古村治彦です。
企業の独占、寡占を取り締まる米連邦取引委員会(Federal Trade Commission、FTC)が、アメリカ国内のビッグテック各社への攻撃を強めている。2017年にビッグテック各社が独占禁止法に違反しているという内容の論文を発表し一躍脚光を浴びた、リナ・カーンが2021年に公正取引委員会委員長に就任した(ジョー・バイデン大統領が指名)。リナ・カーンのリーダーシップの下、連邦取引委員会はビッグテック各社に対する裁判を起こしている。
ビッグテック5社を解体せよ
ビッグテック各社がどのような方法で市場を独占し、利用者の利益を棄損しているか、ということについては、拙訳『ビッグテック5社を解体せよ』をお読みいただきたい。
著者ジョシュ・ホーリーは現役のアメリカ連邦上院議員(ミズーリ州選出)、若手のホープとして、大統領選挙候補者の名前にも取り沙汰されるほどだ。本書はただのビッグテックの危険や脅威を煽る本ではない。ホーリーがミズーリ州司法長官として、ビッグテックと対峙した経験、アメリカの独占禁止法成立、それ以降の歴史に関する研究の成果が基礎となっている。アメリカの独占禁止法がどのような歴史的経緯で誕生し、その精神はどこにあるのか、ということが本書前半に書かれており、後半で、ビッグテックの実際のやり口が赤裸々に描かれている。原題通り、「ビッグテックの暴力的支配(The Tyranny of Big Tech)」である。
以下に引用した記事と併せて、是非本書を読んで、アメリカにおけるビッグテックの暴力的支配に対する戦いを理解していただきたい。
(貼り付けはじめ)
●「米取引委、独禁法違反でAmazon提訴か 米報道」
ビッグテック
2023年6月30日 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN29DQD0Z20C23A6000000/
FTCのカーン委員長はアマゾンを批判してきた=ロイター
【シリコンバレー=山田遼太郎】米ブルームバーグ通信は29日、米連邦取引委員会(FTC)が反トラスト法(独占禁止法)違反で米アマゾン・ドット・コムを近く提訴する見通しだと報じた。カーン委員長が事業分割など厳しい要求を突きつける可能性もあり、FTCと同社の対立は一段と激しくなる。
関係者の話として、FTCが今後数週間のうちに訴訟を起こす計画だと伝えた。アマゾンのインターネット通販を巡り、外部の出品者が同社の物流サービスを使う場合に、利用しない出品者と比べ不当に優遇していると主張する内容になるという。提訴の時期は8月以降に遅れる可能性もあるとした。
FTCは21日に有料会員制度「プライム」を巡り、消費者を意図しないうちに登録させたとしてアマゾンをFTC法などへの違反で提訴したばかりだ。アマゾンとFTCは日本経済新聞に対しコメントを控えた。
アマゾンは自ら小売業者としてネット通販で商品を販売する一方、一般の小売業者が参加して販売できる「マーケットプレイス」を運営する。外部の出品者は追加の手数料を支払えば、配送や倉庫保管といった同社の提供する物流サービスを利用できる。
FTCは物流などのサービスを使わない出品者が、通販サイトで商品が目立たないといった不利益を受けた証拠を集めている。1回のクリックで購入できる「購入ボックス」の商品購入先に一部の業者を優先表示している疑いも調べているという。
アマゾンのマーケットプレイスを巡っては、2019年から欧州連合(EU)もEU競争法(独占禁止法)違反の疑いで調査をしていた。自社の販売を有利にする目的での外部出品者のデータ利用や、購入ボックスの仕組みについて懸念があると指摘した。
アマゾンが自社の小売事業のためにデータを使わないなどの譲歩案を示し、22年12月にEUと和解した経緯がある。ブルームバーグはカーン氏の強硬姿勢を踏まえるとFTCが同様の和解に応じる見込みは低く、アマゾンに事業再編などを求める可能性もあるとした。
FTCは21年6月に就任したカーン氏の下で米テクノロジー大手への監視を強めている。同氏は学生だった17年、アマゾンを独禁法違反で規制すべきだとする論文を書いて脚光を浴びた。FTC委員長に就任後、アマゾンや米フェイスブック(現メタ)は公平性が担保できないとして独禁法に関する調査から同氏を外すよう求めた。
FTCはメタに対しても、画像共有アプリ「インスタグラム」運営会社や、仮想現実(VR)関連アプリ開発の米ウィジンの買収を巡り独禁法違反で提訴した。ウィジンを巡るFTCの訴えは棄却されている。
(貼り付け終わり)
(終わり)
ビッグテック5社を解体せよ