古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ファリード・ザカリア

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のきまぐれで、汚い言葉を使った発言にアメリカ国民、そして世界の人々は驚き、嫌悪感を持つ。彼はこれまでの人生で数限りない嘘をついてきたが、一面で非常に正直で、単純な人間である。嫌な思いをすればそれに対して素直に不満を表明する。退屈だと思えば、ある程度は我慢できるが(さすがに大人だから)、やはり態度に出てしまう。分かりやすく、単純な人間でもある。

 トランプの特徴は自分以外の人間を蔑視し、罵ることが得意である点だ。過剰な自信を持ち、自分は素晴らしいが、ほかの人間はダメだという形でこき下ろす。敵とみなせば、それまでどんなに友人関係であった人でも、口汚く罵ることになる。トランプは長年にわたり民主党員であり、ビル・クリントン、ヒラリー・クリントン夫妻とは長年にわたり家族ぐるみの友人関係であった。トランプの娘イヴァンかとクリントン家の娘チェルシーは長年にわたり親友であったが、親たちが敵同士となったことで、その関係は終わりを迎えた。

 敵認定したり、無能認定したりすれば、口汚く罵る。それは大統領になっても変わらずで、外国や外国の政治指導者たちに対してもそうだった。最新の例で言えば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を罵ったということもあった(仲が良いので率直な物言いになったということもあるだろうが)。

 下記論考で、著者ファリード・ザカリアはトランプのこうした外国への蔑視や軽蔑が外国のアメリカ離れを引き起こしていると書いている。しかし、それはトランプになんでも責任をかぶせてしまう考え方である。外国の政治指導者や外国政府は馬鹿ではないし、トランプの発言や態度にいちいち目くじらを立てるほど狭量でもなく、暇でもない。ヨーロッパ諸国やカナダが軍事面でのアメリカ依存から脱却しようとしているのは、アメリカが世界帝国の地位を維持できないと判断しているからだ。アメリカは西半球に撤退するということになれば、ヨーロッパからアメリカ軍のプレゼンスがなくなるということだ。逆に、カナダにしてみれば、アメリカが西半球での支配を強めるということになれば、「属国化」を懸念することになる。アメリカ離れの動きはアジア地域や中東地域にも波及している。中国との関係改善や関係強化に動いている国もある。

 アメリカ離れは短期的な現象ではない。トランプが馬鹿なことばかり言って、馬鹿なことばかりをやっているから起きている現象ではない。長期的なアメリカの国力衰退、酒井は建国、世界帝国の地位の維持の困難さを世界各国が認識しているから起きている。そうした中で、いつまでも20世紀の冷戦期の思考で、何でもかんでもアメリカに従っておけば安心だ、大丈夫だという、時代遅れでおめでたい政治指導者と国民の国が極東に存在する。ご多分に漏れず、この国もまた衰退の途を順調に進んでいる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの蔑視の代償が明らかになり始めている(The Costs of Trump’s Contempt Are Starting to Show

-ヨーロッパからアジアまで各国政府は不安定で予測不能な(unreliable and erratic)アメリカの力に対抗するための対策を講じている。

ファリード・ザカリア筆

2026年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/24/trump-united-states-allies-partnerships-insult-contempt-europe-canada-china-asia/

先日、中国の産業の中心地である深圳を訪れ、中国の伝説的な実業家の1人と話をする機会があった。イラン戦争について尋ねると、彼の返答は私を驚かせました。彼は次のように語った。「私たちにとって、ドナルド・トランプ大統領のイラン攻撃は、グリーンランド攻撃の脅迫ほど重大な問題ではない。彼がアメリカの最も古い同盟国に対してそのような脅迫をした時、ヨーロッパはアメリカの対中政策に追随しないだろうと私は確信した」。

アメリカにおいて、ドナルド・トランプ大統領がヨーロッパに対して定期的に浴びせる侮辱(periodic insults)は、ホワイトハウスという名のリアリティ番組の一部、日常的な癇癪(routine tantrums)として扱われる傾向がある。しかし、ヨーロッパでは、こうした侮辱(abuse)の積み重ねが限界点(a tipping point)に達している。保守的で、(通常は)熱烈な親米雑誌である『スペクテイター』誌のイギリス版にダニエル・デペトリスは最近寄稿し、次のように書いている。「イラン戦争は・・・ヨーロッパに毅然とした態度を取ることを強いた。ヨーロッパの指導者たちは、もはやトランプ大統領の機嫌を取るためにひざまずいて媚びへつらうことに興味はない」。ヨーロッパは言葉だけでなく行動に移しつつある。

ヨーロッパ連合(EU)の「欧州再軍備計画/2030年即応計画(ReArm Europe/Readiness 2030 plan)」では、今後数年間で約8000億ユーロ(約9350億ドル)を防衛費に投資する予定だ。かつては、アメリカがヨーロッパの安全保障を担い、ヨーロッパ諸国はアメリカ製兵器に多額の資金を投じるという構図だった。しかし今、ヨーロッパ諸国は、より多くの資金を国内に留め、ヨーロッパ企業やサプライチェインの構築に充てることで、ワシントンからの戦略的自立を目指している。

同様の論理は防衛分野を超えて広がりつつある。ヨーロッパ決済イニシアティヴ(European Payments InitiativeEPI)は、ヴィザ(Visa)とマスターカード(Mastercard)に代わるヨーロッパ全域規模の決済システムを構築している。ヨーロッパの諸機関は、スゥイフト(SWIFT)、ペイパル(PayPal)、その他のアメリカ主導の金融プラットフォームに代わる手段を模索している。フランスは金準備(gold reserves)をニューヨークからパリに移し、ドイツとイタリアの政治家たちは自国も同様の措置を取るべきかどうかを議論している。ヨーロッパ各国政府は、アメリカ企業が将来的に重要なサーヴィスを停止するよう命じられることを懸念し、アメリカ製ソフトウェアに代わる手段を探している。これらは全て単なるポーズだと片付けることもできるが、ヨーロッパは世界第2位の経済規模を誇り、世界第2位の基軸通貨を保有している。その行動は重大な意味を持つ。

おそらく最も顕著な変化は、ヨーロッパの右派に見られる。かつて反米主義は左派の教義であり、パリの知識人、学生運動家、反戦政党などが担っていた。右派は本能的に大西洋主義(Atlanticist)の信奉者だ。そして、ヨーロッパのポピュリスト右派はかつてトランプを自分たちの守護聖人(patron saint)と見なしていた。しかし、グリーンランド問題、イラン問題、そしてトランプのヨーロッパに対する全般的な軽蔑は、ヨーロッパの政治スペクトラム全体において、トランプを政治的に忌避される存在にしてしまった。『ワシントン・ポスト』紙は、イギリスのナイジェル・ファラージ、フランスのマリーヌ・ルペン、イタリアのジョルジア・メローニ、そしてドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」党員など、多くのポピュリストがトランプとアメリカの政策から距離を置いていると報じた。ハンガリーでさえ、当時のヴィクトル・オルバン首相のためにJD・ヴァンス副大統領が行った演説は、オルバン首相の選挙の見通しに悪影響を与えた可能性がある。

これはヨーロッパだけにとどまらない。カナダでは、マーク・カーニー首相がアメリカ市場への依存度を下げることを明確に打ち出している。彼はすでに中国を含む20以上の経済・安全保障協定に署名し、アメリカ以外の輸出を拡大しようとしている。カナダ国民もアメリカ製品の購入を減らし、アメリカへの休暇旅行も減らしている。

ヨーロッパとカナダは、中国をすぐに受け入れるつもりはない。ヨーロッパとカナダはウクライナ、補助金、電気自動車、重要鉱物、市場アクセスをめぐって北京と深刻な対立を抱えている。しかし、可能な限り中国との関係を良好に保つだろう。ヨーロッパとカナダはリスクヘッジを行う。ワシントンとは必要な時に、北京とは都合の良い時に、そして可能な限り他の国々とは交渉するだろう。中国の学者である達巍が最近『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿したエッセイで、北京にとっての新たな地政学的事実は、今やヨーロッパとアメリカの間に深刻な分断が生じており、それを利用できる状態にあることだと論じている。

アジアでは、アメリカの同盟諸国が最も大きな打撃を受けている。ホルムズ海峡を通過する石油と天然ガスの80%以上がアジア向けだった。現在、アジア大陸の多くの国々は、半世紀、いやおそらく史上最悪のエネルギー危機に苦しんでいる。その結果、日本や韓国といった同盟諸国は、ロシアやイランといった敵対国に頭を下げて、国内の電力供給を維持するための燃料確保を交渉せざるを得なくなっている。さらに追い打ちをかけるように、彼らはトランプ大統領から非難を浴びている。トランプ大統領は、これらの国々がイランとの戦争に積極的に参加しなかったことを理由に、事前に相談も受けていないにもかかわらず、非難しているのだ。現在、多くの国々がエネルギー安全保障やグリーンテクノロジーについて北京と協議を行っている。

トランプ政権の外交政策に関して繰り返し問われているのは、その影響はどれほど永続的なものになるのかという点だ。アメリカは同盟諸国との信頼関係の喪失から立ち直ることができるだろうか? 各国はすでに長期的な政策転換を始めており、これらの動きはやがて独自の展開を見せ始めるだろう。彼らは、自分たちの安全と幸福をワシントンに委ねていたことに気づき、ワシントンはその依存を利用して彼らを苦しめてきた。だからこそ、彼らは頼りにならないアメリカから身を守るために保険に加入することを決めたのだ。そして、誰が彼らを責めることができるだろうか。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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 古村治彦です。

 今回は、イラン攻撃直前に発表された、ファリード・ザカリアの論考をご紹介する。2月末、27日の段階で発表された論稿だ。27日は攻撃の前日、攻撃命令はすでに下されていた。ザカリアはおそらくイラン攻撃命令が下されたことを掴んでいただろう。その前に、既に中東地域にアメリカ軍が展開していたこともあり、イラン攻撃については秒読み段階という手応えもあっただろう。

 ザカリアの主張は、「爆撃と願いは戦略ではない」ということだ。これは、アメリカが明確な戦略的目標を設定して、その実現のために攻撃をするならばいざ知らず、そのようなことがない状況で、攻撃をしても、「後は野となれ山となれ」の状態になって失敗するというものだ。アメリカがイランの核兵器開発能力を排除するということで攻撃するということならば、それは2025年6月の攻撃で成功している。また、イランの弱体化についても、経済制裁なども絡めて実施しており、その効果は出ている。アメリカの情報・諜報機関もイランは核兵器を開発していないという報告を出している。イランの政権転覆、体制転換を目標とするならば、空爆だけでは成功しない。地上軍の侵攻と占領が必要となるが、アメリカ軍は地上軍派遣を実施できない。アメリカ軍がイランに対して地上侵攻を行えば、双方に多大な犠牲者が出る。アメリカ軍は犠牲者が出ることを嫌う世論とも戦わねばならない。アメリカはイランの体制転換、政権転覆を短期的には望んでいなかった。

 アメリカのイラン攻撃は全く意味のないものということになる。イスラエルにとっては、自力ではできないことであるが、アメリカを利用してイラン攻撃をしてあわよくばうまくいってくれると嬉しいという博打としての攻撃で会って、それが今回失敗したことになる。イスラエルとしてはイランの政権転覆、体制転換が望ましいが、自力で行うことは不可能だ。イスラエルが地上軍を派遣することはできない。モサドがイラン国内、イラン政府内に張り巡らしたネットワークを利用して情報を取り、暗殺を実行することはできるが、それが政権転覆、体制転換にはつながらない。

 こうして、合理的に考えれば、イラン攻撃の判断は誤ったものということになる。アメリカのドナルド・トランプ大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はその責任を取る必要があるが、今のところは早期の停戦合意をしなければならない。そのためにJD・ヴァンス副大統領が事態の収拾にあたっている。イスラエルがその邪魔をしようとするという見方もあるが、そのようなことをすれば、イスラエルはアメリカ国民からの支持も失い、亡国の坂道を転げ落ちていくだけのことになってしまうだろう。

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「爆撃と願い」は戦略ではない(‘Bomb and Hope’ Is Not a Strategy

―イラン政権が崩壊しなければならないなら、その後に起こる事態の責任はトランプ大統領が負うことになる。そして、それは決して穏やかなものではないだろう。

ファリード・ザカリア筆

2026年2月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/27/iran-united-states-trump-bomb-war/

ドナルド・トランプ大統領は、1時間47分に及ぶ一般教書演説(State of the Union address)の中で、イランについてわずか3分しか触れなかった。これは憂慮すべき事態である。なぜなら、アメリカはイランとの戦争の瀬戸際(the verge of a war)に立たされているにもかかわらず、そのことについて公の場でほとんど議論されていないからだ。トランプ政権は、イラク戦争以来最大規模のアメリカ軍をこの地域に集結させ、2つの空母打撃群と少なくとも150機の航空機を近隣に展開させている。この地域には最大4万人のアメリカ軍兵士が駐留している。それにもかかわらず、軍事作戦を成功させるための核心は、依然として不明確で定義されていない。戦争目的は一体何か?

トランプ大統領は一般教書演説の中で、基本的な目標は、イランに「私たちは決して核兵器を持たない」という秘密の言葉を言わせることだ(those secret words: ‘We will never have a nuclear weapon)と示唆したように思われる。しかし、イランは数十年にわたり、このことを繰り返し述べてきた。イスラム共和国の最高指導者は2003年に核兵器保有を禁じるファトワ(fatwa、宗教令)を発布し、その後も何度もそれを繰り返している。この主張は、バラク・オバマ政権とイラン政府が合意したイラン核合意の冒頭部分で改めて確認されている。トランプ大統領が望むのがこの立場の再確認だけなら、この危機はすぐに終結するはずだ。

しかし実際には、トランプ大統領はそれ以上のものを望んでいる。それは一体何なのか? トランプ政権内部には、イランのウラン濃縮計画の破壊を望むと述べる人物もいる。しかしながら、6月にアメリカがイランを爆撃した際、大統領はイランの核開発計画を「壊滅させた(obliterated)」と声高に繰り返し宣言した。彼は間違いをしてしまったのか? それとも私たちを欺いているのだろうか? もしそうでないとすれば、イランは制裁と禁輸措置の下で、わずか数カ月で核開発計画全体を再構築できたのだろうか? そのため、最初の爆撃よりもさらに大規模な2度目の爆撃が必要になったというのだろうか? そのような主張には到底信頼を置くことができない。

トランプ政権とイランの協議は、主に核問題に焦点を当ててきた。政権はレッドラインを何度も変更してきた。時には、イランのウラン濃縮を容認する可能性があると述べてきた。これは、核不拡散体制の下で全ての国が有する権利だと多くの人が主張している。一方で、マルコ・ルビオ国務長官のような政権高官は、いかなるウラン濃縮も容認できないと述べている。ルビオ長官はまた、イランが弾道ミサイル問題(これは別の問題である)について協議を拒否していることを「大きな問題(big problem)」と指摘した。トランプ政権高官たちは、ヒズボラやハマスといった同盟者へのイランの支援を制限する必要性について言及することもある。そしてトランプ大統領はここ数カ月、政権交代を目標としていることを示唆する発言を繰り返してきた。では、真の目的は何なのか?

イランの核能力を制限することは一つの目標であり、トランプ大統領がかつて指摘したように、昨夏の爆撃によってその目標はほぼ達成された。ヒズボラとハマスは、イスラエルによる壊滅的な攻撃によって、かつての面影を失っている。イラン軍は、空爆で多くの指導者が死亡し、弱体化している。それでは、真の目的は政権交代(体制転換、regime change)なのだろうか? もしそうだとすれば、空爆だけでそれが達成される可能性は極めて低い。地上部隊が実際に侵攻して政権転覆を行うことなしに、政権が崩壊した例は、これまで一つも思い当たらない。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子やアラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン大統領など、長年イランの敵対国であった人々が、焦点の定まらない軍事力が制御不能に陥り、中東地域全体を不安定化させる恐れがあるとして、慎重な対応を促していることは、まさにそれを物語っている。

たとえアメリカがイランの最高指導者を含む多くの高官を殺害する壊滅的な攻撃を行ったとしても、最も可能性の高い結果は、イラン軍が社会に対する支配力をさらに強めることである。戦争は、兵士が支配する。聖職者たちは排除され、イランの現在の聖職者と軍人による混合政権は、より一般的な将校主導の政府に取って代わられるかもしれない。しかし、それは自由民主政治体制への道としてはありそうもない。もしイランの民主化(democratization)がトランプ政権の目標であるならば、それを明確に表明し、計画を立て、反体制派を支援し、指導者を探し出し、彼らに支援を提供するべきである。爆撃と願いは戦略ではない(Bomb and hope is not a strategy)。

戦争理論の巨匠カール・フォン・クラウゼヴィッツは、軍事力は明確な政治目標によって導かれなければならない(military might must be directed by a clear political objective)と主張した。明確な目標なしに戦うことは、戦争を目的のない暴力(aimless violence)に変え、その結果が偶然に左右される危険性があるとクラウゼヴィッツは説明した。ワシントンの政策立案者は、立ち止まって単純な問いに答えなければならない。私たちが目指す最終状態は一体何なのか、そして軍事行動はそれをどのように達成するのか? 漠然とした目標―「弱体化(degrade)」「抑止(deter)」「行動変容(change behavior)」―は、任務の拡大を招く。もしイランの核兵器開発を阻止することが目的なら、条件が満たされていることを確認するための査察(inspections)を伴う合意こそが目標となる(そう、まさにトランプ大統領が離脱した合意だ)。もし政権交代(体制転換)が目的なら、ワシントンは事後的な政治的責任を受け入れる包括的な戦略を準備する必要がある。これ以下の対応は、アメリカ軍と数百万人の人々の未来を賭けた賭けに他ならない。

※ファリード・ザカリア:CNN番組「ファリード・ザカリアGPS」司会者、著述家。最新作に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週に一度コラムを掲載し、『フォーリン・ポリシー』誌に転載されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 民主政治体制の根幹については様々な見解があるだろうが、やはり選挙がその根幹をなす。選挙制度についてはここで詳しく述べることはしないが、選挙の結果である人物や政党、組織に権力を託すことになる。日本の場合には国会が国権の最高機関であり、その国会が行政の長である内閣総理大臣を指名する。国会、衆議院の過半数の議席を握る政党、会派の長や代表、指名すると決められた人物が総理大臣(首相)に指名されるのが通例となっている。

 以下は民主政治体制に関して、短いが非常に興味深い記事である。イギリスのキア・スターマー首相の人気低迷と日本の高市早苗首相の人気上昇を比較している。しかし、高市首相や日本の有権者を称揚する内容ではない。「有能さ」や「冷静さを保ち少しずつ前進する」といった価値よりも、「かっこいい」「かわいい」といった感情的な価値に重きが置かれている。著者のザカリアは「復興(回復)」という言葉と「反乱」という言葉を対比させている。

 日本の高市首相人気は、芸能人や有名人、インフルエンサーを応援する「推し活」に擬せられることが多い。「推し活」とは、自分が好きな対象にできる範囲でお金を使うことで自分の生活を充実させるというものだそうだ。高市首相の勇ましい発言や前任の石破茂前首相とは異なる軽くて中身がない言葉遣いが受けている。難しい政策の話やなかなか政策が進まない現実を有権者は嫌い、高市首相の「目新しさ」や「威勢のよさ」に好感を持ち、アイドルのように応援する。そこには政治家としての技量や器量、経験などは全く加味されない。これが現在の先進西側民主政体国家の日本の現実である。

 有権者たちは不満のはけ口をそのような目立つ政治家たちに求める。このような政治家たちは実際には能力も技術もないので何もできないどころか失敗する。しかし、失敗しても良いのだ。それは、失敗して国家や社会を破壊することを有権者が求めているからだ。堅実に仕事をすることを求めていないのだ。

 これは現在の西側先進諸国に共通する病理であると私は考える。それは、世界構造の大きな転換を前にした人々の不安感を示したものであるとも考えている。こうして、時代は移り変わっていく。

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高市の勝利とスターマーの失速が世界の民主政治体制について語る(What Takaichi’s Triumph and Starmer’s Slump Say About Global Democracy

-イギリスから日本まで「冷静さを保ち前進を続ける」というスローガンは忘れ去られつつある。

ファリード・ザカリア筆

2026年2月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/13/japan-britain-elections-keir-starmer-sanae-takaichi/

2つの衝撃的な政治的事実は今日の世界のムードについて何を物語っているのだろうか?

日本では、高市早苗首相が、長きにわたり政権を握ってきた自民党史上最大の衆議院での圧倒的過半数の議席を獲得したばかりだ。イギリスでは、1年半前に首相に就任したキア・スターマーの支持率は、イギリス首相として史上最低を記録している。

表面的に見れば、これらの出来事は無関係に見える。一方のリーダーは地滑り的勝利を収め(ride a landslide)、もう一方のリーダーは苦戦(stay afloat)を強いられている。しかし、これらを総合的に見ると、現在の政治情勢についてより深い何かが浮かび上がってくる。有権者たちは、復興(回復)よりも反乱を好んでいるのだ(Voters prefer rebellion to restoration.)。

まずイギリスについて考えてみよう。ボリス・ジョンソン、リズ・トラス、リシ・スナクの波乱に満ちた首相時代―ブレグジットの余波、倫理スキャンダル、財政危機、そして政権交代が目立った時代――の後、スターマーは異なるものを提示した。労働党党首である彼は、「冷静さを保ち、前進を続ける」候補者(the “keep calm and carry on” candidate)であり、真剣さ(seriousness)、安定性(stability)、そして有能さ(competence)を約束した。スターマーは制度を再構築し、有能な大臣を任命し、イギリスの対外的地位を回復させるだろう。アメリカの不安定な政治を、静かなる毅然とした態度で対処するだろう。ドラマチックな演出も、イデオロギー的な煽動もせず、ただ大人としての監督のみを行うだろう。

そして、従来の尺度から判断すると、彼は期待に応えた。市場は安定し、内閣(cabinet government)が復活した。政策は冷静かつ漸進的だった。しかし、イギリス国民の感情はそれに追いつかなかった。不満は消えなかった。数カ月のうちに、スターマーの純支持率は極めて低い水準にまで落ち込んだ。

熟練した有能さへの期待も、労働党の重要人物の一人、長年究極のインサイダーと目されていたピーター・マンデルソンが、ジェフリー・エプスタインとの過去の関係をめぐって新たな批判に直面したことで、打撃を受けた。多くの有権者にとって、この出来事は、政権復帰は既に拒絶していた、かつての繋がりを保っていたエリート層の復活を意味するのではないかという疑念を強めるものとなった。『ポリティコ』誌の世論調査によると、現在、有権者の大多数がスターマーは辞任すべきだと回答し、留任すべきだと回答したのはわずか34%だった。

イギリスにとってより大きな問題は構造的なものだ。移民問題は、西側諸国におけるポピュリズムの推進力となってきた。イギリスは2023年3月までの1年間で、約95万人の純移民を記録した。これは、国境の「管理権を取り戻す(take back control)」という目的もあってEU離脱に投票した国としては驚異的な数字だ。多くの有権者の目には、コスモポリタンのエリート層がこの問題への対応を誤ったように映った。この裏切り感は今も薄れていない。

加えて、ヨーロッパは長きにわたり緊縮財政に耽溺してきた。2008年の金融危機後、イギリスは他の多くのヨーロッパ諸国と同様に財政緊縮政策を採用した。歳出は圧縮され、公共投資は削減され、実質賃金は10年近く停滞した。一人当たりGDPは、不況期にはるかに大規模な景気刺激策を選択したアメリカを大きく下回った。その結果、じわじわと悪化する不況が続き、政治家への信頼は揺らいだ。

続いて、日本について見てみよう。高市首相は冷静に運営するのではなく、対立(confrontation)を前面に出して政権を運営した。高市首相は移民問題について、激しい口調で語った。日本の外国生まれの人口は3%程度で、イギリスのほんの一部に過ぎないにもかかわらずだ。彼女は文化の浸食と社会的な緊張(cultural erosion and social strain)を警告した。中国に対してはより強硬な姿勢を示した。数十年にわたる慎重な漸進主義(cautious incrementalism)に終止符を打ち、経済政策に変革をもたらすと約束した。

有権者たちは高市首相に、自民党史上最大の衆議院の過半数の議席という報酬を与えた。

その魅力の一部は象徴的なものだ。世界基準で見て、日本は依然として家父長制社会(a patriarchal society)である。女性が政権を握ること自体が、一つの断絶を意味する。たとえ党の基盤が健全であっても、そのイメージは変化を示唆する。目新しさを求める時代に、象徴性は力を持つ。

イギリスと日本の間には明確な違いがある。日本は、西側諸国の政治を不安定にさせたほどの大規模な移民流入を経験したことはない。また、ヨーロッパ式の緊縮財政も受け入れなかった。確かにここ数十年、経済停滞に苦しみ不安を招いたが、その原因と結果は、西側諸国の怒りを煽った緊縮財政に起因する停滞とは異なっていた。日本が継続してきた景気刺激策は、緊縮財政が生み出した怒りから日本を守ってきた。

こうした構造的な対比は重要である。しかし、今日では、それらの対比よりもむしろ、日本の雰囲気の方が重要かもしれない。

先進民主政治体制国家全体で、現職議員は2024年という世界選挙の節目に、異例の高率で苦戦を強いられた。有権者は落ち着きがなく、政策の詳細よりも感情的な承認を求めている。復興(回復)は理性に訴え、反乱は直感に訴える(Restoration speaks to the head; rebellion speaks to the gut)。現在は、直感が勝っている。

日本の首相は雰囲気を変えた。長年与党が優勢を占めてきたにもかかわらず、高市首相は行動力、破壊力、そして反抗心(motion, disruption and defiance)を体現している。一方、スターマーは安定と修復(steadiness and repair)を体現している。平穏な時代であれば、この対照的な姿勢はイギリスのアプローチに有利に働くかもしれない。しかし、今はそうではない。

政治には周期がある。破壊への欲求は、その代償が明らかになれば薄れるかもしれない。しかし今のところ、イギリスと日本という全く異なる国々において、そのムードは紛れもなく存在している。不安の時代(an age of anxiety)にあって、有権者は回復よりも反乱を好むのである。民主党は中間選挙を控えているが、このことを心に留めておくべきだ。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」司会者。数多くの著作があり、最新作に『様々な革命の時代(Age of Revolutions)』がある。毎週『ワシントン・ポスト』にコラムを執筆し、『フォーリン・ポリシー』誌に転載される。Xアカウント:@FareedZakaria

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