古村治彦です。
ドナルド・トランプ大統領がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を罵倒したという報道についてはすでにご紹介した。「狂っている」「何をやっているんだ」「ますます嫌われるぞ」ということを使ってはいけない言葉「fuck」を交えて浴びせたということだ。もっとひどい内容もあったのではないかと推察される。トランプの一連の発言は、「お前にはすっかり騙された」「イランが、イスラエルがレバノン攻撃を停止しないと和平交渉をしないと言ってきている、俺たちの邪魔をするな」という気持ちがよく出ている。
トランプがここまで感情を爆発させたのは、今回のイラン攻撃、イラン戦争が完全に失敗、大失敗、大失策だということを認めており、和平交渉もうまくいっていない、イスラエルのせいでさらに状況が悪くなるということを認識しているからだ。さらに「ますます嫌われるぞ」というのは国際ツ的な孤立を危惧しており、アメリカがイスラエルと一緒に孤立することは望ましくないということも考えの中にあったということだろう。
トランプが融通向けであること、自分の過去の発言や行動には全く縛られずに、くるくると態度を変えるということは世界中の人々が目撃し、そのような人物だと認識している。従って、「私は間違った判断をした」という言葉もさらっと言ってしまえるだろう。しかし、そのためには、「自分を間違いに導いた主要な責任者を差し出す」ということが必要になる。スケープゴートについて言及し、「こいつのせいなんだ、こいつが悪いんだ、こいつに責任があるんだ」ということが言えなくてはならない。犠牲の羊の候補者は、アメリカ側では、ピート・へぐセス米国防長官、外国では、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。へぐセス長官は、イスラエルのネタニヤフ首相がイラン攻撃を売り込んだ際に、トランプ政権の閣僚たちが不安を感じ、反対する中で、前のめりで賛成した。イラン攻撃後に、トランプが「ピート、君がやれと言ったよな」と記者会見で発言したこともある。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はなんと言っても、ホワイトハウスまで出向いて、トランプ大統領と閣僚たちを前にして、1時間にわたり、イラン攻撃のメリットをプレゼンしたという事実がある。イスラエルだけではイランへ大規模攻撃をすることができない。アメリカを巻き込めるかどうかがカギだったが、それに成功した。しかし、イラン攻撃、イラン戦争自体は失敗だった。トランプとしては、ネタニヤフ首相に責任をかぶせることが良い選択肢となる。
トランプ大統領としてはイスラエルを切り捨て、イランと和平を結び、中東地域から出ていきたい。イスラエルは既に中東地域のイスラム教国のいくつか(代表格はUAE)を取り込んでいる。ここにアメリカとイスラエルの分裂線がある。イスラエルはアメリカに見捨てられたらどうしようもない。アメリカにしがみつこうとするだろう。それならば、アメリカが支援し続けるためには、落とし前をつけてもらおう。それはネタニヤフ首相を退陣させろ(汚職で逮捕するかどうかはイスラエル国内で話し合って判断しろ)ということになるだろう。イスラエル国内で反米感情が沸き上がることも考えられる。しかし、根本に立ち返るならば、極右勢力を政治の主流に据えないということになり、イスラエル国内政治が浄化されねばならないということになる。これは日本も同じような状況である。
(貼り付けはじめ)
トランプは自分が大失敗したと認めるべきだ(Trump Should Just
Admit He Screwed Up)
-イラン戦争は明白に間違いだった。なぜそう言わないのか?
スティーヴン・M・ウォルト筆
2026年5月28日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/05/28/trump-iran-war-mistake-admit/
アメリカとイランの間で噂されている和平合意の詳細、あるいはそもそも合意が成立するかどうかも不明だが、3桁のIQを持つ者なら誰でも、イスラエルとアメリカが戦争を始めた時点でとてつもない大失敗(a
colossal blunder)をしたことを理解している。アメリカとイスラエル両国が掲げた目標は1つも達成されていない。イラン政権は崩壊せず、核兵器を放棄せず、ミサイルとドローンの能力はそのまま維持されている。イランは、近隣諸国に甚大な被害を与えたいと思えばいつでもホルムズ海峡を封鎖できることを実証した。ドナルド・トランプ米大統領とピート・ヘグセス米国防長官が過去3カ月間繰り広げてきた自慢話や威勢のいい発言は、くだらない大言壮語(hot air)に過ぎなかったことが暴露された。
和平合意が成立すれば、トランプ政権はこの豚に大量の口紅を塗りつけ、一種の戦略的勝利(strategic
victory)だと主張するだろう。しかし、納得する人はほとんどいないだろうし、こうした努力はトランプ大統領とその取り巻きの追従者たちを滑稽に見せるだけだ。この大失敗を成功と偽る説得力のある方法はどこにもない。彼らがそうしようとすればするほど、妄想に取り憑かれているように見えるだろう。
そこで私は考えた。もしトランプ大統領が自分の大失敗を認めたらどうなるだろうか? 大失敗を認めることは彼の得意分野ではないが、その点では彼だけではない。政治家は、たとえ誰の目にも明らかな大失敗であっても、大失敗を認めることはほとんどない。ましてや重要なこととなるとなおさらだ。例えば、ボリス・ジョンソン元英首相はブレグジットを擁護し続け、マイク・ポンペオ元米国務長官は、イラク侵攻(2003年)と第一次トランプ政権のイラン核合意破棄(2015年)は賢明な判断だったと今も主張している。
こうした明らかな大失敗を認めようとしない姿勢は、少々不可解だ。誰もが知っているように、完璧な人間など存在しないし、外交政策は不確実なものであり、どんなに綿密に練られた計画でも失敗する可能性がある。トランプよりも賢明で衝動性が低い指導者であっても(もっとも、トランプを基準にするのは低いのではあるが)、全てを完璧にこなせる指導者など存在しない。また、ほとんどの人は、失敗したときは、大失敗を認め、経験から学び、同じ大失敗を繰り返さないようにすることが最善策だと学ぶ。当然のことながら、高額な代償を払い続ける指導者は、いずれその代償を支払うことになるだろう。しかし、概して職務を立派に遂行し、時折の過ちを認める勇気を持つ当局者は、国民が彼らの最善の努力を認め、その誠実さを評価すれば、より人気が高まるかもしれない。
しかし、この道を選ぼうとする指導者はほとんどいないようだ。独裁者は特に間違いを認めることを嫌がる。なぜなら、彼らの権力は通常、個人崇拝(cults of personality)と、自分たちが絶対無謬であるという幻想(the
illusion that they are infallible)を維持することに依存しているからだ。しかし、民主政治体制の指導者でさえ、たとえ些細な間違いでも認めれば、反対派がすぐに攻撃してくることを知っているため、在任中は間違いを認めることをためらう。例えば、ジョン・F・ケネディはピッグス湾事件の失敗について全責任を負い、バラク・オバマはトム・ダシュルを米保健福祉省長官に任命した初期の決定(ダシュルの脱税が発覚して裏目に出た)を認め、ロナルド・レーガンはイラン・コントラ事件が間違いだったことをほぼ認めた。しかし、このような瞬間は稀だ。2004年にジョージ・W・ブッシュ米大統領が最初の任期中に犯した間違いを思い出すように求められたとき、彼は1つも挙げることができなかった。政治家が失敗を認めるのを見たいなら、たいていは回顧録が出るまで待たなければならないが、それでも期待外れに終わるかもしれない。
しかし、トランプは政治家としてのキャリアを通して規範を壊し続け、そのテフロンのような耐性はレーガンさえも凌駕する。考えてみて欲しい。彼はかつて「五番街で人を撃っても支持者を失うことはない(he could shoot someone on Fifth Avenue and not lose any voters)」と豪語した人物だ。そして残念なことだが、この発言は彼の最も的確な言葉の1つであることが証明されている。近年のアメリカ大統領の中で、カメラの前で大失敗を認め、そして前に進むことができる人物がいるとすれば、それはトランプだろう。実際、彼は過去にそうしたことがあるが、過去の反省の態度が本心からのものだったかどうかは疑問だ。
そして、それはそれほど難しいことではないかもしれない。トランプはまず、イラン問題が長年にわたり厄介な問題であり、歴代大統領も解決できなかったことを人々に思い出させることから始めればよい。彼は、この問題をきっぱりと解決したかったと主張し、もう一度爆撃すれば効果があると考えた十分な理由があったと説明できるだろう。イランの政権が不人気で、年初にデモの波を鎮圧せざるを得なかったことを指摘することもできる。この計算は大きく間違っていたことが判明したが、トランプ流の典型的なやり方で、何事も100%確実ではないと人々に思い出させ、自分の仕事は難しい決断を下すことだと述べ、様々な方面から受けた悪い助言のせいで間違いを犯したと非難することができるだろう。ここで彼は、トランプの好戦的な態度がトランプに何の利益ももたらさず、アメリカとイスラエルの両方でますます不人気になっているイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を非難することができるだろう。ネタニヤフがどれほど評判を落としているかを考えると、彼をスケープゴートにすることは、この時点でトランプの人気を高めることさえあるかもしれない。
トランプは、自身の意図は称賛に値するものであり、今回の策略は価値のある賭けだったと主張した後、この一件から多くを学んだと述べ、前任者たちと対比させるだろう。彼の声が聞こえてくるようだ。「眠そうなジョー・バイデンとは違い、彼は何事にも考えを変えず、同じ失敗を繰り返すばかりだった。私は常に学び続け、適応力のある、非常に安定した天才だ」。そして、ホワイトハウスの物議を醸している舞踏室プロジェクトなど、別の話題に移るだろう。
トランプが、数々の失策を重ねてきた2期目における最も深刻な失態に対して、このようなアプローチを取ると期待できるだろうか?
正直に言って、そうは思わない。トランプは、過去に時折、大失敗を認めてきた(たいていは、無能な任命者を解任せざるを得なくなった時だが)。しかし、重大な失敗を認めることは、彼の権力のオーラを損ない、より多くの人々が公然と彼に反抗するようになり、偉大な大統領として記憶されるという彼の夢(his dream of being remembered as a great president)を打ち砕くことになると、彼は考えているのだろう。たとえそれが今となってはどれほど可能性が低くなっているとしても諦めていないだろう。トランプの支持基盤であるMAGA支持者たちは今後も彼を支持し続けるだろうが、数カ月後には彼らだけがトランプの頼みの綱となるかもしれない。
紛争終結を遅らせることで、トランプは敗北寸前の状況から勝利の幻想を無理やり掴み取ろうとしているが、これはアメリカとその同盟諸国が被っている苦痛をさらに増幅させ、トランプ自身の評判にもさらなるダメージを与えている。彼が自らの失敗を認め、前に進む方が皆にとって良いだろう。しかし、高齢の親から車の鍵を取り上げた経験のある人なら誰でも知っているように、頑固な高齢者はしばしば自分の利益を理解できないものだ。
※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ウォルトは『新地政学(The New Geopolitics)』の著者。これは今日の世界を生き抜くために活用すべき最も重要な概念を解説した、全5回のニュースレター形式のマスタークラスだ。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』














