古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ファーウェイ

 古村治彦です。

 米中両国の貿易戦争という言葉は、ドナルド・トランプ大統領時代から使われている。お互いの輸出入に対して高関税をかけるということをやり合った。今回ご紹介するのは、米中経済戦争(economic war)についての記事だ。経済戦争とは、多くの産業分野で、敵対国に勝つ、市場のシェアを奪い、技術で優位に立つために戦いを仕掛けるということだ。現在、米中間では経済戦争が起きており、中国側が有利だというのが下の記事の筆者の分析だ。中国は経済戦争に勝つために、産業政策(Industrial Policy)を実施し、成功している。産業政策の本家本元は日本である。産業政策を世に知らしめたのは故チャルマーズ・ジョンソンの著書『通産省と日本の奇跡』である。日本はアメリカの属国であったため、日米間の戦いは、最初からアメリカの勝利と決まっていたが、中国は大胆に勝負を仕掛け、状況を有利に動かしている。

以下の記事で重要なのは、次の記述だ。

(貼り付けはじめ)

中国はアメリカの技術や産業能力に対して大規模な正面攻撃を仕掛けてきている。2006年に発表された「科学技術発展のための国家中・長期計画(National Medium- and Long-Term Plan for the Development of Science and Technology)」は、この対立における最初の攻撃と考えることができ、2015年には習近平の「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025、中国製造2025)」戦略がそれに続く。どちらも中国が自給自足(self-sufficiency)を目指す重要技術を特定し、主要産業における外国企業の市場参入制限、広範な知的財産の盗用、技術移転の強制、中国企業への巨額の補助金などを背景としている。後者の文書では、主要産業における中国の市場占有率の数値目標も追加された。
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 しかし、通信機器、高速鉄道、建設機械、航空宇宙、半導体、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、自動車、コンピュータ、人工知能など、中国の国内先端産業の育成に用いられる巨額の補助金やその他の不公正な慣行は、比較優位とは無関係だ。自国企業を強化し、外国企業の競争力を削ぐという、産業分野における破壊的侵略(industrial predation)による支配欲が反映されているのである。1995年から2018年にかけて、中国とアメリカが先進産業で占める世界生産のそれぞれのシェアの変化には強い負の相関があるのはこのためだ。言い換えると、アメリカがシェアを失った産業で、中国がシェアを獲得したということだ。
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アメリカの産業戦略が首尾一貫していない主な理由の一つは、戦略を策定し、全ての政府機関がそれに沿うようにすることを仕事とする主体が存在しないことである。このような戦略は、中央集権化され(centralized)、大統領の権限に裏打ちされたものでなければならない。そして適切な資金を提供する必要がある。共和制の擁護者が軍事防衛予算の増額を求めるのは当然だが、アメリカは経済防衛予算の増額も必要としている。

(貼り付け終わり)

 簡単に言うならば、中国は特定の産業分野に資源、資金、人材を集中させるための産業政策を実行した。その分野とは、「通信機器、高速鉄道、建設機械、航空宇宙、半導体、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、自動車、コンピュータ、人工知能」といった最先端産業である。これらの産業分野でアメリカに勝つために、官民協調、一丸となって戦う、そのために政府は目標を設定し、それに誘導するために関税や補助金などを利用するという、「産業政策」を実施している。そして、それが成功しつつある。

中国は、電気自動車やスマートフォンの分野で国産化に成功し、市場シェアを拡大させている。「国産化」が重要なのは、重要な部品を外国に頼っている場合、経済制裁などが行われると、その製品が作れなくなるが、国産化はその危険を回避できるということになる。米中間に当てはめると、スマートフォンの重要なチップをアメリカ製に頼っていては、中国は経済制裁などの不安を抱えたままになる。また、アメリカはチップの供給を止めることができるという優位な立場に立つ。しかし、中国が国産化に成功すれば、アメリカはその優位を失う。これは経済戦争において重要な要素となる。

バイデン政権は遅ればせながら、産業政策を実施しようとしている。しかし、状況を好転させるのはなかなかに難しい。

(貼り付けはじめ)

米中経済戦争を如何にして勝つか(How to Win the U.S.-China Economic War

-最初のステップは経済戦争をきちんと定義することだ

ロバート・D・アトキンソン筆

2022年11月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/08/us-china-economic-war-trade-industry-innovation-production-competition-biden/?tpcc=recirc062921

中国が単なる軍事的敵対者ではなく、経済的敵対者であることが、アメリカに明らかになりつつある。中国が先端産業において得た経済的利益の多くは、アメリカが失ったものであり、その逆もまた然りで、両国は技術革新と生産能力の両方において優位性を求めて争っている。この傾向は今後も続くと思われる。中国の習近平国家主席は昨年(2021年)、「技術革新が世界の主戦場となり、技術優位の競争はかつてないほど激しくなるだろう」と述べ、このことを認めている。

経済戦争(economic war)は、経済競争(economic competition)とは別物だ。例えば、カナダとアメリカは経済的に競争しているが、両国とも貿易は互いに有益な比較優位(comparative advantage)に基づいて行われることを理解している。これとは対照的に、中国はアメリカの技術や産業能力に対して大規模な正面攻撃を仕掛けてきている。2006年に発表された「科学技術発展のための国家中・長期計画(National Medium- and Long-Term Plan for the Development of Science and Technology)」は、この対立における最初の攻撃と考えることができ、2015年には習近平の「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025、中国製造2025)」戦略がそれに続く。どちらも中国が自給自足(self-sufficiency)を目指す重要技術を特定し、主要産業における外国企業の市場参入制限、広範な知的財産の盗用、技術移転の強制、中国企業への巨額の補助金などを背景としている。後者の文書では、主要産業における中国の市場占有率の数値目標も追加された。

経済戦争は前例がないということではない。1900年から1945年まで、ドイツは様々な不公正な貿易慣行を用いて世界的に経済的、政治的な力を獲得し、最終的には軍事力のために利用した。しかし、北京は経済戦争を別の次元に引き上げた。中国の長年にわたる、そして増大する攻撃は、競争相手を潰し、アメリカを経済的な属国(economic vassal state)とすることを目的としている。

ドナルド・トランプ前米大統領の貿易戦争は、アメリカの産業・技術力に対する中国の長年の攻撃に対する反応であった(不十分な表現ではあったが)。当時、ワシントンの専門家たちの多くは、アメリカが本格的な経済戦争に突入したという認識ではなく、トランプの保護主義的な傾向によるものと考えていた。中国の経済侵略の意図と程度が広く理解されるようになったのは、ここ数年のことだ。ジョー・バイデン米大統領が中国への先端チップや半導体装置の輸出を新たに禁止したのは、バイデンと政権内の一部の人々がそれに気づいた証拠だ。

バイデンの禁止令にもかかわらず、アメリカは中国との長期的な経済戦争への備えがほとんどないままである。北京の技術革新重商主義施策(innovation-mercantilist practices)は、世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)が違法と見なす戦術を用いて、先端産業の生産高の大きなシェアを獲得しようとするもので、他国の産業政策(industrial policies)をはるかに超えるものである。それを無視して、中国が軌道修正すると信じたり、アメリカの多くの政策立案者たちのように、中国は民主的で自由な市場でない、あるいは高齢化が進んでいるため成功できないと思い込んだりするのは、砂の中に頭を突っ込んで最善の結果を望むのと同じことだ。賭け金は大きい。戦争に勝てば、国内の賃金や競争力を高め、経済や国家の安全保障を向上させることができる。しかし、負ければその反対となる。

アメリカの国家安全保障分野のエリートたちは、軍事戦争に対する計画を真剣に捉えている。戦争ゲームの演習や米国防総省の支援に多大な資源を費やしている。戦闘を研究するために、数多くの戦争専門大学を設立している。戦争のあらゆる側面について助言するために、数え切れないほどのコンサルタントたちを雇っている。過去の紛争から学ぶために歴史学者を雇う。そして、連邦政府内の各機関と連携する。このような動きをしている。

このようなシステムは、経済戦争にはほとんど存在しない。計画もない。評価もない。戦略もない。経済安全保障システムもない。せいぜい、個々のプログラムやイニシアチヴがあるだけで、政府全体の戦略やシステムを構成することはできない。台湾への侵攻がないこともあり、ワシントンを眠りから覚ますような、中国の大規模な経済攻撃はないだろうと人々は考えている。

ワシントンの政界関係者のほとんどは、少なくともまだ、北京との経済関係を勝ち負けで考えてはいない。政策立案者たちは、外国の敵がアメリカの国家安全保障上の重要な利益を攻撃する可能性があることは理解しているが、アメリカの経済上の重要な利益に関しても同じことが言えるということはあまり認めたくないようだ。実際、経済アドバイザーのほとんどは、貿易が相互に利益をもたらすという比較優位(comparative advantage)の概念をいまだに提唱している。例えば、アメリカは旅客機の製造が得意で、中国は5G機器の製造に長けているといった具合だ。

しかし、通信機器、高速鉄道、建設機械、航空宇宙、半導体、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、自動車、コンピュータ、人工知能など、中国の国内先端産業の育成に用いられる巨額の補助金やその他の不公正な慣行は、比較優位とは無関係だ。自国企業を強化し、外国企業の競争力を削ぐという、産業分野における破壊的侵略(industrial predation)による支配欲が反映されているのである。1995年から2018年にかけて、中国とアメリカが先進産業で占める世界生産のそれぞれのシェアの変化には強い負の相関があるのはこのためだ。言い換えると、アメリカがシェアを失った産業で、中国がシェアを獲得したということだ。

ワシントンはまた、政府の援助や戦略的指示がなくても、企業が自らの利益のために行動すれば経済厚生(economic welfare)が最大化するという自由市場の教義に固執している。しかし、経済学者アダム・スミスやフリードリヒ・ハイエクの最も熱心な信奉者でさえも、市場の力だけでは国家に必要な軍事力を生み出すことはできないと信じている。だからこそ政府が介入し、計画を立てなければならない。しかし、ワシントンの専門家の多くは、その論理を経済戦争の能力にまで広げようとしない。

確かに、経済戦争(economic war)と軍事戦争(military war)は異なる。経済戦争では直接的な死傷者はほとんど出ないが、戦闘ははるかに長期にわたって行われる。しかし、どちらの戦争も最終的には国家の自律的な存続能力(the ability of the state to exist autonomously)を脅かすことになる。

必要な戦争に対する戦略を持たないことより悪いのは、まったく戦わないことだ。ワシントンは、北京がほとんどの先端産業で世界的な主導権を獲得するのを阻止し、中国の経済的なアメリカ(および緊密な同盟諸国)への依存度を大幅に高めること(その逆ではなく)を確実にするという包括的な目標を掲げて、経済戦争を戦うことに関与する必要がある。

問題は、そのような戦略をどのように策定し、運用するかである。これまでのところ、米連邦政府は真のアメリカの経済競争力戦略を生み出すことに失敗している。アメリカの歴代政権がこのテーマについて何かを発表してきたが、それは大抵の場合、実績や有利な政策、あるいは将来の政策意図のリストでしかなかった。最近ホワイトハウスが打ち出したバイオエコノミー構想は、アメリカのバイオテクノロジー産業をいかに成長させるかを提案したものだが、競争力のある産業分析に基づいたものではなかった。また、このプログラムは、ホワイトハウス科学技術政策局が主導する、内容が狭いものだ。効果的なバイオ産業戦略、特に中国に対する戦略には、貿易政策、税制政策、規制政策、その他様々な要素を盛り込む必要がある。

アメリカの産業戦略が首尾一貫していない主な理由の一つは、戦略を策定し、全ての政府機関がそれに沿うようにすることを仕事とする主体が存在しないことである。このような戦略は、中央集権化され(centralized)、大統領の権限に裏打ちされたものでなければならない。そして適切な資金を提供する必要がある。共和制の擁護者が軍事防衛予算の増額を求めるのは当然だが、アメリカは経済防衛予算の増額も必要としている。

ワシントンが、経済戦争戦略が必要だと判断した場合、誰が経済戦争戦略を主導すべきかを最初に決めなければならない。軍事戦略を主導するのは米国防総省である。なぜなら米国防総省は軍事戦争を戦うための機関だからだ。しかし、経済戦争は多面的であるため、米商務省が単独で経済安全保障戦略を主導することはできない。

この戦線における米政府機関間の効果的な連携は、自動的に行われるとは期待できない。中国との経済戦争に勝利することがアメリカの国際経済政策の第一目標であるというコンセンサスはまだ得られておらず、様々な機関がそれぞれの狭い範囲での、時には相反する利益を推進するために行動することが多い。例えば、財務省や国務省が対中強硬策に反対し、商務省や米国防総省がそれを支持するというのはよくあることで、通常は膠着状態(stalemate)に陥る。財務省と国務省が国際協調と世界金融の調和を求めるのに対し、商務省と米国防総省は中国を弱体化させ、アメリカ企業を後押ししたいと考えているのだ。

そのため、連邦議会は、敵対者、特に中国との経済競争を管理するために、ホワイトハウス国家経済安全保障会議(White House National Economic Security Council)を設立すべきである。これは、「人工知能に関する国家安全保障委員会(National Security Commission on Artificial Intelligence)」が提案し、超党派の連邦議員グループによって連邦議会に提出された、「技術競争力評議会(Technology Competitiveness Council)」創設のアイデアと似ている。技術競争力評議会の役割は、アメリカがどのようにして中国に経済的に勝つことができるかに関する政府全体の戦略を確立し、調整し、アメリカの主要な活動全てがこの目標の達成に向けて連携できるようにすることになる。連邦議会はまた、米中経済戦争における連邦議会自身の様々な取り組みに一貫性を与えるために、「統合経済競争力委員会(Joint Economic Competitiveness Committee)」を設立すべきである。連邦議会は現在、様々な委員会や小委員会が存在しているが、これらはまったく連携していない。

一旦、政策立案者たちが、アメリカが中国と経済戦争状態にあることを受け入れ、アメリカの取り組みを指導する組織を設立することになれば、次の問題は、「それでは、戦争に勝つために一体何をすべきか」ということになる。

いかなる経済戦争戦略も、軍事戦争戦略と同様に、2つの重要な課題を包含しなければならない。1つは、敵よりも速く行動すること(running faster than the adversary)だ。この場合、主要産業におけるアメリカの競争力を高める国内政策を通じて、迅速に行動するということになる。もう1つは、アメリカの主要産業における競争力を高めることにより、敵である中国の速度を低下させることである。そのために、アメリカから得ている経済投入と、不公平な貿易慣行から利益を得ている中国企業によるアメリカ市場へのアクセスを妨げることが必要だ。

これは、税金、貿易、独占禁止法、外交と海外援助、諜報、科学技術、製造など、多くの分野で政策を見直し、修正することを意味する。言い換えれば、中国との経済戦争に勝つためには、アメリカの経済政策と外交政策のほぼ全ての部分が連携する必要があるということだ。確かに、各政府機関はそれぞれの優先政策を持っている。それらを調整するのが大統領の仕事ということになる。

例えば、アメリカの対外援助は、受け入れ国が中国側につくかどうかという点と、明らかに関係しているだろう。財務省は人民元に対するドルの価値を下げるよう促すだろう。税制政策は、貿易部門、特に先進産業の減税に重点を置くことになる。通商政策ではアメリカの先進産業の公平な扱いが優先されるだろう。独占禁止法規制当局は大企業を解体するという取り組みを放棄するだろう。科学政策は応用研究に焦点を当てることになるだろう。国務省は、中国の経済侵略に対する行動を調整するために、私が以前から主張してきた貿易のためのNATOの組織化を主導するだろう。そして諜報機関と国内法執行機関は商業諜報活動と対諜報活動を優先するだろう。

そのためには、ワシントンは人材を必要としている。国防、情報、外交政策に携わる公務員や政治任用者(political appointees)のほとんどは、これらの分野を専門とする一流大学を卒業している。しかし、現在アメリカの大学で経済戦争について教えているところはない。ワシントンは、この新興分野に特化した大学や職業訓練プログラムに資金を提供する必要がある。また、超党派の連邦上院議員グループが提案した「グローバル競争分析室(Office of Global Competition Analysis)」のような、米中両国の先端産業の強み、弱み、機会、脅威を評価する分析能力を大幅に向上させる必要がある。

最後に、政治的分裂(political divisions)を克服しなければならない。これまで連邦政府が経済戦争のために動員してきた範囲は限られているが、二大政党が優先してきた武器は異なっている。民主党は財政支出を行い、共和党は減税と規制緩和を行っている。もしアメリカの軍事政策が、一方の政党は海軍を、もう一方の政党は空軍を支持するというように二分されていたとしたらどうだろう。しかし、経済戦争に関しては、それがアメリカの現状なのだ。共和党と民主党がそれぞれの違いを脇に置き、同じ目標を抱くことで、アメリカを中国より優位に立たせることになるのだ。

※ロバート・D・アトキンソン:情報技術・革新財団創設者兼会長、ジョージタウン大学エドマンド・A・ウォルシュ記念外交学部非常勤教授。クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマ、トランプ、バイデン各政権で助言役を務め、最新刊『技術革新経済:国際的な優位のための戦い(Innovation Economics: The Race for Global Advantage)』を含む4冊の著書がある。ツイッターアカウント:@RobAtkinsonITIF

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。 

 2019年7月27日から31日にかけて中国の深圳と香港を訪問した。副島隆彦先生の調査旅行に同行した。調査旅行の結果は『全体主義中国がアメリカを打ち倒すーディストピアに向かう世界』(副島隆彦著、ビジネス社、2019年12月21日)として結実した。私たちが訪問したのは地図の通りだ。

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『全体主義中国がアメリカを打ち倒す』から

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

 本のタイトルにあるディストピアとは技術が進み、生活全般が豊かに便利になるが、技術の進歩を利用して、政府や権力者が人々を監視したり、コントロールしたりする、一枚めくると非常に怖い世界ということになる。SF小説などのテーマとしてこれまで長く取り上げられている。ディストピア小説としては、ジョージ・オーウェルの『一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)』、アーサー・ケストラーの『真昼の暗黒 (岩波文庫)』、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)』が挙げられる。

 私たちは2019年7月27日に日本を午前早くに出発し、昼頃に香港国際空港に到着した。空港では日本人で中国語が堪能のK氏と合流した。空港でK氏が予約していた自動車(運転手付き)に乗り、深圳に向かった。香港と深圳の間に広がる湾にかかっている深港西部通道を通り、数十分で深圳に到着した。香港からは鉄道でも深圳に向かうことができるが、自動車で深港西部通道を使った方が早く便利だそうだ。

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 昼過ぎに深圳西部にある地下鉄の后海駅近くのホテルに到着した。ホテルは日本からインターネットの予約サイトを使って予約したもので1泊1万円程度だったが、清潔で豪華な部屋に泊まることができた。夕方に近くの火鍋屋で食事を摂り、それからタクシーで深圳の電気街・「華強北(ファーチャンペイ)」に向かった。華強北は電気製品の卸や小売りをしている店が並んでいる場所だ。夜にかけてぶらぶらして、地下鉄を使ってホテルに帰った。

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 到着翌日の28日、私たちは運転手付きの自動車を雇って深圳を回った。まずは、ファーウェイ(華為技術、Huawei)の本社に向かった。ファーウェイの本社は深圳の北部に位置し、一つの街のように広大な地域を占めている。高い建物はない。なんでも高層ビルにしてエレベーターを使って上り下りをする、エレベーターを待つ時間がもったいないということで低層にしているという話だ。その一角にはファーウェイが経営するゲスト用のホテルまである。

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 ファーウェイの隣の街区には台湾のフォックスコン(鴻海科技集団、中国では富士康)の工場がある。近藤大介の『ファーウェイと米中5G戦争 (講談社+α新書)』によると、1980年代、ファーウェイの創業者・任正非(じんせいひ、Ren Zhengfei、1944年―、75歳)とフォックスコンの創業者・郭台銘(かく たいめい、Guo TaimingTerry Guo、1950年―、69歳)は、両者が30歳代の頃から知り合いで、1980年代から協力し合って会社を大きくしていったそうだ。
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 その後、深圳市内を回った。三和人力市場という場所には衝撃を受けた。ここは元々、日雇い労働者たちの街であり、日本語で言えば、ドヤとなる安価な簡易宿泊所が集まる場所だった。今では簡易宿泊所の1階にはコンピューターが所狭しと並べられて、インターネットゲーム(ネトゲ)ができるようになっている。それは何故かと言えば、全国から若者たちが集まって1日中インターネットゲームをしているからだ。簡易宿泊所(1泊数百円)に泊まりながら、ネトゲをしている。日本でも問題になった、ネトゲ廃人たちだ。
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 この街を歩き回っていると、この場所を取り仕切っているであろう中年女性が出て来て、私たちに「写真を撮るな、写真を撮るなら金を払え」と迫られて恐怖を感じた。インターネットゲームとゲームに耽溺する若者たちという人類の行き着く先が、地廻りが支配するような場所に存在している混沌が大変に印象的だった。
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 その後、テンセントや百度の本社を見て回り、また、福田地区にあるショッピングモールに向かった。ここには日本の無印良品が大型ショップとホテルを展開している。また、モールの中には日本食レストランを集めたフロアも設置されていた。こうして見ると、日本のソフトパワーというのも侮れないものがある。無印良品のショップには日本の商品が日本とほぼ同じ値段で売られていた。家族連れが楽しそうに歩いたり、ソファーに座っておしゃべりをしたりしていた。おしゃれな生活を総合的に提案という形なのだろう。このモールの駐車場や道路には高級外車がずらりと並んでいた。ここでのショッピングや食事を楽しむことが出来るのは金持ちに限られるだろう。

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 ホテルの近くにある地下鉄の駅周辺にある店で従業員募集のポスターが出ていた。そのいくつかを見てみると、普通のお店の従業員の賃金は月3000元前後のようだ。1元は15元から16元だから、日本円では5万円程度ということになる。店長クラスはその倍の6000元(約10万円)くらいだ。日本式のエステサロンだと店長は年間20万元(月1万6000元)と表示されていた。日本円だと300万円近くだ。
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 日本と比べて3分の1くらいだと言えるだろう。物価は中国の方が安いとは言え、大都市の深圳で月5万円で暮らすのは厳しい。福田地区のショッピングモールにある無印良品や日本食レストランで楽しむのは難しい。しかし、日本はこれからも給料が下がっていくことしか考えられないのに対し、中国はこれから伸びていくぞということを実感できるし、自分は自分の力で這い上がってやるという気概も強いので、若者たちは明るい。
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 私はスターバックスにも行ってみた。ここで驚いたのは、値段が日本と変わらないことだった。レシートの写真を見てもらえれば分かるが、アイスラテとトーストを頼んで55元、日本円で約800円だ。月5万円の給料でスターバックスに通うことは難しい。しかし、お客さんはこれから増えていくだろう。また、支払いの時に、現金を使ったのだが、店員がレジの下にある引き出しからビニールに包まれた現金を出してきて、面倒くさそうにお釣りを渡してきたことだ。中国本土ではスマホ決済が支配的になっており、アリペイ、ウィチャットペイという決済プラットフォームが利用されている。中国本土の銀行口座がなければ利用できず、外国人旅行者には利用できない。それなのに、旅行者である私たちが支払いをしようとすると面倒くさそうに取り扱われる。舌打ちをされる。中国国内に限定されているという点で、「ガラパゴスじゃないか」とも思うが、16億人が使うプラットフォームである。「大きすぎるガラパゴス」なのだ。

 2019年7月29日の午前中には再び電気街の「華強北」を訪問した。電気街を歩いてみて、日本の電機会社の存在下の低下を痛感した。私が20年前にアメリカに留学した際に、生活用品を整えるために地元の小売店「ベストバイ(Best Buy)」に向かった。この時には、テレビや冷蔵庫、掃除機などは日本の電機会社の製品が並んでいた。それが今では、何とも残念なことに日本の電機会社のロゴを見ることは少なかった。

 考えてみれば、スマートフォン(スマホ)に関しても日本は主役ではない。私たちがスマホに関して話題にする時、日本の家電メーカーの名前を口に出すことがあるだろうか。中国からはoppo(オッポ)や小米(シャオミー)といった聞き慣れない名前の会社が日本に展開しようとしている。格安で質の良いスマホを提供するということだ。日本が貧しくなっていること、かつ日本のモノづくりの地位の低下が示されている。前述の近藤氏が著書で述べているように、「日本は中国の下請け」となっているのだ。
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(続く)

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界
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