古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:フーシ派

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 昨年(2023年)10月7日にガザ地区を実効支配するハマスによる、イスラエルへの攻撃から始まった紛争は1年以上経過しても終息していない。その後、イスラエルはレバノンを拠点とするヒズボラを攻撃するために、レバノンにも侵攻している。また、イエメンのフーシ派にも空爆を加えている。ハマスとヒズボラ、フーシ派を支援するイランとの対決姿勢を鮮明にしている。状況は深刻化していた。その後、レバノンとの間で停戦合意が結ばれているが、中東における戦争の段階が上がり、エスカレーションが進めば、イランとの全面的な対決となり、最悪の場合には核戦争が起きる可能性もある。
 イスラエルは公には認めていないが、核兵器保有国であり、アメリカからの大きな支援を受けて、軍事力でも近隣諸国を圧倒している。そのため、戦術レヴェルでの勝利を得ることは容易い。それぞれの戦いにおいては確実に勝利を収めることができる。しかし、戦略的に見れば、ガザ地区やレバノンにおける民間人の犠牲者が増えるにつれて、イスラエルに対する同情は消え、世界的に見て、批判が高まっている。それは、イスラエルを手厚く支援しているアメリカ国内においてもそうだ。

 あれだけの圧倒的な戦力差がありながら、イスラエルは常に不安定な状況に置かれている。大きな武力が屁のツッパリにもなっていないということになる。更に、これまでは、同情される面もあったが、昨年からのガザ地区やレバノンでの戦争によって、孤立感を深めている。アメリカが仲介してのサウジアラビアとの国交正常化交渉は頓挫したままだ。サウジアラビアは、中国の仲介もあり、イランとの国交正常化を行っている。中東において、イスラエルとアメリカが孤立感を深め、主要なプレイヤーとしての役割を果たせなくなりつつある。イスラエルは戦術レヴェルでの勝利を収めても、戦略レヴェルでの勝利を収めていないということになる。

 現在のイスラエルの指導者であるベンヤミン・ネタニヤフ首相は、どのように戦争を終結させるのか、どのように現状から自国の利益につなげていくのかというヴィジョンがはっきりしない。戦争を拡大させて、自分の政権が存続することを第一と考えているように見える。これはイスラエルにとって非常に危険なことだ。戦時内閣ということで、批判を受けにくいということもあるだろうが、イスラエルは、自国の利益のために、ネタニヤフ首相の更迭を行うべきであろう。

(貼り付けはじめ)

中東におけるイスラエルの「任務完了」の瞬間(Israel’s ‘Mission Accomplished’ Moment in the Middle East

-ベンヤミン・ネタニヤフはジョージ・W・ブッシュと同じ大きな過ちを犯しているかもしれない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年10月2日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/02/israel-netanyahu-lebanon-iran-gaza-strategy-mission-accomplished/

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ハイファ港に停泊中の米空母ジョージ・H・W・ブッシュを訪問し、アメリカ兵と話すイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(2017年7月3日)

2003年5月1日、ジョージ・W・ブッシュ米大統領はかっこいいフライトスーツを身にまとい、S-3ヴァイキング機に乗り込み、空母エイブラハム・リンカーンに着艦した。「任務完了(Mission Accomplished)」と書かれたバナーの下に立ち、イラクにおける主要な戦闘作戦の終了を宣言した。「アメリカと同盟諸国は勝利した」と誇らしげに宣言した彼の支持率は急上昇し、戦争を仕組んだネオコンたちは、その大胆さと英知(boldness and wisdom)を自画自賛した。しかし、イラクの状況はすぐに悪化し、ブッシュ大統領のイラク侵攻の決断は戦略的な大失策であったと今では誰もが考えている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とその支持者たちが、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスルラと過激派組織のトップ指導者の多くの暗殺で頂点に達した(しかし終わっていない)イスラエルによる最近のレバノン攻撃を祝っているのを見ながら、私はあの事件のことを思い出した。過去1年間、ネタニヤフ首相は、ハマスのイスラエル攻撃から始まった戦争を容赦なく延長、拡大させながら、国防大臣、国内の敵対者グループ、ハマスに今も拘束されているイスラエル人人質の家族、そしてバイデン政権に反抗してきた。かつて、「創業国家(start-up nation)」ともてはやされたイスラエルは、今では「物事を爆発させる国家(blow-things-up nation)」となっており、ネタニヤフ首相はイスラエルの敵対者たちに、イスラエルの手の届かないところは何もないことをすぐに思い出させた。イスラエル軍と諜報機関が複数の敵対者に与えた損害(その過程で数万人の民間人が殺害された)を考えれば、ネタニヤフ首相が勝利の歩みを進めていたことは驚くべきことではない。ブッシュがそうであった。

過去数週間にわたるイスラエルの行動が驚くべき戦術的成果であったことには疑問の余地はない。イスラエル諜報機関は、優れた信号情報とヒズボラの組織構造の亀裂、さらには最高指導者によるいくつかの不可解なミスを利用し、ヒズボラが通信に使用していたポケベルやトランシーバーをブービートラップにする複雑かつ大胆な計画を見事に成功させた。ガザ地区での場合と同様、イスラエル国防軍は、アメリカが提供した最新兵器を使用してナスルラを殺害し、レバノン全土に大規模な被害を与え、ヒズボラのロケット弾とミサイル能力を部分的に低下させた。イスラエル空軍はこれに続いてイエメンのフーシ派を攻撃し、イスラエル地上軍は現在レバノン南部に進入しており、イランは間違いなく最近のミサイル攻撃に対するイスラエルの報復に直面するだろう。ネタニヤフ首相とその極右閣僚たちはまた、「大イスラエル(Greater Israel)」を創設するための長期キャンペーンの一環として、戦争(とそれに対するアメリカの無関心な対応)を利用して、占領下のヨルダン川西岸地区での暴力と土地接収を強化している。

ネタニヤフ首相が全勝で戦争を終わらせ、地域のバランス・オブ・パウア(balance of power、勢力均衡)を恒久的にイスラエルに有利な方向にシフトさせることを、何が止めるだろうか? 戦術的な成果が戦略的な成功を保証するわけではないが、十分な成果を上げることができれば、重要かつ永続的な方法で戦略的環境を変えることができるかもしれないと主張することはできる。ネタニヤフ首相はそれを目指しているが、成功するかどうか疑わしい理由がある。

始めに、イスラエルがいわゆる抵抗の枢軸(Axis of Resistance)に与えたダメージは、抵抗の勢力を解散に追い込む、もしくは、白旗を揚げる原因にはならないだろう。ヒズボラ、ハマス、フーシ派、イランはいずれも過去に強力な打撃を受けて生き延びてきた。更に、昨年の様々な出来事の発生によって、彼らの報復の希望はどんどんと大きくなっている。奇妙なことだが、大量の爆発物を人々に投下しても、彼らを打ち負かすことはできないようだ。あるいは少なくともいじめる相手を止めさせる能力を切望するようになる。ヒズボラは今もイスラエルに向けてロケット弾やミサイルを撃ち続けており、北部に避難している約6万人のイスラエル人が帰還できないようになっている。暗殺された指導者たちは、既に入れ替わり、幹部組織は再建され、再武装され、彼らが学んだことに基づいて新しい戦術が開発されるだろう。イスラエルは現在、これを防ごうとレバノン南部に再び軍隊を派遣しているが、以前のレバノン南部への侵攻は良い結果をもたらさなかった。

イスラエルの手による虐待が問題の根源であるパレスチナ人については、イスラエルが自分たちにしていることに抵抗し続ける以外に選択肢はない。もしイスラエルが彼らに魅力的な代替案、たとえば自分たちの国家や大イスラエル内での平等な権利などを提供していれば、状況は変わっていたかもしれないが、ネタニヤフ首相はそうした可能性を閉ざしてしまった。エジプトのアンワル・サダト大統領はイスラエルと和平を結び、エジプトはシナイ半島を取り戻した。PLOはイスラエルと和平し、さらにイスラエルの違法入植地(illegal Israeli settlements)を手に入れた。現在、イスラエルがパレスチナ人に提示している唯一の選択肢は、追放、絶滅、または永続的なアパルトヘイト(expulsion, extermination, or permanent apartheid)であり、戦わずしてそのような運命を受け入れる国民はいない。従って、イスラエルの存在を受け入れ、実行可能な国家を得ることを期待してイスラエルに協力し、何の見返りも得られなかったパレスチナ自治政府が、パレスチナの人々の間で人気を失う一方で、ハマスへの支持が高まっているのも不思議ではない。

同様に、アリ・アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ大統領とハッサン・ルーハニ大統領のもとで、イランがアメリカ(ひいてはイスラエル)との関係を改善しようと時々行ってきた努力は、イスラエルとその支持者であるアメリカによって断固として阻止された。特に、2018年にイランの核プログラムを厳しく制限する画期的な協定である「包括的共同行動計画」を放棄するよう、騙されやすいドナルド・トランプ大統領を説得したときはそうだった。こうした対応はイラン強硬派の力を強め、イランの新大統領が緊張を緩和させたいと繰り返し表明しているにもかかわらず、この地域の現在の危機も同じことをするだろう。ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤが7月にテヘランで暗殺されたことを含め、イスラエルが地域の同盟諸国を衰弱させたり排除しようとしたりする動きに対して、イランはイスラエルに向けてミサイルを発射することで対抗した。

残念なことに、こうした出来事によって、イランの指導者たちが潜在的な核兵器保有国であることを超えて、イランの核兵器保有を決断する可能性が高まっている。そのような決断をすれば、全面的な地域戦争(all-out regional war)に発展する可能性が高くなるが、イスラエルは究極の抑止力(ultimate deterrent)を欲しがるイランにさらなる刺激を与え続けている。もしそうなれば、イスラエルの最近の成功は驚くほど近視眼的(shortsighted)に見えるだろう。

イスラエルの最近の行動は、地政学的な孤立を深め、最終的にはアメリカとの特別な関係を危うくするかもしれない。10月7日の攻撃後、イスラエルが当然享受していた同情は、ガザ地区やレバノンの民間人に加えられた殺戮を世界が見るにつれて消え失せている。国際司法裁判所はイスラエルのヨルダン川西岸地区占領を国際法違反と宣言し、ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相は、戦争犯罪と人道に対する罪で国際刑事裁判所から逮捕状を請求されるかもしれない。サウジアラビアをはじめとするアラブ諸国による承認は保留され、グローバル・サウス諸国の多くが反対を表明し、ヨーロッパ各国政府はますます苛立ちを募らせている。先週の国連総会でのネタニヤフ首相の演説に反対するデモ行進は、象徴的なジェスチャーではあったが、彼とイスラエルが多くの人々からどう見られているかを反映していた。

ネタニヤフ首相と支持者たちは、バイデン政権からの無制限の援助や、ネタニヤフ首相の米連邦議会演説でのスタンディングオベーション、アメリカ軍からの積極的な支援、大学キャンパスやその他の場所でのイスラエル・ロビーによる批判の抑圧の成功を慰めにするかもしれない。これらも短期的な戦術的成功であり、危険な反動を引き起こす可能性がある。多くの人はいじめられることを好まない。イスラエルの行動に対する正当な批判を封じ込めることを意図した言論統制やその他の規制の実施は、多くの憤りを生むだろう。特に、暴力と民族浄化の大量虐殺キャンペーンを展開している国を守るために、露骨かつ公然と行われている場合はなおさらだ。

更に言えば、イスラエルの行動がより広範な地域の戦争につながり、アメリカがそれに巻き込まれることになれば、アメリカ人は「特別な関係(special relationship)」の価値を真剣に疑うかもしれない。イラクのサダム・フセインを倒そうというネオコンのキャンペーンは、イスラエルをより安全にしたいという願望に触発された部分もあった(だからこそ、アメリカ・イスラエル公共問題委員会やネタニヤフ首相のようなイスラエルの指導者たちは、ブッシュ政権がこの戦争を売り込むのを助けたのだ)が、戦争が起きた理由はそれだけではないし、イスラエルもイスラエル・ロビーも非難されることはなかった。しかし、もしアメリカがまた中東戦争で兵士や船員を失い始めたら、アメリカから金と武器を受け取り、好き勝手なことをする、いつまでも恩知らずな保護国(client state)のためにアメリカ人を危険に晒していると、広く正しく見なされるだろう。さらに、ジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官の不手際が原因で、11月の選挙でカマラ・ハリスが落選するようなことがあれば、民主党も共和党も、反射的にイスラエルを支持することが今でも賢明な政治姿勢なのかどうか疑問を持ち始めるだろう。そして、もしこのようなことが起これば、アメリカ国内のイスラエル支持者に対する反発のリスクは高まるだろう。アメリカにおける反ユダヤ主義の台頭を心配するのであれば、大学キャンパスでの無害なデモよりも、その可能性の方がはるかに怖いはずだ。

最後に、イスラエル自身への影響である。107日の余波で、イスラエル国民はネタニヤフ首相(彼の決断がイスラエルをハマスの残忍な攻撃に無防備な状態にした)を見捨てて、国を正常な状態に戻す機会を得た。しかし、それは実現せず、ネタニヤフ首相の最近の戦術的成功は、イスラエルの未来について熱烈に宗教的でメシア主義的なヴィジョンに基づく政策をとる右翼過激派とともに、彼の政治的立場を強化している。穏健で世俗的なイスラエル人は、近年の経済を支えてきたハイテク部門の中心的存在であるが、ベザレル・スモトリッチ財務相のような人物が作りたがっているイスラエルに住むことを避けるため、離脱を続けるだろう。すでに50万人以上のイスラエル人(つまり人口の約5%)が海外に住んでいる。調査によれば、彼らの80%は戻るつもりはない。『ワシントン・ポスト』紙は、イスラエル経済が「深刻な危機に瀕している」と報じているが、こうした傾向はさらに強まるだろう。イスラエルの大学は国の宝であるが、外国人留学生の激減が報告されており、これはイスラエルのイメージ低下のさらなる兆候であると同時に、将来の科学的進歩への打撃でもある。要するに、ネタニヤフ首相の短期的な成果は、イスラエルの長期的な将来を危うくする傾向を強めているのだ。

人生は不確かなものだ。政治の世界では特にそうだ。しかし、数週間前にも書いたように、一見、軍事的、政治的に圧勝したように見えても、時間の経過とともに深い問題の種が芽生えることがある。成功するリーダーの課題は、一時的な優位性を利用して長期的な利益を確保することである。しかし、そのためには、いつ立ち止まり、いつ戦いから紛争解決へとシフトするかを知る必要がある。悲しいかな、ネタニヤフ首相にそのようなスキルがある気配はないし、身につけようという考えも全く持っていない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。
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 中東情勢は悪化の一途を辿っている。2023年10月にハマスの攻撃に対する報復として、イスラエル軍はガザ地区での軍事作戦を開始し、民間人に多くの死傷者が出ている。ハマスの人質となった人々の救出は思うように進んでいない。更には、イスラエルは、イランの首都テヘランでハマスの最高指導者を殺害し、イランから報復攻撃を受けている。加えて、レバノンの武装組織ヒズボラに対しても軍事作戦を開始している。ヒズボラのメンバーたちが使用していたポケベルに爆発物を仕込み、一斉に爆発して大きな被害を出したニューズは日本でも多く報道された。このポケベルはイスラエルから輸出されたものということが後に分かった。私は「イスラエルからの輸出された製品というのは怖いな。何が仕込まれているか分からないではないか」という感想を持った。イスラエルは危険な国という印象を多くの人々に与えたと思う。

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 このポケベルでの攻撃は衝撃的であったが、それ以外にも、イスラエルはレバノン、ヒズボラへの攻勢を強めている。ガザ地区に続いて、2つ目の戦線を開いたと言える。イスラエルの軍事的な優位性もあり、二正面作戦はまだ耐えられるだろうが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦争の段階を引き上げようとしている。イエメンのフーシ派の空額も実施している。ハマス、ヒズボラ、フーシ派は全部がイランからの支援を受けている。ネタニヤフ率いるイスラエルはイランとの全面戦争(all-out war)へと進む危険性を持っている。

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そうなると、中東全体が戦争地域ということになり、石油の供給に大きな影響が出る。そうなれば、世界経済は大きなダメージを受ける。もっと怖いのは、核戦争勃発の可能性だ。核戦争に対する禁忌が破られるとなると、核兵器使用のハードルが大きく下がることになる。それはまた世界を危機に晒すことになる。戦争の段階を引き上げるべきではない。

 アメリカは現在、大統領選挙期間中で、しかも現職のジョー・バイデン大統領が再選を目指さないということになり、レイムダック化(無力化)している。そうした中で、イスラエルのネタニヤフ首相は暴走している。アメリカはコントロールする力を失っている。イスラエルへの資金援助や武器援助をアメリカが止めない限り、イスラエルはこうした状況を変えることはしないだろう。

 イスラエルのネタニヤフ首相は家族ぐるみでお金に関するスキャンダルを抱えており、平和に復帰すれば、家族ごと有罪判決を受け、牢獄行きとなる。そのために、戦争状態を続けたいということはあるだろう。しかし、それは世界に追って大きな不幸である。

(貼り付けはじめ)

ヒズボラのポケベル爆発は皆が考える以上に危険だ(The Hezbollah Pager Explosions Are More Dangerous Than You Think

-人権問題を超えて、今回の攻撃は中東におけるアメリカとイスラエルの政策にも疑問を投げかけるものとなった。

ハワード・フレンチ

2024年9月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/09/24/hezbollah-pager-explosions-lebanon-israel-middle-east-iran-us-policy/

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9月18日、ベイルート南部の地区で、前日にレバノン全土で発生したポケベルの爆発で死亡した人々の葬儀でヒズボラの旗を手にする男性。

先週、イスラエルがレバノンとシリアでヒズボラを攻撃した際、地政学的にどのような立場にあったにせよ、専門家の多くが最初に抱いたのは畏怖の感情(awe)だった。

敵対国も友好国も関係なく、作戦をやり遂げるために必要な、イスラエル情報・諜報機関の洗練の度合いに驚嘆した。イスラエルのために働く諜報員たちは、ポケベルやトランシーバーの中に微量の爆発物を仕込む仕事に重視し、これを宿敵の手にうまく渡さなければならなかった。この偉業は、1967年の六日間戦争でのアラブ連合軍に対する勝利、1976年の民間旅客機ハイジャック事件で捕らえられた人質を解放するためのウガンダのエンテベ空港攻撃、1990年代後半にさかのぼる過激派グループを攻撃するためのブービートラップ付き携帯電話の使用など、イスラエルの技術的・作戦的洗練の長い歴史を思い起こさせるものとなった。

今回の攻撃は、技術的なレヴェルでは素晴らしいものだったが、多くの批判も当然出ている。1つには、民間人に壊滅的な打撃を与えたことだ。ポケベルはヒズボラ・メンバーのものだったが、爆発によって少なくとも40人が死亡、3000人以上が負傷し、多くの非戦闘員が危険に晒される結果となった。もし運転手や親族がポケベルを携帯していたら、車の乗客や食卓にいた子どもたちはどうなっていただろうか? ヴィデオ映像によれば、市場や街角で爆発したものもあった。

政治理論家のマイケル・ウォルツァーは、『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説ページで、攻撃の瞬間には積極的に戦争に従事していなかったヒズボラの工作員を標的にした爆発は、「戦争犯罪の可能性が非常に高い(very likely war crimes)」と書いている。レオン・パネッタ元国防長官・元CIA長官でさえも、今回の攻撃がテロの一形態であることに「疑問の余地はないと考える(think there’s any question)」と述べている。

 

イスラエルへのロケット弾発射に使われる南部のヒズボラ陣地に対するエスカレートする空からの攻撃など、レバノンにおけるイスラエルの最近の戦術に対する私の懸念は、更にその先にある。ポケベルを爆発させての攻撃という衝撃が落ち着いた後、アナリストたちはイスラエルがこの攻撃で戦略的利益を得たかどうかを問い始めた。その答えは依然として不明だ。イスラエルがガザ地区でハマスに対して1年近く攻撃を続けている間、同じことが言える。そこでは、基本的な疑問が未解決のままである。その疑問とは、イスラエルは軍事作戦が終了した後に、一体何をするのか?

この2つのキャンペーンを結びつけているのは、イスラエルは軍事的優位の政策と無制限の攻撃作戦によって長期的な安全保障を達成できるという、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の明白な見解である。アメリカは、イスラエルに対する弱腰の批判とほぼ無制限の武器供給を通じて、この立場を黙認している。ガザ地区が示し始めたように、またレバノンとの戦争が起これば、それが再確認される可能性が高いように、このアプローチは、イスラエルが平和を達成するために、巻き添え被害の有無にかかわらず「悪者たち(bad guys)」を十分に殺せるという妄信的な希望をもって、近隣の土地を焦土と化すことに等しい。

このアプローチの1つ目の、明確な欠陥は、各軍事作戦が新たな敵を生み出し、イスラエルと近隣諸国との間の敵意を永続させる危険性があることだ。例えば、ガザ地区におけるイスラエルの完全な軍事支配は、パレスチナ人の政治的および領土的権利の差し迫った必要性に対処するものではない。実際、この地域の絶望と支配は、将来、イスラエルに対する新たな形態の抵抗を確実にするだろう。同様に、イスラエルのレバノン南部への侵攻は、両国間に敵対の新たな境地を生み出すだけであり、この作戦による死と破壊により、より多くのレバノン人がイスラエルに対する暴力的報復の方向に駆り立てられるのと同じくらい確実である。

しかし、私が最も懸念しているのは、それだけにとどまらず、イスラエルと同様に、アメリカの戦略にも関わることだ。ここ数十年、同盟関係にある両国は、イランを中東における暴力と不安定化の究極の原因とみなしてきた。しかし、イランに核兵器開発を断念させるための国際的な努力を除いては、イスラエルはともかく、アメリカはイランに政治的に関与する創造性をほとんど示してこなかった。イランと政治的な関わりを持つための非現実的な前提条件、たとえばテヘランがまず自国の政治体制を変えることや、イスラエルの生存権を認めることなどは、その数には入らない。

中東地域の問題を特に扱いにくくしているのは、イスラエルとイランの両方が古い文明的および宗教的アイデンティティの化身であるということだ。西側諸国の多くは、イスラエルが聖書の国であり、多くのユダヤ人がシオニズムへの正当な支持を、部分的には古代イスラエルの存在に基づいており、その物語が旧約聖書の本質を構成していることを知っている。専門家の領域以外ではあまり理解されていないが、イランははるか古代に遡る言語、文化、アイデンティティ、帝国、国家の伝統の継承者でもある。

ガザ地区での終わりの見えない暴力に対し、多くの人々が怒りの声を上げている。ユダヤ人もパレスチナ人も、現在紛争で分断されている土地から消えることはないということを認識することに代わるものはない。つまり、永続的な和平には、この深い溝を隔てた両側の人々、ひいては国家が、互いのニーズと利益を認識することが必要である。

これはイランにも同じことが言える。人口9000万人の国を悪者扱いする政策では、イランを消し去ることはできない。実際、西側諸国がイランの孤立化を図ろうとしても、イランはヒズボラやイエメンのフーシ派といった非国家的な代理勢力を増強し、ロシアや中国との関係を深めようとする決意を強めるだけである。

イスラエルと同様、西側諸国でも中心的な関心事となっているのは、イランの核開発計画であり、テヘランが長引く研究・精製段階を脱し、すぐにでも使用可能な核兵器を開発するのではないかという見通しである。残念ながら、核保有国の核軍縮に関する世界的な実績は極めて芳しくない。ウクライナは、ソ連時代から受け継いだ核兵器を廃棄した唯一の例であり、このことが悲しいことに、ウラジーミル・プーティンのロシアに対して脆弱な国になってしまった。例えば、北朝鮮をめぐる欧米諸国とアジアの長年にわたる外交は、平壌に核プログラムを放棄するよう説得することができなかった。好むと好まざるとにかかわらず(私は好まないが)、それは北朝鮮の体制がその将来について根本的な不安を感じているからだ。更に言えば、イスラエルは公式には認めていないが、何十年もの間、核兵器を保有していることは広く知られている。

イランの核開発プログラムに対する懸念は、テヘランともっと話をし、この地域の敵対関係を和らげる方法を模索する妨げになるはずはない。イスラエルを含む中東地域の広範な安全保障を確保する唯一の方法は、何らかの形でイランを西側諸国とより深く接触させ、最終的にはイスラエルやサウジアラビアなどの他国、パレスチナ人とともに、イランの安全保障上の懸念に対処することである。欧米諸国がそうするのは早ければ早いほどよい。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年10月7日にガザ地区を実効支配するイスラエル過激派ハマスのイスラエルに対する攻撃、人質連れ去りとイスラエルのガザ地区への報復攻撃はまだ継続している。停戦交渉も行われているようだが、まだ厳しい状態だ。ガザ地区での民間人犠牲者が増加していること、イスラエルから連れ去られた人質たちの解放が進まないことに対して、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対する批判が大きくなっている。

 今回のイスラエル・ハマス紛争に対しては、イスラエル北部国境を接するレバノンの過激派民兵組織ヒズボラ、イエメンのフーシ派がハマスを支援する形で、攻撃を行っている。イスラエルはヒズボラとも戦闘状態にある。イスラエルは南部ガザ地区でハマス、北部国境地帯でヒズボラと二正面作戦を展開しなければならない。ヒズボラはイランからの支援を受けやすく、装備や訓練がハマスに比べて上回っている。また、ヒズボラがレバノンの北部に撤退しながらの戦闘ということになれば、イスラエルはレバノン国内に入っての戦闘を行うことになり、そうなれば、戦争はどんどんエスカレートしてしまう危険がある。
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 イスラエルはハマスとヒズボラとの戦闘を、イランのとの戦争の一部と見なしている。この二正面作戦はイランとの戦争における2つの戦線ということになる。二正面作戦はあまり得策ではない。各個撃破が戦術の基本だ。ハマスもヒズボラもイスラエル国防軍にしてみれば強敵という訳ではない。将兵の人数や装備で言えばイスラエル国防軍が圧倒している。しかし、これまで殲滅できなかったのは、ハマスやヒズボラが正規軍ではないからだ。イスラエルが戦線を拡大し、ヒズボラとも激しい戦いということになれば、イスラエル国内も不安定になり、また、中東全体も不安定になる。今のところ、全ての当事者がエスカレートを望んでいないようであるが、戦闘で予想外の出来事が起きればどうなるか分からない。まずは、停戦が何よりも重要である。

(貼り付けはじめ)

イスラエルとヒズボラの間の戦争はどのようなものになるのか(What a War Between Israel and Hezbollah Might Look Like

-レバノンの武装集団はハマスよりもかなり優れた訓練と装備を備えている。

エイミー・マキノン筆

2024年6月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/18/israel-hezbollah-lebanon-conflict-war-border-gaza/?tpcc=recirc_latest062921

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イスラエル軍とヒズボラ戦闘員の間で国境を越えた衝突が続く中、6月16日、レバノンとの国境に近いイスラエル北部の町キルヤット・シュモナで、ヒズボラのロケット弾が当たった家を確認するイスラエル兵士

ガザ地区でのイスラエルとハマスとの戦争は過去8カ月間、世界の多くの注目を集めてきたが、第二前線(second front)、つまりレバノンとの北部国境での戦闘は現在激化している。

レバノンの過激派組織ヒズボラは先週、ヒズボラ幹部を殺害したイスラエルの空爆への報復として、これまでで最も大規模なロケット攻撃をイスラエルに対して開始し、紛争が急速に悪化する可能性があるとの懸念が高まった。

イランの支援を受けるヒズボラが数千発のロケット弾、対戦車ミサイル、無人機をイスラエルに発射し、イスラエル空軍も数千回の空爆で対抗しており、北部国境での戦闘は何か月も継続している。国境の両側で約14万人が家を追われている。

火曜日、アントニー・ブリンケン米国務長官は、イスラエルもヒズボラもより広範な戦争を求めていないと信じているが、それでも「潜在的にその方向への勢い(momentum potentially in that direction)」があると述べた。イスラエル側のカウンターパートであるイスラエル・カッツ外相は火曜日、イスラエルが開戦するかどうかの決定に近づいていると指摘し、「総力戦になればヒズボラは破壊され、レバノンは大きな打撃を受けるだろう(in a total war, Hezbollah will be destroyed and Lebanon will be hit hard)」と警告した。

しかし、イスラエルも血にまみれることになるだろう。国際戦略研究センター(Center for International and Strategic StudiesCISS)によると、ヒズボラはハマスよりもはるかに手強い敵である。ヒズボラは世界で最も重武装した非国家主体であると考えられているからだ。このグループはイラン、シリア、ロシアの援助を受けて洗練された兵器を獲得している。

オバマ政権時代に駐米イスラエル大使を務めたマイケル・オーレンは「ハマスはイスラエル国家に対する戦術的脅威(tactical threat)を表している。ヒズボラはイスラエル国家にとって戦略的脅威(strategic threat)だ」と語った。

ヒズボラは約13万発のロケットとミサイルを保有していると推定されており、これらはすぐに国の高度な防空システムを制圧し、最大都市を攻撃する可能性がある。

オーレンは「ヒズボラが3日間で私たちに何をするかという試算を読んだことがあるが、それはまさに恐ろしいことだ」と語った。オーレンは、イスラエルの核研究施設の敷地について言及し、「我が国の重要なインフラ、製油所、空軍基地、ディモナの全てを破壊することについて話している」と語った。

火曜日、ヒズボラは、レバノン国境から27マイル離れたイスラエルのハイファ港のドローン映像を公開したが、これは明らかにイスラエルの防空網を突破して国内奥深くまで到達する能力を実証する目的で行われた。

イスラエルとヒズボラは、2006年に34日間の戦争を戦い、緊迫した膠着状態に終わった。それ以来、ヒズボラは兵器を強化し、シリアで重要な戦場経験を積み、内戦中に窮地に陥ったシリアの指導者バッシャール・アル・アサドを支援するために、イランのイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps)と共闘した。ヒズボラの司令官は2016年にヴォイス・オブ・アメリカに対し、この紛争は次のイスラエルとの戦争に向けた「予行演習(dress rehearsal)」だったと語った。

ハマスと同様、ヒズボラもレバノン地下を通るトンネル網を開発したと考えられており、イスラエルのアナリストの一部は、そのトンネル網はハマスが使用したものよりも、更に広範囲であると主張している。そして、テヘランの支援者から地理的に孤立しているガザ地区とは異なり、イランは、全面戦争の際にヒズボラ軍を維持するために使用できる、イラクとシリアを経由してレバノンに至る地上および空からの補給ルートを確立している。

イスラエルがレバノンの首都ベイルートやその他の都市を標的にする可能性が高く、ヒズボラが「国家の中の国家(state within a state)」を運営していると評されているレバノンにとっても、エスカレーションは壊滅的な打撃となるだろう。

イスラエルのヨアヴ・ガラント国防大臣は、戦争が起きた場合、イスラエルは「レバノンを石器時代に戻す(return Lebanon to the Stone Age)」だろうと警告を発した。

ガザ地区のハマスと同様、ヒズボラはレバノンの民間人に深く浸透している。2006年の戦争中、イスラエルは過剰な武力行使を行い、銀行、学校、政治事務所などヒズボラに関連する各種の非軍事目標を攻撃し、国の民間インフラを攻撃したとして、人権団体から広く批判された。

シンクタンクの民主政治体制防衛財団の研究担当上級副会長ジョナサン・シャンツァーは、「その計画は、ヒズボラが支配するこの国におけるヒズボラの支配の見せかけをすべて破壊することを目的とするだろう。私たちは多大なる被害について懸念している」と語った。

2006年の戦争後の数年間の比較的平穏な日々は、2023年10月7日の攻撃を受けてヒズボラが明らかにハマスとの団結を示し、イスラエルにロケット弾とミサイルを一斉射撃したことで突然終わった。ジョージタウン大学外交学部のダニエル・バイマン教授は、イスラエル北部国境の危機を緩和する道は、ガザ地区を通る可能性が高いと述べた。

バイマンは、「ハマスが停戦に同意すれば、ヒズボラもそれを尊重すると思う。ヒズボラは、全体として、ハマスの動きに合わせようと努めてきた」と語った。ヒズボラの幹部たちはエスカレーションを望まないとも述べた。

イスラエル内外の当局者やアナリストの多くは、ガザ地区をイランとの広範な戦争における前線の1つにすぎないと見ており、ヒズボラとの衝突激化はほぼ避けられないと確信している。イスラエルの元国家安全保障問題担当補佐官エヤル・フラタは、「彼ら(イラン)が核開発で前例のない進歩を遂げる一方で、ヒズボラとの衝突はそれから目を背けさせるものではないかと心配している」と語った。

ジョー・バイデン米大統領の世界エネルギー担当特使であるエイモス・ホッフスタインは、先月カーネギー基金が主催したイヴェントで、両国が戦争を回避することを望んでいたとしても、戦争に至る可能性があると述べた。ホッフスタインは、「イスラエルとヒズボラはほぼ毎日のように銃撃戦を続けており、事故やミスによって状況が制御不能になる可能性がある」と述べた。

ホッフスタインは、国境沿いの緊張緩和を目指すバイデン政権の交渉の中心人物となった。ホッフスタインは今週、レバノンとイスラエルの代表者らと会談する予定だ。

ホッフスタインは次のように述べている。「私が毎日心配しているのは、計算ミスや事故、目標を狙った誤ったミサイルが目標を外したり、他のものに衝突したりすることだ。そうなれば、どちらかの国の政治体制が、私たちを戦争に引きずり込む形で報復せざるを得なくなる可能性がある」。

イスラエル政府は、9月の新学期開始に合わせて、戦闘によって家を追われた約6万人が北部国境沿いのコミュニティに戻れるような解決策を見出すよう圧力を強めている。

バイマンは「双方向に政治的圧力がある。国中のイスラエル人を避難所に強制収容するような、終わりの見えない大規模な全面戦争は、政治的にもあまり魅力的ではない」と述べた。

アナリストたちは、10月7日のハマス主導の攻撃をヒズボラの戦略の1ページと評し、ハマスがイスラエルへの地上侵攻に備えて何年にもわたって訓練を行っていたことを指摘した。たとえ交渉がロケット弾発射の阻止に成功したとしても、ヒズボラによる更なる攻撃への懸念により、イスラエル国民の安全感を回復する取り組みは困難になる可能性が高い。

ホッフスタインはカーネギー財団のイヴェントで、「双方が発砲を止めただけでは、基本的に10月6日の現状に戻ることだけのことになり、イスラエルの人々が安全に自宅に戻ることはできない」と述べた。ホッフスタインは、民間人が国境の両側の故郷に戻れるようにするためには、より広範な合意が必要だと述べた。

※エイミー・マキノン:『フォーリン・ポリシー』誌国家安全保障・情報諜報担当記者。ツイッターアカウント:@ak_mack

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イスラエルのガザ地区での攻撃について、アメリカの各大学で抗議活動が盛んに行われているは日本でも盛んに報道されている。大学当局が排除する様子も映り、「せっかく一流大学に入っているのに、退学の危険があるのにどうしてこんなことをするのか」というコメンテイターがいた。暴力的、破壊的な抗議活動は批判されるべきだが、平和的な抗議活動は、大学のキャンパス内で行われるのは自然なことだ。日本でも学生運動が盛んだった時代もあるが、過激化、尖鋭化したために、暴力的、破壊的な運動になって、かえって、こうした活動ができにくくなってしまった。私の同郷のある友人は、東京のとある大学に進学する際に、「少々のギャンブルやお酒での失敗、恋愛関係での失敗は大丈夫。ただ、学生運動とか、政治に関心を持つとかは止めるように」と言われたと教えてくれた。

 ハーヴァード大学の教授であるスティーヴン・M・ウォルトは、抗議活動を行う学生たちに賛意を示しながら、「抗議活動でやるべきではないこと」をまとめた論稿を発表している。論稿の内容は、政治活動や抗議活動全般に言えることだと思う。

 ウォルトは、主流メディアやソーシャルメディアの影響や抗議活動の戦術について述べ、多くの学生たちと彼らの親族が卒業式での行動に慎重であるべきだと述べた。祝辞の邪魔をしたり、他の学生が卒業証書を受け取るのを序増したりはすべきではないとしている。また、学生たちに対し、自分たちの主張を表明する自由はあるが、他者の権利を尊重するようにと忠告している。根拠のない、過激な主張は支持を得られないので、そこにも注意するように求めている。ウォルトの忠告は非常に有益である。

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アメリカ国内のパレスティナ支持の抗議者たちがすべきこととすべきではないこと(What America’s Palestine Protesters Should and Shouldn’t Do

-一人の同情を持つ観察者から大学生たちに向けたハウトゥガイド。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年5月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/06/what-americas-palestine-protesters-should-and-shouldnt-do/

シカゴで行われたパレスティナ支持のデモの中、シカゴ美術大学、ルーズベルト大学、コロンビア・カレッジ・シカゴの学生や教職員たちを阻止しようとする警察(4月26日)。

世捨て人(hermit)でないなら、全米の大学キャンパスが学生のデモで騒然となっているのをご存知だろう。そのデモでは、広場やその他の公共スペースにテントを張って野営するのが一般的だ。デモ参加者たちはガザ地区でのイスラエルの行動と、それに対するアメリカの支援に抗議し、即時停戦(immediate cease-fire)を要求し、時には、大学がイスラエルへの投資から撤退し、他の方法で距離を置くよう要求している。大学管理者たちは現在、理想主義的で情熱的な学生、怒りを持っている寄付者、イスラエル・ロビーの影響力のあるグループ、陰険な連邦議員、そして学問の自由の重要な要素が危険にさらされていると懸念する教員らの間で板挟みになっていることを認識している。

私は学生たちに同情するが、彼らの行動全てや一部の学生の発言全てに同意してはいない。私は、ハマスが10月7日にイスラエルで行ったことは、犯罪的で間違っていると疑ったことは一度もないが、その犯罪はイスラエルの無差別で意図的に残酷な過剰反応(Israel’s indiscriminate and deliberately cruel overreaction)を正当化するものでは決してない。また、ハマスの犯罪を理由に、パレスティナ人が数十年にわたって経験してきた苦しみや避難を無視するべきではない。これらの抗議活動に参加している、少数の人々は非難されるべき発言をしているが、参加者の大多数(かなりの数の若いユダヤ系アメリカ人を含む)は反ユダヤ主義(antisemitism)ではなく、苦境(plight)に立たされたガザ地区の住民たちの窮状に対する同情、アメリカがイスラエルに与え続けている支援に対する嫌悪感(disgust)、そして、パレスティナ人とイスラエル人双方のために平和の大義を推進したいという願望から行動していることは、複数の証言から明らかである。特に驚くべきことではないにしても、学生たちを批判する人々が、3万5000人のパレスティナ人の無差別殺害(indiscriminate killing)やイスラエルの重要な政府高官たちが表明した虐殺感情(genocidal sentiments)よりも、少数の無知な短気の嘆かわしい発言に腹を立てているように見えるのは、皮肉で憂慮すべきことである。一方の、少数の過激派の発言を非難するつもりなら、公平性を保つためには、もう一方の過激派も非難する必要がある。

これらの抗議運動は、その様々な目的を達成するのだろうか? 私には分からない。イスラエルの略奪(predations)とアメリカの共犯行為(complicity)に注目を集めることに成功した今、私は、特に大学の卒業式が始まろうとしている今、彼らが集めた共感と支持を知らず知らずのうちに損なうような行動を取るのではないかと心配している。

この件に関する私の考えは、私が住むマサチューセッツ州のあるリベラルアーツ・カレッジ(liberal arts college)での最近の経験に一部基づいている。私は元国務省職員とともにアメリカの中東政策に関する公開イヴェントに出席し、司会の教授による質問に答えるのに1時間ほど費やした。いくつかの点では同意したが、他の点では大きく意見が食い違ったものの、全体としては敬意を払いつつ、実りある意見交換となった。私は、アメリカの過去および現在の政策は大きく誤っており、アメリカは今やイスラエルが犯している犯罪に加担していると考えていることを明確にした。

イヴェントは質疑応答まで何事もなく終わった。他のスピーカーと私が聴衆からのいくつかの質問に答えた後、1人の学生指されて、立ち上がり、ガザ地区で起きていることを非難する長い声明を読み始めた。そのスピーチは、それまでの1時間に私たちが話した内容には何ら反応しておらず、要約して質問を投げかけるよう何度も要求されたにもかかわらず、その学生は声明を最後まで読み上げ、その後、おそらく十数人の他の学生のグループとコール・アンド・レスポンスで唱和(chant)を始めた。昭和はさらに数分間続き、数人の警備員が到着し、学生たちは立ち上がって自主的に行進して去っていった。

質疑応答は再開されたが、数分後、別の学生が指され、立ち上がり、同じ発言を繰り返し、もう1人の学生とともに再び唱和を始めた。最初のグループとは異なり、2人の学生はステージの前方を占拠し、立ち去ろうとしなかった。さらに数分後、主催者はイヴェントを終了させた。

学生たちの発言や唱和には、攻撃的なものや脅迫的なものは何もなかった。もし私たちに反論する機会があれば、彼らの言っていることの多くに同意すると言っただろう。しかし、そうすることで他の聴衆を敵に回してしまったのだから、イヴェントを強制終了させたのは重大な戦術ミスだと感じた。最初の中断の後に抗議が終わっていれば、抗議者たちは自分の主張を行い、パネリストたちは彼らの主張に反論し、聴衆はその応酬から利益を得ただろう。しかし、結果的には、聴衆の大半は、早々に終了せざるを得ないほどイヴェントが中断されたことに、目に見えて苛立っていた。

私自身、アメリカとイスラエルの関係についてかなり物議を醸すような激しい主張を行い、また、意見の異なる人々を含む聴衆の前でかなりの数の講義を行ってきたが、大学(およびアメリカ)にパレスティナ人の権利にもっと注意を払い、イスラエルの行動から距離を置くよう求めている学生たちに、頼まれもしないがアドヴァイスをしたい。

(建設的な行動についての追加的な提案については、ニコラス・クリストフのコラムを参照して欲しい)。

第一に、既にあなたの方向に傾いている人々の本能を強化し、まだ決心していない人々を説得しようとしていることを決して忘れないようにして欲しい。あなたは、熱心なシオニストたちに意見を変えるよう説得しようとはしないだろう。同様に、シオニストたちがあなたの意見を変えることもないだろう。しかし、まだ決心していない人々は通常、事実(facts)、論理(logic)、理性(reason)、証拠(evidence)に惹かれる。私の経験では、彼らは怒り(anger)、無礼(rudeness)、不寛容(intolerance)、そして特に、より知りたいという自分の欲求(desire)を邪魔する人にうんざりする。15年前、私がイスラエル・ロビー(Israel Lobby)について公開講演をしていたとき、聴衆の誰かが私に向かって怒鳴ったり、人身攻撃を始めたりするのはいつも助けになった。それはなぜだろうか? それは、聴衆の残りの人々がそのような行動を無礼で、私が言ったことへの反論に何の裏付けもないと見なし、したがって私がおそらく正しいと結論付けたからだ。

第二に、主流メディアにもソーシャルメディアにも十分にアクセスできる、潤沢な資金を持ち、組織化され、献身的な敵対勢力に立ち向かっていることを認識することだ。彼らは、行き過ぎた行為(excesses)、残念な出来事(regrettable incidents)、不注意(careless)や憎悪に満ちた発言(hateful statements)、怒りの表現(expressions of anger)などを利用して、運動全体の信用を落とそうとするだろう。それがうまくいかなければ、でっち上げるだろう。従って、相手側に更なる弾みを与えるような行動を取らないことは理にかなっている。

第三に、卒業式のとき、出席者たちがあなたに反対するほどに式典を妨害するのは間違いだ。出席する学生や家族のほとんどは、あなたほどこれらの問題に関心がなく、彼らの多くはガザ地区の破壊と、アメリカがそれを可能にしている方法について明確な意見を持っていないかもしれない。ほとんどの学生は、両親、祖父母、兄弟、友人の誇らしげな視線の下で、自分の成果を祝うために卒業式に出席する。それらの人々は皆、その祝賀を不可能にする人に対して怒りを覚えるだろう。確かに、彼らの怒りはパレスティナ人が苦しんでいることに比べれば、大きなことではないが、それは重要ではない。目標は、できるだけ多くの人々をあなたの側に引き入れることであり、あなたが達成しようとしていることを支持してくれるかもしれない人々を遠ざけることではない。

まとめよう。希望するなら、カフィエ(訳者註:アラブの頭に着ける四角い布)を着用。卒業証書(diploma)を受け取るために壇上を横切るとき、「今すぐ停戦だ(cease-fire now)」と叫ぶのも自由だ。しかし、他の人々がそのエリアに入るのを妨げたり、卒業式のスピーカー(たち)の声が聞こえないようにしたり、出席者がガザ地区で起きていることに腹を立てるのではなく、あなたに対して腹を立てるような環境を作ったりしてはならない。なぜなら、卒業式を台無しにしたところで、学生仲間やその家族は、ジョー・バイデン大統領やイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフに腹を立てることはないからだ。彼らはあなたに腹を立てるだろうし、それこそが相手側が望んでいることなのだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 パレスティナのガザ地区を実効支配している武装組織であるハマスがイスラエルとの紛争状態に入り、ガザ地区での戦争が続いて既に8カ月になろうとしている。イスラエルはハマスを徹底的にせん滅するまで作戦を続けるとしているが、同時に、10月7日のハマスによる攻撃で連れ去られた人質の奪還も目指している。人質の奪還のためには、交渉も必要となる。
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 現在の中東の国際関係を見れば、イスラエル対ハマス・ヒズボラ・これらを支援するイランということになる。ガザ地区での紛争がイスラエル・イランの戦争に拡大し、新たな中東戦争になるのではないか、両者が核兵器を撃ち合うことになるのではないかという懸念の声は、昨年の紛争ぼっ発直後から出ている。アメリカはイランと国交を持たないために、影響力、交渉力が限定的であり、イランとイスラエルの仲介をすることはできない。仲介することができるとすれば、両国と関係を持つロシアということになる。
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 イスラエル、イラン両国の指導者層は、核兵器を使った本格戦争まで望んでおらず、両国間関係を悪化させないようにしている。両国は国境を接しておらず、本格戦争となれば、戦闘機やミサイルによる攻撃ということになる。しかし、ハマス、ヒズボラといった武装組織がイランの代理勢力としてイスラエルと対峙している。この点では、イスラエルの方が直接対峙している分、厳しい状況となる。イスラエルはこれらの武装組織を支援している、イランのイスラム革命防衛隊の担当者たちを殺害することで報復をしている。

 イランとしては、後方にロシア、そして中国の支援を期待できる状態であり、紛争がエスカレーションしないように管理しながら、紛争を続けることができる。イスラエルとしては、外敵からの脅威をアピールすることで、国民の納得も得られやすい。現状は、両国にとって、ある面では非常に望ましい状態である。「誰も大規模な中東戦争を望んでいない」という前提のもとで、現状は維持される。問題は突発的な、予想外の、計算違いのことが起きる可能性があるということだ。そうなれば、どうなるか分からない。最終的に必要なのは、イランの持つ恐怖、不安感を持たせないようにすることで、それにはアメリカとイスラエルとの間に意思疎通のチャンネルを開くということが必要である。

 日本は民間、経済レヴェルでイランとの関係が深い国であり、その関係は今も続いている。この点で、日本は国際関係に貢献できるところがある。

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イラン・イスラエル戦争は始まったばかりだ(The Iran-Israel War Is Just Getting Started

-イラン・イスラエル両国が紛争し続ける限り、同盟諸国がどのような助言をしても、両国は打撃を与え合うことになるだろう。

ラファエル・S・コーエン筆

2024年4月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/22/israel-iran-attack-war-retaliation-escalation/

4月13日の早朝、2つの小さな奇跡が起った。1つ目としては、イスラエルが、イギリス、フランス、ヨルダン、アメリカの支援を受けて、驚くべき技術的能力を発揮し、主にイランからイスラエルに向けて発射された約170機の無人機、約120発の弾道ミサイル、約30発の巡航ミサイルを迎撃し、99%の成功率を記録し、迎撃の効果は大きく、人命やインフラへの被害は最小限度に抑えられたという報告があった。2つ目としては、何ヶ月にもわたって主に否定的なメディア報道と国際的圧力の高まりを受けてイスラエルは苦しい立場にあったが、今回のイランからの攻撃で、イスラエルはある程度の同情と肯定的な報道を享受できた。攻撃の撃退とイスラエルのイメージ向上という二重の成功を踏まえ、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に次のように助言したと伝えられている。「あなたは1つの勝利を手にした。最終的な勝利を掴め(You got a win. Take the win)(訳者註:イランとの紛争に入るな)」。他の多くの同盟諸国の指導者たちや専門家たちもイスラエルに対して同様のアドバイスをした。

しかし、イスラエルはこの助言を受け入れることにほとんど関心を示していない。報じられているところによると、即時反撃(immediate counterattack)を中止し、バイデン大統領が要請してきていた通りに「事態を遅らせる(slow things down)」ことに満足しているようだ。しかし、ヨアヴ・ガラント国防相、ヘルジ・ハレヴィイスラエル国防軍司令官、ベニー・ガンツ戦時内閣閣僚、そしてネタニヤフ自身を含むイスラエル指導者たちは全員、報復を約束した。そして、金曜朝、イスラエルはイラン中部のイスファハーンにあるイラン空軍基地の防空システムに対する反撃を実施した。この攻撃は主に象徴的なものだったようだが、それにもかかわらず、「なぜイスラエルは再びアメリカや他の同盟諸国の意見に従わないのか、そもそもこれらの国々はイスラエルの支援をしているのに?」という疑問が生じている。

結局のところ、イスラエルが反撃した理由については、悪いものが多く挙げられている。しかし、重要な良い点も1つある。それは、イスラエルとイランはもともと戦争状態にあり、この戦争は今日以降も続くという事実だ。この紛争が続く限り、この紛争の操作ロジックはエスカレーションに向かって進む。

なぜイスラエルが反撃したのかという疑問に対する答えは、ネタニヤフ首相の野心に帰着するという人もいる。この物語によれば、彼は単に自分自身を救おうとしているだけのこととなる。ネタニヤフ首相はイスラエル国内で非常に不人気だ。彼の支持率はわずか15%に過ぎない。彼の政治的正統性の主な源泉である、イスラエルの安全保障を保証するという彼の主張は、10月7日のハマスによる虐殺とその後に起こったあらゆる出来事によってひどく打ち砕かれている。したがって、当然のことながら、イランの現政権を含む、観察者の一部は、ネタニヤフ首相が国内でのイメージを回復するため、あるいは少なくとも10月7日の大惨事からの政治的清算を長引かせるため、イランとの戦争を望んでいると主張している。このプロセスにより、彼の政治的生存の可能性が高まるということになる。

ネタニヤフ首相は絶望しているのかもしれないが、報復への動きは彼だけから出ている訳ではない。実際、反撃を求めるイスラエル国内の大きな声の一部は、ガンツやギャラントをはじめとする、ネタニヤフの失敗で政治的に最大の利益を得る、ネタニヤフの政敵たちからのものだった。世論調査の結果によると、今日選挙が行われればガンツが首相になる可能性が高い。

また、イランに対する攻撃がネタニヤフ首相や他の誰かにとって良い政治的行動であるかどうかも明らかではない。ヘブライ大学が先週発表した世論調査によると、イスラエル人の約74%が「同盟諸国とのイスラエルの安全保障同盟を損なう場合には」、イランに対する反撃に反対すると答えた。同じ世論調査では、イスラエル人の56%が、「長期にわたって持続可能な防衛システムを確保する」ために、イスラエルは「同盟諸国からの政治的、軍事的要求に積極的に対応すべき」と回答していることが判明した。ネタニヤフ首相の連立政権内でさえ、金曜日のイスラエルの限定的な反撃は明確な政治的勝利と考えない閣僚がいた。例えば、右翼のイタマール・ベン・グヴィル国家安全保障相は、X(ツイッター)上で、今回の行動を「不十分(lame)」であると批判した。

対照的に、イスラエルは反撃が象徴的な内容にとどまった理由を述べている。イスラエル政府高官たちはテヘランに「メッセージを送り」、「教訓を教える」必要性について語った。しかし、イスラエル自身の最近の歴史は、しっぺ返しの暴力(tit-for-tat violence)が意図した教育効果をもたらすことはほとんどないことを示している。10月7日の虐殺が如実に示したように、今回の戦争以前のガザ地区でのイスラエルによる4回の限定的な軍事作戦は、その間に更に限定的な攻撃を挟んだが、ハマスを排除したり抑止したりすることはできなかった。そしてイランは、イスラエルへの攻撃を正当化するために、シリアやその他の地域にいる工作員を攻撃しないようイスラエルに「教える」必要があるというほぼ同じ言葉を使っている。これら全てが、今度は、イスラエルがイランを「教える」努力をもっと効果的に行うことができるかどうかという疑問を提起する。

公平を期すために言うと、イスラエルが実際に敵対者に教訓を教えることに成功した例は数例ある。おそらくその最良の例は、ヒズボラ工作員がイスラエルに侵入し、8人のイスラエル兵を殺害し、残り2人を誘拐した後に始まった2006年のレバノン戦争だろう。紛争後、ヒズボラ指導者のハッサン・ナスララは記者団に対し、作戦開始の決定を遺憾に思うと語った。ナスララは「もしこの作戦がそのような戦争につながることを事前に知っていたら、私はそれを実行するだろうかと質問しているのか。その答えはノーで、絶対に実行しなかったと言える」と述べた。しかし、この教訓のために、121人のイスラエル兵士、数百人のヒズボラ戦闘員、1000人以上の民間人の命が犠牲となり、イスラエル・レバノン双方で100万を超える人々が避難した、34日間にわたる本格的な非常に破壊的な戦争が含まれていた。イスラエルがイランに対して行ったばかりの限定的攻撃とは程遠いものだった。

もちろん、イスラエルがイランを攻撃したいという背後には、より基本的な動機がある、それは復讐(revenge)である。結局のところ、攻撃が最終的に効果などなかったとしても、イランは約60トンの爆発物をイスラエルに直接投げつけ、イスラエルとイランの影の戦争(Israel-Iran shadow war)の不文律を打ち破り、たとえ一夜限りとはいえ、国全体を緊張状態に保ったのだ。当然のことながら、一部のイスラエル人は反撃を望んでおり、反撃したいと考え続けている。

しかし、ブレット・スティーブンスが『ニューヨーク・タイムズ』紙で読者に思い出させたように、「復讐は忘れたころにするのが良い(revenge is a dish best served cold、復讐は冷めてから出すのが最良の料理だ)」。一般に、感情的な決定は賢明な戦略にはならない(emotional decisions do not make for a prudent strategy)。地域戦争が勃発した場合、イスラエルと地域全体の軍事的・外交的利害を考慮すると、これは特に妥当性を持つ言葉だ。そして実際、イスラエルによる、イスファハーンに対する攻撃はそのようなエスカレーションを引き起こさないように意図的に調整されているように見える。

更に言えば、イスファハーン以前から、あるレヴェルでは既にバランスシートは均衡していた。結局、イランはイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)の高級幹部7人を失った。モハマド・レザー・ザヘディ将軍は、2020年にアメリカがイラクでカセム・スレイマニを殺害して以来、殺害された最高位のコッズ部隊メンバーである。ザヘディダマスカスのイラン外交施設に対するイスラエルの攻撃で死亡した。イスラエルはイランの攻撃によって、これに匹敵するものを何も失っていない。

しかし、現在および将来のイスラエルによるイラン攻撃には悪い理由がたくさんあるとしても、少なくとも1つの良い理由がある。それはイスラエルとイランが戦争状態にあるということだ。この戦争は何年間もほぼ秘密にされてきたが、10月7日以降、影から姿を現した。ハマス、ヒズボラ、フーシ派、そして半年以上にわたってイスラエルを攻撃してきた他の組織の共通点は、程度の差こそあれ、いずれもイランから資金提供、訓練、装備を受けていることだ。その結果、イランとヒズボラおよびアサド政権との関係を調整したザヘディを含む7人の革命防衛隊工作担当者たちが3月下旬にダマスカスに現れたとき、イスラエルは、彼らがシリアの複数のレストランで試食するために来たのではないと結論づけた。これは、おそらく正しい結論である。

イランの報復集中砲火とイスラエルの反撃の後、この奇妙にパフォーマンス的な軍事力の誇示というゲームにおいては、ボールはイラン側にある状態である。最初の兆候は、イランが少なくとも当分の間、ボールに触らない可能性があるということだ。そうなれば、アメリカも地域も安堵のため息をつくだろう。

しかし、残念なことに、どんな休息も長くは続かないだろう。イスラエルは、イランから代理勢力への物的・戦略的支援の流れを断ち切る、あるいはおそらく妨害するためだけでも、海外のイラン工作担当者たちに対する攻撃を続ける必要があるだろう。「問題は解決したと見なせる」というイランの主張に反して、イランが代理勢力を支援し続け、その代理勢力がイスラエルとの紛争に関与し続ける限り、ダマスカスのイラン大使館でのような攻撃の作戦上の必要性は残ることになる。

そして、くすぶっている従来の紛争がイスラエルの対イラン軍事行動を促す十分な理由でないとすれば、イランの核開発という、より大きな理由が迫っていることになる。イラン核合意としても知られる包括的共同行動計画が崩壊して以来、イラン政府は核兵器保有に一歩ずつ近づいている。イスラエルの指導者たちは、核武装したイランが、イスラエルを全面的に攻撃するために兵器を使用しないとしても、代理勢力への支援を増加させる勇気を得るのではないかと長年懸念してきた。多くのイスラエル人にとって、先週末のイラン攻撃はそうした不安を強めるだけだった。結局のところ、広く疑われているイスラエルの核兵器が、イランの通常攻撃を抑止するには不十分であることが現時点で証明されているのであれば、なぜイスラエルは、ひとたび核兵器を持てばイランを首尾よく抑止できると信じられるだろうか? このため、いくつかの重大な軍事的課題にもかかわらず、イスラエルがイランの核開発計画に対して先制攻撃を行う可能性が一層高まっている。

その観点からすれば、イスラエルは、たとえ疑わしい政治的動機、あいまいな抑止力の考え方、あるいは単なるありのままの感情を取り除いたとしても、イランの目標を攻撃し続ける必要があるだろう。イスラエルとイランが紛争を継続する限り、米国や他の同盟国が激化を避けるためにイスラエルにどのような助言をしようとも、両国は打撃を与え合うことになるだろう。

結局のところ、アメリカとヨーロッパが中東での地域戦争の可能性を未然に防ぎたいのであれば、イランに対して、代理勢力の力を抑制し、核開発計画について何らかの措置を講じるよう説得する必要があるだろう。そうしないと、紛争はさらにスパイラル化するだろう。

※ラファエル・S・コーエン:ランド研究所「プロジェクト・エア・フォース」戦略・ドクトリンプログラム部長。

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ビッグテック5社を解体せよ

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