古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:パレスティナ

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年10月に始まった、パレスティナ紛争、イスラエルによるパレスティナ側への報復攻撃は半年を超えて継続している。その間にパレスティナ側の民間人の死傷者が増加し、その様子が連日世界中で報道される中で、イスラエルによる過剰な報復、この機会を使用して、二国共存による解決(two-state solution)を無効化しようとする動きに対して、批判が高まっている。これまで、イスラエルを無前提、無条件で支援してきたアメリカでも、国内世論はイスラエルに批判的になっていることはこのブログでも既に紹介した。アメリカ全土の大学での抗議活動で逮捕者が出ていることは日本でも報道されている。

 アメリカのジョー・バイデン政権は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権に対して、自制を求めているが、イスラエル側は、アメリカが支援を止めることはないし、アメリカ国内にイスラエル・ロビーと呼ばれる、親イスラエルの強力な組織が複数あるといいうことから、バイデン政権の要請を無視してきた。バイデン大統領はネタニヤフ首相の姿勢に不満を表明してきた。そして、以下のような状況になっている。アメリカはイスラエルへの弾薬の輸送を停止した。そして、ハマスが戦闘停止の提案に賛意を示し、イスラエル側は提案内容に不満を示しながらも、交渉の継続を発表した。

(貼り付けはじめ)

米、イスラエルへの弾薬輸送停止 ハマスとの戦闘開始後初と報道

5/6() 0:33配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/d63cc6d470f4bd6fb499b4dc7b6ed03d097ba3cf

 【ワシントン共同】米ニュースサイト、アクシオスは5日、米国がイスラエルへの弾薬輸送を先週停止したと報じた。複数のイスラエル当局者が明らかにした。昨年107日にパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まって以降、兵器の輸送を停止したのは初めて。

 イスラエル政府は輸送停止に懸念を強めているという。全米の大学ではイスラエルの自衛権を支援するバイデン政権の対応に抗議するデモが続いている。

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●「ハマス、ガザ停戦案の受け入れ表明 イスラエルは「要求からかけ離れた内容」」

BBC JAPAN  2024年5月7日

https://www.bbc.com/japanese/articles/c1rv23v8j13o

パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘の一時停止とイスラエル人人質の解放にむけた交渉で、イスラム組織ハマスは6日、カタールとエジプトの仲介役に対し停戦案を受け入れると伝えたことを明らかにした。

ハマス関係者は「(交渉の)ボールは今、イスラエル側のコートにある」と述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの提案は「イスラエルの基本的な要求からかけ離れたもの」だとしつつ、交渉担当者による話し合いは継続されると述べた。

イスラエル国防軍(IDF)がガザ地区南部ラファの東側から避難するよう現地のパレスチナ人に指示をした数時間後に、ハマスは停戦案を受け入れると発表した。

ラファでの作戦では、数万人のガザ市民が影響を受けると考えられている。6日には多くの人がぎゅうぎゅう詰めの車やロバが引く荷車で移動した。

IDFは避難命令を出した後に空爆を実施した。ハマス関係者は「危険なエスカレーション」だとしている。

■停戦案を「承認する」と

ハマスは6日夜に声明を出し、同組織の政治指導者イスマイル・ハニヤ氏がカタールの首相とエジプト情報局の長官に「停戦合意に関する提案を承認する」と伝えたことを明らかにした。

この提案に詳しいパレスチナ側の高官は、条件が満たされれば「敵対的な活動を永久に」終わらせることにハマスが同意したと、BBCに語った。

これは、ハマスが武装闘争の終結を熟考している可能性をうかがわせるものだが、それ以上の詳細は明らかにされなかった。

提案では、停戦は段階的に行われる。第1段階では、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人囚人50人(終身刑の囚人数人が含まれる)の釈放と引き換えに、ハマスの人質となっているイスラエル人女性兵士らを解放することが含まれる。

1段階は42日間かけて実施される。この期間中、IDFはガザ内にとどまる。しかし、戦闘の一時停止が始まってから11日以内に、ガザ中部にあるIDF施設の解体を開始し、ガザを南北に走る主要ルート、サラ・アル・ディン通りや、海岸沿いの道路からIDFは撤退する。

停戦開始から11日後には、家を追われたパレスチナ人のガザ北部への帰還が認められる。

2段階も42日間で、前出のパレスチナ側の高官は、「持続可能な長期的な平穏」とガザ封鎖の完全解除で締めくくられるとしている。

「イスラエルが停戦合意に応じるのか、それともそれを妨害するのか。ボールは今、(イスラエル側の)コートにある」とハマス高官はAFP通信に語った。

■イスラエルの反応

ハマスの声明を受け、ガザではお祝いムードが広がった。

しかし、イスラエル政府関係者の1人はロイター通信に対し、ハマスが受け入れるとした提案は、エジプトが提案した内容が「弱められた」もので、イスラエルが受け入れることのできない「広範囲におよぶ」決定が含まれていると述べた。

そして、「イスラエルが合意を拒否する側であるように見せかけるための策略のようだ」と指摘した。

イスラエルの首相官邸はその後、「ハマスの提案がイスラエル側の基本的な要求からかけ離れていても、イスラエルは交渉の代表団を派遣し、イスラエルが受け入れられる条件のもとで合意に達する可能性を追及する」と声明で述べた。

イスラエルの戦時内閣は同じころ、ラファでの作戦継続を決定した。「人質の解放、ハマスの軍事・統治能力の破壊、そしてガザが将来、イスラエルにとって脅威とならないようにするという、我々の戦争目標を達成するため、ハマスに軍事的圧力をかけるため」だとしている。

■アメリカ、合意実現への努力継続と

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、アメリカはハマスの反応を検討し、「我々のパートナー国と話し合っている」と記者団に述べた。アメリカはカタールやエジプトとともに、停戦交渉の仲介を試みている。

「我々は人質解放の合意がイスラエル国民の最善の利益になると信じ続けている」

「(人質解放は)即時停戦をもたらすだろう。人道的支援の動きも拡大できるようになるだろう。だからこそ、我々は合意に到達するための努力を続けていく」

昨年107日のハマスによるイスラエル奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、250人以上が人質となった。イスラエルは直後に報復攻撃を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、ガザでのイスラエルの軍事作戦でこれまでに34700人以上が殺されたとしている。

11月には、1週間の停戦が実現し、この間にイスラエルの刑務所にいたパレスチナ人囚人約240人と引き換えにハマスの人質105人が解放された。

イスラエルによると、ガザでは依然、128人の人質の行方がわかっていない。

そのうち少なくとも34人は死亡したと推定されている。

(貼り付け終わり)

 アメリカのジョー・バイデン政権としては、ウクライナ問題よりも、パレスティナ問題について優先的に目途をつけたいと考えている。今年11月の大統領選挙を控え、各種世論調査で共和党のドナルド・トランプ前大統領に負けているジョー・バイデンは、まずは民主党支持者を固めたい。民主党支持者はイスラエルへの支援に反対が多い。民主党支持者を固めるには、パレスティナ問題が優先課題だ。また、全米各地の大学での学生たちによる抗議運動もバイデンにとっては脅威だ。彼らが今年夏の民主党大会において、激しい抗議活動を行えば、バイデン陣営と民主党にとっては大きな痛手だ。1968年の民主党大会の例を引くまでもなく、2016年の民主党大会で、ヒラリー・クリントンに反対する若者たちの抗議活動の激しさは記憶に新しい。バイデンとしては党大会までに、パレスティナ問題を何とかしたいところだ。そのために、イスラエル・ロビーの圧力を避けながら、イスラエルに対して、停戦に向けて圧力をかけるだろうと私は書いたが、そのような動きになっている。

 更に言えば、そもそも論として、イスラエルをここまで傲慢にし、増長させて、結果として中東の不安定化を進めたのはアメリカである。アメリカが無条件にイスラエルを支援し続けたことが、イスラエルの傲岸不遜、選民思想丸出しの戦争国家にしてしまった。また、イスラエルの極右派は、アメリカが主導した二国間共存解決を反故にしようとしている。アメリカの面子など、イスラエルは全く気にしない。アメリカはイスラエルに利用され、虚仮にされてきた。

 アメリカの世論も大きく変わろうとしている。無条件のイスラエル支援に対しては疑問の声、反対の声が大きくなっている。そうした声はこれまで「反ユダヤ主義的」として封じ込められてきたが、そのようなレイべリング(ラベリング、labeling)の有効性が小さくなっている。それほどにイスラエルの行動は酷いもので、国際的な孤立を招いている。そして、アメリカに対する反感も募っている。アメリカの対イスラエル政策を見直す時期が来ていると言ってよいだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカが中東の燃え盛る炎に油を注いだ(America Fueled the Fire in the Middle East

-イスラエルは、ますます大きくなる危険の中にあるが、その責任はテヘランよりもワシントンにある。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年4月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/15/middle-east-war-crisis-biden-america-iran-israel/

 

2024年4月1日、テヘランにて、イスラエルによるシリアのイラン領事館への空爆を非難する抗議デモで、アメリカ国旗を燃やすイランの抗議者たち

シリアのダマスカスにあるイランの領事館に対するイスラエルの攻撃に対し、イランが無人機とミサイル攻撃で報復するという決定を下したことは、バイデン政権が中東をいかにひどく誤って扱ってきたかを明らかにしている。ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃する前夜に、この地域は「ここ数十年来で最も静か(quieter than it has been for decades)」だと自らを納得させてきた、アメリカ政府高官たちは、それ以来、悪い状況を、更に悪化させるような対応をしてきた。ドナルド・トランプ、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの各政権も多くの場合失敗している。

2023年10月7日のハマスの残忍な攻撃に対するジョー・バイデン政権の対応には、3つの主な目的があった。第一に、イスラエルへの揺るぎない支持を伝えようとした。レトリック的に支持し、イスラエル政府高官たちと定期的に協議し、ジェノサイドの非難からイスラエルを擁護し、国連安全保障理事会での停戦決議に対して拒否権を行使し、イスラエルに殺傷能力の高い兵器を安定的に供給した。第二に、ワシントンはガザ紛争がエスカレートするのを防ごうとしてきた。最後に、パレスティナの市民への被害を抑え、アメリカのイメージと評判へのダメージを最小限に抑えるため、イスラエルに自制的な行動をとるよう説得してきた。

この政策は、その目的が本質的に矛盾していたために失敗した。イスラエルに無条件の支援を与えることは、イスラエルの指導者たちへのアメリカからの自制の呼びかけに耳を傾ける動機をほとんど与えなかったため、彼らがそれらを無視したのは驚くべきことではない。ガザは破壊され、少なくとも3万3000人のパレスティナ人(1万2000人以上の子供を含む)が死亡し、アメリカ政府当局者たちは、ガザの民間人が飢餓状態に直面していることを認めている。イエメンのフーシ派民兵組織は停戦を要求していると主張し、紅海の船舶を標的にし続けている。イスラエルとヒズボラの間の低レヴェルの紛争は依然としてくすぶっている。そして占領下のヨルダン川西岸では暴力が急増した。そして今、イランは4月1日の総領事館爆破に対して報復としてイスラエルに無人機とミサイル攻撃を開始しており、更に広範な戦争の可能性が高まっている。

アメリカ人はイランが悪の体現者であるということを聞き慣れているため、読者の中には、この問題全てをテヘランのせいにしたくなる人もいるかもしれない。たとえば先週、『ニューヨーク・タイムズ』紙のトップ記事は、イランがヨルダン川西岸地区の不安をあおるために武器を「洪水のように大量に(flooding)」持ち込んでいると報じた。

この見方では、イランは既に炎上している地域にガソリンを注いでいることになる。しかし、この話にはさらに多くの要素があり、そのほとんどはアメリカの実情をあまり良く反映していない。

はっきりさせておきたい。イランは残忍な神権的政権(brutal theocratic regime)によって統治されており、私は同情することはない。しかし、その支配下で暮らし、アメリカの制裁による懲罰に耐えなければならない何百万人ものイラン人には同情する。イランの政権の行動の中には、例えばロシアのウクライナ侵略への支持など、非常に不快なものもある。しかし、ヨルダン川西岸(あるいはガザ地区)に小火器やその他の武器を密輸しようとするその努力は、特に凶悪なことだろうか? また、最近イスラエルが領事館を攻撃し、その過程で2人のイラン人将軍を殺害したことに対して、報復の決定は驚くようなものだろうか?

ジュネーブ条約によれば、「交戦的占領(belligerent occupation)」下にある住民には占領軍に抵抗する権利がある。イスラエルが1967年以降、ヨルダン川西岸と東エルサレムを支配し、70万人以上の不法入植者によってこれらの土地を植民地化し、その過程で何千人ものパレスティナ人を殺害してきたことを考えれば、これが「交戦的占領」であることに疑いようがない。もちろん、抵抗行為には戦争法が適用される。ハマスや他のパレスティナ人グループは、イスラエルの民間人を攻撃する際に戦争法に違反している。しかし、占領に抵抗することは正当であり、苦境にある住民を助けることは必ずしも間違っている訳ではない。たとえイランがパレスティナの大義に対する深い関与からではなく、独自の理由から支援を行ったとしても、それは間違っていない。

同様に、イスラエルが自国の領事館を爆撃し、イランの将軍2人を殺害した後に報復するというイランの決定も、特にイランが戦争を拡大する意図がないと繰り返し表明していることを考えると、生来の攻撃性(innate aggressiveness)の証拠とは言えない。実際、その報復はイスラエルにかなりの警告を与える方法で行われ、イラン政府がこれ以上エスカレーションするつもりはないことを示すように設計されていたようだ。アメリカとイスラエルの政府当局者たちが武力行使の際によく言うように、イランは単に「抑止力を回復(restore deterrence)」しようとしているだけだ。

忘れてはならないのは、アメリカは何十年もの間、中東に兵器を「氾濫(flooding)」させてきたということだ。イスラエルには毎年何十億ドルもの高度な軍備を提供し、アメリカの支援は無条件であると繰り返し保証している。

イスラエルがガザ地区の民間人を爆撃し飢餓に陥れても、アメリカからの支持は揺らいでいない。イスラエルが最近、アントニー・ブリンケン米国務長官の訪問を歓迎し、ヨルダン川西岸地区における、1993年以来最大規模のパレスティナ人所有の土地の没収を発表したときも、その支持は揺るがなかった。エクアドルが最近キトのメキシコ大使館を襲撃したことを非難しているときでさえ、イスラエルがイランの領事館を爆撃したとき、ワシントンは何の動きも起こさなかった。それどころか、国防総省の高官たちは支持を示すためにエルサレムに向かい、ジョー・バイデン大統領はイスラエルへの関与が「鉄壁(ironclad)」であることを強調した。イスラエルの高官たちが、アメリカからの忠告を無視できると考えるのは不思議だろうか?

権力が抑制されていない国家はそれを濫用する傾向があり、イスラエルも例外ではない。イスラエルはパレスティナ人よりもはるかに強力であり、更に言えばイランよりも有能であるため、パレスティナに対して罰を受けずに行動することができ、実際にそうしている。数十年にわたるアメリカの寛大かつ無条件の支援により、イスラエルはやりたいことを何でもできるようになり、それがイスラエルの政治とパレスティナ人に対する行動が時間の経過とともにますます過激になる1つの要因となった。

第一次インティファーダ[First Intifada](1987-1993年)のように、パレスティナ人が効果的な抵抗を動員できるようになったのは珍しい機会であった。イツハク・ラビン元首相のようなイスラエルの指導者たちは、妥協の必要性を認め、和平を試みることを余儀なくされた。残念ながら、イスラエルは非常に強く、パレスティナ人は非常に弱く、アメリカの調停者はイスラエルに一方的に有利だったため、ラビンの後継者は誰もパレスティナ人が受け入れられるような取引を提示しようとしなかった。

イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸していることにまだ憤慨しているのなら、もし状況が逆だったらどう思うかを自問してほしい。エジプト、ヨルダン、シリアが1967年の第三次中東戦争に勝利し、何百万人ものイスラエル人を脱出させたとしよう。勝利したアラブ諸国がその後、パレスティナ人が「帰還権(right of return)」を行使し、イスラエル・パレスチナの一部または全部に独自の国家を樹立することを許可することを決定したとする。加えて、100万人ほどのイスラエル系ユダヤ人が、ガザ地区のような狭い飛び地に閉じこもる無国籍難民(stateless refugees)になってしまったとする。そして、元イルグン(Irgun)の戦士や他のユダヤ人強硬派が抵抗運動を組織し、その飛び地を支配下に置き、新しいパレスティナ国家の承認を拒否したとする。更に、彼らは世界中の同調支持者から支援を得て、飛び地への武器の密輸を開始し、その武器を使って近隣の入植地や最近建国されたパレスティナ国家の町を攻撃した。そして、そのパレスティナ国家が、飛び地を封鎖し爆撃することで応戦し、何千人もの民間人の死者を出したとする。

こうした状況を踏まえると、アメリカ政府はどちらの側を支持すると考えるか? 実際、アメリカはこのような状況の出現を許すだろうか? 答えは明白であり、アメリカがこの紛争に一方的に取り組んでいることを雄弁に物語っている。

このような悲劇的な皮肉は、イスラエルを批判から守り、次から次へとアメリカの歴代政権に、たとえ何をするとしてもイスラエルを支持するよう圧力をかけることに最も熱心だったアメリカ国内の個人や組織が、せっかく熱心に支援しても、実際にはイスラエルに多大な損害を与えてきた。

過去50年間、「特別な関係(special relationship)」がどこにつながってきたかを考えてみよう。二国家間解決(two-state solution)は失敗し、パレスティナ人の抱える問題は将来も未解決のままである。その理由の大部分は、ロビー活動によって、歴代の米大統領がイスラエルに意味のある圧力をかけることができなくなったからである。1982年にイスラエルが行った無策のままのレバノン侵攻(ヨルダン川西岸地区をイスラエルの支配下に置くという愚かな計画の一環)は、ヒズボラの出現につながり、ヒズボラは現在イスラエルを北から脅かしている。ベンヤミン・ネタニヤフ首相をはじめとするイスラエル政府高官たちは、パレスティナ自治政府を弱体化させ、ハマスへの密かな支援によって二国家解決への進展を阻止しようとし、2023年10月7日の悲劇を招いた。イスラエルの国内政治はアメリカ以上に偏向しており(これはある意味当然だが)、ロビーの大半のグループがことあるごとに擁護しているガザでの行動は、イスラエルの孤立国家(pariah state)への道を助長している。多くのユダヤ人を含む若いアメリカ人のイスラエルへの支持率は低下している。

この不幸な状況のおかげで、イランはパレスティナの大義を擁護し、核兵器保有に近づき、イランを孤立させようとするアメリカの努力を妨害することができた。もしアメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)とその盟友たちが自らを省みることができるのなら、自分たちがイスラエルに支援してきたことに愕然とするだろう。

対照的に、イスラエルの行動の一部を批判してきた私たち(反ユダヤ主義者、ユダヤ人嫌い、あるいはそれ以上の汚名を着せられるだけだった)は、実際には、アメリカにとってもイスラエルにとっても同様に良かったであろう政策を推奨してきた。私たちの助言に従っていれば、イスラエルは今日より安全になり、何万人ものパレスティナ人がまだ生きていて、イランは核開発から遠ざかり、中東はほぼ確実にもっと平穏になり、アメリカの人権と規則に基づく秩序の擁護者(principled defender of human rights and a rules-based order)としての評判も回復しただろう。最後に、もしこれらの土地が実行可能なパレスティナ国家の一部であれば、イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸する理由はほとんどないだろうし、イランの指導者たちが独自の核抑止力を持っていればより安全になるのではないかと熟考する理由も少なくなるだろう。

しかし、中東に対するアメリカの政策にもっと根本的な変化が起こらない限り、こうした希望に満ちた可能性は依然として手の届かないものであり、私たちをここに導いた過ちは繰り返される可能性が高い。

スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願い申し上げます。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 専門家ではないので不正確という批判は承知しつつも、どうしても言いたいことがある。地政学的を地球の表面に例えてみると、現在は、プレートがぐっと下に入って大きな地殻変動が起きているようなものだ。西側(ザ・ウエスト)、欧米による600年の支配が終わり、西側以外の国々(ザ・レスト)が台頭しつつある。世界の大きな構造変化が起きている。大きなプレートの境目で大地震が起きる。現在、地政学上の「大地震」が起きているのは、ウクライナとイスラエル(パレスティナ)である。これは、大きく見れば、「西側諸国(ザ・ウエスト、the West)対西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)」の対立によって引き起こされている。そして、現在は平穏を保っているが、「地震」が起きるのではないかと心配されているのが、インド太平洋である。具体的には、米中対立がどのようなことになるか、ということである。私たちが住むインド太平洋地域で「大地震」、つまり、戦争を起こしてはいけない。それは私たちのためだけではなく、世界のためだ。

 インド太平洋を平穏のままにしておくことは、しかしながら、難しい。それは、アメリカが自国の衰退を受け入れられず、世界覇権国としての地位から、少しずつ、静かに去るという決断ができていないからだ。ジョー・バイデンが2期目を迎えるとなると、開戦直前の日本帝国海軍のように、「今やらねば、じり貧になって戦えなくなる」ということで、中国に大打撃を与えようとする輩が何をするか分からない。歴史の流れを人間の力で逆転させることは難しい。結局、「ドカ貧」になるだろうが、その過程で大きな犠牲や損失が出て、世界は大きく停滞することになる。ドナルド・トランプが今年秋の大統領選挙で勝利することが望ましいが、現状では、「ジョー・バイデンを勝たせる」という主流派・エスタブリッシュメント派の意思が強固である。バイデンが勝利すれば、アメリカは騒乱状態になるだろう。それが内戦まで行きつくかは分からないが、その危険性、可能性は高まっていると言わざるを得ない。

 地震を食い止めることができないならば、それに備えるということも考えておかねばならない。ドルの信用失墜による紙くず化、アメリカ国債の紙くず化ということも考えておくべきだろう。

(貼り付けはじめ)

地政学的ハードランディングの可能性は極めて高い(A Geopolitical Hard Landing Is All Too Possible

介入すべき時はいまだ。

ジャレッド・コーエン筆

2024年2月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/21/geopolitical-hard-landing-economics-election-china/

市場には良いニューズもあるが、私たちはまだ危機を脱した訳ではない。つまり、エコノミストのほとんどは2024年にソフトランディング(soft landing)すると予測している。しかし、地政学的なハードランディング(hard landing)がその邪魔になるかもしれない。

マクロ経済の課題に対処するためのツールとプロセスが存在する。インフレが高すぎる場合、連邦準備制度は金融政策と金利を調整し、多くの場合、イングランド銀行やヨーロッパ中央銀行などの同等の機関と調整する。結果は保証されておらず、一律でもない。経済学者、投資家、政策立案者たちは政策とその結果について議論する。しかし、金利の上昇によって景気が減速し、不況を引き起こすことなく、インフレ率が低下すれば、ソフトランディングすることになる。インフレ率はピークから低下し(それでも目標の2%は上回っているが)、2024年1月のアメリカの新規雇用数は35万3000人で、国際通貨基金(IMF)は世界経済の成長予測を最大3.1%に修正していることから、これが最終的に達成される成果のように見える。

地政学のシナリオは、悲惨な科学よりもはるかに悲観的な分野となっている。中東やヨーロッパでの戦争、インド太平洋での緊張、そして「ポスト冷戦時代の終わり(end of the post-Cold War era)」が他に何をもたらすのかという深い疑問がある。地政学的ハードランディングは、アメリカ主導の国際システムを圧倒しかねない、複数の、関連し、拡大する紛争や危機を伴うだろう。その結果、パワーバランス(balance of power)が変化し、世界市場が根底から覆される可能性がある。

地政学的に何が起こるかは、世界市場にとっても、私たちの生活にとっても重要である。今日の地政学的課題は一過性(transitory)のものではなく、今後も続く。政治や資源の現実、恐怖、名誉、利害といった要素、主権国家としての優先順位や利害を考慮した、時宜に敵した介入が必要なのだ。あまりにタカ派的なアプローチは、過剰拡張(overreach)と反撃(blowback)を招きかねない。だからと言って、あまりにハト派的なアプローチは、侵略(aggression)とエスカレーション(escalation)を招く。実際、2024年にアメリカとそのパートナーたちがトレードオフを正しく理解できなければ、地政学的なハードランディングがますます現実味を帯びてくる。

今日、世界は過去数十年間見られなかったような連鎖的な紛争(cascading conflicts)に直面している。2021年のアフガニスタンからの混乱した撤退の後、2022年にはロシアによるウクライナへの本格的な侵攻を抑止力は防ぐことができなかった。2023年には、ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃や、イランが支援する中東全域での地域的代理攻撃(Iranian-backed regional proxy attacks)を、抑止力(deterrence)で防ぐこともできなかった。世界で最も人口が多く、目まぐるしく動く地域であるインド太平洋でも、抑止力が機能しなくなる日が来るのだろうか? こうした連鎖はどこで止まるのだろうか?

ユーラシア全土で状況は改善されていない。ロシアから身を守る全面戦争が始まって2年が経ち、ウクライナ人は現在領土の80%以上を支配している。しかし、現場の状況は依然脆弱で、ワシントンの政治的行き詰まり(political gridlock)がこうした成果の逆転を招く可能性がある。つい最近、ウクライナが支配するアヴディーウカの町がロシアの進出により陥落した。連邦上院はウクライナ、イスラエル、台湾への950億ドルの支援策を70対29の賛成多数で可決したばかりだが、その多くはアメリカでの枯渇した武器供給の補充に費やされることになるが、連邦下院での法案の行方は不透明だ。アメリカは既存の法律の下でできる、キエフに対する最後の武器供与(drawdowns)を行った。また、ヨーロッパ連合加盟27カ国は、540億ドルのウクライナ支援パッケージに合意したが、強固な産業基盤を持たず、3月までに100万発の砲弾供与という約束を達成するのに十分な砲弾を生産できない。一方、ウクライナでは弾薬の配給が行われており、今年後半のロシア大統領選挙後(驚くべきことが起きるとは予想されていない)、ウラジーミル・プーティン大統領は大胆にも大規模な動員(larger mobilization)を命じる可能性がある。

市場は現在のロシア・ウクライナ戦争をほぼ織り込み済み(largely priced)だ。しかし、その長期的な意義や、この戦争がヨーロッパにとってどのような意味を持ちうるかについては、説明されていないと言えるだろう。ロシアがフィンランドとエストニアについて精査している中、ボリス・ピストリウス独国防相は、今後5年から8年の間にモスクワが「NATO加盟国を攻撃する可能性すらある(even attack a NATO country)」ことを考慮する必要があると述べ、それが意味することを詳しく説明した。

中東では、10月7日にハマスがイスラエルをテロ攻撃し、その後は紛争になっている。この紛争は中東地域にとって世界規模の対テロ戦争(Global War on Terror)以来最大の地政学的な試練となっている。イスラエルはハマス壊滅作戦を継続しているが、一方で、イランが支援している代理勢力(Iranian-backed proxies)が少なくとも6つの戦域で先頭をエスカレートさせている。世界経済と、バルバリア海賊(訳者註:北アフリカの各都市を拠点とした海賊)の時代から国際通商を守ってきたアメリカ海軍は、イエメンのフーシ派の攻撃に晒されている。全面的な地域戦争(full-scale regional wars)は想定されていない可能性が高いが、アメリカとイランが直接対立する事態が激化すれば、状況はすぐに変わる可能性がある。それがどのようにして起こるかを理解するのは難しいことではなく、地域で最長期間統治を行っている、最高政治指導者である85歳のアリ・ハメネイ師が統治するイランが核兵器の製造に成功すれば、混乱が加速する可能性がある。

しかし、ワシントンやウォール街、そして世界中の政治・金融資本が最も懸念しているのは、インド太平洋地域である。地政学的な理由から、中国はアメリカだけでなくオーストラリア、日本、リトアニア、韓国などの国々に対する経済的禁輸措置と相まって、「二重循環(dual circulation)」経済モデルと国内での自立(self-reliance)強化を推進している。同時に、ドナルド・トランプ政権下で始まった関税の大半はジョー・バイデン大統領の下でも継続されており、アメリカ主導の制限によって中国への半導体輸出は数十億ドル減少した。マイクロエレクトロニクスから医薬品、重要鉱物、レアアースに至るまで、国家安全保障上重要なサプライチェインのチョークポイントに焦点が当てられることで、世界経済に摩擦が生じ、それが他の分野でのリスクや機会を生み出している。

最悪のシナリオは、中国と、台湾やフィリピンといった近隣諸国との軍事衝突であり、アメリカがこれを支援した場合、計り知れない人的損失と過去数世代で最大の経済的ショックがもたらされる可能性がある。ブルームバーグ・エコノミクスは最近、台湾をめぐって中華人民共和国と戦争が起きた場合のコストを10兆ドルと見積もった。

歴史的に見れば、1973年のアラブ諸国の石油禁輸やロシアのウクライナ戦争のようなショックは、世界貿易を混乱させたことはあっても根底から覆すことはなかった。好戦的な北朝鮮やヴェネズエラとガイアナの国境紛争など、毎日の見出しには登場しない危機はもちろんのこと、ユーラシア大陸の3つの主要地域全てにわたって、深刻かつ密接な課題が山積している。

私たちが知っているように、世界は信頼できる大国であるアメリカのリーダーシップを引き継いでいる。アメリカは同盟諸国やパートナーと協力して、アメリカ人だけでなく世界中の人々に利益をもたらす国際安全保障と経済構造を構築し、支援してきた。もう1つの前提は、このアメリカ主導の国際秩序を再構築する意図と能力を他国が持たないだろうというものだった。アメリカのリーダーシップへの挑戦と、中国、イラン、ロシア、加えて北朝鮮の間の緊密化を考えると、どちらの想定も当然のこととは考えられない。

前提は変わったかもしれないが、経済学と同様、地政学(geopolitics)においても、避けられないものはない。昨年、予測者の一部は2023年に景気後退が起こる可能性は100%だと述べたが、それは間違いだった。ただし、ソフトランディングは単独で起こるものではなく、全分野にわたるリーダーシップが必要だ。

ヨーロッパの戦争は1年前と同じ状況ではない。 2023年のウクライナの反撃は成功しなかった。キエフは防御に回っており、2024年に領土の多くを取り戻す可能性は低い。ロシアは前進を続けており、現在GDPの6%を軍事費に費やしており、2021年の2.7%から増加しており、イランと北朝鮮からの軍事品によって支えられている。一方、グーグルの元最高経営責任者(CEO)エリック・シュミットが警告したように、モスクワはキエフとの「イノベーション競争に追いついており(caught up in the innovation contest)」、オーラン10やランセットなどのドローンを国内生産している。そして、アジア市場に軸足を移した後、ロシアは西側諸国の制裁を緩和し、IMFは最近ロシアの経済成長予測を2.6%に引き上げた。

後退を味わったとはいえ、ウクライナに有利な要因はいくつかある。アメリカ人が1人も参戦せず、アメリカの年間国防費の5%を費やし、アメリカの情報諜報機関は現在、モスクワは2022年の侵攻軍の90%を失ったと見積もっている。ウクライナは黒海の戦いに勝利しており、オデッサからの穀物回廊は昨年上半期に3300万トン以上の穀物や食料品に開放され、その3分の2は発展途上国へ運ばれた。ウクライナはクリミア周辺を含め、ロシア支配下のインフラを標的にしている。キエフは防衛産業基盤の拡大も図っており、30カ国から252社が参加する防衛産業フォーラムを立ち上げている。

ヨーロッパは自国の防衛インフラ強化に遅れをとってきたが、勢いはついている。フィンランド、リトアニア、スウェーデン、ポーランドといった対ロシアの最前線の民主政体国家が牽引し、2022年のヨーロッパの国防支出は6%増加した。それでも、NATO同盟のほとんどの加盟国は、GDPの2%を国防費に充てるという、2014年のウェールズ公約を達成できておらず、GDPに占めるアメリカの国防費も、今後10年間で、2023年の3.1%から2033年には2.8%まで減少すると予測されている。ウクライナは、欧米諸国の援助なしに、国土がその28倍、人口が3倍以上の国を抑えることはできない。同様に、抑止力の低下によってヨーロッパの、いや世界の安全保障を維持することはできない。

中東では今日、ガザ地区の「その後(day after)」や、紅海でのフーシ派の攻撃、イラクでのイランの後ろ盾による代理攻撃がいつ、どのように収まるのかが主に問われている。テヘランは不安定と混乱という新たな常態を作り出しており、停戦の継続を望む動機はほとんどない。かつてイエメンでは比較的無名のシーア派の代理集団だったフーシ派は、今やアラブ世界の英雄だ。

イランの短期的な戦略的優位は、根本的に変化した情報環境によって強化されている。戦争の「ソーシャルメディア化(social-mediafication)」とは、あらゆる人気ソーシャルメディアプラットフォームにアップロードされる映像の時間が、戦争の秒数よりも多いことを意味する。911を引き起こしたアルカイダのテロリストの多くは、1990年代にボスニアの戦争から生まれたアルゴリズム以前のコンテンツを見て過激化した。今日のAIを駆使したアルゴリズムは、そのリスクを更に高めている。

しかし、ハイパーターゲットされたオンライン過激化(hyper-targeted online radicalization)によって悪化した、古き悪しき時代に戻る必要はない。アブラハム合意は維持されている。ペルシア湾岸のスンニ派諸国は、サウジアラビアの「ビジョン2030()Vision 2030」のような変革プロジェクトに注力し、地政学的な影響をできるだけ受けずに経済発展を遂げようとしている。紅海で何が起きているのかにもかかわらず、国際ビジネス界との関わりはほとんど途切れていない。カタールもサウジアラビアと同様だ。

 

 

 

 

この地域を瀬戸際から引き戻すための2つの要因は、イランに対する抑止力の回復と、イスラエルと湾岸諸国の統合である。つまり、イランとその「抵抗軸(axis of resistance)」が今日の混乱の原因であることを認識することである。そのためには、アメリカは、アラブ首長国連邦やサウジアラビアのようなパートナーと協力する必要がある。サウジアラビアはワシントンと国防協議を再開し、高官たちはイスラエルとの国交正常化に「絶対的に(absolutely)」関心があると繰り返し述べている。

南シナ海と台湾海峡は危険であるが、ありがたいことに平和である。2023年11月に行われた中国の習近平国家主席とジョー・バイデン米大統領の会談では、サンフランシスコから良いニューズが伝えられた。2024年1月13日に行われた台湾の選挙に対する中国の反応は、多くの人が予想していたよりも抑制的だった。あとは、5月に台湾総統に就任する頼清徳(ウイリアム・ライ)の就任演説に北京がどう反応するかにかかっている。

しかし、台湾は今日の戦略的な焦点ではあるが、潜在的なホットスポット(hot spots)は台湾だけではない。中国は14カ国と国境を接しており、他のどの国よりも多くの国土を隣国と接している。北京は国境を接するほぼ全ての国と領土問題を抱えており、これらの紛争にはそれぞれリスクが伴う。

それでも、インド太平洋の平和を維持することは可能である。中国の攻撃的な姿勢は、オーストラリア、インド、日本、フィリピン、韓国を大きく変化させ、安定のためのミニラテラル連合(minilateral coalitions for stability)へと導いている。クワッド(Quad)、AUKUS、韓国や日本との首脳会談、フィリピンとの基地協定は、アメリカがこれらの国々が互いに協力を強化しているいくつかの例であり、日本は、アメリカとともに、2027年までに自衛隊を世界第3位の規模にする可能性のある防衛政策の大転換を約束した。

しかし、これら全てに欠けているものがある。それは、ワシントンはまだこの地域への経済的関与の戦略を持っていないということだ。北京が支持する地域包括的経済連携(Beijing-backed Regional Comprehensive Economic Partnership)のような協定が拡大する一方で、バイデン政権のインド太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic FrameworkIPEF)は停滞しており、ホワイトハウスはIPEFを「貿易協定ではない(not a trade agreement)」と説明しているが、IPEFは環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific PartnershipTTP)に代わるものではない。ワシントンの経済政策としては、アメリカが遠い国ではなく、信頼できる経済パートナーであることを伝えるようにすべきである。NATO同盟の75周年が近づくにつれ、指導者たちは、平和と繁栄がどのような挑戦を受けようとも、それを維持することに美辞麗句でも実際上でも関与する必要がある。

これらの地経学的な力は、世界中の人々にとって懸念事項だ。ただし、それらは公共部門だけの領域ではない。私たちを経済のソフトランディングに導く同じ市場力学の多くは、世界情勢において資産となる可能性がある。グローバル企業は戦争中の世界で成功することはできず、アメリカとその同盟諸国およびパートナー諸国は、民間部門によって可能になる成長と技術革新がなければ平和を維持することはできない。

この力学が最も顕著に表れているのは、エネルギーと新興テクノロジーの2つの分野である。新しい持続可能なエネルギー源を開発することは、地政学的にも経済的にも可能な最善の一手であり、アメリカが2018年以降世界トップの原油生産国となり、昨年以降世界トップの液化天然ガス輸出国となったのは、民間セクター主導の技術革新によるところが大きい。今後数年間で、アメリカが主導している生成人工知能(generative artificial intelligence)のようなテクノロジーは、地政学におけるワイルドカードとライフラインとなり、テクノロジー企業はより大きな地政学的利害関係者(stakeholders)となるだろう。このような領域は、深く開かれた資本市場、法の支配、財産権を持つ民主政体社会が、正統性(legitimacy)、安定性(stability)、成長(growth)の源泉となる優位性(advantages)を持つ場所である。

世界人口の60%が投票に向かう今年、こうした利点を生かすことが必要だ。何十億もの人々が指導者に投票することは、フリーダム・ハウスなどの団体によって世界的に記録された民主政治体制の長年の衰退の後では歓迎すべきニューズである。しかし、世界中の政府が変わることで、今年の終わりは、始まりとは大きく異なるものになるかもしれない。

特に、2024年のアメリカ大統領選は、他国にとって地政学的に最も重要な問題の1つであることは言うまでもないが、ここ数十年で最も重大な意味を持つかもしれない。有権者にとって外交政策が最優先されることはめったにないが、アメリカ国民の選択は世界情勢にとって経済以上に大きな影響を及ぼすかもしれない。バイデン、トランプどちらの政権が採用する貿易・産業政策も、国内では一部のセクターを強化するかもしれないが、海外ではパートナー諸国を含めて反発を招くかもしれない。世界におけるアメリカの役割に対する新たなアプローチは、友好国を安心させることもあれば、敵対勢力を煽ることもある。そして、どの指導者もバイデンかトランプのどちらかの結果に賭けて、リスクヘッジすることで準備を進めている。

2023年、私たちは経済のハードランディングが何を意味するかを理解し、それを防ぐために時宜を得た慎重な行動を取った。2024年には、地政学的なハードランディングが起こりうることを認識し、社会のあらゆる部門が、この瞬間に必要とされる真剣さをもって対応する時である。

※ジャレッド・コーエン:ゴールドマンサックス社国際問題担当部長・応用技術革新部門共同責任者。ゴールドマンサックス社経営委員会パートナー・委員。

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。イスラエル、パレスティナ情勢についても分析しています。また、『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「アメリカが動けばイスラエルは言うことを聞くはずだ」という内容のブログを掲載して、舌の根も乾かないうちに、「イスラエルはアメリカの言うことを聞かないよ」という文章を掲載するのはおかしいと思われるだろうが、これが国際政治やどのように考えるのかということの面白いところだと思う。

 アメリカはイスラエルにとって最大の支援国であり、アメリカの動向はイスラエルの政策決定にとって重要だ。そのため、イスラエルは、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人たちを動かしてアメリカの世論や政策決定に影響を与えようとしてきた。それが成功している様子は、ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト著『イスラエル・ロビー』に詳しく書かれている。アメリカの連邦議員たち、特に都市部に地盤を持つ議員たちは、ユダヤ系の投票と資金に依存しているため、「支援しない」となれば政治生命が断たれることになる。イスラエルにとってアメリカは最重要の国である。

 支援をする国(アメリカ)と支援を受ける国(イスラエル)で言えば、イスラエルはアメリカ以外からの支援はほぼない状況であるので、イスラエルはアメリカから、支援を見直す、支援を打ち切ると言われてしまえば、立ち行かなくなってしまうので、アメリカの言うことを聞く。しかし、ここで、アメリカにばかり頼っていないという状況が出てくれば、アメリカに対して、「支援を打ち切るならどうぞ」と強い立場に出ることができる。また、支援を受ける国の特殊な事情、例えば、その国がある位置、国内政治体制や価値観の相似などによって、支援を受ける国の方が強い立場に立つことができる。それこそがイスラエルである。

イスラエルは中東にあって西側の形式の自由主義的民主政治体制、資本主義、法の支配などを確立している唯一の国だ。アメリカとしてはイスラエルを存続させることが重要ということになる。また、位置としても非常に微妙なところにある。従って、イスラエルの発言力は強くなる。

 こうして考えると、日本もイスラエルのように、アメリカに対して、ある程度の発言力を持つことができるのではないかと私は考える。それは、「アメリカがあまりに酷いことを日本に求めるならば、日本はアメリカの陣営から飛び出しますよ」という形で、中国と両天秤にかけることだ。しかし、戦後80年、アメリカに骨抜きにされ、アメリカ妄信が骨絡み状態になっている日本には難しいことだ。アメリカが衰退していって、初めて私たちは、その呪縛から解放されるだろう。その時期は私たちが考えるよりもかなり早く到来するだろう。

(貼り付けはじめ)

皆さんが考えるよりも、イスラエルに対するアメリカの影響力は小さい(The United States Has Less Leverage Over Israel Than You Think

-アメリカの影響力の基礎とその欠如について詳しく見てみる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年3月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/21/us-israel-leverage-biden-netanyahu/

ジョー・バイデン政権は、イスラエルのガザ報復作戦(Israel’s retaliatory campaign in Gaza)を止められなかったことで、執拗な批判にさらされている。バイデン米大統領とその側近たちは、増え続ける死者数(現在3万人を超えている)について憂慮し、故郷を追われた何十万人もの罪のないパレスティナ人に十分な人道支援を届けようとしないイスラエルに苛立ちを募らせていると伝えられている。しかし、バイデンはアメリカの武器の流入を止めず、アメリカは停戦を求める3つの国連安全保障理事会決議について拒否権(veto)を行使している(アメリカが承認する可能性のある決議案が準備中と報じられている)。カナダとは異なり、ガザの国際連合パレスティナ難民救済事業機関(United Nations Relief and Works AgencyUNRWA)の職員がハマス支持者で埋め尽くされていたという非難が今となっては疑わしいと思われるにもかかわらず、アメリカはUNRWAへの資金提供を停止するという決定をまだ翻していない。

バイデンを批判する人々は、アメリカがこの状況に対して多大な影響力を持っており、大統領が毅然とした言葉を発し、アメリカの援助を縮小、もしくは停止するとの圧力(脅し)を加えれば、イスラエルはすぐに方針転換を余儀なくされるだろうと想定している。しかし、この仮定は精査するに値する。弱小国家は、しばしばアメリカの要求に従うことを拒否し、場合によってはそれを無視してしまう。セルビアは1999年のランブイエ会議でNATOの要求を拒否した。イランと北朝鮮は数十年にわたり制裁に耐えてきたが、反抗的な姿勢を維持している。ヴェネズエラではニコラス・マドゥロが依然として権力を握っている。そしてバシャール・アル・アサドは、アメリカが以前から「退去せよ(must go)」と主張してきたにもかかわらず、依然としてシリアを統治している。

これらの指導者たちがアメリカの圧力に逆らうことができたのは、アメリカの支援に依存していなかったからであり、それぞれが、「強硬手段に出るよりも従う方が失うものが大きい」と考えたからである。しかし、ドイツがアメリカの反対にもかかわらず、パイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設を継続したように、アメリカの親密な同盟諸国も、アメリカの圧力に抵抗することがある。依存度の高い属国であっても、驚くほど頑固な場合がある。アフガニスタンの指導者たちは、米政府高官の要求する改革を何度も無視して実施しなかったし、ウクライナの司令官たちは昨夏の不運な反攻作戦を計画する際、アメリカの助言を拒否したと伝えられている。カブールとキエフはほとんど全面的にアメリカの物質的支援に依存してきたが、ワシントンは彼らの要求に従わせることができなかった。同様に、イスラエルの指導者たちも、ダヴィド・ベン=グリオンからベンヤミン・ネタニヤフに至るまで、アメリカの圧力に幾度となく抵抗してきた。バイデンから電話がかかってきて、アメリカの援助を打ち切ると脅せば、イスラエルがアメリカの言いなりになると自動的に考えるべきではない。

影響力はどこから来るのか? 偶然にも、私はこの問題について、1987年に、最初の著書の第7章で長々と書いた。支援国が、経済的・軍事的援助、外交的保護、その他の便益を、支援を受ける国に提供することで、支援を受ける国に提供される援助をほぼ独占している場合、支援国が目下の問題について支援を受ける国と同程度の関心を持ち、支援を受ける国に圧力をかけて順守させるために援助水準を操作することに国内的な障害がない場合、支援国はかなりの影響力を持つ。支援を受ける国が他の誰かから同じような援助を受けることができる場合、係争中の問題に関して、支援国よりもはるかに多くのことを気にかけており、それゆえ支援の削減という代償を支払う意思がある場合、あるいは支援国が国内的あるいは制度的な制約のために支援を削減する場合、影響力は低下する。

このような条件によって、なぜ、そして、どのようにして、支援を受ける国の一部が支援国の選好に逆らうことができ、また逆らうことを避けないのかを説明できる。支援国が、弱い同盟国に本質的な価値があると考えている場合(重要な戦略的位置にある、価値観が似ているなど)、あるいは、支援を受ける国の成功が支援国の評判や名声に結びついている場合、支援国は支援を受ける国が頑なに反抗的であっても、その国を切り捨てようとはしない。たとえば、ソ連はアラブの様々な支援を受ける国を自分たちの側に引き留めるのに苦労した。なぜなら、それらの国々は中東における影響力にとって重要な存在であり、クレムリンは、それらの国々が失敗する(あるいはアメリカと同盟を結ぶ)ことを望まなかったからである。同様に、アメリカは南ヴェトナムやアフガニスタンの指導者たちに、支援を撤回すると脅して圧力をかけることはできなかった。もちろん、ヴェトナムのグエン・バン・チュー大統領やアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領はこのことをよく理解していた。

更に悪いことに、援助を提供すると、短期的には影響力が低下する。なぜなら、一度提供された援助を取り戻す方法がないからだ。ヘンリー・キッシンジャーはあるジャーナリストに次のように語った際に、彼はこの力関係を完璧に捉えていた。「私はイスラエルのイツハク・ラビン首相に対して妥協するように求めた時、ラビンは、イスラエルは弱いので妥協はできないと答えた。そこで私は彼にもっと武器を与え、妥協するように求めた。ラビンはイスラエルは強いので譲歩する必要はないと言った」。更に言えば、弱くて依存的な支援を受ける国は、自分たちの方がより脆弱で、より多くのことを抱えているため、しばしば、支援国よりも、問題が提起されている問題について気にかけている。そして、同盟諸国が国内の主要な政治的支持層から支持されている場合、その支援国がその影響力を自由に利用する可能性はさらに低くなるだろう。

それでは、アメリカとイスラエルの関係の現状と、バイデンがもたらす可能性のある実際の影響力について何を物語っているかを考えてみよう。

第一に、イスラエルは以前ほどアメリカの支援に依存していないものの、誘導爆弾と砲弾、F-35航空機やパトリオット防空ミサイルなどの先進兵器システムと精密誘導ミサイルの両方を含むアメリカの兵器へのアクセスに依然として大きく依存している。もちろん、高度な兵器を生産しているのはアメリカだけではなく、イスラエルも独自の高度な防衛産業を持っているが、万が一アメリカが援助を遮断した場合に軍隊を再装備するのは困難で費用のかかるプロセスとなるだろう。イスラエルの戦略家たちは長年、潜在的な敵対国に対して質的優位性を維持することが極めて重要であり、アメリカの援助が失われれば長期的にはその能力が危うくなると信じてきた。これに、国連安全保障理事会の拒否権や他国がイスラエル批判を自制するよう圧力をかける形であれ、アメリカの外交的保護の価値が加わると、イスラエルがアメリカから得ている支援に代わるのは不可能ではないにしても困難であることは明らかだ。だからこそ、専門家の多くは、バイデンがすべきことはアメリカの援助を減らすと脅すことだけであり、ネタニヤフ首相には従う以外に選択肢はない、と考えている。

第二に、立場の弱い、援助を受ける国が問題に関心を持っている場合、圧力をかけるのは難しいが、現在、アメリカの手段を強化する方向に決意のバランスが変化している可能性がある。以前の中東紛争ではよくあったことだが、アメリカは自国の利益がより重視される場合にはイスラエルに行動を変えさせることができた。 1956年の第二次アラブ・イスラエル戦争後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領はイスラエルにシナイ半島から撤退するよう圧力をかけることに成功し、アメリカ政府当局は1969年から1970年の消耗戦争と1973年のアラブ戦争中にイスラエルに停戦協定を受け入れるよう説得するのに貢献することができた。ロナルド・レーガン大統領からイスラエル首相メナヘム・ベギンへの怒りの電話も、1982年のレバノン侵攻中のイスラエルによる西ベイルートでの大規模な爆撃作戦を終わらせた。これらのいずれの場合でも、アメリカの指導者たちは、より広範なアメリカの利益が危険に晒されていると信じていたため、強力に行動し、成功した。

しかし、今どちらの側に大きな決意があるのかはわからない。ネタニヤフ首相は国内では不人気となっているが、世論はガザ地区での軍事作戦を支持しており、ネタニヤフ首相に取って代わりたい政治的ライヴァルたちでさえ、これまでネタニヤフを支持してきた。これに加えて、ネタニヤフ首相は二国家共存解決[two-state solution](あるいはパレスティナ人との公正な和平)に反対し、汚職による訴追を避けたいと考え、政権を維持するために極右閣僚たちに依存している。イスラエルは「バナナ共和国(banana republic、訳者註:政治的に不安定で、経済は外国に支配され、1つの産物の輸出に依存する小国)ではない」と宣言したネタニヤフ首相は、アメリカの明確な警告にもかかわらず、イスラエル国防軍(IDF)が混雑するガザ地区の都市ラファを攻撃すると強硬に主張し続けている。しかしネタニヤフはまた、この問題について協議する代表団をワシントンに派遣することにも同意した。

加えて、ガザ地区における危機的状況は世界中でアメリカのイメージに大きなダメージを与え、バイデン政権が冷酷で無力であるように見せている。もし結果がそれほど憂慮すべきものでないならば、アメリカの政策の矛盾は滑稽なものになるだろう。アメリカ政府はガザ地区の飢餓に瀕している避難住民たちに食糧を空輸している。それと同時に、彼らを避難させ飢餓の危険にさらしている軍備をイスラエルに提供している。この状況はバイデンの再選の可能性を危うくする可能性もあり、ホワイトハウスが強硬姿勢を取る新たな理由となった。

私は、アメリカがイスラエルよりもガザ地区の状況を懸念していると言っているのではない。イスラエルとパレスティナで何が起こっても、アメリカで比較的安全に暮らす私たちよりもイスラエル人(そしてパレスティナ人)にとって、ガザ地区の状況は明らかに重要である。私が言いたいのは、どの程度かということを言うことは不可能ではあるが、決意の均衡がワシントンの方向に向かって進んでいるということだけだ。

最後に、国内の制約についてはどうだろうか? 過去の大統領が想像以上に影響力を行使できなかった主な理由は、イスラエル・ロビー(Israel lobby)の力である。アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)などが議会で行使してきた影響力を考えれば、イスラエルに深刻な圧力をかけようとする大統領は、必ず自分が所属する党の連邦議員たちからも含む、厳しい批判に直面した。ジェラルド・フォード大統領はこの教訓を1975年に学んだ。イスラエルの長期にわたる横暴に対し、関係を見直すと脅したところ、すぐに75人の連邦上院議員が署名した書簡が届き、その動きを非難されたのだ。バラク・オバマは大統領就任1年目に同じ教訓を学んだ。ネタニヤフ首相に入植地建設を止めるよう圧力をかけようとしたとき、共和党所属の連邦議員たちからも民主党所属の連邦議員たちからも同様の反発を受けた。イスラエル・ロビーの影響力は、長い間、結局は失敗に終わったオスロ和平プロセスにおいて、アメリカの交渉担当者がイスラエルの譲歩を得るために、肯定的な誘導策、つまりニンジン(carrots)しか使えずに、結局は棍棒(sticks)を使うことができなかった理由も説明する。

この状況も徐々に変わっていくだろう。アパルトヘイト制度(system of apartheid)を運用している国家を守ることは、特に現在、大量虐殺を行っているという、証明されていないが、もっともらしい告発に直面している場合には、簡単な仕事ではない。イスラエル政府のプロパガンダ(ハスバラ、hasubara)がいくら法廷で無実を訴えても、ガザ地区から流れ出る映像や、イスラエル国防軍兵士自身が投稿した不穏なTikTokYouTubeの動画を完全に否定することはできず、AIPACのような団体が影響力を維持することが難しくなっている。長らくイスラエルを最も忠実に擁護してきたチャック・シューマー連邦上院議員が連邦上院議場で演説し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の政策はイスラエルにとって悪であると宣言したことは、政治の風向きが変わりつつあることが明らかだ。アメリカ政治に対する考え方も、特に若者の間で変化しつつある。イスラエルの行為をアメリカの支持条件とすることには、依然として恐るべき政治的障害(formidable political obstacles)が存在するが、特に選挙の年には、数年前ほど考えられないほどの障害という訳ではない。

私は、ワシントンには確かに潜在的な影響力がたくさんあり、それを利用するための障壁は過去に比べて低くなっていると結論付ける。しかし、イスラエルの現在の指導者たちは、この問題に関して、依然として高い決意を持っているため、アメリカの支援を削減するという信頼できる脅しがあっても、彼らが大きく方針を変えることはないかもしれない。また、バイデンや彼の側近たちが、現在の失敗したアプローチから、より効果的なアプローチに移行するために必要な精神的な調整ができるかどうかも明らかではない。イスラエルへの圧力が機能するかどうかに焦点を当てるのではなく、問うべき真の問題は単に、大規模かつ悪化する人道的悲劇に積極的に加担することがアメリカの戦略的または道義的利益にかなうかどうかである。たとえアメリカがそれを止められなかったとしても、事態をさらに悪化させることの手助けをする必要はない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年10月7日にガザ地区を実効支配するハマスによるイスラエルへの攻撃で、約1200人が殺害され、250人以上が拉致された。そのうちの一部は解放されたが、大部分は拉致されたままだ。被害者家族たちは即時の解放を求めている。イスラエルは人質の解放とハマスの壊滅を掲げて、ガザ地区に侵攻し、激しい攻撃を加えた。ガザ地区では民間人の死傷者が多数出ており、イスラエル軍の過剰な反撃に対しては国際的な非難が高まっている。イスラエルを全面的に支持し、これまでも手厚い支援を行っているアメリカでも、国内世論がイスラエルの過剰な反撃に対して嫌悪を示している。その世論を背景にして、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルに対して不満を隠そうとはしていない。

 これまでも何度か行われた停戦交渉で拉致された人質の一部が解放されているが、イスラエルの軍事的な反撃が激しさを増しながら、半年を過ぎようとしているが、人質救出の目途は立っていない。イスラエル国内でもベンヤミン・ネタニヤフ首相の強硬路線に対する反対の声が上がるようになっている。ネタニヤフ首相は政権内部の極右勢力の閣僚たちを頼りに政権運営を行っているが、一番の問題は「ハマスを壊滅させることもできず(ハマス以外の過激派組織が成長することも含めて)、人質を救出することもできず」という状態にあることだ。
 軍事力だけで比べれば、イスラエルがガザ地区を徹底的に破壊して、再占領をすることは容易なことだ。しかし、ガザ地区再占領が今回の軍事作戦の目的ではない。人質を解放することが最優先だ。ハマスの壊滅はそれに比べれば重要度は低い。ネタニヤフ首相はそのことを履き違えている。しかも、軍事作戦を進めれば進めるほどに、国際的な非難の声は大きくなるばかりだ。イスラエルはガザ地区での作戦を中止し、一部部隊を撤退させた。ネタニヤフ首相はただガザ地区を破壊し、パレスティナ人の憎しみを増大させ、肝心の人質の救出にはつながっていない。半年も経ってこのような状態では、ネタニヤフ首相は大きな失敗をしたと言わざるを得ない。

 バカ極右が下手に軍事力を持つとどのようなことを起こすか、日本にとって良い教訓だ。

(貼り付けはじめ)

ネタニヤフ首相の戦争戦略は意味をなしていない(Netanyahu’s War Strategy Doesn’t Make Any Sense

-イスラエルの計画は、それ自体の条件から見てもつじつまが合わない。

アンチャル・ヴォ―ラ筆

2024年4月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/05/israel-gaza-war-netanyahu-strategy/

2023年11月、私はテルアヴィヴでハマスに人質として拘束されたリリ・アルバッグの父親エリ・アルバッグに会った。ベギン通りの真ん中で19歳の娘の写真を手にしながら、彼はハマスに圧力をかける政府の軍事作戦を支持すると言った。「ハマスが自ら人質を解放すると思うか?」 しかし、アルバッグは我慢の限界に達したようだ。2024年3月下旬、彼はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に最後通牒を突きつけ、家族たちはもう支援集会を開かず、反ネタニヤフ抗議運動の拡大に加わって街頭に集まると地元メディアに語った。

問題となっているのは、人質の家族が、親族の帰還(the return of their relatives)とハマスのイスラエルに隣接するガザ地区からの排除(Hamas’s removal from their neighborhood)を、この順で勝利と見なしている一方で、多くの人がこの2つの戦争目的が矛盾していることを以前から知っていたことだ。しかしネタニヤフ首相は軍事作戦開始以来、人質解放よりもハマスの排除を意図的に優先してきたが、実際にはどちらも達成するための一貫した計画はない。

ネタニヤフ首相は、戦争を終結させ、人質を解放し、平和をもたらす見通し、ヴィジョンを欠いたまま、ただ出来事に反応しているだけだと、軍事アナリストやイスラエル国民の一部から非難されることが増えている。

しかし、ネタニヤフは依然として憤慨している。抗議デモに対してネタニヤフ首相は、「勝利がもうすぐ訪れるこの時期に早期の選挙は国を麻痺(paralyze)させ、ハマスを利するだけだ」と述べた。彼は今、100万人以上のパレスティナ人が避難しているガザ地区南部のラファに目をつけている。このような攻撃は国際的な怒りを買うだけでなく、ハマスとの交渉をより難しくするだろう。

2023年10月7日、ハマスがイスラエルの町やキブツ(kibbutzim)を襲撃し、約1200人を殺害、250人以上を拉致した直後、ネタニヤフ首相は宣戦布告した(declared war)。ガザ地区を空爆することでハマスに圧力をかけ、捕虜を解放させ、同時にハマスを排除するというのが、人質の家族に対する基本的なメッセージだった。

しかし、ハマスは、ガザ地区をはじめとするパレスティナ地域だけでなく、レバノン、シリア、イランなどにも拠点を構え、国民から絶大な支持を得ている。ハマスは、どのように排除するつもりなのかという、より根本的な問題については、ネタニヤフ首相は口をつぐんだ。アメリカの情報諜報機関が毎年まとめている脅威評価によれば、イスラエルはハマスの何年にもわたる抵抗に直面する可能性がある。

何年にもわたる対反乱作戦の末、イスラエルの治安部隊がガザ地区でハマスを壊滅させることができたとしても、将来のどうようなグループの再来はどうなるだろうか? イスラエル国防軍(IDF)が更に長い期間をかけてハマスの分派を壊滅させたとしても、ネタニヤフ首相は、政治的解決の目処が立たないまま、武装抵抗をどのように排除するのだろうか?

安全保障担当のある政府高官は匿名を条件に本誌に次のように語った。「私たちはハマスの全24大隊のうち18大隊を壊滅させたが、ハマスの撲滅にはどれだけの距離があるだろうか? それは大きな疑問だ。ハマスを排除することは可能だが、その期限を決めることはできない。もちろん、他のグループが台頭する可能性もある」。

ガザ地区内でのイスラエルの軍事作戦は、ハマスのインフラと軍事能力に大きなダメージを与えたが、平和は保証されていない。イスラエルの世界的に有名な国防軍と治安機関が、10月7日の攻撃の2人の首謀者、モハメド・デイフとヤヒヤ・シンワルを逮捕することができていないという事実、今もガザの裂け目のどこかに2人が身を潜めているという事実が、イスラエルの限界と、ハマス指導部が今も受けている支援の大きさを物語っている。

2月にネタニヤフ首相がついに計画の概要を発表したが、詳細はほとんどなく、イスラエルの専門家たちによって「計画ではない(non-plan)」としてすぐに却下され、「現実から切り離されている(untethered from reality)」と形容され、ただの大騒ぎのように聞こえた。結局のところ、ガザ地区再占領への行程表(ロードマップ、roadmap)以上のものではなかった。

ネタニヤフ首相は、ガザ地区を当面の間、「安全管理(security control)」し、この地域が完全に非武装化されて初めて復興を許可すると述べた。また、パレスティナ人の非武装化を望んでおり、パレスティナの国家承認を否定している。いかなる合意も、イスラエル人とパレスティナ人の「直接交渉によって(through direct negotiations)」のみ達成されるとネタニヤフは語ったが、交渉の時期は明らかにしていない。報道によると、流布された計画では、戦後のガザ地区の文民行政は、ハマス以外の非敵対的な地元の各グループによって運営されることになっている。

パッと見たところでは、ハマスの残忍な攻撃を受けて恐怖に怯え、安全に暮らしたいと願うイスラエル国民にとっては理に適っている。しかし、よくよく考えてみると、辻褄が合わない。最初に、ネタニヤフ首相はイスラエル軍を無期限に派遣するつもりなのか、それとも必要なときに必要なだけイスラエル軍に自由に立ち入ることを望んでいるのか、明らかにしていない。前者はガザ地区の再占領を意味し、後者は事実上の支配を意味する。どちらの選択肢も、イスラエル国民やイスラエルの国際的パートナーにはまだ提示されていない。

たとえ、ネタニヤフ首相が、イスラエルが最近国交を結んだ、アラブ諸国からなる多国籍軍がガザ地区の治安維持を引き継ぐことに同意したとしても、そのような多国籍軍がパレスティナ人の間でどのような信頼を得られるかについては疑問が残る。ハマスの大隊を全て非武装化するのは短期的な課題かもしれないが、その残党や別組織と戦うには何年も、もしかしたら何十年もかかるだろう。治安維持部隊にとっては、反目する準国家を監視するよりは、反乱軍に対処する方がまだ扱いやすい仕事だが、イスラエル軍には大きな犠牲を強いることになる。イスラエルの高圧的な態度は、イスラエル国内でのパレスティナ人の攻撃を抑制するか、もしくは助長するかのどちらかだ。

イスラエルの元国家安全保障担当次席補佐官エラン・ラーマンは、パレスティナ人の非急進化(deradicalize)という目標は、永続的な和平に向けたものだと語った。ラーマンは、「私たちは一過性の現象であり、遅かれ早かれ圧力で崩壊するだろうというパレスティナ人の認識を変える必要があるため、非急進化がカギとなる」と述べた。学校やモスクでの非急進化プログラムは、「イスラエルの生存権を認めない」人々(those who do not “accept Israel’s right to exist”)を対象にしたものだ。

しかしパレスティナ人は、これもまた二国家共存による解決を遅らせるためのネタニヤフ首相の戦術だと言う。結局のところ、パレスティナ人は単にハマスのプロパガンダによってイスラエルに反対しているのではない。パレスティナ人の多くは、イスラエル国家と入植者による土地収奪の犠牲者であり、それは現在の戦争による苦しみ以前の問題なのだ。ネタニヤフ首相は、パレスティナ人の自決の考えをより生産的な形で形成する方法についての計画を明らかにしていない。

ネタニヤフ首相の、地元住民に最終的な文民統制権を与えるという提案もまた、軽率に思える。いったい誰を念頭に置いているのだろうか? あるイスラエル安全保障関係者は、イスラエルに友好的なアラブ諸国、特にアラブ首長国連邦に従順な現地人はテストに合格するだろう、と語った。しかし、そのような指導者はイスラエルの操り人形とみなされ、パレスティナ人の間では立場が弱いかもしれない。ヨルダン川西岸のマフムード・アッバス率いるパレスティナ自治政府(Palestinian Authority)のように、嘲笑の的になるかもしれない。

ネタニヤフ首相のハマス壊滅、ガザ地区の非武装化、パレスティナ人非武装化キャンペーンは、事実上ガザ地区の再占領に等しい。ガザ地区を再占領することは、イスラエル国民の多くが快く思っていないとしても、ネタニヤフ首相の、計画になっていない計画はそこに向かっている。イスラエル国防軍で報道官を務めたジョナサン・コンリカスは「イスラエル人は占領という言葉を使いたがらないが、他に選択肢はない」と述べている。

先月、アメリカは停戦を求める国連安全保障理事会の採決を棄権した。ガザ地区の再占領は亀裂を更に広げるだろう。言い換えれば、ネタニヤフ首相の戦略は、ガザ地区とその200万人の住民、ますます疎外されるアメリカ政府、国際的孤立の増大に対する責任という形で、悲惨な勝利に向かう可能性がある。

※アンチャル・ヴォ―ラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌コラムニストでヨーロッパ、中東、南アジアについて記事を執筆中。ロンドンの『タイムズ』紙中東特派員を務め、アルジャジーラ・イングリッシュとドイツ国営放送ドイチェ・ヴェレのテレビ特派員を務めた。以前にはベイルートとデリーに駐在し、20カ国以上の国から紛争と政治を報道した。ツイッターアカウント:@anchalvohra

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げたが、2023年10月7日から始まった、イスラエルとハマスとの間の紛争は半年を超えようとしている。イスラエルはガザ地区での地上作戦を展開し、パレスティナ側の民間人に多数の死傷者が出ている。最近では西側諸国の支援者たちがイスラエル軍の攻撃で死亡するという事件も起きた。ジョー・バイデン政権はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と政府の対応に、極めて強い不満を持っていることが報じられている。

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いたが、アメリカの二大政党である共和党と民主党のそれぞれの支持者で、ウクライナ戦争とパレスティナ紛争へのアメリカの支援(対ウクライナ、対イスラエル)について、姿勢が異なる。民主党支持者は、ウクライナ戦争でウクライナ支援を支持し、中東紛争でイスラエル支援には不熱心である。一方、共和党支持者は逆で、ウクライナ支援には不熱心であり、イスラエル支援には熱心である。昨年の段階で、そのような世論調査の結果が出ており、このことは拙著でも紹介した。

 昨年11月の世論調査に比べて、今年3月中旬の世論調査の数字は、イスラエルへの支援に反対が増えており、過半数が反対となったということだ。民主党支持者、無党派層では反対が大幅に増え、共和党支持者の中でも支持が減ったということである。

 イスラエルによるガザ地区での地上作戦でのパレスティナの民間人犠牲者については、世界各国で報じられ、アメリカ以外の国々では、イスラエルの行動に反対が多くなっていた。アメリカはイスラエルの強力な支援国であるが、そこでも反対が多くなっている。民主党であるバイデン政権は、この世論の動きを「利用」して、イスラエルへの支援の削減や、イスラエルのガザ地区での軍事行動に制限をかけるようとするだろう。これは、今年実施される大統領選挙を見据えた動きとなる。支持基盤である民主党支持者からの指示を固めるためにも、イスラエルに対しての何らかの動きは必要となる。大統領選挙に向けて、バイデン大統領は経済回復を実績とアピールしたい。それに加えて、外交、対外政策の面でも成功をアピールしたい。ウクライナ戦争が泥沼の状況になっている中で、中東紛争は、政権にとって対処すべき問題であり、そこで成功(停戦など)をアピールできれば、政権支持率の上昇に資することになり、大統領選挙でも有利に働く。アメリカとしてはまずイスラエルに停船を促す、圧力をかけるということになるだろう。更には、ネタニヤフ首相の「交代」「更迭」ということも視野に入っているかもしれない。

(貼り付けはじめ)

アメリカ人の過半数が現在、ガザ地区におけるイスラエルの行動に反対だ(Majority in U.S. Now Disapprove of Israeli Action in Gaza

-昨年11月から現在までで支持が50%から36%に下落した。

ジェフリー・M・ジョーンズ筆

2024年3月27日

「ギャロップ」

https://news.gallup.com/poll/642695/majority-disapprove-israeli-action-gaza.aspx

ワシントンDC発。昨年11月の時点では、イスラエルのガザ地区での軍事行動を僅差で支持したアメリカ人が、現在、この作戦に大差をつけて反対をするようになっている。現在、55%のアメリカ人がイスラエルの行動に反対し、36%が支持を表明している。
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最新の世論調査結果は、3月1日から20日までのものだ。イスラエルとハマスの戦争は5ヶ月間続き、数万人のパレスティナ人と1000人以上のイスラエル人が亡くなっている。ガザ地区の大部分は破壊され、今もそこに住むパレスティナ市民に人道援助を届ける努力を難しくしている。国連とジョー・バイデン政権を含む国際社会は停戦(cease-fire)を呼びかけているが、イスラエルとハマスの両陣営は合意できない状況だ。

今回の世論調査は、月曜日に国連安全保障理事会がラマダン期間中の停戦を求める決議を可決する前に終了した。アメリカが拒否権を行使せず、棄権したため決議は可決された。アメリカは以前に停戦を求める他の決議には拒否権を行使した。

アメリカの成人の74%は、イスラエルとハマスの状況に関するニュースを注意深く見ていると回答している。これは昨年11月に測定されたギャラップ社の世論調査の結果の72%とほぼ同じである。アメリカ人の3分の1(34%)は、状況を「非常に注意深く」注視していると答えた。

イスラエルの軍事行動に対する反対は、アメリカ人がどれだけ紛争に注目しているかにかかわらず、ほぼ同様である。しかし、注目度が低い人ほど、この問題に関して意見を持たない傾向が強く、その結果、注目度が高い人よりも支持率が低くなっている。
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●共和党支持者は肯定的スタンスを維持しているが、無党派層は決定的に否定的になっている

アメリカにおける3つの主要な政治的なグループ分け全てで、イスラエルのガザ地区での行動を昨年11月時点よりも支持しなくなっている。これには、民主党支持者と無党派層の支持率が18ポイント低下したことと、共和党支持者の支持率が7ポイント低下したことが含まれる。

無党派層は、イスラエルの軍事行動に対する見方が分かれていたが、反対へとシフトした。民主党の支持者は、昨年11月の時点で既に過半数が反対していたが、現在はさらに反対を強めており、賛成が18%、反対が75%となっている。

共和党支持者は依然としてイスラエルの軍事行動を支持しているが、賛成が71%から64%に減少した。
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イスラエルの行動に対する民主党所属の連邦議員たちの間で、反対意見が拡大していることは、ジョー・バイデン大統領にとって、彼の最も忠実な支持者の間でもこの問題が困難であることを浮き彫りにしている。民主党を批判する人々の中には、バイデンは停戦を促進し、紛争地域に巻き込まれたパレスティナ市民を支援するためのより強力な行動を取らず、イスラエルに寄り添いすぎていると考えている人がいる。

バイデンの中東情勢への対応に対する支持率は27%で、今回の調査でテストされた5つの質問の中では最低の数字であった。これは、バイデンがイスラエルとパレスチティナの情勢をどのように扱っているかを支持する民主党支持者たち(47%)が、経済、環境、エネルギー政策、外交問題など幅広い分野でのバイデンの扱いを支持する民主党議員よりもはるかに少ないためである。これらの問題に関しては、民主党支持者の66%以上がバイデンを支持している。

中東情勢に関するバイデンの低評価をさらに促しているのは、無党派層のわずか21%、共和党員の16%が、この問題でのバイデンの対処を支持していることだ。

それでも、中東紛争がバイデンの政治的地位に明らかな打撃を与えている訳ではないようだ。昨年10月と11月の調査では支持率が37%であったが、今回は40%となり、これは、おそらくアメリカ国民のアメリカ経済への信頼が高まっていることが理由となるだろう。

●結論(Bottom Line

イスラエルとハマスの戦争が長引くにつれ、戦争における同盟国イスラエルの行動に対するアメリカの支持は低下している。ギャラップ社が今年2月に実施した世論調査によると、アメリカ人はイスラエルとパレスティナ自治政府の両方に対してあまり好意的でないという結果が出ている。

多くの問題でそうであるが、アメリカ国内は党派別で激しく対立している。共和党支持者の大半は、秋の調査よりは少ないものの、イスラエルの行動を支持しており、民主党支持者の大半は反対している。無党派層の意見は、民主党支持者の意見にかなり近づいている。

アメリカ人はバイデンの紛争への対応を低く評価しているが、バイデンの大統領としての仕事ぶり全般に対する支持率は紛争が始まる前より下がってはいない。中東紛争は、アメリカ人が、アメリカが直面している最重要な問題を挙げるという質問では上位にランクされていない。また、アメリカ人がアメリカの重要な利益に対する重大な脅威として、いくつかの国際問題をそれぞれ評価する際にも上位にランクされていない。しかし、中東紛争は、この問題に深い関心を持ち、バイデン大統領の対応に憤慨している、バイデンに投票するであろう民主党支持者の投票率を下げることで、大統領に打撃を与える可能性がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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