古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:バーニー・サンダース

 古村治彦です。

>※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2025年11月にニューヨーク市長選挙が実施される。本選挙に向けて、民主党や共和党で予備選挙が実施された。ニューヨーク州やニューヨーク市が民主党の金城湯池であることを考えると、民主党の候補者になれれば、本選挙で当選することがほぼ確実ということになっている。今回、民主党予備選挙で、ニューヨーク州議会下院議員ゾーラン・マムダニ(Zohran Mamdani、1991年-、33歳)が勝利した。マムダニは前ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモを破っての勝利だった。
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アンドリュー・クオモはニューヨーク政界のサラブレッドだ。クオモ家はニューヨーク民主党の「王家」とも言える存在だ。アンドリューの父であるマリオ・クオモはニューヨーク州務長官、ニューヨーク州副知事、ニューヨーク知事を務めた。1984年の民主党全国大会で基調演説を行い、ロナルド・レーガン大統領を批判した。この演説が大きな注目を集めた。アンドリュー・クオモはビル・クリントン政権で住宅都市開発長官を務め、ニューヨーク州司法長官、ニューヨーク州知事を務めた。弟のクリス・クオモは報道分野で活躍し、CNNで自身の番組を持つほどであったが、兄アンドリューのセクシャルハラスメント疑惑をめぐり、擁護活動を行ったことでCNNを解雇された。マムダニがクオモを破ったということは、既成政治、エスタブリッシュメントに対する人々の不信が根深いということを示している。

 マムダニはウガンダ生まれで、父はアフリカ研究の学者、母は映画監督だ。両親はインド系で(父マフムードはウガンダ生まれ)、途中で南アフリカに移り、その後、アメリカに移った。父はコロンビア大学教授を務めている。マムダニはウガンダとアメリカの両方の国籍を保有している。マムダニは父と同じくイスラム教徒だ。メイン州の名門ボウディン大学に進学した。大学卒業後にラッパー活動をしながら、住宅カウンセラーを務め、社会活動や政治活動を行い、2020年にニューヨーク州議会下院議員に当選した。

 マムダニは、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)と同様に民主社会主義者を自認し、家賃の凍結、安価な公営住宅の増設、市営商店を設置し、安価や食品の供給、市営バスの無料化、富裕層への課税強化を訴えた。

 ニューヨーク州やカリフォルニア州といった民主党の金城湯池の地域では、民主党エスタブリッシュメント派への反感から、進歩主義派への支持が高まっている。これは、共和党側で言えば、ポピュリズムのドナルド・トランプ派が伸長していることと同じ動きである。民主、共和両党のエスタブリッシュメント派は自分たちが行ってきた政策の失敗を反省することから始めなければならないが、アメリカの国力減退は既に手遅れの時期に来ている。人々はますますエスタブリッシュメント派、中道から離れていくことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

マムダニがニューヨーク市長選挙民主党予備選で正式に勝利(Mamdani formally wins Democratic primary for NYC mayor

ジャレッド・ガンズ筆

2025年7月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5378850-zohran-mamdani-wins-dems-nomination/

「デシジョン・デスク・HQ」は、ニューヨーク州議会議員ゾーラン・マムダニは、順位付け投票による集計(ranked choice tabulation)が終了し、ニューヨーク市長選挙の民主党候補指名を正式に獲得したと予測している。

先週火曜日の予備選挙後、マムダニは、第1ラウンドの集計で約7ポイントの差で大きくリードしていたため、元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ(民主党)をはじめとする多くの候補者たちを破る番狂わせ(upset)の勝利はほぼ確実と思われていた。第1ラウンドで2位だったクオモが民主党予備選挙での敗北を認め、マムダニを祝福したことを受け、マムダニは勝利宣言を行った。

しかし、順位付け投票による追加集計は火曜日まで公表されなかった。

ニューヨーク市では、予備選挙日までに消印が押された郵送投票が集計対象となっているため、今後数週間のうちに未集計の投票が集計に加算される可能性がある。

ニューヨーク市の優先順位投票制度では、有権者は最大5人の候補者を優先順位順に選ぶことができる。先週のように、第一希望の票の過半数を獲得した候補者がいない場合、最も得票数の少ない候補者が脱落し、その票は支持者の第二希望の票に再配分される。

このプロセスはいずれかの候補者が過半数を獲得するまで継続される。

他の候補者たちは、得票数が少なすぎて他の候補者からの票を得ても結果に影響がなかったため、第3ラウンドに進む前に脱落した。ニューヨーク市会計監査官ブラッド・ランダーは11.2%で3位、ニューヨーク市議会議長エイドリアン・アダムズは4.2%で4位だった。

他の候補者全ての得票率は2%以下となった。

脱落した候補者の票のほぼ半分は第3ラウンドでマムダニに、4分の1強はクオモに集まった。また、4分の1の有権者は、マムダニとクオモを5人の候補者のいずれにも含めなかった。

マムダニは声明で、先週の予備選挙で民主党が「明確な声(clear voice)」を発し、「住みやすい都市、未来の政治、そして台頭する権威主義に抵抗することを恐れないリーダー」という信任を得たと述べた。

マムダニは「私たちのキャンペーンに投票してくれた54万5000人以上のニューヨーク市民の支持に深く感謝するとともに、エリック・アダムズを破り、働く人々を第一に考える市政を勝ち取る中で、この連携をさらに拡大できることを大変嬉しく思う」と述べた。

2021年からアメリカ民主社会主義党の支援を受けて州議会議員を務めるマムダニは、クオモに代わる進歩的な候補者として自らを売り込み、他の候補者を探している有権者の関心を惹きつけようとした。家賃凍結、無料バス、市営食料品店など、幅広い進歩的な政策提案を行い、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の支持を得た。

マムダニは他の候補者たちからも支持を受けており、特に市の監査役ブラッド・ランダーはマムダニと相互推薦を行っており、他の候補者を第2候補にランク付けするよう有権者に促し、クオモを破る可能性を高めた。

予備選開始当初、勝利の見込みがあるのはクオモかマムダニの2人だけと見られていた。

選挙戦は当初、クオモが他を大きく引き離して圧倒的な優位に立っていたが、他の候補者たちがなかなか支持を集められず、徐々にクオモとマムダニの2人による争いへと移行していた。

クオモは3月に選挙戦に参戦する前からほとんどの世論調査でトップを走っていたが、マムダニはここ数週間でその差を縮め、自身が大きく優位に立っていた若い有権者の支持を獲得した。クオモの強みは、特に高齢者層を中心とした年配層の支持だった。

クオモは、州および連邦レヴェルで長年公職を務めてきた経験を強調した。10年以上知事を務める前は、クリントン政権下で住宅都市開発省を率い、州司法長官も務めました。

クオモはまた、11月の大統領選挙でカマラ・ハリス前副大統領が敗北した後、アイデンティティを模索する中で、市と民主党全体が直面している問題は左派政権のせいだと非難した。

しかし、彼の純支持率は他の候補者のほとんどよりも一貫して低く、有権者の40%が彼に好意的ではないと見ていた。

知事在任中、クオモは新型コロナウイルス感染拡大中の介護施設での死亡者数を故意に過少報告したという非難を受け、複数の女性からセクハラの申し立てを受けた。クオモは、介護施設の監督に関する連邦政府のガイドラインに従っており、ハラスメントの申し立てを一貫して否定していると主張して自己弁護している。

しかし、マムダニは全般的に期待を上回る結果を残した。期待されていた分野では好成績を収め、弱点とされていた層でもまずまずの成績を残した。白人有権者や大学卒有権者に強いと予想されていたが、黒人やヒスパニック系有権者など、クオモがより強いと予想されていた層でもまずまずの成績を残した。

マムダニは、黒人とヒスパニック系が混在する地域や、裕福な高齢の白人地域で勝利を収めた。

しかし、クオモが総選挙で引き続き立候補するかどうかについては疑問が残る。

クオモは既に11月の予備選挙で、ファイト・アンド・デリヴァー党の党首として出馬表明している。予備選後、無所属で立候補するかどうかは、順位付け投票の最終結果を見てから判断すると述べた。

クオモ陣営の広報担当者リッチ・アゾパルディは声明で、30歳未満でこれまで投票経験のない有権者の数が「急増」したことで予備選挙の有権者層は変化したが、クオモの目標は変わりなく、住宅価格の高騰、住宅、教育、公共の安全問題への取り組みと人々の結束を通じて、ニューヨーク市民に「真の変化(real change)」をもたらすことだと述べた。

アゾパルディは、「過激主義、分断、空約束(empty promises)は、この街の問題の解決策にはならない。今回の選挙は予備選挙の有権者の一部の動機を探るものであり、大多数の有権者を代表するものではない」と述べ、マムダニに対するクオモの批判を改めて強調した。 アゾパルディは、「私たちの家族の経済的不安定さはここでの最優先事項だ。だからこそ、実行可能な解決策、結果、そして成果が非常に重要なのだ」とも述べた。

アゾパルディは、「私たちは、今後の対応策を決定していく中で、ニューヨーク市内全域の人々と話し合いを続けていく」と語った。

CNNは、クオモは少なくとも11月の選挙では候補者名簿に残るものの、今後数カ月で積極的に選挙活動を行うかどうかは未定だと報じている。

マムダニは既に、無所属で再選を目指す現職のエリック・アダムズ市長、共和党候補のカーティス・スリア、そして無所属のジム・ウォルデンと対決する構えだ。予備選挙とは異なり、ニューヨーク市の総選挙では順位付け投票は行われず、勝者は他のどの候補者よりも多くの票を獲得するだけで済む。

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ゾーラン・マムダニの勝利から得た6つの教訓(6 lessons from Zohran Mamdani’s victory

スティーヴ・イスラエル筆

2025年6月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5372085-6-lessons-from-zohran-mamdanis-victory/

ニューヨーク市の政治は常に大げさで、強引で、ドラマチックなものだった。今週、それはブロードウェイの舞台にふさわしいものとなった。

現職の民主党所属のニューヨーク市長エリック・アダムズは、自身の支持基盤からあまりにも不人気になり、予備選への出馬すら断念した。彼のキャラクターは、トランプ大統領の公然たる反対者から、6件の起訴状を前にトランプ支持者へと転落した。そして驚くべき偶然にも、司法省は起訴状を取り下げた。

ニューヨーク州前知事アンドリュー・クオモが選挙戦に参戦し、莫大な資金集めで中道左派の他の候補者を瞬く間に追い落とした。一方、生まれ持った才能とテレビ映りの良さを兼ね備えた若き運動家ゾーラン・マムダニは、主流政治(mainstream politics)に対する人々の不満に刺激され、民主党支持基盤の左派を固めた。

まるで「ラマンチャの男」と「オール・ザ・キングス・メン」が出会ったかのようだ。

衝撃の結末:民主社会主義者がニューヨーク市長選挙の民主党予備選挙で勝利した。マムダニが主導権を握った。

多くの中道派民主党員にとって、マムダニの勝利は選挙前の楽観的な予測さえも大きく上回り、体制に衝撃を与えた。しかし、政治家や評論家たちは、この選挙戦から全国的な結論を導き出す際は自己責任で判断すべきだ。そこには、単なる短い言葉の断片を超越する複雑な事情がある。

ニューヨーク市長選挙民主党予備選から得られた教訓をいくつか挙げよう。

第一に、マムダニの勝利は、ほとんどのアメリカ人がイデオロギーの中心、あるいはその付近に位置しているにもかかわらず、アメリカ政治の中心は維持されていないことを示唆している。トランプとその側近たちは、共和党の正統派思想と制度を極右に引きずり込み、マムダニの勝利は民主党が再び極左に引きずり込まれたことを示唆している。私たちは反動的な政治環境(a reactionary political environment)にあり、一方の行動が他方のエネルギーを刺激している。

第二に、民主党にとって、マムダニの選挙運動は、街頭だけでなく州議会や連邦議会代表団においても世代交代を確固たるものにするものだ。より若く、より進歩的な活動家たちが政治システムに参入しつつある。これは、国政、州政、地方自治体における民主党にとって良いことだ。建設的な連携を築き、友軍の攻撃を避けることができれば、なおさらだ。

第三に、今回の選挙から一般的な傾向を推測することはできても、全米の民主党の顔ぶれを決めることにはならない。マムダニは、左派の熱狂の波に乗り、デジタルに精通した統制のとれた選挙戦を展開した。しかし、ニューヨーク市の民主党登録者の30%しか投票に行かなかった中で、彼はこの選挙に勝利した。これは、2026年に連邦下院をひっくり返すために民主党が激戦選挙区で説得する必要のある有権者を代表するサンプルではなかった。マムダニは称賛に値するが、ニューヨーク市ブルックリンとアイオワ州ブルックリンの選挙に勝つことは全くの別物だ。

第四に、民主党にはこの最悪の状況(perfect storm、パーフェクト・ストーム)においても明るい兆しがある。もし民主党が、進歩的左派の巨大なエネルギーで穏健派有権者たちにアピールする常識的な政策アジェンダを実現できれば、民主党は勝利の戦略を手にすることができる。有権者の一方の派閥を満足させるために他方の派閥を見捨てなければならないという議論は、ゼロサム戦略であり、選挙戦の戦場を拡大する方法ではない。左派対中道派ではなく、勝つためには両方がいなければならない。マムダニの焦点は、進歩主義派や穏健派が受け入れることのできる多くの問題、つまり、手頃な価格、生活の質、億万長者減税のための医療費削減に反対することのプレビューに役立つ。

第五に、マムダニの圧勝でさえも、彼の勝利の連合に軟弱な部分があることを明らかにしている。マムダニの勝利は印象的だ。クオモの牙城であるスタテン島とクイーンズでさえも、マムダニが勝利した。しかし、民主党がマムダニの戦略を全国的に採用しようとする動きには警告の兆候がある。

マムダニは 「金持ち優遇(soak the rich)」のメッセージを発していたにもかかわらず、高所得者層と中所得者層によって当選したのに対し、クオモは低所得者層を圧倒的に獲得した。再分配政策にもかかわらず、マムダニが市内の富裕層を納得させることができたのは、マムダニの政治運動にとって良い兆候である。しかし、民主党が2026年と2028年に勝利するためには、労働者階級の有権者を獲得する必要がある。

そして、バーニー・サンダースが2度の大統領選予備選挙で見せたパフォーマンスとは異なり、マムダニはクオモも圧勝した黒人有権者に苦戦した。中間選挙に出馬する民主党が黒人有権者の支持を得られなければ、来年11月に民主党が連邦下院をひっくり返すチャンスはない。マムダニの連合は今回の予備選挙で勝利するには十分だったが、民主党が全国的に勝利するには不十分だ。

第六に、民主党はマムダニのデジタル戦略による草の根動員を再現すべきである。あるXの投稿では、「Zohran Mamdani 」とツイートするだけで、すぐに1000の「いいね!」を獲得できると言われている。これは、彼のヴォランティアがニューヨーク市中の150万以上のドアをノックする、強力な地上戦に変換された。彼のダイナミックなキャンペーンは、クオモの無気力なメッセージングとは対照的だった。

ニューヨーク市長予備選挙は、11月の選挙も同様に奇妙な展開となるだろう。クオモとアダムズには、依然として無所属の票が残っている。共和党候補のカーティス・スリアワは、マムダニの立場、特にイスラエルに対する忌まわしい見解に反発している民主党支持者を引きつける新たな機会を得るかもしれない。

つまり、今後さらにドラマが展開される可能性があるということだ。これはまだ幕間の出来事に過ぎない。

※スティーヴ・イスラエル:ニューヨーク州選出の連邦下院議員(8期)を務めた。2011年から2015年まで民主党連邦下院選挙委員会の委員長を務めた。

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マムダニの勝利は民主党に懸念と教訓をもたらす(Mamdani’s victory brings concerns, and lessons, for Democrats

ダグラス・ショーエン、カーリー・クーパーマン筆

2025年6月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5374228-democrats-leftward-polarization-zohran-mamdani/

2024年の大統領選挙の重要な教訓が、民主党が経済・社会問題において中道に近づく必要があるというものだったとすれば、先週のニューヨーク市選挙は、民主党が教訓を学んでいないことを如実に示している。

実際、33歳の州議会議員ゾーラン・マムダニがニューヨーク州元知事アンドリュー・クオモを破って勝利したことは、民主党が自らのルーツを再発見するどころか、さらに左傾化を続けていることを示唆している。

さらに、進歩派や民主社会主義者はマムダニの総選挙での勝利を喜ぶだろうが、穏健派の民主党員は不安を抱いている。これは、穏健派と進歩派の間で分極化し、どちらの方向へ進むべきか確信が持てない民主党の現状を反映している。

はっきりさせておくと、マムダニの精力的な選挙運動が民主党にとってのロードマップとなるべきであることは否定できない。

マムダニは生活費に対する人々の根深い不満を掘り起こし、通常は有権者たちとしてあまり信頼できない若者の心を躍らせた。さらに、前回の選挙で民主党指導部がほとんどできなかった方法で有権者たちとの繋がりを築いた。

しかしながら、民主党は、民主党が向かっている方向性に警鐘を鳴らしつつも、活力に満ちた明るい選挙戦を展開するための教訓を吸収すべきだと言えるだろう。

マムダニは、あまりにも無意味な政策を掲げて選挙戦を展開し、『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ニューヨーク・ポスト』紙の編集委員会を結集させ、ニューヨークのような大都市を率いる能力がないと非難した。

このように、マムダニには4つの根本的な懸念事項があり、民主党がさらに1つの教訓を心に刻むべきだ。

第一の懸念は、マムダニが自らを社会主義と称し、極端な思想を掲げていることだ。2024年の選挙後数カ月にわたる世論調査では、民主党支持者でさえ、党がさらに左傾化するのではなく、中道寄りになることを望んでいることが明らかになった。

ギャラップ社の世論調査によると、民主党支持者と民主党寄りの無党派層のかなりの割合(45%)が、党がより穏健になることを望んでいるのに対し、党がよりリベラルになるべきだと答えたのは29%だった。

2021年に実施された同じ世論調査と比較すると、党が中道化になることを望む民主党支持者の割合は11ポイント増加し、よりリベラルになることを望む割合は5ポイント減少した。

共和党は、マムダニの極左政策、すなわち公共交通機関の無料化、警察予算の削減、そして、ソヴィエト連邦でさえ最終的に悪い考えだと認識した市営食料品店の開設といった政策を、民主党全体の代表として描き出そうとするだろう。

実際、トランプ大統領とJD・ヴァンス副大統領は既にそうし始めている。

トランプは民主党が「100%共産主義の狂人(100 percent Communist Lunatic)」を選んだことを激しく非難し、ヴァンス副大統領はマムダニを「民主党の新党首(new leader of the Democratic Party)」として冗談交じりに祝福し、さらに彼を「反ユダヤ主義の社会主義過激派(antisemitic socialist radical)」と呼んだ。

第二に、『ニューヨーク・タイムズ』紙が指摘したように、マムダニにはニューヨーク市を統治する資格が全くない。

彼の極左的な思想、経験不足、年齢を別にしても、不動産会社の大物スコット・レヒラーが「資本主義の首都(the capital of capitalism)」と呼ぶ場所で資本主義を攻撃し、大幅な増税を計画していることは、ニューヨーク市の経済を衰退させるに違いない。

同様に、3つ目の懸念は、マムダニが特定の問題でトランプ大統領に対抗できるかどうかだ。

経験豊富で資格もはるかにあるカリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサム(民主党)はこの点で成功を収めているが、ニューサムでさえホワイトハウスとの関係構築に失敗することがある。

経験不足のマムダニは、より良い結果を出すことができるだろうか? それとも、より可能性が高いのは、トランプ大統領と、ニューヨーク州知事であるキャシー・ホウクル(民主党)と衝突することになるだろうか。ホウクル知事は、マムダニの選挙運動の柱である減税政策に既に反対を表明している。

マムダニが本選挙で勝利すると仮定すると(実際、勝利する可能性が高い)、最後の懸念が浮上する。それは、マムダニがどのようにニューヨーク市を統治するのかということだ。

もし彼の任期が、非常に似た選挙戦を展開した同じく社会主義者のシカゴ市長ブランドン・ジョンソンのそれと似たものになれば、ニューヨーク市にダメージを与えるだけでなく、民主党の評判を落とすことになるかもしれない。

マムダニは2026年の中間選挙の10カ月前、来年1月に就任宣誓を行う予定だ。そして、彼の任期のピークは2028年の大統領選挙となるだろう。

マムダニの支持率がジョンソンと同程度(最近の世論調査ではわずか26%)であれば、共和党は恩恵を受けるだろう。

民主党所属の連邦議員たちは、生ぬるい支持から完全な拒否まで、様々な反応を示した。

連邦議会民主党指導部のチャック・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出)とハキーム・ジェフリーズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出)はマムダニを祝福したが、重要なことは、全面的な支持を表明するには至らなかったことだ。

ローラ・ギレン連邦下院議員、トム・スオッツィ連邦下院議員、ジョシュ・ゴットハイマー連邦下院議員といったニューヨーク州の中道派の民主党議員たちも、マムダニから距離を置いており、ギレン議員はマムダニについて「容認できない反ユダヤ主義的な発言を繰り返しており、非常に憂慮すべきだ」と述べている。

ビル・クリントン元大統領の下で財務長官を務めたラリー・サマーズは、「インティファーダをグローバル化せよ(globalize the intifada)」というスローガンを否定しなかったが、「トロツキスト的な経済政策を提唱する候補者を選出した党の将来について、深く憂慮している」と記している。

確かに、こうした懸念にもかかわらず、民主党にとって、特に党が将来の方向性を決定づける中で、非常に現実的な教訓が1つある。マムダニが勝利したのは、彼が熱意あふれる選挙戦を展開し、有権者をその熱意で鼓舞したからだ。政治的右派と左派の両方の有権者が既成勢力の候補者にうんざりしている時代に、マムダニは非常に現実的な問題を取り上げた。

同様に、マムダニが選挙戦で訴えた問題、主に住宅価格の高騰は、たとえ彼の解決策が的外れであったとしても、正当な懸念事項である。有権者は両陣営の候補者に対し、生活費の高騰が最大の懸念事項であると訴えてきたが、対策はほとんど講じられていない。

これを念頭に置くと、民主党は、現実に根ざさないマムダニのような極端な考えではなく、真の解決策を提示する候補者を選び、選挙活動を行うことが重要だ。

2024年11月の大統領選挙でトランプを勝利に導いた3つの課題、すなわち生活費、犯罪と公共の安全、そして移民問題を考えてみよう。最初の2つの課題について、マムダニは、巨額の公共支出プロジェクトを賄うために、企業を圧迫するほどの極めて高い税金を約束し、(少なくとも過去には)ニューヨーク市警の予算を削減した。これは、昨年11月に有権者に拒否されたジョー・バイデン前大統領やカマラ・ハリス副大統領の政策よりも、はるかに左寄りだ。

そして移民問題に関して、マムダニがニューヨーク市のサンクチュアリシティ法を強硬に支持すれば、民主党はアメリカ国民よりも移民、さらには暴力犯罪者を重視するという考えを強めることになるだろう。

言い換えれば、民主党に必要なのは、有権者と繋がり、彼らが真に関心を持つ問題について、陳腐な言葉ではなく具体的​​な解決策を提示し、熱意を喚起する選挙活動を展開する候補者だ。

結局のところ、民主党は、未来に対する考え方が大きく異なる穏健派と進歩主義派に分極化し(polarized)、岐路に立たされている。民主党は、自らの立場をしっかりと見定め、党がどちらの方向に進むべきかを決めることが不可欠だ。

穏健派が優勢となり、民主党がさらに左派に進むのではなく、その原点に戻ることが私たちの望みだ。

ニューヨーク市はアメリカの大部分を代表するものではない。マムダニのような候補者が党の全国的な顔になったとしても、民主党が近い将来、政治の荒野から抜け出せるとは考えにくいだろう。

※ダグラス・E・ショーン、カーリー・クーパーマン:ニューヨーク市に拠点を置く世論調査会社ショーン・クーパーマン・リサーチの世論調査員兼パートナー。2人は共著で、『アメリカ:団結か死か(America: Unite or Die)』を刊行している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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アメリカでは19世紀から20世紀にかけて、社会主義が人気を博した時代がある。1930年代、1960年代にそれぞれ社会主義が人気を集め、それぞれの時期に労働組合が発達し、公民権運動やジェンダー、人種、福祉について発展していった。そして、現在もまた、社会主義が人気を集めている。このブログでもご紹介しているが、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は「民主社会主義者(Democratic Socialists)」を自称している。若者たちは彼らを支持し、民主党エスタブリッシュメントを批判している。
 アメリカで社会主義が人気を集めた時期を考えてみる。1930年代は、輝ける1920年代の好景気から一転しての大恐慌の時代となり、社会不安は増大した。労働者たちが待遇改善を訴え、警察やギャングとの衝突も頻発した。1960年代は、第二次世界大戦で勝利した後、世界第一位の国家となったアメリカでは人々の生活は大いに向上し、景気も良かった。しかし、ヴェトナム戦争に突入し、財政赤字は増大し、景気も減速し、人々は生活に不安を覚えるようになった。

そして、現在である。各種報道でもあるように、アメリカ国民の生活は厳しく、アメリカの国力は減退している。そうした中で、若者たちは「自分たちは自分の祖父母や父母たちの世代よりも良い生活を望むことはできない」という諦めを感じている。全体として、将来に不安を覚えている。アメリカで社会主義が人気を集める時は、人々の将来への不安が増大している時であり、経済に不安を感じている時だ。大きく言えば、アメリカ経済はどうなるのか、資本主義はどうなるのかという不安が基底にある。

1930年代、1960年代のそれぞれで、人々は不安を乗り越えた。しかし、21世紀の今回の場合はどうだろうか。資本主義の行き詰まりということになっているのではないかと私は考えている。世界覇権国がアメリカから中国にシフトしていくということは、西洋支配600年の近代が終わるということであり、西洋近代が生み出した資本主義もまた変容し、終わっていくのではないかとも考えられる。このような大きな不安が基底にある時代が進んでいて、そうした動きに日本も飲み込まれているのだろうと考える。日本では参議院議員選挙が始まった。選挙戦という狂騒曲は表面の動きであり、その下の大きな動きに目を向けていきたいものだ。
(貼り付けはじめ)
カール・マルクスのアメリカでの好景気(Karl Marx’s American Boom

-新刊書では共産主義思想家が資本主義国家アメリカでどのように受け入れられたかの歴史を検証する。

グレゴリー・ジョーンズ=カッツ筆

2025年5月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/30/karl-marx-america-boom-communism-capitalism-hartman/

アンドリュー・ハートマンは著書『アメリカのカール・マルクス』の中で次のように述べている。「私たちは第四次マルクスブームを生きている。アメリカ人は、1960年代、いや、もしかしたら1930年代以降に匹敵するほどマルクスについて考えている」。この20年間は、社会と政治の激動で特筆すべき20年間だった。その証拠は数多くある。トランプ、マスク、そしてMAGA運動の他のメンバーは、各機構・制度への「マルクス主義」の浸透(the “Marxist” infiltration of institutions)を常に非難している。一方で、あるアメリカ人(バーニー・サンダース連邦上院議員)は、世界で最も有名な社会主義者となっている。

一方、アメリカの学者たちは堅実にマルクスに取り組んでいる。例えば、ヴィヴェック・チッバーの『階級マトリックス』(2023年)は、マルクス主義思想を用いて社会理論における「文化的転回(cultural turn)」を批判し、資本主義における階級構造(class structure)と物質的関係(the material relations)の重要性を浮き彫りにしている。あるいは、プリンストン大学出版局が半世紀ぶりの2025年に、英訳したマルクスの『資本論 経済学批判(Kapital: Critique of Political Economy)』第1巻を考慮してみるのも良い。これは「21世紀のマルクス(Marx for the twenty-first century)」を提示している。

アメリカにおける他のマルクスブームの時と同様に、今回のブームは、特に批判者の間では、純粋なマルクス主義イデオロギーへの回帰を目指してはいない。むしろ、1930年代や1960年代と同様に、マルクスの資本主義批判は現代社会の不安定さと暴力性(the volatility and violence of our contemporary society)を分析するための重要なリソースであり、代替モデルを模索する上で不可欠であるという考えに突き動かされている。経済的困難、資本主義の失敗(2008年の金融危機など)、社会正義への懸念、そして環境破壊といった要因が、読者、活動家、そして学者を再びマルクスの著作へと導いている。

『アメリカのカール・マルクス』は、周期的なマルクスブームの紆余曲折を理解する上で大きく貢献している。500ページ、9章からなる本書は、19世紀半ば以降、アメリカの読者がマルクスをどのように利用してきたかを巧みに歴史的に描いている。ハートマンは、「アメリカ合衆国におけるマルクスの受容は、左派、中道、右派、そして時にはそれらが同時に現れた歴史である。マルクスは、あらゆる政治的背景を持つアメリカ人にとって、相談相手(a sounding board)としての役割を果たしてきた」と書いている。

ハートマンは、アメリカ人は時を経て、マルクスに対して主に3つの方法で自らを位置づけてきたと論じている。第一のアプローチは「マルクスの労働に関する古典的な理論への献身(its devotion to his classic theory about labor)」において注目に値し、「ユージン・デブス、エリザベス・ガーリー・フリン、A・フィリップ・ランドルフ、バーニー・サンダースといった人物」によって用いられてきた。第二のアプローチは、「ハイブリッド・マルクスの創始者([t]he creators of a hybrid Marx)」であり、彼らは「キリスト教、共和主義、ポピュリズム、プラグマティズム、黒人ナショナリズム、先住民性(indigeneity)、ケインズ主義、フェミニズムといった伝統とマルクス主義を融合させることで、マルクスをアメリカの様々な状況に適応させた」。そして第三のアプローチは、「不利な解釈の積み重ね(“the array of unfavorable interpretations)」であり、「反共産主義がアメリカ合衆国をどれほど異常なほど形作ってきたかを物語っている」。

『カール・マルクスのアメリカ』は、広範囲に及ぶ著作だが、ハートマンは「マルクス・アメリカ弁証法(the Marx-America dialectic)」を形作った重要なパターンを有益な形で掘り起こしている。「20世紀を通して発展してきたアメリカに対する私たちの理解そのものが、地下に潜むマルクスによって支えられている」と彼は書いている。ハートマンの著書は、「マルクス・アメリカ弁証法」など存在しなかったという主張に「修正を加えている」とハートマンは主張し、「マルクスの思想はアメリカの政治的伝統に同化されていないものの、無数の反共産主義者の懸命な努力にもかかわらず、一掃されることもなかったことを示している」と述べている。統合される(integrated)ことも、清算される(liquidated)こともなかったのが、『カール・マルクスのアメリカ』である。なぜなら、マルクスに賛同して考えようと反対して考えようと、親マルクスであれ反マルクスであれ、マルクスを高めようと葬り去ろうと、アメリカ人はマルクスが設定した概念的・歴史的枠組みの中で活動してきたからだ。この点で、ハートマンは解釈弁証法的な逆転を用いて受容史を記述している。「たとえマルクスの衰退が訪れても、それはマルクスのブームだ(Even when there’s a Marx bust, it’s a Marx boom)」。こうしたアプローチは、マルクス主義思想そのものについて長らく問われてきた、反証可能性に関するいくつかの疑問(questions about falsifiability)を提起する。

ハートマンが掘り起こした歴史的パターンの具体例を挙げよう。「マルクス主義の台頭には、常に赤狩り(red scares)が伴ってきた」。さらに正確に言うと、第6章でハートマンは、戦後保守主義がマルクスを脅威、非米的あるいは反米的と扱ったことを検証している。ハートマンは、「戦後の赤狩りの助けを借りて、保守派はマルクスを消し去ることにほぼ成功した。しかし、皮肉にも、マルクスに対する右翼の注目は、たとえ最も陰謀的な形であっても、暗い鏡を通してではあるが、存続するのを助けた」と書いている。こうした歴史の皮肉、あるいは弁証法的な逆転は、現代の私たちにとっても馴染み深いものとなっている。ソーシャル メディアの時代では、噂が虚偽であると話すだけで、その噂はさらに広まってしまうのだ。

第8章でハートマンは、1980年代と1990年代に歴史家や文化理論家によってマルクスがどのように利用されたかという皮肉を掘り起こしている。彼は次のように書いている。「規制されたニューディール版を消滅させた『新自由主義』資本主義への傾倒が進む国で、1000人のマルクスが花開いた。マルクス主義が政治的な経路から切り離されたことで、創造的な方法で発展することができた。歴史は皮肉を呼び起こすことをやめない。特にマルクスが関与している場合はそうだ」。言い換えれば、「マルクス」がいわゆる現実の政治から排除されたことで、逆説的に、例えばフレドリック・ジェイムソンのような文化政治家がマルクスを独創的な方法で解釈することが可能になった。しかし、マルクスが政治的な手段から引き離されることは、創造的な解釈が生まれ、普及するために必要だったのだろうか? そして、なぜマルクスは歴史の皮肉を特に引き起こしたのだろうか? これらの逆転は、資本主義が「最も進んでいた」のはアメリカであり、したがって、マルクスとアメリカは、ジキルとハイド、ホームズとモリアーティのように、概念と物質のダンスに閉じ込められた双子にすぎないからではないだろうか?

ハートマンはこうした問いに答えることにそれほど関心がない。しかし、『アメリカのカール・マルクス』には、彼が特定のマルクス解釈に傾倒していることが垣間見える。実際、ハートマンは、21世紀が進むにつれて周縁化され、抑圧されてきたとも言える労働における古きマルクスが、私たちの元に、そして私たちのために戻ってくることを望んでいるように思われる。そして、マルクスは本書全体を通して、地下に潜むマルクスなのだ。例えば、第8章の「ポストモダンのマルクスか?」という節(疑問符に注目)で、ハートマンはフランスの哲学者ジャック・デリダがマルクスの唯物論(Marx’s materialism)を言説的な言語分析(discursive analyses of language)へと転化させたことを批判している。「より広い意味では」とハートマンは書いている。「デリダは、ポストモダンの秘教主義の媒介者(an agent of postmodern esotericism)というよりも、むしろ知的左派が物質的関心を放棄し、身体化されていない文化的・テクスト的関心を優先したことの兆候として理解されるべきである」。デリダのこの表現から明らかなのは、ハートマン(そして彼が好意的に引用する多くの批評家)にとって、デリダは「労働に関する古典的理論」で知られるマルクスを有害な形で脇に追いやったということだ。ベルリンの壁崩壊とソ連崩壊後の1993年にデリダがそうしたことは、資本主義への屈服(capitulation to capitalism)のようにも聞こえる。

ハートマンの特定のマルクスへの偏愛は、アメリカの文学理論家マイケル・ハートとイタリアの政治哲学者アントニオ・ネグリが2000年に著した『帝国(Empire)』の分析にも顕著に表れている。「マルクスを反逆の預言者(a rebel prophet)ではなく、パラダイム提供者(a paradigm provider)とみなした学者たちとは異なり、ハートとネグリは革命的なマルクスからインスピレーションを得ていた。しかし彼らは、資本主義はマルクス主義のパラダイムよりも長く生き残ったと考えていた。彼らのマルクスは、彼の思想を妥当なものにしていた素材から切り離されていた。『帝国』は、反グローバリゼーション運動が労働者階級の政治から乖離したことの副産物である」。ハートマンは、21世紀初頭までに、革命的な労働者階級という主体は、アメリカにおけるマルクス解釈の多くから切り離されていたと指摘する。ハートやネグリをはじめとする左翼主義者たちが唱えた非物質主義(non-materialism)は、正義の精神ではあったものの、政治的には欠けており、全く歯が立たなかった。ハートマンは次のように書いている。「2000年代初頭のアメリカ左翼は、奴隷制度廃止論(abolitionism)に遡る道徳的左翼の伝統に根ざした感性を示していた。道徳的左翼の崇高な目標は・・・時には達成可能だった。しかし、新自由主義の主権に対峙するにあたって、道徳的左翼主義は十分な備えができていないことが証明された」。

ハートマンの文章の最後で、労働における古きマルクスの思想が再び炸裂する。「現在のストライキの波は1934年のそれほど大きくはないものの、労働者階級の意識は高まりつつある。世論調査では、労働組合が半世紀ぶりに人気を集めていることが示されている」。しかしハートマンは、こうした状況がアメリカにおける民主社会主義革命の勃興と資本主義の終焉(a democratic socialist revolution and finish off capitalism in America)につながるかどうかについては予測を避けている。「私たちは後期資本主義(late capitalism)に生きているのかもしれないし、そうでないかもしれない」と彼はためらいがちに記す。「これはかつて過度に楽観的なマルクス主義者の間でよく使われた言葉だ」。この点で、ハートマンは、フレドリック・ジェイムソン、スラヴォイ・ジジェク、マーク・フィッシャーといった著名人とも意見が一致している。ジェイムソンの言葉を借りれば、「世界の終焉を想像する方が資本主義の終焉を想像するよりも簡単だ」。実際、ハートマンにとって、資本主義が終焉すれば、マルクスもついに去ることになる。ホームズとモリアーティのように、彼らはライヘンバッハの滝を渡りきるのだ。ハートマンは文章の終わり近くに「マルクス受容の長い歴史によって明らかにされた真実は、資本主義が存続する限り、マルクスを殺すことはできないということだ」と書いている。

おそらく、アメリカにおけるカール・マルクスの政治的教訓は、マルクス読解の知的歴史に見出されるものではない。その代わりに、今ここでマルクスを利用し、マルクスのブームと衰退を終わらせ、それによってマルクスを休息させるという精神にあるのかもしれない。ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァクが『グローバル・マルクス?』の中で次のように書いている。「マルクスの書いたものを『知る』とは何だろうか。マルクスの著作を『知る』ということは、知識とは知識についての知識であるという古い信念を維持することである。・・・補足的な仕事は、世界を変えようとすることである」。このようなマルクス主義理論の実践、マルクスの地下に潜む亡霊の祓い清めは、資本主義の終焉に伴うものであり、アメリカン・プロジェクトの長い間約束され、悲しくも妨害されてきた理念や理想の実現につながるだろう。

グレゴリー・ジョーンズ=カッツ:アメリカの知識人・文化歴史家。現在、ドイツのバート・ホンブルクにある人間科学研究所の博士研究員、およびフランクフルト・ゲーテ大学一般比較文学研究所の研究員を務めている。

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。

 民主党の反主流派である進歩主義派グループのスター議員であるバーニー・サンダース連邦上院議員とアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)連邦下院議員が一緒になって、「寡頭政治と戦う」というキャンペーンを行っている。AOCはサンダースの大統領選挙民主党予備選挙の手伝いから政治に関心を持ち、地元のヴェテラン議員を破って連邦下院議員になった。AOCは鮮烈なデビューを飾った。このことは、このブログでかなり早い時期にご紹介している。

 サンダースとAOCは、金持ちが政治に影響を与えていることを批判し、その矛先はドナルド・トランプとイーロン・マスクに向かっている。しかし、彼らがまずやるべきは、民主党のホワイトハウス、連邦上下両院での敗北を総括することだ。トリプルレッド状態に何故至ってしまったのかということを反省することだ。最大の反省点は、民主党が労働者たちを見捨てたことだ。そして、民主党こそが金も経ちの党になっていることだ。

 生活が苦しい労働者たちの望む政策ではなく、高尚な、イデオロギーに偏った政策を民主党は実行してきた。民主党はもともと貧しい人、労働者、マイノリティの党であった。しかし、その支持基盤を彼らは見捨てたのだ。そのために、2024年の選挙で大惨敗を喫した。

 サンダースとAOCは、そのことを分かっているだろう。下の記事にあるように、サンダースはキャンペーンを通じて、「無所属の立候補者を増やす」という目的を語っている。「民主党から優秀な政治家を生み出す」ということを述べてはいない。これは、サンダースが民主党に何の期待もしていないということを示している。

 サンダースとAOCはイーロン・マスクを標的にして批判を展開している。マスクが社会保障を「史上最大のネズミ講」と呼んだことを批判している。確かに社会保障は人々にとってのセーフティネットだ。従って、きちんと機能しなければならない。それでは、これだけ人々の不満が募っているのは何故なのかということを考えねばならない。負担と受益のバランスが悪すぎるということは世界各地で起きていることだと考えられる。負担が増える人たちは将来、自分たちが受益者になるときに現在の水準の維持は不可能だという絶望を持っている。一方で、現在の受益者たちは「逃げ切った」「負担よりも受益が多い」ということを自慢げに語る。このような状態を生み出した社会保障政策を主導してきた民主党こそが反省すべき点が多々あると考えられる。

 民主党はリベラルの本筋が離れている。そのことに人々が不満を持っているのだ。そのことが分からずに、ただトランプとマスクを攻撃したところで、民主党の支持が回復するということはない。

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オカシオ=コルテスとサンダースが初の共同集会でマスクを攻撃(Ocasio-Cortez, Sanders take aim at Musk in first joint rally

ジャレッド・ギャンズ筆

2025年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5206479-ocasio-cortez-sanders-take-aim-at-musk-in-first-joint-rally/

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、今週行っているツアーでの最初の共同集会で、イーロン・マスクへの批判に狙いを合わせた。

進歩主義派の連邦議員たちは、サンダースが全国を回って展開している、「寡頭政治と戦う(Fighting Oligarchy)」ツアーの一環として、木曜日にラスヴェガスに集合した。ネヴァダ州選出のスティーブン・ホースフォード連邦下院議員(民主党)も木曜日のイヴェントに出席した。

オカシオ=コルテスは、マスクのような国内の富裕な人々が、裕福なアメリカ人への追加減税を可能にするために、メディケイドや社会保障(Social Security)などのプログラムを標的にしていると主張した。

オカシオ=コルテスは「私たちがここにいるのは、極端な権力集中と腐敗(an extreme concentration of power and corruption)がかつてないほどこの国を支配しているからだ」と発言した。

オカシオ=コルテスは、アメリカでは寡頭政治が定着しつつあり、最も経済的、政治的、技術的権力を持つ人々が「公共の利益を破壊して自分たち自身を豊かにし、何百万人ものアメリカ人がその代償を払っている(destroy the public good to enrich themselves while millions of Americans pay the price)」と主張した。彼女は特にマスクを名指しした。

連邦政府の規模を縮小し、連邦政府機関全体で大量解雇を実行するトランプ政権の取り組みの顔であるマスクは、連邦政府における詐欺と浪費(fraud and waste in the federal government)を追及したいと繰り返し述べている。

社会保障は、何百万人もの受給者と申請者に事務所への訪問を義務付けている

しかし、マスクの発言の一部と連邦議会の共和党所属の議員たちの行動は、ドナルド・トランプ大統領がこれらのプログラムへの潜在的な削減に関する懸念を和らげようと繰り返し努めているにもかかわらず、社会保障、メディケア、メディケイドへの削減が行われるかもしれないという懸念を煽っている。

マスク氏は社会保障を「史上最大のネズミ講(biggest Ponzi scheme of all time)」と呼び、最近は社会保障のような給付制度(entitlement programs)で詐欺(fraud)が蔓延していると示唆した。

トランプは社会保障、メディケア、メディケイドを削減しないと繰り返し述べているが、亡くなった数千万人が社会保障給付を受けていると何度も虚偽の主張をしている。

一方、連邦下院共和党が承認した予算決議では、メディケイドを監督する下院エネルギー・商務委員会に対し、管轄下のプログラムで少なくとも8800億ドルの削減を行うことを求めている。

オカシオ=コルテスは、現在の政治システムは脅威に対応する能力がなく、むしろ政治における金銭の影響を通じて脅威の発生を許していると述べた。しかし、人々は一致協力して反撃できると彼女は主張した。

オカシオ=コルテスは、議会が政府を閉鎖しないために可決した継続決議(連邦上院民主党の支持を得て可決)に言及したが、この決議は一部の連邦プログラムの予算を削減した。彼女は、ホースフォード議員とジャッキー・ローゼン連邦上院議員(ネヴァダ州選出、民主党)が法案に反対票を投じたことを称賛した。

AOCは、「労働者階級のために闘う勇気を持った彼らのような人々がもっと必要だ」と述べた。

サンダースは、経済的に恵まれた人々と、深刻な所得格差(deep income inequality)に苦しむ大多数の人々の2つの異なるアメリカ(two different Americas)が存在すると主張した。彼は「寡頭政治の強欲(greed of the oligarchy)」を今日のアメリカにおける「最悪の追加(worst addition)」と呼んだ。

サンダースは次のように述べている。「彼らはヘロイン中毒患者のようなものだ。彼らはお金をもっともっともっとと必要としている。そして彼らが望むものを手に入れるために社会保障やメディケイドを破壊することでできるならば、彼らはそうするだろう」。

彼は、削減対象となっているプログラムは家族にとって「死活的に(desperately)」必要であると述べた。彼はまた、木曜日にトランプが教育省を解体しようとした動きを非難し、ペルグラント(連邦政府が運営する返済不要の奨学金)受給者が資金を得るのが難しくなる一方で、学校に費用がかかり、障害のある子供たちが受けていた支援を失うことになると主張した。

サンダースは次のように語った。「今後数週間、数カ月間の私たちの仕事は、トランプをあらゆる面で支持するだけでなく、より多くのことを行うことだ。それは、私たちの国が向かうべき方向についてのヴィジョンを持つことだ」。

オカシオ=コルテスとサンダースは、ラスヴェガスでの訪問に加え、木曜日遅くと日曜日にアリゾナ州、金曜日にコロラド州を訪問する予定だ。
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サンダース:「オカシオ=コルテスとのツアーはより多くの無所属の立候補者の立候補を促すことが目的だ」(Sanders: Tour with Ocasio-Cortez meant to encourage more independent candidates

タラ・スーター筆

2025年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5205894-sanders-tour-with-ocasio-cortez-meant-to-encourage-more-independent-candidates/

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、『ニューヨーク・タイムズ』紙の木曜日の報道で、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とのツアーは、より多くの無所属候補の立候補を促すことが目的であると述べた。

サンダースはニューヨーク・タイムズに対して「このツアーの目的の1つは、人々を結集させて政治プロセスに参加させ、民主党以外の無所属として立候補させることだ」と語った。

サンダースは続けて「この国には草の根レベルで素晴らしい指導者たちがたくさんいる。私たちはそうした指導者たちを前面に押し出さねばならない。そして、それができれば、トランプ主義(Trumpism)を打ち負かし、アメリカの政治状況を変えることができる」と発言した。

サンダースとオカシオ=コルテスのインスタグラム投稿によると、2人の政治家は木曜日にラスヴェガスとアリゾナ州テンピ、金曜日にコロラド州グリーリーとデンバー、土曜日にアリゾナ州ツーソンに立ち寄る予定だ。

サンダースは火曜日、ソーシャルプラットフォームのXの投稿に投稿し、次のように述べた。「今週は、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(@AOC)、グレッグ・カザール(@GregCasar)、スティーブン・ホースフォード(@StevenHorsford)と一緒にネヴァダ州、アリゾナ州、コロラド州に向かい、労働者階級のアメリカ人とタウンホールミーティングを開催する。私たちは協力して、権威主義と寡頭政治(authoritarianism and oligarchy)との戦いに強く立ち向かう。皆さんも参加して欲しい」。

サンダースの発言は、トランプ大統領とその政権とどう戦うかをめぐって民主党内で混乱が起きている中で出されたもので、先週、共和党が作成した予算法案を、党内の多くの激しい反対にもかかわらず、連邦上院の民主党所属議員の少人数のグループが賛成したことで、特に不満が高まった。

サンダースはニューヨーク・タイムズに対して次のように語った。「民主党に希望があるとすれば、手を差し伸べる必要があるということだ。扉を開いて労働者階級の人々を党に入れ、労働者階級の指導者たちを党に迎え入れる必要がある。そうしなければ、この国中で、無所属で立候補する人が出てくるだろうと思う」。

本誌は民主党全国委員会とホワイトハウスにコメントを求めた。

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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 アメリカ大統領選挙から時間が経ち、様々な意見が飛び交っている。私が最も信用していないのは「想定通りでしたね」などと述べる人たちで、それは想定ではなく、あなたの希望や願望ではないのかと言いたくなる。想定するにあたってどのようなモデルを作り、どれくらい世論調査の数字データを集め、どれくらいの質的な調査を行ったのかと言いたくなる。今回の選挙結果を「想定通りでしたね」と言えるほど頭脳明晰であるからには、自分の原罪の仕事や学業でさぞや周囲を驚かせるだけの結果を出せているのでしょうね、羨ましい限りですと皮肉を言いたくなる。ここで愚痴を書いても仕方がないが、そのように思ったので書いておく。

 今回、民主党はホワイトハウス、連邦上院の過半数、連邦下院の過半数を失う大惨敗となった。2016年もそうであったが、大統領選挙の一般得票数ではヒラリー・クリントンが上回っていた。「大統領選挙の仕組みが違っていたならねぇ」ということは言えた訳だが、今回は全てにおいてうまくいかなかった。共和党の「赤い波(red wave)」に飲み込まれた形になった。「今回の選挙は民主党が真剣に反省する機会となるだろう」ということは2016年にも言われていたが、結局あまり反省ができていなかったようだ。そして、今回も民主党進歩主義派の重鎮であるバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)のお説教をもらうことになった。
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 各種世論調査の結果や出口調査の結果から、私たちが今まで習ってきたような「共和党は経営者やお金持ちの党、民主党は労働者やマイノリティの党」という構図は崩れ去り、逆になっている。「共和党は労働者の党」となった。そして、民主党は口先だけはきれいごとを言う、リベラル志向のお金持ちたちが支配する党になった。労働者のための政策をしてこなかったということで、これまで民主党支持だった労働者たち、特に白人労働者が民主党から離れたと言うことは2016年の選挙後に分析されている。そうしたことを私は最新刊『世界覇権国交代劇の真相』で述べている。是非読んでいただきたい。

 民主党内のエスタブリッシュメント派と進歩主義派の対立については拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも詳しく書いている。2016年のサンダース躍進に刺激を受けて登場した、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)をはじめとする若手の議員たちは「ジャスティス・デモクラッツ」を結成し、主流派・エスタブリッシュメント派が支配する執行部と対立している。進歩主義派の若手議員たちは「スクアット(Squad)」と呼ばれている。バラク・オバマ元大統領は若手たちの動きを嫌がって、「銃殺隊(firing squad)をうろうろさせるな」という発言をしたほどだ。オバマは演説がうまくイメージが良いので、リベラル、進歩主義的とみられることもあるが、決してそうではない。それどころか、民主党を支配する大ボスということになっている。ジョー・バイデンに再選を諦めさせたのはオバマの力が大きい。

 民主党がこれから変化していくことは難しい。サンダースの「お説教」も何度目のことだろうか。2016年にヒラリー・クリントンがドナルド・トランプ支持者を「負け犬(deplorables)」と呼んだ。今年の選挙戦の最終版、ジョー・バイデン大統領は「ゴミ(garbage)」と呼んだ。熱心なトランプ支持者たちは元々、(熱心であったかどうかは別にして)民主党支持者だった。そうした人々を負け犬、ごみと呼んでしまうような民主党エスタブリッシュメントに対して、人々は失望と怒りを感じている。その結果が「赤い波」となった。

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サンダース:民主党は「労働者階級の人々を見捨ててきた」(Sanders: Democratic Party ‘has abandoned working class people’

アレクサンダー・ボルトン筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/4977546-bernie-sanders-democrats-working-class/
バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)は水曜日、民主党が労働者階級の優先事項をほとんど無視していると非難し、それが、民主党がホワイトハウスと連邦上院を掌握する力を失った最大の理由だと指摘した。

サンダースは火曜日の選挙結果について声明を発表しその中で、「労働者階級の人々を見捨ててきた民主党が、労働者階級が彼らを見捨てたことに気づくのは、それほど驚くべきことではない」と述べた。

サンダースは「民主党指導部が現状を擁護する一方で、アメリカ国民は怒り、変化を望んでいる。そして彼らは正しい」と述べた。

サンダースの厳しい声明は、ハリス副大統領が一般投票で500万票近くの差をつけられ、民主党はウエストヴァージニア州、モンタナ州、オハイオ州の連邦上院議員の議席を失ったと見られる選挙後、これまでで最も厳しく最も鋭い批判となっている。

民主党と会派を組む無所属のサンダースは、「草の根民主主義と経済的正義(grassroots democracy and economic justice)を憂慮する私たちは、非常に真剣な政治的議論をする必要がある」と述べた。

サンダースは、ここ数十年のアメリカにおける経済的不平等の大幅な拡大、何十万人もの人々を失業させる恐れのある先端技術、高額な医療費、そして何万人もの犠牲者を出したガザ地区での戦争に対するアメリカの支持をそうした議論のテーマに挙げた。

「民主党を支配する大金持ちや高給取りのコンサルタントたちは、この悲惨な選挙戦から本当の教訓を学ぶのだろうか? 彼らは、何千万人ものアメリカ人が経験している痛みや政治的疎外感を理解するのだろうか? 経済的に大きな力を持ち、ますます強大化するオリガーキーに対抗する方法を、彼らは考えているのだろうか?」とサンダースは疑念を表明した。

「おそらくそういうことはないだろう」と彼は自身が提起した疑問に答えて述べた。

連邦上院厚生・教育・労働・年金委員会の委員長であるサンダースは2028年までに連邦最低賃金を時給7.25ドルから17ドルに引き上げるという提案について、今年は一度も採決を行うことができなかった。

サンダースはまた、2021年と2022年に連邦上院予算委員長として、メディケアを拡大し、彼が「住宅危機(housing crisis)」と呼ぶものに対処するための6兆ドルの予算融和案を推進しようとしたが失敗した。

その後、チャック・シューマー連邦上院院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)は、ジョー・バイデン大統領の「ビルド・バック・ベター」アジェンダの縮小版を中道派のジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州、無所属)と交渉したが、サンダースや他の進歩主義派がバイデンの大統領任期開始時に抱いていた大きな野望には届かなかった。

サンダースとマンチンの間に緊張が走ったのは2021年10月のことで、マンチンは民主党が成立させようとしていたものに制限をかけ、授業料無料のコミュニティ・カレッジを除外しようとした指導者会議で、サンダースがウエストヴァージニア州の中道派であるマンチンに暴言を吐いた。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 中間選挙で民主党が予想よりも負けなかったことを受けて、現職のジョー・バイデン大統領は2期目を目指し、2024年の大統領選挙に立候補することを表明した。このまま無事に進めば、民主党の大統領選挙候補者はジョー・バイデンということになる。予備選挙は実施され、立候補者が出るかもしれないが、バイデンの候補者指名は確実だ。

しかし、バイデンは1942年生まれの80歳で、現職大統領としては史上最高齢となっている。2年の2024年には82歳となり、2期目の4年の任期を務めれば86歳で退任ということになる。任期途中に何かが起こり、バイデンが退任すれば、副大統領であるカマラ・ハリスが昇格し、残りの任期を務めることになる。直近で何かが起きてバイデンが退任すればハリスが大統領になり、2024年の大統領選挙はハリスが現職大統領として大統領選挙に臨むことになる。しかし、退任の時期によっては、民主党予備選挙に対抗馬が出てくる可能性もある。

そこで古い記事になって恐縮だが、バイデンが大統領選挙に出なければ民主党の予備選挙に立候補する可能性がある人物たちをまとめた記事をご紹介する。この記事の「バイデンが2024年の選挙に出ない」という前提が崩れてしまったが、民主党内でどのような人物たちが人気であり、有力であるかを知ることはアメリカ政治を理解する上で重要だ。

 民主党の有力候補者たちは40、50代の若い世代が出ている。このブログでも何度もご紹介したピート・ブティジェッジ運輸長官は40歳になったばかりで、州知事2人は50代でこれから複数回大統領選挙出馬を狙える立場にある。若さで言えばアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員であるが、彼女はまだ30代前半で2年後にようやく大統領選挙立候補可能年齢となる。知名度は高く、連邦議会でも積極的に働いているが、経験がまだ浅いということになる。前回、前々回の大統領選挙に出馬したバーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン両連邦上院議員は高齢であり、これからの出馬の可能性は低いだろう。若い人材が出てくるということは民主党にとっては良いことである。

 イデオロギーで見れば、急進派、進歩主義派ではやはり党内をまとめるのが難しいとみられるだろう。そうなればアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員やバーニー・サンダース上院議員は一部から熱狂的な支持を受けるだろうが、党の候補者指名を受けることは難しいだろう。

 2024年の大統領選挙は現職のジョー・バイデン大統領(民主党)とドナルド・トランプ前大統領(共和党)の戦いということになるだろう。しかし、アメリカ政治はこれからも続いていく。若い人物たちを見ていくことも重要だ。

(貼り付けはじめ)

バイデンが出馬しないとなると、大統領選挙に出馬する可能性が高い7名の民主党員たち(The seven Democrats most likely to run for president — if Biden bows out

エイミー・パーネス筆

2022年9月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3658507-the-seven-democrats-most-likely-to-run-for-president-if-biden-bows-out/

ジョー・バイデン大統領が今週、大統領選挙に再び出馬するかどうかは「まだ分からない」と発言したことで、2024年のホワイトハウスの主を決める大統領選挙に別の候補を立てるかどうかについて、民主党に関する話題がより広範に拡大している。

バイデンが再出馬しない場合、多くの民主党員が大統領選の海に足を踏み入れることが予想される。しかし、カマラ・ハリス副大統領でさえ、そのような状況では決定的な有力候補とは見なされていないと多くの民主党員は非公式に認めている。

ある民主党の有力献金者は「明確な候補者がいる訳でもなく、新星が出ている訳でもない」と語っている。

ここで、最も話題を集め、最も信頼されているのは誰なのかを考えてみよう。

(1)   カマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領

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7月に暗殺された日本の元首相安倍晋三の葬儀出席のために東京に向かうアメリカ代表団を率いる前に副大統領官邸の外で待つカマラ・ハリス副大統領。

57歳になるハリスは副大統領としての毀誉褒貶が多い任期中に支持率の低下を経験しているが、2024年の大統領選挙でバイデン以外の候補者となるとトップに名前が出てくる存在だ。

ストラティジストたちは、バイデンをホワイトハウスに押し上げた黒人女性たちに対して、党の候補者としてハリス以外の他の誰かに投票するように説得するのは難しいだろうと言う。

あるストラティジストが指摘しているように、「アメリカ南部で勝利を収めることなしに党の候補者指名を勝ち取ることはできない」ということになる。

政権発足後の1年間は、失言やスタッフの相次ぐ離職などでハリスは大きな話題となったが、現在は副大統領としての役割に慣れてきた。

彼女はまた、女性の権利を彼女の課題の1つに挙げている。これは、妊娠中絶の権利に関する「ロウ対ウェイド」判決を覆した連邦最高裁判所の判決が影響し続けているため、民主党支持者の彼女の政治的展望を助けている。

(2)ピート・ブティジェッジ(Pete Buttigieg)運輸長官

petebuttigieg551 

デトロイトでの北米国際自動車ジョーで演説をするピート・ブティジェッジ運輸長官。

2020年大統領選挙立候補以来、ブティジェッジ運輸長官は民主党内で人気の人物となっている。彼は無名な立場から評価を上昇させて、人々を驚かせた。

ブティジェッジの現在の役割は、人気のあるインフラプロジェクトについてアピールするために全国を回ることだ。それは、この先の彼を助けることができる唯一の方策だ。

先月、40歳になったばかりのブティジェッジはフロリダ州、ニューハンプシャー州、ネヴァダ州、オハイオ州の各州を訪れたばかりだ。今月初めの鉄道ストライキで有権者から打撃を受ける可能性もあったが、バイデンの深夜介入により、そのような事態にはならず、民主党有権者に対するブティジェッジの地位は固まった。

(3)グレッチェン・ウィットマー(Gretchen Whitmer)ミシガン州知事

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デトロイトでの北米国際自動車ショーで演説するグレッチェン・ウィットマー州知事。

上記2人はバイデン政権において、バイデンに対抗する有力者として名前が挙がるトップ2だ。

この2人に次いで有力なのが2人の知事である。

1人目はミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーだ。ウィットマーはバイデンの副大統領の有力候補として多くの人々に知られている。

現在51歳のウィットマーは州知事選挙での再選を目指している中で、民主党関係者の注目を集めている。

今週、『デトロイト・フリー・プレス』紙の世論調査で、彼女は共和党の対立候補チューダー・ディクソンに対して16ポイントのリードをつけた。

ウィットマーは、特に中絶の権利を守ることを強調している。最近のイヴェントで、彼女はこの闘いにおける自分の役割を強調した。

CNNによると、「ミシガン州が中絶可能な州であり続ける唯一の理由は、私の拒否権と訴訟のおかげだ」と彼女は語ったということだ。この発言は、ウィットマーがミシガン州の中絶禁止を阻止するために起こした訴訟のことを指している。

彼女は、6月に「ロウ対ウェイド」判決が連邦最高裁で覆される前から訴訟を起こしていたことをよく指摘するが、これは今後、確実に支持層にアピールする動きとなるであろう。

(4)ゲヴィン・ニューサム(Gavin Newsom)カリフォルニア州知事

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ニューヨーク市で開催されたクリントン・グローバル・イニシアチブで講演するカリフォルニア州知事ギャビン・ニューサム。

民主党が共和党と対決できる指導者を渇望していた時期、カリフォルニア州知事ゲヴィン・ニューサムは戦いを挑むように見えた。

54歳のニューサム知事は7月、フロリダ州知事ロン・デサンティス(共和党)に直接戦いを挑み、フロリダ州知事とその保守文化を非難する広告をフロリダ州内に拡散し、大きな話題となった。

ニューサムは、州内で放映されたフォックス・ニューズ内の番組のスポットCMの中で「自由、それはあなたの州で攻撃を受けている。共和党の指導者たちは、書籍を禁止し、投票を難しくし、教室での発言を制限し、女性や医師まで犯罪者にしようとしている」と述べた。

今月初め、ミシシッピ州、テキサス州、インディアナ州、オクラホマ州など保守的な州で、ニューサムは広告塔を立て、積極的な姿勢を続けている。彼のメッセージはどんなものか? カリフォルニア州では中絶はまだ合法であるということだ。

あるストラティジストは「彼はまだ証明することがたくさんあるが、彼は確かに民主党内の注目を集めている」と述べている。

(5)エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)

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連邦上院銀行委員会の年次ウォール街監視公聴会で、ゼール(Zelle)について証人に質問するエリザベス・ウォーレン議員(マサチューセッツ州選出、民主党)。

かつて大統領選挙のホープだったウォーレンは、2024年の選挙の1つである、自分自身の連邦上院議員再選を念頭に置いていると明言している。

しかし、バイデンが再出馬しないことを決めた場合、彼女の居場所はあるだろうと言う民主党関係者は多くいる。

73歳のウォーレンは、気候変動、中絶の権利、銃の安全性など、民主党にとって重要な問題のために、連邦議会においてトップの支持者であり続けている。

しかし、次の大統領選挙について聞かれると、彼女は一貫して言及を拒否している。

ウォーレンはこの夏、『アクシオス』誌に次のように語った。「2024年という数字に固執するのは止めなければならない。もし2024年のことばかりに気を取られて、2022年のビジネスに注意を払わなかったら、2022年の私たちを苦しめるだけではなく、2024年には背後から噛み付かれることになる」。

(6)バーニー・サンダース(Bernie Sanders)連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)

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バーニー・サンダース上院議員(ヴァーモント州選出)は、ジョー・バイデン大統領との会談後、ワシントンのホワイトハウスのウエストウィングの外で記者団と話した後に更に振り向いて話している。

民主党の連邦議員の中には、ヴァーモント州選出の連邦上院議員が再び大統領選挙に打って出るのは難しいと考えている人もいる。

結局のところ、サンダースは現在81歳で、もし当選すれば任期終了時には90歳近くとなる。

しかし、サンダースは2016年に初めてホワイトハウスに立候補して以来、民主党の主役になったので、出馬の可能性を否定することはできない。そして、もし彼が出馬すれば、間違いなく支持を得られるだろう。

学生ローンや気候変動など、支持層にとって重要な議論がある時はいつでも、サンダースはその中心にいるとあるストラティジストは指摘している。

(7)アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)連邦下院議員(ニューヨーク州選出)

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民主党の大統領候補バーニー・サンダース上院議員の選挙演説会に参加するアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員(ニューヨーク州選出、民主党)。

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は

民主党の中で「AOC」と知られるアレクサンドリア・オカシオ=コルテスほど、台頭している人物は存在しない。

そして、ほとんどのストラティジストは、ニューヨーク出身のこの連邦下院議員がまだ大統領選に出馬するとは思っていないが、民主党が人材不足だと訴える時、彼女の名前は常に挙がってくる。

彼女についてストラティジストたちが話す際に出てくる最も多い質問は、アメリカ大統領選挙に立候補できる年齢になるのかというものだ。この質問の答えは、2024年大統領選挙の1か月前に彼女は35歳になる、というものだ。

彼女の年齢は別にして、もう1つ当然のように出てくる疑問は、オカシオ=コルテスの政治がリベラル過ぎるために民主党の予備選挙もしくは本選挙で勝利をすることができるだろうかというものだ。

2020年、ウォーレンとサンダースは結局、バイデンに敗れた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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