古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ビジネス社

 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。
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ダン・ドリスコル

 最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)でも取り上げ、このブログでも紹介したが、ダン・ドリスコル陸軍長官は第二次ドナルド・トランプ政権の「新・軍産複合体」寄りの人事の代表格だ。更に言えば、2028年の大統領選挙で、JD・ヴァンス副大統領が大統領になる場合には、重要なポストに就くことになるだろう。なぜなら、ヴァンスとドリスコルは非常に緊密な関係を持っているからだ。彼らは、イェール大学法科大学院の同級生であり、ドリスコルはヴァンスの連邦上院銀時代に補佐官を務めた。2人は地方の州立大学出身、軍務に就いた経験という共通点もある。アメリカ政治に興味関心がある人はドリスコルについてこれから記憶し、注目しておくのも良いだろう。

(貼り付けはじめ)

陸軍長官候補が承認公聴会でドローン、採用活動、そして合法的な命令について語った(Army secretary nominee talks drones, recruiting, and lawful orders at confirmation hearing

-ダン・ドリスコルは連邦上院軍事委員会から超党派の支持を得ている。

ミーガン・マイヤーズ筆

2025年1月30日

『ディフェンス・ワン』誌

https://www.defenseone.com/policy/2025/01/army-secretary-nominee-talks-drones-recruiting-and-lawful-orders-confirmation-hearing/402627/

ダン・ドリスコルは木曜日、ドナルド・トランプ大統領の陸軍長官候補として連邦上院軍事委員会に出席するまで、JD・ヴァンス副大統領の友人であり、法科大学院の同級生であるということ以外、公にはほとんど知られていなかった。それでも、陸軍中尉から実業家に転身したドリスコルは、承認公聴会を華々しく通過することができた。

民主、共和両党の連邦上院議員たちは、38歳のドリスコルが公聴会前に議員事務所で面会する時間を割いてくれたことに感謝の意を表した。

その1人であるリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)は、息子がドリスコルと同じ時期にイェール大学法科大学院に通っていたことから、公聴会の冒頭で候補者への支持表明を読み上げた。

ブルーメンソールは、「弁護士として、私たちは事実と法律に従う。ダン・ドリスコルは陸軍長官としてまさにそれを実行するだろう」と述べた。

ブルーメンソールは、息子と、ジョー・バイデン大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官で、ドリスコル氏のイェール大学同級生でもあるジェイク・サリヴァンが、「ドリスコルは人々の声に耳を傾け、学び、超党派で協力し、兵士を第一に考える人物だと確信していた」と述べた。

質疑応答で、ドリスコルは陸軍の現行防空システム(the service’s current air defense systems)の費用対効果の悪さを指摘し、陸軍によるドローンの活用拡大への支持を表明した。

ドリスコルは、「400ドルのドローンを撃墜するために、400万ドルのミサイルを発射することはもはや不可能だ。そんな単純な計算は不可能だ。「指向性エネルギー(directed energy)であろうと何であろうと、費用対効果の高い方法で安全保障を提供できる解決策を見つけなければならない」。

ドリスコルはまた、陸軍に対し、採用ボーナスや復員兵給付金(GI法)といった福利厚生以外にも、軍隊が提供できるものについて、アメリカ国民への情報発信を強化するよう強く求めた。

ドリスコルは次のように述べた。「私は祖国に奉仕したいという思いから陸軍に入隊した」と彼は述べた。若い人たちは、私たちがこの物語を再び説得力のある形で伝えるのを心待ちにしていると思う。もし承認されれば、皆さんと共にこの物語を伝えていくことを楽しみにしている」。

公聴会のトーンと雰囲気は、2週間前のピート・ヘグゼス国防長官の証言とは大きく異なっていた。両候補者とも組織管理の経験は限られているが、ドリスコルは個人的または職務上の不正行為で公に告発されたことはない。

記録によると、彼は2007年から2011年まで、第10山岳師団の騎兵偵察小隊長として陸軍に勤務し、2009年にはイラクに派遣された。

その後、イェール大学ロースクールに進学し、その後投資銀行家として働いた。彼はまた、2020年の共和党連邦下院議員予備選に出馬し、トランプ大統領の大統領首席補佐官に就任したマーク・メドウズの後に空席なった議席を狙ったが落選した。

しかし、ヘグセスと同様に、ドリスコルも違法な命令を実行する意思があるかどうかについて疑問視された。

過去にトランプは、ワシントンDCでの平和的な抗議活動を鎮圧するために戒厳令を発令し、第82空挺師団を派遣することや、抗議活動参加者の膝を撃つことを示唆した。これは、マーク・エスパー元国防長官が2022年に出版した回顧録で詳述している。

ドリスコルは、タミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)に、「上院議員、彼が[違法な命令を]発令するだろうという質問の前提は否定するが、私は違法な命令に従わない。私は合法的な命令、それも憲法に則った命令のみに従う」と答えた。

連邦上院軍事委員会は、ドリスコルの指名を承認するかどうかの採決をいつ行うかまだ発表しておらず、その後、連邦上院本会議で採決が行われる予定だ。

(貼り付けはじめ)

(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 


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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 2025年11月21日に
(ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

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スティーヴン・フェインバーグ

 第二次ドナルド・トランプ政権の国防総省の実質的な管理者である国務副長官のスティーヴン・フェインバーグは、トランプ人事である。フェインバーグは、日本でも有名な投資会社サーベラス・キャピタル・マネジメント社の創設者であり、CEOを務めていた。サーベラスの経営者時代に、軍事関連のテック企業に多額の投資を行っていた。このトランプ人事もまた、これまでの軍産複合体の動きをけん制する動きということも言えるだろう。

(貼り付けはじめ)

不正な軍事作戦に関与した億万長者が国防総省次期副長官に指名される可能性(Billionaire tied to shady military ops could be no. 2 Pentagon pick

-スティーヴン・フェインバーグの防衛投資にはカショギ殺害犯のサウジアラビア人訓練を行った企業も含まれる。

ニック・クリーヴランド=スタウト筆

2024年12月5日

『レスポンシブル・ステイトクラフト』誌

https://responsiblestatecraft.org/stephen-feinberg/

ドナルド・トランプ次期大統領は、プライヴェートエクイティ業界の億万長者であるスティーヴン・フェインバーグ氏を国防副長官に選んだと報じられている。人事承認されれば、フェインバーグは事実上、米国防総省の最高執行責任者(COO)となり、米国防総省の日常業務を監督することになる。

地獄の門を守る三つ首の犬にちなんで名付けられたプライヴェートエクイティ会社サーベラス・キャピタル・マネジメント社(Cerberus Capital Management)の共同創業者兼CEOであるフェインバーグは、『ピッチブック』誌によると、650億ドル以上の資産を運用している。

フェインバーグはトランプへの大口献金者でもあり、2016年の大統領選挙の数日前にトランプと提携する政治活動委員会(PAC)に97万5000ドルを寄付し、2020年にはさらに100万ドルを寄付するなど、同様の偉業を成し遂げている。フェインバーグは、大統領情報諮問委員会(Intelligence Advisory Board)の委員長として、情報機関の見直しを主導する役割を担うという評価を受けた。

フェインバーグは、精力的な国防長官候補ピート・ヘグセスとは正反対の、合理的な隠遁者(logical reclusive)という立ち位置だ。ヘグセスは政敵によるスキャンダルを主張しているが、これに悩まされているフォックス・ニューズの司会者である彼は、トランプ大統領の指名候補の中で最も厳しい人事承認手続きに直面している。水曜日には、ヘグセスが共和党連邦上院議員全員の承認を得られない可能性があり、トランプ大統領が後任を探している可能性があるとの報道が浮上した。こうした状況から、米国防総省ナンバー2の地位の重要性はますます高まっている。

フェインバーグはこの比較を喜んでいるかもしれない。それは、連邦議会で彼が理にかなった選択肢に見えることを意味するかもしれない。しかし、連邦議員たちは、サウジアラビアの暗殺部隊を訓練した企業を監督し、彼が新たに長官に就任する予定の機関を欺いた経歴を精査し、防衛分野における彼の株式保有に起因する利益相反の問題を提起すべきだ。

トランプがファインバーグを指名する可能性が高まったことで、サーベラスの防衛ポートフォリオにスポットライトが当たることになる。サーベラスは防衛分野に広く網を張っており、防衛試験システム(defense test systems)、軍用機訓練(military aircraft training)、軍用車メーカー(manufacturers of military vehicles)、極超音速実験データ(hypersonic test data)、外国軍訓練(foreign military training.)に関わる各企業に多額の投資を行っている。このように広範囲に及ぶため、一部の監視組織や利益相反の専門家たちは、フェインバーグが自分の利益よりもアメリカの利益に気を配っていることを確認したがっている。

政府監視プロジェクトの国防情報センター所長、グレッグ・ウィリアムズ氏は本誌に、「私にとっての最大の懸念は、フェインバーグが慣例に倣って保有株を全て売却するかどうかだ。サーベラス・キャピタル・マネジメントのCEOを長年務めた彼にとって、それは大きな出来事となるだろう」と語った。

実際、サーベラスの投資先はほぼどこにでもある。このプライヴェートエクイティ企業のポートフォリオには、装甲車の価格をつり上げ、米海兵隊から5000万ドルをだまし取ったナビスター・ディフェンス社(Navistar Defense)が含まれている。今年初め、サーベラスはトランスディグム社(Transdigm)を買収した。トランスディグムは極超音速技術を扱う企業で、米国防総省の監察官が、あるケースでは金属ピンに対して9400%の超過利潤を得ていたことを明らかにした。

2020年に買収されるまで、サーベラスの防衛ポートフォリオの目玉は、中央アメリカの麻薬戦争に航空機を供給し、イラク、リベリア、アフガニスタンでアメリカが支援する各国の軍隊の訓練を行っていたダインコープス社(Dyncorps)だった。

おそらく最も憂慮すべきは、サーベラスの子会社であるティア1グループ社が、2018年に『ワシントン・ポスト』紙の記者ジャマル・カショギを殺害したサウジアラビアの暗殺部隊のメンバー4人を訓練していたことだ。ティア1グループは、国務省の承認を得て、カショギ殺害の前の2014年から2017年にかけて、サウジアラビア国民に対し、射撃、迎撃、監視、近接戦闘の訓練を行っていたと報じられている。

2020年、トランプ大統領はサーベラス幹部のルイス・ブレマーを米国防総省の別のポストに指名した。ブレマーの指名によって、人事承認公聴会は緊迫した状況になった。ティム・ケイン連邦上院議員(ヴェージニア州選出、民主党)はサーベラスとサウジアラビアの関与についてブレマーを厳しく追及した。ケイン議員は当時、「連邦上院議員は、ジャマル・カショギ殺害に関与したとされるサウジアラビア人を訓練する上でティア1が果たした役割について、私の質問に回答を受ける権利がある。答えが得られるまで、この指名について先に進めるのは不安だ」と述べた。

フェインバーグの指名が承認されれば、連邦議員たちも同様の疑問を投げかける可能性が高い。

アラブ世界民主政治体制協会(Democracy for the Arab World Now)のアドボカシー・ディレクターであるレイド・ジャラーは本誌とのインタヴューで次のように述べた。「トランプ次期大統領がティア1グループと関係のある人物の指名を検討していることは懸念される。これは、ジャマル・カショギ殺害と我が国の外交政策に関して、説明責任が欠如しているという憂慮すべきメッセージだ」。

「レヴォルヴィング(回転ドア)・ドア・プロジェクト」の上級部長ジェフ・ハウザーは本誌との電話会談で、フェインバーグは現在の資産をできるだけ早く売却することが期待されるものの、以前の会社に関する決定には関与しない可能性が高いと説明した。ハウザーは「米国防総省の幹部の一員として、彼が以前の会社に関する決定を下すことはほぼ避けられないだろう」と述べた。

ハウザーはまた、サーベラスの幅広い弁護ポートフォリオが、皮肉なことに、フェインバーグを利益相反の容疑からほぼ免責する可能性があると説明した。「倫理の世界では、利益相反が大きければ大きいほど、自ら忌避する必要は少なくなるという理解がある。そして、もしフェインバーグが忌避する必要が生じたとしても、ハウザーは「トランプ政権への忠誠を示すことにあらゆるインセンティヴを持つ倫理担当官から免除を得ることができる」と説明した。連邦政府職員になれば、元雇用主に関わる決定には少なくとも1年間は関与しないことが求められているが、トランプ政権は利益相反が決定の完全性に影響を与えないと判断した場合、免除を認めることができる。

2017年、フェインバーグとブラックウォーター社の創業者エリック・プリンスは、トランプ政権に対し、アフガニスタンにおけるアメリカ軍ではなく請負業者に頼るよう圧力をかけようとした。伝えられるところによると、フェインバーグはCIAに作戦の完全な管理権限を与え、準軍事組織(paramilitary units)は「軍よりも監視が緩くなる」と強調した。ちなみに、この提案は彼の企業にとって利益となるはずだった。

たとえフェインバーグが保有株を売却したとしても、根深い請負業者優先のイデオロギーから撤退することは不可能だ。

スティムソン・センターの研究員であるジュリア・グレッドヒルは、本誌への書面声明で、「国防副長官には、1兆ドル近い予算を抱える機関の財務上の決定に利害関係を持つ人物ではなく、最高レヴェルの指導者に懐疑的な人物が必要だ。軍需産業にとって、この回転ドアは回り続けている」と説明した。

レイド・ジャラーは議員たちに対し、フェインバーグが国防総省のナンバー2の職にふさわしくない理由を挙げるよう求めた。ジャラーは、「政治資金、外国政府との関係、甚だしい人権侵害、傭兵や殺し屋の訓練のいずれであっても、この指名はきっぱり拒否されるべきだ」と述べた。
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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体
 

最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。
 第二次ドナルド・トランプ政権のアメリカ軍の文民(civilian、シヴィリアン)トップは、「新・軍産複合体」寄りの人事になっている。アメリカ空軍文民トップのトロイ・メインク空軍長官は、メインクはアメリカ空軍に技術者として勤務しながら、工学博士号を取得した人物である。キャリア公判では、アメリカの偵察衛星を監督する国家偵察局(the National Reconnaissance OfficeNRO)の首席副局長を務めている。下記記事には、「メインクは、国家安全保障任務への民間宇宙企業の参加拡大に尽力していることで知られている」と書かれている。これは、スペースシャトル計画が放棄されて以降、宇宙空間への物資輸送をイーロン・マスクのスペースX社が担う中で、国家偵察局(NRO)の実質的なトップとして、メインクはスペースX社に便宜を図ってきた。メインクが空軍全体を統括する地位に就いたのは重要だ。空軍は数年前に創設された宇宙軍を統括している。
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トロイ・メインク

一方で、日本でも有名なアメリカ航空宇宙局(NASA)の長官に内定していた、ジャレッド・アイザックマンはゴタゴタがあり、長官就任に至らなかった。アイザックマンもイーロン・マスクに近い人物であり(マスクの顧客となり、スペースX社の宇宙船で宇宙空間に到達した)、順調に長官就任の手続きが進んでいたが、マスクがトランプ政権から離れて以降、長官就任に至らなかった。これは、トランプとマスクの仲違いが大きな原因となっている。
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ジャレッド・アイザックマン

これらのことは、最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)で詳しく解説している。是非、お読みいただきたい。
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独占:「極めて不適切」:防衛請負業者のマスクが空軍候補者の面接に同席(Exclusive: 'Highly inappropriate': Musk, a defense contractor, sat in on Air Force nominee's interview

-スペースX社創設者であるマスクには、数十億ドル規模の国家安全保障および防衛契約が絡んでいるため同席は重大だ。

ジョー・ゴウルド、サム・スコーヴ筆

2025年4月25日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2025/04/25/musk-meink-ethics-concerns-00309302

イーロン・マスクは、ドナルド・トランプ大統領による空軍長官候補のトロイ・メインクとの面談に同席した。メインク自身の連邦議会への情報開示によると、これは極めて異例の行動であり、選考プロセスにおけるマスクの関与について深刻な利益相反(conflict of interest)の懸念が生じている。

これまで公表されていなかったこの詳細は、メインクが連邦上院軍事委員会に提出した書面による回答に記載されており、『ポリティコ』誌が入手した。

この情報開示は、スペースXCEOとして数十億ドル規模の国家安全保障・防衛契約を握っているマスクにとって重要な意味を持つ。これには、米国防総省の打ち上げ契約、衛星システム、そしてトランプ大統領が提案した「ゴールデンドーム(Golden Dome)」と呼ばれるミサイル防衛システムが含まれる。

しかし、空軍高官の人事決定へのマスクの関与は、億万長者の起業家であるマスクの政治的影響力の新たなレヴェルを示すものであり、契約を監督する機関の指導的決定に請負業者が影響を与えることを阻む倫理規範に違反する可能性がある。

メインクは、2024年12月のインタヴューで、マスクは「同席した大勢の出席者の1人」だったが、「私に質問をしたのは大統領だけだった」と述べている。マスクに支援を求めたことも、マスクから支援を求められたこともないとメインクは述べている。

メインクは「私は、現在の職務遂行における職業上の関係以外、スペースXやマスクとは何の関係もない」と述べた。

メインクはキャリア公務員であり、アメリカの偵察衛星を監督する国家偵察局(the National Reconnaissance OfficeNRO)の首席副局長を務めている。メインクは、国家安全保障任務への民間宇宙企業の参加拡大に尽力していることで知られている。このアプローチは、スペースXのような非伝統的な請負業者を重視するトランプ政権の姿勢と合致している。

倫理専門家たちは、マスクの出席は一線を越えたと警告している。

ジョージ・W・ブッシュ大統領の下でホワイトハウス倫理担当主任弁護士を務めたリチャード・ペインターは次のように述べた。「米国防総省の幹部人事に軍事請負業者が協力するなど、このようなことはかつて見たことがない。もしマスクがメインクの人事に加担したのであれば、メインクはマスクの企業に関わるあらゆる業務から身を引くべきだ」。

超党派の監視団体「政府監視プロジェクト」のダニエル・ブライアンは、今回の件はマスクの企業が獲得する可能性のある空軍との契約に暗い影を落とすだろうと述べた。

ブライアンは次のように述べた。「交渉に参加する企業が増えるのは良いことだ。問題は、スペースXが本当にこれらの契約を獲得したのか、それともマスクのソフトな政治力(soft political power)、率直に言って、それほどソフトではない、が勝敗を左右しているのか、判断できないことだ」。

国家偵察局(NRO)はホワイトハウスに質問を回した。ハリソン・フィールズ報道官はこの批判を否定した。

フィールズ報道官は、「トロイ・メインクを起用するという決定は、誰からも独立して行われ、最終決定権はトランプ大統領にあり、トランプ大統領のみに委ねられた。それ以外の主張は、単なるセンセーショナルなジャーナリズムに過ぎない」と述べた。

マスクはコメント要請に応じなかった。

連邦上院は早ければ来週にもメインクの指名を審議する見込みだ。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、メインクの承認にはさらなる精査が必要だと主張している。

ウォーレンは声明の中で、「マスクがメインクの面接に同席したことは非常に不適切であり、マスクがメインクを選んだのか、もしそうならなぜなのか、疑問が残る。特に、何十億ドルもの税金を彼に渡す権限を持つのであればなおさらだ」と述べた。

ロイター通信は以前、ウォーレンとタミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)が、2021年の機密衛星契約の要件をスペースXに有利になるようメインクが調整したのではないかと疑問を呈したと報じたが、メインクはこの主張を否定している。

マスクの影響力に関する懸念はメインクに限ったことではない。NASA長官に指名されたジャレッド・アイザックマンは、スペースXで飛行経験があり、火星到達というマスクの野望を共有する億万長者の起業家だが、マスクとのつながりについての疑問にも直面している。

アイザックマンは、木曜日に発表された連邦上院商業委員会への回答書の中で、トランプ当選以降、マスクとNASAのビジネスについて話し合ったことはないと述べ、マスクとの親密な関係を否定した。マスクとは2024年末にマーアラゴで、アイザックマンが 「トランプ政権をヴォランティアで支援する」可能性について少し話したことは確認した。

アイザックマンは、トランプがアイザックマンの就職面接を主導したことを強調し、マスクが彼にNASAの仕事をオファーするために電話をかけたという『ウォールストリート・ジャーナル』紙の報道は「全くの虚偽(entirely false)」だと述べた。その他の詳細はほとんど語られなかった。

「私に質問し、最終的に機会を与えてくれたのは大統領自身だった」とアイザックマンは語った。
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メインクとアイザックマンの指名におけるマスクの役割の可能性は依然として懸念材料になっている(Musk’s Possible Role in Meink, Isaacman Nominations Continues to Raise Concerns

マルシア・スミス筆

2025年4月26日

『スペース・ポリシー・オンライン』誌

https://spacepolicyonline.com/news/musks-possible-role-in-meink-isaacman-nominations-continues-to-raise-concerns/

ドナルド・トランプ大統領が空軍長官に指名したトロイ・メインクは、連邦上院軍事委員会に対し、スペースXCEOのイーロン・マスクがトランプ大統領との面接に同席していたと証言したと報じられている。スペースXは、米宇宙軍を統括する空軍省と数十億ドル規模の契約を結んでいるため、この事実は利益相反(conflict of interest)の懸念を生じさせる。また、マスクがトランプ大統領とNASA長官候補のジャレッド・アイザックマンとの面接に同席していたかどうかという疑問も再燃している。スペースXNASAにとって2番目に大きな契約相企業手である。アイザックマンはこの質問への回答を繰り返し拒否しているが、連邦上院商務委員会の公聴会後の質疑応答では、スペースXとの商業宇宙飛行2件の契約を解除したと回答した。

連邦上院軍事委員会によるメインクの指名採決は、いつでも実施される可能性がある。連邦上院商務科学運輸委員会は4月30日にアイザックマンの指名について投票を行う。

メインクは国家安全保障分野で長年のキャリアを持ち、現在は国家偵察局(NRO)の首席副局長を務めている。国家偵察局は、国家の偵察衛星の設計、製造、運用を担当している。国家偵察局の立場で、スペースXとの契約を誘導したとの疑惑が浮上している。

連邦上院商務科学運輸委員会は3月27日、アイザックマンのNASA長官指名に関する公聴会を開催した。空軍省は、2019年に独立した軍種となったアメリカ空軍とアメリカ宇宙軍という2つの軍種を統括している。

『ポリティコ』誌が報じたように、公聴会後の連邦上院軍事委員会からの質問に対する書面回答の中で、メインクは、採用面接にはマスクも同席していたものの、質問したのはトランプのみであったことを認めた。また、メインクは、マスクおよびスペースXとの関係は、国家偵察局での現在の職務の一環としてのみ、仕事上のものだったと述べた。

しかし、『ポリティコ』誌は、ジョージ・W・ブッシュ大統領政権下でホワイトハウスの倫理問題担当弁護士を務めた人物の発言を引用し、国防総省の幹部人事に軍事請負業者が関与するのは前例がなく、メインクはマスクの企業に関するいかなる決定にも関与すべきではないと述べた。連邦上院軍事委員会メンバーのエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、これを「極めて不適切(highly inappropriate)」だと批判した。ウォーレン議員とタミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)は、公聴会前にメインクとマスクの関係について懸念を表明したが、公聴会ではメインクに質問は投げかけられなかった。

一方、49日に行われた連邦上院商務委員会でのアイザックマンの公聴会では、ゲイリー・ピーターズ連邦上院議員(ミシガン州選出、民主党)とエド・マーキー連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)が、アイザックマンとマスクとの関係について直接質問した。スペースXNASAにとって2番目に大きな契約相手企業であるだけでなく、アイザックマンは2021年と2024年に指揮を執った2回の商業宇宙飛行(Inspiration4Polaris Dawn)をスペースXから購入しており、彼の会社Shift4はスターリンク通信衛星システムの支払い処理に関してスペースXと契約を結んでいる。

アイザックマンはピーターズ議員に対し、NASA長官に正式に指名されて以来、マスクとは何の連絡もしていないと語った。マーキー議員は、トランプ大統領がアイザックマンを面接したとき、マスクはマールアラーゴにいたのか、部屋にいたのかと質問した。 アイザックマンは、マスクはマールアラーゴにおり、一応の会話はしたかもしれないが、誰がその部屋にいたかについては、トランプから面接を受けたとだけ答えた。何度か質問して同じ答えが返ってきた後、ついにマーキー議員は「マスクが部屋にいたから直接答えたくないのだろう」と言った。

マーキー議員は公聴会後の委員会の質疑応答(Questions for the RecordQFR)で再度質問した。アイザックマンは同じ回答をした。彼はまた、マスクが彼に仕事をしたいかどうか尋ねるために電話をかけてきたというウォールトリート・ジャーナルの報道にも異議を唱え、「ノー、その報道は虚偽だ」と直接答えた。

委員会の幹部メンバーであるマリア・キャントウェル連邦上院議員(ワシントン州選出、民主党)に対する回答でも、アイザックマンは、元スペースX関係者で現在はNASA上級顧問を務めるマイケル・アルテンホーフェンと頻繁に話をしているというウォールストリート・ジャーナルの報道は誤りだと述べた。マスクとの交流は「親密」ではなく「プロフェッショナル」であるとし、倫理プロセスにおいて金銭的・契約的関係は全て開示しており、「対立の様相を呈する可能性のあるいかなる問題」についても「NASAの法律顧問やその他の適切な関係者を巻き込むことをためらわない」と断言した。

アイザックマンは、既にスペースXの商業宇宙飛行2回に加え、クルー・ドラゴンと新型スターシップ・システムの初の有人宇宙飛行の2回分を購入した。キャントウェル議員に対し、これらの契約は既に解除し、代金は返金されたと述べたが、最初の2回分の支払額については明言を避けた。

「倫理規定に基づき、スペースXとの全ての宇宙飛行サービス契約を解除し、将来のミッションのためにスペースXに支払った資金は全て返金された。さらに、倫理規定に基づき、これらの資金は利益相反のない受動的な投資に再投資することを約束する。過去のミッションのためにスペースXに支払った金額は、スペースXとの契約上の守秘義務の対象となる」ジャレッド・アイザックマン。

アイザックマンは、スペースXShift4にスターリンク関連サービスに対して年間1000万から1600万ドルを支払っているというキャントウェル議員の主張には異議を唱えなかったが、承認されればShift4を辞任し、過半数の議決権を放棄すると述べた。

利益相反の問題が委員会での指名投票や本会議での指名投票に影響を与えるかどうかは予測が難しい。トランプ大統領は指名者の承認を得ることにかなり成功しているが、必要な支持が得られないことが明らかになったため、土壇場で指名が取り下げられた例もいくつかある。

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トロイ・メインク:米国防総省内のイーロン・マスクの男?(Troy Meink: Elon Musk’s Man in the Pentagon?
スティーヴ・ティミヌコ筆

2025年3月27日

『ザ・ナショナル・インタレスト』誌

https://nationalinterest.org/blog/buzz/troy-meink-elon-musks-man-in-the-pentagon

ドナルド・トランプ大統領が空軍長官に指名した人物は、国防総省最大の請負業者の1人であるイーロン・マスクとの緊密な関係を理由に綿密な調査を受けるに値する。

数十年にわたりアメリカの国家安全保障上の利益を守ってきた元国防総省高官として、ドナルド・トランプ大統領によるトロイ・E・メインクの次期空軍長官指名をめぐる最近の動きに私は深く懸念を抱いている。

政治家、オピニオンリーダー、そしてアメリカ国民が、イーロン・マスクの政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)の影響と節約効果について議論する中、より懸念されるのは、スペースXとテスラ社のCEOであるマスクが、メインクの指名を含む国防政策に及ぼす可能性のある明白な影響力についてである。

マスクがメインクをこのポストに推薦したと報じられていることは注目に値する。これは驚くべきことではない。7人の関係者が最近ロイター通信に語ったところによると、監察官がメインクを調査し、18億ドルの機密契約の条件をスペースXに有利なように変更したかどうかを確認したという。この契約は最終的にマスクの会社が獲得した。

メインクはこのポストに最適な人物である可能性が高い。アメリカ連邦上院は、承認プロセスにおいて助言権と同意権を行使し、この点について議論し、決定を下す必要がある。しかし、マスクがこの結果を推し進めたというだけの理由で彼がこのポストに指名されたとしたら、それは政府、特に空軍と数十億ドル相当の取引を行っている企業に対する偏見や不正の疑いを提起することになり、非常に問題となるだろう。

軍に対する文民統制(civilian control over the military)は、アメリカが最も誇りとする、そして最も独特な伝統の1つだ。しかし今日、アメリカは中国と密接な関係にある人物から潜在的な影響力が行使されるという状況に直面している。国防当局者の一部は、マスクの企業が中国の軍民融合法(the country’s military-civil fusion laws)の対象となる可能性を懸念しており、同法では、企業の機密情報は中国共産党と共有されることが義務付けられている。連邦上院軍事委員会のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とタミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)は、メインクがマスクとスペースXを優遇する可能性があると懸念を表明し、マスクの企業が現在支配的な分野における「主要な契約、配備、調達の決定(key contracting, deployment, and acquisition decisions)」にメインクが責任を負うことを強調している。

連邦上院議員たちは正しい。これは党派政治の問題ではなく、アメリカの国家安全保障を守るための問題だ。

スペースXは既に約220億ドルの政府契約を締結している。スペースXの防衛関連契約は2023年から2024年にかけて2倍以上に増加し、8億5600万ドルから18億ドルに増加した。一見すると、これらの契約が不当に授与されたと疑う余地はない。しかし、マスクとメインクの間の不正行為の可能性に関する最近の報道は、確かに疑問を抱かせるに十分だ。

空軍長官は、政治的圧力から完全に独立しつつ、防衛関連企業との複雑な関係を巧みに操らなければならない。不正行為の疑いさえあれば、特定のプログラムや機関、省庁全体に汚名を着せられる可能性がある。そして、空軍長官の職務が商業的利益に影響されているという認識は、国民の信頼と軍事力の有効性を損なうことになる。

これは、マスクの愛国心や、彼の企業がアメリカの技術革新に貢献しているかどうかを問うことではない。アメリカの国家安全保障にとって可能な限り最良の結果を確保することだ。

連邦上院は、この指名について利益相反の可能性がないか徹底的に精査しなければならない。政府と軍の指導者たちは、いかなる偏見やえこひいきもせず、客観的に行動しなければならない。DOGEが米国防総省の契約とプログラムに関する透明性と説明責任の向上を主張する一方で、空軍のトップが、契約の選択によって利益を得ることができる人物によって指名されたのではないかと人々に疑念を抱かせるのは非論理的だ。

調査を始めましょう。アメリカ国民は、それ以上のことを当然受けるべきです。

Let the digging begin. The American people deserve no less.

※スティーヴ・ティミヌコ:米国務省元グローバル政府間担当副部長兼上級会議調整官。
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独占記事:トランプ政権の空軍長官候補は、マスクのスペースXに有利な方法で衛星契約を手配した(Exclusive: Trump Air Force nominee arranged satellite contract in manner that favored Musk's SpaceX

ジョイ・ロウレット、マリサ・テイラー、アラム・ロストン筆

2025年2月8日

ロイター通信

https://www.reuters.com/world/us/trump-air-force-nominee-arranged-satellite-contract-manner-that-favored-musks-2025-02-07/

ワシントン発、2 7日(ロイター)。ドナルド・トランプ大統領の空軍長官候補は現在、国家偵察衛星機関(the national spy satellite agency)の最高幹部であり、契約に詳しい7人によると、イーロン・マスクのスペースXに有利な方法で数十億ドルの契約募集を手配した。

機密契約の要件が変更されたことで、国家偵察局(National Reconnaissance Office)の監察総監は、トロイ・メインクが不適切にスペースX社に取引を指示したかどうかを調査することになったと、2人の関係者がロイター通信に語った。マスクの宇宙ヴェンチャーは最終的に2021年に契約を勝ち取った。監察総監が報告書をまとめたのか、それともまだ調査が続いているのかは明らかではない。

契約に関する疑惑も、監察総監の調査も、これまで報道されたことはない。

国家偵察局の広報担当者はメールで、ロイター通信が言及した「調達に関連するいかなる疑惑、抗議、不正行為も承知していない」と述べた。また、「業界パートナーとの契約関係や特定の活動に関する詳細(details related to contractual relationships with industry partners or specific activities)」についてはコメントを避けた。
テレンス・エドワーズ監察総監は、国家偵察局の広報担当者を通じて、彼の事務所は「苦情や調査活動の可能性に関するいかなる情報も提供しない」と述べた。

エンジニアであり、元軍人、2020年から国家偵察局の首席副長官を務めているメインクは、空軍の指揮官への指名承認を待っている。彼の指名は、億万長者の起業家であり、ホワイトハウスの人事に影響を与え、スペースXを含む彼の様々な会社が連邦政府と広範なビジネスを行っているため、潜在的な利益相反をめぐって騒動を引き起こしているトランプ大統領のアドバイザーとなったマスクの推薦に従ったものだと2人の関係者がロイター通信に語った。

マスクもスペースXも、この報道に対するコメントの要請には応じなかった。空軍の広報担当者はホワイトハウスに問い合わせた。ホワイトハウス広報部はロイター通信の要請に応じなかった。

メインクが国家偵察局に在籍していた期間、スペースXは国家偵察局との強い関係を築いたと契約に詳しい関係者はロイター通信に語った。2021年の契約は、世界中の軍事・諜報ターゲットの高解像度画像を収集・中継する数百のスパイ衛星を開発するものだった。

これはスペースXにとって極めて重要な取引であり、アメリカの防衛・情報機関との結びつきを深めた。当初は18億ドルだったが、衛星ネットワークが配備されるにつれ、契約総額はその数倍になると予想されている。ロイター通信はこの契約を見ることができなかった。この契約は機密扱いで、政府はその詳細を公表しておらず、スペースXの関与も確認していない。

他の数社が競争入札の準備をしている間に、メインクは契約の一部を変更した。この変更は、スペースXがスパイ衛星ネットワークに提供できる衛星間通信の一種に関係しており、軌道上に約7000基の衛星を持つ、スペースXの商業ブロードバンド・サービスであるスターリンクのためであったと関係者たちは付け加えた。

ロイター通信は、この変更が他の入札者を排除するための意図的な試みだったのか、それとも世界最大かつ最速で成長を続ける民間宇宙企業であるスペースXが、この変更がなくても契約を獲得できたのかを判断できなかった。いずれにせよ、結果として「(スペースXに)対抗できる企業はなかった。なぜなら、他には接続できる商用衛星群を持っていなかったからだ」と契約に詳しい関係者の1人は語っている。

関係者たちによると、当時、入札プロセスに関わった関係者の一部が国家偵察局当局に苦情を申し立て、最終的に監察総監による調査に至ったという。契約業者であるL3ハリス・テクノロジーズ社の場合、変更に不満を抱いたL3ハリス・テクノロジーズは、メインクと直接話し合いたが、その場で、メインクは正式な抗議を申し立てれば国家偵察局との今後の取引に支障が出る可能性があると述べたとこのやり取りに詳しい3人の関係者がロイター通信に語った。

L3ハリス(LHX.N)は、契約プロセスに関するロイター通信の詳細な質問には回答しなかった。電子メールで送られた声明の中で、広報担当者は「トロイ・メインクのリーダーシップの下で国家偵察局が変貌していく様子を見てきた。新空軍長官として彼と協力することを楽しみにしている」と述べた。

機密扱いのスパイ衛星群は、アメリカ政府が軌道上で最も待ち望んでいる開発の1つだ。地球上の活動を最も持続的、広範囲かつ迅速に監視できるように設計されたこれらの衛星は、宇宙における軍事的・地政学的優位を巡り、中国、ロシア、その他のライヴァル国を出し抜こうとするアメリカの取り組みにおいて極めて重要な要素だ。

公開されている宇宙追跡データやこの計画に詳しい関係者によると、この衛星群を構成する100基以上の衛星が昨年以降に打ち上げられている。スペースXのスターシールド部門が展開するこのスパイ衛星群は、400万人以上の顧客を抱える商用通信ネットワークであるスターリンクとは異なる。しかし、これら2つの衛星システムは、宇宙で相互に通信できるように設計されている。

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連邦上院はトランプ大統領が空軍長官に指名したトロイ・メインクを承認した(Senate confirms Troy Meink, Trump’s pick for Air Force secretary

-軍と政府で数十年にわたる経験を持つメインクは、イーロン・マスクのスペースXを優遇しているという疑惑があったにもかかわらず、74対25の投票で容易に承認された。

アンドリュー・ジョン筆

2025年5月14日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/national-security/2025/05/14/air-force-secaf-troy-meink-trump/

連邦上院は火曜日、トロイ・メインクを次期空軍長官に74対25の賛成多数で承認した。これは、スペースXの創業者イーロン・マスクとの利益相反の可能性について、民主党所属の連邦上院議員2名が以前から懸念を示していたにもかかわらず、承認された。

メインクは技術者・エンジニアであり、湾岸戦争で100回以上の任務を遂行した空軍の退役軍人だ。ミサイルや衛星の開発に貢献してきた公務員でもある。空軍が管轄する技術に関する彼の経験は、21人の民主党所属の連邦上院議員の支持を得て承認を獲得するのに十分以上の説得力を持ったようで、民主党側からの承認票は21票となった。

メインクは、ライバヴァル国との技術競争や、慢性的なパイロットや他の職種の人員不足など、様々な課題に直面している空軍と宇宙軍の監督を担うことになる。

メインクは承認手続きにおいて、これらの問題に対処することを約束した。

3月27日の公聴会で、メインクは連邦上院議員たちに対し、中国などの競争相手に対するアメリカの技術的優位性の維持、ロシアがもたらす「高度にエスカレートする非対称能力(highly escalatory asymmetric capabilities)」への対処、そして国境におけるサイバー攻撃と違法薬物取引への対処に注力すると述べた。

書面証言の中で、メインクは中国をアメリカにとって「最大かつ最も可能性の高い軍事的脅威(the largest plausible military threat)」と表現した。また、メインクは、ロシアは3年以上にわたるウクライナ紛争で疲弊しているにもかかわらず、ヨーロッパにおけるNATO同盟諸国にとって「深刻な脅威(acute threat)」であり続けることは明らかだと述べた。

メインクはまた、空軍を「史上最も規模が小さく、老朽化し​​ている(smaller and older than it has ever been in its history)」と述べ、少なくとも950名の戦闘機パイロット不足に対処することを約束した。同時に、空軍が航空業界との厳しい競争に直面することを認めた。

メインクは民主党所属の連邦上院議員の一部からの反対に直面している。2月には、連邦上院軍事委員会のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とタミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)が、メインクとマスクの間の「潜在的な取引(a potential quid pro quo)」について懸念を表明した。両議員は、マスクがメインクの前職における契約で「スペースX社に有利な条件を提示した」とされる事件を受け、マスクがメインクの空軍長官就任を働きかけたとの報道を引用した。

メインクにコメントを求めたが、すぐには連絡が取れなかった。『ポリティコ』誌によると、メインクは連邦上院への書面証言で、スペースX社およびマスクとの利益相反や関係を否定したと報じられている。

スペースXの担当者にも火曜日遅くにコメントを求めたが、すぐには連絡が取れなかった。
(貼り付け終わり)
(終わり)
jinruiwofukounishitashoakunokongen001
『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今回は、最新刊『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)をご紹介します。発売日は2025年11月21日です。今回のテーマは「新・軍産複合体」です。これまでの著作で取り上げてきた「新・軍産複合体」に絞っての単著となります。以下にまえがき、目次、あとがきを掲載します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願い申し上げます。 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしています。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されています。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てきます。活用いただければ幸いです。

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

(貼り付けはじめ)

まえがき 古村治彦

■トランプ大統領に振り回される世界

ドナルド・トランプ Donald Trump(一九四六年生まれ、七九歳)は、二〇二四年のアメリカ大統領選挙で勝利し、二〇二五年一月二〇日に政権に返り咲いた。現職大統領が選挙で敗北し、その後、再び当選して大統領に復帰したというのは、アメリカ史上、一三二年ぶりの重大な出来事となった。

 第二次政権発足後のトランプは、就任初日から次々と大統領令を発し、不法移民の摘発の厳格化や行政機関の削減、更には高関税政策を次々と実行に移した。大統領選挙でトランプ陣営に多額の寄付を行い、側近となったイーロン・マスク率いる政府効率化省Department of Government Efficiency(デパートメント・オブ・ガヴァメント・エフィシエンシィ)、DOGE(ドージ)が各政府機関に乗り込んで、調査を行い、数千人の政府職員を解雇した。このことは日本でも詳しく報道された。

 トランプの電光石火(でんこうせっか)の動きに、アメリカ国内、そして世界が振り回されることになった。トランプ大統領と良好な関係にあったイーロン・マスクは二〇二五年五月に政府効率化省から離れ、更には、予算案をめぐり、トランプと対立するようになった。マスクは更に、新しい政党「アメリカ党 American Party(アメリカン・パーティー)」の立ち上げを画策している。

日本関連で言えば、二〇二五年四月のトランプ関税 Trump Tariff(タリフ)のショックがあったが、日本政府の粘り腰の交渉で、関税を引き下げることに成功した。

■「エプスタイン問題」が今後のトランプのアキレス腱となる

 二〇二五年七月に入ってから、トランプ政権にとってアキレス腱となり得る事案が話題

を集めている。

 それは、ジェフリー・エプスタイン Jeffrey Epstein(一九五三〜二〇一九年、六六歳で没)の起こした児童買春事件に関するファイルを公開するかどうかの問題だった。トランプが二〇二四年の大統領選挙で公開を約束した、エプスタイン事件ファイル、特に「顧客リスト」の機密解除の後の公開が焦点となった。二〇二五年七月六日に、司法省は、ファイルは存在せず、エプスタインは自殺だったと発表した。

 これに対して、トランプを支持した勢力、MAGA[マガ]Make America Great Again[メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン])派と呼ばれる人々から激しい批判の声が上がっている。(註1)トランプの名前が顧客リストに掲載されていたために、ファイルの公開が見送られたと誰もが考えた。

トランプは批判を強めるMAGA派の人々に対して、「弱虫 weaklings(ウィークリングス)」「お前たちの支持はいらない」と激しく非難した。MAGA派からすれば、顧客リストの公開なしはトランプの卑劣な「裏切り betrayal(ベトレイヤル)」にほかならない。二〇二五年二月に、パム・ボンディPam Bondi(一九六五年生まれ、五九歳)司法長官 Attorney General(アトーネイ・ジェネラル)が、エプスタインのファイルにトランプの名前が出てくることを報告しており、そのために公開しないという決定がなされたとされており、対応をめぐって共和党内部にも分裂が起きている。

 エプスタイン事件への対応が取り沙汰されるようになって、トランプの動きがおかしくなった、そして、イーロン・マスクとの関係悪化につながったと私は判断している。トランプとイーロン・マスクの仲違いが表面化した際に、マスクはXへの投稿で、「ドナルド・トランプは、エプスタイン・ファイルに載っている。これこそが書類が公開されない真の理由だ(Donald Trump is in the Epstein files. That is the real reason they have not been

made public.)」と書いている(後に謝罪した)。

 政府効率化省を率いて、連邦政府各機関の調査を行ったイーロン・マスクは自身が抱える天才ハッカー集団を総動員して、各機関のコンピュータを調査し、様々な情報を入手したであろうことは間違いないので、マスクのXへの投稿には信憑性が高いと私は考えている。

 そうなると、トランプは自分の支持者たちを裏切ったということになる。そして、トランプは既存勢力、MAGA派が敵視するディープステイト側に寝返ったということになる。

■アメリカをこれまで動かしてきた軍産複合体

 本書は、現下のトランプ政権をめぐる激しい動きではなく、その下にある、より大きな動きについて見ていく。そのためのキーワードとなるのが「軍産複合体(ぐんさんふくごうたい)Military-Industrial Complex(ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス)、MIC(エムアイシー)」という言葉だ。

 この「軍産複合体」という言葉について簡単に説明すると、軍需産業 defense industry(ディフェンス・インダストリー)と軍隊・政府機関が密接に結びつく、互恵(ごけい)的な reciprocal(レシプロカル)連合体ということになる。

 民間企業である軍需産業が、政府の一部門で多くの予算と多数の人員を抱える軍隊と結びついて、お互いの利益となる、予算獲得や予算そのものの拡大のために、協力して影響力を行使するということになる。

 アメリカで見てみると、軍産複合体には、民間の軍需産業や軍隊だけではなく、米連邦議会 Congress(コングレス)や学術界などの社会各層も入っているとも解釈されている。広範囲にわたる連合体ということになる。

 アメリカの巨大軍需産業の代表的な企業としては、①ロッキード・マーティン社Lockheed Martinボーイング社 BoeingRTXコーポレーション社 RTX Corporationノースロップ・グラマン社 Northrop Grummanゼネラル・ダイナミクス社 General Dynamicsなどの名前が挙げられる。

 RTX社は旧名がレイセオン・テクノロジーズ社であり、レイセオン・テクノロジーズ社は元々レイセオンとユナイテッド・テクノロジーズ社が合併した巨大企業で、レイセオンという名前の方が良く知られている。

 この五大巨大軍需産業は、国防総省(註2)やアメリカ軍の主要な契約(請負)企業contractors(コントラクターズ)であり、「プライム primes」と呼ばれ、優遇されてきた。

 ロッキード・マーティン社は、戦闘機、ミサイル、艦船、人工衛星などを製造し、二〇二四年の売上は約七一〇億ドル(約一〇兆五〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約一〇四五億ドル(約一五兆二〇〇〇億円)だ。

 ボーイング社は民間航空機製造でも知られているが、爆撃機やミサイル、宇宙開発の分野にも進出しており、二〇二四年の売上は、約六六五億ドル(約九兆八〇〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約一七一六億ドル(約二四兆九〇〇〇億円)だ。

 RTXコーポレーション社は、航空エンジン、機体、ミサイル、防空システムなどのメーカーで、二〇二四年の売上は、約八〇七億ドル(約一一兆七〇〇〇億円)、二〇二五年八月の時価総額は約二〇九二億ドル(約三〇兆三〇〇〇億円)だ。

 ノースロップ・グラマン社は、戦闘機、人工衛星、ミサイルなどを製造し、二〇二四年の売上は約四一〇億ドル(約六兆円)、二〇二五年八月の時価総額は約八四〇億ドル(約一二兆二〇〇〇億円)だ。

 ゼネラル・ダイナミクス社は、造船や宇宙開発、情報機器に強いメーカーで、二〇二四

年の売上は約四八〇億ドル(約七兆円)、二〇二五年八月の時価総額は約八六〇億ドル(約一二兆五〇〇〇億円)だ。

 他にも軍需産業には多くの企業があるが、これらの巨大軍需企業は、アメリカ国防総省

Department of Defense(デパートメント・オブ・ディフェンス)の元請(もとうけ)契約業者 prime contractors(プライム・コントラクターズ)として優遇され、国防予算から巨額の利益を上げてきた。

 日本経済新聞二〇二四年八月二日付記事「米欧防衛8社、紛争特需で増産投資 時価総額五年で倍増」では、「ロシアのウクライナ侵略や中東情勢の緊迫で、弾薬やミサイルを増産している。好業績を受け、これまで防衛銘柄を敬遠していた投資マネーも流入している」と書かれている。ウクライナ戦争や中東での紛争で、巨大軍事産業は莫大な利益を上げ、それは今も続いているということだ。戦争は彼らにとっての「飯(めし)のタネ」ということになる。

■軍産複合体には都合が悪い「アメリカ・ファースト」

ドナルド・トランプ大統領は、こうした軍需産業に対して、大統領選挙を通じて拒否反応を示していた。

 トランプは昨年(二〇二四年)の大統領選挙の運動期間中、九月のウィスコンシン州での選挙集会で本書のテーマの核心となることについて発言した。『フォーブス』誌二〇二四年九月一三日付記事「ドナルド・トランプは軍産複合体を抑制できるか?(Will Donald Trump Tame the Military-Industrial Complex?)」で、トランプの重要な発言が紹介されて

いる。以下に引用する。

(引用はじめ)

私は好戦主義者たち warmongers(ウォーモンガーズ)を追放するだろう。常に戦争をしたがっている連中がいる。それはなぜか? ミサイルは一発で二〇〇万ドルもする。これが答えだ。彼らは世界中の至る所にミサイルを落とすのが大好きだ。私の(前の)政権の時には戦争などなかった。……私は好戦主義者たちを国家安全保障分野から追放し、必要とされてきた軍産複合体の一掃を実行する。戦争を利用しての利益追求を止め、常にアメリカ・ファースト America first を推進するためだ。私たちはアメリカ国内問題解決を第一に考える。私たちは終わりのない戦争に終止符を打つ。軍産複合体の人々は、終わりのない戦争を決して終わらせることはない。(翻訳は引用者)

(引用終わり)

 この記事で私は「好戦主義者」と翻訳したが、これは「戦争屋(せんそうや)」と言い換えても良いだろう。

 トランプは、巨大軍事産業が金儲けのために、戦争を引き起こしている、戦争の元凶(げんきょう)だと喝破[かっぱ](堂々と論じて人々が隠したがる真理を明らかにすること)している。ウクライナ戦争の即時停戦とウクライナへの支援の停止も同時に訴えていた。トランプは、好戦主義者・戦争屋たちを排除して、アメリカが戦争に巻き込まれないようにすると訴えた。そして、大統領に返り咲いた。

 ドナルド・トランプはこれまで一貫して、「アメリカ・ファースト America First」を訴えてきた。

「アメリカ・ファースト」は、「アメリカが何でも一番だぞ」という単純な、子供じみた優越感を示した言葉ではない。その真意を含んで正確に日本語に訳すと、「アメリカ国内問題解決優先主義」ということになる。アメリカ国内では、経済格差の拡大やインフラの老朽化といった問題が深刻化している。そういった問題の解決を優先しようという考え方

である。

 国内重視姿勢であり、海外の問題をアメリカが出しゃばって解決しようとするのは止めよう(ほとんどの場合、アメリカは失敗してきた)、外国の問題解決は外国がすればよいという考えだ。このような考え方を「アイソレイショニズム Isolationism」という。アメリカ外交にとって、建国以来の重要な伝統だ。アイソレイショニズムを「孤立(こりつ)主義」と訳すのは間違いだ。世界の大国であるアメリカが、世界から孤立すること自体があり得ないことだ。このように訳すと、実態を見誤ってしまう。

 トランプはこの伝統に回帰することを訴えた。そして、多くのアメリカ国民がそれを支持した。しかし現状は、ウクライナへの支援は継続し、トランプが進めた「大きく美しい一つの法案」(One Big Beautiful Bill Act(ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル・アクト) of 2025OBBBA 2025)では、防衛予算は前年比で増額となった。

■新たな軍産複合体がすでに形成されつつある

 私は、前作『トランプの電撃作戦』(秀和システム、二〇二五年)において、「ペイパル・マフィア Paypal Mafia」の総帥(そうすい)にして、シリコンヴァレーの新興テック産業の多くの操業に関わってきたピーター・ティール Peter Thiel(一九六七年生まれ、五八歳)が、トランプ政権の樹立に大きく貢献したことを明らかにした。そして、ティールと、イーロン・マスク Elon Musk(一九七一年生まれ、五四歳)が新・軍産複合体 Neo Military Industrial Complex(ネオ・ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス)づくりを行っていると分析した。

 現在のアメリカ経済において、シリコンヴァレー発のテック産業が大きな存在となっている。その代表が、GAFA(ガーファ)と呼ばれる巨大テック企業である。グーグル社 Google、アップル社 AppleFacebook(現在はメタ社 Meta)、アマゾン社 Amazonは売上、時価総額ともに世界トップ一〇を占めている。これら以外にもテック産業は成長を続けて、アメリカの経済や社会において存在感を増している。

 二〇二五年一月一五日、ジョー・バイデン Joe Biden(一九四二年生まれ、八二歳)前大統領は、退任演説 Farewell Address(フェラウェル・アドレス)において、軍産複合体に言及した。以下の該当部分を引用する。

(引用はじめ)

ご存知のように、アイゼンハワー大統領は退任演説で軍産複合体(ぐんさんふくごうたい)military-industrial complexの危険性について言及した。演説から引用すると、彼は当時、私たちに「誤った権力の破滅的な台頭の可能性(the potential for the disastrous rise of misplaced power)」について警告した。

 六日後(言い間違い)、いや六〇年後、私はアイゼンハワー大統領と同様に、我が国に真の危険をもたらす可能性のあるテック産業複合体 tech-industrial complex(テック・インダストリアル・コンプレックス)の台頭を懸念している。

 アメリカ国民は、権力の濫用を助長する偽情報 misinformation(ミスインフォメーション)と虚偽 disinformation(ディスインフォメーション)の雪崩(なだれ)に埋もれつつある。報道の自由 free press(フリー・プレス)は崩壊しつつある。編集者は姿を消しつつある。ソーシャルメディアはファクトチェックを放棄している。真実は、権力と利益のために語られる噓によって覆い隠されている。

 私たちは、子供たち、家族、そして民主政治体制 democracy(デモクラシー)そのものを権力の濫用から守るために、ソーシャルプラットフォームに責任を負わせなければならない。(翻訳は引用者)

(引用終わり)

 バイデン前大統領は、ドワイト・アイゼンハワー Dwight D. Eisenhower(一八九〇〜一九六九年、七八歳で没 在任:一九五三│一九六一年)元大統領の退任演説(本書第二章で詳しく見る)を意識して、アイゼンハワーが使ったことで注目されるようになった軍産複合体を意識して、「テック産業複合体」という言葉を使い、その存在に警告を発している。

 巨大テック産業が政治や社会、人々の日常生活に過度な影響力を持つことを懸念し、警鐘を鳴らしている。

 シリコンヴァレー発の巨大テック産業の重要人物たちのほとんどは、民主党支持で、二〇二〇年の大統領選挙ではジョー・バイデン(大統領在任:二〇二一│二〇二五年)を、二〇二四年ではカマラ・ハリス Kamala Harris(一九六四年生まれ、六〇歳)を支援した。バイデンは、独占禁止法を盾にして巨大テック産業の影響力の削減を行おうとしたが、中途

半端に終わった。

 二〇二四年の大統領選挙後、シリコンヴァレーの巨大テック産業は軒並み、トランプ支持を表明し、二〇二五年一月の大統領就任式に多額の献金を行い、CEOたちがばつが悪そうな顔をして就任式に出席した。バイデンとしては、テック産業の手のひら返しを許せないということもあって、恨み節として「テック産業複合体」という言葉が出てきたのだろう。しかし、バイデンが指摘するように、テック産業は様々な場面で、影響力を増しているのも事実だ。

■「米中戦争」の主役は双方の新・軍産複合体が担う

私はトランプが批判した軍産複合体と、バイデンが批判したテック産業が交わる領域についてこれから書いていく。

より具体的には、これまでの著作でも触れてきたが、「新・軍産複合体」づくりだ。

 より具体的には、シリコンヴァレーで、第一次トランプ政権誕生に大きく貢献したピーター・ティール、第二次トランプ政権誕生に貢献したイーロン・マスク、ティールが引き立てたシリコンヴァレーの天才児パルマー・ラッキー Palmer Luckey(一九九二年生まれ、三三歳)が軍産複合体に食い込もうとしていることを詳述していく。

更に、これまでの軍産複合体について、新旧の軍産複合体の違い、ティールたちに影響を与えている思想の新潮流、中国の軍産複合体、軍産複合体の変化を前提にした米中関係の予測について見ていく。

本書の構成を簡単に紹介する。

 第一章では、シリコンヴァレーのテック産業が、新しい軍産複合体づくりを行っている様子を人物と人脈を手掛かりにして見ていく。具体的には、ドナルド・トランプの政権獲得に貢献し、大きな影響力を持つ、ピーター・ティール、イーロン・マスク、そして、ティールの庇護の下で成功を収めたパルマー・ラッキーといった、シリコンヴァレー発のテック産業の大立者(おおだてもの)たちが、自分たちの所有するパランティア・テクノロジーズ社 Palantir Technologies、スペースX社 Space X、アンドゥリル・インダストリーズ社 Anduril

Industriesが国防総省とアメリカ軍との大規模な契約を結ぶことを目指している。第二次トランプ政権の軍事関係の人事についても見ていく。

 第二章では、戦後アメリカの軍産複合体の歴史を概観している。主に、第二次世界大戦後の冷戦がスタートした時期から軍産複合体は大きな影響力を行使してきた。第二次世界大戦後もアメリカは多くの戦争を戦ってきた。アメリカの戦争において重要な役割を果たしてきた軍産複合体の成り立ちや役割について、ニューヨーク財界人が作った「現在の危機委員会」や、アメリカの介入主義の思想潮流であるネオコン派の人物たちの名前を挙げて詳述する。

 第三章では、古くからの軍産複合体と新・軍産複合体の違いについて見ていく。二つの間にある大きな違いは、ビジネスモデルの違いと、底流にある思想の違いである。ビジネスモデルの違いで大きいのは、私たちにとってもなじみ深い言葉「サブスク」である。底流にある思想に関しては、古くからの軍産複合体の基底にあるのは介入主義(かいにゅうしゅぎ)であり、新・軍産複合体の場合は暗黒啓蒙(あんこくけいもう)である。これらを詳述し、二つの間の違いを明確化する。

第四章では、アメリカの新しい軍産複合体づくりが国際関係に与える影響について考える。現在、国際関係における最重要のファクターは、米中関係 US -China relations(ユーエス・チャイナ・リレイションズ)である。より具体的に言えば、「米中戦争は起きるのか」ということが重要なテーマになる。

 まず、中国における軍産複合体の形成について見ていく。習近平政権下、中国は軍の近代化を進めており、そのための中心戦略が「軍民融合(ぐんみんゆうごう)」であり、習近平は二〇二三年からの国家主席三期目の中国共産党指導部人事で「軍工航天系(ぐんこうこうてんけい)」のテクノクラートたちを登用していることを紹介する。

 続けて、ピーター・ティール、イーロン・マスク、パルマー・ラッキーの対中観について、そして、暗黒啓蒙の中にある「中華未来主義(ちゅうかみらいしゅぎ)」について見ていく。そして、アメリカの軍産複合体の「変容 transformation(トランスフォーメイション)」によって、米中関係も変化していくだろうということを結論づける。

 本書を通じて、アメリカ政治の表面に出てこないが、確かなそして大きな動きについて、読者の皆さんに理解を深めていただけることを願っている。

二〇二五年九月

古村治彦(ふるむらはるひこ)

【註】

註1 『ロイター通信』二〇二五年七月三〇日付記事「情報BOX:「エプスタイン問題」とは何か、未公開文書巡りトランプ氏と支持層に亀裂も」

註2 二〇二五年九月に戦争省 United States Department of Warに改名

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『シリコンヴァレーから世界支配を狙う 新・軍産複合体の正体』 目次

まえがき

トランプ大統領に振り回される世界 3

「エプスタイン問題」が今後のトランプのアキレス腱となる 4

アメリカをこれまで動かしてきた軍産複合体 6

軍産複合体には都合が悪い「アメリカ・ファースト」 9

新たな軍産複合体がすでに形成されつつある 11

「米中戦争」の主役は双方の新・軍産複合体が担う 14

新旧・軍産複合体の人脈関連図と関係企業

新・軍産複合体の人脈図(1):トランプ政権 26

新・軍産複合体の人脈図(2):ウエストエグゼク社 28

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(1):第一次「現在の危機委員会」まで 30

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(2):第二次「現在の危機委員会」まで 32

これまでの軍産複合体の人脈の歴史(3):ジョージ・W・ブッシュ政権とネオコン 34

新旧軍産複合体企業 36

第1章 アメリカで新しい軍産複合体が出現しつつある

ミッシェル・フロノイというキーパーソンの浮上 40

バイデン政権と濃密につながるウエストエグゼク社 41新・軍産複合体づくりの動きが見えてきた 44

新・軍産複合体の中心人物ピーター・ティール 46

反福祉、反税金、反中央政府の自由至上主義者(リバータリアン)ンたち 51

政界ネットワークを着々と拡大するティール 53

ビン・ラディンの発見と殺害で政府機関の信用を得る 55

第二次トランプ政権の「台風の目」となっていたイーロン・マスク 57

アメリカにとって不可欠の存在にわずか二〇年で成長したスペースX社 61

ティールに育てられた「シリコンヴァレーの異端児」パルマー・ラッキー 63

アンドゥリル社は新時代の軍需企業として台頭 67

ピーター・ティールが見出して、育てたJ・D・ヴァンス 70

防衛関係のスタートアップに投資するスティーヴン・フェインバーグ 75

「アジア・ファースト」軍事戦略を目論むエルブリッジ・コルビー 80

陸軍の文民トップには新・軍産複合体寄りの二人が就任した 84

トロイ・メインク空軍長官はイーロン・マスクと昵懇の中 90

第二次トランプ政権は新・軍産複合体づくりを支援する 92

第2章 二〇世紀は軍産複合体の世紀だった

「アメリカの世紀」は戦争によって築かれた 96

世界最強の軍隊を支える軍産複合体 98

軍産複合体の脅威を警告したドワイト・アイゼンハワー大統領 101

「現在の危機委員会」は米国民が軍拡を受け入れるように仕向けた 106

軍産複合体の生みの親であるバーナード・バルーク 112

財界人にとって安全な投資先となった軍需産業 114

第二次「現在の危機委員会」の創設がレーガン政権につながった 118

ネオコンや人道的介入主義派の源流となったヘンリー・ジャクソン 123

ジョージ・W・ブッシュ政権を牛耳ったネオコンは軍産複合体そのものだった 126

二一世紀になっても米国民を煽っている「現在の危機委員会」 132

二〇世紀で作り上げられた軍産複合体は二一世紀で変容する 137

第3章 新・軍産複合体は旧来と何が違うか

防衛システムのサブスクリプション契約を目論む 142

基盤となる思想も新旧大いに異なる 145

古くからの軍産複合体のビジネスモデルは「お手盛り」でコスト軽視 146

一致団結して国防予算削減を妨げる者たち 149

イーロン・マスクが政府効率化省を率いた理由 151

新たなミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」導入が大きなチャンス 154

時代遅れの巨大軍需産業に取って代わるシリコンヴァレーのテック産業 157

「サブスク」でアメリカ軍をコントロールする新・軍産複合体 162

ウクライナ戦争で核戦争の危機を回避したイーロン・マスク 165

トランプは旧・軍産複合体にも利益を与える方向に転換した 169

トランプとマスクとの仲違いが新・軍産複合体づくりに影響 172

古くからの軍産複合体の思想の基盤は介入主義だ 176

ピーター・ティールが影響を受ける新しい思想潮流「暗黒啓蒙」 178

暗黒啓蒙の思想家カーティス・ヤーヴィン 181

ディープステイトと非ディープステイトの対立構図が浮かび上がる 186

第4章 新しい軍産複合体の台頭で米中関係はこうなる

アメリカが煽り立てる中国脅威論のおかしさ 192

「アメリカ以後の世界」へと歴史は流れている 196

戦争を必要としない新・軍産複合体と米中関係 198

中国の軍民融合はアメリカの軍産複合体と同様の機能を持つ 202

習近平体制三期目のキーワードは「軍工航天系」で、軍民融合を進める 206

中国の軍産複合体幹部が異例の昇進 212

最先端技術の軍への応用を可能にする人事 215

ピーター・ティールは中国に対して批判的だが理想は中国の体制のはずだ 219

中国に恩義があるイーロン・マスクが中国を敵視する理由がない 224

アメリカは世界の警察官をやめるべきと主張するパルマー・ラッキー 226

ニック・ランドが生み出した中華未来主義が重要だ 228

新・軍産複合体が米中衝突を望むことはない 233

新・軍産複合体の後ろ盾があるJ・D・ヴァンス副大統領がトランプの後継者 238

あとがき 243

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あとがき 古村治彦

「西洋 the Westの衰退と非西洋 the Rest の再興」は私の大きなテーマである。フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドは、「西洋の敗北 the Defeat of the West(ザ・デヒィート・オブ・ザ・ウエスト)、La défaite de l’Occident(ラ・ディフェツ・ドゥ・ロクスィダン)」という言葉を使っている。

 世界は今、大きな構造変化の時期を迎えている。西洋近代支配五〇〇年が終わり、非西洋諸国がBRICSを中心にして勃興(再興)しようとしている。

世界覇権は中国に移る。現在の日本の衰退は、世界規模で位置づければ、西洋の衰退という大きな流れの中で起きている現象ということになる。私たちはこのことをまずしっかりと認識しなければならない。

 アメリカ国内に目を向けると、アメリカの国力の減退はもう覆(おお)い隠(かく)せない状況になっている。アメリカは世界覇権国として、第二次世界大戦後の世界を支配してきたが、その世界支配を続けられなくなっている。その象徴がドナルド・トランプ大統領の誕生だ。

 トランプは、戦後のアメリカ支配体制を終わらせるために、時代の要請によって生み出された。世界帝国アメリカの墓堀り人 gravedigger(グレイヴディガー)である。私はそのように判断している。

 トランプ大統領誕生には、本書の主人公であるピーター・ティールとイーロン・マスクが大きく貢献した。彼らが目指しているのが、「新・軍産複合体」である。

 私は、本書を通じて、アメリカ政治の大きな流れである「新・軍産複合体」づくりについて詳述した。ティールやマスク、そして、パルマー・ラッキーは、これからのアメリカ政治において、「影の大統領」とも言うべき、政商 influence peddlers(インフルエンス・ペドラーズ)となるだろう。アメリカ史に引き付けて言えば、二一世紀の「泥棒男爵 robber barons(ロバー・バロンズ)」ということになる。

「新・軍産複合体は中国を敵視しない、戦争を必要としない軍産複合体となる」という私の主張は、突飛に聞こえるかもしれない。私の主張に説得力があるかどうかは、読者の皆様の評価を俟(ま)ちたい。

ドナルド・トランプ大統領は、第二次政権が始まった当初、様々な政策を行い、期待通りの動きを見せた。しかし、その後は、既存の勢力、ディープステイト側に妥協しているように見える。エプスタイン問題でも、ウクライナ停戦でも、昨年の選挙期間に行った自身の主張から大きく後退している。既存勢力に媚びを売り、何とか四年間の任期を無事に終えようという意図が透(す)けて見える。しかし、アメリカの衰退、アメリカ国内の分裂 division(ディヴィジョン)を止めることは不可能だ。大きな流れは誰にも止められない。

 本書の執筆中、日本では、石破茂総理大臣の退陣表明があった(二〇二五年九月七日)。そして、一〇月四日に自民党総裁選挙の投開票が行われ、最終的に高市早苗が新総裁に選ばれた。公明党の連立与党離脱で日本政界に激震が走った。これから連立与党の枠組みの変更と総理指名に向けて、協議が行われることになる。

 石破首相はアメリカに隷属的に盲従することなく、是々非々(ぜぜひひ)で事態に対応した。国防予算の対GDP比三・五%引き上げ要求を拒絶し、日米の外相と国務長官、防衛相と国防長官が会合を行う「2+2」の開催を見送ったことは本文の中で紹介した。

 石破政権は在任期間こそ短かったが、石破政権の業績を後世の歴史家が高く評価するだろう。世界の大きな構造転換に直面する日本で、石破茂というリーダーが誕生したことは倖(ぎょうこう)だった。対米隷属(れいぞく)路線からの小さな軌道修し正(きどうしゅうせい)が将来に大きな違いを生み出すと私は確信している。

 最後に、師である副島隆彦(そえじまたかひこ)先生には推薦の言葉をいただきました。ありがとうございます。本書の執筆にあたり、フリーの編集者の大久保龍也氏、ビジネス社の中澤直樹氏には企画の段階から大変お世話になりました。特に大久保氏には、私のデビュー作、二作目を担当していただいて以来、久しぶりにタッグを組むことができたことは、私にとって光栄なことでした。記して感謝します。

二〇二五年一〇月

古村治彦(ふるむらはるひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体


jinruiwofukounishitashoakunokongen001
『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。
donaldtrumpgoldendome101

 今回は、ドナルド・トランプ大統領が発表した、アメリカ全土を網羅する「ゴールデンドーム(Golden Dome)」計画は、新・軍産複合体が重要や役割を果たすことになる。このことについては、前著『トランプの電撃作戦』(秀和システム)でも取り上げたが、この時は、以下のリンクにある『フィナンシャル・タイムズ』紙の記事にあるように、ピーター・ティールのパランティア・テクノロジーズ社やイーロン・マスクのスペースX社、パルマー・ラッキーのアンドゥリル・テクノロジーズ社などが企業コンソーシアムを構築し、巨大プロジェクト受注を目指すということしか分かっていなかった。その巨大プロジェクトこそがゴールデンドーム計画だ。トランプ肝いりの巨大プロジェクトは、これらの企業コンソーシアムが重要な役割を果たす。これらについては新著で詳しく解説した。是非お読みいただきたい。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」2025年3月27日付記事:「ピーター・ティール率いるパランティア社とイーロン・マスク率いるスペースX社、パルマー・ラッキー率いるアンドゥリル社が新・軍産複合体づくりを行っている」

https://suinikki.blog.jp/archives/89514846.html

(貼り付けはじめ)

アメリカのゴールデンドームは地政学的なゲームチェンジャーとなるだろう(A US Golden Dome would be a geopolitical game changer

マーク・R・ウィッティントン筆

2025年6月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/5361221-trump-golden-dome-missile-defense/

トランプ大統領は今年5月、北米に向けて発射される弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速ミサイル(ballistic, cruise and hypersonic missiles)を阻止するために設計された多層システム「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システム(a Golden Dome missile defense system, a multi-layered system)の計画を発表した。

トランプ大統領によると、ゴールデンドームの建設費用は1750億ドルと積算されており、配備には3年かかる。費用とスケジュールは、他の同様のプロジェクトと同様に変更される可能性がある。

ゴールデンドームという名称は、イスラエルのアイアン・ドーム(the Israeli Iron Dome)に由来する。アイアン・ドームは、ユダヤ国家イスラエルのミサイル防衛システムの一部であり、様々な敵国、最近ではイランからの攻撃を完全に阻止した訳ではないものの、鈍化させてきた。しかし、宇宙配備型ミサイル防衛システム(a space-based missile defense system)という構想は、40年以上前に当時のロナルド・レーガン大統領が提唱した戦略防衛構想(the Strategic Defense InitiativeSDI)にまで遡れる。

レーガン大統領の戦略防衛構想は議論を巻き起こした。一部の反対派はこれを「スターウォーズ(Star Wars)」と揶揄した。この計画は、2つの理由から、技術開発計画の域を出ることはなかった。第一に、1980年代には、飛来する核弾頭ミサイルを追跡・破壊できる衛星を打ち上げ・連携させる技術は存在せず、開発も困難だった。第二に、冷戦(the Cold War)が終結し、世界的な熱核戦争(global thermonuclear war)の差し迫った脅威も消滅した。戦略防衛構想の必要性はあっさりと消え去った。

それから30年以上が経ち、北朝鮮のような、ならず者国家(rogue states)による攻撃を阻止するため、地上配備型および海上配備型のミサイル防衛システム(ground-based and sea-based missile defense systems)がいくつか配備されているものの、ロシアや中国といった近隣諸国による攻撃に対する防衛力は極めて不十分である。

このことは、ロシアのウクライナ併合と中国の台湾侵攻を阻止する取り組みを複雑化させている。どちらの紛争も、制御不能に陥り核戦争に発展する可能性があり、アメリカの外交政策の選択を阻害する。

ゴールデンドームは、提案されている戦略防衛構想やイスラエルのミサイル防衛システムと同様に、ブースト段階、中距離段階、そして終末段階をカバーする多層システムとなる。各段階でミサイルを撃墜することで核攻撃を阻止し、標的に弾が届かないようにするという構想だ。

ゴールデンドームは機能するのだろうか? 疑問を呈する人たちもいる。アメリカ物理学会は、宇宙ベースのミサイル防衛システムが直面する問題点を列挙した研究を発表している。その異議の多くは、戦略防衛構想時代に提起されたものと同じである。例えば、おとりミサイル(decoys)の問題などだ。この研究は、ミサイル防衛が不可能だという結論には至っていない。

一方、ミサイル防衛に関連する技術は1980年代以降、大きく進歩している。イーロン・マスクの スペースX社のおかげで、宇宙へのペイロード(payloads)の打ち上げは、スペースシャトルが最先端技術だった頃に比べ、はるかに安価で信頼性が高くなっている。

人工知能、戦闘空間認識(battlespace awareness)、通信、さらにはビーム兵器(レーザー兵器など)も、戦略防衛構想の時代にはSFの世界のように思われたレヴェルに達している。

ゴールデンドームがゲームチェンジャーとなる証拠は中国がそれを嫌っていることだ。

フォックス・ニューズは、中国の毛寧外相の発言を引用し、「この計画は宇宙を戦場と化し、宇宙軍拡競争を引き起こすリスクを高め、国際安全保障と軍備管理体制を揺るがすだろう。アメリカに対し、地球規模のミサイル防衛システムの開発と配備を断念するよう強く求める」と伝えている。

中国は、おそらく意図せずとも、自らがゴールデンドームを恐れていることを示唆している。これを突破しようとするいかなる試みも、アメリカに代わって地球上の最高超大国となるという中国の壮大な戦略を複雑化させるだろう。

ミサイル防衛構想を攻撃する分析の欠陥は経済的である。ゴールデンドームのようなミサイル防衛システムを突破する手段として、おとりミサイルやステルス技術、機動発射装置について論じることはできる。しかし、こうした技術の開発と配備には莫大な資金がかかる。

もう1つの核保有大国(the other near-peer nuclear power)であるロシアは、ウラジーミル・プーティン大統領のウクライナ侵攻により既に限界まで疲弊している。中国もまた、輸出依存型の脆弱な経済、軍事増強のコスト、人口減少により、経済的制約に直面している。

一方、アメリカには十分な経済成長の潜在力があり、宇宙での軍拡競争(an arms race in space)に参加するだけでなく、優位に立つことも可能だ。

イスラエルのミサイル防衛システムは、イランのミサイルの5~10%を突破させてきた。イスラエルは高爆発弾頭ミサイル(high-explosive-tipped missiles)による被害を吸収してきた。核攻撃の場合、ゴールデンドームは攻撃を100%阻止しなければならない。それでも、イスラエルの最近の経験はゴールデンドームの有効性を強く裏付けるものである。

レーガン大統領が夢見た、核兵器が「無力で時代遅れ(impotent and obsolete)」になった世界を実現するのは、途方もない課題となるだろう。

※マーク・R・ウィッティントン:は宇宙政策について頻繁に執筆活動を行っている。宇宙探査に関する政治研究論文「なぜ月への帰還はこんなに難しいのか?」を出版している。また、「月、火星、そしてその先へ」、そして最近では「なぜアメリカは月へ帰還するのか?」も執筆している。彼は「カーマディン・コーナー(Curmudgeons Corner)」というブログを運営している。

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●「独占スクープ:マスクのスペースXがトランプ大統領のゴールデン・ドームミサイル防衛システムの建設で最有力候補に(Exclusive: Musk's SpaceX is frontrunner to build Trump's Golden Dome missile shield)」

マイク・ストーン、マリサン・テイラー筆

2025年4月18日

ロイター通信

April 18, 20253:19 AM GMT+9Updated April 18, 2025

https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/musks-spacex-is-frontrunner-build-trumps-golden-dome-missile-shield-2025-04-17/

■要約

・スペースXは、新興企業のアンドゥリル社とパランティア社と共同で、ゴールデンドーム建設の入札を主導していると6人の関係者が明らかにした。

・スペースXが率いるこのグループは、ミサイル防衛のための「サブスクリプション・モデル(subscription model)」を国防総省に提案していると関係者たちは述べている。

・スペースXは、400基から1000基以上のミサイル防衛衛星からなる群体(コンステレーション、a constellation)を提案していると関係者たちは述べている。

ワシントン発417日(ロイター通信)。イーロン・マスクのスペースX2社のパートナー企業が、ドナルド・トランプ大統領のミサイル防衛システム「ゴールデンドーム(Golden Dome)」の重要部品獲得の最有力候補として浮上したと事情に詳しい6人の関係者が明らかにした。

関係者たちによると、マスクのロケット・衛星企業スペースXは、ソフトウェアメーカーのパランティア(PLTR.O)、ドローンメーカーのアンドゥリルと提携し、ゴールデンドームの重要部品の建造を目指している。このプロジェクトは、テクノロジー分野で急成長を遂げている防衛関係スタートアップ企業から大きな関心を集めている。

トランプ大統領は1月27日の大統領令で、ミサイル攻撃を「アメリカが直面する最も壊滅的な脅威(the most catastrophic threat facing the United States)」と指摘した。

これらの3社はいずれも、トランプ大統領の主要な政治的支持者である起業家によって設立された。マスクはトランプ大統領当選を支援するために2億5000万ドル以上を寄付し、現在は政府効率化省を通じて政府支出削減に取り組む大統領特別補佐官を務めている。

国防総省がスペースXグループに前向きな姿勢を示しているにもかかわらず、一部の情報提供者は、トランプ大統領のゴールデンドーム建設に関する意思決定プロセスはまだ初期段階にあると強調している。最終的な構造や、その責任者の選定は、今後数カ月で劇的に変化する可能性がある。

情報提供者によると、3社は、ここ数週間、トランプ政権と国防総省の高官たちと会談し、ミサイルを感知・追跡するために地球を周回する400基から1000基以上の衛星を建造・打ち上げる計画をプレゼンテーションした。

情報提供者のうちの3人によると、ミサイルまたはレーザーを搭載した200基の攻撃衛星からなる別の艦隊が敵のミサイルを撃墜する。3人によると、スペースXグループは衛星の兵器化には関与しない見込みだということだ。

この協議に詳しい情報提供者の1人は、協議について、「通常の調達プロセスからの逸脱("a departure from the usual acquisition process)であり、国家安全保障・防衛関係者たちには、政府におけるイーロン・マスクの立場から、彼に配慮し、敬意を払わなければならないという姿勢がある」と述べている。

スペースXとマスクは、マスクが自身の事業との連邦政府契約に関する協議や交渉に関与しているかどうかについてコメントを拒否している。

事情に詳しい関係者によると、トランプ政権とマスクが重要な問題で合意できない場合、スペースXは交渉を一時停止する可能性があるという。

米国防総省はロイター通信の詳細な質問には回答せず、「大統領令に基づき、ホワイトハウスの指針とスケジュールに沿って、大統領の決定のための選択肢を提示する」と述べるにとどまった。

ホワイトハウス、スペースX、パランティア、アンドゥリルも質問には回答しなかった。記事掲載後、マスクは自身のソーシャルネットワーク「X」でロイターの記事に関する投稿に対し、詳細には触れずに「これは事実ではない(This is not true)」と反応した。

■サブスクリプション・サーヴィス(SUBSCRIPTION SERVICE

異例なことに、スペースXはゴールデン・ドームにおける自社の役割を「サブスクリプション(商品やサーヴィスを一定期間利用できる権利に対して料金を支払うビジネスモデル)・サーヴィス」として設定することを提案しており、政府はシステムを完全に所有するのではなく、技術へのアクセスに対して料金を支払うことになる。

関係者2人によると、これまで報道されていなかったこのサブスクリプション・モデルは、米国防総省の調達手順を回避し、システムの早期導入を可能にする可能性があるという。このアプローチは規則違反にはならないものの、政府はサブスクリプションに縛られ、開発や価格設定のコントロールを失う可能性があると関係者2人は付け加えた。

関係者2人がロイター通信に語ったところによると、米国防総省の当局者の中には、ゴールデンドームのいかなる部分についてもサブスクリプション・モデルに依存することに対し、内部で懸念を表明している人たちがいる。このような大規模かつ重要な防衛プログラムでは、このような取り決めは異例である。

関係者2人によると、マイケル・グートライン米宇宙軍司令官は、スペースXがシステムの一部を所有・運営するべきかどうかについて協議を行っているという。他の選択肢としては、アメリカがシステムを所有・運営する、あるいはアメリカが所有し、請負業者が運用を担当するといったものがある。グエトライン司令官はコメントの要請に応じなかった。

2人の情報筋によると、スペースXの最高顧問を務めるテレンス・オショーネシー(Terrence O'Shaughnessy)退役米空軍大将は、スペースXと国防・情報機関の幹部との最近の協議に関与していた。オショーネシーはコメント要請には応じなかった。

スペースXが率いるグループがゴールデン・ドームの契約を獲得すれば、利益率の高い防衛産業におけるシリコンヴァレーの最大の勝利となり、従来の請負業者にとっては打撃となるだろう。

しかし、ノースロップ・グラマン社(NOC.N)、ボーイング社(BA.N)、RTXRTX.N)、といった長年の請負業者も、このプロセスで大きな役割を果たすと予想されると関係者たちは述べている。ロッキード・マーティン(LMT.N)社は、はマーケティング活動の一環としてウェブページを開設した。

■多くの入札(MANY BIDS

アメリカ政府当局者たちによると、米国防総省はゴールデンドームの開発・建設に意欲的な180社以上の企業から関心を集めており、その中にはエピラス社(Epirus)、アーサ・メジャー社(Ursa Major)、アルマダ社(Armada)といった防衛系スタートアップ企業も含まれている。ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のメンバーは、数社からそれぞれの能力について説明を受けたと4人の情報提供者は述べている。

米国防総省のナンバー2で、元プライヴェートエクイティ投資家のスティーヴ・フェインバーグ(Steve Feinberg)が、ゴールデンドームの重要な意思決定者となるだろうと2人の米国防当局者が明らかにした。

フェインバーグは、最先端の極超音速ミサイル産業に投資しているサーベラス・キャピタル・マネジメントの共同創設者だが、スペースXには投資していない。コメント要請に応じなかったフェインバーグは、政権入りしたらサーベラスの全株式を売却すると述べている。

一部の専門家は、ゴールデンドームの総費用は数千億ドルに達する可能性があると見ている。米国防総省は、2026年初頭から2030年以降に提供される能力に至るまで、いくつかのタイムラインを設定した。

非営利組織「憂慮する科学者同盟」のローラ・グレゴ研究部長は、このような防衛システムについて、複数の研究が「悪い考えで、費用がかかり、脆弱である(“bad idea, expensive and vulnerable)」と結論づけていることから、その実現性に疑問を呈した。

グレゴは、「このようなシステムは、複数の兵器を同時に発射することで圧倒され、必要な防衛システムの規模が非常に大きくなり、場合によっては数万基の衛星が必要になる可能性がある」と述べた。

スペースXの目標に詳しい2人の情報提供者によれば、スペースXはゴールデンドーム構想の「カストディ・レイヤー」と呼ばれる部分、つまりミサイルを探知し、その軌道を追跡し、アメリカに向かっているかどうかを判断する衛星の群体を売り込んでいる。

2人の情報提供者によると、スペースXは、衛星カストディ・レイヤーの予備的なエンジニアリングと設計作業に60億ドルから100億ドルの費用がかかると見積もっている。情報筋によると、スペースXは過去5年間で数百基の運用可能なスパイ衛星を打ち上げており、最近では数基のプロトタイプを打ち上げており、これらを改造してプロジェクトに使用できる可能性があるという。

ロイター通信は、ピーター・ヘグゼス国防長官が2月28日の締め切り直前に米国防総省幹部たちに出した内部メモを検証した。このメモでは、初期のゴールデンドームの提案を求め、衛星群の「配備の加速(acceleration of the deployment)」を要請していた。

計画に詳しい関係者によると、スペースXはファルコン9を含むロケット群と、ミサイル防衛システムに転用可能な既存衛星を保有しているため、このスケジュールはスペースXに有利に働く可能性があるという。

こうした優位性があるにもかかわらず、協議に詳しい関係者の中には、スペースXグループが、アメリカを攻撃から守ることができる新技術を費用対効果の高い方法で効率的に構築できるかどうかは不透明だと指摘する人たちもいる。

関係者の1人は「スペースXとこれらのテクノロジー企業が、これらを実現できるかどうかはまだ分からない。彼らは、国家の防衛に頼る必要のあるシステム全体を納品した経験がない」と述べた。

また、民主党所属の連邦議員の一部は、マスクがホワイトハウス在任中に連邦政府の契約に入札していたことに懸念を表明した。

連邦上院軍事委員会の幹部メンバーであるジーン・シャヒーン連邦上院議員(ニューハンプシャー州選出、民主党)は、「世界で最も裕福な人物が特別政府職員(a Special Government Employee)となり、数十億ドルもの税金が自身の企業に流れ込む政府契約の流れに影響力を持つことができるのは深刻な問題だ」と述べた。

シャヒーン上院議員は、マスクのような特別政府職員が所有する企業への連邦政府契約の交付を禁止する新たな法案を提出した。

ドナルド・ベイヤー連邦下院議員(ヴァージニア州選出、民主党)はロイター通信に対し、マスクが前例のない「非公開情報やデータへの内部アクセス(inside access to non-public information and data)」を有していることを踏まえ、スペースXの役割についても懸念を表明した。

ベイヤー下院議員は、「マスク、あるいは彼の企業に授与される契約はどれも疑わしい」と述べた。
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(日本語抄訳)
●「米ミサイル防衛、マスク氏のスペースXが主要部受注の最有力候補に」

Mike Stone, Marisa Taylor

ロイター通信 2025418日午前 10:53 GMT+92025418日更新

https://jp.reuters.com/world/security/DI6L343PEZPK7K33YXOGL35TMQ-2025-04-17/

米ミサイル防衛「ゴールデン・ドーム」、スペースXが重要部で最有力候補

トランプ米政権のミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構築計画で、イーロン・マスク氏のロケット・衛星会社スペースXが主導する連合が重要部分を担う最有力候補に浮上している。スペースXロケット打ち上げ管制センターでのマスク氏、トランプ氏ら、昨年11月の代表撮影(2025年 ロイター)

[ワシントン 17日 ロイター] - トランプ米政権のミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構築計画で、イーロン・マスク氏のロケット・衛星会社スペースXが主導する企業連合が重要部分を担う最有力候補に浮上している。関係者6人が明らかにした。受注すれば、収益性の高い軍需産業にシリコンバレーの企業が参入することになる。

ゴールデン・ドームは、イスラエルのミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」の米国版。トランプ氏は1月27日の大統領令でミサイル攻撃を「米国が直面する最も壊滅的な脅威」と指摘している。

関係筋によると、スペースXは、データ解析のパランティア(PLTR.O), opens new tab、ドローン(無人機)メーカーのアンデュリルと組んで、システム主要部分の入札に参加している。マスク氏はトランプ政権入りしており、パランティア、アンデュリル両社の創業者もトランプ氏の支持者だ。

3社は最近、トランプ政権と国防総省の高官に面会し、地球を周回する400─1000基以上の衛星を建造・打ち上げてミサイルを検知・追跡する計画を提案した。これとは別に、ミサイルやレーザーを搭載した200基の攻撃衛星の艦隊がミサイルを撃墜する計画だが、スペースX連合は衛星の武装化には関与しない見込みという。

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国防総省は、3社連合に前向きな姿勢を示しているという。ただ発注先選定プロセスはまだ初期段階で、今後数カ月で状況が変わる可能性があると関係筋は指摘した。

事情に詳しいある関係者は、今回の協議は「通常の調達プロセスから逸脱したもの」とし、「国家安全保障・防衛当局は、政府での役割ゆえにイーロン・マスク氏に配慮し、敬意を払うべきという姿勢がある」と述べた。

スペースXとマスク氏はコメントを拒否した。

国防総省はロイターの質問には直接回答せず、大統領令やホワイトハウスの指針とスケジュールに沿って、トランプ氏に選択肢を提示すると述べた。

<定額課金サービス>

スペースX連合は、ゴールデン・ドームで担う業務を「サブスクリプション(定額課金)サービス」で提供することを提案した。米政府は、システムを直接所有するのでなく、技術のアクセスに対価を支払うことになる。

関係筋によると、サブスクリプションモデルにすると国防総省の調達手順の一部を飛ばして、手続きが迅速化する可能性がある。一方、政府には継続的な支払い義務が生じ、開発や価格設定で主導権を失う可能性がある。大規模かつ重要な防衛プログラムで定額課金システムというのは異例で、国防総省では一部、慎重論があるという。

米当局者によると、ゴールデン・ドーム計画には180社以上が関心を寄せている。有力軍需企業ロッキード・マーチン(LMT.N), opens new tabは、マーケティング活動の一環としてウェブページを立ち上げた。

一部の専門家は、ゴールデン・ドームの総費用は数千億ドルに達する可能性があるとみる。国防総省は2026年初めから30年以降までの計画でシステム導入を検討している。

一方である情報筋は、スペースXなどには国家の防衛システム全体を提供した経験がなく、新技術を使い費用対効果の高い方法で構築できるかは不透明だと述べた。

また、上院軍事委員会のジーン・シャヒーン議員(民主党)は、マスク氏が政権の職務に就く中で連邦政府の契約に入札することに懸念を表明。「世界で最も裕福な人物が特別政府職員となり、政府契約を通じて自分の企業に流れ込む何十億ドルもの税金に影響力を及ぼせるとなると、それは深刻な問題だ」と述べた。

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アングル:トランプ氏の「ゴールデンドーム」構想、本格的な宇宙軍拡競争の幕開けか

Joey Roulette

2025523日午後 5:48 GMT+92025526日更新

https://jp.reuters.com/world/us-politics/NAOB6RPBQZN6HO4SEI6YSFZUAU-2025-05-23/

[ワシントン 22日 ロイター] - トランプ米大統領の次世代ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」は、数十年前から論争を呼んできた考えを復活させるものであり、実現すれば宇宙空間における規範は覆り、「宇宙大国」間の関係は一変する可能性がある。

ゴールデンドームは地球の軌道上に衛星と兵器の巨大ネットワークを構築する構想で、1750億ドル(約25兆円)の費用が見込まれる。この10年間で激化した宇宙空間の軍事化を一層急速に加速させかねないと、宇宙アナリストらは指摘する。

世界トップの宇宙大国である米国、ロシア、中国は1960年代から軍事および諜報機能を軌道上に配置してきたが、そのほとんどは秘密裏に行われたものだ。

バイデン前政権下、米宇宙軍幹部らはロシアと中国からの脅威を理由に、宇宙における攻撃能力強化の必要性を強調するようになった。

トランプ氏は1月にゴールデンドーム計画を発表し、明確な戦略転換を示した。つまり巨額の費用を要する未検証技術を用いた大胆な宇宙進出に軸足を置く戦略であり、米防衛企業は金銭的な恩恵に預かる可能性がある。

構想には、地球から発射された通常弾頭や核弾頭のミサイルを、衛星から発射するミサイルで迎撃する案が含まれる。

米シンクタンク「セキュア・ワールド・ファウンデーション」の宇宙安全保障・安定化ディレクター、ビクトリア・サムソン氏は、宇宙空間でのミサイル使用は「パンドラの箱を開けるようなものだ」と指摘。「それがもたらす長期的な影響について、われわれは真剣に考えてこなかった」と語った。

同氏を含む専門家は、ゴールデンドームに触発されて他の国々も同様のシステムを宇宙に配備したり、ミサイル防衛網を回避できる高度な兵器の開発に走ったりして、宇宙における軍拡競争が激化しかねないと言う。

米国防総省はコメント要請に即座に応じなかった。

ロシアと中国はトランプ氏の発表に異なる反応を示した。中国外務省の報道官は構想に「深刻な懸念」を表明し、米国に開発を断念するよう要請。構想の発表は「強い攻撃的意味合い」を持ち、宇宙の軍事化と軍拡競争のリスクを高めたと主張した。

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  5月22日、トランプ米大統領の次世代ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」は、数十年前から論争を呼んできた考えを復活させるものであり、実現すれば宇宙空間における規範は覆り、「宇宙大国」間の関係は一変する可能性がある。写真(左)は同構想を説明するトランプ米大統領。ホワイトハウスで20日撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque

ロシア大統領府の報道官は、ゴールデンドーム構想の発表により米ロは近い将来、核軍縮に関する協議を迫られる可能性があると述べた。

ゴールデンドーム構想は、冷戦時代にレーガン元米大統領が打ち出した戦略防衛構想(SDI)、通称「スター・ウォーズ計画」を復活させるもので、ロシア、中国に加えて北朝鮮、イランなど米敵対国の通常兵器および核ミサイルの増加に対応するのが主目的だ。

SDIは、地球の低軌道にミサイルと強力なレーザー兵器を配置し、地球上のどこから発射された核弾道ミサイルであっても、発射直後のブースター段階または宇宙空間での高速巡航段階で迎撃する構想だった。

しかし技術的な課題や高コスト、その後無効化されたABM条約(弾道弾迎撃ミサイルの配備を制限する条約)違反への懸念から、実現しなかった。

<防衛企業は準備万端>

ゴールデンドーム構想は、防衛請負企業や成長著しい防衛技術企業から強い支持を得ており、その多くはトランプ氏の宇宙兵器推進を見越して準備を進めてきた。

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軍用通信大手L3ハリス・テクノロジーズ(LHX.N), opens new tabのケン・ベディングフィールド最高財務責任者(CFO)は先月、ロイターのインタビューで「この日が来ることは予想していた。準備万端だ」と語り、「L3ハリスはゴールデンドーム機構の基盤を成すセンサーネットワークを早々に構築し始めている」と説明した。

トランプ氏の盟友、イーロン・マスク氏のロケット・衛星企業スペースXは、ソフトウエア企業パランティア(PLTR.O), opens new tabおよびドローンメーカーのアンドゥリルと並び、ゴールデンドームの主要部分構築を担う最有力候補に浮上している、とロイターは先月報じた。

初期のシステムの多くは、既存の生産ラインから供給される見通しだ。トランプ氏による20日の記者会見に出席した関係者らは、L3ハリス、ロッキード・マーチン(LMT.N), opens new tab、RTX(RTX.N), opens new tab(旧レイセオン・テクノロジーズ)を、契約企業候補に挙げた。

しかしゴールデンドーム構想の財源は依然として不透明だ。与党共和党議員らは、総額1500億ドルの包括的な国防支出関連法案の一環としてゴールデンドームに250億ドルの初期投資を行うことを提案しているが、財源は議会で協議が難航している財政調整法案と結びついている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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