古村治彦です。
イラン戦争は沈滞ムードに入り、限定的に軍事攻撃が行われているが、大規模な軍事衝突は起きていない。停戦交渉も停滞ムードだ。国連総会に合わせて、イラン代表団とアメリカ代表団がニューヨークで会談を持ち、トランプ大統領が会談について評価したということはあるが、中間選挙までに一定の成果を出すという見通しは立っていない。トランプ大統領としては支持率低迷が続き(支持率が約40%、不支持率が約59%)、打開策を求めているが非常に難しい。対イラン政策については支持率が約32%、不支持率が約63%となっている。参考までに、ウクライナ問題については、支持率が約34%、不支持率が約59%となっている。
イラン戦争停戦は原油価格に対する影響を考えても、世界経済、私たちの日常生活にとって重要である。イラン戦争は完全に失敗であった。アメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は完全に戦争の見通しを見誤った。アメリカでは対外戦争について不支持が多い状況で(ウクライナ戦争への支援にも反対が多い)、イラン戦争を始めたことで、トランプ大統領はドツボにはまった。アメリカ軍は強大で高性能な武器でイランを攻撃し、最高指導者アリ・ハメネイを含む政治の最高指導部層をはじめ多くの人々を殺傷し、イラン国内のインフラなどに大きな被害を与えた。しかし、イランからの反撃で湾岸諸国にあるアメリカ軍基地は破壊され、湾岸諸国にも被害が出た。アメリカ軍は湾岸諸国を防衛することに失敗した。さらに、イラン側の抵抗、ホルムズ海峡封鎖などもあり、予想外に戦争が長引くことで、武器を含む装備品や物資の欠乏に陥り、将兵の士気も低下している。
イラン戦争でアメリカは負けている。戦闘で勝っているが、戦争では負けている。「出口」をきちんと想定せず、「アメリカが攻撃すれば、イランは耐えられずに崩壊するだろう」という根拠薄弱な前提で戦争を始めた時点でアメリカとイスラエルは負けていたのだ。そして、世界に大きな悪影響を与えている。イラン側はハマス、ヒズボラ、フーシ派を使い、弱点を突いている。サウジアラビアはアメリカに「見捨てられた」という感覚を持っているだろう。そして、ますます中国に近づくということになる。イランの体制転換を起こすことができなかったことで負けなのだ。アメリカは人命や戦費を浪費していく。一方、ライヴァルである中国は無駄なことをせずに、資源を成長に正しく使うことができる。その点でもアメリカは負けている。
私はトランプが彼の持つ底知れない無神経さと屈託のなさで「失敗しました」と認める方が状況はまだましになるだろうと考えていた。しかし、いくら何でもそれはできない相談のようだ。中間選挙での敗北もあり、トランプ政権については厳しい状況が続いていく。そして、アメリカ政治は2028年の大統領選挙に向かって進んでいく。
(貼り付けはじめ)
ほぼ全ての指標においてアメリカは対イラン戦争に負けつつある(By Nearly
Every Metric, the U.S. Is Losing the Iran War)
-ある専門家は「アメリカが主要な戦略目標の達成に失敗したことは明白だ」と述べた。
ジョン・ホルティヴァンガー筆
2026年9月17日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/09/17/trump-united-states-losing-iran-war/
ワシントンのホワイトハウスでイランとの戦争について語るダン・ケイン統合参謀本部議長を見つめるドナルド・トランプ米大統領(4月6日)
3月初旬、ドナルド・トランプ米大統領は、対イラン戦争においてアメリカはすでに「勝利した(won)」ものの、まだ「任務を完遂する(finish the job)」必要があると述べた。それから数カ月が経過し、地域全体で戦闘が激化し外交が停滞する中、その「任務(job)」は未完のまま、終わりの見えない状況が続いている。
トランプは水曜日、「願わくは戦争は終結に向かっている」と語り、イランが合意を望んでいるとの見方を示唆した。しかし、現地で起きている現実はそうした楽観論(optimism)を裏切るものであり、テヘランが合意を熱望しているという証拠もほとんどない。
アメリカはこの戦争で軍事的な成功を収めてはいるものの、全体として見れば、この紛争はワシントンにとって戦略的な災厄(strategic disaster)であった。戦闘によってアメリカ軍の深刻な脆弱性(vulnerabilities)が露呈し、兵力は分散を余儀なくされたほか、これまでに推定381億ドルの費用を費やし、世界的なエネルギー危機も引き起こした。この戦争はアメリカの有権者から極めて不評であり、連邦議会では紛争終結に賛成する共和党議員が増加している。ある共和党連邦下院議員に至っては、この戦争をめぐってピート・ヘグセス国防長官の弾劾を求める動きさえ見せている。
しかし、これほどの代償を払ったにもかかわらず、アメリカがイランに関して達成できたことはほとんどなく、むしろ事態が悪化した側面さえある。代理勢力を通じた地域への影響力行使能力、軍事力、体制の強固さ、核開発計画の状況など、ほぼあらゆる指標において、アメリカはこの戦争に敗北しつつある。さらに、テヘランはホルムズ海峡を長期にわたって封鎖できることを証明した。これは彼らが長年誇示してきた能力ではあるが、実際に実証されたことはこれまでなかった。
「2月に時計の針を戻し、アメリカが当時何を目指していたかを見れば、アメリカが主要な戦略目標の達成に失敗したことは明白だ」。ユーラシア・グループの上級アナリストでイラン情勢の専門家であるグレゴリー・ブリューは『フォーリン・ポリシー』誌にそう語った。
●代理勢力(Proxies)
トランプ大統領は2月下旬、イランに対する本格的な戦闘作戦の開始を発表した際、「テロを行う代理勢力がもはや地域や世界を不安定化させたり、アメリカ軍を攻撃したりできないようにする」と述べた。同様に、統合参謀本部議長のダン・ケイン大将も3月初旬、アメリカは「現在および将来にわたり、イランが国境の外で力を行使する能力を解体すること」を目指していると語った。開戦から1カ月後、国民向けのゴールデンタイムの演説において、トランプ大統領はさらに、アメリカは「アメリカを脅かしたり、国境の外へ武力を行使したりするイラン政権の能力を組織的に解体しつつある」と述べた。
しかし、アメリカがこれを達成したことを示す証拠はない。紛争開始時には開かれていた水路であるホルムズ海峡の支配権をめぐる争いが数カ月にわたって続いているという事実は、中東地域およびより広い世界における事態の推移に影響を及ぼすテヘランの能力が依然として健在であることを示している(これについては後述する)。
開戦から数カ月が経過しても、テヘランの代理勢力は依然として大きな脅威であり、地域の混乱と原油価格の高騰を助長し続けている。イランが支援するイエメンのフーシ派反政府勢力は今月、サウジアラビアが支援するイエメン政府軍に対する猛攻を展開し、紅海沿岸にある港湾都市モカやペリム島などの戦略的要衝を制圧するなど、大幅な領土拡大を果たした。その結果、フーシ派は、紅海とアデン湾を結び、アラビア半島とアフリカ大陸を隔てるもう1つの重要な水路であるバブ・エル・マンデブ海峡の実質的な支配権を掌握するに至った。
バブ・エル・マンデブ海峡は、開戦前から重要な海上交通路だったが、ホルムズ海峡の閉鎖に伴い、その重要性はさらに高まりまった。テヘランとフーシ派は、アメリカが戦争を続ければバブ・エル・マンデブ海峡が封鎖される可能性があると数カ月前から警告してきたが、今やその脅しを実行に移せる状況にある。
一方、フーシ派とサウジアラビアの間では交戦が続いており、2014年に始まったものの2022年の停戦合意以降は概ね沈静化していた内戦に関連する緊張が再燃している。現在、イエメンが本格的な内戦状態に逆戻りするのではないかという懸念が高まっている。
サウジアラビアは先週、全長750マイル(約1200キロ)に及ぶ東西石油パイプラインを一時停止した。これは、イラク国内のイラン支援武装勢力によるものとサウジアラビア側が断定したドローン攻撃でこのパイプラインが損傷しただが、いつ稼働が再開されるかは不透明だ。このパイプラインはサウジアラビアの東部から紅海沿岸のヤンブー港まで原油を輸送するものであり、その一時停止は世界の石油供給量の約4%に影響を及ぼしている。
確かに、ハマスやヒズボラ(後者は長らく中東地域におけるテヘランの最強の同盟勢力と見なされてきた)といったイランの他の代理勢力は、数年前と比べて著しく弱体化している。しかし、これはほぼ全面的に、ガザ地区やレバノンにおけるイスラエルの軍事行動によるものだ。
●弾道ミサイルとドローン(Ballistic missiles and drones)
トランプ政権は、イランの弾道ミサイルおよびドローン関連の能力を破壊することも戦争の目的として掲げていた。4月、ヘグセスは、イランのミサイル計画は機能的に破壊され、イランは「もはやミサイルを製造できない(no longer build missiles)」状態にあると述べた。トランプもまた、イラン軍は「完全に壊滅した(totally destroyed)」と主張している。
確かに、イラン軍はこの戦争によって甚大な打撃を受けている。空爆が始まって以来、イラン軍や情報機関の幹部多数が殺害され、産業能力は低下し、通常戦力の海軍も大部分が壊滅した。
しかし、テヘランが依然としてミサイルやドローンを用いて地域各地の標的を攻撃し続けているという事実は、この目標がいまだ達成されていないこと、そしてトランプ政権が自らの軍事的成果を大幅に誇張していたことを示している。
また、イラン軍の弱体化の程度に関するトランプ政権の公的な主張は、情報機関による分析結果とも矛盾している。報道によれば、イランは開戦当初にアメリカ軍がミサイル施設や発射拠点を標的として数千回に及ぶ攻撃を行ったにもかかわらず、地下施設での弾道ミサイル生産を再開した。また、ドローンは製造が容易でコストも低いことから、イランのドローン運用能力を完全に破壊することは、そもそも困難なことだった。
●体制転換(Regime change)
トランプ政権は、イランの現体制を打倒することを主要な目標とすべきかどうかについて態度を揺れ動かしてきたが、開戦当初、イラン指導部の打倒がホワイトハウスの重要な目標の1つであったことは明らかだった。
トランプは2月28日、「誇り高きイランの偉大な国民の皆さん、今夜私はこう申し上げたい。皆さんの自由の時は近づいている」と述べた。「私たちの任務が終わった暁には、自分たちの手で政府を引き継ぐ。それは皆さんが手にするものとなるだろう。これはおそらく、何世代にもわたって訪れることのない唯一の好機となるはずだ」。
前最高指導者アリ・ハメネイ師を含むイランの最高幹部らが殺害されたものの、体制は依然として強固に維持されており、多くの面でむしろ硬直化(calcified)している。
「体制転換が目標であったとするならば、アメリカの行動はほぼ完全に逆効果(counterproductive)だった。体制は今や、より強固に定着している。国内での立場に対する自信を深め、より大胆になっている。現在の体制を主導しているのは軍や治安部門の指導者層であり、彼らは現実的な側面を持ち合わせているとはいえ、一様に西側諸国に対して敵対的であり、アメリカや西側諸国全般との広範な和解には関心を示している」と前述のグレゴリー・ブリューは指摘した。
●核開発プログラム(Nuclear program)
他のどの問題よりも、トランプはイランの核開発計画をこの戦争の主要な焦点として繰り返し取り上げてきた。トランプ大統領は、テヘランによる核兵器の保有を阻止するために戦争を継続する必要性を主張する一方で、アメリカがイランの核開発プログラムを「完全に抹消した(obliterated)」かのように誤解を招く発言も行っている。
アメリカの攻撃によってインフラが破壊され、国内の重要人物たち(トップクラスの科学者たちを含む)が殺害されたことで、イランの核開発プログラムが後退したのは疑いようのない事実だが、イランは依然として約440キログラム(約970ポンド)の高濃縮ウラン(highly enriched uranium、HEU)を保有している。専門家たちは繰り返し強調しているが、正確な所在が不明なこの備蓄にイランがアクセスできる限り、イランの核開発プログラムは脅威であり続け、無力化されたとは見なせない。
国際原子力機関(International Atomic Energy Agency、IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は今週、イランの核開発計画に対する同機関の監視体制が今年に入って「悪化(deteriorated)」したと懸念を表明した。「私たちは6カ月以上にわたり、イラン国内での現地検証活動を行っていない」とグロッシは述べ、IAEAがイランのウラン備蓄に関する「情報の継続性(lost continuity of
knowledge)」を失ってから「1年以上が経過している(well over a year)」ことを強調した。
「この核物質に関する情報が不足し、それを検証するための施設へのアクセスもできないという状況は、核拡散の観点から深刻な懸念事項であり、極めて緊急に対処する必要があります」とグロッシは語った。
トランプは、アメリカの高濃度ウラニウム(HEU)備蓄を回収すべきかどうかについて発言を二転三転させており、過去のアメリカの攻撃によって瓦礫の下に埋もれ、アクセス不能になっている可能性を示唆したこともある。「私たちはそれを回収するつもりだ。私たちには必要ないし、欲しくもない。回収後は恐らく廃棄するだろうが、彼らに持たせる訳にはいかない」とトランプは5月に述べている。
また、戦略国際問題研究所(the Center for Strategic and
International Studies、CSIS)の最近の分析によると、核関連施設と疑われる「ピッケックス・マウンテン(Pickaxe Mountain)」において、2026年に建設活動の「急増(surge)」が見られたことが衛星画像で明らかになっている。
先週、トランプ氏はピッケックス・マウンテンでの建設活動の報告を受け、アメリカが行動を起こす可能性があることを示唆した。「ピッケックスで何らかの動きがあることは把握している」とトランプは述べ、「イランには小細工を弄さないよう(not to get cute)忠告しておく。さもなければ、私たちは彼らを徹底的に叩くことになるだろうから」と語った。
そうした勇ましい言葉とは裏腹に、トランプ政権の実際の行動は、イランの核開発問題がホワイトハウスの優先順位リストにおいて後回しにされつつあることを如実に示している。核問題に進展が見られないことや、より広範な戦争において当初の目標を達成できなかったことを受け、トランプ政権は関心を他の目標へと移しているのだ。
トランプ政権はイランを経済的に追い詰めるべく動き出しており、海軍による海上封鎖に加え、「オペレーション・エコノミック・アウトキャスト(Operation Economic Outcast、経済的追放作戦)」と名付けた金融制裁などの措置を講じ、テヘランをさらに孤立させようとしている。スコット・ベセント財務長官は8月下旬にこの取り組みを発表した際、「私たちの目標は、テヘランが孤立無援の状態に陥るまで、この専制的な体制を支えるあらゆる経済的生命線を断ち切ることにある」と述べた。
しかし、イラン指導部は数十年にわたりアメリカの経済的圧力に耐え抜いてきた実績がある。そのため、今回のアプローチによって事態が実際に動き、将来の交渉でイラン側が譲歩するようになるのかどうかについては疑問の声も上がっている。
●ホルムズ海峡のコントロール(Control of Hormuz)
この戦争は今や、本質的にはホルムズ海峡における石油と海上輸送路をめぐる争いとなっている。
前述のグレゴリー・ブリューによれば、8月初旬にはホルムズ海峡を1日あたり約400万〜500万バレルの石油が通過していたが、現在その量は約1000万バレルに迫っているという。これはアメリカにとって好ましい状況であり、イランの石油輸出が完全に停止していることから、海軍による海上封鎖が功を奏していることも示唆している。一方で、ホルムズ海峡の通航量は開戦前の約5分の1にとどまっており、このことは、現在の状況が「極めて多大なリソースを投入することによって維持・管理されている」という事実を浮き彫りにしている。
このプロセスでは、アメリカ海軍や航空戦力が、小規模な船団を組んで海峡を通過するタンカーの防衛にあたっている。この体制により、過去1カ月間で海峡を通る石油の輸送量は着実に増加した。グレゴリー・ブリューによれば、これはエネルギー市場における「全面的な危機(general crisis)」の発生を遅らせる役には立っているものの、「リスクそのものを排除するものではない(not removing the risk)」という。
石油の国際的な指標であるブレント原油の価格は、木曜日の時点で1バレルあたり約104ドルだった。戦争が始まった2月直前の価格は、およそ72ドルだった。
トランプがこの戦争はアメリカにとって好ましい形で終わると考えているかという点について、ホワイトハウス当局者は『フォーリン・ポリシー』誌に対し、匿名を条件に次のように語った。「イランからは絶えず連絡があり、合意を強く求めている」ものの、大統領は「イランが核兵器保有の意図を恒久的に放棄するような、好条件の合意を結ぶ用意があるだけだ」とのことです。またこの当局者は、トランプは「適切な状況下(right circumstances)」であれば対話に応じる姿勢はあるが、「イラン側と交渉する必要はない」とも述べている。
「歴代大統領とは異なり、トランプ大統領はイラン政権にいいようにあしらわれることはない。トランプ大統領は、避けられないイランの崩壊という事態の推移を静観することに満足している」とこの当局者は語った。
※ジョン・ホルティヴァンガー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@jchaltiwanger.bsky.social、Xアカウント:@jchaltiwanger
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