古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ヒラリー・クリントン

 古村治彦です。
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 今回の大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領に圧勝、地滑り的勝利ということになった。大きいのは、一般得票数でもトランプがハリスに勝利したことだ。2016年の選挙では、選挙人獲得数ではトランプが勝利したが、一般得票数ではヒラリー・クリントンが勝利した。2020年の選挙ではジョー・バイデンがトランプに対して、選挙人獲得数、一般得票数で勝利した。人口が多い都市部を持つ州は民主党優勢州であり、ここで民主党の候補者が圧勝するので、一般得票数が多くなるということがあった。しかし、今回は、民主党優勢州でハリスは勝つには勝ったが、ヒラリーやバイデンに比べて得票率を減らしている。トランプは共和党優勢州ではハリスに圧勝している。こうしたことがあり、ハリスは一般得票数でもトランプに敗北するということになった。
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 やはりアメリカ国民のインフレ疲れ、生活の不安ということが原因であろう。特に低所得者層にとってこの問題は深刻だ。給与や年金が高い中間層以上には耐えられるものでも、こうした人々にとっては生きるか死ぬかの問題である。インフレ率はジョー・バイデン政権で下がってきていたが、生活者の実感としてはかなり厳しいということがある。私たちは、テレビ番組などで有名人たちがハワイに行ってラーメンが何千円もしたとか、朝食を食べるだけで1万円近くしたという話を聞いて、「なかなか海外旅行にも行けなくなったな」と嘆くばかりだが、実際にそこで生活している人たちにとっては死活問題だ。それが今回の選挙で明らかになった。

逆に言えば、トランプ政権はインフレ対策と雇用創出で思い切った施策を行わねばならない。トランプはもう次の任期は狙えないとなれば、子の大統領任期では、イングレ対策と雇用創出、更に、後継者づくりということを主眼に置くことになる。トランプの後継者となり得るのは現在のところ、JD・ヴァンス次期副大統領だ。

 今回の選挙ではラテンアメリカ諸国出身の人々、男性はラティーノ、女性はラティーナと呼ばれるが、ラティーノの間でトランプへの支持が増えている。彼らにとっては、不法移民対策がもっと重要なテーマとなったようだ。彼ら自身も移民、もしくは移民の家族出身であり、本来であれば、不法移民に対して寛容であるとも思われるが、不法移民に対して否定的な選択をしたということは、不法移民に関連しての地域の治安の悪化や財政負担の問題が大きくなっているということが挙げられる。これは彼らの生活の実感である。

 民主党は人々の生活の実感に鈍感になっている。そのことが今回の選挙、大統領選挙だけではなく、連邦上院議員選挙、連邦下院議員選挙で明らかになった。これをポピュリズムだと簡単に片づけて、見ないふりをしていては民主党に未来はない。アメリカの人々は生活の実感を持って政治に怒りを持ち、このような判断を下した。民主党はこれをしっかり受け止めねばならない。

(貼り付けはじめ)

民主党優勢州の結果はハリスと民主党にとって残酷な夜を浮き彫りにしている(Blue state results underscore brutal night for Harris, Democrats

ジュリア・ミュラー、ジャレッド・ガンズ筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4977596-democrats-lose-midterms-2024/

全米の有権者は火曜日にカマラ・ハリス副大統領と民主党が主張した内容を拒否し、この結果は党による大規模な内省(soul-searching)の引き金となっている

ドナルド・トランプ次期大統領は前回勝利した州でハリスとの差を広げたが、一部の民主党の優勢州での差も縮小した。

2020年にジョー・バイデン大統領が16ポイント差で勝利したニュージャージー州では、水曜日の夜、ハリスが5ポイント弱の差でリードしていた。前回バイデンが23ポイント差で勝利したニューヨーク州では、火曜日にはハリスが約11ポイント差で勝利した。

『ワシントン・ポスト』紙の追跡調査によると、国内の約3000の郡のほとんどが火曜日に右方向(トランプ)に移動した。

世論調査専門家ネイト・シルヴァーの分析によると、ニューヨーク市の5つの行政区は全て右にシフトしており、場合によってはトランプの得票率が11ポイントも上昇した。

ハリス副大統領はシカゴ、ボストン、フィラデルフィア周辺の郡でバイデンの2020年の数字を下回った。ヒューストン周辺のテキサス州ハリス郡では、バイデンが約14ポイント差で勝利したが、ハリスはわずか5ポイント差で勝利した。

ハリスは民主党優勢州のメリーランド州で簡単に勝利したが、それでもその差は縮まって23ポイントだった。前回の選挙でバイデンはトランプに33ポイント差で勝利した。

イリノイ州は1990年代初頭以来、民主党の大統領候補は2桁の差で投票してきたが、ハリスはわずか8ポイント程度の差で勝利する見込みになっている。

トランプは多くの民主党優勢州でスコアを伸ばしただけではない。彼は共和党優勢州でもスコアを伸ばした。

トランプ氏は2020年にきわめて強力な共和党優勢州のアラバマ州で25ポイント差でバイデンに勝利したが、今回の選挙ではそのリードを30ポイント以上に広げた。

アイオワ州では、信頼性の高い世論調査でハリスが3ポイント差で驚くべき優位性を示した数日後、トランプが快勝した。最新の数字によると、トランプは約13ポイント差をつけてリードしており、アイオワ州での過去の成績を上回っている。

トランプは2016年と2020年の大統領選挙で一般得票数で敗れた。水曜日夜の時点で、トランプは2024年の一般得票数で勝利するのは確実と見られている。トランプはハリスに500万票近くの差を付けており、驚くべき逆転となった。

ハリスの困難な一夜は、民主党上院議員候補がモンタナ州とオハイオ州で苦戦して敗北し、ペンシルヴァニア州とネヴァダ州でもさらに2敗する危険があったため、投票結果に影響を及ぼした。ウィスコンシン州とミシガン州の連邦上院の他の民主党候補者2名が熾烈な競争を勝ち抜いた。

選挙翌日、民主党は敗北の原因が戦術的、戦略的決定なのか政策上の問題なのかを議論した。

民主党系のストラテジストのジョン・ライニッシュは、選挙戦の特殊な状況を考慮するとハリスは「できる限りの最善を尽くした」と主張し、再選活動から早期に撤退しなかったバイデン大統領の責任を非難した。

一方、民主党系のストラテジストのフレッド・ヒックスは、民主党がバイデン大統領を非難することに反対した。ヒックスは、新型コロナウイルス感染症時代からのインフレという逆風により、2024年に現職大統領が勝利するのは困難だっただろうと述べた。

ヒックスはまた、共和党と中道派の有権者にとって最大の2つの問題、移民とインフレに関してハリスがバイデンから距離を置くのに苦労したとも語った。 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、ブルーカラー層の有権者が大挙して民主党から離れていることを指摘し、民主党は労働者階級を見捨てたと主張した。

「最初、白人労働者階級だったが、今ではラティーノ系アメリカ人や黒人労働者もそうなっている」とサンダースは声明で述べた。彼は、「民主党指導部が現状を擁護する一方で、アメリカ国民は怒り、変化を望んでいる。そして彼らは正しいのだ」と続けた。

トランプ大統領はウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州、ミシガン州の「青い壁(blue wall)」3州を全てひっくり返し、前回の選挙では全てバイデンに敗れた。

また、バイデンが2020年に勝利を収めたジョージア州を逆転し、ネヴァダ州でも勝利して激戦区の連勝記録を伸ばした。前回もバイデンが勝ったアリゾナ州では、水曜午前の時点で5ポイント弱の差で勝利していた。 

選挙前の世論調査では、多くのアメリカ人にとって経済が最重要課題であることも示されており、火曜日の投票では、バイデンよりも経済にうまく対処するというトランプ大統領の公約にほぼ同意していることが示された。

このことは、ハリスが中絶の権利と、2020年の選挙を覆すためのトランプの行動を考慮してトランプが代表していると彼女が述べた民主政治体制への脅威に焦点を当てすぎたのではないかという疑問を引き起こした。

サフォーク大学政治研究センター所長のデイヴィッド・パレオロゴスは、中絶の権利について「一部の有権者にとっては非常に重要な問題だったと思うが、全体としては第一位や第二位の問題ではなかった」と述べた。

ヒックスは、共和党がインフレと移民を攻撃していることと、民主党がこれらの問題についてより良い主張を提案できなかったことが原因だと主張した。

ヒックスは次のように語った。「この件で民主党を沈めたのはインフレと移民の双子(twins)だった。そして、トランスジェンダーの学生がスポーツに参加し、税金がそこに投じられるという社会問題を持ち出すと、それはまさにインフレのポイント全体にまで及ぶが、民主党はそうしなかった。具体的には、ハリス陣営はそれを克服できなかったようだ」。

ライニッシュによれば、民主党は広く中道派の有権者に届く適切なメッセージを磨いておらず、「ここ数年で左派がどれだけ遠くまで行ったか」に不満を抱いた民主党支持層の一部を疎外しているということだ。

共和党系ストラテジストであるジョシュア・ノボトニーは、トランプは多くの人々を惹きつける「ブランド(brand)」であり、将来的には再び選挙に出馬することはないため、共和党がこれまでに得た利益を更に拡大できるかどうかが懸念材料だと述べた。

ノボトニーは、次期副大統領のJD・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)が新しい共和党の「後継者(heir)」と見られるが、将来の成功への最善の道は、制限された政府と減税というより古い理想と共和党の共和党の理念、トランプ大統領時代の「ポピュリズム傾向(populism streak)」を結びつけることだと述べた。

ノボトニーは「もし彼らがそれらを変えることができていれば、昨日彼らはかなりうまくやったと思うが、私たちがそれらを変え続けることができれば、それが勝利のレシピだと思う。 それが起こるかどうかは、私たちがどのような候補者を擁立するかに大きく左右されると思う」と述べた。

民主党は今後数カ月をかけて何が問題だったのか合意することに努め、有権者が2026年の中間選挙、そして2028年に再び中間選挙に戻るべき理由について説得力のあるメッセージを打ち出すよう努めるだろう。

ヒックスは、今後は民主党が経済メッセージを洗練させ、非大卒有権者、中年有権者、男性有権者といったトランプ大統領の主要層の支持を得るべく努力する必要があると述べた。

ヒックスは「今日は次の選挙サイクルの初日だ」と語った。

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トランプはラティーノ系からの支持を基盤にして勝利への道を整える(Trump builds on Latino support, helping pave way to victory

ジュリア・マンチェスター、キャロライン・ヴァキル筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4977774-trump-gains-latino-voters/

ラティーノ系とヒスパニック系の有権者の間でのトランプ次期大統領のパフォーマンスは、前大統領が重要な投票層に進出したことにより、投票日の共和党にとって最も明るい材料の1つとなった。

プエルトリコやラテンアメリカ出身者について人種差別的なジョークを飛ばすコメディアンをフィーチャーした集会でトランプが受けた反発にもかかわらず、トランプ前大統領はこうした人々の間で支持を拡大しているようだ。トランプはプエルトリコ人が多く住むフロリダ州中部のオセオラ郡を僅差で1ポイント以上の差をつけて逆転した。これに対し、2020年にジョー・バイデン大統領が14ポイント近くの差をつけてオセオラ郡で勝利し、2016年にはヒラリー・クリントン元国務長官が25ポイント近くの差をつけて勝利した。

アリゾナ州全体ではヒスパニック系人口が目立つユマ郡とサンタクルーズ郡でトランプ元大統領が2020年の成績を上回っているように見えたが、州内での票数はまだ集計中だ。

CNNの出口調査によると、ハリス副大統領がラティーノ系有権者の間でトランプに52%対46%で勝利しており、このグループ内でトランプを上回ったが、差は一桁となった。2020年の得票率はバイデンが65%だったが、トランプは32%だった。

今回の選挙で最も注目に値するのは、トランプがラティーノ系男性でハリスに12ポイント差をつけて勝利したことだ。これは、バイデンが23ポイント差で同グループの支持を集めた2020年以来、驚異的な35ポイントの差となった。そしてハリスはラティーナ系女性の間で大差で勝利し、トランプを22ポイント上回ったが、わずか4年前には、バイデンが獲得した39ポイントの差と比べると、歴然とした違いがある。

トランプ陣営の上級顧問ダニエル・アルヴァレスは次のように語った。「ドナルド・J・トランプ大統領がヒスパニック系有権者から歴史的な支持を得たのは、コストの削減、経済の回復、アメリカの繁栄の回復、国境の確保、国内外の安全など、私たちのコミュニティにとって最も重要な問題について決して揺るぎなかったからだ。トランプ大統領が勝利演説で述べたように、今こそ仕事に取り掛かり、アメリカ国民のために奉仕すべき時だ」。

ラティーノ系有権者の一部が共和党に傾きつつあるという警告の兆候は、民主党にとって長年にわたって明らかであった。2022年、共和党はフロリダ州の投票圏、特にキューバ人やプエルトリコ人コミュニティで実績を上げた。ロン・デサンティス知事(共和党)は、キューバ系アメリカ人の68%、プエルトリコ人の56%を含むフロリダ州のラティーノ系投票の58%を獲得した。

そして、2024年の選挙に向けた世論調査では、トランプはラテン系有権者の間で、特に若いラティーノ系男性の間で有望な兆しを見せていた。

ラティーノの投票行動や傾向を専門とする共和党のストラテジストであるマイク・マドリッドは、「孤立した若いラティーノ男性により浸透しているが特に注目だ」と述べている。

マドリッドは「若いヒスパニック系男性だけでは、オセオラ郡はひっくり返せない」と述べた。

マドリッドは、ラティーノ系有権者の大きな変化は、「より長期的な、世代的な軌跡(longer-term, generational trajectory)」の一部であると主張する。

マドリッドは「非白人で労働者階級のポピュリスト的な有権者という新しいタイプの有権者が出現している」と述べた。

共和党は、このスイングは経済や移民などの問題で共和党に向かう動きであると同時に、民主党の政策に対する拒絶だと主張している。

ある共和党系ストラテジストは「例えば、テキサス州南部に行って、それらのコミュニティに入ってみると、実際、不法移民の流入については長年の懸念があった。なぜなら、不法移民が実際に彼らのコミュニティに流入するからである」と述べ、ラティーノ系住民が、学校選択や中絶などの問題について右派への傾斜の兆しを見せていると付け加えた。

3月に発表されたピュー・リサーチ・センターの調査によると、アメリカ在住のヒスパニック系住民の75%が南部国境を越える移民数の増加を「大きな問題または危機(major problem or crisis)」と述べ、74%が政府の対処に対して批判的だと答えた。またこの世論調査では、51%が南部国境への対処が大統領と連邦議会にとって最優先事項であるべきだと答えていることも明らかになった。

前述のストラテジストは、「この傾向は以前から存在しており、共和党にとってありがたいことに、民主党はそれを認識できず、歴史を通じてその価値を評価することができず、率直に言って、彼らは党内のほとんどの少数派を同じように扱ってきた。彼らはテキサス州やアリゾナ州のヒスパニック系有権者を黒人有権者の穴埋め要員として扱った」と述べた。

このストラテジストは「それは連合ではない。それは怠惰であり、人々が自分たちを支持して当然なんだと見なしている」と続けて述べた。

アリゾナ州民主党の元幹事長DJ・クインランは、それはさらに単純であると示唆している。ラティーノ系とヒスパニック系の有権者たちは、他の主要な投票ブロックと同じ傾向の影響を受けている。

クインランは次のように説明した。「ドナルド・トランプ勝利の物語を、より多くのラティーノ系アメリカ人が彼に投票するという物語として伝えることに焦点を当て、起きている全体的な広範な社会的傾向に目を向けないのは大きな間違いだ。全体的に広範な動きがあったが、それは何よりも誤った情報と経済的不安によって主に動かされていると私は言いたい」。

クインランは「私自身もラティーノ系アメリカ人として、トランプ政権が傾いていると思われる多くの政策、つまり、特に医療費負担適正化法の廃止や、明らかに大量国外追放などの政策によって、ラティーノ系アメリカ人が不釣り合いなほどの深刻な影響を受けるのではないかと心配している」と語った。

コメディアンのトニー・ヒンチクリフがプエルトリコを「ゴミの浮島(floating island of garbage)」と呼び、ラティーノ系アメリカ人について下品なジョークを飛ばした先月下旬、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの大規模な集会の後、トランプ大統領のラティーノ系コミュニティに対する立場は不安定になったと多くの人が信じていた。リック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を含む共和党員たちは、この発言をすぐに非難したが、トランプと選挙陣営はヒンチクリフから距離を置いた。

ハリス陣営はこの論争を利用して、既に進行していたラティーノ系有権者への働きかけを強化した。しかし最終的には、この論争はこの有権者グループに大きな影響を与えなかったようだ。

トランプ前大統領への大口献金者であるダン・エバーハートは、「全国的に見て、ラティーノ系有権者に起こったことは驚きだと思う。これはアメリカ政治のパラダイムシフトであり、潜在的には今回の選挙よりも大きな変化だと思う」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン大統領の大統領選挙撤退とカマラ・ハリス副大統領の民主党の大統領選挙候補内定を受けて、「カマラ・ハリスは新鮮だ!」「トランプに勝てる!」という大合唱がアメリカだけではなく、日本でも主要メディアでなされている。ハリス急上昇の雰囲気作りがなされている。アフリカ系やヒスパニック系などのマイノリティ、女性や若者たちの間で支持が増えている、という報道もなされている。JD・ヴァンスの以前の発言で、「子供のいない猫をたくさん飼っている女性(childless cat lady)」という言葉があったことで、支持を減らしているということもあるようだ。

 ハリスに対する賛否それぞれの論稿をご紹介したい。賛の方は、あのヒラリー・クリントンがニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した論稿だ。否の方は、保守派のジャーナリストであるジェイソン・ライリーがウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿したものだ。

ヒラリーは、次のように述べている。「彼女(ハリス)はアメリカ政治の新たなスタートを示す希望に満ちたリーダーであり、ドナルド・トランプを打ち負かす能力を持っている。選挙では、自己中心的な犯罪者と新しい解決策を持つハリス氏との明確な対比が求められる。ハリス氏は、偏見や偽情報に直面しながらも、有権者に正しい情報を届けることが重要である」。

「ハリス氏は初のアフリカ系アメリカ人および南アジア系女性としての立場で新たな挑戦に直面するが、過去の成功をもとに進歩を可能とする信念を持っている。特に中絶禁止や民主政体への攻撃が女性有権者を刺激しており、ハリス氏がその先頭に立つことが期待されている」。

「バイデン氏とハリス氏は、新型コロナウイルス感染拡大後の経済復興を主導し、1500万以上の雇用を創出した実績がある。彼らの指導の下で、失業率は低下し、困難な状況でもインフレを抑えながら雇用を維持してきた。バイデン氏とハリス氏は、超党派の協力を通じて重要な法案を可決し、国民の生活向上を図った。 ハリス氏は、過小評価されてきたが、この瞬間に向けて十分に準備が整っている。カリフォルニア州の検察官や司法長官としての経験を活かし、トランプ政権に対して厳しい質問を行ってきた。副大統領としても難しい決断を共にし、女性の権利に関して強い擁護者となった。トランプ氏に対しては、彼の危険な政策に対する反撃を行うことが期待されている」。

 ヒラリーは、ハリスは、バイデン政権の副大統領として実績を残し、中絶や女性の権利などで先頭に立つということもあり、女性有権者が大きく動くだろうとしている。

ジェイソン・ライリーは次のように書いている。「今後の課題は、民主党がカマラ・ハリス副大統領への支持を結集することだ。バイデン氏が再選を断念した後、ハリス氏は党の支持を受けているだが、彼女が2020年にアイオワ州党員集会に参加できなかったことを踏まえると、一般民主党員の支持を得られるかは不透明だ。民主党のストラティジストたちは、ハリス氏がバイデン氏の副大統領候補に選ばれた背景と同様の状況に直面していると指摘している」。

「彼女の進歩主義的な立場に対する支持が得られるかが鍵となる。ハリス氏は国境危機への対処を担当したが、その任務で失敗したため、移民削減を求める候補者が支持を受けている状況がある。さらに、ハリス氏の人種に関する見解も主流から外れている。彼女は、奴隷制賠償に関する法案の共同提案者であり、賠償の必要性についても言及しているが、2022年の調査ではアメリカ人の大多数が賠償に反対していることが明らかになった。

「ハリス氏のようなリベラル派がアフリカ系アメリカ人コミュニティよりも不法移民の問題を重視する傾向があるという意見が広がっているため、これが民主党にとってプラスになるかは不透明だ。民主党にとって本当に必要なのは軌道修正だが、ハリス氏を選ぶことでその実現が難しくなる可能性がある。バイデン氏は年齢や健康問題、インフレや犯罪といった問題に対して有権者に納得させるのが難しい状況にあり、彼が再選を目指す中、民主党はドナルド・トランプ氏の自滅に期待しているとも言えるだろう」。

 ライリーは、民主党自体が、沿岸部進歩主義(coastal progressivism)のために、左傾化しているなかで、軌道修正が必要であるが、ハリス自体が左派であるために、それが望めない。それは、アメリカの有権者の主流から外れているからであり、ハリスが勝利するためには、トランプの自滅を望むしかないとしている。

 アメリカ大統領選挙本選挙は、各州での勝利者が選挙人団を総取りする「勝者総取り(winner-take-all)」システムである。有権者の投票の総計では決まらない。投票の総計で称しても、選挙人数で負けたのが2016年のヒラリー・クリントンだった。大きな流れと共に、各州の細かい動きも見ていかねばならないが、カマラ・ハリスがドナルド・トランプを逆転しているという能天気な報道は誤っている。

(貼り付けはじめ)

ヒラリー・クリントン:Hillary Clinton: How Kamala Harris Can Win and Make History

ヒラリー・ロダム・クリントン(2016年大統領選挙民主党候補者)筆

2024年7月23日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://archive.is/udpIy#selection-647.0-1111.1

歴史は私たちに注目している。ジョー・バイデン大統領の選挙活動を中止するという決定は、私がこれまでの人生で見た中で最も純粋な愛国心の行動だった。それはまた、私たちの国の魂のために彼の戦いを続けるよう、私たちに行動を促すものでもある。これからの15週間は、この国が政治的にこれまで経験したことのないようなものになることは疑いの余地はない。今回の選挙は民主党が勝てる、そして勝たなければならないレースだ。

バイデン氏は大変かつ珍しいことをした。大統領を務めることは生涯の夢だった。そして、最終的にそこに到達したとき、彼は大統領として業績を残してきた。それを放棄し、仕事を終えることがバトンを渡すことを意味する。このことを受け入れるには、真の道徳的明晰さが必要だった。国家はより重要だった。その夢を共有し、それを手放すことで諦めねばならなかった一人として、これが簡単ではなかったことを私はよく認識している。しかし、それは正しいことだった。

選挙は未来に関わるものだ。だからこそ、私はカマラ・ハリス副大統領に興奮している。彼女はアメリカ政治の新たなスタートを象徴している。彼女は希望に満ちた統一的なヴィジョンを提供することができる。彼女は才能があり、経験があり、大統領になる準備ができている。そして私は、彼女がドナルド・トランプを倒すことができることを知っている。今回の選挙では、更に鋭く明確な選択が迫られている。一方には、自分のことだけを考え、私たちの権利と国の時計を戻そうとしている有罪判決を受けた犯罪者がいる。もう一人は、アメリカの最良の時代はまだ先だという私たちの信念を体現する、聡明な元検察官で成功した副大統領だ。それは古い不満と新しい解決策の対照となっている。

ハリス氏の経歴と人格は、氾濫する偽情報や、既にMAGAの代弁者たちから聞かされているような醜い偏見によって歪められ、軽蔑されるだろう。彼女と選挙陣営は雑音を打ち破る必要があり、有権者である私たち全員が何を読み、何を信じ、共有するかについて熟慮する必要がある。

私は、強い女性候補者がアメリカ政治の性差別と二重基準を乗り越えて戦うのがどれほど難しいかについて、多少ではあるが知っている。私は魔女(witch)だとか「嫌な女(nasty woman)」だとか、もっと酷いことを言われてきた。私は非難され嘲笑された。候補者として、私は歴史を作ることについて話すことを避けることがあった。有権者にその準備ができているかどうか分からなかった。そして、私は障壁を突破するために走っていた訳ではない。私はその仕事をするのに最も適任だと思ったので立候補した。その高くて最も固いガラスの天井を打ち破ることができなかったことは今でも心痛むが、2度の大統領選挙活動を通じて、女性がトップに立つことが普通のことのように思われたことを誇りに思う。

ハリス氏は、主要政党のトップに立った初のアフリカ系アメリカ人および南アジア系女性として、独特の更なる課題に直面することになる。それは事実だが、恐れる必要はない。進歩は不可能だと信じるのは罠だ。結局のところ、私は2016年に全国一般投票で約300万票の差をつけて勝利し、アメリカ国民が圧倒的多数で初のアフリカ系アメリカ人大統領を選出したのはそれほど前のことではない。2022年の中間選挙で見られたように、中絶禁止と民主政治体制への攻撃がこれまでにないほど女性有権者を刺激している。ハリス氏が先頭に立ち、この動きは止められない波となる可能性がある。

彼女がバイデン氏に代わって選挙運動を組織するには時間が足りないが、イギリスの労働党とフランスの広範な左翼連合は最近、更に短い時間で大きな勝利を収めた。ハリス氏は民主党に懐疑的な有権者に働きかけ、説得が必要な若い有権者を動員する必要がある。しかし彼女は、家族の生活にかかるコストをさらに削減し、常識的な銃安全法を制定し、私たちの権利と自由を回復し保護するという強力な実績と野心的な計画に基づいて実行することができる。

彼女はバイデン政権の成果について語るべき素晴らしい話を持っている。バイデン氏とハリス氏は、トランプ氏がパンデミックに失敗し経済を衰退させた後、アメリカの復活を主導した。彼らの指導の下、米国は1500万以上の雇用を創出し、失業率は50年ぶりの低水準に近づいている。

世界中でインフレが急増したとき、経済学者の多くは、インフレを抑える唯一の方法は、大規模な雇用喪失を伴う痛みを伴う不況になるだろうと述べた。しかし、インフレが正常な水準に戻り、勤労者の実質所得が増加する中、バイデン氏とハリス氏はアメリカ人の働きを続けた。超党派の政治は終わったと多くの人が思っていたとき、バイデン氏とハリス氏は共和党と民主党を結集させ、インフラとクリーンエネルギー、マイクロチップ、国家安全保障に関する主要法案を可決させた。薬価から学生ローンまで、彼らは私たちの国を更に強くし、人々の生活をより良くする結果をもたらしてきた。

政界の多くの女性と同様、ハリス氏はこれまでずっと過小評価されているが、この瞬間に向けて十分な準備ができている。カリフォルニア州の検察官および司法長官として、彼女は麻薬密売人、汚染者、略奪的金融業者と対峙した。連邦上院議員として、彼女はもじもじするトランプ政権当局者や候補者たちを厳しく質問し、見ていて刺激的だった。ハリス氏は副大統領としてシチュエーションルームで大統領と同席し、指導者として最も難しい決断を下す手助けをしてきた。そして、連邦最高裁判所がロウ対ウェイド事件を破棄したとき、彼女は女性の生殖に関する権利の回復に対する政権の最も情熱的かつ効果的な擁護者となった。

大統領として失敗し、危険な政策を訴えているトランプ氏に対して、彼女が説得力のある反撃を行い、追及の言葉を聞くのを楽しみにしている。トランプ大統領の2期目は、1期目よりももっと悪くなるだろう。トランプ氏の計画はより極端で、より自由であり、彼の最悪の本能の一部を抑制していたガードレールはなくなっている。

ハリス氏は、トランプ氏が提案している一律関税(across-the-board tariffs)、富裕層向けの大幅な減税(sweeping tax cuts for the rich)、大量国外追放(mass deportations)のおかげで、トランプ氏の下ではインフレが再び急上昇するだろうとアメリカ国民に説明できる。中絶の権利のさらなる制限から教育省の解体に至るまで、「プロジェクト2025」でトランプ氏の支援者たちが概説した政策は、アメリカをより弱体化し、より貧しく、より分断するレシピとなっている。

副大統領の法執行機関での経験は、犯罪と移民に関するトランプ氏の嘘に反論する信頼性を与えている。事実は彼女の味方だ。トランプ氏の下で殺人率が急増した後、バイデン・ハリス政権下では殺人率は急減している。不法な国境越えも急速に減少しており、バイデン氏の最近の大統領令のおかげで、現在は2020年以来最低となっている。もしトランプ氏が今年連邦議会での超党派の移民妥協案を自らの利己的な政治目的で潰していなかったら、私たちは更に前進していただろう。

バイデン氏の友人であり支持者として、これはほろ苦い瞬間だと思う。彼は賢明で礼儀正しい人で、私たちの国によく尽くしてくれた。私たちは旗手を失い、彼の安定したリーダーシップ、深い共感力、闘争心を失うことになるだろう。しかし、私たちは新しいチャンピオン、活性化されたキャンペーン、そして新たな目的意識など、多くのことも得た。

悩みや苦しみの時代は終わった。今こそ、組織し、結集し、勝利する時だ。

※ヒラリー・ロダム・クリントン:2016年大統領選挙民主党候補者、元米国務長官、元ニューヨーク州選出連邦上院議員。

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カマラ・ハリスは民主党が必要とする変化ではない(Kamala Harris Isn’t the Change Democrats Need

-犯罪から移民、インフレに至るまでの諸問題に関して、彼女は同じ失敗した左翼政策を更に提案している。

ジェイソン・ライリー筆

2024年7月23日

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

https://www.wsj.com/articles/kamala-harris-isnt-the-change-democrats-need-161d0b2c?mod=opinion_lead_pos6

2020年のサウスカロライナ州大統領選挙民主党予備選で、ジョー・バイデン氏が勝利し、バイデン氏が選挙戦で最も当選しやすい民主党候補者であることが明らかになった後、党指導者たちは、バイデン氏のために候補者の座を明け渡した。エイミー・クロブシャーやピート・ブティジェッジなどのライヴァルたちは、肘を押されて脇に追いやられ、国政での将来を望むなら協力するよう言われた。仕方がないので、彼らは協力した。バイデン氏がドナルド・トランプ氏を破り、民主党は連邦下院での過半数を維持しながら、連邦上院を奪還した。これは党規律の驚くべき偉業だったが、民主党は再びそれをやり遂げることができるだろうか?

来月シカゴで開催される、民主党全国大会に向けた、民主党の大きな課題は、民主党がカマラ・ハリス副大統領への支持を結集させることである。バイデン氏は日曜、再選への挑戦を打ち切った後、ハリス副大統領を支持した。ハリス氏は民主党高官や大口献金者たちの支持を確保しているように見えるが、わずか4年前、彼女がアイオワ州党員集会にすら参加できなかったとき、予備選挙有権者が彼女の立候補を拒否したことを忘れてはいけない。

2016年、共和党の有権者はトランプ氏を指名したが、トランプ氏は当選できないと考えていた共和党エリートたちは落胆した。今年はリベラル派の権力者たち(booh-bahs)がハリス氏を推しているが、問題は一般民主党員が彼女に対する考えを変えたかどうかだ。民主党ストラティジストたちは、ハリス氏が2020年にバイデン氏が年齢への懸念やジョージ・フロイド氏の死を受けてのアフリカ系アメリカ人連邦議員たちからの圧力に対処するためにハリス氏を副大統領候補に選んだのと同じような瞬間を迎えていると主張している。

時間がないのは事実であり、ハリス氏は既に正式な審査を受けている有名人であり、インド人の母とジャマイカ人の父を持つ娘として、全国大会での人種や性別をめぐる党内抗争を避けるには十分な条件を満たしている。しかし、こうした表面的なことを超えて、考えている民主党支持の有権者たちは、ハリス氏の沿岸部進歩主義(coastal progressivism)に取り​​組まなければならないだろう。ハリス氏はこれを体現しており、4年前に民主党がバイデン氏を基準に選んだ際に、ハリス氏と他の極左候補者が激怒した理由の一つとなっている。

ギャラップ社は今月、アメリカ成人の55%が移民レヴェルの引き下げを望んでいると報告した。これは1年前の41%から大幅に上昇し、2001年以来の最高水準となった。「意識の変化は、昨年末に毎月の不法国境越えが記録的な水準に達したことを受けて起きた」とギャロップは述べている。加えて、ギャラップの「この国が直面している最も重要な問題に関する月次測定では、移民が今年も一貫して最上位の問題にランクされている」という。民主党はハリス氏に、国境危機への対処を担当させたが、その任務で惨めに失敗したため、今や国の半分以上が移民削減を要求している候補者たちを擁立している。

人種に関するハリス氏の見解も同様に、主流から外れている。トランプ氏の側近の誰かが、トランプ大統領の反対派が奴隷制度賠償(slavery reparations)を支持していることを思い出させるまで待つことだ。ハリス氏は連邦上院議員として、同じく民主党所属のコーリー・ブッカー議員が提出した「奴隷制の影響とアフリカ系アメリカ人に対する継続的な差別を研究し、奴隷の子孫に対する賠償案について勧告する委員会を設立する(establish a commission to study the impact of slavery and continuing discrimination against African-Americans and make recommendations on reparation proposals for the descendants of slaves)」法案の共同提案者となった。

2019年の大統領選挙運動中、ハリス氏は全米公共ラジオに対し、賠償は「人によって意味が異なる。しかし、私が言いたいのは、何世代にもわたる差別と制度的人種差別の影響を研究し、介入(intervention)という観点から、軌道修正するために何ができるかを判断する必要があるということだ」と述べた。彼女はアル・シャープトンに対し、もし自分が大統領に選出され、賠償法案を連邦議会が可決したら、「私はその法案に署名する」と語った。 2022年のピュー・リサーチ・センターの調査では、アメリカ人が奴隷の子孫に補償する取り組みを2対1以上で、反対していることが判明した。

ハリス氏の過去の賠償金支持は、不法移民への無料医療(free healthcare)提供への過去の支持と同様に、無効になる可能性が高い。民主党のエリートたちは、彼女がアフリカ系アメリカ人女性であるという理由で、有権者がこれら全てを許し、忘れることを期待しているのだろうか? ハリス氏の突然の昇格は今年のアフリカ系アメリカ人投票率の上昇を引き起こす可能性があるが、その全てが民主党にプラスになるということはない。もし世論調査が正しければ、ハリス氏のようなリベラル派はアフリカ系アメリカ人コミュニティの福祉よりも、不法移民の福祉を重視していると考えるアフリカ系アメリカ人有権者が増えることになる。

民主党にとって、本当に必要なのは軌道修正(course correction)であるにもかかわらず、大統領選挙候補者の名前を変えようとしている。そして、ハリス派の誰もがその軌道修正を実現することはできない。バイデン氏の再選は、年齢と病弱のせいもあるが、空回りしていた。彼はまた、インフレや犯罪から移民や外交政策に至るまで、あらゆるものに対する彼の処方箋が、第二のトランプ大統領に期待されるものよりも望ましいものであることを有権者に納得させるのに苦労していた。ハリス氏を選んだことで、民主党は、ドナルド・トランプ氏が11月に自分自身を打ち負かすこと(自滅すること)に賭けていると言えるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン大統領が現地時間の日曜日夜、声明を発表し、再選を目指さないこと、党の候補者としてカマラ・ハリス副大統領を支持すると述べた。先週後半から、バイデン撤退を求める声が大きくなり、マスコミの論調もトーンが上がっていたことは、このブログでも既にご紹介していたが、それが現実となった。投開票日まで残り110日を切り、民主党全国大会まで1カ月を切った段階での慌ただしい交代劇となった。
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ジョー・バイデンとジル夫人
 バイデンが発表した声明を読み、私は彼の無念さを感じた。相当な圧力を受けて、嫌々ながら撤退を決断したのだろうと思う。彼自身は、自分はまだまだ元気で大丈夫だと思っていただろうが、周囲の認識との差は大きかっただろう。人間は自分自身のこととなると分からないことが多くなるものだ。

声明文の中でバイデンは、「Democratic Party」という言葉を使わなかった。怒りのあまり、使えなかったのだろう。「my party」という言葉を使っている。バイデンの気持ちはこのようなものだろう。「いくら他の候補者が立たなかったとは言え、予備選挙で私は勝利して代議員を獲得している。その私をお前たち民主党の最高幹部たちは、引きずりおろそうとあの手この手で、脅したりすかしたりして説得、脅迫してくる。自分はそれに疲れたのだ。民主党が民主的ではないとは。カマラがいいというのなら、それでいいよ」ということが読み取れる。声明文の中で、「Democracy」とわざわざ強調しているところもあるのに、「Democratic Party」とは使っていない。バイデンの無念は相当なものだろう。

 ハリスは早速、連邦議会の民主党議員たちと話をして、支持を得ている。議員たちは11月に選挙があり、民主党に勢いがないと、選挙が厳しいということになる。民主党全体に勢いがないと見られると、選挙運動は停滞し、資金集めも難しくなる。議員たちにしてみれば、「バイデンじゃなければ何とかなる」ということになるだろう。

 今回の撤退・交代劇は見方を変えれば、「民主党内のエリートたちが自分たちの利益のために、リーダーを無理やり引きずりおろした(表面上は円満に)」ということになる。バイデンはワシントン政治家として老獪な人物であり、喧嘩をしても得策ではないときは引くということができる人物である。民主党は禍根を残すことになる。なぜなら、民主党全国委員長は「透明性があり、かつ秩序あるプロセス」を経て、候補者を選ぶと述べており、それならば、バイデン撤退についても「透明性があり、かつ秩序あるプロセス」で明らかにしなければ、ハリスの候補者としての「正統性(legitimacy)」が完全に認められないということになるからだ。

 カマラ・ハリスには、バラク・オバマとミシュエル・オバマから多大な支援が行われる。2008年、2012年のオバマ選対のスタッフ出身者が集められて、ハリス陣営が作られるという話が出ている。バイデンに対して、「猫の首に鈴を付ける(説得して撤退させる)」役を最終的に引き受けたのは、オバマだろう。バイデン陣営の政治資金については、ハリスはバイデンが指名した人物であり、ランニングメイトなのでバイデンに集まったお金が使えるということになりそうだが、一部には異論がある。「ハリスに対して出した訳ではないのだから返金すべき」という意見もある。今回のケールは極めて異例であり、まだ予断を許さない。

副大統領候補には何人か名前が挙がっているが、まだ決定打はない。マーク・ケリー上院議員(アリゾナ州)の名前が出るようになっている。ケリーは白人男性で、海軍のパイロットから宇宙飛行士になった人物。党は違うが、海軍パイロット出身で故ジョン・マケイン(共和党)の後釜的存在でもある。ハリスとは好対照な人物であり、注目される。

ハリスにはヒラリー・クリントンも支援をするという話も出ているが、これは逆効果だろう。ミシェルもあまり表に出ない方が良いかもしれない。有能な弁護士出身でセレブの大統領夫人経験者コンビがしゃしゃり出ると、格差が大きくなっているアメリカでは嫌われる。そして、何よりも、民主党内のニューヨーク王朝クリントン家、シカゴ王朝オバマ家の女王様方がご入来と捉えられる危険もある。

民主党は党綱領を発表しているが、ハリスらしさを出すために修正は必要となる。ハリスはカリフォルニア州司法長官(検事総長のような感じ)時代に、厳しい犯罪対策を行って、評価を上げたが、民主党内左派からは「厳し過ぎる」という批判が集まった。党内左派は支持しているが、ハリスに対して、反感を持っている人たちも多い。

カリフォルニア州は民主党にとって金城湯池の州だ。興味深いことに、それなのに、民主党出身の大統領でカリフォルニア州を地盤にした人はこれまで出ていない。共和党の側では、最近では、リチャード・ニクソンとロナルド・レーガンはカリフォルニア州を地盤にしていた。このジンクスが破れるかどうか、注目される。

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ハリスはバイデンが辞任後、支持を固めようと躍起になっている(Harris races to lock down support after Biden drops out

マイケル・シュニール筆

2024年7月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/4785030-harris-support-biden-drops-out/

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ミシガン州カラマズーの選挙イヴェントに到着したカマラ・ハリス副大統領(2024年7月17日)

ジョー・バイデン大統領が再選をもう望まないと発表してからわずか数時間後、カマラ・ハリス副大統領はホワイトハウスへの立候補への支持を固めようと急いでいる。

ハリスは日曜日、連邦議事堂で、3つの主要な議員連盟(派閥)の会長たちと面会した。連邦下院進歩主義派議員連盟のプラミラ・ジャヤパル連邦下院議員(ワシントン州選出、民主党)、連邦下院ヒスパニック議員連盟のナネット・バラガン連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、ニュー・デモクラット連合のアン・マクレーン・カスター連邦下院議員と会談した。3人全員がハリスを大統領選挙の指名候補として支持している。

ハリスは、マーク・ポーカン連邦下院議員(ウィスコンシン州選出、民主党)とも話した。ボーガンは、Xでの投稿で「彼女はウィスコンシン州で勝つ準備ができている!!!」と述べた。そして、ジャレッド・ハフマン連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、ハリスのスタッフから話を聞いたと述べた。

ハフマンは日曜、本誌の短いインタヴューに対して。「彼女のティームは完全に活性化されており、電話は鳴り響き、電子メールのやり取りは爆発的に増加しており、この事態は順調に進んでいる。これはロケット・シップのように飛び立った」と述べた。

会話の感想を尋ねられ、ハフマンは「さあ、反撃開始だ(Let’s roll)」と答えた。

バイデンがもはや党の指名を求めないと発表したことを受け、ハリスが初期の大統領選挙活動を加速させようとしている中で、連邦議事堂での活発な全面的活動(full-court press)が行われた。

バイデンは、先月の討論会での悲惨なパフォーマンスをしたことで、懸念が高まる中、民主党から出馬の決断を再考するよう圧力が強まっていた。バイデン大統領は当初、自ら撤退はしないと一貫して反抗的だったが、日曜日に態度を翻し、ハリスの候補者指名を即座に支持した。

バイデン大統領はXへの投稿の中で、「2020年の民主党大統領選挙候補者としての私の最初の決断は、カマラ・ハリスを副大統領候補に選ぶことだった。そして、これは、私にとって最良の決断だった。今日、私はカマラが今年の民主党の候補者となることに全面的な支持を表明したい」と述べた。

ハリスはバイデンからの支持を歓迎し、声明で次のように述べている。「大統領の支持を得られたことは光栄なことであり、私の意図はこの指名を得て、勝ち取ることだ」。

今回の件に詳しい複数の関係者によると、ハリスはここ数カ月と同様、強行軍の遊説スケジュールを維持するとみられる。「AAPI勝利基金」、「コレクティヴPAC」、「ラティーノ勝利基金」などの主要な民主党PACは日曜日にハリス支持を表明しており、バイデン選挙運動のインフラはハリス支持に軸足を移している。

ハリスの支持拡大に向けた全速力の疾走(sprint)は、シカゴで開催される民主党全国大会まで1カ月を切った時点で始まっている。民主党所属の連邦議員の多くがハリスを指名候補として支持しているが、一部の主要人物は判断を保留している。ナンシー・ペロシ元連邦下院議長(カリフォルニア州選出、民主党)、チャック・シューマー連邦上院多数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)、ハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)、オバマ前大統領はいずれもバイデン氏を称賛したが、ハリス氏を支持するまでには至らなかった。このことに驚いている人たちもいる。

今後の道筋は依然として不透明なままだ。民主党全国委員会のジェイミー・ハリソン委員長は日曜日、「党は今後数日以内に、11月にドナルド・トランプを倒すことができる候補者とともに、団結した民主党として前進するための透明性があり、かつ秩序あるプロセス(transparent and orderly process)に着手する」と述べた。

ハリソンは続けて、「このプロセスは党の確立された規則と手順によって管理される。私たちの代議員は、候補者をアメリカ国民に迅速に示す責任を真剣に受け止める用意がある」と述べた。

ジャヤパルは日曜日、ハリスとの電話で「あなたが大統領になることを1000%確信している!」と伝えたと述べた。

ジャヤパルは続けて、「彼女は、11月に私たちを勝利に導く知性、経験、実績を持っている、そして、解決すべき課題を分かっている。さあ行こう!」と述べた。

バラガンもその意見に繰り返し、Xで次のように投稿した。「副大統領と話し合って、私は全力で取り組むと繰り返し述べた」。

「今日から、私と一緒にカマラ・ハリス副大統領を寄付で支援してください!」とバラガンは付け加えた。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカの有名なシンクタンクである、アメリカ・エンタープライズ研究所から「台湾とコントロールするための中国の3つの方途(China’s Three Roads to Controlling Taiwan)」という報告書が出たのは2023年3月13日だった。
下記アドレスから見ることができる。
https://www.aei.org/research-products/report/chinas-three-roads-to-controlling-taiwan/

 そして、今年5月に『ザ・ヒル』誌にその内容の概略が、報告書の著者であるダン・ブルーメンソールとフレッド・ケーガンによって論稿として発表された。ブルーメンソールは中国専門家として知られ、国務省に勤務した経験を持つ。フレッド・ケーガンは、アメリカのネオコン派の「名家」ケーガン一族に属しており、兄はロバート・ケーガン、義姉は、ヴィクトリア・ヌーランド前国務次官、妻は戦争研究所(Institute for the Study of War)の所長を務めるキンバリー・ケーガンである。フレッドは、2007年のイラクへのアメリカ軍増派作戦(「大波」計画[Surge Plan])の立案者として知られる。アメリカを戦争の泥沼に引き入れた一族の一員だ。

 この報告書の内容は、「中国は武力侵攻などしなくても台湾統一を実現できるということに今気づいた。アメリカは非武力的な方法にも注意をしなくてはいけない」というものだ。

 私は拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』や『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』、このブログで、散々、「中国は台湾に侵攻しなくても統一できるし、現状は既にぴったりとくっついていて、両岸関係は緊密だ」と書いてきた。中国が武力で台湾に侵攻することなど書いてきた。「台湾有事だ」「ウクライナの次は台湾だ」「日本はアメリカと一緒になって台湾防衛のために中国と戦う」といったお勇ましい言論は、為にする言論であって、日本にとって害悪だ。

 私が不思議に思っているのは、昨年に発表した報告書の内容を今年になって論説にまとめて発表したことだ。どうしてこんなことをするのだろうかと考えて、私なりの答えにたどり着いた。それは、彼らの飯の種を何とか確保するということだ。現在のアメリカh、ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争の2つに注目が集まり、お金を出す出さないでお重めしてきた。しかし、共和党系のネオコン派や民主党系の人道的介入主義派の主敵は、中国である。ウクライナ戦争もパレスティナ紛争も先行きが見えない現状では、中国のために割くエネルギーは残っていない。それでは、この人たちは困るのだ。

 だから、バイデンが中国製の電気自動車に100%の関税をかけると発表した時期に、「中国も大変なんだよ」というアピールをするということだ。何とも迷惑な話である。

 中国はアメリカの衰退という大きな政界史的転換期の動乱を乗り越えようとしている。しかし、それが過ぎて安定期に入り、世界覇権国になっていく時期には、少しずつ、自由化や民主化を行っていくだろう。それはしかしまだ10年単位で先の話である。そして、台湾をゆっくりと中国に近づけさせていきながら、中国国内の制度も変更していき、台湾の人々が統一を選べるようにしていくだろう。そこにアメリカが付け入るスキはないし、アメリカが介入して良い問題でもない。もっとも、その頃にはアメリカは力を失っているだろう。

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台湾統一を実現するために中国は侵攻する必要はない(China doesn’t need to invade to achieve Taiwanese unification

ダン・ブルーメンソール、フレッド・ケーガン筆

2024年5月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/4657439-china-doesnt-need-to-invade-to-achieve-taiwanese-unification/

アメリカは第二次世界大戦後、最も厳しい国際安全保障環境に直面している。

戦争が続いており、中東においても拡大する恐れがあるにもかかわらず、ウクライナ戦争は激化している。一方、中華人民共和国は近隣諸国への嫌がらせと威嚇を続けており、アメリカ政府は台湾に対する中国の攻撃の脅威をより強く認識している。

台湾の安全保障への関心が高まるのは歓迎されることだが、現在の言論は、中国による台湾侵攻の脅威に焦点を当てすぎている。北京には、台湾に対する現在進行中のハイブリッド戦争作戦(hybrid warfare campaign)をエスカレートさせるなど、侵攻という手段を取らずに統一を強制する他の選択肢がまだある。アメリカの政策は、そのような戦略を抑止したり打ち負かしたりするようには設計されていない。

中国は、主に次の3つの理由により、台湾侵攻よりも限定的な運動行動(limited kinetic action)を伴う政治的・経済的戦争を中心とした、私たちが「戦争に至らない強制作戦(short of war coercion campaign)」と呼ぶ作戦を追求する可能性が高い。

第一に、戦争ではない手段で台湾を併合すれば、中国の他の大戦略目標(Chinese grand strategic objectives)にダメージを与える可能性を大幅に抑えることができる。中華人民共和国の長期的な戦略目標は、包括的な国力を構築し続け、世界を主導する超大国になることだ。そして、国際政治秩序を決定的に再編成し、自らをその中心に据えることを目指している。中国の国家最高指導者の習近平は、台湾を大陸と統一することがこの大戦略の重要な要素であると考えていることは明らかだが、本格的な、そしておそらく、世界規模の戦争を始めることで、中国の地政学的支配への歩みを危険に晒すことを嫌っているのかもしれない。

第二に、政治戦(political warfare)と限定的な運動行動を中心とした、戦争に至らない戦略が成功する可能性がある。台湾の直近の選挙では、国内の政治的分裂が浮き彫りになり、アメリカの支持に対する懐疑的な見方が高まった。このような感情は、台湾が国際的に孤立しているという事実によって更に強化されている。台湾の地位は国際問題において特異なもの(sui generis)であり、世界の諸大国に承認されていない、完全に機能する国民国家(nation-state)である。このことは、台湾の見捨てられてしまうという、理解できる恐怖を中国が操る隙を生み出す。

第三に、戦争に至らない戦略は、中国の戦略的思考とこれまでの行動と一致している。中国の戦闘コンセプトの中には、伝統的な運動論的武力の行使を超える手段を用いて戦争を戦うことの有用性に言及しているものが数多くある。これらのコンセプトは、南シナ海や東シナ海、台湾海峡における中国の「グレーゾーン作戦(gray zone operations)」において定期的に採用されてきた。一般的な成功例からすると、中国は台湾併合作戦において、これらの手段の採用を強化する可能性が高い。

私たちの新しい報告書は、北京が現実的にそのような戦略を達成できることを示している。中国の戦略立案者たちの考え方を採用することで、私たちは、中国が侵略や明白な軍事封鎖(overt military blockade)を行うことなく台湾に対する政治的支配を確立できるような、実現の高い戦争に至らない強制作戦を考案した。

私たちがモデルとした作戦は、台湾の新総統の就任からその一期目までの4年間にわたって実施された。この期間中、中国は米台関係を破壊し、台湾政府の統治能力を低下させ、台湾の抵抗意志(Taiwanese will to resist)とアメリカの台湾支援の意欲を著しく損なうだろう。

私たちは、4年間にわたる絶え間ない中国の空軍および海軍の侵攻、準封鎖(quasi-blockade)、政治戦と工作(political warfare and manipulation)、台湾の重要インフラに対する大規模なサイバーおよび物理的破壊行為(extensive cyber and physical sabotage of Taiwan’s critical infrastructure)、および沖合の島々への致命的な武力が、台湾政府内で「認知的過負荷(cognitive overload)」を引き起こし、台湾国民全体が混乱を感じるようになっている。

このような作戦の過程で、アメリカは中国の情報戦(information warfare)に晒され、特に中国との新たな経済協定の後、台湾は戦争をする「価値がない(not “worth”)」と確信するようになるだろう。アメリカの対応を麻痺させる中国の能力に懐疑的な人々は、2015年以来、ウクライナをめぐるNATOとの決裂につながりかけたロシアの対アメリカ政治戦争に注目していない。特に、中国による苦痛を与える作戦が、アメリカが準備している侵攻の兆候や警告を何ら引き起こさないのであれば、アメリカは中国の強制的な作戦には参加しない可能性が高い。

私たちが想定している作戦では、台湾が混乱に陥り、最強の同盟国から見捨てられたように見えるということになる。中国は「和平(peace)」を申し出る機会を捉え、北京が指示するガイドラインに従って協力する代わりに、強制的な作戦を停止し、ある程度の自治を保証することを約束する。

そして、台湾政府は中国の一部になることを望んでいないにもかかわらず、最終的には中国の望む統一につながるであろう計画に同意することで、国民の苦しみを終わらせることを選択する。

私たちの報告書に概説されているシナリオは、私たちが必然的に起こると考えていることの評価を表している訳ではない。むしろ、戦争による強制という短時間のシナリオが現実的であり、非常に危険であることを示そうとしている。

このような戦略を阻止するために、アメリカ、台湾、そして地域の同盟諸国が取るべき手段はいくつかある。これらの政府は、国際法の下での台湾の主権的権利(Taiwan’s sovereign rights)を明確に示すことから始めなければならない。そうすることで、封鎖や船舶検査体制(shipping inspections regimes)を「内政問題(internal matters)」として正当化する中国の法律戦作戦(lawfare campaigns)に対抗することができる。

台湾とアメリカの両政府は、台湾の対干渉・対破壊工作の法的権限と能力(Taiwan’s counter-influence and anti-subversion legal authorities and capabilities)を向上させるためにも協力すべきである。この協力は、台湾が封鎖や封鎖に類似した経済活動に耐えられるようにするための、より広範な取り組みにも及ぶべきである。

最後に、アメリカ主導の連合は、中国の軍事的威嚇努力を阻止するために政治的、経済的コストを課すべきである。例えば、現在の台湾海峡での中国の空軍侵攻に対する回答は、台湾と国際社会との間の民間航空協力の拡大と、地域の防空体制への台湾の統合の両方であるべきである。

中国政府は、進行中の「グレーゾーン(gray zone)」作戦を強化するなど、台湾の支配を成功させるための多くの方法を持っている。中国は、台湾社会に多大な苦痛を与え、アメリカの介入(U.S. intervention)を阻止するための、戦争強制以外の組織的な作戦において、主に台湾の国際的孤立(Taiwan’s international isolation)と同盟関係の欠如(lack of alliance relations)といった台湾の脆弱性(Taiwanese vulnerabilities)を利用しようとする可能性がある。

中国が威圧的な取り組みを強化しそうな手段に焦点を当てることで、アメリカはそれを克服することができる。

※ダン・ブルーメンソール:アメリカ・エンタープライズ研究所上級研究員。
※フレッド・ケーガン:アメリカ・エンタープライズ研究所クリティカル・スレッツ・プロジェクト部門部長。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

 アメリカは外交政策において、インド太平洋(Indo-Pacific)という地域概念を持ち出して、中国とロシアを封じ込めようとしている。これはバラク・オバマ政権時代のヒラリー・クリントン国務長官から顕著になっている。「アジアへの軸足移動(Pivot to Asia)」という概念と合わせて、アメリカの外交政策の基盤となっている。

 インド太平洋から遠く離れたヨーロッパ諸国がインド太平洋でプレイヤーとなろう、重要な役割を果たそうという動きを見せている。国際連合(the United NationsUN、正確には連合国)の常任理事国であり、空母を備える海軍を持つイギリスとフランスを始めとして、オランダ、ドイツなどの小規模な海軍国が艦船をインド太平洋地域に派遣している。昨年には、NATOの東京事務所開設という話が出て、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の反対によって、いったん白紙となった。ヨーロッパから遠く離れたインド洋、太平洋地域でヨーロッパが全体として役割を果たそう、プレイヤーになろうという動きが高まっている。
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 ヨーロッパ側の主張、理由付けは、インド太平洋地域の航行の自由を守ることが、自分たちの貿易を守ることにつながるというものだ。これは、中国の存在を念頭に置いて、中国が航行の自由を阻害するという「被害妄想」でしかない。その「被害妄想」を理由にして、何もないインド太平洋地域にまで艦船を送るというのはご苦労なことである。

 ヨーロッパがインド太平洋地域において役割を果たすというのは、アメリカの手助けをするという理由もある。アメリカが中国と対峙している地域であり、ここでアメリカを助けることが必要だということである。更に言えば、アメリカの要求によって、ヨーロッパ各国は国防費の大幅増額、倍増を求められているが、艦船を派遣することで、「取り敢えず頑張っています」という姿勢を見せることで、少しでもこうした動きを和らげようということであろう。

 しかしながら、ヨーロッパはまず自分の近隣地域の平和な状況を作り出すことを優先すべきだ。ユーロピアン・アイソレイショニズム(European Isolationism、地域問題解決優先主義)を採用すべきだ。ロシアとの平和共存を目指し、ロシアの近隣諸国の中立化(武装解除ではない)を行い、ロシアとの関係を深化させることで、相互依存関係(interdependency)を構築し、戦争が起きる可能性を引き下げることだ。

 落語などでもよく使われる表現に「自分の頭の上のハエも追えない癖に、人様の世話ばかりしやがって」というものがある。ヨーロッパはまず、自分の近隣地域の安全も実現できていないのに、他人様の家にずかずか入り込んでくるものではない。まさに「何用あってインド太平洋へ」である。

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ヨーロッパはインド太平洋のプレイヤーになりたいと考えている(Europe Yearns to Be an Indo-Pacific Player

-ヨーロッパ地域で戦争が続いているが、ヨーロッパの戦略的・海軍的な願望は世界の裏側にある。

キース・ジョンソン筆

2024年3月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/19/europe-navy-indo-pacific-strategy-maritime-security/

地政学的なアイデンティティを探し続けた年月を経て、ヨーロッパは国際関係において最も争いが頻発している分野でより大きなプレイヤーになることを目指し始めている。ヨーロッパが目指しているのはアジア地域を含む海洋安全保障分野(maritime security)での主要なプレイヤーである。

長年にわたる貧弱な国防費とハードパワーへの嫌悪感から立ち直り、ヨーロッパ全体、そしてヨーロッパの主要国の多くは、身近なところから地球の裏側まで、海洋安全保障への関心を急速に高めている。それは、ブリュッセル、パリ、ロンドンから矢継ぎ早に発表される野心的な戦略文書だけでなく、ヨーロッパ諸国の小さいながらも有能な海軍が、より多くの場所で、より多くのことを行い、争いの絶えない水路を確保し、自由航行と世界的なルールの尊重を取り戻すために、配備を拡大していることからも明らかである。

ヨーロッパの海軍は既にイエメンからのフーシ派ミサイル攻撃に対抗するために紅海で任務遂行をしており、ますます多くのヨーロッパのフリゲート艦や航空母艦が、大陸全体でのより大規模で広範囲にわたる責任への移行の一環として太平洋を巡行している。

10年ほど前の地中海での海上警備活動から始まったヨーロッパ連合(European UnionEU)の活動は、現在ではインド洋を含むさらに遠方への野心的な展開へと広がっている。先月、ヨーロッパ連合は紅海、ペルシャ湾、アラビア海で航路を確保するための海軍作戦を開始したばかりだが、これは同じ海域でより好戦的な米英の作戦とは別のものだ。

ウクライナでの大規模な陸上戦争が3年目を迎えている現在でも、ヨーロッパはインド太平洋の安全保障においてより大きな役割を果たすことにますます真剣になっている。ヨーロッパ連合はインド太平洋戦略と、この地域に改めて重点を置く新たな海洋安全保障戦略の両方を掲げている。

ブリストル大学の海軍専門家であるティモシー・エドマンズは、「ヨーロッパ連合の最新の海洋安全保障戦略で印象的なのは、海洋における国家間の紛争や対立の重要性と、そして政治的ダイナミクスの変化を認識し、本格的な転換を図ろうとしていることだ。特にインド太平洋地域とその中でのヨーロッパ連合の役割がそうだ」と述べている。

個々の国もまた、この活動に参加している。イギリスはアジアへの「傾斜(tilt)」を更に強化しようとしている。ヨーロッパ連合加盟国で唯一インド太平洋に領有権を持つフランスは、中国の台頭とバランスを取り、フランスとヨーロッパの重要な経済的利益を守るため、インド太平洋地域における海軍と外交のプレゼンス強化に全力を挙げている。ドイツやオランダのような中堅の地政学的プレイヤーでさえ、インド太平洋戦略を持っている。イギリス、フランス、その他いくつかのヨーロッパ諸国は、遠く離れた太平洋の海域に艦船を置いて、その願望をバックアップしている。

フランス国際関係研究所の軍事部門の研究員ジェレミー・バシュリエは、「インド太平洋における安全保障環境の悪化は、フランスとヨーロッパの利益に重大な脅威をもたらしている。インド太平洋における抑止力と軍事的対応努力は主にアメリカに依存しているが、ヨーロッパ連合加盟諸国は今や、台湾海峡、北朝鮮、南シナ海における危機や紛争など、この地域における危機や紛争の世界的影響を十分に理解しなければならない」と述べている。

ウクライナ戦争は、ヨーロッパの関心と武器を吸収した。それでもなお、ヨーロッパの東方シフト(European shift to the east)は続いており、その勢いは増している。それは、ウクライナ戦争がヨーロッパにとって紛争の真のリスク、特に世界の多くの国々と同様にヨーロッパが依存している世界貿易とエネルギーの流れの要であるインド太平洋における紛争の真のリスクについて警鐘を鳴らしたからでもある。

ハーグ戦略研究センターのポール・ファン・フフトは「インド太平洋地域におけるヨーロッパの存在感を高めようという意図は、ヨーロッパでの戦争にもかかわらず、まだ生き続けている。ウクライナ戦争がなければ、資源を確保するのは簡単ことだろうが、その一方で、今は新たな深刻な問題が出ている」と述べている。ヨーロッパのアジアへの軸足移動(The European pivot to Asia)が注目されるのは、フランスとおそらくイギリスを除けば、ヨーロッパ諸国がもともとインド太平洋地域のプレイヤーではないからだ。しかし、フランスとイギリスの空母に加え、ドイツ、イタリア、オランダの小型水上艦船がこの地域に派遣されている

ヨーロッパが、目の前に多くの課題があるにもかかわらず、地球半周分も離れた地域の争いに力を入れている理由はいくつかある。それらは、攻撃的な中国の台頭、商業とエネルギーの自由な流れを保護する必要性、そして、アメリカが、旧大陸が今後数十年間に形成されつつある重大な安全保障上の諸問題において、さらに前進し、主要な役割を果たすことができるという願望である。

長年にわたり、ヨーロッパは中国との間でバランスを取ろうと努め、中国からの投資を歓迎する一方で、北京に対するワシントンの好戦的な姿勢をますます強めていることから距離を置いてきた。しかし、中国による略奪的な貿易や経済慣行、南シナ海での威圧、太平洋における自由航行への脅威、そして台湾併合というあからさまな計画の組み合わせは、今やヨーロッパを、より明確なアプローチへと押しやっている。

前述のティモシー・エドマンズ「中国との関係の方向性は、ヨーロッパ連合全体で変化している。海外投資(foreign investment)であれ、一帯一路構想(the Belt and Road Initiative)であれ、太平洋での活動であれ、中国の破壊的な役割がますます認識されるようになっている。それらの国々の目からは日々鱗が剥がれ続けている状況だ」と語った。

オランダのような中堅諸国は、インド太平洋における自国の将来を、戦争に参加して実際に戦う海軍国としてではなく、むしろ投資、能力開発、安全保障支援を活用して、アジア諸国を中国の支配に対する防波堤となりうるより広範なグループへと呼び込むことができる外交国になるようにと考えている。ファン・フフトは「私たちにできることは、パートナー諸国に対して、“私たちは本当に気にかけているが、支援は別の形でなければならない”と伝えることだ」と述べている。

エマニュエル・マクロン大統領の下、フランスは長年にわたり、多くの人がバランシング姿勢とみなすものを追求しようとしてきたが、インド太平洋で何が起こるかについて、より現実的な見方にますます傾いている、と前述のジェレミー・バシュリエは述べている。「フランス政府は、アメリカ、インド、日本、オーストラリアで構成されるクアッド(Quad)のようなグループにはまだ正式に参加していないが、インドとのラ・ペルーズ海軍演習のような、考えを同じくする国々と以前よりも多くの演習に参加している」とバシュリエは語っている。

台湾や西太平洋をめぐる潜在的な紛争だけでなく、フランスやその他のヨーロッパ諸国が特に懸念しているのは、自由航行(free navigation)やエネルギーなどの重要物資の自由な流れ(free flow)に対する脅威である。これは、紅海における数ヶ月に及ぶフーシ派の活動や、イランによるホルムズ海峡閉鎖の威嚇によって浮き彫りにされ、世界有数の輸送量を誇る航路を自分専用の湖(a private lake)に変えようとする中国の明白な意志によって強調されている。このことは、海洋法を守り、自国の近くだけでなく、ヨーロッパに影響を及ぼすあらゆる場所で海運を保護したいというヨーロッパ共通の願望につながる。

ファン・フフトは「航路がますます攻撃に対して脆弱になっていることは誰の目にも明らかであり、海洋安全保障の関心は必然的にインド太平洋へと移行しつつある。依存関係(dependencies)を考えれば、航路を確保するという問題を無視することはできない」と語っている。

海洋での取り組みを拡大するというヨーロッパの取り組みは、アジアのパートナー諸国や潜在的なライヴァルだけでなく、アメリカにもメッセージを送っている。数十年とは言わないまでも、何年もの間、米政府はヨーロッパのNATO加盟諸国に防衛費を増額する必要性について説得しており、遅ればせながら、増額を始めている国もある。しかし専門家たちは、特にヨーロッパの近隣地域と、それを遠く越えた地域での海洋安全保障能力の強化は、ヨーロッパ全体がアメリカに真の支援を提供できる分野の1つであると主張している。

これには紅海やホルムズ海峡でのヨーロッパ諸国の任務のような巡回活動が含まれるが、米空母打撃群の長期間の派遣を具体化するためのヨーロッパ諸国からの水上艦艇の定期派遣も含まれる。

ファン・フフトは「これらの任務は全て、大国ではない国の海軍でも役割を果たすことができる、非常に具体的な方法である」と述べている。

しかし、より正確には、どのような役割となるのだろうか? ヨーロッパで最も強力な2つの海軍、イギリス海軍とフランス海軍は、合わせて3隻の中規模空母と40数隻の主要な水上艦艇を保有している。アメリカ海軍は、太平洋艦隊だけでも常時それ以上の数を保有している。イタリア、スペイン、ドイツ、オランダといった国々のより小規模な海軍は、ほとんどが小型のフリゲート艦と一握りの水陸両用艦で構成されている。それでも、フランスとイギリスの空母は、他のヨーロッパ諸国の艦船に護衛されながら、今年後半から来年にかけてインド太平洋に向かう予定であり、どちらもアメリカ軍との相互運用性(interoperable with U.S. forces)を高めるための訓練を受けている。

しかし、だからといって、台湾や南シナ海をめぐって太平洋戦争が勃発した場合、ヨーロッパの軍艦がアメリカやパートナー諸国の海軍を直接支援できるかというと、そうではないとバシュリエは主張している。ヨーロッパ北西部から南シナ海までは到着までに約2週間かかり、南シナ海での後方支援もないため、ヨーロッパの海軍はたとえその意志があったとしても、紛争が起きた場合に大きな役割を果たすことは難しいだろう。

より間接的ではあるが、アジアの海洋環境を形成する上で最終的により有益な役割は、もう少し身近なところで果たせるかもしれない。紅海やインド洋西部で既に海賊やテロリストに対する活動を開始しているヨーロッパ諸国の海軍は、シーレーン保護(sea lane protection)の任務を全面的に担うことができ、アメリカとそのパートナー諸国海軍は太平洋に集中することができる。

バシュリエは「アジアで紛争が発生した場合、ヨーロッパはおそらく、海上交通の安全保障と管理を確保し、スエズ運河とマラッカ海峡の間の“後方基地(rear bases)”を監視しなければならなくなるだろう」と語っている。

バシュリエは更に「バブ・エル・マンデブ海峡からベンガル湾のマラッカ海峡の開口部までの範囲で活動するヨーロッパの海軍は、ヨーロッパのエネルギー権益を維持しつつ、北京の戦略的供給を制約することができる」とも述べている。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌記者(地経学・エネルギー担当)。ツイッターアカウント:@KFJ_FP

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