあった。また、フェイスブック、リンクドイン、マイクロソフト、ウーバーといった大手IT企業にも助言を行った。スピーカービューローのGLG、美術品販売のサザビーズ、バイオ医薬品のギリアド・サイエンシズなどニッチな企業もサポートした。また、ブラックストーン、ラザード、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ、サウジアラビアと大規模な取引を行う多国籍コングロマリット「ソフトバンク社」など、グローバルな投資会社や資産運用会社もクライアントに名を連ねていた。また、コンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニーの顧問も務めた。ブリンケンは2020年7月、『ジ・アメリカン・プロスペクト』誌がウエストエグゼク社との関係について問い合わせた後に、同社を去った。しかし、これらの事業は、バイデン政権内で外交政策を実行する際に彼の計算に影響を与える可能性があるとして国際的に注目されている。

ブリンケンは、国務省の主要スタッフの何人かをウエストエグゼク社から連れてきている。ブリンケンの上級補佐官であるジュリアン・スミスは、ボーイングとソフトバンクを顧客としていた。スミスはシンクタンクのジャーマン・マーシャル・ファンドで常勤の仕事を持ちながら、ウエストエグゼク社のコンサルタントとして3万4000ドルの収入を得ていた。スミスは、NATOの米国常任代表に指名されている。ブリンケンはまた、ウエストエグゼク社のエグゼクティブ・アシスタントを務めたサラ・マクールをスケジュール管理担当として国務省に呼び寄せた。元駐アラブ首長国連邦米国大使のバーバラ・リーフは、ウエストエグゼク社に勤務し、全米バスケットボール協会(NBA)に助言を行った。彼女はその後、国家安全保障会議で中東担当上級部長を務めた。リーフは、国務省近東担当次官補になるための連邦議会承認を待っている。一方、オバマの駐イスラエル大使で、同僚によれば「非常に忙しい」初期メンバーのコンサルタント、ダニエル・B・シャピロの名前が中東特使として浮上している。ジ・アメリカン・プロスペクトは昨年夏、ウエストエグゼク社の顧客のひとつが、船舶追跡を専門とするイスラエルの人工知能企業ウィンドワード社であることを明らかにした。

ウエストエグゼク社はまた、バイデンの最も強力な情報・諜報機関のトップがトランプ政権時代をやり過ごすための快適な場所を提供した。アヴリル・ヘインズ国家情報長官は、早い時期にウエストエグゼク社のウェブサイトから名前を消されてしまったが、2017年10月から2020年7月まで同社で働き、外交政策担当としてバイデンの政権移行チームに参加した。彼女の承認公聴会の前に記入された報告書によると、彼女はフェイスブック、JPモルガン・チェイス、マイクロソフト、オープン・フィロソフィーなどクライアントに対して、「サイバー規範、国家安全保障上の脅威、国防省による機械学習システムのテスト、評価、検証、検証」についての「戦略的アドバイス」を提供したということだ。CIAのデイヴィッド・S・コーエン副長官は、ヘインズやブリンケンとともにウエストエグゼク社の「コアチーム」の初期メンバーであった。しかし、彼のクライアントが誰であったかを知ることは不可能だ。スパイ機関の関係者に対する免責事項により、彼の情報公開は公にされていない。

ワシントン大学(セントルイス)の倫理専門家であるクラーク教授は、「スパイ機関の官舎に対する免責事項は彼らが公的な説明責任から免除されることだ。そしてそれは、私たちが必ずしも内部統制と外部の公的な開示に頼ることができないので問題となるのだ」と述べた。CIAの広報担当者は、コーエンがウエストエグゼク社で助言を行っていた顧客企業について述べることを拒否した。

そして、最近連邦上院が国家サイバー局長として承認したクリス・イングリスがいる。彼はウエストエグゼク社から1万5000ドルを得て、インターネット・セキュリティ企業のクラウドストライク社と電子メール暗号化企業のヴァ―チュー社に助言を行っていた。

2017年の創業以来、ウエストエグゼク社は防衛、情報、法執行機関の能力を強化することに注力してきた。シリコンヴァレーのベンチャー企業であるリッジライン社(Ridgeline)と提携し、自らを「ミッション・ドリブン」であると述べている。つまり、軍との連携を避ける一部のハイテク企業と異なり、リッジライン社は軍事関連製品製造を求めていると説明している。コーエンもイングリスもリッジライン社のウェブサイトに登場し、そのパートナーシップを通じて、ブリンケンはこのヴェンチャーグループの多くの投資先企業に投資している。無名の新興企業は、奇抜な名前(アゴロ、ドゥードル、ウォーラローなど)だが、ドローン、人工知能、ロボットなどの先端技術を開発している。ウエストエグゼク社の出身者たちは、新興技術に深く関わっているため、政府が承認する契約に影響を与える政策立案の役割を担うことになり、利益相反が生じる可能性がある。

政権で最も注目される人物の一人もウエストエグゼク社で働いていた。現在ホワイトハウス報道官を務めるジェン・サキは、ウエストエグゼク社の上級アドヴァイザーとして、イスラエルの顔認識ソフトウェア会社エニーヴィジョンの危機管理コミュニケーションや、非営利団体スピリット・オブ・アメリカのアドヴァイザーを務めた経験がある。

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(写真に取り上げなかった人々)国内政策問題担当大統領補佐官の補佐官エリン・ペルトン、国務長官予定管理担当部長サラ・マク―ル、国防次官補(承認待機中)セレステ・ワーランダー、バイデン=ハリス政権移行チーム顧問アンドレア・ケンドール=テイラー、クリスティーナ・キリングスワース、ジェイ・シャンボー、プニート・タルワー、米国サイバースペース・ソラリウム委員会副部長ジョン・コステロ、人工知能に関する国家安全保障委員会副委員長ロバート・O・ワーク。

各企業が新型コロナウイルス感染拡大の大規模な課題に直面する中、リサ・モナコはブリンケンによる顧客への助言に参加した。モナコはウエストエグゼク社のアドヴァイザーとして、ボーイング社やソフトバンク社に助言を行った。現在、モナコは米国司法副長官を務めている。マット・オルセンは、ウーバーのUberの幹部として数百万ドルを稼ぐ前、早くからウエストエグゼク社の部長を務めていた。バイデン大統領はオルセンを司法次官補(国家安全保障部門担当)に指名した。

イーライ・ラトナーは国防次官補(インド太平洋安全保障問題担当)として中国政策を策定している。政府倫理局の報告書によると、ウエストエグゼク社で、ラトナーは「支払請求可能な時間は、顧客を特定しない背景白書のための仕事をしており、ほとんどの収入はウエストエグゼク社からの支払いだった」ということだ。ラトナーは、ウエストエグゼク社では1万1450ドルの収入しかなかったが、シンクタンクであるセンター・フォ・ア・ニュー・アメリカン・セキュリティ(Center for a New American SecurityCNAS)で40万ドル以上を稼いでいた。

ウエストエグゼク社のシニアアソシエイトであったガブリエル・チェフィッツは国防総省の政策担当次官特別補佐官として入省した。バイデンは2020年6月、ウエストエグゼク社の上級アドヴァイザーだったセレステ・ワーランダーを国防次官補(国際安全保障問題担当)に指名した。

ウエストエグゼク社のコンサルタントは、人脈も血筋も豊富なので、複数の仕事、役職、肩書きを兼任していることが多い。そのため、ウエストエグゼク社の元上級アドヴァイザーであるエリザベス・ローゼンバーグのような人物が事前の紹介なしに財務省の高官に就任できるのだ。2020年5月末、バイデンはローゼンバーグを財務次官補(テロ組織資金捜査担当)に指名した。リンクドインのプロフィールによると、ローゼンバーグは「金融の透明性を促進する」ための連邦政府のイニシアチヴを管理してきたという。ホワイトハウスが指名を公表した経歴書には、ウエストエグゼク社での役割は抜け落ちていた。

米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)の高官たちのオフィスもまたウエストエグゼク社でコンサルタントを務めいた人物たちであふれている。コリン・トーマス・ジェンセンは「サハラ以南のアフリカにおけるデューデリジェンス(due diligence、訳者註:企業売種の前の調査活動)と政治リスクの回避についてウエストエグゼク社と同社の顧客たちに助言」し、その顧客にはボーイング、ソフトバンク、そして訴訟への融資を専門とするベンチャーキャピタル会社デルタ・キャピタル・マネジメントが含まれていた。2022年4月、トーマス・ジェンセンは国家安全保障問題担当補佐官としてUSAIDに参加した。同じ月、ウエストエグゼク社のラテンアメリカ担当だったマイケル・カミレリは、サマンサ・パワーUSAID長官の上級顧問と、USAIDの中米北部三角地帯タスクフォース(訳者註:エルサルヴァドル、グアテマラ、ホンジュラス)担当の上級部長を務めることとなった。ウエストエグゼク社のコンサルタントとして、カミレリはブラックストーン、ソフトバンク、インテル創業者が創設した数十億ドル規模の非営利団体ゴードン&ベティ・ムーア財団、鉱物採掘企業のリオティントなどに助言していた。

この会社が作り出すのは対外政策だけではない。ホワイトハウスで国内政策の上級補佐官を務めるエリン・ペルトンは、ウエストエグゼク社に助言サーヴィスを提供した。また、商務省産業・分析担当次官補に指名されたグラント・ハリスは、ウエストエグゼク社とつながりがある。彼の個人的なコンサルティング会社であるコネクト・フロンティアは、発展途上諸国の市場で活動する企業や団体に助言を与えていた。そして、ハリス自身がウエストエグゼク社に採用されたのである。

バイデン政権内部の中堅クラスの人材もまたウエストエグゼク社に絡んでいる。バイデン=ハリスの政権移行チームは、ウエストエグゼク社のコンサルタント、アンドレア・ケンドール=テイラー、プニート・タルワー、ジェイ・シャンボー、クリスティーナ・キリングスワースの助言を受けた。さらに、ウエストエグゼク社のメンバーは影響力のある超党派の連邦委員会を監督している。ロバート・O・ワーク(人工知能国家安全保障委員会)、ジョン・コステロ(サイバースペース・ソラリウム委員会)などが超党派の連邦委員会を監督している。

ブリンケンは開業当初のパンフレットの中で次のように述べている。「ウエストエグゼク社のアドヴァイザーたちは、政府の最高レベルにおいて、国際的な危機が意思決定に及ぼす影響を予測し、ナビゲートしてきた。私たちは、世界中のビジネスリーダーに同党の洞察力と戦略を提供することが可能だ」。

ブリンケンが政権に復帰して半年が経った今でも、ウエストエグゼク社の共同創設者で経営パートナーのナイティン・チャッダの「リンクドイン」のプロフィールには、このパンフレットが掲載されている。これは、潜在的な顧客たちに対して、この会社ウエストエグゼク社が権力に永続的に接近していることを印象付けるものだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 私が現在翻訳を進めている、The Tyranny of Big TechJosh Hawley著)の邦訳を『ビッグテック5社に解体せよ』(ジョシュ・ホウリー著)とすることに、編集者と話し合いを持ち、決定しました。来月に刊行できるように作業を進めています。素晴らしい内容ですので、楽しみにお待ちください。
joshhawley501

ジョシュ・ホウリー
 今回は、バイデン政権の「ビッグテック包囲網」の要、リナ・カーンについての論稿を紹介する。2本目の記事はリナ・カーンだけではなく、連邦議会での「ビッグテック包囲網」を形成する重要な議員たちが紹介されている。アメリカでは「ビッグテックを何とかしろ」「解体せよ(
Break Up)」という声が超党派で高まっている。『ビッグテック5社を解体せよ』を読むと、アメリカでの動きがよく分かるようになっている。
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リナ・カーン

 リナ・カーンは弱冠32歳で、コロンビア大学法科大学院准教授から連邦取引委員会委員長に抜擢された。連邦取引委員会(FTC)は、日本で言えば公正取引委員会に相当する。連邦取引委員会が仕事をサボっていたために、ビッグテックが野放しになったということで、今回リナ・カーンが起用された。リナ・カーンの名前が知られるようになったのは、イェール大学法科大学院在学中に「アマゾンの反独占に関するパラドックス(Amazons Antitrust Paradox)」というタイトルの論文を発表したことだ。その内容は、アマゾンが取引業者を虐めて低い価格での物品を販売を行っているが、これまでの独占禁止法の執行(物価や価格に焦点を当てる)に当てはめると、消費者にとっては安い価格でものが買えるということで、独占禁止法違反での執行ができないということになる、というものだ。彼女は、ビッグテックに対する批判を主導する立場に就いた。

 リナ・カーンはイェール大学法科大学院在学中から、新アメリカ財団というシンクタンクの上級研究員を務めていた。このシンクタンクには、グーグル元CEOエリック・シュミットから多額の資金が投入されていた。カーンが、EUがグーグルに対して独占禁止法違反で多額の罰金を科したことについて、肯定的なコメントをツイッターに投稿したことがあった。シュミットはこのコメントに激怒し、結果として、カーンの解雇、カーンのアシスタントをしていた職員たちの解雇、カーンが責任者を務めていた部門の閉鎖が行われた。

 リナ・カーンの連邦取引委員会委員長就任は、バイデン政権のビッグテック包囲網の本気度を示すものとして受け止められた。これは非常に重要なことである。前回紹介した司法次官補ジョナサン・カンターと一緒になって、行政府におけるビッグテック包囲網形成に、リナ・カーンは重要な役割を果たす。

(貼り付けはじめ)

バイデンは独占禁止法専門の学者リナ・カーンを連邦取引委員会委員長に指名する意向(Biden to nominate antitrust scholar Lina Khan as FTC commissioner

クリス・ミルズ・ロドリゴ筆

2021年3月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/544379-biden-to-nominate-antitrust-scholar-as-ftc-commissioner

バイデン大統領は月曜日、影響力の高い独占禁止法専門の学者リナ・カーンを連邦取引委員会(FTC)委員長に指名する意向であることを明らかにした。

カーンは32歳、コロンビア大学法科大学院准教授を務めている。上院での人事承認がなされれば、史上最年少の委員長ということになる。

リナ・カーンはイェール大学法科大学院在学中に、「アマゾンの反独占に関するパラドックス(Amazon’s Antitrust Paradox」というタイトルの論文を書いたことで有名になった。この論文はEコマースの巨人がいかにして独占禁止法を違反できているかを詳述した内容だった。

最近では、カーンは連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会が主要なデジタルプラットフォームの独占力を調査している間、補佐官として働いていた。

進歩主義派内のビッグテックに対する批判者たちはカーンの指名を求めてきた。

アメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクトのサラ・ミラー上級部長は次のように述べている。「小規模事業、企業家たち、働く人々の擁護者であるリナ・カーン教授は連邦取引委員会にとって素晴らしい選択である」。

ミラーは続けて次のように述べている。「カーン教授は、法学分野におけるこれまでにない業績によって国際的に認知されている学者だ。また、右派左派や党派を超えて働くことができる能力や政策における専門性でも知られている。連邦取引委員会において、数十年にわたる組織の特性による失敗から、連邦取引委員会を導き、脱出させるために、カーン教授は重要な役割を果たすことだろう」。

連邦取引委員会において、カーンはフェイスブックの独占禁止法違反容疑の事件について監督を行う上で重要な役割を果たすだろう。カーンはその他にも、シリコンヴァレーの巨大企業や他の産業分野の企業に対する新たな独占禁止法違反容疑事件にも関与するだろう。

正式な発表が行われた後、カーンはツイッターに「今回の指名は光栄でありかつ謹んでお受けするものです。人事承認をいただけるだけの幸運に恵まれましたら、私は委員長としての仕事が出来るのだと思い、今から楽しみにしているところです」と投稿した。

カーンの指名が連邦上院で承認されると、バイデン大統領は5名で構成される連邦取引委員会の委員を充足させるために、もう一枠の委員の指名が必要となる。

バイデンは今年1月に連邦取引委員会委員レベッカ・ケリー・スローターを委員長代理に任命したが、彼女をそのまま委員長代理として処遇することも選択できる。

月曜日の発表の前、バイデンは、もう一人のテクノロジー産業の巨大企業の批判者であるティム・ウーをテクノロジー・競争政策担当大統領特別補佐官に指名した。

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ビッグテックに対する独占禁止をめぐる戦いで見るべき5人の重要なプレイヤー(Five big players to watch in Big Tech's antitrust fight

レベッカ・クレアー、クリス・ミルズ・ロドリゴ筆

2021年4月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/549855-five-big-players-to-watch-in-big-techs-antitrust-fight

アメリカ政府は、アメリカ国内の最大のテクノロジー企業群の市場支配力を抑制するための努力が強化している。

バイデン大統領は、就任してから、反トラスト法関連の行動についてはほとんど発言をしていないが、ビッグテックに批判的な2人の人物を執行機関や諮問機関の重要ポストに指名し、任命している。

連邦上院では、民主、共和両党の議員たちが、反競争的な行為に対する懸念を抑制することを目的とする法案を提出している。連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会は、今週初めに、アップルとグーグルの役員たちを招聘して重要な聞き取りを行った。先週には、委員会の民主党側の議員たちが昨年発表した、グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブックの4社が市場力を濫用するために採用している方法についてまとめた報告書を、全会一致で正式に承認した。

これからビッグテックの戦いを進める、5人の注目すべき重要なプレイヤーたちを紹介していく。

(1)リナ・カーン(Lina Khan

バイデンのハイテク産業の巨大企業の市場支配力を制限したいという考えを示しているのは、連邦取引委員会(FTC)委員長にリナ・カーンを指名したことだ。

カーンは反トラストについての研究者であり、影響力を持っている。彼女はビッグテックを批判する進歩主義派の人々から後押しを受けている。カーンは、論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス(Amazons Antitrust Paradox)」で知られている。この論文は、カーンがイェール大学法科大学院の学生の時に書いたものだ。彼女はまた、連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会のテクノロジー産業の巨大企業群の市場支配力の調査の際に補佐官として参加した。

連邦上院商務委員会でのカーンの人事承認をめぐる証言が水曜日に実施された。その席上、カーンは、グーグルとアップルがアプリストア部門において享受している市場支配力は、「深刻な問題」であり、詳細に調査されるべきだと述べた。

彼女は更に、子供たちのプライヴァシー保護手段の拡充を支持し、議員たちに対して、現行のルールは「天井ではなく、床であるべきだ(これが上限ではなく、最低限のものであるべき)」と述べた。

カーンについては民主党側から称賛の声が上がっている。特に、連邦上院司法委員会独占禁止法小委員会委員長エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出)は、カーンを「従来の枠にとらわれない発想の持ち主」、「競争政策における先駆者」と呼んだ。

公聴会の雰囲気は和やかなものだった。それでも共和党所属の議員たちからいくばくかの懸念が表明された。マーシャ・ブラックバーン連邦上院議員(テネシー州選出)はカーンの前歴や背景、そして経験について質問を行った。マイク・リー連邦上院議員(ユタ州選出)からは、カーンが連邦下院独占禁止法関連報告書に関与したことを理由に、いくつかの案件に関わらないのではないかという質問が出たが、強いて彼女の指名の人事承認を撤回させようという議員は誰もいなかった。

テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)でさえもカーンに対して、「私は貴方と一緒に仕事ができることを楽しみにしている」と述べた。これは、ビッグテックに対峙しようという超党派の意気込みを示すものだ。

クルーズは「現在、非常に不透明な状況にあるビッグテックの透明性を確保するために、当委員会ができることはたくさんあると考えている」と述べた。

人事が承認され連邦取引委員会委員長に就任した場合、カーンには既にバイデン政権内に強力な協力者たちが存在する。

バイデンは先月、ビッグテックに対する批判で有名なティム・ウーをテクノロジー・競争政策担当大統領特別補佐官に任命した。

水曜日には、連邦上院は、バイデンのヴァニタ・グプタの司法省序列第3位(司法次官)への指名の人事承認を行った。ここ数年、グプタは、「リーダーシップ・カンファレンス・オン・シヴィル・アンド・ヒューマン・ライツ」の代表者として主要なソーシャル・ネットワーク・メディア・プラットフォームに対して、敵対者となってきた。

カーンは、連邦取引委員会がフェイスブックに対して訴訟を提起している時期に重要な時期に連邦取引委員会に参加する。連邦取引委員会と46州、ワシントンDC、グアムが反競争的な合併容疑で訴訟を提起した。

(2)エイミー・クロウブッシャー(Amy Klobuchar)連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)
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エイミー・クロウブッシャー
クロウブッシャー議員は2020年の大統領選挙に出馬したが、バイデンとは良好な関係を持っている。これからの戦いで注目すべき、重要な民主党所属の連邦上院議員である。ミネソタ州選出の議員であるクロウブシャーは今年初め、「競争と独占禁止法執行改革法案」を提案した。この法案の目的は独占禁止法の執行を再び強化するというものだ。その一環として、連邦取引委員会と司法省独占禁止法局の年間予算を増額するということが提案されていた。

クロウブシャーの提案した法案は、クレイトン法を修正して、同法にリスクベースの基準を加え、独占を生み出す合併は同法に違反することを明確にすることで、反独占的な合併を難しくすることを目的とするものでもあった。

クロウブシャーは連邦上院司法委員会独占禁止法小委員会の委員長を務めている。クロウブシャーは委員長として小委員会で一連の公聴会を開催し、テクノロジー企業の反競争行為の可能性を調査し、法案を検討すると述べた。

水曜日に実施された最新の公聴会では、クロウブシャー議員を筆頭に小委員会のメンバーの議員たちが、アプリストアのポリシーについて、グーグルとアップルの役員たちに質問を行った。

クロウブシャーは公聴会で次のように発言した。「私たちはアップルとグーグルが、私たちの時代の特徴を生み出しているテクノロジーの多くを想像する手助けをしていることに感謝している。これは素晴らしいことだ。私たちは成功に対して怒っているのではない。私たちはただ、資本主義がこれからも全ての人々に対して公正であるように、力強い道筋を進み続けるように望んでいるだけなのだ」。

クロウブシャー議員は更に次のように述べた。「資本主義とは競争なのだ。資本主義とは新しい製品が生み出され続けることだ。資本主義とは新しい競争者たちが参加し続けることだ。私にとって、現状は、そのようなことが起きているようには見えない」。

(3)マイク・リー(Mike Lee)連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)
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マイク・リー
リー議員は連邦上院司法委員会独占禁止法小委員会の共和党側の幹事メンバーである。彼もまたビッグテックに照準を合わせている。しかし、クロウブシャー議員とはいささか異なる考えを持っている。

リーは、2021年1月6日の連邦議事堂での暴動の後、テクノロジー巨大企業が過激なソーシャル・ネットワーク・メディア・アプリ「パーラー(Parler)」に対して行った行動を、反競争行為として非難している。

リーは、保守派に偏っているという根拠のない主張を、テクノロジー巨大企業を非難する共和党の同僚議員たちと一緒に行っている。しかし、反競争慣行の告発では、クロウブシャーやその他の議員たちと一緒になって、テクノロジー巨大企業の責任を追及している。

水曜日の公聴会で、リーは、グーグルとアップルに対して、一部のアプリにかかる最大30%の手数料と、手数料の対象となるアプリとそうではないアプリの区別について、グーグルとアップルに厳しく質問をぶつけた。

グーグルとアップルの役員たちは、ウーバーのような物理的な商品を配送するアプリは手数料の対象外だが、ティンダーのような出会い系アプリはデジタルサービスを提供しているとみなされるので、手数料の対象になると答えた。

リーは次のように反論した。「ウーバーは、文字通り、流通の分野で見知らぬ人と出会うという内容のサーヴィスだ。流通分野で見知らぬ人に出会うことと夕食の席で見知らぬ人と出会うことの違いを私は理解することができない」。

ジョシュ・ホウリー連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)ももまた、ビッグテックの巨大企業の力を弱めるための立法上の行動を提案している。

ホウリーは、「21世紀の独占破壊法」を発表した際に、言論を「コントロール」しようとする「意識の高い巨大企業」を非難しました。

しかし、クロウブシャーの提案と同じく、ホウリーの提案は、規制当局が支配的な企業を解体することを容易にするために、クレイトン法を改革するという内容だ。

(4)デイヴィッド・シシリーニ(David Cicilline 連邦下院議員(ロードアイランド州選出、民主党)
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デイヴィッド・シシリーニ
ロードアイランド州選出デイヴィッド・シシリーニは、連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会で、民主党側で独占禁止法を担当するトップの立場にある委員であり、民主党のビッグテック分野へのアプローチの形成を主導してきました。

先週、独占禁止についての報告書が承認された委員会で会合の後、シシリーニは「我々が提起した重大な懸念に対処する法案を作成することを楽しみにしている」と発言した。

ロードアイランド選出の連邦下院議員であるシシリーニは、今春中に最大10本の独占禁止法関連法案を発表する予定だ。より積極的な政策を民主党に支持してもらうためには、いくつかの作業が必要となるだろう。

この報告書の中には法案化が可能な解決策が複数記載されている。それらは、大手企業の買収を決定前に凍結すること、いくつかの企業には一分野のビジネスを追求することを義務化する構造分離の実施、連邦取引委員会と司法省独占禁止法局の予算と権限を拡充することである。FTCDOJの反トラスト局の資金と権限の拡大などが挙げられます。

このような内容を限定した提案は、大きな改革を連邦上院で進めるために必要な共和党の支持を集めやすくする。

シシリーニは、報告書で取り上げられた独占問題に対する立法上の解決策を作成するために、競争の活性化に焦点を当てた3つの公聴会を現在の議会で既に開催している。

(5)ケン・バック(Ken Buck)連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)  
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ケン・バック

連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会において、民主党所属のシシリーニ議員に対応するのは、ケン・バック連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)である。バック議員は、いかなる提案についても、共和党側で支持を取りまとめる上で重要な役割を果たすことになる。

バックは、先週行われた報告書の最終折衝において、ビッグテックの市場支配力に関する報告書にまで結実した調査について、「完全に超党派」で実施されたものだと認めたが、報告書に対する賛成票を投じることはなかった。その理由は、報告書の中で書かれていた是正案が民主党側だけで書かれたものだったからだ。

コロラド州選出の下院議員であるバックは、共和党所属の議員たちの支援と支持を得て独自の報告書を発表し、独占禁止規制当局への予算や人員の配分と、合併案件の立証責任に関する改革の必要性について、超党派の合意を得た。バックは、今議会で既に独占禁止法改革法案(ジャーナリズム分野における競争と意地に関する法案)について支持を表明している。

バックはまた、アップル、グーグル、アマゾンがパーラーに対して行った行為をきっかけに、アプリストアやウェブホスティングサービスに対するテクノロジー巨大企業の利用させるかどうかの決定に伴う支配力についても積極的に発言している。

バックとリーは、グーグルとアップルが、アプリストアからパーラーを削除したことについて、またアマゾンがウェブホスティングサービスからパーラーを削除したことについて、手紙を書いた。これらのビッグテックの巨大企業は、パーラーがコンテンツ・モデレーション・ポリシーを持たず、連邦議事堂での死者を出した暴動についての投稿を許したことを理由に排除する行動を起こした

アップルは今週議員たちに宛てた書簡の中で、承認されたアップデートを行った後で、アプリストアにパーラーのアプリを戻すことを許可する予定だと述べた。

バック議員はグーグルとアマゾンに対して同様の措置を取るように訴えている。

バック議員は水曜日に発表した声明の中で次のように述べている。「グーグルとアマゾンはアップルの例に倣う時だ。検閲を止めろ」。

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