古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ピート・ヘグセス

 古村治彦です。

 昨年出した拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社、2025年)で、シリコンヴァレーを拠点とした「新・軍産複合体(Neo Military-Industrial Complex)」が作られているということを明らかにした。私がアメリカで新・軍産複合体の形成が進んでいるということを本として発表したのは、『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(終話システム、2021年)からだ。それから数年が経過し、その姿が明らかになりつつある。書籍へのリンクはページの下にあるので、そこで是非お買い上げいただき、お読みください。

新・軍産複合体は戦車やミサイル、戦闘機ではなく、ドローンとソフトウェア、AIが主力製品である。そして、アメリカ国家も大きな防衛システムにテック産業を中心に参画させようとしている。それが、ドナルド・トランプ大統領がぶち上げた「ゴールデンドーム計画」である。これは、アメリカの国全体を1つのドームで覆うようにして(物理的にではなく)、防衛システムを構築するということであり、そのためにはビッグデータ解析などのプログラムが必要になる。そこに、トランプ大統領を支持し、2016年の大統領選挙で当選させたピーター・ティールのパランティア社やトランプと就かず離れずの盟友イーロン・マスクのスペースX社、VR開発の若き天才と称賛され、ティールやマスクの支援を受けてドローン開発企業を立ち上げ成功したパルマー・ラッキーのアンドゥリル社が参画することがすでに決まっている。

 先週、ピート・ヘグセス国防長官が現役将校を前にした演説(「軍の現状」という題名)を行い、」その中で、将官クラスの人員を20%削減するという内容があり、日本でも報道された。重要なことは、「プロジェクト・メリディアン(経線、子午線の意味)」の立ち上げを発表したことだ。これは、自律型(AI)兵器や最先端技術の兵器利用の開発・試験。実践配備のための大枠を答申することを目的としている。

このプロジェクトの共同座長に、イーロン・マスク、パルマー・ラッキー、そして、ニュート・ギングリッジ元連邦下院議長が就任し、120日後に報告書を発表するといとになった。マスクとラッキーについては繰り返さないが、ギングリッジは下院議長を退いて長いが、アメリカ政界に隠然たる影響力を保持している。共同座長にマスクとラッキーが任命されていることの意味は大きい。なぜならば、アメリカ軍と共同で兵器開発やソフトウェア開発を行うのは彼らの創業した企業群であり、そこにはピーター・ティールのパランティア社も絡んでくるのは理の当然だからだ。ここから「自律型戦軍」が立ち上がると、マスクやラッキーの影響力も大きく働く部隊が誕生するということになる。シリコンヴァレーのテック企業が国家プロジェクトに参画し、大きな利益を得る。それが新・軍産複合体の構造ということになる。

 シリコンヴァレーの起業家たちはリバータリアンと呼ばれる、市場と自由を至上とし、国家の介入を嫌う、国家に関わることを嫌うとされてきた。しかし、実際には国家と深く結びつくことで技術開発を進め、巨額の利益を得るという形になっている。新自由主義時代の次は国家の時代が戻ってくる。それをシリコンヴァレーが先取りしていると言えるだろう。

(貼り付けはじめ)

ピート・ヘグセス国防長官が軍事兵器開発プロジェクトにイーロン・マスクを起用(Pete Hegseth Taps Elon Musk For Military Weapons Development Project)

アントニオ・ペケーノ四世(『フォーブス』誌スタッフ、テック産業などの特報担当ニューズ記者)筆

2026年9月30日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/antoniopequenoiv/2026/09/30/pete-hegseth-taps-elon-musk-for-military-weapons-development-project/

●重要事項(Topline)

ピート・ヘグセス国防長官は、スペースX社の経営者であるイーロン・マスクを「プロジェクト・メリディアン(Project Meridian[子午線・経線・頂点の意味])」の共同リーダーに指名した。この億万長者である実業家は、アメリカ軍向けの新たな兵器や技術の開発について調査・特定・提案を行うこの新イニシアティヴにおいて、主導的な役割を担うことになる。

●重要な事実(Key Facts)

・ヘグセス長官は、マスクが、アンドゥリル(Anduril)社およびオキュラス(Oculus)社の共同創業者であるパルマー・ラッキー、そして、元連邦下院議長ニュート・ギングリッチ(ジョージア州選出、共和党)と共に、このプロジェクトを共同で主導する。

・「プロジェクト・メリディアン」の立ち上げに関する覚書には、このプロジェクトが「将来の戦場を研究し」、アメリカ軍将兵が「そうした環境で優位に立つ」ための兵器や技術を特定し、さらに「それらの能力の開発、試験、実戦配備を開始する(start developing, testing and fielding these capabilities)」ための解決策を提案すると記されている。

・覚書の中でマスクの名は明示されていないが、「プロジェクト・メリディアン」は「国防総省外の重要な視点を活用し、トップクラスの技術者、イノヴェーター、ビジネスリーダー、政策立案者、国家安全保障の専門家からなるグループの知見を取り入れる」としている。

・このプロジェクトの調査結果と提言は2027年1月28日までにヘグセス長官のオフィスへ提出される予定だ。

●注目すべきポイント(What To Watch For)

アメリカ国防総省のウェブサイトによると、このプロジェクトの提言は、機密指定されていない報告書として一般に公開される予定だ。

●重要な背景(Key Background)

国防総省によるこのプロジェクトは、昨年「政府効率化省(Department of Government Efficiency、DOGE)」を率いたことに続く、マスクとトランプ政権との新たな関わりを示すものとなる。DOGEにおいて、マスクは「特別政府職員」として組織を主導したが、法的に定められた130日間の任期満了をもって退任した。「プロジェクト・メリディアン」におけるマスクの役割は、公式な役職というよりは、むしろ助言を行う立場に近いものと見られる。マスクは2024年の大統領選挙でドナルド・トランプを支持・献金し、トランプの2期目の初期には自ら「親密な相棒(First Buddy、ファースト・バディ)」という呼称を受け入れていた。しかし、連邦財政赤字を拡大させると主張してトランプの「一つの美しい予算案(Big Beautiful Bill)」を激しく批判したことで、両者の関係は決裂した。マスクが新党結成を示唆し、さらにこの予算案への批判を続けたのに対し、トランプはテスラ社やスペースX社への連邦補助金を打ち切ると警告した。両者の対立は2025年6月に決定的となった。当時、マスクは未公開の「エプスタイン文書」にトランプの名前が含まれており、それこそが文書が公開されない理由だと主張した。その後、両者の関係は修復に向かい、今週ホワイトハウスで開催されたハイテク・サミットでは、マスクが重要な役割を果たした。このサミットは、人工知能(AI)とそれが人類にもたらす短期的な存続の危機に対する懸念が高まる中で開催された。

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ニュート・ギングリッチが国防総省の「将来の戦争」に関する120日間のタスクフォースで共同リーダーに指名される(Newt Gingrich Tapped by Pentagon to Co-Lead 120-Day Future of Warfare Task Force)

コリン・ラッグ筆

2026年10月1日

『コリン・ラッグ・ニューズ』

https://www.collinruggnews.com/newt-gingrich-tapped-by-pentagon-to-co-lead-120-day-future-of-warfare-task-force/

ニュート・ギングリッチ元連邦下院議長が、国防総省の「プロジェクト・メリディアン(Project Meridian)」を共同主導する人物として選出された。これは、将来の戦場におけるアメリカの優位性を確保するために必要な兵器、自律型システム、および先端技術を特定することを目的とした、120日間の取り組みだ。ピート・ヘグセス国防長官は、ヴァージニア州クワンティコ海兵隊基地で行った「軍の現状(State of the Force)」に関する演説の中でこの人事を発表し、ギングリッチをイーロン・マスクやパルマー・ラッキーといった著名なテクノロジー業界のリーダーたちと並ぶ役割に据えた。

この戦略パネルは、21世紀型の防衛能力を開発・試験・実戦配備するための、実行可能な提言をまとめることを目指している。ヘグセス長官は、軍事戦略の抜本的な見直しの一環としてこの諮問プロジェクトを立ち上げ、ロボット工学、人工知能(AI)、最先端の作戦用ハードウェアを軍がどのように運用すべきか、そのあり方を再構築する任務を民間出身のリーダーたちに託した。

「プロジェクト・メリディアンは、イーロン・マスク、パルマ―・ラッキー、そしてニュート・ギングリッチという、我が国屈指の英知を持つ3名によって共同主導される」。

●プロジェクト・メリディアンの内部:現代の戦闘に向けた120日間の青写真(Inside Project Meridian: The 120-Day Blueprint for Modern Combat)

「プロジェクト・メリディアン」の使命は、高強度紛争においてアメリカ軍が直面し得る具体的な作戦上のギャップを特定することにある。単なる理論的な研究にとどまらず、この諮問グループは即座に実行可能な導入プロセスを確立しなければならない。ヘグセス長官は、この委員会が全軍にわたり重要技術を試験・実戦配備するための実行可能な計画案を提示し、最終的に包括的な公開報告書と機密扱いの付録を作成することになると述べた。

このタスクフォースは、軍の指揮系統における大規模な構造改革と並行して活動する。ヘグセス長官は、戦闘軍全体にロボット・自律型システムを迅速に展開・拡大させることを目的に、「Autowarcom(オートウォーコム)」と称される新たな4つ星大将級の統合戦闘軍「自律型戦軍」を創設した。これにより、自律型システムに関するドクトリンが、高レヴェルの戦闘計画策定に直接組み込まれることになる。

●何故ギングリッチなのか? 政策のヴェテランがテック業界の巨人たちに合流(Why Gingrich? Policy Veteran Joins Tech Industry Giants)

イーロン・マスクやパルマー・ラッキーといったテック業界の有力者が、スペースX社やアンドゥリル・インダストリーズ社(両社とも国防総省と最大41億6000万ドル規模の契約を締結)を通じて防衛産業で大きな存在感を示す一方で、ニュート・ギングリッチは、数十年にわたる国家安全保障戦略および連邦議会工作の経験をもたらしている。ギングリッチはテック業界との直接的なビジネス上のつながりこそないが、軍事政策や防衛プロジェクトには長年関与し続けており、空軍大学(Air University)から名誉博士号も授与されている。

ギングリッチは長年にわたり、積極的な外交政策の姿勢を提唱してきた。その一例として、2005年当時からイランの脅威に対して一貫して厳しい態度を取ってきたことが挙げられる。ギングリッジが加わることで、政治・ドクトリン面での経験と民間セクターの迅速な開発能力が融合し、政策面での実績と商業的な製造力がバランスよく組み合わされることになる。

●防衛技術の優先順位をめぐるバランス調整(Balancing Defense Tech Priorities)

国防総省が防衛生産、ソフトウェア統合、無人プラットフォームのあり方を検討する中、このイニシアティヴは極めて重要な戦略的バランスの調整を迫られている。

・実戦配備の迅速化:数年を要する調達サイクルを短縮し、最前線の戦闘員向けに迅速な試作・実証(prototyping)を行う。

・自律型システムの大量展開:陸・海・空にまたがる多正面紛争シナリオに対応するため、自律型ハードウェアを大量に配備する。

・宇宙・サイバー領域での優位性確保:通信やリアルタイムの標的捕捉を支える軌道上での作戦上の優位性を維持する。

●再編をめぐる対立:文民改革派 vs. 軍上層部The Restructuring Divide: Civilian Reformers vs. Senior Brass

国防総省の主要な見直しは常に職業軍人が主導するものだという誤解が広く存在しますが、「プロジェクト・メリディアン」はこの前例を覆すものだ。共同リーダー3名はいずれも現役軍人としての経歴を持たず、ギングリッチはヴェトナム戦争時に学生および父親であることを理由とした徴兵猶予を受けており、マスクとラッキーは民間産業を通じて影響力を築いてきた。

今回の任命は、国防総省全体で大規模な組織・人員削減が進められる中で行われた。ヘグセスは、軍の将官(陸・空・海兵隊の将軍および海軍の提督)のポスト約800のうち20%を1月までに削減する計画を発表した。これは当初示唆されていた10%削減の倍にあたる。ヘグセスは、こうした将官の整理・削減は、肥大化した官僚機構や重複する階層を排除し、作戦上のヴィジョンを民間セクターのイノヴェーターや信頼できる政治家へと転換するために不可欠であると説明している。

■ニュート・ギングリッチ:防衛政策のドクトリン、長期的地政学戦略、そして、立法・行政間の連携調整

■イーロン・マスク:民間ロケット打ち上げシステム、宇宙領域での作戦、および軌道上防衛インフラ

■パルマ―・ラッキー:自律型兵器システム、AI搭載戦闘プラットフォーム、および巡航ミサイルの拡張可能な生産体制

提言策定までの期間はわずか120日間であり、ギングリッチをはじめとする共同リーダーたちは、1月に予定される指揮官ポストの削減が実施される前に、軍の近代化の優先順位を抜本的に見直すという極めて厳しいスケジュールに直面している。

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ピート・ヘグセス国防長官による将校への演説から得られる7つのポイント:戦争の未来、信仰、そして新たな地盤(7 takeaways from Hegseth’s address to officers: Warfare’s future, faith and a new base)

フィリプ・ティモティジャ、エレン・ミッチェル筆

2026年9月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/6121765-pete-hegseth-takeaways-command-warfare-base/

ピート・ヘグセス国防長官は水曜日、現役の将校たちに向けた広範な演説の中で、矢継ぎ早にいくつかの発表を行った。

演説の冒頭、長官は自身の「十八番(bread and butter)」とも言えるテーマに終始した。すなわち、文化戦争(culture-war)をめぐる不満の表明、国防総省(DOD)からの「ウォーク(woke:社会正義や多様性に過度に配慮する姿勢)」の排除、イランとの戦争に関する報道をめぐるメディアへの批判、そして「戦士精神(warrior ethos)」の復活とアメリカ軍の「再建(rebuilt)」の宣言だ。

しかし一方で、長官は注目すべき発表もいくつか行った。それらは、信仰を重視する自身の姿勢を反映したものや、新たな戦闘軍(combatant command)の創設、大学との連携、そして各州知事が誘致を競い合うことになるであろう国内の新規軍事基地の構想などが含まれていた。

ヴァージニア州クワンティコ海兵隊基地で行われたヘグセス長官の52分間にわたる演説の要点は以下の通りだ。

(1)自律型戦闘に特化した新たな統合軍(New combatant command focused on autonomous warfare)

ヘグセス長官は、ドローンや防衛用ロボット技術といった自律型戦闘能力(autonomous warfare)の開発に特化した、新たな4つ星大将が指揮する戦闘軍の創設を発表した。

ヘグセス長官によると、この組織は「現代の軍事史上、平時における最も迅速な転換」として、戦闘軍全体に自律型・ロボット技術の能力を拡大・展開するための「軍種(陸・海・空軍など)に匹敵する権限」を持つことになる。運用開始は来年10月1日を目指している。

「自律型戦闘軍」、通称「AutoWarCom(オートウォーコム)」は、当初、元海兵隊員で現在は国防総省の「国防イノヴェーション・ユニット(Defense Innovation Unit、DIU)」を率いるオーウェン・ウェストと、海軍特殊部隊SEALsの上級曹長であるマックス・ストラサイザーが主導する。その後、4つ星大将の指揮官が発表される予定だ。

「この司令部は、専任の人員、予算、調達権限を有し、将校および下士官・兵のための専門的な軍務キャリアパスを構築することになる」と、ヘグセスは水曜日の覚書で述べた。

ヘグセス長官は覚書の中で、この新しい司令部が演習や過酷な環境下で「現実的な対抗勢力(realistic opposition)」を相手に装備や部隊編成の試験を行い、戦場で何が有効かを見極めることになると説明した。

(2)「プロジェクト・メリディアン」と戦争の未来(Project Meridian and warfare’s future)

ヘグセス長官は、戦争の未来を検討する国防総省の新たな取り組み「プロジェクト・メリディアン」を、スペースX社およびxAI社のCEOであるイーロン・マスク、アンドゥリル社の共同創業者パルマー・ラッキー、そしてニュート・ギングリッチ元連邦下院議長(ジョージア州選出、共和党)が主導することを明らかにした。

ヘグセス長官は、このプロジェクトの目的は、アメリカのイノヴェーター、上級指導者、技術者らの力を結集し、数十年先を見据えて「明日の紛争に向けた独創的な解決策を予測すること」にあると述べた。

「意図的に未来志向のものにしている」とヘグセスはこのプロジェクトについて語り、新たな戦略や政策を策定するためのものではないことを明確にした。

「将来の紛争を最も的確に予測できる人々が、必ずしも国防総省内にいる訳ではないということを認める謙虚さを持つべきだ」とヘグセスは述べた。「自ら問いを立て、自らそれに答えることには、明白なバイアスやリスクが伴うからだ」。

ヘグセス長官によると、マスク、ラッキー、ギングリッチは、エミール・マイケル国防次官(研究・工学担当)の指揮の下、「地下から月の彼方に至るあらゆる将来の戦場において、私たちの子供や孫の世代が必要とする兵器やシステムを、創造的な制約や制限にとらわれることなく発見、開発、実戦配備すること」に注力することになる。

ヘグセス長官が発表を行った際、これら3人の男性は全員ペンタゴン(米国防総省)に同席しており、ヘグセス長官は「プロジェクト・メリディアン」に関する最初の会合を、このイヴェントの直後に同省内の機密情報取扱施設(SCIF)で行うと述べた。

(3)各州に対して「次なる偉大なアメリカ軍基地」の誘致を求める(States invited to bid for ‘next great American’ base)

ヘグセスは各州知事に対し、「次なる偉大なアメリカ軍基地」の受け入れ先となるための誘致提案を行うよう呼びかけた。

「我々は全米の知事および州兵総監に対し、この偉大な共和国のために立ち上がり、最高の提案を提示するよう呼びかける」とヘグセス国防長官は述べた。

「もしもあたなの州が、1万5000人から2万5000人の偉大なアメリカ軍将兵を受け入れる名誉を望むなら、その理由と具体的な実現方法を示して欲しい。煩雑な手続きを排除し、用地を提供し、軍人の家族を最大限に歓迎する体制を整える」と、彼は演説の中で語った。

ワシントン州のエヴェレット海軍基地は1990年代に開設された、アメリカ国内で最後に建設された基地である。この基地には、複数の誘導ミサイル駆逐艦や沿岸警備隊の艦船が配備されている。

ヘグセス長官は、新しい基地は「無機質な政府施設」にはならないと述べ、ペンタゴンは「ダイナミックかつ自立した戦力投射の拠点」を計画・設計していくと主張した。

ペンタゴンによると、この基地は商用電力網から独立し、独自の発電設備、自律型システム、高度な防空機能を備えたものになるということだ。

「自家発電、近代的な防空システム、最先端技術を備えた、数十万エーカー(数千平方キロメートル)規模の施設だ。まさに要塞(fortress)だと考えていただきたい」とヘグセス長官は語った。将兵には「最高級の兵舎や世界水準の訓練施設」が提供され、その家族には「質の高い住宅、学校、保育、医療施設を備えた活気あるコミュニティ」が用意されることになる。

ヘグセス長官は、国防総省のエネルギー・施設・環境担当次官補であるデール・R・マークスに対し、国防総省が進める基地の最適地の特定、評価、選定、および準備に向けた取り組みを主導するよう指示した。

「破壊的技術の急速な進歩、対等な敵対国間での戦略的連携の強化、そして国防や国土の重要インフラに対する執拗かつ巧妙なサイバー攻撃の継続、これらにより、現代的かつ強靭な態勢の構築が不可欠となっている」とヘグセス長官は水曜日の覚書で述べた。

(4)基地を民間送電網から切り離す「フォートレス・アメリカ」構想(‘Fortress America’ takes bases off civilian grid)

水曜日に明らかにされたもう1つの新たな取り組みが「要塞化されたアメリカ(Fortress America、フォートレス・アメリカ)」構想である。ヘグセス長官はこの構想について、「アメリカ本土のための国家的な保険(a national insurance policy for the American homeland)」になると主張した。

「フォートレス(Fortress)」とは、「強靭性、部隊リソース、エネルギー供給、生存性のための連邦業務(Federal Operations for Resilience, Troop Resources, Energy Supply and Survivability)」の頭文字をとったものであり、ヘグセス長官によれば、この構想の下ではアメリカ内の全ての主要軍事施設が、民間の送電網から独立して独自の電力を供給することになるという。

「敵対勢力がサイバー攻撃や破壊工作、あるいはその他の手段で送電網を停止させたとしても、私たちの基地の明かりは消えない。航空機は飛び続け、指揮センターの機能が停止することもない」とヘグセス長官は語った。

この取り組みはまた、レアアース(希土類)、特殊金属、半導体、推進剤といった重要なサプライチェインを国内回帰させることも意図している。これらは全て「アメリカで採掘され、米国で精製され、米国の労働者によって米国で製造される」ものとなる。

加えて、ヘグセス長官は、弾薬、燃料、医薬品、血液といった極めて重要な物資について、国防総省が戦略的備蓄を積み増すと述べた。その備蓄量は、「世界の供給網が寸断されたとしても、実際の戦争では間違いなく寸断されるものだが、アメリカが戦い続けられるほど十分な規模」にするという。

これを実現するため、ヘグセス長官は、アメリカ軍が「アメリカ国内のあらゆる施設をサイバー侵入、破壊工作、ドローン攻撃に対して強靭化し(hardening)、高地や電波領域、衛星、周波数帯といった優位性を確保している」と語り、国防総省こそが「国家全体の保険(the insurance policy for the entire nation)」になるだろうと主張した。

(5)士官候補生のための非アイヴィーリーグ大学と連携(New non-Ivy League partnerships for cadets)

ヘグセス国防長官はまた、士官候補生の層を拡大するために、新たに5つの大学と提携すると発表した。

「アメリカズ・コア・オブ・カデッツ(America’s Corps of Cadets)」と呼ばれるこの軍事訓練プログラムには、ルイジアナ州立大学、リバティ大学、タスキーギ大学、ミシシッピ州立大学、ヒルズデール・カレッジが参加する。

ヘグセス長官は、「私たちには、士官学校や上級軍事大学といった教育機関から輩出される士官がさらに必要であり、今日、それを実現する」と述べた。

ヘグセス長官によれば、各校は「卓越した軍事大学(distinguished military college)」として位置づけられ、「士官候補生の規律、戦術教育、軍事組織のあり方において、極めて高い水準を維持すること」が求められるという。

アメリカ軍の士官の多く​​は、陸軍士官学校(ウェストポイント)、海軍兵学校(アナポリス)、空軍士官学校といった士官学校から任官しており、テキサスA&M大学やシタデル(サウスカロライナ州の軍事大学)などの上級軍事大学がそれに続いている。

水曜日に公表された国防総省の覚書によると、ヘグセス長官のオフィスは30日以内に実施に着手し、4カ月以内には、アンソニー・タタ国防次官(人事・即応担当)がこのプログラムの主導的な担当部署へと移行することになる。

「アイヴィーリーグからリベラルアーツ・カレッジに至るまで、私たちの大学は、反米的かつDEI(多様性・公平性・包摂性)を崇拝する『ウォーク(Woke)』思想の工場(anti-American DEI [diversity, equity and inclusion] worshipping woke factories)と化してしまった。不屈の精神や勇気といった資質は、ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)や社会正義に取って代わられた」とヘグセス氏は述べた。「神と国家は、チェ・ゲバラやクリティカル・セオリー(批判理論)と置き換えされたのだ」。

(6)宗教問題担当室の設置(Creates Office of Religious Affairs)

ヘグセス長官は最後の宣言の中で、国防総省内に「トップに直属する」宗教問題担当室を設置すると表明した。

「最先端技術、新たな基地や駐留体制、そしてより優れた教育の仕組み、これらは全て、私たちの共和国にとって最も不可欠な要素である『信仰(faith)』がなければ不完全なものに過ぎない」とヘグセス長官は集まった軍人たちに語りかけた。

ヘグセス長官は、部隊がどこに派遣されようとも「最高水準の宗教的支援(first-class religious support)」を提供することは国防総省の「神聖な責務(a sacred duty)」であると述べ、この問題を二の次として扱ってきた過去の政権を厳しく批判した。

「ポリティカル・コレクトネスや世俗的ヒューマニズムは発言権を得たが、従軍牧師(chaplains)はそうではなかった。予算は削減され、資源や人員の必要性は無視され、基地内の礼拝所は荒廃した」とヘグセス長官は主張した。「信仰や宗教に関する決定は、個室にこもる世俗的なキャリア官僚や、お役所仕事の規則を振りかざす弁護士たちによってなされてきた」。

ヘグセス長官は、水曜日から「宗教問題担当室(Office of Religious Affairs)」が「長官への直通ルート」を持つことになり、この部局は「予算の確保、インフラ整備の要求、そして宗教的支援の強化」を行うことになると述べた。

ヘグセス長官は頻繁に自身の信仰について言及しており、軍人の精神的な健康は、身体的・精神的な健康と「同等に重要である」と明言している。

ヘグセス長官は今年初め、アメリカ軍の従軍聖職者団(Chaplain Corps)の制度を刷新し、聖職者である将校が階級章を着用するのを廃止し、代わりに自身の宗教的所属を示す記章を着用すると発表した。これは従軍聖職者団組織に対する2つの大きな変更点の1つだ。

(7)ヘグセス長官が将官の削減を擁護(Hegseth defends officer cuts)

演説の冒頭で、ヘグセス長官は国防総省における将官(陸軍・空軍の将官および海軍の提督)の20%を削減するという自身の計画を擁護し、国防総省においてこの大規模な刷新は長らく必要とされていたものだと主張した。

「メディアはこれを粛清(a purge)と呼ぶが、私はこれを説明責任(accountability)であり、長らく遅れていた措置、率直に言えば、最低限必要なことだと捉えている。いつものことだが、メディアが非難の言葉として投げかけるものを、私はむしろ成果(an accomplishment)として誇りに思っている」とヘグセス長官は述べた。

ヘグセス長官は「私は申し上げたい、その組織文化を助長してきた当の本人たちを使って、文化を変えることなどできない。どの階層においても、人事はすなわち政策そのものなのだ」と語った。

この動きは陸軍、海軍、空軍の全軍にわたる上級幹部職に影響を及ぼすものであり、ヘグセス長官が将官の数を10%削減する措置を主導してから1年を経て実施されるものとなる。

彼はすでに各軍種にわたり20人以上の高級将校を解任または退任に追い込んでおり、こうした人事異動は、与野党双方の連邦議会議員に動揺を与えている。

ヘグセス長官は演説の中で次のように述べた。「昨年の演説は、あの将軍たちに向けたものではなかった。あれはあなた方、つまり私たちの軍の屋台骨であり、最前線に立つ現在および将来のリーダーたちに向けたものだった」

(貼り付け終わり)

(終わり)


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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ダン・ドリスコル陸軍長官が辞任の見通しとなった。それに合わせて、デイヴ・フィッツジェラルド陸軍次官代理も辞任の見通しだ。ドリスコル長官については、上司に当たるピート・ヘグセス国防長官との間での軋轢が取り沙汰されてきた。しかし、ついにドリスコル長官が陸軍を去ることになった。

 ドリスコル長官については拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)で詳しく取り上げている。ドリスコルは、ノースカロライナ大学卒業後に陸軍に入隊し、4年間勤務し(イラクにも派遣されている)、陸軍少尉で除隊している。その後はイェール大学法科大学院に進み、ここでJ・D・ヴァンス副大統領と知り合い友人となった。地元でヴェンチャーキャピタリストをしていたが、ヴァンスが連邦上院議員に当選すると補佐官となった。ヴァンスとは、軍隊経験(海外派遣あり)、地方の州立大学出身からイェール大学法科大学院、ヴェンチャーキャピタリストという共通点を持ち、まさに盟友と言える存在である。
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ピート・ヘグセス(左)とダン・ドリスコル(中央)

 ドリスコルは有能であったがために、ヘグセス長官に疎まれた。ドリスコルはトランプ大統領からの信任も厚く、ウクライナ戦争に関して、ロシアとウクライナの交渉仲介を任されるということもあった。陸軍の近代化、特にドローン導入では成果を挙げている。これは当然だ。なぜならば、ヴァンス副大統領との盟友ということになれば、ペイパル・マフィアの総帥にしてパランティア社創業者ピーター・ティール、スペースX社のイーロン・マスク、アンドゥリル社のパルマー・ラッキーとの関係も深いということになり、ドローンに関して、スムーズに仕事を進めることができるからだ。また、ドリスコルは人事承認のための議会での公聴会で「これまでの軍産複合体(Military-Industrial Complex)を打破するのが詩文の使命だ」と述べたこともある。連邦議員たちの間でも評価が高かった。それほど有能な部下というのは上司、特に評価の低い上司にとっては脅威に感じられる。

ヘグセス長官は、「ドリスコルが自分に取って代わる存在だ」と考えるようになり、ドリスコルに近いとされる将校や将官たちの昇進を妨げたり、解任したりということが起きた。ドリスコルが陸軍出身であることから彼を評価し、また、ドリスコルに評価される将校や将官が多かったのは当然のことだ。これで陸軍の人事がおかしくなった。結局、ドリスコルが身を引くことになったが、ヘグセス長官の評価は一段と低くなった。これは見方を変えると、トランプがイラン戦争の責任を全部おっかぶせて解任をしやすくなったということもあるが、そうなればトランプ政権にとっては大きな痛手ということになる。

 ドリスコルはヴァンス副大統領が大統領になる場合には、政権の重要なポジションを任されることは確実だ。連邦議会での評価も高いとなれば、人事承認が必要な役職での起用も考えられる。今回の辞任はドリスコルにとって痛手にはならず、かえって評価を高めることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

米陸軍長官が辞任、国防長官と数カ月にわたり緊張関係

BBC NEWS JAPAN

2026年9月1日

https://www.bbc.com/japanese/articles/c1l6vy7y85no

アメリカのダン・ドリスコル陸軍長官が、在任1年半で辞表を提出した。BBCが提携する米CBSが8月31日、確認した。

CBSによると、ドリスコル氏は、ピート・ヘグセス国防長官との数カ月にわたる確執の末に辞表を提出したという。

現在41歳のドリスコル氏は、米史上最年少の陸軍長官だった。ドナルド・トランプ大統領の「ドローン屋」と言われることもたびたびあった。

ホワイトハウスはCBSの取材に声明で回答。ドリスコル氏について、「アメリカを再び強くする」というトランプ氏の政策推進において「非常に効果的」な存在だったとした。また、軍事作戦では「卓越したリーダーシップ」を発揮したとした。

BBCはホワイトハウス、国防総省、陸軍に取材を申し込んでいる。

軍では最近、主要幹部の辞任が相次いでいる。ドリスコル氏はその最新の事例となった。

4月には、ジョン・フェラン海軍長官が突然辞任。ランディ・ジョージ陸軍参謀総長、デイヴィッド・ホドネ陸軍大将、ウィリアム・グリーン陸軍少将らも軍を去っている。

ヘグセス氏は国防長官に就任以来、軍高官を10人以上解任している。それには、海軍作戦部長や空軍副参謀総長も含まれる。

ドリスコル氏とヘグセス氏の水面下での摩擦は、詳しいことは明らかになっていない。CBSによると、ヘグセスが辞任を求めたとされるジョージ氏は、ドリスコル氏の親しい友人だという。

●副大統領と友人関係

陸軍長官は、陸軍の文民指導者のトップ。現役兵に加え、州兵および予備役兵も指揮する。

トランプ氏による国内各都市への州兵派遣では、ドリスコル氏が重要な役割を果たした。

ドリスコル氏はかつて陸軍に所属していた。2007年には将校を務め、2009年には機甲小隊を率いて数カ月間、イラクに派遣された。

陸軍長官になると、戦場で活用可能な新たなテクノロジーを積極的に取り入れ、トランプ氏の「ドローン屋」として知られるようになった。

昨年は、ロシアとウクライナの戦争の終結を目指す協議で、主導的な役割を担った。複数の外国を訪れ、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。

ドリスコル氏は、J・D・ヴァンス副大統領とも親しい。両者はイェール大学ロースクールで出会った。

ドリスコル氏は陸軍長官在任中、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局の局長代理も務めていた。

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ピート・ヘグセス国防長官がダン・ドリスコル陸軍長官の辞任を通じて陸軍に自身の意向を強いる(Hegseth imposes his will on Army with Driscoll resignation)

フィリプ・ティモティジャ、サラ・デイヴィス筆

2026年9月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/6064658-hegseth-consolidates-pentagon-power/

ダン・ドリスコル陸軍長官の辞任は、ピート・ヘグセス国防長官が就任から20カ月近くを経て、国防総省に対して自身の意向をますます強く反映させるようになっている現状を浮き彫りにしている。

ドリスコル長官の予想より早い退任は、ヘグセス長官との数カ月にわたる緊張関係の末のことだった。ヘグセス長官は、国防総省の官僚的な組織構造を刷新する取り組みの一環として、数十人の軍高官を更迭したり、その昇進を停滞させたりしてきた。

元陸軍州兵将校であるヘグセス長官は、国防総省に着任して以来、特に陸軍に関心を寄せてきた。現在、陸軍には文民・制服組の双方において、連邦上院の承認を受けたトップが不在の状態にある。

陸軍予備役大佐として退役したケビン・キャロルは、「彼は間違いなく権力を集中させており、ラニーヴ大将のような、自分に対して忠実な人物を陸軍参謀総長代行などのポストに起用している」と指摘している。キャロルは、ヘグセス長官が陸軍参謀総長代行に指名したクリストファー・ラニーヴ大将について言及している。

ヘグセス長官は4月、ランディ・ジョージ陸軍参謀総長を解任したが、この動きは連邦議会の一部の共和党議員を動揺させた。

退役海軍少将のマーク・モンゴメリーによると、これにより陸軍は「異例の状況(unusual condition)」に置かれることになる。モンゴメリーは、ドリスコル長官の辞任について「残念ではあるが予想通りだ」と述べた。その背景には、4月初旬のジョージ陸軍参謀総長解任をめぐるヘグセス長官との対立や、最近のクリス・ドナヒュー将軍(在ヨーロッパ・在アフリカ米陸軍司令官)の退役といった経緯がある。

在任期間が2年に満たなかったジェイムズ・ミンガス陸軍参謀次長も、10月に理由が明かされないまま退役しました。その後任として、トランプ大統領とヘグセス長官は、ヘグセス長官の元軍事顧問であるラニーヴを選出した。

国防総省はラニーヴ大将を陸軍参謀総長として承認させるように動いているが、ラニーヴについては与野党双方の上院議員から反対論が出ている。

現在、「民主政治体制防衛財団(the Foundation for Defense of Democracies、FDD)」の上級研究員を務めるモンゴメリーは、ヘグセス長官が前例のない人事異動を強行しており、それによって陸軍の力が弱まっていると指摘した。

モンゴメリーは火曜日、本誌のニューズサイトに対し、「ヘグセス長官は、陸軍の即応態勢を弱体化させていると考える」と語った。その理由として、重大な戦力不足を挙げ、この不足はイランとの大規模な戦闘作戦を遂行する統合軍の能力に影響を及ぼしているほか、ロシア、中国、あるいは北朝鮮と戦うことになった場合にも同様の困難をもたらすだろうと述べた。

本誌が先週最初に報じたところによると、ヘグセス長官はドリスコル長官の後任として、自身の上級アドヴァイザーであり国防総省の首席報道官を務めるショーン・パーネルを検討している。この件に詳しい情報筋が火曜日に本誌に語ったところによれば、パーネルはここ数日、この指名の可能性についてホワイトハウスと連絡を取り合っているという。

国防長官室や統合参謀本部での勤務経験を持つキャロルは、パーネルが連邦上院の承認を得るには苦労する可能性があると指摘した。キャロルは、パーネルが2021年、3人の子供の親権をめぐる法廷闘争に敗れた後、ペンシルヴァニア州での連邦上院議員選挙への出馬を取り止めた経緯に言及した。

元陸軍将校でヴェンチャーキャピタリストでもあるドリスコルは、陸軍に対し、装備の近代化、隊員の生活環境の改善、そしてウクライナ軍からドローン戦の知見を学ぶことなどを推進してきた。

こうした取り組みの一部は、超党派の評価を得ていた。4月には、ある民主党の連邦議会スタッフが本誌の取材に対し、陸海空三軍の各長官の中でドリスコルが最も優れた仕事をしていると語っていた。

火曜日には、民主党と共和党の双方から、ドリスコルの退任に対する不満の声が上がった。

連邦上院軍事委員会のメンバーであるマイク・ラウンズ連邦上院議員(サウスダコタ州選出、共和党)は記者団に対してドリスコル長官の退任を知って「失望した」と述べた。

ラウンズ議員は「私も他の人たちと同じ噂を耳にしている。つまり、ドリスコルは、自身の部下になるトップクラスの将軍たちが解任されたことに不満を抱いていたという話だ」と語り、「そうした話を聞くのはこれが初めてではない」と付け加えた。

連邦下院軍事委員会のメンバーであり、過去にヘグセス長官を批判したこともあるドン・ベーコン連邦下院議員(ネブラスカ州選出、共和党)は、憲法上ヘグセス長官には3つ星や4つ星の将軍を解任したり昇進を阻止したりする権利があるものの、だからといってそれが「道徳的に正しいわけでも、賢明なことでもない」と述べた。

元空軍准将であるベーコン議員は火曜日、CNNに出演した際、「多くのアメリカ人は、より高い品位、そして何よりも敬意を求めていると思う」と語った。「敬意とは、誰かを解任する際にはその理由を説明すべきだということだ。しかし、ここではそうしたことが行われていない」。

連邦下院外交委員会の筆頭委員であるグレゴリー・ミークス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、「国防総省」および「全軍」の状況を懸念していると述べた。

「彼らが行っているのは、キャリアを通じて合衆国を支持し守るという厳粛な宣誓を立ててきた人々を・・・追い出すことのようだ。それも、かつてはフォックスニューズのコメンテーターであり、現在はその地位に据えられた人物によってだ。その人物は、追い出そうとしている将軍が持つ知識や能力には遠く及びもしない。比較にもならない」とミークス議員は火曜日に記者団に語った。

ミークス議員はさらに、辞任すべきなのはヘグセス長官の方だと付け加えた。

ドリスコル長官の議会対応に詳しい関係者たちは、ドリスコルが超党派の支持を集めていたことが、ヘグセス長官との主導権争いにおいては必ずしもプラスには働かなかったと指摘した。

ドリスコル長官の辞任について、匿名を条件に語ったトランプ政権の元高官は、火曜日に本誌に対して次のように述べた。「人事承認手続きの際には強みとなっていた要素の1つが、長期的には彼にとってマイナスに働いた可能性がある。それは、既存の人間関係に基づいた超党派の支持を得ていたという点だ」。

連邦下院軍事委員会のメンバーであるリッチ・マコーミック連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は、ドリスコルの退任をめぐる懸念を一蹴した。

「『今、この時』において、また外国の敵対勢力に対して戦闘を遂行する能力という点では、戦術レベルの指揮官たちの方がはるかに重要だ。従って、私たちの体制は万全だと言える」とマコーミックは本誌に語った。「陸軍はしっかりと準備を整えてきた」。

マコーミック議員はまた、ヘグセス長官が陸軍将校4名の准将(1つ星将官)への昇進を阻止した決定についても言及した。

マコーミック議員は、「私の理解では、彼らが政治的であることへの懸念があったようだ。私たちは、大統領の信任があってこそ職務に就いている」と述べた。

ヘグセス長官は最近、陸軍将校4名の昇進を阻止したが、その中にはジョージ大将やドナヒュー大将とつながりのある人物も含まれていたと本誌は以前報じている。

「次期准将昇進者リストに対するヘグセス長官の介入は全く不適切であり、違法である可能性さえある。ドリスコル長官としては、そうしたことには一切関わりたくなかったのだろう」とモンゴメリーは火曜日に語った。

他の共和党議員たちも、ドリスコル長官のリーダーシップに感謝の意を表した。

スティーヴ・ウォマック連邦下院議員(アーカンソー州選出、共和党)は月曜日遅く、ドリスコル長官を「陸軍に常識と規律をもたらした、変革をもたらすリーダー(a transformative leader who brought common sense and discipline)」と称賛した。

連邦下院軍事委員会のメンバーであるパット・ハリガン連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は、ドリスコル長官が職務に持ち込んだ「切迫感(urgency)」を評価し、陸軍の近代化に向けたドリスコル長官の取り組みに言及した。

ハリガン議員は「『修理する権利(Right to Repair)』から調達プロセスの近代化、そして兵士への信頼と能力の付与に至るまで、ダンは既得権益化したシステムに立ち向かい、あまりにも長い間疑問視されてこなかった前提に挑戦しようとした」と述べた。ハリガン議員は月曜日遅くこのように記し、ドリスコル議員を「友人」と呼んだ。

ヘレン・ハスキーズとアレクサンダー・ボルトンがこの記事の作成に貢献した。
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ダン・ドリスコル陸軍長官がピート・ヘグセス国防長官との数カ月にわたる縄張り争いの後で辞任する(Army Secretary Driscoll resigns after months-long turf war with Hegseth)

フィリプ・ティモティジャ筆

『ザ・ヒル』誌

2026年8月31日

https://thehill.com/policy/defense/6062211-army-secretary-driscoll-to-depart-pentagon/

内部の事情に詳しい2人の関係者が本誌の取材で明らかにしたところによると、ダン・ドリスコル陸軍長官は数日中に国防総省での職を離れる見通しとなった。ドリスコル長官は、ピート・ヘグセス国防長官との間で数カ月にわたって続いた主導権争いに巻き込まれたが、ついにトランプ政権を去ることになる。

1人の関係者が月曜日に本誌に語ったところによると、ドリスコルはトランプ大統領と陸軍の「現状(current state)」について話し合い、その後で辞表を提出した。

ホワイトハウスのアンナ・ケリー報道官は月曜日、本誌へのの声明で次のように述べている。「ドリスコル長官は、歴史的な軍事作戦において卓越したリーダーシップを発揮し、即応態勢と戦闘能力の重視を回復させ、ロシアとウクライナ間の交渉を支援するなど、陸軍省においてトランプ大統領の『アメリカを再び強くする(Make America Strong Again)』という政策課題を推進する上で、極めて大きな成果を上げた」。

ケリー報道官はさらに、「最高司令官(大統領)や国防長官と連携したドリスコル長官の尽力のおかげで、アメリカ陸軍はかつてないほど強力なものとなっています」と付け加えた。

ドリスコルが国防総省を去れば、陸軍は連邦上院の承認を受けたトップを欠くことになる。ヘグセスに近いクリストファー・ラニーヴ将軍は、4月にヘグセス国防長官がランディ・ジョージ陸軍参謀総長を解任して以来、陸軍参謀総長代行を務めている。

ドリスコルの広報担当者はコメントを拒否した。

事情に詳しいある関係者によると、デイヴ・フィッツジェラルド陸軍次官代理も今週中に職を辞任する見込みだ。

J・D・ヴァンス副大統領の強力な盟友であり、ジョージ前陸軍参謀総長と緊密な協力関係を築いていたドリスコルは、レイバー・デー(9月の労働者感謝の祝日)の「頃」に退任することに前向きだったが、ホワイトハウスは少なくとも11月の中間選挙までは留任することを望んでいたと本誌は以前報じていた。

ドリスコル長官は陸軍に対し、装備の更新や、ウクライナ軍から学んだ民間技術の活用による戦闘能力の近代化、そして隊員の生活環境の改善を強く進めてきた。

本誌の以前の報道によると、ヘグセス長官とドリスコル長官の間では数カ月にわたり主導権争いが続いており、昨年、トランプ大統領がロシア・ウクライナ戦争の終結を目指してウクライナ当局との交渉役にドリスコル長官を指名した際、両者の緊張はさらに高まった。

ヘグセス長官は国防総省のトップに就任して以来、ドリスコル長官の側近を含め、20人以上の軍高官を解任している。

ヘグセス長官は4月初旬にジョージ陸軍参謀総長を更迭したが、この動きは、2月にドリスコル長官の顧問であるデイヴィッド・バトラー大佐の解任を命じたことと併せ、連邦議会の一部の共和党議員に動揺を与えた。なお、陸軍参謀次長のジェームズ・ミンガス大将は2025年10月に退任した。

本誌が先週最初に報じたところによると、ヘグセス長官はドリスコル長官の後任として、自身の上級アドヴァイザーであり国防総省の首席報道官も務めるショーン・パーネルを検討している。

ドリスコルの辞任については、『ウォールストリート・ジャーナル』紙が先んじて報じた。

陸軍参謀総長代行を務めるラニーヴ大将が連邦上院軍事委員会を通過するには共和党連邦上院議員全員の支持が必要となるが、与野党双方の上院議員から反対論が出ている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を罵倒したという報道についてはすでにご紹介した。「狂っている」「何をやっているんだ」「ますます嫌われるぞ」ということを使ってはいけない言葉「fuck」を交えて浴びせたということだ。もっとひどい内容もあったのではないかと推察される。トランプの一連の発言は、「お前にはすっかり騙された」「イランが、イスラエルがレバノン攻撃を停止しないと和平交渉をしないと言ってきている、俺たちの邪魔をするな」という気持ちがよく出ている。

 トランプがここまで感情を爆発させたのは、今回のイラン攻撃、イラン戦争が完全に失敗、大失敗、大失策だということを認めており、和平交渉もうまくいっていない、イスラエルのせいでさらに状況が悪くなるということを認識しているからだ。さらに「ますます嫌われるぞ」というのは国際ツ的な孤立を危惧しており、アメリカがイスラエルと一緒に孤立することは望ましくないということも考えの中にあったということだろう。

 トランプが融通向けであること、自分の過去の発言や行動には全く縛られずに、くるくると態度を変えるということは世界中の人々が目撃し、そのような人物だと認識している。従って、「私は間違った判断をした」という言葉もさらっと言ってしまえるだろう。しかし、そのためには、「自分を間違いに導いた主要な責任者を差し出す」ということが必要になる。スケープゴートについて言及し、「こいつのせいなんだ、こいつが悪いんだ、こいつに責任があるんだ」ということが言えなくてはならない。犠牲の羊の候補者は、アメリカ側では、ピート・へぐセス米国防長官、外国では、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。へぐセス長官は、イスラエルのネタニヤフ首相がイラン攻撃を売り込んだ際に、トランプ政権の閣僚たちが不安を感じ、反対する中で、前のめりで賛成した。イラン攻撃後に、トランプが「ピート、君がやれと言ったよな」と記者会見で発言したこともある。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はなんと言っても、ホワイトハウスまで出向いて、トランプ大統領と閣僚たちを前にして、1時間にわたり、イラン攻撃のメリットをプレゼンしたという事実がある。イスラエルだけではイランへ大規模攻撃をすることができない。アメリカを巻き込めるかどうかがカギだったが、それに成功した。しかし、イラン攻撃、イラン戦争自体は失敗だった。トランプとしては、ネタニヤフ首相に責任をかぶせることが良い選択肢となる。

 トランプ大統領としてはイスラエルを切り捨て、イランと和平を結び、中東地域から出ていきたい。イスラエルは既に中東地域のイスラム教国のいくつか(代表格はUAE)を取り込んでいる。ここにアメリカとイスラエルの分裂線がある。イスラエルはアメリカに見捨てられたらどうしようもない。アメリカにしがみつこうとするだろう。それならば、アメリカが支援し続けるためには、落とし前をつけてもらおう。それはネタニヤフ首相を退陣させろ(汚職で逮捕するかどうかはイスラエル国内で話し合って判断しろ)ということになるだろう。イスラエル国内で反米感情が沸き上がることも考えられる。しかし、根本に立ち返るならば、極右勢力を政治の主流に据えないということになり、イスラエル国内政治が浄化されねばならないということになる。これは日本も同じような状況である。

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トランプは自分が大失敗したと認めるべきだ(Trump Should Just Admit He Screwed Up)

-イラン戦争は明白に間違いだった。なぜそう言わないのか?

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年5月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/28/trump-iran-war-mistake-admit/

アメリカとイランの間で噂されている和平合意の詳細、あるいはそもそも合意が成立するかどうかも不明だが、3桁のIQを持つ者なら誰でも、イスラエルとアメリカが戦争を始めた時点でとてつもない大失敗(a colossal blunder)をしたことを理解している。アメリカとイスラエル両国が掲げた目標は1つも達成されていない。イラン政権は崩壊せず、核兵器を放棄せず、ミサイルとドローンの能力はそのまま維持されている。イランは、近隣諸国に甚大な被害を与えたいと思えばいつでもホルムズ海峡を封鎖できることを実証した。ドナルド・トランプ米大統領とピート・ヘグセス米国防長官が過去3カ月間繰り広げてきた自慢話や威勢のいい発言は、くだらない大言壮語(hot air)に過ぎなかったことが暴露された。

和平合意が成立すれば、トランプ政権はこの豚に大量の口紅を塗りつけ、一種の戦略的勝利(strategic victory)だと主張するだろう。しかし、納得する人はほとんどいないだろうし、こうした努力はトランプ大統領とその取り巻きの追従者たちを滑稽に見せるだけだ。この大失敗を成功と偽る説得力のある方法はどこにもない。彼らがそうしようとすればするほど、妄想に取り憑かれているように見えるだろう。

そこで私は考えた。もしトランプ大統領が自分の大失敗を認めたらどうなるだろうか? 大失敗を認めることは彼の得意分野ではないが、その点では彼だけではない。政治家は、たとえ誰の目にも明らかな大失敗であっても、大失敗を認めることはほとんどない。ましてや重要なこととなるとなおさらだ。例えば、ボリス・ジョンソン元英首相はブレグジットを擁護し続け、マイク・ポンペオ元米国務長官は、イラク侵攻(2003年)と第一次トランプ政権のイラン核合意破棄(2015年)は賢明な判断だったと今も主張している。

こうした明らかな大失敗を認めようとしない姿勢は、少々不可解だ。誰もが知っているように、完璧な人間など存在しないし、外交政策は不確実なものであり、どんなに綿密に練られた計画でも失敗する可能性がある。トランプよりも賢明で衝動性が低い指導者であっても(もっとも、トランプを基準にするのは低いのではあるが)、全てを完璧にこなせる指導者など存在しない。また、ほとんどの人は、失敗したときは、大失敗を認め、経験から学び、同じ大失敗を繰り返さないようにすることが最善策だと学ぶ。当然のことながら、高額な代償を払い続ける指導者は、いずれその代償を支払うことになるだろう。しかし、概して職務を立派に遂行し、時折の過ちを認める勇気を持つ当局者は、国民が彼らの最善の努力を認め、その誠実さを評価すれば、より人気が高まるかもしれない。

しかし、この道を選ぼうとする指導者はほとんどいないようだ。独裁者は特に間違いを認めることを嫌がる。なぜなら、彼らの権力は通常、個人崇拝(cults of personality)と、自分たちが絶対無謬であるという幻想(the illusion that they are infallible)を維持することに依存しているからだ。しかし、民主政治体制の指導者でさえ、たとえ些細な間違いでも認めれば、反対派がすぐに攻撃してくることを知っているため、在任中は間違いを認めることをためらう。例えば、ジョン・F・ケネディはピッグス湾事件の失敗について全責任を負い、バラク・オバマはトム・ダシュルを米保健福祉省長官に任命した初期の決定(ダシュルの脱税が発覚して裏目に出た)を認め、ロナルド・レーガンはイラン・コントラ事件が間違いだったことをほぼ認めた。しかし、このような瞬間は稀だ。2004年にジョージ・W・ブッシュ米大統領が最初の任期中に犯した間違いを思い出すように求められたとき、彼は1つも挙げることができなかった。政治家が失敗を認めるのを見たいなら、たいていは回顧録が出るまで待たなければならないが、それでも期待外れに終わるかもしれない。

しかし、トランプは政治家としてのキャリアを通して規範を壊し続け、そのテフロンのような耐性はレーガンさえも凌駕する。考えてみて欲しい。彼はかつて「五番街で人を撃っても支持者を失うことはない(he could shoot someone on Fifth Avenue and not lose any voters)」と豪語した人物だ。そして残念なことだが、この発言は彼の最も的確な言葉の1つであることが証明されている。近年のアメリカ大統領の中で、カメラの前で大失敗を認め、そして前に進むことができる人物がいるとすれば、それはトランプだろう。実際、彼は過去にそうしたことがあるが、過去の反省の態度が本心からのものだったかどうかは疑問だ。

そして、それはそれほど難しいことではないかもしれない。トランプはまず、イラン問題が長年にわたり厄介な問題であり、歴代大統領も解決できなかったことを人々に思い出させることから始めればよい。彼は、この問題をきっぱりと解決したかったと主張し、もう一度爆撃すれば効果があると考えた十分な理由があったと説明できるだろう。イランの政権が不人気で、年初にデモの波を鎮圧せざるを得なかったことを指摘することもできる。この計算は大きく間違っていたことが判明したが、トランプ流の典型的なやり方で、何事も100%確実ではないと人々に思い出させ、自分の仕事は難しい決断を下すことだと述べ、様々な方面から受けた悪い助言のせいで間違いを犯したと非難することができるだろう。ここで彼は、トランプの好戦的な態度がトランプに何の利益ももたらさず、アメリカとイスラエルの両方でますます不人気になっているイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を非難することができるだろう。ネタニヤフがどれほど評判を落としているかを考えると、彼をスケープゴートにすることは、この時点でトランプの人気を高めることさえあるかもしれない。

トランプは、自身の意図は称賛に値するものであり、今回の策略は価値のある賭けだったと主張した後、この一件から多くを学んだと述べ、前任者たちと対比させるだろう。彼の声が聞こえてくるようだ。「眠そうなジョー・バイデンとは違い、彼は何事にも考えを変えず、同じ失敗を繰り返すばかりだった。私は常に学び続け、適応力のある、非常に安定した天才だ」。そして、ホワイトハウスの物議を醸している舞踏室プロジェクトなど、別の話題に移るだろう。

トランプが、数々の失策を重ねてきた2期目における最も深刻な失態に対して、このようなアプローチを取ると期待できるだろうか? 正直に言って、そうは思わない。トランプは、過去に時折、大失敗を認めてきた(たいていは、無能な任命者を解任せざるを得なくなった時だが)。しかし、重大な失敗を認めることは、彼の権力のオーラを損ない、より多くの人々が公然と彼に反抗するようになり、偉大な大統領として記憶されるという彼の夢(his dream of being remembered as a great president)を打ち砕くことになると、彼は考えているのだろう。たとえそれが今となってはどれほど可能性が低くなっているとしても諦めていないだろう。トランプの支持基盤であるMAGA支持者たちは今後も彼を支持し続けるだろうが、数カ月後には彼らだけがトランプの頼みの綱となるかもしれない。

紛争終結を遅らせることで、トランプは敗北寸前の状況から勝利の幻想を無理やり掴み取ろうとしているが、これはアメリカとその同盟諸国が被っている苦痛をさらに増幅させ、トランプ自身の評判にもさらなるダメージを与えている。彼が自らの失敗を認め、前に進む方が皆にとって良いだろう。しかし、高齢の親から車の鍵を取り上げた経験のある人なら誰でも知っているように、頑固な高齢者はしばしば自分の利益を理解できないものだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ウォルトは『新地政学(The New Geopolitics)』の著者。これは今日の世界を生き抜くために活用すべき最も重要な概念を解説した、全5回のニュースレター形式のマスタークラスだ。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt

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(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ピート・ヘグセス国防長官が陸軍人事に介入し、アメリカ陸軍制服組トップのランディ・ジョージ陸軍参謀総長を更迭した。へぐセス国防長官はこれ以外にも、陸軍の文民(civilian)トップダン・ドリスコル陸軍長官と何度か衝突を繰り返している。そうした中で、ドリスコルと親しいジョージが辞任と現役からの退役を求められたという報道がデイル。ドナルド・トランプ大統領とホワイトハウスは現状について静観する構えを見せている。

 ダン・ドリスコルについては拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社、2025年11月)で詳しく紹介した。ドリスコルは、J・D・ヴァンス副大統領とはイェール大学法科大学院以来の友人であり、お互いに軍務経験を持ち、地方の州立大学出身という共通点を持つ。ヴァンスが連邦上院議員当選後は、ドリスコルが補佐官を務めた間柄でもある。ヴァンスと親しいということは、当然のことながら、ピーター・ティールとも親しいということになる。

ドリスコルは、陸軍長官就任に際しての、連邦議会での公聴会で、「これまでの軍産複合体を構成する巨大企業(primeと呼ばれる)の1つを倒産させることが私の責務だ」という過激な発言を行ったが、将兵の数でいえばアメリカ5軍(陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊)でも最大規模であり、武器や装備に関しても大規模である陸軍のトップとして、これまでの軍産複合体に喧嘩を売った。これはつまり、ヴァンスを通じて関係の深い、ピーター・ティールやイーロン・マスクが形成しようとしている、新・軍産複合体を使うという宣言である。実際に、ドリスコルは、ドローンの積極活用を進め、トランプ大統領から賞賛の言葉をかけられている。

 このように見ていくと、アメリカ政府内の小さな事件が大きな構造の中での動きを示していることが分かる。ドリスコルは、トランプの後継者となるヴァンスの側近として、これからさらに重要な役割を果たすようになっていくだろう。

(貼り付けはじめ)

ピート・ヘグセス国防長官と対立したダン・ドリスコル陸軍長官が「辞任や退任」の計画はないと述べる(Army secretary who clashed with Hegseth says he has no plans to ‘depart or resign’)

フィリップ・ティモティジャ筆

2026年4月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/5821970-driscoll-army-secretary-future/

ダン・ドリスコル陸軍長官は、昨年からピート・ヘグセス国防長官との間で度々緊張関係が続いているものの、陸軍長官を辞任するつもりはないと述べた。

ドリスコル長官は、『ザ・ヒル』誌への声明の中で、「ドナルド・トランプ大統領の下で働くことは生涯最高の栄誉であり、私はアメリカに世界最強の地上戦闘部隊を提供することに引き続き全力を注いでいる。陸軍長官を辞任するつもりはない」と述べた。

ドリスコル長官の発言は、2025年2月から務めているドリスコルの陸軍長官としての将来について、ホワイトハウス関係者の間で議論が交わされていたと報じられている中でなされた。これは、ヘグセス国防長官が、ドリスコル長官と親しいヴェテラン軍人であるランディ・ジョージ陸軍参謀総長を解任した後のことだ。

ドリスコルはイラクに派遣された経験を持つ元陸軍将校であり、ヴァンス副大統領の親しい友人である。

ドリスコルの立場について問われたホワイトハウスは、ヘグセス、ドリスコル両政治任用者を称賛した。

ホワイトハウス報道官のアンナ・ケリーは水曜日、『ザ・ヒル』誌に対する声明の中で、「トランプ大統領は、ヘグセス長官やドリスコル長官のような指導者の尽力により、アメリカ軍全体の即応性と戦闘能力の向上に効果的に注力する姿勢を取り戻した」と述べた。

ケリー報道官は「壮大な怒り作戦(Operation Epic Fury)』を通じて、アメリカ陸軍と国防総省全体の並外れた能力が存分に発揮され、全ての軍事目標が達成され、イランの軍事力は低下した」と、ペンタゴンを指す政権の常用名称を用いて述べた。

ドリスコル長官の発言は、『ワシントン・ポスト』紙が最初に報じた。

ヘグセスとドリスコルは、軍将校の昇進問題を含め、複数の面で対立してきた。国防長官はまた、テネシー州にあるキッド・ロックの邸宅付近で軍用ヘリコプター2機を操縦した陸軍の乗組員に対する停職処分を解除し、軍による当該隊員への調査を中止させた。

トランプ大統領は、過去にアメリカのドローン能力強化におけるドリスコルの功績を称賛していたが、イランとの戦争の最中、ヘグセスにも賛辞を送った。

トランプ大統領は月曜日、国防長官について「私が言えるのは、彼は非常に不当な扱いを受けたということだ。そして今、彼を不当に扱い、彼に反対していた同じ人々が私に電話をかけてきて、彼がいかに素晴らしい人選だったかを語っている」と語った。

トランプ大統領は「彼に反対していた人たち―連邦上院議員や私の友人たち―が、『大統領、あなたは正しいことをしていると考えませんでした』と言って私に電話をかけてくるなんて、なんて人選だったことだろう」とホワイトハウスで記者団に語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 2026年2月28日にアメリカとイスラエルがイランに対して大規模な軍事攻撃を行った。イラン政府や軍の指導者層の多くが死亡した。最高指導者であるアリ・ハメネイ師も自宅に攻撃を受けて死亡した。その後、イランがイスラエルとペルシア湾岸地域にあるアメリカ軍基地を中心にして報復攻撃を実施している。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、攻撃実施後に、イラン国民に対して、現政府に対する蜂起を呼び掛けたがそのようなことは起きなかった。また、短期間で指導者たちを殺害して、イラン政府の機能不全を引き起こそうとしたが、そのようなことも起きなかった。イラン革命防衛隊はホルムズ海峡封鎖を通告し、民間のタンカーの航行できない状況になり、世界経済に悪影響を及ぼしている。アメリカ軍はタンカーの護衛を拒否している。イランから攻撃を受ける可能性が高いということを理由に挙げている。先制攻撃でイランを無力化するというアメリカとイスラエルの目論見は完全に外れたことになる。アメリカ制服組トップの統合参謀本部議長のダン・ケイン大将は、イラン攻撃について、リスクが高いという内容の報告書を出し、反対の意向を表明していたが、トランプ大統領は無視して攻撃を実行し、このような状況を引き起こした。責任は挙げて、アメリカ軍最高司令長官(commander-in-chief)であるドナルド・トランプ米大統領にある。

 そして、今回、アメリカをイラン攻撃に引きずり込んだのは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相である。ネタニヤフは自身のスキャンダルを抱え、有罪判決を受けると懲役を科されるということから戦争状態を維持し、選挙に勝ち続ける必要がある。また、イスラエルとしてはイランが弱体化することは望ましい。しかし、イスラエル単独でイランを大規模攻撃することはできない。そのために、これまでイランを攻撃することはできなかった。しかし、そこにトランプ大統領が出現した。「イランを攻撃するほど愚鈍な大統領」の出現はネタニヤフにとって僥倖となった。2025年だけで6回もホワイトハウスを訪問し、そこで、トランプを洗脳に近い形で説得して、イラン攻撃まで漕ぎつけた。

 イランは攻撃で大きな打撃を受けたが、反撃ができないほどの打撃ではなかった。そして、イランは2025年に続いて、軍事攻撃を受けたことで、アメリカとイスラエルからの攻撃は「国家存亡の危機」と位置付けて、総力を挙げて反撃を行っている。ここは攻撃を仕掛けた側であるアメリカとイスラエルにとって大きな誤算となった。この誤算は世界にとっての大きな不幸である。イスラエルは今回のイラン攻撃を実行したことで、世界からの信頼を失い、反イスラエル感情は高まるだろう。ここで注意すべきは、反ユダヤ感情に走らないことだ。イスラエル、特に現在の指導部、ネタニヤフに対する反感や批判は当然であるが、ユダヤ人全体に対する反感を持つことは間違っている。

 アメリカはウクライナ戦争に置いてウクライナへの支援を続け、同時にイラン戦争では、イスラエルを支援しながら、アメリカ軍を使っての攻撃も実施なければならない。アメリカの国力に一定程度のダメージを与えることになる。今回のイラン攻撃はアメリカにとって国益を損なう、最悪の選択だということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ベンヤミン・ネタニヤフ首相が今、イラン攻撃を選択した理由な何か(Why Netanyahu Chose to Strike Iran Now)

-数十年にわたり戦争の脅威を強調してきたイスラエルの指導者は好機が閉ざされていると悟っている。

ユーセフ・モナイヤー筆

2026年3月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/10/iran-war-us-israel-netanyahu-trump-elections-corruption-trial/

2026年3月1日、アメリカとイスラエルによって爆弾がテヘラン上空に投下された際、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イランとの戦争は「40年間も待ち望んでいた」ことだと語った(war with Iran is something he has “longed to do for 40 years”)。この発言は、なぜ彼が今になってようやくこのような対立を引き起こすことを選んだのかという疑問を提起する。

過去30年間、数年に一度、ネタニヤフは、イランの核兵器取得を阻止する窓(機会、window)が失われつつあると、ほとんど滑稽なほど繰り返し主張してきた。しかし、昨年の夏、いわゆる 12日間の戦争の終わりに、ドナルド・トランプ米大統領は、前例のないアメリカの攻撃によってイランの核開発計画は「全滅(obliterated)」したと述べた。それ以来、テヘランが核兵器の開発に近づいていることを示唆する証拠はまったく見当たらない。

今回、ネタニヤフ首相が窓(機会、window)の一つ、いや、実際には複数の窓が閉ざされつつあると正しく認識していた。しかし、それらの窓はどれもイランの核開発への野心とは関係がなく、むしろイスラエルとアメリカの政治に大きく関係していた。

ネタニヤフ首相は昨年、ホワイトハウスを過去最多の6回訪問した。これほど頻繁にホワイトハウスに訪問した外国首脳はかつて存在しなかった。アメリカとイスラエルの関係自体が特異な歴史を持つ中で、トランプとネタニヤフの関係は、その親密さにおいて際立っている。

その理由については様々な憶測が飛び交う。ネタニヤフ首相の側近とトランプ大統領の側近との個人的な繋がりが原因なのかもしれない。あるいは、クリス・ヴァン・ホーレン連邦上院議員の言葉を借りれば、ネタニヤフ首相は「ついにイランを攻撃するほど愚鈍な大統領を見つけた」のかもしれない(Or, perhaps, as U.S. Sen. Chris Van Hollen put it, Netanyahu “finally found a president stupid enough to attack Iran”)。確かなのは、トランプが歴代大統領の誰よりもネタニヤフ首相のために尽力してきたということだ。

しかし、この2人には期限がある。両国で選挙が行われるため、早ければ今年中にも期限が来るかもしれない。

イスラエルでは秋に選挙が予定されている。これは、ネタニヤフ首相が近年のイスラエル史上最大の安全保障上の惨事、すなわち、2023年10月7日にハマス主導の攻撃が発生して以来、初めての選挙となる。この攻撃では約1200人が死亡した。イスラエル国民は、この失態について彼に責任を問う機会をまだ得ていない。(ネタニヤフ自身は責任を認めていない。)また、今回の選挙は、イスラエルでアラブ系政党が連合を組む数期ぶりの選挙となる。いわゆる「統一リスト(Joint List)」という政党連合は、イスラエル政権にとって連立の計算を複雑化させる可能性がある。

ネタニヤフの勝利の可能性は、まだ不透明だ。彼は近年の選挙で大規模な連立政権の構築に苦戦しているが、その一因は法的な問題にある。現在進行中の汚職裁判で、彼は数々の容疑に直面しており、有罪判決を受けた場合、数年の懲役刑を科される可能性がある。ネタニヤフは、政権維持を目指し、イランとの戦争をめぐるイスラエル国民の結集を図るとみられる。イスラエル民主政治体制研究所の調査によると、ユダヤ系イスラエル人の圧倒的多数が戦争を支持しているのに対し、パレスティナ系イスラエル人ではわずか4分の1しか支持していない。

一方、トランプはアメリカで中間選挙を控えている。中間選挙は現職大統領にとって有利な結果になることは稀であり、世論調査はトランプにとって特に大きな打撃となる可能性を示唆している。大統領の好感度は、明確な撤退計画のない不人気な戦争を開始する前から低かった。ロイター通信とイプソス社の調査によると、イラン戦争を支持するアメリカ人はわずか4分の1に過ぎない。現在共和党が過半数を占める連邦議会に大きな変化が生じれば、イラン問題をはじめとする諸問題に関して、トランプ大統領の選択肢は狭まる可能性がある。

ネタニヤフ首相とトランプ大統領の狙いが、イランとの戦争を、彼らがほぼ野放しで活動できる時期と捉えることだとすれば、選挙上の理由だけでも、最も安全な賭けは2026年の春から夏だったと言えるだろう。

しかし、もう一つの窓も閉じつつある。それは世論の窓だ。イスラエルはアメリカ国民を失いつつある。先月のギャラップ社の世論調査によると、初めて、イスラエルよりもパレスティナ人に同情するアメリカ人が増えている。この傾向はガザ地区虐殺のずっと前から始まっていたが、虐殺によってさらに加速した。イラン戦争によって世論はさらに低下する可能性が非常に高いということだ。重要なのは、イスラエルが共和党支持者、特に若い世代を失い始めていることだ。過去20年間、アメリカの右派はイスラエルへの支持の基盤となってきた。

第三の窓は、戦争の性質の変化に関係している。イスラエルとイランの間では、秘密作戦や代理戦争が長らく一般的だったが、近年、通常戦争の力学が変化している。イスラエルとイランは2024年に初めて直接攻撃を相互に行った。イスラエルはシリアのイラン領事館を攻撃し、テヘランではハマス幹部を殺害した。イランはこれに対し報復した。両国は昨年も12日間の戦争で交戦した。

イスラエルとイラン両国はこれらの攻撃を通じて、自らの脆弱性について教訓を得た。イランはますます空襲にさらされるようになった。イスラエルも、特定の組み合わせの弾道ミサイルで攻撃された場合、イランの攻撃に対して脆弱だった。重要なのは、アメリカとイスラエルのミサイル迎撃ミサイルは、撃墜を狙ったイランの弾道ミサイルよりもはるかに高価で、供給量も少なく、製造にも時間がかかった。

これはイスラエル、アメリカ、そして地域における同盟国にとって不利なバランスを生み出した。イランとの紛争が長期化すれば、長期的には受け入れがたいコストにつながるだろう。アメリカとイスラエルの迎撃ミサイル生産とイランの弾道ミサイル生産がそれぞれ異なるスケジュールで進められる中で、12日間の戦争でイスラエルが得た戦略的利益は、一時的なものに過ぎなかった。

イラン戦争の原動力(driving force)は、そして今もなお、ネタニヤフ首相だった。複数の機会(窓)が同時に閉ざされる中で、ネタニヤフ首相は、長年抱いてきたアメリカ軍によるイラン爆撃という夢が実現しないかもしれないという現実を直視していた。次世代のアメリカ人がイスラエルから背を向けるにつれ、ネタニヤフはトランプのような愚か者(a sucker)が再び大統領執務室に座ることはないだろうと考えたのだろう。そうであれば、今しかない。

ネタニヤフ首相は、トランプに対して、新しい宴会場のインテリアデザインを提案するために、1年間で6回もホワイトハウスを訪問したのではない。ネタニヤフはアメリカにイラン戦争という自身の夢を実現させたかったのだ。戦争が早期に終結し、イスラエルに大きな負担がかからなければ、ネタニヤフ首相は投獄を免れるかもしれない。ひょっとすると、イスラエルの総選挙で政権にとどまる可能性もある。

しかしながら、中東地域ははるかに深刻な状況に陥るだろう。その過程でアメリカの利益も損なわれ、そのツケはアメリカ国民が負担することになる。皮肉なことに、ネタニヤフ首相とトランプ大統領による戦争こそが、アメリカ・イスラエル関係に致命的な打撃を与えることになる可能性がある。

※ユーセフ・モナイヤー:パレスティナ系イスラエル市民。ワシントンDCにあるアラブ・センター「パレスティナ・イスラエル」プログラム責任者。Xアカウント:@YousefMunayyer

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(終わり)

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権の外交政策はマルコ・ルビオ国務長官が牛耳っている。アメリカの外交政策立案実施の特徴は、国務省とホワイトハウスに二本立てである点だ。が育成策に関して、国務長官(Secretary of State)と国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)が責任者として存在する。2025年5月、国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマイケル・ウォルツが更迭されて(2025年5月)、国連大使に転身してからは、ルビオがこの2つの職位を兼務している。ルビオには大きな権限が集まることになった。そして、トランプ政権は介入主義的な色合いを強めた。昨年のイランの核開発関連施設攻撃(2025年6月)もその一環だ。それが今回のイラン攻撃にまで続いている。

 ドンロー主義はモンロー主義の変化形である。これはアメリカは西半球まで後退するということであり、世界(全半球)帝国ではなく、西半球帝国になるという宣言である。それだと困ってしまうのはヨーロッパとイスラエルである。これらの国々は置き去りにされてしまう。ユーラシア大陸から西半球に引っ越しをする訳にもいかない。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ドナルド・トランプ大統領を洗脳に近い形で説得して、イラン攻撃を行わせた。ネタニヤフは自身のスキャンダルを免れ、国民の不満を外に逸らし、中東地域を不安定化させることで相対的にイスラエルの立場を強化し、そして、アメリカを中東から撤退させないために、イラン攻撃を実施した。彼の賭けは成功した。アメリカは中東から撤退することが出来なくなった。

 トランプ革命、ポピュリズム革命は失敗した。ワシントンの変革(ワシントンの洗濯)のために人々がワシントンに送り込んだトランプはワシントン政治の論理にからめとられてしまった。既存の政治、エスタブリッシュメントの頑強さを思う時、嘆息しか出ない。しかし、それでも人々はまた立ち上がることだろう。

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「ドンロー主義」は意味をなさない(The ‘Donroe Doctrine’ Makes No Sense)

-寛大に解釈したとしても矛盾が数多く存在する。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/08/donroe-doctrine-trump-venezuela-empire/

ドナルド・トランプ政権のヴェネズエラ政策(ニコラス・マドゥロ大統領の最近の拘束事件を含む)の戦略的正当性について、もしあなたが困惑しているなら、私はそれを非難することはできない。なぜなら、これまでに提示された論拠のほぼ全ては検討に値するものではないからだ。

第一に、これはアメリカを「麻薬テロ(narcoterrorism)」から守ることではない。ヴェネズエラはアメリカに流入する違法薬物(ましてやフェンタニル)の主要な供給源ではなかっただけでなく、ドナルド・トランプ米大統領が、麻薬密売で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領ファン・オルランド・エルナンデスに完全恩赦を与えるという決定を最近行ったが、このことはトランプがこの問題をどれほど真剣に考えているかを示している。さらに、米司法省は、トランプ政権が昨年繰り返し騒ぎ立てた危険な麻薬カルテル「カルテル・デ・ロス・ソレス(Cartel de los Soles)」が実際には存在しなかったことを認めた。言い換えれば、それは全くの虚構の政権プロパガンダであり、繰り返し警告されながら発見されなかったイラクの大量破壊兵器と同じくらい現実味を帯びていた。

マドゥロ政権の掌握もまた、アメリカの安全保障を強化するためではなかった。ヴェネズエラは非常に脆弱な国であり、マドゥロが容易に捕らえられたことからもそれが分かる。そして、ヴェネズエラはアメリカの強力なライヴァル国にとって、緊密な戦略的同盟国ではない。中国はヴェネズエラに軍事基地を建設しておらず、イランはアメリカを攻撃するためのミサイルをヴェネズエラに運び入れていなかった。ヴェネズエラには、アメリカの貿易ルートを阻害できるほどの強力な海軍力もなかった。カラカスがもたらす、アメリカが直面する深刻な脅威について、夜も眠れずに心配していた人間は誰もいなかったし、マドゥロ政権がブルックリンで投獄された今、私たちは誰一人として安眠できていない。

トランプ大統領は既に野党指導者マリア・コリーナ・マチャドの政権掌握を断念し、依然として紛れもなく独裁主義的な政権を率いるマドゥロ政権の副大統領と交渉する意向を示していることからも、民主政治体制の促進(promoting democracy)が目的だったのではないことが分かる。

危険な麻薬の撲滅でも、深刻な安全保障上の脅威への対処でも、民主政体回復への願望でもないのであれば、それは石油に違いない、そうではないか? トランプ大統領は、これが真の理由であり、アメリカ企業が石油を奪い取ってアメリカを偉大な国にするだろうと繰り返し主張している。これもまた間違いだ。トランプ大統領は好きなように信じればいい(そしてよく信じている)が、近いうちにあmエリカにとって大規模な石油ブームが待ち受けている訳ではない。火曜日、トランプ大統領はヴェネズエラが最大5000万バレルの石油をアメリカに引き渡すことに同意したと自慢したが、これはアメリカの原油生産量の4日分にも満たない量であることを考えると、このことを知らなければ、一見素晴らしい話に聞こえる。トランプは、売却益を管理し、ヴェネズエラ経済の支援に充てると述べた。もしそう信じるなら、トランプの略奪的本能(predatory instincts)に耳を傾けていないと言えるだろう。たとえその石油収入が最終的に得られたとしても、ヴェネズエラ経済の再建に必要な資金のほんの一部になるに過ぎない。

そうだ、ヴェネズエラは世界最大の確認埋蔵量を誇っているが、その重質原油は採掘が難しく、精製コストも高い。率直に言って、良識ある生産者なら開発を試みようとしないであろう、ヴェネズエラの石油開発に最後と言えるだろう。ヴェネズエラの老朽化したインフラの危機的状況と、昨今の原油価格の低迷を考えると、なおさらだ。そして、もし奇跡的に大量の原油が世界市場に流入すれば、価格はさらに下落し、アメリカのシェール掘削業者の多くは廃業に追い込まれるだろう。

そして、トランプや大手石油会社が何を考えているかに関わらず、世界は徐々に炭化水素から離脱し、他のエネルギー源へと目を向けつつあり、ヴェネズエラの埋蔵量の価値をさらに低下させていることを忘れてはならない。実際、気候変動の現実を考えると、最も賢明なのは、石油をできるだけ地中に残しておくことだ。つまり、中国が未来のグリーン産業を支配し、その結果、影響力を拡大することにレーザー光線のように集中している一方で、トランプと彼を取り巻く戦略の天才たちは、地球を脅かす、まるで前世紀的なエネルギー政策に邁進しているのだ。

従って、この作戦の戦略的根拠についてあなたが混乱するのも無理はない。私がここで見出す唯一の「戦略的」目的(“strategic” objective)は、西半球(the Western Hemisphere)におけるアメリカの覇権(hegemony)を再確立するという大まかな考えだ。トランプはあらゆるものに自分の名前を冠することで自らのテリトリーを示すことを好むため、この考えは現在「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」として宣伝されており、最近出された「国家安全保障戦略(National Security Strategy、NSS)」にも明確に示唆されている。これは外交政策のリアリストなら支持できる合理的な考えのように聞こえるかもしれないが、綿密な検証にも耐えられない。

モンロー・ドクトリンの本来の目的は、アメリカが西半球におけるライヴァル大国の軍事介入を心配しなくて済むようにすることだった。ジェイムズ・モンロー大統領の構想が実現するまでにはほぼ1世紀が必要であったが、最終的にアメリカは他の全ての大国を西半球から追い出し、歴史家C・ヴァン・ウッドワードが「自由な(無料の)安全保障(free security)」と呼んだものの恩恵を享受することに成功した。

しかし、トランプらが言っているのはそういうことではない。なぜなら、現在、西半球で重要な軍事的役割を果たしている大国はおらず、また、そのような役割を担おうとしている大国も存在しないからだ。「国家安全保障戦略」が明らかにしたように、トランプ政権は、発生する可能性のあるあらゆる問題において、可能な限り多くの近隣諸国に、自らの指示に従わせようとしている。彼らは現在、マドゥロ大統領の後継者たちにこう言い放っている。「私たちの要求に応じなければ、封鎖を続け、もしかしたらもっとひどいことをするかもしれない」。そして、トランプ大統領と周辺の人々は地域の他の国々がこのメッセージを理解し、従順に行動してくれることを期待しているのだ。

特に、トランプ政権は近隣諸国の経済政策を統制する権利、そして中国などの国々にとって経済的に有益となる可能性のある政策に対して拒否権を行使する権利を主張している。「国家安全保障戦略」の中で書かれているように、「私たちは敵対的な外国の侵入や重要資産の所有から自由な半球を望む」とし、外部勢力が「戦略的に重要な資産を所有または支配」してはならず、アメリカは「非米州圏の競争相手が地域での影響力を拡大することを困難にしなければならない」と付け加えている。トランプ政権は、ラテンアメリカ諸国の一部が「低コストと規制障壁の低さ(low costs and fewer regulatory hurdles)」に「惹かれて他国と取引を行う(attracted to doing business)」傾向にあることを理解しているため、「各国にそのような支援を拒否させる(induce countries to reject such assistance)」と主張している。しかしトランプ政権は、一般的に対外援助に反対し、あらゆる二国間関係において利益の大部分を独占しようとする略奪的な政権であるため、欲しいものを手に入れるのに、寛大さ(generosity)ではなく脅し(threats)に頼らざるを得ない。

しかしながら、問題は、アメリカがこのように近隣諸国の経済に干渉し続けるならば、その地域の経済状況に対する責任を負わねばならなくなる点だ。アメリカ製品より安価な中国製品(電気自動車など一部では大幅に優れた製品)をラテンアメリカ諸国が購入しないようにと命じれば、現地の消費者は不満を抱くだろう。さらに、インフラ整備や新たな機会創出につながる中国やその他の外国投資を拒否するようこれらの政府に指示すれば、ワシントンは自らそれを提供せざるを得なくなる。さもなければ、ラテンアメリカの人々を貧困に陥らせていると非難されるだろう。これに、トランプ政権が自国の問題をラテンアメリカ地域からの移民・難民のせいにする傾向や、可能な限り多くを国外退去させるという強硬な姿勢を加えれば、安定した覇権ではなく、反米感情の高まりと地域の不安定化を招く処方箋となる。

より成功したアメリカの政策との対比は明らかである。例えば第二次世界大戦後、アメリカはヨーロッパやアジア(かつての敵国であるドイツや日本を含む)で極めて成功したパートナーシップを築いた。その背景には、これらの国々がソ連からの共通の脅威を認識していたこと、そしてアメリカが新たなパートナーが第二次世界大戦から可能な限り迅速に復興できるよう、善意をもって行動したことがある。しかし、トランプは「善意のある(benevolent)」という言葉の意味を知らない。彼の人生観は「自分のものは自分のもの、あなたのものは交渉可能(what’s mine is mine and what’s yours is negotiable)」である。

銃の威力で西半球を支配しようとしても、それは過去と同様に、将来も決してうまくいくことはないだろう。トランプ大統領の補佐官であるスティーヴン・ミラーは、「歴史の鉄則(iron laws of history)」の1つは、世界は力によって支配されているということだと考えている。しかし、彼が言及しなかった「鉄則」は、力だけが重要だと考える指導者は、必然的に多くの愚かなことをしてしまうというものである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、Xアヵウント:@stephenwalt

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 イスラエルとアメリカによるイランへの大規模攻撃について徐々にいろいろなことが分かってきて、イスラエルの意向が強く働いたことが明らかになっている。イスラエルは、イランを弱体化させ、自国が中東地域で覇権を握ることを目標としているが、そのような状況になれば、中東地域は不安定になる。しかし、そんなことはお構いなしである。アメリカが中東から引き揚げてしまう前に、アメリカを利用して獲れるものは獲っておくということになる。

 アメリカはイランへの軍事攻撃後の計画やシナリオを持たずに攻撃を行った。これは非常に無責任な態度ということになる。トランプとネタニヤフは攻撃後に、イラン国民に対して蜂起を呼び掛けた。新しい態勢を構築するようにと促した。しかし、アメリカにもイスラエルにもそれを支援する用意は全くない。イスラエルは支援する意図はないし、アメリカは、アフガニスタンやイラクでの失敗からそれが不可能なことが分かっている。そのために、口先で言うだけの無責任な態度ということになる。そのことについて、以下に紹介する論稿では「ポッタリ―バーン・ルール」が無視されているという批判がなされている。

下記論考に出てくる「ポッタリ―バーン・ルール」について説明する。家具や家庭用小物のフランチャイズの店として知られる「ポッタリーバーン」の店舗に貼られている店の方針(ルール)が「万が一商品を壊した場合には、お買い上げいただきます(You break it, you buy it)」というものだ。2003年のイラク戦争の際に、当時のジョージ・W・ブッシュ(子)政権の国務長官だったコリン・パウエルが「ある国や地域に軍事介入して体制を破壊・不安定化させた場合、その介入した国がその後の復興や治安維持の責任を負うという原則」を持ち出して、イラク戦争開戦に反対した際に、「万が一商品を壊した場合には、お買い上げいただきます(You break it, you buy it)」の言葉を使ったことから、「ポッタリーバーン・ルール」という言葉が国際関係論分野で使われるようになった。

 アメリカは世界唯一の超大国として、(一応は)責任ある態度を取る、もしくは取ろうとしてきた。しかし、現在はもうそのような態度を取るふりをしようともしていない。アメリカは全く頼りにならない。そのことを毎日世界中に宣伝している。

 そもそもが、今回のイラン攻撃は誤解と計算違いによってなされたものだ。トランプ大統領は肥大化した自己顕示欲によって、認知が歪んでしまっている。そして、それをネタニヤフ首相に利用されてしまった。そして、世界を混乱に陥れてしまった。トランプとネタニヤフは、イラン(政府と国民)の意思と強さを完全に見誤ってしまった。そして、事態の長期化によって見方であるペルシア湾岸諸国を苦しめることになり、世界の状況を悪化させる。攻撃をしてしまったことで、自分たちの首を自分たちで絞めるという結果になってしまった。アメリカとイスラエルは世界の混乱の最大のそして最重要の責任者である。アメリカとイスラエルは世界にとって「悪の枢軸」となっている。

(貼り付けはじめ)

「ポッタリーバーン・ルール」が廃止される時が来た(It’s Time to Retire the Pottery Barn Rule)

-イランとの戦争は、「壊したら、責任は自分で取る」という古い考え方に終止符を打つ。

スザンヌ・ノッセール筆

2026年3月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/03/iran-war-us-foreign-intervention-colin-powell-pottery-barn-rule/

2002年、コリン・パウエル米国務長官は、ジョージ・W・ブッシュ大統領に対し、イラクのサダム・フセイン大統領を打倒した場合にブッシュ政権が負うことになる重荷について警告したことで有名だ。パウエルの警告は後に「ポッタリーバーン・ルール」として知られるようになった。「壊したら責任は自分で取る(You break it, you own it)」。家庭用品店の広報担当者が、客が商品を壊しても弁償は求められないと主張したとしても、それは問題にならない。このルールは小売業よりも外交政策において大きな反響を呼び、その後もリビア、シリア、アフガニスタン、そして最近ではヴェネズエラにおける紛争の議論で長年にわたり引き合いに出されることになる。

20年以上が経過し、ポッタリーバーン・ルールは廃止される時が来た。ドナルド・トランプ米大統領と政権は、アメリカが介入した国の運命に責任があるという主張に全く動じていない。これは、イランで現在行われている爆撃作戦で最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害され、地域全体に及ぶ紛争が勃発したことで明らかになった。トランプ大統領にイランに対する計画があるかと問われたリンジー・グラム連邦上院議員は日曜日、「それは彼や私の仕事ではない」と述べた。グラム議員の発言は冷淡に聞こえたが、アメリカ国民も、アメリカが標的とした国々も、ワシントンが外国の領土を徹底的に支配することを望んでいる者はいない。近年のアメリカのそうした試みは、安定をもたらすどころか、数十億ドルもの資金と計り知れないほどの善意を失わせた。

ポッタリーバーン・ルールは抑止力(a deterrent)として意図されていた。長期にわたる外国との係争の可能性は、アメリカの指導者たちを愚かな冒険主義(unwise adventurism)から遠ざけるはずだった。しかし、アメリカがもはや他国を「所有(own)」しようとすべきではないという認識が高まるにつれ、このルールは慎重な力を失った。ポッタリーバーン・ルールは、アメリカ合衆国が唯一の超大国であり、ワシントンが絶大な信頼を勝ち取り、民主政治体制はどこにでも根付くという確固たる信念があった(the United States was the sole superpower, Washington enjoyed significant credibility, and there was broad faith that democracy could be seeded just about anywhere)時代を象徴するものだった。より争いが多く、ゼロサムゲームの世界では、民主政体は危機に瀕しており、今もなお適用可能なシンプルなルールはほとんど、あるいは全く存在しない。

ここ数日、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃を受けて、専門家の多くが外交政策の原則として、空軍力だけでは体制転換を達成したことはない(airpower alone has never achieved positive regime change)と主張している。これは、トランプ政権は地上部隊を派遣するか、失敗を受け入れるかのどちらかを迫られることを意味する。第二次世界大戦後のドイツと日本の占領を想起させるこの考え方は、社会を安定と友好関係へと回復させるには、マーシャル・プランに倣った、長年にわたる骨の折れる部隊派遣と巨額の投資が必要となる、というものだ。1983年のグレナダと1989年のパナマへのアメリカの介入は、いずれも独裁者を排除するための部隊派遣を伴ったが、選挙とそれに伴う法と秩序(law and order)の確立に必要な、期限付きの地上作戦も伴っていた。

しかし、より最近の事例は、ポッタリーバーン・ルールがいかにして挫折した希望(dashed hope)につながり得るかを示している。アフガニスタン戦争とイラク戦争は、その長期にわたる戦争、数兆ドル規模の費用、数千人のアメリカ人の犠牲、そして深刻な民間人の犠牲という点で、崩壊した社会の「責任」を負う(taking “ownership”)ことが、それを再建できることを意味しないことを証明した。2000年代半ばには既に世論調査でイラク人の大半がアメリカ軍の撤退を望んでいることが示された。アフガニスタン人は当初、自国におけるアメリカ軍の駐留を支持していたものの、それも次第に減少した。アメリカ国内における2つの戦争の被害は甚大で、政府への不信感を加速させ、分断を深め、心身ともに傷ついた退役軍人の世代を生み出し、国家債務を膨らませた。

一方、介入の論理は変化した。アラブの春において、2010年代初頭のリビア、シリア、エジプト、その他の地域におけるアメリカの関与の程度は様々であったが、安定(stability)や民主化(democratization)とは相関していなかった。 2012年までに政治変革の期待は消え去り、動乱の最中も後も、アメリカ軍の増派が効果的だったと主張する人はほとんどいなかった。近年の高度な監視と標的設定により、より低いコストとリスクで指導者を追放することが可能になった。ヴェネズエラの独裁者ニコラス・マドゥロは、事実上人目に触れずに国を出た攻撃部隊によって捕らえられ、ハメネイ師とその側近たちは空襲で暗殺された。

国家建設(nation-building)が無益で逆効果であるとの信用を失うにつれ、ポッタリーバーン・ルールは、アメリカの介入の結果、特にワシントンの統制が及ばない現地の情勢などに対する政治的・道徳的責任を重視するパラダイムへと移行すべきである。ハメネイ師の追放が地域規模の全面戦争、世界的なテロ活動、あるいは長期的なエネルギー供給の途絶を引き起こした場合、トランプは政治的代償を払うことになるだろう。一方、イラン国民が攻撃を機に平和的な政権移行を実現できれば、アメリカの介入は好意的に評価されるかもしれない。ワシントンの動機が人権や自由よりも経済、安全保障、そして地政学的な利益に関係しているという事実は、ようやく息ができるようになった息苦しい人々にとっては問題ではないかもしれない。初期の世論調査では、マドゥロ大統領の追放は、ヴェネズエラ国民の間で非常に支持されていることが示唆されている。ただし、マドゥロ大統領の政党は依然として政権を握っている。一方、ハメネイ師の暗殺は、街頭で祝賀ムードに包まれている。

ヴェネズエラとイランへの介入は、自由と安全への夢を打ち砕く結果に終わる可能性が十分に考えられる。しかし、それは必ずしも両国の国民がアメリカを非難することを意味する訳ではない。両国において、残虐な指導者の排除が社会の変革につながるかどうかは、政治指導者、政府・軍当局者、そして市民社会運動が決定権を持つことになるだろう。カラカスの自治体の1つで市長を務め、かつてマドゥロ政権によって投獄されたヴェネズエラの反体制派で民主主義の指導者であるレオポルド・ロペスは、マドゥロ副大統領のデルシー・ロドリゲスを政権に残したままであるにもかかわらず、アメリカのトランプ大統領に恩義を感じている。先週末ニューヨークでロペスは、トランプ大統領が生み出したこの機会を活用し、将来の選挙に勝利するのは、ヴェネズエラ国民と野党運動の責任だと述べた。

ポッタリーバーンの店舗では、「壊したら、責任は自分で取る」というルールに代わる選択肢は、単に壊れた物を帳消しにすることだった。国家の砕けた破片は、簡単に片付けられるものではない。破綻国家(failed states)、統治されていない地域(ungoverned spaces)、そして、長期にわたる紛争(protracted conflicts)は、壊滅的な人々の活動(devastating human consequences)と波及効果(spillover effects)をもたらし、地域の不安定化、テロリズムの温床となり、病気の蔓延につながる。ポッタリーバーン・ルールの単純さは、アメリカ、標的とする政権下で暮らす人々、地域のアクター、そして世界秩序全体の利益を考慮した、より複雑な計算に取って代わられなければならない。政策立案者や軍事計画立案者たちは、それぞれの利益を綿密に計算し、最善、最悪、そして最も起こり得る結果を検証し、介入の正当性を判断する必要がある。

トランプ政権は介入後の明確な「計画(plan)」を持っていないかもしれないが、激しい戦闘の最中においては、いかに綿密に練られた計画であっても、他者の反応に翻弄され、その反応は完全に予測できるものではない。イラク侵攻後、ブッシュ(子)政権は速やかにジェイ・ガーナー中将を復興活動の指揮官に任命した。しかしガーナーはわずか1カ月で交代させられた。イラク国民の権限拡大と限定的なバース党脱却策を掲げたワシントンの当初の戦略は、より統制のとれた中央集権的なアプローチへと転換されたためである。これは、期待された成果をもたらさなかった一連の戦略転換の最初のものであった。アフガニスタンでは、NATOは当初カブールに限定した安定化部隊の展開を計画していたが、国内全域での暴力と不安定化により、より広範な展開を余儀なくされたため、方針を転換した。

より現実的かつ適切な期待は、戦争に内在する不確実性を認識しつつ、アメリカの政権があらゆるシナリオを策定し、検討することである。ワシントンは、将来起こりうるリスクを冷静に評価し、それらを回避・軽減するための緊急時対応策を講じた上でのみ、前進すべきである。トランプ政権は、そうした広範な先見性を発揮できていない兆候が見られる。中東地域に取り残されたアメリカ国民に対し、(この地域の空域の大部分が封鎖されているにもかかわらず)自宅待機と即時退避の両方を求めるという矛盾したメッセージを送ったことは、信頼を揺るがすものとなった。

ヴェネズエラとイランへの介入がアメリカの安全保障と経済利益に資するだけでなく、長きにわたり抑圧されてきた人々の生活を改善する可能性があると予測するのは、楽観的ではあるが、突飛な予測ではない。しかし、より広い視野で見れば、その結果はさらに不確実になる。マドゥロ大統領の逮捕やカリブ海における麻薬密輸容疑者に対する定期的な致命的な攻撃など、ヴェネズエラに対するアメリカの行動は、自国の敵対勢力を無力化しようとする他の大国によって確実に援用される前例となる。

アメリカとイスラエルによるイラン攻撃はこのパターンを強め、武力行使を禁じる国際規範の現行解釈を著しく損なう結果となった。こうした規範的影響は遠いように思えるかもしれないが、いずれ跳ね返ってくる可能性がある。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、ウクライナ侵攻を開始するにあたり、1999年のコソヴォ支援のための西側諸国の軍事介入、2003年のイラク侵攻、そしてリビアとシリアへのアメリカの攻撃を援用し、主権と国際法に関する西側諸国の主張を覆そうとした。

ポッタリーバーン・ルールは、冷戦に勝利し、アメリカが世界的な正統性を享受していた時代に生まれた。911で大きな衝撃を受けたにもかかわらず、ワシントンは世界中に自由民主主義を広げることに楽観的な見方をし、中東地域にドイツや日本のような民主政治体制を築くことができる、そして築くべきだとさえ考えていた。しかし、そうした時代は遠い記憶となっている。民主政治体制は、かつて西側諸国が想像していたほど必然的なものではなく、はるかに脆弱であることが証明された。アメリカ人は、民主政体を他者に提供できると信じることよりも、自らの力で民主政体を自国内で維持しようと躍起になっている。

トランプとその政府高官たちは、都合の良い時にだけ自由について語る。彼の政権は、自国の国益がそうすることを正当化するならば、不人気で非民主的な敵対勢力を追及する用意は当然ある。しかし、外国介入の結果については、トランプは破片がどこに落ちようとも構わないと思っているようだ。ヴェネズエラでもイランでも、アメリカはどちらの未来も決めることはできない。アメリカの介入によってもたらされる結果が、その潜在的なコストに見合うものかどうかを最もよく判断できるのは、これらの国の国民自身である。

※スザンヌ・ノッセール:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。シカゴ外交評議会アメリカ外国政策・国際秩序担当レッサー・クラウン記念上級研究員。スターリング財団上級顧問。著書に『発言の勇気:全ての人々の言論の自由を守る(Dare to Speak: Defending Free Speech for All)』がある。Xアカウント:@SuzanneNossel

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ドナルド・トランプ大統領はイラン問題で計算違いをしたのか?(Did Trump Miscalculate on Iran?)

-中東専門家のヴァリ・ナスルによると、ホワイトハウスはイランとイスラエルの痛みに対する耐性が高いことに気づきつつあるという。

ラヴィ・アグラワル筆

2026年3月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/02/nasr-trump-iran-israel-strikes-calculation/

中東では激しい戦闘が繰り広げられている。2月28日早朝、イスラエルとアメリカはイラン各地の拠点を攻撃した。その後、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が、自宅の敷地内に爆弾が直撃し、死亡したことが明らかになった。しかし、この報道確認の前後にも、テヘランはイスラエルに向けてミサイルを一斉発射しており、最高指導者の不在下でも機能する指揮統制体制の存在を示唆している。イランは、この地域の他の国々、特にカタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、クウェートといったアメリカ軍基地を抱える湾岸諸国を攻撃している。

戦争はどのように終結するだろうか? イラン、イスラエル、そしてアメリカはそれぞれどのように成功を定義しているのだろうか? そして、それぞれの痛みの閾値(いきち、thresholds)はどれほど異なるのだろうか? FPライヴの最新エピソードでは、イランと中東の専門家であり、元米国務省上級顧問、ジョンズ・ホプキンス大学教授でもあるヴァリ・ナスルに話を聞いた。チャンネル登録者は、このページ上部のビデオボックスで対談の全編を視聴するか、無料のFPライブポッドキャストをダウンロードできる。以下は、編集・要約したトランスクリプトだ。

ラヴィ・アグラワル(RA):アリ・ハメネイ師は残忍な指導者(a brutal leader)でした。86歳で、30年以上イランを統治した。ヴァリ、彼の死をどのように受け止めているか?

ヴァリ・ナスル(VN):ある意味では、彼の死は予想されていた。高齢というだけでなく、彼を排除することがイスラエルとアメリカ双方の戦争目標の1つだったからだ。これはイランと中東にとって極めて重要な出来事だ。彼は36年間イランを率い、アメリカに対抗し、この地域における反帝国主義に抵抗するというイランの戦略の焦点でもあった。つまり、彼の死はイランにとって転換点(a turning point)となるということだ。

RA:しかし、イランはヴェネズエラとは違う。ヴェネズエラでは、ニコラス・マドゥロ大統領が1日の作戦遂行で副大統領に交代させられた。イランはハメネイ師の死後も報復(to retaliate)を続けている。現在、誰が指揮を執っているのか?

VN:イラン・イスラム共和国は、生き残るために設計されてきた。これは、大統領、首相、そして高官が暗殺された共和国成立初期にまで遡り、イラン・イラク戦争、そしてイスラエルとの12日間戦争にも続いた。つまり、このシステムは一人の人物に依存しないように構築されている(this system is built not to rely on one person)。ハメネイ師はイランで最も重要な指導者であり、国の進路を定め、核合意などの最終決定を下したが、イランは運用上、複数の結節点(multi-nodal)を持つシステムだ。様々な機関と様々な運用指導者が存在する。私たちが見ることが出来る通り、戦争の早い段階でハメネイ師が排除されたとしても、イランの立場には影響はない。イランは計画を実行し、前進し続けている。

彼は、国家安全保障顧問のアリ・ラリジャーニ、国会議長のモハンマド・バゲル・ガリバフ、司法長官、イスラム革命防衛隊司令官といった主要指導者と、その下層に複数の階層が存在するシステムを構築した。大統領の下には国家運営の実権を握る側もあり、これはイランの「ディープステート(deep state)」とでも呼ぶべき、高官、官僚、軍司令官、聖職者で構成されている。このディープステートと彼らが支配する機関が、共同で戦争を管理している。

RA:ハメネイ師の後継者は誰になるだろうか? こうした攻撃が続く現状において、それは本当に重要であろうか?

VN:私たちには分からない。イランがすぐに指導者を指名するとは考えられない。それは主に、ヒズボラのハッサン・ナスララ暗殺の直後の後継者に起きた出来事を既に経験しているからだ。イスラエルはヒズボラのナスララを殺害し、その後、その直後の後継者も殺害した。後継者の任命に向けて動いているが、すぐには実現しない可能性がある。こうした動きは、主に世界、イラン国民、そして地域におけるイラン支持者に対し、憲法に基づき体制が継続するという継続性を示すためです。最高指導者は誕生するだろう。しかし実際には、その人物が実際に実権を握り、権力を強化するまでには、ある程度の時間がかかるだろう。

RA:アメリカのドナルド・トランプ大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のような人物がイラン国民に抗議を呼びかけているが、あなたがイランのディープステートについて説明されていることを踏まえると、蜂起の可能性はどの程度あるだろうか?

VN:1月の蜂起につながった人々の怒りは、紛れもなく現実のものだ。そして、デモを鎮圧するために体制が行った血なまぐさい弾圧に対する怒りと悲しみは、今もなお深く残っている。

しかし、現在、蜂起を阻む要因がいくつか存在する。第一に、怒りが高まっているにもかかわらず、イスラム共和国の外には、政治的感情と怒りを組織化し、持続的かつ強靭な方法で目標へと導くための政治運動が存在しない。亡命中の指導者にはそれを提供する能力も、それを管理するための地上戦力もある。第二に、特に首都には、街頭デモを抑止するための治安部隊が多数配置されている。そして第三に、イラン国民は戦争に直面している。彼らは自らの安全を懸念している。そして、戦争がどのように終わるのか、そして生活の糧を失うことになるのかどうかについても懸念している。

騒ぎが収まり、戦争が終息した時、政治的表現(political expression)が見られるようになるだろう。

RA:ヴァリ、あなたはアメリカ政府で働いた経験がある。ホワイトハウスの目的について、今現在どのようなことになっているか、何か考えを持っているか? ホワイトハウスは何を達成しようとしているのだろうか? そして、ホワイトハウスが任務完了と判断するのはどの時点だと考えるか?

VN:大統領がこの戦争の正当性を決して明確に説明しなかったため、判断は非常に難しい。6月にアメリカがイランの核計画を破壊したことに彼は非常に満足しているように見えた。彼にとって、イラン側と話し合う理由など存在しなかった。ところが突然、イランの体制転換(regime change)を目的とした軍事介入に関心を示し始めた。つまりアメリカの目的は、イランの核計画から体制転換へと変わったのだ。そして抗議運動が鎮圧され、その機会が過ぎ去ると、彼は再び核合意を論拠として使い始めた。その後、戦争を開始し、再びイランの体制転換を要求している。つまり、アメリカがなぜイランとの戦争にこれほどの緊急性を感じたのかは不明だ。戦争が始まり最高指導者が殺害された今、大統領は勝利宣言の準備ができていると思う。現時点で停戦を望まないのはイラン側だ。迅速な停戦(a quick cease-fire)で何の得もないと考えているからだ。そして、拡大する戦争に巻き込まれた大統領は窮地に立たされており、エネルギー価格が上昇し、アメリカの死傷者や資産への損害がさらに拡大する可能性がある。

RA:つまり、この戦争は、ある程度、イランが望む時に終わるということになる。それでは、テヘランはいつまでこの戦争を続けることができるだろうか?

VN:それでは、あなたが述べたことに、イランとイスラエル次第だということを付け加えたいと思う。イスラエルは、自国の戦争目的を達成するまで、この戦争が長引くことを望んでいると思う。イスラエルの場合、その目的ははるかに明確だ。言い換えれば、イスラエルはイスラム共和国を打倒するか、少なくともイランを地域の真のアクターではなくなるまで弱体化させ、さらにイランのミサイルやその他の軍事力をイスラエルにとって脅威ではなくなるまで弱体化させようとしている。イスラエルは、この目的を達成するには、たとえ達成できなくても、近づくためには、はるかに長い期間イランを爆撃する必要があると考えている。

イランはまた、アメリカが大きな犠牲を払わない短期的な戦争は、トランプにイランとの戦争は容易だと思わせるだけだと考えています。そして、彼は再び戦争を始められる。しかし、戦争が長期化し、血なまぐさい事態が起こり、より複雑になれば、将来的にアメリカがイランに対して更なる侵略を行うことに対する抑止力(a deterrence)となるだろう。これは、イランが2025年6月の戦争後に確立できなかった種類の抑止力である。イランは今のところ、湾岸諸国への攻撃を継続し、エネルギー価格を引き上げ、世界市場の懸念を高め、そして徐々にヨーロッパ諸国を戦争に巻き込むだけの体力があると考えている。カタールの液化天然ガス(LNG)ターミナルの閉鎖は、最終的にヨーロッパのエネルギー供給に影響を与える。そして、これらすべてが戦争をますます複雑にし、アメリカは現時点で停戦を要求するよりも、より高い代償を払う必要があると判断するかもしれない。

RA:昨年の12日間の戦争でイランが反撃した際、イランは力を控えたようだ。全力を出し切っていない。事前に警告していた標的を選定し、最大限の被害を与えようとはしていなかった。これが私の評価だ。現在、イランは明らかに昨年の夏よりもエスカレートしている。イランの戦力はどれほど増えたか、分かっているだろうか? このような状況下で、イランはどれほど多くのカードを切ることができるのだろうか? どれほど悪化する可能性があるだろうか?

VN:あなたに同感だ。イランはこの戦争で徐々にエスカレートしているが、イスラエルとアメリカからの最大の打撃は、最高指導者と30~40人の司令官の殺害、軍事基地の破壊など、戦争の始まりから始まっています。

第一に、イランはイスラエルだけでなく、地域全体でパトリオットミサイル、迎撃ミサイル、THAADミサイルの供給を枯渇させようとしている。言い換えれば、1万ドルから2万ドルもするイランの小型無人機1機を撃墜するには、大量のパトリオットミサイルなどの迎撃ミサイルが必要となる。最終的に彼らは、いずれこれが湾岸諸国、国防総省、そしてイスラエルにとって問題となると見込んでいる。これが彼らの戦略の1つだ。

第二に、彼らは必ずしもペルシア湾岸諸国やイスラエルの標的を攻撃しようとしているのではなく、継続的な圧力をかけようとしている。彼らはイスラエルに一日中ミサイルを発射しているが、大量ではないものの、継続的なパターンで発射しており、湾岸諸国でも同様のことを実施している。目的は、これらの国の防空システムと住民に継続的な圧力をかけることだ。人々が絶えずシェルターに逃げ込まなければならなくなるようになれば、活動を完全に混乱させることができる。そして、防空システムが疲弊した時点で、彼らはより高性能なミサイルと能力へと移行するだろう。つまり、私たちはまだ戦争の最悪の局面を経験していないと私は考えている。

この戦争は今や、持久力のテスト(a test of stamina)となっている。どちらが先にどちらを倒せるか? イスラエルとアメリカは、イスラム革命防衛隊の背骨を折って、イランのミサイル能力を無力化するのに十分なミサイル、サイロ、そして発射装置を攻撃できるだろうか? 彼らは明らかにそれを達成できていない。それとも、イランはワシントンとテルアビブの思惑を変えるほど長く戦い続けることができるだろうか? イランは徐々にエスカレートを続け、この戦争をペルシア湾岸諸国とヨーロッパにとって財政的にも物質的にもますます高くつくものにしていくだろう。

RA:あなたが「抵抗の枢軸(the Axis of Resistance)」と呼ぶ、この地域におけるイランのいわゆる代理勢力(proxy groups)について、概要を説明してもらえるだろうか? 彼らの現在の能力はどの程度で、どのポイントで戦闘に参戦する可能性があると考えるか?

VN:この戦争に実質的な影響を与える能力が最も高い代理勢力はフーシ派だ。彼らのミサイル火力は健在だからだ。彼らはイスラエルやスエズ運河、紅海の船舶を標的にする可能性がある。また、特定のシナリオでは、ペルシア湾岸諸国との停戦を破棄し、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の後方、そしてペルシア湾岸諸国のアメリカ軍基地を攻撃し始める可能性もある。確かに、アメリカ、イスラエル、そしてサウジアラビアは彼らに対抗できるが、それは同時にイエメンへの注意をある程度逸らすことも意味する。

同様に、ヒズボラはイスラエルに真の打撃を与える立場にはないが、空爆やレバノンへの部隊派遣などによって、イスラエルを北の国境に焦点を絞らせるのに十分な注意散漫(a sufficient amount of distraction)を引き起こすことができる。つまり、イランの戦略は、これらのうちどれか1つがイスラエルとアメリカに大きな変化をもたらすということではなく、アメリカとイスラエルが想定していたよりもはるかに広大な戦場でのこの組み合わせが、状況を変えることができるということだ。

イスラエルとアメリカは、イランとの戦闘を2つの回廊(corridors)に沿って計画している。1つは空中回廊(the air corridor)における攻防、もう1つはイランと地域内のアメリカ軍基地間の回廊(the corridor between Iran and U.S. bases in the region)だ。イランはこれを湾岸地域内の民間人居住地域だけでなく、より広範な地域にも拡大しようとしている。そのため、より広範な地域で低速で戦闘を繰り広げ、より長く戦闘を継続することが、イランにとって有利に働く。

RA:ここでの主要三国、イラン、イスラエル、アメリカは、民間人の損失、インフラの損害、そして軍事的損害に関して、それぞれどの程度の痛みに耐えられるかという許容度(a different pain tolerance)が異なり、それを超えると計算が劇的に変わる可能性があるように思う。あなたの説明からすると、イランの痛みの許容度が驚くほど高いように思われる。最高指導者を失い、依然として代理勢力を使って軍事的に手控えている。これらの計算が変わるまでに、イランはあとどれだけの痛みに耐えられると考えるか?

VN:イランは痛みに耐えられるだろう。問題は、彼らの能力がいつ弱まるかだ。彼らは、イスラム共和国、革命、そして国家さえも生き残る唯一の方法は、この戦いに粘り強く取り組むことだと決断した。特に、この一連の暗殺事件は、指導者たちに、自分たちの誰かが、あるいは全員が、いつ殺されるか分からないという確信を与えている。つまり、彼らはこの戦いに全力を注いでいる(o, they’re all in on this fight)。

イスラエルはまた、痛みに関して高い閾値を持つ。今やイランとその代理勢力を打倒することを自らの使命とし、国民の決意と支持も得ている。しかし、それがどのポイントで変化する可能性があるかは予測できる。イスラエルには世論があり、政府が実際に対応しなければならない場合もあるからだ。イランには、特に1月の弾圧以降、このような世論がない。

アメリカはアキレス腱(the Achilles heel)だ。特にトランプ自身が厄介な軍事紛争に神経質になっているためだ。彼の支持基盤はこれを好ましく思っておらず、トランプ自身も支持基盤やアメリカ国民に対して戦争の必要性を訴えていない。ガソリン価格の高騰や、アメリカ国内で悪評を招くような甚大な被害に、トランプは最も反発するだろう。イランがこの脆弱性を突くのは当然のことであり、まさにトランプにとって試練の時だ。

ここでの危険の1つは、イランが2025年6月の戦争終結時の状況に戻りたくないと思っていることだ。イランにとって、これは最後の戦い(the last battle)だ。彼らは完全に敗北して敗走するか、今後のゲームのルールを変えることができるか、つまり、今後しばらくはアメリカやイスラエルとの戦争は起こらないかのどちらかだ。つまり、彼らの計算はトランプのそれとは大きく異なる。

RA:あなたの発言から敷衍して、ホワイトハウスはイランに関して十分な助言を得ているという印象を持つか? 彼らはイランの「痛みの閾値(pain threshold)」をきちんと計算しているだろうか?

VN:そのようには考えていない。アメリカ特使スティーヴ・ウィトコフが、大統領はイランが屈服しないことに苛立ちを感じていると述べたが、それはイラン側の計算を完全に誤解しているというだけのことだ。彼らは戦場の状況評価を見て、事態が自分たちの考えとは異なっていること、そしてハメネイ師殺害にもかかわらずイラン側がまだ降伏する準備ができていないことを理解しているはずだ。

これは、敵対国の考え方を読み間違えた、トランプの大きな誤算だったと私たちは見なすことになるかもしれない。

RA:アラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビア、オマーン、バーレーンといった多くのペルシア湾岸諸国は、イランからの攻撃に直面している。民間人の犠牲やインフラへの被害が出ている。これらの国々は一枚岩(a monolith)ではないため、それぞれ異なる反応を示すことを私は認識しているが、どのような反応を示す可能性があるのか​​、大まかな考えを教えていただけるだろうか?

VN:ペルシア湾岸諸国は大きなジレンマに直面している。それは、イランを攻撃するため、あるいはイランの攻撃から守るためにアメリカ軍基地を受け入れているということだ。しかし、実際には、これらの基地は湾岸諸国を守ることができていない。

イランもまた、湾岸諸国を攻撃することを決断した。それは、彼らがアメリカを支持しているからではなく(それが口実ではあるが)、湾岸諸国の経済とエネルギー供給に打撃を与えることが世界経済に悪影響を与えるからだ。つまり、イランは世界経済を混乱させ、影響を与えることでトランプ大統領に圧力をかけようとしている。つまり、湾岸諸国にある程度のリスクを与えると同時に、湾岸諸国の経済はイランとの戦争とは無縁で、潤沢に成長し、収益を上げ、世界の経済的繁栄の源泉となり得るという誤った考えを世界に払拭する必要があるということだ。イランは湾岸諸国を戦争に巻き込むことで、自国に有利なように世界経済全体に圧力をかけている。

現在、湾岸諸国が抱える問題は、もし彼らがアメリカとの戦いに加わった場合―軍事バランスが実際に変わる訳ではないが―イランの政権が生き残った場合、数十年にわたってイランの攻撃を受けるリスクに晒されるということだ。そうなれば、彼らの経済は破綻するだろう。もし彼らがアメリカとの戦いに加わらず、イランの政権が生き残った場合、イランからのリスクは消えない。

RA:今回のアメリカとイランの協議で主要な仲介役を務めたオマーンの外務大臣は先週アメリカを訪れ、アメリカ側が公に述べていたよりも協議は順調に進んでいたとメディアに語った。彼は、イランは核開発計画の放棄に実質的に同意したと述べた。なぜオマーンは、アメリカの見解とは異なる見解を公然と表明したのだろうか?

VN:私は、これは実に興味深く、同時に懸念も抱かせた。なぜなら、彼がそうした時、私はそれが窮余の策だったと感じたからだ。トランプ大統領に適切な説明がなされていない、あるいはアメリカ全体がジュネーブでの成果を理解していないという確信があったのだろう。彼がここに来て、その成果を直接伝える最後の行動だった。彼は明らかに国王の支持を得ており、オマーンも合意は達成されたが、それが損なわれていると主張してトランプ大統領に対抗する価値があると判断したのだろう。

RA:これから1カ月、2カ月、3カ月、あるいは6カ月後に、どのような中東情勢が生まれると考えるか?

VN:中東地域はしばらくの間、不安定な状態が続くだろう。それはこの戦争だけでなく、2023年10月7日以降に起こったあらゆる出来事が、約40年間この地域で支配的だった力の均衡(the balance of power that was dominant in the region for about four decades)を崩したためだ。そこには勝者と敗者がおり、新たな均衡は構築されていない。

この戦争は、イランを殲滅させ、この地域におけるイスラエルの立場を強めることで、その均衡を確立するための一環となっている。従って、この戦争の後も、その結末次第ではあるが、中東はしばらくの間、新たな均衡を模索し続けることになるだろう。私が懸念しているのは、アメリカ政権がこうした視点を全く持っていないことだ。アメリカにとって中東における最適な均衡とは何か、そしてそれをどのように達成するかというヴィジョンを全く持たずに、取引的にこの地域に対処しているのだ。

※ラヴィ・アグラウワル:『フォーリン・ポリシー』誌編集長。Xアカウント:@RaviReports

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年2月28日に開始されたアメリカとイスラエルによるイランに対する空爆とミサイル攻撃は収束を見せていない。イラン側からはイスラエルや湾岸諸国にあるアメリカ軍基地や関連施設に対する報復攻撃やホルムズ海峡封鎖通告もあり、世界経済への悪影響が懸念される。何よりもイラン国内では民間人の使者が出ており、アメリカ軍にも死者が出ている。湾岸諸国は厳しい状態になっている。

 イランの核開発に関しては、バラク・オバマ政権時代に、アメリカとイランの間で核兵器開発は行わないという合意に達していた。しかし、その後、第一次ドナルド・トランプ政権時代にこの合意はアメリカ側によって一方的に破棄された。続くジョー・バイデン政権では、核開発に関する合意に向けた動きもあったが合意には至らなかった。第二次トランプ政権下では交渉が行われていた。そうした中で、トランプ大統領は、そして、トランプ政権はどうしてイランへの大規模攻撃を決断したのか。

 端的にまとめれば、今回のイラン攻撃の基にある論理構成は、「イスラエルはイランのミサイル開発や核開発を存亡にかかわる脅威と捉え、イランの最高指導部を弱体化し、イラン政府の転覆を図るために攻撃を決意した。その決意を覆すことは難しい。イスラエルがイラン攻撃を実行すれば、中東地域にあるアメリカ軍基地も攻撃を受けて大きな被害が出る。その被害を避けるために、イスラエルと一緒になって攻撃をイランへの攻撃を行う」というものだ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がドナルド・トランプ大統領に積極的な働きかけを行い(一種の暗示をかけて[洗脳をして])、アメリカ軍によるイランへの大規模攻撃が決定された。アメリカ軍制服組トップの統合参謀本部議長のダン・ケイン大将は、リスクが高いという進言を行い、間接的に反対を表明した。また、J・D・ヴァンス副大統領(高校卒業後に海兵隊に入隊しイラクへの派遣経験あり)は作戦を行うならば「大規模にかつ迅速に(go big and go fast)」行うようにと述べたとされている。これは作戦が長引くことを避けるために(泥沼[quagmire]にはまるを避けるために)、このように述べたようだ。

 イランはアメリカにとって存亡にかかわる差し迫った脅威(existential threat)ではない。従って、大規模攻撃を行って、イランの政府転覆から体制転換を行う必要は、少なくとも緊急的にはなかった。結局、イスラエルに乗せられて戦争を始めてしまったということになる。ネタニヤフ首相は汚職の疑惑に直面し、首相の座を降りれば、家族も一緒に訴追されるという危険な状態にある。ネタニヤフ首相が個人的な利益のためにこのような戦争を始めたとするならば(その可能性が高い)、これは人類に対する大いなる犯罪行為ということになる。そして、トランプ大統領は、有権者の期待(アイソレイショニズムとアメリカ・ファースト)を裏切ってこのような校に加担した共犯者ということになる。彼らの罪は「万死に値する」ものである。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領はどのようにして開戦を決意したか(How Trump Decided to Go to War)

-トランプ大統領がイランへの軍事行動を支持したのは、外交交渉の終結を決意したイスラエルのある指導者の行動がきっかけだった。大統領の補佐官のなかでこれにきちんと反対したのはほぼいなかった。

マーク・マゼッティ、ジュリアン・E・バーンズ、タイラー・ペイジャー、エドワード・ウォン、エリック・シュミット、ローネン・バーグマン筆(記者たちは数十年にわたりワシントンと海外でアメリカのこれまでの戦争を協力して取材してきた)
2026年3月2日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2026/03/02/us/politics/trump-war-iran-israel.html

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2026年2月11日の朝、米大統領執務室に入り、アメリカ大統領を戦争への道へと進ませる決意を固めていた。

数週間にわたり、アメリカとイスラエルはイランに対する軍事攻撃について秘密裏に協議を続けてきた。しかし、トランプ政権当局者たちは最近、イランの核開発計画の将来について交渉を開始しており、イスラエルのネタニヤフ首相は、新たな外交努力が計画に支障をきたさないよう万全を期したいと考えていた。

約3時間にわたり、両首脳は戦争の可能性、さらには攻撃の可能性のある日時、そしてトランプ大統領がイランと合意に至る可能性(可能性は低いものの)について協議した。

数日後、トランプ大統領は外交ルートに懐疑的な姿勢を公に表明し、イランとの交渉の歴史は長年にわたる「話し合い、話し合い、そして話し合い(talking and talking and talking)」に過ぎないと一蹴した。

トランプは、イランの体制転換(regime change)を望むかとの記者団の質問に対し、「それが起こり得る最良のことのように思える(“seems like that would be the best thing that could happen)」と答えた。

2週間後、大統領はアメリカを戦争へと導いた。イスラエルと連携した大規模な軍事爆撃を承認した。この爆撃により、イランの最高指導者は瞬く間に殺害され、イランの民間施設や軍事核施設が壊滅的な被害を受けた。イランは混乱に陥り、中東地域全体で暴力が発生し、これまでにアメリカ兵6人とイラン民間人数十名が死亡した。トランプは、数週間に及ぶ可能性のある攻撃に備え、アメリカ軍の犠牲者が増える可能性が高いと述べている。

公の場では、トランプは軍事行動への道筋を迂回しているように見え、イラン政府との合意を望むと言いながら、同時にイラン政府を打倒したいと言い続けた。アメリカ国民に今こそ戦争が必要だと納得させようとはほとんど努力しなかった。トランプと側近たちが主張した根拠は限定的で、イランがアメリカにもたらす脅威の緊迫さの度合いに関する虚偽の主張も含まれていた。

しかし、水面下では、トランプ大統領の戦争への動きは容赦なく強まっていた。その原動力となったのは、ネタニヤフ首相をはじめとする同盟者たちであり、彼らは大統領にイランの神権政治体制(Iran’s theocratic government;)に対する決定的な打撃を与えるよう圧力をかけていた。また、1月にヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を打倒したアメリカによる作戦成功を受け、トランプ大統領自身も自信を深めていた。

トランプ大統領がイランへの持続的な攻撃を開始する決断を下した経緯を再現する本稿は、協議内容を直接知る関係者たちに加え、地域の外交官、イスラエルとアメリカの政権関係者、大統領のアドヴァイザーたち、連邦議会の議員たち、国防・情報当局者など、あらゆる立場の関係者の証言に基づいている。ほぼ全員が匿名を条件に、デリケートな議論や作戦の詳細について語ってくれた。

アメリカがイランを攻撃する決定を下したことは、弱体化した体制を攻撃すべきだと主張し、数カ月間トランプ氏に働きかけてきたネタニヤフにとっての勝利であった。昨年12月にトランプの別荘マール・ア・ラーゴで行われた会談で、ネタニヤフは今後数カ月以内にイスラエルがイランのミサイル基地を攻撃することについて大統領の承認を求めていた。

2カ月後、彼はさらに素晴らしいものを手に入れた。イラン指導部を打倒するための戦争における完全なパートナーを得た。

ホワイトハウスのキャロライン・リーヴィット報道官は月曜日の声明で、トランプ大統領は歴代大統領が立ち向かおうとしなかった脅威に立ち向かうという「勇気ある決断(courageous decision)」をしたと述べた。

大統領の側近の中で軍事行動に反対する者はほぼいなかった。中東地域におけるアメリカの軍事介入(military interventions)に長年懐疑的だったJ・D・ヴァンス副大統領でさえ、ホワイトハウスのシチュエーションルームでの会合で、もしアメリカがイランを攻撃するのであれば「大規模かつ迅速に行うべきだ(go big and go fast)」と主張したとヴァンスの発言を知る関係者は語っている。

同じ会合で、トランプの首席軍事補佐官である統合参謀本部議長ダン・ケイン将軍は、戦争はアメリカ軍に多大な犠牲をもたらす可能性があると大統領に伝えた。数日後、トランプは国民に対し、軍事補佐官がはるかに安心感を与えてくれたと語った。彼はトゥルース・ソーシャルへの投稿で、ケイン将軍がイランに対するいかなる軍事行動も「容易に勝利できる(something easily won)」だと述べたと述べている。

他の政権当局者も、連邦議員との非公開会合で同様に誤解を招く発言をした。2月24日に行われたいわゆる「ギャング・オブ・エイト(Gang of Eight)」(連邦上下両院の民主共和両党指導部と連邦上下両院情報諜報委員会の指導部)との会合で、マルコ・ルビオ国務長官は、トランプ政権が体制転換を検討していることに一切言及しなかったと発言に詳しい関係者は述べている。

3日後、トランプ大統領は、テキサス州コーパスクリスティでのイヴェントに出席するため大統領専用機エアフォースワンに搭乗中、イランの最高指導者の殺害をはじめとして、継続的な攻撃を命じた。

「“壮大な怒り作戦(Operation Epic Fury)“を承認する」とトランプ大統領は述べた。「中止は認めない。幸運を祈る」。

ホワイトハウスは、イランとの外交交渉は単なる芝居ではないと主張していた。しかし、この1カ月で、トランプ大統領、ネタニヤフ首相、そしてイランの指導者たちを一度に満足させるような合意、あるいは戦争を数カ月以上先送りできるような合意など、到底あり得ないことが明らかになった。

交渉は何も成果をもたらさなかったが、トランプ大統領にとっては別の目的があった。それは、中東地域におけるこの世代で最大規模のアメリカ軍増強を完了させ、トランプ大統領の言葉を借りれば「圧倒的な力と破壊力(overwhelming strength and devastating force)」による戦争を遂行するための時間を確保することだった。

日曜日のニューヨーク・タイムズ紙のインタヴューで、トランプ大統領は、イランが自分の望むものを決して与えないと確信したと述べた。

「交渉の終盤で、私は彼らがそこにたどり着くことはないと悟った」とトランプは語った。 「『とにかくやってみよう』と私は述べた」。

●急速な戦力増強(A Rapid Buildup)

2026年1月中旬、トランプ大統領がイランを揺るがす反政府デモへの支援としてイランへの攻撃を初めて警告した当時、国防総省は中東地域で長期戦を遂行できる状況になかった。

当時、中東地域に米空母は存在せず、戦闘機部隊はヨーロッパとアメリカに駐留していた。また、中東各地に点在する約4万人のアメリカ軍部隊が駐留する基地は、予想されるイランの報復から身を守るための防空システムが不足していた。

イスラエルもまた、2025年12月のマール・ア・ラーゴでの会談でネタニヤフ首相がトランプ大統領と協議した軍事作戦の準備が整っていなかった。ミサイル迎撃ミサイルの供給を強化し、イスラエル全土に防空高射砲台を配備するには、より多くの時間が必要だった。

2026年1月14日、ネタニヤフ首相はトランプ大統領に電話をかけ、イスラエルの防衛準備が完了する月末まで軍事攻撃を延期するよう要請した。トランプは待つことに同意した。

両首脳はその後数週間にわたり数回会談した。ネタニヤフ首相はヴァンス副大統領、ルビオ国務長官、そしてホワイトハウスの対イラン交渉担当責任者であるスティーヴ・ウィトコフ特使とも協議した。イスラエルの軍と情報諜報機関の高官たちはワシントンに飛び、イスラエル国防軍参謀総長のエヤル・ザミール中将はアメリカ中央軍のブラッド・クーパー大将と定期的に連絡を取った。

2026年1月下旬までに、イランの抗議活動は容赦なく鎮圧されたが、戦争計画は順調に進んでいた。アメリカ軍はトランプ大統領に対し、イラン国内の施設への空襲実施のためにアメリカ軍を派遣するなど、幅広い選択肢を提示した。

2隻の空母と12隻の支援艦艇が中東地域に向けて出航し、国防総省は戦闘機、爆撃機、空中給油機、防空砲台を派遣した。

2月中旬までに、国防総省は数週間にわたる軍事作戦を遂行できる戦力を配置した。

その頃、ウィトコフと大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナーは、トランプ大統領の指示に従い、イランと間接的な核協議を行っていた。

しかし、トランプ政権が警戒している兆候もあった。

ルビオ国務長官は2月16日、ブダペスト訪問中に記者団に対し、次のように述べた。「イランは最終的にはシーア派聖職者、それも過激なシーア派聖職者によって統治され、その決定はシーア派聖職者によって行われていることを理解する必要がある。彼らは純粋な神学(theology)に基づいて政策決定を下す。そういうやり方で意思決定をする。だから、イランと合意するのは難しい」。

メッセージは明白だった。協議はイランの核開発計画の解体に関するものだったが、その目的はイランの指導層の排除にある可能性があった。

ウィトコフが2月21日、フォックスニューズのインタヴューで、トランプがイランが「ゼロ濃縮(zero enrichment)」、つまり核燃料生産能力の解体に難色を示していることに触れた時、その意味が明らかになった。

「トランプは、なぜイランが降伏しないのか、つまり『降伏した(capitulated)』という言葉は使いたくないが、なぜ降伏しないのかを知りたいようだ」とウィトコフ氏は述べた。

さらに、「なぜ、これほどの圧力を受け、我々があちらで保有する海軍力の規模を考えれば、彼らは私たちに『私たちは、核兵器は欲しくないと主張する。だから、我々が用意しているのはこれだ』と言ってくれないのか?」と付け加えた。

「しかし、彼らをその立場に追い込むのは容易ではない」とウィトコフは述べた。

大統領の補佐官たちにとって、大統領が何らかの軍事攻勢を強く検討していることは明らかだった。問題は、その軍事作戦の規模と、それが具体的に何を達成しようとしているのかということだった。

●複数の選択肢の評価(Assessing the Options)

2026年2月18日、季節外れの暖かさが続くワシントンで、ヴァンス、ルビオ、ジョン・ラトクリフCIA長官、そしてホワイトハウス大統領首席補佐官スージー・ワイルズは、トランプ大統領と共にシチュエーションルームに集まり、軍事計画について協議した。

会議中、ケイン大将は様々な選択肢について議論した。その中には、アメリカ軍がイランを交渉に押し込むための限定的な攻撃を行うか、あるいはイラン政府転覆を目的としたより大規模な作戦を行うかが含まれていた。特に後者の選択肢は、アメリカ軍の死傷リスクが高く、中東地域の安定を揺るがし、アメリカ軍の兵器備蓄を大幅に枯渇させる可能性があるとケイン将軍は述べた。

ケイン大将は、検討中の選択肢はどれも、ヴェネズエラのマドゥロ大統領の拘束に成功するよりもはるかに困難であると強調した。大統領は、この作戦について、イランにおけるアメリカの成功の兆しと見ていた。

ケイン将軍の報道官ジョー・ホルステッドは、大統領と国防長官に提示された「選択肢と検討事項(options and considerations)」は機密事項であるとしてコメントを控えた。

一方、個人的には軍事攻撃に反対の姿勢を示しているとみられるヴァンス副大統領は、限定的な攻撃は誤りだったと主張した。アメリカがイランを攻撃するのであれば、「大規模かつ迅速に(go big and go fast)」行うべきだとヴァンスは出席者たちに語った。

ヴァンス副大統領の報道官はコメントを拒絶した。

会議の前、トランプはまず小規模な攻撃を行い、イランが核濃縮を放棄しない場合は大規模な攻撃を行うという戦略に傾倒していたように見えた。しかし、ヴァンス副大統領の主張は反響を呼んだようだ。そしてその後数日間で、アメリカとイスラエルはイランのミサイル・核開発計画だけでなく、指導部自体も一緒に攻撃すべきだという考えに傾く当局者が増えていった。

CIAは、イランの最高指導者(supreme leader)であるアリ・ハメネイ師が攻撃で殺害された場合に起こり得るシナリオをいくつか作成した。多くの変数(variables)があるため、CIAが確信を持って何が起こるかを判断するのは困難だったため、複数のシナリオを提示した。

1つのシナリオは、ハメネイ師に代わる強硬派の聖職者、ひょっとすると核兵器取得にさらに傾倒する指導者が登場するというものだ。別のシナリオは、政府に対する反乱を予測するものだったが、イランの反体制派の弱体化を考えると、情報当局者の多くは反乱の可能性は低いと考えていた。

複数のトランプ政権の高官は、第三のシナリオを予測した。それは、強硬派聖職者よりも現実的なイスラム革命防衛隊(the Islamic Revolutionary Guard Corps、IRG)の1つの派閥が権力を握るというものだ。名目上は聖職者が引き続き権力を握る可能性が高いものの、実際にはイスラム革命防衛隊の指導者たちが国を率いることになるというものだ。

このような動きは、40年にわたり強硬な反米姿勢を貫き、イランの聖職者指導部と深く結びついてきた将校団(an officer corps)にとって、劇的な転換となるだろう。

しかし、CIAの分析によると、アメリカがこの派閥の経済活動、例えば石油産業への影響力に干渉しない限り、一部の将校はアメリカに対して融和的な姿勢を示す可能性がある。彼らはイランの核開発計画を放棄したり、イランの代理勢力によるアメリカへの攻撃を阻止したりするかもしれない。

CIAはコメントを拒絶した。

軍事行動に反対するロビー活動はほとんどなかった。唯一の例外は、右派のポッドキャスターであり、大統領に近い同盟者でもあるタッカー・カールソンだ。彼は過去1カ月間に3回、大統領執務室で大統領と面会し、攻撃に反対する主張を展開した。

カールソンは、アメリカがイランと戦争に突入した場合、アメリカの軍人、エネルギー価格、そして地域におけるアラブ諸国へのリスクを説明した。カールソンは大統領に対し、イスラエルによってアメリカが窮地に陥るべきではないと述べ、アメリカが攻撃を検討しているのはイスラエルがイランを攻撃したいという願望があるからに他ならないと主張した。また、トランプ大統領に対しネタニヤフ首相を牽制するよう促した。

トランプ大統領は攻撃のリスクを理解していると述べたものの、カールソンにはイスラエルが始める攻撃に参加する以外に選択肢はないと伝えた。

カールソンは2月23日正午、ホワイトハウスを去った後、トランプは軍事行動に傾いていると考えていると関係者たちに語った。

●外交の最終段階(One Last Round of Diplomacy)

ホワイトハウスは、トランプ大統領に対し対イラン作戦開始にあたり連邦議会の同意を得るよう求める一部議員の要請を無視し、連邦議会で戦争の必要性を訴える努力もほとんどしなかった。

しかし2月24日、トランプ大統領の一般教書演説の数時間前、いわゆる「ギャング・オブ・エイト(Gang of Eight)」と呼ばれる議員たちが議事堂内の厳重な会議室に集まり、ルビオ国務長官とラトクリフとヴィデオ会議で協議した。両者はペンシルヴァニア通りを少し下ったホワイトハウスにいたが、大統領演説の警備体制の都合上、2マイル(約3.2キロメートル)の移動は困難を極めた。

ルビオとラトクリフは、今回の攻撃の背景にある情報、攻撃のタイミング、そしてイランが今後の協議で核濃縮を放棄した場合の「出口(offramp)」の可能性について話し合った。

しかし、ルビオは政権が政権転覆作戦を検討していることには一切言及しなかった。

ルビオ国務長官はブリーフィングで、イスラエルとアメリカのどちらが先に攻撃したとしても、イランはアメリカ軍基地や大使館に対し強力な武器の集中攻撃で反撃すると主張した。いずれにせよアメリカは巻き込まれることになるため、アメリカがイスラエルと協力して行動するのは理にかなっているとルビオは述べた。そしてイスラエルは行動する決意をしているとルビオは述べた。

この論理は民主党員の一部の耳には心地よくなかった。彼らは、トランプ政権がネタニヤフ首相にアメリカの政策を左右させ、アメリカの軍備増強がイランの攻撃を誘発する可能性があるため、アメリカは攻撃せざるを得ないという循環論法(a circular argument)を展開していると考えていたのだ。

一般教書演説の2日後の木曜日、ウィトコフとクシュナーはジュネーブを訪れ、英語を話し、アメリカについて詳しいイランのアッバス・アラグチ外相と再び交渉を行った。

イラン側はアメリカに対し、将来の核濃縮レヴェルを示唆する7ページにわたる計画を提示したが、その数値がウィトコフとクシュナーを警戒させた。

アメリカ側は依然としてイランに対し濃縮ゼロを約束するよう求め、民生用核開発計画のための核燃料の無償提供を提案したが、イラン側は拒否したと、あるアメリカ政府当局者は述べた。協議終了後、ウィトコフとクシュナーはトランプに対し、合意に至る可能性は低いと伝えた。

その日、トランプは大統領執務室に共和党所属の連邦上院議員4名を招き、自身の立法議題について協議した。会話は最終的にイラン問題へと移った。

サウスカロライナ州選出の共和党議員で、イラン攻撃を声高に支持するリンジー・グラム連邦上院議員は、大統領は苛立ち、イラン側が合意に関心を示していないと考えていると述べた。

グラム議員はインタヴューで、「トランプ大統領は外交を追求する必要があると強く感じていたと思う。外交を追求することを望んでおり、軍事的選択肢は最後の手段だと思っていた」と述べた。グラム議員はトランプ大統領に対し、イラン側が交渉を長引かせるだろうが、そうさせるべきではないと伝えたということだ。

「彼(トランプ)は自分が試みたことに非常に満足していた」とグラム議員は述べた。

一方で、外交は単なるパントマイムであり、必ず失敗する運命にあると考える者もいる。

ジョー・バイデン政権で国務次官補として中東政策を担当した元外交官のバーバラ・リーフは、トランプが軍事行動へと向かうことは避けられないことは明らかだと述べ、協議の最中に2つ目の空母打撃群をこの地域に派遣したことを指摘した。

リーフは次のように述べた。「あれは戦争計画(war planning)の証拠だった。外交でより有利になるために、そんなものは必要ない。彼が軍事攻撃に出るだろうということを、私は全く疑っていなかった」。

●情報諜報機関によるクーデター(An Intelligence Coup)

実際、アメリカとイスラエルは、ジュネーブでの会談前日の水曜日に既に攻撃の可能性について協議していた。ホワイトハウスは、イランに核濃縮への野望を諦めさせる最後のチャンスを与えるため、攻撃時期を木曜日の夜に延期した。その後、夜間に紛れてテヘランを攻撃するという案で、攻撃時期は金曜日まで延期されました。

この時期は、最終的に驚くべき諜報活動によって決定された。

ハメネイ師の動向を綿密に追跡していたCIAは、最高指導者が土曜日の朝、テヘラン中心部の自宅敷地内に滞在する予定であることを掴んだ。イランの文民および軍の高官たちも、同じ場所で同時刻に会合を開く予定だった。

CIAはこの情報をイスラエルの情報諜報機関に渡し、両国の指導者は、日中に大胆な「斬首(decapitation)」攻撃で戦争を開始することを決定した。

トランプは金曜午後、エネルギーに関する演説を行うためにテキサス州のコーパスクリスティに飛び立つ際、正式なゴーサインを出した。

地上に降り立った大統領は、外交の行き詰まりを示唆し、記者団に対し「交渉に満足していない」と述べた。イランは何十年もの間、「我が国の国民の足、顔、腕を吹き飛ばしてきた。彼らは我が国の船舶を次々と攻撃し、毎月何かを起越している」と述べた。

イラン当局者4名によると、アメリカが攻撃を準備しているという兆候は十分にあったものの、イラン側は日中に攻撃が行われる可能性は低いと考えていたという。

それはイランの週明けの土曜日の朝で、子供たちは学校へ、大人たちは仕事へ向かっていた。

最高国家安全保障会議(the Supreme National Security Council)の会合に出席した人々は、アメリカやイスラエルのスパイに知られていない可能性のある地下バンカーやその他の秘密の場所で会合を開く必要性を感じていなかった。

複数の当局者によると、ハメネイ師は側近に対し、戦争が勃発した場合、身を潜めた指導者として歴史に裁かれるよりも、その場に留まり殉教者(a martyr)となることを望むと語ったという。

高官たちが会議のために集まっている間、彼は敷地内の別の場所にある執務室にいた。会議終了後、説明を求めていた。

ミサイルは会議開始直後に着弾した。

※ヘレーネ・クーパー、ファーナズ・ファシヒ、ゾルラン・カンノ=ヤングス、デイヴィッド・E・サンガー、マイケル・クロウリーが本稿の作成に貢献した。

※マーク・マゼッティ:ワシントンDCを拠点とする、国家安全保障、情報諜報、外交問題を専門とする調査報道記者。CIAに関する著作がある。

※ジュリアン・E・バーンズ:『ニューヨーク・タイムズ』紙アメリカの情報諜報機関と国際安全保障問題担当記者。20年以上にわたり安全保障問題について書いてきた。

※テイラー・ペイジャー:『ニューヨーク・タイムズ』紙ホワイトハウス担当記者。トランプ大統領とトランプ政権を担当している。

※エドワード・ウォン:『ニューヨーク・タイムズ』紙記者。国際問題、アメリカ外交政策、国務省を担当。

※エリック・シュミット:『ニューヨーク・タイムズ』紙国家安全保障担当記者。30年以上にわたりアメリカの軍事問題とテロ対策を取材。

※ローネン・バーグマン:テルアヴィヴを拠点とする『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌スタッフライター。
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連邦議員たち:イスラエルのイラン攻撃計画がトランプ大統領の攻撃決定を決定づけた

アレクサンダー・ボルトン筆

2026年3月2日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5764030-trump-administration-iran-strikes-israel/

民主、共和両党の有力議員たちは月曜日、トランプ政権が今週末、イラン全土への爆撃とミサイル攻撃を開始する決定を行ったが、この決定は、アメリカの支援の有無にかかわらず、イスラエルがイランを攻撃する計画に大きく左右されたと述べた。

複数のトランプ政権高官は、議会で行われた機密ブリーフィングで、民主、共和両党の議員たちに対し、イスラエルのイラン攻撃計画は、アメリカが中東各地の基地に駐留するアメリカ軍兵士を守るため、先制行動(preemptive action)を取らざるを得ない状況に追い込んだと述べた。国防総省は、これらの兵士たちが報復攻撃(retaliatory strikes)の標的になると考えていた。

連邦上院情報諜報委員会の副委員長を務めるマーク・ワーナー連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は、ブリーフィングに出席し、同盟国(イスラエル)からの圧力を受けて他国(イラン)への大規模軍事攻撃を開始する決定は、アメリカを「未知の領域(“uncharted” territory)」に陥れたと述べた。

ワーナー議員は、「これは依然として選択的な戦争であり、他国からも認められているように、イスラエルの目標とタイムラインによって決定づけられたものだ」とブリーフィングで記者団に語った。

マルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグゼス国防長官、ジョン・ラトクリフCIA長官、ダン・ケイン統合参謀本部議長は月曜日の午後、連邦議員たちにブリーフィングを行った。

ワーナー議員はイスラエルを支持すると述べたものの、差し迫った脅威(an imminent threat)がアメリカ自身ではなく同盟国に向けられている可能性があるにもかかわらず、アメリカ人の命を危険に晒すという決定には疑問を呈した。

ワーナー議員は「イスラエルはアメリカの偉大な同盟国だ。私はイスラエルを断固として支持する。しかし、結局のところ、アメリカ兵を危険に晒すこと、そしてアメリカ人の犠牲者やさらなる犠牲者が出ると予想される状況においては、アメリカの利益に対する差し迫った脅威の証拠が必要だと考えている。私は依然としてその基準を満たしていないと考えている」と述べた。

ワーナー議員は、もしイランに対する軍事作戦が「アメリカに対するイランからの差し迫った安全保障上の脅威によって推進されていたのであれば、私たちはより適切な計画を立てていたはずだ」と主張した。

マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)はブリーフィング後に記者団に対し、イスラエルがアメリカの支援なしでも軍事作戦を開始し、中東地域に駐留するアメリカ軍が危険に晒されることが明らかになったため、トランプ大統領はイランへの攻撃を命じるという、難しい決断に直面したと述べた。

ジョンソン議長は、「イスラエルは、アメリカの支援の有無にかかわらず、自国の防衛のために行動する決意を固めていた。それは何故か? それは、イスラエルが存亡にかかわる脅威(an existential threat)と見なす脅威に直面していたからだ。イランは急速にミサイルを製造しており、中東地域の同盟諸国はそれに対応できないほどになっていた」と述べた。

ジョンソン議長はさらに、「イスラエルがアメリカの支援の有無にかかわらず行動する決意を固めていたので、私たちの最高司令官、政権、そして閣僚は非常に難しい決断を迫られた。彼らは、アメリカ、私たちの軍隊、私たちの施設、そしてこの地域とそれ以外の地域にある私たちの資産に対する脅威を評価する必要があった」と語った。

ジョンソン議長は、トランプ政権の高官たちは「もしイスラエルがイランの兵器庫を破壊するために攻撃すれば」、イランは「即座にアメリカ軍の人員と資産に対して報復するだろう」と判断していたと述べた。

「もし私たちがそうした事態が起こるまで待っていたら、私たちの不作為(inactions)の結果は壊滅的なものになっていただろう」とジョンソン議長は主張した。

「もしイランが短距離・中距離ミサイルを含む全てのミサイル兵器を我が国の人員、資産、施設に向けて発射し始めていたならば、私たちは甚大な損失を被っていただろう」とジョンソン議長は語った。

「もし私たちが先に行動を起こす前に対応を待っていたら、私たちが行ったような行動をとった場合よりもはるかに大きな損失になっていただろう」とジョンソン議長は付け加えて述べた。

ルビオ国務長官はブリーフィング前に記者団に対し、イスラエルの攻撃に対するイランによるアメリカ軍への報復の脅威が、イラン全土へのアメリカ軍による攻撃開始の決定の原動力となったと述べた。

「私が受けた2つ目の質問は、『なぜ今なのか?』だ。攻撃開始が今である理由は2つある。1つ目は、イランがアメリカであれイスラエルであれ、あるいは誰であれ攻撃を受けた場合、イランはアメリカに対して報復措置を取ることは明白だった」とルビオ国務長官は述べた。

ルビオ長官は、イランによるアメリカ軍とアメリカ軍施設への報復命令は、イスラエルとアメリカが週末の攻撃を開始するずっと前に、現場の指揮官に任されていたと述べた。

ルビオ長官は「もし私たち(アメリカ)が攻撃を仕掛ける前に、彼ら(イスラエル)の攻撃をただじっと待っていたら、はるかに大きな犠牲を生み出していたことだろう」と述べた。

ルビオは次のように主張した。「大統領は非常に賢明な決断を下した。イスラエルの行動は必ず起こると分かっていたし、それがアメリカ軍への攻撃を誘発することも分かっていた。そして、イスラエルが攻撃を開始する前に先制攻撃をしなければ、より多くの犠牲者が出ることも分かっていた」。

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〇「米国のイラン攻撃、イスラエルの策略か? トランプ派内で対立激しく」

日本経済新聞 2026年3月4日 5:51

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0401G0U6A300C2000000/

【ワシントン=飛田臨太郎】トランプ米政権のイラン攻撃を巡り、イスラエルに迫られて決断したか否かを巡り政権支持層内で論争が始まり、対立が鮮明になってきた。ルビオ国務長官がイスラエルの軍事計画が攻撃の引き金となったと説明して波紋を呼ぶ。トランプ米大統領は3日、火消しに追われた。

ルビオ氏は2日、記者団に米国が攻撃を決断した背景には、イスラエルがイランに対して米国への報復につながる軍事行動を計画していたためだと説明した。

「明らかに我々はイスラエルの意図を把握しており、それが我々にとって何を意味するかを理解していた。その結果として行動する準備が必要だった」と触れた。

発言後、「MAGA」と呼ばれるトランプ氏を支持する層からは軍事作戦そのものの正当性を疑うような声が噴出した。

MAGAはもともと戦争を嫌い、近年の中東への軍事関与は米国の国益のためではなく、イスラエルが政策決定に影で影響を与えてきたためだと考える人がいる。

MAGA系の著名インフルエンサーのマイク・サーノビッチ氏は「ルビオ氏の発言はレコードの針が飛んだ瞬間だ。多くの人が推測していた事実を口にした」と説き、軍事作戦のとりやめを求める声が増えるだろうと強調した。

トランプ氏は3日、支持層の反発を踏まえて、あくまで自身の判断だと強調した。イスラエルが米国を戦争に巻き込んだのかと問われ「むしろ、私がイスラエルに決断を迫ったと言えるかもしれない」と語った。

トランプ支持層の中でも、イスラエルとの関係を重視する人々はルビオ氏の発言が曲解されていると主張する。極右運動家のローラ・ルーマー氏は「『イスラエルに操られている』との虚偽の物語が流布している」と反論した。

米紙ニューヨーク・タイムズによるとイスラエルのネタニヤフ首相は、数カ月間にわたりトランプ氏にイラン攻撃を働きかけてきた。2025年12月に米国で会談した際には、トランプ氏に数カ月以内にイスラエルがイランのミサイル基地に攻撃するのを承認するよう求めた。

米国とイスラエルは歴史的に強い協力関係を築いてきた。一方、近年になってから親イスラエルの国民感情は揺らぎつつある。

米ピュー・リサーチ・センターが2025年10月に発表した世論調査によると、イスラエル政府に否定的な意見を持っている米国人は59%で24年調査と比べて8ポイント増加した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2025年11月末、私は、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)を刊行した。その中で、ピーター・ティールが率いるパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスクが率いるスペースX社、パルマー・ラッキーが率いるアンドゥリル・テクノロジーズ社(ティールとマスクの出資を受けている)が企業コンソーシアムを形成して、ゴールデンドーム計画に参画し、巨額の利益を上げるだろう、そして、彼らがアメリカの「新・軍産複合体」として台頭するだろうということを書いた。
goldendomeusoutlines101

 ゴールデンドーム計画は数重兆円規模の巨大プロジェクトであるが、その内容も不透明なのが実際だ。そして、現在、予算承認が進んでいないということだ。しかし、準備段階でも相当な予算が投入される。陸海空に宇宙という多層的なミサイル防衛システムということになると、パランティア社のビッグデータ分析、スペースX社の宇宙開発、ロケット打ち上げ技術、アンドゥリル社のドローン技術の融合が必要となる。そして、ドナルド・トランプ大統領誕生に、ピーター・ティールやイーロン・マスクが重要な役割を果たしたことを考えると、ゴールデンドーム計画は彼らに対する利益供与ということもできる。

 中国は、2015年に「中国製造2025」というプロジェクトを発足させ、AI、ドローン、量子コンピュータなどの分野でアメリカに対抗している。同じ年、中国は、「軍民融合(Civil-Military Fusion)」プロジェクトもスタートさせた。これは、民間企業が開発した、最先端技術の中国軍による利用を促進するものだ。アメリカでも同様の軍民融合を行おうということになれば、ゴールデンドーム計画のような形になる。

 詳しくは是非拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』を読んでいただきたい。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領はゴールデンドームを愛している。彼自身のホワイトハウスは支出を遅らせている(Trump Loves Golden Dome. His Own White House Is Slow-Rolling Spending)

-行政管理予算局によって承認された数十億ドルの支出が差し止められている。

サム・スコーヴ筆

2026年2月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/23/golden-dome-spending-omb-budget-pentagon-trump-missile-defense-drones/
写真
ピート・ヘグゼス米国防長官(右)がワシントンのホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領とゴールデンドームについて協議している(2025年5月20日)
『フォーリン・ポリシー』誌が入手した国防総省の文書によると、トランプ政権の目玉となる国家安全保障戦略である「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムとドローン生産増強計画への数十億ドル規模の予算が支出されていないことが明らかになった。

ドナルド・トランプ米大統領は2025年5月、ゴールデンドームへの支出を称賛し、政権は「アメリカ本土へのミサイルの脅威を永遠に終わらせる」と約束した。

ミサイル防衛兵器を宇宙に配備するなど技術的な課題を抱えながらも、トランプ大統領はわずか3年、つまり大統領の2期目が終了する前に、迅速にプロジェクトを完遂すると約束した。トランプはプロジェクト費用を1750億ドルと見積もっているが、他の推計ではそれよりかなり高額になるとされている。

この計画の財源として、トランプ大統領は昨年連邦議会で可決された「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(the One Big Beautiful Bill Act)」の一環として、この計画に250億ドルを支出すると発表した。

しかしながら、米国防総省の文書によると、ゴールデンドームに関連する宇宙能力への支出のうち、最大140億ドルが連邦資金を配分する行政管理予算局(OMB)の「承認待ち(pending approval)」となっている。

これには、宇宙ベースセンサーに72億ドル、軍事衛星とその防護に36億ドル、標的捕捉関連の軍事衛星に20億ドル、次世代大陸間弾道ミサイル防衛システムに8億ドル、宇宙指揮統制システムに3億5000万ドル、そして宇宙通信システムに1億2500万ドルが含まれる。

アメリカンエンタープライズ研究所上級フェローのトッド・ハリソンは、この資金繰りの停滞により、トランプ大統領が提案した野心的なスケジュールでのゴールデンドーム配備が遅れる可能性があると述べた。「会計年度のほぼ半分が過ぎていることを考えると、この資金の多くを2026年度に使用することは困難であり、つまり配分は2027年度に繰り越されることになる」とハリソンは述べた。

国防総省もドローンの調達を最優先事項としており、ピート・ヘグゼス国防長官は「ドローン優位性(drone dominance)」の実現を約束している。しかし、文書によると、小型ドローン船に15億ドル、中型ドローン船に21億ドルの予算が承認待ちのまま保留されている。

行政管理予算局(OMB)が資金拠出を保留している理由は不明だが、これは行政管理予算局と国防総省の間で資金配分の最適解をめぐる意見の相違を示唆しているとハリソンは述べた。国防総省はコメント要請に応じなかった。

コメントを求められた行政管理予算局広報部長のレイチェル・コーリーは、「これは事実ではない。誰がそう言っているにせよ、誤解している。ホワイトハウスが競争政策と単独調達契約についてどのような立場を取っているかは秘密ではない」と述べた。

『フォーリン・ポリシー』誌は当初、競争政策や単独調達契約について質問していなかった。その後、フォーリン・ポリシー誌はコーリーに対し、ゴールデンドームやドローンの契約プロセスが競争的でないという懸念から資金拠出を差し控えているのではないと言っているのかと尋ねた。

コーリーは「その資金のほとんどは全く保留されていない。全くのナンセンスだ」と答えた。

現在承認待ちとなっている項目の少なくとも1つは、「空中移動目標指示」衛星システムへの20億ドルの割り当てである。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は以前、スペースXがこの契約を獲得する見込みだと報じていた。ゴールデンドームは、スペースX、アンドゥリル、パランティアによるシステム建設の入札で、以前から世間の厳しい批判に晒されてきた。

※サム・スコーヴ:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Xアカウント:@samuelskove
=====
トランプ大統領のゴールデンドームは万能薬ではない(Trump’s Golden Dome Is No Silver Bullet)

-アメリカ最大の防衛計画の1つは発表からほぼ1年が経過した現在も構想の域を出ていない。

アレクサンドラ・シャープ、ジョン・ホルティワンガー筆

2026年1月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/22/golden-dome-trump-missile-defense-explained-greenland/

ドナルド・トランプ米大統領は、1年足らずで歴代大統領の誰よりも多くのことを成し遂げたと主張している。しかし、「トランプ2.0」の最大の提案の一つである「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムは、発表から12カ月近くが経過した現在も、構想の域を出ていない。トランプ大統領は2期目終了までにゴールデンドームを完成させると述べているものの、その実現はますます困難になりつつある。さらに、グリーンランドへの進出もこの構想と結びつけ、今週スイスのダヴォスで行った演説では、デンマーク領であるこの地こそ「史上最大のゴールデンドームを建設する地(land on which we’re going to build the greatest Golden Dome ever built)」だと述べた。

このようなシステムが本当に費用に見合う価値があるのか​​、建設と維持にかかる費用(一部の推計では数兆ドルに上る)と、新たな軍拡競争を煽る可能性の両方において、多くの疑問が残る。一部の専門家は、現在のアメリカのミサイル防衛能力には悪用される可能性のある脆弱性が存在することに同意しているものの、ゴールデンドームが真の解決策となるかどうかについては疑問を呈している。

現在、アメリカは複数のミサイル防衛システムを保有している。その中には、飛行中期段階における中・長距離大陸間弾道ミサイルからアメリカ本土を守るために設計された地上配備型中間段階防衛システム(Ground-Based Midcourse Defense、GMD)、飛行中期段階における短・中距離弾道ミサイルを防御するために地上および海上に配備されたイージス弾道ミサイル防衛システム(the Aegis Ballistic Missile Defense、BMD)、そして飛行最終段階における短・中距離弾道ミサイルを防御するために設計された迅速展開・移動式の最終高高度防衛システム(Terminal High Altitude Area Defense 、THAAD)がある。

しかし、専門家の中には、ロシア、中国、北朝鮮といった主要敵国が兵器の増強と近代化を進めている現状において、極超音速ミサイル、ドローン、先進巡航ミサイルといった新技術がアメリカの防衛体制に危険な隙間をもたらしていると警告を発している人たちもいる。

米国防総省は、小規模で的を絞った取り組みによってこれらの脆弱性(vulnerabilities)に対処しようとしている。しかし、トランプ大統領ははるかに大胆で包括的な解決策を求めている。大統領は、ゴールデンドームによってアメリカ本土へのミサイルの脅威が「永遠に(forever)」なくなると述べている。

ゴールデンドームについて、その目的、期待される能力、潜在的なコスト、開発スケジュール、そして考えられるリスクなど、知っておくべきことを以下に挙げていく。

●ゴールデンドームとは何か、そしてその目的は何か?(What is Golden Dome, and what is it meant to do?)

ゴールデンドームは、多様な空中脅威を阻止できる多層型ミサイル防衛システム(a multilayered missile defense system capable of thwarting a wide range of aerial threats)であるが、特に長距離ミサイルの破壊に重点を置く。多くの点で、これは防衛のために宇宙を兵器化する(weaponizing space for the sake of defense)ということだが、地上、海上、空中の層も含まれることになる。

ゴールデンドームは、1984年にロナルド・レーガン米大統領が提唱した「スターウォーズ(Star Wars)」の愛称を持つ戦略防衛構想(Strategic Defense Initiative、SDI)の近代化された拡張版と言えるかもしれない。しかし、この計画が実用化されることはなかったことは注意すべき点だ。

トランプ政権はゴールデンドームを「次世代ミサイル防衛シールド(next-generation missile defense shield)」と表現している。この構想を主導する米宇宙軍のマイケル・グートライン大将は、これを「マンハッタン計画に匹敵する規模(on the magnitude of the Manhattan Project)」と評した。しかし、プロジェクトの規模はそれよりもさらに大きくなる可能性がある。

ゴールデンドームは、基本的にあらゆるもの、つまり国防総省が2025年5月に発表したプレスリリースにあるように「あらゆる敵からの空中攻撃(aerial attacks from any foe)」から防衛することを目指している。当初の構想は、主にロシアや中国などのアメリカの敵対諸国が発射する大陸間弾道ミサイル(intercontinental ballistic missiles、ICBM)の迎撃に重点を置いていた。ICBMは、核兵器を搭載して宇宙空間に発射され、大気圏に再突入して標的を攻撃する先進的な長距離ミサイルで、射程は通常3400マイル(約5600キロメートル)以上だ。

しかし、ホワイトハウスが2025年1月下旬にこの構想を初めて発表して以来、この防衛システムの提案能力は拡大し、「巡航ミサイル、弾道ミサイル、極超音速ミサイル、ドローン(通常兵器か核兵器かを問わず)」を含む、他の多くの潜在的な脅威も含まれるようになったと、ピート・ヘグゼス米国防長官は昨年5月に述べた。

これは、冷戦時代の核への恐怖からドローン技術の実際的な懸念へと現代戦争の変遷に対応するための取り組みの一環だ。ロシアとウクライナの戦争は、偵察から直接的な標的攻撃まで、あらゆる用途における低コストで使い捨て可能なドローンの有効性を特に示した。この戦争における両陣営の死傷者の約70%はドローンによるものと推定されている。

「この分野では、十分な速さで対応できない」と、米陸軍副参謀総長のジェームズ・ミンガス将軍は昨年7月に述べた。その理由として、多くの軍指導者や専門家が、短距離ドローンの脅威への対応においてアメリカは後れを取っている点を強調した。

ゴールデンドームがドローンの脅威に具体的にどのように対処するのかについては疑問が残るものの、国防総省は他の方法でこの問題に取り組んでおり、特に現代の戦場で好んで使用される小型無人航空機(small, unmanned aerial vehicles)への対抗能力をアメリカ軍にいかに強化するかに重点を置いている。このため、陸軍はドローンの訓練にますます力を入れている。昨年8月、国防総省は小型ドローンに対抗する軍の能力強化を加速させるため、新たな省庁間合同タスクフォースを設置した。これは、この問題が軍にとって優先事項となっていることを示す新たな兆候である。

しかし、ゴールデンドーム推進の推進は、音速の5倍(マッハ5)以上で飛行するため迎撃が極めて困難な極超音速ミサイルの開発競争をめぐる世界的な懸念によっても促進されている。

But the push for Golden Dome has also been catalyzed by concerns over the global race to produce hypersonic missiles, which travel at five times the speed of sound (Mach 5) or faster, making them exceptionally difficult to intercept.

●ゴールデンドームは理論上どのように機能するのだろうか?(How will Golden Dome function in theory?)

ゴールデンドームは、センサーと迎撃衛星を搭載した数百、あるいは数千もの衛星群を用いて、極超音速ミサイルをはじめとする兵器システムを追跡・破壊する。

トランプ政権は、この宇宙配備型システムがブースト段階、つまり発射後約5分間の初期段階にあるミサイルを迎撃できる能力を持つことを想定している。ブースト段階のミサイルは探知が容易ですが、破壊は困難だ。なぜなら、ミサイルを破壊には発射地点付近に迎撃衛星を配置する必要があるからだ。迎撃衛星を低軌道に配備することで、ゴールデンドームは理論的には、ブースト段階、つまり飛行初期段階にある敵ミサイルを破壊する能力をアメリカに提供する可能性がある。

アメリカの現在のミサイル防衛システムは、中間段階(ブースターの燃焼が終わった後、ミサイルが最大20分間宇宙空間を滑空する段階。これはミサイルの飛行の中で最も長い段階であり、大気圏再突入前の迎撃の絶好の機会である)と最終段階(ミサイルが大気圏に再突入し、目標に命中するまでの段階)におけるミサイルの迎撃に重点を置いている。

もし今日、ICBMがアメリカ本土に向けて発射された場合、ワシントンの主要な防衛線は地上配備型の中間段階防衛システムであり、ミサイルが中間段階にある間に迎撃する。しかし、アメリカ西部のカリフォルニア州とアラスカ州に設置されている地上配備型中間段階防衛システム(GMDシステム)の一部として運用されている地上配備型迎撃ミサイルはわずか44基である。GMDシステムは全50州を防衛する設計となっているが、北朝鮮のような敵対国による限定的な攻撃に対抗することを目的としており、ロシアや中国のより大規模で高度な兵器に対する防御は想定されていない。

イージスBMDシステムは信頼性が高いと考えられているが、ICBMの迎撃を目的として設計されている訳ではない。これは地域に特化した防衛システムであり、大規模な攻撃に対抗したり、アメリカ本土全体を防衛したりすることを目的としたものではない。

アメリカには最終高高度防衛システム(Terminal High Altitude Area Defense 、THAAD)とパトリオットシステムがあり、ミサイルを最終段階で迎撃することが可能ですが、限られた時間(1分未満の場合もあり)やミサイルが標的に近接していることなど、様々な課題から、最終段階はそのような脅威を迎撃するには最も理想的なタイミングとは言えない。これらのシステムは、一般的にICBMや長距離ミサイルの迎撃を目的として設計されていない。

ここでゴールデンドームの出番だ。提案されているシステムは、より高度な技術を持つ敵から発射される様々な射程のミサイルを、ブースト、ミッドコース、そして最終段階の全ての飛行段階で迎撃することができる。

しかし、繰り返すが、これはあくまでも理論上の話だ。

ゴールデンドームの開発には、その機能を果たすために必要な宇宙配備型迎撃ミサイルの膨大な数をはじめ、重大なハードルが存在する。

「核兵器に対処する場合、真に安全だと感じるためには、非常に高い迎撃率が必要だ」と、ブルッキングス研究所の防衛専門家マイケル・オハンロンは次のように述べている。「多層防御が必要だ。そして問題は、多層防御の多くは、大国によって偽装されたり、欺かれたり、あるいは飽和状態に陥ったりする可能性があるということだ」。

つまり、アメリカの敵対国がゴールデンドームの能力を圧倒するには、システムを水浸しにするか、デコイを使うだけで済むということだ。アメリカはまだ、宇宙空間にある弾頭が真の脅威なのか、それとも欺瞞なのかを判断する技術を開発している。

●ゴールデンドームの費用はいくらかかるだろうか?(How much will Golden Dome cost?)

ゴールデンドーム開発における重大なハードルはおそらく費用となるだろう。トランプ大統領はこのプロジェクトの費用は約1750億ドルだと述べているが、実際の費用ははるかに高額になると推定されている。

宇宙配備型迎撃ミサイルに頼るのは、飛来する飛行体1個を撃墜するのに数十基の迎撃ミサイルが必要となるため、費用のかかる戦略となる。「不在率(the absentee ratio)こそが真の致命的な問題だ。これらの迎撃ミサイルやレーザーミサイルのほとんどは、高度が高いため常に周回しているため、適切な位置に配置できず、適切な位置にある1基に対して10基ほどの迎撃ミサイルを宇宙に配備しなければならない」とオハンロンは述べている。

アメリカンエンタープライズ研究所上級研究員のトッド・ハリソンによると、迎撃ミサイル1基の調達コストは平均440万ドルから890万ドルと推定されている。つまり、ゴールデンドームが最大2発のミサイルに対抗するために全世界を継続的にカヴァーするために1900基の迎撃ミサイルが必要だとすると、総調達コストは86億ドルから172億ドルとなる。しかし、(例えばシステムを氾濫させる戦略の一環として)発射される弾道ミサイルの数が増えると、より多くの迎撃ミサイルが必要となり、調達コストは急騰する。連邦議会予算局の推計によると、限定的な宇宙配備型迎撃ミサイルシステムでさえ5000億ドル以上のコストがかかるということだ。

これはゴールデンドームの総費用を考慮に入れていない。ゴールデンドームの総費用は、どの脅威を優先するか、そしてどこでカヴァーするかによって、20年間で2520億ドルから3兆6000億ドルと推定されている。

これまでに、連邦議会はゴールデンドーム構想に約250億ドルを拠出している。この構想は2026年国防権限法にも漠然と言及されているものの、具体的な支出指示は示されていない。

2025年10月、ロッキード・マーティンのジム・タイクレットCEOは、ロッキード・マーティンは2028年までにゴールデンドーム構想の一部である宇宙配備型ミサイル迎撃ミサイルを少なくとも1基試験する計画だと述べた。

ミサイル防衛プロジェクトのディレクターであり、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員であるトム・カラコは、ゴールデンドームは「システム(system)」ではなく、むしろ「数年にわたって段階的に展開される構想(initiative” that will be rolled out in phases over a “number of years)」であると述べた。ミサイル防衛へのこのようなアプローチはずっと前から必要だったと述べるカラコは、ゴールデンドームを「会計機能(accounting function)」と表現し、この構想に関する多くの詳細が依然として未確定であることを強調した。

トランプ政権には「計画のコンセプト(concept of a plan)」があると元国防次官(政策担当)のエリック・エデルマンは述べた。エデルマンは続けて次のように語った。「トランプ政権が実際に成果を上げたいのであれば、現状の巡航ミサイルの脆弱性への対処といった、容易に達成できる目標に取り組むだろう。そうでなければ、3年で成果を上げることは難しいだろう。なぜなら、はるかに長い時間がかかるからだ」。

しかし、国防総省は依然として楽観的な姿勢を崩していない。2025年10月、ある国防関係のお当局者は『フォーリン・ポリシー』誌に対し、ゴールデンドームは国防総省にとって依然として「戦略的に不可欠なもの(strategic imperative)」であり、同省は「作戦上の安全保障を最優先に考えている(operational security top of mind)」ため、これ以上の情報提供はできないと述べた。

「私たちは大統領のヴィジョンを実現するために、引き続き尽力していく」と公式コメントを控えたこの当局者は付け加えて述べた。

フォーリン・ポリシーは2025年を通して国防総省に複数回連絡を取り、ゴールデンドームの開発状況について最新情報を求めたが、追加情報は得られなかった。

国防専門家の中には、イスラエルのアイアンドーム・システムをトランプ大統領のゴールデンドーム構想の実現可能性を示す証拠として挙げている。しかし、重要な違いがあるため、この比較は不完全である。

第一に、イスラエルは地理的にアメリカ合衆国よりもはるかに小さく、守るべき領土も多くない。イスラエルの面積はアメリカ合衆国ニュージャージー州とほぼ同じである。さらに、イランの代理組織であるハマスやヒズボラなど、イスラエルの敵対勢力の多くは、単純な軌道と小型の通常弾頭を持つ安価なロケットを主に発射している。アイアンドーム・システムはコストを抑えるため、ネゲブ砂漠のような無人地帯を狙ったロケットも攻撃対象としている。これらの地域は民間人に実質的な脅威を与えないからだ。一方、アメリカは世界最大級の核兵器に対抗することになる。これらの核兵器は大都市圏を標的とする可能性が高く、攻撃を放置する余裕はない。

エデルマンは、「全てを攻撃しなければならない。これが核弾頭漏れ防止防衛の問題点だ」と述べた。

ロシアは5400発以上の核弾頭を保有しており、中国は約600発の核弾頭を保有しているが、2035年までに1500発の核弾頭を保有すると予想されている。北朝鮮の核弾頭の総数は未確認だが、アメリカ科学者連盟は平壌が50発以上を保有していると見ている。(アメリカは約5225発の核弾頭を保有している。)

新アメリカ安全保障センターの防衛プログラムのディレクターであるステイシー・ペティジョンは次のように述べている。「ゴールデンドームは、ロシアや中国が保有する量のミサイルを迎撃できるような防御力場にはならないだろう。中露両国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の兵器規模は大きすぎるからだ。むしろ、限定的な攻撃を迎撃できる盾となることを意図している」。

●ゴールデンドームのリスクは何か?(What are the risks of Golden Dome?)

効果への懸念に加え、多くの批評家はゴールデンドームが世界的な軍拡競争(arms race)を誘発するのではないかと懸念している。ペティジョンは次のように語っている。「つまり、敵対国がゴールデンドームを見て、アメリカが先制攻撃を仕掛けてくると想定し、ミサイルの増強、そしてシールドを迂回するためのより高度なミサイルの開発に着手するのではないかという懸念だ。つまり、ゴールデンドームが対処できるものに加えて、さらに強力なミサイルを開発し、さらに新システムの弱点を突こうとする新型ミサイルも開発するだろう」。

これは、オハンロンが懸念した、戦場への電子線(flooding)やデコイの使用という戦略にも繋がる。アメリカにはまだ対抗できる技術力がない。

しかし、一部の専門家は、外国の敵対国がゴールデンドーム構想に不満を抱いていることは良い兆候だと主張する。カラコは次のように述べている。「ミサイル防衛は抑止力に貢献するために存在する。空に浮かぶスピードバンプ(スピードを落とさせるための道路上の段差)のようなものだ。中国人がそれについて不満を言うのを聞くのは、私たちが何か建設的なことをしているという良い兆候となるだろう」。

※アレクサンドラ・シャープ:『フォーリン・ポリシー』誌「ワールドブリーフ」担当ライター。Blueskyアカウント:@alexandrassharp.bsky.social、Xアカウント:@AlexandraSSharp

※ジョン・ホルティワンガー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@jchaltiwanger.bsky.social、Xアカウント:@jchaltiwanger
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『トランプの電撃作戦』
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 古村治彦です。

 アメリカ軍は世界最強の軍隊ということになっている。実際には決してそういうことはなく、ヴェトナム戦争では敗退、アフガニスタン戦争やイラク戦争でも結果としては敗退となっている。相手が弱ければ勝つというのは当たり前のことであるが、「勝てる相手としか喧嘩(戦争)をしない」というのは一つの真理である。勝てるつもりで出ていて、予想外の反撃を受けて泥沼化し、敗退するというのが、アメリカ軍の敗北のパターンだ。アメリカ軍は確かに規模が大きく、人員も多く、アメリカの国防予算は1兆ドル、約150兆円以上であるが、国防予算がアメリカにとっては大きな負担となっている。そのために、同盟諸国に防衛予算の増額を厳命し、日本にも対GDP比5%のお達しが来ている。高市早苗首相はのりのりで、前倒しでこの厳命に従う。日本国民はアメリカさまの武器を買う奴隷として存在することになる。

 ドナルド・トランプ大統領とピート・ヘグセス国防長官は、アメリカ軍の粛清・粛軍を進めている。今回ご紹介する、ハーヴァード大学教授スティーヴン・M・ウォルト教授の記事は、この動きに対する懸念を表明する内容になっている。トランプとヘグセスが、個人的な好き嫌いや忠誠心の有無で将官たちの昇進や退役について決定をする、人事介入を行うことは有能な将官たちをアメリカ軍から離れさせることにつながり、アメリカの国益を損ねるというのがその主張だ。軍隊が専門性と政治的中立性を堅持する限り、軍隊は政治にとって脅威にならない。しかし、日本の旧軍を見ても明らかなように、政治に関わるようになればそれは亡国へとつながる。政治(政治家)が軍隊を恣意的に利用することも同じである。

 トランプ個人に忠誠を誓う(選挙で選ばれた米大統領に忠誠を誓うこととは違う)ことで、昇進が早まったり、逆にそれをしなければ処分されたりということになれば、それは私兵である。アメリカ軍は国民の税金によって運営されている。トランプの私兵になることは、国民の税金を詐取していることになる。

 私は常々、アメリカの内戦ということ、それが荒唐無稽な夢物語ではないということも述べてきた。トランプがトランプに反対する一般市民に対して攻撃せよという命令を出すような事態も想像される。現在のアメリカ軍がその命令を拒絶するだけの軍隊であるのかどうか、ここはよくよく見ておかねばならない。しかし、懸念の声は既に存在している。

(貼り付けはじめ)

独裁者を目指す人物の軍隊(The Would-Be Dictator’s Army)

-アメリカは非常に憂慮すべき退役軍人の日を迎えようとしている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年11月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/11/11/veterans-day-trump-military-dictator-army/

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ドナルド・トランプ大統領とメラニア夫人はワシントンDCで行われたアメリカ陸軍の式典の最後に並んで立っている(2025年6月14日)

今日は退役軍人の日(Veterans Day)だ(11月11日)。アメリカ社会における軍隊の役割がどのように悪化しつつあるのかを振り返るには絶好の機会だ。国家のために奉仕し、犠牲を払った人々を称えるこの日に、ドナルド・トランプ政権の制服組(the uniformed services)に対する政策は、軍隊の競争力と能力を損ない、アメリカが長く大切にしてきた軍の専門性と政治的中立(military professionalism and political neutrality)の伝統を終わらせる恐れがある。

先週、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ピート・ヘグゼス国防長官による制服組の上級幹部の粛清(purge)を継続する取り組みについて長文の記事を掲載した。ヘグセスは、高官たちの業績不振の責任を問うことも、職務遂行能力の低い男女を解雇することもしない。女性や黒人であること、独立心の兆候が見られること、あるいは最悪なことに、ドナルド・トランプ大統領が純粋に個人的な理由で彼らを憎んでいることを理由に、彼らを解雇している。一例を挙げると、トランプ大統領は4人の上級将校の昇進を遅らせたり取り消したりしたが、彼らの唯一の罪状は、トランプ大統領が特別な敵意を抱いている元統合参謀本部議長のマーク・ミリー退役大将と緊密に協力していたことだったようだ。

ヘグセスの動きがなぜそれほどまでに懸念されるのかを知りたいなら、政軍関係に関する重要な2冊の本を読むことをお勧めする。1冊目は、サミュエル・P・ハンティントンの古典『軍人と国家(The Soldier and the State)』だ。この著作は、このテーマについてアメリカ人が書いた本の中で、おそらく最も影響力のある本と言えるだろう。当時、アメリカでは大規模で恒久的な平時軍事組織の構想は依然として議論の的となっていたが、ハンティントンは、軍隊が高度に「専門化(professionalized)」されている限り、つまり軍人たちが自分の使命は軍事技術を習得することであり、政治に介入しないことである(to master the military arts but not to interfere in politics.)と理解している限り、大規模な軍隊は民主政治体制への脅威にはならないと主張した。ハンティントンは、脅威の膨張、過剰な支出、軍事力の有用性を過大評価する傾向など、台頭しつつある「軍産複合体(military-industrial complex)」の間接的でしばしば有害な影響を軽視していたと私は考える。しかし、憲法を遵守することを宣誓し、指導者が主に能力に基づいて選出され昇進する、徹底的に専門化された軍隊こそが、軍事クーデターや、軍隊を使って権力を固めようとする大統領に対する最良の保険(the best insurance)であるという彼の意見は正しかった。

2冊目に読むべき本は、MIT教授ケイトリン・タルマジによる素晴らしい研究書『独裁者の軍隊:権威主義体制における戦場の有効性(The Dictator’s Army: Battlefield Effectiveness in Authoritarian Regimes)』だ。タルマジは、独裁者が主に国内の脅威、特にクーデターによる追放の可能性を懸念している場合、権威主義的な軍隊は戦争において非常に不利になる傾向があると主張している。南ヴェトナムやサダム・フセイン政権下のイラクのような国では、この懸念から、権威主義的な指導者は指揮官の選任と昇進において能力よりも忠誠心(loyalty)を重視し、訓練においては外部の敵ではなく国内の危険に焦点を当て、軍内部に分裂を煽り情報の流れをコントロールすることで、指揮官が独裁者の権力を脅かすことを困難にしている。これらの慣行は全て、戦場でのパフォーマンスに悪影響を及ぼす。対照的に、北ヴェトナムのように国内の敵をそれほど懸念していない権威主義政権は、効果的な軍事組織の構築と軍事力の最大化に注力することができる。タルマジはまた、長期にわたるイランとの戦争中のイラクやナチスドイツが侵攻した際のソ連のように、悲惨な外的危機に直面した独裁者は、敗北を回避するために機能不全な慣行を放棄せざるを得なくなることも示している。

これら2冊を合わせると、ヘグゼスの行動(おそらくトランプ氏の全面的な承認を得ている)がなぜそれほどまでに懸念されるのか、その説明に大いに役立つ。トランプ氏とヘグゼス氏が軍事クーデターを懸念しているとは思えないが、行政府の権力を統合し、数百万人の有権者の権利を剥奪し、権力を無期限に維持しようとする野心的で、かつおそらく違法な取り組みに対する国内の反対は明らかに懸念している。そうでなければ、トランプ氏は軍に対し「内部の敵」に焦点を当てるよう指示するだろうか?2021年1月6日に失敗した2020年選挙覆しの試みの再現に反対しない組織、あるいはそのような行動を支援するために利用される可能性のある組織へと、米軍を徐々に変貌させていくことは、アメリカの民主主義にとって潜在的に致命的な脅威である。思い出してほしい。トランプ大統領が、2020年6月に国内の抗議者に対して軍を使うというトランプ大統領の提案にエスパー国防長官が反対したため、一期目のエスパー国防長官を解任したのだ。また、ミリー国防長官に対するトランプ大統領の怒りも、議事堂襲撃前の同様の意見の相違に一部起因している。

Taken together, these two books go a long way toward explaining why Hegseth’s actions (which presumably have Trump’s full approval) are so worrisome. Although I doubt that Trump and Hegseth are worried about a military coup, they are clearly worried about domestic opposition to their ambitious and arguably illegal efforts to consolidate power in the executive branch, disenfranchise millions of voters, and retain power indefinitely. Why else would Trump direct the military to focus on the “enemy within”? Gradually transforming the U.S. military into an organization that would not oppose a replay of the failed Jan. 6, 2021, attempt to overturn the 2020 election, or even into an organization that could be used to support such an action, is a potentially mortal threat to American democracy. Remember: Trump fired first-term Secretary of Defense Mark Esper because the latter had opposed Trump’s proposal to use the military against domestic protesters in June 2020, and his anger at Milley also stems in part from a similar disagreement before the assault on Capitol Hill.

この傾向が続けば、どのような結果が起こり得るだろうか? 第一に、上級将校を能力ではなく忠誠心で選ぶということは、アメリカの兵士、水兵、パイロットが、必ずしも最も知識豊富で経験豊富、そして有能な指揮官に率いられる訳ではないことを意味する。これは一見して良いことではない。第二に、多くの愛国心のある将校は、ますます政治化され非専門的になる環境での勤務を望まなくなり、中には早期に退役を選択する者もいるだろう。その結果、軍からより優秀なリーダーが奪われ、将校団はさらに党派的な方向に傾くことになる(実際、ヘグゼス長官が目指しているのはまさにこれなのかもしれない)。第三に、軍が国内任務(例えば、危険な犯罪者が蔓延していると誤って描写されているアメリカのブルーステート[民主党優勢州]の都市の街頭パトロールなど)を課せられるようになると、深刻な敵に立ち向かう準備は整わないだろう。非武装の船舶を爆破したり、弱い敵に巡航ミサイルを発射したりするのは1つの方法だが、もし強力で対等な力を持つ競争相手を抑止し、必要であれば打ち負かそうとしているのなら、最も優秀な指揮官の何人かを粛清し、組織を不必要な国内任務に転用することは、自傷行為(a self-inflicted wound)の典型である。

しかし、ちょっと待って欲しい。アメリカの近年の戦績は、軍幹部の刷新がずっと前から必要だったことを示唆していないだろうか? アメリカの指導者たちは世界最強の軍隊を誇示したがるが、潤沢な資金を持つこの軍隊も、イラクとアフガニスタンで屈辱的な敗北を喫し、近年は他にも数々の恥ずべき挫折や事件を経験した。ヘグゼス長官は、見せかけだけの、準備不足のプリマドンナかもしれないが、数人の首を切ることで、他の者たちの士気も上がるかもしれない。

もしそうならいいのだが。もしヘグゼス長官が、第二次世界大戦でジョージ・マーシャルが行ったように、明らかに腐敗した、もしくは無能な指揮官を排除し、その決定の根拠を綿密に説明することで、部隊を粛清していたとしたら、それは全く望ましい説明責任の形態と見なすこともできるだろう。しかし、現状は明らかにそうではない。それどころか、明確な理由もなく将校たちは解任され、昇進が拒否されたり、あるいは、たまたまトランプ大統領とヘグゼス長官が思い描く軍人のあるべき姿や信念のイメージに合わないという理由で、解任されたり昇進が拒否されたりしている。

さらに、近年のアメリカ軍の失敗は、イラクとアフガニスタンにおける実りのない「国家建設(nation-building)」の試み、そしてリビアやソマリアにおける、同様に軽率な政権転覆(regime change)の試みなど、主にアメリカ国家の文民指導者たち(the country’s civilian leaders)からほぼ不可能な任務を課されたことに起因する。アメリカ軍は主要地域における侵略抑止に非常に優れており、第一次湾岸戦争で証明されたように、より弱い軍隊を打ち負かし、通常攻撃を逆転させることにも並外れた効果を発揮することができる。アメリカ軍が苦手とするのは、これまで民主的な統治の歴史を持たない貧しい多民族国家を占領し、変革することだが、この任務を得意とした軍隊はこれまで存在しない。元アメリカ軍指導者の中には、文民の同僚たちに自分たちが無意味な任務に派遣されていることを警告しなかったり、真実ではないと知りながら楽観的な進捗状況の評価を伝えたりしたとして非難される者もいるが、ヘグゼス長官の策略ではこれらの問題はどちらも解決されないだろうし、彼が粛清してきた将軍や提督たちが職務に適任ではなかったという証拠もない。

今年の復員軍人の日、アメリカ社会においてアメリカ軍が果たす重要な役割、そしてそれを党派政治(partisan politics)や現政権による権力統合の試みから可能な限り隔離する必要性について、改めて考えてみることをお勧めしたい。もし今年の復員軍人の日が、アメリカ国民が当然の誇りとすべき軍隊、そして国内の自由を脅かすことのない軍隊を持つ最後の日となれば、それは容易に覆すことのできない悲劇となるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt

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