古村治彦です。
2026年はアメリカ建国250年の節目の年である。中間選挙がじっしされる年でもある。現在、ドナルド・トランプ大統領の人気は低迷し、連邦下院で共和党は過半数を失う可能性が高い。連邦上院は共和党が過半数を維持する可能性が高い。下院で民主党が過半数を握れば議長を出すことになり、トランプ肝いりの法案の可決も困難になる。第二次トランプ政権の後半2年の政権運営も厳しくなる。
トランプ政権が支持率を上昇させるには、物価対策と外交政策の成功が重要になる。海外からの輸入製品の価格引き下げが物価対策の1つの方法である。そのためには、究極的には戦争を終わらせる必要がある。地政学リスクと言うが、地政学リスクを下げることが重要だ。ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争を収拾することが重要であるが、ウクライナ戦争は2026年2月24日に4年が経過することになるが、停戦の見通しは立っていない。イスラエルのガザ地区の状況も戦闘は起きていないが、イスラエルはガザ地区への圧力を強めている。また、イランに対して更なる攻撃を加える姿勢を捨てていない。中東地域も不安定なままである。
昨年、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を発表した。このことについてはこのブログでも複数回紹介した。重要なのは、ラテンアメリカと中東、東アジアである。トランプ政権は、ヴェネズエラ近海にアメリカ海軍の艦艇を派遣し、船舶に対して攻撃を行い、ニコラス・マドゥロ大統領に圧力をかけている。麻薬対策を大義名分にしているが、それならば、コロンビアやメキシコを標的にした方が合理的だ。アメリカ政府はマルコ・ルビオ国務長官を中心にして、ラテンアメリカにおけるアメリカの勢力確保を狙い、反米勢力の一掃、中国とロシアの影響力排除を行おうとするグループがいる。ヴェネズエラはそのための標的である。問題は、どこまで介入するかということだ。地上軍派遣の可能性も浮上しているが、この段階まで進むと、アメリカは泥沼にはまり込む可能性がある。マドゥロ政権を倒しても、マドゥロ支持派がゲリラ戦を展開する可能性がある。ラテンアメリカ各国の「ボリバル主義」「反ヤンキー帝国主義」感情が高揚することになる。それでも地上部隊まで派遣して、マドゥロ政権を打倒して親米政権を樹立するというところまで進めば、トランプは自身が戦争を止める大統領だという自画自賛を放棄することになる。国内の不満を海外での武力行使で目を逸らさせるという意図があるとすれば、アメリカ国内の不満は相当大きくなっているという見方もできるだろう。また、トランプ政権内の対外強硬派の勢いが強くなっているのだろう。※2025年1月2日にトランプ大統領はアメリカ軍に対してヴェネズエラへの攻撃を命令し、マドゥロ大統領夫妻を拘束し、国外に連れ出したと発表した。このような暴挙は予想できなかった。トランプ主義、アメリカ・ファーストの終焉である。BRICSを中心とする「西側以外の国々」は反アメリカの姿勢を強めるだろう。トランプも馬鹿なことをしたものだ。ドル離れと金(きん)への資金の移動が続くことになる。
中東地域に関して言えば、イランへの攻撃があるかどうかである。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はイランへの攻撃を行いたいという願望を持っている。中東地域の不安定な状況はネタニヤフの個人的な利益に適う。状況が平常に戻れば、個人的な汚職の問題で裁判にかけられることになる。ハマスとの紛争が停戦したことで、平常に戻る可能性が大きくなるが、状況の不安定化を継続させるために、ガザ地区に対して人道的に許しがたい圧力をかけ、ハマスの暴発を狙うか、ハマスを支援するイランへの攻撃を行うかである。アメリカのトランプ大統領は昨年実行したイランへの空爆について、イランが核開発を、場所を変えて継続している可能性があると発言している。イランへの攻撃は実行される可能性はあるが、大規模な攻撃とはならないだろう。イランとイスラエルの全面戦争に発展することは避けたい。イラン側としてもアメリカの衰退が継続していけばイスラエルも衰退していくということになるので、中国やロシアと連携しながら、状況を悪化させないということになる。
東アジアにおける最大の不安定要因は高市早苗首相と日本である。日本は成長のない30年を経て、残念なことだが衰退が決定づけられている。経済や社会において人々の不満が高まっていく。人々の不満を外に向けることは常套手段である。そうした状況下で、「日本初の女性首相」という大義名分で、極右派・隷米派の高市早苗議員が首相に就任した。そして、早速に台湾有事の発言で、日中関係と東アジアに緊張をもたらした。高市政権の後ろ盾はアメリカ国防総省のナンバー3であるエルブリッジ・コルビー国防次官だ。コルビー次官については、これまでの著作で取り上げているので、そちらを参照していただきたい。トランプ大統領は中国との対立を望んでいないが、トランプ政権に入った、対中強硬派が中国との対立を望んでいる。厄介なことに、アメリカが直接対峙するのではなく、日本を利用して、日本をぶつけようという姑息な手段を用いてである。2026年は高市政権を退陣させ、日本が中国との衝突を起こさないようにすることが重要である。
2026年も世界を不安定にしようという動きがある。私たちはそのことに気づき、そして、阻止するために学び続ける必要がある。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領の新たな国家安全保障戦略:5つの重要なポイント(Trump’s
new national security strategy: 5 key takeaways)
ラウラ・ケリー筆
2025年12月5日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/international/5635890-trump-national-security-strategy/
ドナルド・トランプ大統領は木曜日の夜遅く、「国家安全保障戦略(national
security strategy)」を発表した。西半球(Western Hemisphere)におけるより大きな軍事プレゼンス(a larger military presence)、世界貿易の均衡(balancing
global trade,)、国境警備の強化(tightening up border security)、そしてヨーロッパとの文化戦争への勝利(winning the culture war with Europe)に重点が置かれている。
この包括的な戦略は通常、新政権発足1年以内に発表され、大統領の外交政策の重点を説明し、予算の配分に関する指針を示している。
33ページに及ぶこの文書は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America
First)」のイデオロギーを基盤としているが、同時に、トランプ大統領がモンロー主義を踏襲し、西半球におけるアメリカの優位性(U.S. dominance)を主張していることを初めて明確に示している。
「長年の無視の後、アメリカはモンロー主義を再び主張し、実行することで、西半球におけるアメリカの優位性を回復し、アメリカ本土と地域全体の主要地域へのアクセスを守る」と「国家安全保障戦略」は述べている。
この文書は、アメリカの世界からの撤退を明確には示していないが、同盟国間の負担分担の増大(increasing burden sharing among allies)、アメリカの経済的利益と重要なサプライチェインへのアクセスの向上(elevating American economic interests and access to critical supply
chains)、アメリカのエネルギー生産の「解放」(“unleashing” American energy
production)を求めている。
トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」の5つのポイントを以下に挙げる。
(1)カリブ海におけるトランプ大統領の戦争は激化する見込み(Trump’s war
in the Caribbean likely to heat up)
カリブ海で麻薬密輸の疑いのある船舶に対するトランプ大統領の2カ月以上にわたる軍事作戦は、「国家安全保障戦略」がアメリカに対し、世界的な軍事プレゼンスを南北アメリカ大陸に再調整し、「ここ数十年、あるいは数年間でアメリカの国家安全保障にとって相対的に重要性が低下した地域」から撤退するよう求めていることから、より大きな支持を得る可能性が高いだろう。
トランプ大統領は、カリブ海におけるアメリカ軍の軍事作戦を麻薬カルテルとの「武力紛争(armed
conflict)」と位置づけ、麻薬密売の罪でアメリカで起訴されているヴェネズエラの実力者ニコラス・マドゥロ大統領を主要な脅威として挙げ、アメリカは間もなく「地上作戦(land operations)」を開始する可能性があると述べた。
ヴェネズエラは具体的には名指しされていないものの、「国家安全保障戦略」は、アメリカ国境の安全確保と「カルテルの打倒(defeat cartels)」、そして「戦略的に重要な地域へのアクセスの確立または拡大(establishing or expanding access in strategically important
locations)」のために「標的を絞った展開(targeted deployments)」を求めている。
この戦略はまた、トランプ大統領が関税を用いて地域を支配する手法にも焦点を当てている。しかし、トランプ大統領がそのような権力を有しているかどうかは、最高裁判所で係争中の訴訟の焦点となっている。
「アメリカは、関税と相互貿易協定を強力なツールとして活用し、アメリカの経済と産業を強化するため、商業外交(commercial diplomacy)を優先する」と文書は述べている。
この文書はラテンアメリカにおける中国の進出を明確に指摘していないものの、NSSは、米国は金融とテクノロジーにおける影響力を駆使して地域諸国を敵対勢力から引き離し、「スパイ活動、サイバーセキュリティ、債務の罠、その他の方法」でこれらの諸国への依存の脅威を強調すべきだと述べている。
And while the document does not explicitly
call out China’s inroads in Latin America, the NSS says the U.S. should use its
leverage in finance and technology to pull regional countries away from
adversaries and underscore threats of reliance on those countries “in
espionage, cybersecurity, debt-traps, and other ways.”
(2)トランプ大統領がロシアへの対応に失敗したとしてヨーロッパを批判(Trump
criticizes Europe as failing to deal with Russia)
「国家安全保障戦略」は、ロシアとの関係悪化の一因となったヨーロッパの「自信の欠如(lack
of self-confidence)」を批判しているが、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領による2014年と2022年のウクライナ侵攻の決定や、破壊工作、選挙介入、そして大陸における不安定化煽動といった活動については言及していない。
「国家安全保障戦略」は、「ユーラシア大陸全体にわたる戦略的安定の条件を再構築し、ロシアとヨーロッパ諸国間の紛争リスクを軽減する」ためにヨーロッパとロシアの間の仲介を行うことができる唯一の勢力がアメリカであると述べている。
この文書はさらに、アメリカは「ヨーロッパの偉大さを促進する」必要があると明言しており、これはヴァンス副大統領が2月にドイツで行った演説を彷彿とさせる。
ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員パウエル・ゼルカは分析の中で、「ワシントンはもはや、ヨーロッパの内政に干渉しないふりをしていない」と述べている。
「現在では、こうした干渉を『ヨーロッパがヨーロッパであり続けることを望む』という善意の行為であり、アメリカの戦略的必要性に基づくものと位置付けている。最優先事項は何か?
『ヨーロッパ諸国において、ヨーロッパの現在の方向性に対する抵抗を育むこと』である」。
(3)台湾はアメリカの対中戦略を応援(Taiwan cheers US
strategy on China)
「国家安全保障戦略(NSS)」が台湾の主権と安全保障を外部からの影響から守ることを明確に認めたことは、台北の外務省から歓迎され、ワシントンの対中強硬派は、トランプ政権が台湾を北京に明け渡すつもりはないと安心することになるだろう。
「アメリカの『国家安全保障戦略(NSS)』は、台湾をめぐる紛争の抑止が地域と世界にとって不可欠であると明言している」と台湾外務省は声明で述べた。
「台湾の安全はインド太平洋の安定を支えるものであり、私たちは自衛を強化し、地域の平和と繁栄に貢献し続ける」。
「国家安全保障戦略」は、台湾をめぐる紛争を抑止するためにアメリカに対し「軍事力の優位性(military overmatch)」を維持するよう求め、「有利な通常戦力のバランス(a
favorable conventional military balance)」が地域におけるアメリカの利益の鍵であるとしながらも、地域におけるアメリカの同盟国間の「負担分担(burden-sharing)」を強調している。
この文書は、日本、韓国、台湾、オーストラリアに対し、国防費の増額を求める圧力を継続するよう求めている。
ハドソン研究所アジア太平洋安全保障担当部長パトリック・クローニンは、「国家安全保障戦略」への初期の反応として、「アジアについて考えると、経済と抑止力への重点は概ね妥当だ」と述べている。
クローニンは続けて「それでもなお、中国の戦略が相互に公正な貿易に関するものだという考えは、この文書が過去の誤った前提について正当に指摘している様々な批判に真っ向から反するものである」と述べた。
(4)アメリカの中東への重点は「後退」(American focus on
Middle East to ‘recede’)
トランプ大統領は、アメリカのエネルギー輸出増加に注力し、イスラエルとの12日間の戦争とアメリカの核施設への攻撃を受けてイランとその代理勢力が大幅に弱体化したと述べるなど、中東におけるアメリカの責任を軽減しようと努めている。
「国家安全保障戦略」は、「しかし、長期的な計画と日常的な実行の両面において、中東がアメリカの外交政策を支配していた時代は、ありがたいことに終わった。中東がもはや重要ではなくなったからではなく、かつてのように常に人々を苛立たせ、差し迫った大惨事の潜在的な原因ではなくなったからだ」と述べている。
トランプ大統領は「紛争は依然として中東で最も厄介な問題である」と認めつつも、この地域の明るい展望を描いている。
リバータリアン系シンクタンクであるケイトー研究所研究員ジョン・ホフマンは、アメリカが中東における役割を縮小する戦略を歓迎する一方で、トランプ政権にそのようなロードマップを実行する政治的意思があるかどうか疑問視している。
ホフマンは「過去4人の大統領―うち2人はドナルド・トランプ――は、中東へのアメリカの関与縮小を公約に掲げながら、変化ではなく継続性に根ざした政策を追求してきた」と書いている。
「ワシントンは依然としてこの状況に巻き込まれ、この地域の情勢を細かく管理しようとしている。このようなアプローチでは、この『国家安全保障戦略(NSS)』の明示された目的を達成できないだろう。トランプが中東情勢を根本的に転換する政治的意思を持っているかどうかはまだ分からない」。
(5)民主党からの党派的な反発を招く(Draws partisan pushback
from Democrats)
民主党は、トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」を、世界におけるアメリカの後退を示す危険な計画であり、アメリカと同盟諸国を弱体化させるものだと即座に非難した。
連邦下院情報特別委員会と連邦下院軍事委員会委員であるジェイソン・クロウ下院議員(コロラド州選出、民主党)は声明で「この計画が進められると、世界はより危険な場所となり、アメリカ国民の安全は脅かされるだろう」と、述べた。
「多くの懸念すべき点の中でも、ソーシャルエンジニアリング(social
engineering)、文化戦争(culture warfare)、そして同盟国である外国政府や政治体制への干渉(interference with allied foreign governments and political systems)を露骨に呼びかけている点が挙げられる。これは国内外における自由と個人の権利に対する攻撃だ」。
同様に、連邦上院軍事委員会委員であるリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)は、「国家安全保障戦略(NSS)」は「同盟諸国を見捨てて、ウクライナを犠牲にし、主要な戦略目標と基本的価値観を放棄するという後退を予兆するものだ。アメリカはより安全になるどころか、より弱体化するだろう。アメリカ・ファーストはアメリカだけの問題であり、その代償を払うことになるだろう」と述べた。
評論家の一部はより慎重な見方を示した。
民主政治体制防衛財団軍事政治力センター上級ディレクターであるブラッドリー・ボウマンは、「国家安全保障戦略」は「以前の国家安全保障戦略との連続性もいくつかあるが、大きな変更点もいくつかある」とコメントした。
「称賛に値する点もあれば、注目すべき批判点もあり、そして深刻な『何だって?』という点もある」。
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』






