古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ベンヤミン・ネタニヤフ

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。イスラエル、パレスティナ情勢についても分析しています。また、『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「アメリカが動けばイスラエルは言うことを聞くはずだ」という内容のブログを掲載して、舌の根も乾かないうちに、「イスラエルはアメリカの言うことを聞かないよ」という文章を掲載するのはおかしいと思われるだろうが、これが国際政治やどのように考えるのかということの面白いところだと思う。

 アメリカはイスラエルにとって最大の支援国であり、アメリカの動向はイスラエルの政策決定にとって重要だ。そのため、イスラエルは、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人たちを動かしてアメリカの世論や政策決定に影響を与えようとしてきた。それが成功している様子は、ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト著『イスラエル・ロビー』に詳しく書かれている。アメリカの連邦議員たち、特に都市部に地盤を持つ議員たちは、ユダヤ系の投票と資金に依存しているため、「支援しない」となれば政治生命が断たれることになる。イスラエルにとってアメリカは最重要の国である。

 支援をする国(アメリカ)と支援を受ける国(イスラエル)で言えば、イスラエルはアメリカ以外からの支援はほぼない状況であるので、イスラエルはアメリカから、支援を見直す、支援を打ち切ると言われてしまえば、立ち行かなくなってしまうので、アメリカの言うことを聞く。しかし、ここで、アメリカにばかり頼っていないという状況が出てくれば、アメリカに対して、「支援を打ち切るならどうぞ」と強い立場に出ることができる。また、支援を受ける国の特殊な事情、例えば、その国がある位置、国内政治体制や価値観の相似などによって、支援を受ける国の方が強い立場に立つことができる。それこそがイスラエルである。

イスラエルは中東にあって西側の形式の自由主義的民主政治体制、資本主義、法の支配などを確立している唯一の国だ。アメリカとしてはイスラエルを存続させることが重要ということになる。また、位置としても非常に微妙なところにある。従って、イスラエルの発言力は強くなる。

 こうして考えると、日本もイスラエルのように、アメリカに対して、ある程度の発言力を持つことができるのではないかと私は考える。それは、「アメリカがあまりに酷いことを日本に求めるならば、日本はアメリカの陣営から飛び出しますよ」という形で、中国と両天秤にかけることだ。しかし、戦後80年、アメリカに骨抜きにされ、アメリカ妄信が骨絡み状態になっている日本には難しいことだ。アメリカが衰退していって、初めて私たちは、その呪縛から解放されるだろう。その時期は私たちが考えるよりもかなり早く到来するだろう。

(貼り付けはじめ)

皆さんが考えるよりも、イスラエルに対するアメリカの影響力は小さい(The United States Has Less Leverage Over Israel Than You Think

-アメリカの影響力の基礎とその欠如について詳しく見てみる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年3月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/21/us-israel-leverage-biden-netanyahu/

ジョー・バイデン政権は、イスラエルのガザ報復作戦(Israel’s retaliatory campaign in Gaza)を止められなかったことで、執拗な批判にさらされている。バイデン米大統領とその側近たちは、増え続ける死者数(現在3万人を超えている)について憂慮し、故郷を追われた何十万人もの罪のないパレスティナ人に十分な人道支援を届けようとしないイスラエルに苛立ちを募らせていると伝えられている。しかし、バイデンはアメリカの武器の流入を止めず、アメリカは停戦を求める3つの国連安全保障理事会決議について拒否権(veto)を行使している(アメリカが承認する可能性のある決議案が準備中と報じられている)。カナダとは異なり、ガザの国際連合パレスティナ難民救済事業機関(United Nations Relief and Works AgencyUNRWA)の職員がハマス支持者で埋め尽くされていたという非難が今となっては疑わしいと思われるにもかかわらず、アメリカはUNRWAへの資金提供を停止するという決定をまだ翻していない。

バイデンを批判する人々は、アメリカがこの状況に対して多大な影響力を持っており、大統領が毅然とした言葉を発し、アメリカの援助を縮小、もしくは停止するとの圧力(脅し)を加えれば、イスラエルはすぐに方針転換を余儀なくされるだろうと想定している。しかし、この仮定は精査するに値する。弱小国家は、しばしばアメリカの要求に従うことを拒否し、場合によってはそれを無視してしまう。セルビアは1999年のランブイエ会議でNATOの要求を拒否した。イランと北朝鮮は数十年にわたり制裁に耐えてきたが、反抗的な姿勢を維持している。ヴェネズエラではニコラス・マドゥロが依然として権力を握っている。そしてバシャール・アル・アサドは、アメリカが以前から「退去せよ(must go)」と主張してきたにもかかわらず、依然としてシリアを統治している。

これらの指導者たちがアメリカの圧力に逆らうことができたのは、アメリカの支援に依存していなかったからであり、それぞれが、「強硬手段に出るよりも従う方が失うものが大きい」と考えたからである。しかし、ドイツがアメリカの反対にもかかわらず、パイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設を継続したように、アメリカの親密な同盟諸国も、アメリカの圧力に抵抗することがある。依存度の高い属国であっても、驚くほど頑固な場合がある。アフガニスタンの指導者たちは、米政府高官の要求する改革を何度も無視して実施しなかったし、ウクライナの司令官たちは昨夏の不運な反攻作戦を計画する際、アメリカの助言を拒否したと伝えられている。カブールとキエフはほとんど全面的にアメリカの物質的支援に依存してきたが、ワシントンは彼らの要求に従わせることができなかった。同様に、イスラエルの指導者たちも、ダヴィド・ベン=グリオンからベンヤミン・ネタニヤフに至るまで、アメリカの圧力に幾度となく抵抗してきた。バイデンから電話がかかってきて、アメリカの援助を打ち切ると脅せば、イスラエルがアメリカの言いなりになると自動的に考えるべきではない。

影響力はどこから来るのか? 偶然にも、私はこの問題について、1987年に、最初の著書の第7章で長々と書いた。支援国が、経済的・軍事的援助、外交的保護、その他の便益を、支援を受ける国に提供することで、支援を受ける国に提供される援助をほぼ独占している場合、支援国が目下の問題について支援を受ける国と同程度の関心を持ち、支援を受ける国に圧力をかけて順守させるために援助水準を操作することに国内的な障害がない場合、支援国はかなりの影響力を持つ。支援を受ける国が他の誰かから同じような援助を受けることができる場合、係争中の問題に関して、支援国よりもはるかに多くのことを気にかけており、それゆえ支援の削減という代償を支払う意思がある場合、あるいは支援国が国内的あるいは制度的な制約のために支援を削減する場合、影響力は低下する。

このような条件によって、なぜ、そして、どのようにして、支援を受ける国の一部が支援国の選好に逆らうことができ、また逆らうことを避けないのかを説明できる。支援国が、弱い同盟国に本質的な価値があると考えている場合(重要な戦略的位置にある、価値観が似ているなど)、あるいは、支援を受ける国の成功が支援国の評判や名声に結びついている場合、支援国は支援を受ける国が頑なに反抗的であっても、その国を切り捨てようとはしない。たとえば、ソ連はアラブの様々な支援を受ける国を自分たちの側に引き留めるのに苦労した。なぜなら、それらの国々は中東における影響力にとって重要な存在であり、クレムリンは、それらの国々が失敗する(あるいはアメリカと同盟を結ぶ)ことを望まなかったからである。同様に、アメリカは南ヴェトナムやアフガニスタンの指導者たちに、支援を撤回すると脅して圧力をかけることはできなかった。もちろん、ヴェトナムのグエン・バン・チュー大統領やアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領はこのことをよく理解していた。

更に悪いことに、援助を提供すると、短期的には影響力が低下する。なぜなら、一度提供された援助を取り戻す方法がないからだ。ヘンリー・キッシンジャーはあるジャーナリストに次のように語った際に、彼はこの力関係を完璧に捉えていた。「私はイスラエルのイツハク・ラビン首相に対して妥協するように求めた時、ラビンは、イスラエルは弱いので妥協はできないと答えた。そこで私は彼にもっと武器を与え、妥協するように求めた。ラビンはイスラエルは強いので譲歩する必要はないと言った」。更に言えば、弱くて依存的な支援を受ける国は、自分たちの方がより脆弱で、より多くのことを抱えているため、しばしば、支援国よりも、問題が提起されている問題について気にかけている。そして、同盟諸国が国内の主要な政治的支持層から支持されている場合、その支援国がその影響力を自由に利用する可能性はさらに低くなるだろう。

それでは、アメリカとイスラエルの関係の現状と、バイデンがもたらす可能性のある実際の影響力について何を物語っているかを考えてみよう。

第一に、イスラエルは以前ほどアメリカの支援に依存していないものの、誘導爆弾と砲弾、F-35航空機やパトリオット防空ミサイルなどの先進兵器システムと精密誘導ミサイルの両方を含むアメリカの兵器へのアクセスに依然として大きく依存している。もちろん、高度な兵器を生産しているのはアメリカだけではなく、イスラエルも独自の高度な防衛産業を持っているが、万が一アメリカが援助を遮断した場合に軍隊を再装備するのは困難で費用のかかるプロセスとなるだろう。イスラエルの戦略家たちは長年、潜在的な敵対国に対して質的優位性を維持することが極めて重要であり、アメリカの援助が失われれば長期的にはその能力が危うくなると信じてきた。これに、国連安全保障理事会の拒否権や他国がイスラエル批判を自制するよう圧力をかける形であれ、アメリカの外交的保護の価値が加わると、イスラエルがアメリカから得ている支援に代わるのは不可能ではないにしても困難であることは明らかだ。だからこそ、専門家の多くは、バイデンがすべきことはアメリカの援助を減らすと脅すことだけであり、ネタニヤフ首相には従う以外に選択肢はない、と考えている。

第二に、立場の弱い、援助を受ける国が問題に関心を持っている場合、圧力をかけるのは難しいが、現在、アメリカの手段を強化する方向に決意のバランスが変化している可能性がある。以前の中東紛争ではよくあったことだが、アメリカは自国の利益がより重視される場合にはイスラエルに行動を変えさせることができた。 1956年の第二次アラブ・イスラエル戦争後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領はイスラエルにシナイ半島から撤退するよう圧力をかけることに成功し、アメリカ政府当局は1969年から1970年の消耗戦争と1973年のアラブ戦争中にイスラエルに停戦協定を受け入れるよう説得するのに貢献することができた。ロナルド・レーガン大統領からイスラエル首相メナヘム・ベギンへの怒りの電話も、1982年のレバノン侵攻中のイスラエルによる西ベイルートでの大規模な爆撃作戦を終わらせた。これらのいずれの場合でも、アメリカの指導者たちは、より広範なアメリカの利益が危険に晒されていると信じていたため、強力に行動し、成功した。

しかし、今どちらの側に大きな決意があるのかはわからない。ネタニヤフ首相は国内では不人気となっているが、世論はガザ地区での軍事作戦を支持しており、ネタニヤフ首相に取って代わりたい政治的ライヴァルたちでさえ、これまでネタニヤフを支持してきた。これに加えて、ネタニヤフ首相は二国家共存解決[two-state solution](あるいはパレスティナ人との公正な和平)に反対し、汚職による訴追を避けたいと考え、政権を維持するために極右閣僚たちに依存している。イスラエルは「バナナ共和国(banana republic、訳者註:政治的に不安定で、経済は外国に支配され、1つの産物の輸出に依存する小国)ではない」と宣言したネタニヤフ首相は、アメリカの明確な警告にもかかわらず、イスラエル国防軍(IDF)が混雑するガザ地区の都市ラファを攻撃すると強硬に主張し続けている。しかしネタニヤフはまた、この問題について協議する代表団をワシントンに派遣することにも同意した。

加えて、ガザ地区における危機的状況は世界中でアメリカのイメージに大きなダメージを与え、バイデン政権が冷酷で無力であるように見せている。もし結果がそれほど憂慮すべきものでないならば、アメリカの政策の矛盾は滑稽なものになるだろう。アメリカ政府はガザ地区の飢餓に瀕している避難住民たちに食糧を空輸している。それと同時に、彼らを避難させ飢餓の危険にさらしている軍備をイスラエルに提供している。この状況はバイデンの再選の可能性を危うくする可能性もあり、ホワイトハウスが強硬姿勢を取る新たな理由となった。

私は、アメリカがイスラエルよりもガザ地区の状況を懸念していると言っているのではない。イスラエルとパレスティナで何が起こっても、アメリカで比較的安全に暮らす私たちよりもイスラエル人(そしてパレスティナ人)にとって、ガザ地区の状況は明らかに重要である。私が言いたいのは、どの程度かということを言うことは不可能ではあるが、決意の均衡がワシントンの方向に向かって進んでいるということだけだ。

最後に、国内の制約についてはどうだろうか? 過去の大統領が想像以上に影響力を行使できなかった主な理由は、イスラエル・ロビー(Israel lobby)の力である。アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)などが議会で行使してきた影響力を考えれば、イスラエルに深刻な圧力をかけようとする大統領は、必ず自分が所属する党の連邦議員たちからも含む、厳しい批判に直面した。ジェラルド・フォード大統領はこの教訓を1975年に学んだ。イスラエルの長期にわたる横暴に対し、関係を見直すと脅したところ、すぐに75人の連邦上院議員が署名した書簡が届き、その動きを非難されたのだ。バラク・オバマは大統領就任1年目に同じ教訓を学んだ。ネタニヤフ首相に入植地建設を止めるよう圧力をかけようとしたとき、共和党所属の連邦議員たちからも民主党所属の連邦議員たちからも同様の反発を受けた。イスラエル・ロビーの影響力は、長い間、結局は失敗に終わったオスロ和平プロセスにおいて、アメリカの交渉担当者がイスラエルの譲歩を得るために、肯定的な誘導策、つまりニンジン(carrots)しか使えずに、結局は棍棒(sticks)を使うことができなかった理由も説明する。

この状況も徐々に変わっていくだろう。アパルトヘイト制度(system of apartheid)を運用している国家を守ることは、特に現在、大量虐殺を行っているという、証明されていないが、もっともらしい告発に直面している場合には、簡単な仕事ではない。イスラエル政府のプロパガンダ(ハスバラ、hasubara)がいくら法廷で無実を訴えても、ガザ地区から流れ出る映像や、イスラエル国防軍兵士自身が投稿した不穏なTikTokYouTubeの動画を完全に否定することはできず、AIPACのような団体が影響力を維持することが難しくなっている。長らくイスラエルを最も忠実に擁護してきたチャック・シューマー連邦上院議員が連邦上院議場で演説し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の政策はイスラエルにとって悪であると宣言したことは、政治の風向きが変わりつつあることが明らかだ。アメリカ政治に対する考え方も、特に若者の間で変化しつつある。イスラエルの行為をアメリカの支持条件とすることには、依然として恐るべき政治的障害(formidable political obstacles)が存在するが、特に選挙の年には、数年前ほど考えられないほどの障害という訳ではない。

私は、ワシントンには確かに潜在的な影響力がたくさんあり、それを利用するための障壁は過去に比べて低くなっていると結論付ける。しかし、イスラエルの現在の指導者たちは、この問題に関して、依然として高い決意を持っているため、アメリカの支援を削減するという信頼できる脅しがあっても、彼らが大きく方針を変えることはないかもしれない。また、バイデンや彼の側近たちが、現在の失敗したアプローチから、より効果的なアプローチに移行するために必要な精神的な調整ができるかどうかも明らかではない。イスラエルへの圧力が機能するかどうかに焦点を当てるのではなく、問うべき真の問題は単に、大規模かつ悪化する人道的悲劇に積極的に加担することがアメリカの戦略的または道義的利益にかなうかどうかである。たとえアメリカがそれを止められなかったとしても、事態をさらに悪化させることの手助けをする必要はない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年10月7日にガザ地区を実効支配するハマスによるイスラエルへの攻撃で、約1200人が殺害され、250人以上が拉致された。そのうちの一部は解放されたが、大部分は拉致されたままだ。被害者家族たちは即時の解放を求めている。イスラエルは人質の解放とハマスの壊滅を掲げて、ガザ地区に侵攻し、激しい攻撃を加えた。ガザ地区では民間人の死傷者が多数出ており、イスラエル軍の過剰な反撃に対しては国際的な非難が高まっている。イスラエルを全面的に支持し、これまでも手厚い支援を行っているアメリカでも、国内世論がイスラエルの過剰な反撃に対して嫌悪を示している。その世論を背景にして、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルに対して不満を隠そうとはしていない。

 これまでも何度か行われた停戦交渉で拉致された人質の一部が解放されているが、イスラエルの軍事的な反撃が激しさを増しながら、半年を過ぎようとしているが、人質救出の目途は立っていない。イスラエル国内でもベンヤミン・ネタニヤフ首相の強硬路線に対する反対の声が上がるようになっている。ネタニヤフ首相は政権内部の極右勢力の閣僚たちを頼りに政権運営を行っているが、一番の問題は「ハマスを壊滅させることもできず(ハマス以外の過激派組織が成長することも含めて)、人質を救出することもできず」という状態にあることだ。
 軍事力だけで比べれば、イスラエルがガザ地区を徹底的に破壊して、再占領をすることは容易なことだ。しかし、ガザ地区再占領が今回の軍事作戦の目的ではない。人質を解放することが最優先だ。ハマスの壊滅はそれに比べれば重要度は低い。ネタニヤフ首相はそのことを履き違えている。しかも、軍事作戦を進めれば進めるほどに、国際的な非難の声は大きくなるばかりだ。イスラエルはガザ地区での作戦を中止し、一部部隊を撤退させた。ネタニヤフ首相はただガザ地区を破壊し、パレスティナ人の憎しみを増大させ、肝心の人質の救出にはつながっていない。半年も経ってこのような状態では、ネタニヤフ首相は大きな失敗をしたと言わざるを得ない。

 バカ極右が下手に軍事力を持つとどのようなことを起こすか、日本にとって良い教訓だ。

(貼り付けはじめ)

ネタニヤフ首相の戦争戦略は意味をなしていない(Netanyahu’s War Strategy Doesn’t Make Any Sense

-イスラエルの計画は、それ自体の条件から見てもつじつまが合わない。

アンチャル・ヴォ―ラ筆

2024年4月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/05/israel-gaza-war-netanyahu-strategy/

2023年11月、私はテルアヴィヴでハマスに人質として拘束されたリリ・アルバッグの父親エリ・アルバッグに会った。ベギン通りの真ん中で19歳の娘の写真を手にしながら、彼はハマスに圧力をかける政府の軍事作戦を支持すると言った。「ハマスが自ら人質を解放すると思うか?」 しかし、アルバッグは我慢の限界に達したようだ。2024年3月下旬、彼はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に最後通牒を突きつけ、家族たちはもう支援集会を開かず、反ネタニヤフ抗議運動の拡大に加わって街頭に集まると地元メディアに語った。

問題となっているのは、人質の家族が、親族の帰還(the return of their relatives)とハマスのイスラエルに隣接するガザ地区からの排除(Hamas’s removal from their neighborhood)を、この順で勝利と見なしている一方で、多くの人がこの2つの戦争目的が矛盾していることを以前から知っていたことだ。しかしネタニヤフ首相は軍事作戦開始以来、人質解放よりもハマスの排除を意図的に優先してきたが、実際にはどちらも達成するための一貫した計画はない。

ネタニヤフ首相は、戦争を終結させ、人質を解放し、平和をもたらす見通し、ヴィジョンを欠いたまま、ただ出来事に反応しているだけだと、軍事アナリストやイスラエル国民の一部から非難されることが増えている。

しかし、ネタニヤフは依然として憤慨している。抗議デモに対してネタニヤフ首相は、「勝利がもうすぐ訪れるこの時期に早期の選挙は国を麻痺(paralyze)させ、ハマスを利するだけだ」と述べた。彼は今、100万人以上のパレスティナ人が避難しているガザ地区南部のラファに目をつけている。このような攻撃は国際的な怒りを買うだけでなく、ハマスとの交渉をより難しくするだろう。

2023年10月7日、ハマスがイスラエルの町やキブツ(kibbutzim)を襲撃し、約1200人を殺害、250人以上を拉致した直後、ネタニヤフ首相は宣戦布告した(declared war)。ガザ地区を空爆することでハマスに圧力をかけ、捕虜を解放させ、同時にハマスを排除するというのが、人質の家族に対する基本的なメッセージだった。

しかし、ハマスは、ガザ地区をはじめとするパレスティナ地域だけでなく、レバノン、シリア、イランなどにも拠点を構え、国民から絶大な支持を得ている。ハマスは、どのように排除するつもりなのかという、より根本的な問題については、ネタニヤフ首相は口をつぐんだ。アメリカの情報諜報機関が毎年まとめている脅威評価によれば、イスラエルはハマスの何年にもわたる抵抗に直面する可能性がある。

何年にもわたる対反乱作戦の末、イスラエルの治安部隊がガザ地区でハマスを壊滅させることができたとしても、将来のどうようなグループの再来はどうなるだろうか? イスラエル国防軍(IDF)が更に長い期間をかけてハマスの分派を壊滅させたとしても、ネタニヤフ首相は、政治的解決の目処が立たないまま、武装抵抗をどのように排除するのだろうか?

安全保障担当のある政府高官は匿名を条件に本誌に次のように語った。「私たちはハマスの全24大隊のうち18大隊を壊滅させたが、ハマスの撲滅にはどれだけの距離があるだろうか? それは大きな疑問だ。ハマスを排除することは可能だが、その期限を決めることはできない。もちろん、他のグループが台頭する可能性もある」。

ガザ地区内でのイスラエルの軍事作戦は、ハマスのインフラと軍事能力に大きなダメージを与えたが、平和は保証されていない。イスラエルの世界的に有名な国防軍と治安機関が、10月7日の攻撃の2人の首謀者、モハメド・デイフとヤヒヤ・シンワルを逮捕することができていないという事実、今もガザの裂け目のどこかに2人が身を潜めているという事実が、イスラエルの限界と、ハマス指導部が今も受けている支援の大きさを物語っている。

2月にネタニヤフ首相がついに計画の概要を発表したが、詳細はほとんどなく、イスラエルの専門家たちによって「計画ではない(non-plan)」としてすぐに却下され、「現実から切り離されている(untethered from reality)」と形容され、ただの大騒ぎのように聞こえた。結局のところ、ガザ地区再占領への行程表(ロードマップ、roadmap)以上のものではなかった。

ネタニヤフ首相は、ガザ地区を当面の間、「安全管理(security control)」し、この地域が完全に非武装化されて初めて復興を許可すると述べた。また、パレスティナ人の非武装化を望んでおり、パレスティナの国家承認を否定している。いかなる合意も、イスラエル人とパレスティナ人の「直接交渉によって(through direct negotiations)」のみ達成されるとネタニヤフは語ったが、交渉の時期は明らかにしていない。報道によると、流布された計画では、戦後のガザ地区の文民行政は、ハマス以外の非敵対的な地元の各グループによって運営されることになっている。

パッと見たところでは、ハマスの残忍な攻撃を受けて恐怖に怯え、安全に暮らしたいと願うイスラエル国民にとっては理に適っている。しかし、よくよく考えてみると、辻褄が合わない。最初に、ネタニヤフ首相はイスラエル軍を無期限に派遣するつもりなのか、それとも必要なときに必要なだけイスラエル軍に自由に立ち入ることを望んでいるのか、明らかにしていない。前者はガザ地区の再占領を意味し、後者は事実上の支配を意味する。どちらの選択肢も、イスラエル国民やイスラエルの国際的パートナーにはまだ提示されていない。

たとえ、ネタニヤフ首相が、イスラエルが最近国交を結んだ、アラブ諸国からなる多国籍軍がガザ地区の治安維持を引き継ぐことに同意したとしても、そのような多国籍軍がパレスティナ人の間でどのような信頼を得られるかについては疑問が残る。ハマスの大隊を全て非武装化するのは短期的な課題かもしれないが、その残党や別組織と戦うには何年も、もしかしたら何十年もかかるだろう。治安維持部隊にとっては、反目する準国家を監視するよりは、反乱軍に対処する方がまだ扱いやすい仕事だが、イスラエル軍には大きな犠牲を強いることになる。イスラエルの高圧的な態度は、イスラエル国内でのパレスティナ人の攻撃を抑制するか、もしくは助長するかのどちらかだ。

イスラエルの元国家安全保障担当次席補佐官エラン・ラーマンは、パレスティナ人の非急進化(deradicalize)という目標は、永続的な和平に向けたものだと語った。ラーマンは、「私たちは一過性の現象であり、遅かれ早かれ圧力で崩壊するだろうというパレスティナ人の認識を変える必要があるため、非急進化がカギとなる」と述べた。学校やモスクでの非急進化プログラムは、「イスラエルの生存権を認めない」人々(those who do not “accept Israel’s right to exist”)を対象にしたものだ。

しかしパレスティナ人は、これもまた二国家共存による解決を遅らせるためのネタニヤフ首相の戦術だと言う。結局のところ、パレスティナ人は単にハマスのプロパガンダによってイスラエルに反対しているのではない。パレスティナ人の多くは、イスラエル国家と入植者による土地収奪の犠牲者であり、それは現在の戦争による苦しみ以前の問題なのだ。ネタニヤフ首相は、パレスティナ人の自決の考えをより生産的な形で形成する方法についての計画を明らかにしていない。

ネタニヤフ首相の、地元住民に最終的な文民統制権を与えるという提案もまた、軽率に思える。いったい誰を念頭に置いているのだろうか? あるイスラエル安全保障関係者は、イスラエルに友好的なアラブ諸国、特にアラブ首長国連邦に従順な現地人はテストに合格するだろう、と語った。しかし、そのような指導者はイスラエルの操り人形とみなされ、パレスティナ人の間では立場が弱いかもしれない。ヨルダン川西岸のマフムード・アッバス率いるパレスティナ自治政府(Palestinian Authority)のように、嘲笑の的になるかもしれない。

ネタニヤフ首相のハマス壊滅、ガザ地区の非武装化、パレスティナ人非武装化キャンペーンは、事実上ガザ地区の再占領に等しい。ガザ地区を再占領することは、イスラエル国民の多くが快く思っていないとしても、ネタニヤフ首相の、計画になっていない計画はそこに向かっている。イスラエル国防軍で報道官を務めたジョナサン・コンリカスは「イスラエル人は占領という言葉を使いたがらないが、他に選択肢はない」と述べている。

先月、アメリカは停戦を求める国連安全保障理事会の採決を棄権した。ガザ地区の再占領は亀裂を更に広げるだろう。言い換えれば、ネタニヤフ首相の戦略は、ガザ地区とその200万人の住民、ますます疎外されるアメリカ政府、国際的孤立の増大に対する責任という形で、悲惨な勝利に向かう可能性がある。

※アンチャル・ヴォ―ラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌コラムニストでヨーロッパ、中東、南アジアについて記事を執筆中。ロンドンの『タイムズ』紙中東特派員を務め、アルジャジーラ・イングリッシュとドイツ国営放送ドイチェ・ヴェレのテレビ特派員を務めた。以前にはベイルートとデリーに駐在し、20カ国以上の国から紛争と政治を報道した。ツイッターアカウント:@anchalvohra

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年10月に始まった、イスラエルとハマスの紛争は半年以上が経過した。4月7日に、イスラエルはラファへの大攻勢を前にして、ガザ地区から部隊を撤収させると発表した。「勝利の一歩手前まで来ている」中で、一部部隊を撤収させた。その前には、アメリカのジョー・バイデン大統領による、イスラエルのガザ地区への攻勢による民間人の死者の増加や国際支援団体の西側諸国の国民の死亡などについて、不満の表明がなされていた。イスラエルとしては、アメリカ側の不快感を増加させないようにするため、一旦停止ということになったようだ。イスラエルは傍若無人であるが、唯一と言ってよい支援国のアメリカの機嫌を損ねたら立ち行かないことは分かっている。

 このブログでも紹介したが、アメリカ国内の世論は、昨年11月の段階での、イスラエル支援への賛成が多数という状況から変化している。イスラエル支援を求めるアメリカ国民は過半数を割っているのが現状だ。これは、アメリカのジョー・バイデン大統領にとっては、アメリカの世論の動きを背景にして、イスラエルに対して強く出られる。「戦闘を停止せよ、アメリカ世論がそのように求めている。もし停止しない場合には、支援についても再検討する」ということで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に圧力をかけることができる。イスラエル側としては、アメリカからの支援が減らされてしまえば、孤立を避けられない。

 アメリカとしては、イスラエルがハマスを支援しているということで、イランに対して攻撃を加えることを迷惑に思っている。ウクライナ戦争もママらない状況で、中東で更に戦争が起きることは好ましくない。そうしている間に主敵である中国がどんどん伸びていく。現在、イスラエルがシリアにあるイラン大使館を攻撃し死傷者が出て、それに対して、イランがイスラエルに報復攻撃を行った(イランの武器が旧式で効果はかなり限定的だったと言われている)。イランが抑制的であったという見方もできるが、中東が不安定化していることは間違いない。それで誰が得をするのかということを考えると、それはアメリカではない。

 アメリカ国内でのユダヤ系の人々の影響力の強さ・大きさはこれまでも語られてきた。マスコミにも多くのユダヤ系の人々がおり、世論形成にも影響を与えてきたと言われている。しかし、今回、アメリカ国内でもイスラエルに対しての批判が高まっているという状況になっている。イスラエルとしては、昨年10月のハマスによる攻撃を利用して、ガザ地区を攻撃し、ハマスの弱体化(育てたのはイスラエルなのに)とガザ地区の破壊、そして、イスラエルとパレスティナの二国共存を葬り去ろうということだったのだろうが、当てが外れている。半年が経過してもイスラエルの思い通りにはなっていない。また、世界中でイスラエルとアメリカに対する批判が高まっている。アメリカは何とかイスラエルを止めたい。そのために、アメリカ国内の世論の動向も武器として使いながら、支援条件を厳しくするなどの圧力をかけていこうとするだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカはイスラエルをどのように抑制できるか(How the U.S. Can Rein in Israel

-条件付き援助(conditional aid)を求める声が広がる中、バイデン大統領は非常に効果的な外交手段を見落としている可能性がある。

バーバラ・エリアス筆

2024年2月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/16/us-israel-gaza-conditional-aid-diplomacy/

ラファへのイスラエル軍の攻撃が迫る中、アメリカはガザで進行する人道災害に対処する上で、引き続きいくつかのディレンマに直面している。アメリカ国民や政策立案者たちの声はますます高まっており、アメリカがパレスティナの民間人を保護しながら同時にイスラエルの安全保障をどのように支援できるかを問う声が高まっている。

同盟諸国に矯正するのは難しい外交業務であり、特に国防に対する相手国のアプローチを制限する政策を推進する場合にはそうだ。更に言えば、アメリカのイスラエルに対する長年の関与により、アメリカの交渉力はさらに低下する。危機に陥ったイスラエルの意思決定者たちは、アメリカに恩義があると感じるどころか、フーシ派やイランを含む共通の大胆な敵に対して確立された戦略的パートナーシップを維持するというアメリカの利益が、アメリカ政府がイスラエルの政策立案者たちに厳しく圧力をかけることはできないだろうということに賭けている可能性が高い。

アメリカがパートナー諸国に圧力をかける手段として最も頻繁に議論されるのは、諸改革を援助の条件とすることだ。先週、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員とクリス・ヴァン・ホーレン連邦上院議員を含む著名な民主党議員たちからの圧力の高まりを受けて、ジョー・バイデン大統領は、アメリカの戦略的パートナー諸国全てに対し、アメリカが提供した軍事援助が国際法に従って使用されていることを証明する書面による確認書の提出を求める「歴史的」指令に署名した。しかし、これがイスラエルの政策にどのような影響を与えるのか、またバイデン政権が違反行為にどのように対応するのかは不明である。この措置がガザのパレスティナ人やアメリカとイスラエルの関係にどのような影響を与えるのかが明確でない理由の1つは、援助を改革の条件とすることに伴う複雑な問題を理解していないことにある。

アメリカの外交官たちが以前にもこのようなことを行おうとした。アメリカは自国の利益を保護しながらパートナーを幅広く支援することを目指しているが、これはイラクやアフガニスタンでの戦争で地域の同盟諸国とともにこれまで直面してきた課題である。もちろん、カブールとバグダッドはイスラエルに比べて制度的および軍事的能力がはるかに限られていたため、反乱鎮圧のための占領に関するこれらの同盟はアメリカとイスラエルのパートナーシップとは大きく異なっていた。それにもかかわらず、これらのパートナーシップの力学には大きな違いがあるにもかかわらず、アメリカ政府は、民主政治体制の促進や人権保護といったアメリカの規範や利益を維持しながら、重要な同盟国を支援する方法を見つけ出す必要があった。

歴史が示しているように、イスラエルにガザ政策の穏健化を行わせるために圧力をかける場合、条件付き援助(conditional aid)は、見落とされがちな外交手段である。しかし、アメリカの一方的な行動の脅威(the threat of unilateral U.S. action)ほどには機能しない可能性がある。

理論的には、条件付き援助の形での「厳しい措置・愛の鞭(TOUGH LOVE)」により、アメリカは影響力と物資を交換することができる。しかし実際には、そのようなアプローチの政治は、見た目よりも複雑で、アメリカにとってリスクが高い。

第一に、援助を制限することはパートナーを弱体化させるリスクがあり、それはほぼ常にアメリカの利益に反することになる。パートナーが失敗した場合、そもそものパートナーシップを動機づけた共通の脅威に対して、アメリカの立場も不安定になる。ワシントンが従えばアメリカも結果に苦しむことをパートナー諸国は理解しているため、このことはそのような脅しの信頼性を制限することになる。

2009年、当時のバラク・オバマ大統領はアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領に対し、アフガニスタンにおける汚職と麻薬取引の取り締まりを公式に求めた。なぜアメリカが上記改革を活用するために軍隊と援助を差し控えなかったのかとの質問に対し、元駐アフガニスタン米国大使は率直にその議論は「愚かだ(stupid)」と述べた。なぜなら、カルザイの弱体化はタリバンを活性化させ、アメリカの介入を延長し、アメリカが自国とアフガニスタンのパートナー国に設定した主要な国家建設の基準を後退させる危険性があるからである。

第二に、援助の削減はパートナーシップの将来に損害を与える可能性がある。パートナー諸国が、ワシントンが自国の安全を損なったと判断すれば、イスラエルの場合はロシアを含め、代替の同盟国を探すようになる可能性がある。現在のイスラエルの不安と孤立についての考え方は、並外れた技術を持って行動しない限り、進行中のイスラエル国防軍の作戦中に軍事援助を大幅に制限するというアメリカの脅しは、イスラエル当局者の怒りと抵抗に見舞われる可能性が高いことを意味している。

第三に、専門家たちとは違い、政策立案者たちは、ワシントンのハッタリを非難し、アメリカの要求に従うことを拒否する重要な同盟諸国に対処するという重い責任を負っている。反抗的な同盟諸国はアメリカにとって、双方にとって不利なシナリオを作り出す。アメリカ政府当局者たちが宣言した罰則を遵守し、戦略的パートナーを弱体化させ、場合によっては共通の敵対国を勇気づけるリスクを冒すか、コストを課すことに失敗して信頼性と将来の影響力を失うかのどちらかである。したがって、バイデン政権がイスラエルへの武器供与を遅らせる意向があるとの報道にもかかわらず、ホワイトハウスがまだ明確な計画を発表していないのは驚くべきことではない。

これらのリスクにより、援助の条件付けは、持続可能な外交アプローチとは対照的に、アメリカの外交官たちが通常は使うことを控える、露骨な戦術となっている。アメリカがパートナー諸国に依存すればするほど、援助の条件は魅力的ではなくなる。確かに、無条件援助は、たとえ恐ろしいものであっても、パートナー諸国の政策に対して少なくとも部分的に責任をアメリカに負わせることになるため、無条件援助にもリスクが伴う。たとえば、イラクでは、スンニ派の政治勢力を政府に組み込もうとするアメリカの要請に抵抗するというヌーリ・アル・マリキ元首相の決意が、2014年にイラクとシリアの一部を占拠した反乱の一因となった。幸いなことに、パートナーに圧力をかけるための別の方法がある。

その代わりに、アメリカは、パートナー諸国の参加の有無にかかわらず、それらの国々の国内政治に影響を与える政策を一方的に実施すると脅すことで、パートナー諸国の行動を変えることができる。パートナー諸国に対する強制的なメッセージは、「あなたが政策Xを実施するか、それとも私たちが実行するか、どちらかだ」というものであり、「政策Xを実施しなければ、アメリカは支援を打ち切る」という援助条件の論理とは異なる。前者のメッセージは、同盟国や同盟に広範な損害を与える可能性のある主要資源を削減するという脅しではなく、問題になっている特定の政策に焦点を当てている。

選択的一方的行動(select unilateral action)の脅威は、アメリカの大規模な介入(wide-scale U.S. intervention)を提案することを意図したものではなく、アメリカの利益にとって特に有害な地方政策に影響を与えるように調整することができる。同盟諸国はこれを自国の自治に対する強制的な脅威と認識し、このメッセージを歓迎しない可能性が高いが、目標は賭け金を高め、同盟諸国に妥協に達するよう圧力をかけることだ。

イラク、ヴェトナム、アフガニスタンでは、パートナー諸国の不作為に対して、アメリカが一方的行動を起こすと脅すことで、現地の同盟国がアメリカの要求に従うように仕向けることが多かった。例えばイラクでは、2010年にアメリカがマリキをスンニ派との関与を強めるためにこのアプローチをうまく利用できたのは、バグダッドのシーア派指導者の支持の有無にかかわらず、アメリカが従順なスンニ派指導者との関与を継続すると信頼できる脅しをかけていたからである。(しかし、2011年のアメリカ軍のイラク撤退に伴い、スンニ派民兵を一方的に支援するとの脅しがなくなったことで、アメリカはイラクにおける影響力を失った)。

アメリカが南ヴェトナムの参加の有無にかかわらず、北ヴェトナムとの妥協を進めるという確かな脅しがあったため、アメリカの撤退中にサイゴンの現地パートナーから譲歩を引き出すこともできた。 2010年、アメリカは国連当局者を招いて進捗状況を報告させることで、アフガニスタンにおける穏健な汚職撲滅改革を推進することができた。アフガニスタン政府は傍観されるのではなく、監視プロセスを監視し、途中で政策を形成するという目的もあり、妥協して監視プロセスに参加した。

一方的な行動を取ることで、アメリカの要求を満たすように重要な同盟諸国をうまく誘導してきた実績がある。しかし、それはアメリカが要求された政策を実行する唯一の能力を持っている場合にのみ適用される。例えば、パートナーに国内法の変更や攻撃的作戦からの撤退を強制するためには利用できない。これらはパートナーの参加なしにはアメリカが実施できない改革だからだ。

しかしながら、アメリカは、イスラエルがガザ地区での攻撃をより選択的に行うよう強制するために、この方法を使うことはできない。しかし、ワシントンは、たとえば、ガザ地区での標的に関する詳細な情報を一方的に公開すると脅すことで、イスラエルに活動の透明性と説明責任を高めるよう動機づけることはできる。アメリカの政策立案者たちはまた、監視とモニタリングの一形態として、ガザ地区での民間人の死亡に関する独立調査機関(independent inquiry)の設立を提案したり、紛争に対処するためにアメリカの機関を利用したりすることもできる。ヨルダン川西岸地区でパレスティナ人に対する暴力を扇動した4人のイスラエル人に対し、金融制裁(financial sanctions)を科すという最近のアメリカの決定は、この方向への一歩である。

現在のガザ地区での緊急事態に関して、イスラエルがこの重要な援助を妨害した場合、アメリカは一方的に人道援助(humanitarian aid)を提供すると脅すことができる。たとえば、USNSマーシーやUSNSコンフォートなどの、アメリカ海軍の災害対応艦艇を派遣し、この地域に配属されている空母打撃群(carrier strike groups)に参加させることで、そうすることができる。当然ながら、この措置はイスラエルの軍事作戦を弱体化させかねないと主張する批評家たちもいるだろうが、そうした立場は、パレスティナの民間人とハマスの過激派を区別できないイスラエルの失敗に安住しすぎている。アメリカは、ガザの市民が基本的なニーズと生存を確保できるよう支援することを申し出ることで、現在の攻撃に対する不快感を示すことができる。アメリカの一方的な援助をガザに送り、イスラエル側の協力があろうとなかろうと、この援助は行われると伝えれば、3つの重要なメッセージを送ることができる。

第一に、歴史的記録は、アメリカの一方的な行動に対する確かな脅しが、アメリカによる政権転覆などを避けるためにイスラエルをアメリカの立場に近づける可能性があることを示唆している。第二に、それは地域におけるアメリカの交渉の信頼性を高め、アメリカが紛争における自主的な主体であることと、イスラエルの献身的な同盟国でもあることを強化する。アメリカがイスラエルによるガザ地区占領の継続に反対し、ヨルダン、サウジアラビア、エジプトなどのアラブの主要パートナーとの関係を強化する必要がある可能性があるため、これはますます重要になる可能性がある。最後に、一方的な行動により、アメリカはパレスティナの民間人の死をただ嘆く以上のことができるようになる。アメリカが10月7日に残酷に虐殺されたイスラエルの民間人を守るために行動を開始したのと同じように、現在国連が「終末的な(apocalyptic)」状況と呼ぶ状況に直面しているパレスティナの民間人を守るために、アメリカも行動を開始する可能性がある。

あらゆる国家外交の手段と同様、これはアメリカの外交ツールキットに含まれる数多くのアプローチの1つに過ぎない。条件付援助と比較して議論されることが少ないとはいえ、戦略的パートナーに参加を強制しようとしての一方的な政策行動の威嚇は、安全保障上の同盟関係とパートナーへの物質的支援を維持しつつ、特定のパートナーの政策を問題視することができるので、より微妙でリスクも少ない。加えて、ガザ地区での一方的な政策実行を脅かすことは、アメリカが選択的な援助条件や、イスラエルの立場に異議を唱える国連行動の阻止を再考するなど、さらなる圧力経路(pathways of pressure)を検討することを妨げるものではない。

ガザ地区への攻勢を含むイスラエルの政策がアメリカの利益を侵害するものであっても、アメリカはイスラエルを支援しながら影響を与えようとするため、ワシントンは外交的アプローチにおいて機敏かつ目的意識を持つ必要がある。アメリカはもっとできることがあるし、そうすべきである。

※バーバラ・エリアス:ボードウィン・カレッジ政治学・法学准教授。著書に『同盟国が反乱を起こす理由:反乱鎮圧戦争における反抗的な地元パートナー諸国(Why Allies Rebel: Defiant Local Partners in Counterinsurgency Wars)』がある。ワシントンDCにある国家安全保障公文書館アフガニスタン、パキスタン、タリバンプロジェクト責任者を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げたが、2023年10月7日から始まった、イスラエルとハマスとの間の紛争は半年を超えようとしている。イスラエルはガザ地区での地上作戦を展開し、パレスティナ側の民間人に多数の死傷者が出ている。最近では西側諸国の支援者たちがイスラエル軍の攻撃で死亡するという事件も起きた。ジョー・バイデン政権はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と政府の対応に、極めて強い不満を持っていることが報じられている。

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いたが、アメリカの二大政党である共和党と民主党のそれぞれの支持者で、ウクライナ戦争とパレスティナ紛争へのアメリカの支援(対ウクライナ、対イスラエル)について、姿勢が異なる。民主党支持者は、ウクライナ戦争でウクライナ支援を支持し、中東紛争でイスラエル支援には不熱心である。一方、共和党支持者は逆で、ウクライナ支援には不熱心であり、イスラエル支援には熱心である。昨年の段階で、そのような世論調査の結果が出ており、このことは拙著でも紹介した。

 昨年11月の世論調査に比べて、今年3月中旬の世論調査の数字は、イスラエルへの支援に反対が増えており、過半数が反対となったということだ。民主党支持者、無党派層では反対が大幅に増え、共和党支持者の中でも支持が減ったということである。

 イスラエルによるガザ地区での地上作戦でのパレスティナの民間人犠牲者については、世界各国で報じられ、アメリカ以外の国々では、イスラエルの行動に反対が多くなっていた。アメリカはイスラエルの強力な支援国であるが、そこでも反対が多くなっている。民主党であるバイデン政権は、この世論の動きを「利用」して、イスラエルへの支援の削減や、イスラエルのガザ地区での軍事行動に制限をかけるようとするだろう。これは、今年実施される大統領選挙を見据えた動きとなる。支持基盤である民主党支持者からの指示を固めるためにも、イスラエルに対しての何らかの動きは必要となる。大統領選挙に向けて、バイデン大統領は経済回復を実績とアピールしたい。それに加えて、外交、対外政策の面でも成功をアピールしたい。ウクライナ戦争が泥沼の状況になっている中で、中東紛争は、政権にとって対処すべき問題であり、そこで成功(停戦など)をアピールできれば、政権支持率の上昇に資することになり、大統領選挙でも有利に働く。アメリカとしてはまずイスラエルに停船を促す、圧力をかけるということになるだろう。更には、ネタニヤフ首相の「交代」「更迭」ということも視野に入っているかもしれない。

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アメリカ人の過半数が現在、ガザ地区におけるイスラエルの行動に反対だ(Majority in U.S. Now Disapprove of Israeli Action in Gaza

-昨年11月から現在までで支持が50%から36%に下落した。

ジェフリー・M・ジョーンズ筆

2024年3月27日

「ギャロップ」

https://news.gallup.com/poll/642695/majority-disapprove-israeli-action-gaza.aspx

ワシントンDC発。昨年11月の時点では、イスラエルのガザ地区での軍事行動を僅差で支持したアメリカ人が、現在、この作戦に大差をつけて反対をするようになっている。現在、55%のアメリカ人がイスラエルの行動に反対し、36%が支持を表明している。
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最新の世論調査結果は、3月1日から20日までのものだ。イスラエルとハマスの戦争は5ヶ月間続き、数万人のパレスティナ人と1000人以上のイスラエル人が亡くなっている。ガザ地区の大部分は破壊され、今もそこに住むパレスティナ市民に人道援助を届ける努力を難しくしている。国連とジョー・バイデン政権を含む国際社会は停戦(cease-fire)を呼びかけているが、イスラエルとハマスの両陣営は合意できない状況だ。

今回の世論調査は、月曜日に国連安全保障理事会がラマダン期間中の停戦を求める決議を可決する前に終了した。アメリカが拒否権を行使せず、棄権したため決議は可決された。アメリカは以前に停戦を求める他の決議には拒否権を行使した。

アメリカの成人の74%は、イスラエルとハマスの状況に関するニュースを注意深く見ていると回答している。これは昨年11月に測定されたギャラップ社の世論調査の結果の72%とほぼ同じである。アメリカ人の3分の1(34%)は、状況を「非常に注意深く」注視していると答えた。

イスラエルの軍事行動に対する反対は、アメリカ人がどれだけ紛争に注目しているかにかかわらず、ほぼ同様である。しかし、注目度が低い人ほど、この問題に関して意見を持たない傾向が強く、その結果、注目度が高い人よりも支持率が低くなっている。
20240320galluppollsisraelhamas002

●共和党支持者は肯定的スタンスを維持しているが、無党派層は決定的に否定的になっている

アメリカにおける3つの主要な政治的なグループ分け全てで、イスラエルのガザ地区での行動を昨年11月時点よりも支持しなくなっている。これには、民主党支持者と無党派層の支持率が18ポイント低下したことと、共和党支持者の支持率が7ポイント低下したことが含まれる。

無党派層は、イスラエルの軍事行動に対する見方が分かれていたが、反対へとシフトした。民主党の支持者は、昨年11月の時点で既に過半数が反対していたが、現在はさらに反対を強めており、賛成が18%、反対が75%となっている。

共和党支持者は依然としてイスラエルの軍事行動を支持しているが、賛成が71%から64%に減少した。
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イスラエルの行動に対する民主党所属の連邦議員たちの間で、反対意見が拡大していることは、ジョー・バイデン大統領にとって、彼の最も忠実な支持者の間でもこの問題が困難であることを浮き彫りにしている。民主党を批判する人々の中には、バイデンは停戦を促進し、紛争地域に巻き込まれたパレスティナ市民を支援するためのより強力な行動を取らず、イスラエルに寄り添いすぎていると考えている人がいる。

バイデンの中東情勢への対応に対する支持率は27%で、今回の調査でテストされた5つの質問の中では最低の数字であった。これは、バイデンがイスラエルとパレスチティナの情勢をどのように扱っているかを支持する民主党支持者たち(47%)が、経済、環境、エネルギー政策、外交問題など幅広い分野でのバイデンの扱いを支持する民主党議員よりもはるかに少ないためである。これらの問題に関しては、民主党支持者の66%以上がバイデンを支持している。

中東情勢に関するバイデンの低評価をさらに促しているのは、無党派層のわずか21%、共和党員の16%が、この問題でのバイデンの対処を支持していることだ。

それでも、中東紛争がバイデンの政治的地位に明らかな打撃を与えている訳ではないようだ。昨年10月と11月の調査では支持率が37%であったが、今回は40%となり、これは、おそらくアメリカ国民のアメリカ経済への信頼が高まっていることが理由となるだろう。

●結論(Bottom Line

イスラエルとハマスの戦争が長引くにつれ、戦争における同盟国イスラエルの行動に対するアメリカの支持は低下している。ギャラップ社が今年2月に実施した世論調査によると、アメリカ人はイスラエルとパレスティナ自治政府の両方に対してあまり好意的でないという結果が出ている。

多くの問題でそうであるが、アメリカ国内は党派別で激しく対立している。共和党支持者の大半は、秋の調査よりは少ないものの、イスラエルの行動を支持しており、民主党支持者の大半は反対している。無党派層の意見は、民主党支持者の意見にかなり近づいている。

アメリカ人はバイデンの紛争への対応を低く評価しているが、バイデンの大統領としての仕事ぶり全般に対する支持率は紛争が始まる前より下がってはいない。中東紛争は、アメリカ人が、アメリカが直面している最重要な問題を挙げるという質問では上位にランクされていない。また、アメリカ人がアメリカの重要な利益に対する重大な脅威として、いくつかの国際問題をそれぞれ評価する際にも上位にランクされていない。しかし、中東紛争は、この問題に深い関心を持ち、バイデン大統領の対応に憤慨している、バイデンに投票するであろう民主党支持者の投票率を下げることで、大統領に打撃を与える可能性がある。

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。イスラエルとハマスの紛争についても分析してします。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカはイスラエルの建国以来、イスラエルを支援し続けている。イスラエルに対する手厚い支援は、アメリカ国内にいるユダヤ系の人々の政治力の高さによるものだ。そのことについては、ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト著『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策Ⅰ・Ⅱ』(副島隆彦訳、講談社、2007年)に詳しい。

 アメリカが世界帝国、世界覇権国であるうちは、イスラエルもアメリカの後ろ盾、支援もあって強気に出られる。今回、ハマスからの先制攻撃を利用して、ハマスからの攻撃を誘発させて、ガザ地区への過剰な攻撃を行っているのは、二国間共存路線の実質的な消滅、破棄ができるのは今しかない、アメリカが力を失えば、パレスティナとの二国間共存を、西側以外の国々に強硬に迫られ、受け入れねばならなくなる。その前に、実態として、ガザ地区を消滅させておくことが重要だということになる。

 アメリカは自国が仲介して、ビル・クリントン大統領が、パレスティナ解放機構のヤセル・アラファト議長とイスラエルのイツハク・ラビン首相との間でオスロ合意を結ばせた。二国共存解決(two-state solution)がこれで進むはずだった。しかし、イスラエル側にも、パレスティナ側にも二国共存路線を認めない勢力がいた。それが、イスラエル側のベンヤミン・ネタニヤフをはじめとする極右勢力であり、パレスティナ側ではハマスである。両者は「共通の目的(二国共存路線の破棄)」を持っている。そして、残念なことに、イスラエルの多くの人々、パレスティナの多くの人々の考えや願いを両者は代表していない。しかし、武力を持つ者同士が戦いを始めた。ハマスを育立てたのはイスラエルの極右勢力だ、アメリカだという主張には一定の説得力がある。

 アメリカとしてはイスラエルに対しての強力な支援を続けながら、ペトロダラー体制(石油取引を行う際には必ずドルを使う)を維持するためにも、アラブの産油諸国とも良好な関係を維持したい。しかし、中東地域の産油国の盟主であり、ペトロダラー体制を維持してきた、サウジアラビアがアメリカから離れて中国に近づく動きを見せている。サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)がブリックスに正式加盟したことは記憶に新しい。

 こうしたこれまでにない新しい状況へのアメリカの対応は鈍い。これまでのような対イスラエル偏重政策は維持できない。しかし、アメリカは惰性でこれからも続けていくしかない。こうして、ますます中東における存在感を減退させ、役割が小さくなっていく。

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バイデンの新しい中東に関する計画は同じことの繰り返しである(Biden’s New Plan for the Middle East Is More of the Same

-改訂されたドクトリンでは、変化はほとんど期待できない。

マシュー・ダス筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/biden-middle-east-plan-gaza-hamas-israel-netanyahu/

2023年10月7日の同時多発テロを受け、ジョー・バイデン米大統領とバイデン政権は、10月7日以前の状況に戻ることはあり得ないと強調している。バイデン大統領は10月25日の記者会見で、「この危機が終わった時、次に来るもののヴィジョンがなければならないということだ。私たちの見解では、それは二国家解決(two-state solution)でなければならない」と述べた。

先月(2024年1月)、バイデン大統領は、長年にわたるお気に入りの、『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニストであるトム・フリードマンを通じて、新しい中東に関する計画の予告を発表した。フリードマンは、「ガザ、イラン、イスラエル、そして地域を巻き込む多面的な戦争に対処するため、バイデン政権の新たな戦略が展開されようとしている」と書いた。

フリードマンは、「もし政権がこのドクトリンをまとめ上げることができれば、バイデン・ドクトリンは1979年のキャンプ・デービッド条約以来、この地域で最大の戦略的再編成(strategic realignment)となるだろう」と書いている。

私はフリードマンの熱意には感心しているが、中東に対する「大きく大胆な」ドクトリンに関しては、彼の判断に大きな信頼を置くことはできないということだけは言っておきたい。フリードマンがこれほど興奮しているように見えたのは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子の革命的ヴィジョンに熱中していたときが最後だった。フリードマンが提示するバイデンの中東に関する計画には、目新しいことや有望なものはほとんどなく、アメリカの政策が何十年も続いてきた同じ失敗の轍にとどめる危険性がある。

フリードマンが伝えるところによると、この計画には3つの部分がある。パレスティナ国家樹立のための再活性化、アメリカが支援するイスラエルとサウジアラビアの国交正常化協定(サウジアラビアとの安全保障同盟を含むが、最初の部分についてはイスラエルの支援が条件となる)、そしてイランとその地域ネットワークに対するより積極的な対応である。

第一に、ポジティヴなことに焦点を当てよう。アメリカが管理する和平プロセスの主な問題の1つは、それが概して弱い側であるパレスティナ人に結果を押し付けていることだ。イスラエルにはニンジン(carrot)のみを与え、パレスティナ人には主に棒(stick)を与える。現在、バイデン政権がこのパターンを変える準備ができているという兆候がいくつかある。ヨルダン川西岸の過激派イスラエル人入植者と彼らを支援する組織に制裁を課すことを可能にする最近の大統領令は、アメリカが最終的に双方に結果を課す用意があることを示す小さいながらも重要な兆候である。この命令が単なる粉飾決算(window dressing)であると主張する人は、米財務省金融犯罪捜査網(Financial Crimes Enforcement NetworkFinCEN)からの通知を見て、その内容について説明できる人を見つけるべきだ。

最近のホワイトハウスの覚書でも同様であり、軍事援助には国際法の遵守が条件となっており、バイデン大統領は以前この考えを「奇妙だ(bizarre)」と述べていた。覚書の必要性には疑問があるが、政府は援助条件を整えるために必要なツールと権限を既に持っている実際、そうすることが法的に義務付けられているため、それは正しい方向への一歩である。もちろん、バイデン政権がその方向に進み続けており、新たなプロセスをイスラエルによる人権侵害に関する信頼できる申し立てを書類の山の仲に隠すための単なる手段として扱っている訳ではない。

しかし、パレスティナ人への配慮を除けば、バイデンの2023年10月7日以降の計画は、バイデンの10月7日以前の計画とよく似ている。それは、根本的な優先順位が同じだからだ。バイデンの新たな計画は、中国との戦略的競争(strategic competition)、つまり、バイデン政権が外交政策全体を見るレンズである。アメリカとサウジアラビアの安全保障協定は、中国を中東地域から締め出すために必要なステップであり、バイデン政権にこのような協定を売り込む唯一の方法は、サウジアラビアとイスラエルの正常化協定(もちろん、両国が独自に追求する自由はある)というお菓子で包むことである。このような合意には多くの疑問があるが、重要な疑問がある。何十年にもわたるイスラエルとアメリカの緊密な関係と比類なき軍事支援によって、アメリカがガザでの戦争の行方に影響を与えたり、イスラエルの武器の誤用を抑制したりすることができなかったとしたら、ムハンマド・ビン・サルマン王太子との合意によって、サウジアラビアによる責任ある武器の使用が保証されるのだろうか?

ここ数カ月の出来事が、アブラハム合意の大前提である「パレスティナ人は全くもって重要な存在ではない」ということを、いかに完全に打ち壊したかを認識するために、時間を使うだけの価値はある。これは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と、ワシントンにいる彼の同盟者たちにとって、彼らが長年主張してきたことの証明として提示されたものだった。それは政治的動機に基づく願望であることが判明した。これは驚くべきことではなかった。何しろネタニヤフ首相は、イラク侵略もイラン核合意からの離脱も素晴らしいアイデアだと断言した人物なのだ。彼は、この地域についてほとんど完璧なまでに間違っている。

バイデン政権は現在、アブラハム合意の論理を受け入れて、地域住民の間でのパレスティナ解放の永続的な重要性を大幅に過小評価していたことを理解している。これは歓迎すべき修正であるが、まだ不完全なままだ。 2023年10月以前の中東に関する計画は、パレスチティ人への永続的な弾圧を前提としていたという理由だけで欠陥があったのではない。この政策には欠陥があり、安定をもたらすと約束した虐待的で代表性のない政府による、アメリカ主導の地域秩序を再強化しようとして、地域の全ての国民に対する永続的な弾圧を前提としていたからだ。 10月7日に私たちは再び酷いことを学ばなければならなかったので、このような取り決めはしばらくの間は安定しているように見えるかもしれないが、そうでなくなる時期を迎えるだろう。

緊急の優先課題は、ガザでの殺害を終わらせ、ハマスが拘束している人質の解放を確実にすることだ。2023年10月7日の直後から、バイデン政権は「未来(day after)」についての対話には積極的だが、イスラエルが日々、無条件かつ絶え間ないアメリカの支援を受けながら、現場で作り出している恐ろしい現実がある。この現実こそが、アメリカが語る空想上の未来において、実際に何が可能かを決定することになることを、アメリカ側は十分に理解していないようだ。イスラエルの戦争努力は、殺戮の終了同時に自分の政治的キャリアが終わることを知っており、それゆえに戦闘を長引かせる動機を持っているネタニヤフ首相によって率いられているのだから、深刻に継続していくのである。

人命と家屋、地域と世界の安全保障、そしてアメリカの信用に与えたダメージの多くは、既に取り返しのつかない程度にまでなっている。デイヴィッド・ペトレイアスがアブグレイブの拷問スキャンダルについて語ったように、私たちの国の評判への影響は「生分解不可能[微生物が分解できない]non-biodegradable)」となっている。バイデン大統領が任期を越えてもこの状態は続くだろう。しかし、イスラエルとパレスティナの紛争に関するアメリカの政策を国際法に沿ったものに戻すことから始め、ダメージを軽減するために政権が選択することのできる措置はある。1967年に占領された地域が実際に占領地であると明確に表明することだ。これらの領土におけるイスラエルの入植は違法であるという国務省の立場に戻すことだ。ドナルド・トランプ大統領が閉鎖し、バイデンが再開を約束した在エルサレム総領事館を、パレスティナ人のための米大使館として再開することだ。ロシアのウクライナでの戦争と同様に、国際刑事裁判所があらゆる側面の戦争犯罪の可能性を調査することを支持することだ。国連加盟国の72%にあたる139カ国がパレスティナ国家を承認している。

結局のところ、パレスティナの解放を推進する真剣な取り組みには、バイデンがイスラエルに圧力をかける必要がある。それは避けられない。しかし同時に、バイデン政権が現在の危機を単に地域政策への挑戦としてだけでなく、政権が守ると主張する「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」全体への挑戦として捉えることも必要だ。パレスティナ人への対処を前面に出しても、権威主義的支配の耐久性を前提とした安全保障戦略の論理に根本的な欠陥があることには対処できない。ジョージ・W・ブッシュの「フリーダム・アジェンダ(Freedom Agenda)」のバイデン版を私は求めていない。しかし、たとえブッシュの処方箋が間違っていたとしても、彼の基本的な診断、つまり抑圧的な体制に安全と安定を依存することは悪い賭けだということは、認識する価値がある。私たちの政策は、このことに取り組む必要がある。

※マシュー・デス:センター・フォ・インターナショナル・ポリシー上級副会長。2017年から2022年にかけて、バーニー・サンダース連邦上院議員の外交政策補佐菅を務めた。ツイッターアカウント:@mattduss

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