古村治彦です。
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2025年11月にニューヨーク市長選挙が実施される。本選挙に向けて、民主党や共和党で予備選挙が実施された。ニューヨーク州やニューヨーク市が民主党の金城湯池であることを考えると、民主党の候補者になれれば、本選挙で当選することがほぼ確実ということになっている。今回、民主党予備選挙で、ニューヨーク州議会下院議員ゾーラン・マムダニ(Zohran Mamdani、1991年-、33歳)が勝利した。マムダニは前ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモを破っての勝利だった。

アンドリュー・クオモはニューヨーク政界のサラブレッドだ。クオモ家はニューヨーク民主党の「王家」とも言える存在だ。アンドリューの父であるマリオ・クオモはニューヨーク州務長官、ニューヨーク州副知事、ニューヨーク知事を務めた。1984年の民主党全国大会で基調演説を行い、ロナルド・レーガン大統領を批判した。この演説が大きな注目を集めた。アンドリュー・クオモはビル・クリントン政権で住宅都市開発長官を務め、ニューヨーク州司法長官、ニューヨーク州知事を務めた。弟のクリス・クオモは報道分野で活躍し、CNNで自身の番組を持つほどであったが、兄アンドリューのセクシャルハラスメント疑惑をめぐり、擁護活動を行ったことでCNNを解雇された。マムダニがクオモを破ったということは、既成政治、エスタブリッシュメントに対する人々の不信が根深いということを示している。
マムダニはウガンダ生まれで、父はアフリカ研究の学者、母は映画監督だ。両親はインド系で(父マフムードはウガンダ生まれ)、途中で南アフリカに移り、その後、アメリカに移った。父はコロンビア大学教授を務めている。マムダニはウガンダとアメリカの両方の国籍を保有している。マムダニは父と同じくイスラム教徒だ。メイン州の名門ボウディン大学に進学した。大学卒業後にラッパー活動をしながら、住宅カウンセラーを務め、社会活動や政治活動を行い、2020年にニューヨーク州議会下院議員に当選した。
マムダニは、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)と同様に民主社会主義者を自認し、家賃の凍結、安価な公営住宅の増設、市営商店を設置し、安価や食品の供給、市営バスの無料化、富裕層への課税強化を訴えた。
ニューヨーク州やカリフォルニア州といった民主党の金城湯池の地域では、民主党エスタブリッシュメント派への反感から、進歩主義派への支持が高まっている。これは、共和党側で言えば、ポピュリズムのドナルド・トランプ派が伸長していることと同じ動きである。民主、共和両党のエスタブリッシュメント派は自分たちが行ってきた政策の失敗を反省することから始めなければならないが、アメリカの国力減退は既に手遅れの時期に来ている。人々はますますエスタブリッシュメント派、中道から離れていくことになるだろう。
(貼り付けはじめ)
マムダニがニューヨーク市長選挙民主党予備選で正式に勝利(Mamdani
formally wins Democratic primary for NYC mayor)
ジャレッド・ガンズ筆
2025年7月1日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/5378850-zohran-mamdani-wins-dems-nomination/
「デシジョン・デスク・HQ」は、ニューヨーク州議会議員ゾーラン・マムダニは、順位付け投票による集計(ranked choice tabulation)が終了し、ニューヨーク市長選挙の民主党候補指名を正式に獲得したと予測している。
先週火曜日の予備選挙後、マムダニは、第1ラウンドの集計で約7ポイントの差で大きくリードしていたため、元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ(民主党)をはじめとする多くの候補者たちを破る番狂わせ(upset)の勝利はほぼ確実と思われていた。第1ラウンドで2位だったクオモが民主党予備選挙での敗北を認め、マムダニを祝福したことを受け、マムダニは勝利宣言を行った。
しかし、順位付け投票による追加集計は火曜日まで公表されなかった。
ニューヨーク市では、予備選挙日までに消印が押された郵送投票が集計対象となっているため、今後数週間のうちに未集計の投票が集計に加算される可能性がある。
ニューヨーク市の優先順位投票制度では、有権者は最大5人の候補者を優先順位順に選ぶことができる。先週のように、第一希望の票の過半数を獲得した候補者がいない場合、最も得票数の少ない候補者が脱落し、その票は支持者の第二希望の票に再配分される。
このプロセスはいずれかの候補者が過半数を獲得するまで継続される。
他の候補者たちは、得票数が少なすぎて他の候補者からの票を得ても結果に影響がなかったため、第3ラウンドに進む前に脱落した。ニューヨーク市会計監査官ブラッド・ランダーは11.2%で3位、ニューヨーク市議会議長エイドリアン・アダムズは4.2%で4位だった。
他の候補者全ての得票率は2%以下となった。
脱落した候補者の票のほぼ半分は第3ラウンドでマムダニに、4分の1強はクオモに集まった。また、4分の1の有権者は、マムダニとクオモを5人の候補者のいずれにも含めなかった。
マムダニは声明で、先週の予備選挙で民主党が「明確な声(clear voice)」を発し、「住みやすい都市、未来の政治、そして台頭する権威主義に抵抗することを恐れないリーダー」という信任を得たと述べた。
マムダニは「私たちのキャンペーンに投票してくれた54万5000人以上のニューヨーク市民の支持に深く感謝するとともに、エリック・アダムズを破り、働く人々を第一に考える市政を勝ち取る中で、この連携をさらに拡大できることを大変嬉しく思う」と述べた。
2021年からアメリカ民主社会主義党の支援を受けて州議会議員を務めるマムダニは、クオモに代わる進歩的な候補者として自らを売り込み、他の候補者を探している有権者の関心を惹きつけようとした。家賃凍結、無料バス、市営食料品店など、幅広い進歩的な政策提案を行い、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の支持を得た。
マムダニは他の候補者たちからも支持を受けており、特に市の監査役ブラッド・ランダーはマムダニと相互推薦を行っており、他の候補者を第2候補にランク付けするよう有権者に促し、クオモを破る可能性を高めた。
予備選開始当初、勝利の見込みがあるのはクオモかマムダニの2人だけと見られていた。
選挙戦は当初、クオモが他を大きく引き離して圧倒的な優位に立っていたが、他の候補者たちがなかなか支持を集められず、徐々にクオモとマムダニの2人による争いへと移行していた。
クオモは3月に選挙戦に参戦する前からほとんどの世論調査でトップを走っていたが、マムダニはここ数週間でその差を縮め、自身が大きく優位に立っていた若い有権者の支持を獲得した。クオモの強みは、特に高齢者層を中心とした年配層の支持だった。
クオモは、州および連邦レヴェルで長年公職を務めてきた経験を強調した。10年以上知事を務める前は、クリントン政権下で住宅都市開発省を率い、州司法長官も務めました。
クオモはまた、11月の大統領選挙でカマラ・ハリス前副大統領が敗北した後、アイデンティティを模索する中で、市と民主党全体が直面している問題は左派政権のせいだと非難した。
しかし、彼の純支持率は他の候補者のほとんどよりも一貫して低く、有権者の40%が彼に好意的ではないと見ていた。
知事在任中、クオモは新型コロナウイルス感染拡大中の介護施設での死亡者数を故意に過少報告したという非難を受け、複数の女性からセクハラの申し立てを受けた。クオモは、介護施設の監督に関する連邦政府のガイドラインに従っており、ハラスメントの申し立てを一貫して否定していると主張して自己弁護している。
しかし、マムダニは全般的に期待を上回る結果を残した。期待されていた分野では好成績を収め、弱点とされていた層でもまずまずの成績を残した。白人有権者や大学卒有権者に強いと予想されていたが、黒人やヒスパニック系有権者など、クオモがより強いと予想されていた層でもまずまずの成績を残した。
マムダニは、黒人とヒスパニック系が混在する地域や、裕福な高齢の白人地域で勝利を収めた。
しかし、クオモが総選挙で引き続き立候補するかどうかについては疑問が残る。
クオモは既に11月の予備選挙で、ファイト・アンド・デリヴァー党の党首として出馬表明している。予備選後、無所属で立候補するかどうかは、順位付け投票の最終結果を見てから判断すると述べた。
クオモ陣営の広報担当者リッチ・アゾパルディは声明で、30歳未満でこれまで投票経験のない有権者の数が「急増」したことで予備選挙の有権者層は変化したが、クオモの目標は変わりなく、住宅価格の高騰、住宅、教育、公共の安全問題への取り組みと人々の結束を通じて、ニューヨーク市民に「真の変化(real change)」をもたらすことだと述べた。
アゾパルディは、「過激主義、分断、空約束(empty promises)は、この街の問題の解決策にはならない。今回の選挙は予備選挙の有権者の一部の動機を探るものであり、大多数の有権者を代表するものではない」と述べ、マムダニに対するクオモの批判を改めて強調した。
アゾパルディは、「私たちの家族の経済的不安定さはここでの最優先事項だ。だからこそ、実行可能な解決策、結果、そして成果が非常に重要なのだ」とも述べた。
アゾパルディは、「私たちは、今後の対応策を決定していく中で、ニューヨーク市内全域の人々と話し合いを続けていく」と語った。
CNNは、クオモは少なくとも11月の選挙では候補者名簿に残るものの、今後数カ月で積極的に選挙活動を行うかどうかは未定だと報じている。
マムダニは既に、無所属で再選を目指す現職のエリック・アダムズ市長、共和党候補のカーティス・スリア、そして無所属のジム・ウォルデンと対決する構えだ。予備選挙とは異なり、ニューヨーク市の総選挙では順位付け投票は行われず、勝者は他のどの候補者よりも多くの票を獲得するだけで済む。
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ゾーラン・マムダニの勝利から得た6つの教訓(6 lessons from Zohran Mamdani’s
victory)
スティーヴ・イスラエル筆
2025年6月27日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/campaign/5372085-6-lessons-from-zohran-mamdanis-victory/
ニューヨーク市の政治は常に大げさで、強引で、ドラマチックなものだった。今週、それはブロードウェイの舞台にふさわしいものとなった。
現職の民主党所属のニューヨーク市長エリック・アダムズは、自身の支持基盤からあまりにも不人気になり、予備選への出馬すら断念した。彼のキャラクターは、トランプ大統領の公然たる反対者から、6件の起訴状を前にトランプ支持者へと転落した。そして驚くべき偶然にも、司法省は起訴状を取り下げた。
ニューヨーク州前知事アンドリュー・クオモが選挙戦に参戦し、莫大な資金集めで中道左派の他の候補者を瞬く間に追い落とした。一方、生まれ持った才能とテレビ映りの良さを兼ね備えた若き運動家ゾーラン・マムダニは、主流政治(mainstream politics)に対する人々の不満に刺激され、民主党支持基盤の左派を固めた。
まるで「ラマンチャの男」と「オール・ザ・キングス・メン」が出会ったかのようだ。
衝撃の結末:民主社会主義者がニューヨーク市長選挙の民主党予備選挙で勝利した。マムダニが主導権を握った。
多くの中道派民主党員にとって、マムダニの勝利は選挙前の楽観的な予測さえも大きく上回り、体制に衝撃を与えた。しかし、政治家や評論家たちは、この選挙戦から全国的な結論を導き出す際は自己責任で判断すべきだ。そこには、単なる短い言葉の断片を超越する複雑な事情がある。
ニューヨーク市長選挙民主党予備選から得られた教訓をいくつか挙げよう。
第一に、マムダニの勝利は、ほとんどのアメリカ人がイデオロギーの中心、あるいはその付近に位置しているにもかかわらず、アメリカ政治の中心は維持されていないことを示唆している。トランプとその側近たちは、共和党の正統派思想と制度を極右に引きずり込み、マムダニの勝利は民主党が再び極左に引きずり込まれたことを示唆している。私たちは反動的な政治環境(a reactionary political environment)にあり、一方の行動が他方のエネルギーを刺激している。
第二に、民主党にとって、マムダニの選挙運動は、街頭だけでなく州議会や連邦議会代表団においても世代交代を確固たるものにするものだ。より若く、より進歩的な活動家たちが政治システムに参入しつつある。これは、国政、州政、地方自治体における民主党にとって良いことだ。建設的な連携を築き、友軍の攻撃を避けることができれば、なおさらだ。
第三に、今回の選挙から一般的な傾向を推測することはできても、全米の民主党の顔ぶれを決めることにはならない。マムダニは、左派の熱狂の波に乗り、デジタルに精通した統制のとれた選挙戦を展開した。しかし、ニューヨーク市の民主党登録者の30%しか投票に行かなかった中で、彼はこの選挙に勝利した。これは、2026年に連邦下院をひっくり返すために民主党が激戦選挙区で説得する必要のある有権者を代表するサンプルではなかった。マムダニは称賛に値するが、ニューヨーク市ブルックリンとアイオワ州ブルックリンの選挙に勝つことは全くの別物だ。
第四に、民主党にはこの最悪の状況(perfect storm、パーフェクト・ストーム)においても明るい兆しがある。もし民主党が、進歩的左派の巨大なエネルギーで穏健派有権者たちにアピールする常識的な政策アジェンダを実現できれば、民主党は勝利の戦略を手にすることができる。有権者の一方の派閥を満足させるために他方の派閥を見捨てなければならないという議論は、ゼロサム戦略であり、選挙戦の戦場を拡大する方法ではない。左派対中道派ではなく、勝つためには両方がいなければならない。マムダニの焦点は、進歩主義派や穏健派が受け入れることのできる多くの問題、つまり、手頃な価格、生活の質、億万長者減税のための医療費削減に反対することのプレビューに役立つ。
第五に、マムダニの圧勝でさえも、彼の勝利の連合に軟弱な部分があることを明らかにしている。マムダニの勝利は印象的だ。クオモの牙城であるスタテン島とクイーンズでさえも、マムダニが勝利した。しかし、民主党がマムダニの戦略を全国的に採用しようとする動きには警告の兆候がある。
マムダニは 「金持ち優遇(soak the rich)」のメッセージを発していたにもかかわらず、高所得者層と中所得者層によって当選したのに対し、クオモは低所得者層を圧倒的に獲得した。再分配政策にもかかわらず、マムダニが市内の富裕層を納得させることができたのは、マムダニの政治運動にとって良い兆候である。しかし、民主党が2026年と2028年に勝利するためには、労働者階級の有権者を獲得する必要がある。
そして、バーニー・サンダースが2度の大統領選予備選挙で見せたパフォーマンスとは異なり、マムダニはクオモも圧勝した黒人有権者に苦戦した。中間選挙に出馬する民主党が黒人有権者の支持を得られなければ、来年11月に民主党が連邦下院をひっくり返すチャンスはない。マムダニの連合は今回の予備選挙で勝利するには十分だったが、民主党が全国的に勝利するには不十分だ。
第六に、民主党はマムダニのデジタル戦略による草の根動員を再現すべきである。あるXの投稿では、「Zohran Mamdani 」とツイートするだけで、すぐに1000の「いいね!」を獲得できると言われている。これは、彼のヴォランティアがニューヨーク市中の150万以上のドアをノックする、強力な地上戦に変換された。彼のダイナミックなキャンペーンは、クオモの無気力なメッセージングとは対照的だった。
ニューヨーク市長予備選挙は、11月の選挙も同様に奇妙な展開となるだろう。クオモとアダムズには、依然として無所属の票が残っている。共和党候補のカーティス・スリアワは、マムダニの立場、特にイスラエルに対する忌まわしい見解に反発している民主党支持者を引きつける新たな機会を得るかもしれない。
つまり、今後さらにドラマが展開される可能性があるということだ。これはまだ幕間の出来事に過ぎない。
※スティーヴ・イスラエル:ニューヨーク州選出の連邦下院議員(8期)を務めた。2011年から2015年まで民主党連邦下院選挙委員会の委員長を務めた。
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マムダニの勝利は民主党に懸念と教訓をもたらす(Mamdani’s victory
brings concerns, and lessons, for Democrats)
ダグラス・ショーエン、カーリー・クーパーマン筆
2025年6月30日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/campaign/5374228-democrats-leftward-polarization-zohran-mamdani/
2024年の大統領選挙の重要な教訓が、民主党が経済・社会問題において中道に近づく必要があるというものだったとすれば、先週のニューヨーク市選挙は、民主党が教訓を学んでいないことを如実に示している。
実際、33歳の州議会議員ゾーラン・マムダニがニューヨーク州元知事アンドリュー・クオモを破って勝利したことは、民主党が自らのルーツを再発見するどころか、さらに左傾化を続けていることを示唆している。
さらに、進歩派や民主社会主義者はマムダニの総選挙での勝利を喜ぶだろうが、穏健派の民主党員は不安を抱いている。これは、穏健派と進歩派の間で分極化し、どちらの方向へ進むべきか確信が持てない民主党の現状を反映している。
はっきりさせておくと、マムダニの精力的な選挙運動が民主党にとってのロードマップとなるべきであることは否定できない。
マムダニは生活費に対する人々の根深い不満を掘り起こし、通常は有権者たちとしてあまり信頼できない若者の心を躍らせた。さらに、前回の選挙で民主党指導部がほとんどできなかった方法で有権者たちとの繋がりを築いた。
しかしながら、民主党は、民主党が向かっている方向性に警鐘を鳴らしつつも、活力に満ちた明るい選挙戦を展開するための教訓を吸収すべきだと言えるだろう。
マムダニは、あまりにも無意味な政策を掲げて選挙戦を展開し、『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ニューヨーク・ポスト』紙の編集委員会を結集させ、ニューヨークのような大都市を率いる能力がないと非難した。
このように、マムダニには4つの根本的な懸念事項があり、民主党がさらに1つの教訓を心に刻むべきだ。
第一の懸念は、マムダニが自らを社会主義と称し、極端な思想を掲げていることだ。2024年の選挙後数カ月にわたる世論調査では、民主党支持者でさえ、党がさらに左傾化するのではなく、中道寄りになることを望んでいることが明らかになった。
ギャラップ社の世論調査によると、民主党支持者と民主党寄りの無党派層のかなりの割合(45%)が、党がより穏健になることを望んでいるのに対し、党がよりリベラルになるべきだと答えたのは29%だった。
2021年に実施された同じ世論調査と比較すると、党が中道化になることを望む民主党支持者の割合は11ポイント増加し、よりリベラルになることを望む割合は5ポイント減少した。
共和党は、マムダニの極左政策、すなわち公共交通機関の無料化、警察予算の削減、そして、ソヴィエト連邦でさえ最終的に悪い考えだと認識した市営食料品店の開設といった政策を、民主党全体の代表として描き出そうとするだろう。
実際、トランプ大統領とJ・D・ヴァンス副大統領は既にそうし始めている。
トランプは民主党が「100%共産主義の狂人(100 percent Communist
Lunatic)」を選んだことを激しく非難し、ヴァンス副大統領はマムダニを「民主党の新党首(new
leader of the Democratic Party)」として冗談交じりに祝福し、さらに彼を「反ユダヤ主義の社会主義過激派(antisemitic socialist radical)」と呼んだ。
第二に、『ニューヨーク・タイムズ』紙が指摘したように、マムダニにはニューヨーク市を統治する資格が全くない。
彼の極左的な思想、経験不足、年齢を別にしても、不動産会社の大物スコット・レヒラーが「資本主義の首都(the capital of capitalism)」と呼ぶ場所で資本主義を攻撃し、大幅な増税を計画していることは、ニューヨーク市の経済を衰退させるに違いない。
同様に、3つ目の懸念は、マムダニが特定の問題でトランプ大統領に対抗できるかどうかだ。
経験豊富で資格もはるかにあるカリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサム(民主党)はこの点で成功を収めているが、ニューサムでさえホワイトハウスとの関係構築に失敗することがある。
経験不足のマムダニは、より良い結果を出すことができるだろうか? それとも、より可能性が高いのは、トランプ大統領と、ニューヨーク州知事であるキャシー・ホウクル(民主党)と衝突することになるだろうか。ホウクル知事は、マムダニの選挙運動の柱である減税政策に既に反対を表明している。
マムダニが本選挙で勝利すると仮定すると(実際、勝利する可能性が高い)、最後の懸念が浮上する。それは、マムダニがどのようにニューヨーク市を統治するのかということだ。
もし彼の任期が、非常に似た選挙戦を展開した同じく社会主義者のシカゴ市長ブランドン・ジョンソンのそれと似たものになれば、ニューヨーク市にダメージを与えるだけでなく、民主党の評判を落とすことになるかもしれない。
マムダニは2026年の中間選挙の10カ月前、来年1月に就任宣誓を行う予定だ。そして、彼の任期のピークは2028年の大統領選挙となるだろう。
マムダニの支持率がジョンソンと同程度(最近の世論調査ではわずか26%)であれば、共和党は恩恵を受けるだろう。
民主党所属の連邦議員たちは、生ぬるい支持から完全な拒否まで、様々な反応を示した。
連邦議会民主党指導部のチャック・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出)とハキーム・ジェフリーズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出)はマムダニを祝福したが、重要なことは、全面的な支持を表明するには至らなかったことだ。
ローラ・ギレン連邦下院議員、トム・スオッツィ連邦下院議員、ジョシュ・ゴットハイマー連邦下院議員といったニューヨーク州の中道派の民主党議員たちも、マムダニから距離を置いており、ギレン議員はマムダニについて「容認できない反ユダヤ主義的な発言を繰り返しており、非常に憂慮すべきだ」と述べている。
ビル・クリントン元大統領の下で財務長官を務めたラリー・サマーズは、「インティファーダをグローバル化せよ(globalize the intifada)」というスローガンを否定しなかったが、「トロツキスト的な経済政策を提唱する候補者を選出した党の将来について、深く憂慮している」と記している。
確かに、こうした懸念にもかかわらず、民主党にとって、特に党が将来の方向性を決定づける中で、非常に現実的な教訓が1つある。マムダニが勝利したのは、彼が熱意あふれる選挙戦を展開し、有権者をその熱意で鼓舞したからだ。政治的右派と左派の両方の有権者が既成勢力の候補者にうんざりしている時代に、マムダニは非常に現実的な問題を取り上げた。
同様に、マムダニが選挙戦で訴えた問題、主に住宅価格の高騰は、たとえ彼の解決策が的外れであったとしても、正当な懸念事項である。有権者は両陣営の候補者に対し、生活費の高騰が最大の懸念事項であると訴えてきたが、対策はほとんど講じられていない。
これを念頭に置くと、民主党は、現実に根ざさないマムダニのような極端な考えではなく、真の解決策を提示する候補者を選び、選挙活動を行うことが重要だ。
2024年11月の大統領選挙でトランプを勝利に導いた3つの課題、すなわち生活費、犯罪と公共の安全、そして移民問題を考えてみよう。最初の2つの課題について、マムダニは、巨額の公共支出プロジェクトを賄うために、企業を圧迫するほどの極めて高い税金を約束し、(少なくとも過去には)ニューヨーク市警の予算を削減した。これは、昨年11月に有権者に拒否されたジョー・バイデン前大統領やカマラ・ハリス副大統領の政策よりも、はるかに左寄りだ。
そして移民問題に関して、マムダニがニューヨーク市のサンクチュアリシティ法を強硬に支持すれば、民主党はアメリカ国民よりも移民、さらには暴力犯罪者を重視するという考えを強めることになるだろう。
言い換えれば、民主党に必要なのは、有権者と繋がり、彼らが真に関心を持つ問題について、陳腐な言葉ではなく具体的な解決策を提示し、熱意を喚起する選挙活動を展開する候補者だ。
結局のところ、民主党は、未来に対する考え方が大きく異なる穏健派と進歩主義派に分極化し(polarized)、岐路に立たされている。民主党は、自らの立場をしっかりと見定め、党がどちらの方向に進むべきかを決めることが不可欠だ。
穏健派が優勢となり、民主党がさらに左派に進むのではなく、その原点に戻ることが私たちの望みだ。
ニューヨーク市はアメリカの大部分を代表するものではない。マムダニのような候補者が党の全国的な顔になったとしても、民主党が近い将来、政治の荒野から抜け出せるとは考えにくいだろう。
※ダグラス・E・ショーン、カーリー・クーパーマン:ニューヨーク市に拠点を置く世論調査会社ショーン・クーパーマン・リサーチの世論調査員兼パートナー。2人は共著で、『アメリカ:団結か死か(America: Unite or Die)』を刊行している。
(貼り付け終わり)
(終わり)

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』












