古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:パレスティナ

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。イスラエルとハマスの紛争についても分析してします。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカはイスラエルの建国以来、イスラエルを支援し続けている。イスラエルに対する手厚い支援は、アメリカ国内にいるユダヤ系の人々の政治力の高さによるものだ。そのことについては、ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト著『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策Ⅰ・Ⅱ』(副島隆彦訳、講談社、2007年)に詳しい。

 アメリカが世界帝国、世界覇権国であるうちは、イスラエルもアメリカの後ろ盾、支援もあって強気に出られる。今回、ハマスからの先制攻撃を利用して、ハマスからの攻撃を誘発させて、ガザ地区への過剰な攻撃を行っているのは、二国間共存路線の実質的な消滅、破棄ができるのは今しかない、アメリカが力を失えば、パレスティナとの二国間共存を、西側以外の国々に強硬に迫られ、受け入れねばならなくなる。その前に、実態として、ガザ地区を消滅させておくことが重要だということになる。

 アメリカは自国が仲介して、ビル・クリントン大統領が、パレスティナ解放機構のヤセル・アラファト議長とイスラエルのイツハク・ラビン首相との間でオスロ合意を結ばせた。二国共存解決(two-state solution)がこれで進むはずだった。しかし、イスラエル側にも、パレスティナ側にも二国共存路線を認めない勢力がいた。それが、イスラエル側のベンヤミン・ネタニヤフをはじめとする極右勢力であり、パレスティナ側ではハマスである。両者は「共通の目的(二国共存路線の破棄)」を持っている。そして、残念なことに、イスラエルの多くの人々、パレスティナの多くの人々の考えや願いを両者は代表していない。しかし、武力を持つ者同士が戦いを始めた。ハマスを育立てたのはイスラエルの極右勢力だ、アメリカだという主張には一定の説得力がある。

 アメリカとしてはイスラエルに対しての強力な支援を続けながら、ペトロダラー体制(石油取引を行う際には必ずドルを使う)を維持するためにも、アラブの産油諸国とも良好な関係を維持したい。しかし、中東地域の産油国の盟主であり、ペトロダラー体制を維持してきた、サウジアラビアがアメリカから離れて中国に近づく動きを見せている。サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)がブリックスに正式加盟したことは記憶に新しい。

 こうしたこれまでにない新しい状況へのアメリカの対応は鈍い。これまでのような対イスラエル偏重政策は維持できない。しかし、アメリカは惰性でこれからも続けていくしかない。こうして、ますます中東における存在感を減退させ、役割が小さくなっていく。

(貼り付けはじめ)

バイデンの新しい中東に関する計画は同じことの繰り返しである(Biden’s New Plan for the Middle East Is More of the Same

-改訂されたドクトリンでは、変化はほとんど期待できない。

マシュー・ダス筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/biden-middle-east-plan-gaza-hamas-israel-netanyahu/

2023年10月7日の同時多発テロを受け、ジョー・バイデン米大統領とバイデン政権は、10月7日以前の状況に戻ることはあり得ないと強調している。バイデン大統領は10月25日の記者会見で、「この危機が終わった時、次に来るもののヴィジョンがなければならないということだ。私たちの見解では、それは二国家解決(two-state solution)でなければならない」と述べた。

先月(2024年1月)、バイデン大統領は、長年にわたるお気に入りの、『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニストであるトム・フリードマンを通じて、新しい中東に関する計画の予告を発表した。フリードマンは、「ガザ、イラン、イスラエル、そして地域を巻き込む多面的な戦争に対処するため、バイデン政権の新たな戦略が展開されようとしている」と書いた。

フリードマンは、「もし政権がこのドクトリンをまとめ上げることができれば、バイデン・ドクトリンは1979年のキャンプ・デービッド条約以来、この地域で最大の戦略的再編成(strategic realignment)となるだろう」と書いている。

私はフリードマンの熱意には感心しているが、中東に対する「大きく大胆な」ドクトリンに関しては、彼の判断に大きな信頼を置くことはできないということだけは言っておきたい。フリードマンがこれほど興奮しているように見えたのは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子の革命的ヴィジョンに熱中していたときが最後だった。フリードマンが提示するバイデンの中東に関する計画には、目新しいことや有望なものはほとんどなく、アメリカの政策が何十年も続いてきた同じ失敗の轍にとどめる危険性がある。

フリードマンが伝えるところによると、この計画には3つの部分がある。パレスティナ国家樹立のための再活性化、アメリカが支援するイスラエルとサウジアラビアの国交正常化協定(サウジアラビアとの安全保障同盟を含むが、最初の部分についてはイスラエルの支援が条件となる)、そしてイランとその地域ネットワークに対するより積極的な対応である。

第一に、ポジティヴなことに焦点を当てよう。アメリカが管理する和平プロセスの主な問題の1つは、それが概して弱い側であるパレスティナ人に結果を押し付けていることだ。イスラエルにはニンジン(carrot)のみを与え、パレスティナ人には主に棒(stick)を与える。現在、バイデン政権がこのパターンを変える準備ができているという兆候がいくつかある。ヨルダン川西岸の過激派イスラエル人入植者と彼らを支援する組織に制裁を課すことを可能にする最近の大統領令は、アメリカが最終的に双方に結果を課す用意があることを示す小さいながらも重要な兆候である。この命令が単なる粉飾決算(window dressing)であると主張する人は、米財務省金融犯罪捜査網(Financial Crimes Enforcement NetworkFinCEN)からの通知を見て、その内容について説明できる人を見つけるべきだ。

最近のホワイトハウスの覚書でも同様であり、軍事援助には国際法の遵守が条件となっており、バイデン大統領は以前この考えを「奇妙だ(bizarre)」と述べていた。覚書の必要性には疑問があるが、政府は援助条件を整えるために必要なツールと権限を既に持っている実際、そうすることが法的に義務付けられているため、それは正しい方向への一歩である。もちろん、バイデン政権がその方向に進み続けており、新たなプロセスをイスラエルによる人権侵害に関する信頼できる申し立てを書類の山の仲に隠すための単なる手段として扱っている訳ではない。

しかし、パレスティナ人への配慮を除けば、バイデンの2023年10月7日以降の計画は、バイデンの10月7日以前の計画とよく似ている。それは、根本的な優先順位が同じだからだ。バイデンの新たな計画は、中国との戦略的競争(strategic competition)、つまり、バイデン政権が外交政策全体を見るレンズである。アメリカとサウジアラビアの安全保障協定は、中国を中東地域から締め出すために必要なステップであり、バイデン政権にこのような協定を売り込む唯一の方法は、サウジアラビアとイスラエルの正常化協定(もちろん、両国が独自に追求する自由はある)というお菓子で包むことである。このような合意には多くの疑問があるが、重要な疑問がある。何十年にもわたるイスラエルとアメリカの緊密な関係と比類なき軍事支援によって、アメリカがガザでの戦争の行方に影響を与えたり、イスラエルの武器の誤用を抑制したりすることができなかったとしたら、ムハンマド・ビン・サルマン王太子との合意によって、サウジアラビアによる責任ある武器の使用が保証されるのだろうか?

ここ数カ月の出来事が、アブラハム合意の大前提である「パレスティナ人は全くもって重要な存在ではない」ということを、いかに完全に打ち壊したかを認識するために、時間を使うだけの価値はある。これは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と、ワシントンにいる彼の同盟者たちにとって、彼らが長年主張してきたことの証明として提示されたものだった。それは政治的動機に基づく願望であることが判明した。これは驚くべきことではなかった。何しろネタニヤフ首相は、イラク侵略もイラン核合意からの離脱も素晴らしいアイデアだと断言した人物なのだ。彼は、この地域についてほとんど完璧なまでに間違っている。

バイデン政権は現在、アブラハム合意の論理を受け入れて、地域住民の間でのパレスティナ解放の永続的な重要性を大幅に過小評価していたことを理解している。これは歓迎すべき修正であるが、まだ不完全なままだ。 2023年10月以前の中東に関する計画は、パレスチティ人への永続的な弾圧を前提としていたという理由だけで欠陥があったのではない。この政策には欠陥があり、安定をもたらすと約束した虐待的で代表性のない政府による、アメリカ主導の地域秩序を再強化しようとして、地域の全ての国民に対する永続的な弾圧を前提としていたからだ。 10月7日に私たちは再び酷いことを学ばなければならなかったので、このような取り決めはしばらくの間は安定しているように見えるかもしれないが、そうでなくなる時期を迎えるだろう。

緊急の優先課題は、ガザでの殺害を終わらせ、ハマスが拘束している人質の解放を確実にすることだ。2023年10月7日の直後から、バイデン政権は「未来(day after)」についての対話には積極的だが、イスラエルが日々、無条件かつ絶え間ないアメリカの支援を受けながら、現場で作り出している恐ろしい現実がある。この現実こそが、アメリカが語る空想上の未来において、実際に何が可能かを決定することになることを、アメリカ側は十分に理解していないようだ。イスラエルの戦争努力は、殺戮の終了同時に自分の政治的キャリアが終わることを知っており、それゆえに戦闘を長引かせる動機を持っているネタニヤフ首相によって率いられているのだから、深刻に継続していくのである。

人命と家屋、地域と世界の安全保障、そしてアメリカの信用に与えたダメージの多くは、既に取り返しのつかない程度にまでなっている。デイヴィッド・ペトレイアスがアブグレイブの拷問スキャンダルについて語ったように、私たちの国の評判への影響は「生分解不可能[微生物が分解できない]non-biodegradable)」となっている。バイデン大統領が任期を越えてもこの状態は続くだろう。しかし、イスラエルとパレスティナの紛争に関するアメリカの政策を国際法に沿ったものに戻すことから始め、ダメージを軽減するために政権が選択することのできる措置はある。1967年に占領された地域が実際に占領地であると明確に表明することだ。これらの領土におけるイスラエルの入植は違法であるという国務省の立場に戻すことだ。ドナルド・トランプ大統領が閉鎖し、バイデンが再開を約束した在エルサレム総領事館を、パレスティナ人のための米大使館として再開することだ。ロシアのウクライナでの戦争と同様に、国際刑事裁判所があらゆる側面の戦争犯罪の可能性を調査することを支持することだ。国連加盟国の72%にあたる139カ国がパレスティナ国家を承認している。

結局のところ、パレスティナの解放を推進する真剣な取り組みには、バイデンがイスラエルに圧力をかける必要がある。それは避けられない。しかし同時に、バイデン政権が現在の危機を単に地域政策への挑戦としてだけでなく、政権が守ると主張する「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」全体への挑戦として捉えることも必要だ。パレスティナ人への対処を前面に出しても、権威主義的支配の耐久性を前提とした安全保障戦略の論理に根本的な欠陥があることには対処できない。ジョージ・W・ブッシュの「フリーダム・アジェンダ(Freedom Agenda)」のバイデン版を私は求めていない。しかし、たとえブッシュの処方箋が間違っていたとしても、彼の基本的な診断、つまり抑圧的な体制に安全と安定を依存することは悪い賭けだということは、認識する価値がある。私たちの政策は、このことに取り組む必要がある。

※マシュー・デス:センター・フォ・インターナショナル・ポリシー上級副会長。2017年から2022年にかけて、バーニー・サンダース連邦上院議員の外交政策補佐菅を務めた。ツイッターアカウント:@mattduss

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。近いうちにある週刊誌にて紹介していただけることになりました。詳しくは決まりましたらお知らせいたします。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イエメン内戦は長期化している。政府側と反政府組織フーシ派の間の戦いとなっているが、政府側をサウジアラビアが支援し、フーシ派側をイランが支援している。あ氏アラビアとイランとの間で国交正常化が合意されたことにより、この構図も変化を見せつつある。サウジアラビアがフーシ派と停戦交渉を行っている。そうした中で、アメリカとイギリスが共同でフーシ派を攻撃した。アメリカとイギリスは、紅海上において、フーシ派が民間船舶(中国やイランの船舶を除く)に対して攻撃を行い、世界の物流に影響を与えていることを理由に挙げている。フーシ派は、イスラエルによるガザ地区への過剰な攻撃に対する攻撃として、紅海上で民間船舶を攻撃している。これを受けて、世界の海運各社は航路変更を余儀なくなされている。これに対して、サウジアラビアは、アメリカやイギリスに同調せず、静観の構えを見せている。
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紅海の地図
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フーシ派の関連地図

 アメリカとイギリスの攻撃は沈静化しかけていた紅海の状況を再び不安定化させている。サウジアラビアとしては、アメリカとイギリスには介入して欲しくなかったところだが、アメリカとイギリスとしては、物流の停滞による物価高もあり、何もしないという訳にはいかなかった。そして、西側諸国においては、「中国はイランとの関係も深いのだから、紅海の状況を何とかせよ、フーシ派をおとなしくさせるために何かやれ」という批判の声が上がっている。中東地域は中国にとっても、エネルギー面において重要な存在であり、中国も中東地域において重要な役割を果たしつつある。サウジアラビアとイランの国交正常化合意を仲介したのは中国である。
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紅海航路と迂回航路の違い
 パレスティナ紛争や紅海の危機的な状況において、中国は何もしていないという批判の声が上がっている。しかし、これはなかなか難しい。中国が中東地域において活発に動き始めてまだ20年くらいだ。それに対して欧米諸国は戦前から植民地にするなど長期間にわたって深くかかわってきた。中東地域においての役割については欧米諸国の方が先輩であり、一日(いちじつ)の長がある。そして、欧米諸国の政策の失敗が現在の状況である。それを修正して、正常化するのは欧米諸国の責任だ。どうしても駄目だ、万策尽きたということならば、他の国々の出番もあるだろう。「中国が何とかせよ」というのが、「自分たちの力ではどうしようもありません、私たちが馬鹿でした、どうもすいません」ということならばまだしも、ただの自分勝手な言い草であるならば、中国が何かをするという義理はない。欧米諸国は一度徹底的に追い込まれて、自分たちの無力を自覚することだ。それが世界の構造の大変化の第一歩である。

 

(貼り付けはじめ)

紅海危機が中国の中東戦略について明らかにする(What the Red Sea Crisis Reveals About China’s Middle East Strategy

-中国は確かに中東地域のプレイヤーになったが、今でもまだ極めて利己的なゲームをしている。

ジョン・B・アルターマン筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/red-sea-crisis-china-middle-east-strategy-egypt-yemen/

昨年(2023年)3月、中国の王毅外相の顔に満足感があったのを見逃すことはできなかった。サウジアラビアとイランの間の和平合意を仲介したばかりの、王毅中国外相(当時)は、二国の代表を優しく近づけた。王毅は彼らの間に立ち、しっかりとコントロールしていた。

王毅外相が満足する理由は複数存在した。多くの人が不可能だと考えていたことを中国がやってのけただけでなく、それが可能な唯一の国でもあった。サウジアラビアとイランの両国は敵対していたが、それぞれが中国を信頼していた。アメリカは中東の安全保障を重視していたが、中国は実際にそれを提供していた。王毅のあり得ない成功は、中東における中国の役割の重要性の高まりを示す新たな兆候となった。

しかし、この4ヵ月の間、2023年3月のような自信に満ちた中国外交は影を潜めている。半世紀以上にわたるパレスティナ人への支援、10年以上にわたるイスラエルとの緊密な関係、イラン、サウジアラビア、エジプトなどへの数百億ドル規模の投資にもかかわらず、最近の中国は静けさを保っている。

さらに明らかなのは、紅海の海運に対するフーシ派による3ヶ月に及ぶ攻撃によって、中国の貿易が大打撃を受け、中国の一部の地域パートナー諸国が首を絞められ始めたとき、北京はしばしば、外交的、軍事的、経済的に、パートナー諸国はおろか、自国の広範な利益を追求するために行動することができないか、あるいはしたくないように見えたことである。

中国は自らを台頭する世界大国(rising global power)として宣伝しようとし、平和と繁栄を確保するという世界的な野望を達成できていないアメリカを非難することを好む。アラブのコメンテイターらは、2022年12月にサウジアラビア・リヤドで行われた中国の習近平国家主席を招いての首脳会談をめぐる温かさを、その5カ月前にジェッダで行われたジョー・バイデン米大統領とサウジアラビア指導部とのより緊迫した会談を対比させた。『アルリヤド』紙は「西側の独立筋」の主張を引用し、「中東地域は中期的には独裁と覇権(hegemony)から離れ、開発、投資、人民の幸福、紛争からの距離に基づく中国の影響力を通じての、戦略地政学的なバランスと政治的正義の段階に移行するだろう」と主張した。

それこそが、中国がこれらの国に望んでいる未来の姿である。間違ってはいけないのは、中国はアメリカを主要な戦略的挑戦と見なしており、それ以外のものは重要ではないということだ。

驚くべきことは、これがどれほど真実であるかということである。過去4カ月間の中国の行動と不作為は、数十年にわたる中東への投資にもかかわらず、北京がこの地域で重視しているのは、依然としてアメリカを弱体化させるためであることを浮き彫りにしている中国は確かに中東地域のプレイヤーになったが、今でもまだ極めて利己的なゲームをしている。

中国の中東への関心の大元はエネルギーだ。中国は30年前に初めて石油の純輸入国となり、過去20年間のほとんどにおいて、世界の石油需要の増加のほぼ半分を中国が占めてきた。この期間を通じて、中国の輸入石油の約半分は中東地域から来ている。

中国にとって、中東への依存は一貫して脆弱性ともなる。アメリカは半世紀にわたり、この地域の安全保障を支配してきた。中国人の多くは、米中両国が敵対した場合、アメリカが中国にとって不可欠なエネルギー供給を遮断することを恐れている。同様に、中東にはホルムズ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡、スエズ運河という、世界貿易に不可欠な3つの海運の重要地点(chokepoints)がある。アフリカ、ヨーロッパ、そしてアメリカ東海岸に向かう多くの中国製コンテナは、この3つの地点すべてを通過する。アメリカ海軍は現在、これら全ての重要地点を守る態勢を整えているが、同時に通行を阻害することも可能だ。

中国の戦略は、アメリカと対立するのではなく、アメリカと共存することであり、アメリカとの関係とともに中国との関係も発展させるよう地域諸国を説得することだ。10年ほど前、中国はアルジェリア、エジプトとの「包括的戦略パートナーシップ(comprehensive strategic partnerships)」を宣言し、後にサウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦をリストに加えた。偶然にも、北京は昨年8月、後者4カ国がBRICSブロック(当時はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成)に加盟するよう働きかけ、新規加盟国全体の5分の4を占めた。中国は、中東全域で経済関係を深め、その過程で貿易と開発を促進することを主張している。

中東諸国は中国の地域的役割の拡大を歓迎している。その理由として、中国が西側諸国の自由化圧力から解放してくれることが挙げられる。また、中国が厳格な規制よりもスピードを重視する経済パートナーとなってくれるからでもある。中東諸国は中国を台頭する世界大国と見ている。10年以上にわたって歴代米大統領が「ワシントンの主要な利益はアジアにある」と宣言してきたのだから、中東諸国が中国と強固な関係を築かないということはあり得ないのである。

中国が提示している主張は、各国は西側諸国との関係とともに中国との関係も発展させることができるというものだ。原則としては正しいが、現実問題としてはより複雑である。西側諸国の政府は、中国がこの地域に技術投資を行うのは、中国のスパイ活動の道具を組み込むためだと非難している。その結果、西側諸国の政府は、中東地域の各国政府がその技術を獲得することを、安全保障上の多種多様な協力体制の確立にとっての障害と見なしている。

中国の学者たちは、アメリカの地域安全保障の取り組みを厳しく批判してきた。ある著名な中国人学者は、「中国は、アメリカの無謀な軍事行動とプレゼンスの結果としての地域の不安定化の犠牲になっている」と書いている。王毅が2022年1月に中東6カ国の外相と会談したことを伝える中国メディアの記事では、王毅が「中東の主人は中東の人々だと私たちは確信している。『力の空白(power vacuum)』など存在せず、『外からの家父長制(patriarchy from outside)』など必要ない」と述べたことを伝えた。

中国の専門家たちが頻繁に主張しているには、アメリカのアプローチは中東諸国への敬意が不十分だということだ。ある学者は「あまりにも長い間、覇権国であったため、アメリカは自国の利益のために他国に圧力をかけることに慣れているが、他国の懸念には耳を貸さない」と指摘している。

2023年3月にサウジアラビアとイランの合意が成立したとき、中国側はこれを「中東の平和と安定の実現のための道をならすものであり、対話と協議を通じて国家間の問題と意見の相違を解決する素晴らしいモデルとなる」とし、「中国は建設的な役割を継続する」と公約した。

しかし、中東で暴力が勃発してから数カ月、中国は世界的な懸念声明に便乗することはあっても、独自の声明を発表することはほとんどなかった。最も明確に非難したのは、2023年10月にイスラエルがガザ市のアル・アハリ病院を攻撃したと当初は考えられていたが、後にパレスティナ側のロケット弾の誤射によるものと判明した事件に対してである。

中国は、2023年10月7日に発生したハマスによるイスラエル民間人に対する攻撃も非難しておらず、紅海の船舶に対するフーシ派の攻撃も非難していない。和平会議の開催が一般的には望ましいと表明すること以外に、この地域で展開し相互に関連する危機のいかなる要素にも対処するための中国の外交提案はない。中国にとって、高官の訪問、奨励と懲罰、調停などの外交手段は全てが保留されている。

2024年1月のジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官と王毅外相とのタイでの会談での議題は紅海の安全保障についてであった。この会談の前に、中国とイランの政府関係者は口をそろえて、中国はイラン政府に対し、フーシ派への支援について苦言を呈したが無駄だったと主張した。このような発言は、単にアメリカの圧力から王毅を守るためなのか、それとも中国がイランの思惑に影響を与えることができないという現実を反映したものなのかは明らかではない。

一方で、西側諸国と中東諸国の外交官たちは、人命を守り、緊張を緩和し、世界貿易の自由をより促進するための、何らかの方法を見つけようと、互いに深く関わっている。

この地域での出来事が中国の利益を直接的に傷つけるものではないと主張するのは難しい。まずフーシ派から話を始めることができる。彼らはイランから年間約1億ドルを受け取っている。イランは中国との貿易が全体の3分の1を占めているが、その貿易額は中国貿易の1パーセントにも満たない。

中国はイランよりも世界の他の国々に対してより注意を払っている。一部の報告によると、通常は紅海南部を通過するコンテナ船の90%が同海域を避けるために航路を変更したということだ。平常時、紅海航路は世界のコンテナ輸送量の約 3分の1、アジアとヨーロッパ間の全貿易量の40% を占めている。輸送のボトルネック(bottleneck)となっているのは、コンテナ価格が3倍から4倍に高騰しており、ヨーロッパに向かうエネルギー輸送がアフリカを迂回し、配送の遅れによりサプライチェインが麻痺していることだ。

中国は貿易立国(trading nation)であると同時に海洋立国(maritime nation)でもある。世界貿易における争いは中国に直接影響を与えるだけでなく、将来の混乱を避けるために、投資家たちを「ニアショアリング(nearshoring)」(サプライチェインの依存をより近くて友好的な国々にシフトすること)に向かわせる。

混乱はまた、中国の中東への投資にも打撃を与える。中国は紅海の各種施設に数百億ドルを注ぎ込んできた。ジブチの軍事基地だけでなく、東アフリカ、サウジアラビア、スーダンの港湾施設、鉄道、工場、その他無数のプロジェクトに注ぎ込んできた。これらの投資は一帯一路計画の一部だ。これらのプロジェクトは全て、紅海航路の断絶によって危機に瀕している。

中東全域で、イランの代理諸勢力がこの地域を戦争に導くと脅しており、その一部はイスラエルへの攻撃を通じてその脅迫に説得力を持たせている。イスラエル自身もほぼ20年にわたって中国との関係を着実に強化してきた。アメリカン・エンタープライズ研究所の中国グローバル投資トラッカーによると、中国は過去10年間でイスラエルに90億ドル近く投資し、30億ドル相当のプロジェクトを構築した。

中国がイランの代理になるどころか、イランをコントロールできると期待する人はほとんどいないが、中国がそのつもりすらないようであることは注目に値する。しかし、今回の紅海危機において中国はチャンスも見出している。

中国はこの危機を利用するために2つのことを行った。 1つ目は、中東におけるアメリカの役割に対するグローバル・サウスの敵対心を刺激しようとして、アメリカを批判することだ。2023年10月に『チャイナ・デイリー』紙に掲載されたあるコラムは、「アメリカはガザ地区において、『歴史の間違った側(wrong side of history)』に属しており、ガザ地区におけるより大きな人道危機の回避を支援することで、世界唯一の超大国としての世界的責任を果たすべきだ」と主張した。中国メディアは、グローバル・サウスの反米感情と反イスラエル感情両方を煽る形で、アメリカの外交努力を非難し続けている。中国メディアは、今回の紛争を根本的に解決するためには二国家解決策の追求が必要であるが、それを阻害しているのは、根本的に、アメリカのイスラエルの肩入れが存在している(これが今回の紛争の基底にある)、と時に間接的に、時に直接的に、主張している。

 中国が行っている2番目のことは、当面の経済的利益に配慮することだ。中国船舶の需要が高まっており、荷主はフーシ派が中国籍の船舶を攻撃しないと信じている。紅海を航行する一部の船舶は、攻撃を避けるために「全員が中国人の乗組員」を船舶追跡装置に表示されるようにしていると発表している。

中国は中東において、急速に変化する状況に適応するために外交が緊張していることを示している。加えて、共通の利益につながる困難なことを行うことへの嫌悪感を示している。中国当局者たちは協力する代わりに、パートナー諸国や同盟諸国を犠牲にして自国の利益を推進するためのギリギリの方法を模索している。

それは、中国がしばしば名刺代わりとして宣伝するような「ウィン・ウィン(win-win)」の論理ではない。現在、中国を含む全員が負けている中で、中国は状況を傍観している。

※ジョン・B・アルターマン:戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)上級副所長、ブレジンスキー記念国際安全保障・戦略地政学(geostrategy)部門長、中東プログラム部長。

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 古村治彦です。
 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。2023年10月に始まったイスラエルとハマスの紛争についても分析しています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イスラエルとハマスとの紛争、その後のイスラエルによるガザ地区への過酷な攻撃が今も継続中だ。イスラエルによるガザ地区への苛烈な攻撃に対しては、体調虐殺(ジェノサイド)だという批判の声が上がっている。アメリカは、一貫してイスラエル支持の姿勢を崩していないが(もちろん崩せないが)、ガザ地区の状況については憂慮しており、イスラエル側に自制を求めているが、イスラエルはアメリカ側の言うことを聞かない。アメリカは、イスラエルに引きずられる形になっている。それでも、「イスラエルを支援しているアメリカが何とかしろ」というアメリカに向けた批判の声も大きくなっている。

 私は最新作『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』の中で、世界は「ザ・ウエスト(the West、西側諸国)対ザ・レスト(the Rest、西側以外の国々)」という対立構造で、これからの世界は動いていくと書いた。ザ・ウエストの旗頭はアメリカで、ザ・レストの旗頭は中国である。ザ・レストには南半球の発展途上国が多いことから、「グローバル・サウス(Global South)」とも言う。アメリカが世界唯一の超大国として、一極構造であった世界から大きく変化しつつある。今回のパレスティナ紛争についても、この構図が当てはまる。

 中国は紛争発生当初から、即時の停戦を求めてきた。最近では、イスラエルによるガザ地区への攻撃を憂慮し、パレスティナ側に立つ姿勢を見せているが、深入りすることはせず、調停者の役割までは担うという姿勢を見せいている。中国の調停案はイスラエルには受け入れがたいものであるが、中国は強硬な態度を示していない。これは、アメリカの失敗、敵失を待っているということも言える。アメリカが自滅していくのを待っているということになる。そして、ザ・レスト、グローバル・サウスの旗頭として、これらの国々の意向を尊重しながら行動しているということになる。中国は慎重な姿勢を見せている。

 アメリカとイスラエルはお互いに抱きつき心中をしているようなものだ。イスラエルはアメリカを巻き添えにしなければ存続できない。アメリカはイスラエルを切り離したいが、もうそれはできない状況になっている。お互いがお互いにきつく抱きついて、行きつくところまで行くしかない。非常に厳しい状況だ。

 世界の大きな構造変化から見れば、アメリカとイスラエルは即座に停戦し、パレスティナ国家の実質的な確立を承認すべきであるが、イスラエルの極右勢力の代表でもあるベンヤミン・ネタニヤフ首相には到底受け入れられない。また、ハマスにしてもイスラエルとの共存は受け入れがたい。中国としてもパレスティナの過激派組織をどのように扱うかは頭の痛いところであろうが、イランとの関係を使ってうまく対処するだろう。二国間共存に向かうように今回の機器をうまく利用できるとすれば、それはアメリカではなく、中国だ。

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中国がイスラエルとハマスの戦争をどのように利用するか(How China Is Leveraging the Israel-Hamas War

-ワシントンとグローバル・サウスとの間に広がり続けている分断は、北京に有利に作用している。

クリスティーナ・ルー筆

2024年1月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/31/china-israel-hamas-global-south-us-foreign-policy/?tpcc=recirc062921

イスラエルによるガザ地区での軍事作戦に対する世界的な怒りが高まるなか、中国は、この戦争に対するワシントンとグローバル・サウス(Global South)のスタンスの間に広がる分断(divide)を利用し、北京自身の外交政策上の野心を高めることに注力してきた。

イスラエル・ハマス戦争の過程を通じて、中国は深刻化し続ける紛争に巻き込まれたり、地域のつながりが危​​険に晒されたりすることを警戒し、慎重に傍観者の立場を守り続けてきた。しかし、アメリカ政府がイスラエル支援をめぐって激しい反発に直面する中、中国政府もまた、ブラジル、インド、南アフリカ、パキスタンを含む数十カ国の集合体である、いわゆるグローバル・サウスと連携する機会を捉えている。アメリカの立場とは大きく異なり、イスラエルの行動を非難した。

戦略国際問題研究センター(Center for Strategic and International StudiesCSIS)で中東プログラムの部長を務めるジョン・アルターマンは、「中国は、そのほとんどをアメリカに任せている。中国が中東で追求している唯一の利益は、アメリカとグローバル・サウスの大部分との間に大きな分断が生まれるのを見守ることだ」と述べた。

イスラエル・ハマス戦争に対する中国のアプローチは当初から慎重さが特徴だった。例えば、中国の習近平国家主席は、2023年10月7日のハマスの最初のイスラエル攻撃後の検討まで2週間近く待ったが、一方、初期の政府声明ではハマスの名前さえも言及せずにいたが、この対応はイスラエル当局の怒りを買った。それ以来数カ月間、中国は自らを和平調停者(peacemaker)として位置づけ、紛争に直接関与するまでは至らないようにしながら、停戦とパレスティナ国家の確立を呼びかけた。

ブルッキングス研究所の研究員パトリシア・キムは本誌の取材に対して、電子メールを通じて答え、「中国は、現在進行中の紛争において実質的な役割を明らかに回避している」と語った。キムは更に、「中国政府は自らを地域の権力仲介者として見せたいと考えているが、安全保障の提供者(security provider)としての役割を果たすことや、地域における関係を危うくする可能性のある困難な状況に直接介入することには全く興味がない」と述べた。

こうした力関係は紅海でも明らかであり、フーシ派がパレスティナ人との連帯と主張して行った数か月にわたる商業船舶に対するフーシ派の攻撃により、世界貿易が混乱している。しかし、紅海を守るために船舶を派遣する国が増えているにもかかわらず、中国は自国の海軍の介入に抵抗している。中国政府が関与に最も積極的に取り組んでいるのは、フーシ派を支援するイランに非公式に介入を迫っているとロイター通信が報じたが、イラン当局者はこの報道を否定した。

北京のアプローチは、ワシントンとは対照的である。ワシントンは、イスラエルの建国以来、長年イスラエルの最も強力な支持者の1人であり、数十億の軍事援助で同国を支援してきただけでなく、パレスティナ紛争が始まって以来、国際舞台でイスラエルの主要な擁護者(primary defender)として行動してきた。国連安全保障理事会(United Nations Security Council)でアメリカの拒否権(veto)を行使し、中国だけでなく、グローバル・サウスの国々を含む数十カ国が支持する停戦を求める決議を阻止してきた。ジョー・バイデン政権は紅海でも行動を起こし、イエメンのフーシ派に対する攻撃を開始し、紅海の航行の自由を確保するために国際タスクフォースを動員した。

しかし、ガザでのイスラエルの軍事作戦が壊滅的な人道的被害をもたらしている中、ハマスが運営するガザ保健省によると、イスラエル軍は戦争開始以来、ガザで2万6000人ものパレスティナ人を殺害しているということだ。イスラエルに対するワシントンの揺るぎない支援に、世界の多くの人々はますます不満を募らせ、幻滅している。ガザでは現在、50万人以上の人々が「壊滅的なレベルの深刻な食糧不足(catastrophic levels of acute food insecurity)」に直面しており、統合食糧安全保障段階分類は12月に警告を発している。

そして、中国政府はその分断を利用しようとしている。「チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト(China Global South Project)」の共同創設者エリック・オランダーは、次のように述べた。「中国は、分断によって、世界の他の国々の目、彼らが関心を寄せる世界の地域において、アメリカを更に弱体化させることになると感じている。これは、アメリカがいかに孤立しているかを示し、世界と歩調が合っていないことを示し、そしてアメリカの偽善を示すという、中国に対する彼らの戦略にそのまま反映されている。」

オーランダーは、「中国は、自国の外交政策を追求し、アメリカ主導の国際秩序の欠点について彼らが言おうとしている価値観のいくつかを広めるという点で、これをかなり巧みに演じていると考える」と述べた。

この戦略の一環として、中国は自らを平和調停者であると公言し、5項目の和平計画を提案し、イスラエル・パレスチナ和平会議の開催を呼びかけている。2023年10月、北京はカタールとエジプトに地域特使を派遣し、停戦(ceasefire)を促した。それ以来、ガザへの約400万ドルの人道支援(humanitarian aid)を約束し、アラブ・イスラム諸国の閣僚代表団を受け入れ、紛争をめぐるBRICSブロック(当時はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成)の事実上の首脳会議に参加した。

中国の張軍国連大使は、戦争が始まって1カ月後、安全保障理事会のブリーフィングにおいて、「中国は、敵対行為の停止と平和の回復を促進するために、たゆまぬ努力を続けてきた。中国は引き続き、国際的な公正と正義の側に立ち、国際法の側に立ち、アラブ・イスラム世界の正当な願望の側に立っていく」と述べた。

中国の王毅外相は2024年1月、アフリカの多くの国々を訪問した。その際、イスラエル・ハマス戦争の仲介役の1人であるエジプトへの訪問の機会を利用し、停戦とパレスティナ国家の確立を繰り返し訴えた。

しかし、専門家たちは、北京の行動はほとんどがパフォーマンスであり、具体的な成果はほとんど得られていないと主張している。ヨーロッパ外交問題評議会のマーク・レナードが『フォーリン・アフェアーズ』誌上で指摘したように、2023年11月のBRICS首脳会議では、共同声明も現実的なロードマップも作成できなかった。ブルッキングス研究所によれば、中国が提案した和平案では、紛争解決の責任は北京ではなく、国連安全保障理事会にあるとしている。

大西洋評議会の非常勤研究員であるアーメド・アブドゥは2023年12月、「中国の外交用語の不明瞭さと、世界第2位の経済力を持っているにも関わらずガザに提供した金額の少なさ」を引き合いに出し、イスラエルとハマスの戦争調停に対する中国の真剣さは「巧妙な欺瞞(smoke and mirrors)」に過ぎないと書いている。

中国政府は紛争に巻き込まれるのではなく、バイデン政権の世界的な信頼性に疑問を投げかける一環として、ワシントンを厳しく追及し、米中両国の間の立場の違い対比させることに重点を置いている。こうした努力は国連安全保障理事会でも全面的に表れており、中国は2023年10月にアメリカの提出した安保理決議案が停戦を求めていないとして批判し、拒否権を発動した。ロシアもこの決議案に拒否権を発動した。

中国の張国連大使は、「アメリカは加盟諸国のコンセンサスを無視した新たな決議案を提出した」と述べた。北京を含む他の理事国が修正案を提案した後でも、ワシントンは彼らの「主要な懸念(major concerns)」を無視し、「善悪を混同(confuses right and wrong)」した決議案を提出したと張国連大使は続けて述べた。

12月下旬、人道的即時停戦(immediate humanitarian ceasefire)を求める安全保障理事会決議案(Security Council draft resolution)にワシントンが拒否権を発動した後、中国は再びその投票を利用して自らをグローバル・サウスと並び称し、ワシントンの立場を際立たせた。張国連大使は、決議案の約100の共同提案者の1人として、中国政府は「草案がアメリカによって拒否権を発動されたことに大きな失望と遺憾の意を感じている。これら全ては、二重基準(double standard)が何であるかを改めて示している」と述べた。

中国国営メディアもこうした意見に同調し、アメリカと中国の立場の相違にさらに注目した。『環球時報』はアメリカの拒否権について、「ガザ住民の安全と人道的ニーズに配慮すると主張しながら、紛争の継続を容認するのは矛盾している。紛争の継続を容認しながら、紛争の波及を阻止することを主張するのは自己欺瞞(self-deceptive)である」と書いている。

さらに最近、北京はイスラエルの行動に対する怒りの最も明確なケースの1つにおいて、グローバル・サウスと協調している。国際司法裁判所(International Court of JusticeICJ)での南アフリカによるイスラエルに対する大量虐殺訴訟がそれである。国際司法裁判所(ICJ)には判決を執行する手段はないが、南アフリカが提起した裁判は、イスラエルに対する国際的な圧力の高まりを反映している。

国際司法裁判所は、イスラエルがガザで大量虐殺を犯しているかどうかという問題についてはまだ判決を下しておらず、おそらくこれから何年も判決を下すことはないままだろうが、先週の金曜日には、イスラエルの軍事作戦の緊急停止を命じるよう裁判所に求めた南アフリカの要求に応えた。国際司法裁判所は判決の中で、イスラエルに対し、ガザの民間人への被害を最小限に抑えるために「あらゆる手段を取る(take all measures)」よう命じた。

この判決が発表された後、中国の国営メディアは、イスラエルのガザでの行動に対して「見て見ぬふりをするのをやめるよう」いくつかの主要国に働きかけることになる((some major countries to stop turning a blind eye))との期待を表明した。これに対してバイデン政権は、プレトリアによる大量虐殺疑惑は「根拠がない(unfounded)」という立場を繰り返したが、国際司法裁判所の判決はイスラエルに市民の安全を確保するよう求めるイスラエルの要求に沿ったものだとも述べた。

中国は長年、グローバル・サウス諸国との政治的・経済的関係を育むことを優先しており、王外相は最近、2024年の最初の外遊をエジプト、チュニジア、トーゴ、コートジボワールを訪問して締めくくった。中国外相が今年最初の世界歴訪の目的地をアフリカにするのは34年連続となる。その後、王外相はブラジルとジャマイカを訪問した。

アトランティック・カウンシルの専門家であるアブドゥは、「中国はイスラエルを、巻き添え被害を与える存在として扱うことにした。中国は、グローバル・ガバナンスと戦略的優先事項のために、これらの国々の支援を求めている」と述べている。

※クリスティーナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@christinafei

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(終わり)
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。2023年を回顧し、2024年、その先を見通す内容となっています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 新刊でも取り上げたが、2023年10月7日からパレスティナ紛争が続いている。ハマスによるイスラエルに対する攻撃とそれに対するイスラエルの大規模な報復攻撃によって、多くの民間人が犠牲になっている。1948年にイスラエルが建国されて以来、パレスティン紛争は、強弱はありながらも継続中で、もうすぐで75年が経過しようとしている。問題は親から子へ、子から孫へと引き継がれて、より複雑化しているようだ。どうしてパレスティナ紛争は解決しないのか。1993年にパレスティナ解放機構(PLO)とイスラエルの間で成立したオスロ合意に基づく、二国家共存解決策(two-state solution)は破綻寸前なのはどうしてか。

 ハーヴァード大学教授スティーヴン・M・ウォルトはその主要な理由を5つ挙げている。ウォルトは、妥協不可能な目的、イスラエルが拡大すればするほど国内が脆弱になってしまう安全保障のディレンマ、無責任な部外者の介入、過激派の存在、アメリカに存在するイスラエル・ロビーが主要な5つの理由として挙げている。

 興味深いのは、イスラエルが拡大を続けて、アラブ人、パレスティナ人が住む領域を国土に編入していくと、イスラエル国民の構成がユダヤ人とアラブ人で半々になってしまう、そうした場合に、アラブ人にユダヤ人と同等の政治的権利を与えるべきかどうかということが大きな問題になるということだ。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はアパルトヘイト政策を実施して、アラブ系のイスラエル国民に政治的権利を認めないということを実行しているが、それでは、イスラエルが建国の理念として掲げる民主政治体制の公平性を毀損することになる。これは国家の存在理由を毀損することになる。イスラエルを拡大し、二国家共存路線を否定すればするほど、イスラエルの建国の理念は毀損され、イスラエル国家の正統性は失われていく。

 イスラエルの過激派は、二国家共存路線を放棄させようとして、パレスティナの過激派であるハマスと手を結んだ。彼らは共通の目的である「二国家共存路線の放棄」のために共闘できた。その結果が現在である。この過激派同士が手を組むというのはよく見られる現象である。ここで重要なのは、穏健派同士が手を組んで主導権を握ることだ。そうすることで、問題解決の糸口が見つかるだろう。パレスティナ紛争の解決(もしくは小康状態)は世界にとっても重要である。そして、それを75年間も成功させられなかったアメリカは、仲介者や保護者の役割を降りるべきではないかと私は考えている。パレスティナとイスラエル、双方と話ができる、非西側諸国(the Rest、ザ・レスト)の旗頭である中国に任せてみたいとなどと言えば、反発を受けるだろうが、サウジアラビアとイランの国交正常化交渉合意を取り付けた実績がある。アメリカの失敗を土台にしてそこから学び、方法を見つけることができるのではないかと考える。

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イスラエルとパレスティナの紛争がすぐには終わらない5つの理由(5 Reasons the Israel-Palestine Conflict Won’t End Any Time Soon

-過激派、ロビイスト、お節介な部外者、そしてより深い構造的問題の存在は、この問題が未解決のままであることを意味するものだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/08/israel-palestine-conflict-gaza-hamas/

関連する歴史にあまり馴染みがなく、今現在のように何か酷いことが起きている時にしかこの問題に注意を払わない傾向があるのなら、あなたは自問するかもしれない。それは次のような一連の疑問だ。「何が問題になっているのだろうか? なぜイスラエルとパレスティナは和解し、うまくやっていくことができないのだろう? アメリカは第二次世界大戦後、ドイツや日本と和解したし、アメリカとヴェトナムの関係は現在友好的だ。南アフリカや北アイルランドのような問題を抱えた社会でさえ、正義と平和に向かって進んできた。それなのになぜ、これらとは別の紛争を終わらせるための多種多様な努力が失敗に終わり、1948年にイスラエルが誕生して以来最悪のイスラエルとパレスティナの血を見ることになったのだろうか?」

私は疑問解消の手助けをするためにここにいる。イスラエルとパレスティナの紛争が、罪のない人々の命を奪い続け、地域を不安定化させ、ワシントンの政治的処理能力(Washington’s political bandwidth)を不釣り合いなほど消費し、恐怖、苦しみ、不正義を永続させ続けている理由のトップ5を紹介しよう。

(1)割り切れない目的(Indivisible objectives)。紛争の核心には、深い構造的問題がある。イスラエルとパレスティナの民族主義者・ナショナリストたちはともに、同じ領土に住み、その支配を望んでおり、それぞれがそれを自分たちの正当な権利だと確信している。両者はそれぞれ主張の根拠を持っており、それぞれが自分の立場が相手の立場を打ち負かすべきだと熱烈に信じている。国際関係学者たちはこのような状況を「不可分性(indivisibility)」問題と呼ぶ。紛争を解決するためには、当事者双方が納得できるような方法で問題を分割する必要がある。さらに、三大宗教の聖地であるイェルサレムの複雑で争いの絶えない地位が加われば、紛争が繰り返されることになる。過去100年にわたり、土地の共有に関するいくつかの提案がなされてきたが、妥協を求める声は、係争中の領土の全てを求める人々によってかき消され、あるいは排除されてきた。悲しいことに、ナショナリズムとは通常このように機能するものだ。

(2)安全保障のディレンマ(The security dilemma)。1つ目の問題と、紛争地域の狭さが相まって、2つの共同体は安全保障上の深刻なディレンマに直面している。シオニストの指導者たちは当初から、アラブ人が多数派どころかかなりの少数派として存在する、ユダヤ人が支配する国家を作ることは困難か不可能であると認識していた。その信念が、1948年のアラブ・イスラエル戦争、そして1967年にイスラエルがヨルダン川西岸を占領した際の民族浄化行為(acts of ethnic cleansing)につながった。しかし、このような行為は、アメリカを含む、他の多くの場所で国家建設の努力が同じような性質の行為に及んでいるように、決して特異なものではなかった。当然のことながら、追放されたパレスティナ人もイスラエルのアラブ近隣諸国も、この事態に激怒し、結果を覆そうと躍起になった。

更に悪いことに、イスラエルは人口が少なく、地理的に脆弱なため、指導者たちは国境を拡大することで国の安全性を高めようとする強力な動機を持っていた。ダヴィド・ベン=グリオン(David Ben-Gurion)首相は、1956年のシナイ戦争(Sinai War[第二次中東戦争]でイスラエルが占領した土地の一部を保持することを一時的に望んだが、アメリカからの確固とした圧力により、この計画を断念せざるを得なかった。その11年後、同じ拡張主義的な衝動によって、イスラエルは1967年の6日間戦争(the Six-Day War[第三次中東戦争]後もヨルダン川西岸とゴラン高原を支配し、1967年から1979年のエジプト・イスラエル和平条約調印まで、シナイ半島の大部分を支配し続けた。

残念なことに、ガザ地区を支配しながらヨルダン川西岸を保持し定住するということは、数百万人のパレスティナ人が永久にイスラエル支配下に置かれることを意味し、事実上、建国者が避けようとしていた人口動態の問題(demographic problem)、つまりイスラエルが支配する領域でユダヤ人とパレスティナ人の数がほぼ同数になるという問題を引き起こすことになる。「大イスラエル(Greater Israel)」という目標を追求すれば、その指導者たちは、ほぼ同数のパレスティナ人従属民に完全な政治的権利を与えるか、彼らの大半を追放する別の口実を見つけるか、イスラエルの民主政治体制と人類への公約とは相容れないアパルトヘイト制度(apartheid system)を導入することを強いられるだろう。元イスラエル外務大臣シュロモ・ベン=アミは2006年に、「民主政治体制とユダヤ国家の地位と領土拡大とを両立させることはできない」と書いた。最も悪くない選択肢は、イスラエルが現在支配している領土のかなりの部分を放棄し、パレスティナ人が独自の国家を持つことを認めるという選択肢だ。この目標は、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、そして現在のジョー・バイデン政権が掲げた政策である。

しかし、安全保障のディレンマは、「2つの民族のための2つの国家(two states for two peoples)」を交渉する努力を複雑にしている。イスラエルの交渉担当者たちは、パレスティナの国家がイスラエルを深刻に脅かすことがないよう、イスラエルが国境と領空を実質的に支配したまま、将来のパレスティナの実体(あるいは国家)を事実上非武装化しなければならないと主張している。しかし、そのような取り決めをすれば、パレスティナ人はイスラエル(そしておそらく他の国家)に対して永久に脆弱な立場に置かれることになる。それぞれの安全意識を向上させ、最終的な和解を促すような取り決めを想像することは可能だが、絶対的な安全は到達不可能な目標である。残念なことに、10月7日のハマスの犯罪と、現在ガザで罪のないパレスティナ人に加えられている犯罪は、当面の間、2国家解決を達成することをより困難にするだろう。

(3)役に立たない部外者。 この2つの人々の間の対立は、利己的な介入(self-interested interventions)が通常は逆効果である一連の第三者によっても煽られ、維持されてきた。イギリスは1917年のバルフォア宣言(Balfour Declaration)によって問題が始まり、戦間期(the interwar period)には国際連盟(League of Nations)の任務を誤って管理し、第二次世界大戦後は問題を国際連合(United Nations)に突きつけることになった。1948

年以降、繰り返される一連のアラブ間対立の一環として、競合するアラブ諸国はパレスティナ内部の別々の派閥を支援し、パレスティナの統一を損なった。

冷戦時代、アメリカはイスラエルを、ソ連はいくつかのアラブの重蔵国を、それぞれ利己的な理由から武装させたが、どちらの大国も問題解決の糸口が見つからないパレスティナ問題や、ヨルダン川西岸一帯に入植地(settlements)を建設するというイスラエルの決定を覆すことには十分な関心を払わなかった。そしてイランは、ハマス、パレスティナを根拠とするイスラム聖戦、レバノンを根拠とするヒズボラを支援することで、主にテヘランが脅威とみなす方法でこの地域を再編成しようとする、アメリカの努力を頓挫させようとしてきた。こうした外部からの介入はいずれも、イスラエル・パレスティナ紛争の解決には役立たず、むしろ悪い状況をより悪化させる傾向にあった。

(4)過激派。中東でも他の地域と同様、少数の過激派が、困難な問題を解決しようとする善意の努力(well-intentioned efforts)を頓挫させることがある。1990年代のオスロ和平プロセスは、両陣営がこれまでで最も紛争終結に近づいたものだったが、両陣営の過激派がこの希望に満ちた和平への道を台無しにした。ハマスとパレスチナ・イスラム聖戦による一連の自爆テロはイスラエルの和平派を弱体化させ、1994年にはイスラエル系アメリカ人入植者が和平努力を阻止するために意図的にパレスティナ人29人を殺害し、その後、別のイスラエル人狂信者がイツハク・ラビン首相を暗殺し、ベンヤミン・ネタニヤフが首相に就任するのを間接的に助けた。

二国家解決(two-state solution)への反対はネタニヤフ首相の政治キャリア全体の道標であり、二国家解決を実現させることに関心を持っていた穏健派パレスティナ自治政府(moderate Palestinian Authority)を弱体化させるという明確な目的のために密かにハマスを支援したほどだ。その政策の悲惨な結果は10月7日に明らかになった。

(5)イスラエル・ロビー。AIPAC、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)、クリスチャンズ・ユナイテッド・フォー・イスラエル(Christians United for Israel)のような諸団体が紛争を長引かせていると考える人もいるだろうが、紛争を長引かせている唯一の責任があるとは思わない。しかし、彼らや他の志を同じくするグループや個人が問題解決にとっての重大な障害となっている。彼らの行動の詳しい説明については、『イスラエル・ロビー』の第7章を​​参照するか、ピーター・ベイナートの最近の論稿を読んで欲しい。

これらのグループは、アメリカの政治家に紛争に対する一方的な見方を教え込むだけでなく、紛争を終結させようとするアメリカ大統領の真剣な試みをことごとく妨害することに積極的に取り組んできた。ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマの各大統領は、いずれも二国家による解決を公に約束し、クリントンとオバマはそれを実現しようと真剣に試みた。それはなぜか? オバマが言うように、2つの民族のための2つの国家は「イスラエルの利益、パレスティナの利益、アメリカの利益、そして世界の利益(Israel’s interest, Palestine’s interest, America’s interest, and the world’s interest)」だからである。しかし、大きな影響力を行使できるにもかかわらず、どの大統領もイスラエルに深刻な圧力をかけようとはしなかった。イスラエルが入植地建設を中止し、占領地のアパルトヘイト体制を解体し始めることを条件に、アメリカの援助や外交的保護を行うことさえできなかった。

Jストリートやアメリカンズ・フォー・ピース・ナウのような、二国家間解決を支持する著名な親イスラエル団体でさえ、アメリカの指導者たちにこの措置をとるよう公然と呼びかけたり、イスラエルに意味のある圧力をかけることを支持するよう連邦議会議員に圧力をかけたりすることはなかった。イスラエルはその主要な後援者であり庇護者(principal patron and protector)であるアメリカから責任を追及されることがなかったため、歴代のイスラエル政府は妥協する必要性を感じることもなく、自分たちの行動の長期的な影響を考慮することもなかった。その結果、ジョン・ミアシャイマーと私が(そして他の多くの人々が)何年も前に警告したように、イスラエルとパレスティナ人が今日直面しているような災難が起こった。

これら5つの要因はそれぞれ、単独でも和平への困難な障害となるだろうし、このリストから外した他の障害も間違いなく存在する。こうしたことが物語っているのは、残念なことだが、この紛争はすぐには終わらないということだ。それは、イスラエル人にとってもパレスティナ人にとっても悲劇(tragedy)である。パレスティナ人が最大の損失を被っているとおりそれは悲劇であるが、イスラエル人にとっても悲劇である。

更に言えば、現在のガザ戦争におけるイスラエルの行為は、反ユダヤ主義(antisemitism)を煽ることによって、世界中のユダヤ人を危険にさらすかもしれない。バイデン政権は、イスラエルのガザにおける残忍かつ大量虐殺の可能性のある作戦に積極的に加担しているため、アメリカはこの惨事(disaster)における役割のために、道徳的にも戦略的にも深刻な代償を払うことになるだろう。「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」の指導者であると自称するアメリカの信用を失墜させようと躍起になっている世界の指導者たちにとって、これ以上素敵な休暇のプレゼントはないだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に単著の4冊目となる『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を発刊しました。203年を回顧し、2024年を予測するための一助となれば幸いです。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 今回は、このブログでもよくご紹介しているハーヴァード大学教授のスティーヴン・M・ウォルト教授の2024年の予測に関する論稿をご紹介する。2024年において、人々の関心が高いのは、ウクライナ戦争の行方、パレスティナ紛争の行方、米中関係である。アメリカ政治においてはやはりアメリカ大統領選挙の行方である。

ウォルト教授は、2022年2月24日から続くウクライナ戦争について、バイデンは選挙までは、負けを認めず、交渉に積極的であろうが、再選が決まれば、負けを認めて交渉を行うと予測している。トランプが大統領に当選すれば、ウクライナにどんな形でもロシアと停戦を行わせるとしている。物理的に、アメリカがウクライナを支援できなくなればウクライナ戦争は終わる。アメリカ連邦議会がウクライナ支援に予算が付けないとなれば、戦争は継続できない。

 パレスティナ紛争は、イスラエルとハマス以外のプレイヤーが消極的であるために、地域的な紛争に拡大することはないとウォルト教授は見ている。ただ、イランとイスラエルが事を構えるということになれば、アメリカはイスラエルに引きずり込まれる形で、地域の紛争に巻き込まれることになる。このようなことは誰もが避けたいところだ。ガザ地区が破壊され尽くせば、紛争は終わるだろうが、そこからの復興には10年単位の時間と大規模な支援が必要になる。

 米中関係は、両国がともにエスカレートさせないということでは一致しているとウォルト教授は見ている。アメリカはウクライナとパレスティナへの対応で精一杯であり、アジアで問題が起きれば能力を超えてしまうことになる。従って、台湾で2024年1月に選挙が実施されるが、台湾が中国を刺激しないように求めることになる。アジアは平穏を保つべきである。

 日本では元旦に北陸地方を中心とする震災が発生し、2日には東京の羽田空港で日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突し、火災が発生するという衝撃的な事故が起きた。先行きが不透明で、不安な状況であるが、せめて日本を取り巻く環境は波風が立たないことを願うばかりだ。

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2024年について予想についてスティーヴン・ウォルトに聞く(Stephen Walt on What to Expect From 2024

-これからの12カ月の最初にあたってFP Live の年1回のシリーズ。

ラヴィ・アグロウアル筆

2024年1月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/01/fp-live-stephen-walt-look-ahead-global-elections-india-china-ukraine-israel-gaza-2024/

先週のFP Liveで、本誌コラムニストのスティーヴン・ウォルトは、2023年の最も重要な流れと展開を振り返った。彼の次の任務は、2024年に世界的な出来事がどのように展開するかを予測するという、非常に難しい課題だ。

本誌購読者は、このページの上部にあるボックスでビデオインタビューの全編を視聴できる。以下は、要約および編集された文字起こし原稿となっている。

ラヴィ・アグロウアル:2024年のリスクの中で、最も過小評価されているものは何か? 言い換えれば、まだ心配していないことで、私たちが心配すべきことは何か?

スティーヴン・ウォルト:1つは、中東紛争が大きくエスカレートする可能性だ。良いニューズは、今のところ、この地域の傍観者や第三者は誰もが関与することに熱心ではないように見えるということだ。ヒズボラとイスラエルが少し対立し、フーシ派はロケット弾を発射した。しかし全般的には、誰もがこの事態を限定的かつ限定的なものにとどめたいと考えているようだ。

紛争が継続し、これが何か月も続く場合、地域の大国のほとんどが傍観者でいる能力や意欲が低下する可能性がある。イスラエルとヒズボラの間で深刻な戦争が勃発し、それによってイランがより積極的に関与せざるを得なくなる可能性がる。もちろんそうなってしまうと、結果として、アメリカがイスラエル側に引きずり込まれることになる。突然、私たちが経験したことのない種類の地域紛争が勃発することになる。数十年の間、本当に見られなかった種類の紛争になるだろう。

ラヴィ・アグロウアル:今後数カ月、イスラエルとパレスティナの間でどのような展開が予想されるか? 1年後の状況はどうなっていると考えるか?

スティーヴン・ウォルト:残念なことに、1年後の状況はそれほど変わっていないと私は考える。その頃には、暴力行為は終わっているだろう。イスラエルによるガザでの作戦は、何らかの停戦や終結を迎えているだろう。ガザ地区のほとんど破壊されているだろう。つまり、これは最大規模の人道的危機(humanitarian crisis)であり、1年、それ以上の機関で終わることはない。

根本的な問題、つまりイスラエル人とパレスティナ人がこの地理的空間でどのように共存していくかという政治的問題は、1年経過しても解決するということはない。ある意味で、私たちは解決を先送りしてしまったことになる(have kicked the can down the road)。イスラエル政府が突然、「今、私たちは二国家間解決(two-state solution)を純粋に追求することに賛成する」と言い出すような変化は見られないと私は考える。改革され、新たに力を得たパレスティナ自治政府が現れるとは思えない。ハマスが排除されるとは考えられない。ハマスがパレスティナの抵抗の象徴として、ガザでもヨルダン川西岸でも以前より人気が出るかもしれない。憂鬱なニューズは、1年後、私たちがこの会話をするとき、この問題は現在と同じように難解で未解決のままだろう。

ラヴィ・アグロウアル:イスラエルがサウジアラビアとの関係を正常化させる可能性についてはどうか?

スティーヴン・ウォルト:今回の戦闘によって、その可能性はひとまず保留となったが、長期的には可能性がなくなったと私は考えない。アメリカの場合、主なインセンティヴは実はイスラエルとアラブの紛争とは関係なかった。サウジアラビアが少なくとも中国にある程度は媚びを売っていた時期に、リヤドを味方につけておくために、何らかの安全保障上の取り決めを仲介しようとしていた。アメリカの政治体制を通すと、イスラエルとの国交正常化と結びつける必要があった。サウジアラビアをアメリカの安全保障の軌道内にとどめ、中国と再編成させないというインセンティヴは、今も消えていない。

サウジアラビアは可能な限り最良の取引を望んでおり、アメリカから安全保障を得たいと考えている。イスラエルは、サウジアラビアとの国交正常化協定という象徴的な成果を得たいと考える。その可能性が戻ってくるであろうことは想像に難くない。問題は、その可能性がどれほど早く戻ってくるかということであり、それは紛争の行方とアラブの人々との関係によって大きく左右されるかもしれない。

ラヴィ・アグロウアル:ガザをめぐる怒りが中東、そしてアメリカの力学にどのような影響を与えるか、あなたはどのように感じているか?

スティーヴン・ウォルト:アラブ世界の世論は常に対立的で、多くの政府の態度や政策よりもイスラエルに同情的ではなかった。特にエジプトは、最終的にイスラエルと和平協定を結んだ。イスラエル政府とエジプト政府は基本的に、ここ何年もの間、共同でガザに蓋をしてきた。それは、多くのエジプト市民の意見と大きく対立している。それはサウジアラビアだけでなく、湾岸諸国の多くでも同様で、そうした差が、最も顕著なのはヨルダンだろう。

これはアメリカにとっての深刻な緊張を浮き彫りにする。アメリカは民主政治体制を支持し、国民が統治すべきだと言う一方で、中東に関して言えば、もし国民が実際に主導権を握っているとしたら、政策を形成するか、あるいはそれらの政策がどのようなものになるかについてより大きな声を上げるとしても、それらの政府の多くの立場は全く異なるものとなるだろう。

ラヴィ・アグロウアル:2024年に注目すべき出来事としてカレンダーに書き込んでいることはあるか?

スティーヴン・ウォルト:ある。それはNATOの創設75周年だ。しかし、NATOには2つの影が落とされている。1つはウクライナでの戦争がうまくいっていないことで、これは同盟の失敗と見なされるだろう。2つ目の影は、NATOの将来に疑念を投げかけ、NATOやヨーロッパ連合(EU)を愛していないドナルド・トランプの再選の可能性だ。

ラヴィ・アグロウアル:2024年を見る枠組みの1つは、歴史上最も多くの人々が投票に行く年だということだ。そして2024年は1月の台湾の選挙で始まる。もし現在与党の独立派政党が再選されれば、台湾海峡で様々な緊張が引き起こされ、最近の米中間の建設的な対話の一部を覆すことになるかもしれない。

スティーヴン・ウォルト:台湾の選挙の結果は非常に重要だ。与党・民進党の現職候補は、これまで独立について率直な発言をしてきた。最近は発言を控えめにしている。つまり、独立の見通しを推し進めることから身を引こうとしている。彼がアメリカやその他の国から一貫して受け取っているメッセージは、たとえ選挙で成功したとしても、野党が大きく分裂していることを考えれば、就任後に彼がすべき最後のこと(もっともやるべきではないこと)は、中国にこの地域でとてつもなく不安定になるような行動をとらせるようなことをすることだ、というものだ。

1年後も現状維持のままであろう。しかし、私たちが注目したい選挙であり、その余波に細心の注意を払いたい選挙であることは確かだ。

ラヴィ・アグロウアル:今年前半に行われるもう1つの大きな選挙はインドの選挙だ。ここ数年、インドの外交政策はかなり強硬になっています。2024年に向けてどのように発展していくと考えるか?

スティーヴン・ウォルト:ナレンドラ・モディ首相は圧倒的な強さで再選されると思う。それによって彼が国内外で取ってきた政策上の立場が強化されるだろう。それは、インドがより強力になるにつれて、さまざまな方法でより独立した立場を採用する。これは、ますます多極化する世界の新たな特徴を示している。そうだ、中国とのバランスを取るためにアメリカに近づきたいと考えているが、安価なエネルギーを入手してインド経済を助けるため、ロシアとも緊密な関係を持っている。これら2つの目標の間に緊張があるという事実は、多数の異なる勢力が競合する場合に政治がどのように機能するかを示しているに過ぎない。これはアメリカが慣れなければならないことだ。

ラヴィ・アグロウアル:インドネシアでは2024年にも大きな選挙がある。2億以上の人口を擁しながら、世界的な報道ではほとんど注目されることのない東南アジアのイスラム教徒が多数を占めるこの大国について、世界がどのように考えるべきか、より広い意味での影響について何か考えがあれば聞かせて欲しい。

スティーヴン・ウォルト:私たちは、その規模と経済成長ゆえに、インドネシアの軌道がどうなるかをより慎重に考えるべきだ。時間の経過とともに、より重要なプレイヤーになっていくだろう。アメリカや他の諸大国がアジアのパワーバランス(勢力均衡)を重視するようになれば、インドネシアがどのような方向性を打ち出すかは、非常に重要な意味を持つことになるだろう。

ラヴィ・アグロウアル:2024年に予定されている全ての選挙について考えるとき、何を一番懸念しているか?

スティーヴン・ウォルト:アメリカ人として、私が最も心配しているのは、2024年11月の選挙の結果だ。テクノロジーが次の選挙サイクルに大きな影響を与えるとは思えない。ソーシャルメディアやAIがそれらに影響を与える能力は、まだかなり限られていると思う。しかし、私はアメリカの分極化(polarization)の程度を懸念している。それによってアメリカ国民が、同じ事実について合意することが不可能になっている。

私たち全員が喜ぶべき 2023 年の傾向は、アメリカでインフレが実際に抑制されているようであり、アメリカ経済がほぼ全ての指数で著しく好調であることだ。しかし、ほとんどのアメリカ人はそうではないと考えている。人々は現在、既に同意している情報源からのみ情報を入手している。このような状況のほとんど全てにおいて、私が懸念しているのは、意見が集中し、自分たちが何を信じているかを誰もが知っているという点まで個別化されている傾向であると私は考えている。私たちが忘れているのは、おそらくそれが全てではないと考えることだ。なぜなら、私たちは別の視点を聞いたことがないからだ。

ラヴィ・アグロウアル:2024年のアメリカ選挙についてもう少し話をしたい。バイデン2.0やトランプ2.0が誕生した場合、世界にとってどのような影響があるだろうか?

スティーヴン・ウォルト:バイデン2.0はそのほとんどが継続されるだろう。劇的な変化は見られないだろう。もしバイデンが再選されれば、アメリカはウクライナ戦争の解決に向けた交渉に、より直接的に動き始めるだろう。大統領選挙前はウクライナが勝てないことを認めたがらないだろうが、選挙が終われば取引に関心を持つようになるだろう。トランプが当選すれば、ウクライナから距離を置き、基本的にどんな取引でも結ばせようとする動きが当選直後からすぐに起きるだろう。

アジアでは、この2つは同じになるだろう。トランプは中国に対して非常に懸念を持っていたが、バイデン政権はトランプの対中政策の一部を継続し、どちらかといえば倍増させている。バイデンはアジアで同盟を組織しようとすることに非常に効果的だった。トランプはそうした同盟関係を解体することはないだろう。アジアではより厳しい状況になるだろうが、アメリカの主要な関与は維持されるだろう。

ヨーロッパは本当に懸念すべき地域である。トランプはEUを愛していない。彼はNATOも時代遅れかもしれないと考えている。私がヨーロッパの指導者なら、トランプ大統領が誕生する可能性に対して多くのリスクヘッジを始めるだろう。

ラヴィ・アグロウアル:トランプが当選した場合、他国が頼れるガードレールはあるか?

スティーヴン・ウォルト:1つのガードレールは、他国が力を合わせてアメリカの行動に反対したり、制限しようとしたりすることだ。アメリカは非常に強力だが、最高権力者ではない(The United States is very powerful, but it is not supreme)。経済やその他の様々な分野では、世界の他の国々からの協力が必要だ。

別のガードレールはアメリカの統治システム内に存在するもので、それらは実際にトランプ大統領が第一期にできることに実質的な制限を課していた。エスタブリッシュメントはトランプが達成したことに対して実質的な制約を課した。彼らは、彼の集中力の持続時間が短いことを認識した。私の懸念は、彼らはトランプ政権第一期の経験から学び、官僚機構をさらに強力にコントロールしようとするが、トランプが再選された後にそうした試みが不可能になることということだ。

ラヴィ・アグロウアル:最後の質問。2024年の米中関係はどうなるだろうか?

スティーヴン・ウォルト:アメリカも中国も、来年にかけて関係が劇的に悪化しないようにすることに関心があると思う。アメリカは現在、ウクライナとガザ紛争への対応で精一杯だ。このような事態が起きている間、アジアのどこかで危機が発生するのは避けたいところだ。

同様に、中国経済も好調ではない。中国国家主席の習近平は明らかに中国政府内の混乱に大きな関心を持っている。中国が他国との間で抱えている緊張により、米中両国の関係は複雑化している。彼らはアジアの他の国々、そしてもちろんヨーロッパ諸国と関係修復をしようとしてきた。米中両国ともに、今後1年ほどはこの競争を多少なりとも抑えておきたいというインセンティヴを持っている。

※ラヴィ・アグロウアル:『フォーリン・ポリシー』誌編集長。ツイッターアカウント:@RaviReports

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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