古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ヒズボラ

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イスラエルのガザ地区での攻撃について、アメリカの各大学で抗議活動が盛んに行われているは日本でも盛んに報道されている。大学当局が排除する様子も映り、「せっかく一流大学に入っているのに、退学の危険があるのにどうしてこんなことをするのか」というコメンテイターがいた。暴力的、破壊的な抗議活動は批判されるべきだが、平和的な抗議活動は、大学のキャンパス内で行われるのは自然なことだ。日本でも学生運動が盛んだった時代もあるが、過激化、尖鋭化したために、暴力的、破壊的な運動になって、かえって、こうした活動ができにくくなってしまった。私の同郷のある友人は、東京のとある大学に進学する際に、「少々のギャンブルやお酒での失敗、恋愛関係での失敗は大丈夫。ただ、学生運動とか、政治に関心を持つとかは止めるように」と言われたと教えてくれた。

 ハーヴァード大学の教授であるスティーヴン・M・ウォルトは、抗議活動を行う学生たちに賛意を示しながら、「抗議活動でやるべきではないこと」をまとめた論稿を発表している。論稿の内容は、政治活動や抗議活動全般に言えることだと思う。

 ウォルトは、主流メディアやソーシャルメディアの影響や抗議活動の戦術について述べ、多くの学生たちと彼らの親族が卒業式での行動に慎重であるべきだと述べた。祝辞の邪魔をしたり、他の学生が卒業証書を受け取るのを序増したりはすべきではないとしている。また、学生たちに対し、自分たちの主張を表明する自由はあるが、他者の権利を尊重するようにと忠告している。根拠のない、過激な主張は支持を得られないので、そこにも注意するように求めている。ウォルトの忠告は非常に有益である。

(貼り付けはじめ)

アメリカ国内のパレスティナ支持の抗議者たちがすべきこととすべきではないこと(What America’s Palestine Protesters Should and Shouldn’t Do

-一人の同情を持つ観察者から大学生たちに向けたハウトゥガイド。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年5月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/06/what-americas-palestine-protesters-should-and-shouldnt-do/

シカゴで行われたパレスティナ支持のデモの中、シカゴ美術大学、ルーズベルト大学、コロンビア・カレッジ・シカゴの学生や教職員たちを阻止しようとする警察(4月26日)。

世捨て人(hermit)でないなら、全米の大学キャンパスが学生のデモで騒然となっているのをご存知だろう。そのデモでは、広場やその他の公共スペースにテントを張って野営するのが一般的だ。デモ参加者たちはガザ地区でのイスラエルの行動と、それに対するアメリカの支援に抗議し、即時停戦(immediate cease-fire)を要求し、時には、大学がイスラエルへの投資から撤退し、他の方法で距離を置くよう要求している。大学管理者たちは現在、理想主義的で情熱的な学生、怒りを持っている寄付者、イスラエル・ロビーの影響力のあるグループ、陰険な連邦議員、そして学問の自由の重要な要素が危険にさらされていると懸念する教員らの間で板挟みになっていることを認識している。

私は学生たちに同情するが、彼らの行動全てや一部の学生の発言全てに同意してはいない。私は、ハマスが10月7日にイスラエルで行ったことは、犯罪的で間違っていると疑ったことは一度もないが、その犯罪はイスラエルの無差別で意図的に残酷な過剰反応(Israel’s indiscriminate and deliberately cruel overreaction)を正当化するものでは決してない。また、ハマスの犯罪を理由に、パレスティナ人が数十年にわたって経験してきた苦しみや避難を無視するべきではない。これらの抗議活動に参加している、少数の人々は非難されるべき発言をしているが、参加者の大多数(かなりの数の若いユダヤ系アメリカ人を含む)は反ユダヤ主義(antisemitism)ではなく、苦境(plight)に立たされたガザ地区の住民たちの窮状に対する同情、アメリカがイスラエルに与え続けている支援に対する嫌悪感(disgust)、そして、パレスティナ人とイスラエル人双方のために平和の大義を推進したいという願望から行動していることは、複数の証言から明らかである。特に驚くべきことではないにしても、学生たちを批判する人々が、3万5000人のパレスティナ人の無差別殺害(indiscriminate killing)やイスラエルの重要な政府高官たちが表明した虐殺感情(genocidal sentiments)よりも、少数の無知な短気の嘆かわしい発言に腹を立てているように見えるのは、皮肉で憂慮すべきことである。一方の、少数の過激派の発言を非難するつもりなら、公平性を保つためには、もう一方の過激派も非難する必要がある。

これらの抗議運動は、その様々な目的を達成するのだろうか? 私には分からない。イスラエルの略奪(predations)とアメリカの共犯行為(complicity)に注目を集めることに成功した今、私は、特に大学の卒業式が始まろうとしている今、彼らが集めた共感と支持を知らず知らずのうちに損なうような行動を取るのではないかと心配している。

この件に関する私の考えは、私が住むマサチューセッツ州のあるリベラルアーツ・カレッジ(liberal arts college)での最近の経験に一部基づいている。私は元国務省職員とともにアメリカの中東政策に関する公開イヴェントに出席し、司会の教授による質問に答えるのに1時間ほど費やした。いくつかの点では同意したが、他の点では大きく意見が食い違ったものの、全体としては敬意を払いつつ、実りある意見交換となった。私は、アメリカの過去および現在の政策は大きく誤っており、アメリカは今やイスラエルが犯している犯罪に加担していると考えていることを明確にした。

イヴェントは質疑応答まで何事もなく終わった。他のスピーカーと私が聴衆からのいくつかの質問に答えた後、1人の学生指されて、立ち上がり、ガザ地区で起きていることを非難する長い声明を読み始めた。そのスピーチは、それまでの1時間に私たちが話した内容には何ら反応しておらず、要約して質問を投げかけるよう何度も要求されたにもかかわらず、その学生は声明を最後まで読み上げ、その後、おそらく十数人の他の学生のグループとコール・アンド・レスポンスで唱和(chant)を始めた。昭和はさらに数分間続き、数人の警備員が到着し、学生たちは立ち上がって自主的に行進して去っていった。

質疑応答は再開されたが、数分後、別の学生が指され、立ち上がり、同じ発言を繰り返し、もう1人の学生とともに再び唱和を始めた。最初のグループとは異なり、2人の学生はステージの前方を占拠し、立ち去ろうとしなかった。さらに数分後、主催者はイヴェントを終了させた。

学生たちの発言や唱和には、攻撃的なものや脅迫的なものは何もなかった。もし私たちに反論する機会があれば、彼らの言っていることの多くに同意すると言っただろう。しかし、そうすることで他の聴衆を敵に回してしまったのだから、イヴェントを強制終了させたのは重大な戦術ミスだと感じた。最初の中断の後に抗議が終わっていれば、抗議者たちは自分の主張を行い、パネリストたちは彼らの主張に反論し、聴衆はその応酬から利益を得ただろう。しかし、結果的には、聴衆の大半は、早々に終了せざるを得ないほどイヴェントが中断されたことに、目に見えて苛立っていた。

私自身、アメリカとイスラエルの関係についてかなり物議を醸すような激しい主張を行い、また、意見の異なる人々を含む聴衆の前でかなりの数の講義を行ってきたが、大学(およびアメリカ)にパレスティナ人の権利にもっと注意を払い、イスラエルの行動から距離を置くよう求めている学生たちに、頼まれもしないがアドヴァイスをしたい。

(建設的な行動についての追加的な提案については、ニコラス・クリストフのコラムを参照して欲しい)。

第一に、既にあなたの方向に傾いている人々の本能を強化し、まだ決心していない人々を説得しようとしていることを決して忘れないようにして欲しい。あなたは、熱心なシオニストたちに意見を変えるよう説得しようとはしないだろう。同様に、シオニストたちがあなたの意見を変えることもないだろう。しかし、まだ決心していない人々は通常、事実(facts)、論理(logic)、理性(reason)、証拠(evidence)に惹かれる。私の経験では、彼らは怒り(anger)、無礼(rudeness)、不寛容(intolerance)、そして特に、より知りたいという自分の欲求(desire)を邪魔する人にうんざりする。15年前、私がイスラエル・ロビー(Israel Lobby)について公開講演をしていたとき、聴衆の誰かが私に向かって怒鳴ったり、人身攻撃を始めたりするのはいつも助けになった。それはなぜだろうか? それは、聴衆の残りの人々がそのような行動を無礼で、私が言ったことへの反論に何の裏付けもないと見なし、したがって私がおそらく正しいと結論付けたからだ。

第二に、主流メディアにもソーシャルメディアにも十分にアクセスできる、潤沢な資金を持ち、組織化され、献身的な敵対勢力に立ち向かっていることを認識することだ。彼らは、行き過ぎた行為(excesses)、残念な出来事(regrettable incidents)、不注意(careless)や憎悪に満ちた発言(hateful statements)、怒りの表現(expressions of anger)などを利用して、運動全体の信用を落とそうとするだろう。それがうまくいかなければ、でっち上げるだろう。従って、相手側に更なる弾みを与えるような行動を取らないことは理にかなっている。

第三に、卒業式のとき、出席者たちがあなたに反対するほどに式典を妨害するのは間違いだ。出席する学生や家族のほとんどは、あなたほどこれらの問題に関心がなく、彼らの多くはガザ地区の破壊と、アメリカがそれを可能にしている方法について明確な意見を持っていないかもしれない。ほとんどの学生は、両親、祖父母、兄弟、友人の誇らしげな視線の下で、自分の成果を祝うために卒業式に出席する。それらの人々は皆、その祝賀を不可能にする人に対して怒りを覚えるだろう。確かに、彼らの怒りはパレスティナ人が苦しんでいることに比べれば、大きなことではないが、それは重要ではない。目標は、できるだけ多くの人々をあなたの側に引き入れることであり、あなたが達成しようとしていることを支持してくれるかもしれない人々を遠ざけることではない。

まとめよう。希望するなら、カフィエ(訳者註:アラブの頭に着ける四角い布)を着用。卒業証書(diploma)を受け取るために壇上を横切るとき、「今すぐ停戦だ(cease-fire now)」と叫ぶのも自由だ。しかし、他の人々がそのエリアに入るのを妨げたり、卒業式のスピーカー(たち)の声が聞こえないようにしたり、出席者がガザ地区で起きていることに腹を立てるのではなく、あなたに対して腹を立てるような環境を作ったりしてはならない。なぜなら、卒業式を台無しにしたところで、学生仲間やその家族は、ジョー・バイデン大統領やイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフに腹を立てることはないからだ。彼らはあなたに腹を立てるだろうし、それこそが相手側が望んでいることなのだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 パレスティナのガザ地区を実効支配している武装組織であるハマスがイスラエルとの紛争状態に入り、ガザ地区での戦争が続いて既に8カ月になろうとしている。イスラエルはハマスを徹底的にせん滅するまで作戦を続けるとしているが、同時に、10月7日のハマスによる攻撃で連れ去られた人質の奪還も目指している。人質の奪還のためには、交渉も必要となる。
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 現在の中東の国際関係を見れば、イスラエル対ハマス・ヒズボラ・これらを支援するイランということになる。ガザ地区での紛争がイスラエル・イランの戦争に拡大し、新たな中東戦争になるのではないか、両者が核兵器を撃ち合うことになるのではないかという懸念の声は、昨年の紛争ぼっ発直後から出ている。アメリカはイランと国交を持たないために、影響力、交渉力が限定的であり、イランとイスラエルの仲介をすることはできない。仲介することができるとすれば、両国と関係を持つロシアということになる。
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 イスラエル、イラン両国の指導者層は、核兵器を使った本格戦争まで望んでおらず、両国間関係を悪化させないようにしている。両国は国境を接しておらず、本格戦争となれば、戦闘機やミサイルによる攻撃ということになる。しかし、ハマス、ヒズボラといった武装組織がイランの代理勢力としてイスラエルと対峙している。この点では、イスラエルの方が直接対峙している分、厳しい状況となる。イスラエルはこれらの武装組織を支援している、イランのイスラム革命防衛隊の担当者たちを殺害することで報復をしている。

 イランとしては、後方にロシア、そして中国の支援を期待できる状態であり、紛争がエスカレーションしないように管理しながら、紛争を続けることができる。イスラエルとしては、外敵からの脅威をアピールすることで、国民の納得も得られやすい。現状は、両国にとって、ある面では非常に望ましい状態である。「誰も大規模な中東戦争を望んでいない」という前提のもとで、現状は維持される。問題は突発的な、予想外の、計算違いのことが起きる可能性があるということだ。そうなれば、どうなるか分からない。最終的に必要なのは、イランの持つ恐怖、不安感を持たせないようにすることで、それにはアメリカとイスラエルとの間に意思疎通のチャンネルを開くということが必要である。

 日本は民間、経済レヴェルでイランとの関係が深い国であり、その関係は今も続いている。この点で、日本は国際関係に貢献できるところがある。

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イラン・イスラエル戦争は始まったばかりだ(The Iran-Israel War Is Just Getting Started

-イラン・イスラエル両国が紛争し続ける限り、同盟諸国がどのような助言をしても、両国は打撃を与え合うことになるだろう。

ラファエル・S・コーエン筆

2024年4月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/22/israel-iran-attack-war-retaliation-escalation/

4月13日の早朝、2つの小さな奇跡が起った。1つ目としては、イスラエルが、イギリス、フランス、ヨルダン、アメリカの支援を受けて、驚くべき技術的能力を発揮し、主にイランからイスラエルに向けて発射された約170機の無人機、約120発の弾道ミサイル、約30発の巡航ミサイルを迎撃し、99%の成功率を記録し、迎撃の効果は大きく、人命やインフラへの被害は最小限度に抑えられたという報告があった。2つ目としては、何ヶ月にもわたって主に否定的なメディア報道と国際的圧力の高まりを受けてイスラエルは苦しい立場にあったが、今回のイランからの攻撃で、イスラエルはある程度の同情と肯定的な報道を享受できた。攻撃の撃退とイスラエルのイメージ向上という二重の成功を踏まえ、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に次のように助言したと伝えられている。「あなたは1つの勝利を手にした。最終的な勝利を掴め(You got a win. Take the win)(訳者註:イランとの紛争に入るな)」。他の多くの同盟諸国の指導者たちや専門家たちもイスラエルに対して同様のアドバイスをした。

しかし、イスラエルはこの助言を受け入れることにほとんど関心を示していない。報じられているところによると、即時反撃(immediate counterattack)を中止し、バイデン大統領が要請してきていた通りに「事態を遅らせる(slow things down)」ことに満足しているようだ。しかし、ヨアヴ・ガラント国防相、ヘルジ・ハレヴィイスラエル国防軍司令官、ベニー・ガンツ戦時内閣閣僚、そしてネタニヤフ自身を含むイスラエル指導者たちは全員、報復を約束した。そして、金曜朝、イスラエルはイラン中部のイスファハーンにあるイラン空軍基地の防空システムに対する反撃を実施した。この攻撃は主に象徴的なものだったようだが、それにもかかわらず、「なぜイスラエルは再びアメリカや他の同盟諸国の意見に従わないのか、そもそもこれらの国々はイスラエルの支援をしているのに?」という疑問が生じている。

結局のところ、イスラエルが反撃した理由については、悪いものが多く挙げられている。しかし、重要な良い点も1つある。それは、イスラエルとイランはもともと戦争状態にあり、この戦争は今日以降も続くという事実だ。この紛争が続く限り、この紛争の操作ロジックはエスカレーションに向かって進む。

なぜイスラエルが反撃したのかという疑問に対する答えは、ネタニヤフ首相の野心に帰着するという人もいる。この物語によれば、彼は単に自分自身を救おうとしているだけのこととなる。ネタニヤフ首相はイスラエル国内で非常に不人気だ。彼の支持率はわずか15%に過ぎない。彼の政治的正統性の主な源泉である、イスラエルの安全保障を保証するという彼の主張は、10月7日のハマスによる虐殺とその後に起こったあらゆる出来事によってひどく打ち砕かれている。したがって、当然のことながら、イランの現政権を含む、観察者の一部は、ネタニヤフ首相が国内でのイメージを回復するため、あるいは少なくとも10月7日の大惨事からの政治的清算を長引かせるため、イランとの戦争を望んでいると主張している。このプロセスにより、彼の政治的生存の可能性が高まるということになる。

ネタニヤフ首相は絶望しているのかもしれないが、報復への動きは彼だけから出ている訳ではない。実際、反撃を求めるイスラエル国内の大きな声の一部は、ガンツやギャラントをはじめとする、ネタニヤフの失敗で政治的に最大の利益を得る、ネタニヤフの政敵たちからのものだった。世論調査の結果によると、今日選挙が行われればガンツが首相になる可能性が高い。

また、イランに対する攻撃がネタニヤフ首相や他の誰かにとって良い政治的行動であるかどうかも明らかではない。ヘブライ大学が先週発表した世論調査によると、イスラエル人の約74%が「同盟諸国とのイスラエルの安全保障同盟を損なう場合には」、イランに対する反撃に反対すると答えた。同じ世論調査では、イスラエル人の56%が、「長期にわたって持続可能な防衛システムを確保する」ために、イスラエルは「同盟諸国からの政治的、軍事的要求に積極的に対応すべき」と回答していることが判明した。ネタニヤフ首相の連立政権内でさえ、金曜日のイスラエルの限定的な反撃は明確な政治的勝利と考えない閣僚がいた。例えば、右翼のイタマール・ベン・グヴィル国家安全保障相は、X(ツイッター)上で、今回の行動を「不十分(lame)」であると批判した。

対照的に、イスラエルは反撃が象徴的な内容にとどまった理由を述べている。イスラエル政府高官たちはテヘランに「メッセージを送り」、「教訓を教える」必要性について語った。しかし、イスラエル自身の最近の歴史は、しっぺ返しの暴力(tit-for-tat violence)が意図した教育効果をもたらすことはほとんどないことを示している。10月7日の虐殺が如実に示したように、今回の戦争以前のガザ地区でのイスラエルによる4回の限定的な軍事作戦は、その間に更に限定的な攻撃を挟んだが、ハマスを排除したり抑止したりすることはできなかった。そしてイランは、イスラエルへの攻撃を正当化するために、シリアやその他の地域にいる工作員を攻撃しないようイスラエルに「教える」必要があるというほぼ同じ言葉を使っている。これら全てが、今度は、イスラエルがイランを「教える」努力をもっと効果的に行うことができるかどうかという疑問を提起する。

公平を期すために言うと、イスラエルが実際に敵対者に教訓を教えることに成功した例は数例ある。おそらくその最良の例は、ヒズボラ工作員がイスラエルに侵入し、8人のイスラエル兵を殺害し、残り2人を誘拐した後に始まった2006年のレバノン戦争だろう。紛争後、ヒズボラ指導者のハッサン・ナスララは記者団に対し、作戦開始の決定を遺憾に思うと語った。ナスララは「もしこの作戦がそのような戦争につながることを事前に知っていたら、私はそれを実行するだろうかと質問しているのか。その答えはノーで、絶対に実行しなかったと言える」と述べた。しかし、この教訓のために、121人のイスラエル兵士、数百人のヒズボラ戦闘員、1000人以上の民間人の命が犠牲となり、イスラエル・レバノン双方で100万を超える人々が避難した、34日間にわたる本格的な非常に破壊的な戦争が含まれていた。イスラエルがイランに対して行ったばかりの限定的攻撃とは程遠いものだった。

もちろん、イスラエルがイランを攻撃したいという背後には、より基本的な動機がある、それは復讐(revenge)である。結局のところ、攻撃が最終的に効果などなかったとしても、イランは約60トンの爆発物をイスラエルに直接投げつけ、イスラエルとイランの影の戦争(Israel-Iran shadow war)の不文律を打ち破り、たとえ一夜限りとはいえ、国全体を緊張状態に保ったのだ。当然のことながら、一部のイスラエル人は反撃を望んでおり、反撃したいと考え続けている。

しかし、ブレット・スティーブンスが『ニューヨーク・タイムズ』紙で読者に思い出させたように、「復讐は忘れたころにするのが良い(revenge is a dish best served cold、復讐は冷めてから出すのが最良の料理だ)」。一般に、感情的な決定は賢明な戦略にはならない(emotional decisions do not make for a prudent strategy)。地域戦争が勃発した場合、イスラエルと地域全体の軍事的・外交的利害を考慮すると、これは特に妥当性を持つ言葉だ。そして実際、イスラエルによる、イスファハーンに対する攻撃はそのようなエスカレーションを引き起こさないように意図的に調整されているように見える。

更に言えば、イスファハーン以前から、あるレヴェルでは既にバランスシートは均衡していた。結局、イランはイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)の高級幹部7人を失った。モハマド・レザー・ザヘディ将軍は、2020年にアメリカがイラクでカセム・スレイマニを殺害して以来、殺害された最高位のコッズ部隊メンバーである。ザヘディダマスカスのイラン外交施設に対するイスラエルの攻撃で死亡した。イスラエルはイランの攻撃によって、これに匹敵するものを何も失っていない。

しかし、現在および将来のイスラエルによるイラン攻撃には悪い理由がたくさんあるとしても、少なくとも1つの良い理由がある。それはイスラエルとイランが戦争状態にあるということだ。この戦争は何年間もほぼ秘密にされてきたが、10月7日以降、影から姿を現した。ハマス、ヒズボラ、フーシ派、そして半年以上にわたってイスラエルを攻撃してきた他の組織の共通点は、程度の差こそあれ、いずれもイランから資金提供、訓練、装備を受けていることだ。その結果、イランとヒズボラおよびアサド政権との関係を調整したザヘディを含む7人の革命防衛隊工作担当者たちが3月下旬にダマスカスに現れたとき、イスラエルは、彼らがシリアの複数のレストランで試食するために来たのではないと結論づけた。これは、おそらく正しい結論である。

イランの報復集中砲火とイスラエルの反撃の後、この奇妙にパフォーマンス的な軍事力の誇示というゲームにおいては、ボールはイラン側にある状態である。最初の兆候は、イランが少なくとも当分の間、ボールに触らない可能性があるということだ。そうなれば、アメリカも地域も安堵のため息をつくだろう。

しかし、残念なことに、どんな休息も長くは続かないだろう。イスラエルは、イランから代理勢力への物的・戦略的支援の流れを断ち切る、あるいはおそらく妨害するためだけでも、海外のイラン工作担当者たちに対する攻撃を続ける必要があるだろう。「問題は解決したと見なせる」というイランの主張に反して、イランが代理勢力を支援し続け、その代理勢力がイスラエルとの紛争に関与し続ける限り、ダマスカスのイラン大使館でのような攻撃の作戦上の必要性は残ることになる。

そして、くすぶっている従来の紛争がイスラエルの対イラン軍事行動を促す十分な理由でないとすれば、イランの核開発という、より大きな理由が迫っていることになる。イラン核合意としても知られる包括的共同行動計画が崩壊して以来、イラン政府は核兵器保有に一歩ずつ近づいている。イスラエルの指導者たちは、核武装したイランが、イスラエルを全面的に攻撃するために兵器を使用しないとしても、代理勢力への支援を増加させる勇気を得るのではないかと長年懸念してきた。多くのイスラエル人にとって、先週末のイラン攻撃はそうした不安を強めるだけだった。結局のところ、広く疑われているイスラエルの核兵器が、イランの通常攻撃を抑止するには不十分であることが現時点で証明されているのであれば、なぜイスラエルは、ひとたび核兵器を持てばイランを首尾よく抑止できると信じられるだろうか? このため、いくつかの重大な軍事的課題にもかかわらず、イスラエルがイランの核開発計画に対して先制攻撃を行う可能性が一層高まっている。

その観点からすれば、イスラエルは、たとえ疑わしい政治的動機、あいまいな抑止力の考え方、あるいは単なるありのままの感情を取り除いたとしても、イランの目標を攻撃し続ける必要があるだろう。イスラエルとイランが紛争を継続する限り、米国や他の同盟国が激化を避けるためにイスラエルにどのような助言をしようとも、両国は打撃を与え合うことになるだろう。

結局のところ、アメリカとヨーロッパが中東での地域戦争の可能性を未然に防ぎたいのであれば、イランに対して、代理勢力の力を抑制し、核開発計画について何らかの措置を講じるよう説得する必要があるだろう。そうしないと、紛争はさらにスパイラル化するだろう。

※ラファエル・S・コーエン:ランド研究所「プロジェクト・エア・フォース」戦略・ドクトリンプログラム部長。

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 中東におけるキープレイヤーとしては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、アメリカが挙げられる。これらの国々の関係が中東情勢に大きな影響を与える。アメリカは、イスラエルと中東諸国との間の国交正常化を仲介してきた。バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)といった国々が既にイスラエルとの国交正常化を行っている。アメリカにとって重要なのは、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化であった。昨年、2023年前半の段階では、国交正常化交渉は進んでいた。こうした状況が、パレスティナのハマスを追い詰めたということが考えられる。

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中東諸国がイスラエルと国交正常化を行うと、自分たちへの支援が減らされる、もしくは見捨てられるという懸念を持ったことが考えられる。ハマスをコントロールしているのはイランであり、イランの影響力はより大きくなっていると考えられる。イランは、レバノンの民兵組織ヒズボラも支援している。イランは、ハマスとヒズボラを使って、イスラエルを攻撃できる立場にいる。イランの大後方には中国がいる。

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 イスラエルとしては、サウジアラビアと国交正常化を行い、中東地域において、より多くの国々をその流れに乗せて、自国の安全を図りたいところだった。イランを孤立させるという考えもあっただろう。しかし、ここで効いてくるのが、2023年3月に発表された、中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。これで、イランが中東地域で孤立することはなくなった。イスラエルとすれば、これは大きな痛手となった。そして、アメリカにしてみても、自国の同盟国であるサウジアラビアが「悪の枢軸」であるイランと国交正常化するということは、痛手である。これは、中国が中東地域に打ち込んだくさびだ。

 アメリカはサウジアラビアと防衛協定を結ぼうとしているが、それには、イスラエルとの関係が関わってくる。アメリカはサウジアラビアとイスラエルという2つの同盟国を防衛するということになるが、サウジアラビアとイスラエルとの関係が正常化されないと、アメリカとサウジアラビアとの間の防衛協定交渉も進まない。サウジアラビアのアメリカ離れということもある。ここで効いてくるのはサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。アメリカとイスラエルの外交が難しくなり、中国の存在感が大きくなる。

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サウジアラビアは次のエジプトへの道を進んでいる(Saudi Arabia Is on the Way to Becoming the Next Egypt

-アメリカ政府はリヤドとの関係を大きく歪める可能性のある外交協定を仲介している。

スティーヴン・クック筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/saudi-arabia-us-deal-israel-egypt/?tpcc=recirc062921

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サウジアラビアの紅海沿岸都市ジェッダのホテルで開催されたジェッダ安全保障・開発サミット(GCC+3)期間中に、家族写真のために到着したジョー・バイデン米大統領とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子(2022年7月16日)

彼らはそうするだろうか、それとも、しないだろうか? それがここ数週間、中東を観察している専門家たちが問い続けてきた疑問だ。アメリカとサウジアラビアは、両国当局者たちが少なくとも2023年半ばから取り組んでいる大型防衛協定プラス協定(big defense pact-plus deal)を発表するだろうか?

2024年4月末のアントニー・ブリンケン米国務長官のリヤド訪問と、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官の保留中のリヤド訪問計画により、合意の可能性の話に緊迫感と期待感が注入された。報道によると、サウジアラビアとジョー・バイデン政権は準備ができているが、「いくつかの障害は残っている(obstacles remain)」という。これはイスラエルを指す良い表現だ。

ワシントンとリヤドの当局者間の協議が始まったとき、バイデン政権はサウジアラビアとの単独合意では、米連邦議会から適切な支持は決して得られないという確信を持っていた。連邦上院で過半数を占める民主党の議員と少数派の共和党の議員(防衛協定に署名する必要がある)は、アメリカをサウジアラビアの防衛に関与させることに二の足を踏む可能性が高い。しかしホワイトハウスは、そのような協定がイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を巡るものであれば、連邦議会の支持が得られる可能性が高いと推測していた。

2023年9月時点では、それは素晴らしいアイデアだったが、今ではやや理想的過ぎる考えになっている。ガザでの7カ月にわたる残忍な戦争の後に、サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化実現に求めている代償は、イスラエル人にとって大き過ぎ、イスラエル人の約3分の2がこの考えに反対している。それだけに基づいて、国防協定のための正常化協定を追求し続ける正当性はない。

しかし、ワシントンの当局者、そして、特にリヤドは、いずれにせよイスラエルをこの協定案から外したがっているはずだ。そうでなければ、アメリカとサウジアラビアの二国間関係に三国間関係の論理を持ち込むことになる。アメリカとエジプトの関係が何かを示すものであるとすれば、それはワシントンとリヤドの関係を深く不利な方向に歪めかねない。

ジョー・バイデン米大統領がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子を本質的にペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物、persona non grata)であると宣言し、米連邦議会の議員たちがサルマン王太子の人権侵害疑惑の責任を追及するよう要求したのは、ずいぶん昔のことのように思える。

リヤド当局者たちが当時予測していたように、バイデン大統領がサウジアラビアの指導者たちを必要とする時が来るだろう。彼らはそれほど長く待つ必要がなかった。新型コロナウイルス感染拡大後の旅行客の急増とロシアのウクライナ侵攻によるガソリン価格の上昇圧力は、ホワイトハウスに特別な難題を突きつけた。その結果、世界規模のエネルギー価格の高騰はアメリカ経済の健全性を脅かし、ひいてはバイデンの選挙での見通しを脅かした。このためバイデンはリヤドに外交官を派遣し、最終的には2022年7月に自らリヤドを訪問するに至った。サウジアラビア政府高官たちにもっと石油を汲み上げるよう説得し、アメリカ人のガソリン代負担を軽減させ、大統領は低迷する世論調査の数字を少しでも改善することを望んでいた。

そして、エネルギー価格の高騰が部分的に後押ししたインフレと、ヨーロッパにおけるロシアのウクライナ侵攻は、ホワイトハウスの中国に対する厳しいアプローチを背景にしていた。バイデンは政権発足当初から、世界中で北京を出し抜くことを優先課題としていた。最も影響力のあるアラブ国家として、サウジアラビアはその戦略の重要な要素になると期待されていた。

そしてイランの脅威が存在した。ドナルド・トランプ米大統領(当時)が2018年にワシントンを脱退させた核合意である「包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)」にテヘランが再加盟するよう、米政府高官たちが政権発足後2年の大半の期間を費やして追い回した結果、バイデンは、イランが実際にはアメリカやペルシャ湾西側の近隣諸国との新たな関係を望んでいないという結論に達したようだ。

結果として、アメリカ政府はイランの封じ込め(containing)と抑止(deterring)を目的とした、地域の安全保障を強化する取り組みに乗り出したが、その取り組みにおいてサウジアラビアが重要な役割を果たすことが期待されている。しかし、核合意と、2019年の自国領土へのイラン攻撃に対するトランプ大統領の反応に消極的だったことを受けて、リヤド当局者らは賢明に振舞った。その結果、彼らは現在、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカの取り組みを大枠で規定する、正式な合意を望んでいる。

2017年と2018年に自らが負った傷のせいで、米連邦議事堂内におけるサウジアラビアの不人気が続いており、その結果、かつてはサウド家の忠実な召使であったが、ムハンマド王太子を激しく批判するようになった、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害にまで至ったことを考えると、連邦議会では支持大きいイスラエルが協定を締結するはずだった。しかし、このアイデアはうまく設計されているかもしれないが、サウジアラビアとアメリカとの防衛協定のための、サウジアラビアとイスラエルとの国交正常化は、アメリカとサウジアラビア当局者が最も重要であると信じている関係に、重大な下振れリスクをもたらすことを示している。

アメリカのサウジアラビアへの関与が、サウジのイスラエルとの国交正常化を条件とするならば、その関係、すなわちイスラエルとサウジアラビアの関係の質は、明白な意味でも、そうでない意味でも、ワシントンとリヤドの二国間関係に影響を及ぼす可能性が高い。

エジプトは、このダイナミズムがどのように展開するかを示す典型的な例である。ホスニ・ムバラク前大統領の時代を通じて、とりわけ長期政権末期には、アメリカ・エジプト・イスラエルの三者関係の論理がエジプト政権に対する、破壊的な政治批判をもたらした。ムバラクの敵対勢力、特にムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)は、イスラエルのせいで、ワシントンがエジプトをこの地域の二流大国(second-rate power)にしたのだと主張した。

換言すれば、ムバラクと側近たちは、イスラエルが2度にわたってレバノンに侵攻し、ヨルダン川西岸とガザ地区を入植し、イェルサレムを併合するのを傍観していた。そうしなければイスラエルとの関係が危険に晒され、ひいてはイスラエルとの関係が損なわれるからである。そうなれば、エジプトとアメリカとの関係を損なうことになる。その結果、エジプトはイスラエルに直接挑戦するのではなく、国連やその他の国際フォーラムの場でイスラエルに抗議をする、つまり弱者の武器(weapons of the weak)を使うことになった。

2007年頃、エジプトからガザ地区への密輸トンネルの存在が初めて発見されたとき、イスラエルとその支持者たちはワシントンでそれを喧伝した。もちろん、彼らが憤慨するのは当然のことだが、エジプト政府関係者たちは、イスラエルがこの事態を二国間問題として処理せず、ワシントンを巻き込むことを選択したため、エジプトはカイロの軍事支援が危険にさらされることを恐れたと、私的な会話で苦言を呈した。米連邦議会の議員たちも、エジプトの軍事援助を削減し、他の支援にシフトするかどうか公然と議論していた時期だった。エジプトから見れば、特に敏感な時期に密輸トンネルをめぐって批判を浴びせられたことで、エジプトとイスラエルの二国間の問題が、ワシントンとカイロの問題になり、アメリカとエジプト関係に不当に緊張が走ることになった。

サウジアラビアとの安全保障協定を確保する努力にイスラエルを含めることは、既に複雑な二国間関係を更に複雑にすることを求めるだけだ。そのようなことをする価値はほとんどない。もちろん、エジプトとサウジアラビアには多くの違いがある。国境を接していないことから、イスラエルの安全保障上の懸念が、アメリカとエジプトとの関係で見られるような形でアメリカとサウジアラビアとの関係に影響を与えることはないだろう。

それでも、イランを管理するサウジアラビアの微妙なアプローチがイスラエルを怒らせた場合はどうなるのか? エジプトと同様、サウジアラビアは、アメリカの安全保障援助に依存している。イスラエルがサウジアラビア王室の外交政策の進め方を好まなければ、アメリカとサウジアラビアの関係に問題が生じる可能性は現実のものとなる。

バイデン政権がサウジアラビアとの防衛協定を望むなら、締結しよう。協定を結ぶにあたり、十分な根拠があるはずだし、バイデン大統領は懐疑論者を説得できるほど熟練した政治家だ。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

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(終わり)

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。2023年を回顧し、2024年、その先を見通す内容となっています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 新刊でも取り上げたが、2023年10月7日からパレスティナ紛争が続いている。ハマスによるイスラエルに対する攻撃とそれに対するイスラエルの大規模な報復攻撃によって、多くの民間人が犠牲になっている。1948年にイスラエルが建国されて以来、パレスティン紛争は、強弱はありながらも継続中で、もうすぐで75年が経過しようとしている。問題は親から子へ、子から孫へと引き継がれて、より複雑化しているようだ。どうしてパレスティナ紛争は解決しないのか。1993年にパレスティナ解放機構(PLO)とイスラエルの間で成立したオスロ合意に基づく、二国家共存解決策(two-state solution)は破綻寸前なのはどうしてか。

 ハーヴァード大学教授スティーヴン・M・ウォルトはその主要な理由を5つ挙げている。ウォルトは、妥協不可能な目的、イスラエルが拡大すればするほど国内が脆弱になってしまう安全保障のディレンマ、無責任な部外者の介入、過激派の存在、アメリカに存在するイスラエル・ロビーが主要な5つの理由として挙げている。

 興味深いのは、イスラエルが拡大を続けて、アラブ人、パレスティナ人が住む領域を国土に編入していくと、イスラエル国民の構成がユダヤ人とアラブ人で半々になってしまう、そうした場合に、アラブ人にユダヤ人と同等の政治的権利を与えるべきかどうかということが大きな問題になるということだ。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はアパルトヘイト政策を実施して、アラブ系のイスラエル国民に政治的権利を認めないということを実行しているが、それでは、イスラエルが建国の理念として掲げる民主政治体制の公平性を毀損することになる。これは国家の存在理由を毀損することになる。イスラエルを拡大し、二国家共存路線を否定すればするほど、イスラエルの建国の理念は毀損され、イスラエル国家の正統性は失われていく。

 イスラエルの過激派は、二国家共存路線を放棄させようとして、パレスティナの過激派であるハマスと手を結んだ。彼らは共通の目的である「二国家共存路線の放棄」のために共闘できた。その結果が現在である。この過激派同士が手を組むというのはよく見られる現象である。ここで重要なのは、穏健派同士が手を組んで主導権を握ることだ。そうすることで、問題解決の糸口が見つかるだろう。パレスティナ紛争の解決(もしくは小康状態)は世界にとっても重要である。そして、それを75年間も成功させられなかったアメリカは、仲介者や保護者の役割を降りるべきではないかと私は考えている。パレスティナとイスラエル、双方と話ができる、非西側諸国(the Rest、ザ・レスト)の旗頭である中国に任せてみたいとなどと言えば、反発を受けるだろうが、サウジアラビアとイランの国交正常化交渉合意を取り付けた実績がある。アメリカの失敗を土台にしてそこから学び、方法を見つけることができるのではないかと考える。

(貼り付けはじめ)

イスラエルとパレスティナの紛争がすぐには終わらない5つの理由(5 Reasons the Israel-Palestine Conflict Won’t End Any Time Soon

-過激派、ロビイスト、お節介な部外者、そしてより深い構造的問題の存在は、この問題が未解決のままであることを意味するものだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/08/israel-palestine-conflict-gaza-hamas/

関連する歴史にあまり馴染みがなく、今現在のように何か酷いことが起きている時にしかこの問題に注意を払わない傾向があるのなら、あなたは自問するかもしれない。それは次のような一連の疑問だ。「何が問題になっているのだろうか? なぜイスラエルとパレスティナは和解し、うまくやっていくことができないのだろう? アメリカは第二次世界大戦後、ドイツや日本と和解したし、アメリカとヴェトナムの関係は現在友好的だ。南アフリカや北アイルランドのような問題を抱えた社会でさえ、正義と平和に向かって進んできた。それなのになぜ、これらとは別の紛争を終わらせるための多種多様な努力が失敗に終わり、1948年にイスラエルが誕生して以来最悪のイスラエルとパレスティナの血を見ることになったのだろうか?」

私は疑問解消の手助けをするためにここにいる。イスラエルとパレスティナの紛争が、罪のない人々の命を奪い続け、地域を不安定化させ、ワシントンの政治的処理能力(Washington’s political bandwidth)を不釣り合いなほど消費し、恐怖、苦しみ、不正義を永続させ続けている理由のトップ5を紹介しよう。

(1)割り切れない目的(Indivisible objectives)。紛争の核心には、深い構造的問題がある。イスラエルとパレスティナの民族主義者・ナショナリストたちはともに、同じ領土に住み、その支配を望んでおり、それぞれがそれを自分たちの正当な権利だと確信している。両者はそれぞれ主張の根拠を持っており、それぞれが自分の立場が相手の立場を打ち負かすべきだと熱烈に信じている。国際関係学者たちはこのような状況を「不可分性(indivisibility)」問題と呼ぶ。紛争を解決するためには、当事者双方が納得できるような方法で問題を分割する必要がある。さらに、三大宗教の聖地であるイェルサレムの複雑で争いの絶えない地位が加われば、紛争が繰り返されることになる。過去100年にわたり、土地の共有に関するいくつかの提案がなされてきたが、妥協を求める声は、係争中の領土の全てを求める人々によってかき消され、あるいは排除されてきた。悲しいことに、ナショナリズムとは通常このように機能するものだ。

(2)安全保障のディレンマ(The security dilemma)。1つ目の問題と、紛争地域の狭さが相まって、2つの共同体は安全保障上の深刻なディレンマに直面している。シオニストの指導者たちは当初から、アラブ人が多数派どころかかなりの少数派として存在する、ユダヤ人が支配する国家を作ることは困難か不可能であると認識していた。その信念が、1948年のアラブ・イスラエル戦争、そして1967年にイスラエルがヨルダン川西岸を占領した際の民族浄化行為(acts of ethnic cleansing)につながった。しかし、このような行為は、アメリカを含む、他の多くの場所で国家建設の努力が同じような性質の行為に及んでいるように、決して特異なものではなかった。当然のことながら、追放されたパレスティナ人もイスラエルのアラブ近隣諸国も、この事態に激怒し、結果を覆そうと躍起になった。

更に悪いことに、イスラエルは人口が少なく、地理的に脆弱なため、指導者たちは国境を拡大することで国の安全性を高めようとする強力な動機を持っていた。ダヴィド・ベン=グリオン(David Ben-Gurion)首相は、1956年のシナイ戦争(Sinai War[第二次中東戦争]でイスラエルが占領した土地の一部を保持することを一時的に望んだが、アメリカからの確固とした圧力により、この計画を断念せざるを得なかった。その11年後、同じ拡張主義的な衝動によって、イスラエルは1967年の6日間戦争(the Six-Day War[第三次中東戦争]後もヨルダン川西岸とゴラン高原を支配し、1967年から1979年のエジプト・イスラエル和平条約調印まで、シナイ半島の大部分を支配し続けた。

残念なことに、ガザ地区を支配しながらヨルダン川西岸を保持し定住するということは、数百万人のパレスティナ人が永久にイスラエル支配下に置かれることを意味し、事実上、建国者が避けようとしていた人口動態の問題(demographic problem)、つまりイスラエルが支配する領域でユダヤ人とパレスティナ人の数がほぼ同数になるという問題を引き起こすことになる。「大イスラエル(Greater Israel)」という目標を追求すれば、その指導者たちは、ほぼ同数のパレスティナ人従属民に完全な政治的権利を与えるか、彼らの大半を追放する別の口実を見つけるか、イスラエルの民主政治体制と人類への公約とは相容れないアパルトヘイト制度(apartheid system)を導入することを強いられるだろう。元イスラエル外務大臣シュロモ・ベン=アミは2006年に、「民主政治体制とユダヤ国家の地位と領土拡大とを両立させることはできない」と書いた。最も悪くない選択肢は、イスラエルが現在支配している領土のかなりの部分を放棄し、パレスティナ人が独自の国家を持つことを認めるという選択肢だ。この目標は、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、そして現在のジョー・バイデン政権が掲げた政策である。

しかし、安全保障のディレンマは、「2つの民族のための2つの国家(two states for two peoples)」を交渉する努力を複雑にしている。イスラエルの交渉担当者たちは、パレスティナの国家がイスラエルを深刻に脅かすことがないよう、イスラエルが国境と領空を実質的に支配したまま、将来のパレスティナの実体(あるいは国家)を事実上非武装化しなければならないと主張している。しかし、そのような取り決めをすれば、パレスティナ人はイスラエル(そしておそらく他の国家)に対して永久に脆弱な立場に置かれることになる。それぞれの安全意識を向上させ、最終的な和解を促すような取り決めを想像することは可能だが、絶対的な安全は到達不可能な目標である。残念なことに、10月7日のハマスの犯罪と、現在ガザで罪のないパレスティナ人に加えられている犯罪は、当面の間、2国家解決を達成することをより困難にするだろう。

(3)役に立たない部外者。 この2つの人々の間の対立は、利己的な介入(self-interested interventions)が通常は逆効果である一連の第三者によっても煽られ、維持されてきた。イギリスは1917年のバルフォア宣言(Balfour Declaration)によって問題が始まり、戦間期(the interwar period)には国際連盟(League of Nations)の任務を誤って管理し、第二次世界大戦後は問題を国際連合(United Nations)に突きつけることになった。1948

年以降、繰り返される一連のアラブ間対立の一環として、競合するアラブ諸国はパレスティナ内部の別々の派閥を支援し、パレスティナの統一を損なった。

冷戦時代、アメリカはイスラエルを、ソ連はいくつかのアラブの重蔵国を、それぞれ利己的な理由から武装させたが、どちらの大国も問題解決の糸口が見つからないパレスティナ問題や、ヨルダン川西岸一帯に入植地(settlements)を建設するというイスラエルの決定を覆すことには十分な関心を払わなかった。そしてイランは、ハマス、パレスティナを根拠とするイスラム聖戦、レバノンを根拠とするヒズボラを支援することで、主にテヘランが脅威とみなす方法でこの地域を再編成しようとする、アメリカの努力を頓挫させようとしてきた。こうした外部からの介入はいずれも、イスラエル・パレスティナ紛争の解決には役立たず、むしろ悪い状況をより悪化させる傾向にあった。

(4)過激派。中東でも他の地域と同様、少数の過激派が、困難な問題を解決しようとする善意の努力(well-intentioned efforts)を頓挫させることがある。1990年代のオスロ和平プロセスは、両陣営がこれまでで最も紛争終結に近づいたものだったが、両陣営の過激派がこの希望に満ちた和平への道を台無しにした。ハマスとパレスチナ・イスラム聖戦による一連の自爆テロはイスラエルの和平派を弱体化させ、1994年にはイスラエル系アメリカ人入植者が和平努力を阻止するために意図的にパレスティナ人29人を殺害し、その後、別のイスラエル人狂信者がイツハク・ラビン首相を暗殺し、ベンヤミン・ネタニヤフが首相に就任するのを間接的に助けた。

二国家解決(two-state solution)への反対はネタニヤフ首相の政治キャリア全体の道標であり、二国家解決を実現させることに関心を持っていた穏健派パレスティナ自治政府(moderate Palestinian Authority)を弱体化させるという明確な目的のために密かにハマスを支援したほどだ。その政策の悲惨な結果は10月7日に明らかになった。

(5)イスラエル・ロビー。AIPAC、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)、クリスチャンズ・ユナイテッド・フォー・イスラエル(Christians United for Israel)のような諸団体が紛争を長引かせていると考える人もいるだろうが、紛争を長引かせている唯一の責任があるとは思わない。しかし、彼らや他の志を同じくするグループや個人が問題解決にとっての重大な障害となっている。彼らの行動の詳しい説明については、『イスラエル・ロビー』の第7章を​​参照するか、ピーター・ベイナートの最近の論稿を読んで欲しい。

これらのグループは、アメリカの政治家に紛争に対する一方的な見方を教え込むだけでなく、紛争を終結させようとするアメリカ大統領の真剣な試みをことごとく妨害することに積極的に取り組んできた。ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマの各大統領は、いずれも二国家による解決を公に約束し、クリントンとオバマはそれを実現しようと真剣に試みた。それはなぜか? オバマが言うように、2つの民族のための2つの国家は「イスラエルの利益、パレスティナの利益、アメリカの利益、そして世界の利益(Israel’s interest, Palestine’s interest, America’s interest, and the world’s interest)」だからである。しかし、大きな影響力を行使できるにもかかわらず、どの大統領もイスラエルに深刻な圧力をかけようとはしなかった。イスラエルが入植地建設を中止し、占領地のアパルトヘイト体制を解体し始めることを条件に、アメリカの援助や外交的保護を行うことさえできなかった。

Jストリートやアメリカンズ・フォー・ピース・ナウのような、二国家間解決を支持する著名な親イスラエル団体でさえ、アメリカの指導者たちにこの措置をとるよう公然と呼びかけたり、イスラエルに意味のある圧力をかけることを支持するよう連邦議会議員に圧力をかけたりすることはなかった。イスラエルはその主要な後援者であり庇護者(principal patron and protector)であるアメリカから責任を追及されることがなかったため、歴代のイスラエル政府は妥協する必要性を感じることもなく、自分たちの行動の長期的な影響を考慮することもなかった。その結果、ジョン・ミアシャイマーと私が(そして他の多くの人々が)何年も前に警告したように、イスラエルとパレスティナ人が今日直面しているような災難が起こった。

これら5つの要因はそれぞれ、単独でも和平への困難な障害となるだろうし、このリストから外した他の障害も間違いなく存在する。こうしたことが物語っているのは、残念なことだが、この紛争はすぐには終わらないということだ。それは、イスラエル人にとってもパレスティナ人にとっても悲劇(tragedy)である。パレスティナ人が最大の損失を被っているとおりそれは悲劇であるが、イスラエル人にとっても悲劇である。

更に言えば、現在のガザ戦争におけるイスラエルの行為は、反ユダヤ主義(antisemitism)を煽ることによって、世界中のユダヤ人を危険にさらすかもしれない。バイデン政権は、イスラエルのガザにおける残忍かつ大量虐殺の可能性のある作戦に積極的に加担しているため、アメリカはこの惨事(disaster)における役割のために、道徳的にも戦略的にも深刻な代償を払うことになるだろう。「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」の指導者であると自称するアメリカの信用を失墜させようと躍起になっている世界の指導者たちにとって、これ以上素敵な休暇のプレゼントはないだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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