古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ポピュリズム

 古村治彦です。

 私はブログや著書の中で、馬蹄理論(horseshoe theory)を紹介した。2016年のアメリカ大統領選挙において、共和党ではドナルド・トランプ、民主党ではバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)が人気を集め、トランプ主義と進歩主義がこの大統領選挙のポイントになった。そして、この両者の主張が実は近いものとなっており、大きくは反エリート・反エスタブリッシュメントのポピュリズムと、エスタブリッシュメントの戦いという構図になっていることが明らかになった。民主党の予備選挙で苦戦し、本選挙で敗れたヒラリー・クリントンは、バーニー・サンダースとドナルド・トランプが代表するポピュリズムに敗れたということになる。この全く相いれないトランプとサンダースが既存の政治に対する抗議の声を集めるポピュリストであり、彼らの主張が似てくるということを説明するのに使われるのが馬蹄理論である。その概念図は以下の通りだ。
horseshoetheory101

 現在、民主党内部で勢力を伸ばしているのが民主社会主義(Democratic Socialism)だ。都市部を中心に、若者たちの間で支持が拡大しており、民主社会主義を標榜する候補者たちが、連邦議員選挙や地方選挙で民主党の予備選挙に勝利して候補者になっている。しかし、そもそもはリベラリズムこそは、そのような既存の政治や権益に反対し、因習を打破し、個人の幸福を増幅させるためのイデオロギーであった。ところが、現在では、エスタブリッシュメント、体制派のイデオロギーとなって、人気を失っている。下記論考の著者ザカリアはリベラリズムの失敗について次のように書いている。

(引用貼り付けはじめ)

ウールドリッジが指摘する第二の失敗は、リベラル派自身の地位に関わる問題であるだけに、より耳の痛い話だ。リベラリズムは「メリトクラシー(meritocracy、能力主義)」を信奉している。歴史的に見れば、これはリベラリズムの最も崇高な理念の1つだった。生まれや人種、カースト、階級ではなく、才能と努力によって人が成功を収めるべきだと主張してきた。しかし時が経つにつれ、能力主義によって選ばれたエリート層は、それ自体が一種の「貴族階級(aristocracy)」へと硬直化してしまった。

リベラル派のエリート層は社会正義を掲げながらも、卒業生の子供を優先的に入学させる「レガシー入試(legacy admissions)」の撤廃にはほとんど何もしようとしない。彼らは貧困層の社会的地位向上を望むが、それが自分たちの住む緑豊かな住宅街への住宅増設を伴うとなれば話は別だ。個人の能力や功績を称賛する一方で、個人の人間性よりも集団的アイデンティティ(group identity)に基づいて人を判断しがちな、巨大な多様性推進の官僚機構(a vast diversity bureaucracy)を作り上げてしまった

(貼り付け終わり)

 「リムジン・リベラル」という言葉がある。リムジンのような高級車に乗り、大邸宅に住みながら、口を開けば、平等や福祉について語る金持ちのリベラルを揶揄する言葉である。ハリウッドの映画スターや人気歌手でもリベラルな主張しながら煌びやかな暮らしをしているということについて、人々は矛盾や偽善を感じている。彼らが正当に得た利益でどのような暮らしをしようがそれは勝手であり、何も悪いことではないのであるが、「お前たちの言っていることは口先だけだ」と捉えられてしまう。

 リベラリズムが再生し、再び人々の支持を得るためには、「口先だけ」と捉えられないようにすることであり、そのためには以前は持っていた「急進性」を再び取り戻すことだ。そのためには民主社会主義の主張を取り入れ、批判にも真摯に向き合うことが必要ということになる。

(貼り付けはじめ)

リベラリズムは急進的にならねばならない(Liberalism Must Get Radical

-かつては攻撃対象であった「エスタブリッシュメント(the establishment)」のイデオロギーとなった。それがリベラリズムは敗北しつつある理由だ。

ファリード・ザカリア筆

2026年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/26/liberalism-socialism-populism-mamdani-democratic-primary-elections-burnham-revolution-wooldridge/

zohranmandani2026001

ニューヨーク・ブルックリンにて、ニューヨーク市選出の連邦議会候補クレア・バルデス(マムダニが民主党予備選挙で支持した3人の進歩主義派候補の1人)の開票を見守る集会で、ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニが演説を行った(2026年6月23日)

大西洋を挟んで起きた最近の2つの出来事が、ある共通の問題を浮き彫りにしている。イギリスでは、威厳あるキア・スターマーの後任首相として有力視されているのがアンディ・バーナムであり、彼は「ビジネスに友好的な社会主義(business-friendly socialism)」を信条に掲げている。一方ニューヨークでは、民主党予備選挙で民主社会主義者が目覚ましい勝利を収めた。これは、急進的な左派勢力が、抗議の声を政治的権力へと転換する道を見出したことを示唆している。

まず断っておくが、左派が一様に社会主義に向かって突き進んでいる訳ではない。ニューヨーク市外の多くの予備選挙では、穏健派の民主党員が勝利を収めている。市外の激戦区の1つでは、退役軍人のケイト・コンリーが圧勝した。しかしながら、ある種のリベラリズムが、その勢いや自信を失いつつあり、自らが代表すると主張する人々とのつながりも希薄になっていることは確かだ。

エイドリアン・ウールドリッジの近著『革命的中道(The Revolutionary Center)』は、啓蒙時代から現代に至るリベラリズムの知的歴史を描いた素晴らしい1冊だが、この本の中で著者は、かつてリベラリズムが政治において最も急進的な勢力であったことを想起させている。当時、それは世襲の特権、独占的権力、検閲、貴族制、聖職者の権威、そして閉鎖的なギルドといったものに挑む存在だった。それは、エスタブリッシュメント側のイデオロギーではなく、むしろエスタブリッシュメントを打ち砕くための「破城槌(battering ram)」のような役割を果たしていた。

今日、リベラリズムは権力と同一視されるようになった。名門大学、財団、メディア機関、大企業、そして官僚機構といった権力中枢と結びついている。ウールドリッジは、こうした状況が2つの深刻な失敗を招いたと主張している。

第一の点は「受動性(passivity)」だ。現代のリベラリズムは、少なくとも1990年代以降、自由市場と自由な個人を称揚してきた。実際には、それは経済活動と私生活の双方で規制を撤廃し、その結果生じる事態を「自由の代償(the price of freedom)」として受け入れることを意味していた。市場においては、これが企業の統合や格差の拡大を野放しにする結果を招いた。私生活においては、リベラルは、特定の行動が社会を破壊しかねないものであると指摘することに躊躇するようになった。

その結果がリベラル的宿命論(liberal fatalism)だ。薬物依存や精神疾患を抱えた人々が街頭で野宿生活を送っていても、リベラルはそれを単なる住宅問題として片付けることが多い。何百万人もの人々が肥満関連の病気に苦しんでいるが、リベラルは、消費者を加工食品中毒に陥らせている企業を追及するよりも、「食品砂漠(food deserts、生鮮食品を入手しにくい地域)」のせいにすることを選びがちだ。ソーシャルメディア企業もまた、消費者の注意を奪い合うという点で同様の手法を採用している。

ウールドリッジは、「リベラル・パターナリズム(父権主義、liberal paternalism)」の復権を提唱している。この言葉は、現代人の耳には耳障りだ。しかし、リベラルな社会とは、個人の権利を尊重すると同時に、個人に責任を求める社会であるべきだ。自由は国家によってのみ脅かされるのではなく、依存症、独占、犯罪、無知、そして何らかへの依存によっても破壊され得るということを理解すべきだ。

これは社会主義を擁護する主張ではない。より真の姿に近いリベラリズムを求める主張だ。リベラル派が市場を支持すべきなのは、市場が強者による支配や格差の拡大を許容するからではなく、真の競争があれば「持たざる者(弱者)」が強者に挑むことが可能になるからだ。健全な市場とは、4社程度の企業が業界をひそかに分割し、弁護士やロビイスト、アルゴリズムを駆使して新規参入者を排除するような市場ではない。新規参入者が台頭し、消費者が選択を行い、労働者が自由に移動し、既存の企業が失敗し得るような市場こそが健全なのである。

ウールドリッジが指摘する第二の失敗は、リベラル派自身の地位に関わる問題であるだけに、より耳の痛い話だ。リベラリズムは「メリトクラシー(meritocracy、能力主義)」を信奉している。歴史的に見れば、これはリベラリズムの最も崇高な理念の1つだった。生まれや人種、カースト、階級ではなく、才能と努力によって人が成功を収めるべきだと主張してきた。しかし時が経つにつれ、能力主義によって選ばれたエリート層は、それ自体が一種の「貴族階級(aristocracy)」へと硬直化してしまった。

リベラル派のエリート層は社会正義を掲げながらも、卒業生の子供を優先的に入学させる「レガシー入試(legacy admissions)」の撤廃にはほとんど何もしようとしない。彼らは貧困層の社会的地位向上を望むが、それが自分たちの住む緑豊かな住宅街への住宅増設を伴うとなれば話は別だ。個人の能力や功績を称賛する一方で、個人の人間性よりも集団的アイデンティティ(group identity)に基づいて人を判断しがちな、巨大な多様性推進の官僚機構(a vast diversity bureaucracy)を作り上げてしまった。

これが最も顕著に表れているのが初等・中等教育の現場である。真にリベラルな政治とは、まず子供を起点に考えるものだ。アメリカの子供たちを置き去りにしながら自らの権力を拡大させるだけの組織―労働組合、官僚機構、教育委員会、大学の学部など―があれば、それらすべてに立ち向かう姿勢が必要だ。

民主社会主義者や右派ポピュリストが支持を広げているのは、まさにこの点においてだ。彼らは、人々が「自分のために戦ってくれる誰か(someone to fight for them)」を求めていることを理解している。彼らが提示する解決策は、時に誤ったものであるかもしれない。左派は階級闘争(class warfare)、保護主義、国家統制を掲げ、右派は保護主義、民族的怨嗟(ethnic resentment)、人種的な過去への郷愁を煽る。しかし、彼らは既得権益に果敢に挑む「アウトサイダー」のように映る。自由が単なる無秩序を意味するように思える世界において、彼らは人々を守る存在として提示される。

リベラリズムが直面する危機を脱する道は、リベラリズムを放棄することではない。その「急進的な精神(radical spirit)」を取り戻すことだ。リベラル派は今一度、独占、世襲による特権、閉鎖的なシステム、そして不公平な仕組みを憎む存在となるべきだ。真の競争、真の能力主義、そして真の機会均護を擁護しなければならない。市場を圧殺する企業権力、内部関係者を保護する政府権力、そして個人の尊厳の代わりに集団的アイデンティティを優先する官僚機構を生み出す文化的権力―これら全てに立ち向かうべきだ。

ウールドリッジが論じるように、「中道」とは単に左派と右派の中間地点にあるものではない。それ自体が独自のやり方で革命的である必要がある。リベラリズムが掲げた偉大な約束は、人々を自由の名の下に放置し、衰退させることではなかった。人々が自らの人生を豊かに花開かせるために必要な手段、ルール、そして責任を与えることこそが、その約束だった。

リベラリズムは、凝り固まった権力に対する反乱として始まった。それが今後も生き残るためには、再びそのような存在へと立ち返るしかない。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は9年ぶりに中国を訪問し、習近平国家主席と首脳会談を行った。トランプ大統領は自身のSNSで「習近平主席が『アメリカは衰退国家かもしれない』と述べたが、それについては、バイデン政権の下での点であれば100%正しい」と投稿した。第二次トランプ政権下ではその逆になっており、習主席からは業績について祝福されたとも書いている。「G2」「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)を率いるアメリカと、西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)を率いる中国」という枠組みで世界の動向を決める最高峰の首脳会談が行われている中で、アメリカ大統領がこのようなことを投稿するということは前代未聞である。このような前代未聞のことを融通無下に行えるのがトランプ大統領の真骨頂である。

 トランプをはじめとする世界各国のポピュリズム(既存のエリートたちに対する人々の異議申し立て)を基盤とする指導者たちの外交政策や外交姿勢についての共通点を抽出しているのが以下の論稿だ。重要なポイントは以下の通りだ。

「しかし、問題は、ポピュリスト的な外交政策が自己強化的(self-reinforcing)になっていることだ。トルコ、インド、ハンガリーの例に見られるように、失敗が人々の行動を変える可能性は低い。循環論法(the circular logic)はあまりにも強力だ。外交政策の私物化とエリート層の排除(the personalization of foreign policy and dismissal of elites)は、指導者たちを軌道修正に向かうように促すフィードバックループ(feedback loop)から孤立させてしまう。社内メディア制作とニューズのキュレーションはこのループを増幅させる。ポピュリストによる「腐敗したエリートたち」という枠組みと壮大な歴史叙述は、世界的な反発を自らのヴィジョンのさらなる裏付けと捉えさせる。そして、世界的な恐喝によって得られたわずかな利益であっても分配することで、国内からの批判にもかかわらず、主要支持層の忠誠心を確保することができる」

 トランプ大統領の今回のSNS投稿について言えば、「ジョー・バイデン前政権」という「腐敗したエリートたち」によるアメリカの衰退を中国の最高指導者も認めているが、自分の業績は評価したという自己宣伝を行っている。こうした行為は「主要支持層の忠誠心を確保する」ためのものとなる。外交政策についてこのように見てみることで、興味関心が高まると思う。ぜひ参考にしていただきたい。

(貼り付けはじめ)

ポピュリスト外交政策の7本の柱(The Seven Pillars of Populist Foreign Policy

-トランプの世界へのアプローチを理解するには彼に似ている指導者たちを見てみよう。

リセル・ヒンツ、ベーク・イーセン、トゥーダー・オネア筆

2026年2月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/19/trump-erdogan-orban-modi-india-hungary-turkey-populism-corruptionthe-seven-pillars-of-populist-foreign-policy/

ドナルド・トランプ大統領就任から1期、1年、1カ月が経過した現在も、アナリストたちは彼の外交政策をどう理解すべきか議論を続けている。トランプは新たな世界的課題に対し、ワシントンの伝統的なアプローチを調整していると主張する人もいれば、彼のイデオロギー的衝動がアメリカの強さの源泉を独自に誤解していると主張する人もいる。良くも悪くも、トランプが外交政策上の制約に直面する状況は、最初の任期に比べてはるかに少なくなっていることは明らかだ。

私たちは、トランプ外交を理解するための最良のアプローチは、アメリカの世界における独自の地位やトランプ自身の特異性ではなく、むしろ彼のポピュリスト的な統治形態(his populist form of governance.)にあると考える。トランプの国内政策を、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相、インドのナレンドラ・モディ首相、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領といった他のポピュリスト指導者たちの政策と比較することは、すでに一般的になっている。しかし、この比較が外交政策の領域においても非常によく当てはまることは驚くべきことだ。結局のところ、アメリカ合衆国はハンガリー、インド、トルコとは全く異なる地政学的立場にある。しかし、トランプ政権下では、世界政治へのアプローチは極めて類似している。

ポピュリスト指導者たちは、彼らが代表すると主張する「人々(the people)」という点において、大きく異なっている。しかしながら、全体として見ると、彼らは類似した物語、様式、戦術、そして、複数の統治チャンネル(channels of governing)を用いており、それらは国内政治に影響を与えるだけでなく、海外での行動にも明確な影響を与えている。近年の研究は、ポピュリズムが戦略とイデオロギーの両面として機能すること、意思決定の手続き面が非ポピュリストのそれとどのように異なるか、ポピュリスト政権下での外交政策の変化の激しさを形作る条件、そして世界的なポピュリズムの台頭が国際秩序に与える影響を明らかにしている。

私たちが「ポピュリスト外交政策の7本の柱(the seven pillars of popular foreign policy)」と呼ぶものは以下のようなものだ。個人化(personalization)、ハイパー・メディア化(hyper-mediatization)、「腐敗したエリートたち」(“corrupt elites”)、壮大な歴史(grand history)、修正主義(revisionism)、恐喝(extortion)、そして(時に失敗する)国内における配当の追求(the (sometimes unsuccessful) pursuit of domestic dividends)である。これらの全ての領域において、トランプは国際的なポピュリスト指導者たちと非常によく似た行動を取っている。少なくとも、これらの類似点は、トランプの国際舞台における行動の根底にある独自の戦略的論理を探し求めるのは誤りであることを示唆している。

(1)個人化(1. Personalization

トランプと同様に、ポピュリスト指導者(多くの場合、当初は自由かつ公正に選出された)は、伝統的に自らの統治に対するチェック機能を果たしてきた民主的制度に穴を開け、可能であれば掌握しようとする傾向がある。

トランプは「効率性(efficiency)」の名の下に官僚機構を大幅に削減したが、エルドアンの粛清はクーデター計画者や「テロリスト(terrorists)」を標的とするものだった。ハンガリーのオルバン首相は新たな憲法秩序を設計した。このように制度的知識を骨抜きにし、豊富な技術と知識を持つ人材を政治任用者(political appointees)に置き換えることは、外交政策の意思決定に深刻な影響を及ぼし、予測不可能性、リスク許容度の高さ、無能さ、そして他の国家優先事項を犠牲にした行政府の肥大化などを引き起こしている。

(2)ハイパー・メディア化(2. Hyper-mediatization

全ての指導者が政治的コミュニケーションに関与するのに対し、ポピュリスト的な政治スタイルは、ニューズメディアやソーシャルメディアを巧みに活用して政治的スペクタクル、つまり一種の政治としてのメディアを演出する。

エクアドルのラファエル・コレア前大統領、ヴェネズエラのウゴ・チャベス前大統領、そして最近退陣させられたニコラス・マドゥロ大統領による毎週のテレビ番組、エルドアン大統領によるほぼ毎日の演説、そしてモディ首相のバーチャルアバターとの3D炉辺談話(the 3D fireside chats)は、国民との感情的な繋がりを生み出す役割を果たしている。これらのプラットフォームを利用して現職指導者の外交政策における勝利を強調することは、現職指導者だけが偉大さを再び示し、国民が当然得るべき地位と尊敬を取り戻すことができるというメッセージを伝えることになる。

トランプは大統領執務室を、厳選されたメディアの前で、外国の指導者を叱責したり、あるいは味方に引き入れようとしたりできる、実際の(新たにギラギラとさせられた)舞台と見なしている。2025年2月に政権の最高幹部たちがウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を厳しく叱責した事件は特に記憶に残る出来事であり、元テレビプロデューサーのトランプは、この出来事は「素晴らしいテレビ番組」になるだろう(the proceedings would make “great television”)と述べた。しかし、サウジアラビアとトルコの首脳による公式訪問を国民向けに企画したことも、ポピュリズムの芝居がかった演出を如実に示した。

ソーシャルメディアもまた、政治の場として頻繁に利用されるようになっている。トランプは、Xや自身のトゥルース・ソーシャルといったプラットフォームを利用して、指導者を脅迫し、政策変更を示唆するとともに、自らの功績を誇張している。

(3)「腐敗したエリートたち」(3. “Corrupt elite”

ポピュリスト指導者たちは、国際政治を、腐敗した既存のエスタブリッシュメントの経済・文化エリートから「純粋な人々(pure people)」を守る正当かつ必要な守護者(rightful and necessary guardians)であると主張する場と捉えている。ポピュリストは、国際的な地位を要求し、悪意ある外国エリートとその国内の陰謀から国家-国民、価値観、領土―を守ることで、「人々(the people)」の利益を強化すると主張している。

世界中のポピュリストは、自らの「腐敗したエリートたち(corrupt elites)」をアメリカ、ヨーロッパ、あるいは西側諸国と結託しているかのように仕立て上げることに長けている。チャベスは2008年のメルコスール首脳会議で、アメリカとヨーロッパ連合(EU)の移民政策を「合法化された野蛮行為(legalized barbarism)」と激しく非難した。親政府メディアから「太陽のスーパーマン(Solar Superman)」と称されるモディ首相は、2023年のG20サミット開催に際し、発展途上国に制限的な政策を課す西側諸国の指導者たちを非難した。

トランプはこのポピュリスト的な筋書きを維持し、西側諸国の一カ国であるアメリカの首都で権力を握る立場から、西側諸国が設計した秩序を批判し続けている。「リベラル派(liberals)」がアメリカを意図的に弱体化させ、世界の物笑いの種にしていると非難する際に、彼らがコスモポリタン的な、従って、非アメリカ的な利益(un-American interests)と結託していると常々示唆している。例えば、アメリカがユネスコから2回脱退した際、トランプは2回目の理由として、ユネスコが「意識の高いウォーク(woke)」だからだと述べた。

(4)壮大な歴史(4. Grand history

ポピュリストの歴史叙述は、理想化された過去へのノスタルジアを喚起し、現指導者との連続性を確立し、失われた物質的および名声的な偉大さを過去の政権のせいにする。エルドアンはオスマン帝国の過去を持ち出してトルコの地域的自己主張を正当化する。モディはヒンドゥー教の民族主義的歴史を引用し、インドを文明的な世界大国として位置づける。オルバンは歴史を巧みに利用して親ロシア的な姿勢を正当化し、ひいてはハンガリーの強化を目指す。

トランプの「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」という政策は、アメリカの外交政策の中核を成す従来の叙述に挑戦する。アメリカが設計した多国間機構に誇りを持つ代わりに、トランプはそれらをアメリカの力に対する制約として位置づける。彼は、アメリカがNATOに資金を提供し、ヨーロッパ諸国がただ乗りしている(free riders)と主張し、冷戦後のルールに基づく秩序は前述のグローバリストの陰謀によって画策されたアメリカの利益への裏切りであると主張する。こうした主張は、一極行動主義(unilateralism)への転換、同盟諸国との取引関係、そしてパリ気候協定やイラン核合意といった過去の協定からの離脱を正当化するために利用された。

(5)修正主義(5. Revisionism

ポピュリストは国際社会を「腐敗したエリートたち」と混同することで、しばしば修正主義を抱き、長年の同盟諸国との対立を招く可能性がある。超大国ではないポピュリストが率いる国家もまた、自国の地位向上につながる国際秩序の修正を求める。

エルドアン大統領が国連総会で「(国連安全保障理事会の常任理事国を指して)世界は5カ国よりも大きい」と頻繁に警告するのは、トルコに有利なように伝統的な力関係を崩すことを狙っている。地域レヴェルでは、オルバン大統領はハンガリーがヨーロッパ連合理事会の輪番議長国を務めていたことを利用し、域内の規範を「強引に押しつぶし(bulldoze)」、多国間構造に内側から挑戦を仕掛けた。

トランプの場合、国家統治術(statecraft)を研究した学者ウォルター・ラッセル・ミードが2017年に初めて指摘した「ジャクソン流ポピュリスト・ナショナリズム(Jacksonian populist nationalism)」が飛躍的に拡大している。二期目のトランプは、エリザベス・N・サンダースの言葉を借りれば「海外の皇帝(emperor abroad)」のように振舞っている。「アメリカ・ファースト」の名の下に広範囲に及ぶ関税、国際機関の権威への挑戦、そしてNATO同盟国に対する領土主張は、いずれもかつての覇権国家(hegemon)というよりは、むしろグローバル・サウスにおける台頭しつつある勢力に見られる修正主義的なアプローチを示唆している。

(6)恐喝(6. Extortion

ポピュリストたちは、いかなる外交政策行動にも見返り(a payoff)が必要だと考えている。そして、ポピュリストたちは見返りを得るための機会を人為的に作り出すことをためらわない。これはしばしば、事態を悪化させ、正常化のための譲歩を要求することによって達成される。実際、ポピュリスト指導者の際立った特徴は、現状に対する劇的で変革的な変化を強調するにもかかわらず、しばしば見返りとして既存の取り決めとの共存を受け入れる用意があることだ。

真の修正主義は革命的だ。しかしながら、ポピュリストたちは現実的である。彼らは激しいレトリックと、劇的だが限定的、そしてさらに重要なことに、安易な権力の誇示から始める。あるいは、相手側と交渉して影響力を行使し、同盟関係を破壊して譲歩を引き出すことで、自らをディールメーカーとして位置付ける。そして、適切な見返りが得られれば、完全な勝利を収め、通常通りの行動に戻ると主張する。

2015年のシリア内戦でシリア難民が流入した際、エルドアン大統領は移民をヨーロッパに送り込むと脅した。その後の数カ月のうちに、彼はヨーロッパ連合(EU)と60億ユーロの資金援助を約束する合意を結んだ。その後、資金が期待したほど迅速に提供されなかったため、彼は再び脅しを続けた。

ワシントンの独自の立場は、トランプに見返りを確保するためのより有利な立場を与えているに過ぎない。例はいくらでも挙げられる。同盟諸国に対する包括的関税は個別交渉の結果撤回された。グリーンランド占領の脅しは曖昧な合意へと変貌し、グリーンランドにアメリカの主権の無駄な一帯を生み出した。トランプはロシアへの制裁をちらつかせたが、その後、ロシアへの巨額投資の約束と引き換えに、ウラジーミル・プーティン大統領との会談に同意した。アメリカ大統領はコロンビアに介入をちらつかせた後、コロンビア大統領に交渉を求めた。ヴェネズエラの野党活動家を突き放した後、彼女のノーベル平和賞を自ら獲得しようと画策した。

(7)国内における配当(7. Domestic dividends

伝統的な指導者は一般的に非難を避けようとする。しかし、ポピュリストたちはそうではない。彼らはしばしば国際的な成果を勝利として主張しようと、紛争を煽り、永続させる。ポピュリストたちは人々の擁護者としてリスクの高い冒険に乗り出し、人々のために戦い、人々のために勝利していることを示す。

世界は、例えば国内メディアとは異なり、ポピュリストたちのコントロールが及ばないことが多いため、これは指導者が時として苦戦する領域である。エルドアンはEU難民協定に対して国民の激しい反発に直面した。2023年のG20サミットをインドが主催した際に、「#GoBackModi」キャンペーンが巻き起こった。インドでは、モディ首相の度重なる国際訪問が自国民に何の利益ももたらしていないという厳しい批判が巻き起こった。

時が経つにつれ、トランプもますます同じ轍を踏む危険性が高まっている。20261月にイプソス社が行った調査では、グリーンランド併合を支持したアメリカ人はわずか5人に1人だった。キュニピアック大学の世論調査では、10人中9人が武力行使に反対している。別の世論調査では、アメリカ人の大多数が、トランプが宣言したようにヴェネズエラを「統治(running)」することに反対していることが明らかになった。

トランプの外交政策は、自らが約束した変革をもたらす成果をもたらすどころか、その条件自体がほぼ失敗に終わった。アメリカの戦争終結を誓ったにもかかわらず、ウクライナでは今のところ何の成果も得られず、ガザ地区では不安定な停戦しか実現していない。海外におけるアメリカの軍事的関与を削減するどころか、トランプはイランとの紛争をエスカレートさせ、ヴェネズエラに対する軍事作戦を命じた。貿易と安全保障に関するより良い合意を約束したにもかかわらず、中国との関税戦争は決着がつかずに終わった。実際、国内的に見ても、トランプの政策は彼が期待した支持率の向上にはつながっていない。

しかし、問題は、ポピュリスト的な外交政策が自己強化的(self-reinforcing)になっていることだ。トルコ、インド、ハンガリーの例に見られるように、失敗が人々の行動を変える可能性は低い。循環論法(the circular logic)はあまりにも強力だ。外交政策の私物化とエリート層の排除(the personalization of foreign policy and dismissal of elites)は、指導者たちを軌道修正に向かうように促すフィードバックループ(feedback loop)から孤立させてしまう。社内メディア制作とニューズのキュレーションはこのループを増幅させる。ポピュリストによる「腐敗したエリートたち」という枠組みと壮大な歴史叙述は、世界的な反発を自らのヴィジョンのさらなる裏付けと捉えさせる。そして、世界的な恐喝によって得られたわずかな利益であっても分配することで、国内からの批判にもかかわらず、主要支持層の忠誠心を確保することができる。

その結果、世界規模で、予測不可能性(unpredictability)、紛争(conflict)、そして腐敗(corruption)がさらに蔓延する可能性が高い。

※リセル・ヒンツ:ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院(School of Advanced International Studies)講師。

※ベーク・イーセン:トルコ・サバンシ大学政治学部准教授。

※トゥーダー・オネア:トルコ・ビルクネット大学国際関係学部講師。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 スティーヴン・M・ウォルトによる以下の論稿は2025年7月に発表された論稿であるが、現状を理解する上で重要な内容となっている。ここで重要なのは、政治的力、政治的な魅力と政策立案・遂行を分けて考えている点だ。私はこのことが出来ていなかった。第二次ドナルド・トランプ政権に持つ違和感を言語化できていなかったが、この政治的な力と政策立案・遂行を分けることで、私の抱える違和感を言語化できるように思う。

トランプは生粋の政治家ではなく、財界人としても主流から外れたアウトサイダーだ。そうした人物が既存の政治を破壊するためにワシントンに乗り込んだ。彼の個人的な魅力で大きな政治力を持った。しかし、政策立案・遂行は彼一人ではできない。周囲に人材を配置しなければならない。第二次政権の特徴は、イスラエルとの関係が深い人物が揃ったことだ。国家情報長官であるトゥルシー・ギャバードは民主党所属の連邦下院議員時代から、非主流派であり、イランやロシアとの交渉を主張し続けてきた。ギャバード長官以外は親イスラエル派であり、今回のイラン攻撃を推進した。トランプは政治的な力を持つが、政策立案・遂行の力を持たず、結果として、政策の失敗をしてしまうことになった。更に言えば、トランプに周辺に配置された人物たちはワシントンの既存政治、エスタブリッシュメントの息のかかった人物たちであり、彼らによって、トランプ政治が変容させられたということが考えられる。

 トランプが政策立案・遂行を任せる人物の選定に失敗したとも言えるだろう。しかし、選定の過程で述べたことと実際に政権発足後に実行することに乖離がある場合、つまり、嘘をついた、もしくは態度を変化させたと言うことになる。

 私がここで重要だと考えているのは、JD・ヴァンス副大統領の存在である。第二次トランプ政権が大統領選挙期間の公約をことごとく破っている状況で、ヴァンスは非常に苦心してトランプ政権内でバランスを取りながら、選挙期間中の公約を守る、もしくは守る姿勢を見せている。トランプが州に騙されて搦(から)めとられている様子も見ている。そうした中で、彼がトランプの後継者として、トランプの失敗を学んでいると私は見ている。政治力を持ちながら、政策立案・遂行に失敗するのは、自分を利用しようとして集まる、もしくは集められる人物たちの影響が大きいということを学んでいるだろう。

 トランプもまた騙され、利用されたということを考えると、ワシントンの既存の政治、エスタブリッシュメントたちの力は大きく、簡単に打ち破ることが出来ないということが認識される。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプが逃した好機は積み上がっている(Trump’s Missed Opportunities Are Piling Up

-トランプ政権にはアメリカをより良い方向に変えるという前例のない好機があった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年7月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/07/29/trumps-missed-opportunities-are-piling-up/

好むと好まざるとにかかわらず、ドナルド・トランプ米大統領は、この10年近くにわたり、アメリカ政界で最も重要な人物であり続けている。今や、私たちは彼を評価する十分な時間があり、彼について2つのことが明白になっている。第一に、トランプの政治的魅力は当初から過小評価されていたこと、そして彼は時を経るごとに、より有能な政治家へと成長してきたことだ。度重なる嘘、公約違反、重罪判決、性犯罪、そして自分の望みを阻むあらゆる規範を容赦なく破壊する姿勢にもかかわらず、彼は共和党を自らの理想とする姿へと変貌させ、最初の任期の惨憺たる実績にもかかわらず、2024年の再選を果たした。彼は今、アメリカ史上最も過激な政治変革を試みている。権威主義的な政権掌握(an authoritarian takeover)は着々と進んでおり、成功する可能性が高い。

彼について分かったもう一つのことは、彼が政策立案者として極めて無能だということだ。無知、衝動性、そして能力よりも忠誠心を優先する傾向が相まって、彼は幾度となく愚かな決断を下してきた。彼は権力を集中させ、私腹を肥やし、弱者を威圧することには長けているが、アメリカ全体に利益をもたらす建設的な政策を立案・実行する能力には長けていないことが明らかになった。

政治的手腕(political adroitness)と政策立案能力の欠如(policymaking ineptitude)の組み合わせは、まさに悲劇(tragedy)のようになっている。なぜなら、トランプはそのカリスマ性と有利な立場(共和党が連邦上下両院を支配し、従順とは言わないまでも、トランプに理解を示す最高裁判所が存在する)を活かせば、近年の大統領が国家の深刻な問題に取り組むことを困難にしてきた膠着状態と機能不全(the logjams and dysfunction)を打破できたはずだからだ。もしトランプがこの機会を建設的に、そして異なる政策のために活用していれば、「アメリカを再び偉大にする(make America great again)」ために大きく貢献できたかもしれないし、ひいては彼が長年主張してきた「アメリカ史上最も偉大な大統領の一人(one of the country’s greatest presidents)」という称号にふさわしい人物になれたかもしれない。

しかし、イギリス国教会の祈祷書を言い換えるならば、トランプは「なすべきことをせず、なすべきでないことをした。彼には健全さが全くない([has] left undone those things which [he] ought to have done,; and [he has] done those things which [he] ought not to have done; and there is no health in [him])」となる。そして、アメリカはこれらの失敗によって大きな苦しみを味わうことになるだろう。

私が言いたいことは何か?

まず、トランプはアメリカの過剰な軍事プレゼンスを縮小し、同盟諸国に防衛努力のより大きな分担を促し、国防総省の肥大化した軍事予算を抑制することで、差し迫った国内のニーズに対応し、増大する国家債務を削減するために必要な資源を確保できたはずだ。ロシアのウクライナでの行動も少なからず影響しているものの、トランプは一部の同盟国にさらなる協力を促すことに成功したが、アメリカの世界的な軍事プレゼンスは縮小されておらず、国防予算は増え続けている。その一方で、連邦議会が可決したばかりの予算案は、アメリカの債務水準を数兆ドル増加させ、上位1%の富裕層をさらに富ませ、幅広い公共サーヴィスを削減し、大多数のアメリカ人の生活を改善する効果はほとんどないだろう。さらに、この予算案には、警察国家(police state)の萌芽となる要素も含まれている。

なんという機会の損失だろう! 中国を含む先進工業国を訪れれば、きらびやかな近代的な空港、安全で効率的かつ手頃な価格の公共交通機関、穴だらけではない道路、超高速の都市間鉄道、そして最先端の港湾やその他の重要なインフラが整っていることに気づくだろう。これらの国の多くは、優れた医療制度と高い平均寿命も誇っている。かつてアメリカはそのインフラの質で世界を驚嘆させたが、同盟諸国やライヴァル諸国に追いつくことはできなかった。その代わりに、愚かな対外戦争や長期にわたる介入(foolish foreign wars and protracted interventions)に数兆ドルを浪費してしまった。さらに悪いことに、国内は深刻な分極化に陥っており、政治システムには拒否権が行き渡っているため、私たちが求める長期的なプログラムを立ち上げ、実行することはほぼ不可能となっている。トランプは、自らが繰り返し主張する(そして最高裁が認める意向を示している)大統領権限を行使し、こうした行き詰まりを打開して国内で「国家建設(nation-building)」を行うこともできたはずだ。しかし彼は、大学への脅迫、NPR(公共ラジオ)やPBS(公共テレビ)への資金削減、トランスジェンダーの選手への処罰、メディケイドの縮小、そしてジョー・バイデン前大統領やバラク・オバマ元大統領が関与したあらゆる政策の解体を選んだ。

トランプは、科学に対する連邦政府の支援を大幅に削減し、大学キャンパスには反ユダヤ主義が蔓延しているという荒唐無稽な主張に基づいて高等教育を攻撃する代わりに、連邦政府の権限を活用して、科学研究におけるアメリカの優位性を維持することもできたはずだ。ソ連がスプートニクを打ち上げた後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領がそうしたように、連邦政府の支援によって生み出された発見から、その後の世代のアメリカ人は多大な恩恵を受けてきた。アメリカはまた、世界中から最も優秀な人材を引き寄せ、留める能力からも恩恵を受けてきた。しかしトランプは今、その優位性を逆転させようとしている。中国はすでに研究開発費でアメリカを上回り、研究者たちはより多くの特許や科学論文を生み出しており、電気自動車やクリーンエネルギーといった将来の重要技術のいくつかにおいて主導的な役割を獲得している。トランプの対応とはどうだろうか? それは一方的な知的武装解除(unilateral intellectual disarmament)の政策である。

もし、その強大な権力を公益のために使おうとする強力な大統領であれば、アメリカ国民の健康を守ることを使命とする機関をロバート・F・ケネディ・ジュニアのようなペテン師たちに委ねたりはしなかっただろうし、気候危機に対処するための、遅ればせながらなお不十分な国の取り組みを後退させるようなこともなかったはずだ。もしトランプが真に偉大なことを成し遂げたいと望むなら、彼は自身の第一期政権における数少ない成功事例の一つ記録的な速さで命を救うCOVID-19ワクチンの開発を可能にした「ワープ・スピード」計画を基盤とし、バイデンが推進しようとしたグリーン・トランジションを加速させるはずだ。誤解のないように言っておくが、気候変動は現実のものであり、事態はさらに悪化するだろう。なぜなら、大気物理学の法則はフォックスニューズを見たり、ソーシャルメディア上のプロパガンダに左右されたりしないからだ。パリ協定からの離脱や化石燃料への依存強化を促すというトランプ氏の決定は、問題を悪化させ、米国はその結果に対する備えが不十分になるだろう。

アメリカの偉大さについて言えば、より賢明なトランプであれば、同盟諸国を搾取すべき属国(vassals)のように扱うのではなく、アメリカの戦略的パートナーシップの改革と強化に尽力するだろう。あるヨーロッパ連合(EU)当局者が「ゆすりたかり(shakedown)」と正しく指摘した彼の気まぐれで強圧的な関税政策は、アメリカの消費者の物価を上昇させ、国内外の経済成長を鈍化させるだろう。また、アメリカの同盟諸国がトランプの国防費増額要求に応じることをより困難にするだろう。デンマーク、カナダ、韓国、日本といった親米諸国と対立することは、歴代大統領の中でも最も愚かな決断の一つと言えるだろう。これらの国々は歯を食いしばってトランプの要求の一部を受け入れるかもしれないが、二度とアメリカを以前と同じように見ることはなく、ワシントンの指示に従う、もしくは、将来的にワシントンが望むような調整を行うことに消極的になるだろう。

トランプ大統領が本当に前任者よりも外交手腕に優れていることを示したいのであれば、ガザ地区での虐殺を終わらせるためにアメリカの影響力を活用し、イランとの新たな核合意に現実的なアプローチを取り、ウクライナ和平に向けて飴と鞭(carrots and sticks)を組み合わせるべきだった。しかし、彼はこの問題を素人外交官のスティーヴ・ウィトコフに任せてしまい、結果として中東地域でのさらなる惨劇(carnage)、アメリカのイメージのさらなる悪化(もはやこれ以上悪化する余地があるのか​​どうかも怪しいが)、そしてロシアの前進を招いた。

一方、トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官は外交団を弱体化させ、かつて多くの国際機関で支配的だったアメリカの地位を放棄している。『ニューヨーク・タイムズ』紙が先週報じたように、北京はこれにいち早く乗じて、様々な国際フォーラムで存在感を高め、取引を成立させている。こうした動きは一見不可解に思えるかもしれないが、これらの機関こそ、多くの国際関係を形作るルールや技術基準が確立される場なのである。中国当局は、将来的に影響力を拡大するための専門知識と人脈を築き上げており、一方で、アメリカはますます存在感を失っている。スコット・ベセント米財務長官は、先日開催されたG20サミットに出席することさえしなかった。なぜか? それは、南アフリカで開催されたからだ。中国は、外交の価値、直接対話の利点、そしてソフトパワーの重要性を理解しているからこそ、すでにアメリカよりも多くの外交官と在外公館を擁している。トランプ大統領はそれを理解していない。アメリカの当局者やビジネスリーダーが、もはや「アメリカ製(made in America)」ではないルールで世界を渡り歩かなければならないことに気づいた時、それは大きな衝撃となるだろう。そして、まさにトランプ大統領がアメリカを導こうとしている世界こそが、そうした世界なのだ。

最後に、トランプは、国をさらに分断するのではなく、共和党に対する影響力と、政府の三権全てを掌握している立場を利用して、国を統一することもできたはずだ。彼は、実績のある女性やマイノリティを政府の要職から追放し、「無能な白人男性のためのアファーマティブ・アクション(affirmative action for incompetent white guys)」を推進するのではなく、より過激な形の「ウォークイズム(wokeism)」からの撤退を(すでに進行中だったプロセスだが)巧みに促し、厳格な実力主義の必要性を強調することもできたはずだ。その好例が、ピート・ヘグセス米国防長官、あるいはダレン・ビーティーだ。ビーティーは、白人至上主義者とのつながりを理由に第一期トランプ政権から解雇された陰謀論者だが、つい先日、アメリカ平和研究所の所長に任命されたばかりだ。トランプは、法的に疑問の残る強制送還を承認し、海外からの有能な人材にとってアメリカをはるかに魅力のない場所にしてしまうのではなく、賢明な移民制度改革を推進することもできたはずだ。

要するに、トランプには、アメリカを弱体化させている政治的分断を縮小し、国際的な地位を強化する可能性のある、広範囲にわたる、そして長らく待望されていた改革(far-reaching and long-overdue reforms)に着手する絶好の機会があった。もし彼がそのカリスマ性と政治的手腕を、より思慮深く、国民の利益を重視する政策に注いでいれば、私を含め、彼を最も厳しく批判する人々も納得したかもしれない。しかし彼は正反対の道を選び、支持率が急速に低下しているにもかかわらず、その姿勢を改める気配は全く見られない。

読者の皆さんが何を考えているかは分かっている。「もしトランプがこうしたことを少しでも実行していたら、穏健な民主党員のような振る舞いになり、MAGA支持層が反旗を翻していただろう」と考えているだろう。私はそうは考えない。ジェフリー・エプスタインのスキャンダルはさておき、トランプの支持層は、たとえ過去の立場と真っ向から矛盾していても、彼が言うことならほぼ何でも飲み込む用意があるようだ。私は、彼が支持基盤を説得し、上述した政策を受け入れさせることができたと確信している。特に、その多くの施策が彼らにとってすぐに利益となるものであったならばなおさらだ。無党派層や穏健派は喜んだだろうし、それによって2024年の大統領選挙で彼に僅差の勝利をもたらした緩やかな連合が固まったはずだ。化石燃料業界は反対しただろうが、その他の経済界は、規制改革や、おそらくは控えめな減税によって、説得できたかもしれない。

しかし、私のこのフィクションのシナリオには致命的な欠陥(a fatal flaw)がある。それは、別のトランプを想定している点だ。自らの天才性を確信し、自己顕示欲にのみ執着し、ルールや規範を軽視する復讐心に燃えるナルシストではなく、私のシナリオが想定するのは、真に民主政治体制を守り、できるだけ多くのアメリカ人の生活を向上させ、世界政治におけるアメリカの特権的な地位を維持したいと願う大統領である。残念ながら、トランプはそのような人物ではない。だからこそ、彼に与えられた機会は浪費され、あるいはそれ以上に台無しにされているのだ。素晴らしい未来はあり得たはずだが、この大統領の下では実現しなかった。トランプ自身が称賛されることを切望していることを考えれば、これは彼自身の悲劇だと捉えることもできるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 民主政治体制の根幹については様々な見解があるだろうが、やはり選挙がその根幹をなす。選挙制度についてはここで詳しく述べることはしないが、選挙の結果である人物や政党、組織に権力を託すことになる。日本の場合には国会が国権の最高機関であり、その国会が行政の長である内閣総理大臣を指名する。国会、衆議院の過半数の議席を握る政党、会派の長や代表、指名すると決められた人物が総理大臣(首相)に指名されるのが通例となっている。

 以下は民主政治体制に関して、短いが非常に興味深い記事である。イギリスのキア・スターマー首相の人気低迷と日本の高市早苗首相の人気上昇を比較している。しかし、高市首相や日本の有権者を称揚する内容ではない。「有能さ」や「冷静さを保ち少しずつ前進する」といった価値よりも、「かっこいい」「かわいい」といった感情的な価値に重きが置かれている。著者のザカリアは「復興(回復)」という言葉と「反乱」という言葉を対比させている。

 日本の高市首相人気は、芸能人や有名人、インフルエンサーを応援する「推し活」に擬せられることが多い。「推し活」とは、自分が好きな対象にできる範囲でお金を使うことで自分の生活を充実させるというものだそうだ。高市首相の勇ましい発言や前任の石破茂前首相とは異なる軽くて中身がない言葉遣いが受けている。難しい政策の話やなかなか政策が進まない現実を有権者は嫌い、高市首相の「目新しさ」や「威勢のよさ」に好感を持ち、アイドルのように応援する。そこには政治家としての技量や器量、経験などは全く加味されない。これが現在の先進西側民主政体国家の日本の現実である。

 有権者たちは不満のはけ口をそのような目立つ政治家たちに求める。このような政治家たちは実際には能力も技術もないので何もできないどころか失敗する。しかし、失敗しても良いのだ。それは、失敗して国家や社会を破壊することを有権者が求めているからだ。堅実に仕事をすることを求めていないのだ。

 これは現在の西側先進諸国に共通する病理であると私は考える。それは、世界構造の大きな転換を前にした人々の不安感を示したものであるとも考えている。こうして、時代は移り変わっていく。

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高市の勝利とスターマーの失速が世界の民主政治体制について語る(What Takaichi’s Triumph and Starmer’s Slump Say About Global Democracy

-イギリスから日本まで「冷静さを保ち前進を続ける」というスローガンは忘れ去られつつある。

ファリード・ザカリア筆

2026年2月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/13/japan-britain-elections-keir-starmer-sanae-takaichi/

2つの衝撃的な政治的事実は今日の世界のムードについて何を物語っているのだろうか?

日本では、高市早苗首相が、長きにわたり政権を握ってきた自民党史上最大の衆議院での圧倒的過半数の議席を獲得したばかりだ。イギリスでは、1年半前に首相に就任したキア・スターマーの支持率は、イギリス首相として史上最低を記録している。

表面的に見れば、これらの出来事は無関係に見える。一方のリーダーは地滑り的勝利を収め(ride a landslide)、もう一方のリーダーは苦戦(stay afloat)を強いられている。しかし、これらを総合的に見ると、現在の政治情勢についてより深い何かが浮かび上がってくる。有権者たちは、復興(回復)よりも反乱を好んでいるのだ(Voters prefer rebellion to restoration.)。

まずイギリスについて考えてみよう。ボリス・ジョンソン、リズ・トラス、リシ・スナクの波乱に満ちた首相時代―ブレグジットの余波、倫理スキャンダル、財政危機、そして政権交代が目立った時代――の後、スターマーは異なるものを提示した。労働党党首である彼は、「冷静さを保ち、前進を続ける」候補者(the “keep calm and carry on” candidate)であり、真剣さ(seriousness)、安定性(stability)、そして有能さ(competence)を約束した。スターマーは制度を再構築し、有能な大臣を任命し、イギリスの対外的地位を回復させるだろう。アメリカの不安定な政治を、静かなる毅然とした態度で対処するだろう。ドラマチックな演出も、イデオロギー的な煽動もせず、ただ大人としての監督のみを行うだろう。

そして、従来の尺度から判断すると、彼は期待に応えた。市場は安定し、内閣(cabinet government)が復活した。政策は冷静かつ漸進的だった。しかし、イギリス国民の感情はそれに追いつかなかった。不満は消えなかった。数カ月のうちに、スターマーの純支持率は極めて低い水準にまで落ち込んだ。

熟練した有能さへの期待も、労働党の重要人物の一人、長年究極のインサイダーと目されていたピーター・マンデルソンが、ジェフリー・エプスタインとの過去の関係をめぐって新たな批判に直面したことで、打撃を受けた。多くの有権者にとって、この出来事は、政権復帰は既に拒絶していた、かつての繋がりを保っていたエリート層の復活を意味するのではないかという疑念を強めるものとなった。『ポリティコ』誌の世論調査によると、現在、有権者の大多数がスターマーは辞任すべきだと回答し、留任すべきだと回答したのはわずか34%だった。

イギリスにとってより大きな問題は構造的なものだ。移民問題は、西側諸国におけるポピュリズムの推進力となってきた。イギリスは2023年3月までの1年間で、約95万人の純移民を記録した。これは、国境の「管理権を取り戻す(take back control)」という目的もあってEU離脱に投票した国としては驚異的な数字だ。多くの有権者の目には、コスモポリタンのエリート層がこの問題への対応を誤ったように映った。この裏切り感は今も薄れていない。

加えて、ヨーロッパは長きにわたり緊縮財政に耽溺してきた。2008年の金融危機後、イギリスは他の多くのヨーロッパ諸国と同様に財政緊縮政策を採用した。歳出は圧縮され、公共投資は削減され、実質賃金は10年近く停滞した。一人当たりGDPは、不況期にはるかに大規模な景気刺激策を選択したアメリカを大きく下回った。その結果、じわじわと悪化する不況が続き、政治家への信頼は揺らいだ。

続いて、日本について見てみよう。高市首相は冷静に運営するのではなく、対立(confrontation)を前面に出して政権を運営した。高市首相は移民問題について、激しい口調で語った。日本の外国生まれの人口は3%程度で、イギリスのほんの一部に過ぎないにもかかわらずだ。彼女は文化の浸食と社会的な緊張(cultural erosion and social strain)を警告した。中国に対してはより強硬な姿勢を示した。数十年にわたる慎重な漸進主義(cautious incrementalism)に終止符を打ち、経済政策に変革をもたらすと約束した。

有権者たちは高市首相に、自民党史上最大の衆議院の過半数の議席という報酬を与えた。

その魅力の一部は象徴的なものだ。世界基準で見て、日本は依然として家父長制社会(a patriarchal society)である。女性が政権を握ること自体が、一つの断絶を意味する。たとえ党の基盤が健全であっても、そのイメージは変化を示唆する。目新しさを求める時代に、象徴性は力を持つ。

イギリスと日本の間には明確な違いがある。日本は、西側諸国の政治を不安定にさせたほどの大規模な移民流入を経験したことはない。また、ヨーロッパ式の緊縮財政も受け入れなかった。確かにここ数十年、経済停滞に苦しみ不安を招いたが、その原因と結果は、西側諸国の怒りを煽った緊縮財政に起因する停滞とは異なっていた。日本が継続してきた景気刺激策は、緊縮財政が生み出した怒りから日本を守ってきた。

こうした構造的な対比は重要である。しかし、今日では、それらの対比よりもむしろ、日本の雰囲気の方が重要かもしれない。

先進民主政治体制国家全体で、現職議員は2024年という世界選挙の節目に、異例の高率で苦戦を強いられた。有権者は落ち着きがなく、政策の詳細よりも感情的な承認を求めている。復興(回復)は理性に訴え、反乱は直感に訴える(Restoration speaks to the head; rebellion speaks to the gut)。現在は、直感が勝っている。

日本の首相は雰囲気を変えた。長年与党が優勢を占めてきたにもかかわらず、高市首相は行動力、破壊力、そして反抗心(motion, disruption and defiance)を体現している。一方、スターマーは安定と修復(steadiness and repair)を体現している。平穏な時代であれば、この対照的な姿勢はイギリスのアプローチに有利に働くかもしれない。しかし、今はそうではない。

政治には周期がある。破壊への欲求は、その代償が明らかになれば薄れるかもしれない。しかし今のところ、イギリスと日本という全く異なる国々において、そのムードは紛れもなく存在している。不安の時代(an age of anxiety)にあって、有権者は回復よりも反乱を好むのである。民主党は中間選挙を控えているが、このことを心に留めておくべきだ。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」司会者。数多くの著作があり、最新作に『様々な革命の時代(Age of Revolutions)』がある。毎週『ワシントン・ポスト』にコラムを執筆し、『フォーリン・ポリシー』誌に転載される。Xアカウント:@FareedZakaria

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 先日の総選挙での自民党の大勝を受けて、友人、知人から「選挙についてはどのように考えているか」という質問を受けた。これは私にはなかなか答えるのが難しい質問である。個人的には、選挙戦期間中に複数のメディアの選挙情勢分析で「自民党が300を超える議席獲得」という報道があり、ショックを受けつつ、「まさかそんな」と考えていただけに、自民党大勝という結果が突きつけられ、呆然としてしまった。しかし、いつまでも呆然としていられない。何か考えなければいけない。

 今回の総選挙の結果は小選挙区制の特徴である得票率と実際の議席占有率の乖離の大きさということが結果をセンセーショナルに見せている。2009年の総選挙でも同様のことが起きている。小選挙区制が良いのか、比例代表制が良いのか、もしくは別の選挙制度が良いのかということは結論が出ない議論である。それぞれに長所、短所がある。選挙については数千年の歴史があるが、選挙制度の精緻な研究は数十年の研究しかされていない。専門家たちの英知を集め、人々の議論の活発化が望まれる。

 私は、以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿を参考にして、今回の日本の総選挙の結果は、西側先進諸国に共通するある心性(mentality)がこのような結果を生み出したと考えている。それは、ウォルトが書いているように、「不確かな未来への恐怖(the fear of an uncertain future)」だ。西側先進諸国はどこも程度の差はあれ、少子高齢化が進み、経済成長も鈍化敷いている。最も厳しいのは日本であるが、他の先進諸国も同様である。そして、世界に目を転じてみれば、BRICSを中核とする「西側以外の国々」の活況や経済成長が目に入る。日本にも多くの外国人観光客が訪問し、「日本は安い」として食事や買い物を楽しんでいる。その様子を私たちは見ている。そして、「日本は安く買われる国だ」「日本は衰退しつつある」ということを肌で感じるようになっている。他の西側先進諸国もこの点で共通している。

こうした中で、強いリーダーの存在が求められるようになっている。強いリーダーは実際に強かったり、賢明であったり、頭脳明晰であったりする必要はない。嘘でも誇張でも何でも言い切り、その後に絶対に謝ったり、撤回したりしない。空とぼけるくらいの図太い人物で、強さを演出できる人物であれば良いのだ。日本はまさにそのような状況になっている。高市早苗首相は私が今書いた通りの人物であり、彼女の指導者としての正統性は、日本初の女性首相であるという目新しさと故安倍晋三元首相の正統な後継者であるという演出にある。そして、人々は強いリーダーを求め、そして、近代的な価値観を否定することが「改革」だと勘違いをする。

これらは全て、恐怖から発していることだ。未来が怖いのだ。そして、現状を正確に分析して受け入れることが怖いのだ。そして、強さを演出する指導者の語るお花畑の話を支持する。南鳥島近海で採掘されるレアアースが日本を豊かにするという夢物語を信じる。自民党が公約したのだから消費税減税がすぐに実行されるという与太話を信じる。信じたいのだ。そして、裏切られる。そして、また、新しく自分たちを騙してくれる指導者を探す。そのようにして国を滅ぼしていく。

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恐怖がいかにしてリベラリズムを殺したか(How Fear Killed Liberalism

-政治における不安感が積み重なり人々の楽観主義の時代は終焉した。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/02/fear-populism-liberalism-trump-far-right/

学者、専門家、政治家たちは常に誤った予測をするが、その間違いの中には本当にとんでもないものもある。ちなみに、過去50年間で最悪の地政学的予測として私が挙げるのは、冷戦後の世界が平和でますます繁栄するリベラリズムの未来へと容赦なく押し流されていくという信念だ。フランシス・フクヤマの有名な「歴史の終わり(end of history)」という主張に表れているが、これは彼に限ったことではない。この見解は、民主政治体制が広がり続け、貿易と投資に対する障壁が全ての人々の利益のために減少し続け、ナショナリズムが衰退し、国境はますます重要ではなくなり、国際機関が最も困難な地球規模の問題に対処するために立ち上がり、戦争の危険は、指導者たちがそのメモを受け取っていない、弱くますます無関係になっている少数のならず者国家(rogue states)に限定されるだろうと想定していた。

それが全て実現していたらどんなに素晴らしいことだっただろう。1990年代に多くの賢明な人々がこの魅力的なヴィジョンに熱狂したのも無理もないことだ。ソヴィエト型の共産主義は崩壊し、アメリカ合衆国は力の頂点に君臨し、世界の多くの国々がリベラリズムの定式を受け入れているように見えた。民主政治体制は東ヨーロッパや中南米に広がり、グローバライゼーションは加速し、人権尊重は勢いを増し、専門家も政治家も、中国をはじめとする一党独裁国家(one-party states)が徐々に多党制民主政治体制(multiparty democracy)へと移行していくと予想していた。アメリカの政策決定層はリベラルな国際主義者(liberal internationalists)とネオコン(neoconservatives)が支配し、世界をアメリカのイメージに沿って再構築し、グローバルなリベラルな秩序を創造することに強く関与していた。

2025年まで早送りしよう。過去四半世紀を振り返ると、こうした楽観的な予測はほぼ完全に間違っていたことが明らかだ。中国はより権威主義的になり、ロシアは真の選挙民主政体を短期間試した後、独裁政治へと逆戻りした。実際、民主政体はここ20年近く、世界中で着実に衰退しており、アメリカ自身も例外ではない。中国、ロシア、そしてアメリカは収斂しつつあるが、アメリカはむしろこれらの腐敗した独裁政治体制(corrupt autocracies)に似てきている。トランプ政権はほとんど抑制なく行政力(executive order)を拡大し、法の支配(rule of law)は崩壊し、トランプは習近平が中国で行ったように、大学、法律事務所、民間企業から譲歩(concessions)を強要している。トランプ政権は、卑劣で抑制のきかないトランプ大統領の怒りを買った者に対して個人的な復讐を仕掛けている。そして今、連邦軍は首都ワシントンDCに展開し、主に一般市民を威嚇することを目的とした武力誇示を行っている。グローバライゼーションは保護主義の台頭に取って代わられた。現在、インド、ハンガリー、そしてアメリカ合衆国では非自由主義的な指導者が政権を握っている。そして、国連、世界貿易機関、世界保健機関、ヨーロッパ連合、核不拡散体制といった国際機関は、30年前よりも弱体化している。

要するに、アメリカ(そしてヨーロッパ)の外交政策を支えてきたリベラルな楽観主義は、全く的外れだったことが判明した。こうした展開の原因として、アメリカの傲慢さ(hubris)、「永遠の戦争(forever wats)」の悪影響、ソーシャルメディアの有害な影響、中国の経済発展、2008年の金融危機、エリート層の説明責任の欠如、格差の拡大など、様々な点を指摘するのは容易だ。そして、リベラルな世界秩序の拡大に向けた努力が失敗した理由を説明する書籍を執筆した人たちもいる。しかし、そこには、アメリカを含む多くの場所で政治が非リベラルな方向へ転じた理由を説明する、より深い力が働いていた。そして、それら全ての深層的な力に共通するのは、不確かな未来への恐怖(the fear of an uncertain future)だ。

今日、それほど裕福でも恵まれたわけでもない人々が、どれほど多くのことを心配しているかを考えてみよう。

第一に、経済の不確実性の高まりだ。これは、格差の拡大、腐敗と縁故資本主義(crony capitalism)の蔓延、人工知能(AI)とロボット工学の労働力への影響、多くの国における若者の失業率(一部のSTEM分野でさえも)、一部の経済大国における生産性の低迷、人口の高齢化、国際貿易やマクロ経済学を理解していない米大統領、またしても軽率な金融市場の規制緩和(一体何が問題になるというのか?)、そしてバブルの兆候を多く示す株式市場などが原因だ。もしあなたが既に超富裕層でなく、経済的な将来について少しでも不安を感じていないのであれば、あなたは注意を払っていないと言えるだろう。

第二のテーマは気候変動だ。その影響はますます顕著になり、ほぼ完全に有害で費用がかさみ、さらに悪化する可能性が高い。トランプとMAGAの世界は、この事実を否認し、問題をさらに悪化させるためにあらゆる手段を講じているかもしれない。しかし、物理法則や化学法則はソーシャルメディアの投稿を読んだり、フォックス・ニューズを見たりはしない。そして、ほとんどの一般人は、私たちがより暑く、より風が強く、より雨が多く、より危険な未来を迎えることを理解している。世界中の若者たちは、私たちが大きな問題を抱えていることを理解しており、彼らが子供を持つことに不安を抱く理由の一つでもある。

次に、大国間競争が再び到来する。一極化の時代は終わり、中国、ロシア、そしてアメリカ合衆国(そしてその他の国々)は対立し、新たな軍拡競争が始まり、直接衝突が起こり得る火種は数多く存在する。第三次世界大戦は避けられないものではないが、リスクは高まっている。より多くの国が核兵器の取得を試みる可能性が高く、長期的には安定化につながるかもしれないが、短期的には予防戦争(preventive war)への大きな動機付けとなり、私たちはさらに恐怖を抱く理由が増えることになる。

テロリズムについても忘れてはならない。確かに、ほとんどの人々がテロリズムに直面する実際の危険は常に誇張されてきた(あるいは、場合によっては政治的な目的で意図的に誇張されてきた)。しかし、テロリズムは依然として世界の一部の地域で深刻な問題であり、無差別的な政治的暴力行為への恐怖は、人々の認識に依然として大きな影を落としている。

さらに、移民や難民の問題もある。そして、様々な国が海外からの人々の流入に飲み込まれ、その結果、ある種の文化が消滅してしまうのではないかという恐怖がある。これは、白人至上主義運動(the white nationalist movement)の中心的な柱である「大人口置換理論(great replacement theory)」のような偏執的な幻想の背後にある恐怖だ。人口増加を切実に必要としている高齢化社会でさえ、この懸念に非常に敏感であり、アメリカ合衆国のような人種のるつぼ社会は、時計の針を戻そうと、障壁を築き、生産性の高い住民を追い出そうとしている。寛容なコスモポリタニズムの世界に溶け込む代わりに、「他者(other)」への恐怖は世界中で深刻な反発を引き起こしている。

しかし、待って欲しい。それだけではない! 専属の免疫学者を雇う余裕があったり、隠れ家としてプライヴェートアイランドを持っていたりしているのでなければ、おそらく次のパンデミックを心配していることだろう。私たちはここ数十年で、エイズ、SARS、エボラ、そしてもちろん新型コロナウイルスなど、すでにいくつかの大きな脅威を経験してきた。そして、またいずれ大きな脅威が起こるだろう(米保健長官ロバート・F・ケネディ・ジュニアの思い通りに事が運ぶなら、おそらくもっと早く起こるだろう)。

最後に、私たちが耳にする偽りの脅威を忘れてはならない。トランスジェンダーの人々、図書館の本、命を救うワクチン、ピザゲート事件、ワシントンDCをはじめとする民主党支持の都市での犯罪などだ。これらの脅威が全くの空想、あるいは極端に誇張されたものであっても、世界は民主政治体制では対処できない危険に満ちており、人々が本当に必要としているのは独裁者だ(the world is brimming with dangers that democratic systems cannot handle and that what people really need is a dictator)という、広く信じられている認識を助長することになる。もちろん、独裁者への依存は他の国々で非常にうまく機能したからだ。

不運なことに、人々は恐怖を感じると、何よりも保護を提供してくれる強力な権威を渇望する傾向がある。アルカイダによる911同時多発テロの後、アメリカ人は愛国者法の賢明さ、国内監視の拡大、そしてたとえテロとは全く関係のない外国の占領の妥当性について疑問を抱くことはなかった。人々は限界まで恐怖を感じると、事実が何であるかを理解し、どのように対応するかを慎重に検討するまで待つことはない。彼らは、誰かが指揮を執り、ただ危険に対処してくれることを望むようになる。

理想的には、有権者たちは、上記のような様々な困難な問題に効果的な対応策を講じるために24時間365日体制で働く、非常に有能な指導者を選ぶことになるだろう。しかし、恐怖心は、たとえそれが現実からどれほどかけ離れていても、強さと能力のイメージを巧みに演出する独裁者予備軍が売りつけるインチキ薬に、人々をいとも簡単に騙してしまう。野心的な独裁者は当然ながらこのことを知っているため、正当な懸念を誇張したり、架空の緊急事態をでっち上げたりすることで、権力の強化を正当化し、自らの行動の結果から人々の目を逸らそうとする。

フランクリン・ルーズベルト大統領は一期目の就任式で、「私たちが恐れるべき唯一のものは恐怖そのものである(The only thing we have to fear is fear itself)」という有名な言葉を残している。しかし、これは必ずしも正確ではない。遅滞なく対処する必要がある真の問題がいくつかあり、あなたがそれらを心配するのは当然だ。私たちが決して許されないのは、恐怖に麻痺したり、判断力を曇らせたりすることだ。私たちが直面する最大の危険は、将来への不安に駆られて、問題を悪化させる兆候を示し、個人的な力を得たいという欲によってより自由な世界というリベラルなヴィジョンを消えゆく記憶にしてしまう可能性のある指導者に頼ってしまうことだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカに関しては外交政策に注目が集まっている。「ドンロー主義」というモンロー主義と棍棒外交を足して、再植民地化という要素を掛け合わせた、アメリカの新たな外交政策は、各国から脅威と見られている。ドナルド・トランプ大統領が外交に注力しているのは、国内問題から目を逸らさせるためだ。国内には大きな不満が溜まり、不安定な状況になっている。不法移民摘発から火がつきそうな国内での暴力や生活費が下がらないインフレ状況は、トランプ政権を苦しめている。結果として、移民(有色人種)や外国を攻撃することで、不満を逸らさせるという、古典的な方法を採用している。

 MAGA派の中で分裂があったのは、ジェフリー・エプスタイン事件の文書、エプスタインファイルの公開をめぐってのことであった。トランプ大統領は選挙期間中、エプスタインファイル公開を公約に掲げていた。しかし、大統領就任後には、エプスタインファイルは存在しないと述べ、批判者たちを「弱虫」と呼んだ。誰もが、エプスタインファイルにトランプの名前があって、未成年の女性たちとの性的な関係があったのだろう、だからファイルを公開できないのだろうと推測した。トランプ大統領のこれまでの行状から、それくらいは織り込み済みで、それが暴露されたからと言って、支持が大きく減ることはないとも言えた。ここからは私の推測だが、エプスタインファイルにはイギリス王室やイギリス貴族たちの名前があったのだろう。アンドルー元王子に責任を全部負わせているが、更なる重要人物たちの名前があったものと推測される。トランプ大統領が当選してから、二度もイギリスを訪問し、チャールズ国王を先頭に大変な歓迎であったことは、口止めをお願いしてのことだったのではないか。エプスタインファイルは結局公開されたが、のり弁当のように一面真っ黒な文書もあった。「被害女性のプライヴァ氏―を守る」ということにすれば、重要な部分を消して公開することも可能だ。

 アメリカ国内のインフレ(物価高)、生活苦の影響を一番に受けているのはMAGA派、失業している白人労働者たちである。彼らの中から「こんなはずでなかった」とトランプ支持を止める人たちも出てきている。同時に、「トランプの進める世直しはこれからが本番だ」と支持する人たちもいる。こうして、支持基盤に分裂が起きることになる。そして、支持派はどんどん過激になっていく。先鋭化していく。アメリカ社会の分断は続き、アメリカの衰退は進むことになる。

(貼り付けはじめ)

抑制されない過激主義がMAGAを内部から分裂させている(Unchecked extremism is tearing MAGA apart from within

スヴァンテ・マイリック筆

2025年11月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5595297-maga-movement-antisemitism-controversy/

MAGA運動にとって、この1カ月は厳しい月だった。有権者たちがトランプ大統領と同調する候補者を拒否する一方で、MAGAの指導者たちは、運動にどの程度の反ユダヤ主義的偏見(antisemitic bigotry)や過激主義(extremism)を受け入れるべきかを巡って互いに争っていた。これは決して好ましい状況ではない。

論争の中心となったのは、元FOXニューズ司会者のタッカー・カールソンが、ヒトラーとスターリンを崇拝するネット上の有名人ニック・フエンテスに親近感を持って行ったインタヴァューだった。フエンテスは、人種差別、反ユダヤ主義、女性蔑視、白人キリスト教ナショナリズム、暴力の脅し、そしてアメリカ民主政治体制がファシスト独裁政治に取って代わられることへの切望(racism, antisemitism, misogyny, white Christian nationalism, threats of violence and a yearning for American democracy to be replaced with a fascist dictatorship.)を日々発信し、疎外された若い白人男性の間で支持を集めてきた。

フエンテスは右翼系ポッドキャスト番組に出演し、インタヴュアーたちの助けを借りて評判を高め、過激主義を軽視してきた。カールソンはFOXニューズを去って以来、極右の熱狂的な支持基盤にどっぷり浸かってきたため、彼がフエンテスをより幅広い聴衆に届ける手助けをする人物になったことは、それほど驚くべきことではなかった。

驚くべきは、MAGA運動においておそらく最も影響力のある団体であるヘリテージ財団のケヴィン・ロバーツ会長が、保守派がカールソンとフエンテスとの軽率なインタヴューを非難し始めた後、公にカールソンを擁護せざるを得なくなったことだ。

ロバーツは水面下で仲間を擁護しただけではない。彼は、保守運動はカールソンやフエンテスを「キャンセル(cancel)」すべきではないと宣言するヴィデオ映像を録画した。ヘリテージ財団と有料メディア関係にあるカールソンは、シンクタンクの「常に」親しい友人であり続けると明言した。

それだけでも十分に良くないのだが、ロバーツはさらに踏み込み、カールソンを批判する人々を「悪意のある連合(venomous coalition)」で、「グローバリスト階級(globalist class)」の一部だと非難するという、典型的な反ユダヤ主義の比喩を使った。

ロバーツのヴィデオは、ヘリテージ財団内、そしてその支持者や政治的同盟者の間で怒りと混乱を引き起こした。彼が公私ともに謝罪したにもかかわらず、この混乱は続いている。

ロバーツとカールソンは親密だ。ロバーツは昨年の共和党全国大会でヘリテージ財団のイヴェントにカールソンを特別講演者として招待した。カールソンは聴衆に対し、「キリスト教徒を殺す(kill Christians)」ことを望む人々との「精神をめぐる戦い(spiritual war)」に臨んでいると述べた。

カールソンはJD・ヴァンス副大統領の大ファンでもあり、トランプにヴァンスを副大統領候補に選ぶよう勧めた。そして、ヴァンスもカールソンをホワイトハウスに招待し、チャーリー・カーク暗殺後に自身が司会を務めた番組「チャーリー・カーク・ショー」に出演させた。カールソンの息子はヴァンスのために働いている。

MAGAの継承者を目論むヴァンスは、運動の一部が求める「右翼に敵なし(no enemies to the right)」の立場を取らざるを得ないだろう。ロバーツは動画の中でこの立場を支持しているように見えた。そのため、ヘリテージ財団のスタッフの中には、保守派の大きな組織がカールソンやフエンテスのような人物を排除できないことを意味するのかと疑問を呈する者もいる。

ヴァンス自身もいかがわしい仲間と交流し、極右の人物たちと付き合っている。その中には民主政治体制に敵対する者もいれば、フエンテスとそれほど変わらない見解を持つ者もいる。

ヴァンスは最近、共和党の若手党幹部グループの間で流出したテレグラムのチャットで明らかになった人種差別的・ナチス的な感情を軽視した。この発言に対する超党派の激しい非難の中、ヴァンスは「子供」や「少年」の間で交わされた冗談を「大袈裟に誇張している(pearl clutching)」と揶揄した。

しかし、彼らは子供ではなかった。ほとんどが24歳から35歳までの大人であり、ヴァンスは人々に彼らを許すよう促していた。トランプ政権が人種差別や陰謀論を助長する高官たちを許してきたのと同じだ。

さらに最近、ヴァンスは「ターニングポイントUSA」のイヴェントで講演した。ある質問者は、アメリカのイスラエル支援について質問した際、「彼らの宗教はアメリカの宗教と一致しないだけでなく、アメリカの宗教の迫害を公然と支持している」と主張した。ヴァンスはこの質問に反論する機会を逃した。

こうした状況において、フエンテスは勝利を収めた。彼はヘリテージ財団が「私とタッカーに同情的な人々にとっての安全な避難所であり、踏切板になりつつある」と主張した。これは、彼の支持者(通称グロイパー[groypers])を共和党に浸透させ、保守的な組織を乗っ取ろうとする彼の試み​​における画期的な出来事だった。

フエンテスは、ヴァンスの最近の行動について言及し、副大統領は共和党の寄付者を喜ばせたいという欲求と、選挙活動中にヴァンスを執拗に追い回すと断言する「グロイパー」たちを疎外させたくないという願望の間で板挟みになっていると自慢げに語った。

これはMAGA運動が自ら招いた事態だ。

トランプは初の大統領選挙キャンペーンを開始して以来、排外主義者、白人至上主義者、そしてキリスト教至上主義者を活気づけてきた。偏見を持つ人々が誇りを持って自己表現できるよう、彼は彼らを勇気づけてきた。ますます不人気となっている自身の運動と政権に彼らを招き入れ、フエンテス、カールソン、ロバーツらが引き起こしたような衝突を避けられないものにしてきた。

一方、民主党候補は全米各地で勝利を収め、強力で包括的な連合を築き、私たち全員のために機能するアメリカというヴィジョンを掲げて若者たちを鼓舞した。そこに私たちの未来がある。共に築こう!

※スヴァンテ・マイリック:「ピープル・フォ・ジ・アメリカン・ウェイ」会長。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 第二次ドナルド・トランプ政権は「変容した」と言うしかない。トランプの急激な変わり身は周囲を置き去りにしている。就任してすぐの、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領との会談の厳しい態度、JD・ヴァンス副大統領の厳しい叱責は、ウクライナ戦争の停戦を促す効果があると当時の私は考えていた。ヨーロッパ諸国、特にイギリスは「口だけ番長」で、武器も金も人も出さずに、ウクライナを焚きつけるだけ、ほとんどがアメリカの金で戦争が行われてきた。トランプはこの状況を変えるだろうと考えていた。
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2025年も残り2カ月を切った。また年を越える。ウクライナ戦争は勃発以来、4年目であり、来年の2026年2月24日を過ぎても戦争が継続していれば、5年目に突入ということになる。ロシア政治や経済、国際関係の専門家たちは、ロシアは人員と戦費の関係で戦争を続けられないと4年間も言い続けた。月報のように「もうすぐロシアはギヴアップ」と言い続けてきた。アメリカとヨーロッパ諸国に比べて、圧倒的に経済面で脆弱なはずのロシアが戦争を継続し、奪取した地域を維持している。この戦争はウクライナの負けではなく、西側諸国の負けということになる。トランプはこの西が諸国の負けを確定させながらも、ロシアとの「ディール(deal、取引)」によって、ある程度の利益を確保できると私は考えていた。しかし、状況はどうもそうなっていない。
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ドナルド・トランプとイギリス国王チャールズ三世

 ヨーロッパ、とくにイギリスがトランプを取り込むことに成功したと考えている。関税交渉をうまく片付け、史上初の米大統領として2度目の国賓招待ということで、トランプを手懐(てなず)ける(tame)ことに成功したのかもしれない。イギリスの狡猾さと外交力は、実力を失って久しい21世紀になっても侮れない。「現代のビザンツ帝国と言うべきだろう。ヨーロッパは、ドナルド・トランプ、習近平、ウラジーミル・プーティンによるヤルタ2.0体制の構築を阻止し、ヨーロッパ防衛にアメリカを関与させ続けることに成功した。トランプの「変容」「変わり身」は、ポピュリズムの敗北を意味する。私たちはこのことを冷静に見つめ、分析しなければならない。

(貼り付けはじめ)

トランプとヴァンスがヨーロッパについてどれほど不快な態度を取ったとしても、彼らは率直な真実を語っている(No matter how distasteful we find Trump and Vance over Europe, they speak a blunt truth

-アメリカは最悪のタイミングと最悪の言い方を選んだが、再編を求めるのは正しい。

サイモン・ジェンキンス筆

2025年2月21日

『ザ・ガーティアン』紙

https://www.theguardian.com/commentisfree/2025/feb/21/donald-trump-jd-vance-europe-us-realignment

ここ最近、右翼勢力でいるのは大変だ。ドナルド・トランプについて何か良いことを言う必要がある。それは困難だ。彼はウクライナ戦争を始めたのはキエフであり、その大統領であるウォロディミル・ゼレンスキーを「独裁者(dictator)」だと考えている。しかし、JD・ヴァンスはどうだろうか? アメリカ副大統領は、「言論の自由(free speech)を後退させている」ヨーロッパの「内部からの脅威(threat from within)」は、ロシアや中国からのどんな脅威よりも深刻だと考えている。彼らは正気を失っている。他に何を言うことがあるだろうか?

答えは数多くある。ジョン・スチュアート・ミルは「物事について、自分の側しか知らない人は、そのことについてほとんど何も知らない(he who knows only his own side of the case knows little of that)」と警告した。私たちは、彼らの主張に賛成するか否かに関わらず、理解しようと努力しければならない。

確かに、彼らは嘘つき(mendacious)で偽善的(hypocritical)だ。トランプは、ゼレンスキーが「選挙を拒否している(refuses to have elections)」と主張し、「各種世論調査では非常に低い支持率だ(very low in the polls)」と主張しているが、最近の世論調査では依然としてウクライナ国民の過半数の支持を得ている。「内部からの」言論の自由への脅威(the threat to free speech “from within”)に関しては、AP通信はメキシコ湾を「アメリカ湾(Gulf of America)」に改名することを拒否したためホワイトハウスのブリーフィングから締め出され、トランプ大統領の友人であるイーロン・マスクはCBSの「嘘つき(lying)」ジャーナリストは「長期の懲役刑に値する(deserve a long prison sentence)」と考えている。

トランプ・ヴァンスは、世界を善と自由へと導くという、神から与えられたアメリカの宿命について、半世紀にもわたって合意に基づいた曖昧な言い回しをしてきた。平和と戦争、移民問題、関税問題など、彼らはアメリカの利益のみを追求していると主張している。なぜアメリカは、自衛できないヨーロッパを守るために毎年数十億ドルもの費用を費やす必要があるのだろうか? なぜ遠く離れた国々に武器を与えて隣国と戦わせたり、途方もない額の援助を困窮するアフリカに注ぎ込んだりする必要があるのだろうか?

もし世界の他の国々が失敗してきたとしたら、アメリカは2世紀半もの間自由で豊かであり続けてきたのだが、それは世界の問題だ。アメリカはこの50年間、地球上の生活を向上させようと巨額の資金を費やしてきたが、率直に言って、それは失敗に終わった。外交儀礼(diplomatic etiquette)などどうでもいい。

ウクライナに関してはもうたくさんだ。ウラジーミル・プーティン大統領はアメリカを侵略するつもりはなく、西ヨーロッパを侵略する意図もない。もしヨーロッパがそうではないふりをし、ウラジーミル・プーティンの敵を擁護し、彼に制裁を与えて激怒させたいのであれば、ヨーロッパだけでそうすることができる。

NATOはヒトラーとスターリンの産物だ。ヨーロッパ防衛の費用をアメリカに負担させるための単なる手段に過ぎなかった。だが今は違う。米国防長官ピート・ヘグセットは「アメリカはもはやヨーロッパの安全保障の主要な保証者(the primary guarantor of security in Europe)ではない」と述べた。これで核抑止力も形骸化した。

実際には、こうした主張は目新しいものではない。ただし、これほど露骨に政権によって表明されたことはこれまでなかった。様々な形で、それらは1世紀以上にわたるアメリカのアイソレイショニズム(Isolationism)の表層下に潜んでいた。選挙に勝つため、ウッドロウ・ウィルソンは第一次世界大戦について「私たちとは無関係であり、その原因は私たちに及ばない(one with which we have nothing to do, whose causes cannot touch us)」と断言した。フランクリン・ルーズベルトも第二次大戦について同様の約束をした。彼はアメリカの母親たちに「何度でも繰り返すが、あなた方の息子たちは外国の戦争に送り込まれることはない(again and again and again, your boys are not going to be sent into any foreign wars”. Neither kept his word)」と約束した。どちらもその言葉を守らなかった。

ヴェトナム戦争時のように、戦争中はアメリカ世論も愛国的になる。しかしそれ以外は一貫して反介入主義的(anti-interventionist)だ。ケネディは「地球規模の犠牲(global sacrifice)」を訴え、「アメリカがあなたのために何をするかではなく、人類の自由のために共に何ができるかを問え(ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man)」と訴えたかもしれない。だがそれは主に外国向けの美辞麗句に過ぎなかった。

トランプ・ヴァンスが今、西ヨーロッパ諸国に伝えているのは「本気になれ(get serious)」だ。冷戦は終わった。ロシアが西ヨーロッパ占領を望んでいないことは周知の事実だ。この脅威は、賢明な大統領ドワイト・アイゼンハワーが「米軍産複合体(military-industrial complex)」と呼んだ連中が作り上げた幻想に過ぎない。彼らは恐怖から利益を搾り取ることに長けている。キア・スターマーが本当に「防衛を優先する(to give priority to defence)」つもりなら、自らの保健・福祉予算を削減して賄えばよい。だが彼は本当に脅威を感じているのか、それとも単に聞こえが良い言葉を言っているだけなのか?

ジョー・バイデンはキエフへの支援の程度に細心の注意を払った。今こそ脱出の避けられない瞬間だが、それに先立って非常に困難な停戦が必要となるだろう。ワシントンからの実質的な保証がなければ、キエフの最終的な敗北以外に道は開けない。ウクライナは、南ヴェトナムにおけるアメリカの再来となる可能性もある。

トランプ・ヴァンスは、冷戦の大部分を支えてきた陳腐な言葉(platitude)、こけおどし(bluff)、そして不当利得(profiteering)の混合物の実態を、最小限の配慮で暴露することを決断した。1989年のNATOの勝利は、より微妙なニュアンスを持つ多極世界への移行の必要性を示唆していたが、それは決して適切に定義されることはなかった。

トランプ・ヴァンスが言うように、再編は切実に必要だ。しかし彼らがそれを表明したタイミングと方法は最悪の選択だった。私たちは彼らに好きなだけ無礼に振る舞えるが、彼らにはアメリカの民主政治体制が味方するだろう。

※サイモン・ジェンキンス:『ザ・ガーディアン』紙コラムニスト。

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(終わり)
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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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 古村治彦です。

>※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2025年11月にニューヨーク市長選挙が実施される。本選挙に向けて、民主党や共和党で予備選挙が実施された。ニューヨーク州やニューヨーク市が民主党の金城湯池であることを考えると、民主党の候補者になれれば、本選挙で当選することがほぼ確実ということになっている。今回、民主党予備選挙で、ニューヨーク州議会下院議員ゾーラン・マムダニ(Zohran Mamdani、1991年-、33歳)が勝利した。マムダニは前ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモを破っての勝利だった。
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アンドリュー・クオモはニューヨーク政界のサラブレッドだ。クオモ家はニューヨーク民主党の「王家」とも言える存在だ。アンドリューの父であるマリオ・クオモはニューヨーク州務長官、ニューヨーク州副知事、ニューヨーク知事を務めた。1984年の民主党全国大会で基調演説を行い、ロナルド・レーガン大統領を批判した。この演説が大きな注目を集めた。アンドリュー・クオモはビル・クリントン政権で住宅都市開発長官を務め、ニューヨーク州司法長官、ニューヨーク州知事を務めた。弟のクリス・クオモは報道分野で活躍し、CNNで自身の番組を持つほどであったが、兄アンドリューのセクシャルハラスメント疑惑をめぐり、擁護活動を行ったことでCNNを解雇された。マムダニがクオモを破ったということは、既成政治、エスタブリッシュメントに対する人々の不信が根深いということを示している。

 マムダニはウガンダ生まれで、父はアフリカ研究の学者、母は映画監督だ。両親はインド系で(父マフムードはウガンダ生まれ)、途中で南アフリカに移り、その後、アメリカに移った。父はコロンビア大学教授を務めている。マムダニはウガンダとアメリカの両方の国籍を保有している。マムダニは父と同じくイスラム教徒だ。メイン州の名門ボウディン大学に進学した。大学卒業後にラッパー活動をしながら、住宅カウンセラーを務め、社会活動や政治活動を行い、2020年にニューヨーク州議会下院議員に当選した。

 マムダニは、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)と同様に民主社会主義者を自認し、家賃の凍結、安価な公営住宅の増設、市営商店を設置し、安価や食品の供給、市営バスの無料化、富裕層への課税強化を訴えた。

 ニューヨーク州やカリフォルニア州といった民主党の金城湯池の地域では、民主党エスタブリッシュメント派への反感から、進歩主義派への支持が高まっている。これは、共和党側で言えば、ポピュリズムのドナルド・トランプ派が伸長していることと同じ動きである。民主、共和両党のエスタブリッシュメント派は自分たちが行ってきた政策の失敗を反省することから始めなければならないが、アメリカの国力減退は既に手遅れの時期に来ている。人々はますますエスタブリッシュメント派、中道から離れていくことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

マムダニがニューヨーク市長選挙民主党予備選で正式に勝利(Mamdani formally wins Democratic primary for NYC mayor

ジャレッド・ガンズ筆

2025年7月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5378850-zohran-mamdani-wins-dems-nomination/

「デシジョン・デスク・HQ」は、ニューヨーク州議会議員ゾーラン・マムダニは、順位付け投票による集計(ranked choice tabulation)が終了し、ニューヨーク市長選挙の民主党候補指名を正式に獲得したと予測している。

先週火曜日の予備選挙後、マムダニは、第1ラウンドの集計で約7ポイントの差で大きくリードしていたため、元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ(民主党)をはじめとする多くの候補者たちを破る番狂わせ(upset)の勝利はほぼ確実と思われていた。第1ラウンドで2位だったクオモが民主党予備選挙での敗北を認め、マムダニを祝福したことを受け、マムダニは勝利宣言を行った。

しかし、順位付け投票による追加集計は火曜日まで公表されなかった。

ニューヨーク市では、予備選挙日までに消印が押された郵送投票が集計対象となっているため、今後数週間のうちに未集計の投票が集計に加算される可能性がある。

ニューヨーク市の優先順位投票制度では、有権者は最大5人の候補者を優先順位順に選ぶことができる。先週のように、第一希望の票の過半数を獲得した候補者がいない場合、最も得票数の少ない候補者が脱落し、その票は支持者の第二希望の票に再配分される。

このプロセスはいずれかの候補者が過半数を獲得するまで継続される。

他の候補者たちは、得票数が少なすぎて他の候補者からの票を得ても結果に影響がなかったため、第3ラウンドに進む前に脱落した。ニューヨーク市会計監査官ブラッド・ランダーは11.2%で3位、ニューヨーク市議会議長エイドリアン・アダムズは4.2%で4位だった。

他の候補者全ての得票率は2%以下となった。

脱落した候補者の票のほぼ半分は第3ラウンドでマムダニに、4分の1強はクオモに集まった。また、4分の1の有権者は、マムダニとクオモを5人の候補者のいずれにも含めなかった。

マムダニは声明で、先週の予備選挙で民主党が「明確な声(clear voice)」を発し、「住みやすい都市、未来の政治、そして台頭する権威主義に抵抗することを恐れないリーダー」という信任を得たと述べた。

マムダニは「私たちのキャンペーンに投票してくれた54万5000人以上のニューヨーク市民の支持に深く感謝するとともに、エリック・アダムズを破り、働く人々を第一に考える市政を勝ち取る中で、この連携をさらに拡大できることを大変嬉しく思う」と述べた。

2021年からアメリカ民主社会主義党の支援を受けて州議会議員を務めるマムダニは、クオモに代わる進歩的な候補者として自らを売り込み、他の候補者を探している有権者の関心を惹きつけようとした。家賃凍結、無料バス、市営食料品店など、幅広い進歩的な政策提案を行い、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の支持を得た。

マムダニは他の候補者たちからも支持を受けており、特に市の監査役ブラッド・ランダーはマムダニと相互推薦を行っており、他の候補者を第2候補にランク付けするよう有権者に促し、クオモを破る可能性を高めた。

予備選開始当初、勝利の見込みがあるのはクオモかマムダニの2人だけと見られていた。

選挙戦は当初、クオモが他を大きく引き離して圧倒的な優位に立っていたが、他の候補者たちがなかなか支持を集められず、徐々にクオモとマムダニの2人による争いへと移行していた。

クオモは3月に選挙戦に参戦する前からほとんどの世論調査でトップを走っていたが、マムダニはここ数週間でその差を縮め、自身が大きく優位に立っていた若い有権者の支持を獲得した。クオモの強みは、特に高齢者層を中心とした年配層の支持だった。

クオモは、州および連邦レヴェルで長年公職を務めてきた経験を強調した。10年以上知事を務める前は、クリントン政権下で住宅都市開発省を率い、州司法長官も務めました。

クオモはまた、11月の大統領選挙でカマラ・ハリス前副大統領が敗北した後、アイデンティティを模索する中で、市と民主党全体が直面している問題は左派政権のせいだと非難した。

しかし、彼の純支持率は他の候補者のほとんどよりも一貫して低く、有権者の40%が彼に好意的ではないと見ていた。

知事在任中、クオモは新型コロナウイルス感染拡大中の介護施設での死亡者数を故意に過少報告したという非難を受け、複数の女性からセクハラの申し立てを受けた。クオモは、介護施設の監督に関する連邦政府のガイドラインに従っており、ハラスメントの申し立てを一貫して否定していると主張して自己弁護している。

しかし、マムダニは全般的に期待を上回る結果を残した。期待されていた分野では好成績を収め、弱点とされていた層でもまずまずの成績を残した。白人有権者や大学卒有権者に強いと予想されていたが、黒人やヒスパニック系有権者など、クオモがより強いと予想されていた層でもまずまずの成績を残した。

マムダニは、黒人とヒスパニック系が混在する地域や、裕福な高齢の白人地域で勝利を収めた。

しかし、クオモが総選挙で引き続き立候補するかどうかについては疑問が残る。

クオモは既に11月の予備選挙で、ファイト・アンド・デリヴァー党の党首として出馬表明している。予備選後、無所属で立候補するかどうかは、順位付け投票の最終結果を見てから判断すると述べた。

クオモ陣営の広報担当者リッチ・アゾパルディは声明で、30歳未満でこれまで投票経験のない有権者の数が「急増」したことで予備選挙の有権者層は変化したが、クオモの目標は変わりなく、住宅価格の高騰、住宅、教育、公共の安全問題への取り組みと人々の結束を通じて、ニューヨーク市民に「真の変化(real change)」をもたらすことだと述べた。

アゾパルディは、「過激主義、分断、空約束(empty promises)は、この街の問題の解決策にはならない。今回の選挙は予備選挙の有権者の一部の動機を探るものであり、大多数の有権者を代表するものではない」と述べ、マムダニに対するクオモの批判を改めて強調した。 アゾパルディは、「私たちの家族の経済的不安定さはここでの最優先事項だ。だからこそ、実行可能な解決策、結果、そして成果が非常に重要なのだ」とも述べた。

アゾパルディは、「私たちは、今後の対応策を決定していく中で、ニューヨーク市内全域の人々と話し合いを続けていく」と語った。

CNNは、クオモは少なくとも11月の選挙では候補者名簿に残るものの、今後数カ月で積極的に選挙活動を行うかどうかは未定だと報じている。

マムダニは既に、無所属で再選を目指す現職のエリック・アダムズ市長、共和党候補のカーティス・スリア、そして無所属のジム・ウォルデンと対決する構えだ。予備選挙とは異なり、ニューヨーク市の総選挙では順位付け投票は行われず、勝者は他のどの候補者よりも多くの票を獲得するだけで済む。

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ゾーラン・マムダニの勝利から得た6つの教訓(6 lessons from Zohran Mamdani’s victory

スティーヴ・イスラエル筆

2025年6月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5372085-6-lessons-from-zohran-mamdanis-victory/

ニューヨーク市の政治は常に大げさで、強引で、ドラマチックなものだった。今週、それはブロードウェイの舞台にふさわしいものとなった。

現職の民主党所属のニューヨーク市長エリック・アダムズは、自身の支持基盤からあまりにも不人気になり、予備選への出馬すら断念した。彼のキャラクターは、トランプ大統領の公然たる反対者から、6件の起訴状を前にトランプ支持者へと転落した。そして驚くべき偶然にも、司法省は起訴状を取り下げた。

ニューヨーク州前知事アンドリュー・クオモが選挙戦に参戦し、莫大な資金集めで中道左派の他の候補者を瞬く間に追い落とした。一方、生まれ持った才能とテレビ映りの良さを兼ね備えた若き運動家ゾーラン・マムダニは、主流政治(mainstream politics)に対する人々の不満に刺激され、民主党支持基盤の左派を固めた。

まるで「ラマンチャの男」と「オール・ザ・キングス・メン」が出会ったかのようだ。

衝撃の結末:民主社会主義者がニューヨーク市長選挙の民主党予備選挙で勝利した。マムダニが主導権を握った。

多くの中道派民主党員にとって、マムダニの勝利は選挙前の楽観的な予測さえも大きく上回り、体制に衝撃を与えた。しかし、政治家や評論家たちは、この選挙戦から全国的な結論を導き出す際は自己責任で判断すべきだ。そこには、単なる短い言葉の断片を超越する複雑な事情がある。

ニューヨーク市長選挙民主党予備選から得られた教訓をいくつか挙げよう。

第一に、マムダニの勝利は、ほとんどのアメリカ人がイデオロギーの中心、あるいはその付近に位置しているにもかかわらず、アメリカ政治の中心は維持されていないことを示唆している。トランプとその側近たちは、共和党の正統派思想と制度を極右に引きずり込み、マムダニの勝利は民主党が再び極左に引きずり込まれたことを示唆している。私たちは反動的な政治環境(a reactionary political environment)にあり、一方の行動が他方のエネルギーを刺激している。

第二に、民主党にとって、マムダニの選挙運動は、街頭だけでなく州議会や連邦議会代表団においても世代交代を確固たるものにするものだ。より若く、より進歩的な活動家たちが政治システムに参入しつつある。これは、国政、州政、地方自治体における民主党にとって良いことだ。建設的な連携を築き、友軍の攻撃を避けることができれば、なおさらだ。

第三に、今回の選挙から一般的な傾向を推測することはできても、全米の民主党の顔ぶれを決めることにはならない。マムダニは、左派の熱狂の波に乗り、デジタルに精通した統制のとれた選挙戦を展開した。しかし、ニューヨーク市の民主党登録者の30%しか投票に行かなかった中で、彼はこの選挙に勝利した。これは、2026年に連邦下院をひっくり返すために民主党が激戦選挙区で説得する必要のある有権者を代表するサンプルではなかった。マムダニは称賛に値するが、ニューヨーク市ブルックリンとアイオワ州ブルックリンの選挙に勝つことは全くの別物だ。

第四に、民主党にはこの最悪の状況(perfect storm、パーフェクト・ストーム)においても明るい兆しがある。もし民主党が、進歩的左派の巨大なエネルギーで穏健派有権者たちにアピールする常識的な政策アジェンダを実現できれば、民主党は勝利の戦略を手にすることができる。有権者の一方の派閥を満足させるために他方の派閥を見捨てなければならないという議論は、ゼロサム戦略であり、選挙戦の戦場を拡大する方法ではない。左派対中道派ではなく、勝つためには両方がいなければならない。マムダニの焦点は、進歩主義派や穏健派が受け入れることのできる多くの問題、つまり、手頃な価格、生活の質、億万長者減税のための医療費削減に反対することのプレビューに役立つ。

第五に、マムダニの圧勝でさえも、彼の勝利の連合に軟弱な部分があることを明らかにしている。マムダニの勝利は印象的だ。クオモの牙城であるスタテン島とクイーンズでさえも、マムダニが勝利した。しかし、民主党がマムダニの戦略を全国的に採用しようとする動きには警告の兆候がある。

マムダニは 「金持ち優遇(soak the rich)」のメッセージを発していたにもかかわらず、高所得者層と中所得者層によって当選したのに対し、クオモは低所得者層を圧倒的に獲得した。再分配政策にもかかわらず、マムダニが市内の富裕層を納得させることができたのは、マムダニの政治運動にとって良い兆候である。しかし、民主党が2026年と2028年に勝利するためには、労働者階級の有権者を獲得する必要がある。

そして、バーニー・サンダースが2度の大統領選予備選挙で見せたパフォーマンスとは異なり、マムダニはクオモも圧勝した黒人有権者に苦戦した。中間選挙に出馬する民主党が黒人有権者の支持を得られなければ、来年11月に民主党が連邦下院をひっくり返すチャンスはない。マムダニの連合は今回の予備選挙で勝利するには十分だったが、民主党が全国的に勝利するには不十分だ。

第六に、民主党はマムダニのデジタル戦略による草の根動員を再現すべきである。あるXの投稿では、「Zohran Mamdani 」とツイートするだけで、すぐに1000の「いいね!」を獲得できると言われている。これは、彼のヴォランティアがニューヨーク市中の150万以上のドアをノックする、強力な地上戦に変換された。彼のダイナミックなキャンペーンは、クオモの無気力なメッセージングとは対照的だった。

ニューヨーク市長予備選挙は、11月の選挙も同様に奇妙な展開となるだろう。クオモとアダムズには、依然として無所属の票が残っている。共和党候補のカーティス・スリアワは、マムダニの立場、特にイスラエルに対する忌まわしい見解に反発している民主党支持者を引きつける新たな機会を得るかもしれない。

つまり、今後さらにドラマが展開される可能性があるということだ。これはまだ幕間の出来事に過ぎない。

※スティーヴ・イスラエル:ニューヨーク州選出の連邦下院議員(8期)を務めた。2011年から2015年まで民主党連邦下院選挙委員会の委員長を務めた。

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マムダニの勝利は民主党に懸念と教訓をもたらす(Mamdani’s victory brings concerns, and lessons, for Democrats

ダグラス・ショーエン、カーリー・クーパーマン筆

2025年6月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5374228-democrats-leftward-polarization-zohran-mamdani/

2024年の大統領選挙の重要な教訓が、民主党が経済・社会問題において中道に近づく必要があるというものだったとすれば、先週のニューヨーク市選挙は、民主党が教訓を学んでいないことを如実に示している。

実際、33歳の州議会議員ゾーラン・マムダニがニューヨーク州元知事アンドリュー・クオモを破って勝利したことは、民主党が自らのルーツを再発見するどころか、さらに左傾化を続けていることを示唆している。

さらに、進歩派や民主社会主義者はマムダニの総選挙での勝利を喜ぶだろうが、穏健派の民主党員は不安を抱いている。これは、穏健派と進歩派の間で分極化し、どちらの方向へ進むべきか確信が持てない民主党の現状を反映している。

はっきりさせておくと、マムダニの精力的な選挙運動が民主党にとってのロードマップとなるべきであることは否定できない。

マムダニは生活費に対する人々の根深い不満を掘り起こし、通常は有権者たちとしてあまり信頼できない若者の心を躍らせた。さらに、前回の選挙で民主党指導部がほとんどできなかった方法で有権者たちとの繋がりを築いた。

しかしながら、民主党は、民主党が向かっている方向性に警鐘を鳴らしつつも、活力に満ちた明るい選挙戦を展開するための教訓を吸収すべきだと言えるだろう。

マムダニは、あまりにも無意味な政策を掲げて選挙戦を展開し、『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ニューヨーク・ポスト』紙の編集委員会を結集させ、ニューヨークのような大都市を率いる能力がないと非難した。

このように、マムダニには4つの根本的な懸念事項があり、民主党がさらに1つの教訓を心に刻むべきだ。

第一の懸念は、マムダニが自らを社会主義と称し、極端な思想を掲げていることだ。2024年の選挙後数カ月にわたる世論調査では、民主党支持者でさえ、党がさらに左傾化するのではなく、中道寄りになることを望んでいることが明らかになった。

ギャラップ社の世論調査によると、民主党支持者と民主党寄りの無党派層のかなりの割合(45%)が、党がより穏健になることを望んでいるのに対し、党がよりリベラルになるべきだと答えたのは29%だった。

2021年に実施された同じ世論調査と比較すると、党が中道化になることを望む民主党支持者の割合は11ポイント増加し、よりリベラルになることを望む割合は5ポイント減少した。

共和党は、マムダニの極左政策、すなわち公共交通機関の無料化、警察予算の削減、そして、ソヴィエト連邦でさえ最終的に悪い考えだと認識した市営食料品店の開設といった政策を、民主党全体の代表として描き出そうとするだろう。

実際、トランプ大統領とJD・ヴァンス副大統領は既にそうし始めている。

トランプは民主党が「100%共産主義の狂人(100 percent Communist Lunatic)」を選んだことを激しく非難し、ヴァンス副大統領はマムダニを「民主党の新党首(new leader of the Democratic Party)」として冗談交じりに祝福し、さらに彼を「反ユダヤ主義の社会主義過激派(antisemitic socialist radical)」と呼んだ。

第二に、『ニューヨーク・タイムズ』紙が指摘したように、マムダニにはニューヨーク市を統治する資格が全くない。

彼の極左的な思想、経験不足、年齢を別にしても、不動産会社の大物スコット・レヒラーが「資本主義の首都(the capital of capitalism)」と呼ぶ場所で資本主義を攻撃し、大幅な増税を計画していることは、ニューヨーク市の経済を衰退させるに違いない。

同様に、3つ目の懸念は、マムダニが特定の問題でトランプ大統領に対抗できるかどうかだ。

経験豊富で資格もはるかにあるカリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサム(民主党)はこの点で成功を収めているが、ニューサムでさえホワイトハウスとの関係構築に失敗することがある。

経験不足のマムダニは、より良い結果を出すことができるだろうか? それとも、より可能性が高いのは、トランプ大統領と、ニューヨーク州知事であるキャシー・ホウクル(民主党)と衝突することになるだろうか。ホウクル知事は、マムダニの選挙運動の柱である減税政策に既に反対を表明している。

マムダニが本選挙で勝利すると仮定すると(実際、勝利する可能性が高い)、最後の懸念が浮上する。それは、マムダニがどのようにニューヨーク市を統治するのかということだ。

もし彼の任期が、非常に似た選挙戦を展開した同じく社会主義者のシカゴ市長ブランドン・ジョンソンのそれと似たものになれば、ニューヨーク市にダメージを与えるだけでなく、民主党の評判を落とすことになるかもしれない。

マムダニは2026年の中間選挙の10カ月前、来年1月に就任宣誓を行う予定だ。そして、彼の任期のピークは2028年の大統領選挙となるだろう。

マムダニの支持率がジョンソンと同程度(最近の世論調査ではわずか26%)であれば、共和党は恩恵を受けるだろう。

民主党所属の連邦議員たちは、生ぬるい支持から完全な拒否まで、様々な反応を示した。

連邦議会民主党指導部のチャック・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出)とハキーム・ジェフリーズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出)はマムダニを祝福したが、重要なことは、全面的な支持を表明するには至らなかったことだ。

ローラ・ギレン連邦下院議員、トム・スオッツィ連邦下院議員、ジョシュ・ゴットハイマー連邦下院議員といったニューヨーク州の中道派の民主党議員たちも、マムダニから距離を置いており、ギレン議員はマムダニについて「容認できない反ユダヤ主義的な発言を繰り返しており、非常に憂慮すべきだ」と述べている。

ビル・クリントン元大統領の下で財務長官を務めたラリー・サマーズは、「インティファーダをグローバル化せよ(globalize the intifada)」というスローガンを否定しなかったが、「トロツキスト的な経済政策を提唱する候補者を選出した党の将来について、深く憂慮している」と記している。

確かに、こうした懸念にもかかわらず、民主党にとって、特に党が将来の方向性を決定づける中で、非常に現実的な教訓が1つある。マムダニが勝利したのは、彼が熱意あふれる選挙戦を展開し、有権者をその熱意で鼓舞したからだ。政治的右派と左派の両方の有権者が既成勢力の候補者にうんざりしている時代に、マムダニは非常に現実的な問題を取り上げた。

同様に、マムダニが選挙戦で訴えた問題、主に住宅価格の高騰は、たとえ彼の解決策が的外れであったとしても、正当な懸念事項である。有権者は両陣営の候補者に対し、生活費の高騰が最大の懸念事項であると訴えてきたが、対策はほとんど講じられていない。

これを念頭に置くと、民主党は、現実に根ざさないマムダニのような極端な考えではなく、真の解決策を提示する候補者を選び、選挙活動を行うことが重要だ。

2024年11月の大統領選挙でトランプを勝利に導いた3つの課題、すなわち生活費、犯罪と公共の安全、そして移民問題を考えてみよう。最初の2つの課題について、マムダニは、巨額の公共支出プロジェクトを賄うために、企業を圧迫するほどの極めて高い税金を約束し、(少なくとも過去には)ニューヨーク市警の予算を削減した。これは、昨年11月に有権者に拒否されたジョー・バイデン前大統領やカマラ・ハリス副大統領の政策よりも、はるかに左寄りだ。

そして移民問題に関して、マムダニがニューヨーク市のサンクチュアリシティ法を強硬に支持すれば、民主党はアメリカ国民よりも移民、さらには暴力犯罪者を重視するという考えを強めることになるだろう。

言い換えれば、民主党に必要なのは、有権者と繋がり、彼らが真に関心を持つ問題について、陳腐な言葉ではなく具体的​​な解決策を提示し、熱意を喚起する選挙活動を展開する候補者だ。

結局のところ、民主党は、未来に対する考え方が大きく異なる穏健派と進歩主義派に分極化し(polarized)、岐路に立たされている。民主党は、自らの立場をしっかりと見定め、党がどちらの方向に進むべきかを決めることが不可欠だ。

穏健派が優勢となり、民主党がさらに左派に進むのではなく、その原点に戻ることが私たちの望みだ。

ニューヨーク市はアメリカの大部分を代表するものではない。マムダニのような候補者が党の全国的な顔になったとしても、民主党が近い将来、政治の荒野から抜け出せるとは考えにくいだろう。

※ダグラス・E・ショーン、カーリー・クーパーマン:ニューヨーク市に拠点を置く世論調査会社ショーン・クーパーマン・リサーチの世論調査員兼パートナー。2人は共著で、『アメリカ:団結か死か(America: Unite or Die)』を刊行している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 今回は、興味深い論稿をご紹介する。民主党系のストラティジストが書いた文章で、内容は、イーロン・マスクが行っている政府効率化(連邦政府職員の削減、連邦政府機関の一部の閉鎖、予算の削減)がトランプと支持者たちを離間させるというものだ。 

論稿の著者ブラッド・バノンは「マスクはトランプのスケープゴートにされる可能性がある。民主党は、トランプを弱体化させることが最終目標であり、マスクを攻撃することではないと認識すべきである」と主張している。失業保険や生活保護など、連邦政府の予算が入っている福祉制度や労働対策制度を利用している低所得者層にとって、連邦政府の予算削減は生活に直結する大問題だ。

これまでにブログで何度も書いているが、トランプは、アメリカの貧乏白人、白人労働者たちの支持を受けて、彼らの代表として、既存の政治を壊すためにワシントンにやって来ている。貧しい白人、白人労働者たちが望んでいるのは、雇用であり、働かせてくれさえすれば、そして、生活できるだけの給料を保証してくれれば、福祉に頼ることなく、自分で生活を立て直すという考えを持っている。

 彼らの考えはもっともで素晴らしい。しかし、実態は厳しいだろう。トランプ政権下の4年間でどれだけの雇用が、一度、製造業が去ってしまった地域に戻るだろうか。しかも、彼らが望むだけの賃金となると、どうしても競争力は限定されてしまう。そうなると、彼らもまた我慢を強いられる。自分たちの思い通りにはいかないし、福祉に頼るということも続くことになるだろう。

 以下の論稿で重要なのは、後半の以下の記述だ。「マスクを嫌うバノンは私だけではない。トランプの大統領顧問を務めたスティーヴ・バノン(私とは血縁関係はない)は、長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)との間で、MAGA内戦が勃発すると警告している。バノンはこれを、トランプ連合内の億万長者と労働者階級の勢力間の戦い(a battle between the billionaire and working-class elements within the Trump coalition)だと表現した」。

 既に、日本でも報道されているように、政権内部には不協和音が起きつつある。最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)でも、政権内の不協和音、衝突については触れているが、より鮮明になっているようだ。私は違和感を覚えていたが、それが「長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)」という形で言語化されている。トランプ政権はポピュリズム政権であるが、大富豪であるイーロン・マスク、そして、ピーター・ティールが支えていることの違和感はあった。これが顕在化しつつある。

 トランプという巨大な存在によって、そうした不協和音を抑えることができるだろうが、それがいつまで続くだろうかということは私の最新の興味関心ということになる。

(貼り付けはじめ)

マスクは民主党がトランプを労働者階級の支持層から引き離すために必要な楔となるかもしれない(Musk may be the wedge Democrats need to separate Trump from his working-class base

ブラッド・バノン筆

2025年2月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/5158364-elons-musk-vs-trump-division/

イーロン・マスクはメディアの注目を独占している。この状況が続く限り、彼にはそれを楽しんでいて欲しい。マスクはトランプ大統領の影を薄くし始めており、トランプのようなナルシストが長く我慢するはずがない。

木曜日、クールなサングラスをかけ、チェーンソーを振り回すマスクは、今年のCPAC保守派会議の主役だった。FOXニューズのショーン・ハニティとの共同インタヴューでは、トランプを圧倒した。トランプが脇役に甘んじていた最近の大統領執務室での会合の報道では、マスクと息子が中心人物だった。カルヴィン・クーリッジがネイティヴ・アメリカンの頭飾りを身につけて以来、最悪の大統領写真撮影の機会だった(意識が高ぶっていることを許して欲しい)。

マスクはフレッド・アステアの真似を精一杯やっている。重力に逆らって天井で踊っている。この綱渡りは、彼の失墜が更に悲惨なものになることを意味するだけだ。

2週間前に『エコノミスト』誌が実施した全国世論調査によれば、トランプ大統領は既に不人気であり、人命が失われる数が増えるにつれ、事態はさらに悪化するだろうことは間違いない。

トランプの支持率も、2度目の就任以来低下している。彼に対するネガティヴな評価が警戒すべきレヴェルにまで達すれば(そして必ずそうなるだろう)、脚光を浴びることを好むこの大企業経営者であるマスクは大統領のスケープゴート(scapegoat)にされるだろう。トランプの元側近の多くと同様に、彼も使い捨てられる存在だ(He is disposable like so many of Trump’s former associates)。民主党は、私たちの最終目標は大統領を弱体化させることであり、マスクを弱体化させることではないことを忘れてはならない(Democrats must remember that weakening the president, not Musk, is our ultimate goal)。マスクがトランプの意のままに動いているのであって、その逆ではないことを明確にすべきだ(We should make it clear that Musk is doing Trump’s bidding and not the other way around)。

国民の60%以上は、マスクがトランプに大きな影響力を持っていると考えているものの、マスクにそう望んでいるのはアメリカ人の5人に1人だけだ。共和党員の3人に1人でさえ、この大企業経営者マスクは大統領に過大な影響力を持っていると考えている。

トランプは、マスク、Metaのマーク・ザッカーバーグ、Amazonの『ワシントン・ポスト』紙のジェフ・ベゾスといった超富裕層のテック業界の巨人たちと肩を並べている。ワシントン・ポストで最近起きた騒動は、トランプの企業カルテルがいかに集中的な権力を持っているかを如実に示している。公益団体コモン・コーズは、マスクを批判するラップアラウンド広告を一面、裏面、そして中面1ページに掲載することを提案した。しかし、注文を受けた後、ワシントン・ポストは尻込みして広告掲載を断った。ワシントン・ポストのモットーは、「ワシントン・ポストで民主政治体制は闇の中で死ぬ(Democracy Dies in Darkness at the Washington Post)」に変更されるべきだ。

ワシントン・ポストが広告掲載を拒否したことは、言論の自由に対する明白かつ差し迫った脅威だ。また、トランプ、マスク、ベゾスが、機能不全に陥ったアメリカ民主政治体制の心臓部に血液を送り込む情報動脈(the information arteries)を、いかに強大に締め上げているかを如実に示している。

マスクは世界で最も富裕な人物の1人、いや、最も裕福な人物と言えるだろう。彼は政府効率化省をリードする頭脳(the brain behind the Department of Government Efficiency)だ。彼の冷酷な指揮下で在宅医療や学校給食を失う貧しいアメリカ国民のことを、彼には気遣う理由など存在しない。効率化をあえて追求するあまり、彼は大切なものを駄目にし()throw the baby out with the bathwater、何百万人もの人々に奉仕する連邦政府機関を丸ごと潰そうとしている。彼の執拗な追求には、政府撲滅省(the Department of Government Eradication)というより適切な名称がふさわしいだろう。そして、彼が直属する大統領の真の目的はまさに政府の撲滅なのだ。

最近、政府効率化省(DOGE)は移民・関税執行局(the Immigration and Customs Enforcement Agency)で80億ドルの無駄遣いを発見したと主張した。『ニューヨーク・タイムズ』紙が調査したところ、実際の数字は800万ドルだったことが判明した。マスクが80億ドルと800万ドルの違いも分からないのであれば、他に何を間違っているだろうか? 彼は政府支出の効率化(efficiency in government spending)を担うべき人物ではない。

彼はまた、行動と言動において利益相反(conflict of interest)そのものだ。彼の巨大な企業的利益は、彼が担う重要な政府責任と真っ向から衝突している。彼のロケット会社スペースX社は連邦政府の請負業者である。

マスクを嫌うバノンは私だけではない。トランプの大統領顧問を務めたスティーヴ・バノン(私とは血縁関係はない)は、長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)との間で、MAGA内戦が勃発すると警告している。バノンはこれを、トランプ連合内の億万長者と労働者階級の勢力間の戦い(a battle between the billionaire and working-class elements within the Trump coalition)だと表現した。

民主党と進歩主義派は、この分裂につけ込むことができる。苦境に立たされた労働者世帯を支援するという自らの関与を強調することで、こうした分裂をうまく利用することができる。彼らは、トランプが新政権発足初日に物価を引き下げるという、今や放棄された選挙公約を実行してくれることを期待していた。

分断統治(divide and conquer)は常に敵を倒す効果的な手段だった。私たちはMAGA内の分裂につけ込まなければならない。マスクは、トランプを労働者階級の支持層から引き離すために必要な楔(wedge)となるかもしれない。

※ブラッド・バノン:民主党の全国規模担当ストラティジストであり、民主党、労働組合、そして進歩主義的な問題団体のための世論調査を行うバノン・コミュニケーションズ・リサーチCEO。彼は、権力、政治、政策に関する人気の進歩主義派ポッドキャスト「デッドライン・DC・ウィズ・ブラッド・バノン(Deadline D.C. with Brad Bannon)」の司会者を務めている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 ドナルド・トランプには大統領としては残り4年間弱しか時間がない。そのうち、最終年はレイムダック化と呼ばれる、次はないのだからということで、人々が離れて実質的に力を失う時期があるとなると、3年間ほどしかない。2026年11月には中間選挙(連邦上院議席の一部と連邦下院の全議席の選挙)が実施され、だいたい与党側が議席を減らすので、連邦上下両院での優位も崩れるかもしれない。そうなれば、政権運営は難しくなるので、最初の2年間で勝負を決しておかねばならない。

トランプは、アメリカの抱える財政赤字と貿易赤字を何とかしようと、電撃作戦を仕掛けた。巨大な連邦政府(職員は約200万人)と巨額の連邦政府予算(約7兆ドル、約1000兆円に達する)の削減を行うために、イーロン・マスクを政府効率化省のトップに据えた。私たちは新自由主義全盛の頃に、アメリカは小さい政府で効率が良い、決定スピードが速いなどと嘘を教えられてきたが、共和党と民主党の大統領、連邦議会は、アメリカ連邦政府を巨大化させてきた。そのくせ、日本は国家予算を削り、人員を減らすことを、アメリカの手先にして売国奴、買弁の小泉純一郎や竹中平蔵に強要されてきた。話が逸れたので元に戻す。

 貿易赤字に対しては、高関税を課すことになった。関税を支払うのは、輸入する業者たちだ。そして、関税が上がった分で業者や取引業者が吸収できない分は消費者が価格の上昇ということで支払うことになる。物価上昇については、トランプ大統領はエネルギーの増産で対処しようとしているが、アメリカ政府の輸出増加を狙う、ドル安誘導で物価上昇は避けられない。アメリカ国民は、強いドルのおかげで世界中から製品を比較的安価に手に入れることができた。そして、外国に支払ったドルは、「世界で最も安全な資産」である米国債購入で、アメリカに戻るというシステムを作り上げ、借金漬けの生活を送ることが可能になった。

 トランプはそのような戦後のシステムとそれが生んだひずみを解消しようとしている。もちろん、それはうまくいかないだろう。はっきり言って、アメリカの製造業が復活するなんてことはないし、アメリカの借金が全てチャラになることはない。多少の延命になるかどうかだ。しかし、これまでの政治家たちが先送りにしてきたことを何とかしようという姿勢を見せているだけでも、アメリカ国民の評価を得るだろう。

 以下の論稿にあるように、これまでの常識で見ていけば、トランプはすぐに失敗することになるだろう。しかし、現状はこれまでとは大きく異なっている。戦後の世界構造、いや、近代600年の世界構造が大きく動揺している。その中で、時代精神、心性を体現する人物としてトランプは出現した。このことを分からなければ、右往左往するだけのことになってしまう。

(貼り付けはじめ)

これは「トランプのピーク」になるかもしれない(This Could Be ‘Peak Trump’

-彼の権力への復帰は印象的なものだが、これから困難な仕事が始まる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年1月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/01/27/peak-trump-war-diplomacy-tariffs-economy/

トランプ政権の発表だけを聞いたり、これまでに業績を上げてきたジャーナリストたちによる、まるで目の前の出来事に戸惑うような(the deer-in-the-headlights)説明だけを読んだりすれば、トランプ新政権は既に抗えないほどの勢いを増大させているという結論を皆さんは持つかもしれない。トランプの君主的な野心(Trump’s monarchical pretensions)を考えると、彼は間違いなく、自分には制限がなく、抵抗は無駄だと皆に思わせたいと思っているだろう。しかし、それは事実ではない。トランプの華々しい復帰と初期の広範な取り組みを、止められない勢いだと誤解すべきではない。むしろ、後になって、この時期を振り返ったえら、トランプ的傲慢さの頂点(the highwater mark of Trumpian hubris)だったということになるだろう。大袈裟な約束をするのは簡単だが、実際に成果を上げるのは非常に困難なのだ。

もちろん、トランプの手腕を過小評価すべきではない。彼は、疑わしい事業に銀行から融資を取り付け、騙されやすい顧客に、決して実現しないものに金を支払わせることに大いに長けている。彼は、事実がどうであろうと、アメリカは絶望的な状況にあり、自分だけがそれを解決できると有権者を説得することに驚くほど長けていることを証明してきた。これは、様々な問題の責任を負わせる架空の敵(fictitious enemies)を見つけることにも同様に長けているからだ。過去の犯罪に対する処罰を逃れることにかけては並外れた技能を持っており、自身、家族、そして仲間に利益をもたらすことにも長けている。そして正直に言って、彼は疑問視されるべき正統性(orthodoxies that deserved to be questioned)、特にアメリカを不必要で失敗に終わる戦争に引きずり込む外交政策エスタブリッシュメントの傾向に、果敢に挑戦してきたことでも恩恵を受けている。

トランプが才能を発揮できていないのは、政府を運営し、首尾一貫した政策を立案し、一般のアメリカ国民に広範かつ具体的な利益をもたらすことにおいてだ。彼の最初の任期における実績は忘れてはならない。貿易赤字は改善するどころか悪化し、不法移民は大幅に減少せず、パンデミックへの対応の失敗で何千人ものアメリカ人が不必要な死を遂げ、北朝鮮は核兵器を増強し、イランはウラン濃縮を再開し、大々的に宣伝されたアブラハム合意は、2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃の布石となった。彼はアメリカ・メキシコ国境に壁を建設することはなく、メキシコは費用を負担しなかった。中国は、トランプが交渉した大規模貿易協定で約束した2000億ドル相当のアメリカ製品を購入しなかった。まさに多くの勝利を得た!

今回はもっと良い結果になるだろうか? もしかしたらその可能性はある。2017年とは異なり、今回は彼には要職に忠実な側近が就いており、ホワイトハウスには有能で有能な首席補佐官(chief of staff)がいると誰もが認めるだろう。しかし、こうした強みをもってしても、トランプの政治政策に潜む深刻な矛盾(deep contradictions)や、彼が直面するであろう障害(obstacles)を解消することはできない。

それらの点を列挙してみよう。

第一に、偉大な平和調停者(a great peacemaker)として歴史に名を残したいというトランプ氏の願望と、自分の思い通りにするために相手を威圧し、武力行使で脅すという彼の根強い特長との間には、明らかな緊張関係がある。巧みな強制外交の使用(the adroit use of coercive diplomacy)は和平努力を促進することもあるが、あらゆる方向に大きな棒を振り回すトランプの特長は、どこでも通用する訳ではない。遅かれ早かれ、彼のブラフは見破られ、彼は引き下がるか、行動を起こさなければならないだろう。彼の怒りの矛先となっている相手の中には、「泥沼(quagmire)」に陥っている存在もおり、武力行使の脅しは、従わせるどころか、抵抗を強める傾向がある。彼はまた、ロシアによるウクライナ戦争と、ほぼ確実に崩壊するイスラエルとハマスの停戦という、特に厄介な2つの紛争を引き継いだ。そして、後者については24時間以内に解決できると選挙運動中に自慢していたことを、既に撤回している。

第二に、トランプの経済政策は到底納得のいくものではなく、彼は自らが表明した目標の一部を犠牲にするか、経済破綻の危機(a potential economic trainwreck)に直面することになるだろう。減税(tax cuts)の延長、関税(tariffs)の導入、そして労働者の国外追放(deporting)は、いずれも財政赤字の拡大とインフレの再燃を招く恐れがあり、トランプが得意とする予測不可能性(unpredictability)によって生じる不確実性(uncertainty)は、企業の足かせにもなるだろう。トランプと支持者たちは、規制緩和(deregulation)と「無駄な(wasteful)」支出の削減でこの矛盾は解消されると主張しているが、国防総省への支出を増やすのであれば、多くのアメリカ人が依存し支持している社会保障制度を大幅に削減しない限り、大した節約にはならない。トランプ大統領は、ジョー・バイデン前大統領から極めて健全な経済を引き継いだ。更に重要なのは、トランプ大統領が実施すると約束した政策が、この落ち込みをより悪化させるということだ。

第三に、トランプが他国(特にメキシコ)を罰すると脅すことと、反移民政策の間には明らかな矛盾がある。メキシコへの関税は、多くのアメリカの製造業が依存するサプライチェインを混乱させるだけでなく、メキシコ経済に打撃を与え、より多くの人々がリスクを無視してアメリカへの移住を試みるようになるだろう。不法移民を阻止する最良の方法は、近隣諸国を不況に陥れるのではなく、経済的に繁栄させることだが、トランプはこのことを理解しているのだろうか?

第四に、政府機関を骨抜きにし、公務員にリトマス試験を課し、不適格者や深刻な問題を抱えた人物を主要な政府機関の責任者に据えることは、不可欠な公共サーヴィスの低下を確実に招く。政府機関は政治の格好の標的だが、億万長者ではないアメリカ人は、特に緊急事態において、それらの機関が円滑に機能することを頼りにしている。公共サーヴィスが低下した場合、一般のアメリカ人は憤慨するだろうし、トランプには他に責める相手はいないはずだ。

第五に、大学やその他の知識生産組織を攻撃することは、アメリカを愚かにし、人的資本を減退させ、他の国々の追い上げを助長することになる。大学を標的にするなら、技術革新を推進し、効果的な公共政策の策定に貢献し、社会全体の幸福に貢献する将来の科学者、エンジニア、医師、芸術家、社会科学者、弁護士、その他の専門家を誰が教育することになるのだろうか? 大学、非政府組織、シンクタンクにMAGAアジェンダを押し付けることで、各国が致命的な過ちを避けるための健全な議論が阻害されてしまう。これは、アメリカのような開かれた社会が、権威主義的なライヴァル国よりも一般的に豊かで、強く、過ちを犯しにくい理由を説明するものだ。賢明な大統領なら、この優位性を手放したいと思うだろうか?

第六に、トランプ氏が政府の腐敗を全く新しいレヴェルに引き上げると信じるに足る理由は十分にある。彼は既に、金持ちでテクノロジー業界の大富豪たちからの金銭と譲歩を強要している。彼らは金銭の授受に躍起になっている。関税やその他の貿易制限を課すことで、企業は例外を求め、それを得るために金銭を投じるため、腐敗が蔓延する新たな機会が生まれる。腐敗が蔓延すると、資源は人材買収に浪費され、投資は最も優秀なイノベーターや最も有望な事業ではなく、独裁者の言いなりになる忠誠心の高い層に流れていく。開発専門家たちは、腐敗の削減と法の支配の強化が経済成長を促進すると強調しているが、トランプはアメリカを逆の方向に導こうとしているようだ。彼と彼の仲間はより豊かになるだろうが、あなたはそうならないだろう。

第七に、トランプの二期目は、ある意味で、共和党が長年追求してきたいわゆる統一された行政権の実現に向けた集大成と言えるだろう。行政権の集中(the concentration of executive power)は1世紀以上にわたり着実に進んできたが、近年の最高裁判決はこの傾向を加速させ、トランプの君主制的な本能(Trump’s monarchical instincts)を強めている。抑制されない権力の問題は、独裁者の過ちを正す術がないことだ。特に、情報環境も掌握し、自らの失策を指摘する者を排除したり、沈黙させたりできる場合、猶更だ。人間は誤りを犯す生き物であり、過ちは避けられないが、抑制されない権力を持つ指導者は、大きな過ちを犯しがちだ。ヨシフ・スターリン、毛沢東、アドルフ・ヒトラー、ベニート・ムッソリーニ、サダム・フセイン、ムアンマル・カダフィ、そして北朝鮮の金王朝が、権力を掌握し、やりたい放題になった時にどれほどの損害を与えたかを考えてみて欲しい。中国の習近平国家主席の最近の一連の失策もまた、警告となる具体例となる。

就任演説でトランプは、アメリカ合衆国を新たな「黄金時代(golden age)」へと導くと宣言した。しかし、寡頭政治家たち(oligarchs)が政治を支配し、縁故資本主義(crony capitalism)が蔓延し、政府が市民社会(civil society)の独立した機関を威圧し、嘘が政治言説の常套手段となり、宗教的教義が公共政策の主要要素を左右し、問題は常に変化する内外の「敵(enemy)」のせいにされるような国のヴィジョンとは、到底合致しない。これはアメリカ合衆国というより、ロシア、中国、あるいはイランに近い。そして、大多数のアメリカ人が本当に望んでいるのは、そのような状況ではないだろう。

良いニューズなのは、そこに到達するにはまだ道のりが長く、独裁政治(autocracy)への道には落とし穴がたくさんあるということだ。22024年11月5日のアメリカ大統領選挙以来、トランプが続けてきた勝利のラップソングは終わりを迎え、彼の突飛な公約を全て実現するという困難な仕事が始まる。特に誠実さや清廉さといった基本的規範を軽蔑する人物には嫌悪感を抱いているものの、もしトランプが私の予想を覆し、専門家の予想を覆し、アメリカをより豊かで、より団結し、より安全で、より尊敬され、より平穏な国にしてくれるなら、嬉しい驚きを感じるだろう。しかし、私はそれに賭けるつもりはない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Bluesky: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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