古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ベンヤミン・ネタニヤフ

 古村治彦です。

 イラン戦争はアメリカとイスラエルの失敗(敗北)という評価で定まっている。そのために犠牲になった人々のことを思うとやりきれない気持ちになり、ご冥福をお祈りすることしかできない。人間はなんと愚かであろうかということを認識するとともに、ドナルド・トランプとベンヤミン・ネタニヤフの誤った判断に関しては、政治指導者としてそれ相応の責任を負わせることが必要だ。

 今回のイラン戦争に関して中国は表舞台で目立った活動はしていない。米中首脳会談やイランのアッバース・アラグチ外相の訪中があり、そこでイラン戦争について議論されたことはあるだろうし、アメリカとイランによる和平交渉実現には、パキスタンが仲介国として大きな役割を果たしたが、同時に裏方として中国がサポートをしたことは知られている。
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 また、アメリカがイラン戦争で失敗することで、相対的に中国が成功を収めることになっている。それは、中東地域におけるアメリカの存在感と影響力が低下しており、イラン戦争がそれに拍車をかけることになっているからだ。中東地域はイランを除いて、親米の国々ばかりであり、石油取引は米ドルのみで行うというペトロダラー体制によってウィンウィン関係になっていた。しかし、世界経済で少しずつであるが「脱ドル化(dedollarization)」の動きが始まっている。サウジアラビアは中国向けの石油取引で人民元での取引を行うようになっているのはその一例だ。

 下記論考にある通り、中国は「棚ぼた(windfall)」で相対的な成功を収めている。そして、イラン戦争は、国際政治の構造に大きな影響を与える。それは、アメリカへの信頼性の低下によって、アメリカの世界支配の終焉を早めるということになる。アメリカとイスラエルが大規模攻撃を行ったことで始まったイラン戦争であり、和平となるためには、アメリカとイスラエルがイランの提示する条件を受け入れることが基本となる。もちろん核開発に関しては国際的に受け入れがたいものはあるが、賠償やホルムズ海峡の管理については、イランの条件を受け入れるべきということになる。アメリカはイランに対して、再度の大規模攻撃がしにくい状況であり、イラン側としてはある程度交渉を引き延ばして、アメリカの苦境を長引かせることも可能となる。そうなると、アメリカへの信頼性も揺らぎ、同盟関係が変化していくことになる。そうなれば、相対的に中国の存在感と信頼性が高まることになる。

 私はトランプ大統領を「アメリカの世界支配を終わらせる墓掘り人」と表現したことがある。しかし、それは、アメリカの内向き志向をさらに強めるという意味であった。まさか、海外への介入で大きな失敗をして、アメリカの衰退を加速させる役割を果たすとは思っていなかった。しかし、現実にはトランプはそのような役割を果たしている。「敵に塩を送る」どころではない、利敵行為ということになる。

(貼り付けはじめ)

イラン戦争は中国への「贈り物」だ(The Iran War Is a Gift to China

-一発の銃弾も撃つことなく、中国は湾岸地域における行動の自由を拡大し、自国産業の促進と新たな信頼を手に入れた。

ファリード・ザカリア筆

2026年7月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/07/17/iran-war-china-benefit-united-states-energy-economics-geopolitics-trump-xi/

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北京のショッピングモールの屋外大型スクリーンに映し出された世界人工知能大会の開会式で演説する中国の習近平国家主席(7月17日)

イランとの戦闘が激化と沈静化(blows un and cools down)を繰り返す中、1つの傾向が明らかになっている。それは、この紛争から最大の利益を得ているのが中国ということだ。

中国は一発の銃弾を撃つ必要もなく、巨額の資金を投じる必要もなく、政治的資本を費やす必要なかった。しかし、過去30年間でどの危機よりも多くのものをこの事態から得ている。この紛争は、中国が長年掲げてきた3つの目標の実現を加速させた。すなわち、アメリカへの依存度が低い中東地域の実現、中国の重要技術への依存度が高い世界、そして真剣かつ安定した世界大国としての中国の評価の確立(a Middle East less dependent on America; a world more dependent on critical Chinese technology; and a reputation for Beijing as a serious and steady world power)だ。

中国政府は、中東地域における軍事的な安全保障の保証者としてアメリカに取って代わろうとはしていない。そうした役割には多大なコストを伴う関与が必要だからだ。中国の狙いはもっと単純かつ巧妙なものだ。それは、ペルシア湾岸諸国をアメリカの影響圏からある程度引き離すことにある。そして、ドナルド・トランプ大統領が、中国の習近平国家主席のためにその役割の多くを担ってくれている。

アメリカのペルシア湾岸の同盟諸国は、アメリカが混乱したやり方でこの戦争を遂行し、現地の都市やインフラ、経済に及ぶ被害をほとんど顧みない様子を目の当たりにしてきた。現在、ペルシア湾岸地域は2つの陣営に分かれつつある。アラブ首長国連邦(UAE)はイスラエルやアメリカとの関係を深めている。しかし、サウジアラビアを筆頭に、カタール、オマーン、さらにはイラクやトルコを含むより大きなグループは、バランスを取ることで長期的な安全を確保しようとするだろう。つまり、アメリカとの関係を維持しつつ、イランとの対話や中国との関係改善も図るということである。

これこそが、北京が志向してきた地域秩序そのものだ。2023年、中国はサウジアラビアとイランの国交正常化を仲介した。それ以来、サウジアラビアはアメリカ主導のデータセンターや半導体関連のプロジェクトへの参加を見送ってきた。サウジアラビアは中国製のミサイルやドローンを購入し、中国海軍との合同演習を実施したほか、戦闘ドローン「翼竜(Wing Loong)」の現地生産についても検討を進めている。2016年から2025年にかけて、中国から中東地域への防衛関連輸出の80%以上をペルシア湾岸諸国が占めた。アメリカの安全保障の枠組みに取って代わろうとする国は存在しないが、各国は選択肢を求めており、選択肢が増えることはアメリカの影響力を低下させることになる。

中国にとってより大きな成果と言えるのは地形学分野での勝利だ。一見すると、石油の約7割を輸入に頼る中国は、この戦争による最大の敗者の1人になるはずだった。しかし、長年にわたる備えのおかげで、中国はこの衝撃を他国の多くよりも巧みに乗り切った。中国は供給源を多角化し、世界最大級と推定される石油備蓄を構築し、石炭の利用を継続し、原子力発電を拡大するとともに、他の主要国が追随できない規模で経済分野における電化を進めてきた。

現在、中国のエネルギー消費に占める電力の割合は約30%に達しており、これはアメリカやヨーロッパを4割近く上回る水準だ。2024年には、世界で新たに導入された風力および太陽光発電設備の半分以上を中国が占めるまでになった。こうした要因が重なり、中国は戦時中、石油の輸入量を日量約400万バレル削減することができた。

イラン戦争は、中国の重要技術にとって巨大な宣伝の場となっている。世界各国の政府が、太陽光発電、蓄電池、風力タービン、電気自動車(EV)、送電網の整備を進めようとしている。中国は世界の太陽光パネル製造能力の約91%、リチウムイオン電池製造能力の約89%を掌握している。ブルームバーグが追跡調査しているクリーンエネルギー関連技術のほぼ全てにおいて、中国企業が少なくとも70%の製造を担っている。エネルギー供給への不安が長引くほど、世界は中国が支配的な地位にある産業への依存を強めることになるだろう。

また、この戦争は中国の重要な目標である「世界貿易における米ドルの支配力の弱体化(weakening the dollar’s hold over global commerce)」を後押ししている。報道によれば、イランはホルムズ海峡を通過する一部のタンカーに対し、取引を中国の人民元[renminbi](または暗号通貨[cryptocurrency])で決済することを条件に許可を与えた。中国とそのパートナー国は、アメリカの制裁によるリスクを低減するため、人民元建ての貿易を事実上拡大させている。移行は緩やかなものとなるだろうが、米ドル支配からの脱却という傾向は今や明白となっている。

最後に、評判の面での「棚ぼた(windfall)」とも言える利益がある。ドナルド・トランプ政権は、体制転換(regime change)、イランの核開発計画の破棄、弾道ミサイル能力および地域内の代理勢力への支援の終了といった壮大な目標を掲げてこの戦争に臨んだ。しかし、そのいずれも恒久的な成果としては達成できていない。それどころか今や、事態が始まる前から開かれていたホルムズ海峡を単に開放することさえも希望するような状況になっている。

トランプ大統領はこの対立を選び取った結果、数百億ドルを費やし、アメリカの弾薬を浪費し、アジアから軍事資産を転用し、同盟諸国を動揺させた。そして、アメリカの圧倒的な力をもってしても、誤った戦略と一貫性のない戦術では悪い結果しか生まないことを露呈させた。

一方、中国の動きは極めて限定的だ。イラン産原油の購入を続け、湾岸諸国との関係を維持しながら、イランの防衛や湾岸地域の警備に伴うコストは回避した。これこそ北京が志向するアプローチであり、劇的な対立を避け、着実に影響力を蓄積していく方法だ。

過去25年間、アメリカが中東地域での3つの大規模な軍事介入で疲弊する一方で、中国は製造業の力、技術力、そして外交関係を蓄積してきた。ワシントンが行動するのに対し、北京は機会を待つという姿勢を取った。もちろん、中国もエネルギー価格の高騰、サプライチェインの混乱、世界的な需要の減退といった形で、この対立による代償を支払っている。

しかし、力とは常に相対的なものだ。アメリカの目標、同盟関係、そして信頼性が受けた損害と比較すれば、中国は優位に立ったと言えるだろう。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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 古村治彦です。

 イラン戦争は、アメリカの脆弱さと共に、イランの強靭さを明確に示した。長年にわたる経済制裁によって厳しい状況にありながら、アメリカとイスラエルによる大規模攻撃に寄ってもイランは崩れなかった。もちろん、国内の締め付け、弾圧があることは承知している。そのために国民が声を上げられない、行動できないということはあるだろう。しかし、アメリカとイスラエルが事前に期待していた、イラン国内での反政府運動の発生や民衆蜂起は起きなかった。イラン国民は、もちろんイラン政府に対して不満を持っているだろうが、それよりもアメリカとイスラエルへの反撃と政府への支持のためにまとまってしまったようだ。アメリカとイスラエル、特にイスラエルの事前の期待は大きく外れることになった。

 それは、イランが、イスラム体制であると同時に、ペルシア帝国以来の「誇り」を保持して言うことを示している。紀元前550年のアケメネス朝ペルシアが成立した。アケメネス朝ペルシアは世界初の帝国(広大な領土と他民族を支配する中央集権的な政治体制)である。イランでは、イスラム体制になって、それまでの歴史、特にイスラム前の歴史について否定的な評価をして、そのように教育していた時代もあったが、今では、肯定的な評価となっている。イラン国内にはナショナリズムが残っている。その後の歴史では、モンゴルやトルコなどの侵略を受けながらも、独自の言語や文化を守ってきたという誇りがある。
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 「ペルシア以来の歴史」と「イスラム体制」の2つがイランのアイデンティティとなっており、それに対する外部からの攻撃はイラン国民を団結させることになる。そして、どんなに苦しくても、外部勢力に対抗するということになる。それは命がけの行為となる。今回のイラン戦争で亡くなった人々は犠牲者(victims)であるにとどまらず、殉教者(martyr)である。イスラム今日の側面と殉教者であると同時に、ペルシア帝国以来の歴史の殉教者ということになる。こういった分析を『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』で行っている。是非お読みいただきたい。
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 イランは誇り高く、独立を守るということに最上の価値を置いている。そのための犠牲は殉教ということになる。これでは安易に手を出して、攻撃をしてしまうと、大変なことになる。容易に戦争は終わらない。アメリカとイスラエルが敗北を認め、謝罪し、イラン側の条件をのまない限り、戦争は終わらない。そんなことはできないので、ズルズルとなってしまう。アメリカとしては泥沼に引きずり込まれ、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡封鎖の責任を取らされるということになる。イラン側もあまり条件を吊り上げると、アメリカとイスラエルが嫌気をさして大規模攻撃を行う可能性があるので、出方を注意しなければならない。そのためには中国とロシアと連携し、ドナルド・トランプ政権の意向をうまくくみ取る必要がある。

(貼り付けはじめ)

世界はイランに間違った質問を投げかけ続けている(The World Keeps Asking Iran the Wrong Question

-イスラム共和国が成立する以前からこの国は常に同じことを望んできた。

アリ・ハシェム筆

2026年5月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/19/iran-politics-strategy-war-sanctions-hormuz/?tpcc=recirc_featured_horizontal051524

過去半世紀にわたり、イランに関する本格的な分析の多くを方向づけてきた問いは、「イスラム共和国は何を求めているのか」というものだった。これは合理的な疑問だが、正しい疑問ではない。イスラム共和国の歴史は47年だが、現代のまとまりある政治的実体としてのイランの歴史は5世紀続いている。この2つを混同したことが、半世紀近くにわたるアメリカの政策の失敗、合意の崩壊、そして現在の形で予測した者がほとんどいなかった戦争を招く結果となった。

より有益な問いは、「イランは何を求めているのか」というものだ。ここで言うイランとは、現在の政府や最高指導者のことではなく、革命よりはるか以前にその戦略的本能が形成され、それ以降のあらゆる体制の変化を生き抜いてきた国家そのもののことだ。サファヴィー朝、ガージャール朝、パラヴィー朝、そしてイスラム共和国は、いずれも同じ地理的・歴史的遺産を基盤として活動してきた。政府は変わっても、その論理は変わらなかった。

イラン高原は西をザグロス山脈、北をアルボルズ山脈に囲まれ、世界でも有​​数の過酷な砂漠によって分断されており、中央アジア、南アジア、中東の結節点に位置している。主要な陸上帝国は全て、この土地に関与しなければならなかった。インド洋への野心を抱く海洋勢力も全て、その南端にある海峡を考慮に入れざるを得なかった。

こうした地理的条件は、歴代の王朝に一貫した教訓をもたらした。それは「内陸部を守るだけでは内陸部を確保できない」ということだ。高原内部に戦略を限定した支配者は、やがてその一部を失うことになった。一方、外へと勢力を広げ、高原を単なる標的(a target)からハブ(hub、拠点)へと変えた支配者こそが、最も長く存続した。

現代において、この論理が最も明確に表れているのがホルムズ海峡だ。世界の石油供給の約5分の1がこの海峡を通過している。2026年のイラン戦争の初期段階でイランが通航制限の動きを見せた際、実際にタンカーが停止させられる前に、エネルギー市場は反応を示した。核兵器を持たず、アメリカに対抗しうる通常戦力も持たない国であっても、その地理的位置ゆえに世界の市場を動かすことができる。これこそが地理的遺産(a geographical inheritance)であり、政府の交代によって崩れ去るものではない。

誰が権力を握ろうとも、イランの戦略的行動を貫く3つの確信がある。

第一の確信は、弱さは他国からの介入を招くという認識である。1813年のグリスタン条約と1828年のトルクメンチャーイ条約により、イランはコーカサス地方の領土を奪われた。1907年の英露協約では、イラン側の意向を無視して勢力圏に分割された。それ以降の歴代政権は、これらの出来事を構造的な警告として捉えてきた。すなわち、抑止力(deterrence)を発揮できない国家は、その主権(sovereignty)を外部から管理されることになるという教訓である。核開発計画、地域的なネットワーク、そしてミサイル戦力といった要素は、ある側面において、いずれもこの警告に対する対応策なのである。

第二の確信は、主権は決して譲歩の対象にはなり得ないという点だ。1890年代初頭のタバコ・ボイコット運動や1951年のアングロ・イラニアン石油会社の国有化は、単発的な出来事ではない。それらは時代を超えて繰り返された、同一の反射的反応であった。1976年、リチャード・ヘルムズ駐イラン米大使がヘンリー・キッシンジャー国務長官に行った報告の中で、この点が的確に表現されている。「核をめぐる緊張が存在するのは、イランが、自国の主権を損ないかねない外部からの干渉を一切容認しようとしないからである」。この一文は、2015年、2021年、そして、2026年に行われた核交渉に関するあらゆる報告書においても、そのまま当てはまるものであった。

そして第三の確信であり、最も一貫して過小評価されてきたのが、イランは自らを単なる「地域大国(a regional power)」とは見なしていないという点である。1979年の革命は、一般的に地域的な文脈シーア派政治勢力の台頭、湾岸地域の安全保障体制の再編、統治勢力としての政治的イスラムの出現で語られることが多い。

しかし、その革命がもたらした最も直接的かつ重大な影響は、世界規模のものだった。わずか1年の間に、イランはワシントンにとっての極めて重要な戦略的パートナーという立場から、超大国とは異なる「第三の道(a third path)」を追求する国家へと変貌を遂げた。人質事件は、その後一世代にわたってアメリカの国内政治のあり方を変えた。イラン・イラク戦争には、米ソ超大国やヨーロッパ諸国の大部分の諜報機関や兵器産業が巻き込まれた。イラン製の無人機「シャヘド(Shahed)」は、ヨーロッパでの戦争にまで投入されるに至った。2026年の紛争は世界のエネルギー市場を動かし、複数の海上ルートにおける海運保険に混乱を招き、湾岸地域の石油に依存するあらゆる経済―すなわち世界の大多数の経済―に、戦略の再考を迫ることとなった。最高指導者であったルーホッラー・ホメイニ師は、革命を世界の隅々にまで輸出すると語った。彼は本気だった。

半世紀の隔たりがある2つの発言が、その継続性を如実に物語っている。1つ目は1960年代、イラン秘密警察の中東担当局長モジタバ・パシャイ大佐によるものだ。彼は、シャー(shah、国王)がレバノンの諸政党を支援していた理由をこう説明した。「イラン国内での流血を防ぐためには、地中海東岸において(ナセル主義[Nasserism]という)脅威と戦い、これを封じ込めなければならない」。2つ目は2016年1月、最高指導者アリ・ハメネイ師がシリアやイラクで戦死した兵士の遺族に向けて語った言葉である。「もし彼らが現地へ赴き敵と戦っていなかったら、敵は国内に侵入していただろう。私たちはケルマンシャーやハマダーンで敵と戦わなければならなくなっていただろう」。2つの発言の論理は、両政権の性質は異なっていたとしても、同一である。

外部から見れば、シャーの親欧米的な姿勢はこのパターンから逸脱しているように見えたかもしれない。だが、実際はそうではなかった。彼もまた、イスラム共和国と同様の論理に基づいて核能力の獲得を追求していた。シャーはイスラエルとの軍事提携も模索した。ワシントンが外部の監視を伴う核の安全保障措置を求めた際、彼がそれに抵抗したのはイデオロギー上の理由からではない。そのような監視を受け入れることは、過去どの時代のイランの統治者も決して容認できなかった「従属的な地位(a subordinate status)」を認めることになってしまうからだった。

同じパターンは現在も見られる。パキスタンでの協議において、最高指導者モジタバ・ハメネイ師は、他者が設定した条件でイランが交渉に応じることはないと同席した当局者たちに明言した。ワシントンとテルアビブは、核開発計画、ミサイル、地域的なネットワークへの圧力といった形で事態を「封じ込める(contained)」ことを意図して2026年の戦争に臨んだ。しかし、イランはその枠組みを拡大させた。軍事的圧力が一定の閾値に達すると、テヘランはホルムズ海峡を封鎖し、対立を世界的な経済危機へと変貌させたのである。ワシントンが「ゲームのルール(the rules of the game)」を定めようとするたびに、テヘランは「競技の場(the playing field)」そのものを変えてしまうのだ。

包括的な制裁、特定の対象を狙った制裁、暗殺作戦、サイバー戦、代理勢力への支援、直接的な軍事行動―これら全てが試みられてきた。しかし、いずれも当初期待されたような戦略的変革をもたらすことはなかった。それどころか、それらは一貫して(この一貫性自体が重要なデータとして扱われるべきだが)事態を加速させる結果を招いた。すなわち、核開発の加速、地域ネットワークの深化、そして政治体制のさらなる強固化である。

2002年の「悪の枢軸」演説(“axis of evil” speech)は、最も明確なケーススタディとなる。911同時多発テロ後の数ヶ月間、テヘラン(イラン政府)はアフガニスタン問題で協力し、アフガニスタンの政治的将来を議論するボン会議に参加し、ワシントンとの間接的な対話ルートを開設した。モハンマド・ハタミ大統領を中心とする改革派陣営は、こうした行動を取ることで、国内政治における現実的なリスクを負った。イラン当局者は、自らが歩み寄りの姿勢を示した以上、相手からの応酬(互恵性[reciprocity])も期待できると考えていた。ロイヤル・ホロウェイ(ロンドン大学)で行った私自身のこの時期に関する研究でも、ジョージ・W・ブッシュ米大統領の演説について、ジャック・ストロー元英外相の表現と同様の証言が一貫して得られた。それは「彼らが冒したリスクに対する裏切り(a kick in the teeth for the risks they had taken)」というものだ。イランのモハンマド・ジャヴァド・ザリフ元外相は後に、わずか数日のうちに「協力の政策(policy of cooperation)」が「対立の政策(policy of confrontation)」に変貌した経緯を語っている。

その後に続いた事態は、構造的に予測可能なものでした。ワシントンの目的は共存ではなく体制転換(regime change)にあるというハメネイ師の確信は、この出来事によって揺らぐどころか、むしろ裏付けられる結果となった。核開発計画は加速し、地域的なネットワークは深化し、抑止の枠組みは拡大した。これは強硬派がその局面を操作したからではなく、協力の申し出が無視された瞬間に、根底にある論理が再び支配的になったからである。

圧力をかけられているイランの行動は、主にイデオロギーに基づくものではなく、戦略的なものだ。イランに対し抑止の枠組みを解体するよう要求することは、イスラム共和国に穏健化(to moderate)を求めている訳ではない。それは、過去5世紀の歴史が「破局を招く条件(the condition from which catastrophe comes)」であると示してきた状況を、イランに受け入れるように迫ることに等しい。いかなるイラン政府もそれを受け入れることはできない。なぜなら、それを受け入れることは、「弱さは介入を招く(Weakness invites intervention)」という根本的な教訓を認めることになるからだ。譲歩(concession)を引き出すための圧力が、かえって阻止しようとしていた行動を誘発している。

キッシンジャーはヴェトナム問題の処理に長年携わった末に、北ヴェトナムが彼自身の想定とは全く異なるもの―すなわち時間、忍耐、そして米国の政治的意志の漸進的な摩耗―のために戦っているのだと結論付けた。テヘランも同じ論理で動いている。イランはこの局面での勝利を目指しているのではない。アメリカが「出口(exit)」を必要とする時が来た際に、存続可能な状態を維持しようとしている。ヴェトナムにおけるキッシンジャーの過ちは、紛争を拡大させたことではなく、相手も自分と同じ「勝利(victory)」の定義を共有していると思い込んだことにあった。ドナルド・トランプ政権も今、同様のディレンマに直面している。国内で正当化できる条件で戦争を終わらせることもできなければ、テヘランが拒否し続けている枠組みなしに撤退することもできない。対立が長引けば長引くほど、その痛みはイランや石油市場、海運、サプライチェイン、そして湾岸地域の安定に依存する経済圏の枠を超えて広がっていく。ホルムズをめぐる問題で打撃を受けるのは、イランだけではない。

核拡散のリスクは現実のものだ。その地域的ネットワークは、実際に暴力を引き起こしてきた。分析上の見解を修正したからといって、こうした懸念が消え去る訳ではない。修正によって変わるのは、それらの懸念に対処するための条件だ。

真の安全保障を保証し、イランを単なる「管理すべき問題(a problem to be managed)」ではなく「正当な抑止の利益を持つ当事者(a party with legitimate deterrence)」として扱い、さらに、歴史的経緯から構造的に受け入れがたい「従属的な地位(subordinate status)」をイランに強いないような取り決めであれば、それは維持される可能性がある。一方、イランが近代史を通じてあらゆる時代に拒絶してきた条件を強いるような取り決めは、どの政府が担当しようともうまくいかないだろう。自国の戦略的論理が禁じていることを実行できるイランの政府など存在しないからだ。

ワシントンが現在直面している困難は、テヘランに対話の相手がいないことではない。依然として、間違った問いを立てていることにある。

※アリ・ハシェム:中東地域における戦争、外交、政治の変革を取材するジャーナリスト・研究者。アルジャジーラの特派員、ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ・イスラム教・西アジア研究センター研究員。Xアカウント:@alihashem

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(終わり)



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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 イラン戦争は一時的に停戦になっているが(その期間は60日間)、最終的な戦争終結の見通しは立っていない。アメリカ軍とイラン革命防衛隊は相互に攻撃を繰り返したり、攻撃を停止したりしている。ドナルド・トランプ大統領は激しい言葉遣いでイランを非難し、イランへの大規模攻撃を示唆するかと思えば、攻撃を中止すると述べるなど、一貫性に欠ける振る舞いを続けている。「トランプは最後の最後には弱腰になって逃げる(Trump Always Chickens OutTACO)」という言葉が出てきた所以である。

 イラン戦争はアメリカとイスラエルによって開始され、圧倒的な戦力を用いて各戦闘でイランに対して大きな被害を与えた。しかし、イランを屈服させることはできなかった。イランの体制転換や政権転覆を実現することはできなかった。イランからの反撃で湾岸諸国やイスラエルで被害が出た。アメリカが提供する防衛システムも完璧ではないということが明らかになった。

 さらに言えば、イランがホルムズ海峡を封鎖し、イエメンの新イラン組織フーシ派が公開の出入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡でも武力攻撃が発生することで、世界経済に悪影響を与えている。戦争を開始することでアメリカの影響力や指導力は低下している。「アメリカは戦闘(battle)では勝利しているが、戦争(war)に負けている」ということになる。
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 ヴェトナム戦争はアメリカの外交再作に大きな影響を与えた。国力が低下し、「アメリカの衰退(decline)」という言葉が囁かれるようになる原因となった。イラン戦争はヴェトナム戦争よりもより深刻な影響をアメリカに与える可能性がある。アメリカがイラン戦争の泥沼に足を取られることで、他の地域への関与が制限される。具体的にはアジアへの関与が減少することになる。アメリカが進めようとしている「中国封じ込め(containment of China)」は厳しい状況となる。世界覇権国アメリカの地位は脅かされることになる。

 ドナルド・トランプ大統領はアイソレイショニズム、「アメリカ・ファースト(アメリカ国内問題解決優先主義)」を主張して大統領になった。それにもかかわらず、ヴェネズエラ、キューバ、グリーンランドへの野心をあらわにして批判をした。しかし、これは「西半球(Western Hemisphere)」支配、「ドンロー主義」という観点からすればまだ理解できる。しかし、イラン戦争に関しては全く主義主張と反する。アメリカの国力を削り、アメリカの影響力を減少させる行為である。このような政策の選択を行ったトランプをただ非難することは簡単だ。その裏側にあるものは何かについて、私は佐藤優先生との2冊目の対談『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』で検討した。是非お読みいただきたい。
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イランはヴェトナム以上の敗北である(Iran Is a Bigger Defeat Than Vietnam

-選択戦争(a war of choice)がワシントンにとって戦略的な大失敗に転換した。

ポウル・マスグレイヴ筆

2026年6月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/16/iran-vietnam-strategy-defeat/

ドナルド・トランプ米大統領は2期目の就任演説で、「先の大統領選挙が我が国の歴史上、最も偉大で最も重要な選挙として記憶されること」を望むと語った。しかし、彼が起こした「湾岸戦争(Gulf War)」に敗北したことで、トランプはその目標を皮肉な形で達成してしまった。イランに対する軍事行動を起こすという決断は、周囲からの後押しもあったとは言え、あくまで彼自身の意志によるものだった。その結果招かれた事態の逆転は、ヴェトナム戦争におけるアメリカの敗北をはるかに上回る戦略的な大惨事(a strategic calamity)となっている。

イランとの戦争における敗北は、一見したところ、アメリカの過去の軍事的敗北とは全く異なる様相を呈している。戦争の展開の速さと、戦場が遠く離れているという地理的条件が、この一連の出来事全体にどこか現実味の薄い雰囲気を漂わせているからだ。1814年のようにホワイトハウスが焼き払われた訳でもなければ、存在しない徴兵制に対する抗議デモが起きている訳でもない。ドーハに拠点を置く私自身、最初の数週間は頭上を飛び交うミサイルを目にし、その音を耳にしていたにもかかわらず、ここ数週間の状況には戸惑いを覚えている。食料品を買い出し、まだ安価なガソリンを給油し、遠く離れた場所にいる共著者たちとZoomで打ち合わせをする中で、私は何度も自問した。「ここは戦地なのだろうか(Is this a war zone?)」。

この紛争においてアメリカ軍側に大きな人的被害が出ていないこともまた、アメリカの敗北の規模を覆い隠している。確かに、この戦争は多くの命を奪った。戦闘員や民間人を含め、数千人ものイラン人が犠牲になった。しかし、アメリカ側の死者ははるかに少ない。現時点でアメリカ軍将兵の死者は20人未満であり、その多くは一度の攻撃によるものだった。

それに比べれば、ヴェトナムの人々が「アメリカ戦争(the American War)」と呼ぶあの紛争の規模は、圧倒的かつ衝撃的なものだった。東南アジアの空やジャングルの広範囲を舞台に10年以上続いた戦闘で、数百万人が命を落としたが、そのうちアメリカ人は6万人弱に過ぎなかった。

その経験があまりに痛ましいものだったため、ある世代の人々にとって、「ヴェトナム」という言葉は、その名を冠した現実の国や社会を指すものではなくなっていた。長年にわたる紛争を経てもなお、彼らはその国や社会についてほとんど無知なままだったからだ。アメリカにおける用法として、「ヴェトナム」は主に、アメリカが経験したある種の出来事を表す比喩や象徴として理解されていたのだ。

多くの一般のアメリカ人にとって、それは個人的な悲しみを意味するものだった。一部のエリート層にとって、ヴェトナム戦争は権力の傲慢さ(the hubris of power)に対する教訓となる出来事であり、また別の人々にとっては、現代における適切な戦略的判断を妨げる過ちでもあった。しかし、ヴェトナム戦争が国家の歴史に刻まれた「汚点(a stain)」であるという点では、国民的な合意が存在していた。シカゴ・グローバル・アフェアーズ評議会が2014年に行った世論調査では、アメリカ人の58%がヴェトナム戦争を「暗い時代(dark moment)」と捉えていたのに対し、誇るべきものと答えたのはわずか12%にとどまった。

今日の視点からあの紛争を理解する上で最も難しいのは、ワシントンにとって最終的にはさほど重要ではなかったにもかかわらず、なぜアメリカがあれほど激しく戦ったのかという点かもしれない。当時戦争を遂行したアメリカの政策立案者たちは、現代では到底考えられないほどの犠牲を容認していたが、その戦争におけるアメリカの敗北は、結局のところ、アメリカのより広範な戦略目標にとって大した問題ではなかった。実際、ヴェトナム戦争と結びつけて語られることになる「ドミノ理論(domino theory)」(ある国が共産化すれば近隣諸国もそれに続くという考え方)については、早くも1964年の時点で、アメリカ政府内部の議論において疑問が呈されていた。

この戦争がアメリカ人にとって最終的に無関係なものであったからといって、それが重要ではなかった訳ではない。東南アジアの不安定化は重大な問題であった。カンボジアの集団墓地は、ヴェトナムの国境を越え、和平協定が正式に調印された後もなお波及し続けた紛争の犠牲を、無言のうちに物語っている。戦争の結果はヴェトナムにとって重大な意味を持ったし、その後の数年間に逃亡した難民たちの絶望もまた同様であった。

しかし、そうした事実を踏まえても、アメリカ自身にとっては、多大な犠牲を伴う敗北の結果は、長期的には比較的軽微であり、国内的な問題にとどまるものであったという事実は変わらない。アメリカは、より広範な冷戦において勝利を収めた。今日のヴェトナムは、アメリカに対して驚くほど好意的な国となっている。

この状況を、トランプの戦争の余波と比較してみよう。アメリカは、自ら選択して始めたこの戦争の開戦時と比べて、間違いなく弱い立場に置かれており、アメリカの核心的な戦略目標も損なわれている。

この紛争における軍事的な戦いぶりを、イラクのサダム・フセイン大統領によるクウェート占領を覆すためにアメリカ主導の連合軍が行った戦争と比較してみると、その対照は際立っている。1990年から1991年にかけての紛争では、イラク軍があっけなく壊滅させられたように見えたその様子が、世界に衝撃を与えた。

対照的に、イランとの紛争においてアメリカの兵器が示した技術的に優れた性能は、アメリカの兵器備蓄の不足という問題によって影が薄くなり、イラン・イスラム共和国よりも強力な敵との紛争に対するアメリカの備えに疑問を投げかける結果となった。この紛争におけるハイテク戦闘の記憶として長く残るのは、データベースの誤作動と思われる事態の結果として命を落とした、血にまみれたイランの女子生徒たちの遺体が入った袋の姿だろう。また、アメリカの防衛システムはイランのミサイルや片道攻撃型ドローンに対して良好な性能を発揮したものの、イランはそれらのシステムを突破して大きな打撃を与えることに成功した。このことは、より集中した攻撃を行う敵や、長期にわたる紛争において、それらのシステムがどれほど通用するのかという疑問を抱かせるものとなった。

戦略的な観点から見れば、その結果はさらに深刻である。アメリカはある種の「政権交代(regime change)」を実現したとはいえ、テヘランを従順的属国(a pliable client)に変えるどころか、戦争によってイランをより強硬な姿勢へと追い込み、事実上、イスラム革命防衛隊に国の主導権を握らせる結果となった。イスラエルとアメリカの兵器は、開戦当初こそ残酷なまでに高い効果を発揮したが、最終的には武力行使による解決の限界を露呈させ、結果としてイランに大きな利益をもたらした。イランの核開発計画は、これまでにイスラエルとアメリカによる2度の共同空爆に耐え抜いてきた。3度目の空爆が行われたとしても、それ以上の成果が得られる可能性は低いと思われる。

国際システムにおけるアメリカの指導力への影響は、さらに甚大なものであった。この軍事行動に反対していたとされる地域の同盟諸国が、戦闘に伴う負担の大部分を負うことになったからだ。何よりも重要なのは、イランがホルムズ海峡を封鎖する能力を行使することで、世界規模での経済的影響力を行使できると学んだことである。

航行の自由(freedom of navigation)は、2世紀以上にわたりアメリカの戦略的な中核的目標(a core U.S. strategic objective)をなしてきた。19世紀初頭には、トマス・ジェファーソン大統領が地中海沿岸諸国への貢納金の支払いを停止させるために海軍を派遣したほどである。ホルムズ海峡の自由な通航が失われる可能性は、貿易ルートが「兵器化(weaponization)」される兆候となり、世界貿易に永続的かつ甚大な被害をもたらす恐れがある。

戦争の終わり方は、その始まり方と同じくらい多くのことを物語るものだ。ヴェトナム戦争後、アメリカはヴェトナムやその近隣諸国から事実上背を向け、より戦略的に重要な地域に注力することができた。世界的なグリーンエネルギーへの移行とアメリカの炭化水素(石油・ガス)生産の拡大という組み合わせにより、ワシントンの一部の人々にとっては、湾岸地域からの同様の撤退が魅力的に映るかもしれない。しかし、ヴェトナム戦争後のような撤退を再現することは困難だろう。

何と言っても、今日の世界経済は1970年代よりもはるかに相互に深く結びついており、経済ネットワークにおいて湾岸地域が果たす役割は、かつてのインドシナが担っていた役割よりもはるかに大きなものとなっている。世界のサプライチェインは、湾岸地域の炭化水素だけでなく、ヘリウム、肥料、アルミニウムにも依存する構造になっている。その結びつきは経済的なものだけにとどまらない。アメリカとイスラエルとの継続的な関係は、中東地域からの完全な撤退を非現実的なものにすると同時に、さらなる、そしておそらくはより激しい紛争の可能性を高めている。イランのミサイル開発や、潜在的な核開発計画の進展は、中東地域のみならず、ヨーロッパや南アジアにとっても、2030年代の展望をはるかに深刻なものにしている。

どのような政権下であれ、アメリカは国内外で自らの力が弱まる中で、こうした事態に直面することになるだろう。同盟諸国はアメリカの能力に対する信頼を失い、国民は有益な関与であってもそのコストを負担しようとはしなくなり、競合国はワシントンの意志に挑戦する可能性を高めることになるだろう。そうした結果は、ヴェトナム戦争におけるアメリカの失敗よりもはるかに長期的かつ深刻なものとなるだろう。

しかし、1つだけ似ている点がある。数十年後、このアメリカの紛争を振り返る学生たちは、私がかつてヴェトナム戦争について抱いたのと同じ疑問を抱くことになるはずだ。「なぜこの戦争が起きたのか?」。学者たちは綿密な調査に基づいた多くの答えを提示するだろう。しかし、最終的に誰もが納得できるような答えは1つとして示されないだろう。

※ポウル・マスグレイヴ:カタール・ジョージタウン大学政治学准教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)



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 古村治彦です。

 イスラエルはユダヤ人の国であり、ユダヤ教の国というイメージがある。それは正しいのであるが、そうとばかりも言えないところもある。人口が約990万人であるが、そのうち、ユダヤ人は約73%、アラブ人が約21%、その他が約6%となっている。アラブ人の割合がイメージよりも高いと思う人が多いだろう。また、宗教で見てみると、ユダヤ教が約74%、イスラム教が約18%、キリスト教が約2%、その他にドルーズ教が約1.6%となっている。ユダヤ人は約750万人弱というところだろうか。アメリカに住むユダヤ人が約500万から750万人(定義によって異なるが、アメリカの総人口の約2%)、ヨーロッパ諸国に住むユダヤ人が約130万人ということで、イスラエル以外に住むユダヤ人が多くいるということになる。

 下の映像は、イスラエル国内におけるキリスト教徒への暴力の様子である。修道女を突き飛ばし転倒させたり、聖職者に対してイスラエル国防軍の兵士が唾を吐きかけたりということが起きている。イスラエル政府もこのような宗教を理由にした差別や暴力には神経を尖らせており、犯人は逮捕されているようであるが、イスラム教徒への差別や暴力については全く無頓着であり、このような措置自体が差別そのものである。アメリカやヨーロッパ諸国のキリスト教徒からの反発を恐れてのことである。ガザ地区での激しい攻撃やイラン戦争開戦によって、欧米諸国でのイスラエルへの支持は減少している。彼らの支持、支援がなければ、イスラエルは立ち行かない。


 しかし、このような状況はイスラエル、特にベンヤミン・ネタニヤフ政権にとっては痛しかゆしである。このような排他的な、ナショナリズムが高揚することで、ネタニヤフ政権への国内での支持は高まるが、ナショナリズムが高揚することで少数派に対する暴力が増加するとなれば、欧米諸国をはじめとする諸外国からの非難は免れない。ネタニヤフ政権がそのようなナショナリズムの高揚と暴力事件を間接的に扇動しているということにもなる。

 似たような状況は日本にも存在する。高市早苗政権の浅慮での対中強硬姿勢によって、排外主義が高まり、「差別でご飯を食べることができる」状況が生み出されている。しかし、これらは諸外国から見れば危険な状況である。外側からの目を持たない国民は滅びることになる。そのことを日本国民は80年以上前に学んだはずであるが、人間の悲しさで、忘却してしまっているようだ。再び、自分たちが厳しい体験をしてそのようなことを学ぶことがないように願うばかりだが、イスラエル国民も日本国民もそこまで賢くないだろうと悲観的になってしまう。

(貼り付けはじめ)

イスラエルでは深刻化する反キリスト教問題を抱えている(Israel Has a Growing Anti-Christian Problem

-イェルサレムで最近発生した襲撃事件は戦時下のナショナリズムによって激化した憂慮すべき傾向に光を当てている。

ジョヴァンニ・レゴラント筆

2026年6月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/02/israel-christian-violence-jerusalem-holy-land-nun-attack/

最近起きた、イェルサレムでフランス人修道女が理不尽な暴行を受けた事件は、イスラエルにおけるキリスト教徒コミュニティへの敵意の高まりに改めて注目を集めている。

4月28日に拡散された動画には、ある男性が修道女に駆け寄り、路上に突き飛ばす様子が映っている。修道女は石に頭をぶつけそうになりながらも、この男性は倒れた修道女を蹴りつけ、通行人が止めに入るまで暴行を続けた。

ユダヤ教のキッパ(帽子)と儀式用の房飾りを身につけたこの男性は、後に占領下のヨルダン川西岸地区に住む36歳のイスラエル人入植者と判明した。イスラエル検察庁によると、警察は容疑者を拘束し、宗教団体への敵意に基づく暴行罪で起訴した。

この襲撃事件は、イスラエル政府関係者からほぼ満場一致で非難されたほか、フランス、スペイン、イタリアからも批判の声が上がった。イスラエル外務省は、この事件を「イスラエル建国の理念である尊重、共存、信教の自由という価値観に真っ向から反する、卑劣で恥ずべき行為(a despicable and shameful act “in direct contradiction to the values of respect, coexistence, and religious freedom upon which Israel is founded)」と非難した。

この事件は、イスラエルにおけるキリスト教徒への敵意の高まりという、近年の傾向に広く注目を集めている事象を示している。こうした暴力行為は処罰されないことが多く、当局はこれらの事件を、宗教的過激主義(religious extremism)と不処罰(impunity)というより広範な問題の兆候ではなく、孤立した行為として扱っていると批判されている。

キリスト教徒コミュニティへの差し迫った危険に加え、これらの攻撃はイスラエルの国際的地位を損ない、イスラエル、特にイェルサレムにおける信教の自由への懸念が外交的に大きな意味を持つヨーロッパやキリスト教世界との重要な関係を緊張させる恐れがある。これに対し、宗教指導者、市民社会団体、そして一部のイスラエル政治家は、高まる敵意を食い止めるために、法執行の強化、宗教的憎悪に対抗するための教育的取り組み、そして宗教間対話の拡大を求めている。

キリスト教徒に対する言葉による嫌がらせや身体的な暴力、そして教会のシンボルや聖地の冒涜行為は、イスラエルにおける宗教コミュニティ間の繊細な均衡を著しく損なっている。この均衡は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとって聖地が持つ特別な意義によって長年培われてきたが、近年、特にイェルサレム旧市街において、ユダヤ・ナショナリズム運動と過激派運動(Jewish nationalist and extremist movements)が台頭し、脅かされている。旧市街では、複数の宗教の聖職者や信者が近接して生活し、信仰を実践している。

イスラエルの人口約1020万人のうち、キリスト教徒は約2%を占めている。キリスト教徒の79%はアラブ人だ。イェルサレムに拠点を置く宗教間対話組織であるロッシング・センターによると、現在イスラエルには約2700人のキリスト教聖職者が居住しており、その大多数はイスラエル国籍を保持していない。

2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、キリスト教徒に対する攻撃的な事件が増加している。キリスト教徒のためのホットラインを運営するユダヤ系イスラエル人ボランティア団体「宗教の自由データセンター(Religious Freedom Data CenterRFDC)」は、2025年に181件の敵対行為(唾吐き、暴言、器物損壊、身体的暴力、オンラインハラスメントなど)を記録した。これは2024年の107件と比較して大幅な増加である。

RFDCの創設者兼代表であるイスカ・ハラニは、キリスト教徒に対するハラスメントの多くは報告されていないため、彼女の統計は実際の件数を過小評価している可能性が高いと述べた。また、RFDCはイスラエル当局に苦情を申し立てているものの、ほとんど回答が得られていないとも述べている。

ハラニは次のように語って言う。「取り締まりがなければ、それは再び同じことを繰り返すことを容認する、いわば消極的な奨励(passive encouragement)に等しい。唾を吐いた犯人が捕まらず起訴されなければ、次回はもっとひどいことになるだろう。・・・一体何を待っているのか? 殺人の発生を待っているのか?」。

アナリストたちは、宗教団体や世俗団体とともに、イスラエルの与党連合政権が宗教的ナショナリズムとユダヤ人過激派の免責意識(a sense of impunity)を助長しているとして、高まる敵意を非難している。彼らはまた、イスラエルによるガザ地区侵攻開始以来、国内に蔓延する憎悪(hate)、恐怖(fear)、そして分極化(polarization)の風潮も指摘している。

ローマ教皇庁聖書研究所名誉教授ジョセフ・シーヴァーズは、イスラエルの特定の層におけるメシア思想(messianic views)が、「他者(others)」とみなされる人々に対する攻撃的な態度を煽る可能性があると述べた。「たとえキリスト教徒がハマスやヒズボラと何の関係もなくても、一部の人々は『自分たちの仲間(their people)』ではないとみなされる全ての人々に対して行動を起こす権利が​​あると考えるかもしれない」と彼は語った。

ロッシング・センターが2025年に実施した、ユダヤ系イスラエル人のキリスト教徒に対する意識調査によると、「回答者の宗教性が高まるにつれて、キリスト教に対する不快感も高まり、・・・学習意欲、寛容性、理解への意欲は低下する(as the level of religiosity among respondents increases, so too do levels of discomfort toward Christianity … and lower willingness to engage in learning, openness, or tolerance)」ことが明らかになった。

ロッシング・センター傘下のイェルサレム・ユダヤ・キリスト教関係センターのプログラム・ディレクターであるハナ・ベンドコウスキーは、イスラエル政府と国民はここ数年、ますます孤立感(isolated)を募らせていると指摘する。戦時下の優先事項や、占領下のヨルダン川西岸における入植者とパレスティナ人コミュニティ間の絶え間ない緊張に追われる中で、治安当局は少数派の保護にあまり積極的ではなくなっており、その結果、ナショナリズム的な傾向を持つ人々が「攻撃的な行動になることを自分たちに容認する(allow themselves to be aggressive)」ようになっているとベンドコウスキーは語っている。

イスラエル当局が最近の襲撃事件の犯人を迅速に逮捕したことは、一部のキリスト教徒にとって事態改善の兆しと受け止められている。しかし、聖地における平和共存を促進するためには、より建設的な努力が必要だとフランシスコ会司祭で聖地管理区の学校長を務めるイブラヒム・ファルタスは語っている。

ファルタスは、イスラエル当局はキリスト教徒の要請に耳を傾け、しばしば介入する傾向があると指摘した。「しかし、この困難な共存関係を助長している(聖地をめぐる)紛争を解決するための、真摯で強い政治的意思が依然として欠如している」とファルタスは述べた。「結局のところ、中東地域全域で日々悪化している状況に対処するための、国際社会の権威ある関与が不足している」。

キリスト教徒はイスラエルに対して直接的な政治的影響力はほとんど持たないものの、その広範なネットワークを通じて、世界的に大きな外交的影響力と道徳的権威を行使している。キリスト教の巡礼と観光はイスラエルにとって経済的に重要であり、反キリスト教的な暴力は潜在的な旅行者を遠ざける可能性がある。

さらに、こうした事件への認識の高まりは、キリスト教徒が多数居住するヨーロッパにおけるイスラエルの主要同盟諸国の間で懸念を引き起こしている。例えば、3月には、イタリアのジョルジア・メローニ首相が、聖週間の始まりを告げるキリスト教の祝日である棕櫚の主日を祝うために聖墳墓教会に入ろうとしたカトリック教会の最高指導者であるピエルバッティスタ・ピッツァバラ枢機卿をイスラエル警察が阻止したことを非難した。(イェルサレムの聖地は、アメリカとイスラエルによるイラン戦争開始以来、信者の立ち入りが禁止されている。)ホワイトハウスのカロライン・リーヴィット報道官によると、ワシントンもこの事件についてイスラエルに懸念を表明した。

イスラエルとヨーロッパの関係は、ガザ地区におけるイスラエルの戦争行為をめぐって既に著しく悪化している。ヨーロッパ連合(EU)加盟国の一部は、EUに対しイスラエルとの関係を規定する協定の停止を求めているが、この動きはまだ十分な支持を得られていない。

5月13日にクネセト(イスラエル議会)で行われた公聴会で、ギラド・カリブ議員は、増加する反キリスト教暴力への対策はしばしばイスラエルの外交的地位という観点から議論されるが、より深刻な問題は、キリスト教徒への敵意がイスラエルの根本的な価値観への関与を損なうことだと主張した。彼は最近の事件を「教育の失敗(educational failure)」と呼び、クネセトでの議論にとどまらない行動を求めた。

カリブ議員は、「これらの事件は、イスラエル国家とイスラエル社会に道徳的な汚点を残した。改革派ユダヤ教のラビとして、私はこれらの事件を恥じている」と述べた。

教育と異文化交流の促進は、これらの問題に対処するための重要な手段となる可能性がある。研究者たちは長年、継続的な対人交流が、疎外されたコミュニティへの理解を深めることで偏見を軽減できることを発見してきた。北アイルランドからバルカン半島に至るまで、紛争後の社会は、対話プログラムや共同コミュニティ活動が、根深い政治的対立を解消する訳ではないにしても、時間の経過とともに緊張を緩和する上で成功を収めてきたことを示している。

こうした力学は、イスラエルの状況にも当てはまるようだ。ロッシング・センターの調査によると、回答者の約半数がキリスト教の慣習や信仰について誤った認識を持っており、教育水準が高いほどキリスト教徒に対する肯定的な態度が強まることが明らかになった。これは、知識と接触の機会が「異質な(othered)」集団への敵意を軽減できることを示唆している。ロッシング・センターは、キリスト教に関する誤解を解消するためのワークショップや学校プログラムを実施している。また、イェルサレムでは、ラビ、司祭、イマーム、学生、住民が一堂に会し、対話や地域活動を行う取り組みも行われている。

こうした取り組みが広く効果を発揮するには時間がかかるだろう。今のところ、クネセト(イスラエル議会)の公聴会をきっかけに高まった意識向上は、状況改善につながる可能性がある。駐イスラエル・ヴァティカン大使のジョルジオ・リングア大司教は、「理想と現実の間には常に隔たりがある」としながらも、緊張緩和に向けた努力がなされていると信じていると述べた。

アルメニア正教会総主教庁アガン・ゴグチャン総長は、公聴会は「イェルサレムにおけるキリスト教徒に対するヘイトクライムを監視している者がいる」ことを示したとし、イスラエル政府に対し「これらの行為をヘイトクライム(hate crimes)と呼ぶべきだ」と強く求めた。

4月の襲撃事件は、悪化する傾向への監視を強化し、イスラエル当局はキリスト教徒の懸念、そして国際社会の懸念をより真剣に受け止める必要性を認識しているようだ。しかし、取り締まりの強化は課題の一部に過ぎない。長年の戦争と恐怖によって既に荒廃した分極化した社会(a polarized society already devastated)において、大胆な教育活動と深い社会的な反省が不可欠となるだろう。さもなければ、コミュニティ間の亀裂は拡大し、暴力の連鎖は続き、さらなる分断と不信感を招くことになるだろう。

※ジョヴァンニ・レゴラノ:イタリアを拠点とするジャーナリスト。

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 古村治彦です。

 2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことで始まったウクライナ戦争と、2026年2月28日にアメリカとイスラエルによる大規模攻撃で始まったイラン戦争はアメリカ軍の武器弾薬、装備品の貯蔵(stockpiles)に大きな影響を与えている。これらの戦争を支援し、攻撃を実行し、また、相手の攻撃を防ぐために、武器が次々と使われている。それにかかる予算は莫大なものとであるが、それ以上に、武器弾薬、装備品の貯蔵が減少している。これはアメリカの防衛計画にも影響を与えるほどのレヴェルになっている。


 なんでもそうだが、武器や弾薬を製造するということはその設備投資や人員確保に時間がかかる。また、おいそれと投資をして生産量を増やすということも難しい。設備投資や雇用を行い、増産を始めるとなった段階で、停戦となって「武器がいらなくなりましたので増産は必要ありません」となると請け負った民間企業は大きな赤字を抱えることになる。そのようなことがないように調整をしなくてはならない。太平洋戦争において、日本の軍部は当時の財閥系の重工業企業に対して、増産を要請した。特にミッドウェイ海戦での敗北は生産拡大が急務となった。しかし、当時の財閥系企業の幹部たちは、「報道によれば、日本軍は連戦連勝、この勢いでいけば時期に戦争は日本の勝ちで終わるでしょう。そうなったら武器はいらなくなります。今から増産を準備していざ始めるとなった時に戦争に勝ったらむだになりますから」と増産に消極的だった。日本軍部は「報道での連戦連勝は嘘だ」と言えずに苦労したという話も残っている。経営者はやはり投資に慎重になる。これは現代でも同じだ。

 ドナルド・トランプ大統領は強気で、何度もイランに大規模な攻撃を行うと警告しているが、実際にどんどんと武器を使用してしまうと、アメリカ軍の手持ちがなくなって厳しい状況になる。そもそもが既存の軍需産業に対して、「あいつらはミサイル一発で大儲けする、自分は彼らを儲けさせる気はない」と訴えて選挙に当選しておきながらのこの状態である。ある意味では自業自得である。アメリカにとっても一日も早い停戦こそが望ましいが、イラン側、そして世界中に見透かされている。アメリカが望む形での停戦は厳しいだろう。戦争は始めるよりも終わらせることの方がはるかに難しい。勇ましいことをいくら言っても駄目だ。私たちはそのことを学ばねばならない。

(貼り付けはじめ)

イランとの紛争の完全な終結が見通せない中でアメリカの兵器備蓄は減少の一途をたどっている(US weapons stockpiles continue to dwindle with permanent end to Iran war nowhere in sight

デイヴィス・ウィンキー、ザッカリー・コーエン筆

CNN

2026年7月29日

https://edition.cnn.com/2026/07/29/politics/us-weapons-stockpiles-dwindle-iran-war

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韓国・平沢(ピョンテク)のアメリカ軍基地に配備されたアメリカ軍のパトリオット・ミサイル防衛システム(2026年3月10日)

米国防総省の最新データや外部アナリストによる新たな報告書に詳しい3人の情報筋によると、ここ数週間でイランとの紛争が激化したことを受け、アメリカ軍の兵器備蓄(重要な防空ミサイルを含む)は依然として著しく枯渇した状態にある。

紛争を終結させるための実質的な解決策は見通しが立っておらず、こうしたミサイルの不足は、他の戦域におけるアメリカ軍の対応能力に影響を及ぼす可能性がある。

シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の複数の研究員は月曜日に発表した報告書の中で、アメリカ軍の備蓄に残る「パトリオット」迎撃ミサイルは827発未満、「THAAD(サード、高高度防衛ミサイル)」弾道ミサイル迎撃ミサイルは278発未満であると推定した。アメリカ軍の備蓄状況について語るために匿名を条件とした前述の3人の情報筋は、CNNに対し、CSISの推定値は政府内部の数値に近いものであると述べている。

これらの数字は、戦前の備蓄が大幅に減少していることを示している。CSIS(戦略国際問題研究所)の推定によれば、戦前の備蓄量は「パトリオット」ミサイル(このシステムの最新鋭2タイプ)が約2200発、THAADミサイルが452発だった。これらは飛来する敵の弾道ミサイルを迎撃するためのアメリカ軍の主要な迎撃手段であり、迎撃ミサイルは1発あたり数百万ドルの費用がかかる。

CSIS報告書の執筆者たちは次のように書いている。「備蓄の減少により、アメリカと同盟諸国は迎撃において、より大きなリスクを負わざるを得なくなる可能性がある。弾道ミサイル防衛において、パトリオットやTHAADに代わる有効な手段は存在しない。こうした脅威を迎撃可能な『スタンダード』ミサイル(Standard Missiles)を搭載した海軍艦艇は、通常、現場から遠く離れた場所に位置しているからだ」。

ドナルド・トランプ米大統領は月曜日、エアフォース・ワン(大統領専用機)の機内で弾薬の備蓄について問われた際、「より高度な装備(the more sophisticated stuff)」を補充したいとの意向を示しつつも、現在の在庫状況は「非常に良好である」と主張した。一方、統合参謀本部議長ダン・ケイン大将は先週、連邦上院議員たちに対し、要請している追加予算がなければ国防総省は必要な「弾薬を確保できない(not get the munitions)」と述べた。

CNNの以前の報道によると、ケイン大将は金曜日にトランプ大統領と会談した際、弾薬備蓄の減少について言及した。この会談は、大統領が紛争の大規模な激化を検討していた際に行われた。紛争拡大に伴うさらなるリスクについてケイン大将などから説明を受けたトランプ大統領は、会談後にイランへの攻撃を一時停止すると発表した。しかし、その停止措置は短期間で終わった可能性がある。火曜日、アメリカ軍とサウジアラビア軍はイラク国内のイランの代理勢力に対して共同攻撃を実施した。また、アメリカ軍は、中東地域のアメリカ軍部隊に対するイランからの「奇襲攻撃(surprise attack)」を迎撃したと発表した。

この報告書の筆頭執筆者であるCSISの防衛アナリストであるマーク・キャンシアン(元海兵隊大佐)は今月初め、CNNに対し、イランとの戦闘が続けば備蓄が極度に枯渇し、中国や北朝鮮との戦闘能力にまで影響が及ぶ恐れがあると語った。

NBCニューズは、迎撃ミサイルを無駄にしたくないという判断から、アメリカ軍の指揮官たちが、中東地域のアメリカ軍基地内の無人エリアに着弾する軌道にあるイランの飛翔体については、あえて迎撃しない選択をしていると報じた。今回報告された戦術は、中東地域における従来の防空・ミサイル防衛の運用からの変化を示すものだ。これまでの運用例としては、2025年6月、カタールのアル・ウデイド空軍基地(当時、人員の大部分は退避済み)において、アメリカ軍が運用するパトリオット部隊がイランによる弾道ミサイルの波状攻撃を迎撃・防御した事例が挙げられる。

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カタールのアル・ウデイド基地をミサイルで標的にしたとイラン軍が発表した後で迎撃が行われた(2025年6月23日)

国防総省はここ数カ月、迎撃ミサイルの増産に向けた取り組みを加速させており、今週も「パトリオット」や「THAAD(サード)」のロケットモーター製造を拡大する2件の契約を締結した。しかし、広報担当者は、この増産がいつ具体的な成果につながるかという質問への回答を避けた。

アナリストたちは、パトリオット・ミサイルのような高性能兵器の在庫を完全に補充するには、その製造にかかるリードタイム(準備・製造期間)を考慮すると、数年を要する可能性があると指摘している。

国防総省のショーン・パーネル報道官は、4月以降CNNに送付された同件に関する2つの声明と同一の内容を7月28日に発表し次のように述べた。「アメリカ軍は世界最強であり、大統領が選択した時と場所で任務を遂行するために必要なあらゆる能力を備えている。私たちは、国民と国益を守るための強固な能力を維持しつつ、各統合軍(コンバタント・コマンド)を通じて数多くの作戦を成功させてきた」。

トランプ大統領とピート・ヘグセス国防長官は、弾薬不足の主な原因はジョー・バイデン前政権にあると主張している。しかし、この問題はイランとの紛争によってさらに深刻化した。戦略国際問題研究所(CSIS)の分析によると、この紛争の間にアメリカ軍は主要な迎撃ミサイルであるパトリオットとTHAADの在庫の60%以上を使用した。

国防総省が求めている追加の防衛予算案には、在庫に関連するいくつかの条項が含まれている。ヘグセス長官は先週、追加予算に関する連邦上院歳出委員会の公聴会で、バイデン政権について次のように主張した。「バイデン政権は弾薬を(在庫から)そのままウクライナへ送った一方で、その補充には、あまりに遅く、即時の補充ができない官僚的なプロセスを使い続けようとした」。

しかし、民主、共和両党の議員たちは、この不足問題は特定の政権の責任にとどまるものではなく、解決には超党派の協力が必要だと主張している。

「弾薬不足の問題は、以前からこの委員会に周知されていた」とメイン州選出の共和党所属スーザン・コリンズ連邦上院議員は先週火曜日の歳出委員会公聴会で述べた。「この弾薬不足(munitions shortfalls)は長年にわたって蓄積されてきた問題だが、今やその緊急性はますます高まっている」。

CNNのケヴィン・リプタク、ジム・スキットはこの記事の作成に貢献した。

CNNにおけるデイヴィス・ウィンキーの活動は、アウトライダー財団とジャーナリズム・ファウンディング・パートナーズ(JFP)の提携により支援されている。報道に関する編集上の決定権は全面的にCNNが保持している。

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●「イラン、米軍が攻撃停止なら報復停止 米は弾薬枯渇懸念か」

Parisa Hafezi, Phil Stewart, Raphael Satter

2026727日午前 7:09 GMT+92026727日更新

https://jp.reuters.com/world/ukraine/HOUKMG7VPJJIPPWDAYVYGWOAHY-2026-07-26/

[ドバイ/ワシントン 26日 ロイター] - イラン高官は26日、米国の攻撃停止が続く間はイランも攻撃を控えるとロイターに述べた。トランプ米大統領は側近から、標的が尽きつつあるほか、米軍の兵器備蓄が枯渇する恐れがあるとの懸念を伝えられ、作戦の一時停止を決定した。

米軍は24日、前日まで13日連続で実施していたイランへの空爆を見送り、25日と26日も米軍の攻撃は報告されていない。米国の攻撃が行われるたびに近隣の米軍基地受け入れ国に報復攻撃を実施してきたイランも、今のところ2日間にわたり攻撃を控えている。

イラン高官は匿名を条件に、同国の立場は「『攻撃には攻撃で応じる』ということに変わりはない。攻撃が止まれば、イランも作戦を停止する。このメッセージはすでに米国に伝えられている」と述べた。

ウォルツ米国連大使は、FOXニュースなど米メディアに対し、トランプ氏が外交により多くの時間を与えるために攻撃の一時停止を決定したとし、「大統領は交渉に一定の余地を与えている」と述べた。

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匿名を条件に語ったある米当局者によると、米軍当局者はここ数日、ホルムズ海峡の船舶に対するイランの脅威を抑止するため過去2週間実施してきた空爆により、事前に選定していた標的がおおむね尽きたと警告していた。

また、大規模な戦闘作戦の再開は依然として選択肢の一つだが、ケイン統合参謀本部議長はトランプ氏に対し、弾薬の備蓄に悪影響を与えることを踏まえるとリスクを伴うと非公式に警告したという。同当局者は、これには中東で米国の防空システムに使われる迎撃ミサイルも含まれると述べた。

ウォルツ氏はNBCの番組で、米軍は「必要なものを全て備えている」と述べる一方、ヘグセス国防長官がトランプ政権下で就任した際には「枯渇した状況を引き継いだ」とも語った。

イラン高官は、トランプ氏の攻撃停止決定が米国の交渉姿勢の大きな転換を意味するとの期待はあまり抱いていないと述べた。

「攻撃停止については楽観よりも懐疑の見方が強い。今回の停止は本心からではなく戦術的なものであるとの見方が支配的だ。イランは米国の欺瞞(ぎまん)と見なす行為について十分に苦い経験を積み重ねてきた」と語った。

複数のメディアによると、トランプ氏の攻撃停止決定は24日に開かれた会議を受けたもので、その席上、ケイン氏や他の軍事・政治顧問らが懸念を示したという。

CNNはバンス副大統領が難色を示したと報じた。アクシオスによると、中央軍のクーパー司令官は空爆作戦が効果の限界に達したとして、作戦停止を進言した。

(貼り付け終わり)

(終わり)



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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 イラン戦争については、2026年6月19日に停戦に関する覚書に署名がなされて、一応停戦することになった。60日間の間にイランの核開発をめぐる交渉を行い、最終的な和平合意に向けて進むことになっていた。これは、戦争の終結を意味していない。あくまで一時的な停戦、休戦(truce)でしかない。実際に、覚書の照明が実施された後も、アメリカとイラン双方による攻撃が続いている。さらに、ペルシア湾のチョークポイントであるホルムズ海峡の封鎖に関する状況も不透明となっている。加えて、迂回航路となっている紅海のバブ・エル・マンデブ海峡(Bab al-Mandab Strait)で、イエメンの親イラン勢力フーシ派によるサウジアラビアのタンカー攻撃が発生した。フーシ派による紅海封鎖ということになり、世界経済への影響もさらに深刻化する。繰り返しになるが、イラン戦争はまだ終わっていない。

 覚書の内容を見れば、アメリカの大幅な譲歩(concession)である。大規模な攻撃直後に、アメリカのドナルド・トランプ大統領もイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が主張した、イラン国内の体制転換(regime change)を達成することができず、イランの反撃能力を排除することもできず、イランによるホルムズ海峡封鎖を引き起こし、世界経済への悪影響を生み出すことになってしまった。イラン戦争は失敗である。核兵器開発を止めた、止めたと宣伝しているが、攻撃前にイランが核兵器を開発したということはなく、核兵器開発に関しては交渉で止めることは可能であった。イラン戦争の意味はなく、かえって、アメリカとイスラエルにとっては「敗北」に近いものとなった。

アメリカの交渉担当は、トランプ大統領の古くからの盟友でビジネス経験豊富のスティーヴ・ウィトコフとトランプの娘婿ジャレッド・クシュナーである。彼らは「金銭と引き換えに交渉を進める(pay to play)」というビジネス的な手法を用い、イランに対し「ウラン濃縮停止や革命の輸出停止と引き換えに、3000億ドル規模の民間投資や近代化」を提示している。カタールの特使アル・サワディが交渉のキーマンとなり、交渉の仲介し、ペルシア以来の「時間をかけて相手を消耗させる交渉術」やイランの複雑な官僚機構・内部事情を深く理解しながら調整を行っているということだ。イラン国内では、現実的な最終合意を目指す勢力(ガリバフ国会議長など)と革命路線を維持しようとする強硬派との間で権力闘争が激化している。

 イランが近代的な中央集権的な国家体制ではないところが交渉において難しいポイントになる。そうした中で、何とか戦争の「出口(exit)」を見つけることが必要だ。イラン戦争だけではないが、どの戦争でもそうだが、戦争は終わることが何よりも難しいということになる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ政権はいかにしてイランからの出口を構築したか(How the Trump Administration Built Its Exit Ramp in Iran

-紆余曲折を経た交渉(zigzag bargaining)が投資家への売り込み(an investor pitch)を脆弱な和平合意(a fragile peace deal)へと変化させた。

デイヴィッド・イグナティウス筆

2026年6月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/16/trump-iran-cease-fire-deal-nuclear-program-negotiation-hormuz/

アメリカとアラブ諸国の交渉担当者たちが、過去5カ月にわたるイランとの長きにわたる紆余曲折の交渉の内幕を語るのを聞いていると、日曜日に発表された枠組みは、この物語の終着点ではなく、中間段階に過ぎないという印象を受ける。それは、最終的には惨憺たる失敗に終わる可能性もあれば、トランプ政権が期待するように、近代イランへの劇的な変革の始まりとなる可能性もある。

率直に言って、外交的に言えば、この合意は、多大な犠牲を伴い、国民の支持も得られなかった戦争からの出口(an exit ramp)であり、勝利のパレード(a victory parade)ではない。この合意は、ドナルド・トランプ大統領が当初語っていた政権交代(regime change)や無条件降伏(unconditional surrender)には足りない。トランプ大統領の側近の一人でさえ、「現時点では結論は出ていない。大成功とも失敗とも言えない」と認めている。

答えよりも疑問点の方が多い。テヘランの核開発計画を制限する具体的な内容はまだ交渉されていない。ホルムズ海峡は再開されつつあるが、それは一時的なものに過ぎないかもしれない。合意はレバノンに適用されるようだが、イスラエルやヒズボラがそれに従うとは限らない。そして何よりも懸念されるのは、テヘランに強硬派政権(a hard-line regime)が依然として存在し、アラブ諸国やイスラエルを脅かす力を持っていることだ。

アメリカ側の主要な交渉担当者は、トランプ大統領の特使であるジャレッド・クシュナーとスティーヴ・ウィトコフだ。それぞれ大統領の義理の息子と親友である。彼らは外交官ではなく投資家である。そのため、この交渉は特異なリスクとリターンの性質(a peculiar risk-reward character)を呈している。外交官のブリーフィングというよりは、投資家への売り込み(an investor pitch rather than a diplomat’s brief)という様子だ。「形式的な手続きを踏む(check the boxes)」のではなく、「金銭と引き換えに交渉を進める(pay to play)」というテーマが中心となっている。

交渉関係者によると、クシュナーは4月にイスラマバードでイランのモハマド・バゲル・ガリバフ国会議長と会談した際、「ロールス・ロイス並みの価格を望むなら、ロールス・ロイス並みの製品が必要だ」と率直に告げたという。つまり、イランがホルムズ海峡の開放を維持し、ウラン濃縮を20年間停止し、革命輸出を止めれば、数千億ドルもの利益を得られるということだ。

アメリカの提案は、事実上、イランの近代化に向けた3000億ドル規模の民間投資計画を通じて、イランの資本増強を図るものだ。例えば、クシュナーはイラン側に対し、イランの国営石油・ガス会社はサウジアラムコよりも規模が大きくなる可能性があるが、それはイランが革命活動を停止した場合に限られると伝えたと関係者は述べている。安定と法の支配(stability and rule of law)がなければ、イランは脆弱なままであり、これらの変化が実現すれば、戦後復興の好景気を享受できるだろう。

ここで、適切な懐疑心を持つべきだろう。イランの指導者たちは、最も強力な強硬派だ。彼らはイスラエルの爆撃や暗殺未遂を生き延びてきた。多くは敬虔な宗教信者であり、西側諸国とその価値観を軽蔑している。彼らの気質は、ウーバーCEOのダラ・ホスロシャヒのような亡命イラン人実業家よりも、北朝鮮の金正恩に近い。彼らが関心を持っているのは、レバレッジド・バイアウトではなく、復讐なのだ。

しかし、クシュナーとウィトコフは、カタールのムハンマド・ビン・アブドゥルラフマン・アル・サーニ首相の戦略問題担当相アリ・アル・サワディという並外れた仲介者を通して交渉を進めてきた。アル・サワディは、中東地域とその文化に対する稀有な理解をもたらしている。ある情報筋によると、彼は和平枠組みを固めるために、過去10日間で4回もテヘランを訪問している。アル・サワディは一般にはほとんど知られていない人物だが、ガザ和平交渉、ヴェネズエラ問題、そしてトランプ政権のその他6つのプロジェクトにおいて重要な特使を務めた。また、ジョー・バイデン政権との調停活動にも携わった。

「私たちが心に留めておくべき最も重要なメッセージは、イランは過去47年間、世界から孤立してきた国であり、国民は文字通り自分たちのコミュニティ以外とは一切コミュニケーションを取っていないということ」と調停ティームに近い関係者は説明した。「私たちは彼らに、世界はもっと広く、彼らもそこで受け入れられる可能性があることを示さなければならない」。

アメリカ人はイランを最高指導者の決定が絶対的な神権政治国家だと想像している。しかし、中東地域の人々は、イランを幾重にも重なる官僚機構を持つ、極めてゆっくりとした動きをする制度国家(an institutional country with layers of bureaucracy that move agonizingly slowly)だと認識している。支配組織であるイスラム革命防衛隊でさえ、派閥や個性的な人物が入り乱れる多層構造になっている。こうした文化を理解しているカタール、そしてサウジアラビアやアラブ首長国連邦からの特使たちは、巧みに交渉を進めてきた。

トランプ大統領のようなアメリカ人は迅速な結果を求めているが、アル・サワディはそのプロセスを遅らせることに成功している。調停ティームに近い関係者はこう説明する。「忍耐(patience)はペルシア人のDNAに組み込まれている。彼らと接する際には忍耐が必要だ。なぜなら、それが彼らの秘密兵器(secret weapon)だからだ。彼らは相手を苛立たせて追い詰め、消耗させてから、最大限の成果を引き出すことができるのだ」。アル・サワディが日曜日にテヘランで行った最後の交渉は17時間に及んだ。

クシュナーとウィトコフにとって、この交渉は数カ月前から始まっていた。2月26日、イランのアッバス・アラグチ外相との会談で合意に近づいた。イランは枠組み合意案を提示したが、「網に8つの穴が開いていて、そのうち5つを塞ごうとしているようなものだった」と交渉関係者は振り返る。

アメリカ側は、交渉が「時間切れになる可能性がある」と警告した。その2日後、イスラエルが戦争を開始し、アメリカも参戦した。イラン当局者によると、戦争が始まった当時、イランはミサイル生産を増強しており、月に最大100発のミサイルを製造し、2025年6月の「ミッドナイト・ハンマー」作戦で破壊されたものを「急速に再建」していたという。

戦争は政権の結束を強めた。しかし、イスラマバードでの停戦合意後、最終合意を目指すイラン指導者と、革命路線を維持しようとする指導者の間で亀裂が生じ始めた。

ガリバフはイスラマバードでの21時間に及ぶ交渉において、理性的で分別のある人物であることを示し、アメリカ側に好印象を与えた。しかし、テヘランに戻った後、武装勢力に襲撃され、一時的に政界から遠ざけられた。イスラマバード後の指導権争いは「まるでジャンプボールのようだった」と交渉関係者は語る。

この関係者は、「私たちは、イランの政権内部に緊張を生み出すような状況を作り出した」と説明する。ガリバフとその支持者たちは現在、主導権を握っているように見える。彼は金曜日にジュネーブで枠組み合意に署名する予定だが、政権内部の権力闘争は今後も続く可能性が高い。

ホルムズ海峡という重要な問題について、アメリカ政府当局者は、イランの国家安全保障会議議長を務め、戦争初期にイスラエル軍の爆撃で殺害されたアリ・ラリジャニの発言を回想した。「彼は、西側諸国の反応を考えると、海峡を封鎖することは一度しか使えない切り札だと述べた(He said closing the strait was a card they could only play once)」とこの当局者は語った。その評価は正しかったと当局者は述べた。戦後の変化により、海峡の防衛が強化され、石油を海上タンカーではなく陸上のパイプラインで輸出する代替ルートが確保されるだろう。

アメリカ政府当局者によると、ここ数週間であまり注目されていない進展の1つは、「プロジェクト・フリーダム」として知られるタンカー護衛計画がひっそりと継続されていることだという。この計画はサウジアラビアの反対を受けて5月に正式に棚上げされていた。当局者によれば、限定的な形で継続されており、湾岸地域を経由して1日700万バレルの原油輸出が認められている。

交渉関係者によると、アメリカの交渉担当者は、イランが和平合意後に経済投資と近代化の機会を捉えることを期待しているが、同時にそれは賭けであるとも認識している。「彼らが政治的な駆け引きをうまくこなし、実際にそれを実行できるかどうかは、時間が経てば分かるだろう。今後数カ月で明らかになるだろう。・・・私たちは可能な限り最も変革的な選択肢を目指している」と当局者は述べた。

私がこの地域を取材して見てきたが、中東における数々の壮大な計画が失敗に終わるのを見てきた者であれば、この壮大な変革構想が成功するかどうか疑問に思わざるを得ないだろう。しかし、イランの運命を革命から責任ある近代国家(a responsible modern state)へと転換させることこそが最大の課題であり、政権交代の失敗を鑑みると、トランプ政権が提案している案以上に良い道筋は見当たらないというのが率直な見解だ。

イラン和平交渉の中心人物であるこの高官は、交渉担当者としての自身の見解を要約するよう求められ、トランプとその和平案に対する評価に関わらず、おそらく全ての関係者が共有するであろう見解を述べた。「私が得た最大の教訓は・・・戦争を始めるのは非常に簡単だが、そこから抜け出すのは非常に難しいということだ(My biggest lesson … is it’s very easy to start a war and it’s really hard to get out)」。

※デイヴィッド・イグナティウス:『ワシントン・ポスト』紙コラムニスト。彼の記事は頻繁に『フォーリン・ポリシー』誌に転載される。

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 古村治彦です。

 アメリカはイスラエルを建国以来支援してきた。最近で言えば、毎年38億ドル(約6100億円)の軍事支援を行い、2024年には臨時として約140億ドル(約2兆2500億円)の軍事支援を行った。イスラエルは核不拡散体制から離脱し、1960年代から核兵器開発を行ってきた。アメリカは核兵器開発に関して、イラクやイランに対して厳しい姿勢を取ってきたが、イスラエルに関しては「見て見ぬふり(turning a blind eye)」をしてきた。また、国連安全保障会議の場で、イスラエルの立場を擁護し続けてきた。アメリカはイスラエルを「育て、甘やかしてきた」ということになる。それは、アメリカ国内の「イスラエル・ロビー(Israel Lobby)」の存在がある。アメリカ国内の親イスラエルのロビー団体が政治資金や投票行動を通じて、アメリカの政治家たちをコントロールしようとしてきた。

 しかし、2022年のイスラエルとハマスの紛争から今年のイラン戦争において、アメリカ国内におけるイスラエル支持が低下している。イラン戦争に関しては、アメリカのドナルド・トランプ大統領を「説得(コントロール)」し、イラン攻撃を実施させたということで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対する批判の声が大きくなっている。アメリカを泥沼に引き込むということになったからだ。アメリカ国内でのイスラエル支持が低下するとなれば、当然のことだが、アメリカのイスラエルに対する支援も低下することになる。若い人々のイスラエル支持が大きく低下しているとなれば、その流れは止まることはないだろう。

 そうした中で、イスラエルとしては軍事的な「自立」をしなくはならないということになるが、イスラエルの専門家たちは楽観的な考えを持っているようだ。アメリカ製の武器ではなくてもどこからでも購入できると考えているようだ。軍事企業がイスラエルに対して、自由市場で兵器を売却するというのは簡単にできそうであるが、それぞれの軍事企業の最大のお得意さんは各国政府であり、各国政府の意向が大きく影響することになる。イスラエルへの兵器売却の制限ということも考えられる。多くの場合、軍事企業は欧米各国に本社を置く。これらの政府が圧力をかけることになれば、イスラエルへの兵器売却も制限されることになるだろう。「防衛用」という名目でということになり、攻撃力の高い武器を売却するということは考えられるが、思うほどにイスラエルの思い通りにはならないだろう。

 イスラエルがアメリカからの支援を受けられないということになれば、やはり大きな痛手である。イスラエル寄りのアメリカが望む方針は国際社会に受け入れられる最低ラインとなる。それを嫌がって「自立」をしても国際的な孤立の途を進むだけだ。「中東に存在する明るい北朝鮮」ということになる。

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イスラエルが自身で采配を振るうことを維持する計画を持っている(Israel Has a Plan to Keep Calling Its Own Shots

-イスラエルは自国の政策をトランプの中東政策に合わせるよう求めるトランプの要求に抵抗している。

アンチャル・ヴォーラ筆

2026年6月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/16/israel-netanyahu-trump-iran-deal-war-lebanon-deal-shots/

ドナルド・トランプ米大統領やアメリカ国民の対イスラエル感情が悪化する中、イスラエルはアメリカとの安全保障関係をそうした動向から切り離し、守ろうとする計画を立てている。イスラエルは、最も重要な同盟国であるアメリカへの圧倒的な依存を痛感している。アメリカは何十年にもわたり、戦場への最新鋭軍事装備の提供や国連での外交的擁護を通じて、イスラエルを支え続けてきたからだ。

しかし、だからといってイスラエルが戦略的自律性(strategic autonomy)を失ったり、この重要な関係の運営を誤った首相の責任を問うことを控えたりしたい訳ではない。

トランプ米大統領がイランとの合意を発表した際、イスラエルが脇にどかされていたことは明らかだった。ベンヤミン・ネタニヤフ首相でさえ、詳細を全て把握している訳ではないと認めたほどだ。

トランプ大統領は、イスラエルがイランとの合意条件に同意したと述べているが、つい最近には『フィナンシャル・タイムズ』紙に対し、この件に関してイスラエル首相には「選択の余地はない」とも語っていた。「私が采配を振るう。全て私が決める(I call the shots. I call all the shots)」とトランプは言明したのだ。

ネタニヤフ首相は、トランプをなだめつつ独自の意思決定権を維持し、さらに選挙の年に指導力を発揮するという、綱渡り(a tightrope walk)のような状況を強いられている。「私たちは互いを知り尽くしたパートナーとしての関係にある」とネタニヤフ首相は月曜日に記者団に語った。「多くの場合は意見が一致するが、一致しないこともある。それはどんなに仲の良い家族にだって起こりうることだ」。

ネタニヤフ首相は両国関係の緊張を軽視する姿勢を見せたが、イスラエル国内の報道からは、特にイランが求めた「イスラエルによるレバノンへの攻撃停止」という条件に対する不満がうかがえる。イスラエルはレバノン問題を別の次元の問題と捉えており、ヒズボラの武装解除に関しては自由な裁量を求めているからだ。実際、アメリカとイランが合意を発表する数時間前の日曜日には、イスラエルはベイルートを爆撃している。

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は次のように述べた。「私たちは、イランによる核兵器の保有を阻止するために独自に行動する能力を持つことになる。イスラエルは、レバノン、シリア、ガザ地区における安全保障上の領域から撤退することはない」。

先週、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、攻撃を控えるよう命じたトランプの警告を無視し、イランへの攻撃に踏み切ることでアメリカに逆らった。

『フォーリン・ポリシー』誌の取材に応じたイスラエルの戦略家たちは、ベイルートにあるヒズボラの拠点を攻撃した後にイランから攻撃を受けた際、イスラエルがそれに応じなければ、テヘラン(イラン政府)にレバノンへのイスラエルの攻撃を「イスラエルを攻撃するための挑発」と位置づけさせ、危険な前例を作らせることになっただろうと語った。また、それはイスラエルの政策を、将来のイランとアメリカの関係に従属する(subordinate)ものとして映し出すことにもなりかねなかった。

今のところ、イスラエルはトランプの怒りを回避できたようだ。トランプは緊張を緩和させ、BBCに対し、ネタニヤフがイランへの攻撃を行ったのは自分に逆らったからではなく、ミサイルが「すでに発射されていたからだ」と語った。しかし、敵対的な勢力に囲まれていると考える国にとって、それだけでは十分な保証とは言えない。

イスラエルはアメリカのどの政権をも刺激しないよう努める一方で、アメリカの軍事装備品の調達において「トランプの気まぐれ」を回避する必要性を痛感している。また、アメリカで高まる反イスラエル感情から両国の関係を守るための新たな指針も採用しつつある。

イスラエルは、外交的・経済的な支援に加え、多岐にわたる兵器システムをアメリカに依存している。もしネタニヤフがアメリカ・イラン間の合意を危うくしていると見なされれば、トランプはその気になればイスラエルの足元をすくい、敵対的な地域の中で孤立無援の状態に追い込むことも可能だ。

イスラエルの戦闘機部隊は、F-35、F-15、F-16といったステルス攻撃機や戦闘機をはじめ、その大部分がアメリカ製である。「こう言えば分かりやすいだろう。アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃において、IDF(イスラエル国防軍)が飛ばした航空機はすべてアメリカ製だった」。ネタニヤフ首相の元国家安全保障顧問であり、現在はワシントンDCを拠点とするイスラエルのシンクタンク「イェルサレム戦略安全保障研究所(Jerusalem Institute for Strategy and SecurityJISS)」の研究員を務めるヤアコフ・アミドロールは、電話取材に対しこのように語った。イスラエルは、アパッチ、ブラックホーク、シースタリオンといった攻撃・輸送ヘリコプターや、155mm砲弾、120mm迫撃砲弾、戦車砲弾、精密誘導爆弾などの弾薬について、アメリカに大きく依存している。

また、イスラエルとアメリカは、「アイアン・ドーム(Iron Dome)」、「ダヴィデの投石(David’s Sling)」、「ジ・アロー(the Arrow)」といった高度なミサイル防衛システムを共同開発してきた。これらは敵の攻撃からイスラエルの都市や国民を守り、人的被害を最小限に抑えるものだ。こうしたシステムのおかげで、イスラエルは自国の被害を比較的低く抑えつつ、強力な力で敵を攻撃することが可能になっている。

アメリカの法律では、中東諸国に提供されるいかなる兵器も、イスラエルの「質的軍事優位性(qualitative military edgeQME)」すなわち軍事的な優位性を損なうものであってはならないと定められており、アメリカ政府は最先端の軍事装備をイスラエルに優先的に提供しなければならない。さらにアメリカは、情報共有を行うほか、国連決議に対して外交的にイスラエルを度々擁護し、ヨーロッパのパートナー諸国の政策をイスラエルに有利な方向へ導き、数千億ドル規模の経済支援も行ってきた。

もしトランプが、イラン核合意やレバノン政策をめぐってイスラエルがアメリカの方針に反していると判断すれば、兵器の供給を停止する可能性もゼロではない。兵器売却の停止は「いわば『核の選択肢』(極めて強硬な最終手段)だ」とトランプ政権第1期に国務次官補(近東地域担当)を務め、現在はワシントン近東政策研究所の上級研究員であるデイヴィッド・シェンカーはアメリカ公共ラジオ(NPR)に語っている。

イスラエルで高い人気を誇ってきたトランプがそこまで極端な措置に出る可能性は低いだろう。考えられる選択肢としては、兵器供給の遅延、情報共有の縮小、あるいは国連での支持撤回を示唆することなどが挙げられる。

イスラエルは、トランプの突発的な言動よりも、アメリカ国内世論によるイスラエル支持の低下こそが、アメリカとの関係にとってより大きな脅威であると捉えている。ピュー・リサーチ・センターが3月に行った世論調査によると、アメリカの成人の実に60%がイスラエルに対して否定的な見方を持っている。

イスラエルに対する支持の低下には、タッカー・カールソンのような保守派の論客たちが拍車をかけている。彼らは、ガザ地区におけるイスラエルの行動や、イスラエルに対するアメリカの軍事支援の根拠について公然と疑問を呈している。こうした状況下で、イスラエルはアメリカ人の支持を失いつつあり、軍事協力体制に深刻な支障が生じることを懸念している。

イスラエルは物資の供給減に備え始め、大型爆弾の独自開発・製造、弾薬の増産、そして装甲車両の追加調達を計画している。

アミドロールは、「弾薬や兵器システムの予備部品の自国生産、さらには情報収集能力の強化など、あらゆる面で自立性を高めたいと考えている」と述べた。一方で、アミドロールはイスラエルが抱える限界も認めている。

「私たちがアパッチ(攻撃ヘリ)やF-35、F-15といった機体を製造することはない。こうした主要なシステムについては、何らかの形で今後もアメリカから購入し続けるだろう」とアミドロールは語った。もしトランプや他のアメリカの指導者によってそれが不可能になった場合には、「自由市場に戻って、売ってくれる相手から調達するだけのことだ」と付け加えた。

アミドロールはさらに続けて次のように述べた。「1960年代初頭まで、私たちはアメリカの兵器を持っていなかった。1967年の戦争では、ベルギー製の小銃を使って戦ったし、運用していた航空機はフランス製だった。1948年の独立戦争の際も、アメリカからの購入が禁じられていたため、チェコスロバキアから兵器を調達した」。

イスラエルの戦略家たちは、アメリカの財政支援の受け取りを停止することが、軍事協力関係を維持する道になり得ると考えている。

アメリカは2018年から2028年にかけて、イスラエルに380億ドルの軍事支援を行うことで合意している。しかし最近、ネタニヤフ首相は、この支援をゼロにする意向を表明した。これは、イスラエルを強大な軍事力と富を持つ国と見なし、アメリカの支援は不要だと考えるアメリカ国内の人々の懸念を和らげるための動きだ。

「アメリカでは、他国の防衛費を負担することに反対する声が高まっている。そこで私たちが提案するのは、アメリカの直接的な支援に代えて、双方が資金を出し合って義塾確信や高度なシステムを共同開発・製造する合弁事業を進める方が賢明だと考えている」とアミドロールは述べた。

イスラエルは、援助に依存した防衛の枠組みを、両国が知識を共有し技術を大規模に交換する共同生産体制へと転換しようとしている。これにより、両国の防衛当局間の結びつきを強固にし、より大きな相互の利害関係と軍事協力体制を構築することを目指しているのだ。そうすることで、アメリカの政治家の気まぐれや、アメリカ国内世論の変動といった不確実な要素から、イスラエルの安全保障を切り離そうとしているのである。

元情報機関大佐であり、イスラエル国家安全保障会議の元副代表、現在はイェルサレム戦略安全保障研究所(JISS)の副所長を務めるエラン・レルマンは電話取材に対して次のように語った。「未来は『施し(handouts)』にあるのではない。私たちは真剣なパートナーとなり得る立場にあり、おこぼれ(scraps)など必要としていない」。

「私たちは、アメリカとの関係を真のパートナーシップへと変えるべく、専門家たち―すなわち(政権交代に左右されない)恒久的な実務機構―に働きかけている」とレルマンは述べた。

アンチャル・ヴォーラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニストであり、ヨーロッパ、中東地域、南アジア情勢について執筆している。これまでに『タイムズ・オブ・ロンドン』紙で中東情勢を取材したほか、アルジャジーラ・イングリッシュやドイチェ・ヴェレ(DW)でテレビ特派員も務めた。以前はベイルートやデリーを拠点とし、20カ国以上で紛争や政治に関する報道を行ってきた。Xアカウント:@anchalvohra

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(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 「イラン戦争において勝者はいない」という主張が出てきている。それはその通りだ。攻撃を仕掛けたアメリカとイスラエルは戦争の目的を達成しておらず、それどころか、イランから厳しい反撃に遭い、ホルムズ海峡封鎖をされて、世界経済に大きなダメージを与えている。60日間の停戦合意の覚書が交わされた後もアメリカとイラン双方の攻撃は続いている。戦争は終わっていない。「イラン戦争に勝者はいない」となっているが、戦争を継続することを望んでいたイスラエルは覚書が無効化される方向に動いていることもあり、「勝者」と言うことができる。その代償として、イスラエルに対しての世界各国からの批判の声は大きくなるということはあるが、そんなことよりも自分たち(と言うよりもベンヤミン・ネタニヤフ首相)の利益ということであり、状況はイスラエルの望む方向に進んでいる。

 アメリカは「戦闘では勝ちながら、戦争では負ける」という状況であり、軍事力の強さを見せつけてはいる。しかし、戦争自体は自分たちの望むような形で臨む時期に終わらせることができていない。そして、そのような姿を世界中に見せてしまっている。特に中国とロシアが注目し、戦争のデータを集め、分析し、判断している。アメリカは簡単に攻撃をしてしまい、武器を供与していることで、データを中国やロシアに与えていることにもなる。

 さらに言えば、中東地域において、アメリカが秩序を構築し、同盟諸国を防衛するという能力を欠いているということが明らかになったことで、中東地域の不安定さを増大させてしまった。中東地域は世界にとって石油資源の重要な供給地である。中東地域の一応の安定は非常に重要であるが、それが確立できないということになれば、世界経済に大きな影響を与える。そして、アメリカとイスラエルが中東地域の安定を損なう要因となってしまったことは両国にとって大きなマイナスと言うことになる。「ならず者国家」などと言って、他国を攻めていたが、お前たちこそがそうではないかということになる。

 今回のイラン戦争には今のところ、イスラエル以外には「勝者」はいない。ここで私たちにとって重要なのは、そのような「言葉遊び」に現(うつつ)を抜かすことではない。物事の本質を見ることだ。それは、アメリカとイスラエルこそが「ならず者国家」になりさがってしまったということだ。少なくとも世界各国はイラン戦争について、アメリカとイスラエルの責任を厳しく問い、ドナルド・トランプ大統領とベンヤミン・ネタニヤフ首相の退陣を求めるという強い姿勢が必要だ。

(貼り付けはじめ)

イランとの戦争で全員が敗者になった(Everyone Lost the War With Iran

-数カ月に及ぶ争いによって明らかになったのは複数の国がコストを強いることはできても秩序を確立できる国は1つもないという事実だ。

ウィル・トッドマン筆

2026年6月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/16/iran-war-trump-gulf-china-russia-israel-ceasefire-deal/

イランとの戦争を終結させるための枠組み合意が発表されたことで、アメリカとイスラエルが敗北したということが常識になりつつある。

この視点に立てば、アメリカ軍とイスラエル軍が戦術的・作戦的に収めた成功は、より深刻な戦略的敗北を覆い隠すものに過ぎなかったと言える。両国とも、そもそも戦争を正当化するために掲げた政治的目標を達成できなかったからだ。イランの体制は存続しただけでなく、より強硬な姿勢を強め、ホルムズ海峡封鎖という新たな強力な交渉カードを手にした。アメリカは再び中東地域での多大な犠牲を伴う紛争に巻き込まれ、その結果、パートナーからの信頼を損ない、敵対勢力に対する抑止力を弱め、インド太平洋地域における即応態勢を低下させることとなった。一方、サウジアラビアやその他の湾岸アラブ諸国との関係正常化を進めようとしていたイスラエルの取り組みはさらに後退したと見られ、戦後の地域秩序においてイランの脅威を排除することにも失敗した。

しかし、アメリカとイスラエルの敗北にばかり目を向けていては、関与したほぼ全ての当事者が敗者となったという事実を見落とすことになる。結局のところ、この戦争は、主要な当事者全てにとって自分たちが望む戦略的最終状態を得ることができないという結果となった。戦争は明確な勝者や、より安定した地域秩序をもたらすことはなかった。それどころか、分断を加速させ、不安定さを増大させ、イラン、湾岸アラブ諸国、ロシア、中国を含む、関与した地域および世界の主要国全てに多大なコストを強いることとなった。この戦争は、いかなる国家も、世界的な無秩序という新たな時代を無傷で乗り切ることはできないということを示したのである。

イランは体制の崩壊を避けることができたが、その代償として将来の選択肢を狭めることになった。体制の存続と引き換えに、同盟国・友好国からの信望の低下、抑止環境の不安定化、経済の壊滅的打撃、そして国家再建への道のりの減少という代償を支払った。中国もロシアも、アメリカやイスラエルの攻撃からイランを積極的に守ろうとはしなかった。このことは、それらの関係が真の同盟関係ではなく、あくまで利害に基づく取引的な関係に過ぎないことを浮き彫りにした。戦後、イランはパートナーへの依存を強める必要に迫られるだろうが、それは以前よりも弱体化し、交渉力が低下した立場でのこととなる。

イランにとって、この戦争がもたらす経済的コストは、国家の生き残りに関わるほどになるだろう。戦争は通貨リアルの暴落を加速させ、インフレを助長し、製鉄所、造船所、電力インフラといった主要な産業基盤に打撃を与えた。紛争中に100万人以上の雇用が失われたとする現在の推計が正確であれば、この紛争はイラン・イスラム共和国の歴史において、経済を最も不安定化させた出来事の1つとなるかもしれない。戦後、イラン政権は、軍事力の再建を優先するか、それとも国民が直面する深刻な経済危機への対処を優先するかという選択を迫られることになるだろう。

イラン政権がより安全になったということでもない。戦争はイランの軍・治安エリートへの権力集中を促し、短期的には政権の支配力を強化したように見える。しかし、治安機関が支配する体制は、時間の経過とともに、国民の不満への対処、経済改革の推進、政治的な適応といった能力が低下する傾向がある。したがって、イランは戦争を経て、より「安全保障重視(securitized)」の体制となる一方で、より脆弱な国家として再出発することになるかもしれない。

また、この戦争は、アラブ湾岸諸国が最も恐れていた事態の一部を現実のものとした。湾岸諸国の指導者たちがイランとの大規模な戦争に反対したのは、事態の激化を制御できない一方で、その結果として生じる多くの代償を自らが負うことになるのを理解していた。イランによるホルムズ海峡の封鎖は、地理的条件こそが湾岸諸国の経済モデルの根幹にある根本的な脆弱性であることを露呈させた。湾岸諸国は数十年にわたり、金融、物流、観光、技術の世界的ハブとして、さらには近年では世界的なAIインフラの拠点として自国の地位を転換しようと努めてきた。しかし、戦争は、紛争地域における「安定のオアシス(an oasis of stability)」という彼らのイメージを打ち砕き、イランの攻撃に対する脆弱性が依然として残っていることを明らかにした。この戦争は、炭化水素収入への依存からの脱却と経済の多角化を加速させる必要性を再認識させた一方で、その実現に向けた彼らの構想に課題を突きつけることになった。

さらに、この紛争は湾岸諸国とアメリカの間の不信感を深める結果となった。戦争はアメリカの安全保障の傘(security umbrella)の限界を浮き彫りにし、ワシントンが自国の安全保障上の懸念を十分に優先しなかったことに対する湾岸諸国の不満を増大させた。アラブ湾岸諸国は、アメリカがイランの抑止や制裁において助けとなり得ることを以前から理解していたが、今回の戦争は、テヘランとの対立がもたらす影響から自国の経済やインフラをアメリカが守り切ることはできないという事実を浮き彫りにした。今や彼らは、自国の防衛能力への投資を進めつつ、経済多角化の計画から資源を振り向けざるを得ない状況にある。

ロシアの立場は、当初見られたよりも複雑なものとなっている。モスクワは、原油価格の一時的な上昇や限定的な制裁緩和の恩恵を受けた。しかし一方で、この戦争は中東地域におけるロシアの影響力を弱める傾向を加速させている。イランに配備されたロシア製の防空システムは、アメリカやイスラエルの攻撃に対して無力であることが露呈した。その一方で、ウクライナはこの紛争を利用し、現代戦の最前線に立つ国としての地位を誇示した。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ドローン防衛に関して湾岸の主要国やシリアと提携を結び、中東におけるロシアの戦略的地位をさらに制約することとなった。また、この戦争は、イランとアラブ湾岸諸国との関係のバランスを保つロシアの能力にも試練を突きつけた。ロシアによるイランへの支援、とりわけホルムズ海峡の再開を目指す4月7日の国連安全保障理事会決議に対して拒否権を行使した決定は、アラブ湾岸諸国の激しい怒りを招いた。さらに、モスクワが紛争の行方を左右する上で重要な役割を果たせなかったことから、ロシアの外交的影響力にも限界があることが明らかになった。したがって、ロシアが得た短期的な経済的利益の陰で、中東地域の戦略的地位は徐々に低下している。

中国が得た短期的な利益も同様に、長期的な課題を覆い隠している。中国は、この紛争においてアメリカよりも安定し、抑制的な姿勢をとっているように見せることで利益を得てきた。また、紛争によってアメリカが大量の弾薬を消費し、インド太平洋地域における即応態勢が弱まったことは、中国の相対的な地位を高める結果となった。しかし、中国は重要な痛手も被っている。この紛争は、「一帯一路」構想(Belt and Road Initiative)の一環として中国がイランに行ってきた数十億ドル規模の投資を危うくした。また、アラブ湾岸諸国との関係にも緊張をもたらした。中国はイランを説得してホルムズ海峡を再開させることはできず、それどころかロシアと共にホルムズ海峡に関する国連安保理決議に拒否権を行使した。このことは、テヘランに対する中国の影響力の限界を露呈させ、アラブ湾岸諸国の指導者たちの怒りを買った。彼らは、中国が自国の経済的利益や投資を守る意思も能力もなく、また広範な地域の経済的安定を維持するための行動もとらないと感じたからである。

より広い視点で見れば、この戦争は中国の将来の経済的利益を脅かすものである。中国は、既存の秩序の一部を修正しようと試みてきたとはいえ、世界経済システムの相対的な予測可能性から最大の恩恵を受けてきた国の1つである。今回の戦争は、そうした利益を脅かす危険な「パンドラの箱(Pandora’s box)」を開けてしまったのだ。戦略的チョークポイントの武器化、民間人の生活に不可欠なインフラへの攻撃、そして経済的威圧の常態化、これらは全て、最終的には競合相手と同等か、あるいはそれ以上に中国自身に不利益をもたらしかねない前例を作り出している。

イランとの戦争が示した教訓は、中東地域における新たな地政学的環境下では、いかに強大な国家であっても、軍事的優位を政治的支配へと転換することはできないという点にある。この戦争は、新たな勢力均衡に基づく中東の秩序再編をもたらすことはなかった。むしろ、あらゆる主体が他者に代償(コスト)を強いることはできても、誰も秩序を確立することはできないという、この地域の現実を浮き彫りにしたのである。

※ウィル・トッドマン:戦略国際問題研究所(CSIS)の地政学・外交政策部門の主任スタッフ兼中東プログラムの上級研究員。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 アメリカとイランとの間で60日間の停戦とその間で核開発に関する交渉を行うという覚書が交わされたが、その後、ホルムズ海峡ではアメリカとイラン双方による攻撃が続いている。事態は沈静化に進んでいない。ドナルド・トランプ大統領はイランが自分の暗殺を企てており、もし暗殺されれば、イランに対してこれまでにない規模の攻撃を実施するように指示しているという報道も出ている。イランがトランプ大統領を暗殺するメリットはないが、そのような話も出てきており、せっかく和平に向けた動きとなっているのに、予断を許さない状況となっている。戦争継続を望むイスラエル、そして、イランとアメリカのそれぞれの強硬派が状況を悪化させているということも考えられる。

 そもそも、アメリカは、イラン革命発生、そして、イスラム共和国成立後のイランの存在を正式には認めていない。外交関係もない。しかし、実際にはこれまで非公式には交渉や取引を実施している。古くはロナルド・レーガン大統領時代のイラン・コントラ事件、新しくはバラク・オバマ大統領時代の核開発をめぐる合意成立である。

イラン・コントラ事件は複雑な事件だ。まず、1985年にレバノンでシーア派組織ヒズボラにアメリカ人兵士が捕らえられた。その解放を目的として、アメリカ側はイラン側と交渉を行い、裏取引を行った。当時、イラン・イラク戦争で劣勢に立っていたイランに対して、アメリカは武器を供与するという条件を出した。当時、イラン・イラク戦争で、アメリカはイラクのサダム・フセイン政権を支援していた。そして、実際にアメリカ側からイランへ武器を売却された。この武器の代金は、ニカラグアの反共右派ゲリラ「コントラ」への支援に流用された。アメリカは支援していたイラクを裏切り、イランと交渉して武器を売却するという取引を行っていた。しかし、表向きにはイランと敵対し、イランを激しく非難していた。「敵と裏でつながる」ということは政治の世界では必要なことである。オバマ政権はイラン側と交渉し、核兵器開発につながる核開発を断念させる代わりに、アメリカから支援を行うということで合意に達した。アメリカにとってイランのイスラム革命政権は不倶戴天の敵であったが、交渉相手として認め、その生存を認めるということになった。

 今年、アメリカとイスラエルはイランの体制転換(regime change、レジーム・チェンジ)を引き起こそうとして、大規模な攻撃を行ったが、その目的を達成することはできなかった。イランからは手ひどい反撃を受け、ホルムズ海峡の封鎖が実施され、世界経済にも大打撃を与えている。そして、アメリカのドナルド・トランプ大統領は体制転換をしようとした相手であるイスラム革命政権と交渉をしなければならなくなった。これはとんだ赤っ恥であり、実質的な敗北である。存在を認めないと攻撃をした相手と交渉をして、譲歩もしなければならなくなった。イラン側から見れば、これは千載一遇の好機である。この機会を最大限に利用するというのは当然のことである。そして、このような隙を与えたアメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の責任は極めて大きく、それぞれ指導者の地位から退任して責任を取るということも必要になってくる。

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ワシントンが解決を拒むイランのディレンマ(The Iran Dilemma Washington Refuses to Resolve

-アメリカの政策において2つの目標が半世紀近くにわたり対立し続けてきた。

ファリード・ザカリア筆

2026年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/08/iran-war-united-states-nuclear-weapons-regime-change-donald-trump-foreign-policy/

なぜ世界最強の国が、経済制裁(economic sanctions)や軍事攻撃(military strikes)で疲弊した、はるかに小さく弱い国に対して、自らの意図通りに事を運べないのだろうか? アメリカが直面するイラン問題の構図を理解する最も単純な方法は、ゲーム理論(game theory)を用いることだ。ドナルド・トランプ大統領は、イランとの間で「チキンゲーム(a game of “chicken”)」(2人のドライヴァーが互いに正面から車を走らせて衝突を避ける度胸試し)を演じる道を選んだ。こうした状況では、一方にとっての賭け金(stakes)が国家の存亡に関わるものであるのに対し、もう一方にとってはそれほど大きくない場合、通常は賭け金のより大きい側が勝利を収める。イランの現体制にとって、もし敗北すれば、体制が崩壊し、指導者たちが殺害される可能性が高いからだ。一方、トランプにとっての代償といえば、マール・ア・ラーゴ(別荘)で不快な週末を過ごす程度のことだろう。このチキンゲームにおいて、なぜイラン側の方がハンドルを固定して譲らない覚悟を決めやすいのかは明らかだ。

しかし、アメリカがイランへの対応にこれほど苦労しているのには、トランプや今回の無謀な対立といった個別の事案を超えた、より根本的な理由がある。イランでイスラム体制が権力を掌握して以来、アメリカはその扱いをめぐって常に2つの相反する姿勢の間で揺れ動いてきた。一方では、人質の解放から核開発の制限に至るまで、解決を望む具体的な課題を抱えている。しかし他方では、単なる交渉相手としてではなく、体制そのものの打倒を望んでもいる。これら2つの態度の間にある緊張関係は、半世紀近くにわたりアメリカの外交政策の根底に流れてきた。ワシントンが求めているのは、イランの特定の政策を変えることなのか、それともイランという国そのものを変えることなのだろうか?

もしワシントンがテヘランと交渉すれば、必然的に「ギブ・アンド・テイク(a give-and-take)」が生じ、双方が譲歩(concessions)し、敵対関係もいくぶん緩和されることになる。何よりも、交渉に関与するということは、アメリカ政府がイスラム共和国にある程度の正当性を与え、対等な交渉相手として扱い、国際舞台においてイランの現体制がイランを代表する存在であることを認めることになる。しかし、こうした承認は、アメリカのエリート層の一部にとっては受け入れがたいものだ。彼らは、イスラム共和国は正当ではない存在であり、本来あるべきではないと考え、ワシントンがとるべき唯一の政策は体制の打倒であると信じているからだ。それにもかかわらず、ワシントンが望むもののうち、イランにしか実現できない事柄が存在する。だからこそ、ロナルド・レーガン大統領でさえ、公の場ではイランの聖職者たちを激しく非難しながら、裏では彼らと秘密裏に交渉を行っていたのだ。

トランプの対イラン政策に見られる緊張関係は、ほぼ日常的に目にすることができる。あるソーシャルメディアへの投稿では、イランの文明を破壊し、47年にわたる「悪(evil)」に終止符を打つと脅しをかける一方で、同じ日に別の投稿では、イランとの交渉が進展していると語ることもある。トランプは交渉の席に着き、合意に向けて楽観的な姿勢を見せたかと思えば、交渉の合間にテヘランとの戦争を始めたり、イラン国民に政権打倒を促したりしている。そして1週間もしないうちに、自身の要求を受け入れればイランには明るい未来が待っていると約束する。

アメリカはかつて、ソヴィエト連邦に対しても同様に矛盾した態度をとっていた。1917年に共産主義者たちがロシアの権力を掌握すると、ワシントンは関係を断絶し、小規模ながらも政権転覆を試みることさえあった。ソ連の存在を承認し、モスクワと大使を交換するに至ったのは、それから16年近く経って、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領の代になってからのことだった。第二次世界大戦後、再び緊張が高まった。1970年代、ヘンリー・キッシンジャーによる対ソ交渉政策は、「悪の帝国(an evil empire)」の地位を強化するものと見なされ、右派から激しい批判を浴びた。それに対するキッシンジャーの答えは常に次のようなものだった。アメリカはソ連とイデオロギー的に対立しているものの、核兵器の管理といった特定の国益に関しては、モスクワとの合意なしには対処できないというものだった。

イランをめぐる議論において、キッシンジャーに相当する役割を果たしたのはバラク・オバマ大統領だった。オバマ政権こそが、ある種の決断を下した政権だった。オバマ政権は、イランに別の体制が望ましいとは考えつつも、アメリカの国益に対する最大の脅威(ソ連の場合と同様、核兵器が関わる問題)に対処するには、現行の体制と向き合うほかないと判断した。イラン核合意は、イランの外交政策の中で最も危険な要素を取り上げ、無力化しようとする試みであり、その点では成功を収めた。しかし、保守派の多くにとっては、その代償として、ある意味でイラン体制を正当化してしまうという問題があった。そこで、トランプは合意から離脱したが、その結果、ハッサン・ロウハニ大統領の求心力が低下し、テヘランでは強硬派が復権してウラン濃縮活動を拡大させる事態となった。こうしてトランプは、再び同じディレンマに直面することになった。すなわち、「合意を結ぶべきか、それとも強硬な姿勢を貫くべきか?」での間の選択だ。

現時点において、トランプが合意を望んでいることは明らかだ。しかし、合意に至る過程で、彼は結果として、イラン・イスラム共和国が47年間にわたって追い求めてきたものを与えてしまうことになるかもしれない。それは、アメリカ国内の最も強硬な勢力からさえも「無条件に認められる」という地位だ。テヘランにとって、それこそは多くの譲歩をしてでも手に入れる価値のある「賞品(a prize)」なのだ。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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 古村治彦です。

 政治家とは自身の間違い、誤りを認められない人たちだ。日本の政治家たちを見てもそうだし、世界中でそうだろうと思われる。人間がそもそも間違いや誤りを認めることに苦痛を感じることが多いので、それは政治家だけの特性ではないかもしれない。人間である以上、誰でも間違う。完璧な人間はいない。「弘法も筆の誤り」という言葉がある。英語では、「Even Homer sometimes nods.」と言う。古代ギリシアの偉大な詩人ホメロスもうっかりミスをしてしまうという意味だ。

しかし、政治家の場合、特に民主政治体制国家の政治家の場合、間違いを認めてしまうと、次の選挙で投票してもらえず、落選してしまうかもしれないという危険性を感じると、頑強に間違いを認めないということになる。それもまた仕方がないことではある。「無誤謬性(infallibility)」に対する過剰な期待と評価を政治家も国民もしてしまうということはある。

 そうした中で、ドナルド・トランプ大統領は特殊な立ち位置の人である。彼は職業政治家ではない。今でもアマチュアのにおいを残している。主張をころころと変えるし、誇張表現は当たり前、嘘もつくということで、これまでの政治家像とは大きくかけ離れた人物である。彼の間違いを数え上げればきりがない。大統領としての伝記が出れば、そこにはありとあらゆる間違いが記載されるだろう。後世の歴史家、後世の人々は「どうしてこんな人が大統領に選ばれたのか」と首をかしげることになるだろう。

 しかし、こうした人物であるがゆえに、型破りであるがゆえに、「間違いを認めて素直に謝る」ということができ、それで支持が落ちるどころか、支持が上昇する可能性がある。イラン戦争の決定に関して彼は決して謝ることはないだろう。正しかったと強弁するだろう。しかし、方針を大転換して、間違いを認めて謝るということがあったらどうだろう。国民は怒り、トランプに対する非難は大きくなるだろう。しかし、同時にその素直さに関しては、一定の評価はあるだろう。今のままではトランプ大統領の支持率の回復は難しい。支持率の平均は40%を切り、不支持率の平均は60%を超えるというところまで来ている。イラン戦争に対する支持率も同様の数字だ。ここで、トランプ大統領が謝罪すれば中間選挙の結果も少しは変わるだろう。しかし、それがどれほど難しいかということも私たちは分かっている。そもそも論で「戦争など始めなければ良かったのだ」ということは全くその通りなのだが。

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ドナルド・トランプは失敗を素直に認めるべきだ(Trump Should Just Admit He Screwed Up

-イランとの戦争は明らかに間違いだった。なぜそう言わないのか。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年5月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/28/trump-iran-war-mistake-admit/

アメリカとイランの間で取り沙汰されている合意の詳細―そもそも最終的に合意に至るのかどうかさえ―は不明だが、ある程度の知性(IQ3桁あるような人)があれば、イスラエルとアメリカが戦争を始めたことがとてつもない失策だったことは理解できるはずだ。掲げられた目標は1つも達成されていない。イランの体制は崩壊せず、核兵器の備蓄も放棄しておらず、ミサイルやドローンの能力も残っている。それどころか、近隣諸国に甚大な被害を与えようと思えば、いつでもホルムズ海峡を封鎖できることを実証した。過去3カ月間にわたるドナルド・トランプ米大統領やピート・ヘグセス米国防長官の豪語や威勢のいい発言は、全て中身のない空虚なものだったことが露呈した。

合意が成立すれば、トランプ政権はこの「豚に口紅を塗る」(見かけだけ取り繕う)行為を行い、これを何らかの戦略的勝利だと主張するだろう。しかし、それに納得する観察者はほとんどいないはずだし、そうした試みは、大統領とその取り巻きである追従的な顧問団を滑稽に見せるだけだろう。この大失敗を成功として印象付けるような、説得力のある方法は存在しない。そうしようとすればするほど、彼らは現実離れした妄想を抱いているように見えるだけだ。

そこで考えた。もしトランプが間違いを犯したと認めたらどうなるだろうか? 過ちを認めることは彼が得意とすることではないが、その点について彼だけが例外ということではない。政治家というものは、たとえ誰の目にも明らかな失策であっても、間違いを認めようとはしない。特に重要な問題に関してはなおさらだ。例えば、イギリスのボリス・ジョンソン元首相は今でもブレグジット(イギリスのEU離脱)を擁護し続けているし、アメリカのマイク・ポンペオ元国務長官も、2003年のイラク侵攻やトランプの1期目におけるイラン核開発合意の破棄を今なお賢明な判断だったと主張している。

明白な過ちを認めようとしないこの姿勢は少々不可解だ。誰もが、人間は過ちを犯すものだと分かっている、外交とは不確実なもので、どれほど綿密に練られた計画であっても狂いが生じうる。トランプよりも賢明で衝動的でない指導者(もっとも、トランプとの比較ではハードルは低い)であっても、全ての判断を正しく行えるということではない。また、私たちの多くは、失敗したときには過ちを認め、その経験から学び、同じ過ちを繰り返さないようにするのが最善の策だと学んでいる。言うまでもなく、大きな代償を伴う過ちを繰り返すリーダーは、やがてその報いを受けることになるし、それは当然の帰結と言える。しかし、概して有能であり、時には過ちを認める勇気も持ち合わせている公職者であれば、彼らが最善を尽くしていることやその誠実さが国民に理解され、評価されることで、かえって人気が高まる可能性もあるだろう。

しかし、この道を選ぼうとする指導者はほとんどいない。特に独裁者は、自身の権力基盤が個人崇拝や「自分は決して過ちを犯さない」という幻想の維持に依存しているため、間違いを認めることを極端に嫌う。一方、民主政体国家の指導者であっても、在任中に過ちを認めることには消極的だ。ほんの少しでも非を認めれば、対立勢力が即座にそこを突いてくると分かっているからだ。例えば、歴代の米大統領を見てみよう。ジョン・F・ケネディは「ピッグス湾事件」の失敗について全面的に責任を認めたし、バラク・オバマはトム・ダシュルを保健福祉長官に指名した初期の判断(後にダシュルの税務上の不備が発覚し、裏目に出た)について非を認めた。また、ロナルド・レーガンもイラン・コントラ事件が間違いであったことを事実上認めた。しかし、こうした場面は稀だ。2004年、ジョージ・W・ブッシュ大統領が1期目における自身の過ちを問われた際、彼は1つとして挙げることができなかった。政治家が過ちを認める姿を見たければ、通常は回顧録が出版されるのを待つ必要があるが、それでも期待外れに終わるかもしれない。

しかし、トランプは政治家としてのキャリアを通じて既存の規範を打ち破り続けてきた人物であり、その「テフロン加工(批判をものともしない)」のような性質は、レーガンをも凌ぐほどだ。思い出して欲しい。彼はかつて「五番街で誰かを撃ち殺したとしても、支持者を失うことはないだろう」と豪語したが、残念ながら、この言葉は彼の発言の中でも極めて的を射たものの一つとなった。もし、カメラの前で「とんでもない失敗をした」と認め、その上で前に進むことができる最近の米大統領がいるとすれば、それはトランプだろう。実際、彼は過去にもそうした行動をとったことがある(もっとも、その反省の弁が心からのものだったかどうかは疑問の余地がある)。

そして、それはそれほど難しいことではないかもしれない。トランプはまず、イラン問題が長年にわたる厄介な課題であり、歴代の大統領も誰も解決できなかった問題であることを人々に思い出させることから始められるだろう。彼は、この問題を一挙に解決したいと望んでいたことや、新たな爆撃を行えば事態が好転すると考えたのには十分な理由があったことを主張できるはずだ。さらに、現地の政権が不人気であり、その年の初めには大規模なデモの波を力ずくで抑え込まざるを得なかったという事実を指摘することもできるだろう。この計算は大きく外れたが、トランプらしいやり方で、彼は「何事も100%確実なことなどない」と説き、困難な決断を下すのが自身の務めだと主張した上で、その誤りは各方面から受けた悪い助言のせいだと責任を転嫁することもできるだろう。その際、彼はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を槍玉に挙げることも可能だ。ネタニヤフの好戦的な姿勢はトランプにとって何のプラスにもならなかったばかりか、ネタニヤフは今やアメリカでもイスラエルでも不人気な人物となっているからだ。ネタニヤフの評判がこれほど悪化している現状では、彼を切り捨てることは、むしろトランプの人気を高める結果にさえなり得るかもしれない。

トランプは、自身の意図は称賛に値するものであり、その大胆な賭け(ギャンビット)は試みる価値のあるものだったと主張した上で、この一件から多くのことを学んだと述べ、歴代大統領との違いを強調するかもしれない。彼の口調が目に浮かぶようだ。「何事においても考えを変えず、同じ過ちを繰り返すばかりの『眠たいジョー・バイデン』とは違い、私は常に学び、状況に応じて適応する術を知っている、極めて安定した天才なのだ」と。そして、ホワイトハウスの物議を醸したボールルーム(舞踏室)改修計画など、別の話題に話をすり替えることもできるだろう。

数々の失態を重ねてきた2期目において、最も深刻なこの失敗に対し、トランプはそのような対応をとると私が予想しているかと言えば、正直なところ、そうは思わない。過去には(たいていは無能な側近を解任せざるを得なくなった際に)過ちを認めたこともあったが、彼は、重大な過ちを認めれば自身の権威あるイメージが損なわれ、公然と反旗を翻す者が増え、さらには「偉大な大統領」として記憶されたいという夢(今となっては実現の可能性は低い)が打ち砕かれると考えているのだろう。MAGA(「アメリカを再び偉大に」)を掲げる支持基盤は今後も彼を支え続けるだろうが、数カ月後には、彼の手元に残るのがその支持者たちだけになってしまう可能性もある。

破局的な事態のさなかに勝利の幻想を掴み取ろうとして対立の終結を遅らせるトランプの行動は、アメリカとその同盟諸国が被っている苦痛を増大させ、彼自身の評判にもさらなる傷をつけている。失敗を素直に認め、次へ進む方が誰にとっても有益だろう。しかし、年老いた親から車の鍵を取り上げなければならなかった経験のある人なら誰でも知っているように、頑固な高齢者は往々にして、自分にとって何が最善かについて見えなくなってしまうものである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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