古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ホワイトハウス

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
 

第2次ドナルド・トランプ政権の最初の100日間の電撃作戦を支えたイーロン・マスクが政権を去った。トランプとマスクの言い合いはややヒートアップしたが、今は沈静化し、関係修復に進んでいるようだ。JD・ヴァンス副大統領とスージー・ワイルズ大統領首席補佐官が仲裁に動いたとされている。
 イーロン・マスクが最近になって、Xに「あいつは蛇みたいなやつだ」と投稿した、トランプ政権高官に注目が集まっている。それがホワイトハウス大統領人事室長セルジオ・ゴオ(Sergio Gor、1986年-、38歳)だ。ゴオはトランプ政権に登用されている人物たち数千名の採用に関する調査や試験を行った人事部門の最高責任者だ。現在、トランプ政権内で実力者となっているのがゴオである。政策面の実力者となっているのはスティーヴン・ミラー大統領次席補佐官だ。ゴオとミラーは共に、学生時代(ゴオはジョージ・ワシントン大学、ミラーはデューク大学)に、「ヤング・アメリカズ・ファウンデイション(Young America’s FoundationYAF)」の活動家として活躍したという共通点を思っている。ゴオという苗字は珍しいが、彼はヨーロッパのマルタで生まれ、少年時代に家族と共にアメリカに移住してきた。そのために、英語とマルタ語を話すことができる。マルタ系と言えば、2020年の米大統領選挙民主党予備選挙に出馬し、ジョー・バイデン政権では運輸長官を務めたピート・ブティジェッジもマルタ系(父親がマルタ出身)だ。
sergiogordonaldtrump001
sergiogorwithpopefrancis001
 拙著『トランプの電撃作戦』(秀和システム)でも触れたが、トランプ政権内には、イーロン・マスクに対する不満や反感があった。特にスタッフとして、2016年の大統領選挙から支えてきたような古参の人々にとっては、突然、莫大な選挙資金を寄付して、最も近い相棒の地位を手に入れたマスクは気に入らない存在となる。

 マスクは、自分にとって都合の良いジャレッド・アイザックマンをNASA長官にしようとしていたが、トランプが最終的に指名を撤回することになった。その過程で、ゴオが指名撤回を画策したという報道が出た。また、ゴオとマスクはその前から衝突していたという話もある。政治において重要なのは人事とお金だ。これら2つを握っている人は強い。トランプの長男と親しいゴオはそうした背景もあり、マスクに対抗したということになるだろう。マスクにしてみれば、NASA長官に自分の息がかかった人物をすえれば、スペースXのビジネスにとっても有益であったが、それを邪魔されたのだから怒り心頭になるだろう。
 イーロン・マスクは政権から外れた。これから閣僚になる、もしくはスタッフになるということは考えにくい。これからマスクの影響力は小さくなっていくだろう。そうした中で、実務を担う、スティーヴン・ミラーとセルジオ・ゴオの影響力は増していくだろう。注目していかねばならない。
(貼り付けはじめ)
マスクはトランプの有力な側近を「彼は蛇だ」と痛烈に批判した(Musk slams influential Trump adviser: ‘He’s a snake’

ブレット・サミュエルズ筆
2025年6月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5359448-elon-musk-sergio-gor-snake/

テスラの最高経営責任者イーロン・マスクは水曜日の夜、マスクともう1人の政府高官の間の不和に関する報道を受けて、ある高官を批判した。

マスクは、自身が所有するソーシャルメディアプラットフォーム「X」の投稿に返信し、セルジオ・ゴオが完全な身元調査書類を提出していないという『ニューヨーク・ポスト』紙の記事へのリンクを貼った。ゴオはホワイトハウスで最も影響力のある高官の1人であり、ホワイトハウス大統領人事室長(head of the Presidential Personnel Office)を務めている。

マスクはゴオについて「彼は蛇だ(He’s a snake)」と述べた。

ゴオはコメント要請にすぐには応じなかった。

ゴオはMAGA運動と強いつながりを持つ、非常に影響力のある補佐官である。彼はドナルド・トランプ・ジュニアの側近であり、トランプ大統領への熱烈な忠誠心も持っている。また、トランプ支持のスーパーPAC「ライト・フォ・アメリカ(Right for America)」の代表も務めている。

人事室長として、ゴオは数千人の政府職員の身元調査と任命を監督し、彼らがトランプ大統領の政策方針に沿っていることを確認している。

ゴオは、先月末に政府特別職員(a special government employee)の職を退いたマスクと大統領の激しい対立の中心人物として、メディアで大きく取り上げられてきた。

マスクとゴオはここ数カ月、閣議で人事上の意見の相違をめぐりマスクがゴオを厳しく叱責するなど、衝突を繰り返していたと報じられている。ゴオはまた、マスクの盟友でNASA長官に指名されていたジャレッド・アイザックマンの辞任を推進した重要人物としても名指しされた。トランプ大統領はマスクの退任直後、アイザックマンの民主党への寄付を「過去の関係(prior associations)」として理由に挙げ、指名を撤回した。

ある政府高官は本誌に対し、アイザックマンの指名撤回の決定は最終的にはトランプ大統領が下したと述べた。また、ゴオとマスクの間により広範な確執があるという噂を軽視した。政権関係者たちは、ゴオが政府効率化省(DOGE)職員の採用を監督していたことを指摘し、2人はDOGEの目標について概ね一致していると主張した。

=====
セルジオ・ゴオはドナルド・トランプ大統領のホワイトハウスの「極めて重要な」一員としての地位を固めた(Sergio Gor cements himself as ‘vital’ part of Trump’s White House

ブレット・サミュエルズ筆

2025年6月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5342901-elon-trump-maga-controversy/

ホワイトハウス大統領人事室長(head of the White House Office of Presidential Personnel)セルジオ・ゴオは、連邦政府の規模を大胆に再編し、忠実な支持者で固めようとするトランプ大統領の取り組みで、目立たないが中心に置かれている。

ゴオはワシントン政界の関係者以外ではあまり知られていないが、複数の情報源によると、彼はMAGA運動と強いつながりを持つ非常に影響力のある補佐官だということだ。彼はドナルド・トランプ・ジュニアの側近で、大統領に対して熱烈な忠誠心も持っている。

トランプ大統領のある側近が述べるところでは、スティーヴン・ミラー次席補佐官(deputy chief of staff)がトランプ大統領の政策を形作り、ウィル・シャーフ秘書官(staff Secretary)がトランプ大統領の見解を形作り、ゴオが政権の要職を担う人事を形作っている。

ヴァンス副大統領は本誌への声明の中で、「セルジオは、献身的で信念を持ったアメリカ・ファーストの支持者たちを大統領が率いる政府のスタッフに確保する取り組みを主導してきた。彼は素晴らしい仕事をしてきたし、これからもし続けるだろう」と述べた。

ゴオはランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)の元補佐官だが、ポール議員がトランプ大統領の政策の主要部分を盛り込んだ大規模な和解的な予算パッケージに現在反対していること、そしてポールが最近ミラーと論争していることを考えると、これは皮肉な展開と言える。

しかし、ゴオのMAGAとしての資質は疑う余地がない。彼はドナルド・トランプ・ジュニアと共同で出版社を設立し、トランプ大統領やチャーリー・カーク、トランプ大統領の上級通商顧問ピーター・ナヴァロといった保守派の著作を出版している。また、ゴオはトランプ支持のスーパーPAC「ライト・フォ・アメリカ(Right for America)」の代表も務めている。

ゴオはこれまで目立たない存在だったが、先月末に特別職員の職を退いたテスラのCEOイーロン・マスクと大統領の激しい対立の中心人物としてメディアの注目を集めてきた。

マスクとゴオについては、ここ数カ月、閣僚会議で人事上の意見の相違をめぐってマスクがゴオを厳しく叱責するなど、衝突が続いていると報じられている。政府効率化省(the Department of Government EfficiencyDOGE)を率いるマスクは、彼の上級副官たちのアクセスと権限の拡大を推進してきた。

ゴオはまた、NASA長官に指名されていたマスクの盟友ジャレッド・アイザックマンの辞任を推進した立役者としても挙げられていた。トランプ大統領はマスクの退任直後、「過去の関係(prior associations)」を理由にアイザックマンの指名を撤回した。これはアイザックマンの民主党への寄付を指している。

ある政権関係者は本誌に対し、アイザックマンの指名撤回の決定は最終的には大統領の判断だったと述べた。また、ゴオとマスクの間に広範にわたる確執があったという噂を軽視した。この関係者はゴオがDOGE職員の採用を監督していたことを指摘し、2人はDOGEの目標について概ね一致していると主張した。

ゴオは、トランプ大統領の2期目における最大の事業の1つである、連邦政府の再編と支持者による人材確保において、中心的な役割を果たしてきた。

DOGEは連邦政府職員数を大幅に削減することを使命とし、様々な政府機関でレイオフの波を引き起こし、数万人の職員に影響を与えた。これらのレイオフの一部は裁判所によって継続が認められた。

一方、ゴオはホワイトハウス大統領人事室を率いており、ホワイトハウス大統領人事室は連邦政府全体の職員の採用、審査、面接、採用プロセスを担当している。

トランプ大統領の最初の任期中、彼の最も物議を醸した政策や衝動的な提案のいくつかは、彼に反対する閣僚や任命者によって弱められたり、拒否されたりした。その中には、『ニューヨーク・タイムズ』紙に匿名の論説記事を寄稿した者もいた。

しかし、今回、こうした時折のガードレールはほぼ撤廃され、ゴオがその先頭に立って任命者がトランプ大統領の考えに沿っているかを確認している。

ゴオは就任式の直後、全ての政治任命者の採用決定はホワイトハウスを経由すると述べた。応募者は、2024年の選挙運動中にトランプ大統領をどのように支持したかなど、忠誠心を試すような質問を受けた。

ホワイトハウス大統領人事室が先月末に配布した採用ガイドラインには、応募者がトランプ大統領の大統領令をどのように推進するかについての質問と、重要だと考える政策イニシアティヴの事例を挙げるよう求める内容が含まれている。

その結果、「人事は政策(personnel is policy)」という古い格言を忠実に守る政権が誕生し、トランプ支持者たちはほぼ一致団結して、大統領の政策を最初の任期よりも積極的かつ同期したスピードで遂行している。

ホワイトハウスのスティーヴン・チャン広報部長は本誌への声明で次のように述べた。「セルジオはティームの重要なメンバーであり、トランプ大統領が至上の政権を築くのを支えてきた。長年のアドヴァイザーとして、アメリカを再び偉大にするという使命に共感し、大統領の政策実行に取り組む人材を政府職員に確保する上で、彼以上に適任な人物はいない」。

●イーロン・マスク氏の非難でヴァンスとパテルは窮地に陥った(Elon allegations put Vance, Patel on the spot

先週、マスクがソーシャルメディアでトランプ大統領を激しく非難した際、マスクは「本当の大爆弾(really big bomb)」と呼ぶものを投下した。テスラのCEOであるマスクは、これが大統領支持層に波紋を広げることを知っていたのかもしれない。

マスク氏は木曜日、悪名高い金融投資家ジェフリー・エプスタインに対する連邦捜査に関する文書にトランプ大統領の名前が記載されていると主張した。これらの文書とエプスタインの死は、トランプ支持者の間で多くの陰謀説や幅広い関心の的となっている。

この関心は、パム・ボンディ司法長官のような政府高官たちの動きを人々が厳しく監視するようにさせている。暴くべき悪質な陰謀はないというトランプ政権の主張を信じないMAGAワールドの一部の人々からは抗議の声が上がった。

マスクが投稿していたちょうどその時、トランプ政権の最高幹部2人が、エプスタイン事件に関心を持つ視聴者層と重なる影響力のあるポッドキャスターたちと共演していた。

ヴァンス副大統領はテオ・ヴォンのポッドキャストに出演し、FBI長官のカシュ・パテルはジョー・ローガンと共演した。ローガンとヴォンは共に「男らしさ(manosphere、マノスフィア)」と呼ばれる、特に若い男性に訴求力のある番組を制作する層に属している。

ヴァンスは、その後削除されたエプスタインに関する投稿を、ポッドキャスト「ディス・パスト・ウィークエンド(This Past Weekend)」の司会者ヴォンが読み上げた際にリアルタイムで知ることになった。

ヴァンスは「この件に対する私の基本的な反応は次のようになる。まず、ドナルド・トランプはジェフリー・エプスタインとは全く何も関係していない。民主党やメディアが彼について何を言おうと、それは全くの嘘っぱちだ」と述べた。

一方、パテルは、マスクの投稿が話題になった時点で、既にローガンとエプスタインに関するファイルについて長々と話していた。

しかし、パテルは、エプスタインが自殺したと主張してMAGA支持者の一部から既に批判を浴びている。彼は陰謀論をさらに深化させるための餌には食いつくつもりはない。

パテルはローガンに対して、「私はイーロンとトランプの会話には一切加わらない。私は自分のやるべきことを分かっている。会話に参加することは私の仕事ではない」と述べた。
=====

トランプとマスクの間でのNASAをめぐる争いを激化させたホワイトハウスの補佐官(The White House adviser who fueled the Trump-Musk NASA feud

2025年6月6日

『アクシオス』誌
https://www.axios.com/2025/06/06/trump-musk-feud-nasa-white-house-aide

ドナルド・トランプ大統領が先週末、イーロン・マスクによるNASA長官指名を突然撤回した直後、この衝撃的な決定の背後にいる有力者として、ホワイトハウス補佐官のセルジオ・ゴオの名前が一気に浮上した。

なぜ重要なのか:トランプ大統領は木曜日、ジャレッド・アイザックマンのNASA指名撤回が、アイザックマンと親しいマスクを「動揺させた(upset)」と認めた。これは、かつて大統領の「ファースト・バディ(First Boddy)」であり世界一の富豪であるマスクとの木曜日の衝撃的な不和につながった多くの要因の1つだった。

マスクは午後、SNSXでトランプ大統領を激しく非難した。大統領の側近や補佐官たちは衝撃を受け、中にはゴオに憤慨する者もいた。ゴオとマスクの緊張関係が今回の論争の背景にあったからだ。

共和党所属の連邦上院議員たちはまた、ゴオがホワイトハウス大統領人事室長の運営を批判していたマスクへの報復として、NASAの指名を撤回させたと非難した。

ゴオはコメントを拒否した。しかし、ホワイトハウス高官の1人がゴオに代わって『アクシオス』誌に電話をかけ、ゴオの「才能、努力、そして献身(brilliance, hard work and dedication)」を称賛した。

ズームイン:ゴオはホワイトハウスで最も影響力のあるトランプの補佐官の1人であり、ドナルド・トランプ・ジュニアと共にウィニング・ティーム・パブリッシングを設立した。この出版社はトランプとその支持者たちの著書を出版し、1月6日の連邦議事堂襲撃事件後の隔離期間中、トランプに必要な資金を提供していた。

マール・アー・ラーゴに頻繁に出入りするゴオは、トランプの親友であり大口献金者でもある元マーベル社幹部のアイク・パールマッターと親しい関係にある。

ゴオはトランプの2020年再選キャンペーンで資金調達担当の責任者を務め、2024年選挙キャンペーン中には親トランプ派のスーパーPACを設立し、約7200万ドルを投じた。

ズームアウト:政治任命者(political appointees)の審査責任者として、ゴオは新規採用者がトランプの政策を心から支持し、民主党に献金していないことを確認するため、忠誠度テストを実施した。

トランプ大統領が指名した人物の中で、裕福な起業家であるアイザックマンは、前回の選挙期間中に民主党に寄付をしていたことが注目を集めていた。トランプ大統領は土曜日、アイザックマンの指名を撤回した際に、この点を理由に挙げた。

しかし、トランプ大統領は数カ月前にアイザックマンの寄付について知らされていたにもかかわらず、何も言及していなかった。

政権関係者たちによると、今後、宇宙機関の長官が連邦上院で承認されるまで、少なくとも9カ月以上がかかる見込みとなっている。

フラッシュバック:マスクとゴオの間には緊張関係があり、3月に閣議でマスクがマルコ・ルビオ国務長官と口論になった際に表面化したと『ニューヨーク・タイムズ』紙は当時報じていた。

ニューヨーク・タイムズの記事では、ゴオについて触れられていなかったが、ゴオがマスクの人事への関与に憤慨していたと語る政権高官2人の目には、この不在は際立って映った(a conspicuous absence)。

「ゴオはマスクの態度を気に入らないと公言していた。そして閣僚の前で、(マスクに)指摘されるのも嫌がっていた」と、会議に出席したホワイトハウス関係者の1人は語った。

陰謀:水曜日に「オールイン・ポッドキャスト」で行われた討論で、アイザックマンは自身の運命は、ホワイトハウスにおけるマスクの地位低下と「影響力のある顧問がやって来て、(トランプ氏に)『これが事実だ。こいつはやめた方がいい』と言った」ことに関係していると考えていると述べた。
NASA
長官選考に関わった、あるトランプのアドヴァイザーは、「狂っている(It’s crazy)」と語った。この人物は、「アイザックマンは非常に優秀だ。億万長者で、宇宙にも行ったことがある。民主党員で、まさに私たちが求めているタイプの有権者だ。それなのに今、こんな状況になっている」。

ゴオは、自分には責任がなく、NASAを監督する商務科学運輸委員会の委員長を務めるテキサス州選出のテッド・クルズ連邦上院議員を含む共和党所属の上院議員が責任を負っていると述べている。

クルズ議員を含む、指名に関わった複数の共和党所属の上院議員事務所のアドヴァイザーは、アイザックマンに反対した上院議員やスタッフを知らないと述べている。

実際、クルズ議員は、マスクがトランプ大統領を説得してアイザックマンをNASA長官に指名させた12月に異議を唱えている。クルズ議員は当時、2つの問題を提起した。

アイザックマンは昨年、民主党が共和党のティム・シーヒー連邦上院議員(モンタナ州選出)とバーニー・モレノ連邦上院議員(オハイオ州選出)に反対する動きを助長した。

アイザックマンはマスクと同様に、NASAが火星の植民地化に注力することを望んでいるが、クルズ議員は月探査に重点を置いている。テキサス州選出のクルズ議員は、火星における中国の宇宙開発に対抗し、ヒューストンのジョンソン宇宙センターをアルテミス計画(the Artemis program.)の管制センター(mission control)として運用し続けたいと考えている。

舞台裏:マスクはクルズの反対意見を聞いてクルズに電話をかけた。アイザックマンはアルテミス計画を優先すると約束した。シーヒー議員とモレノ議員はアイザックマンに問題はないと述べた。

クルズは4月20日、アイザックマンの指名承認公聴会を開催し、委員会は19対9でアイザックマンの指名を承認した。

連邦上院関係者3人とホワイトハウス関係者2人は、アイザックマンが連邦上院本会議で70票から80票を獲得すると予想していると述べた。これは、僅差で分裂している連邦上院では異例の数字だ。

クルズ氏は本誌の取材に対し、「今週中に承認されると思っていた」と語った。アイザックマンの承認を阻止する動きがあったかと問われると、「それは正確ではない」と答えた。

一方、ゴオは「寄付について繰り返し言及することで、大統領を翻弄した」とトランプの外部アドヴァイザーは述べた。

5月30日、ホワイトハウスからの退任を発表するマスクとの共同記者会見(当時は友好的な雰囲気だったようだ)の前に、ゴオは大統領執務室でアイザックマンの経歴ファイルをトランプ大統領に提出した。その後、マスクが部屋に入り、トランプ大統領はゴオにアイザックマンについて質問した。

面会に詳しい関係者によると、トランプはマスクに対し、「この男は民主党に寄付した」と述べた。

「イーロンがアイザックマンを擁護した訳ではない。『彼は本当に有能だ』と言ったが、確かに民主党に寄付した」と取材源は語った。

ホワイトハウスのスティーヴン・チャン広報部長は書面の声明で、ゴオは「ティームの重要なメンバーであり、トランプ大統領が偉大な政権を築くのを支えてきた」と述べた。

=====

130日間の上限とは何か? マスクはドナルド・トランプ政権に「留まる」と補佐官は語る(What 130-day cap? Musk is ‘here to stay’ in the Trump admin, adviser says

-マスクがDOGEにどれくらい長く留まるのか、そして実際にどれくらい在籍するのかという疑問が浮上しているが、トランプに近い関係者たちは、終わりは見えないと述べている。
ジェイク・トレイラー、ダシャ・バーンズ筆

2025年2月28日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2025/02/28/elon-musk-doge-work-limit-023375

ドナルド・トランプ政権のホワイトハウス関係者たちは、イーロン・マスクの破壊的なやり方に辟易し、6週間にわたり、マスクが130日間の任期付き臨時公務員として勤務していることに慰めを見出してきた。

しかし、あるホワイトハウス関係者は、マスクの任期の満了日は未定だと述べている。

ハリソン・フィールズホワイトハウス次席報道官は、「ホワイトハウスの誰もが勝利に飽きていない。大統領はイーロン・マスクに、連邦政府における無駄、不正、そして権力の乱用を根絶するという使命を与えた。この使命は、完了するまで続くだろう」と述べた。

政府効率化省の責任者としてマスクは「特別政府職員(special government employee)」に指定されているため、フルタイムの政府職員と同様の財務情報開示義務は免除される。しかし、勤務日数には上限があり、年間365日のうちの130日に限られる。

この勤務日数制限のため、数千人の公務員を解雇し、他の職員にメールで職務遂行の正当性を示すよう求めるなど、連邦政府の組織を劇的に刷新してきた政府効率化省でマスクがどれだけの期間、そして実際に勤務できるのかという疑問が浮上している。

しかし、ホワイトハウス内では、マスクが130日の期限をはるかに超えて、ドナルド・トランプ大統領が許す限り留任するだろうという見方がますます強まっている。

トランプ大統領に近い外部の政治アドヴァイザーは、内部事情について匿名を条件に、「130日が経過するまで日数を数え、留任に反対する人もいるだろうが、私はそれは負け戦(a losing battle)だと思う」と語った。

この関係者によると、マスクは「今後もここに留まる」ということだ。

ホワイトハウスでのやり取りに深く関わっている人物は、匿名を条件にやり取りについて率直に語った。それによると、マスクの政府効率化省トップとしての役割について「制限(limits)」の話は一切出ていないという。マスクと今後の仕事について議論されたことは全てが長期的な視点で行われているという。

外部の政治アドヴァイザーによると、マスクの退任を待ち望んでいる人物の中には、スージー・ワイルズ大統領首席補佐官、ジェームズ・ブレア大統領次席補佐官、そしてホワイトハウス大統領人事室長セルジオ・ゴオたちがいるという。

ホワイトハウス報道官のキャロライン・リーヴィットはこの表現を否定し、「フェイクニュース」と呼んだ。

マスクが短期的なスケジュールで退任するのではないかとの示唆もいくつかある。今月初めのミュンヘン安全保障会議での演説で、JD・ヴァンス副大統領は、マスクが受けてきた批判について冗談めかして、マスクのタイムラインを認めた。

ヴァンスは「冗談として言うのだが、アメリカの民主政治体制がグレタ・トゥーンベリの10年間の叱責に耐えられるなら、皆さんはイーロン・マスクの数カ月なら耐えられるだろう」と述べた。

しかし、マスクがどれだけ長く政権にとどまるかは、たった1人の人物にかかっているのかもしれない。上級スタッフからの不満はあるものの、トランプ大統領がマスク疲れ(Musk-fatigue)を感じているという明確な兆候はまだ見られない。

ホワイトハウスの幹部スタッフがマスク氏に対して常に抱いている不満の1つは、彼の広範かつ散発的な意思決定(sweeping and sporadic executive decision-making)だ。最近では、ワイルズと部下たちは、政府機関に衝撃波をもたらしたマスクの「5つのこと」メール(“five things” email)について、苛立ちを募らせながらも何も知らされていなかった。ホワイトハウスでのやり取りに深く関わっている人物によると、マスクはホワイトハウスの中核スタッフに事前に通知することなく、政府職員に最後通牒を突きつけた。ホワイトハウスでのやり取りに深く関わっている人物によると、マスクはこれまでにも何度かそうしたことを繰り返している。マスクは今週、事前に大統領の承認を得ていたと述べている。

ワイルズは「ティームプレーヤー(team players)」の信条を掲げており、これはマスクのアプローチとは正反対だとこの関係者は述べている。

マスクが持つ臨時職員の地位は、政府が専門職員を短期的に雇用できるようにするために設けられていた。バラク・オバマ政権下では、フーマ・アベディンが国務省の臨時アドヴァイザーに任命され、130日を超える在職期間だったとして、チャック・グラスリー連邦上院議員(アイオワ州選出、共和党)から追及された。トランプ大統領の最初の任期中は、スコット・アトラスがパンデミック関連の問題で大統領に助言する地位を与えられた。

コロンビア大学法科大学院(ロースクール)教授で政府倫理を研究するリチャード・ブリフォートは次のように語った。「政府特別職員とは、助言を与えるためにやってくる専門コンサルタントのことだが、彼の仕事は助言の域をはるかに超えているように思う。もし彼が部下たちに『5つの要点を箇条書きで送ってくれなければクビだ』と言っているのであれば、それは助言の域を超えていると私は考える」。

今週初めのホワイトハウスでの記者会見で、リーヴィット報道官はホワイトハウスが130日制限を「回避(work around)」しようとするかどうかという質問を避けた。

リーヴィットは「私たちがここに来てから大体35日くらいだと思うので、100日後に質問して欲しい」と述べた。

トランプ政権が130日ルールをどのように回避するかは依然として不明だが、トランプの外部の政治アドヴァイザーは政権が正当化できる理由を求めると予想している。

アメリカ政府倫理局が2024年に出した法的勧告には、1つの可能​​性が詳述されている。文書によると、「予期せぬ事情」により130日制限を超えて勤務する臨時職員は、その状況が「特異で、発生する可能性が低い」場合、翌年も同じ職務を継続することを承認される可能性がある。

130日の期限を超えて勤務するマスクに対する法的措置の可能性がどのような影響を与えるかは未検証であり、依然として不透明だ。しかし、マスクやトランプ大統領が行政府の誰かによって阻止される可能性は低いだろう。

ブリフォートは「現在、政府倫理担当の責任者がいないという事実を考えると、一度滞在期限を超過した場合、次回は滞在期限内に収まるかどうか疑わしいという方針を政府高利化省が強制できるかどうかは明らかではない」と述べた。

トランプ大統領は今月初め、政府倫理室の質長を解任した。現在はシェリー・K・フィンレイソン室長代理が指揮を執っている。

=====

今日が誕生日:ランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)こにゅにケーション部門担当セルジオ・ゴオ(BIRTHDAY OF THE DAY: Sergio Gor, communications director for Sen. Rand Paul (R-Ky.)

ダニエル・リップマン筆

2017年11月30日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/story/2017/11/30/playbook-birthday-sergio-gor-270499

・どのように、そして、どこで、誰と誕生日を祝う?

「ブッシュ大統領の元ホワイトハウス大統領報道部長ナンシー・テイスが自宅で25人ほどの友人を招いて夕食会を開いてくれる。ナンシーは、私が10年ほど前にジョージ・ワシントン大学の学部課程に入学するためにワシントンに来て以来、私のメンターだ!

・政治の世界に入ったきっかけは?

「大学の保守活動だ! 大学の共和党支部から、ジョージ・ワシントン大学の「ヤング・アメリカズ・ファウンデイション(Young America’s Foundation)」の立ち上げ、「GWハチェット」の当時の編集長ジェイク・シャーマンとのスパーリングまで。世間は狭いと実感している。

・今読んでいる、あるいは読み終えた面白い本や記事は何? またその理由は?

ドナ・ブラジールの『ハックス(Hacks)』。前回の選挙の失敗を包み隠さず語る誠実なリベラル派だ。

アメリカ内外で進行しているトレンドで、十分に注目されていないものは何か?

「保守派はリベラル派の間で発展しているエネルギーを過小評価しているが、民主党の全体的な混乱とヴィジョンの欠如は、2018年には我々に有利に働くだろう。」

トランプ大統領の動向は?

「保守派は、彼が行った行政府と司法府の任命に興奮している。彼のアメリカ・ファーストのヴィジョンは、海外への介入を減らすことに非常に合致しており、長年にわたって世界中のあらゆる国に干渉してきた後の前向きな一歩だ」。

ワシントンの人々があなたについて知らないかもしれない楽しい事実は何?

「昨年ローマ教皇庁を訪問した際、教皇フランシスコが頭に被っていた白いスカルキャップを私にくれたこと」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

trumpnodengekisakusencover001

『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ワシントンにある有名なシンクタンクである戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の副理事長を務めたマイケル・グリーンがシドニー大学アメリカ研究センター(U.S. Studies CentreUSSCCEOに転身したのが今年3月のことだった。これは都落ちの感がある異動であったが、別の面で考えれば、対中封じ込めのために、オーストラリアを取り込むため、最前線にグリーンが移動したということも言えるだろう。今年3月1日には、グリーンは、拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも取り上げた、ミッシェル・フロノイ、ミーガン・オサリヴァンらと台湾を訪問している。グリーンはジャパンハンドラーズであるとともに、対アジア外交専門家として活動している。このブログでもマイケル・グリーンの動きは既にご紹介している。
micheleflournoymichaelgreenvsitingtaiwan512
右端がマイケル・グリーン、隣はミッシェル・フロノイ

※「20220610日 ミッシェル・フロノイ創設のウエストエグゼク社がテネオに買収される予定:ミッシェル・フロノイがバイデン政権入りするのではないかと考えられる」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/86261152.html

 マイケル・グリーンの論稿では、アメリカは対中強硬姿勢で、民主党と共和党、ジョー・バイデン大統領(民主党)が率いるホワイトハウスと共和党が過半数を握る連邦下院が協力するということになるということだ。アメリカ社会の分断は深刻になっている。政治の世界でもなかなか一致点が見いだせない。そうした場合、外に敵を作って、団結するということはよくあることだ。ドナルド・トランプ政権で始まった米中貿易戦争路線を、ジョー・バイデン政権も引き継いでいる。そして、中間選挙で共和党が連邦下院で過半数を握っても大丈夫、対中強硬路線は引き継がれるということがマイケル・グリーンの主張だ。アメリカがまとまるには外敵をつくるしかないというのは、如何にアメリカ社会の分断が深刻化しているかを物がっている。

(貼り付けはじめ)

アメリカ中間選挙の結果は、国家安全保障にとって正味のプラスになる(U.S. Midterm Results Are a Net Plus for National Security

-トランプ主義が縮小する中、国際主義の共和党(internationalist Republicans)は中国、防衛、貿易でバイデン政権に圧力をかけるだろう。

マイケル・J・グリーン筆

2022年11月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/11/us-midterm-election-republicans-biden-national-security-foreign-policy-defense-china-house-committees/

2022年の中間選挙の直前、私は『フォーリン・ポリシー』誌上で、共和党が連邦下院で勝利しても、アメリカの対中戦略競争にとって悪いことばかりではないと論じた。それは、共和党が国防費や貿易政策に対して注意を払い、バイデン政権のインド太平洋における同盟中心戦略(alliance-centric strategy)を中心に幅広い超党派的な支持を集めているからである。最終的な結果は数日から数週間は分からないにしても、実際の結果はそれ以上に良さそうだ。確かに、連邦下院共和党はハンター・バイデンや議員を退くリズ・チェイニー連邦下院議員を追及するかもしれない。そして、一般的には、バイデン米大統領の弱さを示し、アメリカの同盟諸国には連邦議会が機能不全に見えるような、パンとサーカスを共和党の支持基盤に提供するかもしれない。しかし、共和党が連邦下院の重要な委員会を支配することで、人々は表面に出てくる騒ぎを楽しむにしても、バイデン政権のタカ派と現実主義者が助かるという事実は変わらない。ケーブルテレビでジャコバン裁判を見ながら、外交政策の専門家たちは、作家のマーク・トウェインがドイツの作曲家リチャード・ワーグナーの音楽について言ったことを思い出すことだろう。それは、「そこまで酷いことはない(It's not as bad as it sounds)」だ。

まず、前回の論稿で評価分析したように、連邦下院の国防、国際関係、通商の主要委員会と小委員会のリーダーたちは、いずれも国際主義者で現実主義者(internationalists and realists)であり、国防への資源投入を推進するとともに、原子力潜水艦と先進防衛力を構築する豪英米協定(Australia-U.K.-U.S. agreementAUKUS)など、能力構築や同盟諸国との野心的な構想の進捗状況を精査することになろう。これは、多くの政策分野、特に貿易と抑止力拡大が、政権内の左翼保護主義者たち(left-wing protectionists)と軍備管理信者たち(arms control purists)の妨害に直面するバイデン政権を律するものである。

しかし、それに加えて、選挙の結果によって、共和党が連邦下院を支配し、連邦上院はこの原稿を書いている時点ではまだ未決定であることが予想され、中国との戦略的競争に向けた政権の組織化努力をより促進することになるだろう。

第一に、ドナルド・トランプ前米大統領とトランプ主義全般の縮小は、アメリカの民主政治体制が崩壊しているという有害なシナリオと戦っている海外のアメリカの外交官たちを助けることになる。例えばオーストラリアでは、最近、アメリカの選挙に関する報道がオーストラリアの国政選挙の報道を凌駕しているほどだ。2021年1月6日の暴動、選挙否定論、民主的な規範に対するトランプの非道な攻撃、民主的な選挙プロセスを制限しようとする過激派の運動という醜い光景をオーストラリア人たちが無視することは非常に困難だった。中国の脅威が同盟諸国をアメリカに接近させている今、友好国の政府が民主政治体制の方向性を見失ったかのようなアメリカへの依存を強めることを考えるのは不安であり、ワシントンの外交政策の急変は大統領選挙1回で起きる可能性がある。

先月発表された、アメリカ研究センターの調査では、オーストラリア国民の約半数がアメリカの民主政治体制の方向性について、「非常に懸念する(very concerned)」と答えている。これは、欧米諸国の同盟が共通の脅威(common threat)だけでなく共通の価値観(common values)に基づいている場合の問題点である。中国の公式な対米シナリオでは、中国のモデルよりも民主政治体制とその原則を強く支持する調査結果があるにもかかわらず、民主政治体制は最良の政府形態ではないことの証拠として1月6日の事件を定期的に取り上げている。中間選挙はこのシナリオを変え、世界中でアメリカの外交官の仕事を容易にする可能性が高い。投票率、当選者の多様性、中絶権に関する連邦最高裁の判決に対する反発、そして特にトランプ派の候補者が世論調査で劣勢だったことは、ワシントンの責任者が共和党と民主党のどちらを好むかにかかわらず、アメリカの友人にとって心強いものになる。

第二に、連邦下院での共和党の勝利の規模は、防衛と貿易に関してバイデン政権を後押しするために関連委員会に力を与えるにはちょうど良いと考えられるが、アメリカの関与(engagement)と長期戦略(long-term strategy)を弱めることを求める破壊者たちを更に増やすほど圧倒的なものではないだろう。もしケヴィン・マッカーシー連邦下院議員が連邦下院議長に選出されれば、ウクライナへの支援を削減しようとしたり、NATOに対するアメリカの関与(commitment)に疑問を呈したりする議員たちは、予想以上に少なくなるであろう。連邦上院を民主党が握れば、「アメリカを再び偉大にする(Make America Great Again)」派の国家安全保障分野での行き過ぎた行動を更に封じることができるだろう。連邦議会での戦略的競争に対する超党派の強い支持は、アメリカ研究センターなどの調査によるアメリカ国民の感情を反映しており、それが中間選挙の結果によって裏付けられた。

このことは、バイデンが率いるホワイトハウスが共和党の支配する連邦下院との取引を行うことができるとか、アメリカの同盟諸国がアメリカ政治の極端な部分を心配するのをやめるとか、極端な部分がなくなるとか、そういうことではない。しかし、過去3回の国政選挙(2018年、2020年、2022年)を貫くパターンがあるとすれば、選挙地図には反トランプの強い壁があり、連邦議会は、選挙の度に、最重要な外交政策問題について、分裂よりも統一された形になっているのだ。

※マイケル・J・グリーン:シドニー大学アメリカ研究センター所長、戦略国際問題研究所上級研究員、東京のアジア太平洋研究所名誉研究員。ジョージ・W・ブッシュ(息子)政権の国家安全保障会議のアジア担当幹部スタッフを務めた。ツイッターアカウント:@DrMichaelJGreen

=====

共和党の中間選挙勝利がアメリカの中国戦略を活性化させる(A Republican Midterm Win Will Boost U.S. China Strategy

-バイデン政権の中国政策の下でアメリカ国民を団結させるためには、ホワイトハウスと連邦議会の分裂が本当に必要なのかもしれない。

マイケル・J・グリーン筆

2022年10月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/31/us-midterm-elections-republicans-china-biden-trade-geopolitics-strategy/

来週の米中間選挙を前にして、両極化(polarization)が進んでいることは、バイデン政権にとって決して良い兆候ではない。世論調査の通り、共和党が米連邦下院の過半数を握れば、バイデン政権に対する党派的な攻撃の奔流が繰り広げられるだろう。2021年1月6日の事件を調査する委員会は解散し、ジョー・バイデン米大統領の息子、ハンター・バイデンは調査され、バイデンは弾劾手続きに直面する可能性がある。また、フォックスニューズの司会者タッカー・カールソンと彼のクレムリンへの崇拝に従う共和党の一部グループは、ウクライナへの資金提供を阻止すると脅迫するだろう。連邦議会による監視の目が厳しくなるのは歓迎すべきことだが、例えば、アフガニスタン撤退の失敗を検証するなど、ホワイトハウスにとっては苦痛であり、アメリカの指導力を懸念する同盟諸国にとっては不安なことだろう。

しかし、中国との競争に関する限り、バイデン政権の戦略でアメリカ国民を団結させるためには、政府の分裂が本当に必要なことかもしれない。なぜなら、共和党は民主党政権に対して、中国との競争において重要な2つの柱である防衛(defense)と貿易(trade)の公約を実現するよう求める傾向があるからである。同時に、米連邦議会と一般的なアメリカ国民は、中国という課題に立ち向かうという点では、他のどんなことよりも一致しているという事実が、潜在的な分裂を和らげることになるだろう。

歴史的な先例を考えてみよう。1994年の中間選挙に向け、ビル・クリントン政権は医療保険制度改革などの野心的な国内政策に政治的資源の大半を費やしていた。国防費は長期にわたって減少傾向にあり、外交政策は日本との保護主義をめぐる戦いや中国に対する最恵国待遇(most-favored nation status)をめぐる内輪もめに陥っていた。共和党が連邦下院を支配し、当時のクリントン大統領の国内政策が実質的に阻止された後、クリントンは国家安全保障にその努力と政治的資源を集中させた。日本との争いは急停止し、1996年には当時の橋本龍太郎首相が、北朝鮮や台湾など地域の有事に対処するために日米同盟を初めて強化・拡大する共同宣言を出し、わずか数年前まで酷い状態で漂流していた同盟を拡大させた。また、共和党が支配する連邦下院は国防費の削減を撤回し、アメリカ軍予算を着実に増加軌道に乗せた。2010年、バラク・オバマ大統領(当時)の最初の中間選挙で共和党が民主党から連邦下院と連邦上院を奪い、超党派連合が誕生し、オバマ政権が2011年に環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific PartnershipTPP)の枠組み合意文書に署名したときと同じことが起こった。この12カ国の貿易・投資協定は、2017年にドナルド・トランプ政権が協定から離脱しなければ、アジアにおける戦略的バランスを変化させることになっただろう。

懐疑論者たちは、「国防と貿易に前向きな共和党はもはや存在しない、つまり2016年にドナルド・トランプが大統領に当選した時に破壊された」と主張するだろう。確かに、共和党の支持層は貿易協定に懐疑的で、党内の「アメリカを再び偉大にする(Make America Great Again)」派からは危険な国内問題優先主義的な主張(isolationist voices)が出ている。しかし、中国との競争について、連邦議会ではかつてないほど超党派的な意見が交わされているのも事実だ。実際、中国との競争については最近のワシントンでは数少ないコンセンサスのある分野である。今年8月にCHIPS法(CHIPS and Science Act)を連邦議会で可決成立させたのは超党派の議員たちであり、その内容は、アメリカの半導体産業を活性化し、同盟諸国からの投資をアメリカに呼び込み、半導体開発をめぐる競争で中国に対する自由世界の優位性を維持するために、バイデン政権に500億ドル規模の予算を提供するというものだ。人工知能のような新興技術を支配するために。その法案の最初の作成者は、保守派でインディアナ州選出の共和党議員であるトッド・ヤング連邦上院議員であり、ニューヨーク州選出のリベラルなチャック・シューマー連邦上院議員が共同提案者となった。中国の脅威は、実に奇妙な仲間の、呉越同舟の枠組みを生み出している。

連邦下院司法委員会の委員長になると予想されるフリーダム議連所属のポピュリスト、共和党のジム・ジョーダン連邦下院議員は、弾劾審問やFBI・司法省への攻撃で見出しを独占するだろうが、国防、外交、貿易を管轄する委員会は、レーガン時代の国際主義者の指揮下に置かれることになるであろう。連邦下院軍事委員会の委員長に、共和党のマイク・ロジャース連邦下院議員が就任すれば、原子力潜水艦の建造や最先端技術の軍事力利用での協力に関する豪英米協定(通称AUKUS)のような同盟諸国との取り組みを遅らせている官僚的障害(bureaucratic obstacles)を取り除くよう米国防総省に働きかけることが予想される。委員会の共和党議員たちは1兆ドルを超える国防予算について話しており、周辺部の国内問題優先主義者(アイソレーショニスト)の声がどうであれ、インド太平洋のための軍事力の強化を図る可能性が高い。連邦下院貿易委員会の共和党筆頭委員であるエイドリアン・スミス連邦下院議員は、農産物輸出州であるネブラスカ州の出身であり、貿易に関する惰性的な習慣を克服し、アジアで新しい取引を行い、市場を開放するよう、バイデン政権に働きかけることは間違いないだろう。連邦下院外交委員会の共和党筆頭委員であるマイケル・マッコール連邦下院議員は、米国司法省の元テロ対策タスクフォースリーダー、連邦下院国土安全保障委員会委員長という確かな国家安全保障上の信条を持つ人物である。中国の強圧に対抗するため、より強固な同盟関係の構築を明確に打ち出している。

アメリカ国民は、同盟関係の強化、技術競争の加速、より野心的な通商政策も支持している。私が所長を務めるシドニー大学アメリカ研究センター(USSC)の依頼で実施した新しい調査の結果は、シカゴ世界問題評議会、戦略国際問題研究所、ピュー研究所など他の機関による調査結果を補強するもので、アメリカ国民が日本、オーストラリア、韓国との同盟関係を強く支持していることが明らかになった。2年前に行われたUSSCの世論調査と比較すると、これらの同盟がアメリカをより安全にしていると考えるアメリカ国民の割合は14ポイントも上昇している。ロシアのウクライナ侵攻や核の脅威、中国の台湾海峡での妨害行為などを受けて、アメリカ国民は同盟が単なる国際的な善意やワシントンの足かせではない、アメリカ自身の安全保障のためのものだと認識したということだろう。中国との完全な経済的分断(デカップリング)を支持するアメリカ人は20%に過ぎないが、アメリカ、日本、オーストラリアでは、自国が経済的に中国に依存しすぎていると考え、中国製でないスマートフォンにかなり高い金額を支払っても良いと考えており、中国と競争するために民主的同盟諸国の技術革新を支持する人が過半数を占めている。

貿易に関しても、共和党が支配する連邦議会は、予想以上に政権を後押しする可能性がある。バイデンを支持する有権者の過半数は、アメリカはTPPのような貿易協定に参加すべきだと答え、トランプを支持する有権者の大多数は参加すべきでないと答えているが、アメリカ国民全体の3分の2は、「アジアとの貿易と投資を拡大することが重要だ」という意見に同意している。数カ月後にスミス議員が連邦下院貿易小委員会の委員長を務めることになれば、より野心的な貿易政策を求める彼の主張がアメリカ国民に支持されていることに気づくだろう。スミス議員はおそらく、消極的な米国通商代表部に対して、「貿易協定」や「TPP」と呼ばれない限り、「インド太平洋経済枠組み」(単なる対話に過ぎない空想上の名称)を実質的なルール設定のための協定にするように働きかけるだろう。

このことは、アメリカ政治におけるポピュリズム(populism)、分極化(polarization)、ポスト真実の言説(post-truth discourse)の台頭が戦略的帰結をもたらさないことを論じるものではない。ヨルダンによるアメリカ政府機関への焼き討ち攻撃は、国防、外交、貿易に関する立法を行う委員会の平凡で手間のかかる仕事よりも、世界中で確実に注目を集めるだろう。海外の人々は、今回の中間選挙について懸念を持って見ている。USSCの調査によると、日本国民とオーストラリア国民の4分の3が、米中間選挙を自国にとって重要だと考えており、オーストラリア国民の半数はアメリカの民主政治体制の現状を憂慮しているという。しかし、もしバイデンが予想通り連邦下院を、そしておそらく連邦上院も失うことになれば、バイデン政権はインド太平洋における中国との競争について、連邦議会が新たな機運を高めていることに驚くかもしれない。どちらかといえば、最近の連邦下院共和党指導部の公約から判断すると、バイデン政権は連邦議会が中国を追いかけようとする熱意を抑えなければならないかもしれない。バイデンは、このような機会を捉え、中国とインド太平洋の戦略の欠けている部分(ミッシングピース)を埋めるべきである。

※マイケル・J・グリーン:シドニー大学アメリカ研究センター所長、戦略国際問題研究所上級研究員、東京のアジア太平洋研究所名誉研究員。ジョージ・W・ブッシュ(息子)政権の国家安全保障会議のアジア担当幹部スタッフを務めた。ツイッターアカウント:@DrMichaelJGreen

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2022年3月1日(日本時間では3月2日)にアメリカでは年に1回の「一般教書演説(State of the Union address)」が実施される。この日はアメリカ連邦議事堂に上下両院議員、行政府の閣僚、連邦最高裁判所の判事たち、アメリカ5軍の最高幹部たちなどが集まり、彼らの前で大統領が演説を行う。アメリカ合衆国(the Union)の国内と国外の状況(State)について、演説を行う。自分と政権の達成した政策成果を強調する。

 今回のジョー・バイデン大統領が行う一般教書演説には、国内においては、新型コロナウイルス感染拡大防止策、インフレーション対策、経済対策、雇用対策、インフラ整備策などが出てくるだろうし、国外に関してはロシアによるウクライナ侵攻が取り上げられるだろう。私が注目しているのは、ロシアや中国に対して「枢軸(axis)」という言葉を使うかどうかだ。これを使えばアメリカは露中を屈服させるまで戦うということを示唆することになるからだ。

 今回のバイデン大統領の一般教書演説について、ホワイトハウスのサキ報道官は「楽観主義」が入るだろうということを述べている。現在の閉塞状況での楽観主義とはどのようなものになるのか気になるところだ。ただの美辞麗句、空々しい言葉の羅列で「希望」を語られてもそれはただの能天気な態度である。アメリカ国民に、そして世界中の人々に本当の希望を持たせるような演説になるのか、残念だが期待が持てない。

 

(貼り付けはじめ)

一般教書演説でバイデン大統領はウクライナについて「楽観的に」を語るだろう(Biden will speak on Ukraine, 'optimism' in State of the Union

ジョセフ・チョイ筆

2022年2月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/596029-biden-will-speak-on-ukrainian-invasion-in-state-of-the-union-but-will?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、ジョー・バイデン大統領は、火曜日(2022年3月1日)の一般教書演説(State of the Union address)でロシアのウクライナ侵攻について話すが、楽観的なメッセージも送るだろう、と述べた。

ABCの番組「ディス・ウィーク」の司会者ジョージ・ステファノポロスは日曜日、バイデン大統領の一般教書演説の内容が先週のウクライナ侵攻でどう変更されたのかと、先に質問した。

サキ報道官は次のように述べた。「一般教書演説で、アメリカ国民と世界中で見ている誰もが、大統領が過去数カ月にわたって主導してきた、独裁政治とプーティン大統領の外国侵略の試みと戦うための世界的連合(global coalition)を構築する努力について話すことに関しては疑問の余地はないだろう」とプサキ氏は述べた。

サキ報道官は更に「しかし、人々はバイデン大統領から、彼の楽観主義(optimism)と、アメリカ国民の回復力(resilience)と強さに対する彼の信念について聞くことになる」と述べた。

サキ報道官は、一般教書演説について特定の瞬間にメッセージを伝えるものだと指摘した。オバマ前大統領は大不況の最中、最初の一般教書演説を行い、ブッシュ前大統領は911テロの数カ月後に最初の演説を行ったことを指摘した。

バイデン大統領はウクライナの危機を認めつつ、「私たちが期待すること」について話すだろうということだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2021年5月29日に発売になった最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を是非お読みください。

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001
 
悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 ジョー・バイデン大統領の世論調査の結果についての記事をご紹介する。全体では支持率60%ということになる。下の記事に掲載されているより詳しい結果を見ていただくと、性別、人種別、地方別、住んでいる場所の種類別、年収別、学歴別、支持政党別のより詳しい数字が出ている。性別では男性の方が女性よりも支持率が高い。人種別では非白人(アフリカ系、アジア系、ヒスパニック系)の方が白人よりも支持率が高い。地方ではアメリカ西部(太平洋沿岸)、住んでいる場所では都市部、年収では7万5000ドル以上、学歴では4年制大学卒以上でバイデン支持が高い。支持政党別では、民主党支持で94%、共和党支持では23%であった。女性の人気が低い理由はどうしてなのかが分からない。
bidenapprovalrate20210522001

 政策分野別では、経済対策では57%の支持、雇用対策で57%、テロリズム対策で56%、移民対策で49%、外交で53%、政府の運営で59%、新型コロナウイルス感染対策で68%だった。新型コロナウイルス感染対策は評価が高いが、外交政策では評価が低いという結果になった。最も評価が低いのは移民対策ということで、カマラ・ハリス副大統領を責任者に任命した。概して国内政策の方が外交政策に比べて評価が高いが、これは、国内政策会議委員長に任命したスーザン・ライスの功績ということになるだろう。スーザン・ライスについては拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で詳しく取り上げている。

 バイデン政権は600兆円規模の予算を提案し、雇用と経済浮揚を目指している。しかし、これには赤字国債とインフレの問題が付きまとう。「ある程度のインフレ率まで国債発行しそれを財源に回しても構わない」というMMT理論については、賛否両論ある。現在の日本はMMT理論を実践しているという状態であるが、物価上昇率は目標の2%に遠く及ばない。アメリカではインフレ懸念が高まっているが、建材が回復しきらないうちにインフレになるということは人々の生活に大きな負担を強いるということになる。ここの見極めが重要だ。

 バイデン大統領はかなりリベラル派、進歩主義派に近い政策を実行しているが、民主党内部の保守派(ブルードッグ)や共和党側とどのように折り合いをつけるか、その政権運営が注目される。

(貼り付けはじめ)

世論調査:大統領としてのバイデンの仕事ぶりに60%が承認を与えた(Poll: 60 percent approve of Biden's job as president

ガブリエラ・シュルト筆

2021年5月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/hilltv/what-americas-thinking/554855-poll-60-percent-approve-of-biden-as-president

最新の『ザ・ヒル』誌・ハリスX社の共同世論調査の結果によると、バイデン大統領のホワイトハウスでの働きについて10名の内6名が認めているということが分かった。

2021年5月17日から19日にかけて、登録済の有権者を対象に実施された世論調査の結果では、60%が大統領としてバイデンの働きぶりを認めている。4月26日から28日にかけて実施された世論調査の結果とほぼ同じだった。

今回の世論調査の結果では、バイデンの新型コロナウイルス感染拡大対応に対して最も高い支持が与えられているが、移民対策については最も低い支持しか与えられていない。新型コロナウイルス感染拡大には68%が支持を与え、移民対策については49%が支持を与えた。

59%がバイデンの政権による統治の仕事ぶりを認めた。

経済対策と雇用創出に対しては57%、テロリズム対策には56%が支持を与えた。

イスラエルとハマスとの間での暴力衝突が発生して以降に今回の世論調査は発表されたが、バイデンの外交対応についての支持率は56%から53%に微減であった。

両者の停戦合意は木曜日に発表された。

最新の『ザ・ヒル』誌・ハリスX社の共同世論調査は1889名の登録済の有権者を対象に実施された。誤差は2.25ポイントである。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ジョー・バイデンはインフラ整備関連法案成立のために動いている。そのために、バイデンの増税に対して支持していないジョー・マンチン連邦上院議員と一対一で会談を持つということになった。また、シェリー・ムーア・キャプト連邦上院議員やその共和党の議員たちとも会談を持つということも発表された。
joebidenjoemanchin001

ジョー・マンチンとジョー・バイデン
 ジョー・マンチン(Joe Manchin、1947年-、73歳)とシェリー・ムーア・キャピトは共にウエストヴァージニア州選出の連邦上院議員だ。マンチンは2010年から、キャピトは2015年から議員を務めている。マンチンは上院ではエネルギー委員会に属している。ウエストヴァージニア州は石炭産業が盛んであり、炭鉱夫たちの労働組合が民主党の支持基盤となっている。ウエストヴァージニア州は民主党の地盤であるが、決してリベラル色が強くはない。きちんと働いてきちんと報酬を得るという価値観を大事にしており、保守的な色合いが強い。マンチンはウエストヴァージニア州議会から政治的キャリアを始めた、叩き上げの政治家だ。州下院、州上院、州務長官、州知事とキャリアを重ねて国政に出てきた。マンチンは民主党の政策に反対し、時には共和党の政策に賛成票を投じるということもある。全米ライフル協会の会員でもある。
donaldtrumpjoemanchin001

ドナルド・トランプとジョー・マンチン
 シェリー・ムーア・キャピト(1953年-、67歳)はジェイ・ロックフェラーの後任として議員に当選した。ロックフェラーは民主党所属だが、キャピトは共和党所属で、共和党が議席を奪った形になっている。父親は1969年から1977年、1985年から1989年まで合計3期12年にわたりウエストヴァージニア州知事を務めたアーチ・ムーアだ。1977年から1985年までの2期8年知事を務めたのがジェイ・ロックフェラーだ。こうして見ると、ムーアは親子でロックフェラーと政敵として縁がある。シェリーはウエストヴァージニア州下院議員、ウエストヴァージニア州選出連邦下院議員を務め、連邦上院議員に当選した。シェリー・ムーアは中道・穏健派の議員である。
shellymoorecapito002

シェリー・ムーア・キャピト
shellymoorecapitojoebiden001
会談を持つバイデンとキャピト
 現在、連邦上院は民主、共和両党が50名ずつで拮抗しており、議長役である副大統領のカマラ・ハリスの投票によって民主党が自分たちの法案を可決できるという状態になっている。日本の政党と違い、アメリカには党議拘束という制度はなく、議員たちはたとえ自党が推進する政策であっても反対をすることがある。また、逆のケースもある。現在、民主党がかろうじて過半数を握っている状態では、民主党内から反対が出ることは民主党、バイデン政権にとっては避けたい状況である。従って、ジョー・マンチンの存在感が増す結果となっている。また、シェリー・ムーア・キャピトは民主党側の主張にも理解を示す共和党議員であり、説得や話し合いをしようとしている。

 インフラ整備にために増税も赤字国債発行も厭わないとバイデンは主張しているが、それがそのまま通るというものではなく、ここから妥協が図られる。
akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

(貼り付けはじめ)

バイデンがマンチンとの一対一の会談を持つ(Biden to go one-on-one with Manchin

モーガン・チャルファント筆

2021年5月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/552632-biden-to-go-one-on-one-with-manchin

バイデン大統領は月曜日、ジョン・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)と一対一で会談を持ち、インフラ整備関連法案について議論する予定だとホワイトハウスが発表した。議論の中では企業税の税率についての意見の相違についても取り上げられるだろうとも発表された。

バイデンは企業税を21%から28%に引き上げ、それを原資とする2兆3000億ドル(約250兆円)規模のインフラ整備案を提案した。マンチン議員はこの税率引き上げ幅は大き過ぎると述べた。マンチンは企業税の引き上げについて25%までは支持するだろうと述べた。

マンチンはバイデンの政策にかかる予算について懸念を表明している。その中には1兆8000億ドル(約200兆円)の幼児教育と短期大学の拡大や低所得、中間所得の世帯の減税政策も含まれている。

マンチンから支持を得ることは民主党にとって極めて重要だ。民主党が予算に関する交渉プロセスを使いながら法案を可決させるためにはマンチンの支持が必要だ。法案を可決させるためには民主党に所属する議員全員の賛成が必要であるからだ。

先週、バイデンは企業税の引き上げ計画については妥協する余地はあるが、赤字についての懸念のためにインフラ整備の予算を削るという法案は支持しないと述べた。

バイデンは水曜日、記者団に次のように述べた。「私は妥協することについてはやぶさかではない。しかし、私たちが主張していることについて予算をつけないということについては譲歩をしないつもりだ。赤字国債発行で予算をつけるということはしたくない。赤字国債額は全体で既に2兆ドルに達しているのだ」。

バイデンはまた共和党側とも交渉を行い、インフラ整備に関して妥協を引き出そうとしている。こうした努力は今週、重要な局面を迎えている。

ホワイトハウスは、月曜日にバイデンがトム・カーパー連邦上院議員(デラウェア州選出、民主党)と一対一の会談を持つと発表した。カーパー議員は連邦上院環境・公共事業委員会の委員長を務めている。カーパー議員はインフラ整備法案を進めようとしている。

カーパー議員は以前にもデラウェア州選出の連邦上院議員の同僚であるクリス・クーンズ議員(民主党)と一緒にホワイトハウスを訪問し、バイデンと会談を持った。しかし、月曜日のホワイトハウス訪問はマンチンのバイデンが大統領になって初めての会談ということになる。

バイデンは今週から自身のインフラ整備提案について、連邦議員たちとの会談をスタートさせる。バイデンのインフラ整備法案は何らかの形で進めるためには時間の制限に直面している。ホワイトハウスは、バイデン大統領はメモリアルデー(5月31日)までに何らかの「進展」があり、夏までに法案が可決することを望んでいると発表した。これが意味するところは、これからの数週間が法案可決のための道筋を見つける重要な機関となるということだ。

バイデンは水曜日に民主、共和両党の連邦下院、連邦上院の指導部と会談を持つ。シェリー・ムーア・キャピト連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、共和党)やその他の共和党の議員たちとは木曜日に会談を持つ。そこでの議題は共和党側が議会に提出している、バイデンの提案した案よりも予算規模が小さい5680億ドルのインフラ整備法案である。この法案は、道路や橋といった伝統的な物理的インフラのみを対象にしている。

(貼り付け終わり)
akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001
悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ